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燃え盛る帝都の桜~身勝手北紀行、つまりは誘拐

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●帝都の夜
 帝都にあるパーラー早乙女。
 そこの看板女給といやぁ、八坂・紅子(やさか・べにこ)嬢に他ならない。
 齢一八。
 艶やかな黒髪は食を扱うお仕事ですからきゅっとおさげにして垂らし、愛嬌ある黒目がちの瞳で、どんな客にでもニッコリ。
 生家の農家が食い詰めて、三年前から単身帝都に上京しせっせと働く孝行娘。
 素直だがお祭り好きのお転婆娘、まぁオジサンフアンの多いこと多いこと。

 さて。
 ここ大正が700年続くサクラミラージでは、影朧が様々な事件を起こすのはご存じの通り。
 この日の夜も、咲き乱れる幻朧桜に影朧が取り憑いて、赤々と燃え上がりだしたからさぁ大変!
 影朧救済機関「帝都桜學府」の學徒兵が右へ左への大騒ぎ。
 とはいえ、だ。
 まぁ超弩級の猟兵も行き来する昨今、これしきの影朧であれば朝まで掛からず慰め完了、どっとはらい。
 なので、市民もちょっとした見世物だーぐらいにしか思わない。
 八坂・紅子もその一人。
 お風呂上がりの天花粉で頬や額を白くして、黒髪つややか、寝間着姿に半纏羽織って、野次馬として参戦だ。
「真っ赤で綺麗ねぇ! これは明日、お客様に自慢できるわ。ちゃんとおめめに焼き付けとかないと!」
「あっはっは! 紅子ちゃん、そんなに身を乗り出すとホントにおめめが焼けちまうぜ!」
 どっと笑うご近所の皆さん。
 もぅっと膨れる紅子の肩に、ひやりとした腕が掛かった。
「……ちょっと、玄さん? 止めてくださいよ」
 肩を抱こうと虎視眈々な困ったオッサンの名をあげ、ぴしゃり。だが払われるどころか紅子はぎゅうと抱き上げられたではないか!

「――嗚呼、嗚呼、お前こそは黒髪麗し、蛇子(へびこ)」

「え? はい、呼びました?」
 べにこ/へびこ、一文字違いで子音は同じ。
 人は名前を呼ばれるとつい返事してしまうもの。
「そうか! やはりお前は蛇子! 水神様の生まれ変わり!!!」
 ワナワナと指を震わせる和装の剣士は明らかに尋常ではない。直後、駆けつけた學徒兵の叫びが場を打った。
「逃げろぉ! そいつは影朧だぁあ!」
 悲鳴をあげて蜘蛛の子を散らすように去って行く野次馬。
 だが、囚われの紅子はガッチリと抱き寄せられて逃れられない。
「あぁ、蛇子、へびこぉぉ」
「違うわ違うわっ! あたしは紅子よぉ! 離して、離してぇ!」
 じたばたと藻掻く寝間着姿の乙女、痛ましや。
「これからはずっと一緒だ、東北にある、あの祠へ戻ろう」
「いやぁああああ! 田舎には2度と帰りたくなぁいいいい!!!」
「悲しいことを言わないでおくれ……斬るぞ」
「ひぃっ!」
 がくり。
 余りの恐怖に糸が切れたように気絶。華奢な肢体を抱き上げて、血ぬれの刀を下げた影朧は一足飛びで屋根へ飛び乗り彼方へと走り去る。
 ――嗚呼、紅子の運命や如何に!

●グリモアベースにて
「影朧の『黒輝血』は百戦錬磨の猟兵達に退治され、八坂紅子は無事帰路へつくのでした。―完―」
 あ、話が終わった。
「…………」
「…………って」
 沈黙に耐えられなかったのは、話を閉じた星崎・千鳥(元電波系運命予報士・f35514)の方だった。
「後味爽快なオチにするのがみんなの仕事だよ」
 千鳥曰わく――現在、燃え盛る幻朧桜を背景に、影朧がカフェの女給さんである『八坂・紅子』を浚って逃避行の真っ最中とのことだ。
「まずは、誘拐犯を見失わぬよう追っかけて」
 燃え盛る幻朧桜は帝都桜學府の皆さんにお任せしておけばいずれ鎮火される。
 なので屋根超えどこぞへと駆けていく誘拐犯の追跡に集中しても、人的被害が出ることはない。
 とはいえ、火事が収まる前の追跡は火に炙られ結構熱い。猟兵だから死なないけれど、気になるのなら鎮火にまわってもよい。
「鎮火の方法はお任せー。水(物理)でもいいし、どうも火事で死んだ影朧が桜に取り憑いてるみたいだから慰め(説得)もOK」
 追跡にしても消火にしても、例示された正攻法以外のやり方も歓迎だ。
「あとはこー、追っかけた先で色々あるから、臨機応変に頑張ってね」
 軽快にぶん投げて、千鳥は大正サクラミラージュへの路を開くのであった。


一縷野望
 オープニングをご覧いただきありがとうございます
 痛快な活劇ノリのサクミラ依頼をお届けします
 アニメ映画みたいに列車に沸く敵をバッタバッタと薙ぎ倒したり、敵や紅子ちゃんにツッコミ入れたりして楽しく遊んでください
 拙作の「殺人事件」みたいなコミカルノリです
 好きなことやってくれたらマスターは積極的にのっかります

【あなたが作るヒロインシステム】
「紅子ちゃんは実は……」みたいな設定があればプレイングの片隅にどうぞ、必須ではないです
>今ある属性
・黒髪18歳
・カフェの女給さんでオジサンファン多し
・東北の農家の娘でお転婆気さく
・田舎に帰りたくないらしい

>募集
 現時点から受け付け開始
 オーバーロードなしの方は6名超えた辺りから受付停止の可能性が出ます、詳しくはタグでお知らせします
 オーバーロードありの方は物理的に締め切るまで受付けます
 オーバーロードなしの方は4~6名ぐらいまで、先着がかなり有利です
 オーバーロードの方は全採用します
(2章目以降の採用は1章目採用の方を全採用、新規の方は余力次第となります)

>同行
 上限3名様まで
【チーム名】を冒頭に、失効日とオーバーロードのありなしは揃えてください

>1章目
 オープニング通りです
 屋根超え追っかけるもよし、火消しもよし
 その他、オープニング例示以外でも自由にやってみたいことをどうぞ
 追跡中、敵や紅子と会話は出来ますが、何故か捕まえることはできません

>2章目
 寝台列車での戦い
 活劇系アクション、痛快豪快なノリの予定

>3章目
 2章目の流れ次第で戦場は変ります
 列車か、北国の祠か、はたまた何故か断崖絶壁か

 それではプレイングをお待ちしております
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第1章 冒険 『紅蓮桜花』

POW   :    水をかけたり消火活動をする

SPD   :    見物人に被害が出ないように警備する

WIZ   :    原因となる影朧の魂を鎮める

イラスト:月都こーや

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ティオレンシア・シーディア
うっわあ…またド派手にハタめーわくなのに引っかかったわねぇ…
巻き込まれた娘はホントご愁傷さまだわぁ…

追っかけるんなら空からのほうが楽で速いわよねぇ。ついでに消火のお手伝いもしましょ。
熱いのは勘弁だしまずはラグ(水)とエオロー(結界)で〇火炎耐性のオーラ防御を展開。ミッドナイトレースに○騎乗してテイクオフ、●黙殺・妨害を起動。描くのは水天印にラグ(水)にイサ(氷)、上から水と氷の○属性攻撃ガンガン降らせるわぁ。あ、ちゃんと威力はケガしない程度に抑えるわよぉ。

イサの別意は「冷静」、当たるなり物理的に水ぶっかけるなりすれば多少は頭も冷える…と、いいんだけどねぇ…
この感じだと望み薄かなぁ…


東天・三千六
闇に揺らぐ炎の華は美しいものですね

悪に拐われた乙女を助けるのは白馬の王子さまというのが定番と書物にありました
そういう展開、騎獣としてちょっぴり憧れていたんですよね
ふふ、御主人様に手伝ってもらいましょう

お姉さん、ええと紅子さん、助けに参りましたよお
龍姿ですいすい空を駆け
前を行く彼女に声を掛け
背に乗る御主人様にエイヤと青龍刀を振り回してもらい威嚇
ふふん、雄々しく頼れる御主人様の姿を見れば、彼女も安心するでしょう
そういう騎士物語が好きな乙女かもしれませんし
たぶん

しかし眼下で燃える炎の熱さが気になりますね
消火の手助けにひとつ雨を降らせましょうか
おや、ついうっかり雷を落としてしまったらごめんなさいね




 喧喧とやかましい民草の元、若き學徒兵らが声を枯らして避難誘導。
「うっわあ……またド派手にハタめーわくなのに引っかかったわねぇ……」
 ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は屋根の上から、大混乱の現場を見下ろす。
「熱ッ……ここまで炎があがってくるなんて、ちょっと勢いが過ぎるわねぇ」
 死にはしないと聞いてはいるが、バケツレースと消火栓からのホースばしゃばしゃじゃあいつまで掛かるやら。
 前方からは影朧が時たまあげる高笑いが響く為、見失う心配はないのが不幸中の幸いか。
「少し鎮めちゃいましょ」
 胸元から取り出したペンの筆先は黄金に輝き、真っ直ぐの縦線からきゅいと折れ曲がる軌跡を描く。
「冷静のイサも添えておこうかしら……効き目なさそうだけど」
 寄り添うように縦1本線。さらには大鹿の角で自分にお守り、水の羽衣を纏った。
 ミッドナイトレースにキーを刺しこみ乗り込めば、ブルンッと唸るエンジン絶好調。家屋の崩壊心配ご無用、ふわり浮かぶ車体から水色のオーラを振りまき疾走開始!
 ルーンを媒介に顕現した水に影朧の炎もたじりと意気消沈。完全消火に至らずとも、燃え広がりは随分抑えられる筈。
 そこに、ドンピシャリ! と稲光が走ったからさぁ大変!
「おや、ついうっかり」
 ごめんなさいね、と伺うあどけない少年の声は深草色の緑の龍から発せられている。後から制御した雷は土塊に吸われ被害ナシ。
 安堵する東天・三千六(霹靂霊・f33681)が曲り角の頭で覗き込む先では、目を剥く人々が空を指さしている。
 厳つい曲り角の元、琥珀の竜眼が人懐っこく窄まる。すると、足下から柔らかな雨が降りだした。
 両手を広げ民草を庇っていた學徒兵は盛る炎が収まったことで三千六の正体を悟る。
「あの御方は超弩級の猟兵様です! 安心して逃げてくださーーい!」
 闇に炊きあがる炎の華を受け、綠龍はにわりと瞳を弓に曲げた。
 するりと伸びた背には、既に中華の鎧に身を包む“ご主人様”が勇ましく跨がっている。
 ――悪に拐われた乙女を助けるのは白馬の王子さま、なんて乙女贔屓の物語をなぞらえて、いざや征かん、悪漢退治!

「待ちなさぁい!」
 先んじたティオレンシアのとろり蕩けてよく通る声が夜を打つ。影朧に抱えられた娘も目を覚まし頭を振るった。
「お嬢さんを離しなさい!」
 急加速で脇を腕を伸ばすも躱される。ちぃと舌打ちし、直角に折れ急停止し行く手を阻む。
「逃がさないわよ」
 これは恰好の舞台設定。
「お姉さーん」
 背筋を伸ばし腕組みのご主人様を落さぬようすすいと飛ぶのは朝飯前。
「ええと紅子さん、助けに参りましたよお」
 騎獣として、お姫様救出に関われるのは至極幸いと、三千六は身をのたわせて呼びかける。
「ぬぬぅ! 蛇子を奪わんとする狼藉者めが!」
 ちゃきりと抜いた刀を前に、紅子がヒッと声を裏返し。
(「ああもう、お嬢さんがいるとやりにくいわね!」)
 腰の銃に伸ばした指を引っ込めてじりじりと機会をうかがうティオレンシアの前を、龍が身をくねらせ長閑に横切った。
「ご安心を。宵闇の騎士が助けに参りましたよ」
 恐い恐いと涙に濡れた睫がふわりと持ち上がる。
「! あら、でも……活動映画でみた西洋騎士様とは全然違うわ」
 その前に馬じゃないところをつっこまないのかしら、とティオレンシアは首を傾げる。
 まぁしかし、紅子は瞳を煌めかせきゅんと指を胸の前で組み合わしてるし、怖がられるよりはよっぽど良い。
「ふーふーふー、騎士にも色々あるのですよ。今、お助けしますよ、姫様」
「騎士様、信じております。あたしは何をすればよろしくて?」
 芝居がかった台詞、まさにヒロインノリノリである。
「お怪我せぬよう、おとなしーくしていてくださいね。さぁ、いくぞ! 悪漢め!」
 三千六の台詞に合わせてご主人様が月曲りの青龍刀の切っ先を敵へ向ける。
 そぉれ!
 ひゅるりと龍尾を撓らせて急旋回、青龍刀がギラリと翻り影朧の握る刀を掬い上げた!
「ぐっ」
 痺れる手首に歯がみする剣士と、吹っ飛ばされた日本刀。
 そしてまぁと瞳を見開く姫君は、熱く胸を滾らせる。だがそんな彼女の前にはひんやりと守護の水盾が展開されている。
「念のためねぇ? あなたが傷つけるなんてヘマはしないと思うけど」
「ありがとうございます。恐くない方がいいですものね」
 ヨイショと、伸びやかに胴体を曲げて剣士ごと囲む三千六。
 ご主人様は剣士の肩を絶とうと青龍刀を振り下ろすも、残念! それは身をよじられて避けられてしまった!
 男はそのまま刀を飛び越えて、ティオレンシアとは逆の方角に着地する。
「多勢に無勢の卑怯者めが! これは逃走ではない! 蛇子を守るためである!」
 捨て台詞を残してぴょーいと飛ぶように駆ける剣士影朧。紅子の「あーれー」という悲鳴が遠ざかっていくと共に、瓦に刺さった刀も霧散するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

橘・小雪
あたし、紅子さんとお友達になりたいの
きっとね、紅茶がお好きな方で、甘味もお詳しいと思うんだ
女給さんとしての心構えとかお伺いしたい!
そして、あたしもメイドとしてレベルアップしたーい!

でも、あたしはまだまだ力が足りないから
まず紅子さんを追う前に影朧を慰めにいくね
そしたら、紅子さんを追うのもきっと楽になると思うから!

まずは、落ち着くために紅茶を一杯
燃えている桜にも紅茶をさっとかけて、紅茶をどうぞ
召し上がったなら、あたしたちは友達ね
ティポットをどこから出したかなんて無粋なことは聞かないで
これはあたしの商売道具だもの

火事で亡くなられたのね
熱かったでしょう 無念だったでしょう
お気持ち、わかる気がするわ
でもね、それであなたが桜を燃やしてしまったら
またあなたも熱くなってしまわない?

