18
雲の海 光の花

#ブルーアルカディア #お祭り2022 #夏休み

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#ブルーアルカディア
🔒
#お祭り2022
🔒
#夏休み


0




 ブルーアルカディアの空が、夕暮れに染まっていく。
 揺蕩う雲は影を帯びてもなお白く、暗くなるにつれ一層白みを帯びる。それが足許いっぱいに広がり、まるで雲の海を泳いでいるかのように思わせる景色が、その浜辺の最たる美しさと言えた。
 雲の漣が寄せる浜辺にあるのは、星の砂と呼ばれる光の欠片。その光がぽつりふわりと不規則に瞬き、浜辺を、街灯のないその島を、仄かに照らし出している。
 その光の生まれた場所――夜空を仰ぎ見れば、大輪の光の花。
 小舟のようなミニガレオンや、大きな羽のグリフォンに乗って、ほろほろと花から零れる光のシャワーを潜った先に、あなたは何を見るのだろう。

 ✧   ✧   ✧

「……その、浮島に遊びに行かねぇか?」
 祭り、やってるんだって。
 そう切り出した楊・暁(うたかたの花・f36185)は、拙くも朴訥に語り始めた。

 ブルーアルカディアのとある小島では、夏の一夜限り、盛大に花火をあげるという。
 花火と言っても、火薬を使ったものではない。天使核の埋め込まれた花光筒を用いた、光の花火だ。
「立体的な、プロジェクションマッピングみてぇなもん……って言えば良いか? 光だから熱くないし、触っても怪我もしない」
 それを地上から眺めるのであれば、普通の花火となんら変わりはしないが――そこは、ブルーアルカディアだ。
「あそこって、空飛ぶ機械とか動物がいるんだろ? それに乗って、その花火を空から見るんだって」
 乗り物は、大別すると2種類。
 まずは、2人乗りのフローターやスカイサイクル、小舟のようなミニガレオン。
 これらは簡易操作盤があり、速度や上下左右の動きが選べる。勿論、自動走行も可能だ。
 もうひとつは、ワイバーンやペガサス、ヒポグリフ、グリフォンなどの、騎乗用に慣らされた獣たちだ。
 どの子も穏やかな性格で人慣れしているため、乗ったことのない者でも、語りかければその通りに動いてくれる。
 それらに乗って、光の雨の降る夜空を駆け遊ぶ。ジェットコースターのようにアクロバティックに愉しんでも良いし、河をゆく船旅のようにゆったりと愉しむのも、また一興だ。

「……勿論、地上での愉しみも、ある」
 宵の口から夜にかけての、ゆったりとしたひととき。
 海や浜辺で遊んだり、緩やかに波に揺られたり。夜になおも白く灯る雲が、海一面に広がっているその浜辺なら、まるで雲の中を泳いでいるような気分にも浸れるだろう。
 現地では、雲のような柔らかさの、真っ白な素材でできた浮き具も借りられる。プールサイドベッドや浮き輪、ごろりと横になれるマット型のものなどもあるから、好きな物を借りて雲の海を満喫してはどうだろう。
 暑さも和らぎ、涼やかな夜風に浸りながら夜空を仰げば、花火から零れた光が燦めきながら柔らかに降り注ぐ。
 まるで流星群のようなその光は、島の天使核の影響で実体化することもあるらしい。そうして生まれたちいさな星が集った浜辺は、淡い光に灯されている。
 ただ眺めるのも綺麗だが、数粒ほどなら持ち帰っても良いとのこと。様々な形をした星があるから、お気に入りのものを探してみるのも良いかもしれない。

 最後に、遊び道具や食べ物の持ち込みは自由だと添えると、暁は微かに、けれど愉しげに口端を上げた。
「じゃあ、行くか。――光と雲と、星の海に」


西宮チヒロ
こんにちは、西宮です。

ブルーアルカディアの夏を愉しみましょう!

●補足(受付期間は後述に記載)
1章完結のシナリオとなります。
POW/SPD/WIZの選択肢に関わらず、OPに添った内容であればご自由にお過ごしください。

・光の花の空をゆく
 花火の中を突っ切ると光のシャワーが、花火の上に行けば眼下いっぱいに広がる光の花たちが愉しめます。
 (「花火 空撮」で動画検索していただくと、想像しやすいかと思います)
 ※音は花火っぽい音が鳴っています。
 乗り物に関しては、種類や速度、どんな動きをするかなど、ご希望あればご指定ください。

・雲のビーチで遊ぶ
 色々できるので複数の遊びを取り入れても構いませんが、それぞれの描写が薄くなりますので、どれか1つに絞ってプレイングをかけていただくことをお勧めいたします。

●プレイング
・同伴者はご自身含め2名まで。プレイング冒頭に【IDとお名前】もしくは【グループ名】をご明記下さい。
・OPにない情報はご自由にプレイングに盛り込んでください。極力採用します。
・公序良俗に反する行為、未成年の飲酒喫煙、その他問題行為は描写しません。

●プレイング受付期間・採用人数
受付開始/締切の日時はタグ参照。
受付可能人数上限があります。詳細はMSページをご参照ください。

⚠オーバーロードについて
・上記条件に限らず、送信可能であればいつお送りいただいても構いません。
・プレイングに問題がない限り全て採用します。
・当MSページ「🔹オーバーロード」項もご参照ください。

●当方グリモア猟兵
お声かけいただき、プレイングに問題がなければご一緒します。

皆様のご参加をお待ちしております。
104




第1章 日常 『浮遊島でキャンプを』

POW   :    魔獣や屍人帝国を警戒し、寝ずの番をする

SPD   :    火を起こし、手早く食事を作る

WIZ   :    安全に寝られる場所を確保し、休息する

イラスト:Hachi

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

結城・有栖
花火ですか。まさに夏って感じですね。
そう言えば、花火って上から見たらどんな感じ何でしょう?

「実際に見たら分かるんじゃないカナ。
上から見ると眺めも良さそうダヨ」

それもそうですね。
じゃあ、行きましょうか、オオカミさん。

水着を着用して、ミニガレオンをお借りしますね。
UCでオオカミさんも呼んで一緒に乗りましょう。

花火を上から立体的に見て回れるように、ミニガレオンを自動運転させます。
焼きそばやフランクフルトなどの軽食も用意したので、食べながら花火を見ましょう。

「何だか夏祭りっぽい雰囲気になってきたネ」

そうですね。
…花火って、上から見ても丸いんですね。
普段と違う視点で見ると、とっても不思議な光景です。



●天空の夏祭り
 茫々とした天穹の果てに陽が沈むころ、代わりに空を彩る光の花が咲き始めた。
 どどん、どん。ぱらら。従来の花火と似た音が、祭りの太鼓のように夜空に響き渡る。
「まさに夏って感じですね」
 そう言った結城・有栖(狼の旅人・f34711)もまた、フリルつきの黒ビキニに赤いパーカーといった夏の浜辺を満喫できそうな出で立ちだ。
「そう言えば、花火って上から見たらどんな感じ何でしょう?」
「実際に見たら分かるんじゃないカナ」
 上から見ると眺めも良さそうダヨ、と続けたのは、有栖の裡に宿るオウガの"オオカミさん"だ。
 その言葉に視線を上げれば、ほろほろと零れてくる光と星の欠片の合間を縫うように、様々な小型飛空挺や幻獣たちが行き交っている。誰しも皆、愉しそうだ。
 それもそうですね、と胸に手を当てながら頷いた娘は、
「じゃあ、行きましょうか、オオカミさん」
「あいよー、一緒に楽しみましょうカ!」
 静かにユーベルコードを唱えると、現れたオオカミさんとともに、有栖はひらりとパーカーの裾を靡かせ歩き始める。

