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7thKING WAR㉓〜冥落

#デビルキングワールド #7thKING_WAR #召喚魔王『パラダルク』

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#7thKING_WAR
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#召喚魔王『パラダルク』


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 まずは、よくぞここまで来たと称賛しよう。
 だが六番目の猟兵達よ、ここは行き止まりだ、他をあたれ。
 何故ならば、私は『私』であり、
 お前達が私に勝つことは不可能だからだ。

 そう言った男は、猟兵たちには目もくれずに船へと乗り込んでいった。
 万物を魅了する魔王。その名を、パラダルクと言う。


「まずは日々の戦いお疲れ様。ガチデビルを護る召喚魔王、その全てへの道が拓けたね」
 今も激しい戦闘が続ているデビルキングワールド。七代目の魔王を決める戦いも今は中盤に差し掛かったと言えるだろうか。1stKINGガチデビルが悪魔契約書によって召喚した異世界の魔王の正体も割れ、地形を変える程の戦いへと身を投じる猟兵たちに、ディフ・クライン(雪月夜・f05200)は柔く労いの言葉をかけた。
 だが、あまりゆっくりもしてはいられない。召喚魔王三体のうち二体を倒さねば、ガチデビルへの道は閉ざされたまま。迅速な行動が求められていた。
「早速だけど本題に入ろう。皆に向かってほしいのは、魔王パラダルク。そのうちの、ディアブロホワイトによって未来の属性を得た方のパラダルクだ」
 そう言って、ディフはテーブルに資料を広げる。
 まず指し示すのは場所。
「ここには銀河帝国戦で使用された実験戦艦ガルベリオンと同一艦と思われる戦艦が停泊している。パラダルクはこの中で、何らかの儀式を行っているみたいだね」
 彼が話していた内容から察するに、カクリヨファンタズムの妖怪親分の一人、碎輝を探す儀式なのだろう。
「パラダルクを倒せば儀式は止まるけれど、パラダルクの能力は万物をドラグナーガールに変える力。自然現象や此方の攻撃はおろか、時間や空気さえもドラグナーガールにしてしまう。……ちょっと理不尽すぎやしないだろうか」
 ディフはさすがに困ったように息を吐いた。改めて口にするととんでもない能力である。紛う事無き難敵ではある。加えて、たとえこの戦闘でパラダルクを倒したとしても、完全に倒しきることは難しいという予知がされていた。
 けれど、突破口はあるとディフは言う。
「パラダルクの背後では、儀式の舞を踊るドラグナーガールたちが居る。彼女たちの舞が儀式には必要不可欠のようだから、儀式を止めるだけならばドラグナーガールたちを狙って倒すことでも可能になるよ。儀式が阻止されたら、パラダルクも撤退する」
 万物を魅了する魔王を相手取るよりは、ドラグナーガールたちを撃破する方がやや現実的であろうか。どちらにせよ、対処の方法は猟兵たちに一任されている。
 けれども。
 パラダルクとて簡単に儀式の邪魔をさせてはくれない。儀式を行っている場所に突入した途端、猟兵たちに襲い来るのはパラダルクからの苛烈な先制攻撃だ。これの対処を怠れば、猟兵と言えど無事では済まないだろう。
「まずは先制攻撃への対処。然る後にパラダルク、もしくはドラグナーガールを倒して儀式を止めること。この順番をどうか間違えないで」
 しっかりと念を押したディフの掌でくるくると回る雪華が、雪の門となる。その向こうには既に、実験戦艦ガルベリオンが鎮座していた。

「相手はどうあっても格上だ。それでも、絶対に勝てると思っている相手には慢心してしまうものだ。勝機はきっとそこにあるよ」
 皆を見送りながら、ディフはそっと笑う。
 その目に宿るのは猟兵たちへの信頼だ。
「大丈夫。皆ならきっと成し遂げられるよ。行って教えてあげておいで。猟兵を侮ってはいけないのだと」


花雪海
 閲覧頂きましてありがとうございます。花雪海と申します。
 此度は「7thKING WAR」の一舞台、『魔王パラダルク』へとご案内致します。

●プレイングボーナス:【敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する(しない限り必ず苦戦か失敗になる)/踊るドラグナーガール達を倒す】

●プレイング受付・締め切り・採用について
 当シナリオに断章はありません。公開と同時に受付開始致します。
 オーバーロード使用に関しては、MSページに記載してありますのでご参照下さい(必須ではありません)
 また、今回グループ参加は【1グループ2名様まで】でお願い致します。
 再送はお願いせず、締め切りまで書けるだけ書くスタイルです。その性質上全採用はお約束出来ませんのでご了承下さい。

 それでは、皆様の熱いプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『召喚魔王『パラダルク』ディアブロホワイト』

POW   :    ガールズ・ポシビリティ
自身の【下僕であるドラグナーガール】ひとつを用いた行動・攻撃の威力を3分間3倍にする。終了後[下僕であるドラグナーガール]は【可能性を使い果たしたこと】により破壊される。
SPD   :    フューチャー・ルーラー
【ドラグナーガール達と連携し、精神支配魔術】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【以降の動き方や使用ユーベルコード】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ   :    パラダルク・フューチャー
召喚したレベル×1体の【ドラグナーガール】に【ガルベリオン鋼の機械兵器とダンス技術】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

マグノリア・ステルニティ
あら可愛い娘達。
あなたとは趣味が合いそうね──『お人形遊び』の趣味が、ね。

ま、何にしても。
ここの行き止まりは無理矢理にでも開通させて貰うわね?

先制UCに対しては、ファミリア・バッツを展開して【弾幕】として放ち【目潰し】。
あわよくばそのまま撃墜しましょ。
同時に、走り回って狙いを撹乱、放たれた攻撃は【オーラ防御】の魔力障壁を展開して受け流し。
手近なガールを捕まえ【吸血】し【生命力吸収】してダメージを補えればと。

チャンスの巡り次第UC発動。
合体した肉人形達に手近なガールを【捕食】させ取り込ませたり、射出してパラダルクや踊るドールに攻撃(ガール化させられそうになったら自爆させる)

うふふ♪楽しいわね?




