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殲神封神大戦⑰〜渾沌に呑まれし黒騎士の未来は

#封神武侠界 #殲神封神大戦 #殲神封神大戦⑰ #渾沌氏『鴻鈞道人』 #最後のリプレイで救出成否に関する言及あり。ご確認願います。

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#渾沌氏『鴻鈞道人』
#最後のリプレイで救出成否に関する言及あり。ご確認願います。


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●グリモアベース――渾沌氏『鴻鈞道人(こうきんどうじん)』を撃破せよ!!
「渾沌氏『鴻鈞道人』への道が開いた」
 集まった猟兵達を前に、グリモアが齎した予知を話し始めるのは、グリモア猟兵館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)。
 だが、その背に浮かぶ丸盾のグリモアは――白とも黒ともつかぬ色に染まっていた。
「そこで皆には、鴻鈞道人の撃破を頼みたいのだが……正直、何が起こるかわからない」
 鴻鈞道人がいる『渾沌の地』は、彼の道人が呼び出したオブリビオンによってその形状を変えるというが、敬輔の言は何か濁すように鈍い。
 どういうことだ、と声を上げる猟兵達を前に、敬輔は頭を軽く振り、何かを誤魔化すように猟兵達に語り掛ける。
「だから、どんな状況になるかは現地で確認するしかないけど、それでも一緒に行ってくれるか?」
 とりあえず了承した、と渋々頷いた猟兵達の前で、敬輔は「ありがとう」と礼を述べながら深々と頭を下げ、丸盾のグリモアを大きく展開し。

 ――猟兵達を、渾沌満ちた地へと転送した。

●封神武侠界・仙界最深部「渾沌の地」
 敬輔のグリモアで転送された猟兵達が見たのは、形が一切定まらぬ「渾沌」そのものの世界。
 頻繁に周囲の風景が変わる地の中心で待ち受けていたのは……白い着物を纏った白髪の道人だった。

(「私は渾沌氏……すなわち【骸の海】である」)
(「お前達が生きるために踏みしめてきた、全ての過去である」)

 猟兵達の頭に声が響くと同時に、鴻鈞道人が何かを招くような仕草をすると、その真横に背後で転送ゲートを守っていたはずの敬輔の姿が突然現れた。
「なっ……!?」
 突然転移させられ、それでも反射的に黒剣を抜こうとする敬輔の右手を、鴻鈞道人は左手1本で押さえながら、敬輔の胸に右手を突き刺した。
 直後、鴻鈞道人の姿は一瞬で消え、敬輔の全身から膨大な渾沌の力が発せられる。
「ぐ、あ……っ!!」
 敬輔の全身から発せられた膨大な力は、鴻鈞道人が放っていたそれと同じ性質のもの。
「まずい、鴻鈞道人の力が……『混沌の諸相(undefined)』が……僕と融合しようと!!」
 おそらくグリモアの予知で察していたのだろうか、敬輔は必死に溢れ出る力を押さえ込もうとするが、それも長続きせず。
「みんな、僕を……俺を……止めてくれ!! 頼む!!」
 その言葉を最後に、『渾沌の諸相』に呑まれた敬輔の両目が紅く染まり、ヴァンパイアへと変身した。
 敵討ちを果たす時しか解放しなかった力を無理やり解放させられた敬輔は、己が裡にかかえる闘争心を引き出され、不気味な笑みを浮かべながら猟兵達に向き直る。
 どういうことだ、と戸惑う猟兵達の頭に、鴻鈞道人の思念が届いた。

(「さあ、罪深き刃(ユーベルコード)を刻まれし者達よ」)
(「相争い、私の左目に炎の破滅(カタストロフ)を見せてくれ」)

 その思念に操られるように、完全に正気を失った敬輔が刀身が赤と黒に染まった黒剣を両手で構え、猟兵達に突き付ける。
 真紅に変じた敬輔の瞳を見た猟兵達は、悟ってしまった。

 ――今の敬輔には、如何なる繋がりがあろうとも声も届かない。
 ――しかも、鴻鈞道人と融合しているなら、手加減もできないだろう。

 ……と。

 ならば、猟兵達が取る手段はただ一つ。
 敬輔が無事であることを祈りつつ、殺すつもりでかかるしかない。

 猟兵達は覚悟を決め、己が得物を手に取り。
 ――『鴻鈞道人』と融合し、『渾沌の諸相』を身に着けた敬輔と対峙した。


北瀬沙希
 北瀬沙希(きたせ・さき)と申します。
 よろしくお願い致します。

 渾沌氏『鴻鈞道人』は、猟兵達を転送したグリモア猟兵と融合しました。
 非常に戦いづらいかもしれませんが……『鴻鈞道人』の撃破をお願いします。

 本シナリオは、非常に特殊なシチュエーションのシナリオです。
 また、有力敵戦でもございますので、やや厳しく判定致します。
 それ相応の準備をした上での挑戦をお待ちしております。

=============================

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「殲神封神大戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

=============================

 状況は全てオープニングの通り。
 今回は冒頭の追記はありません。

 補足として。
 このシナリオに参加する猟兵は、どのタイミングで参加されたとしても、シナリオ開始時点で既に転移されていたものと解釈します。

●本シナリオにおける「プレイングボーナス」
【グリモア猟兵と融合した鴻鈞道人の先制攻撃に対処する】とプレイングボーナスが付与されます。

 本シナリオでは、グリモア猟兵館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)の体内に渾沌氏『鴻鈞道人』が潜り込み、融合している状態です。
 鴻鈞道人の膨大な力によって『渾沌の諸相(undefined)』を身に着けた敬輔は、その影響で正気を失い、ヴァンパイアに変身して先制攻撃を仕掛けてきます。(外観は立ち絵を参照)
 引き離す方法は【融合した鴻鈞道人が力尽きるまで戦う】しかありませんので、戦闘後に敬輔が生きていることを祈りつつ……鴻鈞道人を撃破してください。

 ちなみに、敬輔に何らかの感情を繋いでいたとしても、有利に働くことは一切ございません。

●プレイング受付期間
 オープニング公開直後~1月25日(火)23:59。

●【重要】プレイングの採用について
 締め切りまでにお寄せ頂いたプレイングは、可能な限りの全採用を目指します。
 ただし、挑戦者多数の場合は再送をお願いするかもしれません。その際はマスターページとタグ、Twitterにて告知致します。

 その他、シナリオ運営に関する諸連絡は、マスターページを参照いただけると幸いです。
 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『渾沌氏『鴻鈞道人』inグリモア猟兵』

POW   :    肉を喰らい貫く渾沌の諸相
自身の【融合したグリモア猟兵の部位】を代償に、【代償とした部位が異形化する『渾沌の諸相』】を籠めた一撃を放つ。自分にとって融合したグリモア猟兵の部位を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD   :    肉を破り現れる渾沌の諸相
【白き天使の翼】【白きおぞましき触手】【白き殺戮する刃】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ   :    流れる血に嗤う渾沌の諸相
敵より【多く血を流している】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

霧崎・紫苑
見つけたぞ……世界を侵す病巣の根源をな

グリモア猟兵と融合することで、人質に取ったつもりか?
悪いが、そんな脅しは俺に何の意味もない

敵の攻撃は『対BCM兵器用防護服』越しに、敢えて機械部分が多い箇所で受けることにしよう
呪いや毒も多少は軽減でき、吸血しようにも相手が機械では意味を成すまい
最悪、俺自身の肉体の一部を失うことになっても、敵に肉薄できればそれで構わん

敵の肉体の一部を【グラップル】で捕縛できればこちらのものだ
UCの対象を『敬輔に融合している鴻鈞道人』に指定し【限界突破】の【怪力】を込めて殴り飛ばす
「あまり医者を舐めるなよ、病原体が。患者の肉体を傷つけず、病巣だけを取り除く術はいくらでもある



●医者は世界の病巣を切除する
 ――白と黒、蒼と紅が奇妙に渦を巻いている、渾沌揺蕩う地にて。

「見つけたぞ……世界を侵す病巣の根源をな」
 自らを『骸の海』と称する渾沌氏『鴻鈞道人』を前に、霧崎・紫苑(機械仕掛けの闇医者・f32327)は底冷えする程の赤の瞳を向け、冷徹に言い放っていた。
 紫苑が「病巣」と言い放った鴻鈞道人は、紫苑たち猟兵をこの地に誘ったグリモア猟兵、館野・敬輔と融合し、彼の姿をとっている。
(「世界を侵す病巣とは、随分な言い草だな」)
 鴻鈞道人の思念が紫苑の頭に直接届くが、紫苑は眉ひとつ動かさない。
「グリモア猟兵と融合することで、人質に取ったつもりか? 悪いが、そんな脅しは俺には何の意味もない」
(「否、この者は人質ではない。私は罪深き刃を操る者たちが相討ち、破滅するのを見たいだけ」)
 鴻鈞道人の望みは――ユーベルコードを操る猟兵たちの破滅なのか。
(「さあ、私を止められるものなら止めてみよ」)
 鴻鈞道人は真紅の両目に闘争心を滾らせ、赤黒く染まった黒剣を手に真正面から紫苑に突撃した。

