●宵闇に灯る
涼やかな秋の風が吹き抜ける先に、ずらりと並んでいるのは提灯。聞こえてくるのは賑やかなお囃子で、提灯が飾り付けられた囃子車に乗った囃子方が楽し気に太鼓を叩き笛を吹くのが見えた。
|灯祭り《ともしびまつり》――いつしかそう呼ばれるようになった祭りの主役は提灯で、様々な形をした提灯を持った人々が神社に向かって歩くのだ。
神社に到着すると石段の両端には灯篭がずらりと並び、人々の足元を明るく照らしてくれる。緩やかな石段は大人でも子どもでもゆったりと上れる段差で、奥の方へと向かうと広い境内が迎えてくれるだろう。
人々のお目当ては、この神社で振舞われる新米を使った甘酒、それからおにぎり。五穀豊穣を祝い、喜び合うのもこのお祭りでの楽しみなのだ。
それぞれ自慢の提灯を片手に、振舞われるおにぎりを楽しみ甘酒に舌鼓を打つ。秋の宵に心安らぐようなひと時を楽しんで、また明日からの日々を営むのだ。
揺れる提灯と祭囃子、人々の楽し気な声、そして聞こえるのは――わん、と鳴く犬の鳴声であった。
●グリモアベースにて
「提灯の灯りっていうのは何処か心が落ち着くと思わないかい?」
ぷかりと煙管をやりながら、深山・鴇(黒花鳥・f22925)がそう言って笑う。
「サムライエンパイアでね、提灯のお祭りがあるんだ」
|灯祭り《ともしびまつり》と言うんだけれど、と鴇が話を続ける。
「一人ひとつ提灯を持って、神社に向かうんだよ」
提灯は自前でもいいし、大通りに提灯の出店が多く出ているので、そこで買う事もできる。
「この提灯がね、かなり種類が豊富らしくて」
オーソドックスな丸い提灯に始まり、花の形や金魚、動物の顔を模したような物、現代地球で言うところの中華風の提灯など、職人たちの力作が揃っているのだとか。
「丸い提灯もね、様々な模様が入っていて綺麗なんだ」
美しい花模様の紙を使った提灯や、手書きの模様が丁寧に描きこまれた提灯、飾りの付いた提灯など、きっと気に入るものが見つかるはず。
「神社では豊穣を祝って無料でおにぎりや甘酒が振舞われているから、いただいてくるのもいいと思うよ」
炊き立ての新米で握られたおにぎりは梅や昆布におかか、鮭に明太子と様々。甘酒は米麹から作られているので、ノンアルコールで優しい甘さだ。
「それでね」
ここからが本題なんだけれど、と鴇が煙管の灰を灰吹きにとん、と落とす。
「このお祭りの賑やかさに誘われたのか、オブリビオンが出るんだ。それも――可愛い犬の姿をしたのがね」
ふ、と笑いながら鴇が言うには、この犬の姿をしたオブリビオンは楽しい事が好きなようで、楽しそうにしている人々に遊んでほしいとやってくるらしい。
「可愛い犬の姿をしているとはいえ、オブリビオンだからね。何かのはずみに一般人を傷付けてしまうかもしれないだろう? そこで、だ」
もうわかるだろう? という笑みを浮かべて、鴇が言う。
「猟兵であるお前さん方にこのオブリビオンの相手をしてほしいのさ。戦うもいいし、普通の犬と接するように遊ぶのでも構わないよ。神社の境内は広いからね、裏手に回ってもいいし人の少ない場所で構ってやるのもいいと思うよ」
この犬からすれば戦うのだって遊びだと認識するからね、と鴇が手のひらにグリモアを浮かべる。
「遊んでやれば満足して消えるだろう、遊ぶ方法はお前さん方に任せるよ」
祭りを心行くまで楽しめば『ハレの霊力』が場に満ちる。それはオブリビオンの力を削ぐ役割も果たすから、まずは祭りを楽しんでおいで、と笑って鴇がゲートを開いた。
波多蜜花
閲覧ありがとうございます、波多蜜花です。
秋ですね、浴衣でお出掛け如何でしょうか。こちらは二章で完結となっておりますが、一章のみのご参加も歓迎しております。浴衣を着て、お気に入りの提灯を持って、秋の宵を楽しんできてくださいませ。
浴衣は特に希望がなければ今年の浴衣を勝手に描写する場合があります。浴衣をお持ちでない方も、☆をプレイングのどこかに入れてくだされば、勝手にイメージで浴衣を着せます(ない場合はプレイングでの指示が無ければ描写致しません)
●プレイング受付期間について
断章投下後にタグやMSページ記載のURL先にてご案内しております、参照いただけますと助かります。
また、参加人数やスケジュールの都合、予期せぬ出来事によっては再送をお願いする場合がございます。なるべく無いように努めますが、再送となった場合はご協力をお願いできればと思います(この場合も、タグとMSページ記載のURL先にてお知らせ致します)
オーバーロードについてはMSページに記載があります、ご利用をお考えの方がいらっしゃいましたらお手数ですが確認していただけると幸いです。
●できること
・一章:日常
時間帯は日が暮れてから。
提灯は自前でも、大通りで買い求めたり、ご自由にどうぞ。
提灯を手にして、祭囃子の中を神社に向かって歩いたり、神社でおにぎりと甘酒を楽しんだり、他にも出来そうな事はしていただいて構いません。
どちらかといえば、しっとりとした雰囲気のお祭りかもしれませんが、賑やかなのも大丈夫です。
飲食系の屋台は今回はありません、ご了承ください。
POW/SPD/WIZは気にしなくて大丈夫です。
・二章:ボス戦
くろまろわんこと遊んであげてください、満足すると消えます。
●同行者について
同行者が三人以上の場合は【共通のグループ名か旅団名】+【人数】でお願いします。例:【提灯3】同行者の人数制限は特にありません。
プレイングの失効日を統一してください、失効日が同じであれば送信時刻は問いません。朝8:31~翌朝8:29迄は失効日が同じになります(プレイング受付締切日はこの限りではありません、受付時間内に送信してください)
未成年者の飲酒喫煙、公序良俗に反するプレイングなどは一律不採用となりますのでご理解よろしくお願いいたします。
それでは、皆様の素敵な秋のひと時をお待ちしております。
第1章 日常
『祭りを楽しもう』
|
POW : 屋台を巡って色々食べよう
SPD : 屋台を巡って色々遊ぼう
WIZ : 花火を楽しもう
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●お囃子と、提灯と
至る所に飾り付けられた綺麗な提灯、誰かが手にした提灯、自分が手にした提灯。ゆらゆらと揺れる灯りは橙色で、優しい光を放っている。聞こえてくるお囃子は楽し気で、神社へ向かう足取りも軽くなるよう。下駄の音も、何処か弾んだ音を立てていた。
神社が近くなると、小さな灯篭が道案内をするように人々が歩く道の両端を照らしていて、これがまた幻想的な雰囲気を作り出している。足元に気を付けながら石段を上れば、広い境内に飾られた提灯の灯りが人々を出迎えた。
「おにぎりと、甘酒は如何ですか?」
そう呼び込む声にふらりと近寄れば、美味しそうな艶々の新米おにぎりとふわりと甘さの香る甘酒が振舞われる。おにぎりは様々な具があるので、希望の具を申し付けてもいいし、お任せにして何が当たるか楽しむのもいいだろう。
甘酒は子どもも飲めるノンアルコールで、ほんのりとした甘さの優しい飲み口。もしも甘酒の味が苦手であれば、牛乳で割って貰うとまた少し違った味わいになって飲みやすくなるはず。
さぁ、あなたもどうぞ秋の宵を提灯の灯りを揺らして楽しんで――。
鹿村・トーゴ
◎
2020浴衣
相棒の鸚鵡ユキエは羽織の袖の中や肩に
『ユキエ、夜にはぐれるのイヤよ』
そーだねぇ、お前鳥目だしなー
ん、やっぱりとゆーか
秋の祭りはどこも盛況だねェ
あ。提灯、色々あるなァどれにしよ
最近あーちゃん(長兄)とこに生まれた甥っ子か義姉さんが喜びそうなのがいいな
『あれは?』(薄和紙を重ねた、うさぎと牡丹の透かし柄)
お、さすがユキエも女の子だよなー
小振りだし愛らしいや
それ一つおくれよ
へー新米のおにぎり
炊き立てで綺麗だねえ
梅干しと刻み沢庵を
食うの遅いし立ち食いは苦手だな
横道それてのんびり食べよ
『ユキエもー』
ハイハイ、ユキエ少しだけな?
『甘酒は?』
……(苦手でお茶を貰った
後はお社で手を合わそーかねぇ
●穏やかな|灯《ともしび》
相棒である|黄芭旦《キバタン》と呼ばれる美しい白い鸚鵡を肩に乗せ、藍色地に縞模様の入った浴衣に|空五倍子色《うつぶしいろ》の羽織を着た鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)が提灯に照らされた通りを歩く。
『ユキエ、夜にはぐれるのイヤよ』
鸚鵡のユキエが淡黄のとさかをふるりと揺らし、トーゴに言う。
「そーだねぇ、お前鳥目だしなー。でもまぁ、オレの肩から離れなきゃ大丈夫じゃないか?」
『絶対に離れないわ』
「痛い痛い、加減してユキエ」
爪を立てる勢いで肩にしがみついたユキエを宥め、トーゴが聞こえてきたお囃子に耳を澄ます。
「楽しそうだねぇ。やっぱりとゆーか、秋の祭りはどこも盛況だねェ」
秋祭り、大抵は秋の豊作を祝うものが多いからだろうか。
人通りが多くなると誰も彼もが提灯を手にしていて、トーゴもひとつ買おうと露店を覗く。
「提灯、色々あるなァ。どれにしよ」
シックな物から可愛らしい物まで、どれを手にしても馴染みそうな提灯ばかりだ。
「そーだなぁ……あ、最近あーちゃんとこに生まれた甥っ子か義姉さんが喜びそうなのがいいな」
兄のところに生まれた男の子を思い、トーゴの口元が緩む。
『あれは?』
どれがいいだろうかと悩んでいたトーゴに、ユキエが助言したのは薄和紙を重ねた、うさぎと牡丹の透かし柄が入った提灯。大きさも小振りで愛らしく、これならばとトーゴが頷く。
「さすが、ユキエも女の子だよなー」
『もっと褒めていいわよ』
「ふふ、さすがユキエ!」
ユキエを褒めながら、提灯を買い求めるとそれを手にして再び歩き出した。
ゆらゆら揺れる提灯の灯り、そして紙灯篭の灯りを目印に歩けば神社に迷わず到着する。石段を上り、開けた境内を見れば提灯が綺麗に飾り付けられていた。
「へー、新米のおにぎりだって、ユキエ」
炊き立てのご飯を手伝いの女性達が手慣れた手付きで握る様子は、見ていて楽しい。
「炊き立てのおにぎり、綺麗だねえ。おねーさん、オレに梅干しと刻み沢庵のおにぎりをおくれ」
はーい、と元気のいい返事と共に、竹皮に包んで渡される。それを持って、邪魔にならないように端の方へ移動して、休憩スペースに座ったトーゴがぱくりと食いついた。
「ん、美味ぁ」
『ユキエもー』
「ハイハイ、ユキエは少しだけな?」
軽く割った新米部分をユキエにやりつつ、炊き立ての美味さに頬を綻ばせる。
『甘酒は?』
「……お茶で」
甘酒の味はどうにも苦手で、お茶を貰ったトーゴがそっと視線を外す。
「これ食べたら、お社で手を合わそーかねぇ」
これも何かの縁だし、と指に付いた米粒も残さず食べたトーゴがへにゃりと笑った。
大成功
🔵🔵🔵
御簾森・藍夜
【朱雨】
◎
紅葉模様の狐型提灯
ん、行こう
って暁早い早いっ
ふわふわ目の前で尻尾を揺らす暁が笑顔で嬉しい
今日は暁と繋ぐ右手だけ手袋無しで握り返す
おにぎり全種?何だ暁、今日は―うん?
驚いた
なるほど、半分…
ありがとう、いただくよ
おっこれ梅―酸っぱ…!
ああほら、口の端に付いてる、と手拭と指先で拭って
甘酒も温かくて良いな
こういう絶妙な時期には丁度良い
祭の賑やかさは良いものだ、俺も思う
それに暁と来られてよかった
だって秋って短いだろ?タイミングが合った今日って、何か特別な夜みたいじゃないか?
俺も、特別な楽しい日が増えて嬉しい
お参り、折角だししよう
願うなら
―暁のこれからがもっと幸せであるように
暁の笑顔が一番だ
楊・暁
【朱雨】
◎☆
花模様の丸提灯
藍夜、藍夜!早く行こう!
その手を取り
おにぎり全種と甘酒持って
少し静かな場所で並んで食べる
…あれ
どれがどの具か分かんなくなっちまった…半分こでいいか?
――はい、藍夜
片割れを口許へ
あはは。当たりだな
続けて俺も酸っぱさ楽しみ
ん~…!美味ぇ
口の端の米粒を拭って貰って微笑んで
甘酒も堪能
ああ。身体がぽかぽか、温けぇや
祭りは何度か来たけど…俺、この雰囲気が好きだ
人の声も、音も、灯りも、温けぇ
…こうやって、自分の好きなもんが増えてくのっていいな
…特別?…そっか
ああ、特別だ
お前と一緒に居られて、嬉しい
お参りもしてぇな
願ってばかりで贅沢だけど
…藍夜が幸せで在りますように
繋いだ掌を強く握る
●願いは灯りに揺れて
ゆらゆら揺れる、提灯の灯りがふたつ。
花模様の丸提灯はそわそわとするように、紅葉模様の狐型をした提灯はそんな丸提灯を追うように。
「藍夜、藍夜! 早く行こう!」
普段はその顔に浮かべる表情は仄かながら、今日ばかりは笑みが浮かぶ。黒と赤の半身浴衣に身を包み、帯に挿した四色花弁の花飾りを楽しげに揺らす楊・暁(うたかたの花・f36185)がくるりと振り向いて、早く早くと御簾森・藍夜(雨の濫觴・f35359)を急かす様にその手を取った。
「ん、行こう……って暁、早い早いっ」
そう言ってはみるものの、暁の尻尾がふわふわと揺れて彼の表情以上に感情を表しているのを見ると、嬉しいという気持ちの方が勝って下駄の鳴る音も早くなる。いつもは両手にしている黒い手袋も、今日は右手だけ嵌めていないのは彼の手を握り返す為。その温もりを感じながら黒と藍の半身浴衣の裾が翻ると、その身を飾る金色がしゃらりと揺れた。
神社へと向かう通りは提灯で飾られた囃子車が何台か練り歩き、お囃子が祭りの夜を彩っている。通りの両脇には提灯を売る露店が並び、既に提灯を持っているのに思わず目を惹かれてしまうほど美しい。
「あの提灯、藍夜みたいだ」
「それなら、こっちの提灯は暁だな」
そんな他愛もない話をしながら歩いていれば、いつの間にか神社の石段の前。緩やかな石段の両脇には紙灯篭が置かれ、柔らかな色を灯している。カラコロと二つの音を重ねて石段を上れば、目の前に広がるのは提灯で彩られた神社の境内。
「藍夜、見て」
「うん?」
暁が指さす先には笑い声、それから沢山のおにぎりと甘酒を温めている大鍋が見えた。
「おにぎり、食べよう」
ぴる、と動いた狐耳に小さく笑い、食べようかと藍夜が頷く。
「俺、貰ってくるから待ってて」
返事をする前に暁が手を離し、一瞬藍夜に視線を向けておにぎりを貰う為に列へと向かう。暁がそう言うのなら大人しく待っていようと、藍夜は右手の熱が消えてしまわないように緩く拳を握りしめた。
おにぎり、と思いつつも左手の熱を離したのが惜しい気がして、暁が列に並ぶ。手をこすり合わせれば、左手だけが温かくて不思議な気持ちになる。どうしてか、なんて考えているうちに自分の番が来て、おにぎり全種と甘酒を二つ頼んだ。
竹皮に包まれたおにぎりと紙コップに入った甘酒を手にして戻ると、藍夜がこっちだと人の賑わいから少し外れた所で手を振るのが見えて暁がそちらへ足を向ける。
「お待たせ」
「そんなに待ってないよ、貰ってきてくれてありがとう」
暁が手にした甘酒を二つ手に取り、おにぎりを食べるならと邪魔にならない場所にと藍夜が視線よりも少し低い場所にある中台へと置く。
竹皮を開くと、ふっくらとしたおにぎりが五つ。暁が並んだ時にあった具の入ったおにぎりを全種詰めて貰ったのだ。
「おにぎり全種?」
「うん、鮭と梅と昆布の佃煮とおかかと、ネギ味噌だって」
美味しそうだな、と藍夜が笑うと暁が眉間に僅かな皺を寄せる。
「……あれ」
「うん? どうかしたのか?」
「どれがどの具かわかんなくなっちまった……半分こでいいか?」
軽く首を傾げながら見上げてくる姿に、勿論だと藍夜が頷く。
「じゃあ、まずはこれ」
適当に端にあったおにぎりを手に取り、暁が半分に割った。
「なるほど、半分……」
そして、自然な仕草でそれを藍夜の口許へと寄せる。
「――はい、藍夜」
「ありがとう、いただくよ」
一瞬だけ動きが止まったけれど、藍夜が差し出されたおにぎりを食べてと見上げてくる姿に、迷わず口を開けた。
「おっこれ梅――酸っぱ……!」
きゅ、となった口許を藍夜が手で隠すと、暁が笑う。
「あはは、当たりだな」
俺も食べよう、とおにぎりの片割れを暁がぱくりと食べて、新米の米の甘味と梅干しの酸っぱさに目を細める。
「ん~……! 酸っぱいけど、美味ぇ」
「うん、新米ならではの美味しさがあるな。ああほら、口の端に付いてる」
白い米粒を暁の唇の端に見つけ、手拭と指先で拭う。
「ありがと」
「どういたしまして」
ふわり、微笑んだ暁に藍夜も笑みを返して、おにぎりを半分こしては舌鼓を打った。
「どれも美味しいな」
「どれだけでも入る気がする」
おにぎりってどうしてこんなに美味しいのだろうか、と二人がしみじみと話しつつ甘酒を手に取った。
「甘酒も温かくて良いな、こういう絶妙な時期には丁度良い」
「ああ。なんだか身体がぽかぽか、温けぇや」
甘酒は飲む完全栄養食と言われるほど栄養価も高く、夏バテにも効果のある飲み物。季節の変わり目にも丁度いいと、ほっとする甘さを二人で楽しみながら賑わう境内を眺める。
「祭りは何度か来たけど……俺、この雰囲気が好きだ」
「そうだな」
祭りの賑やかさは良いものだと、藍夜も笑みを浮かべて暁を見遣った。
「人の声も、音も、灯りも、温けぇ。……こうやって、自分の好きなもんが増えてくのっていいな」
そう呟くように零す暁もまた、笑みを浮かべて藍夜に視線を向ける。
「うん、それに暁と来られてよかった」
「どうして?」
こてん、と首を傾げた暁に笑って、甘酒を口に含む。
「だって秋って短いだろ? タイミングが合った今日って、何か特別な夜みたいじゃないか?」
「……特別? ……そっか」
特別、と言葉を口の中で転がす暁に向かって、藍夜が言葉を重ねた。
「俺も、特別な楽しい日が増えて嬉しい」
真っ直ぐに響く言葉に、暁もまたこのひと時が特別なのだと理解する。
「ああ、特別だ。お前と一緒に居られて、嬉しい」
また一つ嬉しいが増えたと、暁の尻尾がそわりと揺れた。
おにぎりと甘酒をすっかり空にし、ゴミを捨てながら暁が神社の拝殿を見て、お参りもしたいと藍夜を誘う。
「お参り、折角だししていこう」
「うん、願ってばかりで贅沢だけど」
それでも、願わずにはいられないから。
二人並んでお賽銭を投げ、作法にのっとり目を閉じる。互いに願うのは、今隣にいる彼の幸せ。
――暁のこれからが、もっと幸せであるように。
――藍夜が幸せで在りますように。
どちらからともなく目を開けて、そっと手を繋いで。
互いの願いは聞かぬまま、ただ笑みを浮かべて繋いだ掌を強く握った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ティア・メル
【龍飴】
ニコくんニコくんっ
お祭りだって!
戀人になってから初めてのデート
下駄を鳴らしてニコくんの指先に指先を絡めて繋ぐ
提灯はせっかくだし、買っていこうよっ!ね!
お店を巡ってニコくんに似合う物を探す
あ、あれとか綺麗じゃない?
指差した先にあるのは桜の提灯
桜、ぼく好きなんだよ
開花の意味があるからね
これはニコくんにプレゼントするよ
花咲みを浮かべ
ニコくんは?どれにする?
んふふ、ぼくっぽい?ありがとうなんだよ
後は甘酒とおにぎりも頂いちゃおう!
たらこのおにぎりをぱくり
んに!美味しい!
甘酒は不思議な味がするね
ニコくんもおにぎり一口どうぞ
あーん!
