#シルバーレイン
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●恐るべき人斬りの業を
ざく、ざく、ざく、ざく、ざく、ざく。
何人もの人を斬ってきただろうか。
ざく、ざく、ざく、ざく、ざく、ざく。
人を斬らねば、我が身を保つことは叶わぬ。
――では何故人を斬る?
――人を斬ることに理由はあったか?
――いいや、何処にもない。
――『人を斬る』ということに、何ら理由はない。
ざく、ざく、ざくざくざくざくざく。
斬る音が更に増える。
人が、物が、斬られる音が更に増える。
斬りたいという欲を晴らすように、連続して刀が振るわれる。
今日もまた、檻の中で刀を振るう。
いつしかここを出て、恨みを全て晴らそうと。
●はるか山奥で
四国のとある山にて、天輪宗と呼ばれる対ゴースト組織の面々が集まっていた。
彼らは完全な事情はわかっていない。ただわかるのは、止んだはずの銀色の雨が降り注いだ今、オブリビオンを倒す手法は限られているということ。
更には霊石を利用すれば能力を失ってしまった自分達でも弱いモノなら倒せるということだけ。
今もなお、彼らは建造しておいた霊石の力を借りて弱いオブリビオン達を倒している。
どうやらオブリビオン達は『何か』に引き寄せられるように集まっているようで。
しかし、それを許せば四国が危機に陥ることを知っている天輪宗の面々は、集まってきたモノから逐一倒し続けているという。
「くそ、アイツに寄せられてるのが目に見えてわかるな……」
「人斬り与吉……ですね」
1人が山奥にちらりと目を向け、すぐに目をそらす。
その奥は本来最も神聖な場所として霊石が建造されているのだが、今はもう立ち入れぬ醜悪の檻へと変貌している。
木々の奥から滲み出る悪意と憎悪に満ちた怨霊の念。それを封じるために、今現在霊石の力で結界を張り巡らせては立ち入りがされないように見張り続けている。
本来であれば霊石の力を借りて倒せるはずのオブリビオン。
だが今回現れたオブリビオン『人斬り与吉』は天輪宗の力では太刀打ちすることは叶わなかった。故にこうして封じて、処理できる者が現れるまで待っているということだ。
「アレがここを下山したら、流石にまずい。ゴースト共が利用することになったら、それこそ四国は壊滅する」
「とにかく今は、近づいてくるのを倒すしか無い……ですね!」
天輪宗の面々はひたすらに待ち付けた。
オブリビオンを倒せる者――猟兵が現れることを。
●いつものように
「よう、集まってくれてありがとよ。シルバーレインで1つ、事件だ」
説明用のスケッチブックを片手に、霧水・砕牙(《黒の風》[プレート・ヴェント]・f28721)は集まってくれた猟兵達に今回の事件について説明をしてくれた。
『人斬り与吉』と呼ばれるオブリビオンが日本・四国のとある山で猛威を奮っていた。
現在、人斬り与吉は四国に存在する組織・天輪宗が設置した『霊石』によって周囲に結界が張られて封印されており、一般人の目につくことがないようになっている。
しかし人斬り与吉の妄執の念は凄まじく、それによっておびき寄せられた弱いオブリビオン達が山へ集結し始めているため、そろそろ天輪宗だけでは対処が効かなくなっているという。
今や山中は弱体オブリビオンが蠢く特殊な空間。そこを突破して人斬り与吉を倒すのが、今回猟兵達に与えられる使命だという。
「人払は済ませてある。が……その影響でちょっと怪しまれる事態にもなっていてな。世界結界のおかげで一般人の記憶は無くなると言っても、早めに記憶を薄れさせる必要がある」
「ってことで、人斬り与吉を倒したら一般人の目を欺くために目一杯楽しむのも忘れないこと。OK?」
にこにこの天真爛漫な笑顔を見せつけてきた砕牙。
了承を得た猟兵達をテレポートさせてゆく。
――人斬りの業を、断ち切ってこい! と。
御影イズミ
閲覧ありがとうございます、御影イズミです。
シルバーレイン第二弾。今回もがくぶるしながら出しました。
初めての方はMSページをご確認の上、ご参加ください。
なお、何回か来て頂いてる方も更新が入ってますので再読をお願いいたします。
●第一章:冒険シナリオ
霊石による結界を張った山の中を進んでいきます。
しかし人斬り与吉の力によって森は『人を斬りたいという欲に支配される』念が漂っており、更には弱体化オブリビオンが集まるようになってしまっています。
既に人払いが済んでいるため、ただ単純に欲の支配と弱体化オブリビオンに対応するだけでOKです。
プレイングには欲に支配される念に対応するか、オブリビオンに対応するかのどちらかの記載をお願いします。
●第二章:ボス戦シナリオ
ボス敵『人斬り与吉』を見つけたので倒します。
森の中なので視界がだいぶ遮られます。
詳細は断章にて。
●第三章:日常シナリオ
一般人へ被害を避けるために人払いをしていたのですが、少し怪しまれています。
そのため早いうちに記憶を消すために欺こう! ということでソフトボールを行います。
詳細は断章にて。
皆様の素敵なプレイング、お待ち致しております。
第1章 冒険
『特殊空間を攻略せよ』
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POW : 先頭を進み、仲間を守る
SPD : おかしな物品や文章が残されていないか探す
WIZ : 空間内の法則を調べ、それに従った行動を取る
イラスト:乙川
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
クロム・エルフェルト
アドリブ歓迎
悪戯にヒトを斬るだけに飽き足らず
斬る大義すらも失くした、と。
本来ならば有無を言わさず手討だけれど
相手が亡霊の類であるのなら。理由を聞かねばいけない、ね。
『人斬りの欲は矜持で克服すべし』
欲の御し方は、剣を手解きされる前に
お師様に骨の髄まで叩き込まれてる。
ならば。私はオブリビオンに対処しよう、か。
▲足場習熟に▲ダッシュを併せ
木々の間を縫う流水のように駆け抜け
敵の攻撃搔い潜りながら▲早業の一閃にて
一息にオブリビオンを▲切断、斬り捨てる
剣を止められても顔色は変えず
――本来ならば、名を訪ねるべきだけど。
今は先を急ぐ身故押し通る……御免。
静かに非礼を詫び、UC:抜刀術・椿で斬り抜け突破する。
●斬り捨て御免。
「悪戯にヒトを斬るだけに飽き足らず、斬る大義すら失くした……と」
悪意漂う山の中、クロム・エルフェルト(縮地灼閃の剣狐・f09031)は道なき道を進み、人斬り与吉の下へと向かっていた。
本来ならば有無を言わさずに手打ちにするところだが……同じ剣の道を歩むものとして、何故そうなったのか、何が与吉を人斬りへの道へ歩ませたのか、理由を聞かなければならない気がしてならないのだ。
山を進むにつれて、クロムの中にぐるぐると感情が渦巻いてゆくのを感じる。
だが、彼女の師曰く――『人斬りの欲は矜持を以て克服すべし』。欲の御し方については剣の手解きを受ける前に師匠から骨の髄まで叩き込まれている故に、彼女には全く通じなかった。
己が剣を持つ理由を強く脳裏に刻み、己の剣に羞じることの無きように心を強く保つ。そのおかげか、クロムに渦巻いた感情はみるみるうちに途絶えていった。
「……となれば、私の相手は――」
山を形成する木々の中、霊石の力によって弱まったオブリビオンがゆっくりとクロムを取り囲む。オブリビオンとは言え、本来であれば剣を抜く前に名を尋ねるべきなのだろうが……。
「すまない。今は先を急く身故に、押し通る」
名を尋ねることを諦め、足場の乱れた草を華麗に走り抜けながら刻祇刀・憑紅摸による早業の一閃を繰り出し、周囲のオブリビオンを一気に斬り伏せる。木も草も、彼女の剣には壁として役に立つことはなく。
その一閃に恐れを抱いたオブリビオン達は一刻も早く彼女を倒さねばならないという衝動に駆られ、集まった者達から一気に襲い掛かる。クロムは木々を盾にしながらこれらを回避し続け、憑紅摸を今一度鞘に収める。
「……神速剣閃、壱ノ太刀」
少々荒れた呼吸を整え、殺気と気配を静かに消して、己の精神を研ぎ澄ます。ユーベルコード『仙狐式抜刀術・椿』の一撃を放つ準備を終わらせたクロムは襲いかかるオブリビオン達の僅かな気配を感じ取り、憑紅摸を抜く。
「――露と消えよ!!」
その瞬間、弱体化したオブリビオン達の目には捉えきれぬほどの速度の刃が振り抜かれる。僅かな一瞬、まばたきの暇さえも惜しいほどの僅かな時間で振り抜かれた刃はクロムに近づいたオブリビオン達を全て斬り裂く。わずか30cm以内というごく狭い対象だったが、油断しきっていたオブリビオン達にとっては最高の一撃となったようだ。
「急がなくては……」
再び集まってくる弱体オブリビオン達に備えるため、憑紅摸を構えたクロムは流水のごとく木々の合間を縫って進む。
襲いかかる者には容赦なく、斬り捨てながら。
大成功
🔵🔵🔵
クライノート・シラー
※改変、アドリブ、連携等OKです。
※欲に支配される念に対応
空間にまで及ぶ念とは如何程に強いものか。
「念が空間に広がっているのか、空間が念を広げているのか。
いずれにせよ観るしかないな。」
UC「千の眼を突き立てる者」を使用し水晶の鉱石ナイフを生成。ナイフに透かして辺りを見ることで、空間内に漂う念の性質やつながりを見通す。
人を斬るから人斬りか、人斬りだから人を斬るか。
因果が人斬りにあるなら循環を、外因に拠るものならつながりを断てば少しはマシになるだろう。
●因果を見て、真実を知る。
