Justice on Surface
クロムキャバリア、パラメリア共和国。
大陸中央部、北に聳える山脈を背にするようにその版図を広げるかの国は、山脈が抱える豊富な資源を狙った周辺諸国の侵略を度々受けていた。
とりわけ18年秋――建国以来の同盟国たる南方のビルシャス帝国が、先帝の急逝により混乱していた隙を狙ったと思しき、東の神聖ヴィスタリア皇国と西のジリエスタ連邦の相次ぐ侵攻は、共和国の国力を疲弊させること甚だしく。ビルシャスからの支援の不足に不満を抱いた当時の共和国軍第三機甲大隊長リッカー・ターヴィンが、独断で配下を動員しビルシャス領へと侵攻する事件さえも起きた。
幸い、事件の影響は共和国首相ウィリアム・スプリングスと帝国の若き新皇帝リル・ビルシャスの両首脳を中心とした協議により最小限に抑えられ。以後は帝国によるベルヘリク高原方面の軍備を増強しての皇国牽制や、物資援助の追加等もあり、共和国は着実に疲弊した国力を回復しつつある処だ。
そんな中、共和国は5年に一度の次期首相選挙の時期を迎えた。
現首相スプリングスは、約20年前の大侵攻以来最大の国難を乗り越えた実績を以て再選を目指し、対する野党はどうにか対抗し得る候補者を擁立するものの、スプリングス再選はほぼ間違いないだろうというのが大勢の意見であった。
だが、そこに三人目の候補者が立候補する。
そして彼こそが、パラメリアに更なる動乱を巻き起こす台風の目となるのであった――。
●
『共和国民の皆様! このままで本当に良いのですか!』
共和国首都ノーザレスの繁華街にて、行き交う人々に呼びかける高らかなる声。決して高級ではないが安っぽさを感じさせない庶民的なスーツを纏った男が、マイクを手に発した声だ。
『援助という名の餌に釣られ、ヴィスタリアを引き付ける囮として使われる現状! パラメリアはビルシャスの身代わりではない!』
拳を握りしめ力説する男。背後には『パラメリアに真の独立を』『国民の為の政治』といったスローガンを記したポスターと共に、その男の名――『ダリオ・マーベック』という名が力強く掲げられていた。
『スプリングス内閣は嬉々としてビルシャスに隷従し、国民の生活を戦火に晒そうとしている! パラメリアの敵は最早ヴィスタリアではない、スプリングス内閣と、ビルシャス帝国だ!』
声音には怒りと決意が滲む。即ち、目先の利益に釣られて国難を招く現政権への怒りと、その現状を打破せんという決意。それらが伝わったか、彼の前を横切ろうとしていた人々が、一人、また一人と足を止め。彼のもとへと引き付けられるかの如く歩み寄ってゆく。
『私が! このダリオ・マーベックが! このままビルシャスの盾として使い潰されようとしているパラメリアの運命を変える! 同盟を破棄し、国威を示し! 全ての侵略を独力のみにて退ける強き国にする!』
熱く叫ぶマーベック。今や彼の前に集う人々の数は百を優に超え、全員が雄弁を振るうマーベックへと熱い視線を注いでいた。
『皆様! どうか、どうか私を、このダリオ・マーベックを! パラメリアの次期首相に! パラメリアを真に強き国とする為に! よろしく、お願い致します!』
そしてマーベックが片手を高く掲げてみせれば。群衆からは万雷の如き拍手が巻き起こり、彼の演説に賞賛の意を示す。その様は、何処か狂的とすら言える熱を帯び。
応えるように両手を広げて天を仰ぐマーベックの口元が、歪んだ笑みの形を取っていることを、誰一人として気付きもしなかった。
――否。只一人、それに気づいた者が居た。
「……マーベック。ついに尻尾を出したか」
漆黒のスーツを纏ったその男は、小さく呟いて。踵を返し、雑踏の中へと消えていった。
●
「――と、いうわけなのだけども」
予知を語り終えたグリモア猟兵、フレティア・ハイマール(アバター・オブ・マザーブレイン・f29910)は困ったように眉根を寄せる。
「このマーベックって人、パラメリア共和国の未来を憂いているように見えるけど、本当は逆なの。寧ろ、神聖ヴィスタリア皇国にパラメリアを売ろうとしているのよ」
元々親ヴィスタリア的な思想を持っていたものが、首相選挙を機に行動に出た、というところであろうか。猟兵の一人の推測に、フレティアはしかし首を振る。
「それもあるけど、大きな要因は二つ。一つは、彼に目をつけたヴィスタリアが、パラメリアを内部から崩す策略の一環として援助を申し出たこと。もう一つは、彼がオブリビオンマシンに取り憑かれたことなのよ」
既にパラメリア領内には、マーベックの手引きで密かに潜入したヴィスタリアの特殊部隊が、正規のパラメリア軍を装って潜伏している。仮にマーベックが選挙で敗れた場合、この戦力とオブリビオンマシンを以て議会を制圧しようというのだ。
オブリビオンマシンの狂気の伝染により、既にパラメリア国内には少なからぬマーベックの支持者がいる。このまま放置すれば、仮に彼らを阻止できたとしても共和国に大きな禍が残ることは間違いない。其を根本から断てるのは、猟兵をおいて他に無いのだ。
しかし、具体的にどのように阻止するか。
「まずはパラメリア国内で情報を集めて、マーベックがヴィスタリアと繋がってる証拠を集めて欲しいの」
首都ノーザレスを中心に、マーベックやその周辺について調査。記録でも証言でも良いので、ヴィスタリアとの繋がりを示す証拠を掴むのがまず第一歩となる。
「他の国の人……それも敵対してる国の人と情報をやり取りする手段はかなり限られると思うから、攻めるならその辺かな?」
広域通信網が失われ、遠隔地との情報交換手段の根絶されているクロムキャバリアである、国内ならば兎も角、国を跨いだ連絡手段などそう多くはない。何処かに連絡の痕跡が残っている可能性は高いだろう。
「あと、パラメリアの軍にもマーベックを疑ってる人はいるみたい。その人達と情報交換するのも一つの手かも」
ノーザレスの一角に、軍の将校が多く利用しているバーがあるという。そこに赴けば、そうした将校と接触できる可能性もあるかもしれない。
「証拠を揃えたら、後はマーベックを捕まえるだけ……なんだけど、やっぱり彼もタダじゃ捕まえられないみたい」
潜伏していたヴィスタリアの特殊部隊や、マーベックに取り憑いたオブリビオンマシンとの戦いが予知されているという。
尚、撃破後に彼らが生存しているなら、パラメリア軍に身柄を引き渡すことが推奨となる。その後に彼らがどうなるか、については、猟兵の関知するべき領分ではない。
「こんな感じで色々大変なお仕事だけど……あの国の平和が損なわれないように。皆、どうかよろしくお願いね」
最後にそう結び、フレティアはグリモアを起動する。
向かうは、嵐の予感漂う共和国首都ノーザレス。
五条新一郎
その静けさを、嵐の前のものとせぬ為に。
五条です。
さて今回はクロムキャバリアより、二年前に名前を出したきりであったパラメリア共和国のシナリオです。
敵国に祖国を売ろうとする男の企みを、皆様のお力で叩き潰してやって下さいませ。
●目的
『ダリオ・マーベック』の陰謀を暴き制圧する。
●舞台
クロムキャバリア、パラメリア共和国。
第一章は主に首都ノーザレスが舞台となります。
現代風の、整然とした街並みを持つ都市です。その他の都市や施設も概ね現代風です。
第二章以降は断章にて。
●第一章
マーベックの陰謀を暴くべく調査を行う「日常」です。
フラグメント選択肢は将校達行きつけのバーに赴く場合のものですが、これに拘らず「これだ」という行動を取って頂けると宜しいかと。
ノーザレス以外での調査も可能です。
●第二章・第三章
ヴィスタリア特殊部隊のキャバリア及びマーベックのオブリビオンマシンとの戦闘となります。
章移行後の断章にて詳細を公開します。
●プレイングについて
第一章はOP公開直後から、第二章以降は章移行後に断章を投稿しますのでそれ以後からプレイングを受け付けます。
それでは、皆様の闇暴くプレイングお待ちしております。
第1章 日常
『将校クラブにて』
|
POW : 強い酒(やつ)を痛飲する
SPD : 静かに場を楽しむ
WIZ : 戦況について情報交換
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
フレスベルク・メリアグレース
売国、という訳ですか
ここはマーベックを疑っている将校に接触するとしますか
メイド服に着替えて給餌をし、ナプキンの下に『マーベックを疑うなら聖教の礼拝堂に来るべし』というメモを残しましょう
聖教の礼拝堂は貸し切りにして将校達を出迎えます
よくぞ来てくれました
メリアグレース聖教皇国第十六代教皇、フレスベルク・メリアグレースです
ダリオ・マーベックの背信について共闘を持ちかけるべく失礼しました
そうカーテシーを披露し、UCを発動
将校達の能力を強化し、礼拝堂の一部屋に設けた作戦室に将校達を案内し、話を共有します
オブリビオンマシン案件です
荒事は避けられませんので…その時はよろしくおねがいしますね
パラメリア共和国首都ノーザレス北部、官庁街に程近い一角に店を構える高級バー『アンドヴァリ』。軍の将校達が多く利用する店として主に軍や政府の関係者の間で知られる店だ。
「ようこそいらっしゃいました」
店の片隅、テーブル席についた一人の青年将校のもとに注文の品を持ってきたのは、琥珀色の長い髪をしたメイド服姿の少女。かけられた声に驚き、振り向く青年。
「め、メイド……? それに君、随分と若くないか……?」
まさかバーでこのような少女と遭遇するとは。目を瞬かせる青年に、少女は微笑みかけながら。
「はい。故あって、短い間ですが特別に働かせて頂く事となっておりまして」
疑問の声に応えると共に、注文通りの酒をテーブルへ。グラスの下にはナプキンを。
「それでは、ごゆっくりお寛ぎくださいませ」
丁寧に一礼の後、離れてゆくメイド服の少女。暫く呆けていた将校だったが、気を取り直して酒を味わおうとし――
「……ん? これは……」
ナプキンの下に入れこまれた、一枚の紙片に気付く。引き抜けば、其処には短いメモ書き。記された内容は。
『貴官がダリオ・マーベックに疑念を抱いているならば、本日より二日後の18時、ノーザレス市内のメリアグレース聖教礼拝堂へ来られたし』
◆
その二日後、18時。ノーザレス南部に所在するメリアグレース聖教の礼拝堂に、件の青年将校は足を運んでいた。
メリアグレース聖教はクロムキャバリアに存在する宗教国家『メリアグレース聖教皇国』の国教であり、信徒の大半はかの国の国民だが、国外の一部の国にも少なくない数の信徒が存在する。この礼拝堂も、パラメリアに在する聖教教徒が請願し建設に至ったものだ。
青年がそんな礼拝堂の中に入ると、中には既に何名かの将校がいるのが認められた。自分だけではなかったのか、と少し驚いた様子ながら見知った一人へ声をかける。
「お前、何でここに?」
「え? いや、バーでなんかメモ貰ったから気になってな」
声をかけられた将校は、青年と同様の経緯で此処に来たと答える。どうやら、他の将校達も似たような経緯を経て此処に来たらしい。
「とりあえず、何かの謀りの類かとも思ったが、見たところ大丈夫そうだ」
などと会話を交わしていた将校達であったが、そこに。
「皆様、よくぞ来てくれました」
礼拝堂に響くは少女の声。聞き覚えのある声に驚き、将校達が祭壇の方へと目を向ければ。
「――お、お前、あの時の……!?」
全員が同一の驚愕に声を上げる。其処に居たのは、琥珀色の長い髪をした少女――そう、彼らをこの礼拝堂へ呼び寄せるメモを渡したメイド服の少女であったが為だ。
だが、その装いはメイド服ではなく、白き聖衣――聖教皇国の制式戦闘衣、それも教皇専用の聖別天衣。そう、彼女こそは。
「はい、故あってあのような形にて皆様をお呼びたて致しました。改めまして、メリアグレース聖教皇国第十六代教皇、フレスベルク・メリアグレースです」
名乗ってみせつつカーテシーを披露するフレスベルク・メリアグレース(メリアグレース第十六代教皇にして神子代理・f32263)に、将校達は皆一様に圧倒されている様子であった。メリアグレース聖教皇国はパラメリアから決して近い国ではないが、聖教が伝わっている通り存在していること自体が分からない程に遠い国でもない。よもや、その国の元首が自ら――しかも単身にて訪れてこようとは。
「此度は聖教皇国教皇としてではなく、一猟兵としての来訪となります。即ち、ダリオ・マーベックの背信に関して、です」
語るフレスベルクの身からは香気が漂い、其を受けた将校達の表情から警戒やそれに類する感情が薄れてゆく。魅了と共に、状況判断能力を強化されているのだ。現時点での彼女は、パラメリア自体に手を出すべく訪れたわけではない。寧ろ。
「此方にいらっしゃる皆様は、かの御仁に対し疑念を抱いておいでのようですので……その点に関して詳しいお話を伺いたいのです」
そして、共に事態の解決に当たる為の共同戦線の構築を。そう求めるフレスベルクに、将校達は承諾の応えを返す。
「感謝します。では、作戦室をこの礼拝堂内に用意しておりますので、詳しい相談は其方にて」
微笑みながら謝意を告げたフレスベルクは、礼拝堂奥の扉の方へと将校達を促す。
「此度の事件はオブリビオンマシン案件です。荒事は避けられませんので……その時は、よろしくお願いしますね」
成功
🔵🔵🔴
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
間諜による離反支援、確かに厄介ですぅ。
【幽測】を発動、『女神の波動』を纏い、演説中のマーベック氏の近くを通りますねぇ。
この状態であれば通常の方法では知覚されず、『波動』が触れた対象の持つ『記憶』や『情報』を得られますぅ。
そして、得た『記憶』や『情報』を元に、『波動』を纏ったままマーベック氏の家か、存在するなら『接触に利用するセーフハウス』等に潜入、証拠になる品を回収しましょう。
彼が『ヴィスタリア側の裏切り』を警戒しているなら『繋がりの証拠』を残しているでしょうし、そうでなくても『指令書』が残っていたり、『援助資金の出納記録』等も考えられますぅ。
何か見つかると良いですが。
『そもそもスプリングス政権はヴィスタリアからこの国を守る為に何をしていたのか! ビルシャスに擦り寄ってみせて、却ってかの国を刺激しているではないですか!』
ノーザレス市の中心部、中央駅前の大通り。路肩に留めた街宣車の上から、マイクを通したマーベックの朗々たる演説が響き渡る。彼が言葉を切るたびに、集まった聴衆から、彼の主張への同意の声や賛辞が響く。オブリビオンマシンの狂気が伝染しつつあるようだ。
(間諜による離反支援、確かに厄介ですぅ)
そんなマーベックと支持者達の姿を眺め、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は心中で唸る。マーベックが首相となった場合は勿論、そうなれずクーデターにも失敗したとしても、彼の信奉者は反ビルシャス勢力として国内分裂の要因となるだろう。其を食い止めるには、オブリビオンマシンを破壊しマーベックの身柄を抑えるより他に無い。るこるは改めて理解する。
その為には、まずマーベックが裏でヴィスタリアと繋がっているという証拠を押さえねばならない。決定的な証拠を握っているのは、間違いなくマーベック自身だろう。だが、普通に尋ねても絶対に口を割らないだろう相手から、どのように其を引き出すか。
「大いなる豊饒の女神、あなたの使徒に『秘匿の加護』をお与えくださいませ――」
だが、その為の最適な手段をるこるは持ち合わせていた。祈りを捧げると同時にユーベルコードが発動し、るこるの姿がその場から消失する。否、存在自体は変わらず其処に在る。奉ずる女神の力の一端である波動で包まれたるこるの身は、外部からの視認が不可能となったのだ。
そのまま、るこるは演説するマーベックのもとへと近づく。聴衆を迂回し、彼の乗る街宣車のすぐ下へ。るこるを包む女神の波動が、マーベックに触れるぐらいまでに近づいて――
(――来ましたねぇ)
るこるの頭の中に、幾つもの情報が流れ込んでくる。彼女のユーベルコードの効果は己の存在の隠匿だけではない。隠匿を成す女神の波動に触れた者の知識や記憶や情報のうち、己が必要とするものを取得することも可能なのだ。
ヴィスタリアの使者との会話。オブリビオンマシンとの邂逅。ヴィスタリアから派遣された特殊部隊との接触。首相選への電撃出馬。クーデターに備えた作戦会議――流れ込む記憶は、マーベックが紛い無き『黒』と断定するに充分すぎる量。
だが、容疑を確実なものとするには物的証拠が必要となる。その為の情報も、取得した記憶の中に含まれている。ならば、後は其を回収するだけだ。るこるは頷き、マーベックのもとを去る。
◆
それから1時間後。
ノーザレス市から北東へ50km弱、なだらかな丘陵地帯に建設された都市『エドジェン市』。ヴィスタリアとの国境に最も近い『フォルトバーク市』からノーザレス市へ向かう経路からは大きく離れているが故に戦略的な重要性は然程高くないこの街へと、るこるは訪れていた。
「確か、この街の郊外ということでしたねぇ」
取得した情報を頼りにるこるが訪ねたのは、街の北部に広がる高級住宅街に存在する一軒の住宅。情報によれば、マーベックはこの住宅――書類上は存在しない人物が所有していることになっている――にて、ヴィスタリア側の者と接触を持っていたらしい。つまりはセーフハウスだ。
警備システムを警戒し、ユーベルコードと祭器を利用して住宅へ潜入。そして最奥の部屋――書斎へと踏み込む。その内装も情報通りだ。
「ええと、確かこの辺りに収納されているのでしたねぇ」
取得した情報を思い出しつつ、デスクの引き出しを漁ること数分。るこるが引っ張り出したファイルの中には、目的の書類――マーベックとヴィスタリアの繋がりを示す決定的証拠が収まっていた。
それは『統治委任状』。即ち、マーベックがパラメリアの政権を掌握した場合、パラメリア領の統治権を承認する、というものだ。当然、パラメリアがヴィスタリアに併合されることが前提となる。そして、其に同意する『誓約書』も発見された。
他にも、パラメリア国内に潜入したヴィスタリア特殊部隊と交わしたと思われる契約書や、援助物資の目録なども複数確認された。これだけあれば、マーベックは言い逃れは不可能だろう。
