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殲神封神大戦⑰〜見敵必殺!傭兵令嬢、混沌に堕つ

#封神武侠界 #殲神封神大戦 #殲神封神大戦⑰ #渾沌氏『鴻鈞道人』

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#渾沌氏『鴻鈞道人』


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●グリモア猟兵イザベラ・ラブレス、ご乱心との事
「えー、早速ですが皆さんには私と殴り合いをしてもらいます。」
 まぁ、この傭兵お嬢ことイザベラ・ラブレス(デカい銃を持つ女・f30419)が事あるごとに乱心するのは今に始まった事でもないので猟兵達も「はぁ」という程度の薄い反応を示していた。
「なんか反応薄いわねぇ……という冗談は置いて、鴻鈞道人の撃破が今回の依頼よ。と言っても再孵化とかいう能力で私を乗っ取って皆にぶつけていくって戦法らしいわ。超一流の傭兵が捨て駒よろしく使い捨てられるなんて……泣けてくるわね。」
 曰く、戦場への転送を担当するグリモア猟兵を引き寄せ、瞬時に融合するらしい。それをイザベラは冗談めかして悲しんでみせるが、反応がよろしくない事を察して説明を続ける。

「という訳でさっきも言った通り、今回の戦いは鴻鈞道人が融合している『私』との殴り合いって訳。生憎私の戦術は単純明快、持てる火力を全部ぶつける。逆に言えば私の攻撃を全部耐えればそこが勝機になるはずよ。」
 イザベラは対物ライフル、携行機関砲、さらに180mmガトリング砲や誘導弾など高火力の実弾兵器を搭載したキャバリア「マイティー・バリー」での戦闘を得意としている。しかも当人の射撃の腕も傭兵の名門ラブレス家の名に恥じないモノがある。

「……さぁ、これ以上説明することも無いからそろそろ転送を始めるわよ。言うまでもないけどガワは私なだけで中身は骸の海、つまり『敵』よ。敵はブッ倒しなさい。ブッ殺す気でかかりなさい。むしろ塵も残さないつもりで殺しなさい。」
 それが戦場の、情無用の掟であるとイザベラは言った。
「それじゃあGood hunting Jaeger.(猟兵諸君、良い狩りを)……そして、まぁ私にも小さじ程度の幸運を。」


マーシャル後藤
 こんにちは、祭りと聞いて駆けつけたマーシャル後藤です。レッツパーリィー!

 ロマン偏重実弾兵器高火力ビルドなイザベラ&キャバリア「マイティー・バリー」と戦えるシナリオはここだけ!対戦よろしくお願いします!

●敵情報『イザベラ・ラブレス(中身:鴻鈞道人)』&『マイティー・バリー』
 ・イザベラはキャバリア「マイティー・バリー」に搭乗し猟兵達と対峙します。基本的に対キャバリア戦となるので、キャバリアや戦車への搭乗を推奨します。
 ・マイティー・バリーは艦砲の直撃にも耐えられるように設計された重量級量産型キャバリアです。なので思いっきり高火力をぶつけて大丈夫です。
 ・また兵装詳細は「ステータス画面」>「アイテム」、マイティー・バリーの外観は「ステータス画面」>「イラスト」からご確認ください。
 とにかく弾やミサイルをぶっ放してくる脳筋戦法ですが、砲撃精度は抜群なのでご注意を。

●戦場情報
 幾つものオブリビオン・ストームが吹き荒れるアポカリプスヘルの荒野。岩や大地の起伏以外に遮蔽物がない地形です。

●プレイングボーナス
 ・グリモア猟兵と融合した鴻鈞道人の先制攻撃に対処する。

 戦闘時は必ず鴻鈞道人が先制でユーベルコードを発動するため、猟兵はこれをユーベルコードを用いない「通常の何らかの手段」で対処しなければいけません。
 猟兵側のユーベルコードは後攻での発動となりますのでご注意ください。

 プレイング募集はOP承認直後から開始となります。
 また受け付け状況などはタグにてお知らせします。

 さぁ猟兵諸君、勝負だ。君達はそこに居て、私(敵)はここだ、「ここ」に居る!!
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第1章 ボス戦 『渾沌氏『鴻鈞道人』inグリモア猟兵』

POW   :    肉を喰らい貫く渾沌の諸相
自身の【融合したグリモア猟兵の部位】を代償に、【代償とした部位が異形化する『渾沌の諸相』】を籠めた一撃を放つ。自分にとって融合したグリモア猟兵の部位を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD   :    肉を破り現れる渾沌の諸相
【白き天使の翼】【白きおぞましき触手】【白き殺戮する刃】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ   :    流れる血に嗤う渾沌の諸相
敵より【多く血を流している】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●荒野を支配せしは、鉄鰐の砲火
 猟兵達が転送された先は四方を荒れ狂う嵐――オブリビオンストームに囲まれた荒野のド真ん中、即ちアポカルプスヘルめいた「混沌の地」である。そして転送された猟兵達を待ち受けるは一機の量産型キャバリア。
 その名は『マイティー・バリー』。グリモア猟兵イザベラの愛機である。しかし、今この場においてはその限りではなかった。

