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殲神封神大戦⑪〜青龍襍种

#封神武侠界 #殲神封神大戦 #殲神封神大戦⑪ #『王翦大将軍』

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#『王翦大将軍』


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 封神武侠界が果てにありし、楽浪郡。
 そこは、神隠しによって異世界の住人が飛ばされてくるという、変わった土地である。
 当然、ここへ来てしまった異世界人は、元の世界に戻ることは出来ない。
 彼らはやむを得ず居を構え、共同体を作り、いつしか交易をするようになった。
 中には、異世界の技や知識を頼りに、勧誘にやってくる者もいたという。
 人が行き来すれば、共同体は村となり、町になり、やがて発展していく。
 誰が呼んだか『流れ者の宝庫』。ここは奇矯だが、少なくとも争いはなかった。

 ……そう、今日この日までは。
「困ったなあ、いないなあ覇王の相の持ち主。そりゃそうか」
 のしのしと、人面獣身の瑞獣が歩いている。
 あっけらかんとした調子だが、この者、名を『王翦大将軍』と云う。
 かの始皇帝の"忠実なる"腹心……を、名乗る外道。つまりはオブリビオンだ。
 王翦大将軍が探すのは、始皇帝の新たな肉体にふさわしい優秀な異世界人である。
「猟兵たちが来る前に、なんとかしないよなー。あそこの街とかどうかな?」
 王翦大将軍は、やけに原色じみたカラフルな建築物の林立する街へ向かう。
 楽しげな明かりと音楽が響く、能天気で気楽な獣人たちの街へ。

 そこは、キマイラフューチャーから流れ着いたキマイラたちの街だった。
「ねえ次はどんな遊びする?」
「こないだ交易で手に入れた、都で流行ってるボドゲがあるんだぜ!」
「うわー楽しそー! やろうぜやろうぜ!」
 異世界に流れ着いても、キマイラたちの呑気なノリは相変わらずだ。
 文明レベルは本来のそれに遠く及ばないが、彼らには日々の道楽で鍛えた無駄なアートセンスがある。
 それで、懐かしき故郷によく似た共同体を作り、日々遊び放題。
 ついでに描いた絵やら文やらを、恰幅のいい商人などがありがたがるおかげで、
 幸いなことに(コンコンコンがない以外は)あんまり変わらず生活出来ていた。
「……ん? ねえ見て、なんか見たことない瑞獣がいるよ?」
「え? マジ? ホントだ! 遊びに来たのかな」
「こんちゃー」
 のしのしと近づいてきた瑞獣を、彼らは警戒しない。
 なにせキマイラは、楽しいことが大好きだ。というかそれしか出来ない。
 だから商人やその他の来訪者にも、いつも明るく無邪気に接してきた。
 中にはキマイラたちをだまくらかして、私腹を肥やそうとする輩もいた。
 そうした連中も、毒気を抜かれ、いつしか気のいい友達となったのである。
 だから、彼らは警戒しなかった。王翦大将軍が、笑顔でいたせいもあるのだろう。
「今からさ、ゲームすんだ! 一緒にやろーぜ!」
「あっしはいいや。それよりさ、頼みたいことがあんだよね」
「何? 面白いこと!?」
「ちょっと死んでもらおっかなって」

「え?」
 キマイラのひとりが、呆けた。顔に何かがびしゃりとかかる。赤い液体。
 隣を見る。ウキウキとゲームの用意をしていた仲間の首が、ない。
「え?」
 そのキマイラは、自分が空を飛んでいることに気づいた。
 いや、違う、これは。ああそうか。首を……。
「あんま強くなさそうだけど、人は見かけによらずって言うしね!
 とりあえず全員殺してみたら、なんかいい感じのオブリビオンになるかも!」
 王翦大将軍は、笑顔で矛を構え直し、三体目のキマイラを無造作に殺した。
 気のいい奴らの街は、半刻も経たずに滅びた。彼らは抵抗しなかった。
 しようとしたところで、許されるはずもなかったが。

●グリモアベース
「……と、ここまでが私の見た映像。そして、『もう起きたこと』よ」
 白鐘・耀は、憮然とした顔で言った。

 王翦大将軍による虐殺で、キマイラたちの共同体は滅んだ。
 あとに遺ったのは無人の街……否。そこには王翦大将軍がいる。そして。
「奴の狙い通り、殺されたキマイラたちはまったく別の異形に変じて復活したわ。
 そういう力があったのか、偶然なのか……まあ、そんなことどうでもいいわね」
 耀は苛立たしげに、カツカツと足を鳴らす。組んだ腕を指で叩く。
 キマイラたち『だったもの』は、醜悪な集合体オブリビオンへと変じた。
 2~5人のキマイラの残骸が集まり、王翦大将軍に似た人面獣身の形を得たのである。
 ようは、死体の塊だ。仮にこのオブリビオンの個体名を、『屍面獣身』としよう。
 それが無数。軍勢と呼んで然るべき数のオブリビオンを、奴は従える。
「あのクソ野郎をぶっ倒してやれば、直接倒さなくても消滅させることは出来るわ。
 ただ、戦ってる間も、容赦なく襲ってくるから……対処が必要でしょうね」
 加えて王翦大将軍本体は、当然のように先制攻撃を打ってくる。
 奴を取り巻く『集団敵』を倒し、かつ、王翦本体からの先制攻撃にも対処する。
 ふたつの条件をクリアせねば、反撃を叩き込むのは困難と言わざるを得ない。
 逆に言えば、そのふたつをクリアできれば、あるいは有利に立ち回れるかもしれない。