 幾つもの乗り物のなかからミニガレオンを選ぶと、早速腰掛けた有栖の隣に、オオカミさんも軽やかな足取りでひょいと乗った。端にある簡易操作盤を操作し、高度や速度などを指定して自動運転モードに切り替える。
 ふわりとちいさな浮遊感を合図に、ミニガレオンがゆっくりと走行し始めた。徐々に地上から離れ、雲を縫って、気づけば光の降る位置まで辿り着く。
 赤、橙、黄、そして白。様々な彩の燦めきが、用意した焼きそばやフランクフルトを照らし出す。それを無表情ながらもどこか不思議そうに眺めながら、有栖は一口分の焼きそばを箸で取り、口へと運んだ。ソースの絡んだ麺が、もちもちとして美味しい。
 どどどん。どどん。花火の音に、光に、屋台飯。
「何だか夏祭りっぽい雰囲気になってきたネ」
「そうですね」
 自身と同じ姿をしているからか、オオカミさんと同じことを考えていた有栖はこくりと頷いた。そのまま、ミニガレオンが更に高度を上げる。
 ひゅるるるる、と細い音をたてながら打ち上げられた光が、眼下で一斉に弾けた。続けてふたつめ、みっつめ。次々に光の花が足許で華やかに花開く。
 光の弧を描きながらあっという間に消えてゆくけれど、その一抹の儚さを感じさせぬほどの光が、まるで水が溢れるかのように空を明るく照らしている。
「……花火って、上から見ても丸いんですね」
 仰ぎ見るばかりだったそれは、普段と異なる視点で見ても変わらなかった。
 その不思議な心持ちのまま、有栖は二口目の焼きそばを味わった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

葛城・時人
相棒の陸井(f35296)と参加

幻獣に乗れると聞いて!

水着なくて二の足踏んだけど
聞いてそわそわしてたら相棒が誘ってくれた!
実年齢考えたら子供っぽすぎるかもだけど…
や、考えないでおこ

皆すごいカッコいいから悩むけどペガサスに
ナイトメアは見た事あるけど、実際触って乗れて
飛べるとか最高だよ
能力者時代には騎乗スキルも持ってたしね
「宜しくね!」
首を優しく叩いて

楊が近くにいたら一緒にあがろって誘うよ
無茶な天駆けはあまりしない方が良いかもだけど
興が乗ったり競争になったら夢中でペガサスに頼むかな
陸井も負けず嫌いなトコあるしー

綺麗な光の雨をかいくぐって、仲間と相棒と、こうやって
ああ…ホントにすごくすごく楽しいよ!


凶月・陸井
相棒の時人(f35294)と参加

前にバイクに乗ろうって約束はしてたけど幻獣の方がレアだよな
水着が無くても楽しめるし、時人が喜んでくれてるし誘ってよかった
「ほら、時人。どの子にするか先に選びな」

俺は毛並みが気に入ったしヒポグリフを選ぼう
乗る前には優しく撫でてみるけど皆本当に良い子だな
「今日は宜しく頼むな」

空から楊くんを見つけたら手を振って声をかけるよ
「良かったら楊くんも一緒に飛ばないかー?」
最初は時人のペガサスに合わせて、脚が温まって来たなって感じたら
背中を優しく叩いて時人達の前へ。ちょっと楽しくなってきてるしね
「ふふ、俺とヒポグリフに勝てるか?」

本当に、空を駆けるって気持ちいい
最高の気分だ



「ホントに本物の幻獣だ……!」
「前にバイクに乗ろうって約束はしてたけど、幻獣の方がレアだと思って」
 ワイバーンやグリフォンなどの幻獣を前に声を弾ませる葛城・時人(光望護花・f35294)に、凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)もまた眸を細めた。
 聞けば、行きたいと思っていたものの、水着がなくて二の足を踏んでいたらしい。
 ――実年齢考えたら子供っぽすぎるかもだけど……や、考えないでおこ。
 そう首を振って行く気満々の構えを見せた時人だったが、現物を前に更に喜んでいる相棒の姿を見ると、誘って良かったと思う。
「ほら、時人。どの子にするか先に選びな」
「そうだな……皆すごいカッコいいから悩むけど……。……よし、ペガサスにする!」
「じゃあ、俺はヒポグリフにしようかな。毛並みが気に入った」
 言って優しく背を撫でれば、ヒポグリフもまたクルル、と甘えるような声を零した。
「ナイトメアは見た事あるけど、飛べるとか最高だよ」
 能力者だったころには騎乗技術も持っていたからか、扱いに慣れた様子の時人もペガサスとふれあいながらご機嫌だ。どの子も人慣れした様子に、陸井もまた眼を瞠る。
 がっしりとした2頭の背に跨がり、時人が首許を優しく叩く。
「宜しくね!」
「今日は宜しく頼むな」
 その声に呼応するかのように幻獣たちはひとつ鳴くと、大きな羽を広げ、その蹄で力強く大地を蹴り上げた。

 風を割くほどの疾走感。それでも思いのほか安定した走りは、頬に触れる夜気も相まって心地良い。
「あれ? あそこに居るの、楊じゃない?」
「本当だ。――楊くん! 良かったら一緒に飛ばないかー?」
 見知った姿を見つけ、少し高度を落としたふたり。陸井が手を振りながら声をかけると、名を呼ばれた少年はきょろきょろと視線を巡らせ――漸く空からだと気づいて視線を上げた。
「団長!? それに時人も! 来てたんだな!」
「うん。陸井に誘って貰って! 楊も一緒にあがろ」
「いいな! ちょっと待ってて。すぐ行く!」
 大きく手を振って応えると、楊・暁(うたかたの花・f36185)は近くにいたグリフォンへと、二言三言声をかけてから跨がった。おっかなびっくりといった様子でふたりの許へと合流した少年に、時人と陸井も笑顔を返す。
 弾ける音と光の海を、3頭の幻獣が駆け抜けてゆく。
 眼前を、頭上を、足許を、溢れる輝きが、絶えず流れるような軌跡を描きながら視界を過ぎる。ふと毀れた笑み声に仲間たちのそれも重なって、躍る心が更に加速する。
(どうやら、皆の脚も温まって来たな)
 満面の笑顔でペガサスを駆る時人をちらりと伺うと、陸井はヒポグリフの背をそっと叩いた。それに合わせて一馬身前へと出た相棒に気づくと、時人も負け時とペガサスへと合図を送り、更に前へと飛び出す。
 そんなふたりに遅れまいと、暁もまたグリフォンの速度を上げ、いつのまにか三つ巴の競争が始まった。
「ふふ、俺とヒポグリフに勝てるか?」
「じゃあ、試してみる?」
 無茶な天駆けはしないほうが良いのかもしれないが、挑まれたのなら逃げるわけにはいけない。陸井も負けず嫌いなトコあるよねー、と微笑を浮かべると、時人は身を屈めて気流に乗った。
 陸井とて、その背を黙って見送るほどお人好しではない。裡に満ちる高揚感のまま、ヒポグリフで一気に距離を詰める。
「速……! 速すぎるだろふたりとも!!」
 幻獣どころか動物への騎乗も初めての暁も、そう言いながら我武者羅に2頭へと食らいつく。
「本当に、空を駆けるって気持ちいい……! 最高の気分だ」
「ああ……ホントにすごくすごく楽しいよ!」
 仲間と、相棒と、今しか味わえないこの心地を、もうしばらく愉しんでいたい。
 そう想いながら、まるで流星のような光の雨のトンネルを、風を切って駆け抜けていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夏目・晴夜
リュカさんf02586と
浜辺から花火を眺めます

我々はいつも全力で遊び回ってばかりなので
偶にはのんびりと過ごすのも新鮮で良いですが
空の旅も確かに楽しそうですよねえ…
ええ、折角の機会ですから借りてきましょうか!
じゃ、この砂から出して下さい

いや、じゃなくて
そもそも何故埋めたんです?え、ハレルヤを砂に埋める必要ありました?
このハレルヤという偉大な至宝を世から隠す的な崇敬の念の顕れとかですか?
理由を聞いてもよくわからない
めっっっちゃ暑いですよ!私のか弱い人狼ボディが蒸し死ぬ寸前です

待って下さい、行ってくるね、じゃないですよ
絶対に駄目です。許可できません
いや此処から出してくれれば全てが解決するんですって!


