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殲神封神大戦⑭〜潔斎行路は甲斐なきを否定す

#封神武侠界 #殲神封神大戦 #殲神封神大戦⑭ #封神仙女『妲己』

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#封神仙女『妲己』


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●仙界・山岳武侠要塞「梁山泊」
 封神台建立こそが『蠱毒の贄』たる封神仙女『妲己』の嘗ての生命の使い方。
 仙界の桃花のみを食していた彼女が、酒池肉林に戯れることで生まれる香気は万物を魅了するものへと変え、多くの殺戮と悪徳に手を染めたのは全てがオブリビオン根絶がため。
 世に安寧を齎すために、あえて人身御供となって生命を捧げることによって封神台は築かれた。
 人の手によって討たれるということこそが最も重要なことであった。
 かつての彼女に其処までの悪徳が存在していなかったのだとしても。
 オブリビオンの根絶という旗印の元に行った所業は決して許されるものではなかった。

 なによりも封神仙女『妲己』自身がそれを赦すことはなかった。
 他の誰でもない彼女自身がそれを理解していた。
「されど、封神台建立を命じた仙翁達は何故か死に、封神台は破壊され、私はオブリビオンとして蘇生され、『異門同胞』に縛られて……こんな事なら、私は何の為に……」
 意味のない生であった。
 オブリビオンを根絶するために散らした生命。
 そのためならば生命を惜しむことはなかった。けれど、今の彼女はオブリビオンである。どれだけ生前が高潔な意志を持っていたのだとしても、『今』を蝕む存在である。

『今』に在るという事実だけで世界に破滅を齎す存在へと成り果てた。
「それでも、私は願います」
 彼女のユーベルコードはどれもが自動発動型。
 封神仙女『妲己』が望むとと望まざるとて発動し、彼女の危機全てを阻害し、自死すら阻む。
「誰か、私を殺してください」
 涙が流れる。
 己が世界に仇成す存在となりて、それでも自死すら叶わぬ。
 ゆえに彼女は己を殺せる存在を願うのだ。

「もう、生きていたくはないのです……」
 彼女の心を苛むのは、全てが徒労に終わったという事実のみ。
 悪逆に身を染めて尚求めたものは、歪む必定であったというのならば、彼女の心を染め上げるのは絶望であろう。
 このまま存在すれば、必ず嘗ての己の再来となる。
 しかも、それは嘗てのようにオブリビオン根絶を成す封神台建立なき、徒に生命を散らすもの。

 生きた意味も。
 死した意味も。
 その全てが無意味。
 絶望図り知れぬがゆえに、それは誰からも理解できぬものであった。理解などできるわけがない。
 誰かのためになりますようにと願ったことが全て無意味であっただから――。

●殲神封神大戦
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。山岳武侠要塞『梁山泊』にて座す封神仙女『妲己』への道が開かれました」
 ナイアルテの瞳は爛々と輝いていた。
 もはや言葉は不要であろう。猟兵たちも見たであろう予兆。それは封神仙女『妲己』が嘗てオブリビオンを封じた封神台を建立するための人身御供であった事実。
 そして、オブリビオンへと成り果てたがゆえに、彼女に備わった自動発動型ユーベルコードと遠い未来に人界が宿星武侠を必要としたときの際に作成された山城である『梁山泊』が、封神仙女『妲己』の自死を許さない。

「彼女は死を願っています。オブリビオンへと蘇生され、また嘗て封神台建立のために備えられたユーベルコードのために自死すらできぬのです。さらに『梁山泊』の所々には泥のような濁流が流れており、その中から無数の武器が飛び回り、皆さんに襲いかかるでしょう」
 だが、その武器は『宿星武侠』を襲わないのだ。
 さらに『妲己』のユーベルコードは自動発動型でありながら、猟兵達に必ず先制攻撃を仕掛けてくる。

「一つ目は、『殺生狐理精』。彼女に憑依した『殺生狐理精』が彼女の攻撃力を5倍にも高めます」
 だが、攻撃の度に生命力を失うというデメリットが存在している。
「二つ目は、『流星胡蝶剣』。飛翔と共に武林の秘宝たる『流星胡蝶剣』で攻撃してきます。最後に『傾世元禳』。万物を魅了する『妲己』の香気を吸う者全てが彼女に対して有効的な行動を行ってしまいます」
 強い意志で抵抗する可能であるが、その一瞬が命取りの隙となるだろう。
 いずれにせよ、無数の武器が飛び回り、さらには封神仙女『妲己』の自動発動型ユーベルコードに対処しなければ、彼女に死を与えることはできない。

 これまでも猟兵達は見てきただろう。
 どれだけ高潔な人物も過去に歪めば、オブリビオンへと変わる。
 その在り方は望むと望まざると世界に破滅を齎す。
「封神仙女『妲己』は、オブリビオンの根絶のために己自身の生命を捧げました。ですが、封神台は破壊され、彼女自身もオブリビオンとなって世界の敵と成り果てました」
 どうしようもないことだ。
 救うことは出来ず、そして救いがあるとすれば、彼女を殺すことができるのは猟兵しかいないという事実である。

「お願いいたします。どうか彼女に死を。生きていたくはないと言った彼女に私達が与えられるのは死のみ」
 同情も、憐憫も、何もかも彼女を救うことはないだろう。
 だからこそ、彼女が望む死を与えなければならない。
 これは猟兵達が歩むべき潔斎行路。
 死を望む封神仙女『妲己』が歩むことができぬからこそ、猟兵達がもたらさなければならない。

 ナイアルテは深く頭を下げ、猟兵たちを送り出すのであった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『殲神封神大戦』の戦争シナリオとなります。

 山岳武侠要塞『梁山泊』に座す封神仙女『妲己』を打倒するシナリオとなります。
 彼女が存在する『梁山泊』は、泥のような濁流流れる山城ですが、無数の武器が飛び回り、さらには自動発動型ユーベルコードの先制攻撃が皆さんを襲います。
 これに対処し、死を望む封神仙女『妲己』に死をもたらしましょう。

 無数の武器が飛び回る『梁山泊』ですが、『宿星武侠』を襲うことはありません。

 ※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。

 プレイングボーナス……無数の武器が飛び回る中で、妲己の先制攻撃に対処する。

 それでは、封神台の破壊により全て水泡に帰したオブリビオン根絶の計画。その人身御供となり、さらにオブリビオンとして蘇生された封神仙女『妲己』のとめどなく流れる悲哀を止めるべく、彼女に死を齎す皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 ボス戦 『封神仙女『妲己』』

POW   :    殺生狐理精(せっしょうこりせい)
対象に【殺戮と欲情を煽る「殺生狐理精」】を憑依させる。対象は攻撃力が5倍になる代わり、攻撃の度に生命力を30%失うようになる。
SPD   :    流星胡蝶剣(りゅうせいこちょうけん)
レベル×5km/hで飛翔しながら、【武林の秘宝「流星胡蝶剣」】で「🔵取得数+2回」攻撃する。
WIZ   :    傾世元禳(けいせいげんじょう)
【万物を魅了する妲己の香気】が命中した生命体・無機物・自然現象は、レベル秒間、無意識に友好的な行動を行う(抵抗は可能)。

イラスト:碧川沙奈

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

笹乃葉・きなこ
●POW

相手からのユーベルコードは呪詛耐性、狂気耐性、除霊、浄化で対応
足りないならリミッター解除でアイテム要の紋のリミッターを解除

武器にはジャンプ、空中戦、野生の勘で対応して、武器落としのユーベルコードでなぎ払い

避けられるなら野生の勘を使って避ける

頭を捻るけど無駄に攻撃をしない

相手のユーベルコードの生命力30%の対処が無理そうなので、できるだけ妲己共々ユーベルコードでなぎ払いで攻撃するべぇ

なるべく妲己と武器を同時に狙える位置にいることを心がけるべぇ

両手を動かく感覚で左手は武器をなぎ払って、右手は妲己を攻撃するイメージだべぇ

楽にはするけど、過程はいてぇからなぁ!我慢しろよぉ!



 かつて仙翁によって付与された自動発動型ユーベルコード。
 それが封神仙女『妲己』の持つ全てであった。それは彼女の離反を恐れたがゆえである。
 如何にオブリビオン根絶のための命とは言え、人身御供。
 己の生命の可愛さに計画を御破算にされては叶わないと仙翁たちはユーベルコードを埋め込む。
 しかし、封神仙女『妲己』は己の生命を厭うことはなかった。
 どれだけの悪逆に身を染めようとも、彼女の中にある高潔なる意志は、オブリビオンという災禍を未然に防ぐため。

 人に討たれた彼女は封神台建立を為した。
「それも全て無意味……私の生命は、無意味でした。ですから、どうか殺してください」
 山岳武侠要塞『梁山泊』に流れる濁流より武器の数々が飛び出す。
 周囲に浮遊し、あらゆる外敵を排除する武装と、封神仙女『妲己』に憑依した『殺生狐理精』が彼女自身の自死すら許さない。

「楽にはするけど、過程はいてぇからなぁ! 我慢しろよぉ!」
 勢いよく宙を飛ぶ武器を蹴散らしながら笹乃葉・きなこ(キマイラの戦巫女・f03265)が山岳武侠要塞『梁山泊』を駆け上がっていく。
 手にした薙刀であらゆる武器を吹き飛ばし、それでもなお己に迫る封神仙女『妲己』と打ち合う。
 武器が軋む。
 打ち合う度に、これが自死を望む者の打撃かと疑うほどに重い。
 己の生を無意味と嘆く彼女にとって、オブリビオンとして蘇生されたことはあまりにも酷なことであった。

「ええ、私を殺してくださるのなら」
 痛みなど意味はないというように『妲己』は涙ながらに告げる。
 しかし、その打撃は痛烈なものであった。野生の勘を総動員してもなお、きなこは『妲己』の攻撃を受け止めるのに苦心していた。
 空中を飛び、己を狙う武器が邪魔でしょうがないのだ。
「奇術を見せてやるべ」
 笹乃葉式気功術(ササノハシキキコウジュツ)――それは不可視なる未知の生体エネルギーを放つことによって片腕で宙を舞う武器を叩き落とす。

