アルカディア争奪戦㉗〜全ての生命のための戦い
●アルカディアの玉座
玉座に在りし者は語る。
「吾は、強者の生命を喰らわねば進化できない。進化しなければ、いつまでも揺蕩う虚無のまま」
あるのは骨格と石剣。そして天使の羽。
顔のない頭蓋は虚の如き闇を湛えいている。いや、闇ではなく混沌であったと言うべきであっただろうか。
「生命は、絶滅の危機に瀕するほど輝き、数多の強者たちを産んできた」
生き残りたいという願望。
種を存続させたいという願望。
喪われた生命の意味を繋げたいという願望。
どれもが生命を生命たらしめる根幹そのものであったことだろう。
「全世界にばらまいた吾がしもべ、『植物』達。彼らが世界を毒で満たす度に生まれる強者と、吾は戦ってきた」
思い返してみれば、それは悠久の時であった。
だが。だが、である。
「だけど吾には、まだ血も、舌も、皮膚も、無い」
通う激情の如き血潮も、喰らうことの喜び満ちる味覚も、触れるものがいかなる形をしているのか知るための触覚もない。
虚の如き顎が揺れ、音が発せられる。
平坦な声。何の感情も乗らぬのは、そもそもないからである。
だからこそ、その身の中にあるのは唯一。
「吾は肉体が欲しい」
それが彼の願い。
彼が願うのは肉体である。未だ生命ならざりし存在。
生きることも死ぬこともない。
ただ、虚無。
故に、彼は求めるのだ。死を求めるのと生を求めるは同義。生きとし生けるもの全てが死に向かうように。
生きていなければ死ぬこともできはしない。
「生命になりたいのだ。強者たちよ、玉座に集まれ。その生命を吾にくれ。そうだ。生命ある者の苦悩、欲望、憎悪を、吾にも見せてくれ」
触れ得ぬからこそ尊ばれるというのなら彼は求める。
「吾は『虚神アルカディア』。己がイ進化のために諸君を苦しめる、諸悪の根源である――」
●アルカディア争奪戦
聖域の果てにあるのは大量の天使核に守られた『黄金の玉座』。
周囲の大気が変化し、一振りの石剣を構えた幽鬼の如き等身大の存在が現れる。
「吾は『虚神アルカディア』。吾は望む。吾が生命ならざりしものであるがゆえに、生命であることを望む。吾がそうであるために必要なことは強者の生命。汝らは強者足り得る。此処まで至ったのだから」
『虚神アルカディア』を名乗る幽鬼の如き存在は、その未だ形成されぬ頭蓋の虚から混沌の如き見通せぬ輝きを解き放つ。
「人は剣に意味を見言い出す。剣戟の音は、強者の奏でる生命の律。故に吾はこの石剣で応えるだろう」
幽鬼の如き体は一瞬で間合いを詰め、石剣を振るう。
目にも留まらぬ速度であった。
「人は何かを投げる生命である。何かを投擲することによって、強靭なる生物を狩猟する唯一。遠ければ遠いほどに。生命を奪うことを厭うという感情を抱くからこそ、遠く、遠く、遠くから生命を殺す術を磨く」
『|拒絶の雲海《アルカディア・エフェクト》』を噴出しながら『虚神アルカディア』は空へと舞い上がる。
『拒絶の雲海』は触れてしまえば滅びてしまうが故に近づけず、そして舞い上げられた玉座の遺跡に在りし残骸を舞い上げ、対峙するものの視界を覆う。
だが、放たれる超遠距離攻撃は、まさしく針の穴を通すほどに精確であった。
「人は他者に己の姿を見出すものである。何故なら己の姿は己の瞳に写せぬが故に。だからこそ、鏡に戸惑う。己の姿が斯様なものであったのかと。認めたくないと叫ぶ心こそ、生命たらしめる証左である」
相対する者の顔を虚の如き頭蓋に映し出す『虚神アルカディア』は、その鏡の如き姿を持ってまったく同じ力を振るう。
寸分違わず。外側、内側を問わず、相対するものは己自身と紛うほどの存在を前にして、その力の発露に惑うだろう。
「人は群れるものである。社会という名の群れを生み出すことによって、己を護る他者の鎧とするものであり、同時に拠り所とするものである。故に、個は群れの中でしか確たる己を認識することができぬ弱く愛おしきものである」
放たれるはオブリビオン。
空を飛ぶオブリビオンたちは、まるで『飛空艇艦隊』そのものように『虚神アルカディア』と連携し、相対する者を滅ぼさんとするだろう。
「人は狂気を持つものである。他者の命を奪うこと、己の命を奪われぬことから遠ざけようとする。その矛盾に耐えられず、また見て見ぬ振りをする。己が賢者であると自称するものにこそ、狂気は宿る。故に、見せてくれ。あらゆる理を凌駕する己の願いを。それこそが人である存在証明である」
全身から放たれる『赤い狂気』は、『虚神アルカディア』を『強者の生命を喰らう事』に特化した異形たる怪物へと変貌させる。
それは相対する猟兵の『真の姿』を引きずり出す。
「人は生きるがゆえに苦悩し、欲望を溢れさせ、憎悪を募らせるものである。だが、強き力である。最悪とは即ち生命に最高の輝きを齎すものである」
悪夢の如き『拒絶の雲海』が見せる幻影。
『最悪の光景』は、猟兵たちの意志を試すだろう。
暴き出されたのではなく、己たちの内側に在る根源的な恐怖が見せる光景を前に、それを乗り越えなければならない。
「人は音を奏でる。喉を鳴らし、掌をたたき、指をうつ。肉体のあらゆるものが音を奏で、それは文化へと昇華するものである」
故に『虚神アルカディア』は『揺蕩う虚無』へと変化し空気に溶け込んでいく。
どんな武器も、魔法も、彼を捉えることはできない。
だが、猟兵たちは知るだろう。大気そのものを震わせるのは即ち『歌声、または叫び声』であると。
「人は惑うものである。道行きは暗く、見通すことのできぬ闇である。故に知恵という名の明かりが、必要なのである」
『雲海の迷宮』が形成され、『雲の鏡』が生み出されていく。
一方的な攻撃に耐えるには、己達だけの力では駄目だと理解するだろう。随伴する『飛空艇艦隊』の勇士達の声が聞こえる。共に征こうと。
「人は他の生命を狩り生きながらえる者である。時に己よりも強大な存在を狩り尽くし、滅ぼすこともある。その溢れる生命の脈動こそが、生命をきらめかせるのである」
魔獣達が召喚され、一斉に猟兵たちに襲いかかる。
凶暴な強敵。だがしかし、己よりも強靭な物を屠ることこそ人の連綿たる歴史の原初。
「人は一人では生きていけぬ不完全なる者。故に完全ではない。だが、その不完全さこそ、互いの欠けるを埋め、次代を絆ぐものである」
虚ろなる頭蓋に浮かぶは、相対する者にとって最も大切な存在。
抗えぬ理解。
目の前の存在がまさしく己の心を占める大切な存在であると知るからこそ、その覚悟は輝く。
「人は高めていく。他の何物にも変えがたきものを。他者には理解できずとも、おのれだけが理解できる唯一を磨き、昇華していく。己一つが一つの価値として輝くのである」
スキャンする。
読み取るように対峙する者の全てを詳らかにし、玉座は『大技能戦場』へと変貌する。
己の技能を最も遺憾なく発揮できる場所であると直感するであろう。
自身を理解し、己にできることを持って最高の技能を発露するしかないのだ。
『虚神アルカディア』は言う。
「これは『全て生命のための戦い』である」
だが、猟兵たちは否定する。
そう、これは、『全ての生命のための戦い』であると――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『アルカディア争奪戦』の戦争シナリオとなります。
『アルカディア争奪戦』の最終決戦となります。
ついに至った『アルカディアの玉座』。
そこに佇むのは皆さんと同じ等身大の幽鬼の如き石剣を備えた『虚神アルカディア』。
彼は、この場にたどり着いた強者の生命を奪うために死合を挑んできます。
『虚神アルカディア』は多彩な『攻撃手段』を持ち、猟兵ごとにそれを適宣切り替えて攻撃してきます。
全て書き出すことはできませんので、下記URLの『㉗アルカディアの玉座』の項目をご参照ください。
https://tw6.jp/html/world/event/032war/032_setumei_5d4f7rt8.htm こちらになります。
それぞれに攻撃方法とプレイングボーナスが異なります。
皆さん自身が、この中のどれかをプレイングに指定して頂くことになります。
ご負担でなければ、プレイングの冒頭に選んだ攻撃方法を明記していただけると大変助かります。
プレイングボーナス………「戦闘手段」をひとつ選び、それに対抗する。
それでは『アルカディア争奪戦』、諸悪の根源と己を語るアルカディアとの戦い、その最後の物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『虚神アルカディア』
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POW : アルカディア・エフェクト
レベルm半径内を【|拒絶の雲海《アルカディア・エフェクト》】で覆い、範囲内のあらゆる物質を【爆発気流】で加速、もしくは【猛毒気流】で減速できる。
SPD : アルカディア・インフェルノ
【石の剣】から、戦場全体に「敵味方を識別する【無限増殖植物群】」を放ち、ダメージと【呼吸不能】の状態異常を与える。
WIZ : アルカディア・ヴォイド
【万物を消滅させる虚無】を宿した【見えざる完全球体】を射出する。[見えざる完全球体]は合計レベル回まで、加速・減速・軌道変更する。
イラスト:棘ナツ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
リオン・ゲーベンアイン
狙撃戦
先制攻撃に関しては『白陽矢』と『黒陰矢』で未来属性と過去属性に干渉して『先制攻撃が命中した可能性・時間軸』を撃ち貫いて破却し、先制攻撃を凌ぐ
そして空中に巻き上げた遺跡の瓦礫を遮蔽物にしたのが運の尽き
こちらは全方位に超連射する物質透過の矢を放つ事で、こちらも遺跡の瓦礫を遮蔽物にしながらも一方的に物質透過の矢によって撃ち貫く事が出来るよ!
更に対象を認識したと同時に対象を燃やす黒炎と敵に突然沸き起こる自殺衝動による自傷行動を以て攻撃していき、超遠距離攻撃に対して反撃を仕掛けていくよ
これが私の弓!
幾ら距離を取ろうと、放たれる矢は決して相手を逃がさない!
玉座に満ちるのは『拒絶の雲海』。
それは『虚神アルカディア』から放たれていた。その勢いのままに周囲にあった遺跡の残骸が巻き上げられ、宙に浮かぶ遮蔽物と化す。
「人は遠方にありて、己の手を汚さぬことを願う。生命を奪う行いは、誰かに代わって欲しいものであり、血潮は穢れであるからだ。故に遠く、遠く、己の視界に映らぬほどに遠き場所から生命を射殺すを望む」
石器が矢に、矢が銃弾に、銃弾がミサイルになるように。
「星と星とを穿つ程に生命は力を増していく。その成長、その進化、それこそが吾が求めるもの。生命。故に吾は穿つ。生命を」
放たれるるは植物群。
猟兵に狙いをつけた植物群は、狙いなど過つことのないように空を走り抜ける。
躱しようのない一撃であった。
けれど、リオン・ゲーベンアイン(四大副王北方担当『神弓侯』・f23867)は矢をつがえる。
白と黒の矢。
未来と過去。
干渉する矢は、己に植物群が命中し、呼吸不全に陥らせたという未来の可能性、時間軸を破却する。
「創世にして終末たる八の慟哭の側近。その魔弾は常闇の炎、常闇の魔弾、常闇の自壊を以て慟哭の創世妨げし者を葬送する」
植物群がたちどころに消える。
放たれたという結果を撃ち抜き破壊する力は、因果を逆転させるのではない。
因果そのものを撃ち抜き破壊するが故に、なかったことにしているのだ。
「強者ならば出来るのだろう。吾はその強者の生命が欲しい。生命ならざる吾に命を与えてくれ、強者の生命よ」
絶対的な力。
『虚神アルカディア』は、たしかに絶対的な力の象徴そのものであったことだろう。
放たれる超距離射撃の一撃は、因果を棄却しなければリオンの肉体を貫き、滅ぼしていただろう。
だが、遮蔽物で戦場を満たしたのは間違いであった。
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
全方位に放たれる物質透過の弓矢。それは遮蔽物を障害としない。どんなものであれ、透過して放たれる矢は『虚神アルカディア』へと迫る。
それらを『虚神アルカディア』は石剣へ切り払う。
全方位から迫る矢の全てを一瞬のうちに、同時に切り払うのだ。これまで彼の元に訪れた強者がどれほどいたのかはわからない。
けれど、並外れた力を持つ者たちであったことは言うまでもないだろう。
それらを倒し、喰らってきたからこそ、その力は証明されている。
「これが私の弓! いくら距離を取ろうと、放たれる矢は決して相手を逃さない!」
「この衝動はなんでろうか。生命ですらない吾にとって、この衝動は新鮮であるといえる。己を殺すという感情。衝動。自傷したいと願い心。どれもが吾には難解である。これが生命であるということなのか、強者よ」
『虚神アルカディア』にとって、それは理解できない感情であり、衝動であったことだろう。
生きても死んでもない虚無そのものであるからだ。
湧き上がる感情などあろうはずもない。
だからこそ、リオンのユーベルコードに寄って湧き上がる衝動を理解できず、困惑するのみであった。
けれど、その困惑こそ強者との戦いにおいて、明暗を分かつものである。
「そこに居るのなら――!」
リオンの瞳が『虚神アルカディア』を捉える。
遮蔽物となっている巻き上げられた瓦礫を伝うように飛び、彼女は、その虚の如き姿を見る。
見つめるだけでいい。
射手とは、即ち見ることによって因果を決定づけるものである。
見たから射るのではない。
射るから見るのだ。
ならば、その『虚神アルカディア』の身を包み込む黒炎は、忽ちのうちに燃え上がることだろう。
そして告げるのだ。
自身が何者であるのか。
生命でありながら、『虚神アルカディア』に食い物にされない例外たる、生命の埒外であると。
「常闇司りし無感動なる魔弾の射手(ストライク・ザ・ダークポイント)、それが私――!」
大成功
🔵🔵🔵
アシェラ・ヘリオース
艦隊戦
さて、大詰めだな
ここで仕留めるぞ虚神!
