●星の道標
「夜の島、と海賊たちの中では認識されているらしいね」
まるで昼夜が逆転したように普段から暗く、一日中大きな月が島を覗き込んでいる。
毎日カタスロトフが起きそうな、しかし、色んな人から忘れ去られた郷愁の漂うどこか寂しげに廃れた島であり、此処に住み着く存在は、いない。
ただ、特徴的な部分はある。
海の中にも浜辺にも、どこをみてもそこら中に光が点在する島だ。
光の正体は、殆どの場合"貝殻または粒の大きな砂"である。
「隠された秘宝、とかの話は聞かないけど……ああでも」
と、ニシシと笑うのは狼姫・荒哉(吹雪謳う爪牙・f35761)。
「此処で光る貝殻や砂は、"誰のものでもない"んだけど、不思議な特徴があるんだ」
人狼騎士が語るには――。
「まずね、光る色は、手にした人によって変わるし……それに、想いの色で変わるんだって。面白いよね」
なんらかのメガリスの影響を受けて、人に、心に影響を受けるようになっている。
色を変えて、光る。
「例えばだけど、一つ貝殻を拾ったとするでしょう。俺が拾ったそれが"蒼"に淡く光ったとして、誰かに渡したらその色は"蒼"に"渡された人の色"が更に加わる。オリジナルの色に染めるには、誰かとそうやって、色を映し合うのが楽しい、みたいに言われているとても平和な島だってことさ」
此処での事は、誰から治外法権。
綺麗な色に光らせることが出来た存在や、綺麗に光る貝殻を量産してばらまく悪徳業者まで後を絶たないが、それらは大抵大変高値で売買されることもあるらしいが、それはそれ、これはこれ。今はその話は置いておこう。だってお祭り騒ぎの日に、そんな物騒な事を詳らかにするのは海賊だってしないのだから。
悪事や金目の話は、普段の日常のホンの欠片でしか無いだろう。
「綺麗に輝く|貝殻《星のかけら》を、自分だけの小瓶に詰め込んで夏の思い出にするのはどうかな?この島にある基本色は"明るい白"、星々の色だけれど誰か一人でも触れていれば、別の色に染まっているから、この島自体、色とりどりで綺麗だけれども」
星を拾い集めるのどかな時間。
君は海へ向かうだろうか。
それとも砂浜、だろうか。
「ハハ、星降る島の、綺麗を今なら猟兵皆で独占し放題だ!」
参加の条件は、水着であること。ただそれだけだ。
それだけ持ち帰ってもいいし、誰かと交換し合って唯一のアクセサリーとするのもいい。ただ転売や悪事に身を染めるのだけはご注意を。
「悪いことする子には、相応に悪いことが起こるっていうのも島のルールとしてあるみたいだからね」
タテガミ
こんにちは、タテガミです。
今回は、夏休みなシナリオ(一章)です。
●簡単な概要
グリードオーシャン、だけどカクリヨファンタズムな島。
昼夜が常に逆転し、島の領空、領海、薄暗いです。
大きな大きな月が覗き込んでいるのが特徴。
それから、白色に輝く|貝殻や大きな粒の砂《星のかけら》が点在しています。
●|貝殻や大きな粒の砂《星のかけら》
これは、色んな場所にありますが、基本色は白です。
淡く明るい白に発光し、暗めな島中を点々と照らしています。
・誰かが触るとその人のカラーに染まります。
・誰かが触った物に、別の誰かが触ると更に色が増えて多彩になります。
『夏の思い出』として、小瓶に詰めて持ち帰ることが可能です。
砂や貝殻ですので、いつの間にかまた島に溜まっていくものですので、貝殻形状の指定をいただければ、その貝殻が見つかるでしょう。
プレイングに記載してほしいのは『|染めたい色《貴方の色》』。
同行者様が触る、触らない場合でも、『色』は必須項目としてお考えください。
思い出の色を染めるシナリオです。どこで拾うかは、自由になっています。
●水着
実はプレイングボーナス扱い。
水着のある人は今年の去年の一昨年の(こんなの、とか)一言でいいので教えて下さい。私服の人にボーナスがつかないわけではないですが、私服は私服で指定をお願いしたいです。
●その他
自由に過ごせる系、「貝殻を拾う」シナリオを想定しています。拾う合間に遊びたい人は、自由に遊ぶと良いと思います。キラキラ見放題して拾わない、も問題はありません。その代わり、やりたいことをプレイング記載お願いします。タテガミの想像を越えた事をすると採用できないことがありますので、破天荒を突き抜けてるかもって方はオバロのご検討をお願いします。このシナリオでは、賑やかしとしてタテガミの配下として活動する5名のグリモア猟兵が暗躍・協賛しています。誰かが呼ばれた時のみ、ご一緒致します。キラキラ光り物を入れる小瓶は、彼・彼女たちが配布しています(シナリオ上の都合)。
第1章 日常
『星の海域にて』
|
POW : 星の海で泳ぐ
SPD : 星の海を眺める
WIZ : 星の海で語らう
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
希那古・もち
(|頭《せなか》に麦わら帽子!夜だけど、これで万全!)
