7thKING WAR㉓〜擬娘化残酷物語
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子猫が跳ねるようなステップを奏でるのは、熱っぽい瞳の女達。
小鳥のような囀りは、女どもの艶めかしい嬌声の集まり。
享楽しかないようなこの場所で、玉座にだらしない姿勢で腰掛ける初老男の表情は何処か浮かない。
「パラダルクさまぁ」
「んー、どうかしたかな?」
憂いを喉奥に沈めてゆらりと笑う。それだけで姦しい嬌声があがり周囲から幾つもの腕が伸びてくる。
パラダルクは年取りなおも引き締まった身体を女どもの好きにさせながら、問いかけを投げたドラグナーガールへ目を向ける。
笑っている。
でも、
伏し目に帯びた憂色を彼女は見逃さない。
――まぁ正確に言うと、パラダルクがわざと見せてるんだが、この憂い。だってそうする方がこの娘は喜びそうだしさ。要はこの男、天性の女タラシの人タラシなのだ。
「ご心配ごとがあるのでしょう?」
「ああそうなんだよ。猟兵がここに来てしまいそうでねぇ。そうしたら大切な儀式もおじゃんになってしまう……」
ふうっと物憂げにため息、斜め38度の傾き。
きゅん★っときたドラグナーガールが真正面から抱きついて初老男の後頭部に指を這わせる。
「大丈夫ですわ、パラダルクさまぁ。あたし達ががんばってやっつけてしまいますから!」
わしゃわしゃわしゃと、心地よく撫でる感触を愉しみつつも、実はこの男そんなに心配していない。
まぁほら、何してきたって女の子に変えればいいんだし、自分が滅ぶことはそうそうないだろう。
気が重い点を敢えて言うなら、儀式が失われてしまうことぐらいか。
●
「世は擬人化が流行なわけだけど……流石オブリビオン、きちっとそこを抑えてきたよ」
と、星崎・千鳥(元電波系運命予報士・f35514)はまず褒めた。
「今、デビルキングワールドはてんやわんや。ガチデビルがが特級契約書で呼び寄せた『異世界の魔王』のひとり、パラダルクって奴と戦ってきてよ」
「イケオジの方」とつけたしてから、千鳥は唇に指を当てる。
再び開かれた唇から出て来た概要は、以下の通り。
パラダルクは、銀河帝国攻略戦において登場した「実験戦艦ガルベリオン」と同一艦と見られる戦艦の中で、某かの儀式を行っている模様。
その儀式を止めるのが今回のミッションだ。
「このイケオジ、強いらしくって、殺しきるのは難しそー。だから儀式の為に踊ってるドラグナーガールを倒してきて」
イケオジパラダルクの背後には、女の子達がいーっぱい。
そのドラグナーガールズ達は、パラダルクからユーベルコードの力を付与されて攻撃してくる。
はて、擬人化どこいった?
と、言ったタイミングで千鳥はぶっ込んでくる。
「パラダルクのユーベルコードは『万物を女の子(ドラグナーガール)に変える』ことができるよ」
この場合の万物とは即ち猟兵以外全部、である。
あなたの武器も、あなたのユーベルコードも、みーんな女の子にされて支配下に置かれてしまうのだ、なんてひどい。
――これは確定事項です。
――絶対に、武器かユーベルコードのどちらかひとつは女の子になってしまいます。
「その上で、襲いかかってくるドラグナーガールに先手を取られるとかなり詰むよ。だから女の子にされちゃうのは諦めて、そっちの対処、頑張って」
ちなみに変えられた女の子=ドラグナーガールは全てパラダルクにべた惚れ、ラブ★見せつけ。自らの愛用武器やユーベルコードが封印されるよりひっどい話だ。
「すごいよね、更に流行のネト……」
いいからもう喋るな、はやく現地までの路をひらいとけ。
まぁそういうわけで、心をいたぶられながら儀式ダンスを踊るドラグナーガールちゃん達を倒してきてください!
一縷野望
なぁダンス技術って生えるもんなんか?
オープニングをご覧いただきありがとうございます、一縷野です
こちらは「武器娘やユーベルコード娘とかって浪漫じゃんね」という方向けの依頼です
ちなみにそれぞれ娘ちゃんことドラグナーガールは、パラダルクおじさまぞっこんなので、むしろ心の強い人向けかもしれない
>採用について
公開時点でプレイングは受付を開始しています
採用の目安は4~8名
予告なく唐突にプレイング受付が締め切りとなる場合があります、ご了承ください
オーバーロードの方は余程の事がない限り全採用で考えています
それ以外の方は書きやすい方を採用します
>どんなリプレイか
あなたが指定したユーベルコードか武器1点がドラグナーガールに変身して、パラダルクおじさまスキスキ言いながら襲いかかってきます
あなたは
・心を折られて打ちのめされてもいいし
・淡々と戦ってもいいし
・ドラグナーガールを口説き返してもいい
・その他、お好きなようにどうぞ
ただし「儀式の舞を踊るドラグナーガール達を倒す」のは忘れないようにしてください
倒す対象に、自分の武器・ユーベルコードから変じたドラグナーガールは必ずしも含まなくていいです。
もちろん滅多打ちにしても武器やユーベルコードは戦闘後に無傷で戻るので、お好きにどうぞ。
>ドラグナーガールの指定
マスター解釈で事故りたくない方は「外見、性格、口調か台詞例」を書いておいてください
外見のみとか一部指定もOKです
*マスター解釈例
UC:探偵儀式
理知的な黒髪スレンダー女子、口調ですます
隙あらば他のドラグナーガールを殺しPCを犯人に仕立て上げようとする
彼女の中ではパラダルクが真犯人ということになっているので、庇っている。愛!
>プレイングボーナスと注意点
リプレイはライトタッチ、判定はやや難仕様です
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プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する(しない限り必ず苦戦か失敗になる)/踊るドラグナーガール達を倒す。
=============================
18禁、エロは採用しません!
ドラグナーガールの姿は幼女だけど酒や煙草をやるよ、とかそういうのもダメです
それではプレイングをお待ちしております
第1章 ボス戦
『召喚魔王『パラダルク』ディアブロホワイト』
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POW : ガールズ・ポシビリティ
自身の【下僕であるドラグナーガール】ひとつを用いた行動・攻撃の威力を3分間3倍にする。終了後[下僕であるドラグナーガール]は【可能性を使い果たしたこと】により破壊される。
SPD : フューチャー・ルーラー
【ドラグナーガール達と連携し、精神支配魔術】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【以降の動き方や使用ユーベルコード】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ : パラダルク・フューチャー
召喚したレベル×1体の【ドラグナーガール】に【ガルベリオン鋼の機械兵器とダンス技術】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
イラスト:モツ煮缶
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
キアラ・ドルチェ
【多重詠唱】【高速詠唱】で森王の槍2連発
一発目はガール化されてしまうの確定なので、二発目に【全力魔法】載せて森(王の槍)ガール含めてぶっ刺します!
「機械兵器も中に植物が入り込んでしまえば使い物になりませんでしょうっ!」
しかし相手の特殊能力の影響とは言え森ガールも趣味が悪い
「なよなよしたおじーちゃんで乳放り出してる奴の、どこが良いんですかねっ!?」
殿方はこう、基本真面目でちょっと悪戯好きでほわーんとしてるけど、やる時はやるタイプが良い…って、あれ、これお父さんな気がする?(ファザコン発動
まあ乳じい(勝手に命名)強いみたいだし、ダンサーと森ガールに集中して攻撃して儀式止めて…はいっ、おわりっ♪
●森王の槍ガール
ふんすと鼻息荒くやってきたキアラ・ドルチェ(ネミの白魔女・f11090)は、ドルイドの杖を掲げあげた。
「おやおや、ご挨拶もなしかい? お嬢さん」
パラダルクが片指をちょいっと持ち上げると、肩口編まれた無数の槍が収束する。そうして現れたふんわり森色ワンピースの裾がキアラの視界を遮った。
「! パラダルク様ぁ、姿をくれてあり……」
どす!
どどどどどどどどどどどど!
できたてほやほや森ガール&優雅な足取りで信じられん距離を跳躍してきたドラグナーガールの皆さんは、2発目の森王の槍に貫かれて次々と墜落している。
何故そのような技ができたかって? キアラの高練度な詠唱の前では魔力の圧縮なんぞ朝飯前だ。1にしか聞こえぬ詠唱で2つ分の術を仕込んでおいた。
つまりは 力 押 し である。
「機械兵器も中に植物が入り込んでしまえば使い物になりませんでしょうっ!」
その言葉を裏打ちするように、床に伏す女達からは無限に思える戦闘能力は消え失せている。残るはダンスのすごさだけ。
「うぅ……ひどいですぅ」
さて。
ふるりと震える背中から、枯れ葉色のふんわりロングが零れ落ちる。そばかす面の元森王の槍ちゃんは若葉色の瞳でじっとりとキアラを睨みつけた。
「ほぉら、手に捕まるといい」
パラダルクの節くれ立った指に鼓動が高まる元森(略)
「知らない子とは言えぬあの人が失礼なことを言って……パラダルク様ぁ、ごめんなさぁい」
内気目少女インドアに見せかけて趣味は山歩きどころかガチキャンパーな彼女は、シュンと顔を伏せる。
「いいよ。あれは君じゃない。ここにいる全てのドラグナーガールが僕じゃないようにね」
当たり前のことを含蓄深く言ったら案外ちょろく誑せるもんなんですよ。
ほら、森ガールさんなんて、完全に腰を抱かれて身体を預けちゃってるし。
「なよなよしたおじーちゃんで乳放り出してる奴の、どこが良いんですかねっ!?」
イダンスしかできないドラグナーガールズを杖でボコって儀式を潰していたキアラさん、とうとう堪忍袋の緒がぶち切れたようです。
「おじいちゃんはひどいなぁ。いいところ君のお父さんと同じぐらいだろうに……」
「! お父さんと一緒にしないでっ! 殿方はこう、基本真面目でちょっと悪戯好きでほわーんとしてるけど、やる時はやるタイプが良い……っ」
あれ、そんな人知ってるぞ?
