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銀河帝国攻略戦㉔~砲火の雨を抜けて

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

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 心惑わす音の波を越え、辿り着いた領域。
 遂に、解放軍は、猟兵達は帝国旗艦『インペリウム』の姿を捉える。
 しかし、それをさせじと待ち受けていたのは無数の砲であり、ミサイルであり、数多の兵装群であった。
 間髪入れず、砲火が雨と解放軍のスペーシシップへと襲い掛かる。
 そして、傘を持たぬ身は雨に濡れるのみ。
 幾つの船がそれに撃たれ、呑み込まれただろうか。
 ただ、少なくない数が巻き込まれたことは疑いようのない事実。
 解放軍の持つ兵装より遠くから撃ち込まれるそれに、その歩みは再びの停滞を見せるしかなかった。

「皆さん、お体の方は大事ありませんか?」
 戦いを続ける猟兵達へ気遣うような眼差しを向けつつ、語るはハーバニー・キーテセラ(時渡りの兎・f00548)。
 だが、その猟兵達の活躍があるからこそ、幾つもの防衛ラインを、要塞を越えられたことは間違いない。
 ふるりと頭を振り、頭の兎耳のヘアバンドが揺れる。
 そして、ハーバニーは意識を切り替え、改めて説明を口にする。
「ここまで突き進んだ解放軍でしたがぁ、今度は無数の兵装が守る防衛ラインに足止めを貰ってるようですねぇ」
 ――手を変えてぇ、品を変えてぇ、なんともたくさんの防衛網を敷いているものですぅ。
 音響洗脳型電子戦艦『クライングシェル』の妨害を越え、辿り着いた領域で待ち構えていたのは、解放軍が持つ兵器の優に2倍はあろうかという射程を誇る兵装群による一斉射撃の雨霰。
 反撃できない程の遠くから行われるそれには、一気呵成と突き進んでいた解放軍の足も止まらざるを得なかったのだ。
 ならば、ここに猟兵達が招集されたのは転移からの一網打尽か? いや、違う。
「残念ながらぁ、兵装群の近くには転移によるご案内はできません~」
 それへの備えとして、出てきた瞬間を叩けるよう護衛隊が配置されているのだと言う。
 ならば、何故、ここに猟兵達が招集されたのか。
 それは砲火の雨を、防衛隊の妨害を、身一つで潜り抜け、兵装を破壊するという役目が任されたというものだ。
 解放軍の個人個人の実力では叶わぬことだが、猟兵達であるならば。
「あまりぃ、気の進まないご案内ではあるのですがぁ、それ以外に道がないのも事実ですぅ」
 言うなれば、鉄砲玉のようなものなのだ。
 だが、宇宙空間を奔る砲火の雨はあくまでも船のサイズであれば避けようがないというものであり、人間大であるならば、避けるスペースは十二分にある。
 代わって脅威となるのは、兵装付近に陣取る護衛隊のみと言えるだろう。
「私達が任された目標はぁ、20m級のビーム射出兵器でありぃ、護衛隊の方は無視しても構いません~」
 目標はあくまでも兵装群の破壊だ。護衛隊の方は倒さなくても問題はない。
 如何に敵の攻撃を掻い潜り、兵装へ破壊へ足る一撃を加えられるかが重要となってくるだろう。
「密度の高い火砲の中へ飛び込む訳ですから、危険は高いと言えるでしょう。ですが、これは皆さんにしかできないこと。どうか、その旅路に幸運がありますように」


ゆうそう
 OPへ目を通して頂き、ありがとうございます。
 ゆうそうと申します。

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 敵の火砲を、護衛を掻い潜り、如何に一撃を与えられるか。
 それが重要となるシナリオです。
 そのため、『護衛の攻撃をどう掻い潜るか』、その上で、『兵装をどのように攻撃するか』。
 以上の2点はプレイングにて必ず指定して下さい。
 どちらか、もしくは両方が欠けた場合、かなり不味いことになりますので、よろしくお願い致します。
 それでは、皆さんのプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『シェル・ウォーマシン』

POW   :    肉弾
【体当たり】による素早い一撃を放つ。また、【帰還用の推進剤を使用する】等で身軽になれば、更に加速する。
SPD   :    フィンガー・ブラスター
【両手の指先から熱線】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    姿勢制御システム
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ガイ・レックウ
【POW】で判定
『護衛の攻撃をどう掻い潜るか』;護衛の攻撃を【戦闘知識】の勘で【見切り】ながら移動に【フェイント】を織り交ぜ、【残像】を起こすほどのスピードで掻い潜れるように回避運動するぜ。【オーラ防御】による防御も忘れないぜ
兵装と相手への攻撃にはユーベルコード【紅蓮開放『ヴリトラ』】による炎と【2回攻撃】と【範囲攻撃】【怪力】を使用した【なぎ払い】と【串刺し】を叩き込むぜ!!
スターチェイサーの機動力にかける!!


