空白のライスメキア
●銀の雨が降る
「あの歌はもう聞こえているか」
亜麻色の髪が揺れる。
壮年の男性の問いかけに銀誓館学園高等部になった少女『銀鈴・花』は答える。
「いいえ。ですが、あれが『闘神の渦』だというのならば、再び歌われることでしょう」
死と隣合わせの青春。
それは彼女たち能力者にとって、与えられるものであり、また同時に掴み取るものである。
戦う力を得て、育て、そして使う。
その意味を『銀鈴・花』は教わってきた。
先をゆく者達の背を見て。
多くの過ちがあっただろう。いつも正解を掴み取ることが出来ないもわかっている。
それが正解であるということさえ、その瞬間には理解できないのだ。
彼女の手にした妖刀『銀の五月雨』に組み込まれた回転動力炉が唸りを上げる。
青春を捧げたが為の力か。
答えは否である。
何一つ失うこと無く、喪うことを恐れずに前に進むからこそ得られるものがある。
故に亜麻色の髪の壮年の男性――『皐月・エイル』は告げる。
「君は嘆かない。幾度となく繰り広げられる戦いの日々が、君の目の前に広がる死と隣合わせの青春が、どれだけ君を試そうとも」
「はい、先生。謳いましょう。生命賛歌を。例えユーベルコードに目覚めていなくても、どれだけ私が弱いのだとしても」
『闘神の渦』に巻き込まれる者たちがいるのならば、それを助けなければならない。
身に宿る善性に従う。
かつて、死と隣合わせの青春を送ったものたちがそうしたように――。
●清廉騎士カリスト
「人狼騎士の諸君」
その言葉は、どこか音割れしたような声であった。
何故ならば、それは拡声された音だったからだ。
響く声は少女の声。
「うーちゃんは諸君らを指揮する『清廉騎士カリスト』なりう!」
もしも、ここに『清廉騎士カリスト』を知る者がいたのならば、訝しんだことだろう。
彼は少女の声を放つ者だっただろうかと。
だが、此処に存在する彼等は理解しなかった。理解するという言葉から最も遠い場所に彼等は居た。
彼等はオブリビオン。
「うんうん。うーちゃんを疑っていないう」
少女は『ハビタント・フォーミュラ』。
此処に嘗て『清廉騎士カリスト』と戦ったことのある能力者がいたのならば、彼女がその名を騙っていることを見抜いただろう。
「諸君の使命は『ヨーロッパ人狼戦線2』の再臨う!」
嘗て在りし戦い。
『闘神の渦』――即ちメガリス『闘神の独鈷杵』の力の代償たる破壊エネルギーをめぐる戦い。それを『ハビタント・フォーミュラ』を狙っているいるようであった。
何故?
「答えは簡単う!『闘神の渦』の破壊エネルギーで世界結界を削れば大量の|銀色の雨《シルバーレイン》が降り注ぎ、オブリビオン・フォーミュラたる『揺り籠の君』に大いなる力を与える筈う!」
過去となりし世界結界。
それを削氷のように『揺り籠の君』に与える。
その結果どうなるかなど明白である。即ち、世界の破滅。カタストロフ。
「猟兵は絶対絶対やってくるう! その間、みんなはうーちゃんを護って欲しいう!」
その言葉に従えられた人狼騎士たちは頷く。
『ハビタント・フォーミュラ』はその様子に満足したように頷く。
「みんな、うーちゃんといっしょにがんばろうねう――!」
●シルバーレイン
グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。シルバーレイン世界、鎌倉周辺においてメガリス『闘神の独鈷杵』の力の代償である『闘神の渦』の発生を予知しました」
ナイアルテの言葉に瞬時に言葉の意味を理解する者もいただろう。
『闘神の渦』とは膨大な破壊エネルギーである。
その発生を放置すれば、『発生地点の全てが破壊エネルギー』によって滅ぼされてしまう。
だからこそ、その力は過去においても争いの起点となってきた。
「この『闘神の渦』は恐らくオブリビオン化しています。この元凶たる存在は『猟書家』……オブリビオン・フォーミュラ亡き世界を侵略しようとするはずの彼等が未だオブリビオン・フォーミュラ健在であるシルバーレイン世界において、何をしようとしているか……」
答えは単純であるのかもしれない。
かつて『伯爵』と呼ばれたヴァンパイアがそうしたように、己の力を高めるために『闘神の渦』を利用しようとしているのだ。
「『猟書家』の目論見は『世界結界を破壊し、この世界のオブリビオン・フォーミュラを強化すること』です。ですが、それ以上に『闘神の渦』が現れた鎌倉の犠牲を見過ごすことはできません」
ナイアルテの言葉に多くの猟兵たちが同意したことだろう。
だが、戦いは現状厳しいというほかない。
ユーベルコードに目覚めていない若き能力者たちが鎌倉の都市で多くの一般人を避難させているが、到底『闘神の渦』による破壊が齎されるまでに完了するとは考えられない。
彼等を救うためには、戦って『闘神の渦』の儀式を止めることしかない。
「鎌倉の外縁部を守る『死兵』。そして、『原初の吸血鬼』の力を移植された強力なオブリビオン……『通り魔の怨霊』を打倒しなければなりません」
しかし、『通り魔の怨霊』は『原初の吸血鬼』の力を遺書kスあれ、通常のユーベルコードに加え、『死兵』を体内から召喚する能力を持ち、力と数の両方でもって猟兵たちを押しかえそうとするだろう。
「溢れ出す『死兵』の群れに対処し、強力なオブリビオンである『通り魔の怨霊』を退け、黒幕の元に急行しましょう。黒幕たる存在は、『闘神の渦』の儀式の最中……未だ完了してはいません」
となれば、破壊齎す儀式を止めることができる。
黒幕たる者の名は、『清廉騎士カリスト』。
鋼の嘴を持ち、書を蝶の羽のように広げる獣腕の少女である。
その言葉にかつて能力者であった猟兵たちは驚愕するだろう。
「『清廉騎士カリスト』ではない……? それは、一体どういう……いえ、今は時間がありません。どうか『闘神の渦』の儀式を止めてください。事態は一刻を争うのです」
猟兵たちはナイアルテに後押しされるようにシルバーレイン世界へと転移する。
謎を呼び込む『猟書家』の存在。
これまで多くの『猟書家』との戦いがあった。
けれど、未だ猟兵たちは彼等『猟書家』たちのことを多くは知らない。
その一端たる謎に迫るためにも、破壊エネルギー渦巻く鎌倉を救わねばならないのだ――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
銀色の雨が降る世界、シルバーレインにおいて世界結界を『闘神の渦』の破壊エネルギーで削ることによってオブリビオン・フォーミュラ『揺り籠の君』を強化せんと目論む『猟書家』、『清廉騎士カリスト』を騙る『ハビタント・フォーミュラ』との決戦シナリオになります。
部隊は『銀誓館学園』が存在する都市、鎌倉です。
『闘神の渦』の儀式がおこなれており、周囲には下級オブリビオン『死兵』たちが外縁部を包囲しています。
学園の能力者の若者たちが一般人たちの避難を行っていますが、到底間に合いません。
●第一章
集団戦です。
下級オブリビオン『死兵』たちが鎌倉の外縁部を護っています。
まずは彼等を蹴散らし、鎌倉内部へと突入しましょう。
●第二章
ボス戦です。
黒幕たる『清廉騎士カリスト』を騙る『ハビタント・フォーミュラ』によって『原初の吸血鬼』のちからを移植された強力なオブリビオン『通り魔の怨霊』が立ちふさがります。
通常のユーベルコードに加え、『死兵』を体内から召喚する能力を獲得しています。
力と数。
その両方を兼ね備えた『通り魔の怨霊』の繰り出す『死兵』の軍勢に対処しつつ、敵を討ち取りましょう。
●第三章
ボス戦です。
『闘神の渦』の儀式を執り行う直下、そこに座すのは猟書家『ハビタント・フォーミュラ』です。
彼女の目的は言うまでもなくオブリビオン・フォーミュラの強化。
『闘神の渦』をもって世界結界の破壊がなし得てしまえば、鎌倉一体は全て滅ぼされてしまいます。
それだけではなく、彼女の目的も完遂されてしまうことでしょう。
これを防ぐために戦わなければなりません。
それでは、シルバーレインにおいて迫る脅威。それを解決するために戦う皆さんの物語の一片となれるように、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『死兵』
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POW : ラスト・スタンド
【肉体のあらゆる損壊を無視した状態で攻撃】を放ち、命中した敵を【自身が死亡しても消えない呪詛】に包み継続ダメージを与える。自身が【致命傷を受けた状態で戦闘を継続】していると威力アップ。
SPD : ラスト・アタック
自身が戦闘不能となる事で、【直前に自身を攻撃した】敵1体に大ダメージを与える。【仲間】に【敵の情報】を語ると更にダメージ増。
WIZ : ラスト・コマンド
自身が戦闘で瀕死になると【体内】から【生者を呪い殺す怨念】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
イラスト:雲間陽子
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
リビングデット化した体を引きずるように鎌倉の街の外縁部に居並ぶは、オブリビオン『死兵』。
彼等の瞳は虚ろ。死が訪れる最期の瞬間まで抗い、戦い続けた成れの果て。それが彼等である。
彼等の中に残っているのは、抗うということ。そして戦うということだけだった。
死を超えてなお、彼等は止まる事を知らない。
いや、それ以外のことはもうどうでもよかったのだ。
永遠に戦い続ける。
それだけのために彼等は鎌倉の外縁部に存在しているのだ。
「戦う」
「抗う」
「戦う」
「抗う」
ただそれだけ。
たった、それだけのためにだけ存在する。それが『死兵』。
死した後も戦うことから逃れ得ぬというのであれば、それは戦いに身を投じた者たちの業であったのかもしれない。そうとしか思えない光景であった。
けれど、死と隣合わせの青春を送る能力者たちは、それだけではないことを知っている。
手にした詠唱動力炉は止まっていない。
『銀鈴・花』は戦場となった鎌倉を走る。
「一人でも多くの人を!」
未だユーベルコードに目覚めぬ己は、弱い。
だからこそ、死力を尽くさなければならない。目の前で奪われそうになっている生命を見捨てることなどできはしないのだ。
救う。
『死兵』たちとは異なる言葉が彼女の、若き能力者たちの心にある。
「落ち着いて避難してください。安心してください、みなさんの安全は必ず私達が守りますから!」
『死兵』たちは、その眩き青春の輝きをこそ目指して、その死した体を引き摺りながら迫る――。
儀水・芽亜
我らが第二の故郷鎌倉に攻め入ってくるとは、いい度胸です。いいでしょう。死にきれない者達は、殺して刻んでねじ伏せてくれます。
断頭卿ギロチン。あなたの同類達を、好きなように殺し尽くしてくださいな。
私は、拷問具『鎖蛇』を振るって援護します。死角は任せてください。
そこにいるのは銀誓館の学生さんですね。私は学園の事務職です。まだ猟兵とはなっていない様子。私達と一緒に動きませんか?
「オーラ防御」を「範囲攻撃」化して、「呪詛耐性」も重ねた「結界術」で多少は安全な場所を作りながら戦います。
『銀鈴・花』さん。いい名前です。共に私達の街を守り抜きましょう。
誰一人あれらに殺させはしません。それこそが私達の誓いです。
渦巻く力の本流が都市、鎌倉の上に広がっている。
それはメガリス『闘神の独鈷杵』による力の代償。『闘神の渦』は破壊エネルギーであり、それは世界結界を削るほどの力を持っている。
その削氷のように降り注ぐ世界結界によってオブリビオン・フォーミュラの強化を目論むのがハビタント・フォーミュラの目的であるというのならば、猟兵が見過ごすことなどできない。
だからこそ、『ハビタント・フォーミュラ』は己を守るオブリビオンを廃する。
『死兵』。
死したリビングデットのオブリビオン。
彼等の中にあるのは戦うことだけだ。
鎌倉市外縁部に彼等はただ立つ。己たちの中にある『戦う』という意義を満たすためだけに、この戦いの意味すら見出すことなく、突き進む。
「戦う」
「抗う」
「ええ、良い度胸であるといえるでしょう」
その言葉が彼等の前に立ち塞がる。
儀水・芽亜(共に見る希望の夢・f35644)は、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
顕現するのは、虐殺師ギロチン。彼女の言うところの断頭卿。
自らの想像より創造されし、落ちる刃(ギロチン)そのもの。
彼女にとって、それらは『死兵』と同類そのものであった。
死してなお死にきれない者たち。
彼等を止めることができるのは言葉ではない。刃のみである。だからこそ、芽亜はユーベルコード輝く瞳のままに敵を見据える。
「最後に立っているのは俺達だ」
その言葉こそが『死兵』たちの意義。
戦って、戦って、死してなお、戦う。その意義に囚われた者たちであるからこそ、彼等は傷ついた体も、引きずるように動かすのだ。
「いいえ、あなたたちは我らが第二の故郷に攻め入ったのです。ならば、死にきれぬものを殺して刻んでねじ伏せてくれます」
彼女が手にした柄を握りしめた瞬間、彼女の血が流れ込み棘の生えた鎖が戦場に舞うようにして伸びる。
「ならばこそ、断頭卿ギロチン、私の敵たちを、好きなように殺してしまってくださいな」
放たれる断頭卿。
それを援護するように飛ぶ鎖の蛇。
そして、芽亜は見ただろう。
戦いの最中に同じように人々を守らんとしている能力者たちの姿を。
確かに自分たち猟兵、ユーベルコードに目覚めていなくても、誰かのためにと願うものたちがいる。
それこそが、自分たちの後進であることの証明。
「そこにいるのは銀誓館の学生さんですね」
「あなたは、学園の事務の……!」
「ええ、『銀鈴・花』さん。良い名前です」
芽亜は学園を卒業した後も、事務職員として銀誓館学園で働いている。そのときに彼女は目の前にいる少女のことを知っていたのかも知れない。
「共に私達の街を守り抜きましょう」
例え、ユーベルコードに目覚めなくても。
それでも彼等の心の中に宿る善性があるのならば。
芽亜は彼等も守らねばならない。目覚めるか目覚めないかの力を待っている必要など無い。
何故なら、彼等はすでにもう大切なものを持ち得ている。
ならばこそ、芽亜は先達として示さなければならない。
「誰一人あれらに殺させはしません。それこそが私達の誓いです」
断頭卿ギロチンの斬撃によって飛ぶ『死兵』たちの四肢。
死すら忘れたものに滅びを与えるユーベルコードの輝き。その最中に芽亜は振り返る。己の背を見る者。
即ち、後進。
学園が育てようとしている、誰かのために力を振るうことのできる者達。
一般人たちを守り、及ばずとも力を尽くそうとする彼等のためにこそ、芽亜は戦わねばならないと改めて決意するように、その力をふるい、外縁部を突破するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
山吹・慧
この鎌倉の地には数えきれない程の思い出があります……。
かけがえのない大切な思い出が……。
この地は何としてでも守り抜きますッ!
死兵との戦闘は我々猟兵が引き受けますので、
能力者の後輩達には一般人の守護と避難に
専念してもらいましょう。
彼らへの攻撃は闘気による【オーラ防御】と
【ジャストガード】で守り抜きます。
玄武の本領発揮ですね。
受けた呪詛は浄黒から【浄化】のエネルギーを自身に
放って【吹き飛ばし】ましょう。
敵の注意を自身に引き付け【功夫】と
【グラップル】の技術で応戦しながら進撃。
群れで来た敵には【宿星零光陣】を放って
纏めて薙ぎ払います。
こんな時だというのに昔を思い出しますね、フフフ。
思い出とは紡ぐものであり、また積み重なるものである。
例え、時が過去を排出して未来に進むのだとしても、それでも其処に残されたものは確かな質量を持ち得ていたのかも知れない。
その重さというものが、人の体を激流の如き現実の流れから守る楔のように撃ち込まれているのならば、猟兵となった嘗ての能力者たちはどのように思っていただろうか。
「この鎌倉の地には数え切れないほどの思い出があります……」
死と隣合わせの青春。
それが、銀誓館学園の卒業生たる山吹・慧(人間の玄武拳士・f35371)の持つ重さであったのかもしれない。
未だユーベルコードに目覚めぬ能力者たちが一般人たちを避難させようとしている。
確かに力では劣るのだろう。
けれど、彼等もまた心に善性を宿す者達。
誰かを守りたいという思いがあるからこそ、彼等は『死兵』たちが蔓延る鎌倉の都市に住まう人々を救出し続けていた。
そこに体を引きずるようにして現れるのが『死兵』たちである。
「戦う」
「抗う」
うわ言のように紡がれる言葉。
彼等の体はただ生あるものを脅かすためだけにあるようであった。心に残された意義が、戦うことと抗うことだとしても、それはもう誰に向けられたものでもないこと慧は理解していたことだろう。
「こちらの戦いは我々が引き受けます。君たちは一般人の守護と避難に専念してください」
「ありがとうございます。こちらのことは、なんとかしてみせますから!」
能力者たちの一団が慧の言葉に頷いて戦場となった都市を走る。
頼もしい、と思ったかも知れない。
まだ危なっかしいとも思ったかも知れない。
自分にもあのような時があったのだと慧は思ったかも知れない。
吹き荒れる闘気が迫る『死兵』たちを押し止める。
「玄武の本領発揮ですね」
吹き荒れる呪詛を受け止め、浄化のエネルギーを己にまとわせながら疾風のように吹き飛ばす。
「此処にはかけがえのない大切な思い出が……」
あるのだ。
青春の時代を過ごした鎌倉の地。
多くのものを得ただろう。喪うものも少なくはなかったはずだ。
死は常に己の傍らにある。
意識しなかったことなど無いだろう。
だからこそ、慧は力得た己の拳を持って、その手に握り締めた宿星剣を振りかぶる。
それは大いなる原初の光。
一閃は、奔流となりて『死兵』たちの体を吹き飛ばし、薙ぎ払う。
「だから、この地はなんとしてでも守り抜きますッ!」
ユーベルコードの輝きが迸り、次々と迫りくる『死兵』た地をなぎ倒し、慧は進む。
己の背に残る道は途絶えない。
後進の姿を己は見たのだ。あれこそが希望そのものである。
自分たちが戦い、費やした青春は決して無駄ではなかった。
それを彼等は証明してくれたのだ。
「こんな時だというのに昔を思い出しますね、フフフ」
慧は笑ってしまう。
穏やかな時も、苛烈なる戦場に座す時も、どんなときでも。
きっと今ならば、あの時のことを思い出して笑うことができる。自分自身の体に宿る力を発露し、慧は宿星零光陣(シュクセイレイコウジン)と共に戦場を切り裂く。
己に向けれれた敵意も、悪意も。
全て切り払って前に進む。
それがあの青春の日々を戦い抜いた己の力であると示すように、鎌倉の地を包み込む暗夜の如き戦場を疾走るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
カツミ・イセ
僕の神様は言ったよ。『鎌倉を守って』と。
僕の神様にとって、鎌倉は故郷とも言えるからね。もちろん頷いたさ。
さて、【似姿】使って共に突入していこう。能力者の人たちには避難に専念してもらうね。
大丈夫、僕は僕の神様から聞いて知っている。…ディアボロスランサーと共に度だったかみさまからね。
『浄化の水』概念でその呪詛は弾いていくし、そもそも効かないよ。
僕は僕で常に再生するしね。
だから皆、水流燕刃刀展開!薙いで薙いで、守りきっていこう!
ここは僕の神様の思い出の地なんだ。惨劇を起こさせなんかしないよ!
願う者がいて、願われる者がいる。
そして、願いは叶えられるものもあれば、叶えられぬものもある。
この銀の雨が降る世界にあって、それは残酷な現実であったのかも知れない。リビングデット化した『死兵』たちは、願う者であり、叶えられなかった者たちであったのかもしれない。
しかし、その彼等が世界を壊す一端となろうとしているのは皮肉だったのかもしれない。
そんな彼等を見て、カツミ・イセ(神の子機たる人形・f31368)はどう思っただろうか。
「僕の神様は言ったよ。『鎌倉を守って』と」
小さくつぶやく。
彼女の言うところの神様が如何なる存在であるのかは彼女しか知り得ぬことであったことだろう。
その理由がどうあれ、彼女の言うところの神は鎌倉を故郷ということが出来たのだろう。だからこそ、カツミは頷く。
もちろん頷く。
頷かぬ理由など無い。
だからこそ、その瞳はユーベルコードに輝く。
「僕の神様から賜りし水の権能、その一つ。僕と似た者たちをここに――水の権能、二『似姿』(ニスガタ)」
生み出されるのは水で出来た、カツミとそっくりな球体関節人形であった。
二人で共に鎌倉の都市の外縁部を取り囲む『死兵』たちへと立ち向かう。
「あなたは……!」
「猟兵というやつさ。大丈夫、僕は僕の神様から聞いて知っている……ディアボロスランサーと共に旅立ったかみさまからね」
満ちる浄化の水は己に迫る呪詛を弾く。
例え、その呪詛が彼女の体を捉えるのだとしても、彼女は効かないと言い切る。
「戦う」
「抗う」
己たちは、その意義でもって戦うものであると『死兵』たちは体を引きずるようにしてカツミたちに迫る。
銀誓館の能力者たちは、未だユーベルコードに目覚めていないものもいる。
彼等の力はオブリビオンには及ばないだろう。
けれど、それでも彼等は一般人の避難を優先している。
救いたいと願う心があって、それが善性によって突き動かされているというのであれば、彼等はやはりカツミの元となった者と同じ志を持っていると言えるのかも知れない。
「君たちの心の中にある呪詛は効かない。だから、此処で君たちを止めさせてもらうよ!」
広がる清淨なる水の力を秘めた蛇腹刀。
その水流はまるで燕が舞うように宙を走り、『死兵』たちを次々と切り裂いていく。
守りたいという願いが此処には満ちている。
「さ、おゆき。ここは僕に任せてよ」
カツミはそう言って微笑んで見せるだろう。
彼女の神様が求めたこと。
そして、その求めたことと同じことをしようとしている後進たち。
多くの戦いの日々があった。
尽きることのない戦いが。
けれど、旅立った者もいた。
遠くに、遠くに。
今はもう此処ではない何処かに。
変わらぬ事実がカツミの中にある。そう。
「此処は神様の思い出の地なんだ」
力強くカツミは言葉を紡ぐだろう。どれだけ戦うという意義が、抗うという意志が呪詛を持って鎌倉の地を蹂躙しようとするのだとしても。
「惨劇を起こさせなんかしないよ!」
カツミと共に並び立つ水で出来た球体関節人形と共に彼女は、迫りくる『死兵』たちをなぎ倒し、『闘神の渦』を生み出す儀式を守る囲いを突破するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
カナギ・アマツカグラ
いいよ……!
キミ達がこの世界を終わらせようとするなら……
まずはその巫山戯た終焉をブチ壊すッ!!
さあさあ!アマツカグラの神楽巫女の力をとくとご覧あれ!!(びしっと決めポーズ!)
バルカンの韶でバルカン10体を召喚して、一般人の護衛を頼むよ!
《ニャー!!》
神羅浄炎陣の結界術で敵とその怨念を封じ込めて
神楽を舞い、UC+装備版の神火大乱舞で無数の神火を招き敵を浄化し、人々を厄災から守るよ!
負傷者は、和魂之鎮歌を歌唱して傷を治療してあげるよ!
アドリブ・その他装備アビリティの使用おまかせ!
