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ハロウィンは楽しかった? じゃあ運動しようか

#アスリートアース #キャンプ

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「質量保存の法則というものがある」
 ムルヘルベル・アーキロギアは重々しく言った。
「物体の形状や状態が変化しても、質量が生み出されたり消失することは、ない。決して、絶対に、ない」
 峻厳な瞳で、猟兵を見た。
「わかるな? これは絶対の法則だ。森羅万象ありとあらゆるものは、この法則に逆らうことは出来ぬ。
 いわんや生物をや、という話である。死人だろうがエネルギー生命体だろうが神だろうがそうなのだ」
 厳粛な面持ちで背筋を伸ばした。
「つまりは――食ったら食っただけ、質量は増えるものなのだ」
 遠い目をしていた。現実逃避したいけど出来ない、悲しい大人の表情だった。

 ハロウィンといえば、お菓子だ。
 お菓子とは、すなわちカロリーの爆弾だ。
「曰く、「美味いものは脂と糖で出来ている」。至言であり悲言であるな」
 賢者は嘆息した。
「オヌシら、パレードのためにたいそう頑張ったようであるな。うむ、それはいいことである。
 しかし現実は無視してはならぬ。……何? お菓子はまだそんなに食べてない? 知ったことか!!」
 くわわっ! 賢者はキレた!
「何? 食べても太らない体質? 知ったことか!!!!!」
 くわわわ! 賢者はさらにキレた!
「宴のあとには現実が待っているのである。ていうかワガハイが最近ちょっとお肉ついてきたから付き合ってほしい。いや違う」
 心なしか賢者は丸みを帯びていた。クリスタリアンだって生きてるんだ、猟兵なんだ。
「とにかく、運動である。キャンプをするぞ。ただし――ブートキャンプであるがなぁあああ!!」
 川崎市民みたいな顔で叫んだ。別に殺人鬼ではない。

 つまりどういうことかというと。
「アスリートアースのとあるキャンプ地を借りた。ただし! 辿り着くルートはあらかた封鎖済みである。
 到着するにはかなりの苛酷な環境を頑張って踏破せねばならぬのだ。|寄り道《うんどう》ということである」
 運動は楽しむのが大事なので、これはつまりフラグメントに従った的確な日常章ということになる。
「そしてキャンプの設営をしたら楽しい食事――だと思ったかオヌシら!!」
 くわわっ! 久々の予知をする賢者はテンションがバグっていた。
「そんなわけがないのである。用意した食料はどれもダイエット向けの食材ばかりなのだ。
 むろん持ち込みは許可せぬ。作っていいのも低カロリー高タンパクなやつのみ! であるぞ!
 あと、じゅうぶんな運動せぬと食事すら出来ぬから覚悟せよ。デザートなどないのだ」
 この地獄のブートキャンプはムルヘルベルもやることになるので、彼は血涙を流していた。グリモア猟兵だって辛いんだ。
「何? 夜はなんの運動をするのかだと?」
 ムルヘルベルは突然黙った。

「……………………夜ぐらいちょっとお酒とかよくないであるか?」
 あっこいつもう気が緩んでる!
「だめ? そっかあ……じゃあもうなんか星空見上げながらロマンチックな会話とかすればいいのではないであるかワガハイ知らぬけど……でもさあ夜ぐらいは晩酌とか、あ、そこまで言うならお前も貫け? はい……」
 因果応報とはこのことだった。

 だが実際3章は存在する。つまり何をするかはあなた次第ということだ。
 これからは健康的に生活するぞ! と決意を固めてもいいし、
 禁じられたお酒あるいは夜食を求めてこっそり抜け出しても、
 そんな不逞な輩を取り締まるために目を光らせていてもいいだろう。
 少なくともムルヘルベルは抜け出そうとする。こいつはダメ人間なので。
「ねえ今回だけ! 今回だけであるから! ワガハイに付き合って! お願いだから~~~!」
 ついには泣き落としを始めた。100歳オーバーの知恵アピールキャラとは思えない醜態だった。


唐揚げ
 憎んでいる。熱力学第二法則を。
 アスパラガスです。

 ハロウィンシナリオに出遅れたので、アフターハロウィンらしいシナリオを出します。
 食べたぶんは動かねばならない。そういうことなのです。なので動いてください。
 それか、動こうとしない輩(それはそういうプレイングを出したお客様かもしれませんしムルヘルベルかもしれません)を叱咤してください。ようはギャグです。でも公序良俗とかなんか色々はアレしてくださいね!
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第1章 日常 『ちょっと寄り道』

POW   :    体力の続く限り遊ぶ

SPD   :    計画的にあちこち回る

WIZ   :    美しい景色や美味しい名産品を楽しむ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

新田・にこたま
つまり…ムルヘルベルさんのダイエットに協力すればいいということですね。心得ました。
いつもグリモアによる予知で大変お世話になっていますからね。一肌脱がせていただきます。

というわけでミニパトに乗ってUC発動。過酷な地形をUCの力で無理矢理踏破しながらムルヘルベルさんを追い回します。バンパーぐらいは当たってもいいやという感覚で。


その顔は何ですか!

その眼は何ですか!

その涙は何ですか!

その涙で脂肪が減らせるんですか!?

この世界を救えますか!?


心が痛みますが、ムルヘルベルさんのことを想うからこそ私は鬼になりましょう。
例えムルヘルベルさんがどうなったとしても、このダイエットは成功させてみせます!



●あれっ? 一発目から予想と違うプレイングが来たぞ???
 パーウーパーウーパーウー!
 キャンプ地(に続く荒れ果てた山道)に鳴り響くけたたましいサイレン。
 熟練の登山家でさえ音を上げそうな超絶デコボコ地形もものともせず、新田・にこたまの乗る|四輪装甲車《ミニパト》がひた走る。

 で、その1メートルほど前を、画風が崩壊するレベルで必死こいたムルヘルベルが爆走していた。
「うおおおおお!! 待て! 待てにこたま! 待つのである!!」
「待ちません。これもすべてムルヘルベルさんのためなんです」
「その気持ちは嬉しい! 嬉しいのであるがな!? これ近い! 近くない!? もうバンパー当たりそうなんであるが!?」
「大丈夫です、轢殺はしません! でもバンパーぐらいは当てるつもりでいます」
「それを轢殺というのだばかもの!!!!!!」
 ムルヘルベルは驚いた。自分にここまでの馬鹿力が眠っていたことに。
 それは生物が死の危機に瀕して引き出された、リミッターを越えた力だ。
 正義のミニパトは絶対に止まらない。だってそういう|UC《ユーベルコード》使ってるから。
 にこたまはバンパーぐらいならとか言ってるが、にこたまのアバウトすぎる基準から考えるに""その時""はおそらく前輪には巻き込まれる。絶対に。

 もうこの時点ですでにやりすぎなぐらいやる気(?)を引き出せてはいたのだが、にこたまはまだスパルタでかかるつもりだった。
「その顔はなんですか!」
「えっ!? 何!?」
「その眼はなんですか!!」
「いやだからあのもうちょっと手加減ひいいいいなんでアクセル踏むのぉおお!?」
 ムルヘルベル、泣いた! ガチ泣きである!
「やだぁもうやだぁ! これ運動がやだとかとは別の意味でやだぁあああ!!」
「その涙はなんですか! その涙で脂肪が減らせるんですか!?」
「だからもうそういうレベルじゃ」
「この世界を救えるんですか!?」
「えっ急に何!? なんでそんなヒーローみたいな話になってんのであるか!?」
 ムルヘルベルは混乱した。もうわけがわかんなかった。
 その混乱が脳の指令をもバグらせ、結果的にシリアスなシナリオでは絶対にありえないレベルのSPDを引き出していた。

 だが、涙を流しているのはムルヘルベルだけではないのだ。
(「ああ、なんて辛い役目でしょう……!」)
 哭いていた。にこたまはサイバー竹刀(※鋼鉄の50倍の硬度を誇るサイバーバンブーで出来た竹刀のこと)を振り回しながら、心で哭いていた。
(「ですがこれも、ムルヘルベルさんのため。日頃の感謝を返すため、私はなんとしてでも、心を鬼にしてでも痩せさせてみせます!」)
 けなげな意気込みだった。やり方が全力で倫理をぶっちぎってさえなければ感動的だった。でも多分、倫理を遵守するにこたまはもう別の生命体だと思う。

「……そうです、私はなんとしてでも、ムルヘルベルさんのダイエットを成功させます!」
「にこたま……」
「たとえムルヘルベルさんがどうなったとしても!!」
「オヌシ覚えとけよ絶対覚えとけよほんとマジで覚えとけよ!!!!!!」
 カロリー消費には適切な運動強度の有酸素運動が大事なので、ムルヘルベルはあまりカロリーを消費できなかった。動けばいいってわけではないのである。残念!

成功 🔵​🔵​🔴​

エドゥアルト・ルーデル
拙者は普段から依頼に出たりムチャしたりしこたまカロリー消費してるから太らねぇけどアーキロギア氏はγ-GTPとかやべぇの?酒飲んでお菓子ばっか食べてたの?
いい大人なんだからハロウィンは子供達にお菓子配ったりTrickしたりするもんじゃないの?
運動するけど…エッ夜は「夜の運動」をする…て事!?

とりあえず拙者の銃を持ってね!片時も離すんじゃないでござるよ、落としたら削ぐからな
拙者も並走してやるから持ったらさっさと走れファットボーイが!!!

準備運動のハイポートが終わったら筋トレでござるヨ!
痩せるには基礎代謝が重要であり基礎代謝を上げるにはやはり筋肉でござる
一緒に超ハイペース筋トレにしゃれこもうとふと横見たら誰!誰なの!誰このおっさん!【知らないおっさん】だこれ
重しになるな…背中に載せようね❤落としたら穿つからな

食事も制限でござる
はいこれ、今日の昼食ね(スルメイカ一杯)
なんだ三杯か?三杯欲しいのか?イヤしんぼうめ!


わかっていただろうにのうアーキロギア氏
|連中《猟兵》に頼んだら手加減なんぞするものか



●うおっすげえ実践的な有酸素運動……軍隊かな?
 ザッザッザッ。さながら海兵隊のような、ハイペースで規則正しい軍靴の音。
「ぜ、ぜえ、ぜえ……」
 身の丈に合わない銃を持たされたムルヘルベルは、ヘトヘトになりながら必死に走っていた。その隣にはエドゥアルト・ルーデル(ドリルインストラクターハット装備)
「おらどうしたでござるかファットボーイ! ペースが落ちてるぞこのお(自主規制)豚!!」
「ええい耳元で怒鳴るでない! もうちょっとペース落としてもいいんじゃ」
「黙れ(自主規制)! 落とすのは脂肪で十分でござる!! ムーブ! ムーブ!!」
 どこの鬼軍曹だよという口汚いスラングで罵倒され、ムルヘルベルは泣きそうになった。あと純粋にこのランニングが(地形もあって)マジでキツい!
「お、おかしい……ワガハイの予想では……ぜえ……もっとこう、ワガハイ以外にもハロウィンで太っちゃった面々と一緒に頑張る、はずが……」
「そんなぐうたら野郎はお前だけなんでござるよ! ちなみに拙者は普段から依頼に出たりムチャしたりでしこたまカロリー消費してるから太らないでござる」
「そういうときだけ働き者アピールするのずるいぞオヌシ!!」
「やかましい! オラッペースアップ! ペース維持! ペースアップ! ペース維持!」
「上がっていく一方ではないか!?」
「そもそもいい大人なんだからハロウィンは子どもたちにお菓子配ったりTrickするのが普通なんじゃないでござるか?」
「急に正論ぶちこんできたな!? Trickはせんが! それはオヌシが変態」
「ああ運動ってそういう……ワァ、ア……」
「バカ! 淫語ではないのだバカ!!」
 ツッコミしなきゃいけないせいで、余計に体力を消耗した。

 地獄の軍隊式ハイポートが終わると、今度は筋トレを命令されるムルヘルベル。
「痩せるには基礎代謝が重要であり、基礎代謝を上げるにはやはり筋肉でござる。一緒に超ハイペース筋トレとしゃれこむでござるとよアーキロギア氏❤」
「猫撫で声で囁くの本気でキモいからやめてくれぬか」
 ムルヘルベルはげんなりしていた。
「そこのおっさんも一緒に頑張るでござるよ!」
「えっ誰であるかそいつは!?」
「……誰! 誰なの!? 誰このおっさん!?」
「オヌシも知らんの!?」
「重しになるな、背中に載せようね❤」
「ナンデ!?」
「落としたら穿つからな」
「何を!!?」
「騒ぐな……まんじりともせず片手腕立てを受け入れろ……!」
「もうやだぁ!! 誰か助けてぇ!!」
 ムルヘルベルは泣き叫んだが、誰も助けてはくれなかった。
「わかっていただろうにのうアーキロギア氏、|連中《猟兵》に頼んだら手加減なんぞするものか……」
「で、ではワガハイはこのままひとりで地獄のトレーニングをやり続け、ガチムチマッチョになれというのであるか!?」
「そうでござる、それがグリモアベースの定めた正しい猟兵の一生でござる」
「くそァ!!!」
 肝心のトレーニング効果はだいぶ出たようだ。差し入れのスルメイカに咽び泣く100歳オーバーの姿は見なかったことにしよう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

綾倉・吉野
あの!マステマ殿?「ちょうどいい鍛錬の機会がありますよ(にっこり)」と聞いていたのでありますが?……いえ、これもきっと水着で浮かれていた私への試練、ここで今一度超弩級戦力として気を引き締めろという事でありますね!
この程度こなせなければ、これからの、いずれ故郷を襲うであろう戦いを乗り越えることはできないのであります!

(素晴らしいですよ吉野。やはり人は試練に立ち向かい、それを乗り越えてこそなのです。という訳で更に追加しますね)
……え?

(UC【召喚術番外『マステマの試し』】が発動。想定外ハプニングが発生開始。楽しまないと行動速度1/5。無慈悲)

……が、頑張るであります……

※アドリブ・ネタ化他歓迎です



●マステマ様がみてる
「……あ、あの! マステマ殿……?」
 ちらり。綾倉・吉野は悪魔『マステマ』の顔色を伺う。女悪魔はいつものように(吉野以外にはあからさまなのだが)胡散臭いぐらい清らかなニコニコスマイルを浮かべている。
『どうしました? 吉野。あなたともあろうものが、怖気づいてしまいましたか?』
「そ、そんなことはないのであります! ないのであります、が……」
 吉野はちらりと逆側を見た。そこでは、この|依頼《ブートキャンプ》の発起人であるムルヘルベルが、他の猟兵たちにしこたましごかれてひいこら言いながら苦しんでいた。
 吉野はどちらかというと、猟兵たちのその容赦ないしごきぶりにドン引きした。そして、ああやっぱりマステマ殿はいつも私のことを考えて試練を与えてくださっているのだなあ、と尊敬の念を新たにした。そのぐらい、猟兵たちの|グリモア猟兵いじめ《じゃれあい》は過酷に見えた。実際過酷なのだが。

 ところでそれはそれとして、吉野がここに来たのはやっぱりマステマの|啓示《いつものアレ》の|導き《せい》だった。
『ちょうどいい鍛錬の機会がありますよ?』とかなんとかにっこり笑顔で言われたもんだから、例のごとくそれを信じてしまったのである。お人好しもここまで来るといっそ清々しい。悪魔の|契約者《おもちゃ》なだけはある。
(「聞いていた話と何か違うような……いや、マステマ殿を疑うなど言語道断であります、私!」)
 吉野は、一瞬でもマステマの判断に疑いを向けた自分を叱咤した。
(「これもきっと、水着で浮かれていた私への試練。ここで今一度、超弩級戦力として気を引き締めろ、ということに違いない……!」)
 そうだ、そうに違いない。もしかしてヘトヘトになってる自分を見て楽しんでるんじゃないか、なんてそんなこと万に一つもあるわけがない!
『素晴らしいですよ、吉野』
 そんな彼女を見(てるとクソ面白いので思わずよくない笑いが漏れそうになるけどバレないようにきちんと偉大な悪魔の風格を)守るマステマは、厳かに頷いた。
『やはり人は試練に立ち向かい、それを乗り越えてこそなのです』
「ま、マステマ殿! はい、私、気合を入れて挑むであります! うおおお!」
 吉野は気合を入れ、明らかに整備されていない山道に飛び込んだ。

 ……数十分後。
「ぜ、ぜえ、ぜえ……!」
 バテていた。

 当然だ。學徒兵としての厳しい鍛錬は受けているが、それはあくまで戦闘者としてのもの。登山に求められる体力は、戦いとはまったく別なのだ。
 優れた陸上選手は水泳競技でもトップを取れるだろうか? 否である。基礎体力は有利に働くだろうが、登山において重要なのはむしろ体力を|消費しない《・・・・・》ための技術。吉野には、知識と技術が足りない。
まあ早い話装備もなしにいきなり山に挑まされている上、気合が先行してペースも考えずフルスロットルしたもんだからスタミナが尽きていた。
「ま、まだまだであります、この程度でへばっていたら超弩級戦力とは……!」
『素晴らしいです吉野!』
「あ、ありがたいお言葉であります! 活力が湧いてき」
『ではさらに試練を追加しますね』
「えっ」
 ガラガラガラ! 頭上から不穏な音! なぜか大岩が降ってきた! さすがにそこまで険しい山道でもないのに!
「ええええええ!? ちょっとぉおおお!?」
 吉野はテンパった。彼女が万全の体勢で備えていたなら、愛刀で一刀両断出来たのだが、スタミナの枯渇は思考力を鈍らせるもの。
「マステマ殿ぉおおおお!?」
 吉野、逃げる! 転がる大岩!
「ヴォオオオ!!」
「げえっ草むらから野生の熊が!? マステマ殿ぉ!?」
『楽しみましょう吉野。これもあなたのためなのですよ』
 マステマはいい笑顔だった。最高に愉しんでいた。愉悦的な意味で。
「が、頑張るでありますが! ありますがぁああ……」
 彼女の叫びはやまびこを呼び、森に吸い込まれていった。マステマは終始いい笑顔だったという。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミーグ・スピトゥラス
●POW

オレ、知ッテル
運動スル
腹ガ減ル
飯ガ美味クナル

オレ、マグロ沢山食ウケド、ソンナニ太ラナイ
デモ、偶ニ食ベルオ菓子、美味イ
美味イカラ、多分太ッテル
ダカラ、オレモ運動シテ、痩セテ腹ゴナシスル
ダケド、タダ山道ヲ登ルダケダト腹減ラナイ
オレ、力持チ
キャンプ用品、沢山担イデ山道登ル
手ガ足リナイカラ、オレ増ヤス(バイオミック・マルチアームで腕をとにかく増やして怪力による荷物持ち)

ケド、オレデモ全部運ベナイ
ダカラ、ムルヘルベル
オマエモ荷物、沢山背負ッテ運ブ

…オオ、スゴイ
オレヨリ小サイ身体デモ、コンナニ荷物ヲ背負ウノカ!
流石、賢者
ナンデモデキルカラ、先導シテ道案内ヲ頼ム
オレ、道知ラナイ
ムルヘルベル、知ッテル



●やっぱりマグロばっかり食べてるヤツは……
 のっし。のっし。
 インドあたりの過剰搭乗列車めいて、三角型のフォルムが山道を登る。
 それはキャンプ用品の塊……ではなく、大量のキャンプ用品を抱えたミーグ・スピトゥラスだった。
「す、すごいなミーグよ。さすがはバイオモンスターである」
 |有酸素運動《猟兵どものかわいがり》で疲労困憊のムルヘルベルは、ミーグの怪力ぶりに舌を巻いた。
「手ガ足リナイナラ、増ヤセバイイ。ケド、ソレデモ全部ハ運ベテナイ」
 ミーグの腰のあたりからニュッと新しい腕が生え、中継地点に置き去りにされた荷物を指差す。
「オレ、力持チダケド、限界アル。モシカシタラ、オ菓子食ベタカラ、太ッテルノカモシレナイ」
「……食べられるのであるか? お菓子。いや、オヌシの食性がどの程度人間に近いのかは知らぬが……」
 人間の食べ物、ことに嗜好品のたぐいは、他の動物の生態に害を与えたり、そもそも消化出来ないこともある。ムルヘルベルが懸念したのはそういうことだ。
「心配ナイ。オレ、オ菓子モタマニ食ベル。イツモハ、マグロ沢山食ウ」
「意外と栄養学的に健やかな食生活しておるなオヌシ……」
「ダカラ、普段ハソンナニ太ラナイ。ケド、オ菓子ハ太ル。
 オレ、ムルヘルベルト一緒ニ、腹ゴナシスル。一緒ニ、頑張ルゾ」
「ミ、ミーグ……!」
 ムルヘルベルは感動した。何故なら今まで|採用され《駆けつけ》た猟兵どもと来たら、半分以上がムルヘルベルを痛めつけ……もといスパルタで運動させる輩ばかりだったからだ。いやまあこいつがそれを望んだんだけども。
「よしわかった、任せておけミーグ! オヌシを見ていたらワガハイも力が蘇ってきたぞ。あの荷物はワガハイに任せておくのだ!」
「デモ、ムルヘルベル……」
「みなまで言うな! うおおお!」
 ムルヘルベルはダッシュで駆け下り、荷物を満身の力で持ち上げ戻ってきた!
「ど、どうだミーグよ! さあ出発」
「荷物、マダアル」
「えっ」
「アッチニ、アル」
 ぎぎぎぎぎ。ムルヘルベルの首が、錆びた人形めいてぎこちなくそちらを向く。
 そこには、どっさりと積み上げられたキャンプ用品の山があった。
「……ええい、吐いた唾は飲まんのがワガハイだ! こなくそがーッ!!」
 ムルヘルベルはヤケになっていた。疲労はヒトの思考力を奪ってしまうのである。

「ふんぎぎぎぎ……!!」
「……オオ、スゴイ」
 ミーグは驚いた。ムルヘルベルはマジで荷物を自力で持ってきたからだ。
「オレヨリ小サイ身体デモ、コンナニ荷物ヲ背負ウノカ!」
「フ、フフーン! そうであろう、そうであろう!」
「流石、賢者」
「そうであろうそうであろう!!」
 ムルヘルベルは調子に乗った! こいつはちょろい。
「賢イ」
「そうだとも! ワガハイはなんでもできるのだ!」
 種族が天狗だったら、もう鼻が成層圏に達していそうな勢いで図に乗っていた。
「ジャア、先導シテ道案内ヲ頼ム」
「任せておけ! ワガハイが的確に案内してくれよう!」
 ムルヘルベルは安請け合いした。ミーグが後ろからついてくるということは、怪力バイオモンスターのペースで移動せねばならないのだということに彼が気付くのは、残念ながらそれからかなり進んだあとの話だ。
 マグロを食べているだけあって、ミーグの知能指数は高かった。ムルヘルベルはすっかり図に乗らされ、いい感じに脂肪を燃焼したのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神代・凶津
「…私、食べても太らない体質なんですが。」
おっと相棒、いきなり全方位を敵に回しかねない発言らNGだぜ。ほら、ムルヘルベルが血涙を流しかねない程睨んでるぜ。
…まあ、俺も仮面だからどんだけ飲み食いしても太らないんだがなあッ!(ドヤァ)

「…山道は巫女の修行で慣れてますから苦もなく踏破できます。」
相棒が太らないのは食った以上に動くからってのもあるよな。
…なあムルヘルベル、少し楽して痩せられるって言ったらどうする?
ヒーローマスクの俺に体を貸せば代わりに運動してやるぜ?なに、いつもグリモア猟兵の予言で世話になってるからな。

ムルヘルベルが体を貸すなら代わりに運動するぜ(良く動く相棒基準)


【アドリブ歓迎】



●あぁ!? 戦争かぁ!?
「……私、食べても太らない体しむぐっ」
 神代・凶津が無理やり顔に被さることで、発言を妨害される桜。
「……何をするんです、凶津」
「相棒、いきなり全方位を敵に回しかねない発言はNGだぜ! ほら、見ろよ……」
「あっ」
 桜は気付いた。こちらをぎりぎりと、血の涙を流さんばかりの形相で睨みつけてくるムルヘルベルに。
「オヌシ……いま何か言いかけたな? 禁じられた言葉をッ!」
 ドドドドド! ムルヘルベルの顔が突然劇画調になり、桜ににじり寄る!
「な、なんです? この奇妙な『凄み』は」
「言いかけたなッ! 『禁じられた言葉』をッ!」
「別にライターの再点火はしてねえよ! 落ち着けムルヘルベル!」
 ふわりと桜の顔を離れた凶津が、ムルヘルベルの前に立ちはだかり……いや、この場合は|浮き《・・》はだかり、静止した。
「……ふむ、まあよい。オヌシに免じて聞かなかったことに」
「まあ俺は仮面だからどんだけ飲み食いしても太らないんだがなあッ!」
「ききききき貴様ーーーー!!」
 ボカスカボカスカ! 80年代の古き良きギャグ漫画みたいに取っ組み合いを始める両名! 煙の中からムルヘルベルの手とか足とかが飛び出してるあの感じだ!
「私を制した割に火に油を注いでどうするんですか……」
 言い出しっぺのはずの桜が、呆れてツッコミを入れる始末だった。

 とまあ和やかな(?)ムードで山道を登るふたりと一体。
「ぜえ、ぜえ……ワガハイ、荷物運びとかで往復しておるから、もう十分すぎるぐらい動いた気がするのであるが……」
 汗を拭いつつ、ムルヘルベルは桜を見やった。
「それはそれとして、息一つ切れておらぬのはさすがであるな」
「山道は巫女の修行で慣れています。むしろこの山は、登りやすいですね」
「マジか……こ、これが修験者なのであるか」
 ムルヘルベルは愕然とした。鍛錬と研鑽はこういうところで出るのだと。

 その時。どこかから聞こえたのだ。悪魔の囁きが……!
「……なあムルヘルベル、少しラクして痩せられるって言ったら……どうする?」
「!?」
 にやり。なぜか普段より邪悪に見える凶津が、やけに濃い陰影で笑う(正確には笑っているように謎のライトがかかっている)!
「な、何を言っているのだオヌシ」
「ヒーローマスクの俺に身体を貸せば……代わりに運動してやるぜ?」
「なんだと? し、しかし」
 ムルヘルベルはちらりと桜を見た。真面目に山登りをしている彼女の手前、ズルをするのはなんだか良心が咎めたのだ。
「なあに、いつもグリモア亮平の予言で世話になってるからな、いいってことよ……」
「……わ、わかった。恩に着るのである凶津……」
 賢者とて心の弱さがあった。彼は悪魔の誘いに乗ってしまった!
「……ムルヘルベルさん、一つ忠告しておこうと思うのですが」
 桜はいまさらのように振り返った。しかし、時すでに遅し。相棒を装着するムルヘルベル!
「凶津の基準は相棒である私にありますから、代わりに運動してやると言われたとしてもむしろ逆に疲れ……ああ、もう遅かったですね」
「なんでこういうときだけ忠告が遅いのだオヌシグワーーーーッ!!」
 ムルヘルベルの悲鳴がこだました。人間は脳のリミッターにより全力を出せないというのが俗説だが、まんまそれを凶津の顧みない強制運動でやらされてしまったというわけだ。
「任せておけムルヘルベル! うおおお行くぜーッ!」
「待て凶津ちぎれるワガハイの腕ちぎれグワーーーッ!」
 ムルヘルベルは無駄に疲労しただけに終わった。インガオホー!

成功 🔵​🔵​🔴​

シャルロッテ・ヴェイロン
(なぜか実戦装備の状態で山野を駆ける兵士Lv1×たくさん(+グリモア猟兵)と、彼らをジープを【操縦】しながら追う鬼教官Lv100)
『貴様ァ!そんな生半可な【覚悟】で戦場で生き残れると思ってるかァ!?』(などと、【逃亡阻止】しつつ追い立てる)

(で、本人はというと)
いやー、屋外でゲームというのも乙なものですねー。
…え、私?ほら、運動とかいうキャラじゃないですし(と、わざわざ発電機まで持ち込んでグランピングしてる(ぉぃ))。
(ちなみに、冒頭の兵士たちはUCで召喚したFPSのやつ)

※アドリブ・連携歓迎



●とーちゃんたちには、内緒だぜ!
「ムーブ! ムゥーブ! ハリアッ! ゴゥゴゥゴゥゴゥ!」
 やたらアメリカナイズされた檄に背中を押されるようにして、山野を駆けるこれまたアメリカナイズされた兵士たち。
「何!? なにこれ!? ワガハイなんでまたこんな軍隊じみたことやっておるの!?」
 そんなかに混ざるちっこいの。後ろを振り向く。迫りくるジープと鬼教官! やっぱこの流れ既視感あるよ!
「貴様ァ! そんな生半可な覚悟で戦場で生き残れると思っているのかァ!?」
「アイエエエ!」
 ムルヘルベルは走った。もう減量がどうとかは完全に頭から吹き飛んでおり、ただただ鬼教官が怖くて仕方ないので逃げまくった。

 で、これが誰の仕業かというと。
「いやー、屋外でゲームというのも乙なものですねー」
 ポータブルゲーム機で呑気に遊ぶシャルロッテ・ヴェイロンだった。
「おのれシャルロッテーッ! オヌシも運動せんか運動をーッ!」
「え? いや私、運動とかいうキャラじゃないですし」
 後ろには発電機! 一足先にグランピングだ! なんて無駄のない無駄な謳歌ぶり!
「あ、その兵士たちは疲れを知らないFPSのプレイヤーキャラクターたちですから頑張ってくださいね!」
「お、おおおおのれ! そんなことやってるとオヌシあれだぞ、クリスマスには肉達磨みたいになっておっても知らんぞーッ!」
「私太らない体質なんですよねー」
「どいつもこいつも都合のいいことを言いおっておのれ猟兵ーッ!!」
 ムルヘルベルの怒号は遠のいていく。字面だけ見るとまるでオブリビオンのようだったという。

 なお、命の危険すら感じるレベルでひたすら走りまくったので、ただただ体力を消耗し精神的に疲弊するだけで、カロリー的にはそんなでもないという(ムルヘルベルにとって)骨折り損な結果になった。シャルロッテはアウトドアゲーミングを堪能しリフレッシュしていた。これが格差社会か……!

成功 🔵​🔵​🔴​

ベロニカ・サインボード
サボって本読んでるムルヘルベルに接触、ワーニン・フォレスト(以下W・F)の超スピードで本を取り上げるわ
座学や知識も大事だけど、それを無駄にしないためにはトレーニングが必要よ

W・F!みぞおちに一発入れて、ムルヘルベルに看板をつけろ!
看板の表面には体脂肪や筋肉量などの情報が記されるわ

なるほど…とりあえずボクササイズね
大丈夫、これ以上ワーニン・フォレストで殴るつもりはないわ
私が相手になるわ…さあ、どんどん打ち込んできなさい

断る?なるほど、この本がどうなってもいいって事ね
ムルヘルベル、さっきの案内板にはアンタの居住地も書いてあるわ
書庫に何をされても文句ないってことよねェ〜〜〜っ



●スピード:A(超スゴい)
「『ワーニン・フォレスト』ッ!!」
「グワーッ!?」
 こっそりサボって本を読んで現実逃避していたムルヘルベルを、突然ベロニカ・サインボードの身体から浮かんだ生命エネルギーのヴィジョンが殴りつけた!
 そのスピードはまるで時間が止まったかと思えるほどの超スピードであり、へとへとな上にもう色々嫌になっていたムルヘルベルでは避けられるわけもなかった。
「なっ、突然何をするベロニカ!? あとワガハイの本返して!!」
「冗談キツイわ。アンタは何のためにここに来たの?」
 ベロニカはキャッチした本をひらひらと振る。ムルヘルベルでは届かない高さで。
「座学や知識も大切だけど、それを無駄にしないためには『トレーニング』が必要よ。そのぐらいは知ってるでしょう?」
「ま、まあ実践してこその知識ではあるが……ハッ!」
 正論に口をもごもごさせるムルヘルベル。殴りつけられたみぞおちをさすると、違和感にお腹を見やる。すると、そこには!

