4
春よ恋、早く恋、愛の伝説は今ここに

#カクリヨファンタズム #猟書家の侵攻 #猟書家 #灯籠に照らされし夢魔・お露 #東方妖怪

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#カクリヨファンタズム
🔒
#猟書家の侵攻
🔒
#猟書家
🔒
#灯籠に照らされし夢魔・お露
🔒
#東方妖怪


0




●恋愛脳花畑
「私は真実の愛を見つけた。よって婚約は……そもそも相手がいないのだがね」
 それは宛らに俗な何処かの恋愛小説の一幕のように、王子様めいた容貌の女は冗談だよ、といつものように笑い飛ばしていた。
 グリモア猟兵スフィーエ・シエルフィートは一頻り笑った後に、気を取り直してと続けてから手帳を開いた。
「真実の愛とやらは別に幾つもあるとは思うが、捻じ曲げておいて語るのは如何なものかという話であってだね」
 開かれた手帳から出でた、薄金に輝く羽根ペンを象ったグリモアが、事件となる舞台の映像を映し出していく――。

「さぁ語ろうか。舞台は常なる者と常ならざる者の境、カクリヨファンタズム。君達には春の恋情の縺れを断ち切って貰いたい」

 カクリヨファンタズムに存在する猟書家幹部【灯籠に照らされし夢魔・お露】はあらゆる種族の老若男女を魅了し、生霊化させる能力を持っている。
 それによって、東方妖怪が集まっている広場に現れ、魅了の力を発揮することでありとあらゆる東方妖怪達を虜にし、生霊としては配下としようとしている。
 如何に妖怪達といえど、魂を剥がされたままでは肉体はやがて衰弱死してしまう――そうなる前に彼等を正気に戻して欲しいのだと語った。

「そこで君達には、東方妖怪を相手に一世一代、愛の大告白大会をやって貰いたい」
 正気に戻す為にはどうすれば良いか、との猟兵からの問いにスフィーエは何処か悪戯っぽく笑ってから頷くと大真面目に言ってのけた。
 あまりにもあまりな内容に口を半開きにする猟兵達に、スフィーエは至って大真面目に――肩を多少は震わせているが――語っていく。
「……いや真面目にだ。別に本気で口説いてその後も面倒を見ろとか、そこまでは言ってない。要は相手をときめかせて魅了を解いてくれ、ということだ」
 正気に戻れば魂は元の肉体に戻り、魅了されている間のことは気にしないでくれる――思い切って普段の自分では決してやらないと思うようなアプローチをするのも手だとも語って。
「アプローチの方法は任せるよ。勿論、年齢差……は兎も角、同性愛だろうと少々変わった相手だろうとお構いなしだ。兎にも角にも、君達の口説きテクに期待しているよ」
 肉体的に訴えるも良し、小技や贈り物でアプローチするも良し、或いはハートで勝負してアプローチするも良し。
 尤もあまりにも強引な手は流石にアウトだがね――と分かり切っているとは思うがと補足もしながら注意もして。

「その後は猟書家幹部を撃破して貰いたい」
 ある程度の生霊化が解ければ、配下になりかけていた東方妖怪を奪われたと勘違いした猟書家幹部が襲い掛かってくる。
 侍女の骸魂に憑かれたことで恋愛対象を求めて彷徨う夢魔と化した東方妖怪であり、非常に執着心の強い存在だという。
「まあ本体の戦闘力はボス格としては低い方なんだが……如何せん、魅了の力は厄介だ。気を付けて当たってくれたまえ」
 老若男女問わず魅了する力もさることながら、過去に味方をした生霊の召喚は決して侮れない力を持っている。
 救出した東方妖怪達も協力してくれるとのことなので、上手く協力しながら倒して欲しいとスフィーエは語った。

「さて、恋愛は大いに結構なことであるが、病むほどの執着はいけない」
 一通りの事を語り終えて、スフィーエは薄紅色の湯で口の中を軽く潤してから、最後の締めへと移るように語りを再開した。
「春の陽気は色々と頭を溶かす何とやらがあるとは言うが、ここは一つ、この世を滅ぼす愛ならぬこの世を守る愛を見せてくれたまえ。では、準備が出来たら声を掛けてくれ」
 ――薄金色のグリモアは改めて、幽世に通ずる門を開いていった。


裏山薬草
 どうも、裏山薬草です。
 君が好きだぜー、マジで好きだぜっ!
 この歌が分かった方とは良い酒が飲めそうだぜぁぁと叫びたい今日この頃でございます。

 さて久々となりますが、猟書家シナリオと行きたいと思います。
 このシナリオは二章構成となっております。
 全編通して、ややギャグチックなシナリオの予定です。

●第一章『日常』
 魅了されてしまった東方妖怪の目を覚まさせる日常パートとなっております。
 肉体的にでもテクを使おうと、ハートで勝負を仕掛けようと、必死にアプローチして真実の愛に目覚めさせてあげましょう。
 尚洗脳から解放されれば普通に正気に戻るので、演技でも構わない、つまり思い切って自分では絶対にやらないようなアプローチに走ってもOKです。
 同性愛等は全然問題ありませんが、あまりに公序良俗に反するアプローチはマスタリングか不採用の可能性もあります。悪しからず。

