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こんこん、きらきら

#サムライエンパイア #戦後 #【Q】

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#サムライエンパイア
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#戦後
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#【Q】


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●きらきら輝いて
 晴天だというのにぽつり、ぽつり振るのは雨雫。凍える様な寒さに雨雫は白雪に代わり、神社の石畳は濡れて、玉砂利の色は濃くなっていく。
 天気が良いのに降る雨はいくつかの名前があるけれど。サムライエンパイアでは狐の嫁入りと呼ばれる事もあり、ある神社では雨足から逃げる狐の姿が見られるのだという。一方で仲睦まじい狐を二匹見たというのなら、それは幸運だと近隣に住まう者は笑って語った。
 その地は水晶の宝玉を口に銜えた番いの狐が出迎える神社、玉鳴神社。
 通常時でも狐と相見える事も多く、触れても危険性の無い事から近隣に住んでいる人達から大切にされていた。番いの狐たちは狐の嫁入りを模した二匹で、口には誓いの指輪代わりの水晶玉を銜えていた。
 境内ではそれを模した水晶玉のお守り、子供向けに狐の耳をぴょこんと出た布製のお守りの授与が行われ――偶に狐たちもおねだりに向かうお揚げの入った温かなお出汁も振る舞われている。目を輝かせたおねだり上手の狐たちに奪われない様に気を付けてと神社の巫女たちは笑う。
 そんな玉鳴神社にて、囁かれる噂話。番いの狐が銜えた宝玉が一個、姿を消すのだという。
「光の屈折で見えなくなっているだけさ」
「お天道様の陽射しと雨でちゃんと見えなかっただけじゃないのかい」
「お狐さんが確と銜えている水晶玉が無くなる訳ないじゃないか」
 水晶玉は無くなっていたんだ。それを見た事があるサムライエンパイアの者の中でこう語る。
「俺ぁ確かに見たんだ、水晶玉が無くなっていて、神主さんにそれを言いに行こうとしたらよう。狐の面を被った男がいたんだよ」
「夢でも見ていたんじゃないのか」
「寝惚けていたんなら仕方がないさね」
「いいや違う。あれは確かに俺に向かって言ったんだ」
 狐の面を被った男は境内に居た者に声を掛けたという。
「遊ぼう」
 懐から玩具を出しては独楽を回し。結んだ紐であやとり。草木を愛でてはこれはお八つにと口に含んで楽しんだ。
 ――子供達の中でも遊んだ子もいるというその男は何者だろうか。

●いつまでも、どこまでも
「サムライエンパイアにさ、玉鳴神社ってのがあるんだけどさー」
 知ってる? 知ってる人いる? 目を瞬かせながら鬼怒川・麻実(楽天家の鬼いちゃん・f03318)は一通り周囲を見た後、俺は知らなかった! そう自信満々に胸を張る。
「お天道様が出てるのに、雨が降る……ええと狐の嫁入りって奴だ! それが起きてる時に、何でも不思議な事が起きるんだって!」
 不思議な事。
 神社の顔でもある番いの狐が銜えた水晶玉が消える。
 狐面を被った男が現れて遊ぼうと誘う。
 危害を加える気は無く、ただ遊ぼうと誘うその男は身元も分からないと麻実は頭を掻き毟る。
「うーん! 怪しい奴だったらぶん殴ったらすぐ分かりそうだけどそうじゃなさそうなんだよなあ」
 皆はどう思う? 再び周囲を見回す麻実は俺そういうのわっかんね……と宙を見上げてる。
「皆だったらこういうのどーする? 俺は馬鹿だからよく分かんないけどさ! 皆なら解決とかできんじゃねって思ったわけよ!」
 棘の生えた棒――鬼の金棒型のグリモアが麻実の掌の上で輝き始めて、猟兵たちを導いていく。


さけもり
 OPをご覧下さって有り難うございます。さけもりです。
 狐の嫁入り。虎の結婚式。天気雨。数多の言葉がそれぞれ素敵と思っております。
 シナリオの募集はMSページ、タグ及びTwitterをご確認くださいませ。

 戦国の世にある「玉鳴神社」でのシナリオとなります。

 1章は日が出ているのにも関わらず雨降る「玉鳴神社」でご自由にお過ごしください。
 雨は寒い日には雪に変わる事もあるでしょう。
 OPで記載した水晶玉や狐耳のついたお守り、その他おみくじなどもあるでしょう。
 その他お揚げの入ったお出汁など振る舞われるそうですが、お狐さまのおねだりにご注意ください。
 断章を追加予定しております。

 2章は「忘却の神使『シラヌイ』」が登場します。
 微笑みながら遊ぼう、遊ぼうと言って誘うでしょう。
 詳細は断章を追加致します。

 1章のみの参加でも大丈夫です。皆さまのプレイングをお待ちしております。
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第1章 日常 『狐の嫁入り』

POW   :    紙吹雪や折り鶴シャワーを撒く

SPD   :    花嫁行列が来るよ、と先々に告げて回る

WIZ   :    行列に合わせて音楽を奏でる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ひらりぽつり、舞い落ちる
 陽が差しているのにも関わらず、ぽつり、ぽつりと石畳を、玉砂利を濡らし色濃くしていく雨雫。それはやがて人と獣の肌も濡らしていく。しとしと降り注ぐその雫は雨傘こそ必要無いものの、青天の下へと居続ける限りはゆっくりと体を濡らしていくことだろう。凍える程の寒さはないがふうと息を拭き掛ければ真白の吐息が口元から零れ落ちていく。雫の中にひらり舞うもの――雪片が混ざって姿を見せた。
 ゆうっくりとひらり舞う雪片。落ちていく雨雫。燦々と輝く陽射しはそれらを照らして、きらきらと輝かせていた。
 地元の子供たちはきゃっきゃっはしゃいで屋根の無い天の下、手を掲げながら走り回る。
「おきつねさまの食べてる水晶のかけらだ!」
「ひんやりしているかけらだ!」
「違いますよ、これは雪って言うんですよ」
「ゆき?」
 首を傾げた子供たちにそうですと頷いた巫女は自分よりも大きく、中棒が長い傘を差して天の下へと歩み出す。元々あった長椅子の下から傘を固定する台座を取り出し、そこに傘をゆっくりとはめ込んで、自立させる。これならば雨が降っていても長居できるでしょうと巫女は猟兵たちにも微笑んだ。
「綺麗でしょう? これ。秋から冬の間だけ見れる光景なんですよ。長く見ていてほしいからって傘も職人に用意してもらったものなんです。運が良ければ番いの狐たちが……ほら」
 がさがさ、ひょこり。ひょこり。植垣から顔を出した狐が二匹。きょろきょろと辺りを見回して静かにその身体を見せた。冬毛でふっくらとしている二匹の狐は前足後ろ足を揃えて子供達へとキュウと一鳴きして挨拶をしてみせた。
「おきつねさまだ! こんにちは!」
「今日は二匹そろってお出掛け?」
 頭を撫でさせ、ふふんと鼻を高く上げた狐の目線の先には――湯気立つお鍋。境内に来た参拝客に振る舞われるお揚げの入った出汁は鰹節の香りが鼻腔を掠めていくらしくひくひくと鼻を動かしていた。
「駄目ですよ、お狐様方」
 じゃり。玉砂利の鳴る音の方へと狐と子供たちがその視線を向ければ巫女が歩み寄って、狐たちへと目線を合わせようとしゃがみ込む。
「あれは参拝された方に振る舞われる奴なのですから。それに」
 わしゃり。わしゃわしゃわしゃあ! 狐の顔を両手で掴んで顎の辺りを勢いよく擽り、狐の体全体を撫でまわせば。嬉しそうに地面を転がる狐が一匹と何しているのと冷ややかな目で見る狐がもう一匹。
「最近お揚げの食べ過ぎじゃないですか? この辺りとか、特にお肉が……」
 寝転んだ狐は大口を開けて何の事ですかととぼけているが巫女にはそれがお見通しだ。この身体はそれを証明している。
「でもまあ、少しだけ。少しだけならいいですよ」
 本当に? 寝転がっていた狐は起き上がり、静かに佇んでいた狐は良かったねと言わんばかりに毛並みが乱れた狐の毛づくろいをし始めた。
「おきつねさまたちなかよし!」
「つがいだもんね!」
 番いの意味も知らないであろう子供たちは再び駆け出し、天からの贈り物にはしゃぎ始める。
 巫女は自分の仕事が残っているからと境内へと足早に戻っていった。お守りの補充をしなくてはいけないと呟きながら。
 狐たちは大人しくしているものの、その視線の先にはほかほかと湯気立つお鍋の方に。
 ――しとしと。きらきら。降り注ぐ中で何をしようか。
逢坂・理彦
お天気雨…狐の嫁入りが雪になるなんて乙なものだね。
(神社の出迎えの水晶を咥えた番の狛狐に目を細め)
まずは本殿にしっかりご挨拶。
すっかりと癖になった神社の息子の性だ。

せっかくだから水晶のお守りと言うのも見せてもらおう。家で待つ彼にお土産として買って行こうか…やっぱりご利益は「夫婦円満」だったりするのかな?
ここのお狐さんで言う水晶がわりの指輪を渡した人との関係を「夫婦」と呼ぶなら。
円満に過ごせるのならいいことだね。
まぁ、今のところ喧嘩ひとつしたことはないけれど…。

(自分も好きなお揚げの入った汁物を食べながら夫婦狐に目を向ければおいでと手招いて)
食べ過ぎには注意だよ?



●見据える先
「お天気雨……狐の嫁入りが雪になるなんて乙なものだね」
 聳え立つ赤い鳥居を目の当たりにしながら、冷えぬ様に自分の袖口に手を通した逢坂・理彦(守護者たる狐・f01492)は天を見上げる。数多の名を持つ其れはまるで祝福の雨ならぬ、贈り物のようにも見えた。そんな贈り物を体に受けても平然としているのは水晶を咥えた番の狛狐たち。ただの石像と言ってしまえばそれまでだが、両足を揃えて境内に立ち入るものを出迎え、立ち去るものの姿を見送るその番の狛狐たちは紅白の前掛けをしており、互いの色味を含んだ水晶玉を銜えていた。其の贈り物にも目もくれず、ただ佇む番の狛狐たちに理彦は目を細め、鳥居の端を潜り抜けた。
 向かう先は本殿。神社の息子たるもの、すっかりと癖になったそれは今も尚身についていた。袖から手を出し、鈴を鳴らし、手を合わせ、頭を下げる。ゆっくりと頭を上げて、次に向かったのは――お守りを授与する巫女の方へ。
「ようこそお越しくださいました」
「水晶のお守りってのはこれだよね?」
 木箱に収まっている数多の水晶玉は透明なものから様々な彩があった。赤、青、黄。その中でも理彦の目を引いたのは薄緑色のもの。球体に穴を開け、組紐を通したそのお守りを袖で示すと巫女ははい、と溌剌とした声で答えた。家で待つ彼にお土産として買っていこうか悩むところではあるけれど……実際のご利益はどうなのだろう。
「やっぱりご利益は『夫婦円満』だったりするのかな?」
「水晶自体に厄除けや邪気を払う効果もあるので普通のお守りとしてお持ちの方もいらっしゃいますが、ずっと見つめていられるように。水晶の様に固く……そう、夫婦円満のご利益として持ち帰られる方もいらっしゃいますよ」
 ここの狐たちでいう水晶がわりの指輪を渡した人との関係を「夫婦」と呼ぶなら。脳裏に浮かんだ彼の姿に理彦は目を細めて微笑んだ。
「円満に過ごせるのならいいことだね」
 今のところ喧嘩ひとつしたこともなく、仲睦まじく過ごしているから此れは必要無いと邪魔して悪かったねと巫女に頭を下げて進むは鼻腔掠める鍋の方。小さなお揚げが浮かぶ黄金色の出汁を器に注いでもらい、寒さで悴んだ指先で受け取り一口含める。
「あったかいなあ……出汁は利いてるし、寒い日にはより一層……うん?」
 理彦の足元で足を揃えて目を輝かせている狐が二匹。理彦の手に持ったそれを見詰めていた。彼がおいで、と柔らかい笑みでしゃがみながら手招く。
「食べ過ぎには注意だよ?」
 そんな言葉を聞いているのかは分からない狐たちはすんすんと鼻を鳴らして舌先で理彦の出汁を舐めはじめた。
 ――此れが無くなったら帰ろう。暖かい家で待つ、彼の元へ。

成功 🔵​🔵​🔴​

儀水・芽亜
サムライエンパイアらしく浅葱の着物で参拝します。

狐の嫁入り、ですね。久しぶりです。
空は晴れているのに、ぽつぽつと雨が降って。

まずは玉鳴神社にご参拝しましょう。きちんと作法通りに。
あらあら、可愛らしいお狐さん。申し訳ありませんが、私はまだ何もあげられるものはありませんよ。
逃げないようなら頭を一撫でしてみましょうか。
元気そうでよいことです。

境内まで引き返して、温かいお出汁をいただきましょう。さすがに、今の季節に雨に降られるのは堪えます。もう歳でしょうか?
子供たちは元気ですね。こればかりはどこでも変わらない。

