殲神封神大戦⑦〜涅槃に至るを拒絶す
●身体臭穢
幽玄の門は開かれた。
『紫霄宫(しあいきゅう)』はいにしえの仙界。それに至る門が『南蛮門』である。
本来は不定期に現れる幽玄の門であるが、その揺らぐ門は大いなる力に寄って固定され、人界と繋がりを絶たれずにいる。
多くのオブリビオンたちが溢れ出す中、『南蛮門』を守護するのは一体のオブリビオンである。
美しき瑞獣の仙女――『屍仙女』はたおやかに微笑んでいた。彼女は確かに美しかった。誰が見ても美しい姿であった。
しかし、その瑞獣たらしめる下半身は白骨と化している。
ゆえに『屍仙女』。
嘗て在りし美しさを取り戻さんがために、オブリビオンとして蘇った悪しき仙女の一人である。
「ああ、人界の精気が流れ込んでくる。しかし、わたくしに必要なのは精気ではなく瑞獣の生命。それこそがわたくしの失われし四肢を蘇らせるもの」
『屍仙女』の背後には『不思議な絡繰で拘束するユーベルコード』によって捕らえられた数多の瑞獣たちの姿があった。
そこから吸い上げる生命力でもって、彼女は強大な力を振るうのだ。
吹き上がる力の奔流は、そのまま彼女が強大なオブリビオンであることを示している。如何に猟兵と言えど、そのままでは勝利することが難しいと思うほどだ。
「もっと、もっと瑞獣を。我が嘗ての同胞たちを。完全なるわたくしの美しさを取り戻すために。あなた方は贄となるのです。美しさとは全てを凌駕するもの。皆さんの尊い犠牲は、美しさの前には必要なものなのです」
独りよがりな言葉を紡ぎながら、『屍仙女』は微笑み続ける。
此処に猟兵が来たとしても何の問題もない。
彼女は『不思議な絡繰で拘束するユーベルコード』が在る限り、負ける気など毛頭ない。あるのは己の美に対する執着のみ。
完全なる姿を取り戻すために他者の生命に手を掛けることに何の呵責もないのだ。
「猟兵の中にも瑞獣はいらっしゃるのでしょう? ならば、わたくしのユーベルコードでもって虜にしてさしあげましょう。楽しみですね。わたくしの美しさの一部になれることが――」
●殲神封神大戦
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)であった。
「お集まりいただきありがとうございます。封神武侠界、その人界と仙界をつなぐ幽玄の門『南蛮門』のことはすでに聞き及んでおられるでしょうか?」
ナイアルテは仙界と人界を繋ぐ『南蛮門』を示す。
未だ門の奥より人界の精気は吸い上げられ続けている。先立っての戦いで雑兵であるオブリビオンは猟兵たちの活躍に寄って退けられたが、『南蛮門』を守護する将軍オブリビオンが存在しているのだと言う。
「このオブリビオンは強大な力を持っている上に、『不思議な絡繰で拘束するユーベルコード』でもって多くの瑞獣の皆さんを捕らえてパワーアップしているのです」
オブリビオン『屍仙女』。
彼女は本来、瑞獣の仙女であったが、下半身を失い、今は白骨化している。
その下半身を取り戻し、己の美を完璧なものとするためだけに捕らえた瑞獣から生命力を奪い続けているのだという。
「このままでは皆さんであっても勝利するのが難しいでしょう。ですが、この絡繰を解いて瑞獣を救い出せば、その度に『屍仙女』は弱体化していくのです」
そこに強大なオブリビオン打倒の勝機があるのだ。
戦って勝てぬ相手ではないのならば、猟兵たちは躊躇わず赴くことをナイアルテは知っている。
しかし、それが険しい道程であることもまた同様だ。
「『屍仙女』は強大なオブリビオンです。如何にして絡繰の拘束をほどき、瑞獣の皆さんを逃がすことができるか……それが戦いのポイントになるでしょう」
難しい戦いになることは避けられない。
けれど、ナイアルテは頭を下げ、猟兵たちを送り出す。
『南蛮門』は人界と仙界を繋ぐ要所。
此処を抑えなければ、オブリビオン・フォーミュラ『張角』に至る道も開けぬのだ。ならばこそ、この地を制圧し、一気に仙界へとなだれ込まねばならない。
「どうかお気をつけて……身体臭穢(しゅうえ)……五衰の一つに数えられる天人の死期に現れるという兆しの一つです。『屍仙女』はそれを受け入れることができないのでしょう」
ゆえに彼女はオブリビオンへと成り果てた。
その美への執着こそが、醜きことであると示すために、猟兵たちは囚われの瑞獣たちを開放し、殲神封神大戦を戦い抜かねばならないのだ――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『殲神封神大戦』の戦争シナリオとなります。
突如として現れた『南蛮門』、その門番である強大なオブリビオンを打倒するシナリオになっています。
人界と仙界を繋ぐ『南蛮門』を制圧しなければ、仙界に座すオブリビオン・フォーミュラへと至ることはできません。
門番として控える強大なオブリビオンは、『不思議な絡繰で拘束するユーベルコード』によって瑞獣たちを捕らえ、その生命力でもって強大な力を得ています。
皆さんであってもまともに戦えば勝利することが難しいです。
しかし、拘束されている瑞獣たちを開放すればするほどに、オブリビオンは弱体化していくのです。
瑞獣たちを救い出しながら、これを打倒しましょう。
※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。
プレイングボーナス……絡繰を解き、瑞獣達を助ける。
それでは、仙界と人界を繋ぐ門を制圧し、オブリビオン・フォーミュラ座す仙界へと続く道を切り拓く皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『屍仙女』
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POW : 白骨仙女
自身の【美しい上半身の肉】を捨て【絡み合う白骨の身体を持つ怪物】に変身する。防御力10倍と欠損部位再生力を得るが、太陽光でダメージを受ける。
SPD : 雲身变化
自身の身体部位ひとつを【雲】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
WIZ : 宝貝「芭蕉暴嵐撃」
自身が装備する【芭蕉扇】から【暴風】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【窒息】の状態異常を与える。
イラスト:らぬき
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
厳・範
半人半獣形態なお爺、故郷と同胞の危機は放っておけない。
たしかに、わしも瑞獣で仙人だが。負ける気はせんのよな。
ま、長く生きると…そういう者にも出会うからな。だからこそ、戦うのだが。
【十二支獣使令法】で呼び出すは龍を三体。あと、こっそりとだが猿と鼠を一体。
仙人だから、生命力には頓着せん。
龍たちに雲を操らせ、相手の思惑を潰しつつ、身体を使った牽制。わしも、こちらで雷公鞭にて雷撃を落とす。
その間に、猿と鼠に絡繰にほどかせよう。役割分担というやつだ。
ああ、龍三体なのは、思惑に気づかせぬためよ。身体にて、猿と鼠の姿を見せないようにできるからな。
『南蛮門』を守護するオブリビオンの一体。
それが『屍仙女』である。彼女の姿は確かに美しいものであったが、それは上半身のみである。彼女の瑞獣たる証である四肢は白骨化している。
「わたくしの美しさは完全無欠なものでなければなりません。ならばこそ、わたくしは、皆さんの生命が必要なのです。おわかりですね?」
彼女は『不思議な絡繰で拘束するユーベルコード』によって、多くの瑞獣たちを捕らえては生命力を吸い上げ続けている。
どの瑞獣もぐったりとしていて、抵抗することすら難しいだろう。
彼女は己の肉体を完全なものとするためだけに他者の命を吸い上げ続けている。
それは奇しくも『南蛮門』より吸い上げられる人界の精気と似た様相であった。
「わたくしは負けるつもりはありませんよ。どんな存在が来ようとも、美しさの前には全てがひれ伏すのですから」
彼女の半身が雲へと変化していく。
それは彼女のユーベルコードであり、ふわりと宙に浮かび上がって地に在るものを寄せ付けぬものであった。