(体にお花も付いちゃったけど、自分で取れないからこのまま!)
きらきら!きらきらしてる!キレイだなー!
わ!色がかわったよ!?おもしろーい!
(ぺんぺんてしてし。星のかけらで遊び始め)
わー見てー!どんどんオレンジ色になるのー!なんでだろー!
(元気な色合いに輝く星のかけら。見えない尻尾を振りながらぐるぐる走り回る)
ご主人にも見せてあげたいな…
あ、そーだ!いつか会ったときのおみやげにするの!
えへへーびっくりさせてあげるんだー!こびん、ください、な!
(誰かが置いた小瓶に一生懸命詰める。
もう会えない事を犬は知らないが、嬉しそうに輝きを集めている)
●だってぼくは|夢を見る《ワンダフル》!
その日、すごい速度のまあるいのが暗い夜の島へ上陸。
ぽぉんぽぉんと弾みながら砂浜を踏みしめるそのフォルムはとにかくまあるくかろうじて、生き物であるとわかったのは。
弾むなにかには、かろうじて麦わら帽子が揺れているのが見て取れたからだろう。
弾むように走っていた。当人はとても真面目に。
楽しくなってガサッと島の散策へ乗り出し、ガサッと森へ突撃。
希那古・もち(|あまり賢くない動物《わんわんわんわんわんわん》・f24531)は、がばっ、と顔を上げて。
「わあ、わあ!きらきら!ねえきらきらだよ!すごいね!」
島に野生で咲き誇る花が体に沢山張り付いて、華やかな事になっていたがそこは賢い動物。
可愛い自前の手では届かないので|まあいいか《とれないし》と現状の状態をすぐさま受け入れた。
見渡す限り、輝く色は点々と。
黒い瞳に、島の|星のかけら《白い光》を映したもちは、手近なそれにぺたりと触れてみる。
「キレイだなー……うん?」
触って驚き。白の輝きはじわりじわりと、色を変えていく。
「わ!なあにこれ、色がかわったよ!?おもしろーい!」
ぺたぺたぺた。触れば触るほど、星のかけらはふわりと優しいオレンジ色へ染まっていく。
もちの色は、柑橘類のような橙の色合いとなって星を染める。
ぺしぺしてちてち、あっちにこっちに、触って光るオレンジ色を増やして。
ふんすふんすと鼻息を鳴らす。なにこれおもしろい。
「わーわー、見てー!どんどんオレンジ色になるのー!なんでだろー!」
不思議なものを見てほしくてそう声をかけるが、誰かが来る様子はない。
こてん、と首を傾けたのは一瞬で。目に飛び込んでくるオレンジ色への感心にすぐに転がった。
遊び道具として、その光り物は大変輝かしく――綺麗であったから。
触れば触るほど、色は濃くなるような気がしてもちの尻尾ははちきれんばかりに揺れている。
これを|本獣《もち》が見ることが叶わないのは体格ゆえだが、色が変わった星の砂の周りをぐーるぐると走り回る!
見てみて此処だよ、ここにいるよ見てみてと。
ぱたぱた走れば走るほど、足跡が残り。
大量の自分の足跡を残したあと、満足したようにぺたりん、と座り込む。
「ハァハァ、えへへ。ご主人にも見せてあげたいな……」
沢山走って。考えは一つの方向を示してくれた。
見てくれるヒトは今此処にないけれど。
「あ、そーだよ!いつか会ったときのおみあげにするの!」
んべ、と舌を出してもちは自分の考えをとっても褒める。
――いい考えだよ!とってもすてきな考えだよ!わーい!
