第二次聖杯戦争⑮〜熾盛のライスメキア
●高難易度シュミレーション『熾盛』
過去を知る者がいたのならば、そこは嘗てゲームセンター『シンデレラチャーム』であった。
今はもうないはずの施設がどうしてか『金沢市もりの里』に実在しているのだ。
だが、誰もがその光景に違和感を覚えない。
その光景に違和感を覚えることができたのは猟兵と能力者たちだけであったことだろう。超常を知覚させぬ世界結界の力は過去のものとなってなお、凄まじい認識阻害となってシルバーレイン世界において一般人の視界に超常を触れさせようとしない。
つまり、逆説的に言えば『シンデレラチャーム』は超常。
「猟兵の進軍が早すぎるぞジャック!」
「ジャックの言う通りだ! どうする気だジャック!」
「落ち着けジャック! 『万物を11倍にするユーベルコード』を持つ俺達が負けるわけがない!」
その言葉は全て同じ声色であった。
ナイトメア王『ジャック・マキシマム』は、『シンデレラチャーム』の中で互いの顔を見合わせる。
そう、11人いる。
あらゆるものを11倍に増やす力。
それは嘗て銀誓館学園の能力者を苦しめた。けれど、それでもなお能力者達は『ジャック・マキシマム』に勝利したのだ。
その敗北の味を知るからこそ、彼らは慌てふためいている。
「忘れたのかジャック! 俺たちはこの力を持ちながら、かつてユーベルコードも無い銀誓館に負けたことがあるのだぞ!」
「ふん……それはジャックに問題があっただけでは?」
「なんだとジャック、貴様言わせておけば……!」
互いに掴みかかり、『ジャック・マキシマム』の間にピリピリとした険悪な空気が流れ始める。
そう、彼らにとって猟兵の進撃速度は恐るべきものであった。
銀誓館学園の能力者たちもそうであったが、個で劣る彼らはまるで一つの生き物のように、ひとつなぎの存在のように己たちを絡め取り、敗北に塗れさせるのだ。
「喧嘩は後にしろジャック!」
「丁度いい。ジャック、此処にある高難易度シュミレーション『熾盛』というゲームから……ん? 何だコイツは……?」
「どうしたジャック! 何をそんなに驚いて……なるほどな。これならば敵が猟兵であろうと恐れるに値しない!」
「ああ、こいつは掘り出し物というやつだな! ジャック、早速コイツを増やすとしよう! 我がユーベルコード『イレブンハート』があれば!」
引きずり出されたゲームキャラクターは、所謂人型兵器の姿をしていた。
青い鎧のような人型ロボット。
そのデザインは騎士を思わせただろう。だが、『ジャック・マキシマム』は首を傾げた。
「おい、おかしいぞジャック! 本来ならコイツは、5m級の戦術兵器の筈だ。なんで俺たちと同じ大きさしか無い?」
「わからん。だが、些細なことだジャック! コイツのステータスを見ろ! とんだチートキャラクターではないか!」
「ああ! 早速11倍に増やして猟兵共を迎え撃とうではないか!」
煌めくユーベルコードの輝きが青い鎧のような人型ロボットを無数に増やしていく。
そう、その人型ロボットは嘗て、高難易度シュミレーション『熾盛』と呼ばれた『呪いのオンラインゲーム』に登場した絶対攻略不能と言われたキャラクターであった。
そのアイセンサーが無数に煌めき、『シンデレラチャーム』を埋め尽くしていく――。
●第二次聖杯戦争
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。シルバーレイン世界、金沢市もりの里にナイトメア王『ジャック・マキシマム』が現れ、骸の海よりゲームセンター『シンデレラ・チャーム』を引きずり出し、無数の『実体化したゲームキャラクター』に守らせた『ジャックマキシマムハウス』に作り変えてしまいました」
その脅威は言うまでもない。
ナイトメア王『ジャック・マキシマム』はユーベルコード『イレブンハート』を持ち、己の所有物を11倍に増やすという能力を持っている。
それにより『実体化したゲームキャラクター』を瞬く間に増やし、己の膨大なオブリビオンの軍勢に編成してしまうのだ。
「放置すれば、さらに彼らは軍勢を強化することでしょう。そうでなくても、今回『実体化したゲームキャラクター』は脅威です」
ナイアルテが示すのは、嘗て猟兵たちが電脳空間で戦ったシュミレーションのチートデータとも言われた『熾盛』と呼ばれる機動兵器のデータである。
今回、『ジャック・マキシマム』が『実体化したゲームキャラクター』というのが、この『熾盛』である。
青い鎧のような装甲を持ったロボット。
キャバリアのように5m級の戦術兵器であるという設定を持っているが、今回『ジャックマキシマムハウス』にて増えているのは人と同じ体高を持つ『熾盛』である。
「『熾盛』はチートデータとも言われるほどに高ステータスを持っています。5m級戦術兵器として引きずり出されていないことが幸いと言えば幸いですが、あまり関係はないかもしれません」
それほどまでに『熾盛』の能力は高い。
この怒涛の波状攻撃をかいくぐり、僅かな攻撃のチャンスを掴まぬかぎり『ジャック・マキシマム』を打倒することはできないだろう。
正直に言って、難しい戦いである。
「ですが、やらねばなりません。『熾盛』に弱点らしい弱点は……どういう理屈かわかりませんが、一体一体の稼働時間が短い、という点にあります。ですが、ユーベルコード『イレブンハート』によって即座に補充されるので、そのタイミングが好機となるやもしれません」
だが、それでも危険であることには変わりはないだろう。
ナイアルテは頭を下げて送り出す。
だが、彼女は知っている。
猟兵は一度勝利しているのだ。
かの攻略不能と言われた『呪いのオンラインゲーム』のチートデータたる『熾盛』に。
それを彼女は見てきたからこそ、数など重要ではないのだとうように猟兵たちの背を見送るのであった――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『第二次聖杯戦争』の戦争シナリオとなります。
シルバーレイン世界の金沢市もりの里に嘗て存在していたゲームセンター『シンデレラチャーム』を『ジャックマキシマムハウス』へと変えたナイトメア王『ジャック・マキシマム』と戦うシナリオになります。
自身の所有物を11倍にするユーベルコード『イレブンハート』によって彼は、『実体化したゲームキャラクター』である『熾盛』の大軍と共に皆さんを迎え撃ちます。
『熾盛』は本来は5m級の戦術兵器ですが、今回は人間と同じ体高です。
ですが、嘗て攻略不能とまで言われたステータスは健在であり、またこれが大挙して皆さんに襲いかかります。
ただし稼働時間が短すぎるという弱点を持っています。
ですが、『ジャック・マキシマム』の『イレブンハート』によってすぐに補充されてしまいます。その補充のタイミングを突くことができれば、好機に転ずることもできるかもしれません。
プレイングボーナス………11人のジャックと実体化ゲームキャラによる波状攻撃に対処する。
それでは『第二次聖杯戦争』、嘗ての強敵、ナイトメア王『ジャック・マキシマム』と『熾盛』の大軍に立ち向かう、皆さんの死と隣り合わせの青春の続き、その物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『ナイトメア王『ジャック・マキシマム』』
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POW : 悪夢グラップル
【ナイトメアと融合した両腕】が命中した部位に【悪夢のエネルギー】を流し込み、部位を爆破、もしくはレベル秒間操作する(抵抗は可能)。
SPD : マキシマム・ナイトメア
着弾点からレベルm半径内を爆破する【悪夢のエネルギー】を放つ。着弾後、範囲内に【悪夢の世界】が現れ継続ダメージを与える。
WIZ : フュージョンジャック
【他のジャック達】と合体し、攻撃力を増加する【マッスルジャック】と、レベルm以内の敵を自動追尾する【ケンタウロスジャック突撃】が使用可能になる。
イラスト:トリプル猿子
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
月夜・玲
こいつ自分自身と喧嘩しとる!
そのまま自滅してくれないかな…くれないか…
さておき、そっちが11倍で来るなら…こっちは100倍じゃい!
【Overdrive I.S.T】起動
召喚した200振りの剣を、雷と蒼炎の2振りで組ませて100組の剣士として運用
私は戦えないから、後方で『オーラ防御』で全方位にシールドを張って高みの見物!
100組の剣士のうち半分は前衛で『なぎ払い』や『串刺し』での攻撃や、『武器受け』等で戦線を維持する役割
残りの半数は『念動力』で浮いて上から『斬撃波』の雨を降らせて攻めていこう
特にジャックの突撃は複数体のを動員して前線で止めよう
いやフュージョンジャックは間違って無いけど色々危ない!
「来るぞ、ジャック!」
「わかっているともジャック! だがしかし、この『実体化したゲームキャラクター』の猛攻を連中は超えては来れないだろうさ!」
「油断は禁物だ。いくら我等がユーベルコード『イレブンハート』が『万物を11倍にする』のだとしても、連中もユーベルコードを持っているんだぞ、それを忘れるなジャック!」
「そんなことは百も承知だ! 言わんでもいい事言うなジャック!」
それはナイトメア王『ジャック・マキシマム』たちの言い争う声であった。
彼らは『イレブンハート』と呼ばれるユーベルコードによって己の所有物をどんなものであれ11倍にするという恐るべき力を持っていた。
だが、それでも銀誓館学園の能力者達は乗り越えてきた。
11人の『ジャック・マキシマム』たちにとって、猟兵の進撃速度は恐るべきものであった。もっと時間をかければ、さらに膨大な数の『熾盛』を生み出す事もできたはずだが、それをさせぬとばかりに猟兵たちは一気呵成に進んできたのだ。
「自分自身と喧嘩しとる!」
一方、月夜・玲(頂の探究者・f01605)は高みの見物であった。
いや、戦ってほしいと思わないでもなかったが、彼女のしっかりと戦場に降り立っている。
彼女のユーベルコード、Overdrive I.S.T(オーバードライブ・アイエスティー)は、己自身が戦えぬ状態になるユーベルコードである。
その代わり、自身と同じ強さを持った雷纏う百振りの模造神器と、蒼炎を纏った百振りの模造神器を召喚し、それらを飛来させて迫る『熾盛』の軍勢と切り結んでいたのだ。
だが、『実体化したゲームキャラクター』であるロボット兵器である『熾盛』もさるものである。
飛翔する剣という狙いがたき的を的確に撃ち抜き、または切り払ってくるのだ。
「あっちはそのまま自滅してくれないかな……くれいないか……とはいえ」
こっちは『ジャック・マキシマム』ほど単純ではない。
一体でも『熾盛』は尋常ならざる動きを見せて斬撃を躱し、模造神器を打ち払い続けている。
拮抗していると言えるだろう。
「雷と蒼炎の二振りで組ませてツーマンセルと行こうか!」
飛翔する剣が蒼炎と雷と共に乱舞する。
銃口を跳ね上げ、『熾盛』が振るうプラズマブレイドを受け止める。
そこに飛び込む他の剣が、機体を切り裂く。
だが、早い。
どうやったら、そんな判断ができるのだと言うほどに斬撃を躱し続ける『熾盛』。物量で押すことは無意味だ。
「けど、稼働時間が短いってことがあるんなら……負荷は完全無視。さあ、暴れ狂え!」
玲の瞳がユーベルコードに輝く。
乱舞する模造神器は一気に加速して『熾盛』を切り裂くのではなく翻弄する。
牽制の斬撃は戦線を維持し、『熾盛』のエネルギー切れを狙う。
「むっ! ジャック、『熾盛』の動きが鈍くなっているぞ! どういうことだ!」
「エネルギー切れということだジャック!」
「ええい、チートデータかと思えば、肝心の継戦能力が低いとは! 罠だろう、これはジャック!」
「いいから『イレブンハート』で補充しろ、ジャック!」
そんな『ジャック・マキシマム』の姿を玲はオーラでもってシールドを張り巡らせた高みの見物でもって見下ろす。
「うーわ……まあ、わかるよ。あんなデータ見たら喜んで増やしちゃうよね。だけど、そっちが11倍なら……こっちは100倍じゃい!」
確かに『イレブンハート』の力強大だ。
だが、ユーベルコードの本懐は、その柔軟性にある。
猟兵達の手繰るユーベルコードは千差万別。
規則性はあれど、そこにあるのは埒外たる証のような規格外。
故に玲の手繰る雷と蒼炎纏う剣は、『ジャック・マキシマム』たちの想定を超えていたことだろう。
「ならばジャック!」
「ああ、俺達が戦線を切り裂くしかなかろう!『イレブンハート』で増やした後は……! ゆくぞ、ジャック!」
「おうとも、ジャック! フュージョンジャ――……」
「いやフュージョンジャックは間違ってないけど、色々危ない!」
そう、権利的なあれそれでヤバイ。
なので、玲は『ジャック・マキシマム』たちのユーベルコードの間隙を縫うようにして雷と蒼炎纏う剣を飛ばし、これを阻止する。
「させないってば! スラッシュ! サンダー! ライトニングスラ――」
「おいやめろ猟兵! 貴様のほうが色々危ないだろうが!」
迫る雷纏う斬撃を前に『ジャック・マキシマム』の咆哮が『シンデレラ・チャーム』に響き渡る――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊だけど、今回は関係ない
早々にUC使用
陰海月「ぷっきゅ!」
…陰海月語を翻訳してお送りします…
お正月、急いで食べたお餅とおせちだけだった…ぐすん。
それにしても…ロボいいよねロボ!!(ロボ好きー)
でも、強いってだけで増やしてるのならダメダメ!
