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蜘蛛の糸の行方

#シルバーレイン #【Q】 #ゴーストタウン #糸を手繰る先で #キャンペーンシナリオ

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 大規模な土蜘蛛の檻で行われた『国見・眞由璃』を巡るやりとりに一応の決着がついた。
 そこでは討伐と共存で猟兵たちの意見が大きく割れ、辛うじて眞由璃が命を拾った形になっている。……当時の状況は同盟というよりも『生かされた』という形が近いだろう。

 そして、この時に割れた意見はいずれも影響を残している。
 眞由璃は猟兵の過去の戦いを仔細に教えられた事で、オブリビオンが人間どころか土蜘蛛を含めた世界そのものを危険に晒す事を知らされた。加えてオブリビオンである以上は【骸の海】を称する者の影響や、フォーミュラの影響が潜んでいる可能性も突き付けられている。眞由璃自身がどう考えようと、世界に、そして土蜘蛛に危害を与える未来は覆らないかもしれないのだ。
 【討伐を選んだ側】は眞由璃が自分であるうちに滅ぼすことを考えた。それが彼女の尊厳になるのだと。
 一方で【共存を模索する側】はオブリビオンに属していながら猟兵のチカラとなる存在に希望がある事を主張した。各世界に点在する例外が、眞由璃についても或いは、と。
 この戦いで【討伐を選んだ側】によって眞由璃の配下は一掃されている。組織としての力を失い、ほぼ個となった土蜘蛛の女王が生かされて思うのは。
(他のオブリビオンを討ちましょう。元より排除するつもりでしたから)
 それが、世界のために今殺すという選択を取らずに眞由璃を生かした者たちとの約束だから。

「先日は大規模な土蜘蛛の檻への対処、お疲れさまでしたー。今回はその際に檻をいちど離れた『国見・眞由璃』さんの行方を追っていただきたくー」
 グリモア猟兵の天日・叶恵(f35376)はそう伝えると資料を配布した。そこは人が住まなくなり、常識が失われたことでゴーストの巣窟と化した『ゴーストタウン』と呼ばれる場所。
 こういった場所は能力者たちによって対話が可能なゴーストであればマヨイガへ、不可能であれば排除が行われた後に『除霊建築学』の祭壇が設置され浄化されていくのだが、人里から離れた場所であれば対応も十分に届かず後回しになってしまう様だ。
 そこは山に挟まれた土地だった。ある工場が不況で閉鎖されたことで住んでいた従業員とその家族、彼らを相手に商売をしていた商店などがまとめて撤退して町ごと廃墟となったのだ。
 そして、眞由璃に渡していた携帯電話のGPSのログがこのゴーストタウンで消えているのだという。ゴーストが多い場所では電波が届かず、大半の通信は機能しなくなるため通信の途絶自体は正常ではあるのだが。問題は見失った事だろう。
「行方を追って接触しましたら、彼女が何故ここを訪れたのかを聞いていただきたいのですー。そして内容に問題がなさそうであれば、そのまま手伝いつつ信頼の構築もお願いできないでしょうかー。前回の接触だと、どうも現代の知識に非常に乏しい上に中途半端に1910年~1960年ころの歴史は学んでいて、人間に対して誤解もある様ですのでー……」
 つまりは一人で行動させるには色々と危ういため世話を焼く必要があるという事である。ついでに心変わりが無い事の確認をする機会にもなるだろう。

 ――以上を伝えた叶恵は、転移の準備を開始した。
「事前の情報は以上となります。私は転移の発動と維持のため同行できませんが、皆さんならきっと大丈夫です。――それでは、いってらっしゃい」


ウノ アキラ
 はじめましての方は初めまして。そしてこんにちわ。ウノ アキラです。
 このオープニングに興味を持っていただき、ありがとうございます。

●執筆タイミングなど
 今回は土日にまとめて書きますので、プレイング受付はその前の【毎週木曜の8時30分から土曜の昼まで】となります。
 他にもマスター紹介のページは一読頂けるとプレイングの文字数を少し節約できるかもしれません。

●依頼の補足
 シルバーレインのキャンペーンシナリオ(続きもの)です。【⚔土蜘蛛戦争】の事後シナリオとなります。
 前回の話を知らなくても事件の解決は可能です。

 以下の三章構成になっています。
 一章は冒険です。
 ゴーストタウン内ですが、オブリビオンの巣窟になっています。
 ここで出るオブリビオンはすごく弱いのであまり戦闘に力を入れなくても良いです。
 敵がたくさん出て来るので戦いつつ、どこかにいる『国見・眞由璃』を探す形になります。

 二章は集団戦です。
 『ソードヴォルフ』が襲ってきます。
 一章の敵よりワンランク強いですが、いつもの集団敵なので弱いです。
 『国見・眞由璃』と合流済みであれば、現代への誤解を一部解くための会話のチャンスです。
 まだ合流出来ていなければ引き続き探す形になります。

 三章はボス戦です。
 『ファクシミリドラゴン』が現れます。
 二章までに合流できなかった場合、ここで『国見・眞由璃』と合流します。
 ボス戦では会話の余裕はあまりないので何をしていたかを聞くので手一杯になります。
 共闘して信頼を得て次の機会に繋げましょう。

●NPCの『国見・眞由璃』について
 ユーベルコードは以下を使用します。
【土蜘蛛禁縛陣】
【指先から放つ強靭な蜘蛛糸】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

 武器は、ゴーストタウン内で詠唱銀をふりかけて得た薙刀を使っている様です。
 ユーベルコード以外にも、土蜘蛛の各アビリティを使用して戦います。
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第1章 冒険 『オブリビオン迷宮』

POW   :    湧いて出てくる敵を倒しながら進む

SPD   :    仕掛けられた罠を解除する

WIZ   :    敵の魔力を探知し、ボスの居場所を探す

イラスト:十姉妹

👑7
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●オブリビオンタウン
 ひとつの巨大工場の閉鎖に伴い多くの従業員とその家族が引っ越して、彼らを相手にしていた商店やスーパーも連鎖的に撤退したことでこの町は廃墟となった。
 その一角の、工場と町の一部がゴーストタウンになっている様だ……。かつて住んでいた人々の思いが残留思念として残っていたのか、……それとも工場で閉鎖を決定付ける様な何かがあったのか。
 人が居なくなって久しくなったところにゴーストが移り住んだ可能性も考えられる。

 だが、ここがゴーストタウンとなった経緯は重要ではない。問題はこのゴーストタウンへと消えた『国見・眞由璃』の行方と、ここがオブリビオンで溢れているという事だ。
 ――オブリビオンで溢れたゴーストタウン。果たしてこれは偶然なのか、それとも『何者か』の手が加わっているのか。
 眞由璃が何かを知っているかもしれない。

 野良犬のようなオブリビオンが襲い掛い来る……そんな廃墟の町と工場で、猟兵たちは探索を開始した。
(地形はプレイングに合わせて生えてきます。)
アリス・フェアリィハート
&&&
アドリブ連携歓迎

私は…本当は
眞由璃さん達との
共存を望みながらも

別の場で
一度は
猟兵として
眞由璃さんを
倒そうとしてしまい…

でも
可能性は低いかも
しれませんけど
眞由璃さんとの共存を
私も模索したいです…

『飛び入り者で…おこがましいかもですけど…私にも、共存の手段を探すお手伝いができたら…』

味方と連携
翼で飛び
【空中機動】も使い
行動

UCで
翼の騎士を召喚
隊を分け
眞由璃さんの捜索と
発見時に
伝令や
眞由璃さんが
敵に襲われてた時の
護衛をお願いし

自身も
ヴォーパルソードを携え
残りの騎士と共に
【情報収集】し
捜索

敵は
剣の
光焔の【斬撃波】や
【なぎ払い】等剣戟で
騎士と共に
戦闘

敵の攻撃は
【第六感】【残像】【オーラ防御】で防御


儀水・芽亜
眞由璃さん、あまり無理をされてなければいいのですが。
とにかく後を追いましょう。
「失せ物探し」で、彼女の行方を探ってみます。
気配のする方へ向けて前進。
邪魔なオブリビオンは幻夢クラスターで眠らせて、裁断鋏『Gemeinde』で首を「切断」しながら進みましょう。

「歌唱」「範囲攻撃」で歌を唄って、私たちの到着を眞由璃さんに知ってもらうのもよさそうです。もちろんダメージは無しです。
歌は分かりやすく、銀誓館学園校歌にしましょう。
気付いてくれるとよいのですが。

眞由璃さんを見つけたら、お手伝いと参りましょう。手早く周囲の敵を殲滅して、終われば持ち込んだスイーツとお茶で情報交換です。
ここにはどういう経緯で?


狐裘・爛
【狐御縁】
&&&

進む道に迷った時に、とりあえず動きたくなるって気持ちはわかるよ。
ちゃっちゃと合流して励ましてあげないと。友達として、ね!

索敵は任せるわ。炎帝鷂、私の体温を食べて増えなさい。そう。より大きく、賢く、たくさんね。
これだけ作れば大丈夫……かな? 時間ない分大盤振る舞いしちゃった。
ふあ……んん、体温が落ちたのと、今日シホのお弁当あるからお腹減らしてて、眠くなってきたわ
ココアが染みるわ。ふう。これなぁに? 聞く前に食べちゃったけど。あやしい……!

茶屋にたどり着いたわ。まぁゴーストタウンだけど。またこんな場所でお茶できたらいいのに。
……何よ、別に腹ペコってわけじゃないからっ!


四王天・燦
【狐御縁】
&&&

アタシは眞由璃と袂を分かったことがある
話を聞く限り、二人が手をとった眞由璃は似て非なる者と思った
魂とは何か、現世の者とオブリビオンの違いとは、彼らが現世の存在となるには…その解を眞由璃に期待しているんだ

神妙な顔してすまね
人探しだね
夢色変化で探偵になぁーれ☆
ちょっぴりセクシーな変身シーンをガン見しちゃあいけないぜ

視力で眞由璃の糸や詠唱銀使用の痕跡(残留思念の不自然な少なさ)、足跡追跡を行い、聞き耳を立てて戦闘音を探ったりするよ
お手軽に高所から見渡せる場所があれば活用する

ゴーストが沸いていたらアークウィンドを手に忍び足で寄って暗殺するぜ
探偵の嗜みです
任せな、静かに速やかに―
一撃で決める

爛…朝ごはんは食べなきゃダメでしょ、めっ!

二人の直感に何かねーの?
眞由璃と縁の糸が繋がっているだろ
縁は力だぜ
縁なのか二人が眞由璃と出会った茶屋みたいな場所で一戦もあるかもね

眞由璃の気配を感じたらシホと爛が探していると大声をあげる
会えたら自己紹介
敵意はねーけど気まずさも手伝ってまだまだ他人行儀さ


シホ・エーデルワイス
【狐御縁】
居れば稲見之守さんとも協力
&&

やっと眞由璃さんに逢えるのね
元気そうで良かったです
でも
独りでオブリビオンの巣窟に挑むのは心配です
早く合流しないと


爛から炎帝鷂を借り皆と連絡を取りつつ探索

って!敵地で寝ちゃダメですよ
ちょっと待って

『聖鞄』から眠気覚ましと保温効果のある温かいココアを淹れて渡す


第六感と聞き耳で警戒しながら視力で
眞由璃さんの物と思われる最近できた足跡を見切り追跡

【潜霊】の『詩帆』にも電話線を介して
偵察と索敵をしてもらいながら
周辺の地形を情報収集して書き出しマップ作製
皆に伝える


戦闘は『聖笠』で透明になって目立たなくなり
可能な限り避けるか
避けられない時は皆と連携し先制攻撃
聖銃にサイレンサーを付けて目立たない消音属性攻撃で
頭部をスナイパーで貫通させ部位破壊攻撃


奥の方は私が狙撃します
近くはお願いできますか?

探偵というよりシーフか暗殺者ですね


眞由璃さん
ちゃんとご飯食べているかしら?

逢えたら何時再会しても渡せるよう毎日料理している
お弁当とお茶を渡して食べながら近況を聞いてみたいです


レーゲン・シュトゥルム
&&

死ぬまで戦い続ける矜持を否定はしない
それが「約定を違えない」と言う大義名分の下に行われる迂遠な自殺でなければな
…心配だから、国見・眞由璃に会いに行くつもりだ

【シルフィード・クローク】を活用して戦闘よりも探索を重視しておこう
それでも接敵は避けられないだろうな
出合頭に【クイックドロウ】で【乱れ撃ち】、速攻戦を心掛けておこう

早く国見・眞由璃と合流する為、戦闘の形跡や残留思念を追ってみようと思う
手つかずの残留思念が多ければ、そこはまだ訪れていないと考えて良いだろうな
敵の数が少なかったり、何処かに敵が向かう様なら近くに国見・眞由璃が居る可能性は高いと思う
…無茶な戦いを繰り返していなければ良いのだがな


酒井森・興和
&&&
オブリビオンになった事で討たれず生き延びた国見の女王様も居られるか

以前は蜘蛛族を感知する事も出来たけど今はもう【第六感】が頼りの様だ…敵に対してもね
敵には三砂を用い【咄嗟の一撃となぎ払い】
昏倒した個体を別の敵に投げ付け攻撃【追撃+敵を盾にする】

【狩猟と暗視】を応用して女王の足跡を追う
『敗れたとは言え女王様が巫女も供も無く彷徨うなんて…』
探しながら無意識に口をつくのは忘却期前の中世頃の言葉
他に人がいれば現代語に切り替え話す

女王が見つかれば以前から縁のある人も居るだろう
会話を聞きつつ敵を警戒し待機
声掛けあれば本能的な緊張と敬意から頭を下げ
『初めまして。国見の女王様。鋏角衆の酒井森と申します…


御狐・稲見之守
&&&ふむン、行方がわからなくなったとは困ったの。
とはいえ眞由璃殿が世に仇なすようなことになれば
恐らく予兆で事前にわかるゆえにそう心配は――とは楽観が過ぎるかナ。

あさて、ひとまずは式神符をバラまいてゴーストタウン内を捜索。
眞由璃殿がいるならおそらく戦闘の痕跡があるじゃろて。
あとはこの場所が陰陽都市計画の一端だとか
マヨイガの勝手口だとかでは困るのでその辺も気にしておくか。
襲い来る有象無象のオブリビオンは適当に蹴散らすこととす。

――で、ホーリーゴーストちゃんよ。
ワシに喧嘩売って来たことはまーったく全然気にしちゃおらんが
この場所のことや、長い黒髪で赤眼のセーラー服姿の女子について
知ってることがあったら教えてくれんかのう? んー??
(影業で縛ったホーリーゴーストの頬を霊符の束でぺしぺし叩きながら)


キティー・アレクサンドル
&&

■心情
眞由璃様どこにいったんだろう…心配だなぁ
あんなにオブリビオンがいっぱい居るのに1人にさせちゃダメだよね
よし、私!探してくる!

■行動
私はUC【スパイダーヒール】による飛翔だけを使って【軽業】で糸伝いに素早く町の中を徘徊します。
途中でオブリビオンの群れに遭遇したら指定UCを発動させて蹴散らします。
眞由璃様を見つけたら私は急いで眞由璃様に近づきます。
もし怪我をしてるならUC【スパイダーヒール】で手当しなくちゃ

眞由璃様?どうしてここに来たの?


