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嵐が中で翠が野望は|煌《かがや》いて

#スペースシップワールド #ブルーアルカディア #戦後 #プリンセス・エメラルド

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●耀きはこの身に
 これまで築いた戦歴は、猟兵に知られずのうちに蓄えた。
 己が帝国軍の再集結。
 |漿船《クリスタルシップ》の回収、|闇の騎士《オブリビオン・フォースナイト》の編成も、クエーサービーストの洗脳も、順調に終えて、猟書家『プリンセス・エメラルド』は微笑む。
 ブルーアルカディアの「希望の聖地オーンブル」にて鹵獲した、空の世界の魔獣達もまた、戦力のひとつに数えて、帝国継承規約――それは、かの銀河皇帝が唯一定めた、皇位継承条件。
 「永遠に不変である事」、ようやく銀河の果てまで電波させる手段が整ったといえよう。

『|帝国継承軍《サクセション・フォース》の完成』を宣言します。
「私達の軍勢は最早、かつての銀河帝国など比較にならぬ程の軍備を手に入れ、洗脳によりクエーサービースト宙域も航行可能となりました。どこまでも、これで向かうことが出来ます!」

 待っていなさい、絢爛たるスペースオペラワールド。
「かつてあなた達を封印した正当なる宇宙の支配者……善龍スターゲイザーの血族」
 彼らの"帝国継承規約"を引き継いだ私こそが、あなた達の新たなる支配者となるのです。
 クリスタリアンが最長老。この――プリンセス・エメラルドが。

●継承軍を追え
「なあ、これまでの長い戦いに、終止符を打たないか」
 フィッダ・ヨクセム(停ノ幼獣・f18408)が静かに告げる。
「スペースオペラワールドへ侵攻される前に、敵の一団『|帝国継承軍《サクセション・フォース》』を撃つチャンスを予知した。大規模移動は、広いスペースシップワールドでだッてそう多くない。|漿船《クリスタルシップ》の群れを越え、プリンセス・エメラルドの居る旗艦「ソング・オブ・オーンブル」へ挑むのが良いと思う」
 巨大の中に一層大きな、旗艦だ。見つけることができれば、後は闘い続けるのみだろう。
「ヒトによッては長い戦いの決着を、夢見るモンなんだろ。いッてこいよ。……ただ」
 やや言い淀んだフィッダが、ジィと見つめ直す。
「それぞれに癖のある奴らが揃ッてる。簡単に進んではいけないかもしれない」
 最強の継承軍、その最前戦を退けて進まなければならないのだから。
 倒し進むことが出来たなら、それは継承軍における最大の痛手になるだろう。
「俺様の予知では、闇の騎士として配置された存在は様々な機器を遠隔操作したりハッキングに慣れてるようだ。当然のようにお前たちの邪魔をする。ホント、厄介なやつだぞ。ブルーアルカディアから鹵獲された個体まで、いる始末だ。小惑星もある、大型種になッてるからよ、見上げる程とはよくいッたもんだぞ」
 それでも臆せずに、猟書家の野望を砕きに行けるか、と問うフィッダ。
「……ま、強敵や超巨大な存在と争うのは慣れてるよな?気をつけて巨大なモン相手にしてきてくれよな!」
 君たちなら、猟書家を止める事が出来るだろう。
 フィッダはそう言いたげに、笑って見送った。


タテガミ
 こんにちは、タテガミです。
 この依頼は猟書家・プリンセス・エメラルドとの決戦シナリオです。
 合計「20回」依頼が成功すれば、完全にオウガ・フォーミュラを滅ぼすことができるようです。

 各章ごとにプレイングボーナスが異なります。
 断章には状況を記載します。
 プレイングボーナスは下記に記載しておきますのでご確認ください。

●一章
 継承軍が誇る最強戦力……「|闇の騎士《オブリビオン・フォースナイト》」のひとりを倒し、血路を開かねばなりません。ボス戦ですが、闇の騎士は「大量のオブリビオン艦隊」と「クエーサービーストの群れ」を従えています。闇の騎士は、戦略上の圧倒的優位を利用して「先制ユーベルコード」を放ち、そのうえ「大量の配下による攻撃(物理突進)」をかぶせてきます。闇の騎士を倒せば、プリンセス・エメラルドの乗る旗艦漿船「ソング・オブ・オーンブル」が存在する座標を割り出すことができます。

●二章
 猟兵達は、プリンセス・エメラルドの搭乗する巨大な|漿船《クリスタルシップ》……数多くの漿船の亡骸を集めて新造された旗艦「ソング・オブ・オーンブル」に肉薄します。そこに顕われるのは「ブルーアルカディアで鹵獲された個体」。しかもその個体は、クエーサービーストを餌とした事で「小惑星サイズに巨大化」しているようです。この闘いは奇襲作戦。よって【惑星ロボ】は持ってこれなかったので、猟兵達は自分の力とユーベルコードのみで、この「超・超巨大モンスター級個体」に対抗しなければなりません。

●三章
 旗艦「ソング・オブ・オーンブル」の内部で、プリンセス・エメラルドとの決戦です!プリンセスの不可思議な能力によって、プリンセスの元には大量の継承軍がテレポートして駆けつけてきます。これにより、プリンセスは「大量の軍勢による全方位からの攻撃」と「プリンセス自身の先制ユーベルコード」の両方を駆使してきます。これの両方に対処をしなければ、勝利は遠いでしょう。

●その他
 可能な範囲の採用で行いますが、おそらく相応にのんびり気味の運用になる可能性があります。加えて、全採用が出来ない場合もありますが、ご検討いただけましたら、幸いです。
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第1章 ボス戦 『アイ』

POW   :    ここに『ある』ものね、みぃんな『わたし』
戦場の地形や壁、元から置かれた物品や建造物を利用して戦うと、【戦場内の機器・兵器による攻撃】の威力と攻撃回数が3倍になる。
SPD   :    『わたし』をおいていかないで
【宇宙船との融合体】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ   :    これで、おともだち
【相手を惑わせる言葉】が命中した生命体・無機物・自然現象は、レベル秒間、無意識に友好的な行動を行う(抵抗は可能)。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はマホルニア・ストブルフです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●だあれ?
 "わたし"、ここにいるよ。
 だれがきたの。だれでもいいよ。
 ひとりじゃないもん。
 ここに『ある』のはみぃんな『わたし』。
 じゃましないで、『わたし』をおいていかないで。

 ああ、でも――これで、おともだちに、なれるかな。

 ハッキングによるテレパシーの意思の疎通。
 もっと近くなら言葉がよく聞こえる。
 かつて、撃ち捨てられた宇宙船の研究施設で、暴走した実験体がいたという。
 猟兵達の姿を見るなり、継承軍の『おともだち』じゃない、と知能が認識して敵対の意志をみせるのだ。
 大量のオブリビオン艦隊と、クエーサービーストの群れでを操って戯れにぺしゃんこにする様さえ見えなければまるで友好的な姿勢の子供のように思えなくもない。
 言葉巧みに、進行を止めさせようと動く。動く。ほら――すぐ其処でも。
子犬丸・陽菜(サポート)
 ダンピールの咎人殺し×聖者、15歳の女です。
「いっしょに苦しんであげるよ」
「臓物がはみ出したくらいで動けなくなると思った?」
「はらわたを搔き回される苦しみはどう?」

 宝珠による臓物を掻き回しを多用し、知られざる枷を使います。怪我は厭わず積極的に行動、臓器の負傷でユーベルコードの威力が上がるので負傷は状況によりわざと受けたりもします。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
 潜在的なマゾヒストなのでユーベルコードの苦痛になにか感じる場面もあるかも?
 負傷重症描写歓迎むしろ希望、内臓が出るくらいやっていただいて全く構いません!
よろしくおねがいします!