リュカ・エンキアンサス
晴夜お兄さんf00145と
地上から花火を見て
お兄さんは砂に埋める
旗もたてておこう
うん、いい感じ

小舟に乗って空の旅か。いいな
ちょっと気になるから、小舟でも借りて…
え。いや
なんでって。夏は砂浜に埋まるものだって聞いたから
俺は身動き取れなくなるの嫌だから、お兄さんを埋めてみようかと
なかなか面白いね
隠すつもりなら顔まで埋めるよ
どう?暑くない?

じゃ、俺ちょっと行ってくるね
向こうから手を振るから
…ええ
いいじゃんちょっとくらい
だめ?そう…
しょうがないからここからいようかな
ここからでも、花火は充分きれいだし
いやこの砂どけるの面倒くさ…折角こんなに面白い恰好なのに、出すのがもったいないかな、って
ある種の芸術だよ



 見上げた夜空からほろほろと毀れてくる光と星の欠片たち。
「小舟に乗って空の旅か。いいな」
 それをぼうと眺めながら呟いたリュカ・エンキアンサス(蒼炎の旅人・f02586)に、
「空の旅も確かに楽しそうですよねえ……」
 夏目・晴夜(不夜狼・f00145)もまた、倣うように仰ぎ見ながら頷いた。
 いつも全力で遊び回っているふたりだ。たまにはのんびりゆったりと空の旅を愉しむのも、新鮮で良さそうだ。
「ちょっと気になるから、小舟でも借りて……」
「!」
 そう続けるリュカに、晴夜の双眸がカッと見開かれた。
「ええ、折角の機会ですから借りてきましょうか! ――じゃ、この砂から出して下さい」
 できることならば、両手を祈るように組んだり、大仰に広げたりしたいところかもしれないが、晴夜は唯々声で懇願した。その彼の首から下は、完全に砂に埋まっている。
「え。いや」
 慈悲もない即答に、晴夜の面に絶望の色が差す。
「いや、じゃなくて。そもそも何故埋めたんです? え、ハレルヤを砂に埋める必要ありました? このハレルヤという偉大な至宝を、世から隠す的な崇敬の念の顕れとかですか?」
 矢継ぎ早に問いかける。もう問いかけずにはいられないのは察して欲しい。
「なんでって。夏は砂浜に埋まるものだって聞いたから」
「……え?」
 よく理解できない回答に、思わず晴夜の思考が停止した。そんな様子もお構いなしに、リュカは続ける。
「俺は身動き取れなくなるの嫌だから、晴夜お兄さんを埋めてみようかと」
 なかなか面白いね、と。いつもの無表情ながらどこか愉しそうにリュカが添える。実際、頭上に立てた旗も良い感じで気に入っていた。
「それに、隠すつもりなら顔まで埋めるよ。それよりどう? 暑くない?」
「めっっっちゃ暑いですよ! 私のか弱い人狼ボディが蒸し死ぬ寸前です!!」
 おまけに、害はないとはいえ、足許――晴夜にとっては頭の位置――のすぐ近くには、雲の波が寄せては返していた。下手をすると雲に飲まれかねない、かもしれない。
「じゃ、俺ちょっと行ってくるね」
「待って下さい、行ってくるね、じゃないですよ」
 何のために暑いかと問うたのか、逆に問いただしたくなる勢いで晴夜が叫んだ。その瞬発力は、流石の人狼と言ったところか。
「向こうから手を振るから」
「許可できません」
「……ええ。いいじゃんちょっとくらい」
「絶対に駄目です」
「だめ? そう……じゃあ、しょうがない」
「わかってくれましたかリュカさん!」
「ここで見ようかな」
「いやいやいやいや!」
 ここからでも花火は充分きれいだし、と続いた声に被さるように、晴夜が全力で反論する。
「いや此処から出してくれれば全てが解決するんですって!」
 どこか涙声のようにも聞こえる、切なさを孕んだ必死の訴えに、
「え。この砂どけるの面倒くさ……折角こんなに面白い恰好なのに、出すのがもったいないかな、って」
 ある種の芸術だよ。そう、リュカは普段と変わらぬ淡々とした口調で答えた。
 ひゅるるるるる……どどどん。どん、どん。
「あ。また上がった」
 そんなこんなの1日を彩るように、特大の光の花が、ふたり見上げた先で晴れやかに花開く。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セラピア・ヒューレー
カノ(f35770)と
水着、緑、小花柄、ワンショルダー

綺麗なペガサス、今日ハ、ヨロシク、ネ
カノの、グリフォン、モ、とっても素敵
楽シイ、時間ニ、なりソウ!
(無表情ながらソワソワ、纏う緑の色艶も絶好調)

ン、写真、撮ル?(ぴーす)
ワタシも、やり方、教エテ、くれタラ、カノと、グリフォン、撮ル
(スマホを借りて一枚ぱしゃり)

風、気持ちイイ、ネ
ウン、終わっタラ、お別レ、なのハ、寂シイネ(ペガサスの首撫で)

ワ、花火、とても綺麗ネ
ただノ、火ハ、マダ、怖いケド
これハ、キラキラして、鮮やかデ、
本当ニ、花ミタイ
(植物好き最大級の褒め言葉)

カノ、誘ってクレテ、アリガト
世界が、広ガル、楽シイネ
マタ、出かけヨ、ネ


猪鹿月・カノ
セラ(f38058)と

ビキニにショートパンツ

グリフォンだ~っ
すごいカッコイイじゃん
初めて見る幻獣種にテンションが上がる

ふふっ、いい子
今日はよろしくね。一緒に楽しも
ペガサス超美人!
セラってばサマになってる
スマホ向けてパシャリ一枚

駆ける夜空は広大で気持ちいい
グリフォンの力強い羽ばたき最っ高!
ん~っ大好き
連れて帰りたいなー

わっ、見て見てセラ!
音と一緒に鮮やかな光の花が咲く

すごく綺麗ね。こんなに近いのに熱くない
飛ぶグリフォンに合わせて色んな角度から花火を楽しむ
あはっ、空から花火を見れるなんて
ブルーアルカディアって素敵なところね