 耀は嘆息した。
「グリモア猟兵やってっと、視た映像に間に合わなかったってのは、ままあることよ。
 いちいちイライラしてたらやってらんないけど、でも……こんなのないでしょ」
 耀は、キマイラフューチャーが好きだ。なにせ彼女はお気楽な女である。
 能天気で気のいいキマイラたちは、つるむのにも見てるだけでも飽きない奴らだ。
 殺されたキマイラたちと耀は、別に知り合いでもなんでもない。
 当然、猟兵たちもそうだ。名前さえ知られないまま彼らは死んだ。
 誰のせいでもない力で異世界に放り出され、故郷に帰ることも出来ず。
 なんの咎もなく、なんの因果もなく、ただそこにいただけで殺されたのだ。

「私はあのクソ野郎が許せないわ」
 耀は端的に言った。
「だから、あのクソ野郎をぶっ倒してきて頂戴。これは半分ぐらい私怨ね。
 まあ、やることはいつもと同じ。私の話を頭の片隅に置いとくかどうかも」
 火打ち石を取り出し、カッカッと鳴らす。手には力が籠もっていた。
 彼女は、気楽な性格だ。だが、それだけに、自分勝手な邪悪を許せない。
 猟兵が同じ怒りを抱くかどうかは、個々人によるだろう。
 義憤があろうとなかろうと、あれは倒さねばならぬ敵だ。
 戦争に勝利するために。
 これ以上の犠牲を生まないために。
「よろしくね」
 転移が始まった。


唐揚げ
 王翦大将軍は、元キマイラの集団敵を従えています。
 数字としての判定に関わるのは、王翦のユーベルコードのみです。
 なので、「こういうユーベルコードを使う」的な設定はありません。

 ありませんが、それはそれとして、生前のキマイラみたいにブキらしきものを使ったりはするようです。あとは獣じみて飛びついたり引っ掻いたり、ですね。
 ビームを出したり精神攻撃したりはしないので、対処の方法は物理的・肉体的なもので十分だと思われます。
 ただし、数は多いです。そして、集団敵としてはまあまあ強いです。
 王翦のユーベルコードで召喚されるオブリビオン軍団も、それ関係になります。
 プレイングのご参考にどうぞ。
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第1章 ボス戦 『『王翦大将軍』』

POW   :    王翦異界混成軍
レベル×1体の【異世界オブリビオン兵団】を召喚する。[異世界オブリビオン兵団]は【出身世界】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
SPD   :    王翦奇兵用兵術
いま戦っている対象に有効な【ユーベルコードを使う新たなオブリビオン】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    王翦龍神変異軍
召喚したレベル×1体の【オブリビオン軍団】に【龍の角と尾、翼】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。

イラスト:藤科遥市

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

張・西嘉
手当たり次第に殺す様はまさに外道だ。
繋がった世界について詳しくはないが故郷に帰ることも出来ないまま死んで何も分からぬまま利用されて…これを怒らずに居られるだろうか?

ひたすらに戦うしかあるまい。
【功夫】と【第六感】で攻撃を躱しつつ【武器受け】で攻撃をいなす時に【カウンター】を決めながら【怪力】で【破魔】の宿った青龍偃月刀で【なぎ払い】
王翦まで辿りついたところでUC【朱雀炎】を発動。王翦に辿り着くまでに負った傷も力にする。



●ひたすらに
 外道邪悪なる獣に怒りを燃やす侠(おとこ)、張・西嘉。
 その眦は釣り上がり、眉間に寄った皺は巌の刻んだ深い罅のよう。
 義憤は両肩から陽炎の如く立ち上らんばかりであり、そのさらに深奥には悔恨と祈りがあった。
「……知らぬ世界から来た旅人たちよ。せめて、第二のふるさとで静かに眠れ」
 西嘉は、彼らの居た世界を知らぬ。だが彼らの痛みと苦しみはわかる。
 故郷の土を踏めぬまま、理不尽に殺され、あまつさえその亡骸を利用される。
 彼らには、その怒りと無念を叫ぶ喉すらもありはしない。ならば!
「あれあれぇ? もう着いちゃったんだ? 猟兵、早いなぁ~」
「ああ、来たとも。報いを受けてもらうぞ、王翦!」
 あっけらかんと嘲笑う悪獣へ、義侠はまっすぐに踏み出した!

 その前に立ち塞がるは、殺され、歪まされ、作り変えられた屍たち。
 獣の爪が西嘉を脅かし、屍が寄り集まった尾が薙ごうとする。
 喉らしき場所から漏れるのは、耳障りな咆哮。そこに意思はない。
「ぬん!!」
 西嘉は、青龍偃月刀の柄で、鋼鉄をも切り裂く獣の爪を受けた。
 そして練り上げた気を両足から大地に流し込み、震脚で屍面を吹き飛ばす!
 ズン!! と大地が揺れた。侠よ、あの者を誅せよとばかりに!
「うわぁ、おっかない! 倫理観が終わってたら器にちょうどよかったかもね?」
「愚王の器にされるつもりも、お前のような卑怯者にいいように使われるつもりもない」
 西嘉は王翦の戯言を一蹴し、次なる獣をすさまじい怪力の太刀で両断した。
 裂かれた屍は凄烈にして清浄なる気により、解けるように大地へ還る。
 彼らにとって、ここが第二の故郷であってくれればよいのだが。

 最初は呑気をこいていた王翦も、間近に迫るにつれ徐々に色を失った。
「ちょっとちょっと、強すぎじゃない? あっしはさぁ、所詮は臣下なんだから」
「ほざくのは大概にしておけよ」
 王翦はにぃい、と笑みを浮かべ、新たな屍面を囮に斬撃を放った。
 しかし、西嘉は見切っている。死角からの戟を見もせずに偃月刀で受ける!
「げ!」
「朱雀の炎よ!!」
 あまりの熱気に、煮えたぎるような血が傷口から間欠泉めいてぶしゃりと噴出した。その傷の痛みすらも薪に変え、西嘉は破魔の炎を宿す!
「邪悪なる敵を! 燃やせッ!!」
「が……ぁあああああッ!?」
 屍たちに終わりをもたらし、下劣なる獣には苦と惨に満ちた痛みを。
 白熱するほどに燃え上がる偃月刀が、悶える王翦の胸を! 裂いた!! 