生きてはいない者が生きている者を殺す。
それがオブリビオンである『死兵』の中にある意義だった。
「戦う」
「抗う」
たったそれだけだった。
骸の如き体は引きずられるようにして鎌倉外縁部を取り囲んでいる。
『ハビタント・フォーミュラ』の為す『闘神の渦』の儀式を守るために。その結果何が起ころうとも彼等には関係のないことだった。
彼等にとって、それはどうでもいいことだった。
世界結界を削り、オブリビオン・フォーミュラの強化を目論む。
確実に世界は破滅に導かれるだろう。だから、それがどうしたというのだろうか。彼らに残っているのは『戦う』ことと『抗う』ことだけだ。
その目的と意義だけがただ骸の如き体を突き動かす。
「いいよ……!」
そんな彼等の前に立ち塞がる者がいる。
多くの銀誓館学園の能力者たちが今も鎌倉市街地に残された一般人たちを救出しようとしている。
「キミたちがこの世界を終わらせようとするなら……まずはその巫山戯た終焉をブチ壊すッ!!」
カナギ・アマツカグラ(扇の神楽巫女・f39117)は黒猫の姿をした星霊を解き放し神火を解き放つ。
「さあさあ! アマツカグラの神楽巫女の力をとくとご覧あれ!!」
彼女は決めポーズを取って『死兵』たちの前に立ち塞がる。
一般人たちに迫らんとしている『死兵』たちを遮るように黒猫の星霊たちが戦場となった市街地を疾走る。
「戦う」
「抗う」
彼女の言葉にも、所作にも敵は興味を示さない。
ただ体内より溢れるような呪詛でもって生きている者たちを殺すためにユーベルコードを輝かせる。
「その怨念を封じ込めさせてもらうよッ!!」
神火大嵐舞は、創世記の炎の渦の召喚で以って放たれるユーベルコード。
その力は極めて強大な力。
しかし、そのカナギが奉納の舞を捧げていなければ制御が不能に鳴る。
だからこそ、彼女は舞い続ける。
人々を厄災から守るために。
彼女がエンドブレイカーだからではない。猟兵だからでもない。巫女だからだ。
自分がそうしたいと思って、そうするべきだと思ったのならば彼女は立ち止まらないだろう。
舞う。
どれだけ多くの呪詛が、生者を苛む力が奔流となってシルバーレイン世界を蝕むのだとしても。
守る。そのためにカナギは力を振るうのだ。
世界結界が破壊されれば、オブリビオン・フォーミュラが強化される。
それを彼女は巫山戯た終焉だと言った。
「人々を厄災から守るよ! ボクがアマツカグラの神楽巫女だよ!」
恩義に報いるために。
そのために彼女は舞い続ける。
創世記の炎の渦の中、迫りくる呪詛の尽くを焼き滅ぼすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
古森・ちゆり
ぴゃーん!
急がなきゃ!
ちゆりのおうちのあるこの世界をめちゃくちゃになんかさせないもん
銀誓館のひとたちには避難ゆうどうをしててもらうよ
ここはちゆりにまかせて……
カードを掲げて…いぐにっしょん…!
赤弓手から妖気の矢を放って攻撃して、それと……
抱えてたにゃにゃこをいったん地面において、両手で糸を放っての【ちゆり式フレイムバインディング】、傷を無視して攻撃ができるなら、破魔の力を込めた炎の糸で、ぐるぐる巻きにしてつかまえ(捕縛)ちゃうよ……!
攻撃されると厳しいからできる限り先手を取って、ぐるぐる巻きにしていっちゃうよ…!
少女の心の中を占めるのは、『急がなきゃ』という気持ちばかりであった。
銀の雨が降る世界。
世界結界によって超常たる現象が封じ込まれた世界。
シルバーレイン。
それこそが古森・ちゆり(土蜘蛛の白燐蟲使い・f35520)の世界であり、|領域《おうち》であった。
「ぴゃーん! 急がなきゃ!」
不安にかられる。
自分のおうちがなくなってしまうかもしれない。
抱えた猫のぬいぐるみの手足が揺れている。その手足の揺れと同じように彼女の心は揺れに揺れる。落ち着かない。だからこそ、彼女は『にゃにゃこ』と呼ばれるぬいぐるみを力強く抱きしめた。
世界結界が削れ、それがオブリビオン・フォーミュラの強化につながるのならば、世界そのものが破滅してしまう。
それは即ち自分の領域がなくなるということ。
だからこそ、彼女は小さな体を震わせて鳴く。帰るべきおうちがなくなってしまう。守らなかればならない。
ならばこそ、彼女は前向きになるのだ。
「戦う」
「抗う」
その言葉が彼女の耳をつく。
嫌な予感がした。彼女は見ただろう。ボロボロの体を引きずるようにして、呪詛を撒き散らすオブリビオンの姿を。
『死兵』たちは止まらない。
どれだけ体が損壊しようとも、その体に宿った呪詛だけで体を突き動かす。
「ちゆりのおうちのあるこの世界をめちゃくちゃになんかさせないもん」
ちゆりの手に掲げられたものがある。
それはイグニッションカード。能力者ならば誰もが持つ力の源。
けれど、それを制するように能力者がちゆりの小さな体の前に塞がるようにして飛び出す。
「逃げて! 此処は私達が!」
その言葉にちゆりは目を丸くするかもしれない。自分より年上の女生徒。恐らく高等部だろう。
ちゆりは土蜘蛛であるが、初等部。
彼女たちは自分たちよりも年下の彼女を守らんとしたのかも知れない。ユーベルコードに目覚めていない能力者は猟兵に力として劣る。
けれど、自分を守ろうとしてくれた。
それに、ちゆりは報いようとするだろう。
「ここはちゆりにまかせて……」
「あなた、何を……まさか!」
「……いぐにっしょん……!」
その言葉と同時にちゆりの腕を覆う鎧状の詠唱兵器。『赤弓手』と呼ばれた『赤手』より放たれる矢が『死兵』たちに瞬時に突き立てられる。
さらに矢と繋がるは炎を帯びた糸。
彼女の瞳に輝くののはユーベルコード。
炎を帯びた糸は即座に『死兵』たちを取り囲み捕縛する。
「……ぐるぐる巻にしたら……」
ちょっとだけ此処で良い子にしていてね、とちゆりは抱えていた『にゃにゃこ』を地面において空いた手より再び『死兵』たちを炎を帯びた糸で捉える。
彼女のユーベルコードは両手で扱うことによって威力が底上げされるのだ。
骸たる体を突き動かす『死兵』たちは、その炎の糸を引きちぎることはできない。どれだけ呪詛に塗れ、己の肉体的欠損を厭わぬのだとしても、ちゆりのユーベルコードは彼等を捉えて離さないのだ。
「あなた、ユーベルコードに覚醒していて……」
「……うん、まかせて。避難ゆうどう……」
ちゆりの言葉に高等部の女生徒能力者が頷く。
この場において力の差は重要ではない。誰かを守らんと疾走る決意があるかないか。
ただそれだけが重要なのだ。
ちゆりは鎌倉市街地の電柱や建物を利用し、糸を『赤手』より放ち、戦場を走る。
敵から攻撃される前に捕縛する。
ちゆりがしなければならないことは、『闘神の渦』儀式を行っている『ハビタント・フォーミュラ』を守る囲いを突破すること。
ならば、『死兵』は雑兵でしかない。
この囲いを破ることに注力するのならば、ちゆりは急がねばならない。
「『にゃにゃこ』、急がなきゃね……」
地面においた『にゃにゃこ』を抱え、ちゆりは糸の上を蹴って飛ぶように、外縁部の囲いを飛び越えるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
御鏡・幸四郎
鎌倉は思い出の地であり、現在進行形の生活の場でもあります。
この地を犠牲になどさせません。
後進は育っているようですね。その心根を頼もしく思います。
彼らを狙う敵はこちらに誘導し、攻撃を引き受けましょう。
手近な敵の体勢を崩して盾とします。
敵からの攻撃を防ぎ、戦闘不能になれば
ラスト・アタックで敵を屠るでしょう。
呪詛を受けても香り袋に忍ばせた特別な茶葉の香りで浄化します。
戦いながら雑霊をチャージ。無数の雑霊弾を放ちます。
「降り注げ!」
麻痺させればラスト・アタックは放てないでしょうが、
放てた場合も敵を盾にし、攻撃を見切って受け流します。
現役時代の仲間や後輩たちを思い出します。
彼らも頑張っているでしょうか。
多くの能力者にとって鎌倉は特別なる思い入れのある土地であったことだろう。
死と隣合わせの青春。
それを送ってきたからこそ、得たものがある。
無論、喪うばかりであったかもしれない。
けれど、それでも得るものがあったから今もなお、大地を踏みしめ立っている。青春の日々は過ぎ去り、思い出の彼方に追いやられるのだとしても、それでも人は思い出があるからこそ、己の背に轍が刻まれることを知るのである。
「戦う」
「抗う」
過去の化身オブリビオン。
彼等は過去の轍そのものでありながら、停滞したものたちである。
時間が質量を持つというのならば、その重みに歪み果てた者達でしかない。死した骸の体を引きずるようにして彼等は鎌倉外縁部を取り囲む。
まるでこれより訪れるであろう外敵を排除せんと備えているようであった。
それは事実正しい。
彼等が守るのは『闘神の渦』儀式である。
『ハビタント・フォーミュラ』が狙うのはオウガ・フォーミュラの強化。
世界結界を『闘神の渦』が生み出す破壊エネルギーでもって削る。その降り注ぐ力によってオウガ・フォーミュラが強化されたのならば、猟兵達の戦いにも影響が及ぶであろうし、また儀式の場となった鎌倉も壊滅的な打撃を受けるだろう。
「この地を犠牲になどさせません」
御鏡・幸四郎(菓子職人は推理する・f35892)は走る。
猟兵と覚醒した嘗ての能力者。青春の日々を戦いで彩った思い出が脳裏に蘇るかもしれない。
思い出は重しではない。
だからこそ、彼の走る姿は軽やかであった。
身に満ちるユーベルコードの輝き。それは星のように後進の能力者の瞳に映ったことだろう。
未だユーベルコードに覚醒指定無くても、彼等の善性を幸四郎は感じただろう。
「君たちの、その心根を頼もしく思います」
「私達は一般人の皆さんを」
「ええ、私は敵を誘導します。頼みましたよ」
その言葉に若き能力者たちが走る。
彼等の背中にこそ幸四郎は光を見たかも知れない。頼もしいとも思った。確かに能力的には劣る者出会っても、心に宿る善性があればこそである。
かつて己の仲間たちがそうであったように。
「戦う」
「抗う」
だが『死兵』たちはそんな輝きを汚そうと呪詛を解き放つ。
けれど、それを香り袋に忍ばせた特別な茶葉の香りで浄化しながら、幸四郎は己より先には活かせぬとユーベルコードの輝きを発露する。
それは周囲にあった残留思念。
雑霊を集め充填するユーベルコード。
「降り注げ!」
雑霊弾雨(ゴースト・スコール)が戦場に荒ぶように解き放たれる。
それは『死兵』たちの体を穿ち、麻痺させる。
例え、己達の肉体的損壊を無視してでも動こうとしても、肉体そのものを麻痺させてしまえば、果敢なる最期の一撃も解き放つ事はできはしない。
「こちらの一般人の方々の保護は、終わりました!」
その言葉に幸四郎は微笑む。
現役の頃を思い出す。
きっとあの時共に戦った仲間たちもまたがんばっているはずだ。きっとそうだ。
離れていたとしても、時がどれだけ自分たちの間にあるものを広げるのだとしても。
それでも幸四郎は微笑んで戦場を走る。
青春の日々は終わりを告げれども、今もなお鎌倉の大地で生きる自分がいる。
途絶える事無く続く道があるのならばこそ、その道を目指す後進がいることを知り、彼は彼等に恥じることのないように正しき力を発露させるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
(死んでいないだけで、自分もいつかはああなるのだろうか)
(……否!否!否!「否だ!!」
『ディスポーザブル』発動。
死兵へ軍刀を振るい指し、【矢弾の雨】を放ち、敵群へ切り込む!
らぁああああああッッ!!!
敵の反撃、【呪詛】を|己が【闘争心】《悪霊の怨念》で|ねじ伏せ《【捕食】》
【エネルギー充填、推力移動】更なる弾丸の雨を引き連れ、叩き斬る!
敵がいる、この世界を壊さんとする敵だ!
攻撃を介した崩壊霊物質で死兵を破壊、
RX騎兵刀を怪力で投げ付け、【早業】で破壊を行い続け、
【継戦能力】破壊した死兵共の呪詛を喰らい、|戦い続ける。《対した違いはない》
戦え、壊せ!死兵ではない!!
自分は猟兵だぁあああ!!!
『死兵』は骸の体を引きずるようにして戦場を進む。
肉体の欠損があろうとも関係など無い。
ただ、己の中にある言葉に従うように進む。
「戦う」
「抗う」
ただそれだけだ。それだけのために魂すら擦り切れるような痛みも、破壊も、何もかも受け入れるのだ。
全てはそのためだけに。
それ以外は必要ない。
その姿に朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は己の未来を幻視したかもしれない。
死んでいないだけで、自分もいつかはああなるのだろうかという疑念が湧き上がってくる。
悪霊。
自覚なきもの。
それが己である。ならばこそ、彼等と己を分かつものは一体難であっただろうか。意志だろうか。それとも使命だろうか。
呪詛を動力にし、衝動を力に変える。
躯体を走らせる動力炉は、熱を持つ。
否である。
そう、否。否。否!
「否だ!!」
叫ぶように小枝子の人工魔眼が光を解き放つ。
己は自覚なき狂える悪霊。
肉体は意味をなさない。『死兵』と己を分かつのは精神そのものである。肉体の負荷は関係ない。
「らぁあああああああッッ!!!」
叫びながら小枝子は『死兵』の群れへと突っ込む。斬り込む。それは自暴自棄のごとき突撃であったことだろう。
迸る『死兵』の呪詛が小枝子に迫る。
けれど、それを己の心に宿る|闘争心《悪霊の怨念》でもってねじ伏せ、捕食する。
己の中に呪詛が満ちていく。
黒くどす黒いもの。
されど、それは色を持たぬのではない。ならばこそ、その色を塗りつぶすのは小枝子の闘争心であった。
迸る弾丸の雨を引き連れて、軍刀を振るう。
血潮の代わりに呪詛が迸る。
「敵がいる、この世界を壊さんとする敵だ!」
投げつける、叩きつける、喰らい続ける。
小枝子の衝動のままに走る戦いは、圧倒的であったことだろう。敵と己を分かつものがなんであったことなど関係ない。
己と彼等に対した違いはない。
戦い続けるということをする。ただその一点が共通点であるしかないのだ。違いなど無い。
「戦え、壊せ!」
砕く。呪詛が迸り、その全てを小枝子は喰らって進む。傷も、痛みも、苦しみも、恐怖も何もかも。
「喰らって、る……何、あれ」
若き能力者は見るだろう。
小枝子の戦いを。あれが猟兵。生命の埒外たる存在。
自分たちの理解の及ばぬほどの戦いを見せる小枝子の姿に恐れを感じただろう。
けれど、あれもまた猟兵なのである。
世界を壊すものを滅ぼす者。
その力の迸りは、共に同じ力――ユーベルコードを使えど、己自身が否定して見せなければならない。
「自分は」
小枝子は叫ぶ。
悪霊。自覚なき悪霊。『死兵』。
そのどれもが違うと叫ぶ。そう己の在り方を叫ぶのだ。
「猟兵だぁあああ――!!!」
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
いざ鎌倉へ!
と気楽に観光に来れれば良かったんだけど…どうにもきな臭いねえ
猟書家は、オブリビオンフォーミュラに成り代わる為に動いているのかと思ったけれども…
いやそうか、上杉謙信もそれらしかったからこういう事もあり得るのか…?
ま、吹っ飛ばし続けていればそのうち分かるか!
●
戦い朽ちた後も、オブリビオンとしてまた働かされるのも気の毒に
餅は餅屋、オブリビオンには猟兵…へい、おまち!
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
【偽書・焔神】起動
『斬撃波』に蒼炎を乗せ死兵にぶつけて『吹き飛ばし』
そのまま蒼炎で一気に『焼却』、仕留めていこう
攻撃は『武器受け』と『オーラ防御』で直撃しないように動こう
「いざ鎌倉へ!」
それは気楽な言葉であったかもしれない。
時代が違えば、決戦に向かう己を鼓舞する言葉であったかも知れない。
けれど、月夜・玲(頂の探究者・f01605)は肩をすくめる。
「……どうにも、きな臭いねぇ」
鎌倉市街地を取り囲むオブリビオンの群れ。
『死兵』たちは骸のごと体を引きずりながらも尚も、『闘神の渦』儀式を守るために戦場にある。
膨大な数だ。
それほどまでに猟書家である『ハビタント・フォーミュラ』はこの儀式を完遂することを目的としている。
猟書家とはオブリビオン・フォーミュラ亡き世界を侵略する存在。
しかし、シルバーレイン世界には未だオブリビオン・フォーミュラが存在しているのだ。
ならばこそ、おかしいと言えるし、玲の言葉通り、きな臭いと言わざるを得ない。
「オウガ・フォーミュラはオブリビオン・フォーミュラに成り代わるために動いているのかと思ったけれども……」
いや、と玲は頭を振る。
事態は既に動いている。
猟書家がオブリビオン・フォーミュラ存命の世界に現れ、オブリビオン・フォーミュラを強化しようとしている。
その思惑がどのようなものであれ。
「ま、吹っ飛ばし続けてればそのうち分かるか!」
玲は戦場を走る。
目の前に存在するのは戦い朽ちた後も、オブリビオンとして動く『死兵』たちだ。
彼等に意志らしきものはない。
ただ、『戦う』ことと『抗う』ことだけのために彼等は動き続ける。それ以外知らないかのように、肉体的欠損など物ともせずに動き続けている。
ユーベルコードに覚醒していない若き能力者たちではどうしようもないだろう。
「気の毒だけどね……」
『死兵』の在り方にも。
能力者達のやるせなさも。
どれもが理解に及ぶものであった。だが、相手が悪い。ユーベルコードでなければオブリビオンは打倒できない。
ならばこそ、玲は楽観的に言うのだ。
「餅は餅屋、オブリビオンには猟兵……へい、おまち!」
抜き払った模造神器の二振りが青い残光を戦場に刻む。放出される浄化の蒼き炎が『死兵』を飲み込む。
「システム切替、偽書・焔神(ギショ・ホムラカミ)起動」
彼女の瞳がユーベルコードに輝いている。
浄化の蒼き炎は『死兵』たちを飲み込み、燃やし尽くしていく。
さらに蒼炎は飛び火するように迫りくる『死兵』の大群を消えることなく広がっていくのだ。
「猛り、狂い、燃やし尽くせ」
掲げる模造神器の刀身が輝きを放つ。
それは篝火のように能力者たちの瞳に映っただろう。ユーベルコードに目覚めていなくてもわかる。
あれが自分たちの目指すべき道であると。
心に善性が宿っているのならば、迷っている暇など無い。
「このまま一気に仕留めていくよ。ここは任せるよ」
玲は能力者たちにいまだ逃げ遅れている一般人たちを頼み、外縁部に存在する『死兵』たちを吹き飛ばしながら一直線に『闘神の渦』儀式を執り行っていうる『ハビタント・フォーミュラ』を目指す。
この事件の渦中にいるのが猟書家であるというのならば、打倒し続ければいずれ真実にぶつかるだろう。
もっとスマートなやり方があるのかもしれない。
けれど、玲は猟兵である。
そこにオブリビオンが、過去の化身が今という世界を破壊しようとするのならば。
「お仕事お仕事ってね!」
蒼炎と共に玲は戦場を切り裂くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
酒井森・興和
鎌倉は思い出深い地だ
何より
次世代の子達には生き延びて貰わないとね
死んでも戦い抗う気負い
解るとも
僕も葛城山の戦ではそのつもりで臨んだ
種族の最後の砦を守りたかった
銀誓館の若い彼らも同じだろう
でもあなた方はそれが無い
只の兵器はいずれ壊れるものだよ
多数を相手取る為
三砂で撃ちUC使用
即【追撃】へ
動きの鈍った個体を狙い飛斬帽【投擲】し手足を【切断】、近い敵は三砂で【足払い、重量攻撃】で足を潰し機動力奪っていく
仕留めは三砂で撃ちぬき横から首を薙いで口封じ
敵UCへは【集中力、咄嗟の一撃で受け流し】て躱したいが
被弾するのも【覚悟】、【落ち着き】後方へ下がりつつ逆鱗【威嚇射撃】
銀誓館生徒の危機は咄嗟に【かばう】
銀の雨降る世界にあって、鎌倉の大地は多くの能力者にとって思い出深い地であったことだろう。
死と隣合わせの青春。
能力者にとって、青春とはそういうものであったのだ。
超常を知覚することができるがゆえに、世界の本当の姿を知っている。狂気に冒されず、心に善性を持って戦うことが出来たのは、彼等の人生においての幸いであったのかもしれない。
故に得たものがあったのだ。
今という未来を。
多くのより善きを掴み取ることのできる未来を。
それが可能性に満ちた世界であるというのならば、若き世代というものは、酒井森・興和(朱纏・f37018)にとって守るべきものであった。
世界結界で封印された己。
土蜘蛛戦争で蘇り、銀誓館学園に下った旧き者。
そのどれもが正しく、また同時に己という存在の確固たる証明でもあった。
「次世代の子達には生き延びてもらわないとね」
だからこそ、ぶつかる。
オブリビオンとなった『死兵』たち。
彼等の中にあるのは『戦う』ことと『抗う』ことだけだ。
ただそれだけのために彼等は肉体を例え破壊されとようとも立ち止まらない。己の敵である猟兵を打倒するためだけに力を振るうのだ。
それを憐れとは言うまい。
「死んでも戦い抗う気負い。解るとも」
己もそうであったのだ。
葛城山の戦いでは、そのつもりで挑んだ。土蜘蛛という種族の最期の砦。
それがシルバーレイン世界での戦いの記憶だった。
守りたかったものがある。
それは敵対した銀誓館の能力者も同じであった。けれど、そう。けれど、オブリビオンとなった『死兵』たちにはそれがない。
「戦う」
「抗う」
それしかないからこそ、彼等の瞳は虚ろであった。
嘗て戦ったであろう能力者の瞳にあった輝きがない。だからこそ、彼等は。
「あなた方は兵器そのものだ。只の兵器はいずれ壊れるものだよ」
故に興和の瞳がユーベルコードに輝く。
「八相、烈火」
手にしたツルハシのような形をした長物を彼は振るう。
強靭なる素材を用いながら、しなるようにした長い柄が宙を斬る。風が鳴り響くように戦場に響き渡った瞬間、風は炎へと姿を変える。
それはまさしく、火纏(カテン)と呼ぶに相応しい光景であったことだろう。
彼の振るう獲物が『死兵』に叩きつけられ、吹き飛ばす。
それで終わらない。放たれる鋏角衆の飛斬帽が、さらに吹き飛ばされた『死兵』に追い打ちをかけ、その手足を切り裂く。
機動力を潰し、その躯体に興和は飛ぶ。
「その呪詛の如き言葉は、後進の彼等に聞かせるわけにはいかないのだよ」
振るう長物の一撃が奔り抜けるように光熱の炎を解き放ち、『死兵』たちの頭部を薙ぎ払うように吹き飛ばす。
言葉は途切れる。
けれど、呪詛が戦場を満たしていく。
それが戦場の在り方であるというように。
けれど、興和はためらわなかったことだろう。己の背には守るべきものがある。
あの時。
そう、あの時己が守りたかったもの。
それが今この時代に続いている。後進の能力者達の力は及ばずとも、その心根に宿る善性だけで人々を救わんとしている。
ならば、興和はためらわないだろう。
「さあ、君等は征くといい。此処は僕に任せてもらおうか」
穏やかに微笑み、興和は未だ己の中にある線を踏み越えない。
これより先は人ならざるものの時間である。己が人間ではないからという理由だけではないのかも知れない。
好いているからこそ、近づいてはならぬと思うのかも知れなかった。
だからこそ、守るのだ。
いつか訪れるその時が来るまで。
そのときに呪詛は必要ない。迫りくる悪意をこそ振り払わんと炎と共に興和は『死兵』の囲いを突き崩すように戦場を走る――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステラさんと】
あ、はい。匂いますか。やべーこと以外全然解りませんが。
とはいえ……。
ステラさんは|平常運行《ぼうそうもーど》だとしても、
今回はなんだかもひとりいますね?