後は、これをパラメリア軍に伝えるだけだ。頷き、るこるはノーザレス市へと引き返してゆく。
成功
🔵🔵🔴
タウ・エコー
私みたいなのがバーに入るのはちょっと怪しいかも、ですね
軍の施設付近の飲食店、安くて美味しそうな所を探してみましょう
お店の人からも情報は得られそうですが、歴戦の雰囲気のある軍人らしいお客さんに接触します
初めての場合はどのメニューがお勧めか、といった話から始めて、最近の国内外の情勢について等、自然な感じに会話を進めましょう
来歴について話が及んだ場合も隠さず伝え、反応を観察します
敵性勢力側ではないと思われる人物でしたら、本題の時間ですね
表面上は普通の会話を続けながら、質問を適当な紙に書いて渡します
軍の内部に潜伏している敵性勢力に心当たりはないか、どの程度まで確証を得られているか、伺ってみたいです
ノーザレス市から東へ60km程の位置に築かれた都市『フォルトバーク市』。ヴィスタリアとの国境に最も近いこの都市は、いつ戦火に晒されてもおかしくないという緊張感からか常に物々しい雰囲気が漂っているが、一方でそれ故の独特な活気をも内包した都市でもある。
パラメリアが保有する総軍事力のおよそ1/3がこの都市に置かれているというのもあり、街を行き交う人々には軍人が目立つ。そんな街中を歩むは、緩くウェーブした黒髪に褐色肌の少女。タウ・エコー(CODE:Echo・f36550)、此度が初めての任務となる猟兵だ。
(ノーザレスで将校さん達から情報収集するのも手ではありましたが、私だとやっぱり不自然さが否めないんですよね)
グリモア猟兵から提示された手段である、将校達が集うバーでの情報収集。妥当だとは思ったものの、自分には不向きな行動であるとタウは判断した。小柄であどけない顔立ちは、15歳という実年齢以上に幼い印象を醸し出す。バーという場所にはどうにもそぐわない、そう考えられたためだ。
ならば、と考えたのは、軍の施設に近い飲食店を当たることだ。目的の人物に遭遇できる可能性を考慮するに、前線に近い都市が良いだろう――そう考え、こうしてノーザレスではなくフォルトバークを訪れた、というわけである。
現在タウがいるのはフォルトバークの東部、軍の基地に近い商店街。必然的に、軍人が主な商売相手となる一帯である。飲食店を一軒一軒見て回り、軍人が多く利用していそうな店を探す。
(……此処とか良さそうですね)
そして見出したのは、一軒の大衆食堂じみた店。店頭に設置されたメニューに記された値段は、此処まで見て来た店舗に比しても随分と安い。店内を覗いてみても、軍人を中心に多くの客が食事をしている様子が伺える。ならば味も悪くはなさそうだ。タウは頷き、入口の扉を開いた。
入店したタウは改めて店内を見回す。ホール業務に携わる従業員達からも情報は得られそうだが、目的の情報を得るならやはり軍人が良い。それも、出来るだけ経験の豊富そうな人物。見回すこと暫し、一人客用の長テーブルについて料理を待っている壮年の男性に目が留まる。顔や手など、露な部位の随所に刻まれた古傷が、如何にも歴戦の兵士と見える人物だ。
彼が良さそうだ。頷き、タウは彼の向かいの席へと着席する。そして。
「こんにちは。この店の常連さんですか?」
正面の兵士へと声をかける。急に声をかけられ、兵士は少し驚いたように瞳を瞬かせるが、タウを認めれば少し相好を崩したようで。
「ん、そうだな。この店に通うようになって十年以上だからな、まあ常連つっても間違いじゃねえだろ」
頷き答える兵士。タウは十年という時間の程に驚いてみせつつ、更に話を続けんとする。
「十年は長いですねえ。私はこの店は初めてなのですけど、お勧めのメニューとかあるでしょうか?」
「そりゃあこの店といったらハンバーグプレートだな。ここのハンバーグはマジで美味いぞ」
これまでの人生でこれ以上美味いハンバーグを食ったことがない、と兵士が請け負うのを受け、タウはハンバーグプレートをオーダーするのであった。
その後も、タウと兵士の会話は続く。パラメリアの食事事情から周辺国家への印象。ビルシャスに対しては二十年前の大侵攻を食い止めて貰った恩があると語る兵士は、マーベックが反ビルシャスを煽る状況に苦々しさを感じているようだった。
「そういやお前さん、出身は何処よ? 口ぶりからしてこの辺りの人間じゃなさそうだが」
自国の状況の話題でふと思い至ったらしく、兵士はタウへと問う。タウは特に動揺を見せることもなく答える。
「私の出身はミテス連邦です。数年前に滅びてしまいましたが」
「マジか!? 噂には聞いてたがマジで滅びたのか、あの大国が……」
出身であるということより、その国が滅びたという方に驚いた様子を見せる兵士。大国と言える程の規模にあったかの国、その名は遠く離れたパラメリアにまで届いていたらしい。尤も、遠距離通信手段の根絶されたこの世界故か、その滅亡の報は明確に届かなかったようだが。
やがて料理が届き、食事の合間にも二人は会話を続ける。ここまでの会話で、この兵士がマーベック側の人間ではないと判断したタウは本題に入る。
「確かに美味しいハンバーグです。これだけしっかりしたお肉を使いながらここまで安いというのも凄いですね」
尤も、不特定多数の人々が集う場所柄を考慮してか、会話はそれまでの流れを受け継いだ形で。本題は、紙に記して差し出した。
《軍の内部に潜伏している敵性勢力に、心当たりは無いですか》
その問いを目にした兵士の表情が、数瞬強張る。だがすぐにペンを取り、答えを記し。
「おう、南の方のライエルって街に牧場があってな。そこから直接店長が牛肉仕入れてんだよ。だから良い肉を安く出せるってワケだな」
記す間も会話は切らさず。タウへと差し出された紙に記された答えは。
《怪しい、って程度なんだが。最近結成された第116遊撃機甲大隊。どうもあいつらの動きが妙なんだよな》
其を読んだタウが首を傾げたのを見て、兵士は更にペンを走らせる。会話を交えながら。
《配属の時にいきなりキャバリアに乗ってきたし、偵察に出ると戻ってくるまで妙に長いし。あと仲間内以外と全然交流が無え。そういや――》
そして返って来た答えに、今度はタウが瞳を瞬かせ驚いた。それは。
《あそこの隊長とマーベックが会ってるところを見た、って言ってた奴がいたな……》
成功
🔵🔵🔴
メサイア・エルネイジェ
オブリビオンの悪事とお聞きして飛んで参りましたわ
世直しの時間でしてよ
情報とはバーに集まるのですわ
いつも通りの格好で潜入調査ですわ
普通の諜報員ならこんなキラキラしたおピンクのドレスなんてお召しにならないはずですわ
あえて目立つ事で警戒心を解く作戦ですわ
いまのわたくしは旅行中の一般通過お嬢様ですわ
お酒は飲めないのでお茶でも頂きますわ
一番お安いのをお願いしますわ
わたくしお金がねぇんですわ…
ゆっくり時間をかけて味わうのですわ
そうしている内にバーの空気とひとつになるのですわ
内緒のお話しをするならやはり隅の席ですわよね
そこから少し開けた席に居座りますわ
優れた狩人は獲物が通るのをじっと待ち構えるものですわ
朱鷺透・小枝子
【視力】『眼倍』で情報収集。
バーの外で、眼倍でバー内のお味方や将校達の話などで、マーベックに関連する話を【瞬間思考力】で処理、怪しい人物を特定できたら、後はその人物を尾行するとしましょう。
…文書や、ヴィスタリア人のスパイとか見つけられれば、この上ない証拠となる筈…
サイキックシールドで【迷彩】周囲に溶け込み、近付き、決定的瞬間を狙って、【早業】雨降装束の雷雨の力で不意打ちマヒ攻撃。鎮圧する。
眼倍で隅々まで調べて…
透明化したディスポーザブル02を使って、こっそりと鎮圧した者達を攫ってしまいましょうか。
…どの様な思想であれ、狂気であれ、故国を売るなどと……自分には、理解できない話であります。
パラメリア将校御用達の高級バー『アンドヴァリ』。普段ならば華やかさとは無縁なその店に、この日は可憐に煌めく花が咲いていた。
上質のシルクが如く滑らかな桃色の髪、精緻かつ可憐な意匠のドレスを纏う肢体は見事なまでのプロポーション。まるで何処かの国の姫君の如き高貴さに溢れる、掛け値なしに美しき娘だ。店内の客も従業員も、思わず視線を向ける程に。
(やはり目立ちますわねぇ。作戦通りですわ)
否、姫君というのは比喩ではない。彼女――メサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)は、クロムキャバリアはアーレス大陸西方に在するエルネイジェ王国の王女であるのだから。ここパラメリアとは大陸単位で離れた国家であることもあり、その人物を特定されることはないが、纏う華やかさはそれだけで人々の目を惹く。
あまりに目立つその姿は、しかし彼女の意図通りのもの。潜入調査の為にこのバーへと赴いた彼女、なれどここまで目立つ姿をした者が諜報員であるとは思うまい。以て、この店に初めて訪れる己への警戒心を解こうという策である。
「いらっしゃい、お嬢さん。旅行かい?」
カウンターへ向かえば、初老の頃と思しき見目のマスターが話しかけてくる。やはりメサイアの装いにある程度驚いているようだが、話す声音の冷静さは年の功か。
「ええ、わたくし只今旅行中の一般通過お嬢様ですわ」
堂々と問いに答えてみせるメサイア。怪しまれない為には躊躇や迷いは厳禁である。
「そうか。この辺は若いお嬢さんには退屈かもしれないが治安は良い、ゆっくりしていってくれ。さて、何にする?」
そんなメサイアの振る舞いに、相好を崩したような笑みを見せるマスター。続けてオーダーを問うが。
「……そ、そうですわね。わたくし未成年なのでお酒は飲めませんから……」
そこで一気に気まずそうな表情になるメサイア。バーとはいえ特に未成年者の入店を拒否している訳ではないので、それ自体は良いのだが。
「……一番お安いお茶をお願いしますわ」
お嬢様らしく振る舞っておいて、と思いつつも、そうオーダーせざるを得なかった。祖国から(勝手に)持ち出した国家予算も既に使い果たしたメサイア、深刻な金欠であった。
一方、アンドヴァリから通りを挟んで反対側。ビルの壁に凭れて、向かいのバーへを眺める黒衣の少女の姿あり。フードの陰から覗く視線は一見茫洋とも見えるがその実、油断なく店内へと向けられその中の者達を監視している。
彼女――朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)の左眼は、様々な機能を組み込まれた人工魔眼。ユーベルコードの力を注げば、視界に収まる範囲内のあらゆる情報を、視覚以外の感覚に基づくもの含めてたちどころに把握することが可能なのだ。そんな眼を以て、彼女はアンドヴァリ店内の将校達の会話を『視て』いるのである。
(……彼女もお仲間でありましたか)
無論、オーダー中のメサイアの様子も確と捉えている。彼女もまた己と同じく猟兵であると気付き、小さく頷く。人工魔眼と持ち前の瞬間思考能力を以てすれば、過不足なく情報を取得できるという自信はあるが、それでも耳が多いに越したことはない。後で情報を突き合わせ確認しようと考えつつ、小枝子は店内の監視を続ける。
(……然し、故国を売るなどと……自分には、到底理解できない話であります)
如何に敵国寄りの思想とはいえ、オブリビオンマシンの狂気に駆られたとはいえ。かの男――マーベックの所業は、小枝子の理解の範疇を超えていた。祖国の為に死ぬ筈が、祖国が滅びて尚生き続けてしまっている――そう認識している彼女には、売国行為など人一倍理解に苦しむ行いだ。
そんな心中の思いがありつつも、バーの状況を把握する思考は淀みなく。状況の推移を見守ってゆく。
オーダーを終えたメサイアは店内を軽く見回しつつ、座る席を探す。見れば店の片隅、奥まった二人がけのテーブルで一人の将校がちびちびとグラスを傾けている。密談をするなら最適な店、その相手を待っているかのような様相。ならば聞き耳を立ててみるべき処だが。
(少し距離を取った方が良さそうですわね)
その隣の席も空いていたが、敢えてメサイアは二つ分ほど空けた先のテーブルにつく。その方が警戒されないだろう、という判断である。
(……さて)
程なくして注文の品が到着。温かな紅茶を湛えたティーカップを手に取り、口元に運ぶ。溢れる茶の芳しい香りが鼻腔を擽る。口をつければ、口中に溢れるは豊かな風味。一番安いとはいえ、なかなか良い味だ。
(……まあ、一番安いのに結構なお値段でしたけど)
高級バーゆえ致し方なし。ともあれ、そんな紅茶の味を楽しむべく、メサイアは時間をかけてカップを傾け、茶を飲んでゆく。このバーの空気に、違和感なく溶け込む為に。
「現状、特に目立った情報は無し……でありますね」
店の外で小枝子は呟く。監視を始めて暫く経つが、未だ決定的な情報は無し。これは根気との勝負と言えそうだ。
店内のメサイアも、ゆっくり紅茶を飲むことで粘っている様子。ならば自分も待つだけだ。油断なく客たる将校達の会話を把握しつつ、小枝子もまた状況の変化を待つ。
そうして暫しの時間が経ち、紅茶もすっかり冷めた頃。一人の将校がアンドヴァリへと入店してきた。注文を経て彼が向かった先は店の片隅、未だ先の将校がつくテーブル。その向かいの席。
「よう、待たせたな」
「ああ」
短い受け答えの後、向かいのテーブルへつく。その間、メサイアに対しては一瞥の後少し驚いたような表情は見せたものの、それ以上の反応は無し。うまく店の雰囲気に溶け込めただろうか。彼らへと無関心を装いつつ、メサイアは耳に意識を集中する。彼らの会話を、逃すことなく聞き取る為に。
「……で、どうだ」
息を潜めて話しかける、元から居た方の将校。尤も、メサイアの耳も小枝子の眼も、それらの声を逃すことはない。会話の内容は、余すことなく正確に聞き取ってみせる。
「アンタが細工してくれたおかげで、ウチの部隊は無事に第116遊撃機甲大隊としてフォルトバーク基地へ着任できた。マーベックの旦那との面通しも済ませたトコだ」
フォルトバーク。その名の意味する処を小枝子は思い返す。確か、ノーザレスから東――ヴィスタリアとの国境に最も近い街だったか。だが、今来た方の将校のこの口ぶり――この男、もしや。
「それは何よりだ。ヴィスタリアの方との連絡は大丈夫か?」
「勿論だ。旦那が首相になれてもなれなくても、大勢が判明した時点でハークレイ基地に集結してる聖騎士団第三軍へ伝令を送る。状況が予定通りなら、翌1800頃にパラメリア領へ侵攻を開始する筈だ」
((……!))
メサイア、小枝子、共に息を呑む。やはり此方の男、ヴィスタリアの工作員か。となると、もう一方は。
「把握した。こっちはそれに合わせて司令部を爆破。混乱している間に116大隊を迎え入れて議会制圧を促す、だな」
此方は元々のパラメリア軍人、だが既にヴィスタリアへの内通者として動いている、という処か。
「しかし大丈夫か? こっちもマーベックさんを怪しんでる奴が少なからずいる状況だが」
「何、最悪後五日――選挙結果が出るまで致命的な証拠を掴まれなければ良い。それくらいなら誤魔化せるだろう?」
「まあ、何とかな。そこまで持たせれば、一週間後には此処も晴れて神聖ヴィスタリア皇国の領土、というわけだ」
内通将校が低く笑う。オブリビオンマシンの狂気が伝染しているのかは分からないが、己の守るべき国を敵国へ売る行為に、何ら良心の呵責を感じていないと見える。
「その通り。その日まで互い、努めに励むとしよう――」
工作員が応えたところに、彼の注文の酒が届く。その密談に全く気付かぬ様子のウェイターの手によって。
「では、前祝いといこうか。我が祖国と、偉大なる大聖皇と、神の光の導きに――乾杯」
「ああ、乾杯だ」
そして二人はグラスを重ねる。己らの勝利を確信し――そしてその会話の全てが筒抜けであることを、知る由もないままに。
それから再び暫くの後。
二人が店を出て数分を経た処でメサイアも店を出る。
「……優れた狩人は獲物が通るのをじっと待ち構えるもの、とはいえ……」
想定以上に大きな獲物がかかった気がする。とりあえず、ヴィスタリアに内通していた将校の名前は先程の会話で把握したし顔も覚えた。後はこれを軍に伝えておくとしよう。
通りを歩きだすメサイア。その時、小枝子は既に向かいの通りから姿を消していた。
◆
アンドヴァリを出て暫く。人気の無い裏通り地を歩む工作員の男。作戦は順調、酒も程よく回って大変に気分が良い。
故に、全く気付かなかった。今しがた通り過ぎた路肩から、黒衣の少女が突如現れたことに。
「――がっ!?」
突如響いた電荷の弾ける音。男がそれに気づいたのと、その主たる雷電を纏う小枝子の腕が背中へ叩きつけられたのはほぼ同時。全身を貫く電流に肉体が痙攣、そして崩れ落ちる。
「………」
男の気絶を確認し、小枝子は義眼を以てその身を検める。まずは口中へ指を突っ込み、奥歯の一つを力任せに抜く。それは毒薬を仕込んだ差し歯。工作員として、いざという時には自害してでも機密を守る、ということだろう。
次いで所持品を確かめるが、明確に身分を示すものは見当たらない。自害用の毒といい、敵に捕まった時のことはある程度想定していたらしい。
「……と、これは」
だが暫く検めてみて、漸く手がかりになりそうなものが見つかった。手帳である。開いてみれば、パラメリアとは明確に異なる言語体系で記された様々なメモや覚書の類。なれど、猟兵たる小枝子には言語の壁など関係無い。この男がヴィスタリアの工作員であるという事実を証立てるには充分な情報が詰まっていた。
一通り調べ終えたところで、工作員の身体が宙に浮く。否、掴み上げられたのだ。姿こそ見えないが、その主はキャバリア。小枝子の制御下にあるオブリビオンマシン『ディスポーザブル02』である。
彼の身柄はひとまず確保しておいた方が良い、という判断のもと。気を失ったままの工作員を伴って、小枝子はノーザレスの闇へと消えた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルイン・トゥーガン
アドリブ&絡み歓迎
はん!何処だろうと売国奴はいるもんさね
ともかく、バーに向かう道の物陰からバーに行く将校に声をかけるさね
遺伝子操作で実年齢の半分ぐらいにしか見えないからバーに入ると目立つからね
おっと、運がいいのか悪いのか。アタシのことを知ってるようだね、悪名だろうけどね
ハッ!傭兵がいる理由なんて一つだけさね、つまりはアタシを雇わないかい?