「たしかに、わたしも瑞獣で仙人だが」
全く負ける気はしないと厳・範(老當益壮・f32809)は『南蛮門』へと駆け抜ける。
長く生きるということは、斯様な存在と出会うこともまたあるものである。
戦う理由はただそれだけでいいのだ。
己のためだけに他者の生命を弄ぶ存在を赦してはおけない。
ただそれだけで戦うに値するというように、彼は瞳をユーベルコードに輝かせる。
「十二支獣使令法。征くがいい」
範の言葉とともに呼び出されるのは三体の龍。
それは生命力を代償としたものであるが、彼は頓着していなかった。
悠久の時を生きる仙人であるからこそ、生命力は膨大なものである。であるがゆえに、出し惜しみする理由など無いのだ。
雲を操る龍たちが空を飛び、『屍仙女』へと迫る。
「龍を呼び出しましたか、それも三体も。その生命力はわたくしにこそ相応しいというのに……仕方のない御方ですね」
『屍仙女』がたおやかに微笑む。
しかし、範は彼女の微笑みに美しさを見出すことはできなかったことだろう。
手にした宝貝の雷撃が答えであるというように、轟音が響き渡る。
「貴殿の考えることとわしの考え方では生命に対する価値が違う。ならばこそ、他者の生命を慈しむの瑞獣たる所以。優しさを忘れた者に生きる価値などあるまいよ」
雷撃が迸るも、強大なオブリビオンである『屍仙女』には通用しない。否、通用しないのは理解している。
ならばなんのために轟音を撒き散らすのか。
「――破れかぶれなのでしょうか?」
「否である。貴殿は無駄に長く生きたようであるな。だからこそ、わしの策略に気が付かぬ」
それは龍の雲に紛れた猿と鼠であった。
彼等は龍の長い体を道にして『絡繰で拘束するユーベルコード』をほどき、瑞獣たちを虜囚から開放するのだ。
「わたくしのユーベルコードを解くためにあえて囮になったと?」
「ああ、そのとおりだ。龍たちは虚仮威しよ。雷もまた同様。貴殿にこちらの思惑を気づかせぬためよ。龍の派手さ、そして己の美しさをこそ求めるから小さき者たちに気が付かぬ」
開放された瑞獣たちを範は抱えて飛び出す。
『屍仙女』のちからの源は、捕らえられた瑞獣たちの数にある。
開放すれば開放するほどに『屍仙女』は弱体化していく。
猟兵の戦いは繋ぐ戦いである。己が打倒せずとも、敵を弱体化させ、決定的な一撃を他の誰かが打ち込めばいい。
そうすることによって猟兵たちは強敵を打倒してきたのだ。
「骸の海に還るがよい。忘れられし者よ。貴殿の美しさは、失われるからこそ尊きものであったことを思い出せもせず、美醜にこそこだわる己の心の澱を持って沈むの――」
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
その様で何が美しさだ!
どれほど美しくなろうとその姿を美しいとは思わない。
敵である事だけでなく、自らの同胞である瑞獣達の屍の上に築き上げる美に価値などないと吼えて、【早業】『迅壊砲』を使う。オーラ【衝撃波】を【念動力】で絡繰を破壊するように飛ばす!
その白骨こそが、お前の人生の証だろうオブリビオン!
綺麗な頃の自分を捨てておいて、何が美だ!!
神器・雷降拳銃で【天候操作】邪魔する雲の動きを阻害し接近、【残像】引き出した雷を乗せた超高速連打で【属性攻撃】雲を撃ち払い、屍仙女の身体を焼きつつ、更にオーラ衝撃波で絡繰から瑞獣達を解放する!
その不快な肉体を焼き壊してやる!
強大なオブリビオンである『屍仙女』の力は言うまでもなく、『絡繰によって拘束するユーベルコード』から伝わる虜囚たる瑞獣たちの生命力である。
吸い上げる様は、『南蛮門』と同じく。
しかしながら、彼女が求めるのは瑞獣の生命のみだ。
「ああ、わたくしの美しさが! なんていうことをなさるのです。わたくしはただ美しさを完璧なものとしたいだけですのに」
嘆くように『屍仙女』が己の肉体を雲に変えて、残った瑞獣たちを隠していく。
彼女の力の源が瑞獣である以上、それを奪還されぬために己の肉体でもって隠して、救出されないようにしているのだ。
「その様で何が美しさだ!」
しかし、その姿を以て朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は叫ぶ。
目の前の『屍仙女』は美しいとは思わない。
どれだけ見た目が美しい女性であったのだとしても、小枝子の瞳が見つめるのは彼女がオブリビオンという過去の化身であるという事実のみ。
己の美醜のみに関心を持ち、それだけのために他者を貶めることを厭わぬ存在。
その何処に美しさを見い出せばよいというのだろう。
オブリビオンというだけではない。
彼女が吸い上げる瑞獣たちの生命を見る。
「自らの同胞である瑞獣達の屍の上に築き上げる美に価値などない!!!」
小枝子は吠え猛る。
どれだけ雲でもって絡繰を隠すのだとしても、手にした神器『雷降拳銃』――雷雨の力が宿るパルスマシンガンから放たれる弾丸が、雲を吹き飛ばす。
打ち払う高速の弾丸は、瑞獣たちを隠す雲すら払うのだ。
「雷雨の力を持つ神器……! ああ、わたくしの体が焼ける……!」
しかしながら、未だ強大なオブリビオンであることには変わりない。小枝子は雲から変化を説いた『屍仙女』を見据える。
「その白骨こそが、お前の人生の証だろうオブリビオン!」
その瞳がユーベルコードに輝く。
瑞獣たちを隠す雲は晴れた。ならば、己が成すべきことは唯一つ。漲る力は腕に集約され、知覚不能たる超高速の掌打の連撃が『絡繰で拘束するユーベルコード』事態を破壊する。
砕け散った絡繰の破片が飛ぶ中、小枝子は落ちる瑞獣たちを抱えて大地に降ろし、凄まじい速度でもって戦場を駆け抜ける。
触れたものを破壊するオーラの衝撃波は、再び瑞獣を取り戻さんとする絡繰を尽く破壊する。
「わたくしの美しさを理解しない者が! わたくしの邪魔をする! いつだってそうなのです。わたくしの美しさを妬むものが!」
己をこんな姿にするのだと叫ぶ『屍仙女』。
彼女の白骨の四肢を見やり、小枝子は叫ぶ。過去の化身。オブリビオン。忘れられし者。
それは本人もまた過去を忘れ去るからこそ、成り得るものであったのかもしれない。
「綺麗な頃の自分を捨てておいて、何が美だ!」
身体臭穢。
生まれた者は必ず衰える。
しかして、その衰えをこそ受け入れて進むからこそ、人の美しさは姿形ではない何かに寄って保たれるものである。
ゆえに小枝子は叫ぶのだ。
己の掌に集まるユーベルコードの力。
迅壊砲(ジンカホウ)の一撃が『屍仙女』へと放たれる。
認識することすら出来ぬ速度の一撃。それは雷鳴の如き轟音を轟かせ、『屍仙女』の肉体へと叩き込まれる。
触れたものを破壊する衝撃波が『南蛮門』に吹き荒れ、過去の化身たるオブリビオンの歪み果てた美への執着をこそ破壊するのだ。
「その不快な肉体を焼き壊してやる!」
宙で打ち込まれる掌打の連撃は凄まじく。
目にも留まらぬ打撃の尽くが『屍仙女』を打ち砕くだろう。
五衰ありて、天人たりとて終わりを迎える。
ゆえに美に執着することこそ、終わりの始まりであると示すように、小枝子は燃える己のユーベルコードで持って『屍仙女』を大地へと叩き落とすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
大宝寺・朱毘
瑞獣たちを拘束する絡繰が視認できる代物でさえあれば、【ソニック・ワーミー】で攻撃して破壊できるはず。まずは瑞獣を傷つけないように威力を絞った衝撃波で、絡繰を狙撃。
雲によって視界を塞がれると辛いが、その場合は【全力魔法】の衝撃波で雲を散らして視界を確保してから絡繰りの破壊、と2アクション。
手間が掛かる隙に攻撃を食らう可能性大だが、根性で耐えるしかないか。少々のダメージと引き替えにしてでも瑞獣らを解放できるなら、収支は黒字と思おう。
敵が一定以上弱体化してなおこちらに動く余裕があるなら、改めて敵本体に攻撃。雲に衝撃波を当ててもダメージが通るかわからないので、雲化していない部分を狙う。あるいは、雲化している部分に魔術的な干渉を施し、元の体に戻れなくして実質その部位を削ぎ落とすというのも手か。