まぁ、最近はLG●Tとかそういうのうるさいですし、
語尾のおかしな少女しゃべりの清廉騎士さんがいてもいいですけど、
キャラの濃いのは否めませんね。
こちらもイジりにいかないといけないのが大変そうですけど、
エイルさんが絡んでいる以上、ステラさんが止まるはずもありません。
ですのでわたしも、精いっぱい|がんば《イジ》っていきますよ!
【ベーゼンドルファー】で【ボレロ】を演奏して、
みんなをメロメロにしてしまいますよ!
……耳栓になんて負けません!
ステラ・タタリクス
【ルクス様と】
|エイル様《主人様》の! 香りがします!!!
ええ、すごくしますよ、メイドセンサーが振り切れそうです!!
誰がやべーメイドですか
かの少女がエイル様に繋がる気がします、ええメイドの勘です
ルクス様
あれは必死にキャラを作っている系の何かではないでしょうか
ええ、ぽっと出が覚えてもらうためのアレですよアレ
弄っても良し、放置しても良し
とりあえず一般人を救出しましょう
止まりますよエイル様がいれば
いなかったらどこまでもいきますメイドゆえに!!
数だけの兵ですが近づくのは得策では無さそうです
ルクス様の演奏に合わせて【シーカ・サギッタ】で
銀の雨とはいきませんがナイフの雨で滅ぼして差し上げましょう
開口一番というのは、こういう事を言うのだろうとルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は思った。
いや、もう知っていたことであったのかもしれない。
これまで何度もこういう場面は見てきたし、聞いてきた。
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)の言うところのメイドセンサーこと、主人様アンテナ。
それが今まさに振り切れそうになっているのだ。
その発露としてステラは叫ぶ。
「|『エイル』様《主人様》の! 香りがします!!!」
「あ、はい」
ルクスは辛うじてそういうのが精一杯であったのかも知れない。
ステラがやべーこと以外は何一つ彼女にはわからない。
けれど、ルクスの勇者としての直感が言っているのである。そう、この事件を引き起こした『闘神の渦』儀式を執り行っている猟書家『ハビタント・フォーミュラ』である。
ステラは|平常運行《ぼうそうもーど》であるが、どうにもきな臭い。
猟兵達の多くがそれを感じ取っている。
猟書家とはオブリビオン・フォーミュラなき世界を侵略する者たちである。けれど、このシルバーレイン世界は未だオブリビオン・フォーミュラが存在しているのだ。
ならば、それは今までの彼等の行動原理から見てもおかしなことなのだ。
「誰がやべーめいどですか」
いえ、言ってないのですが。心では思っていたが、それを読み取ったというのだろうか。どちらにせよやべーメイドであることに変わりはない。
「いえ、今回はなんだかもひとりいますよね?」
「かの少女が『エイル』様に繋がる気がします、ええメイドの勘です!」
あ、これは共通認識からしてズれているやつだとルクスは思っただろう。たぶん、ステラが言うのは『銀鈴・花』のことだろう。
「あの、多分違います。わたしが言っているのは、あの語尾のおかしな少女しゃべりの清廉騎士さんでですよ。確かに最近は色んなことが五月蝿いですから、そういう人が居てもおかしくないんでしょうけど。キャラの濃いのは否めませんね」
「ルクス様」
スン、とステラの顔が引き締まる。
基本、『主人様』以外のことはどうでもよかったのかもしれない。
『主人様』のことが絡まない限り、有能メイドっていうところがなんというか、それはそれでキャラ濃いんだけどいいのかなってルクスも思ったかも知れない。
「あれは必死にキャラを作っている系のなにかではないでしょうか。ええ、ぽっと出が覚えてもらうためのアレですよアレ」
酷い言いようである。
「弄っても良し、放置しても良し」
いや、そういう話なのだろうか。
「こちらもイジりにいかないといけないのが大変そうですけど……」
でもなぁ、とルクスは半眼になる。
今のステラが止まるわけがないのである。
こういう時、ルクスはいつもサポートに回らないといけないのである。しかしまあ、ルクスはルクスでしっかりやるべきことをやるのだ。
勇者である、という自覚が彼女にもあるのである。しかし、その、いいにくいことだが、あちこちで出禁になっているという事実が重くのしかかる。
けれど、そんな事実を振り払うようにルクスはグランドピアノを奏でる。
「ですのでわたしも、精一杯|がんば《イジ》っていきますよ!」
それはベクトルが違うのではないかとステラは思った。
けれど、耳栓をしっかり装備することは忘れない。
ルクスの演奏は、それはそれはとてもすごいのである。
「みんなをメロメロにしてしまいますよ!」
そう、どれだけ肉体的欠損を恐れず、気にもとめず進もうとする『死兵』たちであろうと、彼女の演奏の凄まじさの前で意味をなさない。
奏でるは魂の演奏。
即ち、ボレロ。
「わたしの魂を響かせますよ!」
弾く旋律は、戦場を席巻するだろう。あまりの音に、能力者達は新手の敵の攻撃かと混乱したかもしれない。
しかし、ルクスの演奏は『死兵』たちの動きを止める。
そこに放たれるのは投げナイフの一閃である。
「銀の雨とはいきませんが、ナイフの雨で滅ぼして差し上げましょう」
しっかり耳栓装備したステラは余裕であった。時に耳栓すら突き抜けてくることもあるが、それはそれである。
なにせ、ステラはもう止まらないのである。
『主人様』の香りを辿ることにかけては彼女の右に出るものはいない。すでにメイドという範疇をとうに超えているような気がする。
けれど、それでもゆくのだ。
「|『エイル』様《主人様》がいれば止まります。いなかったらどこまでいきますメイド故に!」
「それはなんか違うんじゃないですか? ……って、耳栓してます!? また!?」
ルクスはツッコミを入れたが、ステラが素知らぬ顔をしていることに察するのだ。
また耳栓をしている。
だが、ルクスのグランドピアノを奏でる指に力がこもる。
そう、耳栓なんかに負けることなんてないのだ。
彼女は彼女の戦いをする。
さらに力強く奏でられる旋律。豊かな色彩を思わせる旋律は、ルクスの演奏によって力を得て、さらに伸びやかに奏でられて、戦場を『死兵』の呪詛塗りつぶしていくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
武器:漆黒風 属性:風
鎌倉はいいところですよねー。だからこそ、放っておけないんですよー。
ああ、避難は能力者の方々に任せましたよー?
ではー、参りましょうかー。
今回はこちらにしましょうかー。
ええ、UCにて一斉に射撃攻撃。『私たち四悪霊』は生者ではありませんしね?陰海月と霹靂は影にいますしー。
鎌倉の人々に行くかもしれませんが…そんなの許すわけがないんですよー。竜脈に干渉、四天霊障にて範囲封印攻撃もやっておきますねー。
そう、ここを破壊されてなるものか。四悪霊は守るためにある。
一般人たちが逃げ惑う。
その背中を追うようにしてオブリビオン『死兵』たちが壊れた体を引きずるようにして市街地をゆく。
其処に割って入ったのは若き能力者たちであった。
「此処から先には……!」
彼等はユーベルコードに覚醒していない。
オブリビオンはユーベルコードでなければ打倒できない。
著しく能力を減退させられた能力者たちでは敵わぬ敵であった。けれど、それでも彼等は彼等の心根にある善性でもって、これらの前に立つ。
例え、敵わなくとも多くの人を救おうとする彼等の心こそが、死と隣合わせの青春を生き抜くために必要なものであったからだ。
「だからこそ、放っておけないんですよー」
『死兵』たちの直上より放たれる呪詛の矢が貫く。
それは、四更・雷(シコウ・ライ)。ユーベルコードの輝きに若き能力者は空を見上げる。
「上から!?」
「此方は私たちにおまかせをー」
のほほんとした声色。
それは、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)、その四柱の一柱である『疾き者』の声であった。
鎌倉の市街地の空より飛来した彼が解き放った雷の矢が宙を走り抜け、『死兵』たちを貫いていく。
敵の数は多く、外縁部には未だ多くの『死兵』が跋扈している。
これを押し止めるのは難しいだろう。
即座に囲いを突き抜けて、『闘神の渦』儀式を敢行している『ハビタント・フォーミュラ』を打ち倒さなければならない。
けれど、此処には守るべき者たちが多すぎるのだ。
「ああ、避難は任せましたよー?」
「わ、わかりました!」
その返事に満足したようにうなずいて『疾き者』は戦場をを駆け抜ける。
『死兵』が放つ呪詛は、悪霊たる己たちには効果がない。
生者を標的にした力は、確かに強力であったことだろう。
けれど、此処にはその呪詛の効果を受けぬ者だって存在しているのだ。
例外はいつでも存在している。
それが今回は己達であったということだけなのだ。
「標的を私たちに向けないかも知れませんが、そんなの許すわけが無いんですよー」
龍脈に干渉する霊障が、伝うように広がり『死兵』たちの解き放つ呪詛を封じ込めていく。
「戦う」
「抗う」
だが、『死兵』たちにとってそれは重要ではなかったのだ。
呪詛が効かぬからといってたじろぐことはない。恐怖することもない。猟兵達を見れば滅ぼすしかない。
ただその一念においてのみ彼等は突き進む。
例え、己の体が砕けてもなお、迫る呪詛に『疾き者』は細めた瞳をわずかに開くだろう。
輝くユーベルコードの輝きが、雷矢となって解き放たれる。
全てを壊そうとする呪詛。
生きとし生けるもの全てを呪い殺すかの如き『死兵』の呪詛。
それが齎すのは、この世界の破壊である。
「そう、ここを破壊されてなるものか。四悪霊は守るためにある」
彼等の心を束ねるものは、それだけである。
壊すのでもなければ、呪うのでもなく。
奪うのでもなければ、傷つけるものでもない。
ただ今を生きる者たちを守るためにこそ、四悪霊は己の力樽ユーベルコードの輝きで持って、『死兵』たちの守りを突き崩すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
遠野・路子
この世界にも猟書家
ドクターオロチを倒しても戦争を再現するとは敵も必死だね
それにしても空白ができる、ということは
やはりオロチにはカリストも入っていた?
ゴーストにして生命の埒外――猟兵である私に
生命を讃える歌は謳えないけれども
戦う|心魂《たましい》を讃える歌は奏でられる
【心魂賛歌】
対象は私の仲間――この脅威に向けて共に立ち向かう者たち
能力者でも猟兵でも細かいことは関係ないんだよ
征こう
私は距離を保った方が戦いやすい
蒼弓と生成した詠唱銀の槍で死兵を撃ち抜いていこう
ところで生者を呪い殺す怨念は私は対象?
まぁいずれにしても私はこの世界を守るだけ
人魔共存の路は途絶えさせない
悪路王の娘、遠野・路子、参る
銀の雨が降る世界。
シルバーレインにおいてオブリビオン・フォーミュラは未だ健在であり、過去の化身であるがゆえにかつて『揺り籠の君』と呼ばれた存在は再び争乱を呼び起こす。
そして、オブリビオン・フォーミュラ亡き世界を侵略しようとするのが猟書家と呼ばれる存在達であった。
鎌倉の市街地の上空に渦巻く破壊エネルギー。
それは『闘神の渦』と呼ばれ、メガリス『闘神の独鈷杵』の力の代償だった。
その力によって世界結界を削り、オブリビオン・フォーミュラを強化しようとしているのが猟書家『ハビタント・フォーミュラ』の目論見であった。
「この世界にも猟書家。ドクターオロチを倒しても戦争を再現するとは敵も必死だね」
遠野・路子(悪路王の娘・f37031)は新世代ゴーストである。
嘗て父と母より語られた戦争の有様を知るからこそ、オブリビオンの再現する戦争とを照らし合わせる事ができる。
過去、シルバーレイン世界にあって暗躍したという存在、『ドクターオロチ』は猟兵によって打倒された。
それが再現された戦争において空白であるというのならば、『清廉騎士カリスト』を語る『ハビタント・フォーミュラ』の存在は、その不在を意味するようにも思えたことだろう。
「やはりオロチにはカリストも入っていた?」
疑念が路子の中に渦巻く。
しかし、それでも未だ世界には歌が響いている。
死と隣合わせの青春を送った能力者たちの後進。
銀誓館学園に集った若き能力者たちはユーベルコードに覚醒していなくても、その心根に宿った善性でもって戦場となった市街地を走っている。
彼等が救わんとしているのは逃げ遅れた一般人たちだろう。
戦えずともできることがある。
そして、それがどれだけ危険を持つものであったとしても、彼等はためらわなかった。
だから、あの歌が聞こえるようだった。
「ゴーストにして生命の埒外――猟兵である私に生命を讃える歌は謳えないけれども」
しかし、路子の瞳はユーベルコードに輝く。
自分は生きている。
生命ならずとも今を歩む魂がある。
だからこそ、その路を往かねばならない。共に駆け抜けようと叫ぶ心魂が奏でるものがある。
故に、その歌を。
心魂賛歌(タマシイアルイハイノチヲタタエルウタ)と呼ぶ。
銀の光が路子の体を包み込む。それは彼女の力。
ユーベルコードの輝きであった。
「戦う|心魂《たましい》を讃える歌は奏でられる」
共に並び立つ者たちに広がっていく力。
波及する銀光は、猟兵のみならず若き能力者たちにももたらされる。
「力が……これが、ユーベルコード!」
若き能力者たちには未だ知り得ぬこと。
けれど、その力を齎した路子の言葉に彼等は頷くだろう。
ゴーストであろうと、人であろうと、関係ない。
共に戦う意志があるのならば、そこに善性が宿っているのならば。
「征こう」
路子は頷く。
どれだけ存在が違えども、宿る善性は語り継がれ、受け継がれてきたもの。
再現された過去の戦争があるのだとして、それがなんだというのだ。過去は変えられない。逆接の花は咲かせない。
故に、路子は手にした蒼弓に生成した詠唱銀の槍をつがえ、『死兵』を貫く。
「どれだけ生者を呪い殺す怨念が私を捉えるのだとしても」
路子は己の存在の意味を世界に問う。
「私はこの世界を守るだけ」
彼女の瞳に写っているのは、人とゴーストの手を取り合う未来。
多くの者が望み、青春をかけた戦いの果にあったのは、人魔共存の路。
それを他ならぬ己が守るのだ。
途絶えさせてはならない。
過去は変えられず、覆らず、そして、失われたものは戻ってこない。どんなに尊いものであっても、どんなに強大なものだったとしてもだ。
故に路子は、その煌めくユーベルコード満ちる瞳で未来を見る。
「悪路王の娘、遠野・路子、参る――」
『死兵』の囲いを突き抜けるように、銀の光が『闘神の渦』儀式の中心へと迫るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『通り魔の怨霊』
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POW : 滅茶苦茶にしたかった
【引火したガソリン】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : 死なせてやろうと思った
【凶器に用いた呪詛を纏う包丁】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
WIZ : 巻き添えにしたかった
【犯行時に用いた暴走自動車】を操縦中、自身と[犯行時に用いた暴走自動車]は地形からの激突ダメージを受けず、攻撃時に敵のあらゆる防護を無視する。
イラスト:はるまき
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「仇死原・アンナ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
誰でもよかった。
そう、誰でも。
幼くとも、若くとも、年老いていたとしても。
男であれ、女であれ、なんでもよかった。
言ってしまえば、人間でなくたっていい。ゴーストであってもいい。それが不毛であったとしても何ら意味はない。
『通り魔の怨霊』にとって、それは些細な問題であった。
己の力によって誰かを傷つける。
それだけが己の存在意義であった。意味はない。理由もない。只、其処にいた、というだけで理由には事足りる。
此処鎌倉の市街地であっても関係ないのだ。
「誰でもいい。誰でもいいから傷つけたい。なんでもいい。理由なんて後からこじつければいい。なければでっちあげてしまえばいい。そんなものなんの腹の足しにもならないのだから」
膨れ上がるように『通り魔の怨霊』から溢れ出るのは、『死兵』たち。
かつて『原初の吸血鬼』と呼ばれた者たちが持っていた力を移植されたオブリビオンである『通り魔の怨霊』は、その体内から軍勢を生み出し続ける。
鎌倉の市街地にあって、これだけ強固な防衛を敷き詰めることができたのは、『通り魔の怨霊』と『原初の吸血鬼』の力の組み合わせが良かったせいもあるだろう。
誰でもいい。
何者でもいい。
地位も性差も、何も関係ない。徒に襲い、傷つけ、殺す。それだけが反映される事柄。
「何が生命か。何が歌だ。何が聞こえるっていうんだ。歌なんてものが何の役に立つってんだよ」
目的がない。
あると言えば、傷つけることだけ。
だからこそ、猟兵や能力者は後手に回らざるを得ない。一つも取りこぼさぬようにと動くからこそ、多くを取りこぼすことを知らしめるように『通り魔の怨霊』は生命賛歌を嗤うのだった――。
儀水・芽亜
誰でもいいから殺したかった。その狂気だけは原初の吸血鬼に匹敵しますね。とにかく何とかしましょう。
湧き出る『死兵』の来る方向を逆に辿って、怨霊の元へ。
『死兵』は幻夢クラスターで眠らせながら道を進みます。
花さん、憑いてきていますね。あまり離れないように。
見つけました、元凶。
花さんは命を守ることだけ考えていてください。
幻夢クラスターの「全力魔法」「範囲攻撃」で湧き出す『死兵』ごと怨霊を眠らせます。
怨霊が眠ってしまえば、『死兵』も湧かなくなるはず。
上手く眠ってくれたら、裁断鋏でその腕を裁ち切りましょうか。首を獲ってもいいのですけど、それだとすぐに起き出しそうで。
花さん、無事ですね? 生存第一ですから。
誰でも良かったという者がいる。
殺すことも、傷つけることも、何もかもに理由が必要であるということ事態が間違いであると言うかのように嗤う者がいる。
その者がただ一人の人間であったのならば、その理屈も通用したことだろう。
だが、人は一人では生まれて来ない。
一人では生きていけない。
他者を必要とする。
だというのに、傷つけたかったのだと『通り魔の怨霊』は言った。
「そんなの間違っている」
若き能力者の一人『銀鈴・花』は言う。
間違っている。何がどう間違っているのかと言葉にすることはできなかった。ただ、彼女たち能力者の中にある善性が言うのだ。
そんなのは間違っているのだと。
「ええ、間違っています。誰でもいいから殺したかった。その狂気だけは『原初の吸血鬼』に匹敵しますね」
儀水・芽亜(共に見る希望の夢・f35644)にとってオブリビオンである『通り魔の怨霊』との問答は無駄であると断じるに値するものであった。
かの者の言葉は悪意そのものだ。
人の善性を否定するためだけに言葉を弄するものだ。
そんなものとの問答ほど時間の無駄はない。
溢れ出る『死兵』たちを芽亜はユーベルコードに輝く瞳で一瞥する。
「眠れ眠れ愛し子よ。再び日の目を見ること能わずとも」
幻夢クラスター(ゲンムクラスター)。
眠りに落とす虹色の炸裂弾が迫りくる『死兵』たちを吹き飛ばす。
「『花』さん、ついてきていますね。あまり離れないように」
「でも……! 前から来てます!」
芽亜はその言葉に前を向く。
迫るのは暴走する自動車。『通り魔の怨霊』が生前に凶行に使ったであろう自動車がユーベルコードとなって芽亜たちに迫りくるのだ。
生命を守れ、と芽亜は若き能力者たちに言う。
我が身を守れ。
その言葉に若き能力者たちは従う。
「見つけました、元凶」
「それは見当違いってやつだぜ。俺が元凶? 違うね。俺は、ただ呼ばれただけだ!」
『通り魔の怨霊』が叫ぶ。
凶行に使った自動車が芽亜へとめがけて飛び込んでくる。
眠りの炸裂弾は確かに彼を眠らせるだろう。けれど、湧き上がり続ける『死兵』は止まらない。
かのオブリビオンを打倒するまで湧出し続けるのだ。
ならばこそ、迫りくる自動車を前に芽亜は裁断鋏を手にし、車体ごと『通り魔の怨霊』を叩き切る。
「――……!? んだよ、これはよぉ!!」
痛みに覚醒する。
そこにあったのは芽亜のユーベルコードに輝く瞳。
「首をはねてもいいのですけど、それだとすぐに起き出しそうなので」
芽亜の手にした裁断鋏がシートごと『通り魔の怨霊』の腕を切り裂く。
裁ち切る一撃は、『通り魔の怨霊』の腕を跳ね飛ばすだろう。車体から転がるように飛び出しながらも『死兵』は次々と生み出され続ける。
眠りに落ちた『死兵』たちが再び立ち上がる。
大元たる『通り魔の怨霊』を打倒しなければ、儀式を守る『死兵』は消えない。
「『花』さん、無事ですね?」
「はい、此処は私達が抑えます。どうか、この儀式を」
「生存第一に。生きてさいれば、為せることもあります。死してしまっては為せるものもなせませんから」
だから、と芽亜は『花』と別れ走る。
一刻も早く、この『闘神の渦』の儀式を止めるために――。
大成功
🔵🔵🔵
カツミ・イセ
はあ…だからと言って、こういうことをするのは間違ってる。
僕の神様から『原初の吸血鬼』のことも聞いてるけど…うん。
野放しにしちゃいけないや。
さて、では…あなたがそういう動きを出来ないようにしよう。
UC『深海』。自動車にとっては最悪な場所。そっちが無視できるの、激突ダメージだけだし?