この先オブリビオンが現れるとは思えない長閑さ。
出来れば気付かれないよう終わらせたいものです。



●浅葱の華
 からんころん。江戸の趣があるこの世に合わせて仕立てた浅葱の着物の裾を、髪を静かに揺らしながら儀水・芽亜(共に見る希望の夢・f35644)は下駄を鳴らして歩いて行く。
「あら?」
 空は晴れているのにぽつぽつと天から振りたつ何かにそうっと手を差し出せば芽亜の掌には雨雫が落ちていた。大きな瞳をぱちり、ぱちりと瞬かせて芽亜は天を見上げた。
「狐の嫁入り、ですね。久しぶりです」
 滅多に会えるものではないものにくすりと笑みを零し、本殿へと向かう。鈴を鳴らして、頭を二度下げ、手を合わせて、もう一度頭を下げる。背筋をまっすぐにして作法通りに行った所作は綺麗であった。参拝を終えた芽亜の目にはお賽銭箱の横に礼儀正しく座っていた二匹の狐。
「あらあら、可愛らしいお狐さん」
 じっと芽亜を見つめる二匹に彼女は何かを強請りに来たのだろうかと首を傾げるも残念ながら彼女の手元には彼等にあげられるようなものは何もなく。静かに歩み寄っても逃げぬ事から、その代わりに芽亜はその両手を二匹の狐の頭にそれぞれ置いて一撫でした。
「申し訳ありませんが、私はまだ何もあげられるものはありませんよ」
 すり、と芽亜の両手にそれぞれが頬を寄せ、静かに立ち去って行った。それを見送った芽亜の口から吐き出された息は白くなっていた事から、暖かな飲み物を求めて境内へと引き返す。境内には温かなお出汁が用意されていて、それを彼女は受け取りながら指先を温めていく。
「さすがに、今の季節に雨に降られるのは堪えます」
 もう歳でしょうか。そう思いながら啜る出汁の味は冷えた身に染みわたっていく。長い年月を生きていく種族がいる最中でも芽亜自身は若い。けれども、それよりも若かりし頃は本当に若くて、様々な無茶が利いていた。今ではしなくなった華美な格好だってもう卒業してしまった。境内を走り回る子供たちは寒さも気にせずに走り回っているのを横目に見ながら、出汁を一口含む。
「こればかりはどこでも変わりませんね……」
 そんな子供たちの元気な声が響いて、悪鬼羅刹が現れるとは思えない長閑さ。この子供達の声が何処までも続くように。響き渡る様に。途切れぬ様に。叶う事ならば、この子供たちにも気づかれぬように終わらせたいと思うのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

鹿村・トーゴ
寒さに弱くて『寒い』とブツブツ言ってる相棒の鸚鵡ユキエを懐に入れてやり外套と手拭いを雨避けに境内へ

…っても
狐の嫁入りで雨避けなんかほとんど要らないかなー
大抵小降りかすぐ止むし
雪に変われば旅笠を

一応作法通りにお詣りしよ
でも細かい事忘れちゃうんだよな
お。あんた達が噂のめおとのお狐様かい?…、わ、あは(ユキエは狐にびっくりして懐に隠れてしまいくすぐったくて苦笑い。狐には手を振り触れずにお詣りを続行)
初めて来たとこだし、と手を合わせ毎日ありがとーございます、と一礼しとく
郷のねーちゃんも巫女だが…ここの巫女さんのが100倍は淑やかだな

…はっ
長閑で事件とか忘れそ
件の狐の像も見とくかな【情報収集】

アドリブ可



●穏やかな一時
 吐いた息に白が混じる時。体を強張らせて鳥肌を立たせるのは何も人だけではない。羅刹である鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は平然としているのに対して、相棒である鸚鵡のユキエは彼の肩に乗ってぶるりと体を震わせていた。嘴をかくかくと上下に動かしながら吐き出しているのは白い息と、たった一つの単語だけ。
「寒い……寒い……」
「ユキエは寒さに弱いもんな、ほれ」
 中に入れよ。トーゴが羽織った外套を広げて開けるとユキエはふぁあ……と一鳴きしつつその懐へと入り込んだ。膝まである外套を肩に、頭に手拭いを被り、天を見上げる。
「……っても。狐の嫁入りで雨避けなんかほとんど要らないかなー」
 ぽつり降る雨雫も、時折混ざってふわり落ちてくる雪片もトーゴの肌を濡らしていくものの、太陽が顔を覗かせた天からは小降りの贈り物か。又はすぐ止んでしまうものだろうから然程気にならなかった。しかし見上げれば天からの贈り物に混ざるの白き雪片。旅笠被って向かう足先は境内へ。
 お詣りにしに来たはいいものの、トーゴはううんと苦笑いをしながら旅笠を取った。
「細かい事忘れちゃうんだよな」
 乱れた髪を整えるために軽く頭を振り、見上げたのは本殿の上。鈴の音を鳴らし、頭を下げて、乾いた空気の中で両手を叩き鳴らせば。初めて来たところだし、手を合わせて。
「毎日ありがとーございます」
 頭を下げると。乾いた手の音に誘われて来たのが番いの狐、二匹がトーゴの近くへ歩み寄った。
「お。あんた達が噂のめおとのお狐様かい? わ、ユキエ?」
 にゅっとユキエがトーゴの外套から顔を出したはいいが、天敵にも成り得る狐の姿にひええと一鳴きしてすぐに彼の懐へと隠れた。くすぐったくて、苦笑いするものの狐たちはじいっとその様子を見ていたがすぐに去って行った。
「……何だったんだろうなあ」
 何かを強請りに来たわけでもなく。ただ見ているだけ。神様の遣いとするものもいるが――。不思議だなあ。トーゴは再び旅笠を被って本殿を後にした。自身のいた郷にも巫女はいたが、境内にいる巫女たちは皆、自分の知っているものよりも穏やかで、百倍お淑やかで戦のいの字も知ら無さそうな姿。そしてこの長閑な空気に飲まれそうになって……。
「はっ。事件とか忘れそ」
 それ程までに穏やかな場所で何かが起きるとか信じられないが、未然に防げるのであればと神社の入り口にいた狛狐の方へと向かった。水晶玉を銜えた狛狐たちはそれぞれ紅と白の前掛けをしており、互いの色の水晶玉を銜えていた。近くを歩いていた巫女曰く、これも番いの狛狐なんですよと微笑みながら話してくれた。
「……これが何か意味あんのかなあ」
 狛狐の銜えている水晶がひとつ、きらりと一瞬だけ輝く。天から振り注ぐ贈り物とは違った、陽の光を浴びて。

成功 🔵​🔵​🔴​

夜鳥・藍
狐の嫁入りが雪に……もしかしてあの冬の日、風花だと思って眺めていたあれはお嫁入のお天気だったのかしら?
こんな日に傘を差したらそれこそ無粋でしょうね。
まずは参拝をして、それから守りを見に行きましょうか。
お守りは、それが水晶となればどうしても気になるというもの。鉱石は好きだもの。
それは私がクリスタリアンだからかもしれないし、そうでないかもしれない。
いつか私を、私の中を満たせるものが見つかりますように。そんな願いを込めて。

そのあとは身体も冷えて来ましたしお出汁をいただきましょう。
おあげは二つに切り分けてお二人の狐さんに。あまり食べられない私にはお出汁だけで十分です。
……温まりますね。



●似た者同士の輝き
 ふうと吐いた息は白く染まり、天から振り注ぐ雨雫は白き結晶と成って夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)の元へと降り立つ。
「狐の嫁入りが雪に……」
 両の掌を空へと向ければ、小さな冷たさを仄かに含んだ雪片は藍の掌を濡らした。
「もしかしてあの冬の日、風花だと思って眺めていたあれはお嫁入のお天気だったのかしら?」
 珍しいものだと思っていたこの状況に出会った事は何も初めてではない。けれどもこんな日に傘を差したらそれは無粋というもの。頬を掠めていく冷たい空気も、天から降る雪片も気にせず藍は本殿へと歩んで行った。
 鈴を鳴らして、二度頭を下げ、ぱちんぱちんと二度の拍手を鳴らして、再び頭を下げれば今度向かう足先はお守りの方。
 藍の目に入ったのは水晶玉のお守り。数多の色を揃えているものの、目に付いたのは透明なものだった。彼女自身が鉱石が好きというのはあるけれども、それは同じ鉱石という性質を持った似たもの同士だからかもしれない。
「すみません、これ、頂けますか」
「はい。こちらの透明な水晶のものでよろしいでしょうか?」
「ええ。これがいいんです」
 ――透明なものが未熟だと見るものもいる。けれどこれだけ透明で、何色にも染まっていないのなら。何色にだってなれる。何にでもなれる。巫女から授かったお守りの組紐を手に取り、天に掲げてみる。きらり、太陽の光を受けて反射した。それはまるで、背中を押してくれているかのように思えて藍の顔から笑みが零れ出る。
 寒さで冷え切った藍の肌は何時までも耐えられるわけではない。暖かさのあまり湯気立つお出汁の鍋の方へと向かい、器によそってもらうと二匹の狐は何時の間に彼女の足元で瞳を輝かせて待ち構えていた。
 ぱちん、と竹箸を割って、お揚げを二つに分けて。
「はい、あーん」
 物怖じせずに二匹の狐は口空けて待ち構えていた。ぱくり。ぱくり。もぐもぐと噛み締めれば口の中に広がる出汁の味に口端を釣り上げて笑った気がした。
 あまり食べられない自分にはお出汁だけでいいと口を付ける。
「……温まりますね」
 ほう、と口から履き出た息は湯気と混ざって上へ上へと上がっていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

逢月・故
【師弟】

不思議だねぇ、狐も虎もどうせ結婚式するなら晴れてる方が良くないかい?
帽子も耳も濡らしたくないなぁ
女王陛下もお気に入りのカワイイお耳だからね!
指をパチンと鳴らせばワンダーランドマジック
現れた蝙蝠傘をばさりと差して

さて、ライセちゃん何処行きたい?
オレはオダシって奴が気になるなぁ、カミサマに興味ないし
ワフウって面白いねぇ、地味なのにちゃんとおいしい
オアゲ?もジューシーでおいしいよ
狐くん、これ以上太っちょになったらボールになっちゃうんじゃないかい?
オレはまん丸とは無縁かなぁ、身軽が売りの黒兎さんだからね!

コレがオミクジ?
ライセちゃんの手元を覗き込んで興味津々
まあ、オレは引く気ないんだけどさ


今世・来世
【師弟】
ぼく、この世界に来たの初めてやわ
京の都みたいで空気が美味やんなぁ

ちっち、せんせはなーんもわかってへん
狐の嫁入りは結婚式ちゃうくて…(蘊蓄言う
狐雨とも言うねん
わぁ~せんせお得意の魔法出た
ぼくにも傘出してぇや(霙の天気に肩震わせ

せやな、神社といえば御参り…えぇ?
せんせ…(食い意地張ってますなぁ
じゃ、出汁食べましょ

せんせと一緒に熱々の出汁食す
狐寄ってきたらお揚げを食べさせようとして自分が食べる

残念、これぼくのー
意地悪な化物で堪忍やで
はは、ボールになったら遊んだろ
それだけこのお揚げが美味なんかなぁ
そーいうせんせはっと(脇腹突っつく

水晶玉の御守り見せて貰い最後に御籤引く
結果お任せ

これほんまかなぁ



●初めてのお出掛け
 両手を広げて天から降る雨雫に今世・来世(メヰデー・メヰデー・f35513)はわあ、と感嘆の声を漏らす。
「ぼく、この世界に来たの初めてやわ」
 けれども自身の住んでいたところによく似ていてどこか懐かしさを感じるそれは、初めて来たとは思えなかった。
「京の都みたいで空気が美味やんなぁ」
「雨だか雪だかわからないもんは食べないでね」
 来世の後ろから見守っていた逢月・故(ひとりぼっちのワンダーランド・f19541)に来世は振り返って頬を膨らませて食べへんし! と怒るも故は喉を鳴らして笑う。
「不思議だねぇ、狐も虎もどうせ結婚式するなら晴れてる方が良くないかい?」
「ちっち、せんせはなーんもわかってへん」
 故の前で人差し指を左右に振り、来世は得意気に喋り出した。
「狐の嫁入りは結婚式ちゃうくて……ことわざやねん。突然来たとか狐に化かされたみたいなことを言うてな、狐雨とも言うんねん」
「いやね、帽子も耳も濡らしたくないんだよね。なんていったって女王陛下もお気に入りのカワイイお耳だからね!」
 ぴこんと立った兎の耳がしんなりとする前に。手を天に掲げてパチンと鳴らしてその瞬間、その場が不思議の国へと様変わり。ワンダーランドマジックで蝙蝠傘を呼び出して、ばさりと差せば来世の口から再び感嘆の声が漏れだした。
「わあ~せんせお得意の魔法出た。なあなあぼくにも傘だしてぇや」
 霙交じりの天模様に肩を震わせ、来世は故を見下ろすも彼はハハと笑うだけ。
「さて、ライセちゃん何処行きたい?」
「せやな、神社といえば御参りやけど……」
「オレはオダシって奴が気になるなぁ、カミサマに興味ないし」
 だって自分の一番は女王陛下。それがカミサマみたいなものだからと嘯く。
「えぇ? せんせ……」
 確かに彼にとってのカミサマは女王陛下かもしれないとそう納得すれば、そこまでしてお出汁食べたいなんて食い意地張ってるなあと思いつつも口にはしなくて。熱々の湯気が出ている鍋の方へと歩みを進めて行った。出汁を貰い、屋根の下で啜ると故はほう、と声を漏らして来世はその声に横目で見つめていた。
「ワフウって面白いねぇ、地味なのにちゃんとおいしい」
「せやろ? 乾燥させた鰹と昆布でこの味出したりすんねん」
「味が染みたオアゲ? もジューシーでおいしいよ」
 がさ。がさ。今お揚げって言いませんでした? そう様子を窺う様に二匹の狐は植垣から顔を出して二人に近付く。お揚げ、ください。そう訴える視線を二人に送り、両足を揃えて並べて口を開いた。来世は揚げを持った箸をそうっと狐――ではなく自分の口へと放り込んだ。
「残念、これぼくのー。意地悪な化物で堪忍やで」
 ぐう、と唸りながら狐たちはその場に丸く蹲る。その姿はまるで――。
「狐くん、これ以上太っちょになったらボールになっちゃうんじゃないかい?」
「はは、ボールになったら遊んだろ」
 ボールになって丸くなって、投げられたりしたら困ると狐二匹はすぐに立ち上がって去って行った。
「そだけこのお揚げが美味なんかなぁ」
「あれだけふくふくだとねぇ。オレはまん丸とは無縁かなぁ」
「そーいうせんせはっと」
 来世の手が故の脇腹を突くも、その感覚はまん丸とは無縁そうだった。
「身軽の売りの黒兎さんだからね!」
 いつでもどこでも女王陛下の元へと行ける様にぴょんと軽いのさ。なんて言う出汁を飲み終えた故の袖を引き、次はこっちと来世はお守りを見に行く。
 変哲のない水晶玉はきらきらしていて。様々な彩があって、見ているだけでも楽しい。けれどその横にあった御籤は来世の興味を一層惹いた。お賽銭箱に小銭をちゃりんと入れて、箱の中に入っている紙の束の中から一つ引き抜く。がさりと音を立てて中を広げて見ていると故もどれどれと興味津々で来世の手元を覗き込む。
「コレがオミクジ?」
「せやで。せんせも引く?」
「まあ、オレは引く気ないんだけどさ」
「せんせも引いたらいいのにー。どれどれ……『吉。待ち侘びるもの、あり。確と待て』かぁ……」
 これほんまかなぁ? どう思います? 故に首を傾げながら尋ねても故もまたどうだろうねぇと笑ってさあね、と呟くだけだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

