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譲れない信念を胸に

#キマイラフューチャー #お祭り2021 #ハロウィン #プレイヤーvsプレイヤーなシナリオ #(コンビ戦闘は共通派閥なら適応、別々派閥なら個人戦での激突) #多分勝者は:たけのこ派

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#キマイラフューチャー
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#お祭り2021
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#ハロウィン
#プレイヤーvsプレイヤーなシナリオ
#(コンビ戦闘は共通派閥なら適応、別々派閥なら個人戦での激突)
#多分勝者は:たけのこ派


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 【猟兵同士の模擬戦シナリオです。勝敗はサイコロで決まるので、負けるのが嫌な人は参加しないでください】。

●第三勢力の介入は許されない
「さて。ハロウィンの季節だ、いろんな場所でいろんな世界で盛り上がりを見せているようだな」
 フィッダ・ヨクセム(停ノ幼獣・f18408)の持ち込んだ話の行き先は、キマイラフューチャー。お祭り騒ぎの破天荒さは請負だ。代わりに、UDCアースやカクリヨファンタズムでは、ほのぼのとした空気感を楽しめるかも知れない。
 仮装、南瓜。トリックオアトリート。
 しかし……フィッダは首を横にふる。
「アンタは、きのこたけのこ戦争をご存知?俺様はよく知らねェんだけど、キマフューにはハロウィン前後にだけコンコンコンで出てくる人気スイーツがあるんだッてよ。なんか、たけのこクレープとかきのこドーナツとか、言うらしいけど……」
 此処まで読んでご理解頂きたい。キマイラフューチャーが「きのこ派」「たけのこ派」の勢力で二分してしまう時期なのだ。
 時期的問題です。キマイラ的お祭り感覚です。
「勿論、ここはキマフューだから勝負は生放送視聴者数で競うだとか、イイネ数で競い合うだとかという穏便な戦いが多いらしいんだが……タイマンバトルを繰り返す"闇のきのこたけのこ武闘会"というのも存在するらしいんだ」
 ひっそりこっそり、こじんまりした人気度低めのいなかまち闘技場で開かれる予選。
 そして今年は盛り上がりの一端として、猟兵まで巻き込んで激しく騒ぎたいとキマイラ達は既に大騒ぎなのだ。
「俺様はすいーつ?を味わいつつ、運営側に口出すようにするから模擬戦ハロウィン楽しんだらいいんじャね?」
 レフェリーがいたりいなかったり、というキマイラ感覚での大会運営だと、加減知らずの猟兵が紛れ込むと危ないのでな、とはフィッダ談。
「決勝戦は、なんと大都会高層ビル屋上特設リングでドローン沢山飛ばした生放送乱舞がお前たちを待ッてるんで、そんなステージに立つ奴らはすげえ人気者だな!ッて感じ。なんかな、全体的にすげえカッケー特設会場らしいぞ」
 猟兵たちの戦いを見て、キマイラたち大盛りあがり。
 ハロウィンの盛り上がり角度がなんか違うとか、言ってはいけないぞ。
「予選に参加しそびれた奴、または予選に落ちた奴が仮にいたとしても……キマイラ達はなんやかんや返り咲いたり乱入してくるのは盛り上がりの一部として受け止めるんで、まあ気にしなくていいじャね?」
 面白い、予想外、楽しいこそ、キマイラ達が求めるものだ。
 楽しいことは、いいことなのだ。
「闘技大会で優勝しても、負けたとしても、貰えるものは全員平等に参加賞。選んだ派閥のスイーツだ」
 とても美味しいらしいので、スイーツ目当てで参加するのはありだろう。
 トリックオアトリートでお菓子を要求することはできないけれど。きのこ派とたけのこ派、譲れない戦いに身を置くことだって時にはあってもいいはずだ。