あとこれ、本業が水練忍者な人たちにもプラス影響かな。
んー、でも。長くは影響させたくないから、とっとと水流燕刃刀で切り裂いていこう。
歌はいいものだよ。生きているって感じがするし。
神様に生み出された僕だけどさ。生命は、輝いているものさ。
「ああ、痛ぇ、痛ぇよ……ああ、でもこの痛みがあるから生きているってことなんだよな。俺が生きているって証なんだよな。ああ、だから、また誰でも殺していいってことだよな!」
オブリビオンである『通り魔の怨霊』は叫ぶ。
彼にとって傷つける者は誰でも良かったのだ。人でなくてもいい。何だっていいのだ。結局の所、彼にとっての生きているということは誰かを傷つけるということに違いなく。
故に彼は徒に誰かを傷つけ続ける。
死んでもいいし、死ななくてもいい。
どちらにしたって、他者は彼にとって自分の生を実感させるための道具でしかないのだから。
「はあ……だからと言って、こういう事するのは間違っている」
カツミ・イセ(神の子機たる人形・f31368)は真っ向から『通り魔の怨霊』の言葉を否定する。
自分の生を実感するために他者を傷つけていいなどと、理由にはなりはしない。
そもそもが『通り魔の怨霊』に理由など必要なかった。
ならばこそ、カツミは溢れ出る『死兵』の群れを見つめる。
『原初の吸血鬼』。
その力を植え付けられているオブリビオンである『通り魔の怨霊』は確かに捨て置くことの出来ない存在だ。
ここで大本を断ち切っていかなければ、後に続くであろう後進の能力者たちに累が及ぶ。
故に彼女の瞳はユーベルコードに輝く。
「間違っていたって別にいいだろうが! 俺が俺であるためには、誰かを殺したり、傷つけたりしなきゃなんねぇんだからよ!」
吠えたける『通り魔の怨霊』のユーベルコードは凶行に使い続けた自動車を呼び出す。けれど、そのユーベルコードはたちまちの内に力を喪うだろう。
降り注ぐのは水球。
雨よりも大きく、また水そのもの。
それが降り注ぐのだ。
そして、周囲にありし『死兵』たちは己の体が重たくなったことを理解しただろう。
「なんだぁ……体が、重く……どういうことだこれは!」
「……僕の神様から『原初の吸血鬼』のことにも聞いているけど……うん。野放しにしちゃいけないや。同時にあなたを自由にしてもいけないってわかっているよ」
だから、とカツミの瞳はユーベルコード、水の権能、六『深海』(シンカイ)を齎す。
それは周囲を深海と同じ環境に変化させるユーベルコードである。
カツミ曰く、彼女の神様と呼ぶ存在は深海においても息継ぎすら必要としなかった。そして、カツミもそうである。
また若き能力者の中に水練忍者がいるのならば、水中での行動に長けている。
即ち、この状況において『通り魔の怨霊』に利するものなど何一つないのだ。
『死兵』たちもどれだけ数がいるのだとしても、深海の水圧に負けて地べたを這うことしかできない。
「ぐ、か……この、どういう……ッ!」
「深海と同じにしたんだよ。だから、あなたの自動車にとっては最悪の場所。そっちが無視することができるのは、なにかとなにかがぶつかる時の衝撃だけだよね?」
ならば、とカツミは笑むだろう。
もはや、その凶行に使った自動車は此処では使い物にならない。
「んー、でも。長くは影響させたくないから、とっとと終わらせよう」
「てめぇ! 俺の! 俺の生を邪魔しやがって! 誰を殺すことを、傷つけることだけが俺の人生だっていうのによぉ!」
その言葉にカツミは清淨なる水の力を秘めた蛇腹刀を振るう。
迸る水の刃は深海の如き環境に在りて、空を飛ぶように放たれる。
「歌はいいものだよ」
「そんなもんがなんだってんだよ! 気色が悪いんだよ、どいつもこいつも、おんなじ歌を謳いがやがって!」
「生きているって感じがしないかい?」
するかよ! と『通り魔の怨霊』が叫ぶ。しかし、その叫びは響くことはなかった。放たれた水の刃が彼の体を切り裂いたからだ。
「神様に生み出された僕だけどさ」
カツミは、その叫びを水の刃と共に遮るようにポツリとつぶやく。
誰でも良かった。どんなものでもよかった。殺したかったし、傷つけたかったという衝動を持つ者もまた生命だ。
けれど、目の前のそれは違う。
過去の化身。
生きているように見えて生きていない。
ミレナリィドールであり、己が信じる神の子機であるカツミでさえ、あの歌を聞けば思いがこみ上げてくる。
あの生命の讃歌を聞けば、思い描くものがある。
「生命は、輝いているものさ」
まばゆいものをみるようにカツミは人々を救い出す銀誓館学園の後進たる能力者の背を見やるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
酒井森・興和
破壊し殺せば良い
その思考、見えざる狂気に堕ちた壮年の同胞を思い出す
…否、生前はいざ知らず今のお前は一個の阿呆だ
暴走自意識の塊に
その『死兵』を使役する価値も無い
ならば狩ろう
鎌倉には知り合いも同胞も居る
身内と縄張りを守るのが兵に生まれついた鋏角衆の本領だ
三砂を【怪力でなぎ払い】死兵を纏めて通り魔に投げつけ【敵を盾にし】ガソリン火を防ぐ
【受け流し、火炎耐性】は多少効くが負傷は【覚悟】の上
なりふり構わず
UCで通り魔の骨ごと腕や首を捻じ上げ地に叩き付ける【追撃、2回攻撃】で体を踏み【逃亡阻止】三砂を撃ち降ろす
銀誓館生徒は【かばう】>
回復、防御アビリティでの自衛と通り魔からの離脱指示
さ、避難誘導を頼んだよ
深海の凄まじき水圧に押しつぶされながらも強力なオブリビオンである『通り魔の怨霊』は立ち上がっている。
その片腕を失いながらも、そのユーベルコードの輝き満ちる瞳は、爛々としていた。
狂気に飲まれたかのような瞳。
その瞳の色を酒井森・興和(朱纏・f37018)は知っていた。
ただ破壊し、殺せればいい。
その思考。行動。どれもが見えざる狂気に堕ちた壮年の同胞のことを思い起こさせた。
だが、興和は否と頭を振る。
目の前のオブリビオン『通り魔の怨霊』は生前からそうであったのだ。
彼の由来を興和は知らない。知りようがない。
どれほどのことをしてきたのかも、どれだけの人を徒に傷つけてきたのかも知らない。
しかし、これだけは言える。
「今のお前は一個の阿呆だ。暴走自意識の塊に、その『死兵』を使役する価値も無い」
その言葉に『通り魔の怨霊』は叫ぶ。
そう、叫ぶしかないだろう。
今、目の前の猟兵は己を否定したのだ。ならば、否定することは彼のやった傷つける行為であると『通り魔の怨霊』は定義する。
少なくとも彼にとってはそうなのだ。
手段も、目的も、歪になりながらも、彼は彼なりの原理で動いている。それが現代に、人に受け入れられるかは別問題だ。
「知るかよ! そんな理屈なんてえのはな! 俺は傷つけたい、殺したい、ただそれだけなんだよ。誰であろうと関係ない。目の前にいるのがどれだけ権力を持っていようが、能力を持っていようが関係ねぇんだよ!」
満ちる呪詛の如き力。
『原初の吸血鬼』の力を移植された彼の力は強大そのもの。
溢れ出る『死兵』たちを巻き添えにするように放たれる爆発。身寄り溢れ出すのは『死兵』だけではないのだ。
ガソリンもまた撒き散らす。
そのガソリンに引火した爆発が無差別に興和と若き能力者たちを巻き込む。
けれど、それを興和は手にした長物で『死兵』を薙ぎ払い、炎を防ぐ。
受け流すことなどできようもないほどの尋常ならざる爆発の威力。
だが、それでも興和は逃げなかった。
彼の背には未だ一般人を救わんとしている能力者たちがいる。彼等は次代。そして、己は楔だ。いや、鎹そのものであろう。
いくつかの時代を知っている。
争いばかりの記憶であったことだろう。
だからこそ、守らねばならない。新たなる血は、此処で流れるべきではないのだ。旧き血は、新しき血のためにこそ礎とならなければならない。
「なりふり構わねぇかよ!」
「そのとおりだ。僕はな、『人間』を好いている。ゴーストもまた同様だ。新たな世代が生まれ、新たな時代を紡ごうとしている。僕が、僕たちの仲間がより善き未来を願ったように」
手を伸ばしたのだ。
より良い未来が訪れますようにと。
その願いを『通り魔の怨霊』は踏みにじろうとしている。猟書家は壊そうとしている。
ならば、興和の瞳がユーベルコードに輝きながら、爆風の中を進む。
伸ばした手は、燃え盛る『通り魔の怨霊』の首を背後から掴み上げる。
「ぐぉっ、ッ!? なんだ、てめぇはぁ! 誰の首根っこ掴んでやがる!!」
「お前はただの阿呆だ。自分というものを見つめていながら、ただそのままにした。破壊衝動も、誰かを傷つけずにはいられないコミュニケーションの取り方も、何もかも、そのままにしようとした」
だから、傷つける前に考えもしなかったのだ。
どうして人は傷つけてはならないのか。
どうすれば人は己を理解し、また他者を理解するのかを考えなかったからこそ、『通り魔の怨霊』はなるべくしてオブリビオンとなったのだ。
「身内と縄張りを守るのが兵に生まれついた鋏角衆の本領だ。だから、僕は守ろう。鎌倉にいる次代を。知り合いも、同胞も」
何もかも守ると尋常ならざる握力で持って『通り魔の悪霊』の首を骨ごと軋み上げ、ユーベルコードの輝きのままに地面へと叩きつけ、さらに踏みつける。
「ごあぁっ、っ、く……てめぇ!」
其処にさらに撃ち込まれる蹴撃の一撃。
さらには長物のツルハシの如き鋭い切っ先を叩きつける。
それは興和が守らんとした者への決意を示す一撃だったことだろう。
彼は守る。
狩って守る。兵として、そして一人の猟兵として。
守らねばならぬものを見定めるからこそ、爆炎上がる戦場となった市街地。此処で『通り魔の怨霊』を打倒して見せると、その手にした力を十全に振るうのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
山吹・慧
原初の吸血鬼に狂気のゲーム……。
あまり思い出したくはない記憶ですね……。
あの頃は脅威という他ありませんでした。
ですが、今は……乗り越えましょう。
死兵の群れには炸裂弾をばら撒いて、
爆発と光の【目潰し】で攪乱して隙を作り
走り抜けます。
生憎遊んでいる暇はないのですよ。
通り魔の怨霊に対しては、まずは【フェイント】で
攻撃を回避しながら【学習力】で動きと速さを憶えていきます。
呪詛を纏う包丁で仕掛けてきたならば、
敢えて正面から間合いに入り、【グラップル】で
腕を取って空中にブン投げてやりましょう。
そして、そのまま間髪入れずに【宿星天剣戟】で
追い打ちをかけます。
『原初の吸血鬼』――それは銀誓館学園の能力者であった者たちにとって、如何なる記憶であっただろうか。
強敵であっただろうか。
難敵であっただろうか。
それとも、手を差し伸べるべき敵であっただろうか。
許しがたき者たちであっただろうか。
今を生きる者たちは、それを知識としてしか知り得ない。過去は確かに存在すれど、その過去を現実として生きてきた者にしか知り得ぬ感情のうねりがあるのかもしれない。
故に、山吹・慧(人間の玄武拳士・f35371)は己が対峙するオブリビオン『通り魔の怨霊』に植え付けられた力に頭を振る。
燃え盛るような体がもつのは呪詛が満ちた包丁。
彼が幾度となく凶行に及んだ凶器である。それを振りかぶりながら慧に迫る『通り魔の怨霊』は彼のそうした記憶に配慮することなどなかった。
「『原初の吸血鬼』に狂気のゲーム……あまり思い出したくはない記憶ですね……」
慧は振りかぶられた包丁の切っ先の剣呑たる輝きを見る。
あの頃は、敵は脅威でしかなかった。
降りかかる火の粉。
払わねば己たちが滅びるしかなかったのだ。それだけではない、己たちが守りたいと思ったものも滅びる。
常に死が隣に存在する青春。
だからこそ、今は、と言えるのだ。
「……乗り越えましょう」
溢れるように『死兵』たちが『通り魔の怨霊』の体から溢れ出してくる。
けれど、それを光と爆発を放つ炸裂弾でもって寄せ付けず、間隙を縫うようにして走り抜ける。
「なあ! そうやって俺を狙うってのはわかりきっているんだよ!」
いくら撹乱しようとも『通り魔の怨霊』は手にした凶器の切っ先を慧に振り下ろす。
片腕を失い、頚椎を破壊されてもなお『通り魔の怨霊』は他者を傷つけることをやめない。やめられないのだ。
それだけが彼に残された他者とのコミュニケーションのツールであったからだ。
傷つけなければ語り合うことすらできない。
彼にとって語り合うことこそが傷つけることであったのだ。
誰でもいいと言った。
どんなことでもいいと言った。
其処に理由はない。言葉をかわすことに理由が必要ではないように、彼にとって傷つけるとは挨拶のようなものだったのだ。
「生憎遊んでいる暇はないのですよ」
慧はそんな悪意を前にあえて正面から立ち向かう。
振り降ろされた腕を取るように握り締め、空へと投げ放つ。凶器の切っ先は呪詛の満ちている。
これまでどれだけの人を傷つけてきたのか言うまでもない。
彼自身も覚えていないだろうし、慧も言及するつもりはない。ただ、そこにある悪意を他者に向けさせてはならないという意志だけが慧の行動を支えるのだ。
「ただ俺は傷つけたいだけなんだよ。あんたらが俺に誰かを傷つけさせたくないというのなら、あんたらが傷つけけばいい。そういうのに慣れているだろう!」
空に投げ飛ばされた『通り魔の怨霊』の叫ぶ声が聞こえる。
それは、悪意そのものだった。
自分たちは確かに戦ってきた。
あの青春の日々は長く険しい道のりだった。誰もが挫けそうになったことであろうし、誰もが傷つかずにはいられなかった。
たしかにそれは『通り魔の怨霊』の言う通りであったのかもしれない。
けれど。
「あなたのそれは、ただの脅威でしかないのです。そして、それらを乗り越えてきたからこそ、今という僕たちがいる」
慧の瞳がユーベルコードに輝く。
手にした宿星輝く剣が閃く。
それは、宿星天剣戟。
空に舞う『通り魔の怨霊』と彼の体が一瞬で交錯する。
その刹那に叩き込まれる斬撃は5つ。
血潮の代わりに呪詛が迸るだろう。それを慧は見ない。『通り魔の怨霊』の体に満ちる呪詛は過去そのもの。
彼は言ったのだ。
乗り越えてきたのだと。
故に、慧は振り返ること無く、宿星の輝き放つ剣閃を持って、『通り魔の怨霊』を制するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
(自分は鎌倉の事を、戦う能力者達を、
原初の吸血鬼も、清廉騎士カリストもろくに知らない。
だが!それでも分かってる事がある!)
誰でも良いか!そうか!
お前は敵だ!!自分もお前も互いを壊す理由は十分だ!!
オーバーロード
【怪力】RX騎兵刀二振りで【重量攻撃】
大質量の崩壊霊物質宿るRX騎兵刀を振るい回し、攻撃を【吹き飛ばし】
死兵を【なぎ払い】壊し、道を切り開き、RX騎兵刀で怨霊へ斬り掛る!
たったそれだけで十分だ!だからお前に壊させない!!
誰も壊ざせない!!お前が相手は自分が似合いだ!
『ディスポーザブル』|雷架装着《ブラストナックル》
増大したスピードと反応速度で【瞬間思考力】
騎兵刀を振るいながら包丁の振るい先へ体を置く。
【継戦能力】怨霊の振るう包丁をあえて受け喰らい、
代りに【念動力】で雷架の拳を怨霊に叩きつける!!
|篤と逝ね《壊れろ》!!|オブリビオン《同類》ッッ!!!
その【|呪詛《怨念》】と己が【|闘争心《怨念》】
で雷架の出力を上げ、【属性攻撃】
互いの怨念を膨大な熱光電撃に変換し怨霊に流し込む!!!
傷つけるのは、殺すのは誰でもいいのである。
他人の顔を一々覚えていられないし、自らが傷つけた者の顔など覚えていない。覚えているのは鮮烈なる感情だけだ。
他者を傷つけることによってのみ成立するコミュニケーション。
『通り魔の怨霊』にとって、それが手段であったのだ。
手にした呪詛満ちる包丁、その凶器はツールの一つに過ぎない。多くの人間が言葉によって、文字によってコミュニケーションを図ろうとするのと同じように彼は、暴力という手段によってのみでしか他者と意思疎通を測れなかったのである。
だからこそ、誰かに挨拶をするように傷つけるのだ。
「誰でも良いか! そうか!」
それは朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)の咆哮の如き言葉であった。
彼女はシルバーレインの鎌倉の地のことを知らない。
戦う能力者達のことも知らなければ、『原初の吸血鬼』のことも『清廉騎士カリスト』のこともろくに知らない。
けれど、確かなことがある。
そう、わかっていることがある。
目の前の片腕を失い、傷を追ったオブリビオン。
それこそが。
「お前は敵だ!! 自分もお前も互いを壊す理由は十分だ!!」
小枝子の人工魔眼が燃える色へと変わっていく。
発露する光は、超克。
そして、彼女の髪は白髪に変わる。あるのは怒りとう感情ではなかった。心が冷えていく。
激情に迸る衝動があれど、彼女の心は痛みを感じない。恐怖を感じない。
死んでも黄泉返る悪霊そのものへと変貌した彼女は、ディスポーザブル(コワレロコワレロコワレロ)。
手にした騎兵刀の斬撃と呪詛満ちる包丁とが激突して火花を散らす。
「だからどうしたってんだよ! 理由なんてのはなぁ! 適当にでっちあげてけばいいんだよ! そういうもんだろうが!」
叩きつけられる一撃と一撃。
互いに譲らない。
『通り魔の怨霊』の身より溢れ出るは『死兵』たち。
それは『闘神の渦』儀式を守る要でもあったし、また同時に猟兵達の進撃を阻む要因の一つでもあった。
けれど、小枝子は止まらない。
たなびく白髪が爆炎上がる戦場となった市街地に揺れるようにして煌めく。
「お前は敵だとい衝動が叫んでいる。その生命を壊せと叫ぶものがある」
だからこそ、小枝子は走る。
迫りくる『死兵』たちを騎兵刀の斬撃で持って吹き飛ばし、『通り魔の怨霊』へと至る道を切り開く。
どれだけ『死兵』をその体が噴出させるように湧出させるのだとしても関係ない。
今の彼女はただ、敵を壊すためだけに力を注ぐ。
「たったそれだけで十分だ! だからお前に壊させない!! 誰も壊させない!! お前の相手は自分が似合いだ!!!」
共に壊すことしかできない。
そうすることでしか自分の存在を証明できない。
騎兵刀が打ち合い、呪詛に負けて折れて刀身が飛ぶ。もう一本の刀を凶器によって断ち切られるのだ。
「知らねぇよ! てめえなんぞな! 誰だっていいんだったら、てめえじゃなくたっていいだろうが!」
『通り魔の怨霊』が振るう斬撃が小枝子を襲う。
けれど、小枝子の瞳はユーベルコードに輝いている。
彼女は己に振り降ろされる斬撃を見ていた。
一瞬の思考。刹那の間に満たぬ時間。その時間に彼女判断する。あの一撃は避けられない。避けられないのならば!
前に進むのである。
踏み出す。あの凶器の一撃は確かに小枝子を傷つけるだろう。
痛みが走るだろうが、しかしそれは消されている。例え、一撃で死ぬのだとしても、小枝子は狂霊となって黄泉返ってくるだろう。
「まずはてめえが壊れろよなあ!」
「いいや、壊れるのは――」
撃ち込まれる楔のような斬撃。
肩より迸る血潮。
けれど、己の中に宿る念動力が突き立てられた包丁を己の体に縫い止める。
踏み出す。
いつだってそうだ。
戦いにあって小枝子ができるのは前進のみである。横道にそれることも、後退することも小枝子は知らない。
前に。
前に進んで、手をのばすことしか知らない。だからこそ、己を超えることができる。己に克つことができる。
「|篤と逝ね《壊れろ》!!|オブリビオン《同類》ッッ!!」
みなぎり、走るのは、膨大な光子蓄えた鋭き拳の一撃。
彼女の中に走る怨念が出力を上げ、雷の如き一撃を『通り魔の怨霊』へと叩き込む。
食い込む凶器からさえも小枝子は『通り魔の怨霊』の怨念を喰らい、奪っていく。
叩き込まれた拳から迸る光が戦場を染め上げていく。
「ごあっ、ぐっ、こんなっ……俺の怨念をッ!!」
「貴様の怨念も、自分の怨念も! 何一つ今に生きる者たちを傷つけることができぬとしれ! 自分の拳はッ!!」
振り抜く。
それは今を生きる者たちには揮われることない光子の力。
「お前たちを壊す拳だ!!」
そう、それは過去を壊す一撃。
例え、どれだけ強大な存在であろうとも、小枝子は拳を振り抜く。
我が身に流れる怨念がそう言っているのだ。
その生命を壊せと――。
大成功
🔵🔵🔵
古森・ちゆり
そ、そんなのさせないよ…!
みんなのおうちはちゆりが護るよ…!
『ちゆりねっと』を張って攻撃に対しての盾にしておいて、
まわりに【ちゆりの領域】で蜘蛛の糸を張り巡らせるよ…!
さっきの敵は銃を使ってたし、今度の敵は刃物とかを使うみたいだから、全部からめ取っちゃうよ
それに、炎を使ってきても、ちゆりの領域は「触れたえんきょり攻撃の威力を奪っちゃう」もん、火の勢いは減らせるよ
相手も、攻撃も絡めとって、攻撃力を封じた上で、触れたらだめなのは「敵」と「遠距離攻撃」だからそこに『蟲笛』(ホイッスル型)で白燐蟲たちを呼び出して直接攻撃してもらうよ……!