――あれれ。そういえば、お土産にするにはどうしよう。
――こびん、ほしいなって伝える前にきちゃったよ。
今度は逆側へあたまをこてん、と倒して。
白色ではない色になにかが光ったのを見つけて、つぶらな瞳を大きく輝かせることになる。
それは誰かが置いた小瓶。
まだなぁんにも入っていない。触らないように気をつけたらオレンジ色と白い色を掴まれられるだろうか。
「えへへーびっくりさせてあげるんだー!」
いつか。もちはいつかの|ハッピーエンド《未来》を夢見て集め続ける。
キラキラを集めてきっときっと見てもらおう!
だが、賢い彼はまだ知らない――もう、該当人物とは会えないことを。
輝きを集める彼の手元にも、黒い瞳にも|希望の色《オレンジ色》が染まって――それはとても幻想的な輝きを手に入れたようであった。
いつか。いつか。希望の色は、輝きを失うこと無く小瓶の中で留め置くだろう。星のかけらは、君の色。君の在り方に寄り添う色だから。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィズ・フレアイデア
キノ(f21482)と今年の水着で
キノ!
おいでよ、真っ白な砂浜だ!
貝殻も白い!
アロハシャツを着せてもらって
ありがとう、大きいねって笑う
ほんのりキノの香りがして嬉し恥ずかしい
カクリヨの月みたいでちょっと懐かしいなあ
うん、凄く大きいんだよ
言いながら巻き貝の貝殻を拾えば
鮮やかな青色に
おお!
これがあたしの色か…
ふむ、キノに渡せば色が混じる訳だな?
そっと渡す瞬間
端っこが桃色に染まった
「あ、駄目」
其れは駄目だよ、貝殻
まだこの心を伝えないで
彼を慕うこの気持ちが
関係を壊してしまったら嫌だから
ん?
んーん、何でもない
乙女の秘密だよ
わあ!黄色と緑だ!
とても綺麗!ねえ、もう一個作ろう!
で、お互いに持っておこうよ!
砂羽風・きよ
ヴィズちゃん(f28146)と
きの人格で
はいはーい
あ、ちょっとヴィズちゃん転ばないでよ?!
無邪気に走る彼女を見る
月明かりに照らされる姿がとても綺麗だけど
刺激が強過ぎなのでアロハシャツを着せた
おれは黒いTシャツにサーフパンツ姿で歩きつつ
へぇ、カクリヨもこれくらい大きな月なの?
あら。いい色ね
これにおれの色を混ぜたらどんな色に変わるのかしら
貝殻を受け取ろうとすれば
何故か貝に言い聞かせしてるヴィズちゃんに首を傾げ
どーしたの?その色、いいと思うけど
なんか気に入らない色でも混じったの?
おれの手に渡れば黄色と緑色が少しずつ滲んでいく
あ、おれの色だ
どう?いい感じに混ざったんじゃない?
ん、いいよ
無くさないでね?
●|乙女《魔女》だって夏に溺れる
きらきらと、ぼんやり輝く光の中をぱたぱたと翔ける。
暗がりだろうとしっかりとした足取りで。
それからキラキラとした笑顔でヴィズ・フレアイデア(ニガヨモギ・f28146)は振り向いた!
「キノ!おいでよ、真っ白な砂浜だ!ご覧よ、貝殻も白い!」
砂が光る。貝殻が光る。
「はいはーい」
呼ばれてその後を追うのは砂羽風・きよ(漢の中の漢・f21482)。
「ああ!ちょっとヴィズちゃん転ばないでよ!?」
――ぐらっと今足踏み外しかけたでしょ!
ちょっと見えてるよ?そして見たよ。何そのハニカミ笑顔!
