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殲神封神大戦③〜甘い甘い私腹の蜂蜜を

#封神武侠界 #殲神封神大戦 #殲神封神大戦③ #どこか正月っぽいシナリオ

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●私腹を肥やすは喜びで
『始皇帝』の威光に充てられて。
 奸臣(かんしん)共は臓腑を潤す為に、頭を垂れる。
 常の事であり、当然のことと受け取り、行動してきた。
 しかし野心を出す事なかれ、ただ、始皇帝に遣えるものであれ。
 潰えたのは当然で、かの始皇帝が蘇ったなら当然の事と馳せ参じよう。

 以(かつ)て。
 いつか自分たちが喪し副葬(ふくそう)されたこれは身を固める鎧と成そう。
 望まれた事は、ひとつ。
 "大都市長安を攻める"こと。
 渭水(いすい)周囲に陣を築き、長安攻略に疾く望むべし。
 望むべし、――さあ我こそはと名乗り出よ。
 兵馬俑(へいばよう)軍団の中でも、勤勉共と、奸臣共に温度差はいくらでも出よう。
 曰く――命可愛さに、あえて殿を務めると口八百を並べ立てるものさえ居るほどだ。

●奸臣共はほくそ笑む
「あけましておめでとう。さあ仕事初めだぞ」
 フィッダ・ヨクセム(停ノ幼獣・f18408)が軽く声を掛けて、冗談めかして笑う。
「アンタらには今から攻め込もうとしてる集団の一つを、退けて欲しいんだ」
 集団の特徴を上げるのなら、ずばり機動力が高く防御力を備えてる。
「俺様あまり難しい用語に詳しくはないんで……なるべく噛み砕いた形で伝えるけど」
 前置きを一つ。
「兵馬俑(へいばよう)とは、死者の墓に副葬される品の一つ。ほら、あれだ。死んだ後の魂が身体無き後で其処に宿れるように……みてえな用途の土偶とかみたいなやつだよ」
 ただし大きさは生前と変わらぬ等身大。始皇帝の時代に創り出された兵馬俑は、それはもう本物に迫る造形の細かさがあったという。
「俺様が予知した集団は、武士のような俑(一般的な兵士を象ったもの。長物の武装済み)と、文官のような俑(裾の長い上位を着て小刀を帯刀する者)の二種がある」
 戦いに赴く者たちと、戦わない者たちの極端な人数割が行われた集団。
 戦うモノよりも、戦わないモノの個体が圧倒的に多い。
「大半が文官。偉い方立場に居るから守れ、とか言うタイプの奴らッぽくてな……まあ、そんなに困る事はねェんじャねえかな」
 兵馬俑を着込んだオブリビオンたちは、機動力に優れる。
 同時に装甲代わりに身を守る武具として、賜り物を使うだろう。
「正面切ッて戦うなら、強敵ぞろいとも言うが……中身は薄いハリボテだ。集団に、そんな結束なんてある理由がねーのさ」
 始皇帝に忠誠を誓うものは、この集団ではそんなに多くない。
 むしろ少ない、に属するほど。後方に控えるように逃げ隠れる文官。これらは悪辣で至福を肥やし最後まで生き残ろうとするものたち。
「むき出しの野心、下剋上を働いて同僚より上を取ろうとする功績の取り合い。戦場だろうとそれが顔を覗かせる」
 最後まで生き残ろうと、策を講じて、いいくるめようとしてくるだろう。
「文官の元は僧侶……特に正月頃には籤(くじ)を引かせる立場であッたとか」
 つまり、それは、おみくじ、のことだ。
 大金を叩いた人、偉い立場の人。
 それらの人物にしか行わないとされる神事。
「アンタが強いものだ、と知らしめる事が出来れば籤の一つでも引かせてくれるかもよ?態度が気に入らねーなら初夢気分でサクサク行動に移すのも良い」
 正月早々生真面目な戦いをしてもしなくても猟兵の自由だけど。
 気を張るには、――まだまだ早い。


タテガミ
 こんにちは、タテガミです。
 この依頼は戦争に属する1章のシナリオ。

 プレイングボーナスは、甘言や魅了で敵の同士討ちを誘う。

●概要
 兵馬俑集団との戦闘。全員が、土偶(どぐう)質な結構かたーい鎧を着込んでいます。なのに何故か素早く動けて厄介です。これは外での戦闘です。
 内訳は――兵士、文官の2種の集団。
 兵士オブリビオンは長物を武装済みで、戦うことに好戦的で無言。
 喋る事が考えられるのは、文官なオブリビオンのみです。
 喋るだけで、文官たちは戦おうとはしないでしょう。
 シナリオに置ける集団敵は文官な者たちのそれとして扱うので、ユーベルコードをご確認下さい。命乞いの相手は猟兵だけに含まれず、同僚である兵士たちにも及びます。プレイングボーナスを上手いこと利用すると、足の引っ張り合いが多発して退けやすくなる、かも。

