第二次聖杯戦争㉒〜いんよくのらいすめきあ
●いんよくのかぜ
白く輝く淫欲の領域。
それはあらゆる生物を『死の絶頂』に至らしめる催淫効果を持つ『いんよくのかぜ』によって引き起こされた光景であった。
絶頂に至った者は必ず死ぬ。
オブリビオンであっても、猟兵であってもだ。
死んだ生命は『揺籠の君』に吸収され、彼女を強化していく。
「ゆりゆりのほんとうにほしいもの。それは『すべてのせかいのすべてのいのち』。いまのゆりゆりは、にくたいからはなつ『いんよくのかぜ』にふれたものすべてをえっちにできる」
彼女のたおやかな指先が、その白磁のような透き通るような淫らな体の上に滑る。
艷やかな色合い。
汗ばむ肌。
紅潮するように満ちて、次々に滴り落ちる体液。
「えっちになったものはすべてしに、いのちはすべてゆりゆりにそそがれる」
そう、それこそが「『すべてのせかいのすべてのいのち』を手にするということ。
生命とは全て。
全ての生命を手に入れるということは、何処までも強く慣れるということ。
今は金沢大学周辺にとどまっている効果範囲も、徐々に広がっていく。世界一つのすべての生命が注がれるのならば、彼女は世界という枠組みを壊して、何処までも広がっていく。
「きっと、むくろのうみもこなごなにできるはず……!」
彼女の瞳は快楽に濡れている。
潤む瞳が見つめるのは天か、それとも地か。
『揺籠の君』は、手にした『リリスの槍』に体を擦り付け、背に追う『聖杯剣』を寝具にするように寝そべり、黄金の篭手の如き『神の右手』でもって己を慰める。
「あれ?」
彼女は僅かに正気に戻ったように首をかしげる。
どうしてだろうか。
なにか忘れている気がするのだ。
「なぜ、そんなにむくろのうみをうらんでいたのでしょうか?」
思い出も、記憶も、過去も、未来さえも彼女は『聖杯』に注いだ。
もう彼女には時間も、思い出も、記憶も……オブリビオンとしての全てもない。
思い出せない。
けれど、仕方のないことだ。
「ゆりゆりはしんぷるに『さいきょう』をめざします。ああ、りょうへいたちもたいせつないのち」
ほう、と吐き出された息は熱を帯びて。
ぬらつく指先をねぶりながらオブリビオン・フォーミュラ『聖杯剣揺籠の君』は快楽に塗れた瞳を向ける。
「ゆりゆりはおなかがすいて、こうふんしてきました……――!」
●第二次聖杯戦争
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。シルバーレイン世界、金沢大学周辺はいまやオブリビオン・フォーミュラ『聖杯剣揺籠の君』が支配する『白く輝く淫欲の領域』へと変貌しています」
彼女の頬が赤い。
いや、違う。それは紅潮しているのではなく、自らの頬を手で叩いた跡であった。
照れくさそうに、それこそバツが悪そうな顔をして集まった猟兵たちに告げる。
「『いんよくのかぜ』と呼ばれる『聖杯剣揺籠の君』の力……あらゆる生物を『死の絶頂』に至らしめる催淫効果を持つ『いんよくのかぜ』は、少しでもえっちになったら、オブリビオンであれ猟兵であれ、死に至らしめる力を持っています」
その言葉に猟兵達は怪訝な顔をしただろう。
ナイアルテの冗談であるとも思えたかも知れない。けれど、彼女はそういうことを言うタイプには思えなかった。
真顔である。
ただ、頬を叩いた跡から察するに、それが真実であるのだろう。
「絶頂に至った者は『行為を繰り返しながら死ぬだけの獣』となってしまい、死んだ生命は『聖杯剣揺籠の君』に吸収され、彼女を何処までも強化していくのです」
それは堂々巡りだった。
彼女を見て淫らな気持ちにならぬ者はおらず、僅かでも淫らな気持ちになった瞬間運命は決定する。
戦場には絶え間なく『いんよくのかぜ』が吹き荒れているし、金沢大学に広がる光景は淫蕩そのもの。
「……手段は唯一です。これらの光景を一切見ず、聞かず、あるいは全てを治療すrなどしながら、淫蕩な光景を一切『認識しない』ように務めることしかありません。そうすれば、『聖杯剣揺籠の君』の最も強大なこの能力を封じることができるのです」
それはあまりにも無茶であった。
どう考えても、視覚は侵され、聴覚もまた犯される。触覚に触れる『いんよくのかぜ』もまた同様だ。
『聖杯剣揺籠の君』の放つ淫蕩なるもの全てを認識しないという手段が果たしてあるのか。
だが、そうしなければ、そもそも勝ち目すらない。
徒に迫り、死に至るのならば、『聖杯剣揺籠の君』の強化に生命を注がれるだけである。
「この能力を封じたとて、聖杯によって強化された『聖杯剣揺籠の君』の力は強大です。過酷な戦いとなるでしょう」
ナイアルテは頭を下げる。
猟兵たちにとっては酷な戦いとなることは言うまでもない。
「それでも、と私は皆さんを送り出すことしかできません。これが第二次聖杯戦争最後の戦いとなるでしょう。どうかお願い致します」
彼女は送り出す。
最も名状しがたき戦い。
白く輝く淫欲の領域。
そこにある光景は何一つ語られない。されど、その白く輝く領域に座すオブリビオン・フォーミュラを打倒できなければ、シルバーレイン世界に明日はやってこないのだ――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『第二次聖杯戦争』の戦争シナリオとなります。
シルバーレイン世界、金沢大学にて広がる『白く輝く淫欲の領域』に座すオブリビオン・フォーミュラ『聖杯剣揺籠の君』との戦いになります。
そこは粘つく大地と獣のような行為に耽る者達が充満するかのような光景が広がっていますが、それらを認識した瞬間に『死の絶頂』によって猟兵であろうと絶命します。
これに対処するには淫蕩なる光景を『一切認識しない』ことしかありません。
認識した瞬間に絶命します。
また、認識しなかった光景は、リプレイでも一切描写されません。
つまり、淫蕩にして淫靡たる光景はリプレイ中に一切現れません。
しかし、『聖杯剣揺籠の君』の持つ、この最大の能力を封じたとて、オブリビオン・フォーミュラとしての格が落ちることはありません。
そもそもが聖杯で強化された彼女は強敵です。
『いんよくのかぜ』、そして淫蕩なる光景を認識しない。
この二点の対処を行って初めて『やや難』の難易度のオブリビオンである、ということを留意頂けたらと思います。
プレイングボーナス………淫蕩な光景を一切認識しない/揺籠の君の先制ユーベルコードに対処する。
それでは『第二次聖杯戦争』、オブリビオン・フォーミュラ『聖杯剣揺籠の君』に立ち向かう皆さんの死と隣り合わせの青春の続き、その物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『聖杯剣揺籠の君』
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POW : うずまくいんよく
【神の左手】による近接攻撃の軌跡上に【いんよくのたつまき】を発生させ、レベルm半径内に存在する任意の全対象を引き寄せる。
SPD : せいはいうぇぽんず
【あらゆる物質を引き寄せる「神の左手」】【癒える事なき毒を注ぐ「リリスの槍」】【対象のユーベルコード全てを奪う「聖杯剣」】を組み合わせた、レベル回の連続攻撃を放つ。一撃は軽いが手数が多い。
WIZ : みだらなひとみ
【揺籠の君の淫靡な眼差し】が命中した部位に【淫欲に満ちた思念】を流し込み、部位を爆破、もしくはレベル秒間操作する(抵抗は可能)。
イラスト:飴茶屋
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
戒道・蔵乃祐
思考を深化し脳の処理能力を酷使
視覚情報の一切を切り捨てて臨む
戦闘術と思索の|マルチタスク《 限界突破 》
しかし
強欲なる海の秘宝「メガリス」は銀の雨降る世界にも遍在し、絶大な力と破滅を齎してきた
揺籠の君は記憶を捧げ、|聖杯を行使する機構に《嘗てのランドルフの様に》成り果てた
欲望と対価の代償
願いを叶える万能の神器
あまりにもエリクシルに似すぎている
多世界侵略船団、七大海嘯、大いなる神
即ちそれは…。
◆龍顎龍尾龍撃乱舞
早業+フェイントで神の左手が意味を為さないクロスレンジに切り込み
聖杯剣を見切り+野生の勘で掻い潜り
リリスの槍は心眼+ジャストガードで弾いて躱す
クイックドロウ+グラップルで重量攻撃+乱れ撃ち
己の思考で脳が染まっていく。
認識は全て思考に塗りつぶされていく。深まっていく思考は、それ以外とを切り離していく。
視覚情報。
瞳から得られる情報の一切を切り捨てる。
あるのは戦闘の術と思索。
「ゆりゆりはおなかがすいてきました。とってもおなかがすいてこうふんしています。だから、りょうへい、あなたもえっちになりましょう。そうすれば、ししてゆりゆりのなかにそそがれます。それはとってもえっちなことです」
聞こえる言葉在る。
しかし、戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)は、オブリビオン・フォーミュラ『聖杯剣揺籠の君』の言葉を聞き流す。
それは今の彼にとって意味のないことだった。
思索が事実を拾い上げていく。
肉体は動いている。これまで培われてきた戦闘の術の全てが己の体躯を突き動かしている。
触れてはならぬのは『リリスの槍』と『聖杯剣』。
いずれもが癒えぬ毒と己のユーベルコード全てを奪うという凄まじき能力を持っている。
「ゆりゆりはぜんぶほしいのです。すべてのせかいのすべてのいのち。ぜんぶぜんぶほしいのです」
だから、というように『神の左手』が招くようにして蔵乃祐を引き寄せる。
距離など彼女には意味がなかった。
蔵乃祐は、それを認識しない。
思索が全てを塗りつぶしていく。
メガリス。
それは海洋の世界、グリードオーシャンに存在していたものである。同時に、このシルバーレイン世界にも存在していたし、絶大な力を持って破滅をもたらしてきた。
「『揺籠の君』は記憶を捧げ、|聖杯を行使する機構に《嘗てのランドルフのように》成り果てた」
「らんどるふ? それはなんでしょう? だれでしょう? どうでもいいのです。しんぷるにゆりゆりはおなかがすいているのです。えっちなのうみそも、きもちも、きおくも、なにもかもおいしそうにおもえるのです」
彼女の言葉は、蔵乃祐の言葉を裏付けるものであったことだろう。
『聖杯剣揺籠の君』はオブリビオンとしての全てを聖杯に捧げて、その力を行使している。
「欲望と対価の代償。願いを叶える万能の神器」
それを想起させたのは、赤い宝石。
万能たる存在。
願いの力を求める赤き魔神たち。
引き寄せられた体に触れようとする『聖杯剣揺籠の君』の手を払うように蔵乃祐は、衝撃波を拳から解き放ち、さらに体をひねるようにして襲撃を見舞う。
「きゃん。ゆりゆりはいたいのもいけるくちなのです。こうふんしてきました」
「あまりにも『エリクシルににすぎている。多世界侵略船団。七大海嘯、大いなる神」
多くに付随する事柄。
どれが真実で、どれが誤りなのか。
いずれもわからない。
けれど、確かなことがある。
「あなたを滅ぼさなければ、この世界が滅びるということのみ。ならば!」
『神の左手』は意味をなさい。