人斬り与吉が封じ込められた山中を歩くクライノート・シラー(鉱石探究者・f35196)は『人を斬りたい欲』に抗いながらも、あらゆる考察を重ねていた。
念が結界の空間に広がっているのか、それとも空間が人斬り与吉の念を広げているのか。どちらにせよ人斬り与吉を倒すことで消えるのは確実なので、クライノートは己のやるべきことに向けて行動に移した。
「いずれにせよ観るしかないか。……さて、何処で観ようか」
周囲を見渡し、弱体オブリビオンが近くにいないことを確認。少し背の高い草むらに身を隠し、ユーベルコード『千の眼を突き立てる者』を使って鉱物結晶から出来た鉱物ナイフを創造する。
「――万物を見透す千の眼よ、真理を問う賢者の声よ。理を暴く鍵を我が手に」
クライノートの手に出来た鉱物結晶のナイフは向こう側が透けるほどに薄く、その先を見通せる。一度軽めに空間を斬るようにナイフを振りかざしてから透き通った刃を見透かし、漂う念の性質を観た。
どうやらこの空間に漂う念は、念というよりもむしろ霊の憑依に近い。人の意識を支配する、人の欲を駆り立てるというのは人が発した念では難しいため、ある種この念は生きているとも言えるだろう。
「では……彼は、人を斬るから人斬りなのか? それとも、人斬りだから人を斬るのか? ……そこも見てみるとしようか」
もう少し奥深く、念を作り出した理由を探るクライノート。鉱石ナイフの刃をもう一度振りかざし、透き通った刃の先を見るが……その先の光景は暗い闇。何があるのかまではしっかりとは見ることは出来ない。だが人斬り与吉という存在が在る理由はおぼろげだが、なんとなく掴み取ることが出来た。
彼は元々『何をしたいからこの目的をやり遂げる』という行動理念に基づいて生きていたようで、今の念も『人を斬ってみたい』という願望が肥大化したもののようだ。
「願望が肥大化し、人を斬り続け……いつしかそう呼ばれるようになった、か」
鉱石ナイフを見通して見つけた情報から、因果が人斬り与吉そのものにあると知る。今ここで出来ることは何もないことを知ったクライノートは、今一度周囲に漂う念を断ち切るかのように虚空に鉱石ナイフを振りかざす。
「ならば、直接本人を断ち切るしかないのだろうな」
そう呟いたクライノートの言葉に、鉱石ナイフが反応するかのように僅かに輝いた。
成功
🔵🔵🔴
葛城・時人
「護」で行動 弱体化オブリビオンに相対する
弱体化済とはいえ大量の敵だから油断はしない
頼もしい大事な仲間と共闘なら怖くなんかないから
「みんな宜しくだよ!」
念の為ヘッドランプを用意して事に当たる
仲間の気付きや声に気を付け即時応対を心がける
接敵即時「起動!」アイテムのカード使用
UC白燐奏甲詠唱、自己から順次仲間全員へ
UC効果で視界阻害を受けた敵、仲間の範囲攻撃で被弾し
弱ったものから適宜長剣でとどめをさす
範囲畳みかけが必要なら白羽蟲笛に風を通し
(蟲は純白の羽毛持つ蛇・名はククルカン)
蟲に殲滅指示を
「ククルカン、攻撃を!逃さないで!」
全部倒しても気は緩めず警戒
「まだ先もある…消耗に十分気を付けて行こう」
神臣・薙人
「護」で行動
欲に支配される念に対応します
懐中電灯を持参
怖くないと言えば嘘になりますが
今回は皆さんと一緒です
きっと、大丈夫
初手で自分に白燐奏甲
結界内の光量が足りなければ
懐中電灯を使用して視界を確保
結界内という事は
何か法則がある筈
周囲の状態に目を配り
異常が無いか観察
決まった動きをするもの
明らかに異質なものが見付かれば注視
間違っても他の皆さんを傷付けないよう
武器の取り扱いには注意を払います
人を斬りたいという欲が湧いたら
防具に手を当てて気分を落ち着かせるよう試みます
その欲が何処から来るのか
たどる事が出来れば良いのですが
空間内の法則に気付いた場合
内部の異変に気付いた場合
声を上げて皆さんと情報を共有します
刀道・御剣
「護」で行動
弱体化オブリビオンに相対する
頼もしい友がいる。
それだけで私は、邪な欲や念に惑わされず自分を見失わずに居られる。
故に唯、狩ろう……過去の亡霊を。
(カードを掲げて)[起動(イグニッション)!]
カードから取り出した無銘(日本刀)と漆黒(長剣)を地面へと突き立て、詠唱兵器と闇の力で威力の強化されたカラミティハンドを使い、弱体化オブリビオンを倒していこう。
視野を広く持てる場所に位置取り、仲間の死角より迫る敵を攻撃して隙を無くしたり、仲間の攻撃した敵へと追撃して確実に数を減らしていこうか。
連携、共闘……昔を思い出す。やはり、安心するものだな。
御門・勇護
「護」で行動 アドリブ等歓迎
弱体化オブリビオンに対応する
念の為、光源となるペン型ライトを持参
力は弱くとも数が揃えば脅威に成るというもの
被害を抑える為にもここで対処せねばなりません。
心強い仲間が共にいるのです。
大丈夫、今回の作戦も必ず成功します。
周囲を警戒しつつ接敵と同時に指定UCを発動
結界内の視界が悪い場合、これで光源が確保できれば良いですが出来ない場合はペン型ライトを使って視界を確保
他の仲間達に何かあった場合即座にサポートに入れるように意識しつつ結界内を調査し不審なものがないか調べていきます。
何かしらの異変に気付いた場合、即座に声を上げ仲間達と情報を共有します。
日向・修一郎
「護」で参加。弱体化オブビリオンの対応に回るぜ。
さて、メンバーは違えど、こうして銀誓館の仲間と共に戦うとは世の中何が起こるか、わからんもんだな。
ま、仕事は仕事。チャチャッと片付けましょ。
最初に「死がふたりを分かつまで」を回復ができる御門へ使用。
その後、ヘッドライトで周りを索敵しつつ探索。
敵を見つけ次第、【誘導弾】の【弾幕】で味方の【援護射撃】をしつつ
撃ち漏らした敵の攻撃は【軽業】で【受け流し】て指輪をはめた拳で一撃。
刃物じゃなきゃ人も敵も斬れないからな!
戦闘中も周りの状況を見渡し【情報収集】をして空間や霊石に異常がないか、戦況を打破するものが無いか探す。
アドリブは歓迎
●「護」に集まりし者達
――銀の雨は降り注ぐ。一度終わらせたはずの戦いを、再び呼び起こすように。
四国のとある山の入り口にて、5人の猟兵達が集まっている。彼らはとある武道館で集まる者達であり、今回の事件が急を要するということで急遽集まったようだ。
「メンバーは違えど、こうして銀誓館の仲間とともに戦うとは……いやはや、世の中何が起こるかわからんもんだな」
ガリガリと頭をかきむしりながら日向・修一郎(復活した戦うパパ・f35504)は空を見上げた。一度止んだはずの銀の雨がもう一度降り注ぐなんて、誰が予想したのかと言いたげな表情をしている。
「みんな、宜しくだよ!」
不安げな空気を紛らわすように、明るい声で挨拶をする葛城・時人(光望青風・f35294)。グリモア猟兵から話を聞いた時には彼も不安だったが、頼もしい仲間達と共に戦うと知って恐怖は何処かへ消えたようだ。
「怖くないと言えば嘘になりますが……いえ、今回は皆さんと一緒ですから、きっと大丈夫ですね」
柔らかに微笑んだ神臣・薙人(落花幻夢・f35429)。時人と同じように不安になっていたようだが、集まってくれたメンバーのおかげで多少の恐怖と不安が吹き飛んだ様子。
「今回の相手は力は弱くとも、数が揃えば脅威に成る。ですが……心強い仲間が共にいるのです。大丈夫、今回の作戦も必ず成功しますよ」
薙人の言葉に対してしっかりと言葉を返した御門・勇護(求道者・f35310)。今までに失敗したことなど無い、いつもどおりにやれば大丈夫だと声をかけ、さらなる安心感を与えておいた。
「とは言え、此度の件は山中に漂う念に支配されるという。皆、各々隣にいる頼もしい友を支えに自分を見失わぬようにな」
冷静に状況を確認している刀道・御剣(見届ける双眸・f35346)。彼は『人を斬りたい欲』が溢れる念を僅かに感じ取っており、仲間達の目を見て己を見失わないようにしていた。
入り口で状況を確認している5人には、人を斬りたいという欲が差し込まれようとしていた。それでも彼らが欲に支配されないのは、お互いを支え合うという意欲を高めているからなのだろう。
「しかし、こうなってくると集まっている弱体オブリビオンの対処をする人と、念への対処を取る人で別れないとまずいですね……」
「そうだな……。どっちかを疎かにすると、全滅の可能性もあり得るかもしれないな」
勇護と修一郎の考えに対し、薙人がそれなら自分が念に対処するのはどうだろうかと申し出る。4人で弱体オブリビオンに対応している間、外から見ることで何かしらの法則を見つけることが出来るかもしれないと。
「戦いながらでは思考がまとまらないかもしれませんし、皆さんが良ければ私が対応します」
「うむ、私は問題はない。むしろその方が良いかもしれぬからな」
「俺も問題ないよ。薙人を守りながら、弱体化してる奴らをドンドン倒せばいいってことだろう?」
薙人の提案に対して御剣も時人も快く許諾してくれた。チームとして動くのならば、1人は周囲の警戒をすることも必要だろうということで薙人が念に対応することになった。
改めてチームの動きを確認を終えた5人。お互いの目を見やりながら、それぞれが懐からあるもの――イグニッションカードを取り出して握りしめた。
「それじゃあ、久しぶりに」
「ああ、行くとしよう」
光源の代わりに薙人のユーベルコード『白燐奏甲』を使い白燐蟲を漂わせ、修一郎のユーベルコード『死がふたりを分かつまで』を使い、回復を担当する勇護と繋げる等の準備を終わらせて5人は山の中へと足を進めた。
●起動(イグニッション)!