何か喧嘩してるし…よーし、隠密結界で隠れてパワー切れ待とう。
そして、パワー切れたら、光珠をポイポイ投げちゃえ!
あれ?相手もぼくと同じ系統のUCだね?
ふふん!でもぼくの方が強いもんねー。だってそっち、喧嘩してたでしょ?
結束力はぼくたちの方が上!
霹靂がね、隙をうかがってビリビリ体当たりするんだもん!
※
霹靂、雷属性体当たりスタンバイ。
「一体全体どうなっているジャック!」
「コイツ、思った以上に強いはずであるのだが! 燃費が悪すぎやしないかジャック!」
「引きずり出して見てからではないと性能だってわからんではないか、いいから備えろ! ジャック!」
ナイトメア王『ジャック・マキシマム』は己が骸の海より引きずり出した『呪いのオンラインゲーム』に登場する青いロボット兵器の性能に満足していなかった。
ステータスだけ見るのならば確かに凄まじいチートデータであった。
けれど、肝心の燃費が悪すぎる。
猟兵達の攻勢を僅かに凌ぐばかりで、すぐにエネルギー切れを起こしてしまうのだ。
「これでは猟兵たちの攻勢が……ジャック! 早くユーベルコード『イレブンハート』を使え! 補充するのだ!」
そんな喧々囂々たる彼らを尻目に馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の影から飛び出した巨大クラゲ『陰海月』は彼らの仲の悪さに辟易するようであった。
「ぷっきゅ!」
ユーベルコードによって合体した四悪霊の体を覆う巨大な『陰海月』の体。
明滅とうよりは、なめらかに色が変わる光景に『ジャック・マキシマム』たちは目を剥く。
「何だアレは、ジャック!」
「うおっまぶしっ! ジャックなんとかしろ!」
「ええい、喧嘩している場合か! ジャック! フュージョンジャックだ、ジャック!」
その言葉とともに『ジャック・マキシマム』は合体し、精悍たる体躯へと変わる。
しかし、『陰海月』は恐れては居なかった。
何故ならば、自分は今頼れる仲間たちと一緒にいる。
四悪霊・『虹』(ゲーミングカゲクラゲノツヨサヲミヨ)たるユーベルコードは、1680万色に輝く四悪霊の呪詛を纏うもの。
どれだけ敵が迫るのだとしても、敵が強大な力を持っているのだとしても、喧嘩している連中に負けるほど自分たちは弱くはないのである。
「ぷうきゅ!」
膨れるように体がたわむ体とともに宙に飛ぶ。
放つゲーミングカラーの光珠が乱舞するように青いロボット兵器『熾盛』に襲いかかる。
その攻撃の全てがかわされ、弾かれる。
けれど、動きを止めればよかっただけなのだ。
なにせ、『熾盛』の弱点はエネルギー切れなのだ。
それほどまでに燃費が悪い。そして、その燃費の悪さは『ジャック・マキシマム』のユーベルコードで解消できる。
「クソッ、またエネルギー切れか! ジャック!」
「面倒だなジャック! そっちでやっといてくれないか!」
「いいからやれ、ジャック!」
はぁ、と『陰海月』はため息をつく。
ロボットはとっても良いものだ。ロボ好きだからわかる。あの青いロボはきっとかっこいいし、強いのだろう。
けれど、そんな愛情無きままにロボを増やしたところでダメダメなのである。
それに喧嘩していて、こっちの狙いにすら気がついていない。
エネルギー切れを起こした『熾盛』が止まった瞬間を狙って、『陰海月』は飛ぶようにして跳ねる。
「ぷっきゅっきゅ!」
投げ放つ光珠は次々と『ジャック・マキシマム』たちを襲う。
「うおお!? ジャック、どうする!?」
「自分で考えろジャック! 俺はお前なのだから! お前は俺なのだから!」
「ぷきゅ!」
「クエッ!」
同じ存在なのに結束力がない。
違う存在であるのにこちらは結束力が上だ。ならばこそ、『霹靂』が一鳴きして雷纏いながら『ジャック・マキシマム』の背を打つ。
「うごっ!? ジャック! 後ろからも来ているんだが!?」
「不意打ちとは! ジャック対応しろ!」
「ぷっきゅ!」
同じようなユーベルコードであっても此方のほうが強い。
そう言い張るように『陰海月』は仲間と共にその放つ光珠とともに喧嘩し続ける『ジャック・マキシマム』を打ちのめすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
今度の敵はあの『熾盛』か。それが11体に、ジャック・マキシマムが11人。面倒の極みだわ。
ここはこの絶陣でいこう。
「全力魔法」砂の「属性攻撃」「範囲攻撃」「道術」で紅砂陣。
ゲームセンターごと、紅い砂に変える。
うん、見晴らしが良くなったわ。
紅砂よ、その青いロボットに絡みつきなさい。細かく内部へ入り込む砂粒は、精密機械の天敵。11体まとめて擱座させる。
ジャックたちは流砂に引き込んで動きを止めてから、紅砂で作った武器類で全方位から攻撃。砂に埋もれてたら、満足に反撃も出来ないでしょ。
とどめは紅砂の大津波。砂に埋もれて骸の海へ還りなさいな。
やっぱり自分の領域で戦えるのは楽でいいわ。
ゲームセンター『シンデレラ・チャーム』に満ちる青いロボット兵器群。
其の名は『熾盛』。
嘗て『呪いのオンラインゲーム』の中に登場したロボット兵器であり、チートデータとも言われたステータスを持つゲームキャラクターである。
ナイトメア王『ジャック・マキシマム』によって『実体化したゲームキャラクター』であるのだが、本来の5m級の体高はなく、人間と同等のサイズに収まっているのは、一体いかなる理由であったのか。
だが、脅威であることには変わりない。
「今度の敵はあの『熾盛』か。それが11体に、『ジャック・マキシマム』が11体」
はあ、と息を吐き出すのは、村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)であった。
これは面倒の極みでしかない。
「ジャック!『イレブンハート』で『熾盛』のエネルギーは満タンだ! 早速コイツらで猟兵共を駆逐してやろう!」
「いいから早くしろ、ジャック! 敵の攻勢はまだ終わってないんだぞ!」
「慌てるなジャック!『イレブンハート』があれば、どんなにエネルギー切れを起こしても、すぐに回復させられる! 焦れば猟兵の思う壺だぞ!」
『ジャック・マキシマム』たちが一斉に集まる。
同じ存在であるというの馬が合うのか合わないのか、なんだか喧嘩ばかりしているように思える。
そんな彼らをみやり、ゆかりはしかし迫る『熾盛』の姿を捉える。
あの機体の強烈な強さは理解できる。
ならばこそ、ゆかりの瞳がユーベルコードに輝く。
「ここはこの絶陣でいこう――古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。貪欲なる紅砂よ、万物全ての繋がりを絶ち、触れるもの悉くを等しく紅砂へと至らしめん。疾!」
自身を中心にして周囲の無機物を急速に風化させる紅い流砂と砂嵐に変換し、一気にせまる『熾盛』たちを飲み込んでいく。
だが、いくつかの『熾盛』はこれを躱している。
即座にこの流砂と砂嵐がどのようなものであるのかを理解したのだろう。
だが、遅い。
「ええ、遅いわね」
ゆかりは己を中心にしたゲームセンター『シンデレラ・チャーム』の建物をも風化さえ、紅い砂嵐に変えていく。
「馬鹿な! なんだあのユーベルコードは! ジャック!」
「無機物を風化させるユーベルコードだ、ジャック! しかも手当り次第と来ている!」
「うん、見晴らしが良くなったわ」
ゆかりは微笑み、流砂を躱した『ジャック・マキシマム』を見上げる。
「砂粒って、精密機会の天敵でしょ。紅砂よ、その青いロボットに絡みつきなさい」
流体となった紅砂が生きているかのように『熾盛』に追いすがる。
これがミサイルや攻撃などと言った実体を持つものであったのならば、『熾盛』を捉えることはできなかっただろう。
砂という流動体ゆえに『熾盛』はこれを払う事ができずに飲み込まれていく。
さらに腕のように操作した流砂が『ジャック・マキシマム』たちの足を捕らえる。
「うおっ! こいつ……! ジャック! 助けてくれ!」
「いや、こっちも助けてほしいんだがジャック! おいひっぱるな!」
引きずり込まれていく『ジャック・マキシマム』たちの姿をみやり、ゆかりは首をなんともまあ、と思わないでもなかった。
彼らの行動は全て同一の11体であるからこそ、自身だけが生き残ることを前提としている。
ならば、そこに助け合いというものは起こらないのだろう。
故に互いの足を引っ張り続ける。
流砂は流れるように彼らを掴み、その体を飲み込んでいく。
「満足に反撃も出来ないまま終わっていきなさいな、ナイトメア王」
ゆかりはゆっくりと肩を回し、その瞳に輝くユーベルコードでもって彼らを睥睨する。
自らの領域に引きずり込んで戦う。
これが肝要である。それに、とゆかりは付け足すように流砂に飲み込まれていく『ジャック・マキシマム』に告げるのだ。
「やっぱり楽でいいわ」
同一であるからこそ反目し合う敵など、と――。
大成功
🔵🔵🔵
紫・藍
あや~。
数とチート性能による暴力でっすかー!
