第二次聖杯戦争⑳〜其れはまるで花托のような
その男は唯一、『槍の持ち手』に選ばれた。
生命の槍『ディアボロスランサー』――次の宇宙へと飛び去り、この宇宙に生命を誕生させたときのように新たな宇宙に生命を撒いていたはずのそれ。
「許せ」
申し訳ないという心に嘘偽りはない。
それでもなお、男はこれから全生命を裏切るのだ。
骸の海で見た何かが彼を変えてしまった。
生命への絶望を胸に、槍持つ男が雷鳴と共に金沢港へ降臨する。
「我は槍持つ男『|都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》』! 槍よ、疾く我が手に戻れ!」
「かつて『|銀色の雨の時代《シルバーレイン》』に発見された巨大槍『ディアボロスランサー』。シルバーレイン世界の全ての生命の創造主であり、宇宙船にもなる巨大槍……のはずなんだけど、『|都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》』はそれを小型化し、武器として使用できるらしい」
つまり、あれはやはり本物の『ディアボロスランサー』なのだ。
仰木・弥鶴(人間の白燐蟲使い・f35356)は頷き、その内部に『時間を停止された能力者達』が閉じ込められているのだと説明した。
「最後の戦いの後、銀誓館学園の能力者達の一部を載せて次の宇宙に旅立ったはずのディアボロスランサー……まるで彼らを人質に取られているような気分だね。都怒我阿羅斯等を倒せばその時点の破損状態に関係なく完全修復された状態で新しい宇宙に戻るようだから、そこは幸いだけど」
遠慮はいらないね、と言う。
都怒我阿羅斯等そのものはかつての記憶にもほとんど存在せず、全てが謎の敵。ひとつ言えるのは強いということ、ただその一点のみ。
「戦いの最中、彼は無造作にディアボロスランサーを振るうだろう。その一振りごと、見たことのない『新生命体』が次々と生まれ、襲いかかる。槍持つ男の神気に触れて発狂した新生命体に知性はなく、異形の戦闘能力を持つのみ。それは蓮の花托のような形をしていて、種のような一粒ずつが別個の命でありながら群体で生きる集合生命体。一粒でも残せばそこから完全に再生する。種はそれぞれに動き、対象に寄生して根を張り、花を咲かせて生命力を吸い尽くす。今回の戦いは都怒我阿羅斯等のディアボロスランサーによる猛攻を凌ぎつつ、同時に新生命体にも対処しなければならないというわけ」
難敵だね、と言う。
「しかも相手のユーベルコードはこちらに先制して発動する。念には念を入れて、戦いを挑むための準備は万端にね」
ツヅキ
プレイングが送れる間は常時受付中です。
執筆のタイミングによっては早めに締め切られる場合があります。
●第1章
小型化された『ディアボロスランサー』と思しき槍を持つ男『|都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》』が発狂し、異形の戦闘能力を兼ね備える新生命体を率いて襲いかかります。蓮の花托に似た新生命体はひとつひとつの種にあたる部分を全て一度に破壊しない限り、何度でも再生する集合生命体です。
都怒我阿羅斯等の先制攻撃に対処する/新生命体の群れに対処するとプレイングボーナスです。
第1章 ボス戦
『都怒我阿羅斯等』
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POW : 天地開闢の祝詞槍
詠唱時間に応じて無限に威力が上昇する【純粋生命力 】属性の【ディアボロスランサー】を、レベル×5mの直線上に放つ。
SPD : 舒弗邯閼智(ソブルハンアルチ)
【全身に生えた七本の蒼き角 】を纏い空中高く舞い上がった後、敵めがけて急降下し、[全身に生えた七本の蒼き角 ]が尽きるまで【ディアボロスランサー】で攻撃し続ける。
WIZ : 魂よわだつみに還れ
【ディアボロスランサーから生命の奔流 】を放ち、レベルm半径内の指定した対象全てを「対象の棲家」に転移する。転移を拒否するとダメージ。
イラスト:いもーす
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
エミリヤ・ユイク
※アドリブ歓迎
なんかとてつもない強さをもった相手ですね。…おそらく今の私が戦おうとしても一撃与えれるかどうかでしょう。ならば決まりですね。新生命体の群れに対処に向かうとしましょう。
本気でいかないとどんどん増殖するので、手袋を外して塵魁拳で軒並み文字通り新生命体を塵にかえてさしあげます。目標は目に入るもの全てを塵にすることです。もちろん、都怒我阿羅斯等の動向にも注意しながらです。
ディアボロスランサーがいつどのタイミングで飛んで来るかわからないですからね。都怒我阿羅斯等とは常に一定の距離をとりつつ、新生命体を塵にかえる。ほんとなら、仮に隙が出来たら都怒我阿羅斯等に塵魁拳を叩き込んでやりたいですね。
ほう、と翠と蒼のオッドアイを持つエミリヤ・ユイク(黒き狼を継ぐもの・f39307)は両目を細め、降臨した都怒我阿羅斯の神気あふれる姿を遠目より確認する。不用意に近づくことは望ましくない――すぐにわかった。
これだけの距離をおいてなお、青白く発光するディアボロスランサーの美しさにはエミリヤも感嘆せしめるものがあった。
「とてつもない強さをもった相手……」
あまりにも強過ぎる存在というのはどこか近寄り難さを感じさせるものだ。それはきっと生命が持つ本能にちがいない。クローン体でありながら|普通の存在《・・・・・》であるエミリヤがその判断をくだしたのは当然といえた。
今の自分では、たとえ戦っても一撃を与えられるかどうか。
「ならば決まりですね」
エミリヤはうかつに接近しないよう、都怒我阿羅斯との距離に気を使いながらディアボロスランサーが生み出す新生命体の方に狙いを定めた。
待ちの体勢にある都怒我阿羅斯とは対照的に、ああみえて好戦的らしい。
「種をより遠くへ飛ばす本能でしょうか? ぞっとしませんね」
外した手袋の下から漏れ出す薄紫色のオーラ。
名称を覇壊之念。
超硬度、触れたものを塵と化すほどの。