●第二章『ボス戦』
 配下を奪われたと勘違いしたヤンデレ風味な猟書家幹部との決戦です。
 助けた東方妖怪たちは皆様に協力してくれますので、共に戦い真実の愛の力を見せつけてあげましょう。

 プレイングの受付状況に関しては、タグにてお知らせします。

 それでは皆様のプレイングをお待ちしております。
 裏山薬草でした。
149




第1章 日常 『どんなようかい?さわがせようかい!』

POW   :    タフネスが大事、肉体言語だ!

SPD   :    スピードが命、でも道具に頼ってもいいかな?

WIZ   :    ハートが一番、言葉も魔法もぶつけてなんぼ!

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

赤凪・風珀
むむむむむ…魅了された方々の目を覚まさせる…ですか…。
私、正直そういうのはあまり得意ではないのですが…。

目には目を歯には歯を、毒を以て毒を制す、です。
恥ずかしい限りですが、いつものストッキングの代わりに黒のニーソックス、スカートの丈も少しばかり短くして…と。
[頑丈な鞭]で大きな音を立てて、こっちを見た方に、ちょっとだけスカートの裾を上げて見せます。…絶対領域?でしたっけ…。
そうしてこちらに意識を向けて貰ったらUC誘惑少女を発動です。
私を見てください。そんな女より、私を。

……あの、やっぱり非常に恥ずかしいので、帰ってもいいですか…?
それでも目を覚まさないやつなんて鞭で叩いてやります…。



●春という意味の深き問うまいよ
 春ののどけきに何とやらなものであり、平和な妖怪たちの村の中にある、憩いの広場であった筈の場所は近寄りがたい湿った熱気に満たされていた。
 ともすれば薄いピンク色の靄がかったようなものが見えそうな、かくも悲しき恋愛に染められた東方妖怪達の仲睦まじき姿に現れた彼女は一歩を躊躇った。
「……、……こ、これは……むむむむむ……」
 赤凪・風珀(人間のシーフ・f19216)は発せられる妙な熱気に頬を微かに染めながらも、産まれたての馬か鹿のように健康的な脚を震わせ立っていた。
 ――恥ずかしい。物凄く恥ずかしい。しかし一度引き受けたからにはやらなくてはならない。
 風珀は意を決すると、文字通りに色々と使える頑丈な鞭を取り出すと。
「ちゅうもーく!!」
 盛大に広場の地を打ち付け、意外に大きな破裂音は幾つかの東方妖怪達の目を彼女へと向けさせた。
 されども煩悩で頭に花を咲かせていた妖怪達が良い機嫌をする筈もなく、
「っ、せーな。俺たちゃ……」
「そんな女よりも」
 口々に不満の声を漏らす東方妖怪達の言葉を遮るように、風珀が凛として声を張り上げると、東方妖怪達の視線は不平不満のそれから期待と情熱のそれと変わる。
「おっおっ……」
「……っ」
 ――それもその筈である。
 普段の丈よりも僅かに短くしたスカート、タイツに覆われていた脚は黒のニーソックスに代え、黒と白い腿の煽情的な対比を映し出す。
 羞恥の限りに耐えながら、スカートの裾を僅かに上げ、禁忌の区域を見せるか見せないか。
 絶対領域の眩しきは宛ら誘蛾灯のように、頭にお花を咲かせた(比喩)の東方妖怪達へ強烈な衝撃を叩き付けていた。
「私を見てください。そんな女より、私を」
 続いて紡がれる言葉と真っ直ぐな目線。
 字面だけを見れば限りない独占欲めいた誘いと、危険な誘いの匂いは盛大に、風珀へ目を向けた東方妖怪達の頭からそれを侵していた恋愛脳の呪いを消し飛ばす。
 宛ら籠っていた不快な空気を、春の爽やかな風が吹き飛ばすように――実際には煩悩を更なる煩悩で上書きされているのはご愛敬。
 何か神々しいものをみるかのように風珀へと跪き、感動に噎び泣く東方妖怪を風珀は一瞥すると。
「……あの、やっぱり非常に恥ずかしいので、帰ってもいいですか……?」
 流石に羞恥に耐えかねたのか、躊躇いがちに、上目遣いで顔を赤く染めながら問うてしまわれれば。
「「「っっっ!!」」」
 ――煽情的な絶対領域と独占欲を見せるような煽り文句を口にする女が、乙女のように恥じらい身体を震わせて問う。
 嗚呼何と素晴らしきギャップか。
 踵を返そうとしていた風珀へと正気を取り戻した(多分)妖怪達は距離を一気に詰めると。
「いやいやいやいや帰らんで!?」
「もっとこう、ギリギリを! ギリギリを! いやもちろん行っちゃダメよ!?」
「なんていうかなあ!? ここでこの表情とか反則っしょ!?」
「……」
 これは成功と言って良いのだろうか。元に戻ったのかどうなのか、将又元々そうであるのかどうか。
 取り敢えず。
 ぱしーん。
 ぱしーん。
 ぱしーん。
 頑丈な鞭の乾いた音が三つ、愛を語る広場の中に響き渡っていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