溜まったものではないのでっす!
ですがですが、ジャンル違い、というものがあるのでっすよー?
どれだけチートとはいえロボットシミュレーションゲームということでっすので。
果たして、音ゲー、ダンスゲーに対応できまっすかー?
藍ちゃんくん時間稼ぎは得意でっすので!
エネルギー切れまでライブ展開なのでっすよー!
切れたら切れたでジャックの11人さんに果たして補給できまっすかー?
何せライブ中に私語で騒ぎ立てるというNG行為行ってますからねー!
UCも11倍も相当弱体化してらっしゃるのではー?
悪意なき綺麗なジャックさんになるのでしょうかー?
藍ちゃんくんのお歌で幕引きでっす!
流砂の中から這い出すナイトメア王『ジャック・マキシマム』、彼は11体のうちの一人であった。
「ぐはっ! ぺっぺっ! ひどい目にあった! ジャック! いるか!」
「ぶはっ! ああ、居るぞジャック!」
「まったくもって猟兵のユーベルコードは奇想天外なものばかりだ! ジャック!」
次々と流砂に変わったゲームセンター『シンデレラ・チャーム』から這い出し、彼らは口々に消耗しきった体に鞭打つ。
「『イレブンハート』どころではないなこれは! ジャック、仕方がないあれをやるぞ!」
「ああ、こうなればジャックが合わさりマッチョなマッスルジャックに!」
「ああ、こうなっては仕方ない。ジャックと力を合わせ、ケンタウルスジャックに!」
「馬鹿なこと言うなジャック! 此処は筋肉の力を見せるときだ!」
「いいや! 機動力で敵を翻弄するときだジャック!」
そんな身内の喧嘩を紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)は尻目にせまる青いロボット兵器『熾盛』の攻勢を躱す。
「あや~喧嘩でっすかー! 喧嘩するほど仲がいいっていいますけど、どうなんでしょう?」
けれど、今はそんな余裕はない。
『ジャック・マキシマム』のユーベルコード『イレブンハート』によって『実体化したゲームキャラクター』である『熾盛』のステータスは尋常ならざるものであった。
言ってしまえば数とチート性能による暴力そのものだ。
これは溜まったものではないと藍は迫りくる『熾盛』の攻撃を躱すので精一杯だった。
けれど、藍もまた猟兵だ。
ユーベルコードに輝く瞳が、世界を変える。
「確かにやってられないでっす! ですがですが、ジャンル違い、というものがあるでっっすよー?」
藍のままに輪が侭に(ズットズットキミガキミデアルヨウニ)。
藍は叫ぶ。
「Present day, Present time」
それは周囲をライブ会場へと変えるユーベルコード。
あらゆる者全てにライブをより素晴らしくするための行為全てを強いる。
これが世界の理を変えるユーベルコード。
「どれだけチートとは言えロボットシュミレーションゲームということでっすので! 果たして音ゲー、ダンスゲーに対応できまっすかー?」
藍の言葉に呼応するように『熾盛』たちが、ぬるりとした動きで踊り始める。
その光景はあまりにも奇天烈な光景であっただろう。
ルールに従う。
それが『熾盛』の持つアルゴリズムであるというのならば、ゲームジャンルは問わないのかもしれない。
けれど、これは音ゲーだ。
つまり、攻撃行為は一切できない。
『熾盛』が優れたゲームキャラクターであればあるほどに、藍を追い詰める攻撃はできないということになる。
今の戦場は即ち撃墜数を競うのではなく、スコアを稼ぐものであるからだ。
「藍ちゃんくん時間稼ぎは得意でっすので!」
「くそう! ジャック、まんまと敵の策略に『熾盛』が嵌められているじゃないか!」
「言うな、ジャック! それだけチートってことだ! 対応できてしまうってことは!」
「いかんぞ、エネルギー切れを起こしてしまう! ジャック、エネルギーを充填しなければ」
そんな『ジャック・マキシマム』たちの動揺に藍はマイクパフォーマンスで切り込むのだ。
「ダメですよ、『ジャック・マキシマム』さん。ライブ中に私語で騒ぎ立てるというNG行為でっす! コール以外のことをしちゃダメダメでっすよー!」
その言葉に藍のユーベルコードが呼応し、『ジャック・マキシマム』たちの肉体は弱体化していく。
「なんだ、力が抜けていくぞジャック! どういうことだ!」
「しまった! これはライブだ、ジャック! コールもすぎれば迷惑行為……! 警備員につまみ出されてしまう!」
「そういことでっすよー! 藍ちゃんくんのお歌で幕引きでっす!」
藍のマイクが掲げられ、ライブは最高潮に達する。
歌声が響き渡り、『ジャック・マキシマム』たちはせっかく合体したのに、弱体化されるというペナルティを受け、ライブ会場と化した『シンデレラ・チャーム』からはじき出されるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
バルタン・ノーヴェ
POW アドリブ歓迎
キャバリア……閃きマシタ!
ではワタシもキャバリアを持ち込みマース!
ジャックマキシマムハウスを踏破して、ジャックと熾盛の前に出てからマイキャバリア・スコールを取り出しマース!
ヒャッハー!
元々5m級の戦略兵器を呼ぼうとしていたならば、広さは十分にあるはず!
序盤は室内を縦横無尽に駆け回り、熾盛が稼働限界に達するのを待ちマース!
動かなくなった熾盛目掛けて、ゲットイット! スコール!
生成されたゲームキャラを捕食することで!
それに施された『イレブンハート』を獲得するのデース!
さあ、スコールたち!
11倍に増えて攻撃の時間であります!
悪夢グラップルに遠くからガトリングガンをお見舞いデース!
『熾盛』の本来のキャラクターデータは体高5m級の戦術兵器、という設定である。
しかし、『シンデレラ・チャーム』に大軍として存在する『熾盛』は、人と同じ体高であった。
いわば、アンドロイドのような。
そんな青い鎧の騎士の如きロボット兵器が『ジャック・マキシマム』のユーベルコード『イレブンハート』によって増やされ、猟兵達の行く手を阻んでいる。
「ジャック! 漸くライブが終わったようだぞ! これでまた!」
「ああ、ここからが巻き返しというものだ! ジャック、俺の両手が回転して唸って悪夢のエネルギーを撒き散らす!」
「勝利をつかめと轟いて絶叫する! ジャック! これで決めるぞ!」
ナイトメア王『ジャック・マキシマム』たちの腕に装着されたリボルバーガントレットが回転し、充填された悪夢エネルギーが迸る。
だが、そんな彼らを前にバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は、『シンデレラ・チャーム』もとい『ジャックマキシマムハウス』を持ち込んだキャバリア『スコール』と共に天井をぶち抜いて、ダイナミックエントリーをしてみせるのだ。
「ヒャッハー!」
「なんだなんだジャック!?」
「何が起こったジャック!?」
彼らの動揺も解かるというものである。突如として天井をぶち抜いて現れたのは体高5m級の戦術兵器、キャバリアであった。
狼を模したかのような姿。
その巨体が、『ジャックマキシマムハウス』の内部を駆け抜ける。
「猟兵だ、ジャック!『熾盛』を向かわせろ!」
「ワタシは閃いたのデース!」
バルタンは『スコール』と共に『ジャックマキシマムハウス』を踏破し、『熾盛』にせまる。
あの大軍たる要因は『イレブンハート』である。
万物を11倍にする力。
そのユーベルコードによって増やされた『実体化したゲームキャラクター』である『熾盛』はたしかに強敵であった。
チートデータと呼ばれるにふさわしい存在であったことだろう。
戦って勝つ、というのは難しいかもしれない。
けれど、『熾盛』の攻撃を躱すことに注力すれば……。
「躱すことはギリギリのギリデース!」
「ちょこまかと! ジャック! 俺のこの拳で!」
「いや待てジャック! 逆に『熾盛』の邪魔になる!」
『スコール』が天井、床、壁、あらゆるものを使って跳ねまわりながら『熾盛』の攻撃を躱す。
それは『熾盛』の唯一の弱点である稼働時間の短さ、エネルギー切れを狙ってのことであった。
攻撃しても当たらない。
逆にカウンターを叩き込まれてしまう可能性があるのならば、エネルギー切れを狙ってしまえばいい。
その狙いは正しく、エネルギー切れを起こした『熾盛』が次々と挙動を止める。
「今デース! ゲットイット!『スコール』!」
開かれる顎。
其の牙並ぶ顎は、ユーベルコードの剣呑たる輝きに満ちていた。
【RX-Haed】フェンリルバイト(フェンリルバイト)。それが『スコール』の顎部武装の名であり、同時にユーベルコードの名であった。
「ジャック、何をするつもりだ、あいつは!」
「喰らっている……!? まさか!? ジャック、まずいぞ!」
「もう遅いデース!『イレブンハート』で増やされたゲームキャラクターを捕食することで! そこに施された『イレブンハート』を獲得するのデース!」
そのユーベルコードの煌めきが『スコール』を包み込み、『万物を11倍にする力』によって、『スコール』の巨体が11体に増えるのだ。
敵の力。
それを捕食して得るユーベルコード。
「馬鹿な、ジャック! 俺のユーベルコードが!」
「なんてデタラメな! ジャック、逃げ……」
「そんなわけありまセーン! 遠くから『スコール』全機でガトリングガンの掃射デース! ヒャッハー!」
その言葉とともに放たれる11体の『スコール』から浴びせかけられるガトリングガンの弾丸。
それは雨よりも酷く『ジャック・マキシマム』たちに降り注ぐだろう。
強烈にして苛烈。
『シンデレラ・チャーム』は内部からは破壊されるように弾丸を撒き散らし、次々と壁をぶち抜いては『ジャック・マキシマム』を逃さぬとばかりにバルタンの笑い声が木霊するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
いかな機体であろうと歩みを止める理由になりはしない!
|禍葬偽神虐殺《テオスファギ》、喰い壊せ!!
フォースサーベル変形双剣形態
11の偽神細胞腕と11の偽神細胞剣を生やし【武器受け】
13の剣を【第六感】と【瞬間思考力】で操り熾盛の攻撃を【受け流し】
【早業】稼働時間の切れ間を狙い、プラズマシューズ【推力移動】
ジャック・マキシマムへ斬り掛る!
王は、一人で良いだろうが!!
【フェイント】剣を引っ込め腕を倍に増やし、
ジャックの両腕を偽神細胞腕で掴み【カウンター解体捕食】
悪夢のエネルギーを腕ごと喰らい、壊して【エネルギー充填】
更に腕を生やし、伸ばし、周りのジャック・マキシマム達を【怪力】で捕え、喰らい壊す!!