――暗闇の中は妄執の念が溢れかえり、正常と異常の境を狂わせる。
山を形成する森は日中であることを忘れさせるほどに薄暗い。薙人が呼び寄せた白燐蟲がいなければ隣にいる相手も見ることが難しく、各々が用意しておいたライトでようやく遠くを見落とせるほどだ。
しかしそれ以上に、5人の精神状態は苦しいものになりかけていた。人を斬りたい、人を斬らねばという欲がじわじわと入り込んでいるのもあって、正常な精神状態を保つことで精一杯となっている。
「け、結構頭に来ますね……」
「ええ。ですが、どうやら私達がこうして弱る方が……向こうには都合が良いみたいですね」
勇護と薙人の言葉を受け止めて、一度足を止める5人。風が軽く木々を揺らす中で、大きな気配が動くのに気づく。
「……来るぞ!!」
修一郎の声に対し、5人は一斉に構えた。霊石の結界によって弱体化したオブリビオンの群れが5人の周囲を取り囲み、逃げ場を無くす。人を斬りたいという欲は、どうやらオブリビオン達にも植え付けられているようだ。
その事に気づいた薙人はいち早く4人へ情報を伝達。念の支配の影響もあって、オブリビオン達は確実に自分達を狙うであろうこともしっかりと告げておいた。
「となれば、やっぱりこいつの出番だね」
「うむ。肌身離さず持っておいた甲斐があった」
そう言って時人と御剣が取り出したのはイグニッションカード。銀誓館学園の能力者達ならば誰もが持つ証であり……己の力を封じておくもの。猟兵となった今は世界の加護のおかげでどんな姿でも違和感を与えない力を持つため、気にする必要はない。
だけど、どうしても、猟兵となっても叫びたくなるものだ。
死と隣り合わせの青春の日々に叫んだ、この言葉を。
「「「「「――起動(イグニッション)!!」」」」」
●覚悟を持って挑む。
――増える、増える。覚悟を決めた者達に向かって、悪意は増える。
叫んだ言葉に呼応して、5人の装備が切り替わる。
時人はユーベルコード『白燐奏甲』で呼び寄せた純白の羽毛を持つ蛇・ククルカンを5人の周囲に舞わせて、敵の視覚を阻害しつつ長剣でトドメの一撃を与え。
薙人は蟲笛を軽く吹いて白燐蟲に命令を下し、光量を最大限に高めて4人の視界を完全に確保しながら、周囲に漂う念の構造や法則を見出して。
御剣は歴戦の相棒である日本刀・無銘と新たに入手した黒曜石の西洋剣・漆黒を地面に突き立て、詠唱兵器と闇の力で威力を増強させたユーベルコード『カラミティハンド』で視覚阻害を受けたオブリビオンを引き裂いて。
勇護はユーベルコード『月天蒼光陣』を用いて蒼の満月を呼び寄せ、不浄なるオブリビオンを祓う月光を降り注がせながら味方の傷を癒やし。
修一郎はその手に長剣を構え、弱体化オブリビオンに向けて誘導弾の弾幕を張り巡らせて視界阻害を受けたオブリビオン達を一気に殲滅してゆく。
5人のチームワークは誰が見ても完璧だ。オブリビオン達は抵抗しようにも霊石の力で弱まってしまっているため、強力な絆の力を前に次々に倒れては塵へと帰っていった。
戦いの合間に、薙人はオブリビオン達の動きを見て観察していた。
『人を斬りたいという欲』を与える念がどのような法則性で動いているのかを。
「……っ……!」
少しだけ、薙人の頭の中に支配が入り込む。まるで霊かなにかが自分の中に入ったかのような感覚が拭えず、思わず桜織衣に手を当てる。
「薙人さん!」
「薙人! 大丈夫か!」
彼の様子の異変に気づいたのは勇護と修一郎だった。同じように周囲を見て観察してくれたことが功を奏したようで、すぐさま薙人に入り込んだ念を振り払うことが出来た。
仲間の声を聞いて正常に戻ってきた薙人。少し無理をしたおかげで法則性に気づいた薙人はすぐさま4人に向けて大声で注意を促した。
「皆さん、気をつけて下さい! この念は『何をしたいからこの目的をやり遂げる』という意志を持つ者に対して欲を与えようとしています!」
「ってことは、俺達も結構危ないんじゃないか!?」
修一郎は指輪をはめた拳が撃ち漏らしたオブリビオンの身体にめり込んで、その身体を吹っ飛ばしてから念の危険性に気づく。自分達もまた、その意志を持つ者としてこの山に入り込んでいるのだから。
だからこそどうしたら良いかと対策を考えるが、良い解決策を見つけるには時間が足りず、判断材料も少し足りない。なので彼らは最後の手段――全体を一気に吹っ飛ばすことで、一度自分達の目的をやり遂げようと決めた。
「それじゃあ、一気に決めていくぞ!」
修一郎の誘導弾の弾幕が、もう一度周囲に張り巡らされた。
どの場所に敵がいるかを指し示す銃弾の痕跡が少しだけ浮き彫りになる。
「ククルカン、攻撃を! 絶対に逃さないで!」
白羽蟲笛に風を通して、無数の蟲を呼び寄せては辺りのオブリビオン達を蹴散らす時人。
修一郎の撃った誘導弾に従ってオブリビオンを見つけ、殲滅を指示してゆく。
「――これも私の力だ。断たせて貰おう」
御剣の呼び寄せた赤い影の腕が、誘導弾から逃れたオブリビオン達の身体を引き裂く。
引き裂くことが敵わない相手には、赤い影が持つ猛毒で苦しめる。
「清浄なる蒼き月よ。遍く大地を照らし出し、一切の不浄、厄災を祓いなさい」
勇護が小さく唱えると、蒼の月はもう一度輝いて光を地上へ落とす。
最後の最後まで生き延びようと抗ったオブリビオン達を焼き尽くすかのように。
やがて、5人を囲っていた弱体オブリビオンの姿はなくなってゆく……。
●繋がったその先に。
――気づけば、その道はそこに現れていた。
「皆さん、お疲れさまで」
勇護の言葉に、皆それぞれが言葉を返す。戦いのあとというのもあって息も荒れているが、ひとまずの峠は越えたという形だ。
そんな中で薙人は先程捉えた念が何処からやってきているのかを突き止めたと告げる。僅かな一瞬の出来事ではあったのだが、なんとか人斬り与吉のいる場所を特定出来るぐらいの時間はあったようだ。
「となれば、薙人殿の案内の下、向かったほうが良さそうだな」
「ああ。道中も襲いかかってくるだろうが……ま、この5人なら大丈夫ってのが今のではっきりとわかったな!」
修一郎がにぃ、と笑う。最初からわかっていたことだったが、実際に戦ったことでどんな対応を行えば良いか、どのように動くことが出来るかわかったのが嬉しいようだ。
「でも、気を緩めずに行こう。場所がわかったとは言っても、どのぐらいの距離があるかわからないしね」
「ええ、そうですね。繋がりがわかったと言っても先は長い。念の対処も忘れないように進んでいきましょう」
数秒の休息後、5人は再び山の中を進む。
僅かに出来た人斬りの欲という細い糸を辿るように。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鈴乃宮・影華
※アドリブ歓迎
「――起動(イグニッション)」
……あぁ、イグニッションカードを掲げるこの感覚!
本当に死と隣り合わせの世界に帰って来てしまったのね、私
復帰したばかりの身には少々キツい相手かもしれないけど、
微力を尽くすとしましょう
人払いが終わっているなら、
事件の早期解決の為にも、速攻で行くべきかしら
UC:黒燐弾・常勝群を起動し、弱体化オブリビオンを襲わせます
「貴方達には役不足だけれど、1体ずつ相手取る時間が惜しいの。よろしくね」
蟲の群れを嗾け、前へ前へ
……視界に人が入らなければ、
さっきから感じるこの『人を斬りたいという欲』も▲覚悟を以て抑えておける、と思いたいわね
●今一度、この言葉を。
「――起動(イグニッション)」
カードを掲げ、過去に叫んだ言葉を口にする鈴乃宮・影華(暗がりにて咲く影の華・f35699)。姿が変わり、力が戻ってきたことでまた帰ってきたのだと実感する。
しかし猟兵という存在になった今、まだ身体が慣れていない部分もあるようだ。手を握りしめたりして力の動かし方を少し確認してから、影華は山の中へと進んだ。
「復帰したばかりの身には少々キツい相手かもしれないけど……」
元々は黒燐蟲の使い手だった影華。しかし再び銀色の雨が降り注いだその日に黒燐蟲は力を失い、途方に暮れていたが……ある時に芽生えた力が彼女を再び戦場へと立たせた。
あまりにも突然だったものだから、最初は何事かと感じた。だが猟兵の存在を知った彼女は自分もまた同じ存在なのだと気づき、グリモア猟兵から話を聞いて今回の事件を解決するためにこの山へとやってきたのだ。
そしてこの世界の異変は、何も影華だけに与えられたものだけではない。未来を消失させるために過去から現れた残滓――オブリビオンという存在が世界に現れ始めたのも1つの異変。とはいえ、今は霊石の結界が弱体化させたものが相手なので、復帰直後の影華にとってはウォーミングアップのようなものだ。
試しに彼女はユーベルコード『黒燐弾・常勝群』を使い、黒い蟲の群れを想像から創造する。過去、自分と苦労を共にした黒燐蟲の姿を思い描きながら。
「彼の力を以て世界に請う――来て、私の軍団!」
影華に呼ばれた黒い蟲の群れは弱体オブリビオンの軍団に向かって襲いかかる。それが敵であるということは影華に言われずともわかっているようで、影華が狙われないように視界を遮る形で襲いかかっていった。
「貴方達には役不足だけれど、1体ずつ相手取る時間が惜しいの。よろしくね」
蟲達に声をかけた後、影華は山の奥へと進む。オブリビオンに襲われないように軽快に動きながら、人斬り与吉がいるであろう方向へと進む。
「……それにしても、さっきから頭の中がうるさいわね」
少々怒り気味の影華。というのも、山の中に入ったその時から『人を斬りたいという欲』が影華の頭の中に渦巻いているからだ。
しかし彼女は既に覚悟を決めて山を登っている。欲に流される暇など、何処にもない。
「と、いうよりも……人がいないのだから、欲を与えられても、ね?」