月見・桜
【心境】
やっとここまで来ましたね…
砲弾の雨を潜り抜るのは少し怖いですけど… この世界の平和の為に進むしかありませんね!

【行動】
まず《飛翔する鉄竜の霊》を召喚します!
次に、召喚した鉄竜に乗り込んで〈見切り/残像/第六感/視力〉を使用し砲弾や護衛隊を避けて兵装に近づきます!
〈盾受け〉を発動して、鉄竜の防御力を上げるのも良いですね!
止むを得ず護衛隊と戦わなければならない時は、鉄竜の25mmガトリング砲で対処します!
兵装には鉄竜の空対空ミサイルで攻撃します!…本来は、動く目標に対して使う物なのですが… 何とかなります!…多分!

「鉄竜よ…貴方が出せる全ての力を出してください!」

アドリブ歓迎です!


如月・アストレア
【SPD】
「対艦兵装なら似たようなの持ってるよ♪ かもん!くりむちゃん! からの、デストロイド☆ジェノサイダー!」


CMF(クリムゾンフレーム)を呼び出して騎乗からの6.5Mの人型に変形。
そして亜空間から対『艦隊』用超荷電粒子砲を取り出して構える、というか横の銃座に乗り込む。

「よーし、ぶっ飛ばしていくよー☆ 射線からは離れてねっ♥」

対艦隊用超荷電粒子砲が護衛ごとインペリウム対艦兵装群をなぎ払う!

㉔の戦場全参加で全部ぶっ飛ばすぞー☆

【吹き飛ばし】


ニコライ・ヤマモト
■アドリブ・連携歓迎
それなりに経験を積んできたつもりだが、結局火力不足は否めなくてな。
相変わらず後方支援だ。だが、もう他人任せにはせんよ。

■攻撃回避
【闇路の先導】発動のキーである鈴をできるだけ沢山用意しておき、万一の備えとして味方に配っておく。
道案内は最大40m先までだ。マズいと思ったらそいつを触って、夜道を通じて回避してくれ。

■兵装
俺も先のUCで突破。[目立たない、忍び足、ダッシュ]で成るべく気づかれずに接近。
[世界知識、情報収集]と[鎧無視攻撃]で壊しやすい場所が分かるだろうか。
ああクソ。もっとこう『一撃必殺』みたいな技が俺にもあれば良かったんだがな!


オリヴィア・ローゼンタール
敵陣真っ只中を駆け抜け、兵器を破壊ですね
そういうことなら、私には頼りになる相棒がいます

【守護霊獣の召喚】で黄金の獅子を呼び出し【騎乗】
【属性攻撃】で聖槍に炎の魔力を纏う
【オーラ防御】【火炎耐性】による火砲への防御を張り、【ダッシュ】で吶喊する
さぁ、征きますよ。あなたなら星の海も駆け抜けられます

強化された【視力】で熱線や体当たりの軌道を【見切り】、速度は落とさず聖槍でいなして(【武器受け】)突破する
有象無象の相手をしている時間はありません、一気呵成に切り抜けます

ビーム砲の砲口へ向けて聖槍を【投擲】(【怪力】【槍投げ】【鎧砕き】【串刺し】)
詳しい構造は分かりませんが、発射口さえ潰してしまえば!


犬憑・転助
俺のユーベルコードは超嗅覚、キナ臭さだって嗅ぎ分ける

護衛の攻撃をどう掻い潜るか、か
着物&浪人笠の姿で 【忍び足】で【目立たない】ように警備の目を掻い潜って、敵が破壊した破片やなんかの影を移りつつ接近
敵の火砲の着弾点は超嗅覚で感知し回避、また、仲間にも知らせて助ける

兵装をどのように攻撃するか……ね、こいつら(二刀)以外に、何を使うっていうんだ?
兵装に到達したら笠を捨て二刀流で戦う
攻撃時には弱点を超嗅覚で嗅ぎ分け、そこを狙う。自分がやられても弱点だけは仲間に知らせてから落ちる 。

サムライに斬れないものは、ないんだぜ?