ムゲン・ワールド
 同盟を結んだわけではなく、自ら死を選ぼうとして生かされた、という状況に興味を示して参加する。
 
 生かされたとは言え、自暴自棄になってる可能性もあるな。自分の信じていたものが間違っていたと分かった時はそう言うものだ。
 私も「教会」を出奔して以降、ビャウォヴィエジャの森で銀誓館に拾われるまでは我武者羅にゴーストを狩って死のうとしていた。

 後に危険になるかもしれないとはいえ、折角生かす事を猟兵が決めたんだ。こんなつまらないところでは殺させない。最期まで見届けなくては。

 UCを発動し、GT中を駆け巡り、捜索を行う。道中のオブリビオンは白銀の騎乗槍でランスチャージだ。
 希望者がいれば背中に人も乗せる。


マリーア・ダンテス
「神敵がおかわりし放題たぁ誰得だよ、ったく」
煙草を吐き捨てヒールで踏みにじる

「敵が多く来る方に行きゃあ、本人か本人の狙ってるもんか、どっちかにゃあ行きつくだろ…かーっ、面倒くせぇ話だぜ」
「とにかく始めるとするかぁ…神を讃えよ、神の意思に従い戦う兵に神のご加護を」
熾天使化し1度上空から特にオブリビオンが多そうな方角を確認
威圧と神罰を撒き散らしながら敵がより多い方角に向かって飛行を続ける

「共存を選んだと聞いた以上、争乱目的で潜んだわけではありますまい。神敵が勝手に集まってきたのか、神敵を倒すために神敵が多く集まる場所に向かわれたのか、どちらかではありましょう。神は悔い改めた子羊を見捨てません」



●空と雲
 時刻は昼。空は晴天で、吹き抜ける初夏の風が涼やかで心地よい気候だ。そんな青空へアリス・フェアリィハート(不思議の国の天司姫アリス・f01939)は舞い上がった。
 彼女は空中浮遊の技とオラトリオの天使の翼で空へ昇ると、空から町を見下ろす。
(私は……本当は、眞由璃さん達との共存を望みながらも……別の場で、一度は猟兵として、眞由璃さんを倒そうとしました……)
 それはオブリビオンとして幾度と現れる『国見・眞由璃』の一人とのかつての邂逅。その時の出会いと別れはアリスにひとつの心残りを残していた。
(でも、可能性は低いかもしれませんけど……眞由璃さんとの共存を、私も模索したいです……)
 オブリビオンである以上、いずれは倒さなければならない。しかし何かしらの方法があるのではないかという希望を、アリスは夢として纏う。

 眼下にあるのはちいさな町だった。山を背にした大きな工場群がひとつあり向かいには団地と思われる大きい建物が立ち並ぶ。
 その周囲には一軒家もちらほらあるけれど、いずれも草木に包まれて人が住んでいる気配は無さそうだ。この住宅地と工場を繋ぐ様に大きい道路が通されており、すき間を埋める様に商店と思われる建物が建ち並ぶ。
 かつてはこの町も、多くの人が希望と夢を抱いて住んでいたのだろうか。この土地は周りを山に囲まれていて他の町に通じるのは一本の道路しかない。そしてその道もアスファルトを突き破った草木に覆われて、そうと言われなければ道だと気づけないほどに陸の孤島と化していた。

 その住宅の間を小さなピンク色の姿が飛んでいく。キティー・アレクサンドル(ドールコレクター・f36894)だ。
(眞由璃様どこにいったんだろう……心配だなぁ)
 キティーはユーベルコード『スパイダーヒール』による蜘蛛糸を使った飛び移りで建物の間をぴょんと飛んでいた。今のところ見えた動く存在は、野良犬のようなオブリビオンと猟兵のみ。そのオブリビオンも野生の動物が住み着いているのと変わらない状態である。
 オブリビオンを恐れているのか、今のところゴーストの姿は見られない。
(オブリビオンがいっぱい居るのに1人にさせちゃダメだよね、眞由璃様を探さなきゃ!)
 キティーは少しでも早く見つけようと町中を急いで見て回った。
 空には晴れやかな青が広がっている。そんな空模様とは裏腹に、二人の気持ちにはうっすらと雲がかかっているようだ。

●霧の中の様に
「眞由璃さん、あまり無理をされてなければいいのですが」
 そう儀水・芽亜(共に見る希望の夢・f35644)は呟いた。彼女が居るのは商店の並ぶ路地の中、そこで芽亜は失せ物を探すように目を配って歩いている。行方を掴むヒントでも見つかれば良いのだが、掴める気配も他の猟兵か、徘徊するオブリビオンによるものばかり。
 襲い来る野良犬のようなオブリビオンをユーベルコードの『幻夢クラスター』で眠りに落とした芽亜は、目覚める前にとその首を裁断鋏『Gemeinde』で斬り落とした。
 ジョキン、と一仕事を追えて改めて周囲を見渡せば。どの店舗も錆びたシャッターが下りてガラスも所々割れている。道の舗装のひび割れからは草がぼうぼうと生えて、放置された年月を物語っていた。
「……この辺りには居なさそうですね」
 誰かが出入りした痕跡のある建物を探して、芽亜は歩みを進めた。

 そんな路地を抜けた先に住宅地と工場を繋ぐ様な大きな道路が通っている。そこも道路はひび割れて草が生え並び、錆びついた旧式の信号機がオブジェとして立っていて人による管理が無いことは一目瞭然の状態だ。
 そんな道を、ムゲン・ワールド(愛に生きたナイトメア適合者・f36307)は疾走していた。ユーベルコード『ナイトメアビースト・ユニゾン』によってナイトメアと融合したケンタウロス型となったムゲンは町中を駆けて捜索を進めていく。
(同盟を結んだわけではなく、自ら死を選ぼうとして生かされた、という状況に興味がある……。生かされたとは言え、自暴自棄になってる可能性はあるな。自分の信じていたものが間違っていたと分かった時はそう言うものだ)
 なぜそう言いきれるのかというと――。
(俺も『教会』を出奔して以降、ビャウォヴィエジャの森で銀誓館に拾われるまでは我武者羅にゴーストを狩って死のうとしていた)
 ――ムゲンにも、己の精神の支柱を失った時期があるからだ。
 駆ける蹄の音に誘われて周囲の路地から野良犬のようなオブリビオンが現れるが、ムゲンはそれを『白銀の騎乗槍』を振るって退ける。
「さて……彼女は何処へ行ってしまったのでしょうね」
 一度立ち止まると、ムゲンは周囲のシャッターの降りた店舗を見回した。

●『人』捜し
「白の星刻騎士団さん……力を貸してください……!」
 空色のドレスをたなびかせ、アリスはユーベルコード『ロイヤルプリンセスガード・スターホワイトナイツ』を使用する。すると彼女の呼びかけに応じた翼を持つ光り輝く女性騎士が百十八人現れた。
「我ら『白の星刻騎士団』、姫を御護りすべく馳せ参じました」
「騎士さん、来てくれてありがとうございます……。眞由璃さんの捜索を、その、黒髪で、赤い瞳で黒い服の女の人を……捜して頂きたいです……」
 翼をもつ騎士たちはアリスの要望を聞くと隊を二十九つに分けた。二人をアリスの護衛に残して彼女たちは町中へと散っていく。

 そんな翼をもつ騎士たちが空を飛んで行くのを見上げて四王天・燦(月夜の翼・f04448)は思う。
(アタシは眞由璃と袂を分かったことがある。そして話を聞く限り、二人が手をとった眞由璃は似て非なる者と思った)
 燦が視線を横に向ければ、そこには縁の深い狐裘・爛(榾火・f33271)とシホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)の二人の姿がある。
 オブリビオンは蘇る度にちょっとずつ性格や性質が異なっていて、いわゆる個体差がある――燦は、以前討った眞由璃と二人が捜す眞由璃は別ものであると感じたようだ。
(魂とは何か、現世の者とオブリビオンの違いとは、彼らが現世の存在となるには……オブリビオンじゃない存在となるには。その解を眞由璃に期待しているんだ)
 燦が視線を向ける先では、シホと爛がそれぞれのユーベルコードで人捜しのための下準備を進めている――燦はこれをオブリビオン捜しではなく『人捜し』だと定義していた。

「さあ炎帝鷂、私の体温を食べて増えなさい。そう。より大きく、賢く、たくさんね」
 爛は寒さに震えながら炎の人工生命である『炎帝鷂』を増やしていく。神下ろしの巫術であるユーベルコード『凍心宿し』を用いて自身の体温と引き換えにした神のチカラを蓄えた爛は、そのチカラを『炎帝鷂』へと分け与えているのだ。
 その傍ではシホが地図を作成している。
「廃墟になっていてほとんど電気も通ってない……けれど、電話線は使えますね」
 彼女はユーベルコード『【潜霊】情報の海を泳ぐ電子幽霊〔薄雪詩帆〕<<センレイ・サイバーゴースト・ウスユキシホ>>』で情報の海を自在に移動できる幽霊を召喚して電話線へと潜り込ませていた。それによって大まかな建物の位置を把握。加えてその先にある有線電話を通した視界から、誰かがその建物に入った痕跡があるかも書き連ねていく。
 そんなシホへ、爛は増やした『炎帝鷂』を渡した。
「これだけ作れば大丈夫……かな? 時間ない分大盤振る舞いしちゃった」
「ありがとう、爛。あとは炎帝鷂でみんなと連絡が取れたらいいのだけれど……」
(居るのなら稲見之守さんとも協力を……)
 シホは他の猟兵が受け取ってくれる事を願って『炎帝鷂』を放った。

●その痕跡を
「神妙な顔してすまね」
 燦は、懸命に方法を模索する二人にそう声をかける。
「眞由璃さん、元気そうなのは良かったです。でも、独りでオブリビオンの巣窟に挑むのは心配です。だから早く合流をしたいんです」
「進む道に迷った時に、とりあえず動きたくなるって気持ちわかるからね。ちゃっちゃと合流して励ましてあげないと。友達として、ね!」
 そう答えるシホと爛の姿に、燦は「人探しだね」と頷いてユーベルコードを使用した。
「アキラキラキラ・マジカルピュア――夢色変化で探偵になぁーれ☆」
 燦の姿が服がなくなる系のキラキラ変身シーンを経て探偵のような姿へ――ユーベルコード『妖狐夢色変化<<フォックステイル・ファンタジー>>』。望んだ職業の自分となった燦はその特性を生かして周囲の観察を開始した。
「――あそこ、草が踏み倒されているけどアタシの記憶が確かならここに来た猟兵はまだ誰も通ってないハズだ」
「確かに……それによく見ると折れた部分が少し乾燥していますね」
「つまりアタシたちより前に来た誰かの足跡ってことさ。同じ足跡を探して、追ってみよう。地図も借りるね」
 燦はそう言って、シホから地図を借りる。その中には、工場跡地に他と異なる記号が書き込まれていた。
「シホもここが一番怪しいと思ったのか」
「ええ。ですが、ただの第六感なので確証がなくて……」
「アタシも第六感的にここが怪しい気はしてる。ま、勘は最後の手段にしてまずは目の前の痕跡を追跡しようぜ」
「うう……寒い。索敵は任せるわ」
 体温を代償にした爛は寒そうに自分の肩を抱き、シホの翼に包まろうとしていた。
 こうして三人は伸びる草を踏み折った跡を追っていく。

 ――そして。放たれていた『炎帝鷂』の一羽が御狐・稲見之守(モノノ怪神・f00307)の元へとたどり着く。
「ん? 何じゃ。はて、この火の鳥は見たことがあるナ」
 稲見之守は目の前にとまった『炎帝鷂』をじっと見る。
「あっ、あの時のハイタカか。眞由璃殿が一羽受け取ってたはずじゃからそれか……? いや、コレは違うナ」
 稲見之守はこのゴーストタウンにシホと爛が居るのだろうと把握する。そして「何か見つけたらこれに言えばいいんじゃな」と心得ると……。
「あさて、ひとまずは式神符をバラまいて捜索じゃナ」
 稲見之守はユーベルコード『式神符』を使用すると霊符で作られた式神を周囲へ放っていった。
(おそらく戦闘の痕跡があるじゃろて。あとはこの場所が陰陽都市計画の一端だとか、マヨイガの勝手口だとかでは困るのでその辺も気にしておくか。ワシの第六感はあの工場を怪しいと告げておるが……それで他を見落とすのももったいないのでナ)
 こういう世間から孤立した場というのは往々にして悪党が利用を企むものだ。稲見之守は眞由璃以外の痕跡にも注意を払って探し始めた。

●残留思念
 その頃、レーゲン・シュトゥルム(黒風白雨・f36427)はひとつの建物に入り込んでいた。
「玄関の鍵が開いていたのでもしやと思ったのだが……ここにも痕跡は無さそうだな」
 埃が積もる室内を見て去ろうとしたレーゲンだったが、奥の部屋に強い残留思念が渦巻くのを見つけて足を止める。
 部屋に着くとその思念は机の引き出しからあふれ出ていた。引き出しを開けるとそこにはかつての住人が残したノートがある……。そこには、勤め先の工場が売り上げが落ちる中で利益を得るべく無茶な長時間労働が続いていることが綴られており、当時の工場長への恨み言が連ねられている。
「成る程……これがこの町がゴーストタウンとなった下地か」
 人が居なくなっただけに留まらず、残留思念が多く集まるという下地がある事でゴーストとなっていくのだ。そして、今であればここにオブリビオンも加わるのだろう。
「……あの工場は思った以上に負の思念が集まっているかもしれないな」
 レーゲンは家屋を出るとこう呟いて、工場の方へ歩みを向けた。彼女が纏うゆるやかな竜巻――ユーベルコード『シルフィード・クローク』は、目と耳と鼻による感知からその身を逃れさせる。それによって野良犬のようなオブリビオンとの戦闘を未然に防ぎ、スムーズな移動を実現していた。

 レーゲンは戦闘の形跡や残留思念を眞由璃捜索の重要な手掛かりとして見ている。なぜなら前回の戦いで眞由璃は武器を破壊されているためだ。なので武器となる詠唱兵器を現地調達している可能性が高い。
 そして少しでも強い武器を得ようとするならば、残留思念からの詠唱兵器の生成は一度や二度ではないはずだ。強い残留思念がある場所は危険であることも多く、段階的に強い残留思念を探しているのではないかとレーゲンは考える。

 時間に取り残された、荒れた廃墟に残るかつての生者たちの想い。
 それは、この廃墟の町で残留思念という生きた証を確かに残していた。

●天命
 酒井森・興和(朱纏・f37018)は工場内を探索していた。それは第六感を持つ者が一様に怪しいと感じたこの工場を、興和もまた気になったためだ。何よりこの周辺の土で足跡を見つけている。
(以前は蜘蛛族を感知する事も出来たけど今はもう第六感が頼りの様だ……)
 猟兵へ覚醒した事で鈍った蜘蛛族感知の能力。その損失が今は口惜しい

 工場の中は別の機械の組み立て工場の様だった。レールやクレーンやベルトなど様々な巨大な機械が並んでおり、内部は長い年月を経てなお、鉄と機械油の匂いが濃い。
 その鉄と油の臭いに交じって血の臭いが微かにすることに興和は気が付いた。山での狩猟で獲物を追う際に、または仕留めたそれの下処理をする際に嗅ぐ臭いは不慣れな鉄と油の臭いの中で比較的慣れたものとして鼻腔をくすぐってくる。
 興和が臭いの元へと向かってみるとそこでは機械の隙間から残留思念が立ち込めていた。その思念の濃さは、この機械が人を飲み込む事故が一度や二度ではなかった事を示している。さらに暗視で目を凝らすとそこに詠唱銀の粉が落ちていた。
(国見の女王様はここに居られたか)
 興和はそう判断したが、ここからさらに何処へ向かったのかが見当つかない。
(国見の女王様がオブリビオンとして蘇りし事は知っておったが、こうして討たれず生き延びた国見の女王様も居られる……)
 世界に害を為すオブリビオンであっても、蘇る度に御心が異なってしまう存在だとしても。興和はかの葛城山の決戦を生き延びて銀誓館へと降りた身、それ故に女王の現状に複雑な思いが宿ってしまう。
「敗れたとは言え女王様が巫女も供も無く彷徨うなんて……」
 理不尽に世界結界に封じられ、目覚めて間もなく命を散らし、死後なお甦らされて、翻弄されて身を落す。これが天の与えし運命だとするなら、なんと酷な事だろう。

●群れの湧く場所
 その頃、工場の外の駐車場にマリーア・ダンテス(サイボーグの処刑人・f37225)が降り立っていた。
 彼女はユーべルコード『天使化・壱』で熾天使となると空へと舞い上がりオブリビオンの多い場所を目掛けて飛行していたのだ。この工場周辺は町中より野良犬のようなオブリビオンの数が多い。
 マリーアが降り立つと野良犬のオブリビオンが吠えながら集まって来きた。どうやらユーベルコードによる威圧を受けた一部が興奮状態にある様だ。
「神敵がおかわりし放題たぁ誰得だよ、ったく」
 マリーアはくわえていた煙草を吐き捨て、ヒールで踏みにじると『聖別されたライフル』で数匹撃ち抜く。
「敵が多く来る方に行きゃあ、本人か、本人の狙ってるもんか、どっちかにゃあ行きつくだろ……かーっ、面倒くせぇ話だぜ。とにかく始めるとするかぁ」
 そう言うと、マリーアは再びユーベルコードで威圧を放つ熾天使へと変わった。

「……神を讃えよ、神の意思に従い戦う兵に神のご加護を」
 マリーアの放つ威圧がさらに野良犬たちを刺激する。脅えるものと、攻撃的になるもの。その反応は様々た。そのうち約半数は脅えて無力化されている様だがそれはマリーアにとって慈悲を向ける相手ではない。
(それは悔い改めた子羊へ向けるもの)
 マリーアは野良犬のようなオブリビオンへ容赦なく威圧と神罰を与えていった。この戦闘音を聞きつけて、キティーとムゲンもこの場に加勢する。
「加勢するわ! 町中はだいたい見たし、あとはここだけだもの!」
 キティーはユーべルコード『人形劇・コープスダンス<<パペットマペットコープスダンス>>』を発動させた。それにより四百五十をゆうに超える小型の人形(パペット)が現れる。それらは刃物を手に持ち野良犬のようなオブリビオンへと襲い掛かっていった。
 ムゲンもオブリビオンを蹄で蹴散らすと白銀の騎乗槍で突いて止めを刺す。
「私も加勢します。しかし、随分多いですね。まるでここが残留思念の出所であるかのような……」
「間違いありません……空から見ても、ここが最も多いです……!」
 アリスが翼をもつ騎士たちを従えて降りてきた。アリスも町中の捜索を一通り済ませたのだろう。
「眞由璃様! 近くにいるの!? 聞こえたら返事をして!」
 キティーが工場の方へ向けて声を投げるが返事はない。
「よし、私! 探してくる!」
 この場の戦力は十分だろうと判断したキティーはここを離れて工場内を探索することにした。蜘蛛糸を工場の窓へと放つと二階から中に入っていく。
「騎士さん、彼女を助けてあげてください……!」
 そしてキティー後をアリスの翼をもつ騎士が数人、追っていった。

●縁結び
 工場と住宅地を繋ぐ道路。そこからひとつかふたつ路地に入った所に商店が並ぶ商店街が存在する。
 どれも錆びついたシャッターが下りていて人の気配は見られない。かつては活気に溢れて栄えていたのだろうか……?
 そんなシャッターが並ぶ通りを燦、爛、シホの三人が歩いていた。三人は見つけた足跡を追っている。それは、アスファルトを突き破って生える草を踏み倒した足跡だ。