無邪気に走る彼女が、時折バランスを崩すようにみえるのだ。
絶対目の錯覚などではない。夜の浜辺で兎が月を見てぴょんと跳ねるが如し。
水着姿もあって、頭を飾り立てる|白い耳《兎耳》が揺れる。
|危なげな兎さん《バニーなガール》と敬称するには、爽快感さえ感じるほどの軽快さで。体のラインが綺麗に出る大胆な水着であそこまで跳ねて楽しむ彼女もなかなかツワモノだ。
――楽しそうだからいーけどね。
「ちょっとこっち来て」
呼び止めて、|きよ《きの》はヴィズにアロハシャツをぱさりと着せる。
「ええと刺激が強すぎなので」
これで少し緩和された気もする。
|きよ《きの》は黒いTシャツにサーフパンツ。
アロハシャツは肩まで露出させた君のほうが必要だ。
はい。元気な兎さん、捕まえた。
島に吹く風で、簡単に風邪を引いちゃ夏をたくさん楽しめないからね。
「ありがとう、でも……ちょっと大きいね」
ふふふ、と控えめに。笑ったヴィズは想う。
――ほんのりキノの香りがする。
――ああ確かに。これさっきまで着ていたものね。
識っていると意識が向く。嬉し恥ずかしが混ざって、今度は正真正銘照れ笑い。
「それはそれとして。この島から見える月は本当にカクリヨの月みたいでちょっと懐かしいなあ」
「へえ、カクリヨもこれくらい大きな月なの?」
空高く、遠くにあるべき月は海にも映り込み、その巨大さはもはや身近と思えるほど。空というキャンバスを埋めて。海という|完全模倣《瓜二つ》な合わせ鏡状態でもその輝きは失われない。
「……うん。うんと大きい。凄く大きいんだよ」
ひょい、とヴィズは目についた巻き貝を拾い上げる。
それは白い輝きにじわりじわりと鮮やかな青色を乗せて変じていく。
輝く色は|貴方《ヴィズ》の色。
「おお!これがあたしの色か……ふむ、キノに渡せば色が混じる訳だな?」
「あら、いい色ね」
素直な感想を口にして。
「おれの色を混ぜたらどんな色にかわるのかしら」
素朴な疑問。
肩を寄せて、青に輝く巻き貝を|きよ《きの》に渡そうとした瞬間。
ヴィズは見た。
白に載った青い色。その隅っこに僅かに――桃色が混じったのを。
心の色を映してみせたらしい、ば、馬鹿!そんなの聞いてない。
「……あっ、駄目」
――其れは駄目だよ、貝殻。
――まだこの心を映して伝えないで。
きゅっ、と一旦握り直す。見えない見てない。見えなかったでしょ?
青に戻って。あたしの色は鮮やかな青色なんだって、もっと主張して。
――彼を慕うこの気持ちの色は、分かったから。
――駄目、駄目。まだ駄目よ。
関係を壊してしまったら嫌だから。
貝殻へ願って、握り込んだ手を緩める。
鮮やかな青色しかみえない。ああ、お前は空気の読める貝殻だな。
「どーしたの?その色、いいと思うけど」
何故か貝に言い聞かせしている彼女に首を傾げる彼の気持ちは当然なものだ。
|だって見えなかった《気づかなかった》。
「なんか気に入らない色でも混じったの?」
「ん?んーん、なんでもない。握り込んだらもっと青が強くなるかと思ってね」
青は青、変わらなかったよ。ヴィズはオーバーアクションで肩をすくめる。
――桃色は、そうさ。今は乙女の秘密だよ。
「じゃあ改めて」
|きよ《きの》が受け取ると、青い貝殻の色に別の色が徐々に混じる。
黄色と緑色が少しずつ、じわりじわりと滲んで色を乗せていく。
「あ、おれの色だ」
見たらわかった。|きよ《きの》の色だって。
ゆるりとお互い色が譲り合う形で染まった。
「どう?いい感じに混ざったんじゃない?」
「わあ!黄色と緑だ!とても綺麗!ねえ、もう一個創ろう!で、お互い持っておこうよ!」
「ん、いいよ。無くさないでね?」
記念の一品。思い出の一品。
きみとおれにしか、作れない色の光る、マーブルカラーの不思議な貝殻だ。
なくさないように小瓶に詰めて置くといいんじゃないかな。
広すぎるくらいの沢山の世界のなかでたった二つ。とっても貴重なものだよ。
この色を、輝きを。どう|ぞ《か》大事にしてね。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ティクルス・ディータ
【いおにとくー】
水着は去年のもの
…海、怖い。とけて、なくなりそう
だから、近寄らない
伊織、そっちはダメ。危ない
僕は食べても変わらないけど、分かった。食べない
ニトロは物知りだね
かいがら。貝の、残り
誰も食べない、いらないもの
でも、きらきらしてる
ふたりの手の中で色を変えて、生きてるみたい
僕の色、水色
…知らなかった、浅い水の、明るい空の色
僕が「生きて」いるから、知ったもの
…ほしぞら?伊織の目、ふしぎ
黒くてきらきらしてる、だけじゃないんだ
見えてるもの、違うのかな
楽しい。よく、分からない
でも、ふたりがきらきらしてるから、僕も嬉しい
…海は嫌だけど、嫌、だけじゃなかった
ニトロ、伊織、これも触って
僕、持って帰る
花城・伊織
【いおにとくー】
依頼の帰りにお二人を海に誘うことに
以前何度か顔合わせしたことがあるのですが、これを機に仲良くなれたらいいですね!