「なッ! なんであるか!? この『看板』は!」
 奇怪! ムルヘルベルのみぞおちには謎めいた『看板』が描かれていた!
 そこにはいくつかの数字と、パーセンテージが表示されている。
「そいつはアンタの体重、体脂肪率、筋肉量、そして今日消費したカロリーと摂取カロリーが記されているわ」
「何ィーッ!?」
「つまり、アンタが盗み食いをしても、私の『W・F』は見逃さない、ってことよ」
 ドドドドド……ムルヘルベルは汗まみれになった。
「といっても大丈夫、これ以上『W・F』で殴るつもりはないわ」
 そう言うとベロニカはスッとファイティングポーズを取った。
「代わりに、ボクササイズよッ! 私に好きなだけ打ち込んできなさいッ!」
「えっ、や、やだ……」
「……そう。なら、この本がどうなってもいいってことね」
「!」
 ムルヘルベルは目を見開く!
「お、オヌシ! そのためにワガハイの『本』をッ!」
「そういうことよ……そしてッ! アンタのその『案内板』には、アンタの『居住地』も書かれているッ!」
「なんだとォーッ!?」
「このまま運動を渋るようなら、何をされても文句ないってことよねェ~~~ッ」
「なんでそこまでするのオヌシ!?」
「アンタが言い出したことでしょうがッ! 嫌いなピーマンを食べたがらない子どもみたいな泣き言を言ってる場合じゃあないのよ!」
「鬼! 悪魔! キマイラーッ!」
「冗談キツイわ。私は時計ウサギよ」
 ムルヘルベルは嘆きと怒りを拳に乗せて叩きつけた。さながらラッシュのごとく!
 めちゃくちゃスパルタだったが、運動自体はきちんと効率的に付き合ってくれたベロニカだった。運動=消費ッ!

大成功 🔵​🔵​🔵​

五百崎・零
※戦闘中じゃないので大人しいです。よかったですね(?)

一回死んでも体重とかって増えるもんなのかな。ま、死んだのかすらよく覚えてないんだけど……。

体重云々は自分には無関係なのでは、と思考しながら進む
このまま行ってもいいけど、もっと楽しいことないかなぁ……

より効率のいい運動ってなんだろうって考えたんだけど、やっぱり模擬戦とか、模擬戦とか……模擬戦とか?
死なない程度に本気でやったらかなりのカロリー消費できるし、今後の役にも立つだろうし。
というわけで、移動しつつ一戦どうですかムルヘルベルさん。

え、やらない?
……うーん、残念だなぁ

(※やってもいいよ、と許可が出たらハイテンションに追い回します)



●似たような主旨のプレイングが並ぶとこうなる
「ムルヘルベルさん、戦いましょう!」
「えっ何急に!?」
 五百崎・零がいきなり決闘を申し込んできたと思い込み、ビビるムルヘルベル。
「いや違いますよ、マジで戦うわけじゃないです。模擬戦です」
「そ、そうか……っていやそうじゃないが!? だからなんで急に!?」
「えっ。だってさっき(※ひとつ上のリプレイ参照)戦ってましたよね??」
「あれはボクササイズであるが!? しかも不本意にやらされたのであるが!?(※原因はサボりがバレたから)」
 零は首を傾げた。戦闘中ではないから大人しく見える零だが、別人格とかでなくキレてる状態も今の状態もひとしく零であるからして、つまり頭がイッてるのは素なので、こういう思考回路になるのも必然だった。

「よくわかんないですけど、結局戦うんですか? 戦いますよね?」
「あれぇ!? ワガハイがよくわかんないこと言ってる扱いされた!?」
 えらく戦おうとしてくる零の、おとなしいが隠しきれない"圧"にヒき気味のムルヘルベル。
「いやだって、移動してるだけより戦ったほうが効率がいいですし……死なない程度に本気でやったらかなりのカロリー消費できますよ?」
「むむむ」
「今後の役にも立つだろうし、ストレス解消にもなりますよ。いいことづくめです」
「た、たしかに……さっきのボクササイズもなんだかんだで気分転換出来たであるしな」
 ムルヘルベルは理屈人間なので、こうして理詰めで説得されると勢いで押しやすい。
「じゃあ戦いますよね? 戦いましょう!」
「よ、よかろう。しかしだ零よ!」
 ノリノリで始めようとする零にビシッと掌を突き出す。
「はい? なんですか?」
「……死なない程度、であるぞ? 模擬戦なのだからな??」
「あ、そこは安心してください。自分、死ぬ気で戦うとか絶対ヤなんで」
「よいか? 絶対であるからな? 絶対であるぞ??」
「なんでそこまで念押しするんです? 安心してくださいって」
「じゃあ、そういうことであれば……」
 ムルヘルベルが武器である魔導書を取り出した瞬間、零の表情が一変!
「え? 零?」
「安心してくださいよ……オレはいつだって死にたくないんだからさァ! ヒャハハハ!」
「おい零!? 零ーッ!?」
「ヒャハハハ! 模擬でも戦いは戦いだもんなァ! 死にたくねェなら逃げないと!」
 BLAMBLAMBLAM! ムルヘルベルは涙目になりながら逃げた!
「待って待って! なんで!? 死なない程度に言ったが!?」
 ムルヘルベルは気付いていなかった。
 零にとっての「死なない程度の本気」とはつまり、だいたいいつも通りであるということに!
「イヒヒッ、アーッハハハ! 行くぜェ!」
「誰か助けてーーーーッ!!」
 本気で逃げ回り続けたおかげで、カロリー消費は上々だった。あと、零もいい感じに戦闘欲を解消できた。ムルヘルベルは鼻水でべちょべちょになった。無慈悲!

大成功 🔵​🔵​🔵​

レン・ランフォード
人格;錬
俺らは基本的にこいつ等が寝てる内に俺が修行…運動してるから
ダイエットとは無縁なんだが
こいつら俺が上げたスペックを把握しきれてないみたいなんだ
戦闘だと致命的になりえる…ということでブートキャンプ参加だ
蓮「仕方ないですね」れん「めんどい…」

ルートは計画済み。この山々を通っていくつもりだ
特にここの山頂が絶景らしいぞ?
俺らは三人に分かれてこっちの獣道(獣も通りそうにない道)を
木を渡り壁を走り谷を跳び越え忍者らしく行くつもりだが
ムルヘルベルはどうする?
俺らと行くか、こちらにある登山道を行くか
後者なら実体化した数珠丸太郎をつけるから一緒に上ってくるといい
(ゴールをしめされてるので走る気満々の狼)



●多重人格者ってズルじゃない?(賢者の大人げない感想)
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……」
 ボクササイズや死なない程度の本気(※欺瞞)の模擬戦をさせられ、ムルヘルベルは今にも死ぬんじゃないかってツラでぐったりしていた。
 もともと肉体労働が得意でないタイプ(正確に言うとそういうのを避けてるズボラでもある)なムルヘルベルにとって、今日は過去一しんどい依頼となっていることだろう。まだ1章だけどな!!
「くったくたになってんじゃねえかムルヘルベル。まだ始まったばかりだぜ?」
「お、オヌシ……オヌシらがスパルタすぎるのだ……!」
 レン・ランフォードは、賢者の訴えに肩をすくめた。
「そう言われてもな、付き合えって言われたのは俺らのほうだし……つっても俺、ダイエットとか無縁なんだよな」
「はぁ!? 藪から棒に喧嘩売っておるのかゲホゲホッ」
「売ってねえよ!? とりあえず呼吸整えろ、呼吸」
 乱暴な人格だが、|レン《錬》は面倒見がよかった。そういう人格だし。
「ほ、他のオヌシからすると、あまりそういうイメージはないのだが……」
「ああ、|あいつら《蓮や"れん"》が寝てるうちに俺が修行、もとい運動してんだよ。だからあえて動く必要がないっつーかさ」
「多重人格ずるい! ずーるーい!!」
「泣きべそかくことないだろ……」
 ドン引きする|レン《錬》。なお、その頭の中では蓮と|れん《・・》が「仕方ないですね」とか「めんどい……」とか怠惰全開なぼやきをしていた。まともな人格は|レン《錬》しかなかった。

 ところでそんな|レン《錬》が提案したのは、シンプルな山登りだ。えっまだキャンプ地たどり着いてなかったの?(※リプレイ上の都合です)
「ちょうど小さな山があるみたいだからな、こっちを迂回して通っていくんだ。山頂の景色は絶景らしいぜ?」
「わざわざ!? わざわざか!? じゃあもうワガハイオヌシのあとについてくもん! ラクするもん!」
「え」
 |レン《錬》は分身しつつ振り向いた。行こうとしているのは、とてもではないが獣道とすら言えない、マジで忍者の隠れ里とかありそうなレベルの秘境である。
「ほんとに来るのか?」
「死ぬんじゃないですか……?」
「たすけるのもめんどい……」
「オヌシらひどくない!? っていうかなんでそんなとこ行くの!?」
「なんでって、なあ」
「私たち忍者ですし」
「ふつうの道だとおもしろくない……」
「畜生! ワガハイがラクするパターンはないんであるか!!」
 ムルヘルベルは地団駄を踏んだ。
「わかったわかった。ちゃんとした登山道あるから。ほら数珠丸太郎、一緒に登ってやってくれ」
 ぼわん。召喚された狼はしっぽをぶんぶん振っている。
「おお、そうであるそうである。こういう動物と触れ合いながらの楽しい運動がちょうどい」
「ゴールはあの山頂だぞー。じゃ、スタートな」
 呑気に言ってシュバッと姿を消す3人。瞬間、数珠丸太郎はニコニコ笑顔でしがみつこうとしたムルヘルベルはふっ飛ばして駆け出した!
「ギャーッ!? おいちょっと待て早すぎではないかオヌシぃいいい!!」
 ムルヘルベルは必死で追走する。どちらのルートであれ、彼が安らげるわけはないのだ。だってそういうシナリオなんだから……!!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ザガン・アッシム
【アドリブ及び連携歓迎】

…細かいことはよく解らんが、要するに減量の手伝いをすればいいんだろ?

よーし、頑張るぞー!(左腕から各種兵装展開)

…ん?言ってるんだ?俺は当然教導側だぞ。

大丈夫大丈夫。これ特性バイオ弾だからちゃんと土に還るし、万が一当たったとしても痛いだけで猟兵ならダメージねぇから、な。(因みに余程酷い輩以外には撃つ気無し。)

じゃ、俺は先行して見てるから頑張れなー。(【UC】と【サバイバル】【クライミング】等を併用して慣れた様子で高所を飛び移りながら周囲を見回し【情報収集】、怪我人や体調不良者は都度対処しつつサボる輩にはお仕置き)

…新兵の引率みてぇだが、ま、偶にはこんな日常もいいかね。



●サイボーグってズルくない?(大人げない賢者の感想)
 ガション! ザガン・アッシムの左腕が突然展開し、様々な兵装が現れた。
「……ん? いや待て、オヌシ何をするつもりだ??」
 嫌な予感に冷や汗をにじませながら、ムルヘルベルが問いかけた。
「え? 何って、よくわからんがお前さんが運動するのを教導すればいいんだろう? 任せてお」
「いやそうではない! そうではあるんだがワガハイが言いたいのはそういうことではない!!」
 むしろ「何をわけのわからないことを質問してるんだ?」みたいなきょとん顔をするザガンに、ムルヘルベルは思わずツッコミを入れた。
「つまり……どういうことだ?」
「だから! 運動させるのはいいとして、なぜそのために物騒な兵装を展開したのかと聞いておるのだ!」
「運動をさせるためだが?」
「おっとオヌシもしかして意思疎通が難しいタイプの猟兵であるな???」
 ムルヘルベルは会話のキャッチボールの限界を感じた。

「……ああ! なるほど、そういうことか!」
 ザガンはなにかに思い至ったらしく、ポンと手を叩く(※兵装を展開したまま)
「大丈夫大丈夫、心配しなくていいぞ。これ、特製バイオ弾だからちゃんと土に還るし」
「おお、そうかそうか。それならば環境のことも気にしなくてよいなってばかもの!!!!!」
 スパーン! ムルヘルベルは持っていた魔導書を地面に叩きつけた!
「違う! ワガハイの心配をしろワガハイの心配を! ワガハイが土に還るだろうが!!」
「ああ、なんだそんなことか。それも大丈夫だぞ、万が一当たったとしても猟兵ならダメージねぇから」
「な、なーんだ。どういう仕組みかわからぬが、そういうことであれば」
「代わりに痛いだけだから!」
「それが問題だと言っておるのだ!!!!」
「サボったら撃つからな」
「ひいっ!!」
 突然ギラリと傭兵モードで警告され、ムルヘルベルはビビった。
「じゃ、俺は先行して見てるから頑張れなー」
「え、あ、ちょ……えっマジで撃つんであるか!? マジで!?」
 ムルヘルベルが止める間もなく、ザガンはひょいひょいと木々を伝って先へ進んでしまった。
「……真面目にやろ」
 下手な脅しより大いに効果があったという。傭兵の世界の過酷さを思い知ったムルヘルベルだった(おそらくそういうことではない)

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジョン・ブラウン
【チーム悪巧み】

「ふふふ、この手のイベントで僕が弱音はいてぶっ倒れると思ったかい?」チッチッチ

「この強化プラグインを使えば<ERROR>何の問題も」

「…………シュッ<ERROR>」
「…………シュッッシュ<ERROR><ERROR><エラーが繰り返されたためロックがかかります>」

「裏切ったなウィスパー!?リクロウと一緒に僕を裏切ったんだ!」

<健康のために一日に1万歩以上の運動が推奨されます>

「嫌だ!やめろ!あの普段スカしてる自称鹿ならいくらでも走らせていいから!」

「あっちの散歩拒否して首のとこダルダルになってる四足歩行のボンレスハムでもいい!僕だけは解放し(ry」


曾場八野・熊五郎
【チーム悪巧み】
「や」

熊五郎は激怒した。必ずかの邪知暴虐な企みを除かねばならぬと決意した。
熊五郎にはカロリーはわからぬ。好き勝手食って散歩でおやつをもらって暮らしてきた、けれども動物病院と意に添わぬ運動には犬一倍敏感であった

「今日は気が進まないでごわ!」
リードを引っ張られてもテコでも動かない。無敵城塞でもかかっているのかコイツ

「あっちの我輩我輩被ってるヒトを代わりにしごくでごわす!」
ついにはムルヘルベルを生贄に

「見て、鱒之助もこんなにでっぷりしてる。秋だから皆太るのはしょうがない。だから帰って皆で我輩の秘蔵の餌を食べゴワアアアアア!?」
脂の乗った鮭を見せるが問答無用でリクロウに引きずられていく


ティアー・ロード
【チーム悪巧み】
「質量保存の法則?知らんな、|私《ヒーロー》の管轄外だ」

だが、ブートキャンプは賛成だ、是非とも参加したい
チームの課題を見直すいい機会だ
そう……最近、皆の|ネタ力《スタミナ》が不足してきている!
「裏切りなんていつものことだろう、ジョン」
「そんなのだから風邪などに負けるんだ
ウィスパーくんの言う通りしっかり頑張りたまえ!」

|ジョン《ナード》や|チェイス《インテリ》、|曾場八野くん《メタボドック》を|詩蒲くん《マッチョ》と共に|叱咤激励《ヤジをとば》しながらキャンプ地を目指そう
「ほらほらもっと早く歩けー、足を止めると辛いぞ!」<ぺしーん!>
私はヒーローマスクだから浮遊して景色を楽しみながら踏破するよ

「ズルと言われてもな……
私が食べたものはサイキックのエナジーとなる以上、浮遊も運動だよ?」
というか仮面に脂肪があるわけないだろう。常識的に考えて

しかしズルと言われては黙ってはいられないな!
文句があれば真の姿となり全力でノルマアップの時間だ!
「さぁ!ここから先はハードタイムだ!走るぞ!」


リチャード・チェイス
【チーム悪巧み】

天高く鹿肥ゆる秋―――

厳しい冬を乗り越えるため、体に栄養を蓄える。紅葉鍋美味しい。
すなわち、それは怠惰ではなく未来への投資である。
故に若きシャーマンズゴーストよ。この行いは未来を閉ざす愚かな行為だ。
何より私は頭脳派であるからして。そもそも肥えた覚えもない。
涙の支配者もフヨフヨヒラヒラととして、それはズルではないか?
地に足を付けて誠実に生きたまえ。具体的には鹿として。
さぁ、今すぐに筋肉で思考するするようなトレーニングを止めたまえ。
|贅き肉犬《メタボドック》はどうなってもいい、私だけは解放するのである。
聞いているであるか? 聞こう。聞いて。


詩蒲・リクロウ
【チーム悪巧み】
いえ、今回はチームマッスルです。
(何を隠そう運動大好きなリクロウです)

さあ皆さん一緒にワンツー!ワンツー!そこ動きが鈍いですよ!いいですね!その調子!ワンツー!ワンツー!

いやー、涼しくなってきて運動しやすくなりましたね!僕の筋肉も喜んでますよ、ね!上腕二頭筋(ウン,ウレシィ)(裏声)

よし、これでワンセット終了です皆さんお疲れ様!ムルヘルベルさんもお疲れ様です!

水分補給をしたらもうワンセット行きますよ!
追い込んでこそ脂肪は燃え筋肉は育ちますからね!

……あれ?皆さん休憩はもういいんですか?(マッスルスマイル)
ふふふ、やる気があって嬉しいですね!それじゃちょっとノルマを増やしちゃいま



●チーム・|悪巧み《マッスル》の休日
「や」
 曾場八野・熊五郎は四本の足で地面に座り、ぷいっとそっぽを向いた。
 まるで我輩は可愛くてちょっと天然な、動画をアップすればSNSで万バズ間違いなしの動物マスコットでございとでも言いたげなポーズだった。
「や」とか一文字で済ましてるあたりがまさにそう。だがやんぬるかな、熊五郎は別にバズらないし、バズるとしたらサイバーザナドゥあたりで無茶苦茶なことやってるときぐらいだ。そしてその腹はだるんだるんだった。
「可愛いフリして拒否ろうとしても無駄ですよ! 今日の僕らはチーム悪巧みではなくチームマッスルなんですから!
 さあ、みんなで一緒に気持ちよく運動して汗を流しましょう! 最高の運動日和じゃないですか、ねっ!」
 一方の詩蒲・リクロウは、お前ほんとにいつものリクロウ? って聞きたくなるぐらいハイテンションだった。もしシャーマンズゴーストじゃなかったら、キラリンとイヤミなくらい白い歯が輝いていそうだ。一言で言うと暑苦しい。

「若きシャーマンズゴーストよ、今回ばかりは私も異を唱えざるを得ないのである」
 リチャード・チェイスは、そんな運動バカに待ったをかけた。
「古来より言うではないか――天高く鹿、肥ゆる秋、と。
 厳しい冬を乗り越えるため、身体に栄養を蓄える。それはすなわち、怠惰ではなく未来への投資なのである」
「つまり紅葉鍋が美味しいということでごわすな。もちろんドッグフードもでごわす」
 熊五郎はうんうん頷いた。こいつら、怠惰なんだ!
「えっと……つまり、どういうことです? 運動はしますよね」
「それだ。その行いは、未来を閉ざす愚かな行為である。というよりそもそも、私は頭脳派であるからして、そもそも肥えた覚えもないのである」
「さっきの主張が秒で矛盾しててすごいね。苦しい言い逃れはやめようよリチャード」
 なんとリクロウ側に回って彼を援護したのは、この中で一番運動が嫌いそうなジョン・ブラウンだった!

「は?? おぬしはこっちでござろうが! 裏切ったでごわすか? うまいこと取り入って甘い汁吸おうってハラでござるか! 卑怯者!」
「ものすごい言われようだな!? ただ運動したくないだけのくせによくそこまで口回るよね! 僕はそういうのとは違うんだよ!」
「うんうん、どちらかというと私も詩蒲くんやジョン側だね。ブートキャンプは賛成だよ」
 これまた意外なことに、ティアー・ロードまでリクロウ側に回った。
「今回のレジャーは、チームの課題を見直すいい機会だと思わないかな?」
「おお、ティアーさんもわかってくれるんですね! 運動は最高ですよ! さあ運動しましょう!」
「まああそこまで暑苦しいのは私としては別の意味でご遠慮願いたいんだけど、この際だからはっきり言っておこう」
 ティアーはくわっと目を見開いた。
「――最近、みんなの|ネタ力《スタミナ》が不足してきている! 私は以前からそう思っていたんだ!!」
「いいこと言うねティアー。理屈はちょっとよくわかんないけどね」
「別に我輩のスタミナは不足しておらんでごわ。どちらかというと足りてないのは餌でごわすな」
「|贅き肉犬《メタボドッグ》の戯言はさておき、そもそも私は言いたい」
 ビシィ! リチャードはティアーとジョンを指さした!
「まず涙の支配者よ。それはズルではないか?」
「え? 何がだい???」
「フヨフヨヒラヒラと、ひとりだけ浮いているではないか。むしろ動いていない度合いでは一番だろう」
「いやあ、そう言われても別にズルとかじゃないし。そもそも質量保存の法則とかヒーローには関係ないね。ヒーローマスクに贅肉がつくわけないだろう?」
「急に早口になったねティアー」
「ジョンよ、そちらもだ。鹿に比べればそちらこそ運動音痴略して運痴であるはず。何を企んでいる?」
「そんなことはいいからみんなで運動しましょう、ね!」
「リクロウすごいテンションだな……まあそれはおいといて、リチャードともあろう者が僕を見誤っているね」
 チッチッチッ、とイラッとくるキザな表情で指を振るジョン。その手にはウィスパー。

「この手のイベントで、僕が弱音を吐いてぶっ倒れると思ったかい? 甘い、甘いね。サッカリンぐらい甘いよ」
「こないだおもいっきり風邪で|途中退場《リタイア》してたじゃないか(ティアー)」
「なんなら|最初《ハナ》から会場に来てすらいなかったでごわすな(熊五郎)」
「ええいやかましい! とにかく! この強化プラグインを使えば『ERROR』何の問題も」

 静寂。

「……何の(シュッ)問題も『ERROR』……」

「……………シュッ『ERROR』シュッ『ERROR』……シュッ『エラーが繰り返されたためロックがかかります」
 ぴゅう~。と、冬の寒い風が吹いた。

「……裏切ったなウィスパー!? リクロウと一緒に僕を裏切ったんだ!」
『健康のために一日1万歩以上の運動が推奨されます』
「ウィスパーさんはいいことを言いますね! さあ今日はたくさん運動しましょうジョンさん! いきますよ!」
「ワハハハいい気味でごわす! さて我輩はおやつを」
「あっさっきの荷物は僕のほうで一足先にキャンプ地に運んでおきましたよ! さあ運動しましょう!」
「嫌でごわ! 今日は気が進まないでごわ!!!」
「なんという醜さ。鹿にあるまじき醜態である」
「リード引っ張られてるのにてこでも動かないねあれは。あとジョン、キミはウィスパーくんの言う通りしっかり頑張りたまえ!」
「嫌だ! やめろ! あの普段スカしてる自称鹿ならいくらでも走らせていいから!!」
「は? 私は鹿であるが? 私のような頭脳派に筋肉で思考するようなトレーニングは不要である」
「まあまあそう言わず、脳も筋肉なんですよ! つまり運動しましょう!」
「おいやめろ近づくなである汗臭い。あの|贅き肉犬《メタボドッグ》と|ズルしてるヤツ《涙の支配者》はどうなってもいい、私だけは解放するのである」
「わかりました! みんなで運動しましょう!」
「だから私はズルはしてないよズルは! 私が食べたものはサイキックのエナジーとなる以上、浮遊も運動だよ?」
「やだー! 僕だけは開放してくれ! あっちの散歩拒否して首のとこダルダルになってる四足歩行のボンレスハムは連れて行っていいから!」
「は??? 我輩だけではないのでごわすが??? 鱒之助もこんなにでっぷりしてる。秋だから皆太るのはしょうがない。だから帰ってみんなで我輩の秘蔵の餌を食べるでごわす! どうしてもというなら、あっちの我輩我輩被ってるヒトを代わりにしごくでごわす!」
「さりげなくワガハイ巻き込もうとしておるな!? というかオヌシらチーム内で互いに仲間を売り合うとか最低であるな!!」
 他の猟兵にしごかれてへとへとのムルヘルベルがツッコミを入れた。

 ぎゃあぎゃあとやかましい怠惰な豚どもの喚きを聞いていたリクロウが顔を上げる。
「はい、運動ですよ運動! 涼しくなってきて運動しやすくなりましたからね! あっムルヘルベルさんもお疲れ様です! 一緒にレジスタンス運動しましょうか!」
「「「「聞いてない(でごわす)(のである×2)!?」」」」
 もはや筋肉の使徒と化したリクロウには何を言っても無駄だった!
「さあ皆さん一緒にワンツーワンツー! 出発しましょう!」
「ゴワアアアア!?」
「聞いているであるか? 聞こう。聞いて」
「リチャードがここまで圧倒されるのワガハイ初めて見るのであるが……(もういい加減慣れてきたので大人しく参加する賢者)」
「|ジョン《ナード》も|チェイス《インテリ》も|曾場八野くん《メタボドック》もやかましいといったらないね。ほらほら、もっと早く歩け! 足を止めると逆に辛いぞ!」
「オヌシは!? オヌシは運動しないのであるか!?」
「なんだいそんなに私も巻き込みたいのかい? 仕方ないなあ」
 なにげにズルと言われてイラッときていたティアー、ユーベルコードで真の姿に変わると、さらにペースアップを強いてきた!
「さあここから先はハードタイムだ! 走るぞ!」
「あれえワガハイ悪いことしてないのに巻き込まれておるが!?」
「嫌だ助けて! ウィスパー!! ウィースーパー!!」
『機能がロックされています』
「静聴せよ。静聴するのである。鹿が命を賭して声を届けようといや本当に聞いていないのであるか頭脳派に運動は無視をするな若きシャーマンズゴーストよ!!」
「みんなと一緒に運動できて楽しいね! 上腕二頭筋! 『ウン、ウレシイ』」
「あいつ自分の筋肉と腹話術で会話してるでごわ! ヤバいでごわ!」
「まずは1セットですよ! 終わって水分補給したらもう1セットですからね!」
「「「「ヤダーッ!!」」」」
 ナマケモノどもの悲鳴がこだまするが、リクロウの耳には入っていない。あるいは入っても向こう側に通り抜けていった。
「うんうん、これこそまさに我々チームの団結力だね」
 ティアーは感動していた。この中で一番可哀想なのは、明らかに脈絡もなく巻き込まれたグリモア猟兵だったが、特に誰も救済しようとはしていなかった。おのれチームマッスル!!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

茜崎・トヲル
【肉即滅】

うーん、痩せかー
あれって、そんな一回二回で、なんとかなるもんじゃねーよ?
でも、ムーさんががんばるなら、おれ、手伝うよ!

はい!スーパーで買ってきたささみとブロッコリー!
今日食べるのはこれだけね!あ、糖質と脂質かんぜんになしだとだめだから、ドレッシングはかけてね!
かけすぎはだめだよ!

そんで、最初にまずすとれっち!宝石のからだってのびるの?てーか、ムーさんってなんの宝石ー?
いきなり全力疾走はしぬからね!
ちゃんとやったー?よーし!じゃーあー……

あの犬の群れからにげろー!!(ガチ)
かみさまはもう!ほんとーにもう!これだから神ってやつは!!
あとマーさんが無理しね~よーに先に回復使います!!


スキアファール・イリャルギ
【肉即滅】
|鉱物生命体《クリスタリアン》の方でも贅肉が付いて太るんですね?
どういう原理なのでしょう、栄養によって鉱物が膨張を?
ムルヘルベルさんそこを詳しく

うぅん、私のこの躰は特殊なんですよね……
鍛えても筋肉にならない、いや怪奇筋肉は付くのか?
(本来の姿に肉や骨が無い。人間の姿は"擬態"である)
でも躰の成長はするようなので、気持ち次第では私もムキムキに……?

猟犬の群れ!?
多すぎやしませんか!?

……。
乗馬は運動効果があると言われています
さらに美しいフォームを保つ為には体幹や筋力も必要なのだとか
なので私はラウルを喚んで騎乗しますラウル助けてください!!
(どういう状況なのだ此れは、な顔のヘラジカさん)


朱酉・逢真
【肉即滅】
心情)ダイエットかァ。俺ハロウィンで何ンも食ってねェし、むしろハロウィンってンで彼岸で大忙しだったし、いま昼間だし、帰っていいかい? ダメ? まァいいや。とりまアレだろ、賢者先生を追い立てりゃアいいンだろ。皆楽しそォだし、俺もちょっくら遊ぼォか。
行動)ハイ猟犬の群れどーん。俺はそいつらの一匹に乗る。だって俺走れンもの。痩せ超えてアバラ浮いてっし。ほーらほら賢者先生犬の群れが来るぜェ。別に噛んだり襲ったりァしねェが、吠えるでな。無理させンぎりぎりの速度で追って、マジで動けンくなったら拾って背に乗せよう。他のおヒトらも。害すよなこたァしないのさ。悪役ぶりはするがねェ、ひ、ひひ…。


マナセ・ブランチフラワー
【肉即滅】

僕、ダイエットってしたことないんです
寿命削るUC使うと体重も削れてる気はしますよ

皆さんダイエットの必要もなく見えますが
トヲルがムルヘルベルを指導してますし、鍛える方向でしょうか

鴇のようなしっかりした体格に憧れる、雲珠の気持ちもわかります
ムキムキのスキアファール、ちょっと見てみたいかも…

なるほど、走ればいいんですね!
かみさまの犬から気合い入れて逃げます
皆さんが怪我をしたり疲れたりしたら任せてください、生まれながらの光で癒しましょう
ちなみに頑張れば16万色に光るようになりました

僕も疲労しますが、これが運動負荷ってやつですよね?
縁、僕達運動しに来てるんですよ。何を疑問に思うんですか(真顔)


深山・鴇
【肉即滅】

ムル君、それは翌日摂生すれば…ああ、連日飲みかい?
休肝日を作りな、後ゲームで夜更かしも程々にな
(当てずっぽうで物申す男)
俺は三食きっちり、起きたら日課の鍛錬さ(刀の柄を叩き)
あとは煙草屋と猟兵の二足わらじさ、特別な事は何もしてないよ

体格は資質もあるからね、茜崎君とスキアファール君、逢真君はちょっと規格外なんで別として
縁君は食べても太らない系、マナセ君は寿命削る系聖者…
鍛錬次第でなんとかなる場合もあるが
(むきむき桜は無理じゃないかなって顔で雲珠君を見る)

犬に追い掛けられるのは訓練とは言わないんだよ逢真君!
何かそういう悪役に見えてきたな…精神疲労も考慮してくれると助かるんだが!?


結・縁貴
【肉即滅】
俺は食事が嗜好品に近いから太った事無いな
だから鍛えなくて好いよね?
マナセ、そのネタ振り笑えないけど??
まァこの面子ほぼ人外だし、種族差はあるよね
人間の鴇帅哥が一番筋肉あるのが皮肉効いてる
小雲珠はもう成体じゃないの?育つの?

適切な運動、筋肉、食事は個々に寄る
賢者さんもそうだよ
脂と砂糖を使った料理は勿論、酒も必要な者もいるさ
欲しいんだろう?
俺は許そう
――だがしかし、他の猟兵が許すかな?
鍛えるのに無縁そうなトヲル帅哥が鍛錬に詳しいの笑えるなァ

くっそ突然の猟犬!!
賢者さんで遊ぶ間が無い!
かみさま、巻き込んでます俺達を!
マナセお前早々に馴染んでんじゃねーよ!
状況を疑問に思え…何16万色って!?


