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第二次聖杯戦争⑲〜聖域のライスメキア

#シルバーレイン #第二次聖杯戦争 #聖戦領域 #セイクリッド・ダークネス

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●白き燦然
 一つの肉体に二つの意志が入り交じる。
 だが、混ざることもなければ、溶け合うこともない。
『セイクリッド・ダークネス』――かつて『伯爵』と呼ばれた『原初の吸血鬼』が使役したと言われるゴーストの名であり、またそれは今正しくはない。
 白き燦然たる光が満ちる『聖戦領域』にあるのは一人の女性。
 そう、『セイクリッド・ダークネス』は『伯爵』が使役する最強のゴースト『聖女ジャンヌ・ダルク』とも呼ばれていた。
『ジャンヌ・ダルクよ。わたしを開放せよ。わたしは全てを滅ぼすであろう』
 その肉体に憑依した『セイクリッド・ダークネス』の言葉を聞いて、誰もがそれを成してはならぬと思っただろう。

 全てを滅ぼさんとするゴースト。
 その存在を抑え込むかのように肉体たる『聖女ジャンヌ・ダルク』は毅然と言い放つ。
「嫌です、『セイクリッド・ダークネス』。あなたが憑依したこの躰は私のもの……何を為すかは私が決めます」
 憑依されてなお、その言葉に偽りはなかった。
 白き燦然たる輝き満ちる『聖戦領域』中で視界を覆われた女性『聖女ジャンヌ・ダルク』は、その聖女に足りうる意志を見せた。
『なんと、この聖なる混沌たるわたしに歯向かうというのか。では、汝は何を為したいというのだ』
 強靭なる意志。
 この聖域に満ちる光と同じように強烈なる意志を前に『セイクリッド・ダークネス』は告げる。

「私は全てを滅ぼします。この黒き白の力で!」
 吹き荒れるように光が満ちていく。
 あらゆるものの視界を奪う白。その白き輝きの前には暗闇すら存在を赦されぬであろう。
 だが、その言葉はあまりにも狂気に満ちていた。
 彼女が成さんとしているのは、彼女の躰に憑依した『セイクリッド・ダークネス』と目的を同じにしているからだ。
『おお、なんと恐ろしい。わたしには全てを癒やす使命がある。汝は光と闇に晒され過ぎて正気を失っているのだ』
「正気をうしなっているのはあなたです。私は全てを癒やしたい。それだけなのです」
『愚か者め、わたしに逆らうことは赦さぬ! わたしは全てを滅ぼすのだ!』
「そんなことはさせません。私は全てを滅ぼしてみせます!」

 狂気。
 それはそう呼ぶしかないほどの堂々巡りの言い争いであった。
 正気を失ったように言い争う躰と憑依したゴースト。
 あらゆる点において言葉が通じない。いや、会話は通じる。だが、会話が成立しないのだ。
 如何なる理由から『そうなってしまった』のかはわからない。
 けれど、現実に『セイクリッド・ダークネス』は『燦然たる光の力』を用いて、この『聖戦領域』を支配しているのだ――。

●第二次聖杯戦争
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。シルバーレイン世界、金沢工業大学周辺において、凄まじい光と闇の奔流に沈めた謎の怪物『セイクリッド・ダークネス』の支配地域である『聖戦領域』へと向かって頂きたいのです」
 ナイアルテの言葉に猟兵達は頷く。
『セイクリッド・ダークネス』とは嘗て、『伯爵』と呼ばれる『原初の吸血鬼』によって使役さていた光の異形である。

 一つの肉体に『聖女ジャンヌ・ダルク』と『セイクリッド・ダークネス』の二つの人格が宿っている存在である。
「ですが、どちらも明らかに発狂しており、互いに口論を繰り返すばかりなのです。会話は……通じますが、成立はしないでしょう。何かを聞き出すことは不可能であると思われます」
 しかし、この『聖戦領域』を制圧しないことには光と闇の奔流に沈んだ地域を奪還することはできないだろう。
 とは言え、敵の力は強大そのものである。

「『セイクリッド・ダークネス』はすべてを滅ぼす『燦然たる光の力』で踏み込む者全てを灼き払おうとしています。純粋な力比べの戦闘になるでしょう……それに加え、先制攻撃が確実に襲ってきます。これに対処しなければなりませんが……」
 ナイアルテの表情は明るくはなかった。
『燦然たる光の力』はその名の通り、『聖戦領域』を光で満たしている。
 常軌を逸する眩しさは視界を塗りつぶしている。
 これに対処しなければ、先制攻撃に対処するどころではない。
 敵を視認することができなければ、戦いようがないからだ。

「まずはこの『燦然たる光の力』、この光に如何にして対処し敵を視認するかが鍵となるでしょう。『伯爵』指揮下最強のゴースト……その力は単体でも凄まじいものです」
 彼女の言葉に息を呑む猟兵達。
 第二次聖杯戦争が始まった折、原初の吸血鬼『伯爵』は告げた。
『セイクリッド・ダークネス』の逃走は、『反乱』であると。
 己の闇の領域の一部を削り、逃走したのだと。
 そして、闇の領域は生命、オブリビオンの区別なくあらゆる存在を取り込み支配できるのだと。
『セイクリッド・ダークネス』の目論見は、その力でもってまずは光と闇の『妖獣兵器』を傘下とし、やがて強大なオブリビオン軍勢を獲得することであると。

 嘗ての『伯爵』を知る能力者であった猟兵達は、その言葉に如何なるものを感じただろうか。
『原初の吸血鬼』は吸血した対象を支配下におくことができる。
 故に『セイクリッド・ダークネス』の出奔を『反乱』だと言ったのだ。
 確たる『証拠』なしに疑うことは、嘗ての『条約』を反故にする行い。
 過去は積み重ねられてきた。
 連綿と紡がれてきたとも言えるだろう。
 その全てが物語るものまたあるのかもしれない。

「いずれにせよ、『セイクリッド・ダークネス』を放置することはできません。どうかお願い致します。『聖戦領域』へと踏み込み、『セイクリッド・ダークネス』を打倒してください」
 そう告げ、ナイアルテは『燦然たる光の力』満ちる戦場へと猟兵たちを送り出すのであった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『第二次聖杯戦争』の戦争シナリオとなります。

 シルバーレイン世界の光と闇の奔流に沈んだ金沢工業大学周辺、『聖戦領域』と呼ばれる戦場において、『聖女ジャンヌ・ダルク』と『セイクリッド・ダークネス』が一つの肉体に二つの人格として宿る敵を打倒するシナリオになります。

 このシナリオでは『燦然たる光の力』を手繰る『セイクリッド・ダークネス』との戦いになります。
『聖戦領域』は常軌を逸した光が満ち、対策なしに飛び込めば敵を視認することさえできません。
 この光による先制攻撃に対処することが戦いの行方を決める鍵となるでしょう。

 プレイングボーナス………「燦然たる光の力」による先制攻撃に対処する。

 それでは『第二次聖杯戦争』、『聖戦領域』にて正気を喪いながらも踏み込む皆さんを打ちのめさんとする『セイクリッド・ダークネス』。彼女に立ち向かう皆さんの死と隣り合わせの青春の続き、その物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 ボス戦 『セイクリッド・ダークネス』

POW   :    アンフォーギブン・ライト
【「燦然たる光の力」】で攻撃する。[「燦然たる光の力」]に施された【理性】の封印を解除する毎に威力が増加するが、解除度に応じた寿命を削る。
SPD   :    ピュリファイ・レイ
【「燦然たる光の力」】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
WIZ   :    プリミティブ・ホワイト
【「燦然たる光の力」】を放ち、命中した敵を【光の奔流】に包み継続ダメージを与える。自身が【正気を喪失】していると威力アップ。

イラスト:hoi

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

戒道・蔵乃祐
最も古く、最も強大な原初の吸血鬼『伯爵』
その寵姫が逃げ出すとは
「反乱」
モノは言い様ですが取り繕いきれてないですね

◆毘紐天動輪
|病的《メンヘラ》過ぎる彼女を自らの闇に囲い込み、長命種の無聊を慰めていたのでしょう
趣味が悪い
異形の依り代たる聖女を解放する手段は、今を於いて他に無い
せめて猟兵が、彼女をヒトとして|祓い《葬り》罪を背負います

戦輪をクイックドロウ+乱れ撃ち四方八方に連続投擲
光の奔流は|浄化+破魔《金剛身》の|武器受けで耐える《激痛・火炎耐性》
心眼+読心術で手応えを感知し、念動力+早業で全ての戦輪を一斉操作して強襲
血の匂いを野生の勘で辿りジャンプ+切り込み
除霊+重量攻撃のグラップルで撃ち抜く



 原初の吸血鬼『伯爵』。
 かつて、それと対峙した銀誓館学園の能力者たちにとって、彼は如何なる存在であったことだろうか。
 そして、彼が使役した最強のゴースト『セイクリッド・ダークネス』。それが憑依した肉体『聖女ジャンヌ・ダルク』。
「私の躰は私のものです。何を為すのかは私が決めるのです。全てを破壊します、必ず!」
『狂い果てたか、恐ろしきことだ。わたしが全てを癒やすのだ。躰を明け渡せ、ジャンヌ・ダルク!』
 一つの肉体に二つの人格。
 互いに発狂していることがわかる。
 言葉は発せられど、ボタンを掛け違えるかのような様相。

「『反乱』、モノはいいようですが取り繕いきれてないですね」
 戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)は『燦然たる光』が満ちる『聖域領域』に踏み出す。
 視界を覆う真白の光。
 それは暗闇よりも人の視界を奪うものであったことだろう。
 見えない。
 だが、蔵乃祐は己の心の眼で視る。

 全てがみえるわけではない。
 あらゆる心が読み切れるわけではない。
 人がそうであるように生命の全てに通じる理があれど、全てを知るにはあまりにも遠き道のり。
「私は全て壊すのです。私の全存在を掛けて、闇のように白き力によって!」
『セイクリッド・ダークネス』の放つ光の奔流は『燦然たる光の力』。
 視界を埋め尽くした光の中を奔る力を知覚することはできないだろう。
 しかし、即座に蔵乃祐は手にした戦輪を投げ放つ。
 いや、投げ放つといった生易しいものではない。四方八方に投げ放つ。その戦輪の手応えによって蔵乃祐は『セイクリッド・ダークネス』の位置を知る。