もちろん、桜が燃えるのは悲しいわ
でも、あなたがまた熱いって苦しむほうが嫌よ

あなたが望むなら眠らせてあげる
きっと熱いのも、苦しいのも、全部治してあげられるわ
望まないなら、あたし、あなたを抱きしめてあげる
桜の木が燃え尽きるまで


大町・詩乃
【WIZ】

紅子さんは気になりますが、まずは火事が広まらないよう幻朧桜に取り憑いた影朧さんを転生に導きましょう。
UC:慈眼乃光で燃え盛る幻朧桜さんを見つめつつ【植物と話す】で、憑りついた影朧さんと対話。

火事で死んだ無念や心残り等々、色々とお話を聞いて影朧さんのお気持ちに寄り添いつつ優しく慰めます。
その上で「でもこのままでは貴方が救われません。どうか心安らかに転生して下さいね。貴方の幸せを祈っておりますから。」と影朧さん納得の上で穏便に解決【除霊】します。

次は紅子さん救出ですね。
どうも彼女はいらん苦労をしてきたような気がします…

(詩乃の考えた紅子ちゃん設定)
東京に出る前は15歳。
東北の農家かつ田舎出身。
村ではモテモテ。
多くの若い男性に告白され、当たりまえの人情として気分が良かったかも。
ですが男性達の間で諍いが起こり、振られた女性達は紅子さんを恨み、更には資産家のエロジジイが妾にしようと画策し始めて、ついには帝都に脱出。

今も紅子さんを想う人有り、エロジジイも未だ諦めず…。

こんなん出ましたけど~




 一方地上。
 炎は猟兵の雨で和らぎつつあるが、縦へ横へと燃え盛る。
 人的被害がでないのは、あくまで學徒兵の身を挺した避難誘導が功を奏したからだ。一歩間違えば大惨事の有様に、輪天号にて駆けつけた橘・小雪(Tea For You・f37680)は気を引き締めるように頬をぺちりと打った。
 小雪もまた紅子と同じカフェーの看板娘。
『星月夜』の店名通り、腰を落ち着けて紅茶を心ゆくまで楽しんで欲しいという願いの店と、活気ある庶民の社交場の『パーラー早乙女』は些か毛色が違う。
 でも、客から耳にした噂話は楽しいものばかり。

 ――早乙女のぼた餅は最高だよ、紅子ちゃんが毎日仕込んでんだってよ。不思議と紅茶と合うんだよね。
 ――愛想が一級品で、客あしらいもうまいよねぇ。

「是非、お店にお邪魔して紅子さんとお友達になりたいと思ってたんだけど……無事かな、紅子さん」
「追いかけている皆さんはそれぞれ腕に覚えのある方のようですし、きっと大丈夫ですよ」
「わわ!」
 独り言に返されて慌てる小雪へ、大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)ははんなりと小首を傾げて微笑んだ。
「あなたも猟兵ですよね。まずは火事が広まらないよう幻朧桜に取り憑いた影朧さんを転生に導こうと思うんですが、一緒にお願いできますか?」
 周辺の炎は仲間の雨で勢いを削がれ、學徒兵らはそこへ誘導している。お陰で未だ激しく燃え盛る中心部付近に一般人はいない。
「はい! あたしも影朧を慰めにいこうと思ってたんだ。哀しみを抱えて燃え尽きてしまうより、心安らかになって次の人生に旅立って欲しいから」
 胸で指を組めば、はらりはらりと髪飾る桜が落ちる。
 頷く詩乃は、万が一の逃げ遅れを確認しに戻った學徒兵へ振り返る。
「人の気配はありません。万が一いらっしゃった場合は、私達が責任もって助けます。だから學徒兵の皆さんも炎から離れてください」
「避難誘導お疲れ様だよ。誰かが亡くなったりはしないから、安心してここは任せてよ」
 小雪も胸に拳を当てて保証する。
「では、超弩級の皆様にお任せいたします」
「どうかご無事で!」
 防火性のインバネスコートを翻し、若き男女二人は走り去っていた。
「小雪さんは、紅子さんとお知り合いなのですか?」
「いえ。ただすごい女給さんだって噂はかねがね。だから心構えとかお伺いして、メイドとしてレベルアップしたいなーっと」
「そうだったんですね。紅子さん、随分と苦労もされてるようですし……あとー……客あしらいはお上手だとは思いますよ」
 さて、その理由、小耳に挟んだ噂をここで話して良いものか――。
 詩乃が聞いた所によると……紅子は、東北の田舎町の中で紅子は100年に一人の器量よしと謳われた娘だそう。
 貧しい農家の生まれにもかかわらず、地主の息子他、金持ち連中に蝶よ花よとチヤホヤされて、すっかり男あしらいが上手くなったのだ。
 ……といっても子供に聞かせられない生々しいやり方ではなく、卓越したバランス感覚で誰かひとりのものにならぬよう躱していたらしい。
(「カフエでチヤホヤしてくるオジサン客のあしらいなんて、朝飯前ですよね」)
「すごいなすごいな、紅子さん! 逢うのが楽しみ!」
 屈託ない小雪を前にして、とても「でも男達はいがみ合い、あぶれた女達には逆恨みされ、挙げ句に地主の息子を飛び越えて当主の爺様が妾にしようと手を伸ばしてきた」――なぁんて、続きは言えない詩乃である。
 閑話休題。
 燃え盛る幻朧桜の前で、小雪は輪天号に結わえてある袋から小さな折りたたみ机を出した。
 手際よく硝子ポットとティセットを置くと、軽い飲み口の茶葉を振らせて水筒から湯を淹れる。
 ラムネ色の金平糖を白いカップに潜ませて、琥珀の液体を空気を含ませるように注ぐ。
「時節柄とアイスティがいいかもしれないけど、氷までは手がまわらなくて……はい、紅茶をどうぞ」
 ティカップを手に取ると、小雪はひときわ炎が強い木の根元にかけた。
 唐突な行動に瞳をまんまるにする詩乃は、炎が……いや、影朧ごと気配が和らぐのを肌で感じ取る。
「召し上がったなら、あたしたちは友達ね。こんばんは、お名前を聞いてもいいかな?」
 紅蓮桜花が揺らめき火の粉が散った。無秩序な輝きから『かのこ』と読み取ったのは、詩乃の慈愛に溢れた神の瞳だ。
「――かのこさん、と仰るのですね」
 そうして手が焼けるのも厭わずに詩乃は木の幹に手を触れる。植物の語る言葉から影朧の気持ちを濾しあげたい。
「かのこさん、可愛らしい名前ね。あたしは小雪よ」
 よろしくね、と握手をするように詩乃の掌に重ねたら、小雪の中に影朧の気持ちが流れ込んでくる。

“熱い、熱い、はやく逃げたい……足が動かない……”

「足を一番に焼かれてしまって逃げ遅れたのですね。それはとても辛くて悔しかったでしょう……」
 詩乃は目を伏せて慰めるように幹を撫でさする。
「でもこのままでは貴方が救われません。どうか心安らかにして転生して下さい」
「火事で亡くなられたのね……熱かったでしょう 無念だったでしょう……でもね、それであなたが桜を燃やしてしまったら、またあなたも熱くなってしまわない?」
 全てを受け止めると示すように、小雪は両腕を広げて樹を抱きしめた。
 詩乃は止めない。それは小雪が猟兵だから……ではなくて、
「かのこさん、お優しい方なんですね。私達が同じ苦しみを浴びせないようにって堪えて下さってます」
 誰に顧みられず密やかに果てていた無念は、二人の猟兵に気づかれ気持ちを傾けられた時点でかなり浄化された。
「うん。こんな風にみんなを巻き込みたいわけじゃないの? でも、ならどうして……?」
「……あ、待って下さい、小雪さん」
 詩乃は桜に近づくと、天耀鏡で燃え盛る桜を映した。
「! なんだかかのこさん以外も映っているような……?」
「はい。力を持っているのはかのこさん。けれどそれを利用して悪さをしているのは別の影朧……の欠片、でしょうか」

 ――憎い、男を寝取られた。
 ――あの女給だ、そう教えてくれた。
 ――みなを焼き払え!

 怨念を唱え、首に掛かった縄をぶら下げた古今の女が数名、水を張ったように澄んだ鏡の中で揺れている。
 恐らくは欠片達の影朧(ほんたい)は既にこの地にはいない。紅子を攫った『黒輝血』が寄せたのかもしれない。
「どうしよう? 影朧のかのこさんが取り憑かれちゃってるの?」
 戸惑う小雪の耳朶を、しゃんと浄福な鈴の音が擽った。
 浄奏三番叟鈴を掲げ、詩乃は神楽の歩を素早く踏む。
「欠片は私が祓います。小雪さんは、かのこさんを支えてあげてください」
「わかった。かのこさん、恐いのは今から祓い清めますよ、もう大丈夫」
「――誘われ寄り合った悪しき欠片よ、ここはそなたらの居場所ではありません。去りなさい、そして正しく新たな命を編みなさい」
 五色の布が夜を裂く。
 しゃんしゃんと五回、その度に荒れ狂う炎と共に何かが抜けて飛ばされていった。
 ……悪しき部分の欠片とて、詩乃は慈悲を注ぎ形なして幸せな来世たらんとの願いを込める。それはかのこへ向けるものと寸分も違いはしない。
 ふう、と肩の力を抜き、詩乃は桜へと語りかけた。
「かのこさん、これでもう大丈夫です。私は貴方の幸せを祈っておりますから」
 人の祈りが神に力をくれる。
 だから神である詩乃は嘗て人であったこの影朧の為に、祈る。
 どうかどうか、次は苦しい死に襲われず寿命を全うできますように、と。
「火が消えた。ありがとう、かのこさん。よかった。桜が燃えるのもあなたが熱いって苦しむのも悲しかったから」
 聞かずとも、わかる。
 かのこは眠りを望んでいる――安らかな眠りも、現世の傷を取り去ることも、桜の精である小雪ならば叶えられる。
 抱擁したままで頬を押し当てて瞼を下ろす。すると小雪の桜花がふわりと舞い上がり、燃えた樹木に彩りを与えた。
 眠りを誘う安寧は燃え盛り傷ついた桜花を包み、癒やす。
「……旅立たれたようですね、かのこさん」
「うん、よかったぁ」
 ほぅと気を抜いてしゃがみ込む小雪の傍ら、詩乃は空を見上げた。
 炎は完全に沈黙し、周囲で響くざわめきは安堵の色合いを増していった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

コノハ・ライゼ
あらあら、愛の逃避行……じゃあなさそうダケド

【翔影】喚んで空飛び、優雅に追うとしましょ
見物?
やぁね、影朧が紅子ちゃんに手ぇ掛けないように見張ってンのよ
いざとなりゃ術も届くしネ

ナニが目的か知らないケド、火ぃ着けるのはいただけないよねぇ
その子まで燃えちゃったらどうすンの
で?あんたにとってその子はナニ?
……ものは相談だけど、アタシが身代わりになるってぇのは……ダメ?そう
じゃあ紅子ちゃん、そんな分からず屋よりアタシに乗り換えない?

適当にテキトーな事話しかけつつの追跡で遊んでるようにしか見えないケド
仲間の邪魔はしないわよ
念のため隙見て「くーちゃん」をこっそり飛ばし
影朧か紅子ちゃんに忍ばしておこうかしらね




 舞台は再び変って屋根の上。卑劣なる悪漢は恥も知らずに敗走一択!
「蛇子、嗚呼蛇子、へびこへびこへびこ…………」
「誰かぁあああ、たぁすけてぇええええ!」
 気味が悪い念仏を打ち消すように叫んだら、前方にするりと千紫万紅なる麗人が現れた。
「あらあら、愛の逃避行……じゃあなさそうダケド」
 足下に影の翼を散らし佇むコノハ・ライゼ(空々・f03130)は、さてどうしてくれようと思案中。
 なにしろ予知ではここで救出は敵わないとでている、であれば無茶は禁物。
「まぁ! 今度は美麗の騎士様かしら? 助けて助けてぇ」
 もっと顔を見ようともぞもぞ身をよじる紅子へコノハは苦笑い。
「紅子ちゃん、ダメよ暴れちゃ、落ちちゃうわ。大丈夫ヨ、絶対に助けるからネ」
 最終的には、と心で付け加え優雅に併走。
「ナニが目的か知らないケド、火ぃ着けるのはいただけないよねぇ。その子まで燃えちゃったらどうすンの」
「フッ……我が火をつけたとよくぞ見破ったな。これも全て蛇子を手中に取り返すが為よ!」
 この影朧、喋ること喋ること。
 帝都カフェでの人気は先の小雪の言う通りで、故にこの影朧の目に止まってしまったのが悲劇の始まり。
「あの桜は恋に破れた女達が最期に行き着く場所。お前が袖にされたのは、カフェの女給の現を抜かしたから。女給の住まいはすぐ傍と嗾したら、ご覧の有様よ!」
「! 待って?! あたし、帝都に出て来てからはそんなことしないわっ」
「「“帝都にでてきてから”は?」」
 あ、思わずコノハと影朧の台詞が被ったぞ。
「……て、帝都以外でも、別に自殺に追い込んだりなんてことはしてないわよ?」
 詩乃が聞き集めた通り、田舎では相当に男を惹き寄せて女の恨みを買っていた口ぶりだ。
「ふぅん、結局は帝都で見かけて攫っただけなのネ」
 深くつつくのはやめようとコノハは話を変える。
「ものは相談だけど、アタシが身代わりになるってぇのは? 女給さんの出来ることは概ねやれるわよ」
 何しろ凄腕の料理人なわけで……まぁ当然のことながら返事は×。
「ダメ? そう……じゃあ紅子ちゃん、そんな分からず屋よりアタシに乗り換えない?」
「はぃい! 乗り換えます!」
 即答。
 時間稼ぎの会話も形無し、まぁ粗方仕事は終わったからいいのだけれど。
 ひょこりと、紅子の頭から顔を覗かせたくーちゃんは、紅子のおさげにちゃあんと溶け込んでいる。
「ならんぞ! 蛇子ぉ! 我と共に祠にてしっぽり永久にであるおおおお!」
 絹を裂く悲鳴を残し剣士は夜空へ消え果てる。
 くーちゃんのお陰で見失うことは万が一にもない。ならば行き先を仲間と共有するのが得策。コノハは足下の影を散らし炎の止みつつある地上へと滑り降りる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

涼風・穹
俺は忍者か何かじゃないんだし文明の利器に頼らせて貰うとするさ
《起動》で格納していた俺の宇宙バイク『スカーレット・タイフーン・エクセレントガンマ』を取り出して飛び乗り上空から影朧を追跡します

飛んで追跡すると影朧は時折屋根から狭い路地へ飛びおりて地面を走ったかと思えばまた屋根の上に出てきたりと、まるでモグラ叩きのような状態になりますが此方も決め手に欠けて捉えきれません
そのうち駅に近付くにつれて人も増えてきてしまい迂闊に接近すれば無関係な方々を撥ねかねない状況になってしまい仕方が無いので他の猟兵の方々の目印になるよう目立つように飛んで追跡しつつチャンスがあれば仕掛けます

ただ追跡だけしか出来ない状況になれば後々何かの役にたつかもしれないし影朧に蛇子との馴れ初めや今がどういう状況だと認識しているか聞いてみます
紅子が目を覚ましたなら恐怖を紛らわせるためにも何故田舎に帰りたくないのかと話を振ってみます
二人の話が妙な具合に嚙み合ってしまい更にややこしい事態に…