「ふむ、この女、このような兵器を扱うとは中々の猛者のようだな。」
 イザベラを乗っ取る鴻鈞道人はその手中に収めた戦力にほくそ笑む。徹甲弾、ガトリング、ミサイル、どれもが未知の兵器であるがイザベラの知識からそのおおよそを知り得る事が可能であった。
「そしてこの鉄騎の防御力、人の手で造られたモノとは疑いたくなる程、実に良い。最強の矛と最強の盾、それを一度に手にできるとは実に良い依代だ。……それを知ってなお、私に挑むか?そしてこの女を斃せるか?」
 イザベラの声で猟兵達を挑発するかの如く訊ねる鴻鈞道人。しかし猟兵達の覚悟は既に決まっていた。

 ――ブッ殺す気でかかりなさい。むしろ塵も残さないつもりで殺しなさい。
 それはイザベラ自身の意志であり、グリモア猟兵からの正式な依頼である。依頼を受けた以上、猟兵はこれを達成するために死力を尽くさない理由はない。

「なるほど……意志は揺るがぬという事か。では猟兵よ――罪深き刃を刻まれし者達よ。相争い、私の左目に炎の破滅を見せてくれ。」
 鴻鈞道人がそう告げるとイザベラの左目が怪しく光り、それに呼応するかのようにマイティー・バリーが起動する。
 それが、開戦の合図であった。
星川・アイ
わお……弾幕シューみたいな事になりそう
でも、あっちだって覚悟キメてるし、アタシもしっかりしなきゃ

【Ⅱ】に換装した【ジェナス】で出撃
キャバリアサイズに武器改造したアブレストランチャーも装備するよ

まずは敵のUCも含めた銃火の雨だけど、スラスター類を駆使して回避
……だけだとキリがないので、敵の足場をランチャーで破壊。姿勢制御を困難にして狙いにくくするよ
(見切り・推力移動・戦闘知識・地形破壊・体勢を崩す)

そうなったら敵はUCで追加された翼で飛び上がるだろうから、その隙を見逃さずに最大出力でUC発動
ランチャーの接射も加えてその重装甲を打ち破るよ
(瞬間思考力・リミッター解除・限界突破・零距離射撃)



●DON'T GRAZE!!
「さぁ、まずはこの諸相にて相手をしてやろう。」
 鴻鈞道人の言葉を合図にマイティー・バリーの各部から飛び出したるは本来あり得ざる物。背部から天使を彷彿させる白き翼、全身からはおぞましき触手の群れ。そして腕部に取り付けられたクローは死神の鎌の如く白く染まる。
 神々しさとおぞましさを併せ持つ、明らかな異形。このような魔改造、イザベラが知ればブチギレ待った無しである。
「これこそは我が混沌の諸相が一つ。触手はこの鉄騎用に改良し、それぞれが砲の一つとして機能している。全方位に死角なしだ。」
 その言葉の通り、触手の先端には穴が開き、丁寧にライフリングまで刻まれていた。しかも軟体という性質を失っていないため自由自在に弾幕を展開できることは想像に容易い事であろう。

「うへぇ、ガトリングだけじゃなくてあの触手からも弾丸が飛んでくるってコト?……ますます弾幕シューみたいな事になりそう。」
 キャバリア「ジェナス」を駆る猟兵、星川・アイ(男の娘アイドル風プロゲーマー・f09817)はマイティー・バリーを見て呟いた。弾幕シューティングとは正に言い得て妙であった。マイティー・バリーに搭載されている兵装は最小でも30mmの徹甲弾。キャバリアの動きを止めるには十分な威力を有し、連撃の如く170mm砲弾をまともに喰らう羽目になってもおかしくはない。
 即ち「一発でも喰らえばゲームオーバー」、縦型弾幕シューティングゲームならお馴染みの状況(ルール)である。
「……だったらゲーマーとして負けられないね。それにあっちだって覚悟キメてるし、アタシもしっかりしなきゃ。」
「ほぅ?飛んで火に入るのは虫だけかと思ったが、猟兵を載せた鉄騎も同類だったとはな。」
「チーターのくせに……後で吠え面をかいても知らないからね!」
 互いに言葉を交わし、戦闘は開始された。

 ジェナスの飛翔と共にマイティー・バリーの全砲門が火を噴く。機首4門の30mm機関砲、両腕の170mm三連装ガトリング砲、混沌の諸相によって形成された無数の触手型砲塔。瞬間火力は如何ほどか。大小の銃砲弾が群れ、破壊の奔流を成し、ジェナスへと襲い掛かる。
「この弾幕でグレイズはマズいよね……っと!」
 アイはスラスターの細やかな微調整で直撃を避けていた。弾幕の追撃を蝶が舞うが如く避け、挟撃されそうになればハチドリの如き三次元機動で翻弄する。
「どうした?ちょこまかと避けているだけでは……何っ!?」
 鴻鈞道人がアイを挑発しようとしたその時、マイティー・バリーから甲高い金属音が響き、弾幕が止んだ。
「オーバーヒートってやつだね。調子に乗って撃ちまくってるからだよ。」
 実弾を用いる兵器が避けられない現象、オーバーヒート。砲撃戦を主体をするマイティー・バリーだがそれも適切な運用があってこそであり、砲弾が尽きるまで撃ち続けるなど愚の骨頂であり、やはりイザベラがブチギレるであろう案件である。
「だが触手であれば関係ない!」
「その前に仕返しだよ!」
 弾幕の切れ目をアイは見逃さなかった。すかさずキャバリア用に改造されたアームズフォート『アブレストランチャー』をマイティー・バリーの足元に向けて放ち、その地面を撃ち砕く。鴻鈞道人は至近弾にたまらず天使の翼をはためかせ空中へと逃げた。
「くっ……その程度で!」
「おっと勘違いしないでよ、まだアタシのターンは終わってないんだから!」
 その行動を待っていたとばかりにアイはスレイプニルを装備、最高速度を維持したままジェナスをマイティー・バリー目掛けて吶喊させる。
「出力最大!クトネリシカ・ドライブ!――っとオマケの一発!」
「ぐおおおお!?」
 翼が生えているとはいえ重量級のマイティー・バリーが満足に空中機動戦ができるはずもなく、ジェナスのスレイプニルはマイティー・バリーの装甲を切り裂き、続くアブレストランチャーの追撃でその巨体を地表へと叩き落した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