 奔流が己の身を灼く。
 痛みが走る。だが、その激痛は、嘗て強大な原初の吸血鬼『伯爵』の寵姫たる『ジャンヌ・ダルク』を思えばこそ耐えきるものであった。
 過去の記録を見て思う。
『聖女ジャンヌ・ダルク』。
 彼女は|病的《メンヘラ》であったように思えた。少なくとも蔵乃祐のはそう思えた。過ぎるほどに、とさえ思った。
 故に『伯爵』は自らの闇に囲い込み、己の長命種の無聊を慰めていたのだろう。
 それを蔵乃祐ははっきりと断じる。
「はっきりと言って趣味が悪い」
 だが、と彼の閉じた瞳の奥は戦輪から伝わる手応えで持って光の奔流に灼かれながら、念動力を発露する。

 全ては己の放った戦輪に。
 その戦輪が『セイクリッド・ダークネス』へと襲いかかる。
「異形の依代たる聖女を開放する手段は、今を於いて他にない。せめて、猟兵が、彼女をヒトとして……」
「私を癒やすといいましたか! 破壊したいという私を。猟兵に壊されることなど私にはない」
『わたしが全てを壊すのだ。癒やして壊すのだ。そのためにこの躰が必要なのだ。ジャンヌ・ダルク、お前がいなければ!』
 |印契《刀印》が向けられる。

 燦然たる光の領域たる『聖戦領域』に於いて、ユーベルコードの輝きは白く塗りつぶされているだろう。
 けれど、蔵乃祐には視えている。
「法輪駆動。即ちクンダーラヴァルティン」
 毘紐天動輪(ビチュウテンドウリン)は、彼の念動力によって操作された戦輪でもって『セイクリッド・ダークネス』を襲う。
 光の中に在りて、それはその位置を知るように自在に動く。
 彼の心眼は捉えている。
「|祓い《葬り》罪を背負います」
 それが彼の覚悟であったことだろう。

 戦輪が『セイクリッド・ダークネス』の皮膚を切り裂く。
 血潮が走る音が聞こえる。そして、匂いも。血の匂い。そこからは、獣のごとく。野生の勘とも言うのだろうか。
 蔵乃祐は満ちる光の中を、暗闇より暗き視界の中を疾駆し、その拳の一撃を叩き込む。
 骨のきしむ音を聞いた。
「この私を壊してくれると言った」
『わたしが壊すのだ。それをわたしよりさきに壊そうとは!』
「いいえ、祓うといいました。罪を背負うとも。ならば、この拳の痛みは」
 己への罰か。
 振り抜いた一撃の後に『セイクリッド・ダークネス』が吹き飛ぶ音を蔵乃祐は聞き、その拳に走る痛みに視えずとも、悟るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・フェアリィハート
アドリブ連携歓迎

【SPD】

セイクリッド・ダークネスさん…
光と闇が
内に混在されて…?

『でも…制御しきれずに…苦しんで…?』

そんな方と戦う
心苦しさを感じつつも
戦いに

味方と連携
翼で飛翔
【空中戦】も行い
立体的に立回り

先制攻撃の光は
直視せず
【第六感】【瞬間思考力】【早業】を総動員し
UC発動

場を
敵の視聴嗅覚奪う
闇に覆い

出来る限り
視界に頼らず
【第六感】【気配察知】【残像】
【結界術】【オーラ防御】等で
敵の攻撃を
防御・回避しつつ
戦場全体に
雷撃の渦を発生
反撃し

黄泉之瓊矛を手に
【ハートのA】達も展開
【電撃】の【範囲攻撃】や
【誘導弾】の【一斉発射】で
攻撃

『雷撃は、戦場全体に及びます…何処にいても…貴女を捉えます…!』



『わたしに躰をよこせ、ジャンヌ・ダルク。わたしが全てを癒やすのだ。そのためには!』
「いいえ、私が癒やすのです。壊して癒やし、そして全てを壊すのです。この躰は私のもの!」
『セイクリッド・ダークネス』の躰の中にあるのは二つの人格。
 言い争う二つの人格は、いずれもが正気を失っているように思えたことだろう。
 互いに相反しながらも、その言葉事態をも相反している。満ちる狂気。『聖戦領域』において『燦然たる光の力』があらゆる暗闇を照らしていく。
 その光景の中、響く声にアリス・フェアリィハート(不思議の国の天司姫アリス・f01939)は悲痛なる思いがこみ上げてくるようであった。

「『セイクリッド・ダークネス』さん……光と闇が内に混在されて……?」
 そう思うしかなかったのかもしれない。
 制御できていないとも思えたし、苦しんでいるようにも思えただろう。
 真実かどうかもわからない。
 言葉から伝わるのは狂気だけだった。発狂し、ただ徒に『燦然たる光の力』を発露し、己たちに襲いかかってくる。
 光は戦場に満ちているが、故にアリスの身体へと迫る。

 発狂していようとも。
 正気を失っていようとも。
 アリスには『セイクリッド・ダークネス』が苦しんでいるように思えたのだ。それだけはこの戦場にあって正しい真実の一つであったことだろう。
 心苦しいと思うこと。
 それを感じることのできる正しさをアリスは持っていたことだろう。
 背に負った翼が羽撃き、迫る光を第六感でもって躱す。いや、躱しきれることはなかっただろう。
「無駄です。私の放つ光はあらゆるものを照らすもの。あまねく全て照らして癒やすためにあるのです!」
『わたしの力だ。全てを嫌そうとする力。全て壊すために必要な力!』

 彼女たちの言葉が耳に響く。
 痛々しいともアリスは感じたかも知れない。
 だが、アリスの瞳はユーベルコードに輝く。
「哀しみだけに支配されることも……その悲しみに心を裂かれることも……それだけにしてはいけないと私は知っているから……八雷さん達……その力の片鱗を……!」
 その背に追う翼は闇に染まる。
『燦然たる光の力』を前にしても染まることはなく。
 金色の髪もまた闇色に変わる。

 己を今定義するのならば、なんと呼ぶべきであったことだろうか。
「闇と死の黄泉姫……」
 掲げた矛より走るはユーベルコードの光。
 戦場を闇世に変える力。『セイクリッド・ダークネス』の視聴嗅覚を奪う暗闇へと変わっていく。
 しかし、『燦然たる光の力』はそれすらも塗りつぶしていく。
「私の視界が覆われていく闇に覆われていく。私の目には光があったはずなのに。この白き黒の力が……!」
『わたしの躰であるのに、何も見えない。何も聴こえない。何も香りを感じない。わたしは一体どうしているのだ。わたしはすべてを壊すはずなのに!』
 狂える人格は、狂った言葉を紡ぐばかりだ。

 だからこそ、アリスの瞳は見ない。
 視覚に頼ることなく、広がる感覚。第六感とも言うべき感覚と共に己の身をオーラで覆い、迫る光を遮断し、その手にした矛より放たれる八雷と共に万象を討つ荒ぶる雷撃の凄嵐の渦を解き放つ。
 その渦は力の奔流。
『セイクリッド・ダークネス』を包み込む雷撃の嵐は、彼女たちの身体を焼くだろう。
 さらに迫る闇焔、火雷が消えぬ焔となって彼女たちの身体を包み込んでいく。

 手にした宝石が舞い散るようにして『セイクリッド・ダークネス』へと放たれる。
「雷撃は、戦場全体に及びます……何処にいても……貴女を捉えます……!」
 【月黄泉之淡島姫・八雷】(ツクヨミノアハシマヒメ・ヤクサノイカヅチ)。
 そのユーベルコードの輝きは、この『聖戦領域』には輝かない。
 あらゆるものを光で塗りつぶす光だからだ。
 けれど、アリスはその光の中で『セイクリッド・ダークネス』を視覚ではなく、感覚で捉える。
 狂気の中で苦しみを感じるだろうか。
 それとも苦しみがあるからこそ狂気に至ったのか。

 どれもが理解から程遠いものであったかもしれない。
「それでも、その苦しみに……」
 寄り添うの人の優しさだというのならば、アリスは満ちる雷撃と焔をもって『セイクリッド・ダークネス』に滅びを与えるために力を振るうのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

妖精水兎・マリリル
いきなりボスバトルとかマジルリ?
とにかくやってやるルリー!!

敵の先制攻撃やUCは厚い脂肪の体から高圧水流を噴射して高速移動して避けるし、高圧水流放射で相殺も狙うし、当たっても耐えるルリ!

パワーきのみを食べて回復&パワーアップルリ!

よくもやってくれたルリね……今度はこっちの番ルリーーーーー!!!!(ブチ切れ憤怒)
UCでキョダイ化して、マリンテールを振り回したり叩きつけたりして、増大した戦闘力とちからもちの怪力300による水属性鎧砕き攻撃でぶっ潰してやるルリ!

こんだけキョダイ化すれば適当に暴れても絶対当たるルリー!!

ううおりゃああああああっ!!!!!



 妖精水兎・マリリル(バイオっとモンスターの力持ち・f35732)は『聖戦領域』の『燦然たる光の力』満ちる戦場に降り立ち、自分でもびっくりするくらい唐突であったと思った。
「いきなりボスバトルとかマジルリ?」
 強大な『セイクリッド・ダークネス』。
 その力が放つ重圧の凄まじさは言うまでもない。
 それに戦場に満ちる常軌を逸したかのような光の量は、暗闇でないのだとしてもマリリルの視界を灼くようであった。
 光なければ視覚は意味をなさない。
 だが、光が多すぎても視界を塗りつぶし、敵も何も見えない。

 そんな状況を打破しなければならないのだが、マリリルはこの視界に対抗する術を持っていなかった。
「私が全てを癒やします。そして私が全てを壊すのです。私の躰なのです、私が全て決めてみせますとも!」
『躰をよこせ、わたしが全てを癒やさなければならないのだ。この黒き真白たる力でもって、全てを壊す! わたしこそが!』
 狂気満ちる会話が光の中から聞こえる。
 それは『セイクリッド・ダークネス』の言い争う声であった。

『聖女ジャンヌ・ダルク』と『セイクリッド・ダークネス』。
 一つの躰に二つの人格。
 そのどちらもが正気を失っている。
 会話は成り立っていない。言葉を交わすことができても、それ自体が意味を成さないのだ。
「とにかくやってやるルリー!」
 迫る光の奔流。
 それは『セイクリッド・ダークネス』の理性が喪われているほどの強烈にマリリルの肉体を灼く。
 いや、違う。
 彼女の躰は分厚い脂肪。そこから高圧水流を噴射するように高速で躱そうとする。だが、その行為は光満ちる戦場にあっては躱すことができないという事実を知らしめる。
「高圧水流噴射で相殺できないルリ! なら後は耐えて、耐えて、耐えるルリ!」
 痛みが走る。
 強烈な光は視界のみならず、彼女の身体をも灼く。