「これって、お父さん……?」
「ファザコンか、攻略し甲斐があるね」
「乳じいは黙ってっ!」
命名、乳じい。乳を放り出しているから。
「え、わたしぃじゃダメで……」
ゴッ!
杖で貫通攻撃。
しっかり元森王の槍ちゃんを盾にして身を引いたパラダルクこと乳じいは、ホントサイテーのクズだと思いました、まる。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
この世界に合わせて邪神様なりきりセットを着用し、悪のカリスマと威厳を纏って登場するが。
あっ、私のお宝画像(主に猫ちゃん)満載のスマホがっ!
語尾が「にゃん♪」で知り合いのグリモア猟兵似のドラグナーガールに…
必死と書いて必ず死なす!(メロス並みに激怒)
先制攻撃は第六感で予測し、見切り・功夫で回避や、天耀鏡で盾受け。
オーラ防御も纏う。
初発之回帰にて召喚されたドラグナーガールにはお引き取り願い、踊っているドラグナーガール達には雷の属性攻撃・全力魔法・神罰・高速詠唱・範囲攻撃による雷で倒す。
そして彼の鳩尾に発勁(功夫・怪力・打撃属性攻撃・神罰・衝撃波・貫通攻撃)を撃つ。
猟兵の身体は変換できないでしょう!
●にゃんすまほ🐱
デビルキングの作法(?)にのっとり、今回の大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)は黒のドレスに禍々しい赫の錫杖と、邪神様なりきりセットの出で立ちである。
「そなたの享楽、妾が全て破壊してくれようぞ」
悪のカリスマと威厳を籠めた登場に、ドラグナーガール達はぴたりと舞いを止めてしまう。そんな中、掠れた口笛がヒュルリと鳴った。
「いいねいいね……でも、本当の君が見たいな」
ゆらりと玉座から立ち上がると、初老の男は柔らにあいた笑いで手招き。
併せてしなやかな動きで襲いかかってくるドラグナーガール達! 動きに注視していた詩乃は、神楽舞の足取りで難なく躱す。付け焼き刃のダンスになぞ負けるわけがない。
「?」
ない、が。
「……あっ、私のお宝画像(主に猫ちゃん)満載のスマホがっ!」
にゃーん🐱
ネコミミと尻尾のどらぐにゃーがーる、あろう事かとある知り合いに似ている。あと尻尾と耳の色はボス猫カラーだ。
「にゅふふ、パラダルクさまぁ」
すりすりと額をぶつけて馴染みを入れる仕草は猫だが、娘さんが半裸中年イケオジにやっているわけだよ。
「…………」
詩乃は激怒した。
必死の念で握りしめた邪神様なりきりセットの錫杖の柄がみしみしと音を立てるぐらいには。
「必ず、死なす」
儀式場全体に容赦のない落雷、逃げ切れぬ女達が次々と膝を折った。更に、赤い宝玉がどらぐにゃーがーるの後頭部に突き刺さる。
「にゃあ(T-T)」
「君は酷いことをするなぁ。ほら、見せてご覧」
「にゃ、パラダルクさま、治してくれるにゃ?」
問いかけには笑みだけ返し傍らにしゃがむ。
「ほぉら、いたいのいたいのとんでいけ」
「にゃにゃ?! なおった(ような気がする)にゃ!」
詩乃の顔の影の濃さが、三段階アップ!
「――そんなことがあるわけないでしょう?」
事後、黒焦げ撲殺その他の死屍累々。
儀式の中心で黒を翻し数々のドラグナーガール達を屠った詩乃は、再び錫杖を振り上げる。
「そもそも人の大切な思い出を覗き見して、このような悪趣味なものを構築するなんて……ッ!」
だが身を固くするどらぐにゃーがーるに殴打は一向に訪れない。
それどころか、がん、と錫杖の宝石が床を叩く音が響くではないか!
「やはり、可愛い猫ちゃんは殴れないかい?」
驕傲露わに顎を持ち上げたパラダルクの元に、すっと黒レース手袋の指が翳される。
――と。
完全に意表を突かれたのと、詩乃自身が高い功夫を納めた達神(たつじん)であるため、発勁が鳩尾に見事に決まる。
「ぐあっっ!」
余裕が消え失せ吹き飛ぶ男の口からは、夥しい血が溢れでた。
「にゃにゃ?! パラダルクさにゃ~!」
ぼん!
追いすがるどらぐにゃーがーるは本来の姿を取り戻すと、詩乃の手のひらにぺそりと戻ってきた。
「…………非常に不愉快でした」
未だ詩乃の顔の上半分はシャドウが落ちたまんまである。
むしろ最初の邪神なりきりより余程邪神っぽい――まぁでも、元々の有り余る神性がいつもの彼女を取り戻してくれることだろう。
大成功
🔵🔵🔵
仇死原・アンナ
アドリブ歓迎
世界を救う為に…
ガチデビルを討ち滅ぼす為に…
行くぞ…私は処刑人だ…!
鉄塊剣抜き…
あぁ…鉄塊剣が女性に……仕方ない…
妖刀抜き振るい敵と相手しよう
敵群の動きを[視力で見切りつジャンプと軽業]で回避
[功夫]による回し蹴りで足を引っかけ[体勢を崩し]たり
妖刀振るい[鎧無視攻撃]で機械兵器諸共[切断]してゆこう
面倒だな…ならばこそ…!
敵群の攻撃を避ける事出来たらば
【火難焚刑之陣】を発動
燃え盛る地獄の炎で敵群を[範囲攻撃で焼却]
焼き尽して[蹂躙]、殲滅してやろう…!
…主は私だぞ…目を覚まさせてやる!
女性化した鉄塊剣を睨み[恐怖を与え]ながら
[怪力と重量攻撃]で顔を殴りつけて目を覚まさせてやろう
●錆色の乙女
世界を救う、即ちガチデビルの討伐と同意。其処に至るには、この乱痴気騒ぎを片付けねばならぬ。
嬌声姦しき宴の場に現れた不似合いな処刑人、仇死原・アンナ(地獄の炎の花嫁御 或いは 処刑人の娘・f09978)は重々しい赤色の愛剣をすらり抜く。
「確かに大義名分に乗じて全身を血染めにすんのは気持ちいいや。生ぬるい内臓を触るのなんて最高だぜ」
直後、そんな粗い声の女の声がアンナの耳を汚した。
声の主、赤錆色の癖毛で筋骨隆々とした大女は、この姿を与えた男にしなだれかかって耳たぶを噛む。
「……パラダルクの能力は事前に聞いていたが……」
目の当たりにすると流石のアンナでも一瞬の戸惑いは現れる。
だが、そこを突くように襲いかかるドラグナーガールズに遅れなんぞはとらない。素早く妖刀を抜くと、飛び退き様に首を跳ねた。
追撃を宙返りで躱す元の主を前にして、錆色の乙女は裸の肩に指を這わす。ちらとそれを見やったアンナは、着地地点で待ち構える数の多さに舌打ちする。
(「面倒だな……ならばこそ……!」)
唇の中で火刑を編むと、着地と同時に周囲を地獄に変えた。
「逃がさん……」
すと伸ばされた腕、握る細身の刀身が火傷を逃れた女の喉を貫く。大女はその刀を指さし傍らの男へ囁いた。
「なぁ、アイツは女に変えねぇでくれ。絶対プライドだけは高い嫌味な女にしかならねぇからよ」
業火を招き次々と娘らを焼き尽くしていくアンナを前に、パラダルクは術を孕んだ腕を下げる。
「……なら、君は僕に何をしてくれるって言うのかな?」
パラダルクは片眉をあげて、肩に置かれた指を引きはがす。一瞬悲しげに眉を寄せた自分より身の丈のある女へは、ますます笑みを深めてやった。
「僕が欲しいなら僕に尽くし満足させて愛を勝ち取るぐらいでないと」
瞳を眇めた横顔は、場にいる最後の女を焼き尽くす炎で色めき染まった。
「おい、お前……主は私だぞ……」
一方、アサエモン・サーベルについた血を振り払い、アンナは沼色の瞳でギロリと睨み据えた。
錆色の乙女は心臓を掴まれたように竦みあがるも、傍らの男はそれすらも面白がっているようだ。
「上等だパラダルク! アンタをアタシのモノにしてやる、ラブレターはあの女の肉塊だッ!」
獣めいた跳躍で鈍色の女は尖らせた爪でアンナの肩から腹を抉り取った。だが『鉄の処女』の面目躍如はここまで。
「目を覚まさせてやる……!」
天井のシャンデリアの輝きを背に、処刑人の女は――妖刀を腰に納めた。
「……全ては敵の術での無様。せめて刃物としての矜持は守ってやろう、その代り……」
ゆらゆらとアンナの輪郭が溶け出すようにぶれる。陽炎を呼ぶほどの熱は儀式場全体に及び、やがて間欠泉めいた焔がそこいら中からあがりだす。
「地獄の業火に灼かれ、その色ボケした頭を冷やせ……!」
「ぎゃあぁああ!」
凄絶な悲鳴があがり全身を炙られた大女が消し炭となり消え失せる。直後、がたりと重たい音をたてて鉄塊剣が床に投げ出された。
アンナはしゃがむと無言で掴みあげる。そうして振り上げた瞳の先、既にパラダルクは姿を消していた。
大成功
🔵🔵🔵
涼風・穹
UC:贋作者
涼風穹本人を女性化してやや幼くしたような、妹とでも言われれば納得しそうな外見
丁寧口調ですが物凄い毒舌で味方だろうと誰であろうと情け容赦なく心を抉る
しっかりし過ぎの妹のような感じで私生活等にも駄目出しするタイプ
彼女の中では涼風穹に問題があったのでパラダルクに走った事になっている
……それなんてNTR…?