あたしもセラと同じ
知らない世界を知るのは楽しい
もっと色んな景色を見てみたいの



「グリフォンだ~っ」
 夏の夜を満喫せんと、ビキニにショートパンツといった出で立ちで幻獣の集う場所へと訪れた猪鹿月・カノ(G.S.FANG・f35770)は、お目当ての姿を見つけると足早に駆け寄った。一回り大きな身体を、嬉々として見上げる。
「すごいカッコイイじゃん」
 獅子の体躯でありながら鷲の上半身を持つグリフォンは、夜にも尚映える金の翼を洋々と広げてカノを歓迎した。その始めて見る凜とした佇まいには、益々惚れ込んでしまいそう。
「ふふっ、いい子」
 抱きついたカノを受け止めながら、グリフォンは静かに腰を下ろした。翼を畳み、騎乗を促すように娘へと視線を向ける。それに気づいたカノは軽やかにその背へと乗ると、首許のあたりをそっと撫でる。
「今日はよろしくね。一緒に楽しも」
「カノの、グリフォン、モ、とっても素敵」
「セラのペガサスも超美人!」
 そう笑顔で返せば、セラピア・ヒューレー(枯れた森の最期・f38058)もこくりと頷いた。白銀の美しい鬣へと柔く触れながら、「今日ハ、ヨロシク、ネ」と語りかけた娘へ、白馬もまた鼻先をすり寄せ信愛を示す。
 小花柄のワンショルダーの水着を纏ってペガサスに乗るセラピアは、まさに森に愛された姫のよう。
「楽シイ、時間ニ、なりソウ!」
 無表情ながら、裡では確かに弾む心。纏う緑の色艶も鮮やかにセラピアが言うと、「そうだ」と零したカノがスマートフォンを取り出した。
「セラってば、サマになってる」
「ン、写真、撮ル?」
「撮ろ撮ろ」
 光の花の雫が毀れる夜に、ペガサスと一緒にVサイン。そんな夢のような1枚を収めてもらうと、今度はセラピアが手を差し出した。
「ワタシも、やり方、教エテ、くれタラ、カノと、グリフォン、撮ル」
「ほんと? えっと、ここのボタンを――」
 手短に教わって撮った、記念すべき初めての1枚。
 笑顔ではしゃぐカノと悠々としたグリフォンを収めたふたりは、早速夜空の遊覧飛行へと繰り出した。

 まるで自分が幻獣そのものになったかのように、彼らに乗って往く夜空は自由で溢れていた。
 力強く羽ばたいたかと思えば、大きく翼を広げたまま滑空する。菊や牡丹の花雨を存分に浴びたり、全長数メートルもあろう滝のような光の中を突き抜けたり。不思議なほどに、行きたい場所、やりたいことを汲み取ってくれる彼らと共に、望むままに空を駆ける。
「風、気持ちイイ、ネ」
「うん、夜空も広大で気持ちいい。グリフォンの力強い羽ばたき最っ高!」
 騎乗にも慣れてきたカノが、そう言って両手を掲げた。天から降り注ぐ光の欠片が、その指の間を毀れ落ちてゆく。
「ん~っ大好き。連れて帰りたいなー」
「ウン、終わっタラ、お別レ、なのハ、寂シイネ」
 そう言って静かに首許を撫でたセラピアに、ペガサスもまた淋しそうな視線を向けた。そうしてぐん、と上昇する。
 忽ち2頭の幻獣は揃って光の海を抜け出すと、翼を大きく広げてゆったりと滞空し始めた。すぐさま、ひゅるるるると次の花火の音が響く。
「わっ、見て見てセラ!」
 先に気づいたカノが指さすほうを見遣れば、ふたりのすぐ眼下で万色の千輪花火が一斉に咲いた。続けて、音と光が絶え間なく夜空いっぱいに溢れては消えてゆく。
「ワ、花火、とても綺麗ネ」
「すごく綺麗ね……こんなに近いのに熱くない。――あっ」
 くるりと旋回したグリフォンが、今度は光の随に漂うように飛行を始めれば、それに続くペガサスもまた、白銀の翼を燦めかせながらセラピアへと新しい風景へと誘う。
「あはっ、空から花火を見れるなんて、ブルーアルカディアって素敵なところね」
 一瞬、一瞬。娘たちの横顔を鮮麗に彩る、目眩くひかりと色。ほろほろと降る星のような光が飾る、今宵のひととき。
「ただノ、火ハ、マダ、怖いケド……これハ、キラキラして、鮮やかデ、本当ニ、花ミタイ」
 それは、植物を愛するセラピアにとっての至上の賛辞。
「カノ、誘ってクレテ、アリガト。世界が、広ガル、楽シイネ」
「うん。あたしもセラと同じ」
 知らない世界を知るのは楽しいし、もっと色んな景色を見てみたい。
 そう続けるカノに、セラピアも静かに視線を向ける。
「マタ、出かけヨ、ネ」
 ふたりで、一緒に。
 これからも幾つもの景色を、世界を、巡ってみよう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

陽向・理玖
【月風】

ブルーアルカディアも幻獣も初めてだ
瑠碧どの子がいい?
ワイバーンかっこいいけど
二人でならペガサス?
グリフォン!いいじゃん
もふもふしてるし
目が優しそうだし賢そう
任せて大丈夫そうな気がするぜ

瑠碧前乗る?
そっちの方が安定感ありそうだし
瑠碧動物と話すの上手いだろ
任せていいか?

よーし出発!
後ろから瑠碧抱えるように乗り
そっか?
瑠碧の指示がいいからもあるんじゃね?

すげぇ
光が降って来る
イルミみたいな感じかと思ったけど
マジで光の雨って感じ
地上で見るのとは全然違うな
光に手が届きそう

これなら熱くないし怖くねぇ?
それとも近くてびっくりする?
気遣い

流星群かそいつはいいな
何でも叶っちまいそう

おお
星の欠片見つかるかな


泉宮・瑠碧
【月風】

ブルーアルカディア…来るのは初めてですね
順に幻獣を見て行き
…この子が、良いです
グリフォンの目を見て、初めましての挨拶を
おいで、と手を伸ばして、来てくれてからもふもふ

はい、任されました
お願いします、と、疲れたら教えてくださいね
そうグリフォンと話し
理玖の薦め通り前に乗り


理玖の乗り方、安定します…
包まれる感覚と背中の温もりに
花火への緊張が少し和らぎ
よく見られる様に、ゆったりと近くを飛んで貰います

音にはまだびくつきますが
光は…熱く無いので、大丈夫です
この間見た事もあって、緊張は残りつつも光の雨を見て
咲いて散ったら…流星群の中、みたいですね

手が届く…
なら…あとで浜辺にも、星を探しに行きますか?



 そこは、まるで幻獣たちの寝床のようだった。
 ごろりと横になっていたり、空を眺めていたり。麻布でできた幾つもの天蓋の下、様々な幻獣たちが各々気ままに寛いでいる。
「瑠碧、どの子がいい?」
 格好良さで言えばワイバーンだが、ふたりで乗るならペガサスも良さそうだ。そう続ける陽向・理玖(夏疾風・f22773)の隣で、泉宮・瑠碧(月白・f04280)もまた、あたりへと視線を巡らせた。
 白銀の鬣が美しいペガサスに、金色の翼を柔くはためかせているヒポグリフ。ワイバーンも複数いるが、それぞれ異なる色の鱗が、花火のひかりを浴びて鮮やかに燦めいている。
「……この子が、良いです」
「グリフォン! いいじゃん。もふもふしてるし、目が優しそうだし賢そう」
 声をかけられたグリフォンは、他の同種よりも大きな個体だった。けれど器用に身体を屈めると、瑠碧たちの方へと顔を向け様子を窺っている。
「初めまして」
 硝子のように澄んだ眸を見つめながらふわりと微笑み、そっと手を伸ばして。おいで、と呼んでみれば、瑠碧の声音に呼応するかのようにグリフォンが腰を上げた。ゆっくりと歩み寄り、ふたりの前で再び座る。
 撫でても良いと言わんばかりの背中に、ふたりは見合って頷くと、そろりと手で触れてみた。ふわりとした羽毛に、つい笑みが毀れてしまう。
「任せて大丈夫そうな気がするぜ」
 言いながらグリフォンへと視線を向けた理玖に、彼もまたクルルルとご機嫌そうに鳴いた。そのまま手を伸ばして額を撫でると、まるで小鳥のように嬉しそうに眸を細める。
「前乗る? そっちの方が安定感ありそうだし。それに、瑠碧、動物と話すの上手いだろ」
 任せていいか? と伺う理玖に、「はい、任されました」と瑠碧もちいさく、けれど確りと頷いた。お願いします、とグリフォンをひとつ撫でて、ふたりは前後に並び乗る。
「疲れたら教えてくださいね」
 そう気遣う娘に頷いた後、
「よーし、出発!」
 理玖の合図とともに翼を大きく広げると、ふたりを乗せた幻獣は羽音を立てながらゆっくりと夜空へ舞い上がった。