 鴻鈞道人の初動を見て、紫苑は対BCM兵器用防護服越しに機械部分が多い右手で受けようと身構える。
(「ふむ、ならば」)
 鴻鈞道人の考えるような思念とともに、紫苑の目の前で突然敬輔の右腕が異形化した。
『渾沌の諸相』を宿し異形化した右腕は、黒鎧の下で筋肉がはちきれんばかりに肥大化し、籠手を破壊。
 破壊された籠手の代わりなのだろうか、白い籠手状の物質が、無数の細い触手で肉体に融合するかのように装着された。
 己が肉体を道具としか思わぬ所業に、紫苑の目が大きく見開かれる。
(「しまった、異形化の代償はグリモア猟兵……敬輔自身の肉体か!!」)
 紫苑は代償を紫苑自身が払うと思っていたのだが、実際に『渾沌の諸相』を宿し異形化するのは敬輔の肉体なのだから、代償を払うのは敬輔自身。
 そもそも、融合している鴻鈞道人にとって、グリモア猟兵の肉体は破滅の炎を招くための器に過ぎないのだから、どれだけ利用しても心は一切傷まない。
 余りの所業に紫苑が硬直している間に、至近距離に迫った鴻鈞道人が黒剣が振り下ろし、紫苑の左肩に叩き込んだ。
 ――ギチギチ……ガキッ!!
 黒剣は機械化した紫苑の左肩を真っ二つに割り、なおも左腕を切断せんとばかりに斬り下ろして行く。
「ぐ、ぐ……っ!!」
 呻き声を上げながら、紫苑は機を伺いつつ衝撃に耐え続る。
 もし生身であれば左肩から先を失っていたかもしれないが、機械化された身体は、左肩に半ばめり込んだ程度で黒剣を受け止め、紫苑の命を繋いでいた。
(「ほぅ……」)
 鴻鈞道人が感嘆と共に黒剣を引き抜こうとした、その刹那。

 ――ガッ!!

 紫苑が逃がさぬ、と万能医療義手の右手で鴻鈞道人の左手をつかんだ。
(「もとより、俺自身の肉体の一部を失うことになっても、敵に肉薄できればそれで構わなかったからな」)
 若干紫苑の予測手とは異なる状況になったが、至近距離から万能医療義手で捕縛できたのであれば、結果的に思惑通りに進んだと言える。
「患部のみ摘出してやろう……傷一つ残さずにな」
 底冷えする声とともに、紫苑は万能医療義手から特殊な医療ナノマシンを鴻鈞道人に注ぎ込む。
 それは黒鎧や籠手をすり抜け、皮膚の汗腺から敬輔の肉体に次々と侵入した。
(「無為な事を……!?」)
 ナノマシンの存在を知覚できないか、紫苑の無為な行為を笑い飛ばそうとした鴻鈞道人の身体が、突然強張った。
(「身体が、動かぬ!?」)
「あまり医者を舐めるなよ、病原体が」
 一時的に融合状態を切り離された鴻鈞道人の気配が、一気に強張った。
 紫苑の万能医療義手から注ぎ込まれたナノマシンは、紫苑が切除したい部位のみを切除できる。
 今、紫苑が切除を望む病巣は――『敬輔に融合している鴻鈞道人』そのものだ。
(「ぐ、ぐぐ……っ!!」)
 ナノマシンの働きで一時的に敬輔から切り離された鴻鈞道人は、己が融合していた肉体の中で身動き取れず藻掻く。
「あまり医者を舐めるなよ、病原体が。患者の肉体を傷つけず、病巣だけを取り除く術はいくらでもある」
 紫苑は藻掻いているであろう病巣に冷徹に言い放ちながら、拳を突き出す。

 ――ドカッ!!

 限界を超えた紫苑の拳は敬輔の肉体をすり抜け、鴻鈞道人の本体を直接打ち据えていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

鹿村・トーゴ
この兄さんとはほぼ面識無しだ
全身鎧、両手に剣、吸血鬼…
普段は堅実そうだが今は?
…情報収集より目の前対処した方が良しか

【野生の勘/激痛耐性/武器受け】敬輔初手は自分の致命傷を避ける為極力身躱すか受け流し【情報収集】で彼の代償部位探し
相手は格上の敵だ
そこが弱点に成り得るなら狙う
猫目雲霧を槍化し距離を測りつつ突き刺し【毒使い/傷口をえぐる】攻撃
+
手裏剣【念動力/投擲】敬輔の武器使用・視界を妨害
敵UC発動に警戒、被弾時も直撃は避けるよう足場一定させず動き【カウンター】もしくは発動前の隙等に【スライディング】駆使、視界から消え背後を取り至近距離からクナイにUC威力を乗せ撃ち【串刺し/暗殺】狙う

アドリブ可



●忍は冷静に渾沌をも観察し、見切る
 ――白黒赤がまだらに混ざり合う、異空間そのものの渾沌の中で。

 鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は、渾沌氏『鴻鈞道人』と融合したグリモア猟兵、館野・敬輔の姿をじっと見据えていた。
(「……実はこの兄さんとはほぼ面識なしだ」)
 トーゴはこれまで、敬輔の知人が予知した依頼を何度か受けてきているが、敬輔自身とは面識がほとんどない。
 グリモア猟兵の肉体が乗っ取られるような事態は捨て置けず駆け付けたのだが、敬輔自身の戦闘スタイルは、彼が依頼を受けたグリモア猟兵がしたためた報告書でしか把握できていない。
 ゆえに、トーゴが始めたのは……鴻鈞道人と融合している敬輔の容姿の観察。
 黒の全身鎧、異形化した右腕に握り締めている赤黒い剣身を持つ黒剣。
 肌が病的な程青白いのは、吸血鬼の証だろうか?
(「普段は堅実そうだが、今は……?」)
 トーゴは装備から鴻鈞道人の戦術を探ろうとし、しかしすぐにその努力を捨てた。
 暴力に等しい力を受けながら情報収集に時間を費やすよりは、目の前の事態に対処したほうが良いだろう。
 ……グリモア猟兵の姿をしているとはいえ、相手は格上の敵なのだから。

 代償として異形化した部位が弱点になり得るならば――積極的に狙う。
 そう、決めたトーゴは、手拭状の『猫目・雲霧』を広げながら槍のように細長く硬化させ、間合いを図りつつ鴻鈞道人に突き出した。
 槍は狙い違わず、先の猟兵との戦いで異形化した右腕の付け根……右肩に突き刺さり、毒を流し込む。
 さらにトーゴは視界を遮るよう念動力で手裏剣を複数投擲し、黒剣の使用を妨害。
 鴻鈞道人が敬輔のユーベルコードを使用する可能性も視野にいれながら、トーゴは鴻鈞道人の次の一手を注視するが、鴻鈞道人は絶好の反撃機会にも関わらず、槍を引き抜きながらその場に投げ捨てるのみ。
(「融合していても、敬輔の意識までは完全に掌握していない?」)
 あるいは、吸血鬼化そのものがユーベルコードによるものなのかもしれない。
 トーゴの目の前で、敬輔の左腕が異常に盛り上がり、異形化する。
 内側からの圧力に耐え兼ねたか、装着していた黒い籠手が破壊され、白い籠手のような物質が皮膚に融合した。
(「忍び、とやらか……ならば一手仕る」)
 左手の異形化が続く中、鴻鈞道人は黒剣の先端を地面を擦過させながら一気に振り上げる。
 我武者羅にも見えるその一太刀を、トーゴは軽くバックステップしながら回避するが、鴻鈞道人もまた空ぶった勢いで身を捻り、左腕を真横に振り抜いた。
 いつの間にか、左腕に融合した白い籠手から、鈍く輝く半月状の刃が生えている。
 右手の黒剣と左手の半月状の刃の双方から放たれた衝撃波は、トーゴを十字に引き裂かんと迫るが、その狙いは極めて甘い。
(「この兄さん、一応遠隔攻撃もできるのか」)
 観察しながらトーゴは易々と回避するが、衝撃波の狙いが甘いのは、使い慣れていない身体で不得手な遠隔攻撃を行ったからだろう。
 その後も鴻鈞道人は、黒剣と半月状の刃から衝撃波を連射しながらトーゴに迫るが、やはりその狙いは一定しない。
 トーゴは足場を一定させないよう衝撃波を避けながら常に動き回り、鴻鈞道人の狙いをさらに狂わせつつ接近する。
 そして、何度目かの衝撃波が放たれる直前の僅かな隙を見切り、大きく身体を倒しながらスライディングし、鴻鈞道人の背後に回り込んだ。
(「何処に消えた?」)
 鴻鈞道人がトーゴを探し、真紅の目を周囲に凝らす間に、トーゴは懐からクナイを取り出しながら立ち上がり。
「“視ずの鳥其の嘴は此の指す先に” ……穿て大鉄嘴」
 至近距離から超圧縮した空気で押し出すように、一気にクナイを突き出した。

 ――ドンッ!!