想像する。
オブリビオン『通り魔の怨霊』の言葉から想像する。
誰でもいいから傷つけたかったと言った。老いも若いも関係ない。性差すら関係ない。強い弱いすらも関係ない。
目の前に存在する者がいるのならば、傷つけずにいられない。
それが『通り魔の怨霊』という存在であった。
片腕を失い、猟兵から打撃を受けた体が傾ぐ。
けれど、その体からガソリンの匂いが充満していく。気化したそれが引き起こす爆発は凄まじいものであり、周囲を破壊の渦に取り込んでいくようであった。
黒煙が上がる中、嘲笑するように『通り魔の怨霊』は嗤う。
生命の全てを嗤う。
「アハハハハハハッ!!! 燃えろ、燃えろ! 全部燃えちまえ!!」
爆発が広がっていくようにして『死兵』たちが黒煙の中から飛び出してくる。
この鎌倉に破滅を齎すために。
それだけではない、シルバーレイン世界の全てに破滅を齎すために彼は力を振るう。自分の身がどうなろうと関係ない。
ただ傷つけて滅ぼす。
それだけのためにこそ力を振るうのだ。だからこそ、古森・ちゆり(土蜘蛛の白燐蟲使い・f35520)は震える心を奮い立たせるようにして踏み出す。
手にした蜘蛛の巣の盾でもって爆風を防ぎ、その盾より放出される蜘蛛の糸でもって『死兵』たちを受け止める。
「そ、そんなのさせないよ……!」
「小せぇ! 何いってんのか聞こえやしねぇよ!」
怒号の如き言葉に、平素のちゆりだったのならば怯んだかも知れない。
けれど、今の彼女は猟兵として此処に立っている。自分が守らねばならぬものを彼女は確りと理解していたし、見据えていた。
だからこそ、足を踏み出す。
恐れも、震えもない。
あるのは……。
「みんなのおうちはちゆりが護るよ……!」
その意志のみ。
誰かのためになりたいという善性がユーベルコードの輝きを彼女の瞳宿す。
此処はすでに、ちゆりの領域(ツチグモノオリ)。
空間に張り巡らされた蜘蛛の糸は、瞬時に『死兵』たちの体から腕力を奪い、さらに手にした重火器の威力を根こそぎ奪っていく。
誰かを傷つける者は全て根こそぎ絡め取る。
ちゆりが戦うのはいつだって護るためだ。自分の領域……『おうち』を護るため。自らの『おうち』がなくなることを恐れる。
恐れは足をすくませるかもしれない。
けれど、ちゆりは、他の誰かの『おうち』がなくなることをも恐れる。
鎌倉の地は多くの能力者にとって第二の故郷とも言うべき場所だろう。だからこそ、ちゆりは戦う。
「邪魔くせえ、蜘蛛の糸がよぉ! 燃えろや!!」
ガソリンに引火する炎が、爆発となって蜘蛛の巣を揺らす。
焼き切るつもりではなった爆発。『死兵』すら巻き添えにしてはなった爆発の威力は凄まじいものであった。
けれど、その爆発は蜘蛛の巣を揺らしただけだった。
おかしい、と『通り魔の怨霊』は思ったことだろう。
何かがおかしい。
「ちゆりの領域は……触れたえんきょり攻撃の威力を奪っちゃうもん」
火の勢いは、ちゆりのユーベルコードによって減退させられている。炎の勢いが失われた瞬間、彼女は蜘蛛の糸を弾ませるように跳躍して『通り魔の怨霊』を見下ろす。
睨むわけではなかった。
誰かを傷つけること。それが『通り魔の怨霊』にとっての意思疎通の手段だったのだ。
それしかなかったからこそ、それ以外を知る機会がなかったからこそ、彼は怨霊となったのだ。
悲しいと思うかも知れない。
「で、でも、そんなの駄目だって、ちゆりだって知っているもん……!」
ちゆりが息を吸い込む。
口に加えた蟲笛が響き渡り、呼び出される白燐蟲たちが『通り魔の怨霊』を取り囲む。全てをくらい尽くす白燐蟲たちの猛攻が、その悪意に塗れた体を蝕む。
ちゆりは知っている。
例え、人間と土蜘蛛であったとしても、自分ではない他者が隣にいるのだとしても、それでも手をのばすことはできる。傷つける以外のやり方をちゆりはこの地で学んだのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
誰でも良かった、何でも良かった…
身勝手だね
まあでも、それくらい分かり易い方がやりやすい
笑えるくらい、呆れるくらいの悪役の方が分かり易い
つまりは君は、退場って事だ
●
【Load[Summon Data]】起動
雷龍、不死鳥、機神召喚!
攻撃力に全振りして、立ちはだかる者全てを倒そう
死兵達には不死鳥と雷龍達で対応させる
不死鳥達は死兵達に体当たりし、蒼炎で燃やす
雷龍達は『ブレス攻撃』、死兵達に範囲攻撃して軍勢に対処させよう
さてと本体は私が相手しようか
『念動力』で機械の右腕を浮かせて操作
攻撃手段まで迷惑な…
引火したガソリンは『斬撃波』で『吹き飛ばし』て対処
此方は右腕を操作し、上空から拳を叩き付ける!
白燐蟲の猛攻がオブリビオン『通り魔の怨霊』の体を蝕む。
けれど、彼の体から溢れるのはガソリン。
かつて、彼は凶行に走ったのだろう。誰かを傷つけることを。殺すことを。それ自体に快楽を見出したわけでもなければ、目的としていたわけではない。
手段事態が目的になっているのだ。
まるで人が行き交う人々に挨拶をするように、彼は、そうした行為でもって誰かとつながろうとしたのかも知れない。
それが『通り魔の怨霊』にとってのコミュニケーションのツールの一つでしかなかったのかもしれない。
傷つけ、殺すことで関係を持つしか無い。
その最初の一歩を致命的に間違えたからこそ。
「楽しいなぁ! なあ、楽しいと思わないか! 誰でもいいと言えば、誰もが怪訝な顔をしたが! それでもやっぱり俺はなぁ!」
身より溢れ出す『死兵』たちを巻き込みながら爆発が引き起こされる。
黒煙が上がり、周囲に破壊がもたらされる。
その黒煙の中を走る者がいた。
「誰でもよかった、何でもよかった……身勝手だね」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)の瞳がユーベルコードに輝く。
燃え盛る『死兵』たちを押しのけるようにして彼女は戦場を切り裂く。彼女のユーベルコードが煌めく。
現れたのは雷の龍。
迸り力は、『死兵』たちをなぎ倒す。さらに溢れ出るようにして迫る『死兵』を空より放たれた炎、不死鳥の羽撃きが吹き飛ばしていく。
立ち塞がる者全てをなぎ倒す力。
それが玲の力。
Load[Summon Data](ロード・サモンデータ)。彼女のユーベルコードは膨大な数の力を世界に顕現させる。
「まあでも、それくらいわかり易い方がやりやすい」
「身勝手だからどうしたってんだよ。それが人間ってもんだろうが! 俺が悪いんじゃあねぇ! 傷つけられる場所にいたのが悪いんだろうが! 誰も彼もが俺を理解しようとしやがった。許せるわけがねぇ! これは、この衝動は俺だけのモノだろうが! 俺のモンを盗ろうとすんじゃあねえよ!」
吹き荒れる爆発。
その爆発の中を召喚された機械腕でもって防ぎながら玲は突き進む。
「笑えるくらい、呆れるくらいの悪役の方がわかり易いよ、やっぱり」
理解を拒む者がいる。
理解を求めながら、理解されたくないと言う者がいる。矛盾した心根であったことだろう。けれど、それは他者から見た『通り魔の怨霊』であったことだろう。
彼の中には理解されては己というものが瓦解するかもしれぬという恐れがあった。
同しようもないほどの利己。
世界とは己が中心であるという叫び。
それを切り裂く青い刀身の一撃があった。
斬撃の波が爆発を切り裂き、玲のユーベルコードに輝く瞳をもって知らしめるだろう。
「つまりは君は、退場ってことだ」
戦場からも。
この世界からも。
振るう一撃が凶器たる包丁と激突する。火花が散って、黒煙の最中に映えることだろう。そこに美しさを見出すのもまた人間性であったというのならば、『通り魔の怨霊』はまさしく人間であったのかもしれない。
けれど、それを認めるわけにはいかないのだ。
放たれる直情よりの機械腕の振り降ろされる一撃は。
「退場の一撃だ。君はどうしたって相容れない。相容れないってことを理解しようとしなかった。誰かを理解するために傷つけることを始めたのかもしれないけれど」
それでも、立ち止まるべきであったのだと玲の念動力によって揮われた拳は、これまで犠牲になった者たちの怒りそのものであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステラさんと】
えっと、ステラさんどうしましょう。
なんだか不穏な空気ですよ。
誤魔化しとか効かなそうですし、
わたし、シリアスアレルギーを発症しそうなのですが!
え?こういうのこそ勇者案件?
確かに目的が『傷つけること』とか、
いろいろ理不尽ですし、一般の方にはた迷惑ですね。
そういうことなら……んっ、うん。
(ちょっとせきばらいしつつ)
光の勇者としては放ってはおけませんね!(UC込みでキメドヤァ
ってステラさん、顔、顔!
表情が銀河の深淵覗いちゃってますけど!?
せっかくわたしがシリアスにキメたのに台無しじゃないですか!
通り魔さんも!
誰でもいいって言ってたじゃないですか!
なんでわたしを避けようとするんですか!
ステラ・タタリクス
【ルクス様と】
悲しい存在ですね、誰でもいい……などと
刃を振るう相手すらいなかったということでしょう
せめてもの情けです
此処でボコボコにして骸の海に還してあげましょう
え?ルクス様何か言いました?
私、今シリアスで忙しいのですが?
誰が誤魔化し上手メイドですか
ちゃんとシリアスしてますよ
シリアス苦手?まさかの?
こういう時こそ勇者の出番だと思うのですが?
(そして宇宙メイド顔)
ええ、メイドでも間違えることはあるということで
さて戦いますか
【テールム・アルカ】起動
人型サイズのビームサイズでお相手しましょう!
貴方の欲望と偽りの生を刈り取る鎌です
似合いでしょう?
ルクス様は早く
え?すでにUC発動してる??
馬鹿な……
傷つけるのは誰でも良かったのだ。
理由なんて無い。
いつだってそうだったけれど、他者は『通り魔の怨霊』に理由を求める。
殺意の在りどころを。
何故、という言葉は『通り魔の怨霊』にとって己を理解しようとする者たちからの刃にほかならなかったのだ。
理解など求めていない。
そんなもので己の中にある空白を埋められてたまるものかと彼は凶行を重ねていったのだ。
「しゃらくせえよなぁ! 誰かが誰かを理解できるなんて、そんな考えは! 誰も求めてねぇんだよ! 他人が自分を理解する? してくれる? 意味わかんねぇよ、気持ち悪いんだよ、お前たちは!」
彼にとって他者とは不理解の極み。
傷つけられてから初めて理解しようとする。傷つけられる前に理解しようとはしない。だから、傷つけるのだ。
「悲しい存在ですね、誰でもいい……などと。刃を振るう相手すらいなかったということでしょう」
その刃の如き言葉を真っ向から受け止めるのは、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)であった。
彼女の手にしたナイフと『通り魔の怨霊』の放った斬撃がぶつかり合う。
不理解。
それは誰しもに降りかかるものであり、また同時に誰もが振りかぶるものである。
故に誰もが傷つくのだ。
それを摩耗と呼ぶか、それとも傷と呼ぶかは当人次第であるけれど。
「えっと、ステラさんどうしましょう。なんだか不穏な空気ですよ」
ステラの背後を守りながらルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は溢れ出す『死兵』たちを前にキョロキョロとしていた。
いつも少しだけ空気感が周囲とは違う二人であったけれど、今のこの状況はいわゆるシリアスな状況と言えるだろう。
まるでごまかしが効かない状況。
ルクスはシリアスアレルギーを発症しそうになっていた。
こういうのが柄ではないと思っているのかもしれない。すでに空気を壊す感じの亀裂を己でもって打ち込んでいる気がしないでもないが、シリアス真っ最中なステラの背中から言葉が向けられる。
「え? ルクス様なにかいいました? 私、今シリアスで忙しいのですが?」
「ここで難聴系メイドにならないでもらえますか!? ごまかし上手!」
「誰がごまかし上手のステラさんですか。ちゃんとシリアスしてますよ」
二人のやり取りはいつものとおりであった。別段作っているわけではないところがたちが悪い。
そんな二人を取り囲み、『死兵』たちが迫る。
更には『通り魔の怨霊』が凶器たる包丁の切っ先を振り下ろし続けている。
「わたし、こういう展開苦手なんですよ!」
その言葉にステラは宇宙メイド顔になってしまう。
シリアスが苦手?
勇者を名乗っているのに? いや、それもそうかもと思ってしまいがちであるが、ルクスは勇者である。色んな所を出禁にされてはいるが、まあ、勇者である。
そして、今この現状において、勇者がしなければならないことなど一択なのだ。
『通り魔の怨霊』は誰彼構わず傷つけることを目的としている。
理不尽を他者に押し付ける存在。
ならばこそ、ルクスは勇者として立ち上がらなければならない。どんな理由があれ、誰かを害していい理由などないのだ。
だからこそ、ルクスは咳払い一つして居直る。
「そういうことなら……んっ、うん」
居住まいを正すようにルクスの瞳が輝く。
「光の勇者としては放ってはおけませんね!」
宇宙メイド顔が光の勇者、ここに来臨!(ユウシャトウジョウ)とばかりにポーズを決めるルクスを見ている。
「ステラさん、顔、顔!」
「ええ、メイドでも間違えることはあるということで」
思ってたのと違う。
そんなステラの顔を直視してしまったルクスはちょっと台無しであった。
宇宙メイド顔とは初耳の方も多かろうと思うので解説をしておくと、銀河の深淵を覗いちゃった時の顔である。つまり、理解不能なものを見た時の人の顔である。
もっと言ってしまえば、宇宙猫。
何処か遠くに思索が飛んでしまったあれである。
「せっかくわたしがシリアスにキメたのに台無しじゃないですか!」
そして、ルクスは気がついてしまった。
宇宙猫みたくなっていたのはステラだけではない。『通り魔の怨霊』たちもそうであったのだ。
理解不能の極みみたいな顔をしているのだ。
なんだこれは。
これではルクスだけが傷を追ったような感じになってしまっているではないか。
「通り魔さんも! 誰でもいいって言ってたじゃないですか! なんでわたしを避けようとするんですか!」
「俺にだって選ぶ権利はある」
真顔であった。
むちゃくちゃである。そんな最中、ステラの瞳がユーベルコードに輝く。
シリアスとはなんであるか。真面目とはなんであるか。メイドとしての職務とはなにか……そんな深淵の如き思索の果てにステラが至ったのは、ともかくぶっ放してしまえばいいとうこと。
そして。
「貴方の欲望と偽りの生を刈り取る鎌です」
リサイズされたキャバリア兵器――ビームサイズを振りかぶり、ステラが舞うように斬撃の一撃を呆ける『通り魔の怨霊』へと振り下ろす。
それはまさに似合いの一撃であったといえるだろう。
ちょっとずっこいと思わないでもなかった。
けれど、それでも戦いの趨勢は傾くのだ――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
馬県・義透
引き続き『疾き者』にて
武器:灰遠雷
…さて。あなたには退場してもらいませんとねー?
悪霊と同一視されても、こっちが困るんですよー。
それに、未来ある者達を守るのも、私たちの役目ですしねー。
というわけでー、UCを使っての遠距離攻撃ですねー。『死兵』も何もかも、この矢からは逃れられませんよー?
ふふ、有効射程は10km以上ありますしね?
近づけさせないよう、内部三人が四天霊障使って結界はってますしね?
ああ、本当に。ときに足掻き醜くく見えるかもですが、美しく輝くのも事実…それが生命ってものです。
…『私たち』にはもう遠くなってしまったものですけどね。
※
陰海月と霹靂の生命讃歌は日々の暮らし!
日々の暮らしを思う。
なんでもない日を重ねるように。
小さな積み重ねかもしれない。劇的な何かがあるわけではないのかもしれない。時折起こる事件のような日もまたなんでもない日に埋没していくのかもしれない。
だからこそ、それを尊いと思うのだ。
平穏無事な毎日が無為に流れていくという奇跡に思いをはせる。
ならばこそ、嘗てシルバーレイン世界で死と隣り合わせの青春を送った能力者たちは、そう思ったのかも知れない。
その思いを『生命讃歌』に載せて謳ったのかもしれない。
「……さて。あなたには退場してもらいませんとねー?」
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は迫る『死兵』の群れを見やる。
その中心に在るのは『通り魔の怨霊』である。
彼の身の内側から溢れ出すのは、『原初の吸血鬼』と呼ばれる強大な力によって再現される『死兵』たち。
その数と力でもって猟兵を圧倒せしめんとしているのだ。
だが、それでも猟兵達の攻勢によって『通り魔の怨霊』は、片腕を失い、その体には無数の傷痕が残されている。
「誰が退場などするものかよ! 俺はな! ただそのままに生きていたいんだよ! 俺が俺であるためには、誰かを傷つけ続けなければならねーんだよ!!」
咆哮。
それは身勝手極まりない言葉であると『疾き者』は思っただろう。
「そのようなこと。悪霊と同一視されても、こっちが困るんですよー」
「何が違う。俺とお前たちの何が違うってんだ? 生きてさえ居ないものが、生きている者に何ができる。そんなのは、呪うしかねぇだろうがよ!!」
咆哮と共に凶刃が煌めく。
呪詛満ちる刃は、周囲に在るもの全てを傷つけるだろう。
それを是とするのがオブリビオンとしての『通り魔の怨霊』の在り方であるというのならば、四悪霊はそれを認めるわけにはいかないのだ。
己たちは確かに内側から溢れ出る呪詛でもって戦う。
けれど、己たちが守りたいと思った心は、『通り魔の怨霊』にはないものであった。それだけが己たちと彼とを分かつものである。
「未来ある者達を護るのも、私達の役目ですしねー」
手にした雷の力秘めし強弓を引き絞る。
満ちるユーベルコードの力によって、弓が黒く染まっていく。溢れ出る『死兵』たちを見据える。
ユーベルコードに輝く瞳は、戦場にありし『死兵』たちの全てを捉えている。
「悪霊からは逃げられない」
放たれるは、四天境地・雷(シテンキョウチ・カミナリ)。
迸るように分裂する矢が、宙を走り抜ける。
どれだけ敵が鎌倉市街地の外縁を取り囲むのだとしても、大元たる『通り魔の怨霊』さえ打倒してしまえば、霧散するしかない。
故に、分裂する矢は雨のように空より降り注ぐ。
分裂するだけではない。追尾する矢は、宙を自在に駆け巡って『死兵』を追い詰め、その体を貫いていく。
「ああ、本当に」
もがくように『死兵』たちが霧散していく。
『通り魔の怨霊』のまたそうだ。体を貫かれ、その体から血潮の如き呪詛を撒き散らしながらも、それでもなお、もがく。
そこに『疾き者』は、銀誓館の能力者達にあった輝きを見ない。
過去の化身であるオブリビオンたちにはなく、若き能力者達にあるもの。
力が及ばずとも、心根に宿った善性のみを頼りに戦場を走る彼等は、確かに醜く思えたかも知れない。
けれど、それでも『疾き者』たちは思うのだ。
「何がだよ! てめえらと俺たちの何が!」
「ときに足掻きもがき、苦しむ……ですが、美しく輝くのもまた事実……それが生命ってものです」
自分たちにはもうないものだ。
煌めくような死と隣り合わせの青春を。
そのまばゆさに目がくらむこともあるだろう。
そして、己たちに負って、それはもう遠きものである。手をのばすことさえはばかられる輝き。
だが、だからこそ、守りたいと思うのだ。
あの輝きを曇らせることも、失わせることも成してはならない。
世界結界の破壊。
世界の破滅。
そのいずれもが、その輝きを失わせるものであったというのならば。
「私達が守りましょう。既に失った者であれど、手をのばすことなど叶わずとも、傷つけるのではなく護ること。それが私達の選んだ道なのですから――」
大成功
🔵🔵🔵
遠野・路子
原初の吸血鬼……最凶の吸血鬼、伯爵と会ったことないけど
きっと、それに比べたらこのゴーストは拍子抜けもいいところだね
戦争の再現だというのに規模が小さくて
こんなことで私達、銀誓館学園が怯むと思う?
引き続き、【心魂賛歌】で能力者の援護を
詠唱銀の槍はともかく、指輪は継戦能力を引き上げるはず
私は前進して通り魔の怨霊を叩く
【空より至る百億の星】
もちろん狙いは通り魔の怨霊
宇宙ゴーストたちが集まるまで
蒼弓と詠唱銀の槍で距離を保ちつつ攻撃
誰でも、ゴーストでもいい、とあなたは言った
お好きにどうぞ?