●『あたし』は此処に居る

 少女のようで、成人女性のような体格で起立し、――ああ視線がピタリと遭った。
『ねえ、わかる?ここに『ある』ものね、みぃんな『わたし』。『わたし』なの』
 幼い子供のような表情を向けながら、しかし内側には『なにもない』ような深淵の空白を思わせた。
 彼女の中に、あるものは――形無き、計算された言葉のみ。
『だから、ね。みんなおいで、おいで。とつげき、あそぶ。たのしいよ』
 手招くようにクエーサービーストを喚ぶ。
 あつまれおいでと、手招いて。アイは群れごと地域の物品として認識し、遠隔で操作する。彼等に意識など無きに等しい。大量の配下となったクエーサービーストは、単純でいて凶悪な突進攻撃を仕掛ける。
 |闇の騎士《オブリビオン・フォースナイト》は、群れごと『わたし』だとニタァと笑った。
 巨大な隕石が迫るように、一気に猟兵の元へ降りてくる。
 重量級の圧迫音。
 衝撃の波動は、周辺の危機をなぎ倒しながら破壊するがその中で。
「……ちょっと、それが『あなた』の全てなの?」
 瓦礫の中から、ぐっ、と唇の隅を上身ながら体を起こす子犬丸・陽菜(倒錯の聖女・f24580)。
 物陰に隠れて被害を最小に留めたつもりだが、クエーサービーストの突撃を指揮するアイはニンマリとこちらを見ている。
 高められた攻撃力で、壁ごと貫いて、それでも尚攻撃を繰り返す残虐性が見え隠させているからこそ油断ならない。
「随分と派手にやってくれたね、……っ」
 衝撃は、身体の怪我よりも内蔵に響く重さを伴っていた。
 陽菜が咳き込むと、臓器に掛かった負担分の|赤色《せきしょく》を僅かに吐く。
『まだいくよ。『わたし』はあなたをかんげいするもん。あそぼう、あそぼう』
 ずっと いっしょ に。
 怖気だつほどの底知れぬ闇を感じる。壊し、破戒し、終了させるのを"遊び"の誘い。
 承諾する者は猟兵ではないだろう。だからこそ、"遊びたがり"への返答は、言葉と"物理"に移行していく。
 同時に、攻撃が再開されるのを感じた陽菜は、履き零した血を拭って、"敵"への抵抗を試みる。
「傷つけられた内臓の痛みが、感触が、蠕動があなたを、あたしを狂わせる」
 悪寒が背中を突き抜ける。ああ、でも――いつも通りの力が発動するハズ。
 痛みの代償に、陽菜の手元に禍々しいオーラで作られた剣が創造されて現れた。
「対象が大きい?ううん、あなたは独り。ちいさなひとり」
 だから狙うのは一人だけ。
「痛みの分、『あたし』が此処に居るって教えてあげる!小さな『あたし』も此処に居るって!」
 |顕現せし苦痛の刃《けんげんせしくつうのやいば》に宿る黒い痛みのオーラは、アイの表情を歪める勢いで迫るだろう。アイが抵抗代わりに向けたクエーサービーストの攻撃をあえて受ければ受けるほど、そのオーラの色は黒色を深めていくのだから。
 接敵した陽菜が切り裂く頃には、剣は"|あたし《痛み》"ごとその体に叩き込む!
 降り注いだ|痛み《刃》は、宇宙を駆けて疾走るのだ――!

成功 🔵​🔵​🔴​

氷咲・雪菜(サポート)
 人間のサイキッカー×文豪、16歳の女です。
 普段の口調は「何となく丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、
 独り言は「何となく元気ない(私、あなた、~さん、ね、よ、なの、かしら?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

氷や雪が好きな女の子で、好きな季節は冬。
性格は明るく、フレンドリーで良く人に話しかける。
困っている人は放ってはおけない。
戦闘は主にブリザード・キャノンを使って戦う。
 あとはお任せ。宜しくお願いします!


陽環・柳火(サポート)
東方妖怪のグールドライバー×戦巫女です。

悪い奴らはぶっ潰す。そんな感じにシンプルに考えています。
戦闘では炎系の属性攻撃を交えた武器や護符による攻撃が多い。
正面からのぶつかり合いを好みますが、護符を化け術で変化させて操作したりなどの小技も使えます。
全力魔法使用後の魔力枯渇はにゃんジュール等の補給で補います
名刀『マタタビ丸』は量産品なので、もしも壊れても予備があります。

 ユーベルコードは指定した物を使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動し他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●炎と氷の二重奏

『こわくないよ。あそびにきたの?じゃあ、"わたし"があそんであげる』
 クエーサービースト達が、アイ――彼女に従って動き出す。
 チカラの動きはユーベルコードそのもの――先に発動させて、まるで手足のように巨大な群れを遠隔操作して振り回す。
 巨大な群れはうぞうぞと彼女の導きに従って、動き出す。
 小細工なしの、突進攻撃のみに特化させた攻撃は、宇宙船などたやすく破壊する鉄砲水が如し。
 壊し、破壊して、更に被害を増やしていく。
『ほら、こわして。こわれて。あそぶの。たのしいよ?』
 氷咲・雪菜(晴天の吹雪・f23461)は帽子を深めに被って、ぼそりと呟いた。
「まずは手始めに破戒、を見せてくれるのは遊びじゃないなあ」
 彼女の遊びは人の心が無いとさえ思う。
 こんな広い|宇宙《そら》で、有限の物資を破壊して。
 クエーサービーストを玩具にして遊ぶのが、楽しいだなんて――スケールが、違った。
「つまりそこら中のうぞうぞ連中を操るボスってことだろ!」
 陽環・柳火(突撃爆砕火の玉キャット・f28629)はその瞳を細める。
 ならば考える事は、あまり普段と変わらない。
「困難なんて、乗り越えればいいって事だもんなあ!」
 身軽に柳火は飛ぶ。襲い来る群れに足して選んだ選択は――単純な、突撃で応戦。
 防御の事はあまり考えられていないが、だからこそ大きな群れの殺到を"小さな自身"は隙間を縫うように躱す。
「俺は此処だぜ、見えてんのかアァア!?」
 手に構える名刀『マタタビ丸』を撫でて灯す、得意な炎!
 見よ、これなるは|妖刀《ようとう》オーバーロード!終焉を知る名刀にこそ許された最強!
 ついでに足に、身体に炎を纏って、攻撃を軽減する道を作り進む。
 ごおうと吠える名刀を構え、クエーサービーストの頭を踏み血気盛んに挑む様は正義の心溢れる|熱血漢《チンピラ》だ。
「今の俺はつえーんだぜぇ!」
 3分間、攻撃力を高めた名刀は炎を巻き上げて突き進む推進力を柳火に与える。
 火の粉に怯えたクエーサービーストは逃げ、道を開けてアイへと迫る道は開かれた。
「オラァッ!!喰らいなぁあ!!」
 全力を注ぎ込んだマタタビ丸はまるで炎の虎が如し。
 噛みつく刃は、彼女の身体を燃やしながらも切り裂く!
 時間との勝負もあり熱い刃がアイの身体を通り抜けてすぐに、手元の名刀は崩れてしまう――。
「チッ……折角の大盤振る舞いなんだからよ!焦がれるくらい味わえってんだよ」
 ――マタタビ丸、ありがとな。
 量産品とはいえ、敵に一撃を与える"猛虎の牙"は役目を果たしてくれたのだ。
『い、いたい……いたいよぉ、あついよぉ』
「だろうなあ!」
 うええん、と泣きべそをかくアイは、やはり子供のような対応で。
 困惑しそうになる柳火は、いつもと同じ態度を崩さずに、ただ言うのである。
「嫌ならウチに帰んな!」
 此処は戦場のど真ん中、立ちふさがるから痛い目に遭うってんだよ!
「そうだよ、じゃあ私良いこと教えてあげる!」
 柳火の猛進を後から追いかけていた雪菜は、明るくニコリと笑った。
「まあ、私が教えてあげられるのは――宇宙では味わえない"温度差"なんだけど!」
 腕に嵌めたブリザード・キャノンは増幅器。
 きらん、と煌いたかと思えばキラキラと氷の魔力を補充し始める。
 補充、そして装填。
 氷の弾丸は、トリニティ・エンハンスによって高められた魔力!
「熱いなら、寒いもあげちゃう!」
 だまし討ちなんて言葉は必要ない。補充した氷の弾丸を一気に発射!
 広範囲に向けて振り回し、クエーサービーストも追い払う!
「さあ集まる時間は終わりだよ!解散解散!」
『ひやぁっ、つめたい!』
 どどどど、と氷の弾丸を身に受けたアイは、よろりとその場でたたらを踏む。
 燃やすように切り裂かれた身体が今度はぱきぱきと氷に覆われていく。
 温度差のダメージは、凶悪な痛みを彼女に与えたことだろう。
「ふふふ、炎と氷もしくは……夏と冬。ねえ、どっちが好き?」
「俺は勿論、炎!」
「私とは正反対ね!でも、――」
 あなたはどちらも苦手、なのかしら。
 残虐性を、その身に返されたアイは――恨めしそうに睨んでいる。
 りょうへい。てき。あそびあいてには、むいていない。
 理解したとしても、それはもう、――遅いのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ユイン・ハルシュカ
闇の騎士……それにクエーサービースト、か。
ボクの故郷でもここまでのワルはそういない。
というか、ワル以前にあいつら不気味だな。
よし、早く片そう。怖くなんてないぞ……ホントだ。

迫る融合体の頭に角を生やし、取引だ。
力を授ける代償に……少々、不自由な目を見てもらうぞ!
殺到する群れを前に、敵の親玉を文字通り盾にしてやろう!
くっ……はは、どうだ、ワルいだろう!

制御が効かなければせめて敵同士をぶつけてやる。
多少こちらも痛手を負うのは覚悟の上だ。
髑髏柱こそ四天王の神髄、
追い詰められるほど本領を発揮するのが我らなのでな。
痛みを対価に……というか……あとで、覚えておけ~~!