苦労人ポジションOK、アドリブ歓迎、他PCと絡み希望



 先遣隊として進んでいき、そして、散っていったスペースシップの残骸が漂う海。
 その海を3つの光が突き進んでいた。
 1つはガイ・レックウ(流浪の剣士・f01997)が駆る、スターチェイサー。
 1つは月見・桜(妖狐の聖者・f10127)を乗せた鉄の竜。
 1つは如月・アストレア(クイック ビー クィーン・f13847)の操る人型機動兵器。
 いずれも光を尾と残し、沈黙の海を行く。
「やっとここまで来ましたね……」
 その沈黙を破ったのは、桜だ。
 周囲に浮かぶデブリに嫋やかな瞳を巡らせ、敵の警戒をしつつも、そのデブリに痛ましいモノを視る。
 ――どうか、ここに眠ることとなった彼らが過去の残滓となりませんように。
 心優しきが故にこの光景へ心痛め、命散らした者達への祈りを捧げる。
「ああ。だが、ここからが本番だ……ほら、団体様の御到着だ!」
 それを横目にしつつ、ガイはデブリの向こう、縦横無尽と迫りくる自分達とは違う光の尾を指し示す。
 だが、そこに怯みなどあるはずもない。
 敵が如何な集団であろうとも、ガイは自身の愛機たるスターチェイサーの能力を信じているからだ。
 そして、それは桜も、アストレアも同じ。
「よーし、今日も元気に、華麗に、ぶっ飛ばしていくよー☆」
 愛と希望をその胸に。
 宇宙空間には存在しない蒼天の色を瞬かせ、アストレイアはくりむちゃん――クリムゾンフレームの翼を稼働させるのだ!
 鋼鉄の翼は鳥の翼程に優雅にははためかない。だが、それでいいのだ。それがいいのだ。
 ――羽でパタパタ? ナンセンス! 飛ぶならやっぱりジェットエンジンだよね!
 唸るジェットエンジン。灯る焔は燃え盛る。なお激しく、より激しくと。
 宇宙空間では響かぬ轟音を残し、アストレアは宙を駆ける!
 そして、それに一拍遅れ、ガイと桜が追従し、猟兵達の攻略戦が始まったのだ!

 迫りくる敵の影は砲弾に手足の生えた冗談のような姿。
 だが、その流線型のフォルムは間違いなく、敵を穿つためにあると見るモノへと知らしめる。
 その姿を前に、桜の心が緊張に軋み、顔が俯く。
「砲弾の雨を潜り抜けるのは少し怖いです」
 迫りくる砲弾型の敵。それに描かれた裂けるような笑みは捕食者のそれ。
 思わず、身に着けたお守りをきつく握りしめる。
 握りしめた手の中で、鬼の角を模したお守りが手に微かな痛みを齎す。
 それは、まるで活を入れてくれいるかのように。
「――けど、この世界の平和の為に、進むしかありませんね!」
 気丈にも上げられた顔は、確かに前をむくモノ。
「だから、誇り高き鉄竜よ……お願いします! 貴方が出せる全ての力を貸して下さい!」
 祈り、乞う願いは果たされた。
 桜の騎乗する鉄の竜が応えるかのように、その速度をあげる。
 それへ追随するように護衛隊が宙を跳ねまわり、時にデブリをその足で蹴り、方向転換し、鉄の竜へと食いつかんと迫る!
「させはしません!」
 弾丸の如き突撃が鉄竜へと喰い込まんとした刹那、桜の声が行動がそれを阻害したのだ!
 それは敵を柔らかく包み、お腹ではね飛ばした狸。
 桜の霊力で生み出されたそれは、結界のように鉄竜の周りを飛び回り、現れ、その攻撃を受け止めていくではないか。
 そして、鉄竜もただ黙ってやられっぱなしではない。
 備え付けられたガトリング砲による弾幕を形成し、その守りをより鉄壁のモノとする。
 幾つかの敵が避けきれず、撃墜される姿を桜はその瞳で認めていた。
 ――敵の動きが、見えます!
 敵の攻撃を防ぎ続ける桜の手の中、もう1つのお守り――活力のお守りが仄かな暖かさを放っていた。
 それは敵を倒した際、相手の力を一部貰い受けるものでもある。
 だが、それだけではない暖かさが、そこには宿っていた。
 それはまるで、この宙域で散っていった者達の生命力が宿り、桜達を援護してくれているかのような――。