数宮・多喜
おいおいイザベラさん、冗談きついぜ?
なんでキャバリアまで取り込まれてんのさ。
こりゃ完全にオブリビオンマシン相手だと思って、
相手しなきゃヤバそうだね……!

カブに『騎乗』し、必死で飽和火力の中を『操縦』して掻い潜る。
ダメ元ででもFCSに『ハッキング』を試みて、
照準を少しでもブレさせようとするよ。
接触信管系の砲弾群は『衝撃波』を放って、誘爆させて至近弾を避ける。
そうして逃げ回りながらも移動パターンなんかを『情報収集』しながら、
特定の座標へ『おびき寄せ』るよ。

アタシがカブを選んだのはただ一つ、
アタシが放てる最大火力がこいつの機能だからさ。
本来宇宙戦用の【宙穿つ穴】だ、
せめて生き残ってくれよ……!



●When you wish “Little Luck”
「ぐっ、砲身の過熱による動作不良だと……?そんなものは不要だ、諸相にて取り払ってくれる!」
 鴻鈞道人は叩き落されるのと同時に混沌の諸相を用いてマイティー・バリーを再強化し、それと同時にガトリング砲の発射機構に手を加え始めた。仏の顔も三度までと言うが、イザベラの場合は基本一発でアウトなので現在ブチギレ三倍拳である。しかしここに当の本人の意思は無く、しかも諸相の強化による代償で絶賛流血中である。

 時を同じくして数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は混沌の諸相に侵されゆくマイティー・バリーを目の当たりにしていた。
「……おいおいイザベラさん、冗談きついぜ?なんでキャバリアまで取り込まれてんのさ。」
 時々トンチキな依頼をふっかけてくる破天荒なグリモア猟兵としてのイザベラが、ある日チェストチェストと連呼していた姿が脳裏を過ぎったが「流石にそういう場合じゃあない」と頭を振って決意を新たにする。
「こりゃ完全にオブリビオンマシン相手だと思って、相手しなきゃヤバそうだね……!」
 味方であれば頼もしいが、敵に回れば唯々恐ろしく、しかも鴻鈞道人のユーベルコードで強化されたマイティー・バリーはクロムキャバリア世界におけるオブリビオンマシンかそれ以上の脅威。
 だからこそ相手取る以上手加減など出来る筈がなかった。
 多喜は愛車のカブに跨り、アクセルを吹かす。
「……血迷ったか?このマイティー・バリー相手に生身で挑むとはな。」
「生憎キャバリアよりもバイクが本業なんでね、本気(ガチ)で特攻(ブ)っこませてもらうよっ!」
 尋常であれば鴻鈞道人の言に理があろう。しかし時としてその理を理不尽なまでに捻じ曲げるのが猟兵である。

「ちぃっ!やっぱり二の轍は踏まないか……!」
 先の戦闘で弾幕形成のコツを学んだか鴻鈞道人は多喜に対して合理的な迎撃を行っていた。翼による飛翔時は触手砲台による小口径弾を用いて、地上ではマイティー・バリーの170mmガトリング砲と30mm機関砲を用いて。ただ火力を誇示するでなく、追い詰めるが如き戦術を駆使しだすと、何時しか戦いは多喜を追撃する様な流れに変わり、鴻鈞道人の優勢であるかのようになっていた。
「うん?さっきまでの威勢はどうした?…何やら火器管制に小細工を試みているようだが無駄だ、手動照準に切り替えこの女の射撃技術を以てすれば良いだけの事!」
「げぇっ、そこまでお見通しなのかい!?」
 遮蔽物の無い荒野を飛ぶように疾走するカブの上で多喜は顔を顰めた。鴻鈞道人の言は正しく、多喜はマイティー・バリーの砲撃から逃れるべく火器管制へのハッキングを仕掛けていたのだ。
(でもあの様子なら本命の方はバレてない……!)
 だが管制へのハッキングはあくまで囮であった。傍から見ればド派手に追われているように見えるそれであったが、彼女から発せられるサイキック能力由来の衝撃波により砲弾に搭載された信管が誤作動を起こしているからこそ「そう見えている」だけであり、寧ろこの状況は鴻鈞道人ではなく多喜が「追わせる」ように作り出したものであった。

「そういやさっき、血迷った〜だの生身で〜だの言ってたね?実はアレにはもう一つ理由があったのさ。」
「――うん?」
 唐突な多喜の語りに思わず耳を傾けてしまう鴻鈞道人。ここまでの優位性から齎される慢心か、その動きが僅かに止まる。
「バイクが本業ってのともう一つ――アタシが放てる最大火力がこいつの機能だからさ!――座標ロック!」
 JD-1725「宇宙カブ」。見た目はあのベストセラーとして知られる某二輪車のそれであるが、その機能はただ走るだけに非ず。時に鎧と化し、またある時はキャバリアの操縦系を司るコアとなる。
「発動承認――宙穿つ穴!」
 その数多とある機能の一つ、宇宙空間における対星獣戦を想定した亜空間連続崩壊シークエンスを多喜は起動させた。