大成功 🔵​🔵​🔵​

神樹・鐵火
奇遇だな、神も人間の常識とやらは通用しない
所詮は主あってこその眷属、分からせる必要がある
戦女神の闘志を解放し【封印を解く】事で【バーサーク】状態になる
元キマイラは聖拳の【覇気】の炎による【衝撃波】で纏めて【焼却】し蒸発させる
追加で呼ばれた者共もやる事は同じさ
殺すというより成仏だ
さて、躾の悪い眷属の処遇だが...ゲンコが必要だな
【蛮神乱舞】でその鬱陶しい尻尾を掴み、貴公が殺したキマイラ達と同じかそれ以上のボロ雑巾にしてやる
鬼鎧籠手を展開し、【怪力】を上乗せし【地形破壊】を伴う【暴力】そのもだ
より傷付きやすい場所へ頭から徹底的に叩き付ける
原型が無くなって尻尾だけになる勢いで叩き潰す



●神は猛り燃え上がる
 神樹・鐵火が封印を解いた瞬間、天が驚き地が動いた。
 戦女神の闘志とは、いわば天地開闢より燃える神の炎のようなもの。
 もはや鐵火を止められる者はいない。いわんや、屍をや!
「あっしを守ってほしいなぁ~! こんなところで死んだら、へーかに新しい肉体を届けられないもんね!」
 屍面獣身が立ち塞がる。鐵火の表情に憐憫や哀切はない。
 それは人間の抱く倫理とやらだ。神は些末なことには囚われない。
 怒りも哀しみも憎悪もなく、ただあるべきへ還すのみ。
「成仏しろ。その怨みも何もかもを燃やし尽くしてやる」
 されどそれゆえに、聖拳のもたらす炎の終わりは慈悲深い。
 神に私心はないからこそ、ある意味で平等であり、そして優しいのだ。
 王翦が新たに屍を呼ぼうと同じことである。
 殺意なき滅びは、屍たちにとっては救い以外のなにものでもなかった。

 いかに王翦が強大なるオブリビオンとて、所詮は瑞獣である。
 神として在る鐵火の猛りを、付け焼き刃の軍勢で止められるはずもない。
 奴に戦士としての『飢え』があれば、話はまた別だっただろう。
 しかし、王翦は『使う者』だ。従え、虐げ、奪い、君臨するもの。
 であれば、与え、戒め、睥睨する者の拳を止められる道理はない!
「あっしが集めた軍勢が通じないって、どーゆーこと!?」
「貴公には躾が必要だな」
「は――」
 王翦の顔面に、山の如き重さを宿した鉄拳が叩き込まれた。
 あまりの威力に斜め上に吹き飛びかけた獣身を、鐵火は尾を掴むことで引き戻す。
「所詮は主あってこその眷属だ。"わからせて"やる」
「ぐ、ぶへ……!?」
 SMASH!! 尻尾を振り回し、弓なりに地面に叩きつける!
 バウンドした王翦を再び引き戻し、ボールめいて引き寄せられた顔面に鬼鎧篭手がめり込む!
「がはッッ!!」
「まだまだ行くぞ」
 一方的蹂躙だ。暴力という言葉を捏ね上げたような、猛然たる神の躾が始まった。
 殴り、引き戻し、叩き潰し、引き戻し、殴る、叩く、殴る叩く殴る叩く破壊する!
 神に人間の常識は通じない。だが、外道を見逃す理由もない。
 もはや鐵火は誰にも止められない。いわんや、瑞獣ごときをや。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ギージスレーヴ・メーベルナッハ
彼奴にとっては狩猟の如きものであろうな。
故に、行為の是非は問わぬ。
只、世界への脅威として討つのみである。

ヤークト・ドラッヘに【騎乗】し出撃。
迫る敵は搭載火器の【弾幕】【砲撃】【誘導弾】で殲滅してゆく。
義眼にて敵集団の動きを適宜【情報収集】、都市内の【地形の利用】で包囲回避と一網打尽にしやすい状況を整える。
傷の浅い敵は一斉射で殲滅しきれぬ可能性ある旨も、念頭に入れておこう。

王翦を捉え次第【空中機動】を開始。空中戦を挑む。
黄昏大隊・突撃部隊召喚、空中へ幅広く展開させ包囲攻撃を仕掛ける。
極力迎撃や離脱の暇を与えぬ【集団戦術】にて波状攻撃。
隙を見せ次第、電磁砲で狙い撃ってやろう(【スナイパー】)



●地獄へ向けて突撃せよ
 かつてキマイラたちの平和な邑だった場所は、無残な有様だった。
 彼ららしい原色めいたカラフルな建物は、すべて赤く血で汚れている。
 屍になりそこねた(あるいはならずに済んだ)残骸がそこかしこに襤褸屑のように転がり、すさまじい悪臭を放っている。

