僕は何になりたかったのだろう?
#シルバーレイン
タグの編集
現在は作者のみ編集可能です。
🔒公式タグは編集できません。
|
●銀の雨
雨。
雨が降る。
透明でもなく、雪混じりでもない――銀色の雨。
白銀の水飛沫の中、彼は歩む。
靴はもう無かった。
最後に脱ぎ捨てたから。
外套はもう必要なかった、今はそんな気分じゃないのだから。
――痛い、ただ痛い。
どこが痛むかは分からない。
肉か骨か、心か、だが脳を突き刺すような『何か』が自分を動かしていく。
何にもなれず、何も得られなかったからこそ……欲しいのだ。
自分が何者だったかを。
知ってほしいのだ、自分な何者だということを。
その為なら……誰であろうと傷つけること……すら……かまわ……な……。
雨の名はシルバーレイン。
悲劇を呼ぶ白銀の幕。
●グリモアベース
「昔だったら、ただの妖獣だったんですけどねえ。時代は変わったものです」
皮肉交じりにグリモア猟兵、流茶野・影郎(覆面忍者ルチャ影・f35258)が呟いた。
「ああ俺の呟きは置いといて、本題に入りましょう。今から数時間後にある住宅地で妖獣化したオブリビオンによる虐殺が起こる。皆さんにはそれを止めてほしいのです」
流れるような親指捌きでスマホをコントロールすると、展開されるホログラムウィンドウ。
映し出されるのは夕暮れ時の閑静な住宅街。そして街から離れた古い一軒家。
「ここが時間が起こる街。発生地点はこの古い家。もう廃屋だから、人はいないけれど戦闘を想定するなら、何らかの方法で街の人に避難を促した方が良いと考えますねえ。後、この家も調べてほしいんですよ……おそらくは妖獣化したオブリビオンと関係するものがあると俺は思うんですよ」
グリモア猟兵がタップすると画面が切り替わり、作戦の手順が箇条書きで記される。
「順番に説明します。まずは避難誘導&調査。方法はお任せします、出来れば穏便に。次に本体に汚染されたオブリビオンの群れが集まり始めるのでこれを駆逐。最後に妖獣化したオブリビオンを撃退。こんな感じですかねえ」
簡潔に作戦を説明したのち、影郎は円筒が回転するグリモアを掲げる。
開かれるは街への道。
「世界は変わりました。多分皆さんが会うのは理由あって妖獣化した者。どうするかは任せるけど、必ず倒してほしい――死者には眠りが必要なのだから」
かつての戦士は、先人に倣う様に戦いに赴くものへ後を託した。
みなさわ
雨が降りて、世界に再び戦いが訪れる。
こんにちは、みなさわです。
今回は銀の雨の降る街での一幕を。
●舞台
夕暮れ時の閑静な住宅街。
そこから離れた一軒の廃屋が主戦場となります。
戦いの規模を大きくするなら住民の避難誘導を考えないといけません。
●行動
今回の行動は以下のようになっております。
第一章:廃屋の調査&近隣住民の避難。
第二章:オブリビオンの群れに対する対処。
第三章:妖獣化オブリビオンの無力化。
●解説
第一章での調査にて三章の敵の人となりが分かるかもしれません。
また避難誘導が上手くいくなら、第二章の戦闘で巻き添えが発生することは少なくなるでしょう。
●その他
マスターページも参考にしていただけたら、幸いです。
それでは皆様、よろしくお願いします。
第1章 日常
『かつての事件の真相』
|
POW : 過去の新聞や雑誌を片っ端から調べ、不自然な点を探す
SPD : 現場周辺を調べ、それらしい噂話の断片を探す
WIZ : 関係者を探し、「常識」によって修正された証言から真相を推理する
イラスト:乙川
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●残り、語るものの名
廃屋にはもう何もない。
家財は引き払われ、残ったのは誰かが置き忘れたフロッピーディスク数枚。
当然であろう。
誰も何かあった家になど居たくは無いし、何かを残したりする気もない。
今は21世紀、都合よく日記帳が残っているわけでもない。
そこがオブリビオンが渦巻くゴーストタウンでない限りは……。
けれど……消えないものはある。
生きとし生けるものの感情。
心のさざ波。
人が人であるための何か。
そういう物が残滓となって漂っていた。
銀誓館学園の能力者に尋ねれば、彼らはこう答えるであろう――残留思念と。
今、君が廃屋に漂う残滓に触れれば、探しているものが手に入るかもしれない。
過去の新聞や情報から知るのも重要であるが、そこにある主観的な何かを手に入れることがこれからの戦いを進めるであろう。
常識という世界結界の塗りつぶされた小さな真実。
今、それを暴く時が来た!
キース・クリストファー
【SPD】アドリブ大歓迎
自分たちの中の銀の雨が降りやむのはいつなんでしょうね。
現場周辺を調べて情報の断片を探します。
噂好きな学生さん女性などを中心に聞いてみたいですね。
ナンパと間違われないように礼儀正しく接して
あちらの話も聞きながらしつこくならないようにお聞きします。
他の猟兵の方と協力できるようなら
邪魔にならないよう心掛けて協力をします。
「運命予報……ではなく、グリモアでしたか。世界は常に変わっているんですね」
変わりゆく常を嬉しく思うのは、不謹慎でしょうか?
●帰って来た男
夕暮れ迫る街の中、長い金髪に帽子をかぶった藍色の瞳の青年が歩いている。
「運命予報……ではなく、グリモアでしたか。世界は常に変わっているんですね」
彼の名はキース・クリストファー(春嵐颯声・f35263)。
世界が変わる中、変わらないものを持つ男。
春を思わせるかつての能力者は第六の力を手にし、再び戦いの雨の中を歩もうとしていた。
「こんにちは少し良いですか?」
夕暮れ迫る住宅街、帰路に着く女子校生達へとキースは話しかけた。
「あそこの家に関して聞きたいのですが……」
彼が指さす廃屋。
それを視界に入れた少女たちは眉を曇らせ、互いに何事かを交わす。
突然すぎたか、と青年は内心焦りを見せたが、幸いにもそれは杞憂に終わった。
「あの家……出るんですよね」
女子校生の一人が口を開き、流れるように次々と言葉が溢れる。
誰かに吐き出さないと不安なほど、現場には何かがあったのだ。
「昔、小説家を目指した大学生の人が住んでいたんですけど」
始まりは穏やか。
「色々な大賞に応募したけれど、賞は取れなかったみたいで」
けれど少しずつ陰が色差す。
「次第に大学も行かなくなって小説を書くことにのめり込んで、そのまま仕事にも就かないで」
闇は次第に大きくなり。
「最後には家族と喧嘩して、両親を殺して自殺しちゃったんです」
黒に染まる。
そして……。
「それから……出るようになったんです?」
「出るようにですか?」
忌避の表情を見せずにキースが応えると少女たちは安堵と共感を覚え、そして答えた。
「自殺したはずの男の人の幽霊が」
「夜な夜な部屋の中からキーボードを叩く音が聞こえるんです」
「誰かはポストに厚い封筒を入れる姿を見たって」
次々と流れ込む不安の奔流の中、青年は厚い封筒という言葉に違和感を覚えた。
「あの、その話。いつくらいに起こった出来事なんですか?」
青年の問いに女子校生達が空を見上げるように思考する。
「えっと、二十年前の話かな? 私達が生まれる前」
返ってきた言葉にキースはありがとうと笑みをたたえて礼を述べるとその場を後にした。
歩みを止めたキースの前にあるのは古びたポスト。
話が間違っていなければ、それは有るはず。
世界結界のベールの向こうに隠れた違和感。
残留思念に触れると能力者の手には古びた封筒が現れた。
大きく厚いそれは中の原稿が折れないように何か芯になる物を入れており、そして重い。
封を開くのは……仲間と合流してから、今は情報交換が優先だ。
そう思ってキースが駆け出そうとし、ふと気づく。
「そういえば、電話は使えたんですよね」
スマートフォンをタップして他の猟兵へと繋ぎを獲る中、キース・クリストファーは空を見上げる。
……自分たちの中の銀の雨が降りやむのはいつなんでしょうね。
新たなる戦い。
再び始まる終わりの見えない時代にかつての少年の口からは吐息が漏れた。
大成功
🔵🔵🔵
木常野・都月
【電脳精霊】
調査と避難誘導か。
俺は避難誘導なら何とか。
和田町さんは調査をお願いできますか?
っとその前に。ちょっとすみません。
和田町さんに[オーラ防御]をかけよう。
俺の影響を受けないように。
これでよし。
穏便に避難誘導って言われても俺はよく分からない。
きっと要は人がこの廃屋から離れればいいんだ。
ならUDCアースにある、あの超音波を使えばいい。
大きなビルの入り口で流れてる、人に聞こえない高さの超音波。
入り口に人が貯まらないようにする音だと聞いた事がある。
あの超高音を廃屋の周囲に流せば、人は自然に廃屋から遠ざかるはず。
風の精霊様、あの超音波を廃屋を中心に流して下さい。
ううっ。痛い。俺は耳塞いでおこう。
和田町・いずみ
【電脳魔術】
調査と避難誘導ですか。
ですので、私は調査して行きます。
廃屋に関連する記事を探したり、証言を聴いて周ります。
都月さんにかけてもらったオーラ防御を活用して、調査しつつ、落ち着いて[情報収集]して行きます。
●下準備は聞こえざる響きと共に
空気が震える。
夜も近くなるというのに鳥が飛び立ち、獣の姿は消えていく。
重苦しい風が流れる中、電子端末片手に歩くのは和田町・いずみ(人間の電脳魔術士・f07456)。
指先がディスプレイに描くのは二十年前の出来事。
ニュースサイトに記事は無くとも、図書館には記録がありPDFとして吸い上げられているであろう。
記されているのは、一面を占めるほどもない小さな記事。
殺人事件故、それなりには扱われているが、それだけの出来事。
掴んだ運命の糸は人が迷い、傷つけた結果、残した名前だけであった。
「ううっ。痛い」
廃屋の傍で木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)が耳を抑える。
UDCアースにて使われているという超音波。
人がビルの入り口に溜まらないようにするための不可聴の響き。
それを風の精霊の力を以って都月は再現した。
勿論、代償はある。
人には不快でも狐には苦痛に感じる。
動物としての可聴域の違いか、妖たる狐の力ゆえか。
人が持たざる物を持つというのは時にして苦痛をもたらすものであった。
「和田町さん大丈夫だと良いんだけど」
眉を歪め都月は呟く。
念のためにやっておいたことが上手くいっていればいいのだけど……。
そう考えるのが精一杯の狐であった。
「こんにちは、お話良いですか?」
夕暮れ時の不協和音に顔を顰めていたサラリーマンがいずみの言葉に振り向き、そして表情を和らげる。
「二十年前に起こった事件に関して、知っていれば教えていただきたいのですが」
男は得てして女性には甘いものだ。
だがそれ以上に、彼女の周りに居ると心ざわめかせる何かが消え去るのをサラリーマンは感じていた。
それは都月がいずみへとかけたオーラ防御。
見えない障壁が超音波を阻み、電脳の魔女が廃屋を背にすることで小さな安全地帯を作り出す。
自然、人は安堵から口を開き、情報を渡す。
時が経ち、廃屋へといずみが戻ってくる。
「大丈夫です?」
「あんまり」
電脳の魔女の言葉に狐は眉をしかめたまま。
彼女にかけたオーラ防御の領域に自分が入ったことを確認すると、都月は改めて確認した。
「で、何か分かった?」
「幽霊騒ぎは殺人事件が起きて、色々と片付いた後。事件が風化しかかった頃に起こったようです。まるで忘れさせないようにするために」
いずみの言葉に、狐は空を仰いだ。
「忘れないように……か」
カクリヨの世界にて再開した両親。
自分を忘れることが無かったことが嬉しくて、そしてもし忘れていたらと頭によぎり、身震いする。
「どうしました」
「なんでもない」
和田町・いずみの問いに応える木常野・都月の表情は言葉と裏腹に不安を見せていた。
……誰だって忘れ去られたくないものだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リューイン・ランサード
この世界は初めてですが、過去に大きな出来事が色々と有ったのですね。
慣れる意味も含めて、付近の図書館で過去の新聞や雑誌を調べて廃屋やそこに住み家族に何が起こったのか調べてみましょう【世界知識・情報収集・学習力】。
「世界結界」で超常現象はすぐに忘れ去られるという事ですが、何らかの悲劇が起こり、常識的に受け入れられる内容として認識されている筈。
その内容をオブリビオンや妖獣に関係する内容に変換し直せば、概要くらいまでには近づける、かなあ?