この近距離こそが蔵乃祐の望んだ戦場だからだ。放つ衝撃波に『聖杯剣揺籠の君』の手が払われている。
けれど、手にした『リリスの槍』が迫っている。
あれに触れてしまえば、この淫靡なる光景を目の当たりにするより先に毒で死に絶える。
故に、その一撃を蔵乃祐は躱す。
目に見えずともみえるものがある。それは感じる、ということでもあっただろう。迫る切っ先を蹴撃が弾きあげる。
上体が逸らされる、と蔵乃祐は感じ取る。
「おなかがまるみえなのです。はずかしいです。ゆりゆりははずかしいけどこうふんしています」
蔵乃祐にその言葉は届かない。
思索は深まり、ただ己の体に染み付いた戦闘術を行使するためだけに彼の拳は、足は、裂帛の気合はほとばしり、五体を龍へと変えるような無数の連撃で以て繋ぐ。
それこそが龍顎龍尾龍撃乱舞。
ユーベルコードに煌めく瞳は『聖杯剣揺籠の君』を一切見ない。
されど、拳から伝わる感触は確かに、かのオブリビオン・フォーミュラを穿つように叩き込まれ、粘つく大地の音を響かせて蔵乃祐は彼女を打ちのめすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
リリスフィア・スターライト
アドリブ、連携可
とにかく少しでも気を許したらいけない相手という事だね
いんよくのかぜには、少しでも認識されてしまいそうなら
変幻自在で人格を変えて対抗だね
聖杯剣揺籠の君と接近戦になるならピンク髪のリリスで
距離がある場合は魔法が得意な銀髪のフィアで、
せいはいうぇぽんずの連続攻撃に対しては
天使の少女になって、回避優先かな
特に聖杯剣の攻撃は受けないように気を付けるよ
どの人格に変えても余計な事は考えずに
オブリビオンを倒す事だけに集中して
魔剣や魔法で攻撃し続けるよ
戦いが長引いてどの人格でも認識して
しまいそうなら速やかに撤退だね
聖杯剣揺籠の君の力になんかならないよ
「とにかく気持ちを切り替えていくよ!」
弾けるようにしてオブリビオン・フォーミュラ『聖杯剣揺籠の君』は粘つく白く輝く大地の上に起き上がる。
猟兵の打撃は痛かったけれど、とても心地よいものであった。
恍惚とした表情を浮かべている。
「ゆりゆりはとってもこうふんしています。りょうへいのいのちをもぐもぐできるのは、とてもうれしいことです。とっても、とっても、こうふんしてきました」
痛みすら快楽に変えるように彼女は手にした『リリスの槍』と『聖杯剣』を構える。
黄金の篭手たる『神の左手』は彼我の距離を無意味にする。
「とにかく少しでも気を許したらいけない相手ということだね」
リリスフィア・スターライト(プリズムジョーカー・f02074)は多重人格者である。
彼女の肉体に宿る人格を切り替える。
『いんよくのかぜ』は、『それ』を認識した時点で『死の絶頂』に生命を落とす。
それは絶命しかない未来である。
「絶命した生命は『聖杯剣揺籠の君』に注がれ、無限に強化されてしまう……なら」
「ええ、りょうへいのいのちもとってもたいせつなもの。ゆりゆりのほしいもの」
引き寄せられる。
迫る『聖杯剣揺籠の君』の瞳。
その瞳は美しく濡れていることだろう。けれど、リリスフィアは、瞬時に己の人格のスイッチを切り替える。
髪の色が代わり、桃色の髪を持つ『リリス』に。
ふるわれる『リリスの槍』を躱す。
あの一撃に触れてはならない。触れたら最後だ。致死に至る癒えぬ猛毒。それに苛まれてしまう。
けれど、さらにふるわれる『聖杯剣』の斬撃。
ユーベルコードの全てを奪うという力。規格外な力。それこそが『聖杯剣』。いずれも当たってならない。
「余計な事を考えている暇なんて無い……!」
天子の姿に変じたリリスフィアは、変幻自在(シェイプチェンジ)たるユーベルコードの輝きを持って、次々と姿を変えていく。
「いっぱいかわっておいろなおしうれしいです。もっともっとゆりゆりにたくさんのあなたをみせてください。ゆりゆりはそれだけでもうとってもきもちいいのです。こうふんしてしまいます」
「変えられるのは姿だけではないんだよ」
『いんよくのかぜ』は凄まじき力だ。
そして、迫る『せいはいうぇぽんず』も同様だ。どれもが致死に至る力を持っている。
『いんよくのかぜ』は認識しないことで効果を失わせることができるが、しかし、それでもリリスフィアはオブリビオン・フォーミュラたる『聖杯剣揺籠の君』の力の凄まじさを知る。
倒すことだけに集中する。
他のことは考えない。
魔剣を握り締めた手のひらの痛みが、体に走り抜ける。打ち合う槍と剣。体に伝わる衝撃は、それだけで骨身に響くようだった。
「……長引く……!」
戦いが長引けば長引くほどにリリスフィアは己が不利になることを理解していた。
この眼の前に広がるであろう光景を認識しないように人格を切り替え続けていても限界は来る。
だからこそ、リリスフィアは己の生命が『聖杯剣揺籠の君』に注がれることこそ裂けなければならないと理解する。
「ゆりゆりのものになってください。すべてのせかいのすべてのいのちは、ゆりゆりのほしいものなのです。どれだけのじんかくがあるのだとしても、それのぜんぶをゆりゆりはほしいのです」
手をのばす。
黄金の篭手『神の左手』が招くように距離を離そうとしたリリスフィアの体を引き寄せる。
だが、それは同時にリリスフィア……彼女の一つの人格たる『フィア』にとって都合の良い距離であった。
「君の力になんかならないよ」
手にした『リリス』の愛用している魔法剣の緋色の一閃が『神の左手』を弾き飛ばすように跳ね上げられ、さらに人格が『フィア』に切り替わる。
「えっちなきもちになれば、そんなにせわしなくていいのに。でもゆりゆりははやいのもおそいのもだいすきです」
「君の言う言葉は、全部切り替えて受け流す!」
『フィア』の手にしたスタンナイフが『聖杯剣揺籠の君』へと打ち込まれ、その電流が彼女の動きを止める。
その刹那に満たぬ瞬間こそが、リリスフィアにとって撤退のタイミングだった。
これ以上此処に居ると負ける。
けれど、敵の消耗は成した。ならば、あとに続く者たちに任せるのだ。リリスフィアは敵の力にならぬことと、敵を消耗させること。
その二つを為して、身を翻し、戦場から飛び立つのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
尾守・夜野
風に対抗する為、普段飲んでる呪いの影響を軽減する為の痛み止め・吐き気止めを飲まず、式による軽減するもせず、かつ身代わりの宝珠の取り立てによって怪我してからいく
痛すぎて吐き気に襲われてて他考えるとか無理
…まぁ眼の前とか霞んで見えんが動けてるから問題はない
予知で聞いた話じゃ引き寄せ攻撃してくるっていうからそれに乗る
…その後どういう攻撃してくるのか聞いてねぇけど
槍か剣がくると予想し黒纏で防げるようには意識しとく…が
うん。痛みで意識飛び飛びだからやれるかは微妙
まぁ何にせよ痛みで立ってるのもやっとだったのが寄せられたらバランス崩すよな
んで倒れてもそりゃ相手の方に過失あるよなってもんでUC発動
吐き気がする。
頭痛がする。
痛みが体を走っていく。それは普段常飲している痛み止め、吐き気止めを飲まなかったからだということを尾守・夜野(墓守・f05352)は理解している。
何故そんなことを、と問われたのならば、そうしなければ『いんよくのかぜ』にとらわれてしまうからだ。
認識してしまえば、即座に『死の絶頂』に至る。
祝福とかの狂信者たちが宣う呪詛が手足の末端から肉体の中央にせり上がってくるようだった。
式による軽減すら切っている。
それは即ち己の体が蝕まれ、食い尽くされることを意味している。
けれど、それを留めておけるのは身代わりの宝珠があればこそである。
「ああ、痛すぎて吐き気に襲われて他考えるとか無理」
喉元からせり上がるものがある。
胃の内容物が込み上がってきているのだ。噛み殺すようにして、その吐き気を留め、そして霞む視界の先に迫る黄金の篭手、『神の左手』を視界に納める。
「ゆりゆりはとってもしんぱいです。むねがはりさけそうです。でもでもこのいたみもとってもきもちのよいものだってわかっているのです。こうふんしているのなら、ゆりゆりはいたいのだってきもちいっておもうのです」
オブリビオン・フォーミュラ『聖杯剣揺籠の君』の言葉が響く。
頭痛が鳴るように頭を締め付けている今では、その言葉の意味を感じることすらできない。
だが、それでいいのだ。
彼女の『神の左手』は、あらゆるものを引きつける。
放たれる『いんよくのかぜ』の嵐は、夜野の肉体に走る神経という神経を逆撫でするかのようであった。
体に這う気色の悪い感触。
本来なら、それは快楽に満たされるべきものであったことだろう。
けれど、今の夜野にとっては、不快でしか無い。
死の絶頂すら遠い痛みと吐き気だけが夜野を支配している。もうそれ以外どうだっていい。この痛みと吐き気を抑えられるのなら。
他の全部はどうっだっていいのだ。
「……ただ、俺が」
引き寄せられるだけだったなど思われている事自体が癪に障る。
それも痛みにかき消される。
もうどうしようもないほどの痛み。意識が飛ぶ。飛んで、戻って、また飛ぶ。明滅する視界。
何も捉えられない。
けれど、この痛みが彼の足元をふらつかせる。
その肉体を『聖杯剣揺籠の君』は両手を伸ばして抱き寄せようとしている。敵だと認識しているはずなのに、彼女はふらつく夜野を抱きとめようとしていた。
触れてしまえばいい。
そうするだけで彼女は生命を奪える。
彼女の体に触れて、淫らな気持ちにならぬものはいないのだから。
「ぜんぶゆりゆりのものです。すべてのせかいのすべてのいのちは、ぜんぶゆりゆりのものです。だから、あなたのいのちもぜんぶゆりゆりのもの。だから、いたいのいたいのとんでいけ。えっちなきもちになれば、それでぜんぶきもちよくなりますから」
夜野の瞳がユーベルコードに煌めく。
それは痛みによって満ちるユーベルコード。
専【呪亡】衛(センシュボウエイ)。
自ら触れるのではなく、『聖杯剣揺籠の君』から触れたという事実のみが必要なユーベルコード。
遅延、蓄積、その式の呪詛と毒を『聖杯剣揺籠の君』に与える。
痛みと吐き気だけが夜野の中に満ちている。そこに快楽や淫らな気持ちが介在することはない。
彼女の指も、腕も、肌の艶やかさも柔らかさも、何もかも痛みに塗りつぶされて知覚などできはしない。
「ああ、これがのろい。なんて、いたくて、なんて、こわくて、なんて」
こうふんしてきました、という言葉すら夜野は聞くこともできず、その呪いでもって『聖杯剣揺籠の君』の肉体の内部に荒れ狂う力の奔流をたぐり、彼女の肉体を破壊する。
血潮が吹き荒れ、痛みにすら興奮を覚える『聖杯剣揺籠の君』。
そんな彼女に夜野は短く告げる。
「そんな痛みなんてくそくらえなんだよ……」
彼女の腕を払うようにして夜野は痛みに染まる視界と意識と共に、離れていくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ニーニアルーフ・メーベルナッハ
揺籠の君。
かつても今も、多くの命を弄び喰い尽くす魔性。
私個人にとっては、かつての聖杯戦争で死んだ双子の妹の仇。
即ち、必ず此処で倒さなければいけない敵…!