ぼくにもくれるの?ありがとね
大好きな彼氏とのひととき
夢見るような時間
ニコラ・ノワイユ
【龍飴】
祭りか、ティアとなら楽しそうだ
戀人になって初めてのデート
可愛らしい浴衣に身を包む彼女と手を繋いで歩く
黒い浴衣はティアに選んでもらった
きっとティアとなら楽しい日になる
俺もティアに提灯を贈りたい
桜の提灯か、ティアの髪と同じ色だな
そんな素敵な意味があるのか、知らなかった
ありがとう、ティア
俺は椿の提灯にしよう
ティアらしい綺麗な花だ
俺の瞳の色という意味もあるが、それは内緒にしておこう
そっとティアの髪を梳く
甘酒とおにぎりをいただく
鮭のおにぎりを口に入れる
塩がきいていて美味しいな
甘酒は初めて飲むタイプのものだ
1口くれるのか?ありがとう
ティアもほら、食べてみろ
大事な彼女とのひととき
夢見るような時間
●甘酒よりも甘く
ニコくん、と呼ぶティア・メル(きゃんでぃぞるぶ・f26360)の声がニコラ・ノワイユ(レーヴァテイン・f38507)の耳に甘く届く。
「ニコくんニコくんっ」
「何だ、ティア」
「お祭りだよ!」
桜模様が浮かぶ浴衣に身を包み、下駄の音を鳴らすティアはいつになくはしゃいでいるように見えて、ニコラが眩しそうに彼女に微笑んだ。
「祭りか、ティアとなら楽しめそうだ」
揺れる提灯は柔らかな灯りを放ち、あちらこちらで誘うように揺れている。
「提灯もいっぱいあるね、せっかくだし買っていこうよっ! ね!」
そう言うとティアが立ち止まり、くるりとニコラの方を向くと下駄を鳴らして近寄って、彼の指先に白く細い指先を絡めた。
「んふふ、ニコくんの浴衣姿、とっても似合ってるんだよ」
「ありがとう、ティアが選んでくれたからだな。ティアの浴衣もよく似合ってる」
彼女に選んで貰った黒の浴衣はニコラに誂えたようにぴったりで、帯に挿した桜の根付がしゃらりと揺れている。それはティアの浴衣の帯飾りと揃いの桜で、密やかなお揃いというやつだ。
「嬉しい、提灯もニコくんに似合うのをぼくが探してあげるね」
「それなら、俺もティアに似合う提灯を探そう」
ニコラの案にティアがパッと華やいだ笑みを見せ、楽しみだね! と下駄の音を響かせた。
通りには幾つもの露店が並び、数えきれないほどの提灯が並んでいる。どれがいいかと真剣な顔で眺めながら、二人で互いに似合う提灯を探しながら歩く。
「あ、あれとか綺麗じゃない?」
ティアが指さした先を視線で追えば桜の提灯が見えて、ほう、とニコラが吐息を零す。
「桜の提灯か」
「桜、ぼく好きなんだよ」
「今日の浴衣も桜模様だものな。ティアの髪と同じ色だ」
彼女のピンク色の毛先を指先に絡めながら、桜が好きな理由があるのかとニコラが問えば、ティアが擽ったそうに笑う。
「開花の意味があるからね」
「そんな素敵な意味があるのか、知らなかった」
開花、と聞いてティアの笑顔の様だと思いながら、絡めた髪をするりと流す。
「ふふ、これはニコくんにプレゼントするよ」
ちょん、と桜の提灯をつついてティアが花笑みを浮かべた。
「ありがとう、ティア」
桜の提灯を受け取って、ニコラが嬉しそうに揺れる提灯を手にして再び提灯を見遣る。
「ニコくんは? どれにする?」
「そうだな……俺は椿の提灯にしよう」
ティアらしい綺麗な花だ、と店主から提灯を受け取ってティアへと渡す。
「んふふ、ぼくっぽい? ありがとうなんだよ」
笑うティアの瞳には自分が映っていて、ニコラは俺の瞳の色という意味は内緒にしておこうと、夜風で少し乱れたティアの髪をそっと手櫛で梳いた。
お互いが選んだ提灯を揺らし、人の流れに任せて歩けば神社まではすぐで、手を繋いだまま石段を上り境内へと向かう。
「んに! いい匂いなんだよ」
「これは……甘酒か?」
ふんわりと甘い、優しい香り。
賑わう境内を進むと、おにぎりと甘酒を振舞う人々の姿が見えた。
「せっかくだから、おにぎり食べたいな! 甘酒も頂いちゃおう!」
「そうだな、豊穣を祝っての振舞いだ。頂いていこう」
おにぎりの具は何にしよう? と二人で悩みつつ、ティアはたらこのおにぎりを選び、ニコラは鮭のおにぎりを選ぶ。それから、甘酒も受け取って列から外れて休憩スペースへ向かった。
「うわぁ、お米が艶々なんだよっ」
「白く輝いているようにも見えるな」
真珠のような……とニコラがまじまじと眺めていると、ティアがその横でぱくりとおにぎりを齧る。
「んに! 美味しい!」
絶妙な塩気と中のたらこがご飯と共に口の中で解けて、おにぎりってこんなに美味しいんだとティアが目を瞬く。
「そんなに……どれ」
美味しいと全身で表しているかのようなティアの姿に、ニコラも鮭のおにぎりを一口。
「……これは塩が効いていて美味しいな」
鮭の甘味と塩気が丁度良くて、ニコラもティアと同じような表情をして美味しいと頷いた。
「甘酒、不思議な味がするね」
どこか懐かしいような、それでいて初めての味。
「そうだな、初めて飲むタイプのものだが……うん、美味しいと思う」
「ぼくも! あ、ニコくんもおにぎり一口どうぞ」
「一口くれるのか? ありがとう」
あーん! と差し出されたたらこのおにぎりを齧り、お返しにと自分の鮭のおにぎりを彼女の口許へと寄せる。
「ぼくにもくれるの? ありがとね」
はむっと一口食べて、鮭も美味しいね! とティアが満足気に微笑んだ。
――大事な彼女とのひととき。
――大好きな彼氏とのひととき。
それは二人にとって、まるで夢見るような穏やかで優しい時間。
どちらからともなく寄り添って、ぴたりとくっついて。
いつまでも続けばいいと、内緒話をするように囁き合った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ピスーニア・ブロゼ
【綺羅2】◎
今年の浴衣を着ていくよ♪
早速、提灯を買いに行こっか♪
リリーちゃんらしくてすっごく可愛いね!
それじゃあピスは向日葵柄のまぁるい提灯にしようかな…
えへへ、そうかな…!
リリーちゃんも今すっごくいい笑顔だよ!
んも〜!褒め上手さんめ!
リリーちゃんと手を繋いで
ゆっくり提灯の光を見ながら神社に向かおうか♪
そうだね、暖かくて綺麗〜!ゆらゆら揺れててなんだかペンライトみたい!
ちょっとだけ…気分がいいから鼻歌歌っちゃお♪
最初に甘酒を貰ってこようかな!
そうだね〜優しくてほっこりするね…
お次はおにぎり!
何食べようか迷っちゃうね
ピスはお任せにしちゃおうかな☆
何が来るかな!宝箱みたいでドキドキワクワクだね〜!
リリー・フォーゲル
【綺羅2】 ◎
今年仕立てて貰った浴衣を着ていきます!
リリーはうさぎさんの形をした提灯が欲しいです!
ピスさんも素敵な提灯ですね!
向日葵ってなんだかニコニコ笑顔のピスさんみたい!
ふふ、それはきっとピスさんと一緒で楽しいからですね!
ピスさんのお手手をぎゅっと握って
提灯って温かくて綺麗な光ですね!
ふふ、確かにそうかも?
ピスさんの鼻歌に合わせて、リリーもついつい体がゆらゆら
初めての甘酒なので牛乳を混ぜて、いただきます!わぁ…ポカポカする優しい味…
ん〜どれも美味しそう…
なんだか楽しそうですね
それじゃあリリーもお任せで!
ふふ、リリーもとってもドキドキワクワクです!
●笑顔を灯して
辺りを見回せば優しい灯りを揺らす提灯がたくさん、隣を見れば今年新調したばかりの浴衣で笑うお友達。これでテンションが上がらない訳がないと、ピスーニア・ブロゼ(煌めく光獣・f34523)とリリー・フォーゲル(みんなの食材(仮)・f30316)が視線を合わせて笑い合う。
「リリーちゃん、浴衣すっごく似合ってるよ♪」
「ピスさんも、とーってもお似合いなのです!」
リリーの浴衣は白地にパステルピンクとパステルイエローの市松模様が浮かび、お花とうさぎが遊ぶ可愛らしいもの。ピスーニアの浴衣はレモンの中にライムが混じる、洋装も取り入れたピスーニアらしい元気さと可愛らしさを感じさせるようなデザインのもの。
どちらも甲乙付け難い可愛らしさで、二人の可愛らしさを最大限に引き出していた。
「早速、提灯を買いに行こっか♪」
いっぱいあって迷っちゃうね、と言いながらピスーニアが近くの露店を覗き込んだ。
「リリーちゃんはどんなのにするか決めた?」
「リリーはうさぎさんの形をした提灯が欲しいです!」
決めてたのです、と意気込むだけあってリリーの瞳には迷いがない。幾つかあるうさぎの形をした提灯を見比べて、これにしますと手に取った。
赤い目をして耳がぴょこんとした提灯は可愛らしく、リリーが手にすると今にも跳ねて行ってしまいそうにも見える。
「リリーちゃんらしくてすっごく可愛いね!」
「ふふ、ありがとうございます! ピスさんはどれにするのですか?」
「ん-……それじゃあピスは向日葵柄のまぁるい提灯にしようかな……」
これかな? と丸い提灯を手に取ってみれば、和紙に描かれた向日葵柄がピスーニアにしっくりときてリリーが微笑む。
「すっごく似合ってるのです! ピスさんらしい、とっても素敵な提灯ですね!」
「えへへ、そうかな……! じゃあこれにするね!」
リリーに褒められた提灯に決めて、持ち手棒を手にすれば二人の間に優しい灯りが揺れる。
「向日葵ってなんだかニコニコ笑顔のピスさんみたい!」
「リリーちゃんだって、今すっごくいい笑顔だよ!」
「ふふ、それはきっとピスさんと一緒で楽しいからですね!」
「んも~! リリーちゃんの褒め上手さんめ!」
本当のことです! とリリーが言うと、ピスもリリーちゃんと一緒でとっても楽しいよ! とピスーニアが笑った。
お互い花丸の笑顔を浮かべて笑い合いながら、露店を離れて歩き出す。
「お祭りだけあって、人が多いですね」
「そうだね、迷子にならないように気を付けないと……あ、リリーちゃん、手!」
「て?」
手と言われ、提灯を持っていない方の手をリリーが差し出す。
「こうすれば迷子にならないよ♪」
良いこと思い付いた! とばかりにピスーニアがリリーの手を繋ぐ。
「とっても名案なのです!」
ぎゅっと握り返した手を提灯を揺らす様に二人で揺らし、神社への道を歩く。どっちへ向かえばいいのかなんて考えなくても、人が行く方へ向かえば神社の灯りが見えた。
「提灯って温かくて綺麗な光ですね!」
「そうだね、暖かくて綺麗~! ゆらゆら揺れてて、なんだかペンライトみたい!」
「ふふ、確かにそうかも?」
アイドルを夢見るピスーニアならではの例えに、リリーも納得したように頷く。ペンライトのようだと思えば、揺れる提灯が自分を応援し励ましてくれる灯りに見えて、ピスーニアの気分も上がって、思わず鼻歌が零れた。
鼻歌といえどピスーニアの可憐な歌声、それはリリーの体をリズムに乗せながら神社まで続いたのだった。
二人が神社に到着すると、おにぎりと甘酒を振舞う声が聞こえて貰いに行こうと下駄の音を鳴らす。
「リリー、甘酒を飲むの初めてなのです」
「ピスもだよ!」
初めて同士ですね、と笑っていると、配膳してくれるお姉さんが優しく声を掛けてくれる。
「初めて飲むのかい? それなら牛乳で割ってあげようか」
「牛乳で……!」
「美味しそう!」
甘酒は少し癖があるのだとお姉さんが笑う、勿論それが美味しいのだけれど初めてならきっとこっちの方が飲み易いだろうと、二人に牛乳で割った甘酒を渡してくれた。
「いただきます!」
「いただきまーす」
恐る恐る、それでいてわくわくしながら一口飲むと、口の中に広がる優しい甘さ。
「わぁ……ポカポカする優しい味……!」
「そうだね~、優しくてほっこりするね……」
二人でほわほわしながら甘酒を飲み、ピスーニアはこの味なら牛乳で割らなくても美味しく飲めるかも、と機嫌よく笑う。
「ね、次はおにぎり食べようか!」
「はい!」
紙コップを片手におにぎりの列に並び、何があるかと眺める。
「鮭に昆布、梅におかかに……あ、いくらもあるよ。何食べようか迷っちゃうね」
「ん~どれも美味しそうで迷います……!」
どうしよう? とリリーが迷う横で、ピスーニアがそうだ! とリリーを見た。
「ピスはお任せにしちゃおうかな☆」
「お任せ……なんだか楽しそうですね! それじゃあリリーもお任せで!」
お任せと言われたお姉さんが、はーい! と笑って竹皮に二つずつおにぎりを乗せて包んでくれる。それを一つずつ持って、二人は列を離れた。
「何が来るかな! 宝箱みたいでドキドキワクワクだね~!」
「ふふ、リリーもとってもドキドキワクワクです!」
どの味が当たるかは食べるまで分からない、驚きと喜びの結果はきっと二人の笑顔を咲き誇らせて――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
椚・一叶
トリス(f27131)と
浴衣着て、風情というやつ楽しむ
儂の朝焼けとトリスの夕焼け
空色合わせは自慢物
提灯は儂にとって見慣れた物ではあるが
色々な種類あるの面白い
そういえば居たな、あの店に金魚
儂は手描きの模様が入った提灯
秋の葉が入ったやつ
…個性光ってるか?どう?
自分の個性、よく分からなくて
顔の横に提灯翳してみる
儂らいつも食うか遊んでるか
こうして大人らしく余裕ある過ごし方も良い
幻想的な景色を眺めながらのんびり歩こう
自分の世界なだけあって、落ち着く
いつになく穏やかな気分
そういえば提灯は霊を導くものだとか、聞いたことある
見えない存在、どうなってるか分からないが
生きてる儂らもまた、この提灯に導かれてるかもな
鳥栖・エンデ
友人のイチカ君(f14515)と
秋空色な浴衣を着ての灯祭りだ〜
ランタンとかは割と買ったりするんだけども
提灯をじっくり眺める機会は中々ないかも
どーれにしようかなーと色々見て回り
丸い金魚のとか見てるとパーラーの
看板のこ元気かなぁ、とか思ったりもして
空泳いでるサカナを最近よく見かける気もするから
金魚柄の丸い提灯にしようかなぁ
イチカ君はどんなのにしたんだい?
個性が光るといいねぇ、灯りだけに
色変わる秋の葉はそれっぽいなぁ…なんて
神社に向かって歩く景色は
星明かりにも似ているような気がする
目印があれば其処まで頑張るのも悪くないし
偶にはこういう…のんびりも良いのかもね
●時にはのんびりと
「イチカ君、よく似合ってるねぇ」
「ふふん、そうだろう。トリス、お前も似合ってる」
互いの浴衣を褒めながら、椚・一叶(未熟者・f14515)と鳥栖・エンデ(悪喰・f27131)が提灯の揺れる夜の通りを歩く。夜といってもそこかしこにある提灯の灯りで不自由はなく、楽し気な下駄の音がそこかしらで鳴っている。
「ありがとう。秋空って感じでね、僕も気に入ってるんだ~」
「儂もこの空色の合わせには満足」
一叶の朝焼けと、エンデの夕焼け。それは対になるような見目も美しい浴衣で、新調してよかったと笑いながら少し涼しい秋の夜を楽しむように提灯を眺めて神社を目指す。
「ランタンとかは割と買ったりするんだけども、提灯をじっくり眺める機会は中々ないかも」
「提灯は儂にとって見慣れた物ではあるが」
こんなに色々な種類を目にする機会は中々ない、と一叶も興味深そうに提灯を見遣った。
「どーれにしようかなー」
せっかく買うのだから、一番気に入るものがいいなとエンデが楽しそうにあちこちの露店を冷かして、ふっと足を止めた。
「気になるもの、あったか」
「気になると言えば気になるかな、これ」
これ、とエンデが指さした提灯は丸い金魚の形をした提灯で、愛嬌のある顔をしている。
「金魚」
強そうな提灯だな……と一叶が真剣な顔をして提灯を見て言うと、エンデが笑いながらそうだねぇと頷いた。
「これを見た瞬間にね、パーラーの看板の子は元気かなぁって思って」
「そういえば居たな、あの店に金魚」
タカギ! と二人の声が同時に響いて、顔を見合わせて笑う。
「今度餌をやりに行くか」
「いいねぇ、一緒に行こうか」
そう約束をして、エンデが他の提灯を眺める。
「空を泳いでるサカナを最近よく見かける気もするから、金魚の提灯にしようかなぁ」
金魚の形の提灯に、金魚が泳ぐ丸い提灯、どっちもいいけどこっちかな? と、エンデが金魚柄の丸い提灯を手に取った。
「イチカ君はどれにするの?」
「儂は……これにする」
一叶が手にしたのは手描きの模様が入った提灯で、彼の浴衣にもよく似合っているように見えた。
「秋の葉が入ったやつ」
「ススキと紅葉だねぇ」
「トリスの浴衣にも入ってるな、ススキ」
エンデの浴衣の裾に揺れるススキ模様を眺め、自分の選んだ提灯を眺め、改めてこれにしようと一叶が言った。
「ふふ、個性が光るといいねぇ、灯りだけに」
「……個性光ってるか? どう?」
自分の個性というものがよく分からないと言いつつ、一叶が提灯を自分の顔の横に翳してエンデに問い掛ける。
「色が変わる秋の葉はそれっぽいなぁ」
「そうか!」
儂の個性だな、と納得したような一叶が提灯を揺らして言うと、エンデもそうそう、個性だよ~と提灯を揺らした。
二人並んで提灯を揺らし神社に向かって歩き出すと、同じように提灯を手にして向かう人々が見えてエンデがふと星明りにも似ているような気がするね、と一叶に囁く。
「幻想的というやつだな」
「ふふ、そうかも」
いつもは食べるか遊んでいるか、そんな風に共に時間を過ごしているけれど、今夜みたいに大人らしく過ごすのも悪くないと一叶が唇の端を持ち上げる。
それにサムライエンパイアは一叶の生まれた世界だ、サクラミラージュも好きだと思うけれどやはり落ち着くのは故郷たる世界。いつになく穏やかな気持ちで歩いていると、エンデが神社までもう少しだねぇと指さした。
「そういえば提灯は霊を導くものだとか、聞いたことある」
「お盆にも飾るんだっけ?」
そうだ、と一叶が頷く。
「目印みたいなものなのかな。目印があれば其処まで頑張るのも悪くないし」
「儂は見えない存在、どうなってるか分からないが」
そこで言葉を切って、一叶がエンデを見遣る。
「生きてる儂らもまた、この提灯に導かれてるかもな」
「ふふ、そうかもしれないね」
揺れる提灯は何も語らないけれど、この灯りが拠り所となる事もあるのだろう。
「偶にはこういう……のんびりも良いのかもね」
「む、儂もそれ思ってた。大人っぽい時間」
お揃いだねぇ、とエンデが笑って神社の石段の前で足を止める。
「さぁ、そんな大人のイチカ君」
「何だ、大人のトリス」
「この先の神社でおにぎりと甘酒が貰えるらしいんだけど」
「それはそれで頂く」
だよねぇ、ところころと鈴が鳴るようにエンデが笑い、じゃあ今日は大人として美味しく頂こうかと二人で石段を上るのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
夏目・晴夜
◎⭐︎
リュカさんf02586と
秋といえば?そう秋祭りですよね!
という経緯で灯祭りに来たわけですが
あ、提灯を買いましょう
明かりは沢山あるほど良いのですよ
なので積極的に片手を塞いでいきましょう!
犬提灯とかどうですか?
好きですよね、犬
成る程、提灯が嫌って…。提灯が嫌ってくる…?
まあ、その時はハレルヤが爆笑してあげますよ
甘酒は私もリュカさんと同じのを
え、飲んでもいいのですか?
このハレルヤ、まだ飲酒未経験ゆえに果たして飲めるのか、
そしてどんな風に酔うのか未知数という可能性の塊ですよ?
よし、ここはノンアルコールで!
おにぎりはやはり鮭ですよね
いや、豆よりも鮭がいいです
豆の方が高貴だとしても鮭の方が美味いので
リュカ・エンキアンサス
◎☆
晴夜お兄さんf00145と
提灯か
片手が塞がるのやじゃない?
あー。うん。そういうお祭りだから貰うけど
貰うけど…犬?
…(お兄さんを見て)嫌いではないよ
でも犬柄はなあ…
(動物には悉く好かれないから)提灯にまで嫌われる事態とかになるとちょっと悲しいかもしれない(真剣)
とりとめない会話をしながら歩く
俺は未成年用の甘酒をもらう
お兄さんはどうする?
大丈夫、酔っ払いの対処の仕方は知ってるから飲んでいいよ
川に投げ込めばいいんだよね。え。違う?
俺もおにぎりは鮭派です
鮭は俺が貰うからお兄さんはそっちの豆おにぎりにしなよ
ん?
でもお兄さん、豆の方が後期っぽいし、高貴な人が食べるような感じがしない?鮭は庶民派でしょう
●秋も変わらぬ二人
カラコロと響く音、それは黒地に蒼い炎が灯るような浴衣の袖を揺らす夏目・晴夜(不夜狼・f00145)と白地に赤のよろけ縞が入った浴衣に更夜を首に巻いたリュカ・エンキアンサス(蒼炎の旅人・f02586)の足元から聞こえる下駄の音。
「秋ですね! リュカさん!」
「そうだね、秋だね」
「秋といえば?」
あっ、この流れ知ってるとリュカは思う。|デジャヴュ《既視感》どころではない、だってこの問答この間も聞いたから。
「そう、秋といえば秋祭りですよね!」
「まだ何も言ってないんだけど」
またまたー、と晴夜が笑う。
「まぁそういう訳でね、灯祭りに来たわけですが」
本当に提灯だらけですね! と辺りを見回して晴夜がリュカを見遣った。
「ほら、提灯の露店も沢山ありますよ。あ、提灯を買いましょう」
「提灯か」
提灯、とリュカが少し難しい顔をしたのを見て、どうかしましたか? と晴夜が声を掛ける。
「片手が塞がるのやじゃない?」
咄嗟の対応が遅れそうだと、リュカが懸念を述べれば晴夜がやけに優しい瞳でリュカに微笑む。
「リュカさん、今日は遊びに来たんですよ? それにですね、灯りは沢山あるほど良いのですよ」
暗いのが嫌いな晴夜にとっては最高のロケーションである。闇夜に提灯、推していきたい。
「なので積極的に片手を塞いでいきましょう!」
「あー。うん。そういうお祭りだから貰うけど」
いざとなったら提灯は放り出せばいいか、とリュカが冷静な考えを巡らせていると晴夜が露店の前で足を止める。
「リュカさん、犬提灯とかどうですか? 晴夜が買って差し上げますよ」
「貰うけど……犬?」
なんで犬? と、晴夜の視線の先を追えば可愛らしい犬がちょこんと座っていたり、歩いている絵が描かれた丸い提灯が見えた。
「好きですよね、犬」
そう言われて、少しの沈黙と共にリュカが晴夜を見遣る。
うん、白いおっきな犬みたいなもんだよね。何がとは言わないけれど。
「嫌いではないよ。でも犬柄はなあ……」
「では何か他に理由が?」
理由は簡単だ、リュカが動物には悉く好かれないからである。動物に対しては愛が一方通行なのだ、こちらは好きでも向こうが好きではないのだから、どうしようもない。
「提灯にまで嫌われる事態とかになると、ちょっと悲しいかもしれない」
「成る程、提灯がリュカさんを嫌って……。提灯が嫌ってくる……?」
なんて? とは思ったけれど、リュカがいつになく真剣な顔で言うので晴夜も突っ込み損ねる。そこは確実に突っ込むべきだったのだが、リュカも晴夜も気が付いていない。どうして……って顔をしているのは露店の店主くらいである。
「まあ、その時は晴夜が爆笑してあげますよ」
そう言って晴夜が犬柄の提灯を買い、リュカに渡す。自分のは兎と犬と迷った挙句、奇跡的にどちらも描かれている提灯を見つけて嬉々として購入した。
「良い買い物をしました!」
「そうだね」
お兄さんにとっては間違いなく良い買い物だろうね、と思いながらリュカが提灯を揺らす。ゆらゆらと揺れる灯りは狙撃されるいい的だと思ったけれど、周囲にも同じように提灯を持った人がいるし何より狙われるなら晴夜だな、と根拠もなく思っていたので大人しく神社までの道を歩いた。
「リュカさん、甘酒がありますよ」
「飲もう」
無料で振舞われるという甘酒を貰い、リュカが晴夜を見て首を軽く傾げる。
「お兄さんはどうする?」
「リュカさんと同じのを」
「未成年用でいいの?」
「え、飲んでもいいのですか?」
大人用を? と晴夜がリュカを見ればこくりと頷かれた。
「しかしですね、このハレルヤ――まだ飲酒未経験ゆえに果たして飲めるのか、そしてどんな風に酔うのか未知数という可能性の塊ですよ?」
酒粕の甘酒であっても、アルコール度数は1%程度と低い。けれど初飲酒、しかもアルコールにどの程度耐性があるか全くわからない。
「大丈夫、酔っ払いの対処の仕方は知ってるから飲んでいいよ」
「リュカさん……! なんて頼もしい」
「川に投げ込めばいいんだよね」
「リュカさん……! よし、ここはノンアルコールで!」
え、違う? って顔をしたリュカを横目で見つつ、晴夜が米麹の甘酒を受け取った。
「胃に染み入るような優しい甘さですね! これぞ米の力」
「飲む完全栄養食だからね」
じわりと温まる甘酒を飲みながら、おにぎりは何があるのかと二人で並ぶ。
「でもリュカさん、おにぎりはやはり鮭ですよね」
「俺もおにぎりは鮭派」
あの塩気と油の甘味、鮭おにぎりは至高。
「鮭は俺が貰うから、お兄さんはそっちの豆おにぎりにしなよ」
枝豆と塩昆布が混ぜ込んであるおにぎり、とリュカが指さす。
「好きしょ、枝豆」
「いや、枝豆は勿論好きですけどね。でも豆よりも鮭がいいです」
枝豆塩昆布おにぎりも美味しいだろうけれど、今は鮭が食べたいのだ。
「ん? でもお兄さん、豆の方が高貴っぽいし、高貴な人が食べるような感じがしない?」
鮭は庶民派でしょう、俺は庶民だからとリュカが頷く。
「豆の方が高貴だとしても、鮭の方が美味いので」
そんな二人のやり取りを見て、おにぎりを振舞っていたお姉さんが竹皮に鮭おにぎりも豆おにぎりも、どっちも包んでくれたのは言うまでもない話なのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
陽向・理玖
【月風】
恋人の瑠碧と去年の浴衣で
遠目に灯りとして見る分なら怖くねぇ?