「何だこれは……うおおおっ!?」
 マイティー・バリーの周囲で無数に発生した微小空間に驚きを隠せずにいた鴻鈞道人はすぐにそれの威力を知る事となった。
 それは猛禽が獲物の肉を啄むが如くマイティー・バリーの装甲を、諸相によって現れた異形の部位を穿ち、抉り抜く。耐久性など無視したそれによる攻撃はマイティー・バリーにとっては天敵に等しい。
「イザベラさん、せめて生き残ってくれよ……!」
 ――まぁ私にも小さじ程度の幸運を。
 多喜は転送の直前、イザベラが呟いていたあの言葉を想いながら破壊されてゆくマイティー・バリーの中にいるイザベラの生存を願うのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​


●肉を抉りて流血を嗤う
「ぐっ……この程度でやられるものか!」
 このまま決着かと思われた所で鴻鈞道人はマイティー・バリーのスラスターを噴射、さらに両腕のガトリング砲を足元に向けて発射し、機体の推進力に加え爆風の力を借り亜空間発生地帯を脱出に成功した。
 しかし檻の如き包囲網を力尽くで破った代償は高く、マイティー・バリー自慢の重装甲は所々で剥がれ落ち、全体を覆っていた諸相に至ってはその権能が消失した。
「まさか我が諸相を剥ぎ取るとはな……よかろう、ならば次なる諸相を以てお前達を完膚なきまでに叩き潰してやろう!」
 鴻鈞道人のその言葉に呼応するかの如くマイティー・バリーが次なる変貌を遂げる。
桐嶋・水之江
厄介な事になっちゃったわね
でも合法的に同業者に色々出来るチャンスよね
ん?別に?何も?

マイティー・バリーはちっちゃい地上戦艦みたいなものね
正面から殴り合うなんてとんでもない
という訳でエレノアで行くわ

攻撃を見てから対処出来るよう距離を思いっきり離しておくわ
火力が鬼強化されるでしょうし
電子妨害でレーダーと火器管制をバグらせて目眩しするわよ
後はふらふら飛び回るしかないわね
逃げる分にはこっちが有利でしょうし

それでどう攻撃するのかって?
マイティー・バリーの火力を利用するのよ
私の間合いにミサイルが入ったら干渉波を触媒に機巧感染を発動
誘導システムの乗っ取りプログラムを流すわ
これでミサイルをそのままお返しするわ


ヴィリー・フランツ
wiz
心情:お前のヘビー級チャンピオンみたいな機体と殴り合える奴なんざ、数える程しかいねぇじゃねぇか。

手段:ヘヴィタイフーンに搭乗、更にシールドと増加装甲を着けて防御力を更に高める。

武装はコングⅡ重無反動砲に肩のクロコダイル単装電磁速射砲、ピラニアミサイルを装備、予備武器の一六式自動騎兵歩槍は背後のハードポイントに引っ掻けておく。

奴の先制攻撃には切り札の無反動砲を守りながら防御態勢を取り耐える、こっちもそれなりに装甲は厚い方でな。

耐えれたら反撃開始、【EP-155mmクラスター焼夷弾頭】を装填、頭上で炸裂させ炎のシャワーを浴びせてやる!

後は脆くなった装甲に発射可能な全武装を叩き込めば良い。



●KING SLAYER―魔女の一計、傭兵の意地―
「おい、ありゃあ……血か?」
 その異様な光景を見て猟兵ヴィリー・フランツ(スペースノイドの傭兵・f27848)は思わずつぶやいた。マイティー・バリーのあらゆる箇所から溢れだしたるは血。間欠泉の如く吹き出してはその足元に血の池を作り出していた。
「正真正銘人間の血ね……しかも何十人と出血多量で死にかねない程の量の。だけど流石のマイティー・バリーの中にそんなに人は入らないハズよね?」
 そしてその成分を乗機「エレノア」から解析しヴィリーの問いに答えたのは桐嶋・水之江(機巧の魔女・f15226)である。
「するってぇと全部ラブレスの血って事か……マジかよ、コックピット開けたらミイラとかになってんじゃないのか?」
「……彼女アポカリプスヘルの出身だって言うじゃない。だったら大丈夫よ、血の気の多さって意味で。」
「血の気が多いって生命力のパラメーターじゃ……あー、でも不謹慎は承知の上だが、アイツの事だからあの程度じゃ死なんだろうなっていう何かはあるな。何かは知らんが。」
「でしょお?」

 でしょお?じゃないが。
 まぁこれも脳筋系破天荒型グリモア猟兵の宿命である。更に異形と化したマイティー・バリーを前に身構えていた二人の猟兵であったが、緊張がほぐれた事で戦闘前に本調子を取り戻していた。
「それで……あなたは彼女と組んだことがあるんでしょ?あの地上戦艦みたいなキャバリアについて気を付けないといけない事ってある?」
「馬鹿正直に真正面から殴り合いをしようなんて考えない事だ。いわばアレはキャバリア界のヘビー級チャンピオン、軽いジャブでも一撃必殺になりかねん。」
 水之江の問いにヴィリーは即答した。彼の搭乗する「へヴィタイフーン」もまた重装甲キャバリアである。故にイザベラとマイティー・バリーの戦いを間近で見る機会に恵まれて――、
「なるほどね……。でもあなたは真正面から立ち向かう気マンマンじゃない?」
 ――故に重装甲キャバリア乗りとして興味があった。『暴風』と『鰐』、果たしてどちらが上なのか?
「こっちもそれなりに装甲は厚い方(ヘヴィー)でな。打ち合いで負けるつもりはねぇよ。」