「お前の気持ち、わからなくはないよ。あたしも見てくれを商売道具にしてるんでな。だが、ソレは胸張れる『美しさ』じゃねぇ。だから、うらやましいとも思わねぇし、惹かれねぇ――そんな美しさに、何の意味があるんだ?」
瑞獣たちを捕らえ、その生命力で持って強大な力を有するオブリビオン『屍仙女』は未だ己の美を完全無欠なるものとすることを諦めてはいなかった。
彼女をオブリビオンたらしめるのは、彼女の四肢が白骨化しているがためである。その欲望無くば、過去に歪んだ彼女は此処まで強大なオブリビオンへと変貌することはなかっただろう。
溢れんばかりの重圧は、彼女のユーベルコードとなって輝く。
「わたくしの美こそが世界に在りて至上なるもの。美しさは全てを凌駕するのです」
下半身が雲へと変貌し、『絡繰よって拘束するユーベルコード』で捕らえられた瑞獣達が隠される。
「こいつはあんまりご機嫌なサウンドじゃねえ……あたしの目に映る敵を滅ぼす、呪いの音だ。打ち砕け、ソニック・ワーミー!」
鬼の面を模したボディを持つエレキギターをかき鳴らす大宝寺・朱毘(スウィートロッカー・f02172)のユーベルコードまでに昇華した演奏が、『屍仙女』の持つ絡繰を破壊する。
瑞獣たちを傷つけぬようにと威力を絞った衝撃波であっても絡繰は破壊できるだろう。
四肢が変化した雲が衝撃波によってふきとばされる。
彼女のハスキーボイスが『南蛮門』に響き渡り、『屍仙女』は己を邪魔する者の姿を見ただろう。
見慣れぬ衣装を身をまとった彼女の姿を、『屍仙女』は見下ろす。
「小賢しいことを。わたくしの邪魔ばかりをする!」
雲がほとばしり、朱毘へと殺到する。
これまで他の猟兵達によって弱体化された『屍仙女』であっても強大なオブリビオンであることに変わりはない。
迫る雲を躱し、朱毘は戦場となった『南蛮門』を走る。雲が巨大な腕となって振り下ろされ、彼女の体をしたたかに打つだろう。
しかし、彼女は倒れない。
倒れないどころか、エレキギターが奏でる演奏は片時も途絶えることはなかった。
「お前の気持ち、わからなくはないよ」
ハスキーボイスが戦場によく通る。
雲の腕による一撃は少なくないダメージを彼女に与えていたが、声が震えることはなかった。
体は痛む。
されど、己が成すべきことは何一つ変わらない。欠けることはないのだと言うように、奏でるメロディーは『屍仙女』の耳を打つ。
魔力が込められているからではない。
朱毘の演奏には魔力以上に魂が込められていることだろう。
何を伝え、何を響かせたいのか。
ただそれだけが彼女の指が弾く弦より空気を震わせ、心さえも震わせる唯一。
「あたしもみてくれを商売道具にしてるんでな」
アイドルをやる。
それは小っ恥ずかしいことであったのかもしれない。
けれど、いつだって本気で物事に挑む者には、見た目だけではない美しさが宿るものである。朱毘にとっての、それがそうであったように。
エレキギターが奏でる衝撃波が『屍仙女』の放つ雲の腕を一撃の元に断ち切る。力の差は歴然と存在している。
猟兵は個としての力でもってオブリビオンに及ばない。
強大なオブリビオンであれば、あるほどに力の差は歴然である。
だが、それでも超克していくのが猟兵であるのならば、彼女はオーバーロードへと至るのだ。
輝くユーベルコードの光が、瞳にある限り。
彼女は決して諦めることはしないだろう。
「ならば、わたくしの美しさも理解できるでしょうに!」
落とされた腕を抑えながら『屍仙女』が叫ぶ。
己の美しさを誇り、衰えることを悲しむ者。
「だが、ソレは胸張れる『美しさ』じゃねぇ。だから、うらやましいとも思わねぇし、惹かれねぇ――」
その声は静かなものであった。
端的な事実を告げるものであったし、拒絶の一言であった。
絡繰から開放された瑞獣たちを見る。彼等は皆、生命力を奪われ、衰弱している。世界にたった一つの美しさのために、全てが犠牲にされても良いとするのならば、その美しさは世界を破壊するものである。
周囲に在るもの全てを破滅へと至らしめる美しさを朱毘は美しいとは思わない。
己が光り輝く事のできるアイドル――偶像であるというのならば、己に輝き当てるスポットライトは他者である。
彼女はそれを知るからこそ、目の前の『屍仙女』が求める美しさに惹かれぬ。
「美しさは全てを凌駕するのです! わたくしは美しい。美しさの極地にあるはず! 今は欠けてるだけ! それだけのはずなのです!」
絶叫のような『屍仙女』の声と共に変化した雲の腕が再び振るわれる。
その一撃を前に朱毘は頭を振る。
「そんな美しさに、何の意味があるんだ?」
かき鳴らされるエレキギターとハスキーボイス。
衝撃波は斬撃と成って。
紡がれる言葉は雲という触れ得ぬものに形を与える。オーバーロードに居たりし、彼女の瞳はまっすぐに美しさを誇り、そして己の美醜をこそ最大のものとする欲望に真っ向から対峙する。
退くことはない。
恐ろしさもない。
あるのは唯一つ。己が信じる美しさはは、己の中にこそある。例え、己が欠けたる者に堕すのだとしても。
自分が信じる美しさを根幹に成すのであれば、もはや朱毘が揺らぐことはないだろう。
「わたくしの――!」
「キラキラ煌めくからこそ、人の心が見せる光はまばゆいんだ。人を笑顔にするようなロックンローラー……あたしは、アイドルなんてガラじゃねーけど……」
それでも頑張るしかないと己に言い聞かせ、名乗るのだ。
スウィートロッカー。
誰かの笑顔のために演奏する者だと。
放たれる演奏は誰かを照らす光。美醜にこだわり、囚われた存在を切り裂く光と成って、その名を知らしめるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
兵卒がいれば将軍がいるか。当たり前の話よね。しかし厄介な。
あたしが正面から屍仙女の気を引くから、、アヤメは隠形で「目立たない」ように相手の背後に回り、絡繰を解除してちょうだい。
あなたに、あたしの命預けたからね。
それじゃあ、死合うとしますか。偶神兵装『鎧装豪腕』顕現。
こういう、失ったものを取り戻そうと足掻くオブリビオンこそ醜い。
「全力魔法」「範囲攻撃」で炎の「属性攻撃」を放ち、雲になった部分を水蒸気にしてしまいましょう。
瑞獣を戦線に投入してきたら、『鎧装豪腕』でなるべく傷つけないように「受け流し」て対処する。
屍仙女が隙を見せれば、『衝撃波』纏った薙刀で「なぎ払い」「貫通攻撃」で「串刺し」よ。
『南蛮門』を巡る戦いは、門を守る将軍オブリビオンである『屍仙女』との戦いに推移していた。
彼女の肉体は雲へと変化する。
『絡繰によって拘束するユーベルコード』でもって瑞獣たちを捕らえ、その生命力を吸い上げるからこそ、彼女の優位は揺らがない。
しかし、猟兵達が囚われの瑞獣たちを次々と助け出すことによって徐々に『屍仙女』は弱体化している。それでもなお、未だ強大な力は衰えきっていなかった。
「わたくしの美のために生命を使うこと、それの何処に誤ちがございましょうか」
吹き荒れる雲の体。
どれだけ強大な力を持っていれば、このようなユーベルコードを使うことができるのか。
雲の中に瑞獣たちを隠し、絡繰の位置を悟られぬようにしていることこそ、賢しいと言わざるを得ない。
「兵卒がいえば将軍がいるか。当たり前の話よね。しかし、厄介な」
村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は雲でもって絡繰と瑞獣を隠す『屍仙女』の厄介さを知る。
だが、ここで退くわけにはいかない。
かのオブリビオンを打倒することで人界と仙界を繋ぐ『南蛮門』を攻略することができるのだ。
これまで多くのオブリビオンを打倒してきたからこそ、開けた道であるともいえるだろう。
「急急如律令! 我が愛しき虜よ、主命に応え姿を現せ!」
ゆかりは愛奴召喚(アイドショウカン)によって恋人にしたエルフのクノイチの式神アヤメの肩を抱く。
「あたしが正面から『屍仙女』の気を引くから、アヤメは隠形で目立たないように相手の背後に回ってから、絡繰を解除して頂戴」
それは己が囮になるということでもあった。
「危険ですよ。あのオブリビオンのちからも強いです」
しかし、ゆかりは首を振る。
敵の弱体化を狙うのならば、これが確実であったからだ。それにただ囮になるだけではない。