そう嫌な顔をするもんじゃないよ、ヴィスタリアの特殊部隊連中の情報もあるさね
くくっ、蛇の道の蛇ってね。この手の連中の手法は大体知ってるんだよ、アタシの前歴を知ってるなら分かるだろう?
交渉成立だね、なら前金代わりにそこのバーで高い酒でも一杯おごって貰おうかい
ノーザレス北部の表通りの一つ。パラメリア将校御用達のバー『アンドヴァリ』はこの通りの一角に存在する。
かの店へ向かうべく、通りを歩む一人の将校。交差点を渡り、もう少し歩けば目当てのバーだ。今日は何を飲もうかと思案しながら、路地の前を横切った、その時。
「よう兄さん。仕事は順調かい?」
「!」
不意に、路地からかかる声。油断なく身構えながら素早く向き直るその動きは、確と訓練を積んだ軍人ならでは、という処か。
「……お前は!」
そして視線を向けた先に立つ声の主。その出で立ちはあどけなさの残る少女のようでありながら、浮かべる笑み、将校を見返す瞳は、幾多の死線を潜り抜けた歴戦の兵と言うべき凄みと、諦観にも似た酷薄さを感じさせる。そんな彼女――猟兵にして傭兵たるルイン・トゥーガン(B級戦犯指定逃亡者・f29918)を、この将校はどうやら知っているようだ。
「おっと、運が良いのか悪いのか。アタシのコトを知ってるようだね?」
将校の反応から見当を付け、笑みを崩さずルインは言う。
「そうだな。元ズィガ帝国海兵隊員の傭兵ルイン・トゥーガン。民間人殺傷及び捕虜殺害等の罪で周辺国家に指名手配中のB級戦犯、任務遂行の為なら如何なる卑劣行為も厭わぬ凶犬。違うか?」
ルインを見据えながら将校が口にする彼女の経歴。やっぱりね、と肩を竦めてみせるルイン。ズィガ帝国からは決して近くない此処パラメリアでも己の名が知られていたとは驚きだが、知られているならまあ悪名だろう、と割り切ってもいた。
「で、そんなお前が何故この国にいる。傭兵として稼ぐなら、今まさに内戦真っ只中のジリエスタ連邦だと思うが」
未だ警戒を解くことの無いまま将校が問う。が、ルインにとってそれは愚問。笑みを深めつつ答える。
「ハッ! そりゃ当然、この国にアタシの仕事があると踏んだからさね。つまりはアンタ、アタシを雇わないかい?」
「……何?」
一瞬、将校は虚を突かれたと言わんばかりに瞳を見開く。そして直後に不快げに眉根を寄せる。そんな反応に愉快さを覚えたルインだが其処は表に出さず。
「そう嫌そうな顔をするもんじゃないよ。ヴィスタリアの特殊部隊連中の情報、知りたいだろ?」
「な……!? 何故貴様がそれを知っている!?」
続けての言葉に、今度こそ将校は驚愕する。己らが必死に探っている、この国を内側から崩さんとする敵の動き。何故この傭兵が情報を握っているのか。
「くくっ、蛇の道は蛇ってね。この手の連中の手法は大体知ってるんだよ。アンタなら分かるだろ?」
ルインもまた、今度こそ愉快げに喉を鳴らし笑いつつも答えてみせる。
「……成程な」
続けての問うような言に、得心いったかのように将校は呟く。かつて得た情報によれば、ルインはズィガ帝国軍の特務部隊に所属し、非正規戦によって敵国を撹乱する任務に就いていたという。つまりは件の特殊部隊と似たようなものだ。
この傭兵、手段は選ばないが腕は確か。正規軍と違うルートで事に当たれる兵も居て損は無いだろう。そう算段しつつ、将校は構えを解く。
「交渉成立だね。それじゃ、前金代わりにそこのバーで一杯奢って貰おうかい」
満足げに頷きつつも、通りの先――アンドヴァリの方向を指しながらルインは言い放つ。実の処、悪名と実年齢より若い見目のせいでバーでは悪目立ちしかねないと考えていた為にバーの外で将校を捕まえた、という事情もあったりする。
「まずは詳しい話を聞かせてもらおう。その価値次第だな」
「良いとも。グリューエンバルトの16年辺りは最低でも貰いたいモンさね」
などと言葉を交わしつつ、二人はバー『アンドヴァリ』へと向かってゆく。尚、確りと目当ての酒を奢らせることには成功したようだ。
成功
🔵🔵🔴
リーゼロッテ・ローデンヴァルト
【WIZ】
※アドリブ連携他歓迎
※金は【ゴールド・セキュア】から拠出
副業はフィクサー、後ろ暗いコネは十二分♪
交渉材料を揃えたら件のバーで将校に接触
ソイツはアタシの奢りだよ
気楽にビズと行こうか♪
実は【リップ・ブルー】が各方面に当たっていてね
アンタへのアポだけでなく、最近マーベックが
『通販』した全荷物の輸送経路も《情報収集》済さ
中には潜入手引に関する記録媒体もあったよ
…何故知ってるかって?ちょいとバイトをね♪
※金で《取引》して清掃員を買収、ゴミから回収
疑うなら生体電脳のホロ画像で複製情報を表示♡
偽装暗号化も《瞬間思考力》と【ライト・デバイス】で解除済
重反逆罪には十分だと思うけど、裏取りも手伝おうか?
パラメリアの将校達が多く利用するバー『アンドヴァリ』。すっかり陽も沈みきった午後8時頃、一人の男が入店してくる。見目若々しい端麗な容貌の、銀髪の男。身に纏うのは如何にも高級感漂う漆黒のスーツだが、先客の将校達と何やら挨拶をしている処を見るに彼も軍属であろうか。
「よう、いらっしゃい」
カウンターにつけば、マスターが愛想の良い笑みと共に一杯のカクテルを卓上へ置く。男の目が細められ、マスターに向く。未だ注文していないにも関わらず、ということは。
「ああ、あっちのお客さんからだ」
マスターの示す先を向けば、其処には漆黒のドレスを纏う少女――の如き女性の姿。席を立ち、男の方へとにこやかに歩み寄るはリーゼロッテ・ローデンヴァルト(マッド&セクシーなリリー先生・f30386)。此度、彼にアポイントメントを申し込んだ人物だ。
「やあ、わざわざご足労どーも。ソイツはアタシの奢り、遠慮なくどーぞ♪」
改めて男の隣に座りつつ、軽い調子でリーゼロッテはカクテルを勧める。先に注文していたのか、彼女のもとにも別のカクテルが用意された。
「頂こう……の前に念の為。貴公が今回私にアポを取ってきた『Dr.リリー』で良いのだな?」
頷きつつも、まだ手をつけることはなく。確認として男が問えば、リーゼロッテは勿論、と頷いて。
「如何にもその通りさ。パラメリア共和国軍第一諜報部長、シュリック・スケイズ大佐。まさか、本当にアンタ本人が来るとは思わなかったけど」
その驚きを示すかのように肩を竦めてみせつつも、リーゼロッテはその男――スケイズの名を告げてみせる。何らかの罠の可能性を疑わなかったのか、と問う意味も含めての言葉ではあったが。
「アポ申し込みの折、最近のマーベックの購入物資の輸送記録を添付してきただろう。仮にも共和国首相を目指している身にとっては、あれだけでも十二分に致命的だ」
そんな情報を諜報部に流してくる以上、少なくともマーベックやヴィスタリアに与する者ではない。その判断のもと、己がアポイントメントに応じることを決めたとの事だ。更に。
「何しろ諜報部の総力を挙げても掴みきれなかった情報を、挨拶代わりに送ってくるような者だ。掴んだ情報は、それだけじゃないのだろう?」
それ程の情報の受け取りならば、部下に任せるわけにはいかない。そんな理由もあったようだ。
「それはまた実直なことで。ま、当然あれ以上の情報はばっちり収集済みだけどね」
そんなスケイズの判断を、皮肉でもなく評しつつ、リーゼロッテは本題へと入る。闇医者、キャバリアパイロットの他にフィクサーとしての顔も有するリーゼロッテ、後ろ暗いコネクションも数多有する。所有する秘書AIを介した各方面への並列調査に金の力での買収行為を合わせれば、彼女に把握できない情報は皆無とすら言える。
「例えば……そうだね、こいつとか」
生体電脳に記録した複製情報を、展開したホロディスプレイに表示。映るのは幾つかの写真と文書。其に目を通すスケイズの表情が、見る間に険しさを増す。
「……ヴィスタリアのキャバリア部隊を秘密裏にパラメリア領へ引き込み、遊撃部隊の一つとして登録……だと……!?」
映っていたのは、まさにその行為の計画書データ。清掃員を買収してゴミから回収した記録媒体から抽出したデータ。そしてこの計画が実行されたということは、即ちパラメリア軍内部にもマーベックの協力者が存在する事実を示す。
「実際にこれに携わった連中の名前も、幾つか抽出済みだよ。全部じゃあないかもだけどね」
愕然とした様子のスケイズに、囁くようにリーゼロッテは告げる。そのデータも、後程送付する、と。
「重反逆罪には十分だと思うけど、裏取りも手伝おうか?」
「――いや、構わない」
更なる協力を申し出るリーゼロッテだが、スケイズはこれを固辞。
「本来我々の為さねばならない仕事。最後の詰めぐらいは任せて貰いたい」
いっそ淡々とした声音で告げ、スケイズはカクテルを呷る。空になったグラスをカウンターに置けば、重い溜息を一つ。
「――貴公には、近く別の形で助力を願うかもしれない。頼めるだろうか」
低く問う言葉に、リーゼロッテはにやりとした笑みを浮かべつつ応えてみせた。
大成功
🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
食い詰めたわけでもないのに国を売り、人間同士で争うとは……
長距離通信が断絶しているなら、工作員と直接やり取りでしょうか
将校クラブのような会員制のところではなく、場末の雑然とした酒場
ひと気のない場所でコソコソすれば怪しいですが、雑踏に紛れていれば誰も気にしなくなるので、そういうやり取りに向いている筈
紅い衣を身に纏い、踊り子として潜入
艶やかな【ダンス】を披露しながら客を見渡し、こちらに興味を示さない――つまり「別の目的」を持った人物を探す
【目立たない】席へ誘い込み(おびき寄せ)、酒を振る舞い(奉仕)、【傾城傾国の艶美】で口を軽くさせて【情報収集】
情報を吐いたら【グラップル】で拘束して軍に突き出す
ノーザレス西部、大衆向けの酒場やクラブ等が乱立する歓楽街。その一角に存在する一際大きな酒場。
名を『アルフ・ライラ』。芸人が舞踏や音楽を披露するステージを備えた此処は、パラメリア建国以前から存在するとも言われるノーザレス屈指の老舗店。変わらぬ庶民の娯楽の場として、今夜も多くの人々でごった返し、混沌とした賑々しさを見せていた。
否、今夜は常以上に騒々しく盛り上がっているかもしれない。今宵、ステージ上で舞踏を披露する踊り子の、紅衣纏う均整の取れた豊艶なる肢体と、鮮やかに輝く銀の髪に彩られし美貌、それらを存分に魅せつける華麗なる舞踏に、店内の客達が興奮に極みに至っていた為だ。
(思った通り、雑然たる活気に満ちた場所ですね)
そんな客達の熱狂ぶりを眺め渡しながら、紅の衣を靡かせ舞う踊り子――オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は店の雰囲気を心中にて評する。
無論、彼女が此処で踊り子に扮しているのには理由がある。長距離通信手段の根絶されたクロムキャバリアにおいて、表向き敵対する国家の人間と陰謀を巡らすならば、工作員と直接やり取りをするぐらいしか方法が無い。そして、そうした秘密のやり取りは、この酒場のような雑然とした環境の方が意に介され難い。出入りする人間自体が多いならば尚更だ。
そうした判断のもと、この店のステージに上がったオリヴィア。その艶やかなる舞踏を以て、見事に店内の客達の心を奪うことに成功。ステージ真下まで詰め寄って間近で彼女を見ようという客は多数、そうしない客も客で、各々の席からオリヴィアへと熱い視線を注ぎ、其を肴とするかのように酒を飲んでいるようだった。
だが、彼らは違う、とオリヴィアは判断する。己に興味を示すならば、彼らは純粋に酒や芸を楽しむ真っ当なこの街の住民。彼女の目当ては、そうでない者――何らかの目的を以てこの店にいる人物。舞いながら店内を見渡すこと暫し。
(――あの男――もしや)
新たに入店したその男。オリヴィアを一瞥しただけで彼女から視線を外し、誰かを探すかのように店内を見渡す男。あれか。頷き、オリヴィアは舞台袖へと下がってゆく。
「――もし、其処のお方」
「……あん?」
此処で落ち合う筈だった相手を探して視線を巡らせていたその男は、かけられた声を受けて振り向く。其処に居たのは、先程までステージ上で舞踏を披露していた踊り子――オリヴィア。
「宜しければ、あちらの席で――一つ、愉しみませんか?」
オリヴィアは科を作って誘いをかける。別の目的を以て此処に在る男にとっては、即時却下と言っても良い誘い――その筈だったが。
「……良いぜ。楽しませて貰おうじゃないか」
男は何故か二つ返事で承諾。迷うことなくオリヴィアについてゆく、その判断に、男本人は一切の疑問を持っていない様子でさえあった。
案内された先は、人目につきにくい片隅のテーブル。男が席につけば、オリヴィアは早速とばかり用意したグラスに酒を注ぎ。
「此方は私からのお気持ちです。遠慮なく、お好きなだけお飲みくださいませ」
そして男へと勧めれば、男は何の疑問も持つことなくグラスを取って一気に呷る。酒が無くなればオリヴィアが即座に追加。そして男は飲み干す。三度程繰り返せば、男はすっかり酒が回って完全に酔っぱらってしまう。
「ところで貴方様は、普段どのようなお仕事をなされているのです?」
そんな男にオリヴィアは質問を投げる。まずは確認も含めての質問を。
「ああ、パラメリアの軍で将校やってる……けどな、ここだけの話」
男は淀みなく問いに答えるが、そこで何やら勿体ぶった表現を見せる。続きを促すオリヴィアに、男は応えて。
「この国が国として独り立ちできるのも、後一週間ってトコだ。後一週間で、この国はそのままそっくりヴィスタリア領になっちまうのさ」
自分だけが知る秘密をこっそり教える、と言わんばかりに薄ら笑いを浮かべつつ、そう続けてみせる。
「俺はそれを実現する為に色々仕事をしてるんだ。マーベックさんとヴィスタリアからの使いとの連絡役とか、軍の中での情報操作とか」
己の仕事を誇るべきものであるかのように語る男。マーベックの名前が出たことに、オリヴィアが詳しい話を求めれば男は躊躇なく応え。
「あの人は凄ぇよ。最初は俺も胡散臭いと思ってたけど、直接話してみたら、とにかくみんなの生活とか未来を真剣に考えてる人だって思い知らされた。その為に、あの人はパラメリアをヴィスタリアに譲り渡すつもりでいるんだ」
曰く、それが実現すればマーベックはパラメリア領の統治を任される予定で、その為の契約も既に締結済みだという。成程、それがかの者の最終目的か。
その後も、最終目的実現の為のマーベックの計画、その中における己の役割といった情報を、男は淀みなく応えてみせる。酒の勢いと、酌をするオリヴィアが放つ魅惑の雰囲気が、彼の口をこの上なく軽いものとしていた。それこそ、己の知る秘密の全てを話してしまいそうな程に。
一通り話しきり、この店で落ち合う予定らしい工作員を探そうと、男は席を立った――直後。
「――がっ!?」
短い悲鳴。崩れる男の身体。それまで柔和な笑顔を浮かべていたオリヴィアが、厳しい表情で倒れた男を見下ろしていた。
「――食い詰めたわけでもないのに国を売り、人間同士の争いを煽る。その行いを、誇りさえするか」
度し難い、と言わんばかりにオリヴィアは呟く。そして男の身を抱え上げると、彼を反逆者として軍へ引き渡すべく、店を出ていくのであった。
成功
🔵🔵🔴
第2章 集団戦
『IZM-28S『ゲラボゴ』』
|
POW : 対キャバリア近接格闘
【RX-Aヒートダガーと対キャバリア格闘術】による素早い一撃を放つ。また、【重装甲をパージして機体を軽量化する】等で身軽になれば、更に加速する。
SPD : 試作型バリアフィールド発生装置
見えない【バリアを発生させ指向性を付与した物理障壁】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
WIZ : 次元転送リロードシステム
【RSグレネード砲付きメガパルスライフル 】で攻撃する。[RSグレネード砲付きメガパルスライフル ]に施された【弾数無限増加】の封印を解除する毎に威力が増加するが、解除度に応じた寿命を削る。
イラスト:エンシロウ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
パラメリア首相選挙三日前、正午。通りがかった人々の誰もが、ノーザレス中央駅前マルチビジョンから流れるそのニュースに釘付けとなっていた。