(この世界初参加なので、今一つ自信が無い。が、頑張ります。)
尚、他の猟兵さんと協力し合えるのなら喜んで協力します。
栢沼・さとる
連携、アドリブ歓迎
真の姿:現時点では外見上の変化なし
せっかく平和になったと思ったのに……でも、こういう時に役に立てる力があるのは素直に嬉しいです! 頑張ります!
私は事件の調査を重点的に行いますね、避難誘導はお任せできれば
今はスマートフォンも普及して便利になりましたね、過去の事件も検索すれば大体wikiに概要が書いてありますし
……でも、そうじゃないんです
私が本当に欲しい情報は、そこにはない
普段は下世話な話しか書いてないからあんまり好きじゃない週刊誌
ずけずけと人の秘密を暴く性根こそが、廃屋についての秘密に導いてくれる
癪ですけど、これも正義のため
きっとどこかで「不自然な点」が見つかるはずです
●それはほんの小さく深いもの
もうすぐ閉館に至る図書館の中、二人の男女が新聞から週刊誌まで机いっぱいに広げていた。
「この世界は初めてですが、過去に大きな出来事が色々と有ったのですね」
リューイン・ランサード(乗り越える若龍・f13950)は初めて足を踏み入れた、かつて人々が戦った世界の歴史に関心を抱きつつ、視線は目の前の新聞記事から離れない。
他の猟兵が調べたように書かれているのは大きな写真も載らなかった一家無理心中。
無職の息子が両親を殺害し、首を吊って終わった話。
あっという間に風化していったそれは次第に掲載されることが減っていくのが分かる。
「これ、本当に普通の殺人事件だったのかなあ?」
「おそらく、そうですし。そして多分違うんでないかと」
目の前の能力者の言葉にリューインは視線を記事から相手に向ける。
そこには栢沼・さとる(流星の馭者・f35303)が居た。
「せっかく平和になったと思ったのに……」
再び始まる争いの気配にさとるは悔しそうに呟き。
「でも、こういう時に役に立てる力があるのは素直に嬉しいです! 頑張ります!」
すぐに気持ちを切り替える。
あるのは能力者としての使命と猟兵へのリスペクト。
決意を言葉にしてから、此処が図書館であることに気づいて身を正し、そしてリューインの視線に応える。
「ええとですね……まず世界結界はご存じですよね?」
緊張した声で問いかけるのは能力者の女。
「ええ、世界結界で超常現象はすぐに忘れ去られるという事ですが、何らかの悲劇が起こり、常識的に受け入れられる内容としては認識されている筈」
猟兵の男は前提を確認したうえで、あたらめて考えを述べる。
「その内容をオブリビオンや妖獣に関係する内容に変換し直せば、概要くらいまでには近づける、かなあ? と」
「そこなんですよ」
さとるが指摘する。
「確かに世界結界で超常現象やオブリビオンに関する事件は修正されます。でも、これは二十年前の事件。オブリビオンは居ませんし、もしゴーストが関係していれば何らかの形で能力者に知られているはずです」
「つまりは……最近に起こった事件ということですか?」
リューインの言葉に女は頷いた。
「おそらく幽霊騒ぎは噂話かあるとしても……残留思念が残る程度。シルバーレインでも実体化しなかったものだと思います」
さとるの手の中で当時の週刊誌が開かれた。
「それは……?」
「週刊誌ですよ、まだスマホが普及する前の情報ソースは紙が主流でしたから」
リューインの問いにさとるの眉が歪む。
「下世話な話やずけずけと人の秘密を暴く性根の現れた記事ばかりですが、こういう物が廃屋についての秘密に導いてくれると思うんです……癪にさわりますが」
女にとって好みではない週刊誌。
けれどこれも正義の為。
誓ったのだ、真実に近づくと。
だからこそ見つける……不自然な点を。
「……動機」
さとるがぽつりとつぶやく。
意味に気づき、リューインが顔を上げる。
「この事件、動機は家庭内の諍いという事になっていますが、真実は違うのでは……?」
「確かに……幽霊騒ぎも事件が風化されようとされた辺りから起きたと聞いています」
能力者の疑問に仲間からの情報と統合し猟兵が補強する。
「本当は……」
途中まで呟き、さとるは言葉を止めた。
「悪名であっても自分という人物を知ってほしかった」
だからリューインが継ぐ。
それは自分が何者かを知ってほしかったという心が生み出した小さくも深い闇であった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
南青台・紙代
【SPD】アドリブ連携歓迎
小説で賞を取りたかった、か。
我輩にもわからんではないのである。
賞が欲しかっただけではない、己の書いたものと、
ニアリィイコヲルである己を、認めて欲しかった。
……そう思っていた時期も、あったのである。
我輩が共感し得る執着故に獣と化す死者を、止めてやらねばなるまい。
『私には貴方がおりますので、こうして生きていかれまする』
我輩の一の読者、我が身に住まう蛇怪よ、影を貸しておくれ。
幽霊騒ぎのある廃墟だ。お前の影を揺らめかせれば、
人払いの助けにもなれるであろう。
我輩は[闇に紛れる]ようにして身を隠し、
[念動力]で少しあらぬ方向から物音を立てたりもしよう。
●人は何者であるかを知る生き物である
廃屋を歩く女がいた。
藍色の髪をリボンで結い、光る双眸は赤。
「小説で賞を取りたかった、か」
独白するは南青台・紙代(言の葉綴りし青蛇女・f23355)。
「我輩にもわからんではないのである」
物語を綴る者ゆえ、死者の一端を理解する。
「賞が欲しかっただけではない、己の書いたものと、ニアリィイコヲルである己を、認めて欲しかった」
筆を執った時、作品が形になった時、生まれしものは理解できる。
「……そう思っていた時期も、あったのである」
けど、それは過去の話。
今は生きるために筆を執り、死ぬために筆を握る。
だからこそ……
「我輩が共感し得る執着故に獣と化す死者を、止めてやらねばなるまい」
彼女は銀の雨降る異界へと足を踏み入れた。
「私には――」
紙代の声が響く。
「貴方がおりますので」
それは祝詞であり。
「――こうして生きていかれまする」
情念である。
念は意志となり魂魄となり化生となる。
ジャエイヨブコトノハ
蛇影呼ぶ言の葉
現れるは蛇怪。
紙代の一の読者にして、作品。
「幽霊騒ぎのある廃墟だ。お前の影を揺らめかせれば、人払いの助けにもなれるであろう」
蛇怪は主の意を組み、沈みゆく西日へとその身をさらした。
朱の夕暮れ、青を失うつつある光は化生の影を映し、廃屋の壁にその禍々しき動きを描いていく。
唸り声が響いた。
蛇怪の声ではない。
闇に消えた紙代が念動力で鳴らした音だ。
屋敷を歩む怪異、響き渡る声。
それを見た者は自然、自然と背を向ける。
写真に写った怪異を古いフィルムの多重露光等に修正してしまうほどの世界結界。
その綻びを貫く恐怖に、人は耐える術など持っていないのだから。
「なあ、貴殿は……何になりたかった」
紙代の唇から自然と漏れたのは何だったのだろう。
文豪は唇を拭い、それを脳内の原稿用紙の片隅に書き留めるだけにとどめた。
……答えはいずれ出るであろうから。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
事前に廃墟周辺に●破壊工作
狼煙の要領で白煙を長時間立ち昇らせ
(住宅地にて)
失礼いたします、消防署の方から参りました
あの煙が見えますでしょうか?
実はあちらの廃墟に不法投棄された化学物質がガスを発生させているようで…直ちに健康に影響ありませんが専門家の方々の処理が済むまで避難をお願いしております
ええ、避難場所はこちらが宜しいかと…
…新世界を訪れ早々に身分偽装と虚言とは…
似て非なる世界のUDC組織の有難みを実感しますね…
“本物”が来る前に終わらせたいものです
機会あらば銀誓館学園…この世界の先達の方々のノウハウを尋ねたいものですが…今は騎士として為すべきを為しましょう
廃墟について聞き込みしつつ家々回り
黒木・摩那
ただでさえオブリビオンは強力なのに、それが妖獣化というのは穏やかではないですね。
周囲への被害が広がってしまうかもしれません。
ここは近隣住民へ情報収集を兼ねて、避難誘導をしていきます。
身だしなみを整えて、隣家を訪ねていきます。
市役所から来ました。
件の廃屋からスズメバチの大きな巣が発見されまして緊急駆除します。
つきましては、近くの銀誓館学園に避難してください【言いくるめ】。
お隣り、廃屋のようですが、本当に無人か、ご存知ですか?