 凡そこの世界には似合わぬ宇宙戦艦の中。硬質な床を駆け抜ける。
 目指す先はただひとつの部屋。直感が囁くそこに、この船最大の脅威は居る。そう確信できる。
 この船の行き止まり。もう何処へも行けぬ最後尾の巨大な扉を開いた瞬間、マグノリア・ステルニティ(亡き創世の七重奏・f30807)の目に飛び込んできたのは鈍く光る無数の銃口と、それを構える白き少女たち。そして、その中央に佇む一人の男。
「客を招待した覚えはないんだがねえ」
 そうと認識した瞬間、銃口が火を噴いた。
 だが、先制攻撃も来ると判っていれば対処は出来る。
 マグノリアは冷静にファミリア・バッツたちを影から放った。飛び出した蝙蝠の群れは黒い奔流となってマグノリアを包み、弾丸の雨からマグノリアを隠す。弾が命中した蝙蝠が弾け、呪詛孕む闇が溢れ零れる。その呪いが、手近に居たドラグナーガールを焼いた。
 絹を裂くような悲鳴が響く。
 蝙蝠の群れを放ち、自身も駆け回って狙いを攪乱していたマグノリアが、悲鳴を聞いて蝙蝠の群れの切れ目から笑みを覗かせた。
「あら可愛い娘達。あなたとは趣味が合いそうね」
「そうかい?」
「ええ、――『お人形遊び』の趣味が、ね」
「……おやおや」
 探り合うような薄い笑みが交錯する。
 だがその間すら許さぬように、すかさず別のドラグナーガールたちから弾丸が掃射された。蝙蝠の群れを手繰り、その隙間を縫われた弾丸は纏うオーラで受け流してマグノリアは儀式場を駆ける。
「ま、何にしても。ここの行き止まりは無理矢理にでも開通させて貰うわね?」
「いやあ、参ったなあ……どうしても、僕を見逃してもらう訳にはいかないのかい?」
 君には何の関係もないだろう、なんて口調軽くパラダルクは嗤う。その笑みに、マグノリアはパラダルクの自信を見てとった。己の力の優位性、そしてそれを猟兵単体では打ち破ることが出来ぬということを知っている。
 受け流せなかった弾丸が、マグノリアの肩を抉って鮮血の花を散らす。だが痛みに呻くより早く、マグノリアは手近に居たガールを捕まえて噛みついた。何から生み出されたドラグナーガールかは知らぬが、人間体となったことで吸血が可能になっていたのは幸いだった。生命力ごと勢いよく吸い上げれば、痛々しかった傷口すら瞬時に塞がって。
「行って、私『達』」
 ふいに攻撃が止んだ一瞬を見逃さずに、今度はマグノリアがユーベルコードを発動する。
 名を『数多にして一つなるもの』。召喚されし肉人形たちがすぐに合体し、巨大な肉塊へと変化する。それだけに留まらず、肉塊は傍のドラグナーガールをも吸収して取り込んでいく。
 反撃しようとしたガールの攻撃も肉塊を楯にすることで防ぎ、更に肉塊はマグノリアの指示のもと、パラダルクへと取り込んだガールを勢いよく撃ちだす。
「無駄だよ。僕のもので僕を攻撃しようだなんて。すぐに――」
「させるとお思い?」
 パラダルクが歪んだ半月を浮かべて、「射出されたドラグナーガール」という攻撃すらドラグナーガールへと変えようとした瞬間。マグノリアは笑みを深めた。
 
 ドンッ!!!!!
 
 パラダルクの眼前でガールが自爆した。
 ばらばらと降り注ぐのは赤と、べちゃりとしたガールだったもの。
 パラダルク自身は「己へと向かう爆発」をガール化していたが、爆発の余波で儀式の舞を踊っていたガールが数体、身体を吹き飛ばされて転がっていた。

「うふふ♪ 楽しいわね?」
 その様子を見て、マグノリアは笑う。艶やかに、妖し気に、そして何より――心から愉しげに。
「はは、豪気だねえ。君、魔王の素質があるよ」
「誉め言葉として受け取っておくわ、召喚魔王さん」
 二人の応酬を刃としながら、肉塊とドラグナーガールが激しくぶつかりあった。

成功 🔵​🔵​🔴​

冴島・類
万物を?
魅力的過ぎませんかね、すごいな

周り全て変化させられたら詰みかねるが
無差別、範囲で変えるわけでないなら

彼女達の先手の攻撃に対して
瓜江と共に、残像を用いたフェイントにて
こちらの位置をぶれて認識させ
魔法直撃を避け

が、相手の数が数だ
全ては避けきれない、と考え
破魔の結界での防御を
くれあにに協力願い

初手を耐え切ること叶えば
七芒星に触れ、星と影を喚ぶ
星灯りで攻撃へ転じた味方と自身癒すと共に視線の注意を引き
刀の薙ぎ払いで、ドラグナーガール達を攻撃すると見せ…
実際は影からの猫達で、仕掛けに

行き止まりの先を拓くのに
あなたのように従わせる強い力などはないが…
星も闇も、可能性の
儀式を壊す布石にはなるはずだから


夜刀神・鏡介
勝ち目が薄いじゃなく、まず勝てないと感じるとはな……
だが、個人の勝利と戦術・戦略的勝利はまた別だしやりようはあるさ

敵のUCは制限時間があるとはいえ、相手のドラグナーガールは複数体。単純に耐えて時間切れを待っても仕方ないかな
神刀を抜いて身体能力を強化。まずは包囲されない事を第一に。強化されたガール相手は牽制と防御で時間を稼ぎ
その他のガールには幾らか攻撃を仕掛けて少しでも数を減らしていこう