『――臨時ニュースです。パラメリア公安捜査局は先程、パラメリア首相選挙に立候補中のダリオ・マーベック氏に対し、国家転覆企図及び外患誘致による重反逆行為の容疑で逮捕状を取ったと発表しました。公安捜査局によると、マーベック氏は首相選挙の後に共和国を解体し領土を神聖ヴィスタリア皇国へ譲渡することを企図、また皇国のキャバリア部隊が共和国領へ潜入する手引きを行った疑いが持たれているということです。繰り返します――』
呆然とする者、納得したように頷く者、怒りを露とする者、呆れたように肩を竦める者。反応は様々だが、でっち上げだと声を荒げる一部の者を除けば考えは一つ。――最早、マーベックにこの国を託すことはできない。
◆
その頃、ノーザレスより南東に30km程の位置。岩場に設けられた急造キャンプ。数十機のキャバリアに囲まれたテントの中に、ダリオ・マーベックの姿はあった。
「くそっ、何処だ! 何処で私は間違えた!?」
両の拳でテーブルを激しく叩き、マーベックは悔しげに唸る。情報が軍諜報部や公安捜査局に漏洩し、軍内部の協力者やヴィスタリアから派遣された工作員の殆どが身柄を拘束された事を知らされた彼は、慌ててノーザレスを脱出。クーデターを起こす際の一時拠点として用意していたこのキャンプまで落ち延びてきたのだ。
「いや、お前は何も間違えてはいない。向こうの動きが想定以上に巧みだった、恐らくはそれだけの話だ」
マーベックの隣で背筋を伸ばし立つ壮年の男が淡々と応える。その身に纏うはパラメリア軍の制式品ではない白のパイロットスーツ。神聖ヴィスタリア皇国の正規軍――聖騎士団の制式スーツだ。キャンプ内には、同様の装いをした兵士が多数。
彼らはフォルトバーク基地所属の第116遊撃機甲大隊――として同基地に潜伏していたヴィスタリアの特殊部隊。そして男はその隊長。正体の露見したことが工作員を通じて伝えられたが為、軍が動き出す前にこうして脱出してきたものだ。
「だが、これからどうする? 計画が露見している以上、現状で強引に議会の制圧を試みようにも成功の目は薄い。本国へ撤退するにも、敵は厳重な警戒網を敷いていることだろう」
隊長はマーベックに問う。進むも退くも困難極まりない状況。彼らはまさに追い詰められていた。
「ここまで来て、何もせず逃げるなど出来るか……! こうなれば一か八かだ、ノーザレスに突入し議会の制圧を狙う!」
ならばとことんまで行くだけだ。マーベックは絞り出すように叫ぶ。それが乾坤一擲の決断であるのか、オブリビオンマシンの狂気が齎す蛮勇であるのか。マーベックにも分からない。
「……良いだろう。ならば我々も付き合うとしよう。我等とて聖騎士団、『聖戦』の為に命を捨てる覚悟はとうに出来ている」
だが隊長は異を唱えることなく頷く。元より敵国潜入という危険な任務、八方塞がりに追い込まれる事も織り込み済みだ。
とは言え、やるからには最大の戦果を。現状の条件にて目的を達成するべく、作戦会議を始めようとしたその矢先。
「伝令! パラメリア軍のキャバリア部隊がこのキャンプに接近中!」
テントに飛び込んできた兵士が事態の変化を告げる。このキャンプの位置も把握されていたか。ならば、如何な作戦を立てるとしても。
「この場を切り抜けねばどうにもならんな。全軍、このキャンプを放棄し出撃。敵軍を食い止めつつビルシャス方面へ撤退する」
指令を下す隊長。パラメリアの同盟国であるビルシャス帝国の方面ならば敵の警戒網は比較的薄い筈、という判断からだ。
隊長が確認するようにマーベックへと視線を向ければ、マーベックは苦い顔で首肯する。
「お前は先に撤退するがいい。あのキャバリア、お前が素人なのを込みで考えても性能は高いが、あれは集団戦闘には向かん」
マーベックにそれだけ告げて、隊長もまたテントを出る。撤退戦の指揮を執る為に。
◆
そして、パラメリア軍のキャバリア部隊がキャンプへ到着。展開を終えたヴィスタリア側部隊と対峙する。
『敵軍、キャンプを放棄し撤退を試みる模様。マーベックは敵陣最奥のキャバリアに搭乗していると思われます』
敵の陣容の報告とそこから予想される敵の行動方針が、兵士の一人から隊長機へ伝達される。自機のコクピット内にて唸る隊長。
『敵の主力機体はゲラボゴか。面倒な相手だ』
堅牢な装甲と高出力且つ持続力の高いバリアにより、高い生存性能を有するキャバリア。成程、潜入部隊が運用するには最適な機体と言えるだろう。あれを主力とする部隊が本気で逃げを打つとなると、追撃しきるには相応の戦力と戦術が必要だ。
隊長の意識が、自身の部隊に同行する戦力へ向けられる。全員が全く別の機体に乗り、或いは生身で戦場に立つ者もいる。それが『猟兵』という名の一騎当千の存在であることを、彼らは未だ知らない。
『奴らを残らず捕らえる為、お前達にも協力を要請したい。宜しく頼む』
猟兵達へと向けられる、隊長からの協力要請。戦場最奥、マーベックの乗るオブリビオンマシンへ攻撃する為には、まず正面のキャバリア群を排除し戦力を削らねばならない。
戦いの時だ。
※戦場は荒野の真っ只中。敵軍のキャンプ跡以外に特に建造物は無く、障害物も少ないです。
※この章で戦う機体はオブリビオンマシンではありませんが、兵士の平均練度が高いためオブリビオンマシン相当の強さを持ちます。
※二章時点ではマーベックのオブリビオンマシンへは攻撃できません。
※パラメリア軍のキャバリアは『オブシディアンMkIV』となります。武装はライフル・ヒートブレード・ミサイルランチャー・肩部グレネード砲。
※希望すればPCも同機体を借りて乗ることができます。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
成程、確かに練度が高い様ですぅ。
生身で参加、友軍から離れた位置に配置しますねぇ。
『FAS』を使用し問題無い高度を飛行、『FMS』のバリアと『FGS』の重力結界で周囲を覆い『近接格闘』の届き辛い状態にして、【溯圉】を発動しましょう。
『戦場全体』に齎されるルールは『搭乗型機械使用禁止』、当然キャバリアは含まれる上、性質上『ルールの対象』は『乗手』の方、私が使用していないことで弱体化しても『空間干渉系能力の無い機体』と『一般人』で『亜空獄』からは出られません。
生身で出てきた場合、その状態で私と交戦することになる以上、問題無く対処可能ですぅ。
放棄された機体は、安全確認後友軍に。
交戦を開始するパラメリア軍とヴィスタリア軍。その戦線を迂回し、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は敵軍の側面を取るような位置を取ろうと戦域を飛翔する。
『むっ!? 空を飛ぶ人間……だと!?』
然しその途上、ヴィスタリア軍の一集団に遭遇。どうやら敵もその戦術には警戒していたと見える。その実行役が、キャバリアにも乗らぬたった一人の娘であるとは思わなかっただろうが。
「成程、確かに練度が高いようですぅ」
そんな相手と言えど必要以上に驚いたり侮ったりすることなく、即座に腕部の主武装たるパルスライフルを斉射しながら前進を開始するゲラボゴ。冷静な判断力と言えるだろうか。
だが、それでも尚、己を打倒するには不足。展開した銀盤より生じた結界がパルス弾を防ぎ止め、るこる自身へと攻撃を届かせない。輝く障壁はその光を衰えさせることなく、容易な突破を許さぬ意志を如実に示す。
『くっ、障壁か! 総員、角だ! 角を狙え!』
なれど結界が銀盤を基点に発生していることを見抜いたか、兵の一人が其方への攻撃を呼びかける。重力結界の守りもあるとはいえ、長く好きにさせる訳にはいかなそうだ。るこるは両手を合わせる。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その天獄の理をここに――」
そして奉ずる女神へ祈りを捧げれば、其はユーベルコードとなって一瞬にして戦域全てへ伝播する。直後。
『……何っ!? き、機体が動かない……!?』
『機体全体が拘束されている……! 貴様、一体何をした……!?』
一斉にその動作を停止するヴィスタリア軍のキャバリア。驚愕しつつも機体を動かそうと試みるヴィスタリア兵達は、やがて機体が外部から何等かの手段で拘束されていることを把握する。何をしたのか、と兵の一人がるこるへ問えば。
「この戦場に『全搭乗型機械使用禁止』のルールを布かせて頂きましたぁ。当然、キャバリアも対象ですよぉ」
平然と答えてみせるるこる。そして告げる。違反した者は亜空間の檻に囚われ、およそ一切の行動が不可能となること。そして脱出するには当該機体を放棄しなければならないことを。
『くっ、道理でキャバリアにも乗らず単騎で此処に来た訳だ……!』
悔しげに唸るヴィスタリア兵。何らかの対策を携えているだろうことまでは想像できたが、よもや戦域全てに影響を及ぼす手段を有しているとまでは予想できなかった。
「そういう訳ですねぇ。大人しく投降願えますでしょうかぁ」
全く動く様子の無いキャバリア群を確認し、るこるは算段する。己が元々キャバリアを持たず、且つキャバリアの集団を相手としても戦えるが故、拘束力は落ちているが、相手は一般人が搭乗する時空干渉機能を持たないキャバリア。ルールを布く能力という性質もあり、弱体化しても拘束は可能と踏んでいたが、予想通りにうまくいった。
後は機体から降りてきたところを拘束するのみ。降機を促すべく、浮遊兵器群を差し向ける。明確にキャバリアにとっても脅威と見える砲門の群れを前に、観念したか兵士達が一人また一人と機体を降りてきた。
後から追従してきていたパラメリア軍が、降機してきたヴィスタリア兵を拘束してゆく。後は機体の方も引き渡すべきだろうが、念の為安全確認はしておいた方が良いだろう。再度ユーベルコードを用い、機体の走査を開始する。
大成功
🔵🔵🔵
フレスベルク・メリアグレース
第一章で協力した将校達と共に行動
オープンチャンネルで無線と電子データを投入
我がノインツェーンの姿を知らぬ者もいるでしょうし、データと無線を送りました
私の名はフレスベルク・メリアグレース
メリアグレース聖教皇国第十六代教皇を務める者です
外患誘致の大罪を犯した愚者を引き渡せば、わたくしが貴方達に便宜を図りましょう
……まぁ、聞かないですよね
瞬間、ゲラボゴの四肢が突如消失する
バリアを展開させるが、その『バリアを展開した空間』諸共キャバリアの四肢が消えていく
バリアを攻撃に使っても同じく消失
そのままパラメリア軍の支援も活用し、工作部隊を確保
治世を誇る国家を転覆させようとして騎士団等……おこがましいですよ
マーベックの身柄を確保するべく、ノーザレスから出撃してきたパラメリアのキャバリア部隊。その中には、先程猟兵達と協力体制を確立した軍人達もいる。フレスベルク・メリアグレース(メリアグレース第十六代教皇にして神子代理・f32263)と共に行動する将校達だ。
彼らのキャバリアを背後として屹立するは、白と金にて彩られた神聖さを漂わすキャバリア。メリアグレース聖教皇国に伝わる神騎『ノインツェーン』、其を起動せしめた実績で以てフレスベルクを教皇の地位へ就かしめた伝説級のサイキックキャバリアである。
『――聞きなさい。神聖ヴィスタリア皇国の者達よ』
『っ!?』
ヴィスタリア兵が驚きの声を上げる。通信機のオープンチャンネルを介して彼女の声が届くと共に、電子データが届いた為だ。データの中身は、その声の主の素性、そして彼女の座すキャバリアのを示すもの。
『私の名はフレスベルク・メリアグレース。メリアグレース聖教皇国の教皇を務める者です』
通信を介して名乗ってみせるフレスベルク。ヴィスタリア兵の側にも、送信したデータを介し彼女の姿が端末へ浮かび上がっていることだろう。
『私は此度、この地に於いて進みつつあった国家転覆の陰謀を打破するべく参りました。其方が保護しているダリオ・マーベック――外患誘致の大罪を犯した愚者を共和国へ引き渡すというなら、皆さんの処遇に関してはわたくしが便宜を図りましょう』
続いて語る本題。即ち、マーベックの身柄を以ての交渉だ。あくまでも誠意を以て語るフレスベルク。あわよくば、このまま投降を促すことができれば最良ではある――が。
『メリアグレース聖教……あの邪教の親玉が態々介入してこようとはな!』
『甘言を以て我等を惑わし、神の光より引き離そうとするか! 邪教を統べる魔女に相応しき所業!』
フレスベルクの語りと送ったデータを一通り把握した兵士達から上がるは、熱烈なまでの敵意を感じさせる力強い声。どうやら、フレスベルクの身分を知って逆に彼女を敵と認識したらしい。
『我等ヴィスタル教の徒は、貴様らの説く邪悪なる思想に絆されなどはしない!』
『かの者の逃げ道は必ずや我等が護りきる! 貴様らの魔の手は絶対に彼の者には届かぬと知るが良い!』
その声音にはある種の熱狂――即ち宗教的な熱狂さえも感じられる。其に基づく正義の行い、と彼らは考えているのだろうか。
(成程、どうやら聖教の教えは彼らの信仰と相容れないもののようですね)
その熱狂が国家単位のものであるのか、彼ら個人のものであるのか。任務の最中ということを考えれば前者の可能性が高そうだが。いずれにせよ、交渉が成立しないこと自体はフレスベルクの想定内だ。
『良いでしょう。ならば、ノインツェーンの力を超えて私に刃届かせられるかどうか――試みてみるが良いでしょう』
フレスベルクが告げると共に、ノインツェーンが両手を広げる。其々の手に魔法陣が形成されると共に、其が淡く光を放つ。
『無よ、其は万有を残らず貪る全ての終わり』
光が増すと共に、戦場の空気が変わってゆく。例えるならば静謐、或いは虚無。時刻は真昼でありながら、真夜中の暗闇の放り込まれたかの如き感覚。
只ならぬものを感じたヴィスタリアの兵士達は、一斉に攻撃を開始。ゲラボゴが構えたるパルスライフルから、無数の光子弾が放たれノインツェーンを目掛けて降り注ぐが。
『無よ、万象を礼賛する私は汝を征服する』
一切に回避行動を取らなかったにも関わらずノインツェーンは無傷。降り注ぐパルス弾は、その全てがかの機体へ届く前に消失したのだ。まるで最初から存在しなかったかのように、忽然と。
何らかの防御結界が展開されているのか。そう考えてか、ゲラボゴもまたバリアを展開。其を射出しての攻撃を試み――ようとして。
『――無よ、全てを飲み込む汝を以て礼賛を証明しよう』
フレスベルクの詠唱が結ばれると同時。バリアを展開しようとしたゲラボゴの腕が一斉に消失。バリアに覆われたる範囲が丸ごと、空間ごと刳り抜かれるかの如く突如として消え去ったのだ。
其は『無』の侵食。ノインツェーンから放出された『Ain』という名の『無』。其がバリア――即ちエネルギーとの接触により、エントロピー消滅事象を引き起こしたのである。
『さあ、今のうちです。彼らを制圧しましょう』
一連の流れを見守っていたパラメリア軍も、何が起こったのか理解しきれず唖然としていたが。フレスベルクの呼びかけを受ければ我を取り戻したかのように動き出し、戦闘力の半減したゲラボゴを瞬く間に無力化していった。
『治世を誇る国家を転覆させようとして騎士団等と……烏滸がましいですよ』
制圧されてゆく敵を厳しく見据えながら、フレスベルクは、彼らの在り方を断じる。騎士ならば騎士らしく、正々堂々あるべきだ――と。
成功
🔵🔵🔴
オリヴィア・ローゼンタール
パイロットスーツを纏いヘラクレスに【騎乗】
ヘラクレスは広範囲戦闘には向いていない
故に敵をこちらに【おびき寄せ】る
神聖だの皇国だのと名乗って、やっていることは間者を送り込んで売国奴を利用
貴様らの言う聖戦とやらはそういうものを指すのか?
大声で挑発の【パフォーマンス】
誇りのために命を捨てる覚悟があるなら、その誇りを傷つければ怒りを買える筈
迫る軍勢、次々と突き立てられる熱刃、四肢を極めにかかる格闘術――【怪力】を以って撥ね退ける!
我がヘラクレスはスーパーロボット! 対キャバリアの常識など通用しない!
【極鋼爆裂拳】で装甲を砕き、大地に罅割れを起こす
足が止まったところへ追撃を仕掛けて【蹂躙】する!
ルイン・トゥーガン
アドリブ&絡み歓迎
はん、判断はそう悪くないが……動き出すのが少々遅いねぇ?
先手を取るべき特殊部隊が後手に回った時点で、まぁお察しさね
さて、報酬の後金の為にもお仕事の時間だね。アマランサス・マリーネ、出るよ!
おっと、本命が先に逃げるか。なら逃げ切れないうちにこいつらを手早く片付けないとね
スラスターを吹かして突っ込むよ!
バリア?パージ可能な装甲にリロードシステムといい、量産機の癖に随分と金と技術がかかるものを
まぁ用はやり方次第さね
高機動で翻弄して、サブアームのサブマシンガン2丁で牽制してバリアを発生させて、両手のビームアサルトライフルとロングビームライフルでバリアをぶち抜くか背後から撃ち抜くさね!