●おまけ
 文官は、元は僧侶であった者たちで、正月行事みたいな事はしてくれる場合があります。具体的にはくじを引かせてくれる、みたいな?プレイングボーナスを絡めた交渉を行ったりすると、だいたいちょろく釣れるでしょう。
 結果はどんなくじであるという内容だけプレイング指定でも、タテガミにぶん投げるでも可。くじ結果がタテガミ任せな場合は、あみだくじを自主作成してダイスでなんやかんやして決定します。
 敵相手に今年はじめの運試しなくじを引くためだけに来た、でも一応可。
 タテガミが分かれば、問題有りません。
 参加者が全員おみくじオンリーという奇跡が起きた場合は、猟兵が関わったことで敵の同士討ちが過熱化し虐殺ルートな内部崩壊によって解決が成されますので、そこまで気にしなくても、問題ないかも知れません。

●その他
 プレイングの内容によっては真面目だったり軽率に軽くなったりするかも。
 なるべく頂いたプレイングは採用できればと思いますが、中華系のあれやそれやは多少の理解はあまり詳しいとはいえない為、描写が期待に答えられない場合は、内容に問題なくても採用を見送らせて頂く事があります。
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第1章 集団戦 『私服を肥やす奸臣達』

POW   :    御馳走を食わせるから…み、見逃してくれぇ…!
【今までに口にしてきた豪勢な食事】を給仕している間、戦場にいる今までに口にしてきた豪勢な食事を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
SPD   :    金なら幾らでもやる!だから頼む命だけは!
あらゆる行動に成功する。ただし、自身の【不正により懐に蓄えてきた財産】を困難さに応じた量だけ代償にできなければ失敗する。
WIZ   :    協力すればどんな願いも叶える!儂の命だけでも…!
【自身を助けたくなるような魅力的な条件】が命中した生命体・無機物・自然現象は、レベル秒間、無意識に友好的な行動を行う(抵抗は可能)。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

張・西嘉
奸臣と言うのは本当に何処にでもわいて出るものだな…かの始皇帝の臣の中にもこうしてしれっと紛れていたわけだ。

さて、お前達。主に使える身でありながらそのような体たらく情けないとは思わないか?
俺も今は一人の人を主人と仰ぐ身。
そのような無礼とてもじゃないが許せんな。
どれ、一つ仕置きをしてやろう。

UC【氷蒼の加護】を乗せた一撃
俺のように忠実であればこのような加護さえもらえる。
(攻撃と主人の仙術を見せ怯えさせる)

正直命乞いはどれも響かんな。
そうだな余興でもしてみるか?
くじの一つくらいなら引いてやらんこともないぞ



●向上の兆し有り

 砂埃が沸き立つ。
 武装された集団が、歩みを進めれば舞い上がる。
 それをどうして見逃せようか。
 数ばかりが多い武装集団を、ただ行かせてなんとする。
「奸臣と言うのは本当に……」
 鷹が如き気配をその身から呼び起こし張・西嘉(人間の宿星武侠・f32676)が躍り出る。狙う場所は、見当が付く。ただしそちらへはいかせまい。
 武装する兵士たちは、相応の戦意を武勇に起こしているというのに。
「後方に蠢くだけで、本当に何処にでもわいて出るものだな……」
 いや、かの始皇帝のもとであったからこそ甘い蜜を啜り、私腹を肥やし続けた者共かも知れぬ。
 相応の信頼と相応の"臣"があれば当然のことやもしれず。
「こうして混ざっているのなら、それ相応に戦う気持ちを持ち合わせていると受け取るが、構わんな?」
 兵馬俑を身に着けた兵士共が、敵対者有りと青龍偃月刀を構え直す。
 西嘉が同じく構える得物こそ、青龍偃月刀。煌めき冴え、どちらも兵馬俑の集団の上を往く。
「技術の程は、低くはない。惜しいな」