紅子ちゃんは実は…蛇子の血縁者で瓜二つの容姿




「俺が追う」
 コノハに入れ替わり快速で夜空駈けるは涼風・穹(人間の探索者・f02404)である。見目艶やかスカーレットの車体は、闇を斬り裂く一迅の絲。
「助けてぇ、いやぁあああああ」
 紅子も超弩級の猟兵達が追ってくれていると知り、演技がかった悲鳴には余裕すら滲む。
「まぁ下手に怖がられるよりいいか」
 苦笑交じりにアクセル全開、米粒の影がぎゅんぎゅんと大きくなっていく。
「むむむ、またしても追手」
「此方よ此方! 電動自転車の騎士様ぁ」
 騎士は自転車に乗ってないが、少女歌劇の白馬の騎士様の憧れは捨てがたい模様。
 紅顔破顔の紅子を忌々しげに見下ろすと、影朧『黒輝血』は屋根から屋根へと飛び移……らずに、ごみごみした横町通路へ飛び降りた。
 すっかりと燃え盛る現場からは離れて、夜に寝静まる商店街。追いついた穹はさてとしばし考える。
 紅子の弾むおさげから、ふつりふつり零れる影が印を残してくれている。それを追えば見失うことはない。
 穹の眼下で影朧は右に左に直角曲がり。
「~~きゅう@@」
 その度にノックバックを喰らう紅子は目を回してぐったりとしている。
「蛇子や蛇子、嗚呼、可哀想に」
「可哀想にしてるのはお前だろう」
 上野の公園に出た所で、穹は屋根の上を弾み広場の真ん中へ踊り出た。
「いい加減彼女を離……」
 しゅん!
 影朧は床を蹴り周囲に盛り咲く幻朧櫻を駆け上る。わさわさと桜花を散らし、夜の池では驚いた水鳥が飛び立った。
「……ッ! 逃がすかよ」
 レストランの屋根へ乗り移る男へ舌打ちすると、垂直上昇で再び空へ。悲鳴がなくなった今は、足音と仲間の残してくれる影が頼りだ。
「これはまた嫌なところに降りやがって」
 繁華街、夜化粧の不良モガとモボが、穹からの闖入者に悲鳴をあげて散っていく。女を庇った男と、放り出して逃げる男と……運命の分かれ道だなぁ、なんて。
 ――まぁそんな風に、だ。
 空から追えばちょいとしたせせこましい路地へと飛び込み……叩いても叩いてもでてくるモグラの如く、右や左への大立ち回り。
「なぁ、蛇子とあんたってどういう知り合いなんだよ」
 ドルルッドルルッとエンジンを鳴かせながら、声は聞こえるが手の届かない絶妙な距離で問いかける。
(「これ以上つめると逃げるからなぁ……」)
「フッ、それを知りたいか?」
「ああ」
 散々勿体ぶっている間にもいつでも逃げ腰及び腰。辛抱強く問答を五回繰り返した所でようやく影朧はぶっちゃけた。

「我は――我はな、愛する蛇子に呪い殺されたのよ」

 ニィと歯を剥く影朧は刹那身に纏いしおぞましき気をわざと高めて見せた。
 緊張を解くように下唇を嘗めながら、穹は更に言葉を投げかける。
「……それで、出逢った故郷に連れ帰ろうってのか」
「夫婦として今度こそ契りあう」
「いや! いやよっ!」
 どこから聞いていたのか、突如覚醒した紅子がくわと目を見開いた。
 100年に一度の器量よし、それでも無様にはならぬ愛らしさ。しかし人の多き帝都の中ならば、見目可憐で留まる程度なのはさておき。
「地主の息子だかなんだか知らないけれど、その絡みつくような瞳が虫ずが走るのよ!」
「なっ……我の顔は生まれつきだ! あの日、我を袖にした台詞を繰り返すか……蛇子めぇえ」
 生まれつきってもう死んでるけどなー……と、心で付け足しながら、穹は二人の喧々囂々のやりとりを見守っている。
「顔を近づけないでえっ! 妾にって大金持ってやってきたアンタの親父よりはマシだけど……!」
 改めて暴れ出す紅子を影朧は押し抱いた。
(「どさくさに紛れてなにしやがるんだ……」)
 穹、心に正直。リア充絶許。
「さぁ蛇子! 祠行きの夜行列車が上野駅に入線する音が聞こえるだろう? いざいかん」
(「影朧、耳いいな」)
 とにかく! 行き先がわかった以上は仲間に知らせて先回りが良策であろう。
「お父ちゃんとお母ちゃんもお金に目の色変えてたから、売り飛ばされる前に逃げてきたのにぃいいい!」
 ドップラー効果で撓む紅子の悲鳴を見送って、穹はバイクをターンさせて上野駅へとひた走る。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『朧侍』

POW   :    桜花行進
【霊力を流し込んだ刀を構えながらの】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【連携を行っている同型機】の協力があれば威力が倍増する。
SPD   :    桜華狂騒
【影朧に取り憑かれ、霊力機関が暴走した状態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ   :    桜香前線
【幻朧桜を介した霊力通信】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【通信を行った同型機との一糸乱れぬ連携】で攻撃する。

イラスト:蛤大漁

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●上野駅構内
 夜の帳がおちた中、北へ西へと走るは長距離花形寝台列車。
 上野駅に駆けつけた猟兵は、駅構内に入ってすぐに騒然とした空気の出迎えを受ける。
 確かに本日週末につき夜の割りには乗客が多い。その殆どが、出稼ぎがしばしの羽根休めに故郷に帰ったり、旅行としゃれ込む人々だ。大きめの旅行鞄や風呂敷包みを手にしている。
 だが彼らは落ち着かない顔で辺りを見回したり所在なげに佇んでいる。目を凝らすと階段下で人だかりができている。
「うぅうぅ、ひどいわ、恐いわ……」
 中央では肌着姿の娘が項垂れてしくしくと泣いていた。足下には華やかな帯留めと布地が落ちている辺り、刀で帯を切られ奪われたのだろう。幸いにも怪我はないようだ。
 物見遊山で鼻の下を伸ばす男どもと眉を潜めてそれを囲む娘らの攻防戦を猟兵らが改める前に、耳を劈く発車ベルが構内にこれでもかと響き渡った。

『3番線より、19時47分発の寝台急行『星影』発車しまーす』

 急かすようなアナウンス、恐らく影朧はあの列車に乗り込んでいる!
 気遣う言葉をかける者、手持ちの上着を周囲の娘に手渡す者……猟兵らは思い思いの振る舞いを娘に残して段抜かしで階段を駆け上がる。
 ゴトンゴトンゴトン……。
 機関車に引かれた藍色に★マークの散りばめられた四角いは、線路に沿って揺れながら上野駅を離れだしている。
 猟兵らは躊躇うことなくホームを踏み切り、ゆらゆら手を振るように夜に輝くデッキ目掛けて飛翔した。


●寝台急行『月影』
 寝台急行『星影』は14両編成である。
 機関車の次には乗務員の控え室がある。交代要員の仮眠や、客室乗務員の休憩室も兼ねている。
 そこからひとつ目が特別等級車。乗客は華族や資産家である。
 非常に高価で、列車の半分以上を占める二等座席の5倍以上の運賃がかかる。
 ただそれだけの金額を取るだけはあり、車両を2等分されたスペヱスは4人家族で過ごすに充分な程に広い、ちょっとしたホテルの調度品が揃っている。入浴さえ我慢すれば、長旅を心地よく過ごせること請け合いだ。
 続き5両が寝台ベッドが二段並ぶA級車両。こちらが5両畳一畳よりは狭いが寝っ転がって過ごせるので快適である。
 食堂車を挟み、最後の7両がB級車両だ。こちらは普通車でも使われる硬い木のシートで、据わって過ごしてくださいね、その代わり安いですよという寸法である。

 ――さて。
 猟兵達が飛び乗る直前、既に車内では騒ぎが起きていた。
「……か、影朧だ」
「ど、どうすればいいの……」
「ママぁ」
 特等車から華族らしき壮年夫婦と子供2人が困ったように逃げ出してきた。
 彼らは華族としての慎み深さのある類いの者達のようで、騒がず呆然とした面差しでA級車両に佇んでいる。
 しかしどうしたものか。乗務員に知らせようにも、追い出された向こう側に詰めている。
「父様、食堂車なら誰かいるでしょう」
 紅顔の12歳ほどの息子が利発な容に似合いの提案をする。
「誘拐されたお嬢さんは騒ぎを大きくしたくないようでした。きっと、食堂車の人に知らせれば、次の駅で緊急停止して學徒兵の皆さんや超弩級の方々が駆けつけてくださる筈です」
 彼は學府への進学を望んでいるが、危険だからと両親に反対されていて――なんてことは、今は関係ない。

 ――しかし、少年の騒ぎを大きくしないという心遣いは、直後無駄だと知らされる。
 車両のそこかしこから、絹を裂くような悲鳴が上がりだしたからだ!

 同時多発でいきなりわき出たのは、薄紅色の甲冑姿の『朧侍』
 彼らは、人の瞳ではなく桜花弁の輝きで周囲を見回すとやたらめったらに刀を振り回しだしたのだ!
 食堂車で硝子の割れる音がする。
 華族のいるA寝台車両にも、奴めは現れ場はパニックに陥っている! ああ、救いはないのか!!


●特別等級車にて――
「ふむ、蛇子にはやはり華やかな柄が似合うな」
「…………そ、そう。あ、ああ、ありがとう」
 歓迎とおかれた酒を嗜みご満悦なのは此度の首謀者、影朧の黒輝血。
 隣で赤や黄色の大花小花の柄の和装を羽織るのは勿論ヒロインの八坂紅子嬢である。
(「だいじょうぶ、だいじょうぶ……きっときっと、超弩級の騎士……猟兵さん達が来てくれてる筈」)
 ドアの前では物々しい刀を構えた朧侍らが控えていて、そもそも黒輝血も怒るとなにをするか分らぬ輩。
 恐くて恐くて歯の根が合わないが、グッと堪えて紅子は終始気丈に振る舞っている。

「あ、あたし、血がついた着物なんて嫌だわ!」
 なぁんて、駅で娘から身包みを剥ぐ黒輝血が傷つけるのを止めさせた。

 同じような台詞を乗り込んでからも言い続けてなんとか流血沙汰になるのを押さえているが……朧侍を出している時点で、乗客達を生かす気がないのは明白だ。
(「ああ、ああ、はやく来て……! みんなを助けて!」)

 最後尾から乗り込んだ諸君は、恐怖の坩堝となりつつあるそれぞれの車両に駆けつけ朧侍を成敗して欲しい。
 全ての朧侍を倒せば、いよいよ黒輝血との最終決戦である!


******
【マスターコメント】
 既に受付を開始しています
 執筆は10日(日)からとりかかる予定です
 1章目参加の6名様は採用確定
 プラスして6名までは先着順で採用します! 途中参加歓迎です!
 またオーバーロードは受付締切を宣言しない限りは、合計12名を越えても全員採用します

◆概要
 2章目は朧侍とのチャンバラアクションです
 チャンバラに限るのは敵側だけなので、皆さんは思い思いの戦い方でどうぞ
 戦う中で車内を壊しても罪に問われませんし、それが原因で脱線や横転などで乗員乗客に死者がでることはありません
(リプレイ描写で、揺れたり脱線し掛かったり、転んで怪我、ぐらいはありそうですが、それは壊さなくても発生すると思います)

 後味を良くしたいなら乗客を助けることを念頭に置いていただければと!
 みんな怖がったり浮き足だっていますが、猟兵が「乗客を盾にする」など明らかに犠牲にしなければ死にはしません
 また「超弩級の猟兵が助けに来てくれた」とわかれば、以降は指示には従ってくれます

◆戦いの舞台となる車両
・座席だらけのB級車両
・寝台の並ぶA級車両
・食堂車:雰囲気は洋風レストラン、天井にはシャンデリア

 指定がなければB級車両での戦いとなります(Bに人が集中した場合はA)
 ただ、神経質に担当を決めなくても大丈夫です

※他の車両のプレイングの多くが成功以上であれば「向かった人がいなかった車両もうまくフォローできた」ことになります

◆同行
 3名様まで。プレイング冒頭に【チーム名】をお願いします

 アニメやアクション映画みたいなノリのテイストになると思います
 細かいことは気にせず、お好きなように楽しんで下さい!
 以上、プレイングをお待ちしております!
ティオレンシア・シーディア
うーん、実に見事な田舎の悪いとこの煮凝りっぷりだわぁ。
女の子引ん剝くとか同情心とかそーゆーのもきれいさっぱり根こそぎされたわねぇ。まあ元から雀の涙程もありゃしなかったけれど。

あたしはA級車両に向かおうかしらねぇ。
●鏖殺・狂踊起動、閉所で障害物は沢山あるし跳弾させる射角には困らないわねぇ。更に銃弾には遅延のルーン三種。強かろうが堅かろうが、詰まって動けなければ置物よねぇ?あとからゆっくり大火力で吹っ飛ばせば問題ないわよねぇ。
あ、乗客さんたちは寝台で伏せててちょうだいな。「速く動く物を無差別攻撃」なら、逆説動かなければ優先度は下がるはず。あたしは誤射なんてしないけれど、その意味でも安心でしょぉ?