その意志のもと、意識の全てを揺籠の君へ集中。他の全てを認識から排除し戦いに臨みます。
肉弾戦を挑むため、先制UCの引き寄せには逆らわず接近。竜巻にだけ飲まれぬよう、【蟲使い】で操る蟲達に引っ張って貰うなどして回避。
聖杯剣は斬撃軌道を【瞬間思考力】で判断し回避、槍はそれに加えてブレンネン・ナーゲルを打ち当てることで凌ぐことも選択肢に。
近接次第、黒燐奏甲を発動。
強化に【怪力】を上乗せしたブレンネン・ナーゲルで攻撃を。
これ以上、何も奪わせはしません…!
その瞳に映るのは唯一だけだった。
「『揺籠の君』。かつても今も、多くの生命を弄び喰らい尽くす魔性」
ニーニアルーフ・メーベルナッハ(黒き楽園の月・f35280)は瞼の裏に刻まれたであろう光景を見やる。
これは個人的な感傷であると理解している。
戦いに赴くに当たって、あまりにも個人的な感情だった。
けれど、しかし。
己が人間であるのならば。人としての性を持っているのならば。
「ゆりゆりはなにかやっちゃいましたか? そんなまなざしでみつめられるとこうふんしてきます」
オブリビオン・フォーミュラ『聖杯剣揺籠の君』は首を傾げ、その手にある『神の左手』たる黄金の篭手の指先をうごめかすようにして動かす。
その瞬間彼女の瞳はユーベルコードに輝く。
渦巻く『いんよくのかぜ』は、一瞬でニーニアルーフの体を引き寄せた。
吹き荒れる竜巻にニーニアルーフは身を任せた。
己の意思は全てを『聖杯剣揺籠の君』へと向けられている。
それ以外は何も見ない。認識しない。
只管に感情の炎に薪をくべる。
双子の妹の仇。
嘗ての聖杯戦争において死んだ妹。それを思い浮かべる。身を焦がす情念の炎ではなく、復讐の炎に身が灼かれるような思いであった。
「必ず此処で倒さなければいけない敵……!」
その焔燃えるかのような烈日たる光を宿したニーニアルーフは操る蟲たちに引っ張られるようにして竜巻の一撃から逃れる。
そんな彼女を見つめる瞳が在った。
己の中にある炎の如き感情を見透かすように、『聖杯剣揺籠の君』はニーニアルーフを見つめている。
「ゆりゆりがたいせつなものをほっするのとおなじようにあなたにもたいせつがあったのですね。でもゆりゆりはなにもおぼえていないのです。かこもみらいもおもいでもきおくもなにもかもせいはいにそそいだので」
だから、覚えていない。
「それで通るほど……!」
迫る聖杯剣の斬撃を既のところで躱す。白く粘つく光景が跳ねる。けれど、それすらニーニアルーフは視界に入れなかった。
覚えていない。
覚えていない。
己の双子の妹を殺したことも。彼女が引き起こした惨劇も。何もかも簿得ていないと言ったのだ。
「ゆりゆりは、すべてのせかいのすべてのいのちがほしいのです。どんなにおこっても、どんなにこうふんしても、どんなにえっちになっても、どのみちゆりゆりがぜんぶほしいとおもったら、てにいれるのです」
だから、なにもしんぱいしなくていいのです、と『聖杯剣揺籠の君』は言う。
全ての生命は、猟兵の生命も等しく。
放たれる『リリスの槍』の切っ先と赤手が激突する。
しかし、その一撃で赤手が砕ける。破片が飛ぶ。それがニーニアルーフの頬を切り裂く。血潮が溢れ、それでもニーニアルーフは止まらない。
「押し通らせて、もらいます……!」
砕けた赤手に這うは黒燐蟲。
それは一瞬で破片を取り込み、にニーニアルーフの手と融合する。力が膨れ上がり、巨大な塊へと変化する赤手。
その振るい上げた膂力は凄まじいの一言であった。
「たくさんほしいのです。ゆりゆりはすべてのせかいのすべてのいのちがほしい。ぜんぶぜんぶほしい。だから、きっとうばうこともためらわない」
「これ以上、何も奪わせはしません……!」
叩きつけられるは、黒燐奏甲(シュヴァルツ・フルーフ)纏う塊の如き赤手の一撃。
それは強化反転呪詛を齎す一撃。
聖杯によって強化されているというのならば、その防御に回した力を減ずるに反転させる。
「これが、この一撃が、私の!」
死と隣合わせの青春を駆け抜けた軌跡。
『聖杯剣揺籠の君』が全てを聖杯に注いだというのならば、ニーニアルーフは何一つ投げ出すことなく抱き続けたからこそ齎すことのできる一撃。
それは、思い出という質量もつ一撃となって『聖杯剣揺籠の君』の体へと打ち込まれるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
ゆりゆりを召喚して飛鉢法の飛鉢に同乗。
身体を丸めて愛しのゆりゆりに膝枕して貰いながら、子守歌を歌ってもらおう。これで、外の様子は見えず聞こえず。ゆりゆり自身は「いんよくのかぜ」に絶対の耐性があるはず。
淫猥な領域を過ぎたら、飛鉢から降りて、二人で彼女の居場所まで歩いて行く。手と手を恋人繋ぎ。
偶神兵装『鎧装豪腕』を「式神使い」で操って彼女の視線が向いていそうなところをカバー。ダメージは仕方ないけど、彼女の操作はあたしが押さえ込む。
行こう、愛しのゆりゆり。道を誤ったあなたを止めるために!
薙刀振るって、「なぎ払い」「衝撃波」「斬撃波」で牽制。ゆりゆり、針剣のブレスを! あたしは薙刀で「串刺し」に!
ゆら、ゆらと揺れる鉄鉢があった。
その中で、村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は淫雅召喚(インガショウカン)によって現れた強大なリリスの女王の膝を枕にして子守唄に耳を澄ます。
それ以外は何も聴こえない。
其処に広がっているであろう光景。
粘つく音も。
打ち据えるような音も。
何も聴こえない。
聞こえるのは、彼女の歌声だけだ。
鉄鉢の中でリリスの女王の膝の柔らかさと、そして鉄鉢が覆う視界は彼女を『いんよくのかぜ』に触れさせることはなかった。
「あれはなんでしょう。ゆりゆりはきになります。あれにのっているのもりょうへいなのでしょうか。どちらにしてもえっちにしてしまえばいいのです。えっちないのちもゆりゆりはすきですから」
オブリビオン・フォーミュラ『聖杯剣揺籠の君』は笑っていた。
猟兵達の苛烈なる攻勢を前にしても、なお笑う。
彼女にとって、それは心地よいものであったからだろう。
どれだけ自分に憎しみの視線を向ける者であっても、哀れみの視線を向けるものであっても、敵意を向ける視線であっても。
どれもが彼女にとっては等しく欲するものであったからだ。
「すべてのせかいのすべてのいのち。それがどうしてもゆりゆりはほしい。どうしてもほしい。それがほしくてたまらないのです。えっちなのをがまんして、こうふんしてきました」
淫靡なる視線がユーベルコードとなって走る。
それをゆかりは見下ろす。
どこまでも広がる領域。
見るのは、自分だけでいいのだというように強大なリリスの女王が微笑んでいる。
頬を包み込んで、自分以外を見るなというようであった。
「わかっているわよ」
ゆかりはその頬を包む手を取って指を絡める。
「けれどね、それでも行こう。愛しのゆりゆり。道を誤ったあなたを止めるために!」
淫靡なる視線は『鎧装豪腕』が遮ってくれる。
しかし、それだけで終わりではない。
『聖杯剣揺籠の君』の手繰るユーベルコードは封じれど、その手にした『聖杯剣』も、『リリスの槍』も『神の左手』もまだ健在である。
猟兵達の攻勢に叩きのめされてもなお、彼女は笑っているのだ。
「そこにいるのがゆりゆりなのですか。ならそれもゆりゆりのものです。すべてのせかいのすべてのいのち。なら、りょうへいがしょうかんしたそれもゆりゆりのものです。どうかえっちになりましょう。えっちになればぜんぶらくになります。あやまったみちなんてなにひとつないのです」
迫る『聖杯剣』の斬撃を『鎧装豪腕』が防ぐ。
亀裂走り、斬撃の重さにきしむ。
その最中をゆかりは手にした薙刀を振るう。
衝撃波が『聖杯剣揺籠の君』を捉える。牽制の一撃。
「どうして道を誤っていないなんて言えるの」
「だって、ゆりゆりはすべてのせかいのすべてのいのちがほしいのです。なら、このみちがいちばんただしい。ぜんぶをてにいれるためにぜんぶをそそぐ。それがあたりまえなのです」
ああ、と恍惚とした顔で『聖杯剣揺籠の君』は『リリスの槍』を打ち込む。
大地が抉れ、その亀裂は元に戻ることはない。
生命を毒し続ける力。
その切っ先に触れることは出来ない。
リリスの女王が放つ針剣のブレスが『聖杯剣揺籠の君』の体を覆う。
「いたいのもくせになるくらいえっちなのです。いたいということはゆりゆりがまだここにいるということです。ならこれからまだまだもっともっと」
欲しい、とふるわれる『聖杯剣』の一撃を交錯するようにゆかりは躱しながら、手にした薙刀の一閃を叩き込む。
「奪うばかりで与えることを覚えない。それさえ覚えて、癒やしを得られたのなら!」
きっと違った未来もあったはずだと、あり得なかった未来をゆかりは思う。
止めることができるだろうか。
自分だけでは無理だ。
けれど、それでも諦めることはない。
彼女の手にあるのは、リリスの女王の手。
こうして手が取れたように、諦める理由は遠く。故に、ゆかりは薙刀の一閃を持って、『聖杯剣揺籠の君』の体を貫くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
黒沼・藍亜
まあ、今のボクは性欲の類感じられない体っすからねー……てかそういうのを強制する奴大嫌いなんすよ
第一、よそ見しててどうにかなるほど甘い相手でもないでしょアンタ
生身で打ち合うのはキツイから猶更っすよ
念のため抑制剤を使い、見てしまっても最悪自分にリペインター使ってその記憶を飛ばすっすよ(ついでにUDCの祝福による干渉妨害)
そのまま相手の方向、特に「神の左手」に意識を集中し、タイミングを合わせて粘度増弾力減にした触腕を盾にして妨害し、回避を試みる。もし引き寄せられたら至近での目潰し閃光で時間稼ぎ
……凌げればそのままUCを。
聖杯だろうが関係ない、今のアンタは異物。その痕跡ごと全部塗り潰してやるっすよ
迫る『いんよくのかぜ』は触れたものを『死の絶頂』にいざなう強制力を持った力である。
それに触れてしまえば、死ぬまで行為に及ぶ獣となってしまう。
今や金沢大学であった場所を包むのは、そうした淫靡なる光景であった。
それを認識してしまえば、生命は全て囚われてしまう。
だからこそ認識してはいけない。