 バイオモンスターであるからこそ、この程度で済んでいるのだ。
 痛みを堪えながらマリリルは手にしたパワーきのみを頬張る。
 痛みは耐えられる。肉体の傷も、彼女用に作られたパワーフードならば己の肉体を回復してくれる。
「それにパワー百倍ルリ!」
 立ち上がり、その痛みに怒りを覚える。
 よくもやってくれたのだと、感情が心の奥底から膨れ上がっていくのを感じる。
「私が滅ぼすのです! 全て! 一つからゼロまで!」
『なんたる狂気。わたしこそがゼロにして一。光と闇に満ちた黒と白で、その力を放つのだ!』
 会話が成り立たない。
 意味のわからない言葉を投げかけられてもマリリルは何一つわからなかった。

 いや、『セイクリッド・ダークネス』たちの言葉を理解しようというのがそもそもの間違いであったのかもしれない。
 もどかしいと感じることすら怒りを感じる。
 それに痛みがまだ走っている。
 高圧水流で防ぐことのできない光の奔流がマリリルの身体を灼き続けるのだ。
「よくもやってくれたルリね……今度はこっちの番ルリ―――――!!!!!」
「いいえ、私の番のはずです! 私はもう放棄していますから!」
『まだだ。まだ何もしていない。これからするのだ。わたしが、全てやったことだ!』
「だからそういうの全然わからないルリ!!」
『セイクリッド・ダークネス』の言葉が、なおさらにマリリルの怒りに油を注ぐ。彼女たちの言葉はマリリルには全くわからない。

 だからこそ、苛立つ。
 そのいらだちは怒りに変わり、爆発していく。
 彼女の瞳はユーベルコードに輝いていた。爆発した怒りによって、マリリルの身体は巨大化し、その凄まじい巨体を持って腕を振るう。
「これだけキョダイ化すれば適当に暴れても絶対当たるルリー!!」
 そう、どんなに視界が光に閉ざされているのだとしても。
 それでも巨大化したマリリルの腕を振るえば……それこそ無秩序に振り回せば、彼女の言葉通り、その拳の一撃が『セイクリッド・ダークネス』を捉えるのだ。

「この私を捉えた!? いいえ、私は躱したはず!」
『躱していない。当たったのだ、わたしに。わたしの傷を癒やすな、全てを壊すのだから!』
「そこルリね! ううおりゃああああああっ!!!!!」
 マリリルは己の手に触れた『セイクリッド・ダークネス』を掴み上げ、そのバイオミック・オーバーロードの渾身の力を込め、その身体を大地に叩きつけるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

霧島・絶奈
◆心情
狂気の狭間に在ろうとも、強敵であるならば是非もありません
共に愉しみましょう、この『逢瀬』を

◆行動
視界が塞がれるのならば、他の五感を活用するだけです
先制攻撃には【聞き耳】を立てる事で対処
加えて【オーラ防御】を活用し、光の透過量を減らしておきましょう

『涅槃寂静』にて「死」属性の「濃霧」を行使し【範囲攻撃】
霧は光を遮りますので、少しは戦いやすくなるでしょう

更に【範囲攻撃】する【マヒ攻撃】の【衝撃波】で【二回攻撃】

負傷は【各種耐性】と【オーラ防御】で軽減し【生命力吸収】で回復

…それにしても、オブリビオンすら取り込める『伯爵』ですか
再度取り込める可能性もありますし、今後の注意も必要かもしれませんね



『セイクリッド・ダークネス』は、『聖女ジャンヌ・ダルク』の肉体に二つの人格を有する存在である。
 彼女たちに正気はない。
 狂うように互いを認識し言い争うばかりである。
 その会話は成立していない。
 会話が出来たとしても理解はできない。
「私こそがこの躰の主なのですよ。あなたの出る幕ではありません。私が全てを癒やして壊すのです」
『いいやわたしこそが全てを癒やすのだ。あらゆる全てを真黒き白色に染め上げてみせる!』

 彼女たちの言葉を聞き、それが狂気の狭間にあるのだと霧島・絶奈(暗き獣・f20096)は理解する。
 けれど、彼女にとって、それは大した問題ではなかったのかも知れない。
 彼女は平穏を愛しながら殺戮を嗜好する獣である。
 その二面性故に彼女は彼女を彼女たらしめるものを理解しているのかも知れない。余人が彼女を理解しようとすることは、彼女にとって己への好意そのものであたことだろう。

 理解が及ぶことと理解が及ばぬこと。
 その対極に位置するものを包括するものをこそ、彼女は戦いに見出す。
 故に告げるのだ。
「強敵であるのならば是非もありません。共に愉しみましょう、この『逢瀬』を」
 彼女は視界塗りつぶす『燦然たる光の力』満ちる『聖戦領域』を走る。
 確かに視覚は潰されている。 
 だが、彼女にとって視覚とは五感の一つでしかない。
 せまりくる光の奔流に音はなくとも、それを放つ『セイクリッド・ダークネス』が物体として存在しているのならば、その動くだけ乱れる大気を触覚で感じ取り、また風切り音を耳で聞く。

 ああ、それはきっと恋にも似たことであったことだろう。
 相手の存在を己の全感覚でもって理解しようとする。感じ取ろうとするのならば、それは確かに恋とよぶのかもしれなかった。
 光を減らすことも『セイクリッド・ダークネス』を知覚したいが故に。
 絶奈はせまりくる光の中を進む。
 肌を焼く光。
 強烈過ぎる痛み。
 けれど、近づいていると感じることができる。光の奔流が近づけば近づくほどに、己が『セイクリッド・ダークネス』に近づいていると理解して、またその唇が笑みの形を作り上げる。

「其は始原にして終焉。永遠不変と千変万化。万物が内包する奇蹟にして、森羅万象が齎す福音と災禍也――即ち、それは死にして濃霧」
 絶奈の瞳がユーベルコードに輝く。
 この『聖戦領域』において光は輝かない。それよりも強烈なる『燦然たる光の力』によって塗りつぶされているからだ。
 けれど、それでも彼女が生み出した死の濃霧は、広がり、光を拡散させていく。
 光の向こう側に確かに影をみた。
 絶奈が求めたもの。

「私の光を捉えようとして、破壊するなど。私が破壊するというのに、どうして破壊されるのを待ってはくれないのですか。今すぐに癒やして差し上げます!」
『壊すのはわたしだ。それを違えることは許されない。癒やしこそが破壊なのだ。それをわたしがもたらし、取り上げようというのだ!』
 言葉に意味はないのかも知れない。
 発狂するままに力を振るう『セイクリッド・ダークネス』の身体を包み込む死の濃霧。

 その力が導くのは、涅槃寂静(ヨクト)。
 戦場にありて、音は響かない。生命があるのならば、その音は必ず聞こえるはずだ。けれど、その音を吸収するように絶奈のユーベルコードは、死の濃霧となって『セイクリッド・ダークネス』を包み込む。
 それは彼女たちにとって、その身を汚す行為にして好意であったことだろう。
 知りたいが故に光の中に影を落とすように。
 影の大元を知るために近づき、手に触れるように。

 絶奈は、その死の濃霧を切り裂く衝撃波を解き放ち『セイクリッド・ダークネス』を打ち据える。
 悲鳴が聴こえた。だが、未だ跳ねる心臓の音が己の旨の高鳴りを告げる。
 オブリビオンすら取り込める『伯爵』。
 その存在が意味するのは如何なることか。『セイクリッド・ダークネス』が滅びてもなお、また取り込む事ができるのかも知れない。
 絶奈は、その可能性を感じ、また注意をしなければと思うと同時に再び出会えるかもしれぬという邂逅を望むのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…お前達が何故そのような狂気に囚われたのかは知らないけれど、
その力がこの世界に生きる人々を害する以上、お前達の存在を許容する気は無い

肉体改造術式により眼球を変化させて光量の調整を行う事で視界を確保し、
無数の「写し身の呪詛」の残像を乱れ撃ちして囮にする事で攻撃を回避して切り込みつつUCを発動
「皆既蝕の精霊結晶」に魔力を溜め召喚した凶星の大魔剣を怪力任せになぎ払い、
魔剣のオーラが防御を無視してダメージを133倍に増幅する呪属性攻撃を行う

…正気を失くしているならば、この術が有効ね。さあ、惑いなさい

…待っていなさい。今、その不本意な生を終わらせてあげる
…それが、私がお前達に与えられる唯一の慈悲と知れ



『わたしの邪魔をするな、ジャンヌ・ダルク! わたしが壊すのは、癒やされたものたちだ。必ず壊さなければ、癒やすことができない!』
「いいえ、させはしません!『セイクリッド・ダークネス』! 壊すのは私です。私の力を持って、必ずや癒やすのです。そして、壊してみせます!」
『セイクリッド・ダークネス』の中にある人格の二つが言い争い続けている。
 光満ちる『聖戦領域』にあってなお、彼女たちは互いを否定し続ける。
 正気を失った言葉は、会話を成り立たせることはなかった。

 その異様なる光景にありながらも、溢れる光の奔流は迫る猟兵たちを滅ぼさんとせまりくる。
「聖女の内の闇、あるいは闇に堕ちた聖女……一体どっちなのかしら? それとも、どちらでもないのかしら?」
 御影・しおん(Unknown・f27977)は一つの肉体に宿る二つの人格の境界線を興味深そうに微笑んで見ていた。
 彼女たちの言葉は、あまりにも支離滅裂であった。
 どちらも癒やすことと破壊することを求めている。だというのに、相反し続けているのだ。