東天・三千六
龍姿のまま汽車と並走し
爪を屋根か窓に突き刺し抉じ開け車内へ入ります
ふふ、少々はしたなかったでしょうか

その際に背の御主人様を還して変身を解除しますよ
行って参ります、御主人様

争いの場へ急行
敵兵の姿が見えれば畳んだ傘を手に応戦します
もし動けない乗客が場にいれば優先的に救出しましょう

みなさま、 御機嫌よろしく
UCを放ちながら数人を殴打
呪詛を振り撒きつつ一撃離脱を繰返し
敵のミス、同士討ちを誘うように、狭い車内をくるりくるり動きます

そんなに刀を振り上げて…おや、天井に刺さりましたね?
ふふ、僕の呪いは伝播するんですよお

僕と向合うだなんて、 あなたたち、不幸でしたねえ
あはは、ふふ、それではさようなら




「うーん、実に見事な田舎の悪いとこの煮凝りっぷりだわぁ」
 雀の涙ほどあったかどうかの同情心も、女の子を引ん剥く時点でティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)から消し飛んだわけで。
 さて、デッキに飛び移ろうとした所で、先程ご一緒した綠龍がぬらりと併走するのを目にする。
「後方は人が足りそうね」
 即断即決、ティオレンシアはミッドナイトレースを再び召喚し跨がった。
「やや」
 ぐんぐん離れていく列車に離されじと速度をあげる東天・三千六(霹靂霊・f33681)は、聞き慣れたバイクのエンジン音に瞳をぱちり。
 ばうんっと背中の空間を跳ね、三千六の対角へ宙返りで回り込む。ティオレンシアはイスの印で凍らせた窓ガラスを割り中へ。
「これは負けてはいられませんよ、えいや!」
 見目に対し仕草は猫が馴染みを入れるように楽しげだ。三千六は人のいない寝台のガラスを割ると、ころりんと列車内へ。
 足下の割れたガラスを足で脇に寄せ、はしたなかったでしょうかと袖を口元に。
「行って参ります、御主人様」
 雲色の髪をふわり、愛らしい眼差しの娘がひとり、龍尾を撓らせまずは車内を確認。
 これは怖ろしい怖ろしい!
 狭苦しい通路に厳つい甲冑姿の朧侍が4体、車両中央で背中合わせで刀を振り上げている!
「あたし達猟兵が来たここが一番安全よぉ、寝台で伏せててちょうだいな」
「その通りですよ。みなさま、 御機嫌よろしく」
 超弩級参上と、くるりふわりと踊り出た三千六が手元をかちり。パッと開く薄紅の傘にて寝台に戻ろうとする乗客を隠す。
 ピィーーー!
 猟兵の登場に、兜より覗く桜が乱れ双眸が哮った。
 ぐりんっ! と刀をつり下げたまま周囲を丸く斬り裂いて、朧侍は全員ティオレンシアの方へと我武者羅に疾走していく。
 明らかに常軌を逸した暴走を前にしてもティオレンシアは膝立ちで冷静に引き金を絞るのみ。
「安心してね、あたしは万が一にも誤射なんてしないし、あいつらは速く動く物を狙うから、伏せててくれたら安全……ッ、よ!」
 速射の弾丸が、さながらキネマの特殊効果の如く空中で静止。
 遅延、解除。
 直後、床を跳ね、荷物棚を弾き、精密な軌道を手にした弾丸は朧侍の胴体に重ねつきささる!
 どすん!
 刀を振るおうとした先頭の朧侍の胴体が消し飛び、上半身がダルマ落としの滑稽さ。
「どんどんいくわよぉ」
 わざと大きな所作で後ずさるティオレンシア目掛け、仲間の屍を踏み壊し3体が吶喊していく!
「あらあら、こちらにもいますのに」
 避難完了を確認し、かちりと傘を閉じた三千六は、殿目掛けて滑るように駆けだした。
 ふわり、左右の長い耳がなびき、翡翠の尻尾が軽快に弾む。
「ちょうどきゅうさま、しっぽあるー」
「これ!」
「はい、龍でございます故に」
 にっこりはにかみ笑顔。
 好奇心一杯に顔を出す童子の頭をそっと撫で母の胸へと納め、畳んだままの傘で最後尾の背中をつついた。
 少し触れただけなのに、黒々とした穴が穿たれた。とたんに、苛々と振り回す刀が“たまたま”天井に刺さった。
「そんなに刀を振り上げて……ほら、だからそんなことになってしまうのですよ」
 じたばたと藻掻く奴めは、荷棚からの金だらいを喰らって混乱している。
 だが、新たな朧侍が床からにょきりと現れたではないか!
 かしゅー……と蒸気を吐いて、新たな奴の統制を受けてタライの輩も我を取り戻してしまう。
「おやおや、これは喫驚です」
 ゆるりと典雅に傘を開き、くるりん。飾り紐で目を惹いておいて、尻尾を滑らせ甲冑の足下を纏めて薙ぎ払い。
 身を屈めて2体の間に姿を晒せば浮き足だった刀は、それぞれ味方へと食い込み腕をもぐ。
「ふふふ、同士討ち成功です。御主人様、僕もやるものでしょう?」
 再びかちんと閉ざした傘で突けば、つんつるてんと“たまたま磨き上げられた床”に為す術もなく滑ってどぉっと前まで将棋倒し。
 そこへティオレンシアの銃弾がタイミングピッタリで突き刺さる!
 耳を劈く爆発音。破片が飛ばぬよう傘を開き寝台を庇おうとする三千六へ、ティオレンシアは片目を閉じて人差し指を立てる。
「大丈夫よ。絶対的に危険はないんだからぁ」
 遅延――ニイドで縛り、ソーンで留め、イスで“乗客の安全”へと運命を強固に安定させる。
 朧侍の甲冑の欠片すらティオレンシアの計算通り。
 パチン! と指を弾いたならば、それらは真っ直ぐに斃れた朧侍達へ。そうして跡形もなく影朧の群れを消し去るのである!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジュジュ・ブランロジエ
【紫翠】
『』は腹話術でメボンゴ(人形)の台詞

皆さん、安心して!助けに来たよ!
『超弩級メボンゴ参上!』
すごいショーだけど覗いちゃダメだよ?

UCの炎で侍のみ燃やす
『コノちゃなら侍ロボも美味しく料理できるよね!』
コノさんならできそう!やっちゃえ〜!
炎で援護

突進は早業でオーラ防御展開しつつメボンゴの手から風属性衝撃波出して勢いを殺し武器受け
『真剣白羽取り〜!』
直後、UCで熱してから氷属性衝撃波(メボンゴから出る)で冷やし装甲の金属疲労を狙う
ちょっと脆くなったかな

『コノちゃのフライパンチャンバラもっと見た〜い!』
よーし、どんどん火力上げてくよ〜!
UC2回攻撃
コノさん、火加減どうかな?
あ、美味しくないんだ


コノハ・ライゼ
【紫翠】
追う途中駅で合流したジュジュちゃん達と食堂車へ

どーせ逃げられやしないンだから、邪魔しないでほしいわね
ケドそんなにお望みならあのキモイおっさんの前に……美味しぃく料理してあげる

客は机やカウンターの陰に隠れるよう声掛けるわ
料理ショーの始まりはじまりってね

敵の気を引くよう飛び込み【震呈】発動
範囲攻撃と2回攻撃掛け合わせ、連携妨げる呪詛乗せた殴打を放つ
固いお肉は叩かないとネ!

反撃は見切り軸ずらして避け、カウンターで炎の援護を受けた殴打
アタシもイケてるケド、うさちゃんもなかなかのチャンバラっぷりネ
さあてそろそろ食べ頃かしら
傷口えぐる2回攻撃で生命力を頂くわ

火加減は最高よ
……味はイマイチだけど




 列車中が蜂の巣をつついた大騒ぎである。
 さてさて、火を使う食堂車で大事になる前に対処したいのだが……。
「やっぱり埒が明かないわね。ジュジュちゃん、上からいける?」
 デッキに戻り既に上部に立つコノハ・ライゼ(空々・f03130)は、答えは聞かずともわかると言いたげだ。
『それぐらい朝飯前だよ!』
 ルビーの瞳のうさぎさんに続き、ジュジュ・ブランロジエ(白薔薇の人形遣い・f01079)はB級車両に残る仲間を示す。
「皆さん、もう大丈夫。このふたりは強いから!」
 ドアを潜りカンッと鉄床を蹴り飛ばせば、ふんわりとスカートが風をはらむ。白魚の指は紫苑のマニキュア飾る指としっかと繋がれた。
「よいしょっと……すごい風」
「走るわよ、転ばないようにネ」
 向かい風なんのそので飛び越えた車両はざっと7両。
 さてさて『星影食堂』と飾り付きのプレート下のドアをジュジュは勢いよく横へ滑らせる。
『超弩級メボンゴ参上!』
「皆さん、安心して! 助けに来たよ!」
 転がるグラス、高級ワインは絨毯に飲まれて仕舞った。しかも厳つい輩が刀を翳して脅しつけ。
 だが超弩級の助けと知り、容には次々と希望の火が灯る。
「うさぎさんが超弩級?」
『メボンゴ強いよ!』
 微笑ましいやりとりの間にコノハは素早く中央へ滑り込むとテーブルクロスに指をかけた。
「よかったわ、まだ食事のサーヴ前で」
 白を引き抜きバッサリ翻す。そうして朧侍の視界を惑わしながら、次々とテーブルを通路側へと蹴りとばしていく。
「カウンターかテーブルの影で屈めてて!」
 鈍重な駆け足で突進してくるのをちろと舌だし迎え撃ち。
「さぁ、料理ショーの始まりはじまりっ……てね」
 鉄の軋む音をたて振り上げられた刀目掛け、コノハは渾身の力で腕を振るった。
 がいーーん!
 ドラのように戯けた音の正体はなんとフライパン! いつもの柘榴を持ち替えて、仰け反り踏鞴を踏む朧侍の顎を更に突きあげる。
 左手のフライパンは右手へトス。そのまま裏手で振り抜けば3体がひっくり返りダンゴムシのようにじたばた転がった。
「固いお肉は叩かないとネ!」
 料理人ですもの、フライパン使いはお手の物! え、使い方が違うって?
「すごいショーだけど覗いちゃダメだよ?」
 戯けてウインク。ふんわり操り糸がシャンデリアの光できらきらり、対するジュジュ自身は隠れそびれた親子を身を挺して庇うのだ。
 ガシャン! と、明らかに無事では済まない音。震える肩は存外華奢で心配を誘う。
『みてみて、真剣白羽取り〜!』
 ところがどっこい、淑女うさぎのジャグリングにて刀は紙切れのように弄ばれている。
「ほ、は、はッ……はい! 仕上げはフランベ!」
『折角のレストランだもんね』
 ぱちん★
 小気味よいフィンガースナップが響けば、七色の祭典。
「うさちゃんもなかなかのチャンバラっぷりネ。負けてられないわ」
 イケてる方におひねりちょうだい、なんて茶目っ気振りまき両手持ちのフライパンで叩き下ろす。
『コノちゃなら侍ロボも美味しく料理できるよね!』
 ぴょんこぴょんことメボンゴが跳ねる度に風が起こり、朧侍は足取りふわふわ危なっかしい。
「コノさんならできそう! やっちゃえ〜!」
 つま先が浮いた朧侍をすかさず炎で炙ってコノハの元へ押しやるのだ。
『コノちゃのフライパンチャンバラもっと見た〜い!』
「よーし、どんどん火力上げてくよ〜!」
 灼熱直後に冷却氷点下。温冷自在に操るジュジュは、ぴりぴり、きかきか、と作戦大成功の軋み音を耳にする。
 粗方斃れた仲間が消えていく中で、朧侍はユーベルコヲドは諦め大太刀をぶん回した、所謂ヤケクソである。
 がしゃん!
 けたたましくテーブルが叩き割られるも肘を境に腕が砕け落ちる。
「わっ!」
 武闘料理ショウにつられて首を出していた子供の眼前に、すかさずフライパンが現れた。
「お客様には危険な部分を処理してからネ! キッチンの裏側はナイショよ」
 フライパンでてんてんっと腕を受け止めつつ、開いた腕は鋭く撓って片腕の朧侍にめり込んだ。
 ――さあてそろそろ食べ頃かしら。
 此度は残酷ショウも演目ではありません。そんなわけで踊るように抱きしめて、肩口に宛がった口元は観客席から見えないように。
 はてさて、これの親玉は貴賓車両で悠々自適。どんな味がするのやら――あのキモイおっさん、どーせ逃げられやしないンだから。
「コノさん、火加減どうかな?」
 かりん、と歯の奏でる音と同時に、朧侍は全身罅割れ霧散した。
「火加減は最高よ……味はイマイチだけど」
「あ、美味しくないんだ」
 ことりと首を傾けるジュジュは、慣れた手つきで糸を繰る。その先ではメボンゴが上手に風を吹かせて瓦礫を中央に集めて後始末も完璧です!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

涼風・穹
非常時ゆえ無賃乗車を失礼、っと
朧侍に『風牙』で斬りかかり抑えながら乗客には車両後方へ移動するよう伝えます
相手が《桜華狂騒》を使用すれば俺自身は動きを止めつつ《贋作者》で銃器を作り出して撃ち続けます
弾と踊っていろ…なんてな
その間に列車内の方々には太極拳のようにゆっくりとした動きで俺の後ろへまわって貰います

最後尾の車両内の朧侍を全て片付けて安全を確保してから一つ前の車両へ移動
朧侍と戦いつつ同車両内の方々を全員最後尾の車両へ移した後に車両の連結器を外すか破壊して最後尾の車両を切り離し、止まった後下車して逃げて貰います
それを繰り返し黒輝血がいる車両よりも後ろの車両は全て切り離します

黒輝血が紅子と一緒に田舎の祠とやらに向かうのが目的なら下手に列車を止めれば何をするか分からないし、乗客を走っている列車から降ろすのは無理だ
どこかに纏めて守るというのも不測の事態や戦力の分散が怖いしな
黒輝血がわざわざ乗客を追跡するとは考え難いし、車両の後始末で迷惑を掛ける鉄道会社や関係者には申し訳ないけど人命優先って事で


橘・小雪
駅にいた女性、大丈夫だったかな
怖かっただろうな、後で紅茶飲んでもらえればいいんだけど

さて
格好良く影朧を倒せればあたし、超かっこいい!なんだけど
正直に言っちゃうと自信ないんだよね

だから、あたし、ティーナイフで身構えながら
お客様を避難させることを優先させるよ

敵と切り結ぶくらいはできる、と思う
その間に避難してもらって
他の猟兵さんの戦いっぷりを見てもらえれば
超弩級の助け手が来たってことは理解してもらえると思うの

でも混乱して、とっても怖いよね
避難してきたお客様に素早くUCを
さあ、紅茶をどうぞ
こういう時は暑くても熱い紅茶が一番落ち着くの

ほら、痛いところも消えていく
心もほぐれていく
紅茶の香りで、笑顔を戻してもらえれば

大丈夫だよ
あたしの仲間たちが必ず助けてくれる
だから、今はあたしたちの言葉に従って
どうぞ、命を一番大事にして

紅茶の時間を邪魔する影朧は許さないつもり
ケーキフォークでもティーナイフでも使って
あたしは怪我をしてでもみんなを守るよ

あたしが守るのは
紅子さんと乗客の命と、紅茶の時間

アドリブ歓迎です




「は、はい、お任せあれ、です!」
 仲間ふたりに太鼓判を押されたならば、内心の自信のなさは引っ込めて橘・小雪(Tea For You・f37680)は、どんっと胸を叩いて請け負った。
(「格好良く影朧を倒せればあたし、超かっこいい! なんだけど……」)
 正直言って自信がない。緊張を先程共に戦った女神が感じ取り励ますように肩にふれた。
「非常時ゆえ無賃乗車を失礼、っと」
 さて、更に風色の髪を靡かせ飛び移ってきたのは涼風・穹(人間の探索者・f02404)である。続けて駅員に急ぎ話を聞いた青年も、8名の猟兵が駆けつけたわけである。
「さて、俺は1両1両潰して腹づもりだが、みんなはどうするよ?」
 そう問いかけながらも、穹は最後尾の車両へと躍り込む。
 通路一杯に立ちふさがる朧侍をまず鮮やかに斬り伏せりゃ、それだけで窓に張り付く乗客らから歓声があがった!
「僕はA寝台に向かいたいな、駅員さんの話だとそっちがほぼ満席らしいから」
「私もそちらに……小雪さん、穹さん、ここはお任せします」
 人形を連れてひょいと軽快に椅子を飛びゆく少年に続き、艶やかな黒髪の彼女も先の車両へ消えた。
「あたしはお客様の避難をがんばるね! 敵と切り結ぶくらいはできる、と思う……」
 ティナイフを構え駆けでる小雪へ、穹は唇の端を持ち上げた。
「分業分担ありがたいぜ。これから俺は敵を倒し進むから、安全地帯になった後部へみんなを誘導してくれ」
 乗客に当てぬよう短く持った風刃で胴体をバッサリ。だが奴めはユーベルコードで頑丈に強化されている。であればと、傾ぐ上半身目掛け手品のように虚空から出したリボルバーで打ち抜いた。ユーベルコードの加護を帯びた弾丸は、朧侍の額に突き刺さり見事に命を断ち切る。
「ささ、皆様、彼の脇を抜けてこちらへどうぞ」
 既に穹は車両中程まで進んでいる。離れずについた小雪はいつでも庇えるように腕を広げ、真横の座席へ目配せした。
「乗客の皆さん聞いてくれ。この敵ははやく動く者を狙う」
 背もたれを乗り越えて逃げようとしていた乗客が、慌てて身を強ばらせて固まった。
「だから、俺の横や後ろを、ゆっくり、ゆーっくり歩いて抜けてくれ」
 また1体を弾丸で打ち抜いてから、穹は人が通れるように躰を傾けた。
 そこへ、そろりそろりと太極拳めいた動きで中年夫婦が後ろへと抜けていく。
「超弩級の誇りに賭けて、あたしは絶対に皆様をお守りします! もしお怪我をされてもぴたりと痛みの紅茶も振る舞うから、どうか落ち着いて来てね!」
 小雪の可憐な鼓舞を聞き、未だ朧侍がそばにいる乗客達もほっと肩の力を抜いた。