 初めて訪れたブルーアルカディアの天穹に、光を散りばめながら咲く千の花。
 数えきれぬほどの煌めきが、空の昏さを忘れさせるほどに溢れては消えてゆく。
「すげぇ……光が降って来る」
 イルミネーションを想像していたけれど、まさに光の雨だ。地上から仰ぎ見る花火とは全く異なるその美しさが今、手を伸ばせば届くほど近くにある。
「瑠碧、これなら熱くないし怖くねぇ? それとも近くてびっくりする?」
「光は……熱く無いので、大丈夫です」
 響く音にはまだ身体が竦んでしまうけれど、つい先日、実際の花火も理玖と共に愉しめた。あのときと同じように、護るように身体を包んでくれる理玖の腕と、預けた背を受け止めてくれるそのぬくもりが、強張っていた心まで溶かしてくれる。
「次は、花火の間を抜けてみようぜ」
「はい。……グリフォンさん。よく見られる様に、ゆったりとお願いできますか?」
 瑠碧の声に短く鳴いて応えたグリフォンが、夜空を大きく旋回した。それでも安定した乗り心地なのは、理玖の支えと、瑠碧の的確な指示があるからこそ。
 花弁のように、雫のように、止め処なく降り続ける柔らかなひかりたち。
 仄かな緊張感は未だあるけれど、無数の燦めきを透いた眸に映しながら、瑠碧の唇から声が洩れた。
「咲いて散ったら……流星群の中、みたいですね」
「流星群か……そいつはいいな。何でも叶っちまいそう」
 ここからは散って夜に溶けてゆくように見える光も、地上まで辿り着いたものは星の欠片となって、淡く浜辺を灯している。
 それは夢や幻ではなく、ここではほんとうのことだから。
「なら……あとで浜辺にも、星を探しに行きますか?」
「おお。いいな」
 ――星の欠片、見つかるかな。
 そんなふたりだけの御伽噺が、今宵密やかに紡がれる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
※今年の水着着用

一人より誰かと一緒の方が楽しいから
楊さん、良かったらご一緒していただけますか?

動物に乗って空飛んでみたいな
普段なら自力で飛んじゃうからたまにはね
…2人乗りでもいける?
動物さんは流石に個別じゃないと重いかな?(お任せ)

ふふ、お世話になります
少しの間よろしくね
と、担当してくれる動物さんの頭を優しく撫でて
基本はゆったりと、時にアクロバティックに楽しみたいな

すごーい、キラキラだ!
ほら見て楊さん、花火触れる…!
妖怪花火の上に乗ったこともあるけど
触れる花火ってやっぱり何度見ても飽きないよね

あ、ここからなら浜辺も見える
あの光って持ち帰ってもいいんだっけ
綺麗だなぁ…後で浜辺も散策してみようかな



「……あ」
「楊さん」
 楊・暁(うたかたの花・f36185)が幻獣乗り場で見知った顔を見つけたと同時、花嫁を思わせる繊細なレースとふんわりとしたフリルをあしらった水着姿の栗花落・澪(泡沫の花・f03165)もくるりと振り向いた。
「澪も乗りに来たのか?」
「はい。動物に乗って、空を飛んでみたいなと思って。――普段なら自力で飛んじゃうから、たまにはね」
 そう言って背の羽をふわりと広げた澪に、「なるほどな」と暁も頷いた。翼を持たない妖狐だから空への憧れもあるのだろう。淡々とした口調ながら、尻尾は興味津々といった風にぱたぱたと忙しなく動いている。
「そうだ。楊さん、良かったらご一緒していただけますか?」
「俺?」
「一人より、誰かと一緒の方が楽しいから」
「……確かにな」
 それは、暁もまた良く知る感情。だからこそ、珍しく微笑を向けて賛同する。これから見られるであろう絶景をひとりで満喫するのも良いだろうけれど、ふたりならもっと心躍るはず。
 ならば早速と、ふたりで幻獣を選び始める。
「……ふたり乗りでもいける? 動物さんは流石に個別じゃないと重いかな?」
「併走するのも面白そうだけど……あ。あいつなら大丈夫そうじゃないか?」
 そう言って向けた視線の先には、他よりも一回り大きなペガサスの姿があった。ふたりの視線に気づいたのか、ペガサスもまた、淡い青の双眸を澪たちへと向ける。
「俺たちのこと、乗せてくれるか?」
 近寄った暁が尋ねれば、心を許すかのように身体を寄せてきたペガサスに、
「ふふ、お世話になります。少しの間よろしくね」
 澪もふわりと瞳を細め、頭をそっと撫でた。

 高らかにひとつ嘶いた白馬は、夜になお燦めく翼を広げて静かに飛び立った。そのまま花火の咲く場所まで上昇すると、澪の声にあわせてゆったりと、時に活発に夜を駆る。
 弾ける音が響くたびに花開く、数えきれぬほどの耀きたち。彩が、光が、絶えることなく視界を横切り、流麗な軌跡を描きながら地上へと毀れてゆく。
「すごーい、キラキラだ! ほら見て楊さん、花火触れる……!」
「ははっ、本当だ。どんどん掌から零れてくな!」
 両の手で器を作って受け止めてみるも、忽ち溢れた光がほろほろと夜に溶けていく。熱くはないのに、どこかあたたかさを帯びた柔らかな燦めきに、自然と口許も緩んでしまう。
「妖怪花火の上に乗ったこともあるけど、触れる花火ってやっぱり何度見ても飽きないよね」
「なんだそれ、すげぇ気になる……!」
「ふふ、妖怪花火っていうのは――」
 澪の紡ぐ想い出話に、光の花が彩りを添える。そうして語り終えてふと視線を落とせば、雲の波が静かに打ち寄せる浜辺があった。
 仄かに灯って見えるのは、星の欠片のちいさなひかりが集っているから。
「綺麗だなぁ……。あの光って、持ち帰ってもいいんだっけ?」
「ああ。数粒くらいなら良いって」
「じゃあ、後で浜辺も散策してみようかな」
 言って、澪が柔く笑う。
 その頬の輪郭をなぞりながら、ひとひらの光がまた、夜風に乗って溶けていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クーナ・セラフィン
ミモザさん(f34789)と。

空の世界の花火って中々面白い感じなんだね。
そりゃもう至近距離で見ないと!楽しそうだし!