頭の中で時間を数えて、約3分。強化された個体が落ちるタイミングで勝負
次がくる前に、敵陣に踏み込みながら黎の型【纏耀】を発動

真の姿に変身して更に戦闘能力を強化。敵を切り払って儀式担当の元へ突っ込み、切り倒す




「万物を? 魅力的過ぎませんかね、すごいな」
 いっそ感心するといった風に、冴島・類(公孫樹・f13398)は扉の向こうの男を見る。
 無論それが当人自体の魅力でないことは、今現在パラダルクに全くもって魅力を感じていない類自身が証明しているようなものだ。
 召喚魔王パラダルク。享楽の力で万物を魅了し操ったとされる、いずこかの魔王。
 武器や攻撃、果ては空気や時間まで。実在する物質や現象であるならば全てドラグナーガール化してしまえるという能力を持つ男。なぜ女の子化なのか、という疑問は今回はとりあえず横に置いておく。
「勝ち目が薄いじゃなく、まず勝てないと感じるとはな……」
 苦々しい思いを嚙み潰すように、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は眉間を険しくひそめる。魔王の名に相応しい強力さが、強力すぎて勝ち筋が全く見えない。歴然とした力量差に唇を噛みかけたが、鏡介は頭を振ってその考えを打ち消した。
「個人の勝利と戦術・戦略的な勝利はまた別だし、やりようはあるさ」
 冷静さを欠いてはいけないと言い聞かせる。
 格上であるからこそ、己は常に冷静であらねばならない。力量差の中に勝機を見出すには、針の穴のような僅かな隙間から零れる小さな光を見逃してはならないのだから。
「周り全て変化させられたら詰みかねるが、無差別、範囲で変えるわけではないのなら」
 やれるのならばきっと、既にこの周囲の空気や時はドラグナーガール化されている。それが出来ないということは、魔王の能力といえどある程度の制限下に置かれていると考えていいのだろう。
 ならば、きっとやりようはある。類と鏡介は頷き合い、刀に手を置いて突入した。
 
「猟兵ってのは話を聞かないねえ。ここは行き止まり。他を当たってくれと言ったろう」
 やれやれと気安い調子の声が届く。
 肩を竦めて二人を迎えたのはパラダルクと多数のドラグナーガール。類と鏡介が鯉口を斬る。
「僕は今忙しいんだ。邪魔しないでくれるかな。それとも」

 ――君達も僕のモノになりたいのかい?

 パラダルクが瞳孔を開いて蛇のように笑った。
 刀を抜くまでの僅かな時間、先手を取ったのはパラダルクだ。
 創造されたドラグナーガールを伴ってパラダルクは類に向かい、ディアブロホワイトの手が当てられたドラグナーガールが、「未来にあり得たかもしれない成長可能性」を限界まで引き出され、他のガールとは比較にならぬ速さで鏡介へと飛び込んでいく。

「……っ!!」
 無仭と銘打たれた神刀を抜いて、鏡介は強化されたガールの攻撃を受け止めた。刀から溢れる神気で己の身体能力をも強化しているはずなのに、ガールの攻撃はやたらと重い。ともすれば押し負けそうになるのを踏みしめた両足で堪え、鏡介は刀を力任せに振り抜いてガールを振り払った。
 刀を握る手がやや痺れている。敵のユーベルコードには制限時間があるとはいえ、相手のドラグナーガールは複数体。単純に一体の猛攻を耐えてもすぐに次が来る。
(時間切れを待っても仕方ないかな)
 ならばと、鏡介は駆けだした。
 まずは包囲されないことを第一に。間髪置かずに攻撃を仕掛けてくる強化されたガールを牽制し、時に防御していなし時間を稼ぐ。その合間にも他のガールに攻撃を仕掛け、少しでも数を減らすのだ。
「おやおや、及び腰なら帰ってくれても構わないんだよ?」
「何とでも言えばいいさ」
 嘲笑うパラダルクを意に介さず、鏡介は駆け続ける。言わせておけばいい。己の能力の優位性を知っているからこそ生まれる余裕こそが、パラダルクを倒す唯一の隙だ。
 強化された身体能力はガールを撒くに足る。常軌を逸した方法で強化されたガールは、その行動時間に制限があることは既に予知されている。ならば無理に今落とす必要はない。鏡介は頭の中で時間を数えてじっと待っているのだ。
 強化されたガールが落ちる――その瞬間を。

 一方、類もまた襲い来るドラグナーガールを捌いていた。
 絆で手繰る相棒の瓜江と共に、残像を用いたフェイントを織り交ぜれば類の位置がぶれて見える。位置を誤認させ、ガールと連携して類を精神支配魔術で堕とそうとするパラダルクの攻撃をも避け続けていた。
 だが、相手の数が数だ。
(全ては避け切れない。まあ、当然か)
 あの魔術の直撃だけは避けねばならぬと勘が囁いている。背中合わせの瓜江と繋がる絆の絲からも、警告のようなものを感じ取っていた。あれに当たれば奪われる。そんな予感がひしひしとする。
 この猛攻も永久に続くわけではあるまい。必ず一瞬途切れる時があるはずだ。狙うとするならばそこで、だからこそ類と瓜江はなんとしてもそこまで耐えねばならない。
「くれあ」
 ならばと呼ぶのはもう一人の友。縁繋いだ気高き炎の君。
 呼べば罅の左頬に触れる小さな手と温かな熱の感触。炎の精霊くれあはまっすぐに肩に立って、類の言葉を待っている。
「破魔の結界を」
 返事の代わりに焔が舞った。
 類を護るように展開された炎が破魔の力を纏い、類や瓜江に触れんとするガールの魔手を悉く跳ねのける。主に触れさせはせぬと燃え上がるくれあの気概を映すように、髪の焔が煌々と輝いている。類も瓜江もくれあも多数の敵からの猛攻を耐え凌ぐ。たったの一分が一時間にも感じられた。だが、時は必ず巡ってくる――。
 