近衛装束を纏って天空を駆ける
迫るは無数のオブリビオンの群れを率いる虚神
こちらの背後にも頼もしき飛空艇艦隊達だ
先制で撃ち込まれる【見えざる完全球体】に対し、背後の艦隊を考慮し回避の選択肢は捨てる
手にした破天槍に有りっ丈の闇理力を注ぎ、【念動力、推力移動、槍投げ】にて迎撃
相殺しきれなかった威力は闇理力盾に【盾受け、オーラ防御】で受け、後は逆らわずに吹っ飛ぶ
「大事ないか、同朋達!!」
損傷を見せず、落ち着いた口調で艦隊に声掛け
「見ての通り、私は槍を失った。すまないが、貴公等の力を貸してくれ」
後は、旗艦に同乗し、適切な指揮力を発揮して、奴等を駆逐しよう
『虚神アルカディア』は己の岩剣を掲げる。
溢れるはオブリビオンの群れ。
翼在るオブリビオンたちは群れをなし、空を蹂躙する。あまりのも膨大な数。空を埋め尽くすような光景を前に立ちすくむものもいるかもしれない。
けれど、アシェラ・ヘリオース(ダークフォースナイト・f13819)は違う。
ここが正念場であると知っている。
眼前には無数のオブリビオンの群れ。
逃げる隙間など元より在りはしない。
まとった近衛装束が風になびき、彼女の道行きの困難さを知らしめるだろう。
「此処で仕留めるぞ虚神!」
確かにオブリビオンの数は膨大である。
「仕留める、と言ったな。吾を前にして、その無謀たる宣言。生命とは群れるものである。個として弱き者は群れて大いなる個を乗り越えるしかない。それが弱き者が唯一持ち得る強者を屠る鉾であるがゆえに」
『虚神アルカディア』の言葉が響く。
一斉に空を駆けるオブリビオンたち。
「そうであろう。だがな、こちらにも頼もしき『飛空艇艦隊』がいる」
アシェラは退くことをしないのだ。
「強者の影に隠れるものをどうして頼る。強者であるのならば、ただ個であればいいはずだ。だというのに」
「無論。それが生命というものだからだ。生命ならざる揺蕩う虚無よ」
振るわれる岩剣より放たれた不可視の完全球体。
それは物理法則を無視し、あらゆる角度からアシェラを狙うだろう。
アシェラにとって、それは躱すことなど出来ないのだ。自分が躱せば、自分の背後にある『飛空艇艦隊』が球体の餌食になる。
見えぬ球体は、それだけで脅威だし、己に標的を絞らせるのならば対処は可能であった用に思えたからだ。
「見えぬとて、焦る必要はない」
自らに出来ることを。
そのために彼女は己の手にした破天の槍を構える。
不可視の球体は、己の体を撃つ。
迎え撃つと決めた以上、彼女は己の肉体が砕けようとも、それを曲げることをしない。
「ぐっ――」
身に受ける痛みは、五体が引きちぎれそうなほどであった。
けれど、おのれを標的としている以上、急加速と減速を繰り返し、おのれの体を撃つ球体を彼女は理解する。
必ずおのれを撃つというのなら。
「此処だ!」
放つありったけの一撃が見えぬ球体を穿つ。
迸るフォースの力が完全なる球体を破壊し、溢れる力の爆発とともに彼女は背後の『飛空艇艦隊』へと吹っ飛ぶのだ。
「お、おい! 大丈夫か……!?」
「大事ないか、同朋達!!」
自らの激痛は切って捨てる。己は今冷静であるだろうか。そのように振る舞えているだろうか。
宇宙の戦いで彼女が見せたように。
彼女の瞳は今ユーベルコードに輝いている。すでに武器は手にはない。
ありったけのフォースの力を籠めて、あの球体を破壊することしかできなかった。『虚神アルカディア』は未だ健在。
ならばこそ、彼女は『飛空艇艦隊』に在る勇士たちを頼る。
「観ての通り、私は槍を失った。すまないが、貴公等の力を貸してくれ」
アシェラは言う。
これは己達だけの戦いではない。ブルーアルカディアの世界に生きる人々だけの戦いでもない。
あの『虚神アルカディア』は生命を喰らうもの。
ならばこそ、これは『全ての生命のための戦い』である。故に、アシェラは指揮官の貫禄(カリスマ)を見せる。
『飛空艇艦隊』は未だ健在。
激突する勇士たちと翼在るオブリビオンたち。
アシェラは、指揮官としての辣腕を振るう。誰ひとりとして欠けさせはしない。誰もが明日を望んでいる。
ならばこそ、アシェラは指揮を執る。
「さあ、征くぞ。同朋達!!」
彼女に率いられた『飛空艇艦隊』はオブリビオンの群れを物ともせずに、玉座ありし空域を席巻していく。
生きることを誰もが諦めないからこそ、輝くものがある。
それは絶滅の憂き目にさらされたからではない。己の生命を懸命に生きようとする者たちの抵抗そのものであることをアシェラは『虚神アルカディア』に示すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
技能戦
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
陰海月からお題が出たんですよ。『ヒポグリフぬいぐるみ作って!』と。
布と糸、綿は…陰海月がいつの間にか買っていたこの世界産のが。型紙もあります。
折角ですから、これを勝負にいたしましょう。
大丈夫、モデル(霹靂)もいますから。
というわけで、裁縫の技法を駆使して、ヒポグリフぬいぐるみを作りましょう。陰海月のリクエストなんですから、負けるわけにはいきませんよ。
ええ、早業にて縫い上げていきましょう。
私なのは、手先が器用だからですよー。
※
公平のため、陰海月は応援席に。霹靂はモデルのお立ち台にいる。
霹靂「クエ?」なにこの勝負。
『虚神アルカディア』は無造作に馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)をスキャンしていた。
四つの悪霊を束ねた存在。
表層に在るのは『疾き者』。
されど、『虚神アルカディア』はスキャンした猟兵の情報を元に、玉座の周辺を『大技能戦場』に作り変えていく。
そこにあったのは一つのお立ち台。
一体全体どういうことなのだと思っただろう。
封じられていくユーベルコード。
「これが人。人とは即ち技術の集大成。繋ぎ、連綿たる歴史を紡ぐ者。故に吾は求める。それが生命であると。例え『今』に可能性が万が一にしかないのだとしても、絆ぐことに寄って次は、千が一に。そしてさらに百が一に。十が一に。最後には一そのものとなることを吾は知りたい」
故に『大技能戦場』。
ここではユーベルコードはできない。
お立ち台に昇るは、『霹靂』。ヒポグリフである。
「クエ?」
なにこれ、とヒポグリフである『霹靂』が首を傾げている。
公平のために『陰海月』もまた『大技能戦場』に設けられた応援席にスタンバっている。
何から何まで意味がわからないと『疾き者』は思っただろう。
ででん、と謎のスクリーンにお題が映し出される。
そこにあったのは『ヒポグリフぬいぐるみを作って!』という文言。
「……昇華した技能。そのための戦い。生命とは競いあうこと。練磨と人はそれを呼ぶのだろう」
『虚神アルカディア』は、その手に裁縫道具を持ち、『疾き者』と相対する。
「ええ、折角ですから、これで勝負をいたしましょう」
飲み込みは早かった。
確かに『虚神アルカディア』は強大な存在である。
このようにユーベルコードを封じ、さらには互いの技量だけで優劣を決めることを強いるほどの力を持っている。
ならばこそ、おのれたちはそれで超えなければならないのだ。
「裁縫勝負……お題の『ヒポグリフぬいぐるみ』。勝敗は如何に互いの心を震わせたか……そういうことでしょう」
「そのとおりだ。吾に見せてもらおうか、その技量。その技能。その熱意。心を震わせるという衝動そのものを」
互いに手にした布と糸。そして綿。
詰め込むのは綿だけではない。
思いであったり愛情であったり、託すものはそれぞれことなる。
「型紙を……!」
手に取る。すでに『陰海月』がいつの間に買っていたものがある。これならば負ける道理などない。
だが、その目算は甘かったと言わざるを得ないだろう。
なぜなら『虚神アルカディア』は多くの強者を喰らってきた虚無そのもの。
その喰らってきた者の経験をすでに会得している。
即ち、裁縫という文化においても『虚神アルカディア』はただならぬ力を発揮するのだ。
「やるようですが、『陰海月』のリクエストなんですから、負けるわけにはいきませんよ」
見事な針さばき。
『疾き者』は、おのれと同等、それ以上の速度で縫い上げていく『虚神アルカディア』を見やる。
確かに正確無比。
機械かなにかかと思うほどの手さばき。よどみなく、ムダなど一つもない。
完璧に縫い上げられていくぬいぐるみ。ヒポグリフの複雑な翼の構造など難なく作り上げていく。
だが、それはそつがないということ。
逆に言えば、ゆらぎがない。
いや、だからこそ誰も責められないだろう。一つの隙もないぬいぐるみは、たしかに完璧だった。
「ですが、これは他者の心を震わせる勝負。ならば」
早業によって生み出される『ヒポグリフのぬいぐるみ』。
お立ち台の上の『霹靂』をデフォルメしたぬいぐるみだった。確かに出来栄えであれば『虚神アルカディア』のほうが優位であっただろう。
けれど、『疾き者』が籠めたぬいぐるみへの思いは、孫のように思っている『霹靂』への愛情。
『虚神アルカディア』は虚無故に感情を保たない。
そこにゆらぎはなく。されど、故に熱量がないのだ。
「……これが、感情。これが魂の振り幅だとでも、言うのか。これが、吾にはないもの。吾が欲する生命というもの。吾の……」
欲する処。
余すこと無く体現されたぬいぐるみを前に、『虚神アルカディア』は膝をつくだろう。強き思いは、虚無の如き存在に『憧れ』を抱かせるには十分であり、その身を穿つ一矢であるのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
神酒坂・恭二郎
剣戟戦
命が何かの答えはないが
虚神と呼ばれるお前さんには大事な事なのだろう
答の無い問いを求める様は、何処か道を求めるのに似ている
共感はあるが、認められない理由もまたこちらにもある
ならば死合う他は無かろう
「神酒坂風桜子一刀流 神酒坂恭二郎 参る」
手にした銀河一文字を構え、拒絶の雲海に対し剣風の衝撃波を叩き込む
一撃で吹き飛ばすのではなく、加速と減速の気流を見極める為だ
加速の流れを見切り、それに乗って納刀し踏み込もう
石剣に対しては、加速度に覚悟を乗せて掻い潜りを狙う
後は、高次元まで高めた風桜子を込めた居合の一閃
肉体を斬らず、その存在を構成する超常の力を切り裂きたい
命無き存在は何を支えに存在するのだろう
『虚神アルカディア』は生命になりたいと願う存在である。
だが、虚無そのものである。
生きることも死ぬこともない。
だからこそ、求める。希求するものが在るがゆえに、それ以外をないがしろにすることができる。
他者を喰らうことでしか進化することができないというのならば、『虚神アルカディア』はやはり、虚のままであった。
骨身があるのだとしても、血潮があるのだとしても、しかして其処に感情は乗らない。
「生命になりたいのだ、吾は。そのためにあらゆる強者の生命が必要である。諸君ら生命に対して差し向けられる『拒絶の雲海』は、その篩。強者だけが吾に食われるに値するもの」
手にした岩剣が無造作に抜き払われる。
「生命が何かの答はないが、虚神と呼ばれるお前さんには大事なことなのだろう」
神酒坂・恭二郎(スペース剣豪・f09970)はサムライブレイドを手にする。
大業物。
その彼が手にするからこそ、その銘、『銀河一文字』は煌めく。
答のない問い。
それが生命というものである。確かに掴みかけた答えは、次の瞬間に泡沫と帰す。正答であったとしても、流れる月日に寄って過ちに変わることもある。
だがしかし、それでも諦めずに手を伸ばし続ける。
答えのでぬ物に答を出そうとしている行いは、何処か道を求めるのに似ていると彼は思っただろう。
僅かな共感。
だが、同時に恭二郎はおのれの中にある理由を自覚する。
認めることなどできないのだ。
生命を喰らうのが生命の宿命である。他の生命を喰らわぬ生命などない。故に、ここに道同じくしながら歩む道程の異なる者同士が激突する。
「神酒坂風桜子一刀流、神酒坂恭二郎――参る」
告げる言葉とともに走るは剣閃。
放たれる『拒絶の雲海』よりも速く、彼の斬撃は走っていた。
後の先である。
『虚神アルカディア』は早い。踏み込みの速度など、速度としてたとえることが出来ぬほどに圧倒的な踏み込み。動く足すら見えなかった。
けれど、恭二郎は理解していた。
おのれに対峙する『虚神アルカディア』の放つ岩剣の剣戟。
その間合いで必ずおのれに攻撃するのならば、その剣の先を彼は捉えることが出来る。放つ斬撃波が『拒絶の雲海』を切り裂く。
否、切り裂く事ができない。
けれど、その気流は手にしたサムライブレイドの刀身が捉え、おのれの指先に伝える。
「加速……!」
「汝も剣に見出す者。その剣に何を見た。剣身に何を見出す。生命であれば、それが理解できるのだろう。吾には理解できぬものだ。どうしても理解できないものだ。汝は今何を見ている」
「剣心……己の心を写すのが剣身。故に、お前さんが見たのは俺の心というわけだ」
恭二郎は気流を蹴るようにして飛ぶ。
すでにサムライブレイドは収められている。
振るわれる剣戟。
岩剣の斬撃は鋭く速い。躱す、とは思っていなかった。
ただ覚悟があっただけだ。
踏み込む。恐怖を噛み殺すのでもなければ、受け流すのでもない。
対峙するものは、恐怖という形ではないのだ。
瞳に写すは虚無。
力だけがある。故に、恭二郎は覚悟するだけでよかった。
「誠心一刀、万象を祓う……柄じゃあないんだがね」
高次元にまで練り上げられた風桜子。それが籠められたのは、一刀の一撃。
だが、その斬撃は、肉体を傷つけるものにあらず。
存在に関与する非物理的な超常の力のみを切り裂く刃。
故に名を、霊妙剣・滝祭(タキマツリ)。
放たれた斬撃は『虚神アルカディア』を切り裂く。切り裂くは、虚無を支える願いそのもの。
数多の強者の命を喰らうことによって紡がれてきた生命になるという願い。
それを切り裂く。
「そうか、生命無き存在は何を支えに存在するのだろうと思っていたが」
恭二郎は『虚神アルカディア』と交錯し理解する。
生命ならざる生命なることを求めるもの。
求め、願い。
そのたった一つだけが『虚神アルカディア』を、そうたらしめるのだと、己の剣身が教えてくれるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
荒珠・檬果
技能戦
気がつくと、そこは…テレビが2台。そして、それに繋がるレトロゲーム機…。
間違いないです、これは程よいの長さがあるRPGの『RTA並走会場』…!
条件としては
・バグなし
・タイマースタートはNewGame押した瞬間
・タイマーストップはラスボス撃破
バグありだと機体選別から始まるので…これ…。
さて、まあスキャン時にチャートも知られてるでしょうから。
あとは、それまで修練したもの。
そして…NPCの移動とかエンカ運のとかで幸運と祈りですね!動くNPCに邪魔されて2分ロスとかよくある。
エンカ運最悪でボコられるのもある。
なんとかそこの運はよかったんですよ。
が。ラスボスが…一番の運…!
しかし、やりきります!
荒珠・檬果(アーケードに突っ伏す鳥・f02802)は、気がつく。
いや、たしかに彼女は『虚神アルカディア』と戦うために『アルカディアの玉座』へと至った。
相対する『虚神アルカディア』の等身大の姿を見た瞬間、玉座の風景が変わっていたのだ。
目の前にあるのは、ブラウン管のテレビ。
それも二台である。
そして、繋がっているのはレトロなゲーム機。
UDCアースや、アポカリプスヘルなどには存在していたかもしれないゲーム機である。
いわゆる傑作ハード機というよりは、コアな一部の熱狂的ファンが存在している据え置き機であった。
「こ、これは……!」
見覚えがあった。
「これなるは人の技術の粋を集めたもの。結晶と呼ぶにふさわしいものであろう。吾は知っている。人の生命は、絆ぐものであるが、同時に濃縮された願望の結実でもある。これはまさに人の、生命の心が形なったもの。存在あらざりしものを、存在たらしめる虚構にして、実在する願望機」
『虚神アルカディア』の大仰な物言いは檬果には、ちょっと違うかも知れないと思ったし、頷けるところもあったかも知れない。
けれど、彼女はそれどころではなかった。
レトロゲーム機に挟まっているソフトを確認したかったのだ。
「間違いないです、これは程よい長さのあるRPG……! そして、此処は!
「『RTA並走会場』である」
大真面目な雰囲気で言う言葉ではないように思える。
けれど、これが現実である。
『虚神アルカディア』は、すでに着席している。座布団の上に正座をしてコントローラーを握っているのだ。
これは受けねば無作法というもの……!