「我が刀に封じられし、炎よ!! 紅蓮の竜となりて、すべてを焼き尽くせ!!」
 鉄の竜が飛ぶ傍ら、紅蓮の竜もまた顕現する。
 抜き放たれたそれはガイが持つ刀が1つ、妖刀ヴァジュラ。
 デブリ漂う中を上下左右へと駆け抜けるスターチェイサーの後を追うように、紅蓮の竜もその軌跡を描く。
 そして、それを迎え撃つように迫りくる弾丸の群れ。
 それは自身の安否など二の次と言わんばかりの機動を描く。
 時に、誤ってデブリに衝突するものがあり、爆炎が宙域を赤く染める。
 それでもなおと、迫りくるその様は、まさしく、特攻と言えるものだ。
「覚悟は上等だ。だが、それに付き合ってやる必要性はないんでな!」
 吼えるガイの言葉へ応えるように、スロットルを全開とされたスターチェイサーもまた甲高く吼え猛る!
 ぐん。と、意識が、速度が加速する。
 彼我の距離が間を置かず縮まる景色が見て取れた。
「俺は、こいつの機動力にかける!!」
 敵の動きを予測しての、直前での転進。
 慣性がガイに尋常ではない重圧をかけ、遠心力がその身をスターチェイサーの外へと弾き飛ばそうと手を伸ばす。
「おおぉぉぉぉぉっ!!」
 歯を食いしばり重圧に耐え、自身より生じたオーラでその身をスターチェイサーごとに包み込む。
 ――加速。
 遠心力を、慣性を撃ち貫き、その身は転進した方角へ。
 遅れて、弾丸の群れがその場所を貫き通る。
 ガイはそれを躱しただけ? いや、違う。
 ガイのその後ろには燃え盛る紅蓮の竜が居たことを忘れてはならない!
 紅蓮の竜がその顎を開き、ガイの居た空間を貫き通り過ぎた弾丸の群れを根こそぎに平らげる!
 ――閃光。爆発。
 それを背後に、ガイは一路、目標の地点へと駆け抜ける!

「おぉ~! 派手にやってるね☆」
 鉄の竜や紅蓮の竜が翔び回る宙域。
 アストレアもまた、ジェットエンジンの翼から火を噴き上げ、その心地よい唸りを身体で感じながら、宙域を進む。
 その時、光が、熱線の雨がアストレアへと降り注ぐ。
 それを旋回しながら躱すアストレア。だが、他の猟兵達へと迫ったように弾丸の群れは諦めるを知らない。
 突撃する者がある。熱線を撃ち放ち、アストレアの機動を抑制しようとする者がある。アストレアを囲むように回り込む者がある。
 それを針の穴を通す程の精密さ、それを捉える眼差しでもって、辛くも避け続けるアストレア。
 だが、その足は、鋼の翼は、思うように前へと進めない。
 デブリの向こう、目標となる兵装はそこにある。
 ――もう、一気になぎ払ってしまおうか。
 そんな考えもチラリと頭をよぎる。
 アストレアの持つ対艦隊用のユーベルコードであれば、確かに、デブリなどの障害もなぎ払い、吹き飛ばして、直接兵装を狙えるものではある。
 このまま囲まれ、足止めを受け、ジリ貧となるのであれば、それもありか。
 決断は一瞬。
 アストレアはデバイスを通し、亜空間より瞬時に対艦隊用の荷電粒子砲を取りだし、クリムゾンフレームへと接続する!
「これが全力の――」
 砲口に光が溢れる。
 味方である猟兵には射線の通達も既に済んでいる。
 ならば、あとはトリガーを押すだけ。
「――お仕置きビーム!!!」
 凝縮した光は砲口より零れ出、その射線上にある全てを薙ぎ払い、呑み込みながら突き進む!
 その射線上、幾つもの閃光が、爆炎が生まれた。
 だが――その煙が晴れた先、そこには未だ健在な姿を見せる兵装の姿が!
 デブリも、護衛隊の姿もそこにはない。
 確かに、アストレアの一撃は兵装を捉えはした。だが、数多のデブリが、護衛隊が、緩衝材となり、その威力を減退させていたのだ。
 もう少し、護衛隊を躱すことへの対応があれば、兵装との距離を詰められたならば、また違った結果もあったことだろう。
 逆に、すべての障害がなくなった今、敵兵装とアストレアの間を隔てる障害はなく、その姿を捉えられてしまっている。
 兵装より光が溢れ、アストレアを呑み込み返す。
 ――鈴が音無き音を奏でて、世界が暗転した。