 先に時が成ったのは類の方だった。
 明らかな攻撃の間断。猛攻を耐えきったのだ。
 そう判断した類は、次の攻撃が来る前にすぐさま次手へと移った。花葉色の七芒星に触れ、儀式場全体に夜影と花葉色の七芒星の星灯りを喚ぶ。その瞬間攻撃へと転じた味方と、花葉色抱く星の灯火で類自身を癒し、視線の注意を引く。
「やあ、無駄な足掻きをするねえ」
「行き止まりの先を拓くのに、あなたのように従わせる強い力などはないが……」
「勝てると思ってるんだ?」
 類が刀を握り、瓜江が風を纏って駆ける。再び攻撃に転じようとしたドラグナーガールを先んじて瓜江が吹き飛ばし、見据えるはただ一点。くれあの焔が破魔の力を宿し、類は刀を全力で薙ぎ払った。その先にはパラダルク、そして儀式の舞を続けるドラグナーガール達。
「無駄だと思い知るがいい。そんな攻撃など簡単に――」
「ああ、簡単にどらぐなーがーるにしてしまうんだろうさ」
 だが。
 わかっていて類は静かに笑った。

 放った破魔の衝撃波がドラグナーガールにされるのと、パラダルクの後ろで悲鳴が上がったのはほぼ同時だった。
 咄嗟に振り返ったパラダルクの目に飛び込んできたのは、夜影から出づる黒猫たちの攻撃によって打ち倒されていく儀式の為のドラグナーガールたち。その顔が驚きに染まっているのを見てとって、類は萌黄と女郎花の瞳をすっと細めた。
「星も闇も、可能性の。儀式を壊す布石にはなるはずだから」
 類は知っているのだ。先程からずっと、時が来るのをじっと牙を研ぎ続けて待つ男がいることを。
 
 ……178。179。180!
 戦い始めてきっちり三分。
 鏡介と斬り結んでいたドラグナーガールが、突然どうと倒れた。未来の可能性を使い切って壊れたのだ。
 時は成った。
 次のドラグナーガールが強化される前に、鏡介は一気に敵陣に踏み込む。そして、

「幽冥を越えて暁へと至る。黎の型【纏耀】」

 神刀ら溢れる神気を纏い、神器一体の境地へと覚醒した。
 湧き出る神力に揺れる髪は銀。燃える炎のよな瞳。そしてその左腕は、まるで神器の如く。
 強く踏み込めば、駆ける速度は目にも留まらぬ。まるで風としか思えぬ速度で駆けて、一瞬で儀式を行っていたガールたちに肉薄する。鏡介が駆け抜けた後には、すっぱりと両断されたガールが己が斬り払われたとも気づかぬままに地に転がる。
「行き止まりと言われても押し通るぞ、パラダルク」
「……これはこれは。まるで神にでもなったかのように」
 刀についた血を払って告げた鏡介の言葉に、パラダルクの顔から笑みが消えた。
 
 パラダルクは気づいていないのだ。
 目の前にいる二人は、カミと呼ばれるものに縁あるものだと。それは或いは、魔王をも超え得るか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒城・魅夜
漆黒のオーラを満たした呪詛の結界を展開し精神攻撃魔術を遮断
同時に戦場を暗黒の霧のようなこの結界で包み
闇に紛れてガールたちの攻撃を惑わせます
捉えたと思いましたか? お気の毒ですがそれは私の残像
誘惑による陽動に容易く引っ掛かるなど
しょせん人形ですね

……だからこそ苛立たしいのです
全ての戦争でフォーミュラや幹部たちを倒してきたこの私が
唯一勝ち得なかった相手──白騎士の力が
こんな茶番に使われているということが

「時」を自在に扱うのはあなたや、そして白騎士だけではありません
早業で鎖を舞わせ範囲攻撃の衝撃波を無数に発生
ふふ、時を止めている間にね
時が動き出した後で気づくでしょう
人形たちが打ち倒されていることに




 じゃらり。
 鎖の音が儀式場へと踏み入れた瞬間、ドラグナーガールたちは即座に攻撃を開始した。
 ここに足を踏み入れる者がどんな者であるのかを、もう十分すぎる程にガールたち――ひいては魔王パラダルクは理解したからだ。
 わざわざ行き止まりだと言った此処に足を踏み入れるなど、パラダルクには理解出来ぬことだった。猟兵では自分に勝てぬことも、親切に教えてやったつもりだ。デビルキングボスの護衛など知らぬ。己が目的を果たす為にこそ己は此処に居て、わざわざ「召喚魔王パラダルク」ではなく他を当たる方が賢明だと教えてやったのに。
 第六の猟兵が、それでもここに来るのは――。

