第二次聖杯戦争⑳〜熾盛のライスメキアⅡ
●槍持つ男
雷鳴が轟いている。
雷とは即ち神の御業にして、力の象徴である。
故に神気まとう一柱のオブリビオン、槍持つ男『都怒我阿羅斯等』が、それを手繰るのは当然であったように思えた。
手にした槍の名を嘗て銀誓館学園の能力者であった猟兵達は知っているだろう。
『|銀色の雨の時代《シルバーレイン》』に発見されたと言われる巨大槍『ディアボロスランサー』。
『都怒我阿羅斯等』が持つのは、それを小型化したと思えぬものであった。
「我が手に戻りしは生命の槍『ディアボロスランサー』。汝ら猟兵に物申すところは何一つ無い。我はオブリビオンとして蘇った。我は……生命に絶望したのだ」
彼の言葉は雷鳴のように轟く。
漲る力はあまりにも強烈過ぎた。
鮮烈なる生命の輝きとも取れるほどの輝き。
その雷鳴轟く金沢港にありて、彼は猟兵たちと対峙していた。
ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)は転移を維持しながら、猟兵たちに告げる。
彼女の予知は、あの槍持つ男『都怒我阿羅斯等』の言葉が真実であることを知らしめていた。
「『シルバーレイン世界の全ての生命を創造した』創造主……! あれが……!」
だが、嘗て能力者であった猟兵達は知っているだろう。
あの生命の槍『ディアボロスランサー』は銀誓館学園の能力者たちの一部を載せて次の宇宙に旅立った筈だ。
宇宙船にもなる巨大槍。
それはもうこの宇宙には存在しないはずだったのだ。
「故に我は悪用したのだ。生命の危機に際しての対抗策として拵えた『強制テレポート術式』を」
彼の手にあることが証明であるというように小型化された『ディアボロスランサー』の切っ先が猟兵たちに向けられる。
それだけで大気が震える家のような重圧が肩にのしかかるだろう。
「……ッ!『時間停止された能力者達』……が閉じ込められているのですか。それは……!」
ナイアルテの予知は、たしかにそれが事実であると知らしめる。
『都怒我阿羅斯等』には何ひとつの虚言はない。
あるのは真実のみ。
手にした『ディアボロスランサー』も、その中に在るであろう嘗ての学友たちも、何もかもが真実である。
「然り。槍は怒るであろうな。だが、赦されようとは思わぬし、構わぬ。我が骸の海で何を見たかは語らぬ。猟兵、我がオブリビオンである以上、汝らとは滅ぼし滅ぼされる間柄でしかない」
活性化するように輝く『ディアボロスランサー』。
瞬時に『都怒我阿羅斯等』の全身から生えるのは、樹木の如き大量の角。
それは生命樹。
吹き荒れるユーベルコードと共に『生命樹』の角は猟兵達を次々と自動迎撃し、戦場から弾き飛ばしていく。
猟兵達は為す術もなく、弾かれ、打ちのめされ大地に叩き伏せられる。
煌めく輝きは生命の輝き。
強烈にして鮮烈。
生命とは斯くも輝くのかと猟兵達の瞳に燦然と輝く。
「故に我は汝ら生命の埒外を滅ぼす――」
●其の名は『セラフィム』
オブリビオン『都怒我阿羅斯等』の放った『生命樹』は猟兵たちを寄せ付けない。
このままでは、為す術もなく滅ぼされてしまうだろう。
だが、突如として空より……いや、宇宙より降り注ぐのは禍々しき呪いに満ちた『赤』と『青』であった。
それは熾火のようでもあった。
「……『抗体兵器』か。『生命に敵対する武器』……我の、いや『生命樹』の輝きを消すために送り込まれたか!」
『都怒我阿羅斯等』の全身より生えた『生命樹』が次々と枯らしていく。
呪いは、あらゆる生命を殺す。
生命を殺すために生み出されたもの。争いの道具。進化していくのが生命だけだと誰が決めたのだ。
そう告げるように『赤』と『青』の体高5m級の人型戦術兵器が宇宙より無数に舞い降りる。
熾火は『赤』と『青』に昌盛する。
その姿は嘗て『セラフィム』とも呼ばれ、また同時に『熾盛』とも呼ばれた『キャバリア』の如き姿をした『抗体兵器』。
『赤』一色の機体もあれば、『青』一色の機体もある。
それだけではなく、『赤』と『青』が半々のものもあれば、その割合を変えたものもある。
そして、いくつかの機体は、その場で分解されるように『考えつく限り存在する』兵器へと形を変えて、戦場に降り立つ。
「……『抗体兵器』……それは嘗てシルバーレイン世界のゴースト達が使用していたという『生命と敵対する武器』!」
ナイアルテの言葉に『都怒我阿羅斯等』は答えない。
だが、『生命樹』がたしかに枯れていく。
呪いが満ちる兵器。
それを手にすることの危険性は言うまでもない。
だが、あの『生命と敵対する武器』に満ちる呪いに対処できるのならば。
「『生命樹を枯らせる効果』を持っているはず……!」
危険をはらむことは承知の上だった。
ナイアルテは猟兵たちに告げる。あの『抗体兵器』をもって、『生命樹』に対処することができたのならば、謎に満ちたオブリビオン『都怒我阿羅斯等』を打倒することもできるだろうと。
当然、呪いにも対処しなければならない。
「ですが、今は考えている時間もなければ、『都怒我阿羅斯等』はまってもくれません!」
キャバリアのごとき無数の『赤』と『青』の『抗体兵器』が己の責務を果たすために、戦場に鎮座する。
選択しなければならない。
時は止まらず。止めてはならぬからこそ、猟兵達は己達の手で取るべきものを定めなければならない――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『第二次聖杯戦争』の戦争シナリオとなります。
シルバーレイン世界の金沢港に現れた神気帯びる謎のオブリビオン、槍を持つ男『都怒我阿羅斯等』と戦うシナリオになります。
彼が手にしているのは『ディアボロスランサー』。嘗てシルバーレイン世界の全ての生命を創造し、また銀誓館学園の一部の学生たちを載せて異なる宇宙に旅立った宇宙船そのものでもあります。
内部には『時間停止された能力者たち』が存在していますが、『都怒我阿羅斯等』を打倒した段階で、どれだけ破損していても、完全に修復し新しい宇宙に戻るようです。
ですが、『都怒我阿羅斯等』は『ディアボロスランサー』を活性化させ、通常の先制攻撃ユーベルコードに加え、全身から樹木の如き長い角を大量に生やした『生命樹状態』へと変身し、近づく対象を何万体でも退ける自動迎撃によって己の敵を戦場から弾き飛ばします。
この状態では為す術もありません。
ですが、宇宙より飛来した『抗体兵器』を手に取れば、『生命樹を枯らす効果』を持ってたやすく対処することができるでしょう。
ただし、『抗体兵器』は呪いに満ちています。
キャバリアのような『抗体兵器』もあれば、キャバリアが分割するようにして『考えつく限り存在する兵器』となって戦場に突き刺さっています。
この呪いに対処できるのならば、その後持ち帰っても構いません。
プレイングボーナス………都怒我阿羅斯等の先制攻撃に対処する/何らかの手段で『生命樹』に対処する。
それでは『第二次聖杯戦争』、謎多きオブリビオン『都怒我阿羅斯等』に立ち向かう皆さんの死と隣り合わせの青春の続き、その物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『都怒我阿羅斯等』
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POW : 天地開闢の祝詞槍
詠唱時間に応じて無限に威力が上昇する【純粋生命力 】属性の【ディアボロスランサー】を、レベル×5mの直線上に放つ。
SPD : 舒弗邯閼智(ソブルハンアルチ)
【全身に生えた七本の蒼き角 】を纏い空中高く舞い上がった後、敵めがけて急降下し、[全身に生えた七本の蒼き角 ]が尽きるまで【ディアボロスランサー】で攻撃し続ける。
WIZ : 魂よわだつみに還れ
【ディアボロスランサーから生命の奔流 】を放ち、レベルm半径内の指定した対象全てを「対象の棲家」に転移する。転移を拒否するとダメージ。
イラスト:いもーす
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アリス・フェアリィハート
アドリブ連携歓迎
【SPD】
生命樹…
都怒我阿羅斯等さん
あの様なお姿にも…?
『どのような素性の方なのか…未だ伺い知れませんけど…この世界の為にも…!』
ふと
キャバリアの様な
抗体兵器を見つけ
誘われる様に搭乗
『貴方は…セラフィム…さん?…っ!?』
呪いを
【呪詛耐性】【浄化】等で
抑え込み中和し【操縦】
味方と連携
抗体兵器で飛翔
【空中戦】で
立体的に立回り
先制攻撃は
【第六感】【見切り】【早業】を総動員
UCの瞬間移動で
回避を試み
死角に回ったところで
自身の力を同調させた
抗体兵器の武装で
生命樹状態の
都怒我阿羅斯等さんに攻撃
敵の攻撃は
【第六感】【見切り】【残像】
【結界術】【オーラ防御】で
防御・回避
戦闘後
抗体兵器を持ち帰り
謎のオブリビオン『都怒我阿羅斯等』の放つ生命の輝きは、燦然と戦場に満ちる。
それは雷光のごとき鮮烈なる輝き。
彼の体から溢れるようにして生える『生命樹』は万軍すらも退けるかのように猟兵たちを迎撃し、打ちのめす。
圧倒的な力。
これがシルバーレイン世界に生命を創造した『ディアボロスランサー』を持つ者の力であると示すようでもあった。
「生命樹……『都怒我阿羅斯等』さん、あのようなお姿にも……?」
アリス・フェアリィハート(不思議の国の天司姫アリス・f01939)は驚愕する。
敵の力は強大そのものであったし、またあの生命樹の枝のごとき角がある限り、猟兵達は彼に攻撃を届けさせることができないであいた。
「どのような素性の方なのか……未だ伺い知れませんけれど……この世界の為にも……!」
アリスにとって、戦う理由はそれだけで十分だった。
オブリビオンは過去の化身。
そのオブリビオンが世界にとどまれば、時は停滞し世界は破滅に向かう。
「我が猟兵に語ることはない。我が槍にて滅びるがいい」
『都怒我阿羅斯等』の身より生まれる七本の蒼き角。
手にした『ディアボロスランサー』から繰り出される一撃は、確実にアリスを貫かんとしていた。
しかし、宇宙より舞い降りるのは生命を殺す兵器。
名を『抗体兵器』。
かつての戦いをしる能力者であった猟兵であるのならば知っていたことだろう。
異形たちが使い、抗体ゴーストたちが己の身から取り出す兵器。
それが『抗体兵器』である。
『セラフィム』と呼ばれた5m級戦術兵器。
人型であること。『赤』と『青』の色を持つこと。
抗体兵器がアリスの目の前に降り立ち、『都怒我阿羅斯等』の一撃を受け止め、その身より溢れる『生命樹』を枯らすのだ。
「『抗体兵器』……生命樹の輝きを消そうとするか!」
『都怒我阿羅斯等』の一撃を受け止めた『抗体兵器』の背中の装甲が別れるようにして広がる。
それは己に乗れ、と言われているようにアリスには感じられただろう。
誘われるままに乗り込む。
キャバリアと同じ操作系統。コクピットらしき部分にアリスが収まれば、襲うは呪い。
生命を殺すこと。
それが『抗体兵器』の在り方である。自身に迫りくる呪いの多さにアリスは目を見開く。
「貴方は……『セラフィム』……さん? ……っ!?」
きしむ心がある。痛みではなく、苦しみでもなく、ただ純然たる生命を殺すためだけの呪いがアリスの魂すら蝕まんとしている。
だが、彼女は呪詛に対する耐性と浄化でもってコクピットの内部にある己を侵食しようとする呪いを抑え込み、中和して操縦桿を握りしめる。
「『抗体兵器』を手繰るか、猟兵!」
「『セラフィム』……さんが、どんなものなのか、わからないけどっ……!」
迫る『ディアボロスランサー』の一撃をアリスは『セラフィム』と共に躱す。迫る『生命樹』は『抗体兵器』に乗り込んでいる以上、己に至る前に枯れ果てる。
これならば懐に飛び込むこともできる。
アリスの瞳はユーベルコードに輝く。
バンダースナッチ・ムーヴ――それは攻撃自体を回避する瞬間移動。自動的に迎撃する『生命樹』の枝は躱せずとも、『抗体兵器』によって無力化できる。
ならば、後は。
「『都怒我阿羅斯等』、さん……あなたを……」
瞬間的に移動したアリスと『抗体兵器』が『都怒我阿羅斯等』の背後に回る。
「我のテレポート術式と似たユーベルコードだと!?}
「――白の王さまはこう仰いました」
『抗体兵器』の装甲の中から溢れ出るのは全てを灼く光焔。
纏うようにして『赤』と『青』の装甲より放たれた魔法の如き一撃が『都怒我阿羅斯等』を吹き飛ばす。
だが、それで終わらない。
踏み込む。
「『まだ一匹の燻り狂える怪物を押し止める方が楽じゃろうよ!』と……なら、これはっ!」
『抗体兵器』のアイセンサーが煌めく。
ユーベルコードの輝きと共に『ディアボロスランサー』の一撃を躱し、瞬時に背後に回り込み、その手にしたプラズマブレイドの一撃を『都怒我阿羅斯等』に叩き込む。
交錯する槍の返す一撃に『抗体兵器』の装甲が切り裂かれる。
しかし、それでも止まらない。
「例え、呪いが齎す……悪しき未来が視える光景があるのだとしても……」
それでも、とアリスは『抗体兵器』の放つ一撃をもって『都怒我阿羅斯等』を切り裂くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
熾盛…!ああ、敵が同じなら!