「さあ、塵に変えてあげましょう。この世界にあなたたちの居場所はないのですから」
新生命体は己の危機を敏感に察する。
まるで赤子が、親がいなくなったらすぐに泣き出すようにそれは苛烈な反応だった。いくつもの花托から一斉に弾けた種状の生命体が弾丸みたいにエミリヤを貫こうとする。
――だが、届かない。
「はッ!!」
相手から近づいてくれるのなら、塵魁拳にとってこれほど好都合なことがあるだろうか。
エミリヤの振るう拳が触れた刹那、種は塵となって消滅する。不思議な光景だった。神速なる拳撃の周囲に塵と化した新生命体の残滓が発生しては消えゆく。
「面妖な拳を使うのであるな」
興味深そうに都怒我阿羅斯が呟いたのをエミリヤは見逃さなかった。
ディアボロスランサーの直撃を受けるのは何があっても避けたい状況。注意をおこたるわけにはいかなかったから。ゆえに、彼に拳を叩き込む機会があるとすれば|今《・》であると知れた。
「くらってみますか、塵魁拳を」
「むッ」
都怒我阿羅斯の好奇心が仇となる。どのような拳であるか、この身で受け止めてみたい。武人としての興味が塵魁拳の直撃を助けた。
「ほう……!」
今の自分ではまだ、たいした傷は与えられないかもしれないけれど。
「これが塵魁拳です」
「面白い」
都怒我阿羅斯は皮膚の一部を消し去られながら笑った。
「末恐ろしい技だな。その行く末を見てみたいものである」
大成功
🔵🔵🔵
唯嗣・たから
先制攻撃には…幸運と残像で対応できたら、いいなぁ…運だよりで回避。
たから、ディアボロスランサー…が何かよく、わかってないけれど。
生み出す命が、異形であれなんであれ、それが命に他ならないなら。
終わる定めは、変えられない。
たからは、鬼来迎。彼の世からのお迎え。
とくとほろびろ。UCで新生命体を尽く腐らせる。
ついでに、そのまま…ええっと…名前忘れた、難しい。
槍持ってる人にも、UCの手で攻撃を続ける。
命に絶望するのは、勝手。
だからといって、自分の絶望に、他人や世界を、巻き込むな。
たからでも、それくらいの判別、つく。
呪詛まみれの鉈で、切り込み。ついでに絡繰糸も、その人の腕に絡め。
人質卑怯、その槍、離せ。
「うわわ……」
とても綺麗で、けれど残酷で、そして……情け容赦がなかった。
天地開闢の祝詞槍、という名前がつけられたその一閃は頭上に掲げたディアボロスランサーを一直線に振り下ろして発動、唯嗣・たから(忌来迎・f35900)が残した残像を1ミリも残さずかき消し、戦場の端にまで到達する。
よけられたのは、とても幸運。
ありがとう。
たからは祈った。
そして呼ぶ、彼の世からのお迎えを。
「なに?」
都怒我阿羅斯等は周囲から伸びる怨霊の腕に気付いて顔を上げた。
「これは……そうか、地獄より我を迎えに……ふふ、だがまだ早いぞ。我には全生命を消し去るという大義があるのでな」
「そんなの、だめ」
たからが首を振る。
「命に絶望するのは、勝手。だからといって、他人や世界を、巻き込むな」
それは|あなたの《・・・・》絶望であって、それ以外のものとは何の関係もない別個の想い。自分のやり方に他の全てを巻き込もうというのは傲慢だ。他の意思を認めていない。他の命を尊重していない。
「たとえ強い、としても。槍の持ち手、だとしても。それじゃ、だめ。たからでも、それくらいの判別、つく」
都怒我阿羅斯等の周囲で鬼来迎に触れられた新生命が生まれた先から腐り落ちた。まるで孵化して外の空気に触れた途端に死んでしまうみたいに。
だって、それは命だから。
異形であろうと、まったく新たな存在であろうと。
それが命にほかならないなら、終わる定めは変えられないということをたからは知っている。わかっているよ。だって、私もそうやって黄泉の川を渡ったのだから。
「つ……つる、ええっと……」
彼の名前を思い出そうとして、そのあまりにも難しい字面と読み方につっかかる。静かな声が言った。
「|都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》だ」
「つぬが、あらしと」
「汝の言っていることは正しい。だが、どうしようもないのだ。あのようなものを見てしまった以上、我の行動は決して止まらぬ。止められぬ……!!」
再び、ディアボロスランサーが振り上げられる――否、振り上げようとした都怒我阿羅斯等の動きが不自然に止まる。
「糸?」
「それ、とても頑丈。すぐには切れない」
ざく、と都怒我阿羅斯等を抉ったのはたっぷりの呪詛が染み付いた鉈。それはたからを殺した凶器。怨念まみれの、血の匂いが漂うような。
「人質卑怯、その槍、離せ」
「馬鹿な……汝はそのような身の上で、なぜ絶望しないのだ。不思議である。実に、面妖である」
鉈は都怒我阿羅斯等の二の腕に食い込み、血を流させた。それはディアボロスランサーをたどって地面に染みをつくる。
それを見ながらたからは独り言みたいに言った。
「だからこそ、かもしれない、ね」
大成功
🔵🔵🔵
ニーニアルーフ・メーベルナッハ
まさか、今になってディアボロスランサーを手にするものと相対しようとは…。
ですが、生命の敵となるならば。打ち倒させて頂きます。
何より、その槍の中には私の友人も居るのですから!
敵のユーベルコードは時間に比例して威力が増す代物。ならば即座に距離を詰めて戦わねばなりません。
ダッシュして距離を詰め、槍を放つ動作が見え次第回避行動を。
同時に【蟲使い】で蟲達を放ち、新生命体への対処を。
其々に種を喰わせて殲滅を期します。
私自身は都怒我阿羅斯等へブレンネン・ナーゲルによる接近戦を挑みつつ、ユーベルコード発動の機が巡り次第白燐拡散弾を発動。
新生命体の殲滅を試みつつ都怒我阿羅斯等へダメージを与えましょう。
「なんてこと……!」
ニーニアルーフ・メーベルナッハ(黒き楽園の月・f35280)にとって、漸く開いた戦場で遭遇した事実は信じがたい事態であった。
その昔、友人たちはあの槍に乗って遠い新たな宇宙へ旅立っていった。誇らしい気持ちと寂しい気持ちの両方があったのを、微かに覚えている。
それを武器として使う?
|私たち《生命》を殺すため?