瑠碧の分も俺が持つけど
空いた手はしっかり繋いで階段上がり
軽くお参りしてから
豊作だったのかな?
おにぎり美味そうだなぁ
俺鮭と明太子
瑠碧は何にする?
昆布も美味いよな
甘酒も2人分な
邪魔にならない場所で腰を下ろし
ほかほかでつやつや!
さすが新米だな
いただきますと手を合わせてまずは明太子
うーん米の甘みと明太子の辛さがちょうどいいな
瑠碧も食ってみる?
交換して
昆布も美味い
やっぱお互いが引き立つな
鮭も最高
やっぱ鮭は鉄板だよな
ほら鮭も
食べ終えれば甘酒で一息
少し風が涼しいから丁度いいな
寒くは…ねぇよな?
肩寄せつつ
祭囃子に耳を傾けて
素朴でいい祭りだな
泉宮・瑠碧
【月風】
恋人の理玖と去年の浴衣で
火は怖い、のですが…
熱を感じなければ、多少は大丈夫です
身体から離して提灯を持っていたので
理玖に預け
空いた手は理玖と繋ぎます
点いた提灯も怖い事への謝罪とお参りをしてから
振る舞われている品々を見て
わ…
豊穣のお祝い、凄いですね
私は甘酒と…昆布にします
一緒にその場を離れ
腰を下ろして
お米、つやつやで綺麗…
新米、というのもそうかもですが
元々のお米も良いのでしょうね
いただきますの手を合わせ
ちまっと昆布を齧り
!…美味しい
理玖にも、と一口ずつ交換して
貰った具も美味しい
甘酒で一息
過ごし易い日になりました
はい、大丈夫です
のんびりと寄り添って
…豊穣は、恵みに感謝する事でもありますしね
●片手に提灯、片手に君の手
瑠璃色と深い夜の様な色をした浴衣を着た二人がからり、ころりと下駄の音を鳴らして歩く。瑠璃色の彼女の方はどこかおっかなびっくりしているような音色で、隣を歩く彼は心配そうな音。
「大丈夫か?」
「はい……火は怖い、のですが……熱を感じなければ、多少は大丈夫です」
火は苦手だという泉宮・瑠碧(月白・f04280)を気遣って、陽向・理玖(夏疾風・f22773)が彼女が恐々と持つ提灯をそっと見遣る。身体から極力提灯を離して持っている姿に、理玖がそっと彼女の持つ提灯を手に取った。
「理玖?」
「遠目に灯りとして見る分なら怖くねぇ?」
「ええ、それは勿論」
「なら、瑠碧の分も俺が持つよ」
確かに灯りとして見る分には幾分か平気なのだろう、彼女から提灯を遠ざければほっとしたような表情を浮かべたから。
「はい、瑠碧」
代わりに俺の手を握って? というように差し出された彼の手に瑠碧が笑って、ありがとうと自分の手を重ねた。
提灯の代わりに繋いだ手を揺らして、提灯の灯りがそこかしこで揺れる通りを歩く。火は怖い、それはもうどうしようもない気持ちだけれど、理玖と手を繋いでいるだけでもその気持ちは宥められて。きっとそれもお見通しなのだろうと彼を見れば、青い瞳がこちらを優しく見ていたから、瑠碧は笑みを浮かべて大丈夫だと言うように手を握り返した。
石段を上る時は理玖が紙灯篭の並ぶ端を歩き、瑠碧の視線が自分に向くようにとあれこれと話し掛けて上る。そうしていればあっという間に境内に到着し、まずはお参りをしようかと拝殿へと向かった。
瑠碧は手を合わせながら、火の点いた提灯も怖い事への謝罪をしつつお祭りを楽しませて貰いますと祀られている神様に伝えると顔を上げ、先にお参りを終わらせていた理玖と再び手を繋ぐ。
「お待たせしました」
何も待ってないよと笑う理玖が彼女の手を引いて、おにぎりと甘酒を振舞う場所へ歩き出す。
「わ……豊穣のお祝い、凄いですね」
瑠碧がずらりと並んだおにぎりに目を瞬かせ、理玖を見る。
「豊作だったのかな? おにぎり美味そうだなぁ」
理玖もまた、様々な具を使って握られたおにぎりに、どれにしようかと目を迷わせた。
「迷うけど、俺は鮭と明太子! 瑠碧は何にする?」
「私は甘酒と……昆布にします」
「昆布の佃煮も美味いよな」
また迷いそうになったけれど初志貫徹、理玖が瑠碧の分も一緒に頼む。竹皮に包まれたおにぎりを受け取り、甘酒を二人分手にしようとしたところで瑠碧がそっと紙コップに入った甘酒を持った。
「私も持ちますね」
「ありがとう、何処で食べようか」
きょろりと辺りを見回し、灯りの少ない邪魔にならない方へ向かうと理玖が腰を下ろす。
「瑠碧はちょっと待って」
理玖が袂に入れていたハンカチを広げてどうぞ、と笑うと瑠碧がありがとうございます、とその上に腰を下ろした。
竹皮の包みを開き、二人でおにぎりを覗き込めば飛び込んできたのはふんわりと湯気を揺らすつやつやのおにぎり。
「ほかほかでつやつや! さすが新米だな」
「新米、というのもそうかもですが、元々のお米も良いのでしょうね」
つやつやで綺麗なおにぎりに向かって手を合わせ、いただきますと二人の声が揃う。
「! ……美味しい」
小さな一口でおにぎりを齧った瑠碧がパァっと表情を明るくして理玖を見れば、明太子のおにぎりを齧った彼も瞳をキラキラとさせている。
「うーん、米の甘味と明太子の辛さがちょうどいいな……!」
美味い、と自然に零れた呟きに、瑠碧も美味しいですねと繰り返す。
「瑠碧も食ってみる?」
「いいんですか? なら、私の昆布も」
はい、と互いのおにぎりを交換して一口齧れば、その美味しさに頬が綻ぶ。
「貰った具も美味しいです」
「うん、昆布も美味い」
米の甘味と具の味、お互いが引き立っていると理玖がおにぎりを頬張った。
「あー、鮭も最高……! やっぱ鮭は鉄板だよな」
ほら、と差し出された鮭のおにぎりを瑠碧が一口齧って、美味しいと頷く。あっという間におにぎりを食べきって、美味しかったと言い合いながら甘酒を口に運ぶ。
「甘酒もほっとする味ですね」
「だな、少し風が涼しいから丁度いいな」
じわりと温まるような、優しい甘さと熱すぎない温度に二人小さく息を零す。
「過ごし易い日になりました」
風に遊ばれた髪を直しながら、瑠碧が笑う。
「寒くは……ねぇよな?」
「はい、大丈夫です」
それでも、秋風で身体を冷やしてはいけないと理玖がそっと肩を寄せれば、瑠碧がその温もりに寄り添って。
「素朴でいい祭りだな」
「……豊穣は、恵みに感謝する事でもありますしね」
穏やかな笑みを浮かべ、聞こえてくるお囃子に暫しの間耳を傾けた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
馬県・義透
☆
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第四『不動なる者』盾&統括役武士
一人称:わし 質実剛健古風
神社に悪霊がいていいのか、と思いつつも。陰海月と霹靂のおねだりだからの…。
(気分は祖父)
提灯は大通りで求めた。ちょうど、丸い提灯でクラゲ模様のがあったでのう…。
うむ、こういう祭りはいいものよ。楽しく、幸せであるからな。
…最近、クラゲ模様のを見ると買ってしまうので、部屋の一角がクラゲグッズコーナーになっとる気がする。
※
陰海月と霹靂、「おもおもおじーちゃん(『不動なる者』)といきたい!」とぷきゅクエねだった。
おじーちゃんとお揃いの提灯も持ってる!ほわほわの光が綺麗だなー…!
●おじーちゃんといっしょ!
秋祭り、それは大抵の場合において五穀豊穣を祝うものが多い。そしてその主体となるのは大抵の場合神社であると、|焦香《こがれこう》色の地に真っ直ぐな縞模様の入った浴衣を着た馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)はミズクラゲの陰海月とヒポグリフの霹靂を連れながら思う。
「神社に悪霊がいていいのか……?」
いつもは『疾き者』か『静かなる者』が主人格として現れる事が多いのだが、今日は『不動なる者』が主人格として身体を動かしていた。
四人の人格の中では上から数えて三番目の年齢だけれど、何故か陰海月からはおじーちゃん! と認識されている。そして陰海月と霹靂の『|おもおもおじーちゃん《不動なる者》といきたい!』というおねだりによって、この灯祭りへやってきたのだ。
手にした提灯は露店の並ぶ通りを歩いた際に買い求めた、丸提灯にクラゲの模様が描かれたもの。ぷかぷか浮いている陰海月に似ている、と思って手にしたそれを揺らしつつ、神社の境内を眺めて歩く。
「……最近、クラゲ模様の物を見るとつい買ってしまうのう」
お陰で部屋の一角がクラゲグッズコーナーになっている気がする、しかも陰海月が混じっていても違和感のないほどに。改める気は一切ないので、そういうものなのだと思っていると、陰海月と霹靂が義透を呼んだ。
『ぷきゅ!』
『クエ!』
「おお、なんだ? おにぎりが食べたいのか?」
いつものサイズでは人々の邪魔にもなろうと、いつもよりは幾分か小さな姿になった陰海月と霹靂が義透と同じ提灯を持ちながら、甘えるようにねだる。その様はお祖父ちゃんにせがむ孫のようで、義透の頬がどうにも緩んだ。
「陰海月と霹靂のおねだりだからの……」
今年はとりわけ豊作だったのだろう、同じくらいの大きさに握られたおにぎりが沢山並んでいるのが見える。
「具は何がいいか……高菜と鮭? ではわしは昆布にしようかの」
竹皮に三つおにぎりを包んでもらい、邪魔にならぬ場所に移動すると陰海月と霹靂におにぎりを渡す。
「詰まらせないようにするんだぞ」
詰まる喉がクラゲにあるのかは置いといて、そう言うと義透もおにぎりを口に含んだ。
「む、美味いな」
『ぷっきゅ!』
『クエッ!』
炊き立ての米というのもそうだが、さすが新米。具も米に合う味の濃さで、ぺろりと一つ食べきってしまう。陰海月と霹靂も同じだったようで、味わいつつも米の一粒も残さずに平らげる。
「こういう祭りも良いものよ」
人々の笑い声、豊穣を祝うお囃子、幾つもの揺れる提灯の灯り――。
「楽しく、幸せであるからな」
太平の世で在れと願わずにはいられない穏やかなひと時に笑みを浮かべながら、おにぎりのおかわり! と浴衣の袖を引く二匹の為に、義透は再びおにぎりを貰いに境内を歩くのであった。
大成功
🔵🔵🔵
鳴上・冬季
◎
「それでは、甘酒を」
なみなみ注いでもらった甘酒を飲み干したら、今度は牛乳割したものをやはりなみなみ注いでもらい飲み干す
中華風提灯選択
「おにぎりは…そうですね。知り合いと合流してから食べたいので、包んでもらっても良いですか」
鮭と明太子のおにぎりを懐へ
ここまで何もない祭りも初めてで興味深い
実りへの感謝と商売ッ気が入り交じったお祭りは、食べ物の屋台が溢れていた
「まだまだ貧しい世界、ということなのでしょうか。祭りにエンターテイメントを持ち込まないのは」
少しばかり寂しい気がしなくもない
最初に生まれたのは千年前の豊葦原
この世界で間違いない
「オブリビオンで犬ですか。食べられますかね」
おにぎりの包みを触った
●たまにはこんなひと時も
様々な藍が重なった縞模様の浴衣の裾を揺らし、鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)が提灯の露店が並ぶ通りを歩く。
「……食べ物の屋台はないのですね」
意外だと目を瞬かせつつ、折角だから提灯を買っていこうと露店を覗く。丸い物、動物や花の形を模した物、縦長で細い物、様々な提灯を眺める冬季の目を引いたのは楕円の形をした赤い提灯。
「いいですね」
枠は金色で彩られ、下部にはタッセルの様な飾りが揺れている。冬李が夜間巡回時に使うランプとまではいかないが、和紙に描かれた模様も繊細で美しい。
中華風にも見える提灯に決めると、灯りが点されたそれを揺らしながら神社へと向かう。
「しかし、ここまで何もない祭りも初めてで興味深い」
何もないわけではないが、今まで冬李が訪れた頃のある祭りは大抵食べ物の屋台が溢れていたから余計にそう思うのだろう。
「実りへの感謝と商売ッ気が入り交じったお祭りだとそうなんですけれどね」
恐らく商売っ気がないのだろう、ただ純粋に豊穣を祝う――それ故に、穏やかで優しい時間が過ぎていくような。
けれどエンターテイメントに慣れ切った身ともなれば、少々寂しい気がしてしまうのも仕方がない。
「……贅沢な話ではありますね」
ふっと笑いながら神社の石段を上れば、境内には提灯がそこかしこに飾られて人々の楽し気な声が途切れる事無く聞こえてくる。
「これはこれで……」
ありかもしれないと思いつつ、おにぎりと甘酒は如何ですかという呼び込みの声に惹かれるように、声のする方へ足を向けた。
「それでは甘酒を」
なみなみと注いでもらった甘酒を味わうようにまずは一口、それからぐいっと飲み干せばじわりと身体が温まる。空になったコップへ牛乳と割ったものを頼めば快く注がれて、零さぬようにしつつまた飲み干す。
「口当たりが大分変わりますね」
これは子どもにも飲み易い味だと頷きながら、次はおにぎりを貰おうかと視線を向ける。
「おにぎりは……そうですね。知り合いと合流してから食べたいので、包んでもらっても良いですか」
竹皮に包まれた鮭と明太子のおにぎりを懐に仕舞い、境内の端へ向かうと眼下に広がる町を見下ろす。提灯の灯りが揺れるのと、月明かりに照らされた稲刈りが終わっていない田んぼが見えた。
「この世界で間違いない」
最初に生まれたのは千年前の豊葦原、野狐であった頃の――。
そこまで考えて、ふるりと被りを振る。それから、懐でその温かさを伝えてくるおにぎりの包みに触れた。
「オブリビオンで犬ですか。食べられますかね」
食べられるならば、共に食すのも悪くないと冬李がぽつりと呟いた。
大成功
🔵🔵🔵
神坂・露
レーちゃん(f14377)
自前の提灯って持ってないから出店で買おうと思うわ。
色んな種類と形があるみたいだから楽しみね♪楽しみ♪
凄く多いわ。可愛いのも多いし…うーん。どれにしよう。
金魚型も可愛いし鈴蘭の形も可愛い。あ!猫さん型のもある。
あたしは結局金魚の形の提灯を選んで買うわ。ふふ♪満足だわ。
レーちゃんと神社の方へ歩いてく。えへへ♪提灯が可愛いわ♪
日暮れからだからちゃんと着物着てこれてよかったわね。
「レーちゃんレーちゃん、紅葉柄の着物似合う似合う?」
くるっと一回転して感想聞くけど…むぅ。してくれないわ。
「レーちゃんの意地悪ぅ…。少しは褒めてくれても…」
お腹減ったらオニギリ貰うわ。おいしそう。
シビラ・レーヴェンス
露(f19223)
自前の提灯はない。祭りで購入しようと思っている。
だが…。
こんなに多彩で種類が豊富なのは想像できなかった。
「ふむ…」
動物は猫が気になる。植物もあるのか。なるほど…。
悩んだが私は鈴蘭の形の提灯にしよう。ん。可愛いな。
露の提案でススキ柄の着物を着てきたが…いい感じだ。
神社へ向かう道で露は自分の着物の評価を聞いて来て…。
やはり露はうっとおしい。今日は更にうっとおしいな。
…。露のような子がこういう場所には最適なんだろうな。
五穀豊穣の祝いらしく白米や甘酒…穀物を振る舞うんだな。
境内を巡りながら途中で甘酒を頼んでみる。露はおにぎりか…。
「いや。おにぎりはいらない。一人で食べろ、露」
●下駄を鳴らして
「わ、提灯がいっぱいだわ!」
囃子車に飾られた提灯も、町のあちこちに飾られた提灯も、どれもが柔らかで優しい灯りを揺らしているのを眺め、神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)がシビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)に振り向いて笑う。
「露、前を見ていないと危ない」
「うふふ、はぁい」
シビラに窘められて、露が前を向いて彼女の隣にちょんと位置取ると、下駄をからころと鳴らして歩く。
「露店の提灯も色んな種類と形があるみたいだから、楽しみね♪ 楽しみ♪」
自前の提灯は持っていないから、現地で買おうと露とシビラは事前に決めて来たのだ。
「レーちゃん、あの露店を見ましょ」
ずらりと並んだ提灯を見つけて、露が早足で露店へ向かう。その後をゆっくりと歩き、シビラが露店の前に立ち止まると露がうんうんと唸っているのが見えた。
「どうした」
「レーちゃん、大変よ! 提灯の種類、凄く多いわ!」
それの何が大変なんだ、と思いながらシビラが提灯を眺める。
「む……」
すぐに露が言うところの『大変』の意味を理解して、シビラも小さく唸る。本当に、本当に提灯の種類が多彩で豊富なのだ。動物の形に、植物の形を模した物、恐らくオーソドックスであろう丸い形の提灯だって色違いや柄違い、持ち手の細工違い――恐らく、一点物だとシビラが視線を彷徨わせた。
「可愛いのも多いし……うーん。どれにしよう?」
露も悩みに悩みつつ、金魚型の提灯を手に取ったり、鈴蘭の形をした物をじっと眺めたりと、困ったわと言いつつ楽しそうに提灯を選んでいる。
「あ! 猫さん型のもあるわ、レーちゃん」
「ふむ……猫か」
猫の形をしたのも気になるが、とシビラが手に取ったのは鈴蘭の形をした提灯。下を向いた花を模しているそれは、花びらの形に下部が反っていて可愛らしい。
「レーちゃんはそれにするのね? あたしは……これにするわ!」
一番最初に気になったの、と笑う露の手には金魚の形をした提灯。どこか愛嬌のあるその提灯が気に入ったのだと、露が笑った。
「ん。可愛いな」
「でしょう! ふふ、レーちゃんの提灯もとっても可愛いわ!」
二人で代金を支払って、提灯を手に再び歩き出す。向かう先は神社で、露は手にした提灯が可愛くて仕方ないのだろう、揺らしてみては楽しそうに笑っている。
「えへへ♪ 提灯が可愛いわ♪ 可愛いわ♪ とっても満足だわ!」
「ああ、良い買い物をした」
からころと二人の下駄の音が軽やかに鳴って、お囃子の音楽が秋の宵を彩って。
「ふふ、日暮れだからちゃんと着物を着てこれてよかったわね」
「そうだな」
露の提案でシビラはススキ柄の着物を着てきたのだが、これが思ったよりもいい感じでしっくりとくる。普段は洋装ばかりだわ、和装というのも悪くないとシビラが提灯を揺らす。
露が紅葉柄の袖をくるんと揺らし、シビラに期待するような瞳で問い掛けた。
「レーちゃんレーちゃん、紅葉柄の着物、似合う? 似合う?」
くるっと一回転して、紅葉柄をアピールするように両手を広げ、目を輝かせる。そんな露を鬱陶しそうな目で見て、シビラが小さく溜息をつき、やはり露は鬱陶しい、今日は更に鬱陶しいな……という顔をした。
「レーちゃんの意地悪ぅ……。少しは褒めてくれても……」
しょんぼりとしつつ、露が神社へと続く石段を上る。それでもすぐに、おにぎりと甘酒が貰えるんですって! と、楽しそうな声を響かせるものだから、シビラは露のような子がこういう場所には最適なのだろうな、と眩しい物を見るかのように目を細めた。
緩やかな石段を登りきり、境内を巡るように二人で歩く。するとおにぎりと甘酒をどうぞという呼び込みの声が聞こえてきて、露がシビラを見遣った。
「レーちゃん、貰いに行きましょ!」
「ふむ……五穀豊穣の祝いらしく白米や甘酒……穀物を振る舞うんだな」
甘酒ならばとシビラが受け取ると、露はおにぎりも貰おうとシビラを誘う。
「いや。おにぎりはいらない。一人で食べろ、露」
「そう? とっても美味しそうよ♪」
お腹が空いたわ~♪ と露が鮭と梅のおにぎりを貰い、シビラに見てと笑い掛ける。
「竹皮に包んでくれたわ!」
「良かったな」
境内の人の少ない場所へと移動し、シビラが甘酒を露がおにぎりを口にする。
「美味しいわ! 炊き立ての新米の味だわ♪」
「これは中々……」
米の優しい甘さと独特の風味、慣れれば癖になるようなその味にシビラがほう、と息を零す。
「こういうお祭りも楽しいわね、レーちゃん!」
「うるさくないのはいいな」
露はうるさいが、それはいつもの事だとシビラは思う。
だから、隣で露が笑っているのも含めて――今日は楽しいのだろうと、シビラが甘酒を飲んで口許を僅かに緩ませた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
夜鳥・藍
☆
提灯の種類が豊富で目移りします。そしてその柔らかな光は、そうですねおっしゃる通り心が落ち着きます。悩みに悩んで秋桜模様の提灯を買い求めましょう。
そして神社へ。
神社では甘酒をいただきます。新米のおにぎりも食べたくもあるのですが、いかんせん甘酒をいただくとなるとお腹に収められないのですよね。おにぎりだけにしても一つ……良くて小ぶりなのを二つでしょうか。中の具が豊富なだけに食べられないのがあると少しばかり悔しいですから。
甘酒を飲みながら神社に詣でてる方々を眺めます。
どうしても職業柄かこうして人々を眺める観察する癖がついてしまって。なにがどうというわけではないのです。ただ眺める癖がいつの間にか。
●揺れる灯りを眺めて
夜空の様な浴衣に秋桜柄のレース羽織を揺らし、夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)が提灯の灯りが揺れる通りを歩く。
「本当に提灯の種類が豊富なのですね」
並ぶ露店には様々な提灯が吊り下げられていて、見ているだけでも楽しいほど。そして、その柔らかな光は不思議と心を落ち着かせてくれるようで、藍は思わず露店の前で立ち止まった。
「折角ですから、私も一つ買っていきましょうか」
でも、どれにしようか? これだけあるとさすがに迷うと藍が目を瞬かせ、ぴんとくるものがないかと一つ一つ眺めていく。
「動物をモチーフにした物も、とても可愛らしい……」
だけど、今日の装いには少し子どもっぽいだろうか? と、悩みに悩んで藍が選んだのは秋桜模様の提灯。丸い雪洞のような白い提灯に、ピンク色の秋桜が幾つも咲いたものを買い求め、楽し気に揺らしながら神社へと向かう。
足元を照らす紙灯篭に視線を向けつつ石段を上れば、賑やかな声が聞こえてきて思わず笑みが零れた。
「おにぎりと甘酒……」
豊穣を祝い、振舞われているおにぎりと甘酒に視線をやって、どちらを貰おうかと真剣な顔で藍が悩む。
「新米のおにぎり……絶対美味しいとは思うのですけれど、いかんせん甘酒をいただくとなるとお腹に収めきれないのですよね」
少食な身が少し恨めしい、と小さく笑って藍が甘酒にしようと決める。
「おにぎりだけにしても一つ、良くて小ぶりなのを二つでしょうし」
中の具が豊富と聞いているだけに、食べられないものがあると少しばかり悔しい気持ちになりそうだったので、やはり甘酒だと列へ並んだ。
渡された甘酒は温かく、手にしたそれを一口飲んで藍が頬を緩める。
「ふふ、やっぱり美味しい……」
米の優しい甘さは酒粕の甘酒とはまた違った味わいで、藍の胃を優しく温めてくれるよう。ほっこりとした気持ちになりながら、少しずつ甘酒を飲んで神社に詣でる人々を眺めた。
それは藍の癖の様なもので、なんとなく人々を眺め監察してしまうのだ。
「職業柄、人を見るのが癖になっているのかもしれませんね」
何がどうというわけではないのだけれど、なんとなく眺める人々は皆笑顔を浮かべていて――なんだか提灯の柔らかな光を眺めている時のような気持ちになって、藍も同じように笑みを浮かべて甘酒を口にするのだった。
大成功
🔵🔵🔵
茜崎・トヲル
【モノクロフレンズ】◎
秋祭りだー!暑かったり寒かったりするけど、秋だね!