「ふあ……んん、体温が落ちたのと、今日シホのお弁当あるからお腹減らしてて、眠くなってきたわ」
 そう言う爛はすでに目が閉じており、歩きながらフラフラしていた。食事を抜いてきた所に寒さも加わって、どんどん体力を失っていた様だ。その様子にシホと燦は慌てた反応を返す。
「って! 敵地で寝ちゃダメですよ。ちょっと待って」
「爛……朝ごはんは食べなきゃダメでしょ、めっ!」
 シホは『『聖鞄』フリッタラリア(Fritillaria)の掌トランク_αPW』に入っている設備でお湯を沸かした。その間、フラフラしている爛を休ませてココアを淹れると爛へ渡す。
「ココアが染みるわ。ふう……」
 体が温まったことで爛の体調も戻って来た様だ。ここで燦はふと思ったことを二人に聞いてみた。
「二人の直感に何かねーの? 眞由璃と縁の糸が繋がっているだろ、縁は力だぜ」
 勘どころで言うならば例の工場がやはり怪しくはあるのだが、縁としての直感は――。
「あ、見て! お稲荷さんだわ! ちょっと縁を感じるかも」
 ふと見れば横道に鳥居が建っていた。どうやらこの先に商店街の商売繁盛を祈願した神社がある様だ。しかしこの町は人が居なくなって長い年月が過ぎている。管理する人が居ない今、荒れるに任せる状態だろう。
 そんな鳥居の向こうの境内から、燦が音がすることに気が付いた。
「あれ? 誰かいるぞ?」
「……行ってみましょう。足跡も丁度この先に向かっている様です。最も、出て来る足跡もあるので音の主は眞由璃さんでは無いかもしれませんが」
 三人が神社の境内へと入り、音のする先を探してみると……そこでは稲見之守がゴーストをしばいていた。

●陰陽都市計画、その一端
「大丈夫じゃヨー。ワシ怒ってないから、ほんと怒ってない。腐った柿を顔面にぶつけてきたこと、許すから」
「ぴぇぇぇぇぇ、すすすすみませんー」
 稲見之守は足元から伸びる漆黒の影『影業』で一体のゴーストを捕らえた上で、霊符の束でぺしぺし叩いて脅していた。
 それはふわふわと空中を漂うごく普通の地縛霊。姿は丸く、三角形の布を頭につけたスタンダードなお化けの姿をしており、暗闇でうらめしやと囁いてくるゴーストだ。
 これはオブリビオンではないただのゴーストなので放置しても問題はないのだが。……絡んだ相手が悪かったですね。
「稲見之守さん、来ていたのですね」
「ン、久しいの。もうちっと情報集めたら連絡しようと思っとったンじゃが丁度いいナ。一緒にこやつの話を聞いていくといいゾ」
 シホと稲見之守がやり取りしていると、遠距離でのやりとりはもう不要だとして『炎帝鷂』が一羽爛へ戻っていく。
「――で、ホーリーゴーストちゃんよ。ワシに喧嘩売って来たことはまーったく全然気にしちゃおらんが。この場所のことや、長い黒髪で赤眼のセーラー服姿の女子について知ってることがあったら教えてくれんかのう? んー??」
 ぺしぺし。
「ぴぇっ……! 言います、言います」
 彼はこの地にずっといる古株のゴーストで、この神社への御参りで向けられる思念が集まって生まれた存在であるらしい。
 彼曰く、黒髪で赤い瞳の土蜘蛛は確かにここに来たそうだ。その時に神社の裏に設置された何かをひとつ壊していったらしい。
 見れば確かに、木製の残骸がそこにはあった。ゴーストが言うにはそれはひと月以上前に現れた者が設置していったのだという。これが設置された後に、この地を守る様にオブリビオンが現れ始めたのだそうだ。
「ふむン、どうやら当たりじゃナ」
 ここには『劉・叔成』の『陰陽都市計画』に関する何かしらの手が入っていたのだ。眞由璃がここに来たのは、この土地に設置された仕掛けを破壊する為なのだろう。
 しかし、ここで爛が疑問を口にする。
「でもこれじゃ行方不明の原因は全部わからないよね……? コレを壊すだけならすぐ帰って来るだろうし……」
 その時、ホーリーゴーストが再び脅えだす。それは神社の隣にある茶屋の建物から野良犬のようなオブリビオンが複数出てきたためだ。

●繋がる線
「燦、奥の方は私が狙撃します。近くはお願いできますか?」
「任せな」
 シホと燦が素早く対応を開始する。シホはサイレンサーをつけた二丁の『聖銃』で奥のオブリビオンを狙い打った。その間に手前のものは――。
「静かに速やかに――、一撃で決める」
 ――燦が風属性の短剣『アークウィンド』で仕留めた。
「探偵というよりシーフか暗殺者ですね」
「忍び足も暗殺も探偵の嗜みですー」
 軽口を叩き合う二人。その横で爛は茶屋の前の椅子にちょこんと座る。
「またこんな場所でお茶できたらいいのに」
 ぐぅ。と鳴るお腹。
「……何よ、別に腹ペコってわけじゃないからっ! ……あれ?」
 その時だ。爛の視界の向こう、工場の敷地にある大きい木の下で一羽の『炎帝鷂』がグルグル回っているのが見えた。
「あれ眞由璃さんに渡した子だよ!」
「あそこは……電話線を通してみた時は、木の根元にお社と鳥居がありましたね」
 シホは作った地図を広げながら、記憶を掘り返す。その地図を稲見之守も覗き込み。
「なるほどナ、ここと、ここ。社の位置を線で結び、そして伸ばしてゆくと……あの大きな土蜘蛛の檻のあった土地と地脈で繋がってそうじゃ。ふむン、もしや地脈を通して他所の町へ残留思念を送り込んでいたのかの?」
 だがその仕掛けのひとつは眞由璃の手で破壊されている。そのため近辺の都市が狙われる可能性はとても小さくなっているだろう。

 眞由璃の居場所が分かったことで爛に元気が戻って来た。
「あの木のところに急ぎましょう!」
 ぐぅ。と再び鳴るお腹。
「早く合流してお弁当食べたいとかじゃないからね!?」
 爛は真っ赤になって否定した。

●眞由璃の行方
 町中の捜索を終えた猟兵たちが、残る捜索場所として工場跡地に集まりだす。そこはこの土地を正常化させまいとするようにオブリビオンの数が多くなっていた。
 だがその数も猟兵との戦闘で減っていき、駐車場での戦いはやがて制圧という形で終結する。
「これだけ減ってきたなら私たちも周辺や内部の探索に加わっても大丈夫そうですね。ここで敵を引き付ける必要も無いでしょう」
 ムゲンはそう言うと工場の敷地内へと駆けていった……そして、直ぐに何かを見つけて戻って来る。
「皆さん、ちょっと来てもらえませんか」

 そこには小さな稲荷神社があった。商売繁盛を祈願して敷地内に作られたものなのだろう。立派な木が近くに生えており、社と鳥居はその根元に立っている。
 そして……その木の太い枝に輪のついた縄が垂れ下がり、朽ちた人骨が転がっていた。
 首を吊った痕跡を中心に強烈な残留思念が渦巻いている。

「この亡骸はここを任されていた長だった方のものかもしれません」
 興和が姿を現した。彼はキティーと一緒に工場の建物から出てきたところだ。これまで工場の中を調べていたのだろう。
「工場内をしばらく調べていました。詳しい数字の意味は存じませんが、読み取れた内容からは組織の維持がうまくいかず無茶な運営から犠牲が出ていた様でした。その責任を取らなければならなかったのでしょう」
 その言葉に、芽亜が推測を繋げる。徒歩で町中を探していた芽亜はつい先ほどここに到着したばかりのようだ。
「であれば、これだけの強い思念です、何かしらゴーストかオブリビオンになっているはずですが、その姿が見られない……。つまり特殊空間に隠れており、その入り口が近くにありそうですね……もしや眞由璃さんは特殊空間の中に?」
 
 そう問う芽亜に、ムゲンはこう返す。
「私たちも実際に入ったところを見たわけではありません。ですが町中も工場内にも居ないとなれば、可能性は高いでしょう」
 マリーアも眞由璃の行方について考えるが、断定する材料は少ない。
「共存を選んだと聞いた以上、争乱目的で潜んだわけではありますまい。神敵が勝手に彼女へ集まってきたのか、神敵を倒すために神敵が多く集まる場所に向かわれたのか、どちらかではありましょうが……」

 そこへ燦、爛、シホ、稲見之守、そしてレーゲンの五名が到着する。
「眞由璃さんはそこよ! この前渡した『炎帝鷂』がいるし、間違いないわ!」
 爛はそう言って、木の陰に隠れていた炎の人工生命を回収した。
「おいで『炎帝鷂』。ここで眞由璃さんとはぐれちゃったのよね?」
 これで芽亜は合点がいったようだ。
「なるほど。以前別れる前に『陰陽道を用いた組織的な動きを追ってみる』と言っていました。この周辺の地形を探るうちに特殊空間に引きずり込まれてしまったのでしょう」

●特殊空間の中
 巻き込まれたのか、突っ込んでいったのか。……いずれにしてもこの社の付近を調べる必要がある。
 爛とシホは亡骸に手を合わせると社へと近づいた。
「このあたりを調べればいいのかしら」
 と爛が恐る恐る社を覗き込めば、その姿が吸い込まれる様に消えてしまう。
「「爛!?」」
 燦とシホが慌てる横でレーゲンもひょいと社を覗き込むが今度は吸い込まれなかった。
「成程。遺体に手を合わせてから近づくと取り込まれるという事か、では私も先にいかせてもらおう」
(死ぬまで戦い続ける矜持を否定はしない。それが『約定を違えない』と言う大義名分の下に行われる、迂遠な自殺でなければな。……心配だから、国見・眞由璃に会いに来のだ。躊躇する理由はない)

 レーゲンが特殊空間へ入り込むと、そこには先ほどあった廃工場が新品のように綺麗になって明かりがついていた。そして内部からはけたたましい駆動音が鳴り響き、設備が稼働していることを知らせて来る。
 先に吸い込まれた爛も無事で、すぐに他の猟兵たちも現れて全員がこの場で合流した。

 そんな低く唸る機械の音に負けぬように芽亜の高い歌声が通り抜ける。それはこの場に味方が来たことを眞由璃に伝えるため。
(歌は分かりやすく、銀誓館学園校歌にしましょう。気付いてくれるとよいのですが)
「眞由璃様ー! 何処ですかー!」
 キティーも眞由璃の名を呼ぶ。すると。
「あなた達、一体どうしたのですか。こんな所で」
 社の裏手からひょっこりと『国見・眞由璃』が顔を出したのだ。見れば社の裏に小さな土蜘蛛の巣が作られていて、彼女はミニチュア視肉の肉をもっちもっちと食べている。
「眞由璃様ー! 良かったー!!」
「あら、また会いましたね」
 心配して駆け寄るキティー。眞由璃様はキティーを抱きとめた。
 一先ずとしてアリスは様態を気にするが……。
「怪我などは……されていないのでしょうか……」
「ええ、大丈夫です。心配をかけてしまった様ですね」
 返答を聞くに大丈夫そうである。キティーは皆が抱く疑問を眞由璃へと問いかけた。
「眞由璃様? どうしてここに来たの?」
「それは、かつて檻の周辺に風水の乱れを誘発する組織的な動きがあった事と関係しています。その時の見知らぬ祭壇の設置場所を地図で見て線で結ぶと延長線上に不自然な土地があったので、それで調べていました」
「すると今回は、神敵を倒すために向かわれた所で思わぬ大物を引き当てたという事なのですね」
 マリーアの結論に眞由璃は頷いた。
「正しくその通りです」

●再会
 続けて芽亜も心配と安堵を伝えた。
「急に消息が途絶えたものですから心配をしていましたよ。無事な様で安心しました。ところで巣を作っていたと言う事は、ここは安全なのでしょうか」
「心配をかけてしまいましたね。ここが安全かついては、どうやらその様です。この社の周辺にはこの特殊空間内のオブリビオンは近寄りません。恐らくこの空間の主にとって特別な意味があるのでしょう」
 眞由璃の話によるとここには二足歩行の狼のオブリビオンが居るらしい。
「安全であれば結構。では、いちどここで休憩にしましょうか」
 そう言うと芽亜はビニールシートを広げた。芽亜の用意したスイーツとお茶、そしてシホのお弁当とお茶がビニールシートに広げられていく。
「これはこれは、とても嬉しい物資です。助かります。この特殊空間の主が居る場所の目星まではついたのですが、疲労と空腹で疲れてしまったので、こうして野営して食事をしていた所だったのですよ。以前もらったこの子の事も、とても助かっています」
 そう言うと眞由璃は肩のミニチュア視肉を撫でた。

 食事とお茶で一息つく中で、軽く自己紹介の流れになる。まずは燦。
「四王天・燦です。シホと、爛の友人です」
(敵意はねーけど気まずさも手伝ってまだまだ他人行儀さ)
「はじめまして……なのでしょうか。アリス・フェアリィハート、といいます……。飛び入り者で……おこがましいかもですけど……私にも、共存の手段を探すお手伝いができたらと……」
 二人はどちらも過去に『別の』眞由璃と会い、そして討伐している。原則オブリビオンは蘇るたびに記憶が戻るためこの眞由璃とは面識はないのだが……それでもいくらかの気まずさが二人にはあった。
 そして、ムゲンが挨拶をする。
「私はムゲン・ワールドです。宜しくお願いします」
(後に危険になるかもしれないとはいえ、折角生かす事を猟兵が決めたんだ。こんなつまらないところでは殺させない。最期まで見届けなくては)
「私はマリーア・ダンテスと申します。神の意志に従って神敵を討ち、迷える子羊に手を伸ばすシスターの役目を担っております。神は悔い改めた子羊を見捨てませんから」
 二人もそれぞれの思いでこの場に来ていた。そして、最後に興和の番となる。
 眞由璃の視線が向いた時、彼は本能的な緊張と敬意から頭を下げて名を名乗った。
「初めまして。国見の女王様。鋏角衆の酒井森と申します……」
「その様に畏まらずとも良いですよ。ここに在るのは過去の影法師――」
 興和の緊張した様子に対して、眞由璃は遠慮を示そうとしたが眞由璃は興和が携える武器に気が付いた。それは、忘却期より以前の土蜘蛛の一族の御業で作られたもの。つまり――。
 それに気づいた眞由璃はいちど口元を引き締めて、口調を女王のものに変えた。
「――いえ。良くぞ生き延びてくれました。この再会を嬉しく思います。そして此度の危機へ駆け付けた事も賞賛に値します。大義であった」
 そう告げる彼女の目と口元は柔らかく微笑んでいる。それは立派に成長した同胞の姿を嬉しく思い、そして心から安心している様であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ソードヴォルフ』

POW   :    剣狼斬
【日本刀または体から生える刃】が命中した対象を切断する。
SPD   :    無人刀
【刀に宿る残留思念の励起】によって、自身の装備する【日本刀】を遠隔操作(限界距離はレベルの二乗m)しながら、自身も行動できる。
WIZ   :    剣狼の呼び声
【体から生える刃】で武装した【狼型妖獣「剣オオカミ」】の幽霊をレベル×5体乗せた【巨大「剣オオカミ」】を召喚する。

イラスト:天野 英

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●人の世が残すもの
 しばしの休憩。
 安全地帯に広げられたビニールシートでお弁当とお菓子をつまんだ一行は、食後のお茶で一息ついていた。
「美味でした。見たことのない料理が多く、楽しめました。からあげ、というものが食べやすくて兵糧にも良さそうですね。さんどいっち、とやらも初めて食しました。不思議な食感です。そして、そこの菓子も羊羹にも劣らぬ甘みでいながら軽い食感。まどれぇぬ、といいましたか」
 眞由璃は食べたものの感想を述べる。そして茶を一口飲むと、ここを抜け出すために倒すべき特殊空間の主の居場所の説明を開始した。

「この建物へ入った奥の扉。そこが空間の主が居る間でしょう。部屋より漏れ出る強い呪いが、周辺の土地を汚染するそれと似ていると感じました。ここを抜け出す為には、その部屋へ到達する必要があると考えます」
 枝でかりかりと描かれた図を見るに、工場内を突っ切って奥の部屋にたどり着くのが目的となるだろう。それにあたり障害となるのが、二足で立つ狼のオブリビオン、『ソードヴォルフ』となる。
「数が多いのが厄介です。……ですが、あなたたち猟兵の力なら難なく退けられるでしょう。あなたたちの持つ戦略級能力者に匹敵する力は私も身を持って知っていますから」
 なお、眞由璃によると建物ごと壊す試みは駄目だったらしい。この特殊空間の独自のルールにより工場とその設備には傷すらつかない様だ。そして窓も開かなかったという。
 最後に眞由璃はこの特殊空間内で稼働している工場の中の様子を伝えた。
「仕掛けが動いているため、巻き込まれないよう気をつけてください。鉄と油の臭いと、音がただ不愉快です……こういった場所が、呪いや病を撒くのでしょう。そこでは鉄で出来たものを組み立てている様ですが、用途や目的は知りません。興味もありません」
 そう言うと、眞由璃はこれ以上は工場について言及しなかった。

 この空間は残留思念が残した無念が再現したもの。そして生産される工業機械はそのまま虚空に消えるのみである。何故なら失われた全盛期が再現されているだけなのだから。
 過去を懐かしみ、慰めるように動き続ける工場。そこに侵入者を妨害するようにオブリビオンが立ち塞がる……。
御狐・稲見之守
&&&鉄を取れば山は禿げるし染物は川を濁す。
災いを撒く云うて古来よりその営みには付き物であるが
その功罪を経たこの時世ではむしろ災いを撒かんよう意識は高いゾ。
コケて痛い目見てからそれを識るのはご愛嬌。

いずれ意識高過ぎてその贖罪にコロニー落としを企む者や
踊って人類に反省を促す者も現れたりしてナ。
冗談はさておき、不愉快ならばそれはそれで良いが
そこで止まらず事物を問うて考えて識ることも大事ではないかナ。

そうそう、古竜の骨で作った御守りを渡しておこか。
異門同胞の類を退けるのに少しは役立つじゃろて。

UC破魔矢、さてそれでは除霊解体工事と参ろうか。
いやァ他人が作った呪い仕掛けをブッ壊すのはワクワクするのう。


アリス・フェアリィハート
&&&
アドリブ連携歓迎

私も
恥ずかしながら
過去の…『以前』の
眞由璃さんを…
全てを知る訳では
ありません…
けど

『今はただ…皆さん方と共に…
眞由璃さんのお力になれれば…!』

【WIZ】

味方と連携
翼で飛翔
【空中機動】【空中戦】も行い
仕掛けに気をつけ
敵に囲まれぬ様
立回り

ヴォーパルソードに
【破魔】を込め
剣から
光焔の【斬撃波】を放ち
【切断】や【なぎ払い】等の
剣戟や

【ハートのA(アリス)】も
展開
【破魔】の魔法【誘導弾】の【一斉発射】に

UCで
『破魔の光の竜巻』発生
纏めて攻撃も
(味方を巻き込まぬ様)

敵の攻撃などは
【第六感】【見切り】【残像】
【結界術】【オーラ防御】で
防御・回避

眞由璃さんに
危険が及ぶ時は
【結界術】で防護


儀水・芽亜
&&&

神楽鈴を振り神楽歌を「歌唱」。それを詠唱に炎の「属性攻撃」と「範囲攻撃」で時限発火の炎をばらまきます。
工場が壊れないなら幾ら暴れても構いませんね。

眞由璃さん、お話よろしい?
眞由璃さんは人類史の一部を学んだそうですが、それは特に世界が軋んでいた時代です。
例えば、土蜘蛛の檻に学んだ歴史に出てくるような覇権主義者がいましたか?
己と周囲が平穏なら幸い。それが普通。
戦争を起こすのは一部の野心家。民はただ命じられるまま。
七百年前もそうではなかったですか? 便利な世になっても、ヒトの中身はそう違いません。
それでもヒトを信じきれません?