『聖騎士団を名乗る侵略の走狗共!』
戦場に、オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)の大音声が轟く。戦場に屹立する巨いなる鋼の超人――スーパーロボット『ヘラクレス』からのものだ。
『神聖だの皇国だのと名乗って、やっていることは間者を送り込んで売国奴を利用! 貴様らの言う聖戦とやらは、そういうものを指すのか!』
叫ぶは前方へ展開するヴィスタリア軍に対して。彼らは己の誇りの為なら死をも厭わぬ覚悟の持ち主と見える。ならば其処を謗ることで怒りを買えると見てのことだ。
『何を言うか! 我等が版図を広げることは、神の威光を世に広く知らしめる行い!』
『我等が『聖戦』を穢す者には裁きを!』
狙い通り、ヴィスタリア兵達は激した声で反応を示すと共に機体を加速させ迫り来る。だが、その反応にオリヴィアは軽く眉根を寄せる。傷ついたのは、誇りよりも寧ろ――
『ああ、奴らは詰まるところ狂信者だからね。奴らの言う『聖戦』ってなぁ、どんな手を使ってでも異教徒を叩き潰すってコトさね』
つまり内部工作も誇りに悖る行いというわけではない。そう語るのはヘラクレスに並び立つキャバリア『アマランサス・マリーネ』に搭乗するルイン・トゥーガン(B級戦犯指定逃亡者・f29918)。傭兵として様々な国、様々な戦場を渡り歩いてきた彼女。神聖ヴィスタリア皇国が如何な国であるのか凡そは把握している。
『成程、傷ついたのはどちらかといえば信心と。――それにしても理解し難いですが』
理解はできないが納得はした。頷くオリヴィアにルインはそれが常人の反応だと応える。何より敵の動き自体は想定通り、問題は無い。
『どうやら本命は先に逃げるようだ、逃げ切る前にこいつらを手早く片付けちまうよ』
ルインが呼びかければオリヴィアも了解を返し。直後、ヴィスタリア軍のゲラボゴ、その第一波が迫り来た。
『神の光に背く者へ、裁きあれ!』
二体のゲラボゴがヘラクレスへと肉薄する。その手に握るは赤熱するナイフ。RX-Aヒートダガー、ゲラボゴの基本武装の一つだ。其々が赤い刃を振るってヘラクレスの装甲へと斬りつける。
『我等に神の光の加護ぞあれ!』
更に続いて迫る二体のゲラボゴは徒手。だが決して無防備ではない。柔軟に動く四肢を以てヘラクレスの両腕を二機其々が捉え、まるで柔術めいた動きで関節を極めにかかる。あわよくばそのまま圧し折らんばかりの勢いで。
動きを封じられたヘラクレス。その背からコクピットと動力部を貫かんと、装甲を排除して速度を高めた先のゲラボゴ二機が再度迫る。ヘラクレスは振り向く様子が無い。殺った。搭乗者達がそう確信した、次の瞬間。
『――この程度か!』
『『……ぐわぁぁぁぁ!?』』
オリヴィアが吼えると同時、巨英雄は其に負けぬ動力の唸りを上げて猛然と動きだす。上半身を回転させて左右の腕を大きく振るい、其を極めにかかっていたゲラボゴと背後から刺突を繰り出さんとしていたゲラボゴとぶつけ合わせ、諸共に吹き飛ばした。
『我がヘラクレスに、対キャバリアの常識が通用すると思うな!』
かの鋼鉄巨兵は即ちスーパーロボット。単騎にて戦局を変え得ると称される超特機。量産を前提とした機体が容易く対処できる存在ではない。寧ろ。
『鋼の拳よ――打ち砕けッ!!』
叫ぶに応え、思念にて制御される鋼の大英雄は拳を握り、地に倒れた戦機を目掛けて全開の出力で振り下ろす。鉄鎚が如き拳は堅牢なる複合金属の装甲をもトタン板かの如く圧し砕き、その下の大地にまで衝撃は伝播。大出力を叩きつけられた大地に、凄まじい振動が走ると共に、無数の地割れが着弾地点を中心として放射状に走ってゆく。
『逃がしはしない……!』
一旦退いて態勢を立て直さんとしたゲラボゴ達へと、ヘラクレスはそのまま前進。拳を振るい、或いはタックルを喰らわせ。蹂躙し、粉砕してゆく。更に反転、次いで突撃を試みていたゲラボゴにも拳を叩き込みこれを破壊せしめる。
『接近戦は無謀か! だが距離を取れば……!』
其に続いての肉薄を試みていたヴィスタリア兵は、かの鋼鉄英雄の暴れぶりを前に接近を躊躇。代わって構えたパルスライフルを以ての射撃戦に徹する構えを取る。
『よし、撃――ぐわぁっ!?』
ヘラクレスに照準を合わせ、一斉にライフルを発砲せんとしたその時。横合いから放たれた何条もの光が、ゲラボゴ達を撃ち抜き擱座せしめた。
『はん、目の前の敵に気を取られ過ぎさね!』
声の主は、二丁のビームライフルを構えた赤いクロムキャバリアから。ルインである。
『そもそも特殊部隊が後手に回ったって時点で、アンタ達の命運は尽きてんのさ!』
『抜かせ!』
ヴィスタリア兵の反駁をも置き去りにするように、アマランサス・マリーネはスラスターを吹かし荒野を疾走し始める。残るゲラボゴ達もパルスライフルを発砲するが、敵の機動力にはまるで追い付けていない。
『パルスライフルリミッター解除……! 次元転送リロードシステム起動する!』
搭乗者達が叫ぶと共に、パルスライフルの弾幕が一気に濃度を増す。時折、小型の榴弾までが飛んできて荒野に爆発を齎してくる。
『ちっ、流石に弾幕が濃くなってきたねぇ』
スラスターを巧みに吹かしパルス弾の雨を回避するアマランサス・マリーネだが、それでも全ては回避できず徐々に装甲を削られる。反撃として此方もビームライフルを放つが、ゲラボゴはバリアを展開し身を守る。
『バリア? パージ可能な装甲といいリロードシステムといい、量産機の癖に随分と金も技術も掛けてんじゃないか』
そんなゲラボゴの多様な機構を前に、ルインは呆れたようにぼやく。随分と骨の折れる相手だが、対処の術が無いわけではない。要はやり方次第だ。
アマランサス・マリーネの背部サブアームが稼働し、其処に懸架されたままのサブマシンガンを連射する。バリアを以て食い止めるゲラボゴだが。
『狙い通りさね! 今の状態で、こいつを防げるかい!』
其処へルインは再びビームライフルを発射する。放たれた光条がバリアへと命中し――減衰していたそれを貫通、更には機体本体までをも撃ち抜いた!
『そんなもので、ヘラクレスの拳を防げると思うな!』
更にはオリヴィアもヘラクレスを操り肉薄。振り下ろした鋼鉄の巨拳は、バリアも装甲も纏めて叩き割り、粉砕する。
一部のゲラボゴは装甲を排除してルインへ機動戦を挑みにかかるが、それでもアマランサス・マリーネへは追い付けずにビームで撃ち抜かれ。バリアで守りを固めようにもヘラクレスの拳の前には無意味。
機動力で射撃戦を挑むクロムキャバリアと、装甲と出力による格闘戦を旨とするスーパーロボット。対照的な二機の連携を前に、ヴィスタリアのキャバリア部隊は為す術無く打ち砕かれていった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
タウ・エコー
例の機甲大隊、全部が敵だったんですね
機体性能もパイロットの練度も侮れませんが、やってみせます
…対キャバリア戦闘、開始
私の性能は知られていないはず、『雪雫翔華』を発動しますが飛行は制限
歩兵として接近し敵機が射程に入り次第、脚部や武装を狙い射撃します
複数の敵機が私を狙って来た段階で飛行制限を解除、殲禍炎剣に留意しつつ敵集団へ突撃
生身の私を撃墜するならライフル弾かグレネードの爆風だけで充分ですが、特殊部隊の精鋭でも味方機の至近を飛び回る小さな標的を狙うのは難しいでしょう
目的は捕獲ですし加減はしますけど、敵機が抵抗するならできなくなるまで撃ちます
兵器としての優位性は、分かり易く示しておきたいですからね
メサイア・エルネイジェ
おほほ!まさか一般お嬢様が張り込みをしていたなどとは夢にも思わなかったようですわね!
なけなしのお金でお茶を飲んで慣れない間諜に勤しんだ甲斐がありましたわ
ここからはおキャバリアの時間ですわ〜!
ヴリちゃん!参りますわよ!
車線が通り易い開けた荒野ならガンフューラーの出番ですわね
ゲラボゴはなかなかにお強い武器をお持ちのようですから、射程に入る前に撃ち落としますのよ
我が王家に伝わりしエルネイジェ流狙撃術で狙い撃ちですわよ〜!
ミサイルを発射した後にロングレンジビームキャノンを撃ちますのよ
すると相手はミサイルを避けながらビームも避けなければならないのですわ
なのでどちらかは多分当たりますわ!
「例の機甲大隊、全部が敵だったんですね……」
敵の情報を思い返し、タウ・エコー(CODE:Echo・f36550)は少し驚いたように呟く。第116遊撃機甲大隊がヴィスタリアの送り込んだ潜伏戦力ではないか、という情報を得たのは彼女だが、まさかかの大隊全てがそうであったとは、と。
『おーほっほっほ! お膳立ては完璧ですわね!』
と、其処へ響く高笑い。黒き肉食恐竜じみた姿のキャバリアから響くその声はメサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)のもの。マーベックとヴィスタリア皇国の陰謀を暴くに至った情報は、彼女の成果でもある。
『なけなしのお金でお茶を飲んで、慣れない間諜に勤しんだ甲斐がありましたわ……』
しかしそこで一度声音がトーンダウンする。出費は実際痛かったらしい。
『ともあれ! ここからはおキャバリアの時間ですわ~!』
だが事ここに至らば後は戦闘あるのみだ。メサイアの意気に応えるように、愛機『ヴリトラ』もまた咆哮を上げる。
「……そうですね。後は戦いあるのみ、です」
一方のタウは生身のまま、相対する敵機群を見据える。機体性能、搭乗者の練度。侮れる相手では決してないが、タウの心中には恐怖も怯懦も無い。斯様なる敵を前に性能を発揮してこそ、己の存在意義を示し得る。彼女はそう考えるものである。
「やってみせます……対キャバリア戦闘、開始」
呟くと共に地を蹴り、走りだす。翠の瞳が明度を増し、向かう先の敵をより明瞭に視界へ捉える。
『ふむ、あちらの方は生身で接近戦ですのね。丁度良い感じに連携できそうですわ』
そんなタウの様子を見てメサイアは頷く。此度は射線の通りやすい開けた荒野が戦場ということで、ヴリトラは射撃戦強化仕様『ガンフューラー』へと換装してきたが。前衛を担う仲間がいるなら更にやりやすい。
『それではヴリちゃん、参りますわよ!』
メサイアの愛機へ呼びかけるが早いか、ヴリトラの両肩に備えられた二門の長砲身が仰角を下げ、ヴィスタリア軍のキャバリアへと向けられる。砲口に光が集束し、ビームキャノンが今にも発射されんとする。
(狙撃の極意は集中力と忍耐ですわ。心を落ち着かせて精神統一……)
己と敵軍、彼我の距離は未だ大きい。確実に当てる為には十分な集中が必要となる。敵機の動きを見定め、予測し。好機を逃さぬよう――
『――やっぱり我慢できませんわー!』
だがその前にメサイアの忍耐力が限界に達した。叫ぶが早くトリガーを引く。光溢れる砲口から、ビームの砲弾が爆音と共に撃ち出され、瞬く間に戦場を駆け抜けヴィスタリア軍の戦列へと迫る。
『敵の砲撃だ! 回避を――!』
ヴィスタリア兵の一人が叫ぶが早く、ゲラボゴ達が一斉に回避機動を取る。なれど反応の遅れた一機が直撃を受け、アンダーフレームを破壊され崩れ落ちる。
『ちっ、何て威力だ……っ!?』
重装甲のゲラボゴを一撃で大破させるとは。その威力の程に驚嘆する兵が、突如自機のコクピットに響いたアラートに目を見開く。被弾、そして右脚部破損を示す警告メッセージがモニタに映る。
「生身でも、私の性能はあなた達には負けません」
タウである。メサイアの攻撃に敵の意識が向いた隙を突き、間合いを一気に縮めて先制攻撃を仕掛けたのだ。
彼女の手に構えられたる拳銃は、キャバリア用レーザーライフルを小型化した代物且つ念動力による出力増幅機能も有する。以て撃ち放てば、その小ささに反してキャバリアへも脅威となり得る破壊力を示す。
『くそっ、こっちも厄介だな……!』
『だが此方の攻撃も届く、それに何より生身だ!』
唸る兵士に別の兵士が呼びかける。対処すべきはまず此方である、と。生身である以上、一撃当てれば戦闘不能に追い込める。いずれ劣らぬ精鋭である特殊部隊の兵達ならば、生身の人間をキャバリアで撃つことは決して不可能ではない。
一斉にパルスライフルを構え、光弾を連射し始める。その射線のほぼ全てが、タウを狙い殺到する。
「――では、私の本当の性能を発揮しましょう」
だが、それこそはタウの狙い通りの展開。己に敵の意識が向いたその時こそ、己の性能――今は亡きミテス連邦の遺産、超人兵士という兵器の性能を最大に発揮する機会なのだ。
「――増幅回路、起動」
一言。呟くと同時、タウの身体は宙へと浮き上がる。念動力の応用による肉体の浮揚。そのまま身体は一気に高く高く舞い上がり、やがてキャバリアの頭上を取る程にまで。
(これ以上は、恐らく危険ですね)
キャバリア群との彼我の距離から、己の現在高度に当たりを付け。タウは上昇を止める。この世界の空を鎖す光――殲火炎剣。かの兵器の眼に見咎められぬ為には、これ以上の上昇は避けねばならぬ。
だが、充分だ。念動力を斥力と変えて高速飛翔を開始。撃ち上がるパルス弾を易々と躱しながら、反撃と放つレーザーが地を這うゲラボゴを撃ち抜く。
更に。
『戦闘中に余所見はいけませんわね!』
メサイアの声。直後、ヴィスタリア軍の間で巻き起こる無数の爆発。ヴリトラの脚部装備ランチャーから放たれたミサイルが着弾したのだ。タウが上空を飛翔している今ならば、彼女を巻き込む心配は無い。
ミサイルの直撃を受けた不運なキャバリアは崩れ落ち、避けた者も爆風の煽りで動きを止めざるを得ない。
『その隙、狙い撃ちですわ!』
そして間髪入れず撃ち込まれる高出力のビームが二条。狙い違わず其々に狙ったゲラボゴを撃ち抜き擱座せしめる。
『おのれ、ちょこまかと……!』
生き残ったキャバリア達も、思うように動くことができない。高度を下げてきたタウが、彼らの間を縫うように飛翔しながら攻撃してくる為だ。下手に攻撃すれば仲間を巻き込みかねないこの状況では反撃も侭ならず、彼女を見失った者から脚や腕を撃ち抜かれ戦闘力を奪われる。
そしてタウを見失うまいと意識を集中すれば、必然的にメサイアへ隙を晒すことになる。エルネイジェ王家に伝わりし狙撃術を以て繰り出される彼女の砲撃を、その状態で躱せよう筈もなく。
結果、この方面の一団も、碌な反撃のできないままに壊滅。タウは己という兵器の優位性を、存分に示してみせたのである。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リーゼロッテ・ローデンヴァルト
【WIZ】
※アドリブ他歓迎
※愛機搭乗
大佐の望み通り助力とイコうかね
公安等は随行の【ファルマコン】で護送準備中
流れ弾対策や自決防止の医療体制も完備♪
アタシの狙いは弾幕担当のゲラボゴ共
ライフルを構えた所で背部【D・アームズ】を開き
悪魔めいたバインダー…DA61号【ソーサレス】起動
荒野に満ちるは聖騎士サマを惑わす魔女の思念波
拐かされた連中は潤沢な弾で同士討ちを始めるのさ♡
当然猟兵や味方は《瞬間思考力》で選り分けるし
ゲラボゴも狙うは四肢…あくまで不殺ね?
12秒経過したらソーサレスは強制停止・収納
その前に【テルス】のEMP爆弾で完全無力化♪
※起爆前に味方機へ警告
敵軍の武装解除中もマーベックを探査しとくよ
朱鷺透・小枝子
こいつらはオブリビオンじゃない。
だが、この先にオブリビオンが、壊すべき敵がいる!
障害は打破する!!
亡国の主【操縦】。
メガスラスターで【推力移動】正面から敵陣へ突っ込み【オーラ防御】
サイキックシールドで弾丸を弾きながら前進し物理障壁を【怪力】で押しのけ…
この程度でぇええ!!
【継戦能力】『騎兵壱番機』発動。
異常な頑丈性を獲得し敵からの集中攻撃、グレネードの爆破を受け切る
止まるものかぁああああ!!!!
【念動力】フォースウィップを伸ばして敵機を捕縛
【ジャンプ】一気に跳び掛り、ブラストナックルで【マヒ属性攻撃】
【瞬間思考力】次々と敵集団へ【早業】で殴り抜け協力要請に従い殺さず搭乗者の無力化に留める。
『こいつらはオブリビオンじゃない……だが!』
翼持たぬ竜を思わせる意匠の白きジャイアントキャバリア『亡国の主』のコクピットから、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は厳しい視線で戦場を見渡す。
猟兵達の攻勢と、其に呼応したパラメリア軍の攻勢により、ヴィスタリア軍は次々と制圧されてゆく。だが未だに敵は多く、突破を試みる猟兵側戦力を迎え撃たんと展開する。
『この先にオブリビオンが……壊すべき敵がいる!』
吼える小枝子、その闘志は狂戦士と紛うかの如く熱く滾るが、一方で思考は冷徹に状況を把握する。如何に卓絶した打撃力を誇る亡国の主と、歴戦の操縦者である小枝子とて、単騎でこの数を突破するのは少々荷が勝つ。ならばどうするか――答えは簡単だ。
『ああ、さっさとここを突破して、本命を取っ捕まえにイこうか』
同等に卓絶した性能と卓越した操縦者を揃える戦力が、もう一人いれば良い。即ち、最早原型のキャバリアの面影が残らぬ程の魔改造を施した量産型キャバリア『ナインス・ライン』に搭乗するリーゼロッテ・ローデンヴァルト(マッド&セクシーなリリー先生・f30386)である。白の竜機と、蒼の重戦機が並び立つ。
『後詰めはパラメリアが引き受ける、と大佐のお達しだ。アタシ達は連中の突破だけを考えればいいさ』
リーゼロッテは愛機のコクピットのバックモニター越しに後方へ展開する戦力をちら、と見遣る。己の移動拠点である武装列車じみた超大型ホバートレーラー、非合法機動医療艇『ファルマコン』。其に随うように居並ぶ共和国軍のキャバリアや装甲車群。
『左様。突破が叶う状況となり次第、貴公らはマーベックを追って欲しい。残るヴィスタリア軍は我々が何とかしよう』
ファルマコンを出入りし護送準備を整える公安局や軍諜報部のスタッフを指揮する男が、手持ちの通信機でリーゼロッテの言を継ぐように要請する。先日リーゼロッテが交渉を持った軍の第一諜報部長、シュリック・スケイズ大佐である。
『承知……! 障害は、排除する!』
応えるが早く、小枝子は機体の前進操作を実行。即ち、全速にて。
亡国の主の背後から、咆哮にも似た噴出音を上げるはメガスラスター。砲弾めいた速度で飛翔、瞬く間に敵陣との距離が縮まってゆく。
『なんて速さだ……! だが、正面から来るなら!』
『撃て、撃ちまくれ!』
無論、敵とて黙ってはいない。一斉に主武装たる右手のパルスライフルを構えれば、その大口径から光の弾丸が高速にて連射され、雨霰と亡国の主目掛けて降り注ぐ。
『この程度でえぇぇぇぇぇぇ!!』
なれど迎撃を考慮していない小枝子ではない。主の前面に展開されるはハニカム構造の光の障壁。超能力にて形成されし光の盾が、降り注ぐパルス弾を防ぎ止め、その損傷を機体本体まで届かせない。
『とんでもなく高出力のバリアだな……! だが、こっちだって!』
一機のゲラボゴへと肉薄すれば、此方も前面に障壁を展開。ゲラボゴの持ち味の一つである高出力バリアだ。其はキャバリアの突進さえも食い止め得る程の代物、このような敵が相手でもある程度は持たせられる。そう踏んでいたヴィスタリア兵だったが。
『邪魔だッ!!』
だが、目前まで来た処で、亡国の主は徐に腕を伸ばす。展開されたバリアの側面を――掴んだ!?