仇死原・アンナ
【道連れ】

告白…か…
そういう相手がいた事も…
そういう感情を抱いたのも遥か昔の事だった気がする…
もう思い出せないや…はぁ……
まぁ…恋に堕ちた妖怪達を救う為に…行こうか…
私は…処刑人…!

おい…こっちを見ろ…!なぁ…おい…!

[情熱]を胸に灯して
【恐怖与える殺意の瞳】で妖怪達を睨みつけて
[優しく威圧]しながら告白しよう…

あなたに惚れたんだ…
だから私と付き合え…なぁ…おい…!
逃げるなよ…私は処刑人だ…覚悟を決めろ…!
惚れさせたんだから…責 任 を 取 れ … !

[呪詛]放ちながら相手を釘付けにして
[逃亡阻止]してやろう…

こんなものでいいのかな…
告白って難しいね…なんだか恥ずかしくなってきた…な…


ベルト・ラムバルド
【道連れ】

告白ぅ!?
いやそんな…まだアンナさんとは…その…
この前の依頼で…膝枕…してもらっただけで…
そこまで深い関係では…
え、何?妖怪のほう!?あぁ…さいでっか…
分かった…このベルト、精一杯の事はやろう…はぁ…

…とはいえ一つ目とか首が長いのとか
そもそも顔がない女性もいるし…
いやルッキズムで人…じゃない妖怪を選ぶな私!いくぞ~コホン!

恋に落ちた麗しの君、どうか私の願いを聞いてください…
私めの口付けで恋という魔法から目を覚ましてください…
(コミュ力と落ち着き合わせて手の甲に口づけする)

くー!我ながらカックイイ~!
…でも本当はアンナさんに言いたかったんだよな~トホホ…

…?向こうから凄まじい殺気が…?



●知らぬが仏とは幽世に
 幾度となく使い古された表現であるものだが、この申し出は正に青天の霹靂と言うものであり、背景に雷の降りた幻影が見えても可笑しくはないのかもしれない。
 それぐらいに彼女からの申し出は途轍もない衝撃を彼に――ベルト・ラムバルド(自称、暗黒騎士・f36452)へと与えていた。
「こ、告白ぅ!?」
「そうだ……」
 鳩が豆鉄砲を食うでは済まされない驚愕を共にした問いに、淡々とその彼女こと仇死原・アンナ(地獄の炎の花嫁御 或いは 処刑人の娘・f09978)は頷いた。
「いやそんな……まだアンナさんとは……その……この前の依頼で……膝枕……してもらっただけで……そこまで深い関係では……」
「??? 妖怪へだけど……」
「へ? 妖怪?」
 悶々と頭を抱え、挙動不審となるベルトに小首を傾げ、アンナは広場の方を指さすと。
「……あぁ、さいでっか……いや、うん、分かった……このベルト、精一杯の事はやろう」
「よろしく……」

* * * * * * * * * *

 ――と、そんな遣り取りからもそう経ってはいない筈だが、妙に懐かしくも思える今日この頃。
「はぁ……」
 幸せを逃がすのもこれで二度目となるが、実際に東方妖怪――それも女性形を見て見れば、様々なものもいるが一つ目、首のやたらと長いの、口が二つもあるもの……果ては顔のないのっぺらぼうすらもいる。
 命の危険を承知で渓谷の白面金毛へ――と迷うも。
「い、いや、ルッキズムで判断してどうする! 人……じゃなくて妖怪を選ぶな私! いくぞ~……コホン」
 そう、見た目だけで判断して何が真実の愛か――紳士たる者、淑女には等しく礼を以て接しなければならないのだ。
「そこのお嬢様」
 ……それが例え、歯が真っ黒で目の無い首が伸びる和服姿の美女であろうとも!!
 出来得る限りの甘いマスクを以て、恋に顔を火照らせ惚けていた東方妖怪へ彼は迫り。
「嗚呼、恋に落ちた麗しの君、どうか私の願いを聞いてください……」
「や、やだ、願いなんて……やだわ、これが西洋や新しい妖怪達の……!」
「私めの口付けで恋という魔法から目を覚ましてください……」
 リップ音をここで一つ。
 指の甲へと掠らせる程度に落した口付けの、何と甘きことか――落ち着き払ったまま放たれる甘く蕩けるような愛の言葉と、跪きながら行われた口付けの贈り物に乙女が夢中にならぬ筈もなく。
「「「きゃーーーーっ!!!」」」
 次は私、いや私が――見目の男らしきベルトに愛を囁かれたいと、見た目こそ少々筆舌に尽くし難き妖怪なれど中身は実に乙女なもので。
(く~! 我ながらカックイイ~! でも本当はアンナさんに言いたかったんだよな~……トホホ……)
 騒ぎ立てる東方妖怪の淑女達の声も後目に、心の中で滂沱の涙を流し肩を落とすベルトだったが、不意に背筋に嫌な寒気が走り――
「っ!?」
「どうかなさいました?」
「い、いやいや何でも……」
 東方妖怪の問いも何のその、一先ずはそれを気にしないことにして、引き続き東方妖怪を口説きにいくベルトなのであった。