ああ、なんてことだろう。
運命の悪戯か、それとも宿命か。
世界は時に残酷なめぐり合わせを人々に見せつける。
最も見たくないものを見せ、最も叶えたいものが叶わない。
「いいえ、いいえ……」
ニーニアルーフは抗ってみせる。
|今になって《・・・・・》ディアボロスランサーを手に立ち塞がる強大な敵を前にして。できるだけ早く、可能な限り時間をかけないで。
それこそが、時間に比例して威力が増す都怒我阿羅斯等の技への対抗手段。ぎゅっと拳を握り、ニーニアルーフは駆ける。
――金沢港を。
「来るか、猟兵よ」
まだ早い、と都怒我阿羅斯等は思った。
ディアボロスランサーはまだ力を溜めきっていない。中途に振りかぶられた槍はそれが振り下ろされる直前に「えいっ」と脇へ飛び退いたニーニアルーフの背後を掠めたのみに留まった。
「なに?」
まさか、躱されるとは思ってもいなかったのだろう。
都怒我阿羅斯等に過ぎった僅かな隙。ニーニアルーフは何回か転がってから体を起こし、裂帛の気合で叫んだ。
「消えて、なくなってくださーい!」
「これは――」
ニーニアルーフの体内に寄生する白燐蟲が一斉に放たれた。戦場の一角が純白の輝きで満ちて、花托に宿る種をあっという間に喰らい尽くす。
「蟲か……!」
「どこを、見てるんですか!?」
既にニーニアルーフは立ち上がり、腕に装着した|手甲型の赤手《ブレンネン・ナーゲル》を薙ぎ払う。鋭い鉤爪が都怒我阿羅斯等の脇腹を抉った。花弁のように鮮血が散る。
「ほう、我に届いたであるか猟兵よ!」
「その槍を離してください」
「聞けぬ」
都怒我阿羅斯等は首を振った。
「我は決めたのだ。全生命の敵となることを!」
「それでもッ……!」
再び、ニーニアルーフから大量の白燐蟲が拡散する。赤手が抉った都怒我阿羅斯等の体内へ入り込んで暴れた。
「ぬう――!」
「――それでも、生命の敵となるならば! ここで打ち倒させて頂きます」
銀色の瞳に決然の色が浮かんだ。全身で、全力で。友がいるディアボロスランサーを取り戻すためにニーニアルーフは告げるのだ。
「どうか、お覚悟を!」
大成功
🔵🔵🔵
岩永・勘十郎
『気を付けて。アイツら元を絶たないと増えてくみたいだよ』
「なるほど、だが手が無い訳じゃない」
まず敵の先制攻撃を[第六感]で察知し[瞬間思考力]で太刀筋を[見切り]、[残像]が残る程の[早業]で回避。真っ直ぐな攻撃なら避けるのも難しくない。そのまま敵へ装備している悪臭を放つ爆弾を投げる。詠唱を止める為だ。
「まずはコイツらか」
生み出した無数の敵に対しUCを纏った斬撃を放つ。敵の“全て一度に破壊しない限り、何度でも再生する”と、存在という概念ごと叩き斬り破壊。
「終わりだ」
無数の敵を蹴散らし、本体とボスに向けて[仙術]を加えたUCの斬撃を[怪力]任せに斬撃波として撃ち放つ。[幸運]も味方するはずだ。
『気を付けて』
まだ戦場に入って間もないというのに陸上火力支援端末・通称『|陸火《りっか》』はこれまでにないレベルの警告を岩永・勘十郎(帝都の浪人剣士・f23816)に出した。
「状況は?」
どこか飄々と勘十郎は帽子を被り直す。都怒我阿羅斯等が降臨した影響か金沢港の海は荒々しく波間を揺らしていた。
『射程に入った途端、|ディアボロスランサー《あれ》を振り下ろすつもりだよ。それにアイツら元を絶たないと増えてくみたい』
――アイツら。
これだけ離れているとまだ茫洋とした光のようにしか肉眼では見えない、が――陸火は捉えた映像をリアルタイムで表示した。
「なるほど、だが手が無い訳じゃない」
『どうするの?』
「まあ、見てろ」
生命に仇なす者として君臨する都怒我阿羅斯等にとって猟兵の反抗は予想できたものだった。ならば力ずくで押しきるまでのこと。
ゆえに、このディアボロスランサーは敵を斬る。
「覚悟せよ」
――勘十郎が察したのは都怒我阿羅斯等が攻撃動作に移った瞬間ではない。もっと前、彼が『斬る』と決めた時だ。それはまさしく第六感の成せる技。振りかぶった姿勢から瞬時に軌道を割り出す。
真っ直ぐなら、ぎりぎりまで引き付けて――。
「なに?」
動いたのは都怒我阿羅斯等が槍を振り下ろしきる直前、軌道修正するには間に合わないが躱すだけの猶予がまだ残された僅かな一瞬だった。勘十郎の瞳がタイミングを見切り、素早い身のこなしで残像を残しながら転がり避ける。
体勢を整え、投げ付けるのは忍び道具。
「ぬ!?」
さすがの都怒我阿羅斯等もそれが悪臭を放つ爆弾であると気づいて顔をしかめた。鼻が捻じ曲がるような匂いに面食らい、息が止まる。
「まずはコイツらか」
龕灯返しの太刀は“概念”を斬るのだ。
満ちる仙力は|上書き的に干渉《・・・・・・・》するため、斬り伏せられた花托からは“全て一度に破壊しない限り、何度でも再生する”という特徴を剥ぎ取る。さらにその存在ごと滅し、跡形もなく叩き割った。
「終わりだ」
勘十郎は敵の次撃が来る前に勝負を決めるつもりだ。
「く――」
都怒我阿羅斯等は顔を拭い、詠唱を紡ごうとして咽る。
『いける。間に合うよ』
陸火からのメッセージ。
頷きの代わりに太刀を構え、――斬る。
怪力任せに撃ち込まれた剣撃はうなる衝撃波を伴なって都怒我阿羅斯等と周囲の新生命体をまとめて薙ぎ飛ばした。
「しまった……!」
ディアボロスランサーを盾にしきれなかったのはおそらく、幸運も味方したのだろう。存在ごと痛めつけられた都怒我阿羅斯等の呻きが勘十郎の耳を打った。