 さらにもう片方の手で『妲己』へと打撃を打ち下ろすのだ。
「これでも足りないべ……ならっ!」
 要の紋……きなこの体に浮かび上がった紋の力が開放されていく。
 瞳に輝くユーベルコード、そして、目の前の涙を浮かべながら己の死を願う『妲己』。
 それらに応えるべくきなこは、己の手にした薙刀を旋風のように回転させながら武器の全てを叩き落としていく。

 飛ぶ。
 高く。『妲己』よりも高く飛ぶ。きなこにとって、彼女の中にある虚しさや悲しさは晴らすことはできない。
 けれど、彼女が自死を望み、また彼女がオブリビオンであるというのならば、嘗て在りし高潔な意志を貴ぶ。
 それは理解できることだからだ。
 誰かのために己の生命を使う。それは無意味と貶めるのがオブリビオンという存在であり、オブリビオン・フォーミュラ『張角』の齎すユーベルコード、『異門同胞』である。

「その縛りを解いてやるべさ!」
 未知の生体エネルギーが頭上で膨れ上がっていく。
 両手を組み、一つの鉄槌のごとき巨大さまで膨れ上がったエネルギーは質量を持ち、憑依した『殺生狐理精』さえも躱せぬ広範囲の一撃を炸裂させる。
 その一撃は山岳を砕く一撃。
 きなこができる『妲己』への手向けの一撃であった。
『梁山泊』の一部が瓦解するほどのきなこの迸る生体エネルギーは、まさに高潔な魂すらも歪ませ、縛るオブリビオンへの怒りとなって叩き込まれたのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
つくづく不幸体質ねぇ。あたしが終わりにしてあげるからもう泣かないの。

「オーラ防御」に「狂気耐性」と「呪詛耐性」を重ねて誘惑の術をかわし、薙刀を振るって飛び来る流星胡蝶剣を「受け流し」「ジャストガード」する。
飛び来る飛刀をかわしながら紡ぐは、宝貝『太極図』。
「全力魔法」虚無の「属性攻撃」「範囲攻撃」「浄化」「仙術」「道術」を乗せて。

『太極図』が起動すれば、傾世元禳の誘惑の術も、流星胡蝶剣も機能を停止する。
ユーベルコードさえなければ、妲己はただのか弱い仙女でしかなくなるわ。
これほどの美人さんを泣かせるままには出来ない。
己が死が望みなら、オブリビオンという魂を縛る枷を壊してあげましょう。
「串刺し」。



 封神仙女『妲己』は嘗て、封神台建立のための人身御供となった。
 それは彼女の高潔な魂があればこそであろう。誰もが誰かのために生命を捨てることができるわけではない。
 己の生命でもって多くが救われるのならばという献身。
 確かに、彼女の献身は本物であった。
 如何に仙翁たちが彼女の離反を恐れ、悪逆に身を染めるためのユーベルコードを埋め込んだのだとしても、きっと彼女は、彼女自身の意志でもって封神台建立を為さしめただろう。
「しかし、私の生命は無意味でした。封神台は破壊され、オブリビオンが跋扈している。私は、この光景を見るために生命を捧げたわけではないというのに……」
 彼女の嘆きは尤もであったことだろう。

 生命を捧げた甲斐がない。
 あまりにも無情すぎる。オブリビオン・フォーミュラ『張角』のユーベルコード『異門同胞』は嘗ての高潔な意志をもつ存在すらも従わせる。
 山岳武侠要塞『梁山泊』さえも今はオブリビオンの手の中にある。泥の如き濁流より飛び出す様々な武装が宙に飛び、『妲己』を護るように迫る猟兵たちへと襲いかかるのだ。
 鉄槌の如き打撃を受けても尚、彼女は立つ。
 自死を望みながら、それを許されぬ彼女は涙を流すしかない。
「つくづく不幸体質ねぇ。あたしが終わりにしてあげるからもう泣かないの」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は目の前に迫る秘宝『流星胡蝶剣』の剣閃を見やる。

 放たれる斬撃の鋭さは凄まじきものであった。
 薙刀をふるって武装を叩き落としながら、振り下ろされる『流星胡蝶剣』の鋭さは言うまでもない。
「私自身の不幸など。オブリビオンの犠牲になる人々の苦しみに比べたのならば……」 
 それは微々たるものである。
『妲己』は己の生の無意味さを嘆く。
 生命を捨てても、オブリビオン根絶は為さしめることはできなかった。悪逆に身を染め、数多の生命を巻き込んでも尚、できなかったのだ。

「あなたほどの人物を泣かせるままにはできない」
 首にかけた太極図の立体ペンダントトップから涙無き終焉の冷気が放たれる。
 それは宝貝『太極図』(タイキョクズ)。
「万物の基は太極なり。両儀、四象、八卦より生じし森羅万象よ。その仮初の形を捨て、宿せし力を虚無と為し、悉皆太極へと還るべし! 疾!」
 全てのユーベルコードの維持を不能とするユーベルコード。
 それはかつて埋め込まれた自動発動型のユーベルコードすらも打ち消すことだろう。
『傾世元禳』も『流星胡蝶剣』も、あらゆるユーベルコードが、この冷気の前には無意味となる。

 ゆかりは一歩を踏み出す。
 目の前のオブリビオン、封神仙女『妲己』は救われなければならない。
 彼女が嘗てなげうった生命は、たしかに一時にしかすぎぬ平穏をもたらしたのだろう。
 だが、たしかに彼女は為し得たのだ。
「つかの間の平穏であったとしても、あなたは為した。それを誇ることもできず、無意味と泣くことなんて在って良いはずがない」
 己の死を望むオブリビオン。
 それが封神仙女『妲己』である。悲しいということは簡単である。
 しかし、終わらせなければならない。

 彼女が存在するだけで封神武侠界は破滅へと一途を辿る。それこそが彼女の望むところではないのは言うまでもない。
 だからこそ、ゆかりは己の手にした薙刀を突き出す。
 目の前の『妲己』はユーベルコードの維持が出来ぬただの仙女。そのか弱き存在を突くことに躊躇いがなかったわけではない。

「己が死が望みなら、オブリビオンという魂を縛る枷を壊してあげましょう」
 放たれる一撃は『妲己』の胸を貫く。
 悲しさは絶たなければならない。
 いつまでも世にとどまらせてはならない。この『梁山泊』に流れる泥の如き濁流のようになってしまうから。
 だからこそ、放たれた一撃は、清流を呼び込むための一撃となる――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シーザー・ゴールドマン
オブリビオンとなっても生前の価値観を失わず自死すら願うか。
幹部クラスの存在としては稀有な類例だね。

封神台建立を無意味に感じているのかもしれないがそれは間違いだ。
殷周革命の時代に建立されたとすれば千年以上の時をこの世界の人々はオブリビオンの脅威から免れたのだからね。
それは誇ると良い。犠牲になった者たちが許すことはなくとも救われた者たちは確実にいるのだから。

まあ、お話はここら辺にしておこうか。
それでは君の望み通りに最期を贈ろう。

先制対策
無数の武器&敵WIZUC
周囲から無数に湧く武器、そして牙を剥く地形や自然現象。
それら全てを見切り、オーラセイバーを振るって逸らし、破壊して凌ぎます。(自身への未了は抵抗)
(見切り×瞬間思考力×戦闘知識×功夫)

『アイオーンの隔絶』を発動。
その後のすべての攻撃をこちらの戦闘力に変えて妲己に超絶的な一撃を振るいます。

さて、封神台を建立した仙人達は死んでいるという事だが……何があったのか。とても興味深いね。



 泥の如き濁流が流れ込む山岳武侠要塞『梁山泊』。
 猟兵の一撃に寄って砕けた山岳なれど、その濁流はただ流れの形を変えるのみ。飛び出す武器の数々は宙を舞って侵入者たる猟兵たちへと迫る。
「此処までしてもなお私は死ねない……これが私の咎だというのならば、それを受け入れましょう。ですが……」
 それでも封神仙女『妲己』は生きていたくはないと嘆く。
 胸を穿たれて尚、彼女は死ねない。
 オブリビオンとして蘇生した彼女は、生前の高潔な魂のままにユーベルコード『異門同胞』によって縛られたままだ。

 自動発動型のユーベルコードは、彼女の意志とは無関係に悪逆に身を染める。
 それこそがオブリビオン根絶のために封神台建立を目指した仙翁たちの術策。それが今、封神武侠界そのものを脅かす存在となったのは皮肉以外の何物でもなかった。
「オブリビオンとなっても生前の価値観を失わず、自死すら願うか」
 シーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)は目の前に対峙する封神仙女『妲己』の放つ万物を魅了する香気によって操られた武器の数々をオーラセイバーでもって逸し、破壊する。

 魅了の力は凄まじい。
 シーザーですら、気を抜けば魅了されるだろう。
「幹部クラスの存在としては稀有な類例だね」
「それも意味無きこと。私の生に意味はなく。私はもう生きていたくない。私の生を犠牲にしてもオブリビオン根絶は為されなかった。この空虚を見るために私は蘇生されたのでしょうか」
 人身御供の意味すらなく。
 あるのは人々がオブリビオンに虐げられるという事実のみ。
 生命を賭して無意味とさえあざ笑う過去に彼女の心は擦り切れていた。

「それは間違いだ」
 シーザーはオーラセイバーを振るいながら、迫りくる武器の数々を撃ち落とし告げる。
 封神仙女『妲己』はたしかに生命を賭した。
 結果は封神台の破壊と、再び現れたオブリビオンたちの跋扈。
 しかし、シーザーは否定する。
 その空虚をこそ否定しなければならない。
 確かに封神台は破壊された。しかし、つかの間であったとしても平穏は確かにあったのだ。