『惜しいなどと、称賛を受けても怯むな挑め!挑め!』
 奸臣の声は兵士たちを鼓舞する。協力しろ、協力を惜しむな。
 どんな願いも叶えてやるから、軍師が如き立場を固める儂の命は助けよと。
『立場!金!それから武勇のでっち上げ!どれでも叶えよう』
『この集団のトップ層があれでは、お前達は義理堅き者共であえるとも頷ける』
 兵馬俑を身に着けて、幾人もの兵士が長柄の青龍偃月刀を振るい西嘉へ果敢に挑みかかる。速さこそ、これまでの強敵に匹敵する勢い。
 ――言葉を交わさず、ただ武勇を示す。
 ――これが友好的で、義理堅い者共でなければ何なのだ。
 柄で受けて、それとなく流し――力任せに押しのける。
「さて、お前達。主に使える身でありながらそのような体たらく情けないとは思わないか?」
 力持ちに力で挑むとは、笑止。
 一度、二度の長柄の振り抜きで、周囲を囲う兵士たちをふっ飛ばし――鋭い視線は、怯えの表情を貼り付ける奸臣へ向いた。
『……ひっ!?』
「俺も今は一人の人を主人と仰ぐ身」
 主人を戴くのに、忠誠を誓っているとも言えないその姿は、不遜だ。
「そのような無礼とてもじゃないが許せんな」
 ――どれ、一つ仕置きをしてやろう。
 怯えの顔に何を言おう。
 何を言ったとしても、彼らは怯えに取引を持ちかけてくるのだろうが――。
『何をしている!お前達、集団の崩壊は主上の顔への泥塗り!欲しい物を申告せよ!』
『伝説級の武器防具、仙人修行への出奔手当。なんなりと、手配してみせようぞ』
 はあ、とひとつのため息を。
 ――自身の命可愛さに、よくもまあそんなに口から条件提示が出来るものだ。
「多少の傷も、恐れぬならずか――しかし、ではこれならばどうだ」
 かしゃんと陶器の割れるような音を幾つか聞いた後。
 西嘉は氷蒼の加護を呟く。攻撃が命中した兵士の身体を、傷つけられた部分からぶわああと溶けない氷が覆っていく――。
 足を縫い止め、進行の停滞を促進し、徐々に氷の表情を創り上げていく。
「俺のようなに忠実であればこのような加護さえ貰える」
 軽く指を鳴らすと兵士たちはバタバタ斃れる。悲鳴を上げることもなく、息をしている様子さえ見て取れぬ武侠の鑑やもしれない。
『……だ、誰か!まだ戦えるモノよ!前に出よ!』
 主人の戦術を見せ、攻撃する姿にまだ余裕を持つ西嘉に対し、奸臣たちはビビり散らして集団の残存数さえ認識を誤認する。
 スピードを活かし戦える兵士など、氷の前にほぼ全てが沈んだではないか。
『兵士なぞ使い物にならないと思っていたのだ!』
『この際お前でも良い!命だけはゆ、譲れぬが……欲しい物はないか!』
『そうだぞ、どんな願いでも叶えてやろう!』
 懐に手を忍ばせ、文官共は怯えて震え上がる。一歩でも引けば、討たれる。
 彼らにもその生命の危機は視えるのだ。
「正直、命乞いはどれも響かんな。どんな願いも叶えてもらおうとは思わん」
 ――だが、そうだな。
 ――余興でもしてみるか?
「文官。もとは僧侶だそうだな、くじの一つくらいならひいてやらんこともないぞ」
『……おぉおおお!成程、それが願いか!ならばすぐに叶えよう!』
 木管を懐からこれみよがしに取り出して、奸臣共は逃げの準備を始めだす。
 周囲に氷漬けになった兵士たちを置き去りに、大声を張り上げて結果を言うのだ。
『お前の運勢は、"吉"!』
 『これより先に、困難があれどただ、己の路を信じて進み続けるべし』
『様々なことに迷わず、挑戦せよ』
『自分らしく過ごせば周囲の運気も上がっていくだろう!』
 木管を慌てて放り投げ、奸臣共は弱々しい悲鳴を上げながら逃げ出した。
 兵士への指揮をがくんと下げ、放り投げた事は現実として残ったわけだが……。
 くじの通り強運を得るに動くかどうか、行動するもしないも、西嘉次第――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
おみくじ引きたーい!
年の初めはやっぱり大事だよね
運の良し悪しに関わらず