* * * * * * * * * *

(告白……か……)
 提案しておいて何だが、という奴であるがぼんやりとアンナは幽世の空を見上げ、ふと思う。
 そういう相手がいたことも、そうした感情を抱き地獄のように恋の炎へ身を焦がしていたことも遠き昔のような……今はいずこへと薄れてしまったその想いもそこそこに、アンナは改めて今の決意を確かにする。
「私は……処刑人……!」
 全てはその矜持を以て、恋に堕ちた妖怪達を救う為――地獄のように暗く、されど熱き決意を心に灯しアンナは恋に狂う妖怪達の下へ一歩を踏み出した。
「おい……」
 ――その声はとてもこれから恋をする女の甘い声には聞こえず。
 強いてその声かけを例えるならば、勇ましくもある宣戦布告のようで――春も麗かな生暖かい空気を一瞬で焦がす重厚感があった。
「こっちを見ろ……! なぁ……おい……!!」
「な、なんでしょーかっ!?」
「あなたに惚れたんだ……」
「へ?」
 ――惚れた、とは。
 思わずに直立の体勢を取った東方妖怪の男は、続けられたアンナの言葉に一つしかない目を文字通りに顔いっぱいに丸く広げた。
 その反応を芳しくない反応と思ったか、アンナは更にその東方妖怪へと顔を近づけて――
「二度も言わせるな……! あなたに惚れたんだ……だから私と付き合え……なぁ、おい……!」
 これはいけない。この女性には関わってはいけない気がする――そう考えて背を向けようとする妖怪は決して間違っていない。
 ただし。
「逃げるなよ……」
「ひ、ひぃぃいっ!?」
「私は処刑人だ……覚悟を決めろ……! 惚れさせたんだから……」
「惚れさせたんだから……?」
 処刑人からは逃げられない。その真理から目を背けることは許されないのだから。
 呪い殺しかねないほどの凄まじい視線と、発せられる威圧感の前には最早妖怪の心を支配していた恋情も灰と消えてはいたが、続けられる熱烈極まりないアンナの声が絶望として届いていく。
「責 任 を 取 れ …… !」
 果たして誰が彼女のラブコール(突っ込み不要)に逆らえるというのだろうか。
 遠くにその殺気に寒気の走った男がいることも露知らず、地獄のように熱く甘い、珈琲の如き愛の文句は惚けた妖怪達の目を鮮烈に覚まさせていくのだった。

* * * * * * * * * *

「お疲れ様です、アンナさん」
「あぁ、お疲れ……ふぅ……」
「どうしました?」
 物憂げに溜息を吐くアンナの横顔に、何処か浮くような心持を感じつつベルトは彼女を心配するように声を掛けた。
「いや……告白ってこんなもので良いのかなって……なんだか恥ずかしくなってきた……な……」
「っっ!!」
 続けられた返答は、何と可愛らしい生き物であるかということをベルトの心に深く刻んでいた。
 不意に見せるこの細やかな恥じらいは、嫌な猟書家の術式が無くともその心を浮足立たせ、胸をときめかせてくれる。
 ……そんなベルトの熱を帯びた視線にも気付かぬまま。そしてベルトはアンナの繰り広げた【熱愛】の正体に気付かぬまま。
 魅了の術式解けつつあるその場にて、暫し届かぬ想いとそれに気付かぬ物憂げな女の時間が過ぎていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『灯籠に照らされし夢魔・お露』

POW   :    わたしの唯一人の味方・お米
【骸魂と化した黒い霧の体を持つ侍女】の霊を召喚する。これは【黒い霧から伸びる白骨化した手足】や【手に持つ牡丹の灯籠から吹き出す炎】で攻撃する能力を持つ。
SPD   :    愛しいあの方との想い出
自身の【恋愛体験を包み隠さず語ること】を代償に、1〜12体の【語りに登場した過去に魅了された者達の生霊】を召喚する。戦闘力は高いが、召喚数に応じた量の代償が必要。
WIZ   :    魅惑の下駄の音
【自分が履いている下駄】から、戦場全体に「敵味方を識別する【歩くたびカランコロンと鳴る足音】」を放ち、ダメージと【時間と共に重みが増す使用者への恋愛感情】の状態異常を与える。