ゲームセンター『シンデレラ・チャーム』は内部から放たれた弾丸によって破壊され、壁を吹き飛ばされていた。
ナイトメア王『ジャック・マキシマム』によって要塞化された『シンデレラ・チャーム』と言えど内部から破壊されることは想定していなかったのだろう。
「めちゃくちゃだ、ジャック! ここまで猟兵達がデタラメな存在であるとは!」
「わかっていたはずだぞ、ジャック。連中が生命の埒外であることは」
「だからといっても無茶がすぎるぞ。このままでは、ジャック! 俺たちの敗北が決まってしまう!」
「案ずるな、ジャック! 俺たちには『イレブンハート』がある! どれだけ消耗されようとも、ただ一人残ればそこから巻き返せる!」
彼らは11体のナイトメア王。
しかし、同一であるがゆえに連携が取れるかと思いきや、ただ一人でも残ればいいがゆえに互いよりも己という自己のみを保全しようとする。
その行動理念が彼らを仲違いさせる。
そんな彼らとは裏腹に『シンデレラ・チャーム』を守る無数のロボット兵器『熾盛』は強靭なる存在であった。
「いかな機体であろうと歩みを止める理由になりはしない!」
朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は止まらなかった。
どれだけ人間大になった『熾盛』が今日的であっても関係なかった。
己の目には倒すべき敵として映っている。
ならば。
「喰い壊せ!!」
禍葬偽神虐殺(テオスファギ)。
それは己の体より11の偽神細胞による腕と、剣を生み出すユーベルコード。
無数の腕が奔るようにして『熾盛』と切り結ぶ。
斬撃が飛ぶ。
11の斬撃に対して『熾盛』は対応してくる。反応している。尋常ならざる動き。これが本当に人が操縦でもって為せる動きであるのかと疑うほどの速度で持って目の前の『熾盛』は小枝子の斬撃をいなす。
「『熾盛』……ッ!」
『実体化したゲームキャラクター』である『熾盛』は語らない。
けれど、その太刀筋、動き、あらゆるものが小枝子を追い詰める。まるで無数の猟兵から攻撃されているかのように錯覚するほどの技量。
だが、それでも小枝子はしのぎ切る。
己の瞬間思考と第六感を頼りに彼女はプラズマブレイドの斬撃をかすめながらも、躱し続ける。
「いいぞ! そのまま押し切れ! よし、ジャック! 俺たちも猟兵に打ち込んでやろう!」
「うむ、このまま……おいまてジャック、エネルギー切れが!」
小枝子は、その瞬間を見逃さなかった。
エネルギー切れ。
それこそが『熾盛』の弱点だった。
尋常ならざる機動性と攻撃性能を持つが故に、唯一の弱点であるエネルギーの消耗速度こそが『熾盛』の猛攻をかいくぐる唯一の方法なのだ。
「ま、まずいぞジャック!」
「案ずるな! このまま誰か一人でも残れば、ジャック!」
だが、小枝子は切り込む。
エネルギー切れを起こして止まる『熾盛』を尻目の小枝子は一気に『ジャック・マキシマム』に迫る。
「王は、一人で良いだろうが!!」
迫る偽神細胞腕が握り締めた剣をみやり、『ジャック・マキシマム』もまたリボルバーガントレットを唸らせる。
「多ければ多いほうがいいだろうが! ジャック! 挟み撃ちにするぞ!」
「おうとも! ジャック息を合わせろ!」
だが、瞬時に小枝子は剣を引っ込め、さらに腕を倍に増やす。
都合22本の腕部が一気に『ジャック・マキシマム』へと掴みかかる。しかし、振り払われる。悪夢のエネルギーを放ちながら彼らの腕が小枝子に叩きつけられる。
「自分に触れたな、ナイトメア王!!」
「なに……!? ジャック! こいつまさか……!!」
「喰らえ、喰らい、壊せッ!!!」
小枝子の伸びた偽神細胞の腕が叩き込まれた悪夢のエネルギーをも食い散らかすように捕食していく。
あらゆるものを捕食し、己のエネルギーに変える偽神細胞が小枝子に力を溜め込ませる。
「お前たちは、自分の歩みを止める理由になってない!」
振るう腕部が『ジャック・マキシマム』たちを吹き飛ばし、戦場に満ちる悪夢のエネルギーを食らいつくさんと唸りを上げるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
凶月・陸井
妻のシリル(f35374)と参加
ジャック・マキシマム…相変わらずの喧しさだな
でも、お前達の思惑を正面からへし折る機会だ
勿論、全力で行かせてもらう
「任せてくれ。しっかり護るよ」
シリルに言葉を返し俺は初手から全力
即座に【水遁「水獄檻」】を使用し
半径130mの全周に苦無を乱舞させる
範囲内へ入る敵には苦無を浴びせつつ自分も銃や近接で対処
シリルのチャージ完了と、敵の補充のタイミングまでは俺が護り切る
「シリルにもロボにも、指一本触れさせる気はない」
ロボの目が光ったらシリルのターンだ
二人なら大半を薙ぎ払えるし、もしもジャックが残るなら
俺は最後に、その力と合わせてジャックへ切り込んで決着を
「王手だ、ジャック」
シリルーン・アーンスランド
夫の陸井さま(f35296)と
11人の夢魔の王…
この騒がしさも久しぶりでございますね
久闊を叙す気は微塵も
疾く追い返しましょう
「それでは陸井さまお願いを致します」
戦闘前に優雅に一礼し
UCメガリス・さまよえる舵輪を詠唱致します
ロボさまがご顕現されましたら一礼し
ご助力に心から謝してから
奮戦なさる陸井さまの敵の輩を指し
「どうか、強くお溜めになってのち、お力お示し下さいませ!」
とお願いを致します
チャージの間はわたくしも剣もて攻撃を全力排除
陸井さまの水獄檻と併せロボさまのお目が光れば
蹂躙のお時間でございます
過去の亡霊が如き、11人だろうが我らを止めること能わず!
此度も臍を噛み水底へ沈む次第となりましょう!
戦場に満ちていた悪夢のエネルギーを食い破られながら、ナイトメア王『ジャック・マキシマム』は唸るしかなかった。
「ジャック! これはまずいぞ! 非常に!」
「喚くな、ジャック! わかっていることだ! 猟兵……生命の埒外と言えど過ぎるぞこれは!」
「だが幸いに『イレブンハート』は『熾盛』を増やすことができる! エネルギーの充填は終わったのかジャック!」
「出来ているとも! 此処からだ!『ジャック・マキシマム』は此処からでも巻き返せるのだ。それがナイトメア王たる由縁だ、ジャック!」
オブリビオンとなってなお、その喧しさは健在であると『シンデレラ・チャーム』の内部から破壊された壁面から響く声に凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)は、あの死と隣り合わせの青春を思い出した。
誰も彼もが傷つかずにはいられなかった時代があった。
そうしなければ生きることすら困難な時代があった。
けれど、それだけではなかったのだと今ならば言えるだろう。隣に立つ妻の姿に彼は改めて思うだろう。
「11人の夢魔の王……この騒がしさも久しぶりでございますね」
シリルーン・アーンスランド(最強笑顔の護り風・f35374)は、言葉とは裏腹に久方ぶりであると挨拶を交わすつもりはなかった。
過去の化身。
オブリビオン。過去の強敵が再び蘇ったこと。
それはいずれにせよ、自分たちが再び戦列に立たねばならぬことを示していた。けれど、それを憂うことはない。
何故なら、銀の雨が降る時代も。それが止まぬのだとしても、正しい未来を護るためにこそ己の歩みはあるのだ。
己が抱くメガリスが如何に、道をさまようのだとしても。
「ああ、奴らの思惑を正面からへし折る機会だ」
陸井は己の背に覆った一文字の意味を知らしめる。
全ては護るためにこそ。
彼の心の中に満ちる言葉がある。
その言葉に後押しされるように彼は『シンデレラ・チャーム』の内部へと飛び込む。それを阻止せんとするように青い鎧の如きロボット兵器『熾盛』が殺到する。
「陸井さま、お願いを致します。疾く夢魔の王を追い返しましょう」
「任せてくれ。しっかり護るよ」
優雅に一礼するシリルーンを陸井の瞳が見て、ユーベルコードに輝く。そして、シリルーンは見ただろう。彼の背に追う『護』の一文字を。
その一文字を知るからこそ、任せることができる。
目の前に迫る『熾盛』の凄まじさは、対峙するだけでわかる。
尋常ならざる力量。
故に陸井も本気だ。後のことは考えない。
煌めくユーベルコードが水遁「水獄檻」(スイトン・スイゴクカン)となって放たれる。
水のクナイが乱舞するように飛ぶ。
凄まじい速度。嵐の如き水の斬撃が『熾盛』たちを取り囲み、一分の隙もないほどに攻撃を仕掛ける。
全力のユーベルコード。
だが、その乱舞するクナイの間隙を『熾盛』は手にしたプラズマブレイドで切り払い、躱し、踏みつけ、防ぎ、凌ぐ。
チートデータとも言われた力は、言葉通りであった。
これがゲームとして成り立つのかと陸井は背筋に冷たいものが走る。けれど、それでも前に踏み込む。
この程度の恐ろしさも、窮地も、陸井は踏み越えてきたのだ。
多くの戦いがあった。多くの経験があった。多くの別離があった。だから、今此処に己が在る。
その意味は、ただ一つ。
我護る故に我在りと叫ぶ心のままに陸井は、迫る『熾盛』と手にした苦無でもって受け止める。
己の背には護るべきものがあるのだ。
「閉じろ、水獄檻」
己ごと閉じ込める一手。
その水の乱舞が陸井をすり抜けるようにして『熾盛』を切り刻む。
だが、まだだと思った。
「キャプテンさま…!ハナさま!皆様!どうかお力お貸し下さいませ!」
手にしたメガリス。
舵輪。
それは、シリルーンの手より中に浮かび、巨大なメガリスロボットへと変じていく。その姿は、嘗て在りし存在。
「ぬう! ジャック! あれは!」
「あれは『さまよえる舵輪』! メガリス! どういうことだ、どうしてあれがここにあるんだジャック!!」
「キャプテンさまは言ってくださいました。『お前が持って行け』と、託してくださったのです。ならばどうか!」
シリルーンの言葉と共にメガリスロボットが頷く。
満ちる力は、雷。
迸る力の奔流はメガリスロボットの中心に収束していく。
「陸井さま!」
「ああ、共に行こう」
誰かのために。自分のために。
多くの戦いを経験したからこそ、彼らは前に、前に進んでいく。過去を振り返ることがあれど、歩みは止まらない。
時が逆巻くことはない。
それをオブリビオンたる者たちは知らない。
己の欲望のままに振る舞う。だからこそ、時を停滞さえ、世界を破滅に導く。
「シリルにもロボにも、指一本触れさせる気はない」
陸井が『熾盛』を受け止め、迫る『ジャック・マキシマム』へと蹴り飛ばす。
「まずいぞ、ジャック! あれは!!」
「もう遅い!」
メガリスロボットの瞳が輝く。それはユーベルコードの輝き。
満ちる雷が躯体より迸る。
極大の雷の奔流がメガリスロボットの合わさった両掌に集まる。