使おう、ディスポーザブル!!
ディスポーザブルを呼び出し操縦
ブースター付きのバトルハンマー型抗体兵器となった熾盛を持ち、【|闘争心≪怨念≫】で呪いと同調。
生命樹をなぎ払い、【早業】、ブースターでハンマーを再度【なぎ払い】、都怒我阿羅斯等を【吹き飛ばし】『禍戦・大崩壊』発動【呪詛】抗体兵器の呪いを纏う多量の複腕を展開
壊せ!!|禍戦・大崩壊!!!!≪カスラージィイイイイ!!!!≫
【推力移動】、都怒我阿羅斯等へ迫りながら【念動力】で複腕を飛ばし、角を強引に破壊!
複腕でハンマーをさらに持って【怪力、重量攻撃】思い切り叩きつける!!
宇宙より舞い降りる人形戦術兵器『熾盛』。
それは『抗体兵器』と呼ばれる生命の敵。
生命を壊すことを、殺すことを課せられた呪われた力。その満ちる呪いが戦場にありて槍を持つ男『都怒我阿羅斯等』の体より発露する『生命樹』の力を枯らす。
『赤』と『青』は如何なる意味を持つのか理解できなかったかもしれない。
けれど、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)にとって、それはどうでもいいことであったことだろう。
目の前の敵、オブリビオンを打倒すること。
ただそれだけを目的とするのならば、『抗体兵器』が生命を殺すことを望むのだとしても関係の無いことであった。
降り立った『熾盛』のアイセンサーと小枝子の魔眼が繋がるように、一瞬で意思疎通が叶うような、そんな奇妙な感覚が走り抜ける。その一瞬で十分だった。
己に迫る『都怒我阿羅斯等』。
手にするは『ディアボロスランサー』。
全身より生える蒼き角は、『生命樹』と共に小枝子を襲う。
「『熾盛』……! ああ、敵が同じなら!」
『ディスポーザブル01』に騎乗した小枝子が分解されるように姿を変える『熾盛』――いや、ブースターの付いたバトルハンマー型『抗体兵器』を振るう。
闘争心に火が付くようだった。
燃え盛る炎。
熾火は己の中でも上がっていく『赤』と『青』が混ざり合い、己の中にある善悪をないまぜのものにしていく。
怨念は何ものにも染まらない。
己の中にあるものは、何一つ変わらない。
「『ディスポーザブル』!!」
同調した呪い共に振るうバトルハンマーの一閃が『生命樹』を薙ぎ払う。
一瞬のことだった。
手も足もでなかった『生命樹』がたちどころに枯れ果て、迫る『都怒我阿羅斯等』の体を打つ。
いや、受け止められている。
手にした『ディアボロスランサー』でもって、その一撃は致命傷を避けられているのだ。
「『抗体兵器』を手に取るか、生命の埒外!」
「知ったことか!」
小枝子は力のままに受け止められたバトルハンマーを振り抜く。
吹き飛ばし、小枝子の瞳がユーベルコードに輝く。
己以外の全てを敬う小枝子の心が脱ぎ捨てられる。
己は、人間の形をしているが人間ではない。生命であったが、生命ではない。
此処に在るのは悪霊だ。
「……生命の敵はやはり生命ではないもの……!『抗体兵器』を振るうに値するか、猟兵!」
「二度も言わせるな、オブリビオン! 知ったことか! 壊せ!! 禍戦・大崩壊(デッドオーバー・カスラージ)!!!!」
咆哮と共に小枝子のと共に『ディスポーザブル』の姿が変わる。
それは破壊の災害霊。
白く伸びた副腕が、赤黒く染まっていく。
放たれる蒼き角に掴みかかり、拮抗する両者の力。きしむフレーム。砕ける角。
だが、互いに止まらない。
雷光がほとばしり、互いの一撃が閃光となって戦場を塗りつぶしていく。凄まじいまでの衝撃波が金沢港の壁面を砕き、破片を飛び散らせる。
轟音はあらゆる音を塗りつぶす。
打ち合う音は、閃光を迸らせる。
「その蒼角が、生命の発露だというのなら! 自分は……!」
「壊すか、悪霊! 破壊の権化よ! その手にした『抗体兵器』を振るうのならば!」
『ディアボロスランサー』の一撃でバトルハンマーが弾き飛ばされる。
だが、それを瞬時に複腕がつかみ、柄を握りしめる。
角の一撃が災害霊となった小枝子の体を貫く。痛みが走る。痛いと感じる。生きていないのに。生きているかのように痛みを感じる。
それが生前の己の痛みであったというのならば、小枝子はそれを振り切る。
己は何だと問う言葉が頭の中に反芻する。
悪霊か。猟兵か。それとも人間か。
否である。
今の己は災害霊。生命に仇なす破壊の権化。
いや、それすらも当てはまらない。
ならばこそ、満ちる生命の輝き放つ『都怒我阿羅斯等』をこそ叩きぶさねばならない。掴みかかりながら一気に小枝子は複腕を集合させ、『熾盛』が変じたバトルハンマーが放つ熾火のごとき炎と共に『都怒我阿羅斯等』へと振り下ろす。
その一撃は互いの体を吹き飛ばし、視界を塗りつぶすかのごとく雷光のように。
「自分は兵士だ! 今も、以前変わらず――!!」
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第二『静かなる者』霊力使いの武士
一人称:私 冷静沈着
武器:灰遠雷
生命を溢れさせるはずのものを悪用すると…ああなるのですね。
抗体兵器…キャバリアのような形をしてましたが、分解して『赤』『青』が同等の弓のように。まあ、機械壊す人がいますのでね…。
呪いは、こちらに来る分のみ破魔にて中和。弓引けば、自動的な呪詛矢が生成されて…それで生命樹を迎撃。
さらに先制は見切り、結界にぶつけての処理。
こちらの手番になれば、この抗体兵器弓の呪いを合わせたUCにて攻撃。
生命力も吸収していきましょう。
…この抗体兵器、興味があるので持ち帰りましょうか。
雷光が金沢港を塗りつぶす。
それほどまでに猟兵とオブリビオン『都怒我阿羅斯等』との戦いは苛烈を極めるものであった。
轟音が響く度に周囲に破壊の跡が刻まれていく。
戦いの苛烈さは言うに及ばず。
さらに恐ろしきと言わしめるのは槍持つ男『都怒我阿羅斯等』の精強たる戦いざまであった。
『抗体兵器』に殴り飛ばされ、地面に跳ねるようにして転がりながらも『都怒我阿羅斯等』は立ち上がっている。
手にした槍『ディアボロスランサー』は生命力を輝かせ、その肉体より『生命樹』を解き放ち、迫る猟兵を退け続けている。
「やはり生命の輝きを消そうとするか『抗体兵器』……! だが!」
発露する力は宇宙より舞い降りる『抗体兵器』――5m級の人型戦術兵器『熾盛』を退ける。
弾かれた人形戦術兵器たる『熾盛』がその場で分解していく様を馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)はみやり、パーツとなった『抗体兵器』を掴む。
一柱たる『静かなる者』は、冷静であった。
「生命を溢れさせるはずのものを悪用すると……ああなるのですね」
彼が見たのは『都怒我阿羅斯等』であった。
凄まじき力。
身より放たれる生命力は『生命樹』の枝となって迫る敵を討ち滅ぼし続ける。
あまりにも強烈。そして、苛烈。
迸る雷光と雷鳴は、まさに神気放つに値すると言わしめるだろう。
だが、悪霊たる己にとっては関係のないことであった。
手にした『抗体兵器』のパーツが『赤』と『青』に分かたれ、弓の形へと変形していく。
「……なるほど。『赤』と『青』。人の心と同じ、というわけですか……」
手にした弓の色の比率は同率。
ならばこそ、それは中庸と呼ぶにふさわしいものであったことだろう。
手にしたそれは機械、というよりも器であった。
「ま、機械壊す人がいますのでね……」
手にした弓から流れ込む強烈な呪い。生命を殺すこと。それだけのために流れ込む呪いは、悪霊たる己達の魂さえ蝕むことだろう。
だが、それでも弦を引き絞る。
流れ込む呪いを飲み込めなくて何が悪霊か。悪霊でありながら己達は破魔たる力を手繰る。
ならばこそ、己の瞳が未だユーベルコードに輝くことを『静かなる者』は知る。
「生命に仇為すか!」
せまりくる蒼い角と『ディアボロスランサー』の一撃。
『都怒我阿羅斯等』の踏み込みは神速。雷光よりも早いと言わざるを得ないほどの強力な力。
その斬撃を前に放たれる呪詛満ちる矢が解き放たれ、迫る『生命樹』を次々と撃ち抜き枯れ果てさせるのだ。
叩き込まれる槍の一撃により結界が砕け、割れていく。
切っ先が頬をかすめ、血潮が噴出する。
しかし、それでも『静かなる者』は冷静だった。痛みが恐ろしいのではない。
それよりも恐ろしいことを知っている。
生命が奪われるよりも恐ろしきことを知っているからこそ、己達は悪霊と成ったのだ。喪い、嘆き、苦しみ、あらゆる辛苦が己の中に満ちていく。
「それが呪詛というものだ。猟兵! 痛みを知りながらも、何故すがる!」
「この苦しみも悲しみも他者に味合わせぬためには!」
迸るユーベルコードの輝きと共に『赤』と『青』の抗体兵器に番えるは、四天境地・雷(シテンキョウチ・カミナリ)の輝き。
煌めく矢の一撃は、迫る『生命樹』の生命を吸い上げ、枯らしながら一瞬で『都怒我阿羅斯等』の肩を射抜く。
それは刹那の出来事であったことだろう。
放った矢は金沢港から海へと抜け、その海面を切り裂きながら空へと光条戸なって刻まれる。
「悪霊からは逃げられない」
さらに軌道が変わる。
天に垂直に飛び上がった矢は、『都怒我阿羅斯等』へと背後から迫り、その体を貫く。
「ぐっ……っ! だが!」
「ええ、まだ貴方は倒れぬのでしょう。ですが」
それでも猟兵は立ち向かう。
己がそうであったように。例え、生命を殺す呪いが満ちるものが手にあろうとも。
違えてはならぬことを猟兵達は知っているからこそ、その手にした『抗体兵器』を振るうのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
空桐・清導
POW
アドリブや連携も大歓迎
降り注いだ紅きキャバリア型の抗体兵器に搭乗する
「ぐっ!…へっ、とんだじゃじゃ馬だな!
流石に生命の敵。本来ヒーローとは
不倶戴天の敵かもしれないが、今は頼らせてもらう!」
膨大な呪いを[気合い]でねじ伏せて都怒我阿羅斯等と相対する
放たれるディアボロスランサーをブースターを使って
直線上から逃れてドンドンと接近していく
どれだけ超速な一撃だろうと出力を[限界突破]させて、
ドンドンと機体性能を上げていく
「悪く無い相性だぜ。やっぱ、赤は良いもんだ!