『何ぃ……!?』
驚愕する兵の前で、バリアが一気に脇へと退けられ。空いた空間へと、唸りを上げる白き竜が飛び込んできた!
『お前は殺さない、だが倒れろ!』
握りしめた機体の拳が、猛烈なる電荷を帯びて輝く。小枝子はそれを――思いっきり、眼前のゲラボゴへと叩きつける!
『うわぁぁぁぁぁ!?』
兵士の悲鳴、崩れ落ちるゲラボゴ。だが中からは兵士の喚く声がする。つまり生きている。その電撃は機体の制御だけを殺す為のもの。小枝子もまた、共和国からの要請に従い、極力敵兵の殺害を裂ける形で戦っているのだ。
『ちぃ、何て力だ。だが囲んでしまえば!』
だがヴィスタリア軍も対抗する。亡国の主の至近の部隊が前進を阻んでいる間に、左翼右翼の部隊が前進、主を包囲にかかったのである。
『囲まれたか……!』
唸る小枝子、だが声音には落ち着きも見える。このような状況をも切り抜けられるという確信が、今の彼女にはあるが故に。己と機体の性能を見込んでいるというのもあるが、此度は何より。
『おおっと、アタシを忘れてもらっちゃあ困るねぇ♪』
哂うようなリーゼロッテの声。その背に負った巨大なるコンテナが、圧縮空気を吐き出す音と共に開かれる。其は、キャバリア規格を外れた超大型兵器、或いは特殊装備を搭載する為のハンガー。そして此度、其処から現れたのは――
『思念波遮蔽コンテナ開封……13秒以上は筐体自壊……』
ノイズ混じりの警告音声がコクピット内に響く。広がるのは悪魔の翼じみた形状の大型バインダー。
『その前にアタシの想いを届けようか――毒電波だけどね』
哂いながら指はコンソールの上で踊る。目標をマニュアルロック。電脳によって成す高速思考は、本来機体CPUが行う処理さえも人の手で行い得る程のもの。
『DA51号『ソーサレス』起動。思念波放出開始っ』
そしてエンターキーを押下。なれど、目に見える変化は戦場において見られない。当然だ。
『ぐあ……っ!? 何だ、これは……!?』
『思考が……だ、駄目だ、そっちは……!!』
放たれた思念波は目には見えず、ただ精神のみを狂わせる。影響は機体ではなく――その搭乗者にのみ齎されていた。
それは聖騎士を惑わす魔女の思念の如く。拐かされた者達は、即ち魔女の虜。意識に反して身体は動き、機体のトリガーを引く。
『ぐわっ!? お、お前、何故だ!? 何故撃った!?』
『ち、違うっ! 身体が勝手に……!』
ゲラボゴが放った光子弾は、亡国の主ではなく、仲間の筈のゲラボゴへと命中。リーゼロッテの機体から思念波を受けたことで、肉体の操作権を奪われたのだ。
そして今度は、撃たれた兵が別の相手側兵へとパルスライフルを発砲。そのまま、ヴィスタリア軍の至る処で始まる同士討ち。
『な、何なんだこれは、この状況は……! だが、このままやられはせんぞ……!」
隊長と思しき男は、その異様極まりない状況に呆然としかけるが、すぐに気を取り直し。己同様に思念波の干渉を逃れた兵と共に、パルスライフル下部、もう一つの銃口の狙いを亡国の主へと定める。
『榴弾、一斉発射!』
そこから放たれるは無数の榴弾。その爆風、念動防壁すら撃ち砕けるという自信があるようだ。だが、其に対する小枝子の対応に、迷いは無い。
防壁を解除する。亡国の主へと、榴弾が次々に着弾。そして爆発。局所的に発生した破壊の嵐に、パラメリア軍の間に動揺が広がる。あの白い竜のキャバリアは、果たして無事なのか――
『……止まる、ものか……!!』
響き渡るは小枝子の唸るような叫び。爆炎と煙とが風に払われれば、その下から現れたのは白き竜のキャバリア――亡国の主。その装甲には僅かな焦げ跡がついただけで、損傷らしい損傷などは一切見えぬ。
『な……馬鹿、な……!?』
愕然とするヴィスタリア兵の声。あれだけの爆発をまともに受け、その上で無傷とは。このキャバリア、一体。
『お前達も、倒れろ……!!』
だが思案の時間など無い。小枝子の叫ぶが早く、腕から伸びた光の鞭が、付近のゲラボゴを捉え。そこから流れる電流が、機体の制御回路を焼き切り行動不能に追い込む。辛うじての反撃も、命中こそすれ傷は与えられぬ。
其は小枝子が最初の接敵段階で既に発動していたユーベルコード。彼女が保有するキャバリアの一機、異常なまでの堅牢さを誇る『ディスポーザブル01』の概念と合体し、その堅牢さと武装の一部を主にも使用可能とする代物だ。主の打撃力と、ディスポーザブル01の耐久力。其を兼ね備えた今、小枝子に敵は無し。
暴れ回る亡国の主の猛攻、操られたゲラボゴ同士の撃ち合い。総崩れとなったヴィスタリア軍に止めを刺すべく、リーゼロッテは最後の手札を切る。
『よっし、そろそろ決めるとしようか。小枝子さん、そのまま突破しちゃって。後はアタシが纏めて始末をつけるよ』
小枝子へ呼びかけると同時、背中の悪魔翼バインダーを停止し格納。起動から丁度12秒。これ以上の起動は、事前の警告通り機体の自壊を招くが故に。
『了解……! リリー先生、宜しく頼みます……!』
目前のゲラボゴを殴り倒した亡国の主は、そのまま前方へと跳躍し敵の戦列を突破。其をリーゼロッテが確かめると共に、ナインス・ラインの機体腰部からなんらかの射出装置じみた機構が展開される。
『さあて、総仕上げだ。後始末は大佐、宜しく頼むよ……っと!』
そしてトリガーを引けば。機構から射出されるは幾つもの爆弾。それらは未だ行動可能なゲラボゴ達の足元へと次々に着弾し――直後、電流じみた光が辺りへ撒き散らされる。
其を受けたゲラボゴの動きが、一瞬にして止まる。否、動けないのだ。ナインス・ラインから放たれた爆弾の正体はEMP爆弾。周囲に撒き散らされた強烈な電磁パルスが機体の制御機構を完全に破壊し、無力化してみせたのである。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第3章 ボス戦
『H・O・P・E』
|
POW : Harmony=Origin
【高速】で敵の間合いに踏み込み、【爪による攻撃】を放ちながら4回攻撃する。全て命中すると敵は死ぬ。
SPD : Origin=Peaceful
【機械仕掛けの無数の羽根】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ : Peaceful=Emotion
【操縦サポートAIが起動し、自動操縦モード】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
イラスト:落葉
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠斑星・夜」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
神聖ヴィスタリア皇国領、その最西部に位置する都市『ハークレイ』。此処に設けられたヴィスタリア軍の基地には今、皇国の軍事の中核たるキャバリア軍団『聖騎士団』の第三軍が集結していた。その数、実に二個師団相当。
皇国の使命に呼応し共和国への反抗を決意した勇士ダリオ・マーベック、彼とパラメリア軍内に潜入させた特務騎士大隊がノーザレスのパラメリア議会を制圧するのにタイミングを合わせ、聖騎士団本隊も侵攻を開始。そのまま一気呵成に、同国領を皇国の版図として併呑する。それが『神聖円卓会議』の計画であった。
だが。
「――計画は全てパラメリア当局へ露見。特務騎士達はマーベック卿を護りつつビルシャス領方面へ撤退中、か」
ハークレイ基地内の一室にて、聖騎士団第三軍団長ジャスティン・ウォードリックは配下の騎士――ヴィスタリア本国とマーベックや特殊部隊員との連絡を担当していた騎士からの報告内容を復唱する。肯定の応えが返る。
「うまくビルシャス国内まで逃れられれば……ビルシャスはパラメリアと同盟国とはいえ、亡命希望者として引き渡すよう交渉も可能だろうか。――否、其処は大聖殿の考える事だな」
政治的な手段へと思索が及びかけたのを自覚しジャスティンは其を打ち切る。己は飽くまでも神の刃たる騎士、考えるべきは武力を以て神の威光を知らしめる手段。なれど、無為な武力行使もまた、神の威光を翳らせる結果を招くことを彼は理解する。
「ともあれ。現状にての作戦遂行は不可能と判断するより他に無い。作戦は中止だ。第三軍の待機命令は明朝を以て解除とする」
その旨を連絡するべく、各部隊長の招集をかけようとしつつ、ジャスティンは心中のみにて呟く。
(――パラメリア。ビルシャス。神の光より目を背く愚かな者共。いずれは貴様らも、あの光の前に平伏せしめてやろう)
窓越しに、空を見上げる。地上を見守り、驕れる者へと光以て裁きを下し給う『それ』の在る空を。
●
『くそ……っ! 逃げきれないっていうのか……!』
ヴィスタリアの特務騎士達に殿を任せ撤退――逃亡を試みていたマーベックは、追いかけてくる者達――猟兵の姿を見て愕然とする。
今の彼は生身ではない。彼の暴走の原因たるオブリビオンマシン、其に搭乗した状態だ。其は常に狂気を煽り、乗り込む者の理性を駆逐する。そして狂える論理を植え付けてゆく。
程なくして、彼は迫る猟兵達へ向き直る。無論、観念したというわけではない。
『お前達……! 何者かは知らないが、この私を止めようというなら大方ビルシャス辺りの回し者だろう!』
機体より響くは、喚くようなマーベックの声。憎悪と憤怒、何より狂気を色濃く感じさせる声音。
『リル・ビルシャス。あの毒婦は言葉巧みに周辺国家の首脳を誑かし、この地域の全てを己の手中に収めんと野望を巡らせている。平和を望む聖女みたいな面をしてな』
かの帝国の若き少女皇帝を口汚く罵るマーベック。己の語るその言葉が、あたかも真実であるかの如き口ぶりで。
『最早スプリングス内閣は奴に骨抜きとされた。奴の野望を挫き、パラメリアの民を解放するには、他国の力も借りねばならない。つまりはヴィスタリアだ』
それ故に祖国をヴィスタリアへ売ろうとしたという事か。どちらであれ祖国の独立は損なわれるという事実を、狂気故に自覚していないのだろうか。否、そうではない。
『そして私がパラメリアに君臨し! その下で国を強く育て上げ! いずれは真の独立を勝ち取ろう! そう、私はパラメリアの未来を担う『希望』なのだ!』
朗々と語るマーベック。だがその道程は恐らく、数多の流血を招くもの。この世界に争乱を引き起こさんとする、オブリビオンマシンの狂気に他ならない。
『パラメリアの希望を摘まんとする悪しき者共! 私がこの場で打ち倒してくれる! 覚悟!』
そしてマーベックが、彼の搭乗する『希望』の名を冠したオブリビオンマシンが戦闘態勢を取る。偽りの希望を、此処に破壊するべし。
フレスベルク・メリアグレース
戯言はそこまでになさい
思想自体は自由ですが、他者を巻き込む道理は無いのです
そう言ってマーベックを罵って冷静さを失わせると同時、三呪剣を死角から投射
オブリビオンマシンの過去を封印し、戦闘状態を奪っていきます
要は、若くして皇帝の座に上がったリル様が気にくわないだけなのでしょう?
リル様とて好きであの年齢で皇帝陛下となったわけではありません
先帝の逝去によってのものですが……リル様は着実に、若くありながら国を治めています
よって、貴方の言葉は今後いかなる価値も意味も有しません
他者への妬みで国を売ろうとした罪……外患誘致は大体の国で死刑と定められているのですよ?
そう言って切っ先を突きつけ、降伏させます
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
狂気の影響が酷いですねぇ。
敵機体の『踏み込み』に合わせ【燦華】を発動、全身を『光』に変換し、上方へ一気に離脱しましょう。
相手からすれば『小型』且つ『光速飛行』する個体、捉えるのは相当困難ですぅ。
また『殲禍炎剣』が『光』に反応するなら、太陽光でも発動している筈ですので、この状態なら問題無く飛行可能でしょう。
そして『殲禍炎剣』発動高度やや下に『F●S』各種を展開、『FTS』による『回収』→『解放』で配置を変えつつ、相手の真上から『FRS』『FSS』の[砲撃]と『FDS』の[爆撃]で空爆を仕掛けますぅ。
相手の射撃等で『殲禍炎剣』が発動しそうなら、即時退避し自滅を誘いますねぇ。
『戯言はそこまでになさい』
マーベックの言葉を厳しく撥ね退けるは、白と金の神騎『ノインツェーン』から発されるフレスベルク・メリアグレース(メリアグレース第十六代教皇にして神子代理・f32263)の声。
『思想自体は自由ですが、他者を巻き込む道理は無いのです』
凛然と告げるその声音、落ち着きこそあれどあどけなさもまた残る。搭乗者は年若い娘である、と悟ることは難しくないだろう。それ故か。
『貴様ァ! 貴様のような娘がいるから世界は歪むのだッ!!』
かの少女皇帝を想起したか、オブリビオンマシンからはマーベックの怒り狂うかの如き声音が響く。その隙を突き、彼の背後から呪剣を投射、以て戦闘力を封じ込めんとしたフレスベルクであったが。
『世界の歪みは正さねばならん、このように!!』
そうマーベックが吼えると同時、その乗機が翼の如き意匠を備えし両腕を振るえば。其処から散り出た機械仕掛けの羽根が瞬時に増殖、白き狂機の周りで渦を巻きながら周囲一帯へと一気に拡散してゆく。
高速飛翔する羽根は刃となってフレスベルクの呪剣を弾き、更には彼女の乗機をも切り刻まんと渦が迫って――
「そうは参りませんよぉ」
其処へ響くは拡声機器を介さぬ生身の声。同時、ノインツェーンの周囲へ乳白色の障壁と闇色の結界とが形成される。まるでかの神騎を護るかのように。
否、事実その目的は保護。羽刃は白の障壁を突き抜けること叶わず弾かれ、黒の結界に囚われればそのまま力無く地に落ちる。結果、ノインツェーンは全くの無傷。
『――感謝致します』
それが仲間の猟兵のものであるとフレスベルクは悟る。そう、彼女の前に舞い降りた、オーラの翼を背に負う少女――夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)の業であると理解したが故に。
「いえいえ、無事で何よりですぅ。それにしてもぉ……」
フレスベルクの謝意に、るこるは微笑み応え。なれど、再びマーベックの乗るオブリビオンマシンへと向ける表情は厳しく。
「言っていることが支離滅裂、狂気の影響が酷いですねぇ」
『私の高尚なる理想を理解できぬ愚物めが!』
断ずれば、即座にマーベックの憎々しげな反駁が飛ぶ。否、それだけではない。
『私の理想の邪魔はさせん! 死ね!』
マーベックの喚き声を引き連れて、狂える希望の戦機が迫る。まさに一瞬で間合いを詰めてきたかの戦機、両手の鉤爪を蒼く光らせ、るこるを狙い振り下ろす!