大成功
🔵🔵🔵
七那原・望
彼らは赤の他人ですけど、この世界出身の友達が悲しむかもですし、助けましょう。
第六感と心眼と気配感知で敵の行動を見切り、自身の身体能力と飛行速度を全力魔法の強化で限界突破させ空中戦。
新生命体を弾く結界を自身の周囲に多重展開し、敵より上の高度を維持し高速飛行。
敵の急降下を封じてユーベルコードを発揮出来ないようにしながら魔法の乱れ撃ちで蒼き角を消耗させます。
果実変性・ウィッシーズアリスを発動したら結界の中に呼んだねこさん達にお願いしてわたし達を視認出来なくし、新生命体には都怒我阿羅斯等がわたし達に見えるようにします。
新生命体は都怒我阿羅斯等の元に群がるはず。
ねこさん達との全力魔法で全員纏めて殲滅を。
……感じる。
潮の匂い。
膨大で瑞々しい神気。
命の芽吹き
そして……眠りについた能力者たちの、息吹も。
七那原・望(封印されし果実・f04836)は上空から金沢港の戦場を見下ろす立場にあった。ほとんど成層圏にすら近い宇宙と空を区切るための彼方。ここへ来たのは友達のためだ。あの槍が元通りにならなければこの世界出身の友達が悲しむかもしれない。
「そんな顔は見たくありませんので、善処いたしましょう」
頼りにするのはまず、第六感。
望は敵の接近を察知するなりさらに上空を目指して飛翔速度を上げた。全力だ。自分に許される魔力を全て投じ、限界を超えて高さを極める。
「ぬ……?」
全身に蒼き7本の角を生やした都怒我阿羅斯等が微かに顔をしかめた。いくら上昇せど、追いつかない。それで薄々と狙いがわかり始めてくる。
「これは、よもや」
「急降下に入れない以上、そのディアボロスランサーを振るうことはできませんね?」
彼の舒弗邯閼智はその原理上、敵の上を取らねば攻撃体勢に移れない。その弱点を突いた望は次々と魔法を繰り出してその角を狙い撃った。立て続けの攻撃を受けた蒼き角がひとつ、ふたつと霧散する。
「なるほど、そう来るであるか。猟兵よ。だが、いつかは我が上を取るぞ」
不敵に笑む都怒我阿羅斯等の耳にその時、動物の鳴き声が届いた。
「にゃあ」
まるで戦場にそぐわないそれ――猫の。
「なに?」
しかも、いつの間にか望の姿が消えている。
――果実変性・ウィッシーズアリス。
極めて強力な魔法及び幻覚を操る能力を持った4匹の猫は都怒我阿羅斯等の意識に作用を及すことで戦場に混乱を引き起こす。
事実、望は先ほどと変わらず、そこにいた。あくまで幻覚によって視認できなくなっただけに過ぎない。そうして目くらまししたところで同士討ちを狙う。
「あそこにいますよ」
ディアボロスランサーの生み出す花托のような生命体もまた、果実変性の影響を受けて狂い始めた。
「なにを……!?」
新生命体は種を都怒我阿羅斯等に飛ばし、苗床にしようとする。やめろと言って腕で薙ぎ払い、叱咤しようが止まらない。
「正気に戻らんか!」
やがて極上の神気を吸い、残酷なまでに美しい青白き蓮の花が満開した。それを散らすのは猫と望が力を合わせて放つ全力魔法だ。金沢港のはるか上空に紡がれた魔法陣が輝いた直後、巨大な爆発が咲き乱れる。
望はディアボロスランサーの中にいる人たちのことを知らない。
赤の他人だ。
それでも、友達のために戦った。
「これで無事に助かるとよいのですが……」
大成功
🔵🔵🔵
シモーヌ・イルネージュ
槍の持ち手というから期待してたんだけど、さすがにその槍は反則だろ。
何でもありだね。
ただ、面白い槍試合ができそうだ。
ワクワクするよ。
いざ勝負しよう。
得物はもちろん黒槍『新月極光』。
これに『竜封火布』を巻き付けて『炎の魔力』を【武器に纏う】。
これで新生命体を【なぎ払う】ことで【焼却】してしまおう。
都怒我阿羅斯等の先制攻撃は【見切り】と【野生の勘】頼み。
あの槍は当たったら、ヤバそうだから、【武器受け】するより、払うように。
チャンスが来たらUC【月影戦士】を発動。
黒槍を都怒我阿羅斯等に叩きつけて、【怪力】で【吹き飛ばし】てしまおう。
ここで負けたら、勝負したラダガストにも申し訳ないしね。
――槍、と聞いてこのシモーヌ・イルネージュ(月影の戦士・f38176)が黙っていられるはずがなかったのだ。
「おいおい、さすがに反則だろ?」
そもそもが全く槍に見えない。
世界樹のような意匠の青白く輝くそれは都怒我阿羅斯等の手の中にあって、今も新しき生命の力に満ち溢れている。
そんなものを、武器として使う?
「冗談じゃない」
なのにシモーヌは歯を見せて笑った。
「何でもありだね。けど、そういうのは割と嫌いじゃないんだ。面白い槍試合ができそうじゃないか」
「畏れぬのか?」
どうしてか楽しそうに宣戦布告するシモーヌが理解できない様子で都怒我阿羅斯等が尋ねた。これほどの神威を前にして、なぜ笑っていられるのか――と。
「簡単さ、荒事が大好きなんだ」
シモーヌは髪を留めている『竜封火布』を解いて黒槍『新月極光』に巻き付けた。かつて妖獣を封印していた神旗から作られたものだ。炎の魔力が槍に宿り、陽炎のように刃全体を包み込む。
「いざ勝負しよう」
「受けて立つのである」
その身に青白き角を生やし、超高速で降下する都怒我阿羅斯等をシモーヌは無理に迎撃しようとはせず、回避に全神経を集中する。
――|アタシ《クルースニク》の中に眠る野生よ。いまこそ、その牙を剥け!
