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銀河帝国攻略戦⑲~ アウトブレイクを打ち破れ!

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

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「やーやー。皆、ガルベリオン発見、お疲れ様なのよ」
 少々気怠そうにシーネ・クガハラ(ただいまB級テンペストプレイヤー・f01094)はユーベルコードで召喚した愛竜の黒竜、クロウロードド共に猟兵達を労う。
「皆のおかげで、帝国執政官兼科学技術総監ドクター・オロチの居場所がわかって後は突撃殲滅……なんて、なればよかったんだけどねー。所でコイツの肩書と名前すっごく噛みそう」
 ちょっとした個人的な感想も交えて説明を続けるシーネ。曰く、
「このまま進めばオロチのオロチウイルス満載の突撃艇のワープ突撃&自爆戦法によって我々は全滅する!まあ全滅は言いすぎかもしれないけど、大打撃間違いなし!ちょっと呆れるほど有効な戦術すぎて引くわ!」
 なんだってー!!だとかじゃあこのまま指をくわえてガルベリオンを見ているしかないのか!等という声が猟兵達から沸き起こる。だが――。
「まあそうなんだよなー。普通ならどうしようもないのよこれ。ワープしてくる艦隊とかどっから来るかわからないし、いくばか迎撃はできるかもしれないけど一つでも懐に入れられてウイルス散布されたら大打撃。奇跡でもない限りどうしようもない。だったら、だ」
 ――皆、奇跡、おこそっか?

「ってなわけで、どうするか説明するよ。簡単に言っちゃえば、これから皆にはオロチウイルスの抗体を作ってもらうよ。早急に、突貫で、時短で。そんなことできるのかって?奇跡じゃないかって?奇跡ならあるさ、そうユーベルコードっていうね!」
 どういうことかと問う猟兵にさらに説明を続ける。
「ほら、私達のユーベルコードって単にオブリビオンを倒すために使われるものっていえばそうかもしれないけどさ。なんかいろいろ応用ができると思わない?ほらここにいるうちの子にオロチウイルス投与したりしたらどんなふうに症状が進んだりとかわかったりとか」
 思いっきり、後ろで、黒い竜が涙目で『姉さん、ひどいっす!!?』みたいな顔をしているが一切気にせずシーネは話を続ける。曰く、だって30秒位あればリスポン(復帰)するじゃんとかなんとか。
「まあ、皆がどんなユーベルコードを持ってるか私はわかんないから、やり方は皆に任せるのよ。古代遺跡船の研究施設にいろんな船から研究資材は積んであるらしいけど、人員も時間も資料も研究費も足りないので、そこら辺全部ユーベルコードで賄ってねー。じゃあ、皆、頑張れー♪」
 右手を振って、笑顔で君たち猟兵を送り出すシーネ。さあ、未来を切り開く研究を始めよう!


風狼フー太
=============================
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
============================= 

 さあ、ライフルを研究してライフルラッシュを……あ、違う違う。
 当シナリオの閲覧ありがとうございます。風狼フー太です。違うんです。自分、戦争屋じゃないです。内政屋ですよ。ちょっと色んな資源や遺産を内政で使うから戦争をするだけですよ!

 さて、与太話はこのくらいにして。ガルベリオンの居場所の発見、お疲れさまです。ですが、なんかやばいウイルスである【オロチウイルス】満載の自爆用突撃艇の存在により足止めどころか、こちらの戦力に大打撃を与えてくるとか言う、かなりえげつないほど有効な自爆戦術をドクター・オロチは繰り出してきました。

 これに対抗するべく猟兵特別研究機関(そんなものはない)は、エンペラーズマインドで持ち帰ったオロチウイルスのサンプルを元に抗体を生み出すことを決定しました。できるわけがない?4回だけ言っていい……じゃなかった。出来ますとも、そうユーベルコードを使えば!
 そんなわけで、何もかも足りませんがその足りない物全てをユーベルコードで補ってください。時間も人員も参考論文もモルモットも全てです。大丈夫です、ユーベルコードは自由です!自由×自由な発想できっと何とかなりますよ!