お願いです。ヒトをよく知ってください。
昔の銀誓館の轍を踏まないよう。


酒井森・興和
&&&
女王様のご無事も確認出来て安堵したよ
目的地までに剣狼がいるのか
僕もお役目を果たそう

>敵
初手、三砂を手に特に敵方向へUC使用
遠隔操作の剣は【咄嗟の一撃、なぎ払い】で対応
動きの鈍った個体から狙い飛斬帽を投げ【追撃】
近接可能な個体へは三砂で【怪力活かし重量攻撃】+ツルハシ部で引っ掛け近付く敵へ投げ込み【敵を盾にする】

>現在の事
今の文明を操る同胞もいますが僕自身は疎くて…
今の世は電気や通信を要に僕らの知る交通とは桁違いの輸送ですぐに世界と繋がる
この工場もその一環でしょう
山を崩し毒や病を撒いた頃を戒めに今は無毒化の技術や工夫もあると

他は銀誓館が10年程前に来訪者人魔が共存する仕組みを築いて、今に。


ムゲン・ワールド
【莉出瑠(f36382)】&&&

 さて、眞由璃さんと話をするチャンスではあるのだが、……正直レポートを見る限り私があえて声をかけるべき事もないように思うな。否定しなければならないほど彼女の見解が間違っているとは思えない。
 ここは、戦闘に専念し、他の人達が対話する時間を稼ごう。

 莉出瑠、ここからは戦闘だ。力を貸してくれ。
 
 ま、待て、莉出瑠、誤解だ。彼女とは決してそう言うのではない。

 ※ムゲンは莉出瑠をただの相棒だと思っているが、ずるい人間なので向こうが恋人だと思っていることを否定せずにいる

 さて、やることはシンプルだ。悪夢クラスターで本体も剣オオカミも纏めて眠らせる。
 近づく敵は頼むぞ、莉出瑠


有栖川・莉出瑠
【ムゲン(f36307)】&&&

 おー、アナタ、呼ばれた、ワタシ、すぐ、参上!

 ※ムゲンの事をアナタと呼ぶ

 うー? アナタ、ワタシ、来るまで、他の女、お楽しみ、だった?

 ※莉出瑠はムゲンの事を恋人だと思っているので他の女に嫉妬する

 うー、怪しい。
 良い。ワタシ、アナタ、最高、パートナー、また、分からせる。
 UC、発動。アナタ、想う、心。サキュバス・キュア、から、サキュバス・ドール、大変身。

 【アリスランスに装着した軽機関銃】、【制圧射撃】。アナタ、撃ち漏らした、敵、牽制、してく。

 アナタ、近づく、敵、【アリスランス】、【ランスチャージ】。
 そのまま、【蛇の尾】、絡みつかせて、噛み付かせる。


キティー・アレクサンドル
&&
複数UC使用

■心情
通してほしいなぁ…このオブリビオンさんたちとお話出来るならしたいかな
戦わずに通してもらった方がいいし…戦いになったら眞由璃様を守ろう!
戦いになるならみんなをサポートしなくちゃ!
でも…過去を想う気持ちもわかるなぁ…私も過去を大事にしていたら家出しなかったのかな(ここの描写有無はおまかせで)
ってぼーっとしてちゃダメ!みんなのサポート!

■行動
もし戦闘になっちゃったら
UC【スパイダーヒール】の蜘蛛糸の飛び移りをしながら指定UCで敵の動きを妨害したり味方が攻撃されそうな時に私が味方を動かして避けさせるわ!
味方が怪我とかしちゃったらUC【スパイダーヒール】の蜘蛛糸で治療していくわよ!


マリーア・ダンテス
「ケンケンねえ…かわいく言おうが神敵だろ?」
「やぁっと裸族でも恥女でもない証明ができる神敵が山盛りなんだ。うれしいに決まってるだろ」
ガトリングガンで威嚇射撃
敵を寄せ付けないようにしながらUC使用
体表8割以上露出のシスター服で魔炎の継続ダメージUP
周囲の剣狼を焼き尽くす

戦闘後は眞由璃と話す
「世界はどんどん変わります。ステイツでは60年代、白人以外は人扱いされなかった。80年代、キリスト教史に違うからとまだ進化論を教えない州があった。同性婚を認めても性同一障害への不理解があった。この世界に生きるなら、世界の加速度的な変化に目を向けなければなりません。この工場含め、今に興味を持たれ生きられますよう」


狐裘・爛
【狐御縁】
&&&

なあに? ダブルデート、両手に花じゃ足りないって言うの? なんてね、シホが怖い顔しちゃいそうだからいじわるはしないわ、ふふ。…ホントにしないわよ!
私が求めるのは対等な友人関係よ。保護じゃなくてフォローし合うの。そういう睦まじい方が綺麗だと思わない?

私が使うのは乖炎戯・魂魄凍結理衣。簡単に言うと、私の体を炎に変える技よ。
空に瞬く花のような、この私に見惚れてちょうだい。できないなら丸こげにしてあげるから。

記念写真ね。なるたけ綺麗に撮ってちょうだい。せーの、ちょりーっす♪
てへ♪


四王天・燦
【狐御縁】
&&&

眞由璃は今までどんな食事してたんだ?
GTを出たらご馳走するからとデートに誘うぜ
皆でねっ
デートとは英気を養うものと言いくるめます

工場が丈夫なら好都合
敵の渦中にカウントダウンを放り込み真威解放するぜ
たーまやー
花火は知ってるかな
眞由璃の興味を探るよ
グルメ・行楽・麻雀etc

無暗に寿命を削るなよ
清薬は特別だから一粒だけだぜ
もっと特別が欲しくなったとシホにねだるのでした

爛とシホに眞由璃に何を望むか聞くよ
アタシは女王の誇りは胸に、されど過去に縛られず眷属の外側にも愛と興味を向けて欲しい
できるよ
既に友達いるじゃんと爛とシホを見る

写真は気まずさが僅か滲むぜ
アタシのちょりーっすが爛にパクられた!?


シホ・エーデルワイス
【狐御縁】
&&

先日の戦いで壊れた眞由璃さんの赤手が
残骸でも持っていれば【復世】で修復

使い慣れた武器の方が良いでしょう


戦闘は眞由璃さんの援護を優先
敵の顔付近を狙って刺激臭と塗料の目潰し誘導弾を射撃

負傷者が出たら【復世】で回復

眞由璃さんがUCを使ったら
燦の『清薬』を分けて貰えないか相談

特別なのは帰ってからね


燦の言うデートは交際の事ね
(燦にちょっと焼餅)

(ぼっそと)…爛の意地悪…

ちょっと膨れて見せるも本気にしていません
眞由璃さんに仲の良い友人がどんなものか見せるのが目的


眞由璃さんに何を求めるかですか…
漠然としたイメージになりますが
未来に個人的な楽しみを見つけて希望を持って欲しい
かしら

例えば好きな音楽やお菓子を見つけるとか
音楽は、いきなりハイカラなのは難しいでしょうから
昔からある日本民謡を和風ロックにアレンジした物とか
を紹介できればと思います
お菓子は…抹茶パフェという甘味でも勧めてみようかしら


あとは
皆で記念写真を撮っておきます
スマホの使い方を教えるのも兼ねて撮って
ホーム画面に設定するのも良いかも


レーゲン・シュトゥルム
&&

戦闘では【浄化】の力を込めた【ヘヴンリィ・シルバー・ストーム】を発動し味方を支援する
敵の攻撃は【クイックドロウ】で迎撃だ

そう言えば国見・眞由璃
あなたと私達とで認識に齟齬がある様に感じているのだが少し良いだろうか?

例えばこの騒音を奏で、鉄と油を香らせる仕掛けだが…
特殊空間という前提を加味しないのであれば、生み出す物は呪いではなく寧ろ文明の福音だったんだ
匂いや音に不快感を覚える事自体を否定はしない
ただ、これだけは理解して欲しい
人はあなたが生きていた時代に比べれば幾分か戦乱から遠ざかり、自然との調和を模索した文明を築いているんだ
だから切って捨てるのではなく、広い視野で今の時代を見て欲しいと思うよ



●巡り、巡って
 特殊空間の入り口となっていた工場敷地内の小さなお社……その周辺だけは安全地帯となっていた。
 この場所に何があるのかは解らないが、その社で命を断った者が残した思いは銀の雨を浴びて変質し、形作った特殊空間の中でかつての工場を稼働させている。
 この社を離れれば『ソードヴォルフ』が襲い掛かかってくる様だ。それは侵入者を排除するためか、それとも喰らう為か。いずれにせよこの空間内にいるのはゴーストではなくオブリビオンだ……。銀の雨が降る世界。この世界のオブリビオンはゴーストと交じり合っている事が多い。

(過去……過去、かぁ)
 キティー・アレクサンドル(ドールコレクター・f36894)はふと考えた。
(……過去を想う気持ちもわかるなぁ……私も過去を大事にしていたら家出しなかったのかな)
 そう考えながらキティーは黒猫の人形を抱きしめる。この人形は自身の出身を明かさぬ彼女が持ち歩く、大切なもの。
 そしてシホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)はお弁当とカップを片付けながら眞由璃へ心配していたことを伝える。
「やっと逢えました。元気そうで良かったです」
(独りでオブリビオンの巣窟に挑むのは心配でしたから)
 早く合流できて良かったと、安堵をしていた。その安堵はレーゲン・シュトゥルム(黒風白雨・f36427)も同様で。
(特殊空間に一人で取り込まれるというのは半ば遭難に近いだろう。このような無茶を今後も繰り返さなければ良いのだがな)
 手遅れになる前に間に合った事に一先ず安心をする。これだけ戦力がいれば今回の空間を形成したヌシも倒せるはずだ。
「一息つけたところでそろそろ行こう。ここを出なければならないからな」

 広げたビニールシートをたたむと一行は社を離れた。目指すのはこの工場の入り口。しかしこの場を離れれば二足歩行の狼のオブリビオン、『ソードヴォルフ』が姿を見せる。

●敵との遭遇
 工場をぐるりと囲むようにある敷地内を進んでいくと、途中に数体の『ソードヴォルフ』が現れた。
 それは身体から刃を生やした二足の狼。かれらは犬のような唸りを鳴らしている。
(このオブリビオンさんたちとお話出来るならしたいなぁ……戦わずに通してもらった方がいいし)
 キティーは育ちが良いのか、どこか世間知らずな所がある。そのため相手を即座に敵だと断定することに躊躇していた。
「こんにちは! ここを通してくれませんか……え?」
 と挨拶して近づくキティーに対し『ソードヴォルフ』は刀を振り上げる。そして――。
「きゃあ!」
 ――勢いよく振り下ろされた。キティーは慌てて飛び退くが切っ先が脚のひとつを傷つける。これを合図とするかの様に周囲の植え込みからも『ソードヴォルフ』が飛び出して襲撃が始まった。
「怪我は私が治します」
 シホは刺激臭のある目潰しの塗料の誘導弾を二丁の『聖銃』から『ソードヴォルフ』へと撃ち込むことで敵の動きを止め、キティーに駆け寄った。そしてユーベルコード『【復世】世界記録の復元』を使用する。
「主の世界の記録に接続……、これより転写し復元します」
 世界の記憶を元にした復元を行う光がキティーの脚を治してゆく。その間、二人の近くの『ソードヴォルフ』は眞由璃が相手をしていた。
 詠唱兵器の薙刀へ凝縮した妖気を纏わせると、炎へ変えて叩きつける――。
「――ふっ」
 短く吐く息と共に繰り出されたのはアビリティの紅蓮撃。『ソードヴォルフ』は深手を負い魔法の炎に包まれて倒れた。眞由璃は倒れる相手に目も向けず、背後から迫る別の一体へと振り向きざまに刃を振るい、敵の刀を跳ね上げて返す刃で斬りつける。
 武器としての有効な距離は薙刀の方が長く、払うことに長けているため守りは硬い。紅蓮撃の代償としてアビリティが使用できなくなる封術という状態異常状態が発生したが、この戦闘ではさして問題ないだろう。

●阻むもの
 『ソードヴォルフ』と相対する眞由璃の、その背を護る様に酒井森・興和(朱纏・f37018)も前へと進み出た。
(女王様のご無事も確認出来て安堵したよ。……そして目的までの道なかに女王様を阻む者がいるならば)
 眞由璃が二体の『ソードヴォルフ』を倒し、そこに興和が進み出たとき眼前には道を塞ぐ様に剣の生えたオオカミが現れていた。巨大な剣オオカミと数十体の剣オオカミ。これらは『ソードヴォルフ』が呼び出したものだ。
 興和は飛び掛からんとする群れへとツルハシ状の武器『三砂』を振りあげて。
「僕もお役目を果たそう――八相、烈火」
 『三砂』を大地へと撃ち下せばユーベルコードによる高熱の炎が奔り抜けてソードヴォルフと剣オオカミを包み込む。その炎から多数の刀が飛来して興和を狙ったが、それは興和自身の『三砂』と眞由璃の薙刀が薙ぎ払い、叩き折った。
「敵方の第一陣はこれで終わりの様ですね」
 眞由璃はそう言って周囲を見渡した。
 植え込みから飛び出した分はレーゲンのクイックドロウの技能による早撃ちと、勘で気付き素早く対処をしたアリス・フェアリィハート(不思議の国の天司姫アリス・f01939)によって討ち倒されている。

「治療も終わった様ですし、敵が再び湧く前に入り口まで進みましょう」
 儀水・芽亜(共に見る希望の夢・f35644)がそう言って一足先へと進むと入り口前にも『ソードヴォルフ』が待ち構えていた。
 マリーア・ダンテス(サイボーグの処刑人・f37225)は背中に担いだ箱から『詠唱兵器・ガトリングガン』を出して。
「さっきより多そうだ。ケンケンねえ……かわいく言おうが神敵だろ?」
 そう呟いてマリーアが銃弾を放つ。そしてこの弾丸の雨で浮足立った群れへ、アリスが攻撃を仕掛けていった。

●工場入り口へ
 アリスは翼で空中へと浮くと、空色の光焔を纏う『ヴォーパルソード』を手に羽ばたいて飛翔する。
(私も……恥ずかしながら、過去の……『以前』の眞由璃さんを……全てを知る訳では
ありません……。けど)
「今はただ……皆さん方と共に……眞由璃さんのお力になれれば……!」
 すり抜けざまの刃が『ソードヴォルフ』を切り裂いた。そのまま空中へ上がったアリスが振り返ると、その周囲に空翔ぶジュエルのハート『【ハートのA(アリス)】』がきらりと現れる。
 ハート型の宝石は魔法の弾を一斉に発射して『ソードヴォルフ』を貫いた。他の『ソードヴォルフ』もマリーアのガトリングの弾でハチの巣にされて、骸の海へと還っていく。

 猟兵のもつ戦力に眞由璃は改めて驚愕を示す。
「あれだけの数をこうも一瞬で……やはり、猟兵とは強大な力を持っているのですね。あのまま一人でこの場にいたなら、私自身も危うかったかもしれません。ありがとうございます」
 オブリビオンとして蘇った彼女は、土蜘蛛オブリビオンを増やす能力を持っている。それに対し個としての戦力は特に高いというわけでもない。
 そのため配下を増やさないという約束はこの眞由璃の能力を制限していた。しかし土蜘蛛が生きる世界の滅亡を望まない彼女は、意志が変わらない限りは今後も制限を守るだろう。それ故に、今後も猟兵による助けが必要な場面が発生するはずだ。

 特殊空間の中に優しい雨が降り出した。ユーベルコードによる銀色の雨が全員の疲労を癒していく……それは浄化の力が込められており、眞由璃にかかっていた封術の状態異常も解除された。
 レーゲンのユーベルコード『ヘヴンリィ・シルバー・ストーム』だ。
「念のためだが、突入前の回復をと思ってな」

 現在位置は工場の入り口前。あとはここから中に入り、突破して奥の部屋へとたどり着くのみ――。

●それは丈夫な密室
「そういや、壊そうとしても壊れなかったんだっけ」
 四王天・燦(月夜の翼・f04448)の言葉に眞由璃は頷く。
「はい。中へ踏み込むのが手間でしたのでしばらく建物ごと壊そうとしていたのですが、いずれも駄目でした」
 先ほどの戦闘でもいくつかユーベルコードの巻き添えを喰らっていたはずだが、壁には傷すらついておらずこの空間の特殊性が伺える。
 その言葉を聞いた燦はニヤリと笑みを浮かべた。
「工場が丈夫なら好都合」
 その言葉に芽亜も同意してほほ笑んで。
「壊れないなら幾ら暴れても構いませんね」
 と、燦と芽亜はユーベルコードの準備を開始する。