小さく笑った影華は、核心をついてしまう。
斬る相手がいなければ、与えられる欲なんて意味はないのだと。
とん、とん、とん、と軽快なステップで影華は山を進む。
与えられる欲を気にすることなく、蟲達の活躍を耳にしながら。
成功
🔵🔵🔴
第2章 ボス戦
『人斬り与吉』
|
POW : 斬らせい
自身と武装を【触れた存在を切断する剣気】で覆い、視聴嗅覚での感知を不可能にする。また、[触れた存在を切断する剣気]に触れた敵からは【剣に対する防御力】を奪う。
SPD : 斬らせい
レベルm半径内に【範囲内を埋め尽くす不可視の斬撃】を放ち、命中した敵から【移動力】を奪う。範囲内が暗闇なら威力3倍。
WIZ : 斬らせい
【止まることなく放たれ続ける斬撃】が命中した対象を切断する。
イラスト:Re;9
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ベリル・モルガナイト」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
……斬らなければならない。斬り続けなければならない。
……人を斬ることで、己の欲が満たされた気がするから。
……人を斬ったその感触が、己の欲を満たしていくから。
山奥の開けた場所に、人斬り与吉は佇んでいた。
霊石による結界で封じ込められて以降はこの場所から動くことなく、ずっと待ち続けていた様子。
なぜなら彼は気づいている。
動かないでここで待つことで、斬ることが出来る人――猟兵が来ることを。
誰から聞いたわけでもない。オブリビオンとして成ったその日から、猟兵という存在が来ることは本能としてわかっていた。
だから、他のオブリビオン達もおびき寄せた。自分だけが大きな事件を起こすよりも、別のオブリビオンを呼び寄せることでより一層猟兵の存在が必要であると知らしめたかったから。
さあ、準備は整った。
――人斬りと猟兵の死合を始めよう。
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プレイング受付:11/29 8:31~
ボス敵『人斬り与吉』との戦いです。
人を斬りたい! 丁度猟兵来るやん! やったぜ! の勢いです。
場所は山奥の開けた場所となります。
人斬り与吉を中心に半径10mほどの円状の荒れ地が広がっているような感じです。
開けた場所となってはいますが、少々岩が多いため遮蔽物にもなります。
木々も遮蔽物として有効活用できる範囲に存在するので、使用する際には記載をお願いします。
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鈴乃宮・影華
※アドリブ歓迎
私の剣才は
手ほどきしてくれた友人が曖昧に笑うだけだった、という所からお察しレベル
所詮下賤の蟲使いに出来るのは、蟲の力を借りる事のみ
だから視聴嗅覚で感じ取れなくなった件の人斬り相手にも、
UC:黒燐蟲・常勝群を起動
「お願い、探して!」
荒れ地全域を蟲達にしらみ潰しに進軍させれば、人斬りに蟲が集って輪郭が顕になるか、はたまた蟲が斬殺されていくか……いずれにせよ居場所を特定できるはずです
後は斬撃波を放つなり蟲達に食らいつかせるなりで攻撃です
なお、人斬りに逃げを考えさせないよう、あらかじめ『黒の葬華』を正眼に構えアピール
「端くれとは言え私も剣士です……斬らないんですか?」
●たとえ曖昧に笑われたとしても。
山奥の開けた場所で、影華はそれを目にする。
静かに佇み、獲物を待つ人斬り与吉。それに近づかなければ害はないことはよく知っているが、それでも影華は近づいた。それを倒さなければ、終わりが無いのだから。
影華には少々、恐れがあった。剣を使うことが彼に対する礼儀なのかもしれないけれど、果たして己の剣が人斬りと呼ばれる程になった剣士相手に通用するのか、と。
(……確かに、私の剣才は……友人が曖昧に笑うだけのレベルだけど)
例え教えてくれた友人の反応が微妙でも、それでも自分が剣の手ほどきを受けたことは、悪いことではなかったと言いたい。言いたいのだ。
(……私は)
どう動くか、短く悩んだ末に……影華は前に出たが、一瞬で身を引いた。人斬り与吉がいるであろう空間に触れた瞬間、風圧が彼女の髪を揺れ動かしたからだ。
何が起こっているのかと顔を上げたその時、影華は気づく。人斬り与吉の姿が目で認識出来なくなっており、近づいただけで切り裂かれる空間が出来上がっていることに。
このままでは影華は人斬り与吉を見つけることは出来ない。そこで、目で認識出来ないのであれば別の感覚を使って探し出せばいいと閃いた影華はユーベルコード『黒燐弾・常勝群』を使い、黒い蟲の群れを呼び寄せる。
「お願い、探して!」
過去を共にした黒の蟲に声をかけ、辺りを探る。視覚と嗅覚での認識を無くし、触れた存在を切断する剣気は黒の蟲を次々に切り落としてしまうが、影華は次々に蟲達を想像から創造する。疑念など、苦労を共にした仲間に感じることは微塵もない。
そして、その仲間のために、自分も逃げることは許されない。学生時代、剣を教えてくれた友人が持っていた剣に似せた物――黒の葬華を正眼に構え、人斬り与吉に圧を与えた。
「端くれとはいえ、私も剣士です。……さあ、いつでもどうぞ」
躊躇なく、己の存在をアピールする影華。姿は見えずとも太刀筋は既に見切っているという圧を与えることで人斬り与吉の逃げ場を失わせ、蟲ではなく自分を斬るように道筋を作り変えた。
「……斬らないんですか?」
ふと、影華の言葉が和らぐ。斬らないのであれば、人斬り与吉の名が泣くのではないか? と言いたげな、優しい声だ。
しかしその言葉を遮るように、蟲達を斬って存在を見せつける人斬り与吉。最後の一振りで影華を断ち切ってやろうと前へ出た瞬間、人斬り与吉の身体が宙に浮く。
気づけば人斬り与吉は、剣士の端くれの斬撃波で吹き飛ばされていた。
大成功
🔵🔵🔵
クロム・エルフェルト
アドリブ歓迎
UCの先手は敵に譲る
岩陰にて不可視の斬撃から身を隠しつつ、目的を問う
――与吉とやら。その剣の先に、何を求める。
予知で聞いてはいたけれど
互いに武士の端くれ同士
口上を与え、大義を得たい
誇り無き人斬りの剣に道は無し
天片・識即是遂を解放
一足飛びに剣の極致、その紛い物のソラを借り受ける
軽佻浮薄。貴男の逝く先は奈落の底と識りなさい。
"斬らせい"、其の技は先刻見たばかりよ。
敵が鍔に指掛け、鯉口を切り終わる迄の刹那に▲先制攻撃。
縮地の▲ダッシュで擦れ違い、▲早業の一閃を放ちましょう。
いいえ、止刀を刺すのは私では無いわ。
だって、ほら。もう自己暗示が解けかかっているのだもの。
後は御味方に任せましょう。
●天に至る道を借り受ける!
ざん、と。人斬り与吉が刀を振るう。
そこに《人が居る》と信じて疑わない一撃は、目に見えぬ速度で荒れ地を切り刻む。
クロムはその見えぬ斬撃を一心不乱に回避して、出来るだけ身を隠しながら人斬り与吉の様子を伺っていた。
事前に話を聞いていたが、人を斬ることに何ら理由を持たない彼に果たして剣士としての心得は通用するのか否か。クロムは武士として、そこがどうしても気になって仕方なかった。
そこで彼女は身を隠しながらも、彼に声が届く範囲を動きながら唯一つ人斬り与吉に問いかけた。『その剣の先に、何を求める』のかを。
「――……」
クロムの問いかけに対し、人斬り与吉の動きが一瞬だけ止まる。求める先など何もない、ただの虚無だと言いたげな一振りを振るうと、クロムが隠れていた大岩を切り裂く。
「それが答えというのならば、誇り無き人斬りの剣に、道は無し」
すかさずクロムは刻祇刀・憑紅摸の鯉口を切り、ユーベルコード『天片・識即是遂』を発動。己の至るべき剣の極致、それを少々借り受けて人斬り与吉の刃を流して落とす。
僅かな一瞬、チリンと鋼と鋼の擦れる音があたりに響いたかと思えば、クロムは身を翻して与吉の背後を取る。今一度クロムを斬らねばと言う意志を持った人斬り与吉は周囲を一斉に切り裂く不可視の刃を放ち、クロムの動きを封じようとした。
「――其の技、先刻見たり」
人斬り与吉の刃がクロムを捉えるよりも先に、憑紅摸が刃を防ぐ。鋼と鋼がぶつかる衝撃音が響いたかと思えば、人斬り与吉の身体がぐらりと揺らぐ。防がれた衝撃によって彼の体勢が崩れた。
その瞬間、クロムの足が動く。荒れ地を素早く駆け抜け、人斬り与吉とすれ違った僅かな合間に憑紅摸の刃で人斬りの身体を切り裂いた。
体勢が崩れ、立て直しの効かない人斬り与吉。もう一度来るのかと身構えていたようだが、クロムの姿は既にそこにはない。
「――ちょっと、無茶をしすぎたかな?」
人斬り与吉から少し離れた森の中、クロムは少し落ち着きを取り戻していた。
今までの動きが出来たのは、自分への自己暗示を掛けていたからこそ。与吉とすれ違ったあの瞬間にまさに自己暗示が解けかかっていたため、これ以上の無理は禁物だとその場を後にしていた。
だが、彼女はこれで良いのだと自分に言い聞かせる。あの場で死ぬことは、剣の道を閉ざすことと相違ないからだ。
「あとは……御味方に任せましょう」
空を仰ぎ、クロムは後続の猟兵達に後を任せてその場を離脱する。
僅かに経験値となった剣の極致の感覚を、握りしめながら。
大成功
🔵🔵🔵
神臣・薙人
「護」で行動
蟲笛で白燐蟲を呼び
道中及び戦闘中の光量を確保
足りなければ懐中電灯も継続使用
皆さんの先に立って念をたどって行きます
接敵する前でも気を抜かず
周囲の物音や木々の様子に異変が無いか注意
異常に気付けば皆さんに注意を促します
敵を発見もしくは
攻撃があった時点で
リアライズ・バロック使用
敵を視認していなければ
バロックレギオンの後を追って接敵
おかしいですか?