檬果はルールを確認する。
バグなし。
タイマースタートはNewgameを押した瞬間。
タイマーストップはラスボス撃破。
「バグありだと機体選別から始まるので……これ……」
そうしたところは解消済みである。というか、『虚神アルカディア』が檬果をスキャンした結果が、この『大技能戦場』であるというのならば、そうした知識も知られていよう。
だからこそ、バグなし。
「後は……それまで修練したものが物を言うということですね」
そうこれはTRPG。
NPCの移動とかエンカウント運やらなんやらが大きく作用するゲームである。
動くNPCに自キャラの進路を妨害されてロスとか普通になるのである。
というか、エンカウント次第では、普通に格上にボコボコにされてスタート地点から、はいやりなおしもあるのである。
だが、『虚神アルカディア』と檬果は挑むのだ。
どんなに理不尽なエンカウントであったとしても。どんなに、これもうバグでしょ! とコントローラーをぶん投げたく成ったとしても。
彼女たちの目の前にあるのはゲームである。
その技能を競う戦場なのである。
もう止められない。もう止まらない。
どうあがいてもどちらかがクリアするまで止まらないのである。
「此処までは五分……!」
「ランダム性を生み出す手法。競技性とはかけ離れているがゆえに、対等に戦えるということか」
「が、ラスボスが……一番の運……!」
互いに疲弊している。
ここまで何度理不尽な目に合わされてきたか知れず。
そして、この時代のゲームとは即ち根気! 短気は損気! 故に、こみかめに青筋が走ろうが、ピキピキしようが、クリアするためには我慢しなければならないのだ。
「己の怒りを押し殺してでも、という強い意志。そのエゴ……吾にはないもの……!」
いっそ憧れにも似た感情を見せる『虚神アルカディア』の隣で檬果は拳を振り上げる。
目の前のブラウン管に示されていたのは、『GAME CLEAR』の文字。
そう、彼女はやり遂げたのだ。
『虚神アルカディア』よりも速く、よりハイスコアで。
運さえ味方にできぬ状況で、運を凌駕する己のエゴでもって、彼女は拳を天に突き上げ、リアルタイムアタックを制したのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
リア・アストロロジー
●音響戦
揺蕩う虚無
命満ちる世界と交わることのない、虚ろ
だけど、あなたが座すこの|玉座《座標》でなら――
●小さなうた
緑色が心を安らかにしてくれるのは、人がかつて森で暮らしていた名残だそうです。
冬を超え春に咲いてくれた花を見て、微笑まずにいられるでしょうか?
太陽の無い世界でだって、かぼちゃを喜んでくれる子どもたちがいました。
あなたのしもべだという植物たちは、いのちの輪の中でいのちにたくさんの贈りものをくれています。
なのに――あなたは、何もない虚無のままなのですね。
理解さえしてあげられないその境遇には、少しだけ同情します。
フラスコから生まれた戦争の道具は、呼吸をして……|命《こころ》を持てた。
だから、せめてその感謝の分だけ、小さなうたを捧げます。
硝子ではなく、人肌を求めて、そのぬくみに触れて。
何よりその|存在《いのち》が愛おしいと思った、素朴で、飾らない、愛の歌を。
神様にとってはちっぽけな存在、一瞬に過ぎない幸福であっても。
わたしが感じた記憶が。
愛する喜びが、どうかあなたにも伝わりますように。
『虚神アルカディア』は虚無である。
生命とは言えない。
その等身大の体には生命がない。
あるのは虚の如き混沌だけである。皮膚もなく、肉もない。血潮すら見ることはないだろう。
故に彼は求める。
生命であることを。
しかし、その道程は到底他者には許容できぬものである。
強者を喰らうことでしか進化ができない。たとえ、強者を喰らうのだとしても悠久の時を経て尚、現状に至ることしかできない。
「故に吾は求める。強者を。その欲望を、熱望を、切望を、願望を。あらゆる生命が求めるところを吾は知りたい。吾もそうありたいと願う。故に」
揺蕩う虚無へと『虚神アルカディア』は変貌して、大気へと溶けていく。
どんな攻撃も、どんな武器も、今の彼には届かない。
ユーベルコードすら届かないのだ。
圧倒的なまでの力。これが己の願いのためだけに世界を作り上げた『虚神アルカディア』の力。
けれど、リア・アストロロジー(良き報せ・f35069)は歌うのだ。
如何なる歌を歌うというのだろうか。
「揺蕩う虚無。生命満ちる世界と交わることのない、虚ろ。だけど、あなたが座すこの|玉座《座標》でなら――」
そう、小さな歌は響く。
彼女の心にあるのは造られた体でありながら、彼女自身が生み出してきた心というものであった。
虚無たる存在と己とを分かつのは、その一点。
このブルーアルカディアの世界にある緑を彼女は見る。
人がかつて森で暮らしていた名残故に、人はその色を見て心を安らかなものとする。
リアは知っている。
「冬を越え、春に割いてくれた花を見て、微笑まずにいられるでしょうか?」
「理解できない。吾にとって、それは触れ得ざるものであるがゆえに。仮に見ることができたのだとしても、それは吾があらゆる世界に撒いたもの。汝らを追い詰める毒そのものである」
リアは頭を振る。
そうではないのだと。
「太陽のない世界でだって、かぼちゃを喜んでくれる子どもたちがいました」
そう。太陽無き世界にも植物は存在している。
常闇の世界にあって、リアは子供らと共にこの後に来る季節において、共に過ごしたことがある。
あの笑顔は得難いものであったはずだ。
だからこそ、リアは『虚神アルカディア』の言葉を否定する。
「あなたのしもべだという植物たちは、いのちの輪の中でいのちにたくさんの贈り物をくれています。なのに――あなたは、何もない虚無のままなのですね」
「だから、強者の生命がいるのだ。そうやって喰らわねば、吾は生命に進化できない。生命を得て、吾は汝らが得ているものすべてを感じたいのだ。手で触れて、目でみて、耳で聞き、舌で味わいたいのだ。なのに――」
「理解さえしてあげられない境遇には、少しだけ同情します」
そう、リアにとって、それは同情であった。そのような感情であった。
それ以上の感情は思い浮かべることが出来ない。
彼女が存在している意義は、戦争の道具。
争うための存在。
悲しみに対応した感情に由来した生誕の理由。故に、彼女は同情だけしかできないのだ。
今、彼女は此処にある。呼吸をして、|生命《こころ》を持てた。
きっと、植物がなければ生きていることすらできなかったことだろう。道具として生まれたのだから、感情など不要であるはずだ。
けれど、彼女の中にあるものが言う。
残された時間を、もらった時間を、精一杯生きなければならないのだと。
「だから、せめて。その感謝の分だけ、小さなうたを捧げます」
世界の片隅で響く小さな|歌《こえ》は、『虚神アルカディア』の虚なる器に響く。
世界に自らの|存在証明《おと》を響かせたいという感情のさざなみでもって、彼の虚を揺らす。
その歌声は、硝子ではなく、人肌を求めて、そのぬくみに触れて。何より|存在《いのち》が愛おしいと思ったのだ。
だから、これは大げさな歌ではない。
壮大な歌でもない。
ただ、素朴で飾らない愛の歌。
故に、彼女は歌う。
激情でもない。慕情でもない。ただ、己の中にあるものを発露させるようにリアは歌うのだ。
彼女の感じた記憶が、愛するという喜びが、他ならぬ|『あなた』《虚神アルカディア》に伝わりますようにと願うのだ。
その願いは祈りに昇華する。
ユーベルコードに煌めく瞳でリアは『虚神アルカディア』の虚を見つめる。
混沌の闇ばかりが広がる虚の中。
「これが、歌声。これが世界。これが存在するということ。これが生命の、讃歌」
今も君は歌えているかと響く声がリアに届く。
歌えている。
愛の歌を。
生命を歌う。
神にとってはちっぽけな存在であっても。
一瞬に過ぎない幸福であるのだとしても。
それでも真実だ。リアにとっての。例え、悲しみから生み出された存在であっても、愛は宿る。どんなものにも宿るのだと証明する歌声は、たしかに『虚神アルカディア』の虚を彼には理解できぬ|なにか《愛》で埋め尽くしていくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
悪夢戦
目の前に現れた猟兵仲間達の幻影。
かつての悪夢が脳裏をよぎる。
「詩乃(or詩乃さん)って●●万歳なのに、セーラー服着て学校潜入とかよくできま…」
「その話はもういいですから💢💢💢」とピシャリ。
「可愛いは正義にして真理。似合っているなら歳など関係無いのです!」
と怒り心頭のオーバーロードで真の姿に変わりつつ、圧倒的な「意志」を示します。
いつの間にか周囲には激しい雷雨が降り、《神域創造》が発動。
|圧倒的な意志力《ガチギレ》はそのままに、神域効果と合わせてアルカディアに「そこに座りなさい」と正座させる。
「植物を私利私欲で悪用するのみならず、女性の年齢をあげつらう姑息さ。
到底許せるものではありません!」
右手に神罰と(多重詠唱・高速詠唱による)光と雷の属性攻撃を籠め、衝撃波を放ちつつのなぎ払い・鎧無視攻撃で平手打ちしてお仕置きです!
「骸の海にて植物への労りと女性への配慮を学び直しなさい!」
まったく、UDCにしろ虚神にしろ、どうして嫌な所を的確に攻めてくるのでしょう💢
『生命ある者の苦悩、欲望、憎悪』。
それが『虚神アルカディア』の求めるものであった。
斯様にネガティヴな感情ばかりを求めるのは、それが強烈な感情であったからだ。強い感情にこそ『虚神アルカディア』は揺さぶられるほどに憧れを持つ。
当然であろう。
耳があり、音を解するのだとしても、その根底あるものを理解できないのだから。
だからこそ、『虚神アルカディア』の身より溢れ出る『拒絶の雲海』は、『最悪の光景』へと変わっていく。
対峙する猟兵に寄って、その光景は異なるだろう。
忽ちのうちに『拒絶の雲海』は迫る。
「汝らの苦悩、欲望、憎悪。どれもが吾にとって強烈なるものだ。めまいすら覚えるほどに、吾がこがれたものだ。故に、見せてくれ。汝の苦悩を、欲望を、憎悪を」
その言葉は大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)の心をしたたかに打ち据えるだろう。
詩乃は覚悟した。
目の前に広がる『最悪の光景』はきっと自身の心をえぐるものだと理解したからだ。
「詩乃さんってぇ、おいくつなんですか~?」
「え~、そんなお年なのに、セーラー服着て学校潜入とかよくできま……――」
ものすごい悪夢の如き光景であった。
彼女の目の前に現れたのは猟兵仲間たちの幻影であった。それはかつての悪夢であったし、脳裏に浮かび上がった最悪の形。
だからこそ、彼女はピシャリと言い放つ。
彼女らしからぬ迫力であった。いつものほんわかした雰囲気など何処にもなかった。
「その話はもういいですから」
封殺する。
それ以上の会話は必要ないと言うかのような冷徹な視線。
別の意味でなんか違う扉を開きそうに成ってしまいそうであるが、彼女は言い放つのだ。
そう、この戦いは即ち意志の戦いである。
目の前の『虚神アルカディア』が見せる『最悪の光景』は踏み越えてい中なければならない。
彼女がどうしてセーラー服を着るのか。
そんなもん決まっている。
「かわいいは正義にして真理。似合っているなら歳など関係ないのです!」
落ちる雷。
いや、それはただのイメージである。
理屈でもなんでもない。ついでに言うと真理ですらない。いやまあ、一部界隈では真理かもしれないが、正直そのぉ、屁理屈的な気がしないでもないのである。
だがしかし、詩乃の怒りは頂点に達している。
思わずオーバーロードしてしまっているくらいである。
年齢のことを言われることも、セーラー服うわキツって思われることも、何もかも彼女にとっては許しがたいことなのである。
それ以上に仲間の、猟兵の姿を映し出して言われたことが、詩乃の逆鱗に触れたのだ。
圧倒的な、高圧的な、その意志を前に『虚神アルカディア』は何も言えなかった。いや、この状況でなにか彼女にいえるのならば、まじで大したものである。
いつしか、周囲は『拒絶の雲海』ではなく雷雨満ちる詩乃の領域であった。慈雨なんてなかった。神域創造(シンイキソウゾウ)とはこういうものではなかったはずであるが、怒り心頭である彼女には関係ないことだった。
「そこに座りなさい」
詩乃の瞳に輝くのはユーベルコードでもなければ、オーバーロードでもなかった。あるのは|圧倒的な意志力《ガチギレ》であった。
その圧倒的な意志に『虚神アルカディア』は恐怖よりも、圧倒されるよりも、憧れてしまうのだ。
『拒絶の雲海』を噴出させいた体は素直に詩乃の前に従い、正座をする。
息を吸う。
とても、ともて、大きく詩乃は息を吸っていた。
「植物を私利私欲で悪用するのみならず、女性の年齢をあげつらう姑息さ。到底許せるものではありません!」
ぐわっ! と詩乃はお怒りであった。
『虚神アルカディア』もなにか言い返せばいいのに、あまりにも圧倒的な意志力の前に、震えるばかりである。
恐怖ではない。憧れによって、だ。そういうところが、なんというか、二人の間にどうしようもない溝を作り出している。
「なにか言ったらどうです! 骸の海にて植物へのいたわりと女性への配慮を学びなおしなさい!」
もう我慢ならぬと詩乃は、何も言わず、さりとて反省の色の見えない『虚神アルカディア』へと光と雷満ちる神罰の如き衝撃波伴う平手打ちを見舞う。
スナップの聞いた良~い一撃であった。
鞭がしなるように。
空気の音をぶち抜く雷鳴のように。
彼女の平手打ちが『虚神アルカディア』をぶっ飛ばす。
ふーっ! ふーっ! とものすごく荒い息が詩乃の口から漏れている。よほどお怒りになられたのだろう。
わからんでもないが、ちょっとこうやりすぎな気がしないでもない。
「まったく、UDCにしろ虚神にしろ、どうして嫌な所を的確に攻めてくるのでしょう!」
詩乃はこういう事態に置いては弱いのである。
だが、今回はそれが転じて『虚神アルカディア』にとっての災いとなった。
そこだけは結果オーライと言ってもいいのではないだろうか。
「良いわけないでしょう!!」
天に向かって未だ収まらぬ怒りを叫ぶ詩乃。
彼女の怒りがクールダウンするまで、玉座に降りしきる雷雨は止むことはなかった――。
大成功
🔵🔵🔵
アルトリウス・セレスタイト
俺は不信心ゆえ祈らぬぞ
剣戟戦
状況は『天光』で逐一把握
先制含め守りは煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し害ある全てを世界の外へ破棄
要らぬ余波は『無現』にて消去
全行程必要魔力は『超克』で骸の海すら超えた“世界の外”から常時供給
目の前の空気を起点に絢爛起動
因果と破壊の原理を以て戦域の空間を支配
虚神アルカディアの行う攻撃と存在根源のみに破壊の原理を直接行使
即座に、確実に討滅する
万象一切に終わりを刻む破壊の原理に例外はない
たとえ虚無を宿そうと消え失せ小波も残りはしない
無論のこと神であろうと逃れる道理もなし
生きるものの世界にお前の舞台は存在しない
虚ろなまま終わるが良い
※アドリブ歓迎
虚神なれど神。
故に願いは祈りへと変わり、その昇華されたものをもって『虚神アルカディア』は強者の命を喰らう。
その強き願望が。欲望が。憎悪が。
あらゆるものが『虚神アルカディア』にとって生命に憧れるに値するものであった。
揺蕩う虚無は、ただ生命でありたいと願う。
この大空の世界すら『虚神アルカディア』の願いを叶えるための世界でしかない。
「俺は不信心ゆえ祈らぬぞ」
アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)はそう告げる。
『虚神アルカディア』はその言葉に首肯する。
否定するまでもない。なぜなら、その祈りは必要としないものであるからだ。
「吾が求めるは強者の生命。ただそれだけ。祈らずとも、例え信じずとも、吾は吾の願いのためにこそ強者の生命を喰らう」
不可視の球体が空を走る。
加速減速を繰り返し、あらゆる角度から曲がる球体は、それだけで脅威であった。
その球体を見えているわけではないが、アルトリウスはただ進む。
十一の原理でもって害在るもの全てを世界の外に破棄する。
「煌めけ」
アルトリウスのユーベルコードが輝く。
周囲の無機物を起点に周囲の空間を完全に支配する。
絢爛(ケンラン)たる輝きは、戦場の空間を、その因果と破壊でもって支配していく。
放たれる剣戟は砕ける。
即座に、だ。
だが、揺蕩う虚無は生命ではない。
生きてもいない。死んでもいない。
確定することのない混沌そのものたる虚を、その未だ形成されぬ頭蓋の奥に秘めながら『虚神アルカディア』は感情の乗らぬ声で言うのだ。
「強者の生命は吾に進化をもたらしてくれる。強者であればあるほどいい。この『拒絶の雲海』をも乗り越えてきたのならば、吾に進化をもたらしてくれる稀人そのもの」
「俺にはそのつもりはない」
振るわれる岩剣が砕けても、即座に岩剣は形をなして襲い来る。
万象一切に終わりを刻む破壊の原理に例外花い。
虚無を宿そうと消え失せ、小波も残りはしないのだとアルトリウスは言う。虚神である『アルカディア』においてもそうであると告げるのだ。
「生きるものの世界にお前の舞台は存在しない。虚ろなまま終わるがよい」
「終わる? 終わることはない。虚無に終わりなどない。無論、混沌にも。そして、骸の海も尽きることはない。『今』というものが存在している限り。未来という可能性が在る限り。『今』は『過去』になる」
「だが、『過去』が『今』に逆流するという定めもない」
振るう岩剣が砕け、再生されながらアルトリウスに迫る。
その一撃を受け止め、アルトリウスの放つ淡青色の原理が迸る。それは、岩剣を砕きながら、『虚無アルカディア』に迫り、その虚の如き未だ頭蓋形成されぬ頭部を撃ち抜く。
溢れるは混沌の如き闇。
揺蕩う虚無は、それゆえに生命たり得ない。滅びなきものであるがゆえに。
されど、その滅び無きものに滅びを与えるのが猟兵であり、ユーベルコードであるのならば、『虚神アルカディア』は等しく滅びを得て、生命ならぬ生命へと堕すのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィクトリア・ノウェム
そんなに|ひと《私》が借金背負ってお腹空かしてるのを見たい、です?