イラスト:おきな

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はルネ・シュヴァリエです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●執着する愛の狂気
 猟兵達の魂の籠った愛の告白大会により、東方妖怪達は順当に正気を取り戻しつつあった。
 ……一部、本当に正気を取り戻したのか、はたまたショック療法が利き過ぎたのか、振舞いに不安のある者もいたりするが。
 閑話休題。
 何はともあれ、思考に薄紅色の薄靄がかかり春の陽気に夢現を彷徨いつつあった東方妖怪達は、解放されたことに喜び猟兵達に次々と礼を述べていく。
 このまま元の、平和な村の広場の様相が戻るのかと思われたその時、東方妖怪達と猟兵達の間に春の長閑な空気を、一瞬で嫌な寒気で貫くような不穏な気配が走った。
「ああぁ……わたしの愛しい子達を……」
 からん、ころん。
 下駄の軽やかな響きと裏腹に、底冷えを齎すような嘆きの声と共に、和装の女は悍ましい気配を纏い広場にやってきた。
 猟書家幹部【灯籠に照らされし夢魔・お露】――今回の事態を仕組んだ骸魂が、己が虜とした妖怪達が猟兵達の手によって正気を取り戻したことを、奪われたと身勝手に解釈したのだろうか。
「なんと、なんと、悪いお方……わたしから愛する子達を引き剥がす、なんて……」
 艶やかなりし黒い前髪と、背にする悍ましい骸魂が陰りを作り、お露の表情の上半分を隠していた。
 されどその唇の釣り上がりと歪み具合は、嘆きと笑みの入り混じる奇々怪々な、正しく病んだとしか思えない――
「許さない……許さない、許さない、許さない、ゆ、る、さ、な、いぃぃ……!」
 実に実に狂気に満ち溢れたる、愛に囚われた亡霊が金切声を挙げて猟兵達と東方妖怪達に襲い掛かる。
 東方妖怪達の村に平和を取り戻すために、真実の愛を守る為に――猟書家幹部との決戦が始まった。
ベルト・ラムバルド
【道連れ】
くー!愛が重そうな奴!お前が恋愛地獄の張本人か!
…だがなぜだろうこの胸のときめき…恋?
…いかーん!こーんな奴にときめーてどーする!?

くっそ~!あったまきた!
オーラ防御纏って生霊追っ払って手首を掴んで
コミュ力で言葉の貫通攻撃!

お前みたいな重い女は大ッ嫌いだ!私の気になる人はなぁ…!
ふわもさの黒髪で背の高ーいボインちゃんで!
ミステリアスでちょっぴり怖いけどとっっても
素敵なお嬢さんだぁーッ!!!

ど~だ思い知ったか~!!猟書家め~わはは~!
はは…は…グワー!言ってしまったーん?!
はずかしー!!!いやーん!!

嗚呼つい勢いで…アンナさんの目の前で…うう…

…へ…気づいてない?あ…さいでっか…はい…


仇死原・アンナ
【道連れ】
愛に狂った女…か…
猟書家め…貴様を討ち倒し騒動の終焉を齎そうぞ…!
我が名はアンナ!処刑人が娘也!

…?…おい、何やってる?なぁ…
…………私は何を見ているのだろう?
急に女性の好みを叫んだその次にのたうち回ってるし…
まぁ敵も動揺してるからその隙に…

霊剣振るい[破魔と浄化]の力で黒い霧の女を[除霊]しよう
地獄の炎纏う鉄塊剣を振り払い敵に突き刺し【聖処女殺し】を発動
[傷口をえぐりながら]敵を地獄の炎で[焼却]し屠ってやろう!

恋の炎で身を焦がすだけでは足りぬ…
地獄の炎で身も心も焼き尽して去ね…!

そして同行者を無理矢理立たせよう…
いつの日か…あなたは思い人に出会えるから…
だから気をしっかり持て…!