雨野・雲珠
【肉即滅】

可能性は無限大だと思うんです。
最近ちょっと現実が見えてきたというか、
本体(盆栽サイズ)をどこかに植え替えないと
いつまでたっても俺このまま(155㎝+枝)なんじゃないかとか
考えてはいるんですけど

でも可能性は無限大(略)

目標は身の丈八尺超!
深山さん(※手近な重量級ムキムキ成人男性)すら
軽々抱き上げ難なく救助できるような、
頼り甲斐のある、むきむきの桜に!俺はなる…!

というわけでムルへルベルさまに並走します。
益荒雄目指してがんばりましょう、ムルへルベルさま!

い……いぬ!
いぬは駄目です、なんでか追いかけてくるから!
そして根っこを掘るから!
キャーーーー…!(ガチ逃げ)



●|肉・即・滅《健康は無論死ぬまで》
「僕、ダイエットってしたことないんですよね。寿命を代償にする|ユーベルコード《UC》使うと体重も削れてる気はしますが」
「あぁ!? 喧嘩であるか!!?」
 開口一番爆弾発言をかましたマナセ・ブランチフラワーに、疲労やその他諸々で情緒がグズグズになったムルヘルベルが不良漫画みたいなツラでキレた。数々の猟兵によるしごきが彼のキャラを崩壊させていた。まあダンピールは美しいことが義務付けられた種族(※個人の感想です)なので、そういうこともあるのかもしれない。半分吸血鬼なわけだし。
「というか、そもそも|鉱物生命体《クリスタリアン》の方でも贅肉がついて太るんですね。どういう原理なのでしょう、栄養によって鉱物が膨張を……?」
 ちょっとそのへん詳しく教えてもらえませんか、と妙なところに食いつくスキアファール・イリャルギ。学術的興味が尽きないようだ。
 だがここではその原理は省かせてもらいたい。なぜかというとクリスタリアンも生態は様々(イラストの自由度的な意味で)だし、ムルヘルベルのケースがクリスタリアン全体に適用されるとは限らないのだ。多様性!
「つかよゥ、俺ハロウィンで何ンも食ってねェし。むしろハロウィンってンで|彼岸《こっち》で大忙しだったし、そもそもいま昼間だし、帰っていいかい?」
「ダメだぞ逢真君。まあたしかにキミや茜崎君やスキアファール君は規格外だから、色々別にしたいのはたしかだが……」
 仕方ねえなあってツラで大人しく従う朱酉・逢真と、それを諭す深山・鴇。なお、鴇の身体は184cmの優れた体格に見合う引き締まったフォルムをしていた。イケメンかくあるべし。考えてみるとまともな人間は彼だけだ(種族的な意味でも常識的な感性という意味でも)

 しかしここで、ある意味一番このレジャーに縁のなさそうな男が、苦言を呈した。
「うーん……色々考えたんだけどさぁ。痩せって……そんな一回二回で、なんとかなるもんじゃねーよ?」
 茜崎・トヲルである。無限再生キマイラからの苦言! これには賢者もびっくりした。だって、一番無邪気に「やろーぜ!」って言いそうだったし、なんだったらいつかの飲みとかその他様々なシナリオのように、無茶苦茶なペースでこっちを引っ掻き回してくることを覚悟していたのだから。「こういうときだけまともなこと言うって、じゃああのトンチキぶりはなんなんだよ」とツッコみたくて仕方ないムルヘルベルだったが、色々ややこしくなりそうなので飲み込む理性があった。あと効かなさそうなので。
「鍛えるのに無縁そうなトヲル帅哥が一番まともなこと言うの、なんか妙に笑えるなァ。まァ俺も俺で、食事が嗜好品に近いから太ったことないけど」
 けろっとした顔で火に油を注ぐ結・縁貴。マナセと違って、こちらは明らかに火に油を注ぐとどうなるかわかってて言ってそうなのがタチが悪い。そして、実際に瑞獣なので色々と尋常な生物のルールが通用しなさそうなのがなおタチが悪い。でもトヲル云々に関しては正しかった。
「……可能性は無限大だと思うんです」
 何故か雨野・雲珠が重々しく口を開いた。
「もうこやつらひとりひとりに言いたいことが山ほどあって仕方ないのであるが、どうしたのだ雲珠よ」
「いえ、その……太るとか太らないとか、みなさまそれぞれなわけではないですか。でも俺の場合、むしろ太りたいというか……より正確に言うと、成長したいというか……」
 エアろくろを回す雲珠。
「ムルヘルベルさんの前でそれを言います? ある意味一番可能性がないことを示している実例のような……というか、背丈は子供のままで贅肉はつくって、やっぱりおかしくないですか色々」
「其処は深くツッコまねェほうがいい気がすッけどなァ」
 世界の|禁忌《タブー》に深入りしようとするスキアファールを、逢真が優しく窘めた。境界を護るのがかみさまの仕事なので(もっともらしい理由付け)

「まァこの面子、ほぼ人外だし種族差はあるよね。おまけに猟兵なんだから、さらに個性っつーか、物差しが機能しないっつーかさ」
「しかしだな、そうなるとある意味、俺が一番理にかなったアドバイスが出来る立場になるが……ムル君、言えることなんてせいぜい、休肝日を作って夜更かしはほどほどにしろ、ぐらいしかないぞ?」
 縁貴の指摘に、どうせ酒飲んでゲームやってんだろ、という当てずっぽうをのたまう鴇。だがそれはのたまいではなかった。図星を突かれて愕然としているムルヘルベルの顔がそれを証明している。全部当たってた。
「僕からすると、皆さんダイエットの必要なんてないように見えますけどね。丸くなった、というのはご本人の感覚なんでしょうが、そこまで太っているようにも思えませんし」
 マナセは至極まっとうなことを言った。少なくとも彼も含めた7人は見目麗しい美男子揃いであり、酒かっくらって菓子食って新作ゲーム(※塗るアレ)をバカみたいにやってた100歳超児はさておき、減量にあえて付き合う必要がある猟兵は誰もいなかったのだから。
「で、でもですよ! 俺は育ちたいんです……! もういっそ、本体(※盆栽サイズ)をどこかに植え替えないと、いつまでたっても俺このままなんじゃないかとか、考えてはいるんですけど、でも可能性は無限大じゃないですか!」
「小雲珠はもう成体じゃないの? 育つの??」
「か、可能性は無限……(震え声)」
 必死に未来に目を向けようとする雲珠の希望は、縁貴の残酷な一言(※自覚している)でグサグサ刺されて萎れていく。もしかして縁貴はオブリビオンだった!?
「ぐっ、お、オヌシら言いたい放題であるな! じゃあ鴇よ、オヌシはいったいどうやってその体型を維持しておるのだ!?」
「三食きっちり食べて、起きたら日課の鍛錬さ。あとは煙草屋と猟兵の二足わらじ、特別なことは何もしてないよ。まあ体型は資質もあるが」
「ここぞとばかりに正論でカウンターしてきたぁー!!」
 ムルヘルベルは泣きそうになった。でもだいたいこいつが悪い。自業自得である。

「……よーし、わかった!」
 しばし黙っていたトヲルが、パン! と手を叩いた。一同の視線が彼に集まる。
「じゃあ今日は、みんなでトレーニングしよーぜ! 痩せるにしても、筋肉があるかないかじゃおー違いだかんね!」
「なンだろなァこの強ッ烈な違和感。俺が言うこっちゃねェが、白いのがこゆのを率先するってのが面白くてしょうがねェ」
「トーさんのアイデアにぜひとも賛同したいんですが……私のこの躰はこの躰で色々特殊なんですよね……」
 怪奇って筋肉はつくのか? そもそも|本来の姿《真の姿》には肉も骨もないただの擬態なのに? スキアファールは考え続ける。
「ムキムキのスキアファール、ちょっと見てみたいですね。試しに躰のサイズをいじって、どんなものか見せていただいても?」
「マナセ、そのネタ振り笑えないけど?? つーか身体操作して実現しちゃったらこの催しの意味ねーじゃん?? まァ俺鍛えるつもりないけど」
 縁貴はあくまで傍観を決め込むつもりのようだ。だいたいの物事において彼はそうである(それが一番ノーリスクかつ|面白い《ハイリターン》だから)
「鍛える……! 鍛えれば、俺の目標である身の丈八尺超も達成できますかね!? 深山さんすら軽々抱き上げ、なんなく救助できるような、頼りがいのあるむきむきの桜に……!」
 むきむき桜は無理じゃないかなあ、って顔をした鴇が水を差そうとしたが、急にここぞとばかりに面白くなってきたって笑顔の逢真がそれを制した。いいおもちゃを見つけた子供のような、爽やかな笑顔だった。
「よしわかった。とりまアレだな、賢者先生を追いたてりゃアいいワケだな。任せといておくれよ」
「オヌシ今までの話の流れ聞いてた!?!!?」
「明らかにかみさまのスイッチが入ってますねこれ!(スキアファール)」
「ダメだってかみさまー! まずはストレッチしないとー!」
「止める理由は準備運動の不足でしかないんですね……」
「そりゃそーだよ! あ、ちなみに今日食べるのはささみとブロッコリーだけね。おれこんなこともあろうかとスーパーで買ってきたんだ!」
 ドレッシングもあるよ! と笑顔でトヲルが差し出した食料を見て、賢者は今日イチ絶望的な顔になった。

 これから地獄が始まるとわかっているのに悠長にストレッチをしなければならないというのは、なまじいきなり地獄の釜の蓋が開くよりプレッシャーが大きい。
 まだかなまだかな、って感じでどこかの獣医の漫画みたいに出待ちしてる猟犬の皆さんを横に、トヲル指示の下ストレッチをする一同。
「え、待って?? 突然来ると思ったら出待ちしてるのわかってる状態でやんねェとなの?? 俺巻き込まれたくないから離れてていい??」
「いきなり全力疾走はしんじゃうからだーめ! ほら一緒にストレッチ!」
「ってか俺も運動する組に入ってんのな!? トヲル帅哥の話を聞かねェいつものヤツこういう時に発揮するのなんなの!!!」
「せっかくだしみんなで益荒雄になりましょう! ねっ、ムルヘルベルさま!」
「ワガハイちょっと糖分欲しくなってきたのであるが頭脳労働系だから……」
「そういうところだぞムル君。喚いたところで逢真君を楽しませるためだから諦めておきたまえ」
 |信徒《慢性的被害者》なりの精神的負担を減らすためのアドバイスをしたつもりらしい鴇だが、ムルヘルベルの絶望的な表情は変わらなかった。結局こうなるんだね!
「大丈夫です、皆さんが怪我をしたり疲れたりしたら任せてください。|生まれながらの光《ユーベルコード》で癒やしますから」
「それはマナセさんが余計に疲労するだけなのでは……?」
「大丈夫です、16万色に光れますからね」
「発光色数が増えることになんの安心感を生む効果が???」
 グッとサムズ・アップするマナセの謎の説得力に首を傾げるスキアファール。今日の彼は知りたがりだ、月夜のない晩には気をつけた方がいい(謎の脅し)
「よォーし、そろそろ始めっぞォ。全員準備出来たかィ?」
「準備も何も俺ら巻き込まれてる組ですかみさま! 待って人数分だけ猟犬増やさないで! 話聞いて!?」
「い、いぬ……! いぬが、いぬが増えてる! なんでか追いかけてくるいぬが、根っこを掘るいぬが……! で、でもこれも無限の可能性のため、そして深山さんを抱えあげて救助するため……!!」
「混乱のあまり目的と手段が入れ替わって変なことになってないかい?? うんまあ俺も逃げたいのはやまやまなんだけどね、かみさまからは逃げられないから諦めるしかないんだ」
「粛々と受け入れておるでないわ鴇よ!? オヌシがそうだから逢真めもああやってどんどん増長しておるのだぞ!! 責任を果たせ責任を!」
「ムルヘルベルさん、それは保護者に対してする説教なのでは? それはそれとして、あの猟犬、多すぎませんか??」
「ほらそこー、話してないで! スーさんも! ちゃんとストレッチやったー!?」
「くそっまともなこと言ってると思ってたトヲル帅哥が気がついたらあっち側にいやがる! こういう流れだったのかよ!!」
 縁貴は今頃気付いたがもう遅かった。
「あ、いや待てよ。賢者さん、俺は思うんだ。適切な運動、筋肉、食事ってのは個々によるってさ」
「突然どうした縁貴。まさかワガハイをうまいこと肉の壁に使おうという魂胆ではなかろうな」
「脂と砂糖を使った料理は勿論、酒も必要な者もいるさ。欲しいんだろう? 俺は許すよ」
「やっぱりオヌシ、ワガハイを体よく使うつもりであるよな???」
 だが賢者は許さなかった。舌打ちする縁貴。逢真が片手を上げる。途端に一同の視線がその手に集まった。
「よーし、じゃーあー……」
「ハイ、よーいスタート。行っておやりなお前たち」
「「「|GROWLL《おれはやるぜおれはやるぜ》!!!!」」」
 怒れる猟犬たちが我先にとゲート(?)を飛び出す! トヲルが叫んだ!
「あの犬の群れからにげろー!!!」
 ガチだった。別にトヲルも逢真側ではなかった。最初からそれを悟っているがゆえのある種のゼンめいた境地だったのだ。無知の知ともいうかもしれない。
「トーさんも諦めてただけなんですね!?」
「かみさまはもー! ほんとーにもう! これだから神ってやつは!!!」
「普段よりガチめな叫びだな! まあ俺も同意見だがねよし逃げるぞ!!」
 ダッ! 体力ある組は全力疾走! 後ろから追いかける猟犬の皆さん!
「キャーーーーーー!! いぬ! いぬはだめですかみさまー!!」
「大丈ォ夫だってェ、噛みャしねェし襲ったりァしねェからさ、まあ吠えッけど」
「それが怖いんですよきゃーーーーーー!!」
「体力についてはご心配なく。僕が光って癒やしますからね。16万色で」
「お前もお前で馴染むのはえーんだよマナセ!! ってか16万色って何!? それ関係あんの!? そもそも状況に疑問を覚えて!?」
「ワガハイもうしぬ」
「賢者さん体力切れ早っ!!!」
「縁、何言ってるんですか僕らは運動しに来てるんですよ?」
「それは同意だが、そのためにはまずあの精神的疲労を強いてくる悪役みたいなかみさまなんとかしてほしいところだな!!!」
 鴇は叫んだ。慣れているからといって、ノーダメージかというとそんなことはない。逢真はニコニコしていた(みんなが楽しそうだし、自分が一番楽しいから)
「ハッ! 見てください、かみさまは猟犬に乗っています! そうか……乗馬にも運動効果があると言われていますし美しいフォームを保つためには体幹や筋力も必要と物の本にありましたそういうわけで私はラウルに乗って一足先に失礼します!」
「ここぞとばかりに早口で屁理屈を並べるでないわスキアファール! オヌシも|地獄《これ》に付き合えーっ!!」
「いーーーーーぬーーーーー!!!」
 召喚されたラウルは「えっなにこの状況???」と途方に暮れた。後ろからなんかやべーのが(※ニコニコ笑顔の神含む)来てるし、猟兵どもは泡吹いてっし16万色に光るのがいる。風邪を引いた時に見る悪夢?
「おお、疲れてきました……これが運動負荷ってやつですよね?」
「この期に及んでツッコミ所増やすなよマナセェ!?」
「いちいちツッコミを入れてしまうあたりが人の良さというか性分を表しているな、いいことだ(うんうん)」
「そもそもツッコませないでほしいんだけど鴇帅哥!? 役割不足しすぎじゃない!?」
「いぬーーーーーーーーきゃーーーーーーーーーーー!!」
「ラウル! 乗せてくださいラウ……ラウル!? なぜ我々から全速力で離れていくんです!? ラウル!!?」
「あとそれ運動負荷じゃねーからねマーさん! 回復しすぎに気をつけてね!!」
「ありがとうございますトヲル。ではさらに光りますね」
「ワガハイもうしぬ」
「いぬーーーーーーーーー!!」
 けらけらけら。阿鼻叫喚を後ろからせっつきながら逢真はニコニコしていた。みんな楽しそうで、よかったね!(早朝アニメの不条理回のEDみたいなゴリ押しの〆かた)

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『キャンプめしを食べよう!』

POW   :    出来立てを沢山美味しく食べる

SPD   :    現地で何らかの食材を調達してくる

WIZ   :    キャンプならではの調理法に挑戦する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「ワガハイが思ってたキャンプとちがう」
 しこたま運動させられ口からエクトプラズムを吐きながらぐったりするムルヘルベル。
「なぜワガハイと一緒に痩せようという猟兵がこんなにもいないのだ……何故……!!
 これではワガハイの「みんながヘトヘトになってる隙にこっそり持ち込んだお菓子とお酒で愉悦を味わい最高の休日」プランが……ハッ!」
 ムルヘルベルは我に返った。
「いや、なんでもない。そろそろ食事の時間であるな。ワガハイ思ったのであるがもう十分動いたしやっぱりバーベキューとかせぬ? しない? そっかぁ……」
 吐いた唾は飲めないもの。ムルヘルベルの言い出したことは完全に跳ね返っていた。
 あなたは「こいつまだ運動が足りねえな。レジスタンス運動でもさせるか」と思って1章とは違う|運動《かわいがり》をさせてもいいし、飯を他人に用意させるつもり満々の頭をひっぱたいて低カロリー高タンパクな食事のイロハを叩き込んでもいい。こっそり食料を調達して豪勢なキャンプ飯を目論むのもアリだが、ここに生息しているのは黒帯を締めたアスリートアース殺人カラテクマやアスリートアース殺人カポエラカンガルーなど危険極まりない生物ばかりなので、相応の代償が必要になる。日常フラグだろ? この際もういいだろそういうのは!
ミーグ・スピトゥラス
●SPD
キャンプ場、ヤット着イタ
オレノ役目、ヒトツ終ワッタ
ダケド、マダ役目アル
美味イモノ、オレ獲ッテ来ル
キャンプノ醍醐味ハ|地産地消《現地調達》
ソコデシカ獲レナイモノ、美味イ

ムルヘルベル、オマエモ来ルカ?
手伝ッタラ一番美味イ所、オマエニヤル
ソレ、酒ノ肴ニモナルゾ
(のっしのっしと森に分け入り、嗅覚やらセンサーを使って獲物の痕跡を辿り、お目当ての獲物を見つけ出す)

獲物ハアレダ、アスリートアース殺人カラテクマ
アイツ、強イ
オレデモ倒セルカ分カラナイ
倒シタラ、ニヘイゴハン風丸焼キニスル
クマ肉デ一番美味イ|心臓《ハツ》、オマエニヤル
ソレト、逃ゲテモ無駄ダ
アスリートアース殺人カラテクマ、逃ゲル奴、追イカケル



●地産地消なんて言葉を知ってるとは……やはり高IQ……!
「……」
 荷物運びを終えたミーグ・スピトゥラスは、森のほうをじっと見つめていた。
「やれやれ、ワガハイまたしごかれそうで……ん? どうしたミーグよ」
「オレノ役目、ヒトツ終ワッタ。ダケド、マダ役目アル」
 ミーグの言葉に、ムルヘルベルは首を傾げる。
「はて? それはいったい?」
「美味イモノ、オレ獲ッテクル。キャンプノ醍醐味ハ、|地産地消《現地調達》ダ」
「!!」
 ムルヘルベルは目を輝かせた!
「ほ、本当か!」
「オレ、嘘言ワナイ」
「食べていいのか!? 美味いもの!!」
「ソコデシカ獲レナイモノ、美味イ。ムルヘルベルモ、食ウカ? ナラ、オマエモ来ルカ」
「よ、よいのか!? 実はこれで山菜とかきのこばっかりでしたーみたいなオチではないよな!?」
「山菜モ茸モ美味イ」
「いや美味いが! そうではなく!!」
「??? ヨクワカラナイ。ケド、手伝ッタラ、一番美味イトコロ、オマエニヤル」
「!!!!」
 ムルヘルベルは感涙した。
「ミーグ! お、オヌシこそワガハイの救世主である……!」
「オレ、聖者ジャナイ。オレ、バイオモンスター」
「いいや神だ! むしろ神でしかない!」
「オレ、バイオモンスター」
 ツッコミはいなかった。

 十分後、森の奥深く。
「アレダ。見ツケタゾ」
「えっ。あ、あれは……アスリートアース殺人カラテクマではないか!?」
 アスリートアース殺人カラテクマ! それは!
 アスリートアースにのみ生息する、DNAレベルの黒帯化により恐るべき殺人カラテを会得した、殺人的な強さのクマである!
「ヴォオオオオ!!」
 アスリートアース殺人カラテクマは、血みどろの黒帯を誇示するかのように両前脚を振り上げ雄叫びをあげる。まさに森の覇者……!
「アイツ、強イ」
「オヌシ知っておるの!? と、というかオヌシで倒せないならワガハイは」
「ケド、倒シタラ美味イ。オマエニモ一番美味イトコヤル」
「……あの、それってどこなんであるかちなみに」
「心臓ダ」
「どこのマタギだオヌシは!!? もういいワガハイ帰る!!」
 こんなとこにいられるか! とばかりに踵を返すムルヘルベル。

 ぱきり(小枝を踏み折る音)

「あっ」
「ヴォオオオオ!!」
「ギャアアア!! ミーグ助けて!! ワガハイ逃げる!!!」
「アスリートアース殺人カラテクマ、逃ゲル奴、追イカケル。逃ゲテモ無駄ダ」
「ヴォオオオオ!!」
「それ早く言って!! っていうかその台詞悪役が言うやつ!!」
「ヴォオオオオ!!」
「心臓ノ丸焼キ、楽シミニシロ。行クゾ」
「ヴォオオオオ!!」
「うおおおおどっちも応援したくない!! ワガハイどうなるの!!?」
 無事助かりましたが、それはそれとして野性味と血の味しかしないハツには大変悶絶したそうです。

大成功 🔵​🔵​🔵​

チル・スケイル
【つよいメスケモ】
なかなかの登山でした(馬車で何日もかかる距離を徒歩旅してたので足腰強い竜人)

…聞き捨てならないですね
ベロニカさん。あなたの能力で、嗜好品を探す事はできますか?
はい、ありがとうございます。あとはお任せください

嗜好品をまとめて、バーベル型の氷で包みます
そのうえで…何よりも凍りつけ!
永遠物質に匹敵する氷でございます。帰りの際の重りにするといいでしょう
UCが解けても、普通に解凍する必要がある点にご注意ください
ムルヘルベルさんはウィザードのようなので、魔力操作で解氷するのもいいでしょう。魔力も体のうち。鍛えて損はないですよ

(ドリンクを見て絶句)
…凍らせて胃に直送したほうがよさそうですね


ベロニカ・サインボード
【つよいメスケモ】
…!
アンタ今確かに『お菓子とお酒』って言ったわねェェ〜
ワーニン・フォレストでムルヘルベルの肩を掴む

私も同じ事考えてたし、そうムズカシイ事じゃあないわ
ワーニン・フォレスト!案内板で菓子と酒を探し出せ!

ありがとう、チル。考えがあるなら任せるわ
私は飲み物を作るわ。適当に生でいける野菜をすりつぶす!

味の破壊力-A
スピード-E(超ドロドロ)
栄養持続力-A
飲んだ人の成長性-ムルヘルベル次第
氷のオブラートか…自分の料理下手は知ってるし、苦しめるのは目的じゃないから、それでいいわ

この山が楽だったとは言わない…だがこれで屈服するようでは、加速する戦線を生き残れないし、アリスと共に歩めないわ



●そのぐらいの贅沢は許されてもよくない!?
「……アンタ」
 ガシィッ! と、ムルヘルベルの肩を掴むベロニカ・サインボード……の『ワーニン・フォレスト』。
 その顔はやはり彫りが深まっており、得も言われぬ『凄み』を放っていた。
「ハッ!」
「いま、たしかにッ! 『お菓子とお酒』って言ったわよねェーッ」
「い、いや違う! 今のは言葉の綾というかその」

「聞き捨てならないですね」
「ひいっ!?」
 ずいっ! と、ムルヘルベルの背後から顔を出すチル・スケイル。その顔はあまり彫りが深くなってはおらず、必然的にベロニカの顔も普通に戻って、ゴゴゴゴ……って感じの凄みも消えた。
「ベロニカさん。あなたの能力で、嗜好品を探すことは出来ますか?」
「当たり前じゃあないの。その様子だと、考えがあるのね? チル」
 頭上で会話を交わすふたりの|女獣人《メスケモ》の顔を、ムルヘルベルは不安と焦燥が綯い交ぜになった表情で交互に見る。
「ま、待て! 待つのだふたりとも! ワガハイのさっきのは、ほら、ジョークであってだな? そんなものを探しても見つかるわけがないのであるから、無駄なことはせずに食事の準備を」
「冗談キツイわ。『無駄』かどうかは、私が決める」
 ド ド ド ド ド ! ベロニカの身体から立ち上るオーラ!
「『ワーニン・フォレスト』ッ!」
 ドグシャア! W・Fが地面を殴りつけた! すると、爆ぜるように吹き飛んだ土塊に、案内板が浮かび上がる……!
「菓子と! 酒を! 探し出せッ!」
「よせェーッ!」
 ムルヘルベルは叫ぶ、だがそれこそが無駄! 無駄だったのだ!
 案内板にはデパ地下スイーツの図像とビールが描かれており、それはムルヘルベルが甲斐甲斐しく自ら運んできた荷物の山を指し示していた!
「うおおおおッ!」
「あるじゃあないの……随分厳重に隠された『嗜好品』が……」
 W・Fが無慈悲に荷物の中からそれらを探り出すと、ムルヘルベルは膝から崩れ落ちた。
「わ、ワガハイの、お楽しみが……」
「で? チル、これを一体どうするっての?」
「あとはお任せください。具体的に言うと、こうします」
 チルは……W・Fが放り投げた嗜好品の山を、バーベル型の氷で包み込んだ!
「アーッ!? 何をするーッ!?」
「まだ終わりではありません。何よりも、凍り付け!」
 さらに上乗せ! バーベル型の氷は永久結晶じみた絶対零度の氷にパキパキと変わり、ズシン!! とむなしく地面に落下した。
「ああああ、ワガハイの新作デパ地下スイーツ……」
「帰りの際の重りにするといいでしょう。ちなみに|UC《ユーベルコード》が解けても、普通に解凍する必要がありますからご注意ください」
「こんなことしといて何細かいこと言っておるんだオヌシはぁ!?」
 ちくしょう! この女も大概頭が筋肉で出来ていた! ムルヘルベルはそう叫びむせび泣いた。

 だが、彼にとっての地獄はこれでは終わりではなかったのだ。
「自業自得ってヤツよ……ここまではね。けどここからは、アンタのための『食事』よ」
「え?」
「キャベツ! そして! ピーマン! あとブロッコリー!」
 ベロニカは生でいける野菜を適当に取り上げた! そして、それらを!
「オラァ!」
 ゴリゴリゴリゴリ! すり潰していく! 足りないとみるやさらにトマトも追加! 出来上がるのは極彩色の危険すぎる特製ドリンク……!
「お、オヌシまさか」
「言ったはずよ、アンタのためってね」
 ムルヘルベルは青ざめた。
「待てェーッ! それ超どろどろしておるし、明らかにヤバげな色ではないかァーッ!」
「……ムルヘルベルさん、ご安心ください」
 さすがに色々絶句していたチルが、ぽんと肩を叩いた。
「凍らせて胃に直送しますから、味の心配はしなくても大丈夫です」
「何も大丈夫ではないのが!!!?!?!?!」
「筋肉と魔力がそうであるように、胃もまた鍛えていて損はありません。栄養はありますよ、栄養は」
「ワガハイは味の話をモガガガーッ!!」
 悶絶するムルヘルベルから、ベロニカは視線を外した。
(「この山がラクだったとは言わない……だがこれで屈服するようでは、加速する戦線を生き残れやしない……私もみんなも、気高く強くあらねばならないのよ」)
 バァアアアーz_ッと風が吹く。雲の形がなんかいつもと違う感じになっていた。

「モガガガーッ!!」
「……ベロニカさん、さすがにもう少し品目は少なめでもよかったのでは?」
「冗談キツイわ。……私の料理下手、知ってるでしょう?」
 そういう問題じゃねーだろ、的なことを思ったチルだが、それ以上は言わないでおいてあげる優しさが彼女にもあった。
「モガガガーッ!!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神代・凶津
キャンプと言ったらバーベキューだよな、相棒ッ!
「…まあバランス良く食べた方が健康的に痩せるとは聞きますね。
用意されてる食材は野菜とかばっかりでお肉がないですし。」
じゃあ現地調達しかねえな、相棒ッ!

式神【ヤタ】にキャンプ場付近を偵察させ野生動物を狩るぜ。
「…鹿肉とかダイエットにいいとか聞いた事が。」
んじゃ鹿を中心に破魔弓で狩るぜ。忍び足でスナイパーよ。
熊やらカンガルーが現れたら動きを見切り【結界射ち】で封じてスナイプよ。…カンガルーの肉って旨いのか?

相棒の料理技能が猛威を奮うぜッ!
おう、ムルヘルベル。丁度いい所に来たな。食ってくか?肉と野菜はバランス良く食った方が痩せるぜ、多分。


【アドリブ歓迎】



●どうしてワガハイはこんなキャンプを企てたのであろうか(賢者談)
 晴れ渡る空。
 自然たっぷりのロケーション。
 そして……野菜! 野菜! ささみ! あと野菜!!
「……用意されている食材、ほとんど野菜ばっかりですね」
「肉はあるけど、ささみじゃあなあ……」
 神代・凶津と桜は材料を眺め、顔を見合わせた。
「……どうするんです? 凶津」
「そんなもん決まってんだろ! キャンプと言ったらバーベキューだぜ、なあ相棒ッ!」
「……まあ、バランスよく食べたほうが健康的に痩せるとは聞きますね」
 しかしこの材料でどうすんだ、と言いたげな桜に、凶津は言った。
「なら方法はひとつだ、つまり……現地調達ってこった!」
「やっぱり、そうなりますか……」
 新たなトラブルを予感し、桜はため息をついた。

 時間短縮のため、肝心の獲物探しは式神に任せることに。
 するとほどなくして、式神のヤタがやべえもんを見たって形相で戻ってきた。
「おいおい、ヤタがこんなにビビるなんて珍しくねえか?」
「……何を見つけたのやら」
 ふたりは警戒しつつ、破魔弓を手に草むらの奥へと分け入った。するとそこには……!
「AAAAARGH!!」
 アメコミのヴィランみたいな雄叫びを上げる鹿がいた。鹿!?
「……あれは鹿なんですか? 本当に」
「少なくとも見た目はそうだなッ! まあ腰にチャンピオンベルト巻いて二足歩行で立ってっけど」
「ここはアスリートアースですよね??」
「言うなれば、アスリートアース殺人プロレス鹿ってとこか!」
「アスリートアースのまともな住民と、プロレスラーの方々に対して失礼極まりないですね」
 桜はツッコミを諦めた。とりあえず仕留めればいいのだ。
「……気付かれる前に仕留めます」
 破魔弓を構え、矢を放つ……が、アスリートアース殺人プロレス鹿はギラリと目を光らせると、空中殺法を得意とする某レスラーじみた華麗なムーンサルトで回避!
「なッ!? 相棒の動きが読まれただとッ!? 来るぜ!」
「……安全なキャンプのはずだったんですが……」
 桜と凶津を、アスリートアース殺人プロレス鹿の巨体な影が覆う。万事休すか!?