あらゆるものを女性にして侍らせているという腐れ外道を天誅すべく殴り込むと《贋作者》が女性化して何故かお説教タイムに
……いや、そりゃずっと一緒に戦い続けてきたんだし世話になってきたのは認めるけど…
意地でも《贋作者》が変化したドラグナーガールは倒します
《贋作者》の欠点も分かってるしな
……傍から見ると寝取られた挙句に諦めきれずに殺してしまうDV野郎のようにも思えてしまうのが余計に心を抉りますな…
なんかもう色々と心が折れそうなのでRB団の宿敵であるハーレム野郎にして諸悪の根源たるパラダルクを全力で爆破します
それはもう全力でその顔面に拳を叩き込む為ならあらゆるダメージに耐え抜いてやり遂げます
●俺そっくりだけど何故か美少女な贋作妹が、親ぐらいの見た目のイケオジにNTRれて俺は今日も1人枕を濡らす
「いや、寝てないから! ちゃんと起きて戦ってるから!」
「おめめが開いていらっしゃっても、お兄ちゃんの刃はパラダルク様には一切届いてません!」
「うぐッ……」
抜き身の風牙を構える涼風・穹(人間の探索者・f02404)の心は、花瓶の剣山でザックザクにされる。
「大体、お兄ちゃんは『陽キャ・モテ男・リア充』を前にすると猪突猛進すぎ。手順を頭からすっ飛ばすからこのようなことになるのですっ!」
リア充許すまじで乗り込んで有無を言わさずドラグナーガールの群れへ突撃、狙いはパラダルクただ1人!
そうしたら、ユーベルコードを女の子に変えられて、今、精神支配魔術というカテゴリーの暴言? を浴びせられ、身動きがとれずドラグナーガールズの集中攻撃に遭っている。
――以上、状況解説終わり。
「ふぅむ、中々に愛らしい。それに君にどこか似ている、妹さんかな?」
穹とそっくりの青髪ストレートを腰までたらし、すっと切れ長の蒼瞳を尖らせる白色セーラー服の少女を、玉座にだらしなく身を沈めるパラダルクは手招きし膝をぽんぽんと叩き誘った。
「パラダルク様……ッ、おひざ、よろしいのです?」
「君はまだ幼い、大人の男の膝に腰掛けてもいい年頃なんだよ」
「きゃ!」
強引に抱き寄せて膝に乗せる。贋作妹は逆らわず赤らめた頬で目を閉じると身を預けた。
「てーめーえーなーあぁ! どんな年であれ他所の男が女の子を膝に乗っけていいわけないだろうがよおぉおおおっ!」
いいお年頃だったら子供は見ちゃいけない同人サイトによくあるNTR。
「そいつみたいに子供だったら……もっとダメな奴に決まってるだろうがよおぉ!」
「もおっ、お兄ちゃん! 私は子供じゃありませんーっ!」
ぷっと頬を膨らます顔とかめっちゃ可愛い、自分に似てるのが色々あれなんだが、可愛いものは可愛いのだ。
「うっせえっ14歳!」
野獣のように歯を剥き出しに、穹は逆手に持ち替えた風刃で壁となるドラグナーガールに斬りかかる。
「ほう、精神支配に抗うとはねぇ。精神損傷が深まるだろうに」
と、配下の娘が胴体分断される様を、贋作妹の頭をぽふぽふ撫でながらパラダルクは平然と眺めていた。
「ッ、お前は血も涙もない奴だなぁ?! ムカツクムカツクムカツクムカツク……」
以下呪詛反復、その数だけドラグナーガールが倒されました。
「なんだってこんなクソ外道がモテんだよっ! 顔がいいそれだけで人生勝ち組とかふざけんな!」
「ふむ、いけない。流石にこれでは儀式が出来なくなるね。君たち、彼の戦い方はよく見たね?」
「「「「はぁ~い♥」」」」
じゃきじゃきじゃきん!
様々な見目の娘らは、片手に刀を目を爛々と輝かせて穹へと襲いかかった!
「……ッ! そういうことかよっ」
上段からの迷いのない斬り下ろし、フォームは鏡映しのようにそっくりだ。
スッと掠めただけでゴッソリ左肩の肉を刮がれた、明らかに先ほど相手取った娘達に比べても威力も精度も段違いに高い。
「ふん、でも遊びすぎなんだ……よっ!」
穹の真似事即ち動きは手に取るようにわかる。瞬く間に斬り伏せて、残るは贋作妹とパラダルクの2人となった。
すとっ。
贋作妹は覚悟を決めた眼差しでオジサマの膝からおりると刀を構えて前にでた。
「どけ」
「どきません」
「なんでそんなクズ男を庇うんだっ」
「お兄ちゃんが悪いんだよ?」
ここで敬語を崩すとか反則だろう。しかも瞳に涙を溜めて、切り結んだ唇を小刻みに震わせるとかっ。
(「あーー、によによ笑いで後ろで見てるそのイケオジをぶった切りてえ!」)
本音はそれ。
「……お兄ちゃんは私にひどいことをしたじゃないですか」
「へ? ……いや、そりゃずっと一緒に戦い続けてきたんだし世話になってきたのは認めるけど……ひどいことなんてしてないぞ」
「お兄ちゃんは、私が早起きして朝ご飯作っても食べてくれなかった。学校では居眠りして、教科担当の先生に『妹がしっかり管理してくれよぉ?』なんて言われて、私がどれだけ恥ずかしかったと思ってるんですか? それからそれから……」
生活態度全般のダメだしを涙をポロポロこぼしながら刀を突きつけてされるって、感情迷子になるわけだが。
絵づらは一見古き良き泣かせゲークライマックスで、でもにやけたイケオジがたまに茶々入れて抱き寄せたりするのはNTRあるあるで――。
「ああもういいわかった。お前を元に戻すには殺すしかないんだな……」
所詮は“贋作”だ、強化を受けている為に労せずとまでは言わぬが、穹の命が脅かされることなく討ち取れた。
――傍目には寝取られた挙句に諦めきれずに殺してしまうDV野郎のようで、その心抉りが精神力の最後の欠片を削り取ってしまう。
「畜ッ生……RB団の宿敵であるハーレム野郎にして諸悪の根源たるパラダルクッ……逃げやがったか」
最後まで卑怯な奴だったと血塗れのすごい形相で穹は空の玉座を睨みつけた。
苦戦
🔵🔴🔴
オネスト・ファッション
なんでも女の子に変える能力!?
ワルのボスって大体綺麗な女の人が側にいるイメージあるけどさぁ…よくわかんねーな!
※PCは外見を武器とする見せ掛けの悪魔
ドラグナーガールに変じるのはアイテム『カリスマ・スタイル』
改造制服を着たワルっぽい女の子、性格等はお任せ
……流石僕一番のビジュアルだ、だいぶ可愛いぜ!
ビジュアルを取られて若干動揺はするけど慌てず『魔武断学園制服』に[早着替え]!
ドラグナーガール達の先制攻撃にはワル力を展開し[環境耐性][オーラ防御]で受け止めます!
耐え切れずに負傷しても構いません
そのまま見せ掛けを剥がし、【指定UC】を発動し真の姿へ!
◆
万物が変じたドラグナーガール——うん、良い見せ掛けだね
だけど倒さないといけないからさ
『見せ掛けを消し去る硝子片』を喚び出し、ドラグナーガール達に射出
彼女達が万物から“変化”したものなら、全てを無効化するUCであるべき姿に戻してしまおう
『カリスマ・スタイル』を取り戻したら直ぐに着替えて真の姿を解除するよ
こんな格好いつまでも晒してられないからなっ!