終夜・嵐吾
【雅嵐】

問うまでもないのじゃが一応問うておこう
のう、せーちゃんや
わしの尻尾とどっちがもっふりしとるじゃろか?
いやわしなのはわかっとるんじゃよ、ブラッシングしてきたからの
ふふ、じゃろう!(もっふぅ)

狐ならばわしもお喋りできよう
ふむ、お揚げが欲しいと…しかし、巫女さんも言っておったが狐的に体形管理は必要じゃよ
こう、とびかかる時に軽やかさがないと逃げられるじゃろ
一緒に?
甘味無しならばの(激甘修行になったらしぬの顔

とは言いつつも、お揚げが美味いんはわかる
わしもお揚げには逆らえぬような気がする…
仕方ないの、ちょっとだけじゃよ
(せーちゃんからの視線…これは…)
…まぁ、箱に耳と尻尾があるのもおかしいからの~


筧・清史郎
【雅嵐】

おお、お狐様
2匹とももふもふだな(瞳キラキラ

友の問いに、交互に3本のもふもふを眺めた後
どれも見事なもふだが
珍しく空気読み、にこにこと
ああ、らんらんの尻尾は極上のもふもふだからな
手入れも完璧だ(微笑み

俺も共にお喋りを(動物と話す強化
確かに、狐さんに限らず体形管理は大事だ
俺も食べる事は大好きだが(大食い)鍛錬も好きだぞ
時間の隙を見つけては、日々鍛えている
山籠もりや海峡を泳いだりなども楽しいぞ(雅なゴリラ
らんらんも今度一緒に行こう(微笑み

お狐様も食べたらその分、動かねばだな
だがその前に、もふらせて貰えれば(わくそわ

俺もお揚げは好きなのだが…
箱には何故、もふもふな耳尻尾がないのだろうか…(じぃ



●こんこんとこんすずり
 ちょこん。ちょこん。冬毛仕様で三割程度はもふもふ増しでございますと言わんばかりの黄金色の体をした狐二匹は終夜・嵐吾(灰青・f05366)と筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)の前に両足を揃えて現れた。
「おお、お狐様。二匹とももふもふだな」
 そうでしょうそうでしょうと二匹は頭を上げ、誇らしげでその様子に嵐吾は此方も狐としての誇示があった。妖狐なれど狐――たとえそれが本物の狐だとしても負けるわけにはいかない……!
「のう、せーちゃんや」
 問うまでもない。けれど狐を目の前にして目を輝かせている友に一応尋ねてみよう。
「わしの尻尾とどっちがもっふりしとるじゃろか?」
「そうだな……」
 ぼわ。ぼわ。ふわっ……。三本の狐のもふもふな尻尾を眺めた後。清史郎は僅かに頷き、微笑んだ。
「どれも見事なもふだが……やはり、な?」
 清史郎が向けた視線は嵐吾の尻尾のもの。嵐吾も自分の尻尾が一番なのは分かっている。なんて言ったってブラッシングをして抜け毛も無し、毛艶、毛並み、共に良好なのだから!
「ふふ、じゃろう!」
 もっふりとした尻尾をゆるりと揺らし、上機嫌の嵐吾に清史郎は微笑みを携えたまま頷く。
「ああ、らんらんの尻尾は極上のもふもふだからな。手入れも完璧だ」
 ぱちぱちと手を叩けば、狐たちは自分達じゃないのかぁと頭を下げて、緩やかに凛々しい姿勢を解いてその場にくつろぎ始めた。しかしその視線の先はほかほかと湯気立つ鍋の向こう。近寄らないのはどうしてだろうかと気になった嵐吾と清史郎は顔を見合わせては狐に話し掛ける。
「のう、どうしてそんなにお鍋の方を見ているんじゃ?」
「あれはお出汁だからとても熱いぞ?」
 狐ならば同じ言ってる事が分かる。そして清史郎は秘術を使い、聞き取りが出来ないかと項垂れゆく狐たちの顔を見た。きゅう、と甲高い声が発せられてその一鳴きで何を喋っているか理解する。
「ふむ、お揚げが欲しいと……しかし、巫女さんも言っておったが狐的に体型管理は必要じゃよ。こう、とびかかる時に軽やかさがないと逃げられるじゃろ」
 あ、と口を開けた狐たちはお互いの顔を見合わせて心当たりがある……そうばつが悪そうな顔をしていた。
「確かに、狐さんに限らず体型管理は大事だ。俺も食べる事は大好きだが鍛錬も好きだぞ」
 大食いでも体型維持はできる。自分だってそうなのだからきっと狐たちもできるだろうと言う清史郎の顔は朗らかだった。時間の隙を見つけては、日々鍛錬を積み重ねている清史郎にとっては容易いものかもしれない。しかし……山を駆けるだけでは飽きてしまう。それはどうしたらいいか、と狐たちは地面に体を伏せた。
「山籠もりや海峡を泳いだりなども楽しいぞ。らんらんも今度一緒に行こう」
「一緒に?」
 今、山籠もりとか海峡を泳いだりって言わなかったか? そんな激しい鍛錬……いやできる。できるとは思うけれど。清史郎が行く所行く所、その先はおよそ――。
「甘味無しならばの」
 そう、甘い物。特に激甘のもの。それさえなければ良い。それだったらきっとできるとは思うけれど、激甘修業だったら絶対に無理じゃぞ……そう呟く嵐吾に清史郎は安心しろ、と微笑むだけ。狐たちは顔を見合わせて、甘味? そう首を傾げるもお揚げみたいなものかあと思うものの、湯気立つ鍋から目が離せなかった。
「とは言え、お揚げが美味いんはわかるんじゃ。わしもお揚げには逆らえぬような気がする……」
 分かるでしょう? と狐二匹の視線を受ける嵐吾はうんうんと頷く。しかし、食べる量が少しだけだったら。
「仕方ないの、ちょっとだけじゃよ」
 本当に? いいの? 表情が明るくなる狐たちに嵐吾と清史郎の足取りは軽く、お揚げをよそってもらった器を貰って狐たちの元へと戻る。
「お狐様も食べたらその分、動かねばだな。……その前に、もふらせて貰えれば」
 わくわくそわそわとする清史郎に一瞬は固まるも、狐たちはその顔を清史郎の手にすり寄せた。触れて、体へと手を進める度にもふり、もふりと狐たちの冬毛を楽しんでいく。
 食べやすいように地面へとお揚げをそうっと落とせば、狐たちはぱくり。ぱくりと食べ進めて行った。楽しげに揺れる尾が、清史郎の目につく。
「俺もお揚げは好きなのだが……箱には何故、もふもふな耳尻尾がないのだろうか……」
 その視線を横にいる嵐吾への尻尾へと向けて憂えば嵐吾は彼からの視線を感じて固まる。だって清史郎の本体は硯箱。それに耳と尻尾があったら可愛いのかもしれないけれど。
「……まぁ、箱に耳と尻尾があるのもおかしいからの~」
 もしかしたらあるのかもしれないけれど……人の形を得て耳と尻尾がもふもふとして顕現しているかはまた別の話なんじゃなかろうか。嵐吾は言い出せずにいた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

吉備・狐珀
(眷属の白狐と黒狐のしっぽが一本なのを確認して)
ウケ、ウカ、人前ではしばらくそのままでいてくださいね。

まず最初に土地の神様にご挨拶してから境内を散策。
これが水晶のお守りですね。
あら、お狐様が水晶をくわえたものも。
こちらをふた…四つ頂けますか?(きらきらとした目で見つめるウカとウケに気が付いた)
あとで首に下げられるようにしましょうね、と話しながらお守りを大事にしまい、次に向かうのは良い香りのする温かい湯気が見えるお鍋の方へ。

二杯頂きたいのですが、よろしいですか?
この子達もお揚げが大好物でして。
椀を受け取りウカ達に食べさせようと、しゃがみこめばしっぽが四本。
ふふ、皆で仲良く食べるのですよ?



●白黒混じり、分かれて
 ふっさりとした冬毛。神の名を一部持つ狐たちの白と黒の尻尾が一つに交わり、二匹が一匹になったのを吉備・狐珀(狐像のヤドリガミ・f17210)はその頭を撫でた。
「ウケ、ウカ、人前ではしばらくそのままでいてくださいね」
 こくりと返事替わりの頭が下がり、歩みを向けるのは本殿――土地の神様が住まう社へ。頭を二度下げ、ぱちんぱちんと手を合わせて心の裡で思うはほんの少しお邪魔させて頂きますのご挨拶。ゆっくりと下げた頭を再び上げて、向かうは境内。
「これが水晶のお守りですね」
 授与所に並べられた彩りに狐珀は目をぱちぱちと瞬かせる。小さな狛狐が水晶玉をくわえたものもそこにはちんまりと置かれていて、何処か自分と似たそれにぱちりと目が合った。
「あら、お狐様が水晶をくわえたものも。ひょっとして、あの神社の入り口にいた?」
「ええそうなんですよ。此方の水晶をくわえたお狐様の方も珍しさから買われる方もいらっしゃいます」
 水晶玉のお守りは何処かで見た事あるかもしれない。けれど確かに水晶玉をくわえた狛狐のものはあまり見かけなかったかもしれない――自分も神社に祀られた狐像。近しいものとの感情が沸いてきて、す、と指を差した。
「すみません。こちらをふた……」
 自分と、大切な人に渡すためのそれを頂こうと思っていたのに。それはもしかして僕たちなのではないか? そう瞳を輝かせて見上げている一匹――もとい二匹に狐珀は気付いた。
「四つ頂けますか?」
「四つですね、畏まりました」
 お守りが入った白い封筒を受け取り、狐珀は懐に仕舞い込む。
「あとで首に下げられるようにしましょうね」
 足元で僕たちのは? そう待ち構えている二匹にはそう優しく告げ、今度はこちらと手招き歩むのは鼻腔を掠める良い香りのする温かな湯気が誘う鍋の方。
「二杯頂きたいのですが、よろしいですか?」
「大丈夫ですよ。お連れ様の分ですね」
 器に出汁をよそう巫女は狐珀の足元にいる一匹を見て、ふふりと微笑みながら二杯分を彼女に渡した。
「ええ。この子達もお揚げが大好物でして」
 有り難うございますと微笑みながら二杯を受け取った狐珀はしゃがんで、ウケとウカに差し出そうとすれば狐の尻尾は気付けば四本。
「あら、あらあら」
 いかにも僕たち最初からいましたけれども。何か? そう首を傾げた狐二匹。そして白い尻尾のウケと黒い尻尾のウカはそうだっけ? と顔を見合わせるもその顔はお出汁の方に向けて待ち構えている。
「ふふ、皆で仲良く食べるのですよ?」
 狐が四匹並んで湯気立つ出汁を食べる姿は何とも可愛らしく。自分の出汁を啜りながら見守る狐珀の表情は緩やかに微笑んでいた。

成功 🔵​🔵​🔴​

夜刀神・鏡介
こうやって神社にきちんと参拝するのは久しぶりかな
ゆっくり観光でもと思ったが、その前にまずは参拝を済ませてしまうとしよう
昔習った作法を思い出しながら、間違えないようにやっていこう

さて、折角だしおみくじを引いてみよう。尤も、具体的に聞きたい事がある訳じゃないが
もしかしたら何かの参考になったりするかもな
一通り目を通したら、改めて見物して回り、最後にお出汁を一杯頂こう

しかし、天気雨の神社ってのもなかなか風情がある……っと、今のは狐か
流石、随分と人に慣れているみたいだな。ああ、もしかして食事目当てだったりするのかね?