「仮装して出場するのは問題ねェよ?ただ、どんな格好かはキチンと受付で言うんだぞ」
 それからキチンと自分がどちらの派閥か、の表明も大事である。
 君は――きのこ派?
 それとも――たけのこ派?
「ああ、どッちも好き平等派は人数調整で片側に寄せられる可能性もあるので、キチンと表明したほうがいいかもなー」
 仮に全員同じ派閥だった場合、最強の"おれこそが派閥に対する熱量(愛)を語れる存在"選手権に趣旨代わりが行われる。
 勝った人のほうが大好き、という単純なもの。
 同じ派閥同士の激しい主張合戦だ。これはこれで盛り上がるハズだ!
 ルールのあやふやさはキマイラのさじ加減でコロコロするだろうが、お前の主張は愛あるものであることを祈ろう。
「楽しい楽しい仮装と行脚とハロウィンは、別のやつに案内されてくれ」
 ハッピーハロウィン。
 良い脳筋(せんとう)を。


タテガミ
 こんにちは、タテガミです。
 このシナリオは、【2章構成のシナリオフレーム】です。
 上から下までキチンと読みましたね、良いですね?
 今年のタテガミハロウィン模様は、キマイラフューチャーからお送ります。

 雰囲気は、模擬戦メインの楽しい感じです。

 貴方が仮装をしてる場合は、イラスト指定(南瓜2020とか)可能。
 イラストが無くてもざっくり教えてくださればOK(吸血鬼とか)。
 全く指定がない場合は獣耳搭載です。

 ――シナリオ上戦闘のルール――――。
 (1)「きのこ派か、たけのこ派か」と「対戦相手の猟兵と、一対一で戦うプレイング」を書いてください。合わせプレイングで対戦希望してもOK。
 ※選んだ派閥に関しては、タテガミが分かればいいので文字数都合で「茸」「竹」の漢字一文字となっていてもOKです。
 (2)マスターがきのこ派とたけのこ派のプレイングをひとつづつ選びます。ただし、「負けた相手を貶める内容」が書かれたプレイングは採用しません。
 ※NPCと戦闘する系にはなりません。相手は必ず、猟兵です。
 (3)きのこ派を10の位、たけのこ派を1の位として、d100して出目の大きい方を勝者と決め、リプレイを執筆します(同値なら引き分け)。プレイング内容はリプレイの描写にのみ影響し、勝敗には全く影響しません。
 (4)最終的に、リプレイ執筆終了時点で勝利数の多かった派閥の勝ちです。
 ――――――――――――――――。

 OPにもあります通り、うっかり全員同じ派閥になった場合は、"おれこそが派閥に対する熱量(愛)を語れる存在"選手権、みたいな感じになります。
 戦闘に勝った方が熱量(らぶ)が強いって感じですね!

 戦闘のプレイングにプラスして「少しで構わないので私はこのあたりがすきー!」というのを主張しておくと、楽しい感じになるのではないでしょうか。まあきのこでもたけのこでもないものに対する主張(を行う模擬戦に持ち込む形)でも構いませんが、その場合は必要ならお相手をお連れ下さい。
 具体的な戦闘方法については、特に何もいいません。
 お祭りって、そういうとこあるよね?

 ここまでお読みいただいた方はご理解いただけると思うのですが、全く真面目な事にはならない可能性が高いので、キマフュー特有のお祭り騒ぎ感をお持ち込み下さい。タテガミの対応できる範囲のキマイラハートでイイネしつつ大会を盛り上げたいと思います。
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第1章 冒険 『きのこたけのこ武闘会(予選)』

POW   :    パワーと体力で押しまくる

SPD   :    スピードとテクニックで翻弄する

WIZ   :    賢く策を弄して立ち回る

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●場外武闘会(舌論ハロウィンBOMB)