●人をカリスマたらしめるモノとは
玉座にしどけなく腰掛ける壮年の男からは、噎せ返るような女の香りがたち上る。左右から後ろから、古今東西の美を割り振った女達が彼の肌にぺたりぺたりと手を這わせ頬を寄せている。
「綺麗な女の人をいっぱい侍らして確かにワルのボスっぽいな!」
元気にはだけた深紅のワイルドコート、床をいい音たてて踵で叩く同じ色の靴はスタイリッシュ――今日のオネスト・ファッション(見せ掛け以上・f31551)豪快で好奇心いっぱいの一寸悪ガキの青年だ。
「あぁ、君はデビルキングワールドの子かい? だったら素の性格はとても“いい子”なんだろうね」
「さぁそれはどうだかね」
見せ掛けに相反して……まで含んだ見せ掛け。
だがオネスト・ファッション(見せ掛け以上・f31551)にとっては“見せ掛け”こそが本質である。
――そう、彼は“見せ掛け”の悪魔。
にしし、と牙を見せ笑う余裕の態度にパラダルクは肩眉を持ちあげた。
人とを手玉に取ることが身上のこの男にとって、オネストはやけに扱いづらい。
故に実力行使。
「男を脱がす趣味はないのだけれどもね」
男が片手を掲げると同時に、加速装置を吹かし襲い来るドラグナーガール。
「ッ! 駄目かぁ」
上着を奪われたオネストは一瞬焦るも、すぐにワルの力を解き放った。紫やダークレッドの星やトゲトゲがパァッと具現化し、女の子達の眼前で輝いた。
「……きゃあっ!」
「やだ! この子悪そう、コワーイ」
たじろいだドラグナーガールから距離を取ったところで、オネストは目が合った新しい“カノジョ”に向けて「へえ」と、どこかはしゃぐように目尻を下げる。
――魔武断学園の真っ赤なジャケットを具現化したような、赤いストレートの髪。右目が隠れた斜めの前髪、唇は天然で紅さしたような赤。
――少し古風な白のセーラー服、ネクタイだけは制服基準の赤と黒の縞々。
――床を引きずるような長いスカートには艶やかなぼたんの花が咲く。左側の蠱惑的な深い切り込みがあるからキックは自由自在。
「……流石僕一番のビジュアルだ、だいぶ可愛いぜ!」
「可愛い? 私がか」
抑えたようなアルトヴォイス、煌びやかさよりは古風な佇まいのカノジョはオネストを一瞥する。
「牡丹の花が似合ってるぜ、ほら、お揃い」
ばさりと大布を翻して早着替え。
針仕事で丹精込めたチャイナスタイルのシャツに『魔武断学園制服』一揃いでお色直し。
「……君はおかしな奴だねぇ」
オネストは未だワル力で防戦一方であり『カリスマ・スタイル』も手駒にされてしまっている。
「置かれている状況が判らぬ莫迦なのか。元主ながら、わからぬ」
「いいや、君はわかっている筈だ。ねぇ教えてよ、彼はどんな人だい?」
パラダルクは敢えて肉体的には触れずに問いかける。
「私の信条を尊重した扱いに感謝する」
誰にでも着られたいわけではない。そして着る気がないのなら触れられたくはない。
カノジョは自らパラダルクの傍らに控えるように立つと続けた。
「そうだな……実は生真面目で努力家の奴だ。私も手図から縫いあげられた」
語る最中も、オネストはドラグナーガールズの攻撃を必死に凌いでいる。
だが、ユーベルコードの力を乗せた剣戟に、折角身に纏った制服は斬られ、裂傷だらけの身体からは大量の血が噴き出している。
「……ッ、つっ……万物が、変じたドラグナーガール――……うん、良い、見せ掛けだ、ね……」
苦しげに持ち上がった顎で荒い息を吐く青年は――変質する。
「……あれは、なんだい?」
白。
ドラグナーガールの前に佇むオネストは、飾り気のない白の衣のみ身につけてぽつりと存在している。
整えられてない色の抜けた髪。紅い瞳も飾りの蛍光色を取り払った素っ気ない、赤。
――これが、真の姿だ。
見せかけの悪魔から見せかけを取ったなら、残るのは『 』だけ。
「……ヤバイっ! パラダルク、貴様は下がれ」
異変を察したカノジョは壮年の男を突き飛ばすと、オネスト目掛けて跳び蹴りを食らわせる。
す。
オネストは翳した指1本でキックを堰き止めて虚静恬淡とした眼差しで、微笑。
「優しい子だね。時間を掛けるとまずいいっと知って、蹴り掛かりに来てくれた」
「……ちっ、あたしはアンタが作ったんだからな」
“優しいに決まってる”
白セーラーの女の子は崩れる全身に巻き込まれるようにくしゃくしゃの顔で笑った。
ひらり。
くたびれた『カリスマ・スタイル』の制服が目の前で弱々しく翻った。
“――ちゃんと、繕ってくれよ”
「ああ、もちろん。おかえり」
願いに応えるように優しく服を抱き取って、オネストは気圧されるドラグナーガール達へと振り返る。
「万物が変じたドラグナーガール――うん、良い見せ掛けだね」
先ほど苦しげに吐いた台詞をもう一度。
同時に“ワルの欠片”とは比べものにならぬ、圧倒的な“消去力”を持つ欠片がきらりはらりとオネストから零れ出す。
「……だけど、倒さないといけないからさ」
全ては元になるものがある。
さぁ、原始へ、還れ――。
オネストがそこに存在するだけで『見せ掛けを消し去る硝子片』は濃度を増し、この場にいる全てのドラグナーガール達へと降り注ぐ。
「きゃあああ」
「助けて、パラダルクさまぁ!」
やがて、宴は終わる。
数々の物品は元に戻った直後砂塵へと還っていった――ここにはもう、何もない。
大成功
🔵🔵🔵
御鏡・幸四郎
武器:ガンナイフ
大振りのナイフとリボルバーを手にした小柄な少女。
不愛想だがわずかな仕草にデレが見える。
指摘されるとキレる不器用系。
ナイフの振りも、射撃のタイミングも、
使い込んだ自分なら予測できます。
【ガールズ・ポシビリティ】でガンナイフガールの
攻撃の威力が3倍になっていたとしても、
当たらなければ意味はありません。
「貴女の心が彼になびいてるのだとしても」
彼女に密着するほどに近接。
剣先を逸らし、銃口を躱し、
まるでダンスを踊っているかのように翻弄。
「貴女は私の元に必ず帰ってきます」
苛立つ彼女から離れ、踊るドラグナーガールを盾にして躱します。
彼女の攻撃で倒れれば僥倖。倒れなくても儀式の邪魔は出来るはず。
数を減らしたところで彼女に再接近。
大振りの一撃を透かして【探偵格闘術】で地面に叩きつけます。
「貴女のことは私が一番理解しているのだから」
目を見つめながら告げたところで、そろそろ3分経過でしょう。
ガンナイフに戻った彼女を拾い上げ、冷たい視線でパラダルクを見つめます。
「いずれ、お灸を据えに行きます」
●
予知を聞き赴いた地は、甘ったるい女と酒の匂いに満ちた腐りかけの果実のような場所だった。
その中心部で沼のような淀んだ瞳をしているのが、此度の敵のパラダルクだ。
(「姉さんには留守番をお願いしておいて本当に良かったです」)
御鏡・幸四郎(菓子職人は推理する・f35892)は、手元のガンナイフを確かめるようにグリップを握る指に力を込める。
武器ないしはユーベルコードが奪われるのは把握済み。さぁ、一体何が変えられてしまうのか――。
「いらっしゃい。君ぐらいの年頃が男性として完成し、体力も盛りで一番楽しい時期だね」
中年の酒焼けた声と同時に、魔方陣めいた床描きの上で踊り狂っていた女達か一斉に幸四郎へ瞳を向けた。
直後、裸足が床を叩き駆け込んでくる、だが幸四郎の注意は手元から突如消え失せた重みと感触へと向く。
ブン……ッ。
刹那、空間を横に分断する荒れた音が鼓膜を打った。大ぶりの刃が、重く鋭く幸四郎の胴体を一撃の下に叩き斬らんと牙を剥いたのだ。
「――」
スーツとシャツだけを薄く斬らせ飛び退いた幸四郎は、素手となった右手を下ろす。
「貴女が奪われましたか」
「……コウシロウ、殺す」
腰まで伸ばしっぱなしの不揃いな黒髪、喪服めいた黒一色のロリータドレスの少女は、振り回したナイフを再び翻す。
キレのある鋭い踏み込み、だが幸四郎は難なく手首を掴んで引き倒す。
「殺す」
だが少女は戸惑いの欠片も浮かべずに、ひやりとするような黒い眼差しを向けリボルバーのトリガーを引いた。
ぱちり、と、幸四郎のサラ髪が弾け飛ぶ。頬についた火傷の痛みを包むように手のひらを当てがって、青年は何処か得意げに口元を緩めた。
「ああ、見事です。僕じゃなければ顔が半分なくなっていましたよ」
「随分と、傲慢」
平坦な表情に僅かな嫌悪が浮かぶ。
そんな少女の前に、嬉々としたドラグナーガールズが躍り込んできた。
「邪魔ッ……どいて! わたしが殺すの」
荒々しくリボルバーを構えた少女の手は、節くれ立った男の指で押さえて下げられた。パラダルクだ。
「撃ってはダメだよ。あの子たちは君のお友達なんだから」
「…………ぱらだるく様」
辿々しい呟きで愛しき人の名を呼ぶ。振り返った頬は林檎色に染まり、漸く黒一色から脱した。
「君は、まるで妖精のように愛らしいお顔をしているね」
後ろから肩を抱くパラダルクは、からかうように幸四郎を見た。
「……」
幸四郎は既に魔法や弾丸の射撃で輪郭を朱に染めていた。
接近戦以外の攻撃は急所を外す回避に留め、眼前の娘らを一撃必殺のカウンターで討ち取っているが故の負傷だ。
実際は余裕たっぷり、故にパラダルクからの「大切な物を取り上げた愉悦のひけらかし」なぞ、毛ほども気にならない。
「……わたし、かわいくなんか、ないよ」
「いいや、ほら、こんなに真っ直ぐな瞳をしている」
前髪を持ちあげて金飾りの留め金をつけると、パラダルクは笑みを深める。
「さぁ、力をあげようね。協力してあいつを殺しておいで」
少女の背中を撫でてユーベルコードを流し込む。
「……は、はい」
歯車が噛み合いすぎて壊れはじめる音がする。高鳴る鼓動は、苦しい。
(「これは……ぱらだるく様が、好き、だから……」)
「好き?」
確かめるように呟いてから、少女は疾走を開始した。
「……!」
リミッターを外された素早い動きに合わせ幸四郎は、傍らのドラグナーガールの頭を引っ掴み盾にした。
「ぎゃっ!」
穢い呻きにひくりと痙攣ひとつ。ガンナイフ少女の突き立てるナイフにて、女がひとり絶命した。
「卑怯者」
「対応出来たのは貴女が相手だからですよ」
「……どういう、こと?」
くるりとまわるリボルバーは囮、更なる斬りつけを完全予測し幸四郎は手首を跳ね上げ切っ先を逸らす。
「ナイフの振りも、射撃のタイミングも、使い込んだ私なら予測できます」
「………ッ! そんなのッ、わたしが所有物だってことじゃない。ぱらだるく様とお前はやっぱり違う! 殺す、殺す殺す殺す」
「殺すという気持ちはとても自然です、だって貴女は武器なのだから」
一々耳元で囁いては、離れ、敢えて少女の怒りに油を注ぐ。
感情の儘に振り回されるナイフは、一々残りのドラグナーガールを盾にして凌いだ。
「貴女の心が彼になびいてるのだとしても」
劈く銃声は幸四郎が難なく避けるものだから流れ弾となり、周囲のドラグナーガール達の数を減らしていくだけだ。
ガンナイフが振るわれて敵が死ぬ、いつもと何一つ変わりはしないのだ――!