 燦は持参した箱型時限爆弾の『カウントダウン』を取り出して扉から工場内へぽいっと投げて、ユーベルコード『真威解放・カウントダウン<<スリー・ツー・ワン・ゼロ>>』で巨大化させた。
 そこへ芽亜も『神楽鈴『Papagena』』を取り出してシャランと鳴らし、ユーベルコード『時限発火』と共に一定時間で炸裂する鴇色の炎を扉から放り込む。
「あ、じゃあワシもワシも。いやァ他人が作った呪い仕掛けをブッ壊すのはワクワクするの」
 と御狐・稲見之守(モノノ怪神・f00307)も霊符の束を放り込んで、霊符を破魔の矢へと変化させるユーベルコード『破魔矢』のための言の葉を紡ぎ始めれば。マリーアがユーベルコード『フェニックスキャノン』による不死鳥のオーラを工場内へと放り込んだ。
 マリーアの『フェニックスキャノン』も、体表の80%以上を露出するという条件を満たす事で威力が上がっている。服装に理由がある事の証明と、討つべき敵の大量撃破にマリーアはご機嫌だ。
「やぁっと裸族でも恥女でもない証明ができる神敵が山盛りなんだ。うれしいに決まってるだろ」

 最後に燦が扉をパタンと閉めて抑え込めば、工場内から轟音が鳴り響いた。
「たーまやー♪」

●堕落への懸念
 鳴り響いた轟音は三つ、燦の時限爆弾が三回爆発したのだ。
 加えて内部では炸裂する炎と消えない魔炎で埋め尽くされて、六百本もの破魔の矢が飛び交い内部に潜む様々なものを破壊して焼き尽くす……内部は、ともすれば地獄の方がマシな状態となっているに違いない。

「流石にヒビ割れくらいは出来るのではと思いましたが、本当に壊れないのですねぇ」
 芽亜がそう呟く傍らで、眞由璃は流石に言葉を失っていた。そんな彼女へ芽亜は言葉をかける。
「眞由璃さん、お話よろしい?」
「えっ、あ、はい」
 工場内に潜む『ソードヴォルフ』たちがじっくりと蒸し焼きにされていく間、猟兵たちは眞由璃が抱く現代への認識について言及を開始する。それらは眞由璃がこの世界で一時的でも共に生きるのならば修正しておきたい認識でもある。
「眞由璃さんは人類史の一部を学んだそうですが、それは特に世界が軋んでいた時代です」
 芽亜は続ける。
「例えば、大規模な土蜘蛛の檻に居た人々に学んだ歴史に出てくるような覇権主義者がいましたか? 己と周囲が平穏なら幸い。それが普通。戦争を起こすのは一部の野心家。民はただ命じられるまま。七百年前もそうではなかったですか? 便利な世になっても、ヒトの中身はそう違いません」
 芽亜は一般の人々と一部の野心家は別であると説明する。一部を見て殺し合うのが常だと思わないで欲しいのだと。しかしその内容には眞由璃はその内容に不安を示す。
「命じられるままである者が多いのならば尚更、より理性的な種族が治めるべきであるように思えますが……」
 人間の堕落と自滅への懸念が補強されてしまった様だ。けれど、眞由璃は次の言葉を加えて約束を違える意志はない事は強調した。
「……ですが、今は人を殺す事はしないと以前に約束しています。なのでかつて提唱した、破滅へ繋がる堕落を防ぐべく人間の天敵として在る形は、今は考えてはいません」

●戒めを経て
「そう言えば国見・眞由璃。あなたと私達とで認識に齟齬がある様に感じているのだが少し良いだろうか?」
 続いてレーゲンが言葉をかける。
「例えばこの騒音を奏で、鉄と油を香らせる仕掛けだが……」
 ……工場内部からは炎が荒れ狂う中でも機械が動き続ける音が聞こえてくる。
「特殊空間という前提を加味しないのであれば、生み出す物は呪いではなく寧ろ文明の福音だったんだ」
 レーゲンはそれを文明の福音と表現した。その言葉に、眞由璃は怪訝な表情を垣間見せる。
 レーゲンは言葉を続ける。
「匂いや音に不快感を覚える事自体を否定はしない。ただ、これだけは理解して欲しい。人はあなたが生きていた時代に比べれば幾分か戦乱から遠ざかり、自然との調和を模索した文明を築いているんだ」
 そこに興和も言葉を加えた。
「今の文明を操る同胞もいますが僕自身は疎くて……ただ、今の世は電気や通信を要に僕らの知る交通とは桁違いの輸送ですぐに世界と繋がる。この工場もその一環でしょう」
 その恩恵の大きさは一言では語り切れない。そして、大規模な土蜘蛛の檻での意見交換でも眞由璃が気にしていた人間の堕落と自滅についても興和は現在の状態を伝えていく。

「山を崩し毒や病を撒いた頃を戒めに今は無毒化の技術や工夫もあると」
「……それはまことですか」
 眞由璃は無毒化の技術や工夫に関心を示した。何故ならその改善が事実であれば抱く懸念がひとつ減るためである。
 これに稲見之守も説明を加えた。
「鉄を取れば山は禿げるし染物は川を濁す。災いを撒く云うて古来よりその営みには付き物であるが、その功罪を経たこの時世ではむしろ災いを撒かんよう意識は高いゾ」
 この話を聞いた眞由璃は話の内容を反芻するように、顎に手をあて目を細める。
「そうですか……そうなのですね……」
 まだ納得していない様子は見られるが、状況の改善が進んでいる事は受け入れた様だ。

●今への興味
 ここでマリーアも眞由璃へと言葉をかける。それは、人の世にあった変化について。
「世界はどんどん変わります。ステイツでは60年代、白人以外は人扱いされなかった。80年代、キリスト教史に違うからとまだ進化論を教えない州があった。同性婚を認めても性同一障害への不理解があった」
 常識や在り方は常に変わっており、かつてあった問題もひとつずつ解決されてきているのだと、そうマリーアは説法をする。
 迷える者が今をより良く生きられるよう導くのもシスターの務め。眞由璃が変化についていけず、道を誤りそうなのであれば手を取って方向を示さなければならないだろう。

 今回であれば、今の事を知ろうとはしたのだが情報の鮮度と更新に問題があった。それには興味の強さが関係している。
「この世界に生きるなら、世界の加速度的な変化に目を向けなければなりません。この工場含め、今に興味を持たれ生きられますよう」
 マリーアは最後にそう締めくくった。ここへ芽亜も同様の要望を伝えていく。
「お願いです。ヒトをよく知ってください。昔の銀誓館の轍を踏まないよう」
 稲見之守も一部にしか伝わらない冗談を加えつつ。
「コケて痛い目見てからそれを識るのはご愛嬌。いずれ意識高過ぎてその贖罪にコロニー落としを企む者や踊って人類に反省を促す者も現れたりしてナ」
「ころにぃ……? 何でしょうかそれは……」
「いやまあ、冗談はさておき、不愉快ならばそれはそれで良いが、そこで止まらず事物を問うて考えて識ることも大事ではないかナ」
 そしてレーゲンも。
「そうだな。切って捨てるのではなく、広い視野で今の時代を見て欲しいと思うよ」
「……分かりました。あなた達がそこまで言うのであれば、少しは人里に交わることも考えてみましょう。その際は、案内を頼んでも良いでしょうか」
 戒めを経て今は改善が行われていることは今の眞由璃にとって考えもしなかった情報だった。そして、文献の情報と今とでは状況が違うらしい事も。
 『今に興味を持つ』こと。これが今後の彼女の目標のひとつとなった。

●向き合い方
 このやり取りはムゲン・ワールド(愛に生きたナイトメア適合者・f36307)も耳を傾けていた。
(さて、眞由璃さんと話をするチャンスではあるのだが、……正直レポートを見る限り私があえて声をかけるべき事もないように思うな。否定しなければならないほど彼女の見解が間違っているとは思えない)
 ムゲンは戦闘に専念することにした。この眞由璃が人の世とどう向き合うかは彼女と過ごすこれからを思い描く者に任せて、自分は会話の時間を稼ぐことに決めたのだ。
「莉出瑠、ここからは戦闘だ。力を貸してくれ」
 ムゲンがそう呼びかけると、近くの植え込みからぴょこりと有栖川・莉出瑠(サキュバス・キュアのパーラーメイド・f36382)が現れる。
「おー、アナタ、呼ばれた、ワタシ、すぐ、参上!」
 二人の関係は元使役ゴーストと使役主。特に莉出瑠は数奇な運命を経て猟兵へと覚醒し現在に至る様だがその事の説明は別の機会となるだろう。
 現れた莉出瑠はムゲンの傍へと近づくと、不満げにムゲンの顔を覗き込む。
「うー? アナタ、ワタシ、来るまで、他の女、お楽しみ、だった?」
 果たして何処から見ていたのか。莉出瑠はムゲンの視線がしばしば眞由璃へと向いていた事に嫉妬していた。
「ま、待て、莉出瑠、誤解だ。彼女とは決してそう言うのではない」
「うー、怪しい」

 そんなやりとりをする間にも周辺に残っていた『ソードヴォルフ』がこの場に姿を見せ始める。ムゲンは他の猟兵たちへと伝える。
「ここは私と莉出瑠が引き受けます。みんなは工場内の確認を」
 莉出瑠はそれをムゲンに話をはぐらかされた様に感じてちょっと不満そうにしつつ。
「良い。ワタシ、アナタ、最高、パートナー、また、分からせる」
 と、ユーベルコードを発動させた。
 ユーベルコード『限定上位変身<<チェンジ・サキュバス・ドール>>』――それはサキュバス・キュアの上位種族であるサキュバス・ドールに変身するチカラ。莉出瑠がムゲンを思う心に比例してその能力も高くなる。
 ……どうやらムゲンは莉出瑠をただの相棒だと思っている様だ。そのため恋人同士のようなやりとりは考えていないのだが、対する莉出瑠はムゲンと恋人同士のつもりでいる。
 それ故に、変身した莉出瑠は強かった。

 今は莉出瑠の思いを否定せずあやふやに接しているムゲンだが、いずれは彼女とどう向き合うかを考える日が来るのかもしれない……。

●工場内部の様子
 工場内は熱が籠っていた。
 しかし内部の機械は傷ついておらず絶えず動いては工業機械を組み立て、そしてコンベヤーベルトの先の虚空へと消えていく……。
 あれだけの爆発と熱を経てなお傷ついていないのは、元となる地縛霊を生み、そしてこの地に縛り付ける残留思念の強さによるものかもしれない。最も今回はオブリビオンとなっているのだが……。

 工場内では空を飛べるアリスが先行して上から周囲を見渡した。建物の上部は熱気がこもり特に暑く、しかし同時に全体が良く見渡せる。
「まだ少し……残っていますね……」
 機械の影に隠れて炎と爆発をやり過ごしたのか、物陰から剣が突き出して、動いている。あれは『ソードヴォルフ』の身体から生える刃だろう。
 加えて奥の扉から怨念と共に新たな『ソードヴォルフ』が発生していた。しかし、その呪いに若干の綻びが出ているのか『ソードヴォルフ』はスムーズに出てきておらず、時々詰まっている。先の攻撃で稲見之守が放り込んだ破魔矢が効いている様であった。
 誘惑や煩悩などの精神に巣食う魔は呪いに繋がる強い思いを生み易い。そのため誘惑と幻術を打ち破る破魔もいくらか効いている。

 アリスは戻ると状況を伝え、ある作戦を提案した。
「――まだすこし……敵さんは、残っているみたいです……。それに、奥の扉の呪いからも……新たに、敵さんがうまれていました……。そこで……いちど、竜巻で残りを吹き飛ばしたら……扉に結界を張って、漏れる呪いを……閉じ込めてみようと思います……」
(ふむン、元ネタと創作で概念にズレがある破魔とかって効果にブレがあるからナ)
 そんなメタなことを考えつつ稲見之守はアリスの作戦に手を挙げる。
「結界術にはワシも心得があるゆえ、蓋をするのに協力しよう」
 そして狐裘・爛(榾火・f33271)も手を挙げる。
「はい、はーい! 攻撃、私も一緒にやるわ! 要は物陰で避難されちゃうってことでしょ? だったら、私の体を変化させた炎なら、どんな隙間でも入り込んで丸こげにできちゃうから最適だと思うの」
 それは入り組んだ場所では願ってもない攻撃能力である――こうして工場内における『ソードヴォルフ』全滅の最後の仕上げが開始された。

●最後の仕上げ
「不思議の国の精霊さん達……その力の片鱗を……世界に……!」
 アリスのユーベルコードが工場内で発動した。『ワンダーランド・シンフォニア』――それは世界の力を精霊として具現化して現象を発生させるチカラだ。
 具現化した精霊がアリスの声に応えて、破魔の光の竜巻を発生させる。その竜巻は発生したばかりの『ソードヴォルフ』を巻き上げた。そして。
「空に瞬く花のような、この私に見惚れてちょうだい。できないなら丸こげにしてあげるから」
 爛はそう宣言すると、ユーベルコード『乖炎戯・魂魄凍結理衣』を発動させる。
「天よ、声に答えて!」
 それは真の姿の魔性と合わさる切り札。花びらが散っていくように爛の肉体が徐々に炎へと変異しながら渦を巻いていく……爛が今回変異したのは炎の竜巻だった。
 光の竜巻と炎の竜巻が混ざりあり、狭い隙間まで熱と光を行き渡らせて残りの『ソードヴォルフ』を焼いていく。最初の爆発と炎を物陰でやり過ごし生き残った『ソードヴォルフ』も、隙間まで入り込む炎までは防げずに骸の海へと還っていった。
 そして炎と光の嵐が止んだなら、稲見之守が霊符をシュッと投げて奥の扉に結界を張る。神秘空間を区切るそれは、漏れ出る呪いに蓋をした。

 その頃、ちょうど工場の外の『ソードヴォルフ』も全てが片付こうとしていた。
 周囲の『ソードヴォルフ』が工場の入り口へと集まってくるのをムゲンと莉出瑠が迎撃していく。
「さて、やることはシンプルだ。本体も剣オオカミも纏めて眠らせる。これだけ撃てば避けられまい!」
 ムゲンが放つ、拡散していく黒いエネルギー体はユーべルコード『悪夢クラスター』。元は能力者の一部が扱える上位のアビリティだったものが、ユーベルコードとなって強化されたものとなる。
 そうして眠りについた敵は後にまわして、莉出瑠は他の『ソードヴォルフ』へ攻撃を行った。手にするのは『アリスランス』。莉出瑠はランスに装着した軽機関銃を撃っていく。
 二人の目的は時間稼ぎ。工場内の安全が確保されたら中へと退避して扉を閉めれば良い――そう考えていたのだけれど……。

●敵の全滅
 ……増えていく剣オオカミへ、刺激臭のある目潰しの塗料の誘導弾が突き刺さった。その強烈な臭いにオオカミたちが首をふる隙に風を纏う短剣が踊る――燦とシホの攻撃だった。
「中でもう一回全体マップ兵器を撃つみたいだからさ、アタシらはこっち手伝った方がいいかなー……って」
「サポートは任せて!」
 そう言って、キティーも蜘蛛糸を周囲へと放つ――ユーベルコード『人形劇・スチュピッドピッシャー』。その糸が当たった巨大剣オオカミは動きが止まってしまった。
 なお、キティーは眞由璃に大きなぬいぐるみのように抱えられておりほぼマスコットと化している。
 そしてキティーが動きを止めた敵を眞由璃が指差せば、それを興和が討ち取った。
「興和」
「御意」
 興和はツルハシ状の武器『三砂』を、蜘蛛糸で動けなくなっている巨大剣オオカミへと突き刺すとそのまま怪力で持ち上げる。それは飛来する遠隔操作の刀を防ぐ盾となった。
 刀が突き刺さったことで巨大剣オオカミは絶命し、消えてゆく。

「アナタ、近づく、敵、許さない!」
 莉出瑠のランスがムゲンへ斬りかかろうと迫る『ソードヴォルフ』を串刺しに貫いた。絶命して消えるそれを他所に、別方向から来る敵へと蛇の尾を向け、絡みつかせて動きをとめ、蛇を噛みつかせる。
 そしてムゲンは莉出瑠を信頼して背中を任せ、悪夢クラスターをばらまくことに集中した。
 こうして最後の一体までも倒されて、骸の海へと還っていった。

「こっちは片付いたゾ。中は安全、あとは奥のボスに対面するだけじゃな」
 工場からひょこっと稲見之守が顔を出す。
 一方でキティーはすこし浮かない気持ちを抱えていた。
(このオブリビオンさんとお話、できなかったなぁ……)
 戦いが避けられなかったこと、対話すらできなかったことをキティーは残念に思う。今回は意思の疎通が出来るオブリビオンでは無かったことも要因であるが、無言で武器を振り下ろされたことはショックだった。
(ってぼーっとしてちゃダメ! みんなのサポート!)
 この後はボス戦なのだ。キティーは頭をぷるぷる振って気を取り直す。

 そして改めて面々が合流する中で、その女性率の高さに莉出瑠が再びムゲンに対して嫉妬をするのだった。
「うー……、アナタ、やっぱり、他の女、お楽しみ、だった?」
「莉出瑠、誤解だ。決してそう言うのはないから……!」

●未来の楽しみ
 工場内を突っ切って奥の部屋へと向かう途中。シホは眞由璃へと聞いた。
「先日の戦いで壊れた眞由璃さんの赤手ですが、残骸でも持っていませんでしょうか。持っていたら『復世』で修復できるのですが……」
 その問いに、眞由璃は首を振る。
「いいえ。あれは特に回収はしていません。あの時の檻へ戻れば戦った場所に落ちているかもしれませんが……」
「そうですか……使い慣れた武器の方が良いかと思ったので、修復したいと思ったのですが……」
「では、より大きな戦いで並び立つ事があればその時は欠片を持ってきましょう」
 残念そうに俯くシホに、眞由璃はこう約束をした。そこへ話題を変えるように燦が質問をする。