 その太路を、ギージスレーヴ・メーベルナッハの駆るヤークト・ドラッヘが進む。
 あとに続くのは亡霊の兵団。黄昏大隊の死してなお終わらぬ精兵たち。
「発射(フォイア)!!」
 KA-BOOM!! BRATATATATAT!!
 ヤークト・ドラッヘの誇る火線が、立ちはだかる屍面獣身を薙ぎ払う。
 時にはその頑強な走破性で、めりめりと轢殺してまで進む。
 ギージスレーヴは、義侠の輩でもなければ正義の味方ではない。
 王翦の行いは、いわば奴にとっての狩りのようなもの。
 己が戦争をしなければ生きていけない戦争狂(ウォーモンガー)であるように、
 あれもまた殺し、蹂躙し、奪い、辱めなければ生きていけないのだろう。
 ならば、是非を問いはしない。ただ、世界への脅威として討つのみだ。

 かくも無慈悲なる突撃は、いよいよ王翦を視界に捉えたことで終わる。
「突撃部隊、展開! 奴を逃すな、包囲攻撃を仕掛けるぞ!」
 機甲兵器を纏った亡霊兵が空中に散開、空と地から王翦を襲う。
 獣身が文字通りの肉壁となるが、圧倒的火勢は些末な小細工を許さぬ!
「あっしを相手に、似たような軍勢で勝負ぅ? やってくれるじゃん!」
 されど、敵もまた無双の猛将である。屍面の動きは不気味なほどに統率されていた。
 死んでいく。死を乗り越えたはずの亡霊と屍どもが、ことごとく死んでいく。
 路辻を穢し屍を塵に変え、臓物を踏み越えてまた一体、また一匹死んでいく。
「さすがは始皇帝随一の配下か! 面白い!」
 ギージスレーヴは鬼のような笑みを浮かべていた。ああ、やはりここが我がふるさと、我がゆりかごにして我が墓場。
 まったく敵も味方も救われない。心の滾りは止められぬのだ!
「電磁砲、行くぞ! 射線上の友軍は……覚悟を決めよ!!」
 亡霊兵を巻き込んでの容赦ない電磁砲斉射! 火線が戦場に穴を穿つ!
「ぎゃあああああっ!?」
 蒼い鱗を融かされ燃えた王翦が悲鳴を上げる。奴をして理解できぬ狂気!
 ギージスレーヴは、世界への脅威を討つ者だ。ゆえに世界の味方といっていい。
 しかし彼女の在り方は、おそらく。目の前の獣と同じ、日向にあってはならぬものだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

茜崎・トヲル
はーあーいー。
いいひとを殺すのはよくないぜ。いいひとがいなけりゃこの世は闇だからね。まっくらー。ふふふ。暗いのは怖いよね。だって見えないもの。前も。未来も。あんたも!それはとてもこわい……。

だから殺すね。

ううん、違うよ?あんたが嫌いとかじゃないんだ、おれもほら、ひとのこと言えないし……知らない?そりゃそうかー!初対面だもんねえ!あっはっは!
もっと笑いなよ。笑顔はだいじ!でしょ?

俺の骨は何度でも再生する。
俺の肉は何度でも再生する。
俺の血は何度でも再生する。
そんで、ぜんぶ、武器になる!

おーせんくーん!あーそーぼー!
しっぽハートマークみたい!かーわーいーいー!おれが赤く染めたげるねー!
ミンチ好き?



●あんこく
「おーせんくーん! あーそーぼー!」
「ん~? 誰、あんた? あっしと戦いに来た猟兵?」
 茜崎・トヲルのあまりの毒気のなさに、王翦は逆に呆れた。
 まるで子供のような笑みを浮かべて、トヲルは「うん! そーだよ!」と頷く。
「わー、しっぽハートマークみたーい! かーわーいーいー!」
「……」
 常にふざけ、嘲笑う王翦が、真顔になった。
 フレンドリーな様子だが、トヲルから放たれる殺気は真逆だ。
「なー、おーせんくんさー、いいひとを殺すのはよくないよ」
「は? 何、あっしに説教しに来たの?」
「ちがうよぉ。だってさ、いいひとがいなけりゃこの世は暗闇だぜ? まっくら!」
「……なんかわけわかんないし、もういいや。死んじゃえ!」
 屍面獣身が、襲いかかる。それで話は済むはずだった。

 だが、そうはならなかった。
「え」
 襲いかからせた獣身が、ばぁん、と爆ぜた。
「暗いのは怖いよね、ふふふ」
 トヲルがそこにいた。トヲルになりつつある肉の塊が。
「だって見えないもの。前も。未来も。あんたも! それはとてもこわいよねぇ」
「なんだ、お前!」
 再び獣が襲いかかる。爪。尾。牙。あるいはおぞましいなんらかの武器。
 飛びかかり、引き裂いて、叩き潰し、押しつぶし、バラ肉に変えてやる。

 そしてまた、爆ぜて消える。
「だから殺すね」
 トヲルは……解体されたはずのそれは、また元の姿に戻っていた。
「あんたが嫌いとかじゃないんだ、おれもほら、ひとのこと言えないしさ」
「知るかよ! いいから、死ねよ!」
「あはは、そりゃそーかー! 初対面だもんねー!」
 骨が武器となり、獣を十の肉に変えた。
「もっと笑いなよ。笑顔はだいじ! でしょ?」
 王翦は口元を引きつらせていた。
 肉が再生する。血が再生する。屍どもがバラされ還っていく。
 トヲルはあえてそうした。彼も同じモノだから。所詮は狢同士だから。