「蹂躙のお時間でございます。過去の亡霊が如き、11人だろうが我等を止めること能わず! 此度も臍を噛み水底へ沈む次第となりましょう! キャプテンさま……! ハナさま!」
その事と共に光条がほとばしり、『熾盛』を巻き込んで『ジャック・マキシマム』を飲み込む。
しかし、それで終わらない。
『ジャック・マキシマム』は一人でも残せば、そこから『イレブンハート』によって再起ができる。
だからこそ、陸井は飛び込む。
「王手だ、ジャック」
放つ一閃が『ジャック・マキシマム』の一体の体を袈裟懸けに切り裂いた――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
…久方ぶりに戦争に来てみれば、随分とまた濃い連中…連中?に遭遇したわね
…質、量ともに侮れない。戦力の差は歴然だけど…まあ、それだけね
事前に施した肉体改造術式により神経系を強化して反応速度の向上を行いUCを発動
自身に星詠みの精霊を降霊し自他の未来を残像として暗視する事で行動を見切り、
大鎌を武器改造した聖剣による早業の乱れ撃ちで波状攻撃を受け流し迎撃する
…無駄よ。単なる力押しで何とかなるほど、今の私は易しくない
…そして、こうして耐え続ければ動きが止まる。私の詠んだ未来の通りにね
敵群の動きが鈍った瞬間に怪力の踏み込みで敵の死角に切り込み、
限界突破した魔力を溜めた聖剣で敵をなぎ払う時属性攻撃を行う
光条の一撃がナイトメア王『ジャック・マキシマム』を青いロボット兵器『熾盛』ごと吹き飛ばし、多くの『ジャック・マキシマム』を巻き込みながら滅ぼす。
猟兵の一撃によって大多数の『ジャック・マキシマム』は消えていく。
だが、まだである。
例え最後の一体になろうとも、ユーベルコード『イレブンハート』は己の所有物を11倍にするのだ。
その力は消耗しているものの、再び数を瞬時に揃えるのだ。
「まずい! まずいまずいまずい! まずいぞジャック!」
「ああ、言い過ぎだがまずいぞジャック!」
「此処まで消耗させられるものなのかジャック!」
彼らは追い詰められていた。確実に、消耗の度合いは深刻であると言える。このままでは遠からず滅ぼされてしまうだろう。
この状況を打開しなければならない。
彼らはすぐさまに破壊された『熾盛』たちを『イレブンハート』で増やし、体勢を整えようとする。だが、それを許すほど猟兵達は甘くはなかった。
特に、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は。
「……随分とまた濃い連中……連中ね?」
ゲームセンター『シンデレラ・チャーム』にてリーヴァルディは『ジャック・マキシマム』たちを睥睨する。
その視線に彼らは飛び上がり、声を上げる。
「うおおおっ!? いきなりか!? ジャック! 此処はマッスルジャックに変身だ!」
「馬鹿言え、ジャック! 此処はケンタウルスジャックで逃げの一手だろうが!」
「……どちらでもいいけれど」
滅ぼすだけだと、リーヴァルディは、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
吸血鬼狩りの業・星剣の型(カーライル)。
彼女は歌うように呟く。
我が手に来たれ、星詠みの剣、と。
その言葉と共に彼女の体は未来を詠む星霊騎士へと姿を変える。その手にした聖剣は未来視の力を宿す。
視る。
それは幻視ではなく、己の手で手繰り寄せる不確定の未来。
迫る『熾盛』。
青いロボット兵器。人間大であることは、リーヴァルディにとって重要ではなかった。人型である以上、その動きは予測できる。
「……質、量ともに侮れない。戦力の差は歴然だけど……まあ、それだけね」
その言葉通りであった。
リーヴァルディにとって、それはいつものことであった。
オブリビオンと猟兵は個としての力に差がある。けれど、それは特別ではないのだ。紡ぎ、繋ぎ、そうして打倒する。
その連綿たるつながりの中をリーヴァルディは視る。
未来は、その先にあるものを彼女は選び取る。
『熾盛』の動きは複雑怪奇であった。
己の斬撃に反応している。何をどうすれば、そうなるのだと思うほどの挙動であった。チートデータと言われた言葉を思い出す。
それほどまでの相手。
だが、問題にはならない。
視えているのだから。
「……無駄よ」
ぎしり、とリーヴァルディの体が軋む。肉体改造術式によって強化された膂力は、彼女の手にした大鎌へと姿を変えた聖剣の斬撃を、さらなる神速の斬撃へと昇華し、乱れ放たれる。
「……単なる力押しでなんとかなるほど、今の私は易しくない」
斬撃の未来を視る。
全てがかわされる。凌がれる。防がれる。
わかっている。けれど、リーヴァルディは視えている。『熾盛』に打ち勝つ必要はない。ただ待てばいいのだ。
この斬撃は多大な負荷を『熾盛』に強いる。それこそエネルギーを膨大に消費するのだ。
それ故に、即座に『熾盛』たちは動きを止める。
「……私の詠んだ未来の通りにね」
リーヴァルディの瞳がユーベルコードに輝き、一気に踏み込む。
「ジャック! おいもたもたするな!」
「せっつくな、ジャック!」
「おい、ジャック、猟兵は何処だ……!?」
『ジャック・マキシマム』たちは『熾盛』が軒並み動きを止めた瞬間、リーヴァルディの姿が消えたことに困惑していた。
「……11体も自分が居ながら連携が取れていないなんて……容易い相手ね、あなた」」
限界を超えた魔力を込めた聖剣の大鎌形成する刃が『ジャック・マキシマム』を横一線に薙ぎ払う。
それはリーヴァルディが視た未来と違わなかった――。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィクトリア・ノウェム
むむ……なんだかすごくうるさい、です
……それよりあの機械兵、見覚えがあるような、ないような……
まあいいです
稼働時間が短いなら……ガス欠でさっさと倒れてもらう、です
エル・セプス(外装)で空中から挑み、ガム弾ばら撒きつつ、さっさとUC【蒼穹の輪廻】、いくです
数は関係ない、です
黄金の羽に気を取られたら、不可視の波動に本体も攻撃もみんなエネルギーを「食われる」です
……奪ってもすぐ天使の羽になって消えてゆくですけど
後はガス欠を起こした敵をCファングを打ち込んでから怪力で振り回して他の敵へとぶつけ、そこに魔法剣を飛ばして追撃
UCの効果が終わる前にレミエールⅢと一緒に空中から爆撃+砲撃+機銃掃射してやるです
「これはまずい! 本当にまずいぞジャック!」
「此処までとはな、猟兵! ジャック、あれをやるぞ!」
「ああ、悪夢エネルギーを爆発させ、一気に吹き飛ばす! ジャック、いくぞ!」
ナイトメア王『ジャック・マキシマム』は確実に追い込まれていた。
その消耗の度合は、傍目には分かりづらい。
それもそのはずである。彼のユーベルコード『イレブンハート』は己の所有物を11倍にする力。
自らをも11体に増やし、そして骸の海より引きずり出したゲームセンター『シンデレラ・チャーム』にあった『呪いのオンラインゲーム』からチートデータである『熾盛』と呼ばれる青い鎧の騎士のようなロボット兵器を実体化させたのだ。
『熾盛』とはあまりのステータスの高さ故に攻略不能とまで言われたゲームキャラクターだ。
「まずはジャック、『熾盛』を盾に時間を稼ぐぞ!」
「ああ、意見があったな珍しく! ジャック、とちるなよ!」
そんな彼らの声にヴィクトリア・ノウェム(はらぺこ空戦天使・f33941)は思わず耳を塞ぎたい気持ちであった。
ものすごく五月蝿いのである。
どっちかと言うと『ジャック・マキシマム』の顔も五月蝿い。
オブリビオンに対して、そんな気持ちを抱くのは間違いではないのかもしれないが、それでも五月蝿い。もうちょっと静かにしてほしい。
けれど、そんな彼女に迫るのはロボット兵器『熾盛』の大軍であった。
「……あの機械兵、見覚えがあるような、ないような……」
彼女が知る体高5mほどの人型兵器は赤い色をしていた。
それにところどころ形が違う。似通った部分は確かにあるのだが……。
「まあいいです。どちらにせよ敵で、倒さないといけないというのなら」
ヴィクトリアは小型飛空挺を外骨格状態に可変させ纏う。
確かに『熾盛』のステータスはあまりにも高い。
けれど、その強さ故にエネルギーが長く持たないというのならば。
「さっさとガス欠で倒れてもらう、です。お腹がすくのは本当に大変なのです」
とてもよくわかる。
お腹が空くのはヴィクトリアにとって、とても緊急の事態だ。だからこそ、わかる。あの『熾盛』はすぐに動かなくなる。
だからこそ、ガム弾をばらまき、その足を止めようとするが、『熾盛』はガム弾の全てを躱し、炸裂したトリモチを避けるのだ。
「全部躱す、です? けど……!」
蒼穹の輪廻(エンジェリック・リンカーネーション)がヴィクトリアの瞳に輝くユーベルコードの光と共に戦場に広がっていく。
それは不可視の波動。
いや、黄金の羽の嵐が『熾盛』をも飲み込んで広がっていくのだ。
「ジャック、これは……! 吸収されている! エネルギーが!」
「これもユーベルコードか! ぐおっ! ただでさえ消耗しているというのに。拙い、ジャック!」
「数は関係ない、です。波動にどんな敵でもエネルギーを『食われる』、です」
黄金の羽は、吸収したエネルギーを変換して放出される過剰エネルギーではなかった。吸い上げては即座に天使の羽として放出され、ヴィクトリアはお腹が満たされるような減るような不思議な感覚に微妙な顔をしてしまう。
ヴィクトリアのユーベルコードはただでさえ燃費の悪い『熾盛』を加速度的にエネルギー不足に陥らせるのだ。
「そこ、です」
放たれるケルベロスファングが止まった『熾盛』に噛み付くように掴み上げ、ヴィクトリアは己の怪力でもって分銅のように振り回しながら、『ジャック・マキシマム』へと叩きつける。
「なんということをするんだ貴様! おいジャック! あの猟兵とんでもないぞ!」
「いやまて、それだけじゃないぞジャック! 魔法剣まで飛ばしてきやがる!」
そんな彼らの頭上を飛ぶのは大型翼でもって風をきるようにして飛ぶヴィクトリアの姿であった。
その合体した武装の銃口が彼らを睨めつける。
『ジャック・マキシマム』たちは顔を見合わせるしかなかった。そして、見上げる。
そう、これはあれである。
「まさか、爆撃じゃないよな、ジャック」
「ああ、そう願いたいものだな、ジャック」
「そうに決まってる、です」
にべにもなく告げ、ヴィクトリアは空より無数に爆撃砲撃、そして機銃による掃射でもって『ジャック・マキシマム』たちを追い回すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステラさんと】
ジャックさん、なんてことしてくれたんですか!
エイルさん案件の時のステラさんには、
一切の理屈が通用しないんですよ!?