「去年はどっちの派閥が勝ったんだっけえ?」
 のんびり屋のキマイラが、隣のバーチャルキャラクターに問いかける。
「え?どっちだっけ、きのこ派だったような……」
「ちょっおま、放送見てなかった系?去年のはたけのこが圧勝だっただろ!」
 周りで囃し立てるテレビウム集団が、画面をちかっちかとさせている。
 画面に移しているのはきのこ派とたけのこ派が居て、無言の主張をおこなっているようだが……。
「……ははーん、此処に居る誰もが憶えてねえんだな?」
 毎日の暮らしが楽しいキマイラ達。
 楽しい事が毎日続くと、うっかり忘れてしまっていることさえ思い出す工程を楽しいと言い出すのだ。
「成程?僕らに参加券はないけれど、此処でひとまずの"去年優勝したのはどっち派だったか"を決めようか」
 全員の手にはコンコンコンで入手した大量の"きのこのパイ"と"たけのこのパイ"。
 ふっくらできたてのアップルパイな、何層も重なって出きたものを想像して欲しい(しかしもう冷え切っている)。
「全員もってんだろ?これを顔面に浴びなかった奴の好きな派閥が勝者だ、行くぜ」
 猟兵たちの戦いを、眺めに来たハズの集団が会場の外で唐突な場外乱闘を始めた。
 しかし、全員の武器は流血沙汰にはならないのがポイントである。全員が納得し、わあわあと悲鳴含み鬼ごっこのような騒々しい音が起こること数分。顔面に浴びた者達は、空気を読んでバタバタと斃れたままで居る中で――たった一人。
 勝者が誕生したようだ。
 成り行きを見届けていた、獅子舞頭部のような形状のヒーローマスクは駆け寄って勝利者インタビューを開始する。
「あ、あのう……去年はどっちが勝ったのでしたっけ……?」
「うん?去年はねえ、南瓜派が勝ったよお」
 その場に居た全員が、唖然としたが――あのバーチャルキャラクターが勝ったのだから、そうだったかも!
 なんて共通認識が更新されていくことになったのだ。
 ヒーローマスクが勝者にインタビューを続けた結果、分かった事。
 それは――。
「甘いものよりネット好きなあたしとしては~、"勝者はとにかく今好きなものを好きに主張してもいい"と思っちゃうんだよね!」
 キマイラネットワークSNSに、この発言は大量のイイネを稼ぐことになる。
 第三勢力、第四勢力の出場は認められていないがそう思うこと自体は自由なのだ。
 その事を――猟兵達はまだ知らない――。
エルヴィン・シュミット
きのこか、たけのこか。
俺個人としては争うほどの事でも無いと思うが、そういうのって表立って口にすると両方に叩かれるよな。

ま、ここは便宜上「たけのこ派」を名乗らせて貰おうか。
仮装は…オオカミ男のマスクでも調達してくるかな。この時期ならすぐ手に入るだろ。

さて、と…まずは予選を勝ち抜かねぇとな。
お互い猟兵なら手加減抜きでヤっても構わねぇだろ?
とはいえ予選からフルスロットルで飛ばしても後が続かねぇし…まずは小細工なしのステゴロで勝負させてもらうぜ!
正直な話、お祭りにかこ付けて一暴れしたいだけなんでな!

…どうでもいいけど、ツノとかはみ出してないよな?

『さぁて、勝っても負けても恨みっこナシだぜ!』


有栖川・夏介
きのこ派
仮装:魔女の使い魔をイメージした黒猫。

勝っても負けてもスイーツをいただける、と聞いて(と、参加理由が食い意地がはっているみたいで少し恥ずかしいな……)
きのこもたけのこも、どちらもおいしいと思いますが、どちらか一方をということであれば…きのこでしょうか。ドーナツおいしいですし。

負けるつもりはないので、相手が誰であっても全力でいかせていただきます。
小回りの利く「懐の匕首」を使用。鞘はつけたままで。
こういった勝負はスピードが大事かと思うので、鳩尾などの急所を狙って突いていく。