猟兵の癖に、私は恐怖を捨て切れないのですよ
嗤いたければ、どうぞご自由に
それでお役に立てるのなら本望です
戦闘中もリアライズ・バロックでの攻撃を主体に行動
視覚等を阻害された方がいれば
声を上げて敵の位置を知らせます
余裕があれば白燐蟲を増やし
光量を上げます
凶月・陸井
「護」で行動
途中からの参戦で仲間達には一歩遅れて行く事になる
だからこそできるであろう策で動いてみるよ
「あんたが例の人斬りか?さ…いざ尋常に勝負」
接敵したら声をかけつつ【黒影剣】を使用して闇に紛れる
自分と同じ方法で攻撃してくる奴がいると意識させ、
嫌でも多方向に注意を向けさせるように動く
仲間へ攻撃してきた時や少しでも隙があれば切りかかる
「隙あり、だな」
常に闇に紛れ、現れを繰り返すようにして戦う
敵の注意が自分へ向けばそれでも良し
仲間達の攻撃の隙を作るように全力で受けきる
「甘いな…俺には仲間達が居てくれるんだぞ?」
一人で戦って居たら絶対にできない戦法だからこそ
仲間達を信じて、全力で攻撃して全力で護る
御門・勇護
「護」で行動 アドリブ等歓迎
引き続きペン型ライトを所持。
周囲を警戒しつつ先導する神臣さんに追従していく。
常に【索敵】を心掛け異変に気付いたら声掛け、情報を即座に共有する。
木々が多い、視界の確保が難しそうですね。
と内心でため息を吐きつつ気を引き締めましょう。
何処から襲い掛かってくるかわからないのですから。
接敵と同時に指定UCを発動。その後は【誘導弾】の【弾幕】で味方を【援護射撃】、自身への攻撃は【受け流し】つつ、八握剣で切り返す。
また、暗闇の範囲内に入らないように意識しつつ立ち回る。
可能ならば指定UCの光量を増幅し戦場の暗闇を減らしたい。
葛城・時人
「護」で行動
正々堂々のつもりなんだろうね
呼び寄せたのが猟兵なのは潔くて好感すら覚えるよ
でもお前の居場所はここじゃない
骸の海へ還しこの森に安寧を
先行の神臣に最大限注意しつつ白燐蟲の光でも探し
縫い止めを狙う
UC白燐奏甲詠唱、続き白羽蟲笛も行使
「ククルカン索敵を!敵の目は塞ぎ俺たちには力と光を!」
神臣か蟲が発見したら即時戦闘状態に入る
奏甲の加護も皆に順次
攪乱し一人に攻撃が集中しないよう立ちまわる
誰かに重い攻撃が行きそうなら即かばい、蟲でも割って入る
「俺の仲間に手を掛けるなんて絶対許さない」
長剣も蟲笛も、蟲も技能も全てを使い防ぎつつ戦う
「皆がいる。だから負けるはずなんかないから!」
勝利したら笑顔を皆に
刀道・御剣
「護」で行動
ふむ、矜持か、それとも単に強者を狩ると言う欲か。……どちらにしろ、我々猟兵の対処だけで済むと言う事は僥倖だ。
周囲と状況を判断し、適切に活用していこう。
恐らく、神臣殿の先導で敵と対峙する事になるので、神臣殿が攻撃を受けた時に放つリアライズ・バロックをあてにさせて貰おう。
敵がいかに視聴嗅覚を阻害してくるとしても、対象を追跡するユーベルコードでは場所が突き止められると考える。そこに追随して、カラミティハンドでの攻撃を加えていく。当たりさえすれば刈り取れよう。
日向・修一郎
「護」で行動
索敵を担当する神臣に「死がふたりを分かつまで」を使用。
最悪の場合を考えた保険だ。
キャバリアの全身に付けたライトで光源を確保しつつ、神臣のUCによる索敵を見て【誘導弾】&【斬撃波】の【弾幕】による【掩護射撃】で相手に攻撃、足止めを仕掛けていく。
キャバリアで耐久力はあるのでなるべく味方への攻撃を庇いつつ敵の攻撃が来たら【受け流し】、神臣の索敵がうまく行かない場合や敵の攻撃を喰らった場合は敵の剣、もしくは腕を掴んで動けなくし、自分がキャバリアから出たところで仲間に遠慮なく一気に攻撃させる。
「取ったぜ・・・!伊達に図体デカイだけじゃねぇ!」
「キャバリアごとやっちまいな!」
アドリブ等は歓迎。
●新たに合流。
山の中にポッカリと出来上がった荒れ地。そこに佇む人斬り与吉を目指す傍ら、薙人、勇護、時人、御剣、修一郎の5人は作戦を立てるために一度足を止めていた。
こちらは5人、あちらは1人と多勢に無勢ではあるが、相手は霊石によって封じなければならないほどの強大な力を持つオブリビオン。作戦も無しに突撃するには、あまりにも無謀だと感じていた。
念の出どころまで掴んだのは良かった。だが、そこからどう動いて人斬り与吉を制するか? そして連携を取るにはどう動いたものか? 様々な課題が押し寄せていた。
しかしそんな5人の下に、また新たな仲間がやってくる。
「すまない、遅れたな」
「陸井さん」
薙人が名を呼んだ男――凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)、彼は同じ志を持った武道館に所属する仲間。少々遅れてしまったと詫びているが、むしろ彼が来たことで5人にはある作戦が思い浮かんだ。
「現在どうなっている?」
「さっき、薙人がこの山に漂う念の出どころを掴んだところなんだが……流石に作戦もなしに突撃するのはまずいよなぁ、ってことで作戦会議中だ」
「なるほど……」
山に入る前から現在に至るまでの状況を陸井に説明する修一郎。山の構造、念の性質、そしてその先にいるであろう人斬り与吉というオブリビオンの性質まできっちりと、余すことなく。
そして陸井が来たことで5人には新たな策が浮かんだため、こちらの策を使って人斬り与吉を倒すことが良いのではないかと告げられる。当然、陸井は拒否することなかった。
「っと、さっきは御門に繋いでいたが、次は神臣に使っておくぞ」
修一郎は今一度、ユーベルコード『死がふたりを分かつまで』を使い、薙人と赤い糸で繋がる。念を辿り、索敵も担当する彼を失えば戦いの活路は閉ざされてしまうが故に。
また薙人も蟲笛を使って白燐蟲を呼び寄せ、時人もユーベルコード『白燐奏甲』によって呼び寄せたククルカンを使い、光源を確保。敵に襲われずに薄暗い山の中を歩くには、多少の光源も必要と判断してのこと。それでも少々明かりが足りなくなっていたため、薙人の懐中電灯や勇護のペン型ライトを駆使して辺りを警戒しながら進んでいった。
●夜闇の中の死闘
進めば進むほどに、6人は息を呑む。その先に存在する強大な力を持つオブリビオン――人斬り与吉の圧が山を下り、6人を包み込んでいたからだ。
「こちらです。足元には気をつけて」
薙人が静かに合図を出しながら、念の出どころを辿り先へ進んだ。風の流れや周囲の音に気をつけつつ、6人は山の奥地へとたどり着いた。
荒れ地に佇む人斬り与吉。彼は6人の気配を感じ取ったのか、既に戦闘態勢を取っている様子だ。軽く手に持っていた刀を振るうと、その姿が6人の目の前から消えた。
彼を覆い尽くす剣気は触れただけでも切り裂かれる。それを思い知ったのは、辺りの木々が勝手にバラバラに切り落とされるのを目の当たりにしたからだ。
「気をつけて、既に向こうは攻撃態勢です!!」
勇護の声と同時、6人は散開。それと同時に陸井のユーベルコード『黒影剣』による闇のオーラと勇護のユーベルコード『月光蒼天陣』が展開され、辺りが夜のように暗く染まった。
どのように動くかは、既にここに至るまでに6人で綿密に計画を立てている。それぞれが己のやるべきことを頭に浮かべ、人斬り与吉と対峙し始めた。
「あんたが例の人斬りか?」
闇のオーラに包まれた陸井が人斬り与吉に向けて声をかけ、認識を歪ませる。視覚と嗅覚による探知を行わせない手法を持つのは、何も人斬り与吉だけではないのだと主張するように。
その合間にも修一郎のキャバリアで人斬り与吉の斬撃を防ぐが、触れただけで切り裂かれる剣気によって僅かに薙人は恐怖心を植え付けられ、ユーベルコード『リアライズ・バロック』によるバロックレギオンが呼び寄せた。
恐怖心を植え付けた相手を追従するバロックレギオン。視覚と嗅覚で探知できない人斬り与吉の居場所を、与えられた恐怖から感じ取ってその場所を取り囲み始めた。
「なるほど、そこに『居る』のだな?」
バロックレギオンが取り囲む中央部に向けて、御剣のユーベルコード『カラミティハンド』によって生まれた赤い影の腕が伸びる。腕によって剣気を引き裂き、人斬り与吉の姿を出すことに成功。すかさず、時人のククルカンが人斬り与吉の周囲を飛び回って視覚を阻害した。
「ククルカン、視覚を塞ぎ続けるんだ!」
白き光を放つ白燐蟲・ククルカンは蟲笛の音に合わせて人斬り与吉の周囲を飛び回り、赤い影の腕の存在を際立たせながら視覚を塞ぐ。他のメンバーに居場所を知らせるようにチカチカと輝かせつつ、人斬り与吉の動きを鈍くさせる。
その一方で近づいたものを斬り裂く剣気に対処を取っていた修一郎と勇護は誘導弾で人斬り与吉の足元を撃ち抜き、逃げ場を失わせている。
辺りを取り巻く剣気への対処は修一郎のキャバリアで防いでおり、薙人、陸井、時人、御剣に降りかかる斬撃もキャバリアの腕が防ぎ続けていた。
「しかし、このままだと防戦一方だな……!」
「どうにか突破口を切り開かなくては、皆さんの体力も持ちませんね……!」
逐一、4人の動きを阻害しないように誘導弾を撃ち込み、蒼の月による浄化の光を周囲に散らす勇護。キャバリアに乗っている修一郎とは逆に人斬り与吉から狙われやすい立場にあるため、出来る限り修一郎から離れないように動いていた。
逆に修一郎はキャバリアのコクピットから見渡せることが出来るという特性を活かし、戦場全体を把握して人斬り与吉の逃げ道を防ぐように誘導弾を撃ち込む。どのように撃てば人斬り与吉がどう動くか、素早い計算のもとに援護を続けていた。
だがこのままの防戦一方では勇護はおろか、薙人達も体力が続かない。修一郎は悩みに悩んだ末、ある決断を取った。
「……あーっ、仕方ねぇ!! 全員、一旦離れろ!!」
修一郎の声と共に5人は一旦距離をとり、キャバリアの両腕が人斬り与吉を掴むために伸びる。人斬り与吉は刀を奮って得体の知れぬ腕を片方切り落とすが、もう片方の腕を止めることは叶わず捕まってしまう。
「取ったぜ……! 伊達に図体デカいだけじゃねぇ!!」
「修一郎さん!」
「やれ、陸井! 皆も、キャバリアごとやっちまってくれ!!」
その言葉に対し、5人は堰を切ったように人斬り与吉に攻撃を仕掛けた。
薙人はバロックレギオンによる包囲網を敷いて逃げ場を無くし、恐怖を与えた対象である人斬り与吉に恐怖を差し返す。
「猟兵となったとは言え、私は恐怖を捨てきれない。ええ、これは笑われても仕方はありません。でも……それでお役に立てるのなら、私は本望です」
恐怖というのは、例え生命の埒外の存在だとしても切っても切り離せないものだと今一度心に刻みこむ薙人。恐怖心から生まれたバロックレギオンの存在を認めながら、恐怖の存在を打ち倒す。