うーん……ま、こういう風にじっと見られるのもやりづらいしな
ちょっとだけ分けるとしようか



●ほんの少しだけ
「こうやって神社にきちんと参拝するのは久しぶりかな」
 日が照っているのにも関わらずぱらぱら降る雨を見上げながら夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は鳥居を見上げ、ゆっくりと歩みを進めていく。こうしてゆっくりと観光でも……と思ったがその前に向かったのは本殿だった。
 昔習った作法は確か――二礼、二拍手、一礼だっただろうか。右手を少しだけずらしたら良いんだっけか。作法を思い返し、間違えない様に行い、頭を上げて目に入ったのはおみくじの箱。
「折角だし引いてみるか」
 じゃらじゃらと筒に入ったものを引いて、数字を言うのも良いが此処は運試しをしてみようと鏡介は小銭を箱の中に入れ、別の箱の中に入ったお神籤を一枚引き抜いた。
「尤も、具体的に聞きたい事がある訳じゃないが……どれどれ」
 引き抜いたおみくじの中には『中吉。努力はものの上手成り』と書かれているもので、ほう、と感嘆の声を漏らした鏡介はそれを枝に結ばずに懐に仕舞い込む。
「もしかしたら何かの参考になったりするかもな。此処でじっくり見るのも良いが、家に帰って見る事にしよう」
 ぐるりと辺りを見回して、境内、授与所にずらり並んだお守り。一通り目を通して、改めて見物して回り終え、歩みを止めたのは温かな湯気が出ている鍋の前。
「しかし、天気雨の神社ってのもなかなか風情がある……」
 なかなかお目に掛かれるものではないし、鏡介が拠点としているところでは雨よりも桜の方が降る方が多いから物珍しさもあった。
 がさ。がさがさ。植垣からこすれる音が聞こえ、鏡介が体を其方に向けるとひょこり。ひょこりと顔を出したのは二匹の狐だった。
「……っと、今のは狐か。人怖じせずにやってくるなんて流石。随分と人になれているみたいだな」
 出汁に釣られてやってきたか? そう思って出汁を前に出すと狐たちの視線は矢張り其方へと向いていた。
「ああ、もしかして食事目当てだったりするのかね?」
 それは僕たちにはくれないのですか。じいっと見つめる視線に鏡介は言葉に詰まって、苦笑い。
「うーん……ま、こういう風にじっと見られるのもやりづらいしな」
 ほんの少しだけ。箸で揚げを切り分けて、そうっと箸でぱかりと開いた口へ放り込んだのなら。にこやかな表情をしている狐が二匹。
「少しだけだぞ?」
 これ以上はやらないからな。そう言えば狐二匹は頭を下げて、静かに鏡介の前から立ち去って行った。

成功 🔵​🔵​🔴​

千家・菊里
【守】
(お供のおたまも肩に乗せ
くるりとケダマフラー状態で暖を取りつつ)
ええ、澄んだ空気と清い光景が際立つ様ですねぇ
ふふ、こんな時は、そう――
(おたま共々、鼻を擽る香りの元へ熱視線向け)
温かなご馳走の味わいも、より深まるというものです

おや失礼ですねぇ
これは冬毛ですよ、たぶん
(おたまはとりあえず伊織をかじっている!)(抗議…どころか、恐らく“それより早くごはん!”の意)

(そんなこんなで仲良くお出汁頂き、ほくほく笑顔で)
いやぁ、好い風情と好い風味が心身に染み入りますねぇ

おや、本当に仲睦まじくて微笑ましいですねぇ
ふふ、独り凍えっぱなしの伊織にも御利益を分けてやってくださいな(おあげお裾分けしほっこり)


呉羽・伊織
【守】
(此方は女子どころかお供達にも“寒いから留守番してる”とフラれ――若干心が凍え気味で)
晴と雨、秋と冬の狭間で輝く世界か
良い雰囲気だな
…嗚呼
オレもお狐サマ達みたいに、可愛い女子と肩寄せ合ってこの光景に浸りたかったヨ
(毎度の如く食気特化狐野郎達に遠い目し)
お前らはホント幸せそーだネッ

てかおたま、食欲の秋を経て一層丸くなってない?
そろそろマジで管に詰…ってて!
分かったから!オレじゃなくてお揚げ齧りなさい!

(そうして参拝後、お出汁で一息つき)
ウン、オレを温めてくれるのはこのお出汁だけダヨ

あ、お狐サマ達はデート中?良いな~
…って何また余計な世話をー!
(叫びつつも
仲良く分けてな~とお揚げ渡して和み)



●こんこんと冷えゆくのは
 ちょこん。もこん。……ふっわり。にこやかな表情で肩にまあるい管狐のおたまを乗せた千家・菊里(隠逸花・f02716)は獣マフラーもとい、ケダマフラーを首回りに纏わせて暖を取っている。
 一方、呉羽・伊織(翳・f03578)の表情は薄笑いをしているものの、心は凍えそうだった。女子を誘ったら断られ、お供にも寒いから留守番しているとフラりフラれ――一足早い、冬の寒さが心に吹き荒ぶ。
 穏やかに天からの贈り物は二人の頭上に降り立つ。太陽の光を反射してきらきらと輝く雨雫は人に触れてしまえば溶けて無くなってしまう小さな宝石の様に見えるだろう。
「晴と雨、秋と冬の狭間で輝く世界か。良い雰囲気だな」
「ええ、澄んだ空気と清い光景が際立つ様ですねぇ」
「……嗚呼。オレもお狐サマ達みたいに、可愛い女の子と肩寄せあってこの光景に浸りたかったヨ」
「ふふ、こんな時は、そう――」
 す、と菊里が指さしたのは狐二匹ではなく。暖かな鍋。鼻腔を擽る香りの元に暖かな眼差しを肩に乗ったおたまと菊里が向ければ。隣の伊織は遠くを見つめながらはあ、と長い溜め息を吐いた。
「温かなご馳走の味わいも、より深まるというものです」
「お前らはホント幸せそーだネッ」
 伊織が顔を覆いながら嘆けば、その指の隙間からちらりと見たのは菊里の肩に乗ったおたま。
「てかおたま、食欲の秋を経て一層丸くなってない?」
 だってこの間までもう少し……いや一回りは小さかった気がする。しかしその身体は確かに……大きい。もっふりとしているけれども。
「おや失礼ですねぇ。これは冬毛ですよ、たぶん」
 多分て。いやお前も思ってるんだよな……? そう疑いの目を向けて、菊里の肩に乗ったおたまに顔を寄せる。
「そろそろマジで管に詰……ってて!」
 太っていないもん! おたまは伊織の頭を齧り、抗議の声ならぬ態度……は、恐らくそれよりも早くごはん! の声。何故ならば。おたまの視線はずっと鍋の方だったのだから。
「分かったから! オレじゃなくてお揚げ齧りなさい!」
 ぱかり。おたまが伊織から離れればそれを見ていた菊里の顔からは笑みが零れて、袖で口元を覆う。
「いや失礼……面白くて……ふふっ」
「躾ぐらいはちゃんとしておいてヨ……」
 頭を二度下げ、ぱんぱんと二度の拍手。そして一礼の参拝を終えた後。今も笑っている菊里を余所に、伊織が自分の分と菊里の分の出汁の入った器を受け取り、はい、と渡せば菊里は有難うございますと軽く頭を下げて受け取った。ほかほかと湯気立つ出汁の香りを吸い込めば菊里の表情に柔らかな笑みが広がる。
「いやぁ、良い風情と好い風味が心身に染み入りますねぇ」
「ウン、オレを温めてくれるのはこのお出汁だけダヨ」
 伊織の心に吹き荒ぶ木枯らしは隙間に温かな出汁が染み渡り温めてくれてほう、と声を漏らした。お出汁の匂いを嗅ぎ分けて来たのか、二人の前に現れたのは狐が二匹。
「あ、お狐サマ達はデート中? 良いな~」
「おや、本当に仲睦まじくて微笑ましいですねぇ」
「ふふ、独り凍えっぱなしの伊織にもご利益を分けてやってくださいな」
 竹箸で切り分けたお揚げをそうっと狐たちの前に出すとぱくり、ぱくりと食べて満足気な狐たちの様に菊里の胸の内はほっこりと温まる。
「……って何また余計なお世話をー!」
 びくりと驚いた狐二匹はぱちぱちと目を瞬かせて伊織の方を見た。じり、じりと避けていく様子に伊織ははっとして竹箸で切り分けたお揚げをそうっと地面に置くと、二匹は恐る恐る食べ始め、彼が何もしないと分かると仲よく食べ始める。
「仲よく分けてな~」
 自分にもいつかこういう風に分け与えられる女の子がいたらなあ。お揚げを渡して狐たちの食べる姿に和みながら伊織は顔を綻ばせた。一方、菊里とおたまはこのお出汁のおかわりを貰えないだろうかと巫女に貰う。――おたまの体が本当にまん丸になる日も近いのかもしれない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

浮橋・八尋
【奇縁】
今日は珍しいコト尽くしだな!
良いコトありそう、というかまさにこれが良いコトかな!
雪混じりの天気雨なんて貴重な景色の中、更にレアなキミ達が遊びに付き合ってくれるなんてさ~
(狐の誼みで仲良くしてね~、と黒狐クンにも恐れず気楽に笑いかけ)
ヤだな、ホント狐だよ?
この立派な尻尾は飾りじゃない――かは秘密にしても、ほら、おあげも大好きだし!
(丁度漂ってきたお出汁の香につられ、早速頂く事にして)

お、黒クンもおあげ食べる?
よしよし良いコだな~!っと、キミ達も賢いね!
(黒クンの後ろで仲良く顔出したお狐様達に笑って)
もしや幸せ太り?お出汁以上にお熱くて良いね~!
そうだ、食べた後は運動と親睦がてら遊ぼっか!


百鬼・景近
【奇縁】
(偶然掛かった誘いの声に珍しく乗り、此処へ来る事となった訳だけれど――ああ、本当に)
良い事、か
(疎まれ悪し様に言われる事も多かった日陰の身だけに、その言葉も輝く世界も少し擽ったく胸に響くけれど)
――そうだね
お陰で俺達も貴重な一時を得られて、有難く思うよ
(供として連れた黒狐もそろそろと頷き)
ところで君、ケサラン何とかじゃないのかい?
(穏やかな景色や空気につられ、更に珍しく冗談も交えて微かに笑い)
じゃあそういう事にしておこう

(お出汁頂けば、黒狐も鼻を反応させ――何と、お手をした)
おや、此処の狐達も見事なものだね
(後ろで仲良くお座りした姿に和み)
良かったらうちの狐とも遊んでやってくれるかい?



●合縁奇縁
 不思議な神社に行こう。
 偶然掛かった浮橋・八尋(万華鏡・f31241)の誘いの声に百鬼・景近(化野・f10122)は珍しく乗り、此処へ来る事となった訳だけれど。
「今日は珍しいコト尽くしだな! 良いコトありそう、というかまさにこれが良いコトかな!」
 ――ああ、本当に。
「良い事、か」
 疎まれ悪し様に言われる事も多かった日陰の身である景近にとっては、無邪気に笑う八尋顔も、その言葉も輝く世界も少し擽ったく、むず痒く胸に響く。
「――そうだね」
 太陽が顔を出しているというのにも関わらず、ちらちらと天から降る雪片交じりの雨雫に八尋は両手を広げ上げてその場でくるりと回った。
「雪交じりの天気雨なんて貴重な景色の中、更にレアなキミたちが遊びに付き合ってくれるなんてさ~」
 本当に良い事尽くめだよ、と歯を見せて笑う八尋に景近はくすりと笑みを零す。
「お陰で俺達も貴重な一時を得られて、有り難く思うよ」
 ね。と傍に携わっている黒狐へと話し掛ければこくりと頷いた。八尋が狐の誼みで仲良くしてね~と黒狐に目線を合わせる様にしゃがむと黒狐はそろそろと頷いた。
「ところで君、ケサラン何とかじゃないのかい?」
 だってふわふわしているし――と言い掛けた言葉を景近は噤み、八尋はお? と目を丸くしてきょとんとした。その顔をすぐに綻んで、笑みが零れる。
「ヤだな、ホント狐だよ?」
 景近に背中を向け、尻尾をふうわり見せた。
「この立派な尻尾は飾りじゃない――かは秘密にしても、ほら、おあげも大好きだし!」
 景近の前にいる八尋がケサランパサランであるにしろ、ないにしろ。狐であるにしろ、ないにしろ。――今も穏やかに流れる景色や空気。これは八尋と共に居たからであって。それらには偽りがない。この時は八尋の正体が何であっても変わらない。
「じゃあそういう事にしておこう」
「あっ、笑った!」
 いつも憂いを帯びた景近の表情から零れた笑みに八尋はあは、と笑い声を漏らした。それにはっとした景近は赤い目を細めて恥ずかしそうに口元を覆った。
「ね、ね。お出汁食べよう。此処のお揚げは絶品だって言う話なんだぜ。近所の狐たちも食べにくるくらいらしいんだ」
「それは美味しそうだね」
 二人はほかほかと温かな湯気立つ鍋の方へと向かって、巫女から温かな出汁の入った器を貰うと其々手にして頂きますと呟いた。景近の傍にいた黒狐はひくひくと鼻を動かした。
「お、黒クンもおあげ食べる?」
 おあげ。甘美なる響きとその香りにぴくりと耳を立たせて、目線を合わせてしゃがみこんで手を差し出した八尋の掌にお手をした。
「よしよし良いコだな~! ……おや?」
 わしゃわしゃと黒狐の顔周りを撫でる八尋はその手にす、と差し出された黄金色の毛並みの手が二本現れる。これは黒狐のものではない――近所に住んでいるという狐二匹のものだった。八尋はわ、と驚いたもののあははと口を開いて笑いだす。
「っと、キミ達も賢いね!」
「おや、此処の狐達も見事なものだね」
 す、と差し出した手を引っ込めた狐二匹は背筋をぴんと伸ばし、両手をきちんと揃えて凛々しくその場に座った。寒さから来るものか、すりとお互いの体を擦り合わせている姿に八尋と景近の顔は柔らかく微笑む。
「もしや幸せ太り? お出汁以上にお熱くて良いね~!」
「良かったらうちの狐とも遊んでやってくれるかい?」
 狐二匹はじ、っと黒狐を見つめ、それに黒狐はこくりと頷いた。
「そうだ、食べた後は運動と親睦がてら遊ぼっか! 狐五匹合わさって遊ぼ!」
 ――皆で遊べばきっとこの寒さだって、寂しさだって、吹き飛ばしちゃうくらい楽しいさ! 楽しげに鳴く狐の声がひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、いつつ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

月詠・黎
【望月】

しとしと静かな雨雫
ひらり舞う雪片
滴る露が燐く様を天満月の色に映して

雨に特別な思い入れは無いが
番の話を聞けば祝福のひとつでも贈りたくなるのは神の性かの

うむ、狐の嫁入りは言の葉しか知らぬが
雨に燐く露、白雪混ざれば正に不思議な光景よ
ふふ、降り注ぐ粒が水晶の欠片とは
此の世界の天気には興味も湧いてしまうのう

両手を広げた友を見守りながら翳した指先
雪は人肌で雫となり雨と融け合う
指先に残る一滴に唇を寄せ
柔く細めた月眸が宿すは喜色
ユエの視線にはくすりと咲い返して

出汁…確か揚げ入りだったかの?
どれ、共に参ろうか
目の前の手を取り、温かいのうと呑気な音
繋いだ手は些か熱を伴って

鰹節の馨に手招かれながら
ゆるり、ふらり
馴染んだ手のぬくもりに
友とは斯様な物かと実感をじわり馴染ませ
本来意味する友人より
ずっと近い距離なのは未だ気付かぬ処