己が信じる彼女だからこそ託すことが出来るのだ。
「あなたに、あたしの生命預けたからね」
ゆかりの言葉にアヤメが隠れ潜み走り出す。
「それじゃあ、死合うとしますか」
『鎧装豪腕』と共にゆかりは己の解き放つ炎で持って雲の腕を吹き飛ばす。
熱せられれば水蒸気になる。
「こういう失ったものを取り戻すとあがくオブリビオンこそ醜い」
「わたくしを醜いと? わたくしこそが美しさの象徴であるというのに。あなたは何もわかっていらっしゃらない」
その言葉こそが驕りであると『屍仙女』は気が付かない。
彼女の失った四肢、その白骨は醜さの象徴でもないはずなのだ。だというのに、彼女はそれを恥じる。だからこそ、その下半身をユーベルコードで雲に変え、襲い来る。
「醜いわよ。人は老いるもの。五衰、天人であっても死期は訪れるもの。滅びを前にして如何にして生きるか。欠けたることなど変化の一つに過ぎないのだと理解できないのなら」
ゆかりは手にした薙刀で衝撃波を放ち、雲を晴らす。
瞬間、其処へ駆け込むのは式神アヤメであった。彼女の放つ一撃が絡繰を切り裂き、捕らえられた瑞獣を落とす。
それを鎧装豪腕が受け止め、生命力で持って強化されていた『屍仙女』の力を削ぐのだ。
「それはわたくしのものです!」
鎧装豪腕を追う『屍仙女』は隙だらけであった。
どれだけ強大なオブリビオンであったのだとしても、意識の外から放たれる斬撃を躱すことはできないだろう。
ゆかりは、己の手にした薙刀でもって『屍仙女』へと衝撃波を放つ。
それは彼女の肉体を切り裂くものであったし、鮮血をほとばしらせるものであった。
「他者から生命を奪って生きるのは生命の本質。けれど、あなたのそれは、ただ己の欲望のままに振るっているだけ。そこに美しさを感じるものなんていないわ」
その一撃は『屍仙女』の肉体を傷つける。
これまで強化されてきた強大なオブリビオンの力。それがまさに減退させられていることを告げるものであった。
反撃の狼煙はあげられ、ゆかりは救い出した瑞獣たちを鎧装豪腕とアヤメと共に保護し、怨嗟の咆哮を上げる『屍仙女』から逃れるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
…用途申請、非戦闘員の救助
電脳禁忌剣の承認を得、UCを解禁
剣に眠る設計図…未完の兵器
御伽を愛した創造主の憎悪の形
己が騎士を模倣する戦闘兵器でしか無き証左
“騎士に討たれるべき邪竜”の姿へ
美の探求、大いに結構
ですが戦う意志無き者を無理矢理捕え、あまつさえ力を奪うその性根と所業
剣の制限も解除された今、もはや容赦はいたしません
貴女には騎士の体裁かなぐり捨てたこの姿での相対が相応しい
絡繰りを“一瞥”し、素粒子分解
無害な花びらに変換し瑞獣達を解放
飛翔して掌に納め戦域外へ逃がし
反転して接敵
巨体の怪力で白骨怪物を殴り倒し空中へ拉致
素粒子支配能力で擬似太陽を生成、その中へ叩き込み
焼けた体躯を剣で一閃
囚われし瑞獣たちが徐々に救われていく。
それは『屍仙女』の力を削ぐことに直結している。彼女の力はもとより強大なものであったが、猟兵達がまともに戦って勝てぬものではなかったはずだ。
けれど、彼女は『絡繰によって拘束するユーベルコード』によって瑞獣たちを捕らえ、その生命力を吸い上げることによって、さらに強大なオブリビオンへと変貌していたのだ。
「わたくしの! わたくしの贄であるというのに! 返しなさい!」
喚くように叫ぶ『屍仙女』は血を噴き出しながらも、未だ健在。
だが、傷を負わせることができているのは、瑞獣達の救出された数が増えてきたからであろう。
攻めるのならば、今であると判断したトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は己の手にした電脳禁忌剣を掲げる。
用途の申請。
それによって解除される力こそ、トリテレイアの真の姿を晒す要因である。
「……用途申請、非戦闘員の救助」
瑞獣たちを助けることこそが、猟兵たちが勝利に近づくための最善手である。
剣に眠る設計図、未完の兵器である銀河帝国未配備A式形相干渉大型戦機・騎械竜(ウォーマシンドラゴン・タイプアレクシア)を開放する。
かつて己の創造主の憎悪の形。
御伽を愛し、己が騎士を模倣する戦闘兵器でしか無き証左――すなわち、“騎士に討たれるべき邪竜”の姿へと変貌させるユーベルコード。
トリテレイアの姿が変わって行く。
己に突き立てられた剣は、真なる姿へと変貌させる鍵そのものであった。
翼がはためき、飛翔する。
目指すは『屍仙女』。
しかし、これまでの攻勢によって傷つけられた肉体は、すでになかった。在ったのは、白骨が絡みつく化け物の如き姿であった。
それが本来の彼女の姿であるのであろう。
美しき肉を捨て、白骨絡みつく巨大な姿に変貌した『屍仙女』が咆哮する。
「わたくしの美を! わたくしがわたくしであるための、生命を、贄を! 返しなさい!」
咆哮が轟く。
凄まじき重圧。されど、トリテレイアはたじろぐことはなかった。
「美の探求、大いに結構」
だが、トリテレイアは羽撃く機械の翼と共に睥睨する。
「ですが戦う意志無き者を無理矢理捕らえ、あまつさえ力を奪うその性根と所業。もはや容赦は致しません」
剣の制限は此処に解除された。
ならばこそ、今の己の姿こそが『屍仙女』に相対するに相応しい姿である。
騎士としての体裁などかなぐり捨てる。
救わなければならない者たちを救えぬ姿に意味はない。どれだけ己の姿が創造主の憎悪の形なのだとしても。
それでもトリテレイアは誰かを助けることをこそ止められない。
己が騎士だからではない。
己が己である証明のために彼は咆哮する。その視線が一瞬で素粒子に干渉し、瑞獣を捕らえている絡繰を分解する。
無害は花びらへと変換させた絡繰から瑞獣達が落ちていく。それをトリテレイアは飛翔し、己の掌に収めて戦闘領域の外へと運び、逃がす。
「わたくしの! わたくしの美が! 瑞獣は贄なのです。わたくしの美こそが世界の全て! それを捧げることこそが至高のはず」
追いすがる『屍仙女』の醜きことは言うまでもない。
怪物と化した『屍仙女』の肉体は、即座に傷を癒やしている。されど、トリテレイアは瑞獣たちを逃がすために反転する。
万全なるオブリビオン。
「不肖の騎士たる私ではありますが……!」
トリテレイアは巨体でもって巨大な怪物へと変貌した『屍仙女』の体を殴り倒し、空中へと吹き飛ばす。
己の掌にあるのは素粒子支配能力により生み出した疑似太陽。
それを放ち、即座に『屍仙女』の背後へと回り込み、その光の中へと叩き落とすのだ。
「日が……! わたくしの体を焼く……! 何故太陽が、此処に……!」
その言葉と共に『屍仙女』の肌が焼けていく。
一撃は凄まじい威力であった。けれど、それでもなお強大なオブリビオンは健在。そこへトリテレイアは己の巨躯から放たれる剣の一閃を解き放つ。
「その悪意。その憎悪。此処で断ち切らせていただきます。人はそれを妄執と呼ぶがゆえに!」
叩き込まれた一撃が怪物の巨体を一撃のもとに切り裂き、その肉体を大地ヘと失墜させる。
トリテレイアは翼を広げ、疑似太陽最後の光を背に咆哮するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
夜刀神・鏡介
まあ、あんたのその外見は美しいと言って差し支えないかもしれない
だが、その美しさを手に入れる為に何をしている。他者を……同胞を犠牲にして手に入れるなど
いかに外見を取り繕おうと、決定的なまでに歪んでいる
神刀を抜き、黎の型【纏耀】を発動――神気を纏いて真の姿へと変身。身体能力を大きく強化
まずは絡繰を解いて、瑞獣達を助ける所からだ。まずは斬撃波で敵を牽制しながら一気にダッシュで絡繰の元へ。素早く刀を振るって一太刀で破壊
幾らか逃したならば改めて敵へ向かって切り込もう
防御力が上がっていようが、この刀はそれを容易に上回る。浄化の力でその邪念を切り払う
限りある時間を懸命に生きるからこそ価値があると、俺は思うよ
疑似太陽が燦然と輝く人界にありて、『屍仙女』は大地に失墜する。