「君が生命を賭した意味はあった。千年以上の時、この世界の人々はオブリビオンの脅威から免れたのだからね。それを誇ると良い」
「ですが、それ以上の悪逆に私は身を染めました。これがその咎。私の生の無意味さを見ることこそ、罰」
 数千数万という生命を巻き込んでの封神台建立。
 今にして思えば、それは正しかったのか。
 大を救うために小を切り捨てただけに過ぎなかったのではないか。犠牲になった生命は己を恨むだろう。
 魂の平穏などあってなきものであるはずだ。

「犠牲になった者たちが君を赦すことはなくとも、救われたもの達は確実にいるのだから」
 シーザーが走る。
 オーラセイバーの煌めきが描く軌跡は『梁山泊』に明滅する。
「それでは君の望み通りに最期を贈ろう――来たまえ」
 その瞳がユーベルコードに輝く。
 放たれる武器の斬撃を受けたシーザーは、しかしかすり傷すら負っていない。それは体を覆う魔力。オド。
 嵐のように襲い来る武器の数々を受けながら、彼は平然と歩を進める。

「君が無意味といった生。それは君にとってそうであるのかもしれないが、他者にとっては違う。意味ある生であった。君が居なければ、後に続く歴史も、生命もなかった」
「それでも失われた生命は戻りません。回帰しないのです。だから」
「ああ、だからこそ、君に贈ろう。君が望むものを。あらゆる悪逆に身を染めたからこそ、望むものを」
 シーザーは超克する。
 あらゆるものを越えていくオーバーロード。その力を持ってオドに蓄えられた武器の斬撃の力が集約されていく。

 それこそが、アイオーンの隔絶(デウス・アルムム)。

 膨れ上がった力は彼のオーラセイバーに蓄えられ、極大の力となって振りかざされる。
 彼の思考を染めるのは、封神台建立を為さしめんとした仙人達の存在である。
 既に彼等の姿はない。
 何があったのかと興味深げにシーザーは考える。
 目の前の封神仙女『妲己』は死を望む。放つ光の奔流は、宙を舞う武器の悉くを飲み込んで『妲己』へと放たれる。

 それは超絶なる一撃。
 迫る脅威の全てを薙ぎ払う。シーザーは、この一撃を手向けとする。高潔な魂を持ち、己の生命をもって誰かのためにと願った彼女の望むものを与える一撃を――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜鳥・藍
飛び回る武器が厄介ですが、何とか避けて彼女の元にたどり着きましょう。
第六感による回避や、最悪念動力で強制的に一時的な操作をして動きを阻害、致命傷さえ受けなければ。

香気には呪詛・狂気耐性で耐えます。
ただ悲しくて悲しくて、終わらせるために武器を向ける事に躊躇いがないのは既にある種の狂気なのかもしれないけど。
彼女に届く距離にたどり着いたなら青月を構え、雷光天絶陣を放ちます。

全てが徒労に終わるわけではない。私はそう思います。
少なくとも今あなたがこうしてある事が誰かの心に何かを灯すことになると思います。それはどういうものになるかはわかりませんが。
でも過去に学ぶ事ができるのは今を生きてる人の特権で……。



 極大の光の刃が山岳武侠要塞『梁山泊』に振り下ろされる。
 その一撃でもって泥の如き濁流から飛来する武器の悉くが消失し、さらには封神仙女『妲己』をも飲み込んでいく。
 しかし、その極大の光の中にあっても強大なオブリビオンとしての格を持つ封神仙女『妲己』は万物全てを魅了する力によって、致命的な打撃を回避せしめていた。
 いや、回避しようとしていないのだ。
 彼女が望んでいるのは死。
 己の生命を賭した術策は、封神台の破壊によって無意味へと堕した。
「ああ、私は生きていたくない。ただ、死を望むばかりであるというのに。未だ私は死ねない。死ぬことが許されない。人の手に寄って討たれるまで、私は……」

 己を殺せる者。
 それを求め、無意味に生きることを彼女は望んでいないのだ。
「全てが徒労に終わるわけではない。私はそう思います」
 泥の如き濁流から飛び出す武器の数々を念動力でもって止めながら、夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)は崩れた山岳の大地を蹴って封神仙女『妲己』へと向かう。
 万物を魅了する『傾世元禳』の力は強大である。
 抵抗出来るとは言え、あらゆるものが『妲己』の生命を脅かす物を阻害しようと、障害となって藍を阻むのだ。

「少なくとも今あなたがこうしてある事が、誰かの心に何かを灯すことになると思います」
 それがなんであるかを藍は知らない。
 どういうものであるかを伝えることができない。彼女は香気に耐えながら、悲しげな瞳を濡らす封神仙女『妲己』を見据える。
 彼女の瞳にあるのは悲哀だ。
 己の生命が無意味に終わったことに対してではない。
 役目とは言え、悪逆に身を染めて、数多の人々の生命を巻き込んで為した封神台建立。
 それはたしかにオブリビオン根絶のために礎。
 しかし、許されることではない。

 その咎が今彼女がオブリビオンとして蘇生されたことであるというのならば、皮肉でしかない。
 藍は振るう力を躊躇わない。
 瞳をユーベルコードに輝かせ、その手にした宝貝『雷公鞭』を掲げる。
 悲しい。
 悲しさしかない。此処にあるのはもう、それしかないのだ。
 生命を使った報いが、これであるのならば、その仕打ちはむごたらしいものであったと言わざるを得ない。

 だからこそ、藍は悲しいと思うのだ。
 けれど、その悲しさを知れど、彼女はユーベルコードを振るうことをやめない。
「過去に学ぶことができるのは今を生きてる人の特権で……」
 前に進むこともでもある。
 背後に続く轍を振り返ることはあるだろう。何がいけなかったのか。何を変えるべきあったのか。
 それは詮無きことであるのかもしれない。

「けれど、それでも『今』を生きる人達のためには」
 振るうは雷の力。
 宝貝「雷公天絶陣」の一撃が涙に濡れる『妲己』の体を討つ。終わらせるために武器を向けることに躊躇いがないのは既に在る種の狂気なのかもしれないと藍は自問自答する。
「ええ、良いのです。私を殺してください。それで救われる生命があるのならば、私はもう生きていたくはない……」
 溢れる涙は死への恐ろしさ故ではない。

 己がオブリビオンとして生命を奪うことへの危惧のみ。
 その憂いに寄り添うことができるから、優しさという。己ではない誰かのために添うことができるのもまた人である。
 故に、藍の放つ一撃は、その過去の化身を穿つのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アドナ・セファルワイド
確かに貴様は罪を成したのだろう
大事の為の礎として、悪逆を尽くし討たれた
だが、功罪の多数で人の勝ちが決まるとは言わぬが……先に言った者もいるだろうが、貴様が封神台を建立したことで未来にて救われた者が確実に存在する事だろう
オブリビオン無き世界にて真っ当に生を謳歌した命の数が貴様の正義だ

ホワイトレクイエム・D.Dで『飛び回る無数の武器と先制攻撃を受けた未来』という因果を破却し、回避
そのまま皇帝天鎧でそーシャールディーヴァのネットワーク染みた技術を展開し、UCを複合させていく

見よ、貴様が救ってきた未来に生きた者の命の数とその凡庸ながら輝かしい生を
其れすら直視せず己を悪だと断じるのは最早悪以下の存在だ
眼を逸らすな、その目に焼き付けろ
貴様の正義(つみ)の数をな

真の姿に変身し、時間凍結氷結晶で作られた衣装を纏ったソーシャルディーヴァとなり、『救われた未来』を妲己にあくまで説き伏せる

流した血も涙もあるであろう
だが、それを超える笑顔と幸福を莫大な数だけ、貴様は齎した
其れが、貴様に与えられた正義の花束だ



 雷の力が封神仙女『妲己』の体を穿つ。
 されど彼女の身に宿した『殺生狐理精』は、死を否定する。
 己の生命の三割を削るユーベルコードであったとしても、自動発動型であるがゆえに、封神仙女『妲己』は自死を望みながらも、それを阻害されてしまう。
「ああ、私は……もうどうしようもなく自動的なものなのです。だから、どうか躊躇いは必要ありません。罪ありき者に与えられる慈悲は唯一」
 そう、死だけである。

 しかし、自動発動型ユーベルコードは、その自死すら拒むのだ。
 凄まじい速度でもって損傷を気にもとめず、いや……傷が開き血潮が噴出しながらも憑依した『殺生狐理精』は『妲己』の体を使って猟兵達に迫るのだ。
「確かに貴様は罪を為したのだろう。大事の為の礎として、悪逆を尽くし討たれた」
 それが封神台建立の真実である。
 どれだけの生命が失われ、血が流れ、そして悪逆に染まったのかは言うまでもない。
 アドナ・セファルワイド(セファルワイド初代にして最後の皇帝・f33942)はそれを否定しない。

「だが、功罪の多数で人の価値が決まるとは言わぬが……先に言った者もいるだろうが、貴様が封神台を建立したことで未来にて救われた物が確実に存在することだろう」
 人の生命は繋がれていく。
 紡がれ、そして、多種多様な枝葉のように広がっていく。
 今ある現在は、その枝葉。
 誰かのためになりますようにと願ったことが『今』につながっている。
「だからこそ、この無意味な生に終わりを欲するのです。封神台は破壊され、オブリビオンは跋扈しています。あの流れた生命、私の犯した大罪は灌がれなければなりません」
 打ち据える一撃一撃が重たい。

 か細き仙女が放つ一撃とは到底思えなかったことだろう。
 さらに『梁山泊』にて放たれる無数の武器がアドナに襲いかかる。
「皇帝の名の元に宣言する。総ての叡智を求め識る歴史と凍結を司りし蒼き竜の王よ、汝の氷と時を我が鎧と魔導書としよう」
 凍てついた時の果てに書を司る竜は識を我に与える(グレイシャルロード・ブックドミネーター)とアドナは告げる。
 全身を時間凍結氷結晶に多い、自身の帝国が辿り得た全並行世界を連結していく。