 違うとすれば、トヲルが殺すのは王翦だけということだ。
「なんなんだよ、おま」
「ねえおーせんくん、ミンチ好きー?」
 にこやかに放たれた鉄拳が、骨と筋肉が混ざり合ってバネのようになった一撃が、王翦をくの字に吹き飛ばす。
 尻尾を掴んで引き戻す。顔面に膝。のたうち回る獣にさらにダメ押しの蹴り。
「あんた、いまからそうなるんだぜ」
 トヲルは笑っていた。彼はそれしか表情を知らないがゆえに。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スキアファール・イリャルギ
……成程
これは同情の余地が一欠けらも無いクソッタレだ

背後をとられたら厄介だ
まずは襲い来る配下に呪詛を最大限に載せた霊障を放ち
周囲の敵をなるべく遠ざける
これで少しでも恐怖を与えて一瞬でも怯えさせられたらいいのですが

次に呪瘡包帯で片っ端から配下を束縛
それをぶん回して投擲して王翦への道を無理やり作る

先制攻撃で召喚された配下は前述の戦法も使用しつつ
至近距離に居る配下に火と雷(属性攻撃)を放ち対処
配下全員を対処できずとも、
王翦を射程圏内に捉えた瞬間にUCを発動できればいいのです
影らしくない戦法ではありますがまぁいいでしょう
大声で喉が張り裂けんばかりに叫んでやりますよ
クソッタレ瑞獣が! ……とね



●影は煮えたぎる
 オブリビオンには、どうしようもないクソ野郎と被害者の二種類がいる。
 こいつは前者だ。元からどうしようもなかった、紛うことなきクソッタレ。
 スキアファール・イリャルギは、それを許さない。正義の味方だからではない。
 ただ、気に入らない。
 ただ、許せない。
 ただ、呪わしい。
 それだけだ。それだけでいい。それ以外など背負うつもりも挟む必要もない。
 自分は所詮、怪奇(よそもの)なのだ。だから、それでいい。

 研ぎ澄まされたエゴは、時としてあらゆる道理を無理で押し通す。
 襲い来る配下を相手に、ひとり。敵うべくもない。だが。
「退いてください」
 全身より放たれる怒気と呪詛が、屍とて獣であるものどもを畏れさせた。
 屍とされてしまったがゆえに、それらは獣としてより純然である。
 ゆえに、怯える。その一瞬でスキアファールには十分だ。
 呪瘡包帯が"配下"を縛り、まとめあげ、巨大な鉄球のように固めた。
 殺到する群れを、包帯で編み上げられた肉の球体が薙ぎ払う。
 無残な戦い方だ。かいぶつに似合いの。だから、それでいい。

 王翦は猛将である。兵の使い方を心得、戦術を知り、戦略に通ずる。
 それゆえに、わかる。あれは、戦の方策を練ろうとどうしようも出来ぬもの。
 嵐。あるいは雷。つまりはそういう、災害に等しいものだと。
「猟兵ってさぁ、あっしが思ってる以上に厄介だなぁ……!!」
 傷だらけの王翦は呻いた。その怒りの理由を、奴は識るが理解出来ない。
 なぜそこまで怒るのかを解せない。だから外道を犯すのだ。
「居ましたね」
 スキアファールの黒い瞳の奥、赤黒い憎悪の炎が燃えた。
 王翦は瑞獣だ。ゆえに、その奥にくろぐろと燃えるものを畏れた。
「……お前もへーかの器候補にしてやるよッ!」
 獣が。来る。スキアファールは包帯を伝い火を熾した。
 憤怒を形にしたような火雷。災害がかたちとなって荒れ狂う。

 成ってしまったモノたちは薪となり、燃え、炭化し、風に散った。
 あらゆる道理を叩き潰し殺すもの。生命の埒外。猟兵。我らの天敵。
 その恐ろしさを、王翦はいまさら理解した。虎の尾どころの話ではない。
 奴は踏むべからざるものを踏んだのだ。いまさら後悔したところで!
「これは、影らしくはないんですがね」
 スキアファールは嘆息し、その何倍も大きく大きく息を吸った。
「この――クソッタレ瑞獣がッッッ!!!」
「――ッッッ!?!?」
 鼓膜が裂け血が吹き出す。衝撃波が王翦の全身を裂いて吹き飛ばした。
 荒狂の一撃が死臭を吹き飛ばし洗い流す。……嫌味なくらいの空だ。
「こんなことをしても、戻らないんですよ、何も。……何もかも」
 人ならば泣いたのだろう。だが、スキアファールに涙はなかった。
 そのための思いは薪に変える。敵を滅ぼす憤怒の炎の薪に。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リオ・ウィンディア
全く嫌なことしてくれるじゃない
間に合わなかった…それだけ敵の行動が早い、早すぎる

ならばせめて私のできることを
ギターによる【楽器演奏、歌唱、郷愁を誘う、浄化】でその不気味な心、安楽の地へ誘ってあげるわ
対UC
上記の方法プラス絶望への誘い【二回攻撃、殺気、精神攻撃、呪詛】で足止めさせるわ。
さぁ、私は腹が立って仕方がないわ
UC発動
ありったけの恐怖と呪詛と不幸でもって呪われるがいい
全敵を範囲攻撃するわ

王翦、あんたも逃さないわよっ!
ダガーによる近接戦を仕掛ける
【切断、斬撃波、二回攻撃、早業】
あんたの首こそ価値がありそうだわ
今ここで置いていけ!言霊という【呪詛、呪術弾】を忘れずに



●猟兵はいつだって
 グリモアの予知は万能ではない。
 察知した瞬間には終わっていることも、そもそも防げないこともある。
 防いでしまうことで、より悪い未来を招いてしまうことも。
 そう、猟兵はいつだって間に合わない。終わったあとにしか戦えない。
 本当に万能で全能なら、悲劇の寸前などに割り込むまでもないのだ。
 敵を、生じた瞬間に滅ぼす。そうすればいいだけなのだから。
 ……猟兵はいつだって間に合わない。そう、今日のように。

「敵の行動が早すぎる……! けど、私に出来ることは、まだあるはず!」
 死体を凝り固めた不気味でおぞましい獣が、リオ・ウィンディアに襲いかかる。
 リオはすさまじい悪臭のなか、恐るべき爪をギリギリのところで躱す。
 王翦の用兵術には舌を巻く。奴の将としての才覚は、本物だ。
(「けど……」)
 だから、なんだというのだ。
 だから、この暴虐を見過ごせと?