とりあえず色々巻き込まれると厄介なので【オーラ防御】で身を守りつつ
兵士さんも邪魔かなぁ
さて…ねぇ兵士さん達、いいように使われちゃってるけどそれでいいのかな
この人達(文官)、何もせずに手柄だけ貰っていこうとしてるみたいだけど
貴方達がどんなに命をかけて忠誠を誓ってもなんの功績も認められない
そんなままで本当にいいの?

文官達の性格を利用し
【誘惑、催眠術】を乗せた言葉で兵士の方を挑発
仲間割れの誘発を狙いつつ
ダメ押しの【おねがい】で兵士の心にトドメ
出世応援してるから

あ、おみくじの為に1人は残しておいてねー
願いは自分で叶えるからいいです



●良縁に恵まれる

 正月晴れやかなおみくじの波動を、翼の隅にキャッチ。
 ぞわぁ、と期待と興味が栗花落・澪(泡沫の花・f03165)の中に大量に発生する。
「おみくじ、引きたーい!引いてくれてもいいよー!」
 年の初めはやっぱり大事だよね、そういうの。
 運の善し悪しに関わらず、識った後にどうするか、とか?
 考えたりするの、楽しいよね。
「でもその前にとーりーあーえーず!」
 色々巻き込まれたりするのも時間の問題。
 兵馬俑の集団は集団だけに数が多い。
 敵対して一気に迫られては事だ、巻き込まれる前にオーラ防御で身を包み、致命傷を追わないように祈りを心に留める。
 新年早々派手に大怪我なんて、笑えないからね。
『新手か!?さあ、さあ!出会え者共!』
『挑め、蹴散らせ!すすめすすめ!』
『協力せよ、願いを叶える権利をやろう!儂らの命だけでも死守せよ!』
 奸臣たちが大声を上げて指揮をする声。
 あれらは決して自分から敵攻めを行おうとしないのに、兵士たちは青龍偃月刀を振るいながら澪へと迫る。
 無言の圧力、無言の同調。
 無意識下の支配。それら全ては奸臣達の向こう側――始皇帝へと至る想い。
「おっと……!」
 ふわり、と足元軽く振り抜きを空に身体を逃がすことで避けて。
 兵士たちの冷たい身体に手を当てて、飛び越えるように身を逃がす。
 ――ううん、兵士さんもちょっと多いと邪魔かなぁ。
「さて……ねぇ兵士さん達?いいように使われちゃってるみたいだけど、それでいいのかな」
 偉い人(始皇帝)の為って権力を振るっているだけじゃないかな。
 きっと全部の行動を自分のことのように報告して、――甘い甘い功績の蜜を独占するんだ。同じ役職に付く者達だけが啜れる甘い、どろどろの蜜を。
 翼を広げて、跳び箱でも飛ぶように勤勉兵士たちを飛び越えて。
 澪に踏み台にされた者、飛ばれた者たちはボーリングのピンでも倒すように仲間を巻き込んで転倒した。数が多ければ多いほど、一人が転べば巻き込まれる。
 勤勉でアレば在るほど、敵を討つ。それだけに思考を奪われる。
「あの声の大きな人達(文官)何もせずに手柄だけ貰っていこうとしてるみたいだよ?」
『……まあ、そうですね』
 接敵した兵士の一人が、ぼそりと呟く。
 その声からは尊敬の色も、守護する強い意志もなかった。
「貴方達がどんなに命をかけて忠誠を誓っていても、なんの功績も認められない……ように思えるよ。そんなままで、本当にいいの?」
『……此処だけの話。我らが忠義を置くのは始皇帝。彼らなどではありません』
『……もし、この作戦を達成できた暁には逆賊有りと第一に地に沈めましょう』
 今はどんな扱いを受けても放置して、後に一番初めに打ち倒さん。
 功績の奪い取りは、彼らだけが行える特別な事柄に非ず。
 ――あらら。悪を見逃す悪にだってなれる、っていうんだね……。
 強い人たちだ、本当は。奸臣たちに好きに扱われているのが気の毒だ。
「敵対している立場の僕が、何に協力したら願いを叶えて貰えるのかな」
 ふと、そんな言葉を奸臣に降らせる。
「僕ね、この人達にばかり重労働させないであげてほしいよ」
 言葉に誘惑する波長を落とし込み、耳へ心へ響かせるシンフォニアとして甘く、甘く囁く。可愛ら良い誘惑ボイスに込める催眠術。
 もう少しねぎらって。普通に対応してあげて。
『儂らにも働けと申すか……小刀は木管を削るものであって』
『戦いに用いるモノ等兵馬俑の防御力と逃げ足のみで……』
 見るからにうろたえ始めた文官達。催眠にどっぷりハマって私腹を肥やそうという考えがやや薄れたようである。文官、の名の通り武にわきまえがない辺り、本当に戦場に向かないタイプの存在だ。
「……さあ!兵士さんたち、皆の功績を此処で正当化しておくといいじゃないかな」
『これはどうも、ご丁寧に』
『我らの身内に毒は要らず。主上の膝下に、毒は要らず!』
 兵士達の攻撃の的は、奸臣達。青龍偃月刀の刃はお前らの喉笛をまず掻き切ることだろう。
 仲間割れを誘発し、ダメ押しにと声に力を込める。
「君達、僕のお願いを聞いてくれるよね」
 此処で敗北の汁を啜ること。甘くない泥の味を、甘受する事を認めるよね。
『ああ……そうだな、儂らの罪は狂わす毒の甘さよ』
『……ではどうかお覚悟を。我らの忠誠は、主上の元へ!』
 首を狩る兵士達、自壊を祈る文官達。
 朽ちる者、終わるもの。
 敵の敵は味方になり、悪臣どもは討たれ続ける。
『……この場を指揮するものが居なくなるのですから』
『悪を打ち次第、撤退を行いましょう』
 砂が舞い上がる中で、彼らの声を聞き。
 情けない悲鳴を幾つも聞いた。これが悪の終わる刻。

「さあて?」
『……じ、指差して示されよ』
 扇のように並べた木管を、澪に示す手は震えていた。
 一人だけ遺された文官は、スべきことを行った後、悔い改めて撤退する気でいる。
 財の全ては死んだらおしまい。それを知っているからこその、逃げの姿勢。
「うーんとね、これ!」
 右から二番の木管を選び、信託のようなおみくじ結果を待つ。
『……汝が運勢は、"中吉"。転機や運気が変動を繰り返す星の巡りの兆し、有り』
『人との縁、周囲との縁。大事に思える気まぐれな物事に、出会うやも』
『選び取るも良し、育み慈しむも良し』
『選ぶ縁は汝が決めよ。星の巡りは、そのように修正されていく』
「あ、願いは自分で叶えるからいいです」
 友好的に応じる風を見せて澪は再びふわりと空へ舞い上がる。
 自分は見逃されたと思うやいなや奸臣は逃げ出すが、――その後方へ迫る兵士達。
 あの奸臣が生き延びる路は――無いだろう。
 悪ばかりが蜜を舐める、集団に悪が栄える場所は無し。

大成功 🔵​🔵​🔵​

楊・宵雪
「可哀想なようにも見えるけれど、お仕置きが必要なコたちみたいね

符術の[弾幕]見せてまずは威嚇
そして[誘惑]とUCのご馳走のアメとムチで交渉

「わたくし、あなた達を根こそぎ倒そうとは思っていないの。犠牲が少ないほうがいいのは、わかるでしょう?
戦争後の統治を思えば、国力を削ぐ殺戮は最小限に抑えるのがよいという政治論にて説得を行なう

文官のUCで兵士たちの行動速度を下げてくれないか頼む

「それはそうと、おみくじ、わたくしにも引かせていただける?