 けれど、しおんはどちらでもいいし、真実はさほど重要ではないというように、くすくすと笑う。
「さあ、始めましょうか」
 迫る光。
『燦然たる光の力』は凄まじい。
 それほどまでに理性を失った『セイクリッド・ダークネス』の力は、強大にして鮮烈。
 故にしおんは、己の光喰らう龍爪と、手に浮かぶ黒い結晶でもって光を吸い込ませていく。
 影翼も光を吸い込み続ける。
 だが、それでも『燦然たる光の力』は飲み込みきれるものではなかった。
「私の白き黒の力は飲み込むことなどできはしないのです。これは私の力ではない。私が闇の力を奮って癒やすのです!」
『馬鹿なことを。黒き白の力は、あらゆるものを塗りつぶす。光はもはやわたしの手の中にある。破壊こそが全てを癒やすのだ!』
「ええ、そうかもしれないわね。けれど、境界線を引く事はできる。そして、その内を仮の異界……結界と成し、その境界面を屈折させることができるのなら」
 そらすこともできるのだとしおんは笑う。

 一体何がおかしいのかと『セイクリッド・ダークネス』は思ったかもしれない。いや、それすら思い浮かべることはなかったのかもしれない。
 彼女たちにとって、その力の発露は息をするのと同じであったからだ。
 けれど、しおんにとっては違う。
 境界線を定義し、己の中にあるユーベルコードの輝きへと変える力。
 吸収した光あh、輝きを増し、満ちるユーベルコードの奔流の中から現れるのは光で出来た竜。

「我が名は御影しおん、“彼方より来る極光”」
 笑う。
 竜身解放・彼方より来る極光(アルターエゴ・アイン・ソフ・オウル)は此処に至りて、全ての光を取り込む。
 光は果てることはない。
 無限の彼方にこそある光。その光の名を冠するが故に、しおんは竜としての姿をさらけ出し、迫る奔流を吸収し、束ねあげる。

「……うふふ、それじゃあ行くわね。此処は光が多すぎるもの。纏めてしまいましょうか」
 束ねた光をまるで槍のように掴み上げる竜。
 その姿はを『セイクリッド・ダークネス』たちは見ない。
 己に内在する人格と言い争うことしかしない。
「最後までそうなのね」
「私は!」
『わたしこそが!』
 己の肉体の主であると言い争い、光を放ち続ける『セイクリッド・ダークネス』に、しおんは笑いながら吸収した光の槍を竜翼でもって羽撃かせるように放ち、彼女たちの身を穿つ。
 光が反射し、膨大な光線が走り抜ける。

 その様はしおんにしか知覚できなかっただろう。
 けれど、確実に『セイクリッド・ダークネス』の躰を切り裂き、その内なる人格達を分かつように、光線は走るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​


――――――
 言い争う声が聞こえる。
 二つのの声。
『セイクリッド・ダークネス』と『聖女ジャンヌ・ダルク』の声は、交われど会話という人間のコミュニケーションに到達することはなかった。
 言葉は同じでも、その意味を互いに理解しない。
 理解できるだけの理性は其処にはなかったのだ。
 すでに正気を失っている二つの人格は、相手を否定するがためだけに言葉を弄する。けれど、その言葉の全てがボタンをかけちがえるかのように決定的にすれ違い続けていた。
「……自らの言葉すら理解していないようね……お前たちが何故そのような狂気に囚われたのかは知らないけれど」

 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は己の瞳を変化させる。
 肉体改造術式によって眼球を変形させ、己の網膜に刺さる『燦然たる光の力』を調整し、入り込む光を減らす。
「……その力がこの世界に生きる人々を害する以上、お前たちの存在を許容する気はない」
「私達が全てを壊すのです。癒やして見せるというのです、この私達が! いえ、私こそが!」
『戯言を。全てを壊すだと? 世迷い言ばかりを吐く。わたしが壊してやるというのだ。全ての癒やしから破壊を取り除く!』
 彼女たちの言葉は、どれもが正気を失っている言葉だ。
 対話する余地などない。
 つまり、それはヴァンパイアに対するリーヴァルディのスタンスと同じだったのかもしれない。

 理解できない。相容れないということだけを理解した彼女は、無数の残像を乱れ打ち、『聖戦領域』の中を駆け抜ける。
 せまりくる光の奔流が残像を灼き滅ぼす。
 一瞬であった。
 凄まじい光量に裏付けされた熱線の如き奔流が無数に放った残像を一瞬の内に打ち払うのだ。
 だが、それでも構わなかった。
 リーヴァルディにとって、それは所詮囮でしかない。

「……正気をなくしているのならば、この術式が有効ね」
 彼女の瞳に映る『セイクリッド・ダークネス』は己達猟兵を見ていなかった。己の身体に宿るもう一つの人格ばかりを見ている。
 ただ、己の躰から追い出すか、掌握するか。
 それにしか興味がないようであった。

 だからこそ、リーヴァルディは踏み込む。
 同情する余地などない。そうするつもりもない。狂気に苛まれた者がたどるのはいつだって凄惨たる末路でしかない。
「……待っていなさい。今、その不本意な生を終わらせてあげる」
 彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
 手にした精霊結晶から『凶星の大魔剣』が召喚される。
 それを手にしたリーヴァルディは、『セイクリッド・ダークネス』が放つ光を躱し、踏み込む。

「私がどうあがいても倒れぬというのならば、『セイクリッド・ダークネス』、あなたこそが私の身体を奪うのです。そうして私は必ずや全てを破壊するのです」
『恐ろしきことを。勇ましさとはそういうことうぃうのだ。故にわたしはお前を排除して、この白き黒の力を振るう!』
 彼女たちの言い争いは、誰にはばかることもなかった。
 ただ、其処に存在しているだけということ。それがあまりにも憐憫を誘うものであった。
 けれど、リーヴァルディはその手にした大魔剣の刀身をきらめかせる。
「……私がお前たちに与えられる唯一の慈悲と知れ」
 振るう斬撃の一撃が『セイクリッド・ダークネス』に叩き込まれる。その一撃は『セイクリッド・ダークネス』にとってはかすり傷であったことだろう。
 けれど、凶星は瞬くようにして『セイクリッド・ダークネス』の身体を走り抜ける。

 これまで猟兵たちに刻まれた打撃の跡。
 それが一瞬にして膨れ上がるようにして『セイクリッド・ダークネス』の体から走るのだ。
 痛みに悲鳴を上げることもできないだろう。

「……お前の命運は既に潰えた」
 それは、刹那。
 膨大なまでに増幅された過去より連なる傷が『セイクリッド・ダークネス』の躰を、弄ばれた肉体を滅ぼすように、明滅と共に『聖戦領域』を染め上げ、その異形たる肉体を切り裂くのだった――。
御影・しおん
聖女の内の闇、あるいは闇に堕ちた聖女……一体どっちなのかしら?
それとも、どちらでもないのかしら?
くすくす、さあ、始めましょうか

先制の光には『黒鏡』『黄昏の龍爪』『暁の翼影』に光を喰らわせ、
境界線を引いてその内を仮の異界……結界と成し、その境界面で屈折させることで少しは逸らすわ

……うふふ、それじゃあ行くわね
竜身解放―――【彼方より来る極光】
わが身を光そのものへと変える。その力で取り込むのは勿論「光」属性。
此処にはこれだけ溢れているのだもの、少し多すぎるし、纏めてしまいましょうか
攻撃や周囲に溢れる分を含めて光を取り込み、
吸収した分を暁の翼影の力で上乗せして光放射で反撃していくわね



『わたしの邪魔をするな、ジャンヌ・ダルク! わたしが壊すのは、癒やされたものたちだ。必ず壊さなければ、癒やすことができない!』
「いいえ、させはしません!『セイクリッド・ダークネス』! 壊すのは私です。私の力を持って、必ずや癒やすのです。そして、壊してみせます!」
『セイクリッド・ダークネス』の中にある人格の二つが言い争い続けている。
 光満ちる『聖戦領域』にあってなお、彼女たちは互いを否定し続ける。
 正気を失った言葉は、会話を成り立たせることはなかった。

 その異様なる光景にありながらも、溢れる光の奔流は迫る猟兵たちを滅ぼさんとせまりくる。
「聖女の内の闇、あるいは闇に堕ちた聖女……一体どっちなのかしら? それとも、どちらでもないのかしら?」
 御影・しおん(Unknown・f27977)は一つの肉体に宿る二つの人格の境界線を興味深そうに微笑んで見ていた。
 彼女たちの言葉は、あまりにも支離滅裂であった。
 どちらも癒やすことと破壊することを求めている。だというのに、相反し続けているのだ。

 けれど、しおんはどちらでもいいし、真実はさほど重要ではないというように、くすくすと笑う。
「さあ、始めましょうか」
 迫る光。
『燦然たる光の力』は凄まじい。
 それほどまでに理性を失った『セイクリッド・ダークネス』の力は、強大にして鮮烈。
 故にしおんは、己の光喰らう龍爪と、手に浮かぶ黒い結晶でもって光を吸い込ませていく。
 影翼も光を吸い込み続ける。
 だが、それでも『燦然たる光の力』は飲み込みきれるものではなかった。
「私の白き黒の力は飲み込むことなどできはしないのです。これは私の力ではない。私が闇の力を奮って癒やすのです!」
『馬鹿なことを。黒き白の力は、あらゆるものを塗りつぶす。光はもはやわたしの手の中にある。破壊こそが全てを癒やすのだ!』
「ええ、そうかもしれないわね。けれど、境界線を引く事はできる。そして、その内を仮の異界……結界と成し、その境界面を屈折させることができるのなら」
 そらすこともできるのだとしおんは笑う。

 一体何がおかしいのかと『セイクリッド・ダークネス』は思ったかもしれない。いや、それすら思い浮かべることはなかったのかもしれない。
 彼女たちにとって、その力の発露は息をするのと同じであったからだ。
 けれど、しおんにとっては違う。
 境界線を定義し、己の中にあるユーベルコードの輝きへと変える力。
 吸収した光あh、輝きを増し、満ちるユーベルコードの奔流の中から現れるのは光で出来た竜。

「我が名は御影しおん、“彼方より来る極光”」
 笑う。
 竜身解放・彼方より来る極光(アルターエゴ・アイン・ソフ・オウル)は此処に至りて、全ての光を取り込む。
 光は果てることはない。
 無限の彼方にこそある光。その光の名を冠するが故に、しおんは竜としての姿をさらけ出し、迫る奔流を吸収し、束ねあげる。

「……うふふ、それじゃあ行くわね。此処は光が多すぎるもの。纏めてしまいましょうか」
 束ねた光をまるで槍のように掴み上げる竜。
 その姿はを『セイクリッド・ダークネス』たちは見ない。
 己に内在する人格と言い争うことしかしない。
「最後までそうなのね」
「私は!」
『わたしこそが!』
 己の肉体の主であると言い争い、光を放ち続ける『セイクリッド・ダークネス』に、しおんは笑いながら吸収した光の槍を竜翼でもって羽撃かせるように放ち、彼女たちの身を穿つ。
 光が反射し、膨大な光線が走り抜ける。

 その様はしおんにしか知覚できなかっただろう。
 けれど、確実に『セイクリッド・ダークネス』の躰を切り裂き、その内なる人格達を分かつように、光線は走るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

紫・藍
藍ちゃんくんでっすよー!
やや、なにやら互いに言い合ってる様子!
つまり正気は失えど互いの聴覚は機能しているということでっしてー!
でしたら、ええ。
藍ちゃんくんの歌と演奏で催眠術をかけ、あらぬところに攻撃をおびき寄せちゃいましょう!
藍ちゃんくんが見えずに避けられずとも、向こうに外していただければよいのでっす!
向こうも視覚には頼ってなさそうでっすしねー!
そのまま歌をお届けするのでっす!
歌でしたら見えてなくとも届きまっすし、この歌、常時回復も兼ねてますのでー!
ジャンヌさんもダークネスさんもその本来の在り方を知られることなく狂った存在として倒される。
とても寂しいことなのでっす。
せめて葬送の歌を贈るのです!