勝てたら嬉しいですし、負けたら悔しいです。人並みに。
良い勝負をして美味しくスイーツをいただきたいものです。



●狼男と黒猫のきのこたけのこ戦争

 いなか会場で始まる予選と思えぬ熱気がそこにあった。
 事前に広告していたキマイラの伝達力はとても凄まじい。
『タケコーナーァ!エルヴィン・シュミット(竜の聖騎士・f25530)ぉお!!』
 妙にハウリングの喧しいマイク音声がエルヴィンの派閥を端的に表しながら紹介する。リアル寄りのオオカミマスクをすっぽりと頭に被り、名を呼ばれたからには手を上げてアピール。やや気だるめな動きであった。
 仮装用のマスクの調達は、想像より簡単に可能だった……なんと、エルヴィンがマスクを探していると口に出してみると大会運営側のキマイラ達が数種類すぐに集めて来てくれたのである。
 口が開いている奴や、とてもメルヘンな奴。
 それからゾンビ感のあるある継ぎ接ぎオオカミなんて、バリエーションの豊富さでゾンビウルフは選ばれた。
「きのこか、それともたけのこか……なんつーか、すげえ武闘会開いてんだなあ」
 エントリーしたからには、やることをやるだけと割り切っているエルヴィンは、マスクの下でかなりノリ気な顔をしている(相手からはみえない)。内心は、面白いじゃないか、と思って疑っていないのだ。
 ――まあ俺個人としては争うほどのことか?って思うトコだ。
 ――……まあ、お祭り騒ぎの口実、みたいな奴なんだろうな。
 そういうのを口に出しては、両方の派閥に叩かれるんだろう。想像できる事は言わないエルヴィンなのである。
「ま、便宜上"たけのこ派"を名乗らせて貰おうか」
 んで?俺の相手はどちらさま?
『キノコーナー!有栖川・夏介(白兎の夢はみない・f06470)ぁああ!!』
 対戦相手の名前を告げるアナウンス。
 視界を邪魔しない黒いつば広帽子の頭部には、三角の獣耳がちょこん。
 魔女の使い魔がイメージの黒を貴重としたヒラリとしたマントを装備した夏介。首元あたりに赤のリボンがキュッと結ばれていて、ヒールのやや高いブーツにはちりりと鳴る鈴が一つずつ。
「勝っても負けてもスイーツがいただける、と聞いて……」
 参加理由に合わせて服装も合わせて見たけれど、可愛い方面に力を入れすぎただろうか、夏介はやや大人しくしたい気持ちと参加理由に思うところがあって、なんだか気恥ずかしい。
 ――食い意地だけでエントリーしたなんて、笑われたりしないだろうか……。
 心配していたが、相手はどうやら笑う様子はないようで一安心。
 キマイラたちも確かにその辺りにコメントをしていなかったような。
「こちらは"きのこ派"と言っておきます。個人的な言葉で言うなら、どちらもおいしいと思いますが……」
「どちらか一方だけに加担するならそっち?」
「はい。どちらかと言えば、です。ドーナツ、おいしいですし」
 ――コンコンコンで出てくるきのこドーナツは、どんな形のドーナツでしょう。やはり平均的にまあるい奴……?
 話は聞いたものの、夏介は肝心な形は聴いていなかった。
「だってほら、論争の発端はスイーツという話ですし……興味、ありません?」