「大いなる豊饒の女神、その象徴せし欠片の一つを我が身へ」
なれどるこるはあくまでも冷静に。奉ずる女神へ祈りを捧げ、以てユーベルコードを発動すれば、その身は光と変じて一気に上昇。光ゆえにその速度は文字通りの光速、瞬きの間も無くマーベックの視界から彼女の姿は消失する。
『な……貴様……!?』
驚愕の呻きを漏らしながら、るこるの変じた光を見上げるマーベック。るこるの滞空するその高さは、殲禍炎剣の反応する高度のやや下。
(光そのものには反応せずとも『一定以上のエネルギーを持つ光』には反応する可能性がありますからねえ……)
心中にて思案するるこる。光となった状態の自分ならばかの破壊衛星を無視して自由に飛行が可能なのでは、と当初考えた彼女だが、元が質量を持つ肉体である以上、その密度は自然の光に比してもかなり高い。であれば、やはり反応される可能性もあるのでは、と、念の為に限界高度を超える行為は避ける判断を下したのである。
いずれにせよ、作戦方針自体に変更は無い。オブリビオンマシンの真上、限界高度付近に、幾つもの浮遊兵器群が展開される。浮遊砲台や爆撃機構、フレスベルクのもとから回収してきた銀盤や重力錫などだ。
『――そもそも、貴方の理想は高尚でも何でもありません』
頭上に展開される攻撃機構を前として唸るマーベックへ、フレスベルクの声がかかる。
『何だと!? 貴様……』
『大方、若くして皇帝の座に上がったリル様が気にくわないだけなのでしょう?』
激した反応を返すマーベック、なれど彼に構わずフレスベルクは続ける。
『リル様とて、好きであの年齢で皇帝陛下となった訳ではありません。お父上でもあられた先帝の急逝によるものと聞き及んでいます』
かの少女皇帝とは、以前に参加した任務を通し面識のあるフレスベルク。同様に若くして国一つを治める身として、その責務の重さは理解する。故にこそ。
『ですが、彼女は着実に、若くありながらにして立派に国を治めています。其を為している実績があるのです』
その努力の程もまた、理解できる処である。以て、彼女の治世をそう評してみせる。
『そんなものは見せかけだ! そうして周囲を騙して、奴は……』
『無意味です』
反駁を試みるマーベックの言を、フレスベルクは一言にて断ち切る。
『貴方の思想は詰まるところ嫉妬によるもの。そのような心にて発された言葉など、如何なる価値も意味も有しません』
『な……ぐっ!?』
そう断ずると同時、マーベックの座するコクピットに伝わる衝撃。見れば、その機体の至る処に幾つもの剣が突き刺さっている。白と黒と灰の三色からなる呪剣、其は過去を喰らう剣。かの機体の、オブリビオンマシンへ至る前の過去の戦闘経験や経緯を封ずるものだ。
『最早勝負は決しました。せめて、法の下にて裁きを受けるが良いでしょう』
その手にも呪剣を形成、突きつけながらフレスベルクは降伏勧告をする。パラメリアの刑法でも外患誘致は死刑である為、何処で死ぬかの違いではあるが。パラメリアの問題である以上、最終的な解決はかの国に委ねるべき――フレスベルクはそう考える。
『ふざけるな……!』
だが、マーベックは降伏勧告を撥ね退け、機体を加速させにかかる。その手の爪で以て、ノインツェーンへと襲い掛かろうとする。呪剣の効果で速度は落ちているが、戦闘能力そのものは失われていない。
『私は死なん……! この場を生き延び、必ずや祖国を救うべく舞い戻って――』
妄執めいた叫びは、だが、眼前に降り落ちてきた爆撃で妨げられる。上空から降るそれは、無論のこと。
「いいえ、貴方はここまでですよぉ」
るこるである。彼女の思念に応え、浮遊兵器群を構成する爆撃機構の一つが爆弾を投下したのである。そして、これもまた無論ながら。
「その野望は決して成就させません。この場で、完璧に叩いてみせますよぉ」
上空の浮遊兵器群、その全てが攻撃を開始していた。降り注ぐ幾つもの熱線、炸裂弾、爆弾、重力弾。等々の多種多様な砲撃や射撃、或いは爆撃が、希望を騙る戦機を打ち据え、猛烈なる爆風の中へと飲み込んでいった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
タウ・エコー
火力も耐久性も高いようですが、敵は1機だけ
友軍と連携して包囲し、逃さず破壊します
『雪雫翔華』を発動して接近、まずはカメラやセンサー部分を狙い射撃
有効な損害を与えられなくても注意を引ければ充分です
敵の直上、殲禍炎剣に捕捉されないよう警戒しつつ位置取って更に射撃、反撃を受ける前に急降下、一旦離脱して命中箇所を確認します
レーザーが最も有効そうな箇所に狙いを絞り、再度接近して射撃を集中
どんなに頑丈な装甲とフレームでも、同じ箇所を撃ち続ければ貫けるはずです
…敵の主張に興味はありません、機体は破壊してパイロットは捕獲するだけ、ではあるんですが
こうも耳障りな言葉を聞かされていると、加減を誤ってしまいそうです
メサイア・エルネイジェ
野心がお高いのは結構ですけれどそれはそれでこれはこれですわ
オブリビオンマシンは皆殺しですわ〜!恨むならその機体をお恨みになられるのですわ〜!
まずは距離が離れてる内にミサイルを連射ですわ
そちらに注意を向けさせたところを二連装砲で狙い撃ちですわ
それでも突破してきましたらビームガンで面の弾幕を張るのですわ
これでもダメなら…ステゴロですわ〜!
元々ヴリちゃんは格闘戦の方がお得意でしてよ
一撃は甘んじて受けてラースオブザパワーでとっ捕まえるのですわ
腕を掴んでしまえば爪も振るえないのですわ
後は降参するまで振り回して地面にギッタギタに叩き付けるのですわ
早く降参しませんとコクピットの中身がおミンチですわよ〜!
『おのれ貴様ら……! ええい、かくなる上は……!』
憎々しげなマーベックの呻きと共に、希望の名を持つ狂機が地を滑り翔ける。目指す先には二人の猟兵、恐竜じみた姿のキャバリアに搭乗する者と生身の者。
『Peaceful=Emotion起動! 私の道を阻む者を全て破壊し尽くせ!』
マーベックの声に呼応するかの如く、オブリビオンマシンの瞳が蒼く鋭利な輝きを放つ。同時に腕を大きく振るえば、腕部の翼飾りから放たれた何枚もの羽根が飛刃めいて飛翔。猟兵達を斬り裂かんと迫る。
「速い……ですが!」
生身を晒すタウ・エコー(CODE:Echo・f36550)は飛び迫る羽根の軌道を冷静に見極めると共に疾走、跳躍、そして飛翔。小柄な肉体からはギロチンじみて見える羽刃の間をすり抜け、一気に白の戦機との距離を詰めにかかる。
『舐めるなぁ!』
キャバリアにも乗らず肉薄戦を仕掛けんとする少女に対し、侮られたと感じたか。激したように叫ぶが早く、オブリビオンマシンが蒼く煌めく爪を薙ぎ振るい、タウの身を裂かんとする。
「舐めているのは其方です……!」
なれどタウとしても迎撃行動は想定の内。念動力による浮力を高めれば、その身は一気に急上昇。横薙ぎの爪をすり抜けて、上空高く飛び上がる。思わず見上げる戦機の眼を掠めるように、何発もの光線が降り注ぐ。
『隙ありですわ~!』
更にそこへメサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)の声。持ち前の装甲にて羽刃を凌いだ黒きキャバリア『ヴリトラ』、その太腿部に装着されたポッドから左右各四発、計八発のミサイルが撃ち出される。
白煙を棚引かせオブリビオンマシンへと迫るミサイル群、更にはヴリトラ肩部の砲塔から放たれた高密度ビーム砲弾が追い付き、諸共に白き戦機目掛けて着弾。盛大なる爆発音と共に、辺りへ爆炎と土煙とが巻き起こる。
『やりましたか!?』
「いえ……これは、まだ……!」
直撃と見て快哉を上げかけるメサイアだが、上空を飛翔しつつ警戒するタウの指摘と同様、未だ終わりでないことは直感していた。まるで回避行動を取らなかったかの戦機。それは恐らく――
『この程度の攻撃で、我が希望が潰えると思うな!』
マーベックの声が響くが早いか、煙の中から飛び出してくるは希望を騙る戦機。殲禍炎剣の反応しないギリギリの高度に在るタウへと一瞬で接近するその跳躍力は驚異の一言。そして何より。
(思った以上に損傷が軽い……!)
タウのキャバリア主武装級のレーザー射撃に、メサイアの砲撃。それらを受けて尚、目立った損傷の見られないオブリビオンマシン。その耐久力は見た目以上だ。
「――ですが、無傷ではない」
尤も、損傷は軽微でこそあれ確かに刻まれている。其を確かめつつ、上昇する狂機と交錯するような形で急降下。ヴリトラの陣取る方向へと、地を滑るように飛翔してゆく。
『こんな攻撃如きでこいつは破壊できん! 私はパラメリアの希望、正義を背負う者! パラメリアの完全な独立の為、倒れるわけにはいかんのだ!』
尚も己の行いが正当であると喚くマーベックの声と共に、着地したオブリビオンマシンがタウを追って駆け出す。その先には無論、メサイアのヴリトラが待ち受ける。
「……貴方の主張に興味はありませんが」
うんざりげに眉根を寄せつつ、タウは飛翔を続ける。此度の作戦目的は理解しているし、それ以上の行動を取るつもりも無い。だが。
「こうも耳障りな言葉を聞かされていると、つい加減を誤ってしまいそうです」
思わずため息じみた言葉が漏れる。身勝手かつ思い込みに満ち満ちた彼の主張。傾聴の価値など無いどころか、寧ろ苛立ちを催す程のものである。
『野心がお高いのは結構ですけれども……』
一方のメサイアは、彼のその思想を敢えて否定はしない。だが、それはそれ、これはこれである。即ち。
『恨むなら、その機体をお恨みになられるのですわ~!』
オブリビオンマシンは皆殺し。その目的意識もまたブレることは無い。高らかに叫ぶと同時、両肩のビームキャノン砲から再度ビーム砲撃を撃ち放ち、両腕のアームビームガンからもビームを立て続けに連射する。
『この機体は我が希望の鎧! 感謝こそすれ恨みなどするものか!』
だが狂機はマーベックの操縦に応えて両腕と其処の翼飾りとで頭部と胴部とを守る構えを取る。其処にビームが着弾するも、小口径のビームガンでは腕部に傷一つ付かず、ビームキャノンの砲撃も肩部を僅かに破損せしめるのみ。
『やはり硬いですわ……!?』
『私に楯突いたその愚行、死んで悔いるがいい!』
愕然とするメサイアに、白の戦機が迫る。そしてヴリトラへと肉薄するや否や、前面を守っていた腕部を大きく振り抜き。蒼の鉤爪が、ヴリトラの胴部へと浅からぬ損傷を刻み込む。後三発。全て受けてしまえばヴリトラどころかメサイアにすら危機が及ぶ。果たして、如何に回避するか――
『――ですが』
否。続けてのメサイアの反駁は、回避など不要であるという事実を口にする。何故ならば。
『――捕らえましたわよ!!』
『な……に!?』
斬撃を受けてたじろぎつつも伸ばされたヴリトラの手が、己が身を斬り裂いたオブリビオンマシンの腕を捕まえたからだ。
『ヴリちゃんは元々格闘戦の方が得意なのですわ! ここからは全力全開で参りますわよ~!』
即ち、ここまでの攻撃もタウの機動も、此処に至る為の誘導。砲撃で敵を引き付け、白兵戦を仕掛けた処で捕らえる。それが彼女の作戦である。死の連撃を繰り出す爪も、其が具わる手や腕を掴まれれば無意味なのだから。
そして、捕まえて終わりではない。
『そぉぉいっ!!』
『ぬおおおおお!?』
主の意を受け力強く咆哮するヴリトラ。その腕が思いきり振るわれれば、どちらかといえば細身のオブリビオンマシンが腕に引かれて宙を舞い、そして地面へと真っ逆さまに叩きつけられ。。
『ぐはぁっ!?』
機体も流石に、自身の質量とヴリトラの出力が齎す衝撃までは耐えられないらしい。地面への激突と共に機体の全身から猛烈な軋み音が響き、更にマーベックの悲鳴も聞こえた。その衝撃は、装甲に覆われた機体内部へとまともに伝わっているのだ。
『まだまだ参りますわよ、そぉいっ!!』
『ぬわぁぁぁ!?』
だが当然ながら、一撃で終わらせるつもりなどメサイアには無い。続けざまにヴリトラが腕を振るえば、再度オブリビオンマシンは空中へと振るわれ、そして地面へ叩きつけられる。其処から更にもう一回、再びもう一回。
『がっ、ぐぁ、がはぁっ!?』
『お~っほっほっほ! さあ早く降参なさい、さもないとコクピットの中身がおミンチですわよ~!』
断続的に上がるマーベックの苦鳴も意に介さず、メサイアは高笑い混じりに降伏勧告を突きつける。つまり降伏するまで投げるのをやめない、と。
「いえ、流石にこのままでは機体より先に彼が持たなそうですので」
然しタウはマーベックが死ぬまで降伏を拒む可能性を考慮し、別の手段を提示する。つまりオブリビオンマシンの物理的な破壊である。
『でしたらば、適当なところでお願いしますわ!』
メサイアも提案に異論は無い様子。其を受け頷いたタウは、得物たるレーザー光線銃を構える。
「ええ。これだけ投げまくられれば、狙いは一点、です」
即ち、ヴリトラに掴まれている腕の付け根。散々振り回されたことで、関節強度が一気に疲労を増している。であれば。
「――其処です!」
それは果たして幾度目か。再び宙を舞うオブリビオンマシン。その腕へと狙いを定め、タウの指がトリガーを引く。念動力により出力を最大まで高められたレーザーが空を裂き、白き戦機の肩へと着弾すれば――そのまま、フレーム剥き出しの肩部を穿ち、貫き、そして破損せしめ。
ヴリトラの持つ腕部と、残る機体本体とが泣き別れ――斜め上方向へ向いたままの運動ベクトルとヴリトラの出力が齎した運動エネルギーに従い、機体本体が吹っ飛んでゆく。幸い、殲禍炎剣が反応する高度までは至らない様子。
『ぐわぁぁぁぁぁ!!?』
マーベックの悲鳴をその場に残して、オブリビオンマシンの白き機影は、驚く程に遠くまで飛んでいったようだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
リーゼロッテ・ローデンヴァルト
【POW】
※アドリブ他歓迎
※愛機搭乗
※不殺
アンタ、あの娘を買い被り過ぎだよ
聖女でも魔女でもない、ただの頑張り屋さ
ソレをまぁ大人げない事で
絶望に屈したバカの思い上がりはココまで
アタシがアンタの尊厳を辱めてやるよ
オペ127番【オリオン・ピリオド】開始
弓型の【リゲル・タクティクス】がビームの太矢を投射
ソイツは味方に迫ろうとしたマーベックを執拗に追い
着弾すればコンソールに通信確立の表示
後は攻性プログラムを《瞬間思考力》と生体電脳が統制
怒涛の《データ攻撃》で《追撃》してOSをブチ壊せば
自称革命家サマの機体は完全に木偶の坊♡
【ファルマコン】の医療体制は万全だし自決狙いもムダ
精々大佐達のお世話になるんだね♪
ルイン・トゥーガン
アドリブ&絡み歓迎
お前の言い分なんてどうでもいいさね
狂人の言葉なんざ聞いても金にならないからねぇ
はん、幾ら機体性能が良くてもパイロットがこれじゃねぇ?
加速性は認めるさね、狙いがバレバレだと意味ないがね!
突っ込んでくる敵に右手のビームアサルトライフルとサブアームのサブマシン2丁で弾幕を浴びせて、それで少しでも怯めば両肩部ミサイルポッドから中型ミサイル6発全部撃って空のミサイルポットを即座にパージするよ
あぁミサイルはスーパーナパームさね!さぁ炎に突っ込むか、仮にミサイルを迎撃しても炎に巻かれるだろうよ、素人に炎は怖いだろ?
それでも抜けてくる根性があるなら爪は左手のビームソードで受けて切り払うさね!
『おのれ、おのれぇぇぇ!! ビルシャスの回し者めが、あの毒婦の狗めが!』
思うように攻め込めず、機体の損傷ばかりが積み重なる状況を前に喚き散らすマーベック。希望をその名に冠するオブリビオンマシンが、彼の苛立ちを狂気で以て加速させる。
『そうまでして我らを、我らが祖国を食い物にせんと……!』
『アンタ、あの娘を買い被り過ぎだよ』
尚も叫ぶマーベックの嘆きぶった妄言を、リーゼロッテ・ローデンヴァルト(マッド&セクシーなリリー先生・f30386)の呆れた声が遮る。その声は彼の前方、蒼き重装キャバリア『ナインス・ライン』から。
『あの娘は聖女でも魔女でもない、只の頑張り屋さ』
かの少女皇帝と面識を持つリーゼロッテは理解する。彼女は只々、己の責務を果たすべく日々頑張っているだけなのだと。
『ソレをまぁ、大人げないことで』
故に、マーベックの妄言に耳を貸す価値など無し。端的に切って捨ててみせる。
『貴様こそあの悪女に騙されているのだ! そうして都合の良い駒として――』
『お前の言い分なんてどうでもいいさね』
それでもマーベックは反論してみせるが、今度はナインス・ラインに並び立つ赤きキャバリア『アマランサス・マリーネ』からの声――ルイン・トゥーガン(B級戦犯指定逃亡者・f29918)に妄言を断ち斬られる。
『狂人の戯言なんざ聞いても金にはならないからねぇ。それが如何にも正義ぶってるってなら尚更さね』
畳みかけるルインの言葉は忌まわしげな毒を帯びる。かつて故国の為と信じ汚れ仕事に従事した末、敗戦の後はその責を全て押し付けられた過去が過るのだろうか。
『そうさ、絶望に屈したバカの思い上がりはここまでってね』
リーゼロッテの嗤う声。眺めるモニタの一角、通信を介したルインの表情も何処か愉快げな笑み。「違いない」と同意を示すかのような。
『き、貴様らぁぁぁぁぁ!!』
直截的に罵られればマーベックは瞬く間に怒り心頭に発し。其に応えるが如く、白の狂機が疾走を開始。瞬く間に加速する機体が、赤と青、二機のキャバリアとの距離を一気に詰めてゆく。
『おっと、なかなか速いじゃないか』
『だが充分に乗りこなせてるかねぇ? アタシが一つ遊んでやろうじゃないか』
なれどリーゼロッテとルインは共に余裕。マーベックの技量を試してやろうとばかりにアマランサス・マリーネがスラスターを吹かせば、ナインス・ラインは逆に距離を取りに行く。
『この私を! 愚弄するかぁぁぁ!!』
前進するアマランサス・マリーネ、その眼前に白きオブリビオンマシン。己を侮った報いを与えんというマーベックの意志を受けて、蒼く煌めく爪を振るう。四度刻めば、あらゆる存在を滅びに導く力宿す爪を。
だが。
『はん、加速性は認めるさね。だが――』
既にアマランサス・マリーネは回避機動に入っていた。振るわれる爪と逆側へ潜り込むように機体の腰を落とし、爪の攻撃軌道より逃げる。そしてそのまま距離を離し、逆側の爪の第二撃も回避。
『思った通りさね。所詮は素人、機体性能をまるで活かしきれてないねぇ』
距離を取らんとするアマランサス・マリーネの動きに対し、オブリビオンマシンは踏み込みながら爪を振るいに行く。だが同一方向へ移動しながらの白兵攻撃など早々当たるものではない。
『踏み込みが甘いんだよ!』
嘲るようにルインが言い放つと同時、アマランサス・マリーネが銃器を構える。主武装たるビームアサルトライフルと、背部サブアーム二本で其々保持するサブマシンガン。
構えた銃器のトリガーを同時に引く。ビームと実弾、二種類の弾丸によって成る弾幕が、四度爪撃を繰り出さんとしたオブリビオンマシンへと叩きつけられる。
『ぬお……っ!?』
マーベックの驚愕する声が聞こえる。所詮は牽制目当ての弾幕、まともに受けたとてこの機体ならば耐えきれる。其を当てにして突っ切れば、振るいかけた爪をアマランサスへ当てることも不可能ではなかっただろう。だが彼は怯んだ。故に爪は力なく空を切った。
『ハッ、覚悟がまるで足りてないねぇ!』
その有様を詰るルインの声、その後半部分に爆音が被る。両肩に担ぐ二基のミサイルポッドが、搭載した六発の中型ミサイル全てを射出した音だ。炎を噴いてオブリビオンマシン目掛けて飛翔する六発のミサイルは――そのすぐ手前の地面に着弾し、そして爆発する。
『………!!』
外れた。だがマーベックは直後にその理由を悟る。己の眼前、ミサイル着弾位置を中心とした広範囲に広がる、燃え盛る炎を……!