必要ならばUC【虎蜂旋風】でスズメバチ出して、危機感煽ります。
●戦士が戦士たらんとするために
家のインターオンが鳴る。
来客の予定はない。
警戒しつつ住人が内蔵されているカメラを通して来訪者を見ると、鋼鉄の鎧が立っていた。
「失礼いたします、消防署の方から参りました」
なるほどレスキューの人。
だから大きいのか。
違和感を感じさせない猟兵の特性と世界結界が合わさり、家人はトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)を受け入れる。
「あの煙が見えますでしょうか?」
トリテレイアが指さす先には夕日に彩られる白煙。
「実はあちらの廃墟に不法投棄された化学物質がガスを発生させているようで……直ちに健康に影響ありませんが専門家の方々の処理が済むまで避難をお願いしております」
消防署の方からやって来た騎士の言葉に住人はすぐに避難の準備を始めた。
「ええ、避難場所はこちらが宜しいかと……あ、行ってしまいましたね」
指示した場所へ走っていく男を見送りつつ、戦機は次の家に回った。
「市役所の方から来ました」
黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)も同じように廃屋を指差す。
「件の廃屋からスズメバチの大きな巣が発見されまして緊急駆除中です」
ただし、立ち上る白煙は違う理由に使う。
「人体には有害ではありませんが、拡散する危険があります。つきましてはこの場所への避難をお願いします」
同じように廃屋より距離を離そうと試みる。
様々な現象が起こる中、誰かが避難を促せば自然、人は足を動かす。
それが消防署や市役所と言った肩書があればなおさら有効だ。
手馴れた摩那の言いくるめに人は次々と避難を開始していく。
「そういえば」
その最中、廃屋に近くに住む主婦へと迷い子は声をかける。
「ご近所、廃屋のようですが、本当に無人かご存知ですか?」
すぐにこの場から離れたいであろう住民は容易く口を開いた。
「もう二十年前から無人よ。誰だって寄り付かない、解体業者が来たこともあったけど、すぐに中止して結局そのままなの」
「……ありがとうございます」
去り行く主婦の背中に礼を述べながら、摩那は思考の片隅に何かが残るのを感じる。
「新世界を訪れ早々に身分偽装と虚言とは……」
その思考を打ち切るようにトリテレイアが呟いた。
自分の持ち場を終わらせて合流してきたのだ。
「似て非なる世界のUDC組織の有難みを実感しますね……“本物”が来る前に終わらせたいものです」
「そうですね、出来れば早急に」
「……黒木様?」
摩那の言葉に感じるものを悟り、問いかける騎士。
「その本物……どうして今まで見つからなかったのでしょうか? 二十年前なら能力者が対処していたでしょうに」
「機会あらば銀誓館学園……この世界の先達の方々に尋ねたいものですが」
返ってきた答えに対し、戦機も考え、能力者たちがどうしたかを知りたいと口にする。
けれどそれ以上は空が許さなかった。
日は沈み、闇が近づく。
「今は猟兵として為すべきを為しましょう」
トリテレイアは自分の役目を全うすべきことを選んだ。
情報収集に動く仲間がいる、形にした能力者がいる。
ならば自分達がすべきことは――人々の安全。
自分が何者かを知っているならば、自然と選ぶ選択肢。
彼らは戦士――過去の残滓を狩る猟兵なのだから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
レモン・セノサキ
残留思念の扱いは熟知してる
けど、経験者が率先してやっちゃったら後続が覚えないからね
調査は優秀な"後輩達"に任せるとしよっか
乱符・複製偽身符!
100人の分体達で方々に散らばって避難を呼びかける
お題目は『動物園から猛獣が逃走』でいいかな?
同じ顔が誘導してたら不自然だな
それぞれが良く似た背格好の別人に見えるように
住民には軽く▲催眠術でもかけようか
必要なら「ディアボロスライナー」に乗せて避難サポート
勿論普通のバイクに偽装、乗り手の見た目も成人に偽装だ
さぁ、悲願だったこの世界での活躍だ
張り切って行くぞ、おーっ!
……ところで分体達、私の本体に見破られるなよ?
『私の偽身符ー!』とか言って回収されちゃうぞ
●もう一人の帰還者
避難を促す者が居れば、それを誘導する者もいる。
レモン・セノサキ(金瞳の"偽"魔弾術士・f29870)がそれだ。
調査は他の猟兵に任せ、偽身符という仮初を生み出す符から顕現した特性を活かし、ユーベルコードによって紡がれた百体の分身と共に逃げる住民を安全な場所へと誘導する。
「さぁ、悲願だったこの世界での活躍だ」
帰ってきた世界での任務にレモンは嬉しさを隠せない。
「張り切って行くぞ、おーっ!」
追随するかのように分身も応え、動き始めた。
そして気づくこともある。
「……ところで分体達、私の本体に見破られるなよ?」
彼女とその分身はこの世界の能力者がつかう偽身符から生まれた者。
つまりこの世界にはレモンの本体たる能力者は別に存在する。
偽身符とは本来能力者が日常生活を営むに支障をきたさないための分身の触媒。
「『私の偽身符ー!』とか言って回収されちゃうぞ」
故に本人の手元に戻ってしまう可能性もあった。
分身に呼びかけつつもヤドリガミは自らがそうなった場合を思考というキャンバスに書き込む。
今はまだ出会えていないけれど、もしレモンが能力者たる本体に出会った時、どのような結果になるのだろう?
だが出来れば只の符には戻りたくないと思っていた。
自分は一個の意思を持った人間。
何者かを知る存在なのだから。
逃げる人々を見守る中、ふと視線は廃屋へ。
あそこに居るのは何者だろうか?
廃屋から答えは返って来なかった……。
大成功
🔵🔵🔵
エル・クーゴー
●避難誘導
『シルバーレイン』に現着
これより作戦行動を開始します
・飛行用バーニア展開、廃屋周辺を大まかに俯瞰し地理把握を(空中浮遊+偵察)
・【ウイングキャット『マネギ』】発動
・デブ猫MAX550体を降下させ、地表からも路地の伸び方や交通状況についての【情報収集】を同時進行、情報を随時受け取りつつ猟兵間で共有出来るよう発信
・マネギ達は避難誘導開始に備えその辺に潜ませとく(団体行動)
・避難誘導開始に際しては、マネギ達に立て看板を駆使させたり赤くてピカピカ光る棒を振らせたりする
・転びそうな人あらば、マネギのぶよぶよボディでサッと割り込み事故防止
・移動困難な人あらば、マネギ達でワッショイワッショイ運ぶ
●SilverRain
何者かを知りたい者もいれば、役割与えられ何者かになった者もいる。
「シルバーレインに現着――これより作戦行動を開始します」
彼女の名はエル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)。
過去を失ったが、新たなタスクを与えられ、今を生きる。
不満はない。
今の自分には仲間と役割があり、何者かを知っているから。
いや、少しだけ不満はあった。
だがプライベートなことなのでそのメモリにはロックを掛けた。
不満はあっても不快ではないのだから……。
廃屋周辺を飛行し、エルは俯瞰した視界から地理を把握する。
続いて550体の羽を生やしたデブ猫が空を舞い、住宅街へと降下する。
ウイングキャット『マネギ』
ミレナリィドールの操る機械兵器にして、情報端末。
大体規模のデブ猫が高高度降下低高度着陸をこなすと地上に展開。
周囲の状況を指差し確認。
現況を把握し、空中から把握しきれない路地の伸び方や交通情報を収集、エルへと即時伝達を行う。
「情報確認、各猟兵に共有を開始します」
大量の情報を受けたミレナリィドールのゴーグルに光が走り、秒を挟まない速度で精査されたデータが猟兵達へと伝達される。
それに伴い住民の避難の速度も上がり、戦場が確保され始めた。
条右方伝達だけではない。
地上においてもエルの指示によって随所に配置されたマネギが看板を持ち、誘導灯を振って道を案内する。
人々は混乱なく導かれ、移動が困難な住民は他の猟兵とデブ猫によって運ばれていった。
やがて空から太陽が消え、月が大地を照らす頃。
廃屋を中心に周辺は闇が支配した。
もう巻き添えになるであろう人はおらず無用な犠牲は起きない事は確信となった・
「…………」
闇を見下ろす月下の少女が思考する。
妖獣化したオブリビオン。
銀の雨の降る世界にて、現れるのは何者であろうか。
だが、その思考は髪を塗らす雫によって中断される。
「銀色の雨……各位に伝達、オブリビオンの反応を検知しました」
エルの視野とマネギの情報が異変を確認した。
現れるのだ……かつて能力者達が戦ったゴーストが。
オブリビオン――質量を持った過去となって。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『ソードヴォルフ』
|
POW : 剣狼斬
【日本刀または体から生える刃】が命中した対象を切断する。
SPD : 無人刀
【刀に宿る残留思念の励起】によって、自身の装備する【日本刀】を遠隔操作(限界距離はレベルの二乗m)しながら、自身も行動できる。
WIZ : 剣狼の呼び声
【体から生える刃】で武装した【狼型妖獣「剣オオカミ」】の幽霊をレベル×5体乗せた【巨大「剣オオカミ」】を召喚する。
イラスト:天野 英
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●IGNITION
銀色の雨。
激しい夕立を思わせる白銀の迸り。
雨雫は冬が近い夜に寒さをもらたし、人の営みが残した温もりを奪い去る。
やがて雨は終わり、生き物の気配が消えた大地に『それ』は来た。
歩く姿は人のようであり、その手には刀が握られていた。
だが風貌は狼を思わせ、その身体からは刃が生えていた。
人でも獣でもない異形の亡霊。
過去に世界が人類を排除するために生み出した抗体。
世界結界の影で牙を研ぐ妖獣。
だが、それは昔の
話。
今、ここに居るのは過去より現れた獣なのだ。
名はオブリビオン。
猟兵が狩るべき存在であり、能力者の新たな敵。
廃屋を囲み込む様に獣たちはにじり寄る。
その口からは咆哮が、その視線には殺意が。
全ての人間を滅ぼさんとするかのように。
雲が晴れ、月光が戦場を照らす。
舞台が整ったのだ。
さあ戦いの焔に火を灯せ。
封印を解き、今こそ叫ぶのだ。
――イグニッションと!!