わー、かわいいね!おれはー……これにするー!カボチャ提灯!
コロちゃんも周囲の光に負けねーくらいピカピカで、
ラーさんの目もきらっきらだ!
聞こえるオハヤシ?にテンション上がったりして、
のんびーり、あーさんと神社にいきます!
こころなしか、おれのビックリマークも少なめ。トーシャヒ。
ふふはふ、ね。今日はふーいん!
神社でふら~っと景色を見たり、絵馬を見たりして、
オニギリとアマザケをもらったり。……代金いらねーの?ほんとに?
うん、おれもオニギリは好き!アマザケ、は、はじめてだけど。
甘いサケ? え、アルコールじゃねーの?
(具はお任せ!)
スキアファール・イリャルギ
【モノクロフレンズ】◎
今年の浴衣を着ます
今宵は好い秋の気候ですねぇ
トーさんはどんな提灯にしますか?
私はそこの…猫の顔を模した提灯が(うずうず
南瓜提灯! この季節にピッタリですね
コローロは楽しそうに飛び回り
ラトナは興味津々に周囲の提灯を眺め
ゆっくり歩き、他の方の提灯のデザインに惹かれ…
こうしてのんびりするお祭りも良いですね
私たち、いつも屋台制覇で大忙しですから
ふふ、今回は大食い・早食いフレンズは封印です
トーさんはおにぎりと甘酒はお好きですか?
シンプルですが味わい深くて私は好きなんです
こちらはお米で作ったものだそうですが、酒粕で作る甘酒もあるんですよ
ほんのり甘いから甘酒なんですかね?
(具はお任せ!
●のんびりゆったり秋の宵
いつもは黒を好んで着るスキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)の浴衣は白地に銀糸で牡丹を咲かせた粋なもの。そして、いつもは白いのと呼ばれるくらいには白い服を着ている事が多い茜崎・トヲル(Life_goes_on・f18631)は黒地に白い花火の咲き誇る浴衣。
「なんだかしんせーん!」
「偶には色を交換するのも面白いですね」
ね! と笑うトヲルの爪は黒いネイルが塗られていて、細やかなお洒落が光る。
「なんだかこないだまで暑かったですけれど、今宵は好い秋の気候ですねぇ」
「うんうん、暑かったり寒かったりするけど、秋だね!」
そして秋祭りだね! とトヲルが笑う。
「ええ、提灯が沢山あるとは聞いていましたが、本当に沢山ありますねぇ」
神社へと続く通りを見渡せば、食べ物などの屋台の代わりに提灯を売る露店がずらりと並んでいるのが見えた。
「トーさんはどんな提灯にしますか?」
「ん-、どれにしよっかなー」
近くの露店に近寄って、どんなのがあるのかと二人で眺める。
「あーさんは決めた?」
「私はそこの……猫の顔を模した提灯が」
うずうず、そわり。そんな表情でスキアファールが猫の提灯に手を伸ばす。それはピンとした耳も可愛らしい形の提灯で、和紙の部分には手描きの猫の目と鼻と口、そしてヒゲが描かれている。
「わー、かわいいね!」
なんだかラトナのようにも見えて、スキアファールがラトナの隣にそっと提灯を並べた。
「……これにします」
おひげの具合がラトナにそっくりだったので、とスキアファールが笑う。
「おれはー……あ! これにするー!」
びびっときた! と言いながらトヲルが手にしたのは南瓜の形をした提灯。
「カボチャ提灯!」
「南瓜提灯! この季節にピッタリですね」
あと少しもすればハロウィンですから、とスキアファールが頷いた。
それぞれが提灯を手にし、神社までの道を歩く。スキアファールの近くを飛び回るコローロは楽しそうだし、ラトナはてててっと楽し気に彼の足元を歩き、揺れる周囲の提灯に興味津々だ。
「コロちゃんも周囲の光に負けねーくらいピカピカで、ラーさんの目もきらっきらだ! きれい!」
「ふふ、良かったですねぇコローロ、ラトナ。トーさんが褒めてくださいましたよ」
ありがとうと言うようにコローロが瞬いて、ラトナが尻尾を優雅に振って。それにまたトヲルが笑って、スキアファールも微笑んでと楽しい気持ちを膨らませながら神社の石段を上る。
「オハヤシ? っていうのかな、この音楽も楽しいね!」
「軽妙と言いますか……気分が上がりますよね」
「そう、それ! テンション上がる!」
行き交う人々が持っている提灯も素敵だし、のんびーりしたお祭りも楽しいね、とトヲルが南瓜提灯を揺らす。
「はい、こうしてのんびりするお祭りも良いですね。私たち、いつも屋台制覇で大忙しですから」
「ふふはふ、ね」
「ふふ、今回は大食い・早食いフレンズは封印です」
確かにその通りだとトヲルが笑って、でも今日はふーいん! と最後の石段を登りきる。
心なしか声も密やかに、ビックリマークも当社比で控え目に。おれたち大人だからねと、胸を張って境内を歩く。神社だから、とお参りをしてみたり、遠目に絵馬を眺めてみたりしていると、賑やかな人々の声に混じっておにぎりと甘酒は如何ですかという声が聞こえ、二人が顔を見合わせた。
「トーさんはおにぎりと甘酒はお好きですか?」
「うん、おれもオニギリは好き! アマザケ、は、はじめてだけど」
「初めて……多分大丈夫だと思いますから、貰いに行きましょうか」
スキアファールに促され、まずはおにぎり。
「具がいっぱいありますね……」
「まようね……あ、お任せにしちゃおーぜ!」
「お任せ……いいですね、何が当たるかおみくじみたいで」
おにぎりはお任せで! と言えば竹皮に二つずつ包んでくれて、甘酒と共に受け取る。
「え、代金いらねーの? ほんとに?」
五穀豊穣のお裾分けだからと言われ、今年は豊作だったのだろうと納得して二人が列を離れる。そのまま人の少ない所までいくと、まずは甘酒からいただきましょうかと、スキアファールが手にした甘酒を乾杯と揺らした。
「甘酒、シンプルですが味わい深くて私は好きなんです。こちらはお米で作ったものだそうですが、酒粕で作る甘酒もあるんですよ」
「甘いサケなの?」
「正確に言うとお酒では無い……ですかね?」
「え、アルコールじゃねーの?」
甘酒、イズ何。という顔をして、トヲルが甘酒を見つめる。
「ええと……取り合えず飲んでみましょうか」
「うん、なにごとも体験だよねー」
えい、と一口飲んで、トヲルが目を瞬かせる。
「ほんとだ、なんか……甘くって不思議な味だね。嫌いじゃないよ、おれ」
「良かった、甘酒は栄養満点なんだそうですよ。ほんのり甘いから甘酒なんですかね?」
アマザケ……とまた一口飲んで、トヲルがふへへと笑った。
「つぎはー、オニギリ!」
「はい、中身は何でしょうね」
「せーのでたべよーよ、スーさん!」
何が出るかはお楽しみ、とひとつおにぎりを手に取って、せーの! でがぶり。
「ん! おかかだ!」
「んん、私のは昆布でした」
どっちも美味しいよねー、とトヲルが笑い、よく噛んで飲み込んで。
「シンマイが最高って言うの、わかる気がするなー」
「ええ、炊き立ての新米がこんなに美味しいとは……」
もう一つのおにぎりは何味でしょうね、とスキアファールが笑って、また二人がせーので齧り付いた。
そうして、二人が酸っぱい口をするのはすぐの事――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
結・縁貴
【金翠】◎
今年の浴衣で
応、仕立て屋に任せてね、動きやすいようにしてもらったのと…贈り物も装いに混ぜて貰ってね(帯元を軽く叩く)
マナセもよくお似合いだよ
歩きにくいなら手を貸そうか?
提灯も色々あるねェ
細工が凝っていると職人の手腕が見えて価値を付けやすいね
マナセは質実がお好み?
俺の嗜好としては…そうだな
飾り気のない方が、灯火自体を楽しめそうだ
手に取るのは月と雲が描かれた提灯
マナセのものと合わせて購入しよう
炎が命?
嗚、すぐ消えるから。…なァんてね
光に惹かれるのは人の性かねェ
さて、人に捧ぐものなのか、かみに捧ぐものなのか
それともまったく別の経緯なのか…俺には見当つかないけれど
この灯る光の光景は、麗しいね
マナセ・ブランチフラワー
【金翠】◎☆
慣れない装いで少しふらふら
縁はよく似合っていますね
ありがとうございます、人の多い場所ではお願いします
これだけあると目移りしますね、と笑いながら提灯屋台を覗き込む
動物や魚の形を興味津々で眺めたものの、手に取るのは、ささやかに桜の花弁が散る模様の提灯
華やかなのも素敵ですが、僕はこのくらいが落ち着きます。縁はどんなのが好きですか?
ああ、灯火が月光にも見えて素敵ですね
炎は、命の象徴だと僕は思っています
すぐ消えるのもまあそうですが。それでもその光は美しくて、あたたかいものですから
沢山の炎を灯すこのお祭りは、どんな歴史から生まれたのでしょうね
ええ、とても綺麗です。もう少しだけ見て回りましょうか
●儚くも美しく
秋の宵ともなれば、随分と過ごし易いもの。さらりとした風が肌に心地よく、通りを歩く人々の足取りも軽い。勿論、結・縁貴(翠縁・f33070)とマナセ・ブランチフラワー(ダンピールの聖者・f09310)の足取りも日中よりも遥かに軽かった。
「涼しくなりましたね」
マナセがしみじみと言いながら、いつもと違う装いの縁貴に視線を向けて微笑む。
「|就是《そうだね》、過ごし易くて好い。昼間もこれくらいになればいいのにねェ」
「すぐですよ、あっという間に涼しくなって寒くなります」
秋から冬なんて一瞬にも等しいとマナセが言い、それからまじまじと縁貴を眺める。
「縁はよく似合っていますね、浴衣」
「応、仕立て屋に任せてね、動きやすいようにしてもらったのと……」
白地に金の藤模様の浴衣、それに緩めのチャイナパンツを合わせた姿は縁貴によく似合っていたし、何より見覚えのある物が帯に差してあったのでマナセがぱちりと目を瞬く。
「贈り物も装いに混ぜて貰ってね」
ぽん、と白銀の短刀袋を叩いて縁貴が笑い、マナセの装いにも目を細める。
「マナセもよくお似合いだよ」
白練色をしたしじら織りのシンプルな浴衣ながら、その織り方から見える控え目な縞模様と結んだ紺の角帯がマナセによく似合っていた。
「そうですか? っと」
慣れぬ下駄に足を取られ、マナセがふらりとよろけたのを縁貴が咄嗟に手を伸ばして支える。
「歩きにくいなら手を貸そうか?」
さっきから気になってたんだよねェ、と縁貴が笑う。
「ありがとうございます、人の多い場所ではお願いします」
ぶつかるようなら手を借りようと、マナセが真剣な顔で頷いた。
「うん、人が多くなってきたらね。それにしても――」
提灯も色々あるねェ、と縁貴が通りの露店に並ぶ提灯を見遣る。
「これだけあると目移りしますね」
本当に沢山ありますねと、マナセが笑いながら露店に足を向けてどれどれと覗き込む。
動物の形に花の形、魚の形にと実に多彩な提灯の数々に迷いはするけれど、マナセが手に取ったのは小さな丸い提灯。
「細工が凝っていると職人の手腕が見えて価値を付けやすいね……マナセは質実がお好み?」
マナセが持つ、シンプルだが質の良さそうな提灯を見て縁貴がそう問うと、マナセが微笑んで提灯を掲げる。
「華やかなのも素敵ですが、僕はこのくらいが落ち着きます」
桜の花弁がふわりと舞い散る提灯はマナセの手にあってこそ価値があるようにも見えて、縁貴が良い物を選んだねと提灯をつついた。
「そういう縁はどんなのが好きですか?」
「俺の嗜好としては……そうだな」
華美な物は散々見て来たし、それによって目も肥えている。そんな中でも縁貴自身が良いと思えた物に指先を伸ばし、これかなとマナセに見せた。
「飾り気のない方が、灯火自体を楽しめそうだ」
月と雲が描かれた、秋の宵に相応しいような粋な提灯にマナセが微笑む。
「ああ、灯火が月光にも見えて素敵ですね」
「マナセはいい着眼点を持ってるよねェ」
本当だ、と笑いながら縁貴がマナセの分も支払うと、いいんですか? と聞かれて宿代と答えて歩き出した。
楽し気なお囃子を聞きながら、ゆらゆらと揺れる提灯と共に神社へと向かう。まるで道案内のように灯された提灯を眺め、提灯の中で揺らめく炎にマナセがゆっくりと言葉を紡ぐ。
「炎は、命の象徴だと僕は思っているんです」
「炎が命?」
そう言われ、縁貴が手にした提灯に視線を落とす。
「嗚、すぐ消えるから。……なァんてね」
「すぐ消えるのもまあそうですが」
風前の灯と称されるくらいに、命はいとも容易く消えるもの。
「それでもその光は美しくて、あたたかいものですから」
命の光は美しいと、マナセが静かに微笑みを浮かべる横で、縁貴もまた唇の端を持ち上げる。
「光に惹かれるのは人の性かねェ」
強い命は強い光だ、と縁貴は思う。猟兵は特に、誰も彼も強い光を放っているように思う。
「こんなに沢山の炎を灯すこのお祭りは、どんな歴史から生まれたのでしょうね」
興味深いと思いませんか? とマナセが縁貴に言って、神社の石段をゆっくりと上る。
「さて、人に捧ぐものなのか、かみに捧ぐものなのか――それともまったく別の経緯なのか……俺には見当つかないけれど」
祭りの起源を遡れば分かるのかもしれないけれど、今はそれよりも。
「この灯る光の光景は、麗しいね」
石段の両脇を彩る紙灯篭の灯り、石段を上る人々が手に持つ灯り、命のように輝く光。
「ええ、とても綺麗です。もう少しだけ見て回りましょうか」
ゆっくりと石段を登り切れば神社の境内を飾る提灯の灯りが見えて、マナセが眩しそうに目を細める。
「いいねェ、その後で豊穣のお裾分けをいただこう」
聞こえてくるおにぎりと甘酒を振舞う声に縁貴が興味を引かれたように言い、足元がよたついたマナセの手を取って笑った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
グウェンドリン・グレンジャー
【煉鴉】☆
二十歳に、なった
(提灯掲げてくるくる踊る)
うん。身長も伸びた
甘酒
アルコールはないけど、仄かにライスの風味、するよねー
(期待のまなざしで師を見上げる弟子。おごってほしいらしい)
(甘酒を飲みながら歩を進めて)
そういえば、ここ、神社だよね
お参り、しよー
五穀豊穣、実りと、解釈するなら
実りある、大学生活になります、よーに
学びの果実、たくさん、収穫できたら、いいな
(手にした提灯の灯りと、飾られた灯りと。しみじみと見つめて)
平和って、いいもの、だね
(最近は特にそう思うようになった。これまで縁遠かったものが、こんなに近いなんて)
ありがとう、先生
(無表情な顔の口の端が、仄かに吊り上がった気がした)
叢雲・源次
【煉鴉】☆
…二十歳…そうか、お前はもう二十歳になったのか。
(変化せぬこの肉体に反して時が経つの早いものだと感慨深くなる)
いいだろう…成人祝いだ。
(意を汲んで甘酒を奢る)
(言葉少なく、並び立ち歩みを進めつつ)
承知した。
(グウェンのお祈りを耳にしてかすかに、ほんの微かではあるが口の端を歪め)
お前が『今』を掴めたからこその祈りだ。邪神がいるのだから良き神もいる。そしてそれは、その神に届くだろうよ。
よもや、お前からその言葉を聞くことになるとはな。
いや…本質に戻りつつあるのか…どちらにせよ…良い傾向だ。
グウェンドリン・グレンジャー…月並みだが
成人、おめでとう。
●灯に祝いをのせて
カラコロと鳴る足元が楽しいのだろう、グウェンドリン・グレンジャー(Imaginary Heart・f00712)がラピスラズリの色と煌めきを写し取ったような浴衣に蝶の翅のように結んだ兵児帯を揺らしながら、くるくると踊る。
手にした提灯は光の線を描き、叢雲・源次(DEAD SET・f14403)はよく目が回らないものだなと思いながら彼女を眺めていた。
「二十歳に、なった」
プリンシパルのようにぴたりと動きを止めてそう言うと、また兵児帯を躍らせる。
「……二十歳……そうか、お前はもう二十歳になったのか」
成る程、それでと彼女がくるくると舞う理由を察して源次が頷く。
「うん。身長も伸びた」
感情を覗かせぬその顔はそれでも金色の瞳が嬉し気に瞬いていて、彼女の喜びが垣間見えるよう。
「ああ、浴衣もよく似合っている」
手にした提灯も揚羽蝶の舞う姿が描かれていて、まるで彼女の様だと源次は思う。
「先生も、似合ってるよ」
黒地にすっと一本の青い線の入った浴衣に結んだ角帯は茜色で、粋という言葉が似合うとグウェンドリンが躍る足を止めた。
「神社に、行こう」
「そうだな」
掲げた提灯を揺らし、二人並んで歩く。下駄の高さもあるのだろうが、確かに背が伸びたなと源次が目線の高さにそう思う。変化せぬこのサイボーグの肉体に反して、時が経つのは早いものだと弟子の成長に感慨深くなりながら、緩やかな石段を上る。
「甘酒、甘酒だって」
「ああ、振舞っているみたいだな」
おにぎりと甘酒、どちらも新米を使った物らしいと源次が聞こえてくる声に耳を澄ます。無料で振舞っているので、どなたでもどうぞという声に、グウェンドリンが源次を見た。
「アルコールはないけど、仄かにライスの風味、するよねー」
「……そうだな」
じっと源次を見つめる視線に、源次が石段を登りきると貰ってこようと声のする方へと足を向けた。
「やったー」
「そこで待っているように」
頷き、ちょこんと灯篭の下で立ち止まったグウェンドリンがきょろきょろと提灯の飾られた境内を眺めているのを確認しつつ、源次が彼女の為に甘酒を貰ってくる。
「ほら」
「ありがとー」
甘酒の入った紙コップを手にして、早速ひとくち。
「甘い、ね」
ほんのりとした甘さに、グウェンドリンの口許が僅かに緩む。それは他の人では気が付かないレベルではあったが、源次は目の端でちらりと確認して美味いか、と問うた。
「うん、美味しいよー」
「そうか」
それなら良いと隣に立つと再び並び歩き、境内を歩く。
「あ」
「ん?」
「そういえば、ここ、神社だよね」
「そうだな、何を祀っているかは知らないが……様子からして豊穣の神だろう」
五穀豊穣を祝う祭りを行うのであれば、実りと縁のある神なのではないかと源次が言う。
「そっか。じゃあ、お参り、しよー」
「承知した」
砂利道を歩き、拝殿へと赴くとグウェンドリンが手を合わせて願いを口にする。
「五穀豊穣、実りと、解釈するなら、実りある、大学生活になります、よーに」
それは普通の女の子が口にするような願いで、源次は隣にいる彼女がそう思えるようになるまでの軌跡を思う。
「学びの果実、たくさん、収穫できたら、いいな」
その願いはきっと届くだろうと、源次は唇の端を僅かに歪めて口にする。
「お前が『今』を掴めたからこその祈りだ。邪神がいるのだから良き神もいる。そしてそれは、その神に届くだろうよ」
「いい、かみさま」
顔を上げたグウェンドリンが手にした提灯と飾られた灯り、それから豊穣を祝う人々をしみじみと眺めた。
「こんなに、豊穣をありがとー、ってする人たちがいる、かみさま、だもんねー」
きっといい神様なのだろうとグウェンドリンが呟いて、源次を見遣った。
「平和って、いいもの、だね」
これまで縁遠かったものが近くにある事に気付く余裕が出来たのかもしれない、最近は特にそう思う事が増えたとグウェンドリンは考える。
「よもや、お前からその言葉を聞くことになるとはな」
グウェンドリンの穏やかな声音に、それが本心から出た言葉なのだろうと源次が僅かに目を瞠った。
「いや……本質に戻りつつあるのか……どちらにせよ……良い傾向だ」
少女はすぐに大人になるものだな、と小さく息を零しながら言葉を紡ぐ。
「グウェンドリン・グレンジャー……月並みだが……成人、おめでとう」
言いそびれていた祝いの言葉を口にすれば、グウェンドリンの瞳が源次を真っ直ぐに捉えて。
「ありがとう、先生」
そう言った彼女の唇の端が仄かに吊り上がったように見えて、源次は彼女のこれからの道行きが良いものであるようにと願うのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
尭海・有珠
【星巡】
今年手に入れた天の川の浴衣
付けるかどうか暫く悩んだ末のアネモネの髪飾り
レンの彼岸花に目を細め眉を下げる
「提灯の灯りにホッとする感覚は、同居人に看過されてきたのかも
私は灯りは手元に置くより、遠目に眺めることが多かったから」
だから灯りとの出会いの期待に、瞳煌めかせて
視線が引き寄せられたのは赤い金魚の提灯
風鈴にあったからもそうなのだけど、そもその風鈴も、
赤、に惹かれたのも――隣の青年の瞳を思い起こしたから。
星空を泳ぐ金魚だな
互いの色を手にしてお揃いで。
手元の温かな光は君の色。傍にある光が君の色なのは、ふふ、嬉しいね
おにぎりもシェアしようか
私のおかかと君の鮭、どちらも味わえるのは贅沢だな
飛砂・煉月
【星巡】◎
2020浴衣or☆
和の髪紐に赫の彼岸花を一輪挿して
有珠、その浴衣綺麗だね
願いでも託したくなっちゃいそう、なんてね
アネモネは視線を向けてみとめるだけに
同居人は提灯が好きなの?
他愛無い疑問をキミへと零しながらゆるり
なら見に行こうよ、提灯
あっは、最高の出会いがあるかもよ?
艶やかで鮮やかな提灯達
目を惹いたのは隣の浴衣に似た星空、椿、風鈴の金魚
キミが金魚を手に取るから星空を手に取る
オレ達の星巡り
それから今日のキミ
うん、これにしよっと!
隣り合い揺れる金魚と星空
オレまでキミとお揃いみたいで綻ぶ頬
辿り着いた神社で選ぶのは鮭のお握り
ね、シェアはどう?