 だが、さすがにこの程度は読んでいないふたりではなかった。
「捕らえました」
「!?」
 パキン! と清浄な音とともに、空中で大の字になったアスリートアース殺人プロレス鹿を包み込む透明な結界。
 地面に突き刺さった破魔弓に結び付けられた、結界霊符による呪縛結界だ!
「さすがだぜ、相棒ッ!」
「……鹿肉とかダイエットにいいと聞きましたね」
 じゃきん。桜はどこからともなく解体道具を取り出した。
「AAAARGH!! AAA……RRRRRRR!!!」
 憐れ、アスリートアース殺人プロレス鹿は自然淘汰の法則に従い、立派な紅葉鍋と化したのである……

「いやあ、上々上々! ムルヘルベルも食べたそうにしてたし、食わしてやらないとな!」
「そうですね。ただ……」
 桜が指さしたほうでは、氷の塊を口に押し込まれて悶絶するムルヘルベルがいた。
「モガガガーッ!」
「落ち着いてからですね」
「ムルヘルベル……」
 ほろり。鬼面の目にも涙。賢者の受難はまだまだ続くのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャルロッテ・ヴェイロン
なるほど、つまりそういう魂胆でしたね(と、しっかり【聞き耳】立てていた)。
そんなあなたにこれを差し上げましょう(と、UCで出した謎の装置をグリモア猟兵にセット)。
――ああ、大丈夫です。この状態で走ってもらうだけですから――ただし目標速度を下回ると爆発します(しかも時間経過ごとに数値は上昇(ぉぃ))。それでは、カラダニキヲツケテネ!

(で、本人は)
フードデリバリー?最高級スシ一人前、ASAPでお願いします。請求先は(【ハッキング】で探り当てたグリモア猟兵のやつ)で…ハイ、ハイヨロコンデー(とか高そうなやつをいろいろ注文してる(ぉぃ))。

※アドリブ。連携歓迎



●イェーガー・サンダーボルト
「ハァーッ! ハァーッ! 死ぬかと思ったのである……」
 ゲロマズドリンクの冷凍直送 for 胃袋という未曾有のトーチャリングを耐え抜いたムルヘルベル。その顔はすでに疲弊していた。
「お疲れ様ですムルへルベルさん。これはわたしからの贈り物ですよ」
「お、おお。なんであるかシャルロッテ、珍しく殊勝、な……?」
 がちゃり。シャルロッテ・ヴェイロンのニコニコ笑顔と、自らの胸部に着けられた悪趣味な謎の装置を交互に見比べるムルヘルベル。
「……シャルロッテよ、これはなんだ?? 妙な数字が書いてあるのだが??」
「さきほどあなたの魂胆を聞いて思いついたトーチャ……ではなく、トレーニング方法ですよ」
「いまオヌシ何言いかけた!?」
「大丈夫です。この状態で走ってもらうだけですから。あ、、ただし目標速度を下回ると爆発しますし、時間経過ごとに数値は上昇していきますので」
「ついでみたいに言ったことが重大すぎるのであるが!!!?」
「それではまずは20km/hからです。カラダニキヲツケテネ!」
「オヌシマジで覚えておれよほんとマジで!!!!!」
 ピコーン! 不穏なLED発光とともに装置から「制限速度を下回ると爆発ドスエ」という電子マイコ音声が流れ、ムルヘルベルはダッシュ開始!
「転ばないように気をつけてくださいね~」
「オヌシマジであとでいてこますからな!!!!!!!」
 ムルヘルベルの声は遠ざかっていった。まあナビ用のドローンが追従していつでも監視してんだけど。

 で、肝心のシャルロッテは何してるかっつーと。
「あーモシモシ、フードデリバリーですか? 最高級スシ一人前、ASAPでお願いします。請求先はムルヘルベル・アーキロギア宛で……ハイ、ハイ。ヨロシクオネガイシマス」
 好き勝手していた。悪鬼羅刹ここに極まれり! おお、ブッダよ、寝ているのですか!
 だがこれもまた、マッポーの一側面に過ぎないのだ……!!

大成功 🔵​🔵​🔵​

レン・ランフォード
現地調達なら実質ゼロカロリー
蓮とれんはテント設営と野草採りをしているから
俺達は狩りだ
狙いは兎や鳥、最大で猪
熊やカンガルーは調理法が分からんからな
狩場は数珠丸太郎が匂いでアタリをつけている
作戦はシンプルに
ムルヘルベルが騒いで大型獣の注意を引き、太郎が中型肉食獣を牽制
二方向の騒ぎで逃げてきた獲物を俺が狩る

囮役は逃げる獲物を確実に狩れる自信があるなら代わるぞ?
兎がヴォーパルの危険性も考慮しろよ
(熊は最終的にUCで巨大化した太郎が追い払います)

おかえり…ここからはインテリジェンスの時間だよ…
はいこれ収穫した野草…これを仕事用の毒草と薬草と食べるのに分ける…
ミスると賢者様だけ毒耐性強化訓練になる…がんば



●そのカロリー理論はじめて聞いた
「ハァーッ! ハァーッ! し、死ぬかと思ったのである」
 なぜか全身黒焦げで頭がアフロ状態になりながら、よろよろと戻ってきたムルヘルベル。何があったのかはひとつ上のリプレイを見てほしい。
「何やってんだムルヘルベル。立て。出発だぜ」
「えっ!? オヌシこの状況でツッコミなしなの!? ていうか次はワガハイに何をさせるつもりなの!!?」
 レン・ランフォード(正確には"錬")は頭をかいた。
「ツッコんでたらキリねえだろ今回のキャンプは……それに蓮と|れん《・・》は、テント設営と野草採りに行かせてるからな。あいつらが戻ってきて、余計なツッコミ要素を増やす前にさっさと移動だ」
「だからワガハイに何をさせるつもりであるか???」
「決まってんだろ――|狩り《ハンティング》だよ」
 心なしか時間を止める海洋学者めいた顔つきになる錬。
「狩り? ……肉か!!?」
「ああ、そういうこった。兎、鳥、いけそうなら猪も狩りたいな」
 熊だのカンガルーだのは、食べられるかどうか以前に調理方法がわからないので除外したとのこと。ムルヘルベルは喜び勇んで立ち上がった。
 そして両手で顔をシャッシャッとやると、まるで漫画みたいに髪型も煤も直る。猟兵だからね(?)
「食べていいんであるな!? 肉を!!!」
「お、おう。現地調達なら実質ゼロカロリーだぜ。狩りってのは運動にもなるからな」
「言われてみればそうであるな! ようしワガハイ気合入ったぞう!」
 そうやってすぐ調子こくからかわいがられてんじゃねえの? とツッコミを入れない情けが、錬にもあった。

 そんなこんなでふたりは、数珠丸太郎の導きで獲物の住処へ。
「……な、なあ錬よ」
「なんだよ、声出すなよ。気付かれたら元も子もないぜ」
「いやあの、オヌシあれマジで狩るつもりであるか……?」
 そこには洞穴があり、洞穴の周りには謎の通りすがりの円卓騎士団の皆さんの亡骸が転がっていた。
 のっそりと洞穴から現れたのは……ムッキムキの巨体で、刃物じみて鋭い耳を血に濡らした恐るべき兎! 兎!? 二足歩行なのに!?
「ああ。あれはアスリートアース殺人ヴォーパル兎……危険だけど、そのぶん身が締まってて絶妙って噂だ」
「ねえオヌシもやっぱりそっち側なの? 一瞬でも味方と思ったワガハイの期待返して???」
「ちなみにムルヘルベル、お前の仕事は囮だ。あとは太郎と俺でやるから任せてくれよな」
「えっ」
 どんっ。ムルヘルベルは錬に背中をつつかれ、アスリートアース殺人ヴォーパル兎の前に飛び出した。
「ヴォアアアアアアアアア!!」
「アイエエエ!! アイエエエ!!」
 ムルヘルベル、涙目で逃げる! 逆方向では数珠丸太郎が、アスリートアース非殺人コマンドサンボイグアナを牽制している!
「ヴォアアアアアア!!」
「ギョエー!! ギョエー!!」
「アイエエエ!!」
 アスリートアース殺人ヴォーパル兎とアスリートアース非殺人コマンドサンボイグアナに挟まれ、ムルヘルベルは絶叫! そこへ襲いかかるアスリートアース殺人ヴォーパル兎!
「もらったッ!」
「ヴォアアアグワーッ!!」
 死角から飛び出した錬の一刀が、アスリートアース殺人ヴォーパル兎の喉元を切り裂いた! アスリートアース非殺人コマンドサンボイグアナは、巨大化した数珠丸太郎に恐れをなして逃げていく。
「アイエエエ……」
「よくやったなムルヘルベル。さあ戻って仕込みをしようぜ、そろそろ|れん《・・》も野草を摘んできてるころだ」
「アイエエエ……」
 ムルヘルベルは呆然自失状態のまま、錬に引きずられていった。

 で、キャンプ地。
「おかえり……ここからはインテリジェンスの時間だよ……はいこれ、収穫した野草」
 |れん《・・》が差し出した野草は、あきらかに毒草としか思えないものばかりだった。
「これを仕事用の毒草と薬草に分けるのが次の仕事……ミスると賢者様だけ毒耐性強化訓練になるから……がんば」
「ワガハイこんな役回りばっかり!!!!???」
 賢者の叫びがこだました。特に仕事が免除されることはなかったし、そこそこ見分けを失敗したのであとで地獄を見た。インガオホー!

大成功 🔵​🔵​🔵​

五百崎・零
(ええッ!?日常フラグなのに戦闘できるシナリオですって!?)

いやー、道中楽しかったですね。
ついついやりすぎてしまったような気もしますけど、自分もムルヘルベルさんも他の皆も死んでないし、何も問題はなかったということですよね?

ところで、バーベキューでしたっけ。
自分は賛成ですよ。食べたらその分動けばいいんですもんね?
また模擬戦しましょう。
……え、食べたら動く、今回のってそういう話ですよね?

それはそうと、早速材料調達にいきます。
倒さないといけないのは惜しいけど、楽しめそうでワクワクするなぁ……!
きひ、きひひ…ヒャハハハハハ!!
オラオラ、こいよぉ!美味しくいただいてやるぜぇ!!

UCで回復しつつお肉調達



●けっきょく毎章いつもの感じになってませんか?
「バーベキューですか。自分は賛成ですよ」
 意外にも、五百崎・零は素直に同意した。ムルヘルベルは目を丸くする。
「なんですかその顔。自分がムルヘルベルさんをいじめたりするわけないでしょう」
「オヌシさっきまで何やってたか忘れたのか???」
「ああ、楽しかったですよね道中」
「楽……楽しかった? あれが???」
 撃たれて逃げて撃たれて逃げる。ムルヘルベルは死ぬ恐怖しかなかったが、零はそうでもないらしい。けろっとした顔だ。
「いやまあ、ついついやりすぎてしまったような気はちょっとしますけどね。でも自分もムルヘルベルさんも他のみんなも死んでないし、つまり何も問題はなかったということでは?」
「そっかぁ~、ワガハイこれからはオヌシとの付き合い方考えるか~~~」
「そんな、ひどいですよ! 美味しい食材をご用意しますから、機嫌を直してください」
 まともな状態(※さっきの台詞からわかるように、別にこの状態でもまともなわけではない)の零にそう言われると、ムルヘルベルは決意が揺らいでしまった。腹が減っているだけともいう。
「ま、まあそこまで言うのであれば……」
「食べたらそのぶん動けばいいんです。つまり、食後は模擬戦ですよ。機嫌を直して、また自分と模擬戦してください!」
「ワガハイやっぱり帰る!!!!」
「さあ材料調達ですよ、いきましょう!」
「はなしてーー!!」
 嘆願は聞き入れてもらえなかった。会話って難しいね。

 なんで聞き入れてもらえなかったかっつーと。
「あれがアスリートアース殺人柔道クロコダイルかぁ! 倒さないといけないのは惜しいけど、楽しめそうでワクワクするなぁ……! きひ、きひひ……ヒャハハハハ!!」
 ごらんのように、もう頭の中が戦うことしかなかったからである!
「オラオラ来いよォ! 美味しくいただいてやるぜェ!!」
「やるならひとりだけでやってくれ! ワガハイを巻き込むなー!!」
「グオオオオ!!」
「ギャー!! 噛まれる!! ワガハイ噛まれる!!」
「イヒヒ、ヒャハハハ!! 死にたくねえなあ、ああ楽しいぜぇ!!」
「グオオオオ!!」
「ワガハイ死ぬー!!」
 悲鳴と咆哮と狂笑が溢れる楽しい狩りになったそうです。楽しいのは一名だけだけどな!!

大成功 🔵​🔵​🔵​

シルキー・アマミヤ
やっほー★
お疲れのみんなにシルキーちゃんがUCで飲み放題ドリンクのサービスだよ★
(箱型ボディの側面が開いて中からコップと蛇口というかドリンクバーのあれみたいのが出て来る)
効果ばっちりだからくたくたな人には特におすすめだぞ★

あと周りにそんなに危ない生き物が居るならちゃんと見張っていないとね★
お空に青い鳥のホログラムを被せて偽装した「ことりちゃん」を飛ばして周囲を|撮影《監視》、データ連動したロボットビースト達を放って警備もさせておくね★これで侵入者も脱走者も見逃さないぞ★

特に|ムルヘルベル《グリモア猟兵》さんに何かあったら大変だから、しっかり見張っておくよ★

※アドリブ・ネタ・その他歓迎だよ★


ザガン・アッシム
【アドリブ及び連携歓迎】

…ふぅ、久しぶりの登山行軍…山登りも悪くねぇな。

ムルヘルベル、お前さんも設営したら一旦休んでおけよ?

(自身も設営の為に【UC】で左腕から色々取り出す)

つ【コンロ】
つ【クーラーボックス】
つ【モラ・カー】(?)

…ああ、俺は車中泊だ。こっちの方が慣れてるからな。

そう、これは車だ。いいな?(強めの圧)

…さて、些末事はいいとして、食事もしっかり持ってきたぞ
それでなんだが…

蝗と蜂とコオロギとタガメ(食用)、どれがいい?(初手危険球)

ああ、大丈夫だ。俺の故郷(戦場)の味付けだからな。

低カロリーで高タンパク、ちゃんと条件はクリアしてるぞ

それで…どれから食べるんだ?ん?(強めの圧その2)


エスターテ・アレグレット
※アドリブ・連携歓迎

巻き込まれ体質のくせに運動もせず飯だけ食いにきたのかって思われそうっすけど……いや、これでもしっかり運動してきましたよ。……すげー疲れた

食事の後何するのか知らないけど、この調子だと体力持たない気がするんで、食事はしっかり摂りたいすね
低カロリー高タンパクなメニューのレシピ持ってきてるんで、美味しく料理します
ハンバーグ、サラダとか
デザートもいけるけど、ムルヘルベルくんいらないって冒頭で言ってたし、おあずけっすね
そもそもデザートのレシピ持ってきてないから、味どうなるかわかんないし

博打の味でもよければ作りましょうか?(※異様に辛かったり苦かったり、虚無の味がするカステラを作ります)



●デスブリンガーと傭兵と巻き込まれた人のコラボレーション
「うう……」
 狩りに行かされたり、
 毒草と薬草の目利きをさせられたり、
 また狩りに巻き込まれたり、
 模擬戦(※実弾を使う)で殺されかけたり。
 ムルヘルベルがへとへとになって戻ってくると、そこには遅れてキャンプ場にやってきた猟兵たちが合流していた。
「やっほー★お疲れのみんなに、シルキーちゃんの特製ドリンクの飲み放題サービスをどうぞ★」
 シルキー・アマミヤの美少女アバター(※これはホログラムであり、本体はそのホログラムを投射している箱型ボディのサイボーグ)が計算され尽くした角度でウィンク&スマイルすると、|箱型ボディ《本体》の側面がウィーンとスライドし、中からコップと蛇口……というかもっとストレートかつわかりやすく言うと、ファミレスなどのドリンクバーにあるアレ……みたいなのがせり出した。このボディどうなってるんだろう。
「あ、ありがたいんすけど、これ飲んで大丈夫なやつなんすかね……?」
 そこそこ過酷なコースを頑張って踏破してきたエスターテ・アレグレット――普段ならなにかと巻き込まれてばかりだが、今回は自らの意思で運動をしにきたようだ――は、得体の知れない箱型ボディの中身に少し怪訝な顔をしつつも、ありがたくドリンクをいただくことにした。
「おう、そうだそうだ。若いのは体力があるから無理をしがちだが、身体を壊したら元も子もねぇからな。水分補給はしっかりしとけ」
 歴戦の傭兵でもあるザガン・アッシムは、アラフォーならではの経験に基づいたアドバイスとともに、うんうん頷いた。
「ありがたいお言葉っすけど、その、僕一応こう見えても|30歳《三十路》っす」
「えっ、マジかよ!? 俺と7歳しか違わねぇのか……まあ、猟兵なんて見た目によらねえもんが、意外だな」
 割と童顔に見られがちなのか、驚くザガンの反応にもエスターテは慣れた様子で頭をかいている。
「ちなみにシルキーちゃんは、花も恥じらう|20歳《ハタチ》だよ★あと、ドリンクの中身はちゃーんと安全だから心配しないで★疲れてる人には効果バッチリだから★」
 じゃーごぼごぼ。エスターテの持つ紙コップに注がれる、蛍光色の謎ドリンク。
「台詞と出てきたものの見た目が全然あってないんすけど!?」
「サイバー感溢れてんなこりゃあ……栄養はありそうだな、栄養は」
「それ栄養過剰で毒になってるヤツじゃないっすか!?」
 エスターテのツッコミが炸裂した! だがザガンはもともと細かいことを気にするタイプではないので、自分も紙コップに謎のサイバードリンクを汲むとグビグビ飲み干してしまう。
「ぷはーっ! 刺激的な味だぜ。体の底からパワーが溢れてきやがる!」
「でしょ?★ スタミナ回復抜群だよ★」
「ええ……逆に不安しか増さねえっす……」
 エスターテは飲もうかやめようかしばし考えた。実は強化人間となった代償に味覚を喪っているため、そういう面では心配していない。むしろ気になるのは健康面の影響だった。なんせ絶賛してるのがどっちもサイボーグだから。
「……まあせっかく人からもらったもんだし、捨てるってのも悪いしいただくっす」
 しばし悩んだすえ、エスターテは一気にサイバー謎ドリンクを呷った。味覚が死んだはずの舌にすらビリビリくる、得も言われぬ強烈な刺激!
「うぐっ!? な、なんすかこの炭酸とも違う……未知の感覚……!」
 悶絶するエスターテだが、しかし体の底から隠れていたスタミナが湧き上がってくる感覚があった。それは喜ばしいのだが、むしろ逆に健康的な不安が増した。元気の前借りって、アブないやつだし。
「と、とりあえず元気は出たっす。ありがとうっすよ」
「どういたしまして★おかわりいる?」
「それは遠慮しとくっす(即答)」
「じゃあ代わりに俺がもらうわ!」
 ザガンは気に入ったらしかった。サイボーグにはクセになる味らしい。

 ところで、へとへとになっていたムルヘルベルはというと。
「ほらほらムルヘルベルさんも飲んで飲んで★」
「うぐぐ……ウグーッ!?」
 シルキーにぐびぐびとサイバー謎ドリンクを飲まされた途端、どこかの|究極生物《アルティメットシイング》のように直立不動で起立した!
「な、なんなのだこのパワーは……! まるで正月元旦の朝に新しい下着を穿いたばかりのようである!!」
「なんで微妙にヤな方向に具体的なんすか!? ていうかどういう表現!?」
「よくわかんねぇが、元気が出たならなによりだな! よし、いっちょ設営すっか!」
 ツッコミを入れるエスターテに対し、ザガンは細かいことを気にせずスルーして話を進めた。なぜなら彼は傭兵だからだ(?)
「コンロだろ? クーラーボックスだろ? そして……モラ・カーだ!」
 武装展開した左腕から次々とアウトドアグッズを取り出し設営する。
「ってストップストップ! いまなんかヘンなの出てきたっすよね!?」
「ああ、俺は車中泊だからな。こっちのほうが慣れてるんだ」
「いやモラ・カーってなんすか!?」
「車だが?」
「いや誰がどう見ても」
「これは、車だ。いいな?」
「アッハイ」
 アスターテはザガンの"圧"に引き下がった。歴史の闇に触れるのは得策ではないのだ。

「ところで、食事はどうするのかな?★シルキーちゃんは(普通の人間の食事は)不要だけど、ムルヘルベルさんやみんなはちゃんと食べないとだよね★」
「ま、待てシルキーよ。まさかまた狩りに行けというのではないだろうな!」
 さんざっぱら無茶振りをされたトラウマがまた疼いたのか、ムルヘルベルはブルブル震え始めた。
「大丈夫★周りにはロボットビーストたちを放ってあるし、ホログラムで偽装した『ことりちゃん』で監視してるから、変なのが近づくこともないよ★」
「おお、よかった……! オヌシ見た目にそぐわず優しいのであるな!」
「ありがと★でも一言余計だぞコラ★」
 シルキーの意外な優しさにムルヘルベルは感涙した。心から。
「食事っすか、うーん……材料、用意されてるのは野菜ばっかりっすよねぇ。今日はレシピ持ってきてないからなあ……」
「はっはァ、そんなことか! それならこの俺に任せておきな!」
 腕を組んで悩むエスターテに、びしぃ! と自分で親指で示しながら、自信満々に言い切るザガン。逆に不安を煽る。
「……一応聞くが、オヌシは何をもって大丈夫と言い切ったのだ?」
「食料を持参してるってことよ。えーとだな」
 ごそごそ。そして取り出したのは……。
「まずイナゴと、ハチと、コオロギと、タガメ。どれがいい?」
「「初手から危険球では(じゃ)ない(っす)か!!」」
 ムルヘルベルとエスターテは声を揃えてツッコんだ!
「ん? ああ、大丈夫だぞ。ちゃんと食用のを持ってきたし、俺の|戦場《ふるさと》の味付けだからな。低カロリーで高タンパクだ!」
「そういう問題ではないわーッ!?」
「でも虫食って、最近は色々と研究が進んでるっていうよね★」
「オヌシこの流れでそっちに回るの!? さっきまでの優しさは!!?」
「どれを食うんだ? ん??」
「ひいい!! その強面で圧をかけないで怖いからぁ!!」
 ずずいっと迫ってくるザガンに泣きべそをかくムルヘルベル。
「……とりあえず、豆腐ハンバーグとかサラダとかのレシピならあるんで、それ作るっすよ。博打の味でもよければデザートも作るっすけど……」
「おう、ならこのセミを」
「豆腐ハンバーグでよい!!!! よいから!!!!!!」
 ムルヘルベルは強く強く、非常に強く叫んだ。その目は死に瀕した者特有の鬼気迫るものがあったという。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

綾倉・吉野
……色々大変でありましたけど、「体力を消費しないための技術」また一つ教訓を得られたであります!
(山中で殺人カポエラカンガルーや殺人レスリングゴリラ等に追われている状況でそう言える貴女は途轍もない大物なのでは……と時々思いますよ)

(とはいえ……このままでは夕食どころではありませんね。
仕方がありません。残りの鍛錬は後程。少し眠っていなさい、吉野)
※UC。吉野、意識途切れる

……今は代わって私、悪魔マステマがお相手いたしましょう
これでも元「帝都軍人の影朧」たる身、易々とやらせましませんよ

うふふ、さあ来なさい、私の吉野に手を出そうとした大罪……
その身に刻み込んであげましょう(昏い笑み)

※アドリブ歓迎です



●マステマさまが来てる
「キョエアアアア!!」
「ウホウホオオオ!!」
「い、いろいろ! 大変でありましたけど! た、体力を消費しないための技術……またひとつ、教訓を、得られたでっ、あります……!」
 綾倉・吉野はキリッと真面目な顔をした。そのすぐ後ろに迫るのは、恐るべきアスリートアース殺人カポエラカンガルーと、アスリートアース殺人レスリングゴリラだ! コワイ!
『この山奥で、あんな殺人アニマルに追われている状況でそういえるあなたは、実はとてつもない大物なのでは……?』
 普段なら状況を楽しむマステマも、ちょっとツッコミに回ってしまった。吉野は面白い。面白いのだが、たまに想像を超えた出力をもたらすことがある。そういうとき、マステマは少しだけ畏怖を覚えるのだ。
 これも吉野の伸びしろということか。きっとマステマはそう褒めてくれているのだ。吉野はそう思うことにした。彼女は天然だった。

 それはそれとして、恐るべきアスリートアース殺人アニマルの追跡は止まない。このままでは挟撃されボコボコだ!
『このままでは夕食どころではありませんね。仕方がありません』
「ま、マステマ殿? また新しい試練でありますか!?」
『この状況でさらに無茶振りすると思われているんですか私。ちょっとショックですね……いやそうではなく』
「で、では何を……はっ」
 吉野は急に視界が暗くなっていく感覚を得た。いや、違う。急激に瞼が重くなり、目を開けていることが出来ないのだ。
「ま、マステマ、殿……」
『少し眠っていなさい』
 吉野が目を閉じ、ふらつくと、ぴたりと立ち止まった。

「キョア?」
「ウホ?」
 突然の停止に、首を傾げるアスリートアース殺人アニマルたち。
「……いまは代わって、この私――悪魔マステマがお相手しましょう」
 くるりと振り返った吉野の表情は、普段の彼女とは似ても似つかない冷徹な軍人めいたものだ。
「これでも、元・帝都軍人の影朧。やすやすとやらせはしませんよ?」
 口元に浮かんだ昏い笑みを見た瞬間、アスリートアース殺人アニマルたちに戦慄が走る。本能に生きる獣たちは、それゆえに彼我の強さを本能的に理解するのだ。
「キョ……キョエアアアアッ!!」
「ウホオオオアアア!!」
「うふふ。さあ、来なさい。私の吉野に手を出そうとした大罪、その身に刻んであげましょう……!」
 いま、山中で3つの暴威がぶつかり合う。そして始まるは恐るべき死闘!
 まるでシリアスな戦闘章のような流れだったが、ネタシナリオなので肝心の戦闘は省略されてしまうのだ!
 一分後、無惨なアスリートアース殺人アニマルたちの亡骸がその場に転がっていた……今は、それだけ申し上げておくとしよう……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルー・カンガ
さて、草食獣としては、草を食ってれば飢えずに済むんだけど
雑食や肉食にとっては、辛そうだな。
まぁ、オレとしても、結構キツかったし。
カンガルーはジャンプして移動するから、坂とかキツいんだよ。

んで、殺人カポエラカンガルー?
ここ、オーストラリアじゃないだろ?
まぁ、オレのトレーニング相手にはちょうどいいか。
こっちはキックボクシングだけどな。
ムルヘルベルのじいさんも一緒にやろうか?

熊が来たら逃げる。
当たり前だろ!
オレを美味しそうに見てる…逃げろー!
…オレに抱きついて楽しようとするなよ!
離れろ!このままだと共に食われる、ヤダー!

アドリブ歓迎



●オーストラリアには殺人カポエラカンガルーがいる……?
 カンガルーは草食獣だ。であれば、バイオモンスターであろうがなんだろうが、ルー・カンガもカンガルーなので、草を食べてりゃだいたい問題ない。
 が、他の猟兵まではそうもいかない。それを見てもさもさ草を食べて放っておけるほど、ルーは無情なヤツではなかった。
「まぁ、オレとしてもけっこうキツかったしな、ここまで。あの坂はしんどかった……」
 昭和の運動部みたいにジャンプ移動で重力に逆らい続けた辛い記憶。ルーは嘆息した。

 だが、今のこの状況に比べるとマシかもしれない。
「カン! ガルッ!」
 シュバッ! アスリートアース殺人カポエラカンガルーの鋭い蹴りがルーの頭部を襲う! メイアルーアジコンパッソだ!
「うおっ! いい蹴りだな。トレーニング相手としちゃちょうどいい!」
「……いやいや待て待て! ツッコミどころが多すぎるが!?」
 カンガルーとカンガルーのワイルドな死闘に思わず待ったをかけるムルヘルベル。
「ん? なんだ? ムルヘルベルのじいさんも一緒にやろうか? でも熊が来たら逃げるぞ、オレ絶対食われるからな」
「そうではないが!? この状況が根本的におかしいことに気づくべきではないか!?」
「……? カンガルーがキックボクシング使ったらおかしいのか……?」
「そこではないが! いやそうでもあるが!!」
 シュバッ! 会話中も容赦ないカポエラ攻撃! 危険なフォーリヤ・セッカをルーはくぐり抜け回避し、すれ違いざまのソバットを叩きつけ!
「ガルーッ!」
「なかなかやる。いい経験になったよ」
「カンガルーってあんな鳴き方するものであろうか……」
「ヴォアアアアア!!」
 ガサガサ! 近くの草むらからアスリートアース殺人カラテクマがPOPだ!
「アイエエエ! 助けて!」
「だから逃げるって言ってるだろ! ほらオレのこと美味しそうに見てる!」
「助けて! カンガルーは脚が速いんであろう!? ワガハイ運んで!」
「やめろって! ラクしようとするなって! このままだと一緒に」
「ヴォアアアアア!!」
「「アイエエエ!!」」
 ルーはぴょんぴょん必死に逃げた。ムルヘルベルはしがみついて絶対離れなかった。きたないな賢者きたない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティアー・ロード
【チーム悪だくみ】
●悪の誘い
「バーベキュー!酒!お菓子!大いに結構じゃないか」
「目的こそあれどキャンプに来たんだ
楽しまないとキャンプへの冒涜さ」
そもそもスタミナをつけさせたいからね
うちのチームは暴飲暴食歓迎だ

●狩猟クエスト:殺人カラテクマ
バーベキューやカレーの為に調達してこよう!ちょうどよくクマがいるんだって?
「新鮮な食材は現地調達に限る」<捨て身の一撃><覚悟><見切り><怪力>
「黒いベルトを巻いただけで|私《ヒーロー》のカラテに勝てる訳がないだろう?」
|食材《クマ》を抱えてキャンプ地で皆と合流するよ

●クッキング担当:クマカレー
「皆もいい感じに調達したね!この山菜貰うよー」
「チェイス、カレーに入れるからコーヒーくれるかい」
集めた食材で<料理>してカレーを作るよ
たくさん作るからムルヘルベルもどうかな?
カレーの材料で赤ワインもある……
「大人の特権さ」

●死を待つか、活路を見出すか
「よし、皆しっかり食べたね?」
「ではこれよりガス走破訓練を開始する!」
最初に言ってたろう?
食べたから、運動したいと


リチャード・チェイス
【チーム悪巧み】
すなわち、狩りで食材を調達せよとの鹿の導きであるか。
狩りとはやんごとなき身分の者のみに許された優雅な娯楽。
|愉快な下僕を持つ高貴な鹿《チーム悪巧み》にふさわしい。
ジビエは大自然の中での適度な運動により引き締まった肉質はカロリーゼロ。
もののけ的なアスリートアース殺人ナントカ鹿よ、それがジビエの生きる道。

カレーは如何にスパイスの香を立たせるかが肝要。
同時にジビエの臭みを抜き野性味を際立たせる。
涙の支配者よ、もっと優雅に作りたまえ。
細やかな仕事が飲み物かのように胃に入るカレーを生み出すのである。

大いにカレーを食した後の一杯のコーヒーが身に染みる。

―――第3章 完



完だってば


詩蒲・リクロウ
【チーム悪巧み】
……はい、なにも痩せるのに必要なのは運動だけじゃないと思うんですよ。いや筋トレは素敵で最高で最強なんですけども。

「たんと食べて良いですよ」
要はカロリーをどうにかすれば良いんですよ、動かなくても、たらふく食べたとしても、カロリーを消費したり摂取しなければ何をしても身体は痩せるんですよ。筋トレは最高なのでやったほうがいいですが。

「おかわりもありますよ」
さて、本題ですが、ここに豪勢なカロリーの残骸と肥えに肥えた豚が数頭いる訳なんですが

スチャ

「ではこれよりガス訓練を始めます」
さあ動かなくても痩せる方法を実践してみましょう!