 光の奔流が戦場を染め上げていく。
 それは『セイクリッド・ダークネス』のユーベルコードであり、『燦然たる光の力』そのものであった。
 猟兵たちにとって幸いであったのは、『セイクリッド・ダークネス』の肉体の内部に二つの人格が存在しており、同時に彼女たちは相反し、発狂していたことであろう。
 それにより彼女たちは反目しながらでしか存在できていなかった。
「私の躰です。私が為すことを得るために、私はこの黒き白の力で全てを壊すのです。癒やすために壊して、癒やすのです!」
『何を馬鹿なことを。わたしこそが、全て癒やすのだ。壊すことなど以ての外だ壊すことでしか得られぬ癒やしがあるのだと知るべきだ』

 会話は成り立っていない。
 言葉は発せられているが、しかして、全ての言葉が意味をなしていないかのように響き渡る。
 そんな光満ちる戦場に紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)は飛び込む。
「藍ちゃんくんでっすよー! やや、何やら互いに言い争っている様子!」
 藍がそう思うのは無理なからぬことであった。
『セイクリッド・ダークネス』の声しか聴こえないからだ。この『燦然たる光の力』満ちる戦場は、光で全て塗りつぶされている。
 それは藍の視界も動揺であった。

 けれど、と藍は思うのだ。
「正気は失えど互いの聴覚は機能しているということでっしてー! でしたら、ええ」
 歌う。
 奏でる演奏と、歌で己の存在を知らしめた瞬間、光の奔流は藍に迫……ることはなかった。
 それは奏でる幻影。
 反響する音が藍の存在を、その位置を『セイクリッド・ダークネス』たちに誤認させるのだ。
「何をしているのです。私ならば外すことはなかった。当たらないかも知れないけれど、当たらなかったのです」
『いいや、ジャンヌ・ダルク、そちらのほうが上手であっただろうが、これはわたしの力だ!』
 言い争い続ける言葉。
 それは藍が敵の攻撃を上手く引きつけ、躱したことを意味する。

「ええ、たしかに藍ちゃんくんは、この光満ちる視界では視ることもできないでしょう。躱すことだって。けれど、向こうに外していただければよいのでっす!」
 藍もまたそうであるように『セイクリッド・ダークネス』も視覚には頼っていない。
 ならば、そのまま歌を届けるだけだ。
 歌ならば見えなくても届く。聞くことができる。
「歌声よこの宇宙に響け ああ 彼方をも超えて 広がるこの世界を塗り替えて行こう 藍で」
 白い光の世界に、『聖域領域』にみちるのは、藍ノ空(アイノソラ)の如き歌声。
 藍色に染め上げていく色持つ歌声は、遥か空を超えて、彼方まで届く歌声。
 その歌声は、『セイクリッド・ダークネス』を藍ドルたる藍の世界に包み込む。反響する音。
 いや歌声に彼女たちは何を思っただろう。

「あなたも、そして、あなたも」
 藍は告げるように歌う。
『ジャンヌ・ダルク』も『セイクリッド・ダークネス』も。
 本来の彼女たちを、そのあり方を知られることはない。
 例え、彼女たちを知るものがいたのだとしても、それは意味をなさない。既に彼女たちは狂った。
 狂い果てたのだ。
 そして、倒されるしかない。
「知られることのないということは、とっても寂しいことなのでっす」
 だから、と藍は歌う。
 せめてもの手向けであると言うように。

 自分にできることはそれだけだ。ただそれだけを為すために己の存在はあるのだと、その全てを懸けるように喉に走らせる。
「せめて葬送の歌を贈るのでっす!」
 狂い果てた最期に、訪れるものがなんであるかはわからないけれど。
 それでも、そう思うことは藍の中にある。

 白で塗りつぶされる世界を塗り替えて行け、その歌声は戦場にこそ響く――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

七那原・望
戦場に転送されたらすぐに多重詠唱全力魔法で結界を多重展開し、燦然たる光の力を凌ぎます。
更に結界内にアマービレでねこさんを複数呼び出し、ねこさん達自身にそれぞれの目を自衛してもらいながら、追加の結界を多重詠唱全力魔法で展開し続けてもらいます。

確かあなたは両目を封じられてるのでしたっけ?
奇遇ですね。わたしもなのですよ。
だからいくら光ってても、わたしにはいつもと変わらないただの漆黒の闇です。

第六感と心眼と気配感知で敵の行動と位置を見切り、全力魔法で自身の身体能力を限界突破したら結界の一部を纏ったまま敵に素早く接近。
絶・蘇威禍割で概念ごと破壊します。

概念を砕かれたあなたは死ぬ前に何を語るのでしょうね。



 戦場に降り立った七那原・望(封印されし果実・f04836)が最初にしたことは、多重詠唱に寄る全力の結界魔法であった。
 多重展開される結界は、『聖戦領域』に満ちる光を遮断しようとする。
 だが、それ以上の光の煌きがあった。
 暗闇すら光に変える『燦然たる光の力』。
 それに対抗するのは容易ではなかったことだろう。彼女の閉ざされた視界であっても、眼帯を、瞼すらも突き抜けるような光の強烈さが刺さるようであった。

 白いタクトを振るった瞬間、結界の中に猫たち溢れ、その力でもって追加の結界を展開する。
 それは薄く広がり、幾重にも重ねられていく。
 其処までして漸く光が閉ざされる。
「私の為すべきことは私が決めます。あなたには私の躰を渡しはしない。私が為すのは、破壊を癒やすこと。壊すことで癒やすのです。全てを破壊してでも」
『狂い、その果てに何が待つのかも理解していないというのか。わたしこそが、全てを破壊するのだ。躰をよこせ、そうすれば、全てを癒やして、全てを壊してやれる!』
『セイクリッド・ダークネス』たちの声が聞こえる。
 彼女たちは一つの肉体に二つの人格を有する存在である。
 会話が成り立っていないと望は理解しただろう。

 二つの人格それぞれが発狂している。
 もしも、これが片方だけであったのならば、猟兵に取っては尋常ならざる脅威であったことだろう。
 けれど、結果論としてそうはならなかったのだ。
 光の奔流がほとばしり、結界を砕こうと凄まじい圧力でもって襲い来る。
 きしむ結界の中で望は静かに言い放つ。
「あなたも両目を封じられているのですね。奇遇ですね。わたしもなのですよ」
『わたしと同じだと言ったか、この肉体はジャンヌ・ダルクのもの。わたしのものだ!』
「いいえ、この躰は私のもの。確かに私の肉体。私が得るべき癒やしと破壊と、そして黒と白の力にて、破壊することが!」
 望は理解するだろう。
 会話が成り立たない。
 言葉は放つが、そのどれもが意味を為していない。

 だからこそ、それはただ光るだけだと結界の中で、その瞳をユーベルコードに輝かせる。しかし、その光は漏れ出ることもなかった。
 眼帯に覆われ、視界を閉ざしているからこそ、放つ事のできるユーベルコードであった。
「いくら光っても、わたしにはいつもと変わらないただの漆黒の闇です」
 白く塗りつぶされる視界。 
 それは光あれど、暗闇と同じだった。白か黒かの違いでしかない。

 だからこそ、絶・蘇威禍割(アブソリュートリィ・ディバイド)は外すことなんてありえない。
 これは、この戦場は両目を封じた望にとっては平素と同じ。
「故に、絶対に割ります」
 神速の一刀。
 それこそが彼女のユーベルコードの真髄。 
 視界が奪われていても、視界が確保できていなくても。
 それでも放たれる一刀は、過つことはない。
「この剣閃は概念を粉砕するのですよ」

 そう、彼女の放った神速の一刀は、彼女の身体能力の限界を超えている。
 彼女の耳には己の筋繊維の一本一本が引きちぎれる音が響いていた。この視界封じられた戦場にあって、彼女が不自由に感じる事は何一つない。
『わたしは何を切られたのだ? 痛みが走る。破壊が癒やしになるのなら、わたしはわたしではないのか? 全てを癒やして破壊するはずであるというのに!』
「砕かれたのですか。私は、私の何かを。一体それが何であったのかさえ知っているというのに、知らないという事実だけがわからなくなってしまう。破壊をもって癒やすと決めたのに」

 彼女たちの言葉は意味をなさない。
 けれど、望は彼女たちの言葉を背に聞く。
 神速の太刀は、この戦場に在りて誰も知覚させることのない一撃であったことだろう。『セイクリッド・ダークネス』すらも気がつけぬほどの斬撃。
 確かに切られたという感覚はあれど、己の何が喪われたのかも理解できない。
「あなたは死ぬ前に何を語るのでしょうね」
 例え、語られたのだとしても、その言葉を解する術を誰も保たないだろう。
 それは正気を失ったがゆえに紡がれる、誰にも届かない叫びであっただろうから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
発狂して話にならないなら
さっさと倒そうか
まあ、ああならなくて良かったってとこかな

本体(わたし)が晶の意思を尊重しているからですの
感謝して欲しいですの

分霊が何か言ってるけど聞き流そう
そもそも体を乗っ取ろうとしてる時点でダメだろう

鉑帝竜に乗り込んでカメラの光量補正や
レーダーを利用し光に対抗

それと使い魔に頼んで
ロジウムあたりの反射率の高い希少金属で機体を覆って
光を受け流せるようにしておこうか
その上で神気と装甲があれば耐えられるかな?
もちろん回避行動も取るけどね