それは文明に生きる人間がはるか昔に失ってしまったもの。己を生み落とした自然という存在に繋がるための感受性、野生にて生き抜くために授かった知恵と勘。
恐るべき直観でディアボロスランサーの軌道を見切り、獣じみた体捌きで攻撃を躱し続けるシモーヌを見た都怒我阿羅斯等に驚愕が走った。
「なに!?」
シモーヌはできるだけまともにくらうのを避けるため、最小限の接触で槍を斬り払い矛先を逸らす。
ディアボロスランサーが振られる度に撒き散らされる新生命体は苗床を求めてシモーヌに近づくが、黒槍から放出される竜封火布の魔炎によって敢え無く薙ぎ払われた。種も花托も別なく炎にまかれて焼却される。
可能性として生まれながらも、世界に根付くことの無かった新生命の末路であった。
「よもや、我が使うディアボロスランサーを躱すとは見事であるな」
「ははッ、ここで負けたら顔向けできない|大先輩《ラダガスト》がいるんでね」
燃え落ちる花托の向こうで都怒我阿羅斯等の角が一時的に引っ込んだ。次が来る前決めるべきだろう。迷わず、シモーヌは月の魔力に身を委ねた。
「月よ、月よ」
シモーヌの輪郭が淡い月光を纏い、血肉の深くに眠りし野生を解き放つ。その先を都怒我阿羅斯等が視認することはなかった。あまりにも速く、あまりにも鋭かったがゆえに。気付いた時には彼方へ吹き飛ばされている。
「ぬう!」
「一本とったよ」
恐るべき怪力で黒槍を叩きつけ、都怒我阿羅斯等に土をつけたシモーヌは息を弾ませて言った。
「もっとやろう。二本目、いくよ!」
大成功
🔵🔵🔵
暗都・魎夜
【心情】
都怒我阿羅斯等、名前だけは聞いたことがある
ま、見た感じ強いこともよく分かったよ
「ただ、ディアボロスランサーの先の宇宙には、そこへ向かった俺の大事な仲間がいる。奴らのために、余計なことはさせねえよ!」
【戦闘】
「(誰何の声に)通りすがりの能力者さ、覚えておきな! イグニッション!」
生命の奔流による転移は拒否し、ダメージを受ける
痛みは「覚悟」「激痛耐性」で耐える
「正月だし嫁のいる家には帰りたいが……その前にやることがあるんでな!」
UCを発動し、全力で挑む
「リミッター解除」した「斬撃波」の「なぎ払い」で種を刈り取る
「てめえが何に絶望したかは知らねえが、俺は生きることにまだ絶望してないんでな」
その実物は、聞いたことがある名前にそぐわぬ神気と威厳を備えていた。
金沢港の入り口に立った暗都・魎夜(全てを壊し全てを繋ぐ・f35256)の目を奪うディアボロスランサーの青白き生命の輝き。記憶の通りだ。寸分の違いもありはしない。
「やれやれ……」
何をどうやったら|あれ《・・》が|ああ《・・》なるんだ。確かに都怒我阿羅斯等は強いのだろう。唯一、槍が選んだ持ち手という肩書きは強烈だ。
「ただ、ディアボロスランサーの先の宇宙には、そこへ向かった俺の大事な仲間がいる。奴らのために、余計なことはさせねえよ!」
「ほう……」
都怒我阿羅斯等は興味深そうに魎夜と己の槍を見比べる。
「この中にいる者たちと知り合いであるか。汝、いったい何者だ?」
「通りすがりの能力者さ、覚えておきな! イグニッション!」
その身に纏うは真紅のプロテクター、手には滅びの業火たる七支刀。装着された回転動力炉が唸りを上げた。かつての仲間たちのために戦うのを喜んでいるみたいな音で、魎夜の覚悟を代弁するかのような速度で。
「仲間を想う心意気や天晴である。だが、我は止められぬ。|ディアボロスランサー《我が槍》を取り戻した今や、死角なし!」
戦場を迸る生命の輝きは金沢港のほとんど巻き込み吹き荒れる。呑み込まれたものは全て転移の対象だ。
――棲家へ還れ。
どくん、と魎夜の心臓が高鳴る。
「……お断りだ」
移転を拒絶した途端、心身を酷い痛みとダメージが襲った。膝をつきそうになるのをすんでのところで堪える。
覚悟が違うのだ。
痛みだって、これくらい慣れている――!
転移を命じられた瞬間、魎夜の脳裏を過ぎったのは愛しい人の顔だった。まったく、どこまでこちらの覚悟を試せば気が済むのだろう。
だがそれは、むしろ逆効果だと思い知るべきだ。
「正月だし嫁のいる家には帰りたいが……その前にやることがあるんでな!」
「ぬッ――!?」
リミッターを解除した渾身の斬撃波は都怒我阿羅斯等の周囲に浮遊する花托を薙ぎ払い、種を刈り取ってゆく。
「なぜであるか。我の攻撃を受けて弱まるどころか強くなるとは……?」
目を細め、都怒我阿羅斯等は改めて魎夜を見た。その身は銀色。ユーベルコードによって詠唱銀の体に再構成された魎夜の心に燃えるのは『愛する者を守りたい』という強き決意だ。
ディアボロスランサーに眠るかつての友人たち。
家で待つ妻。
|この世界《シルバーレイン》に生きるあらゆるものたちのために。
「そうか。|想い《・・》か。益荒男はこの時代にもいたのであるな」
「てめえが何に絶望したかは知らねえが、俺は生きることにまだ絶望してないんでな」
薙ぎ払った剣の後には消し飛んだ花托の残滓のみが漂っている。あとは、都怒我阿羅斯等のみ。やってやるさ。
「ここは退けねェ。|ディアボロスランサー《そいつ》は返してもらうぜ」
大成功
🔵🔵🔵
レモン・セノサキ
【剣花】
ツヌガ、つぬ……
……。
よう、ラッシー
何に絶望したのかは知らないが
お前の悪夢を勝手にコッチにまで押し付けないで貰えないかな
迷惑だ
「奇術符」を次々に切り
幻影を身代りにして防ぎたい
全て無傷で避けられるとは思ってないけど
幻影には▲マヒ攻撃の▲呪詛返しを組み込んである
かなりの呪詛が重ね掛けされた筈だ
符を一枚放り、まずは"他のUCと同時使用"の枠で【天雨豪嵐】を起動!
仲間の傷を癒し、再行動を可能にしたうえで【指定UC】を放つ
弾速は遅いがド派手だ、注意を惹く程度には役に立つ
私程度に気を取られてていいのか?
|本命の隠し玉《トップエース》は……澪ちゃん、頼んだぞ!!
追撃付きの鎌の乱舞で刻んでやれ!