 襲い来る無数のガールたちの魔手を、漆黒のオーラを満たした呪詛の結果が阻む。精神支配魔術をも遮断して、女は歩む。それと同時に、儀式場に暗黒の霧が広がった。まるで突然夜が訪れたかのようだ。視界を奪われたガールたちが一瞬動揺した隙を見逃さず、女は鎖を手繰り惑うガールを制圧する。
「捉えたと思いましたか?」
 ただの一分の攻防。それが暗黒の世界ならば、先手を打たれようと制するのはガールではない。
 すぐさまパラダルクが闇をドラグナーガール化する。そうしてようやく晴れた視界の中で、黒纏いし女――黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)が、先手を打ったドラグナーガール全てを捕えていた。
「お気の毒ですがそれは私の残像。誘惑による陽動に容易く引っ掛かるなど、しょせん人形ですね」
 魅夜の言葉には棘があった。
 無論、オブリビオンは全ての猟兵の敵だ。だが、それだけではなかった。それを示すかのように、魅夜の視線はパラダルクに寄り添う白。ディアブロホワイトへと向けられていたからだ。
「……だからこそ苛立たしいのです」
 ギリと歯を食いしばる。
 銀河帝国戦で使われたSSWの実験戦艦ガルベリオンと同型艦のこの船。銀河帝国に居た女戦士。魅夜にとって苦々しい思い出の象徴のような女が、それと同じ名を冠したドラグナーガールが、なぜ、此処に。
「全ての戦争でフォーミュラや幹部たちを倒してきたこの私が、唯一勝ち得なかった相手――白騎士の力が、こんな茶番に使われているということが」
 解っている。指し示す答えはただ一つだ。
「僕の知った事じゃないねえ」
 目の前でへらへらと笑う魔王パラダルク。
 その能力が、十属性に纏わる全てをドラグナーガールとするものであるならば。
「……でしょうね」
 ならばせめてここで。我が白き牙に喘ぎ悶えよ時の花嫁。
「だから私も、あなたの企みなんて知った事じゃありません」
 
 その瞬間を、パラダルクは知らない。
 その間にあったことを、ドラグナーガールは知覚できない。
 高速で鎖が舞い踊り、無数の衝撃波が儀式場を満たした一瞬を。

 ――カチリ。

 気が付いた時には、儀式場に暴風が吹き荒れていた。
 轟音が過ぎ去った一瞬後には、地面に何人ものドラグナーガールが倒れ伏している。
「……なっ、いつ」
「ふふ、時を止めている間にね」
 驚愕に目を瞠るパラダルクに、魅夜は妖艶に笑み返す。
「時を自在に扱うのはあなたや、そして白騎士だけではありません」
 笑みと重なり、じゃらり、じゃらりと鎖が鳴る。
 妙に耳に残るその音と笑みが、パラダルクの表情を険しくしていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

国栖ヶ谷・鈴鹿
● SPD 連携OK

【先制対策】
精神支配魔術は厄介だね……。
こっちはきこやんの結界術、白鈴晶燈の魔除けを合わせた魔術耐性、ドラグナーガールの攻撃を防ぐ紅路夢の機動力、残像シフトで連携をさせない動きをしよう。

【厭穢欣浄パラダヰムシフト】
こっちの動きを覚えられているなら、その未来を変える!
厭穢欣浄の敵味方識別で味方のみを改編!ぼくから覚えた未来を変えて、UCの事実を変える!

何度も使える芸当じゃないけど、ここから反撃するよ!
事前に結界術に反転式を付与して、精神魔法への反射、ここでパラダルクの連携に隙を作って、ドラグナーガールを改編して元の現象まで回帰させていくよ!
未来を扱えるのはキミだけじゃないよ!




「精神支配魔術は厄介だね……」
 前後左右から襲い来るドラグナーガールを躱し、儀式場内をフロヲトバイで疾走しながら国栖ヶ谷・鈴鹿(未来派芸術家&天才パテシエイル・f23254)は難しい顔をしていた。
 ガチデビルの護衛として召喚されるほど力のある魔王だ。一度でも魔術をくらってしまえば、どの程度耐えられるかはわからない。
「でも、やりようはある! きこやん!」
 駆け抜けながら名を呼べば、強力な加護が結界となって鈴鹿を包む。身に着けた白鈴晶燈の魔除けも重ねて魔術への耐性をぐんと引き上げる。その上で紅路夢の機動力と残像を見せるかのような高速移動を織り交ぜて、ガールとパラダルクを連携させぬように不規則に動き続ける。
「っ、全部避けるのはちょっと難しいかあ!」
 フロヲトバイの動きを予測したのか、横から飛び出してきたガールの爪が鈴鹿の腕を抉っていく。痛みだす腕を抑えることは、今はしない。そんなことよりも妙にこちらの動きを予測するようになったガールを振り切り、パラダルクの魔術を受けぬことの方が先だ。
 恐らく「覚えられている」。此方の動きや、ともすればユーベルコードまで。
 だが、それがどうした――!!
「こっちの動きを覚えられているなら、その未来を変える!」
 初手の攻撃を防ぎきって生まれた、ガールたちの攻撃の間断。その僅かな隙間にねじ込むように、鈴鹿は厭穢欣浄パラダヰムシフトを発動した。
 突如鈴鹿に後光が差す。それはハイカラさんにのみ許された光だ。敵味方を識別する理想世界構築型ハイカラさん御光。それは世界をも改変しうる、人の埒外たる所以の力。
 此度鈴鹿が改変せしは味方のみ。鈴鹿から覚えた未来を変えて、ユーベルコードの「事実」を書き換えるのだ。

「まさか、世界を書き換える力……?」
 次手を繰り出そうとしていたパラダルクが、目を見開く。もうその顔に軽薄な笑みはなかった。それを浮かべる余裕など、既に何度も猟兵によって打ち砕かれようとしている。
 無論、鈴鹿とてこれが何度も使える芸当ではないことは分かっている。だからこそ今、ここから反撃しなければならない!
「おっと、術を僕に返そうっていうのかい?」
 パラダルクの挙動が少し変わった。
 蛇のように鈴鹿の精神に侵入しようとしていたパラダルクの精神魔法を、事前に結界に付与しておいた反転術を用いて反射したのだ。その対処をして生まれた連携の隙に、すぐさま鈴鹿は次の手を打つ。
「それはただのお返し! ぼくの本当の目的はキミじゃないよ!」
 そう叫んだ鈴鹿の後光が、ドラグナーガールたちへと向いた。
 