さあ!今度はコッチの番だ!」
UCを発動させて巨大な炎剣を創造
「超必殺!セラフィック・ブレイザー!」
[怪力]で振るい、生命樹を[なぎ払う]
生命と呪いが渦巻く戦場。
在りて、手にするのはユーベルコードの輝きか。それとも生命を脅かす呪い持つ『抗体兵器』か。
『赤』と『青』の人型戦術兵器たる『抗体兵器』が宇宙より舞い降りる。
満ちる呪いに対処できなければ生命の敵として『抗体兵器』に侵食されることだろう。だが、槍持つ男、オブリビオンである『都怒我阿羅斯等』に対抗するために『抗体兵器』を使わなければならない。
最も厄介なのは万軍すら自動的に退ける『生命樹』の枝であった。
猟兵達はこの枝に阻まれ、さらに『都怒我阿羅斯等』の放つ『ディアボロスランサー』の一撃によって弾き飛ばされていた。
迷っている暇などなかった。
迷う暇があるのならば、走らねばならぬと空桐・清導(ブレイザイン・f28542)が乗り込んだのは『赤』い『抗体兵器』であった。
「ぐっ!」
降りかかる呪い。
その呪いに清導は顔を歪める。
操縦桿を握った瞬間にわかる。これは『怒り』だ。『哀しみ』だ。
煮詰めたような感情。
生命に対する強烈な呪いのような感情に清導は翻弄される。
これが生命の敵。
「……へっ、とんだじゃじゃ馬だな!」
痛みが走る。己が生命であるのならばこそ、その呪いは己自身を許さない。
しかし、これを乗りこなさなければ『都怒我阿羅斯等』に対抗するのは難しい。
「猟兵よ、それこそが生命に対する敵。生命を滅ぼさんとする存在。その呪いを汝らは乗りこなせるか」
『都怒我阿羅斯等』は、そんな呪いに苛まれる清導を考慮しない。
目の前に迫る脅威を振り払わんとするように手にした『ディアボロスランサー』の一撃が、生命力に溢れた奔流となって放たれる。
一直線に放たれる一撃。
その一撃を受けてしまえば『抗体兵器』諸共、清導は滅ぼされてしまうだろう。
歯を食いしばる。
「不倶戴天の敵かもしれないが、今は頼らせてもらう!」
乗りこなすのではない。
抑え込むのではない。
ねじ伏せるのだ。己の中にある気合でもって強引に抑え込む。
『赤』い『抗体兵器』のアイセンサーが煌めく。
迫る生命力の奔流。そして『生命樹』を尽く枯らす呪いの力。脚部のブースターが大地を蹴った瞬間に荒び、清導は己の体にかかる加速度Gによって肺を圧迫される。
痛みが走る。
けれど、それも気合でねじ伏せる。
彼にとって全てのことは気合でどうにかするものであった。
「躱すのだとしても逃がすものか!」
『都怒我阿羅斯等』が放った生命力の奔流はいわば突きの一撃。
「悪くない相性だぜ。やっぱ赤は良いもんだ!」
生命力の槍の一撃が『赤』い『抗体兵器』の左腕を吹き飛ばす。既の所であった。これが僅かに反応が遅れていれば、胴体ごと吹き飛ばされていた。
清導の反射神経があればこそ、片腕ですんだと言える。
「限界を超えろよ。俺も超える。超えてきたんだ。なら、見せてみせろよ!」
アイセンサーがユーベルコードに輝く。
煌めく光は熾火のように。
『抗体兵器』の腕部。いや、撃ち抜かれた左腕が炎によって形作られていく。
それは、バーニング・クリエイション。
収束された炎が腕をなし、そして更に剣の形へと変わっていく。
「ユーベルコードの輝き! 生命の輝きを断ち切らんとするか!」
『都怒我阿羅斯等』の手にしたディアボロスランサーが揮われる。
溜め込むように、引き絞られるようにして構える姿は神速の突きを放たんとしているようにも思えただろう。
対する清導は炎の剣を手にする。
「超必殺! セラフィック・ブレイザー!」
放たれる一撃が『都怒我阿羅斯等』の放つ突きと激突し、力の奔流を砕きながら炎が飛び散っていく。
その炎は、意志の光。
呪いにさえ打ち克つ力。
不屈なる気合があればこそ、清導は『ディアボロスランサー』の一撃にさえも勝るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
紫・藍
あやー、赤と青の割合でっすかー。
つまり藍と紫も当然あるということでっしてー!
藍ちゃんくんに扱えないはずがないのでっす!
呪いでっすかー?
かまわないのでっす!
呪いとは宣るを語源とする、つまりは言葉なのでっす!
言葉に満ちているというのならそれに曲をつけ、歌うのが藍ドルというもの!
ちょうど相手も宣るが語源の祝詞を唄うようでっすしー!
ぶつけちゃおうなのでっす!
逆位相の音を当てれば打ち消し合うというように、生命と死の歌がぶつかればどうなりまっすかー!
無音ならばいくら詠唱しても0×無限=0!
怖くないのでっす!
ディアボロスランサーが放たれた直後の大技の隙を!
無音で貯めに貯めたお口解禁音響兵器でフィニーッシュ!
炎と生命力の奔流が激突し、周囲に衝撃波を撒き散らす。
金沢港の周辺は破壊の跡が刻まれていた。
それほどまでにオブリビオン『都怒我阿羅斯等』の力は凄まじかった。轟音は雷鳴のように、力の激突は雷光のように周囲を染め上げていく。
戦場にありて舞い降りるのは『赤』と『青』の人形戦術兵器。
『抗体兵器』たる存在は、人型を保ったものもあれば、分解し『考えうる限り存在する兵器』へと形を変えていく。
それは生命に敵対するものたちが使う兵器。
生命を殺す呪いに苛まれることを恐れぬのならば。
「あやー、『赤』と『青』の割合でっすかー」
ならば、と紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)は笑う。
つまりは藍と紫も当然あるということだ。
ならば、己に扱えぬはずはないと笑うのだ。
笑って、笑って、笑い続けて。
世界に満ちるのは、いつだってこんな笑い声であったほうがいい。
どんなに生命を呪うものがあるのだとしても、藍は笑い飛ばすのだ。
「呪いでっすかー? かまわないのでっす!」
藍は笑って、迫る生命力の奔流たる槍の一撃を見据える。
「生命の埒外が、生命を呪う力を手繰るか」
オブリビオン『都怒我阿羅斯等』の手にあるのは生命を撒く槍。『ディアボロスランサー』。
その内部には別の宇宙に飛び立ったと言われる一部の能力者たち。
時間停止した中にある、というのだが、それでも藍は拡声器のような兵器を手に取る。
身を苛む呪いが満ちる。
体の中に響く。
呪いとは即ち宣るを語源とするのならば、祝詞を唄うように。
藍の中には歌が満ちている。
ならば、呪いと歌が打ち消され消えていく。
逆位相の音を当てれば打ち消し合うのと同じように、己の中には生命の歌が響いている。かつて能力者達の背を押したあの歌のように。
生命を否定する呪いもまた、それによって打ち消し合うのだ。
そして、藍の瞳はユーベルコードに輝く。
藍は黙っていられない。いつだって言葉を紡ぎ続ける。
己が生きているということは歌うということだ。いつだって、いつでも、いつまでも、歌い続ける。
そのためにこそ藍は己の喉があるのだと言う。
「消え失せろ、生命の埒外。我の絶望は今更贖うことなどできはしない」
荒ぶように放たれる生命力の奔流。
それは神速の槍。
『都怒我阿羅斯等』の一撃は藍に放たれていた。
一直線に走るそれは、地面を削りながら光の奔流となって藍を襲う。
身を穿つ生命力のほとばしり。
悲鳴すら塗りつぶされるかも知れない。けれど、藍は己の悲鳴さえも噛み殺す。
だまり続ける。
それは生きていないのと同じだ。
黙ってはいられないからこそ。
「藍ちゃんくんリタアアああああん!」
叫ぶ。
痛みは生きているということ。生命力の槍、その奔流に貫かれながらも藍は前を向く。
後ろ向きに生きることは難しいのだ。
未来に背を向けて歩くことが出来ないのと同じように、いつだって人は前を向いている。振り返ることがあっても、それでも自分たちの前にしか道はないのだ。
だからこそ、叫ぶ。
「お口解禁藍ちゃんくんなのでっす!(アイル・ビー・バック)」
満ちるは生命の歌。
鼓動の音が藍の喉から迸るように吹き荒れる。
これが生命の歌。
手にした『抗体兵器』の拡声器から放たれるのは、藍の歌。
それはあらゆる波長をもって解き放たれる音の波。
視えず、防げず、あらゆる防壁すらも突破する奔流。
「歌え、歌え、歌い続けるのでっす! 何も怖いことなんてないのでっす! だって藍ちゃんくんは生きているのでっすから! この痛みも、苦しみも、全部!」
喜びに変えていける。
それを生命賛歌と言うのだというように藍の放つ歌声は『都怒我阿羅斯等』を吹き飛ばす――。
大成功
🔵🔵🔵
上野・修介
※アドリブ連携負傷歓迎
調息、脱力、戦場を観据える。
――為すべきを定め、水鏡に入る
「推して参る」
初手から真っ直ぐ最短を突貫――と見せて、伏せる様に地面を打撃し先ず横方向に跳ぶことで初撃を回避。
体幹操作と重心偽装による緩急虚実を混ぜた歩法で攪乱しつつ接近。
その合間に周囲の手頃な大きさの抗体兵器をその周囲の地面ごと敵に向かって殴り飛ばす。
生憎と呪詛への耐性は皆無。
だが受ける影響を意識から『外し』、且つ攻撃が直撃さえしなければ、行動不能になるまで幾らか猶予はあるはず。
飛ばした兵器と巻き上げた土埃を目隠しにして懐に飛び込み、道中拾ったナイフ状の抗体兵器を突き立てて、更にダメ押しでナイフに拳を叩き込む。
歌が聞こえる、と上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)は思った。
変化の乏しい表情は、その生命賛歌の如き鮮烈な歌声を聞いて、変わることはなかった。
けれど、彼の心の中にあるのは闘いに際しても穏やかなものだった。
心を揺らすことはない。
確かにオブリビオン『都怒我阿羅斯等』は強敵であろう。
掛け値なしの、それこそ圧倒的な敵であった。
己の技量、己の力、その全てを上回る。しかし、それはいつものことだった。オブリビオンは個として猟兵に勝る。
だが、それでも。
「ほう、我を前にして気負うことがないとは、見上げた胆力よな、猟兵!」
『都怒我阿羅斯等』の手にした『ディアボロスランサー』が煌めく。
それはユーベルコードの輝きにして生命力の輝く。
体から生える『生命樹』の枝が修介に迫る。あの『生命樹』は万軍すらも迎撃し、退ける力を持っていることはもうわかっていた。
あれが在る限り、猟兵は『都怒我阿羅斯等』に一方的に叩き潰されるしかない。
倒れることはたやすくイメージ出来てしまう。
けれど、修介は己の呼吸を整える。
肩の力を抜く。
そして、静かに瞳を開き、戦場を見据える。これまで他の猟兵達が紡いできた戦いの軌跡がそこにはあった。
誰もが無事ではいられなかったことだろう。
宇宙より飛来した『赤』と『青』の人形戦術兵器たちが修介の周囲に降り立ち、分解しながら様々な形となって地面に突き刺さるようにして示している。
どれだけ状況が変わろうとも。
己を狙う『ディアボロスランサー』の切っ先を見ようとも修介は揺れることはなかった。
ただ、一言。
ただ一言、『都怒我阿羅斯等』へと彼は言う。
「推して参る」
その言葉とともに修介は一直線に最短距離を『都怒我阿羅斯等』へと走る。
いや、それはフェイントであった。
彼は伏せるようにして『抗体兵器』が突き立てられた地面を打ち付け、己の体を横に強引に躱す。
初撃を躱す。
それが修介に課せられた道だったことだろう。
これができなければ、己はあの槍の一撃によって倒れるだけだ。
しかし、『都怒我阿羅斯等』もまた尋常ならざる敵であった。完全に不意をついたはずだった。
けれど、生命力の奔流が放つ熱量は修介の肌を焼く。
身を灼く。
激痛が走り抜ける。
しかし、それでも修介は駆ける。
生命を燃やすように、走り抜ける。
「――力は溜めず――息は止めず――意地は貫く」
己に呪詛の耐性はない。
故に『抗体兵器』は使えない。手に取るわけにはいかない。
だが、周囲に満ちる呪いはどうしようもない。
どうしようもなければどうするのか。
身を苛む呪いを意識から『外す』。
まだ己の体は動く。ならば、この体が倒れるまでに猶予はあると修介は理解する。