キース・クリストファー
「イグニッション」
覚悟なんて決まり切っているカードを構えて
そうつぶやきましょう。
使い慣れたアビリティのように調整しましたが
ユーベルコード、使えるでしょうか…
UCの風を纏って相手からの狙いを定めにくくし
少しずづでもいいので相手に斬撃を与えます。
力と速さがあって、敵は切断が容易だと思うので
その素早さを少しでも下げてみようと試みます。
回避ができそうにない場合は受け流しでやり過ごします。
「この数、ゴーストタウンを思い出しますね」
僕らのお役目は、果たしましょう。
アドリブ大歓迎です。
エル・クーゴー
●SPD
躯体番号L-95
当機は市街地戦に於ける用兵に高い適性を発揮します
――『イグニッション』(ふんいき出す)
・【合体強化マネギ】発動
・MAX110体を交戦地帯内へ逐次投入、己は全機の活動を【瞬間思考力】も用いリモートで統括する
・味方の援護や、マネギ達だけでの敵撃破と、戦況に応じて動く(援護射撃+団体行動)
・第1章にて得た地形情報を此度のマネギ群にも共有させ、奇襲や地形を活用しての敵攻撃射線寸断とに活かす(学習力+先制攻撃)
・マネギ各機が『1の数字』では対処出来なさそうな敵とカチ合った際は、適当に合体して強個体を繰り出す
・あとエルのアームドフォートより放物線軌道でピンポイントに【砲撃】を落とす
南青台・紙代
【SPD】アドリブ・連携歓迎
ふむ、前哨戦らしいが油断はできぬのである。
では、この世界の作法に合わせてみようか。
「――イグニッション」
と、まるで『藍色表紙の文庫本』の
[封印を解く]かのようなポヲズをとる。
(独りでにページがめくれる)
「燃ゆる我が情念よ、獣となりて獣を喰らえ」
(本の中から黒い影の獣の群れが飛び出して、
敵の足元にまとわりつき移動の邪魔をしようとする)
振り回される日本刀の攻撃などは、
『蛇怪之気』のオーラで防御するのである。
……我輩の心の内の獣は、こうして制御下にあるが、
扱いを間違えてしまえば、自身の身さえ
獣に成り果てさせてしまうのやもしれぬな……
●風よ、獣よ、炎よ
「躯体番号L-95」
エル・クーゴーが自らのナンバーを名乗る。
「当機は市街地戦に於ける用兵に高い適性を発揮します」
その言葉を裏付けるかのように、羽根を生やしたデブな機械猫マネギが小隊規模で正面に展開した。
Battle・$・cat's
合体強化 マネギ
あっという間に展開した機械兵器の集団は廃屋周辺の地形を掌握し、その身の小ささを活かし、遮蔽物から火砲を開く。
コントロールされた制圧射撃によって剣狼は動きを止め、猟兵達は機を掴む。
覚悟なんて決まり切っていた。
キース・クリストファーの右手には一枚のカード。
能力者が持つ封印にして、戦の焔を点火する火種。
「ふむ、前哨戦らしいが油断はできぬのである」
そのカードを見て南青台・紙代も気を引き締める。
戦いの時間が始まったと悟ったのだから。
「では、この世界の作法に合わせてみようか」
紙代がキースの右へ、エルが左へ並ぶ。
「「「イグニッション」」」
声が重なった。
無垢な風が能力者を包み、藍色表紙の文庫本のペヱジが独りでに開き、アームドフォートが砲門を開く。
ソードヴォルフを仕留める狩りが今、始まった。
マネギによる射撃が収まったのは幾秒か、次に来るのは汚れ無き無垢な風。
清らかな流れは目に見えず、匂いもなく、音もない。
だが風が剣狼にまとわりつけば、その首は流れるように持っていかれるであろう。
Mane of Wind
風 の 鬣
「糸巻く鬣、鈴成りて」
音もなくオブリビオンの頭に乗るキース。
軽く体重を掛けて跳べば着地と同時にヴォルフの背中を朱色の数珠が巻かれた一文字拵えで切り裂いた。
一方の剣狼のやられっぱなしではない。
耳も鼻も目も効かなければ、風に触れろとばかりに刀を構え切っ先で揺らぎを探る。
だが、それこそが罠。
銃声が響き、回り込んでいたマネギの斉射がオブリビオンを蜂の巣にし、その額にエルが拳銃弾を叩き込んだ。
能力者が纏う風はただの身を隠す纏いの衣ではない。
絡みつくように敵を捉え素早さを奪う
「其の靡く風に輪舞る族」
――静かなる暴風。
「この数、ゴーストタウンを思い出しますね」
思い出したかのように呟くとジグザグにステップを踏みキースが敵から斜めの位置を取れば、次に襲うのは黒き影。
「燃ゆる我が情念よ、獣となりて獣を喰らえ」
其れは言の葉
其れは情の念。
其れは影の獣。
紙代が銘ずるは――
ケモノウム コトノハ
獣生む言の葉
黒が銀を喰らう。
残留思念を纏いしオブリビオンの刀が影を貫くがそれでも数が足りない。
瞬く間に黒は銀を染め上げ、そこに残るのは影を縛られし剣狼ども。
「……我輩の心の内の獣は、こうして制御下にあるが」
原稿用紙に筆を入れ、紙を読み物へと変えるかのように戦場を掌握した文豪が独白する。
「扱いを間違えてしまえば、自身の身さえ、獣に成り果てさせてしまうのやもしれぬな……」
自らの日記帳に記すかのように。
「お役目、果たしました」
その思考を断ち切るかのようにキースの言葉が耳朶を打つ。
「さあ、今です」
同じように紙代も口を開いた。
今が好機だと。
「了解しました。当機は只今より効力射を実行します」
声の主。
マネギ達の奥に居たエルのゴーグルが緑色に光る。
相手の動きは能力者と文豪が鈍らせた。
位置はデブ猫が把握し、一体ずつ間接的にレティクルを合わせている。
後は引鉄を引くだけだ。
「――砲撃開始」
銀の雨を上回る炎の雨が降り注ぎ、一帯に居たオブリビオンは残らず消えた。
「躯体番号L-95より猟兵へ、担当区域の無力化に成功」
戦場を制圧しミレナリィドールが仲間に通信する。
それをキースが興味深そうに見つめていた。
「どうしました?」
怪訝に思った紙代が問いかける。
「自分達が戦った頃にゴーストによって通信が無力化されたことを思い出しましてね」
能力者は過去を語る。
「世界が変わりつつあるな……と」
変わりゆく世界に若干見せる戸惑い。
「そう、世界は変わりつつあります。それでも我輩たちは戦うしかないのです」
文豪はそこへガス灯が如き灯火を示す。
「貴殿達が自分であるために。人が人として営みを過ごすために」
「シルバーレインにおける通信網の確立を確認しました」
エルが改めて通信の確保を告げる。
「今後、キース・クリストファーが通信において困難に陥る状況は大幅に減少すると思います」
「ありがとうございます」
二人の言葉に礼を述べるキース。
「では、仲間のところへ行きましょう。戦いはまだ終わってないですし」
今もこの地で戦っている若者の言葉を拒む者は居なかった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
和田町・いずみ
【電脳魔術】
シルバーレインのオブリビオンですか…
私は戦闘は得意ではありませんので、電脳魔術を駆使して都月さんのサポートします。
[落ち着き]で冷静に敵を[世界知識、視力、集中力]で分析したり、電脳魔術で攻撃します。
木常野・都月
【電脳魔術】
シルバーレインのオブリビオン…
人狼に似てるけど…妖獣か。
でも、やる事は変わらない。
人と世界を守るんだ。
俺には月光の助けと[暗視]がある。
これでも野生育ちなんだ。夜目に慣れてる。
[野生の勘、第六感]を働かせて、見取り。敵の動きに注意しよう。
ダガーとエレメンタルダガーを装備、エレメンタルダガーには雷の精霊様を仕込み接近戦を挑もう。
風の精霊様に空気抵抗を減らして貰い、UC【俺分身】で手数を増やし、和田町さんの援護があれば、それなりに渡り合えるかも?
和田町さんの方へは行かせないようにしないと。
刃が敵に触れたら[属性攻撃]で電撃を敵に流し込もう。
敵の攻撃は[カウンター]で対処しよう。
●野生と電脳
「「シルバーレインのオブリビオン」」
木常野・都月と和田町・いずみの言葉が重なった。
「人狼に似てるけど……妖獣か」
都月の視線はソードヴォルフへ。
「でも、やる事は変わらない、人と世界を守るんだ」
違う世界。一度大きな戦いが終わり、そして再び脅威にさらされる世界。
けれど揺るがないものがある。
過去を狩る。
猟兵としてのその決意が狐を肉食獣へと変える。
「では、私はサポートへ。戦闘は得意ではありませんし」
いずみが後ろに下がる。
適性がそうさせるのであろう、自然と一段高い位置を陣取りオブリビオンを俯瞰する。
「じゃあ、行くよ」
「灯りは大丈夫ですか?」
前に進む都月に電脳の魔女が闇夜の不安を問う。
闇夜では鼻が利く獣が有利なのだから。
「これでも野生育ちなんだ。夜目に慣れてる」
暗視持ちの狐が一歩駆けだした。
「出てこい……俺」
二振りのダガー、一つは両刃。もう一つは片刃にして雷の精霊が宿りし精霊の短剣。
両手に刃を握った都月が闇の中もう一人。
オレブンシン
俺分身
それは分身にして、もう一人の狐。
二人の都月が剣狼の群れに飛び込んだ。
「始まりましたね、冷静に……冷静に……」
一方のいずみは自分に言い聞かせるように呟き、瞳を閉じる。
瞳に焼き付いたオブリビオンの残像。
一匹たりともその視力は逃さず。
闇夜に居た者すら視つけ。
その情報を強制的に脳で拡張させる。
parablepsia
拡張 錯視
見開いた目がレールをイメージする。
全ての敵の動きを封じるべく包囲された軌道を走るが如く電脳は魔法となり、顕現するのはGV系気動車。
電線は要らない、ディーゼル・エレクトリック方式で回るモーターが鉄の箱を走らせるのだから。
「今です!」
電脳の魔女にして鉄の女の言葉に都月が舞った。
風は感じなかった。
精霊が空気抵抗を操っていたのだから。
残留思念が操るオブリビオンの日本刀は密集した戦場では思うように動かなかった。
故に敵味方入り乱れる中、狐は暴れるだけでいい。
鉄の刃と雷の刃がソードヴォルフを捉える中、止めとばかりにいずみが召喚した気動車が狼の集団へと飛び込んだ。
ちなみに気動車とはエンジンで動く列車の事であることをここに解説しよう。
戦いが終わり、レールも気動車もオブリビオンも消える。
和田町・いずみと木常野・都月は戦場を確保したことを確信すれば、仲間の増援へと走っていった。
戦いはまだ続くのだから。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
黒木・摩那
動物園から猛獣が逃走、という話が来てたけど、あれは本当だったね(棒)。
廃屋の住人は狼でも飼っていたのかしら。
ともかく、あんな刀だらけの狼を野放しにしておくわけには行きません。
一刻も早く刈って、街の安全を確保しましょう。
ヨーヨー『エクリプス』で戦います。
あらかじめ、住宅の屋根など高い位置を確保。
そこから、ヨーヨーを投げつけて【なぎ払い】することで、ゴーストを倒していきます。
数が集まってきたら、ゴーストの一匹をヨーヨーで捕らえて、そのまま大回転。
群れにぶつけていきます。
リューイン・ランサード
うわあ、斬られたら痛そうな相手が出てきました。
僕、痛いの嫌なんです。
ここは躱した方が良いけれど連携されると厳しいので・・・ここはコレかなあ。