●ワルが従える最強の片腕

「|闇の騎士《オブリビオン・フォースナイト》……それにクエーサービースト、か」
 ユイン・ハルシュカ(山羊角の悪魔の四天王・f33153)は視線を僅かに伏せる。
「ボク故郷でもここまでのワルはそういない」
 とおせんぼ技能が飛び抜けて高い、幼子が相手なのだろうか。
 謎は深まるものの、しかしそれは訪れた本質ではない。
「でも、ワル以前にあいつら不気味だな」
 うごうごと、群れが声も奇声もあげずに蠢くさまは、視覚情報だけでも地獄の様相だ。
 デビルキングワールド系だったら、あの中から驚きを発揮する悪魔はいくらでも居そうだが空気は読める。
 それがデビルキングワールド的マナーというやつだ。
「ようし、早く片そう。怖くなんてないぞ……ホントだ」
『こわくない、こわくないよ。"わたし"はここにいるよ』
 ずずず、と宇宙船と声を発したアイの体が溶けて混ざる。
 打ち捨てられた宇宙船を自分の体のように、扱って。そしてユインへ声を送る。
『ここはもう"わたし"のなかで、いっぱい"わたし"のことをかんがえていてよ』
 "わたし"をおいていかないで。声に溢れる逃さないという純粋で狂気な暴走気味の願い。
 アイの"内側"の中にあるものは、ほとんど全てが彼女の管理下だ。
 遠隔でハッキングを仕掛けられた色んなものが飛んでくる。
 宇宙船と融合した個体として起立するアイは、先ほど見かけた姿よりメカメカしく悪魔のようにも見えた。
 用途不明な、金属類を振りかざしぶつかったら当然痛いでは済まない鋭角の後にクエーサービーストもまた追いすがる!
 金属を避ければクエーサービーストの群れを避けきれない、そんな中で下すユインの決断は――。
「まあまあ、そんなに慌てるものじゃないだろう」
 さあ此処でデビルズ・ディール――取引だ!
 にょきりと生えた角に対して、ふええ?と困惑顔のアイ。
 しかしユインは言葉巧みに捲し立てる。
「"|玩具《ボク》"と遊ぶのならその力を授けても良い」
『ほんとぉ?』
 理性を失て素早く機敏に、動いたそれは言葉の色を感じ、嬉しそうな気配を感じたのだろう。
 故に、真っ先に近寄ってくるのは群れの|親玉《ボス》である。
「……が少々、痛い目を見て貰おう!料金先払という奴だ!」
 殺到する群れを前に、敵の親玉を文字通り盾にする!
 交換条件は呑まれた故のワルい行い!どうだ、これこそがデビルキングワールド流!
 無差別攻撃し続けるその攻撃は、一緒に迫るクエーサービーストを逆に返り討ちにする。
 敵の敵は味方なり。
 ボスを盾に取られたクエーサービーストの群れは、闇の騎士の手によって無差別に昏倒させられていく。
「っ……はは、どうだ、ワルいだろう!どうだ。つよいぞ!すごいぞ!」
 えっへん、と胸を張るユインだが、相手の数を少しでも多く減らせれば、と考えた。
 対価と駄賃代わりに痛手を負うのも覚悟の上。
「髑髏柱こそ四天王の神髄、追い詰められるほど本領を発揮するのが我らなのでな」
 そちらの痛手は、我らが進む道筋成れば。
 群れの追加攻撃は、物理的な突進だ――無差別に同士討ちしながら暴れ続けるアイに生やした角――強化の効果を与え続けるのは厳しい。
 無差別破戒の制御は犠牲を強いる。ユインは頃合いを見つけてデビルズ・ディールを解除して身を翻す。
「どうだ!痛みを対価に……というか……あとで、覚えておけ~~!」
 痛かったとは言わなかったが、その背中は振り向かずに台詞を残した。
 まるで、――痛かったのを思わせるちょっぴり震える俊足であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クック・ルウ
(幼子のような声がしている
見つけてあげねばな)

声の大きくなる方へ、闇に紛れ、静かに這い寄ろう
アイを敵の軍勢に誘導するように位置取り
縦横に宇宙空間を泳ぎながら配下達を盾とおとりに使わせてもらう
無差別の攻撃を敵同士でぶつけ合うがいい

望むのなら、遊んであげよう
【水鏡の魔法】
飛び交う鏡と戯れよ

無数の鏡を繰り、敵の群れを撹乱しよう
負傷した仲間がいれば透明な鏡での援護も行う

(この広大な宇宙に置いていかれるのは悲しい。私もそうだった)
(けれど私は待つ事をやめて探しに行くことを選んだから)
先へ向かわせてもらうぞ
この宇宙の平穏を再び奪わせないために



●啼く声は己が真実を映さず

 ――ああ、幼い子のような声がしている。
 声音はどこまでも、嘘自体はないのだろう。嘘で固められた狡猾で計算高い図られた音だとしても、演じるほどの声音だとクック・ルウ(水音・f04137)は思わなかった。
 泣く声。嘆く声。
 純粋でいて、危うい幼い声。
「……みつけて、あげねばな」
 大暴れした見知らぬ誰か。クックは音のする方へと歩みを進める。
 闇に紛れ、静かに静かに――這い寄る道を選んで。
『だれ、だれなの……ねえ、"わたし"をおいていかないでよぉ』
 泣きじゃくる声は、耳にではなく、心に届く。
 テレパシーだと気がつくまで時間はそうかからない。
 ボロボロの宇宙船の中で、一人の存在が泣いていた。
 傷だらけの姿で、泣きじゃくりながら背後にクエーサービーストの群れを従えながら。
 彼女が闇の騎士であり、立ちふさがる刺客であった。
 ずずず、と宇宙船と融合し、索敵の範囲を広げる。
 積まれたカメラは彼女の瞳に。どの積載物も彼女の一部。
 探すようにキシキシ音を立てて動く色んなモノが、理性を無くした彼女の手足代わりに無差別に働きかけられる。
「ああ、ここにいるとも」
 声を上げたクックの出没は、敵の軍勢の誘導を誘う位置取りだ。
 声を聞き、攻撃力を高めた宇宙船の積載物を完全にハッキング及び掌握したアイは――投擲に見舞う。
 先制の一撃は――しかし宇宙空間を背にするクックにとって、避けた先にあるものはクエーサービーストであった。
 縦横に泳ぎながら動くクックの動きに連れられて、攻撃の手は伸びる。
 配下たちはアイの攻撃先めがけて突進を繰り出すが方向の不一致によって、アイの全ての攻撃は配下への被弾という形で爆破を起こす。
「良い命中率をしているな」
 無差別の攻撃を敵同士でぶつけ合う中に、嘆きなどどこにもない。
「だが、クックと遊びたいのだろう。ならば、もっと速度をあげなければな――さあこちらをもっと"見ろ"」
 ふわり、と浮かびだすのは水の魔力で出来た無数の鏡。
 キラキラ煌く水鏡の魔法は、宇宙を照らす輝きを抱く。
「飛び交う鏡と存分に戯れよ」
『わあ、いいなあ。"わたし"いっぱいいるね』
 理性なく、語彙もない言葉を口にして、しかし破戒の手を休めないアイは子供にしかクックにはもう見えなかった。
 鏡に映る自分を見てはまるで楽しげに表情を明るくして笑っていたのだ。
 純粋故に残虐で。壊したモノが何であるかなど、些細だと言わんばかりに攻撃の手を停めることもない。
「ああ、いるとも。限りなく」
 ――これが、この広大な宇宙にぽつりと置いていかれた子。
 かつてクックにも憶えがあった。私もそうだった、悲しいことだと心が理解を示している。
 ――けれど私は待つ事をやめて探しに行くことを選んだから。
 クエーサービーストとの間に、鏡を滑り込ませて反射に互いの自壊を誘わせる。
「さあおいで。ついて来られぬならば先へ向かわせてもらうぞ」
 せめて一人ではないおしまいを。
 ひとりぼっちではない、おしまいを。
 爆撃の音は、破滅の音だ。理性のない彼女の笑い声が、耳に届く。
『ハ、は、ははは……!』
 いたいという言葉を叫ばぬ彼女の声が、だんだん小さくなっていく。
 配下と共に戯れを繰り返すうちに、だんだん聞こえなくなっていく声。

 彼女が朽ちた証拠だろうか。
 群れであるクエーサービーストの多さに埋もれ、姿はもう見て取れない。 
「そうか、遊び疲れて眠ったか――」
 進軍も、侵略もこれ以上は行わせるわけにいかない。
 先へ進もう――この宇宙の平穏を、再び奪わせないために。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『黒華の天使』

POW   :    零距離切断
【目くらましになる羽毛を撒き散らす翼】で敵の間合いに踏み込み、【両手のガンナイフから斬撃】を放ちながら4回攻撃する。全て命中すると敵は死ぬ。
SPD   :    怨恨弾
【両手のガンナイフから撃ち出す弾丸】が命中した部位に【攻撃対象への敵意や殺意の念】を流し込み、部位を爆破、もしくはレベル秒間操作する(抵抗は可能)。
WIZ   :    聡明なる翼
【自分の翼】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、自分の翼から何度でも発動できる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はスティーナ・フキハルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●宇宙に殺意の堕天使を

 |闇の騎士《オブリビオン・フォースナイト》が一人は群れの向こうへ消えていった。
 旗艦漿船「ソング・オブ・オーンブル」を追いかける為の座標は此処に示される。
 たた――進み続ける先にこそ、猟書家『プリンセス・エメラルド』は佇む――。
 該当旗艦漿船に肉薄し、いざ進めと歩むならばバサリと黒羽が行く手を遮ることだろう。
 超を越えて、更に巨大のモンスター級個体は――小惑星サイズ程に巨大であった。
 しかし黒の翼を大きく広げ、敵意を向ける様は猟兵の要害として在ろうとする目的を重く受け止めさせる。