 超圧縮した空気が破裂し、クナイを押し出すとともに音と衝撃で鴻鈞道人を怯ませる。
(「後ろだったか! ……ぐっ!!」)
 爆音に近い圧縮空気の破裂音に驚き足を竦ませた鴻鈞道人の背後から、クナイがマントと黒鎧を貫きながら心臓に突き立った。
 マントと黒鎧越しに、ドクドクと血が流れ出す音が不自然な程大きく響き、足元に血がたまり始める。
(「ぐ……だがそれでいい」)
 心臓を穿たれたにもかかわらず、鴻鈞道人は背後のトーゴに見えぬ様、不気味な笑みを浮かべていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

白石・明日香
戦うしかないか・・・いいもんだなぁ!
残像で撹乱しながらダッシュで背後に回り込むように接近。異形化した部位を見極めて(腕かな?)その攻撃を見切って回避、躱せなければ武器受け、激痛耐性、オーラ防御で耐え部位破壊で切り捨てる。ダメージには構わず間合いまで接近して背後に回り込んだら怪力、2回攻撃、属性攻撃(炎)、鎧無視攻撃で叩き切る!(貫く即ちバックスタブ)
お前と戦えるのはめったにないからな、楽しくて仕方ねえ!



●戦闘狂と戦闘狂
 ――白黒赤のまだらが渦巻きながら漆黒と化し、光を閉ざす帳が降りる。

 闇に支配された「渾沌の地」の中央で、白石・明日香(十字卿の末裔・f00254)は金と蒼のヘテロクロミアの瞳で、渾沌氏『鴻鈞道人』と融合した館野・敬輔の姿を見据えていた。
 渾沌が渦巻いた空間は一面闇に支配されているのに、お互いの姿は何故かよく見えるため、戦闘に支障はなさそうだ。
 明日香が目にしている敬輔の両腕は、先の猟兵との戦いで異形化したのか、筋肉がはちきれんばかりに肥大化し、籠手も黒から白へと変化し皮膚と融合していた。
 変わり果てた知人の姿に、明日香も一瞬息を呑むが、それで闘争心が萎えることはない。
 むしろ、戦友と心行くまで死合える高揚感が、全身を満たしていた。
「戦うしかないか……いいもんだなぁ!!」
 明日香は舌なめずりひとつすると、赤と金のヘテロクロミアの瞳で異形化した両腕の動きを注視しつつ、残像を引きながら鴻鈞道人の背後に回り込むようにダッシュ。
 鴻鈞道人に間合いに踏み込まれる前に残像で撹乱し、背後を取るつもりだったのだが……。
『そう簡単に背後が取れると思ったら、大間違いだ』
 鴻鈞道人の思念が明日香の脳裏に響いた瞬間、明日香の脳裏にけたたましく警鐘が鳴り響く。
 反射的に残像を引きながらその場を飛び退いた直後、身を翻した鴻鈞道人が黒剣を大きく弧を描くように振りかぶり、明日香の足場と間合いを奪うように地面を叩き割った。
「チッ、バックスタブはお見通しかよ!」
 二、三歩後退しながら毒づく明日香に、鴻鈞道人はさも当然とばかりに思念で明日香に伝えて来た。
『この者の知識が、お前の戦術を伝えてくれる。背後を取るのは予想のうちだ』
(「融合しているからか、敬輔の知識を使えるのかよ! ……ったく面倒な相手だぜ!!」)
 チッ、と明日香が舌打ちしたその一瞬で、鴻鈞道人は異形化した両腕で力まかせに黒剣を跳ね上げるように斬り上げ、明日香の身体を二枚下ろしにしようとする。
 明日香は咄嗟に力まかせに全てを食らうクルースニクを両手で握り、怪力で黒剣を受け止めるが、クルースニクの刀身は下から上へじわじわと押し戻されていった。
 それでも、明日香の顔から不敵な笑みが消えることはなく。
「お前と戦えるのはめったにないからな、楽しくてしかたねぇ!!」
 無理やりクルースニクで黒剣を受け流し、必殺の構えを取る。
「虚無に還るがいい! ――緋燕十字斬!!」
 明日香はクルースニクに炎を纏わせ、至近距離から一気に振り抜いた。
 炎を纏ったクルースニクの初撃は、あらゆる魔法や精神的な護りを破る斬撃。
 もし護りを破れば、あらゆる物理防御を貫く致命の斬撃が襲う。
 あらゆる防護を無にし致命傷を与える二撃は、十字の炎を鴻鈞道人の胴に穿ちながら防護を斬り裂き、肉体を虚無に還そうとする……はずだった。
 はずだったのだが。
『聞いてなかったか? お前の戦術はこのものの知識が伝えてくれている』
 鴻鈞道人は半ば呆れながら、筋肉が肥大化した両腕で握られた黒剣を無造作に振るい、振り抜かれようとしているクルースニクの柄を強く叩く。
「な……っ!?」
 その強烈な衝撃に、クルースニクごと明日香の腕がもがれそうになるが、明日香は全身に力を入れ、かろうじて耐え抜いた。
 だが、緋燕十字斬を破られ、出だしを潰されたことに、明日香は困惑を隠せない。
 まるで初撃の軌道を完全に見切っていたとしか思えないのだが……。
(「そういえば……異形化した部位はどこだ?」)
 両腕は別の猟兵と交戦した結果、異形化しているのを確認している。
 ならば、明日香との剣戟の最中に別の部位が異形化している可能性が高いのだが、未だその部位が何処かは掴めていない。
 痺れが残る腕を振りながら回復を待っていると、ふと敬輔の顔が目に入る。
(「……ん?」)
 その顔に、なぜか若干の違和感を覚えた明日香は、改めて敬輔の顔を凝視。
 不気味な笑みを湛えた口元から鼻、そして両目に視線を移し……ぎょっとした。

 ――いつの間にか、敬輔の左目が真紅から白に変貌していた。

 おそらく、真紅の左目を代償に捧げ、白く異形化させることで、視力を大幅に強化し明日香のクルースニクの挙動を見切り、緋燕十字斬の初動を潰したのだろう。
「チッ! だがそうでなくちゃなあ!!」
 明日香は軽く舌打ちしながらクルースニクを白く変じた鴻鈞道人の左目に向けて振るい、異形化した左目を潰そうとするが、これもまた見切られていたかのように紙一重で回避され、至近距離から黒剣を袈裟に斬り下ろされる。
「お前と戦えるのはめったにないからな、楽しくて仕方ねえ!」
 身体を真っ二つにせん勢いで振り下ろされた黒剣をクルースニクで受け止めながら、明日香はさらなる闘争が続く予感に身を震わせていた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

パラス・アテナ
胸糞悪いね鴻鈞道人
ようやく自分の道を歩き出した敬輔を
こんなところで死なせたりしないさ
だが生憎アタシは鴻鈞道人だけを攻撃するような
器用な真似はできないんでね
多少の怪我は覚悟おし

鴻鈞道人の攻撃は見切りと第六感で回避
喰らえば激痛耐性と継戦能力で戦場に立ち続け
鎧無視攻撃でマヒ攻撃を乗せていく
鴻鈞道人のUCで攻撃力は上がるだろうが
何らかの代償を受けているだろう
動きが鈍りできた隙に指定UC
2回攻撃とマヒ攻撃を乗せて連続攻撃を叩き込む

アンタは家族を手に掛ける修羅場を乗り越えたんだ
鴻鈞道人ごときに呑まれるような玉じゃないのは
アタシがよく知ってるよ
選んだ相手が悪かったね鴻鈞道人
敬輔は返してもらうよ
骸の海へお還り