「まあ、今のボクは性欲の類感じられない体っすからねー」
黒沼・藍亜(人■のUDCエージェント・f26067)は、しかして迫る『いんよくのかぜ』に触れてはならないと思う。
感じる感じないではないのだ。
「……てかそういうのを強制する奴大嫌いなんすよ」
その言葉にオブリビオン・フォーミュラ『聖杯剣揺籠の君』は首を傾げていた。
どうしてそんなに嫌うのかわからなかったのだろう。
オブリビオンと猟兵は互いに不倶戴天の敵である。
滅ぼし、滅ぼされる間柄でしかないのだ。だからこそ、その怒りは尤もなものであったことだろう。
しかし、それを彼女は理解しない。
本能的に猟兵が敵であると理解していながらも、己の欲するものであればこそ、慈愛にも似た笑みでもって藍亜を迎えるのだ。
「そんなことをいっていないでこちらにいらしてください。ゆりゆりはうえるかむです。りょうへいもたいせつないのち。ゆりゆりがほっする、どうしてもほしい、すべてのせかいのすべてのいのち。だから、こわがらなくていいのです。えっちになりましょう」
微笑む姿は絶世の美女そのもの。
だが、藍亜は本来は己のUDCの暴走を阻止するための抑制剤を煽るようにして『聖杯剣揺籠の君』に向き直る。
「ゆったじゃないっすかー、アンタみたいなのが大嫌いだって」
「それでもたいせつないのちです。ゆりゆりにそそがれるいのち。だから、とってもたいせつなのです。ひとしく、あまねくすべてのいのち。それがゆりゆりはたいせつ」
だから、あなたのいのちもちょうだい。
ふるわれる『聖杯剣』。
その斬撃を受ければユーベルコードを奪われる。
無数の触腕が走り、斬撃をたわませるようにして躱す。だが、さらに『リリスの槍』が迫る。
触れてしまえば、癒やすことのできない毒に冒されてしまう。
「ゆりゆりはいつでもいいのです。おそかれはやかれいのちがつきるのなら、はやいこともおそいこともなにひとつはじることなんてないのですから」
「よそ見してどうにかなるほど甘い相手じゃない……!」
視界に染まるは白。
だが、瞬時に藍亜は手にした記憶消去銃の銃口を己に向けて、躊躇わず引き金を引く。
記憶が飛ぶ。
一瞬のことだった。
認識した瞬間に全てを持っていかれる。
だからこそ、彼女は躊躇わなかった。記憶を飛ばし、さらにはUDCによる祝福の干渉妨害。
それを持ってして、なお無効化するのに手間取る。
「おいでおいで。ゆりゆりがたっぷりあいしてあげます。えっちなのうみそも、いのちも、ぜんぶぜんぶえっちなのです」
手招くようにして蠢く『神の左手』の指。
瞬時に引き寄せられる。
藍亜はそれでも諦めなかった。放つ閃光が目潰しとなって『聖杯剣揺籠の君』の視界を潰す。
ふるわれる槍はデタラメ。
けれど、万が一にも触れてはならない。
「時間稼ぎもキツイっすね!」
「めかくしぷれいですね。ゆりゆりこうふんしてきました!」
「そういうんじゃないっすよ! けど! さ、楽しくないイベントの始まりっす」
藍亜の瞳がユーベルコードに輝く。
それは、どこでもないどこにもない、どこにもいけない(セカイヲヌリツブスモノ)という事実を押し付ける。
この白く輝く粘液の満ちる戦場にあって、一点の染みのように広がっていくのは漆黒のねね行きの海。そして、空にあるのは純白。
「此処はもう『異界』っす。さあ、今のアンタは異物。その痕跡ごと全部塗りつぶしてやるっすよ」
藍亜のユーベルコードは無数の触腕で『聖杯剣揺籠の君』を捉え、すすり、ねぶり、なぶり、飲み込み沈める海となって迫る。
「ゆりゆりをのみこもうというのですね。とってもよいしゅこうです。とってもよくて、ゆりゆりは」
笑う。
笑いながら、その異物たる存在を塗りつぶすユーベルコードに『聖杯剣揺籠の君』は消耗させられていく。
藍亜は、その光景を認識した瞬間に記憶消去銃の銃口を己に向けて引き金を引く。
此処までしなければならない相手。
記憶を飛ばし続け、そして藍亜は『聖杯剣揺籠の君』を、その場に留め続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
銀誓館学園に敬意を表してセーラー服で。
視覚は封じて心眼と索敵で揺籠の君を捕捉し、破魔・浄化を自身に施して『いんよくのかぜ』を治癒し続けます。
先制攻撃に対しては自身への念動力で引き寄せに抵抗する。
リリスの槍と聖杯剣に対しては第六感で予測して、
・結界術と高速詠唱による防御壁
・オーラ防御を纏った天耀鏡による盾受け
・衝撃波で吹き飛ばして受け流し
・見切りで回避
にて対応します。
《神性解放》発動
迷彩とUCの高速飛翔能力を組み合わせて、揺籠の君に捉えられないように動き(引き寄せられても即離脱)、UC効果&多重詠唱による雷と光の属性攻撃・神罰・全力魔法・高速詠唱・貫通攻撃による極大の雷を揺籠の君に撃ち込みます!
迫る『いんよくのかぜ』はあらゆるものを『死の絶頂』へと至らしめる力である。
それを認識してしえば、あらゆるものは死に至り、その生命はオブリビオン・フォーミュラ『聖杯剣揺籠の君』へと注がれる。
生命によって強化され続ける彼女を放置すれば、シルバーレイン世界どころか他世界にまで脅威が及ぶことになるだろう。
「ゆりゆりがほしいのは、すべてのせかいのすべてのいのち。ぜんぶほしいのです。ゆりゆりはせかいのぜんぶのいのちがほしい。どうしてもほしい。それさえてにいれることができたのなら、きっとゆりゆりは」
こうふんしてきました、と呟く彼女。
猟兵達のユーベルコードによって消耗させられてなお、それでも絶大なる力を誇っている。
最大の能力である『いんよくのかぜ』を封じるのは、それを認識しないことである。
故に、大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)は瞳を閉じる。
視界を塞ぎ、この金沢大学に満ちる淫靡なる光景を一切感知しない。認識しない。
だが、目を閉じるという行為は、『聖杯剣揺籠の君』のオブリビオンとしての力を前にしては自殺行為であった。
「ですが、私の心眼さえあれば」
「みえないのはふじゆうではないですか。めかくしぷれいというものだとおもうのですが、えっちなことはやっぱりあいてのめをみてみつめあってするのがいいとおもいます」
そんな声に惑わされはしない。
己の身に破魔と浄化の力を満たし、迫る『いんよくのかぜ』による力を打ち消し続ける。
しかし、そんな詩乃に迫るのは竜巻の如き『いんよくのかぜ』。
さらに言えば『神の左手』によって彼女の体が引き寄せられるのだ。
「むりしてはいけません。がまんなんてもってのほか。だから」
「いいえ!」
詩乃のセーラー服が風になびく。
それは彼女がシルバーレイン世界で嘗て戦った銀誓館学園の能力者たちに敬意を表しているがゆえであった。
彼女は迫る『神の左手』による引き寄せに対抗する。
けれど、メガリスたる力は神の一柱である詩乃をしても強大だと言わざるを得ない。じりじりと引き寄せられ、たとえ『いんよくのかぜ』を払っても、迫る切っ先が在る。
二つ。
それは『聖杯剣』。触れたもののユーベルコードを全て奪う力。
それは『リリスの槍』。癒せぬ毒でもって死ぬまで蝕む力。
「例え、あなたが世界の全ての生命を欲するのだとしても!」
「ええ、ゆりゆりはほしい。すべてのせかいのすべてのいのちが。ぜんぶほしいのです」
詩乃の瞳がユーベルコードに輝く。
結界による防御壁が『聖杯剣』の一撃で砕ける。だが、それを天耀鏡でもって受け止め、溢れる若草色のオーラでもって吹き飛ばす。
これこそが、神性解放(シンセイカイホウ)。
「人々を、世界を守る為、全力でお相手致します!」
詩乃の中にあるのは、嘗てこの世界を護った能力者たちと同じ思いであった。
守りたい。
そのためにこそ燃え上がる想いがある。
彼女のセーラー服は、それを踏まえたものだ。多くの者たちが死と隣合わせの青春を送った。
本来ならば、死など最も遠きものであったはずだ。
けれど、それでも青春の日々は待ってはくれない。故に詩乃は思う。
彼らの戦いの続きがこんなことで傷つけられていいわけがない。
未来を思う。
故に彼女は掲げた薙刀の切っ先に満ちる神罰の雷を持って、『聖杯剣揺籠の君』へとそれを示す。
「世界の有り様が変わろうとも。世界が一つではなく、数多く存在するのだとしても!」
それでも変わらぬ思いがある。
多くの生命が願うものがある。
ならばこそ、その極大の雷が迸る。
「ゆりゆりはただほしいだけなのに」
「その欲望が全てを害するのならば、私は、それを許しはしません!」
放たれる雷は、『聖杯剣揺籠の君』へと降り注ぎ、その強烈なる明滅でもって世界を塗りつぶすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
【サージェさんと】
さすがナイアルテさん。
自らがえっちになって『揺籠の君』の力を封じるとは、
これが身体を張ったグリモア猟兵の真の萌え!
さっきの動画をリピートするだけで、
『いんよくのかぜ』なんてまさにそよかぜ、いいや、凪!
サージェさんと動画をガン見して、充電まっくす!
ファングッズとしては、こんどこそDVDじゃないでしょうか!
(鼻に真っ赤に染まるティッシュ詰めながら)
ファンクラブの滾りをいまここに!
【ビブリオテーク・クルーエル】を発動して、
銀誓館の人に見せてもらった過去の資料から、『揺籠の君』の攻撃を予測。
サージェさんにも教えて、攻撃回避のフォローするよ。
サージェさんいっけー! 忍べてないけど!!
サージェ・ライト
【理緒さんと】
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、死因はえっちなナイアルテさんです(はなぢもじ)
くっ、私はにゃいあるてさんを見るまで死なないはずなのに
まさかナイアルテさん自身がえっちで殺しに来るとはね!!
全然えっちな気分じゃないですよ萌えに滾っているだけなので!!
理緒さん萌えの供給はまだですか!?
ナイス動画!
というかファンクラブの全力を出す時じゃないでしょうか!
フィギュアつくる?それとも別のファングッズですかね!?
もちろん無許可でやりますけども!
そんな滾りのままに
【疾風怒濤】で攻撃でーす!
「強き一撃は野望をも砕く!参ります!!」
攻撃力重視でとっつげーき!
理緒さんフォローお願いしまーす!