 空から宇宙へ解き放たれた"魔獣と成り果てた"天使は翼を広げて、踊るように、舞い降りた。
 遮るように、立ち塞がるように。
 かつて雲海にて没した|天使《エンジェル》は、あり方を反転させて堕天した。何かと混ざり、加虐性を帯びた堕天使は、宇宙を際限なく飛び回り――構えるガンナイフは殺意の弾丸を放つ。
『奥へ向かうのならば、容赦しません。私は強いですよ』
 "猟兵"だというのなら、この宇宙の果てで終焉を。
 ガンナイフの銃口は、狙い迫る者たちへ突きつける黒華の"堕"天使からの|死の宣告《祝福》だ。
ナーダ・セッツァー(サポート)
顔を隠し、喪服に身を包み、兄弟と半分に分けたロザリオを身につける。
兄弟と同じ装丁の仕込み杖を持ち、隠すのは槍。
オラトリオの翼は出さない。
髪に咲く花は山荷葉。

弱者を救済し、悪を裁く。
全ては亡き我が神のため。
憐れなるモノに神の御加護を。
その為ならばこの身が、手が紅く染まろうと悔いはない。

尊大な口調だが他人を下に見ている訳では無い。
他人には他人の価値がある。
だが我が神を侮辱するのは万死に値する。
神のみもとに逝くがいい。

戦闘は仕込み杖(槍)での肉弾戦、又は硝子のような山荷葉の花を風に舞わせて切り刻む。
回復?殺られる前に殺れば必要ないな。



●"祝福"を

 あゝ、――此処にも神はいないのだ。
 胸元で兄弟と半分に分けたロザリオが揺れた。
 喪服を纏うナーダ・セッツァー(地に満たせ神の威光・f35750)は、空砲よろしく撃ち放たれる銃声を聞きそしてため息のように小さな音を漏らす。
 素顔を隠すナーダのため息に、小惑星規模の大きさを誇る黒華の天使は目敏く目をつけた。
『その音の感情は一体なんでしょうか』
 両手に構えたガンナイフに込める|弾丸《祝福》は殺意を込めて。
 どのような返答でも、引き金を絞る手は止まることはない。
 ナーダと関連性を持たない怨恨の弾丸は、息を吐くように。
 黒翼を広げて風を起こすように、撃ち放たれる。
「なにも。強いて言うならば、亡き神の為の加護が此処に必要だろうと思うまで」
 憐れなるモノだとナーダは語る。
 弱者ではないサイズと出会ったモノの心のサイズまで巨大化するはずはない。
「大きいも、小さいも。些細なことだ」
 これもまた、兄弟と同じ装丁の仕込み杖にて事を成そう。
 隠したる槍は、まだ魅せなくてもいい。
『では安らかに眠る手助けをさせて頂きましょう!『神様』が言う通りに』
「……ほうほう。我が前で『神』を語るか。堕天のモノよ」
 手が赤く染まろうと、|痛み《赤い華》を咲かせてみせよう。
 これは神のみもとに逝く手助けだ。
 巨大な堕天使を侮っているわけではない。
 だが、その弾丸は怨恨を込められた|重力《グラビティ》を|装填《チェイン》。
 当たるわけにはいかず、オラトリオの翼を出さぬナーダの逃げ場を容易く奪える巨大さは、厄介だった。
「"良い子"なんて壊れやすいの。壊わす側になってしまったほうが楽なのですよ」
 ずだだだ、と連続で撃たれる弾丸を、ナーダはするりと躱す。
 瞳がギラリと光っているが、堕天使は見て取れない。
 大きな体相手に躊躇する様子は一切無く。
 仕込み杖によって神罰の裁定者として弾丸を見切り、切り捨てて。
「踊り給え。君が信ずる"神"とやらが微笑むように」
 九死殺戮刃――殺戮の舞踏に、招待しよう。
 大きな堕天の黒翼を、殺戮刃物によって切り揃え散らしていく肉弾戦への意欲に喝采を。
 素早く、連続で繰り出す槍の乱舞に、胸の鼓動が異様に高鳴る。
『やっ、やめてください!私の翼が!神様に祝福された、私の自慢の翼が!』
 舞い落ちる黒翼は、赤に染まって散っていく。
 巨大な|鳥《羽》はひらひらと、宇宙に溢れて散っていく。
 ――なあに、これだけ羽根を散らしてやれば。
 ――遠く遠く、飛び回ることなどもう"出来ないだろう"。
 ずだずたの翼は宇宙を駆ける為の手段にならず。
 堕天の翼は、|宇宙《そら》よりも墜ちるほうが相応しい。

成功 🔵​🔵​🔴​

樹神・篠(サポート)
人間の魔剣士×悪魔召喚士、少し気弱そうな男子です。
普段の口調は少年(僕、~君、~さん、だね、だよ、だよね、なのかな? )、
気分が高揚した時は元気系(僕、あなた、~さん、だ、だね、だろう、だよね?)な感じです。

シルバーレインの出身で価値観は現代的。
得意な技能は暗殺と斬撃波、なぎ払いや高速詠唱など。
他、何かを『詰め込む』事や
(学生の範囲内での)一通りの礼儀作法も心得ています。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


スカーレットスター・クリムゾン(サポート)
「自分から殺されに来たんだ、怨むのは違うだろ?」

「正義や悪でしか判断できないのか?……なら『お前の意志』は何処にあるんだ?」

「ちょうど濃厚なワインが飲みたかった所だ、この後は上質なヴィンサントも控えている、楽しみだよ」

貴種ヴァンパイアであり大規模マフィアファミリー『知恵の蛇』を束ねる女帝。
マフィアとして自由に動くの為にパラディンとして爵位を得る。
武器の大鎌は『知恵の蛇』の女帝、聖槍はパラディンとしての言葉にしない意思表示。
雪の様に真っ白な長髪
高身長でスレンダーな美人。
服装は黒主体の露出しない上流階級の布質のパンツスタイル
冷静沈着で冷酷
誰も選べない事も即決する。
【NG】R15以上のエロ、恋愛描写



●血に穢れた黒翼

 これは――。
 対象を此処まで見上げる事は多くない。
 樹神・篠(眼鏡の魔剣士・f35462)もまたそうだ。
 シルバーレインのゴーストでも、小惑星規模なんて――。
「でも、……どんなに大きくても"天使"なんだろう?」
 少年は冷静だった。
 焦茶色の瞳を細めて、その手に"ダイモンデバイス"を携える。
 これがあるから、怯える必要はない。
『ええ。見たそのまま、私は"魂"を運ぶ天使と成りましょう』
 目眩ましとなる羽毛を、派手に撒き散らすその翼。
 血に塗れ、赤が交じる黒翼をぶわあと散らしながら、敵の間合いの入り込む。
『逃げ遅れたらそれでおしまい。絶命までそう長い時間は掛けませんよ』
 囁くように黒華の天使は、旗艦漿船への侵攻を当然のように身を挺して妨害する。
 その手にあるのは両手で握る、ガンナイフ。
 煌めく身近な煌めきは、人間規模の大きさなら当然死は近くなる。
 ナイフどころの刃ではない――あれは、死に最も近い、裁断の剣だ。
『さあ、逃げないで』
「逃げないで、と言われてハイそうですかと答える奴がどこにいる」
 堕天使へと肉薄するように声を届けたスカーレットスター・クリムゾン(マフィアファミリー『知恵の蛇』の女帝・f39213)。
「誰が誰を殺すって?もう一度言ってみな?――自分から殺されに来た、の間違いだろう」
 大きさなんて些末な事だ。
 貴種ヴァンパイアであり、規模マフィアファミリー『知恵の蛇』を束ねる|女帝《エンプレス》は格が違った。
 堂々と振る舞うそれはマフィアの落ち着き。
 篠とは異なる、落ち着きだ。フルオーダーの黒一色で、彼女が飛び込んだ理由――それは。
「――あ?ナメてんのか?」
 威圧的な姿勢からの、漆黒の大鎌による反撃だ。
 |伝授理合《デンジュリアイ》|斬閃《ザンセン》と彼女は呼ぶ――攻撃に触れた部位、それは斬撃だ。
 巨大な巨大なナイフの斬撃を大鎌で刈り取る。
『無駄ですよ、4回受けたらおしまいですから』
「……だそうだ。数度は防いでやるが、その代わりに頼めるか」
 くい、と顎をシャクるのは後方に見た学生が成果を出すと見込んだから。
 この場において、不意をつけるのは"攻撃を防ぐ"存在ではなく。
 状況を見極めるモノ。
「だいじょうぶ。僕の代わりに"彼"がするからね」
 暗殺――の技術に理解が在る。だからこそ召喚した斬撃波を獄炎と焼べて敵対者へと届けよう。
 ダイモンデバイスから唐突に湧き出す獄炎が、一気に空中を疾走り堕天使の体を燃やしに掛かる。まるで意思を持つ炎が、燃えやすい素材を見つけたようにあっという間の着火であった。ごおうと激しく燃え盛る獄炎の術を操る悪魔【アスモデウス】は、篠のそばでニタァと笑うような気配さえ天使に示す。
『きゃあっ!?』
 燃える、燃える。悪魔が燃やす。
『……なんて、言うと思いましたか?』
 聡明なる翼は、半ば脆く散らされて痛みを憶えていたとしても。
 飾りではない。堕天使は翼を広げ、ユーベルコードをそっくりそのまま写し取り――獄炎を扱う"堕天の悪魔"を召喚し返した。
 攻撃対象は一人ではない。ならば、攻撃方法は多様に、そして過激に、苛烈に、妨害行動へと勤しむ。
『私を燃やしたのは総計でしたね。おかげであなた方は今、自業自得の火の海にいます』
「正義や悪で判断するだけか?『お前の意志』は、既に没してしまったか?」
 涼しい顔をして、威圧の姿勢を崩さないスカーレットスターは、連続攻撃を阻止してみせた"悪魔"にも学生にも称賛の笑みを浮かべる。
「炎を操る|悪魔《アスモデウス》が、獄炎の操作で遅れはとらないよ」
 何よりも、負けを嫌うのが悪魔というもの。
 周囲に燃え広がった炎を、炎で相殺されれば火もまた涼しい。
『没していてもいなくても。此処で皆様を滅ぼせればそれでいいのです』
 でも、どうして。
 どうして、うまくいかないのですか。
『容赦はしないと、言いました。私がどれほど傷付いたとしても――使命を果たすだけですので』
 自身の生命が失われたとしても、――彼女に後悔などしないのだろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