「貴女は私の元に必ず帰ってきます」
「知った風な口、きかないで」
少女の口が開きがちになっている、吐かれる息は荒い。
(「限界が近いようですね」)
面白がる中年男を、幸四郎はここに来て初めて冷たい憤怒を籠めた視線で睨む。
「苦しいのでしょう?」
この子が壊れる3分の手前ギリギリで、胸ぐら掴んで床へとたたきつけた。
「帰っておいで、貴女のことは私が一番理解しているのだから」
「~~!!」
ナイフとリボルバーを握ったままで拳で両目を隠す。しゃくり上げるように震えた少女は、元のガンナイフの姿を取り戻した。
「……逃げ足だけははやい。いずれ、お灸を据えに行きます」
誰も居ない玉座にそう呟いて、幸四郎はガンナイフを丁重な手つきで納めるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
クーナ・セラフィン
何かすごーく殴りたくなってくるんだけど。
こう、殴りたかったのにナレ死してた相手が勝手に再生してきたの見たような…気のせいだよね、初対面だし。
しかし能力は本気でヤバいね。どう突破するか…
とりあえずここはオラクルを…ってもう女の子化されてる!?
っていうかその姿…そっか、私よりそっちが聖女らしいからね…
見れば見る程…ごめん私に力がなかったから(消えていく瞳のハイライト)
嘆いてばかりもいられない。
数で押し切られないよう周囲の障害物にできそうな物の近くで戦う。
機械兵器での攻撃見切りつつ纏うオーラや突撃槍で受け流して反撃。
ダンスの動きで躱される事も警戒して周囲の壁や天井も利用してあちこち跳ねて翻弄しつつ儀式のドラグナーガールの位置を把握。
十分凌いだらUCで儀式の方狙って寒さと幻覚で儀式を妨害しよう。
…扱うのが私じゃダメかもだけど、頑張るから。
※アドリブ絡み等お任せ
武器:オラクル
知り合いで一時剣を貸した事がある聖女さまにそっくりな美人さん。
自己肯定感高めなふわふわ系で疑う事も犠牲になる事も厭わない系。
●絶対革命聖女オラクル
いや、初対面の筈。
こう、殴りたかったのにナレ死してた相手が勝手に再生してきたの見たような……。
クーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)の深海の瞳は、舐めるように玉座にしなだれるオジサマを品定めしている。
「気のせいだよね、初対面だし」
けれどまぁ、すごーく殴りたい気持ちには正直に従って良い筈。
「しかし能力は本気でヤバいね。どう突破するか……」
嬉々として襲いかかってくる大量の娘らに囲まれたらアウトだと、クーナは素早く壁際へ走る。
眼前にはシャンパンタワーの如く積み上げられたグラスの群れ。襲う敵に一瞬であれ躊躇いが出ればもうけもの。
さぁて返り討ちにしてやろうではないかと、革命乙女の魂宿す剣を抜こうとしたら……指がスカッと空を切った。
ない。
腰に下げているはずの革命剣オラクルが、ない。
「あちゃー……」
ふっかりとにくきゅうおててで顔を覆う、そんなクーナの眼前では、今まさに白き剣が眩い輝きを放ち聖女の形を取ろうとしていた。
神の啓示を受けし誇り高き容を、細く繊細な髪が飾る。対してくっきりとした瞳は己を信じる強さに満ちる。聖なる銀色の鎧に、裾は上品なレース仕立て。
「わたくしは、神託を遂行する者」
「……っていうかその姿……そっか、私よりそっちが聖女らしいからね……」
瞼という幕があがり現れたのは、強き意志を現す瞳。星型のハイライトが輝けば、ここに絶対革命聖女オラクルは完成する。
「……見れば見る程……ごめん私に力がなかったから…………」
一方、クーナの瞳からはスゥッとハイライトが消えてしまう。
どうしようこれ。
悪いことをしないんなら、いっそこのまま主役交代の方が物語も映えるんじゃなかろうか。
「今のわたくしの神は唯一無二のパラダルク様」
アカン。
瞳孔が♥になってる。
「ああ、もうー」
機械兵器の力を借りて襲い来る女の攻撃を躱しオーラで弾く。頼れるのは貴女だけと握った突撃槍で突き刺したなら、その勢いの儘に跳躍する。
(「とにかく、囲まれないようにして1個1個潰して……ああ、あの子はどうしようか……」)
シャンデリアの熱を背に感じる眼下では――。
「これはまた、随分と清らかな子が現れたもんだね」
ゆるりふわりとした風情の娘は、視界に中年男が入るやいなや、跪いた。
「ああ、なんと神々しいのでしょう……! この身は全て唯一神パラダルク様のものでございます」
頭を垂れる聖女のそばにしゃがみ込み、イケオジは腐り堕ちて甘さだけはある笑みを浮かべた。
「いい子だ。君が滅んでも、僕の中に遺るんだよ。だから安心して正義を振りかざしておいで」
手のひらをとり寄せる唇。
頬染める聖女、死の前に知った実らぬ悲恋――とか、そういう奴ですかこれは!
「正義とは――唯一神パラダルク様をお守りすること」
「そして、儀式を成功させる。君の命は関係ない」
「は、この身は滅べども、心はパラダルク様とともに!」
ガッシャンと、グラスの群れがたたき割られた。
それは、ドラグナーガールの猛攻によってではなく、クーナが踏みつけたのだ。
「クーナ、儀式場を穢すだなんて……! 貴女があくまでパラダルク様に徒ななすというのなら、わたくしは骨の1本となろうとも悪行を阻むわ」
酒臭い床を踏みしめてクーナは三ツ口を小さく震わせた。
「……私の手にあるより生き生きとしているならって……一瞬でも揺らいだ己が恥ずかしい……」
いざ勝負と突きつけられた細い切っ先を、叩き壊すように薙ぎ払う。
ふわり、優雅な輪舞で躱せた己に聖女は「パラダルク様のご加護ね」と、心からの歓喜で容を染めている。それがまた苦々しいことこの上ない!
「……貴女は死ねと言われているんだよ?」
その加護は存在の可能性を食いものにした、邪法。
「崇高なる志の元に死ねるは本望ですわっ」
「話にならない――風花、悪夢を破ってしまえ」
ヴァン・フルールを天井に掲げ、獣の口が閉ざされた。深海の瞳には煌々とした光が宿り、灰色の猫の身体は白銀の花のように輝き出す。
冬の桜。
その幻想は、クーナを追い回していたドラグナーガールズやオラクルへ向けてではなく、儀式へ舞いを奉じていた娘達に襲いかかった!