「見よ、貴様が救ってきた未来に生きた者の生命の数と、そおの凡庸ながら輝かしい生を」
 アドナが告げる『今』はたしかに『妲己』が礎となり、そして同じく流れた生命が紡いだものである。
 束の間であったのだとしても、オブリビオンの存在しない世界であった封神武侠界は平穏であったのだ。
 その平穏の中で育った生命がある。
「其れすら直視せず己を悪だと断じるのは最早、悪以下の存在だ。目をそらすな、その目に焼き付けろ。貴様の正義の数をな」
 
 正義とは罪である。
 罪とは正義でもある。己の掲げた正義に殉じた生命を思うのであればこそ、アドナはオーバーロードへと至る。
 時間凍結氷結晶は鎧へと姿を変え、『救われた未来』を示し続ける。
「それでも私は死にたいのです。見たくはないのです。失われる生命も、失われてしまったがための『今』も」
 封神仙女『妲己』は自死を望む。
 しかして、それはただ暗澹と死すことが出来ぬことを示す。抵抗の意志はない。戦意もない。

 されど、彼女に憑依した『殺生狐理精』が許さない。
 どれだけの未来を示したとしても、打倒する子事に代わりはない。瞳にあるのは哀しみと諦観のみ。
「流した血も涙もあるだろう。だが、それを超える笑顔と幸福を膨大な数だけ、貴様はもたらした。それが、貴様に与えられた正義の花束だ」
 ならばこそ、終わらせなkれればならない。
 放たれる一撃は、天に飛翔し直上より放たれる一撃。
 天の星は希望の数。
 煌めく星々があるかぎり、この封神武侠界はオブリビオンの好きにはさせないだろう。

 かつて生命を賭してまで願ったオブリビオン根絶。
 それを成すために散った生命を思えばこそ、『妲己』は涙を流す。生命は回帰しない。なかったことにはならない。
 死したことも、失われたことも。
 何もかもが因果の果に消えることなく刻まれていく。
「失っても、失っても、それでも私は私の目で『今』を見なければならないのですね」
 どんなに己のたどった生命が無意味だったとしても。
 失われた生命を思うのならばこそ、それから目を背けてはならない。

 輝くユーベルコードの一撃が封神仙女『妲己』を飲み込んでいく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ココ・クラウン
ぼ、僕…猟兵になったら怖い人たちと戦うんだと思ってた
まさかあんなに悲しそうな女の人と…
シュガーも泣いてるの?
乙女に寄りそうユニコーンには辛いけどがんばろう、ね(撫で)

わあ、すごい戦場…時間をかけるほど不利になっちゃう
シュガーに乗り、ガジェットのレイブンと共に武器をなぎ払って前進

妲己さんの攻撃がくる…!
僕の騎士レイブン、1度でもいいから武器受けで時間を作って
飛翔する彼女めがけてUC
シュガー跳んでっ
星屑の道で一気に距離をつめ、王子の剣で攻撃

罪のない人じゃない でも怖い人でもない
ここに来るまでに見た、この世界の景色や人々の宴
僕にはどれも眩しかった
この『今』を守りたい気持ち、伝わらなくても剣に込めるよ



 猟兵たちの猛攻の果に封神仙女『妲己』は目を開く。
 未だ瞳から涙は流れ続ける。
 しかし、それは与えられた傷の痛みによるものではない。
 彼女が涙するのは、無意味に散った数多の生命たちへの贖罪のため。贖う方法も、何もない空虚なれど。
 それでも彼女は涙を流しながら『今』を見つめる。

 己がもたらした未来がある。
 それは決して彼女が望んだ形ではないけれど、彼女の目は開かれている。そらされることなく真っ直ぐに。
 そんな封神仙女『妲己』を見やり、ココ・クラウン(若葉星・f36038)は僅かに戸惑う。
「ぼ、僕……猟兵になったら怖い人達と戦うんだと思ってた」
 けれど、彼が見る『妲己』はただ悲しそうな人でしかなかった。
 涙を流し、己の死を望む存在。
 過去に歪み、そしてオブリビオンとしてユーベルコード『異門同胞』に縛られながらも、今を憂いている。

 そんなオブリビオンが存在するとは思いもしなかったのだ。
 乙女に寄り添う『シュガー』と名付けられたユニコーンの瞳にも涙があることをココは知り、寄り添う。
 撫で、その瞳から零れそうな涙を拭いながらココはユニコーンに乗り、戦場である山岳武侠要塞『梁山泊』を駆け上がっていく。
 砕けた山岳のあちこちから流れ出る泥のような濁流より飛び出す武器の数々がココを襲う。
「わあ、すごい戦場……時間を掛けるほど不利になっちゃう……シュガー、辛いだろうけどがんばろう、ね」
 首を撫で、ココは山岳を共に蹴り上がっていく。

 迫る封神仙女『妲己』の手にあるのは秘宝『流星胡蝶剣』である。
 その剣閃の煌めきは凄まじく、ココはたじろぐだろう。恐れもある。けれど、ココは精悍な黒騎士の魔導人形に命じる。
「僕の騎士レイブン、時間を作って!」
 迫る武器を魔導人形は打ち落としながら、迫る『妲己』へと向かう。

 けれど、その斬撃は魔導人形をしても防ぎきれなかった。
 斬撃が魔導人形の鎧を刻む。
 あ、と思う暇もなかっただろう。けれど、ココにはそれだけでよかったのだ。己が駆る愛馬はユニコーン。
 その頭上に輝くはユーベルコードの輝き。
 輝く波動が放たれ、『妲己』へと迫る。
「ああ、ダメです……それでは、私には」
 迫る波動を躱す『妲己』。
 彼女がどれだけ自死を望んでいたとしても、彼女の自動発動型ユーベルコードがそれを許さない。
 これまで多くの猟兵達が彼女に打撃を与えてきた。けれど、既のところで消耗を減ぜられてきてるのだ。

 ユニコーンの角より放たれた波動も躱される。
 しかし、その軌跡には星屑の道が刻まれる。そう、それこそがココの狙いであった。手にしたのは王子の剣。
 勇気を振り絞る。
「道を開けよ! ……いくよ、『シュガー』」
 その言葉とともにユニコーンが嘶き、星屑の道を駆け抜ける。
「罪のない人じゃない。でも怖い人でもない」
 ココは知っている。
 この封神武侠界という世界を。彼にとって、この世界の景色や人々、宴はどれも眩しいものであった。

 だからこそ、己の生命をいとわず、誰かのためにと願った『妲己』のことを敵だとは思えなかった。
「この『今』を守りたい気持ち、伝わらなくても」
 剣に込める。勇気と、かつて『妲己』が願ったであろうこの世界を守りたいという気持ち。
 その重なり合った気持ちをココが持ち得た時、煌めくは星屑の剣。
 一撃が『妲己』に打ち込まれる。秘宝『流星胡蝶剣』を弾き、突き出されるレイピアの一撃。

 それは『妲己』に刻まれ、そして心同じくしたココへと伝わることだろう。
 誰かのために戦うということは、こんなにも誇らしいのだと――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

源波・善老斎
功罪相償えど、封神台の建立により平和が続いたのは事実。
ならば、生前の功を穢す前に送るが、この場における活人と心得たり!

時に飛び回る武器の腹を【足場】にし、時に「行善復鉤」の力で柄に掴まり、【軽業】を活かして濁流を越えるぞい。
殺生狐理精は甘んじて受けるが、心までは流されん。
「活人の心得」を胸に心を【落ち着け】、一撃に賭けようぞ!
これほどの力、他の猟兵方も心身共に負担を強いられたじゃろう。
ならば、功を紹ぎて殆うきを断つべし……行善天拳奥義が一、【断殆功紹拳】!

速やかに送るもよしと思うたが、敢えて申そう。
心中はお察しする。
しかし斯様に嘆いておっては、貴殿の功に救われた者に如何にして顔向けできようか!
善なる道と信じて行うたならば、終身……否、死して尚悔やむべからず!



 星屑の道が軌跡を描き、封神仙女『妲己』の身を穿つ。
 煌めく星の屑はキラキラと山岳武侠要塞『梁山泊』の空に流星の如き光を齎す。
 しかし、それでもなお封神仙女『妲己』は、その身に宿した『殺生狐理精』がために傷だらけになりながら立つ。
 血潮が流れ、涙を流しながらも『妲己』は死することのできぬ己の身を憂う。
「私はまだ死ねない。死にたいのに。生きたくはないのに。オブリビオンとして蘇生されてしまったがゆえに。『異門同胞』に縛られているがために」
『今』を見据える。
 彼女の瞳にあったのは、やはり悲しさだけであった。

 この『今』は彼女が生命をとして封神台建立を為したために紡がれてきた歴史でもある。
 破壊された今、それは無意味な犠牲であったと彼女は思うだろう。
 数多の生命を散らした。
 悪逆に身を染め、そして、術策とは言え、多くの犠牲を強いた。
「功罪相償えど、封神台建立により平和が続いたのは事実。ならば、生前の功を穢す前に送るが、この場における活人と心得たり!」
 源波・善老斎(皓老匠・f32800)は、『行善天拳』の使い手である。
 危険在るところに『行善天拳』は在る。
 ならばこそ、彼は封神仙女『妲己』を討ち滅ぼす。

 オブリビオンと猟兵だからではない。
 目の前の存在の生前の功績を知るからである。彼女は封神台が破壊されたことで、失われた生命が無意味であったと嘆いている。
 しかし、『今』を生きる善老斎は知っている。
 彼女がもたらした平穏は束の間。されど、得難き束の間であったことを。
「速やかに送るも良しと思うたが、敢えて申そう」
 彼に迫る濁流より飛ぶ武器の数々を足場に、空中を蹴るようにして崩れた山岳を飛ぶ。