……悪いのは性格です?それとも趣味です?
狙撃戦で行くです
レミエールⅢを連れてエル・セプス(飛空艇形態)を駆り、精霊機関の出力を上げる事で、非物質である風の結界を張って拒絶の雲海を遠くまで放ってきた時に備えるです
それ以外のものならレミエールⅢ搭載のデビルアヴェンジャーと、A.F.C.での砲撃で迎撃するです
飛空艇パイロットの動体視力、なめないでほしい、です
速度を低下させられる拒絶の雲海、瓦礫、確かに撃ち合いには邪魔なものばかりです
でも……どんな障害だろうと、ぶっ飛ばしてやるだけです
多分速度落とされるけどレミエールⅢからのけん制射撃をしつつ魔力充填し……
臨界出力での【G.A.F.C.】をぶっ放す、です
あらゆる障害も防護も全て貫通する特大魔力光線、もちろん実体弾じゃないからそっちの雲海じゃ遅くできない、です
この戦いもクライマックスです、さっさとこいつも倒して、ご飯を食べに帰る、です!
膨れ上がっていく『拒絶の雲海』。
それは『虚神アルカディア』が空へと飛び上がる予備動作であったのかもしれない。噴出する『拒絶の雲海』は、彼の体を空へと舞い上げる。
同時に周囲に合った遺跡の瓦礫が宙に浮かぶ。
「人の欲望、憎悪、怒り。人はネガティヴな感情に揺り動かされ、その力を発揮する。強者の怒りは、吾にとって生命そのもの。吾はそれを喰らって、進化したいのだ」
生命ならざるものの願い。
そのためにブルーアルカディアという世界が出来上がり、全世界に繁栄したであろう『植物』を撒き散らす。
『虚神アルカディア』は、生命になりたい。
「そんなに|ひと《私》が借金背負ってお腹空かせているのを見たい、です?」
ヴィクトリア・ノウェム(はらぺこ空戦天使・f33941)は飛空艇『エル・セプス』とガンシップ『レミエールⅢ』を引き連れて、空中戦を挑む。
精霊機関の出力を上げていく。
『拒絶の雲海』に触れたものは、そのまま滅びる。
雲海に沈むのと同じ。
だからこそ、彼女は風の結界によって雲海を退け、切り裂く矢のように空へと飛ぶのだ。
飛ぶことこそが彼女。
この世界に生まれ、この世界の理に翻弄されてきた身である。今更であるとも思えた。
どれだけ理不尽が、この身に降り注ぐのだとしても。
彼女を突き動かすものが今も胸にある。
「……悪いのは性格です? それとも趣味です?」
「諸悪の根源は吾だ。存在そのものであるといえる。汝らの生命を吾は欲しい。その生命を持って進化したいのだ」
放たれる『拒絶の雲海』を煮詰めたかのような射撃。
精密無比。
狙いは、過たずヴィクトリアを狙うだろう。
だが、正確無比であるからこそヴィクトリアは弾丸を見る。
結界では防げないと理解している。
だからこそ、その弾丸の正確さに賭けた。必ず己の頭部を狙ってくるとわかっているのならば。
それこそ針の穴を通すような精密射撃であるというのならば。
「飛空艇パイロットの動作意志力、なめないでほしい、です」
飛空艇を横に倒すように回転しながらガトリングガンと魔導砲が火を吹く。
放たれる弾幕が周囲の障害物を破壊していく。
負けてはいない。
戦えていると思える。だが、周囲に在る『拒絶の雲海』が飛空艇の速度を殺す。
「そうだ。その強さが、強き思いが、吾に進化を与えてくれる。その意志の強さが、吾を生命に昇華させてくれる」
放たれる弾丸。
迫る『拒絶の雲海』。
どれもがヴィクトリアにとって巨大な障壁であった。宙を舞う瓦礫を躱しながらヴィクトリアは小さく呟く。
「……どんな障害だろうと、ぶっ飛ばしてやるだけです」
『レミエールⅢ』から放たれる牽制射撃を『虚神アルカディア』は『拒絶の雲海』を噴射しながら躱していく。
速さ、正確さ共にこれに並ぶものなどいない。
圧倒的な力。
これが虚神と呼ばれる敵であるとヴィクトリアは理解しただろう。
けれど、彼女の瞳はユーベルコードに輝く。
越えていかなければならないのは、障害だけではない。今日の自分すらも越えていなかければならない。
生きるということはそういうことだ。
『虚神アルカディア』には見えていないものがある。
彼にとって生命になるということは、生きるということは、ただそこが到達点。だが、今を生きるヴィクトリアはそうではない。
明日を求めて生きるのが生命であるのならば、彼女の瞳の輝きは超克を宿す。
「限界チャージ……!G.A.F.C.……耐えられるものなら、耐えてみればいい、です……!」
満ちる魔力を湛える魔導砲の砲口。
極大なる威力を持つ一撃が、『虚神アルカディア』へと放たれる。
瓦礫など障壁にすらなりえない。
G.A.F.C.(ギガ・エンジェリック・フォース・キャノン)の一撃は、『拒絶の雲海』すら飲み込んであらゆるものを吹き飛ばしていく。
「あらゆる障害も防護も全て貫通する一撃、です」
光条が『虚神アルカディア』を飲み込んでいく。
躱すこともできず、かといって防ぐことのできぬ一撃。
そう、戦いはもうクライマックスなのだ。
ヴィクトリアは明日を願う。
それがどんな明日かなど言うまでもない。
「さっさとこいつも倒して、ご飯を食べに帰る、です!」
もうすっからかんなのだ。
お腹も、飛空艇の燃料も。
だが、この空腹こそが生きている証だとヴィクトリアは、知っている。生きるということがどういうことであるのかを知っているという一点に置いて、彼女は「虚神アルカディア』を上回っているのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
黒影・兵庫
[鏡戟戦]
あれは…俺?
(「いいえ黒影。あれは空っぽ。分かるわよね?」と頭の中の教導虫が話しかける)
!はい!せんせー!
では無限増殖植物群は『植物と話す』技能を使って
{蜂蜜色の靄}を散布後に強烈な枯葉剤であり触れると枯死すると『催眠術』で信じ込ませて攻撃の手を緩ませ
アイツのUC【蜂蜜色の奔流体】は俺の言葉で弱気にさせた後に反撃して打ち砕きます!
(「なんて言うの?」)
お前、せんせーが居ないんだろ?捨てられたな
親に捨てられ、せんせーにも、か
なんでだろうな?良い子じゃなくなったから?
良い子のはず?じゃあなんでせんせーはお前を捨てた?
お前は良い子と誰が認めてくれるんだ?お前自身か?
(「ごめん。もういい」)
『虚神アルカディア』は宿す。
その頭蓋すら形成されていない頭部に、相対する者の顔を映し出す。
謂わばそれは鏡。
他者とは己の鏡である。
しかし、『虚神アルカディア』は揺蕩う虚無。例え、彼が相対する者の瞳を覗き込んだとしても、そこにあるのは虚無のみ。
確立した己という自己は写し出されることはないのである。
故に求める。
「あれは……俺?」
黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)は動揺したのかも知れない。
自分と同じ顔が『虚神アルカディア』の頭部に映し出され、そして、その溢れんばかりの植物群を己へと解き放つ。
だが、兵庫は見ただろう。
目の前の『虚神アルカディア』は己のユーベルコードを発現させているにも関わらず、その力を発露していない。
そう、揺蕩う虚無そのものたる『虚神アルカディア』には精神力というものがない。
在るのは虚無だけ。
その虚無たる存在が己のユーベルコードを使おうとした所で、十全に力を発露できるわけもない。
そして、なによりも。
『いいえ黒影。あれは空っぽ。わかるわよね?』
頭の中で教導虫が話しかけてくる。
自分が迷ったとしても、導いてくれる者がいる。人は一人では生きていけない。それを弱さだというのならば、過ちだ。
人は一人では生まれてこない。
一人で死ぬのだとしても、その生まれは唯一人ではないのだ。
必ずそばに誰かがいる。
「――! はい! せんせー!」
兵庫は植物群に語りかける。彼らは悪くはないと思った。なぜなら、彼らは彼らの原理でもって存在している。
増え、根をはって、種を残す。
繁栄することが植物に課せられた存在理由であるのならば、兵庫は蜂蜜色の靄を振りまく。
言葉が通じるのならば、それは植物群に思い込ませることができる。
「これは枯葉剤。触れると枯れ死する」
「思い込ませる。強烈な暗示。それもまた人の生命たる証左。技能。そうやってあらゆるものを昇華していうのが生命の煌めきなのならば」
『虚神アルカディア』が迫る。
その虚の如き頭部に己の顔を映し出しながら。
けれど、黒影は狼狽えない。
言うべきことがあるのだ。
「お前、せんせー居ないんだろ? 捨てられたな。親に捨てられ、せんせーにも、か」
「理解できない言葉だ。吾を導くは強者の生命の煌めきのみ。吾は何物にも捨てられず、また拾われることのない虚無」
「なんでだろうな」
ただ一人あること。
『虚神アルカディア』の名を持つ揺蕩う虚無は、その問いかけに答を保たない。
虚無という虚だからではない。
黒影にはよくわかっていた。
捨てられる子に理由なんてない。あるとすれば、捨てられた本人がどのように答を見出すかだ。
「良い子じゃなくなったから? 良い子のはずだった。じゃあ、なんでせんせーはお前を捨てた?」
意味のない言葉であったように教導虫も思えただろう。
けれど、己というものすらない『虚神アルカディア』にとっては、その言葉は鮮烈であった。
理解できぬことを理解しようとして動きが止まる。
どうしようもなく答のでないことであった。
虚無に良いも悪いもない。
だが、目の前の強者は己を良いと悪いに二分した価値観の中に放り込む。
『ごめん。もういい』
教導虫の言葉を兵庫は遮るように言うのだ。
「お前は良い子と誰が認めてくれるんだ? お前自身か?」
写し身たる鏡。
それが他者なのならば、『虚神アルカディア』は映し出した黒影という存在の、その性格をも映し出す。
そして、理解できない。
何故、己の中がこんなにも言葉一つでざわめくのか。
その理由が『虚神アルカディア』には証明できない。
「折れたな! でもな、俺は、俺の心が折れない限り、俺の体は無敵です!」
煌めくは、蜂蜜色の奔流体(イエローハニー・オーラボディ)。
そのオーラの塊となった兵庫の一撃が、『虚神アルカディア』の揺蕩う虚無を別のなにかに映し出し、痛烈なる一撃を叩き込むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
空桐・清導
悪夢戦
POWで挑む
アドリブや連携も大歓迎だ
この空間に入った瞬間、足下に赤い液体が触れる
目線の先には無残な姿で倒れ伏す家族
そして、嬉々として笑うヴィラン達
(奴だ!俺達を捕えたヒーローだ!
家族と一緒に晒しあげてやれぇ!)
それぞれの武器を手に迫るが…
「すっげえムカつく…。
ムカつくけどよ、お前はヒーローを舐めすぎだ。
世界には多くのヒーローがいるんだぜ?
こんな悲劇を止めるためにな!
それによ…オレが家族をむざむざ見殺しにする訳ねえだろうが!」
いっそ過信とも言えるが、確固たる[覚悟]と共に叫ぶ
全てを守るヒーローたるなら、この手から取りこぼすものは無し!
隙を見せた瞬間にUCを発動
全力の一撃を虚神へと叩き込む!