●愛の叫びは決して届かぬ
 背後に暗く不穏な気配の悪霊がけたけたと嗤いながら、恋に狂った女は頬を染め肢体をくねらせ嘆きと歓喜の声を交互に挙げていた。
 己が恋情と繰り返されていた恋の経験を語る様を、ぼんやりと眺めつつアンナは呟いた。
「愛に狂った女……か……」
 一方的なその感情とやらを愛と呼び、平和に住まう人々――例え百鬼夜行の妖怪であろうとこの幽世の民を害するならば。
「猟書家め……」
 良いだろう。
 この処刑人の矜持に賭けて、今此処に決意を――黒き地獄の炎を昂らせるアンナの姿もそこそこに、不穏な気配を打ち払うかのような場にそぐわぬ声が響いた。
「くー!」
 心底に悔しそうに、握り拳を強く、地団駄を数度踏むとベルトはびしりと強く、灯籠に照らされし夢魔の方を指さした。
「愛が重そうな奴! お前が恋愛地獄の張本人か!」
「ちょっと何を言っているのか分からない……わたしはただ、愛する子を、愛してくれる子を欲しかっただけなのに……」
 よよよ、と和服の袖を自らの目許に添え、儚げに振舞い泣いて魅せる夢魔は、自らの語った偏愛の中から生霊を呼びつけて嗾けた。
「そーいうのを重いって言うんだよ! だがなぜだろうこの胸のときめき……恋?」
 ――そう、恋。この胸の高鳴りと愛の言葉を語る夢魔への、何とも言えなく絆されそうな……いやいやいやいや。
「って、いかーん! こんな奴にときめーてどーする!?」
 背後でちゃぶ台型の東方妖怪がずっこけるのもまた奇怪な演出か。
 それを華麗にスルーし、ベルトは力強く自らに突っ込みを入れると、体に闘気を迸らせながら嗾けられた生霊を文字通りに振り払うと、強引に手首を抑えつけるように掴み。
「お前みたいな重い女は大ッ嫌いだ!」
「そんな、酷い……!」
「いーか、私の気になる人はなぁ……!」
 ジャラララララ……とどこかしらから謎のドラムロールが響いてくるのは、気を利かせた太鼓の姿をした東方妖怪の計らいか。
 何とも言えない微妙な気持ちになりながらも、盛り上げのドラムロールの後に響いた銅鑼を打ち鳴らす盛大な音と共に、ベルトは宣言した。
「ふわもさの黒髪で背の高ーいボインちゃんで! ミステリアスでちょっぴり怖いけど!」
 そう、それはこの場にて地獄の炎を熱く滾らせた処刑人の矜持に満ちたあの女性!
 十歳年上?
 だからどうした! 愛があれば歳の差なんて! これこそ真実の愛なのだから!!
「とっっても素敵なお嬢さんだぁーッ!!!」
 賑やかしの東方妖怪達のおおーっという歓声を背景に、更に気を利かせた妖怪達がベルトの背景に漢という文字を浮かばせ、何処からか謎の大波の押し寄せる効果音すらも奏で。
 心の籠った愛の叫び(シャウト)に、盛大にショックを受けたかのように愕然となり、数歩下がりながら震える唇で夢魔は言い返す。
「わ、わたし黒髪! 背もあるし、む、胸も多分……」
「だからちがーう! ぜんっぜん! 好みじゃないって言っただろーがっ!!」
「そんな、ひどい……」
「ど~だ思い知ったか~! 猟書家め~わはは~! ……ぐ、グワーッ!?」
 ……とまあ、只管にヤケクソで高笑いを続けていたベルトは、急激に自らの言い放った好みの女性への感情を思い返し、一人で黒歴史作成の恥に悶えていた。
 そんなことも露知らず、告白されたことにも気付いていないであろう、そのミステリアスな女性の闘志は整い、今此処で改めて夢魔へと彼女は宣言する。
「貴様を討ち倒し騒動の終焉を齎そうぞ……! 我が名はアンナ……! 処刑人が娘也……? おい、なにやってる? なぁ……?」
 ……のだが、彼女の問いに答える者は誰も居らず。
 一体どうしたものかと一瞬悩みもしたが、敵自体もまた動揺し固まっているのならば、それは好機といったところか。
 愕然としている夢魔の元へと、揺らめく炎を思わせる刀身が齎す、残酷な切り口が印象的な剣で一気に斬り込む。
 退魔の力が込められた霊剣が、夢魔の身体と彼女に憑りつく骸魂を直で切り裂き、破魔と浄化の霊力が悍ましき骸魂に苦悶の叫びを挙げさせた。
 ここで漸くに邪魔をしようとする猟兵の気配に気付いたか、咄嗟に自らの唯一の味方である侍女の霊を嗾ける。
 されどアンナはそれを、白骨の手や放たれる炎を、地獄の業火を纏う鉄塊剣の一撃で容易く振り払い砕きつつ――その勢いで力強く、大気を震撼させる程の勢いを以て夢魔の身体に鉄塊剣を突き立てる!
「身体を熱し貫く痛みに悶え苦しむがいい……! 恋の炎で身を焦がすだけでは足りぬ……! 地獄の炎で身も心も焼き尽して去ね……!」
「あああああっ……!」
 刹那。
 突き立てられた剣を花芯とし、文字通りに花開くように広がっていくは地獄の業火。
 剣を捻り傷を容赦なく抉りながら、肉体も魂も等しく焼き払う業火が夢魔を蹂躙していく――!
 身を文字通りに焦がす炎に悶え狂い、苦悶に踊り狂う夢魔を後目に、何故だか頭を抱え悶々としているベルトの元へつかつかと歩み寄ると、アンナは彼の腕を掴み強引に引き立たせ。
「おい」
「あ~……! って、え? あ、アンナさんっ!?」
「とりあえず好みは聞かせてもらった……」
「えっ!? は、恥ずかしいな……」
 自らの指を突き合わせ、頬を赤くしつつ恥じらい目を頻りに泳がせるベルトの肩へと、アンナはぽんと強めに手を置くと。
「大丈夫……」
 それはもう、とても穏やかな笑顔で以て。
 胸を冷たい刃で貫かれたかのように息を詰まらせる彼へと、アンナは無慈悲にも――彼女の名誉の為に言っておくが決して悪意があって行う訳ではない――処刑の刃を下した。
「いつの日か……あなたは思い人に出会えるから……だから気をしっかり持て……!」
「グハァァッ!?!!?」
 それもまた、非常に、非常に穏やかな笑顔を以て。
 ええ、もう、見事に気付いておりませんでしたとも。
 あれだけに分かり易いアピールをされながら尚、自分のことだと気づいていませんでしたとも。
 分かっていて尚彼女の口から放たれた処刑の刃に、がっくりと、膝と両手をついて沈むベルトを見下ろし、きょとんとした顔でアンナは一言だけ、誰も答えを教えられない疑問を口にした。
「……どういうこと……?」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ウィータ・モーテル(サポート)
アドリブ連携絡み負傷◎
発声、表情の感情表現はNG