栗花落・澪
【剣花】
先制攻撃は…正直対処が思いつかないので
【オーラ防御】と【激痛耐性】で一旦我慢
お家にはまだ帰れないので信頼と根性見せます
この人名前なんだっけ
つぬ…らし……
ラッシーでいいよもう
見た目だけはかっこいい気もするのにね
新生命体は基本翼の【空中戦】で回避に徹しつつ
流石セノサキさん、頼りになるね
なら、ここからは僕も本気見せますか
紅色鎌鼬発動
ざっと300程増殖、浮遊させた鎌に
【高速詠唱、多重詠唱】で炎と雷の【属性攻撃、範囲攻撃】を付与
当たれば雷撃と炎のダメージも上乗せされるようにして
次々と【なぎ払う】
セノサキさんのUC効果により追撃付与と再行動
鎌の操作には魔力はほぼ使わないから
魔力切れは期待しないでね
「よく来たであるな猟兵よ。我の名は|都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》!!」
青白い輝きを放つディアボロスランサーを手にした男はレモン・セノサキ(Gun's Magus魔砲使い・f29870)と栗花落・澪(泡沫の花・f03165)を前に朗々と名乗りをあげる。
「ツヌガ、つぬ……」
「つぬ……らし……」
レモンと澪が同時につっかえた。
「もうラッシーでよくない?」
澪が提案する。
「……よう、ラッシー」
レモンが軽く手を挙げた。
「ら……」
都怒我阿羅斯等が言葉を失った。
「お前が何に絶望したのかは知らないが、コッチにまでそれを押し付けるのは乱暴に過ぎないか? はっきりいって迷惑だ」
「待て。普通に話を続けるな。さっき、我を何と呼んだ?」
「ラッシー」
即答する澪に都怒我阿羅斯等は生真面目に言った。
「違う。つぬがあらしとだ」
「ラッシーでいいよもう。見た目だけならかっこいいのに、ねえ? セノサキさん」
「もう少し覚えやすい名前ならよかったのにな。ラッシー」
「いや、だから」
「というわけで、ここは通してもらうよ」
レモンはざっと指の合間に挟めるだけ挟んだ『奇術符』を次々に切って自分の身代わりと入れ替わり、ディアボロスランサーの乱打を耐え抜く。都怒我阿羅斯等の全身に生えた七本の角が無くなるまでの辛抱だ。
「まだまだ……!」
多少の傷は構わず、奇術符を全て使い潰すつもりで猛攻を凌いだ。幻影が斬り捨てられる度に都怒我阿羅斯等の身には呪詛が返る。一枚ずつは僅かでも、それが何枚、何十枚と積み重なれば決して無視はできまい。
「なるほど、痺れを齎すか」
眉をひそめ、都怒我阿羅斯等はディアボロスランサーに満ちる生命の迸りを差し向ける。澪はオーラを纏わせた翼で自分を覆い隠し、少しでも衝撃を妨げようと試みる。
「お家にはまだ帰れないもんね……ッ」
「ほう、拒絶するか!」
だってこれ避けようがないじゃん、と澪は激痛に耐えながら思うのだ。ならば受け止める。それは信頼と根性があってこそ選び取れた対処法。だって今回は【剣花】が揃った戦場だから。ほら、光の奔流の向こうから雨音が聞こえる。
「流石セノサキさん、頼りになるね」
――あらゆる状態異常も負傷さえも洗い流す雨が、やってくる。
「来い!」
レモンの放った一枚の符が呼び寄せるのは|天雨豪嵐《テンペストフィールド》。辺り一帯を|豪雨《スコール》が襲った。
「これは?」
突如降り注いだ豪雨に都怒我阿羅斯等も驚いて空を見上げる。
さっきまで晴れていた金沢港はいまや暗雲と稲妻が支配する暗天の下にあった。見れば海も荒れている。紛うことなき嵐はしかし、レモンと澪の受けた傷を癒す恵みの雨だ。都怒我阿羅斯等も簡単にはやられまいとディアボロスランサーを再び掲げる。
「させるもんか!」
叫ぶレモンの眼前に超弩級の蒼い魔弾が顕れた。
深蒼の大収束魔弾の名は伊達ではない。摂理さえも崩壊させる可能性を秘めたそれは、強引に周囲の空間を捻じ曲げながら都怒我阿羅斯等に向かって突き進む。
「そのような速さに遅れを取る我ではあるまいぞ!」
だが、レモンは涼しい顔だ。
「おや、私程度に気を取られてていいのか?」
「なんだと? ……まさか!」
「本命の隠し玉トップエースは……澪ちゃん、頼んだぞ!! 派手にやってやれ!」
戦場に浮かぶ、きらきら紅色に透けるような鎌の数――ざっと300程。しかも全てに炎と雷の魔力が付与してあるという念の入れようだ。
「ぬッ……!」
次々と都怒我阿羅斯等を薙ぎ払うように斬り付ける度、それは火傷と痺れるような激痛を与える。やられた、と彼は臍を噛む。
「しかも、これは!」
「そう。この雨のおかげでね、追撃まで付いてるんだ。防御も次の攻撃も間に合わなかったでしょ? それもね、セノサキさんの天雨豪嵐が齎す恵み。再行動の加護」
にっこりと澪は微笑む。
「ちなみに鎌の操作に魔力はほぼ要らないから、魔力切れは期待しないでね」
「ぐ――」
さらにレモンが追い打ちをかける。
「考えを改める気になったか、ラッシー」
「つぬがあらしとだ!」
虹色の鎌鼬に追われ、都怒我阿羅斯等は金沢港の海際にまで後退を余儀なくされる。それは彼にとっては青天の霹靂であると同時に耐えがたい屈辱でもあった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
正直よくは知らん!だがその生命は!
人工魔眼の【瞬間思考力】と【動体視力】で放たれるディアボロスランサー、その直線上を認識、プラズマシューズで【推力移動】回避!
回避先に居た新生命体へ『ブレイズフレイム』体を裂いて噴き出す地獄の炎で【範囲攻撃】種ごと纏めて燃やす!
今お前の手にあって良いものではないと判断した!!
燃える新生命体から数多の種を【念動力】で取り出し【投擲】
都怒我阿羅斯等へ弾幕を放ち、地獄の炎を纏う種で【属性攻撃】
メガスラスターで飛翔【追撃】
体から噴き出す炎と地獄の炎を纏うフォースサーベルで【切り込み】
なんとしてでも【焼却】せんとする!
その手を離せ!オブリビオン!!