敵の攻撃を凌ぎつつ
UCによる鉑帝竜のブレス攻撃を
セイクリッド・ダークネスに対象を絞って使用

おまかせくださいなのです
きんぞくにかえてくだくのです



「私は破壊を得ようとしているのです、癒やすために。破壊こそが全て癒やしてくれると知っているからこそ、破壊ばかりで世界を満たしていきたいのです」
『それが愚かであると言えるのだ。同時にわたしはそれを理解しない。できないことをできるということが意味を持つ事を私は理解しているからだ。故にわたしがこの身体を使って破壊しようというのだ!』
『セイクリッド・ダークネス』の肉体に宿る二つの人格。
 それらが相反するように言い争っている。
 会話が成立していない。
 言葉は放てど、それを理解できない。

 彼女たちは正気を失っている。
 狂うように言い争いながら、『燦然たる光の力』を解き放ち、猟兵たちを灼き滅ぼさんとしているのだ。
「話にならないな」
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は息を吐き出す。
『セイクリッド・ダークネス』の有様は己の身を想起させるものであった。己の内側にもいる邪神。
 形は違えど、本質は似通っていると言えるだろう。いや、本質というよりは、境遇が、ともいえる。
 ああならなくてよかった、と胸をなでおろすことくらいはしてもいいだろう。

 けれど、内なる邪神が告げる。
「わたしが晶の意志を尊重しているからですの。感謝してほしいですの」
「聞き流そう。そもそも身体を乗っ取ろうとしている時点でダメだろう」
 晶は視界儘ならぬ『聖戦領域』の戦場に『鉑帝竜』と共に降り立つ。モニターはホワイトアウトするように白く染まっている。
 光の力が強烈過ぎるのだ。
 カメラアイの光量補正を使っても、意味がない。
 それほどまでに強烈な光なのだ。
「なら、レーダーを使えば……それに使い魔、頼んだよ」
「おまかせくださいなのです」
 此処はすでに帝竜の領地(レアメタル・ランド)である。機体を覆っていく希少金属。
 それは反射率の高い素材であり、光を受け流し、集束させる。

 戦場に満ちる『燦然たる光の力』は『セイクリッド・ダークネス』の力の源でもある。ならばこそ、その攻勢は神気と金属で覆われた装甲でもって耐えることができるはずだ。
「視界が確保できていなくても、レーダーの反響なら……!」
 迫る光の力。
 全方位からせまりくるそれを希少金属の装甲が跳ね返す。だが、光は反射しつつ、更に迫るのだ。
 あまりの光量。その熱量は凄まじいの一言である。
「けれど、一撃目はしのぎましたの!」
「ああ、なら、このまま……!」
 放たれるブレスの一撃が、金属粒子を解き放つ。

「『セイクリッド・ダークネス』、私の肉体を金属化しようなど! これは私の肉体です。私が癒やして壊すのです!」
『わたしのものだ、これは! この金属化は、わたしが壊して癒やす!』
 相反する狂乱の人格。
 この存在は、此処にあるだけで狂気を撒き散らすかのようだった。
「相反し続けている相手にわたしたちが負ける理由なんて無いですの」
「それはそうかもしれないけれど……『セイクリッド・ダークネス』だけにブレスの対象は絞らせてもらうよ」
『鉑帝竜』の口腔より放たれるブレス。
 それは『セイクリッド・ダークネス』の肉体を金属化させていく。だが、それでも満ちる光は、これを退けるようにして満ちていく。

 圧される、と晶は理解しただろう。
 けれど、ブレスと光が打つかる度に、ユーベルコードの輝きが満ちていく。機体がきしむ。それでも前に進むのだ。
「その翼は、ここで砕かせてもらう!」
 吹き荒れるブレスによって『セイクリッド・ダークネス』の翼が金属化する。
 そこに使い魔が飛び込み、さらに金属を変えていく。
 希少金属ではなく、組織を改ざんすることによって脆い金属へと変えるのだ。

「もろいきんぞくにかえてくだくのです」
「ああ、そのとおり! これで!」
 晶の言葉とともに放たれた尾の一撃が『セイクリッド・ダークネス』の翼を砕き、金属の破片を『聖戦領域』に撒き散らすのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステラさんと】

人の話を聞かない……狂気……。
後方メイドをチラ見したら、ばっちり目が合って。

つい、やべっ、と呟いてしまいます。

いえ、あの。はい、できるメイドです!
……エイルさんからまなければ(ぼそっ

なんでもないです!
ないですから、スリッパしまってください!

光の勇者のオーラで対抗ですね!
任せてくだ……なんでいま目逸らしましたか?(にっこり

その疑い、わたしの光輝に満ちた演奏で、晴らしてみせましょう!

いつもはバイオリンですが、今日はすぺしゃる!
ピアノを弾きながらの【光の勇者、ここに来臨!】でいきますよ!

響け、97の即興曲!

ところで……光vs光ですから、上書きですよね?
相殺じゃないですよね?


ステラ・タタリクス
【ルクス様と】
会話が通じないほどの狂気
いえ、狂ってるからこそ話が通じないのか
どちらにしてもいやですね、狂ってるからって人の話聞かない人
……なんですかルクス様その目は
私のどこがやべーメイドだと?
私は|エイル様《主人様》への愛を叫んでいるだけで
全然出来るメイドだと思うのですが?

まぁとりあえず
『ウェントス・スクートゥム』で
燐然たる光の力のダメージを防御
しかしこの光に対抗しないと勝てませんね
ここは……勇者、お願いします
ルクス様の闇なら、いえ光ですね(そっと目を逸らす)
相殺できると思うのです
視界さえ確保できれば!
【テールム・アルカ】起動!
人型サイズにリサイズしたダークネスキャノンで狙い撃ちです!



『聖戦領域』に存在する異形、『セイクリッド・ダークネス』。
 その肉体には二つの人格が存在していた。
『聖女ジャンヌ・ダルク』、『聖なる混沌』。
 二つの人格は既に発狂していた。どうしようもないほどに狂い果てていた。それが如何なる要因からであったのかを知る者は未だ無く。
 そして、彼女たちはそれが故に『燦然たる光の力』を解き放ちながら、あらゆるものを破壊せんとしていた。
「私が全て壊すのです。癒やすためには壊してしまわなければなりません。どうしてもそれがやりたくないのです。私が全て壊すまで癒やし続けなければなりません!」
『わたしより先に全てを壊すことなどさせはせん。わたしが壊すものを癒やすことなど。この混沌たる白と黒の力によって全てを破壊するまで、わたしは滅びないのだ!』

 その言葉は会話として成り立っていなかった。
 言葉は発せられど、全てが意味をなしていなかった。
「会話が通じないほどの狂気。いえ、狂っているからこそ話が通じないのか。どちらにしてもいやですね、狂ってるからって人の話を聞かない人」
 ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)の言葉にルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は、えっ!? という顔をした。
 後方にステラが控えているから顔は見られなかったと思うが、ルクスはそれがどうしても鏡に向かって喋っているように思えたのだ。
 もしくはブーメラン。
「人の話を聞かない……狂気……」
 ちらっとルクスは背後を振り返る。

 ばちっ、と火花が散るような思いであった。
「やべっ」
 思わずつぶやいてしまっていた。
 不可抗力というやつである。自分の心の中を見透かされてしまったとさえ思っただろう。
「……なんですかルクス様その目は私のどこがやべーメイドだと私は|『エイル』様《主人様》への愛を叫んでいるだけで全然できるメイドだと思うのですが?」
 一息であった。
 そういうところなんだけどなぁと、ルクスは思ったがおくびにも出さない。出したらどうなるかなんて多分解っている。

「いえ、あの。はい、できるメイドです!」
 ぼそっと『エイル』がからまなければ、とつぶやいた。
「なんです?」
「なんでもないです!」
 スリッパが見えた。あれで叩かれるの痛いのだ。やめてほしい。
 落ち着け、ステラさん。それはルクスちゃんに効く。
 そんなやり取りが『聖戦領域』であったのだが、丁寧な前振りなんて『セイクリッド・ダークネス』には関係ないのである。

 吹き荒れるような光の奔流が二人へと迫る。
「まぁ、よしとしましょう。言葉の意味、その視線の意味は追々」
「え!? 今の話終わりじゃないんですか!?」
 ステラはそんなルクスを放置して、風の盾で光を防ごうとする。しかし、その風の盾では光は防げない。
『燦然たる光の力』は凄まじい光量でもって視界を塗りつぶす。
 暗闇よりも厄介であるといえるだろう。 
 光量の多さは即ち熱量に変わる。故に奔流はステラやルクスの身を灼くだろう。

「ここは……勇者、お願いします」
「勇者らしいお役目来ましたね! 光の勇者、ここに来臨!(ユウシャトウジョウ)ですね! わかります! 任せてください!」
 ステラはそんな意気揚々なルクスから目をそらした。
 え、今何で目をそらされたのかとルクスは訝しんだ。
 攻守逆転である。
「今何で?」
「ルクス様、前」
 ステラは目をそらした。この二人、実はリバーシブルなのではないだろうか。
 どう考えてもステラにはルクスのあれは闇だろうなぁって思っていたが、それもブーメランな気がする。
 どっちも執着することに対しては、そのなんていうかぁあのぉそのぉってなるやつになるので。

「その疑い、わたしの光輝に満ちた演奏で、晴らしてみせましょう!」
 いつになく大張り切りである。
 いつもはバイオリンであるが、今回は違う。グランドピアノの鍵盤の上に指を乗せ、そのたおやかな指からは想像できないほどの演奏が奏でられるのだ。
 効果線も、集中線も、その他諸々の全部がまばゆい光と成って『燦然たる光の力に激突する。

「響け、97の即興曲!」
「しまった。アンチルクスレゾナンスイヤープラグを……!」
 忘れていた。
 けれど、今は目の前のことに対処しなければならない。ステラはできるメイドであるからして。
「今なんかいいましたよね!?」
「いいえ」
 ステラはスンとした顔で、其の瞳をユーベルコードに輝かせる。
「テールム・アルカ、箱舟、軌道。武装、転送」
「今ごまかしましたね!?」
「いいですから、光を上塗りでも相殺でもしておいてくださいってば!」
「あー! ごまかした! ごまかしたぁ!」
 ステラはルクスの追求を振り払うようにリサイズされたキャバリア兵器、ダークネスキャノンの長大な砲身を構え、その銃口でもって塗りつぶされた光の先にある『セイクリッド・ダークネス』へと引き金を引く。
 放たれた砲撃の一撃が『セイクリッド・ダークネス』を撃ち、盛大な爆発を巻き起こしながらステラはルクスの追求を逃れるようにスタコラサッサとメイドは逃げる。

「こらー!!」
 立場が逆転すればこうなるのである。
 ルクスはステラを追いかけ、昭和の描写でぴゅーんって彼女に追いつく。
 やったね、今日は演奏会だ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
…うおっ眩しいっ…【アルゴスの眼】を遮光モードにしてもなお眩しいな…
…これが『燦然たる光の力』か…
…えー……あれは二つの人格が全てを滅ぼす性の違いで喧嘩してる…のかな……?