『さあて正義の活動家さんよ、正義の為に戦う覚悟があるってんなら、こんな炎ぐらい突っ切れなきゃねぇ?』
炎の向こうから、ルインの挑発が聞こえる。先のミサイルはナパーム弾、着弾地点を猛烈なる炎に包む兵器。ルインのユーベルコードも受けたことで、その炎は規模も火力も通常より更に増している。
『ぬぐ、お、おのれ……!』
歯噛みするマーベック。こんな炎に突っ込んだら、機体は無事でも己が熱の被害を免れ得ない。そんな恐怖が、彼に前進を躊躇わせ、そして。
『――そんなんじゃあ、国の未来も自分の尊厳も守れやしないね』
『な……ぐわぁっ!?』
剽軽さを滲ませながらも冷たく断ずる声。と同時に響く爆発音と伝わる衝撃。驚きながらも踏み止まったマーベックは、即座にモニタのロックオンアラートの向きを確かめる。そして機体を向けた先には、大弓を構えた蒼き騎兵――ナインス・ラインの姿があった。
『着弾確認、通信確立――これで、勝負ありだよ』
コンソールに映る表示を確かめ、不敵に笑うリーゼロッテ。一方のマーベックは、彼女の言葉の意味を掴みかね――その直後。
『貴様、何を言って――な!? こ、これは……!?』
響き渡るレッドアラート、モニタに走る意味不明な文字列と映像のバグ。突然機体に起こった謎の異変。マーベックはどうやら、その意味を理解したようで。
『これはまさか……クラッキング……だと……!? ……さっきの爆発か!?』
『へえ、それくらいは流石に理解できるか。でも、理解したところでもう手遅れさ』
その原因に思い当たったらしき様子に、感心したかの如くリーゼロッテは呟く。だが、それを理解しても最早どうにもならない。
先の爆発は、構えたる大弓から放った光矢の着弾によるもの。そしてその光矢とは、対象とリーゼロッテとを電子的に繋ぐ機能を宿した代物。そして接続を果たしたオブリビオンマシンの電子系へ、リーゼロッテが攻性プログラムを送り込み――
『流石にオブリビオンマシン、電子防御もそれなりか。でも、どのみちあと数秒で、アンタの機体は木偶の坊さ♪』
既にリーゼロッテの放った攻性プログラムは、機体の制御プログラムをも侵食しつつあった。これが完全に破壊されれば、オブリビオンマシンと言えど最早動くことは叶わない。
『つまりはチェックメイトだ、自称革命家サマ。精々大佐達のお世話になるんだね♪』
リーゼロッテの嗤う声が聞こえる中、マーベックは悔しげに唸る。これで終わりなのか。崇高なる己の使命は、こんな形で頓挫するのか。こんな、こんなことは――
『――こんな事が認められるかぁぁぁぁぁ!!』
絶叫、同時に機体を後方へ一気に走らせる。強引にリーゼロッテの接続をも切断し、すんでの処でOS全損を免れて。そして彼の姿は一気に遠ざかってゆく。
『ちっ、まだあんな根性があったってのかい』
感心するやら呆れるやら。ルインは呟きながら、追撃せんと機体のバーニアを点火しかけるが。
『や、アタシらはここまでで良いでしょ。あっちにもお仲間が二人ほど来てる』
なら、後はきっちり確保できるように備えておくだけさ、と。何処か悪戯っぽく、リーゼロッテは笑ってみせた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
亡国の主と融合、敵へ向かいながら真の姿へと変貌、
『破壊翼』を発動。超巨大翼を広げて羽根の弾幕を放ち先制攻撃。
【瞬間思考力】で敵の回避軌道を【見切り】次の行動へと移る。
ビルシャスだとかヴィスタリアだとかお前の正義はどうでもいい!
まず壊す!必ず壊す!!そのマシンを壊させろ!!!
翼をはためかせ高速【推力移動】
敵の回避軌道の先へ、ハルバードを【怪力】で振るい重量攻撃。
攻撃の成否に寄らず、即座にその場で回転、崩壊霊物質を纏う超巨大翼で敵ごと機械羽根を【なぎ払い】、吹き飛ばし、崩壊の【呪詛】でもって機械羽根を壊し装甲を蝕み、次の攻撃へと繋げる。
マシンの狂気に呑まれたお前の正義は聴くに絶えない。
そしてお前の話を聴くのは自分のする事ではない!
逃げるにせよ向かってくるにせよ、【早業】で多量の戦塵縛鎖を放ち、脆くなった装甲へ先端で【貫通攻撃】コクピットは外す。
貫き、【捕縛】締め上げて
並べた御託は、パラメリアで語れぇえええ!!!
【念動力】で、思いっきり四方八方に引きあげ【解体】引き千切る!
オリヴィア・ローゼンタール
……人間同士の戦争というのは、複雑でややこしいな
オブリビオンマシンによって元来の野心を煽られたのだろうが、捨て置くことはできん
ヘラクレスに【騎乗】したまま、【巨神射殺す星辰の強弓】を装備
【怪力】を以って引き絞り、狙いを定める
理性を失った動きならば【見切り】易い
速く動くものに反応するなら、矢にもまた反応するだろう
本来ならば超耐久力によって耐えるのだろうが、我が一矢はあらゆる防御を打ち砕く(鎧砕き)
ステュムパーリデスの鳥を射落とした功業をここに再演しよう
――矢を解き放つ!
飛行機能を破壊し、墜ちる偽りの希望へ、ダメ押しの鋼の拳を叩き込む!
『まだだ……まだだ! 私は、私はまだ終わっていない……!』
全力で逃走にかかりながら、譫言めいてマーベックは叫び続ける。己のパラメリアの未来を救う為の戦いは、未だ終わっていないと。
搭乗するオブリビオンマシンは全身の装甲が砕け、腕の翼飾りも半ば近くが千切れ落ち、何よりOSが深刻なエラーを訴えている。幸いにしてまだ戦うことは可能だが、何とも無惨な状態ではある。
『ヴィスタリアまで逃げきれれば、まだ立て直しはできる……! 聖騎士団の力を借りて、今度こそ……』
次なる作戦を脳内で算段しつつ、ビルシャス帝国との国境を目指すマーベックとその乗機。国境さえ超えてしまえば、パラメリア軍はもう追っては来れまい、と判じて。
だが、猟兵に国境は関係無い。そして、それ以前に。
「――す――壊す――」
向かう先、荒野の向こうから遠く聞こえてくる叫び。何が、とマーベックがその出処を探ろうとしたその矢先。
「――壊す! オブリビオンマシンは全て壊す!!」
一気に叫ぶ声音が明瞭さを増す。と同時、その主たる白と黒の人間大の影が、凄まじい速度で以てマーベック機へ迫ってきていた!
「ビルシャスだとか! ヴィスタリアだとか! お前の正義はどうでもいい!!」
吼える声音は紛いなく朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)のもの。なれどその姿は、常の彼女とは似ても似つかぬ真黒き体躯に骨めいた白の装甲を纏った姿。そしてその背には、彼女自身の数倍はあろうかという超巨大なる翼が雄々しく広がる。
それは、小枝子が取り得る真の姿の発露の一つ。先程まで搭乗していたキャバリア『亡国の主』と融合した姿だ。
「まず壊す! 必ず壊す!! そのマシンを、壊させろォォォォォッ!!!」
そして叫ぶは己の目的に対する、狂的なまでに紛いも迷いも無き純粋なる意志。即ち、オブリビオンマシンを破壊する。その意志を以て翼を一打ちすれば、翼を形作る数十枚もの羽根が散る。舞い散る羽根はマーベック機を捉え、向きを変え、そして飛翔し。無数の刃の如き弾幕と化して、白き狂機へと降り注ぐ。
『ぬおぉぉぉぉ!? き、貴様も大局を見ぬ愚か者か! この機体は私の理想の成就に必要なものなのだ!』
機体の全身を斬り刻まれ、衝撃に呻きながらもマーベックは反論を試みるが。
「マシンの狂気に呑まれたお前の正義など! 聴くに堪えない!」
小枝子は真っ向から力強く、彼の言葉を撥ね退ける。オブリビオンマシンを介する以上、その正義は確実に歪んだものとなる。ならば、其を受け止めることに何の意味があろうか。何よりも。
「お前の話を聴くのは、自分のする事ではない!」
マーベックが抵抗するべく放った無数の機械羽根を前としても臆することなく、小枝子は断言する。そしてその身を捻って一回転すれば、背の双巨翼も合わせて大きく振るわれ、迫る機械羽根を巻き込んで。そのまま崩壊、消失せしめ。
「『壊れろぉぉぉぉ!!」
そして回転の勢いを利して間合いを詰めれば、重厚なるハルバードを遠心力と膂力とを以て一気に振り抜き。オブリビオンマシンの側胴部を、強かに打ち据える。
『ぐあぁっ!? な……この程度の攻撃で、装甲が……!?』
この機体ならば耐えられた筈の、ハルバードの一撃。だが、実際に受けたダメージは想定を大きく超える。驚愕し、困惑するマーベック。小枝子の背の巨翼は、その全体に霊物質を纏う。物質を腐食・崩壊させる力を有するこれを以て、先の機械羽根を破壊したり、機体本体の装甲を劣化させたりしているのだ。
『な……っぐ、お、おのれ、おのれ……っ!!』
万事休すか。だが未だ諦めきれぬ。故にマーベックは切り札を切る。
『Peaceful=Emotion起動! こいつを殺せぇぇッ!!』
そして叫ぶと共に、オブリビオンマシンが猛然と小枝子目掛けて襲い掛かる。踏み込みの速度、蒼き爪を振るう速度。それまでに増して早くなる。
小枝子はすんでの処で躱し、反撃のハルバードを打ち込む。だが先程よりダメージは小さい。ユーベルコードで劣化した装甲を再度強化したか。
なれど、やる事は変わらぬ、巨翼を羽ばたかせ、敵の攻勢を凌ぎつつ。小枝子は尚も攻撃を続ける。
そんな両者の交戦の場より少し離れ。雄々しき鋼鉄の巨人が、両者の動きを静かに見据えていた。
否、正確にはその搭乗者が、である。巨人は鋼の大英雄たるスーパーロボット『ヘラクレス』、搭乗するはオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)。
(――人間同士の戦争というのは、複雑でややこしいな)
小枝子に向けて猛攻を仕掛ける白きオブリビオンマシン、その搭乗者と彼に関わった者達の思惑。それらが絡み合えば、全てを理解することは容易なことではない。だが。
(奴は恐らく、オブリビオンマシンによって元来の野心を煽られたのだろうが……捨て置くことはできん)
その一点に紛いは無し。オブリビオンマシンは破壊するのみだ。頷くと同時、オリヴィアの意志を受けたヘラクレスが片腕を前に突き出せば。その手に現れるは鋼の巨体にこそ相応しい長大なる強弓。全てが金属からなるその意匠、キャバリアと言えど引くは容易ならざると見えるが。
共に現れたる矢を番え、巨英雄は弓を引く。その名に相応しき並外れた出力は、これ程の強弓を引けるだけの剛力をも、この機体に与えているのだ。
(――敵は今や、理性的な判断を放棄していると見える)
瞳を細め、標的たる白の狂機を見据えるオリヴィア。小枝子に対し猛然と攻めたてるその攻勢は苛烈なようでその実単純。只々、間近の小枝子を追い回しているだけだ。
(ならば、見切るは容易い)
好機は、小枝子が敵の側面や背後に回り込んだその直後。即ち――
(――此処だ!)
敵機の左方へと回り込む小枝子。彼女を追って、オブリビオンマシンが切り返したその瞬間に。
番えた矢が解き放たれ、唸りを上げて荒野を飛翔し。一直線に、希望を騙る白の戦機を目掛けてゆく。
『な……っ!?』
小枝子を追いかけて爪を、機械羽根を振るっていた白の戦機。その動きが突然変わったことに、マーベックは困惑と驚愕の入り混じった声を上げる。
機体が反応したのは、己を目掛けて飛び迫る太矢。小枝子の機動すらも超える速度で急速に迫るそれを感知し――オブリビオンマシンは叩き落とさんと疾走する。
そして振るわれる爪。なれど矢は捉えられることなくすり抜け、そしてそのままオブリビオンマシンの右肩口へと突き刺さり――
『な、に……!? 馬鹿な、たった一矢で、こいつの腕が……!?』
脱落の感覚。機体重量バランスエラーを訴える乗機OS。マーベックは悟る。今の一矢で、己の乗機が片腕を撃ち抜かれたことを。あまりにも予想外なその事実に驚愕しつつも、重量バランスの狂いが機体の動作にも更なる支障を生み、満足な機動ができない。
その様は、まさにかの大英雄が成し遂げた十二の難行の一つ――青銅の嘴持つ鳥を射落とした逸話の如く。翼を射抜かれた偽りの希望は、最早二度と飛び立てず、無様によろめく姿を晒すばかり。
そして、その隙を見逃す小枝子ではない。
「そこだ……! 捕らえろ、縛鎖よ!」
叫ぶと同時に、巨大な翼の至る処から無数の触手ともワイヤーとも見える細長い物体が撃ち出され、よろめく希望の狂機へと突き立つ。鋭利なる先端で以て劣化した装甲を貫通すれば、そのまま三肢へと巻き付き拘束して。
『が……ぁっ!? は、離せ、離せ……! 貴様ら、この場で私を処刑しようというのか……!?』
空中に磔にされるかの如く動けぬオブリビオンマシン、その事態を前にマーベックが愕然たる声を漏らす。だが。
『貴様を裁くは我々ではない! 貴様は、彼らの手で裁かれねばならん!』
そこに響くオリヴィアの声が、彼の問いを否定する。彼女の声と共に、大地を揺らしながら疾走するヘラクレスの巨躯が迫る。剛堅なる拳を握りしめ、大きく振りかぶって。
『並べた御託は……』
唸るように叫ぶ小枝子、縛めたオブリビオンマシンをヘラクレスへと向ける。同時、三肢を穿った縛鎖触手が其々に外側へと引っ張られて――
『パラメリアで! 語れぇぇぇぇぇ!!』
ヘラクレスの拳が、希望を騙る狂機の胴を強かに殴りつけると同時。片腕と両脚、三肢が千切れ飛んで、残された胴体部は吹き飛ばされて幾度も荒れた大地を転がっていった。
以て、オブリビオンマシンはその戦闘力を喪失。こじ開けられたハッチから引きずり出されたマーベックは、全身十数か所を打撲し白目を剥いて気絶していたが、大きな怪我はしていない様子であった。
●
その後、追い付いてきたパラメリア軍によってマーベックは逮捕され、ノーザレスへと護送される運びとなった。
「猟兵……と言ったか。貴殿らの助力に、軍として感謝の意を表する」
マーベック及びヴィスタリア兵達の連行の指揮を執っていた黒スーツの男――パラメリア軍第一諜報部長シュリック・スケイズ大佐が、猟兵達のもとへと歩み寄り、頭を下げる。
「恐らく、貴殿らがいなければ、状況はもっと悪くなっていた筈だ。敵の工作員、我らの内の内通者。その全てを捕縛し、ヴィスタリア特殊部隊やマーベックの新型キャバリアも完全制圧。ヴィスタリア本国の動きも事前に阻止できた。これ以上の成果は、恐らく無いだろう」
故にこその感謝の意、とスケイズは語る。マーベックが搭乗していたオブリビオンマシンを新型キャバリアと表現したのは、猟兵ならぬ身にその事実を認識する事は叶わぬ故。
「だが、これで終わりではない。神聖ヴィスタリア皇国は、また別の形を以てパラメリアを――或いはビルシャスを侵略せんとするだろう。侵略が成功するまで、何度でも」
かの国の奉ずる神の教えを、遍く世界に広める為に。ヴィスタリアとはそういう国だ――険しい表情で語るスケイズ。
「無論、我々に其を許すつもりは無い。祖国を、国民を守る為にも。我々は、これからも戦い続けよう。……此度は貴殿らに頼り切りだった身で言うのも何ではあるがな」
自嘲が混じりながらも、決意を口にするスケイズの表情に迷いは無く。その意志の確かなるが感じられようか。
「改めて、此度の助力、感謝する。それでは、失礼する」
今一度の礼の後、スケイズは踵を返す。其を見送って、猟兵達もまたグリモアベースへと帰還していった。
●
斯くして、ダリオ・マーベックと神聖ヴィスタリア皇国によるパラメリア政府転覆の陰謀は阻止された。
その後の裁判にて、マーベック及び内通者達には外患誘致等の罪により死刑が言い渡され、彼らは獄中にてその執行を待つ日々を過ごしている。
ヴィスタリア兵達は捕虜としてヴィスタリア本国への送還が行われたが、その間、自国の内情に関わる情報は一切口にしなかったという。
そして黒幕たるヴィスタリア本国は、一切の公式発表をも行うことなく、沈黙を保っている――
尚、マーベックの出馬が無効となったパラメリア首相選挙は、当初の予測通りに現職のスプリングス首相が再選を果たした。
彼の組織した新内閣のもと、パラメリア共和国は新たな五年間を歩み出すこととなるのであった――
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