「……なんという事だ。只人の身でありながらこれほどの失血をしても尚、まだ十分に生命力を残しているというのか?……まぁいい、流血を強いれば強いるほどに力を増すこの諸相ならではの適材だ。存分に血を流してもらおうか!」
 鬼に金棒、ヤクザにポン刀、傭兵令嬢に桁外れのバイタリティーとはよく言ったもの。悪魔的なまでの相性の良さに気を良くした鴻鈞道人はヴィリーと水之江を相手取るべく動き出した。

「それじゃあへヴィタイフーン、マイティー・バリーとの殴り合いはあなたに任せるわ。私は空中から支援しながら反撃の隙を探してみる。」
「あいよ、それじゃあ互いに幸運を、だ。」
 水之江とヴィリーはそれだけ言葉を交わすと行動を開始した。エレノアは空へと舞い上がり、へヴィタイフーンはマイティー・バリーに負けぬ重武装で地上を駆ける。

「なるほど、空と陸から仕掛けて翻弄しようという策か。だがこの諸相を前にその程度しか弄せぬというならば見くびりが過ぎるぞ!」
 二機の接近に吠えるが如くマイティー・バリーはエレノアとへヴィタイフーン目掛けて砲撃を開始した。
「ジャミング、ハッキング開始。どの程度の効果があるか分からないけど少しでも目眩しになれば――っ!直撃!嘘でしょ!?」
「違う!これは『血』だ!銃砲弾に紛れて血自体が散弾みたくダメージを食らわせて来てやがる!」
 マイティー・バリーから放たれる銃砲弾、先の戦いでは無数の触手型砲塔を含めた物量的破壊力を有していたが、それに比べると常識(アポヘル猟兵基準)的な物量攻撃である。しかし、それが赤みを――「銃砲弾並みの質量」を持った血液を帯びているという事を除けば。
「はははは!この諸相の血が見かけだけである筈が無かろう!この女が血を流せば流すほどにお前達への刃となって返ってくる、私を斃そうとするその行動がお前達の首を絞める諸相なのだよこれは!」
 鴻鈞道人は一頻り嗤うと二機から距離を取るようにマイティー・バリーのスラスター出力を上げて後退を開始する。その際にも血が噴射されへヴィタイフーン目掛けて飛び散っていった。
「野郎、とんでもなく品の無ェ戦い方をしやがる……!」
 増加装甲に加えスパイクシールドで前面を防御しながらヴィリーは悪態をついた。血煙そのものが一種の弾幕となりへヴィタイフーンを切り裂き、エレノアを空から引きずり降ろそうとしていた。
「こちらエレノア。へヴィタイフーン、この状況じゃあ時間をかけすぎるのは圧倒的に不利だわ。ちょっと乱暴だけど、こちらから隙を作り出すわよ。」
「オーケー、エレノア。こっちもそろそろ殴り返したい所だった。……その話、ノるぜ!」
 水之江から提示された反撃案を見てヴィリーは、そしてそれにつられた水之江も獰猛に笑う。
 ――猟兵を無礼(なめ)るなよ、と。

「む、誘導弾による飽和攻撃か。しかしこの諸相の敵ではない!」
 鴻鈞道人はエレノア、へヴィタイフーン両機から発射されたミサイルを撃墜するべく30mm機銃による迎撃を開始、イザベラ本来の射撃技術に加え、散弾の如く拡散する血の壁が次々にミサイルを撃墜していく。
「ほら、じゃあおかわりをどうぞ!」
「遠慮せず食っていきな!」
 しかし二人の反撃はまだ続いた。エレノアからはレーザーの連続射撃、へヴィタイフーンからは電磁速射砲とキャバリアライフル「一六式自動騎兵歩槍」による射撃が行われる。
 全弾マイティー・バリーに直撃するがびくともせず。だがそれでも止まぬ「蚊ほども効かぬ反撃」は鴻鈞道人の精神を逆なでるには十分な効果を発揮した。
「ええい、鬱陶しい!ならばその鈍重な鉄騎から倒してくれるわ!」
 鴻鈞道人は「鈍重な鉄騎」――即ちへヴィタイフーンをターゲットカメラに捉えるとマイティー・バリーの兵装中、最大の対地攻撃力を誇る「ミサイルの皇帝」、ツァーリ・ラケータの格納ハッチを開いた。
「鈍重なのはそっちもだろうが。――へヴィタイフーンからエレノア、『皇帝に毒を盛れ』。」
「とっくに盛ったわ。」
 次の瞬間、4発のミサイルがマイティー・バリーのバックパックから発射され、空中高くからへヴィタイフーンの直上目掛けて推進を開始する。
「乗っ取られてるとはいえ同業者相手にこんな事をしなきゃいけないなんて心が痛むけど……仕方ないわよね!」
 合法、合法♪と水之江は唱えながら、あるシステムを起動させた。それと同時にミサイルは方向を転換、マイティー・バリーのもとへと飛び始めたのであった。
「なんだとっ!?」
「流石のイザベラもミサイルを操るなんて芸当はできねぇ。……おっと、『皇帝サン』を撃墜なんてさせないぜ?」
 事態を飲み込めていない鴻鈞道人に追い打ちをかけるようにヴィリーはコングⅡ重無反動砲に搭載された一発の砲弾をマイティー・バリーの直上へ放つ。次の瞬間、マイティー・バリーは炎に包まれた。
「特注の焼夷弾だ、諸相とやらの血で消せるもんなら消してみやがれ!」
「その前にミサイルが着弾するでしょうけどね。いやーこういう時だからこそ色々できるんだから苦労の割には役得よねぇ。」
「うおおおおおお!?」
 水之江の予告通り、炎に包まれたマイティー・バリーは掩蔽破壊弾頭を積んだミサイル4発の直撃を受け「完膚なきまで」に破壊されたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エインセル・ティアシュピス
【アドリブ連携歓迎】
にゃーん!
いざべらをのっとってわるいことするなんてゆるせないよ!
ぜったいにたすけるんだからー!