己の拳が抉った大地が盾のようにめくれ上がる。
「それを盾にしようともな、猟兵!」
生命力の槍を前には意味をなさぬと『都怒我阿羅斯等』が言う。だが、それは見当違いだと修介は笑むことも、力むこともなく。
ただ、拳は手を以て放つに非ず(ケンハテヲモッテハナツニアラズ)と、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
めくりあげた大地。
『抗体兵器』が突き刺さる地面を押し出す。
力は溜めない。息を止めることもなく。ただあるのは己の意地のみ。故に修介は、その拳を放つ。
めくりあげた大地を『抗体兵器』ごと迫る『生命樹』の枝を枯らしながら『都怒我阿羅斯等』へと叩き込むのだ。
「大地ごと放つかよ、猟兵!」
「――己の内は為すべきを定め」
修介の瞳に輝くユーベルコードが『赤』と『青』の『抗体兵器』が変じたナイフを手に取る。
身を苛む呪い。
それは己の体に駆け巡って痛みを放つ。
しかし、それすら修介は『外し』、『都怒我阿羅斯等』へと叩きつける。突き立てられた一撃が彼の胸へと楔を叩き込む。
「水鏡に入る」
揺らぐことなく。波立つことなく。
凪の如き心のままに修介は生命を呪う痛みすら気にもとめず、押し込んだナイフへと拳を叩きつけ『都怒我阿羅斯等』を驚愕させるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
シャルロッテ・ヴェイロン
(ホワイトラビットを【操縦】してエントリー)
まーたフォーミュラ並にえげつないのが出てきましたね。
まあいいでしょう。事情はどうあれ、【覚悟】決めていきましょう。
まずはパーツ分割した「抗体兵器」と合体。【(各種)耐性・オーラ防御】でこらえつつ、多連装ランチャーの【一斉発射】で「生命樹」を退ける。そして敵【先制攻撃】の軌道を【第六感・野生の勘】で【見切り、残像】が付くくらいの【ダッシュ】で回避。なおも迫る「生命樹」を、追加装備したブレードで【切断】しつつ接近し、【レーザー射撃】めいたUCを叩き込んでやりましょう。
※「抗体兵器」は気に入ったらお持ち帰り(ぇ)
※アドリブ・連携歓迎
猟兵の放った『抗体兵器』の一撃がオブリビオン『都怒我阿羅斯等』の胸を穿つ。
拳を載せた刃の一撃は確かに『都怒我阿羅斯等』の胸に穴をあけるかのような強烈な一撃であった。
しかし、それでもなお『都怒我阿羅斯等』は立っている。
なんたる生命力であったことだろうか。
『生命樹』を生やす肉体は、あらゆる敵を自動的に排除する。
その力の凄まじさは、オブリビオン・フォーミュラにさえ並び立つものだとシャルロッテ・ヴェイロン(お嬢様ゲーマーAliceCV・f22917)は感じたことだろう。
まただ、とも思った。
シルバーレイン世界に現れるオブリビオンの多くが、強大な存在であった。
特に謎多きオブリビオン『都怒我阿羅斯等』は、その中でも最たるものであったことだろう。
手にした『ディアボロスランサー』は生命力の塊のようであったし、彼が振るうユーベルコードはまるで嵐のようであった。
振るえば雷鳴の如き轟音が響き渡り、激突すれば雷光が戦場を染め上げていく。
「まあいいでしょう。事情はどおあれ、覚悟決めて行きましょう」
シャルロッテは己のキャバリア『ホワイトラビット』と共に戦場を駆け抜ける。
迫る蒼角が『生命樹』の枝と共に迫る。
隙などあるわけがない。
四方から迫る角と枝の切っ先。それに加え『都怒我阿羅斯等』の手にした槍の攻撃まで加わるのだ。
これを躱せ、というのはあまりにも簡単な言葉であったことだろう。
「覚悟はもう決まっていると言ったでしょう! ぼさっとしているんじゃないの、『抗体兵器』!」
その言葉に応えるように人形戦術兵器である『抗体兵器』が分解され、まるで外装のように『ホワイトラビット』の機体を取り囲む。
それは浮遊するシールドのように蒼角の一撃を防ぎ、さらに『生命樹』の枝を枯らしていく。
これが生命に敵対する呪い。
手にした多連装ランチャーから放たれる砲撃が蒼角と枯れ果てる『生命樹』を吹き飛ばし、退ける。
「『抗体兵器』を扱うか、猟兵。だが、我の槍の一撃を受けるのならば!」
神速の一撃。
機体を取り囲む分解されたパーツの如き『抗体兵器』が防ぎ、さらに手にしたブレードに合体する。
長剣のような姿となった『抗体兵器』が槍の一撃を切り上げるようにして防ぎ、さらに分解していく。
「攻撃プログラム展開!」
ATTACK COMMAND Ver.GS(アタックコマンド・バージョン・ゴッドスレイヤー)、その文字列が『ホワイトラビット』のモニターに浮かぶ。
それはユーベルコードの輝き。
『ホワイトラビット』のアイセンサーがきらめいている。
シャルロッテの電脳から迸るは、神殺しの属性をコーティングした攻撃用プログラム。
分解された『抗体兵器』が長大な砲身へと組み上がり、『ホワイトラビット』に直結されたジェネレーターから生み出されるエネルギーを上乗せされて、砲撃の一撃と変わる。
「神殺しの一撃、食らわせますよ!」
引き金を引く、という意識が『ホワイトラビット』に伝えられた瞬間、砲身より放たれる攻撃プログラムと光条がねじれるようにして『都怒我阿羅斯等』へと叩き込まれ、金沢港の大地を穿つ。
天に爆風が届かんばかりに立ち上り、その威力を物語る。
シャルロッテは、砲身が溶け落ちるほどの熱量を解き放った『抗体兵器』が再び分解し、己の『ホワイトラビット』の周囲をぐるりと取り囲み、再び人形戦術兵器に戻るのを見ただろう。
生命と敵対する呪い。
『抗体兵器』の齎す呪いは、シャルロッテの電脳さえも灼く痛みを走らせることだろう。
だが、すでに彼女は覚悟を決めていたのだ。
目の前の敵を、オブリビオンとなった『都怒我阿羅斯等』を打倒すると決めた時、呪いよりも、痛みよりも、戦うと決めた覚悟が全てを凌駕するのだと――。
大成功
🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
…この身、この魂は異端の大神の呪いに呪われきっているもの。今さら他の呪いが介在する余地なんて無いわ
戦場に突き刺さった|"赤と青の双剣"《抗体兵器》を無造作に手に取り、
双剣から流れ込む呪いを左眼の聖痕の呪詛と自前の呪詛耐性で受け流し、
敵UCを魔力を溜め限界突破した双剣のオーラで防御しつつUCを発動
肉体改造術式により負傷を超速再生しながら敵の懐に弾丸の如く切り込み、
6倍化した全能力を駆使した双剣で敵を乱れ撃ちする早業の死属性攻撃を行う
…さあ、出会ったばかりで恐縮だけど終幕の刻よ、銀の雨降る世界の生命の創造主とやら
…これ以上、生命に絶望すること無く逝ける幸福を噛み締めながら…滅びるがいい
生命を呪う。
それは『抗体兵器』の在り方であったのだろう。
故に燦然と輝く生命を枯らし果てさせる。例え、それが生命を生み出した創造たる槍『ディアボロスランサー』の力であったとしても、それを打ち消すことだけを目的とした兵器が宇宙より飛来し、次々と金沢港へと突き立てられる。
キャバリアの如き『抗体兵器』は『赤』と『青』。
一色だけの存在もあれば、二色を持つ個体もある。その二色の比率さえも異なる。如何なる理由からかなど、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は考えない。
ただ、戦場に満ちる呪いを彼女は変わらぬ顔で歩む。
猟兵たちとオブリビオン『都怒我阿羅斯等』との戦いはまるで雷鳴のようであった。打ち合う度に轟雷の如き音が響き渡り、雷光のように激突するユーベルコードの輝きが戦場を塗りつぶしていく。
無造作に彼女は大地に突き立てられた『赤』と『青』の双剣を引き抜く。
それは『抗体兵器』。
生命に対する呪い満ちる武器。
「……この身、この魂は異端の大神の呪いに呪われきっているもの。今更他の呪いが介在する余地なんてないわ」
彼女の左目の聖痕刻まれし呪詛と己の身が持つ呪詛への耐性で持って受け流す。
彼女の瞳が視るのは『都怒我阿羅斯等』ただ一人。
その手が振るうのは生命の槍『ディアボロスランサー』。
「『抗体兵器』の呪いを受け流すか。生命の埒外、その意味を己の身でもって証明するか、猟兵」
膨れ上がる力。
生命。
それこそが『都怒我阿羅斯等』の力であるというようにユーベルコートが雷光のように煌めく。
迸る奔流はリーヴァルディを襲う。
あの光に触れてしまえば、己の体は吹き飛ばされてしまうだろう。
せまりくる光の奔流と『生命樹』の枝。
手にした『抗体兵器』がせまりくる『生命樹』の枝を枯れ果てさせる。
ぎしり、と手にした双剣がきしむ。
それほどまでの力を込める。限界を超えた出力。
「『抗体兵器』……お前たちが『生命に仇為す』ものであるというのならば、この程度……耐えてみせなさい」
振るう斬撃が光の奔流を切り裂く。
刀身に亀裂が走る。
それほどでに生命を呪う力は凄まじものであった。
だが、リーヴァルディはそれに構わなかった。
己は弾丸。
走る彼女は、金沢港の地面を一歩進む度に抉るように進む。飛ぶように、跳ねるように。それこそ、その足運びはみえるものではなかったかもしれない。
切り込む。
ただ、それだけのために彼女の左眼の聖痕が彼女自身の体を侵食していく。
彼女の全能力のを6倍にまで引き上げるは、代行者の羈束・魔人降臨(レムナント・デウスエクス)。
筋力も、速度も、あらゆるものが彼女の通常時の六倍。
膨れ上がる力に『抗体兵器』の双剣のほうが悲鳴を上げるようにきしむ。だが、まだである。
「『抗体兵器』すら悲鳴を挙げさせる力……!」
「……さあ、出会ったばかりで恐縮だけど終幕の刻よ、銀の雨降る世界の生命の創造主とやら」
リーヴァルディの左眼が呪詛放ちながら『都怒我阿羅斯等』を見つめる。
時の流れは変わらない。
けれど、ときの流れが遅く感じるのは、それほどまでに高められた集中力と意識のせいであろう。
手にした双剣が煌めく。
ユーベルコードに、そして『生命を殺す』呪いに。
それは熾火のように膨れ上がっていく。
確かにこれは呪いだ。
生命に死を与える呪い。しかし、生命が生まれたのならば、また死も遠からず訪れるものであり、絶対なるものである。
それが生命への絶望の正体であるというのならば。
「……これ以上、生命に絶望することなく逝ける幸福を噛み締めながら……」
振るわれる『ディアボロスランサー』の一撃と双剣の一撃が交錯する。
煌めく光の最中にリーヴァルディは告げるだろう。
「……滅びるがいい」
満ちる生命の輝きは必ず終わりを示す。
故に、懸命に生きるのだということをリーヴァルディは、その手にした双剣が砕け散る音を聞きながら『都怒我阿羅斯等』の胸を十字に切り裂くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
シリルーン・アーンスランド
絶対に、絶対に許してなるものですか
ともがらを、讃うべき輝かしき時代の仲間たちを
斯様な自分勝手に今更巻き込もうなぞ!
蘇ったのなら…再び追い落とすまで!
必ずやり遂げて見せますわ
武器を手に取ればよいのですね
悪しきものでも今はこの手に宿る力なれば
屹立する大剣を躊躇わず握りしめます
呪いが毒が身を蝕みましょう
なれど…このような些事、我が祈りと誓いを消し去る事能わず!
「…ハナさま、キャプテンさま、皆様…!」
UCメガリス・さまよえる舵輪を
祈りと願い籠めお呼びを致します
我が手に参られて後、戦争とあらばわたくしを大きなお身体で
お護り下さった鋼鉄の『キャプテン』を
何卒お力お貸し下さいませ
生命の根絶を、貴方様方も愛された人を含む
生命の終わりを導くものに、鉄槌を!
わたくしもご一緒し、この剣にてお力に抗う力載せましょう!
生命樹…命といえど、わたくしたちにとっては毒の樹なりて!
ロボさまにかかる攻撃もわたくしに向かう攻撃も凡て討ち払います
「ロボさま…どうか!」
全身の力籠めお力の射出に合わせます
我らが意思、かくやあらん!