「さあ、元の現象に戻りなよ、ドラグナーガール!」

 光を浴びたガールたちが、動きを止める。
 そして徐々に女性の姿を保てなくなり、やがてそれぞれの現象となって儀式場に飛び散った。
 ある者は水であった。
 ある者は闇であった。
 ある者は炎であった。
 ある者は薬であった。
 光を浴びたドラグナーガールたちが居た場所には、それぞれの現象の名残だけが残る。
「どう? 未来を扱えるのはキミだけじゃないよ!」
「……流石は第六の猟兵。侮っていたわけじゃないが、僕にも油断があったということか。既に時を操れる者が猟兵に居るだなんてねえ」
 快活な笑みを向ける鈴鹿をねめつけて、パラダルクが呻いた。
 思い知った。
 己が探し求めてようやく手に入れた力を、猟兵の中には既に手に入れている者が居る。二番煎じは己の方だったか。
 だがそれでも、パラダルクはもう一度笑った。それでも己の優位性は揺らがぬと言いたげに。

大成功 🔵​🔵​🔵​

山崎・圭一
機械兵器と飛翔能力が厄介だが試してみる価値はあるか
古今東西、女の子って生き物は“アレ”に弱いんだ
そう…女の子がだーーい嫌いな…

ゴキブリ!

ドラグナーガールの影から出て来い!ゴキブリ型ゴースト!
羨ま…華やかなそっちの能力と違って
【蟲使い】たる俺は蟲を操るぐれェしか出来ねーが
今この状況じゃ多分驚異になると思うんだ
ゴキまみれでも尚、舞を踊れるか?

何でもドラグナーガール化させてみればいい
時間を掛ければ俺の詠唱で威力は上がってく
呪詛と毒だって広がる。忙しくなるぜ?

状況がパニックなってる隙にゴキ型【呪殺弾】もバラ撒くか
器を齧るからゴキブリなんだとさ
女子の肉だ。喜んで齧り貪れ!ゴキ共!
一人おっさんいるけど




 儀式場は既に混沌の渦の中に居た。
 多数居たドラグナーガールたちは猟兵たちの活躍によって数を減らし、舞を踊るドラグナーガールは儀式を崩壊させぬよう必死に踊り続ける。そしてそれを守るように佇む男こそが、此度の標的パラダルク。
「機械兵器と飛翔能力が厄介だが……試してみる価値はあるか」
 そして今回の目的はパラダルク、もしくは儀式を行う為に舞を踊るドラグナーガールの撃破。それに伴うパラダルクの撤退である。
 それを行う為に山崎・圭一(宇宙帰りの蟲使い・f35364)が出来る事を模索した時、思い浮かんだ一つの手段。
「古今東西、女の子って生き物は“アレ”に弱いんだ」
 効果のほどはいまいち使ってみないとわからないが、やってみる価値はある。うまく行けば大混乱を巻き起こせる。今、この状況でなら多分脅威になれるのではないかと思った。だから、圭一は行動を起こした。
 圭一に気付いたドラグナーガールが、ガルベリオン鋼の銃を構えた。圭一が行動するよりも早く、同じ鋼で作られた弾丸が圭一を掠める。すぐに直撃が来る、その直前で圭一はユーベルコードを発動した。
「そう……女の子がだーーい嫌いな……」

 ゴキブリ!!

「ドラグナーガールの影から出てこい! ゴキブリ型ゴースト!!」
 うぞうぞとドラグナーガールの影が蠢きはじめる。ガールたちの顔が引き攣ったのを、圭一は見逃さなかった。
 ガールたちの影からカサカサカサカサと飛び出したのは、確かに、黒光りして素早くて、それでいてやや大きめの。
 ゴキブリ。
 
「「「「「きゃーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」」」」」

 儀式場に多数の悲鳴が響き渡った。
 
 ドラグナーガールにゴキブリとか効くんだろうという疑問は最初からあった。無視されるとか割と平気とか、そういうことも当然あるかもしれないと。だが不安は杞憂に終わった。見事大混乱である。
 根性で舞を続けているドラグナーガールも居るが、攻撃を担当するドラグナーガールと儀式担当のガールの大半は大騒ぎ。平然としているのはゴキブリをドラグナーガールにしていくパラダルクだけだ。
「羨ま……」
「羨ましいのかい」
 うっかり零れた呟きに、間髪入れずに返事が返ってきた。しかも余裕たっぷりの笑みも浮かべられている。
「ちげぇし! 華やかなそっちの能力と違って蟲使いたる俺は蟲を操るぐれェしか出来ねーがな」
 びしと指を突きつけ、圭一はそれをすぐさま否定した。
 十の属性にまつわるもの全てを女の子化してはべらすとか、正直男の子の夢を詰め込んだような浪漫溢れるその能力。本音を言えば羨ましくないわけはないのだが、肯定するのは非常に腹が立つので絶対するもんか。
 ――ともあれ。
「ゴキまみれでも尚、舞を踊れるか?」
 圭一はあかんべと舌を突き出した。
 
 だが、狂乱を前にしてもパラダルクは笑みを崩しはしなかった。
「はは、面白い趣向だねえ。だが、これがどうした? 僕のドラグナーガールたちを驚かせただけじゃないか」
 
「影は闇。そして毒。言ったはずだけどねえ、僕はあらゆるものをドラグナーガールに出来る。こんな風にね」
 パラダルクに這い上がって呪詛と毒を撒き散らすゴキブリを、パラダルクはただ指を鳴らすだけで己に添うドラグナーガールへと変えてみせた。ただこれを繰り返すだけだと笑い、今どんな顔をしているかと圭一を見れば――。
「おーおー。何でもドラグナーガール化させてみればいい」
 圭一もまた笑っていた。
「だがな、時間を掛ければ俺の詠唱で威力は上がっていく。呪詛と毒だって広がる。忙しくなるぜ?」
  ドラグナーガールへと変える能力が、範囲でも複数同時でもなくて良かった。この状況を一瞬でひっくり返されていたら危なかったが、そうはならなかった。

 ならば、勝ち目はある――!!!