ふたつの味を一緒にって贅沢しよッ
欲しがりはいつも通り
●君色に揺れて
どの浴衣にしようか迷ったけれど、今年手に入れた天の川の様な浴衣を選んでよかったと尭海・有珠(殲蒼・f06286)が小さく笑う。通りに幾つも溢れるように飾られ、露店で売られる提灯の揺らめきが地上の星のように見えたから。
そして、鏡の前で付けるかどうか暫く悩んだ末に髪に飾ったアネモネの飾りもまた、彼女を彩るように揺れていた。
「有珠、その浴衣綺麗だね」
「ありがとう、レンもよく似合ってる」
黒地に赤のよろけ縞、結んだ帯は金糸に細やかな模様の入った角帯で、飛砂・煉月(渇望・f00719)の彩だと有珠は思う。彼が髪紐に一輪挿した彼岸花に視線をやって、有珠が僅かに目を細め眉を下げたのを煉月は気付かぬ振りをして願いでも託したくなっちゃいそう、なんてね? とおどけてみせた。
それから、彼女の髪を飾るアネモネを目に留め、そのまま自然な動きで提灯へ向ける。
「灯祭りって言うだけあって、提灯がいっぱいあるな」
「そうだな、どんな提灯があるか楽しみだ」
今日はそれも楽しみの一つなのだと、有珠が視線を上げて煉月に頷く。
「提灯の灯りを見ると、なんとなくホッとするんだ」
「ホッとする?」
「ああ、この感覚は同居人に看過されてきたのかも。私は灯りは手元に置くより、遠目に眺めることが多かったから」
「同居人は提灯が好きなの?」
「提灯……というよりはランプを集めるのが好きなんだと思う」
へぇ、と煉月が相槌を打ち、提灯もランプも夜を照らすものだしね、と人々が手にする提灯を見遣る。
「だから、今日は私も灯りとの出会いがあるかもと思って」
「なら見に行こうよ、提灯」
すぐそこの露店でも、神社に向かう先にだって提灯はどうかと呼び込む声が聞こえてくるほどだ、きっと気に入るものが見つかるはず。
「ああ、必ず見つけて帰るつもりだ」
「あっは、なら最高の出会いがあるかもよ?」
そうだといいな、と笑いながら二人で露店を流し見る。気になるものがあれば立ち止まって覗き、また歩いて――ふっと有珠が視線を向けた先に煉月も視線をやって足を止めた。
「……これ」
有珠が呟いて手に取ったのは赤い金魚の提灯で、どこか風鈴の金魚を思い起こさせる。赤、赤い色だと有珠は思う。それから、隣で提灯を見ている煉月を見て、あぁ、彼の瞳の色なのだなと思えば何故か腑に落ちて。
「これにしようと思う」
「金魚? じゃあ俺は……」
隣にいる君の浴衣に似た星空を、とは声に出さずに提灯を手に取った。
持ち手の飾りは揃いの椿、それも決め手の一つだったのかもしれない。
「うん、これにしよっと!」
オレ達の星巡り、それから今日のキミ。
最高の出会いがあったのはオレの方かも、なんて思いながら提灯を買い求め、二人互いの色を手にして揺らしながら神社へ向かう。
「まるで星空を泳ぐ金魚だな」
「そうかも」
まるでお揃いみたいだと考えて、煉月の頬が綻ぶ。その横で、有珠も手元の温かな光は煉月の色だと思って口元を綻ばす。嬉しい、という気持ちを灯して二人ゆるりと石段を上っていけば、境内を彩る提灯が見えた。
「ここも提灯でいっぱいだな」
「綺麗だね、有珠の同居人さんが見たら喜ぶんじゃない?」
「そうだな、喜びそうだ」
なんて話をしながら境内を歩けば、おにぎりと甘酒を振舞う声が聞こえて二人顔を見合わせる。
「おにぎり……食べていこうか」
「種類が沢山あるみたいだよ」
炊き立ての新米、という声に引かれて近付くと、どれにします? と聞かれて悩みつつもおにぎりの具を選ぶ。
「オレは鮭で」
「私は……おかかを」
はい、と竹皮に包まれたおにぎりを受け取って、邪魔にならぬ場所まで向かう。
「鮭におかか……絶対にどっちも美味しい……。ね、シェアはどう? ふたつの味を一緒にって贅沢しよッ」
そう煉月が有珠に提案すると、彼女もいい案だと頷いて笑う。
「私のおかかと君の鮭、どちらも味わえるのは確かに贅沢だな」
では、とおにぎりを半分に割って、片方ずつを交換して。いざ一口、とおにぎりを齧れば口の中に広がる新米の味。
「美味しい……!」
「ん、鮭ともおかかともよく合うね」
美味しいおにぎりに舌鼓を打ちつつ、二人で揺れる提灯を眺めて満足気に吐息を零す。
「いいものだな、秋祭り」
「うん、夏祭りとはまた少し違って、楽しい」
何より、|キミ《君》といっしょだから。
互いの彩をした灯りを揺らしながら、煉月と有珠が視線を交わして微笑み合った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルーシー・ブルーベル
【月光】
今年の浴衣姿
藍染のブルーベリーの花咲く衣で
ふふーあたり!
気づいて下さってうれしいわ
ちゃんと着れてる?
パパの浴衣姿、これは金のドラゴンさん?
ぐるりと周りをまわって、うんうん!
今年もカッコいいわ!
パパと手をつないで歩くとき
ちょっと得意げな顔をしても仕方ないと思うのよ
提灯って優しい光ね
本当、気持ちをおだやかにしてくれるみたい
一人ひとつ、だって!
ゆぇパパはどんな灯りを選ぶのかな
ルーシーもうんと悩まなくちゃ!
いっしょならお店を巡って目移りするのも楽しい
そうしてコレ!と決めたのは
まん丸な満月を模した提灯!
えへへ
やっぱりルーシーにとってお月さまってトクベツだから
パパのはヒマワリと、太陽?
あたたかな絵柄ね
ヒマワリを選んで下さったのがうれしい
照らす?それって
えへ、そう
神社でおにぎり?おいしそう
何だかゴリヤクもいっぱいありそうね
ルーシーはね、おかかがあればお願いします!
うん、しょっぱいけど甘くて大好きなの
パパは梅が好き!
すっぱくて口がキューってなるけどおいしいものね
甘酒頂きたいわ
身体もぽかぽかしそう
朧・ユェー
【月光】今年の浴衣
ルーシーちゃんの今年の浴衣はブルーベリーの花が綺麗咲いてますねぇ
もしかしてそれは僕からの贈り物?
良かった、よく似合ってます
えぇ、金の昇り龍ですね
似合いますか?ありがとうねぇ
手を繋いで一緒に歩く
何処かドヤァとしている可愛らしい彼女にくすりと笑い微笑んで
提灯のお祭りですか
えぇ、とても柔くあたたかい光ですよね
ほっこり包んでくれます
お店で素敵な一つを探しましょうか
ルーシーちゃんはまん丸お月様?
おや、それはとても嬉しい事を言ってくれてますね
では僕はこちらにしましょうか
花の形をした向日葵と太陽の提灯
向日葵の花は特別の花、太陽はいつも照らしてくれる子みたいですからね
おにぎり美味しそうですね
おかか?なるほどとても美味しいですよね
では僕は梅で、酸っぱい感じが好きです
後で甘酒も飲みましょうか?
ぽかぽかあたたまりましょう
●灯る花
共に浴衣の袖を揺らし、ルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)と朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)が下駄の音を鳴らす。
「ルーシーちゃんの今年の浴衣はブルーベリーの花が綺麗咲いてますねぇ」
藍染で染めた生地に、ブルーベリーの花――見覚えのあるその浴衣にユェーが思わず足を止めて。
「ルーシーちゃん、もしかしてそれは僕からの贈り物?」
カクリヨで手ずから染めて、彼女には内緒にして後から贈った着物だとユェーの目が優しく緩む。
「ふふー、あたり! 気づいてくださってうれしいわ」
「良かった、とっても似合ってますよ」
「だって、ゆぇパパが贈ってくださったお着物だもの!」
ルーシーのことをよく見ていてくれるユェーからの贈り物、それが似合わないはずはないのだとルーシーが胸を張る。
「ちゃんと着れてる?」
「はい、ルーシーちゃんはお着物を着るのも上手になりましたねぇ」
手直しするところはないですよ、と可愛い娘の成長にユェーが口許を綻ばした。
「パパの浴衣姿、これは金のドラゴンさん?」
黒地に金色の龍が空へ向かって駆けていくような浴衣をまじまじと見て、ルーシーがぐるりとユェーの周りを回る。
「えぇ、金の昇り龍ですね」
「今年もカッコいいわ! さすがゆぇパパね!」
「似合いますか? ありがとうねぇ」
肩に羽織ったショールもユェーの落ち着いた雰囲気を引き立てて、ルーシーはパパがカッコいいと満足そうに笑みを浮かべてぴょんと飛び跳ねた。
「それでは、お祭りに行きましょうか」
迷子にならぬよう手を繋いで、とユェーがルーシーの手を優しく握れば彼女の小さな手が大きな手をぎゅっと握り返す。それだけでも幸せな気分になって、ユェーはゆっくりと歩き始める。
ルーシーの歩幅に合わせつつ、彼女が歩き難そうにしていないかと視線を向けると、何故かドヤァ……ッというようなピッカピカの得意気な顔をしたルーシーが見えて、その可愛らしさにユェーがくすりと笑みを浮かべた。
「ルーシーちゃん、楽しそうですねぇ」
「ええ、とっても! カッコいいゆぇパパとのお出掛けですもの!」
だから、ちょっとばかり得意気な顔をしていても仕方がないのだとルーシーが繋いだ手を楽しそうに揺らす。
「そうですか、僕も可愛いルーシーちゃんとのお出掛けですから、楽しいですよ」
なんてユェーが笑い、またルーシーが笑って下駄の音も楽し気に鳴り響く。そうやって、少しばかり歩くと神社へと続く通りに出て、提灯があちらこちらに飾られているのが見えた。
「わ、提灯がいっぱいだわ!」
「提灯のお祭りみたいですねぇ」
秋の豊穣を祝うお祭りに提灯がどう関係して今のようなお祭りになったのかはさておき、提灯が主役というだけあってその種類も様々。職人達の腕の見せ所なのだろう、オーソドックスな形から変わった形の提灯までと幅広く取りそろえられている。
「提灯って優しい光ね」
「えぇ、とても柔くあたたかい光ですよね」
ゆらゆらと揺れる橙色の光、提灯の色によってはその光の色を変え、けれどどれもが優しい灯火。
「本当、気持ちをおだやかにしてくれるみたい」
「ほっこり包まれるような、そんな感じがしますねぇ」
どんな暗い道でも照らしてくれるような気がします、とユェーが笑うとルーシーもこくこくと頷いた。
「一人ひとつ、だって!」
案内人の猟兵が言っていたように、確かに道行く人々が手に提灯をひとつ持って歩いていくのが見える。
「そうですねぇ、お店で素敵な提灯を一つ探しましょうか」
「ふふ、素敵な出会いがありそうな気がするわ!」
一期一会の素敵な出会いを求めて、ユェーとルーシーは通りに並ぶ露店を眺めつつゆっくりと歩く。どんな灯りを選ぶのかな? と、ルーシーがユェーをちらりと見れば、ユェーもルーシーちゃんはどんな提灯が似合うだろうかと視線を向けて、二人が笑いながら気になる露店で足を止めた。
「あれもこれも素敵だわ……!」
「これは迷いますねぇ」
うんと悩まなくちゃ! とルーシーが気になる提灯を見比べて、真剣な顔で品定め。
「ゆぇパパは決まった?」
「それがまだ……これは楽しい悩みですねぇ」
目移りするのもまた楽しいとルーシーも頷いて、悩みに悩んで吟味した結果――コレ! と彼女が決めたのはまん丸な満月を模した提灯だった。
「おや、ルーシーちゃんはまん丸お月様?」
「えへへ、やっぱりルーシーにとってお月さまってトクベツだから」
まん丸な提灯は月の模様を再現しているかのようなもので、手にして夜空に掲げれば小さな月が手元で輝く様にも見える。
「おや、それはとても嬉しい事を言ってくれますね」
ユェーの名は月を表す言葉でもあり、それを重ねてトクベツと言う彼女にユェーの目が優しく笑う。
「では、僕はこちらにしましょうか」
そう言ってユェーが手にしたのは上向いて咲くような花の形をした提灯。それはまるで向日葵が太陽を向いているような、そして提灯自体が太陽のようにも見える物だった。
「パパのはヒマワリと、太陽? あたたかな絵柄ね」
太陽を模したような中心の丸い部分に描かれた絵に、ルーシーがほっこりと笑みを浮かべる。そして向日葵を選んでくれたことが嬉しくて、ぎゅうとユェーの手を握った。
「向日葵の花は特別の花、太陽はいつも照らしてくれる子みたいですからね」
特別な、二人の花だとユェーが微笑む。
「照らす? それって」
パッと自分を見上げてくるルーシーを見つめ、ルーシーちゃんの事ですよと言うようにその手を握り返せば、ルーシーがそれこそ太陽のような笑みを浮かべた。
お気に入りの一つになった提灯を二人で揺らし、神社へ続く道を歩く。石段では左右の脇に置かれた紙灯篭が足元を照らし、ユェーがルーシーをエスコートするように上っていく。最後の石段を上りきると、境内にも提灯が沢山飾られていてルーシーが小さく感嘆の声を上げた。
「ここも提灯がいっぱいだわ!」
「夜なのに夜じゃないみたいですねぇ」
都会の明かりとはまた違って、提灯の灯りはひどく優しく感じられて、どこか落ち着く気分。そんな中、聞こえてきたのはおにぎりと甘酒を振舞う声。
「神社でおにぎり?」
「きっと豊作だったんでしょうねぇ、実りの秋ですね」
「とってもおいしそうだわ……!」
「美味しそうですね、一つ貰いに行きましょうか」
人々が並ぶ列に二人も並んで、何の具にしようかと少し悩んで。
「ルーシーはね、ええと……おかかがあればお願いします!」
「では、僕は梅で」
頼んだおにぎりが竹皮に包まれ、どうぞと渡されたそれを受け取って列を離れる。
「何だかゴリヤクもいっぱいありそうなおにぎりね」
「そうですねぇ。はい、ルーシーちゃん」
渡されたおにぎりを受け取って、ルーシーがぱくりと一口。
「おかか、美味しいですか?」
「うん、しょっぱいけど甘くて大好きなの。パパは梅?」
「なるほど、おかかも美味しいですよね。はい、梅は酸っぱい感じが好きです」
同じように齧ったおにぎりの、梅の酸味と仄かな甘みにユェーが目を細める。
「パパは梅が好きなのね! すっぱくて口がキューってなるけどおいしいものね」
「ふふ、そうですねぇ。これはそんなに酸っぱくは無いですが、酸っぱい物は口がキューってなりますね」
キューって口をしたルーシーが可愛くて、ユェーが同じような口をして笑った。
「食べ終わったら、少し境内を散策して……それから甘酒も飲みましょうか?」
ルーシーちゃんも飲める甘酒だそうですよ、とユェーが甘酒を振舞う声に耳を傾ける。
「甘酒! 頂きたいわ。米麹と酒粕でお味が違うのね?」
「酒粕で作られた方は酒粕独特のクセや香りがあるみたいですね。米麹の方は香りと甘さも控え目……だったと思います」
ユェーの豆知識にうんうんとルーシーが頷き、甘酒も素敵と笑う。
「身体もぽかぽかしそう」
「栄養も満点ですからね、ぽかぽかあたたまりましょうねぇ」
もしも味が苦手なら、牛乳でも割ってくれるそうですよと言えば、それも気になるわ! とルーシーが興味津々に甘酒を配る方へと視線を向けた。
灯祭りの夜はまだまだこれから、ユェーとルーシーは提灯を揺らして境内を歩くのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『くろまろわんこ』
|
POW : あそんであそんで
【投げて遊んでもらうための枝】が命中した対象に対し、高威力高命中の【あそんでくれるひとみつけたアタック】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : もふもふぱわーあっぷ
全身を【もふもふの毛並】で覆い、自身が敵から受けた【負傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
WIZ : どうしてあそんでくれないの?
【遊んでほしいというせつない鳴き声】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠蓮賀・蓮也」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●揺れる灯りに誘われて
ゆらゆらと揺れる提灯、それに楽しそうな人々の声。誘われるように姿を現したのは、まろ眉のような柄をした可愛らしい犬――にしては少し大きい、犬の姿をしたオブリビオン。
『|わんっ《あそんで》』
あそんで、とつぶらな瞳が煌いて、わふわふと境内に向かって歩き出す。
悪意も他意もなく、ただ遊んでほしいとねだる犬そのもの。けれど、どれだけ可愛くてもオブリビオンである『くろまろわんこ』の相手を一般人にさせるわけにはいかない。想いは純粋なものであっても、その力は強く猟兵にしか相手が出来ぬのだから。
人々の楽しい祭りの夜の守る為、猟兵達はくろまろわんこと共に遊ぶべく提灯を揺らすのであった。
馬県・義透
引き続き『不動なる者』にて
さて…オブリビオンではあるが。ただ遊んでほしくて害意がないとなると…。遊びになるのが、陰海月と霹靂のいいところよな。
燃えると危ないし、提灯は預かろう。
こうしておるのを見ると、癒されるな…。ほわほわしておる。
なお、3つ目のおにぎりを貰っておってな。お腹が空いたら、それを食べよう。もちろん、わんこもな。
※
ふかもふ好きな二匹。全力で遊ぶために提灯はおじーちゃんに預けた!
陰海月「ぷきゅ!」(あそぼー!)
霹靂「クエッ!」(あそぶ!)
UC使って、ふかもふジャンプ台設置。跳ねたり、もふもふしたり!撫で撫でしたり、一緒におにぎりを食べたり!
●わんこもいっしょ!
おにぎりを食べ、その味に満足したように笑みを浮かべた馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)――今、表に出ている人格は内県・賢好である――は、オブリビオンの気配を感じてそちらに視線を向けた。
「……ふむ、害意はないと」
姿形は可愛らしい犬そのもの、少しばかり図体が大きいのはオブリビオンが故だろう。どうしたものかと考えつつ、義透が陰海月と霹靂を見れば二匹は遊ぶ気満々で提灯を揺らしているのが見えた。
「うむ、陰海月と霹靂に任すとするか」
ふっと笑みを浮かべ、陰海月と霹靂の持つ提灯を危ないからと預かると二匹の視線が義透へと向く。それはまるで、遊んできていーい? と聞く幼子のよう。
「ああ、遊んでくるといい。わしはここで見ておるでな」
その声と共に、二匹が『くろまろわんこ』の方へと向かっていく。
『|ぷきゅ!《あそぼー!》』
『|クエッ!《あそぶ!》』
二匹の声に気が付いたのか、くろまろわんこも|わんっ!《あそぶー!》と可愛らしい声で吠え、何するー? とばかりに頭を突き合わせる。
「……これは癒されるな」
なんといっても可愛いうちの子と、オブリビオンといえども可愛らしい犬、可愛くない訳がなかった。
どうやら何をするか決まったようで、ぷきゅー! クエー! わんっ! と、三匹の声が響く。まずは陰海月が『ぷきゅ~』と鳴くと、カラフルな動くミズクラゲ型のぬいぐるみが幾つも現れて、お手本を見せるように陰海月がぬいぐるみをジャンプ台のようにして跳ねた。
それを見た霹靂が続く様にしてぬいぐるみに飛び込むと、ぽーんとトランポリンのように飛んで一回転を決める。
『わうー!』
僕も! と言うようにくろまろわんこも突撃し、ぽーんと飛び跳ねた。
「はは、上手い上手い」
義透が手を叩いて三匹を褒めると、また喜んだ三匹がぽよんぽよんと跳ねてぬいぐるみの上に着地する。ふかふかもふもふのぬいぐるみ、もふもふのくろまろわんこ、ふわふわぽよんな陰海月、ふわもこな霹靂――あの中に飛び込めばこの世の極楽ではないか? と義透が考えていると、お互いをもふもふ撫で撫でしだしたものだから、思わず顔を覆ってしまった。
「うむ……うちの子が可愛いのう……」
尊さがすごい、と思わず言葉が零れるほどだ。
暫くすると三匹が義透の方へ寄って来たので、どうしたのかと問えば腹が減ったと訴える声。
「抜かりはないぞ、三つ目のおにぎりを貰っておってな」
食べるとするか、と竹皮の包みを取り出して三匹に見せる。
「もちろん、わんこもな」
分け合うおにぎりの味はまた格別だと、義透が笑った。
大成功
🔵🔵🔵
ピスーニア・ブロゼ
【綺羅2】 ◎
わぁ、あはは!かわいい!
まろまゆワンコちゃんなんだね!
ピス達と遊んでくれる遊びたがりさんはいるかな〜?
いたら元気にお返事だよっ☆
出来た賢い子はわしゃわしゃっと、撫でてあげちゃう!
さて、どうやって遊ぼうか?
取ってこーい!って遊ぶのもいいし、
駆けっこもいいかも?
あ、そうだ、鬼ごっこにしよう!
ピス達は猟兵だからね!
きっとそう簡単には捕まらないよ☆
UC発動☆
何事も音楽って大事だからね!
まろわんこちゃんが心から楽しめるように、
ピスからの贈り物だよ♪
ふふ、リリーちゃんにも効いちゃったかな?
数も増えた事だし、気合い入れて歌って遊んじゃうぞ!
退屈させる暇なんてあげないんだからっ☆
リリー・フォーゲル
【綺羅2】◎
ふふ、かわいいまろわんこさん。
リリー達と一緒に遊びせんか?
折角のお祭りですからね、楽しまないと!
撫でられるなら…リリーももふもふ少し撫でてみたいです…!
鬼ごっこ!いいですね!
でもリリー達だけが相手で物足りるでしょうか?
よーし、それならリリーはUC発動します!
ひょっこ、ひょっこ、白狐人形さん達を沢山召喚して。
まろわんこさんに心ゆくまで捕まえて貰いましょう!
でもまろわんこさんを傷つけるのは可哀想なので
ただ遊ぶだけです!
ふふ、ピスさんの歌も相まって何だかリリーも気分が上がってきちゃいました!
よーし、リリーも全力で逃げますよ!
お犬さんこちら!手の鳴る方へ!
●お犬さんと鬼ごっこ
ぴょこりと現れた『くろまろわんこ』に、ピスーニア・ブロゼ(煌めく光獣・f34523)とリリー・フォーゲル(みんなの食材(仮)・f30316)の目がきらりと瞬く。
「わぁ、あはは! かわいい!」
「この子が聞いていた、くろまろわんこさん……!」
あそぼ? って言うように小首を傾げているくろまろわんこは、それこそ普通の犬よりはサイズが大きいけれど見た目は可愛らしいわんこ。オブリビオンでありながら悪意も感じられず、ただ人と遊びたいと願う犬だった。
「まろまゆワンコちゃんなんだね!」
「ふふ、かわいいまろわんこさん。リリー達と一緒に遊んでくれるでしょうか?」
「聞いてみちゃう?」
「はい! 聞いてみちゃいます!」
自然と浮かぶ笑みを零しながら、ピスーニアとリリーが顔を見合わせてこくりと頷き合う。
「こほんっ! ピス達と遊んでくれる遊びたがりさんはいるかな~?」
ピスーニアがくろまろわんこの注意を引くように声を上げ、ぴっと人差し指を立てる。
「いたら元気にお返事だよっ☆」
『|わんっ!《あそんで!》』
元気なお返事! と、ピスーニアが笑ってくろまろわんこをわしゃわしゃと撫でて褒めれば、嬉しそうに尻尾を振ってくろまろわんこが答えた。
「わ、リリーも、リリーもします!」
撫でられるなら、とそっとくろまろわんこの毛並みに触れると、もふもふの手触りでリリーの顔が幸せそうに蕩ける。
「もふもふの、ふわふわなのです……!」
「うんうん、素敵な手触りのワンコちゃんだね!」
くろまろわんこも満足気に胸を張るものだから、暫しの間二人で撫でてもふもふを堪能する。
「さて、思う存分撫でた所で……どうやって遊ぼうか?」
「何が良いでしょうか、まろわんこさんが楽しんでくれる遊び……」
普通の犬が喜ぶことでいいのかな? とピスーニアがくろまろわんこを見れば、わふっと返事が聞こえて。
「それなら、取ってこーい! って遊ぶのもいいし、駆けっこもいいかも?」
「どれも楽しそうです!」
「あ、そうだ、鬼ごっこにしよう!」
「鬼ごっこ! それなら駆けっこにもなるし、いいですね!」
鬼さんならぬ、犬さんこちら、というやつだ。
「でもリリー達だけが相手で物足りるでしょうか?」
天真爛漫な犬の相手、それは結構な体力を必要とするのではとリリーが心配気にピスーニアを見遣る。
「大丈夫大丈夫、ピス達は猟兵だからね! きっと、そう簡単には捕まらないよ☆」
「はっ、確かに……! よーし、それならリリーはユーベルコードを発動します!」
高らかに宣言し、リリーが力を開放する。それは白狐の人形を召喚するもので、喚び出した人形達はそれぞれ番号が振られた首輪をしていた。
「さあ、まろわんこさん! 心ゆくまで捕まえてくださいね!」
勿論、くろまろわんこを傷付けるつもりはないので、白狐の人形達には逃げるだけで反撃は無しですとリリーがお願いする。ひょっこひょっこと跳ね回る人形達とくろまろわんこが戯れる姿は可愛らしく、思わずピスーニアもリリーもにっこり。
「よーし、それじゃあピスも!」
あなたの素敵な笑顔を見せて欲しいと願いを込めて、ピスーニアが歌声を響かせる。それは胸の内がポカポカとするような優しい歌声で、くろまろわんことリリーの瞳を煌かせた。
「なにごとも音楽って大事だからね!」
音楽が流れているだけで気分が上がったり安らいだりするのだと、ピスーニアが頷く。
「まろわんこちゃんが心から楽しめるように、ピスからの贈り物だよ♪」
「ふふ、ピスさんの歌も相まって何だかリリーも気分が上がってきちゃいました!」
白狐の人形を追い掛けては捕まえて楽しそうにしているくろまろわんこに向かって、リリーがぐっと拳を握りしめる。
「よーし、リリーも全力で逃げますよ!」
「ふふ、リリーちゃんにも効いちゃったかな?」
楽しそうに走り出したリリーを見て、ピスーニアが笑う。それから、自分もまるでステージでファンサービスをするかのように走り出す。
「数も増えた事だし、気合い入れて歌って遊んじゃうぞ! 退屈させる暇なんてあげないんだからっ☆」
ウィンクを飛ばしながら、リリーの逃げる方へと向かう。
「お犬さんこちら! 手の鳴る方へ!」
「こっちもだよっ♪」
二人、手の音と下駄の音を響かせながら、くろまろわんこが疲れるまで共に駆け回るのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鹿村・トーゴ
んむむ、ホントにわんこじゃん!