服装は…水着がいいのかな?
ミモザさん誘い空へ。
乗るのは何となく鱗な気分なのでワイバーン。
…ミモザさんそう言えば空飛ぶのは結構慣れてたりするのかな?
もし慣れてないならできるだけ丁寧に説明。
あんまり速度出すと大変だからまずゆっくり、光にびっくりしそうになるけど大丈夫、慌てなくても動物たちは慣れているはずだからね。
落ちないようぎゅっとしがみついて、見渡すのは余裕ができてからで十分。
…結構揺れるけどその揺れも何か楽しいね、これ。
空の花火の中を突っ切ったりその先でくるりと反転して再突撃したり。
更に高い所から見下ろしたり…こんな景色はそうそう見れるものじゃないよね。
空から見たら咲いてる花を真上から見下ろしてる感じになるのかな。
わいわい話しつつこの時間を二人でたっぷり楽しめたら。

…空から海へダイブとかも楽しそうだにゃー。
いややるとしても予め周りに言ってからだけども。

※アドリブ絡み等お任せ



 夜空に咲く花に手が届くなんて聞いたら、じっとしてはいられない。逸る心のままに、水着姿のクーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)と海藤・ミモザ(millefiori・f34789)は幻獣乗り場へと駆け出した。
 なんとなく鱗の気分だから、選んだのはワイバーン。そう簡単に導き出せたのは、着飾りもしない、見栄を張ることもない、素直な気持ちだからこそ。
 娘たちを乗せた2頭の飛竜は、最初はゆっくりと、徐々に速度を上げて上昇すると、幾重もの薄い雲を抜け、忽ちぽっかり開けた夜空へと飛び出した。
「ひゃっ! 速……! もうこんな高さ!?」
「そう言えば、ミモザさんは空飛ぶのは結構慣れてたりするのかな?」
「妖精の姿のときは飛んでたけど、さすがにここまで高いところには来たことないなー」
 自力飛行と騎乗獣とじゃまた違うしね。そうからりと笑うミモザの手許は気づけばお留守で、
「っ、あわっ!? っととと……!」
 不意に吹いた風に上半身が煽られて、どうにも危なっかしい。
「あんまり速度出すと大変だから、まずゆっくり……光にびっくりしそうになっても大丈夫。慌てなくても動物たちは慣れているはずだからね」
「う、うん。ゆっくり……ゆっくり……」
「そうそう。慣れるまでは、落ちないようぎゅっとしがみついて。見渡すのは余裕ができてからで十分だよ」
「――あ、なんかわかってきたかも!」
 声を弾ませながら、ぐるりと旋回したり、滑空したり。丁寧な説明の甲斐あって、すぐに乗りこなし始めたミモザに、クーナもつられて笑顔を零す。

 どどどん、どん。ひゅるるるる、ぱぱぱぱ。
 ワイバーンでの空の旅に感動したのも束の間、すぐ真横で弾けた光に、ふたりは歓喜の声を上げる。
「ひゃあああクーナさん、クーナさん! 光の洪水~~~~っ!!」
「空の世界の花火、思った以上に凄いね! ……こんな景色は、そうそう見れるものじゃないにゃー」
 今日くらいは、欲張りになったって良いはず。いや、ならなければ勿体ない。
 いつもは見上げるばかりの花火だからこそ、煌めく花の海を突っ切ったら、そのまま反転してもう一度。連続で咲き乱れるリズムに乗って、上へ、下へ、右へ、左へ。縦横無尽に駆け抜けたら、今度は鋭角的に昇って一面の光を眼下に見下ろす。
「……結構揺れるけど、その揺れも何か楽しいね、これ」
「うん! 自分で飛んでる、って感じがすごくする!」
「……空から海へダイブとかも楽しそうだにゃー」
 外界の雲海と違って、この真下の雲揺蕩う海なら泳ぐこともできるし、十分な深さもあると聞く。試してみるのも、また夏の醍醐味だ。
「クーナさん、結構チャレンジャー!?」
 驚きながらくすりと笑うミモザに、
「勿論、今すぐじゃなくて、予め周りに言ってからだけども」
「ふふ、やる気満々だね! よーし、じゃあ後でやってみる?」
「やってみようか!」
 クーナも満面の笑顔で頷く。
 夜の空から、夜の海へ。身一つで飛び出した先には、どんな景色が待っているだろう。
 ――祭りの夜は、まだ始まったばかり。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鈴鹿・小春
双良センパイ(f35515)と!

空の世界、雲の海…他の世界ってホントすっごく色々あるんだね!
この世界の楽しい時間過ごしたいなー。

BUの水着+上着姿。カメラも準備。
光の花火を空の特等席で見られるなんてなにそれ行くしかないし!
乗るのは…やっぱりこっちかなーとグリフォンを。
グリフォン騎乗初心者だけどよろしくお願いします…!
恐れは一瞬で吹っ飛んで、力強く飛ぶグリフォンの格好良さと風切る爽やかさの清々しさ、そして光の雨の綺麗さにもう夢中!
段々慣れてきたらグリフォンがやや抑えて飛んでくれてるのも感じ取れて来て。
全力で飛んでも大丈夫、と囁いたり。
アクロバティックな飛び方になってもどんとこい!

一通り空楽しんで着地したらグリフォンにお礼言って海へ。
あ、双良センパイこんばんは!と声をかけて。
さっき空グリフォンで飛んできたんですけど凄かったです!と感想言ったり。
浮き具を借りて空の花火をゆらゆら揺れながら見上げて写真撮って。
すっごい夏って感じが凄くしますよねー。
流れ星に見惚れて感動したり。

※アドリブ絡み等お任せ



 夜に尚映える青のパーカーに、ワンポイントのふわふわチャームが愛らしいサーフパンツに身を包んだ鈴鹿・小春(万彩の剣・f36941)は、地上の光を見下ろしながらグリフォンの柔らかな羽をひとつ撫でた。
 初めて乗るなら、と選んだグリフォン。「よろしくお願いします……!」とぺこり一礼した小春の頭へ嘴で優しく触れた彼は、今ではすっかり空の相棒だ。
 最初だからこそあった恐れも、ひとたび飛び立てば何処へやら。力強い羽ばたきやダイナミックな飛行は惚れ惚れするほど格好良く、風を切る爽快感と絶え間なく降る光の雫に忽ち夢中になってしまう。
「空の世界、雲の海……他の世界って、ホントすっごく色々あるんだなー!」
 ――光の花火を空の特等席で見られるなんて、なにそれ行くしかないし!
 そう思って飛び出してきたけれど、能力者だったころに満喫した学生らしい愉しみとはまた違った面白さが、いま確かにここに在る。
「……あ。もしかして抑え気味に飛んでてくれた?」
 騎乗に慣れてきたからこそ察した気遣いに、小春は苦笑しながらも礼を添えた。
「もう全力で飛んでも大丈夫だよ」
 折角の遊覧飛行だ。グリフォンにも思いっきり愉しんでもらいたい。
 そう思うままに言葉を継げば、嬉しそうに一声鳴いた幻獣は、一段ギアを上げたかのように加速した。
 思わず手綱をぎゅっと握りしめながらも、不思議と笑み声が零れる。さしずめこれが一体感というものだろうか。言葉にせずとも、視線を合わせずとも、グリフォンの喜びが伝わってくる。
「よーし! アクロバティックな飛び方でもどんとこい!」
 気合満点の小春の声に、幻獣もまた高らかに呼応した。
 華やかに夜空を彩る光たちを、一気に抜けたり、波打つように蛇行したり、仕舞にはくるりと蜻蛉返りをしたり。
 さすがにこれはカメラで撮るどころじゃないな、なんて。小春もつい、苦笑を漏らす。