 そんなわけで皆様、心の琴線等に触れる物があればご参加の検討よろしくお願いします。
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第1章 冒険 『オロチウイルスの抗体を開発せよ!』

POW   :    オロチウイルスを摂取し、未完成の抗体とユーベルコードを駆使し、全力で耐え抜く事で抗体のヒントを得ます

SPD   :    圧倒的処理速度で演算を行なったり、肉眼では確認できないウイルスの動きを見切り、その特性を導き出します

WIZ   :    集積された膨大な情報を高速処理するなど、ユーベルコードを利用して開発に貢献する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

フィロメーラ・アステール
「よーし、起こすぞ! 奇跡起こすぞー!」
この最強に最高なラッキー妖精がいれば奇跡なんて朝飯前だぞ!
さあ資料を見せてみろ、あたしのキラキラ脳細胞が火を噴(頭が爆発して死ぬ)

おのれドクター・オロチ、このあたしを倒すとは……やるな!
しかし、あたしには心強い仲間たちがついてる!
【全力魔法】による【鼓舞】を受けた仲間の熱い活躍をみろー!
【生まれかわりの光】を発動して仲間たちにバリバリ働いてもらうぜ!
この光の粒子には回復の力が備わっていて……。

そうだー! これを材料に混ぜたら良い感じになるんじゃないか!?
色々足りてないみたいだから素材も足りないだろ!
【気合い】でじゃんじゃん出すからじゃんじゃん使ってくれ!


フィオ・グラート
むむむ……。これはとっても重要なお仕事な気がするんだよ……。
ボクに出来そうな事は……はっ、そうだ!
難しいことは出来るのに任せちゃえばいいんだ!

【封印の隙間から呼応する不定形のモノ】で呼び出した眷族を使ってウィルスを見れたり触れたり普通の人には出来ない事をやってもらえばいいんだ!

邪神の眷属だから、少しくらい人にできない事だってできるはず!
眷属にやってもらってる間ボクは…荷物とか必要な書類の整理とかしようかな?そんな暇あるかなぁ?


仇死原・アンナ
ウイルス…抗体…?
その抗体とやらを開発すればウイルスを駆逐できる訳か…
よし、やろう…

POW 全力で耐え抜き抗体のヒントを得る

「オロチウイルス…地獄の炎で滅却できるかどうか試してみるよ」
未完成の抗体を打った後に
[オーラ防御][火炎耐性]を重ねて【ブレイズフレイム】を使用する
地獄の炎で自身の身体を包みこみ、ひたすらに耐え抜く
何かしら変化があれば[情報収集]して抗体のさらなる改良のヒントを
得ようと思う

もしウイルスを滅却出来たら素直に喜ぶとしよう
「ウイルスを処刑することが出来る…処刑人としてこれほど嬉しいことはないね…」

アドリブ絡みOKです


花巻・里香
ホントに厄介なモノね…
私は【魅惑の外装人形】による対象を自由に操るフェロモンや宝石の体に内包されたフェロモン系超能力エネルギーでウイルスを誘惑し、共食いさせてみましょうか。
そうして生き残った、突然変異体のオロチウイルスだけを喰らうワクチンウイルスの開発を目指すわね。
上手くいけば、ウイルスの増殖には増殖を以って制したいところね。
もっとも逆に凶悪なウイルスに成り得る可能性もなくはないのだけれど。

他にも操ることに関してなら協力できるわよ、例えば筋肉痛になるけれど制限された肉体の枷を外したりね。
痛みや負荷が掛かるモノなら暗示で一時的に緩和できるかもしれないわ。


ヘスティア・イクテュス
確か、神風とかUDCの世界では言うのかしら?
本当に呆れるほど有効ね…

そして突貫で対策なんてこっち側も本当に無茶苦茶ね…
えぇ、やってやるわよ!伊達に無茶無謀のお父様の血を引いてないわ!!


といっても、わたしのユーベルコードでできることなんて
アベルを使って解析するぐらいかしら?
アベル頑張りなさい!【情報収集】
同じように解析する人がいたら共同作業ね

ウイルスの症状に、それに対する免疫系の動き
そこから抗体は出来ないか…自然に無理ならナノマシンとかその辺からのアプローチに挑戦

抵抗が出来たら実際に免疫が働くか…ほら、貴方実験動物にならない?