UCで生み出された大きくて丸い”何か”が廃屋の天井部から妖獣の1体に向けて落ちる。
斬られて割れた巣から大量のスズメバチが飛び出し、妖獣達をその刀や刃で防げない角度から毒針と噛みつきで攻撃して混乱させる。
廃屋ってスズメバチの巣が作られやすいんですよね~。
スズメバチで妖獣達の連携を乱し、第六感と見切りで相手の攻撃を躱しつつ、光の属性攻撃・全力魔法・高速詠唱・範囲攻撃で生み出した光の矢衾を放ったり、双剣による風の属性攻撃・2回攻撃・怪力で斬り裂いたりで倒します。
●狩りの時間
戦いの中、廃屋の屋根に陣取るのは二人の男女。
「動物園から猛獣が逃走、という話が来てたけど、あれは本当だったね」
黒木・摩那の言葉には何一つ重みも感情も無かった。つまりは棒読み。
「廃屋の住人は狼でも飼っていたのかしら」
女の視線は男の方へ。
「うわあ、斬られたら痛そうな相手が出てきました」
一方でリューイン・ランサードの口から出た言葉には重みがあった。
「僕、痛いの嫌なんです」
正直に告白するリューインの姿に摩那を目を丸くして。
「頑張ろう、少年」
容赦なく突き放した。
「そんな!?」
「ともかく、あんな刀だらけの狼を野放しにしておくわけには行きません」
若龍の言葉を無視し、迷い子の女は改めて状況を確認する。
雑談の時間はもう終わりだ。
「一刻も早く刈って、街の安全を確保しましょう」
その言葉にリューインも覚悟を決めて頷いた。
距離を詰めてくるソードヴォルフ。
「何か手はある?」
摩那が問えばリューインは考え込む。
「ここは登ってきた奴の攻撃を躱して戦うのが良いけれど連携されると厳しいので……」
呟くうちに恐怖は思考が塗りつぶす。
恐れはあるが足は動く、手も動く。
「ここはコレかなあ」
若龍の両手から黒くて大きい何かが生まれる。
それを放り投げると、剣狼は反射的に切り落とし――そして蟲の群衆がオブリビオンを襲った。
Hornet nest ・ Creation
ホーネットネスト・クリエイション
それはスズメバチの大群。
想像から創造された無敵の雀蜂に対し、ソードヴォルフは為す術を持たない。
「廃屋ってスズメバチの巣が作られやすいんですよね~」
屋根から眺めるリューインの言葉。
自然と口数が多くなっていた。
当然であった。
このユーベルコードは能力に疑念が生じれば強さを失う。
だからこそ言葉で思考を上書きしていかなければ若龍の意志が揺らぐのだ。
それを悟った摩那は何も言わずにヨーヨーの環に指を通した。
エクリプスと名付けたそれは迷い子の女が解放する超能力の力場により斥力を増し、逃げ道を探し走り出した剣狼を薙ぎ倒す。
La Faux
獅子剛力
ヨーヨーを通して発揮される剛力に等しい斥力がオブリビオンを蜂の群衆の中に歩放り込み。
さらに逃げる一体のヴォルフを捕らえ、ハンマー投げの要領で振り回してスズメバチに襲われている剣狼の群れに叩き込む。
自らより素早く小さい上に毒を持つ虫に痛めつけられた上に突然の衝撃。
たちまちオブリビオンの群れは崩壊し、そこへ雀蜂が殺到した。
完全なる蹂躙
最早、リューインの心は揺らぐことは無く、摩那は逃げようとしたソードヴォルフを一体ずつ狩場に放り込むだけで済んだ。
狩りは終わった。
「これで、この辺りの安全は確保……っと」
黒木・摩那が安堵と共に呟く。
戦場はいくつもあるも安全地帯のひとつは確保したかったからだ。
「あとはみんなに連絡すれば大丈夫――」
場所を確保したことをリューインが伝えようとした時、戦場に再び銀色の雨が降った。
「これは……」
敵の襲来を警戒した若龍が雨雫に触れた時、それは違うと悟った。
隣に居た摩那も頷く。
これは味方による恵みの雨であった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
栢沼・さとる
このイグニッションカードも随分年季が入ってきましたね……
行きます! 解放した武装は懐かしの七支刀
思えばいろんなジョブを経験しましたけど、これが一番しっくり来ます
そしてこれまたどこかで見たゴース……えっと、オブリビオン!
戦場でご一緒する皆さんが戦いにくくならないように
「天候操作」で銀の雨が降る範囲を確認して絞りながら
【ヘブンリィ・シルバー・ストーム】を発動です
私が扱える時間はまだ長くないですが、力になれれば
万色の稲妻任せにせず、七支刀で「斬撃波」を起こして
牽制や直接攻撃も頑張りますね
飛んでくる日本刀を撃ち落としたりしちゃったり
んん、久々に本格的に戦ってる感じがする
平和が一番ですが、こう、滾ります
●優しい雨
七支刀が振るわれ、自らを襲う剣狼の刀を叩き落とす。
ショートカットに切りそろえた黒髪が雨を吸って重くなる中、栢沼・さとるが見つめるのは年季の入ったイグニッションカード。
「思えばいろんなジョブを経験しましたけど」
刀を向けた先に落とすのは万色の稲妻。
「これが一番しっくり来ます」
全ての敵を打ちぬく致命的な雷撃がソードヴォルフを残らず狩っていく。
ヘヴンリィ・シルバー・ストーム
天 雨 ・ 白 銀 ・ 嵐 撃
かつての敵が操り、嵐の王がもたらした力はさとるの手によってユーベルコードへと進化した。
地球が人類を排除するために使った力は過去の残滓を倒し、そして味方を癒す雨となって降り注ぐ。
栢沼・さとるという女は戦い方を知っていた。
逐次戦場に投入される猟兵とは別の戦い。
一日の半分近くを戦野の中に置き、その上で味方を活かし動かすための術。
――回復である。
能力者の降らせる雨の時間は短いであろう。
だが対集団戦闘において、それは猟兵の力となり回復を受けた仲間は次々と戦場を制圧していく。
「んん、久々に本格的に戦ってる感じがする」
雨に濡れた顔を袖で拭い、さとるは笑みを浮かべる。
「平和が一番ですが、こう、滾ります」
それは年齢が止まったことによって取り残された自分が何かを取り戻したからであろう。
――死と隣り合わせの青春という名の。
戦の天秤は雨によって傾いた。
ただし最初のようなオブリビオンを生み出す雨ではなく、人が生きるための優しい雨によって。
成功
🔵🔵🔴
レモン・セノサキ
あっれ、剣オオカミじゃん!
久しぶりだねぇ、ちょっと雰囲気変ったー?
――なんてな
日本刀を▲集中力・▲瞬間思考力で軌道を補足して回避
悪いね、日本刀使いの腕なら
私の相棒の方が数倍エグイのよ
イグカも私と同じニセモノだけど
格好付けるくらいは別にイイでしょ
ポケットの中のカードを取り出してイグニッション!
「STACCATO.357」を両手に実体化して構えよう
射撃で刀を撃ち落とし
距離を詰められれば▲グラップルで蹴り上げる
脚癖の悪いガンナーで御免遊ばせ♪
仕上げは複数巻き込めるようにUC発動
気をつけなー? "アビリティ"と違って爆ぜるぞ★
さて、派手にやっちゃったな
あー……えぇとあれだ
ガス管の爆発って事で……だめ?
トリテレイア・ゼロナイン
一匹たりとも逃がす訳には参りません
人々の安寧護るは騎士の務め、討ち滅ぼさせていただきます
剣オオカミを躯体の格納銃器の乱れ撃ちで仕留めつつ巨大剣オオカミに接近
怪力での剣と盾で爪牙と切り結び
機動力が気掛かりですね
逃がす訳には参りません
妖精に情報収集させた戦闘データを元にワイヤーアンカーを武器改造
口に射出し、手綱の如く絡み付かせ
脚部スラスターの推力移動で跳躍し背中に立ち乗り騎乗
手綱に電流を流し、動きを封じ首を剣で刺し貫き仕留め
そういえば廃屋に“仕込み”をした際、気になる記録媒体を回収していましたね
規格が古すぎてハッキングも叶いませんでしたが、今なら…
武器改造したアンカーでフロッピーディスク読み取り
●雨が止み、真実は月下に
「あっれ、剣オオカミじゃん!」
懐かしそうな表情を浮かべレモン・セノサキがソードヴォルフへと近づく。
「久しぶりだねぇ、ちょっと雰囲気変ったー?」
そんな彼女めがけて飛ぶ一本の日本刀。
「――なんてな」
頭一つ動かして刃を回避すれば、取り出すのは自らを描いたカード一枚。
「イグカも私と同じニセモノだけど、格好付けるくらいは別にイイでしょ」
今回は能力者として振舞うつもりなのだろう。
レモンが呟く――
「イグニッション」
戦いの焔を点火する言葉を。
同時に両手に持ったガンナイフが火を吹いた。
一方で戦機は巨大なオオカミと対峙していた。
その背には自らの眷属を乗せた刃を生やした獣、名は剣オオカミ。
かつて妖獣と呼ばれた幽霊に対し、トリテレイア・ゼロナインの格納銃器が展開し、鉛を叩き込みつつ接近。
銃撃に肢を止めた妖獣へ剣と盾で真っ向から立ち向かう。
「機動力が気掛かりですね」
剣が牙に、盾が爪に、衝撃と何かが擦れる嫌な音が響いた後、互いに距離を取る。
動くのは巨大剣オオカミ、対峙し様子を伺うのはトリテレイア。
「ですが一匹たりとも逃がす訳には参りません」
飛び掛かる眷属たる狼を切り捨て、騎士は宣言する。
「人々の安寧護るは騎士の務め、討ち滅ぼさせていただきます」
――討ち滅ぼすと
呼応するかのように巨大な妖獣は咆哮を上げた。
射撃で刀を打ち落とし、接近するソードヴォルフの顎を蹴り上げるレモン。
ふと視線を仲間に向ければ、騎士の剣は輝き、妖精が付き従う様に現れていた。
Weaponcustomize system――Steal of『fairytale』
電脳禁忌剣・通常駆動機構:兵装改造『妖精の導き』
妖精達が戦場を走る巨大剣オオカミから距離を取り、追随しつつ情報を収集する。
その情報は電脳禁忌剣アレクシアを通じ、トリテレイアのワイヤーアンカーに改造を加えた。
――獣を捕える速さと野生を封じる戒めを。
射出されたアンカーが妖獣のマズルに絡みつき、縛り上げる。
そこから先は騎士が暴れ馬を御するが如く。
脚部スラスターを噴射し、高さに不足ある脚力を補えば跨るのは巨大剣オオカミの背中。
襲い掛かる眷属を一刀のもとに切り伏せ、ワイヤーアンカーを通して電流を流し込めば暴れる妖獣の動きが一瞬止まる。
それで充分。
獣の延髄に電脳禁忌剣を突き立て、一撃を以ってトリテレイアはソードヴォルフが引きつれた援軍を討ち滅ぼした。
「やるじゃん――じゃあ、こっちも仕上げといくか」
レモンが天へ向かって指を立てる。
「気をつけなー? "アビリティ"と違って爆ぜるぞ★」
指が振り下ろされれば、降るのは雨でなく炎。
Meteor Bullet
爆裂する隕石の魔弾
天より落下せりし隕石は爆発と共に周囲のオブリビオンを呑み込んだ。
「さて、派手にやっちゃったな」
仲間の銀の雨が止み、戦いが終わったのを確信するとヤドリガミは戦場の様子を見て呟く。
「あー……えぇとあれだ、ガス管の爆発って事で……だめ?」
何かを誤魔化すように騎士の方へ視線を向けるとトリテレイアは一枚のフロッピーディスクを片手に何かを考え込んでいた。
「……それは?」
「廃屋に“仕込み”をした際、気になる記録媒体を回収していましたね」
戦機の傍に妖精が近づき、フロッピーに触れる。
「規格が古すぎてハッキングも叶いませんでしたが、今なら……」
ワイヤーアンカーの端子を改造し、トリテレイアはフロッピーディスクの中身を読み取る。
溜息のようなものが戦機から出たのはレモンの見間違いだろうか?