 戦闘開始は、猟兵のタイミングでいいという自由なルール。
 ゆるーく模擬戦開始の雰囲気まで持ち込んで行けばいい。

「……ははーん。参加賞で貰える分だけでも十分納得できる系?そんなんじゃあオオカミ男に簡単にやられちまうぜ?」
 トーナメント形式、予選有り。
 その一つがこの戦い。
 ――予選っつーからには、勝ち抜かねぇとだろ。
 マスクの下でにやりと笑うエルヴィン。
 戦いが、もう始まる。そんな武者震いが身体を揺らすよう。
「私をただの黒猫さんだと思っていたら痛い目に遭いますよ」
「お互い猟兵だ、手加減抜きで構わないだろ?」
 ――とはいえ、予選からフルスロットルで飛ばしてりゃ後が続かねぇ……勝ちを狙うなら、温存は必要だと考える。
 仕掛けるなら拳。相手もなにか持っているようには見えなかった。
 ――いや、もし隠し武器なんてあれば……ん。
 どう攻めるかの思考纏めを行うオオカミ男の前で。
「……おやおや、意外とよく考える方でしたか」
 戦闘開始のゴングは無く。聞こえた音はかすかなチリリと小さな鈴の音。小細工なしのステゴロ――武器を持たずに、素手で喧嘩にすること――――を夏介に拳を向けようとした時。
 とても間近でちりん、と澄んだ音が鳴る。
「簡単に負けるつもりはないので、私は全力でいかせて頂きます」
 赤い瞳がエルヴィンの直ぐ側で覗き込んでいる。
 小回りの効く、夏介の鞘を匕首は鞘を付けたまま相手の攻撃を掻い潜るように伸ばされていて、単純に鈍器として振るわれた。
「……んなっ!?」
 いきなりの際どい場所狙いの動揺は凄まじい。エルヴィンの握り込んだ拳では、叩き落とすには難しい鳩尾狙いだ。このままでは躱せない。
 だが、エルヴィンは一瞬のヤル気(殺気)に反応して、半歩下がり急所へそのまま一撃貰らわないよう身を捩る。
 多少掠りはしたが、軽いものだ。まだヤれる!
「外しましたか……こういう時は、スピード勝負だと思ったのですが」
「ははっ、正直な話、お祭りにかこ付けて一暴れしたいだけなんでな!簡単に終わられるのは――」
 ――困るんだよな!
 急所を狙われた分、オオカミ男は真っ向勝負で拳を向ける。
 整った相手の顔面狙いだってルール違反にはならない。なんといってもキマイラ達は盛り上がりを重視するから!
 聞こえるだろう、どちらの派閥をも応援する声が――。
 ――ちと激しく動いてっけど、ツノとかはみ出してないよな?
 ツノを隠そう、尾を隠そうという部分。そういえば気を使っていなかったな、と思ったエルヴィン。
 夏介からはマスクから飛び出したドラゴニアンの立派なツノが、なんと丸見えだったりする。キマイラ用マスクに喧嘩用耐久力がなかった為、飛び出してしまったようだ。とてもワイルドな裂け目がチラチラしている。
「なかなか、そちらも鋭く狙ってきますね……」
 ちりり、ちりりと鈴を鳴らしながら猫のようにひらりと避ける夏介は模擬戦の範囲で楽しむ。どちらもギリギリの手加減の狭間だ。
「さあて、勝っても負けても恨みっこナシだぜ!」
「ええ、構いませんよ。急所を激しく叩かれて、悶絶しても恨まないのであれば」
 黒猫とオオカミのワルツは暫く続く。
 真っ向勝負でぶん殴って勝利を思い描くエルヴィンと、スピード感重視で重たい一撃狙いの夏介。
 攻守は見事に入れ替わりながらの、――数分後。
「~~~~!!」
 ガッ、とだいぶ鈍い音。
 それは弁慶の泣き所――所謂脛を叩く音だった。
「勝負有り、ですかね」
 夏介が身を低く、狙った攻撃を避け損なったエルヴィンはフィールド上に転がる。
 相当痛かったようだ。
 人並みに嬉しそうにする夏介が小さくガッツポーズする中で、エルヴィンは痛がりながら立ち上がり、握手を求める。
「いい勝負だった……っとマじいてえ」
「軽い打撲程度かと。早めに冷やすことをお勧めします」

『勝者ァ~~~きのこ派ァアアア!』
 アナウンスが入り、歓声が広がる。
 参加賞用の小袋が二人に手渡され、これは競り合った分美味しく食べられそうだ。とても、今できたて!という匂いが漂ってくる。
『熱い戦闘を繰り広げたお二人に拍手を~~!!』
 わあああ、という歓声が二人の戦闘を讃えるように響き渡った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

佐々・夕辺
【夢狐】
・仮装
種族特徴は収納
悪魔の羽根と角、尻尾
黒のミニスカナース

武闘会は私も初めてだわ
ところでなんでミニスカなのかしら!?
短いわ!?

…残念だけどマリアドールさん
戦わなければ理解し合えない事も
戦っても理解し合えない事もこの世にはあるのよ
ちなみに貴方はどちらが好き?
そう…私はきのこドーナツが好きなのよ
ドーナツよ?美味しいじゃない
クレープは私、チョコバナナ派なの

そうね…戦うしかないというのなら
私も容赦はしないわ
お菓子は悪くない、判っている
でもこの戦い、負けられない…!