オブリビオン・フォーミュラ『聖杯剣揺籠の君』の『いんよくのかぜ』は、その淫靡にして淫蕩なる光景を認識した瞬間に『死の絶頂』を強いるものである。
視認しないわけにはいかず、認識したという事実だけが力の起点足り得る。
そのおぞましき力を封じたとて、残るのはオブリビオン・フォーミュラとしての力である。
手にした『聖杯剣』は触れたもののユーベルコードを全て奪い去る。
『リリスの槍』は傷つけたものを癒えぬ毒で殺し、『神の左手』はあらゆるものを引きつける。
「ゆりゆりはとってもほしいだけなのです。すべてのせかいのすべてのいのち。それがてにいれることができたのなら、ほかのなにもいらないのです」
彼女の言葉が響く。
その肉体から発せられる『いんよくのかぜ』は防ごうと思って防げるものではなかった。
「お呼びとあらば参じましょう。私はクノイチ、死因はえっちな」
ぶっぱ、と鼻血があふれる。
いくらなんでもそれは開幕過ぎるとサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)の倒れ込む姿に菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は驚愕する。
しかし、それは正しくない。
なんかわざとらしい驚き方であった。
まるでサージェが鼻血をぶっぱするのはいつものことだというようだった。
「むっ、この鼻血文字は……」
どこかの名探偵みたいな語り口で理緒は、サージェの残した血文字を見つめる。そこに描かれていたのはグリモア猟兵の名であった。冤罪である。
「くっ、私はにゃいあるてあさんを見るまで死なないはずなのに、まさかご本人自身がえっちで殺しに来るとはね!!」
何言っているのかさっぱりわからないのである。
なんだろうか、なにかおハーブ的なのをキメておられる? 本当に濡れ衣である。しかし、理緒はうんうんと理解を示す。示さないで。
「さすが。自らがえっちになって『聖杯剣揺籠の君』の力を封じるとは」
封じていない。
えっちになってもない。
え、なんかそういう力が働いています?
「つまりえっちになっているということですね? ゆりゆりもはすはすしてきました」
「全然えっちな気分じゃないですよ萌えに滾っているだけなので!!」
サージェが目を剥く。こわ。
「これが体を張ったグリモア猟兵の真の萌え!」
ねえ、だからそれ何!?
理緒が示すのは動画であった。なんかグリモア猟兵ばっかり写している。何気ない日常のあれそれだったりなのだが、それを見たサージェと理緒はなんか滾っていた。
「ナイス動画!」
ナイスではないが。これはあれではないか盗撮というやつではないのか。
「充電まっくす!」
理緒はファングッズとしては、今度こそDVDじゃないかと鼻血を抑えるためにティッシュを詰め込みまくっている。
そんな彼女たちを『聖杯剣揺籠の君』はなんとなしに釈然としない顔をしていた。
『神の左手』で二人を引き寄せる。
「というかファンクラブの全力を出す時じゃないでしょうか! フィギュアつくる? それとも別のファングッズですかね!?」
「やっぱりDVD! なんかこううまいこと口車に乗せてイメージビデオ的なあれそれを!」
二人は『聖杯剣揺籠の君』を認識しないままに迫る『いんよくのかぜ』を躱す。
理緒の瞳がユーベルコードに輝く。
「ファンクラブの滾りをいまここに!」
いまここに! ではないが。
ビブリオテーク・クルーエル。
理緒のユーベルコードは過去の『揺籠の君』の資料を読み解くことで、彼女の攻撃を予測しようとしていた。
けれど、『聖杯剣揺籠の君』は、オブリビオン・フォーミュラ。
似通っていたとしても、その手繰るメガリスの力は強大であった。引き寄せられながらも、理緒はサージェに叫ぶ。
「サージェさん、あの『リリスの槍』だけは絶対に触れたらダメだよ!」
「わかっておりますとも!」
「ゆりゆりはむしされてとってもせつないのです。あ。せつなくてきもちいいのでゆりゆりはとってもこうふんしてきました。むしされるほうちぷれいというやつですね。とっても」
それはえっちです、と『聖杯剣揺籠の君』の振るう『聖杯剣』と『リリスの槍』がサージェに襲いかかる。
しかし、その斬撃を躱しサージェは懐に飛び込む。
『神の左手』は確かに強烈な力だ。
けれど、それは己の間合いにこちらから飛び込む必要がないことを示していた。
「サージェさん、いっけー! 忍べてないけど!!」
「忍んでますけど!?」
サージェの瞳がユーベルコードに輝く。
手にしたカタールを握りしめる。
己の心にあるのはえっちではなく萌え。
萌えとえっちはイコールではない。ノットイコールなのである。
純然たる萌はえっちに勝る。
「そうだよ、サージェさん! これが終わったらファンクラブグッズ作らないと!」
「強き一撃は野望をも砕く! 参ります!!」
煌めくは、疾風怒濤(クリティカルアサシン)たるカタールの連撃。
一撃一撃が重たく、『聖杯剣揺籠の君』へと叩き込まれていく。その斬撃は彼女の柔肌を引き裂くだろう。
けれど、それすらもサージェも理緒も認識していない。
彼女たちの瞳に映るのは、なんかこう、もろもろ肖像権とか大丈夫なのかなーセウトかなーってなる映像ばかりなのであった――!!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステラさんと】
そのシリーズ、第1作目もでてないですからね!?
うっかりとかじゃない目なんですけど!
ひょっとしてまだ『当ててんのよ』根に持ってます!?
それより、ステラさんに危険な相手なのでは?
ただでも煩悩だだ漏れなのに、
こんなの、エイルさんと●●な××が△□※☆で、
そんなの見たら『いんよくのかぜ』とか関係なくステラさん致死量ですよ!
って、あ、そうなんです?
わたしは光の勇者としてぴゅあっぴゅあなので、平気ですけどね!
光・の・勇・者・な・の・で!!
ま、またですか!?
あれ、ほんとに怖いんですよー!?
紐なしバンジー、じゃない、【カンパネラ】いきまーす!
勇者ってこんなのじゃない気がするんですがー!(落下)
ステラ・タタリクス
【ルクス様と】
これは……はいぼくゆうしゃきょうせいシリーズの続きですか?
ちがう?そんなシリーズ無い?
そうですか、メイドうっかり
私の場合、|エイル様《主人様》の子供が欲しいだけで
えっちなことをしたいわけではないというか
エイル様とそういうことをするなら
そもそもこの場にいないので逆説的に大丈夫です
さぁ、闇ぴゅあ勇者、見せ場ですよ?
強大とは言え人型サイズなら可愛いものです
【ガレオンチェンジ】で飛空艇形態に
さてルクス様?準備はいいですか?
引き寄せていただけるならそれすらも利用しましょう!
【テンペスタース・クリス】!突撃です!
不本意ながら揺籠の君からの攻撃は私が受け止めましょう
ルクス様、トドメはお任せです
「これは……はいぼくゆうしゃきょうせいシリーズの続きですか?」
え、何が、と思った。
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は、マジでそう思った。
いきなり告げられた言葉に困惑したと言ってもいい。
目の前に広がる光景を認識してはいけない。
粘つく大地は正直、衛生的とは言えない。だからこそ、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)はそういうあれそれなのかなと思ったのである。
「そのシリーズ、第一作目も出てないですからね!?」
「そうでしたか? そうですか、メイドうっかり」
にこ、と微笑むステラ。
言っていた言葉さえ無視できるのならば、ただの美少女メイドなのであるが、とにかくこのメイドは言動があれである。
「うっかりとかじゃない目なんですけど!」
なんかステラがぐいぐい、目の前に広がっているであろう淫欲と淫靡、淫蕩、まあ、なんというかレーティング的に18が付いてたりする光景を自分に近づけさせようとしているような気がした。
「ひっとしてまだ『当ててんのよ』根に持ってます!?」
それは悲しい事件であった。悲しいかな?
まあ、ともかくそういうあれがあったのである。ステラが『主人様』と仰ぐ者に対してルクスは『当ててんのよ』したのである。そういうことである。
まるでさっぱりわからないであろうが、確執があったのである。ひどいあれである。
「いえ、私の場合|『エイル』様《主人様》の子供が欲しいだけで、えっちなことをしたいわけではないというか」
「えぇ……」
この期に及んで何を言っているのだろうかとルクスは、ちょっと退いた。
いくら『聖杯剣揺籠の君』の放つ『いんよくのかぜ』を防ぐためとは言え、そこまで想像しているのかと思ったのである。
「えっちなことをしたいわけではないというか『エイル』様とそういうことするなら、そもそもこの場に居ないので逆説的に大丈夫です」
え。
つまりは、居たらダメだったということである。
どう考えてもあれでそれでどれで、そんなの見たらステラはもう『いんよくのかぜ』関係なく死んじゃうあれである。
そんな心配をよそにステラは涼しい顔であった。
欲しいものは欲しい。
けれど、手に入っていないのならば、懸想すれどまやかしに惑わされることはないのである。このメイド、こういうところはしっかりしているのである。
「あ、そうなんです?」
「ええ、そうなのです。いまさらです」
「でもでも、えっちになりますよね? そうなったらしのぜっちょうでしんでゆりゆりにそそがれるので、えっちになってもらえるとうれしいです。でもでもしおたいおうもくせになりそうです。こうふんしてきました」
『聖杯剣揺籠の君』の『神の左手』がステラとルクスを引き寄せる。
あのメガリスの力は、間合いというものを削る。
距離という概念を覆す力。
そして、手にした『聖杯剣』は触れたものの全てのユーベルコードを封じる。あれを受けては、反撃の芽はなくなる。
「さぁ、闇ぴゅあ勇者、見せ場ですよ?」
「光・の・勇・者・な・の・で!!」
本当である。
釘っていいたくなるほどに最近のステラのルクスに対する扱いは雑である。
この雑さが信頼の証であると思えることもあるのであろうが、しかして、それって本当に? と思う所もあるのである。
先程の『当ててんのよ』事件をまだ許してくれてないのではないかと思うほど。
しかし、そんなステラはさっさと飛空挺に変身している。
「これもまたいつもどおりってことですか!? またですか!? あれほんとうに怖いんですよー!?」
飛空挺に変じたステラによる突撃と、空寄りの強襲。
つまり紐なしバンジーである。
「たかいところからとびおりるとおなかがしくしくじんじんするのです。たぶんくせになるのです。だから、そのきもちわかるきがします。しのきょうふにちょくめんするとせいぞんほんのうがうずいて、たまらないのです」
「違いますからね!? そういうんじゃないですよ!?」
「ええい、ルクス様。いちいち敵の言動に惑わされない。準備はいいですか?」
「まだダメです!」
そんなルクスを誰も待ってくれない。
『聖杯剣揺籠の君』も、仲間のステラだって待ってくれないのだ。
テンペスタース・クリスたるユーベルコードを発動し、風の盾と共に急転直下、『神の左手』の引き寄せる力をも利用してステラは飛ぶ。
「勇者ってこんなのじゃない気がするんですがー!」
「いいえ、トドメは大体いつだって勇者の仕事です。ほらはやくはーりーあーぷ」
「もう! La Campanella(ラ・カンパネラ)いきまーす!」
手にしたグランドピアノを振るい上げる。
それは単純で重たい一撃。
ふるわれた一撃は一閃となって『聖杯剣揺籠の君』へと叩きつけられる。
きしむ骨身。
『いんよくのかぜ』すら吹き飛ばすように、ルクスの一撃はステラの急転直下たる急降下の重量を乗せ、さらなる威力を伴って『聖杯剣揺籠の君』を打ちのめすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
酒井森・興和
手にした途方の無い神力を肉欲極まる術に行使する…貴方はどこまでもリリスの首魁なのだね
まあ僕も住処を護りたい鋏角衆の一兵
あなたの糧にはならないよ
【集中力】揺籠との戦闘のみ考え周囲の光景、音を【切断】
先制UC>
敵に意識集中するため視線を完全に逸らすのは難しい
障害物や行為中の人も視線を遮る盾に利用
目深に飛斬帽を被り断固抵抗、負傷【覚悟】
被弾後は痛くても即【カウンター】行動
飛斬帽と墨糸を結んだ逆鱗【投擲】
武器を【追跡】し接近
鉄扇で【怪力、重量攻撃、追撃】と連打