でもこうげきがものすごくて、ぼくじゃ【式神使い】でにゃんげいざーに【結界術】と【オーラ防御】をかけてみんなを【かばう】ことしかできないにゃーん……うう。
ぼくじゃまだむくろのうみには……

でも、ぼくはぜったいあきらめないよっ!
【指定UC】をつかうにゃーん!
おにいさんおねがい!ぼくにちからをかしてっ!
(未来の自分に変身)

……ああ、エインセル。君の覚悟は受け取った。
ここからは俺が相手だ、俺たちの大事な仲間を返してもらうよ!

まだいけるねニャンゲイザー?【多重詠唱】で防御を重ねがけして引き続きみんなを護ってくれ。
同時に【レーザー射撃】で弾幕を一掃する。
その間に『生命を守護せし霊布の聖槍』に雷の【属性攻撃】の力を付与してキャバリアの関節部を【不意打ち】させて【体勢を崩す】ことで動きを阻害!
弾幕が鈍ったら飛翔して接近、【浄化】と【破魔】の【全力魔法】による【神罰】を真上から叩きつける!!


朱鷺透・小枝子
イザベラ殿は中身が敵だと言った!

外殻ユニット装着ディスポーザブル03【操縦】メガスラスターで【推力移動】しつつ、人工魔眼で【思考力限界突破】。【瞬間思考力】で飛んでくるミサイルを認識即【早業】内蔵ビーム砲で迎撃。ビーム【砲撃】やミサイルの【一斉発射】で撃ち合い、サイキックシールドとバリアの【2重オーラ防御】で弾丸や渾沌の諸相を防ぐ。

ならばなんとしてでも!!
イザベラ殿から追い出し壊す!!!

【念動力】4基のサーベルユニットで上空から【重量攻撃】
サーベルユニットでマイティー・バリーを拘束
『敵壊装』2機目の外殻ユニット装着ディスポーザブル03を生成し、10指ハイペリオンランチャーを収束した一撃を放つ!



●流血の先に、肉を裂いて顕れたモノ
 諸相により強化されたツァーリ・ラケータは荒野の大地に巨大なクレーターを作り出すほどに強力であった。その威力は流石のマイティー・バリーをしても今度こそは――、否。
「まだだ……まだ終わらんぞ!」
 クレーターの中心から轟くは半壊したマイティー・バリーのコックピットを開放し、その身を乗り出させ猟兵達を睨みつけるイザベラの、鴻鈞道人の声。
「一度ならず二度も死の淵を見るとはな……流石に次はこの鉄騎も、この依代でも耐えられんだろう。故に最後の諸相を発現し、お前達を葬ってくれよう。」
 鴻鈞道人がそう言うとマイティー・バリーは血の諸相により破損部分が再構築され、そしてイザベラの身体に変化が起きた。体内で何か大きなものが蠢き、それが――、一対の巨腕がイザベラの背部を突き破って現れた。その両腕はイザベラの愛銃二丁、「フェイルノート」「スチールバスター」を掴み、計六門の砲口が猟兵達に向けられることとなった。
「正真正銘の全戦力投入だ。猟兵、最後の勝負だ。」
 ついにイザベラの流血だけではなく身体までを代償に諸相を用いた鴻鈞道人。そしてそれは超一流の傭兵が用いる射撃術と砲撃術の両方を相手取らなければいけない、つまり脅威度はこれまで以上、単純計算でも二倍に跳ね上がった事を意味していた。

●Fortis Fortuna Adiuvat.
【ゲ、――ゲ、ザアァッ……!】
「にゃんげいざー、がんばってぇ!このままじゃいざべらが……!」
「くぅっ!弾幕と狙撃に対応するので手一杯であります!」
 傭兵『イザベラ・ラブレス』と鉄騎『マイティー・バリー』の二つを相手に二人の猟兵、エインセル・ティアシュピス(生命育む白羽の猫・f29333)と朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は防戦を強いられていた。
 マイティー・バリーの火力は今更言うまでもなく強力であり、スーパーロボット『鋼鉄猫帝ニャンゲイザー』はマスターであるエインセルのサポートを受けているにかかわらず攻め手を封じられ、彼が被弾しないようにその身を盾とせざるを得ず。
 そして敵を翻弄しようと『ディスポーザブル03』で駆ける小枝子も兵装のビームやミサイルで応戦するが諸相の腕に握られた「フェイルノート」の25mm砲弾による精密狙撃でミサイルを次々と撃ち落とされ、マイティー・バリーの弾幕に押し切られる場面が少なくなかった。