 飛来する武器の柄を内功高めたるしっぽで掴み、ぐるりと軽業のように身軽な身のこなしでもって、躱して走る。
「何を……私は無意味な存在。『今』にあってはならぬオブリビオンの身。その身に何を申されましょうか」
 放たれる一撃は仙女の一撃とは思えぬほどに重い。
 しかし、善老斎は、その一撃を受け止める。甘んじて受けるのだ。しかし、その心は流されることはなかった。

 確かに『妲己』は同情して余るところがある生き方をしてきたのだろう。
 だが、彼は流されない。
 目の前にあるのは憐憫の情を抱くに値する存在である。しかし、彼の心にあるのは活人の心得。
「これほどの力、他の猟兵も心身ともに負担を強いられたじゃろう。ならば、功を紹ぎて殆うきを断つべし……行善天拳奥義が一、断殆功紹拳(ダンタイコウショウケン)」
 それはこの地に流れた血潮から、戦い続けた猟兵達の意志や心を引き継ぐユーベルコード。

 己が技を繰り出すに足る気を集める。
 煌めくはユーベルコード。
「心中はお察しする。しかし、斯様に嘆いておっては、貴殿の功に救われた者に如何にして顔向けできようか!」
 大喝し、その裂帛の気合は彼の拳へと集約されていく。
 超克し、そのさきへと至る力。
 それはかつて『妲己』が求めたオブリビオンなき世界。その平穏をかすかに見せるものであったことだろう。

「善なる道を信じて行うたならば、終身……否、死して尚悔やむべからず!」
 放たれる気功拳の一撃は、その身に憑依した『殺生狐理精』を穿つ。
 彼の拳は活人の拳。
 目の前の仙女は確かに死を望む者。
 されど、徒に拳を打ち込むものではないことを知っている。彼の拳は、彼女の中にある自動発動型ユーベルコード『殺生狐理精』を穿つ。
 気功は体内をめぐり、憑依している力の源を減ずる。

「これこそが活人の拳。汝の中にある悔恨も、懺悔も、呵責も、全て吾輩の拳が打ち払わん」
 裂帛の気合と共に放たれた拳の衝撃波が山岳を砕いて亀裂を走らせる。
 飛び交う武器が吹き飛ばされ、砕かれていく。
 その破片舞う中、善老斎は見ただろう。
 涙を湛える『妲己』の瞳を。
 そこにあったのは、たしかに彼が求める活人拳たる所以。哀しみと後悔に暮れる彼女の涙の一粒でも善老斎は拭うのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…私の故郷にも死が救いとなる者は確かに存在するもの
だから貴女の望みを否定はしないわ、封神仙女

「嵐の精霊結晶」を砕き自身を中心に暴風を放って無数の武器を弾き、
積み重ねてきた戦闘知識から敵UCの空中機動を見切り、
手傷は気合いで受け流し大鎌によるカウンターで迎撃してUCを発動

…やはり無傷という訳にはいかないか。ならば…

…来たれ、不変なる時の流れを遡るⅧの剣

大鎌に武器改造を施し時間逆行の神剣化を行い時の魔力を溜め、
攻撃される度に自身を時間流のオーラで防御して無傷の状態に巻き戻して切り込み、
時属性攻撃の斬撃波をなぎ払い妲己が生じる前の時間まで巻き戻す

…これ以上、苦しむ事はない。時を逆行して無に還るが良い



 死は救い。
 言うまでもなく生命は苦しみに満ちている。されど、苦しみがあるからこそ、楽しさを得ることができる。
 楽しさがあるからこそ、苦しみがある。
 どちらかだけではないことは確かだ。されど、苦しみだけを押し付ける者がいるからこそ、人の生は歪み果てることをリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は知っている。
「……私の故郷にも死が救いとなる者はたしかに存在するもの。だから、貴女の望みを否定しないわ、封神仙女」
 告げる言葉は、どこかそっけないものであったかもしれない。

 これまで常闇の世界で戦い続けてきた彼女にとって、それはごく身近なものであったからだ。
 死ぬことよりも辛いことが蔓延る世界。
 だからこそ、それを取り除きたいと願うことは、封神仙女『妲己』の思いと同じであったことだろう。
 リーヴァルディに襲い来る山岳武侠要塞『梁山泊』の濁流より飛び出す武器の数々。
 その切っ先が煌めき、リーヴァルディを貫かんと迫るのだ。
「私は、生きていたくない。私のつないだ未来が、『今』であるというのならば、私の生命だけではない……私の悪逆に巻き込まれ失われた生命もまた無意味になってしまう」
 失われる必要のなかった生命であったのだと封神仙女『妲己』は嘆くのだ。

 その嘆きを理解しながら、リーヴァルディは嵐の精霊結晶を砕き、自身を中心にして暴風を放ち迫る武器を弾く。
 しかし、その暴風を切り裂くのが秘宝『流星胡蝶剣』である。
 封神仙女『妲己』が手にした剣が煌めき、暴風を切り裂いてリーヴァルディへと一撃を見舞う。
 致命の一撃。
 その斬撃は確実にリーヴァルディの生命を奪うものであった。
「――私は、もう、血が流れるところを見たくない。私以外の誰かの血が……!」

 彼女自身では最早止めることのできぬ剣。
 それが自動発動型ユーベルコード。自死を願いながらも、阻害される力。ゆえにリーヴァルディは返す刃で大鎌を放つ。
「……やはり無傷という訳にはいかないか。ならば……来たれ、不変なる時の流れを遡るⅧの剣」
 手にした大鎌が黒剣へと変貌していく。
 それは時間遡行の神剣化。

 溜め込まれた魔力。
 それは神剣の力へと変わって行く。
 代行者の羈束・時間王の神剣(レムナント・クロノルーラー)。それこそが今、リーヴァルディの手にある力である。
「……名も無き時の支配者、天の獄に座する異端の神の力を此処に」
 放たれる『流星胡蝶剣』の連撃。
 目にも留まらぬ超高速の斬撃をリーヴァルディはかわせなかった。刻まれた傷跡から血潮が噴き出し、『梁山泊』を染め上げていく。

 だが、目の前の封神仙女『妲己』は見ていた。
 確かに己の剣がリーヴァルディの体を貫いていたはずだ。けれど、目の前のリーヴァルディは無傷。
「え……っ!?」
「……これ以上、苦しむ事はない」
 リーヴァルディは静かに言い放つ。手にした神剣が放つ斬撃波の一撃が、己に刻まれた傷跡ごと時間遡行によって巻き戻されていく。

 どれだけ斬撃を放っても、傷を刻んだという事実は巻き戻されていく。
「時を遡行して無に還るが良い」
 それだけリーヴァルディに出来る『妲己』への手向け。
 なかったことにはならない。
 けれど、その哀しみを徒に感じる必要もない。それが贖罪であるというのならば、リーヴァルディは死を持って彼女にそれを贈る。

 哀しみだけが空虚に染まった人生に彩られることなんて、在って良いはずがない。
 リーヴァルディは、その神剣を振るい、『妲己』の哀しみを取り除かんとする。今の彼女は死よりも辛き『今』を見つめている。
「悲しいこと、辛いこと、苦しいこと……その全てが生命に必要なことだというのならば、貴女の望みは叶えられるべき」
 煌めくユーベルコードの力が、リーヴァルディよりはなたれ、時間遡行の一撃が『妲己』を撃ち、その哀しみの澱を溶かすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

厳・範
故郷の危機に参戦しているお爺。
避けやすさから、人間形態での参加。

…仙女本人の望みだ。叶えるのが筋であろうよ。
魅了には、桃月桃源郷にて作りし宝貝『護桃花羽織』を展開。白い桃の花吹雪よ。

そして、武器には限界突破な見切りでの回避。どんな悪路とて駆け抜けよう。

わしは、確かに封神台があったときのことを知っている。そのときは、オブリビオンなき世で…人の争いはあれど、それ以上はなかったな。
だから、一つの礼を。貴殿は、確かに役目を果たしていたのだ。無意味などではなかった。

そのあとにUCによる攻撃を。すまぬ、痺れはしようが…貴殿の望みを叶える一手なのだ。



 どれだけ自死を望んでも死ぬことのできぬ体。
 それが自動発動型ユーベルコードを埋め込まれた封神仙女『妲己』であった。彼女自身が抵抗をしないのだとしても、身に備えられたユーベルコードの全てが死に抗う。
『傾世元禳』もまたその一つ。
 彼女の香気が触れたものは、万物全てを魅了してやまない。
 それは猟兵であっても変わらぬことであった。
 この山岳武侠要塞『梁山泊』の濁流より飛び出す武器の数々は封神仙女『妲己』を護るように飛翔し、迫る猟兵たちへと放たれる。
「どんなに望んでも、どんなに願っても。それでも私は死ねない。生きていたくないのに……『今』から目をそむけることもできません……さりとて、自死すら阻まれる……どうか、私を殺してください」

 その瞳にあるのは悲哀だけであった。
 自死すらきず、そして己が巻き込んだ多くの生命を無意味なものへと貶めたことへの後悔。空虚。その全てが彼女の瞳に浮かび、そして頬を伝う。
「……仙女本人の望みだ。叶えるのが筋であろうよ」
 瑞獣である厳・範(老當益壮・f32809)は人の姿を持って、砕けた山岳の地を飛ぶ。
 迫る魅了の香気を白い羽織の宝貝でもって弾き、大量の桃花の花弁が舞い散る。
 その桃花が封神仙女『妲己』へと範が贈る手向けであった。

 迫る武器の切っ先の尽くを躱す。
 桃花舞い散る山岳は、風が吹き、花嵐でもって世界に示す。
 今目の前に在るオブリビオン、封神仙女『妲己』に死を齎すことが救いであると。存在するだけで世界に破滅を齎す存在となってしまった彼女を救うことができるのは、他ならぬ猟兵であると示すのだ。
「わしは、たしかに封神台があったときのことを知っている」
 範は花弁と共に迫りくる武器を払って、『妲己』と視線を交わらせる。