"私は、オブリビオンを助けたい"
その信念の元に行動します。
黒猫ユランは常にウィータの為に行動し、ウィータを優先、守ります。
「僕のウィータに触ろうっていうなら――許さないよ?」

戦闘が必要な場合は、UCにてユランが対応するか、自身で大鎌を使用するか、別人格フロルへ交代。
「オブリビオンは全て……滅するだけだ」

フロルは敵には容赦なく戦い、武器は基本使用しません。

非戦闘時は負傷者のケアを優先します。自身が傷つくことを厭いません。

また公序良俗に反する行動はしません。
エッチ系NG、それ以外ならどの依頼も歓迎。
お好きなように動かし頂けましたら幸いです。



●等しき慈悲と慈愛を以て
 むくりと身体から黒く焦れるような煙を噴き上げながらも、未だに倒れる気配は無いのか夢魔はゆっくりと立ち上がった。
 身体に受けた熱と衝撃に、何処か陶酔した雰囲気を身に纏い彼女は頬を紅潮させると艶やかな唇を動かしていった。
「ああぁ、こんなに熱く焦れるのは、そう、いつの日だったかしら……わたしがまだ……」
 朗々と語り出すのは彼女の過去、幾度となく経てきた恋愛の経験譚が一つ。
 一切の恥じらいもなく、赤裸々に語り出される恋情と目くるめくアバンチュール、その過去の記憶が象る生霊を静かに――場に現れた猟兵は見つめていた。
「…………」
 無言のままに、無感情のままにウィータ・モーテル(死を誘う救い手・f27788)は、顔を火照らせ陶酔しながら語りを続ける夢魔を見続ける。
 ――救いたい。
 例え無駄であろうとも、狂った愛に生きる存在を救いたい。
 その救いの方法が何であろうとも――静かに一歩を踏み出したウィータを阻むかのように、夢魔の呼びつけた生霊が牙を剥く。
 されど生霊の魔手がウィータを侵そうとしたその前に、颯爽と飛び出た黒猫が息も荒く威嚇せしめ生霊を退かせていた。
「おっと。僕のウィータに触ろうっていうなら――許さないよ?」
「っっ……ああ、何て、何ていう愛かしら。僕の、だなんて……♪」
 黒猫の使い魔が赤き目を爛々と輝かせ、力強く地面を踏みしめながら、その爪で地を蹴り出しかねぬままに言い放てば、その姿に何処かの感動を覚えたか夢魔が己の頬に手を遣り、陶酔に頬を染めた。
「もっと聞かせて頂戴、その愛を。ねえ、ねえ、ねえ……!」
 宛らに恋に恋する少女のようで――同時にとても憐れで、愛に狂い続けることしか知らない身の上は、何とも。
 感情もなくその様を見ては、ウィータは大鎌を取り出し、嗾けられ続ける生霊の魔手を大鎌で受け流しつつ。
「…………」
 ――巡りと恵み、慈悲と慈愛をここに。そして、生と死の名の元に、裁き導く光を……。
 とん、と大鎌の柄が地面を軽く打てば、戦場の地に二対の羽根模様が燦然と輝いた。
 それと同時に降り注ぐ光の雨は戦いに傷ついた猟兵達には癒しを、そして相対する敵には――
「あぁ、あぁ……き、消え、いや……」
 与えるものは消失。
 過去の愛の具現が消え去り、自らの骸魂も薄れゆく様に嘆き苦しみ、自身もまた薄れゆく身を儚む。
 時を司る力が齎した雨は等しく、慈悲と慈愛を齎し、愛に狂い踊る夢魔へと確かな“救済”を与えていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

赤凪・風珀
一方的に、強制的に向ける愛なんて、そんなの、ただの自己満足です。愛なんかじゃない。
…ホントのココロがいらないなんて、愛とも呼べない。
それでもなお"愛"に執着するなら私も私なりの愛をキミにあげます。