……やべーです。これはやべーですよ。
あ、でも、増えたのが鉄板さんでよかったですよね。
エイルさんが増えたりしたら、ステラさんヘヴン状態で、
戦うより、ひとり持って帰る、とか優先しそうですからね。
うわぁ。ほんとにみんな固まってますね。
愛が原因かどうかは、わたしにはわかりませんが(棒
(圧に押されつつ)アッ、ハイ。
これ失敗したら、エイルさんへの愛語り、
3日3晩じゃすまなさそうですからね!
【ルジェッリ】を取り出して、全力ダッシュ。
【カプリス】で思いっきり蹴散らしていきますね。
ステラ・タタリクス
【ルクス様と】
|エイル様《主人様》の! 香りがします!!
ええ、主人様在るところメイド在り
この場に私が登場したのは必然
って、エイル様じゃなくて|V《ヴィー》様じゃないですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!
詐欺ですこれは詐欺案件ですよジャック!!
どうしてエイル様じゃなくてV様を増やしているんですかこの馬鹿!!
許しませんよジャック!!
誰がやべーメイドですか!!
私の|エイル様《主人様》への愛の前に敵なし!
ほらこの通り皆固まっています
ルクス様今です仕掛けますよ一掃です
『ニゲル・プラティヌム』を使って
クイックドロウの制圧射撃&威嚇射撃
弾幕を張って
ルクス様後は任せました!
確実に倒すように!
爆撃の光が満ちる戦場『シンデレラ・チャーム』の最中にありて、響き渡る声があった。
それは絶叫とも言えたし、また同時に嘆きの声でもあった。
「|『エイル』様《主人様》の! 香りがします!!」
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は叫んでいた。
声高々に。
それはもう猛烈に叫んでいた。
目が若干ヤバイ感じのあれになっている。
「ジャックさん、なんてことしてくれたんですか!」
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)の嘆きの声にナイトメア王『ジャック・マキシマム』は爆撃の最中を走りながら困惑する。
え、なんで? という顔をしていた。
「ジャック、猟兵がなにか言っているが」
「え、俺たちまたなんかやっちゃいましたか? っていうやつだジャック! 恐らく『イレブンハート』のことを言っているのだろうな」
「いや、だからといってあんなに謗られることあるか、ジャック?」
その困惑はわかる。
けれど、ルクスにとっては関係なかった。
「ええ、主人様在るところメイド在り。この場に私が登場したのは必然」
くんかくんか。わんわん。
それでわかれというのが無理な話である。
しかし、ルクスはちょっと涙目であった。怖かったのかも知れない。
「『エイル』さん案件の時のステラさんには一切の理屈が通用しないんですよ!?」
「一体何を言っているんだあの猟兵は。ジャック、わかるか?」
「いやさっぱりわからん。それ以前に『エイル』とはなんだ、ジャック」
『ジャック・マキシマム』たちは困惑していることしかできない。
え、何、何がなんなの? と首をかしげるばかりである。そんな事している暇があるのなら攻撃すればいいのになと思ったが、彼らは『イレブンハート』で消耗した自分たちを増やし、また同時に青い鎧のロボット兵器『熾盛』を増やすことに注力していたのである。
話を聞いているふりをしていてえげつない連中である。
しかし、それ以上にルクスにはわかっていた。
「……やべです。これはやべーですよ」
ステラは刮目する。
匂いがするってことは、いるってことである。犬じゃねーや、メイドとしての嗅覚が言っているのである!
「って、『エイル』様じゃなくて|『V』《ヴィー》様じゃないですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
絶叫である。
もうすごい絶叫であった。
あまりのことに『ジャック・マキシマム』はビクって引きつった。
ドン引きってやつである。
いくら献身的なメイドの想いであろうとも、そこにあるのは狂気であったからだ。少なくとも第三者からすれば、そうとしか思えないほどの叫びであった。
「こわっ、あれには関わらんでこうジャック」
「ああ、珍しく意見があったなジャック」
「わぁ……ジャック、泣いちゃった……」
「小さくてかわいいのをやっているばあいですか!」
「詐欺ですこれは詐欺案件ですよジャック!! どうして『エイル』様じゃなくて『V』様を増やしているんですかこの馬鹿!!」
ステラの顔はマジで怖かった。ルクスはだからほらぁって顔をしていた。こうなってステラはもう暴走機関車であった。止まらない止まれない。
あ、でもでもとルクスは思った。
これがもし本当に『エイル』が増えていたら、ステラがヘブン状態になって使い物にならなくなるところであったからだ。戦うより先に一人持って帰るとかいい出しかねないし、そのままバイバイさよなら! ってなりかねなかった。
「許しませんよジャック!!」
「ジャック、どうする。やべーぞ」
「ああ、やべーメイドだ、ジャック」
「マジで何言っているのかさっぱりわからんが、ジャック謝ったほうがいい」
「過去になったものしか引っ張り出せないのだから、過去になってないものは引っ張り出せないし増やせないだろうジャック。俺たちに落ち度はない。なんで謝らないといけない」
「いや、謝っといたほうがいいですよ、ジャックさん」
そんなやり取りをしてルクスは思った。
マジで固まっている。これが押しかけメイドの本気(マワリトノニンシキノチガイ)ってやつである。
しかし『熾盛』は動いている。
いや、全然どうじていない。ドン引きしていない……ってこと!?
「誰がやべーメイドですか!!」
ステラの主人様に対す愛の前に敵はなし!
つまるところ、どれだけ『熾盛』が迫るのだとしても、今のステラには関係ないのである。
牽制射撃を片手間で行いながら『熾盛』の動きを止める。
躱す、凌ぐ。
己の主人が乗っていたデータが元であるというのならば、それくらい出来て当然であるとステラはなんかちょっと誇らしい気持ちなった。
「今なんか、私が育てました顔してました? 育ててないですからね!? ステラさん!?」
「いいですから」
「アッ、ハイ」
ステラの圧にルクスは負けた。
「ルクス様、後は任せました。確実に倒すように!」
厄介なことになってしまったとルクスは肩を落とす。
これで失敗しようものなら、主人様への愛語りを三日三晩されてしまうところである。
ステラの牽制によって動きを止め、猟兵達のユーベルコードで持ってエネルギー不足に陥った『熾盛』を躱しルクスは今の今までの漫才コントみたいなやり取りの間に溜めた力を開放する。
瞳がユーベルコードに輝く。
「ちょ、ちょっとまってくれ! 今ジャックは動けないんだが!?」
「なんかやべーメイドの語りに圧倒されてしまったんだが、ジャック、どうする!?」
「といりあえず、必殺の一撃です」
にっこし。
自分のみを守るために。睡眠時間を削られぬために。
ルクスは、Caprice No.24(カプリスダイニジュウヨンバン)、そのヴァイオリンによる鈍器の一撃で『ジャック・マキシマム』をぶっ飛ばすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
菫宮・理緒
【サージェさんと】
(前口上かぶせてツッコミ)あるもん!
『熾盛』とはよく見つけたね。
でも一度観たものは対抗策だって考えられるよ。
ということで『希』ちゃん、シミュレーションよろしく!
『熾盛』のデータならあるから、それを元に相手の機動や攻撃を解析。
数が多いのはちょっと面倒だけど、今回はサージェさんとペアだし、
ひとりじゃないから、囲まれる心配も減るしね!
事前シミュレーションの計算をサージェさんと共有して、初撃を凌いだら、
相手の補充タイミングで【フレーム・アドバンス】を発動。
補充のスピードを遅らせて、その隙にサージェさんに突撃してもらうね。
さ、サージェさん、忍んでないクノイチの本領発揮の時間だよー!
サージェ・ライト
【理緒さんと】
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、胸が大きくて忍べてないとかそんなことないもんっ!
あるぇ?!
まさかの身内からツッコミ!?
天の声も同意してたりとかそんなことないですよね!?
あの熾盛が相手なら!
かもんっ!ファントムぎにゃぁぁぁ?!
ばか、な…(ダイイングメッセージでシリカって書く)
人の話を聞け?
あははー私、勢いで生きて…あの、シリカさん?
爪出しながらはちょっと…アッハイイッテキマス
理緒さんとこの希ちゃんとミニシリカでデータを共有しましてっと
ではでは参りましょう
「手数こそ正義! 参ります!」
手数重視の【疾風怒濤】で!
クノイチ|力《ちから》を思い知るがいい!
あの!忍んでますから!!
「お呼びとあらば参じましょう。私はクノイチ、胸が大きくて忍べてないとかそんなことな――」
「あるもんっ!」
それは前口上にかぶせたツッコミであった。
前口上ってなんだと思われる方々もいるかもしれないが、イチから説明するとちょっと面倒なので割愛させて頂く。
詳細は、サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)の揺れる忍べてない胸を参照していただきたい。
そんでもって菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)はにっこにこである。
かぶせツッコミとはますます持ってコンビネーションが活きてきていると言ってもいいのではないだろうか。
そんな笑顔にサージェは驚愕する。
「あるぇ!?」
まさかの身内からのツッコミである。
ここはナイトメア王『ジャック・マキシマム』からのツッコミが入るところではなかったのだろうか。
そうですよね。わかります。
「そんなことない――」
あるもんっ!