クック・ルウ
喰らったものは糧となる
だがお前は、それに喰われたのだろうな

斬撃と衝撃波で羽毛を切り飛ばし
捨て身の覚悟で天使の攻撃を掻い潜って、懐に喰らいつく
肉薄すれば攻撃は天使自身にも向くだろう
肌に止まった小虫を潰すには己を叩くしかないからな

至近距離で渾身の力を込めた【激浪の魔法】を放つ
波よ溢れよ、我が心のままに荒れ狂え
私は猟兵
死に牙を剥く者だ

狙いはお前の後ろにある船
その巨体を旗艦漿船に叩きつけてくれる
宣戦布告をさせてもらうぞ!



●堕天の宇宙は悠くて

 堕天使は、血に姿を染めても頑なに道を譲ろうとしなかった。
 自身の流血よりも、相手の血。
 敵の叫びと、滅びの歌を弾丸とナイフに込めて祈るのだ。
 猟兵は、殺害対象になによりも相応しい。
 |死の宣告《祝福》は、汝の為に。
「お前は何を喰らったのだ?いや、答えずで構わない」
 喰らったものは糧となる。糧として、生き様を創るもの。
 クック・ルウはそう考える。
「お前は、そう――お前は」
 "それ"に喰われ染まったのだろう。
 乳白色の瞳は目眩まし代わりに大量に撒き散らされた黒の羽毛に時折視界を遮られる。
 小惑星規模のお前には、隠れるという言葉はとても遠い。
『私は、――邪魔を企てる命を刈り取るだけです』
 使命とするには軽く、命を賭すにも軽い理由。
 黒華の天使は、大量に羽根を舞い踊らせる。これで終わって良い、これで終わりでもいいと最後の殺人行為に手を染める機会であると信じて。
『だから、貴方の命も貰っていきます。切断は、得意なんです、なるべく楽に終わらせますね』
 聴覚が声を拾う前にクックは真っ向からガンナイフからの斬撃を受ける。
 大量に舞う羽毛を全て斬り飛ばす鋭さを誇る衝撃波で、だが。
「クックの傍は、遠いぞ」
『……どうして。苦しむ時間が長くなるだけですよ』
 二度目、三度目のちから任せの斬撃が来る前に、クックは襲い来る可能性を視野に入れながら捨て身であえて堕天使の元へ肉薄する。
 いきものであるのなら、急激に近づかれて驚かない者などいない。
「死ななければ、易い。私は猟兵、死に牙を剥く者だ」
 死ぬのは果たしてどちらだろうか。クックの言葉に堕天使は焦りを募らせたように、眉根を潜める。
「懐にまで入り込まれたお前は、大きさを理解してなどいないのだろう」
 自身が思っている以上に巨大なこと。
 認識に齟齬が在る。距離感と、実感が、伴われていないとクックは考える。
 相手は歴戦の戦士ですらなさそうな、堕天使がガンナイフで堕ろせる生者など油断している者以内ありえない気さえした。
『そんなことはないですよ?私にくっついた貴方ごと、この最後の斬撃で終わればそれで良いんですから』
「……捨て身の覚悟は、お前もか」
 ――この戦いは何のために。
 クックの問いはおそらく返答を期待できない。
 戦う理由など、存在理由の証明にもならない彼女は、答える言葉を持たない。
 自死さえ作戦に組み込む彼女は、――狂っている。
「では喰らえ。抗って、クックまで巻き込んでみろ」
 溢れるものおは喰い溜めた魔力。
 |魔法騎士《マジックナイト》の|激浪《げきろう》の魔法は、編み出された激流に乗せて炸裂する。
 ざあざあと波打つ音が、溢れ、溢れて身を埋めて、沈めて、染めて。
「我が心のままに荒れ狂え」
 息を奪う。叛逆して、クックごとガンナイフの斬撃で自分を終わらせるつもりなら、時間はあったことだろう。
 クックへとナイフが振り下ろされる事は――なかった。
「溺れて、還る。お前は殺ず退場できる」
『――!?』
 赤い瞳がきつく閉じた。
 水音がごぼごぼと聞こえる中で、"小惑星"は水に沈みそのうち静かになる。
 過去に死した場所が異なれども、お前もまた"オブリビオン"。堕天したお前は、人類の敵である。では、元の姿大きさで、遥かどこかの骸の海まで魂ごと流されるといい。いくら多くとも、お前はお前。お前自身が持つ『魂の大きさ』『質量』まで巨大化したりはしないだろう。
「もとよりクックの狙いは後方に座したあの船だ」
 どが、とぶつかる音がする。だばだばと後を彩る水音が、奔流となって旗艦漿船へと堕天使を叩きつけて――大量の羽毛が舞ってその身が散った。黒き華の羽毛の主は、もう――いない。

 次は、お前だ。

 宣戦布告と取るが良い。この軍団を率いるものよ。
 軍団を崩壊させる因子は、猟兵の奇襲でも猛攻でもない。

 統率者として立つ|猟書家《お前》自身だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャイニー・デュール(サポート)
『拙者は剣士でござります故!』
ウォーマシンの剣豪×クロムキャバリアです

真面目な性格ですが勘違いや空回りも多く、かつ自分がズレているという自覚もありません
正々堂々とした戦い方を好みますが、それに拘泥して戦況を悪化させたりはしません

ユーベルコードは所持する物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません
公序良俗に反する行為は(そういう依頼でない限り)しません

サムライというものに憧れていますが、正しい知識はありません
銃を使うことを嫌っているわけではなく、必要に応じて刀と内蔵兵器を使い分けます
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●心眼は虚構を見通す