「くくっ、諸相の併用はなかなかに堪えるが……趨勢はこちらに傾ているなぁ!」
 勝機を見出したか鴻鈞道人は弾幕を張りながらマイティー・バリーをニャンゲイザーに肉薄させ、「スチールバスター」の13mm焼夷徹甲弾の掃射で鉄壁の装甲を切り裂いた。
「おーらとけっかいごとなんて――にゃ、にゃんげいざあぁぁ!」
 両断されていないとは言えほとんど零距離からの攻撃に倒れ伏すニャンゲイザーの姿にエインセルは叫ぶ。
「ははははっ!ようやく盾が剥がれたか!――ではまずはお前からだ猟兵!」
「駄目っ……間に合わない!」
 勝ち誇る声を上げた鴻鈞道人に呼応するようにマイティー・バリーの腕が振り上げられる。その真下にはエインセルが、小枝子もそれに――鴻鈞道人が「何をするか」に気が付き救援に向かうも間合いが遠く、正に絶体絶命の状況。
 あわやエインセルの命運尽きたか――否。

「でも……でも、ぼくはぜったいあきらめないよっ!ぜったいにいざべらをたすけるんだからぁー!」
 例え絶体絶命の淵に立たされても、それでもなお立ち向かおうという気高き魂の叫びをエインセルが轟かせ、そして全身が光を帯びる。
「むぅっ!?だが今更何をしようと無駄な事だぁーっ!」
 鴻鈞道人はエインセルの変化に一瞬怯むが、叩き潰さんとマイティー・バリーの腕を振り落とす、が――。
「させないであります!」
 エインセルが生み出した、鴻鈞道人の一瞬の怯み。時間にして1秒にも満たないその僅かな隙はディスポーザブル03の突撃をマイティー・バリーの横っ腹にブチ当てる絶好の機会を作り出した。
 その重量から吹き飛ばされずとも、認識外から虚をつかれた形となりエインセルへのとどめを刺し損なった鴻鈞道人とマイティー・バリー。そして邪魔をされた事でその矛先が小枝子へと向けられた。
「ぐぉっ!……邪魔をしなければ僅かでも生き残れたものを――!」
 その猟兵は戦争の道具として生み出された消耗品。まっとうな兵士ではないが、しかしだからこそどのような兵隊よりもより人間らしく。そしてどのような兵士達よりも勇敢であった。
 正に決死の覚悟を決めた小枝子は全く臆することなく、寧ろ笑って見せる。
「戦友(とも)を護れるならば本望っ……!」
 小枝子が啖呵を切った直後、ディスポーザブル03へと向けられたガトリング砲が唸りを上げ170mm砲弾を吐き出した。

「ニャンゲイザー、彼女を護れ!」
【ゲイザアアアアァァ!!】


 古代ローマの劇作家、テレンティウス曰く『フォルトゥナは勇者に味方する』。
 フォルトゥナとはローマ神話に語られる幸運の女神であり、英語における「Fortune」の語源とされる。
 覚悟を決めた者とそうでない者、そのどちらに女神が微笑むかは明白である。


 ディスポーサル03とマイティー・バリーの間に割って入って来たのはニャンゲイザーであった。
「学習能力のない奴め!ならば纏めて斃すまでよ!」
 鴻鈞道人は更に30mm機関砲、そしてスチールバスターとフェイルノートを加えた計8門をニャンゲイザーのコア目掛けて撃ち放つ。

「果たしてどうかな?娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわすとも言うし、それに何事も『決めつけ』は良くない事だ。」

 が、ニャンゲイザーは耐える!最小で13mmの焼夷徹甲弾から最大で170mmの砲弾までで構成される暴力の嵐を真正面から受け止めていた!
【ゲイザアアアアァァ!!】
「ば、馬鹿なっ!この一斉砲撃を耐えるだと!……はっ!?貴様、まさか……!」
 ニャンゲイザーごとディスポーサル03を、二人の猟兵を消し飛ばすべく放った超弾幕をたった一騎に阻まれる。全くといって良い程に理を捻じ曲げられた鴻鈞道人は驚きを隠せず、そして一つの結論に至った。
「小僧っ……!貴様、『超越(オーバーロード)』したなぁっ!」

「そう……確かにお前を、骸の海を相手取るには今(エインセル)は荷が重い。……だがその覚悟は間違いなく未来(俺)に引き継がれ、そして確かに受け取った。さぁ、ここからは俺が相手だ、俺たちの大事な仲間を返してもらうよ!」
 声の主は一人の青年。それは神霊たるエインセルが悠久の年月を重ねた末に辿りつく到達点の一つ、「白羽の賢者」として知られる事になるであろうエインセルの「未来」であった。
 当然その魔力量、そして魔法を使役する技術は格段に成長した彼がニャンゲイザーに纏わせる多重層オーラは先に切り裂かれたそれとは一線を画する防御力を持ち、マイティー・バリーの攻撃を阻んでいるのだ。
「ならばその外殻を優先的に破壊するまで!ツァーリ・ラケータ、発射!」
「させないであります!」
 鴻鈞道人がツァーリ・ラケータを発射した直後を狙った小枝子はディスポーサル03の外殻内蔵レーザーでその弾頭を狙撃、誘爆させミサイル攻撃を阻止。そして至近距離の爆発で弾幕が途切れた瞬間を見逃さず飛び出した。
「エインセル殿!私がヤツの動きを止めるであります!その隙にとどめを!」
「わかった!タイミングは君に任せる!」
 短く言葉を交わし、小枝子はマイティー・バリーの頭上へと舞い上がり、背部から4基のサーベルユニットを分離させるとマイティー・バリーに杭を打ち込むように射出した。
 質量兵器といっても差し支えない超重量のサーベルはマイティー・バリーから両腕を切り落とす!
「くッ…!だが読めたぞ、次の行動が――ぐぅ!?」
「おっと、逃がしはしないよ!」
 マイティー・バリーの両腕を失い、迎撃能力が大きく低下した鴻鈞道人はその場から退避すべく行動を起こそうとするがエインセルの放った雷槍がマイティー・バリーの脚部を貫きその動きを封じた。