●失せ物は必ず見つかる

 半数の兵士を討たれても尚、作戦遂行を優先する奸臣共の声は喧しい。
『戦え戦え者共!功績を上げよ、戦火を以て武を示すのだ』
 飛び込む敵を討て。そして進めと声を高らかに。
「可哀想なようにも見えるけれど、お仕置きが必要なコたちみたいね」
 ――特に、あの声を張り上げる者たちは特に。
 楊・宵雪(狐狸精(フーリーチン)・f05725)は笑みを携える。
 武装であり死者である証、兵馬俑を防具として進むとは。長安攻略も、防具が硬く足が疾いとなれば、確かに作戦の固めとして展開も出来よう。
「でもダメよ。戦果を上げて貰っては困るの」
 進めと声を掛け、進軍をやめるなと怒号を散らす。どちらも同じ兵として、出撃している身の上だと奸臣達は意識している様子もない。
「戦いを、と望む姿勢をわたくしは肯定したいとは思わないのだけれど……」
 バッ、と手元に得意の符術を展開し、駆け出してくる兵士の長柄武器に向けて、素早く放つ。
 一つの属性では、耐性ありなら停められない。
 水と炎の札を大量に、弾幕として放ち被弾と共に込めた力を顕現させて威嚇攻撃。
「悪くは思わないで欲しいの」
 炎が灯ると同時に武器を破壊される者が居て。
 激しい破魔の清き水が頭上より降り注ぎ、浄化されてその場に崩れ落ちるものまで。
 兵士もまたオブリビオンならば、武器破壊は攻撃手段の損失。
 亡骸となったことのあるものであるならば、破魔の水撃はとても効果を示すだろう。
「攻撃手段が無くなればもう戦いに持ち込むのは難しいでしょう?」
 ――ご飯にする?それとも、お風呂?
 ――それとも……ふふふ。
 花嫁修業は湯気と石鹸の香り。宵雪は囁くように問いかける。
 麗しの寵姫に声を掛けられては、如何に無言で好戦的な兵士達もノーリアクションという体裁を崩し始める。
『あー……』
 大きな布を一枚。そして、淡々と、並べて見せる包子(パオズ)。
 手持ちの食材として、持ち込んだ小麦粉と塩さえあれば、幾らでも作り上げよう。
 ニコリと宵雪が微笑めば一人また一人と兵士たちは大人しく、その手に暖かさを享受する。兵馬俑からほぼ同一の顔をした男たちが出てくるのだから不思議な光景だ。
 武器がなければ防具も要らない。
 食事に武具は必要ないと、誘惑されて、脱ぐように。
「美味しいかしら?」
『あ、悪女か!?』
 武器と戦意を奪い、アメとムチを使い分ける宵雪に向けて吐き捨てられた言葉はそのような響きでブツケられた。
 それはきっと、宵雪とは関係ない者との比較。
 いつか何処かで朝廷を見出した狐が居たとか、居ないとか。奸臣たちが、戦術を扱う妖狐をいたなら、そんな言葉が出ても仕方がないのかもしれない。
『全てを殺し尽くして、見せしめにすると!?』
「わたくし、あなた達を根こそぎ倒そうとは思っていないの」
 ため息を一つ。別の誰かを幻視している様子の者たちを、此処まで怯えさせる誰かは凄い。
「犠牲が少ないほうがいいのは、わかるでしょう?」
 屍の山を築いても、誰も得をするものは居ない。
 屍に討たれる者が出ても、得がない。
「この戦いには意味があるのでしょう。でも、国力を削ぐ殺戮は誰の為に行うのでしょう」
 長安攻略で無血開城が出来ずとも。
 最小限での流血で済むのなら、それでよいのではないかと。
「これが戦略的攻略法なら、国の動かし方が少々疎いような……」
 ――ねえ?
 ――此処に広げたご馳走よりも、もっと美味しいモノを振る舞うわ。
 ――戦うのをやめて、撤退してはもらえない?
 誘惑する言葉を並べて、囁いて。
 コクリと頷く兵士の数に、目を細めて振り向く。
「わたくしの言葉にこうして乗ってくださる方が見えているかしら」
『ご、ご馳走なら儂らが腹がはち切れるまで振る舞おう!お前達、目を覚ませ!』
『な、なんだその目は!儂らは作戦終了後に振る舞うとも!』
『今すぐ欲するなら時間をよこせ!』
 ぎゃあぎゃあと慌てだす奸臣たちは怯えの表情を貼り付ける。
 兵士達が、奸臣たちの料理に興味と関心を示さないのだ。
 豪華仕立ての、にんにく中心チョウザメスープから派生した品々。
 始皇帝が長生きするために欲した食材を使う料理だぞ、と怒号が返答される始末だ。情緒不安定な彼らに、誰が耳を傾けるというのだろう。
 奸臣の給仕に応じずl豪華な食事に興味を示さなかった兵士達全てが、行動速度を減速させられる。
 驚異ですら無くなった彼らは、無力に等しい。
「美味しそうね、それは。男性の関心を引くならば、やはり胃袋と利益の話からするのがよいかと」
『……み、見逃してくれぇ…………!』
 演説が聞こえていなかったのかしら、と困り顔を披露する宵雪。
「命乞い……それはそうと、おみくじの話を聞きまして。わたくしにも引かせていただける?」
『……籤(くじ)!?お、おう良いとも、その代わり…………』
「はい。条件はそちらで構いませんよ」
 逃亡を図りたい奸臣は自分の可愛さに木管を扇のように並べ、選べと。
「では左のこれで」
 つん、と指で触るとびくん、と派手に肩が跳ねる。
 どうも完全に怯えさせたようだ。
『……汝の運勢は"大吉"。大きく運命が動くことがありそうだ』
『絆が深まったり、色んな事を経験したり大きく気持ちが躍動する年となるだろう』
『色んな場所に赴き、色んな場所で色んなものを見ると良い』
 妖狐の仙人は耳を揺らし、たくさんの尾をわさりと揺らす。
 それはそれは――おもしろ愉快な内容なのね。
 木管を強引に宵雪へ押し付けて、間抜けな背中は逃げていく。作戦放棄を行った奸臣は、――命令違反でどのみち処罰、されるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ゲニウス・サガレン
「連携・ネタ歓迎」
奸臣たちが嫌がるのは努力した挙句、上が負けて自らも一緒に破滅することだろう
生き延びるには小心と視野が必要、敵軍から小心者を探してお話しよう