陸井は闇に紛れ、姿をくらまして人斬り与吉の視覚と聴覚を奪い、七支刀と日本刀を交互に振るいながら人斬り与吉を追い詰める。
キャバリアの腕で掴まれて取り押さえられているとは言え、人斬り与吉の剣気は未だに衰えていない。故に、陸井は隙を見つけては針の穴を通すが如く刃を振るう。
「隙あり、だな」
自分が失敗したとしても、何ら問題はない。陸井は1人での戦いでは絶対に出来ない、慣れない刃の動きも試してみたくなるほどに仲間達を信頼していた。
勇護が呼び寄せた蒼の月は、辺りをゆるく照らして不浄なる存在――人斬り与吉を祓い続け、仲間達の切り傷を全て癒やし続ける。
痛みを与えられる前に祓い、痛みが広がる前に癒やしを与える。その月があるだけで、仲間達は皆安心して人斬り与吉に挑めるのだ。
「傷は私が癒やします。どんな速度で斬られようとも、全て」
どんなにたくさん斬られても、斬られなかったように全ての傷を癒やす勇護の蒼い月。それは、暗がりの森に一筋の道明かりを作り出していた。
時人はククルカンに指示を出し、皆にその力を分け与える。人斬り与吉に与えられていたまばゆい光も、仲間達に広がればそれは強さを与えるものとなる。
そして時人本人も動かねばと、長剣を片手に人斬り与吉に突撃し始めた。蟲笛と長剣を交互に操り、仲間を守り抜く強い意志を持って。
「どんな時でも、皆がいる。だから、負けるはずがないんだ!!」
その背を守り続けてくれる仲間がいる。その安心感の下、時人はククルカンと共に人斬りの業と戦い続けていた。
御剣の刃と赤い影の腕は人斬り与吉を捉え続け、切り裂き続けた。まるで人斬りの業を断ち切るかのごとく、何度も何度も剣気を割いて人斬り与吉を苦しめる。
「ふむ、矜持……いや、これは単に強者を狩るという欲か?」
刃と刃が交わることで、人斬り与吉の欲がいかなるものをかを推し量る。強い者も弱い者も関係ない。ただ、人の形を斬りたいという欲が人斬り与吉という存在を形作っているようだ。
ならば、ここで生かしておく理由は何処にもない。世界のため、ひいては仲間達のために人斬り与吉の身体を引き裂き続けた。
修一郎はキャバリアで人斬り与吉の身体を抑え込みながらも、自分も誘導弾を使って人斬り与吉を抑え込んでいた。片腕を壊されたとは言え、後で修理すれば何ら問題ないからひとまずは人斬り与吉を抑え込まねばと。
「っつっても、修理費用がバカにならないんだよなぁ……! 経費で落とせりゃいいんだけども……そうはいかねぇんだろうな!」
キャバリアの修理費用のことを考えると、とにかく頭が痛い。人斬り与吉という存在に対して有効な手段ではあったけれども、壊された場所があまりにも悪い。
この恨み、今晴らさねばどうするか。その勢いを保持したままに、修一郎は人斬り与吉の足元に向かってガンガン誘導弾をぶち込んで、ガンガン足場を揺らがせた。
6人のすさまじい攻撃は人斬り与吉の身体を覆い尽くす。
『人を斬ること』、それは間違っているのだと彼に叩き込むかのように。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『青春ソフトボール』
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POW : 豪腕からの超スピードボールや超飛距離のホームランで決める
SPD : テクニカルな変化球や盗塁を繰り出す
WIZ : 応援や差し入れで仲間の士気を上げる
イラスト:シロタマゴ
👑5
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
猟兵達の尽力により人斬り与吉の圧は消え、辺りに漂っていた念は消失した。
これでめでたしめでたし……というわけにもいかず、最後の課題が残されている。
天輪宗の人々が抑え込んでいた山の近くには、ある村が存在している。
既に情報網を敷いて一般人へは情報が流れないようにしているが、小さな村というのは噂が早く広まるもので猟兵達の存在から何から怪しまれていた。
世界結界のおかげで村の人々の記憶からは今回の事件は徐々に忘れ去られることになるだろうが、天輪宗の人々は出来る限り早く忘れさせたいという。
そこで……人々の目を欺くために何かで楽しませて忘却を早めよう! と言う形で作戦が進められていた。
一体どんな作戦なんだろう。そう考えた矢先、今回の事件を手伝ってくれた天輪宗の人がくるりと振り向いた。
「悪いんだけど、もう少しだけ付き合ってくれないかな?」
そう言って天輪宗の人から、ソフトボールの一式が手渡される。
村の人々への説明としては、山に入ったのはソフトボールで打った球が動物達に被害をもたらさないかどうかの調査だったためであり、村の発展を願ってのソフトボール大会を開くためだった……ということにするらしい。
そのため、調査していた猟兵達の参加もなければ怪しまれるかもしれないと釘を差されてしまった。
「すまないね。あ、ところで別の球技でもいいけどどうする?」
……天輪宗の人々もだいぶノリノリだ!!
参加しないなんていう手は、何処にもなさそう!!
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プレイング受付:12/4 8:31~
人斬り与吉を倒し、無事シナリオクリア! というわけにもいかず。
近くの村の人々から山で何かしらの事件が起きたのかと、少々怪しまれてしまっています。
世界結界で記憶が薄れるとは言え、忘れるのは早いほうが良いわけです。
そこで、天輪宗の人々・村の人々と共にソフトボール大会を開くことになりました。
理由は村の発展のためという理由付け。楽しませれば問題ないです。
ソフトボールの知識がなくとも、なんとなくの感覚でOKです。村の人々を楽しませるのが目的ですので。
また、ソフトボールをするようなPCじゃない! という方は別の競技でも構いません。
先にも申している通り、楽しませて記憶を薄れさせるのが目的となっていますので、楽しませるような目的であればだいたいOKです。
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凶月・陸井
「護」で行動
これも依頼に含まれてる必要な事だもんな
折角だし村の人達の疑問を払拭するように全力で遊ばせてもらおう
俺は天輪宗の人達に交じってソフトボールに参加するよ
「あ、じゃあ折角の機会だし俺が投手をさせてもらうな」
銀誓館のソフトボール大会でもやってたし…確かウィンドミルだったかな
腕を振り上げてから、一回転させるようにして一気に前へ
刀道くんが受け止めてくれるとは言え猟兵としての力もあるから気を付けるよ
運動が終わったら皆で一息だな
用意してくれたものを食べたり飲んだりしつつ
今日も無事に、戦いを終えれた事にも思いを馳せて
「本当に、皆もお疲れ様だよ」
※アドリブも勿論歓迎です
葛城・時人
「護」で行動 アドリブ等歓迎
後はカムフラージュ
こういうのって、実際の戦闘と同じくらい大事な事
だって思うからお遊びでも全力で
やー…10年前辺りが最後だったんだけどやっぱ
こういうので汗流すのいいなぁ
出来そうならかなり難しいって言われる盗塁とかも
チャレンジ!
打つのも積極的に振ってくよ
ブンブン丸でしくじらないように頑張ろ
「ホームラン狙うよ!」
終わった後でも、皆が色々作ってくれてるみたいだし
何でも喜んでいっぱい食べるよ
甘いの大好きだから食事よりお菓子とかケーキとかを
多く食べちゃうかもだけど…いいよね?
賑わいや、天輪宗の人たちの笑顔を見ながら
「願わくば此処にもう人斬りなんて物騒なものが
出ない事、祈るよ…」
日向・修一郎
「護」で行動
天輪宗もなんか楽しそうだな、おい。
ま、俺も久しぶりのソフトボールだし頑張らせてもらおうかね。
投手と捕手は凶月と刀道がやってくれてるし、俺は外野でバッターに集中だ。さて、このまま普通に参加するのも面白くないし、話題で昨日の騒動ごまかすには…(キャバリアの壊れた部品見て)…これの一部使ってキャバリアの仮装でもしていくか。(しかし出来は微妙だった)
ま、重くて動きにくいが多少はご愛敬だ。
(UCは設定してますが使いません)
さて、終わった後は飯でも…(大量の重箱見て)…oh…。
シリルーン、またえらい量作ってきたな(汗)
だが、折角の料理だ。ありがたくいただきますかね。
アドリブなどは歓迎
御門・勇護
「護」で行動 アドリブ等歓迎
任務の後ですし、羽目を外す気持ちも分かりますが……
天輪宗の方々も随分と乗り気なご様子。
私は運動は得意な方ではないのでお弁当の差し入れや応援で場を賑やかしましょう。
「世は並べて事も無し、善き哉善き哉……といった所でしょうかね。」
過酷な任務もその後に続く日常も、全てが大切な人生の一ページです。
本当に犠牲が出なくてよかった。そう思いを噛み締めながら皆さんを応援しましょうか。
シリルーン・アーンスランド
「護」で行動しアドリブも歓迎致します。
こういう日常も大事ですから、しっかり頑張りますわ。
戦われた皆様はさぞお疲れででございましょう。
会場に沢山食べ物や飲み物をお運び致しますね。
サンド・おにぎり・から揚げ・たこさんウィンナー…。
煮しめや甘味も含めまして…あら、お重だけで数十個…(汗)
お運びは猟兵としての自分の体力に任せ、必要であれば天輪宗の皆様の
助力も仰ぎます。
勿論どなた様にもお振舞いを。
「腕を奮って参りましたので、たんとお召し上がり下さいまし」
ソフトボールは銀誓館の頃からよく存じております。
懐かしゅうございますね…。
出場の皆様に声援と、ご活躍には拍手を。
声をからし熱戦を応援で彩りましょう。
刀道・御剣
「護」で行動
仕事の誘いを掛けた私が率先して依頼をこなさないというのは示しもつかなかろう。
まあ、数が足りぬ分は他の猟兵なり天輪宗なりに協力を仰げばよかろう。
凶月殿が投手を行う様なので捕手に回ろう。
なに、安定感には少しばかり自信がある。どんな球でも受けて見せよう。
運動後、用意して貰った物があればご相伴に預ろう。こういう物は雰囲気が大事だ。
(アドリブ、共同リプレイ歓迎です)
神臣・薙人
「護」で行動
天輪宗の皆さん、なんだか楽しそうですね…
これは、成功させなければ
運動と寒さが苦手なので
羽織の上からコートを重ねてもこもこになります
その後はお弁当の準備や
応援のお手伝いを
ふぁいと、おー、です
…この場合、どなたを応援すれば良いのでしょう?