●双銃の矜持は悪意をねじ伏せ
 ――周囲の環境が、一寸先も見通せない漆黒の帳に閉ざされた荒野に変化する。

 その荒野の意味を悟り、パラス・アテナ(都市防衛の死神・f10709)は小さく舌打ちした。
(「胸糞悪いね、鴻鈞道人」)
 チッ、と舌打ちするパラスの前に立ちはだかるのは、彼女をこの地に誘ったグリモア猟兵、館野・敬輔と融合した渾沌氏『鴻鈞道人』。
『この者の記憶から、お前と縁深い光景を選んだだけだ』
「ようやく自分の道を歩き出した敬輔を、こんなところで死なせたりはしないさ」
 パラスは静かな怒りを言の葉に籠め、鴻鈞道人に叩きつける。
 鴻鈞道人だけを攻撃するような器用な真似はできないが、手にしたEK-I357N6『ニケ』とIGSーP221A5『アイギス』の名を持つ二丁の特注拳銃で牽制し、撃ち抜いて弱体化させることはできる。
 だから……。
「敬輔、多少の怪我は覚悟おし」
 融合されたグリモア猟兵に謝罪の言葉を言い捨てながら、パラスは二丁の拳銃を構え、鴻鈞道人の出方を伺った。
 ……おそらく、身体の何処かを異形化させてから斬りこんでくる。
 そう考えたパラスの予測は、易々と裏切られた。
『私の渾沌は、異形化させるだけではない』
 既に異形化している両腕と左目以外の部位はそのままに、真正面から黒剣を手に斬りこむ鴻鈞道人。
 パラスも己が第六感に忠実に、初撃を見切り身を捻って躱そうとするが。
 ――斬ッ!!
 回避より先にパラスの脇腹が大きく斬り裂かれ、血しぶきが舞った。
 激痛に苛まれながらもパラスが脇腹に目をやると、すれ違いざまに黒剣を振り抜いた鴻鈞道人の姿が目に入った。
 その背中には先の猟兵が穿った1本のクナイが突き立っており、絶えず血が流れ落ちている。
 鴻鈞道人は、左目の異形化により強化された視力と、敵より多く血を流すことで攻撃力を上げる『渾沌の諸相』の力でパラスが身を捻って回避しようとする一瞬をも見切り、一挙に踏み込んで脇腹を薙ぎ払っていた。
(「チッ、動きが早すぎる」)
 脇腹に走る激痛をぐっと歯を食いしばり耐えながら、パラスは至近距離からニケとアイギスを交互に連射。
 ニケで鴻鈞道人の動きを牽制し、アイギスの電磁弾で四肢を撃ち抜きながら、少しずつ鴻鈞道人の肉体を麻痺させ、少しずつ動きを鈍らせようとする。
 構わず黒剣を逆袈裟に振り上げる鴻鈞道人の両腕はさらに異形化が進み、筋肉がはちきれんばかりの腕に白い籠手がめり込むように融合していた。
 顔に張り付いた不気味な笑いは、闘争心に支配され続けているかのように消えない。
 だが、両の瞳が不自然な程に血走っているのが気になった。
(「『渾沌の諸相』で攻撃力は上がっているだろうが、何らかの代償を受けているはずだろう」)
 ならば、その代償とは何か?
 見たところ、鴻鈞道人が代償らしき状態異常を受けている気配は、一切ない。
 背中から滴り落ちている血は、他の猟兵にクナイで穿たれた心臓から流れ落ちているものなので、流血の代償でもない。
 毒や呪縛も受けている形跡がないのを見て、パラスはある可能性に思い至る。
(「いや違うね。これは鴻鈞道人じゃない……敬輔自身が代償を受けている」)
 敬輔の吸血鬼化は、代償として激しい吸血衝動を伴うことをパラスは知っている。
 今は鴻鈞道人と融合した際に無理やりヴァンパイアに変身させられ、維持させられている状態。
 問題は、鴻鈞道人と融合している状態で吸血衝動に襲われるか否かなのだが、紅白の瞳を血走らせながら左手で喉を押さえたところを見ると、衝動そのものには襲われているのだろう。
『成程、この肉体が血を欲しているのか』
 抗えぬ衝動で制御の利かぬ肉体の挙動を冷静に分析しながらも、鴻鈞道人は呼吸を整え、両手で黒剣を握る。
 その間にパラスは黒剣の間合いから離れ、ニケとアイギスの銃口を鴻鈞道人に向けた。
「選んだ相手が悪かったね鴻鈞道人。敬輔は返してもらうよ」

 ――骸の海へお帰り。

 これでも銃の扱いは得意な方でね、との呟きを覆い隠すように、漆黒の帳が降りた空間に二発の銃声が響き渡る。
『ぐぐ……っ!!』
 確実に鴻鈞道人の両肩に命中した2発の弾は、電撃で肉体を麻痺させるとともに、異形化した左肩の肉を大きく抉り取っていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

西条・朱莉
連携・アド、御自由に
…うわぁ
復讐を終えた敬輔さんが、まさか渾沌氏に取り込まれるとはねぇ
まあ、敬輔さんの体を悪い事する為に乗っ取っちゃった
鴻鈞道人さんは許せない!
悪い虫は早くぺっぺ! と敬輔さんに吐き出させないとね♪
先制対策
相手は吸血鬼化した敬輔さん?
じゃあ鴻鈞道人さんが『渾沌の諸相』化させやすい部位は、まあ、左肩から首の付け根にかけてついた噛み傷じゃないかな?
と注意を払いつつ敬輔さんの動きを見切って肉薄
それから黒剣の中の『少女』達に笑いかけて
ねぇ、『皆』はどう思う?
と、呟き敬輔さんの腹部にUCを目一杯の怪力と浄化の力を込めて叩き込むよ
此で…敬輔さんを乗っ取った鴻鈞道人の魂を少しでもこじ開ける!



●少女たちは青年の身を案じつつ
 ――周囲の渾沌が揺らぎ、岩盤をくり抜き造られた無骨な地下室へと変貌する。

「……うわぁ」
 西条・朱莉(天真爛漫お気楽ヒーロー・f16556)は、紋章製造役の『第五の貴族』を討ちに行った際に訪れた地下室そのものと化した「渾沌の地」の風景と、両腕を異形化させ左目を白に変化させた館野・敬輔……に融合した渾沌氏『鴻鈞道人』を交互に見やり、思わず感嘆とも呆れともつかぬ声を漏らしていた。
(「復讐を終えた敬輔さんが、まさか渾沌氏に取り込まれるとはねぇ」)
 かつての復讐者が骸の海を自称する輩に取り込まれるとは何たる皮肉、と思うところはあれど、今やれることはひとつだと思い直した朱莉は、いつものざっくばらんな口調で、鴻鈞道人を挑発。
「まあ、敬輔さんの体を悪い事する為に乗っ取っちゃった鴻鈞道人さんは許せない!」
『乗っ取っちゃった、とはずいぶん砕けた言い方をしてくれる』
「とーぜん! 悪い虫は早くぺっぺ! と敬輔さんに吐き出させないとね♪」
 ざっくばらんな口調の裏に、飛び切りの怒りをこめながら。
 朱莉はブレイブグローブを嵌めた手を握りこみ、鴻鈞道人と向き合った。

『さて、私は悪い虫だろうか……どれ、ひとつ試してみよう』
 鴻鈞道人の涼やかな声とともに、敬輔の肉体の左肩から首の付け根の肉が異形化し、僅かに盛り上がる。
 そこは、敬輔の宿敵であった吸血鬼が、彼を吸血鬼に堕とすために噛みついた痕が今でも残っていた。
 仇と言える宿敵を全て討ったことで、痕に宿っていた呪詛は消滅したはずだが……。
「――――!!」
 噛み傷が異形化した瞬間、鴻鈞道人――否、敬輔の瞳から意志の光が失われた。
 おそらく、魅了の呪詛が復活したのだろうか。
『ふむ、ここがこの者の吸血鬼化の根源だったか』
 ならば、と鴻鈞道人は『渾沌の諸相』をさらに吸血鬼マリーの噛み傷に流し込み、異形化を進める。
『渾沌の諸相』は失われたはずの呪詛を蘇らせ、敬輔をさらに支配しようとすると同時に、既に異形化していた敬輔の両腕を白く硬化させ、左目の虹彩を完全に純白に染め上げていった。
 その変貌を見て、朱莉は思わず息を呑んだ。
(「左肩から首の付け根にかけてついた噛み傷が『渾沌の諸相』化させやすい部位と思ってたけど……ドンピシャとはねぇ」)
 それでも新たに異形化した箇所に注意を払いつつ、鴻鈞道人の動きを見切りながら朱莉が肉薄しようとした、その時。
 ――シュシュシュシュシュ!!
 ――ドドドドド!!
 異形化し白化した噛み傷痕から、突然無数の針が飛び出した。
「わあっ!?」
 至近距離から白針の雨を浴びせかけられ足を止めながらも、朱莉は笑顔を崩さず、鴻鈞道人が手にする黒剣に視線を向ける。
「ねぇねぇ、皆♪」
 朱莉の声に反応したのか、鴻鈞道人が手にする黒剣がわずかに明滅。
 おそらく、黒剣に封じられているオブリビオンの少女の魂たちが、かつて絆を結んだ朱莉の呼び声に反応しているのだろう。
「『皆』はどう思う?」
 何らかの助力を期待して、問いかけを呟きながら朱莉が鴻鈞道人に拳を突き出そうとした、その時。

 ――お姉ちゃん、お兄ちゃんを助けて。

 朱莉の耳に届いたのは、『少女』たちの悲痛な叫びだった。

 ――お兄ちゃんの声、全然聞こえない。
 ――急がないと、二度と戻らなくなっちゃう。
 ――完全に鴻鈞道人とやらに取り込まれてしまうわよ。

「え!?」
 驚いた朱莉の拳が、一瞬止まった。
 よく見れば、敬輔の肉体は両腕と左目、そして噛み傷痕が異形化していた。
 しかも、異形化した箇所は例外なく白に染め上げられている。
 もし、全身が異形化し、黒や蒼が全て白に染め上げられるようなことがあれば、その時は……。
『人に味方するオブリビオンの魂どもが、余計なことを吹き込むな』
 鴻鈞道人の一喝と共に、黒剣が蒼とも漆黒ともつかぬ色の『骸の海』に包まれ、激しく揺らいだ。

 ――きゃあああああ!!
 ――お姉ちゃん、助けて……助けて!!
 ――早く、鴻鈞道人とやらを追い出して!! お願い!!