出汁は温かく、揚げはほんのり甘く
溢れた笑みは隣と同じ
仲睦まじい番を見れば笑みも咲く
…ふむ、揚げは譲れぬが
祝福の花を受け取ってお呉れ

――月彩

ユエが奏でれば耳欹て
生まれた倖いに浸るひと時


月守・ユエ
【望月】
しとしと、きらきら
天から注ぐ雫や白欠片を眺めてた

雨は少し苦手
雨音が孤独を運んでくるようで
でも
この綺麗な風景は好きになれそう
お狐様達や皆が楽しそうで
祝福に満ちている

雨…雪…不思議な狐の嫁入りだね、黎さん
こんなお天気もこの世界にはあるんだね?
きらきら降ってくる粒も水晶の欠片みたい

境内ではしゃぐ子達みたいに心が踊る
両手を広げ空へ向ける
手に触れれば溶けて落ちる雨と雪を肌に触れて
黎さんはどんな気持ちで見てるかな?
彼に振り返ってみたりして

お出汁のいい香りがすれば
あ。あっちでお出汁のお振る舞いだって!
いってみる?と手を差し出す
もう慣れたように互いの温もり繋ぐ
傍に添う大切な友のあたたかさ
僕はこのあたたかさにいつも甘えてる

お出汁を貰う
1口含む温かさに笑み零れ
ふふ…。あったかいね
お揚げも美味しい♪

おきつね様たちが楽しそうに遊んでる
ひらり…月彩が揺れるなら表情を綻ばせる
花弁も風景に溶けて雪のようで
僕も歌を口遊む
きらきら雨の光に乗せて
穏やかな、楽しげな時に彩り添えるよう
幸福が絶えず続くように祈りを込めて



●月は見えずとも
 ――雨は少し苦手。雨音が孤独を運んでくるようで。そう、思っていた。
 ――しとしと。しとしと。静かに降り注ぐ雨雫。陽の光に当てられてきらきら。きらきら。ひらり舞い滲む雪片たちを月守・ユエ(皓月・f05601)は目を丸くしながら天を見上げ眺めていた。暫く見上げていれば目を細めて、愁いを帯びた顔色に月詠・黎(月華夜噺・f30331)は隣の友人へと顔を向け、優しく声を掛ける。
「ユエ、どうした?」
 天満月の色が同じ天を見上げ、雨雫もその中に混じる雪片が燐くよりも隣にいる同じ天満月の色が憂いた方が気になってしまった。
「音がね、あんまり好きじゃないんだよね」
「音?」
「でも、この綺麗な風景は好きになれそう」
 愁いを帯びたユエの顔色からは微笑みが零れ落ち、黎は安堵し、釣られて微笑む。
「それにほら。お狐様達や皆が楽しそうで祝福に満ちてる」
 雪片交じりの雨雫にも関わらず、境内を駆けまわる子供たち。狐もふわりとしていたであろう毛並みが雫を含んでしっとりと濡らして境内を闊歩していた。
「あれらは例の番の狐達じゃろうか」
「きっとそうだよ」
 頬擦り寄せたり、毛繕いをして毛並みを整えていたり、時折顔を見合わせては笑い合う狐二匹を見てはそうか、と黎は目を伏せ微笑みながら頷き、ユエもまた目を伏せて頷く。
 黎自身雨に特別な思い入れは無いが、番の話を聞いた時から心が落ち着かないのは何故だろう。それはきっと。
「祝福のひとつでも贈りたくなるのは神の性かの」
「何を贈るの?」
「さあて、な」
 夜であったのなら月の祝福を贈ったかもしれないし、星の煌めきをひとつふたつは降らせたかもしれない。けれどその祝福は黎ではなく、此処を住まいとしている他の神からもう既に受け取っているのかもしれない。
「ふふ。晴れの日なのに雨が降って……雪も降って……不思議な狐の嫁入りだね、黎さん」
「うむ、狐の嫁入りは言の葉しか知らぬが……雨に燐く露。白雪混ざれば正に不思議な光景よ」
「こんなお天気もこの世界にはあるんだね?」
 侍の国。戦国の世と謳われたこの世界には不思議なものが満ちているとユエの掌の上にはぽつり、ぽたりと落ちる露。
「きらきら降ってくる粒も水晶の欠片みたい」
「ふふ、降り注ぐ粒が水晶の欠片とは。此の世界の天気には興味も湧いてしまうのう」
「だって。こんなに綺麗なんだよ?」
 境内ではしゃぐ子供たちの気持ちも分かっちゃうかも。ユエが両腕を広げて空へと向ければ、それを黎は優しく見守り手を翳す。手に触れれば溶けて落ちる雨と雪は確かに冷たく、指先に落ちる水晶雫はユエと黎の指先を濡らしていく。指先に溶けて冷たさが滲んだ雫を黎は口許へと運び、柔く細めた月眸が宿したのは喜色。どんな気持ちで見ているのかな、ユエがくるりと黎の方を見てみれば。彼はそれにくすりと咲い返して咲い合う。
 はあ、と吐いた白い息に混ざって漂ってくる出汁の香りは二人の鼻腔を擽り、視線を其方に向けたユエはあ。と声を漏らした。
「あっちでお出汁の振る舞いだって! いってみる?」
「出汁……確か揚げ入りだったかの? どれ、共に参ろうか」
 ユエが黎に手を差し出せば、その手を取って静かに歩みを進めた。
「……温かいのう」
 呑気にそう呟けば、ユエはそうかな? と首を傾げて目を丸くした。慣れた様に手を繋いでお互いの温もりを結び、傍に添う友人のあたたかさは冷たいこの空気の中でも心地良くて。繋いだ手には些か熱を伴う。このあたたかさに甘えている。だからこの手を離したくないと結んだ手を少しだけ、緩めても放す気は無かった。
 巫女から出汁の入った器を貰い受け、二人は其れに口を付けた。鰹節の馨に手招かれ、一口含む温かさにユエの顔色に笑みが零れる。馴染んだ黎の手のぬくもりはユエとお出汁の二つに温まりながら、友とは斯様な物かと実感がじわり馴染んでいく。――結んだ手を離さないのも。本来意味する友よりずっと近い距離な気もするのは未だ気づかないけれど。
「ふふ……あったかいね。お揚げも美味しい」
「ああ。出汁は温かく。揚げはほんのり甘く。これなら狐達が気に入るのも分かるのう」
 顔を見合わせて、ユエの弾んだ声に、零した笑みに、黎もまた笑みが零れていく。
 境内では仲睦まじく遊ぶ狐二匹が追いかけっこをしながらはしゃいでいた。仲睦まじい番に微笑んだ黎に狐達は足元に寄り添う。それはおねだり。手元にあるそれは狐達も食べられるものではないのかという眼差しが眩い。
「……ふむ、上げは譲れぬが。祝福の花を受け取っておくれ」
 ――ざあ。ざあ。心地よい風が吹き始め、辺りには月下美人の花弁が舞い、狐達の上へとひらりと踊る。月彩が揺れて表情を綻ばせたユエは雨雫、雪片、花弁の共演に目を奪われて、口ずさむのは月の光を贈る歌。
 きらきら輝く雨の光。雪の欠片。花の踊り。穏やかな、楽しげな時に彩り添えるように歌うのは降伏が絶えず続くように祈りを込めたもの。その祝福の歌に黎は耳を欹て、生まれた倖いに浸っていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『忘却の神使『シラヌイ』』

POW   :    白狐召喚
戦闘用の、自身と同じ強さの【玉をくわえた白狐】と【鍵をくわえた白狐】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
SPD   :    錬成カミヤドリ『玉』
自身が装備する【自分の本体(水晶玉)】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    桜火爛漫
レベル×1個の【桜の花びら形】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。

イラスト:久蒼穹

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠サギリ・スズノネです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●誰かがなくからかえりましょう
 夕刻を告げる鐘が鳴り響く。その鐘の音を耳にした子供たちは童歌をうたいながら境内を去っていく。その声は子供達の姿が見えなくなるまで聞こえ、やがて聞こえなくなった。
 雪片交じりの雨雫も、日照りも、仄暗い雲に包まれていき、神社の敷地内でたむろしていた狐二匹たちも静かに立ち去って行く。
 雨が止んでしまえば雨避けとして使われていた傘も仕舞われ、授与所も、開かれていた本殿の扉も閉ざされて人の気配も獣の姿も無くなって静かになる。
 ――からん、ころん。
 境内に鳴り響いたのは本殿にあった鈴の音。下駄の音にも似たその音は、『やって来たよ』と報せると言わんばかりに鳴っていた。
「あれ、あの子たちは?」
 やって来たのは狐面を被った男。辺りには冬だというのに桜の花弁の――炎が舞っていた。口元に笑みを携え、首を傾げれば静かに口を開いた。
「ね、きみ達は僕と遊んでくれる?」
夜鳥・藍
もしかしかしてこの方は水晶の……。
そんなに悪い人の様には見えないし、要望どうりに遊べばいいのかしら?
でも日も暮れ始めてるし何をして遊べばいいのかしらね。……それに普通の遊びでいいのかしら?子供達とも遊んでいたという話らしいけど、私はもう子供でもないしいられない歳だもの。
それでもお話しは聞いてみましょう。
とくに戦意も悪意も感じられないようなら普通にお相手すればよいだけですもの(悪意なき悪意であれば別ですが)
追いかけっこでも致しましょうか?でしたら白銀も呼びますか?
静かに騒がないように。
だってここはお社。神様の敷地内。
日も暮れたのだから騒がしくしてはいけません。



●おいかけっこしましょ
 遊ぼうと開いた口端を釣り上げて笑う忘却の神使『シラヌイ』の腰元できらり光った水晶玉に夜鳥・藍は耳にした話を思い出し、ぽつり呟いた。
「もしかしてこの方は水晶の……」
 狐面の男が現れ、狐が咥えた水晶が消える。そんな話を思い出しては確かめようにも目の前のシラヌイの向こう側にそれはあるから確かめられずにいる。今此処で戦えばこの男は正体を話してくれるかもしれない――けれども藍には、シラヌイが悪い人の様には見えなかった。男は遊ぼうと言っていた。ならば要望通りに遊べばいいのでは。
「君は僕と遊んでくれる人?」
「そうですね……でも、日も暮れ始めてるし何をして遊べば……」
「ふふ、かくれんぼでも、追い掛けっこでも、玉遊びでも、なあんでも良いよ」
 それは果たして本当に普通の遊びなのだろうか。一抹の不安が過る。けれど子供達とも遊んでいたという話もあるし、それにその子供達や誰かを傷つけたりしたという話は聞いた事がない。だが藍自身子供でもないし子供でもいられない年齢。
「私は子供じゃないけれども、良いのですか?」
「きみみたいな子でも僕にとっては子供みたいなものさ。何をしようか?」
 ねえと喋り掛けてくるシラヌイの言葉。表情。体を前に出して藍の様子を窺う様に周りを歩きはじめる様子に悪意は感じられなかった。
「……それなら、追い掛けっこでも致しましょうか」
「きみが走るの?」
「私が走っても……では、この子はどうでしょう」
 おいで。自身が走るよりかはこの子が走った方がきっと楽しめるだろうと銀の毛並みをした白銀は藍の呟きに応え、現れた。すり、と藍の体に白銀はその顔を寄せた後、背に藍は自身の体を乗せ、手を突く。
「いいねえ、狼と追いかけっこなんて初めてだよ ――だけど、これならどうかな?」
 きらきら輝く水晶玉。その光は複数。シラヌイの周囲に漂うけれど、足元に転がるだけ。
「障害物競走みたい、ですね」
「そ。ね、追い掛けっこしようよ!」
 早く早くと急かすシラヌイに藍はしぃ、と人差し指を自身の唇に添えた。
「静かに騒がないように。だってここはお社。神様の敷地内。日も暮れたのだから騒がしくしてはいけません」
 ぱっと口元を塞いで静かになったシラヌイはこくり、と頷いて藍はゆっくりと微笑む。
「分かってくれるのであれば、大丈夫です。――じゃあ始めましょうか」
 追いかけっこ。ぴょんぴょん跳ねて、跳んで遊んで、遠くからは狐と狼が楽しそうに見えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

逢坂・理彦
遊ぼう、かい?
いくらでもと行ってあげたいけれどおじさんだからねぇ体力がないから…長くは遊んであげられないけれどそれでも構わないなら。
(そんな風に言うとにぃと笑って)

あまり慣れてはいないけれどせっかくだから神社らしい格好で…(真の姿・狩衣姿)

桜の花弁もよいけれどね。
季節が違いすぎるよ。
愛でるならその時々の花がいいんじゃないかなぁ。

【オーラ防御】と【結界術】で炎の桜を防ぎつつ。
UC【狐火・椿】

時期的にはこちらの方が近いだろう?