「それは無意味なことでした。生命ばかりを散らし、私は悪逆に身を染めた。それが全て無意味。オブリビオン跋扈するこの世界の在り方が未来であったのならば、あの散った生命はいったいなんだったのでしょう」
「――」
 その言葉は空虚に塗れていた。
 悲しさに沈む言葉に範は口を開く。
「あの時代、オブリビオン無き世であった。人の争いはあれど、其れ以上はなかった。だから、一つ礼を」
 範は、宝貝を掲げる。
 確かに在ったのだ。

 束の間の、仮初の平穏だったのかも知れない。
 されど、たしかに平穏はあった。争いは起これど、無為に長引くことはなかった。
「貴殿は、たしかに役目を果たしていたのだ。無意味などではなかった」
 己と嘗ての親友が在りし世につながるものであったのだ。
 もしも、封神台が建立されていなければ、範と彼の親友の出会いもまた異なるものとなっていただろう。
 忘れがたきあの日々をもたらしたのは、他ならぬ『妲己』である。
 だからこそ、感謝する。

「貴殿の望みを叶える一手――」
 迸るは、宝貝「雷公天絶陣」。その雷撃が迫る武器を打ち落とし、『妲己』の身を穿つ。
 身をしびれさせる痛み。
 されど、それが滅びへの一歩。『妲己』は涙を浮かべながらも、己の生が無意味ではなかったと言う後の人々の言葉を胸に抱く。
 それだけが空虚を埋めるもの。

 哀しみは変わらない。
 無意味な生であったと嘆く言葉も変わらぬだろう。
 されど、その人の暖かさこそが、彼女の守りもたらしたものであるはずだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

董・白
彼女が妲己ですか…。
崑崙に居たころに話に聞いてはいましたが…このような悲しい定めを与えられているなんて…オブビリオン…張角許すまじです。

妲己…偉大なる先人よ。
その悲しい願い。私達猟兵がかなえます。
貴方の死も…そしてオブビリオンの根絶も。
なので…安心して、また眠ってください。今度こそ永遠に!!

飛んでくる無数の武器を『道術』でその位置と軌道を『情報集』しました。
タイミング合わせて『空中機動』であくろばてぃっくに回避しつつ先制攻撃を『オーラ防御』と『結界術』でいなします。

宝貝「五火神焔扇」で反撃です。
炎と風の『属性攻撃』です。

貴方の死は決して無駄にいたしません。
かならず。必ずです!!おさらばッ



 己の生命を賭してオブリビオン根絶のため封神台建立を為した封神仙女『妲己』。
 しかし、彼女の献身虚しく封神台は破壊され、オブリビオン跋扈する世が訪れた。多くの生命を巻き込んで為さしめられた建立は悪意によって打ち砕かれる。
 つかの間の平穏。
 その代価が数多の血であったというのならば、『今』を目の当たりにした封神仙女『妲己』の絶望は計り知れない。
 己自身もまたオブリビオンとして蘇生された。
 自死すら出来ぬ自動発動型ユーベルコード。
 あらゆるものを魅了する『傾世元禳』。
 その力によって、山岳武侠要塞『梁山泊』ですら、彼女の味方をする。

 猟兵との戦いによって崩れた山岳のあちこちから流れ出る濁流から飛び出す武器が飛来する。
「彼女が『妲己』ですか……」
 董・白(尸解仙・f33242)が僵尸として蘇り、仙人へと至る修行の中で彼女の話を聞いたことが在ったのだろう。
 そして、彼女の献身虚しくオブリビオンとして蘇る定めであったのならば、それを悲しいと思う心があった。

 そして何より許せぬと思ったのはオブリビオン・フォーミュラ『張角』のユーベルコード『異門同胞』である。
 縛られたオブリビオンは、自死すら叶わない。
「『妲己』……偉大なる先人よ」
「私を殺してください。私は生きていたくない。このような形で『今』を見たくない。私が求めたのは、こんな未来ではない」
 存在そのものが世界を滅ぼす。
 それがオブリビオンである。魅了の力と襲い来る武器の飛翔。それを白は大地を蹴って、舞うようにして迫る武器の峰の上に立つ。

「その悲しい願い。私達猟兵が叶えます。貴女の死も……そして、オブリビオンの根絶も」
 白は再び中を舞う。
 武器の切っ先がどれだけ迫ろうとも道術で、その軌跡と位置を正しく把握しているがゆえに、彼女が傷つけられることはなかった。
 結界術に寄って飛翔する武器を囲い、閉じ込めながら宝貝を手に取る。
『妲己』が望むのは死である。
 彼女は己の存在がオブリビオンとなって他者を、世界を傷つけることをこそ憂う。

 ならば、白は先人の道を護るために戦うのだ。
「なので……安心して、また眠ってください。今度こそ永遠に!!」
 白の瞳がユーベルコードに輝く。
 仰ぐは、宝貝「五火神焔扇」(パオペエゴカシンエンセン)。
 全てを塵に焼き尽くす猛火と狂風が荒ぶ。吹き荒れる炎と風は竜巻のようになって飛翔する武器を焼き尽くしていく。

 さらに炎は『妲己』へと迫るだろう。
 万物を魅了する『傾世元禳』の力は彼女自身では止められない。自動発動型であるがゆえに、彼女の制御にはないのだ。
「貴女の死は決して無駄には致しません。かならず。必ずです!!」
 ゆえに、広範囲の炎でもって封神仙女『妲己』を包み込んでいく。如何に魅了の力と言えど、熱風まではどうしようもないだろう。

 熱による痛みは彼女の体を消耗させるだろう。
「ええ、頼みましたよ」
 悲しみをたたえる瞳の向こうに白は見ただろう。
 あとに続くものに託すことしかできぬ彼女の希望を。絶望に打ちひしがれ、塗れても尚輝くものがあることを。
 ゆえに白は己の宝貝に渾身の力を込めて扇ぐ。

 炎と風が彼女の絶望を拭取さんと。
「おさらばッ――」
 別れの言葉は多くなくていい。彼女の意志を継いだのだから。ただ、それだけで救われるものがあるのだと知るのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

荒珠・檬果
この世界大好きで戦ってきましたが。
…放っておくなど、できないのです。私は猟兵として、彼女の望みを叶えます。

白日珠は長剣へ。それにて飛来する武器を受けて落とす。さらに、念のために防御用結界を張っておきます。

あなたの魅了は…宝貝『璃茉虹衣』にて防御します。あの桃源郷で作ったやつですからね!

で…反撃なんですが。白日珠を七色竜珠に戻してからのUCですね。
此度は『幻』としましょう。何を見せるかって、彼女がただの仙女として仙界にいたときのことですよ。
そしてそのまま、またもやビーム。夢の内に終わるのも、いいでしょう?

彼女がやったことは、決して無駄ではなかったと思ってますから。



 荒珠・檬果(アーケードに突っ伏す鳥・f02802)は封神武侠界を愛する。
 彼女はバトルゲーマーである。
 ゲームの中には三国志を題材にしたものが多く在るだろう。史実を学び、そこに生きた英傑たちの生き様をもって心に去来するものもあっただろう。
 人が生き、そして死ぬ。 
 そこで名を成すことも、何かを成し遂げることも尊いことだ。
 人の描く軌跡こそ、彼女にとって愛する理由に成り得るのだろう。

「この世界大好きで戦ってきましたが」
 封神台建立の真実をしった彼女は如何なる思いを抱いたことだろうか。
 失意と失望だろうか。
 封神仙女『妲己』のようにオブリビオンとして蘇生され『今』を見た絶望は計り知れないものがあると理解しただろう。
 数多の生命を奪い、血を流し、そして己の生命すらも献身によって失ったのが封神仙女『妲己』だ。

「私は生きていたくない。このまま世界を滅ぼすことなど、私にはできない。私は私の死を願います。どうか殺してください」
 数多の猟兵たちの攻撃は彼女を消耗させていた。
 血に塗れ、疲弊おびただしい顔。
 抵抗らしい抵抗はしない。けれど、彼女の体に埋め込まれた自動発動型ユーベルコードが彼女自身の死を拒むのだ。

 万物を魅了するユーベルコード『傾世元禳』がその一つである。
 山岳武侠要塞『梁山泊』すらも魅了する彼女のユーベルコードは、無数の武器の飛来となって檬果を襲う。
 手にした白日珠を長剣へと変え、檬果は飛来する武器を受けて叩き通す。
「……放っておくなど、できないのです。私は猟兵として――」
 彼女の手にあるのは、宝貝『璃茉虹衣』。
 桃源郷にて生み出された『妲己』の魅了の力に対抗するための宝貝である。万物を魅了するがゆえに、彼女は自死すら拒まれる。

「それが貴方達の為さしめること……どうか、私を」
 殺してください、とつぶやく声色は哀しみしか彩ってはいない。
 痛みが、苦しみが、彼女の体を苛む。
 しかし、彼女の心を苛むのは、全てが無意味、徒労に終わったという事実だけである。封神台建立のために悪逆に身を染めたことを憂うのではない。
 その悪逆に巻き込まれた数多の生命をこそ、彼女は憂う。

「貴女の望みを叶えます」
 白日珠が七色竜珠へと変わる。
 透明な衝撃波が放たれる。それは幻の力となって、『妲己』を穿つ。しかし、その一撃は体を傷つけるものではない。
 彼女が嘗て一人の仙女として桃花のみを食み生きていた頃の幻。
 懐かしきあの頃。
 もう戻れぬあの日。もう見ることも叶わぬ昔日。

 涙が溢れるのを檬果は見ただろう。
 どうあっても戻れない過去。過去に沈み、オブリビオンとして蘇生されたが故に、もう戻れない。
「七色よ、その力を発揮せん」
 ゆえに見せるのだ。
 七色の夢(ナナイロノユメ)を。せめて優しい夢を。悪夢ではなく。そして『今』という徒労に終わったかもしれない未来ではない、優しい過去を。

「ああ、私の生も終わる。無意味なる生も……」
 はらりと流れ落ちる桃の花の中で『妲己』は涙を落とす。
 けれど、檬果は言う。そうではないのだと。
「貴方がやったことは、決して無駄ではなかったと思ってますから」
 歴史の正しさは後の人々が決めることだ。
 確かに『妲己』は稀代の悪女として名を残しただろう。けれど、その真相を猟兵達は知っている。

 悪逆に身を染めながら、オブリビオン根絶のために身を賭した仙女の名を。
 悪女ではなく、封神の仙女としての『妲己』の名を。
 放たれる光条が『妲己』の体を貫く。
 せめて優しい夢の中に溶けて消えるといい。哀しみも、虚無感も、全て。そう檬果は願わずには居られなかった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
自分は妲己という敵をよく知らない。だが!
だがこの敵が!!この存在が!!!