滅茶苦茶にできるものならするといい
……うん、挑発しすぎた感
それでも私達はあなたを討つ
新世代ゴーストの力、思い知るがいい
怯えからは最も遠い。
それを遠野・路子(悪路王の娘・f37031)は理解していた。
嘗て在りし大きな戦い。
その結果として次世代ゴーストが生まれたのならばこそ、路子は今という現実を受け止めなければならない。
「『原初の吸血鬼』……最凶の吸血鬼、伯爵と会ったことないけど、きっとそれに比べたらこのゴーストは拍子抜けもいいところだね」
銀の槍を揮いながら、『死兵』の波のような攻勢を彼女は切り抜ける。
確かに膨大な数だ。
数と力。
その二つを兼ね備えたオブリビオン『通り魔の怨霊』は確かに強大なのだろう。
だが、強大だという彼ですら猟兵達のユーベルコードの輝きの前には屈するしかない。
世界の悲鳴に答える戦士。
それが猟兵であり、またその証左として『通り魔の怨霊』は片腕を失って、その体の至るところに攻勢の痕を刻み込まれている。
「勝手に推し量って、勝手に失望してんじゃあねえよ!」
吹き荒れる爆発が『死兵』ごと巻き込んで、路子を襲う。
けれど、その爆発荒ぶ戦場を路子はためらうことなく前に進む。
「戦争の再現だと言うのに規模が小さくて、こんなことで私達、銀誓館学園が怯むと思う?」
連綿と紡がれてきたものがある。
過去より今に贈られた歌がある。
その歌声が心の中に力を宿す。傷つくことも、傷つけられることも厭わぬからこそ、手に入れることのできたよりよい未来がある。
それを今こうして過去よりにじみ出た者たちが汚し、傷つけようとしているのならば、路子は、銀誓館学園の能力者たちも己が傷つくことを躊躇いはしなかった。
それはきっと『通り魔の怨霊』にとっては、脅威であったことだろう。
怯えと恐怖こそが彼にとっての最良であったはずだ。
なのに、これだけの数と力を持ってしても猟兵は、そして、それよりも力の劣るであろう能力者たちもひるまない。
「なんだってんだよ、お前たちは!」
彼が見るのは、空より至る百億の星。
それが如き光景であったことだろう。
前に進む。路子は、己前に路が在ることを知っている。進まなければならないと思うのは、己の名が示すからではない。
己の在り方が、己がそう在りたいと願う心が眼前を照らしている。
未来は暗闇に閉ざされ、見通すことなどできようはずもない。
「だからといって路を歩むことをやめてはならないもの」
ユーベルコードに輝く路子の瞳に引き寄せられるようにして宇宙ゴーストたちが出現し、その手にした重力剣と流星魔法が『死兵』たちを穿ち、吹き飛ばしていく。
手にした蒼弓が引き絞られ、放つ銀の槍が『通り魔の怨霊』の体を貫く。
「ぐっ、おっ……! こんな、こんなところで!」
「誰でも、ゴーストでもいい、とあなたは言った。お好きにどうぞ? めちゃくちゃにできるならするといい」
「てめぇが! てめえらのようなものがいるから、夢見ちまうんだろうが! ありえないと切り捨てていたのなら、世界はシンプルだったっていうのによぉ!」
溢れ出る呪詛。
吹き荒れる爆発。
挑発しすぎたかも知れないと路子は思ったかもしれない。
けれど、それでも己の中にあるものは揺らがない。
たとえ、どれだけ強大な力が荒れ狂うように戦場を飲み込んでいくのだとしても、路子は己の路を違えない。
それが己の名に込められた思いであると知るからこそ。
「あなたの思う世界と、私達の思う世界は違うのかも知れない。相容れないのかもしれない。激突するしかないのかもしれない」
だが、と路子は宇宙ゴーストたちと共に『死兵』を蹴散らし、『通り魔の怨霊』に迫る。
「それでも私達はあなたを討つ。新世代ゴーストの力、思い知るがいい」
過去のにじみ出た存在。
最も新しき存在。
過去がなければ新しきは生まれず。
されど、過去と新しきは交わらず。相容れず。
故に滅ぼし滅ぼされることでしか、互いの存在を証明できない。路子は、それでも、と言った。
願うものが異なれど。
それでも、己が定めた路は暗中を照らす想いによって背を押されているのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
御鏡・幸四郎
とりこぼしはしない。見捨てることはない。
どんなに厳しい状況でも、全ての命を救おうと欲張り続けてきた。
「あの頃はガムシャラでしたね」
能力の力不足は否めなくても、若き能力者の心根はあの頃と変わらない。
ならば、先達として一肌脱がねばなりません。
死兵の攻撃を見切り、受け流し、盾として数を減らします。
傷つけさせはしない。殺させはしない。誰も彼もただの一人とて。
癇に障るでしょう。自分がやりたいことの正反対なのだから。
通り魔の怨霊が激発してガソリンを撒こうとした瞬間、
「吹き飛びなさい!」
ガンナイフに雑霊の力を凝縮し、青白く光る刃を振り抜きます。
衝撃波が炎も死兵も吹き飛ばし、通り魔の怨霊諸共焼き尽くします。
「あの頃はガムシャラでしたね」
御鏡・幸四郎(菓子職人は推理する・f35892)は過去を想起する。
多くの戦いがあった。
多くが傷ついた。時に死す者もいた。
心に宿した理想が折れることもあったかもしれない。くじけることもあったかもしれない。
けれど、死と隣り合わせの青春は、己だけのものではなかったのである。
共に立つ者がいることは幸いである。
理解する友がいることは、心に温かなものを生み出す。隣人の存在を理解するからこそ、戦うことができる。
「とりこぼしはしない。見捨てることはない。どんなに厳しい状況でも、全ての生命を救おうと欲張り続けた」
その選択の連続が今という未来に繋がっている。
誰もがより良い未来を手に入れたいと願い、もがいていた時代があった。
それは己達の時代だけではなかったことを幸四郎は、今の若き能力者達の姿を見て思うのだ。
彼等は確かに猟兵と比べるべくもなく、力が足りない。
見劣りする能力しか持ち得ていない。
けれど、それは彼にとって些細なことであったのだ。
何も変わっていない。あの頃の自分たちと今の能力者たちが抱える善性は何一つ変わっていないのだ。
「ならば、先達としてひと肌脱がねばなりません」
溢れ出る『死兵』たちを躱し、見切り、受け流す。幸四郎は戦場の中心に座す『通り魔の怨霊』を見据える。
爆発が吹きすさび、周囲の能力者たちを傷つけようとする。
「うるせえんだよ! どいつもこいつも! 誰だっていいって言ってんだろうが! 理由なんてねぇよ!」
『通り魔の怨霊』の咆哮が轟く。
しかし、彼の思惑は届かない。
幸四郎は『死兵』を吹き飛ばしながら、彼等を能力者たちの盾にするように受け流したのだ。
「傷つけさせはしない。殺させはしない。誰も彼もただの一人とて」
「てめぇぇええええ!!!!」
「癪に障るでしょう。自分がやりたいことの正反対なのだから」
感情が爆発するのを幸四郎は感じただろう。
身より溢れ出る『死兵』と気化したガソリン。
それが周囲を満たす瞬間、幸四郎は戦場を駆け抜ける。
この『死兵』たちの溢れ出る数は、大元たるオブリビオン『通り魔の怨霊』を打倒すれば止まる。
ならばこそ、敵のユーベルコードの起点を叩く。
欲張りなのだ。
そう、銀誓館学園の能力者たちは、あの死と隣り合わせの青春を送った者たちは、みな欲張りになる。
救える生命を選択しない。
救わねばならぬという思いにかられて戦場を走ることしかしない。
故に、凝縮した雑霊の力がユーベルコードとなって幸四郎の瞳を輝かせる。
「吹き飛びなさい!」
裂帛の気合と共に光子郎の手にしたガンナイフが煌めく。
凝縮された力。
それは、まさに雑霊旋風(ゴースト・ゲイル)。
あらゆるものを吹き飛ばす旋風の力宿した一撃が、青白く光る刃となって戦場となった鎌倉の市街地に満ちる炎や『死兵』の全てを吹き飛ばし、『通り魔の怨霊』の体を浮かせる。
「誰が、このまま滅びてなるものかよ……!」
「いいえ、滅びるのです。オブリビオンである以上、過去の化身が今に滲み出ることは世界の破滅を引き起こす。ならば、私達は」
全てに手をのばす。
救われぬものなどあってはならぬと、貪欲に手を伸ばし続ける。
手にした雑霊の力宿る刃の一閃が『通り魔の怨霊』を一刀の元に両断せしめるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『ハビタント・フォーミュラ』
|
POW : イミテイト・カリストう
自身の【身体部位ひとつ】を【緑色のスライム】化して攻撃し、ダメージと【侵食】の状態異常を与える。
SPD : 夢の中のネジう
【獣腕の掌】が命中した部位に【洗脳をもたらすネジ】を流し込み、部位を爆破、もしくはレベル秒間操作する(抵抗は可能)。
WIZ : 滅亡の翼う
【背中の「書物の翼」】からレベル個の【赤き頁の刃】を射出する。射出後も個々の威力を【記述された「破滅の未来」の内容と文章量】で調節でき、低威力ほど視認困難。
イラスト:otomo
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
空に破壊エネルギーが渦巻いている。
それは『闘神の渦』。猟書家『ハビタント・フォーミュラ』が求めたのは、オブリビオン・フォーミュラ『揺籠の君』の強化である。
何故、その必要があるのかを彼女は語らないだろう。
何故、『清廉騎士カリスト』を騙るのかもまた同様だ。
「うーちゃんを守っていたみんなはやられちゃったみたいう。でもでも、どっちにしたって、うーちゃんは猟兵を滅ぼすう!」
彼女は渦巻くエネルギーの直下にありて、拡声された声を紡ぐ。
鋼鉄の嘴の奥に在る表情は如何なるものであるか、うかがい知ることはできなかっただろう。
「儀式が中断されても、ぜんぶぜんぶぶっ倒してしまえばいいう! うーちゃん賢いう! 邪魔する者みーんな、ぶっ飛ばして、滅ぼして、そんでもって鎌倉をふっ飛ばせばいいう!」
どろりと、緑色のスライム状へと変化した下半身。
獣腕の掌には蠢くネジ。
背の翼は書物のページであり、記述された破滅の未来を実現せしめる。
『ハビタント・フォーミュラ』は鋼鉄の嘴の中で笑ったのかもしれない。
生命の讃歌は響かせない。
滅びは必定。
ならば、今という現実は泡沫に過ぎないのだ。
一時の感情に揺り動かされて、滅びから目をそらすことは愚かであると嗤う。
「さあ、やってくるといいう! うーちゃんが齎す『破滅の未来』は決定づけられているう――!」
儀水・芽亜
さあ、猟兵のお通りですよ、ハビタント・フォーミュラ。
鎌倉を襲ったことの意味、その身体に刻んであげます。
ナイトメアライドでナイトメアに「騎乗」し、「騎乗突撃」。その勢いを乗せて、「ランスチャージ」で「串刺し」です。反応する暇など与えません。
突き抜けたら反転して、また「ランスチャージ」で一撃離脱攻撃を繰り返します。
何のつもりでカリストの席に割り込んだか知りませんが、そこは銀誓館学園の能力者にとって一番の怨敵。私のあとにも敵意を燃やす皆さんが向かってきますよ。
まあ、私はあなたがボロボロになるまでアリスランスを突き刺せればいいんですけどね。
この戦い、花さんたちにも見てもらいたかったものです。
「さあ、猟兵のお通りですよ、『ハビタント・フォーミュラ』。鎌倉を襲ったことの意味、その身体に刻んであげます」
儀水・芽亜(共に見る希望の夢・f35644)の声は破壊エネルギー渦巻く鎌倉市街地の空に吸い込まれるようであった。
世界結界を削る儀式。
『闘神の渦』のエネルギーは凄まじい。
かつて、それを我がものにせんとした者がいた。
けれど、能力者たちはこれらを防ぎ、倒してきたのだ。より善き未来を手にするために。そのためにこそ彼等は走る。
芽亜もその一人であったことだろう。
「うーちゃんの計画では、銀誓館学園もぶっとばせて一石二鳥だと思っていたう! でもでも、こうやって躍起になってくるってことは、それだけ此処が急所ってことう!」
『ハビタント・フォーミュラ』の獣腕が唸りを上げる。
彼女にとって、此処を儀式に選んだのは能力者を育成する学園を破壊してしまえるからであったことだろう。
その狙いは逆にユーベルコードに目覚めた猟兵達の逆鱗に触れたともいえる。
多くの者がそうであったように、鎌倉の地は能力者にとって第二の故郷ともいえる場所だ。その場所を守らんと駆けつけるのは在る種当然であったかもしれない。
「それをさせないと言っているのです」
純白の白馬型来訪者『ナイトメア』に騎乗し、芽亜は戦場を走る。
すでに『死兵』や、彼等を生み出す『通り魔の怨霊』はない。『ハビタント・フォーミュラ』と猟兵を邪魔するものはなにもないのだ。
だが、それを補って余りある力が『ハビタント・フォーミュラ』にはある。
「うーちゃんは、一生懸命役目を果たすう! それだけう!」
振るう獣腕に触れてはならない。
あの一撃を受けてしまえば、洗脳を齎すネジを埋め込まれてしまう。
だが、芽亜の手にするアリスランスがそれをさせぬと叩き込まれるも、それを軽い身のこなしで『ハビタント・フォーミュラ』は躱す。
反応する隙など与えはしないと放たれた一撃であっても容易に躱されてしまう。
「『ナイトメア』の突進を躱す……! ですが!」
即座に反転し、芽亜は『ハビタント・フォーミュラ』に再度一撃離脱を敢行する。
「何のつもりで『清廉騎士カリスト』の席に割り込んだか知りませんが、そこは銀誓館学園の能力者にとって、一番の怨敵」
「そうなのう。だからなのう。猟兵として覚醒した能力者たちがやってくるなら、それこそ一石二鳥う! 計画通りにいけば、全部ぶっとばせるう!」
揮われる獣腕の一撃を芽亜はアリスランスで受け止める。
ぐん、と芽亜は己の腕が跳ね上げられるのを感じただろう。そして、それは洗脳するネジによって操作されたことを意味する。
「――……!」
「これって生命力を共有しているう!」
白馬の『ナイトメア』に触れた獣腕。そこから流し込まれた洗脳するネジが『ナイトメア』の首を跳ね上げさせたのだ。
そのいななくように首をもたげた『ナイトメア』の頭部に押されて槍を持つ手を跳ね上げさせられたこと芽亜は気がついた瞬間、白馬の手綱を手に背を蹴って揮われる獣腕を躱す。
抵抗するように『ナイトメア』が大地を蹴って、さらに突進でもって『ハビタント・フォーミュラ』を弾き飛ばす。
「痛いう! なにするう!」
「こちらの台詞です。私のあとにも敵意を燃やす皆さんが向かってきますよ、それほどのことなのです、『清廉騎士カリスト』を騙る者!」
振りかぶったアリスランスの投擲が『ハビタント・フォーミュラ』の掌に撃ち込まれ、その体を遠くに吹き飛ばす。
戦いは激化していく。
誰も彼もが無事ではいられない。
「じゃあ、爆発しちゃえう!」
握りいしめた獣腕。
瞬間、『ナイトメア』が爆発し、芽亜の体を内側から血潮が噴出する。
生命力を共有しているが故の弊害。
痛みが胸に走れども、芽亜はそれでも投げ捨てられたアリスランスを手にし、その一撃を『ハビタント・フォーミュラ』に叩き込む。
「何度でも! あなたがボロボロになるまで私は戦う!」
それは執念の一撃。
この戦いを後進の能力者たちに見て欲しいと彼女は思った。
傷つくことは恐れに繋がる。
けれど、傷つくことを肯定するのならば、前に進むことができる。
多くを失ってもなお、多くに手を伸ばす。
取りこぼさず、何一つ諦めず、皆が望むより善き未来を諦めないこと。それが銀誓館の能力者であると、そう示したのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
カツミ・イセ
さてと、僕の神様からの神託だ。「カリストを騙るもの、覚悟はいい?」
ま、散々戦ってた相手を騙るなら、こうなるってね。僕だって逃がす気もないし。
だからさ…あなたに贈るのはこのUC。僕の神様からの水刃手裏剣無影術。
1/3ずつにわけて…そう、ホログラム。それに洗脳は無効だし。
僕は手裏剣にしたやつを投げていくし…残りのは時限爆弾。そこへ追い込んでいくよ!
ああ、避けようとしても。水流燕刃刀も展開してるから、簡単にはいかないよ。
あなたは怒りを買った。やってはいけないことに手を出そうとしたんだ、当たり前だよね。
ここであなたは退場するべきだ。
槍の一撃が『ハビタント・フォーミュラ』の獣腕を貫く。
血潮が奔り、彼女の体を激痛が走るだろう。けれど、『ハビタント・フォーミュラ』は未だ健在である。
例え腕を貫かれようとも、その流れる血潮から溢れるのはユーベルコードに寄る洗脳ネジ。
そのネジが触れた者の内部に入り込めば、訪れるは体の動きを支配されるか、爆殺されるかのどちらかである。
「うーちゃんは、うーちゃんの目的のためにオブリビオン・フォーミュラである『揺り籠の君』を強化するう!」
『清廉騎士カリスト』を騙る猟書家。
その姿を知らぬ者は、彼女が『清廉騎士カリスト』であると思ったことだろう。
けれど、嘗て銀誓館学園と敵対した『清廉騎士カリスト』は、その名故に多くの能力者たちに記憶されている。
「カリストを騙るもの、覚悟はいい?」
それはカツミ・イセ(神の子機たる人形・f31368)の神から告げられた言葉。つまりは神託である。
カツミにとって、それは知識でしか無いのかも知れない。
だからこそ、解る。
目の前の『ハビタント・フォーミュラ』はけっして『清廉騎士カリスト』ではないのだと。
「散々戦ってた相手を騙るなら、こうなるってね」
猟兵の言葉を『ハビタント・フォーミュラ』は思い出したように頷く。
「疑り深い人たちは、みんなうーちゃんのことを見抜くみたいだけど、それでもやることにかわりはないう!」
俊敏な動き。
鋼鉄の嘴から拡声される音は、少女の声。
やはり対峙してみてよくわかる。あれは『清廉騎士カリスト』ではない。似た力を使うようであるが、それは恐らく偽物であろう。
しかし、偽物であったとしても、その力が本物に及ばぬということもなければ、凌駕しないということもないのだ。
「猟兵全部ぶっ飛ばしちゃえばいいんだう!」
「僕だって逃がす気もないし」
カツミは己の瞳をユーベルコードに輝かせる。
「だからさ……」
彼女の周囲に浮かぶのは水流手裏剣。
無数に浮かぶそれは、カツミの周囲を渦巻き、水流のように流れる。
「僕の神様、その根源となる力を」
創造主の力:水刃手裏剣無影術(スイジンシュリケンムエイジュツ)。
それは召喚され水流手裏剣に己の姿を幻影として映し出す。カツミの姿を伴って飛ぶ水流手裏剣が『ハビタント・フォーミュラ』の動きを撹乱する。
本物と偽物。
「これがあなたに贈るユーベルコード。僕の神様の力さ!」
見分けの付かぬカツミの姿に『ハビタント・フォーミュラ』は混乱するだろう。
「猟兵がいっぱいう! でもでも、どれかが本物なのなら、全部ぶん殴っちゃえばいいう!」
力押し、とカツミは思ったことだろう。
けれど、迫る水流手裏剣を物ともせず、一直線に『ハビタント・フォーミュラ』は迫ってくる。
恐るべき速度。
展開された水の刃も、物ともせずに飛び込んでくるのだ。
拳を振るい、ホログラムのように幻影を映し出す水流手裏剣を吹き飛ばし、『ハビタント・フォーミュラ』はカツミ本体へと迫るのだ。
「あなたは怒りを買った。やってはいけないことに手を出そうとしたんだ、当たり前だよね」
「そんなの知らないう! うーちゃんは、うーちゃんのやるべきことをやっているだけう!」
「なら、ここであなたは退場すべきだ」
カツミは告げる。
これは銀誓館学園から連なるものなのだろう。
それを知らぬ者にとってはオブリビオンとの戦い。それを知るものにとっては長年の決着。
多くを傷つけられ、多くを失ってきた者であるからこそ湧き上がる怒りが在る。
例え、カツミにとってそれを経験していなくても、己の神がそれを経験しているのならば。
翻る蛇腹刀の水流が『ハビタント・フォーミュラ』の体を切り裂く。
「どうあってもね。過去にあった戦いの傷なんて、二度とあってはならないと、そんなふうに僕も、そして神様も言ったよ」
その名を騙るのならば覚悟せよと――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
破滅の未来がどうした!
なにが破滅だ!壊せ!!壊れろ!!
これまでだってそうしてきたのだ!!!
人工魔眼の【動体視力】、【第六感】で刃を認識
【呪詛】崩壊霊物質纏う騎兵刀を振るい、赤き頁の刃に叩きつけ、破壊せんとする!
猟兵は数多の破滅の未来を切り開いてきた!
故に、壊せぬ筈がない!!そうだろう!!!
『ディスポーザブル!!!』
【瞬間思考力】遠隔操縦、禍戦機を呼び出しハビタント・フォーミュラへ|奇襲《フェイント》、|RBX騎兵刀《大量の呪詛》を叩きつける!
これまでも!これからも!自分達はその未来を|破壊《超克》する!!
咆哮【闘争心】を奮い上げ、騎兵刀と頁を相殺、
メガスラスター【推力移動】
【早業】武器持ち替え、フォースサーベル変形無敵斬艦刀。
サイキックエナジーを刀身へ流し【限界突破】!
長大な刀身でフォーミュラを切断する!!
『ハビタント・フォーミュラ』は跳ねるようにして、その小さな体躯を戦場に駆け抜けさせる。
猟兵の攻勢が弱いわけではない。
確かに手傷を与えている。
けれど、彼女に致命を未だ与えられていない。
「儀式を中断させられるから、うーちゃん、みんなにがんばろうねって言ったんだけどう。これは猟兵の力が予想以上だってことう?」
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
鋼鉄の嘴から拡声される言葉は、どれもが現実的ではなかったかもしれない。けれど、それを成し得るだけの力を彼女が持っていると言わざるを得ない。
それを朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は直感的に理解していた。
敵の消耗は未だ深いとは言えない。
けれど、ここで畳み込まねばならないこともまた理解していた。
「どちらにしたって『破滅の未来』はやってくるう! 逃れようのない破滅が来るう!」
彼女の背に追った書物から羽撃くようにして飛ぶ頁が赤くそのまり、刃のように空を駆け抜ける。
齎すは『破滅の未来』。
回避することのできない必定たる破滅だと彼女は言うが、小枝子は頭を振る。
「『破滅の未来』がどうした! 何が破滅だ! 壊せ!! 壊れろ!! これまでだってそうしてきたのだ!!!」
「こわぁ……やっぱり猟兵こそが、うーちゃんたちの敵う!」
燃えるように熱を放つ人工魔眼が赤き刃を認識する。
手にした騎兵刀が崩壊霊物質を纏う刀身でもって迫る赤き刃と切り結ぶ。激突する力と力がせめぎ合う。
かの頁の刃に込められた『破滅の未来』。
圧倒的な文章量で持って示される破滅を小枝子は認識する。けれど、彼女は止まらない。
破壊する。
破壊だけが彼女の道行きであった。
ならばこそ、彼女に壊せぬものはない。
例え、これより訪れる未来が必ず滅びるものであったとしてもだ。
「猟兵は数多の破滅の未来を切り開いてきた! 故に、壊せぬハズがない!! そうだろう!!!」
掲げた手が天を衝く。
彼女は呼ぶ。
迫る破滅すらも破壊せしめる衝動を持ちうる悪霊キャバリアを。
其の名を|『禍戦機』《ディスポーザブル》。多くの戦場にて死した者たちの怨念の塊。
抱えるは無限の破壊衝動。
未来すら壊しうる力の発露と共に小枝子の瞳がユーベルコードに輝く。
コワセコワセコワセと叫ぶ声が聞こえるようだった。
己の内側から、『禍戦機』の中から、迸るように叫びが聞こえる。鎌倉の大地を揺らす鋼鉄の巨人。その拳が『ハビタント・フォーミュラ』へと振り降ろされる。
「甘いう! とってもすーうぃーてぃーな呪詛う!」
その拳を躱す。
呪詛満ちる拳であっても彼女は難なく躱す。『ハビタント・フォーミュラ』という名に相応しき力である。
だが、小枝子は『禍戦機』の影より強襲する。
機体は念動力でもって制御されている。これは布石でしかなかった。
小枝子には破壊することしかできない。
破壊するために戦う。
戦うために破壊する。
そのどちらも内包するがゆえに小枝子は、己の中の衝動をこそ信じ、『ハビタント・フォーミュラ』へと騎兵刀の一撃を叩きつけるのだ。
「まだ甘いう! こんなのでうーちゃんを倒そうなんて!」
獣腕が交錯し、猟兵によって刻まれた傷痕から血潮が流れているにも関わらず、奇襲の一撃を受け止めて見せるのだ。
「だからどうした! 受け止められたからどうしたというのだ!」
小枝子の人工魔眼が熱を帯びて、炎を迸らせる。
其処に在るのは超克の輝き。
「これまでも! これからも! 自分たちは、其の未来を|破壊《超克》する!!」
咆哮が迸る。
受け止められたのならば、敵に触れているということだ。
ならばこそ、小枝子のメガスラスターが力を放出する。闘争心を奮い上げる。己の騎兵刀を押し返そうとした赤い頁の刃と呪詛満ちる刃が相殺され、霧散する。
「どんなに叫んだところで、うーちゃんには届かないう!『破滅の未来』も既に決まったことう! 意味ないう!」
「それを決めるのはお前たちではない! 自分たちでもない!」
出力が上がっていく。
メガスラスターは推力を生み出す。しかし、それは小枝子の闘争心に比例する。頁の刃が見せる破滅の未来が頭に流れ込んでくるのだとしても。
それでも臆することはない。
怯えることはない。
恐怖することはない。
すでに小枝子は乗り越えている。
克己するものが彼女の中にはすでにある。砕けた騎兵刀から手を離す。
そこにあったのはフォースサーベル。
無敵斬艦刀へと変わる刀身。
「――……無敵斬艦刀う!」
「この生命が壊れても。それでも! その『破滅の未来』を壊す!!! 壊す!!! 壊せ!!! 壊せえええええええッ!!!」
迸る力の奔流が限界を超えて、サーベルを焼き切りながら振り降ろされる。
その一撃は確かに『ハビタント・フォーミュラ』の見せた一つの『破滅の未来』を切り裂いた―――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
引き続き『疾き者』にて
武器:漆黒風
さてまあ…あとはあなたを倒すのみですよねー。
一石二鳥どころか、二兎を追うものは一兎をも得ず、になりますね。
ええ…私たちは深くは知りませんが、数多の怒りを買ったようですし。
さて、さすがにここでは『無茶しても仕方ない』って言われましたから。UC使いましてー。
そのまま、突撃して漆黒風を投擲したり、刺したりですねー。
被弾すればするほどに、あなたへ返る怨嗟は大きくなるだけですよ。
四悪霊は護りきるためにいますからねー?