「――って感じで、もう凄かったんですよ!」
「ここから見てるだけでも良くわかるよ。僕も後で乗ってみようかな」
 興奮気味に語る小春へと頷くと、蓮見・双良(夏暁・f35515)も空を仰いだ。光の花はまだまだ当分咲き終わりそうにない。
「やっぱりお勧めはグリフォン?」
「そうですねー」
 相槌を打ちながら、別れたばかりの幻獣の姿を思い出す。たっぷり撫でてお礼も伝えたけれど、早くももう一度乗りたい気持ちが込み上げてくる。
「でも、双良センパイならペガサスも良いかも?」
 ナイトメアに似てるし、と添えた小春に、双良は「ああ」と短く返した。うちのと違って凛々しいかもね、と親しい間柄にしか見せない皮肉を漏らす。
 そんな様子に笑みを返しながら、倣って見上げた先で咲き誇る大輪の光の花々に小春は眸を細めた。
 浮き具に身体を預けて、雲の海に揺られるままに揺蕩って。のんびりと気ままに、この一瞬をファインダー越しに眺め見る。
「すっごい夏って感じが凄くしますよねー。……あっ!」
「流れ星……!」
 小春が気づき、双良が思わず掌を差し出すと、ころりと零れてきた星の欠片が、優しく夜に光を灯した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

冴島・類
リティさん(f20406)と

灯環も共に空の旅へ
君は今日はリティさんの肩にと

2人で乗るので
力強そうな飛龍さんにご一緒いただけたら
よろしくね、乗る前に動物会話でご挨拶
ちゃんと信頼関係は築きたい

彼女を前に乗せてから
後ろで補助しながら駆けれたら
うん
両手で手綱を離さないように握って
後は、どちらに行きたいかを
軽く手綱開きながら伝えてご覧
伝わるとおりにしてくれたら
目一杯褒めてあげてね

ちゃんと見えているから
背筋は伸ばして大丈夫だよ
出発進行!
お、灯環も鳴いて返事してる

弾ける音がする度に
のぼって、咲く光の花の間を飛ぶ
地上で見るのとはまるで違う
歓声につられて君の見る先へ向いて
輝きに見惚れ

…おっと
傾きかけたら支え
手をぽんとして、安心させたい

あの中を?
できるかい
リティさんの願い聞いて
きっと応えてくれるさ、も込めて飛龍さんに声を
慣れて来たらぐるり回るのもありかな

きらきらどかん
目まぐるしい花火の色
滅多に見られぬ景色に鼓動が早まりそう
君もかなと表情を見て
灯環も目を回さないよう
確り彼女に捕まってね

ああ、勿論
捕まえているよ


城野・いばら
類(f13398)と灯環と
光のお花咲くお空の世界、
飛龍さんとの旅を楽しみに

はじめまして飛龍さん
今日はよろしくねと撫でて
ええ、できれば
飛龍さんにも気持ち良く飛んでほしいもの
初騎乗だけど、類に習ってチャレンジ!

手を借りて、前に乗せてもらったら
えと…手綱を握っていたら良い?
貴方の説明に確り頷いて

浮遊する感覚にぴゃっと伸びる背筋
あ、類が前見えないかしら
前屈みの方が良いのかなってそわそわしちゃう
進行の合図に、もう一度手綱を確かめて
灯環はね、私に掴まっていてね

わぁ!みてみて
手が届きそうな距離に零れ落ちてきた光の雫
思わず手を伸ばしたら
体が傾いて
慌て手綱をぎゅっ
ありがとう、類
ごめんね、灯環も吃驚したでしょう

でもでも
綺麗なのに熱くないと聞いたら
やっぱり触れてみたくって
光のシャワーを潜ってみたいわってお願いを

まぁ!ぐるって回るの?それも気になるわ
叶えてくれたら
すごい、すごいわ、飛龍さん!
って、きっと沢山はしゃいじゃうの

ドキドキ、わくわくが弾けそうで
また飛び出しちゃいそう
…類も、リティを掴まえていてね?
なんて



 ゆったりとした動きで、ふたりを包み込むかのように広げられた飛龍の翼に、冴島・類(公孫樹・f13398)も城野・いばら(白夜の揺籃・f20406)も、眼をまあるく見開いた。
 視界を覆うそれは、まるで鱗の天蓋だった。夜空も、そこに花開く光さえも隠すほどの大きさに、類の連れであるヤマネの灯環は大層驚いたのか、いばらの右肩から首の後ろをまわって左肩へと慌てた様子で移動した。
「はじめまして飛龍さん。今日はよろしくね」
 短い時間とはいえ、折角空を共に往くのだ。できれば飛龍にも気持ち良く飛んで欲しい。そう想いながら撫でるいばらに続いて、
「僕も、よろしくね」
 類も動物会話で語りかけると、ワイバーンもまた長い首を垂れてふたりへと顔を近づけた。信愛の行為なのだろう。猫よりもうんと低音ながらも、はっきりと喉を鳴らす音を響かせる。
 そのまま腰を下ろした飛龍の背へと、まずは類が脅かせぬようそろりと乗った。2人乗りをしたいからと体躯の大きな幻獣を選んだが、その広い背はやはり安定感がある。
 振り返り差し出された手を取って、次いでいばらが恐る恐る騎乗した。一気に高くなった視界に、いばらの頭の上の灯環が円らな瞳を不思議そうに瞬いた様に、類は思わず笑みを洩らす。
「じゃあ、リティさんは前へ。僕は後ろで補助するから」
「わ……わかった。えと……飛んでる間は、手綱を握っていたら良い?」
「うん。両手で手綱を離さないように握って……後は、どちらに行きたいかを、軽く手綱開きながら伝えてご覧」
 伝わるとおりにしてくれたら、目一杯褒めてあげてね。そう添えた類に、いばらも真剣な眼差しでこくりと頷く。初めての騎乗はどうにも緊張してしまうけれど、同時に、これから出逢うであろう未知なる景色を想うと胸が高まる。
 そんなふたりをちらりと伺った飛龍は、正面へと視線を戻すと、準備は万全だと言わんばかりに一度ちいさく浮上した。
「わっ……!」
 不意の出来事に、思わずぴんと伸びてしまった背。それに気づいたいばらは、「――あ。類が前、見えないかしら」と、今度は逆に背を丸めた。あちらこちら気を遣いすぎて、そわそわと落ち着かない。
「ちゃんと見えているから、背筋は伸ばして大丈夫だよ」苦笑を滲ませながら返す類もまた、ひとつ呼吸をして居住まいを正す。
「そろそろ行こうか。――出発進行!」
 類の合図とともに、手の内にあるのを確かめるように、いばらも手綱を力強く握った。頬に触れるふわふわのぬくもりに、過剰な緊張が程よく解ける。
「灯環はね、私に掴まっていてね」
 そっと語りかければ、愛らしく返る声。柔く綻ぶふたりを乗せた飛龍が、その大翼をゆっくりと広げた。