ふふ、おふたりとも、早く早く!
郷に入っては郷に従え、海辺ときたら水着を着るべし、ですよ!
此処の貝殻は拾うと色が変わるそうですよ
私は……あら、ピンク色ですね
ふふ、可愛らしい
ニトロさんとティクルスさんは?
あらあら、でもみんなの貝殻をくっつけると……ほら!星空みたいで綺麗だと思いませんか?
二人がちょっとでも楽しそうなら私も嬉しいです
それに、実は私も海って見たことなかったんです
ですから一緒に来てくれてありがとうって、そう言わせてくださいね
ニトロ・カルヴァディアス
【いおにとくー】
水着は今年の(アラビア風
海?見たいと思った事なんかないけど
いいよ。ちょっとだけ付き合ってあげる
ここはうざったい太陽も出てないみたいだからさ
待ってってば
砂浜って歩きにくいんだけど
貝殻?この光ってるやつ?
ちょっとクー、これは食べないでよね
俺が触ったら貝殻は黒く染まって光らなくなった
…これが俺の、色
別に。最初から興味なんてないから
俺はいらない
綺麗だと思うならあんた等にあげる
二人の貝殻
俺が触ればまた黒くなるだけだと思ってたのに
…ほし、ぞら
眩しい。そう言って笑う伊織の方がずっと
二人と居ると調子が狂う
この気持ちが何なのか分からない
ざわめく心のままに馬鹿じゃないの、なんて悪態づいて顔を背けた
●鮮やかな色彩を
「依頼の帰りにばったりと顔合わせしたお二人をつい誘ってしまいました。海、ね、行きましょう!」
花城・伊織(死滅回遊魚・f27225)は暗めの島でも決して傘を手放さない。
白く、そして透け感のある涼やかなワンピースを風に揺らして。
それから、二人に向けて微笑む。
「以前何度か顔を合わせていましたからね!」
覚えていましたよ、伊織は思う。これもなにかの縁だから、この機会に相手を知って仲良くなれたらいいのだけれど。
「海?見たいと思った事なんかないけど」
アラビア風の、泳ぐよりは魅せる夏の装いを身につけるニトロ・カルヴァディアス(常闇・f27205)の口から出た言葉は拒絶というには、どこか角が丸い。
「でもいいよ、ちょっとだけ付き合ってあげる」
口にした一言が否定ではなかった事に伊織が楽しそうに笑ったのを見て、ついもう一人共々グリードオーシャンまで連れてこられてしまった。
「ここにはうざったい太陽も出てないみたいだからさ、ああでも月はあるのか。月明かりならギリギリ許容範囲」
「……海、怖い。とけて、なくなりそう」
ああ海だ。ティクルス・ディータ(海雪・f27190)は島の領海、きらめく昏い海へ近寄らないように心の決めた。
なるべく砂浜に。もしくは、二人に続いて、決して離れすぎないように。
「ふふ、なんだかんだと付き合ってくださって嬉しいです。さあおふたりとも!早く早く!」
急かすように手を取って。さあ砂浜へ駆け出そう。
白い輝きが見えるじゃない?アレが全て、この島の特色だ。
「郷に入っては郷に従え、海辺ときたら水着を着るべきで、若者らしくはしゃぐべきなのです!」
「……あ、伊織。そっちはダメ。危ない」
水兵のようなセーラー服。ティルクスは水辺で夏場だからと、なるべく相応の衣装を身につけて訪れたつもりだけれど。
この島は暗い景色が広がる無人島。
――あまり、気にしなくて、良かったかな……?