※
陰海月『ぷっきゅ…』ハビタントの方が許せないので、わりと渋々である。あとでご飯ねだる
ばらまかれる背に負った書物の頁。
其処に記されているのは『破滅の未来』。その文章量と内容が赤き頁の刃となって戦場を埋め尽くしていく。
「どれだけ破壊しようと、滅亡の翼は亡びることはないう!」
始まりがあるからこそ終りがある。
終わりがあるからこそ始まりが在る。
再生と破壊は表裏。
ならばこそ、『ハビタント・フォーミュラ』の言葉もまた真理であったことだろう。
シルバーレイン世界において、彼女は『清廉騎士カリスト』を騙る。
その目的がなんであれ、猟兵たちは世界の破滅を防ぐために戦いに望む。この激突は必定であったことだろう。
「さてまあ……あとはあなたを倒すのみですよねー」
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は戦場となった鎌倉市街地を走る。
空には渦を巻くように破壊エネルギーが世界結界を削っている。
削氷のように降り注ぐエネルギーはオブリビオン・フォーミュラの強化に使われるのだろう。
それを目論む『ハビタント・フォーミュラ』にとって、この戦いは一石二鳥の一つでしかなかった。
鎌倉の地を吹き飛ばすことができれば良いし、そうでなくてもオブリビオン・フォーミュラの強化は成り、世界は破滅に導かれる。
そうでなくても、猟兵が駆けつければ、これを打倒する。
「一石二鳥どころか、二兎を追う者は一兎をも得ず、になりますね」
「そんなことないう! うーちゃんはいっぱいがんばっているう!」
『疾き者』にとって『ハビタント・フォーミュラ』は『清廉騎士カリスト』の名を騙る者であるという感覚はない。
どちらも初見の存在であったからだ。
しかし、『清廉騎士カリスト』を知る者たちにとって、それは多くの怒りを買うものであったことだろう。
どれだけの歴史が紡がれてきたのかは伺い知ることしかできない。
けれど、それだけのことをしたのだというとは理解できるからこそ、その瞳がユーベルコードに輝く。
「因果は巡りて回る。どこまでも」
四悪霊・『回』(シアクリョウ・マワル)は、己に降りかかる赤き頁の刃を身に受けながら、刻まれた体を再構築しながら『四悪霊の呪詛』でおって身を覆っていく。
切り裂かれる。
その度に体の中に刻まれる『破滅の未来』。
それは確定したことなのだろう。
逃れ得ぬ破滅が在ることを知らしめるように、その文章量は圧倒的なまでに四悪霊の脳裏を染め上げていく。
尋常ならざる痛みが体を駆け巡る。
全てを滅ぼさんばかりの痛み。
無茶をしても仕方ないと『陰海月』が言っただろう。
けれど、それを差し引いてもなお、無茶をしなければ対等に戦えない。それほどまでの存在であるのだ。
『ハビタント・フォーミュラ』は背に追う翼を持って滅ぼす。
猟兵とオブリビオンは滅ぼし、滅ぼされる間柄でしかない。目の前にいるのならば、滅ぼさずにはいられないのだ。
ならばこそ、『疾き者』は手にした棒手裏剣を握りしめる。
痛みに軋む心がある。
だが、そのユーベルコードは、己に撃ち込まれたユーベルコードの攻撃に比例して戦闘力が増強していく。
心が壊れるか。
それとも体が壊れるか。
そのどちらかでしかなかった。
「我慢比べう! でも、気をつけるといいう。どれだけ、その体が呪詛で束ねられているのだとしても、結局の所、その大元は人のものであるう! そんなもので、うーちゃんたちを阻もうなんて、できるわけないう!」
舞い散る赤き頁の刃。
その乱舞を前に『疾き者』はユーベルコードに輝く瞳で『ハビタント・フォーミュラ』を見つめる。
言葉を否定することは簡単であったことだろう。
けれど、それは意味のないことだった。
「果たしてそれはどうでしょうか? 私達、四悪霊は」
投げ放つ棒手裏剣が閃光のように滅びを示す頁を切り裂いて『ハビタント・フォーミュラ』へと突き刺さる。
それは怨嗟。
これまで紡いできたであろう怨嗟が巨大になった一撃が赤い頁の刃すら貫いて、彼女の体を穿つのだ。
「護りきるためにいますからねー?」
それが己達の見失わぬ存在意義であると示す――。
大成功
🔵🔵🔵
花咲・月華
さて…懲らしめようか…(雰囲気が変わる)
『気を抜くな…月華』
朱雀(鬼の姿)が囁く
分かっているよ…朱雀
情報収集と視力は敵の動きと癖を見抜く
防御はオーラ防御と結界術反射属性(属性攻撃)で防御する
回避は軽業と地形の利用で縦横無尽に駆け巡り呪殺弾で反撃
『…そこだ』
朱雀は仙術と爆撃を組み合わせた火の鳥で敵を焼き尽くす
私は焼却の衝撃波✕急所突き✕影縛りで動きを封じながら焼き尽くす
朱雀が敵に攻撃している隙に蟲使い(爆破する)をこっそり使って
敵の不意をつく
UC発動
王牙はこの世の条理を超えて行く攻撃
をする
攻撃が当たった敵は防御すら出来ずふっ飛ばされた
王牙が攻撃した時に刀銃から跳弾で追い打ちをかけた
終わりだよ?
『ハビタント・フォーミュラ』は猟兵達の攻勢によって追い込まれつつあった。
だが、その力は未だ圧倒するものであったことだろう。
止まらない。
片時も止まらず、その書物の翼を持って破滅を齎す。
獣腕が揮われる度に、その掌から溢れるのは洗脳のネジ。
「猟兵が来ることは簡単に予想できるう! どっちにしたって滅ぼさないといけないのなら、面倒なもの全部まとめてぶっ飛ばしちゃえばいいう!」
能力者たちにって、この鎌倉という地がどれほどの意味持つのかは言うまでもない。
だからこそ、花咲・月華(『野望』を抱く?花咲の鬼姫・f39328)は理解する。
「私は自分の国と民を愛している。だから……懲らしめようか……」
彼女は傍らにある朱雀がささやく言葉に頷く。
気を抜くなという。
対する『ハビタント・フォーミュラ』は言うまでもなく強敵であり、難敵である。これまで紡いできた猟兵達の戦いを見れば、一筋縄では行かぬことは容易に想像できる。
「わかっているよ……朱雀」
目で追う戦いの軌跡。
跳ねるようにして戦場を飛ぶ『ハビタント・フォーミュラ』の動きは速い。そして、猟兵を標的にするのならば、月華もまた振るう獣腕に晒される。
その一撃を躱す。
「逃げてばっかりじゃ、うーちゃんを倒すなんて夢のまた夢う!」
放たれる呪殺弾は牽制にしかならないだろう。
鎌倉の市街地を駆け巡り、弾丸と獣腕の応酬が繰り広げられる。
朱雀の仙術と爆撃を組み合わせた火の鳥の攻撃も、全てが『ハビタント・フォーミュラ』によって薙ぎ払われる。
爆撃の炎の中をかき分けるようにして獣腕が伸びる。
アレに触れてはならないと理解する。
洗脳のネジを流し込まれては、猟兵であろうと体の自由を奪われる。奪われなくても、其の体は爆破されるだろう。
「ユーベルコードに対抗できるのは、ユーベルコードだけう!」
「そうね。だけど、隙を作り出すことはできる。さあやっつけて! 王牙!」
朱雀と月華の連携によって生み出された隙。
其の僅かな隙に月華の瞳がユーベルコードに輝き、伝説の大妖怪・王牙(デンセツノダイヨウカイ・オウガ)を呼び出す。
「仙術とこの世の条理を超えていく力、それが王牙なんだから!」
放つ拳の一撃が『ハビタント・フォーミュラ』を吹き飛ばす。
獣腕に触れた王牙の腕が爆破され、落ちる。けれど、その条理によって超える。爆破の一撃すらも超えていく。
月華の言葉に応えるように大妖怪は咆哮する。
力の発露をためらわない。
あらゆる条理を超えていく力だと月華は言った。
「終わりだよ?」
王牙の拳の一撃に月華はただ見ているだけではなかった。
手にした大剣の刀身と刀の刀身に機関銃とライフルを組み合わせた武装の引き金を引く。
弾丸は周囲に跳ねるようにして飛び交い、『ハビタント・フォーミュラ』に追い打ちをかける。
戦いは必ず終わる。
どれだけ強大な存在であったとしても。
『ハビタント・フォーミュラ』が言うように滅びは必定。
過去の化身、過去より滲み出す存在であっても、其の滅びからは逃れ得ぬというように、その体は月華たちの攻勢によって追い詰められるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
山吹・慧
この鎌倉の地を蹂躙した事……。
我々人狼騎士団が忌むべき清廉騎士カリストの名を
名乗った事……。
後悔させてあげましょう。
そしてたっぷりと聴かせてあげましょう、生命の賛歌を。
敵の攻撃は【残像】を伴う動きで攪乱して回避。
回避困難な攻撃には、【リミッター解除】した闘気による
【オーラ防御】を展開し、浸食を受けた場合は
【気功法】で対処します。
なるほど、確かにあのカリストを彷彿とさせますが……
それがどうしたという話でしかありませんね。
敵の攻撃を凌いだら、スライム化していない箇所を狙って
【功夫】による打撃を放ち、【集中力】で気の流れを
呼んで【羅山靠・戒】を放ちましょう。
逆鱗に触れるということはこのことであったのかもしれない。
能力者たちにとっての第二の故郷。
それが鎌倉である。
銀誓館学園が存在する鎌倉は能力者たちにとっても特別であった。それを理解すれば、この地を破滅に導くことは『ハビタント・フォーミュラ』にとって必要なことであったのかもしれない。
彼女の出自がどうあれ、彼女のしたことは到底許されることではなかった。
「この鎌倉の地を蹂躙したこと……我々人狼騎士団が忌むべき『清廉騎士カリスト』の名を名乗った事……」
山吹・慧(人間の玄武拳士・f35371)にとって、それは許されざることであった。
だからこそ、後悔させなければならない。
そして、そのような敵には聞かせなければならない。
連綿と紡がれてきた生命の歌を。
如何にして響き、如何にして謳い、如何にして続いてきたのか。
過去は消えない。
過去は変わらない。
自分たちが死と隣合わせの青春の中で積み上げてきたものの重みが、今此処に試されているというのならば、慧はためらう事無く歌うだろう。
「後悔なんてしないう! うーちゃんは、うーちゃんのやるべきことをやっているだけなんだう!」
どろりと、『ハビタント・フォーミュラ』の下半身が緑色のスライムへと変貌し、たわむ。
瞬間、彼女の姿が消える。
慧ですら捉えることのできなかった速度。
液体状にたわんだ下半身は凄まじい俊敏性を見せて、跳ねるようにして慧に迫る。
「なるほど、確かにあのカリストを彷彿とさせますが……」
己の周囲を取り囲むようにして跳ねる『ハビタント・フォーミュラ』。
ただ跳ねるだけではない。そのスライム状の脚部でもって放たれる鞭のようにしなる蹴撃の一撃が慧を襲う。
だが、その一撃を躱す。
いや、躱せない。こちらの回避の挙動をあちらは理解している。しなるスライムの脚部が体の動きに追従してくる。
躱せないのならば、受け止める。
己のオーラのリミッターを解除した闘気による防御。
「甘い甘いう! 甘すぎるう! その程度のオーラでうーちゃんキックを防げるわけないう! そして、一撃受けたのなら、このスライムは体を侵食するう!」
砕けたオーラから慧の体に流入してくるスライム。
体の支配を奪うかのようなユーベルコードの一撃。
慧は地面を転がりながら吹き飛ばされる。
皮膚の下を這い回るスライム。激痛が走るだろう。だが、激痛はこれまで何度も出会ってきた。痛みを御すること。心を保つこと。
それを彼は知っているからこそ、己の中にある気を持ってこれを排除する。
「それがどうしたという話でしかありませんね」
侵食するスライムを吹き飛ばした慧の瞳がユーベルコードに輝く。
満ちる輝きは曇ることはない。
踏み出す。
敵が液状化した脚部に寄る機動力を持っているのならば、必ず此方を仕留めようとする。そのカウンターを狙うのだ。
「この一手で」
「うーちゃんの侵食を受けてまだ立つう! なら、もう立ってこられないほどにボッコボコにしてやるう!」
再び襲い来るスライム状の脚部による蹴撃。
慧はしかし、しかと見る。
しなる鞭の動きは、確かに強烈だろう。だが、見えている。己の中にある気だけではない。森羅万象の気の流れを読み解く。
それが――。
羅山靠・戒(ラザンコウ・カイ)。
煌めくユーベルコードは慧の闘気を攻防一体と成し、敵の護りを無効化する拳となって放たれる。
どれだけスライム化していたとしても、液体である以上震動は伝わるのだ。
迫る襲撃を手で払い除け、慧は踏み込む。
「穿つッ!」
放つ一撃が『ハビタント・フォーミュラ』の胴を捉える。他の猟兵たちによって穿たれた傷痕へと叩き込まれる森羅万象の気は大地の力を吸い上げるようにして拳に乗り、忌むべき者を騙る猟書家の体を吹き飛ばすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
古森・ちゆり
ぴゃーん……みんなが頑張ってるんだから、わたしだって……頑張るもん!
接近戦は不慣れだから、近づけないよう頑張るよ
わたしの周りに『ちゆりねっと』を張って、簡単に近づけないようにしてから……
【風刃禁縛弓】を放つよ!例え回避しても軌道上に蜘蛛の巣を張るから触れれば絡めとっちゃうよ
少しでも動きを止められたら赤弓手から妖気の矢を放って追撃するよ…!
それでも接近されたときは、ごめんね……蟲笛で呼んだ白燐蟲たちに攻撃を受け止めてもら……ぴゃーん!まだ足りない……うん、あとでちゃんと直すから……にゃにゃこにも攻撃してもらって、赤弓手からすかさず早撃ちの矢を放つよ…!
ところで、どの辺が「きし」なんだろう……?
スライム化した下半身をたわませながら『ハビタント・フォーミュラ』は元の体躯へと体を戻す。
穿たれた一撃。
獣腕に刻まれた傷痕。
どれもが浅からぬものであったし、同時に此処まで猟兵が追い込んでもなお、健在であることが『フォーミュラ』の名を持つに相応しいものであることを知らしめるだろう。
「うーちゃんの邪魔ばっかりする猟兵は嫌いう! 全員洗脳してぐっちゃにするう!」
獣腕がいびつな音を立てる。
あの掌に触れてしまえば、洗脳ネジを流し込まれ意のままに操られてしまう。
警戒するのは当然のことだった。
古森・ちゆり(土蜘蛛の白燐蟲使い・f35520)は鎌倉市街地のあちこちに土蜘蛛の糸を解き放ち、その上を跳ねるよにして『ハビタント・フォーミュラ』に迫る。
「ぴゃーん……みんなが頑張ってるんだから、わたしだって……」
恐るべき敵。
『ハビタント・フォーミュラ』のちからは恐れるべきものであった。
ちゆりは怖いと思っただろう。不安にかられただろう。元来彼女は戦いに不向きな性格をしていたのかもしれない。
今だってそうだ。
彼女が戦うのは『おうち』のためだ。
己の領域を守るために戦っている。此処は、鎌倉の地は彼女にとって帰るべき『おうち』なのだ。
それを奪おうとしているものが居るから戦う。
そして、志を同じくする者たちがいる。能力者たちだってそうだ。ユーベルコードに目覚めていなくても人々を救おうとしている。守ろうとしている。
蜘蛛の巣の上を奔り、『ハビタント・フォーミュラ』の振るう獣腕の一撃を躱す。
近づけさせない。
「ちょこまかと跳ねて鬱陶しいう! それそろぶっ飛ばして欲しいう!」
振るう一撃が蜘蛛の巣を寸断する。
怖い、とちゆりは思ったかも知れない。
けれど、それでも彼女の瞳はユーベルコードに輝く。
恐れを乗り越える物が彼女の中にあるからこそ、そのユーベルコードは輝くのだ。
「わたしだって……頑張るもん!」
煌めくユーベルコード。赤手より放たれる妖気と風の刃を纏う矢の一撃が音速を超え、空気の壁をぶち抜く轟音を響かせて『ハビタント・フォーミュラ』に迫る。
「――ッ!」
だが、その一撃を躱す『ハビタント・フォーミュラ』。
凄まじい反応速だった。
「あっぶないう! こんな……ッ!?」
「ごめんね……」
ちゆりのホイッスルが鳴る。迫る『ハビタント・フォーミュラ』の獣腕の前にちゆりが呼び出した白燐蟲たちが壁となって受け止める。
弾け飛ぶ蟲たちの燐光をちゆりは見た。
けれど、まだ足りない。
構わずに振り降ろされる一撃。
「『にゃにゃこ』!」
ちゆりの抱えていたぬいぐるみが獣腕の一撃を受けて綿を撒き散らす。ちゆりの瞳に涙が浮かぶ。
大切な家族。身を挺して己を守ってくれた。ならば、ちゆりが今すべきことは涙を流すことではない。
ましてや『ハビタント・フォーミュラ』にむざむざ倒されることでもない。
涙をこらえて、ちゆりの瞳がユーベルコードに輝く。
一度目は躱された。
けれど、今回は違う。
例え、最初の一撃を躱されたのだとしても、あの矢は残る。そう、敵のみを絡め取る無数の蜘蛛の糸となって戦場に残るのだ。
『にゃにゃこ』が胴体から綿を巻き垂らしたのは、その蜘蛛の巣を張り巡らせ、巨大な一つのネットとなって『ハビタント・フォーミュラ』を囲うためだった。
ごめんね、とちゆりはつぶやく。
あとで絶対に治してあげるからね、と。
その決意満ちた瞳と赤手より妖気が満ちる。風の刃が渦巻き、矢となって大気の壁をぶち抜く。
「……えーい!」
風刃禁縛弓(フウジンキンバクキュウ)。
その一撃は音速に至る一撃。
「糸が、絡まるう!?」
放つ一撃が『ハビタント・フォーミュラ』を貫く。絡みついた蜘蛛の巣すら引きちぎりながら彼女は吹き飛ばされていく。
それほどまでの一撃。
ちゆりは、自分を庇ってくれた白燐蟲のかけらと『にゃにゃこ』の体を抱きしめる。
ごめんね、と謝る彼女の頭をぬいぐるみの手がゆっくりと撫で、ちゆりは己が守ったものを見るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
酒井森・興和
あれがカリストでも異形でも我らの敵に変わりない
メガリス、儀式、揺籠の強化…
難敵だろう
言うこと全てが大ごとだからね
少しでも確実に負傷させる
誰かの決定打に繋がるように
距離を取り飛斬帽【投擲】体やスライム【切断】狙う
とはいえ
これでは消極的過ぎる
【捨て身の一撃の覚悟】【集中力】で隙や背後を狙い三砂で【早業の重量攻撃】
敵UCは警戒【第六感】で躱したいが
対策に【カウンター、咄嗟の一撃で受け流し】を図る
侵食へは【狂気耐性】で抵抗しながら思い切って踏み込む
スライムを【怪力】で引き裂き接近
腕や足、【急所突き】を狙いたいが…どこでも良い、幾つか刺突を穿ってやる
【殺気】も隠さず【捨て身の一撃の覚悟】でUCを使用
風の刃と妖気を撒き散らす矢の一撃が『ハビタント・フォーミュラ』の体を吹き飛ばす。
蜘蛛の巣に捉えられていた彼女は躱す術などなかっただろう。
渦巻く刃が彼女の体を散り散りに切り裂く。
血が体中から噴出してもなお、『ハビタント・フォーミュラ』は霧散しない。彼女はゆらりと立ち上がる。
まるで刻まれた傷痕を修復するように緑色のスライムへと体を変える。
胴が、不定形の緑の粘液に変わっている。
その姿に酒井森・興和(朱纏・f37018)は驚愕しただろう。
確かにあれは『清廉騎士カリスト』の異形としての姿。
だが、怯むことはない。
彼等は乗り越えてきたのだ。どれだけの難敵であろうと、強敵であろうと。より善き未来を手に入れるために手を伸ばし続けたのだ。
「君のいうことは全てが大事だ」
「うーちゃんのやることは全部大事なんだう! 一つとして大事じゃないことなんてないう!」
動きの起点となる胴をスライム化させた『ハビタント・フォーミュラ』の攻勢は興和を取り囲むように迫る。
異形としての力。
それを十全に扱うことができているのは、偽物であるという事実を覆い隠す。
「メガリス、儀式、揺り籠の強化……君の存在がいずれ世界を破滅に導くというのならば、僕は」
少しでも誰かの決定だに繋がるように戦う。
猟兵の戦いは繋ぐ戦いである。戦場に満ちた蜘蛛の糸がそうであるように、彼等は一本の糸にすぎないのかも知れない。
強敵の前には引きちぎられる弱いものであったのかもしれない。
けれど、撚り合わされることによって強靭なるものへと変わっていく。
かつてそうであったように。興和は思い出していたかもしれない。あの青春の日々を。
誰もが同じ場所を見据えていたわけではないだろう。
けれど、誰かのためになりますようにと願った思いは同じだったはずだ。それが今という時代を紡いでいる。
傷ついたあの日も、決して無駄ではなかったのだ。
迫る『ハビタント・フォーミュラ』の攻勢を飛斬帽でしのぎながら、彼は走る。
覚悟を決めなければならない。
己の攻撃は消極的だ。決め手に欠ける。けれど、それでも、刹那に懸けるのだ。
「ぐっ……!」
「捉えたう! これでうーちゃんは、お前の体をボッコボコにしてやるう!」
緑のスライムが興和の体の中をめぐる。
侵食の力。皮膚の下を、神経をずたずたにするかのような激痛が彼の集中を切らすように蠢く。
痛みに声が溢れる。
けれど、それでも興和は踏み込む。
躱しようのない攻撃だった。仕方のないことであったのかもしれない。だが、興和にはあるのだ。
「捨て身の一撃の覚悟があるのだ。僕には。次代を守る責務が、僕にはある」
だからこそ、踏み込む。
侵食するスライムの蠢く一撃を推して、彼は踏み込む。
「なんでう?! 痛いう? なのに、なんで踏み込んで来るう!?」
彼女には理解できなかったかもしれない。
己が捨てることができるのは身一つであると理解する者が、発露する力というものを。
痛みが集中を裁ち切る。
けれど、興和は為す。やるべきことを。為さねばならぬことを。痛みは彼を押し止めるには値しないのだ。
「どこでも良い」
解き放たれる殺気に『ハビタント・フォーミュラ』はたじろいだろう。
何がそこまで興和を突き動かすのか理解できなかったがゆえに。
いつだってそうだ。
喪うばかりだったのだ。種族としても、生命としても。けれど、残されたものがある。次代のためになりますようにと願う心がある。
ならば、その拳の名を叫ぶがいい。
そして、聞け。
「『ハビタント・フォーミュラ』……君が何者であろうと、カリストでも異形でも我らの敵には変わりない」
放つは白虎絶命拳。
触れるは拳。
その瞬間、呼気よにって練り上げられた気が『ハビタント・フォーミュラ』の体内に流れ込み、爆発的なエネルギーの奔流へと膨れ上がり、そのスライム状に変化した胴を爆散させる。
これが興和の覚悟なのだと、拳の一撃で持って知らしめるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステラさんと】
えっと……ステラさんどうしましょう。
ポッと出だとしても語尾キャラ痛いんですが。
はっ!?
ま、まさかその語尾って……。
スカートのイラストの「兎」ってことですか!
ウサギだから「う」ってことですか!?
萌えってことですね!
ならばその挑戦、受けて立ちましょう。
勇者の奥深さを思い知らせてあげますよ。
ステラさん、審査員お願いしますね!
【はっぴーぶれいぶ!】で、
パフ袖フリルスカートの萌え勇者に変身して、
両拳をあごにあてる萌えっこポーズで瞳を潤ませます。
光の勇者ルクスちゃんは負けないゾ☆
さぁどうですか、この萌え萌えパワー!
ウサギさんなんかには負ける気がしないよネ♪
あれ? ステラさんどうしました?