「吾は求める生命ある者の苦悩、欲望、憎悪を。それは吾にとって強者の証であるからだ。苦悩無き強さなどなく、欲望無き強さもない。また憎悪に駆られぬ強さもない。どれもが強き感情という名のゆらぎであればこそ、吾は、それを求める」
噴出する『拒絶の雲海』。
それは形を成していくだろう。
押し寄せてくる形ならざる形。
それを前に空桐・清導(ブレイザイン・f28542)は、一瞬己の足がなにかに取られたように思えた。
見下ろす。
足元には赤い液体。
血だととっさに判断できたのは、己の鼻腔をかすめる匂いであったからだ。
「――」
絶句するしかない。
悪夢だと思った。だが、己の五感に訴える者全てが、これが現実であると教えるようでも合った。
目線の先にあるのは、無残な姿で倒れ伏す家族。
どれもこれも、全て生命が尽きている。
どうしようもない運命であったと、そんなふうに嘲笑うなにかがいる。う米ている。
「ヤツだ! 俺達を捕らえたヒーローだ! 家族と一緒に晒しあげてやれぇ!」
叫ぶヴィランたちは、笑いながら迫ってくる。
清導の心は散々にかき乱される。
苛立ちと怒り、憎悪が心の中に満ちていく。
「すっげぇムカつく……ムカつくけどよ」
その怒りは彼にとって踏破すべきものであった。
乗り越えなければならないものであり、既に乗り越えたものであるともいえる。
そう、『虚神アルカディア』は、怒りや苦悩、憎しみ。そうしたものを強い感情だと言った。
強い者が持つ特有のものであると。
けれど、それはもっと単純なものだ。力弱い者だって、当然のように持っている。生命ならば当たり前のように、怒り、悲しみ、そして、それを糧に進んでいくのだ。
「お前はヒーローを舐め過ぎだ。世界には多くのヒーローがいるんだぜ?」
そう、己一人じゃあない。
憎悪に駆られることも。
怒りに我を忘れることも。
苦悩に苛まれることも。
どれ一つとして、自分だけのものじゃない。
「こんな悲劇を止めるためにな! それによ……オレが家族をむざむざ見殺しにするわけねえだろうが!」
己の中にある覚悟を信じる。
それは過信ともいえるのかもしれない。
けれど、己の中に膨れ上がる炎が在る。煌めく輝きがある。
「それが人の、生命の煌めき」
「全てを護るヒーローたるなら、この手から取りこぼすものはなし!」
例え、それが憎悪であれ、怒りであれ、苦悩であれ。
全てを抱えていくからこそ、ヒーローと呼ばれるのだ。
『虚神アルカディア』は、その覚悟を前に動きを止める。
その圧倒的なエゴたる覚悟を前に圧倒されるのだ。いや、憧憬すら覚えているのだろう。
故に動けない。
「大切な日常、守りたいものが在る限り!ヒーローは何度だって、不死鳥のように蘇る!!」
放たれるフェニックス・メテオの一撃が不死鳥の如き炎となって『虚神アルカディア』へと叩き込まれる。
それは彼の中にある大切な日常や守りたいと思うもの。
その思いが結実した姿と成って、『虚神アルカディア』の揺蕩う虚無の如き肉体に、渾身の拳を叩き込むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
『悪夢戦』
体が動かない。寝かされている?
|何も見えない。《眼球が無い》身動きひとつできない。
これでは、戦えない。戦えない!!
敵の存在は感じるというのに、ああ、
たたかえない!!!
酷い状態だ!酷い光景だ!最悪とはこの事だ!!
死ねもせず戦えもせず、ただ生きているだけ!!
最悪だ!最低だ!死にたい程に申し訳ないほどだ!!
戦わせろ!!戦え!!戦え!!!朱鷺透小枝子!!!
否、戦おう!!!
これが最悪であるというのなら、それでもだ!!
この|闘争心《ココロ》だけでもだ!!戦おう!敵を壊そう!
瞋憎を喰らえ!戦意を絶やすな!!何が虚神だ!!
お前にくれてやるものか!!
この憎しみも!怒りも!願いも苦しみも命も!
自分のモノだ!自分達のモノだ!!
壊せ!!壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ!!!
この躯が動いた瞬間、最高速で虚神アルカディアへ突っ込み、
塵怨霊物質で構成した|騎兵刀《破壊の霊物質》を叩き込み、
虚神を、崩壊させる。
朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は、己の体が動かないことに違和感を感じていた。
別に『虚神アルカディア』に恐怖を感じていたわけではない。
オブリビオンに対して、そんな感情を抱くことはない。
けれど、体が動かない。
いや、違うと彼女は思った。
寝かされているのだ。自分の体は今、戦場にありて仰向けに倒されている。攻撃されたのか? 打ち倒されたのか?
だが、痛みはない。
いや、それ以前に|何も見えない《眼球がない》のだ。
指一つ動かせない。
「これでは、戦えない。戦えない!!」
その声すら響かない。
喉すら震えることがない。己の喉は喪われてしまっていると感じる。
なのに、敵の存在は感じる。
その悪夢。
戦うべきが在るのに、己が戦えぬという悪夢。
たたかえない!!!
その事実が彼女の心を蝕む。
ひどい状態だ。ひどい光景だ。最悪とはこのことだと小枝子は理解する。
死ねず。湛えず。ただ生きているだけ。
「それは死んでいるように生きているのと同じことだ。それが吾という虚無」
最悪の形は皮肉にも『虚神アルカディア』と同じ状態のことを示している。
だが、小枝子はそんなことなど知ったことかと叫ぶ。叫び、狂う。
「最悪だ! 最低だ! 死にたいほどに申し訳ないほどだ!! 戦わせろ!! 戦え!! 戦え!!! 朱鷺透小枝子!!!!」
その言葉は響かない。
『拒絶の雲海』が迫る。
己の身を滅ぼさんと、捕食せんと迫っている。
最早終わりだと思った。
だが、灯る物がある。
『否、戦おう』
ゆっくりと小枝子はまぶたを開く。
何も見えない。
ゆっくりと小枝子は指先を動かす。
何も感じない。
だが、今彼女の目の前に横たわる最悪だけは理解できる。
これが最悪であることが理解できるのならば。それでも、と叫ぶことができる。
あるのは、この|闘争心《ココロ》だけだ。
ならば、それだけでもだと叫ぶ。戦おう! 敵を壊そう!
「それほどのエゴ。それが吾の欲するところのもの」
「お前にくれやるものか!!」
何一つ無い。差し出せるものも、奪われるものも。何一つないと小枝子は叫ぶ。
「この憎しみも! 怒りも! 願いも苦しみも生命も!」
そう、この感情は自分自身のものだ。
例え、虚の如き化身であったとしても、奪われる謂れはない。
「自分のモノだ! 自分たちのモノだ!!」
強烈なエゴが迸る。
呆れるほどに圧倒されるエゴ。それを前に『虚神アルカディア』は己の虚がざわめくのを感じただろう。
恐怖すら感じさせるのかもしれない。いや、違う。これはきっと憧れという感情そのものだと『虚神アルカディア』は理解できずとも、感じてしまっていた。
「壊せ!! 壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ!!!」
僅かでも動いたことを自覚した瞬間、小枝子は走る。
疾走った、と理解できた。
ならば、その最悪は最早『見えない』。
開けた視界の先にあるのはなんだ。
「敵だ!!」
敵とはなんだ。
「壊すものだ!!」
ならば、その身に満ちるものは。
「瞋憎を喰らうものだ!!!」
満ちる怨念が溢れ、その身より発露する。噴出する怨念は騎兵刀へと形を変え、その手にしたあらゆる破壊の因子を籠めた斬撃の一撃を打ち込む。
禍戦・瞋憎喰(デッドオーバー・ハート)は此処に相成る。
壊せ、と叫ぶものが体の内にある。
強烈なエゴなど知ったことではない。ただ壊せと命ずる何かに従うように小枝子は渾身の斬撃を『虚神アルカディア』に叩き込み、その身を崩壊させるように『拒絶の雲海』という悪夢すら切り裂いて、喪われていたであろう視界の先を見据えるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
シャルロッテ・ヴェイロン
〇技能戦
最初に言っておきますが、あなたの願い、叶うことはありませんよ!
では勝負方法は――【ハッキング】対決といきましょうか!
(次の瞬間、戦場がサイバースペースめいた空間に変わる)
なるほど、いい雰囲気ですね。では早速PCと電脳ゴーグルを直結!そして互いの電脳を直結して――さあ、どちらが先に相手のニューロンを焼き切るか、勝負といきましょう!
まずは多次元世界間ネットワークにアクセスし、攻撃に役立ちそうなデータをサルベージ。それらを基に【暗号作成】の要領で即興で【プログラミング】。そうしてできた攻撃用プログラムを【精神攻撃】めいてぶつけてやりましょう。
相手の攻撃は【オーラ防御】で防いだり、【ジャミング】で攪乱していきましょう。あと植物群めいた攻撃は【(各種)耐性】でしのぎつつ、【カウンター】で【焼却】をイメージした反撃をしていきましょう。
とどめは【限界突破】の超高速タイピングで、一気に【蹂躙】といきましょうか!
※アドリブ・連携歓迎
例え、どれだけの傷を負わされようとも『虚神アルカディア』は倒れない。
揺蕩う虚無はすぐに体を変える。
彼は憧れすら抱く。
猟兵の持つエゴに圧倒され、その身を硬直させる。
だが、それでも強者の生命を求めることは止められない。
何故ならば、その憧れに近づくために手を伸ばすからだ。
「そうだ。吾は強者の生命、それを喰らい、生命になりたい。鮮烈なるエゴ。強烈なる個。その意志。その欲望、そのよ憎悪、あらゆる感情を吾は感じ取りたい。吾の無き五感を得て、吾は」
だが、その言葉は断ち切られる。
「最初に言っておきますが、あなたの願い、叶うことはありませんよ!」
シャルロッテ・ヴェイロン(お嬢様ゲーマーAliceCV・f22917)は電脳ゴーグルを被り、光る猫耳のついたヘッドフォンを装着して言い放つ。
どんな世界であったとしても、彼女は電脳空間に飛び込む。
対峙する『虚神アルカディア』もまたそうだ。
ここは『大技能戦場』。
ユーベルコードはなく、技能のみにおいて戦う場所。
ユーベルコードは使えない。
「では勝負方法は――ハッキング対決といきましょうか!」
変わる戦場。
彼女が飛び込んだ電脳空間は、サイバースペースめいた場所だ。シャルロッテの記憶の中にある良い場所、というのはこういう場所なのだと示されているようにも感じただろう。
手にしたPCに電脳ゴーグルが直結される。
ハッキング対決といっても勝負は単純だ。
「――さあ、どちらが先に相手のニューロンを焼き切るか、勝負といきましょう!」
「これが人の技術の粋。時に電脳の海から、生命なき場所から生命すら芽吹くことを可能とした技術の昇華。吾もまたそうであれたのならば」
シャルロッテは次元世界間ネットワークにアクセスし、そこからデータをサルベージしていく。
使える者は何でも使う。
それを元に暗号作成の要領で即興のプログラミングを披露する。生み出された攻撃用プログラムは、一気に電脳空間を走り抜け『虚神アルカディア』へと迫る。
だが、その攻勢を一瞬で『虚神アルカディア』は防壁で取り囲む。
防ぐのではなく、プログラム事態を取り囲んで、その中で処理してしまおうというのだ。
「なるほど、やりますね! でも……!」
迫る攻勢プログラム。
それをシャルロッテは同じく防壁を持って防ぐ。
敵のプログラムを即座に理解し、それを応用する。『虚神アルカディア』が防壁を囲いにして使ったのならば、シャルロッテも参考にする。
技術とは、敵のものを吸収し、己がものにした者が勝利する。
理解しなければ、扱うことなどできない。
けれど、シャルロッテは、それを容易く行う。ジャミングで撹乱しながら、理解に及ぶ時間を確保する。
そして、模倣したデータは、さらに応用を利かる。
囲って取り込んだ攻勢プログラムを逆算し、発信源へと打ち返すのだ。
まるでピッチャー返しのように放たれたボールを放った者に打ち返す。これまでシャルロッテが得てきた知識、体験、それら全てでもって『虚神アルカディア』の放つプログラムに対応するのだ。
「これが生命。繰り返される波間が岩を削るように。真理すら削り取るように、技術は昇華していく」
その恐るべき速度に『虚神アルカディア』は動きを止める。
憧れすらある。
そう、生命とは老いていくばかりではない。
時に老練という言葉で表現されるように、シャルロッテのハッキング技術は、今という時間を『過去』にすることによって前に、前に進んでいく。
迫る植物群めいたプログラムも、分かっているのならば対処はできる。
炎の壁が植物群を受け止め、増殖するのならば、そのままに炎へと巻き上げていく。
膨れ上がる炎は、植物群のプログラムを糧にしてシャルロッテの力へと変わっていくのだ。
「リソースは十分! そっちのプログラムっていう餌があるかげで、育ちきりましたよ! こっちのソースがね!」
限界を超える。
シャルロッテのタイミピング速度は最早神懸かりであった。
一度のタイプミスなどない。
一つの誤りもない。
煌めく瞳はユーベルコードではなく、超克の輝き。
ただ邁進する。それだけでいいのだ。シャルロッテは己のソース全てを叩き込み、一気に『虚神アルカディア』をハッキングする。
「このエゴ。この技術。この存在。全てが」
「わたしって存在そのものです!」
叩き込む情報の塊。
それは鉄鎚のように『虚神アルカディア』を打ち据え、シャルロッテを勝利に導くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
真宮・奏
義兄の瞬(f06558)と参加
【片翼戦】
虚神アルカディア、ですか。確かに強大な存在なれど、この世界にこのような悪者は必要ありません。多くの命を護る為、断固として立ち向かいます。
目の前にいるのは兄さんそっくりの姿。なるほど、良く似せましたね。でも傍にいて一緒に飛んでくれる兄さんがいる限り、惑わされませんよ!!
兄さん、共に行きましょう!!飛んでくる先制攻撃は【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【受け流し】【ジャストガード】で耐えきり、蒼の戦乙女を発動。兄さんと一緒に空へ舞い上がります。
私と兄さんの絆はそんな姑息な手では砕けない!!兄さんと力を合わせて全力の【怪力】を込めた【衝撃波】で攻撃します!!
神城・瞬
義妹の奏(f03210)と参加
神と名乗るだけあって多大なプレッシャーを感じますね・・・しかし、たとえ神であろうと、命を蹂躙する行為は許されない。共に行きましょう。奏。
先制攻撃は【オーラ防御】【結界術】で耐え凌ぎます。
目の前に現れるのは奏そっくりの姿。よく似せましたね。ただ、傍に奏がいるものではっきり偽物と分かります。
ええ、奏、共に行きましょう!!月読の騎士を軌道して奏と共に飛びながら、奏と力を合わせ、【高速魔法】【全力魔法】【魔力溜め】【限界突破
】を併せた【電撃】を叩き込みます!!
何も知らない虚な神に僕と奏の絆の深さは理解出来ないでしょうね。何も得ないまま、消えていきなさい!!