「分かった?」
「分かりました」
女の問いに男が応える。
「おそらくはどこにでもありうるような普通の話。だけど『本人』にとってはそうであってほしくない――そういう物です」
トリテレイア・ゼロナインは感情というフレーバーを極力排除し答えた。
雲が消え、真実は月光の下に晒される。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第3章 ボス戦
『自尊心の虎』
|
POW : 臆病な自尊心と尊大な羞恥心
全身を【肥大しつづける無数の虎の頭部】で覆い、共に戦う仲間全員が敵から受けた【プライドを傷つけるような行為】の合計に比例し、自身の攻撃回数を増加する。
SPD : 個人情報特定電流
【全身に帯びた電撃】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【SNSのIDとパスワード】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ : 承認を求める虎の群れ
自身が【屈辱】を感じると、レベル×1体の【燃え盛る毛皮を持つ虎】が召喚される。燃え盛る毛皮を持つ虎は屈辱を与えた対象を追跡し、攻撃する。
イラスト:青空皐月
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●誰かにとっては他愛もなく、自分にとっては大事なこと
月光に照らされた舞台で、戦機は真実を語りだす。
生まれた時から勉強に苦労しなかった。
数学は得意ではなかったがこなせたし、英語や歴史、そして古語と現代文は解を導くのが楽しかった。
念願叶い大学に進み文学部を選んだのもそういう理由だった。
学び、そして様々なものを知る。
知識を得た時、何かが変わった。
自分も書いてみたい、自分も本の人物のようになってみたい。
幸いなことに小説を読むのは趣味だった。
だから自分が読んでいた出版社の賞を狙って投稿した。
歯車はそこから狂った。
賞なんて得られなかった、全て一次選考で落ちた。
何故だ!?
自分はこんなに文学が出来るなら物語だって書けるはずなのに……。
そうか、自分はもっと書かねばならないのか?
ならば、書いて書いて、自分がなんであるかを証明してやる。
其れからは寝食を忘れ、学業を忘れ、やがて大学を止め、全てを……全てを小説へと打ち込んだ。
出版社に持ち込むことは考えてなかった。
この土地は東京からは遠いから。
何かを書いて発表する場もあったけれど、そこで書いても何も得られなかった。
だから賞にこだわった。
書いて、書いて、書いて、かいてかいてかいてかいてかいて……書きまくったあげく、残ったものは何もなかった。
何もない自分がいた。
だから父も母も厳しかった。
「働け」
ただ、それだけを言い放つ。
何もない自分にはそれが当然だというばかりに。
違う!
自分には何かが有るんだ、何もないわけじゃないんだ!
叱責を受ける中、歯車が狂い、壊れる。
気が付けば手には赤く染まった包丁。
ああ、そうか……僕はこうやって名を残すのか。
やっとわかったのは縄に首をかけた後だった。
……だけど。
お前たちは僕を忘れる。
忘れるなと叫びたいが鎖が僕を縛った。
何年立ったろう、十か二十か、もう分からない。
鎖につながれた僕が僕である証はこの家だけ。
……そのはずだった。
思い出したのだ。
輝かしい夢にあふれた日々を。
情熱が前に進ませた日を。
間違っていたかどうかは知らない。
でも、それがあるなら、僕は何者かは分かるはずだ。
過去が鎖から僕を解き放った。
戒めの中、這うように歩いていたせいだろうか、手は獣となった。
そんなことはどうでもよかった。
人であって何もできないなら人を止めてしまえばいいのだから。
銀の雨の中、僕は咆哮した。
僕が僕であるために、僕の住んでいた家に集まった奴らに爪を振るおう。
僕を認めないなら死を。
僕を認めるというなら答えを。
求めるため。
真実はさらけ出され。
自らを縛る鎖を過去の残滓によって引きちぎった者は獣となった。
彼は自分が何者かを知るために猟兵を……人を襲う。
最後の戦いだ。
自分が何者かを謳い、能力者よ、猟兵よ、オブリビオンを倒せ。
――死者には眠りが必要なのだから。
南青台・紙代
【WIZ】アドリブ連携歓迎
「――嗚呼」
獣の独白に、いっそ泣きたくなる。
生まれつきの病と、故郷の風習で
外の学び舎へ真っ当に通わぬまま、
本から得た知識だけで、言葉を書き連ねていた子供を知っている。
時間切れの直前、紙束を小脇に抱えてフラフラと裏山へ行き、
丁度いい縄に手を伸ばした馬鹿者を知っている。
その縄が、青鱗持つ蛇で、人との会話に飢えた妖で、
子供なりに詰め込んだ情念を、面白いと笑ってくれて、
消えかけの命を、分けてくれて、経験を積む時間を得て。
俺は、文豪の端くれだ。
「『物書きだったさ。賞なぞなくとも、貴殿は』」
運が良かっただけの自分が、これ以上何を言ってやれる?
(蛇怪之気を纏い、己の身は守る)
●貴殿は物書きだったさ
最初に立ったのは虎だったものがなりたかった者だった。
「――嗚呼」
南青台・紙代の心が哭きそうな程にざわめき、漏れる言葉は一言のみ。
彼女は知っていた。
生まれつきの病と、故郷の風習で外の学び舎へ真っ当に通わぬまま、本から得た知識だけで言葉を書き連ねていた子供を。
一方で紙代の言葉を憐憫と断じたオブリビオンは屈辱を火種に燃え盛る毛皮を持つ虎を呼ぶ。
彼女は知っていた。
時間切れの直前、紙束を小脇に抱えてフラフラと裏山へ行き、丁度いい縄に手を伸ばした馬鹿者を。
炎虎が身を屈め、剝き出しの牙から燃ゆる咆哮を漏らす。
知っていたのだ。
その縄が青鱗持つ蛇で、人との会話に飢えた妖で、子供なりに詰め込んだ情念を、面白いと笑ってくれて、消えかけの命を、分けてくれて、経験を積む時間を得て……そして南青台・紙代となったことを。
眷属が紙代に牙を突き立てようと飛び掛かれば蛇怪之気がそれを阻む。
炎が怪之気を焼き尽くさんとする中、文豪は虎を睨みつける。
俺は、文豪の端くれだ……と。
「『物書きだったさ。賞なぞなくとも、貴殿は』」
言葉が虎のこころを揺らす。
其れは重い何か。
哀れみではない、むしろ妬ましいくらいの歯痒いくらいの何かだった。
モノカキノゴウ
物書きの業とはそのようなものなのであろう。
運が良かっただけと自認する紙代にはそれ以上にかける言葉は持ち合わせてなかった。
だけど……だけども……。
獣と化したモノに人を思い出させる楔となった。
そこに居たのは物書きになりたかった虎であった。
成功
🔵🔵🔴
木常野・都月
【電脳精霊】
人は…自分の夢に喰われる事もあるんだな。
夢に喰われるほど、大きな夢。
貴方は…何もない人じゃない、大きな…大きな夢を追いかけた、立派な1人の人だと、俺は思う。
和田町さんは、夢がありますか?
俺は…大事な人。大事な家族。
彼らを支えられる、妖狐に、人になりたい。
だから俺は、貴方みたいに、夢に食われる訳にはいかない。
UC【精霊召喚】で虎を抑え込もう。
精霊様には虎に纏わりついて、攻撃や妨害をお願いしよう。
[集中力、魔力溜め]で練り上げた[属性魔法]で虎を攻撃しよう。
敵の攻撃は[カウンター]で対処しよう。
電気には電気を。雷の精霊様、お願いします!