「知ってるか? 器を齧るからゴキブリなんだとさ」
 状況がパニックになっている隙に、ゴキブリ型の呪殺弾もばら撒いておく。呪いは圭一の言葉によって方向性を持ち、黒光りする体に目を紅く光らせる。キチキチキチと、本来ゴキブリからは聞こえるはずのない蟲の歯ぎしりの音がする。
「そら、女子の肉だ。喜んで齧り貪れ! ゴキ共!! ……まあ一人おっさんいるけど。好き嫌いはしねーだろ。多分」
 圭一が合図した瞬間、ゴキブリ型ゴーストのオブリビオンと呪殺弾は一斉にドラグナーガールへと飛びついた。
 悲鳴の声が質を変える。
 鮮血が舞い、打ち払おうとしても払いきれぬ蟲に混乱は狂乱へと堕ちていく。一人、また一人と黒き蟲に喰われ、ガールを増やそうとしても追いつけぬ程に崩れていく。舞い続けているのはもう幾人も居ない。

 あと一押しだ。
 あとたった一押しあれば、この状況は結末を迎えるだろう。

成功 🔵​🔵​🔴​

茜崎・トヲル
【モノクロフレンズ】(スーさん、あーさん、交互に呼びます!)

自分で女の子作って、魅了して、はべらせて……ははーん、キャバクラだね!
しかもどーぐみてーに使うとか、これはかけねなしに悪い人だよ、あーさん!
がんばるぞー!

スーさん、いい案があるの?!なら、おれは肉体改造!全身を密度のたかい骨でおおったじょーたいで、あーさんを全力でかばうよ!
そーやって、せんせーこうげきをたいしょする!二人でね!

あとは【リミッター解除】して、ハンマーで機械ごと、女の人をたおしていきます!
おれの体は再生するし、痛覚もないからね!ケガは無視して倒しに行くよ!
行こーぜ、スーさん!向こうはけっきょく頭は一人!こっちは二人だ!


スキアファール・イリャルギ
【モノクロフレンズ】
……なるほど
つまり奴は異世界転生して、
ここにキャバクラを作ったというわけですねトーさん
他を支配して自分はふんぞり返っている……
どう見ても悪い奴です。ぶん殴ってやりたい

えぇ、敵が機械を搭載かつ雷属性を扱えないなら……
霊障によるグレムリン効果と
空から落とす雷(属性攻撃)で
機械兵器に不調を起こす!
霊障がうまく機能せずとも
躰に雷を浴びせば少しの間だけ痺れて動けない筈
敵の攻撃は……あぁ、トーさん、助かりました

そして、呪詛を最大限載せたUCで瞬殺を狙う!
未来属性があろうが、躰を蝕む病で一瞬で終わってしまえば対応できないでしょう?
はい、私たちふたりの連携を見せつけてやりましょうトーさん!




 時間は少し前まで遡る。
 
 儀式場に突入する前に、茜崎・トヲル(Life_goes_on・f18631)とスキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)は召喚魔王パラダルクの様子を観察していた。
 事前情報通り、パラダルクの周囲には何人ものドラグナーガール。儀式の舞を踊る者と、猟兵と戦う者、そしてパラダルクに寄り添う白と黒の二人のガール。
「自分で女の子作って、魅了して、はべらせて……ははーん、キャバクラだね!」
 顎に手を当てて、トヲルは至極真面目にそう分析する。
「……なるほど。つまり奴は異世界転生して、ここにキャバクラを作ったというわけですねトーさん」
 それに同じく大変真面目な顔で頷いて、スキアファールは分析を付け加える。
 異世界転生して女の子はべらせてキャバクラ。で、過去因縁のライバルを探して儀式の真っ最中。
 纏めてみると魔王という大仰な称号の割には、存外にありがちの枠にぴたりと嵌っていたことに二人は思わず顔を見合わせて笑ってしまった。
 とはいえその能力は侮る事は出来ない。
 万物――より正確には水・光・土・火・樹・薬・風・毒・氷・闇の十属性に纏わる全て――をドラグナーガールに変える力は、通常の攻撃方法のほとんどを無効化し、あまつドラグナーガールに変えて支配してしまう。此処に居るドラグナーガールはそうやって作り出された存在であり、パラダルクの為だけに動く駒である。
「他を支配して自分はふんぞり返っている……どう見ても悪い奴です。ぶん殴ってやりたい」
「しかもどーぐみてーに使うとか、これはかけねなしに悪い人だよ、あーさん!」
「よしぶん殴りましょう」
「よーし、がんばるぞー!」
 秒で決まった。
 元より殴り倒して骸の海へとお還り願う所存であったが、その決意がより強く固まったと言えよう。
 その時、儀式場で悲鳴があがった。
 ドラグナーガールのものだ。見ればガールの数が減っている。儀式を行っているガールも相当数を減らし、パラダルクは残るガールを儀式の舞う者達の守りへと傾けている。
 畳み掛ける好機だ――!!

「それではトーさん、打ち合わせ通りに!」
「りょーかいだ、あーさん!」
「また新手か……! そうまでして此処を押し通りたいかい、猟兵!」
 混乱を極める儀式場に踏み入れた二人に、それでもパラダルクは真っ先に気づいた。余裕を含んだ笑みは消え、声音に怒りすら滲ませてパラダルクはドラグナーガールをけしかける。彼女たちの手にはガルベリオン鋼の銃。照準を合わせ引鉄を引く速度は閃光のようだ。
「――今」
 だがマズルフラッシュを放つことなく、一丁の銃の引鉄が動かなくなった。弾詰まりを起こしたのだ。別の銃も同様に、何故か突然起こったトラブルによって発射することが出来ない。ガールたちは動かない銃を棄て、すぐさま別の銃を手に取ろうと踵を返した瞬間、天より穿たれた稲妻がガールと銃を貫いた。
 ガールたちは気づかなかったのだ。ヒトガタの影がいつの間にか、虚ろな姿で怪異を撒き散らしていたことに。
 