 否。
 否だ!
「私はね、腹が立ってしょうがないのよ!」
 リオは怒りのままにギターをかき鳴らし、浄化の旋律で大気を揺らした。
 清廉な楽音が、立ち込める不浄を払う。音波に触れた屍たちを還していく。
「安楽の地へ、誘ってあげるわ。だからどうか、安らかに眠って」
 哀切は祈りとともに彼らに託し、今は怒りと戦意で心を満たす。
 屍たちが滅び、土へ還れば、へらへらと笑う呪わしい敵が見えた。

「残念! あっしの兵は、こんなもんじゃないよー!」
 さらなる屍面の召喚! だが、リオは臆さない。
 相手が龍の力を備えた化け物であろうと、根を断たねば彼らは安らげぬ。
「王翦! あんたは逃さないわよっ!」
 周囲を漆黒のカーテンが覆い、呪詛と恐怖と不幸をもたらす旋律が満ちる。
 屍たちは、獣に堕した。それゆえに与えられる恐怖に抗うことが出来ない。
 足並みが乱れた瞬間にリオはダガーに武器を持ち替え、一気に疾駆。
「あんたの首こそ、始皇帝なんかの肉体より価値がありそうだわ」
「げ、最初からあっし狙い!?」
「当然よ。今、ここで! 置いていきなさいっ!!」
 ざんっ!! 小刃が蒼い鱗を裂き、王翦は滂沱の血を噴出した。
「ぐああっ!! ほんと、どうしてそこまで怒ってんだか……」
「あんたにはわからないでしょうね。わからないまま恐怖して死になさい」
 リオの言霊に、王翦は気圧された。ぽたり、と冷や汗がこめかみを伝う。
 猟兵はいつだって間に合わない。だが、終わらせることは出来る。
 その執念と怒りは、着実に奴を追い詰めていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

劉・涼鈴
今回の敵はちょーかくに操られたかわいそーなのばっかかと思ってたけど……
お前はド許さん! ぶちのめす!!

デジャヴる街を【ダッシュ】!
合体キマイラの攻撃を【見切って】躱す!
パワーが強くなっても、元々戦士でも武侠でもない! 技としては雑なハズ!

配下が城や街を築く能力! それが有利に働くのは自分だけだと思うなよ!!
キマイラが作った街だ! その趣味やクセは私の方が詳しい!
奇抜なオブジェや独特の建物を足場にしてアクロバティックに跳び回る!!(ジャンプ・軽業・地形の利用)

覇王方天戟で青龍刀の一撃を【受け流して】【体勢を崩し】たところで懐に潜り込む!
【功夫】【劉家奥義・妖蛇穿衡拳】!



●馴染みある街を駆け抜け
 王翦は次々に屍面獣身を召喚し、それらに廃墟の街の改造と増築を行わせる。
 劉・涼鈴にとって馴染みある風景は、物々しく禍々しい要塞へ変貌しつつあった。
 奴はキマイラを殺戮するには飽き足らず、その住まいさえも利用しようとしている!
「王翦! お前はド許さん!! ぶちのめすッ!!」
 吠える涼鈴の前に立ち塞がる、巨大屍面獣身!
「おー怖! 怖いからあっし、配下に頼っちゃおーっと」
「お前ー!!」
 KRASH!! 振り下ろされた爪を涼鈴は方天戟で受けた!
 踏みしめた両足から伝わった衝撃で、地面が蜘蛛の巣めいてひび割れ砕ける!
(「重い! パワーは強い、けど技としては雑なはず……!」)
 涼鈴は柔術の要領で腕を払い除け、続く尾の横薙ぎをジャンプ回避。
 敵が体勢を立て直すより早く、間合いを詰めて方天戟を下から上へ払う!
 真っ二つに両断される獣身を抜ける涼鈴。彼女の足は止まらない!

 血と臓物で穢されたオブジェから、屍面獣身が飛び出す。
 生前のキマイラたちの、奇妙な遊びが一種のゲリラ戦術に昇華されたか。
「全部見えてるぞ! 私だってキマイラだッ!!」
 ビルめいた建物を駆け、飛び石状の柱を蹴り渡り、さらに前へ。
 アクロバティックな動きで連携をかき乱し、敵の数を減らしていく。
「……あれ? ヤバくない?」
 王翦のこめかみを冷や汗が流れた。奴は猟兵という存在の恐ろしさを嫌というほど教え込まれている。
 そも、正面切っての殴り合いなぞ、王翦の柄ではないのだ。
「いかにもパワーありそうだしなー、あっし逃げよっと!」
「逃すかッ!!」
 涼鈴、弾丸のごとく壁を蹴って肉薄! ……振り向いた王翦の口元に笑み!
 振り向きざまの青龍偃月刀が首を狙う! ブラフか!?

 だが涼鈴は、それすらも読んでいた。青龍偃月刀の一撃を受け流す!
「な!?」
 瞬間的な気の発露で、王翦は上半身を大きくのけぞらされた。
 その間隙に割り込んだ涼鈴は、蛇のようにうねる拳打を正中線に叩き込む!
「劉家奥義! 妖蛇穿衝拳ッ!!」
「が、は……!!」
 浸透勁だ! 内的エネルギーが爆ぜ、王翦は赤黒い血を吐いた!
 涼鈴は気息を整え残心を切る。戦いはまだ終わっていない……!