必要があれば和田町さんを[かばう]ようにしよう。
和田町・いずみ
【電脳精霊】
夢に持つのは良いことですが…大きすぎて自分の夢に喰われてしまうこともあるのですね…
貴方は何もない人ではなく、大きな夢を追いかけた立派な人です。
私もとても小さな夢がありますが、とにかく大好きな電車を追いかけることです。
私も夢に飲み込まれる訳にも行かないです。
私は都月さんをUC【Fatality RushHour】で地下鉄車両を召喚して、サポートします。
●貴方は大きな夢を追いかけた人
そこに居るのは夢に食われたモノ。
そこに立つのは夢を持つ者。
「夢に持つのは良いことですが……大きすぎて自分の夢に喰われてしまうこともあるのですね……」
「そうだな、人は……自分の夢に喰われる事もあるんだ」
和田町・いずみの言葉に応えるように木常野・都月が呟いた。
「和田町さんは、夢がありますか?」
虎に対峙しながら都月がいずみへと問いかける。
「私ですか? ええ、とても小さいですが夢があります」
違う意味での鉄の女が自分の胸に手を当て、そして答える。
「とにかく大好きな電車を追いかけることです」
「電車か……」
街の中で見た鋼鉄の箱を思い出しながら狐も夢を語る。
「俺は……大事な人。大事な家族。彼らを支えられる、妖狐に、人になりたい」
そのために……
「だから俺は」
「だから私は」
二人の言葉が重なる。
「貴方みたいに、夢に食われる訳にはいかない」
「私も夢に飲み込まれる訳にも行かないです」
オブリビオンのように夢に取り込まれるわけにはいかないと。
人の決意に対し、虎は全身に雷を帯びることを答えとした。
最初に前に出たのは都月。
「貴方は……何もない人じゃない」
それは同情でもなんでもない。
「大きな……大きな夢を追いかけた、立派な一人の人だと、俺は思う」
獣として生きていた自分から見た人の生だと信じているから。
人として生き、人として苦しみ、人として過ちを犯した。
人になりたい狐にとっては眩しくも見えた。
だから……。
「精霊様、ご助力下さい」
その純粋な心は虎に様々な精霊を絡みつかせたことすら気づかせないものであった。
Summon Spirit
精 霊 召 喚
虎の雷は雷の精霊がある程度相殺してくれる。
それだけで充分だった。
「和田町さん、お願いします」
後は託すのみ。
電脳の魔女に。
「貴方は何もない人ではなく、大きな夢を追いかけた立派な人です」
都月の背後から影が現れる。
いずみだ。
「だから、せめて人として……」
それ以上は言葉にしなかった。
その代わり雀の鳴き声のような何かの擦れる音がした。
鉄道と聞くと鉄の車輪をイメージすることが多いだろう。
だが地域によってはゴムタイヤを使うところもある。
これはゴムが軌条を走る足音――地下鉄の走行音なのだ。
Fatality RushHour
人生鉄道最終列車
鋼の5000系が虎めがけて疾走する。
エネルギーがオブリビオンが持っていた。
張り巡らされた線路、第三軌条と呼ばれる線路と並行したレールが虎の雷を動力源として吸い取り、地下鉄に力を与える。
速度を増した鋼鉄の貨車は人が人生の終わりを選ぶようにオブリビオンを跳ね飛ばした。
かつて大きな夢を持った虎は人として扱われた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
リューイン・ランサード
あまりにもイタイ…。
客観的な評価を受け入れる事も、地道に知識と技術を習得する事もせず、狭い世界に引籠って一人よがりな考えのままに突き進んだ。
等身大の自分を受け入れる痛みを避け続け、事実を指摘する両親を殺して自殺した。そして今も自分勝手な理由で人を襲おうとする。
肥大した醜悪な自己愛の塊、それが貴方です。
夢と情熱を抱いて臨んだ初冒険で心が折れ、逃げたくても逃げられずに、結果的に進み続けた者として、相手の甘えに怒りがこみ上げる。
敵攻撃は第六感と見切りで読んで躱したり、盾受けとオーラ防御で防いで、UCにて虎の群れを消し去る。
光の属性攻撃を宿した双剣による2回攻撃・怪力で、容赦なく虎の妖獣をぶった斬る。
●それが貴方
彼を人と認めるがゆえに、厳しく糾弾する者もいる。
リューイン・ランサードがそうだ。
「あまりにもイタイ……」
言葉には嫌悪がこもる。
夢と情熱を抱いて臨んだ初冒険で心が折れ、逃げたくても逃げられずに、結果的に進み続けたリューインにとっては虎の心は甘えに見え、怒りさえこみ上げられる。
「客観的な評価を受け入れる事も、地道に知識と技術を習得する事もせず、狭い世界に引籠って一人よがりな考えのままに突き進んだ」
感情を押し込めつつも、若龍はオブリビオンに突きつける。
「等身大の自分を受け入れる痛みを避け続け、事実を指摘する両親を殺して自殺した」
事実そのものを。
「そして今も自分勝手な理由で人を襲おうとする」
だからこそ許せない。
「肥大した醜悪な自己愛の塊、それが貴方です」
だからこそ、正面から虎の汚い一面を突きつけた。
咆哮が響いた。
空気が変わる、熱がこもる。
現れるのは百を超える燃え盛る虎。
正面から来た以上、オブリビオンも正面から答える。
突きつけられたものが事実であることは分かっている、だからこそ屈辱の炎は地獄の業火より熱く、そして終わりなどない。
全ての技能すらを無駄にする数による蹂躙。
炎虎の群れにリューイン・ランサードは呑まれていった。
……だが、炎は晴れる。
Advent――past
アドヴェントパスト
過去よ来たれ。
皮膚が焼け、肉が爆ぜる中、炎虎は過去のものとなり、存在すらなくなった。
若龍が双剣を構え、虎が牙をむき出しにした。
互いに機を伺うように歩む動きは弧。
それが線と変わり交わった時、リューイン・ランサードもオブリビオンも血を流す。
若龍は真正面から挑み、虎も真正面から応えた。
だから互いに傷ついた。
正解は無数にある。
その中から痛みを伴う物を選んだだけなのだ。
それが貴方だと告げられたものはまるで人のような情を以って応えた。
苦戦
🔵🔴🔴
エル・クーゴー
【物九郎(f04631)と】
●POW
・フロッピー内容を己の電脳世界内にも巻き取り【瞬間思考力】でリード
・虎の視界内に赴きコンタクト開始
・「作品」を客観評価し「よかったところ」を列挙
・文体を総合的に分析、描写に時間を要したであろう箇所も抽出し評価
・攻撃を程度受けようと評価を続行
・なんなら「いまいちだったところ」も抽出する
・――作品に向き合われることこそが、書き手の本懐であろうから。
・プライドを傷付けるではなく、重んじる
・虎頭の増殖肥大速度に遅延を見次第、それを以って敵POW技の「弱点」として【狩猟の魔眼と砂嵐の王】発動
最終撃破目標、捕捉中です
ワイルドハントの開始を要請します――猟団長(マスター)
白斑・物九郎
【エル(f004770)と】
●SPD
ココが「先輩方」の世界っスか
どんな手合いが跋扈してんのかと思いきや、結構な大物じゃニャーですか
虎よ虎よ、アメの次はムチの時間っスよ
ワイルドハント、白斑物九郎
自尊心の虎を狩りに来た
・エルのコード使用に乗ってエントリー
・この180秒にしか用は無い
・【ストームドライブ】発動、110分はイケるコード効果を3分に集約(力溜め)
・エルはじめ味方、そして己にも、強化治癒の雨を持続的に展開し続ける
・【限界突破】した全力のゲーミング発光雷(天候操作+属性攻撃)を縦横無尽に振るい、虎を追い攻め立てる
・敵の機動力と地形条件を重ね合わせて次の動きを読み、討ち取らん(野生の勘+狩猟)
●重んじたがゆえに――狩る
心のぶつけ合いは終わりに近づいている。
死者には眠りが必要で、猟兵は狩るべきものだから。
だが鎮魂には弔辞が必要だろう。
心持つ人形がそれを担った。
「フロッピーディスク及び、原稿用紙閲覧完了。両方に相違はありません。これより当該作品を客観的に分析します」
虎の前に立ったエル・クーゴーが閲覧したフロッピーと原稿用紙を大き目の封筒にしまい、小脇に抱えるとゴーグルの位置を左手で直した。
「まず文章構成、歴史公証に高い技量が見受けられます。そのため主人公の剣術は非常にリアリティの高いものと推測されます」
虎の頭が増える。
プライドを傷つければ喰らおうと牙を研ぎつつ、今は自分の作品の評価に耳を傾けるために。
「技量及び、作品の思考から緻密な描写が多く見受けられ、特に最初の立ち合い及びクライマックスへ向かう決闘においては立ち位置、息遣い、思考まで細かく書き込まれ相当の時間を要したと想像されます」
無数の顔が喉を鳴らし、虎は静観する。
「ですが緻密な描写や文章構成の巧みさゆえに、読者に描写を想像させる余地はなく、難解な個所も多く。読書コストが非常に高い作品となっております」
問題点となりうるものを指摘され、虎の顔が肥大する。
傷つけられたプライドを守るろうと牙をむき出しにしエルへと襲い掛かろうとした時。
「ただしコスト削減に努めた場合はある程度の評価を得られる可能性がありました。境遇を考慮するに現状の得意分野及び問題になりうる箇所に対してアドバイスできる存在が必要と推測します。以上を以って分析を終了します」
最後の言葉が虎の動きを止めた。
必要だったのは理解者。
共に歩む者だったのだろう。
だが一人で打ち込んだ結果、抜けられない悪循環に陥ってしまった。
それを知らなかった。
それを知りたかった。
自らも閉ざした心の扉に差し込んだミレナリィドールの鍵はオブリビオンに躊躇を与えるに充分なものであった。
「最終撃破目標、捕捉中です」
機を逃さなかった。
「ワイルドハントの開始を要請します――猟団長」
作品という名の弔辞を読み上げたエル・クーゴーが門を開く。
WILD×WILD HUNT×HUNT
狩猟の魔眼と砂嵐の王
狩りに来たのだ、彼方より。
ワイルドハント猟団長、白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)が。
「ココが『先輩方』の世界っスか」
首をコキリと鳴らし、腕を回しつつ、物九郎は虎の前に立つ。
「どんな手合いが跋扈してんのかと思いきや、結構な大物じゃニャーですか」
浮かべる笑みには犬歯がぎらつく。
「虎よ虎よ、アメの次はムチの時間っスよ」
「ワイルドハント・アクティブ――カウント180」
嵐の王の背後でミレナリィドールが告げる、狩りの時を。
「ワイルドハント、白斑物九郎」
狩猟者は物九郎。
「自尊心の虎を狩りに来た」
獲物は虎。
「――スタート」
エル・クーゴーの言葉と共に白斑・物九郎は獣を狩らん。
与えられた時間は180秒。
そこに全てを注ぎ込む!
StormDrive!
狩りへの疾走
モザイクが戦場を覆った。
空間が変わったわけではない、転移されたわけでもない、雨が降ったのだ――モザイクの雨が。
味方を癒し、次につなげる強化を促す雨がエルの銀髪を重くし、毛先より零れた雫が地面を打つ。
濡れたゴーグル越しに映るのは1680万色に発光する稲妻の迸り。
それは虎を追い立てる雷の罠。
オブリビオンが吠える。
全身から放たれる雷が稲妻に打ち落とされ、相殺される。
――瞬間
人と虎が跳んだ。
追い詰められつつある獣にとっては起死回生のチャンスであり、追い詰める王にとっては狩るべきタイミングであった。
雷光が視界を塞ぎ、大気割れる音が耳を奪う。
互いに感覚を削られ、意識を割く、瞬間を狙い。
――爪が
――拳が
叩き込まれる!
「タイムアップ。ワイルドハント終了です、マスター」
「オーライ、お先に失礼しますわ。エル……寄り道スンなよ」
オブリビオンが吹き飛ばされるのを背に歩む物九郎。
その姿はやがてモザイクのように欠落し、エルとすれ違う頃には消えていく。
「問題ありません。当機は正確な帰着に適性があります」
先に帰った主へと告げたミレナリィドールの表情が少しだけ動いたような気がした。
重んじたがゆえに獣は狩られる。
そうするべきが今、必要なことなのだから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
黒木・摩那
話を聞く限りでは誰でも陥る可能性がある話です。
同情の余地もあります。
ですが、最悪の結末を選んでしまったのは自らの責任としか言うことができません。
そして今、その責任にも目を背けて、再び姿を現してしまったからには、
こちらも事情は考慮せずに、一介のオブリビオンとして倒すだけです。
尊大な虎には直接攻撃の方が効き目がありそうです。
【功夫】で戦います。
UC【飛天流星】で相手の懐に飛び込み、顎に一撃、腹に一撃からの回転キックで叩きのめします。
最後のは【重量攻撃】も籠めます。
相手からの攻撃は【ハッキング】【ジャミング】で防御します。
SNSは無いけれど、情報機器からデータ抜かれると困りますから。
レモン・セノサキ
へぇ、随分と沢山書いたもんだ
SF、ファンタジー、何でもいい
原稿にざっと目を通し、何か銃的な武器の描写を探す
ええと……ほら、なんて言ったっけ?アレ
虎は死して皮を留め人は死して名を残す、か
それでもう一度聞くんだけどさ
名を残す事がお前の目標だったんだっけ?
お前、『四人』も殺したね
原稿に残されたセンスの光る銃をUCで大量に再現
燃え盛る虎に向けて斉射しよう
履き違えるんじゃないよ
虎として皮を残してどうする
罪人として名を残してどうする
お前は
物書きとして書を残すんじゃなかったのか
父親と母親と自分自身
そして四人目、『大成していたかもしれない未来の自分』を殺した罪
地獄できっちり償って産まれ直して来い!