「うまくいったな、スーさん!」
「えぇ、霊障も雷もよく効いてますね」

 パチンと響いた軽快な音は、二人が手を合わせた音。
 突入直前、二人の間ではある作戦が決まっていた。それがうまくハマッたのだ。

「トーさん、ちょっと思いついたことがあるのですが」 
「スーさん、いい案があるの?!」
「えぇ、敵が機械を搭載かつ雷属性を扱えないなら……」
 ぴっとスキアファールは長い指をたてる。
「霊障によるグレムリン効果と、空から落とす雷で機械兵器に不調を起こす! これです」
「ぐれむりんこうか」
 思わずトヲルが真顔で首を傾げた。全く聞き覚えのない単語である。
「あっ、ええとですね。機械とかコンピューターが原因不明で異常な動作を起こすことです。今回は霊障でそれを起こすので、原因不明ってわけでもないんですが」
「おお、なるほど! スーさんは物知りだな!」
 慌てて捕捉をしたスキアファールに、それならば理解できたとばかりにぱあっとトヲルの顔が明るくなった。
 無事伝わったことに安堵しつつ、スキアファールは説明を続ける。
「いえいえそんな……。ともかく、霊障がうまく機能せずとも、躰に雷を浴びせれば少しの間だけで痺れて動けない筈。その間の敵の攻撃は……」
「ふむふむ。なら、おれは……」

 ――そうして組み上がった戦術。その上で、トヲル自らが提案した彼自身の役割は……。
「スーさんあぶない!」
 運よく雷の直撃を受けなかった一体のドラグナーガールが、撃てなくなった銃をスキアファール目掛けて全力で投擲した。弾丸もかくやの速度は、弾丸にも引けを取らない。
 だが銃がスキアファールに届く前に、割って入ったトヲルが腕で受けた。スキアファールが受けていれば腕を折りかねなかったが、受けたトヲルには傷一つない。
 それもそのはずだ。トヲルはユーベルコードを発動し、自らの全身を密度の高い骨で覆っていたのだ。骨の装甲によって守られたトヲルは、ぶつかって落ちた銃を拾い上げて破壊する。
「あぁ、トーさん、助かりました」
 穏やかに笑ってスキアファールが礼を言うから、トヲルは嬉しくなった。人間ではとても持ち上げられぬ重さのウォーハンマーを軽々と構え、トヲルはスキアファールに不敵な笑みを向ける。
「行こーぜ、スーさん! 向こうはけっきょく頭は一人! こっちは二人だ!」
「はい、私たちふたりの連携を見せつけてやりましょうトーさん!」
 最早儀式場は崩壊寸前、残るドラグナーガールもほとんど居ない。
 トヲルは自らのリミッターを解除してガールたちの元へ突撃し、ハンマーを振り上げる。思い切り振り抜けば暴風の如し。強力な一撃はガルベリオン鋼の武器ごとガールを叩き潰し、返す刃で別のガールを打ち上げる。
 動けるようになったガールがトヲルの進撃を止めようと飛び込んでくる。ガルベリオン鋼のナイフが骨の隙間からトヲルの足を刺し貫くが、トヲルは何も気にしなかった。もとよりトヲルには痛覚自体がなく、また傷つけられても再生する。この程度のケガなど無視しても問題ないのだ。
 一方肌を覆う黒包帯をぱらりと解いたスキアファールは、あらゆるものを捉える無数の怪奇の目をガールたちに向けた。その視線に持てる最大の呪詛を載せれば、呪詛は視線の数程に威力を増す。そうして放たれた視線に、ドラグナーガールは何も出来ぬままに事切れた。スキアファールはトヲルを絶妙に視線から外しながら、次々とドラグナーガールをバジリスクの瞳でドラグナーガールをほとんど打ち倒していく。
「未来属性があろうが、躰を蝕む病で一瞬で終わってしまえば対応はできないでしょう?」
「おれのハンマーでもな!」
「……このっ、猟兵が……!」
 パラダルクがガールを増やす間もなかった。
 残ったドラグナーガールはあっという間に制圧されて、誰も残っていない。
 あと一手を必要としていた戦場は、トヲルとスキアファールの連携によっていとも簡単に崩壊したのだ。
 パラダルクは強く強く歯噛みした。
 親切に己が能力を教え、その圧倒的な力量差を知らしめることで儀式に集中できると思ったのに。
 現実は、このザマか。
「……ここまでか。なかなかやるね、猟兵」
 大きな溜息をついたパラダルクは、苦々し気に呟く。儀式は破壊され、ガールたちは居なくなった。ならばパラダルクが今此処に居る理由はない。パラダルクは背の翼を広げると、羽搏き一つで船に開いた穴から空へと舞い上がる。
「……この借りは、いつか必ず」
 そう言い残し、去っていった。
 追おうと思えば追えたかもしれない。追撃をいれようと思えばいれられたかもしれない。それでもトヲルとスキアファールが敢えてそれをしなかったのは、ここまで追い詰めて尚広がる力量差を感じ取ったからだ。今挑めば、呪詛による病もウォーハンマーもまとめてガール化させられていたかもしれない。そんな直感が、二人にはあった。
 
「……ひとまずは、これで終わりでしょうか」
「そーだな、スーさん。儀式はとまったし、あいつもいなくなった。おれたちの勝ちだ!」
「ええ」
 スキアファールが差し出した手を、トヲルがぱちんと叩く。 
 
 パラダルク自身は健在で、懸念が全てなくなったとは言えない。
 それでも猟兵たちは、万物を魅了する魔王に勝ったのだ。
 合わせた手の音と二人の笑い声が、まるで勝鬨のように船内に響いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年05月20日


挿絵イラスト