アイテム「トビウオ空翼機」&「フライングシュリンプ」&「沈滞の投網」

空翼機に乗って敵軍の後備を奇襲
有翅エビたちに投網を落とさせ、文官をその護衛と一緒に捕獲

「相談があるんだ」
「勝敗は兵家の常なれど、国を動かすは文の力。我々が勝手もお役人様に皆死なれては統治が困難」
「どうだろう、裏切れとは言わない。部隊と共に持ち場を死守と称して動かないでくれないか」

UC「眠れる力を呼び起こせ」
さあ、呼び起こせ君の小心を
大軍でも不参加の部隊が増えれば機能しないね


リオ・ウィンディア
小難しい話は苦手だわ
そこのオブリミオン集団さぁ、覚悟なさい!

UC発動してタガーを握りしめ素早い立ち回りで、早技、2回攻撃でズババッと
行きます

命乞い?知らないわ
私はあなたたちにとっての死神だから問答無用で行くわよ?
後ろで文官が騒いでいるような気がするけれども、ちょっと手前の雑魚をやっつけたらすぐ行くから待っててね?(くす

おみくじ?私は遠慮しておく、いい占いを知ってるのから
え、それは何かって?教えてあげないわよ
冥土の土産にするにももったいないじゃない




 ばたばたと走り逃走を図る音。
 後方で、逃げの最前線を駆ける者共は不思議なことに武装がない。
 木管に小刀、人を害して進む文官中心の武装集団。
 遅れて駆けてくる者共は武装状態がガタガタの兵士集団。
 長安攻略を目指し、先に出撃していた最前部隊は手傷を追った。
 撤退を余儀なくされている、そんな最中。無傷の待機部隊と合流すればまだもう一度の再出撃は可能なり。
 思惑の交差点、十字の分岐が集まる終着点に置いて猟兵達は追いつく――。

『儂の命を最優先に考えよ!褒美は幾らでも進呈しよう!』
 声を張り上げる一人は同じく文官の命の保証だけはしない。
 私腹を肥やす奸臣は、ただ自分だけが助かればそれで良いのだ。