●火焔
「遊ぼう、かい?」
 問われた言葉に逢坂・理彦は顎に手を当てふむ、と呟いた。
「いくらでもと言ってあげたいけれどおじさんだからかねぇ体力がないから……長くは遊んであげられないけれどそれでも構わないなら。
 にぃ、と口端を釣り上げて笑った理彦に忘却の神使『シラヌイ』の顔は笑顔のまま、体が強張る。――その遊びは、単なる遊びではない、と。
 此処は神社。折角ならば。其れに見合った格好に変わるべく、理彦の首元に纏わっていた首巻きはぐるりと解ける。急に吹いた風にシラヌイは目を瞑り、風が止み終えると理彦は狩衣の衣裳を纏っていた。手にした薙刀の矛先をシラヌイに向ければそれに彼は物怖じせず、微笑み携え立っている。
「神主さんの姿になってどうするんだい?」
 首をこてりと傾げたシラヌイに理彦はそうだねぇ……と呟きながら薙刀の矛先を地へと向けた。
「いや何。君を説教とかそういうことはしないさ」
 シラヌイの背後に揺蕩う桜の花弁を模した炎を見遣れば、ううんと唸りながら顎を触る。
「桜の花弁もよいけれどね。季節が違い過ぎるよ」
「狂い咲きかもしれないよ?」
「いいや。愛でるならその時々の花がいいんじゃないかなぁ……だってね、雪の白に桜は、溶けてしまいそうじゃないか。溶けて、無くなってしまうのは悲しいと思うんだ」
 無くなってしまう。悲しい。その言葉にシラヌイの表情は凍りつく。――忘れてしまう。無くなってしなう。それなら僕は。
「――此処で、燃やして無くなってしまえば、何も変わらないさ!」
 揺ら揺らとしていた桜の炎は理彦の頭上へと舞い落ちる。下から見上げれば確かに見事な桜だけれども……これは炎。頭上に紅色のオーラで防ぎ、指先で円を描いて作った結界術で弾いた。
「それにほら、今の季節だとこれが綺麗だ」
 ――ぽとり、ぽとり。理彦の掌から落ちる紅の炎は中心に黄色になっていて、宛ら首から落つる椿の花。それは地面に落ちた筈だったのにも関わらず、消えたとシラヌイは思っていた。
「ほうら、上だ」
 ぽたり。ぽたり。シラヌイの頭上から落ちていく炎はその顔を、その身体を燃やして行く。
「時期的にはこちらの方が近いだろう? けれどねぇ……」
 ふう、と冷たい空気に温かな吐息を吐きだして理彦は片目を瞑った。神社とは神聖なる場所。時に遊んだり、火を使ったりすることもあるけれど。
「――度が過ぎる火遊びは厳禁だよ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

儀水・芽亜
こんばんは、お面の御方。遊び疲れてはおられませんか? 疲れたのなら眠るが、生き物の有り様。
静かに、静かに、眠らせて差し上げましょう。この幻夢クラスターで。
「全力魔法」で「郷愁を誘う」「催眠術」の催眠炸裂弾の雨です。本物の天気雨には少し遅かったですね。

反撃の桜の花弁は「見切り」「オーラ防御」で退け、彼の方が眠るまで幻夢クラスターを放ち続けましょう。
「オーラ防御」があるとはいえ、突っ立っているだけでは芸がありません。
彼の方の気を逸らせるよう素早く立ち位置を変えながら戦います。

眠気に囚われたように見えたら、裁断鋏『Gemeinde』を構えて突撃しその身体を「切断」します。

結局あのお人は何だったのか?



●あなたは一体誰でしょう?
「こんばんは、お面の御方。遊び疲れてはおられませんか?」
 スカートの両端を持ち、カーテシーのご挨拶。儀水・芽亜が頭を軽く下げ終え、頭を上げて首をこてりと傾げれば、忘却の神使『シラヌイ』も同じように首を傾げた。
「疲れたのなら眠るが、生き物の有り様」
「疲れてなんかいないよ。だってこんなにも遊んでくれる人がいっぱいなんだからさ!」
 両手を掲げて喜ぶシラヌイに芽亜はそう、と呟きながらもしい、と人差し指を口元に携えた。
「けれど夜に向かうこの時間は静寂へと向かう刻。それでも遊ぶと仰るのなら――静かに、静かに、眠らせてあげましょう」
 この幻夢クラスターで。
 静かに言い放った芽亜の言葉を引き金に、五百もある虹色の炸裂弾は郷愁を、睡眠を誘う香りを纏いながらシラヌイの頭上へと振りかかろうとしていた。
 ――懐かしい香りだ。あの時の桜の匂いは。氷菓子の冷たさ。紅葉を集めて焼いた芋。冬に振る舞われる出汁の香り。嗚呼、どれもが懐かしく、帰りたくなる。
 何処に?
 ばちりと炸裂弾がシラヌイの頭に当たった。くらり、地面に膝を付けそうになったシラヌイは自分の手から桜の花弁を模した炎を芽亜に向かって投げる。その動きは鈍く、虹色のオーラで防ぎきれる程芽亜にとっては容易かった。
「鬼さんこちら、手の鳴る方へですよ」
 ぱちん、ぱちん。そう芽亜が手を鳴らす度に撃たれる弾はシラヌイの方へと落ちていく。鳴っているのは手ではなく、弾ではあるがその弾はシラヌイが深き眠りに落ちるまでは止まらない。鳴り止まない。
 がくり、と頭を垂れるシラヌイに芽亜はすかさず裁断鋏『Gemeinde』を構えてその先端を彼に向けて突撃する。刃の切れ味は良し。これならばその身体もきっと切れる筈。ばちんと刃と刃が合わさった時、シラヌイの身体からは赤き血が流れる。
「貴方は一体、何なんですか?」
「何、と言われてもね。ふふ、何だろうね」
 はぐらかすシラヌイに芽亜はそれ以上の言葉は紡がなかった。
 ――僕は一体、何だろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

終夜・嵐吾
【雅嵐】
狐のつがいたちは帰っていってしまったの
しょんぼりせんでも、ここにもふはあるんじゃろ、ほれほれ(尻尾ゆらゆら)
しかし――お遊びの時間じゃってよ、せーちゃん
わしらと遊ぶんなら、ちょっとばかり危ない遊びになってしまうがええかの?

さて、どのよに遊ぼか
…なんというか、わしがせーちゃんの技使っとるようじゃね
桜に炎に、親しみを持ってしまうの~

ではわしは炎で一緒に遊んでもらおか
その桜の花弁のような炎も飲み込んでしまうように
せーちゃんを巻き込まんように気を付けておかんとな
まぁ、巻き込まれるようなへませんのは知っておるけど

好きにする言う前に好きにしとるじゃろ
共に遊べるのは楽しく尻尾もご機嫌に揺れてしまうの


筧・清史郎
【雅嵐】

もふもふな番いは帰ったか(ちょっぴりしょぼん
ああ、そうだな
極上のもふもふ尻尾は俺のすぐ傍にある(友の尻尾ガン見
お遊びの時間か
ふふ、では楽しませて貰おうか

確かに俺達のようだな
けれど、桜も炎も俺達が舞わせるものだけで十分だ
何より、らんらんのものに勝る狐さん尻尾などない(きり

相手が炎に桜ならば
俺は水に桜花弁を躍らせよう
桜炎を、水龍の加護宿す桜の水矢で消し散らせながら
隙あらば踏み込み、蒼桜の刃で遊んでやろう

ふふ、俺の事は気にせず、目一杯遊んでくれ
いつも通り、俺も好きにする
友が咲かせる炎は今日も美しいなと微笑みながらも
ご機嫌に揺れる尻尾を見つめ、にこにこ
帰ったら念入りにブラッシングしてやろう、と



●風流なる花嵐の戯れ
 姿が見えなくなった狐の番たちは何時の間にか帰っていた様で筧・清史郎はがくりと肩を下さずとも、少しだけその顔に悲しみの彩を見せた。
「もふもふな番いは帰ったか……」
「しょんぼりせんでも、ここにもふはあるじゃろ、ほれほれ」
 ゆらゆら。清史郎の前で終夜・嵐吾が自身の尻尾を揺らせばそのもっふりとしたもふに清史郎は目を奪われ、じいっと揺れる尾を見つめる。
「ああ、そうだな。極上のもふもふ尻尾は俺のすぐ傍にある」
 ふ、と笑みを零した清史郎の表情に嵐吾の顔に笑みが灯る。けれどもその目は、細めて忘却の神使『シラヌイ』を見た。
「しかし――お遊びの時間じゃってよ、せーちゃん」
「……お遊びの時間か」
 そのお遊びは唯の遊びではない。
「お兄さんたち、何して遊ぶ? 季節外れの花見も綺麗だよ?」
 ゆらゆらとシラヌイの頭上で揺れる桜の花弁にも似た炎は薄桃色。触れれば散るのはきっと自分達の方だろう。
「さて、どのよに遊ぼか」
「ふふ、では楽しませて貰おうか」
 揺らめく薄桃色の炎は、普段共にいる友の技にも似ていてふむ、と嵐吾は呟き耳が揺れる。
「……なんというか、わしがせーちゃんの技を使っとるようじゃね」
「確かに俺達のようだな」
「桜に炎に、親しみを持ってしまうの~」
 けれども桜の扱いだったら自分も負けていないと清史郎の掌の上には桜の花弁が舞う水球が作られていた。
「けれども、桜も炎も俺たちが舞わせるものだけで十分だ」
 何度桜を見上げ、何度桜を舞わせてきた事か。
「何より、らんらんのものに勝る狐さんなどない」
 きりりと表情を引き締めれば嵐吾はせ、せーちゃん……とほろりと涙を流し、袖口で拭う振りをして気を取り直す。
「一人ずつ遊ぶ? 三人で遊んでもいいよ!」
「ではわしから遊んでもらおうかの」
 前に出た嵐吾の右手に灯すは狐の炎。シラヌイが行け! と嵐吾の方に指を差して彼の頭上に振りかかろうとするもその炎を狐の炎で覆い尽くす。零れ、見落としたものが無いか、後ろにいた清史郎の方を振り向けば、清史郎は手にした水球より矢尻に桜の花びらを含んだ矢が放たれ消え落ちる。
「ふふ、俺の事は気にせず、目一杯遊んでくれ。いつも通り、俺も好きにする」
「好きにする言う前に好きにしとるじゃろ」
 そうは言っても共に遊べるのは楽しく、嵐吾の尻尾もご機嫌に揺れる。この遊びはどこまで続くか分からないけれど、友とこんなに遊べるだなんて。嗚呼楽しい。
「巻き込まんようにはしとるんじゃが、大丈夫そうじゃろうか?」
「なあに。前をらんらんだけに任せるわけにはいかないからな」
 後ろで控えていた清史郎の腰元に携えていた鞘から蒼桜の刃が抜かれる――二人、背中を合わせて顔を向けるはシラヌイの方。
「皆で遊んだ方が、楽しいもんね!」
 シラヌイのそうれ! の掛け声で二人に降り注ぐ桜の焔は嵐吾の狐炎。桜の花弁を食べ尽くす狐の如く。食い切れなかった焔は蒼桜の刃で断ち切り、散らされる。
 ――友が咲かせる炎は今日も美しい。口元に微笑みを携えながら清史郎の目線はご機嫌に揺れる嵐吾の尻尾。にこにこと零れる表情に清史郎の動きも軽やかに舞う。
「帰ったら念入りにブラッシングしてやろう」
「そしたらせーちゃんに極上のもふをお届けじゃのう」
 二人の遊びは、ずうっと。ずっと。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鹿村・トーゴ
あの子たち、って境内にいた子供や巫女さん?
それともめおとのお狐様かな
聞いた話じゃお前さんこの辺のちびっ子とよくじゃれて遊ぶそうだねぇ…

神社の狐さんが銜えた水晶がたまに消えるって話も聞いたね
お前さんのお腰の水晶飾りとなんか関係あるんかな…?

あの狐像に関係ある者なのか
あれに邪なモノが取り憑いたのか
それとも全然関係ない奴か
悩ましーな

殺意が無ければ攻撃は仕掛けないし
敵からの攻撃も防御優先、菜靡のUCで相殺を狙う
明らかに敵意を感じた時、一般人への危害を感じたら攻撃に移る
UCで一度敵の視界を奪いその間に接近【忍び足】
クナイで斬れる距離でUC解除
武器を手に傷数少なく急所を刺すよう【串刺し/暗殺】

アドリブ可



●問われても、想われても
「あの子たち、って?」
 鹿村・トーゴの脳裏に過ったのは境内にいてはしゃいで走り回っていた子供たち。お出汁を振る舞い、お守りを授けてくれた巫女さんたち。夫婦の狐たち。どれの事を指すのだろう。――きっとどれでもあって、どれでも無いような気がする。
「聞いた話じゃお前さんこの辺のちびっ子とよくじゃれて遊ぶそうだね」
 ああ! と両手をぽんと叩いた忘却の神使『シラヌイ』は嬉しそうに笑った。
「あの子たちはよく僕と遊んでくれるし、あの子たちは僕にお辞儀をしてくれるし……あの子達は何もしなくても僕をじっと見てるね。なんでだろうね」
 口を閉じてんー、と首を傾げるシラヌイにトーゴはさあなと答える。狐だから何かを見透かしていたとか、そんなことも過るけれどきっと答えは出ない。
「神社の狐さんが銜えた水晶がたまに消えるって話も聞いたね」
「……」
「お前さんのお腰の水晶飾りとなんか関係あるんかな?」
「――君が思う、僕はどんな形をしている?」
「え?」
 言われてみれば。あの狐像に関係ある者なのか。其れに邪なモノが取り憑いたとか。それとも全然関係無いモノなのか。トーゴは腕を組んで考えてみるも……。
「わっかんね!」
 だって言われてみても思いつかないし、誰かに危害を加えたという話もない。――本当に、本当に遊んで欲しいだけの存在なのかもしれない。
「なー、お前本当に遊んで欲しいだけなのか?」
「そうだよ。こうやって。……ほうら、綺麗だろう?」
「な、」
 トーゴの頭上に降り注ぐ桜の焔は手にしたクナイを菜の花に変え、相殺する。ぶわり、シラヌイの視界を菜の花で覆って奪い、後ろへと入った。近づいて菜の花に姿を変えたクナイを再び手にして、首元の急所にクナイを静かに沈ませた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
※此方から手を出す事はしないが、向こうが明確に手を出してきたなら刀を抜く。くらいの心持ちで