「ほら、待ってってば。砂浜っていっても貸し切りみたいなものだし、それに歩きにくいんだけど」
急ぐ必要はないだろう、と言葉尻に口に出すニトロ。
伊織は誰よりも楽しそうに、こっちこっちと二人を手招いている。
「待ってって言ったけど今度は来いって?」
本当に忙しい行動力してるね、とは匂わせるように口に出して真実の言葉としては告げない。
「いこ」
ティルクスもニトロに一緒についてくる。
――あぁどうしてこうなった?
二人が伊織の元へ近づくと、彼女は貝殻を指さしていた。
真っ白で、短い螺旋の形を写し取ったような巻き貝がある。
「此処の貝殻は、拾うと色が変わるそうですよ。私は……」
そっと、二人の前で触れてみると伊織が触れた貝殻は。
みるみるうちに薄いピンク色を映していく。
「あら、ピンク色ですね。ふふ、可愛らしい。ニトロさんとティルクスさんは?」
「貝殻?この光ってるやつ?」
視線を落とすニトロに対し、ティルクスは首を傾げている。その瞳が、どことなく食べられるか、食べられないかを考えているようにも見えた。
「……ちょっとクー、これは食べないでよね」
「僕は食べても変わらないけど、わかった。食べない」
「分かればいいよ。これ、貝殻だし。カラだよ。中身なんて無い」
「そっか、ニトロは、物知りだね」
囀るような二人の言葉を聞いて、伊織はクスクスと笑う。
「見ろ。俺が触ったら、貝殻は黒く染まってそれきりだ」
深淵、常夜。虚ろな闇の色。光る貝殻から、光るという概念が消えたようにしか見えない。
――これが俺の、色。
「かいがら。貝の、残り。誰も食べない、いらないもの」
――でも、きらきら、してる。
「二人の手の中で色を変えて、|貝殻《白》は、生きてるみたい」
おそるおそる、ティルクスは手を伸ばす。
すると、髪色に似た、優しく淡い水の色が反映されていく。
「僕の色、水色……知らなかった、浅い水の、明るい空の色」
――こんなに、鮮やかなんだ。
――僕が"生きて"いるから、知ったもの。
「ねえ、ニトロ。海、ううん、僕の、色だよ」
「俺の黒とは全く違うね」
「あらあら、でも皆の貝殻をくっつけると……ほら星空みたいで綺麗だと思いませんか?」
巻き貝通しをくっつけて。それぞれの色合いを合わせてみる。
すると色はじわりと動きを見せて、互いの色を少しずつ貰って映し始める。
朝焼けから広がり、オレンジと赤が交差して生まれたような華やかなピンク色。
明るくて、浅い水を映した空の色。
真っ黒黒い、冷たい漆黒。それぞれ異なる色合いで。
伊織とティルクス、二人の貝殻を見たニトロは呟く。
「……ほし、ぞら」
ああ、眩しい。そう言って笑う、伊織の方がずっと。
「……ほしぞら?伊織の目、ふしぎ」
ニトロの持つ貝殻が、どうしてそう見えたのだろうと考えてみるが――彼女にはそう感じられたのだろう。
「そうでしょうか?」
「見えているもの、違うのかな」
「綺麗ですよ。だって、元々これは白に"光る"貝殻ですから」
夜の色に染まっても、目を凝らすと薄っすらキラキラと色を返している。
黒ではない。昏き色を識る者の心を映した星空だろう、と言うのだ。
「ニトロさん、どうしました?」
「……なんでもない」
――ああ、二人と居ると調子が狂う。
なんでだ。わからない。
この気持がなんなのか。|理解できない《わからない》。
「二人がちょっとでも楽しそうなら私も嬉しいです」
ハニカムようにピンク色の瞳を細めて、恥ずかしながら……と少々声量を落とす。