 ――瞬く間に最後尾車両の制圧が完了する。

 乗客達が安堵するのにつられずに、穹は次の車両へのドアに手をかけた。開け放つその前に、こそりと振り返り小雪に耳打ち。
「俺はここからどんどん先を制圧していくが、ある程度安全な車両がたまったら連結器を外して切り離していって欲しい」
 お皿のように目を見張り「どうして?」と素直な疑問が花唇から飛び出した。
「黒輝血だよ」
 穹は現時点の懸念を手短に話す。
 黒輝血は紅子と田舎の祠へ行くのが一番の目的だ。だから下手に列車を止めれば何をするか分からない。
「とはいえ、乗客を走っている列車から降ろすのは無理だ」
「降ろせないのなら、安全な車両にいていただいて守るのはどう?」
 穹は短く唸り、こう返す。
「これだけ守る者の数が多いと不測の事態に陥る危険性が跳ね上がる。1人ぐらいならいいが、護衛に猟兵の手数を取られるのも避けたい」
 どの世界にも大なり小なりある現地組織、その中でも帝都桜學府は心強い側に入る。だが当てにしすぎるのは危険だ。だから穹としては出来る限りの手は打ちたい所。
「なるほど、わかったわ! 乗客の皆様はあたしに任せて!」
 感心と共に大きく頷いて小雪は穹を先へ送り出した。


 がらりと穹がドアを開け放ったならば、鏡を連れた軽やかな乙女が「あとはお任せしました」と託し更に先の車両へと消えた。
 朧侍は皆少しの傷があれど健在、乗客の安全最優先での時間稼ぎ。恐らくもうひとりも同じように先を抑えてくれている筈だ。
「こりゃあ気合いを入れて可及的速やかに葬りさらないと……ッな!」
 あの2人はA級寝台、更に先へと急ぎたいのが本音だろうから。
 上段斬りで手近な敵を止めながら、先程発した説明と注意喚起をもう一度叫ぶ。
 超弩級が抑えていたこともあり、最初の車両より明らかに混乱が少ない。乗車率は8割、どうやら指定席は最後尾から埋めているようだ。
「ほらほら、鬼さんこっちだ」
 ぐんっと躰を反転させて座席を背に庇う。
 素早い動きに反応し振りかざされた刃目掛け、穹は即座に銃口をあわせてトリガーを引いた。
「……おっと」
 ガンッ! と折れ砕けた切っ先はしなやかに蹴り上げた強化靴に突き刺し止める。荒々しくも周囲を傷つけぬ手慣れた戦い方だ。
 だが片脚あげの不安定な穹目掛け、仲間を飛び越えた敵が斜めに刃を突き出してくる。
「動くもんにつられるって猫かよ……胴体ががら空きだぜ?」
 両手持ちの風牙で力任せに薙ぎきる。敵が蹌踉ける隙に両足を地に着けて、あけた片手にまたまた銃を召喚して、撃った。
 ぽいっと手放せば銃は消え、再び右手を柄に添え握り込む。
「すげっ、かっこいい!」
「いけいけ! 超弩級!」
 ドングリ眼をくりっとさせて男兄弟が囃し立てた。
「これ! 超弩級さん、すんませんー……」
 2つの頭にげんこつ落とし、母親が申し訳なさそうに頭を下げるのに、穹はにぃっと人好きのする笑みを返した。
「ははは、元気だな。いいか、今のお前らの仕事は母ちゃんとはぐれず後ろに逃げること……だっ!」
 ガシャン! と、力任せに斬り伏せる裏側を、言われた通りにやんちゃ坊主と母が首を竦めて通り過ぎていく――。


 穹を送り出してすぐの小雪は、今し方救いきった最後尾の車両を見渡した。
「皆様、改めてご安心くださいね! この車両はもう安全だから!」
 すらり。
 翳した掌からティーワゴンが2つ現れる。銀色上下の台には、硝子ポットで入れた紅茶が既に美味しく蒸らされている。
「っとっと……よいしょっと」
 小雪はワゴンとワゴンの間に滑り込み、それぞれを引きながら乗客の元へ。
「さあ、紅茶をどうぞ。こういう時は暑くても熱い紅茶が一番落ち着くの」
 甘さを効かせたミルクティを淹れては次々と手渡した。
「とっても恐かったよね……擦り傷も打ち付けた傷も、飲んだら消えちゃうからね」
 恐い気持ちもちちんぷいぷい飛んでいけ!
 わぁわぁ泣きじゃくる赤ちゃんも、一旦小雪が抱っこして、まずはお母さんにほっとしてもらえたらと申し出る。
「うん……恐かったよね、よしよし、もーう大丈夫だからね」
 あやしても顔を真っ赤にして泣き喚く。赤ちゃんに紅茶ははやいし、はてさてどうしたものか。
「……はぁ、美味しい。こんなに落ち着いてお茶をいただけたのなんて久しぶりだわ」
「おう、赤ん坊いると寝れねえもんなぁ!」
 がははと笑う赤ら顔のオジサンは、ハイカラな紅茶を一気に飲み干し完全に何時もの調子だ。
「おとうちゃんはガーガー寝てたじゃないのさ! ささ、赤ちゃんはあたしが抱っこするよ」
 肘で夫を小突いたおばさんが進みでて小雪の腕から赤子を受け取った。母親を安心させるように隣に大きなお尻を押し込んで笑い合う。
 母親が落ち着いたからか、赤子も真っ赤な頬をゆるめておねむの時間。
「超弩級のお嬢ちゃん、他の車両の人も心配だろ? はやく先へ行ってやんな」
「お代わりはうちらでもらうよ。ありがとう、美味しいかった!」
 座席の方々からあがるお礼に小雪はぱちりと睫を揺らした。
 吃驚した。
 あんなことがあったのに、みんなみんな、なんて強くて優しくてあたたかいの……! 取り戻せたのは、紛れもなく小雪が振る舞った紅茶のお陰。
「ありがとう! うん、少ししたら消えちゃうけど、そのままでいいから」
 ワゴンを渡り連結部のドアに手を触れる。先に行こうとして慌てて振り返った。
「そうだ! あのね、この後すぐに、ガクンッてすごく揺れるから皆様どこから捕まってください! 安全確保の為に走る車両から切り離すの。それで……」
 學徒兵が駆けつけるまで待ってもらった方がいいかなと小さく考えたら、若い男が手をあげた。
「まだ駅から離れてないし、俺が駅までひとっ走りするよ」
「! ありがとうございます!」
 學府さんもくるだろうなど言い合う皆は、紅茶の魔法が効いて一様に落ち着いている。
 乗客の声援を背に小雪はドアの向こうへ、連結器へえいやっとティーナイフを叩きつければ、がったんと重たい音と共に後部車両は置き去りになった。
 感傷に浸らず即座に前へ――。

「おつかれ。連結切ってくれたんだな、じゃあこの車両も頼んだぜ?」
 小雪が来たのを確認し、穹は先のドアを開き躍り込んだ。
 今度は人形遣いの少年が抑えてくれていた模様、にへらと笑い先へ急ぐのへ穹も片手をあげて応じると、すぐさま風刃で座席にしがみついた朧侍を引きはがす……。

 ――こうして穹と小雪の見事なコンビネーション、更には2人の猟兵の助力でB級車両の安全は確保された。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

霧島・ニュイ
A級車両

人形のリサちゃんを連れて
魂人のリサちゃんに会えるかもしれない
その時に今の僕を見られたら幻滅されるだろうから
別れが近いかもしれないから少しでも長くいたいな…

敵の前に躍り出る
僕が相手だよ!
皆は落ち着いて、ゆっくり避難して!
僕が敵の注意を引き付け、立ち竦んでる客はリサに庇わせる
動けないなら寝台の下に隠れて

チャンバラ未経験
マスケット銃を手に前に出て
観察回避で相手の出方や刀の切っ先、視線や足の向きをよく見て、見切り、受け流し、躱す
躱せないときは急所を避ける、もしくは銃で受ける
実の父に肉弾戦を教わった
保護者と慕う人に見切り術を教わった
2人とも師匠で大切な人
速さ重視の肉弾戦
フェイントやだまし討ちを織り交ぜ
2回攻撃で手数を増やす
間合いを取ったあとにマスケット銃でスナイパー使って命中率を上げて攻撃
間合いが近づいても平気、左の袖にピストル仕込んでるよ♪
人のいない寝台の上を飛んで蹴りとか浪漫

え?チャンバラじゃない?
勝てば正義だよ★
リサちゃん、見ててくれた?
落ち着いたら2人で列車でのんびり過ごしたいね♪


大町・詩乃
怖いのに犠牲を抑えようと頑張る紅子さんは優しくて気配りのできる方なのですね。
私も頑張って助けないと。
あ、でも直接助けるのは騎士たる殿方の方が良いかも。

列車内で薙刀を振るうと設備を壊してしまうかもしれないので、チャイナドレスに早着替えして格闘戦で戦います!

A級車両で襲われそうなご家族を護る。
猟兵さんがAに集中するなら、少ない場所にて人々を護って戦います。
「もう大丈夫ですよ。貴方達は私達、超弩級戦力がお護りしますから♪」と優しく微笑んで安心させますよ。

UC発動。
天耀鏡を大きくして、一つは人々を盾受けでかばえるように配置。
もう一つは朧侍達の視線を遮って、連携攻撃を阻害するように動かす。

朧侍の剣撃はUC効果・第六感・見切り・功夫・ダンス・空中戦・空中浮遊によって車両内を縦横無尽に移動して躱したり、受け流しを加えた化勁で逸らしたりします。

カウンターでUC効果・功夫・神罰・雷の属性攻撃・貫通攻撃・鎧無視攻撃による発勁を打ち込んで倒しますよ!(列車への被害を抑える為、衝撃波や吹き飛ばしは控えます。)




 さて、時間は猟兵が飛び乗った直後に遡る――。
 大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)と霧島・ニュイ(霧雲・f12029)はA級寝台車を目指し床を蹴る……筈が、いきなり後ろから2両目で出鼻を挫かれた。
 朧侍に怯える人々を置いて通り過ぎるなんぞ超弩級の名が廃る!
「穹さんと小雪さんが来て下さるまでここは私が抑えます。ニュイさんは先へ」
 深草色のチャイナドレスからすんなり覗く足が白の残像を生む。直後、朧侍が仰向けにひっくり返った。
「うん、ここは任せたよ」
 詩乃が羽交い締めにして作ってくれた隙間を通り、ニュイは次の車両へ。予想通りの7割乗車、ぶんぶんと刀を振り回す朧侍にそこかしこから上がる悲鳴や痛ましや。
 短い深呼吸で落ち着いて、藍色髪の羅刹人形を前方へ送り乗客と敵の間へ。
「僕が相手だよ!」
 兜を四角くくりぬいた先、ギラリと睨む無機質な瞳へも怯まず睨み返してやる。
「皆は落ち着いて、すぐに後ろから味方がくるし、ここは僕が守りきるから!」
 銃で刀をいなしつつ乗客を安心させるよう笑顔で語りかける。だが、ニュイの心は乗客を庇う人形へと寄り添っている。
(「リサちゃんは、上層で魂人として生きているかもしれない」)
 そんな彼女が自分の映し身人形を連れたニュイを見たらどう思うだろう。
(「きっと幻滅されるんだろうな……」)
 だから、お別れが近いのかもしれない。
 でも、本当に手放してしまえるのかな――物言わぬ彼女は、引きちぎれそうなニュイの心を何度も何度も継ぎ接ぎ縫い合わせてくれたっていうのに。
 そんな彼女を手放すなんて、僕は自分を赦せるのかな……。
 容は思い詰めていながらも防戦は的確に。
 座席を飛び越え急接近。切っ先はギリギリまで惹きつけて最小限の動きで躱す――畏れぬ勇気は実の父から、見切りは戦場に長くいた年上の友人から教わった、知識も彼らの存在もニュイの宝物だ。
「ニュイさん、私は更に先にいきますね」
「わかった、気をつけてねー」
 春風のように滑り駆ける詩乃を見送れば程なくして制圧班の仲間も来てくれた。合図のように手を振って、ニュイは詩乃が守る車両も駆け抜け先へと進む。


 ニュイと互い違いにけん制しつつの詩乃は、B級車両の前から二つ目に辿り着く。
「! お怪我はありませんか?!」
 なんと! 車両中央の座席が無残に瓦礫と化しているではないか! ギラリとこちらを睨む朧侍へは気合い一閃の速攻跳び蹴りをエイヤッと喰らわしておく。
「超弩級さん……ああ、来てくれたんだぁ……」
 窓に張り付き怯える男を皮切りに身を屈めていた数名が顔を出した。若さ故、身軽に逃げ回ってくれていたよう。
「よかったご無事で。もう大丈夫ですよ。貴方達は私達、超弩級戦力がお護りしますから♪」
 花がこぼれる微笑みは、若者達を大層勇気づけた。
「この2体は倒してしまいますね」
 とにかく先へと急ぎ控えた神性をここで一気に解放した。
 足下からたち上る薫風が詩乃の左右に垂らした髪を巻きあげる。苛烈に麗しく咲く花は、畏れなど微塵もなく甲冑の兜を掴みとり引き倒した。
 キィンッと耳障りな音と共に禍々しさを増す個体へは、己を振り返れと言わんばかりに天耀鏡が立ちふさがる。
「……ッ!」
 連携不能に焦り浮いた首か手刀で狩り取られ、命脈は一瞬で絶たれる。
「これでこの車両は安全ですよ。すぐに仲間が後ろから来ますから指示に従って下さいね」
 ドアが開き、あたたかな紅茶の香りが後ろから追いかけてくるのに口元を緩めた。心のケアは仲間に任せよう。
「お待たせ。一番前は誰も乗ってない筈だよ」
 人形を抱いて来たニュイを先導するように詩乃は歩きだす。
「そうですね……随分と静かです」
 がらりと開けたら、人気のない車両がごとごとと小刻みな振動で揺れるのみ。
 ふたりは抜け目なく左右に視線を配し保護対象も敵もいないことを確認した。
 突き当たりのドアは今までの素っ気ないものではなくて『星影食堂』としゃれたフォントのプレートつき。
「食堂車はおふたりが先んじて下さってますけれどその先は……」
「A寝台へも文字通り飛んでったふたりが入ってくれたよー」
 最後に乗り込み状況を見ていたニュイの報告に、よかったと詩乃は胸を撫で下ろした。
「でしたら、紅子さんのすぐそばに行けそうですね」
 攫われて恐いだろうに黒輝血を惹きつけてくれている紅子。
 それは、列車内の犠牲を抑えんと踏ん張る芯の強さ。なにより、猟兵が必ずや助けに来ると信じてくれているのだ。
「駅で斬られたお嬢さんが着物だけで済んだのも紅子ちゃんの機転だったんだって」
「ええ、頑張って助けないと。ああ、でも――」
 食堂車のドアの前で、詩乃はふふっと頬を緩め、ニュイを上から下まで眺める。
「あ、でも直接助けるのは騎士たる殿方の方が良いかも」
「! えぇ、僕は騎士って柄じゃないけどなー」
 ……騎士だとしたら、ただ1人の彼女の為に。
 窓硝子に映る白い横顔の彼女を盗み見て、ニュイは静かに思う――落ち着いたら、こんな風に食堂車がある列車でふたり旅もいいかな、なんて。