かつて銀誓館学園の能力者の一部は、生命の槍『ディアボロスランサー』と共に別の宇宙に旅立った。
星を見上げる度に思う。
視線の先には、もう彼らはいない。星の瞬きの中にさえ彼らはいないのだ。
別離があった。
もう二度と会えないかもしれないという予感があったかもしれない。
けれど、彼らは踏み出したのだ。誇らしささえ感じる。未来に一歩踏み出すのと同じように。彼らもまた自分たちと同じ一歩を踏み出したのだ。
だからこそ、シリルーン・アーンスランド(最強笑顔の護り風・f35374)は許せなかった。
許せるものではなかった。
彼らの一歩は彼だけのものだった。だからこそ、『強制テレポート術式』によってオブリビオン『都怒我阿羅斯等』の手元に引き戻されたことは、彼らの一歩を巻き戻すことと同じであったからだ。
「絶対に、絶対に許してなるものですか」
彼女は呟く。
戦場に満ちるのは呪い。
嘗て『抗体ゴースト』たち『異形』が振るった『抗体兵器』。
忌まわしき力。
宇宙より飛来したキャバリアの如き人形戦術兵器の一体が分解するように分かたれ、そのうちの一つがシリルーンの目の前に突き立てられるように屹立する。
「ともがらを、讃うべき輝かしき時代の仲間たちを斯様な自分勝手に今更巻き込もうなぞ!」
「赦されようとは思わぬ。我はすでに絶望しているがゆえに」
『都怒我阿羅斯等』より放たれる『生命樹』の枝。それは自動的に敵を迎撃し叩きのめす力。
今の猟兵達であっても、それに抗うことは困難を極める。
さらに迫る生命力の奔流。
あの光に触れてしまえば、どうなるかなど言うまでもない。
だからこそ、シリルーンは躊躇わなかった。
「蘇ったのなら……再び追い落とすまで! 必ずやり遂げて見せますわ」
彼女は手をのばす。
『抗体兵器』に触れれば呪いに身を苛まれてしまう。『赤』と『青』が示すのは、如何なるものであっただろうか。
示すのは呪いだけであっただろうか。
流れ込む生命に対する呪い。
だが、それは彼女にとって些事であった。
今もなお彼女の体には歌が響いている。あの日々を、死と隣り合わせの青春。その日々に幾度も耳にした歌がある。
誰にもあった歌だ。
だからこそ、これは誓いだ。祈りだ。故に、自身が自身である限り消し去ることなどできはしないのだ。
「……ハナさま、キャプテンさま、皆様……!」
「今更他者に祈ろうなど!」
握り締めた『抗体兵器』の大剣が『生命樹』を枯れ果てさせる。
だが、生命力の奔流がシリルーンを襲う。
痛みが走る。
だが、これは乗り越えなければならないものだ。彼女の瞳が超克の輝きを宿して見開かれる。
彼女の目の前に出現するのはメガリス『さまよえる舵輪』。
祈りと願いが呼び寄せるのは鋼鉄の巨人。『キャプテン』の威容が生命力の奔流から彼女を守るのだ。
彼らは『さまよえる舵輪』。
さまよい続ける。目的地があれど、辿り着くには最短距離を得ることはない。ただ遠回りするばかりである。
「けれど、それは愛すべき遠回り。いつだって正しかったのは険しく厳しい遠回りの道だったのです」
祈る。力を貸してくれと。生命の根絶。『キャプテン』が愛した人を含む、あらゆる生命の終わりを導くもの。
世界を破壊するもの。
オブリビオンを。『都怒我阿羅斯等』に下す鉄槌の如き拳が振るい上げられていた。
「メガリスロボット……! このようなことが起こりうるのか……! これが!」
「生命樹……生命と言えど、わたくしたちにとっては毒の樹なりて!」
シリルーンは目をそらさない。
振り上げられた鋼鉄の拳。
鉄槌の一撃は、『都怒我阿羅斯等』の手にした『ディアボロスランサー』と打ち合って雷光の如き輝きで持って戦場を塗りつぶしていく。
明滅する光の中をシリルーンは走る。
手にした『抗体兵器』の大剣は色を変えていく。二色。『赤』と『青』。それは揺れ動く人の心のようでも在ったことだろう。揺らぎであったとも言える。
どちらに染まるわけでもなく。
人の心に善と悪があるように。
どちらにも染まり切らぬが故に、人は成長していける。進むことができる。
「揺らぐか、揺らぐからこそ成長すると言うか!」
「ロボさま……どうか!」
メガリスロボットより放たれるライトニングフォーミュラの一撃が『都怒我阿羅斯等』を吹き飛ばす。
膨大な光が周囲を満たす。
けれど、彼女は進む。もう決めたことだ。自分は進むのだと。例えどれだけ迷うのだとしても、さまようのだとしても。それが生き方だと。生命の在り方だと。
迷っても、迷っても、いつかたどり着く答えがあるのだと知っているからこそ。
「我等が意志、かくやあらん!」
望む未来を共に視る者たちがいるからこそ、大剣の一閃は『都怒我阿羅斯等』を切り裂くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
カツミ・イセ
ぼくの神様の声が聞こえないと思ったら、時間停止されてたんだね。
だから、ぼくはぼくの意志で。
…『抗体兵器』の力を借りよう。そうだね、キャバリアのままだ。青い機体に、赤の差し色という感じかな。
浄化の水属性なぼくなら、呪いは対抗できる。乗り込もう。
そして、操作して…避けよう。その槍は、ぼくの神様がいるんだから。
UCを使おう、これは半分を手裏剣に、半分を時限爆弾に。飽和攻撃っていうのかな?それをしよう。
投げつけていくよ!そう、爆弾は…投げつけた先で爆発するのさ。
いいかい、ぼくは絶対に退かないから。
だってさ、親たるぼくの神様がそこにいるんだよ?退くわけないじゃないか。
生命力の槍『ディアボロスランサー』は宇宙船にも変わる槍である。
かつて銀誓館学園の一部の能力者達は『ディアボロスランサー』と共に別の宇宙に飛び立った。
その能力者の一人をカツミ・イセ(神の子機たる人形・f31368)は神様と呼ぶ。
「ぼくの神様の声が聞こえないと思ったら、時間停止されてたんだね」
オブリビオン『都怒我阿羅斯等』の手にした小型の槍。
それこそが『ディアボロスランサー』そのものであるという。内部には時間停止された能力者達が存在していることがグリモア猟兵から指摘されている。
自らの行動の指針となる神様の声。
それが聞こえないことは、カツミにとって灯りを消されたようなものであったことだろう。
誰もが道に迷う。
未来は見通すことはできない。例え未来がみえるのだとしても、すぐさま揺らいでしまう。不確かなもの。
だからこそ、恐れるのだ。
けれど。
「だから、ぼくはぼくの意志で」
「自らの意思で我に立ち向かうというか、猟兵』
『都怒我阿羅斯等』の体から迸るように『生命樹』の枝が走る。その攻勢と共に蒼角が迸る。
手にしたディアボロスランサーの切っ先がカツミに迫る。
だが、それを防いだの宇宙より飛来したキャバリアの如き『抗体兵器』であった。
『青』い機体。
その背が割れるようにしてコクピットブロックが露出する。
「……あなたの力を借りるとしよう」
カツミは乗り込む。
体に襲い来る呪い。生命に対する呪い。カツミは己の意志で乗り込んだ。戦うのも、何もかも今は自分の意志だ。
灯火の如き神様の声は今は聞こえない。
けれど、それでも自分は立っている。自分で立って、選んでいるのだ。
ならばこそ、『抗体兵器』のアイセンサーが煌めく。
機体の色に『赤』が差し色のように走る。
「その槍は、ぼくの神さまがいるんだから」
カツミの瞳が輝くと同時に『抗体兵器』が戦場を走る。迫る『生命樹』を呪いでもって尽く枯らしながら戦場を走る。
漲るユーベルコードの力を発露させる。
『抗体兵器』の腕部に現れるのは水流手裏剣。
「僕の神様、その根源となる力を」
創造主の力:水刃手裏剣無影術(スイジンシュリケンムエイジュツ)。
例え、時間停止されているのだとしても、今もなお、自分の神様がそこにいるのならば。カツミは助けるために戦う。
いつだってそうだ。
そのためにこそ戦う。
そうして今まで生きてきたのだ。これは紛れもなく自分の人生だ。最初は異なるのだとしても、今はもう自分で選択している。
「他ならぬぼくの意志で」
放たれる水流手裏剣が『都怒我阿羅斯等』に迫る。
『ディアボロスランサー』が迫る水流手裏剣を弾きとしながら、カツミに迫る。
「生命に絶望するだけだと何故わからない。骸の海で汝らも見ればわかることだろうが……だが、今は語らぬ。我がなすべきことを」
『都怒我阿羅斯等』の言葉には強固な意志を感じる。
けれど、カツミも退かない。
絶対に退くことはない。
「いいかい、ぼくは絶対に退かないから」
『ディアボロスランサー』の一撃で『抗体兵器』の装甲が削れる。衝撃がコクピットブロックにあるカツミにも走り抜ける。
力強く言い放つのだ。
絶対に退かない。
「だってさ、親たるぼくの神様がそこにいるんだよ? 退くわけないじゃないか」
弾かれた水流手裏剣が軌道を変え、一斉に『都怒我阿羅斯等』に迫る。
「弾き飛ばしたはずだが……! これは!」
「そうさ、時限爆弾。君がただ弾き飛ばした時点でこうなることは決定していたのさ」
そう、カツミのユーベルコードは飽和攻撃であったが、しかしそれ自体を時限爆弾に変えるものであった。
空より軌道を変えて舞い戻る水流手裏剣が降り注ぎ『都怒我阿羅斯等』の傷ついた体をさらに追い込むように猛烈なる爆風が彼を包み込むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
【サージェさんと】
これは……『熾盛』に乗れってことかな。
たしかになかなかの呪いだけど、
【呪詛耐性】【狂気耐性】【浄化】【破魔】を使って対抗しよう。
本体ではないとはいえ、あのチート機体を動かせるなんて、
技術者冥利に尽きるってものだよね!
わたしの操縦技術だと追いつかないけど、
そこはサージェさんにお願いして、わたしはフォローに回るよ。
前の席はサージェさんに任せて、わたしは後ろのシートに。
前後逆だと、背中のたゆんで集中できない、とかじゃないよ? たぶん。
【不可測演算】発動しつつ、
『希』ちゃんにも助けてもらって回避行動をインプット。
最初から【リミッター解除】でいくよ!
サージェさん、攻撃は任せた、よー!
サージェ・ライト
【理緒さんと】
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、シリアスもできる今を生きる者の味方ですっ!
なるほど、確かにここは『熾盛』ですね
後は呪いをどうするか
クノイチ|力《ぱわー》で……どうにもなりませんよねハイ
では【VR忍術】呪詛返しの術で!
こう、藁人形をたくさん作っておいてそっちに引き受けてもらいましょう
忍術万能!
ということで攻撃は任されました!
プラズマブレイド展開っ
光の翼で突撃いっきまーす!
あ、セラフィムビットとか使えるんですかね?
おおー!?すごいG!(重力加速度の方)
これはもってかれるー?!(GならぬIがたゆん)
あれ?理緒さんどうしました?
え?集中できない?GとIがすごい?
なんで?