なんかめっちゃつぶらな目だし
あ、戦わなくてもわんこ遊びすれば良いんだっけ
お祭りの屋台から離れたとこ行くかー
ほれほれ、わんこ、おいで(膝を手を打って手招き。犬の声まねもする。相棒のユキエも音真似は大得意、くんくん、こゃわん、と甘えた犬の鳴き声を再現)
何する?追かけっこする?
【念動力】でさっき買ったうさぎと牡丹透かしの和紙提灯を浮かせてゆらゆら
オレはUCで木の幹から細い枝、池の水面、わんこの尻尾の先でも自在に走り回るよ
寄っては離れ追いつ追いつつ
よしよしよーしいいこ!と顔撫で繰り
ちょっと待ってて、と屋台で新米おにぎりおかかを一つ貰い
ホラ
逝く前にひとつどうだい?
アドリブ可
●わんこと遊ぼ!
わん、と聞こえた鳴声に鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)が振り向くと、鸚哥のユキエも同じように振り向いた。
『わんこだわ』
「んむむ、ホントにわんこじゃん!」
オブリビオンだというから、もう少し厳つい感じの犬っぽい何かかと思っていたのに、目の前のオブリビオンはまろ眉のような柄の黒わんこだ。ちょっと普通の犬よりは大きいけれども。
「なんかめっちゃつぶらな目だし……どうしようか」
『遊べばイイじゃない』
「あ、戦わなくてもわんこ遊びすれば良いんだっけ」
そういやそうだったと、トーゴがおにぎり等を振舞う場所から離れながら『くろまろわんこ』を誘う。
「ほれほれ、わんこ、おいで」
膝をポンポンと打って手招きをすれば、くろまろわんこがてててっとトーゴの方へと駆けていく。
「かわいいなぁ! よーしよし、おいでおいで、わぅん、わん!」
トーゴが犬の声真似をすると、ユキエが自分の方が上手いわよとばかりに犬の鳴声を囀る。
『くんくん、きゃわん』
甘えたような可愛らしいユキエの声真似に、くろまろわんこもきゃんきゃんと鳴いて尻尾を振ってトーゴの前にちょこんと座った。
「さあ、何する? 追いかけっこする?」
何でもいいよ! と言わんばかりにくろまろわんこが尻尾をぶんぶんと振って応える。
「よし、それなら……こいつも使うか」
先程買ったうさぎと牡丹の透かし提灯を念動力でゆらゆらと浮かせ、目印になるようにくろまろわんこに見せるとトーゴがユーベルコードの力を開放する。
「寄せの術……うかみの渡り足、ここへ」
とん、と地面を蹴ってトーゴが歩き出すと、その足は木の幹へも、細い枝へも、平地と同様に歩いてみせた。
『わぅん!』
そんなトーゴを追うようにくろまろわんこが走り出し、楽し気な鳴声を上げながら追いかけっこを楽しむ。
「こっちだ、おいでおいで!」
追い付かれそうになれば走り、自ら近寄ったりとトーゴが寄っては離れ、追いつ、追われつと人気のない場所を走り回り、わぅーん! と鳴いたくろまろわんこを全身で受け止めた。
「よしよしよーし、いいこ!」
『きゃう、きゃわん!』
顔の辺りをわしゃわしゃと撫で繰り回し、ぽんぽんと頭を叩く。
「ちょっと待ってて」
『わうん!』
待て、と言われてちょこんと座ったくろまろわんこの為に、トーゴがおかかおにぎりを貰って戻ってくる。
「ホラ」
差し出されたおにぎりに、くろまろわんこがお手をするようにトーゴに前足を差し出す。
「いいこだな、逝く前にひとつどうだい?」
お手、おかわりと前足を差し出して、トーゴの手ずからおにぎりを食べて。
『きゃわん!』
そう、満足そうにくろまろわんこが鳴いたのであった。
大成功
🔵🔵🔵
夜鳥・藍
黒柴さんのようなまろまゆ、可愛らしい胸元のハート柄。なんて可愛らしい柴さんなのでしょう!
柴さんなら白銀が一緒がいいかしら?種としても近そうですし。厳密には狼でも柴犬でもないのですが。
少し開けた場所に移動して追いかけっこしましょう。
でもその前に少しだけ触らせてもらえないでしょうか?
感触はもふもふなのかしら?見ためではもっちりボディとも感じ取れますがとても気になります。
ふかふかしてそうなその感触を楽し、いえ確認できましたら今度こそ追いかけっこをいたしましょう。
私は白銀に乗って。そしてその白銀には飛ばないようにお願いしておきます。思いっきり走り回ったほうが柴犬さんとしては良いのではないでしょうか?
●もふもふと追いかけっこ
夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)の『くろまろわんこ』へのファーストインプレッションは『なんて可愛らしい柴さんなのでしょう!』であった。
黒柴のようなまろ眉、可愛らしい胸元のハート柄、藍の目の前で首を傾げるような仕草をするくろまろわんこはオブリビオンでありながら、その可愛さを遺憾なくアピールしている。勿論、くろまろわんこにそんなつもりはなくても、藍にとってはそうなのだ。
「可愛い柴さん、一緒に遊ぶなら白銀が一緒だといいかしら……?」
己が召喚する竜王と白虎、そして白銀の姿を思い浮かべて共に遊ぶならと翼持つ銀狼を召喚する。
「種としても近そうですし。厳密には狼でも柴犬でもないのですが」
喚び出した白銀を撫で、くろまろわんこを手招く。人見知りすることなく駆け寄ってきたくろまろわんこと白銀を連れ、人の少ない開けた場所へと移動する為に歩き出した。
「この辺りでいいかしら……ふふ、追いかけっこは好きですか?」
『わぅん!』
「好きみたいですね。でもその前に……少しだけ触らせてもらえないでしょうか?」
藍がお願いすると、いいよ! と言うようにちょこんと座り、くろまろわんこが撫でられるのを待つ。
「では失礼して……」
何せ、一目見た瞬間からそのもっちりボディに心惹かれ、触り心地はもふもふなのかどうなのか……ずっと気になっていたのだ。
「ふかふかです……!」
もふもふの、ふかふか。これは白銀に勝るとも劣らない極上の毛並み……!! 一通り撫で、その首元にえい、と抱き着いて藍が笑みを零して、ハッと我に返る。
「大変素敵な毛並みでした、ありがとうございます。では今度こそ追いかけっこをいたしましょうか」
名残惜しそうにしつつ、もふもふから離れると藍が白銀に騎乗する。
「白銀、飛ばないように走ってください」
白銀が心得たように頷くと、まずは様子を見るように軽く走り出す。
『きゃわん!』
追いかけっこ! と、くろまろわんこがつぶらな可愛らしい瞳を煌かせ、白銀の後を追うように駆ける。その速度は中々に早く、白銀が徐々にスピードを上げていく。
「ふふ、とっても楽しそうです」
白銀に追いつき並走したり、逆にくろまろわんこが追い越して走るのを白銀が追いかけたりと、思う存分走り回る姿はほっこりとするほど可愛らしい。
「黒柴のぬいぐるみ……今度買おうかしら」
白銀と戯れるくろまろわんこの愛くるしい姿に、思わず藍がぽつりと零すのであった。
大成功
🔵🔵🔵
鳴上・冬季
「狐も一応イヌ科ですから。ただ、仙にならねば触れあいたいとは思わなかったでしょうねぇ」
嗤う
「なるほど、これは確かに一般人には荷が勝ちすぎる相手です。うっかりあちらの神社が倒壊しては目も当てられません。…紡げ、蜃夢」
叫び声が神社側迄影響を及ぼさないよう封じてから犬と遊ぶ
「構ってほしいのでしょう?遠慮なく来なさい」
頭や背中をわしゃわしゃと撫でてからもらったおむすびを半分こにして犬にも与える
「確か犬はこういうのが好きなのでしょう?…取ってこい」
落ちていた木切れを適当な大きさにして投げ、取ってきたらまた全身を撫で回すのを繰り返す
犬が満足するまで(翌朝になろうと)継続
「満足したなら、骸の海へ逝きなさい」
●狐とわんこの
わふっ? っと自分を見上げてくる、普通よりは些か大きなサイズの犬――もとい、オブリビオン『くろまろわんこ』を見下ろして、鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)はなるほど、と思う。
「これは確かに一般人には荷が勝ちすぎる相手です。うっかりあちらの神社が倒壊しては目も当てられません。……紡げ、蜃夢」
害意のないオブリビオンとはいえ、遊びに夢中で何かを壊すこともあろうと、冬季は宝貝・蜃夢の力を開放する。
「これでいいでしょう」
『わんっ!』
冬季が何をしたかはわからないけれど、遊んでくれる事だけはわかると言わんばかりにくろまろわんこが返事をした。
「ふ、狐も一応イヌ科ですから。ただ、仙にならねば触れあいたいとは思わなかったでしょうねぇ」
そう嗤いつつも、冬季はその場にしゃがんでくろまろわんこへ声を掛ける。
「構ってほしいのでしょう? 遠慮なく来なさい」
『きゃんっ』
おいで、と伸ばされた手に千切れんばかりに尻尾を振って、くろまろわんこが冬季に甘えるように飛びついた。
その勢いは手加減されているのだろう、思ったよりも衝撃がこなかったが一般人であれば怪我をしていたかもしれない勢いで、これもこのオブリビオンが遊び相手に飢えていた理由の一つなのかもしれないと冬季が頷く。
「よしよし」
頭や背中を抱えるように、わしゃわしゃと撫でてやれば気持ちよさそうにして、もっと! とばかりに冬季に擦り寄る。
「甘えん坊というやつなんでしょうかねぇ」
もしかしたら、まだ子犬と呼んでも差し支えない精神年齢なのではないか? と冬季がくろまろわんこを見遣れば、つぶらな瞳でくぅんと鳴いた。
「そう考えれば納得もいきますね」
思う存分撫でまわしてから、冬季が貰ったおむすびを取り出して半分こにするとくろまろわんこへと差し出す。
「食べますか?」
『わんっ!』
躊躇いなくおにぎりを食べる姿に、思わず冬季も唇の端を持ち上げておにぎりを齧った。
食べ終わると、その辺に落ちていた木切れを拾いあげ、これならばいいだろうとくろまろわんこに見せて。
「確か犬はこういうのが好きなのでしょう? ……取ってこい」
それ、と遠くへ投げた。
『わふー!』
楽し気に追い掛ける尻尾は提灯のように揺れて、何とも可愛らしい。木切れを咥えて戻ってくると、いい子ですねぇと頭を撫でた。
「満足したなら、骸の海へ逝きなさい」
満足するまで付き合ってあげますから、と冬季が再び木切れを投げて、それを追い掛ける背を眺めるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
マナセ・ブランチフラワー
【金翠】◎
あちらに害意があるのなら、それは倒しますけど……
そうではないようですし、遊んであげれば消えるのでしょう。ならそれでいいじゃないですか
ええ、動物は好きですよ。でもそんなに詳しくはないんです
……って、ちょっと、縁。あまり意地悪しちゃダメですよ
受け取ったおにぎりは犬にあげます
あなたは何して遊びたいですか?枝を投げればいいでしょうか?それとも追いかけっこですか?
通じるか解らないけど、視線を合わせて聞いてみます
何か意思表示があるなら、それに従って遊びましょう
沢山遊んだら、少しお散歩もしていきますか
多少走るくらい平気です、少しは慣れて……おっとっと
……あの子に追いつけなかった時は、お願いします
結・縁貴
【金翠】◎
あの犬、一応オブリビオンだけど殴る?
まァそうだね、遊んでやるか
楽な方がいいしね
マナセ、犬は好き?
俺も犬と戯れたこと無くて勝手が分からないなァ…そォら、欲しいか?欲しかったら取ってみな
(握り飯を掲げてお手玉して犬を引き付ける)
そう?此れくらい犬相手なら普通じゃない?
分かった分かった、マナセの佳きように。投げるよ!
(犬に見せつけた後、マナセに向かって握り飯を投げる)
…犬に本気で尋ねる辺りがマナセだよねェ…
マナセが付き合う限りは俺も付き合うよ
散歩ね。歩くかなあの犬…
(駆け出して行く犬の姿)
まァこうなるよね。追おうか、マナセはその足元で平気?
…担いでやろうか?はは、そっちの方が速そうだし!
●わんこのお相手
甘酒をいただいて、その独特な優しい味わいを楽しみ、おにぎりを竹皮に包んでもらったところで結・縁貴(翠縁・f33070)は自分達――と言うよりは、境内で行われているお祭り全体に向けられた視線に気付きそちらへと顔を向けた。
「マナセ、犬だよ」
「はい?」
犬、と言われてマナセ・ブランチフラワー(ダンピールの聖者・f09310)がそちらへ視線をやると、確かに犬が境内の奥の方からこちらを見ているのが見えた。
「大きい……ですね? 子犬っぽく見えますが」
「ここからの距離であの大きさは、まぁ普通の子犬よりは大きいんじゃない?」
おにぎりの包みを受け取り、そちらに向かって歩き出しながら縁貴が言うとマナセもそうですねと言いながら移動する。
「ところで……あの犬、一応オブリビオンだけど殴る?」
「あちらに害意があるのなら、それは倒しますけど……」
視線の先にいる犬型のオブリビオンには、どう考えてもそういった気配は感じられない。
「そうではないようですし、遊んであげれば消えるのでしょう。なら、それでいいじゃないですか」
「まァそうだね、遊んでやるか。俺としても楽な方がいいしね」
わざわざ戦う必要もないか、と縁貴が淡翠緑色の尻尾を優雅に揺らした。
「大きなぬいぐるみみたいなオブリビオンだなァ……マナセ、犬は好き?」
「ええ、動物は好きですよ。でもそんなに詳しくはないんです」
わふっ! と尻尾を揺らす『くろまろわんこ』が遊んでくれるの? とばかりに二人を見上げてくる。遊んでほしいのだろう、というのは分かるけれども、どんな風に接してやればいいのか。
「俺も犬と戯れたこと無くて勝手が分からないなァ……ん? わんこはこれが気になるの?」
縁が手にしている竹皮に包まれたおにぎりに鼻先を向けるくろまろわんこに、縁貴がにんまりと笑う。
「そォら、欲しいか?欲しかったら取ってみな」
竹皮から取り出したおにぎりを掲げ、お手玉のようにひょいひょいと放り投げると、くろまろわんこを引き付けるように境内から距離を取る。
『きゃうんっ!』
「ほらほらこっち」
「……って、ちょっと、縁。あまり意地悪しちゃダメですよ」
「そう? 此れくらい犬相手なら普通じゃない?」
おにぎりをくろまろわんこが届かない高さに掲げつつ縁が言うと、マナセがふるふると首を横に振って、ダメですよという顔をした。
「分かった分かった、マナセの佳きように。投げるよ!」
「え、わっ、とっ」
緩くカーブを描いて飛んできたおにぎりをなんとかキャッチすると、くろまろわんこもマナセの方へと走り寄る。
『きゃわん!』
「良かった……キャッチできましたよ、ほら」
心配そうな顔をしたくろまろわんこにおにぎりを見せて、食べますか? とマナセが問えば、くろまろわんこの元気なお返事が響いた。
「あげていいですか?」
「啊、いいよ」
良かったですね、とマナセがおにぎりをあげると、くろまろわんこがはぐっとおにぎりに齧り付く。
「オブリビオンも握り飯を食べるんだなァ……」
まァ猟兵もオブリビオンを食べるし、どっこいどっこいって奴かなと縁貴がくろまろわんこがおにぎりを食べ終わるのを眺めた。
「さて、あなたは何して遊びたいですか? 枝を投げればいいでしょうか? それとも追いかけっこですか?」
真剣な顔をして、マナセがくろまろわんこと同じ目線になるように屈んで問い掛ける。
「……犬に本気で尋ねる辺りがマナセだよねェ……」
呆れたような、それでいて優しい目をして縁貴が呟くと、マナセが彼の翡翠のような瞳を真っ直ぐに見つめて笑う。
「でも、この子きちんとお返事できてますよ」
「え?」
ほら、と指さす先を見ればくろまろわんこが枝を口に咥えてちょこんと座っている。
「……賢い犬だね」
「ええ、賢い子です」
枝を受け取ると、マナセがあっちに投げますよ、と枝を投げる。それを追い掛けて走っていく姿は普通の犬のようであった。
「マナセが付き合う限りは俺も付き合うよ」
「ありがとう、縁。沢山遊んだら、少しお散歩もしていきますか」
「散歩……散歩ね。歩くかな、あの犬……」
元気いっぱいで枝を咥えて戻ってきたくろまろわんこが、もっとー! と言うように枝をマナセに渡す。それを何回も繰り返し、どちらかと言えばマナセの腕が疲れた頃にお散歩でもしましょうか、とマナセがくろまろわんこの頭を撫でた。
「お散歩も分かるんだ?」
「わかるようですね」
きゃうん! と駆け出していく犬の姿を眺め、縁貴が元気だねェと零す。
「まァこうなるよね。追おうか、マナセはその足元で平気?」
マナセの履く下駄にちらりと視線を落とし、縁貴が問う。
「多少走るくらい平気です、少しは慣れて……おっとっと」
「フラグ回収が早くない!?」
小走りで駆けだそうとしたマナセがよろけたのを支え、縁貴が嘘だろ、と目を瞬く。
「……担いでやろうか?」
「……あの子に追いつけなかった時は、お願いします」
あの子、と言われたくろまろわんこは既に離れた場所にいて、あぁ……って顔をマナセがするものだから縁貴が噴き出して。
「はは、そっちの方が速そうだしね!」
ひょいっとマナセを担ぎ、縁貴がくろまろわんこを追い掛けて走り出したのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リュカ・エンキアンサス
◎
晴夜お兄さんf00145と
…
お兄さん、犬だよ
……(動物に好かれたことがないので困っている
(珍しくお兄さんの言葉に否定はできない
よし、せっかくだから一緒にドラゴン狩りでも行く?
……何さ
犬は狩りをするものじゃないの
だったらお兄さんは何するの。どういう遊びを提供するというの
……
はっ(鼻で笑った
わんこ。正直に言ってあげるといい
今、お兄さんと、散歩に行く気はないと
正直に言わないと、後々まで誤解するから
まあ何せ体力有り余ってるんだろう。多分
走る?
俺がボールを投げるから、二人(お兄さんとわんこ)でどっちが早くとってこれるか勝負ね
え。俺が褒めたいのはわんこの方なんだけど
お兄さん、空気読んで(とてもまじめな顔
夏目・晴夜
◎
リュカさんf02586と
犬がリュカさんに懐いてますよ!信じられない事に!
懐かねば撃たれると思ってるんですかねえ
健気で可愛いですねえ
ですね、折角なので一緒に遊…ドラゴン!?
犬とは一緒に仲良く遊ぶのがベストですよ
犬に提供する遊びは散歩一択です
ハレルヤには褒め、犬には散歩
ハレルヤレベルになると散歩の「さ」の字を口にするだけで犬達は即座に反応し、歓喜に暴れ、自らリードを持ってきてその場をグルグル回り出すのです
ご冗談を、犬は皆散歩とハレルヤが好きなのですよ
しかし散歩を始めると長くなりますからね
ええ、ボールでも投げて走らせますか
これ私も走る流れですかあ
では早く取った方が褒められるという事で(UC高速移動
●可愛いわんこと!
あれこれと言ってはいたが、鮭のおにぎりも豆のおにぎりも美味しくぺろりと頂いた二人は甘酒を飲みながら境内を散策するように歩いていた。
「おにぎりに外れなし! でしたね、リュカさん」
「そうだね」
ご機嫌な夏目・晴夜(不夜狼・f00145)の言葉に頷きながら、リュカ・エンキアンサス(蒼炎の旅人・f02586)がふと視線をあらぬ方向へと向ける。つられて晴夜もそちらを見ると――犬がいた。
「……お兄さん、犬だよ」
「犬ですね! 子犬にしてはちょっと大きい気もしますが!」
見た目は子犬そのもの、けれど大きさは自分達の腰の辺りよりも大きいくらいの犬。あれが聞いていたオブリビオンかな、と二人が考えているうちに、犬の方が二人に気付いたようで、わんっ! と鳴いて近寄ってきた。
「……お兄さん」
「犬ですねえ、どこからどう見ても犬」
尻尾を振る仕草も、自分達の周囲をうろうろしつつも遊んでほしそうに見上げてくる姿も。そんな『くろまろわんこ』に、リュカが珍しく困ったような顔をしている。何せ、動物に好かれた事がないのでどうすればいいかわからないのだ。
「すごいですね、犬がリュカさんに懐いてますよ! 信じられない事に!」
リュカの足元に擦り寄りながら、つぶらな瞳で見上げて尻尾を振っている。
「……」
「どうすればいいかわからないリュカさんもいいですね! しかしあれです、懐かねば撃たれると思ってるんですかねえ? 健気で可愛いですねえ」
それは健気なのだろうか、とは思うけれどリュカは反論できない。自分でもそうかもしれないと眉根を寄せて、ただ懐いてくるくろまろわんこに視線を合わせた。
『わふっ!』
あそぼー! というノリのように思える、尻尾も怖がっているようには見えない。うん、それなら遊んでやるべきなのかもしれないとリュカが意を決して口を開く。
「よし、せっかくだから一緒にドラゴン狩りでもいく?」
『わんっ!』
「ですね、犬もやる気のようですし、折角なので一緒に遊……ドラゴン!?」
なんで? ドラゴンなんで? という顔で晴夜がリュカを見ると、何さと彼が晴夜を見る。
「犬は狩りをするものじゃないの?」
「うーーん否定はできないんですけれど、それは狩猟犬と呼ばれる犬じゃないですか? この犬はどう見てもそうではないかと」
言われてみれば確かにそうだが、犬とはいえオブリビオンだからドラゴンくらいいけるでしょ、と思ったのでリュカが晴夜に問う。
「だったらお兄さんは何するの。どういう遊びを提供するというの」
「ハレルヤなら、ですか?」
ふっと前髪を払い、晴夜が胸を張る。
「犬とは一緒に仲良く遊ぶのがベストですよ。そうとくれば、犬に提供する遊びは散歩一択です」
「……散歩」
「ええ! ハレルヤには褒め、犬には散歩、これはこの世の摂理ですよ、リュカさん!」
これは多分いつものやつ、とリュカが一歩引いた目で晴夜を見遣る。勿論、物理的にも一歩引いていた。
「ハレルヤレベルになるとですね、散歩の『さ』の字を口にするだけで犬達は即座に反応し、歓喜に暴れ、自らリードを持ってきてその場をグルグル回り出すのです」
当然の事ですよ、と言う晴夜と何もわかっていなさそうなくろまろわんこを交互に見る。全然反応してなくない? ずっと尻尾は振っているけど。
「はっ」
鼻で笑って、リュカが足元に纏わりつく犬の頭を撫でる。
「わんこ。正直に言ってあげるといい。今、お兄さんと、散歩に行く気はないと」
『わふー?』
こてん、と首を傾げて、くろまろわんこが元気にわんっ! と鳴く。
「いい子だね。正直に言わないと、後々まで誤解するから。よく返事が出来たね」
「ご冗談を、今のは行くという意思表示ですよ。犬は皆散歩とハレルヤが好きなのですよ」
バチバチと見えぬ火花が散ったような気がするが、そんな事はくろまろわんこには関係ない。あそんでー! とばかりに二人の間を飛び跳ねる。
「……しかし散歩を始めると長くなりますからね」
「まあ何せ体力有り余ってるんだろう。多分」
元気いっぱいのくろまろわんこに視線を向け、二人がどうするかと考えて。
「それなら、ボールでも投げて走らせますか」
「走る?」
「ええ、体力を消耗させるには走らせるのが一番では?」
なるほど、とリュカが考えながら視線を晴夜へと向ける。
「俺がボールを投げるから、|お兄さんとわんこ《二人》でどっちが早くとってこれるか勝負ね」
「えっ」
「何」
「これ私も走る流れですかあ」
最後にそう来たかと晴夜が夜空を見上げ、くろまろわんこを見る。
「では早く取った方が褒められるという事で」
妖刀である悪食の怨念を纏い、高速移動の準備は万端ですよ!! とばかりに晴夜がリュカに笑う。
「え。俺が褒めたいのはわんこの方なんだけど」
「え」
「お兄さん、空気読んで」
「えぇ……」
近年稀に見るレベルの真面目な顔でそう言ったリュカが視線で晴夜を制しつつ、ボール代わりに木切れを投げた。
勿論、わんこはめちゃくちゃに褒められたし晴夜は|罵倒された《ある意味ご褒美》のであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
御簾森・藍夜
【朱雨】
◎
…………なんだ|あいつ《くろまろわんこ》は
ん?ああ、待ってくれ暁
そっちは暗い、危ないぞ
(提灯を持って追い
……もふもふは好きだ
好きだとも
だがどうしてかあいつは気に入らん
……暁には言わんが
暁、暁、それは犬の形だがオブリビオンだからな
ふぅん
人が好き、ねぇ…
なぁんで俺に寄ってこないんだろうな?