「何をやっているんだ、あの猟兵達は。ジャック、わかるか」
「わからんのかジャック。あれの間に挟まることは万死」
「うむ。俺たちは挟まってはならんのだ。そんなこともわからんのか、ジャック。この唐変木!」
『ジャック・マキシマム』たちは、彼らで後方なんちゃら面をしている。
どうなっているんだ。
サージェは、えぇ……と思わないでもなかった。
「とは言え、『熾盛』とはよく見つけたね」
理緒は『ジャック・マキシマム』が骸の海から高難易度シュミレーション『熾盛』を引き上げ、データを実体化させた手腕に感心する。
確かにあのチートデータを相手にするのは骨が折れる。
けれど、すでに理緒は『熾盛』を見ているのだ。
一度見たものに対策を立てられないで何が猟兵かと彼女はAIである『希』にシュミレーションを走らせる。
今回は『イレブンハート』によって11倍に増やされた『熾盛』だ。
一体でも脅威そのものである。
「そうですよ、理緒さん! あの『熾盛』が相手なら! かもんっ! ファントムぎにゃぁぁぁぁ?!」
バリィって音がした。
それだけで察せられるものがあるというものである。
バリバリてまた音がなる。白猫又の『シリカ』さんの爪の唸る音が聞こえる。荒ぶって折られる。
『お姉ちゃんは人の話を聞くべきです』
「え、なんで? え、なんで?」
「ほら、あの『熾盛』ってキャバリアみたいに5m級じゃないんだよ。人間大なんだよ。だからじゃない?」
理緒の冷静な言葉にサージェは、あははーって笑う。ごまかしたとも言える。
「私勢いで生きて……あの『シリカ』さん? 爪出しながらはちょっと……」
そんなこんなをしている間にあっさりと『熾盛』に取り囲まれている。
迅速すぎる。
「ほらーあんなに囲まれちゃったじゃない。でもでも大丈夫。数が多いっていうのは面倒だけど、今回はサージェさんがいるしね」
なら、と理緒の瞳がユーベルコードに輝く。
現実と動機させる電脳魔術によって、理緒は『熾盛』の動きを画像にキャプチャーし改ざんする。
現実に影響を及ぼすフレーム・アドバンスの力によって『熾盛』は、その性能を発揮できないままに固定されるように動きを止めるのだ。
「事前シュミレーションで出た計算から見れば、動きを止めることなんて簡単なんだよ。サージェさん、初撃は凌いだよ! すぐにまた動き出すから!」
「わっかりましたー! アッハイイッテキマス」
爪がにゅっと伸びているのをみやり、サージェはビクビクしながら飛び出す。
『熾盛』は理緒のユーベルコードによって動きを止められている。
だからこそ、その間隙を縫う。
かの『熾盛』が動き出せば、此方に勝機はない。
エネルギー不足という欠点を補う『イレブンハート』は隙ができる。ならばこそ、サージェの役目は。
「そう、吶喊だよ! サージェさんの得意技! さ、サージェさん、忍んでないクノイチの本領発揮の時間だよー!」
何気ない理緒の声援がサージェのクノイチ心をちょっと傷つけた。
わからないでもない。
「ああ、わかる。確かにジャック、あれは忍べてないと思う」
「見事に跳ねているものな、ジャック。あの褐色の……」
「言うな、ジャック! それ以上は野暮になる!」
何に見とれているとは言わないが、しかし『ジャック・マキシマム』たちはサージェを迎え撃つ。
「ええい、五月蝿いですね! 手数こそ正義! 参ります!」
疾風怒濤(クリティカルアサシン)たる連撃が『ジャック・マキシマム』に走る。
「いっちゃえ、サージェさん! 全然忍んでないけど!」
「クノイチ|力《ちから》を思い知るがいい!」
揮われる斬撃の嵐が『ジャック・マキシマム』たちを切り裂いていく。
なんかとっても雑にやられてると思わないでもなかったが、これが様式美というものである。多分。
「あの! 忍んでますから!!」
「いや、それは無理あるよサージェさん」
そんなことないもんっ――!!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ドウジ・ユークレナ
ふう、正月休みを故郷で過ごしてたら戦争が起きてる衝撃。
ちょっと遅れましたがドウジ・ユークレナ華麗に参戦であります…あれ?装備がキツ…さすがに一日10個餅食う生活は堕落の極みでありましたか(ぉぃ/無理やり装備完了)
かつての世界結界があった時代はまだ幼く、先人たちから話に聞く日々でありましたが、今は違う。今は自分たちの時代であります!!
投網に編んだ蜘蛛の糸を『範囲攻撃』で射出して11体纏めて『捕縛』&『マヒ攻撃』であります
捕縛した『敵を盾にする』ことで攻撃を防ぎつつ、アラクネ・アクティブで強化したガンレッグ・ブラスターを『エネルギー充填』100%×3倍の『レーザー射撃』で発射であります。。
ドウジ・ユークレナ(風渡り人・f36443)はちょっと太ましくなっていた。
何故かと問われたのならば、お正月であったからである。
それではちょっと説明不足ではないかと思われるので、もう少し言うのならば、お正月といえばお餅である。
焼いたお餅に雑煮にとまあ、それはそれは美味しく食べていたのである。
砂糖醤油もあれば、海苔を巻きつけたもの、きなこもいいし、あんこもいい。
美味しかったのである。
それはとてもとても美味しくて、一日十個は堅く食べていた。
「流石に堕落の極みでありましたか……」
なんか装備が上手くできない。きっついのである。目を背けたくなる堕落の日々。
過去は変えられない。
ときは逆巻くことはない。あの堕落のもちもちの日々は覆らないのである。
「ええい、ちょっと遅れましたがドウジ・ユークレナ華麗に参戦であります!」
「無理矢理に締めたな、あの猟兵。どう思うジャック」
「いくらなんでも開き直りすぎではないか、ジャック」
「ジャック、それ以上言うな。猟兵には猟兵の事情ってものがあるのだ」
「そうだ。俺たちにも事情がるようにな! いや、敵に理解を示してどうする、ジャック!」
ナイトメア王『ジャック・マキシマム』たちもそう思っていた。
けれど、ドウジは対峙するオブリビオンが幼き日に聞いた先人達の戦った存在であると知っている。
確かに強大そのもの。
けれど、だ。嘗ての時代とは違う。幼き日の無力な自分は居ない。
「というわけで、若き猟兵よ! このジャックが貴様たちを叩き潰してくれよう!」
「いいぞ、ジャック! いい具合に大物感出ているぞ!」
「オッケー、いくぞジャック!!」
ええい、小うるさい、とドウジは思った。
先人達から聞きかじった話は本当だったのだ。万物を11倍にする力を有するナイトメア王。
その力は青いロボット兵器の群れを見やれば解かる。
あのユーベルコード『イレブンハート』を使えば、『ジャック・マキシマム』は尋常ならざる軍勢を生み出す事ができてしまう。
「今は自分たちの時代であります!!」
放たれる蜘蛛の糸が放たれる。
それは迫る『熾盛』を捉えようとするが、しかし、それはかわされてしまう。
チートデータと言われた『実体化したゲームキャラクター』は、そのステータスの異常さをドウジに知らしめるだろう。
だが、同時に知っているのだ。
あの『熾盛』は慢性的なエネルギー不足に陥っている。
攻撃をする、回避すると言った行動を行えば、すぐにエネルギーぎれで動かなくなる。その隙を付けばいいのだと。
「ええい、燃費の悪いことだな、ジャック!」
「構わんだろうが! 我等がユーベルコードで補充してやればすぐ済むことだ、ジャック!」
「その隙こそ命取りであります!」
放たれる蜘蛛の糸はエネルギーを補充しようとする『ジャック・マキシマム』たちを一瞬で捉える。
「うおっ! これは土蜘蛛の糸か! ジャック、おいこれネバネバしていて」
「こっちに来るな、ジャック。糸が張り付く!」
「同じ存在なのに、全然連携が取れていないでありますな! というわけで、そこにガンレッグ・ブラスター』でありますよ!」
ドウジの瞳がユーベルコードに輝く。
脚部に備えられたブラスターが煌めく。
ユーベルコードの輝きを湛える砲口は、通常の三倍に引き上げられた威力と効果を解き放つ。
吹き荒れる光条の一撃が『ジャック・マキシマム』たちに迫る。
「なんかあの光やばくないか、ジャック!」
「ジャック、躱すぞ……って蜘蛛の糸のネバネバに!?」
「これで終わらせるであります!」
底上げされた威力のガンレッグ・ブラスターの一撃が『ジャック・マキシマム』たちへと容赦なく叩き込まれるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
なんかこう色々迷惑な相手っぽいし
何とか打倒してしまおうか
ギャグキャラっぽいけど
侮れる相手では無さそうだしね
過去の資料から得た熾盛のデータを元に攻撃を予測
実物を見て予測を修正しつつ戦おう
熾盛は凄く強力なんだろうけど
ガトリングガンの範囲攻撃で
ジャックとまとめて攻撃すれば
それなりの弾丸はジャックに届くんじゃないかな
後は着弾後爆発する攻撃を思い出しながら
ジャックの攻撃を回避しよう
悪夢の世界に当たらないようにできるなら避けて
逃げる場所がないなら神気で防御しながら戦おう
熾盛が稼働限界を迎えて次のが補充されるタイミングには
盛大に弾をばら撒いて攻撃を行おう
漫才か何かのようなやり取りが聞こえても
気にしない方向で
「蜘蛛の糸のネバネバと熱線はいかんだろう、ジャック!」
「あつあつとねばねばのコラボなんていうのは納豆丼だけでいいんだ。そうだろう、ジャック!」
「意味のわからん言い訳をしていないでユーベルコード『イレブンハート』を発動させろ、ジャック!」
ナイトメア王『ジャック・マキシマム』たちは喧々囂々の大忙しであった。
猟兵達の攻勢は苛烈を極めた。
マジで千差万別にして多種多様なユーベルコード。
生命の埒外たる存在という言葉を噛みしめる。これまでの時間はそういう時間であったのだ。
「くそう、ジャック! これでは『熾盛』のエネルギーチャージがジリ貧なんだが!?」
「口を動かすより先にユーベルコードを使え、ジャック!」
そんな彼らの様子を佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)はなんだかなぁって思っていた。
色々迷惑な相手だなって思っていたけど、あのやり取りを見ていると本当に強いのだろうかと思わないでもない。
しかし、冗談みたいなノリであっても、あの力は本物なのだ。
「ギャグキャラっぽいけど」
「そういうのは言いっこなしだぞ、猟兵! そうだろう、ジャック!」
「まったくもって同感だな、ジャック! どこがギャグキャラなのだ、俺たちのどこが!」
いや、そういう所、と晶は思った。
けど空気読んだ。侮れる相手ではないことは当然のことであったからだ。
そして、それ以上に脅威であったのが青い鎧のロボット兵器『熾盛』であった。
本来の体高5m級の姿ではなく、人間大の大きさであることは幸いであたのかもしれない。
「過去の資料を漁ってきたけど……!」
実物を見てデータを修正しつつ、と思っていたのだが、現実はそれを軽々と凌駕している。
他の猟兵達との戦いを見ても解かる。
あれは規格外だ。
幸いであったのは、エネルギー不足ですぐに動きを止めてしまうこと。そこに『ジャック・マキシマム』の『イレブンハート』で補給する瞬間があることが幸いであった。
「十分なエネルギーがあったのなら、これは……!」
手が付けられなかったかも知れない。
だからこそ、付け入る隙を逃さない。これまでのデータから『熾盛』は一つの攻撃と一つの回避でエネルギーを使い切ってしまう。
それほどまでに規格外の動きをしているのだ。
「その瞬間を捉えればいいんだよ!」
もう『ジャック・マキシマム』に対する攻撃はおまけだ。
「俺たちをおまけ程度にしか見ていないのかっ。ジャック、なめられっぱなしだぞ!」
「ならば見せてやろうジャック! 俺たちの悪夢の力ってやつをな!」
「広がれ、悪夢よ! ジャック、サボるな!」
放たれる『ジャック・マキシマム』のユーベルコード。
それを晶は着弾地を予測し躱す。敵の攻勢は確かに脅威であった。けれど、彼らとて万全ではない。
これまで猟兵達の攻勢で消耗しているのだ。ならばこそ、そこに飛び込む。
『熾盛』のエネルギーをチャージしようとしているジャックもいれば、晶に攻撃を仕掛けようとしているジャックもいる。
11人いるからこそ、統制が取れていない。
全部が自分であるからこそ、自分だけが生き残ればいいと思っているのだ。
ならばこそ、晶は庸人の錬磨(ヒューマン・エクスペリエンス)によって、天才を凌駕する。
構えたガトリングガンが火を噴く。
「何度も見ていればわかるよ、その隙。チャージとこっちへの攻撃を前提としているようだけれど、そんなに何度も見ていれば!」
放たれるガトリングガンの弾丸が盛大にばらまかれる。
統制取れぬ自分自身達が『ジャック・マキシマム』の足を引っ張り続けるのだ。
「おい、ジャック! こっちに援護に……!」
「チャージが先だろうジャック! そんなこともわからんのか!」
「いや、言ってる場合か! 猟兵の攻撃が……ジャック、マジでどっちかにしろ!」
「ジャック、なんか弾丸がこっちに集中してるんだが!?」
そんなやり取りが弾幕の向こうに聞こえる気がした。
けれど、晶は苦笑いしてトリガーを引き続ける。
「なんか漫才かなにかみたいなやり取りが聞こえるけど……気にしない。気にしない」」
溢れる弾丸の向こう側で悲鳴が聞こえたけど。
気にしないのである――。
大成功
🔵🔵🔵
戒道・蔵乃祐
ほう高難易度クエスト専用ボスですか
しかしながら|デカコア《10core》…いえ、|イレブン《11core》ハートの並列処理が逆に足を引っ張ってしまっているようですね
11倍の『熾盛』はその全てが寸分違わぬ性能を誇るが故に個々の区別が付きません
…誰がどの熾盛を操作しているのかも分かってないんじゃないですか?