「……それにですね、実は私も海ってみたことがなかったんです。涼やかでこんなに綺麗なところなんですね」
「……馬鹿じゃないの」
潮騒の音を絶てないように、振り回されるのはニトロの心。
悪態づいて誤魔化して。
その本質の音の綺麗さは――決して今は、聞かぬまま顔を背けた。
「ですから、初めて付き合ってくれて、一緒に来てくれてありがとうって、そう言わせて、下さいね」
伊織の言葉に、ティルクスは少しだけ視線を逸らす。
「楽しい。よく、わからない。でも」
――ふたりがきらきらしてるから、僕も嬉しい。
――"楽しい"って、"嬉しい"なのかな。
「……海はだけど嫌、嫌、だけじゃなかった。ニトロは?」
「別に。最初から興味なんてないから」
「ニトロ、ねえ。伊織も。これも触って。僕、持って帰る」
「俺はいらない。此処へ来たのは断りきれなかったから。綺麗だと思うんならあんた等にあげる」
「一緒の時間を過ごした思い出に、持って帰りましょう?私の色も、ティルクスさんの色も映して」
ありがとうで生まれた貝殻が灯した色の内訳は。
明るい色の空と昏い夜空が同居して、ピンク色が包み込むような抽象色。
幻想的な貝殻は、光ることを思い出したように三人の色を反映して、星空のように輝くだろう。きみたちの手に、三人だけの星のかけらを握りしめて。
時間の共有は確かに、思い出という形で光り続ける――夜空を流れる星のような瞬くばかりの時間の中で。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
栗花落・澪
※今年の水着着用
そうだなぁ…フィッダさん、ご一緒どうですか?
色の移る貝殻なんて素敵だね
僕なら何色だろう…やっぱりオレンジ?
自身の色を思い浮かべつつ貝殻にそっと触れて
はい、じゃあ次フィッダさんも触って!
二人で遊ぶなら二人分の色が無いとね
えへへ、とっても綺麗
ありがとう、フィッダさん
加わる色は何個までとかあるのかなぁ…
例えばだけどさ、小瓶でいくつか持って帰って
友達にも触って―!ってしたら
赤や青、黄色に緑…友達の色も移っていくって事だよね
僕とフィッダさんだけの今日の思い出を移した貝殻と
そして今日来れなかった皆と楽しみを共有するための、まだオレンジしか移ってない貝殻をいくつか
小瓶に入れて持ち帰りたいな
●それぞれの色を映して
島の様子を見て、大きめな目をパチリ。
沢山の白い色は、何処にでも見えるようで暗い無人島な様子はあまり感じない。
自然発行するアトラクション――そう思うとなんだか一人で手を伸ばして見るのは味気ない気がした。
「そうだなあ、……フィッダさん、ご一緒にどう?」
栗花落・澪(泡沫の花・f03165)が振り向くと普段はもう少し視界が上に見える少年は今日は澪よりも小さな背丈と無邪気な笑顔に言の葉に乗せて答える。
「いいぞ。ヒマしてたところだ」
「じゃあ決まり。行こっか」
黒い犬のパーカーを来た小さな背中。
下の方でゆるりとハイエナの尻尾がリズミカルに揺れている。
――誰かとする散歩や散策が、好きなのかなぁ。
先程まで、特に感心なさそうに島の領海――星を写し取ったようにキラキラと輝く昏い海を眺めていたのに。
「此処の貝殻はどれも光っているね」
全部明るい白に輝く貝殻は、遠巻きに見ても近くで見ても、どこにでも見かけそうな|星の落とし物《貝殻》だ。
「触るとキラキラの見え方が変わるッてー話だッたな」
「素の状態でも素敵な色だけど、僕なら何色なんだろう」
――やっぱり、オレンジ?