完全に油断をしていた彼女らは、抗う術なく凍結し砕け散る。
「ははは、やるねぇ、君」
パラダルクの胸元でしゃらりとメダルが鳴る。
「碎輝の探索にここはもう使えないね、残念だけど」
「「「パラダルク様」」」
口々に助けを求めるような娘達へ一瞥、彼は何も命じずに背を向けた。
役目を終えた花雪は収まるどころか、更に戦意を喪失したドラグナーガールズに纏いつき、その存在を終焉へと押し込んでいく。
「…………」
いきなり放り出されたオラクルは吹雪の中、棒を飲まされたようにぼんやり佇んでいる。
「ねぇ、オラクル」
クーナは彼女にだけはまだ花雪で侵さずに、暖かな両手を差し出した。
「……扱うのが私じゃダメかもだけど、頑張るから」
唇を噛んだのはただの娘。
そして、ひとさし指で毛皮に触れた刹那に崩れ落ち床に転がったのは、クーナの愛剣オラクル。
クーナはしゃがんで拾い上げると、丁重な手つきで彼女を鞘に収めるのである――。
大成功
🔵🔵🔵
呉・深
真剣なのかそうでないのか判断に迷うところだ
流石にダオツァオレンを弟ではなく
妹にされる訳にはいかないからユーベルコードを犠牲にしよう
それで産み出されるのは……
どことなくダオツァオレンっぽい
服装の女だなぁ……
けど俺の弟は側にいる
ダオツァオレン、お前の偽物を一緒に倒しにいこう
という訳でキャバリアに乗り込んで戦うぞ
強化されるのは偽ダオツァオレン娘だろうか
グリード・イーターはキャバリアを起点とするUC
見た目がキャバリアのコスプレだろうとコピーしているのはUCだ
だからグリード・イーターの効果はあまり考慮しなくても大丈夫だろう
出来て精々共食いだろうな
そして3分耐えきれば勝ちならば……
他のドラグナー娘共々大雑把に潰しにいこう
儀式場も破壊できるように基本は『焦がすもの』で周囲を焼き払う
接近してくる相手がいれば『穿つもの』で反撃だ
出来るだけ多くの敵を巻き込みつつ、儀式の妨害をしていこう
あの気に食わない優男は深追いしない
殺せない相手に執着しても仕方ない
……ハーレムよりは隣に誰か一人がいてくれる方が俺は嬉しいな
●グリード・イーター
「パラダルクさまぁ、あーん」
「ははは、あーん」
開いた口には果実の甘露ではなく甘い唇が落ちてくる。
「もう! 抜け駆けしないでっ!」
布一枚で隔てた豊満な胸を押しつける別の女がキスした女を睨んだ。
呉・深(星星之火・f30169)はウンザリと視線を天井に向ける。だが見上げたそこにもシャンデリアが下品にギラついていて、嘆息。
銀に闇を少し挿した前髪越しの瞳もシャンデリアの粒と似た無機物が素材。映すなら此方の方が幾ばくかマシか。
しかしまぁ、呆れ続けているわけにもいかない。
「ところで」
深はダオツァオレンに足を掛けながら、優男へと言葉を投げる。
「あなたは興味がそそられないですか?」
下劣な宴そのもののな男の関心が乗り込んだダオツァオレンに向かぬように先んじる。この優男と話すのはこれっきりのつもりだ。
「そのデカ物を奪ったらどうなるかの興味はあるねえ」
黒手袋につつまれた手のひらを上に向け、形なきものをあるように見せ掛ける。
トリックを暴くと手品師の手元に吸い寄せられるように、パラダルクは興味津々で深の指を見た。
「俺のユーベルコードは、彼が喰らったユーベルコードを悉く己のものにして使用できるのですよ」
「へぇ、それはとても怖ろしいね。ではお言葉に甘えていただいておくとするよ」
玉座から立ち上がるパラダルクは上手く掛かった! ダオツァオレンは難を逃れ、ユーベルコードが餌食にされた。
研究者然とした青年は、まるで未来を見てきたかのように起こりえる事象を予測し事を運ぶ――。
「やはりな、どことなくダオツァオレンっぽい」
巨大案山子ダオツァオレンに良く似た大女、ざんばらの髪に機械の鎧を纏ったそれは、パラダルクに付与された力任せの殴打を見舞ってきた。
弟は両腕を折り曲げて前に出し深の騎乗部分を庇う。
やはりだ。
ユーベルコード本体の能力は乗らず、あくまで強化された腕力のみが脅威の人形だ。
「――ッ」
ギギギギギッ!
勢いで押され流線の床傷が深く穿たれる。儀式場の中央に放り込まれるのも、無論計算ずくだ。
「――燃えろ」
ごぉごぉと唸りを上げて吹き上がる紅蓮、地獄の業火に灼かれるようなダオツァオレンから、舞踏の女らは跳んだり跳ねたりと必死に避ける。
「ふむ、彼女らも強化済みか」
全てを捉えることは叶わず、壁を蹴って反転してきた女を叩き落とした所でダオツァオレンの手が後ろからがしりと後ろから取られた。
「パラダルク様、の、ために」
グリード・イーターにより後ろに引き倒された。深はやれやれと肩を竦め、弟の名を呼んだ。
ふわり。
踵を滑らせ無様に倒れる……フリで、床から270度の軌跡を描いてグリード・イーターへと踵落とし。勢いの儘に天井ギリギリにまで飛翔する。
「ちぃっ! その空飛ぶ力を、寄越せ」
「残念だがこれはユーベルコードではないからね、お前には奪えないよ」
すらり構えた穿つものを横薙ぎに、起こされた突風にダオツァオレンは熱を帯びた手足を触れた。
轟音。
場を叩きのめすような爆裂に乗って、煌びやかな宴を構成する、グラスもご馳走も供物も……そして女達へも、全てに等しく業火が降り注ぐ。
赤く、朱く、紅く爆ぜる地獄の中で、わき上がるは憐れなる女達の悲鳴。その中でグリード・イーターに身を挺して庇われた男はほぼ無傷であった。
「……ッ、不味いな」
眼下で舌打ちした優男は、はやくもこの儀式場に見切りをつけたようだ。
「パラダルク様、ここは私が……」
腕をもがれなお自分たちを見捨てる男の退路を護りぬくグリード・イーター。その報われなさを前に、深の胸が刹那膿むように痛む。
それは、己のユーベルコードが象った女への同情ではなく、彼が心の一部に住まわせるある少女へ向いたもの。
――あの子も、こんな時には俺を庇うのだろうか。
身を挺し、自らの手足がもがれても、からりと笑って「これぐらいなんてことない」などと嘯くのだろうか……。
「……ここに、彼女を連れてこなくて良かった。どんな無茶をするかと考えると肝が冷える。なぁダオツァオレン」
半分機械の自分でも、ここまで濡れた感情が眠っている。それは研究対象の“人間”から学び取ったのか、あの子の生き生きとした振る舞いが――心まで死にたくないという足掻きが、目覚めさせたのか。
あの子を報われぬ娘にするわけには、いかない。
だから、自分は無事帰らなくては、ならない。
粗方焼き尽くした儀式場はもう使えまい。それは姿をくらましたパラダルクが担保してくれている。
着地したダオツァオレンは、振りかぶった拳でグリード・イーターを打ち据える。
「ぐぅっ、この莫迦力めぇッ! お返しだぁ!」
額で拳を受け止め血気盛んに手のひらを翻す、そんな大女はダオツァオレンを平手打ちすること叶わずに崩壊をはじめる。
「……3分経ったな」
同時期に力を与えられていた女達も次々と2度と治らぬ崩壊に囚われている。
やがて残ったのは、深とダオツァオレンのみ――。
大成功
🔵🔵🔵
ヲルガ・ヨハ
淀みなく、迷いなく
からくり人形の"おまえ"の背を
とん と押し、
……ふむ
上から
下まで
視線向け、ふふり
ゆらゆら尾は機嫌良く揺れ
姿かたちがどうであろうと
"おまえ"はわが下僕、わが片割れ
われのものである事に違いはない
それゆえに
嗚呼、嗚呼
われ以外に気を移すなど
面白がる様にくつくつと笑い
その浅黒き顎に手をかけ(顎クイ)
ーー教え込まねばなるまいな、その肉体に
儀式を行う娘等ともども、可愛がってやろう
……人形を執拗に狙っている?気のせいだ
『限界突破』で反応速度上げ
銀の尾で『なぎ払い』、正拳突きや掌打の『2回攻撃』
対集団には煙(けぶり)の『オーラ防御』で煙に巻く
儀式の娘等は<星離雨散>を向け
人形たる"娘"へはこの手ずから
わが寵愛(全力の攻撃)を与えよう
胸倉掴み、
口紅を、口角をうっそりと笑みのかたちに歪め
"おまえ"よ、"おまえ"
さぁ、幾度でも
ーー"わからせて"やろうぞ
■変化
武器:おまえ
勝色の髪、黒龍面の痩せた娘
(そのまま性別反転させた感)
胸はヲルガより大きめ
無口、パラダルクを護り闘う
グラップルや徒手空拳で攻撃
●“娘”
いい加減退屈だと欠伸する中年男に対し、何時ものように“おまえ”に抱かれ現れたヲルガ・ヨハ(片破星・f31777)は、口火を切る。
「舞台装置の役回りにもいい加減飽いたか」
腕を差し伸べる男へ向けて、ヲルガはとん、と浅黒い肌のからくり人形の背を押した。
淀みなく、迷いなく。
はしたなくも“おまえ”の変化をワクワクと待ち焦がれる、邪魔をしに来た女は、極速の尾で叩き払っておいた。
「もしかして不仲なのか?」
「底の浅い考えは聞く価値なし。我の楽しみを邪魔をするな、舞台装置」
舞台装置は滞りなく仕事を果たしてくれは、した。
現れた姿を、ふむ、と品定め。尾はゆらゆらと機嫌良く虚空をかき混ぜている。
「…………」
娘に作り替えられた“おまえ”は、一言で言うなら彼の双子の妹の見目だ。
勝色の髪は細く編まれ、痩せた中そこだけが女だと主張する胸の膨らみに掛かっている。古代中国風の衣は浅黒い肌によく馴染み露出は控えめ。
傾国の美女とは流石に言わぬ。だが花唇は華奢で仄かな桜色、黒龍面の元で結ばれたそれは、元の“おまえ”の精悍さに恥じぬ整った造詣。
ふふり、と溜まらずの笑みが、面紗をほんの少し浮かせた。
そうして、ヲルガは何時ものように躊躇いもなく“おまえ”の胸に指を這わせる。布地の擦れる滑らかな音と感触は、しかし今回は気が済むまでは享受できなかった。