よく分かりませんが
賑やかに楽しくしていれば何とかなる気がします
随所で拍手したり歓声を上げたり
とにかく場が明るくなるよう心掛けます
見せかけではなくて
こんな日常が当たり前になる日が来れば良いのですが
ソフトボールに参加された皆さんが
食事に戻られたら
率先して料理の取り分け等を手伝います
お疲れ様です
もうすっかり寒いですけど
運動の後の水分補給は
しっかりして下さいね
●護るべき日常
人斬り与吉が倒され、一息ついた陸井、時人、修一郎、勇護、御剣、薙人の6人。
天輪宗の人々から近隣の村の記憶を薄れさせるため、もう少しだけ付き合ってくれないか? とお願いをされたので、快く引き受けた。
今回は近隣の村でのソフトボール大会。……というのが建前。
本来の目的は村人を楽しませることで世界結界の記憶除去を早めるのが目的だ。なので天輪宗の人々や村の人々を織り交ぜてのチームを作らなければならない。
とは言え、誰もが経験者というわけではない。投手と捕手は慣れた人間でなければ難しいだろうと考えていたところで、陸井が手を上げた。
「あ、じゃあ折角の機会だし俺が投手をさせてもらうな? 昔は銀誓館のソフトボール大会でもやってたし」
「じゃあ俺は打手! ホームラン狙うよー!」
バッドを持ってブンブンと振り回す時人を少々諌めつつ、勇護が周囲を見渡すと……ふと、見慣れた姿を見つけた。
「おや……あの方は」
勇護が見つけた人物に手を降ると、その人物も勇護に気づいて手を降って近づいてきた。
同じ武道館で志を共にする仲間、シリルーン・アーンスランド(未来渡る護り風・f35374)。彼女は戦いを終えた彼らのためにお弁当や飲み物を持ち込んできてくれたようだ。
「皆様、お疲れさまです。さぞ大変だったことでしょうに……」
「いえいえ。皆さんと一緒だったので、大変ということはあまりありませんでしたよ」
「まあ、薙人様……薙人様??」
シリルーンが薙人に声をかけようと振り向いてみれば、そこにいたのは羽織の上からコートを重ねてふわふわもこもこになった薙人。運動と寒さが苦手なので、今回は応援側に回るそうだ。
あまりのもこもこ加減に思わず小さく笑ってしまったシリルーン。彼のこんな姿を見ることが出来るのは、もしかしたら今回だけなのかもしれないと思うと笑みがこぼれたようで。
「えーと、じゃあソフトボール参加するのは誰だ?」
ふと、修一郎が気になって6人に問いかけて参加メンバーを確認する。手を上げたのは陸井、時人、御剣と修一郎の4人のようで、勇護、薙人、シリルーンは見学と休憩所の設置を行うのだそうだ。
「仕事の誘いをかけた私が率先して依頼をこなさないというのは、示しもつかなかろう?」
「ま、そうだよな。御剣は何処のポジションに行く?」
「ふむ……ならば、捕手に回ろう。凶月殿が投手を行うならば、我々から捕手を出さねば受け止めきれる者がおらぬかもしれぬからな」
「ん、じゃあ俺は外野でバッターに集中する。時人、あんまり変な動きするなよ?」
「大丈夫! 任せて!」
修一郎の問いかけに、えっへん、と胸を張って答えた時人。かなりの自信満々な姿に修一郎も御剣も大丈夫というのならと安心感を得ており、彼には十分な期待を寄せていた。
だがこの時は、誰も知らなかったのである。
とある人物があんな仕込みをしていたことなんて……。
●防御、開始!
「…………」
最初は猟兵チームが守備側となった。ふぁいとー、おー、と声をかける薙人達の声援を受けつつ、陸井と御剣がそれぞれ配置につく。
真剣な目で構える陸井に対し、相手バッターもかなり威圧を放っている。ソフトボールならば負ける気がしない……そう言った雰囲気を陸井は感じ取っていた。
(この者……なかなかにやりおるな?)
捕手を務める御剣もまた、相手バッターの威圧を感じ取っていた。圧を放つことで投手の手元を狂わせ、速度の落ちた球を作ることを狙っていると気づくまでにそこまで時間はかからず、御剣はハンドサインで陸井に注意を促した。
(なるほど。……となると、ここは本気で行くべきだな)
どのような球を出してみるかと悩んだ末、陸井はいちかばちか賭けに出た。銀誓館でソフトボール大会をやっていた時に出したウィンドミルを使ってみることに。
腕を振り上げ、一回転させるように腕を回し下手投げ。無駄のない動作で投げられたボールは真っ直ぐに奔り……見事、御剣のミットの中へと入り相手にストライクを与えた。
あまりの速度に目をパチクリとさせている相手バッターだが、彼らが本気なのだと知るとまた彼もやる気に満ち溢れたようで、しっかりと構える。
(次は……こう!)
先ほどとは変化を付けてボールを投げてみた陸井。しかしそれは相手バッターに読まれていたのか、バットに直撃したボールは高く大きく飛び上がる。
「っ、まずい……!」
「しまった……!」
飛び上がったボールを視線で追いかける陸井と御剣。その視線の先には誰もおらず、このままでは1塁進出されてしまうか……そう思われた矢先、時人が動いた。
「間に合えーーー!!」
自分がいたポジションから、一気に走った時人。同じく修一郎も走ったが、ボールにたどり着くのは時人が早かったため彼に譲ることにした。
結果は、打ち上げたボールはしっかりと時人のグローブの中に収まった。すれすれでスライディングしたのが功を奏したようで、上手く相手にアウトを一本与えることが出来た。
「よし、この調子で続けるぞ!」
「オッケー、修一郎も無理しないように!」
「そこの2人もな!」
修一郎の掛け声に、軽く右手を上げて答えた陸井と御剣。その言葉にしっかりと答えるかのように2人の動きにはキレが出てきており、1点も相手に与えることなく攻撃側へと回った。
●攻撃、開始!
「10年前辺りが最後だったけど、やっぱこう言うので汗流すのはいいなぁ……」
バットを手に取り、バッターボックスに立った時人。昔のことを少々思い出したが、今は今を楽しもうと首を軽く横に振って投手へ視線を向ける。
相手の動きをしっかりと見定め、振りかぶった一瞬を見逃さずバットを降り、ボールに当てて大きな山を描いて飛ばす。
猟兵の力もあるために出来るだけ力を抑え込んでの振りかぶりだったが、それでも思った以上に遠く飛んだ。一般人である村人相手に少々大人気ないかなとも思ったが、相手側はかなり楽しんでいる様子なので問題ないようだ。
1塁に進んだ時人。しかし振り返ったその瞬間に、彼は思わず吹き出してしまった。なぜなら視線の先に映ったものが……。
「ふう……ちょっと重いな、やっぱ」
次にバッターボックスに立つのは修一郎だった。だったのだが、何故か彼は先の戦いで壊れたキャバリアの部品を使って少々不格好な仮装を施しており、それが時人のツボに入ってしまったのだ。
「ちょ、あの、修一郎!? その格好何?!」
「何って、さっきのアレでぶっ壊れたヤツだが?」
「いや、だからってそれを着るのは予想外だったね!?」
思わずツッコミを入れていた時人。陸井と御剣もそれは流石に予想外だったらしく、顔を伏せて小さく笑いを堪えていた。
まさか戦いで壊れた部品を使った仮装なんて誰が予想しただろうか、応援に回っている薙人も勇護も口元を抑えて笑っていた。なお、シリルーンは先の戦いで使われていることは知らなかったが、薙人と勇護に話を聞いてからは何故? という表情しか浮かんでなかったという。
がしゃん、がしゃん。鉄と鉄がかち合う音が聞こえるが、今行っているのはソフトボールであり決してキャバリア大戦ではない。そこだけは履き違えてはならないのだ。
修一郎がバットを構えると、すぐにボールを投げてきた相手投手。ボールは修一郎の仮装によって見づらくなった足元を利用し、ストライクゾーンギリギリの下方へと投げ込まれる。
「それは……お見通しだ!!」
動きづらいキャバリアの外装を駆使し、投げ込まれたボールを打つ修一郎。それと同時、ボールが投手の手から離れたのを確認した時人が盗塁を仕掛けた。
結果、ボールは修一郎のバットをかすめ、ぽん、ぽんと転がる程度の距離しか飛ばなかった。更にキャバリアの仮装をしているのもあって体力の減少が早く、1塁に辿り着く前にアウト判定をもらってしまった。
「くっ……ダメだったか……!」
しかし時人の盗塁が成功していることに気づいた修一郎は、ぐっと拳を握りしめて喜ぶ。ここでアウト判定をもらっても、時人が前に進んでくれるならばもしかしたらどうにかなるかもしれない。そういう期待を持っていたからだ。
カァンと、攻撃側のボールが何度も飛ぶ。
そのおかげで、猟兵チームには多少の点が入ったまま防御へと回る事になった。
●疲れた後の、美味しいご飯。
数回の攻防が繰り広げられた後、ゲーム中断の合図が鳴る。
長く運動をすることも悪くはないが、休憩もまた大事な運動の1つ。無理をすることが全てではないのだ。
「皆さん、お疲れさまです。こちらでお食事を用意しておきましたので、お好きなものをどうぞ」
勇護、薙人、シリルーンの3人が作ったであろう食事が休憩所に並ぶ。重箱に詰められたお弁当の数々に、思わず修一郎が「Oh...」と声を漏らすほどだった。
「シリルーン……またえらい量を作ってきたな……」
「作れるものを作っていたら……つい、お重が多くなりまして」
お重の中身はサンドイッチやおにぎりといった軽食から、唐揚げ、たこさんウインナー等の子供向けのおかずに加えて、大人向けの煮しめや甘味を色々と組み合わせて作られていた。色とりどりなお重には、村の人々や天輪宗の人々にも好評のようだ。
「さあさあ、わたくしが腕を奮って作りましたお弁当、たんとお召し上がり下さいまし!」