逆鱗も都度八方へ展開するように擲って行く
敵の視線は開いた鉄扇で形だけだも遮ろう
そのまま目潰し狙う様に【なぎ払う】
この隙にカードを手にUC発動を
オブリビオン・フォーミュラ『聖杯剣揺籠の君』の力は凄まじいものであった。
オブリビオンとしての全てを聖杯に注ぐことによって得られた力。
本来であればリリスである彼女に扱えるはずのないメガリスの力さえ、彼女は振るう。手にした『聖杯剣』は触れたもののユーベルコードを全て奪い取る。
『リリスの槍』は癒えぬ毒を撒き散らし、その肉体から放たれる『いんよくのかぜ』は、あらゆるものを『死の絶頂』に導く。
死した生命は、全てが『聖杯剣揺籠の君』へと注がれる。
「そうすれば、すべてのせかいのすべてのいのちはゆりゆりのものになるのです。りょうへいもたいせつないのち。ゆりゆりはそれがほしい。ゆりゆりにそれをください」
いいでしょう、ね? と『聖杯剣揺籠の君』は微笑み、その淫靡なる眼差しを猟兵たちに向ける。
しかし、酒井森・興和(朱纏・f37018)は頭を振って否定する。
「いいや。あなたの糧にはならないよ」
何処まで行っても『聖杯剣揺籠の君』はリリスだ。
手にした途方もない神力も肉欲極まる術に行使することしか考えない。結局、と思うのだ。
それがリリスとしての本質なのである。
その首魁たる者の性質なのであると。
「どうして? えっちになればとってもきもちいいのに。そうしてとけてまざってゆりゆりのものになってほしいのに」
手招くようにして『神の左手』が発動する。
あらゆるものを引き寄せるメガリスは、距離という概念を覆す。
興和の体が引き寄せられる。
目深にかぶった飛斬帽の奥で興和は彼我の距離を理解する。しかし、触れる視線が己の肉体の内部から炸裂するような痛みを走らせる。
飛び散る血潮を『聖杯剣揺籠の君』は美味しそうに舐め取るように指先を唾液で濡らす。
「とってもたくましいあじがするのです。ゆりゆりはこうふんしてきました。このつよきちしおもいのちも、ぜんぶすべてゆりゆりのものにできることに」
「いいや、例え、血の一滴手に入れたのだとしても僕のあり方は変わらない。棲家を守りたい鋏角衆の一兵。例え、死ぬのだとしても変わらない!」
痛みが走る。 けれど、それでも興和は目深にかぶった飛斬帽を投げ放ち、武器を投擲する。
瞳を閉じる。
己が手繰る武器は、己の手足の延長。
ならばこそ、未だ繋がる墨糸を手繰るようにして飛ぶように興和は『聖杯剣揺籠の君』に迫る。
「それでもゆりゆりはほしい。どうしてもほしい。それがほしくてたまらないから、ゆりゆりはもっともっとえっちになるのです」
ふるわれる『リリスの槍』。
その切っ先の剣呑さを知る興和は鉄扇でもって切っ先を叩き落とす。
広げられた扇が『聖杯剣揺籠の君』の視線を遮る。それは淫靡なる視線を防ぐだけではなく、興和の姿を隠すものであった。
「イグニッション!」
鉄扇も飛斬帽もすでに己の手の中にはない。
この一手のために布石。
その軌跡を手繰るようにして手にしたイグニッションカードがユーベルコードに輝く。
「八糸、禍炎」
それは、呼焔(コエン)。
これまで布石として放っていた墨糸が『聖杯剣揺籠の君』を取り囲む。
まるで逃さぬというように。
また同時に、彼女の行いをこれ以上広げさせはしないという強烈なる意志を解き放つ。墨糸に囲われた内部に放たれるは八連の白熱火矢。
走る火矢は、瞬時に『聖杯剣揺籠の君』へと叩き込まれる。
「そう、ただの一兵として。護りたいという思いだけで僕は、あなたを討つ。他の誰も、これ以上糧にはさせない――!」
大成功
🔵🔵🔵
夜刀神・鏡介
「見ただけで死ぬ」って言うのはなんとも究極的というか
それだけの素質を持つ彼女か、力を与えた聖杯か……恐れるべきはどちらだろうな
目的……眼の前の敵と刀に集中すれば余分な事は見えないし考える事もなし
神刀の封印を解除して、バイク『八咫烏』に騎乗。ひとまず揺籠の君の周囲を走っていこう
眼差し自体を躱す事はできないだろうが、彼女の攻撃は「視線を当てる」と「思念を流す」の二段構えで効果を発揮する
命中後、思念が流し込まれる前に浄化と破魔の神気を高めて振り払う
周辺を走り回りつつ各所に神刀で斬撃痕を刻む事で、廻・肆の秘剣【黒衝閃】の前準備
十分な準備を整えた所で発動。この空間、周囲の光景ごと纏めて吹き飛ばしてやる
猟兵の言葉と共に放たれる火矢がオブリビオン・フォーミュラ『聖杯剣揺籠の君』へと叩き込まれる。
吹き荒れる血潮さえも灼き滅ぼすような炎。
そのさなかにありながら『聖杯剣揺籠の君』は微笑んでいた。
己の身を灼く炎の熱ささえも快楽に変えるように微笑んでいたのだ。
「みをこがすおもいというのはこういうことをいうのですね。ゆりゆりはとってもせつなくて、とってもくるおしくて、とってもいとおしくて。このかんじょうにむねがやききれるかんかくにとってもこうふんしてきました」
恍惚とした表情。
だが、それを夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は認識しない。
彼女の肉体から放たれる『いんよくのかぜ』が生み出す光景を認識した瞬間、『死の絶頂』によってあらゆる生命は死ぬまで行為に耽る獣に墜ちる。
「『見ただけで死ぬ』っていうのはなんとも究極的というか」
しかし、それだけの素質を持つオブリビオンであったと言うべきであろう。
もしくは、聖杯の力か。
まことに恐れるべきはどちらなのだろうと鏡介は考える。
けれど、今において、その思考は眼前の敵が繰り出す光景を無視する要因でしかない。
認識してはならない。
少しでも心が揺らげば、そこから傷を押し広げるように死は己に至るだろう。
「どうしてえっちにならないのでしょう。よくぼうをかいほうすることはこんなにもここちよいのに。どうしてがまんするのでしょう」
鋼鉄の騎馬たるバイク『八咫烏』にまたがり、『聖杯剣揺籠の君』の周囲を疾走する鏡介。
彼の目的は彼女の視線を振り切ることだった。
けれど、視線そのものを防ぐ手立てはなかった。身の内側から弾けるようにして破壊の力が触れ上がり、鏡介の皮膚を突き破らんとする。
思念を流し込まれる前に、浄化と破魔の神気を高めてなお彼の体に裂傷を生み出す。
「がまんはからだにどくなのです。きにせず、きもちよくなりましょう。それがゆりゆりはうれしい。しにたえるのですけど、それでもゆりゆりはそのいのちをそそいでもらったことをわすれませんから」
だから、と言うように視線が走る。
けれど、鏡介は頭を振る。彼女の言葉はすべてを欲するがゆえ。
「それは誰かの生命を自分のものにしたいというリリスの欲求だろう。だが、それは間違っている。世界を壊す愛で、力を振るうことは!」
鏡介の瞳がユーベルコードに輝く。
無意味に視線を躱すためにバイクで疾走していたのではない。地面に刻まれた刀の傷痕。
それは在る種の儀式めいたものであった。
「神刀解放。砕き散らせ、黒の剛撃――廻・肆の秘剣【黒衝閃】(カイ・シノヒケン・コクショウセン)」
手にした神刀を地面に突き立てる。
瞬間、それは地を穿つほどの勢いでもって噴出する黒の神気。
吹き荒れる神気は、粘つく白い大地すらも吹き飛ばす勢いで、『聖杯剣揺籠の君』すらも巻き込んで放たれる。
極大なる神気の放出は、鏡介が地面に刻んだ刀の傷痕から漏れることはない。
「さっきからなにかしているとおもっていましたが、それが」
「ああ、このユーベルコードは大掛かりなんでね。『聖杯剣揺籠の君』、その視線を躱すことにばかり注力できていなかった」
「きのないやりとりもこのために。このためにゆりゆりのためによういしてくれていたのなら、それは。とってもうれしいことですね。あいてをおもって、あいてにしようとすること。そのぜんぎはとってもたいせつなことです「」
だから、手傷を追ったのだ。
流れる血潮が白き大地を汚すように点々とした赤を刻む。
けれど、それ以上にあらゆる白を塗りつぶす黒の神気が『聖杯剣揺籠の君』の体を灼く。
「根本的にズレているんだな。けれど……これで!」
大地ごと吹き飛ばすかのような強烈なる力の奔流を受け、彼女は吹き飛ばされるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…認識したらアウトは中々に滅茶苦茶だな…聖杯の力と言う事か…
…転送されたならば術式を多重展開…
現影投射術式【ファンタズマゴリア】により闇の幻で周囲を包んで互いの視界を塞ぐことで自分の視界とゆりゆりのまなざしを封じ…
この幻に付与した浄化復元術式【ハラエド】でいんよくのかぜを絶え間なく浄化その影響を治療…
そして操音作寂術式【メレテー】にて音を消失…声も届かないようにするよ…
…周囲に遅発連動術式【クロノス】で大小様々な簡易障壁を展開してゆりゆりの動きと攻撃の邪魔をして時間稼ぎ…
…【縋り弾ける幽か影】を発動…知覚することなく『驚異』であるゆりゆりにステルス自爆ガジェットを送り込んで爆破するとしよう…
「……認識したらアウトは中々に滅茶苦茶だな……聖杯の力という事か……」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は、オブリビオン・フォーミュラ『聖杯剣揺籠の君』の肉体より放たれる『いんよくのかぜ』の力を知り、驚愕するしかなかった。
金沢大学に広がる淫蕩極まる光景。
これを認識することは許されない。
転移した後に術式を多重に展開し、さらに現影投射術式『ファンタズマゴリア』によって闇の幻で周囲を包み込む。
「なにもみえません。めかくしぷれいというものだとおもうのですが、ちょっとゆりゆりはこうふんしてきました。みえないということはほかのかんかくはえいびんいなっているということ。それはいつもとちがっていつもではないとくべつなえっちになるきがするのです」
彼女の言葉は聞こえる。
だが、己に迫る淫靡なる眼差しは防ぐことができる。
思念を流し込み、それによって内側から破壊される力は、脅威であった。
それ以上の脅威は『いんよくのかぜ』であった。
『聖杯剣揺籠の君』が存在している限り、その『いんよくのかぜ』は吹き荒れ続け、あらゆるものを『死の絶頂』に誘おうとするだろう。
猟兵であろうと例外ではない。
「ゆりゆりはすべてのせかいのすべてのいのちがほしい。どうしてもほしい。だから、ゆりゆりはみんなえっちにしたい。えっちにすればみんなしにたえる。そのいのちはすべてゆりゆりにそそがれる」
「……そうすれば、いつか骸の海すら粉々にできる、か……」
浄化復元術式によって『いんよくのかぜ』を浄化し、その影響を治療し続ける。
肉体を苛む『いんよくのかぜ』は、即座に治療しなければ、その隙間から入り込むように『死の絶頂』をメンカルに与えようとするだろう。
少しも惑わされてはならない。
記憶も何もかも聖杯に注いだ『聖杯剣揺籠の君』との対話にメンカルは意味を見いだせなかった。
故に己に彼女の言葉を届かせぬように操音作寂術式『メレテー』でもって音を消失させる。
視覚を塞ぎ、聴覚すら隔てる。
さらに術式を刻み込む。
大小様々な簡易障壁。それは言ってしまえば、簡易的な迷宮を生み出すこと。自分を捉えようとする彼女であれば、これらの障壁に阻まれてしま。
「かべがあります。こういうとき、かこわれていることはひめごとっぽくてゆりゆりはだいすきです」
その言葉も聞こえない。
これは時間稼ぎだ。
ユーベルコード、縋り弾ける幽か影(ステルス・ボム)を使うための時間稼ぎ。
「忍び寄る破滅よ、潜め、追え。汝は炸裂、汝は砕破。魔女が望むは寄り添い爆ぜる破の僕」
自爆機能をもったガジェットが闇の中を走る。
それは極めて発見しづらい。さらに言えば、『ハラエド』によってさらに視認性は低いのだ。
これを見つけることはできないだろう。
「……確かにお前は脅威そのものだよ。放置しているだけで世界は終わるだろうし、そうでなくても全ての世界のすべての生命を奪うのなら、途方もなく強化されていくのだろうさ」
そうなれば、彼女の言葉通り骸の海すら破壊してしまえるのかもしれない。
けれど、そのためにすべての生命を犠牲にすることなどあってはならない。
故にメンカルの瞳はユーベルコードに輝く。
何も見えない。
何も聴こえない。
その最中で、確かに手応えがある。認識できなくてもメンカルは己の創ったガジェットが『聖杯剣揺籠の君』を捉え、その自爆攻撃によって彼女に手傷を追わせたことを掴み、静寂と暗闇の中で、戦いの決着を待つのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん?