その肉体はこれまで猟兵たちの攻撃に寄って消耗してはいたが、再び欠損した肉体を復元し、その絡みつく白骨が成す巨体を持って咆哮する。
「わたくしの美を理解しないものなど!」
咆哮と共に『絡繰によって拘束するユーベルコード』でもって捕らえている瑞獣たちより生命力を吸い上げていく。
それこそが彼女の力を強大なものとする源である。
もとより強大な存在であるが、瑞獣たちを捕らえ生命力を奪うことで、猟兵たちも手こずる存在へと昇華しているのだ。
彼女にとって己の美しさこそが最上たるものである。
それ以外のものなど必要なく。
五衰の一つたる身体臭穢。その兆しが己が身にあらわれているのだとしても、他者から奪う事によって贖うことができるとさえ思う傲慢さがあった。
「まあ、あんたのその外見は美しいとって差し支えないのかもしれない」
夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)はそう告げる。
されど白骨が絡みつく怪物へとなった『屍仙女』は怨嗟の咆哮だけを上げる。彼女にとって、猟兵とは己の美を阻む存在でしかないからだ。
「だが、その美しさを手に入れる為に何をしている。他者を……同胞を犠牲にして手に入れるなど。如何に外見を取り繕おうと、決定的なまでに歪んでいる」
問答は不要。
鏡介の抜き払った神刀の刀身がユーベルコードに輝く。
「幽冥を越えて暁へと至る。黎の型【纏耀】(レイノカタ・テンヨウ)」
神刀より溢れる神気を纏うは、神器一体の境地に至りし、鏡介の真なる姿である。
己の肉体を極限まで高めた彼が戦場を走る。
放たれる斬撃波が『屍仙女』の巨腕を牽制し、弾き飛ばす。どれだけ巨大化しようとも、単調な動きに己が捉えられる道理などないのだ。
一直線に走る鏡介の瞳に映るのは絡繰である。
瑞獣達が捕らえられた絡繰に刀の一閃が振るわれる。それは強固な装甲であったが、真の姿へと変貌した彼の刀に断ち切れぬ者など無い。
「わたくしの贄を! 美を保つための存在を!」
「他者を喰らうは生命の必定……だが」
鏡介の剣閃が絡繰を尽く破壊していく。瑞獣たちは開放される。しかし、新たなる絡繰が彼等を捉えようとするだろう。
それを神刀の剣戟が弾き飛ばす。
「今のうちに逃げるといい……時間は俺が稼ぐ」
鏡介は開放した瑞獣たちを守りながら戦う。振るわれる巨大な腕、迫る絡繰。
強大なオブリビオンであるが所以である。圧される。それに『屍仙女』の防御力も上がっている。
ただの剣閃では牽制にしかなり得ない。
「わたくしを傷つけることなどできようはずもないのです!」
尋常ならざる防御力を持つ白骨絡む巨体は、たしかに厄介なものであった。しかし、鏡介の瞳はユーベルコードに輝いている。
「他者を傷つけても止むなしと言うあんたの歪み果てた願望。それを断ち切るためには――!」
煌めく瞳は金。
邪念に塗れた『屍仙女』の振るわれた腕を一撃の元に切り落とす。それは彼女には見えぬ斬撃であったことだろう。
彼が振るう神刀の切れ味は、真の姿を得るにいたりて、断ち切れぬものなど存在しない。
「その邪念を切り払う」
浄化の力満ちる刀が迫る『屍仙女』の腕を切り刻み、巨体を駆け上がっていく。
「限り在る時間を懸命に生きるからこそ、その美しさには価値があると、俺は思うよ」
振るう一撃は巨体を打ち据える。
地鳴りを持って大地に倒れ込む巨体。
そう、灰色に鈍く輝く永遠よりも。
一瞬の煌きの虹色に人は美しさを見出すように。『屍仙女』の歪み果てた願望をこそ、灰色であると断ずる一撃を持って、示すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
董・白
同じ仙女として、見るに忍びません。
全力で持って解放してあげます。
がんばります。
死して縛り続ける悪意。許せません。
私は…数で勝負します。
霊符を取り出し『道術』による『召喚術』で宝貝「黄巾力士」を召喚します。
一体一体は力は弱くても、全員で力合わせれば…。
屍仙女を『仙術』で風の『属性攻撃』を起こして『吹き飛ばし』つつ、瑞獣
達を捉えた絡繰りを黄巾力士たちに解かせていきます。
諦めないでください。きっと成し遂げれます。
『結界術』で芭蕉扇の暴風に耐えつつ、屍仙女を『おびき寄せ』黄巾力士が成し遂げるのを信じます。
私は僵尸で仙人です。窒息なんて…耐えて見せます。
「同じ仙女として、見るに忍びません」
董・白(尸解仙・f33242)はオブリビオン『屍仙女』の巨体が大地に倒れ伏す姿を見やり、そう言った。
彼女の巨体は、白骨が絡みつくものであった。しかし、猟兵の一撃を持って大地に沈み、元の姿へと戻っている。
上半身は確かに美しい女性。
しかし、下半身の瑞獣たる所以である四肢は白骨化している。
それが欠けたる美しさであるというのならば、『屍天女』は、それをこそ否定するために歪み果てた欲望の贄として瑞獣たちを絡繰でもって捕らえるのだ。
「全力で以て開放してあげます」
オブリビオンとなった『屍天女』はすでに死した存在である。
過去の化身。しかし、その本質は死して縛り続ける悪意そのものである。白はそれをこそ赦してはならぬと、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
「これは私の修行の成果でもあります。宝貝人形の舞。とくとご覧あれ」
手にしたのは、宝貝「黄巾力士」(パオペエコウキンリキシ)である。
小型の道術によって仮の生命を与えられた宝貝人形を召喚する。
一体一体は弱くても、全員の力を合わせるのならば、百を超える黄巾力士たちが戦場にひた走る。
「そのような愚昧なる存在でわたくしに迫ろうとは!」
『屍仙女』が手にしたのは芭蕉扇。
無論、宝貝であろう。その突風は凄まじい。白は己の周囲から空気が失われていくのを感じる。
息ができない。
苦しい。しかし、彼女は諦めなかった。己の手繰る仙術でもって風を巻き起こし、芭蕉扇の放つ突風を防ごうとする。
「力で押される……!」
強大なオブリビオンの持つ宝貝の力は凄まじい。
わかっていたことであるが、『屍仙女』の力は白よりも上である。しかし、白にとって、これは時間稼ぎにしか過ぎない。
己が勝つことはない。
彼女が黄巾力士たちに伝えたのは、『屍天女』を攻撃しろという指示ではない。敵を打倒するのではなく、敵の力の源となり、囚われている瑞獣たちをこそ救出することを指示したのだ。
己の風の仙術は目くらましにしか過ぎない。
「信じていますよ……きっと成し遂げられます」
「何を!」
あざ笑うように芭蕉扇の放つ風が白の体を吹き飛ばす。体が宙に浮かぶ。しかし、白は見たのだ。
彼女の視界、『屍仙女』の背後で黄巾力士たちが次々と絡繰をほどき、瑞獣たちを開放しているのを。
「窒息しておしまいなさい! そのまま!」
『屍仙女』は一つ思い違いをしている。
白がただの仙女だと思っている。しかし、よく知っておくべきであったのだ。己の額に貼られた符のことを。
彼女は僵尸にして仙人。
肉体は死して。されど、魂は誰かを救うことをこそ望む。
ならばこそ、彼女の肉体に窒息という概念は必要なく。あるのは、瑞獣たちを全て救って見せるという意志のみ。
「私は僵尸で仙人……ゆえに尸解仙。瑞獣の皆さんは返していただきます」
白の言葉に『屍仙女』は背後を見やる。
そこにあったのは小さき黄巾力士たちが絡繰から瑞獣たちを開放する姿であった。
これが狙いである。
瑞獣たちを開放する度に『屍仙女』は弱体化していく。
ここまで多数の瑞獣達が開放されてきた。彼女はまんまと白の誘導にはめられたのだ。
「小さな力であっても集まり、力を合わせることで大きなことを為し得る……あなたがどれだけ強大な存在であったのだとしても。私達の力を合わせれば、何も怖くはないのです」
放たれる風の仙術が弱体化した『屍仙女』を吹き飛ばす。
白は、息を大きく吸い込む。
小さな黄巾力士たちと共に瑞獣たちを救い出す。それは誰よりも多く開放し、己の成すべきことを為した彼女の戦いの軌跡であった――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
美とは自分の内面と行動から滲み出るもの、同類である瑞獣さん達を贄として得る美など認めません!