シリルーンの言葉と共に、皆が一斉にお弁当を食べ始める。
味付けも好評のようで、辺りから「美味しい!」「美味い!」といった声が聞こえていた。
「本当に、皆もお疲れ様。お茶だけど、乾杯!」
「「「「「「乾杯!」」」」」」
陸井の乾杯の音頭とともに、コップを高く上げた6人。彼らは皆同じ席に座り、渡された温かいお茶をゆっくりとすすりながら、今日の出来事を振り返る。
山への到達から念と己の戦い、人斬り与吉との戦いにおいての皆の動き……それぞれが仲間を褒め称え、ある者は研鑽を積み、ある者は精進しようと心意気を高くする。
話が弾んだ頃、時人は辺りを見渡して小さく呟く。
「でも、さ。願わくば、此処にもう人斬りなんて物騒なものが出ない事を祈りたいよね」
その言葉に他の6人が辺りを見渡せば、人々の賑わいや楽しそうな笑顔が目に映る。もし彼ら猟兵がいなかったら、今頃この場はどうなっていたのだろうか? それを考えるだけでも、少々恐ろしい。
「うむ。我々がいるとは言え、全てを守るのは難しい。時人殿の言う通り、願わくば同じことは起こらないことが1番だな」
御剣はゆっくりと頷くと、1つ、小さくちぎった唐揚げを口に放り込む。同じことが起こればまた同じように解決するだけなのだが、事件が起こらないことが何よりの平和だと言いたげに唐揚げの味を堪能する。
「……ですが、ゴースト……いえ、オブリビオンは待ってくれません。私達がこうしている間にも、別の何処かでは事件が起きていますから……」
勇護の言葉に、シリルーンと修一郎が同意だと言うように頷く。今は束の間の休息でも、この事件が終わればまた別の何処かで事件を解決する。それが、猟兵というものだ。
少しだけしんみりした空気になったが、それを払ったのは陸井。一気に飲み終えたお茶のコップを、たんっ、とテーブルに置いて同じ志を持つ仲間達に向けて言い放つ。
「だけど、今は楽しもう。この後のこと、別の事件のこと……そういうのは、一旦無しにして。今は今で、この時間を楽しもうじゃないか!」
その言葉には薙人も大きく頷いた。今を楽しむこと、それが彼らに課せられた現在の任務なのだから。
その後、食事休憩が終わり、後半戦に入る。
「よし、後半戦も頑張ろう!」
「今度こそホームランを打ってみせる……!」
十分な食事と十分な休息を取った陸井と時人は軽くストレッチを行い、再びグラウンドに立つ。そんな中で御剣の視線は修一郎に向けられていた。
「……修一郎殿、それはまだ着続けるつもりか?」
「え? もちろん。休憩十分にとったしな!」
「…………」
そうかとも、やめておけとも言えなかった御剣。修一郎の自信満々な姿になにか言うのは、無粋だと感じ取ったそうだ……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鈴乃宮・影華
※アドリブ希望
POWで挑戦
そういえば銀誓館では毎年5月にやりましたっけ、ソフトボール
能力者じゃないはずのクラスメートがなんか凄い魔球を投げたり打ったりしてましたねぇ……
まぁそういう事で参加しますね
でもここには戦闘服でテレポートしてもらったんで
まずは着替えです
……高校の時の制服しかなかったけど、まぁいっか!
私は銀誓館の高校生、今日は天輪宗の体験ボランティア授業という事で
無事着替えられたなら
昔取った杵柄を披露しちゃいましょう
球をよく見てしっかりバットを振り抜けば、
まぁそれっぽい事は今でもできます……多分
●高校生。そう、私は高校生。
「そういえば、銀誓館では毎年5月にやりましたねぇ……」
しみじみと過去の出来事を思い出す影華。能力者ではないクラスメートの肩が凄まじく、とんでもない魔球を繰り出したのを目撃したのはとても良い思い出だ。
アレは一体どんな動きであんな球を出せるのだろう? それが少し気になってきた影華は、丁度いいタイミングのソフトボール大会に参加することに。
「……あ、そういえば」
ふと思い出すは、自分の服装。すぐに戦闘行為に走ることになったため、ここに来るまでには戦装束を着込んでいる。なのですぐに着替えをしなくては、もしかしたら疑われるかもしれないと影華は所持している服の中から探す。
……が、彼女が現在持っているのは高校時代の制服のみで、それ以外に疑われなさそうな服はない。今から他の服を買いに行くには少々時間がもったいないので……。
「まぁ、いっか! 天輪宗の体験ボランティア授業に参加したって言っておけば、多分きっとなんとか……なる!」
自分を信じて、天輪宗を信じて、影華は学生服を着込む。そう、今の私は高校生なのだと自分に言い聞かせながら。
影華はバッターボックスに入ると、鋭い目つきで投手を見やってどんな球でも打ってみせると威圧を放つ。昔とった杵柄を披露するために初手バッターをもらったが、思った以上に投手側もやり手のようでなかなか隙を見せなかった。
(相手の動きを見れば……打てるはず)
すう、と小さく息を吸ったその瞬間、タイミングよくボールが投げられた。ボールは影華の横を素早く通り抜けようとするが、それを阻むかのように影華のバットが振るわれる。
カァン、といい音が鳴って、ボールが大きな弧を描く。より高く、より遠くへと飛んでいったボールを追いかける相手外野手を尻目に、影華は2塁まで進んだ。
「長らくやっていなくても、なんとかなるものですね」
呼吸を整え、盤面を見定める影華は後続の選手達に応援の声をかけ、走り出す準備をする。盗塁は非常に難しいため、後続の選手がきっちりと打ち込んだのを確認してからすぐに3塁ベースを踏み込み、ギリギリを攻め込んだ。
次が決まれば、1点獲得。それを次の選手にも伝えると、期待に答えるかのように打ってくれたので、持てる脚力を全部出しきってホームベースを踏みしめ、1点を獲得した。
その日、影華はたくさん楽しんだ。
過ぎ去ったはずの時代を、もう一度駆け巡ったかのように。
大成功
🔵🔵🔵
クロム・エルフェルト
アドリブ・トンチキ歓迎
野球。ん、旅団の友から教わったから、良く知っている。
失言連発の不届者を金網の向こうへ『葬らん』する遊び。だね。
――え、違うの?
旅団の友に貰った装備は、赤い兜(注:ヘルメットです)に白い羽織(注:ユニフォームです)、手甲(注:グローブです)は赤。部隊名は『備後・滝昇り』、番号は四。格好イイ(尻尾ぶんぶん)。
迫る白球に拍を合わせ、その中心を抜刀術で……じゃない、『ばっと』で斬裂くように振り抜く。
残心を見せ、ゆるり納刀……え。走れ?
走れと言われたなら疾走らねばならぬ
「流水紫電」の縮地走法で壱塁、弐塁、参んんん、ヒトが、まだ、居る
……え。戻れ?(こんらん)
●葬らんとホームランって確かに似てるけど。
「確か、失言連発の不届き者を金網の向こうへ『葬らん』する遊び、だね」
ソフトボール大会に参加しているクロムは、間違いない、と言った顔で言い切った。流石にそれは違うと訂正を入れた天輪宗メンバーだったが、その訂正に首を傾げるクロム。どうやらガチだったらしい。
「えーと、じゃあどうすれば……??」
よくわからないから教えてほしいと天輪宗の人々に聞いて、まずは衣装から整えようという話に流れた。ヘルメットに白い服、グローブがあればいいだろうという話を聞いたクロムは心当たりがある衣装をいそいそと着込む。
――闇の漆黒をも塗りつぶすような、燃える赤の兜《ヘルメット》。
――華麗で美しく、雪のように真っ白な羽織《ユニフォーム》。
――薔薇のように美しい、朱と緋色の入り混じった手甲《グローブ》。
何処からどう見ても野球選手だろう! とふんぞり返ったクロムだったが、その見た目は何処からどう見ても武士のそれである。なお羽織の背にはしっかりと4の文字が刻まれているし、あまりにも自分が格好良いものだから尻尾がブンブンと揺れている。ついでに天輪宗がツッコミを諦めた。
「さて、確か迫る球を打て……という話だったな」
バットを持たされたクロムはバッターボックスに立つと、いつものように刀を構える形で構えた。本来それはルール違反だが、まあ楽しんでもらえているとのことなのでセーフ判定をもらえた。
投手から投げ込まれたボールをしっかりと見切り、その中心を素早く抜刀術の如き速度で打ち抜く。カァン、といい音がなると同時に、残心を見せて納刀するクロム。
「……え? なに?」
味方チームから、走れー! という声が聞こえてくる。ルールの把握が上手くいかないクロムだったが、そういえば打ったら向こうに行くというのを思い出したようで、ととととーと走っていった。
他の打者が打つたびに、走れと言われたものだから走るクロム。何もわからずに早く走りすぎて詰まったり、適当に四角のところを踏んでいたが、とうとう彼女はホームベースへと戻ってくることが出来た。
「ふっ……これこそ、部隊『備後・滝昇り』……」
ドヤァ……とカッコつけて言い切るも、チームメイトから戻れと言われてびっくりしたクロム。一体どういうことなのかとわからぬまま、彼女は打席の方へと戻っていった。
「よくわからんが……まあ、皆が楽しそうなら??」
この日、クロムはちょっとだけ。
ほんのちょっとだけ、ソフトボールに詳しくなった。……気がした。
●薄れゆく記憶
猟兵達の助力のおかげで、世界結界による記憶の消去は早まった。
故に、人斬り与吉の事件を知る者は今回手伝ってくれた天輪宗の面々を除き、猟兵達だけとなる。
しかし、まだまだ銀色の雨は降り止まない。
これから先も、同じような事件は続く……。
大成功
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