 はあ、はあ。堕天使は身を翻し、猟兵達の前から姿を消した――ようにみせかけた。
 ぐっしょりと濡れた体、ぼろぼろの翼。
 息を乱して、呼吸をせめて整えて。
「拙者は剣士。逃げ仰せたと考えておられるかも知れぬところ、失礼!」
『――!』
 自称する剣士、シャイニー・デュール(シャイニングサムライ・f00386)。
 黒華の天使は、驚いた。大量の羽毛を撒き散らし、残像のように仕立て上げてギリギリ本体を|宇宙《そら》へ身を投げクエーサービーストの群れに身を隠すように逃げれば見つからないだろうと踏んでいたからだ。
 どこまでも追いかけてくる猟兵という存在は、本当に滅ぼすべき存在だ。
 そんな殺意の籠もった視線であるとシャイニーにも分かった。
「もしや、戦線復帰後にまだ殺人行為を行うおつもりで?」
 それは無理な相談だ。肩をすくませて、シャイニーは頭を横へ振って見せる。
「そのボロボロの肢体では、十分な活躍は期待できぬのでは!」
 真面目な性格で、ややずれた着眼点。
 彼女は確かに猟兵で、ただ天然の気風であった。
 オブリビオン相手に、まるで友人のように声をかけるのだから。
『……ええ、そうかも知れないですね』
 諦めの口調で返されれば焦る。サムライマシーンは、正々堂々相手をする姿勢だけは崩さない。
 堕天使が、ガンナイフを握りしめている限り。
『でも、心配は御無用ですよ……!』
 破裂音は不意打ちにて発生する。
 その音は、空気を切り裂く死を齎す隕石級の貫通力を誇る。
「ほう。威勢はお持ち、ならば――!」
 無銘刀に手を伸ばし、しかしシャイニーが選んだ行為は今の動作の関連性を見出さない。
「拙者はずっと見ていましたので!無力化は容易いものかと!」
 搭載兵器№1:グリントインアイ――その瞳は、彼女が機械人形である事をすぐに理解させた。
 視認した対象に向けて放たれるのはレーザーだ。目に内蔵されたものまでは、堕天使は到底、見透かせなかった。
 弾丸を攻撃するレーザー光線に危険を感じた聡明なる翼は大きく広げられる。
 折れた黒翼はこれまでのダメージの|蓄積《痛み》を堕天使に齎したが、貫通する光によって更に被害は拡大する。
『ひぃ……!でも、私の翼はまだあります、そんなに焼くのがお好きならお返しします!』
 翼が辛うじて受け止めたユーベルコードのレーザーを、彼女は傷だらけの翼でそっくりそのまま返却した。
 ぶつかる光は流星が如き光を戦場に疾走らせる。
 ただし、その時間こそは光が流れるよりも、瞬くよりも、息を呑むより短かった。
 コピーしたシャイニーの技を何度も発動することも、出来たはずだった。
 そこに――翼が、あったなら。
 燃え焦げた、翼はもう羽毛を携えてなどいなかった。
「過信は身を滅ぼすように出来ています故……」
 レーザーの押し合いに打ち勝ったのはシャイニー。
 黒翼を焼き尽くし、そして彼女の胸を視線で射抜く。

 今度こそ、雲海より向こう――眠りの園へ向かうといい。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『猟書家『プリンセス・エメラルド』』

POW   :    プリンセス・エメラルド号
自身の【サイキックエナジー】を代償に、【宇宙戦艦プリンセス・エメラルド号】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【エメラルド色の破壊光線を放つ多数の砲】で戦う。
SPD   :    侵略蔵書「帝国継承規約」
自身の身長の2倍の【皇帝乗騎(インペリアル・ヴィークル)】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ   :    クリスタライズ・オリジナル
自身と自身の装備、【敵に被害を与えうる、半径100m以内の】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●翠の彗星

 旗艦「ソング・オブ・オーンブル」の内部を駆ける。
 数多くの漿船の亡骸を集めて新造された艦が内部に佇むのは翠の君主。
 広いドーム状の部屋の中で、彼女は猟兵が訪れるのを待つように微笑んでいた。
『追い詰めた、と思っているのでしょう?私は|単独《ひとり》だと、思ったのでしょうか』
 プリンセス・エメラルドが煌めく細い指で、ぱちんと音を鳴らした。
 すると、広い空間を埋め尽くすようにどこからともなく|転送《テレポート》されてくる姿が出没。
『此処ぞというときに、継承軍をこの場に召集するに決まっているでしょう』
 |闇の騎士《オブリビオン・フォースナイト》――も混ざるが、頭数はウォーマシンやブラックタールの銃撃重視のブラスターガンナーたち。 超巨大な個体はいない。見渡す限り人間サイズだ。
 ただし、猟兵を囲むようにぞろりと数を揃えている。
 ブラスターを構え、ターゲッティング先は"敵対者"である証に猟兵へ――。
 それぞれが護衛としての殺意を込めてエメラルドの攻撃の後に追撃の直線光線の雨を降らせるだろう。
『この数を前に、私だけを阻めますか?』
 誰よりも先に、攻撃の手段を画策する。
 手に持つ侵略蔵書に今も陰りはどこにもないと信じて、猟兵を返り討ちにする算段を彗星が如く思案する。
『私の指示が無くなった時。|帝国継承軍《サクセション・フォース》は空中分解、もしくは瓦解するのでしょう、……まあ、そうなるはずはありませんが』
 深部まで踏み込まれた事をなかったことにするように。
 開戦の火蓋を切って落とす。
 睨み合いの硬直を、打ち破ったのはエメラルドであった。
桜井・乃愛(サポート)
 桜の精のパーラーメイド×咎人殺しの女の子です。
 普段の口調は「元気(私、~さん、だ、だね、だろう、だよね?)」、偉い人には「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

性格は明るく天真爛漫で、少し天然ボケな感じの少女。
一番好きな花は桜で、その他の植物も好き。
強敵にも怖気づく事は少なく、果敢に挑む。
人と話す事も好きなので、アドリブ歓迎。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


仇死原・アンナ(サポート)
鉄塊剣『錆色の乙女』,妖刀『アサエモン・サーベル』、戦闘用処刑道具『赤錆びた拷問器具』、『鎖の鞭』等装備してる物を使います

UCは指定した物をどれでも使用

普段の口調は(私、あなた、呼び捨て、ね、よ、なの、なの?)
戦闘中は(ワタシ、お前、呼び捨て、言い捨て)

処刑人として敵と戦います
同行者がいれば協力
メインは鉄塊剣で攻撃
鉄塊剣の使用が不向きな相手・場所では刀剣をメインにして相手をします。
拷問具や鞭を使い敵の行動を阻害、鉄塊剣や刀剣で敵を攻撃します。影朧にはできる限り説得しますが説得不能と判断すれば容赦なく屠ります
キャバリアを操縦したり生身でも戦います



●ブラスターの雨をくぐり抜け

 一斉砲撃というのは、まるで雨のようであった。
 敵対者のみを撃退する決意をキメた|帝国継承軍《サクセション・フォース》の一同は統率を強めていた。プリンセス・エメラルドの指示通り、その指は破戒のためのエネルギー弾をぶちまけたのである。
『では、私は――貴方がたを暗殺出来れば勝ちですね』
 輝きの中ですぅう、とクリスタライズの効果で装備ごと消えていく。
 群れの中で一人、何者かも一緒に消えたようだがそれを確認している時間がない!
「……暗殺ぅ?正々堂々、はどこへいったの?」
 桜井・乃愛(桜花剣舞・f23024)は殺人の方法を問う。
 それでいいのかと。しかし、消えた存在は息を殺して、応答しない。
「作戦を阻むなら、堂々と力で叩き壊せば問題ない」
 仇死原・アンナ(地獄の炎の花嫁御 或いは 処刑人の娘・f09978)は銃撃を共に避けながら、軽く息を吐いた。
 そして力ある言葉を、声にだして詠唱する。
「|宇宙《そら》より降る無数の燃える石で、貴様の血肉を打ち砕く」
 エメラルドが息をひそめて銃撃兵達の向こうに隠れて消えてから少しの後だ――だからなんだと、アンナは手を伸ばすのだ。
 それは|燃石打ち《ねんせきいうち》の刑の執行である。
 遠く地獄の炎に包まれた火炎の群れを、導き落とす。
 遠くの宇宙に漂うモノをこの場に落ちよと召喚したのだ、退陣を許されない室内においてそれは驚異の隕石として降り注ぐ。
『ひぇっ!?』
 銃撃兵たちが驚いて、身を引いた。
 撃ち込んで壊すには多すぎて。
 地獄の炎を打ち払うより先に終了させられるのが分かった者は、即座に周囲のものを置き捨てて後退する。集団が動く。すると、クリスタライズ・オリジナルは無意味になる。
『……落ち着きなさい、私はこの場に居ます!』
 体温や物音を隠せたとしても、群れが動き出せばエメラルドに衝突するものさえあるからだ。
 クリスタライズで隠していたものは、重武装の|闇の騎士《オブリビオン・フォースナイト》。
 猟兵たちの隙をついて、狙撃・暗殺を任せていたようだが作戦は容易に失敗した。
『次の作戦です。ええ、此処での私は無敵、つまり……信頼の置ける最大戦力にて…………』
「正面から打ち合うか?私は構わない、クリスタリアンが私の怪力に堪えられるのならな」
 ぼんやりとしたアンナは、処刑人として立つ。
 鉄塊剣を手に、次の出方を伺う。
 しかしエメラルドはやや乱れた呼吸を整えて、声を荒らげる。
『さあ、宇宙戦艦プリンセス・エメラルド号の砲撃を受けて頂きましょう!』
 旗艦"ソング・オブ・オーンブル"の外――サイキックエナジーを代償に充填されたエメラルドの砲台が目に入ったことだろう。
 プリンセス・エメラルド号の攻撃はエメラルド色に煌く破戒の光線。
 多数の砲撃により、一斉に敵対者を殲滅する。ばりばりぐしゃぐしゃりと、色んなものが一気に吹き飛ぶ。
 目標のためには、エメラルドが生き残れば良い――そんな破天荒な戦い方出会った。
「一斉攻撃はちょっとずるいね、規模が大きいと!じゃあ、これでお終いにしてあげるよ!」
 天真爛漫にふふっと笑った桜の精は普段どおりの明るさで、軽機関銃『ブルーミング・ファイア』を構え、そして一気に打ち放つ。
 今響け、必殺の|弾丸豪雨《ガトリング・スコール》!
 ぶわああ、と弾丸の雨が戦場の中に弾けて咲き誇る。
 弾丸が弾け、避けるという機能を持たない"無人のプリンセス・エメラルド号"に弾丸は命中し――備えた砲台が爆発した。
 宇宙戦艦自体は無事だが、メイン砲台を破壊されては戦艦としては行きてはいけない。
 この場置けるオーディエンスでしかないだろう。思い出の華として、戦場で成り行きを見守るだけの機体と果てた。
「えへへ、私の今一押しの華はホウセンカでねえ、ぱーんと種が弾ける様が素敵だよね」
 少し天然さを魅せて微笑む少女は、当然果敢に挑んだ結果を残した。
『……くっ、砲台も含め、素晴らしき意匠であったのに!』
「そういうのを後方援護射撃に持ち込んじゃうから~」
 宇宙戦艦の攻撃を弾丸をぶつけることで破壊して、だが敵兵の銃撃はアンナが躱して切り込み進む。
 逃げる場所など無い。
 全ての敵兵を蹴散らして、お前を一人にしたのなら――我々が完全勝利する。
「覚悟を決めろ、――長き準備の割に儚く散る今日という日に」
『戦闘を仕切り直し、立て直せたならば……まだチャンスは私の手の中にあります!』