「そういやさ、眞由璃は今までどんな食事してたんだ?」
「食事……そうですね」
 眞由璃は顎に手をあててしばし記憶を掘り起こし。
「野菜、肉、魚を焼いて塩をふったもの。そして粟や稗でしょうか。人里から味噌がもらえれば味も増えてご馳走でした。今の世で目覚めた後は未知の物が多く、良くわからなかったのでそのまま人間に与えて、私は変わらず野菜、肉、魚を探していました。兎や猪が居ればそれを狩りたかったのですが、私が知る限りでは今は姿を見かけることも稀です」
 その食生活は鎌倉時代あたりの庶民と武士の中間が近そうで、米もあまり食べたことが無い可能性がある。かつての茶と羊羹、そして団子は、とても高価なもてなしのつもりだったのだろう。
「それだと何を食べてもびっくりしそうだな……。それじゃ、ここを出たらご馳走するからデートいこうぜ」
「なあに? ダブルデート、両手に花じゃ足りないって言うの?」
 その燦の言葉に爛が喰いついた。爛の言葉は自分とシホとの三人じゃ飽き足らず眞由璃まで加えるつもりなのかという話のようだ。それに対して燦は「皆でねっ」と付け加えて訂正をする。
「燦の言うデートは交際の事ね」
 そう静かに答えるシホであるが心なしか言葉に心が籠っていない。
「……なんてね、シホが怖い顔しちゃいそうだからいじわるはしないわ、ふふ。……ホントにしないわよ!」
「……爛の意地悪……」
 などとやり取りをする三人。
「交際……具体的には何をするのでしょう」
 と眞由璃が呟くと、キティーが補足を加える。
「みんなで出かけて、お買い物したり、ごはん食べたりしようってことだよ眞由璃様! 私も一緒に行きたいな!」
「なるほど」
 工場内部を爆破した直後のやりとりで、眞由璃は「少しは人里に交わることも考えてみましょう」と、『今に興味を持つ』ことを目標のひとつに据えている。そのため再び運命が交わればその要望が叶う事もあるだろう。

●文明の利器に触れる
「アタシは女王の誇りは胸に、されど過去に縛られず眷属の外側にも愛と興味を向けて欲しいな」
 燦はそう呟いた。
「それは、眞由璃さんに何を求めるか、という話でしょうか……」
「そそ」
 燦の言葉にシホが考え事を始めると、爛がはーいと挙手をして。
「私が求めるのは対等な友人関係よ。保護じゃなくてフォローし合うの。そういう睦まじい方が綺麗だと思わない?」
 そう答えた爛の言葉を聞いて、シホも思いを口にした。
「漠然としたイメージになりますが、未来に個人的な楽しみを見つけて希望を持って欲しい……かしら」
(例えば好きな音楽やお菓子を見つけるとか。音楽は、いきなりハイカラなのは難しいでしょうから……)
 はたと思いつき、シホは再び眞由璃の元へと小走りに移動した。
「記念写真を撮りましょう」
「記念写真ね。なるたけ綺麗に撮ってちょうだい」
「スマホの使い方を教えるのも兼ねて……」
 盛り上がるシホと爛。以前にレーゲンが眞由璃に渡した携帯電話を確認してみれば、それは折りたたみ式のものだった。
「……スマホじゃないですが、カメラは使えますね」
 その画面を覗いてキティーがあることに気付く。
「この電話、バッテリーの残量が少なくなってるみたい。眞由璃……充電方法は分かりますか?」
「ばってりー……じゅうでん……?」
 これは現代の貨幣の使い方も怪しいかもしれない。それほどまでに、現代知識が足りていないのだ。
 困った眞由璃は助けを求めるように興和をじっと見る。その視線に興和は。
「僕自身も疎くはあるのですが……お役に立ちましょう」
 自身のスマートフォンを取り出した。
「せーの、ちょりーっす♪」
「アタシのちょりーっすが爛にパクられた!?」
「てへ♪」
 通信が出来ない空間なので写真は共有できず、それぞれのスマートフォンで撮影が行われていった。

 写真を呪術と思った眞由璃が不信がったり、燦の胸に残る気まずさが表情に出ていたり、シホが和風ロックや抹茶パフェを勧めてみるもインターネットが使えない空間だったので十分伝えられなかったり。とりあえずは以前に渡して今回はぐれた『炎帝鷂』をもう一度渡すことで緊急時の連絡手段を確保して、携帯電話の諸々はいったん先送り。
 一行は特殊空間を出るべく改めて空間のヌシの居る部屋に向かう事になった。

 最後に、呪いの漏れ出る部屋の前で稲見之守は眞由璃にひとつの御守りを手渡した。
「そうそう、古竜の骨で作った御守りを渡しておこか。異門同胞の類を退けるのに少しは役立つじゃろて」
 それは異世界のアックス&ウィザーズで採れる、ユーベルコードを弱めるとされる古竜の骨を用いたものだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『ファクシミリドラゴン』

POW   :    ペーパーブレス
【怨念に満ちたファックス用紙の奔流】を放ち、命中した敵を【締め付け呪うファックス用紙】に包み継続ダメージを与える。自身が【ファクシミリの機械に接続】していると威力アップ。
SPD   :    ファクシミリストーム
戦場全体に【呪いのファックス用紙で出来た竜巻】を発生させる。レベル分後まで、敵は【鋭い呪いのファックス用紙による切断】の攻撃を、味方は【体を補充する紙】の回復を受け続ける。
WIZ   :    ファクシミリ・トランスミッション
召喚したレベル×1体の【ゴースト】に【ファックス用紙の竜翼と竜爪】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。

イラスト:高芭タカヨシ

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●それは、やり直しという呪い
 この地に残る強い思念は、工場を中心に渦巻いていた。呪いが漏れる扉を開ければそこで舞うのは大量の紙。
 ファクシミリという古い通信手段の家電が多くの発注用紙を吐き出していた。
 ――まだやり直せる。

 声がした。
 その声は、古いファクシミリから聞こえてくる。その家電は事務机に乗っており、古びた灰皿の上には火のついたタバコから紫煙が立ち昇っていた。
 だがその火の下に灰はなく、こんな場所で喫煙をする者も居る筈がなく。この煙草も特殊空間が作り出した物だと推測できる。
 ――まだ終わりじゃない。

 声がする。
 やがて散らばる紙が集まって龍の姿を形作った。周囲の呪いも龍へと集まっていく。
 ――今度こそ成功する!!

 声は叫んだ。
 その呪いはどこか願いや祈りに近い悲痛な叫びの様でもある。
 しかしこの廃墟の町を探索した者ならば気付くだろう。その願いと祈りは犠牲によって血塗られている事を。
 残留思念の元になっているのは、あの小さなお社の遺骨だろう。かれは組織運営を間違えて失敗した。そして残った後悔と、もしもという心残りがこうして醜く変質したのだ。

 その願いと呪いに眞由璃は息をのんだ。何故なら、その在り方がかつて女王をやり直そうとした自分と重なるからだ。
 その心の怯みを感知したのか怨念に満ちたファックス用紙の奔流が眞由璃を襲う。
「――くっ」
 猟兵たちの側を呪いの紙の束がすり抜けて、眞由璃を包み、締め付けた。

 いつもの彼女であれば後れを取ることは無かっただろう……。
 兎に角、早急に何とかしなければ。猟兵たちは急ぎ『ファクシミリドラゴン』への対策と攻撃を開始した。
アリス・フェアリィハート
&&&
アドリブ連携歓迎

【WIZ】

これ程の念…
鎮魂の為にも
私達で…

って
眞由璃さん…!?

可能なら
【破魔】【浄化】の魔法を
呪いの紙の束にかけ
眞由璃さんから
少しでも剥がす等
試み

味方と連携

UC発動
翼の騎士を召喚
【破魔】【浄化】の加護を
騎士達に与え
(騎士の数隊は眞由璃さんの護衛に)
自身もヴォーパルソードを手に
【ハートのA(アリス)】も展開
【破魔】【浄化】を込め
【切断】【なぎ払い】等剣戟や
【ハートのA】から
魔法【誘導弾】の【一斉発射】で
騎士と共に攻撃

翼で飛翔
【空中機動】【空中戦】で
立体的に立回り

敵の攻撃は
【第六感】【見切り】【残像】
【結界術】【オーラ防御】で
防御・回避

『眞由璃さん…私達はいつでも…お力に…』


儀水・芽亜
『紙(パー)』に『鋏(チョキ)』。これ以上ないほど好相性ですね。
その感熱紙、ばっさり行かせてもらいます。

まずは眞由璃さんを絡め取った感熱紙を目覚めの時間で切り裂いて、眞由璃さんを救出します。
お礼は後でいいです。

では竜退治と行きましょう。ドラゴン本体に駆け寄って接近戦を挑みます。
感熱紙の奔流は「受け流し」すり抜けざま切り裂いて。
どうせなら、ファクシミリとの接続部分を裁ち切りたいですね。

ここで討滅することが、この特殊空間の主にとってのせめてもの慰め。
もう嘆きも恨みも忘れて、安らかに眠ってください。

終わりましたね。おつかれさまでした。
眞由璃さんは、敵の本拠地に乗り込むなら、銀誓館まで事前にご一報を。


酒井森・興和
&&&
女王の拘束>【咄嗟の一撃】飛斬帽を投げ紙束を【切断、追撃】
拘束解除されていれば女王の死角か背後を守り援護

敵UC>三砂を用い【衝撃波でなぎ払い】拘束されたら【怪力】で抵抗
逆鱗を紙一部に差し入れ【切断】し脱出図る
また紙束を逆に掴み遡りファクシミリへ三砂を【重量攻撃、追撃】で撃ち下ろしUC弱体化狙う
敵本体へ接近してゆき敵の動きを見計らいカウンター気味にUCを【二回攻撃】も活用して撃ち込む

未練じゃ無い
執着だね?僕もよく知ってる
自分で命を断った地に自らを縛する程に
辛かったろう
けど
残念…今度は2度とない

◆戦闘後
可能なら女王に声掛け


宜しければ此方をお使い下さい
(スマホ付属らしい太陽電池充電機。使い方を示して
電話が使えれば彼女達(依頼メンバー)と連絡も取れます
女王に親身になって下さる
信用できる方々でしょう

僕は皆と食事する女王を見て
嬉しくも切なくなりました
あの誤解からの戦が無ければ…と
人の味を知る僕らの世代は減り
人と共存出来る同胞が多く育っています
直系では無いけど
女王のお声が護った次世代の仔達です


ムゲン・ワールド
【莉出瑠(f36382)】&&&

 いきなり、眞由璃さんを狙ってきたか。
 救出に赴きたいが、戦場全体を巻き込む竜巻が怖いな。
 ここはこちらも戦場全体を覆うユーベルコードで、味方を支援しよう。
 ここまでの状況からして、味方は十分数いるはず。
 私のユーベルコードで回復し続ければ、竜巻も怖くない。召喚されたゴーストにも幻の怪物で対処させよう。

 後は棒立ち、と言うわけにもいかないな。莉出瑠、私に取り憑いて、強化してくれ。

 よし、莉出瑠の機嫌も治ったし一石二鳥だな。
 あとは前線を担おう。

 やり直したい、か。
 だが人生にもしもはない。前を向いて生きるしかないんだ。
 若返ってる身で言うのもなんだがな。


有栖川・莉出瑠
【ムゲン(f36307)】&&&

 うー、女の子、たくさん。アナタ、すぐ、他、女、ばかり、見る。

 うー! 大変、眞由璃、捕まった!
 助けなきゃ、けど、ランスチャージ、まとめて、貫いちゃう?
 うー、どうしよ。

 おー! ワタシ、アナタ、取り憑く、いいの?
 ユーベルコード、発動、アナタ、取り憑く、アナタ、強化!
 ワタシ、アナタ、一心同体、嬉しい!

 取り巻き、ゴースト、警戒。アナタ、近づく、奴。尻尾、操って、噛み付く!
 シャー! シャー!
 ついでに、アナタ、近づく、女の子、にも。

 うー、アナタ、やっぱり、まだ、あの子、こと、考えてる……。

 ※ムゲンが夕蝶(初恋の少女)の事を引きずっている事を知っている


キティー・アレクサンドル
&&
複数UC使用

■心情
失敗しちゃった後悔…私もわかるよ。だって私も家出しちゃって親に心配かけさせちゃったまま猟兵になっちゃったから。でも自分が失敗したことにいつまでも抱いちゃダメ…たぶんそれは自分も…そして少なからず大切にしてくれた人を傷つけちゃうから…だから私が眠らせてあげる。もう苦しまなくていいんだよ

■行動
まず「式神使い」で人形を強化した指定UCで眞由璃様の巻きついてる紙を切り刻んで解放させて残りの人形を使って敵を攻撃。味方が攻撃されそうになったら「人形劇・スチュピッドピッシャー」で敵の行動を制御しながら指定UCで敵を切り刻んで他の猟兵が攻撃しやすく妨害しつつ攻撃

辛かったね…おやすみなさい


レーゲン・シュトゥルム
&&

呆けている暇は無いぞ、国見・眞由璃
やり直せる者は幸運だ
だからこそあなたは、ここで歩みを止めてはいけない
過去に縛られてはいけない
それが幸運に浴した者の義務だと私は思うのだ

【浄化】の力を込めた【ヘヴンリィ・シルバー・ストーム】を発動し味方を支援する
持続時間こそ及ばないだろうが、短時間なら敵のユーベルコードと拮抗状態を作れる
ユーベルコードだけなら千日手だろうが、【クイックドロウ】で魔法弾の【乱れ撃ち】を見舞うとしよう
【弾幕】でファックス用紙を押し返したり、ファクシミリドラゴン自体を削っていく
一発必中ばかりが【スナイパー】だと思わない事だ

国見・眞由璃を捕らえている塊は早急に破壊し救出しておきたいな


シホ・エーデルワイス
【狐御縁】
&&


これは…眞由璃さんが過去を乗り越える為の試練ね

眞由璃さんの援護を優先
彼女が自分の答えに至り過去の呪縛を断てるよう祈り【盾娘】
締付状態の眞由璃さんが追撃されないよう
覚悟と勇気を決め
破魔と浄化の激痛&呪詛耐性オーラ結界で庇い防御し時間稼ぎしつつ
彼女の思いを読心術で心配りしながらコミュ力で鼓舞

眞由璃さん
私も…前世をやり直して変えたいと思った事はあります
でも…考えた末
過去を変えてはならないという結論に至りました

私が罪を背負って死んだ事で猟兵になり
大勢の人を救えているからです

選んだ選択肢が悲惨な結果を招く事もあるでしょう
でも後に補って余りある良い結果になるかもしれません
だから
選んだ後も良い結果になるよう頑張れば良いと思います


眞由璃さんが攻撃する時は
火災竜巻(火と風の融合属性攻撃)の誘導弾で敵UCを妨害し援護射撃

負傷者は【祝音】で手当て


戦後
眞由璃さんの携帯電話を弱い雷属性魔法で充電

眞由璃さんがUCを使ったら


『清薬』を分けて貰えないかしら


爛ナイスです
電波の繋がる所で一枚撮り共有しましょ


狐裘・爛
【狐御縁】
&&&

オブリビオンは過去。なのに過去の己を幻視する。不思議ね。その紅玉のような瞳、今までで一番綺麗。写真は魂を映し出すそうね。さて、その瞳は今何を見ているのかしら
未来? 過去? それとも――
残念。あなたは今、目の前にいる存在を忘れているわ。それは綺麗な私よ。ね、綺麗でしょ

炎戯・魂魄突流! 見よう見まね素人剣術、きりきり舞させてあげる
狙いはファクシミリの機械のコードね。相手の攻撃力を下げていくわよ

シホはストイックだし、燦もスパルタよね。お互い高め合う関係ってやつ? だからお似合いなのかも、ふふ

もう一枚写真撮影しない? ちょりっすちょりっす♪


四王天・燦
《狐御縁》
&&&

ちっと熱いぞ
フォックスファイアで眞由璃を襲う紙を焼く
眞由璃に引火させないよう操作します
更に狐火の半数でゴーストが纏う用紙も焼きましょ

今度こそ成功って…眞由璃は今も過去の大望を夢見るかい?
そうでねーなら今の動揺は変わろうとする証明だよ
悩むならシホと爛、皆にも相談しな

でも戦闘中に動揺は三流です!
女王の誇りを胸に抱いて戦いな…無理無茶しちゃダメよ?
シホも、だぜ

残る狐火を武器改造で神鳴や皆の武器に宿らせる
行くぞ爛、ダブル紅蓮撃だ!
眞由璃も、みんなも参加するかい

倒せば念仏唱えておくさ
清薬は特別なのにー…一粒だけだからねっ、うう…

眞由璃さぁ
影法師だのツクツクボウシだの辛気臭いこと言わず一度現代社会で生活してみろよ
夏に風呂にも入らず彷徨われては適わん
まさか清流で水浴びなんてしてねーよな…あかんで
戸籍諸々は銀誓館かアタシらでどうとでもするよ

GT出ての写真はいいね
眞由璃が外側の世界に出たって象徴になる
ちょりーっすと爛とダブルでポーズを決め…シホと眞由璃もやろーぜ♪
気まずさを晴らしていくのさ


御狐・稲見之守
&&&
ふふ、そう肩肘張りなさんナ。
想いを独り抱えていては己に押し潰されてしまうゾ?