ジョン・ブラウン
【チーム悪巧み】
「そっちだクマゴロウ!周り込め!あの罠に追い込むんだ!」
「逃がすんじゃないぞリチャード!その赤い顔でなんかやけに角が枝分かれした鹿っぽいのを仕留めろ!」
「たぶんアスリートアース殺人カポエラ鹿とかだろ!」

「ハァ………ハァ……失ったカロリーを取り戻すには用意されてるサラダチキンとかじゃ足りない……」
「脂を炭酸で流し込まないとダメなんだ、僕の中のアメリカンスピリッツが思い出したかのようにそう叫んでる……」


「ゲフゥ」
<マスターの血糖値上昇を確認 ステータス:『満腹』と判断します>
<運動時に”腹痛”や”嘔吐”へ派生する恐れがあります>

「大丈夫だよ、もう今日は運動しな」

「…………えっ?」



●一人足りない? そんなことないよ、ないってば
「そっちだクマゴロウ、回り込め! あの罠に誘い込……ウワーックマゴロウがやられたー!」
「仕方のない犠牲である。さあジョンよ、励むのである」
「キミも働けよリチャード! その赤い顔でなんかやけに角が枝分かれした鹿っぽいのを仕留めるんだ!」
「アレはどう見ても鹿ではないのである」
「じゃあアスリートアース殺人カポエラ鹿とかだろ! あっクマゴロウが立ち上がって……あーっ逃げようとしたら後ろからやられたー!」
「どう見ても鹿ではないのである。今のは鹿に対する侮辱。謝罪を要求するのである」
「うるさいなこのシャーマンズゴースト!! いいから戦……ああっまたクマゴロウがやられた!!」
「訂正も要求するのである」
「いいから戦えよ!! せめて動けよ!!!?」
 大惨事が起きていた。

 リチャード・チェイスとジョン・ブラウンらが、なぜあんなに奮闘していたかというと、話は少し遡る。
「バーベキュー! 酒! お菓子!! 大いにけっこうじゃないか」
 ティアー・ロードは大きく両手を広げて、意外なことを言った。
「そうですね。なにも痩せるのに必要なのは運動だけじゃありません。いや、筋トレは素敵で最高で最強なんですけども」
 詩蒲・リクロウが否定する……と思いきや、素直に頷く。
「そうそう、目的はあれどキャンプに来たんだ。楽しまないとキャンプへの冒涜さ。食べ物を残したらバチが当たるのと同じだよね」
「まったくそのとおりですね。筋トレが素敵で最高で最強なのと同じことです」
「そもそもスタミナをつけさせたいからここに来たんだし、うちのチームは暴飲暴食歓迎さ」
「ええ、持久力もまた筋トレには重要です。そう、瞬発力と持久力を両方鍛えることが出来る。だから筋トレは完全無欠のトレーニングなんですよ」
「キミ悪いものでも食べた? 筋トレ推し強すぎない?」
「筋トレしてますからね。そりゃ強いですよ」
「そういう話してるんじゃないんだよなあ私は!!」
 リクロウの目は済んでいた。あまりお近づきになりたくない感じの澄み方をしていた。

「つまりどういうことでごわ? 狩りすればどんちゃん騒ぎしてもいいでごわ?」
 今はなき(語弊)熊五郎が首を傾げると、リクロウとティアーは「うん(はい)」とあっさり頷いたのだ!
「これはすべて、鹿の導きでわかっていたこと。なぜならば、狩りとはやんごとなき身分の者のみに許された優雅な娯楽であるがゆえ」
「うーん、なるほどね。|利発で聡明な僕とボンクラども《チーム悪巧み》にうってつけってわけだ」
「いかにも。|愉快な下僕を持つ高貴な鹿《われわれ》にふさわしいのである」
「これは|下等な餌やり係どもを支配し従える誰よりも賢き我輩《チーム》の出番でごわすな!」
「まったくである」
「ほんとだね」
 意思疎通が出来ているようで出来ていない。あるいはわかった上で各自スルーしている。高度すぎるコミュニケーションで、多分宇宙人とかいたら「コンナノハデータニナイ、人類メ……」とか言いながら頭爆ぜてたと思う。
「それはそれとして、肝心の狩りの相手はどうするの?」
「あったでごわす! アスリートアース殺人カポエラ鹿!」
「でかしたのである。あれは鹿ではないが。もののけ的であるゆえ。しかしそれはそれとして、引き締まった肉質はカロリーゼロ。これはイッツ|狩猟のち解体そして美味《ジビエ》であるな」
「よーし、僕が指示を出すからキミたちで倒すんだ! いいねふたりとも! ここが|優れた頭脳役としてノロマどもを動かしてやる優しい僕《チーム悪巧み》の力量の見せ所だよ!」
「任せとけでごわ。そもそも殺犬じゃない時点で食べてくださいと言ってるようなもん。進化の方向ミスってるでごわす。|四足歩行も出来ない間抜けどもと歩調を合わせてやる慈悲深い我輩《チーム》が狩ってやるでごわ!」
「仕方あるまい。|鹿の真の価値を理解しえない鹿たちを導く地上の神すなわち私《われわれ》の底力を見せてやるのである」
 こういう流れで死地に挑むことになった。連携なんて出来るわけもなかった。

 そして熊五郎がけちょんけちょんにされているが、とりあえず無事にハンティングは成功したようだ。
「やあみんな、おかえり! あいにく私のほうが先だったみたいだね」
 ティアーは平然とした顔で戻ってきた。彼女は、恐るべきアスリートアース殺人カラテクマを|技能宣言まで絡めた日常章とは思えない大人げないプレイング《ヒーローとしての優れた実力》で瞬殺したようだ。さすがはヒーローといえよう。
「材料は揃いましたね。では今回はカレーを作りましょう。これだけ材料があれば、寸動鍋いっぱいに作れますよ!」
「カレーはいかにスパイスの香を立たせるかが肝要。同時にジビエの臭みを抜き野性味を際立たせる……私はともかく、皆に作れるかどうか」
「仕事ぶん投げてるくせにずいぶん上から目線だなキミ。そんなこと言ってないでコーヒーくれるかい、カレーに入れるから」
「オヌシら仲よいのか悪いのかどっちなんであるか???」
 ムルヘルベルは呆れ顔で眺めていた。

 なお、けちょんけちょんにされた熊五郎と、へとへとのジョンはというと。
「はぁ……はぁ……カロリー、カロリーを使いすぎた……この喪ったカロリーを取り戻すには、あんなサラダチキンとかじゃ足りない……!」
「…………(けちょんけちょんにされたので死んでいる)」
「脂を炭酸で流し込まないとダメなんだ、僕の中のアメリカンスピリッチが思い出したようにそう叫んでる……」
「…………(けちょんけちょんにされたので死んでいる)」
「キミもそう思うよねクマゴロウ! 約束通り生き肝も心臓も食べていいんだよクマゴロウ! ……クマゴロウ?」
「…………」
「クマゴロウ、クマゴ……し、死んでる……!」
「殺すなでごわ!! |食事《エサ》はまだでごわすか!!!!」
 ふんすふんす! 熊五郎は怒り狂った!
「いやー、赤ワイン美味しいねえ。まあカレーに入れる用だけどね、ちょっとぐらいつまんでもいいよね、大人の特権だしね」
「あー! ずるい! ワガハイも! ワガハイもー!」
「ムルヘルベルはダメだよ。カレーを楽しみにしていたまえ」
「我輩は玉ねぎ入れたら許さんでごわすが?」
「オヌシ変な割り込み方してくるな!? 会話が混線するであろうが!」
「細やかな仕草が飲み物のように胃に入るカレーを生み出すのである。涙の支配者よ、若き鹿よ、もっと優雅に作りたまえ」
「別の方向で口調が被ってる上になんもしてねえくせに偉そうなのまで割り込んできたのであるが!?」
「はいはい、そろそろ出来上がりますからねー」
 朗らか(?)な調理風景が過ぎていた。

 しばらくあと。
「さあ皆さん、出来ましたよ。熊五郎さんもどうぞ」
 どすん。カレーがたっぷり入った鍋が置かれ、各自の紙皿によそわれていく。
「えっ!? 今日は|カレー《人の餌》食べてもいいのか!?」
「たんと食べていいですよ」
 リクロウは微笑み、熊五郎の皿にカレーをよそった。熊五郎はもりもり食べ、速攻で皿を咥えて持ってくる。
「おかわりもありますよ……遠慮しないでください」
「マジ!? やった!! コーラ! コーラもちょうだい!! 僕もうコーラがないと耐えられない!!」
「何を言うのであるか、ここに|飲み物《カレー》があるではないか。飲め」
「ご飯も食べようねチェイス。いくらでもあるよ」
「これもまた、鹿に許された当然の褒美であるな……」
 もりもりと食べまくるボンクラども。ムルヘルベルも食べていたが、なにか嫌な予感を覚えた。
「……なあオヌシら、なにかおかしくないか? これは陰謀の気配が」
「んめ んめ」
「あー最高! 脂と炭水化物最高!! 肉!! 最高!!! そしてそれらを炭酸で飲みこむのはこの世の贅沢だよ!!」
「ここで味変をするのが鹿流である。涙の支配者よ、ソースを取ってくれたまえ」
「聞いてねえのである……」
 ムルヘルベルはそこそこに食べてやめておくことにした。そのくらいのムーブだって許されるはずだよね!?

 で、またしばらくあと。
「よし、みんなしっかり食べたね?」
「「ゲフゥ」」
 きったねえゲップで返事するのがふたり。もうひとりは太鼓腹を撫でながら優雅にコーヒーを飲んでいる。
「うむ、なかなかの仕事であった。褒めてつかわすのである。食事のあとのコーヒーもまた、格別」
「それはよかったです。さて、本題に入りましょう」
 ボンレスハムみたいになった犬と血糖値スパイク起こして気持ちよさそうにしてるギーグと、腹が膨れてるので優雅さのかけらもねえ鹿を見つめ、リクロウは言った。
「え? 本題? 何いってんのさ、あとはもうごろごろするだけでしょ」
『マスターの血糖値上昇を確認。ステータス:満腹と判断します。運動時に"腹痛"や"嘔吐"に派生する恐れがあります』
「あははは、心配性だなあ。もう今日は運動しな」
「では、これよりガス訓練を始めます」
「えっ」
「最初にムルヘルベルが言っていたはずだね」
 ぎらり。ティアーのマスクが光った。
「食べたから運動したいと。そして今のキミたちは? どうだ?」
「そう、いわば我々は鹿、ということであるな」
 リチャードはキザな首の角度でカッコいいポーズを決めながら言った。人々はそんな見事な鹿っぷりにスタンディングオベーションし、アスリートアースに新たな鹿概念が伝導した――第2章、完。

 ということは別にない。
「豚ですね。さあ、動かなくても痩せる方法を実践してみましょう! カロリーをどうにかすればいいんです! 動かなくてもたらふく食べたとしても、カロリーを消費したり摂取しなければ何をしても身体は痩せるんですよ! 諦めて運命を受け入れろオラァアアア!!」
「アイエエエグワーッ!?」
 まず|熊五郎《ボンレスハム》が犠牲に! リクロウ特製強制ランニングガスを注入され、ボンレスハム状態で走行開始だ!
「いやちょまグワーッ!?」
「諦めようかジョン! もちろんチェイスもね!」
「おいやめろ離せ私は鹿グワーッ!?」
 リチャードとジョンにも注入! 始まる地獄絵図!
「やっぱりこうだった! 伝えねば、伝えねば! こやつらの本性を……!」
 ムルヘルベルは逃げ出そうとした。カレーにつられた被害者をこれ以上出さないために!
「ムルヘルベルさんも……食べてましたよね?」
「アイエッ!?」
「さあ、訓練の時間だよ」
「アイエエエ! アイエーエエエエエ!」
 悲鳴は長くこだました。ボンクラどもはそれはもうひでえ絵面になり、描写すらもできなくなったという。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

結・縁貴
【ニクメツ】
人員が欠ける事を心配する道中って何事?
賢者さん、バーベキューしたいの
じゃあ肉の調達しに行こうか
俺は賢者さんで遊…喜ぶ顔が見たいだけだよ!

※カラテクマとカポエラカンガルーと対峙
わァ屈強
スー帅哥に見せる為に撮っておこう(スマホで撮影)
賢者さんには囮になってもらおうか!
大丈夫、ちゃんと守るよ
俺の異能は「動作」や「筋力」だって断ち斬れる
…そんな限定的な効果、一瞬だけどね!(一度止まった拳が再び動くのを見て笑う)
でもほら、瞬きの隙があれば十分だろう?
鴇帅哥が一刀両断、マナセが殴殺だ

俺の所業で出来た毒みたいに聞こえるな??
警戒心無く毒飲むのすげェよ…
見事な踊りだな、皆踊れば?
俺?撮影してるね!


マナセ・ブランチフラワー
【ニクメツ】

(実は運動が特別得意でもない聖者、虚無の顔でキャンプ地に横たわっている)(そして起きた)

お疲れ様です
次はご飯ですか。トヲル、料理もできるんですね
キャンプのご飯て何だかわくわくしま……熊?カンガルー?
世界の食文化は様々ですね。美味しいんですか?

準備は雲珠とスキアファールがやってくれるそうですし、縁が狩りに行くなら一緒に行きます
炎……じゃ燃やしてしまいますし、まあ物理で(杖の素振り)
命に敬意を忘れずいただきましょう

おやかみさま、こちらは?え、毒?
……飲むのを期待されている流れでしょうか?
じゃあ僕もちょっと舐め、あっ(鴇に奪われた)
なるほど?こうなるんですね(舐めた分相応にインドダンス)


深山・鴇
【ニクメツ】

全力疾走してたら誰でも疲れるんだよ
適度な休養とタンパク質の補給は必須だな

よし、クマとカンガルー狩りに行くか
一瞬の隙があれば余裕だろう、熊肉は滋養があって美容にも良くカンガルーはタンパク質が豊富で脂肪が少ないらしい
ジビエ料理か、楽しみだな!

(帰ってきたらこの現場である)
うん、逢真君何で毒をナチュラルに勧めてるんだい??
あっこら雲珠君!ダメだぞ、マナセ君もやめなさい、もっと危機感を持て君達!
(毒を取り上げてちょっと遠くに置いた)
いいかい、身体に害がなくてもどうせトンチキな効果が…あ、あ~~
(警戒してたはずのムル君が色々あってうっかり飲んだのを見た、インド映画ばりのダンスを踊り出した)


茜崎・トヲル
【ニクメツ】

なんとか逃げ切った……みんなー!ぶじー?!……ヨシ!一人も欠けてないね!
こっそりみんなの疲労をひきとっちゃお、おれ元気だし

よーしっ、ご飯だね!
ムーさんも、はい!バーベキュー(ソースをかけてたき火で焼いたささみブロッコリー)串!
おかわりもあるよー!
はんごーすいさんしよーっと!一人旅長かったからなれたもの!
みんなのご飯もつくろー!ダイエット飯じゃなくていーよね?
おれはー、まあ、ムーさんといっしょのにするかあ

あれ、兄ちゃん、みんなは?
えっやべークマとやべーカンガルーを狩りにいったの??
なんで???
まあ肉増えるし……って、ちょっと待ってかみさま何してんの、ああーっインド映画!!


朱酉・逢真
【ニクメツ】
心情)ここアスアスだったのな。いま知ったわ。なンだい賢者先生、メシが喰いてェのかい。そうかァ。ちとハナシ変わるンだが、こないだ虎兄さんとオシゴトしてよゥ。そンときに興味深ァい技見せてもらったンだわ。そう、毒自体をいじるって発想にインスピ受けてね。リスペクトってヤツさ。
行動)てなワケで賢者先生、ここに超ウマい毒があるンだが。仕様上、誰が呑んでも最大級の美味に感じるはずだ。飲みすぎッと毒だけど。飲みすぎなくとも毒だが。どォだい、うまいぜ? ア。(旦那に防がれた) チェ。じゃア他のおヒトに渡そう。近くに居た黒髪の兄さんと、坊に勧めよう。何、呑んだ量に応じて踊っちまうだけだよ、安心おし。


雨野・雲珠
【ニクメツ】

(犬にべろべろされてる)
むきむきになるために必要なもの
それは運動と…そう、ごはん!(むくり)

狩りにも興味津々ですが、己の実力を弁えて設営班です
な、なんでかな…
縁さん虎ですからね。血が騒いだのかも

地面に布を敷いて薪を集めて、
今年漬けた梅シロップも箱から出します
清水で割れば梅ジュース!
そう、俺はタニシのように住環境を整える桜

毒だから飲んでみなっていう方に会うのは初めてです俺…
ぺろっ これは…毒!
しかし…なんと馥郁たる…ぺろ
ぺろ…あっ、もっと舐めたいです!
深山さんに取り上げられて
焚火の横で悲しみのナートゥ・ダンス

明らかに身体能力を超えた動き
自分でわかります…終わったあと筋肉痛で死ぬと


スキアファール・イリャルギ
【ニクメツ】

な…なんとか無事です…げほっ
(SPDは低い影人間
(ヘラジカさんとはお互いにゴメンねして和解出来ました

カラテクマやカポエラカンガルーの生態と技が気になりますが
それは深山さんとマナセさんが華麗に狩ってくださる筈
縁さんとムルヘルベルさんに動画撮影お願いしていいですか?
いえ決して知りたがり過ぎて月夜のない晩が怖くなったとかではないです断じて

私はトーさんと雲珠さんのお手伝をば
人数分の食器の準備と材料の下拵えをしましょう

おぉ、見事に狩りましたねぇ…って朱酉さん?
待っ、無害な毒はトンチキがあると前に学習――あっ

…なんだこの光景
疲れすぎて変な夢を見ているのでしょうか
えっこれ私も混ざるべきですか??



●このネタの採用を躊躇するようではお前は大地女神の子ではない
 地獄の猟犬(※人懐っこいしおっかけっこしてるだけ)に追われてへとへとの一同は、ほとんど倒れ込むようにごろごろと転がった。
「なんとか逃げ切った……みんなー! ぶじー!?」
 茜崎・トヲルが声をかけると、仲間たちは手を挙げて応える。それを眺めてヘラヘラ笑う朱酉・逢真。悪魔かな? いいえかみさまです。
「そういや、ここアスアスだったのな。いま知ったわ」
「遅すぎない??? っていうか、人員が欠けることを心配する道中って何事???」
 汗だらけの頬を拭いながら、それでもツッコミを忘れられない結・縁貴。染み付いた性分は抜けないものである。リプレイにおける|立ち位置《ポジション》もまた同じく。7人いてツッコミがひとりってどうなってんだこの面子。
「な、なんとか無事、ですが……げほっ、次はハンティング、ですか……」
「ふ、不甲斐ないですね……僕がこのぐらいで動けなくなるとは……いえ、もともと運動が得意なわけではないのですが……」
 ふらふらしつつも膝を突いてなんとか立ち上がろうとするスキアファール・イリャルギと、虚無の顔で横たわり動かない(※正しくは動「け」ない)マナセ・ブランチフラワー。こういう追い込まれたときで地力の差が出るのだ(?)
「気にすることは、ないぞ……全力疾走してたら誰でも疲れるんだよ……こういうときは、適度な休養、そして……」
「そして、運動と……そう、ごはん! ですね!!!」
 深山・鴇の言葉に、雨野・雲珠はむくりと元気よく起き上がった。なんだかんだ最年少の10代というだけはあ……いや19歳であり最年少でも唯一の10代でもないのだが、なんかもうイメージ的には一番年下という感じしかしないのでそういうことにしておこうと思う。とにかく体力が有り余っているのだ。だが起き上がったところに犬に飛びつかれるとまた「わひゃー」と仰向けに倒れてしまい、ぺろぺろされるに任されていた。

 で、一同は狩りの流れに乗るため(※へばりまくっていたマナセあたりの疲労はこっそりとトヲルが吸収して受け止めた)、調達班と設営班に分かれることに。
「あの……キャンプのご飯ってなんだかわくわくしますけど、狩りの対象がなにかおかしくないですか???」
「うん、よかったマナセがそこツッコんでくれて。俺がやるしかねえのかって割と絶望してたマジで」
「世界の食文化は様々すぎて、驚きの連続ですよ」
「そこじゃねえからね??? 俺が求めてたツッコミそこじゃないよ???」
 縁貴は頭を抱えた。それを見てマナセは首を傾げる。彼の役割は誰かに任せられるものではないのだ。だって天然ボケばかりなんだから。
「ジビエ料理か、楽しみだな! タンパク質の補給は喫緊の課題だ。そのためにも……」
 鴇はすらりと愛刀を抜き、構えた。

 ……そう、3人のハンターたちは、囲まれていたのである!
「まずはこの包囲網を突破しないと、だな!」
「おかしいよね!? おかしくない!? クマだのカンガルーだのいるのは聞いてたけどさ、なんかほかにもいるんだけど!?」
 縁貴はツッコまざるを得なかった。彼らを囲むのは凶暴なアスリートアース殺人カラテクマやアスリートアース殺人カポエラカンガルー、それ以外にもアスリートアース殺人ジークンドーゴリラや、アスリートアース殺人アフガン航空相撲トリケラトプス(!?)までいる! なおこの文章はコピペとかではなく毎回毎回打ち込んでいる! なんでこんなややこしい名前にした!(※答え:他の世界で同じようなシチュやるときに世界の名前だけ変えてネタの流用をするため)
「ゴリラに恐竜まで……美味しいんでしょうか?」
「そこ!? 疑問に思うとこそこ!?」
「ゴアアアアアア!!」
「わァーなんかヌンチャク持ったコアラ増えたー。屈強ー」
 縁貴は現実逃避した。そうでもねえとやってらんねえ。それはそれとしてスマホで撮影しておく。スキアファールが喜ぶだろうから。
「……で、なんでワガハイここにおるの!?」
 ハンターは3人と言ったな? だがこいつもいる。なぜならムルヘルベルはハンターではないのだ。
「賢者さん、囮になってよ!」
「オヌシ笑顔でとんでもないこと言ったな!? いま死ねっていったなワガハイに!?」
「大丈夫、ちゃんと守るよ。ねえふたりとも」
「ええ。炎で……は燃やしてしまいますし……この場合は物理でしょうか」
 ぶんぶん。マナセは杖を素振りする。ムルヘルベルは不安で青ざめた。
「そこは我々だぞ? 心配ないよムル君。一瞬の隙があればそれでいい、余裕さ」
「その一瞬でワガハイ八つ裂きにされそうなんであるけども……」
「だーかーら、心配しないでって賢者さん。俺の異能は、「動作」や「筋力」だって断ち斬れるんだから」
「ほ、本当か? 本当であるな? であれば……ウオオオーッ!」
 縁貴のニコニコ満面の笑顔を信じたムルヘルベルは、恐る恐る一歩を踏み出した!
「「「グオオオオ!!」」」
「ひいい死ぬ!! さようなら!!」
 襲いかかるアスリートアース殺人アニマル! だがその爪/拳/ヌンチャク/角は……「縁」を斬られたことで、ムルヘルベルに命中する寸前にぴたりと停止!
「はい、御縁はなかった、とねェ」
「わっ……わァ……!」
「ちいさくてなんか可哀想な声を出してるな、ムル君が」
「……しかし、あんな使い方はかなり限定的なはずでは……?」
 マナセの指摘は正しい。ムルヘルベルが恐怖のあまりわずかに身体をそらすと、再び動いた拳/爪/ヌンチャク/角が眼の前をビュン!!
「ひぃ~っ」
 ムルヘルベルは腰を抜かしてへたり込んだ。縁貴は笑っている。外道かな?(※ツッコミばかりだったところに久々に自分らしいことが出来て楽しかっただけ)
「お、おぬ、オヌシ! オヌシオヌシオヌソ!!」
「落ち着いて賢者さん、恐怖のあまり口調おかしいことになってるからね? ほら、見なよ」
 縁貴が親指で指し示す先――肩口の向こう、どさどさと倒れるアスリートアース殺人アニマル。マナセと鴇の瞬殺コンビネーションだ!
「一瞬あれば余裕、だったろう?」
「さすがに、こんなところで後れを取るわけにはいきませんからね」
「さァすが鴇帅哥とマナセだ。食えそうな獲物の肉だけ持って帰ろうかね」
「ええ、命に敬意を忘れずにいただきませんと」
「熊肉は滋養があって美容にもいいし、カンガルーはタンパク質が豊富で脂肪が少ないらしいよ。トリケラトプスは……どうなんだろうね?」
「ワガハイはオヌシらが一番怖い……」
 心底から漏れ出した言葉だったという。

 その頃、設営班。
「はっ」
 全員分の疲労をこっそり吸い取ったもんだから、さすがに一瞬気絶していたトヲル。目を醒まし周りをきょろきょろ。
「あれ? 兄ちゃん、みんなは?」
「おはようございますトーさん。4人でしたら、今はアスリートアース殺人カラテクマとアスリートアース殺人カポエラカンガルーを狩りに行ってますよ」
「アス……え、何? 長い長い、何???」
「アスリートアース殺人カラテクマと、アスリートアース殺人カポエラカンガルーです」
「なに? なんて??? おればかだからわかんない!! ていうかなんで!?」
 珍しいことにトヲルがツッコミ役になっていた。これだけの文字数をすらすらと口に出せるスキアファールも無駄に器用だ(口が)
「どんなものかは、縁さんとムルヘルベルさんに動画撮影をお願いしましたから、きっとわかりますよ」
「兄ちゃんそんなの頼んだの? なんで???」
「せ、生態が気になって……別に月夜のない晩が怖くなったわけではなく……」
「兄ちゃん何言ってるの??? 疲れ残ってる???」
「大丈夫です、みんな正気ですからね。でもなんでなのかは俺もわかんないです」
 てきぱきと、地面に布を敷いて薪を集める雲珠が、優しい声音でトヲルの困惑を和らげた。
「だからあとは何も考えずご飯を食べましょう。そのほうがらしいですよ!」
「う、うん。そーだよね! おっかしいなあ、さすがのおれでもちょっとよくわかんなさがよくわかんなさすぎるぐらいの情報量だったからなあ」
「白いのにも|キャパ限界《オーバーフロー》って概念あンだなァ。うける」
 逢真はけらけら笑っていた。こいつ無敵か?
「かみさまはちょっとマイ・ウェイをぶっちぎりすぎでは???」
「それはいつものことだと思います」
 スキアファールは手を動かしつつ冷静にツッコミを入れた。それはほんとそう。
「いやァ、なンせここが何処かも忘れるぐらい楽しかったからよゥ。そうかァ、アスアスだったかァ。あンま気にならねェのは|地形《ロケーション》の問題なンかね」
「|好き放題《エンジョイ》してるからではないでしょうかね!」
 雲珠はツッコミを入れつつ、箱から梅シロップを取り出す。清水で割れば梅ジュースの出来上がりだ。まるでタニシのように住環境を整えている。タニシのようにって表現どうなの???
「と、とりあえずトーさん、下ごしらえをしましょう」
「うん、いーよー! はんごーすいさん、なれてっからねー!」
 一人旅が長かったおかげか、トヲルは意外にもテキパキと食事の準備を進める。スキアファールも兄貴分らしくお手伝いだ。ようやく2章にしてキャンプらしい朗らかで平和な空気が流れる。
「あァ、そォいやこないだ虎兄さんとオシゴトしたとき、い~い|悪巧みのネタ《アイデア》もらったっけなァ、ひひ」
 その背景に|こいつ《かみさま》が居さえしなければ平和なのだが、残念ながらいるんだね。かみさまだからね。

 準備がだいたい整った頃、狩人班が戻ってきた。
「はあ、はあ……疲れた、疲れたのである……」
 ごろり。恐怖とかでぐちゃぐちゃになった賢者は地面に大の字になった。
「おつかれさんだよゥ賢者先生。|毒《のみもの》いるかい」
「おお、いただこ……ん???」
 ごくごく自然に、逢真が差し出した入れ物(※マザーハーロット姐さんが某ゲームに出演する際に使っている金のゴブレット)を受け取りかけ、ムルヘルベルは首を傾げた。
「……逢真よ」
「どしたィ、疲れてンならぐいっと一気が一番キくぜ」
「オヌシこれ毒であるよな??? なんか禍々しいオーラ立ち上っておるのわかるからなワガハイ!!!」
 その通り、ゴブレットになみなみ注がれていたのは……極彩色の、毒!!
「ひひ、そうだぜ賢者先生。だがよゥ、ただの毒じゃねェんだ」
「な、に……?」
「こいつは――超ウマい毒さ」
 さあっと風が吹き、逢真の前髪を爽やかになびかせた。

 間。

「……いや意味がわからんが!!!?!?!?」
 普通にツッコまれたし拒否られた。
「違う違う、ウマいンだよ先生。誰が呑んでも、最大級の美味に感じるはずだ。飲みすぎッと毒だし、飲みすぎなくとも毒だが」
「つまり毒ではないか!? POISON!! 有害物質!! なんで飲ませる!!!?」
「いやあ、毒自体をいじるって発想にインスピ受けてね。虎兄さんへのリスペクトってやつだァな」
「さりげなく俺の所業で出来た毒みたいに言うのやめてくれる???」
 縁貴の主張はごもっともだった。めずらしいこともあるものだ。
「俺、毒だから飲んでみななんて言う方に初めて会いました……」
「まあかみさまですからね……それにしても立派な獲物を取りましたね!」
「おー、すげーなー! こんだけ肉あったらいっぱい料理作れるぞー!」
「おふたりはもう慣れすぎて流してしまっていますね。これはこれで恐ろしいんですが」
「というかだな逢真君、ムル君に勧めるんじゃないムル君に」
 マナセはさておき、ようやく鴇が逢真を止めた。逢真はちぇ、と唇を尖らせる。
「仕方ねェ。じゃア黒髪の兄さん、あと坊。ほら、毒だぜ」
「近くに居たからってこっちにくるんですか? 飲むのを期待されてるんですかこれ???」
「ぺろっ……これは、毒!」
「警戒心なく飲むのすげェよ!」
「じゃあ僕もちょっと舐めますね」
「この流れで普通に続くのもすげェよ!?」
 縁貴はまたツッコミが続くのかと諦めた。だがその時!

 どこからともなくゴキゲンなインドBGMが流れる。そして、なぜかマナセと雲珠はサスペンダーシャツ姿に変身し、肩を組むと右足を器用に動かす激しいダンスを踊り始めたのだ!
「えっ、あっ、なんですかこれ」
「うわーっ! 美味しいと思ってたら身体が! 止まりません!!!」
「ほらみろ身体に害がなくてもトンチキな効果あったじゃないか! だいたいなんだいこれは!」
「旦那ァ、ナートゥを知らねェのかい?」
「つっつくのそこですか!? え、これ私も混ざるべきですかね???」
「兄ちゃんどうしてこの流れで自分もチャレンジしようとすんの???」
「落ち着けオヌシら! もうこの毒があるからいかんのである! だったら毒をなくせばよい! しかし捨てると絶対悪影響があるのだ!」
「じゃあ賢者さん飲めば?」
「それだ! 名案である! ごくり」
「もっと危機感を持て君たち! あとさりげなく背中押したな君!?」
 てへぺろ☆みたいな顔をする縁貴。それでも顔がいい。それはそれとして背景でムルヘルベルも踊りだす!
「安心おし、踊るだけだからよ」
「でもあの動き、絶対に筋肉痛になるやつですよ……!」
 スキアファールは戦慄した。しかしその一方で、激しい土煙を起こすダンスからは、燎原の炎と氷河が抱擁をかわすかの如き、熱き真の男のオーラを感じるのだ!
「「「ナートゥナトゥナトゥナトゥナトゥナトゥナトゥナトゥ」」」
「言語中枢までやられてるじゃないか! どうするんだこれは逢真君!」
「効果が切れるまではどうしようもねえなァ」
「あのー、めしの準備……」
 トヲルは冷めないように暖めていたしちゃんと調理もした。踊った連中はその後筋肉痛に大いに苦しめられることになったとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


●おわび
 上記リプレイにおいて、一部参加者様の三人称に重大な取り違えがあったことをお詫びします。申し訳ありません。
エドゥアルト・ルーデル
別に酒も菓子も別にいいんでござるがね食った分消費すればいいんだし
そういうぐうたらで浅ましい性根をしてるから容赦して貰えないんじゃないでござるかね?