●アベル
ヘスーお嬢様呼び
執事のような話し方



「誰か、2番の棚から資料を持ってきてくれ!」
「サンプルの追加だ!早くしろ!」
「馬鹿野郎!ロックを忘れるな!死にたいのか!!」
「新しい反応を見つけたぞ!早く、海水につけて真水に漬けるんだ!」
 古代遺跡船の研究施設では主に猟兵達の起こす喧噪と怒号が交互に鳴り響いていた。各ブロックに割り振られた猟兵達は己の叡智、技術、生命力。ありとあらゆる力をもって。殺人ウイルスの研究に没頭していた。ここで抗体を作ることができなければ解放軍は大損害を被り、ひいてはスペースシップワールドの存続すら危うくなる。彼らの肩には一つの世界の全生命と未来の命が掛かっているのだ。

「よーし、起こすぞ! 奇跡起こすぞー!」
 自称【非常に珍しいレアな存在、出会えたらラッキー!】と豪語するフィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)。真偽の程は定かではないが、この状況においては猫の手だろうが幸運の御守りであろうが、少しでも役に立つならどんな力でも借りたいというのが本音であろう。
「この最強に最高なラッキー妖精がいれば奇跡なんて朝飯前だぞ!さあ資料を見せてみろ、あたしのキラキラ脳細胞が火を噴…………~~~~ッ!!」
 ボンッ!という音と共に脳内回路が火を噴きショート、目を回して倒れるフィロメーラ。きっとキラキラしてたからダメなんだ。脳細胞は灰色じゃないと。
「……ぐう。やるなドクターオロチ……この私を倒すとは」
「いや、オロチ関係ないでしょそれ」
 呆れたようにツッコミを入れるヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長(自称)・f04572)。なんだか若干不安を抱えているが今回の抗体作成、どのような方法で作ればいいかわからないものを作ろうというのだ。あれくらいの騒々しさであれば逆にプラスになるかもしれないとこれ以上考えるのをやめる。
「はぁ、それにしても」
 確か、神風とかUDCの世界では言うのかしら?と、頭を抱えるヘスティア。殺人ウイルスを詰め込み神風として特攻、ウイルスを散布。本当に呆れるほど有効な戦術にも頭を抱えるが。
「突貫で対策なんてこっち側も本当に無茶苦茶ね……」
 対してこちらはあまりにも無謀というか、戦術もへったくれもない。いや、人海戦術とは言えばそうなるのかもしれないが、単なる力押しとも言えなくもない。だが――
「この位の無茶が何よ。えぇ、やってやるわよ!伊達に無茶無謀のお父様の血を引いてないわ!!」
意気込みも新たにヘスティアは集まった猟兵達に向きを変える。
「それで、貴方達はどういう事ができるか聞いてもいい?」
「そうね……試してみたい事があるにはあるのだけど」
 桃色の光を反射させる宝石の体を持つ花巻・里香(クリスタリアンの人形遣い・f05048)。その雰囲気がそうであるからなのか、はたまた性格か、或いは見た者を魅了する宝石という躰がそうさせるのか。彼女には強く他者を惹きつける能力があった。
「これを使ってウイルスを共食いさせてみようかと思っているの。上手く行けば、ウイルスを殺すウイルスができるかもしれない……けど」
 それはいわいる蟲毒。様々な毒虫を壺の中にいれ、生き残った虫は様々な毒を取り込んだ虫になるという。もしかすれば、さらに凶悪なウイルスが出来上がるやもしれない。
「それは、抗体……なの……?」
 それは死の体現。だが、安息の担い手でもある仇死原・アンナ(炎獄の執行人・f09978)は呪われし処刑執行人の装備一式を纏い、その話に興味を持つ。
「抗体なら……私に使ってほしい」