UC:産巣にて地面から(ブルーアルカディアの)ブレイドホーク・(A&Wの)ドラゴン・(デビルキングワールドの)屈強な悪魔さん達を次々と生み出して向かわせます。
ブレイドホークさんの群れは力強い羽ばたきによる強風を芭蕉暴嵐撃にぶつける。単独では力負けしても、群れで放つ事で威力アップして相殺します。
ドラゴンさんの群れは空を飛んで屍仙女を襲い、注意を引き付けます。
その隙に悪魔さん達が繊細な心配りでもって瑞獣さん達の絡繰を解いて救出します。
屍仙女が弱体化すれば、生み出した者達に一斉に襲わせての蹂躙攻撃で倒します。
「わたくしの贄たちが! ああ、わたくしの!」
手にした宝貝『芭蕉扇』より放たれる風が渦を巻いて、その怒りを示すように『屍天女』の力を膨れ上がらせていく。
瑞獣たちを数多開放されて弱体化してなお、この力である。
『南蛮門』を守るオブリビオンとしての格の違いを見せつけるかのごとく暴風が吹き荒れる。
されど、猟兵たちは知っている。
確かに強大なオブリビオンであったのだとしても、その力の源である瑞獣たちを開放すれば、いずれ必ず彼女を打倒できるのだと。
「わたくしの美しさのために、彼等はわたくしのために死するべきなのです!」
その言葉に大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)は、その瞳をユーベルコードに輝かせながら宣言する。
「美とは自分の内面と行動から滲み出るもの、同類である瑞獣さん達を贄として得る美など認めません!」
彼女の周囲にありし無機物が次々と他世界に存在する生物たちを生み出していく。
大空の世界からはブレイドホークを。
剣と魔法の世界からはドラゴンを。
悪魔の世界からは屈強なる悪魔たちを。
次々と生み出していく。
それが植物と活力を司る神である彼女のユーベルコードであった。
神の理。それが、産巣(ムスヒ)である。
想像された彼等が『屍仙女』の放つ突風を切り裂くようにして飛ぶ。
ブレイドホークの群れが力強い羽ばたきに寄って生み出された強風を『芭蕉扇』より放たれた突風にぶつける。
相殺しきれぬ風にブレイドホークたちがふきとばされていく。
「単独では力負けしても!」
「無駄なのですよ、わたくしの美のちからの前には!」
放たれる力は未だ凄まじい。けれど、詩乃は諦めなかった。次々と生み出されていくブレイドホークたちの数が、必ず『芭蕉扇』の暴風を上回ると信じているからだ。
そして、彼等だけではない。
詩乃が生み出したのは、ドラゴン。空を飛び、その強靭なる翼と爪でもって『屍仙女』を襲うのだ。
「鬱陶しいこと! わたくしの邪魔ばかりを!」
ブレイドホークたちによって風がふきとばされ、ドラゴンたちの猛追によって『屍仙女』は追い込まれていく。
しかし、それはただの誘導であった。
ドラゴンとブレイドホークが真正面から『屍天女』に襲いかかるからこそ、彼女の背後で蠢く絡繰に囚われた瑞獣たちを救うことが出来る。
悪魔たちを生み出したのは、彼等の性質を思えば当然であったのかもしれない。
「お願いしますね、悪魔さんたち!」
詩乃はデビルキングワールドで彼等の働きぶりと性質を理解していた。強面のルックスからは考えられないほどに繊細な心配り。
とてもよいこの種族である彼等が瑞獣たちを開放する時、きっと丁寧に救い出してくれるであろうと理解していたのだ。
詩乃の考え通りに悪魔たちは次々と瑞獣たちを開放し、抱きかかえて安全圏まで奔るのだ。
「おのれ、わたくしの贄を!」
「言ったはずです、瑞獣さんたちは貴方の贄ではないと! みなさん! 行きますよ!」
詩乃の号令と共に生み出された悪魔やブレイドホーク、ドラゴンたちが一斉に『屍天女』へと襲いかかる。
それは蹂躙と呼ぶに相応しい攻撃であったことだろう。
多勢に無勢。
そして、瑞獣たちを開放したことに寄る弱体化。
それらが重なることによって宝貝『芭蕉扇』の威力も落ちている。突風は最早、暴風に足り得ない。
「あなたの美のためにみなさんを犠牲にすることなど赦してはおけません!」
神罰だと言うように詩乃の一撃が『屍天女』を打ち据えるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
…己が欲望の為ならば他者を犠牲にする事を厭わない
傲慢極まるそのあり方は私の故郷、暗き世界の吸血鬼共によく似ている
…だからこそ、お前にも教えてあげるわ。吸血鬼狩りの業をね
事前に銃弾に血の魔力を溜め着弾点にUCの魔法陣を展開するように武器改造を施し、
絡繰や戦場、敵に向けて銃撃を乱れ撃ちする早業で魔法陣を刻み、
絡繰を常夜の城に転送して捕縛された瑞獣達を解放して回り、
敵の風属性攻撃は魔法陣から魔法陣への転移を繰り返して受け流し、
第六感が好機を捉えたら敵の至近に転移して切り込み、
呪詛を纏う大鎌を怪力任せになぎ払い生命力を吸収する
…ここは既に私の狩り場となっている
もはや進む事も退く事も叶わぬと心得なさい
宝貝『芭蕉扇』より放たれる暴風は猟兵たちを寄せ付けぬ強力な力であった。
しかし、その暴風を受け、髪をなびかせながらリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は告げる。
「……己が欲望の為ならば他者を犠牲にする事を厭わない傲慢極まる、その在り方は私の故郷、暗き世界の吸血鬼共とよく似ている」
オブリビオン『屍仙女』の欲望は己の美を保つことであり、同時に取り戻すことであった。
下半身の四肢は白骨化している。
それを欠けたる美しさだと認識するからこそ、彼女は『絡繰によって拘束するユーベルコード』によって瑞獣たちを捕らえ、その生命力を吸い上げ続ける。
強大なオブリビオンと化した彼女は、人界と仙界とを繋ぐ『南蛮門』を守護する存在として相応しい力を持っていたことだろう。
「わたくしの美を理解しないとは。猟兵とはなんと愚かな存在なのでしょう。美しさは全てにおいて優先されるべきことであるというのに」
その体に腐臭を刻みながら『屍仙女』は言う。
彼女の瞳にあるのは歪み果てた欲望だけである。
リーヴァルディはかぶりを振る。
問答するだけで無駄である。オブリビオンは滅ぼすべき存在である。
ならばこそ、彼女はこの言葉を最後にするのだ。
「……だからこそ、お前にも教えてあげるわ。吸血鬼狩りの業をね」
その瞳がユーベルコードに輝く。
「……開け、常夜の門」
彼女の銃より放たれる弾丸が次々と打ち込まれ魔法陣を展開される。
それは彼女自身の血液で作成した魔法陣であり、触れた抵抗しない対象を吸い込むユーベルコード製の他の魔法陣に転移できる、常夜の世界の古城を生み出すもの。
それは通常戦いにおいて意味のないことであった。
弾丸だってそうだ。
芭蕉扇によって暴風を生み出す『屍仙女』にとって、それはあまりにも些細な抵抗にしかすぎなかったのだ。
「だからなんだというのです!」
しかし、彼女は気づいていないのだ。
リーヴァルディが何故魔法陣撃ち込み続けたのかを。
「その驕りが己の命運を分かつと知らず……ここは既に私の狩場となっている」
襲う暴風を魔法陣の中に飛び込むことに寄ってリーヴァルディは躱し、戦場を自由自在に飛び回る。
そう、打ち込んだ魔法陣は他の魔法陣へと転移できる。
自身を攻撃しようとすればするほどに狙いは定まらない。そして、転移し続けながらリーヴァルディは絡繰に捕らえられた瑞獣たちを救い出して魔法陣から魔法陣へと転送し、『屍仙女』の手が届かぬ場所へと運び込む。