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ユイン・ハルシュカ
なるほど。駆け抜けるような銃撃は確かに厄介だ。
加えて不可視の攻撃。知覚できなければたちどころにやられてしまうな。
従来のボクの技では確かに太刀打ちできまいが、
窮地に策をひねり出すのが我らの真骨頂。
……猟兵たちの中には天啓を得て戦う者もいると聞く。
閃きに優れる四天王のボクに、できない筈はない。

攻め寄せる軍の前で眼を閉じ、内なる声に耳を傾けよう。
……そこだ。我が知恵を司る半球よ、敵の姿を暴け!
見えたエメラルドの突撃を躱すと同時、
凝縮された魔力の音響弾を見舞ってやろう。
ここは宇宙、響む音波を遮るものなどないぞ。
ソニック・ブームでそのまま敵軍もろとも薙ぎ払ってくれる!


音骨原・章馬
お邪魔するよ
俺の体が勝手に動いてしまってね

攻撃を結界術と銃で応戦
使えるものなら人だろうが物だろうが構わない
呪瘡包帯で捕まえたモノを盾にしようか
沢山あるから不自由はしないだろう
ははっウォーマシンにブラックタールまでいるのか
まさしく総力戦という訳だね
こちらも必死になるよ

悲鳴に銃声、爆音に揺れる艦内
この体は戦場の気配が懐かしかったようだ
眼前の者共に【黄昏の教え】を浴びせてあげよう
見えているともお前達、最期までしっかり見届けてやるさ

古いものは滅び過去は捨てていかれるものさ
残酷だけど仕方がない
さようなら


クック・ルウ
ここへ来る迄の戦いで
貴様の統治する世界はどこまでも残酷だと思い知った
最古のクリスタリアン、この世界の歴史を知る者よ
それが貴様の選択ならば、私達は最期まで抗おう

水の属性攻撃を放ち、水音で消えた敵の気配を探り
剣撃とジャンプで攻撃を凌ぐ

この世界を共に生きていたはずの同胞を斬る度に心は軋む
なぜだ……なぜ
お前達は連綿と繋がれた今を壊そうとする
オブリビオンはそういうものだからだと
わかっていても問わずにはいられぬ

どれ程傷つき満身創痍になろうとも私は諦めない
この世界を守る為に何度でも立ち向かう!

敵を跳ね除け、残る力の限りの一撃を
砕けよ、その野望と共に


火土金水・明
「私はあなたの事を孤独の女王とは思ってはいませんよ。各地に散らばっていた帝国軍を集結してくれたおかげで、纏めて殲滅できるのですから。」「数多くの敵を相手にするのであれば、戦場全体を纏めて攻撃することにします。」「私は攻撃をしつつ、他の猟兵の方達の回復も受け持ちましょう。」
相手の先制攻撃には【第六感】【野性の勘】【オーラ防御】で、できる限り回避をを試みます。
【SPD】で攻撃です。
攻撃は、【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】と【貫通攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【巷に金色の雨の降るごとく】を【限界突破】で【範囲攻撃】にして、『猟書家『プリンセス・エメラルド』』と帝国継承軍達を纏めて【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【勇気】【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「勇気が砕けない限り、ここで倒れる訳にはいきません。」「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「私の役目は少しでもダメージを与えて次の猟兵の方に繋げる事です。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。



●翠の煌きは宇宙に解ける

 ――此処へ来る迄の戦い。
 クック・ルゥの乳白色の瞳は、当たり前のように戦いに身を投じるものや戦士として――または騎士として配置されたモノたちをみた。
「貴様の統治する世界はどこまでも残酷だと思い知った」
『……進むための犠牲も、同士も、願いも。私は先へ先へと進化の途を歩けるように導いているはずです』
 プリンセス・エメラルドは毅然として振る舞う。
 靴音を鳴らして、さあ構え。撃ち放ち彩りを添えよと、周囲に告げる。
 カカッ、と高鳴る音は靴音であり開幕の合図。
「最古のクリスタリアン、この世界の歴史を知る者よ」
 クックは攻撃の雨を躱して身を捩り、そして、見た。
 彼女は侵略蔵書"帝国継承規約"を開き、煌きを発生させたかと思うと本から飛び出すように現れた二倍規模の|皇帝乗騎《インペリアル・ヴィークル》。
 エメラルドが思い描く最強武装として。この場において"装備品"として。
 誇示するように、見せつけた後にクリスタライズ・オリジンですぅうと消えてゆこうとする翠の君主を僅かに見据えた。
 あれならば、――皇帝乗騎もまたエメラルドと共に透明化する。
 消えて紛れて、猟兵へと最大威力の突進攻撃を行うことさえ可能だろう。
 消えている間の体温も物音も消せはしないが、タイムリミット以内に事を済ませてしまえばいい。
「それが貴様の選択ならば、私達は最期まで抗おう」
 次の世界への迷惑を防ぐため。いや、それだけではない。
 "野望"という名の夢の航海の終わりを、この場から始めよう。

「――ああ、なるほど?」
 駆けるようなユイン・ハルシュカは、瞬時に理解する。
 止まっていれば、容赦ないブラスターの雨を浴びるだろうと。
「銃撃は厄介だ。加えて、不可視の攻撃……」
 知覚できなければたちどころに敗北を期するのは用意に想像出来た。
 何しろ武装の数が違う。兵士共との総数に圧倒的に差がある。
 ――ではどうするか。
 悩む叡智は、四天王を関するユインの頭を閃かせる。
 山羊角の先まで、クリアに思う描くプランが有った。
 達成させるまでの道筋だけが、――手数が、足りない。
『考えている時間は、私達の攻撃が降り注ぐ時間と同義。さあ打ち続けなさい、猟兵たちが倒れ伏すその時まで!』
 姿がよく見えずとも、エメラルドの号令が聞こえる。
「従来のボクの技では、この数は厳しいな……」
 太刀打ちできないだろう、という確信。
「だが、――窮地に策をひねり出すのが我らの真骨頂」
 躍り込む男の姿が、ユインの視線の先を遮った。
「おっと、お邪魔するよ。狙撃の腕も、なかなかのようだ」
 音骨原・章馬(怪奇録・f22795)は結界術で防壁を張り思案する少年の前に立ち塞がる。
 銃撃でずどんと、致命傷を受けそうな弾道を反らして応戦しながら、笑う気配は大きめに。
「ああ、すまない。俺の体が勝手に動いてしまってね」
 そのまま考え続けてくれ。男はそんなニュアンスで紛れ込む。
 しゅるり、と流れるように呪瘡包帯が解けていく。
「見えない相手より、見える相手にするに限るよ」
 伸縮自在、解ける包帯は直ぐ側、一番近くの相手めがけて結びついて絡みつく。
『……ひぇっ』
 悲鳴も聞こえた。だが使えるものなら人だろうがモノだろうが大差はない。
 この場に集った者は味方は猟兵、敵は全て|帝国継承軍《サクセション・フォース》。
 戦いの場に命を賭さないモノなどありはしない。――そうだろう?
「君は不運にも選ばれた。自分たちの実力をその身に然りと浴び給え」
 捕まえたウォーマシンを盾に章馬は立つ。
 ――沢山あるから不自由はないね。
「……ははっ、ウォーマシンにブラックタール!探せばクリスタリアンもいるのかい?あゝ、まさしく」
 総力戦。決死戦。
 相手の総戦力の集う場所は――此処だ。
「ではこちらも、必死になって抵抗しよう」
 攻め寄せる軍の前で、ユインは眼を閉じて、内なる声に耳を傾け続ける。
 ――猟兵たちの中には、|天啓《オラクル》を得て戦う者がいると聞く。
「そうだ、抵抗を続けてやる。閃きに優れる四天王のボクに、出来ない筈はない」
 強襲するがたがたと強い音が近づいてくる。
 エメラルドによる、不可視の姿での突撃だろう。
 確かに、侵略蔵書は開かれていた。
 ――どちらもを同時に使うなんて聞いてないぞ。
 ――しかし、効率としては確かに最上ではあるな。
 敵兵の中を通り抜けて、突っ込んでくる突撃攻撃などギリギリまで静かに努められたら避けられない。
「……だがボクの耳を侮ったな、此処まで防衛に強い男が傍にいれば十分時間は稼げた」