「これが俺の出来ることでな」
 星々の灯りが瞬き、戦火が照らす宇宙。だが、それでも照らされぬ黒が支配する空間は多い。
 その中、黒の中にあってなお深い黒がそこにはあった。
 それはニコライ・ヤマモト(郷愁・f11619)。そして、ニコライの作り出した宵の道。
 そこからニコライと共にするりと抜け出たのは、光に呑まれた筈のアストレアとクリムゾンフレームの姿。
「相変わらず後方支援ばかりだ」
 竜との一戦、邪神の力が一端との一戦。数々の経験がその身には沁みついている。
 そこには歩んできた道のりへの想いがあった。
 ――とは言え、それなりに経験は積んできても、結局、火力不足は否めないがな。
 内心の独白。顔に浮かぶは苦笑か。
 そして、火力不足を自認するからこそ、ニコライはその火力を持つアストレアを助け出したのだ。
 いや、そうでなくとも、女性子供には紳士足らんとするこの黒猫は、きっと助けはしたであろうが。
「ありがとう♪ 助かったよ☆」
「いや、まだこれからだ」
 にこやかな礼には、背中で応じ、ニコライは兵装の姿を見定める。
 ニコライが展開出来る夜道は基点となる場所から40mが今のところ限界だ。
 それでも、ニコライは前へと進み出ることを選んでいた。
 それは敵の面前へ出ることと同じであり、先の焼き直しなのではないか。
 兵装に光が集まり、再び、それが溢れ出しそうになっている姿が、ニコライの瞳へいやにはっきりと映り込んだ。
 そこに諦めの色が――ある筈もない。 
「確かに、俺にお前を脅かせる程の火力はない。だが、出来ることは色々とあるんでな。そこを他人任せになど、せんよ」
「――ええ。ここから先はお任せください」
 未だ残っていた夜道から、声が応え、金色が溢れ出した。
 それは黄金の獅子。
 それは聖炎纏う破邪の徒。
「さぁ、征きますよ。あなたなら星の海も駆け抜けられます」
 オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)が、守護霊獣たる黄金に輝く獅子へと騎乗し、宇宙空間へと躍り出る!
 敵陣を駆け、突破し、それを破壊する。それを為すことへの不安は、オリヴィアの胸中にはない。
 何故なら、そこには頼りになる相棒――己の駆る黄金の獅子があるからだ。
 生命を共にするそれの存在が故、オリヴィアの力はいつにも増して光り輝く。
 それは、敵の兵装が発せんとする光の奔流へと負けずとも劣らぬモノ!
 槍の穂先に灯る聖炎が、その輝きを増していく。
 ――どこを狙うべきか。
「砲口だ! 逆流させてやれ!」
 オリヴィアのその考えを読み取ったかのように、ニコライがその意思を伝え来る。
 それは狙撃手としてのニコライの瞳が敵の状況から読み取ったモノ。
 敵の兵装の姿は荷電粒子砲に焼かれ、やや煤けているが健在。
 如何なオリヴィアの一撃とは言え、一撃だけで壊しきることは難しい。
 そして、その間に光の奔流はニコライ達を呑み込むだろう。
 だからこその判断であった。
 そして、オリヴィアもまた、その判断を過たずに受け止める。
「詳しい構造は分かりませんが、発射口さえ潰してしまえば!」
 黄金の獅子の背中にて、引き絞られるオリヴィアの身体。
 それは、弓を思わせるような力強いしなり。
 では、そこから解き放たれる矢とは?
 ――決まっている。その手にした破邪の聖槍だ。
 オリヴィアのせんとすることを汲み取った黄金の獅子が、宙を力強く蹴り、加速を始める。
「こんな所で足止めを貰っている時間はありません。一気呵成に、貫き通します!」
 兵装の砲口へと向けて、一陣の彗星が解き放たれる!
 そして、時を同じくして、兵装からも光が零れ――激突。
 眩い光が辺り一面を照らし出す。
 20m級の兵装が齎す熱量。
 常であれば、それに一個人が叶うものではない。
 だが、目の前の光景はそれを否定するもの。
 輝きが拮抗し合い、互いが互いを呑み込まんと鬩ぎ合う!
 当然、敵も指をくわえてみている訳ではない。
 それを排除せんと、弾丸が飛び込み、
「邪魔はしないで貰おうか!」
 ――ニコライの弾丸がそれを穿ち、堕とし、到達する前に爆散させる。
 一撃必殺は出来ない。だが、それを為しえる状況を生み出すことは出来るのだ。
 黒に浮かぶ澄んだ蒼は、ただの1つとしてそれを邪魔する者を逃しはしない。
 ――あと一押し、あと一押しがあれば!
 アストレアの荷電粒子砲もあるが、それのチャージは今暫しかかる。
 拮抗し合う光が周囲を照らし出す中、最後の欠片がそれへ応えるかのように現れるのだ。