 骸の海に意志疎通を遮断され、それっきり少女たちの声は途絶える。
 朱莉は少女たちの叫びに一瞬声を失ったが、両手で頬を叩いて気合を入れ直し、改めて拳を構えた。
「これで……敬輔さんを乗っ取った鴻鈞道人の魂を、少しでもこじ開けられれば!」
 朱莉は大きく身を屈めて鴻鈞道人の視界から完全に姿を消しつつ、目いっぱいの怪力と浄化の想いを籠めた拳を全力で鴻鈞道人の腹部に叩き込んだ。

 ――グシャアアアアアア!!

 拳を叩き込まれた腹と黒鎧が、朱莉の単純で重い拳の一撃で破壊され、鮮血が床にまき散らされる。
『グハッ……だがこの身体、ここまで私と相性が良いとはな!』
 鴻鈞道人は腹部に穿たれた拳から流し込まれた浄化の気に悶絶しながらも、活性化する呪詛を触媒に肉体に深く馴染もうとしている『渾沌の諸相』に狂笑を隠し切れずにいた。

成功 🔵​🔵​🔴​

真宮・響
娘の奏(f03210)と連携

珍しく瞬が先に行ってて、と言っていたが、心配ないか。よりにもよって敬輔に渾沌が融合したか・・・あの状態の敬輔は本気でやらないとこっちがやられる。痛いのは我慢してくれ!!

先制攻撃は出来る限りの【戦闘知識】を動員して動きを【見切り】、【オーラ防御】【残像】で凌ぐ。

凌げたら【怪力】【グラップル】で全力で蹴っ飛ばした上で【追撃】でサイキックブラスト。上手く動きを止めれたら【ダッシュ】で一気に距離を詰め、【気合い】を入れた【グラップル】で渾身の正拳突きからの【頭突き】!!

あの状態の敬輔はこうでもしないと止まらないと思うからねえ。手当ては後でするよ!!


真宮・奏
響お母さん(f00434)と参加

珍しく瞬兄さんが二人で先に行ってるように言ってましたが・・・気にしてる暇が無いです!!目の前に真紅の瞳をした敬輔さんがいますし!!

正直相手し切れる自信がないですが!!敬輔さんを助けないと!!

先制攻撃してくる敬輔さんの攻撃を【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【受け流し】【ジャストガード】で受けます・・・重いです!!【結界術】を展開して防御を補います!!

転びそうになっても踏ん張りますよ!!凌ぎきったら【怪力】【シールドバッシュ】で押し返して、【グラップル】で膝蹴りを入れて眩耀の一撃で敬輔さんの中にいる渾沌だけを攻撃しますよ!!

さあ、敬輔さんを返しなさい!!



●母子は吸血鬼化した猟兵を案じて
 ――渾沌が揺らぎ、周囲の環境が変化する。

 真宮・響(赫灼の炎・f00434)と真宮・奏(絢爛の星・f03210)の母子が戦場に姿を見せたのに反応し、岩をくり抜いた地下室の様相を呈していた戦場に再び漆黒の帳が降りた。
 闇を見通すふたりの視線の先にいるのは、両腕と左目、そして左肩の付け根を白く異形化させた、渾沌氏『鴻鈞道人』と融合した館野・敬輔。
「よりにもよって敬輔に渾沌が融合したか……」
「しかも目の前の敬輔さんの目は……真紅と……あれ、白?」
 左目が白に変色しているのに気づき、思わず首を傾げる奏を見て、顔を顰めていた響も左目に視線を向ける。
 変色した左目は、虹彩らしきものが一切見当たらない――異形そのもの。
 人ならざる瞳を目の当たりにした響の記憶が、唐突に蘇った。
(「先に助けに行った別のグリモア猟兵も、確か左目だけ白に染まっていた……」)
 そして、予兆で目にした鴻鈞道人の目は、左目しかなかったはず。
 偶然の一致とは思えない状況に、響は思わず息を呑んだ。
「母さん?」
「奏! あんまり時間をかけていられる状況じゃなさそうだ!!」
「え、母さんどういうことですか?」
「思い出しな。渾沌は……左眼を得て具現化しているんだ!!」
「あっ!!」
 響の指摘で奏も左目が白に変色した意味を悟り、小さな悲鳴を上げた。
 それを耳ざとく聞き逃さなかった鴻鈞道人は「然り」と肯定しながら、白く異形化した左目を指差した。
『私はこの左目を得たことで具現化し、ヒトの似姿を取れるようになった』
 ――そして、具現化したことで、グリモア猟兵に干渉できるようにも。
『そして今や『渾沌の諸相』は、この身体に馴染み始めている』
 首の付け根につけられた吸血鬼の噛み傷痕を指差しながら、さも嬉しそうに嘯く鴻鈞道人。
 吸血鬼の噛み傷痕が異形化したことで、『渾沌の諸相』が肉体に馴染み始めてしまったのか。
 あるいは……敬輔にとって過去と未来、双方の遺物足るヴァンパイアの肉体と『渾沌の諸相』の相性が良すぎたのか。
 いずれにせよ、状況は良くなるどころか、むしろ悪くなっている気がしてならない。
 だから響は唇を強く噛みしめながら、鴻鈞道人を力いっぱい睨みつけた。
 一方、奏は顔面蒼白のまま、焦っていた。
「しょ、正直相手し切れる自信がないです……!!」
(「そもそも、兄さんが私と母さんに先に行っているように言ってましたけど……!」)
 普段なら後衛でサポートに入る義兄は、今この場にいない。
 珍しく本人がそう希望したから、あえて別行動を取っているのだが……。
「なあに、心配いらないさ」
 何か思うところがあっての行動だろう、と察した響は、それより、と鴻鈞道人を指し。
「あの状態の敬輔は本気でやらないとこっちがやられる。……奏、わかるね?」
「は、はい……」
 母の言に、奏も同意せざるを得ない。
 かつて復讐の旅を見届け、ヴァンパイア化した敬輔の力を何度も見て来たからこそ、一切の手は抜けないし、斃しても止む無しでかかるしかないのだから。
(「敬輔、悪いが痛いのは我慢してくれ!!」)
 心の奥底でそっと敬輔に詫びながら、響は拳を構え。
 奏もまた、愛用のエレメンタル・シールドを構えて、母の側に並び立った。