ステラ・タタリクス
【ルクス様と】
……………………(ルクス様を見守る生暖かい目)
なんというか、ルクス様ってたまに壊れますね
さて審査員にはかの少女(銀鈴・花様のこと)を巻き込みましょう
ええ、がっつり誘拐してきました
貴女にお願いがあります
目の前のよくわからない争いの審査員をしつつ
エイル様のことを教えて欲しいのです
ええ、審査員:エイル様の話=1:9比で
特にメイドが好きかと……そうですね
何か鎧のようなモノを所持していないかを
あ、ルクス様すみません
全然バトルの様子を見ていませんでした
じゃあ、ルクス様の勝利で
後はさくっと倒すとしましょう
【トニトゥルス・ルークス・グラディウス】
ハビタント・フォーミュラ
私のメイド道の邪魔です
「えっと……どうしましょう」
思わず、ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は戦場を見て呟いていた。
猟兵と『ハビタント・フォーミュラ』との戦いは苛烈を極めていた。
かつて能力者であった者たちにとって、彼女が騙り、模倣する『清廉騎士カリスト』の名はあまりにも許しがたいものであったのだろう。
だからこそ、際立つのだ。
「ポッと出だとしても語尾キャラ痛いんですが」
語尾に『う』が付く喋りは、ルクスにとって大変に痛々しいものであったのだろう。彼女の言葉を聞く度になんかぞわぞわしていた。
「はっ!?」
もしかして、とルクスは思い至る。
「ま、まさかその語尾って……スカートのイラストの『兎』ってことですか! ウサギだから『う』ってことですか!? 萌ってことですね!」
「うーちゃんのこと分析しないでもらえるう?」
「……………」
そんなやり取りをステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は生暖かい芽で見守っていた。
なんていうか、ルクスってたまに壊れるよね、とステラは思っていた。
正直に行って、どっちでもいいんじゃないかなと思う。
むしろ、属性的な話をするのであれば、それはそれで双方にダメージが入るあれなのではないかと思わないでもない。
しかしながら、勇者がそういうのならば、そうなのである。
世の中、白を黒と言って通る人間だっているのだ。勇者が言うのならば、それはそうなのである。
「うーちゃんはうーちゃんなのう! それ以外でもそれ以上でもなう! あっ、今は『清廉騎士カリスト』う! そこんとこよろしくう!」
「くっ、微妙にドジっ子な所まで……! ならばその挑戦、受けて立ちましょう。勇者の奥深さを思い知らせてあげますよ。ステラさん、審査員お願いしますね!」
なんで?
ステラはそう思った。
けれど、ステラは委細承知とばかりに戦場を駆け抜け、一人の能力者を確保する。審査員と言えど、一人で判定するのはちょっと荷が重いと思ったからであろう。
確保されたのは『銀鈴・花』だった。
彼女は何が起こっているのかわからなかっただろう。こっちもわからん。
「貴女にお願いがあります」
「え、あ、はい」
「眼の前に『ハビタント・フォーミュラ』と勇者のよくわからない争いの審査員をしつつ、『エイル』様のことを教えてほしいのです」
その言葉に『銀鈴・花』は首をかしげる。
よくわからない争いとは……?
「はっぴーぶれいぶ!(タマニハコンナユウシャハイカガ) こういうのって『ギャップ萌え』っていうんですよね!」
パフ袖フリルスカートの萌え勇者に変身したルクスがユーベルコードの輝きを解き放つ。
両拳をあごにあてがうあざとい萌えっ子ポーズで潤む瞳に輝きを写す。
「まぶしいうっ!」
「光の勇者ルクスちゃんは負けないゾ☆」
時代が時代であったのならば、☆が誰かの頭部に、ゴン☆ってなっているところである。ジェネレーションギャップというやつである。
旧き奥ゆかしい表現技法の一つであろうがよ! と誰かが叫んだ気がするが気のせいである。
フリルは大正義。
もっとこう、スカート裾が膨らんでもいいよね。ルクスのあざといポーズは場所が場所であったのならば、多分ドーム一個分は普通に沸かせることができるポテンシャルを持っているのだ。
きっとそうなのである。
そういうのに需要が在る世界だってあるのである。多分。
「さぁ、どうですか、この萌え萌えパワー!」
「ずるいう! うーちゃんは緑のスライムにしかなれないのにう!」
そういう勝負であっただろうか。
そうなのかもしれない。ルクスのギャップ萌え勇者姿は、戦場の混乱を齎す。
しかし、そんなやり取りを他所にステラは『銀鈴・花』に詰め寄っていた。
壁ドンしていた。
「『エイル』様のことをどうか教えていただきたいのです。ええ、特にメイドが好きとか……そいういうのです!!」
むしろ、そこが本題であるとばかりにステラの瞳がマジになっている。
ちょっと怖い。
『銀鈴・花』はたじろぐばかりであった。なんで壁ドンされているのかとさえ思ったし、なんでそんなに『先生』のことを聞きたがるのだろうかとさえ思った。
「そ、そんなの私も知りたいですよ!『先生』、何が好きなのかなーとか、どんなお食事が好みなのかなーとか、そういうの!」
ぐわっと逆に聞き返される。
目の前のメイドは黙っていたらただの美少女メイドである。そんな美麗な顔を前にしては『銀鈴・花』も思ってしまうのだ。
あれ、とステラは思う。まさか、と思う。
「『先生』秘密主義すぎるんですよ! いっつもそうなんですよ! 生徒優先生徒優先生徒優先って!」
ステラはちょっと圧されるかもしれない。
この反応、もしやと思ってしまう。
「……まさか」
「ステラさーん! どうですか! どっちが可愛いですか!」
「うーちゃんの方がかわいいう!!」
ステラが何かを問いかけようとした瞬間、入る邪魔。
「……あ、ルクス様すみません。全然バトル見ていませんでした。じゃあ、ルクス様勝利で」
「雑う!?」
「後はサクッと倒すとしましょう」
ルクスとのかわいい勝負に疲弊していた『ハビタント・フォーミュラ』は目をむく。
其処に在るのは、ステラの心臓である天使核より流入したエネルギーによって形成された迸る雷光の剣。
その名は、トニトゥルス・ルークス・グラディウス。
雷光が鎌倉の市街地の空に迸る。
「『ハビタント・フォーミュラ』、私のメイド道の邪魔です」
「ええー!? 勝因言ってくださいよー☆ やっぱり、この可愛いギャップ萌えですか!?」
「はいはいそうです」
「もっとちゃんと褒めてくださいよー!?」
そうだそうだ! もっとルクスちゃんを褒めるんだ!
しかし、ステラはルクスの言葉にカクカクうなずいてから雷光の剣を『ハビタント・フォーミュラ』に叩き落とすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
遠野・路子
猟書家……ブックメイカーの彼女がその存在を押さえていたのなら
この世界への来襲は予定調和だったのかもね
……ブックつながり?偶然?
何故こんなことをしたのかは気になるね
教えてくれる?ニンジンあげるから
ダメか
あなたの思惑に乗るのは大変マズイ気がする
だから倒す
銀鈴・花、あなたも手伝って
【ヘヴンリィ・シルバー・ストーム】
銀の雨がハビタント・フォーミュラ、あなたを討つ
銀鈴、安心して
私達にとってはとても優しい雨だから
この銀の雨の中なら私達が有利になる
夢の中のネジは接触されなければ効果をもたらさない
蒼弓と蒼銀の光芒を使って距離を保ち続ける
銀鈴に迫るならそれも妨害してみせよう
さぁいくよ
ハビタント・フォーミュラ覚悟
図書館船に全ての見聞を蔵める、歴史記録者の一族。
それが『ブックメイカー』である。
彼等の存在はシルバーレイン世界にあって、戦いに加わることなく。いずれ来る猟書家という敵と戦う為にその知識を蓄えていたという。
『悪路王の娘』として遠野・路子(悪路王の娘・f37031)は、それを知っていた。
そして、今目の前に対峙する『ハビタント・フォーミュラ』もまた猟書家であるという。
名を騙り、その存在の力を模倣する。
だが、猟兵達の度重なる攻勢によって、彼女の凄まじき地力も削られ始めている。
「この世界への来襲は予定調和だったのかもね」
「うーちゃんの邪魔をする能力者も猟兵もぜんぶぜんぶぶっ飛ばすう!」
跳ねるようにして『ハビタント・フォーミュラ』が飛ぶ。
握り締めた獣拳。
あれの一撃は痛烈なるものであったが、本命は流し込まれる洗脳ネジであろう。アレを流し込まれてしまえば、肉体を操られ、そして爆破されてしまう。
触れてはならない敵。
だからこそ、路子は尋ねる。
「何故こんなことをしたのかは気になるね。教えてくれる? にんじんあげるから」
「そんなもんで、うーちゃんは釣られないう!」
「やっぱりダメか」
路子は落胆したようであるが、しかし、それでもやるべきことは変わらない。
『ハビタント・フォーミュラ』の目的は世界結界を削り、オブリビオン・フォーミュラを強化すること。
それは世界の破滅を望む者にとっては当然のことであったのかもしれない。
けれど、些か遠回りではないかとさえ思うのだ。
世界を破滅に導くためだけであるのならば、オブリビオン・フォーミュラを強化するのではなく、自分たち自身を強化すればいい。
だというのに、それをしないということは、強化を受けられないのか、もしくはそれ以外の理由があるのか。
「どちらにしたってあなたの思惑に乗るのは大変マズイ気がする。だから倒す」
路子は、他の猟兵につれて来られていた『銀鈴・花』の手を取って、迫るくる『ハビタント・フォーミュラ』の攻勢を躱す。
「あなたも手伝って」
「あのっ、私では足手まといにしかならないのでは!?」
「大丈夫」
路子の瞳がユーベルコードに輝く。
戦場に降り注ぐのは銀色の雨。
それは万色の稲妻をもって『ハビタント・フォーミュラ』を穿ち、そして優しい雨でもって戦場に存在する味方の傷を癒やす。
銀色の雨が降る世界。
それは嘗ての在り方を思えば、忌避すべきものであったのかもしれない。
「銀鈴、安心して。私達にとってはとても優しい雨だから」
だから、と手を引く。
ユーベルコードに未だ目覚めぬ能力者であったとしても戦うことができる。
より善き未来に手を伸ばし、その実現に向かって走るのならば力の有無など些細なことであると路子は思う。
「鬱陶しい雨う! この雨そのものがユーベルコードう!?」
「ヘブンリィ・シルバー・ストーム……この銀の雨の中なら私達が有利になる」
さあ、と路子は『銀鈴・花』の手を離す。
手にした妖刀に組み込まれた回転動力炉が唸りを上げる。
敵を斬れと叫ぶように。
「さぁいくよ」
路子は己の道を見る。
人魔共存。
それが彼女という存在を証明するものである。人とゴーストは共存できる。傷つけ合う宿命から解き放たれたのだ。
故に路子はは己の路を唯一人で歩むことを是としない。
共に並び立つものを者を求める。
「『ハビタント・フォーミュラ』覚悟」
『銀の五月雨』――そう銘打たれた妖刀が万色の稲妻と共に戦場を走り抜ける。
放つ銀の光。
それは路子の進む先を示すように詠唱銀によってかたどられる剣。
「路子さん、いきます!」
揮われる『銀の五月雨』の斬撃が万色の稲妻纏って『ハビタント・フォーミュラ』を切り裂く。
「わざわざ人質になりそうなのを前に立ててご苦労さまう!」
斬撃を物ともせずに『銀鈴・花』へと迫る獣腕。
その腕に触れられてしまえば、洗脳ネジが『銀鈴・花』の体を操り、人質としてしまうだろう。
けれど、それえも路子は、それをさせない。
大弓引き絞り、放たれる銀の矢が『ハビタント・フォーミュラ』の腕を地面に縫い付ける。
「猟書家の侵略……それがどんな大事を起こすのかはわからないけど……それでも私の路は続いている。例え、あなたがどんな存在であったとしても」
人と手を取り合うことができる。
その証明を示すために路子の放った矢が『ハビタント・フォーミュラ』の体を貫くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
御鏡・幸四郎
カリストではないにせよ、その力を宿すとなれば相応の地力があるはず。
強敵、ですね。
「行くよ、姉さん」
イグニッションカードを掲げ、骸骨の姉を召喚、合体します。
射出された頁の刃は機動をよく観察し、癖を見切って受け流します。
強化された今ならガンナイフで撃ち落とし、打ち払うことも可能でしょう。
破壊の未来に打ちひしがれそうになった数など数える気にもならない。
それでも私達は諦めなかった。
大切なものを守るために。大切な人と共に。
頁の隙間を掻い潜り、ハピタントに肉迫。
問答で注意を引き、切り結びながら死角に雑霊弾を発射。
鍔迫り合いで動きを止め、背後から着弾させます。
生まれた隙を突き、零距離で威力を増した第二射を。
猟兵達の攻勢が『ハビタント・フォーミュラ』を穿ち、打倒する。
しかし、背に負った書物の如き翼が羽撃く。
その羽撃きによってばらまかれる頁は、赤く染まっていく。
記されているのは『破滅の未来』。
もたらされるものか、それともやってくるものか。
いずれにせよ始まりがあるからこそ終わりがある。どんな物語にもプロローグが存在し、エピローグが綴られるというのであれば『ハビタント・フォーミュラ』のユーベルコードは、強大な力を持つことは疑いようもなかった。
「うーちゃんはこんなところで負けたりなんかしなう! うーちゃんは、きっと必ずオブリビオン・フォーミュラの強化を成し遂げてみせるう!」
ばらまかれた赤い頁が刃となって猟兵たちを襲う。
「カリストではないにせよ、その力を宿すとなれば相応の地力があると思っていましたが……強敵、ですね」
だからこそ、御鏡・幸四郎(菓子職人は推理する・f35892)は一枚のカードを掲げる。
それは銀誓館の能力者であれば誰もが持つものであった。
そう、イグニッションカード。
幸四郎が学生時代から愛用し続けている年季の入ったカードである。煌めく力と共に幸四郎の背後に現れるのは骸骨の姉。
「行くよ、姉さん」
骸骨の腕が優しく幸四郎の体を包み込む。
例え放たれていても絆で結ばれた姉との合体は、ゴーストイグニッション(オモイアウキズナ)というユーベルコードに消化する。
放たれる赤い頁の刃が迫りくる。
「うーちゃんを邪魔するものはみんなみんなぶっ飛ばすう!」
迫る刃は癖などないものであった。バラバラに操作されたそれを幸四郎はガンアイフで撃ち落とし、振り払う。
「『破滅の未来』に絶望するう!」
「そんな絶望、数など数える気にもならない」
幸四郎はガンナイフの刀身で赤い頁の刃を受け止めながらつぶやく。
幾度となく心を折られる出来事があっただろうか。
自分だけではないという救いさえも慰めにならぬこともあっただろう。
多くの者が膝を折った。現実に屈した。
けれど、それでも銀誓館の能力者たちは諦めなかったのだ。
「なら、今回も折れるといいう! そんでもって、ぶっ飛ばされるといいう!」
揮われる力。
『破滅の未来』は確かに在るのだろう。
自分たちの大切な者を守れない未来。より善き未来を手にすることのできなかった未来。
多くの可能性が潰え、消えていく。
だからこそ、幸四郎は頁の刃をかいくぐり『ハビタント・フォーミュラ』に迫る。
「大切なものを守るためには! 大切な人と共にあらねばならない!」
踏み込む。
頁の刃が幸四郎の頬を切り裂き、肩を、腕を、足を、胴を切り裂く。
痛みが走る。
けれど、それでも手にしたガンナイフの一閃を叩き込む。
「姉さんと私のように。分かたれてなお、残る絆というものを理解できるのならば!」
何も喪うことなどないのだと、幸四郎は赤き頁の刃を振り払ってガンナイフの銃口を『ハビタント・フォーミュラ』に突きつける。
「そんなもの知らないう!」
獣腕が振り上げれる瞬間、死角より飛ぶのは雑霊弾。背後寄りの強襲につんのめる『ハビタント・フォーミュラ』の顔を幸四郎は見ただろう。
拡声する鋼鉄の嘴。
何事かをつぶやかんとした瞬間、幸四郎はその嘴に銃口を突きつける。
「運命は変わる。変えられる。どれだけ『破滅の未来』を私に見せようとしても無駄だ」
放つ雑霊弾の一撃が「ハビタント・フォーミュラ』の頭部に叩き込まれ、その体を吹き飛ばす。
幸四郎は多くを得てきたのだ。失った以上のものを得てきた。
その経験の発露こそが、理不尽な破滅を許しはしない。
その瞳に輝くのは絶望でも破滅でもないのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
やあ、なりきり猟書家
けど折角カリストとやらになりきるなら、きちんと服装もしっかり準備してコスプレをしたらどう?
あと喋り方も
やる気があるんだか、無いんだか
ま、私はこの世界の事詳しくないから知ってる人が居なかったら騙されてたかもね
揺籠の君を強化して、何を企むの?
…と言っても答えてくれる訳はないか
オブリビオンとはいえ、人狼騎士を騙し死兵を利用しやりたい放題
ならぶちのめすだけだよね
けど君の企みを阻止した先には、何があるんだろうね?
超克…オーバーロード
外装展開、模造神器全抜刀
目に見える頁の刃は『オーラ防御』のシールドや、『斬撃波』を飛ばして『吹き飛ばし』て対処
視認困難なものは『第六感』頼みで『武器受け』して被弾は最小限に
威力は低くなるから、耐えられない事もない!
そうして攻撃を捌きながら接近
接近中に術式詠唱、距離を詰めたら【疑似神性・解放】起動
光でハビタント・フォーミュラを薙ぎ払う!
存在を無に還す光、何処まで耐えられるかな?
破滅の未来は世界には必要ないよ
これ以上、好き放題出来ると思わない事だね
『ハビタント・フォーミュラ』は跳ねるようにして飛ぶ。
弾丸は確かに彼女を追い詰めていたが、それでも未だ彼女を打倒しきれていない。
腕に刻まれた傷も、穿たれた体も、血潮流れる獣腕も。
全て彼女にとっては、未だ破滅に至るには足りないとばかりに力の衰えを見せない。
『清廉騎士カリスト』と騙る彼女は笑いながら、戦場を駆け抜ける。
「まだまだう! うーちゃんは必ずやりとげるう!」
銀誓館の能力者であったのならば、彼女が『清廉騎士カリスト』ではないと理解できただろう。
そして、其の言葉の意味も理解できたかもしれない。
いや、理解できない。
彼女の目的はオブリビオン・フォーミュラの強化。それによって世界は破滅する。
オブリビオン・フォーミュラ亡き世界に侵略するのが猟書家であるのならば、世界を滅ぼすことと侵略することはイコールで結びつくのか。
「やあ、なりきり猟書家」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は、そう戦場において呼びかける。
騙る名を持つのならば、『ハビタント・フォーミュラ』のやり方は隙が多いと言わざるを得ない。
よりもよってシルバーレイン世界において『清廉騎士カリスト』を騙るのは、リクスのほうが大きいと言わざるを得ないだろう。
事件を聞いて集まった元能力者達の数を見ればわかりきっていたことだ。
「折角カリストとやらになりきるなら、きちんと服装も確り準備してコスプレしたらどう?」
「みんな、うーちゃんのことを疑わないようにってお願いしたう! それなのに猟兵は、うーちゃんのことを疑ってばかりなのう! だからそんな意地悪言っちゃうんだう!」
「その喋り方も。やる気があるんだか、ないんだか」
いじわる! と叫ぶ『ハビタント・フォーミュラ』より放たれる赤い頁の刃が玲に迫る。
それ一枚一枚が『破滅の未来』を示すものであった。
宿る力は、全てが滅びの力の如き強大なものであった。
その迫りくる刃を前に転送された外装副腕が手にした模造神器の刀身が防ぐ。
軋む。
それでもなお、玲の瞳に輝くのは超克の輝き。
「オーバーロードう!」
「全抜刀――ま、私はこの世界のこと詳しくないから知っている人が居なかったら騙されたかもしれないけれどね。けど」
振るう模造神器の刀身が放つ斬撃波が迫りくる赤い頁の刃を吹き飛ばす。だが、吹き飛ばされた刃は即座に咆哮を転換し、玲へと迫る。
吹き飛ばすだけでは足りない。
オーラの防御を切り裂く頁の力は絶大そのものだ。
なにせ『破滅の未来』を示した文章量は膨大であり、また同時にあらゆるものを切り裂くほどの力を持っている。
被弾は最小限にと玲は思っていた。
けれど、オーラを重ねてもなお突き抜けてくる威力。
「フォーミュラの名は伊達じゃないってことか……! 『揺り籠の君』を強化して、何を企むの?」
「うーちゃんの目的まで知られているってことう! 世界結界を削って強化すれば、『破滅の未来』は必ずやってくるう! 遅かれ早かれ必ずう!」
振るう刃が玲のオーラを切り裂き、外装の装甲を削り取る。
劣勢に立たされている。
オーバーロードにいたりてなお、『ハビタント・フォーミュラ』と玲の間にある力の隔てりは深いものであったことだろう。
けれど、玲の瞳はユーベルコードに輝く。
超克とは己を超えていく力。
そして、彼女のユーベルコードに上限はない。
詠唱する時間に応じて無限に威力が底上げされていくユーベルコード。
疑似神性を開放するユベルコードは、束ねる度に色を変えていく。混じり合った色は灰色ではなく、極彩色。
混沌の属性は、即ち極彩色そのもの。
「再誕の剣」
「混沌の鍵」
「帰路を示す鳥」
「いつか見た空」
紡ぎ、繋げる力がユーベルコードとなって光を放つ。
外装が軋み、オーラが削れる。『破滅の未来』は確実にやってくるのだと言った。
そのとおりでろう。
わからないことでもない。例え、此処で『ハビタント・フォーミュラ』を打倒したところで、その先に何が在るのかさえわからない。
わからないことだらけだ。
「けどさ、オブリビオンとはいえ、人狼騎士を騙し『死兵』を利用しやりたい放題なら、ぶちのめすだけだよね」
「うーちゃんの目的のために仕方ないことう! みんなみんな、納得してくれるう! オブリビオン・フォーミュラを強化すること、その意味をみんな理解してくれるう!」
満ちる赤き頁が示すは『破滅の未来』。
刃は破滅を世界に刻み込むように玲の前で束ねられ、巨大な刀身となって玲に振り降ろされる。
その一撃を前に玲は退くことをしなかった。
既に詠唱した時間あは十分。
故に、距離を詰める。前に進む。後退して勝てる相手ではない。真っ向から立ち向かう。
手にした模造神器の四振りが束ねられる。
ユーベルコードの輝きは今ここに『全てを無に還す光』へと変わる。
「『破滅の未来』は世界には必要ないよ」
玲が束ねた四振りの光が振り降ろされる。
極彩色の光は、迫る赤き頁の刃すらも砕きながら『ハビタント・フォーミュラ』へと迫る。
上限なく、無限に至る力の奔流を持って玲は力を出し切る。
「うーちゃんの目的のためには必要なのう!」
「これ以上、好き放題できるとは思わないことだね」
戦いに際しては心に平和を。
破滅の未来に平和はない。ならばこそ、思う。
多くの能力者たちが願ったより善き未来を、破滅の未来に彩らせてはならない。
彼等が死と隣合わせの青春をかけて守った未来を損なわせてはならぬと、全てを無に還す光の一撃が『ハビタント・フォーミュラ』を飲み込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