 さてさて。
 食堂車とA寝台5両の内後ろ2両は制圧済み。更に2両も先んじた仲間が奮戦中。残りは黒輝血が陣取る特別等級車の手前1両だけだ。
 フォン! と、このタイミングで汽笛が鳴った。どうやらまだ機関車量は無事なよう。だが一歩踏み込み悟った、この車両の状況は最悪の一歩手前だ。 
「朔太郎! もうやめて、お願いよっ」
 車両の前方から貴婦人の金切り声が場を打った。叫ぶ母の影に隠れる娘はべそをかき、すぐ傍では夫である身なり良い男性が倒れている。
「學徒兵が駆けつけるまで、この車両の面々を守るのが高貴に生まれた我が家の勤めです」
 そう叫ぶ少年は徒手空拳、確かに朧侍を一手惹きつけているものの余りに無謀だ。気絶している父親は一度は息子を守ったのであろう。
 無論、猟兵ふたりは手ぐすね引いてこのやりとりを見ていたわけではない。
 身を屈めた詩乃は狭い廊下を糸を通すように一足飛び。
 左右の目端に掛かる乗客達は怯え寝台に縮こまっているが無傷。
「大変お待たせしました。超弩級戦力の我々が、皆さんも前方のあの子達も必ずや助けますからご安心くださいね」
 だから安心させる声かけのみ。そして台詞が結ばれる頃には、詩乃は少年と朧侍の間に割り入り間一髪! 刀を真剣白刃取り!
「とても恐かったでしょう、投げ出してしまいたかったでしょう」
 ぎゅうと目を閉じて頭を抱える少年へは、無謀との誹りより賞賛の微笑みを。
「けれど、勇気を振り絞って頑張って下さったのですね。本当にありがとうございます」
 この少年の崇高なる意志は称えるに値する。
 どのような人生を歩むとしても、この先も曇らせずに真っ直ぐに生きていって欲しいと詩乃は願う。
「は、はいっ……うぅ……」
 一気に緊張の糸が切れたか、膝を震わせる少年を慌てて抱き取った。そうして己の首を狙う兇刃は嫋やかに柔らかに首を揺らして退ける。
「…………」
 泣き出しそうな貴婦人と少女の前にはリサが細い腕を広げ庇い立つ。
 素早い操りは鋼糸使いの達人の師匠仕込み。武器と人形と違えども戦場で求められる技術は似たものだから。
「お父さんは大丈夫みたいだよ」
 ニュイは父が横たわる右端に家族を誘導する。
「リサちゃん、みんなをお願い」
 ニュイの命を受け立ちはだかるリサは頑健な砦のようだ。
「こっちだよ。僕が相手だ!」
 ニュイは素早く車両前三分の一まで走り、暴走甲冑を誘い込む。この辺りは寝台も空っぽ、だから大立ち回り上等だ!
 ――タァン!
 理性を佚した朧侍の戦闘を精密に打ち抜いて出鼻を挫いた。
 弾丸の動きにつられ仲間を斬り伏せ突撃してくる朧侍へ、ニュイは再び距離を詰めた。
「?!」
 どちらを狙うか迷い撓む太刀筋、だが力だけはあるようでニュイのいた寝台が真っ二つ! 嗚呼、超弩級あやうし!
「なーんてね」
 瓦礫と化した寝台の隙間から覗く短い銃口、追撃で覆い被さる朧侍の眉間は見事打ち抜かれる。続けては、寝台の下からしゅるりと伸びる足払い。
「トリッキーな戦い方をされるのですね」
 ニュイにこかされた敵は、腰にしこたま流し込まれた気を受け爆散する。
 詩乃はこれまで極力列車の損害は抑える戦い方をしてきた。ニュイも倣っていたが、今は華族から遠ざけることを選択している。
「詩乃さん、そっち」
「はい!」
 ニュイに振り回されていた朧侍が振り返り、一糸乱れぬタイミングで詩乃へ斬りかかる。だが神性なき彼らの動きなんぞ見切るは容易い。統制が取れているからこそ避けやすいまで、ある。
 ふわり。
 宙返りのサマーソルトキックで最前の刀を手首ごと千切った。
 かっきりと、つま先を荷棚に引っかけて、ぶら下がりながらの苛烈な叩き払いで観音開きに敵を払った。
「トリッキーさは人のこと言えないってば」
 子犬の人なつっこさで笑い、瓦礫から飛び出し連続射撃。見事に数体塵に帰す。
 一方、詩乃の前にところてんの如く押し出された最後の2体の命運は尽きていた。
「力任せなだけの攻撃は、こうやって相手にそのまま利用されてしまうんですよ」
 くるんと着地した詩乃に手首をとられ、あっさりと受け流された。
「わぁ……す、すごい」
 おっとっと、と蹌踉ける巨体に少年は目をぱちくりとさせた。
「鍛錬すれば、人間の悪漢相手でしたらあなたにだってできますよ」
 背後から腰を落し両手を掲げだした掌底打ち。がくんと項垂れた背中は精密な弾丸で撃ち抜かれ果てる。
「あなたには既に勇気という最大の武器が備わっているんですから」
 振り返り様の回し斬りはするりとしゃがんで避けて、顎の下にしこたまの気を流し込む。千切れ飛んだ頭が天井に当たる前に力尽きて体と共に消え去った。

 此にて配下の朧侍軍団は討伐完了!
 いよいよ次は 黒輝血との大決戦である――!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『黒輝血』

POW   :    俺と死合おうってのかァ!? ヒハハハッ!!
【致死性の蛇毒に濡れた刀】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    …呪え…呪え、呪え呪え、呪え呪え呪え呪え呪え!!
自身の【鬼灯色の瞳】が輝く間、【実体を持った蛇の呪い】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    死ぬまで苦しむ毒に踊るってのはどうだァ?
【蛇毒と呪い】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に大量の毒蛇を解き放ち】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。

イラスト:らぬき

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は鬼灯原・孤檻です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●夜空に星が咲くが如く
 寝台急行『星影』の車両は、猟兵らが安全確保を済ます度に連結を切られ線路の上にぽつりぽつりと止まっている。
 車体の星を横切り駆けつけた學徒兵らの手を借り退避する者多数。僅かにでた怪我人も医者に運び込まれ手厚く治療を受け、皆無事である。
 残るは特別等級車と乗員控え室、そして機関車のみだ。

 特別等級者のドアをあけ駆け込んできた猟兵を目にし、紅子嬢の瞳に光が灯る!
(「嗚呼、嗚呼、やはり、騎士様方は助けに来て下さったわ!」)
 だがすぐに、耳元で響いた“がちり”という万力で鉄が潰されるような厭な音に、容の笑顔を消した。
『ぐぬぅ……何処までも我の邪魔をするかぁ! 斯くなる上は、この列車もろとも蛇子と果てん!』
 騒然。
 猟兵らがただただ手をこまねいているわけがない。修羅場を潜った者は数多い。
 乗員の安全確保を一に考える者、その間、影朧の気を惹く者、紅子の救助を考える者……と、皆が皆、助かる最善の方法を瞬時に組み立てている。
 だが、人心を手玉に取る紅子はこう考えた――このままじゃァ、乗務員の皆さんが危ないわ……!
「ねぇ、黒輝血様。先程語って聞かせてくだすった、あたくし達の過去のお話……いたく感激いたしましたのよ」
 早口で捲し立てる。貼り付けたような笑顔は、先程の助けが来た安堵とはほど遠い。
「蛇神の巫女たるあたくしを黒輝血様が憐れんで求婚してくだすったこと。男性と結ばれたなら巫女でいられなくなるからと……」
 カァッと頬を染めあげる。生娘が語るには余りに生々しい話だからだろう。
「あたくし、あの時は勇気がでなくって……でも今宵は違いますわ。あたくし、この追手を全て下す程にお強い黒輝血様なら、喜んで結ばれます。けれど、こんな狭いところはいやよ、いやいや」
 折しも線路の横は大高原。窓を開ければビュウッと風が吹き込んでくる。
 紅子は助けを求める信頼の瞳を猟兵らに一瞬だけ向け、再び黒輝血へ陶然とした声音で叫ぶ。
「蛇子は海が見とうございます! ただし追手から逃げるだけのあなた様には興味がございません。舌を噛んで……死にッ……ます!」
 くわと目を見開く迫真の演技。人たらし八坂紅子一世一代の大演技に、影朧はすっかり騙し切られた。
『あいわかったぞ、蛇子。貴様らもついてこい――蛇子の望む断崖絶壁で勝負と参ろうぞ!』


******
【マスターコメント】
 ここから断崖絶壁ってどこよ? とか、どうやって辿り着くよ? とか聞いてはいけません。

 さて、最後です。
 このにっくき黒輝血を討ち取ってやってくださいませ。

>受付
現時点~7/27(水)夜23時まで

※オーバーロードはいつでもどうぞ
※受付期間が長い為、一部の方へ再送をお願いする場合があります

>採用人数
 前章までに来て下さった方は全員採用します
 飛び入りさんは4名程度までならどうぞ

>プレイング
 列車の皆さんはこの戦いには巻き込まれません、ご安心ください!
 断崖絶壁、夜の日本海を背景に戦っていただきます
 移動のプレイングは不要です

 黒輝血は紅子を抱えながらの立ち回りとなります
 戦いの最中に紅子を引きはがして確保する場合は、なにか相応のプレイングをお願いします
 確保のプレイングがなくても、敵が紅子を盾にすることはありません。3章目が成功でクリアされたら無事に戻ってきます
(戦闘中に悲鳴をあげたり、ちょこっとした怪我はあるかもしれません)
 みんなで確保にまわった場合は、取ったり取られたりと目まぐるしい展開になると思います
 ただそれはそれで紅子に悪いことは起こらないので、確保ありなしはご自由にどうぞ!

>オーバーロードありなし
 3章目は戦闘リプレイ+紅子からのお礼など含めた事後での構成予定です

【オーバーロードなし】
戦闘シーンメイン。事後は名前のみ、多くて一言

【オーバーロードあり】
 戦闘シーンはオーバーロードなしの方とと同程度の描写
 プラスして、事後にNPCと絡むことができます

>絡めるNPC
「紅子」「寝台列車『星影』に乗っていた人」「2章目冒頭で服を取られた娘さん」

例)紅子のカフェで星影に乗っていた人と話す など

 事後は後味のよいものであれば割と色々できます
 同じNPCと絡む場合は同時描写となる場合もあります

 以上です
 ご参加お待ちしております
ジュジュ・ブランロジエ
【紫翠】
『』はメボンゴ
断崖絶壁…物語のクライマックスにぴったりだね
紅子さん、待ってて
絶対助けるから

生まれ変わりって言うけどさ、結局好きなのは蛇子さんなんでしょ?
今の紅子さんじゃないよね
仮に生まれ変わりだとしてももう彼女には彼女の人生があるでしょ
『過去を押し付けるのよくない!』
等と煽る

コノさんが助けた紅子さんを受け取る
『コノちゃ、ナイスパス!』
抱えたまま早業で距離を取ってから下ろし背に庇いつつオーラ防御
紅子さんは渡さないよ!

氷属性の付与したUC2回攻撃
蛇や呪いは破魔の力帯びたオーラ防御で対処
蛇って寒さに弱いんだよね?
毒蛇もみーんな凍っちゃえ!

女の子の意思を尊重できない独りよがりはカッコ悪いよ


コノハ・ライゼ
【紫翠】ジュジュちゃん達と

あら、なかなかイイ女っぷりねぇ
コレは乗らなきゃ面白くないわ

気を引いて貰ってる隙に動き見切り近付いて【彩儡】発動
紅子の姿を取り誘うように触れる
「いやだわ、ずっと一緒と仰ったじゃない」
するりと敵との間に割り入り、からの紅子抱えてジュジュちゃんにぽーい
余所見厳禁よ、と敵へ回した手の陰からマヒ毒乗せたくーちゃん放ち属性攻撃
今度はこちらへ注意を向ける

刀は見切り致命傷を避けつつオーラ防御併せ受け流す
毒ナンてオードブルよ
だから――メインディッシュもちゃぁんと頂かないとネ
丁度良い感じに冷えた頃かしら
傷口えぐる2回攻撃し生命力吸収

ホント、誘拐だなんて論外ダケド
お転婆も程々にしないとね?




 列車を飛び降りた後、高く高く響くは紅子の悲鳴!
 ――だが、追いすがるコノハ・ライゼ(空々・f03130)の口元には薄い笑みが浮かぶのみ。
「なかなかイイ女っぷりよねぇ、紅子ちゃん」
 悲鳴から恐怖は微塵も感じられない。童話で子供が小石をおいて目印にするように、猟兵が追いやすいよう叫んでいるのだ。
「コレは乗らなきゃ面白くないわ」
 折角の騙し討ち、ならばとジュジュ・ブランロジエ(白薔薇の人形遣い・f01079)とは打ち合わせ済み。
「……潮の匂いがするね」
 くんと鼻を鳴らしジュジュは容を持ち上げる。
 前方には断崖絶壁。まさにまさに、物語のクライマックスに誂えたようだ。
「紅子さん、待ってて……絶対助けるから」
 ひらり。
 ジュジュの細い指が宙を掻き夜空に細い糸が舞い上がる。
 ほとり。
 待ち構える余裕綽々傲慢な男の前へ降り立ったのは、真っ白うさぎの我らがメボンゴ。
『紅子ちゃ、助けにきたよ!』
 がおーっと両腕掲げてうさぎなりに威嚇する。
「ハハン、獣風情が我と蛇子が添い遂げるのを邪魔出来るものか!」
「生まれ変わりって言うけどさ……」
 メボンゴと入れ替わり、腰に手をあて躰を大きく見せてのご立腹。ジュジュとメボンゴはびしりと黒輝血を指さした。
「結局好きなのは蛇子さんなんでしょ? 今の紅子さんじゃないよね」
『そうだそうだ、このうわきものー』
「なっ……我を愚弄するなッ」
「仮に生まれ変わりだとしてももう彼女には彼女の人生があるでしょ」
『過去を押し付けるのよくない!』
 ジュジュが繰る糸を引きつれたメボンゴは、ちっちゃな腕をめいっぱいに広げ空から覆い被さろうとする!
 視線が逸れた隙にと紅子へ手を伸ばすジュジュ、だがしかーし!
「甘いわっ!」
 影朧めは片手で抱きの紅子と共に素早く反転。後には悔しげな顔をするジュジュが残された。
「…………様」
 直後、じっとりとした吐息と共に何者かが影朧の名を呼ぶ。
「んー?」
 首が曲げ紅子から視線を外し、吐息の主である|紅子《?》へと視線を移す黒輝血。
「ああ、蛇子……」
 この紅子、吐息は夏なのに冷たく眦には巫女化粧の赤が奔る。ああ、なんだ、と黒輝血は瞳を僅かに潤ませた。
「ホンモノの蛇子、か……」
 蛇子は優しく頬をなぞり瞳を潤ませる。
「ええ、そうよ、お忘れにならないで。ずっと一緒と仰ったじゃない」
 ギリッと、爪が頬に食いかかる。影朧の癖に柔らかな皮膚がめくれ、ギャアッと虫が潰されたような叫びが悲痛。
 しかもなんと! 影朧の眦の横には今宵は星影色の柘榴が突き刺さっているではないか?!
「蛇子ぉおお! いいや、貴様蛇子ではないな!」
 両腕でにっくき敵をかき抱こうとも宙を掻くのみ。それもそのはず、刺した主のコノハは既に紅子を抱き取って素早く距離を取っている。
「まぁ……素敵な殿方に抱きしめられて、天にも昇る心地だわ」
 嬉しや役得と頬染めるのだから、この紅子嬢肝が据わっているったらない。しかし姫様抱っこはこの一瞬だけ。
「はい、ジュジュちゃんパス」
 投 げ た。
「嗚呼、もっとお近……え?! ふぇえええっ~~?!」
 ふよんとコノハが優しく投げた紅子は、ジュジュがナイスキャッチ。
『コノちゃ、ナイスパス!』
「もう恐くないよ、後ろに隠れてて!」
 えへへと笑うジュジュ、さっきの悔しがりは無論迫真の演技である。ササッと背に姫君を庇いコノハへ目で合図。
「余所見厳禁よ」
 姫を追わせるものか!
 突きつけられた蛇毒の湿り気を流麗に躱し、代わりに手の甲から顕現させるくーちゃんを嗾ける。夜はいつだって影の中。黒輝血の刃をからかうように螺旋に絡み、持ち手から斬り裂いた。「帝都ではお預けくらったもの……ここじゃあそうはいかないワ」
「ふんッ、やるなぁ。ならばこれはどうだ!」
 開いた手から無数の蛇が花と咲いた!
「ああ! うさぎちゃんが危ないわ!」
 目を覆う紅子。
 うさぎと蛇? うさぎ丸呑み蛇が勝ちが定石であろう……あやうし!
『こんなのこけおどしだよ!』
 うさぎを中心白薔薇が舞う。白いおててがてんっと叩く度、花を抱いて凍り付いた蛇が墜落していく。
「蛇って寒さに弱いんだよね?」
『毒蛇もみーんな凍っちゃえ!』
「もうっメボンゴったら、それ私の台詞だよ!」
 けんけんと崖っぷちで凍っては砕ける蛇を前に、黒輝血の噛みしめすぎた奥歯も同じく砕け散る。
「ぷ……あははっ! すごいすごーい!」
 流浪の奇術師たるもの観客の笑顔を咲かせて一人前。ころころお腹を抱え笑う紅子へは、ふふりと片目を閉じてのフアンサアビス。
「すっかり場も暖まったようね」
 ――これから冷やすんだけど。
 コノハは黒輝血を抱き寄せると唇を耳元へ。これなら紅子からは内緒話をしているようにしか見えないはず。
「だから――メインディッシュもちゃぁんと頂かないとネ」
 実際の所は、柘榴を突き立て切り開き、直接的に命を貪らせていただいている。ぞぶりと喰んで四肢の力が抜けたところでコノハは男をぽいと放った。
 手の甲で血を拭い、綺麗なお顔に戻したら、片目を閉じてにやり。
「ホント、誘拐だなんて論外ダケド、お転婆も程々にしないとね?」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