それが人力の限界…猟兵1:ジャック1:ユニット11の多重処理であれば負けていた
船頭多くして船山に上りましたね!
◆デモリッションOD
怪力+グラップルでガトリングを振り回し
ジャンプ+フェイントの空中戦で縦横無尽に飛び回り、ナイトメア爆撃を掻い潜って機動力で撹乱
乱れ撃ち+焼却で蜂の巣にしてやりますよ!
ガトリングガンの斉射の向こう側で跳ねるようにしてナイトメア王『ジャック・マキシマム』たちは冗談みたいなコントをやり続けながら躱したり、盾にしたり、増えたりを繰り返していた。
まったくもって緊張感がないように思える。
けれど、冗談みたいなノリであっても『ジャック・マキシマム』は掛け値なしの脅威であった。
放置すれば増え続ける軍勢によって一大勢力へと成り代わるだろう。
際限なく。
『イレブンハート』は万物を11倍にする。
どんなものであっても関係ないのである。もしも、他のオブリビオンがこの力を手に入れたとしたら……。
「確かにそうですね。ですが」
戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)は、戦場を走る。
『シンデレラ・チャーム』に広がる青い鎧のロボット兵器『熾盛』の大軍を前にして、一つ頷く。
かの『熾盛』は『呪いのオンラインゲーム』のゲームキャラクターだ。
「高難易度クエスト専用ボスですか」
ちょっと心が躍る気がする。
絶対攻略不能と言われているのならば、尚更である。高い山に登るのと同じだ。絶対無理だと言われると、是が非でもと思ってしまうのは男の子であるがゆえであろうか。
「しかしながら|デカコア《10core》……いえ、|イレブン《11core》ハートの並列処理が逆に足を引っ張ってしまっているようですね」
蔵乃祐は、『熾盛』が全てが寸分違わずの性能を持っていることを理解している。
そのゲームデータキャラクターであるがゆえに、区別が付いていないのだ。また『ジャック・マキシマム』もなんかこう適当に操っているのだろう。
エネルギー切れが起こった瞬間に『イレブンハート』を使って補充しなければならない。
強力であるが故の弊害が此処に起こっているのだ。
「いや、本当に補充のタイミングが難しいんだよ、ジャック! お前もやってみろ!」
「やっているだろう。ジャック、あー、そのタイミングじゃないんだよなぁ」
「早くしろ、役目だろ、ジャック!」
阿鼻叫喚の地獄絵図である。
役割分担しなければレイドボスを倒せないあれやそれと同じで、この『熾盛』を十全に動かすためには、とても補給のタイミングがシビアなのである。
そして『ジャック・マキシマム』は全てが同一の存在であるがゆえに、そのタイミングを合わせるという発想がないのだろう。
全てが自分であるがゆえに、欠けている部分も全て同じなのだ。補うことができない。
「……やはり。それが人力の限界」
蔵乃祐は頭を振る。
だが、容赦など必要ないのである。
これがもしも、並行処理ではなく多重処理を『ジャック・マキシマム』たちが行っていたのならば、圧倒的な連携と強力過ぎる『熾盛』の軍勢によって猟兵達はすり潰されていたことだろう。
それが可能なほどの規格外の存在。
「船頭多くして船山に登りましたね!」
それ故の敗因。
蔵乃祐は、キャバリア武装のガトリングガンを構える。
尋常ならざる膂力でもって持ち出されたガトリングガンの銃口は振り回され、エネルギー切れで動きを止めた『熾盛』を薙ぎ払う。
「|コード実行《Exterminate》」
デモリッションOD(デモリッションオーディー)。
それは無限に供給される榴弾を放つユーベルコードであった。
「爆発!? なんで急に!? おい、ジャック、猟兵のユーベルコードへの警戒はどうした!」
「いや、それはジャックの役目だろう!」
「くそ、来るぞジャック!」
放たれる悪夢エネルギーの奔流を蔵乃祐は躱し、跳ねるようにしてフェントを交えながら迫る。
この距離であればもう『熾盛』は関係ない。
迫る蔵乃祐の巨体、そのマッシヴフィジカルに『ジャック・マキシマム』たちはやはりち思ったのだ。
「やっぱりマッチョにしておくべくだったぞ、ジャック!」
「あんなロボット見たら選びたくなるのが男の子というもだろうが、ジャック!」
「わかりますけど、蜂の巣にしてやりますよ!」
蔵乃祐は手にしたガトリングキャノンを振り回し、その銃口を向け放たれる弾丸でもって『ジャック・マキシマム』たちを盛大に撃ち抜くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…ふざけた性格してるけど所有物11倍ってだいたいのもの11倍に出来るから厄介だな…
…とはいえ、あの『熾盛』は実体化したゲームデータ…ふむ…
…ちょっと実験してみるか…
…【起動:応用術式『不落』】を発動…術式組紐【アリアドネ】に形質保持術式を付与…
…ゲームセンター内部に細かく張り巡らせてジャックと『熾盛』の動きを制限…攻撃もシャットアウトして身を守るよ…
…この隙に…ああ、あったあった…アーケードゲームもオンラインの時代だものね…
…ネットワークの接続口からハッキング…『熾盛』のデータを改竄して勝手に実体化して敵味方の区別無く暴れる制御不能の存在に変更…ジャック達には自滅して貰うとしようか…
弾丸の嵐がナイトメア王『ジャック・マキシマム』を襲う。
彼らにとって己だけが残っていればいいという事実が、彼ら自身の足かせになっていることを彼らは理解していなかったのかも知れない。
万物を11倍にするユーベルコード『イレブンハート』。
それは完全に同一の存在を増やしてみせる。劣化もなく生み出すことができるとう事実は脅威でしかない。
けれど、であるからこそ。
他者が自分と違う存在であるからこそ、欠けているものを補うことができるように。
されど、完全同一であるがゆえに欠けている所まで一緒なのならば、『ジャック・マキシマム』は、己だけが残ればいいと思ってしまう。
数の利点であるフォローを行えないのだ。
「ジャック! マジでいいかげんにしろ!」
「こちらの台詞だ、ジャック!『熾盛』へのエネルギー補充のタイミングはシビアなのだ! こっちにタイミングを合わせろ!」
「喧嘩している場合ではない! 来るぞ、猟兵が! ジャック、構えろ!」
「ケンタウロスジャックに変身だ! ジャック!」
「マッスジャックだ、ジャック!」
「ええい、どっちかにしろジャック!」
そんな彼らの整合性の取れぬ行動にメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)はふざけた性格まで全部同一なのだなと、呆れ半分であった。
「所有物11倍って大体のもの11倍にできるから厄介だな……」
あらゆるもの。
万物全てを等しく11倍にしてしまうのが『イレブンハート』である。それは確かに脅威であった。
使い方さえ誤ることがないのであれば、最強の軍勢を生み出すことさえ可能であった。
けれど、メンカルは思うのだ。
確かにあの『実体化したゲームキャラクター』である『熾盛』はチートデータと言われるに値するステータスを持っている。
だからこそ、強力であるが故の弱点を実体化した時点で得てしまっている。
「エネルギー効率が悪すぎる……とは言え、あの『熾盛』は実体化したゲームデータ……ふむ……ちょっと実験してみるか……」
メンカルの中の研究者としての欲求が湧き上がってくる。
彼女の紡ぐ術式組紐『アリアドネ』に形質保持術式を付与する。走る組紐は『シンデレラ・チャーム』内部に張り巡らせ、蜘蛛の巣のように広がっていく。
彼女の術式は、あらゆる物質より固く、決して壊されることはない。
「起動:応用術式『不落』(ラン・インヴァルネラブル)……魔女が望むは揺るがず敗れぬ不変の理」
広がる蜘蛛の巣の如き組紐は、『熾盛』たちの攻撃であっても裁ち切ることはできなかった。それこそが彼女のユーベルコード。
決して破壊されぬという理を強要する力。
「なんだこれは、壊れないぞ、ジャック!」
「おい、ジャック、『熾盛』に無駄撃ちさせるな! それだけでこっちの隙がでかくなるんだぞ」
「でっかくなるのは筋肉だけでいいだろう、ジャック!」
「言ってる場合かジャック!」
メンカルの張り巡らせた罠に『熾盛』はかかり切りである。しかし、それは無意味だ。全ては24時間後にしか解除されない。
すでに『シンデレラ・チャーム』は『ジャック・マキシマム』たちの牢獄でしかないのだ。
「……この隙に……ああ、あったあった……」
メンカルは『シンデレラ・チャーム』に再現されたゲーム筐体にハッキングしていた。
過去のゲームであったとはいえ、オンラインゲームである。
ならばネットワークの接続口からハッキング可能であると思ったのだ。その目論見は的確であった。
そして、メンカルは入り込んだデータを改ざんする。
それは『熾盛』のデータ。
「ステータス、『バーサーク』……やっぱりこういう仕様もあるんだね」
メンカルがハッキングした瞬間、『ジャック・マキシマム』たちが11倍にした『熾盛』達のアイセンサーが赤く煌めく。
機体の色が赤く染まっていく。
「……ジャック。もしかしてなんだが」
「奇遇だな、ジャック。俺も同じことを思っていた」
「ジャック、納得している場合じゃないぞこれは!?」
「赤い『熾盛』だと――!?」
制御不能のステータスを付与された『熾盛』はメンカルの張り巡らせた術式組紐の網に囲まれ、敵味方区別なく暴れまわる。
それは、尋常ならざる咆哮であった。
『ジャック・マキシマム』たちは、最強を求めたが故に、自滅するしかなかったのだ。
「……ちゃんとデータを見ないからそうなる……赤い『熾盛』……それだけの数があれば、『ジャック・マキシマム』……お前たちは、自分たちの力で自滅するしかないんだよ」
メンカルは檻となった『シンデレラ・チャーム』の中で赤い『熾盛』に最後の一体まで滅ぼされる『ジャック・マキシマム』に背を向け、戦いの終結を知らせるのであった――。
大成功
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