拙者は普段からとっても優しくしてるのに優しくないと言う…心外でござるよね
アーキロギア氏をオモチ…ャのチャ…チャチャ…心を鬼にしていたがまあ拙者も鬼じゃないし
思いっきり肉を食べたい、でも太りたくない…何とかしたいでござるよね
やろうぜバーベキュー、良き筋肉には良きたんぱく質ですぞ!なりたいよね?100%中の100%
その為には狩りでござる、狩りでござるよアーキロギア氏

引き締まって脂肪分の少ない殺人動物共を狩っていくでござるよ、はい銃持って狩ってきてね
強敵を前にすると猟師の魂が勃起するだろ!!拙者?とりあえず優しく見守ってるから…おやおやおやおや

こうやるんでござるよ!生きてる牛!(ダンッ)
頭蓋の厚い動物も大体は目が弱点なのでここを狙撃するんでござるな
適度に切れ込みを入れてモツを抜き出し血をぶっこ抜く!腐りやすいモンを除去する事で鮮度を保つんでござるな



●あれっ急に正論で殴られたぞ!?
「別に酒も菓子もいいんでござるがね」
 エドゥアルト・ルーデルは、踊りすぎてぐったりしているムルヘルベルに言った。
「食った分は消費すればいいとして、そういうぐうたらで浅ましい性根をしているから容赦してもらえないんじゃないでござるかね?」
「は!!!!!?」
 ムルヘルベルは愕然とした。
「お、おぬ、オヌシが! オヌシがワガハイに!!? 正論を!!!?」
「拙者は普段からとってもアーキロギア氏に優しくしてるでござろう? そして、いつも正しいことしかしていないでござるが? すべてが『正義』でござる」
「どこの大統領だオヌシは!!!!!」
「はーやれやれ、心外でござるよね」
 付き合ってらんねえとばかりにため息をつくエドゥアルト。
「拙者はただアーキロギア氏をオモチ……ャのチャ……チャチャ……心を鬼にしていただけで」
「いまオモチャっていったな!!?」
「まあまあ、そこまでいうならやろうぜバーベキュー! 良き筋肉にはよきタンパク質ですぞ!」
「この流れで許可されても不安しかない……」
 考えてみると、エドゥアルト絡みで安心できたことは一度たりとてない。つまり詰んでいた。

「というわけで、狩りでござる。狩りでござるよアーキロギア氏」
「なんでええ!?」
 ムルヘルベルは気がつくと、銃を持たされ山の奥深くに立たされていた!
 目の前にはいきり立ったアスリートアース殺人骨法ジャイアントパンダ!!
「強敵を前にすると猟師の魂が勃起するだろ!!」
「いやあのオヌシは!? ねえ!?」
「拙者は優しく見守っておるから……拭けばいいから……」
「いやおいちょ」
「ゴワーッ!!」
「グワーッ!!」
 SMASH!! 殺人骨法炸裂! ムルヘルベルは紙くずみたいに吹っ飛んだ!
「おやおや。おやおやおやおや」
「(むくり)どこの黎明のだ貴様は!! 助け(ボカッ)ギャーッ!!」
「むっ! やるねェ……拙者でなければ見逃しちゃうね」
 助けない! 何故? エドゥアルトだから!
「オヌシあとで覚え(ドカッ)アバーッ!」
「あーもう仕方ないでござるなあ、狩りとはこうやるんでござるよ! 生きてるパンダ!(ダンッ)」
「グワーッ!?」
 エドゥアルトの頭部攻撃! 眼窩を狙撃するとジャイアントパンダは寝ちゃうみたい。
「というわけでここを狙撃するんでござるな」
「最初からやればよいではないか……」
「あとは適度に切れ込みを入れるんでござるな。そしてモツを抜き出し血をぶっこ抜く!」
 手際よく解体を始めるエドゥアルト。
「おお、さすがに手際はよ」
「しばえび……」
「なんで!? なんで代わりにしばえび入れるの!?」
「昆布です…………」
「なんで!? なんで昆布を添えるのであるか!? ていうかなんでそんなもたもたしておるの!!?」
 切り出したばかりのアスリートアース殺人骨法ジャイアントパンダ肉に謎の添え物をするエドゥアルト。その箸はもたもたしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『キャンプの夜を楽しもう』

POW   :    ゲームやお喋りに興じる

SPD   :    歌やダンスで盛り上がる

WIZ   :    満天の星空を眺める

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●そして夜がやってきた
「つかれた」
 ムルヘルベルは精も根も尽き果てていた。どこかでホーホーと鳴き声。多分、アスリートアース殺人飛び六方フクロウだろう。
「夜ぐらいは……夜ぐらいは穏やかにいきたいのである……!
 いやもうホント、マジでワガハイ酒隠してるとかないであるから! 目を盗んで飲むとかしないであるから!!」
 ムルヘルベルの言ってることがホントか嘘かはともかく、最後ぐらいまともにキャンプを過ごしたいという人もいるかもしれない。そういう人は普通にキャンプを過ごすことができる。3章だから。

 だがそうでない人は、ムルヘルベルが本当に諦めたのか問い詰めてもいいし、深夜の警備に連れ回してもいいだろう。あるいは歌やダンスも運動! という理屈でゴリ押しするのも可だ。NPCはフリー素材です(個人の感想)
シャルロッテ・ヴェイロン
(突如大音量で鳴り響くEDM!カクテルライトにミラーボール!その中で踊りまくるパリピたち!キャンプ場にあるまじき光景がここに!(ナンデ))

(で、本人はDJブースで場を盛り上げていた(【楽器演奏・パフォーマンス・ブームの仕掛け人】))
あ、起きました?つか魂胆見え見えですよあなた?てなわけでそんな気分を【ダンス】で忘れさせましょう――はい、今更「疲れた」なんてごまかさないでくださいね!そんなあなたにニューロン【ハッキング】!強制再起動!夜が明けるまで寝かせませんよー!!
(で、後日、設営費用云々がグリモア猟兵あてに請求されたという(ぉぃ))

※アドリブ・連携歓迎



●EDM! EDM! E! D! M!
 ドンツクドンツクブブンブーン。ギュワギュワッギュワイーン!
「な、なんであるかこの異様な音とカラフルなライトは!?」
 キャンプ場とは思えないEDMサウンドときらびやかなカクテルライト!
 おまけにギンギラのミラーボールまで回っていた。
「「「ウェーイ!」」」
 となれば当然パリピも現れる。パリピはEDMがあるところに集まる習性があるからだ。
「イェーイ! 次の曲いってみましょー!」
「ゲーッ!? オヌシ何をやっておるーッ!?」
 ギュワッギュワッピュピュピュピューン! シャルロッテ・ヴェイロンはヘッドホンを首に提げてノリノリでDJしていた。なんで?
「あ、起きました? ムルヘルベルさんの邪な気持ちをダンスで忘れさせてあげましょうと思いまして」
「いや待て、だとしてこの設備とあのパリピどもはどっから!?」
「ユーベルコードに不可能はないんですよ」
「いやあれオヌシのゲームキャラクターじゃな」
「はいブレインハッキング! 再起動プログラム実行!」
「アババババババーッ!?」
 無慈悲! ニューロンハッキングされたムルヘルベルは中央にあつらえられたステージに飛び乗り、非人間的BPMに合わせて激しくブレイクダンス!
「夜が明けるまで寝かせませんよー!!」
「オヌシ! オヌ……オヌシィー!! アババババーッ!!」
 ドンデッドンデッドンデッドンデッドンデッ! パワリオワー!
「「「ウェーイ!」」」
「アバババーッ!」
 ムルヘルベルに安らぎの時はなかった。パリピ怖い。彼はのちのち、そう述懐したという……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レン・ランフォード
兎肉美味かったな
さて、忍者の修行は夜が本番だ

あの山登って戻ってくるんだ、灯りなしで
ムルヘルベルには式鬼の先導と護衛と尻叩き役をつけよう

俺達は暗闇の中を妨害有りで競争だ
ま、俺の勝利は目に見えてるけどな
「「は?」」
ははは負けず嫌いどもめ「錬もでしょ」
面倒とかいってりゃいいんだぜ?「本気だされら勝てないって言ってる…」
あ?「訓練で本気とか出しませんよ…出さなくても私が勝ちますが」
お、下剋上タイムか?「下剋上なんて…自分が下だって自覚有りです?」
「れん達がいないと寂しくて泣く癖に…」「な、ないてませんし!」
というかれんお前草弄ってただろ草臭い「臭くないし…!」

「「「……死ね!」」」(UCぶっぱ)



●みんな、なかようせんとあかんよ
「さて、ムルヘルベル。行くぞ」
「え……何がであるか」
 強制ダンス地獄で大の字に寝転んでいたムルヘルベルは、レン・ランフォードが立ち上がったのを訝しんだ。
「何って、修行だよ修行。忍者の修行は夜が本番だからな」
「ワガハイ忍者じゃないからもう動かないのである」
「はははこやつめ。もちろん仕事があるから安心してくれ」
「やだー!! ワガハイ夜ぐらいはじっとしてるー!!」
「だから夜が本番なんだって」
「やーーーーだーーー!!」
 ずるずるずる。錬の腕力には抗えなかった。チビだから。魔法使いだから。ダッダダー。

 で、小さな山の麓。
「この山のてっぺんまで登って戻ってくる。それが修行の内容だ」
「ええ……ま、まさか灯りもナシにであるか?」
「? そうじゃないと修行になんないだろ?」
「だからなんで忍者の基準をワガハイにも押し付けるの???」
 錬は別人格のふたりを呼び出し、わかったわかったと両手を突き出した。
「じゃあ、ムルヘルベルは式鬼の先導と護衛をつけるから」
「……運動はせねばならんの? どうしても??」
「尻叩き役も兼ねてるから安心してくれよな」
「何をどう安心しろというのだ!?」
 ムルヘルベルの意見は一切聞いてもらえない。怖いね。

 錬は、ちらりと別人格たちのほうを見やった。
「俺たちは暗闇の中、妨害ありなわけだが……ハンデつけるか?」
「「は?」」
 れんと蓮の額にビキッと怒りマークが浮かんだ気がする。
「ああ、私にですか? いいですよ、そのぐらいで平等ですよね」
「……違うよね、れんにだよね」
「いや俺にだが? だって平等にやったら俺の勝ちが目に見えてるじゃん」
「「は???」」
「オヌシらこんなとこで喧嘩始めるでないわ!!」
 ムルヘルベルが仲裁しようとする! だけど聞いてない!
「まったく負けず嫌いどもめ。面倒とか言ってりゃいいんだぜ、ん?」
「それは錬もでしょう? その言葉はそっくりそのままお返ししますよ」
「本気だされたら勝てないってことだね、わかるよ……」
「あ?」
 今度は錬の額にビキッと怒りマークが浮かんだ!
「だいたい、訓練で本気とか出しませんよ。まあ出さなくても私が勝ちますが」
「そうだね、兵糧丸だね。結果がすべてだよ、まあれんが勝つけど」
「お、下剋上タイムか? がんばれよ~」
「下剋上なんて……自分が下って自覚ありですか?」
「錬はともかく、蓮はそういうのやめときなよ……れん達がいないと寂しくて泣いちゃうんだから……」
「な、泣いてませんし! もう訓練関係ないでしょう!?」
「というかれん、お前草いじくってたろ。草臭いぞ」
「く、臭くないし……! それも訓練関係ないし……!」

 3人はしばし睨み合った。
「「「死ねーッ!!」」」
「うおおおお!?」
 ガキーン! 同一人物同士で激突! 衝撃でムルヘルベルはふっとばされる!(※式鬼たちが守ってくれています)
「あとで吠え面かくなよバーカ!」
「こっちの台詞です! いいえもう我慢なりません、この場で仕留めます!」
「れんが立場ってものわからせてあげる……!」
「だから! オヌシら!! や・め・ん・かー!!!!」
 結局修行そっちのけでガチバトルをすることになり、しばらくあと3人ともムルヘルベルに正座させられ、滾々と説教を食らったそうな。

大成功 🔵​🔵​🔵​

綾倉・吉野
(では吉野、警邏に出ますよ)

ま、マステマ殿?道中殺人動物から逃げている所から記憶が途切れているのでありますが……あともう周囲も暗いでありますよ?

(いいですか吉野、この地は周囲に凶獣蔓延る敵地、誰かが見張りに立つは当然の事……それに、何事も経験ですよ吉野)

マステマ殿…解りましたであります!不肖綾倉吉野、夜の警邏に出るであります!



(……では、吉野も出た事ですし、指定UCを。夜のキャンプでの想定外のハプニングは「お約束」でしょう?何事も経験ですよ吉野。さあ夜はまだこれからです

え?「あの賢者様には最初からハプニングしか起きてないのでは?」
……さあ、どうしてでしょうね。うふふ)

※アドリブ等歓迎です



●意図されたトラブルはハプニングと言えるのでしょうか
 綾倉・吉野が目を覚ますと、あたりはとっぷり日が暮れていた。
 そもそもなんかキャンプの設営もう終わってるし。ご飯のいい匂いもする。
「……ま、マステマ殿? あのう……」
『どうしました吉野。警邏に出ないといけませんよ』
「いえ、その……道中殺人動物から逃げているところから、記憶が途切れているのでありますが……」
 さすがの鈍感娘も、これだけ違和感があると気になるらしい。
 マステマはしばし黙った。どう言い訳したものか、沈思黙考する。
「周囲も暗いでありますし、一体何が……」

『いいですか、吉野』
「えっ。は、はいであります」
 マステマが神妙な声で口を開いたので、吉野はピシッとかしこまった。
『この地は周囲に凶獣蔓延る敵地、一切油断は出来ません』
「敵地だったのでありますか!? 野営地だったのでは!?
 というかマステマ殿、質問の答えになっていないでありますが!?」
『聞きなさい吉野。凶獣から実を守るために必要なことはなんですか?』
「そ、それは……」
 マステマの有無を言わさぬ強い語気に、吉野は言いくるめられてしまう。
「やはり、誰かが見張りに立ち、安全を確保すること……でありましょうか」
『そうです。誇り高き學徒兵が率先して矢面に立たずにどうするというのです』
「いやあのそれはまったくもって身が引き締まる思いなのでありますが、私が言いたいのは記憶が途切れていることで……」
『何事も経験ですよ、吉野。この夜の平穏は、あなたの双肩にかかっています』
「……わ、私の双肩に……!!」
 吉野は電撃で打たれたような思いを味わった。
 誰かがやらねばならぬなら、己がやらずしてどうするか。
 責務を果たさずして何が學府の兵か、何が召喚士か!
「マステマ殿……わかりましたであります!」
 ビシィ! 吉野は気をつけをして敬礼した。
「不肖、綾倉・吉野! 夜の警邏に出るであります!!」
『それでこそ私の吉野です。期待していますよ』
「はい! どうか見守っていてくださいであります!」
 マステマは満面の笑みを浮かべた。この娘、ちょろいなっていう笑みだった。

 一方その頃、キャンプ地からほど近い林の中。
「はぁ~、なんでワガハイがあんな説教などせねば……」
 要らん仕事を押し付けられたムルヘルベルは、げんなり顔で戻る途中だった。
「あっ、ムルヘルベル殿! こんばんはであります!」
 ちょうどそこへやってきた吉野は、手を振りながらムルヘルベルに駆け寄る。

 が、その時。吉野は何かをぎゅむりと踏んでしまった。
「ん? なんでありますかこの妙な柔らかい感触は……?」
「おお、吉野ではないか。何をしておる……の、だ……?」
 ふたりは、夜の闇とは違う何かが自分たちを覆っていることに気づいた。
 恐る恐る振り向くと……そこには、吉野に尻尾を踏まれてまどろみから目覚めた、アスリートアース殺人ボクシングヒグマが!!
「ゴアアアアア!!」
「「ギャーーーーー!!」」
 デカイ! そして恐ろしい! アスリートアース殺人カラテクマの3倍近い大きさだ! コワイ!
「何をやっておるか吉野ーーー!!」
「違うであります不可抗力でありますぎゃああああ!!」
「ゴアアアアア!!」
 ふたりは逃げる! ヒグマが追う! 逃げる! 追う……!
『いやあ、本当に飽きさせないですね。それでこそ吉野です』
 マステマは満面の笑みを浮かべていた。これだからやめらんねえという至極の愉悦を感じていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シルキー・アマミヤ
そんな危ない生き物が居るなら監視をしっかりしないと★
引き続き|ことりちゃん《監視ドローン》で周囲を警戒、データリンクしたロボットビースト達に周囲を警備しながら“お掃除”と“後片付け”をさせておくよ★

後は見回りかな★(暗闇に居たら幽霊とかに間違えそうな程度にホログラムの光量を落とす。節約?いいえ、隠密を意識したつもりです。歩行音?気にしちゃだめだぞ★)

あれー?ムルヘルベルさん喉乾いたのー?はい、じゃあ特製ドリンク~★
これ一杯で空腹とか眠気とか全部とんじゃうし、飲んだ回数だけ致命傷を防いでくれるよ★これで夜間運動中に殺人アニマルとかに襲われても大丈夫だよ★(親切心)

※アドリブ・ネタ等歓迎です



●1UPするドリンク……ってコト!?
「わ、ワガハイ、もうやだ……」
 よろよろ、ばたり。猟兵たちに引きずり回されヘトヘトになったムルヘルベルは、もう立っていることも出来ずに倒れた。
 しかし、まだ彼はキャンプ場に戻れていない。あたりは暗闇だ。
「い、いかん、ワガハイの身体がもう動かぬ、死ぬ、ガチで……」
 ムルヘルベルの意識が遠のいていく。ざんねん! 彼のぼうけんは ここでおわってしまった……。

 ……と、思いきや。
「……ん?」
 地面に倒れ伏していたムルヘルベルは、かすかだが戦闘音らしきものを聞き取り、己を強いて起き上がろうとした。
 どこかで誰かが戦っている。そしてこれはおそらく、アスリートアース殺人アニマルの断末魔……。
「た、助けが来たのであるか? 一体誰が……」
 ムルヘルベルは顔を上げた。そこにぼんやりと浮かび上がる……人の、顔!
「ッッッキャーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
 ムルヘルベルは叫んだ! 心臓が口から飛び出しそうな勢いで!
 彼は大のビビリなのだ! 賢者名乗ってるくせにね!!

『もー、うるさいぞムルヘルベルさん★せっかく"お掃除"したんだから★』
 だがその人の顔は、間違っても幽霊などではなかった。
「……お、オヌシ、もしかしてシルキーなのか?」
『誰がどう見ても美少女シルキーちゃんだぞ★疲れて見間違えちゃったかな★』
 なるほどたしかに、暗闇から現れたのはシルキーのホログラムだった。
 なぜか光量が普段より少ないせいで、ぼんやりとしていたのである。
『このあたりの危ない生き物はみーんな"後片付け"しておいたから、安心してね★』
「あ、ありがとうである。でもそんな驚かすようなやり方はよくないのだ……」
『え~? 変な意図なんてないけどなあ★やっぱりシルキーちゃんの美少女ぶりに、心臓が跳ね上がっちゃったんじゃない?★』
 シルキーは超絶ポジティブシンキングだった。有無を言わさぬ口調とも言う。

『それはさておきムルヘルベルさん、はい★』
 疲れ果てたムルヘルベルの前に差し出されたのは、本体からジョバーと出てきた謎のサイバードリンクである。
「え、なんであるかこれ」
『昼間に飲んだやつとは別のレシピで調合した栄養ドリンクだよ★
 これ一杯で空腹とか眠気とか全部飛んじゃうし、効果抜群だよ★』
 ムルヘルベルは恐る恐るグラスを受け取った。
 正直歩くこともままならないので、ええいままよと飲みたいところだったのだが……。
『しかも、飲んだ回数だけ致命傷を防いでくれるし、高揚感も与えるし、痛みや恐怖心や狂気とも無縁になるからいいことづくめだね★』
「いいことづくめすぎて逆に怖いわ馬鹿者!?」
『え~~~?★ ほらほら、いいから遠慮せずに飲んで飲んで★』
「やめて! ワガハイ怖い! オヌシが善意でやってるのわかるからなおさら怖ガボボーッ!」
『そーれ★イッキ★イッキ』
 シルキーは一から十まで純粋な親切心でやっていた。
 しかし身も心もサイバーザナドゥナイズされた彼女のやることは、常人には計り知れない負担を与えてしまうのである。
 その後、目がギンギンに冴えたムルヘルベルが、「この世の真理を解き明かしたぞ!!」と言いながら山を走り回ったのは、無関係ではあるまい……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

五百崎・零
今までのも穏やかだと思ってたんだけど、違うの?
え、だって、誰も死んでない。
………?
いまいち理解できないんだけど、キャンプって自分やったことない、というか記憶にないからどんなのが普通かわからないや。
なにすればいいか教えてくれません?

テントの設営、焚き火の準備
焚き火のパチパチと爆ぜる音、なんだか癒やされる。
簡単に準備できると思ってたけど、本格的にやろうとすると結構難しい。
こうやって身体使うのもいいもんですね。

……まあ、でもやっぱり運動するなら模擬戦が一番では?
だって、運動したいから来たんですよね??
じゃあ、最後にもう一戦!
そうと決まれば……クク、ヒャハハハ!楽しくヤろうぜ!!ギャハハハハ!!!



●辞書をご用意したほうがいい感じですか?
「誰も死んでないですよね」
「は?」
 五百崎・零は、ムルヘルベルと互いにきょとんとした顔で首を傾げた。
「いえ、ですから。今まで誰も死んでないから、穏やかな一日でしたよねって」
「……は???」
「……?」
「えっオヌシマジで言っておるの!!?」
 零が心の底から不思議そうな面をしているので、これがボケとかでなくマジだということにムルヘルベルはようやく気が付いた。
「いやあ、キャンプって自分やったことが……ああ、この場合は記憶にない、かな? とにかく普通にわかんないんですよね」
「ううむ、そうであったか。デッドマンはそういうこともあるのやもしれぬな」
 真顔で言われると、ムルヘルベルのほうが立つ瀬がなくなった。
 零が(おおよそブッ飛んでるのはともかく)根がいい人なのは、ムルヘルベルもよく知っているからだ。

 そこでムルヘルベルは、オーソドックスなキャンプのイロハを零に実演してみせることにした。
「へぇ、これが焚き火ですか……木材も選定基準があるなんて知りませんでした」
「ワガハイも慣れているわけではないのだがな。そうかぁ、オヌシはこういうことを全然したことがないのであるなあ」
「ええ、正直簡単に出来ると思ってましたけど……」
 零は大きく伸びをした。夜が更けつつあったが、近くの薪を探してくるだけでも、なかなかいい運動である。
「本格的にやろうとすると、結構難しいですね。こういう身体の使い方もいいもんです」
「そうであろうそうであろう! オヌシもこれを気にもう少しまともな生活を」
「でもやっぱ運動なら模擬戦が一番ですよね」
「いまワガハイいい感じの話でオトそうとしておったよね!!?」
「だって、運動したいから来たんですよね??(チャキ」
「そうだけど! そうだけど銃を取り出しながら立ち上がるでない!!」
「せっかくだし! リフレッシュ出来たところでもう一戦いきましょう!!」
「オヌシがやりたいだけだろそれぇ!!!」
 ムルヘルベルは逃げ出した! 零は「ああ鬼ごっこ形式でやるんだな」と都合のいい解釈をしにやりと笑う!
「クク、ヒャハハハ! 楽しく|戦《ヤ》ろうぜ! ギャハハハハ!!」
「もーーーーやだーーーーー!!!」
 ムルヘルベルの泣き言が山間にこだました。あと、銃声も。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ザガン・アッシム
(アドリブ及び連携歓迎)

(※前回余った昆虫はザガンとモラ・カーで美味しく頂きました。)

(寝息を立ててるモラ・カーの上から)ようムルヘルベル、今日はお疲れさん。

まあ明日はまた大変だろうが…それは一旦忘れて一寸一緒に飲もうぜ。

…ああ、安心しな、俺の故郷(UDCアース)にはこんなのがあるんだよ。

つ【焼酎(糖質・プリン体0)】

安酒だが、今回の趣旨に合ってるなら文句も言われねぇ…だろ?
ルールの範囲内で楽しくやる、これが減量を継続する最も効率的な方法だ。
ま、その代わりにツマミはねぇがそれは勘弁してくれや。

今日一日頑張ったんだしそれ位の権利はあると思うぜ!

明日は筋肉痛地獄だろうしな、お前さんは…(小声で)



●これを欺瞞と人の言う……
「よう、ムルヘルベル。今日はお疲れさん」
 ふらふらとキャンプ地に戻ってきたムルヘルベルに、ザガン・アッシムが声をかけた。
「おお、ザガンか……いたわってくれるのは嬉しいのだが、ワガハイはもう心も身体もズタボロなのだ……」
「大変そうだな。つーかなんださっきの銃声は」
「模擬戦をしていたのである」
「模擬戦……???」
 その割にはムルヘルベルがボロボロなので、ザガンは首を傾げた。
 よもや、その対戦相手がちょっと頭のネジ飛んじゃってるバトルジャンキーで、「死ななきゃそれは実質模擬戦」ぐらいのことをケロっと言い出す輩とは普通は思わないものだ。彼の反応も、さもありなん。

「はああ……もういっそ酒でも飲んでゆっくりしたいのである……」
 ムルヘルベルの何気ない嘆きに、ザガンはニッと笑みを浮かべた。
「それならちょうどいいのがあるぜ」
「ちょうどいい……?」
 ムルヘルベルは疲れ切った顔で見返す。
「そうは言うがなザガンよ、ワガハイが酒に口でもつけようものなら、間違いなく誰かがすっ飛んできてワガハイを罰するに違いないのである」
「お前さんなんか重めの罪でも犯したのか??」
「ワガハイが知りたいぐらいだがぁ!?」
 ムルヘルベルは逆ギレした。でもまあ猟兵相手ならそういうこともよくあるよね(個人の意見)。

 しかしそんなムルヘルベルに対しても、ザガンはニコニコと笑っていた。
「ま、なんにせよ安心しな。ようは太るような酒じゃなきゃいいんだろ?」
「は~? 何を言っておるのだオヌシは、この世に太らない酒があるわけ……」
「実はなぁ……|俺の故郷《UDCアース》には、こんなのがあるんだよ」
 ごとり。ザガンが取り出したのは……焼酎!!
「……そ、そう来たかぁー!?」
 ムルヘルベルはUDCアースの食事情に詳しい(よくデパ地下でスイーツとか買い集めてるから)。それゆえ、ザガンが焼酎をなぜ勧めたのかを頭脳キャラらしくすぐに理解した。
「そう! 焼酎は糖質・プリン体0! いわゆるゼロカロリー系の飲料みてぇな詐欺広告じゃねえ、マジの0だ!」
「た、たしかにビールやワインに比べればそうであるが……」
 ムルヘルベルは言いかけた。「いや、それはそれとしてアルコール自体にカロリーがあるじゃん」と。しかし彼は考えた。ここでそんなことを言っても、自分が苦しむだけだと!
「ルールの範囲で楽しくやる。これが減量を継続する、もっとも効率的な方法だ」
 ザガンはにやりと笑みを深める。
「安酒だが、趣旨には合ってる。文句も言われねぇ……だろ?」
「……そ、そうだな! そうであるな!!」
 ムルヘルベルは赤べこみたいにこくこく頷き、ニコニコ笑顔で紙コップを差し出した。
「ワガハイ頑張ったであるよな!」
「ああ、頑張った。お前さんは今日一日頑張ったさ」
「それくらいの権利はあるはずなのだ!」
「いやそれはマジでな。むしろもっと贅沢していいと思うけどな!」
 ザガンは自分の紙コップにも焼酎を注ぎ、乾杯した。
「「かんぱーい!!」」
 ぐびぐびぐび。星を見上げながら飲む酒の……旨いこと!!
「ああ……酒だ、酒である、酒ってこんなに美味かったのであるか!!!?」
「今は堪能しな、ムルヘルベル……」
 だって明日、筋肉痛地獄だろうしな――そんな野暮な一言は飲み込む、空気の読めるザガンだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱酉・逢真
【肉食】
心情)|依頼受けた《オープニング》時から思ってたが、川崎でなく川越じゃねェかな。それはそれ、夜ンなったので俺は機嫌がよろしい。たっぷり楽しませてもらったしなァ。なンでコレ以上、トンチキするつもりはないよ。賢者先生もお疲れだしなァ。のんびり急速に勤しもう。
行動)オヤ虎兄さんが音頭を取ってくれるのかい。ならお任せしようかねェ。ひひ、猟兵としての俺のチカラ、あくまで"毒"だからねェ。悪酔いするのンしか作れンさ。坊らァはハナシに夢中かね。マア神酒系ならある、眷属どもに取ってこさせよう。ホレ旦那、≪|小路《みち》≫出来たよ。神酒も届いたか。ヘイキさ黒兄さん、呑んでも寿命が伸びる程度だ。楽しいね。


茜崎・トヲル
【肉食】

みんなー!ごはんできたよー!
あ、ムーさんには玄米ご飯ね!はい、飯ごう!
ごはんは大事なので、とんちきとかなしで!ゆっくりたべよー!さすがに疲れたし……(本音)

んー?肉たたき!まっかせてー!!いま柔らかくするね!(いつものハンマー)(手加減してたたく!)
シンプルにステーキとー、野菜炒めとー、あ、チーズあんの?じゃー、さいごリゾットにしよっか!肉も味噌チーズ焼きできるよ!
はい、マーさん!(トリケラの串焼きを渡す)
兄ちゃんもむずかしー話はあとにして、いっぱい食べてねー!

たき火をかこんで、みんなでゆっくりして、お酒はいってきたら歌っちゃったりして
空もきれーだし、いい思い出になりそーなよかん!


深山・鴇
【肉食】
飯の時間にふざけてはいけない、いいね?(力強い圧)
飯を食い終わった後?それは別にいいかな、食い終わった後だし(ガバ判定)

肉塊を斬る為の刀じゃないんだがね(蛇之麁正で切り分けつつ)
筋肉が発達してるんだな、煮込み料理なんかにいいかもしれないね
茜崎君が柔らかくしてくれるなら…肉叩く用のハンマーじゃないんだよなぁそれ!

肉も米も美味しいね、ところで此処にチーズがあるんだが(
収穫祭のチーズを持ち出し)

いやぁ満足満足…え?逢真君がトンチキしない…?
(ムル君が疑心暗鬼に囚われそうだなって顔)
寿命…三年とかならまぁ?
なら、うちの冷蔵庫への小路開いてくれるかい?
ビールがあったはずだからね(どこでも扉~)


雨野・雲珠
【肉食】
お、俺の知ってる肉叩きと違う…!

ぎににに…(肉を頑張って食いちぎり)
んっ。おいしいですねえスーくん!
トヲルくんがお料理上手だって、俺初めて知りました
知り合って日の浅いマナセさんだけじゃなく、
みんなまだまだ知らない一面がある…
…チーズ?(お皿待機)

あっ。それ、よいですね
どうでしょうムルへルベルさま、
さらに俺の箱があれば重量無制限です!
なにも悪さをしようってわけじゃないんです。
豊かな世界で儲けを出して、
医療水準の低い世界に貢献したり…
まず自分の世界が先?たしかに…(むずかしい顔)
…リゾット?(再・お皿待機)

寿命が三年伸びるって十分すごいですから!
ああ、深山さんまでどこでもドア扱いして…!