『いずれこの身体も土へと還るが、その前にお前たちが絶望の土に還る番だ』
 鴻鈞道人がそう囁きながら黒剣片手に走り出すと同時に、先の猟兵に深く穿たれた腹が白く細い棘に覆われる。
(「異形化したところは軒並み白くなっている、か……」)
 先の猟兵達との戦いで異形化した両腕や噛み傷も、左目同様白く染まっているのを見て、響の歴戦の猟兵の勘が激しく警鐘を鳴らしていた。
 ――確か、鴻鈞道人の容姿も、白一色だったはずだから。
 根拠は不明だがあまり時間はかけていられないと判断した響は、これまで共闘して得た記憶と知識を総動員し、鴻鈞道人の初撃の軌道を見切りながら赤のオーラと残像を囮に回避しようとするが。
『言ったはずだ。『渾沌の諸相』はこの身体に馴染み始めていると』
 響が残像を生み出すより早く、黒剣を大きく振りかぶりながら鴻鈞道人が目前に迫っていた。
 流れる血に嗤う渾沌の諸相は、無傷の敵と相対した時に最大の効果を発揮する。
 鴻鈞道人は背中や腹から血を流しているが、交代したばかりの響は当然無傷。
 故に、無造作に振りかぶられた黒剣は、的確に響の頭をかち割る軌道を描き……。
(「まずい……間に合わない!!」)
 回避が間に合わないと悟り、目を瞑った響の頭上から、黒剣が確かな殺意を以て振り下ろされ……。
「母さん!!」
 悲鳴混じりの奏の声が耳に届くと同時に、響の前に立ちはだかる人の気配が現れ。
 ――ガキッ!!
 金属と金属がけたたましい音を立てながら、激突した。
 響がそっと目を開けてみると、響の頭をかち割らんとした黒剣は、割り込んだ奏の持つエレメンタル・シールドが確りと受け止めていた。
『この一撃を受け止めるか。だがまだまだだ』
「くっ……!!」
 鴻鈞道人は受け止められてもお構いなく、黒剣をエレメンタル・シールドに押し込み、かち割ろうとする。
 奏もまた、エレメンタル・シールドで黒剣を押し戻そうと、必死にこらえ続けるが、押し勝ったのは黒剣のほうだった。
 圧倒的な膂力を以て押し込まれた黒剣は、エレメンタル・シールドごと奏の膝を少しずつ折り、地につけようとする。
「お、重いです……!!」
 防御に特化した姿勢で受け止めたにも関わらず、少しずつ折られていく膝を見て、奏は翠の結界を展開し、補助的に己を支えさせる。
 それでもなお、鴻鈞道人は少しずつエレメンタル・シールドの上から奏を押さえつけ、膝を折らそうとするが、奏は己の目的を口にしながら必死に倒れぬ様姿勢を保ち続けた。
「敬輔さんを、助けないと……!!」
『そうだ、足掻け、藻掻け。そして絶望し焼かれるがいい』
「諦めません! さあ、敬輔さんを返しなさい!!」
 鴻鈞道人の心無い煽りで、奏の心に火がついたのか。
 奏は全身に力を籠めてエレメンタル・シールドを押し込み、少しずつ黒剣を押し戻し始める。
『む?』
 奏の気迫に鴻鈞道人がほんの僅かに気圧されたか、黒剣に籠められた力が僅かに緩む。
 その一瞬を見逃さなかった奏は、一気に黒剣を押し返し、無理やりはね飛ばした。
『ぐぐぅっ……!!』
 鴻鈞道人は黒剣を手にしたままよろめき、後ずさる。
 攻守が逆転したと察した奏は、すかさず鴻鈞道人との間を詰め、グラップルで膝蹴り。
 奏の戦意に反応し、鴻鈞道人の腹の表面にびっしりと白い棘が並ぶが、奏は構わず白い棘の上から鴻鈞道人の腹に全力の膝蹴りを叩き込んだ。
 腹に並んだ白い棘は奏の膝に次々と刺さるが、腹にめり込んだ膝は鴻鈞道人の意識を一瞬だけ飛ばしていた。
(「痛いですけど、そんなことは言ってられません……!」)
 膝の痛みを歯を食いしばり耐えながら、奏は懐の刀身が瑠璃色をした匕首――瑠璃の短刀を抜く。
「この心が、貴方に届きますように……!」
 刀身に純真な願いを籠め、ただひたすら真っ直ぐに瑠璃の短刀を突き出した。
 それは敬輔の肉体をするりと通り抜け、裡なる鴻鈞道人の魂のみを貫く。
『ぐ、ぐうううぅぅぅっ!!』
 己が存在のみを的確に貫かれた鴻鈞道人は、奏を突き飛ばしながらよろよろと後退。
「母さん!」
「ああ! 任せておきな!」
 奏と入れ替わるように響がダッシュし、タックルして鴻鈞道人を吹き飛ばすと同時に両掌から高圧電流を放つ。
 流れるように放たれた高圧電流は、タックルで体制を崩した鴻鈞道人の全身を強く打ち据え、一時的に電気ショックで麻痺させていた。
『あぐぁ、ああああああ!!』
「敬輔、手当は後でするからな!!」
 脳内に響く悲鳴は一切意に介さず、響は麻痺して身動きが取れない鴻鈞道人の両肩をガッと掴み、至近距離から睨みつける。
『お前、何をする気……』
「案外ね、こういうのが効くんだよ!!」
 響は不敵な笑みを浮かべながら、大きく頭を振りかぶった。

 ――ゴツッ!!

 響の全身全霊を籠めた頭突きが、鴻鈞道人の額を直撃。
(「以前、敬輔の妹を取り戻した時は、これが結構効いたけど……」)
 額から流れ落ちる血を拭いながら、響は鴻鈞道人の様子を伺うが、鴻鈞道人も痛がっているだけで何ら感銘を受けたようには見えない。
『想いを伝えるなら、このやり方も効果的だったのかもしれないが……私には効かん』
 額の血を拭いながらなお不敵な笑みを浮かべる鴻鈞道人は、無駄だと響をせせら笑う。
『この者の意識と魂は、私が奥深くに封じている。私を倒さぬ限り呼び戻せない』
「だったら何度でも繰り返して呼び覚ますだけだ!!」
 そのせせら笑いを無にしてやるとばかりに、響は再び鴻鈞道人の肩を掴み、頭突きせんと大きく頭を振りかぶっていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

神城・瞬
・・・・敬輔さん。君まで渾沌に融合されてしまったか。君がその姿で立ちはだかるなら、僕も覚悟を決めよう。

まずは先制攻撃を凌がないと・・・【高速詠唱】で【結界術】を展開して攻撃を防いだ上で【オーラ防御】【第六感】を使用。

凌いだら、血統覚醒を使用。身体に秘められたバンパイアの力を解放する。敬輔さんに向けて【高速詠唱】【全力魔法】を使って【マヒ攻撃】【武器落
とし】を併せた【結界術】を展開。【追撃】で【魔力溜め】を併せた【浄化】【破魔】を込めた想いを込めた【電撃】を撃つ!!

敬輔さん、渾沌なんかに君を奪わせはしない!!必ず君を取り戻す!!



●吸血鬼を救うために、吸血鬼の力を解放して
 ――渾沌が渦を巻き、周囲の風景が変化する。

 何処とも知れぬ荒れ果てた村に変化した周囲の風景と、半ば異形化が進んだ館野・敬輔の肉体を交互に見やりながら、神城・瞬(清光の月・f06558)は沈痛な表情を浮かべていた。
 普段、家族3人で連携しオブリビオンを討つことが多い瞬だが、今回は思うところがあり、義母と義妹を先に行かせている。
 必然的に、渾沌氏『鴻鈞道人』と融合した敬輔とは1対1で向かい合うことになるが、いざ向かい合ってみると、余りの痛々しさに目を逸らしそうになった。
「……敬輔さん。君まで渾沌に融合されてしまったか」
 今の敬輔の姿は、敵討ち以外では決して発動することのなかった吸血鬼化の力を、無理やり行使させられ、両腕と腹、そして左目と首の噛み傷痕を代償に捧げられ、異形化した姿。
 もし、敬輔の意識がほんの僅かでも残っていたら、彼はこの現状をどう思うだろうか。
 だが、肉体の持ち主の意識を厳重に封じ込め顕現している鴻鈞道人の紅白のヘテロクロミアは、瞬を親友としてではなく、ただの獲物としてしか認識していないかのように冷たく見えた。
『諦めよ。この者を取り戻すには絶対的に力が足りぬ』
「いえ……君がその姿で立ちはだかるなら」
 瞬は静かに首を振り、胸中に秘めた決意をそっと口に出す。

 ――僕も覚悟を決めよう。

 だが、そのためには、異形化した鴻鈞道人の初撃を凌がねばならない。
 瞬は六花の杖を構え、黒剣を手に走り出した鴻鈞道人の動きをじっと観察した。
『渾沌よ、彼の者を喰らえ、貫け……焼き尽くせ』
「結界よ!!」
 鴻鈞道人が瞬の頭上から黒剣を振り下ろすのを見て、瞬は極限まで圧縮した高速詠唱で眼前に結界を張った上で、銀のオーラを結界に覆いかぶせるように展開。
 さらに己が勘を総動員し、少しでも黒剣の初撃の軌道を逸らそうとするが。
『魔術師風情が、無駄な足掻きを!』
 突然、鴻鈞道人の首筋の噛み傷痕が蠢き、無数の白針が瞬目がけて撃ち出された。
 ――ドドドドドドド!!
「ぐぅっ……!!」
 思わぬ奇襲を受けた瞬が無数の白針を必死に結界で弾いている間に、赤黒く染まった黒剣がとうとう結界を叩き割った。
 そのまま黒剣は右肩口に振り下ろされ、瞬の右腕を斬り落とそうとするが、瞬は無意識に銀のオーラを右肩に集中させ、その上から結界を重ねるように展開していた。
 結果、銀のオーラと結界は、黒剣が肩に触れる寸前で受け止めていた。
 間一髪で右腕の切断を免れた瞬の背に、冷汗が伝い落ちる。
『さあ、破滅の炎に呑まれるか、それとも鮮血の紅に沈むか……選ぶがいい』
 鴻鈞道人はオーラと結界から黒剣を引き抜き、その息はどこか荒い。
 それは、鴻鈞道人が少しずつ猟兵達に追いつめられている証左か。
 それとも、敬輔の肉体が……吸血衝動に苛まれて血を欲しているのか。
(「母さんと義妹を先に行かせたのは正解でした。ここから先の戦いは見せたくない」)
 瞬は軽く目を閉じ、そして一気に見開いた。

 ――ゴオオオオオオウッ!!