鉄大団扇を【念動怪力】で【なぎ払い】風を生む。破魔の宝貝である団扇が自分の【闘争心】を煽り、風が襲い来る武器を、魅了の香気を【吹き飛ばし】妲己への道を押し開く。

妲己を侮辱している事は分かった!!!!

妲己の元へ駆けながら【早業】大鉄団扇を振るい【属性攻撃】破魔の暴風を、風の【斬撃波】を放ち妲己の動きを封じて鉄杭を【投擲】

壊せ、壊せ!壊して終わらせろぉオオ––––––––––!!!

妲己を【捕縛】。【念動力】で思い切り引寄せ途中で『終の崩壊』が発動。団扇を振るい、崩壊霊物質で妲己を呑み込む。
壊れて、崩れて、この世に溶けてしまえ。



 光条が封神仙女『妲己』の体を貫く。
 穿たれた体から流れる血潮。しかし、『傾世元禳』――万物を魅了する力が、それでも『妲己』の死を阻む。
 溢れる血潮はすくい上げられるように桃の花が運び、その傷口を埋めていく。
 不浄なるものを払う桃の花。
 流れた血潮は汚れているかもしれないが、それさえも取り払い、封神仙女『妲己』の傷口を塞いでいくのだ。
「ああ、私は……死にたい。生きたくはない。私の罪が、私の咎が、今もなお、この罰を与えるのならば」
 受け入れなければならないと知っている。
 けれど、それでも己の存在はオブリビオンである。存在しているだけで世界を破壊するのだ。

 それだけはどうしても許容できない。
 ゆえに、彼女は涙を流しながら求めるのだ、己の死を。
「自分は『妲己』という敵をよく知らない。だが!」
 山岳武侠要塞『梁山泊』を駆け上がっていく一筋の赤い閃光があった。
 それは朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)の燃える人工魔眼の軌跡であった。
「だが、この敵が!! この存在が!!!」
 手にしていたのは鉄大団扇である。念動力でもって巨大な鉄の団扇を仰ぎ、暴風を生み出し、迫りくる武器を吹き飛ばすのだ。
 それは桃源郷で生み出した破魔の宝貝。
『妲己』に対抗するために生み出した宝貝は、小枝子の闘争心によって仰がれ、あらゆる武器を大地に叩きつける暴風となって吹き荒れる。

 目の前の存在はオブリビオンである。
「『妲己』を侮辱していることは判った!!!!」
 過去の化身。
 オブリビオンは過去に高潔な魂を歪める。自死を望む『妲己』を阻み、そして『今』という惨状を彼女に見せ続ける。
 それは彼女が悪逆に身を染めてまでなし遂げたかった願い。
 オブリビオンの根絶。それが封神台建立。しかし、流れた血はあまりにも多かった。悲しむ権利すら彼女にはなかった。
 だからこそ、その流れた血を贖うために悪逆に身を落としたのだ。

 その結果が今の封神武侠界であるというのならば、その哀しみは理解できるものであった。
 駆け上がっていく小枝子が巻き起こす暴風は凄まじい勢いで『妲己』と武器を襲う。
 破魔の暴風はあらゆる魅了の力を吹き飛ばしていくのだ。
「壊せ、壊せ! 壊して終わらせろぉオオ––––––––––!!!」
 終の崩壊(ディースカスラ)。
 それは彼女の戦塵霊物質より放たれる崩壊霊物質。
 如何に万物が『妲己』を癒やすのだとしても、小枝子は、それをさせない。

 放たれる念動力が『妲己』の体を掴み寄せ、霊物質を取り込んだ暴風が彼女の体を飲み込んでいく。
「生きていたくはない……私は、『今』を見たくはない。私の生が無意味であったことよりも、失われた生命の無意味さを知りたくはないのです」
 崩れる体。
 抵抗の力を小枝子は感じることはなかっただろう。

「壊れて、崩れて、この世に溶けてしまえ」
 小枝子は破壊しかできない。
 オブリビオンを破壊することだけが彼女の存在意義であったから。目の前の『妲己』を救うことは己には出来ないと知る。
 だからこそ、彼女は力を振るう。
 ユーベルコードに輝く人工魔眼が燃える。

 そう、溶けてしまえばいい。
『今』を見たくはないと言った『妲己』。しかし、彼女が『今』を作ったのならば、彼女は今を生きる者たちの中に脈々と紡がれている。
 悪逆の存在としてではなく。
 つかの間の平穏であっても、穏やかなる日々をもたらした女性として。気高き魂の持ち主として、その献身をもって世界に溶けていくべきだと、その哀しみを小枝子は燃やし、滅ぼすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
この世界の歴史は詳しくないけど
封神台が機能していた期間は
どれくらいだったんだろうね
守られた命はあったと思うから
全てが無駄ではないと言いたいところだけど
オブビリオンとなってしまってはね

その身を犠牲にして世界に尽くした有り様
永遠にすべき方だと思うのですけれど
今の姿を見ると少々悩みますの

倒すしか方法が無いというのが虚しくはあるけど
犠牲を増やす訳にはいかないしね

飛び交っている武器は神気で時間を停めて防御
停めた武器を利用して
他の武器や妲己の流星胡蝶剣を防いで凌ごうか
抜けてくるならガトリングガンを盾にしよう

凌いだらUCを使用
生命体でも無機物でも自然現象でもない神気で凍らせよう
永遠の眠りとなる事を祈ってるよ



 封神武侠界の歴史は浅からぬものである。
 数千年に及ぶ歴史。
 仙界と人界。
 人と仙人。そして、オブリビオン。
「封神台が機能していた期間はどれくらいだったんだろうね……」
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は、封神仙女『妲己』がもたらした束の間ともいえる平穏の時間を噛みしめる。

 封神仙女『妲己』は哀しみにくれている。
 その瞳を見れば分かる。『今』というオブリビオン跋扈する世界を見て、己の生が無意味であったと覚ったからだろう。
 仕方のないことであったのかもしれない。
 自身の生命を惜しんだのではない。数多の流れた生命を憂うのだ。失われるべきでなかった生命が数多あった。
 その狭間で彼女は悪逆に身を堕しても尚、封神台建立を為さしめたのだ。
「全てが無意味であったなど……思いたくはないのです。ですが、オブリビオンは今も尚、世界を混乱に陥らせている」
 それが悲しいのだと、崩壊する体を推して『妲己』は秘宝『流星胡蝶剣』をふるう。

 彼女の意志ではない。
 全ては自動発動型ユーベルコードゆえに。あらゆる攻撃を受けて尚、万物を魅了する『傾世元禳』は彼女の死を拒絶する。
 身に宿した『殺生狐理精』は凄まじき戦闘力を引き出す。
「守られた生命はあった。全てが無駄だったことなんてなかったんだ」
 晶は告げる。
 オブリビオンになってしまった『妲己』の心の傷は言うまでもなく深いものである。
 身に宿した邪神もまた頷く。
「その身を犠牲にして世界に尽くした有り様。永遠にすべき肩だと思うのですけれど……」

 今の痛ましい姿は違うのだと思う。
 心も、在り方も、全て。己を悪為さしめても、誰かのためになりますようにと願った心が美しくないわけがない。
「倒すしか方法がないというのが虚しくは在るけど」
 犠牲を増やすわけにはいかないと晶は飛翔する武器を展開された神気でもって停滞をもたらし、止める。
 迫る『妲己』の手にした秘宝『流星胡蝶剣』の斬撃が凄まじい速度で晶に迫る。
 周囲に停滞した武器を蹴り上げ、その斬撃を防ぎながら晶は走る。

 哀しみだけが生の全てだなんて言わせない。
 彼女のもたらした平穏は、たしかに僅かな時間だけだったのかもしれない。けれど、人の営みとっては長きに渡るものであったのだ。
「だから!」
「さあ、貴方様に優しい微睡みを」
 邪神のユーベルコードが広がっていく。
 静寂領域(サイレント・スフィア)。それは神域に似た環境に変化させる。虚空より飛来するは、森羅万象に停滞を齎す神気。

「生命体でも無機物でも、自然現象でもない神気……これなら『傾世元禳』は作用しない!」
 万物を魅了する『傾世元禳』。
 その力を凌駕する停滞の力。
 それは凍えるほどの力であったことだろう。

 死を望み、そして、それが自らをもって成すことのできぬ『妲己』を晶は見やる。
「永遠の眠りとなることを祈ってるよ」
 せめて優しい夢を見て欲しい。
 嘗て在りし過去でもいい。
 オブリビオン根絶を為した後の、穏やかな日々を見るのもいい。

 それだけの偉業を彼女は為したのだ。
 ならばこそ、邪神の力は優しさでもってもたらされるべきであった。哀しみだけが占める生などあってはならない。
 辛苦があるからこそ、得られるものがあるはずなのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
飛来する武器を全身の格納銃器にて撃ち落とし
ワイヤーアンカーを第三の腕とし操る大盾にて弾き飛ばし
両の手に構えるは電脳禁忌剣と神殺しの力持つダンピール(ダクセ種族説明)鍛えし義護剣ブリッジェシー