 リズミカルな音とともに咲く、万彩の花たち。
 その音と光の波を渡るかのように、緩やかに上下しながら飛龍が夜空を昇る。花火の合間を抜けるたび、花びらのように柔く舞う光が、視界に幾つもの軌跡を描いては消えてゆく。
 地上で仰ぎ見るのとはまるで違う夢のような景色に、思わず言葉も忘れてしまう。
「わぁ! みてみて」
 弾ける音のなかでも鮮やかに響いた声。つられて向けた視線の先には、零れたひとしずくを掌に乗せてはしゃぐいばらの姿があった。
 普段ならば、触れることなど到底叶わぬ星のひかり。そっと手を伸ばしてそれを受け止めた娘の横顔もまた歓びに煌めいて、類は知らずと見惚れていた。途端、体勢を崩したいばらの身体を、咄嗟に支える。
「……おっと」
「ありがとう、類」
 思わず手綱を握りしめていた手に、類のそれが重なった。ゆるりと抜ける力のままに、気づけば服に確りとしがみついている灯環の背をそっと撫でた。「ごめんね、灯環も吃驚したでしょう」と、怯えの色を滲ませる双眸に笑顔を見せる。
「でもでも、綺麗なのに熱くないと聞いたら、やっぱり触れてみたくって。――光のシャワーを潜ってみたいわ」
「あの中を?」
 いばらの願いに、類は静かに瞠目した。そうして飛龍へと問いかける。
「できるかい?」
 きっと応えてくれるさ。そう期待を込めた声には、短く力強い鳴き声が返った。
「慣れて来たら、ぐるり回るのもありかな」
「まぁ! ぐるって回るの? それも気になるわ」
 ならばまずは、もうすこし上空へ。その先にある、光の花園へ。
 そう言わんばかりに、ワイバーンはゆるりと顔を上げて翼を大きくはためかせた。加速する音と光のなか、瞬く間に光の海へと飛び込むと、星となった光が止め処なくふたりへと降り注ぐ。
 赤、黄、橙。菊に牡丹に、錦冠。躍る光に寄り添うように、飛龍も夜空に大きな弧を描く。
「すごい、すごいわ、飛龍さん!」
 夢幻のような風景に、じっとしているほうが無理というもの。
(……君もかな)
 弾む鼓動のままに見れば、視線の先には愉しそうないばらの姿。屹度、今の自身も彼女と同じ顔をしているのだろう。
「灯環も目を回さないよう、確りリティさんに捕まってね」
 飛行にも慣れてきたのか、娘の肩や腕をちょこちょこと渡っている灯環に微笑むと、可愛い応えの後に、ぽつりと零れた声。
「……類も、リティを掴まえていてね?」
 ――ドキドキわくわくが弾けそうで、また飛び出しちゃいそうだから。
 どこか恥ずかしそうに視線を逸らしたいばらに、類はその双眸をふわりと細めた。
「ああ、勿論」
 捕まえているよ。
 どれほどの光に溢れても、決して君を失わないように。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シャルファ・ルイエ
シャオさんも猟兵さんだったんですね。
それなら、ちょうどいいですし一緒に遊びませんかってお誘いしてみます。

お話してた花火とはちょっと違うかもしれませんけど、此処の花火は此処でしか体験できませんもの。
どうせならどっちもって欲張って楽しむのが良いです。
あ、でも耳が良いなら、耳栓みたいなものも用意しておいた方が良いんでしょうか。
あと、シャオさんにやりたい事なんかがあればちゃんと聞くので遠慮なくどうぞ。

乗った事のない乗り物は気になりますし、騎乗用の子達もすごく魅力的ですけど……!
わたしは今日はシリウスと一緒に飛ぶ事にするので、シャオさんは好きな乗り物を選んでくださいね。
この世界の空を魔法の箒で飛ぶのも、なかなか素敵でしょう?

乗り物が決まったら、真っ直ぐ飛んで花火の中へ。
せっかく熱くないんですし、突っ切って突き抜けて、花火の上まで行ってみたいです。
花火の中を飛ぶなんてあまり出来ませんし、周囲で開く光の花も、普段見上げている花火を見下ろすのも、きっと絶対綺麗ですから。



 出逢ったのは、春。
 桜の舞う麗らかな午後、公園のガゼボで甘味をお伴にのんびりと語らったふたりの再会は、夏空の下だった。
「シャオさんも猟兵さんだったんですね」
「そういうシャルファも……。というか、そういやお互いに名前しか言ってなかったな……」
 今日のご時世、天使の羽や狐の耳と尾があるからといって、猟兵だとも限らない。とはいえ、初対面で聞くのも憚られる――という気持ちがあってもなくても、あの日のふたりは何よりも眼前の甘味に釘付けだったのは確かだ。
「それなら、ちょうどいいですし一緒に遊びませんか」
「俺と……?」
「はい。お話してた花火とはちょっと違うかもしれませんけど、此処の花火は此処でしか体験できませんもの」
 どうせならどっちもって欲張って楽しむのが良いです。そう柔らかく微笑むシャルファに、暁は驚きを顕に瞬いた。

 ――空飛べんのか……! いいなぁ……気持ちよさそうだ。俺も飛んでみてぇな。
 ――花火とか……見たことねぇんだけど、すっげぇ音なんだってな?

(……あのときの話、覚えててくれたのか……)
 そのまま忘れ去られてもおかしくはない、他愛もない会話。それを記憶に留めて、こうして誘ってくれる人がいる。
 昔だったら考えられない状況に、裡にじんと歓びがしみてゆく。
「……あ、でも、シャオさんが他にやりたいことがあれば、遠慮なく言ってくださいね?」
「い、いや! その……誘ってくれて、ありがとう……。俺も……一緒に、遊びたい」
 感動に浸っていて、返事をするのを忘れていた。空いてしまった間を継ぐように続けたシャルファに、暁は慌てて答える。
 こんなとき、普通の人はどう返すのだろう。言葉選びにも自信がなく、最後のほうはどうにも尻すぼみになってしまったが、そんなことを気にする様子もなく、シャルファは澄んだ青い双眸をふわりと緩めた。
「じゃあ、早速乗り物を探しましょう!」

 躍るような足取りで向かった騎乗場には、ペガサスやグリフォンなどの幻獣や、ミニガレオンやスカイサイクルといった飛空挺が、様相様々に集っていた。
「シャルファはどれにするんだ?」
「わたしは、今日はシリウスと一緒に飛ぼうかと」
「シリウス?」
 きょとりと瞠目する暁へ愉しそうに笑うと、娘は手にした魔法の箒を前へと出した。意志を持って空を駆けるそれは、白銀のような燦めきを放っている。
「この世界の空を魔法の箒で飛ぶのも、なかなか素敵でしょう?」
 乗ったことのない乗り物も、騎乗用の幻獣たちもとても魅力的だけれど、こんな素敵な機会は次にあるかもわからないから。
「いいな、それ……! なら、俺はこれにするかな」
 瞳を煌めかせながら、そう言って暁はフローターに手を添えた。これもまた、ブルーアルカディアならではと言えよう。
 慣れねぇから自動走行モードにするけどな、と気恥ずかしそうに添えた暁に、娘からも柔らかな微笑みが返った。

 シャルファは慣れた様子で、暁はおっかなびっくり浮上すると、併走しながら緩やかに夜空をゆく。
「どこか行きたい場所あるか?」
「せっかく熱くないんですし、花火を突き抜けて上まで行ってみたいです」
 いつも仰ぐばかりの花火だ。その中を突っ切るなんて、早々できるものではない。想像しただけで胸が躍ってしまう。
「周囲で開く光の花も、普段見上げている花火を見下ろすのも、きっと絶対綺麗ですから。――あ、でも」
「どうした?」
「耳が良いシャオさんは、耳栓みたいなものも用意しておいた方が良いんでしょうか」
「……ははっ、ありがとう」
 思いもよらぬ言葉に、暁は「多分、大丈夫だ」と添えながらはにかんだ。
 人との交流を断っていた月日が、忘れさせていた。相手を気遣う優しさも、それを嬉しいと思う気持ちも。
「良かったです。――じゃあ、行きましょう!」
「おう!」
 そう言って優しく微笑むシャルファへと、暁の口端も知らずと綻んでいた。

 ほろほろと降る光の雨のなかを、ふたつの影が真っ直ぐに渡る。
 どどんと一際大きな音が響き、大輪の花が鮮やかに咲き溢れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年08月07日


挿絵イラスト