「あれがディアボロスランサー!」
朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵ジカクナキアクリョウ・f29924)の左眼を覆う眼帯型の|視力・思考補助用デバイス《人工魔眼》を通して観測された槍。それが世界の常識の埒外にあるのは一目瞭然であった。
正直、その由来を小枝子は知らない。
噂としては色々なところから伝え聞いてはいるものの、いずれも夢物語のようでいまいちぴんと来ない。
だが、それでも。
わかる。
わかってしまう……危険、警告、優先的排除要請。
「その生命は!」
――絶たねばらない。
この場で、この手で。
最初からプラズマシューズの出力は全開だった。
「我に勝負を挑むであるか、勇気ある猟兵よ」
「勝負? 生ぬるいことを! これは焼却だ!」
都怒我阿羅斯等が両手で構えたディアボロスランサーを振りかぶる。そのまま一直線に振り下ろす槍の軌道とタイミングを人工魔眼によって強化された瞬間思考力と動体視力が認識し、ノータイムでプラズマシューズに推力移動の指示を送る。
スラスターの反動を膝で殺し、小枝子は上体を屈めてディアボロスランサーの真下を潜り抜けることに成功した。
「なに!?」
まさか空振りするとは思ってもいなかったのだろう。攻撃直後で斬り返せない都怒我阿羅斯等をよそに、小枝子は突っ込んだ先にいた新生命体をブレイズフレイムの業火で呑み込んだ。
「ぐうッ……」
体に突き立てた軍刀を力一杯薙ぎ払い、吹き出す血の代わりにあふれる地獄の炎はまるで生きているかのように揺蕩う新生命体を花托ごと燃え尽くす。
「それは今! お前の手にあって良いものではないと判断した!!」
ブラストナックルを装着した掌を上向け、握り潰すように念動力を発動。燃える花托からくり抜かれた種を弾丸に変え、弾幕のように擲った。
「おおおッ――」
都怒我阿羅斯等もただではやられまいと足掻く。地獄の炎を纏う|種《弾丸》をディアボロスランサーで薙ぎ払い、身を守った――かに思えた。
「まだだ!!」
「!?」
メガスラスターを全噴射、弧を描いて飛翔した小枝子が逆さまの格好で頭上を取っている。手には双剣の形をとった蒼きフォースサーベル。その刀身が炎を纏い交ざり合って紫色に視界を染めながら、追撃を叩き込む。
「がッ……」
「その手を離せ! オブリビオン!!」
都怒我阿羅斯等の腕が燃え上がり、ディアボロスランサーを掴む手を包み込む。離せ――離せ!! 炎は容赦なく彼を焼き、ついにその指先が槍から離れた。
大成功
🔵🔵🔵
蓮見・双良
壽春さん(f33637)と
…それでもあなたは"人"にはなりたくないんでしょう?
困った女性(ひと)ですね
苦笑し
その善し悪しには触れず
分かりました
お付き合いしますよ壽春さん
僕としても…生命の槍(あそこ)には仲間がいるので
視力に集中させ攻撃は見切り回避狙う
無理なら極力素早くオーラ防御
激痛耐性で凌ぐ
UCで巨大な|神話の盾《アイギス》生成
勿論メドゥーサの首付で双眼も巨大
防御力強化
敵2撃目以降は盾で受け流しつつ
その広い視野で纏めて石化視線攻撃
…ねぇ、壽春さん
それでも僕は、"自分自身の為の望み"があるあなたが羨ましい
…"誰か"の為に生きてきた僕も
ある意味"物"なのかも―
…ふふ
ええ、そうですね
全く…敵わないな
壽春・杜環子
蓮見様(f35515)と
蓮見様はご存じ?
物って拒否権が無いの
使われて当たり前、それこそ“物”の存在意義
持ち主が決まったその時から―…“物”は選ぶことを許されませんの
あら
だってわたくしは“物”側よ?やぁねぇ
ほらごらんなさい。どんなに意思があろうと持つ者が全てを決めてしまう―従って、しまう
だから|あの子《ディアボロスランサー》は戻ってしまった
だって、|持ち主《都怒我阿羅斯等》が呼んだもの
付き合ってくださるの?嬉しい
そう―お友達がUC
痛くとも転移拒否
なぁに?
あら、まぁこれは異なこと
―こら、だめよ。貴方は人の子!
これからよ
まだまだお若いんだから!
一緒に遊んでくださるのでしょ?
…落とした種か片鱗かしら?
|そのアンティークな出自《陶器万華鏡のヤドリガミ》からか、壽春・杜環子(懷廻万華鏡・f33637)が話す声色は繊細なのに深みがあり、移り気だけれど柔らかという不思議な印象を聞く物に与える。
「蓮見様はご存じ?」
着物の袖を口元に当て、上目遣いの瞳は藍色。
「物って拒否権が無いの。ですから人に使われるのは当たり前。それこそ“物”の存在意義。持ち主が決まったその時から――……“物”は選ぶことを許されませんの」
「……それでもあなたは“人”にはなりたくないんでしょう?
蓮見・双良(夏暁・f35515)は耳に心地よいその声に苦笑を返し、困った|女性《ひと》ですねとだけ言った。
善し悪しはわからない。
物に対する愛着なら双良もあるけれど、それは人側の感想だから。物側からするとまた別の見方があるのかもしれない。
まさしく、その“物”側に在る杜環子は可愛らしい笑い声を立て、肯定する。
「あら。その通りよ、まるで見透かされてるみたいだわ。やぁねぇ」
そして、金沢港に降臨した男の手元にある槍を白磁のような指先で示した。
「ほら、|あの子《ディアボロスランサー》をごらんなさい、あれが証拠。どんなに意思があろうと持つ者が全てを決めてしまう。――従って、しまう」
それは使われる者の宿命。
主に呼ばれたら、戻る。
どこにいても、何をしていても。
……他の誰と共に在ったとしても。
「だって、|持ち主《都怒我阿羅斯等》が呼んだもの。それは心に響いたでしょう。きっと、魂が震えたことでしょうね」
「ゆえに、ですか」
双良は微笑み、杜環子に手を差し伸べた。
「わかりました。お付き合いしますよ壽春さん」
「よろしいの?」
「はい。僕としても……|生命の槍《あそこ》には仲間がいるので」
「嬉しいわ」
「こちらこそ」
一瞬にして意識を戦闘に切り替えた双良の瞳に映るのは、都怒我阿羅斯等が振りかざすディアボロスランサーのまばゆい生命の輝き、その発露。
「そこを退くのだ、猟兵よ。それとも汝らが我の手にかかって斃れる最初の生命となる覚悟であるか。ならば斬らん」
「お言葉ですが、退くのはそちらになるかと。槍は置いていってくださいね」