スキアファール・イリャルギ
【肉食】
食事は大事な時間ですからね
その後どうなるかは分かりませんが(考えを放棄

わぁ、刀とハンマーでの豪快な処理…
私も炎は出せますが(※属性攻撃)調整が難しいのでやめときます

まさかトリケラトプスやコアラを食する日が来るとは
…むむ、顎が鍛えられる硬さですが美味しい、さすが殺人アニマル
トーさんの手料理がとっても美味しいですねぇ
深山さん、それは絶対に合う奴じゃないですか、戴きます

おや気になるお話が
厳しい環境の世界を少しでも豊かにできたらいいですよね

神酒を気軽に取ってこれる環境なのが凄い…
とても気になりますが大丈夫です?
飲んだら討伐されたり蒸発したりしません?
…寿命が伸びる?
あぁ、それは有難い効果ですね


結・縁貴
【肉食】
疲れたし普通に飯食おうよ
肉塊を切って…硬!どうなってんだよアスリートアースの動物!
わァ鴇帅哥の刀、流石の斬れ味
肉叩いて柔らかくしてほし…それでやる!?
血抜きが良かったからか味は悪くないな
小雲珠もマナセも歯ァやられないでね
トヲル帅哥の料理も|好吃《うまい》な
俺にもリゾット頂戴

賢者さん今日は大変だったね、楽しく飲み食いしてよ
酌もするね
かみさま、酩酊する毒って出ます?
謝謝您…、…神酒だこれ…!
何でもないよ、一杯どうぞ
知りたがりなスー帅哥、怪奇人間が神酒飲むとどうなるか気にならない?

時に賢者さん、他世界間で品々を運んで売買するの如何思う?儲かると思うんだよね
ダメ?
ちっ…付けこむには早かったか…


マナセ・ブランチフラワー
【肉食】

はい、夜はゆっくりご飯ですね
料理はあまり得意でなくて、お手伝いできることは少ないですが、食器の準備などします
お肉が沢山ですし、UCで焼ければ便利ですけどね。あれは制御が難しいので残念です

お酒ですか。……ん、それって普通の人が飲んでいいやつですか?
あと、この世界ではお酒は何歳からですっけ。僕は一応やめておきましょうか
皆さんのお話を聞きながら、ご飯をゆっくりいただきます(物静かにめっちゃ食う)
トリケラトプスどれですか?一番気になってまして……
あ、固いけど意外といけます。トヲルや鴇の腕が良いんでしょうね

こうしてわいわいするのは、やっぱり楽しいものですね
皆さん、誘ってくれてありがとうございます



●川崎も川越も一緒ってことでなんとかなりませんか? ならない? そっかぁ
 朱酉・逢真はニコニコ笑顔だ。なにせ夜になったので。
 いや待て、よく考えてほしい。逢真は|朝《1章》からこっち、ずっと笑顔だったのではないか? いやまあ常に笑ってるけどもこの|人《かみ》。
「今日ォはたっぷり楽しませてもらっちまったなァ。ひ、ひ」
「オヌシはいつだってどこでだって|好き放題《エンジョイ》してるであろうが……」
 ムルヘルベルは心底呆れた顔で逢真を見た。
「おいおいムル君、さすがに逢真君も真面目な時は……」
「……深山さん? どうして黙ってしまったんですか???」
 雨野・雲珠はおろおろした。この中で逢真をフォローしてあげられそうなのは、|信徒《第一被害者》である深山・鴇だけだろうと期待してたので。
 だが鴇はこれまでにねえぐらい眉間にシワ寄せてん~~~~~って感じの悩ましーい唸り声を喉から漏らしているし、雲珠がフォローできるかというと難しかった。なぜなら雲珠はナートゥのダメージが大きかったから。
「まァあれだよ、疲れたし普通に飯食おうよ。かみさまはほっとこう」
「とりなしてるように見えて地味に失礼ですね縁」
 結・縁貴はマナセ・ブランチフラワーの顔を、愕然とした表情で見つめた。かみさまに不敬なんて概念ある!? とでも言いたげな面だ。てか表情に書いてある。そういうことになった。
「今日も皆さん仲がよくてなによりですね、トーさん」
「そうだね兄ちゃん! なんか疲れてたせいでごっちゃんなってたけど、スーさんが兄ちゃんでも案外しっくりくるかもなー!」
 微笑ましいねえって感じの穏やかスマイルのスキアファール・イリャルギと茜崎・トヲル。いやもう本当2章は失礼しました申し訳ありません。
 でもそれはそれとして、どちらかというとこの白黒コンビがムルヘルベルを苦しめてきた(※無邪気かつ無自覚)回数のほうがずっと多いので、別に彼らが常識人でまともな側ということはない。一切ない。断じて、ない。

 かくのごとく|3章だから色々もういいよねみてえな許されざる空気《なごやかでにこやかな雰囲気》の中、一同はご飯を食べることに。
「調理を始める前に、ひとつ言っておきたいことがあるんだ」
 鴇は(逢真のフォローを諦め)神妙な面持ちになった。
「なンだい旦那ァ、あらたまって」
「飯の時間にふざけてはいけない。いいね?」
「なンで俺のほうをガン見しながら言うンだい旦那ァ」
「いいね?」
「これまでにねェぐらい圧かけてくンなァ今日は」
 機嫌がいい逢真はにこやか笑顔で鷹揚に頷いた。ムルヘルベルは「お前そういうとこだぞマジで言いたいことが山ほどあんだぞ」的な顔をしたが、そんなことを言い出すと絶対に話がややこしくなるので、雲珠が頑張って裾を掴んで止めていた。気苦労が絶えませんね。
「そうですね、食事は大事な時間です。まあそのあとどうなるかはわかりませんが」
「フラグ立てんのやめようスー帅哥??? 怪奇人間が言うの洒落ンなってないからね???」
「これ以上何かが起きるって、もう隕石が落ちてくるぐらいしかないんじゃないでしょうか」
「マナセなんで具体的な例出して解像度高めてんの??? 落ちてきかねねえよこの流れ」
「今日はいろんなことあったもんなー! おれキャンプがこんなハチャメチャなんだってしらなかったー!」
「トヲルくん、今日のことを例にしてはダメですよ、いやもう本当に」
 縁貴がさっそくツッコミ過多を食らって死にそうな面をしていたので、ムルヘルベルをなだめた雲珠がサポートに入った。気苦労が絶えませんね。
「ほら、ね! 言霊とかそういうのはやめましょう! ご飯に集中すればきっと平和に終わりますよ! かみさまも笑顔でいらっしゃいますし!」
 雲珠はパンパンと手を叩いて、流れをなんとか食事に持っていく。飯を作るだけで一苦労である(かけあいの文量的な意味でも)
「僕なんとなくわかってきましたよ。それが逆に怖いっていうパターンですよねあれ」
 マナセはすっかり一同になじんでいた。こんな気の狂ったキャンプについてこれる上にもう熟練のメンバーみてえな自然な面が出来るのは才能としか言いようがない。
「マーさんすっかり馴染んだなー! よーし、みんなでなかよくご飯だー!」
「さすがですトーさん、その勢いで平穏無事なご飯の時間にしましょう!」
「ワガハイ勢いでトラブル誤魔化そうとする食卓、100年以上生きてきて初めてなんであるが???」
「きにしないきにしなーい! かみさまが笑顔のうちにご飯たべよ、ね!」
「それは全面的に賛成であるけども」
 ムルヘルベルは言いたいことが100も500もあったが、過去の遺恨は水に流すことにした。でないと怨念返しの繰り返しになってしまう。誰かが「それでも」と言い続けなければいけないんだ……!

 ともあれ、一同はせっかくなので、あの恐るべきアスリートアース殺人アニマルの肉を使って料理を作ることに。
 ん? 一部食用なのか疑問なのがいたし、そもそも霊長類がいなかったかって? 恐竜がいたのにいまさらじゃない?
 まあそういう話ではなく、アスリートアース殺人アニマルはアスリートアース殺人アニマル目なので何も問題はない。見た目が既存のアニマルに似てるだけで完全に独立した生態系なのだ。こんなこと言い張ってて大丈夫なのかいまさらながら不安になってきましたが、まあ本当にいまさらなのでゴリ押ししていきましょう。ゴリラだけに。ゴリラだけに!

 カメラを調理風景に戻そう。
「あれだな、まずはこの肉を切り分けるとこからじゃない?」
 縁貴はそう言って、おもむろに肉塊を切ろうとしてみた。びくともしねえ。
「硬! かった!! どうなってんだよアスリートアースの動物!!」
「虎兄さん、ありゃただの動物じゃねェぜ。アスリートアース殺人アニマルさ」
「そこそんなに重視するポイントなの!!?」
 なぜかしたり顔でツッコミを入れてきた逢真に(よりにもよって逢真にツッコミを入れられたことのショックも相まって)逆ギレする縁貴。
「まいりましたね。さすがにこのサイズの塊を焼くわけにはいきませんよ。僕の|術式《ユーベルコード》は制御が難しくて……」
「この中で、一番「斬る」ことが得意な方というと……」
 じーっ。雲珠は鴇を見つめた。自然と、残りの面子の視線も鴇に集まる。
「……肉塊を斬るための刀じゃないんだがね」
 鴇は苦笑しつつも愛刀を取り出した。
「実際、生きているものを斬るのと、物を斬るのとでは、力の入れ方がまったく違うと聞いたことがありますね」
「へー、スーさんものしりだなー! おれいつもぶったたいてばっかだからわかんねー!」
「まあワガハイら戦いが仕事みたいなところがあるのでいまさらではあるのだが、そんな明るい笑顔で物騒なこと言うでないぞトヲルよ」
 呆れ顔のムルヘルベルがツッコミを入れた。
「あいにく俺は、そこまで居合を究めているわけではないからね。ストイックな武道家でもない、ようは手段のひとつとして用いているだけさ」
 などと言いつつも、鴇はすらりと肉塊の筋に刃を入れ、驚くほどの滑らかさで塊を捌いていく。
「さすがのお点前ですね。真の達人はかようなものですか」
 マナセは素直に感心した。けして誇らず、驕らず、されど卑下もしない。それは己の鍛え上げた技と、先人に対する敬意があらばこそ……奥ゆかしく好ましいものだと聖者は受け止めたのだ。
「いい流れですが、これで捌いてるのがアスリートアース殺人アニマルの肉なのが残念ですね、本当に」
「スー帅哥はなんでそういう台無しなこと言っちゃうの???」
「いやあ、言わずにはいられなかったと言いますか……」
「褒めてねェからね」
 縁貴のツッコミ、なぜかてれてれしながら頭をかくスキアファール。
「じゃあおれが褒める! スーさんはすごい!」
「人を褒めるのはいいことですが、流れがめちゃくちゃですよトヲルくん!」
「肉を捌くのすら落ち着いて進まんのかこの集まりは……」
 誰かがボケれば誰かがツッコむ。ムルヘルベルの呆れ顔は固定されたかのようにそのままだった。

 鴇の見事な手際で肉を捌いたあとは、トヲルの怪力の出番だ。
「斬ってみてわかったが、筋肉の発達具合がすさまじいな。殺人なんてあだ名されるだけはある。ところで茜崎君、肉叩き用のハンマーは」
「んー? あるよ! はいこれ!」
 ぶおん! トヲルは普段遣いのハンマー(普段遣いのハンマーって大工さん以外に使うことあるか?)を肩に担いだ。
「肉叩く用のハンマーじゃないんだよなぁそれ!!」
「まあ、それを言い出したら鴇帅哥の刀も肉捌く用の刃物じゃないし……」
「規格外の動物相手には、調理も規格外で臨まねばならない。つまりそういうことですね、縁」
「同意求められてるけど、どういうことなのか俺にもわかるように言って!!?」
 真顔でボケるマナセに、こいつこんなやつだっけ? と不安感が加速する縁貴。この独特の空気が彼の何かを変えてしまっているのかもしれない。
「いいですかトーさん、絶対にミンチにしてはダメですよ、絶対にダメですからね!」
「今日のスーくんはやけにフラグを立てに行きますね! でもホントにダメですからねトヲルくん!!」
「だいじょーぶだいじょーぶ! 手加減してたたくから、まっかせてー!!」
 スキアファールと雲珠のネタ振り……もとい注意を受けたトヲルは、きちんと宣言通りいい感じに力を調節し、びったんびったんと肉を叩きまくった。
「ひひ、まるで新年の餅つきみてェだなァ。気が早くねェかい」
「そもそも君の出番はどちらかというと大晦日のほうだしな」
「そォなンだよ、旦那。賢者先生が毎年のごとく妙な案件引っ張ってくるモンだからなァ」
「え、ワガハイがトラブル持ち込んでるみたいな扱いされておる???」
「グリモア猟兵にありがちな誤解です、ここは粛々と受け入れるべきかと……」
 マナセは物言いたげな顔のムルヘルベルの肩に手を置き、ふるふると首を横に振った。
 そう、けしてグリモア猟兵が、好き好んでトラブルを持ち込んでいるわけではない。グリモアの予知は猟兵側で選べるようなものではなく、それゆえに時として残酷な使命を託さなければならないこともあるのだ。
 だからグリモア猟兵は被害者。むしろかわいそうな立場。もっと労られていい。この依頼がムルヘルベルのめちゃくちゃな提案から始まってるとかそんなことは知らない。知らないったら知らない。

 閑話休題。
「じょーずにできましたー!!」
 ぱぱらぱー。柔らかくなった肉を、さっそく手際よく調理していくトヲル。マナセやスキアファールといった、調理の手伝いが難しい面子は、その間に食器を用意したりと細々した仕事を分担する。
「お疲れ様ですトヲルくん! ……ってこれは、まさか……ステーキ!?」
「うん! しんぷるいずべすとってね! あとは野菜炒めとー」
「……実はここに、チーズがあってね」
 スッ。鴇は収穫祭で手に入れたチーズを取り出した。
「あ、チーズあんの? じゃー、さいごリゾットにしよっか! 肉も味噌チーズ焼きできるよ! おいしーよー!」
「やっぱりトヲルが炊事を先導しておるの、ワガハイものすごい違和感あるのだが……」
「まあまあ、トーさんの手料理の美味しさはすでに証明済みなわけですし」
「問題は肉そのものの味だよなァ。血抜きはキチンとしたから中ったりはしないと思うけど、小雲珠もマナセも歯ァやられないように気をつけてね」
「お気遣いありがとうございます、縁。ですが見た限り、心配はなさそうですよ」
「俺も深山さんのようにむきむきになれば、無敵の咬合力が……!」
「その言い方だと、俺が鉄をも噛み砕く咬合力の持ち主みたいな扱いされそうだからすごく複雑な気分になるな」
「ひひ……首周りバキバキの旦那も見てみてェな、絶対面白ェし」
「逢真君は俺をどうしたいんだ???」
 などとわいわい騒ぎつつ、調理を手伝ったり、出来たものをよそっていったり、飲み物を用意したり。
 一同に十分な量の食事が行き渡ると、逢真を除いた全員が両手を合わせ、誰ともなく声を揃えた。
「「「いただきます!」」」

 そして、がぶり。
「……むむ、やはり顎が鍛えられる硬さ。ですが……美味しいですね!」
「血抜きがよかったからか、悪くないな。特にトヲル帅哥の料理、|好吃《うまい》!」
 スキアファールと縁貴は顔を見合わせ、トヲルにぐっとサムズアップした。トヲルはふふん、と得意げに胸を張る。
「ぎににに……(ぶちん。もぐもぐ)んっ。おいしいですねえ! ね、スーくん!」
「はい、とても美味しいです。調理してくれたのがスーさんだからこそですね」
 頑張ってステーキを噛みちぎった雲珠は、目をキラキラさせてこくこく頷いた。
「褒めてくれてありがとー! リゾットもつくるかんねー!」
「酒、欲しくなるであるなあ。なあ! 欲しくなるのではないかオヌシらも!!」
「そうだねムル君。ちなみに俺は普段からトレーニングをしてるから、今呑んでも問題はないわけだ」
「この中で呑むと(他の一部の猟兵がすっとんできてスパルタトレーニングを開始するので)問題があるのはおひとりだけですね」
「畜生ォめえ!!!!」
 どこかのちょび髭のように怒り狂うムルヘルベル。現実は冷たかった。

「まあまあ賢者さん、今はいいじゃん。仮に誰かがすっとんできても俺らがうまくとりなすから、ね」
 すると縁貴がするりと隣に座り、ニコニコ笑顔で酌を始める。
「え? え? 今日は酒呑んでもよいのであるか!?(もう焼酎呑んだけど)」
「今日は大変だったしさ、楽しく飲み食いしてよ。……ところで神様、酩酊する毒って出ます??」
「縁、それは酒というより……」
「まあまあマナセ。まあまあまあまあ」
 縁貴はニコニコ笑顔のまま、マナセの台詞を遮った。満面の笑みに「いま俺は何かを企んでいます」と書いてある。だがスキアファールや雲珠は肉料理とチーズのコラボレーションに夢中で聞いちゃいねえ!
「猟兵としての俺のチカラ、あくまで"毒"だからねェ。悪酔いするのンしか作れねェんだ、虎兄さん」
 などと言いつつ逢真は裂け目を作り、眷属を遣わした。するとあっさり酒が出てくる。ただし神酒だが。
「謝謝您……いいのかこれ? さすがの俺もちょっと躊躇すんだけど神酒とか」
「そもそも神酒を気軽に取ってこれる環境なのがすごい……」
「なんならうちの冷蔵庫に|小径《みち》繋いだり出来るんじゃないか? 実はビールを冷やしててね」
「それは醤油を取ってもらうぐらいの気軽さで頼んでいいことなんですか……?」
「はいよ旦那、繋がったよゥ」
「しかも繋いでしまうんですか……?」
 さすがにこの怪現象に慣れてないマナセは若干面食らった。なお、彼は19歳なのでお酒は飲めないし自制している。聖者は法律を守るものなのだ。

 なんやかやわいわいと騒がしく楽しい食事会。酒が入れば成人組はいよいよ盛り上がり始める。
「ぷひ~。旨い酒に旨い飯、最高であるなあ。ワガハイ、生きててよかったなあ!!」
「うんうん賢者さん、もっと楽しく飲み食いしていいんだよ、さ」
 縁貴はニコニコ笑顔で酌をする。しまくる。
「……あの、飲みすぎなのでは? というかそれ、クリスタリアンの方が呑んでも大丈夫なやつなんです……?」
「怪奇人間だとどうなんのか気にならない? 確かめてみる?」
「とても気になりますが、討伐されたり蒸発したりしないですよね」
「ヘイキさ黒兄さん、呑んでも寿命が伸びる程度だからよ」
「君の場合その単位が洒落にならなさそうなんだが……死にたいわけじゃないが不老長寿になっても困りものだろう」
「じゃあ、深山さんはどのぐらいなら許容出来るのでしょう」
「そうだなあ……3年ぐらいならまあ?」
 きゅぽん。ビール瓶の栓を抜きつつ雲珠の質問に答える鴇。マイペースだ。

「ときに賢者さん」
「え? なんれあるか?」
「俺さァ、前から考えてたことあって……世界間で品物を運んで売買するの如何思う?」
「あっ。それ、よいですね」
 雲珠が食いついた。縁貴の笑顔の裏にある意図は気づいていない。
「え~? いや、それは色々とまずいような……」
「でもですよムルヘルベルさま、俺の箱があれば重量無制限です! それになにより、悪さをしようってわけじゃないんですよ!」
 雲珠の力説に、ムルヘルベルはうーむと考え込む。
「たとえば、豊かな世界で儲けを出して、医療水準の低い世界に貢献したり……」
「おお、さすがです。厳しい環境の世界を、少しでも豊かに出来たらいいですよね」
 スキアファールもうんうん頷いた。同じく、縁貴の陰謀には気づいていない。
「ふたりともむずかしーこと考えてんなー! マーさんもやっぱ、こーゆーこと考えたりする?」
「僕は自分の出来る範囲のことをまずこなすようにしてますからね。ところでトリケラトプスの肉はどれでしょう、とても気になってまして」
「おー! それいいねー、だいじだいじ! あとトリケラはこれね、串焼きー!」
 聖者組もマイペースだった。
「そうそう、つまりそういうことなんだよ賢者さん。ね」
「いやあ、でもなあ……しかしたしかにそう言われると……」
「ムルヘルベルさま、そこをなんとか!」
「私からもお願いします、きっと出来ることがたくさんあるはずですよ!」
「儲かると思うんだよね!」
「「えっ」」
 真摯にフォローしてた雲珠とスキアファールは縁貴を二度見した。
「ダメであるな(スンッ)」
 ムルヘルベルもシラフに戻った。縁貴は笑顔だったのがうそみてえな面んなって舌打ちした。
「チッ、つけ込むには早かったか……」
「オヌシサイバーザナドゥのときとかワガハイの懐に潜り込もうとしてきた前科あるのによく諦めんな!?」
「人聞きが悪いな賢者さんってば~、ほら飲もう飲もう」
「この流れで飲めるかぁ!?」
「お、俺は人のためになればと思って……」
「私も心から賛同してたのに……!」
 ぷるぷる震える純朴組。人はそうしておとなになるものなのだ(片方32歳だけど)
「まーまー、兄ちゃんとスーさんもさ、とりあえずどんどんたべてたべてー! あとムーさんこれ、玄米ご飯ね!」
「オヌシこういうとき強いなあ!」
「トヲルの意外なしたたかさを発見しましたね。料理も上手いですし……」
 大幅に蛇行しつつも、楽しい雰囲気自体は崩さず、大人数らしい騒がしさで食事は進む。

 そんな様子を、相変わらずかみさまはニコニコ笑顔で眺めていた。
「楽しいねェ」
 漢字が違うんじゃないかと誰もが考えることだろうが、今の彼はこちらでよかった。その笑顔は心からのものだ。きっと。多分。
「うん、たのしーね! なんかおれ、歌いたくなってきちゃったなー!」
「食事に酒に、歌ですか。いよいよ宴会めいてきましたね」
「あー、芸能を輸出入するって手もあんのかなァ……」
「オヌシこの流れでまだ儲け話する!?」
「あっあっ、であれば俺がここで一発芸をしてみなさまを盛り上げなきゃ!」
「一発芸なら私にも任せてください、色々ネタはありますよ!(※ただし怪奇人間のやることなのでウケるかは別とする)」
「やれやれ……本当に騒がしいことだね、この集まりは」
 ビールを呷りつつ、鴇は逢真を見た。にこにこと笑うかみさまを。
「……まあ、いいか」
 彼もまた口元に薄く笑みを浮かべ、月を見上げる。……心地よい時間だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

新田・にこたま
料理ができない訳ではないんですが、現地食材やダイエットのことも考えると美味しい料理を作れる自信がなかったので夕食の時間は一度下がらせていただきました。私は例えそれが施しだとしても他人に不味い飯を食べさせる行為は悪だと思っていますので。

夕食の準備をしなかった分、夜は全力です。依頼では本邦初公開の真の姿です。
真の姿となった私のホールド・アップは凄いですよ。動いた瞬間、体が半分になります。真っ二つです。
ムルヘルベルさんを疑っているわけではありませんが…こうしておけば万が一にも心に魔が差すこともないでしょう。あくまでも保険です。
では、ごゆっくりお休みください。

え?寝返りを打った場合?

当然、半分こです。



●その謙遜誉れ高い。しかし|正義《きょうき》が隠せておらぬぞ
「というわけで、ムルヘルベルさんは真っ二つになるか大人しく従うか選んでください」
「待て待て待て待て」
「待ちません。選んでください。でないと真っ二つです」
「だから待て! 銃を構えようとするな!!」
 なんですかもう、と呆れ顔になる新田・にこたま。
 その姿は普段の少女めいたものから、ピシッと黒コートを着こなした武装警官に相応しい|真の姿《スタイル》に変わっていた。
「わざわざ真の姿になってまで、やることが脅迫か!?」
「脅迫とは失礼ですね。これは正義ですし、私はやるといったらやりますよ。脅しとかでなく」
「前者も後者も聞き捨てならなさすぎる!!」
 同じ言語使ってるのに会話が通じないので、ムルヘルベルは震え上がった。

 そもそも、初めて|依頼《シナリオ》で見せる真の姿が、こんなふざけたキャンプでいいんだろうか。まあ多分いいんだろう。
「ご心配しないでください。私のホールド・アップはすごいですから。動いた瞬間、身体が半分です。ええ、例外はありません」
「つまりそういう物騒なユーベルコードをワガハイに使おうとしておるのだよな???」
「ムルヘルベルさんを疑っているわけではないんです」
「ワガハイと会話通じておる???」
 にこたまは嘆息し、頭を振った。
「しかし誰しも、心に魔が差すということはあります。私はないですが」
「断言しおったなこの正義狂い」
「なので、それを防ぐための保険です。あなたの信念と正義があれば不要なんです」
「そもそもオヌシワガハイに何をさせようとしておるの?」
「寝てください。今すぐ。休みたいというのならば」
「ええ……」
 にこたまは改めて言い、銃を構えてホールド・アップの宣言を……。
「ま、待て! 待て、いいか! にこたまよ、考えてみろ!」
「なんですかもう……撃ちますか?」
「撃つな! あれだ、その、えっと……寝返り! 寝返り打った場合は!?」
「……」

 にこたまはしばし考え、言った。
「当然、半分こです」
「おい待てや」
「ではごゆっくりお休みください。ホールド・ア」
「待てぇ!! お願いだから待ってぇ!!!!!」
 心も身体も休まるわけがなかった。猟兵って、大変だね!

大成功 🔵​🔵​🔵​

マックス・トール
【草食】
さすがに山はきついよね。
それでも、身体を馬の体型にすれば何とかなるけどね。
カンガルーの体型じゃ、山登りがキツイのも無理ないよね。
ぼくも、本来の体型しかできなければキツカッタもだけどね。
まぁ、山登りも、しないよねって言うけど、偶蹄類なら、普通に山登るから…

まぁ、ヤギみたいに崖は登れないけどさ。

あ、リカオン?
…え?犬か。
バイソンさん、ぼくも、蹴散らしに行きますよ。

あ、なんか、猟兵がこっちに向かってきてるけど。
これ、やばくない?
じゃあ、逃げよう。
ぼくなら、大丈夫。
いざとなれば、ムスヘルベルのところに突っ込んでいけばいいかなって思うから。


ルー・カンガ
【草食】
それにしても、ムルヘルベル氏、盛大にフラグ踏んでそうだよね。

ここ、恐ろしい生き物いるから、みんな気をつけようね。
特にバイソンさんは野牛だから、周りの飢えた獣から付け狙われてそうだね。
マックスさんも大きい草食だし、おれも同様だから…

ほら、来た。
飢えた野犬が来た!

みんな逃げ…え?蹴散らす?
これだから、牛は…

あり?
なんか、猟兵まで来てない?

みんな、逃げろー!!

アドリブ・他者絡み歓迎


バッファロー・バイソン
【草食】
キャンプすると言っても、俺様達、ただ山に登っていっただけだぜ。
まぁ、マックスにルーは平坦な所以外体感したこと無いんだろうな。
『あんたもだろ、バイソンさんよ』
いや、|あそこ《イエローストーン》は結構山もあるけどよ。

『おいそれと、肉食いてぇよぉ…ねずっちょでもいねぇかな…あ』
この気配、野犬だぜ。
なに、俺様とマックスがいる分には蹴散らせると思うが。

ほらな。

て、飢えた猟兵、近くまで来てねぇか?

さすがに、ここは逃げるしかねぇな…
『おいらを置いてかないでくれ!!』(とっさに乗っかかるフェレット)

猟兵がスタミナ切れればいいんだがな…



●殺伐としたキャンプシナリオに殺人しないアニマルたちが!
 アスリートアースには殺人アニマルがいる。少なくともこのシナリオの中ではそういうことになった。
 では、殺人しないアニマルは? というかそもそも殺人しないアニマルとは一体なんなのか?
 生きとし生けるものは暴力を持つ。それは生きるための手段……弱肉強食という唯一絶対のルールを切り抜くツールでしかない。
 善悪の話ではないのだ。自然はそういうもので、であれば殺人しないアニマルなど存在しないと言ってもいいのではなかろうか。
 つまり、こうだ。殺人アニマルはアスリートアース以外にもいる。

 違う。話がズレた。ようは彼らは心優しく賢い動物たちだった。
「おかしくねえか?」
 バッファロー・バイソンが言った。
「キャンプったって、俺様たち、ただ山に登ってっただけだよな」
「いやいや、そうは言ってもキツかったんだよバイソンさん」
 へとへとのルー・カンガが、前肢をぶんぶん振りながら否定する。
「まあ、さすがにカンガルーの体型じゃ、山登りがキツいのも無理ないよね。
 ぼくも、本来の体型しか出来なければキツかっただろうしなあ……」
 うんうん、とマックス・トールが同意する。
 彼らは賢い動物。けして殺人などしない、猟兵アニマルズだった。

 誰がどう見てもマル・デ・動物が人間の言葉で世間話しながらキャンプする光景は、かなりセインでない光景だが、まあそれも猟兵ではありえることだ。っていうか、実際ここにありえていた。
 彼らの目的は夜の食事の材料調達だ。賢い動物なので、そこらへんに生えてる草をもしゃもしゃしていればいいわけではない。プライドと好みがあるのだ。
「まぁ、マックスにルーは、平坦なところ以外体感したことないんだろうな」
『そりゃあんたもだろ、バイソンさんよ』
 頭の上に乗っているフェレットさんが口を挟んだ。
「いや、|あそこ《イエローストーン》はけっこう山もあるけどよ。そういうことじゃなくてだな」
「まあまあ、いいじゃない。どうせ崖登り出来るヤギが一番すごいって結論になるんですよこういうのは」
 フェレットさんとバイソンの会話を、マックスが遮った。
「それより、お腹すきません? なんかいい草、生えてないですかね」
「マックスさん、おれよりも身体が大きいもんね。ただなあ……」
 ルーは周りの暗闇を見渡し、ぶるりと震えた。
「ここ、恐ろしい生き物いるから、みんな気をつけてね。特にバイソンさんは野牛だから」
「野牛だとなんかまずいのか?」
「いや……|獣《あっち》も餓えてるだろうし、付け狙われそうだなって」
『肉ならこっちだって喰いてぇよぉ……ねずっちょでもいねぇの?』
「頭の上でぼやくなよ。ただ……いや、この気配は野犬だな」
 バッファローの言葉に、ルーとマックスは身構えた。
 顎で示した先、草むらががさがさと動いた。

「あ、リカオン……って、犬か。なあんだ」
「違うんだよマックスさん、あれはアスリートアース殺人テコンドーハウンドだ!」
「え、何? なんて???」
 聞き慣れない単語の連結に、マックスは思わず聞き返した。
「アスリートアースにいる殺人アニマルの一種で、テコンドーを使うらしいんだよ。警戒しないと」
「大丈夫? 疲れてなんか思考がまとまってないやつ?」
「俺様たちがいうのもなんだが、狂ってるだろこの山」
 それはそう。
「とにかく、みんな逃げよう!」
「いや、俺様とマックスがいるんだ。蹴散らしてやろうぜ」
「ええ……」
 及び腰のルーに対し、バッファローはやる気だった。野牛だし。
「それなら、ぼくも手伝いますよ。|二匹《ふたり》でやってやりましょう」
「いや、あの」
「じゃあ腹ごなしの運動といくか。うおお!」
 ダカダッダカダッ! 土を踏み砕いて駆け出す両名!
「「「アオオオーン!」」」
「「うおおおお!!」
 激突! 衝撃! あの凶悪なアスリートアース殺人テコンドーハウンドの群れがたやすく蹴散らされていく! 何故だ!?
「これだから牛は……」
 ルーは呆れた。理由は単純だ。殺人アニマルが殺せるのは、人だけ! だが彼らは人ではない、賢い動物(※ルーはバイオモンスター)だ!
 つまり、アニマル同士の場合は話が別! 彼らのほうが強い! それだけのことだ!