迫る妲己の攻撃を両の剣でいなし
義護剣の●破魔の刃にて彼女に憑りつく「殺生狐理精」を両断
一時的に斬り祓い動きを封じ

このような形…
ですが、淑女の願い叶えるは騎士の務め

貴女は一度死を以て罪を裁かれた身
嘗てが無為に終わろうと、死する理由が過去と同じではなりません

未来へと歩む封神武侠界…贖罪でなく、その礎として死するのです
(嗚呼、口惜しい。御伽の騎士なら救うべきは…)

後事は、私達にお任せを

UC起動
巨大光刃振り下ろし



 世界が軋む音がする。
 停滞した時間の中、封神仙女『妲己』に憑依した自動発動型ユーベルコード『殺生狐理精』が、その力を持って動き出す。
『妲己』の体は消耗激しいものであった。
 数多の猟兵たちの攻撃を受けているのだから当然であり、『妲己』自身は抵抗すらしていなかった。
 だが、彼女の死を許さぬものがある。

 彼女の体に埋め込まれた自動発動型ユーベルコード。
『傾世元禳』は万物を魅了し、彼女の体を癒やす。
 秘宝『流星胡蝶剣』は彼女の敵を切り払う。
 そして、『殺生狐理精』は、暴虐なる意志でもって自死を望む『妲己』の肉体を操り、世界に破滅をもたらさんとする。
 さらには山岳武侠要塞『梁山泊』より放たれる武器の数々が一斉にトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)を襲うのだ。

「このような形……」
 トリテレイアは忸怩たる思いであったことだろう。
 飛来する武器を全身の格納銃器でもって打ち落とし、ワイヤーアンカーでもって大盾を翻し、弾き飛ばす。
 両手に構える電脳禁忌剣と神殺しの力持つダンピールが鍛えし義護剣『ブリッジェシー』。
「ですが、淑女の願いを叶えるは騎士の努め」
 崩れた山岳を蹴ってトリテレイアは進む。

 飛来する武器など障害にすらなりえない。
 封神仙女『妲己』は嘗て悪逆を為した。その悪逆は、後の世に伝えられるものである。しかし、それは封神台建立のために仕方のない犠牲であったのだろう。
 己を悪と為し、討たれることによって完成する封神台。
 その為に流れた血は大海を飲み込むほどであった。だからこそ、『妲己』は『今』に涙するのだ。

 破壊された封神台。
 跋扈するオブリビオン。
 それは彼女と犠牲になった生命が無意味であったことを示すものとなるからだ。
「私は生きていたくはない……どうか私に死を。死という名の救いを」
「貴女は一度死を以て罪を裁かれた身。嘗てが無為に終わろうと、死する理由が過去と同じではなりません」
 トリテレイアのアイセンサーがユーベルコードに輝き、手にした『ブリッジェシー』が『殺生狐理精』を切り裂く。

 一時的な祓いにしかならないことを理解していた。
 だが、それで十分であったのだ。
「未来へと歩む封神武侠界……贖罪ではなく、その礎として死するのです」
 無為な死では決して無い。
 在ってはならない。二度目の死が、そんな理由であってあならない。トリテレイアは口惜しいと思ったことだろう。
 目の前の封神仙女『妲己』は救われるべき存在である。
 打倒されるべき存在ではない。

 だからこそ、口惜しい。
 どうにもならぬ己の力の至らなさをトリテレイアは嘆く。
 されど、今、目の前で涙する『妲己』を存在させてはならない。
 開放されるユーベルコードの力。白い粒子が装甲から漏れ出し、手にした柄より形成されるは極大なる刃。
 コアユニット直結式極大出力擬似フォースセイバー(ダイレクトコネクトセイバー・イミテイト)を振りかぶったトリテレイアは、眼前の『妲己』へと、それをふるう。
 ふるうべき相手を違えない。
 それがウォーマシンたる己である。だからこそ、トリテレイアは、己の感情を押し殺す。

「後事は、私達にお任せを」
 振り下ろす一撃は、トリテレイアの電脳を焼き付かせるほどの感情でもって荒れ狂う。
 救うべきを救えぬ己の不甲斐なさ。
 しかし、それこそが救いとなるがゆえの皮肉。
 極大なる刃の一撃は、山岳要塞を切り裂き、過去に囚われた仙女を解放する一撃となるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
…仙翁…少しになる所だけど…まずは妲己だな…
…香気による魅了…香りを付けているのであればおそらく匂いで精神に作用…と言うところか?
…予め医療製薬術式【ノーデンス】で作った嗅覚を麻痺させる薬を服用しておこう…
…少なくとも効果を弱めることは出来るだろう…
…更に遅発連動術式【クロノス】で一定間隔で自動的に浄化復元術式【ハラエド】を発動するようにして周囲の香気とその影響を浄化だな…
…飛んで来る武器は障壁を張って防御…UCを発動する隙を確保して【投じられしは空裂く巨岩】を発動……
…術式組紐【アリアドネ】を周囲に展開して…障壁で防いで落ちた武器…さらに飛んで来る武器を妲己に射出してダメージを与えるよ…



 かつて封神台建立を目指したのは封神仙女『妲己』であった。
 己を悪逆の身にやつし、人に討たれることによって計画は成就された。彼女の離反を恐れたがゆえに、自動発動型ユーベルコードを埋め込んだ仙翁たちは今は消えた。
 それが何を意味するかはわからない。
 けれど、確かなことが一つだけある。
 オブリビオンとして蘇生された封神仙女『妲己』は涙を零している。

『今』というオブリビオンが跋扈する世界を憂いている。
 何よりも己が悪逆を成すことによって失われた生命の無意味さを悲しむ。
 万物を魅了する『傾世元禳』の力が世界を飲み込んでいく。極大の一撃を受けて尚、崩壊進む肉体を推し進める『妲己』の瞳からはとめどなく涙が流れ続けている。
 彼女は『今』を悲しむ。
 痛みではない。無為に終わった生命を悲しむ。
「哀しみだけが体を飲み込んでいく……私は、こんなことのために、数多の生命を散らしたわけではないというのに」
 一歩進む度に激痛が走るだろう。それでも、彼女は自動発動型ユーベルコードによって、あらゆるものを魅了しながら進むのだ。

「……香気による魅了……香りを付けているのであれば、おそらく匂いで精神に作用……と言うところか?」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は予め医療製薬術式『ノーデンス』で生み出した嗅覚を麻痺させる薬を服用して戦場に至る。
 すでに香気は彼女には意味を為さない。
 万物を魅了する『傾世元禳』は、無効化され、メンカルは一歩を踏み出す。
 封神仙女『妲己』にユーベルコードを埋め込んだ仙翁たち。
 その所在も気になるところではあったが、目の前の『妲己』をどうにかしなければならない。

 踏み出す一歩は互いの距離を詰めていく。
 メンカルはその度に遅発連動術式『クロノス』を配置し、浄化復元術式『ハラエド』を展開していく。
 周囲にある香気を浄化し、山岳武侠要塞『梁山泊』が封神仙女『妲己』の香気で魅了される事態を回復させていく。
「私は生きていたくない。私の存在が世界を破壊するのならば、私はなんのために悪逆を為したのか……」
 それさえも失ってしまえば、オブリビオンとしての彼女は完成する。
 稀代の悪女のままにオブリビオンとして猛威をふるうだろう。どれだけ、その身に献身を宿していたのだとしても、過去に歪められてしまえば、オブリビオンとしての性に勝てないだろう。

 世界を滅ぼすだけの存在など、彼女のひび割れた心を砕くには十分すぎるものであったからだ。
「……それでも守られた生命があることを知るべき。つかの間であっても平穏がったことを知るべき。どんなに哀しみにくれても、それでも人の営みは守られたからこそ『今』がある」
 メンカルは飛来する武器を障壁で防御しながら、術式組紐『アリアドネ』でもって落ちた武器を捕まえ、その瞳をユーベルコードに輝かせる。

 すでに数多の猟兵達によって消耗し、ひび割れた肉体の『妲己』を見やる。
「見えざる腕よ、投げろ、放て。汝は剛力、汝は投擲。魔女が望むは大山投じる巨神の手」
 投じられしは空裂く巨岩(タイタンズ・スロウ)。
 悪女、と石を投げることは簡単である。
 誰も彼も出来ることである。自死を望む『妲己』にとって、それこそが贖罪の痛みであったはずだから。

 けれど、メンカルは瞳を伏せる事無く見据える。
 誰かのためになりますようにと願っての献身に攻撃の意志を向ける。涙あふれる『妲己』を打ち据えるように打ち込まれる武器の数々。
 その度にメンカルの心もまた叩きつけられるような衝撃を受けたことだろう。
「猟兵の皆様方……どうかお願いいたします」
『妲己』は涙を零しながら微笑んでいた。
 これでいいのだと。
 こうする他なかったのだから、優しい誰かが傷つくことなど無いのだというように『妲己』は微笑んでいた。

 己を滅ぼすために。
 そして、己の為したことを肯定し、決して無意味ではなかったと言ってくれた者たちのためにこそ、彼女は微笑む。
 涙は止まらないけれど。
 けれど、優しく拭ってくれた。痛みを感じてくれた。
 ただ、それだけが『妲己』のオブリビオンとしての体を砕く。
「此の世界を」
「……わかっている。救うために戦う。それが猟兵というものであるから。封神仙女『妲己』……その願い聞き受けた」
 メンカルは投ぜられる武器によって崩壊し、霧消していく『妲己』を見送る。

 崩れた体の後に残るは一滴の涙。
 哀しみだけが彩る生ではなかったと、証明するために。
 猟兵達は、殲神封神大戦をこそ、戦い抜くのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年01月19日


挿絵イラスト