【存在感】を出して【誘惑】し、【催眠術】や【演技】であの人の気を引きつけます。少しでも気を引けたなら【だまし討ち】で[閃光煙幕弾]を使い視界を奪いましょう。向こうがUCで抗おうとも、【傷口をえぐる】【咄嗟の一撃】で反撃。
【ダッシュ】で距離を詰め思いっきり抱きつき、UC道連少女を発動。

ーー私が愛してあげます。

微笑んで、そう言います。
だから、一緒に逝きましょう。キミはもう、おやすみの時間ですよ。



●共依存の破滅
「ひどい、ひどいの……どうして、わたしの愛を……」
「そんなもの……」
「自己満足、本当の愛じゃない……って言いたいの?」
 未だ尚、愛の狂気に犯され猟兵達へと敵意を向け続ける夢魔へ、僅かに声を震わせては風珀は言い放った。
 彼女の科白を先読みするかのように――恐らくは幾度となく言われ続けてきたであろうが――怒りを表情に張り付けて夢魔は問う。
「ええ、その通りです……ホントのココロがいらないなんて、愛とも呼べない」
 それは独り善がりに過ぎない、自己満足、相手を思いやれない感情は、そしてその末に相手は愚か果ては自分すらも満たされぬ思いを求めるのは【自己愛】ですらもない。
 放たれる明朗な言葉と、これでもかと放たれる存在感は確かに夢魔の気を惹き続け、彼女の身をその場に釘付けとさせていく。
 強く、放たれる正論に怒りを込めた眼差しで今にも射殺さんとする中、不意に――風珀は顔を緩めると。
「それでもなお"愛"に執着するなら私も私なりの愛をキミにあげます」
 すっと己が唇に手を当て、その輪郭をなぞり。形の良い唇の動きと艶を目で追わせ――夢魔は顔を微かに火照らせると。
「なら……頂戴……! 愛を、わたしに、愛を!」
 縋りつくように目を潤ませ、手を伸ばしてはぎこちない一歩を踏み出した夢魔へと――風珀は黙って手榴弾を投げつけた。
 戦場を一瞬で眩く、目も開けられぬ閃光に満たし、光の強く鋭い情報量が夢魔の目を灼き、続いて立ち込める噴煙が視界を閉ざしていく。
「っ、がぁ……お、お米ぇぇっ……!」
 あまりにもあまりな不意打ちに絶望で怒りを燃え上がらせ、身悶えしながらも夢魔は己の骸魂――侍女を務めていた者の霊に縋る。
 奇怪な鳴き声を放ちながら、白骨化した腕を噴煙の中より伸ばし、風珀の首を捕らえんとするも――咄嗟に繰り出した短剣を白骨の手の甲へと、上から杭を打つかのように下し、その魔手を止めた。
 されど夢魔の激怒が消える筈もなく、煙幕の中で灯火が光輝き次の攻撃を放つ――と思われた、その瞬間だった。
「!?」
 夢魔を不意に包む柔らかな温もり。
 一瞬、何が起こったのかも分からなかったが、不意打ちへの激情を一瞬で掻き消す衝撃に幾許かの冷静さを取り戻せば、その温もりと柔らかさの正体が風珀であることを知り。
 呆然とする夢魔の両頬を手で挟み込み、鼻先が触れ合うほどに風珀は顔を近づけ柔らかな笑みを浮かべると。
「――私が愛してあげます」
 だからもう、キミはおやすみの時間――呆気にとられる夢魔の身を新たに、柔らかく抱き締めると。
 ――響いたのは、硝子細工が砕け散ったかのような音色。
 抱き締められた夢魔が幾許かの身を震わせながら、縋りつくように自らを抱き締める者の背に腕を回していて。
 漸くに満たされたかもしれない表情を浮かべ、静かに――共に意識を閉ざした女の腕(かいな)の中で、夢魔は塵となることを受け入れるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​


●春は来た、もう来た、哀の執着は今ここに……
 戦いは終わった。
 愛に狂い続けた猟書家幹部の野望はここに潰え、その猟書家幹部もまた骸の海へと帰っていった。
 尤も彼女はオブリビオン、因果を断った訳でも無ければその内に蘇るかもしれないが……ひとまずは、ここに飛来した脅威は無事に去って行ったのだ。
 仮初の愛に囚われ、生霊と化しそうであった東方妖怪達も、皆等しく正気を取り戻し、救いの主である猟兵達に丁重に礼を述べていく。
 ……心なしかに、東方妖怪達の目が妙に温かい気もするのは、これもまた春の陽気が齎した変な気なのかもしれない。

 何はともあれ。
 偽りの愛が襲った東方妖怪の村は、ここに真実の愛――ただしその愛は人の数だけあるかもしれない――によって、無事に平和を取り戻した。
 春の陽気もいよいよに最盛を迎えつつある中、猟兵達は東方妖怪達の労いを背に、各々の場所へ戻っていくのだった。

最終結果:成功

完成日:2022年03月31日


挿絵イラスト