「わたくしの贄を……!」
敵の狙いが己の弱体化であることを悟った『屍仙女』が憤怒の形相へと変わる。
しかし、それはあまりにも遅きに失するものであった。
これまで猟兵達が瑞獣たちを解放してきた。その数は最早半数を超える。どれだけ数多の瑞獣たちを捕らえていたのだとしても、彼女の力は全盛の半分に落ち込んでいる。
ならばこそ、今こそが好機であるとリーヴァルディは大鎌を構える。
呪詛満ちる刃の暗き力は、魔法陣へと飛び込み、その行き先を知らせない。わからない。『屍仙女』の周囲には数多の魔法陣が展開されている。
「どこから……来るッ!」
「もはや進むことも退くことも叶わぬと心得なさい」
リーヴァルディは己の大鎌に映る『屍仙女』の姿を見る。
美しさを求めるがあまりに他者を犠牲にすることを是とした存在。どれだけ美しさを誇っていたのだとしても、他者に犠牲を強いる時点でリーヴァルディにとって唾棄すべき存在であった。
振るわれる呪詛の大鎌。
その一閃が『屍仙女』の背に癒えぬ傷を刻み込むだろう。
これまで彼女が見て、知ってきた吸血鬼と変わらぬ邪悪なオブリビオンへと振るわれた一撃は、重たく、そして鋭く悪業を切り裂くのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
フィア・シュヴァルツ
「チキン南蛮を独占する者がいるだと!?
美しさのために、チキン南蛮たち(注:瑞獣のことらしい)を贄として独り占めするとは許せぬ!
チキン南蛮は我のものだ!」(じゅるり
チキン南蛮たちを捕らえている絡繰とやらから、チキン南蛮たちを解放していこうではないか。
【リザレクト・オブリビオン】で我の下僕たるアンデッドたちを召喚し、チキン南蛮解放にあたらせよう。
あれは我のもの。
きちんと逃さぬように見張っているのだぞ。
「屍仙女とやら……オブリビオンとして蘇ってまで美しさに囚われるか……
不老不死など、そこまでして求めるものでもなかろうに」
我の胸に去来するのは、自身の不老不死の呪いと、チキン南蛮への期待であった。
チキン南蛮。
『南蛮門』。
それは言葉の響きだけ聞けば、まあ、そういうふうに聞こえることもあるのかもしれないなぁと思うものであった。
しかしながら、戦いの現状を見れば、それが誤りであることは火を見るより明らかである。
フィア・シュヴァルツ(腹ペコぺったん番長魔女・f31665)は違う。
「チキン南蛮を独占する者がいるだと!? 美しさのために、チキン南蛮たちを贄として独り占めするとは許せぬ! チキン南蛮は我のものだ!」
ヨダレをたらしながら言っても何も決まらないのであるが、フィアにとって大切なことはチキン南蛮だけである。
もう食欲が限界に達しているのだろう。
『屍仙女』が絡繰でもって捕らえる瑞獣たちが鶏に見えて仕方ないのだろう。
そこまでいくともうヤバない? って思わないでもないが、それがフィアという猟兵である。
「何をわけのわからないことを。わたくしの美のための贄。それを如何にしようとわたくしの勝手でありましょうに」
猟兵たちに半数の瑞獣たちを開放されて弱体化しても尚、『屍仙女』は強大な力を誇っていた。
オブリビオンの個としての力は猟兵を凌ぐものである。
だからこそ、猟兵たちは紡ぐ戦いを続けるのだ。己が打倒できなくても、後に続くものたちがきっと為してくれると信じるからこそ、戦い続けることが出来る。
「やかましい! 我のチキン南蛮を! 独り占めしている者が言うことか!」
くぅわっ! とフィアの瞳が見開かれ、ユーベルコードに輝く。
それはリザレクト・オブリビオン。
自身と同じ強さを持つ死霊騎士と死霊蛇竜が召喚され、己の下僕とする力である。
彼等は一斉に『屍仙女』へと迫る。
しかし、振るう宝貝『芭蕉扇』が生み出す突風でふきとばされる。しかし、フィアは戦場に躍り出る。
術者である彼女自身が飛び出すことは珍しいことであったし、『屍仙女』もそう思ったことだろう。
「血迷いましたか! 術者自身が前に出るなど!」
「『屍仙女』とやら……オブリビオンとして蘇ってまで美しさに囚われるか……」
「当然でございましょう? 美しさこそが全てを凌駕するもの。ならばこそ、わたくしは欠けたる美しさを求めるのです。当たり前のことでしょうに」
彼女の瞳は欲望に歪み果てている。
己の美しさ。それが衰えるものであると理解できぬからこその欲望である。
どんな存在であれ五衰より逃れる術はない。
フィアにとって不老不死とは求めるに値するものではない。
胸に去来するのは己の身を縛る不老不死の呪い。
そんでもって、チキン南蛮への期待。いや、何処に言ってもチキン南蛮はでてこないと思うのだが、そんなことは些細なことであった。
「そこまでして求めるものでもなかろうに」
憐れすら感じる。
けれど、フィアの言葉の背後で死霊騎士たちが絡繰から瑞獣たちを開放していくのだ。
「持つものが持たざるものに告げる言葉としては、妥当なものでございますね! それが奢りであると!」
『屍仙女』にとってフィアの言葉は決して交わらぬ平行線なるもの。
しかし、彼女はようやくにして気がついただろう。フィアが憐れすら感じる視線を送っていたのは、彼女自身に対するものであったからだ。
変わらぬということは成長無きものと同然。
変わらぬことは日々を灰色に変えていくものである。そんな灰色に塗れた生き方などむなしいだけであると告げるのだ。
「あれは我のもの。返してもらうぞ」
フィアは瑞獣たちを開放した死霊騎士たちと共に戦場を奔る。
死霊蛇竜がとぐろを巻き、開放された瑞獣たちを抱えて戦線を離脱していく。
憤怒の声が背を追ってくる。しかし、フィアはもう『屍仙女』のことなど気にもかけていなかった。
「フフフハハハハ! これでチキン南蛮食べ放題だな!」
しかしながら、フィアは勘違いしている。
瑞獣ってそういう食べ物じゃないから――。
大成功
🔵🔵🔵
ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
美しさねえ、あたしにはあまり縁のない話だけど、
まあこれは止めないといけないよねえ。
さて、まずは瑞獣の救助ね。
瑞獣たちを捕らえているのがユーベルコードなら、古竜の戦斧を使おうか。
【古竜浪波】を使って、瑞獣を傷つけずにユーベルコードだけ攻撃して、
拘束している不思議な絡繰を破壊するよ。
白骨の怪物相手でもやることは大して変わらないかな。
【古竜浪波】の波動でユーベルコードの効果を弱めながら、
戦斧を直接叩き込んで白骨の体を砕いていこうか。
生きる為に命を奪う事はあるしそれを否定はしないけどね、
死体を飾るのに奪われていい命は無いよ。
猟兵達によって絡繰でもって拘束し、生命力を吸い上げていた瑞獣たちを開放された『屍仙女』の力は大きく減退していた。
しかしながら、もとより強大なオブリビオンである彼女は猟兵さえ打倒できるのならば、巻き返すことができることを知っていた。
これまで刻まれた打撃の数々を己の上半身の肉を捨て去ることによって白骨絡む巨大な怪物へと変貌させる。
「わたくしの邪魔ばかりを! そこまでして、わたくしの美を邪魔したいというのであれば!」
巨大な怪物へと変貌した姿は、まさに欲望の権化と言うべきものであっただろう。
五衰を否定し、拒絶し、死して骸の海に沈んでもなお求めるは美。
失ったものを贖うためだけに欲望が歪んだ結果であろう。