 エメラルドは、そこだ。

「我が知恵を司る半球よ、敵の姿を尽く暴け!」
 |天啓の光《ヘミソフィア・オラクル》が溢れ出る限り、秘匿されたものは姿を暴かれる。
 クリスタライズ・オリジナルも同様に暴かれる。
 透明化して隠れていようとも、ユインの眼には明らかな姿として写った。
 エメラルドの突撃を、ひらりと躱し凝縮された魔力の音響弾をその背中にぶつけてやる。
「どうした背中ががら空きだが?」
『……どうして、居場所が!?私は解除していませんが!』
「此処は宇宙だ、響く音波を遮るものなどないぞ。逃げる場所もどこにもない」
 吹き荒れさせよう、ソニック・ブーム。
 お前にも、敵軍にも――逃げ道などやるものか。
 ユインの追撃は、エメラルドが如何に逃げようと続く。
 抗うものたちとて、慌てふためくのが関の山だ。

「少なくとも、ですが。私は貴方のことを孤独の女王とは思っていませんよ」
 透明化して消えたエメラルドへと、対話を求めて火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)は声を張る。ガタガタと駆ける皇帝乗騎の音がある。
 敵兵たちのブラスター銃撃音で確かにかき消され気味だが、それでも。
 息遣いは消えない。消せない。
「これほどまでの信頼です。帝国軍はこの規模でいたのですね」
 感心を込めた称賛と。
「各地に散らばっていた帝国軍を集結してくれたおかげで、纏めて殲滅できるのですから」
 終わりまでのカウントダウンが聞こえるのだと、終焉を重ねて告げていく。
「数多くの敵を相手にするのであれば、戦場全体を纏めて攻撃することにします」
 ――だって、それが最適解でしょう。
 明は選ぶ。攻撃を、行い続ける道筋を。
 同時に対処を行おう。数を減らして。
「私は攻撃に重心を置きつつ、回復も受け持ちます。これは――お互い消耗戦ですよ」
 指差すように発動するのは、|巷に金色の雨の降るごとく《ゴールドレイン》。
「雨は雨でも、――此処にも、そして私の心にも雨が降るんです」
 ざあああ、と激しく降り注ぐのは、|金色《こんじき》の雨だ。
 攻撃的で、そして轟く虹色の|稲妻《蛮行》がランダムに敵を撃つ。
 狙撃よりも的確で、誰もが対処を行いきれない。鎧も、武装も何もかもがお構いないなし。
 穿つ雷鳴は、破戒に特化したダメージを齎すのに適していた。
 音が響く。攻撃が墜ちる。明がユーベルコードを操る先で敵は穿たれて、同時に銃器を無効化する。
『私を見つけにくくしただけではないですか』
 駆ける音も雷と雨の音に溶けている。
 エメラルドに有利な状況になった、と確かに言えた。
「いえ。私の雨は――」
 一度しか降らない。そんなものは|フェイント《まやかし》だ。
 限界を超えた雨が降る。雨は二度、降るのだ。
 それに明の雨は、普通の雨ではない。
 "攻撃"だ。その身が敵であるのなら、痛みを重ねて喰うばかり。
「勇気が砕けない限り、此処で倒れるわけにはいきません!」
『でしたら、あなたから此処で倒れのがいいでしょう!』
 急激に迫る突進音、皇帝乗騎から迫る攻撃の知らせを――明は躱さない。
「残念、……それは残像です。私の役目は少しでもダメージを与えて次の猟兵の方に繋げる事です」
 その場全員の身を雨に晒し濡らしながらも、猟兵へは優しい雨となって傷を癒やし武勇を称えることだろう。

 ――増えた水音。いや、利用させて貰おう。
 自身の水属性攻撃を放ち、水音で消えた敵の行方を追う。
 近場ではないのなら、明が大量に浴びせ掛ける雨の音がどこかで遮られているはず。
 居場所を知られたくないだろう。突撃してくるなら、声も音も近づいてくる!
「そこだ」
 剣戟でブラスターの弾き、身を逃すように跳ねて身を翻して攻撃を防ぐ。
 攻撃が集中して飛んでくる先は、自ずと限られる。
 ――この世界に共に生きていたはずの同胞を斬る度に心は軋む。
 ――お前たちの野心と野望は、それより先には進ませない。
「なぜだ……なぜ」
『貴方は何を問いたいのですか、私は勝って進むことを諦めていません。聞くだけならば、耳をお貸ししましょう』
「お前達は連綿と繋がれた今を壊そうとする」
 今ではなく、過去に終りを迎えた者たちの再来。
 オブリビオンはそういうものだからと、勿論クックにも分かっている。
 けれども――問わずには、いられなかった。
「……いいや。傾聴などいらない。そちらは意見と信念を曲げたりしない」
 だからこそ、抗うための魔法はある。
 クックの全身から、抵抗の意思を灯す光のオーラが溢れ出す。
 敵を跳ね除ける、耀きは翠の君主に引けを取らぬ輝きだ。
 同時に、銃撃に勤しむ帝国軍をオーラで退ける。
 もう撃つな、武器を降ろせ。抵抗は構わない。
 発動前の戦闘の長さ分、光の威力は敵軍一同を、エメラルドの体を叩く。
「敵は此処に跳ね除けた。あなたは独りではないが、――此処で砕けよ。その野望と共に」
 煌きと同一の、存在を耳に届けて終わりを告げよ。
 君主として、猟書家"プリンセス・エメラルド"として、|帝国継承軍《サクセション・フォース》へと最期の指令を出すがいい。

 爆音、銃声、仲間を撃つなという、切実な声。
 仲間でも躊躇せず撃てという憤怒の声。
 何でも聞こえて、賑やかな|戦場《艦内》だ。
「はは、この体は戦場の気配が懐かしかったようだ」
 首から下のこの誰かも共に神出鬼没に現れたがる変わり者とばかり。
 少しでも、"懐かしい"と改めて識るのは嬉しいことだろう。
 断片的な記憶んび刺激され、――夕焼け色の魔法の矢となって展開される。
 眼前の者たちよ、黄昏の教えの前に膝を、戦意を折り給え。
「見えているともお前達。最期まで仕事をするといい、俺はしっかりと見ているから」
 夕焼け色が疾走る。
 戦意を失った者たちの間を貫き吹き抜けて、圧倒する一撃を届かせる。
 誰に――そりゃあ一人だ。
 この場において、誰よりも"重要人物"。
「其処にいるのはわかっているよ」
『な、何故……!』
「なぜかな。|帝国継承軍《サクセション・フォース》が護ろうとするように立っていたからかな」
 真実は、異なる。
 雨によって水が足元に溜まったこの場所において――水が床に落ちない透明こそが、エメラルド。
 持久戦に持ち込んで、ヒットアンドアウェイを繰り返し続けた|皇帝乗騎《インペリアル・ヴィークル》が遮った床の広さは大きかった。
 ――そこに、気が付かなかったとは。
 "クリスタリアンの最長老"は自身の足元を確認するという事象を持ち得なかった。
 野望のために前進を。彼女はそれだけを目指していたのだから、当然のことだったかもしれない。
 章馬の魔法の矢は、エメラルドの腹部をいとも容易く貫いていた。
 本来脆い体なのがクリスタリアンであることまで、彼女が忘れたとは思いにくいが――クリスタライズ・オリジナルが解ける。
 貫かれ、壊れた腹部から罅を大量にその身に刻んだエメラルドはもう、笑ってなどいなかった。
『ああ……私の、私の』
「古いものは滅び過去は捨てていかれるものさ。もうその手は届かないよ」
 ぱりぱりと細かく広がる罅の群れを停める手段は誰にもない。
「残酷だけど仕方がない。――さようなら」

 翠の野望多き、猟書家よ。
 その旅路は――宣言無く終わるのだ。

 軍団が長は砕け散って床に翠の破片をぶちまける――と同時に、|帝国継承軍《サクセション・フォース》は大混乱に陥ることだろう。
 爆発の音が猟兵たちがその場を逃げ出していく間に、聞こえ始めた。
 誰かがボタンを間違えたのだろう。
 各戦艦から強制テレポートを行う権限のボタンの隣、自爆ボタンは押された。
 もう戦艦"ソング・オブ・オーンブル"の崩壊は止まらない。

 翠の|彗星《願い》は、この宇宙で消える。
 爆発音は連鎖して、他の戦艦も巻き込み始めるだろう。
 敗北者は、爆発の向こうに没するのみだ。
 たとえそれが――計画を長く練った古き者だとしても。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年02月08日


挿絵イラスト