「話聞いていた?抗体になるとは限らないって。いわばどうなるかわからない実験で出来た産物でしかないよ」
「それでいい。……私が献体になる」
 ギョッとする二人に目をくれずアンナは淡々と話しを続ける。
「私も試したい事があるんだ。いろいろとデータは多い方がいいのでしょう?」
「まあ、それは確かにそうですけど」
「本人が決めたっていうならまあ……その代わり、死ぬんじゃないわよ」 
 もちろんと一言だけアンナは返す。艦内に設置されたベンチに座り込みその時を待つアンナ。果たしてウイルスの研究はこの方向性でいいのだろうかと思い悩む猟兵達も、迫りくる時間、どのようにすれば開発できるかもわからない抗体の前には、いくばかの危険や非人道性は目をつぶらなければならないのかと……
「そんなにさ、暗い顔しなくてもいいと思うのよ!」
 そんな、重くなった空気を吹き飛ばすように二人の顔を覗き込みながらフィロメーラは励ますように笑顔を振りまく。
「何も心配する様な事なんて起こらないって!大丈夫!」
「貴方、いったい何を根拠にそんなこと」
「私がいるから!」
 その答えにキョトンとした顔をする里香。
「最強に最高なラッキー妖精のあたしがいる!信じてよ!」
 そして、思わず吹き出してしまった。何か状況が変わったわけではない。それでも、何かが変わった気がする。そんな予感に。
「ふふっ、じゃあちょっとだけ信じてみようかしら」
 くるりと宝石の体の向きを返して個室に入る里香。その顔は、ほんの少しだけ、素晴らしい未来を予感したような微笑みを浮かべて。
「それほど時間はかからないと思うけど、危ないから入らないでね。出来上がったらまた持ってくるから。」
 軽快な機械音と共に扉が閉まる。残された二人は抗体ができるまでの間、どうしようかと考え
「あ、ヘスティアちゃんだ!」
 元気よく飛び出す声の方向に顔を向ければ、以前に合ったことのある顔。
「あら、フィオじゃない。あなたもいたの?」
「うん!ボクにもできることがあると思って!」
 フィオ・グラート(おいしく!楽しく!元気よく!・f03872)。強力なUDCを宿す少女で、以前同じ依頼でヘスティアと行動を共にした間柄であった。
「相変わらず元気そうね」
「うん、えっとそっちは?」
「最強に最高なラッキー妖精のフィロメーラなのだ!あたしがいれば抗体なんて出来たも同然なのだ!」
「ほんと!?じゃあかえってご飯でも食べようっと!」
「できないから!帰らないで!……ところでフィオ。あなた、どういう事ができるのかしら」
「ん?……えーと。この子に任せようかなって」
 そして現れたのは、おおよそこの世にいてはいけない生物、いや果たして生物なのであろうか?だが、形としては生物状である以上生物と呼称するが、ともかくおぞましい何か。
「私に寄生したUDCの眷属なんだ!ウイルスの症状とかこの子を使えばわかるかなって思って!」
 うん、明らかに眷属が顔がないけどギョッとした表情をした。召喚系のユーベルコードはこういう時に使い勝手がいいのかもしれない。
「……貴方意外と、えげつないのね」
「そうかな、えへへー」
「褒めてない」
「そういえばヘスティアちゃんはどうするの?」
「私?そうね……アベル!」
 その言葉と共に電子音が鳴り響き、ヘスティアのゴーグルが変形、浮遊。流線形の丸みを帯びた形の機械に。
『サポートAI ティンク・アベル 自立モードに移行しましたヘスーお嬢様』
「おお!?なんか変形してしゃべったのだ!」
『お初にお目にかかります皆様。実験データの記録や修正は私にお任せください』
「そういうことよ。面倒な事はアベルに任せてしまえばいいわ!」
 ぞんざいな言葉も、彼を信頼しての事だろう。ここに、全てのピースはそろったのだ。