栢沼・さとる
【リベレイション】、油断なく虎と対峙しますが
いきなり斬りかかるのはちょっと待ちましょうか
あなたのような行く末をたどった存在を、私は知っています
自分の作品を少しでも残したいと願い
その次に家族への後悔を告げ
……そもそも順番が逆だったと嘆きました
作家になろうという情念はさぞや強かったのでしょう
でも、人であるならばそれ以前に大事にすべきことがあったのでしょう
それを見失ったから、今、あなたは虎の姿でここにいる
それこそが、答えです
プライドが傷つきましたか? 結構です
ひとでなしには、相応の末路を用意しなければなりません
天雷の属性攻撃で七支刀を振るう
命がけです、生命力も失うでしょうとも!
●報いの時、そして……
どんな理由が有れど報いは受けねばならない。
それを敢えて担う者が起き上がった虎へと対峙する。
最初はこの世界で時が止まった者が請け負った。
「あなたのような行く末をたどった存在を、私は知っています」
栢沼・さとるが昔話を語る。
「自分の作品を少しでも残したいと願い、その次に家族への後悔を告げ……そもそも順番が逆だったと嘆きました」
それはオブリビオンと同じような運命をたどった者の物語。
「作家になろうという情念はさぞや強かったのでしょう」
知っているからこそ、さとるは共感し……。
「でも、人であるならばそれ以前に大事にすべきことがあったのでしょう」
否定する。
「それを見失ったから、今、あなたは虎の姿でここにいる」
突きつけるは七支刀。
吠える虎からは肥大したエゴを表すかのように無数の頭が浮かび上がり、唸り声を上げる。
「それこそが、答えです」
能力者は左手に何かを握る。
「プライドが傷つきましたか? 結構です」
オブリビオンが襲い掛かる全ての牙で喰らわんと、全ての爪で引き裂かんと。
「ひとでなしには、相応の末路を用意しなければなりません」
覚悟を決めたさとるは猟兵として――かつての力を引き出す。
Revelation
英霊召喚!
かつての能力者の力をその身に纏った姿は真なる嵐の王。
天雷が七支の刃に光を帯び、魂の剣となれば命を燃やしそれを振るう。
「決めたのです……これからも戦うと」
栢沼・さとるは銀の雨の中再び戦う事を決意し、それを刃に乗せ、虎の胴を薙ぎ払った。
誰かが眠れる時を作るために……。
「へぇ、随分と沢山書いたもんだ」
次の執行者が原稿に目を通す。
「ええと……ほら、なんて言ったっけ? アレ」
レモン・セノサキが虎へと問いかけるように言葉を探す。
「そうだ、虎は死して皮を留め人は死して名を残す、か」
答えを見つけたレモンは一度深く息を吸い、改めてオブリビオンへ向き直った。
「それでもう一度聞くんだけどさ……名を残す事がお前の目標だったんだっけ?」
問う声は氷のように冷たい。
Bullet・Storm
全周飽和砲火陣
ヤドリガミの周囲に浮かぶのは虎だったものが書いた作品より生み出された銃。
どれも作者の性格を表すような、精緻な工芸品のレベルまで高められた品。
「お前、『四人』も殺したね」
それがオブリビオンに向けて斉射された。
「履き違えるんじゃないよ」
反撃の為に召喚された炎虎の勢いすら押し込め、レモンは話を続ける。
「虎として皮を残してどうする。罪人として名を残してどうする」
眷属を打ち払い、次に銃火は虎を射ちぬかんとする。
「お前は――物書きとして書を残すんじゃなかったのか?」
その問いかけが一番重い弾丸であった。
オブリビオンの動きが止まる。
誰かを模して描かれ『残された』者ゆえの何かは真意は伝わらないが情は伝わる。
だから、止まった。
「父親と母親と自分自身。そして四人目、『大成していたかもしれない未来の自分』を殺した罪」
故に。
「地獄できっちり償って産まれ直して来い!」
虎は全ての弾丸を甘んじて受けた。
最後の一人が放電する拳を握り、虎の前に立つ。
「話を聞く限りでは誰でも陥る可能性がある話です」
黒木・摩那は共感の意を表した。
「同情の余地もあります」
その上で
「ですが、最悪の結末を選んでしまったのは自らの責任としか言うことができません」
分けるべきものは分ける。
「そして今、その責任にも目を背けて、再び姿を現してしまったからには」
構える摩那に対し、虎は雷を纏う。
「こちらも事情は考慮せずに、一介のオブリビオンとして倒すだけです」
迷い子たる女の姿が消え、彼女を仕留めようとした雷電は空を走る。
Meteor
飛天流星
達人が長椅子の下をくぐるように両足を広げ、身を低く潜り込ませ、そして踏み込む。
溜め込まれた発条が解放され、足から威が掌に伝わる。
かち上げるような掌底がオブリビオンの顎へ叩き込まれ、その身が浮く。
次に一歩。
踏み脚と共に放たれる縦拳。
摩那の体重を乗せた一撃が腹を貫き、虎の身が九の字の曲がる。
そして背中を翻せば、回転して踵に全ての勢いと重さを乗せた後ろ回し蹴りがオブリビオンの頭を撃ち抜いて、獣は地へと転がった。
獣であった虎は死んだ。
後に残ったのは……ただの誰かだった。
彼は何になってしまったのだろう……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●僕は何になりたかったのだろう?
僕は死んだはずだった……?
せめて名を残そうと家族を殺めて。
僕は死んだはずだった……?
この家に縛られた存在として、只の思念の残滓として。
僕は変わったはずだった……?
人ではない、何かに変わって。
今の僕は……何だろう。
そこには『何か』がいた。
かつて人だったモノ
かつて虎だったモノ
報いを受けた、その姿はかろうじて人の形をなすばかり。
時が来た。
過去を狩り、死者に眠りをもたらす者が『何か』に歩み寄る。
モザイクの雨は既に止み、当たりには静けさだけが残っていた。
キース・クリストファー
【POW】
虎と物書き。日本にはそれに関係する文豪というものがいましたね。
なりたかったのでしょうか
それを考えるのは戦いの後になりそうですが。
火力をメインに考えず、とにかくUCで速さを削ることに専念します。
彼の人がなりたかったものは
血の惨劇を生み出すモノではなかったはずです。
他の猟兵と連携が取れるなら連携をとりたいところです
死と隣り合わせの…なんてあの日々に
自分たちも確かにいろんなものに夢を見ていた気がします
貴方もそうだったんでしょうか
「貴方が何者か。もしも自分が答えるのであれば」
――過去に確かに生きたモノ。
それが自分の答えですね。
トリテレイア・ゼロナイン
剣と盾で爪牙捌き
貴方の罪は、貴方が一番理解している筈です
死した後の罰もまた同じ
私達は、貴方の境遇を、先入観を得て
その作品に“真”に心動かされる機会は永遠に失われてしまったのです
…もう、良いでしょう
怪力で叩き伏せ
白刃抜き
鎮静剤入りの“慈悲の刃”…用途は御分りですね?
『めでたしめでたし』を齎す騎士を、私は夢想し歩んできました
つまり、これは
これ以外に術を持たぬという、敗北の証です
道半ばか、踏み出す事も叶わなかったか
立ち上がるか、横たわるか
何であろうと、それを目指していた、と私は誇りを胸に口にしたい
己が泥に塗れても、その“標”は尊いものなのですから
獣の喉と、筆を握れぬ爪
貴方の目指したモノに必要ですか?
●彼は過去を生きた者として……
「……もう、良いでしょう」
かろうじて人の形を保つそれにトリテレイア・ゼロナインが告げる。
「貴方の罪は、貴方が一番理解している筈です、死した後の罰もまた同じ」
何故、鋼鉄の騎士は悲しそうな音声を発しているのだろう?
イントネーションは普通なのに……キース・クリストファーは不思議でならなかった。
「私達は、貴方の境遇を、先入観を得て、その作品に“真”に心動かされる機会は永遠に失われてしまったのです」
その言葉にキースは全てを理解した。
救いたかったのだ、この戦機は。
彼がなりたかったものは血の惨劇を生み出すモノでないと自分も知っているから。
けれど、もう取り戻すことも出来ないと能力者である彼は知っている。
あの六年を過ごし、年を取らなくなった身で幾年も過ごした中、見てきたのだから、体験したのだから。
トリテレイアが一本の短剣を『何か』の前に静かに置いたのはその時だった。
「鎮静剤入りの“慈悲の刃”」
機械たる騎士に感情はなく、プログラムに基づいて音声を発しているはずなのに耳朶を打つ何かがあった。
「……用途は御分りですね?」
永久の眠りへ導く刃を前にトリテレイアが問う。
答えは求めていなかった、必要もなかった。
「『めでたしめでたし』を齎す騎士を、私は夢想し歩んできました」
それはとある騎士の物語。
「つまり、これは……これ以外に術を持たぬという、敗北の証です」
だが、それが叶うのは物語の中のみ。
「道半ばか、踏み出す事も叶わなかったか、立ち上がるか、横たわるか」
非常な現実は夢を砕き、未来を砕き、希望は既に砕かれていた。
「何であろうと、それを目指していた、と私は誇りを胸に口にしたい」
けれど自分が何になろうとしていたか、その始まり……オリジンは決して砕けない。
「己が泥に塗れても、その“標”は尊いものなのですから」
歩む先の灯火ほど眩しく揺るがないものはないのだから。
「獣の喉と、筆を握れぬ爪――貴方の目指したモノに必要ですか?」
トリテレイア・ゼロナインの問いに「いいや」と『何か』は……自分を保てず残留思念のみを残すだけだったの者は首を振り、おぼろげだった四肢は、胼胝の出来た細い指となり手となりて、その刃を力強く握った。
彼は何かになった、自分を終わらせるために。
「キース様」
騎士と能力者の目の前でようやく己を取り戻したものが、全てを精算するために喉へ刃を埋める。
「よろしくお願いします」
トリテレイアの言葉にキース・クリストファーは頷き、涼やかな風を纏った。
――死と隣り合わせの…なんてあの日々に、自分たちは確かに色々なものに夢を見ていた。
彼もそうだったのだろうか?
今はもう分からない、かつて虎だった者の喉に刃が突き刺さっているのだから。
故に――
「貴方が何者か。もしも自分が答えるのであれば」
介錯の風は既に命を失ったものを塵に、土に、霞に、変え、そして世界へと解き放つ。
もうこの地に二度と縛られることはないように。
今までやって来たことを再び行った。
「――過去に確かに生きたモノ」
言葉が響き、風が止み、騎士が見つめるのはかつて命を守るために戦い、そして舞い戻って来た若者の背中。
「それが自分の答えですね」
振り返ったキースは月光照らす夜空を見上げ、そう告げた。
何かになりたかった者は、過去を生きた者として……今、眠りについた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