宇宙より飛来する『抗体兵器』の姿はキャバリアに酷似していた。
その姿を知る者もいただろう。
『熾盛』とも呼ばれた『セラフィム』。
無数の『抗体兵器』として舞い降りるそれらは、『赤』と『青』だけではなく、『赤』と『青』の二色のものもあれば、比率を変えたものもある。
さらには機体が分解し、考えうる限り全ての兵器の姿となって大地に降り立つ。
オブリビオン『都怒我阿羅斯等』は今も膨大な生命力を発露させる。
「『抗体兵器』……やはり生命の輝きを消さんとするか」
猟兵たちとの戦いは苛烈を極めた。
ユーベルコードが煌めく度に雷光のように戦場は塗りつぶされる。激突する度に轟雷の如き音が響き渡る。
地面は抉れ、猟兵達の攻勢によって徐々に『都怒我阿羅斯等』は追い込まれていた。
「お呼びとあらば参じましょう。私はクノイチ、シリアスもできる今を生きる者の味方ですっ!」
おっ、前口上変えた? となるのは、サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)であった。
そんな彼女の前にあるのは人型戦術兵器の如き『抗体兵器』。
その姿を彼女は知っていた。
『熾盛』。
だが、己を見下ろすそれは異なるものでるとわかるだろう。溢れる呪い。それは生命を呪うものであった。
「これは……『熾盛』に乗れってことかな」
菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は『抗体兵器』のアイセンサーを見つめる。
溢れる呪いは濃密なものであった。
だからこそ、彼女は耐える。耐えて、浄化と破魔でもって対抗するのだ。
「コクピットブロック……はキャバリアと同じか。本体ではないとはいえ、あのチート機体を動かせるなんて技術者冥利に尽きるってものだよね!」
理緒は単純に喜んでいたが、サージェはうーん、と首をひねる。
サージェは呪いに対してどうしていいかわからなかった。クノイチ|力《ぱわー》でどうにかならないかと思ったのだが、どうにもならなそうだった。
なので、とサージェは専用メモリを手にコンソールへとセットする。
インストールされるのはVR忍術(イメージスルノハカッコイイワタシ)、呪詛返しの術である。
理緒と共に乗り込んだコクピット。狭い。
「サージェさん、これって……っていうか、なにこの藁人形!?」
「忍術万能! これに呪いを引き受けてもらおうって寸法ですよ!」
「呪詛返しの術の、返しの部分なくないかなー?」
「……ということで攻撃は任されました!」
ちょっと、と理緒が言う前に『抗体兵器』が戦場を走る。
前方より迫る生命力の奔流の一撃が槍のように切っ先を己達に向かってきているのだ。
その一撃を既のところで躱す。
かすめた装甲が溶解して弾け飛んでいく。
「『抗体兵器』と言えど、扱うものがいればこそ……猟兵が乗り込むのならば、『抗体兵器』ごと滅ぼすのみ」
『都怒我阿羅斯等』の手にした『ディアボロスランサー』の一撃は強烈だった。
「かすめただけでこれですか……!」
「『希』ちゃん、今の攻撃のデータから不可測演算(フカソクエンザン)で、回避行動をインプット! いくよ!」
理緒の瞳がユーベルコードに輝く。
初撃を躱せたことは幸運だった。
『抗体兵器』の性能があればこそであったが、だが、すでに『都怒我阿羅斯等』の槍の一撃の攻撃データは得ている。
ならばこそ、理緒のユーベルコードは次なる攻撃を掠めることなく躱すモーションを生み出すのだ。
「まだ出力がたりない……なら、リミッター解除!」
理緒はコクピットブロックで機体に掛けられたプロテクトを突破し、機体の出力を跳ね上げさせていく。
じゃじゃ馬の如き力。
機体に自分たちが振り回されているような感覚に理緒は陥るだろう。
「サージェさん、任せた、よー!」
「プレズマブレイド展開っ!」
『抗体兵器』の背より余過剰エネルギーが光の翼となって放出する。肉体に掛かる加速度Gは尋常なものでなかった。
GならぬIが揺れている。
何がとは言わないけど。その様子に理緒は視線をそらす。いや、本当にシートが前後逆でよかったと思った。
理緒の前でなんかこう揺れている気配があるのである。
これが逆だったら危なかった。
「背中のたゆんで集中できないところだった、たぶん」
「え、なんです!?」
「Gがすごいなってー! いや、Iだけど!」
「なんで!?」
そんなやり取りがコクピットブロックで行われていることなど『都怒我阿羅斯等』は知らないだろう。
いや、知っていた所で『抗体兵器』の凄まじい動きは座視できるものではなかった。
『生命樹』の枝すら枯れ果てさせる呪い。
そして、何より振るうプラズマブレイドが『ディアボロスランサー』と打ち合っている。
強烈な斬撃が『都怒我阿羅斯等』を吹き飛ばし『抗体兵器』は機体のあちこちから火花を散らせる。
リミッターを解除したことによって関節駆動域の全てが負荷によって保たないのだろう。
「なんで?」
「多分サージェさんがすごかったからだよー」
何がとは言わないけど、と理緒はサージェに一つ咳払いしてごまかすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ステラ・タタリクス
【ルクス様と】
|エイル様《主人様》の! 香りがしまぁぁぁぁぁぁぁすっ!!(乙女のムーブ)
ってまた|V《ヴィー》様じゃないですかぁぁぁぁぁぁ!!!
エイル様どこ!?
ルクス様探して!
誰がやべーメイドですか!
ぜぇ、はぁ、ぜぇ、はぁ
ちょっと冷静になりましょう
セラフィム……いえ、あれは形だけですね
本来の|絆ぐ者《セラフィム》なら片割れだけで現れることなどあり得ませんし
ならばアレは残滓なのでしょう
彼の方が戦った際の
あるいは皐月・エイル様の願いの
これがエイル様の心遣いというなら
メイドたる私が乗らないわけには
熾火は|希望《『青』》から|絶望《『赤』》へ
されど消えることなく
『戦いに際しては心に平和を』
この言葉を灯していく
私は赤いV様に騎乗しましょう
呪いはエイル様への愛で弾き返し……
無理ですか
それでは【バトラーズ・ブラック】
呪詛耐性でしのぎましょう
というわけでルクス様?
V様の中で当ててんのよしたルクス様?
まさかV様が扱えないとかそんなことないですよね?
武器の形でも構いませんけども
ちゃきちゃき働いてください
ルクス・アルブス
【ステラさんと】
な、なんですか、このピンクいオーラ!
わたしの光のオーラにも負けないくらい輝いてますよ!?
それにそのバックに咲いてる! どこから出したんですか!?
……あ、散ってく。
待って!?待って!?
ステラさん、苦しいです!そして目が怖すぎます!
『やべーメイド極』とかになってますから!
こひゅー、こひゅー……。
首はダメです、せめて肩にしてくださいよぅ。
って、温度差!?
いきなりシリアスにならないでくださいー!
アレルギーでちゃうじゃないですか!
そして、それもう忘れてください!?
不可抗力なんですってばー!
ま、まぁ……そこは置いておいて(できれば忘れて?)。
とりあえずこれをなんとかしないといけないのは同意です。
それにわたしだって『音楽家兼料理人、ときどき勇者』
鉄板さんを使うのは得意ですよ!
呪詛は光のオーラ(【光の勇者、ここに来臨!】)で防御。
わたしは鉄板さんを動かすことはできませんが、
『使う』ことはできますからね!
適当な大きさの鉄板さんを、
ジャイアントスイングの要領で振り回して、ぶつけていきますね!
それは慟哭の如き叫びであった。
戦場に満ちるのは雷鳴の如き猟兵とオブリビオン『都怒我阿羅斯等』の放つ攻撃の激突する音。
轟雷を思わせる激突は、ただそれだけで凄まじき力の発露を思わせる。
雷光の如きユーベルコードは戦場を染め上げ、それでも足りぬとばかりに『生命樹』の輝きが席巻する。
しかし、その『生命樹』の枝を枯らす呪いがあった。
それは宇宙より飛来せし『抗体兵器』。
降り立つは『赤』と『青』の人形戦術兵器。言ってしまえば、キャバリアのような『抗体兵器』であったが、その姿に見覚えのある者たちもいたことだろう。
だからこそ、轟雷すらつんざく家のような叫びがあったのだ。
「|『エイル』様《主人様》の! 香りがしま――!!」
ものすごい大声量であった。
ものすごかった。隣りにいたルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)はあまりのことに耳がキーンとなったし、周囲に満ちるなんかこう、ピンクいオーラに慄いていた。
「な、なんですか、このピンクいオーラ! わたしの光のオーラにも負けない位輝いてますよ!?」
「――ぁぁぁぁぁぁぁぁぁすっ!!」
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)はまだ叫んでいた。
ルクスはいつになく……いや、いつもどおりか、と思いつつもなんかステラの背後に咲いている可憐な花々に目を見開く。
え、いつのまに? 何処から出したのだと思った。
しかし、宇宙より飛来したキャバリアの如き『抗体兵器』を見上げたステラは更に叫ぶ。
「ってまた|『V』《ヴィー》様じゃないですかぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
うわ、とルクスは思っただろう。
なんていうか、こういうやり取りも何度目かわからない。
「『エイル』様どこ!? ルクス様探して!」
「いや、そこになければないですね」
ルクスは冷静であった。というか、一瞬でいつもどおりなステラにスンとなったのかもしれない。
「誰がやべーメイドですか!」
「言ってないですよ!? いや、まって!? 待って!? ステラさん、苦しいです! そして目が怖すぎます! やべーメイド極とかになってますから!」
どさくさに紛れてなんか、さらにひどいこと言っているような気がするが、ルクスも必至である。
ガクガク体を揺さぶられているのだが、問題はそのステラの手が首にかかっているという点にあったのだ。
「こひゅー、こきゅー……ステラさん首はダメです、せめて肩にしてくださいよぅ」
「ぜぇ、はぁ、ぜぇ、はぁ」
二人はひとしきりコントを繰り出した後、肩で息をしていた。
ものすごく疲れた、という雰囲気が満ちている。
『抗体兵器』に意志というものがあったのならば、きっと困惑していたことだろう。何してるのこの人達怖い、とかそんな感じ。
しかしながら『抗体兵器』のアイセンサーはただ彼女たちを見下ろすだけだった。
「ちょと冷静になりましょう」
ステラはすぐに息を整えていた。
あまりの顔の違いにルクスは温度差で風邪引きそうだった。いきなりあんなクールな顔をしたからと言って取り繕えることができるようなあれではなかったはずである。
いやなんかアレルギーが出てしまいそうであった。
「『セラフィム』……いえ、あれは形だけですね。本来の|絆ぐ者《セラフィム》なら片割れだけで現れることなどありえませんし。ならばアレは残滓なのでしょう」
見上げる『抗体兵器』は答えない。
如何なる理由であるのかも知りようがない。
なぜ『抗体兵器』として舞い降りたのか。満ちる呪いは如何なるものであったのか。
兵器が兵器である以上、生命を奪うものであるというのならば、この形こそが正しき形であったのだろうか。
『赤』と『青』は天秤に揺れるかのように数多存在している。
故にステラは思うのだ。
己の思う『主人様』の戦いの残滓。もしくは『皐月・エイル』なる人物の願いなのか。
いずれにせよ、これが『主人様』の心遣いであるというのならば、ステラはメイドたる己が乗らないわけにはいかぬと『赤』の『抗体兵器』へと乗り込む。
「いや、ナチュラルにわたしを引っ張り込まないでくださいよ!?」
ルクスの訴えをステラは無視していた。
コクピットに入り込むだけで呪いが満ちていることが解かる。
生命を殺すこと。
生命を否定すること。
生命を根絶すること。
それだけに満ちた呪い。だが、熾火はすでに彼女の中にある。
|希望《青》から|絶望《赤》に変わるものがあるのだとしても。
されど熾火は消えることはなく。
「戦いに際しては心に平和を」
呟く言葉はステラの中で灯ることだろう。いつだって、この言葉に背を押された者たちがいるのだ。
戦いはいつだって苛烈であるし、どうしようもないことだ。
今も猟兵と戦うオブリビオン『都怒我阿羅斯等』の放つユーベルコードの輝きは、世界を破滅に導かんとしている。
ならばこそ、これを阻止出来ないで何が猟兵であるかとステラは思うのだ。
呪いは愛で打ち消せばいい。
それだけの愛を己は持っているのだ。
「いや、やはり無理ですねこれは。ならば、『主人様』より拝命致しましょう。この呪いを耐えしのぐという、命を!」
煌めくユーベルコード。
瞳に輝く光は、生命を根絶せんとする呪いをこそバトラーズ・ブラックによって抑え込む。
「というわけでルクス様?『V』様の中で当ててんのよしたルクス様?」
ぐるっとステラの顔がルクスを覗き込む。
にこり、と微笑んでいるが底知れない恐ろしさをルクスは感じていたことだろう。正直言って怖い。ものすごく怖い。
「それもう忘れてください!?」
不可抗力であったのだ。まさかあの時のことがこんなにも尾を引くなんて思っても居なかったのだ。
しかし、過去は変えられないのである。
当ててんのよした事実は、例えその気がなかったのだとしても、ステラの中で事実として補強されているのである。
ならばこそ、その瞳は圧力となってルクスの肩にずっしりとのしかかるのだ。いや、物理的にステラによってぐいぐい後ろから押されているのではあるのだが。
「わ、わかりましたから! でもそれは置いておいて」
あわよくば忘れておいてほしい。
「扱えないとかそんなことはないですよね?」
にこり、とほほえみの圧がすごい。
『赤』い『抗体兵器』を駆るステラは、せまりくる『都怒我阿羅斯等』の放つ『生命樹』の枝を振り払うように、その呪いでもって枯れ果てさせる。
「私が抑えております。ちゃきちゃき働いてください」
圧。
だから、圧。ルクスは、これは本当になんとかしないとまずいと思った。
しかし、同時に迫る『都怒我阿羅斯等』をどうにかしないといけないというのにも同意できるのだ。
「わかってますってば! それにわたしだって『音楽家兼料理人、ときどき勇者』! 鉄板さんを使うのは得意ですよ!」
肩書多いな、と思わないでもなかった。
「さあ、光の勇者ルクスがお相手します!」
ばーんと、まばゆい光と効果線を纏ったかっこいいポーズを取ったルクスが手にしたのは、『抗体兵器』の巨体であった。
まるでジャイアントスイングをするかのようにぶんまわし、使い方が決定的に間違えているようなやり方でもって彼女はせまりくる『都怒我阿羅斯等』の槍の一撃を受け止めた ステラの『抗体兵器』の背後から、回転の力を得た一撃でもって、その巨体を叩き込むのだ。
「光の勇者、ここに来臨!(ユウシャトウジョウ)です!」
ステラはそうなのかなぁ、と思ったが、あえて言わなかった。
彼女のしたことを思えば、これだけの働きではまだ解消されぬあれやそれがあるのだ。突っ込むよりも先に、目の前の敵を倒すことに注力すべき。
そういうように眼下で『抗体兵器』をぶん回すルクスを見やる。
彼女は目があった瞬間、なんか曖昧な顔をしていたが、ステラはただ微笑むだけであった。
それだけで伝わるものがあるのだ。たぶん――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
霞・沙夜
【路子さんと】
またすごいものを持ち出してきたわね。
そしてそれに対抗するのに、あれを使うのね。
呪いは【結界術】【破魔】【呪詛耐性】、
それに路子さんのフォローもあるし、いけるわね。
それにしても路子さんはさすがね。あの大太刀を苦もなく、か。
ならわたしは、この糸で。
抗体兵器に糸を絡ませ、操って行くわね。
霞流を甘く見ないでね。
『人形』なら、わたしに操れない道理はないわ。
この人形銃も持ってるみたいだし、
牽制射撃を撃ち込んでから、路子さんの囮になるように繰るわね。
そう、路子さんの言うとおり。だけど……。
ゴースト……路子さんとは『今』をいっしょに生きてる。
『過去』に囚われたあなたでは勝ち目はないわ。
遠野・路子
【沙夜と】
都怒我阿羅斯等にディアボロスランサー
なるほど
生命を創造し生命を護った者達が生命を脅かすか
なら、私は抗おう
えい(無造作に抗体兵器の大太刀をむんずと引っこ抜く
ん?どうして驚く?