『虚神アルカディア』は思う。
生命とは如何なるものかを。個として虚無たる総意には及ぶものはない。
だが、揺蕩う虚無は願うのだ。
生命足り得ることを。
どのようにして己を確立しているのかを学ぶのならば、相対する強者より学ばねばならない。
猟兵という生命の埒外。
その強烈なる個を模倣する。
虚の如き未だ形成されぬ頭蓋の中に、相対する者にとって大切な存在を映し出す。
鏡ではない。
己自身ではなく、己の大切に思うものを映し出す。
「吾には理解できぬことだ。理解から最も遠い。だが、生命とはそういうものだ。理解できぬ他者の存在を許容する」
その身より放たれる重圧は本物であった。
神城・瞬(清光の月・f06558)は、そのプレッシャーを持って神である名乗る存在と対峙する。
目の前にある『虚神アルカディア』の虚如き頭蓋にあるのは、己が大切に思う義妹である真宮・奏(絢爛の星・f03210)の顔。
紛れもなく本物であると感じる。
けれど、同時に違うともいい切れる。
己の隣に彼女はいる。
「『虚神アルカディア』、ですか。確かに強大な存在なれど、この世界にこのような悪者は必要ありません。多くの生命を護る為、断固として立ち向かわなければなりません」
彼女の言葉に瞬は頷くだろう。
「共に行きましょう。奏」
心強いと思える。
目の前にあるのが確かな神そのものたる存在であったとしても、恐れる必要はないと思えるほどに心強いのだ。
そして、それは奏にも同時にいえることだった。
彼女の瞳に映るのは瞬そのもの。
確かに此処に自分ひとりが立っているのならば、その姿に彼女は惑わされてしまっただろう。
けれど、その必要はない。
「でも傍にいて一緒に飛んでくれる兄さんがいる限り、惑わされませんよ!!」
蒼の戦乙女(アオノヴァルキリー)と月読の騎士(ツクヨミノキシ)が共に飛び立つ。
放たれる不可視たる球体。
それが彼女たちの体を打ち据える。
無限に加速と減速を繰り返し、急角度で曲がり翻弄する球体。互いに背を預ける。その熱が、互いの存在を意識させる。
どれだけ目の前に『虚神アルカディア』が己達が大切に思う存在を写し出すのだとしても構うことはなかった。
「兄さん、共に行きましょう!!」
「ええ、奏、共に行きましょう!!」
互いに背を預け、空を駆け抜ける。
球体の一撃をオーラで受け止め、奏が受け流す。重たいと感じるだろう。骨身が軋む。痛みが走る。
だが、それでも彼女の中には共に並び立つ騎士の姿がある。
あれを見失うことがない限り、自分は戦えると思えた。
それは瞬にとっても同様であったことだろう。
「理解できない。異なる存在、生命でありながら、同じものを信じている。それが生命というものなのか」
『虚神アルカディア』に瞬が迫る。
奏の生み出したオーラを足場にして瞬は飛ぶ。雷撃をまといながら飛び込む。
「私と兄さんの絆はそんな姑息な手では砕けない!!」
「何も知らない虚ろな神と僕の奏の絆の深さは理解できないでしょうね」
「理解できぬを理解する。吾は未だ生命ならざるもの。ならば、正滅を得れば、吾もまた汝らと同様になる」
その言葉に奏ではブレイズセイバーより放たれる衝撃波を叩き込む。
力の奔流が渦巻く。
理解できぬを理解する。
それはなにか一つを得たように思えるだろう。
だが、思えただけだ。
所詮、絆や愛情と言葉にしたところで、それは言葉でしかない。
「それを感じ取れるからこそ人は誰かと手を取れる。片翼の存在であったとしても欠けたものを埋められる。虚ろな神は何も得ないまま、消えていきなさい!!」
放つ雷撃が『虚神アルカディア』を撃つ。
その一撃は再び無理解へと『虚神アルカディア』を落とすだろう。
一つ得ては、一つを失う。
人は全てを得られない。
だからこそ、誰かの手を取り、新たなるを得るのだ。
それを理解できぬ『虚神アルカディア』は、やはり揺蕩う虚無のまま、永遠に生命たり得ぬのだと二人が絆いだ手を見上げるしかなかったのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステラさんと】
『虚神アルカディア』といえど、
音楽家でもあり、勇者でもあるわたしに音響戦を挑むとは!
えっ?
『歌声、または叫び声』じゃないと効かない?
楽器の演奏じゃダメ?
な、なに言ってるんですか。
音楽家の演奏は、魂の叫びですよ!
あ、で、でも、ステラさんの愛とか叫んでもらえると嬉しいかなー、とか思ったり。
あの叫びなら神も悪魔も一般人も、みんなドン引き間違いなしです。
そしてその叫びを、わたしの【Canon】に乗せて増幅しちゃいますよ!
『虚神アルカディア』!
ステラさんの|エイルさんへの愛《ヤバさ》を、その身をもって思い知……。
世界を在るべき姿に戻す立場としては、放っておいちゃいけない気がしてきました。
ステラ・タタリクス
【ルクス様と】
音響戦
(ルクス様が文句を言っているのをよそに後方メイド顔して瞳を閉じている)
思えば…この空中庭園に入ってから
|エイル様《主人様》への愛は負けていません
カンギ様の豪運すら凌駕したのです
つまり…!(瞳くわっ)
私の|迸る想い《あい》の叫びはこの空中庭園において無敵!!
よって虚の神であろうとも逃れることは不可能!!
ええ、ルクス様
ステラ、参ります!!
|エイル様《主人様》は!! 私のモノ!!!
っていうか私が|エイル様《主人様》の元へ行こうとするのを邪魔するんじゃなーーーーーい!!
誰がやべーメイドですか!!
こんなユーベルコードが発現しているのもひとえに愛ゆえなのです
誰ですか狂気とかいってるの
無理解を得る。
それは『虚神アルカディア』にとって、どうしようもないことであったのかもしれない。
生命とはなにか。
言葉で理解することはできよう。
けれど、『虚神アルカディア』には、それを感じ取ることのできる心がない。
故に彼は求める。
強者の命を喰らうことに寄って得られる進化を。
揺蕩う虚無へと姿を変え、彼は大気に溶け込んでいく。如何なる武器も、如何なるユーベルコードも意味をなさない。
「吾は求める。強者の生命を。それだけが吾を生命にしてくれる。だからこそ、汝らを喰らうのだ」
満ちる『拒絶の雲海』。
それを前にルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)はヴァイオリンを手に取る。
知っているのだ。
この状態の『虚神アルカディア』は音響戦と呼ばれる戦いになることを。
故に彼女は自信満々であった。
なにせ、彼女は音楽家であり勇者である。そんな自分にそんな戦いを挑むだなんて! と彼女は意気揚々としていたのだ。
だが、後方メイド面していたステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は静かに言う。
あの、目を閉じたままなんですが、とルクスはツッコミそうになったが、その神妙な雰囲気に黙った。これ絶対あのパターンだと理解しているのだ。
「ルクス様、『歌声、または叫び声』でなければなりません」
あれ、パターン外してきたな、とルクスは思った。
けれど、それはまちがいであったとすぐわかった。
「思えば……この空中庭園に入ってから、|『エイル』様《ご主人さま》への愛は負けていません」
何を言ってるんだろうと誰もが思った。
ルクス以外のみんなが思ったに違いない。
「『カンギ』様の豪運すら凌駕したのです。つまり……!」
くわっ! くわわっ!! と見開かれるステラの瞳。
其処に宿るは狂気にも似ていた。
「私の|迸る想い《あい》の叫びは、この空中庭園において無敵!!」
ルクスは聞いてなかった。
むしろ、他の猟兵に自分の演奏は魂の叫びだと講釈していた。そう、音楽家は楽器を奏でる者。ならば、その魂の発露は、楽器の音色として反映されるものである。
誰もが認めるところであるはずだと、彼女は熱意たっぷりに語っていたのだ。
しかし、そんなルクスをよそにステラは叫ぶ。
進行解説などあってないものである。もう、シッチャカメッチャカである。だが、そんなこと愛の前には全てが無意味。
「よって虚ろの神であろうとも逃れることは不可能!! ええ、ルクス様。ステラ、参ります!!」
「え、なんですか!? え、行くんですか?」
ルクスは漸く自分の背後でステラがやる気満々愛情百倍状態になっていることに気がつく。
押しかけメイドの本気(マワリトノニンシキノチガイ)はここからが本番である。
彼女は、叫ぶ。
あ、ちょっとまって、待ってください! とルクスはヴァイオリンでCanon(カノン)の演奏の準備を始める。
折角なら、ドン引きされるにしてもBGMって必要ですよね。わかる。わかるのか?
「『虚神アルカディア』! ステラさんの|『エイル』さんへの愛《ヤバさ》を、その身を持って思い知……」
「|『エイル』様《ご主人さま》は!! 私のモノ!!! ていうか私が|『エイル』様《ご主人さま》の元へ行こうとするのを邪魔するんじゃな―――――い!!」
叫びが全てを凌駕する。
もう凄まじいまでの声量であった。
その愛は、狂気。
その愛は、妄執。
そう言われても仕方のないほどの声量で叫ぶステラ。
「うわー……世界を在るべき姿に戻す立場としては、放っておいちゃいけない気がしてきました」
どっちが?
言うまでもなくヤベーメイドの方である。
その迸る想いを前に『虚神アルカディア』も動きを止めている。
いや、なんか、憧憬すら感じているようである。それほどまでにステラの叫びは重たかった。
叫びに言霊が宿り、質量があるのだとすれば、それは激重感情であった。
ルクスが世界を在るべき姿に、と思ったのもまちがいではなかった。
これは流石にお茶の間に届けられないたぐいのアレである。だが、ステラの叫びは『虚神アルカディア』にダメージを与えるのだ。
憧憬は時として毒になる。
どんなに憧れても、あれほどの感情を『虚神アルカディア』は得ることはできないだろう。
だからこそ、そのあり方に『虚神アルカディア』は戸惑い、その虚如き虚無に痛みを走らせるのだ。
「誰ですか、狂気とか言ってるの」
ぎくぅ!
ステラが周囲を見回す。周囲の猟兵たちは違う違う自分たちじゃないと言っている。
じゃあ、ルクスかなってなるけど、ルクスは最初からそう思っているのでノーカウントである。
「これもひとえに愛故なのです。言葉でくくることが愚かであるとは思いませんか?」
ステラのにこやかな笑顔は、そこだけトリミングしたら、最高のメイドそのものであったことだろう。
けれど、我々は知っている。
その叫びを聞いたのならば、やっぱり狂気じゃないかと、心に秘めるしかないのだ――!!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シーザー・ゴールドマン
【剣戟戦】
悠久の時を経て現状がソレならば、方法に問題があるのではないのかね?
まあ、構わないがね。
石剣による一撃を見極めてカウンターでオーラセイバーの一撃を。
(見切り×第六感×カウンター)
敵POWUCは魔力障壁(オーラ防御×結界術)により自身への影響を遮断。後は何が加速或いは減速して襲ってくる、或いは戦闘に利用しても見極めて対処。
ある程度、オーラセイバーを振るって戦闘(暴力×功夫)を楽しんだ後に『シヴァの支配』を発動。
破壊神の相を顕し、|魔法《究極の破壊》の一撃を放ちます。
さて、取りあえず今は此処で終わろうか。
人の魂の叫びが、生命ならざる虚を震わせる。
憧憬すら抱かせるエゴを前に『虚神アルカディア』はますます持って生命になりたいという願いを強くするだろう。
無造作に手にしていた岩剣を握る骨身が軋むほどに力強く響く。
「やはり生命になりたい。吾は生命になりたいのだ。強者よ、その生命を吾にくれ。吾は、生命になりたいのだ」
迫る猟兵たち。
その間合いに瞬時に『虚神アルカディア』は迫るだろう。
歩法であるとか、速度であるとか、そうしたものを吹き飛ばすほどの圧倒的な間合いの詰め方。
手にした岩剣と共に『拒絶の雲海』が迸る。
「悠久の時を経て現状が『ソレ』ならば、方法に問題があるのではないのかね?」
シーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)は迫る岩剣の斬撃を見極め、カウンターの一閃を叩き込もうとしていた。
だが、噴出する『拒絶の雲海』は爆発的な加速と、驚異的な減速を持って猟兵を翻弄する。
第六感であったとしても、目まぐるしく変わる速度の変化にシーザーは、その金色の瞳を細める。
叩き込まれる剣戟の一撃をオーラセイバーで受け止め、力の奔流が周囲にありし遺跡の残骸を打ち壊していくのを見た。
「まあ、構わないがね」
オーラのちからに寄って『拒絶の雲海』による気流の流れを遮断する。
だが、周囲に溢れる気流が『虚神アルカディア』の踏み込みを読み解けぬ難解な動きに変えていく。
「吾にとって生命とは即ち、不理解の極み。故に理解したいのだ。強者の生命は、喰らうに値するのではない。強者の生命でしか進化できないからそうしているまでのもの。それほどまでに強大な生命であっても、重ねてきても、吾は未だ骨しかない。皮膚もなく、目もなく、舌もない」
故に焦がれるのだ。
生命というものに。
当たり前のように生命が持つすべてを『虚神アルカディア』は求める。
己もそうでありたいと願うのだ。
「そうか。だが、とりあえず今はここで終わろうか」
意味のないことだと切って捨てる。
シーザーにとって、『虚神アルカディア』は何処まで行っても揺蕩う虚無でしかない。
虚無が生命になりたいと願うのは勝手である。
だが、しかし。
その願いが世界を滅ぼすのならば、『虚神アルカディア』はやはり世界の敵だ。即ち猟兵の敵であるといえる。
故に彼の瞳がユーベルコードに輝く。
剣戟の音さえ、遠く感じる。
間近に火花散るオーラセイバーと岩剣の激突。
だが、シヴァの支配(デウス・イムペリウム)はここより始まる。
己の姿は無敵の破壊神。
満ちる力は障壁となって岩剣の一閃を受け止める。もしも『虚神アルカディア』に敗因というものがあったのならば、それは完全防御の力を見定めることができなかったからだろう。
「受け給え、銀河砕く魔法の一撃を」
シーザーの指先が天に掲げられる。
それは破壊の局地たる一撃。
支配とは即ち破壊。
破壊とは即ち再生への下地。
故に放つ一撃は極大である。
「十分君との打ち合いは楽しめた。だが、それだけだ。君にはこの時間を楽しむという感情すら持ち得ない。なら、此処で――終焉だ」
放たれる魔法の一撃が空に炸裂する。
銀河すら砕く一撃は、明滅を繰り返し『拒絶の雲海』すらも吹き飛ばし、空の青を戦場に満たす――。
大成功
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夜刀神・鏡介
狂乱戦
狂気にあてられて真の姿(IC参照)に変身
俺は――あんたの願いを否定はできない
そういう存在として生まれた事を悪とは言えないから
だが、あんたの存在は世界を滅ぼす。この世界を、或いは他の世界をも。それは看過できない
だから、俺は俺の好きな世界を守る。あんたのような存在の願い。その全てをその踏みにじってでも
神刀を引き抜き、漆の型【柳葉:梵】の構えで接近
アルカディアが動き出す前にまずは片腕に一太刀食らわせてやる
これで奴が剣を抜くのに少し時間がかかるだろうから、その隙に更に脚へと一撃
流石に三太刀すべては叩き込めないだろうが、これで奴の動きは格段に鈍るだろう
後は落ち着いて確実に対処していけば問題ないな
「何故だ。何故吾は生命を理解できない。生命になれない」
その感情乗らぬ言葉ば証左であると言うのに、それに気がつけぬ『虚神アルカディア』の全身から放たれるのは『赤い狂気』。
噴出するそれらは、相対する猟兵の身に降り注ぎ、強引に彼らの『真の姿』を引きずり出すだろう。
「生命になりたいのだ。強者よ。吾は生命を喰らう。汝らの強者たる生命喰らって生命の進化する。そのために吾は」
喰らうモノへと変貌する。
異形なる怪物。
『生命を喰らうこと』のみに特化した怪物は、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)を標的とする。
引きずられてさらけ出した『真の姿』。
されど、鏡介は『虚神アルカディア』を否定できなかった。
「俺は――あんたの願いを否定できない」
揺蕩う虚無。
それが『虚神アルカディア』である。生命ですらない。生きることも死ぬこともできない存在。
斯くあるように在る存在を否定できない。
それを悪として認識できない。
「だが、あんたの存在は世界を滅ぼす。この世界を、或いは他の世界をも。それは看過できない」
それが鏡介の引いた一線だった。
その一線を越えさせてはならない。もしも、越えたのならば、滅びるのは生命だからだ。
あらゆる生命を飲み込んでも虚は虚のままだ。
かりに生命に至るのだとしても、『虚神アルカディア』は生命足り得た瞬間に個であり、全である。
生命の孤独も。苦しみも、何もかも感じられぬままに、再び虚無になるばかりだ。
「だから、俺は俺の好きな世界を護る。あんたのような存在の願い。その全てを踏み躙ってでも」
抜き払われる神刀。
その投信が煌めく瞬間、漆の型【柳葉:梵】(シチノカタ・ヤナギバ・ソヨギ)へと変わる。
怪物が動き出す前に放たれる斬撃が一太刀浴びせられる。
だが、それは痛みを感じさせるものではなかった。
傷口すら出来ていると認識できないほどの一撃。
されど、それは楔。
「梵ぐように密やかに、斬り堕とす」
振るわれる異形の腕。
だが、鏡介には当たらない。異形たる腕が何故狙いを外すのか『虚神アルカディア』は理解できなかっただろう。
「これが生命であるということか。生命ではない吾と汝らとの差異であるとでもいうのか」
「いいや。違う。生命であることと、生命ではないことに意味はない。虚無たるあんたには理解できないことかもしれないが」
振るう一撃が異形の脚部へと叩き込まれる。
鏡介は鈍る『虚神アルカディア』の動きを見ていた。
溢れる植物群が鏡介を阻む。
「吾の願いを踏みにじると言った。ならば、吾の願いもまた生命ある者の願いと同義であるはずだ。違いなどはないはずだ」
だというのに、己の動きが鈍っていくのを『虚神アルカディア』は理解しただろう。
何が違うのか理解できない。
得られるのは無理解のみ。
その永劫たる時の中で繰り返し行われた問答が『虚神アルカディア』をも殺す。
「この道の先に、まだ出来ることがある筈だ、と俺は気がついた。ただそれだけのことさ。あんたが今までの時間、どれだけ立っても気がつけなかったことに気がつけた」
それが鏡介の意志。
『虚神アルカディア』の願いを凌駕する意志。
その衝動は静かながらもエゴそのもの。
圧倒されるように異形たる怪物は、立ちすくむしかないだろう。互いの視線が絡まる。
そこに意味はない。
けれど、たしかに意志はあったのだ。憧れにも似た感情は、時として虚無すら立ち止まらせる――。
大成功
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ヴェルンド・ラスリス
※アドリブ共闘歓迎
悪夢戦
あぁ、そうだろうよ。俺にとっての悪夢。最悪。絶望はこれしか無い。
それはあの一夜、母親を殺されたあの日しかない。
あの日の絶望は怒りへ、そして復讐の薪へと。
守るべき、小さな希望の火種に、薪を焚べて獄炎と成す。
そんなヤワな幻で俺の獄炎は!意思は消えねぇぞ!明日はいらねぇ!