「知っておるようだな、ディアボロスランサーを」
「ええ、とてもよく」
果たして、都怒我阿羅斯等が渾身の力で振り下ろしたディアボロスランサーを双良は間一髪で躱しきる。保険に纏うオーラが余波で避けた。当たっていないのにこれでは、直撃したらどうなっていたことか。
「今なら家に還ることができよう。戦いよりも休息が欲しかろう」
「いいえ」
都怒我阿羅斯等の誘いを杜環子はぴしゃりと跳ね除けた。
……あぁ、痛い。
けど、耐えられなくはない。
与えられる痛みを上回る嬉しみのおかげで。
「せっかく蓮見さまがお付き合いくださるのですもの。わたくしは戦います。ほら、お友達もたくさん」
|万華千篇魔鏡《カレヰドスコヲプフタマワシ》、という。
百を超える小魔鏡が四方八方から都怒我阿羅斯等を映し、動きを追った。前からも横からも後ろからも、ありとあらゆる敵の姿がそこに見える。
「邪魔である」
だが、都怒我阿羅斯等が薙ぎ払った途端に砕け散るような痛みを受けたのは彼自身であった。
「なるほど、そういうことであるか」
「ご理解いただけましたら、よしなに」
ゆえの、お友達。
杜環子は目を閉じてにっこりと微笑む。
都怒我阿羅斯等は何かを言いかけたが、不意に迸った光線に石化する腕を見て双良を振り返る。
そこに、巨大な|神話の盾《アイギス》。
「どこから……いや、それが力か。夢の力。なるほど興味深い」
ゆえの|本物《メディーサの首付》か。
してやられたと、都怒我阿羅斯等は自嘲する。
取り込まれた時点で不利なのだ。
夢は、想像は時として現実を凌駕するから。
「我としたことが……逸ったであるか」
「……ねぇ、壽春さん」
都怒我阿羅斯等の猛攻を盾で受け流し、双良が言った。
「なぁに?」
「それでも僕は、"自分自身の為の望み"があるあなたが羨ましい」
「あら、まぁ」
目を見開く杜環子。
双良は敵を見据えたまま、ぽつりと。
「……“誰か”の為に生きてきた僕も、ある意味“物”なのかも――」
「――こら、だめよ。貴方は人の子!」
異なことを言う少年を、杜環子が優しく叱る。
こういう時、双良は彼女が|アンティーク《はるか年上》あることを思い出すのだ。
「これからよ、まだまだお若いんだから! わたくし、約束はきちんと覚えていましてよ。緒に遊んでくださるのでしょ?」
「……ふふ。ええ、そうですね」
ふんわりと暖かくなった心のままに双良は微笑んだ。
「敵いませんね、壽春さんには」
「年季が入っておりますもの」
ふふ、と笑って胸を張る仕草は可憐。
それから小首を傾げ、呟いた。
あれ、あの種。
気になっていたのだ、もしかしたら。
「……落とした種か片鱗かしら?」
大成功
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戒道・蔵乃祐
海を渡り帝に仕えた[額に角のある人]ですか
しかし今の貴方は|益荒男《荒ぶる者》、日出ずる国に降り立った狼藉者
ディアボロスランサーは死と隣り合わせの青春を戦い抜き、生命賛歌を語り継ぐべく新たなる宇宙にその身を捧げた先人達にこそ相応しい
未来に何も託すことが出来ないならば、骸の海で絶望し続けていればいい
◆外法・宿業無間輪廻
蓮は神聖なるもの。天上に座す梵天の寝所を象徴する
傲慢が過ぎる!
投擲+乱れ撃ちで戦輪を投擲、焼却+念動力で新生命体を焼き払う
祝詞槍は金剛身の武器受け+グラップルで受け止め
狂気渦巻く怨念を代償に残霊を召喚
来たれ異形!ドクター・オロチ!
怪力+重量攻撃の『ジャイアントカルシウム』で叩き潰す
|都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》は『日本書紀』にその名を見ることができる。海を渡り帝に仕えた“額に角のある人”という記述。
「しかし今の貴方は|益荒男《荒ぶる者》、日出ずる国に降り立った狼藉者も同然」
戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)は見放すように言った。
さまざまな意図や歴史、出来事が絡み合って複雑な状況を織り成してゆく。だがそれでも、誰かの一存で未来が閉ざされるようなことがあってよいはずがなかった。
「我の前に立ち塞がるのであるな、猟兵よ」
「無論」
蔵乃祐は首肯する。
「ディアボロスランサーは、今の貴方には相応しくありません」
「否。槍の持ち手は未来永劫、我以外には有り得ぬ」
「だとしても」
それはかつて死と隣り合わせの青春を戦い抜いた者たちが乗った|槍《宇宙船》。語り継ぐべき生命賛歌を胸に新たなる宇宙へ旅立った先人達の旅路を邪魔する権利など誰にもない。たとえ所有者であったとしてもそれは変わらない。
「ならば一人、骸の海で絶望し続けていればいい」
蔵乃祐は怒っていた。
ひとつには、先人達を乗せた槍を我が物顔で振るうこと。
そしてもうひとつ。
――蓮だ。
異形なる新生命体は神聖なる花を象り、生命を襲う。あれは天上に座す梵天の寝床を象徴する花だ。
「傲慢が過ぎる!」
その時、蔵乃祐の怒りが怒髪天を突いた。
それは戦輪。
環状の円盤の外側に刃がつけられた、殺傷能力の高い投擲武器だ。蔵乃祐はそれを念動力で操り、あっという間に花托と化した新生命体を焼き払った。
「これしきで!」
「――ふん!」
都怒我阿羅斯等が振り下ろすディアボロスランサーの一撃をなんと蔵乃祐はその身ひとつで受け止めたのだ。
「なん……だと……!?」
「来たれ異形! ドクター・オロチ!」
刹那、蔵乃祐の周囲に渦巻く怨念を代償として召喚された残霊が繰り出す超重量の『ジャイアントカルシウム』――!!
蔵乃祐の金剛身と鍛え上げられた|格闘術《グラップル》によって真剣白刃どりもかくやの状態でディアボロスランサーを封じられていた都怒我阿羅斯等にこの一撃を躱せるわけがなかった。
「ぐお、おおおお…――!!」
叩き潰され、滅しゆく男の手から離れたディアボロスランサーが修復を始める。やがて空の彼方を目指して高く高く……離れていくはずなのに大きさが変わらないのは小型化が解かれたからだろう。
再び宇宙を目指すディアボロスランサーを蔵乃祐は見届けた。
「達者で」
その姿が見えなくなるまで、とても誇らしそうに。
大成功
🔵🔵🔵