霧島・ニュイ
なんかドラマティックな展開来た
役者だねー。燃えるねー。夜の海は不気味でいいよねー

なになに、その子と前世の恋人か何かなの?
お話聞かせてよー
とりあえず話は聞き出すスタイル
矛盾点は遠慮なく突く
駄目だよ、相手の今の人生を大事にしないと

紅子ちゃんには当てたくないから、出来れば他の猟兵が確保してくれるのを待つ
急所に当たらなかったら平気な気はするけどもあまり怪我はさせたくない
スナイパーで命中率を上げて、二丁撃ち
2回攻撃で攻撃回数を増やして
フェイントとだまし討ちを使い、トリッキーな戦い方を好む
狙うのは敵の足。重心を担う場所、移動の要となる部位をまず落とす
次は利き手、目、とどんどん削ぎ落とすよー
攻撃は相手の視線や武器の向きなどよく見て見切る
ばいばい
次の人生があったら、好きな人とお幸せに

…僕は今世で叶えたいけどね
リサちゃんにもう一度会いたい
もうこの恋は終わってるけど、もう一度会えば何か得られる気がするんだ

終わった後は皆を見守ってから
ひっそりと列車のA級車両に乗って、リサちゃんと過ごす
今は抱きしめて眠りたい


橘・小雪
……正直、転生を考えてなかったわけじゃない
討ち取らず、転生させれば彼にもまた幸せな未来があるかもしれない、と
でも、ね
こんなに紅子さんに未練のある影朧
未練を晴らして転生させるのは、あたしには難しい
だから……ごめんなさい
先に謝る 桜の精らしくなくてごめんなさい
あたしは、あなたを討ち取ります

紅子様、助けに参りました!と声を挙げて
UCを起動、ティーナイフを構え、一気に影朧だけを薙ぎ払おうと
それで影朧が避けようとするならば隙ができるはず
仲間に目配せ、紅子さんを確保してもらえれば

逆に仲間が隙を作ってくれた場合には
あたしが紅子さんを確保しに走るよ
ただ、うん、ごめんなさい、騎士様じゃなくって
ただのティーソムリエなことをこれほど悔やんだことはないかも

紅子さん、此処までよく頑張ったよね
怖かったよね
あと少しだけ耐えてね
絶対あたしたちが助けてみせるから

あたしができることは隙を作ることくらい
あとは本当の超弩級の先輩方にお任せして
……どうか、安らかな眠りを

すべて終わったら、気になっていた駅の女性のフォローへ


涼風・穹
【内心】
結局生前の黒輝血は何がどうして蛇子に執着していたんだ…?
影朧なら話半分だとしても黒輝血の一方的な片思いだったようにしか聞こえないけど、蛇子に呪殺される程に嫌われてもまだ諦めないというのもある意味凄いな…
……蛇子に手玉に取られていたようにも思えなくもないけど…

【戦闘】
『風牙』を構えて黒輝血に斬りかかりつつ、隙を見て紅子に『イグニッションカード』を触れさせて《起動》で収納します
紅子を盾にはしないだろうけど攻撃に巻き込まれる危険はあるし、追い詰められた黒輝血が心中しようとしないとも限らないしな
その後はさっさと退避します

【戦闘後】
まあ、一応、黒きケツ…じゃない変態ストーカー…でもな…くはないけど黒輝血が桜の精の癒やしを受けられるよう善処はします
……粘着男が転生するというのは一抹の不安はあるけど、記憶は残らないなら性格も変わるだろうから…多分、きっと…

予め『イグニッションカード』に格納していた俺のキャバリア『ズィルバーンヤークトフント』を取り出し、それで切り離した車両の後片付けを手伝います


大町・詩乃
紅子さんの演技に心の中で拍手します。
おかげで犠牲者を出さずにすみます、さすがですね♪

紅子さんが怪我しないよう、引き続きチャイナドレスを着て格闘戦で臨みます。

「紅子さんは貴方には勿体無い。いずれ紅子さんに相応しい殿方が現れるでしょう。そうなるように此処で貴方を倒します!」
と拱手をした後に太極拳の構えを取りつつ《神性解放》発動。

蛇毒は若草色のオーラで浄化消滅できるでしょうが、刀は危険かも。
第六感で相手の動きを読み、見切り・功夫・ダンスで刀や蛇の攻撃を華麗に回避。
躱しきれない時はオーラ防御を纏った天耀鏡の盾受けで防ぎます。

機を捉えて天耀鏡で刀を真剣白刃取り!
念動力で刀ごと天耀鏡を固定し、相手が動きを止めた瞬間に接近。
右拳に雷の属性攻撃・神罰を籠めて発勁(功夫・衝撃波・貫通攻撃・鎧無視攻撃)を打ち込みます!

後日、普段着で紅子さんのカフェを訪れて歓談します(可能なら第二章で頑張った華族一家とも)。
紅子さんには良い殿方と巡える良縁を、朔太郎さんには真っ直ぐに成長できるよう幸運を、それぞれ祈りますよ。


ティオレンシア・シーディア
いやあ…この土壇場で随分なクソ度胸ねぇ。いい根性してるわぁ。
…一般人にこれだけ体張らせて、失敗しましたじゃあ超弩級の名折れってものだわぁ。言い訳与える余地もなく、完膚なきまでコテンパンに叩きのめしましょ。

相手の主武装は毒と呪詛…なら、イヤガラセするならこうかしらぁ?
まずはエオロー(結界)に孔雀明王印(退魔災祓)で〇毒・呪詛耐性のオーラ防御を展開、最低限固めたら●鏖殺・殲舞起動。そっちが手数増やすんなら、こっちはそれ以上の手数で圧し潰すわぁ。
攻撃に乗せるのはラグ(○浄化)にソーン(○破魔)、五大明王印(破邪顕正)烏枢沙摩明王印(汚穢焼滅)迦楼羅天印(悪鬼覆滅)etc。一発頭は軽くても、これだけ一気に聖〇属性攻撃ドカ盛りすれば中々に効くでしょぉ?

…ねぇ、紅子ちゃん。あなた、スタア目指してみる気なぁい?
あの極限状況でこれだけの立ち回りできるんなら、資質としてはたぶん十二分よぉ?
まあ、最終的には本人の意思次第ではあるけれど。あたしもそこそこいろんなとこに顔効くし、その気があるなら紹介するわよぉ?




 夜の断崖絶壁目掛け猟兵らは同時に紅子と黒輝血を追ったわけで、やはり道中軽口はきかれるものだ。
「なんかドラマティックな展開来た」
 霧島・ニュイ(霧雲・f12029)はくぅぅっと拳を握りしめ感極まる。
「役者だねー。燃えるねー。夜の海は不気味でいいよねー」
「おかげで犠牲者を出さずにすみます、さすがですね♪」
 刻一刻と濃くなる海の匂いを嗅ぎながら、大町・詩乃(|阿斯訶備媛《アシカビヒメ》・f17458)は唇の端を持ち上げる。
「いやあ……この土壇場で随分なクソ度胸ねぇ。いい根性してるわぁ」
 己のなすことをはじき出せたとしても、ああも大立ち回りを演じられる者はそうそういない。ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)はは感心と同時に躍る心を抑えられないのだ。
「……一般人にこれだけ体張らせて、失敗しましたじゃあ超弩級の名折れってものだわぁ。言い訳与える余地もなく、完膚なきまでコテンパンに叩きのめしましょ」
 超弩級の猟兵ら余裕綽々。
 裏を返せば、それほどに紅子の作った舞台は作戦に優れた効果をもたらしたわけだ。
(「……紅子さんは、すごい。だから超弩級の猟兵として応えないと」)
 橘・小雪(Tea For You・f37680)の切り結ぶ口元が強い気負いを感じさせる。ちらとそれを見た涼風・穹(人間の探索者・f02404)が何かを差し挟む前に、画然とした声が発せられる。
「討ち取らないと」
 それは穹や耳にしてはいないがニュイの浮かべる終着点とは違うもの。
「こんなに紅子さんに未練のある影朧、未練を晴らして転生させるのは、あたしには難しい」
「……桜の精も大変だな。色々と肩にのし掛かってくるもんな」
 それだけ落とし穹は速度をあげた。


「なになに、その子と前世の恋人か何かなの? お話聞かせてよー」
 まずは銃を下ろし煽り精神をかき乱すことにするニュイ、勿論趣味です。
「俺もそれが知りたいところだ。結局生前のお前は何がどうして蛇子に執着していたんだ……?」
 穹はじりりと風牙を構え詰める。
「影朧なら話半分だとしてもお前の一方的な片思いだったようにしか聞こえないけど……」
 今回はアタッカーではなく防衛担当の腹づもりだが、グハハと笑いながらも此奴隙がない。
『ふんっ……蛇子は巫女である己を呪っておったのだ』
「……という、思い込みだったんでしょぉどうせ」
 ティオレンシアは指を折り曲げ胸の所であわせると、閉じ目でじとり。
『なっなんだとぉ!』
「超弩級のお姉様、図星よ!」
 影朧の腕の中、えいやっと拳を振り上げる紅子嬢。今は後方支援に下がったコノハとジュジュ、そしてメボンゴのの強さを支えに、すっかり強気だ。
「紅子ちゃん、目を閉じててちょうだいな」
 素早く組んだ印を結界に纏わせる。効能は勿論退魔に災祓、禍々しい毒なんぞ最初から受付拒否だ。
『ふはははは! これは蛇子からもらった技よ! まさに愛の証ぃ!』
 ゆらりと九連に鈴なりの蛇が迫り来るのに対し、ティオレンシアは鮫のように歯を剥いて笑った。
「あたしが一番得意なこと、教えてあげる。雑魚散らし、よぉ?」
 雑魚。
 言い放った通りにある蛇は光に包まれ散り、ある蛇は燃滅しある蛇は顎から真っ二つにおろされ……と、猟兵側に触れることなく滅した。
『ぐおおおおおお! 蛇子を巻き込むか、この外道の超弩級めがぁぁあッ』
 消滅する蛇の祭典の派手さを潜り、至近距離に到達したティオレンシアは黒輝血の首をつかんでしこたまの“浄化”を流し込む。
「人様にはありがたぁい破邪のおまじないよぉ。紅子ちゃんに取り憑いた邪なあんたを祓う為の、ねッ!」
 後ろに激しく揺れた黒輝血が、唐突に鈍い音を立てぐにゃりと過剰にお辞儀する。
 翡翠に咲く花が揺れた。詩乃の白磁の足がこれでもかと奴めの後頭部を打ち据えたのだ。
「紅子さんは貴方には勿体無い」
 ふぅっと呼吸を乱さずにおろした足が地面に触れる前に手刀、くるり舞踏めいたステップで突き出された刀を避けてから後ろ手に手首をつかみとった。
「紅子さんに当たったらどうするおつもりですか?!」
『ぐぅぅ、これは蛇子由来の毒! 紅子が傷つくわけもないわッ!』
「――やはり、貴方は紅子さんには相応しくありません」
 神のオーラ纏う詩乃は容赦なく影朧の腕をねじり上げる。
「いずれ紅子さんに相応しい殿方が現れるでしょう。そうなるように此処で貴方を倒します!」
 黒輝血の刃が触れれば死す状況に流石に肝を冷やしたか、さっと青ざめる紅子。
 そこへ、風の刃の一閃が走る。
 詩乃が引きずり紅子との密着が剥がれたその隙へ、機をうかがっていた穹が刃をねじ込んだのだ。
「紅子様、助けに参りました!」
 続けて、黒輝血の眉間へ華奢なナイフが突きつけられた。当たるかどうかも確認せずに、小雪は無我夢中で紅子の手を引き抱き取る。
「!」
「走ってください」
 優しい紅茶の香りに包まれ瞠目する紅子の手を握りなおすと小雪は飛び退く。
『くっ、蛇子ぉ! 我を見よお! 我と共に永遠に煉獄に征くと言ったあれは嘘かぁぁあ!』
 追いすがる手が、高速で揺らされて実像を佚する。
 一発に聞こえた銃弾は合計四発、あまりの早さに知覚できぬ銃撃の射手は勿論スナイパーのニュイである。
「紅子ちゃんキャッチナイスだよ! さて、これで遠慮なく攻撃できるや」
 手首を亡くし落ちた刀に瞠目している黒輝血の肩に更に鮮やかに血花が花開く。
「俺達には当てないようにしてくれよ?」
「努力するー。でも猟兵だからささっと避けてよね」
 穹の軽口にはゆるく笑い、ニュイは鬼火に輝きだした右目を射貫いた。
 パァンッ! と、風船が弾けるような音に首を竦めしゃがみ込む紅子。ガタガタと震える肩をさすり、小雪もしゃがんで寄り添った。
「紅子さん、ごめんなさい、騎士様じゃなくて……」
 小雪は物語ならば日常小話でお茶をどうぞと微笑む役回り。決して冒険活劇の騎士様ではない。
「紅子さん、此処までよく頑張ったよね。怖かったよね……これ、すっと飲める様に淹れたわ、よかったら」
 震える指で、けれど最大限の想いを籠めて入れた紅茶を差し出す小雪。
「……」
 胸のカードに触れながらそれを穹は見守っている。
「…………ありがとう。ああ…………」
 飲み干すことのできるギリギリの熱さで伝う液体を飲み干したなら、紅子の瞳から涙が溢れ出した
「あたし、助かったのね……ありがとう。ほっとしたわ……そうよ、飲まず食わずに気づかぬぐらい……本当は恐かった」
 ありがとうと繰り返す紅子の傍らにくると、穹はイグニッションカードを懐から顕現させる。
「全部終わるまで安全な場所で休んでてくれ。ちょいと錆び臭いのは勘弁な」
 すっと角で肩をつつくと、紅子は2杯目の紅茶ごと吸い込まれていく。
「これで紅子はもう浚われない。念のため俺は戦線離脱させてもらうぜ」
「はい、あとはお任せを。あの怨念、転生は願えずとも、必ずや討ち取ってみせます」
 気負う声に穹は頭を掻いた。
「あー……彼奴が執着してんのは蛇子だ。手玉に取られてたのすら気づいてないようだけどな。俺は上手くやり直せたらなって思っちゃいるよ」
「――……」
 息をのむ小雪の背中では、片手は折られ片目を失い、蛇を垂れ流しにするぐらいしか出来なくなりつつある黒輝血が彷徨っている。
「ばいばい。次の人生があったら、好きな人とお幸せに」
 手向けの台詞と共にトリガーを引くニュイ。その台詞にまたまた小雪は硬直する。
「小雪さん」
 台詞を継ぐ前に素早く天耀鏡を左目前にあげてから、自身はしゃがんで足払い。
「転生させる、させない……どちらも正解だと私は思います」
 鏡にて返された呪いに煩悶するように顔を覆う黒輝血は、何度も何度も取り落としては手元に招いた愛刀をまた落した。
「紅子さんのことを心配されているのですよね」
 ニュイの弾丸が残された腕を打ち貫くのと、ティオレンシアが刀を蹴飛ばすのはほぼ同時。
「あたしはこんなロクでもないのは地獄の釜で煮込んでおけって思うわ」
 振り向きざまに左目へ物量を一点集中し注ぎ込むティオレンシア。
 ばぅんっと弾んだ四肢。これで絶命かと思わせる気配の前に、ニュイの銃身が現れた。
「……僕は今世で叶えたいけどね」
 だが、例え恋が実らなくても、このように妄執に囚われて誰かを苦しめるような存在になるのはごめんだ。
 胸に腹に額に……人の急所と呼ばれる場所全てに弾丸を撃ち込み完全に命脈を絶つ。
『――ッ………………へび、こぉ……………………あい、して……おくれ…………』
 この影朧は、罪を悔いた良い人には、なれなかった。
 けれども叶わぬ恋に身を窶したただの男にも、見えた。
「――…………辛い苦しい思いにもう囚われることがありませんように」
 この世界からいなくなる直前に小花が黒輝血の元へ届く。小雪は転生を祈ったわけではない、けれど。