す、と身を引いてパラダルクの元へ。そして如何様にも対応出来るよう両腕の力を抜いて足らした。
「ははははは、残念だね。もうこの子は僕のものだよ」
厚かましく見せつけるように肩に触れる節くれ立った指を“おまえ”は振り払おうともしない。ただ他の女どものようにしどけなく男に寄りかかったりしないのは――……。
「そうか。“おまえ”は其奴を命を賭して守る心算である、と」
なんと“おまえ”らしい忠義。
ぶわり、と、ヲルガの心の中で、柔らかな棘を生やした提灯が一気に膨れあがる。
「僕の守りはこの子に任せて、君たちはあの憐れな“元主”を片付けておいで」
だが軽々としたパラダルクの声で、柔らかな棘が心を蝕むことはなかった。安っぽい嫉妬を煽ろうとしているのが見え見えで、却ってころりころりと笑いが零れる。
「おやおや、おかしくなってしなったかな。もうお仕舞いにしてあげようじゃないか」
「はぁい」
「全てはパラダルク様のために」
ケーキを切り分けパラダルクに与えていた女が、腰を抱かれていた女が、それぞれ魔道エンジンを吹かして一気に詰めてくる。
ヲルガは撓る尾でひたりと床を1度打った。持ち上がる上半身で迫り来る女達の真ん前に踊り出ると握りこんだ拳で殴り下ろし、もう一人は銀尾で掠め遠ざけた。
「きゃあぁッ!」
叩き落とされた女へはヲルガの連れる下級神の幼龍達が顎をあいて待ち構えていた。
「……なにあれ、気持ち悪ーい」
ゾッとしないと眉を顰める女は風圧でつけられた頬の傷を拭い再び加速……しようとして、まるで蠅の如くぽとりと床に落ちる。
「神罰の“しるし”は既についておる」
まるで鬼ごっこのように怯む女どもへ掌打や尾で触れて、儀式に興ずる女達へは広げた気で印をつけて、あとは幼龍へ任せておく。
「…………」
パラダルクへ覆い被さり庇う“おまえ”の元へとおりたったヲルガは、黒龍面を掴んで此方側へと振り向かせた。
「姿かたちがどうであろうと“おまえ”はわが下僕、わが片割れ。われのものである事に違いはない」
面から眦、頬へとなぞりおりる指、為すがままなのは後方の男の安全を何より重視する為か。くつくつと、喉を濡らす笑みが神の口から溢れでた。
「それゆえに」
浅黒き顎に指がかかり持ち上げる。さらりと零れる勝色は、何時もより繊細な音をたて流れた。頬にはよく見れば朱が挿している、それを認め、ヲルガは、嗚呼、嗚呼……と、嘆息。
「われ以外に気を移すなど……」
反対の指が“おまえ”の頬に触れ――
ぎぃ、と、
尖らせた爪で肉を抉り、紅い筋を四本、引いた。
「――教え込まねばなるまいな、その肉体に」
滴り落ちる血を舐め取って、まずは後方の男から引きはがすように床へと叩きつける。
絆という消えぬ疵を有してなお、他の男へ現を抜かすとは……この人形たる“娘”は、この手ずから可愛がってやらねばなるまい。
むくりと起き上がった“娘”を銀尾が浚う。堪えるように床を踏むが、普段より軽い女の身体はあっさりと虚空を舞った。
するりと尾を立て追いすがるヲルガは曲げた指で胸ぐらを掴む。
「先ほどはようもこの手を振り払ったものよ……“おまえ”よ」
面紗越し、紅を挿した唇がうっそりと弧を描く。
「“おまえ”」
粘度の高い囁きながら固有名ではない、誰へでも向けられる呼び名を吐いて、神は握りこんだ拳を首へと叩き込む。
吐かれる血反吐が面紗を汚すも構わずに平手で打ち、そうしてから羽交い締め(だきしめる)
みしりみしりと骨の砕ける音を聞きながら、か細く震える顎を定めるようにもう一度指をかけた。
「苦しいか……あの男の元に行きたいか?」
答える代りにギチギチ無理矢理に地上へと傾いた容。それを前にして、ヲルガはますます口元を裂けあがらせる。
「こらえしょうのない奴め……さぁ、幾度でも――“わからせて”やろうぞ」
龍神の拳が人形の胴体を貫いたなら、その重みは従来の男のものを取り戻す。そう、パラダルクは既にこの戦場を離脱したのだ。
食い足りぬと不満げに尖る唇のヲルガを抱き取ると、満身創痍の“おまえ”は何時ものように変らずの姿勢で床に立つのである。
大成功
🔵🔵🔵
ジャック・スペード
寄る辺なきパ・ド・ドゥを――
放とうとするが
ヒーローカーが動かない
代わりに眼前に現れるのは
蠱惑的に微笑む美しい娘
ふわりと巻かれた黒髪は短く
華奢な軀を覆う繻子も黒尽くめ
サポートAI「オディール」と
良く似た姿に思わず脱力する
ああ――
そういう奴だよな、お前
見目の良い人間の男が好きなのは
俺もよく知っている
確かに愛車のことは
捨身の特攻で納車1週間で炎上させたり
戦車に無理やり突っ込ませたり
矢鱈ぶつけて疵を付けたりしたが――
……まあ、嫌われて当然か
車から降りれば
ドラグナーガールに集中を
UCの方は好きにさせよう
言っておくが、な
俺よりあの男と踊った方がタノシイぞ
3分耐えれば良いんだろう
ならば先ずは、
ドラグナーガールへ麻痺の弾丸打ち込もう
動き封じた隙に怪力で其の身を捕え
UCの攻撃を凌ぐ盾としようか
色男に惹かれた者同士
仲良く削り合うと良い
敵が破壊されるごとに
新たな敵を捕まえUCの攻撃凌ぎつつ
UCに消耗の彩が視えたら
手当たり次第、銃から燃え盛る誘導弾を放つ
一応、UCは庇って遣ろう
なんだかんだ、世話に成ってるからな
●寄る辺なきパ・ド・ドゥ
散々に猟兵に荒された儀式場、既にご馳走は腐りかけ、酒も生ぬるい――そんな淀みきった部屋に、突如現れるのがヒーローというもの!
物理法則なんぞ無視をして豪快にヒーローカーでカッ飛ばす。
……カッとば、
…………カッ、とばない。
ウンともスンとも言わないヒーローカーのハンドルから手を離し、ジャック・スペード(J♠️・f16475)は額に手を宛がった。
「早速してやられたか」
ボンネットにすらり揃えた足で座る女が突如降臨。紅く柘榴のように艶やかな唇は弧を描き、肩につくかどうかの巻き髪がくるりふわりと弾んだ。
「オディール」
扇情的な仕草と貞淑なる黒尽くめ繻子のアンバランス。ジャックは王子を誑かす黒鳥の名を貯めた息とともに吐き出した。
「ご機嫌如何? ジャック。私はすこぶる良好よ」
サポートAI『オディール』がちらと視線を向けるは、玉座から立ち上がったばかりの伊達男。
にやけた面の観客気取りに辟易しつつも、ジャックはヒーローカーのドアをあけた。翼のように翻り開くドアが誇らしくて黒鳥オディールの名をつけた。
「ああ――そういう奴だよな、お前。見目の良い人間の男が好きなのは、俺もよく知っている」
「あら、見た目だけで私が彼に惹かれたとでも?」
繻子のショールを閃かせ降りて、オディールはすいっと容をジャックへ近づける。
「……」
人ならば汗ばむとでも言えば良かろうか、そんな居住まいの悪さでジャックは目を逸らした。
「思い当たる節があるようね」
確かに愛車のことは捨身の特攻で納車1週間で炎上させたり、戦車に無理やり突っ込ませたりと、扱いはお世辞にも丁重ではない。
無論、無為に痛めつけたわけではない、全てはヒーローとして平和を守る為が故。だがこのタイミングでは流石に言い訳でしかないので嚥下する。
「そうだな、矢鱈ぶつけて疵を付けたりしたが――」
「したわね」
「……まあ、嫌われて当然か」
行くならば行けとパラダルクの側に腕を伸べた。所詮は相手のユーベルコードの支配下にある彼女だ、じたばた足掻いても敗北のフラグを重ねるだけ。
オディールはトゥシューズで進みかけて、不意にくるりと振り返る。
「ねぇ、本当にそれだけだと思ってる?」
「……?」
「白鳥とのダンス。最後でとっておきの舞台へ、黒鳥オディールの私で駆けつけるだなんて」
むいと頬を膨らませた女はそれ以上は囀らず、アッサンブレの足取りで飛翔、入れ替わりドラグナーガール達が業物を携え襲いかかる!
「言っておくが、な」
レンズはオディールを捉えながら、指先は慣れた素振りで左右のドラグナーガールへ麻痺の弾丸を撃ち込む。悲鳴を上げずに横倒しの女達はまずそのままに、シャンデリアに指をかけて揺らめくオディールへと向けて声を張った。
「俺よりあの男と踊った方がタノシイぞ」
「……君はどうしようもない朴念仁だねぇ」
呆れ声のパラダルクの胸へ、繻子を閃かせ飛び降りたオディールが飛び込んだ。
「パラダルク様、ご命令はありまして?」
「おいおい、言わなくてもわかっているだろ?」
古びた男だけができる皺を刻む苦笑いに、オディールは仰々しく頭を垂れる。
果たして、ここで彼とパ・ド・ドゥを興じないのは気の迷いかはたまた何かの意地なのか。
パラダルクは、あくまで素材を女に変えるだけであり、己の趣味を押しつけるのにも限界があると垣間見える。
「承りました」
オディールは一足飛びにジャックの傍らへ。電光石火の勢いは流石ヒーローカーのAI。疾走の力を乗せ繰り出された手刀へは、ジャックは躊躇わず麻痺した女を掴みあげて盾にした。
「ぎゃっ……ッ」
胸元を深々と抉られた女は、一撃で落命。
少し申し訳ない気にもなるが、丁寧に寝かしてやれる余裕はない。立て続けのハイキックに合わせ死体を押しつけると、更に3人まとめて抱き上げ突進も辛うじて堪える。
「乱暴ね」
「言っただろう、俺は上手く踊れやしないのだと」
あの時だって今だってそうだ。
荒事専門。敵の軌跡を推測し回避、ないしは力と力での相殺は得意だが、繊細な動きはどうにも苦手だ。
「色男に惹かれた者同士、仲良く削り合うと良い」
迫り来るドラグナーガールズへは麻酔弾をばらまき、盾を増やす。
3分耐久、やけに長いと苦笑い。
それでもオディールの息が荒く雑になり出したのを契機に、ジャックは、ダメージ重視の燃え盛る誘導弾の制圧射撃へと切り替える。
もう盾は必要ない、ここで押し切る……!