まあいいが
(暁に撫でられている犬をじっと見ながら
…何故かどうにも気に入らん。あの目が
「|はは、そうだなかわいいな《なんだこの犬っころは》」
「ああ……|とても賢い犬だな《分かっているな》」
「……は、はは。ああかわ――なぁ、|犬《お前》が|余りにも可愛い過ぎて《俺が可愛がってるうちに》|困ったな《やめろ》」
楊・暁
【朱雨】
◎
足元ついてくる子連れて、境内の裏手へ
一応、離れた場所の方がいいよな
藍夜ー、こっちこっち(手振り
分かってるって、藍夜
大丈夫、大丈夫
頭撫でて、極力目線の高さ合わせるようにしゃがんで
よーしよーし、いい子だ
じゃあ、遊ぶか?…って、あはは、舐めんなくすぐってぇよ
お前、人が好きなんだな
分かった分かった(わしゃわしゃ撫で
…可愛いな
本当、普通の犬にしか見えねぇ
ボール遊び、するか?(犬の目前にボール見せ
こいつ、取ってくるんだぞ?(軽く投げ
あははっ、偉い偉い
抱き留めて撫でまくって
なぁ、藍夜。こいつ頭いいぞ?
っ、ふふ、だから舐めんなって…!
ほらお前、藍夜とも遊んでこいよ
なんかムスっとしてふてくされてるから
●わんこと|触れ合いのひと時を《繰り広げる攻防戦》
お参りを済ませ、さぁどうしようかと御簾森・藍夜(雨の濫觴・f35359)と楊・暁(うたかたの花・f36185)が笑みを浮かべながら拝殿を離れようとした時だった。
『わんっ』
可愛らしい犬の声が聞こえて、二人同時に視線を向ける。
「……犬? 藍夜、犬だ」
「ああ、犬……だな」
まるで黒柴のような、それでいて丸っこいフォルムをした可愛らしい子犬。なのだが、子犬にしてはちょっと大きいような……と、そこまで考えて、藍夜はあれが案内をしてくれた猟兵が言っていたオブリビオンなのだと気付く。
「暁」
「うわ、すっごい人懐っこいなお前」
くぅん、と鳴いて近寄ってきた犬型のオブリビオン――『くろまろわんこ』が暁の足元にすりすりと擦り寄った。
「はは、遊んでほしいのか?」
『わぅんっ!』
元気に返事をしたくろまろわんこに暁が優しい瞳を向けて、それならと暁が視線を彷徨わせて境内の裏手を見遣る。
「一応、離れた場所の方が良いよな」
お祭りを楽しむ人々の方に行くと迷惑だし、と暁が藍夜に視線を向けた。
「あっちの方に行こう」
「ああ、それはいいんだが暁」
「わ、そんな急かすなよ」
『きゃわんっ』
ぐいぐい、とくろまろわんこに押された暁が藍夜の手を離し、しょうがないなと境内の裏手へ向かう。その姿をうっかり見送りながら、藍夜が眉根を寄せた。
「…………なんだ|あいつ《くろまろわんこ》は」
手を繋いでいたのは俺だが? と険しい顔をしていると、暁が藍夜を呼ぶ。
「藍夜ー、こっちこっち」
手を振る暁と、足元にべったりとくっついたくろまろわんこの姿が見えて、もう一度小さく藍夜はなんだあいつと呟いた。
「藍夜ー?」
「ん? ああ、待ってくれ暁。そっちは暗い、危ないぞ」
ハッとしながらも、提灯を手に暁が待つ方へと向かう。その間にも、何か胸にもやもやとした気持ちを感じて藍夜が小さく息を零す。もふもふは好きだ、犬も好きだとも、と藍夜は思う。
「だが――」
どうしてか|あいつ《くろまろわんこ》は気に入らん、とも。
「……暁には言わんが」
「え? 俺がどうかした?」
「いや、どうもしない……訳じゃないが」
きょとんとした顔でくろまろわんこの頭を撫でる暁が、藍夜を見上げて首を傾げる。
うん、その顔は可愛いが。
「暁、暁、それは犬の形だがオブリビオンだからな」
「なんだ、その事か。分かってるって、藍夜」
大丈夫、大丈夫と暁が藍夜に向かって僅かに微笑む。
うん、その顔は可愛いが。と、また同じことを思いつつ藍夜がくろまろわんこを見遣った。
邪気のない顔、仕草、鳴声。何一つ落ち度はないのだけれど、そんなに暁にくっつく必要があるか? と藍夜が唇の端をひくりとさせて拳を握る。
「よーしよーし、いい子だ」
視線を合わせる為にしゃがんで、暁がくろまろわんこをわしゃわしゃと撫でた。
「じゃあ、遊ぶか?」
『わんっ!』
遊ぶ、遊ぶ! とばかりにくろまろわんこが暁に鼻先をくっつけて、ぺろりと頬を舐める。
「……って、あはは、舐めんなよくすぐってぇよ」
くすぐったさと、くろまろわんこの可愛さに暁がとうとう笑い声を上げ、くろまろわんこの首をぎゅっと抱き締めた。
「は?」
めちゃくちゃ低い声が藍夜の唇から零れたが、幸いにも暁には聞こえていない。
「お前、人が好きなんだな」
ぽつりと零す様に暁が言い、よしよしと撫でる。
「ふぅん。人が好き、ねぇ……」
へぇ、ほぉ、ふぅん? じゃあ、なぁんで俺に寄ってこないんだろうな? と藍夜が笑う。多分、その圧があるからではないでしょうか、と言う者もここにはいないし、暁は気付いていない。
まあいいが、犬を撫でている暁は可愛いし、とくろまろわんこを撫でる暁を眺めることにした。
「……可愛いな。本当、普通の犬にしか見えねぇ」
可愛いのは暁だが、と思いつつ、暁に撫でられている犬をじっと見る。
何故かどうにも気に入らん、と藍夜が目を細める。そう、あの目が――暁を見る目が。
「な、藍夜もそう思わないか?」
「|はは、そうだなかわいいな《なんだこの犬っころは》」
にこっと暁に微笑むと、そうだよな、と彼が立ち上がる。それからくろまろわんこにボールを見せた。
「ボール遊び、するか? こいつ、取ってくるんだぞ?」
『きゃんっ!』
藍夜の視線など気にもしていないのか、くろまろわんこは投げられたボールを追いかけて走り、口に咥えて戻ってくると暁に褒めて! とばかりにボールを差し出す。
「あははっ、偉い偉い」
ぎゅっと抱き留めて撫でまくると、くろまろわんこも嬉しそうに尻尾を振って。
「なぁ、藍夜。こいつ頭いいぞ?」
「ああ……|とても賢い犬だな《分かっているな》」
静かに、そっと藍夜がくろまろわんこへ圧を掛けるのだが――くろまろわんこは気付かない。撫でてくれる暁を好き! と言うようにぺろぺろと舐めている。
「っ、ふふ、だから舐めんなって……! はー、ほんっと可愛いなぁ。な、藍夜」
ビキッと藍夜のこめかみに青筋が立ったけれど、くろまろわんこと遊ぶ暁は気が付かない。
「ほらお前、藍夜とも遊んでこいよ」
『わう?』
「なんかムスっとしてふてくされてるから」
そんな事はないぞ、と瞬時に笑みを浮かべた藍夜にくろまろわんこが向かう。
『わぅんっ』
待てお前それは突撃ではないか? と思ったが首元をわしゃわしゃと撫でてやり、上からくろまろわんこを覗き込む。
「……は、ははああかわ――なぁ、|犬があまりにも可愛い過ぎて困ったな《お前 俺が可愛がってるうちにやめろ》」
な? と眼力を効かせると、わぅーん! と、くろまろわんこが飛び退いた。
それから、きゃうん! と鳴いて、てってってと二人から離れていく。
「あれ? どうしたんだろうあいつ」
「さぁ……満足したんじゃないか?」
「そっか、それならいいんだけど」
暁が頷いて、藍夜を見上げる。
「それじゃ、もう少し祭りを見て行こうか?」
「ああ、そうしよう暁」
柔らかく藍夜が微笑んで、暁の手をさらりと繋ぎ直すと提灯を揺らして境内へと戻るのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
神坂・露
レーちゃん(f14377)
いつの間にかあたし達の前に犬さんが居たわ。
おにぎりとか甘酒のいい匂いに寄って来たのかしら。
「この子って何処から来たのかしらね。レーちゃん」
しゃがむと犬さんは尻尾を振ってとっても可愛いわ♪
不思議なのはこの犬さんが現われてからのレーちゃん。
複雑な表情で警戒してる感じ?…んー?この犬さんって?
なんだか遊びたいみたい。どうやって遊ぼうかしら。
軽く駆けてみたら追いかけてきたわ。可愛い~♪
この周辺で犬さんと駆けっこするわね。わーい。
周囲に一般人さんが来てもいいように気を払うわ。
「わーい♪ こっちよ、こっち♪」
犬さんが追いつかれてあたしに触れたら撫でるわ。
「よしよし、いい子ね♪」
シビラ・レーヴェンス
露(f19223)
急に現れた犬に露は警戒していないようだが…。
この犬は…ふむ。これが件のオブリビオンだな。
露は…まあ。気が付いていないようだな。この顔は。
「ん。これが例の犬のようだな」
伝えると予想通り驚いた表情の露に呆れてしまう。
やれやれ。全く露は。
露は全力で犬と遊ぶだろうから私は周囲の警戒を。
一般人に向けての警戒…いや。気を払うと言おう。
祭り客が負傷でもされたら祭りが中止になってしまう。
それは避けたい。楽しんでいる者達に迷惑はかけない。
「ん? 私とも遊びたいのか? …元気だな。君は」
遊び足りないらしい。
露が言うように確かに無邪気に尻尾を振る姿は可愛いな。
…。犬の頭や身体を丁寧に撫でてやろう。
●可愛いは正義なので
おにぎりを食べて、甘酒も飲んで。お祭りを満喫していた神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)の前に、ひょっこりと現れたのは子犬のような姿だけれど、子犬よりはちょっと大きいサイズのオブリビオン――『くろまろわんこ』であった。
「レーちゃん、レーちゃん、犬さんだわ!」
露はオブリビオンだとは気が付いていないのか、いつの間にか現れた犬に笑みを浮かべてシビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)に向かって振り向く。
「……ああ、犬だな」
急に現れた犬、それも普通の子犬よりは大きい……とシビラが僅かに考え込む。それから、これが件のオブリビオンなのだなと見当を付けた。
「ふむ……」
「この子って何処から来たのかしらね。レーちゃん」
おにぎりとか、甘酒のいい匂いにつられて寄って来たのかしら? と、露が首を傾げながらくろまろわんこに向き合うとおもむろにしゃがみこんだ。
「露」
「なぁにー? ふふ、犬さんったら尻尾を振ってて、とっても可愛いわ♪」
その返事と表情に、気が付いていないのだなとシビラが軽く溜息を零す。
「レーちゃん?」
何だかこの犬さんが現れてからレーちゃんの様子がおかしいわ? と、露がシビラを見ればどこか複雑そうな表情で、まるで警戒しているような感じで。
「……んー?」
そして、その視線は自分ではなく犬の方へ向いていて。
「レーちゃん、この犬さんって?」
「ん。これが例の犬の様だな」
「えっ! ふーちゃんが言ってた、オブリビオン?」
そうだ、と肯定するように頷けば、ええ~!? と驚いたような表情をした露にシビラが呆れたような視線を向ける。
「やれやれ。全く露は」
「だってだって、こんなに可愛らしいんだもの~!」
気が付かなくてもしょうがないわ! と露がくろまろわんこを撫でた。
『わんっ! わぅんっ!』
人懐っこく鳴いて、遊ぼうと露とシビラを誘う。それを野生の勘で感じ取った露がシビラを見上げ、笑みを浮かべた。
「レーちゃん、レーちゃん、犬さんったらあたしたちと遊びたいみたい!」
どうやって遊ぼうかしら? と露が首を傾げてシビラに問う。
「……露の好きにしろ」
きっと露は全力で犬と遊ぶだろうから、自分は周囲の警戒をしようとシビラが思う。
「そう? それじゃあ……追いかけっこかしら♪」
スッと立ち上がると、おいで♪ と笑って露が境内の端の方に向かって駆けた。
『わうーん!』
それを追うようにくろまろわんこも走り出し、シビラは一般人に向けての警戒を……と視線をやって思い直す。
「祭り客達に気を払おう」
ぽつり、と零した声は凛として、あの犬が望んで人を傷付ける訳ではないと、露と追いかけっこを楽しむくろまろわんこを眺める。
「うっかり祭り客が負傷でもしたら、祭りが中止になってしまうからな」
遊びに夢中になって、人を害する可能性はある。だから、それは避けたいとシビラは気を払うのだ。
「楽しんでいる者達に迷惑はかけられない」
その為にここに来たのだからと、露とくろまろわんこが飽きるまで待つことにした。
一方、露は開けた場所でくろまろわんことの追いかけっこを楽しんでいた。
「わーい、楽しいわ、楽しいわ♪」
軽く駆けただけでも、追い付こうとして走ってくるくろまろわんこは露にとってとても可愛らしく思えて、頬がふにゃりと緩む。
「可愛いわ、可愛いわ! 犬さん、こちら~♪」
駆けっこをしつつ、露もまた周囲に一般人がやってきてもいいように気を払う。シビラがそうしているのが感じられたから、露もそうしようと笑みを零す。
『わんっ! わわんっ!』
「ふふ、こっちよ、こっち♪」
楽しげな声を響かせ、露が呼ぶとくろまろわんこが露へと追い付いて、わふっと飛びついた。
「よしよし、いい子ね♪」
その勢いは確かに一般人には受け止められないものだろう、けれど猟兵である露には問題のないこと。ぎゅっと抱き締めて、わしゃわしゃと撫でてやれば甘えたようにくろまろわんこが鳴いた。
「満足したのか?」
シビラがそう問いながら近寄ると、くろまろわんこがシビラの方に向かって飛びつく。
「ん」
しっかりと抱き止めてやると、くろまろわんこがまだだよ! と言うように尻尾を振って遊んでとねだる。
「ん? 私とも遊びたいのか? ……元気だな。君は」
まるで露みたいだな、と思いつつ尻尾を振るくろまろわんこに向かって僅かに笑みを浮かべた。
「尻尾を振る姿も可愛いわ♪ 可愛いわ♪」
「……そうだな」
確かに露が言うように、無邪気に尻尾を振る姿は可愛いとシビラも思う。
「……撫でてやろう」
これも遊びのうちになると言っていたのを思い出し、シビラがくろまろわんこの頭や身体を丁寧に撫でる。
「なんだか……いいわね、羨ましいわ!」
「犬を羨ましがるな、露」
だってだって! あたしもレーちゃんに撫でて欲しい! と騒ぐ露を視線だけで黙らせて、シビラは心ゆくまでくろまろわんこの毛並みを堪能したのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
茜崎・トヲル
【モノクロフレンズ】◎
わーかわい…即落ちあーさんだ!!
まってめっちゃいい音したんだけど?!へーき?!へーきそーだね……
うんうん、めーっちゃかわいーね!せっかくだし、みんなでいっしょにあそぼーぜ!
そ、そーそー!ほら!ラーさんもさ、スーさんを近くで見張るってことで!いっしょに!ね?(せっとく!)
コロちゃんもあそぼー!
よーしっ、わんこ!追っかけておいでー!
そのあとは、木の枝とってこーい!
つぎはじゃーんぷ!コロちゃんに届くかなー?
はーい、八の字!あーさんの足の間をぐるぐるっと!
おわったらー、おやつたいむ!スーさん、なんかもってる?
ああっわんこがラーさんに遊んでーして、前足であしらわれ!!
たのしいね!
スキアファール・イリャルギ
【モノクロフレンズ】◎
アッ(語彙力喪失
(ねこさんの渾身の尻尾ビンタ!
ハッ!? 私は一体何を
トーさん…あのくろまろわんこがすごく……すごく、かわいいです
あぁでもラトナの激しい嫉妬の目線が
…ヨ、ヨシここは!
ラトナもわんこさんと追いかけっこして一緒に遊びましょう!
コローロも一緒に、ね?
あそこの樹の根元まで競走です!(皆でたったかたー!
(わんこのジャンプに嬉しそうなひかり!
(負けじと一緒に八の字をするねこさん!
アッ八の字かわいい…(消失再び
わん○ゅーるがありますよトーさん(キリッ
ふふふ、気に入られたみたいですねぇラトナ
(仕方ないな、と付き合ってあげているねこさん
ふたりをもふり撫でて…ほんと楽しいですね
●全力で遊んで触れ合って
酸っぱいけど米に合って美味しい! と梅干しおにぎりを食べ終わり、なんだか満たされた気分でほんわかとした雰囲気を漂わせていた二人の前に、ぴるっと動く尻尾が見えた。
「トーさん、今のって」
「ん-、みゃーさんの言ってたやつかなー?」
犬の姿をしたオブリビオン、と茜崎・トヲル(Life_goes_on・f18631)がスキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)に頷いて、尻尾が見えた方へと向かう。境内の奥、人目の届かぬ場所にその犬――『くろまろわんこ』はいた。
「わーかわ……」
いーねー! と続けようとしてトヲルがピタッと止まった。
「アッ」
そこには心臓を押さえて崩れ落ちるスキアファールの姿が!
「即落ちあーさんだ!!」
「ア……ア……」
「ヤバいね、人語をうしなってんねー!」
意訳すると『何ですかあの可愛らしい生き物、犬? わんこ? えっ? 神が造りたもうたなんとかかんとか? かわいい……はい、かわいいです……まろ眉なのがまたかわいらしい……』と言ったところだろうか。
崩れ落ちたまま呻いているスキアファールの元へラトナがすててっと駆け寄って、その立派な尻尾で彼の頬を打つ。いわゆる猫尻尾ビンタである。
「まってめっちゃいい音したんだけど?!」
「……ハッ!? 私は何を……」
額を押さえ、目を瞬かせるスキアファールを眺め、頬を押さえるんじゃないんだーとかトヲルが思いながらも、心配そうに覗き込む。
「スーさん、へーき?!」
「トーさん……あのくろまろわんこがすごく……」
「あっへーきそーだね……?」
猫尻尾ビンタは猫好きにとってはご褒美みたいなものなので、ノーダメージです。
「すごく、こう……かわいいです……!」
「うんうん、めーっちゃかわいーね!」
そんな二人を見上げ、ラトナが尻尾をたしーん! たしーん! と地面に打ち付けている。
「あぁ、でもラトナの激しい嫉妬の目線が」
「あー……でもほら、せっかくだし、みんなでいっしょにあそぼーぜ!」
遊ぶ、という言葉に反応したのだろう、くろまろわんこが『わんっ!』と鳴いてよちよちとててっとこちらへ近寄ってくる。
「フゥ……ッ」
「わーー気絶しないで!? あ、でもあのわんこ、思ったより大き……大きくない?」
「あ、すみません、つい。そうですね……子犬の見た目ですけど、子犬サイズではないですね」
大型犬よりももう少し大きい、くらいの。
そこはきっとオブリビオン故なのだろう、と二人は解釈してくろまろわんこと遊ぼうと改めて頷いた。
「……ヨ、ヨシここは! ラ、ラトナ! ラトナもわんこさんと追いかけっこして一緒に遊びましょう!」
たしーーん!! たしーーん!!! と尻尾を地面に叩きつけていたラトナがちらっとスキアファールを見てくろまろわんこを見る。
「そ、そーそー! ほら! ラーさんもさ、スーさんを近くで見張るってことで! いっしょに! ね?」
「そうですよ、コローロも一緒に、ね?」
「コロちゃんもあそぼー!」
仕方ないと言わんばかりに尻尾を振って、ラトナがくろまろわんこに近付いていく。
「アッ、かわいいとかわいいが合わさって無限にかわいい」
「しっかりあーさん! コロちゃんも心配してるからー!」
「ハッ! いけないいけない……かわいいの暴力が凄すぎて」
ふるり、と頭を振るって正気|に戻ると《すぐに失います》スキアファールが大きな樹を指さした。
「あそこの樹の根元まで競争です!」
「よーっしっ、わんこ! 追っかけておいでー!」
わーっと走り出せば、くろまろわんこも楽しそうに追い掛けてきてトヲルといい勝負をしながらゴールへ到着する。
「はやいはやい、えらーい!」
わしゃわしゃと撫でてやると、くろまろわんこが得意気に胸を張った。
「トーさんとわんこさんが尊い……」
スマホで連写しつつ、写り込んだラトナもしっかり撮って次は何をしましょうかとスキアファールが笑う。
「つぎはじゃーんぷ! コロちゃんに届くかなー?」
コロちゃんと呼ばれたコローロが頭上でぴかぴかと光りながら旋回すると、くろまろわんこがわうん! と飛び上がる。コローロに触れるか触れないかの高さまで飛ぶと、コローロも楽しそうに点滅して見せた。
「じゃんぷすごいねー! えーっと、つぎはこっち! はーい、八の字! あーさんの足の間をぐるぐるっと!」
きゃわん! と、心得たようにくろまろわんこがスキアファールの長い脚の間で八の字を描く。それに負けじとラトナも八の字でぐるぐるとしたものだから、スキアファールが再び語彙を失う。
「アッ八の字、アッかわいい……」
「スーさんしっかりー!! あ、ほら! おやつたいむにしよ! あーさん、なんかもってる?」
「ハッ! ええ、わんちゆぅるがありますよ、トーさん」
キリッとした顔でスキアファールが取り出した犬用おやつ、そして勿論ラトナ用の猫用おやつも忘れない。
『わふっ!』
「はい、ごほーびだよー!」
トヲルがくろまろわんこに、スキアファールがラトナにおやつをあげて、暫し休憩タイムを楽しんでいると、くろまろわんこがわぅん? とラトナの方へと前足を伸ばす。
「ああっわんこがラーさんに遊んでーして、前足であしらわれた!!」
それでもめげずに、というよりは、そういう遊びだと思ったのかくろまろわんこがラトナに前足をえいえいと出し続ける。
「ふふふ、気に入られたみたいですねぇ、ラトナ」
仕方ないな、というように付き合ってあげているラトナを見て、スキアファールがふんにゃり笑った。
それから、トヲルとスキアファールがくろまろわんことラトナを撫でて、もふもふを堪能しながら顔を見合わせる。
「たのしいね! スーさん!」
「はい、本当に」
楽しくてもふもふなひと時を思う存分楽しんで、二人は笑い合うのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
陽向・理玖
【月風】
くっ…
わんこ可愛い…
そりゃそうだよな
人が沢山いるし楽しそうにしてるし
一緒に遊びたいよな
よーし思いっきり遊んでやるぜ
いい?瑠碧
よし、じゃあ人のあまりいない広いとこがいいか
裏?境内?