『斯くあれかし』――呪とは想いの力である。
ゆえに願いと呪い、この両者は同質であり裏表に過ぎぬ。
その想いをどちらにするか、それは眞由璃殿次第。

――自身で願い叶わずとも、想いを託すことはできる。
眞由璃殿にはまだ女王と慕う者達があろうに。
此奴は呪いを振りまくことしかできんが
眞由璃殿ならば、その想いを願いにもできよう。

[UC呪繰り]
さ、眞由璃殿を放して大人しくしてもらおうか。
毒を盛るが如く、紙束の龍にワシの霊符を潜り込ませ
その内側から彼奴を喰らってみせよう。
朱に交われば赤くなる――願いも呪いも、誰かに影響してこそのものよナ。


マリーア・ダンテス
「眞由璃さんの救助はお任せします…!」
眞由璃に巻き付いた分を除き敵をファクシミリと紙ごとUC使用し魔炎で燃やし続ける

「死者がやり直す場所はここではなく神の御元です。死者が生者に仇なす事を神は望みません…テメェの罪を清算して、さっさと神の御元に逝きやがれ!」

「医術の心得は多少ですが…大丈夫でしたか」
戦闘後は眞由璃の怪我の状態確認
必要なら簡易な手当てを行う
「眞由璃さんは愛することがきちんとできていますから。あの方とは違います。愛することは、決意であり決断であり約束です。他者のために、他者と共に生きること。他者を受容し自分を受容する。他の貴女は知りませんが。ここに居る貴女は、出来ていますから」



●思いの残滓が渦巻く場で
 扉を開ければそこで舞うのは大量の紙。そして紙と共に強い思念が渦巻いていく。
 ここに残る思念とは後悔、そして心残りだ。残留思念とはそういった残滓であり、思いを残した本人ではない。そして思念から生まれるゴーストもまた本人ではなく、思いが受肉した様なもの。
 この世界のオブリビオンはそんなゴーストと性質が混ざり合い易い様だ。故に、この『ファクシミリドラゴン』もここに残された思念なのだろう。

 その残された無念が魂の一部としてこの地に縛りつけられている。その様子にキティー・アレクサンドル(ドールコレクター・f36894)は息を飲んだ。
(失敗しちゃった後悔……私もわかるよ。だって私も家出しちゃって親に心配かけさせちゃったまま猟兵になっちゃったから)
 それはキティーが抱く心残り。けれど、それを責めても傷が増えるだけなのだと彼女は考える。
(でも自分が失敗したことをいつまでも抱いちゃダメ……たぶんそれは自分も……そして少なからず大切にしてくれた人を傷つけちゃうから……)
「だから私が眠らせてあげる。もう苦しまなくていいんだよ」
 アリス・フェアリィハート(不思議の国の天司姫アリス・f01939)も同様に、この地に縛られた思いと呪いに心を痛める。
 晴れる事の無い後悔に潰されたままでは悲しいから。そしてその後悔が、新たな災いを撒く火種として残り続ける事が悲しいから。
「これ程の念……鎮魂の為にも、私達で……」
 声の叫びを終わらせるため、アリスが空色に輝く『ヴォーパルソード』を構えたその時だ。
 ――怨念に満ちたファックス用紙の奔流が放たれた。
 猟兵たちの側を呪いの紙束がすり抜ける。
「って、眞由璃さん……!?」
 驚くアリスの側を酒井森・興和(朱纏・f37018)が放つ『飛斬帽【丹霞】』が飛んで行く。その軌跡はファックス用紙の紙束を切り裂くが――咄嗟に放つそれで全てを防ぐ事は出来なかった。
 いつもの眞由璃であればこの興和のアシストで出来た僅かな時間で回避行動が間に合った筈だ……。しかしこの時の眞由璃は、気持ちが怯み反応が遅れてしまった。

●呪詛の嵐
(いきなり、眞由璃さんを狙ってきたか)
 ムゲン・ワールド(愛に生きたナイトメア適合者・f36307)は冷静に敵の初動を分析する。味方の反応はそれぞれ、眞由璃を助け出そうと駆け寄る者と即座に『ファクシミリドラゴン』へと向かう者、驚き反応が遅れる者とでそれぞれ分かれていた。
 その中で有栖川・莉出瑠(サキュバス・キュアのパーラーメイド・f36382)は反応が遅れた側であり、オロオロしている。
「うー! 大変、眞由璃、捕まった! 助けなきゃ、けど、ランスチャージ、まとめて、貫いちゃう? うー、どうしよ」

 対してマリーア・ダンテス(サイボーグの処刑人・f37225)は即座に『詠唱兵器・ガトリングガン』を構えて攻撃を開始していた。
「眞由璃さんの救助はお任せします……!」
 その銃口が火を噴くのと、『ファクシミリドラゴン』の猛攻が始まったのはほぼ同時だった。
 呪いのファックス用紙の竜巻と怨念に満ちたファックス用紙の奔流が室内で荒れ狂い、室内がぐにゃりと歪曲して広がれば隙間を埋める様に、五百体に迫る竜翼と竜爪を生やしたゴーストが召喚されていったのだ。

 ファックス用紙が渦巻く特殊空間で拮抗する様に万色の稲妻と幻夢が発生する。レーゲン・シュトゥルム(黒風白雨・f36427)のユーベルコード『ヘヴンリィ・シルバー・ストーム』とムゲンのユーベルコード『サイコフィールド』だ。
「持続時間こそ及ばないだろうが……!」
「ここはこちらも戦場全体を覆うユーベルコードで、味方を支援しましょう」
 レーゲンが放つ万色の稲妻は、込められた浄化によって呪いを僅かに癒して弱めていく。そしてムゲンの放つ悪夢の怪物が盾となり飛び交う呪いの紙の勢いを和らげた。
 マリーアのガトリングも敵の物量を抑え込む。
 ……ここまで数秒も経っておらず、本当に僅かな時間だった。オーラの守りで防御姿勢に入っていた儀水・芽亜(共に見る希望の夢・f35644)は、守りを維持しながら時折狙ってくるファックス用紙の奔流に警戒して眞由璃の元へと進んでゆく。
(まずは眞由璃さんを絡め取った感熱紙を切り裂かなければ)

●乗り越えるべきもの
 吹き荒れる呪いと鋭い紙の嵐の中で、シホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)と四王天・燦(月夜の翼・f04448)の二人のオーラの守りが壁を作る。咄嗟に作られた守りのドームは狐裘・爛(榾火・f33271)も含めた三人の身を守っていた。
「あの紙ドラゴン、今度こそ成功って言ってたな……眞由璃は今も過去の大望を夢見るのかい? そうでねーなら今の動揺は変わろうとする証明だよ」
「これは……眞由璃さんが過去を乗り越える為の試練ね」
 燦はぽつりと疑問を呟いて、シホは現状をこう捉える。そんな二人のやりとりを爛はひとり微笑ましく見ていた。
(シホはストイックだし、燦もスパルタよね。お互い高め合う関係ってやつ? だからお似合いなのかも、ふふ)
 しかし、爛はあの眞由璃の動揺に何も思う所が無いわけでもない。自身を影朧の転生体だと認識する爛にとって、眞由璃の状況には自分を重ねてしまうところがあるのだ。
「オブリビオンは過去。なのに過去の己を幻視する。不思議ね」
 爛はスマートフォンを取り出すと工場内で取った写真を表示する。
「その紅玉のような瞳、今までで一番綺麗。写真は魂を映し出すそうね。さて、その瞳は今何を見ているのかしら」

 未来? 過去? それとも――。

 ――暗闇の中で呪が身を蝕む。隙を見せた心にそれは入り込み、精神を穢しだす。心が蝕めば、意識に押し込んでいた思考が自然と浮き上がって来た。
 それは一度は目を反らした忘れようのない事実。自分の感情的な判断で多くの仲間が命を落とす争いが発生し、一族が壊滅したという事実だ。

 葛城山の土蜘蛛は大和国の始まりを記す歴史書にも記載がある歴史のある一族。この一族は葛城山の霊的な中心地に作られた葛城の宮で卵を産み出し、その卵は十月十日をかけて蜘蛛童にかえって、更に数年の年月を重ねて鋏角衆や土蜘蛛へと成長する。そうやって育った土蜘蛛の中からやがて女王として覚醒する者が現れて次の代へと繋がってゆく。
 その代々続いた営みが、千年を超える積み重ねが眞由璃の代で一度途絶えたのだ。その重みが少女の心を押しつぶす。

 蘇った蜘蛛童たちの保護をもっと早く出来ていれば。
 かつての旧校舎で己を律していたならば。
 あの戦いで勝てていたならば。
 ――一族が滅ぶことは無かっただろう。

 やり直しという機会が呪いの様に心を揺さぶっていく。

●今との戦い
 『ファクシミリドラゴン』の猛攻が始まってから十秒ほど経過した頃。
 怨念の奔流と呪いの嵐が渦巻く場に、光輝く大勢の騎士が現れた。かれらはアリスのユーベルコード『ロイヤルプリンセスガード・スターホワイトナイツ』で召喚した騎士たちである。
「騎士団のみなさん、お願いいします……!」
「我ら【白の星刻騎士団】、姫のお役に立ちましょう!」
 翼を持ち様々な加護を持つかれらはこの怨念の奔流と呪いの嵐の中でも動くことが出来る様だ。百二十を超す騎士たちが猟兵たちを囲む様に円形に並ぶと結界を構築しはじめる。
 神秘的な空間を区切るそれは、物理的なそれよりも呪いそのものを妨害するのに効果を出した。これによって猟兵側の守りに余裕が出来始める。

「莉出瑠、私に取り憑いて、強化してくれ」
「おー! ワタシ、アナタ、取り憑く、いいの?」
 ムゲンは莉出瑠へユーベルコードによる強化を依頼する。莉出瑠のユーベルコード『コスチュームプレイ・ゴーストガール』は任意の対象に憑依して相手を強化する事ができるのだ。
「ユーベルコード、発動、アナタ、取り憑く、アナタ、強化! う〜ら〜め〜し〜や〜」
 莉出瑠はシーツを被ったようなオバケ娘の格好となると透明になっていった。そして、憑依されたムゲンに蛇の尻尾が生える。
「ワタシ、アナタ、一心同体、嬉しい!」
(よし、莉出瑠の機嫌も治ったし一石二鳥だな。あとはこのまま前線を担おう)
 そうムゲンは胸を撫でおろした。何故なら戦いが始まる直前まで、莉出瑠は『うー、女の子、たくさん。アナタ、すぐ、他、女、ばかり、見る』と不機嫌になっていたからだ。

 レーゲンは浄化を込めた『ヘヴンリィ・シルバー・ストーム』を維持しながら後方をちらりと見る。
 眞由璃が怨念の奔流に襲われてまだ僅か十秒ほど、だがもう十秒ほどでもある。眞由璃を案じ、呪うファックス用紙から助けるべく動く者たちも敵の攻撃に対処しながら辿り着き始めている。
「呆けている暇は無いぞ、国見・眞由璃。やり直せる者は幸運だ。だからこそあなたは、ここで歩みを止めてはいけない。過去に縛られてはいけない。それが幸運に浴した者の義務だと私は思うのだ」
(……しかし、国見・眞由璃を捕らえている塊は早急に破壊し救出しておきたいな)
 現状を少しでも打破すべく、レーゲンは武器を手に取った。

●この地に積み重なったもの
 レーゲンは改造詠唱銃の『Sturm』と『Drang』を交互に乱れ撃ち、飛び交う呪いのファックス用紙を撃墜していく。
「一発必中ばかりがスナイパーだと思わない事だ」
 レーゲンとマリーアの浄化を込めた弾丸を乱れ撃ち、アリス、レーゲン、ムゲンのそれぞれのユーベルコードがこの場を支えていた。いま守りを解けば眞由璃を助けようとする後方の仲間が危険にさらされて、眞由璃の身も危うくなるだろう。
 そんな最中に狐火を纏った製図用の定規がひらりと舞う。
「炎戯・魂魄突流! 見よう見まね素人剣術、きりきり舞させてあげる」
 爛のユーベルコード『炎戯・魂魄突流<<エンギ・コンパクトツール>>』だ。これは有り合わせの武器が狐火によって切断の能力を得るというもの――爛はその定規で迫りくるファックス用紙の奔流を切断した。
「狙いはファクシミリの機械のコード――といきたいけれど、ちょっと物量がきついわよ!?」

 そして周囲を囲む五百体に迫るゴーストたちも猟兵のユーベルコードで傷つきながらじわりと迫る。
 ファックス用紙の竜翼と竜爪を生やされてはいるが、かれらはゴーストだ。この工場に残された残留思念が形づくる彼らは作業服を着た地縛霊たち。彼らは口々に、給料が欲しい、休みが欲しい、と口にしながら工具を手に迫りくる。
 キティーは眞由璃を守るように立っており、猟兵の攻撃を潜り抜けてきた敵の足止めをしていった。ユーベルコード『人形劇・スチュピッドピッシャー<<パペットマペットスチュピッドピッシャー>>』――無差別に放つ蜘蛛糸が当たった対象を操れるというものだ。
「自分が失敗したことをいつまでも抱いて……それを取り返そうとして他の人まで巻き込んで苦しめちゃって……」
 こんな連鎖は悲しい事だと、キティーは感じた。彼らは土地に残った思念でしかないけれど、過去の本人ではないけれど。
「眠らせてあげるから」
 キティーは五百体に迫る小型の人形を召喚する――ユーベルコード『人形劇・コープスダンス<<パペットマペットコープスダンス>>』。
(……こんな苦しみ、終わらせなくっちゃ)

 このゴーストの群れはムゲンと莉出瑠も警戒をしていた。どうにもかれらは士気が低く、万色の稲妻と悪夢の怪物でほぼ足止めできてはいるのだが……。
「取り巻き、ゴースト、警戒。アナタ、近づく、奴。尻尾、操って、噛み付く! シャー! シャー!」
 莉出瑠が透明の身体で懸命に威嚇を放っていく。
「ついでに、アナタ、近づく、女の子、にも。シャー!」
「莉出瑠、それは出来れば止めてほしい」

●願い
「さて。『斯くあれかし』――呪とは想いの力である。ゆえに願いと呪い、この両者は同質であり裏表に過ぎぬ」
 御狐・稲見之守(モノノ怪神・f00307)はそう言うと目を細めた。長い時を生きヒトと歩んだ狐は、人に願われた事もあれば願いが呪いに変わるのも見知っている。

 しばらく状況を見守っていた稲見之守だが、彼女は『ファクシミリドラゴン』を抑える方にまわる事にした。
「さ、眞由璃殿を放して大人しくしてもらおうか。毒を盛るが如く、紙束の龍にワシの霊符を潜り込ませ、その内側から彼奴を喰らってみせよう――我、呪に交わる黒き色也」
 そう唱えると稲見之守は霊符を、呪いの嵐へと放り込む。ユーベルコード『呪繰り』――それによって稲見之守の全身に漆黒の呪詛を纏わせればファックス用紙から呪詛と共に生命力を吸い取っていく。
 触れずとも、届かずとも。呪いを介しているならば命を吸い取り『ファクシミリドラゴン』の本体を弱らせる。
「願いと呪い。己が背負うその想いをどちらにするか、それは眞由璃殿次第……といったところかナ」

 そんな中で、眞由璃の元にたどり着いたシホは、眞由璃を包んでしまった締め付け呪うファックス用紙の怨念を和らげるべく浄化をかけた。同時に、翼を持つ騎士を従えたアリスも空中より舞い降りて怨念を浄化しようと魔法をかける。
 怨念を和らげながらシホは祈った。それは眞由璃が自分の答えに至り、過去の呪縛を断てるようにという祈り。
「眞由璃さん。私も……前世をやり直して変えたいと思った事はあります。でも……考えた末、過去を変えてはならないという結論に至りました」
 顔は見えないけれど、なんとなく今の眞由璃は過去に押しつぶされそうになっている様な気がする。そんな彼女を思ってシホは自身の持つ過去が参考になればと考えた。
 かつての処刑とその顛末。そしてそれに対するシホの結論が何かの参考になればと。
「過去を変えてはならないと……そう考えたのは、私が罪を背負って死んだ事で猟兵になり、大勢の人を救えているからです。選んだ選択肢が悲惨な結果を招く事もあるでしょう。でも後に補って余りある良い結果になるかもしれません」
 呪いや怨念に、負けてほしくない。過去に引きずられてほしくない。その一心で。
「……だから、選んだ後も良い結果になるよう頑張れば良いと思います」

●救出
 けれど眞由璃はまだ自身の過去を振り切れるほど心を強く持てていない様だ。今回は特に、自分と重ねてしまったことで呪いに深く浸食されている。

「失礼。どうやら眞由璃さんは自力での脱出は難しい様なので、このまま呪いを断ち切らせて貰います」
 芽亜はそう言うと、神秘を滅する虚無を込めて『裁断鋏『Gemeinde』』を振るう。それは肉体を傷つけずに深く蝕んだ状態異常を攻撃する――ユーベルコード『目覚めの時間』。
 そこにキティーも加わって、人形たちの持つ刃物でファックス用紙を切ろうとする。
「眞由璃様、今助けます!」
「ちっと熱いぞ」
 燦もユーベルコード『フォックスファイア』の狐火を放てば、呪いに傷を受けたファックス用紙はシホとアリスの浄化もあって溶ける様に消えていった……。
 解放された眞由璃の姿を確認すると、芽亜は「お礼は後でいいです」と言い残して『ファクシミリドラゴン』への対処へと向かう。眞由璃は消耗して若干ふらついている様だったが自分で起き上がれるくらいには無事である用だ。
「手間を取らせてしまった様ですね……再び未熟なところを見せてしまい、恥ずかしい限りです」
 自己嫌悪を見せる眞由璃だが、キティーは構わず無事を喜んだ。
「眞由璃様、良かったー!」
 そして、興和もすかさず背後を守る配置に着く。眞由璃の無事な姿にレーゲンも安心した表情を見せた。
 一方でシホは眞由璃の表情から彼女がまだ答えを得られるような経験を出来ていないことを察知する。これから様々な経験を積んでいく必要があるのだろう。
「【祝音】で手当てをします」
 シホはユーべルコード『【祝音】苦難を乗り越えて響く福音<<シュクイン・クナンヲノリコエテヒビクゴスペル>>』を使用した。慈愛の光が眞由璃を癒し、消耗した体力を素早くに回復させていく。
 治療を受ける眞由璃に燦が声をかける。
「悩むならシホと爛、皆にも相談しな。でも戦闘中に動揺は三流です! 女王の誇りを胸に抱いて戦いな……無理無茶しちゃダメよ? シホも、だぜ」
 ちょっぴりおどけて見せながら真剣な目でそう言った。