 あまりにも単純明快な理屈で、アスリートアース殺人テコンドーハウンドの群れはものの数十秒で鎮圧された。
「ほらな」
「思ってたより歯ごたえありましたね」
 バッファローとマックスはけろっとしていた。……が。
「あり?」
 遠くから近づく物音に、ルーの耳がぴくりと揺れた。
「なんか、猟兵まで来てないですか?」
「「……」」
 マックスとバイソンは顔を見合わせる。足音、そしてその他の様々な感覚からわかることは、ただひとつ……。
「あいつらも餓えてやがる」
「狙われてますね、これ」
 食欲。奴らは群れでやってくる。賢い動物すらも食材扱いして!
「これ、やばくない?」
「やばいな」
「……みんな」
 3匹は顔を見合わせた。
「「「逃げろー!!」」」
 恐怖! 猟兵を喰らおうとする猟兵! 3匹は暗闇めがけ駆け出した!
『まて、待って! おいらを置いてかないでくれ!』
 とっさにフェレットさんがバッファローの頭に飛び乗り、逃げ出す。
 自然界のルールはたったひとつ。弱肉強食……負けたものは肉となるのみ。
 今ここに、純粋なる生存競争が勃発した……!!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミーグ・スピトゥラス
●SPD

腹一杯食ッタ食ッタ
アスリートアース殺人カラテクマ…アイツハ強ク、ソシテ美味カッタ
ゴチソウサマデシタ
(ゴミを極力出さないことがキャンプのマナーなので、骨も毛皮も全て平らげている)

…何カ忘レテル気ガスルガ、星キレイ
アノ星ノドレカガ、オレノ故郷ダロウカ…ア、思イ出シタ

…朝ゴハン、ドウシヨウ
アスリートアース殺人カラテクマ、全部食ッタ
肉モ骨モ、モウ無イ
ダケド、今ハ夜更ケ
眠ッテイタリ楽シンデイル人ノ邪魔スルノハ良クナイ

ナラ、仕方ナイ
空ヲ飛ンデル『アスリートアース殺人飛び六方フクロウ』
アイツ、上空デ狩ル
腹ガ減ルガ、『バイオミック・ウイング』デ、オレモ飛ブ
コレナラ皆ノ迷惑ニナラナイ
(星空に映し出されるふたつの影。激しい攻防線の末に、ミーグはアスリートアース殺人飛び六方フクロウを地面に叩きつけようと急降下。キャンプ地から程よく離れたその下には、多分ムルヘルベルがコソコソと隠していたお酒を飲もうとしようとしていた矢先、二匹のモンスターによるバトルでお酒の瓶が割れたり溢れたりとインガオホー!)



●ノリで出したアニマルがこんなことに
「ゴチソウサマデシタ」
 ミーグ・スピトゥラスは行儀よく手を合わせた。
 なお、彼はバイオモンスターなので、肉だけでなく骨も毛皮も臓器もすべて食べきっている。あとにゴミを出さないのがアウトドアのマナーだ。
「オヌシの食べっぷりはある意味気持ちがよいな。ワガハイには無理だが……」
 ミーグの精神そのものはとても褒められるべきことなので、ムルヘルベルはうんうん頷いた。
「……何か忘レテル気ガスル」
「ん? 飯を食べてあとは寝るだけではないか?」
「ウーン……ア、星キレイ」
 ミーグは首を傾げつつ頭を上げ、空を見上げる。
 あの星のどれかが、ミーグの故郷なのだろうか。
 可視範囲内にあるとは限らないが、宇宙は無限だ。なら、ロマンもいくらあってもいいはず。
 ミーグはそう思い、食事のもたらす安らかな眠気にまどろみを……。

「ア、思イ出シタ。朝ゴハンダ」
「……」
 ムルヘルベルが冷や汗をたらした。
「……ワガハイも忘れておった!!!」
「ヤッパリカ」
 そう、朝ごはんの材料が何もないのである!
 ムルヘルベルは困った。これでは疲れ果てた挙げ句明日は腹ペコで下山! つまりあのルートをもう一度通るということ! 死ぬ!!
「……待テヨ」
「ミーグ、妙案があるのか?」
「オレガナントカスル。ムルヘルベル、休ンデロ」
「お、おお……ありがとうミーグ、ありがとう……!!」
 ムルヘルベルは感涙した。慮ってくれる猟兵の少ねえこと少ねえこと。

 さて、そのミーグが狙いを定めた獲物。それは……。
「ホーッ! ホーッ!!」
 なぜか歌舞伎の隈取り風の模様が浮かんだ、恐るべきアスリートアース殺人飛び六方フクロウだ!
 飛び六方は格闘技じゃないって? 細かいことはいいんだよ!!
「オ前……明日ノ朝ゴハンニナレ」
「ホー!?」
 その眼前に、バイオミック・ウィングで飛翔したミーグが出現!
「ホーッ!!」
「腹減ルケド、シカタナイ……!」
 恐るべきモンスターの壮烈なバトルが始まった! 誰も知らぬ、空の戦いが……!

 ところでその真下では、こっそりとムルヘルベルが酒盛りをしようとしていた。
「むふふふ、こんなこともあろうかと先んじて酒を隠しておいて正」
「ホーーーーッ!!(グシャーーーーーッ!!)」
「あーーーーーーーーーーーー!?」
 地面の中に隠しておいた酒瓶無残! 急降下激突したアスリートアース殺人飛び六方フクロウの巨体で粉々だ!
「あああああ……ワガハイ……こんな役回りばかり……」
 地上で続く二体のモンスターのバトルにより、酒瓶もツマミもめっちゃくちゃになった。
 ムルヘルベルはがくりと崩折れた。なお、台無しになったツマミは、スタッフが美味しく食べました。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベロニカ・サインボード
【ねぎらうメスケモ】
アドリブ・絡み歓迎

ここに来て不健康な休暇に逃げられないようにするためにも、今日一日がんばったムルヘルベルをねぎらわないとね

鉄の看板を伸ばし、茶碗のような形に成型
底には足場として木の看板
木炭の看板、紙の看板にマッチで着火
木の看板で柵も作らなきゃ

即席だけどお風呂よ。入って
汗とか色々を落としてもらわないといけないし、休みも大切よ
せっかくだからムルヘルベルの後に私も入ろうかしら。チル、新しい雪をちょうだい
覗いたら血管に看板つけるわよ

風呂入ったら寝るわよ(パジャマに着替える)
お楽しみ?冗談キツイわ寝なさい
休息もトレーニングのうちよ
まったく…妙な事しないか監視する為に、私がムルヘルベルと寝るわ(モフッ・キュッ・モフッな体で抱きしめて寝る)
助かるわチル、背中は任せたわ

眠れないようなら子守唄を歌うわ(普通に上手い)


チル・スケイル
【ねぎらうメスケモ】
アドリブ・絡み歓迎

北風と太陽の寓話ですね
「新しいトーチャリングなのでは!?」と警戒されないか心配ですが

ベロニカさんの作った容器に、たくさんの雪を降らせましょう
雪が溶ければお風呂です

これは嬉しいですね。川や湖での水浴びもいいのですが、やはりお湯は汚れの落ち方が違います
では、私はベロニカさんの次に入浴しましょうか
覗いたら贅肉凍らせますよ

なんとムルヘルベルさん、あれだけトレーニングしたのにまだ活動するおつもりですか
となると…狩りですか?
吸血竜!?この山にそんな生物が?
…カリゲー?なんですかそれは?

あ、そうですね。寝ましょう(ネグリジェに着替える)
では私はムルヘルベルさんの後ろで寝ます
魔力詰まりとかないか気になりますし

(…ほー…これはこれは…なるほどなるほどスヤァ…)
(ムルヘルベルの魔力の様子を見ながら子守唄を聞き寝てしまう)



●ねぎらいの時間
 ベロニカ・サインボードとチル・スケイルのふたりは、ようやくムルヘルベルをねぎらうつもりのようだった。
 といっても、これには理由がある。ベロニカ曰く、
「最後までイヤな思い出だと、キャンプが終わってから不健康な休暇に逃げちゃうもんでしょう? つまり童話のえーと……」
「北風と太陽の寓話、ですね」
「そう、それよ。協力してくれるわね、チル?」
「ええ。別にムルヘルベルさんを苦しめに来たわけではないですからね」
 ベロニカの提案に、チルは素直に頷いた。
 ボディビルダーなどは、過酷な節制の合間にあえて欲望の限りに食事をする「チートデイ」というものを設けているそうだ。
 ベロニカのアイディアは科学的にも理に適ったものであり、そういう意味でもチルは感心したのである。

 で、肝心のそのねぎらいがどういうもんかというと。
「ワーニン・フォレストッ!」
 ドグシャア! と、力ある|像《ヴィジョン》が地面を殴りつけた。
 すると巨大な鉄の看板が生える。さらに|W・F《ワーニン・フォレスト》は、有り余るパワーでそれをメキメキと成型していく!
「……何やっとるんであるかオヌシら」
 あまりにもパワーすぎる光景に、ムルヘルベルはドン引きしていた。
「まあ、見てなさいって。これで終わりじゃあないわよ」
 ベロニカは言い、さらに木炭と紙の看板を作り出す。
 おまけに木の看板で柵を……と、ここまでくるともうサンドボックス型のクラフトゲームを想像しなくもないが、ユーベルコードはなんでもありなのだ。
「容器が出来ましたね。では、雪を降らせますね」
 さらにチルが魔力で雪を降らせる。あっという間に、茶碗型の容器の中身は雪でいっぱいになった。
「で、最後にこの、木炭と紙の看板をマッチで燃やせば……」
 シュボッ。ベロニカが燃料剤に着火すると、徐々に雪が溶けていく。
 しばらく時間はかかったが、出来てみれば一目瞭然。これは……!
「……風呂か!? こんなDIYワガハイ初めて見たのだが!?」
 然り。そこには、ホカホカと湯気の立った即席バスルームが完成していた!
 なお、覗き防止に柵と看板(なにげに|W・F《ワーニン・フォレスト》の能力が正しい意味で使われたのはこのシナリオ初かもしれない)があり、絶対に不埒者を寄せ付けない仕組みだ。
「即席だけどね。汗とか色々落とさないといけないし、休みも大切よ」
「入浴は筋肉に癒やしをもたらしますからね。メンタルもリセットです」
「よもや温泉まで入れるとは……」
 ムルヘルベルは予想外のDIYに唖然としている。
「それじゃあまずはムルヘルベルが入ってくれる? せっかくだし、そのあとは私が」
「では、最後に私ですね。入れ替わりごとに雪を降らせれば、湯も張り直せます」
「ありがたく頂くが……オヌシら能力の利用っぷりすごいなあ!」
 ムルヘルベルは素直に驚き、感心した。
「覗いたら血管に看板生やすわよ」
「その能力の利用法はエグすぎる! 覗かんわ!!」
「覗いたら贅肉凍らせますよ」
「だからどうしてそうエグい処刑方法思いつくんであるか!? 覗かぬから!!」
 もともとそんな下心はムルへルベルには一切なかったが、ふたりの目から『凄み』を感じたので、絶対に勘違いされないように誤解を招きそうな振る舞いはすまい、とムルヘルベルは心に誓った。李下に冠を正さず、というやつだ。

 なにせ燃焼剤がいくらでも生やせるので、湯冷めの心配はなかった。
 開放的なロケーションの非日常的な入浴はワクワクするもので、そしてなにより疲れ果てていたムルヘルベルはすっきりリフレッシュである。
「いやー、なんだか悪いであるなあ! 生き返った気分である」
「年寄りクサいわね。まあ、思いつきだったけど悪くなかったかも」
「お湯は汚れの落ちが違いますしね。川や湖の水浴びもいいですが、やはり入浴に勝るものはありません」
 ほこほことたまご肌(といってもうち二人は|獣人《ケモ》だが)になった3人。ベロニカとチルは、それぞれ可愛らしいパジャマだ。
「さて……ワガハイはちょっと用事が」
「待ちなさい」
 ガッ! と、ムルヘルベルの肩を掴む|W・F《ワーニン・フォレスト》。
「まさか……『酒』を呑もうってんじゃあないでしょうね……?」
 ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ……!
「ち、違うのである! ちょっとこう星を見るというかなんというか」
「その|表情《かお》はッ! 嘘をついている顔ね……!」
「ヒイイーッ!」
 ムルヘルベルはマジにビビった。ベロニカの『凄み』にッ!
「おや、あれだけトレーニングしたのにまだ活動するおつもりですか。となるともしや……狩り、ですか!?」
 チルはマジで言っていた。
「あ、それならワガハイ吸血竜クエがまだ」
「冗談キツいわ、ムルヘルベル」
「ヒイッ!」
 いそいそとポータブルゲーム機を取り出そうとしたムルヘルベルは、さらに彫りが深くなった(ように見える)ベロニカにビビった!
「こうなったら余計なことをしないように、一緒に寝るしかないわね」
「って待てェ?! さすがにそれはまずいであろう! オヌシらは女子! ワガハイ一同男であるぞ!?」
「魔力詰まりとかないか気になりますし、妙案ですね。では私がムルヘルベルさんの後ろで」
「助かるわチル。背中は任せたわ」
「だから話を聞けぇ!?」
 繰り返すが、ムルヘルベルにそういった不埒な行いをするなどという下心はない。断じてない。が、それとこれとは話が別だ。
「安心なさい。子守唄には自信があるわ」
「そういう話ではない! ええいわからん者たちであるなッ!」
「むっ。逃げるつもりですか。やはり狩りを……?」
「チル、あれはゲームの話なのよ。吸血竜なんていやしないわ」
「えっ、そうなのですか? でもアスリートアース殺人アニマルはいましたし」
「冗談キツいわ。色んな意味で」
 逃げ出すムルヘルベル! 追うふたり! お風呂に入ったばっかだってのに、結局夜更けまで騒がしくなるキャンプ地だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

賀茂・絆
グリモアベースでのやり取りからして絶対にムルヘルベルさんが酷い目に遭うんだろうなと思い、色々準備して待っていマシタ!

お酒もおつまみもお菓子もありマスヨ!こっそりキャバリアで買い出しに行っていマシタ!
ふふっ、いいんデスヨ。ストレスを貯める方が体に毒ですし、ちゃんと発散させて明日から頑張りマショウ!
という感じに、誠心誠意ムルヘルベルさんを癒すために接待しマスヨ。

ふぅ…なんだか酔ってきちゃいマシタネ…。
ムルヘルベルさん、ワタシとちょっとイイコト、しマセンカ…?

―――吸血による血抜きダイエット、デス。
食べた分減らせばそれが減量デス。

ワタシ、吸血衝動って自分がケダモノになったみたいで正直あんまり好きじゃないんデスヨネ。
でも、いつまでも苦手を苦手のままにしておくのも良くないデスし…。
ムルヘルベルさんのためでもありマスし、ここは一肌脱ぎマスヨ。

大丈夫デス、痛くしマセンから。寧ろおクスリ(合法な麻酔薬)も使うのでちょっと気持ちいいかもデスヨ?

では、いただきマス。

(無理な部分は適当にカットお願いします)



●急にダンピールらしさ出してくるじゃないですか
 グリモアベースでやりとりを聞いていたときから、賀茂・絆はひとつ確信していた。
「やっぱり思った通り、ムルヘルベルさんがひどい目に遭っていマシタね」
 絆はそりゃそうだよなという顔で、深く頷く。
 あんだけフラグを立てていたら、ネタと聞いて黙っていられない猟兵がおとなしくキャンプをしてくれるわけがないのだ。
 誰だってそーする、オブリビオンだってそーする。

 だがムルヘルベル当人はそう思っていなかった。
「わかりきっていた結末みたいに言うでないわぁ!! わァアアーッ!!」
「あ、泣いちゃいマシタ」
 ちいさくてなんかかわいそうな生き物みたいな感じの見た目になり、わんわん泣くムルヘルベル。100歳オーバーとは思えないガチ泣きだった。
「まぁまぁ、気を取り直してくだサイ、ムルヘルベルさん」
「そんなこと言っておいて、オヌシもワガハイを苦しめるんであろう!? 猟兵みたいに! 猟兵みたいに!」
「ワタシもムルヘルベルさんも猟兵デスヨ」
 絆は真顔でツッコミを入れた。

「そうではなく! ムルヘルベルさんを癒やすために準備をしておいたのデスヨ!」
「な、なんであるか? 癒やすためにはマッサージ! とか言って、骨とかバキボキ鳴らすタイプのクッソ痛いやつを施術するんであるか!? 猟兵みたいに! 猟兵みたいに!!」
「完全に被害妄想が悪化してマスネ。あと、ワタシもムルヘルベルさんも猟兵デスヨ」
 ツッコミを入れつつ、絆が取り出したのは……おお! 高カロリーなお菓子に塩気の強いおつまみ、そして……酒!!
「お、おお……?」
 ムルヘルベルはあっけに取られ、ハッと我に返る。
「そ、そうか! わかったぞ! ワガハイが目の色を変えて飛びついたら、騙されたなーと言って鬼のしごきをするんであろう!? 猟兵みたいに! 猟兵みたいに!!」
「むしろそういう流れを期待されてるのデスカ? あとワタシもムルヘルベルさんも猟兵デスからネ」
「期待などしておらんわ! …………えっほんとによいの?」
 誕生日でもないのに、欲しいゲームソフトを親に買ってもらった子供のようなナチュラルびっくり顔のムルヘルベル。
「もちろんデスヨ。こっそりキャバリアで買い出しに行ってたンデス」
 絆はにこりと微笑んだ。
「ストレスを貯めるほうが身体に毒デスし、ちゃんと発散させて明日から頑張りマショウ!」
「……」
「ムルヘルベルさん? まだ疑って……ウワッ」
 絆はちょっとびっくりした。ムルヘルベルが表情を変えずに、いきなりブワッと泣き始めたからだ。
「おお、おおお……! ワガハイは、ワガハイはまだ人間の可能性を信じてよいというのか……!! うおおおおん!!」
「そこまでデス? あとワタシ、ダンピールですカラネ」
 絆は冷静にツッコミを入れた。今日はそういう役割らしい。

 ともあれ、警戒心をようやく解いたムルヘルベルは、絆に接待されてにっこり笑顔で運動のあとのごちそうを堪能していた。
「やったー! ワガハイ生きててよかったー!! この世は天国!!」
「調子がいいデスネ……あ、でも……」
 ふぅ、と熱っぽく吐息を漏らす絆。
「ん? どうしたのだ絆よ」
「……なんだか酔ってきちゃいマシタ」
 艶やかな眼差しが、ムルヘルベルを見つめた。
「き、絆? なんか様子がおかしいぞ?」
「ムルヘルベルさん、ワタシとちょっとイイコト、しマセンカ……?」
 絆は頬を紅潮させ、火照った吐息を漏らしながらムルヘルベルにしなだれかかろうとする。
 ムルヘルベルはあわわわと混乱した。このままじゃリプレイが大変なことだぜ!

「――吸血による、血抜きダイエット、デス」
「あわわわ……えっ」
 ムルヘルベルは真顔になった。
「食べたぶん減らせば、それが減量デス。今食べたぶんを吸血して身体から抜いてしまいマショウ」
「ん?? 待って??? 誰が誰の血を吸うと???」
「ワタシがムルヘルベルさんの血をデス」
「え???」
「ワタシ、吸血衝動って、自分がケダモノになったみたいで正直あんまり好きじゃないんデスヨネ」
 困惑するムルヘルベルをよそに、絆は語る。
「でも、いつまでも苦手を苦手のままにしておくのもよくないデスし……」
「そ、その意識は立派ではあるが! あるがだな!?」
「ムルヘルベルさんのためでもありマスし、ここはひと肌脱ぎマスヨ!」
「待って!? なんでもうやる流れになっておるの!?」
 ムルヘルベルは逃れようとする! だが逃れられない! 何故か? そういうシナリオだからだ!
「大丈夫デス、痛くしマセンから。むしろ|合法な麻酔薬《おクスリ》も使うので、ちょっと気持ちいいかもデスヨ?」
「字面!! 字面がいかがわしすぎるから!! あとワガハイ吸血とかそういうの」
「では、いただきマス」
「やっぱりこうなるんではないかギャーーーーーーーー!!」
 夜空にムルヘルベルの悲鳴が轟いた。特に助けてくれる人はいなかったし、がぶっと吸血されたムルヘルベルはむしろ晩酌前より憔悴した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エドゥアルト・ルーデル
ええー?ホントにござるかぁ???
開放されてから飲めば目を盗まずに飲める…とか浅ェこと思ってンじゃないでござろなァ?

じゃあ拙者は今から持参した酒飲むから…なんでって運動して汗かいたら飯と酒でござるよね?ツマミもあるが?
飲みたかったらごちゃごちゃ言ってないで大人しく素直に飲みたいですと言え

バーベキューだって言ったろ!さっき仕込んどいた殺人動物をがっつり焼け!強火で適当に焼け!なんなら森も焼いていいでござるよ!ひたすら肉を焼いて酒を飲む!キャンプなんてそれでいいだよ!
英気を養ったら明日も頑張ろうネ!明日からは運動強度上げていきますぞ、一人一本丸太を持って…なにってダイエットだけど?なんてったってブートキャンプだからな…7日ぐらいは拙者も予定を開けてあるでござるヨ!
今日だけで終わりなんてそんな訳ないじゃん!一日やった程度で痩せられる訳がないんですよ…!
という訳だアーキロギア氏、運動しな

身体についた肉に
脂肪に
トランス脂肪酸に
痩せるために進み続けるんだ
これはお前が始めたダイエットだろ?



●その日、ムルヘルベルは思い出した
 ジュー。ジュー。
 どこかの北の国の黄色いマスコットみてえな音がしている。これは肉が焼ける音だ。
「オラッ強火! 強火解除! 強火!」
「強火以外の選択肢はないんであるか!? もっと弱火でじっくりやらんと肉が」
「黙れ……まんじりともせず焦げた肉を受け入れろ……!」
「せめて美味しく食べさせてくれぬかなあ!?」
 もくもくとあがる煙のなか、ぎゃあぎゃあと騒ぐエドゥアルト・ルーデルとムルヘルベル。
 彼らの前には巨大なバーベキューの台があり、その上では様々な肉がじゅうじゅう燃えていた。強火で。
 言うまでもなく、これは先の章でさんざんハントされたアスリートアース殺人アニマルのものだ。
 なんでまた夜のバーベキューなんぞをするハメになっているのか。それは大したことではないが、多少遡る……。

「し、死ぬかと思った……」
 とっくに運動時間は終わったはずなのに、血を抜かれたりなんだりとヘトヘトになっているムルヘルベル。
「なーにしおしおになってんでござるか、インガオホーでござるよ」
 その眼前に、ザンッ! とエドゥアルトが立ちはだかった。
「げえっ黒ひげ!」
「武将扱いやめてもらえる? どうせ拙者らから解放されてから呑めば目を盗む必要もないとか浅ェこと思ってたんでござろう?」
「うぐっ!!」
「やっぱりね、そーゆーのわかっちゃう」
 とかなんとか言いながら、エドゥアルトは懐をゴソゴソと漁った。

 で、取り出したのは酒!
「ってオヌシも持っておるではないか!?」
「え? 何が?」
「何がって! それ! 酒!!」
 ムルヘルベルはエドゥアルトの酒瓶を指さした!
「なんか悪いんでござるか? 運動して汗かいたら飯と酒、当然でござろう? ツマミもあるが?」
「わ、わわ、ワガハイにあんなこと言っておいて、お、おおおオヌシ」
「は~~~? なんでござるか~~~? 聞こえねえでござるが~~~???」
 ムルヘルベルはぷるぷる震えた。
「飲みたかったらごちゃごちゃ言ってないで、おとなしく「素直に飲みたいです」と言え」
「う、うぐ、うぐぐぐ……!!」
 どんっ!!(顔がアップになる効果音)」
「飲゛み゛た゛い゛っ!!」
「言えたじゃねぇでござるか」
 やっぱり辛い(いじられ役が)。賢者はそう言う気持ちでいっぱいだった。

 で、いざ飲もうと思ったら、なぜかバーベキューが始まってこのざまだ。
「オラオラ肉が焼けたでござるよアーキロギア氏!」
「焼けたが!? 焼けたらどうするのだ!?」
「どうもこうもねえでござるよ! 肉が焼けたら! 肉を食う!!」
 がりっ(強火で焦げきった肉のじゃりじゃりした音)
「やっぱり焦げてる!! 火強すぎであるよこれぇ!!」
「がちゃがちゃやかましいな明日のためのカロリーなんだぞ黙って食え!!」
「うう、せめてもう少し美味しく……ん??」
 ムルヘルベルははてな、と首を傾げた。
「オヌシいまなんと言った? 明日のため……?」
「そうでござるが? 明日はもっと運動強度を上げていきますぞ!」
「待て! 待て待て待てぇ!!」
 今度はエドゥアルトが首を傾げた。
「何? なんでござるか。トレーニング内容は決まってるでござるよ。ひとり一本丸太を持ってだな」
「いやそうじゃなくて! なんで明日もやる前提なのだ!?」
「はァ~~~? なんてったってブートキャンプだろうが、7日ぐらいは拙者も予定を開けてあるでござるヨ!」
 ムルヘルベルは、へなへなと崩れ落ちた。
「え~? まさか今日だけで終わりのつもりでござったの? そんなわけないじゃん! 一日やった程度で痩せられるわけがないんですよ……!」
 辛辣なライフハック!
「というわけでアーキロギア氏。運動しな」
「で、でもワガハイは、今日一日頑張って……」
 エドゥアルトは、ムルヘルベルの肩をがっしりと掴んだ。

「身体についた肉に、脂肪に、トランス脂肪酸に――痩せるために進み続けるんだ」
「え……」
「これは、お前が始めたダイエットだろ」
「え、あ、あああ……あああああーッ!!」
 ムルヘルベルはその時、思い出した。
 いつだって、|黒髭《この男》によってしっちゃかめっちゃかにされて苦労させられてきたという当たり前の事実を……!

大成功 🔵​🔵​🔵​

神代・凶津
「…どこ行くんですか、凶津?」
ちょ、ちょっと散歩をなあ!?
「……私はもう寝ますが、羽目を外し過ぎては駄目ですよ?」
おうよ、相棒ッ!

(浮遊する鬼面の元に何処かに行っていた影依代が影バイクに乗って帰ってくる。影依代が持ってきたビニール袋には大量の色々な酒におつまみ)
うっへっへ、【影依代】にキャンプ場の外へ買い物に行かせてたのさ。夜くらいご褒美は必要だよなぁッ!この時間の為に俺はこのシナリオに参加したんだぜぇッ!
どれどれ、おつまみは鳥の唐揚げにイカリングにポテトか。ひゅ~っ、冒涜的な揚げ物セットだ。
昼間の内にゆっくり晩酌できるキャンプ場の穴場も情報収集済み。
仮に邪魔する奴や動物が居ても俺の|超克影依代《オーバーロードシャドウヒーロー》が護衛にいるし万全よッ!

おや?そこにいるのはムルヘルベルか。
くっくっくっ、これからお楽しみに付き合わないか?
ダイエットならまた明日から頑張ればいいじゃねえか。この酒はその為の、謂わば活力ってやつよ。

晩酌を大いに楽しむぜ。メリハリってやつは大事だぜ。


【アドリブ歓迎】



●そんなこんなで宴もたけなわ
「……どこ行くんですか、凶津?」
 こっそりふよふよ浮かんでいた神代・凶津は、桜に呼び止められてびくぅ!! と大げさなぐらい慌てた。
「ちょっ、ちょっと散歩をなあ!?」
「…………」
 桜はジト目で凶津を見る。じーっと。凶津の全身からダラダラ汗が噴き出した。
「……私はもう寝ますが、ハメを外しすぎてはダメですよ?」
「お、おうよ相棒ッ!」
 桜はふう、と嘆息し、テントの中へ。
 凶津は一息つき、こっそりと闇の中へと消えていった。

 さて、彼は実は、影依代を放っていた。
 本来は簡易型の依代として、桜なしで戦うために生み出す式神の一種だ。
 なにせヒーローマスクである凶津は、猟兵としての特性で違和感を持たれることがないとはいえ、色々と物理的に苦労することがある。
 しかも今日はトレーニングにハンティングにと大忙しだったので、自ら出向くヒマも、ついでに言えば相棒の目が光る間はその余裕もなかった。
「うっへっへ……よーし影依代よ、おかえりぃ!」
 影バイク(?)に乗って帰ってきた依代の荷台には、ビニール袋。
 中には……そう、お酒だ! そしておつまみ! ほとんどコンビニで手に入るレベルの安価なモノだが、アウトドアにおいては野暮な話。
 むしろそういうジャンクなほうが色々と風情がある、とは誰の言葉か。
「夜くらいはご褒美は必要だよなァッ! くぅ~っ、このときのために俺はここに来たんだぜェ……!」
 がさがさとビニール袋の中を物色する凶津。鶏の唐揚げ、イカリングにポテト……あまりにも冒涜的な揚げ物の数々……!
「昼間の間に、ゆっくり晩酌できそうな穴場スポットも捜しておいたしなぁ、それじゃあちょっくら楽しむとしますかァ!」
 凶津はウキウキ上機嫌で、影依代とともに人気のない穴場へ向かった。

 ……すると、そこには先客がひとり。
「はぁ……」
 ムルヘルベルだ。肩を落とし、虚空を見つめてぼんやりしている。
「おや? ムルヘルベ……ってなんだオイ、この世の終わりに親戚一同全滅したみたいな虚無の面して」
「おお、凶津か……ワガハイもう疲れたのである」
 ムルヘルベルは死人みてえな面で淡々とため息をついた。
「血を吸われたり引っ張り回されたりトレーニングやらされたり、狩りに付き合わされたりせっかく仕入れた酒も台無しにされて……って、オヌシそれは」
「くっくっく、そうよ、そのまさかよ!」
 凶津は悪い笑みを浮かべた。
「まあお前さんも色々大変そうだな。せっかくだし、"お楽しみ"に付き合わないか?」
「……ほんと? それ罠ではないよな??」
「お前どんだけ疑心暗鬼になってんだよ……」
 凶津は呆れた。だが猟兵たちがこうしてしまったのだ。おお、悲しきかなグリモア猟兵のサガ……。
「まあともあれ、そんな罠とかしねーよ! な? 今日一日色んな意味で頑張ったご褒美ってことでさ!」
「……うむ、そうであるな。オヌシほどの者が、いきなり噛みついて血を1リットル近く吸おうとはしないであるよな」
「どういう体験してんの???」
 などと会話しつつ、ふたりは適当な岩場にこしかけた。
「この酒は次のための、いわば活力ってやつよ。そうだろ?」
「明日は丸太でダイエットかぁ……」
「明日!? 明日もあんの!?」
「ワガハイはそういうことになっているのである……」
「そ、そっか……ま、まあとにかく今は色々忘れて晩酌だ、なッ!」
 凶津は紙コップをひとつ渡してやった。
「メリハリは大事さ。相棒も知らんぷりしてくれてるし、野郎ふたりで静かに楽しもうや」
「……そうであるな。今は、うん、今はな……」
 ムルヘルベルもようやく元気が戻ってきたのか、凶津に感謝を述べ、酒を一口。

 どちらともなく空を見上げる。満点の星空を。
「旨いなあ」
「うむ。良い酒だ……」
 明日も明日でしっちゃかめっちゃかになる(賢者だけ)が、それは明日の話。
 今はただ、飲んではハイに、醒めては灰に。
 この時間だけは、男たちは誰にも縛られず自由だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年12月01日


挿絵イラスト