 美貌。傾国の美女などと評されるように昔から女性の美しさというのは妖しい魔力が込められているのだろう。そしてそれを己の力にできるというのは十分な武器であり――
 ユーベルコードとまで化した里香の持つそれは、たやすくガラス管の中のウイルスを支配し、同族を食らうことを強要させる。無論、同族を食らった『モノ』が抗体となるか。それはわからない。だが、未知なる道を切り開くためにはありとあらゆる方法を施し、その内より道を見つけ出す。指輪より落ちたダイヤを、砂浜から拾うような所業。だがその不可能を可能にする力がユーベルコードとして猟兵達には備わっている。
「……じゃあ、やるわね」
「ああ、頼む」
 里香の手によって作られた『ソレ』をアンナに投与する。何が起こっても問題ないようにと残りの猟兵達もあんなの周りに待機して様子を見る。しばらく様子を見るが何事もなく、次にウイルスの投与を行おうとする……が。
「ガッ……ァァァ!」
 突然のうめき声、苦しみだし、爪が胸をかきむしる。
「ッ!や、やっぱり」
 不測の事態……っというわけではなかった。ウイルスを魅了しウイルスを食するウイルスを作るという目的で行われた行為がその目的通りに動くかなど、分かるはずもなく。
「フィロメーラ!ユーベルコード!急いで!」
「よしまかせろー!!」
 すぐさまフィロメーラの持つ癒しの力がアンナに向けて放たれる。だが――
「ご、ごめん!ちょっと、力が足らないかも……!」
 確かに癒しの力はアンナの傷を癒している。だがそれよりもあの中にいるウイルスの力が上回っているのだ。呻き声が、すでに声にならない空気の音にしかならないのは、喉が爛れ、もしや、すでに肺すら腐り落ちているのか――その時であった。
「――!」
 アンナの傷という傷から、全身の皮膚の細胞の隙間から流れ落ちる血の代わりに噴き出す炎。明らかにそれはアンナの持つ力であり、それは決して自らの傷を癒すような、そういう物ではないというのは一目瞭然だった。だが。
「……!効いてる!アンナちゃんの傷が治ってる!」
 炎が噴き出すと同時にフィロメーラの癒しの力を持つ光の粒子がアンナの傷を治し始めていったのだ。しばらくすれば、抗体にはならなかった物を投与される前のアンナの姿がそこにはあった。
「……私の持つ、地獄の炎でウイルスを滅却できるかどうか試したかったの」
 自らの持つ炎に耐性を持つアンナに炎は効かず、だが中にいるウイルスを焼き尽くすだけの効果はあった。故に、フィロメーラの癒しがアンナに届くようになったのだ。だが――
「……普通の人は、これじゃダメ」
 アンナの超人的な力があったからこそ、今ある命。この方法では普通の人間には耐えられない。
「やっぱり、やめましょう?」
 震えた声で里香が叫ぶように……か細い声で。
「こんなの命がいくつあっても足りないわ!もっと別の方法で――」
「いい、次の実験に移って」
 それを遮るのはアンナだ。先ほど命を落としかけた、だがその事実に構わず
「私は処刑人。死は苦しい物じゃなくて安息であるべきだから」
 最後の祈りでなくてはならないと。穢れた物であるべきではないと。
「このウイルスは死を穢す。そんなウイルスを処刑できるのなら、これほど嬉しいことはない。だから里香、私は大丈夫だから、次に行こう」
 この方法に意味があるのかはわからない。だが確実に今のデータはアベルの記憶媒体の中に記憶された。この情報があれば、他の研究をしている猟兵がこのデータを使い抗体を生み出すかもしれない。
「でも……」
「次をやろう里香ちゃん!」
 ためらう里香に声を掛けたのはフィロメーラだ
「大丈夫!さっきだって大丈夫だったから!次も大丈夫!不安なら私のこの光を混ぜてみよう?癒しの力があるしさっきよりは何とかなるって!気合入れて一杯出すぞー!!」
 それは、信じている声だった。この行動がいい未来になると知っているわけではない。だが、きっと、未来につながっているという希望に満ちた声。その声は、どうしても。
「……そうよね。うん。やってみなくちゃ、わからないわよね」
 なんだか胸の内が明るくなって。できる事を出来るだけやらなくてはと思わせて。気持ちを新たに、新たな素材を元に里香は再び抗体作りへと向かうのだった。