行くぞ
走って誘導
良さそうな場所でそのまま少し早く走ってみたりスピード緩めたり
緩急付けてかけっこ
うおーさすが
なかなか早いな!
褒めるように撫で繰り回す
ほら瑠碧も!
何か瑠碧投げれそうなの持ってる?
なければ手ぬぐいでも縛るかな
これでよし
ちらちら目の前で
ほーら欲しいだろ?
取って来い
距離は調整して投げる
おー偉い
結構こいつ賢いな
取って来たの受け取りなでなで
ほい交代
瑠碧に渡し
水分受取り礼言い
少しは楽しめたかな?
一緒にわんこ撫で
泉宮・瑠碧
【月風】
わんこの可愛さに打ち震えている理玖に和みつつ
元々遊びたかったそうですし
人が多くて楽しそうなら、尚更ですね
…淋しがりなのかも…
はい、わんこと遊びましょう
駆ける理玖の後ろから
わんこに
速い速い、と追う背を押しますね
理玖とわんこに遅れて追い付けば
微笑ましく見守り
勧められるままにわんこを撫でます
どちらも速かったですね、凄いです
ボール代わりを投げた理玖と追うわんこ
お利口さんに持って戻れば拍手
え、私もですか…
遠慮して転がす様に投げて
う、もっと遠くなら理玖の方が上手ですよ
遊び疲れたわんこと理玖の水分補給をしてから
小休止の様にわんこを抱えて撫でて休ませますね
…沢山遊びましたから、ゆっくり眠れると思います
●沢山遊んで、君と一緒に
おにぎりの美味しさと甘酒の優しい味に満たされて、二人が笑顔で他愛ない話をしていると『わんっ』という鳴声が聞こえて顔を見合わせる。
「犬の鳴声……だな?」
「ええ、それも大変可愛らしい声でしたね」
どこから、と陽向・理玖(夏疾風・f22773)と泉宮・瑠碧(月白・f04280)が辺りに視線を向けると、また『わぅんっ』と鳴声がした。
「あっちだ」
理玖が瑠碧の手を取って、エスコートするように歩き出す。
「あ、あそこに」
瑠碧が指さした先には、黒柴の子犬のような姿をした犬――『くろまろわんこ』が見えた。
「あのわんこが聞いていたオブリビオン……なのですね」
「くっ……子犬にしてはちょっとでかい気がするけど、わんこ可愛い……」
そう、子犬にしてはちょっと大きいサイズだが、可愛らしさに遜色はない。寧ろ大きなぬいぐるみのようで、可愛さ倍増なのではないだろうかと理玖が小さく唸る。
「ふふ、可愛らしいですね」
くろまろわんこも、くろまろわんこの可愛さに打ち震えている理玖も、と口にはせずに瑠碧が和んだように笑みを浮かべる。
『わんっ!』
二人に視線を合わせ、くろまろわんこが再び鳴いた。
それはまるで、遊んで! と言っているようで、理玖がくろまろわんこの前にしゃがむとその頭を撫でる。
「そりゃそうだよな。人が沢山いるし楽しそうにしてるし、一緒に遊びたいよな」
「元々遊びたかったそうですし……人が多くて楽しそうなら、尚更ですね」
ひとりぼっちで楽しそうな人々を眺めていたのだろうか、と理玖と瑠碧がしんみりとくろまろわんこを見遣った。
「もしかしたら、淋しがりなのかも……」
「よーし、それなら俺達が思いっきり遊んでやるぜ」
いい? と理玖が瑠碧に向かって問う。
「はい、わんこと遊びましょう」
私も遊びたいですと瑠碧が微笑むと、理玖が立ち上がる。
「よし、じゃあ人のあまりいない広いとこがいいか」
どこがいいか、と見渡して境内の裏の方なら人もいなさそうだと頷き合って。
「行くぞ!」
ついてこいよ、と理玖がくろまろわんこを誘導するように走り出す。
『わんっ!』
「ふふ、速い速い、頑張って!」
駆けていく理玖を追い掛けるくろまろわんこの背中に向けて、瑠碧が応援するように声を掛ける。それから、自分も下駄を鳴らしてゆっくりと追い掛けた。
人気のない場所まで来ると、理玖が人がいない事を確認するついでにくろまろわんこと追いかけっこを楽しむ。少し速く走ったり、スピードを緩めたりと緩急をつけてくろまろわんこの相手をした。
「うおー、さすが! なかなか速いな!」
追い付かれれば立ち止まって、褒めるように頭を撫でる。
「ほら、瑠碧も!」
理玖達に追いついて、追いかけっこをする二人を微笑ましそうに見守っていた瑠碧を理玖が誘う。
「では……どちらも速かったですね、凄いです」
くろまろわんこの頭をよしよしと撫でながら、瑠碧が二人を褒めた。
「瑠碧も一緒に遊ぼうか。投げれそうなの持ってる?」
「ボールがあればよかったんですけれど」
持ってないと瑠碧が首を横に振ると、理玖が袂に入れていた手拭を縛ってボールの代わりだと笑う。
「ほーらほーら、欲しいだろ?」
それをくろまろわんこの目の前でちらつかせ、充分に食い付いたところで投げた。
「よし、取って来い!」
『わうん!』
目の届く範囲へと投げられた手拭を追い掛け、はぐっと口に咥えて戻ってくる。
「おー偉い! 結構こいつ賢いな」
「賢いですね」
理玖が頭を撫で、瑠碧が拍手をして褒めると、手拭を渡しながら胸を張ってくろまろわんこが『わんっ!』と鳴いた。
「ほい、交代」
「え、私もですか……?」
手拭を瑠碧に渡せば、戸惑いながらもそれを受け取って瑠碧が転がす様に投げる。
『わうんっ』
それを追い掛け、咥え、戻ってくるとくろまろわんこがちょこんと瑠碧の前に座った。
「う、もっと遠くなら理玖の方が上手ですよ」
「わんこも瑠碧と遊びたいんだよなー?」
『きゃわん!』
なー? と意気投合する理玖とくろまろわんこに、瑠碧も楽し気に笑みを浮かべた。
その後は理玖が主体となってくろまろわんこと遊び、何か飲み物をと瑠碧がお茶と水を貰ってくると遊び疲れた理玖にお茶を、くろまろわんこに水を差し出す。
「ありがとな!」
「ふふ、これくらいお安い御用ですよ」
少し休憩しましょうね、とくろまろわんこの頭を膝にのせてやり、瑠碧が労わるようにその頭を撫でる。
「少しは楽しめたかな?」
その隣で、理玖もまたくろまろわんこを撫でて瑠碧に笑う。
「……沢山遊びましたから、ゆっくり眠れると思います」
きっと、と囁いて、二人はくろまろわんこが満足するまでその頭を撫で続けたのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
飛砂・煉月
【星巡】◎
遊んでーだってさ、有珠?
どうする、なんて聞かなくても良いよね
可愛いお願いは浴衣が駄目に為らない程度に叶えてあげよ
お互いの提灯は並べて光源に
折角ならもっともふもふになってよなんて
ちょっと煽っちゃえ!
絶対触り心地最高でしょ
ハクも好きに遊んで来なと送り出し
…有珠、もしかしてオレに似てるとか思った?
でも、ふふ間違っては居ないかな
オレいつもキミに構って貰って、遊んで欲しいし~
あっは、イイじゃん
撫でる有珠の手、オレ好きだし
有珠があんまりわんこに構ってたら
ちょーっとヤキモチ妬いたりしちゃうかも?
例えばほら、くろまろごとキミを抱きしめちゃう
ね、オレにも構って?
撫でてくれる手は
ほら、こんなにも心地好い
尭海・有珠
◎【星巡】
つぶらな瞳の期待、応えないのは心苦しい
「し、仕方ないな」なんて言いつつも
撫でたいのは…まあ事実
ふかふかの毛並みに手を差し入れてわしゃわしゃと撫で回す
真っ黒でもっふもふなところに既視感を覚えたのだが
レンの指摘にぎくり
「ま、まあ、似てるところも……あるとは思うが?」
そんな可愛い顔されると余計にそう思ってしまう
誤魔化すように更にくろまろを撫で回し
いやでも、ほら流石に犬のようにレンを撫でまわすのは
流石にどうかなって
くろまろごと抱きしめられれば驚くけれど
構ってと飛び込んでくる狼を構わぬ理由もないだろう?
レンの髪に手を差し込んで優しく撫でる
「仕方ないな」
レンに触れる心地好さに思わず笑みも零れる
●可愛いわんこと狼と
境内に揺れる提灯を眺めながら美味しいおにぎりを食べ終わった飛砂・煉月(渇望・f00719)と尭海・有珠(殲蒼・f06286)の二人は、祭りの喧騒に紛れて微かに聞こえた犬の鳴き声に互いを見遣った。
「今のって」
「犬の鳴声だったな」
互いに頷き合い、鳴声がする方を辿って歩き出す。甘えるような、寂しそうな、そんな鳴き声だと有珠は思いながら声の主を探す。
「有珠、あっち」
煉月の視線を追えば、そこにいたのは可愛らしい子犬……にしては少し大きいが、確かに犬だった。
「あれが……聞いていたオブリビオン」
害意のない犬の姿をしたものだと聞いてはいたが、まさかこんなに可愛らしい姿形をしていたなんて。
『わう、わうん?』
鳴き声もまた可愛らしく、近寄ってきた二人に警戒することもなく嬉しそうに尻尾を振っている。
『きゃんっ!』
期待に満ちたつぶらな瞳、これは確実に遊んでほしいとねだっている子犬だ。
「遊んでーだってさ、有珠?」
「し、仕方ないな」
どうする? なんて聞く気はなく、さっきから撫でたそうにしている有珠を見て煉月がくすりと笑っている。その視線からスッと顔を逸らしつつ、撫でたいのは事実なので有珠が膝裏を軽く抑えるようにして手を添えて浴衣を押さえると、くろまろわんこの前にしゃがんだ。
「わんこの可愛いお願いだからね、浴衣が駄目にならない程度に叶えてあげよ」
「そうだな」
互いの提灯を並べ、光源にしながらくろまろわんこの頭を撫でる。
「もふもふだな……」
「折角ならもっともふもふになってよ」
なんて、と笑いながらも煉月が煽るように言葉を重ねる。
「こんなの、絶対触り心地最高でしょ」
「ああ、すごく……」
もふもふだ、と有珠が頷く。
「夢中じゃん」
あは、と笑いながら煉月が白銀の毛並みをもつ緋眸の竜、ハクに好きに遊んで来なと囁いて送り出す。
『わうん!』
遊ぶの? とくろまろわんこが有珠の手を離れ、ハクを追い掛けていくのを眺めて彼女がもふもふともふもふだな……と瞳を煌かせたのを煉月は見逃さない。
「ところで……有珠、もしかしてオレに似てるとか思った?」
ぎくり、としたものの動揺は表に出さず――出てないよな? と思いつつ、有珠がこほんと咳払いをしつつ答える。
「ま、まあ、似てるところも……あるとは思うが?」
ちらり、と横目で煉月を見れば笑っているのが見えて。
「ふふ、間違ってはいないかな」
有珠の隣にしゃがんで、煉月がそっと下から彼女の顔を覗き込む。
「オレいつもキミに構って貰って、遊んで欲しいし~」
「む……」
そんな可愛い顔をされてしまっては、余計に似ているように思ってしまうじゃないかと思いつつ、戻ってきたくろまろわんこを有珠が抱き止めた。
それから、誤魔化す様に有珠がくろまろわんこのふかふかの毛並みにそっと手を差し入れ、わしゃわしゃと撫で回す。可愛いな、と小さく呟きながら撫でれば、くろまろわんこがわふん! と鳴いた。
「いやでも、ほら……流石に犬のようにレンを撫で回すのは、こう……どうかなって」
「あっは、イイじゃん。撫でる有珠の手、オレ好きだし」
そうやって優しく撫でてる手、と煉月がくろまろわんこを撫でる有珠の手付きを眺めて笑う。
ああ、でも――と、膝を抱えながら煉月がくろまろわんこを可愛がる有珠を眺め、少しだけ面白くなさそうに唇を尖らせて。
「ちょーっとヤキモチ妬いたりしちゃうかも?」
「え?」
ヤキモチ? と有珠が顔を上げて煉月を見遣る。パチリと目を瞬いた彼女に向かって、悪戯っ子のような笑みを煉月が浮かべる。
「例えばほら、くろまろわんこごとキミを抱き締めたり」
そう言いながら、くろまろわんこを挟むような形で煉月が有珠をぎゅうと抱き締めた。
「ね、オレにも構って?」
「レン」
それでも、有珠が驚いたような顔をしたのは一瞬の事で、構ってと飛び込んでくる狼を構わぬ理由もないと、すぐに柔らかな笑みを浮かべて手を伸ばす。
「仕方ないな」
伸ばした手を煉月の髪に差し込んで、髪紐に挿した彼岸花が落ちぬように優しく撫でた。
「ふふ、気持ちいい」
有珠が撫でてくれる手は優しくも心地良くて、煉月がまるでくろまろわんこのように笑う。有珠は片手で撫でて? と甘えるくろまろわんこを撫でつつ、レンに触れる心地良さに穏やかな笑みを零す。
「どっちの撫で心地がいーい?」
「そうだな……甲乙つけがたいところだな」
戯れに問われた言葉に笑えば、くろまろわんこがわぅん! とアピールするように鳴くものだから、二人顔を見合わせてまた笑うのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルーシー・ブルーベル
【月光】◎
まあ、ゆぇパパ
大きなわんこさんね!とってもかわいいわ
眉の所がとくにかわいい
大きなわんこさんだから
最初に触れるのは少しドキドキするけれど
パパが大丈夫と言って下さるならきっと平気
そうと手を伸ばすと…わああ、ふかふかだわ
あご下辺り撫でてあげるのと嬉しいみたい!
すごい…!
パパ、わんこさん飼っていた事があるの?
くろまろわんこさんも良い子ね
『取っておいで』!やるやる
ルーシーもやりたいわ!
ボールを受け取って、
大きく振りかぶって『とってこい』!
――のハズだったのに思い切り足元にボールをべしん!
うう、全然飛ばなかった
けど、わんこさんは楽しそうに追いかけてくれているし
良しとしましょう
もう一回?もちろん何度でも!
まあ?わんこさんは幸運ね
パパのゴハンはとってもおいしいの
いつも食べてるルーシーが言うのだから間違いないわ
山盛りゴハン
おいしそうに食べてる!
食べ終わる頃にブランケットを敷いて
温かい寝床を用意する
おなかいっぱいで横になったらお休みタイム
ううん
最後まで見守るわ
撫でながら
ね、またいつか遊びましょうね
朧・ユェー
【月光】
ワンと後ろから声がする
振り向くと丸々としたまろわんこ
ちょっと大きめでこてんと首を傾げてる姿が見える
おやおや、可愛いらしい
ルーシーちゃん、大きなわんこさんですよ
頭をなでなで、そっと抱き締めるとふんわりふかふか
良い手触りです
ルーシーちゃんも触りますか?
大丈夫、少し大きめですが噛みませんし大人しい子ですよ
そっと手を出し
お手、おかわり、指をくるりと回って
おや、とても賢い子ですね
僕が飼ってた訳じゃないですが大きなわんこと遊んだ事があります
近くのボールを持ってそれを投げて『取っておいで』
嬉しそうに持ってきて尻尾をふりふりしてる姿が愛らしい
ルーシーちゃんもやってみますか?
楽しそうにしてるルーシーちゃんににこにこ
僕はこの子達のご飯を作るのでルーシーちゃん遊んででくださいねぇ
ささみやお魚、何を食べるかわからないが塩分控えめのご飯を作ってお皿に入れる
お食べと食べさせて
良く遊び良く食べる、きっと眠たくなるはず
消える時は楽しい夢を見たままで
ルーシーちゃんも一緒に寝ても大丈夫ですよ
●またいつか、灯る日
甘酒を飲み、その味に二人が頬を綻ばせていると後ろの方から可愛らしい鳴き声がして、ルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)と朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)はぱちりと瞳を瞬かせて見つめ合う。
「犬の鳴き声……でしたね?」
「そうよね、かわいい鳴き声だったわ!」
くるりと振り向いて、どこかしらとルーシーが探す様に歩き出す。それを後ろからゆっくりとついていき、ユェーもまた鳴き声の主を探した。
「ゆぇパパ、あの子!」
そう言われて見ればなんとも丸々とした可愛らしいまろ眉をした犬の姿。子犬のようにも見えるけれど、ちょっと大きめなのはオブリビオンだからだろう。しかしそれを差し引いたとしても――いや、差し引かずとも大きなぬいぐるみのようで、これはこれで可愛らしい。こてんと首を傾げた姿に、思わずユェーも笑みを浮かべて。
「おやおや、可愛らしい。ルーシーちゃん、大きなわんこさんですよ」
「ええ、大きなわんこさんね! とってもかわいいわ!」
眉の所が特に可愛らしいとルーシーが瞳を煌かせると、ユェーもそうですねぇと頷いた。
「あの子が聞いていたわんこさんなのね」
「そうですね、近寄ってみましょうか」
聞いていた通り害意は感じられず、ただ遊んで欲しいという想いだけが伝わってくるような。それでも、ユェーが本当に危険がないか確かめるようにしつつ、ルーシーよりも前に出てくろまろわんこの前に立った。
『わんっ!』
「大人しい子ですねぇ」
どれ、と試しに頭を撫でてみれば、もっと! と言うように手に頭を押し付けて甘えたように鳴いて。これならば大丈夫だろうと、ユェーがルーシーに視線を向ける。
「ルーシーちゃんも触りますか?」
頭を撫でつつ、そっと抱き締めれば極上のふんわりとした感触、そしてふかふかのお布団に包まれるような感覚……!
「良い手触りですよ」
「る、ルーシーも……!」
「大丈夫、少し大きめですが噛みませんし大人しい子ですよ」
大きな犬に少しの緊張はあったけれど、ユェーが大丈夫と言うのならばきっと平気なはず。それに、ユェーとくろまろわんこが触れ合う姿があんまりにも楽しそうで、ルーシーも触れてみたくなったのだ。
そうっと手を伸ばし、くろまろわんこの頭を撫でる。
「……わああ、ふかふかだわ」
まるでぬいぐるみのような、毛布のような、素敵な手触りだとルーシーの顔に笑みが広がる。そのままあちこちと撫でて、顎下の辺りを撫でるとくろまろわんこが嬉しそうに尻尾を振った。
「パパ、この子あご下あたりを撫でてあげると嬉しいみたい!」
「ルーシーちゃんは撫でるのが上手ですねぇ、この子も喜んでますよ」
二人で思う存分に撫でると、今度はユェーが見ていてくださいねとルーシーに言う。何が始まるのかしらと、ルーシーがドキドキしながらユェーとくろまろわんこを見つめると、ユェーがそっとくろまろわんこに向かって手を差し出した。
「お手」
『わぅん!』
ぽふ! と柔らかくも可愛らしい前足がユェーの手の上にのせられる。
「おかわり」
『わう!』
反対側の前脚もちょこんとのって、なんとも可愛らしい姿。次に指をくるりと回してみせれば、くろまろわんこもそれに合わせるようにくるりと回った。
「おや、とても賢い子ですね」
「すごい……! パパ、わんこさん飼っていた事があるの?」
「僕が飼ってた訳じゃないですが大きなわんこと遊んだ事があります」
ルーシーの問いに答えながら、ユェーが頷く。
「そうなのね、くろまろわんこさんも良い子ね!」
『わんっ!』
得意気な鳴き声にルーシーが笑って、よしよしと撫でた。
「犬と遊ぶとなると……あとはそうですねぇ、ボールを投げて『取っておいで』とかでしょうかね」
「えっと、ボールを投げてわんこさんに取ってきてもらう……のよね?」
そうですよ、と頷いたユェーの手には野球ボールくらいの大きさのボール。
「わんこと遊ぶと聞いていたので」
「用意がいいわ……! さすがゆぇパパね」
ユェーが袂から出したボールを投げて、取っておいでをするとくろまろわんこが一目散に駆け出して、ボールを咥えると尻尾を振りながら戻ってくる。
「賢いですねぇ」
よしよし、とボールを受け取りながらユェーが頭を撫でる。
「ルーシーちゃんもやってみますか?」
「やるわ! 『取っておいで』! やるやる!」
ルーシもやりたいわ、とボールを受け取ってなるべく遠くへ行くようにと大きく振りかぶって『とってこい』! とボールを投げた。
「あ、あら、あら?」
けれどボールは足元へべしん! といい音を立てて投げつけられ、ころころと転がっていく。
「うう、全然飛ばなかったわ……!」
それでも、くろまろわんこは楽しそうにボールを追いかけて、拾ってくるとルーシーの元へと戻ってくる。
「ふふ、もう一度したいそうですよ」
「もう一回? もちろん、何度でもするわ!」
『わぅん!』
楽しく遊ぶルーシーとくろまろわんこを見遣り、ユェーがにこにこと笑みを浮かべて見守って。
「そうだ、ルーシーちゃん」
「なぁに? ゆぇパパ」
「僕はこの子のご飯を作ってこようと思いますので、ルーシーちゃんはここで遊んでてくださいねぇ」
「まあ? わんこさんは幸運ね!」
パパのゴハンが食べられるなんて! とルーシーがくろまろわんこを撫でる。
「わんこさんも、ルーシーちゃんをお願いしますねぇ」
わんっ! と応えたくろまろわんこに笑い、ユェーが調理できる場所を借りる為境内へと向かった。
「ふふ、パパのゴハンはね、とってもおいしいの。いつも食べてるルーシーが言うのだから間違いないわ」
『わぅ、わん!』
ルーシーの言葉に期待するようにくろまろわんこが鳴いて、ルーシーと遊びながらユェーを待った。
「さて……無事に調理場は借りられましたから……」
犬にも優しいものをと持ってきていたささみや魚を煮て、炊き立てのご飯を少し分けて貰い一緒に煮ながら味付けは薄めにと塩分控えめのご飯を完成させる。
それを借りたお皿に入れて、お礼をいってルーシー達の元へ戻るとくろまろわんこの前へと置いた。
「わあ、山盛りゴハンね!」
「さ、お食べ」
『わぅん!』
丁度良く冷まされたご飯をはぐ、と一口食べて、その後はあっという間に食べきって、美味しい! と言うようにくろまろわんこがきゃんっ! と鳴いた。
「美味しそうに食べてたわ!」
「そうですねぇ、よく遊びよく食べる、きっとそろそろ眠たくなるはずですよ」
眠く……とルーシーが呟くと、そっとブランケットを地面に敷いて温かい寝床を準備するとそこに座り、くろまろわんこを呼んだ。
「おいで、ここで寝るといいわ」
ぽんぽん、とルーシーが自分の膝を叩くとくろまろわんこがてててっとやってきて、ころんと転がる。
「おなかいっぱいになったのだもの、お休みタイムね」
ルーシーが膝の上に頭をのせたくろまろわんこの頭を撫でると、ユェーがその隣に座った。
「ルーシーちゃんも一緒に寝ても大丈夫ですよ」
きっと、消える時は楽しい夢を見たままで消えるでしょうとユェーが囁く。
「ううん、最後まで見守るわ」
ゆっくりと首を横に振って、ルーシーが優しく何度もくろまろわんこの頭を撫でた。
「ね、またいつか遊びましょうね」
『くぅん』
気持ちよさそうな鳴き声を上げたくろまろわんこの頭を、ルーシーはその姿が消えるまでユェーと共にずっと撫で続けたのだった。
大成功
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