●空の海を進む冒険家
「あそこまで宣言を口に出せるとは、相当の甘い蜜を啜ってきたのだろうなあ」
 ゲニウス・サガレン(探検家を気取る駆け出し学者・f30902)は、聞こえた声が人を物欲で操ってきた者のそれだとぼんやりと理解した。
 反感を買っても、それなりの褒美と栄光を与えれば誰も苦言を口にしなくなるシステムを繰るものたち。
 権力を権力で握りつぶす――言ってしまえば、声が大きいだけの無能共だ。
「平等な天秤運用が求められる奴だね。あまり上手そうには聞こえないが……」
 奸臣たちが嫌がる事。それは自らの努力が海の藻屑となることだ。
 媚びへつらい、始皇帝のもとより派遣されたという立場から、使者という気持ちでも居る筈。
 戦う力がないからこその、作戦指示に徹し――戦果全てを独り占めにする事だけに頭を働かせる。
 流れる血も、生まれる損害も。
 始皇帝の、主の耳には情報操作して伝えればプラスもマイナスも起こらない。
「生き延びるには本物の小心と広すぎる視野、それから深海が如き野心が必要なのだろうな」
 よしよし、ならば小心者には直接、話を聞きに出向こうじゃないか。
 小心者は大抵、最前線には出てこない。
 突然敵が現れたら、余計に取り乱すだろうからね。
 空を見ろ、誰かが声を上げたのだ。
 ぶわあああ、と泳ぐ海洋生物の群れが空を埋めていた。
 ひときわ目立ったのは、トビウオ空翼機――鰭(ひれ)を大きく広げた魔導蒸気技術を搭載した、飛行装置。
 男は空を泳ぐトビウオのように、空を征く。
 友として連れるのは、赤い浪のように揺れる大量のフライングシュリンプだ。
 空を飛ぶ有翅のエビの群れに紛れたトビウオに、誰が手出し出来るものだろう。
 例え投擲する石などがあっても機動力は空を泳ぐ魚の群れに追いつけない。
 兵馬俑で速さを獲得していても、その手が届かなければ意味がない。
 疾いだけの木偶の坊へ成り下がる。そう時間は掛からずにゲニウスの奇襲は誰も防げない敵軍の後尾到達を可能にした。
「さぁ、自慢の投網圏内だ!」
『……空、賊!?そんな所に!?』
 フライングシュリンプたちにそれぞれ隅を持たせたと金属の投網を落とさせ、思考力を大いに奪う。
 速く動くのなら、その行動範囲から奪おう。
 ガッチリ防御を固めている文官と護衛たちを一気にまとめで総取りだ!
「すまないね、少々手洗い真似をした。私は賊ではないよ、少々陽気に空を飛ぶ冒険家みたいなものさ!」
 はっはっは、と楽しげに笑うゲニウスと投網の中の者達との温度差は大変ひどい。
『我らをどうする気だ……捕虜か!?』
『御馳走を食わせるから……み、見逃してくれぇ……!』
 お前の知らない食べ物はないか、と囁く奸臣共はすぐさま命乞いを始める。
 捕虜は大人数で要らないだろう。誰かは命を落とすかも知れない。
『始皇帝の好む料理であれば、多少レシピ等も……』
「待ってほしい。まずは囚われた側として、傾聴しては貰えないか?」
 私の合図一つで、彼らが殺到するよ?
 親指を立てて、自分の背後を示してやればぶわあああとフライングシュリンプが並ぶ。どれもがゲニウスを主と認めている為、指示一つで投網に溢れるほど群がるだろう。多少の嫌がらせ、程度で済まそうと思っているのだが、奸臣達には殺人エビにでも視えるらしい。
『ヒィイイ!!?』
「おや、効果てきめん。まあまあ、相談があるんだよ」
 落ち着いて、とゲニウスが朗らかに笑えば、奸臣達はじゃあ此処から出せと迫る。
 本当に人の話を聞かず、命乞いばかりだ。
「これは国家戦略とか、なのだろう?勝敗は兵家の常なれど、国を動かすは文の力――人に指示を出す者は、人の心を把握しているものでなければいけないよね」
 例えばあなたたちみたいに。
 きっと得意だろう?"自分たちが"得する話にゴマを擦るのは。
「私はね、君等はもともと役人だろうと目をつけている。違うかな?」
『ち、違わない!戦うことしか出来ない能無しどもには手綱が必要だからな!』
「我々としては、こちらが勝ってもお役人様に皆死なれては統治が困難になると考えるんだ」
 それこそ、戦いしか分からない兵士達だけ残っても誰も得をしない。
 相応のバランスで武と知は存在しなければ、ならない。
「どうだろう。完全に裏切れ、とは言わない。君が信用し、君を信頼する部隊と共に持ち場を死守渡渉して動かないで居て、くれないか?」
 兵馬俑を着込んだ持ち場死守。それは鉄壁の要塞となるだろう。誰にも踏み込ませず。決してその場から動かない。
 誰も死なず、必要以上の血が長安に流れることもない。
『……長安攻略陣地で、身を固めておれば追い打ちはせぬと?』
「少なくとも、私はそうだね。向こうの彼女は……考えが違うようだ。完全な賊軍となって再始動するなら、私が見逃しても君達は討たれることになる」
 もうひとり訪れた猟兵が、何をどうするかゲニウスには分からない。
 保証もできない。死にたくないなら、選ぶ道は一つじゃないかい?
『仕方がない。儂の部隊、儂の考えに賛同する者たちを連れ、ただ陣を固めるだけに留める要石となろう。ところで、貴殿は商人の端くれか?』
 交換条件の出し方は、交渉上手を思わせた。
 如何に私腹を肥やした奸臣でも、甘い蜜を搾り取れない侮れない男だと思ったらしい。
「ご明察。私だってタダで追い返すセールは行わないとも」
 さあ『眠れる力を呼び起こせ』!
 最も小心な君よ、命が大事なら生き残れ。
 ゲニウスの言葉に同意した者たちにバトルオーラを付与して、軽めのウインク。
「君達が、"君達の意見に反した賊軍"相手に正当防衛を行うのは、問題ないだろう。私はそれを支持するし、応援する」
 意識の統一は、行われるべきだ。私腹では無く、忠誠の元に集団は動くべき。
 ――大軍でも不参加の部隊が増えれば、機能しなくなるしね。
 君達は何処までいっても全員がオブリビオン。
 主と戴く始皇帝もオブリビオンならば、何れ海に還るべき存在だが――。
 なあに、それはそれ。骸の海に還るべき時に、命がけで戦ってから還ればいいのさ。