「嗚呼、臭う、臭うな」
 纏うは、宇宙の色に溶け込むかのような色合いの着物、い草で編まれた浪人笠。
 この世界においては浮いているともいえるその姿。
 誰もが気付かぬ間にそこへと現れた人影。
 閃光が辺りを照らし出す迄、気付けなかった人影。
 犬憑・転助(孤狼の侍・f06830)が護衛の、兵装の、そして、仲間の目すらも掻い潜り、ゆらりその場へと姿を現したのだ。
 その場所とは――光放つ砲身のすぐ間近。
 ――いったい、いつの間に!?
 誰もの心に奔る激震。特に、敵の動揺は最たるものであろう。
「悪いな。俺の鼻は特別性でね。キナ臭い場所なんて、すぐに分かっちまうのさ」
 それはある種の見切りが到達した境地なのか。はたまた、それとはまた違うものなのか。
 自身の五感、そのうちの1つたる嗅覚が教える情報を、転助は経験から的確に処理し、ただ自然に、散歩するかのようにそこへと至ったのだ。
 そして、転助が現れた位置――砲身のすぐ傍は兵装に近すぎるが故、護衛もまた手出しができない。攻撃すれば、あるのは共倒れの未来のみ。 
 否、既にそこまで攻め込まれた今、未来は決まっていると言えたのかもしれない。
「さぁて、それじゃあやっちまおうか」
 そこに気負いなど存在しない。
 当たり前を当たり前のようにこなす自然体のみがあった。
 滑らかな音を立てて引き抜かれたは転助が二刀一対――白狼刀、白狽刀。それ以外には武装は持ちえない。
 ――たかが刀二振りで、何をする?
 敵の嘲りが聞こえてくるかのよう。
 これが砲であったり、竜であったり、明らかな脅威、強大な武装と分かるものであれば、また敵も違う反応を示したのであろう。
 だが、それはサムライという生き物を軽く見過ぎている証拠だ。
 軽んじられたが故、転助はそれを誰にも邪魔せず、成しえることが出来る。
 浪人笠が宙を舞った。
 傘から零れる白髪が、いっそ艶やかとも言える程に、宙を漂う。
 どこを斬るべきか、どこに刃筋を立てるべきか、どう振りぬくべきか。
 その全ては己の鼻が教えてくれる。
「よう、サムライを侮ったな? サムライに斬れないものは――」
 それを斬れるか斬れないかではない。
 ――斬。
 ただ、当然のように斬るのだ。
 音はない。だが、見る者全て、白刃が砲身を滑らかに通り抜けたことだけは、感覚で理解させられた。
「――ないんだぜ?」
 砲身を蹴り、転助は宙を舞い、距離を取り――硬質な音を立てて、二振りの刃を鞘へと戻す。
 その背後、砲身がズレ、光の奔流が千々に乱れた。

 最大の脅威は消え去った。だが、本体は未だそこに。
 光の奔流とぶつかり合い、鬩ぎ合った槍の勢いは生きている。
 それに追いつき、未だ残る光の残滓すらも飲み込んで、オリヴィアは一陣の疾風となる。
 それはまさに流星が如き突撃。そして、兵装を芯から貫き通していく!
 だが、追撃はそれで終わらない。
 追いついた紅蓮の竜が、鉄の竜が、熱で、爆装で、兵装を蹂躙していく。
 そして、とどめの時。
 此度こそは、と放たれた荷電粒子砲の一撃は、今度こそ間違いなく、それをこの世界から消滅させたのであった。
 それを見守った黒猫の瞳は、己に足りぬモノを探るような、憧憬を含んだような、そんな瞳であったと言う。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年02月18日


挿絵イラスト