 さて――。
 猟兵達がアンナの方へ気を取られている隙に。一つの小さな影がその場を離れようとしていた。それはフィオが召喚したUDCの眷属。
 そりゃあ。あんなもの見せられたら逃げるだろう。明らかに自らを召喚した召喚者の意図の中には自分もあの実験に参加させられ、しかもモルモットの代わりとして――
「あ、こんなところにいたんだ」
 がっしりと。肩……正確には触手状の何かの部位なのだが、そんな物よりおぞましく感じられる手が、がっしりと。
「ダメじゃないか逃げちゃ。ほら、君も実験に協力するんだよー」
【特別意訳:嫌だ!助けて!死にたくない!死にたくなーい!!】
 フィオの手によってふたたび、実験場へ連れていかれる眷属を目にしながら止めるべきか悩んだヘスティアだが、召喚者がフィオである以上あまり干渉する物ではないかと思いなおしふと。
「……アベル。あなたも実験に参加してみない?モルモットとして」
『ヘスーお嬢様。生命としての肉体を持たない私が参加したところで有効なデータは得られないかと』
「わかっているわよ。言ってみただけよ」
『はい、存じ上げております』
 ……その後、異形の叫び声の様な物が艦内の一室から響き渡った。

 その場所が元はどのような目的で作られたのかはよくわからない。だが、今は即席の長椅子が置かれ、猟兵達の休憩室と化していたそこは、宇宙船の外を一望できる窓があって。
「ヘスティアちゃん、お疲れ様!」
「ん?ああ、フィオ。お疲れ様」
 あれから里香が作り出した抗体の試作品の実験を眷属に一通り施し終えて一息ついていたフィオと、一人と一匹によって得られたデータの処理をアベルに丸投げして休憩に入るヘスティア。眷属?彼はいいデータを提供してくれた。
「そういえばヘスティアちゃんはこの世界の出身だよね?」
「ええ、そうよ。ソードフィッシュ号っていう海賊船の船長なのよ!お父様も海賊で私もお父様にあこがれて海賊になったの」
「おおー、なんだかカッコイイ!」
 そうでしょう?と、どこか誇らしげに宇宙(そと)を見ながらつぶやくヘスティア。その双眼にはいったい何が映っているのか――
「皆、ここにいたのね」
 少々疲れた顔をして、休憩室に入ってきたのは里香。フィロメーラの癒しの力のこもった光の粉という素材を元に、自らの誘惑の力を組み合わせ、様々な方法や配合で抗体になりうる物を作り続ける。その繰り返しは肉体よりも、頭脳に蓄積される疲れであるようで。
「正直、もう、頭はしばらく使いたくないわね」
「お疲れ様、何か飲む?」
「何か、甘い物……砂糖たっぷりの」
 じゃあ何か適当に持ってくると、席を立つヘスティア。それと入れ違いになるように休憩室へと入ってきたのはアンナだ。
「アンナちゃん!……体、大丈夫?」
「平気。何度かやっていたらどんどん症状が軽くなっていったし。」
 フィオの心配に問題ないと返すアンナ。もちろん、その軽くなった症状でも解放軍に参加する一般人にとっては、致命的ではあるのだが流石は猟兵の力と言った所なのだろう。
「……抗体、出来るかな」
「わからないわね……でもできることはやったと思うわ」
 この先はミディアの元に集まった情報と照らし合わせるしかない。だがきっと問題ないだろう。誰かがもしかすれば自分達が。きっと必ず抗体を作り出す。少なくともその希望を見いだせるだけの内容ではあった。
「つーかーれーたー」
 そこへ、よろよろと。明らかに疲労困憊といった様子でフィロメーラが入ってくる。気合を入れて素材の為にユーベルコードを使ったのはいいのだが、少々気合を入れすぎて体力を使いすぎたのだろう。全身の力を抜いて椅子にもたれるように座り込むフィロメーラ。
「お疲れ様。大丈夫?」
「平気平気ー、ちょっと休めば大丈夫だから」
 労うアンリに手を振りながら笑って答えるフィロメーラ。癒しの力を持つ彼女の存在は今回の実験に大きく貢献したといっても過言ではない。
「あ、フィロメーラ。いい所にいたわね」
 飲み物を手に帰ってきたヘスティア。その手にはもう一つ、黒い小さな物体を持っていて。
「アデルがまとめたデータよ。貴方がミディアに届けてくれない?」
「んー別にいいけどなんで?」
「そりゃあ」
 最高にラッキーな妖精なのでしょう?と。その言葉に。
「ああ、なるほど!うんうん、そうだよね!」
 金色の妖精は、空駆ける流れ星の様に駆け抜けていく。
「待っててよ皆!最強に最高なラッキーな結果、ちゃんと皆に届けてあげるから!」
 果たして、このデータがどういった結果をもたらすのか。だが、この宇宙に輝く無数の星の数の内の一つの可能性しかないのだとしても。きっと彼らなら、答えにたどり着けるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月16日


挿絵イラスト