大成功 🔵​🔵​🔵​

リア・ファル
過去が今を生きる人々を脅かす
その点に於いて、ボクはキミを見逃しはしない
理不尽な邪悪なら尚更だ

「ガーネレイ」で戦闘開始、囲まれなければソレで良い
A&Wのドラゴンとの戦闘、カクリヨでの龍神との戦闘
これまでの経験を基に、相手の先制攻撃、戦術を凌いでいこう

ギリギリまで耐えたら、反撃開始
不意を突き、ガーネレイを、電子の海へ強制送還、
コアにあった「イルダーナ」で上空へと駆け抜けよう

龍神変異軍だろうが、屍面獣身だろうが飛べる相手は連れて行く
「ヌァザ」を掲げ、次元門を開く
【星の彼方の妖精郷(マテリアライズ・イ・ラプセル)】!

さあ、至福の島よ
眼下の理不尽を骸の海へと叩き落とせ!


鳴宮・匡
死して尚、嘲弄される命
きっとこの光景を見たら悲しい顔をするひとを知っている
その光景を見て、自分の裡に湧き上がるものをもう知っている

【影装の牙】は速射性を確保して射程距離は半減
どのみちある程度は踏み込む算段だ、問題ない
屍面獣身は近接しか手段がない個体から対応
半端はしない
全て、きっちり止めを刺すよ

――命ってのは、死ねばそれで終わりなんだ
それ以上、望まない形で永らえさせられる道理なんてない

感傷だけの話じゃない、合理的な話でもある
一度“死んだ”ら、蘇らせるのにも手を使うだろ
だったら、俺の方が早い
こっちはたった一発、お前の脳天に撃ち込めばいいだけなんだ

もうそれ以上喋らなくていいぜ
ここで墜ちてもらう



●いのちの終わり
「さあさあ、どんどん出てきておくれ! そしてあっしを助けてちょうだい!
 あっしはへーかの容れ物を探さないといけないからね! 仕事があるんだ!」
 この期に及んで、王翦はまだ始皇帝の復活を企んでいるらしい。
 殺戮したキマイラの残骸を玩弄し、辱め、また新たな兵隊を生み出す。
 混沌の軍勢である。死してなお嘲弄される、いのちの残骸。

「あれは、リアか」
 X(クロス)キャバリア『ガーネレイ』の機影を認めた鳴宮・匡。
 黒き海の深き影を揺蕩わせ、リアの吶喊に乗る形で敵陣を突っ切る。
「匡にーさんの反応……! よし、それなら!」
 コクピット部。ドッキングしたイルダーナの機上にあるリア・ファルは、
 これまでの経験……特にアックス&ウィザーズでの帝竜との戦いと、カクリヨファンタズムにおける碎輝との戦いの経験を生かし、敵の攻撃を捌く。
 名将たる王翦の指揮によって、龍の特徴を得た獣身の動きは的確で俊敏だ。
 しかしそれゆえに、主体なき怪物の動きはある程度似通うもの。
 ガーネレイの機動力と、射程を犠牲に連射力を高めた匡の援護があれば。
「こっちは、近接しか手段がない奴から仕留める。あとから追うよ」
「了解! 匡にーさんが安全に通れるよう、多少無理してでも孔をこじ開ける!」
 リアの無茶はなんらかの考えがあってのこと。それが匡にはわかる。
 ゆえに、案じたりはしない。妹分が最善だと考えたなら、そうなのだろう。
 匡のやるべきことは、露払いだ。醜くなりさばらえた獣への躊躇はなし。
 半端はしない。屍が融合したオブリビオンとて、急所は存在する。
 たとえそれがなかったとしても、縫合を解くように結節点を潰せばいい。
 バラバラと「ほぐれ」て転がる屍は、ガーネレイの起こす風で土埃と消えた。

「って足止め出来てないじゃん! あいつらなんで的確に動けるの!?」
 この連携に、王翦は虚を突かれた。名将たる奴の指揮を超えるほどの動き。
 どうやら猟兵は、すでに痛い目を見させられた王翦の警戒をすら上回るほどに、厄介で執念深い連中らしい。たまらず、奴は苛立たしげに舌打ちした。
「せめてもっとマシな奴らを殺せてればなぁ。ま、愚痴ってられないか」
 龍変異を起こした獣身の比率を増やす。地と空の二面で進路を塞ぐ構えだ。

 当然、匡もリアも、それを読んでいる。
「あっちも無茶をしようとしてるみたいだな。まあ、そうだろうさ」
 いのちは、死ねば終わりだ。望まない形で永らえさせる道理などない。
 道理。これは合理性の話でもある。いかにオブリビオンとてそこまで不条理ではない。
 骸の海から現出させたものを「殺され」てしまえば、そこにはタイムラグがある。
 新たな召喚にせよ、創造にせよ、戦いの中では致命的な一瞬の空白が生まれる。
 そこに隙がある。匡はトリガを引くだけだ。そして、その動作は慣れている。

「!」
 ガキン! 王翦は脳天狙いの弾丸を、咄嗟に矛で弾いた。
「嘘でしょ? もう射程まで来てるの!?」
 猛スピードで近づくガーネレイ。銃を構える男。どちらを殺す?
 王翦の頭が高速思考する。今の弾丸は……おそらく、フェイント。
 見切れたということは本命ではない。つまり奴は有効射程に入っていない!
「じゃあ、まずはこっちからだ!」
 王翦の下半身が地を砕いて跳んだ。狙いはガーネレイ!
 屍面獣身を囮にしての、先制を得た振り下ろし。いかにXキャバリアの装甲とて……!