ブライダル風の水着が浜辺の砂に汚れてしまわないように、慣れた手付きでやや摘んで屈む。
自身の色を思い浮かべて、そっ――と振れると、小柄な白い二枚貝にふわあとオレンジの色が灯る。
触れた指先から始まって広がるさまは、絵の具を水に垂らしたように不規則。
「はい、じゃあ次フィッダさんも触ッて!」
「澪の色だけでも……十分綺麗なのに?」
「二人で遊んでいるんだよ?じゃあ二人分の色が無いとね」
はい、と二枚貝を差し出すと控えめにバス停はつん、と振れる。
すると墨を垂らすように色が広がっていく――薄く明るい青紫色。
「俺様知ッてるぞ、これは確か和名で言うなら|楝《おうち》色。平たく言えば、紫色だ。澪のはううん、なんつッたかな、和名の……」
ヤドリガミなりに知識を披露したいのか、うーんうーんとパーカーの鬣を揺らしながら、少年が考える事暫し。
「思い出せなかったらオレンジ色で大丈夫だよ?」
「……|山吹《やまぶき》色だ!たぶん!明るい、黄色であるがオレンジ色!」
どーだ凄いだろ俺様博識ーと、気分良さげに犬のように揺らす尻尾がなんだか年下の印象を澪に思わせる。
「えへへ、フィッダさんの思いの色も、明るい感じなんだねぇ。とっても綺麗」
「俺様は控えめを好むから、ホントに水を垂らしたみたいにぼやけた色を付けたようだけどね」
「ううん、それでも綺麗な感じだよ。ありがとう、フィッダさん」
よくできましたー、とノリで褒めてみると満足気にニコッと笑う子供。
この姿のバス停少年は素直な態度が顔と尻尾に出すぎている。
なんだか危なげな仔だな、と澪がひっそり思ったことは|ナイショにして《言わないで》おこう。
「これで二色……ねえねえ、加わる色は何個まで、とかあるのかなぁ?」
「うん?無いんじャね?絵画に色を加えるみたいに、色が共存出来る限りは大丈夫そうだけど……相応に大きめのやつのほうが、沢山色を反映してくれそうな気はするな?」
けたけた笑う。そんな大きな貝殻は持ち帰れないだろう。
冗談混ざりに口に出したようで、その様はカクリヨの妖怪たちにやや似た態度にも思えた。
からかって、様子を伺って。問われたことにキッチリと受け答えて、会話を楽しむ姿勢を全面に出している。
「あ、じゃあ例えばだけどさ、小瓶をいくつか持って帰って、僕の友達にも触ってーつてしたら……」
「赤や青、緑に黄色、みんなの思う色が移ッていくッて事になるな。夢が広がるやつー!」
色が映る、混ざって色を添える。
最終地点の黒に至るかどうかは、わからない。黒だと認識するものがいれば、黒は反映されるだろうが――其れ以上に沢山の知り合いが触り、色んな色が載った貝殻はどんな色に輝くモノになるだろう?
「試してみれば?人それぞれ、想う色は違うだろ」
――俺様の色が暗さにも明るさにも染まって変わりやすい色なように。
「僕とフィッダさんだけの今日の思い出を移した二枚貝は、持って帰るけど……」
「小瓶も必要ぶん用意するよ。でも、……貝殻を多めに検討したいなら」
ビニール袋とかエコバックにしとく?
軽口を楽しげに吐いた小柄なハイエナの少年の頭をぺち、と叩いて。
「今日来れなかった皆と楽しみを共有するなら、色んな君合わせが出来上がるよね。……お願いできる?」
「いいとも。澪が持てる分なら、いいんじャね?素の状態の巻貝やらがある方が、説明しやすいだろ」
君と誰かが染める色。
この島を離れても、貝殻は光ることを辞めないから。
オリジナルの色で、君と誰かの色をともし続けることだろう。
「俺様との貝殻はもう染まッてるしな、先に詰めとこうぜ」
白色に弾けた水玉のような後を残した青紫色と。
自由に空を流れる風のようなオレンジ色の二枚貝を、少量の砂と一緒に小瓶へ。
「綺麗なものは綺麗なまま、サンプルを示すように皆にみせたらいいと思うぜ」
どんな色が持ち帰る貝殻に映るのか。
楽しみを沢山つめこんで澪もまた、キラキラ光る色を瞳に移して、この不思議な島から持ち出す宝物の未来を想像して、思わず吹き出して――笑ってしまった。
人それぞれの色に価値を見出す海賊の賛美瞳は間違っていないだろう。
どれもこれも、同じようで違う色。
宝物と喚ぶにふさわしい、芸術品ともいえるのだから。
手に入れた君たちが、貝殻をどう扱おうと誰も文句はいうまい。君たちが手に入れた夏の宝物は、――染め上げた君たちの|所有物《もの》だから。
大成功
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