 稲見之守は漆黒の呪詛で『ファクシミリドラゴン』の生命力を吸いながら、一連のやりとりを見ていた。かの若き女王はまだ己の力で心を乗り越えられない様である。
 最も、乗り越えたとしても彼女が引き摺る過去のやり直しは独りでは叶わないだろうが――。
(――自身で願い叶わずとも、想いを託すことはできる。眞由璃殿にはまだ女王と慕う者達があろうに)
 けれども、倒すという選択をとならなかったからこそのこの出会いに稲見之守もまた期待を寄せていた。
(此奴は呪いを振りまくことしかできんが、眞由璃殿ならば、その想いを願いにもできよう。朱に交われば赤くなる――願いも呪いも、誰かに影響してこそのものよナ)

●狂気の老人『劉・叔成』
 こうして分断された戦力は『ファクシミリドラゴン』へと集中していく。
 戦闘開始から二分〜三分が経とうという状態で、戦場全体に広がるムゲンの『サイコフィールド』とレーゲンの『ヘヴンリィ・シルバー・ストーム』は未だ健在。
 そこにアリスの『ロイヤルプリンセスガード・スターホワイトナイツ』とキティーの『人形劇・コープスダンス』による手数も加わって守りは十分となっている。加えて稲見之守の『呪繰り』が敵を消耗させていた。

 マリーアはトドメの頃合いかと不死鳥のオーラをその身に宿す――ユーベルコード『フェニックスキャノン』。
「死者がやり直す場所はここではなく神の御元です。死者が生者に仇なす事を神は望みません……テメェの罪を清算して、さっさと神の御元に逝きやがれ!」
 この土地は祝福された終わり方をしていない――それはこの地に縛られ、召喚されているゴーストたちの姿からも察することができる。恐らく末期には無理に利益を得ようとして従業員に対する不法な就労と、そこからくる事故やトラブルが多発していたのだろう。
 浄化を乗せた炎ならば呪いの紙も燃やすことが出来る。弱り始めていた『ファクシミリドラゴン』は、その直撃を受けて燃えた。
 ――熱い、熱い……!
 苦しみ灰となっていく『ファクシミリドラゴン』……そのとき燃える紙の中から何かが倒れ込んだ。それはなんと、角のある『鬼型のオブリビオン』。

 ファクシミリの着信を示すライトが点滅し、この部屋の思念とは別の老人の声が発せられる――。
『クク……やはり順調に事は進まんか。だが、諧謔としては面白い。我等と同じオブリビオンが、其方へと付いているのは何ゆえか? 実に面白い……ククク』
 この声に、ムゲンはかつての予兆を思い出す。
(この声は……『劉・叔成』か?)
 かつて予兆でその姿を見た老人である。猟兵たちの中にも見た者は居るはずだ。
 彼は生前、除霊建築術の技術を悪用してひとつの街全ての住人を殺そうとした。それは大量の残留思念を発生させて多くの鬼を生み出すためだ。
 そこに正気はなく、狂気に侵された人物である。
 老人は言葉を続ける。
『さて……地脈を繋ぐ我等の祭壇を壊したのは貴様らだな。だが無数にある地脈から祭壇を探し出し、残留思念を全て浄化するには時間もかかろう。我が計画に然程の瑕疵も無し。加えて今や我はオブリビオン。今の我が力に比ぶれば、今度こそ再び『陰陽都市計画』を成してくれよう……』

●呪詛の嵐の終焉
『足掻く姿を楽しみにしておるぞ……ククク……フハハハハハハハハハ』
 その言葉と同時に再びファクシミリから不浄の気と紙が湧き出てきた。それによって『ファクシミリドラゴン』は再生を開始する。これは『劉・叔成』が持つ『思念からオブリビオンを生み出す』ユーベルコードによるもの。この工場に残る残留思念からオブリビオンを生み出しているのだ。

「――残念。あなたは今、目の前にいる存在を忘れているわ。それは綺麗な私よ。ね、綺麗でしょ」
 狐火を纏い切断能力を得た製図用定規が、ファクシミリの線を切断する。会話の間に爛が接近していたのだ。
「そしてファクシミリの機械のコード頂きっ」
 このコードの切断で経路が途絶えたのか『ファクシミリドラゴン』の再生は途中で止まった。
『未だ地の利は此方に在り……クク』
 この老人の言葉を最後に、ファクシミリから流れて来る不浄の気も消え去っていく。
 残されたのは再生しかけのボロボロの『ファクシミリドラゴン』のみ。

 ――がああああああ!!!
 残留思念は絶叫した。

 乱舞する呪いのファックス用紙には血が滲み、その奔流も血に染まる。
 爛が慌てて皆と合流するなか、襲ってきた赤いファックス用紙の奔流を芽亜は『裁断鋏『Gemeinde』』の刃で受けた。そのまま流そうとしたが、ファックス用紙が触れた瞬間に紙は芽亜を包み込もうと展開する。それを芽亜はハサミの刃を開くとジョキンと切断して抜け出した。
「『紙(パー)』に『鋏(チョキ)』。これ以上ないほど好相性ですね。どうせなら、ファクシミリとの接続部分を裁ち切りたいですが――」
 血に塗れたファックス用紙の奔流は、興和にも襲い掛かった。
「ぐ……」
 その締め付けに怪力で抵抗しながら、興和はファックス用紙から流れ込む呪いを感じ取る。
「未練じゃ無い。執着だね? 僕もよく知ってる。……自分で命を断った地に自らを縛する程に辛かったろう」
 興和は押し広げた隙間へと『逆鱗【朱纏】』を差し入れた。
「けど、残念……今度は2度とない」
 差し入れた朱塗の鉄片がファックス用紙を切断して興和は拘束を脱する。その時だ。涼やかな声が響いたのは。
「そこです」
 眞由璃が強靭な蜘蛛糸――ユーベルコード『土蜘蛛禁縛陣』を放ったのだ。その糸は、呪いのファックス用紙が乱舞する空間で隙間が重なる瞬間を狙いすまして『ファクシミリドラゴン』まで到達する。すると糸はくるくると絡みつき、『ファクシミリドラゴン』を捕縛した。
 この捕縛によって敵のユーベルコードが全て封じられ、召喚済みのゴーストを除いたファックス用紙の奔流と竜巻が消え失せる。

●鎖からの解放
 眞由璃の放った蜘蛛糸が『ファクシミリドラゴン』の動きとユーベルコードを封じた。
「この土地の様子から察するに、この者も組織の維持が上手くいかなかったのでしょう。私にはこの者に何かを言う資格はありません。ですが、その成れの果てがこの有様だというのはあまりにも――この者に止めを」
 眞由璃がその言葉を言うが早いか、興和がツルハシ状の『三砂』を振い衝撃波でゴーストをなぎ払って道を作りだす。そこへ芽亜が飛び込んで。
「ここで討滅することが、この特殊空間の主にとってのせめてもの慰め。もう嘆きも恨みも忘れて、安らかに眠ってください」
 『裁断鋏『Gemeinde』』が『ファクシミリドラゴン』の尾を切断してファクシミリから斬り離した。続けて接近していた興和がファクシミリへと『三砂』を打ち下ろして破壊する。
 ――ああああああ!
 『ファクシミリドラゴン』は近くに居る興和へと爪を振り下ろすがその動きは予想されていた。
「てぇいっ!」
 カウンター気味にユーベルコード『白虎絶命拳』を敵へと打ち込めば、練り上げられた『気』がその内部を破壊する。
「行くぞ爛、ダブル紅蓮撃だ!」
「おっけー、こっちはいつでもいけるわ」
 燦は『フォックスファイア』の炎を自身の刀……紅の電撃が帯電する『神鳴』へと纏わせると、爛と二人で『ファクシミリドラゴン』へ追撃する。
 続けてアリスのジュエルのハートたち『【ハートのA(アリス)】』による魔法弾の一斉発射と、レーゲンの詠唱銃からの乱れ撃ち、そしてシホの『聖銃』からの火と風の融合属性の弾丸が呪いのファクシミリ用紙の身体を穿って燃やしていく。
「これで終わりです……!」
「削り取らせてもらうぞ」
「これで……今度こそとどめ、です……!」
 最後に、アリスの騎士が『ファクシミリドラゴン』と核になっていた鬼型オブリビオンを貫いた。

 ――やっと、おわッタ……。
 その鬼は最後に解放された様な、どこか安らいだ顔を見せて消えていった……。
「……おやすみなさい……」
 そうアリスが呟くと、すでに特殊空間は消えて目の前には小さなお社が建っている。
 それは空間に入る前にあったもの。……無事に、特殊空間から戻って来たのだ。

●垣間見える愛
 特殊空間は消え、全員が再び元の小さな社の前へと戻ってきた。
 何時の間にか日は傾いて暮れはじめ、お社の側にある木の下には木漏れ日に人骨が照らされている……。

 そういえばこの特殊空間に入るには、この亡骸にいちど手を合わせてから社に近づくのであったか。……もしかするとあのオブリビオンは情を寄せた上で自分を鎖から解放してくれる誰かを求めていたのかもしれない。
 そして、あの空間に囚われていた眞由璃もこの亡骸に手を合わせていた事になる。
 決して人間そのものを嫌っている訳ではないのだ。ただ現在どうなっているかという事への興味が足りていなかった。
 だがそれも特殊空間の工場内で得た『今に興味を持つ』という目標で解決の道筋が見えつつある。
 眞由璃はこの亡骸へ改めて手を合わせた。
 キティーも並んで手を合わせる。
(もう苦しまなくていいね。ゆっくりおやすみなさい)

 同様にそれぞれが自身のやり方で供養を行っていった。そして一巡したころにマリーアが眞由璃へと話しかける。
「医術の心得は多少ですが……大丈夫でしたか」
「お気遣いありがとうございます。助けられた後、すぐにユーベルコードによる治療も受けましたのでこの通りです」
 マリーアは手当の必要がない事を確認するとほっと胸をなでおろした。続けて心の傷にも手当てをする。
「眞由璃さんは愛することがきちんとできていますから。あの方とは違います」
 特殊空間内で召喚されたゴーストや、町中で見つかった日記など、各自が見聞きした情報を持ち寄れば従業員がどういう待遇だったかは察する事が出来るだろう。この地に縛られていた残留思念の主は、工場を守ることに目が行き過ぎて従業員の扱いが良くなかった様であった。
 マリーアは、言葉を続ける。
「愛することは、決意であり決断であり約束です。他者のために、他者と共に生きること。他者を受容し自分を受容する。他の貴女は知りませんが。ここに居る貴女は、出来ていますから」

 このやり取りを聞いて、興和も眞由璃へ自身の思いを伝えた。
「……恐れながら進言します。僕は皆と食事する女王を見て、嬉しくも切なくなりました。あの誤解からの戦が無ければ……と」
 興和はかつての土蜘蛛戦争を生き延びた土蜘蛛一族の者。あの戦いを巡る運命に未練が無いわけではない。
「人の味を知る僕らの世代は減り、人と共存出来る同胞が多く育っています。直系では無いけど、女王のお声が護った次世代の仔達です」

●絡まった糸がひとつほどけて
「人と共存出来る同胞が多く育っています。直系では無いけど、女王のお声が護った次世代の仔達です」
 この興和の言葉に眞由璃は首を振った。
「あの嘆願の事であれば、それは違います。交戦の指示を行った長が責任を取り、組織としての力を失った事が伝われば銀誓館はあなた達を受け入れていたでしょう。……次世代が護られたのは、あなた達が築いた信頼によるものです。その信頼を築き上げたあなた達を私は誇りに思います」
 あの戦いについて、眞由璃はあくまで自身に全ての非があると考えている。そして女王がそう言ってしまえば興和の立場からは言葉を返し辛い。しかし、この日の興和は勇気を出してこう返した。
「お言葉ですが、失礼を承知で言葉を返したく思います。かつての同胞より和睦を先に発案したのは女王のお声だと聞き及んでおります。『今からでも遅く無いかもしれません。和睦の使者を……。誤解を解く事ができれば、この戦いを止められるかもしれません』……と。あの和睦を望むお声が無ければ、我らは最後のひとりまで戦っていたでしょう」

 嘆願の事ではなく和睦の提起。過去の記録を見れば、これ以上戦わないことを最初に示したのもまた眞由璃であったのだ。
 興和はその事を事実としてただ伝える。
 それに眞由璃は言葉を失っていた。自分自身と当時の状況、これらに対する憤りと後悔から誰が和睦を発案したのかをすっかり忘れていたのだ。
「……そういえば、そうでしたね。すっかり忘れていました……」
 そう呟いて恥じる彼女の表情は年相応のものである様に見えた。

 その顔を覗き込んで稲見之守が茶化す様に思いを告げる。それは稲見之守が眞由璃に対して思う事。
「ふふ、そう肩肘張りなさんナ。想いを独り抱えていては己に押し潰されてしまうゾ?」
 そしてアリスも。いつでも力になるのだと懸命に言葉を伝える。
「眞由璃さん……私達はいつでも……お力に……」
 その様子を微笑ましく見て興和は再度、眞由璃へと話しかける。
「……重ねて申し上げます。宜しければ此方をお使い下さい」
 そう言って興和は眞由璃へ携帯電話で利用できる太陽電池の充電機を、使い方を示して差し出した。
「これらの道具は使い方を会得したなら縁を結んだ者たちとの連絡がより手軽に行えます。彼女たちは女王に親身になって下さる、信用できる方々でしょう」

●青春の一コマ
「そういえば眞由璃さぁ」
 そう、燦が切り出した。
「影法師だのツクツクボウシだの辛気臭いこと言わず一度現代社会で生活してみろよ。夏に風呂にも入らず彷徨われては適わん。まさか清流で水浴びなんてしてねーよな……あかんで」
 要は定住しろということだろうか。
「戸籍諸々は銀誓館かアタシらでどうとでもするよ」
 そう燦は言ったが戸籍については芽亜が否定をする。
「戸籍は今はまだ不味いでしょう。もしオブリビオンである問題が解決できず、いずれ倒さなければならなくなった時に新たな問題が出来てしまいます」
「燦、『清薬』を分けて貰えないかしら」
 ここでシホが燦へと話しかける。どうやら消費した寿命を少し回復させる薬らしい。
「清薬は特別なのにー……一粒だけだからねっ、うう……」
 渋る燦から薬を受け取ると、シホはそれを眞由璃に渡す。
「ユーベルコードの代償に寿命を使っている筈ですから。この薬で回復させてください」
 この会話には爛も加わって。
「もう一枚写真撮影しない?」
「爛ナイスです。電波の繋がる所で一枚撮り共有しましょ」
「GT出ての写真はいいね。眞由璃が外側の世界に出たって象徴になる」
 三人で盛り上がっていった。
 ゴーストが多いと電波が使えなくなるため、そのためにはこの場を離れなければならないだろう。そのためゴーストタウンを出てから、ということである。

「ちょりっすちょりっす♪」
「シホと眞由璃もやろーぜ♪ ちょりっす♪」
 ワイワイ絡む面々を見てムゲンはふと昔の頃を思い出していた。
 こうしていると、過去をやり直すということに対して感傷的な気持ちを抱いてしまう。
(やり直したい、か。だが人生にもしもはない。前を向いて生きるしかないんだ。若返ってる身で言うのもなんだがな)
 果たして彼が浮かべているのはかつての学生時代か、それともさらに昔の過激な『教会』に居た頃のものか。
 どこか遠くを見るような目をするムゲンに莉出瑠は胸をもやもやさせていた。
(うー、アナタ、やっぱり、まだ、あの子、こと、考えてる……)

 本人の肉体だけが戻っても、周りの時間は過ぎてしまい、そして戻らない。
 今という瞬間は、一度しかないのだから。

●蜘蛛の糸の行方
「終わりましたね。おつかれさまでした。眞由璃さんは、敵の本拠地に乗り込むなら、銀誓館まで事前にご一報を」
 解散の折に芽亜は最後にこう伝えた。
 しばらく言葉を交わし、以前にこの携帯電話を用意したレーゲンが眞由璃に使い方を教えた後にこの場は別れることとなった。とりあえず登録した先に電話をかけて、通話が終わったら切るくらいの操作は出来る様になっている。

 そして眞由璃はこのまま地脈に沿って移動して祭壇を壊してまわるつもりらしい。
 現在地は関東は東京都の青梅市の山中。ここから地脈や龍脈に沿って山中を移動して、各地のパワースポットやゴーストタウンにひっそりと設置されている祭壇を破壊してまわる事になる。それが当面の眞由璃の行動だ。
 この行動により関東から東側は『陰陽都市計画』の影響から逃れていくことだろう。

 しかし『劉・叔成』の声が告げる様に妨害にはなれど全てを阻止するには時間がかかりすぎる……いずれはその大元を見つけ出す必要がありそうだ。

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 国見・眞由璃の状況。

 持ち物。
●『ミニチュア視肉』
●炎の鳥の『炎帝鷂』(伝書鳩的な連絡手段)
●GPS付き折り畳み携帯
●異世界の群竜大陸産の古竜の骨のお守り
●太陽電池の充電機

 その他の変化。
●電話の簡単な使い方(登録済みの番号へかける)を学習しました。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2022年05月23日


挿絵イラスト