「イザベラ殿は中身が敵だと言った!ならばなんとしてでも!!イザベラ殿から追い出し壊す!!!」
 完全に身動きを封じられたマイティー・バリーの真上に陣取った小枝子はその身をディスポーサル03と同じ姿へと変え、その両腕に備えられた10門のハイペリオンランチャーをマイティー・バリーへ――否、イザベラへと向けて放った。
「鴻鈞道人!私は『お前を撃ち壊す』!」
「ぐぅおおおおお!?」
 小枝子が放った攻撃は全てが精確にイザベラを貫き、鴻鈞道人は苦しみの声を上げるがイザベラの身体は無傷!しかし次の瞬間、イザベラの背中から「鴻鈞道人そのものの上半身」が現れた!
「ば、馬鹿なぁ……!まさか、『私だけに作用する攻撃』をしたとでも言うのかぁ!?くっ……このままでは終われん!惜しいがこの依代を捨てて逃げ延びねば……!」
 イザベラから生えるという何とも悍ましい姿で絶叫する鴻鈞道人。そして己に勝ちの目が無くなったことを悟り戦域からの脱出を決意した――その時であった。

『ほぅ?何やら自由に動けないと思ったが漸くすべてを理解した……下手人は貴様だな?』
「だ、誰……だぁっ!?」
 鴻鈞道人は直ぐ近くから響いた声に警戒するも、その直後に「何者かが喉に喰らいつかれていた」。
『つ か ま え た』
「……グッド。最高にグッドよジョージ。」
「なぁ!?何故っ……!お前の意識は乗っ取ったハズなのにぃ!?」
「こっちが聞きたいわよそんな物……。」
 このような状況を果たして誰が予想できたであろうか。
 小枝子が放った「戦塵霊物質」が鴻鈞道人を攻撃した瞬間、イザベラに対する支配のレベルが下がり、更に鴻鈞道人が依代の放棄を選択したことがイザベラが覚醒する決め手になったなどと!

「さぁ、未来のエインセル。ショーダウンよ、『私に構わず思いっきり』トドメを刺しなさい!」
「……っ!わかったよイザベラ、俺の出せる全てを放ってやる!」
 イザベラのその言葉を受け取ったエインセルはすぐさまマイティー・バリーの頭上へと飛び、詠唱を開始した。

「し、正気か貴様!?あの魔力量、解らぬハズがないだろう!私を斃せたとて貴様も――!」
「ゴチャゴチャとうるさいわねぇ……本当は自分の腕でぶん殴ってやりたいところだけど、背中じゃあ届かないし、代わりにこの『ブッサイクな腕』で殴らせてもらうわ――よォッ!」
 狼狽え始めた鴻鈞道人に対してイザベラは諸相によって生やされた巨腕によるハンマーパンチを顔面に撃ち込んだ。
「なんだ……結構上手く打ち込めたじゃないの。」
 そしてまさかの諸相の逆乗っ取りによる突然の不意打ちを喰らった鴻鈞道人は顔面を潰され気絶した。

 時を同じくしてエインセルの詠唱は完了し、マイティー・バリーの頭上には複雑な幾何学模様による魔法陣が幾重にも重ねられ、誰もが「それが決着をつける一撃」となる事を確信していた。
「コイツで……トドメだぁあああ!」
 エインセルが両の手をマイティー・バリーに向けると魔法陣から莫大な量のエネルギーが放たれた。
 神聖なる光を放つそれは瞬く間に鴻鈞道人を、そしてイザベラとマイティー・バリーを包み込み、欠片を残すことも無く全てを消し去った……。









●そして骸の海は去り、世はなべて事もなし?
 鴻鈞道人の消滅。
 それは猟兵達の勝利を、そして依頼の完遂を意味していた。
 しかし同時に、一人のグリモア猟兵を失ったという事も……、


「無事に狩りは終えた様ね。皆お疲れ様。」
 ……。
 その場の猟兵全員が目を点にした。
 そこには無傷のイザベラが湯気を立てるコーヒーの入ったカップを片手にたたずんでいたのだ。
「あ、次の貴方達のセリフは『え、さっき欠片も残さず消滅しなかったぁ!?』よ!」

――え、さっき欠片も残さず消滅しなかったぁ!?……はっ!?

「まーね。……残機がなかったらマジで死んでたわ。」
 理由も全く訳が分からない、しかしこのトンチキなインチキぶりは明らかに平常運転のグリモア猟兵、イザベラ・ラブレスであった。
「まぁ、私だって下準備をしていたって事よ。それじゃあ改めて――猟兵達による依頼の完遂を確認!帰還するわよ!」
 そうイザベラが宣言すると共にグリモアベースへの転送ゲートが開いた。
 こうして、混沌の地における依頼は今度こそ完遂(コンプリート)されたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年01月30日


挿絵イラスト