 大地を断ち割るほどの矛は、しかし、何もない場所をスカッと通り抜けた。
「へ?」
 リアと目が合う。……機体の消失? いや、強制送還。コアユニットのイルダーナでブースト? このための吶喊か!?
「星の彼方の妖精郷(マテリアライズ・イ・ラプセル)!!」
 魔剣ヌァザが切り開いた空間孔から、高速戦闘空母イ・ラプセルが出現、主砲に光が集まる。王翦は泡を食った!
「ちょっとちょっとぉ! そういうのは哪吒相手にしてよ!?」
 屍面獣身が肉の壁、いや要塞のように集まり、王翦を守る。
 リアだけならばここで手は潰えた。しかし。
「匡にーさん!」
「ああ」
 その一手は、弾丸を届かせるための布石である。
「もうそれ以上喋らなくていいぜ」
 さきほどの射撃はフェイントに見せかけたフェイント。匡ならあの距離の射撃は当てられる。
 当てられないと思わせての本命。深影を纏う弾丸が――届いた!!
「お前の言葉なんて、聞きたくないからな」
 匡は識っている。この嘲弄を、陵辱を悲しむであろうひとを。
 代わりに彼がここにいる。湧き上がるものがある。だから、戦う。
 理由などそれだけでいい。やることは、今も昔も変わらないのだから。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

御形・菘
極論を言えば、妾が邪神を名乗るのは手段でしかない
感動を生み出し、妾という存在をできるだけ多くの者の心に強く刻みつける目的のためのな

邪神オーラを左腕に集中させ、盾として防御を行おう
更に殺気を込めた恫喝を全力で放ち、恐怖を与えて精神的にヘシ折る!

右手を上げ、指を鳴らし、さあ降り注げ流星よ!
はーっはっはっは! あくまで標的は王翦だが、攻撃回数…弾数を増やして戦場全体を絨毯爆撃だ!
もちろん屍面獣身の迎撃は続けるし、妾の周囲も別に流星の安全地帯ではないぞ
ちょうど良い具合に頭を守る盾がいくらでも調達できるからな!


…私と繋がりを作る可能性のあった者たちを、手に掛けたわね?
お前は潰す、微塵に砕いて潰し尽くす!



●邪神の怒り
 キマイラにとって、楽しいことは生きることだ。
 より騒がしく、より面白おかしく、より楽しくなければ意味がない。
 それしか考えられないし、それが一番大事だし、そのために生きている。
 今際の際ですら、そうだろう。彼らは絶望さえも出来なかったはずだ。
 故郷を離れても、同じ生き方を貫き続けた同胞たちなら。きっとそうする。

「どうした王翦、その程度では邪神たる妾の守りは打ち崩せんぞぉ!!」
 御形・菘は笑っていた。頭から流れた血が、その顔を汚す。
「いや、効いてるじゃん! つーか、なんでそっちこそ死んでないの!?」
「死ぬわけがなかろうが! 妾は、邪神なのだぞ!」
 死物狂いで攻撃を受け止め、致死的一撃をギリギリで留める。
 王翦はわけがわからなかった。恫喝より何より菘のわけのわからなさに恐怖していた。
 いや。そもそも猟兵という存在が、奴からしてみればわけがわからない。
 何をそんなに怒っている?
 なぜここまで自分を殺そうとする?
 張角を滅ぼすため? それもある。それだけではない。はっきりとわかる。
 この女もそうだ。邪神だなんだと云うが、所詮こいつはキマイラだ。
 殺した奴らと同じはずなのに。なぜ、殺せない!?

「はーっはっはっは!!」
 菘は血まみれで笑い、右手を上げ、パチンと指を鳴らした。
「さあ降り注げ流星よ! すべて、すべて吹き飛ばしてしまえい!!」
 馬鹿げた量の流星が、落ちる。菘は自分さえもその標的に入れていた。
 屍面獣身の肉体を盾に防御し、戦場を駆け、怯える王翦を追う。
 地獄じみた光景だ。あるいはパーティの翌朝、余ったクラッカーをまとめて鳴らした瞬間のような。
「なんなんだよあんた!?」
「妾は! 邪神だと! 言っておろうが!!」
 ガツン! 菘は鉄拳で王翦を殴打した。王翦にはもう防御する気力もない。
「はっはっは! 恐れおののいたかオブリビオン! ははーはははは!!」
 菘は高笑いする。ふんぞり返って。周りがよく見える。

 焼け野原に転がる屍。故郷を思い出して作られた街の残骸。
「……」
 もうなにもない。ここにあった「キマイラフューチャー」は潰えた。
「お前は」
 菘は拳を握りしめた。
「私とつながりを作る可能性があった者たちを、手にかけたわ」
「は……?」
「だから、お前は潰す。微塵に! 砕いて!! 潰し尽くすッ!!!」
 わけがわからない。理解出来ない。王翦にわかることはひとつ。
「あっし、死ぬの?」
 滅びの時が来たということだけ。
「あっしが? なんで? へーか、いや、そんな――嫌だ! やだぁ!!」
 菘は冷たい瞳で睨んだ。ただ一言だけ。
「誰に縋ってるのかしらね。お前は」

 滅びが雨となって落ちて、青い畜生も消し炭に変えた。
 勝利の高笑いはなかった。それを聞かせるべき者たちはここにはいない。
 虚しい勝利だった。……それでも、終わりはもたらされた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年01月22日


挿絵イラスト