「美しさねえ、あたしにはあまり縁のない話だけど、まあこれは止めないといけないよねえ」
ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)は、小さく頷く。
目の前には怪物へと返納した『屍仙女』の姿、その威容がある。
強大なオブリビオンであることには違いない。けれど、ペトニアロトゥシカは、躊躇わなかった。
己の手にした古竜の戦斧を握りしめる。瑞獣たちを捕らえているのがユーベルコードであるというのならば、古竜の戦斧こそ輝く時である。
彼女の瞳はユーベルコードに輝く。
どれだけ不可思議な絡繰であったとしても、ユーベルコードで生み出されたものであるというのならば、ペトニアロトゥシカにとってそれは破壊できぬものではなかった。
「打ち消そうか」
放たれるは、古竜浪波(ディフィート・パルス)。
彼女自身の生命力を込めた古竜の戦斧が振るわれ、放たれる波動による一撃は肉体を一切傷つけない。
それは相対する『屍仙女』も同様であったことだろう。
彼女の肉体を透過する波動は、背後に捕らえられていた瑞獣たちを拘束する絡繰だけを破壊するのだ。
一瞬の出来事であった。
『屍仙女』にとっては、何が起こったのかすら理解できなかっただろう。
己の力を強大なものとしていた絡繰より流れ込む瑞獣たちの生命力が過半数失われてしまったのだ。
「何が……!? わたくしの贄たちからの力の流入がなくなった……!?」
絡みつく白骨の巨体が揺らぐ。
それもそのはずだろう。
彼女の力はもとより強大であれど、猟兵たちを苦戦させたのは囚われの瑞獣達が存在してるからだ。
それが一気に失われてしまったのならば、ペトニアロトゥシカにとって目の前のオブリビオンはただの巨体に過ぎないのだから。
「生きるために生命を奪うことはあるし、それを否定しないけどね」
ペトニアロトゥシカは飛ぶ。
振るう戦斧の一撃が白骨を砕きながら凄まじい衝撃波を解き放つのだ。ユーベルコードをのみ打ち消す斬撃の一撃は『屍仙女』の身を覆うユーベルコードによる強化を打ち消していく。
どんな力であっても打ち消す力は作用する。
ましてや、瑞獣たちを開放され弱体化した『屍仙女』にそれを防ぐ手立てなどないのだ。
白骨の破片が飛び散る中、ペトニアロトゥシカの瞳が煌々とユーベルコードに輝く。
今まさに他者を喰い物にしてきた者が食い破られる瞬間を迎えようとしていた。
「死体を飾るのに奪われていい生命は無いよ」
振るう戦斧の一撃が『屍仙女』の体へと、その本体へと放たれる。
「わたくしを死体……だとおっしゃるのですか!?」
「そうだよ。オブリビオンは過去の化身。今を生きる人達の生命を徒に奪っていい理由なんてどこにもない」
斬撃は縦一文字に刻まれ、その力の奔流を持って怪物の如き威容を霧散させるのであった――。
大成功
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アストラ・テレスコープ
捕まってる瑞獣さんたちは、本当ならみんなすごく強いはずだよね……
でも捕まっちゃったってことは、あの屍仙女はもっと強いってことだよね!
それなら、屍仙女の攻撃を防ぎながら、瑞獣さんたちを元気にすればきっと自力で絡繰を解いて脱出できるはず!
まずはロケットを噴射して空中から一気に捕まってる瑞獣さんたちのところに近づく!
「みんな!回復させるからあとは自力で頑張って!よろしくー!」
ってUCを発動!
暗黒エネルギーを敵の暴風にぶつけて相殺しながら
光の力で瑞獣さんたちを治すよ!
あとは元気なって脱出した瑞獣さんたちと一緒に攻撃!
私は弓で射撃するよ!
アストラ・テレスコープ(夢望む天体望遠鏡・f27241)はその瞳で見たことだろう。
白骨が絡みつくような巨体。
その怪物の如き威容が霧散したのを。それは『屍仙女』の力が大きく減退させられたことを示していた。
すでに絡繰に捕らえられていた瑞獣たちは開放されている。
他の猟兵達がそれを為したのだ。しかし、瑞獣たちは長く『屍仙女』に生命力を吸い上げられていたがために多くが衰弱していた。
立ち上がることすら難しい有り様であった。
「あの人達は、本当ならみんなすごく強いはずだよね……」
だが、それでも『屍仙女』は彼等を上回る強さであるということである。
アストラにとって、それは恐るべきものであったかもしれない。
けれど、彼女は立ち止まることを是としない。己が何のために歩むのかを知るからこそ、その瞳はユーベルコードに輝く。
「お星さま、カモン!」
アストラの右手が天に掲げられる。
集まるは星の光。
ここが夜天であるからこそ為し得たものであろう。ロケット噴射でもって空中を飛ぶアストラはまさに流れ星の如き姿であった。
煌めく星に瑞獣達が顔を上げる。
衰弱した顔に灯るのは、美しさの発露であった。
「わたくしの贄たちを返していただきます……! この、輝き……!」
アストラの放つ星の輝は如何なるものよりも美しいものであったことだろう。
天の光を集める右手は、光のエネルギーとなって衰弱した瑞獣達に降り注ぐ。
治癒の力。
それこそがアストラのユーベルコードによる力であった。瑞獣たちは力を取り戻した大地に立つ。
しかし、『屍仙女』はそれを許せぬと手にした『芭蕉扇』を振るうのだ。
「その輝きを! わたくしの美しさを上回るものがあっていいはずがないのです!」
吹き荒れる暴風がアストラを襲う。
しかし、アストラの瞳は未だユーベルコードに輝いている。放たれる暗黒エネルギーが暴風を相殺し、光の治癒による力が瑞獣達を率いるのだ。
「みんな! もう元気になったよね! なら、がんばって! よろしくー!」
アストラの言葉に瑞獣たちが頷く。
彼等もまた封神武侠界に生きる者たちである。
世界の危機に戦わずしてなんとする。ゆえに、彼等は己たちのユーベルコードを振るうのだ。
一つ一つは『屍仙女』の強大な力に敵うべくもない力であろう。
しかし、力が束ねられれば、光が束ねられるのと同じように、強大なものすら穿つ力へと変わっていく。
アストラはその光をこそ束ねた矢を引き絞る。
其処に宿るのは天の力。
宇宙の力を宿した弓は、瑞獣達より託されたユーベルコードの光を矢として『屍仙女』へと放つのだ。
光条が流れ星のように戦場の空をまばゆい光で埋め尽くしていく。
「こんな、光が……! わたくしの美を上回る、輝きがあっていいはずが……! こんな、こんなことって……!」
『屍仙女』はまばゆい光に顔を覆う。
その姿は老いた姿であった。
捕らえた瑞獣達全てを開放され、弱体化した彼女を待っていたのは、本来の姿であった。
死して骸の海より這い出て、欲望に歪み果てた本当の姿。
美しさはない。如何なる天人とて五衰より逃れられない。それから逃れようとしてもがいた先にあったのは、彼女が本来持っていた美しさを捨てた姿であった。
「みんなの生命を吸った美しさなんて! みんな天に浮かぶ星の一つ一つと同じ。変わらないことなんてない。けど、それでも輝いている。最期の時までずっとね!」
反射と屈折の力を手繰るアストラの矢の一撃が『屍仙女』を穿つ。
それはプリズム。
極光の輝きが解き放たれ、歪み果てた欲望の権化を打ちのめす。
煌めく光が戦場に飛び散り、夜天を明るく照らす。
アストラは、霧消していくオブリビオンの欠片すらも極光の美しさでもって照らし、その成れ果てを見送るのであった――。
大成功
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