 瞬の両の目が一瞬にして真紅に染まり、爆発的に魔力が膨れ上がる。
 それは、瞬が己が意思でルーツたるヴァンパイアの姿を解放した、瞬間だった。

『これはこれは……ほう、この者と同族か』
 突如膨れ上がった膨大な魔力に感嘆しつつ、鴻鈞道人はなおも黒剣片手に瞬に迫る。
 ヴァンパイアに変身した瞬は、怒りを秘めた真紅の瞳と六花の杖を鴻鈞道人に向けながら、思いのたけを叫ぶようにぶつけた。
「敬輔さん、渾沌なんかに君を奪わせはしない!!」
 瞬は呪を高速かつ濃密に圧縮し、麻痺毒と目潰しの術式を練り込んだ結界を高速展開し、構わず結界に突っ込んだ鴻鈞道人を絡め取る。
 結界に触れた鴻鈞道人は、雷に打たれたように動きを止めていた。
『ぐっ……想いはいずれ土に還る、儚いものに過ぎないだろう』
「鴻鈞道人、必ず敬輔さんをあなたの手から取り戻す!! 去れ!!」
 麻痺し動けぬ鴻鈞道人に、瞬は六花の杖の先端を向け、電撃を発射。
 浄化と破魔の術式が練りこまれた青白い電撃は、至近距離から鴻鈞道人の全身を何度も何度も強く打ち据え、『渾沌の諸相』を削り取り、復活した呪詛を抑制する。
『ぐああああああああ!! この者は返さぬ、渡さぬ!!』
 電撃に打ち据えられ、己が存在を、力を削られながらも、鴻鈞道人は顔を歪め、瞬に怨嗟の声を叩きつける。
「オレの大切な人を返してもらうまで、止めない!!」
 瞬もまた、鴻鈞道人の力をさらに削り取る為に、電撃に魔力を注ぎ込み続けていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

シン・コーエン
こういう時に救い出すのは戦友なら当然。
ではいくぞ鴻鈞道人。舐めた真似をしたツケは支払ってもらう。
と、右手に灼星剣、左手に村正を持つ。

相手は強敵。
怒りがこみ上げ真紅のオーラ防御を纏いつつも頭は冷めて。

相手の先制攻撃は第六感・瞬間思考力で予測し、軌道を見切ってジャンプ・ダッシュで回避。
威力は半端なものではないだろうから余波でダメージを受けない様、大き目の動きで対応する。

そのまま素早い移動を行い、灼星剣と村正による2回攻撃の斬撃波を放ち、更に多数の残像を生み出して幻惑しつつ接近。
まあ、これくらいで引っ掛かるタマではないだろうよ。

相手が反撃で本気の一撃を加えようとしてきた時に、念動力・範囲攻撃・捕縛で一瞬だけで良いので鴻鈞道人の動きを止める。

両足裏から衝撃波を噴出して加速しつつダッシュ(早業で灼星剣を両手で持ちかえ)。
一気に接近し、UCを籠めた灼星剣の2回攻撃で鴻鈞道人の魂のみを斬り上げ、更に斬り下げる!

俺が斬るのはお前のみだ!


文月・統哉
敬輔も薄々分かってはいたのだろうな
俺達なら大丈夫と見込んでいたに違いない
ならばやる事は一つだ
アイツがこんな所で簡単に死ぬものか
全力で戦って、絶対に助け出す!

仲間と連携して戦う
【早業】で素早く状況確認
【視力・読心術・第六感】も駆使して
代償による異形化の特性を【情報収集】
先制の一撃を【見切り】【ダッシュ】で回避する
どうしても完全回避が無理なら宵で【武器受け】し
衝撃を【オーラ防御】と【激痛耐性】で凌ぐ

先制攻撃を凌いだら着ぐるみの空発動!
大事な友を絶対に助けるという
強い意志の力に比例して戦闘力増強
【空中戦】の素早い動きで撹乱し
【体勢を崩す】隙を狙い宵で斬る

敬輔が戻ったら、おかえりの言葉を

※アドリブ歓迎



●戦友を救うのに言葉は必要か
 ――周囲の渾沌が激しく渦巻き、黒十字の影が乱立する白光溢れる空間へと変化する。

 それは、シン・コーエン(灼閃・f13886)がダークセイヴァーの『常闇の燎原』に向かう過程でちらりと見かけた、異端の神々の領域そのものの風景。
 だが、渾沌氏『鴻鈞道人』に対し怒りを滾らせているシンは、その光景に何の感銘も覚えない。
 何故なら今、シンの目の前にいる渾沌氏『鴻鈞道人』は、シンをこの地に誘った戦友でもあり、グリモア猟兵でもある館野・敬輔の姿を取っているのだから。
(「こういう時に救い出すのは、戦友として当然」)
 怒りが具現化したかのように鮮烈なあかを放つ真紅のオーラを纏いながら、シンは身体の随所が異形化し、黒鎧が悉く破壊された敬輔の姿を目に焼き付ける。
 一方、異端の神々の領域に実際に足を踏み入れた文月・統哉(着ぐるみ探偵・f08510)は、静かに目を閉じ物思いに馳せていた。
(「あの時から……敬輔も薄々分かってはいたのだろうな」)
 それはおそらく、鴻鈞道人が出現し、丸盾のグリモアが予知した時からだろう。
 グリモアベースであえて口にしなかったのは、実際に融合する現場を目撃してもらい、躊躇なく撃破してもらうためか。
 ――否。
(「俺達なら大丈夫と見込んでいたに違いない」)
 それは、長年共に戦ってきた戦友ならではの直感だが、統哉には確信があった。
 ならば、やるべきことは自然と定まる。
「シン、俺らがやる事は一つだ」
「ああ、絶対敬輔を助け出す」
「アイツがこんな所で簡単に死ぬものか。全力で戦って、絶対に助け出す!」
 統哉が決意を叫びながら漆黒の大鎌・宵を構え。
「ではいくぞ鴻鈞道人。舐めた真似をしたツケは支払ってもらう」
 シンが右手に灼星剣を、左手に村正を構え。

 ――戦友を救うための戦いの火蓋を、切って落とした。

『なんと愚かな。二人がかりでも未来は変わらない』
 素早く周囲に視線を巡らせ、状況確認する統哉の前で、鴻鈞道人は不敵な笑みを隠さない。
『そろそろ……馴染み切ったころか』
「何!?」
 その言に驚く統哉の目前で、敬輔の両足が瞬時に異形化。
 異形化と共に両足に装着していた黒鎧は悉く破壊され、代わりに有機的なフォルムを持つ白の脛当てと靴が皮膚に融合するように装着された。
 さらに鎧に護られていない太ももから下も一瞬で純白に染まり、皮膚の表面が硬化した。
 ほぼ一瞬で完了した異形化を目の当たりにした統哉の目が、大きく見開かれた。
(「異形化が早い……早すぎる!!」)
 目を凝らし、鴻鈞道人の思考を読み、己が第六感を駆使して異形化の特性を情報収集しようとするが、ここまで速く異形化が完了するとは思っていなかったため、情報分析が間に合わない。
『何を驚く。この吸血鬼の身体は実に『渾沌の諸相』と相性が良くてな……既に十二分に馴染んでいる』
 せせら笑うような鴻鈞道人の言に、シンも統哉も言葉を失った。
 それはすなわち、敬輔の肉体が鴻鈞道人に完全に支配されつつあり、統哉とシンがこの場で鴻鈞道人を撃破せねば、2度と敬輔が戻ってこないことを意味していたからだ。
 言葉を失うふたりをよそに、鴻鈞道人は異形化した両足で地面を蹴り、間を詰めようとする。
 先に狙われたのは――統哉ではなく、シン。
 鴻鈞道人は、地面を擦過させるように黒剣を斬り上げつつ、異形化した首の付け根から無数の白針を撃ち出すが、瞬間思考力で白針の軌道を見切ったシンは即座にダッシュで横移動し回避。
 振り上げられた黒剣は村正でなんとか受け流すが、軽く黒剣に触れただけでも腕には鈍い衝撃が伝わった。
(「やはり威力は半端ないな。余波でダメージを受けないようにしないと」)
 シンは村正を落とさぬようしっかり握り締め、わざと高くジャンプしながらいったん後退。
 鴻鈞道人はシンへの追撃を諦め、目標を統哉に変更。
 異形化した右ひざで統哉の腹を狙いつつ、黒剣を地面と水平に構え心臓を直接串刺しにしようと突き出した。
『諦めろ。この肉体は既に私のものになりつつある』
 膝が統哉の腹に触れる瞬間、白い有機的な鎧から細い槍が勢いよく飛び出し、統哉の腹を突き破ろうとする。
「諦めるか!」
 だが統哉もまた細い槍の存在を見切り、バックダッシュで距離を取ってかろうじて回避。
 それでも黒剣は心臓を狙い続けていたが、統哉は目前に翳した宵の三日月状の刃で絡め取るよう受け止めつつ、衝撃を歯を食いしばり堪えた。