武器:漆黒風
目閉じにて視覚を、遮音結界にて聴覚を遮断しまして。大丈夫、生前から培った業でいけますよ。
さらに風を操って、『いんよくのかぜ』を浴びないように。今回私なのは、それができるから。
操りには抵抗をして、爆破には激痛耐性にて耐えましょう。
ここで止まるわけにはいきませんし。止まるはずがないんです。
そして、UCにて変化させた鬼蓮。それを揺籠の君へと。
風の操りで、二回攻撃しましょう。切り刻みなさい。
四悪霊は、貴女の糧になんてなりませんよ。この先も、歩むのですから。
見てはならぬ。
聞いてはならぬ。
認識してはならぬ。それら全ては『死の絶頂』に至る楔。故に瞳を静かに閉じ、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱である『疾き者』は、オブリビオン・フォーミュラ『聖杯剣揺籠の君』の放つ『いんよくのかぜ』を認識しない。
彼女の放つ最大の能力。
それは、かの光景を認識した瞬間に『死の絶頂』に至らしめる、全ての生命を死に追いやり、己に注ぎ込ませる力。
その力の強大さは言うまでもない。
「ええ、ですが大丈夫。生前から培った業でいけますよ」
視界は封じられている。
聴覚も頼りにはならない。
けれど、忍びとして生きてきた轍がある。ならば、その感覚を研ぎ澄ます。
使えぬ感覚は閉じ、他の感覚を持って補う。
手繰る風は、『いんよくのかぜ』を浴びぬように操作し、戦場を走る。
見てはならないというのは酷である。粘つく大地が足を取るようでもあった。
「みないきかないふれない。まるでしばりぷれいですね。きんばくぷれい。ゆりゆりはそういうのもいけるくちでした。とってもこうふんしてきました」
淫靡なる視線が宙を走る。
それは見たものを内部から破壊せしめる視線。
だが、それを受けてなお『疾き者』は走る。肉が弾ける。痛みが走る。苦痛にゆがむ表情を見て、『聖杯剣揺籠の君』は微笑んだ。
愛おしいものを見るように。
己の手の中で跳ねるものを見るように。
彼女は、生命を弄ぶ。全ての生命を手に入れたいと願う本質。
それ故に無邪気で、純粋で、転ずる悪意にすら気がつけない。
「すべてのせかいのすべてのいのち。あなたもゆりゆりのものです。だから」
微笑む。視線が走る。肉が爆ぜる。
その痛みすら愛おしく思えるようにと伸ばされた手。
しかし、『疾き者』は答えない。
聴覚を閉じているからではない。
「ここで止まるわけにはいきいませんし。止まるはずがないんです」
己が悪霊であるからか。
それとも生前に塗れてきた業故か。
その答えを知るのは己だけであり、また他者の介在するところではない。ならばこそ、己が『鬼』であったことを証明するように『疾き者』は、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
「これは『鬼』である私が、至った場所」
吹き荒れる鬼蓮の花びら。
それが一瞬で『聖杯剣揺籠の君』へと走る。
包み込むのは花びら。その光景に彼女はほほえみながら、興味なさげであった。彼女がほしいのは生命。花ではない。
だからこそ、彼女は己の身を切り裂く花弁にすら興味を示さなかった。
「ゆりゆりはぜんぶほしいのです。いのちのぜんぶ。どうしてもぜんぶほしい。りりすであるからとか、ゆりゆりにはかんけいなく、ぜんぶぜんぶほしいのです。しにみちたうちゅうはくらくてこごえるのです。だからいのちあふれるものでゆりゆりのからだをみたしたいのです」
その言葉は届かない。
認識すらない。ただ穿つ敵として。己を糧とせんとする者に対する答えは唯一。
「四悪霊は貴女の糧になんてなりませんよ」
「どうしてです? えっちになればきもちいいことしかできなくなるのに」
「この先も、歩のですから」
培ってきたものは業。
業は轍となって己の道行きを阻む手となるだろう。
けれど、それでも隣に立つ者たちがいる。
彼らと共に、今よりも遠き場所を目指すのならば。此処で止まることはありえない。その言葉の意味を噛みしめるように、されど、『聖杯剣揺籠の君』に伝えることなく、『疾き者』は鬼蓮の花弁の中に消えるように彼女の伸ばされた手を拒絶するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
んもー滅茶苦茶だよー
●フィルタリング
[白昼の霊球]くんの透過設定をあーしてーこーしてーこれでー…ヨシ!
おそらく!メイビー!大丈夫だとボクの【第六感】が言ってる!
周りを覆って周囲の眺めとたつまき?を遮断する結界になってもらおう
えっちなのはいけな…くはないけどこれなんか違わない?
ただただ存在の級位を引き上げる事に酔っているならキミはもう…えっちなお姉さんとは言えないね!
たつまきだかかぜだかを霊球くんが遮断してくれている間に引き寄せられたところでUC『神撃』でドーーンッ!!
いいかい?えっちっていうのはね
命を終わらせるためじゃなく、輝かせるために…
いやなんかこれはこれで違う!
「んもー滅茶苦茶だよー」
己の望むものだけを透過させる球体の中でロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)はうめいていた。
金沢大学はすでに白く輝く粘ついた大地に変わっている。
そこに在るもの全てを認識してはいけない。認識した瞬間に『死の絶頂』に居たり、生命は死に絶える。
例外はない。
故に、認識することは即ち死。
「どうしてもりょうへいはゆりゆりをみてくれない。えっちになってくれない。えっちになればこんなにもきもちいいのに。どうしてどうして、ゆりゆりのものになってくれないのでしょう」
猟兵達の攻勢に苛まれながらもオブリビオン・フォーミュラ『聖杯剣揺籠の君』は未だ健在であった。
手を覆う黄金の篭手の如きメガリス『神の左手』を持って、あらゆるものを引き寄せる。彼我の距離など関係ないのだ。
渦巻く竜巻は、全てが『いんよくのかぜ』そのもの。
あれに触れてしまえば、あらゆる生命は『死の絶頂』に至るだろう。
「えっちなのはいけな……くはないけれど、これなんか違わない?」
ロニはフィルタリングして視界を通す『聖杯剣揺籠の君』を見やる。
劣情も性欲も何も感じない。
ただそこにある力、存在としての力しか感じない。何も考えない。けれど、この広がる光景は違うと思う。
生命を生み出すための行為ですらない。
ただ、『聖杯剣揺籠の君』に生命を注ぐためだけの行い。
それは違うのではないかとロニは思うのだ。
「ただただ存在の級位を引き上げる事によってるならキミはもう……えっちなお姉さんとは言えないね!」
「ゆりゆりはゆりゆりです。えっちなのはそうあれかしということでしかないのです。えっちなのはゆりゆりをこうふんさせてくれるだけ。それいがいのことはなにもなく、ただしのしずけさからとおざかるためだけにすべてのせかいのすべてのいのちがほしい。ぜんぶ、ぜんぶおしいのです」
彼女の言葉とともに放たれる竜巻。
それは『いんよくのかぜ』が束ねられた力の奔流。
いずれもあれに触れてしまえば、『死の絶頂』は免れないだろう。それに引き寄せられる。どれだけフィルタリングしていたとしても、純然たる力の奔流に飲まれてしまえば、あらゆるものが無意味になるだろう。
「いいかい? えっちっていうのはね。生命を終わらせるためじゃなく、輝かせるために……」
いや、これもなんか違うなとロには思った。
引き寄せられるままにロニは拳を握りしめる。
振り上げた拳が叩き込まれるのは『聖杯剣揺籠の君』。
言葉にし難いものがあったのかもしれない。相容れないもの。どうしようもなく拒絶しなければならないもの。
死とは静寂にも似た永劫。
生は奏でる歌のようなもの。
ならばこそ、『聖杯剣揺籠の君』は求める。
多くを求める。静かなる宇宙は寂しいばかりだ。だから、多くを求める。全ての世界の全ての生命。
その鼓動が奏でる歌を手に入れたいと思うのだ。
「まあ、どっちだっていいさ! ボクは神様だからね! キミも、すべからく! どーんっ!!」
放つ拳の一撃が『聖杯剣揺籠の君』を捉え、その神々しさを感じさせるかの如き拳、神撃(ゴッドブロー)でもって白く輝く大地ごと彼女を沈めるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
夕凪・悠那
またヤバいフォーミュラが来たなぁ
えっちになって死ぬって……
能力の強度以上に字面が強すぎる
情報を観測できないって普通にきついんだけどね
『エルドリッジ』に騎乗
物理的にいんよくのかぜを遮断して、視聴覚はセンサー表示を弄って対処
引き寄せに対しては自ら突っ込んで引力を加速度に利用
【Ignition Assault】起動
機体性能を引き上げると同時に、装甲上とコックピット周りに電脳空間を展開してかぜに対する二重防壁にする
実体刀"RAIKIRI"でリリスの槍/聖杯剣を捌きつつ機を狙い
電磁抜刀か[電撃]で撃ち抜くよ
『いんよくのかぜ』はオブリビオン・フォーミュラ『聖杯剣揺籠の君』の肉体から常に発せられるものである。
触れたものを『死の絶頂』にいざない、行為に耽るだけの獣へと堕とす力。
そうして死した生命は全て『聖杯剣揺籠の君』に注がれ、その力を際限なく強化していく。
「またヤバいフォーミュラが来たなぁ。えっちになって死ぬって……」
恐るべき能力であった。
それ以上に夕凪・悠那(電脳魔・f08384)が戦慄したのは、その能力の強度以上に字面の強さであった。
問答無用であるということが伺える力。
触れてしまえば、認識してしまえば、己も死に至るという恐ろしさ。
だが、やりようはある。
認識したら、えっちになって死ぬ。
「なら、ニンシキシなければいいって簡単に言う……情報を観測できないって普通にきついんだけどね」
どちらかと言うと、それは精神面であろう。
新たな情報を脳に仕入れることのできないという精神的負荷は、思った以上に人の心に傷痕を残す。