こんな時間に現れる仮面を被った男……はっきり言って怪しいにも程がある
遊びたいのなら、そっちの素性は明らかにしてほしいものだな

ひょっとしてあれか、遊びに付き合ったら教えてくれるとかそういう奴か?
それ以外に手がないなら仕方ない。少しくらい付き合うとするか

独楽回しとめんこ辺りなら昔やった事があるし、その辺りならちゃんとした勝負になるだろう……が、他の勝負であっても受けて立つ(内容、結果はお任せ)

……で、結局あんたはなぜこんな事をやってるんだ?
事情が分からなければ、相応の対処を考えざるを得ないんだが



●戯れ
 夕暮れ時、と言えども辺りは暗く。こんな時間に現れた仮面を被った男は誰の目に見えても怪しいにも程がある。警戒し、腰元に携えた刀を抜こうと夜刀神・鏡介は構えた。――けれども、出会った人々に危害を加えたりという話は無い。すぐに警戒を解き、構えるのを止めて溜め息を一つ零した。
「遊びたいのなら、そっちの素性は明らかにしてほしいものだな」
 素性の知らない者と遊ぶ心算は無い。しかし、鏡介の脳裏にはふとひとつの過去を思い出した。幼い頃、大勢の中で遊ぶ子の中には遊ばないと名を名乗らない子がいた様な気がする。もしかして。
「ひょっとしてあれか、遊びに突きあったら教えてくれるとかそういう奴か?」
「ふふ、どうだろうねえ? ね、君はどうするのかな?」
 やれやれ、と首を回し、腕を回した鏡介はよし、と前に出る。それ以外に手が無いのなら仕方がないと諦めがついた。
「少しくらい付き合うとするか」
 やったあ、と両手を掲げて万歳をする忘却の神使『シラヌイ』の姿は境内で遊んでいた子供たちの様にはしゃぎ、そわそわと落ち着かない様子で鏡介の周りをぐるりと回る。
「そ、そんなに遊びたかったのか」
「だって僕と遊んでくれるお兄さんなんてあんまりいなかったし」
「そうか。独楽回しとめんこ辺りなら昔やった事があるし、その辺りならちゃんとした勝負になると思うぞ」
 その他でもいいぞ、と言う鏡介にシラヌイは何にしようかなと首を左右に揺らして悩む。あ、と声を漏らしながら目に付いたのは鏡介の刀だった。
「チャンバラがいい」
「でもお前の刀は無いじゃないか」
 ふふん、と胸を張りながら鏡介の前に出したのは自分が持っていた桜の枝。
「……それは使って大丈夫なんだな?」
「大丈夫だよ、丈夫な僕のものなんだから」
「ならいいんだが……折れても泣くなよ?」
 鏡介は鞘を付けた侭の刀を引き抜き、手を狙い、叩き落とそうとするもシラヌイのその姿はぴょんと上に跳んで後ろに行った。
「距離を取ったら俺には届かん、ぞ、っと!」
 鞘の先端が桜の枝を突いて、鏡介は折ろうともした。確かに鞘は枝に届いた。けれども、折れない程しなやかで逞しかった。
 ぴょん、とシラヌイが後ろへ下がると桜の枝は懐へと仕舞われる。それを見た鏡介もまた自分の刀を仕舞った。
「あーきた!」
 飽きたのならばそれで良いのだが、とふうと一息ついた鏡介は前にいるシラヌイへと言葉を投げかける。
「……で、結局あんたはなぜこんな事をやってるんだ?」
「遊んで、覚えててほしい。それって、駄目な事かい?」
 ――駄目じゃないさ。首を横に振るう鏡介は目を伏せて微笑んだ。そうして遊んだ自分は確かに覚えているのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

逢月・故
【師弟】
随分静かになっちゃったねぇ
雨も止んだし、もう傘は要らないかな
指パッチンで蝙蝠傘が消える
雨降るって言われてたのに傘持って来なかったのライセちゃんでしょー

ちょーっと遅かったねぇ
ボールくん、じゃなかった、狐くんたちは帰っちゃったよ
キミの遊びは随分物騒そうだなぁ
ま、良いけどね
物騒な遊びはオレの世界にも溢れてるもの
さ、ライセちゃん、お仕事しようねぇ

【軽業、早業、不意打ち】でUC
遊撃兼囮ってコトで【誘惑】
愛用の大鋏を手に突っ込むよ
飛んで跳ねて【蹂躙、部位破壊、串刺し】
衝撃波を足場にして空でも跳ねて、跳ねるついでに衝撃波を蹴って飛ばして追撃を
水晶玉は【見切り、第六感】で避けたついでに打ち返しちゃおう


今世・来世
【師弟】

せんせが傘貸してくれなかったから、ぼくはびしょ濡れのままですわ
風邪ひいたら看病してくれへんと~

態と恨みがましく
雨で濡れた髪はその儘に
御籤は懐に忍ばせ
言葉だけは心に留め

せやねぇ、すこぉし遅かったみたいや(狐ポーズして
遊ぶのはぼくも好きやけど
今世(ここ)はキミがおってええ場所ではないからなぁ
来世(あちらさん)にお還り願いましょ(ちょーっとばかし可哀想な気もするけどお仕事やし
いつでもええよ、せんせ

後衛
せんせの攻撃を邪魔しない程度に支援(サボってる訳ではない
左耳につけたSign.が揺れ
片目細めてUC使用
右腕から白燐蟲を出現
敵を転びやすくしたり、突然白燐蟲で敵の視界を奪い事故を誘発

ほな、左様なら



●白々の戯れ
「随分静かになっちゃったねぇ」
 雨も止んで、人気が無くなった境内をぐるりと見回した逢月・故は手にしていた蝙蝠傘を下した。
「雨も止んだし、もう傘は要らないかな」
 指をパッチンと弾いて音を鳴らせば蝙蝠傘はふわり故の手から離れて消えていく。
「せんせが傘貸してくれなかったから、ぼくはびしょ濡れのままですわ」
 頬を膨らませてぶうぶうと文句を言いながらも引いた御神籤は懐に忍ばせる今世・来世に故は薄ら笑みを浮かべてえぇ? と雨で濡れた侭の来世の顔を見上げた。
「雨降るって言われてたのに傘持って来なかったのライセちゃんでしょー」
 オレは悪くないーと来世の膨らんだ頬を人差し指で突こうとすれば首を横に振られて雨雫が故にも振りかかろうとして、するりと避ける。
「――あれ、あの子たちは? 番いの、あの子達」
 きょとんとした様子の忘却の神使『シラヌイ』は辺りを見回すもその姿が居ない事に気付いた。
「ちょーっと遅かったねぇ」
「せやねぇ、すこぉし遅かったみたいや」
 こんこん。来世の空いた両手は狐に見立てて、寄り添って顔の前で口を開いて閉じを繰り返してぱっと消えたと手をひらりとはためかせる。
「ボールくん、じゃなかった、狐くんたちは帰っちゃったよ」
「なあんだ。じゃあお兄さんたち、遊んでくれる?」
 首を傾げて笑い、腰元に携えた水晶玉をいくつか浮かばせたシラヌイに故はどうしようかなあと呟くも顔には笑みを携えたまま。来世もううんと唸るものの、不服の表情を見せたまま。
「キミの遊びは随分物騒そうだなぁ。ま、良いけどね」
 物騒な遊びは故の住む世界では溢れている。今更水晶玉を投げたり蹴飛ばしたりするぐらいなら生易しいもの。
「遊ぶのはぼくも好きやけど今世はキミがおってええ場所ではないからなぁ。来世にお還り願いましょ」
 ――ちょーっとばかし可哀想な気もするけどお仕事やし。此処に居てはいけない存在を送るのは地獄の獄卒である自分の役目。はためかせた掌を拳に変える。
「さ、ライセちゃん、お仕事しようねぇ」
「いつでもええよ、せんせ」
 準備はとっくにできている。濡れた髪を掻き上げながら来世が呟く前に、故は駆け出す。
 左耳の耳飾り――Sign.が揺れる。
 片目を細めて、故の周りに白い光――白燐蟲がふより漂って、故の力を強くする。
 兎の足はとても速くて、狐面で視界が悪く、白燐蟲の灯りが眩いシラヌイには捉えきれず、水晶玉を故に向けて飛ばすもそれよりも先にその頭上に故の長い脚が叩き込まれ、水晶玉は故には見え見えで、避けるもそうだと良い事を思いついたように蹴り返して腹へとお返しする。
「ぐぅッ……!」
「ほぅら、遊ぶんでしょ。こっちこっち」
 愛用の裁ち鋏を手にして突撃すれば尖端がシラヌイの腹を掠めるがその腹を狙って串刺して、抉り、蹂躙していく。衝撃波を起こし、足場にしながらぴょん、と空を跳ねて蹴り上げて追撃をする姿は月で駆けて、跳んで行く兎の様。その姿にシラヌイの表情からは余裕はなくなるも、笑みは絶やさなかった。
「兎狩りも、悪くない、かな……」
「狩らせへんで」
 ――自分達は狩られる訳ではなく、狩る側だ。故の後ろから蟲を呼ぶ笛を吹き、夕暮れ時の境内に白い光が集まる。
「その目、塞いだろか」
 白い光の蟲たちがシラヌイの目元に集って視界を奪っていった。纏わりつく白い光が邪魔で腕をばたつかせるもその白き光は彼の視界を遮ったまま。ばたつかせた腕から桜の枝が零れ落ちるも、その枝からは桜の花弁にも似た炎が来世へと向かう。
「あかんよ、そんな暴れたら」
 つるり。雨で滑りやすくなっている足元に気付かずシラヌイは転倒する。
「ほな、左様なら」
 シラヌイが見上げたのは月ではなく――二人の男の顔であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

千家・菊里
【守】
ええ、それでは僭越ながら、おたまと――そして伊織が喜んでお相手致しますよ
俺はおしくらまんじゅう応援要員召喚で忙しいので、ほら、どうぞ狐に包まれてごゆっくり
(UCでわらわら現れたおたまもどき軍団を伊織に押し付け、暢気に笑い)

ふふ、何でもどんとこいですよ
でも大事なけだまをチリチリに焦がすのはおやめくださいねぇ
(あ、どうせ火を使うなら焼芋にしましょう、とか徐に芋取り出し――おたまも落葉集めにぐいぐい誘っている!)

(害為さぬ限りは此方も攻撃せず――無邪気に戯れるおたまを通し、静かに浄化の力を巡らせるに留め)

さて――楽しい一時に感謝を
忘れ得ぬ思い出が出来ましたね、おたま達
貴方は如何です、シラヌイ?


呉羽・伊織
【守】
遊び相手?ソレなら丁度運動が必要なけだま(おたま)がいてネ?
良けりゃ構…って俺も!?てかお前も遊べよ!
つつまれるどころか色々とつままれすぎなんだがー!
(シラヌイの存在に加え――おたまもどき軍団が物理的にはむはむつまんでくる件)
俺はお前らの玩具でもなけりゃおつまみでもないぞー!

ったく…で、何して遊ぶ?
おしくら饅頭はけだま圧がヤバイんで他で!
…って何ソレ遊ぶってかおやつ準備よネ、まだ食う気か!

(と、彼方に敵意がないなら、極力穏便にお還り頂けるよーに尽くし)

そーだ、草花遊びなら俺も一つ
(南天添えた草指輪を二つ、番の狐に供え)
どう、シラヌイも一緒にやる?

ああ、俺も――不思議で貴重な一日、忘れない



●狐につままれ、つまれる
「遊び相手?」
 ソレならと呉羽・伊織が指を差した方向は千家・菊里の肩に乗っているおたまだった。
「丁度運動が必要なけだまがいてネ?」
「ええ、それでは僭越ながら、おたまと――そして伊織が喜んでお相手致しますよ」
「良けりゃ構……」
 うん? 今菊里は何て? 伊織は彼の言葉を疑ったけれど間違いなくその言葉は確かに自分の名前。
「って俺も!? てかお前も遊べよ!」
 伊織は菊里の方を向くが、菊里は穏やかな表情で微笑みながら口元袖で隠した。
「俺はおしくらまんじゅう応援要員召喚で忙しいので、ほら、どうぞ狐に包まれてごゆっくり」
「つつまれるどころか色々とつつまれすぎなんだがー!」
 ね? と首を傾げる菊里にぐぬぬと不服の表情を見せる。目の前にいる忘却の神使『シラヌイ』に加え、肩に乗せたおたまの後ろ側――もっふりとした狐の式神が一匹。二匹。三匹。わらわらと増えていくおたまに似た狐の軍団をはい、と笑顔で菊里は押し付けていく。狐の軍団は伊織の頭や身体に乗ってはこれは食べ物か? 分からないなら口に含んでみようとはむりはむりつまんでいく。
「……俺はお前らの玩具でもなけりゃおつまみでもないぞー!」
 伊織の怒りに何匹かの狐は驚き、跳ぶもすぐに伊織の頭上へと落ちる。その綺麗な技を見た菊里はおお、と感嘆の声を漏らしてぱちぱちと手を叩いた。
「ったく……で、何して遊ぶ? おしくらまんじゅうはけだま圧がヤバイんで他で!」
「そうだね、こんなのはどうだい?」
 ふう、とシラヌイの両手に息を拭き掛ければ桜の花弁を模した炎が少しだけ飛んでいく。
「ふふ、何でもどんとこいですよ。でも大事なけだまをチリチリに焦がすのはおやめくださいねぇ」
 シラヌイの問いに好意的な言葉と表情を見せた二人に彼はにい、と口端を釣り上げて笑う。
「そうだねえ、何にしようか」
「あ、どうせ火を使うなら焼き芋にしましょう」
 徐に芋を取り出した菊里におたまも肩から降りて、せっせと落ち葉を集めながらシラヌイの裾をぐいぐいと引っ張り彼を誘う。――食べよう? と。ぽかんとしているシラヌイはわ、とおたまに引きずられるまま落葉の前へと連れて行かれてこれを? としゃがみ込んで首を傾げてから菊里の顔を見上げた。そうそう、と頷いた彼に分かったと笑顔で頷けば。ふう、と両の手に息を吹きかけ、桜の花びらが炎へと変わってぱち、ぱちと静かに音を立てる。
「……って何ソレ遊ぶってかおやつ準備よネ、まだ食う気か!」
 菊里の底なしにも近い胃袋は今に始まった事ではないけれど、呆れた溜め息を伊織はひとつ零した。
「ふふ、紅葉に桜が舞うなんて――楽しいね! これなら他にも仲間が居た方が楽しいかな?」
 おいで、と指笛を吹けば。シラヌイの元には静かに玉を咥えた狐と、鍵を咥えた狐が現れた。
「お芋が焼けるまでちょっと時間が掛かるけど……他に何して遊ぶ?」
 どうする? と尋ねてくるシラヌイに伊織はあ、と思いついた表情。
「そーだ、草花遊びなら俺も一つ」
 草指輪を二つ網み、地面に落ちていた南天を組み合わせて――現れた二匹の狐に供えれば、ふんふんと匂いを嗅いだ狐たちは伊織の手にすり、と感謝の頬を寄せた。
「どう、お前も一緒にやる?」
「――やる! 女の子と花冠作った事あるけど、これは初めてだ!」
 わくわくしながら作る草指輪は南天の他にこの季節に咲く椿なんかでやってもいいのかも。なんてはしゃぎながら話していれば――。
「お芋、できましたよ」
 火から取り出した芋を、熱いので気を付けてくださいねと渡す菊里に有り難うと微笑みながら受け取り、それを一口頬張ると甘い味が広がった。
「皆で食べるとなんて美味しいのでしょう」
「皆で食べるから美味しいの?」
 ええ、と頷くシラヌイは落葉の近くでいくつかの芋を分け合いながら食べている狐の軍団。菊里。伊織の顔を見た。ああそうか。これが楽しい、って奴だと頬を紅潮させる。
「さて――楽しい一時、有り難うございました。忘れ得ぬ思い出が出来ましたね、おたま達」
「ああ、俺も――不思議で貴重な一日、忘れない」
 ――貴方は。お前は。如何だった? そう尋ねる菊里と伊織の目にシラヌイはうん、と頷いて口を開く。
「楽しかったよ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浮橋・八尋
【奇縁】
や~、今日はとことん面白い縁に恵まれたな!
キミも遊び好きなんだ?何だか親近感湧いちゃうな~!
(何処となく己と似たように感じる不思議な相手へ、無邪気に笑い返し――悪影響がない限りは、普通に遊ぶつもりで応対を)
ね、折角だし良いよね、かげちー君?