●決意と想いは渾沌すら斬り裂いて
 先制攻撃を凌ぎ切った統哉とシンは、すかさず反撃に転じる。
 一見、鴻鈞道人には余裕が残されているように見えるが、猟兵達の猛攻で力は相当削られているはずだから、あと少しで力尽きるはず。
 だが、完全な融合まで時間が残されていない以上、この一撃で確実に鴻鈞道人を追い出さねば……戦友を取り返すことは叶わない。
「シン! 先に!!」
「そのつもりだ!」
 シンは灼星剣と村正を交互に振り抜き、斬撃波を撃ち出しながら残像を複数発生させつつ、鴻鈞道人に迫る。
『数があれば良いものではなかろう』
 鴻鈞道人は残像に幻惑されるどころか、黒剣の一振りでそのほとんどを消滅させた。
 もっとも、シンもこの程度で眩惑される相手だとは思っていないし、その程度で引っ掛かるタマだとも思っていない。
 ――むしろ、引っ掛からないほうが時間を稼げるのだから。
「統哉!」
「ああ!! 今こそ、着ぐるみの力をここに。着ぐるみ召喚・着ぐるみの空!」
 僅かな時間を稼いだシンの合図を受け、統哉は白光に輝く空に向かって叫びながらクロネコ着ぐるみを召喚し、学生服姿からクロネコ・レッドに変身。
 全身クロネコ姿になるその着ぐるみは、統哉の意志の力に応じて戦闘力を大幅に引き上げ、高速飛翔の能力まで与えていた。
「敬輔を、大事な友を……鴻鈞道人の手から絶対助け出す!!」
 空中に身を躍らせた統哉は、そのまま空を自在に舞い、鴻鈞道人を撹乱。
 白き翼を生やす機会を逸した鴻鈞道人は、統哉の空中の舞に翻弄され、視線を目まぐるしく動かしながらも身動きが取れずにいた。
 たまらず首の付け根から無数の白針を撃ち出すも、統哉は易々と回避しながら宵を構え、接近する。
「斬る!!」
 統哉は裂帛の気合とともに、宵を大上段から振り下ろす。
 それでも、鴻鈞道人はすれ違いざまに黒剣で斬り落とそうと、黒剣の先端を擦過させながら斬り上げようとするが。
「させん!!」
 シンの一喝とともに、鴻鈞道人の動きが念動力で捕縛されたように一瞬だけ止まった。
『が、あ……っ!?』
 突然全身にかかる強烈な圧をはねのけながら、鴻鈞道人が黒剣を力まかせにはね上げ、統哉を両断しようとした、その時。

 ――ズザァッ……!!

 一気に懐に飛び込んだ統哉の振るった宵が、鴻鈞道人の胸を深々と斬り裂いた。
『ぐ、ぐおおおおおおおおお!!』
 鴻鈞道人は胸に強烈な一撃を受け、たまらず後退するが、まだ倒れない。
「まだ足りない……!?」
「統哉、後は任せろ」
 シンが統哉の肩をポンと叩きながら、早業で村正を納刀し灼星剣を両手で構え、両足裏から衝撃波を噴出しながらダッシュし、鴻鈞道人に迫る。
 鴻鈞道人に対する怒りは消えない。
 だが、心の裡は不思議と澄み渡り、頭の片隅は十二分に冷えている。
「灼星剣の一閃を以って、あるべき清浄を此処に顕現す……鴻鈞道人よ、去れ!!」
 シンの裂帛の気合と共に、未来への意志を籠められた灼星剣が眩いばかりに輝き、白光を塗りつぶす。
 清浄の力を宿した灼星剣を、シンは胸元を斬り裂かれた鴻鈞道人の足元から頭上を両断せん勢いで一気に斬り上げた。

 ――斬ッ……!!

 灼星剣は敬輔の肉体を透過しながら、鴻鈞道人の魂のみを斬り裂いてゆく。
『が、があああああああ!!』
「終わりだ!!」
 至近距離から迸る絶叫の中、シンは一気に灼星剣を斬り下げ、鴻鈞道人の残る力を全て斬り裂いた。

『ぐぐぐ……これまでか』
 残る力を全て斬り裂かれ散り散りにされた鴻鈞道人が魂と化し、ゆっくりと敬輔の肉体から離れる。
 融合していた相手が離れたことで、敬輔は瞬時に意識を失い、頽れそうになるが、すぐに統哉が受け止めた。
『だが、何れ皆土に還る。骸の海に過去を流し続ける』
 敬輔を抱える統哉と、灼星剣の輝きをもとに戻したシンの目の前で、鴻鈞道人の魂は徐々に薄れてゆく。

 ――いずれまた、相打つ機会があろうぞ。

 最後に悪あがきともとれる言の葉を渾沌に揺蕩わせながら、渾沌氏『鴻鈞道人』の魂は消滅した。 

●渾沌から救いあげられし黒騎士の未来は
「敬輔!」
「敬輔さん!!」
 統哉がゆっくりと敬輔の身体を地面に横たえていると、遠くで事の推移を見守っていた猟兵達が次々と駆け付けた。
 鴻鈞道人を追い出し、『渾沌の諸相』を消滅させたからか、猟兵達の目の前で敬輔の異形化とヴァンパイア化が解け、元の華奢な青年の姿を取り戻していた。
 だが、身に着けていた黒鎧は破壊されたまま戻らず、鎧下に着こんでいたインナーはズタズタに引き裂かれ、全身にいくつもの深手を負っていた。
 鴻鈞道人だけを攻撃した猟兵より、敬輔自身を直接攻撃せざるを得なかった猟兵の方が多かった以上、やむを得ない状況ではあるのだが……。
「病巣は消滅している。急いで手当てをすれば助かる」
「もちろん、敬輔がこの程度で死ぬわけがない!!」
 手早く敬輔の容態を診て診断を下す紫苑の横で、響が急ぎ傷の手当てを施し。
「豪快に殴っちゃったから、後で謝らないとね~」
「ま、オレは仕合えただけで満足だな」
 満足げな朱莉と明日香の横で、トーゴは油断なく周囲を見渡し警戒を怠らず。
(「渾沌から鴻鈞道人が復活する形跡は……なさそうか」)
「ひとまずこの場は、凌いだようだな」
 安堵するトーゴの心の裡を読み取ったかのようにシンが相槌を打ち。
「敬輔さん、助かるのでしょうか」
「……奏、今は祈りましょう」
 奏と瞬が祈る中、ニケとアイギスをホルスターに収めたパラスが敬輔に近づいた。
「敬輔、アンタは家族を手に掛ける修羅場を乗り越えたんだ。鴻鈞道人ごときに呑まれるような玉じゃないのはアタシがよく知ってるよ」

 ――だから、目をお覚まし。

 その声が呼び水となったか、敬輔の両の瞼に力が入り、ゆっくりと開いてゆく。
 瞼の下の瞳は、蒼と紅に戻っていた。
「う……みん、な……」
 蒼紅の瞳で周囲を見渡す敬輔の表情からは、既に不敵な笑みは見られない。
「お帰り、敬輔」
 帰還した戦友を労いながら、統哉は敬輔と軽く拳を合わせる。
「うん……ただいま」
 敬輔もまた、統哉と猟兵達の顔を見渡しながら、皆に聞こえるようゆっくりと言の葉を紡いでいた。

 ――ありがとう、皆のおかげで戻ってこられたよ。

 ……と。

 かくして、11人の猟兵たちは、誰一人欠けることなく、グリモアベースに帰還する。
 主を失い、猟兵の姿が消えた「渾沌の間」は、再びまだらな色に染まり始めていた。

 ――渾沌氏『鴻鈞道人』撃破。
 ――並びに、グリモア猟兵館野・敬輔……救出成功。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年01月29日


挿絵イラスト