抗体兵器は元々ゴーストの武器
ならば新世代ゴーストの私に馴染まない訳がない
多少の侵食はあるけども
だから私は高らかに|心魂《たましい》を謳おう
対呪いでは無いけれど
詠唱銀の癒しが沙夜を護ってくれるはず
今回は私が前に出る
沙夜、援護よろしく
刀捌きも母から仕込まれてる
負ける気はしない
どこまでいっても『生命』じゃないゴーストが
『生命』を護るために抗体兵器を握る
これが今の世界の縮図だよ
絶望は死に至る
だからこそ私達は希望を捨てない!
オブリビオン『都怒我阿羅斯等』は猟兵を見くびっていたわけではない。
此処まで消耗することは想定外であったのかもしれない。
宇宙より飛来した『抗体兵器』。
あの呪いは生命を根絶する呪いそのもの。『生命樹』たる枝は尽くが呪いによって枯れ果てる。
どうしようもないほどの呪い。
どれだけ燦然と輝く生命があるのだとしても、それを滅ぼさなければならないと言わんばかりに大地に降り立つ『抗体兵器』の『赤』と『青』。
「『都怒我阿羅斯等』に『ディアボロスランサー』……」
「またすごいものを持ち出してきたわね」
嘗て銀誓館学園の能力者であった霞・沙夜(氷輪の繰り師・f35302)は、『都怒我阿羅斯等』が持つやりが『ディアボロスランサー』そのものであることを知る。
あの中には別宇宙に共に旅立った能力者たちが時間停止され、眠っている。
遠野・路子(悪路王の娘・f37031)は頭を振る。
「生命を創造し、生命を護った者達が生命を脅かすか」
「ならばなんとする。生命の敵、ゴーストよ」
『都怒我阿羅斯等』の言葉に路子は瞳を開き、言い放つ。
「なら、私は抗おう」
呪い満ちる『抗体兵器』が分解し、様々な武器となって地面に突き立てられていた。その一つ、大太刀を引き抜く。
驚くことはない。
『抗体兵器』とはもともと『抗体ゴースト』たちが己の身より抜き出す武器。
ならば新世代ゴーストたる己になじまぬ理由はない。
だが、それでも生命を呪う侵食が始まっている。
沙夜はそんな路子を頼もしく思う。操り糸が沙夜の手から放たれ、人形戦術兵器たる『抗体兵器』の四肢へと絡みつく。
「うん、沙夜。呪いは私がフォローする」
「ええ、さすがは路子さんね。霞流繰り方……参ります」
手繰る糸が紫電の舞(シデンノマイ)を『抗体兵器』へと伝える。ユーベルコードの輝き。
それは、瞬時に『抗体兵器』の四肢へと伝導し、その巨体を持って『都怒我阿羅斯等』へと襲いかからせるのだ。
凄まじい速度。
まさに紫電そのものであった。
「『抗体兵器』をそのように手繰るか、猟兵……!」
『ディアボロスランサー』を持つ『都怒我阿羅斯等』より放たれる生命力の奔流。
その流れが沙夜と路子を襲う。
どれだけ生命を呪う呪いがあるのだとしても、圧倒的な生命力の輝きは、あらゆるものを圧倒し、押し流すように『抗体兵器』を吹き飛ばす。
糸が切れたことを沙夜は実感しただろう。
けれど、それでも沙夜は信じている。
己と共に並び立つ路子のちからを。
「生命に絶望したのだ。我は。ならばこそ、この世界を我は滅ぼさねばならぬ。例え赦されぬのだとしてもだ!」
『都怒我阿羅斯等』の咆哮が聞こえる。
だが、それを前に路子は恐ろしいと思うより早く、その瞳をユーベルコードを輝かせる。
「我らは『生きて』いる」
それは小さく呟くような言葉だった。歌声にならぬ声であった。
けれど、響く音を沙夜は聞いただろう。
「だから私は高らかに|心魂《たましい》を謳おう」
それは、心魂賛歌(タマシイアルイハイノチヲタタエルウタ)。
蒼銀の宝石を握り締め、破壊されたが故に解き放たれた銀光が沙夜を包み込む。それは一瞬の光。
けれど、己の中に満ちる光でもあった。
「どこまでいっても『生命』じゃないゴーストが『生命』を護るために『抗体兵器』を握る」
「生命を呪う者が何を言うか!」
「これが今の世界の縮図だよ」
路子は握り締めた『抗体兵器』の大太刀を振るう。銀の光は、今もまだ己の中にある。
歌が響いている。
忘れることのできない歌が。
忘れてはいけない歌が。
だからこそ、路子は進む。彼女に迫る『生命樹』の枝は枯れ果てる。沙夜のはなった糸が次々と彼女に迫る枝を切り払い、彼女の道をひらく。
「そう、路子さんの言う通り。だけど……路子さんとは『今』を一緒に生きてる」
共に在ること。
それが人魔共存たる礎になる。この共存がいつまで続くのかわからない。
けれど、彼女たちの路は絶望に阻まれてもなお、その先に続いていることを知る。
「絶望を知らぬものが!」
ふるわれる『ディアボロスランサー』の一撃を路子は踏み込んでいく。切っ先は恐ろしく鋭い。
けれど、沙夜の糸がこれを跳ね上げさせ、路子はさらに前に踏み込む。
手にした大太刀の『赤』と『青』の刀身が煌めく。
「絶望は死に至る」
「だけど『過去』に囚われたあなたでは勝ち目はないわ」
なぜなら、自分達は未来を見ている。
隣立つものと共に歩みたい未来がある。
「だからこそ私達は希望を捨てない!」
ふるわれる一閃が『都怒我阿羅斯等』の体を切り裂く。
その閃光の如き一閃は、たしかに人魔共存の未来を切り開いたのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
……んん?語り口的に何か見たのか……?骸の海で……
…教えてくれるとも思えないから頭の片隅にでも置いておくか…
…あの生命樹は厄介だけどこちらにも抗体兵器がある…まあちょっとだいぶ禍々しい雰囲気あるけど…
飛行式箒【リントブルム】に乗ってまずは生命の奔流を回避…
…そして【我が手に彩る傀儡舞】を発動…様々な武器種の抗体兵器を魔力の糸で同時に操るよ…
…糸を通してこちらに来る呪いは浄化復元術式【ハラエド】で浄化して軽減…
…盾で奔流を防ぎ剣や斧を振り回して生命の樹を伐採しながら都怒我阿羅斯等に迫って大量の抗体兵器を叩き込むとしよう…
…抗体兵器はサンプルを1つ圧縮格納術式【アバドン】に入れて持ち帰るよ…
『抗体兵器』の斬撃がオブリビオン『都怒我阿羅斯等』の体を切り裂く。
身に刻まれた猟兵達による攻撃は、どれもが彼を消耗させていく。溢れんばかりの生命力の発露は、『抗体兵器』の呪いによって徐々に輝きを喪い始めていた。
だが、それでもなお、彼は立っている。
手にした槍は『ディアボロスランサー』。
静寂たる宇宙に生命を撒き、その命の詩を響かせる者。
「だが、我の絶望を汝らは知らぬ。骸の海、その先に待ち構えるものを……!」
己は見たのだと『都怒我阿羅斯等』は言う。
その言葉はそれ以上でもなければ、それ以下でもなかった。
「……骸の海で……」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は『都怒我阿羅斯等』の言葉に何を見たのかを、その片鱗を知りたいと思った。
知識の探求者。
それが彼女である。
しかし、『都怒我阿羅斯等』はそれ以上を語らない。
けれど、その言葉は骸の海の事実を物語る一片であったことだろう。だからこそ、それは頭の片隅に置いておく。
いつか真実が詳らかになった時その一片がなにかを決定づけるかもしれないからだ。
「我は故に槍を振るうのだ」
湧き上がる生命力の奔流。
その一閃の如き一突きはをメンカルは飛行する箒に跨って躱す。
明らかに動きに精彩を欠いている。
猟兵達の攻勢も、『抗体兵器』による呪いも、確実に強大な存在である『都怒我阿羅斯等』を追い詰めているのだ。
空よりメンカルは『都怒我阿羅斯等』を見下ろす。
「物言わぬ躯よ、起きよ、踊れ。汝は木偶、汝は無命。魔女が望むは九十九綾取る繰繰り糸」
煌めくユーベルコードの瞳。
その手より放たれる非実態の魔力の糸が、戦場に突き立てられるようにして存在する様々な『抗体兵器』へと繋がれ、その全てを操る。
だが、それは『抗体兵器』に満ちる呪いの全てが糸より伝播するように彼女に流れ込むことを意味していた。
「……これが、生命を否定する呪い……けど」
浄化復元術式によって浄化し、軽減する。
しかし、それでもなお身を侵す呪いは強烈なものであった。
「あらゆる『抗体兵器』を担うか! だが!」
迫る『都怒我阿羅斯等』の槍の一撃をメンカルは盾の『抗体兵器』で防ぐ。放たれた一撃を反射する盾の衝撃波が『都怒我阿羅斯等』の体を吹き飛ばし、さらに剣と斧の『抗体兵器』が舞うようにしながら迫る『生命樹』の枝を切り払う。
「……我が手に彩る傀儡舞(ストレンジ・ストリングス)」
時間は掛けられない。
糸によって大量に手繰る『抗体兵器』。その全ての呪いを軽減することは難しい。
だからこそ、メンカルは一気に勝負に出る。
糸は担う。『抗体兵器』はそれ自体が呪い。故に、メンカルは糸でもって操り、その切っ先の全てを『都怒我阿羅斯等』へと叩き込むのだ。
雨のように降りそそぐ『抗体兵器』たち。
その全てが『都怒我阿羅斯等』にとって脅威。いわば、天敵同士の戦いなのだ。
膨れ上がる生命の奔流。
それを切り裂く呪い。
雷鳴が轟くように激突する力と力。染め上げる雷光のさなかにメンカルは見ただろう。
数多の武器に貫かれる『都怒我阿羅斯等』の姿を。
「……これが『抗体兵器』の力……サンプルとして一つは確保するか……」
呪いの影響を排除するために格納術式の中に保管し、メンカルは『都怒我阿羅斯等』を見やる。
溢れんばかりの生命力。
謎多き者。そして、謎をまた一つ残した者。
骸の海。
そこに何が在るのか。片隅においた事実が、メンカルの頭の中で、彼女の知的探究心を煽る風となって吹き荒ぶ――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
心剥がれて分かった。自分はあの時死んでいた。だが、今はどうでもいい。
どうせまた、忘れる。
そんな事より。
ディスポーザブル01再操縦
|バトルハンマー《抗体兵器》を再度手に取る!