轟音が響き、オディールを中心にした一体がクレーターの様に焦げて窪んだ。
もはや儀式の魔方陣なぞまったく意味をなさないのを悟り、パラダルクは舌打ちを残して姿を消した。
そんな男をオディールは肩を竦めて見送る。
「パラダルクは懸想を向ける相手というよりは、娘を利用する碌でもない魔王」
白鳥になれない黒鳥の娘は唇を歪める。
もう立っているのもやっとの状態で、それでもパラダルクの逃走を阻むように翼のように腕を広げ。
引導を渡すかと銃を構えたジャックは頭上で鎖の千切れる音を感知する。
直後、オディールの身を抱き取って、背中で硝子の群れを受け止める。
「……ここで庇うなんて……なんなのよ、もうッ」
「なんだかんだ、世話に成ってるからな」
どうせ自壊してしまうというのに、無残な終わりは気が引けた。
そんな台詞を聞いたなら、オディールはぷはっと空気が抜けるように吹き出す。
「だったらヒーローカーもそれぐらいには大切にしてちょうだい」
――それでも、正義の為に結局は特攻させるんでしょうけど!
大成功
🔵🔵🔵
クロト・ラトキエ
世の、流行…?
いやはや、全くついて行けない僕も、初老なんですかね…
(アラフォーは思案した)(※見た目は若い
イケオジよりダンディと呼ばれたい
先制…向かい来るガールの視線、意識の向き、機動より、知識に基づき手を察し
体幹、速度、手足の屈伸など、視て、見切り、回避を
カウンターの如く、ガールの頸等、致命傷を与えられそうな箇所へ巻き、引き斬って
次…
あっ
(鋼糸は 女の子に なってしまった!
(※マスター解釈大歓迎です★
……。
これも仕様と、次の鋼糸を取り出します
パラダルクといちゃいちゃ?嫉妬や未練?
それが何か
道具は所詮、道具に過ぎませんし
こちとら暗器使い。替えはまだまだありますし?
(血も涙も無い悪人だった…!
ワイヤーフックを艦に掛け空中を渡り、一気に儀式場へ
これも女の子に?まぁ道具は(以外略
鋼糸が尽きればナイフ、と次々
武器大量は便利ですが…
その分あの男にベタベタされるのは鬱陶しくはありますね
故に、此方をサッサと
レイピアを以て
――唯式・幻
一撃のみ、己を軽く斬る攻撃
剣一振りでも、連撃を重ね、より多くを倒したく
●鋼糸三姉妹
――クロト・ラトキエ(TTX・f00472)は失望していた。
(「世の流行のトップを走る男がいると聞いて、来てみたのですがこれは……」)
立て続けに儀式を潰された事が相当に堪えているのだろう、玉座に身を沈める男からは拭いきれぬ疲れが滲み出ている。
いやまぁ実際のとこ、アラフォーともなると無理が出来なくもなるのだよ。きめ細かな肌で皺一つないぴっちぴちのクロトさんがレアなだけであってだな。
「ここは死守を頼むよ」
そう命じ、パラダルクは左右の娘の背を押す。床に落ちた果物を踏みにじり迫り来る娘らの視線は存外真っ直ぐで、感覚を糸のように張り巡らせていたクロトが避けるのは容易い。
ちりと、内的視界にノイズが走った。精神への介入……。
「本命はそちらですよね」
すぃと泳ぐように翳した右の指先から、アンカーを結わえた糸が奔る。行き先は無論、パラダルク。左指の糸は、娘らの頸や胴を結び引きちぎる。
「抜け目がないね。まぁそれではありがたく……」
男が鋼糸を指で挟み受け止めたなら、引きずる程に長い髪の痩身少女が現れる。
「パラダルクおじさまぁ、ギュッてしていい?」
答えを聞く前に両腕を伸ばして絡みつく、さすが鋼糸。
「はっはっはー、これ、止めなさい……ちょっと苦しいよ」
首、首絞めてるから!
「やんやん、おじさまはボクのなの」
ロリオジなどという世間様が黙っていないイチャイチャを前にしても、クロトは虚静恬淡としたもの。
ドラグナーガールズの死体からするりと鋼糸を回収し、次なる女達の襲撃に備える。
「それもいただくとしようか。どうにも君はつけいる隙がないからね。嫉妬の一つもすればいいのに、愛用の道具に未練はないのかな?」
「嫉妬や未練?」
知らない子ですねとでも言いたげなクロトの手元で鋼糸が弾け飛ぶ。直後パラダルクに抱きついている(穏当な表現)娘と良く似た女が転げ出た。
「死ね」
即座に腕が撓りクロトの首を狙う、が、そう簡単にはいかない。仕掛け糸が弾み、二子の足首はあっさりと断ち切られた。
「……ッく」
「あははは! パラダルクおじさまの元に来る前にやられちゃってぇ、ぶーざーまーww」
ケタケタ笑いの幼女はパラダルクによじ登って無理矢理肩車でご機嫌だ。
「ああ、これはもしかして、今流行の『メスガキ』でしょうか?」
多分、あってる。
「こうなったら道連れに死んでやる……そしてパラダルク様の心に『仇敵を見事に屠った鋼糸』として一生棲みついてやるわ」
粘着質なのは敵に絡みつくが所以のこと。じとりとした目つきの二子の手首へ、慣れた音たて鋼糸が絡む。
「え……アンタ、あたしを殺すの……?」
「まぁ、今回はそういう仕様のようですしね」
「ずっと一緒に戦ってきたじゃないの!」
「それが何か? 道具は所詮、道具に過ぎませんし……」
くるり。
花の首飾りをかけるように鋼糸をまわす。目を見開く二子は、姉妹とも言える糸を握り侵食を阻もうとして指ごと首を千切られた。
「……殺しても戻らないんですか、仕方ないですね」
三つ目の糸をたぐり寄せるクロトは、儀式場へと目を移す。そこには完全に状況に飲まれて踊る事を忘れた女達が立ち尽くしていた。
「君さぁ幾つ鋼糸を持ってるの? ほら、お嬢ちゃんーお姉ちゃんの仇を討っておいでよ」
「やだー! ボクはパラダルクおじさまと一蓮托生だもーん」
肩車でぽこぽこと頭を叩く、図らずもパラダルクに攻撃が入っている妙にクロトはふむりと感慨深げに頷いた。
「言うことを聞きなさい! ああもう、その子達もいただくよ、ちょっとは聞き分けのいい子をくれ!」
逆ギレ気味に三つ目も奪われるが、クロトは我関せずと懐に手を宛がう。御多分に漏れず現れた鋼糸を艦の天井柱へと渡し、投げフックを引っかけた。
「あたしがそれやりたかったなぁ。パラダルク様、おねがーい」
元の主がターザンのように身軽に移動するのを、ボケらっとした瞳で見やる三人目。
――おかしい、とても優秀な武器の筈なのになんでこの子達ったらどいつもこいつも使えないんだ。
答えは簡単だ。スーパーダンディなクロトが操るからこそ、鋼糸は素晴らしい性能を発揮する。道具とは使う人次第なのだ。
そのダンディクロトさんですが、襲い来るドラグナーガールズを、次々と繰り出すナイフで返り討ちにしまくっているわけですよ。
「えーいっ! くらえー!」
勢いのよい蹴りで三本目のマンゴーシュが跳ね上げられても焦らず手のひらをひらり。
「……? 何よ……ッ、きゃあ!」
潰れたような破砕音が響いたかと思うと、女は矢で顔を穴だらけにして倒れた。更に背面に向け紫餞で払いあげ。宙に舞う女は仕掛け糸で八つ裂きだ。
「オバチャンたち、よわーい! ザーコザーコザーコww」
「よわーい、フフフフ。ざーこざーこざーこ???」
ざこってなんだろうって顔して反対から抱きつく三子さん。メスガキの一子は罵詈雑言が絶好調だ。
「…………」
流石に少々うっとうしくなってきた。ベタベタされてる男が幸せかはさておき。
まぁ潮時だろう。
血の臭いしかしなくなった儀式場に佇む傭兵の瞳から、彩度高い蒼が消え失せた。
手には何処に隠し持っていたのか、一振りのレイピアがある。
――鋼糸のふたりが気づく前に、胴体とともに命脈が絶たれる。
盾として使えたのはたったの二回。
ちぃと舌打ちしたパラダルク、残り七回の内二回は鋼糸とマンゴーシュを娘に変えて凌いだ。
あと四回、喰らえば涅槃が見える。
「これまでだねぇ、僕の願いは叶わぬようだ」
ラスト一回は誰も居ない空間のみを薙ぐ。クロトは命の総量を削らず済んだのだが、既定路線とはいえ敵を逃がすのは歯がゆいものだ。
「さて、回収して帰りましょうか」
死屍累々な中、女達の姿がナイフに鋼糸にと戻っていく。前者は屈託なく拾えたが、後者は少しだけ指が戸惑った。
「所詮は道具ですしね」
言い聞かせるようにメスガキ……いやいや鋼糸をつまみ上げてクロトは懐に収める。
――こうしてパラダルクの儀式は猟兵達の手により確りと阻まれたのである。
ー終ー
大成功
🔵🔵🔵