『覚醒する怨嗟の復讐鬼』
全力の強化、一撃目は『黒焔』による高火力の斬撃、そのまま更に懐に潜り込み、振るう二撃目は形見の『黒撫』勢いそのまま袈裟懸けの一撃を叩き込もう。
『拒絶の雲海』が見せる悪夢を前に、ヴェルンド・ラスリス(獄炎の復讐鬼・f35125)は、そうだろうな、と嘆息する。
悪夢。
それは彼にとっては唯一つのことであったはずだ。
最悪であり、絶望。
それしかない。
だが、だからこそ、彼の炎は轟々と燃える。
「その憎悪、懊悩、怒り。それこそが生命足り得る理由。燃えるような、たぎるような、その強き感情と呼ばれる奔流をこそ吾は求める」
『虚神アルカディア』の言葉が響く。
ヴェルンドは悪夢を見ている。
何度繰り返されたか分からぬ悪夢を。
されど、フィルムが擦り切れるように、それは風化していくことはないのだ。
永遠に、永劫に己の心を擦り切れさせる刃そのもの。
あの一夜。
運命を決定づけた寄る。
母親を殺されたあの日。
失ったものの代価は一体なんであっただろうか。
「あの日の絶望は怒りへ、そして復讐の薪となった」
ヴェルンドは悪夢を見る。
目をそらすことはなかった。反らすことは許されなかった。見なければならない。己の中に怒りの炎があるのならば、その光景から決して目をそらしてはならない。
なかったことにしてはならないのだ。
己が己であるためには、その憎悪こそが必要なものであったからだ。
「守るべき、小さな希望の火種に、薪を焚べて獄炎と成す」
そう、ヴェルンドは叫ぶ。
悪夢を炎で包み込んでいく。
どんなに己を苛むのが『虚神アルカディア』の目的であったのだとしても、彼は決して止まらない。
踏み出す度に、その足元から獄炎が噴出していく。
「そんなヤワな幻で俺の獄炎は! 意志は消えねぇぞ!」
踏み出す。
己の生命を削るユーベルコードの輝き。
揺蕩う虚無そのものたる『虚神アルカディア』に相対するのは、覚醒する怨嗟の復讐鬼(デッドライン・アヴェンジャー)。
獄炎の血は覚醒せり。
怨嗟の復讐鬼は咆哮する。
そう、何も要らないのだ。
生命にとって生命とは己が守らねばならぬものだ。されど、復讐鬼は、それすら削って力へと変えていく。
その煌めき。
その圧倒的なエゴは、まばゆい輝きとなって『虚神アルカディア』を憧憬へといざなう。
「それこそが生命。それが明日を願う生命というもの」
「明日はいらねぇ!」
だが、その言葉すらヴェルンドは否定する。
己の一撃を強化するために費やす生命の総量など知ったことではない。
踏み込む。
獄炎が『拒絶の雲海』を切り裂いて走り抜ける。
振るう斬撃は『黒焔』。吹き飛ばす斬撃は、あらゆるものを拒絶する。さらに踏み込む。
『虚神アルカディア』は見ただろう。
その瞳に輝く強烈な復讐の炎を。
それ以外必要としていない生命を。
奪われた生命は、生命で贖わなければならない。絶望の悪夢そのものたる形見。
一撃は重たい。
まるで生命そのものたる重さを持って放たれた。
「これが俺の全部だ。ただそのためだけに生きる。そう俺は決めたんだ。俺の人生は復讐を終えてから始まるのさ」
まだ生命は始まってすら居ないのだと示すようにヴェルンドは『虚神アルカディア』を切り裂く――。
大成功
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鵜飼・章
狩猟戦
苦悩、欲望、憎悪
それがきみの思う命の定義なら
既に条件は満たしていると思うんだけどな
『肉』体を欲するなら
いいよ
きみという概念を書き換えよう
放たれた魔獣達にUCを使用し
図鑑から召喚した猛獣を放つ
彼らが戦っている隙をつき
針の投擲で急所を狙い撃つね
調理の手間は極力省略
飛んできた肉塊を素早く解体し
鱗や骨や毛を取り除いたら生で食べる
あまり行儀は良くないけど
毒・環境耐性とサバイバル力で突破しよう
呼吸不能に対する耐性を得たら
植物群から逃げつつ虚神の元へ
UCを放つ
僕に斬り裂かれ肉塊になるか
肉食動物に追われる肉になるか
どちらでもいいよ
食物連鎖の輪に加われば
虚無も世界の一員になれる
僕ももう少し人間頑張ろうかな
それは意味のない問いかけであったのかもしれない。
悠久の時を得て尚、得られぬ解答。否、無理解であったのだろう。
「苦悩、欲望、憎悪」
それこそが強き感情の全てだと思うのならば、鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)は既に『虚神アルカディア』は生命の条件を満たしているのではないかと思ったのだ。
『肉』体をも欲するのならば、それで十分だと彼は言う。
だが、『虚神アルカディア』は違う。
「まだ在るはずなのだ。でなければ理由にならない。吾が未だ生命ならざる虚無そのものであることの理由が」
「いいよ。きみという概念を書き換えよう」
それは即ち解体するということ。
放たれるは多数の魔獣。
共に走るは無限増殖する植物群。
圧倒的な数が章に迫る。数の暴威ですり潰されるほどの勢いだ。誰もがそう思っただろう。
彼――|獣を集めた獣ではないもの《鵺》以外は。
放たれた魔獣たちを章は一瞬のうちに解体する。
最早それは魔獣ではない。生命ではない。肉塊でしかなかった。
開かれる図鑑より飛び出すのは影の獣たち。
生命を奪うということは生きることにほかならない。血肉を得るために、己の安寧を得るために、しなければならないことだ。
生命奪わぬ生命など何一つ存在しない。
そこに意義を見出し、矛盾を見つけ出すのは人であるからこそ。人の証左は矛盾ひた隠す心あればこそ。
故に章は迷わずに針を放つ。
魔獣たちの動きが止まり、肉塊に変わっていくのを横目に血潮滴らせながら魔獣の肉を喰らう。
生命の味がする。
「あまり行儀は良くないけど」
わかっている。
本当ならばもっと美味しく食べるべきなのだろう。それすらも章の勝手な理屈でしか無いと理解している。
だが、そこに自然の。生命のやり取りの寛容さがある。
命を奪うのに作法も無作法もない。
あるのは命を奪う力と、その関係性だけだ。
故に彼は滴る血肉で喉を潤す。
己をめぐる血潮は他の生命であるとりかいするからこそ、瞳を見開く。
輪廻の如き輪の輝き。
「僕に斬り裂かれ肉塊になるか。肉食動物に追われ肉となるか」
本当に。
「どちらでもいいよ」
虚無たる存在も食物連鎖の輪に加われば、それは生命の輪に組み込まれるということ。
「虚無も世界の一員になれる」
「吾もまた生命なき生命であるというのか」
迫りくる肉食動物の群れ。己の願いを叶えるために生み出された世界に落ちる生命。
己が慣れぬ生命という名の憧憬。
されど、世界は願いに満ちている。その願いを章は喰らう。
同じ様に。
生命を否定せず、生命をすすり、喰らう。
ああ、それこそが人間讃歌。
己よりも強大を打ちのめし、己よりも強靭を屠る。
それが己のユーベルコードの見せる輝き、その術であるとうのならば、章もまた人間であるといえるだろう。
情動だけが人間の証でないとするのならば。
「僕ももう少し人間頑張ろうかな」
尽きることのない願いではないけれど。
逃げることをやめているのならば、揺蕩うままに浮かび、沈み、それを繰り返して往くのが彼の生――。
大成功
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ティオレンシア・シーディア
【技能戦】
いやまあうん、理屈はわからないではないけれど。ハタめーわくもここに極まれりよねぇ…
付き合わされるほうとしてはたまったもんじゃないわぁ…
そのまま正面切ってやり合ったんじゃ勝ち目見えないし、お互いUC封じられるこれしかなさそうねぇ。
…とはいえ、あたし技能は広く浅くの器用貧乏な汎用型。十全に技能を発揮するなら――向かい合っていざ尋常にの〇決闘スタイルかしらぁ?戦場としては…西部劇か何かの風景、ってとこかしらねぇ?
クイックドロウから瞬間思考力で射線を見切り、体勢を崩す演技でオーラ防御と結界術によるジャストガード。そのままグレネード投擲による爆撃に紛れ一気に切り込みかけて零距離で鎧無視貫通攻撃の●滅殺ブッ放すわぁ。
あたしのコレ、UCに「昇華」したものだから実はふつーに撃つことはできるのよねぇ。オブシディアンに負担かかるから滅多にやらないし当然UCほどの火力も速度も出ないけれど。
…あたし、早業にはちょっと自信あるの。大一番に真っ向から不意討つくらいのコトは、してみせないとねぇ?
『虚神アルカディア』は思う。
生命とは何であるかを。人とは、その生命の頂点であるように思えた。
あらゆる技術を昇華していく。
どんな願いも実現していく。
『大技能戦場』は、その結実たるを披露する場所のように思えただろう。
「いやまあうん、理屈はわからないではないけれど。はためーわくもここに極まれりよねぇ……」
ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は思わずため息を付いていた。
確かに『虚神アルカディア』の言うことも頷ける。
強者の生命を喰らうことに寄って進化する。
それは人の営みと似ている。人もまた己よりも強大な存在を狩り、生命をつないできた。それは歴史が証明しているとおりである。
だからこそ、頷ける。
しかし、ブルーアルカディアという世界そのものが『虚神アルカディア』の願いを叶えるための世界であるというのならば。
「つきあわされるほうとしては、たまったもんじゃないわぁ……」
己のユーベルコードが封じられるのをティオレンシアは感じる。
このまま正面切ってやりあったとしても、『虚神アルカディア』に勝てる要素など無い。
技能でもって『虚神アルカディア』を打ちのめすしかないのだ。
「吾は求めている。生命を。強者を。その強者が持つ昇華された力の結実ともいえる技能を。汝は何を示す。何を持って吾と相対する」
「……あたし技能は広く浅くの器用貧乏な汎用型なのよぉ」
どうしたものかとティオレンシアは首をかしげる。
だが、彼女をスキャンした『虚神アルカディア』の導き出した戦いの方法は、彼女の中にあるものから導き出されたものだ。
広がるのは西部劇かなにかかと思われる風景。
所々にテクスチャーらしさが散見されるのは、彼女の中の決闘というイメージが定まっていないからかも知れない。
「ああ、そういうこと――向かい合っていざ尋常に、の決闘スタイルってわけかしらぁ?」
「汝の中を見通せば、こうなったまでのこと。つまるところ、汝のイメージはこういうことだ」
頭蓋なき虚の上に落ちるは帽子。テンガロンハット。まさしく西部劇の世界。
ガンホルダーに手を置く『虚神アルカディア』。
そんなところまで再現されると、ティオレンシアはなんとも言えない気持ちになる。
自分をスキャンした結果だと言われて、これが出されるとは……いや、それもいいことなのだろう。
故に彼女は向き合う。
空に放たれるはコイン。
くるり、くるり、とコインの表裏が空の光を受けて煌めくさまを見ただろう。
彼女の瞬間思考は、それさえ置き去りにする。
どうすべきか、どう対処すべきか。
めぐる思考。
刹那の瞬間。何通りもの選択肢が目まぐるしく形を変えていく。シュミレートしている。
「――……」
揺らがせる。
己の体が崩れたような体勢を演技でもって押し通す。放たれる弾丸がオーラに激突する。
結界術と重ね合わせる事によって砕けたオーラが弾丸の軌道を変える。結界術がさらに弾丸をそらし、ティオレンシアの頬の横を掠めさせるのだ。
だが、彼女はまだ愛用のリボルバーの撃鉄に指をかけたままだ。
いや、違う。
「虚勢」
「ええ、『虚神アルカディア』、と名乗る貴方に虚勢見せるというのもなんていうか……」
おかしみがあるように思えた。
けれど、投擲されたグレネードの爆発が両者を分かつ。
爆発がお互いの姿を覆い隠すのだ。
ティオレンシアは踏み込む。
確実に当てるために、距離は詰める必要がある。
距離が離れれば離れるほどに精度は下がる。それは人の技術の中で培われて来た経験則というものであった。
ゼロ距離であれば外すことなどない。
「滅殺(ブラスト)……距離を保てば安心? そう思っていたのなら、ちょぉっと甘いんじゃないかしらねぇ?」
放つリボルバーの弾丸。
雷管を叩くは撃鉄。
爆ぜる火薬。
それはユーベルコードに昇華したただの攻撃。
故に、それ自体はユーベルコードとして輝くことがなくとも、致命の一打として放たれるのだ。
「……あたし、早業にはちょっと自信あるの」
微笑む。
細められた瞳がさらに細くなるのを『虚神アルカディア』は見ただろう。
スキャンして知っているはずだ。
だが、ティオレンシアという猟兵を理解しきったということとは別の話だ。
「大一番に真っ向から不意打つくらいのコトは、してみせないとねぇ?」
突きつけられたリボルバーの負担は多大なものとなるだろう。
めったにすることではない。
わかっている。
当然ユーベルコードほど火力も速度もない。
けれど、それを埋めるのがティオレンシアの技能。ただの技能がユーベルコードにまで昇華したというのならば、その大元になった彼女の技量はどれほどのものであったことだろうか。
器用貧乏など偽りであると言っても過言ではない。
放つ一撃は『虚神アルカディア』を穿つ。
虚勢も、何もかも己の生命を懸けてこそ。轟音がティオレンシアの耳を撃つ。
確かに『虚神アルカディア』は見ただろう。
己を穿つのがユーベルコードでもなければ、弾丸でもなく。障害を乗り越えようとする意志宿した超克の輝き満ちる瞳であることを――。
大成功
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メンカル・プルモーサ
【技能戦(ハッキング)】
(巨大な機械に繋がる数多のモニタに写る虚神アルカディア。ハッキングを仕掛けることでしかダメージを与えられないが、逆ハッキングでダメージを喰らう可能性もある)
……なるほど……ハッキングで勝負しろと言う事かな……
…それならば機械に接続して…いざ勝負…と…いきなり仕掛けてきたな…
…まずは相手のハッキングに対して防壁を構築…
…自己判断型伝令術式【ヤタ】に相手の攻撃経路から潜んでいるデータ領域を割り出して貰って…
…そこに攻勢プログラムを多数差し向けて飽和攻撃を仕掛けよう…
…攻勢プログラムの処理に手間取っている間にヤタに突撃して貰って…アルカディアへ打撃を与えるとしようか…
『大技能戦場』が再び形成されていく。
そこにあったのは巨大な機械に繋がる数多のモニタ。
在る種の異様さすら感じさせる光景であった。
だが、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は戸惑うことはなかった。