自分は兵士……為すべきは、敵を壊す事だッッ!!
同調した抗体兵器から引き出した|呪い《呪詛》を、
パルスアトラクターで放射【範囲攻撃】
角を、生命の奔流を押し返しに掛る!
此処が……自分の|居場所《棲家》だ!!
此処が!我らの禍戦場だ!!
戦え!戦え!!たたかええぇええええええ!!!!
オーバーロード!生命の奔流を押し返し『禍戦・劫焔納 甲』
戦場を我が【|闘争心《怨念》】の大炎熱世界で包み生命を否定し【焼却】せんとする!!
熾盛!熾盛!熾盛!熾盛!!!熾盛!!!!!
【念動力】戦場内にある抗体兵器を【解体】一部大釘へと転じ
矢弾の雨が如く都怒我阿羅斯等へ射出。動きを鈍らせ【追撃】
熾盛を解体し集めたパーツで強化した超巨大バトルハンマーで、
膨大な怨念で再度の重量攻撃を敢行する!!
|都怒我阿羅斯等《オブリビオン》!壊れてしまぁえぇぇぇぇぇっ!!
戦場において己が何で在ったのかを朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は知る。
心剥かれ、理解した。
この戦場にあるからこそ、理解できること。
数多の生命が溢れている。煌めく輝きは、全てが生命。
だが、この戦場にあって『抗体兵器』と己は生命ではない。生命を根絶せんとする呪い。
そして、己は悪霊である。
「自分はあの時死んでいた。だが、今はどうでもいい。どうせまた、忘れる」
そう、どうでもいいことだと小枝子は、その瞳でもってオブリビオン『都怒我阿羅斯等』を見やる。
敵だ。あれは敵なのだ。
見据える者。
故に意味など無く。『ディスポーザブル01』のコクピットの中で小枝子は呟く。
「自分は兵士……為すべきは、敵を壊すことだッッッ!!」
『ディスポーザブル01』が手にした|バトルハンマー《抗体兵器》が唸りを上げるようにして呪いを撒き散らす。
迫る『生命樹』の枝を枯らす呪いが満ちていく。
「破壊の権化……貴様は!」
迫る生命力の奔流。
それは槍の切っ先のように神速の勢いでもって『ディスポーザブル01』に迫る。しかし、手にした『抗体兵器』より迸る|呪い《呪詛》が胸部装甲が展開し、露出したパルスアトラクターから放出される。
その放出が迫る生命の奔流を打ち消していく。
『都怒我阿羅斯等』の力が万全であったのならば、押し切られていたことだろう。よくて拮抗だった。
けれど、数多の猟兵達の攻撃が、確実に『都怒我阿羅斯等』の力を削ぎ落としていた。
強烈な輝きを押し返す呪詛。
生命を呪うかのような奔流が戦場を塗りつぶしていく。
例え、生命力の奔流が小枝子を撃つのだとしても。
彼女は変わらず此処にあるだろ。そう。
「此処が……自分の|居場所《棲家》だ!! 此処が! 我等の禍戦場だ!!」
走る。
己の中にある呪いも、流れ込む生命への呪いも。
何もかも振り切るように戦場を押し返していく。此処にしかない。此処に在るしかない。己を悪霊であると自覚するからこそ、此処以外に己があってはならぬと小枝子は咆哮する。
己が守りたかったもの、それに背を向けることでしか、守れぬのが己であると知るからこそ、彼女の瞳は|超克《オーバーロード》の輝きに満ちて、『都怒我阿羅斯等』を見やる。
「戦場こそが己の在りし場所と説くか!」
嗚呼、そのとおりだと思う。
それを否定はできない。肯定しかない。今も頭の中に、そして世界に響くは――。
「戦え! 戦え!! たたかええぇええええええ!!!!」
己のレゾン・デートル。
ただそれだけ。
突き進むしかない。
「|全て、須らく《壊れてしまえ》」
禍戦・劫焔納 甲(デッドオーバー・マグナゲヘナ)は世界を置換する。
砲火襲い来る大炎熱世界。
その世界にありて、小枝子は叫ぶ。
あらゆる呪いが己を苛むのだとしても、この躯体は伽藍堂である。生命ですら無い。ただ呪詛満ちる。ただ|闘争心《怨念》たる衝動を糧に己の心臓は早鐘を撃つように響き渡る。
生命を否定する大炎熱世界。
「熾盛! 熾盛! 熾盛! 熾盛!!! 熾盛!!!!」
叫ぶ。
これこそが生命を否定する力。投げかけた言葉は、ただの命令でしかなかった。燃堂力で持って戦場に残る『抗体兵器』の全てを解体し、束ねていく。
その姿は大釘。
『赤』と『青』の斑。
揺れ動くは、人の心。しかし、悪霊にそれはない。あるのは衝動だけだ。
破壊しなければという衝動そのものたる一つの大釘へと変えた一撃が『都怒我阿羅斯等』へと叩き込まれる。
『ディアボロスランサー』と打ち合い、戦場を雷光が染め上げていく。
だが、その一撃は生命の槍によって砕かれる。
「斯様な呪いに、生命の輝きが負けるものかよ!」
だが、その砕けた『熾盛』の残骸が、さらに念動力という名の怨念に束ねられ、『ディスポーザブル01』の持つバトルハンマーを更に巨大にしていく。
流れ込む呪いの量は尋常ならざるもの。
しかし、伽藍堂たる躯体は、底が抜けている。
どれだけ注がれるのだとしても、満ちることはない。渇望するかの如き暗闇が、虚がそこにあるだけだ。
「|『都怒我阿羅斯等』《オブリビオン》!」
小枝子の瞳に映るのは、ただそれだけだ。
壊すべき存在。
己の怨念の全てを叩きつけ、砕かねばならぬ敵。
その巨大な怨念の塊たるハンマーの一撃がふるわれる。
「壊れてしまぁえぇぇぇぇぇぇっ!!!」
咆哮とともに放たれる一撃は、轟雷鉄槌。
地面をえぐり、空を裂き、天に届く明滅する光と共に小枝子は、己の全てを掛けて、その一撃を見舞うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
戒道・蔵乃祐
〖Unknown unit has connected〗
[System in jeopardy.]
[Recommending immediate termination of use.]
そもそも抗体兵器という呼称を定義したのは異形達だ
しかし|凡《あら》ゆる世界の可能性を考えれば、同一機能を有する抗体反応が異なる宇宙に複数存在してもおかしくはない
星と海を渡り、生命の特異点を滅ぼしに来ましたか
◆絡繰機構・鬼の爪
※キャバリア戦闘
抗体兵器と機体を接続
限界突破+念動力で呪いを制御
『アンチボディ・|キリングツール《殲術兵装》』
ダークマターを集束したグラビティ・プレッシャーで自動迎撃を見切り、撃ち落とす
サイキックエナジーで機体を覆う光鎧防御で舒弗邯閼智を武器受け
レーザーライフルの乱れ撃ちで鎧を穿ち
月光剣ツインクレッセントで戦太刀と|切り結びます《電撃+早業》
情けない男だ…!
貴様の身勝手な粛清で多くの命が失われる
それを止めようとして何が悪いか!!
心眼+クイックドロウでRX-Sニードルガンを全弾持ってけ!
告げる言葉がある。
それは戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)の駆るクロムキャバリアのコクピットから響くものだった。
『赤』と『青』の『抗体兵器』。
機体の内部からエラーメッセージが吐き出され続ける。
「Unknown unit has connected」
システムが危険に晒されているというけたたましい警告音。
即時実行停止を推奨する言葉。
どれもが危険性を証明するものであった。流れ込む呪い。生命を根絶せんとする呪い。
その源が『抗体兵器』である。
「そもそも『抗体兵器』という呼称を定義したのは『異形』達だ」
荒れ狂う呪いの奔流がキャバリアを通して蔵乃祐の体を蝕む。激痛が体を走り抜ける。生命を根絶せよという命令にも似た呪い。
それが彼の肉体を内側から引き裂くようであった。
「しかし|凡《あら》ゆる世界の可能性を考えれば、同一機能を有する抗体反応が異なる宇宙に複数存在してもおかしくはない」
宇宙より飛来した『抗体兵器』群。
『赤』と『青』。
その姿を見つめ、蔵乃祐は呟く。
「星と海を渡り、生命の特異点を滅ぼしに来ましたか」
キャバリアの中より見つめるはオブリビオン『都怒我阿羅斯等』。
その雷光の如き生命の奔流、そして『生命樹』の枝と蒼角が己に迫っているのを知覚する。
「『アンチボディ・|キリングツール《殲術兵装》』」
接続された『抗体兵器』。
それは装甲のようにクロムキャバリアにまとわれ、その中より迫る呪いの全てを蔵乃祐は念動力で呪いを制御する。
呪いが指向性を持つのならば、視えざる力同士でもって干渉し、これを捻じ曲げる。
それだけのことをしなければ、『抗体兵器』の呪いは御すことができない。
故に彼の瞳は超克に輝く。
キャバリアの武装がせまりくる蒼角をダークマターを集束したグラビティ・プレッシャーで撃ち落とし、機体を覆うサイキックエナジーで持って『都怒我阿羅斯等』の振るう『ディアボロスランサー』の一撃を防ぐ。
だが、砕ける光鎧のごときサイキックエナジー。
「槍を手にした我を、この程度で……!」
これまで猟兵達によって消耗された『都怒我阿羅斯等』の動きは精彩を欠くものであった。しかし、漲る生命の輝きは、ここに来てさらに輝く。
「まさしく蝋燭が燃え尽きる直前の如く……!」
「だがそれで十分であるとも言える! 我がなすべきことは!」
存在するだけで世界を破滅に齎すのがオブリビオンである。
ならば、『都怒我阿羅斯等』が如何なる理由を持っていようとも、語らぬ理由に真実があるのだとしても。
それでも蔵乃祐は退かない。
クロムキャバリアの武装たるレーザーライフルが放たれ、その鎧を打ち砕く。
生命力纏う肉体から溢れ出す輝きは、その身に内在する力そのものであったことだろう。ふるわれる月光剣とディアボロスランサーが打ち合い、砕ける。
野太刀の一閃は電光のごとく走るも、それさせも『都怒我阿羅斯等』の肘と膝に挟まれ、砕けて散る。
「情けない男だ……!」
蔵乃祐は圧倒的な力を見せる『都怒我阿羅斯等』の戦いぶりを、そう評する。
赦されなくてもいいと彼は言った。
己がこれより為すことを。
怒りを向けられると知りながらも、赦されずとも生命への絶望でもって塗りつぶして進むと言ったのだ。
それは、世界を護る者からすれば意気地のない言葉であったことだろう。
「貴様の身勝手な粛清で多くの生命が喪われる」
「それを望むのだ。生命に絶望した我にとっては! 汝ら猟兵こそが、我の道を妨げる障害よ!」
ふるわれる『ディアボロスランサー』の一閃がクロムキャバリアの両腕を一瞬のうちに寸断する。
なんたる力。
なんたる神気。
その発露たる雷光の輝きが蔵乃祐の視界を埋め尽くしていく。
だが、それは刹那の瞬間であった。
「それを止めようとして何が悪いか!!」
如何なる真理があろうと。如何なる真実があろうと。
命を護ること。世界を護ること。
それを課せられたのが猟兵であるのならば、其処に在るのは意地だ。
絡繰機構・鬼の爪(ザ・クイック・アンド・ザ・デッド)。
それはまさしく爪の様相であったことだろう。
胸部装甲が弾け飛び、その内部に備わったニードルガンが解き放たれる。
「全弾持ってけ!」
咆哮と共に解き放たれる『赤』と『青』の針弾。
それらは生命を根絶する呪いに満ちた『抗体兵器』。ばらまかれる弾丸は、一瞬で『都怒我阿羅斯等』の肉体を穿ち、四肢を、胴を、頭部を吹き飛ばしていく。
残されたのは、巨大な槍。
『ディアボロスランサー』のみ。
輝く光は生命の煌めき。
明滅する光は、瞬時にその姿を忽然と消滅せしめる。
「……別の宇宙に戻りましたか」
蔵乃祐は、その光景を見やる。あれは宇宙船。生命に仇為す者から言わせれば、生命を宇宙に撒く播種たる揺り籠。
しかし、蔵乃祐は見上げる。
夜空の向こう側ではない別の宇宙。
異なる世界か。
それともまた別の何かか。
再びの邂逅に見えた時、『都怒我阿羅斯等』の語る言葉に真実という光が照らされるのか。
その答えは未だ出ないけれど。
されど、守られたるものがあるのならば、蔵乃祐は静かに戦いの後の静寂に耳を傾けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