●死神は飛んでいく
 とりあえず見過ごそうじゃないか――状況を見定めた学者はそう言っていた。
 だが、同じ地に訪れた少女は首を横に振った。
「……小難しい話ね」
 苦手だわ、とエルフの少女は目を伏せる。
 見るに堪えない裏切りと内戦の連鎖はシンフォニアお耳には雑音が過ぎる。
「何が何でも生き残ろうとする姿勢と、揺すれば従う人たちと。きっと違う思想の人がいるの」
 逃げる背中と、引き連れる配下の多さ。
 貴方と戦う場所を分けるなら、従う兵力の疎らさを極めた方を請け負うと、少女は決めて踵を返す。
 文官に従う者が多いということは"信頼"がある。
 文官に反感を持ち、護りさえしない側は、ほっといても武力での崩壊で無為な殺戮が起こる筈。
 それは男と少々言葉を交わした分かれ道での話。
「さあ――そこのオブリビオン集団、さあ皆纏めて覚悟をお決めなさい!」
 全体を見れば、皆等しくただの敵。骸の海まで還るといい!
 リオ・ウィンディア(黄泉の国民的スタア・f24250)は手傷を負った集団の後方より出没して現れた。
 冷たい鬼気――死が迫る予感を思わせる終わりの気配をその身の装飾として服の袖を風で揺らす。
 大人びた小柄な風貌で、しかし、その手には握りしめた手に馴染む暗器。
 ダガーを持つリオの姿が、おぼろげに揺らぐ。
「この大空を駆け抜ける勇気を、この手に希望を――この背に翼を!」
 怯まぬ翼がふわあ、と広がる少女の服装は白から黒へ。
 彼女に向けて、風は吹く。
 向かい迫る困難の風ではなく、どこまでも羽撃ける追い風を受ける風に乗る少女へと。翼に追い風を(ツバサニオイカゼヲ)、ふわり、と妖艶に微笑む死神にして天使は、怯えた表情を貼り付けた奸臣へ、優しく言葉を紡いで告げる。
『か、金は欲しくないか!?幾らでもやるが!!頼む、わ、儂の命だけでも……!』
「それ、命乞い?知らないわ」
 微笑む少女へ向けられるのは槍や薙刀、偃月刀。
 身近な刃が届くものではないけれど、しかし追い風を受けた死神の狩る手は何よりも間近に迫る。
「私はね、あなたたちにとっての死神なの。だから、問答無用で行くわよ」
 ――とても早い機動力を持っていても、私のほうが疾いもの。
 振り抜かれた長柄の武器の切り裂きも、武器を受けるその手も、何もかもが遅れてみえる。
『――!』
 胸目掛けて最速の一撃を。
 水と風の精霊が力を成した、鋭き刃で命の終わりを伝えよう。
 再度の再起が果たせないように。
 安らかに眠れるよう、一撃で必ず潰してみせよう。
「後ろの方で文官が騒いでいるような気がするけども、兵士の皆さんの活躍で何も聞こえない……」
 無言で迫る兵士達は、奸臣の甘言に耳を貸しているのだろうか。
 顔色を伺うことさえ出来ない兵馬俑フェイスでは、何を考えているのかさえわからないけれど。
「お金で雇われた傭兵に成り下がりたいのね?自分たちが忠誠を誓った存在を差し置いても」
『……それ、は……』
「良いのよ。私は告げ口したりしないもの」
 兵士が口を聞いたから、精神攻撃の一環のように死へ案内する天使は囁く。
「此処で皆纏めて潰えたら、誰に従い、誰を裏切ったのかさえ、結末は変わらないのよ」
 反論の言葉を聴かないで。別れの歌を口ずさむリオは、"雑魚"を切り捨てながら柔らかく微笑む。
「すぐに行くから、待っててね?」
 その場から逃げてもダメ。私はそこへ飛んでいくから。
 クスクスと、笑う少女の声はどんなに喧しい戦場の中でも毒の音を帯びた呪詛のように奸臣の耳に直撃する。ああ、あああ。空を飛ぶ死神が、じわりじわりと命を刈取りながら、飛んでくる――。

「みんな地に沈んでいくの。あなたもどう?仲間はずれにならずに済むのよ」
 死神が通る路にオブリビオンの生き残る術は成し。
 追い風に微笑まれた背中の翼がある限り、逃がす理由もない。
『そ、そそそうだ!籤はどうだ、他の者にも案内したぞ!』
「おみくじ?……そうね、私は遠慮しておく、かしら」
『な、何故(なにゆえ)か!』
「いい占いを知っているから」
 元僧侶の文官は、それは何だと言い立てる。
 我らの籤より最良の導きを出すのかと。
「え、それはなにかって……そんなに聞きたいの?」
 きらん、と輝かせる終焉の小さな刃。
「教えてあげないわよ」
 速度を持って地面を蹴り、風を受けて更に速度を上げた俊足の貫き潰すは人間にとって無くてはならないもの。
 兵馬俑を破壊して、突き立ったナイフは臣(心)の蔵を貫き壊す。こほ、と口から血があふれかえる男の顔に、やはり何故、という言葉が浮かんでいる。
「冥土の土産にするにも、もったいないじゃない」
 死した後に副葬される鎧さえ、持ち帰れないあなたには。
 此処で一緒に滅した人たちと、還るべき場所に還るのが一番よ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


●撤退と殲滅の間で
 猟兵たちが討たずとも、兵士たちの反感を大いに買った奸臣は。
 ひとり、また一人と先に骸の海へ返される。
 その胸を貫かれ、腹の中の物をぶちまけて。
 自分の立場を利用して甘い甘い汁を啜り、他人を貶めて自分の望む悪逆の徒は滅ぼされる。戦うべきは始皇帝が望む目的のため。

 心を入れ替えた元奸臣は、正義の兵士たちと共に陣で身を固める事に没する。
 そうしなければ、討たれるのだとをその目で確認してしまったから。
 彼らが戦わずとも、戦況は動く。今暫くは命大事さを優先して、手出しさえしてこないだろう。
 彼らが真実に生き延びたとしても、――オブリビオンである事実だけは変わるまいが何れ討たれるその日まで、――――命乞いした分遊軍としてスべきことへ義理を果たし続けるだろう。

最終結果:成功

完成日:2022年01月03日


挿絵イラスト