だからこそ、興味本位で、怖いもの見たさで見てはならぬものを見てしまうのだろう。
それはつまるところ、ホラーと同じなのかもしれない。
刺激を求める。
死に近ければ近いほどに、その刺激の純度は上がっていく。
「とは言え、『エルドリッジ』、頼んだよ」
悠那はサイキックキャバリアに乗り込み、『いんよくのかぜ』を物理的に遮断する。
さらに視聴覚をセンサー表示を弄って対処し、『聖杯剣揺籠の君』の姿を認識しない。
「どうしてもゆりゆりをみないのですね。それはとってもかなしいことです。みてほしいのにみてもらえない。しせんをそらされる。そのこどく、そのほうちぷれい。ゆりゆりはとってもこうふんしてきました」
だから、と言うように、その黄金の篭手たる『神の左手』が招き寄せるように『エルドリッジ』の機体を惹きつける。
彼女にとって距離は関係ない。
あらゆる彼我の距離を無いものとするメガリスの力は、脅威そのものであり、多くの猟兵たちを引きつけてきた。
「引き寄せてくれるってのはさ、構わないけど!」
悠那は『神の左手』の誘引の力を自ら突っ込むことで加速度に利用し、そのキャバリアの巨体でもって『聖杯剣揺籠の君』へと突っ込むのだ。
「ああ、きてくれました。ゆりゆりのもとに。たいせつないのち。りょうへいもゆりゆりがほしいもののひとつ。すべてのせかいのすべてのいのち。そのひとつ。だから、きてください。ゆりゆりとえっちになって、ゆりゆりにそそがれてください」
「そのつもりは――ない!」
悠那の瞳がユーベルコードに輝く。
機体を覆っていく防壁を兼ねた天球型電脳空間。
機体性能を引き上げ、装甲とコクピットを重点的に覆う。
それは『いんよくのかぜ』に対抗する処置だった。
せまりくる竜巻の如き『いんよくのかぜ』。それは如何にキャバリアにのっているのだとしても、もしもの事態があり得るのだ。
だからこそ、二重防壁。
「がーどのかたいおんなのこのがーどをこじあけるのによろこびをみいだすとのがたもいるとおもうのですが、それはとってもわかるきがします。それってとってもえっちなのです。ひきはがしたときのよろこびに、ゆりゆりはとってもこうふんするのです」
ふるわれる『聖杯剣』。
それは触れればユーベルコードの全てを奪われる力。
「『エルドリッジ』! 躱して、それは受けては駄目だ!」
更に迫る『リリスの槍』。癒えぬ傷。死に至る猛毒。
最大の能力である『いんよくのかぜ』を防ぎきってもなお、迫る脅威。それを『エルドリッジ』は実体刀で捌き、ぐるりと機体を回転させる。
『聖杯剣揺籠の君』と背中合わせになるように機体を入れ込み、振り返りざまに放つ一撃。
「さあ、ぶっ飛ばせ」
それは、Ignition Assault(イグニッション・アサルト)。
点火するように煌めくユーベルコードの輝き。
圧倒的な速度で巨体が走り抜け、その斬撃の一撃を持って『聖杯剣揺籠の君』の手にした槍を吹き飛ばし、その身に情報支援、リソースを注ぎ込んだ斬撃の一撃を見舞い、切り裂くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
|ぉぉぉぉぉおおおおおオオオオオオオオ!!!!《壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ!!!!》
【闘争心】を以って、純然たる破壊衝動を以って!
真っ直ぐ!!聖杯剣揺籠の君を視認し、駆ける。愚直に、真っ直ぐ駆ける。
聖杯剣揺籠の君《破壊対象》だけを、|脇目も逸らさず、ただただ奴だけを!!壊す為に!!!
|オオオオオオオオ《壊せ壊せ壊せ壊せ》壊せよぉおおお!!!
二振りの亡国の騎兵刀、その刀身から破壊の【呪詛】物質を振りまき、
己すらも壊す勢いでいんよくのたつまきを騎兵刀で破壊し、
人工魔眼の【念動力】で身体を動かし【空中機動】聖杯剣を回避し、
【早業】何度も何度も【怪力】で騎兵刀を振るい、守りをこじ開ける!
何なら毒槍は喰らっても良い、|そんなもの《毒もいんよくも》己ごと壊してしまえば良い!!
聖杯剣揺籠の君へ強引に騎兵刀を突き立て【継戦能力】『禍戦・壊帰萌』
癒えないものは壊して新たに、壊し切れ。
壊して、壊して、壊して、壊して!!
破壊の呪詛物質の放出を強化し、己をも壊し、
蘇る度強く破壊を|奮う《願う》。
滾るものがあった。
漲るものがあった。
心のなかに、胸の中に、躯体の中に、脳髄を走り抜け電流のように流れ込むものがあった。神経の隅々にまで行き渡る血液のように、それは意志となって朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)の左目から炎と成って発露する。
燃える瞳。
人工魔眼の内部で煌めく輝きは、闘争心。
満ちるのは純然たる破壊衝動。
「|ぉぉぉぉぉおおおおおオオオオオオオオ!!!!《壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ!!!!》」
叫ぶ心に『いんよくのかぜ』は意味をなさない。
強大な能力。
それを認識した瞬間に運命が決定してしまうほどの力。
「とうそうしんはえっちじゃないです。どうしてえっちになってくれないのでしょう。どうしてりょうへいのみんなはえっちをひていするのでしょ?」
こんなにも気持ちの良いことなのにとオブリビオン・フォーミュラ『聖杯剣揺籠の君』は首を傾げながら、消耗しきった体を動かす。
多くの猟兵に打ちのめされ、揺らめく用に体を揺らしている。
痛みに喘ぐのではなく、快楽に喘ぐように熱い吐息を漏らしながら、上気した顔で猟兵達を見ている。
手招くように『神の左手』が小枝子の体を引き寄せる。
だが、それより速く小枝子は踏み出していた。引き寄せられるより、何よりも速く、己の中にある破壊衝動が迸るのだ。
ただ、只管に真っ直ぐに。
『聖杯剣揺籠の君』を視認し、駆ける。
それはあまりにも愚直で、真っ直ぐで、その鋭さに『聖杯剣揺籠の君』は微笑んだ。
「うれしいのです。ゆりゆりにまっすぐきてくれて。つらぬこうとしてくれて。そのいたみもここちよいものになるはず。きっときもちいいはず。せいめいのほとばしり、せいめいのゆたかさ、せいめいのそうぞうしさ。そのぜんぶが」
ほしいのだと彼女は言う。
けれど、そんなことなど小枝子には関係ない。
あれは淫欲渦巻く存在でもなければ、淫蕩に耽る存在でもない。淫靡たる瞳も、小枝子には見えていなかった。
あれなるは滅ぼす存在。破壊しなければならない存在。
「関係ない! お前を! ただ壊すために!!」
迫る竜巻の如き『いんよくのかぜ』。
手にした二振りの亡国の騎兵刀を振るう。その刀身から迸るのは、呪詛。破壊を齎すためだけに放たれる物質。
その力の凄まじさは言うまでもない。
だが、その破壊の力は己の身すら破壊するだろう。
壊れても構わないという思いと壊さなければならないという思いとが重なる時、その騎兵刀の斬撃は『いんよくのかぜ』が生み出す竜巻すらも切り裂き、その間隙を見出す。
「ゆりゆりにきてくれるのはうれしいことです。でもどうしてえっちになってくれなのでしょう? そうすればむずかしいことのひとつもかんがえなくてすむのに。ただえっちにきもちよくなっていればいいのに」
振るう『聖杯剣』。
切っ先に触れてしまえば、ユーベルコードの全てを奪われてしまう。そうなってしまえば、戦う力なき小枝子は滅ぼされてしまうだろう。
それこそ一方的に蹂躙されてしまう。そうなってしまえば、もはや小枝子に勝ち目はない。
故に小枝子は人工魔眼の念動力でもって、己の肉体がねじ切れても構わないというように身を反り返して『聖杯剣』の一撃を躱す。
「そんなにねじっていたくはないのですか? それともそれがきもちいいのですか?」
純粋な疑問であるというように『聖杯剣揺籠の君』の言葉が響く。
小枝子はそれを聞かなかった。
意味のない問いかけであったからだ。
痛みも、苦しみも、小枝子の進撃を止めることはできない。あらゆるものを破壊する。
ただそれだけのために彼女は走る。
手に握った騎兵刀の柄から伝わる痛みが己を此処に在ると知らしめる。
「壊して、壊して、壊して、その先を」
ふるわれる『リリスの槍』の一撃は、彼女を殺しうるものではなかった。だから、振るう。
禍戦・壊帰萌(デッドオーバー・リカーシブル)は、己の攻撃を躱すという意志を欠如させる。
槍の痛みなどどうでもいい。
振るう一撃の、その騎兵刀より迸る破壊の呪詛が『聖杯剣揺籠の君』の体を切り裂く。
「|そんなもの《毒もいんよくも》己ごと壊してしまえばいい!!」
壊れたものに、それらは認識できない。
癒えないものは壊して新たに、壊しきってしまえばいい。壊れたものの意味なんてない。
あるのは。
破壊の痕跡ばかり。
それを他者が見て言葉にするだけの話だ。
「自分には意味がない。そんなもの」
「どうしてそんなさびしいことをいうのですか。おーばーろーどをこえてなお、そんなことばばかり。えっちになればいいのに。きもちよくなればいいのに。それだけでいいのに。どうしてそんなに」
「壊して、壊して、壊して、壊して!!」
小枝子の人工魔眼に映るのは、己が破壊すべき者のみ。
破壊の呪詛物質が放出され続ける。自覚なき怨霊は、ただ只管に壊す。
『今』という時間を停滞させようとするもの。
あらゆるものを壊すという――。
|奮う《願う》こと。
故に小枝子は、その最後の一閃を持って否定する。
斬撃の一撃。
「ああ、またとどかなかったというのですね。ゆりゆりがほしかったもの。どうしてもほしかったもの。すべてのせかいのすべてのいのち。それが」
「それはお前のものではない!」
放たれる一撃が『聖杯剣揺籠の君』を切り裂き、その体を霧散させていく。
満ちるかぜはもう、かぜではなく。
死と隣合わせの青春に駆け抜けた、一陣の風となって消えゆく――。
大成功
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