……正気を失ってるからか動きがデタラメなのは逆に厄介な所があるな…視界を含めて下手に動かない方が良さそうだ…
…術式組紐【アリアドネ】を周囲に展開…それを元に結界障壁を何重にも張り巡らせて光の力による攻撃を防ぐよ…
…そして重奏強化術式【エコー】で強化した【魔弾、侵魔を穿つ】を発動…『オブリビオン』に誘導するこの術式であれば姿を捕らえきる必要は無い…
…1度発動すれば自動的に連射してくれるからあとは私自身は防御に専念するとしよう…



 満ちる光は『燦然たる光の力』。
 奔流たる光はあらゆるものの視界を白く塗りつぶすものであった。
「私こそが全てを癒やすのです。破壊などさせはしません。破壊することだけが私の存在意義なのですから!」
『何を言う。混沌たる聖なるわたしのためにこそ癒やしは存在しているのだ。全て破壊するために存在するのならば、わたしこそが破壊の主である。全て癒やして、壊してやるのだ!』
 言い争う二つの人格。
 それらを内包した肉体は、相反するように反目し続けていた。
 
 だが、だからといって、『燦然たる光の力』が衰えることはなかった。
 猟兵達の攻勢を受けてなお、それでも止まる所をしならい光の力。それを『アルゴスの眼』を遮光モードにしてメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は防ぐ。
「……うおっ眩しいっ……遮光モードにしてもなお眩しいな……」
 これが『燦然たる光の力』である。
 遮光モードにして瞼を閉じてもなお、それらを突き抜けるようにして光が網膜を灼くようであった。
「私こそがこの躰の持ち主。故に何をするのかの決定権を有しません。ですが、破壊します」
『破壊するのはわたしだ。癒やすことしかできないのだ。だから、わたしが癒やす。癒やして壊すのだ。壊すためには癒やさなければならないのだから!』
「……えー……」
 メンカルは聴こえてくる言い争いの声にげんなりするようであった。

 理解しようとしても無意味であったのかもしれない。
 彼女たちは反目しながらも、理性無き存在である。狂気に陥り、正気のかけらなど見つけられようはずもなかった。
「……ともあれ、喧嘩していることには違いない。正気を失っているからか、動きがデタラメなのは逆に厄介なところがあるな……」
 下手に動けば、というより満ちる光の奔流は狙いを付けていない。
 ただ徒に全方位に放たれ続けているだけだ。
 だからこそ、厄介なのだ。

 指向性を持たせる。
 狙いをつける。
 その行動があるのならば、こちらも予測が立てやすい。けれど、それができないのであれば、下手に動くことは逆にこちらを窮地に陥らせるだけだとメンカルは理解し、術式組紐『アリアドネ』を己の周囲に展開する。
「……結界障壁展開。多重……これでも、光の力は防ぎ、きれないか……けど」
 メンカルの瞳がユーベルコードに輝く。
 彼女の眼前に広がるのは多重に放たれた重奏強化術式『エコー』。
 反響するように術式の描く魔法陣の中でユーベルコードの輝きが増幅されていく。

「……それでもなお、これだけの光か……」
「私が壊すのです! 全て癒やさなければ! 私の責務は壊すこと!」
『黙れ、それはわたしのものだ。お前の成さねばならぬことなど知らぬ。全て壊すことなのだから、お前自身も癒やさなければならない!!』
 響き渡る声。
 その声の方角をメンカルは見なかった。
 見る必要もなかった。彼女のユーベルコードはオブリビオンへと誘導する魔弾。
 故に彼女の輝きは、『燦然たる光の力』を意に介さない。
「貫きの魔弾よ、狙え、穿て。汝は討滅、汝は穿孔。魔女が望むは過去を貫く銀の弾」
 魔弾が飛ぶ。

 光の中をためらうこともなく、迷うこともなく『セイクリッド・ダークネス』へと走る。
「……そう、この魔弾は敵を認識する必要がない。この術式は必ずオブリビオンを捉える……」
 一度発動してしまえば中止できない。
 そして、敵は言い争うことに注力していて、己達の攻撃をかわそうとはしない。
「魔弾、侵魔を穿つ(シルバー・バレット)……確かに強大なのだろうけれど……正気を失っているからこそ、互いに同調しようとしない。互いの足を引っ張ろうとする……」
 それが『セイクリッド・ダークネス』の敗因だと告げるように超高速の魔弾の群れが彼女たちの躰を穿ち、さらなる魔弾が叩き込まれるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
これだけ狂っている奴が反乱なんて考えるのかな…?
伯爵は反乱と言うけれども、あの手のタイプは何かしらやってそうだけど…
しかし証拠か…探ろうにも、狂った本人しかいないからなあ…
ま、やるだけやってみようか

超克…オーバーロード
外装展開、模造神器全抜刀

先ずは『天候操作』をして周囲の大気を操作
薄く雲を発生させて光の一部を吸収、眩しさを多少は抑えよう
後は念の為サングラスをかけて更に光量を絞っていこう
そして視界を確保しつつ、剣に『オーラ防御』でシールドを付与して強化
光の力を剣で『武器受け』し、覆ったオーラのシールドを破壊させる事で武器自体の破壊を回避しよう
【Code:C.S】起動
時間加速、一気に加速し接近
『なぎ払い』『串刺し』して攻撃

攻撃を叩き込んだら武器を放棄し、外装の副腕で体を掴む
手術等で弄った跡がないか触診
ちょっと役得
隠した瞳も何かされていないか何とかはぐって調べてみよう
魔術的な要因はちょっと直ぐには分かんないけどスキャンして『情報収集』はしておこう
装備品とかに仕掛けがあるかもしれないしね



「私が全てを壊して癒やすのです。癒やすためには壊さなければならない。それが私の為すべきことを決められたのです。私が決めたことなのです。全て壊すこと!」
『狂えるジャンヌ・ダルクよ。わたしが全て決められないばかりに。闇と光に苛まれて、癒やされてしまったというのか。わたしがすべて壊すのだ。お前ではない!』
 一つの肉体に内在する二つの人格は、『聖戦領域』において言い争い続けているばかりであった。
 その言葉はどれもが会話として成り立っていなかった。
 互いに言い争うばかりであったが、しかし『燦然たる光の力』は放たれ続け、この戦場を満たしていた。
 強烈そのものたる力。

 光は暗闇を照らすのではなく、塗りつぶす。
 あまりにも強烈な光は相対する猟兵たちを暗闇の中に落とすかのように、何一つ視覚から情報を与えなかった。
「これだけ狂ってるやつが反乱なんて考えるのかな……?」
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)は原初の吸血鬼『伯爵』の言葉を思い出す。
『反乱』だと言ったのだ。
 己の闇の領域を削って逃走し、オブリビオンを取り込んで一大軍勢を獲得しようとしているのだと。
「でも、あの手のタイプは何かしらやってそうだけど……」
 しかし、『証拠』がない。
 確たる証拠。
 それがなければ、嘗ての『条約』を反故にすることになる。

 だからこそ、玲はやるだけやってみるしかないと結論づける。
 彼女の瞳が超克に輝く。
 転送される外装副腕。その手に握り締められるは模造神器。玲の手にある二振りと合わせ、四振りの蒼き刀身が戦場に煌めくも、それらは即座に『燦然たる光の力』に飲み込まれて輝きを喪う。
 だが、力は失われていない。
 ただ塗りつぶされただけだ。
「超克……オーバーロード。模造神器、励起」
 共鳴するように四振りの刀身が震える。それは周囲の大気を操作し、雲は大気中にて固まった水滴と氷の粒。
 ならば、光は乱反射して雲に覆われた玲とその光を減退させて届けることだろう。

「私がすべて壊すと言っているのです。だまって癒やされていればいいのです。私がやると言ったのですから!」
『何を言う。それはわたしが為すべきことだ! 全て破壊することは!』
 狂える理性無き『セイクリッド・ダークネス』たちの声が聞こえる。
 玲は年のためにと掛けたサングラスの奥にひときわ輝く存在を見た。さらに刀身にオーラをまとわせ、光を剣で受け流すように切り裂きながら進む。

「いい感じに言い争っているね……しかし、『証拠』か……」
 探ろうにも物的証拠は、ない。
 いや、目の前にある。『反乱』だと言った『伯爵』。何故理性を失っているのか。狂気に満ちているのか。
 それについては言及しなかった。
 闇の領域に入ったものは生命であれオブリビオンであれ支配することができると『伯爵』は言ったのだ。
 なのに、何故『セイクリッド・ダークネス』は狂乱し、出奔したのか。

「ともかくやってみないとね! ――封印解除、時間加速開始。Code:C.S(コード・クロノシール)!」
 煌めくユーベルコードの輝きが玲の瞳に満ちる。
 時間加速の封印を解かれた模造神器の放つ斬撃は次々と放たれ『セイクリッド・ダークネス』の身体を切り裂く。
 叩き込まれた模造神器の刀身が『セイクリッド・ダークネス』の四肢を貫き、地面に縫い止める。
 だが、それでも彼女の身体は起き上がろうとしている。

「おっと、ちょっっと触診させてもらうよ。ちょっと約得だね、これは」
 縫い止めた『セイクリッド・ダークネス』の身体を玲は見やる。しかし、刀身によって縫い留められた体が跳ね、抵抗する。
 それを外装副腕でもって抑え込みながら、玲は探す。
 眼帯で覆われた『セイクリッド・ダークネス』の眼。その眼帯を剥ぎ取り、魔術的な要因から何まで全てを調べようとする。
 つまりは外的な要因。
 理性を喪うほどのなにか。手術や魔術といった手段。
 そうした何かが施されているというのならば、仮面の如き眼帯が最も怪しいと思ったのだろう。
 スキャンし、情報を集める。