◇◇◇
●猛り去りし後で
『紅子ちゃの立ち回りにはくしゅー』
 ぽてぽてぽてぽてと手を叩くメボンゴ。操るジュジュもにっこり。
「ホント、見事な胆力だったワ」
 コノハからも褒められ「いえ、そんな」とか今更殊勝な振りをする乙女紅子である。
「お怪我がないようで良かったです。紅子さん、乗客の皆さんを助けてくださりありがとうございました」
 詩乃の背景では、連結器を切られた車両がてんてんと上野駅へと向けて落ちている。
「さぁて、片付け手伝うとしますかね」
 穹はカードをぺらり翻し、キャバリアバイクを引っ張り出した。そんな驚異的な技もサクラミラージュの民は近しいのだろう。さして驚かずに紅子は詩乃へ返す。
「みんなが来てくれるって、あたし信じてましたから……」
 もじもじと照れるのは、何処にでも居そうな普通の娘だ。
(「だからこそ、この子って凄いのよねぇ。でも、お誘いは改めて落ち着いてからにしましょ」)
 ティオレンシアがどこで話そうか算段を立てていたら、ふと桜髪の猟兵が視線の端に引っかかる。一件落着にかかわらず、その容は思案顔だ。
 このような妄執に囚われた男でも、転生を与えようとする猟兵もいる。
「あたしは祓うだけを考えていた……」
 悩み考えて癒やしを手向けた小雪は、ぐっと拳を胸に押し当て俯く。
「それも正しいと思うぜ。確かに奴は厄介だったからな」
 キャバリア『ズィルバーンヤークトフント』に跨がる穹は片眉をあげ先輩として……なんて考えはすぐにぽいってして、照れくさそうに頭を掻いた。
「……粘着男が転生するというのは一抹の不安はあるけど、記憶は残らないなら性格も変わるだろうから……多分、きっと……うん、あのな、俺のワガママを通した形で悪かったよ」
「ううん、そんなこと!」
 あわわと手を揺らす小雪。
「選択肢があるからこそ悩みもでてきますよね」
 詩乃の口添え。決断は難しい。これはとても優しく柔らかだからこそ生じる悩みなのだから。
「そうそう、僕のワガママでもあるんだから。穹さん、そうやってひとりで持ってくのなしだよ」
 リサの破れた服を隠すように自分の上着を掛けるニュイを前に、小雪はハタリと何かを思いだした模様。
「……! 着物を斬られたお嬢さん!」
 戦っている最中もずっと気に掛かっていた。あの時は足を止めて紅茶をと勧める時間もなかった。
「學徒兵さんの手で無事に帰れたならいいんだけど……」
「あらぁ、じゃあ後ろに乗ってく? 上野までなんてひとっ飛びよぉ」
 ティオレンシアはミッドナイトレースをぽふりと叩き小雪を視線で招いた。
「私も気になっていたんです。小雪さんの励ましがあれば百人力ですね」
 詩乃はそっと小雪をティオレンシアの方へと押した。
「現場の収拾は任せてくれていいぜ」
 穹の見送りは、ミッドナイトレースのエンジン音でほぼかき消されたが、まぁそれはそれと彼もまたズィルバーンヤークトフントにて最前の現場へ向かう。
 戦場が、完全に解けた――。
 ニュイは一番前方で人の乗っていなかったA級寝台のデッキへ登る。リサの肩を抱き車内へ消える背中を見送った詩乃は意図を悟った。
「……あの車両の回収ができるのは朝でしょうから」
 独り言のように呟いて、ジュジュとコノハと共に上野方面へと歩き出す。

●当日夜『A級寝台車』にて
 真ん中の草原が見える側にリサを座らせると、ニュイは窓を持ち上げあけた。草で梳かれた夜風が吹き込み、ひんやりと爽やかに夏と戦いで熟れた頬を撫でてくれる。
「おつかれさま、リサちゃん。今日もありがとう」
 従者のように目の前に跪くと、懐からだしたハンカチを埃と血で汚れたリサの頬に宛がった。
 丹念に丁寧に声をかけながら綺麗に拭う。
 ――ひとり遊びのお人形遊び。
 チョビというあたたかな存在を得てからは、ますますリサの無機物さが際だったようにも思える。
 それでも、掛け替えのない“リサちゃん”
「動いてない列車だから旅だなんて言えないけど……」
 綺麗になった所で、未だ戦いの残り香で汚れだらけの青年はぎこちなく笑った。
「それは今度行こうね」
 今までだったら“今度”はちゃんと巡り来ると確信できていた。
 でも――魂人の存在がわかり、ホンモノのリサちゃんが死んでいない可能性がそれを赦してくれなくなっている。
 黒輝血のように狂ってしまうのではなく、今世でこの想いを叶えたい。
 もうこの恋は終わっているけれど、もう一度会えば何か得られる気がしている――それには人形のリサちゃんは…………。
 断ち切るようなニュイの顔はぐちゃぐちゃの泣き顔に近い。
 誰もいないのに、いいや、リサがいる。リサに見られたくないと肩口に顔を埋め抱きしめた。
「……おやすみ、リサちゃん」
 今日も一緒に眠ろう。
 だって今はまだ、僕の傍にいるのはキミだけなんだから。

●当日夜『線路脇』にて
 穹は車両をある程度引きまとめ再び連結する。急場こしらえの連結器はユーベルコード製だ。上野まで引く分には充分過ぎるだろう。
 ズィルバーンヤークトフントで先頭を取り線路の上を走る。超弩級にしか為しえぬ回収だ。そして地味な作業ではあるが、ここを穹が一手に引き受けることで、鉄道会社の手間と資金注入が大幅に減る。

『代理輸送の手配が整いました。帝都に戻る方はこちらに並んでください』
『東北行きのバスも少数ですがお出しします』
『お怪我をされている方とご家族の方はタクシーに乗車願います、近隣の病院へ向かいます』

 普段は決して記されぬ裏側。
 だが常に事件には被害に遭う人々がいて、彼らが日常を取り戻すには手間が掛かる。そこへ注力した超弩級がいたことを忘れてはならない。

●当日夜『上野駅』にて
 小雪とティオレンシアがとんぼ返りした上野駅は、蜂の巣をつついたような大騒ぎであった。
 着物を斬られた娘は駅員の休憩室に留め置かれていると聞き、小雪は取るものも取りあえず駆けつける。

「…………ありがとうございます」
 小雪が誂えたティカップを前に、娘はほぅっと息をつく。
 あたたかで甘い紅茶はシンプルに仕上げた。小皿には袂に入っていた砂糖がけの苺と林檎他フルーツも添えた。
「お好きならこれを紅茶に沈めてみて。即席のフルーツティよ」
「まぁ、ハイカラ! 一度監督さんに高級カフエに連れて行っていただいたことがあってその時に見たわ」
 硝子ポットに詰まる果物は、どこかスクリーンで可憐に華にも似てキラキラとしている。
「もしかして、キネマ女優さんなの?」
「隅っこで笑ってる脇役ばかりよ。もう25だから田舎に帰るつもりだったの」
「そんな……初めて逢ったばかりだけど、寂しいなって思ったわ」
 戸惑う小雪を前に、清子の微笑みがティカップに沈めた苺のように彩りを増した。
「ありがとう。だから田舎に帰るのは止めるわ」
「え?」
 ぱちくりと鳩が豆鉄砲を食ったように小雪は瞬いた。
 紅茶のお陰が平静を取り戻した清子は気力が充実している。だから前を向けた。
「死ぬような目にあったけど、攫われた彼女のお陰で助かったわ。お礼を言わないと。ううん、他の人にも。周りで着物をかけてくれた人、駅員さん、學徒兵の方々……都会は冷たいなんて大嘘よ、みーんな優しかった!」
 だから、まずはあなたに「ありがとう」――なんて、清子は小雪へ向けて頭を下げた。
「はい、元気になられて嬉しいです! あたし応援しますね」
 感極まって清子の手を取る小雪、その背後のドアががちゃりと音をたてて開いた。
「そうよぉ? 女はこれからどんどん楽しくなるんだから! 25歳になったから~なんて夢を捨てちゃうのはダメダメよぉ」
 人差し指をたててチチッと揺らすティオレンシアは、内心渡りに船だと思いつつ口火を切る。
「引き払っちゃったなら済む場所もないんじゃなぁい? ツテがあるから口利きするわよ? あと、紅子ちゃんに直接お礼がしたいなら機会も用意するわよぉ」
 ――そして、更に話は数日後へとコマを進めるのだ。

●後日『カフェ 星月夜』にて
 改めましての顔合わせ、場所は是非にうちでと小雪が申し出た。
 本日は貸し切り――どうぞ心ゆくまでおくつろぎくださいませ。

「まぁここも紅子さんのカフェに負けないぐらい素敵ですね」
 サクラミラージュテイストの和装にサイドをリボンで纏めたハイカラさん、そんな詩乃は、店主の人柄が滲み出る居心地の良さにおっとりと首を傾げる。
「ねぇ。紅子ちゃんのお店は活気があって、こっちはおちつくわぁ」
 ティオレンシアの方は活動的なモガあわせ。ハイウエストのスカートがお似合いです。
 実はこのふたり、昨日カフェの仕事に復帰した紅子のカフェを訪れて偶然バッタリだったのだ。
「ねぇ、紅子ちゃん。昨日の話、考えてくれたかしらぁ?」

 昨日のパーラー早乙女にて――。
「……ねぇ、紅子ちゃん。あなた、スタア目指してみる気なぁい?」
 命の恩人と話がしたいと小休憩をもらった紅子は、ティオレンシアからの唐突な申し出にまずは呆気にとられた。
「ああ、それは……確かにあってらっしゃるかもしれませんね」
 素敵な殿方との良縁祈願、先にそう告げた詩乃は同僚の提案にも成程と頷く。
「あ、あたしが……キネマ女優?」
「あの極限状況でこれだけの立ち回りできるんなら、資質としてはたぶん十二分よぉ?」
 どう? と身を乗り出し勧めるティオレンシア――以上、回想終わり。

「はい、お話だけ聞いてみようかなーって……」
「よかったわ! じゃあ早速今日お話してみましょ♪」
 至る所に顔が利くティオレンシア、その上、ゲットしたてホヤホヤのコネもあることですし。タイミング良くドアベルが鳴り、清子と芸能関係の者が現れた。
「よかった。清子さんもお元気そうで安心しました。女優さんでいらっしゃったのですね」
「はい。そこの女給さんが、とても美味しい紅茶をご馳走して励ましてくださったから、もう大丈夫です」
 清子も紅子もそれぞれ花唇を咲かせて鮮やかに輝いている。
 ――若い頃に死に瀕するなんて、ましてやオブリビオンのせいでだなんて、できればない方がいいと詩乃は常々思っている。
(「けれど、人は|私《神》が思うよりずっと逞しいのですよね」)
 死に瀕したからこそ限りある命を自覚しより輝く方へと歩き出す。
 ただそれはあくまで“命を落さなければ”でも、ある。
 詩乃はこれからも力の限り人命を救おうと改めて胸に誓う。
 誓い新たにした所で、詩乃のもう一方の待ち人が現れた――あの日、特等車両に乗っていた華族の一家だ。
「大町様、超弩級の皆々様、本日はお招きいただくありがとうございます」
 深々と頭を下げる父親の傷はすっかり癒えたようだ。
 階級の高い人は本音を言いづらいもの。少しでもほぐれますようにと心を込めた紅茶をサーヴし、小雪は一礼し去る。
「大町様、僕は帝都桜學府に入学しようと考えています」
「朔太郎! ここでする話ではありませんよ」
 あらあらと苦笑するのは詩乃。母親の気持ちもわかる、けれども真っ直ぐな朔太郎に味方してあげたい。
 紅茶を啜れば、先程浮かべたことと重なると詩乃は気づいた。ならばかける言葉もひとつだ。
「……お母様の、そして恐らくはお父様のご心配は尤もです。けれども人は、特にこれから成長する子供達には、願いを叶える強さがあるとも私は思います」
 あの場で果敢に立ち向かった朔太郎の心を無理矢理に押さえ込んでも、後悔に囚われた人生になる。思わぬ暴発で無謀に走る危険性すらある。
 言葉を選びそう告げれば、父親は詩乃へ同意を示した。恐らくずっと迷っていたのだろう。
「朔太郎さん。果敢なあなたが理想通りに振る舞えるよう、日々努力されることを応援しますよ。それが、お母様を安心させてあげる一番の薬です――どうか真っ直ぐに成長されますように」
「はい! 有り難うございます! 必ずや帝都の涙をひとつでも減らすよう尽力します。その涙は……母様のも、勿論」
 まるで小説の主人公のようだと頬を赤らめる朔太郎へ、ぱっと場の空気が和みを帯びた。
「え、ダブルの主演キネマですか……?!」
 別のテーブルでは紅子が新たな道への一歩を踏み出す足音がする。
「紅子ちゃんの度胸ならいけるわよぉ」
「咄嗟の機転も役者にぴったりだと思うわ」
 清子の役回りはティオレンシアをモデルにしたものになると聞き、バーのお姉さんはふっふっふとご機嫌だ。
 ドアが開き、穹やニュイ、おめかしメボンゴをつれたジュジュとコノハと三千六も現れる。
 そこかしこで花開く笑顔を前に『カフェ星月夜』の看板娘ははにかむとキッチンへ戻った。さァさァ、ここからは大忙しだ!

 嗚呼、帝都は今日も人々の幸いを乗せて未来へ巡る――。

-終-

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年08月02日


挿絵イラスト