やった!じゃあそうだな~、手始めに独楽遊びとか行く?
お、ソレも良いな~!中々可愛い事するんだな、かげちー君!よし俺も狐の顔描いとこ!
(先程の狐夫婦を思い出して、二匹分作り満足顔)

さてと、満足したらちゃんと還るんだぞ、シラヌイ!
キミが一人でふらふらしてたら、きっと心配するコもいるだろ?
大丈夫、忘れないからさ――キミの事も、今日の事も、この場所の事も、ね


百鬼・景近
【奇縁】
そうだね
今日は本当に、不思議な事がよく起こるな
(妙に意気投合しそうな八尋とシラヌイを交互に眺め、小さく笑って肩を竦め)
ああ、構わないよ
おいたが過ぎなければね?
(お互い傷付け合わずに解決出来るならそれが一番だから――どうか互いに穏やかに帰路へ就けるようにと)

独楽か、懐かしいな
普通の独楽も良いけれど…そうだ、シラヌイ、団栗独楽を作った事はある?(ふと足元に転がっていた団栗を拾い――こんな感じで、と、器用に細工した序でに黒狐の顔も描き)
可愛い…?いや、うん、皆の独楽も可愛く出来てるね
(きょとんとしつつも、並んだ団栗に目を細め)

ああ――何も消えやしないよ
またお参りがてら遊びに来るから、達者でね



●こん、コン、狐ん
「や~、今日はとことん面白い縁に恵まれたな!」
 浮橋・八尋が背を、腕を伸ばしながら言うと百鬼・景近は首を縦に頷く。
「そうだね。――今日は本当に、不思議な事がよく起こるな」
「不思議な事がいっぱい? それは面白いね。きみ達と遊んだらもっと楽しそうだ」
 二人の前に現れた忘却の神使『シラヌイ』に目を細めて見つめるも彼はただ口をにいと釣り上げて笑うだけ。その様は何処となく、正体が掴めるようで掴めないでいる隣の彼に雰囲気がよく似ている気がした。
「キミも遊び好きなんだ? 何だか親近感沸いちゃうな~!」
 袖口を擦り合わせて八尋は何処となく己と似た様に感じる不思議なシラヌイへと笑い返す。――悪意さえなければ良い。その遊びだって、もしかしたら純粋に遊びたいだけかもしれないと片目を瞑った。
「ね、折角だしいいよね、かげちー君?」
「ああ、構わないよ。おいたが過ぎなければね?」
 お互いを傷つけ合わずに解決出来るならそれが一番だから――どうかお互いに穏やかに帰路に着ける様に。そう景近は思う。傷ついた知人の顔は見たくない。傷つける事なんてさせやしないけれど。
「やった! じゃあそうだな~、手始めに独楽遊びとか行く?」
 万歳をして手を掲げた八尋は懐から取り出したのは木を削り、やすりで表面を滑らかにして中心に鉄の棒を差し込んだ独楽だった。あ! と興味を示したシラヌイはそわそわと体を左右に動かして目を輝かせているように見えた。
「キミ、その独楽は何処から?」
「ふふ、内緒」
 人差し指を唇に携えた八尋に目を丸くした景近だったが、不思議で正体不明な知人のこと。その独楽をじいっと見ては不思議なところは何も見当たらない。本当に持っていたのかもしれないもの、と色も付いていないその素朴な独楽に笑みを零した。
「懐かしいな。普通の独楽も良いけれど……そうだ。団栗独楽を作った事はあるか?」
「団栗で独楽が作れるの?」
 へえ、と声を漏らしたシラヌイに景近はああと頷きながら呟いた。足元に転がっていた艶やかな団栗を拾い上げ、指先で器用に細工した序でに墨で黒狐の顔を描く。
「こんな感じでね」
 わあとその手元を覗き込むシラヌイの肩に手を置いて八尋も景近の手を覗き込んだ。
「お、ソレも良いな~! 中々可愛い事するんだな、かげちー君!」
「可愛い……?」
 きょとりと目を丸めてそうかな、と自分で作った独楽を見上げた。よく見れば足元にいる相棒によく似ているのかもしれない。
 よし! と意気込んだ八尋は自分の持っていた独楽を懐へと戻した。その独楽は使わないのか、と景近が問えばいいの! と片目を瞑り笑う。
「だって折角だし、皆で同じのを作ろうぜ」
「ああ、良い思い出になるな」
「思い出……」
 うん! と頷くシラヌイはその手に団栗を乗せ、指先で景近に教えを乞いながらようやく一つの団栗独楽を作り上げる。一方、八尋も先程出会った二匹の狐に似た団栗独楽を墨で描いて見てみて、と見せて満足気に笑い、それを景近は目を細めた。
「さてと、満足したらちゃんと還るんだぞ!」
「えぇ……僕もっと遊びたい!」
「キミが一人でふらふらしてたら、きっと心配するコもいるだろ?」
「心配する子?」
 誰だろうと辺りを見回し、後ろを振り返っても誰も何もいない。あるのは番いの狐像だけ――。
「大丈夫、忘れないからさ――キミの事も、今日の事も、この場所の事も、ね」
「ああ――何も消えやしないよ」
「でも、お兄さんたちも忘れちゃうんだろう?」
「またお参りがてら遊びに来るから、達者でね」
 嗚呼だって。そう言って。人は忘れるじゃないか。唇を噛み締めて俯くシラヌイに差し伸べる手は無く、手には二個の団栗独楽が握られていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

吉備・狐珀
私が顕現する前、ぼんやりと意識だけがあった頃、境内で遊ぶ子供達に混ざりたいと思いました
参拝に来て下さる老夫婦とお話してみたかったですし、赤ん坊が産まれた夫婦にお祝いを伝えたいと、赤ん坊を抱いてみたいと思いました

だから、貴方が遊ぼうと仰るのわかります
喜んでお話し相手や遊び相手になります。
ウカとウケ、月代も貴方と遊び相手になりましょう

散り散りに別れて、きらきらと輝くシラヌイの水晶を鬼さんこちらと手を叩いて始めるのは鬼ごっこ。

一頻り鬼ごっこを楽しんだ後は―。
シラヌイ殿、もう少しだけお狐様のままでここの人達を見守って頂けませんでしょうか。
そう、貴方の番のお狐様が顕現されるまで。
貴方がここを離れて誰かと楽しそうにしているのを見つめることしか出来ないなんて寂しいですから。
こんなに愛されているいるのですもの。
貴方の番もきっとすぐ顕現されます。

だからその時まで。
ただ水晶から逃げていたわけではない。
水晶で描いた五芒星の力を借りて、三種の神器の祓いでシラヌイを暫しの眠りへと導く。

次にお会いする時はお二人で―



●永久に待つもの
 ――混ざりたかった。境内で遊ぶ子供達と共にはしゃいで遊びたかった。
 ――お話をしてみたかった。参拝に来て下さる老夫婦と今日は良い天気ですねとか、今日は寒いですねと言葉を交わしたかった。
 ――お祝いをしてみたかった。赤ん坊を抱いて笑い合う夫婦に幸あれと、この手で抱き締めてみたかった。
 ただの狐像であった頃。肉体を得る前。顕現する前の吉備・狐珀にはぼんやりと意識があった頃でさえそう思ったのだから、忘却の神使『シラヌイ』が遊びたいと思う気持ちも、分かっている。
「貴方が遊ぼうと仰るのわかります」
「……分かるはずがないじゃないか」
 人に。何時かは置いて行ってしまう人の形をしたものに。狐珀の言葉を否定するシラヌイに彼女はいいえ、と首を横に振るった。
「私も、貴方と同じ。ずっと待ち続けて、人の形を得た――狐像だから」
 ぴくり。シラヌイの指先が揺れて固まる。だからどうした、とシラヌイの顔からは笑顔が消えて狐珀の顔を見据える。
「貴方が望むまで、喜んでお話相手や遊び相手になります」
 勿論、この子達も。狐珀の肩から顔を出した月代。足元で大人しくしていたウカとウケは二匹に分かれ、首元に携えた水晶玉を揺らした。そして、狐珀の姿は青白い吹雪が吹き荒んで彼女の体を包んでいく。その姿は狐の面を被った人――嘗て吉備稲荷神社で得た人の姿だった。
「貴方と私。そしてこの子達と一緒に、遊びましょう」
「お姉さんは何して遊んでくれるのかな?」
「鬼ごっこを、致しましょう。貴方が鬼です」
 月代は空へ。ウカは左へ。ウケは右へ。狐珀は後ろへと下がる。四者が散り散りになり、彼女の両の手が合わさって空気を震わせて鳴り響く。
「鬼さん、こちら」
 お手々の鳴る方へいらっしゃい――。手を鳴らし、誘えばシラヌイの背後からふわり浮かんだ数多の水晶玉は狐珀の方へと飛び交う。しかし、それは三匹の獣が接近を許さず、月代は上から下へと水晶玉にのしかかり、左からウカが噛み砕き、右からはウケが尻尾ではたき落としていった。
「やるねぇ……」
「楽しい、ですか?」
「うん!」
 嬉しそうに笑うシラヌイに狐珀は微笑みを零す。空飛ぶ月代にはその手が届かず、右へ左へと行き交うウカとウケには少しのところで届かない駆け引きはシラヌイにとっては飽きの無い遊びだった。
 ――愉しかった! そうシラヌイが叫んだ途端。彼らの身体からは強張った緊張の糸は緩やかに解けていく。へにょりとその場に伏せるウカとウケの頭を撫で、月代を肩に乗せて狐珀はシラヌイの前へと出て深々と頭を下げる。
「お願いがあります。もう少しだけお狐様のままでここの人達を守って頂けませんでしょうか」
「……それは、」
 ――自分に狐の像に咥えられた水晶玉のままでいろという事か。シラヌイの顔色から笑顔が消える。
「貴方の番のお狐様が顕現されるまで。貴方がここを離れて誰かと楽しそうにしているのを見つめることしか出来ないなんて寂しいですから」
 ――寂しいのは自分の方だ。ずうっと、ずっと。誰にも覚えて貰えず、誰からも忘れられていくなんて。その言葉をシラヌイが噤んだ。
「こんなに愛されているいるのですもの」
 この神社が地元の人間から愛されているなんて知っている。古くからあると言われているこの神社は寂れず、今も尚綺麗に子供たちが笑いながらはしゃいで、駆けまわるものなのだから。
「貴方の番もきっとすぐ顕現されます」
 だから、もう少しだけ。ゆっくりと頭を上げた狐珀にシラヌイは目を伏せる。
「……番が、現れるかどうかは分からない。でも、」
「でも?」
「皆を見るのは、悪くないよ」
 ――だからその時までは、ね。口元に人差し指を添えたシラヌイに狐珀は有り難う、ございますと呟いた。――狐珀はただ逃げていたわけではない。水晶玉を誘導しながら地面に落ちた水晶玉の光で描いた五芒星を使い、鏡、剣、勾玉の三種の神器をシラヌイの胸元にそうっと触れさせる。
「少しだけ。きっと、私たちにとっての暫しの眠りを」
「……うん。ねえ、また遊んでくれる?」
「……勿論です」
 小さく出された小指を交わし、シラヌイの姿は透明な硝子の欠片と成って消えていく。地面に落ちた水晶玉もひび割れて、弾けて光の粒となった。
 次にお会いするときはお二人で――できたら三人で。
 永い時間を過ごす器物を持つ者同士。また、会いましょう。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年12月07日


挿絵イラスト