「装備品とかに仕掛けがあるかもしれないしね――って、あっぶな!?」
 そんな玲の頬をかすめる『セイクリッド・ダークネス』の光の奔流。
 これほどまで猟兵に追い詰められてもなお、力を振るう余力があるのだ。そのイチゲキをかわしながら、玲は飛び退く。
「私は何もかも壊すのです。癒やすために。癒やして壊すことこそ私の為すべきこと」
『わたしが全て壊す。それはわたしのものだ。わたしが壊してしまえばいいことだ。他の誰でもないわたしが癒やす。全て壊すことによって!!』
「うーわ……此処まで理性がないっていうのも……」
『セイクリッド・ダークネス』たちを縫い止めていた四振りの模造神器を玲は手に取る。

 戦いはまだ終わらない。
 しかし、此処まで狂い果てた『セイクリッド・ダークネス』。
 嘗てを知る銀誓館の能力者であった猟兵であれば、なにか知ることもあっただろうか。いずれにせよ、放置してはおけない。
 戦って倒すしかないのだと、玲はスキャンした『セイクリッド・ダークネス』の肉体や剥ぎ取った眼帯から得られる情報のために未だ光り輝く戦場を駆け抜けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
いいや、破壊を行うのは自分だ!
お前に滅ぼさせるものか!お前を壊し、その狂気も壊してやる!!

人工魔眼の【第六感】で攻撃を察知し、
【推力移動】戦場を駆け続け先制攻撃を回避。
人工魔眼の|超視力《千里眼》で聖女を認識、斬り掛る!

癒しなど求めるものか!
自分は戦い、壊し、為すべきを為す!
壊せ!!壊せ朱鷺透小枝子!!

【継戦能力】『壊帰萌』己そのものに、命令する。
何度も何度も言って来た言葉、壊せと、セイクリッド・ダークネスを!
この自覚なき|狂気と正義の《やさしき》聖女を!壊せと──!!
亡国の騎兵刀に秘めた破壊の【呪詛物質】が解放。
高まり続ける破壊の力で燦然たる光の力を削り、その体を破壊する!!



『セイクリッド・ダークネス』の中に存在する二つの人格は、猟兵たちに追い込まれてもなお、言い争うことをやめなかった。
『燦然たる光の力』は『聖戦領域』に満ちて、迸るようにユーベルコードと成って猟兵たちを襲う。彼女たちにとって理性はすでに存在しないものだった。
 狂うように反目しあう。
「私が全て破壊するのです。私が為すべきことは私が決める。この躰は私のものなのですから。だから、癒やして、壊すのです!」
『聖なる混沌たるわたしに歯向かうか。それこそ無意味だ。全て癒やしても、壊す。それが黒き白の力。この光で持って遍く全てを混沌に叩き落とす!』
 彼女たちは破壊するという。

 その声だけが『燦然たる光の力』満ちる『聖戦領域』に響いている。 
 だが、それを否定する声が響き渡る。
「いいや、破壊を行うのは自分だ! お前に滅ぼさせるものか! お前を壊し、その狂気も壊してやる!!」
 迫る光の奔流に灼かれながらも、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は己の人工魔眼に灯る焔すら塗りつぶす光の中を走る。
 己の第六感は光の奔流を知覚している。
 けれど、光は圧倒的な速度と量でもって迫るのだ。痛烈なる痛みが走る。
 だが、止まらない。
 己が壊すのだ。己が壊れることは許容できるものではなかった。

 人工の魔眼が焔を放つように光を切り裂き、『セイクリッド・ダークネス』の姿を認識する。
「私が全て癒やすのです。全てを壊すために」
『いいや、わたしがそれを為すのだ。全てを破壊するために!』
 響き渡る声。
 だが、小枝子は止まらなかった。
 彼女たちの言葉に意味はない。けれど、己が求めるものとは相反するものだった。目の前の聖女は敵だと己の本能が訴えている。

「癒やしなど求めるものか! 自分は戦い、壊し、為すべきを為す!」
 踏み込む。
 手にした騎兵刀はこれまで猟兵達が刻み込んできた『セイクリッド・ダークネス』の肉体にさらなる打撃を与えんとしている。
 振るう一撃が空を切る。
 だが、それでも構わない。
 進め、という言葉と破壊しろという言葉は小枝子の中では同義であった。

「壊せ!! 壊せ朱鷺透小枝子!!」
 己に言い聞かせる。
 いや、それはユーベルコード。
 壊帰萌(リカーシブル)たる力。己が要求するのは己自身。そして、それを己は否定しない。
 己は破壊の権化。
 破壊するためだけに存在するもの。それを否定することは己という存在を消滅冴えるもの。
 強化され続ける肉体。
 限界はとうに超えている。だが、しかし、その先があることを小枝子は知っている。

 何度も何度も紡いできた言葉がある。発した言葉がある。
 それを己は知っているからこそ、踏み込む。
「壊せ、と言っている。私の中の何かが、培ってきた何かが言っている。壊せ、と。『セイクリッド・ダークネス』を! この自覚なき|狂気と正義の《やさしき》聖女を! 壊せと――!!」
 踏み込む。
 亡国の騎兵刀の刀身が煌めくようにして開放される破壊の呪詛物質。それは『燦然たる光の力』の中に在りて、高まり続けた破壊の力。

 その一閃が『聖戦領域』に満ちる光すら削り、『セイクリッド・ダークネス』の躰を切り裂く。
「壊せ」
 頭に鳴り響く言葉に従うように小枝子は、吹き出す血潮を頬に浴びながら騎兵刀を振り抜くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
武器:漆黒風

さてー、参りましょうかー。
しかし、異なるものが同居している状態ねぇ…。私たちに似た状況ですが、そう発狂するものでしょうかー?
その光は目蓋を閉じて遮り、さらに探知結界で動きを察知。
…攻撃は当たったとしても、激痛態勢で凌ぎます。

そうして、察知した場所へUCつきの漆黒風を投擲していきましょう。
寿命を削るならば、いつかガタがくるんです。其のときこそ、体勢崩したときでしょう。
そこへまた、UCつきの漆黒風を投擲しますねー。

貴女の救いはいりません。いえ、すくいがいるのは、貴女の方だと思いますよー?



「さてー、参りましょうかー」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『疾き者』は『燦然たる光の力』満ちる『聖戦領域』に降り立つ。
 あらゆる暗闇すらも光に変える領域。
 その光の強烈さは言うまでもない。
 瞼を閉じても、突き刺さるような光量を感じる。視界はすでに白で塗りつぶされている。光あれど、真白き光に満ちているのならば、何も見えないのと同じだった。

 しかし、それでもいいのだと『疾き者』は覚悟を決める。
『セイクリッド・ダークネス』の手繰る力は、光の奔流となって己を穿つ。
 皮膚の焼ける痛み。
 激痛走る中、探知結界で敵の動きを察知する。しかし、痛みに声を上げることはない。今はそれをする時ではないと知るからだ。
「私が全て破壊します、この癒やす全ての力で。白き黒の力! この力で全て!」
『わたしこそが破壊するのだ。いいから躰をよこせ、ジャンヌ・ダルク!』
 光の中で言い争い続ける『セイクリッド・ダークネス』の躰の中に存在する二つの人格。

 彼女たちのあり方は己たちとにているように思えた。
 異なる人格が一つの器に収まっているのだ。
 互いに相反するのはわかる。けれど、己たちもそうである。四つの悪霊を束ねた存在。なれど、自分たちは彼女たちのように発狂することはなかった。
 本当にそう発狂するものなのだろうかと訝しむ。
 だが、今はそれをしている暇はない。
 他の猟兵達によって刻まれた傷痕。あの消耗の度合いを見れば、後ひと押し。

「その『燦然たる光の力』は寿命を削るのならば、いつかガタがくるんです」
 それは猟兵達の攻勢があれば、さらに追い込まれるものであったことだろう。
 誰一人として欠けてはならなかった。
 誰一人として、この強敵を前にしてなくてはならなかった。
 ユーベルコードの煌めきは、『燦然たる光の力』の中で輝かなかった。けれど、たしかに其処に力があると感じる事ができたのならば、視界などは無意味であった。

「ええ、そこですね」
 放たれる棒手裏剣。
 それは『セイクリッド・ダークネス』に叩き込まれ、その肉体を穿つ。
「私が全てを癒やして破壊するのです。壊すことこそ、私が決めたことであり、私が求めていないことなのです! 全て壊すことこそ!」
『わたしのものだ。この躰は、わたしが、すべて壊すために使う! 全て救わんとしているのだ、私は! 全て壊すために!』
 彼女たちの言葉は、言葉であれど、意味をなしていない。
 会話にすらなっていない。
 それが如何なる理由からかはわからない。

 狂気に堕ちた者のことをまことに理解できるものなど存在しないのかもしれない。
 けれど、と『疾き者』は告げる。
「貴女の救いはいりません。いえ、救いがいるのは貴女の方だと思いますよー?」
 がくりと、崩れる膝があった。
 それを探知結界が捉えた瞬間、『疾き者』は握り締めた棒手裏剣を解き放つ。

 それは疾風のように『セイクリッド・ダークネス』の身に走る亀裂の如き傷痕に触れる。その瞬間、棒手裏剣が楔となって亀裂をより深めていく。
 溢れる血潮。
 吹き荒れる光と闇。
 四悪霊・風(シアクリョウガヒトリ・トノムラヨシツナ)は、そのユーベルコードの力を発露する。
 救いなど無いのかもしれない。
 あるのは狂気のみ。理性など無きものに、救いを理解することもできなかったことだろう。
 けれど、それでも放った一撃は、これまでの猟兵達の打撃に耐えてきた『セイクリッド・ダークネス』の躰を亀裂となって走り抜け、つなぎとめる力をこそ破壊し、致命へと至らしめる。

「私は」
『わたしは』
 最期の言葉までも、狂気に彩られていた。
 己の身が崩れ去る中にあってもなお、求めるは破壊。崩れていく躰、その手が伸ばした先にあったのは、果たして光か闇か。
 それとも混沌か。

 誰にも知られぬことなく、その最期は光の中に解けていくように霧散する――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年01月15日


挿絵イラスト