即座に理解していた。
これが己をスキャンした『虚神アルカディア』のもたらした戦場であるというのならば、このルールを作り上げたのもまた、己の中にあるものだからだ。
故に理解する。
『虚神アルカディア』にはなにもない。
あるのは力と虚の如き混沌のみ。
自発的に生み出すものなど何一つないのだ。これまで猟兵達が戦ってきた光景を思い返せば明らかだった。
見せる悪夢すら他者のもの。かけがえのないものを写す鏡すらも他者のもの。
どこにも己という存在がない。
「ハッキング勝負ということか……」
よくやる、とメンカルは思った。ハッキングを仕掛けることでしかダメージを与えることのできない戦場。
だが、逆に自分自身をもハッキングされダメージをもらう可能性だってある。
けれど、恐れることはない。
彼女は数多の術式とガジェットを生み出してきた文明交錯させる魔女。
「……いざ勝負……」
自らを機械に接続し、そのハッキングに対応する。
メンカルが接続した瞬間を狙うかのように仕掛けてくる『虚神アルカディア』のハッキング攻勢。
速い、と思う。
迅速果断。
それはともすれば、メンカルの戦い方にも似ていただろう。
理論を実証するためには、検証が必要なのだ。迷う時間があれば、仕掛けた方が速い。仮に仕掛けた攻勢が防がれたとしても、何故防がれたのかを証明すれば、次なる攻勢に活かすことができる。
「……そういうところまで理解されているのなら……」
メンカルは防壁を構築していく。
何かを組み上げるのは得意だ。彼女にとって術式とはそういうものだ。
自己判断型伝令術式『ヤタ』によって、防壁にぶつかって霧散した攻勢プログラムの痕跡をたどる。
そのこのハッキング勝負において必要なのは、敵の存在位置を知るということだ。
「知ることから始まる。生命とはそういうものだ。故に吾はなりたい。生命を。知りたいという欲求そのものを理解したい。それが生命に近づくことであるというのならば、吾は他の何をおいても、汝らの生命を喰らいたい」
喰らい、理解し、進化する。
ただそれだけのために、世界すら作ってみせる。
それが『虚神アルカディア』である。
だが、今は違う。
ただ、ハッキング勝負に興じる個でしかない。少なくともメンカルにとては、そうだ。
『ヤタ』が導き出した道筋。
その先に攻勢プログラムの発端が在る。
「……こっちも仕掛けさせてもらう」
放つ攻勢プログラム。
すでに放たれた『ヤタ』の経路から最短を導き出し、また同時に包囲する。
攻勢プログラムの飽和攻撃。
四方八方から襲いかかるプログラムは防ぐには容易いかもしれない。けれど、これはハッキング勝負だ。
飽和攻撃は、『虚神アルカディア』の処理能力を大きく減退させる。
力の大小というのならば、確実に『虚神アルカディア』のほうが上だ。けれど、物事には処理の順番がある。
ハッキング勝負ならなおさらのこと。
故に、タスク処理がオーバーフロー……溢れるのだ。
処理できぬものは山積していく。
「……簡単に本来は処理できるもの。けれど、確実にお前の時間は奪われていく。僅かな時間でも積み重なれば、悠久の時にすらなる。お前の重ねてきた進化の道筋もそうだよ。一足飛びには何事もなせはしない」
だからこそ、その隙が生まれる。
走る『ヤタ』。
山積したプログラムの残骸を縫うようにして『虚神アルカディア』へと突撃する。
それは一矢。
ハッキング勝負の決め手。ただ触れるだけでいいのだ。ただそれだけでハッキングは為せる。
その根本的なことを理解できていなかった『虚神アルカディア』は、それ故に触れるかのような一矢に破れ、メンカルにハッキングを許すのであった――。
大成功
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ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
―――意志持つ飛空艇、自称”世界一速い”ボロ船ミレニアムドラゴン号の意気
『そうか…あれが伝説の…相手にとって不足はねえ!』
【技能戦】!
じゃあ最後にもう一勝負と行こうよ!
さぁ始まりました!ブルーアルカディアとえば勝負はこれに決まり!
チキチキ|飛空艇《ガレオン》レース!
さてまず登場するのは強者よその全てを見せてくれ!そして我が糧となってくれ!
そんなチャンピオン然とした態度に定評のあるフォーミュラー・アルカディアのアルカディア号!
対する挑戦者はおいおいこれで大丈夫なのか?っというケチな密輸船!借金まみれのボロ船!ミレニアムドラゴン号!
勝負は簡単!山あり谷あり雲海のコースをチェックポイントを通りながら一周するだけ!
UC『神心』使用で全世界同時中継
【第六感】でボクはてきとうにコース指示と実況をするよ!
さぁこれが最後の直線だー!願いを受けて勝利するのはいったいだれだーーー!!
ごーーーーるっ!!!
『大技能戦場』は、その名の通り、技能のみにおいて勝負の決する戦場である。
ユーベルコードは使えない。
それは『虚神アルカディア』も同様である。
スキャンした猟兵から導き出される戦い。
あるのは技能のみを使用したパフォーマンスであったり、戦いであったりするだろう。
――意志持つ飛空艇、自称”世界一速い”ボロ船ミレニアムドラゴン号は意気込む。
『そうか……あれが伝説の……相手にとって不足はねえ!』
「そうだね! じゃあ、最後にもうひと勝負と行こうよ!」
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)はケラケラと笑っていう。
そう、彼にとってブルーアルカディアの勝負と言えば、これしかないと思っていた。
「チキチキ|飛空艇《ガレオン》レース!」
「速度を競う勝負か。吾にとって、それは造作もないこと。飛空艇は人の技術の結晶。強者に阿ることなく、その手足によって生み出されたものならばこそ、吾の欲するところ」
「ふふーん、そうでしょうとも! じゃあ、解説していこうか! 此処からは是世界同時中継! ボクことロニ・グィーがお送りするよ!!」
ロニの言葉と共に『大技能戦場』に満ちる光がある。
スモークがたかれ、スポットライトが左右に振られる。
まるで何かの行進かのようであったし、事実それは行進曲であった。
鳴り響くファンファーレ。
「さてまず登場するのは強者よその全てを見せてくれ! そして吾が糧となってくれ! そんなチャンピオン然とした態度に定評のあるフォーミュラー・アルカディアのアルカディア号!」
現れるは飛空艇。
翼生えた骨身の機体。
『アルカディア号』と勝手に命名したのはロニの趣味である。しかし、そこはそこである。『虚神アルカディア』はTPOに配慮しているし、応えるのである。
なんだか手を周囲に振っている。
そういうところまで応えてくれるの!? と思わないでもなかったが、実際やってくれているのだから仕方ない。
「対する挑戦者は」
ロニは溜める。
何を、って空気であり、間である。
こういう実況には時として必要な技術である。
「おいおいこれで大丈夫なのか? というケチな密輸船! 借金まみれのボロ船! 『ミレニアム・ドラゴン号』!」
借金まみれでボロ船なのは、おめーのせいだろうが! という咆哮が轟き、『ミレニアム・ドラゴン号』が空を飛ぶ。
まあまあ、とロニはそんな『ミレニアム・ドラゴン号』をなだめながら笑う。
「勝負は簡単! 山あり谷あり雲海のコースをチェックポイントを通り名がrあ一周するだけ!」
簡単だよね! とロニが笑う。
スタートの空砲もあっという間であった。
空を駆ける2つの飛空艇。
速度とパワーで勝る『アルカディア号』。
老練なるテクニックで追う『ミレニアムドラゴン号』。
どちらもデッドヒートである。山あり谷ありのコースであることが、互いの機体性能やテクニックをもって実力伯仲のレースに仕立て上げていく。
ここまではロニの思惑通りであった。
けれど、ロニは特に考えていない。
この勝負に負けるだとか、勝つだとか、そんなことはどうでもいいのだ。
自分が出来ることは一つ。
そう、実況だけだ。
「さぁこれが最後の直線だー!」
楽しければなんでもいい。負けてもまあ、他の猟兵がどうにかしてくれるでしょって思っているし、『ミレニアムドラゴン号』が負けるも思っていない。
ただ懸命にレースに挑むこと。勝負に走ること。
それはもう生命ならざる虚無であっても、生命そのものであると証明するようなものであった。
そんな熱い魂の震えるようなレースができればなんだっていいのだ。
「願いを受けて勝利するのは一体だれだ――!!」
響くはゴールラインを破る音。
いつだってそうだ。
勝者は高く飛び立ち、敗者は放物線を描く。
あのボロ船が高く飛び立つのをロニは見た。
「ご――――るっ!!!」
叫ぶ言葉は中継を通して世界に満ちるだろう。
全身全霊を懸けるということは、生命あればこそ。ロニはだから笑うのだ。いつだって懸命に生きているものたちを見てきた。
その煌めきになりたいと願うことも、手を伸ばすことも否定はできまい。
だから、示したのだ。
揺蕩う虚無にもまた生命は宿るのだと。けれど、今はその時ではないと、その勝利でもって押し止めるのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
夕凪・悠那
狩猟戦
【Firewall】が発動
呼吸不能の状態異常を無効化
『Virtual Realize』起動
具現化するのは"魔獣ハンター"としてクリエイトしたキャラクター
武器は身の丈を越える魔獣素材の太刀
そうだね
ボクらは数えきれないぐらい多くのモンスターを狩ってきた
だから今更この程度、恐れることなんてない
植物群は『黄金瞳』で視界の端で動きを把握しつつ、魔獣と虚神に注力
魔獣の動きを観察して動きを予測(情報収集+戦闘知識)
生まれる隙に一気に斬り伏せて(ハンターが)捕食
アルカディアの石の剣に合わせて[カウンター]
魔獣を斬って練り上げた気を全部叩き込む
アドリブ○
「吾は生命になりたい。強者よ、その生命を吾に。その命を持って吾は進化する。例え、諸悪の根源であるとなじられるのだとしても、吾はその願いを叶えるために、あらゆる悪を成すもの。故に輝け、汝らの生命。その全霊を持って、吾に命の煌きを見せてくれ」
放たれるは魔獣の群れ。
それは謂わば、ブルーアルカディアという世界の象徴であったのかもしれない。
眼下には『拒絶の雲海』。
落ちれば滅びるしかなく、人の拠り所となるのは浮遊大陸のみ。
そして、迫るのは人よりも強大で強靭なる魔獣。
その魔獣を狩らねば人は生きてはいけない。
逞しき者、強き者しか生き残ることしかできない世界なのだ。それは強者の生命を求める『虚神アルカディア』の願いを具現化した世界そのものであるといえるだろう。
だからこそ、夕凪・悠那(電脳魔・f08384)は否定する。
迫る魔獣と無限増殖する植物群。
それらが周囲の大気を吸い上げ、また同時に酸素の量を増やしていく。
呼吸不全。
それは人であるにとっては致命的な攻撃であった。
だが、彼女は言う。
「無駄だよ」
Firewall(ファイアウォール)が並び立つ。電脳障壁が彼女を守り、そして仮想を具現化する電脳魔術が世界に走る。
「魔獣を狩る者……そんなのこの世界にはたくさんいるよ。みんな生きているんだよ。力強くね。明日を夢見ながら。そうやって、生きていくしかなかったのだからと言われたら、そのとおりなんだろうけれど」
具現化されたのは『魔獣ハンター』。
自らをモチーフにしたキャラクターは、身の丈を超える魔獣を素材として練磨された太刀を振りかぶる。
煌めく輝きは、まさしく生命の輝き。
人が練磨し、魔獣が生きた証。
その太刀の一撃が迫る魔獣を一刀の元に切り伏せる。
彼女の黄金瞳が迫る植物群と『虚神アルカディア』の動きを捉える。
「生命を糧にするのが生命。吾はそう在りたいと願うのだ。逞しく生きる生命そのものに。まだ感じることの出来ぬ嗅覚、視覚、味覚、触覚、あらゆる感覚でもって吾は世界のすべてを感じ取りたいのだ」
溢れるようにして魔獣達が悠那に迫る。
だが、その眼前に立ちふさがるのは仮想具現化されたキャラクター。
黒髪をなびかせながら、魔獣の骨牙でもって造られた太刀を振るう。
「そうだね。ボクらは数え切れないぐらい多くのモンスターを狩ってきた。だから今更この程度、恐れることなんてない」
生きるために殺す。
活かすために作る。
その二つを併せ持つのが人の業。
魔獣を狩ることも、理屈や理想では語れない。
実利が直ぐ側に迫っているからだ。殺さねば生きていけないのならば、生命は殺す。誰が罪であると言えようか。
生きることは罪を背負っていくことだ。
何一つ奪わぬ生命など生命ではない。だからこそ、悠那は黄金の瞳で見据える。
別離があった。
彼女ににもまた言葉にしようのない別離があったのだ。
だが残ったのは別れだけではない。約束が胸の中にある。それが今の彼女を成さしめている。
「何がそうさせる。何が生命たらしめる。何が、吾を生命にしてくれる」
「生きることを進化だなんて言わないよ。だから、『虚神アルカディア』、キミの道行きの先にあるのは、他者無き個。自分なんて認識できない。それを生命と呼ぶのかはわからないけれど」
煌めくは黄金瞳。
見据える。
胸にある約束が叫ぶ。
この生命は譲られた未来。
それを後悔になんてさせはしない。そのために悠那は己の日々を心のままに生きると決めた。
誰もが忘れ去ったのだとしても。
「ずっとずっと、覚えてる」
あの別離も、何もかも。
だから、彼女は躊躇わずに仮想具現化されたキャラクターから魔獣の太刀を受け取って『虚神アルカディア』へと踏み込む。
数多の戦いがあった。
多くの猟兵達が刻んだ道筋があった。どれがも未来を、世界を護りたいと願うものであったはずだ。
その傷跡をなぞるように悠那は、これまで奪った生命、魔獣の素材を練り上げる。
太刀は異形なる形になっていた。
不格好であったかもしれない。けれど、それは生命の集大成。故に彼女は躊躇わず振り下ろす。
「これが今此処にある生命の全部」
打ち込む一撃が『虚神アルカディア』を切り裂く。
揺蕩う虚無は生命ならず。
そして、その意味を理解するのかも分からず。けれど、悠那は数多の生命を束ねた刃でもって、『全て生命のための戦い』を否定する。
そう、これは『全ての生命のための戦い』。
たった一つのために振るわれる力ではなく。
猟兵が、己たちの背後に在る数多の生命を救うために力を振るった戦いであると、揺蕩う虚無を切り裂くことで証明した瞬間であった――。
大成功
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