こちらは管狐を一斉発射
誘導弾に管狐をぶつけて相殺し
本命の鎧無視攻撃を隠す
出来る限り接近して蹴撃
お客様とて今回は容赦しないわ!


マリアドール・シュシュ
【夢狐】竹
・仮装
天使の羽に白ナース
白ニーソ

ミニスカナースは基本と聞いたわ!
マリア、武闘会へ参加するのは初めて
猟兵同士で争うだなんて…分かり合えないの?(悲しみ
夕辺もそう思うでしょう?
お互いに良さはあるわ
えっ、どちらかといえば…たけのこクレープが好きかしら
マリアは苺…
トッピングで味を変えられるし飽きないと思うの

夕辺…あなたとは戦わなくっちゃいけない運命みたい(竪琴構え
お菓子に優劣はないけれど、そこまで言われたら負けたくないのだわ!(膨れ面

凱旋の狼煙の如く高らかに謳って開幕の曲を
UC使用
接近戦は不利なので音の誘導弾で範囲攻撃
飴が跳ねる様なポップで甘い旋律を奏で、体を少し痺れさせ
その隙にぽかすかする



●すいーつ聖戦此処に在り

 ぱふぱふ、と気の抜けるラッパの音。
 この会場ではあまり予選に集った面々を映すカメラが限定されているが、それでも猟兵の訪れをキマイラ達はとても歓迎してくれた。
 ひゅうひゅう、とあからさまに口で言っている囃し立てる声。
 それもそのはずだ。
「これ、本当に武闘会なの?」
 佐々・夕辺(凍梅・f00514)が通されたのは、"きのこ派"とキノコの絵がポップに描かれた通路だ。
 此処を通って会場入りすれば、ゴングが迎えてくれるらしい。
「ええ。なんでもありの武闘会と聞いたのよ」
 マリアドール・シュシュ(華と冥・f03102)の背中にぴょこんと純白の翼が揺れた。"たけのこ派"と漫画タッチの絵が描かれた通路から、純白の天使が現れる!
 ひゅうひゅうと口笛のラッシュ!キマイラたちの囃し立てる声は、何処征く風。
「ところで白衣の天使さん。私の方はどう見えるのかしら」
「黒い悪魔の天使さん?」
 ふふふ、と笑って返すマリアドールに対して、夕辺はちょっと自分の丈が気になってしまう。
 ――ちょっとちょっとなんて完璧に決め込んだ白ニーソなの!
「清楚な姿は分かるのよ!でもでもでもよ、ところでなんでミニスカなのかしら!?ねえ、短いわ!?」
 はしたないと思いながら、ギリギリ伸ばせば恥じらう気分が隠せるかしら、なんて。いや、絶対なんともならない。種族特徴を収納し、悪魔的な小悪魔翼と角と矢印みたいな長い尻尾がぴょいんと伸びる。
 動くたびに揺れる尾と翼はいい。でもやはりミニスカは短すぎると思う夕辺だ。
「何故って……ミニスカナースは基本と聞いたわ!」
 仮装の。そう、仮装のよ。
 素敵可愛らしい姿に、一つ二つのワンポイントを加えた姿にロマンは発生するものなのだそうです。
 キマイラ史上ではなく、人間が発生する場所には不思議とそういう文明が存在するとかしないとか――。
「でもそうね。マリアもね、武闘会に参加するのは初めてなのよ」
 話は始まりへと戻る。恥じらいは一歩前の話なのだ。
 同じ舞台に立ったのだから、それはそれとわりきらないと、と言いたげだ。
「猟兵同士で争うだなんて……分かり合えないの?」
 こんなにお話が合うのに"派閥"という区切りだけで勝敗を決め合うの?
 悲しい話だ。意見の違いだけで、齟齬が生まれるだなんて。
「……夕辺もそう思うでしょう?」
 話を振ると、夕辺は静寂で一拍置く。
 悲しい話の共感を求められたと分かったのだ――この模擬戦闘を行おうという間柄で。天使は悪魔に囁いたのだ。
「……残念だけどマリアドールさん。話し合いだけで片付くことだらけではないのよ」
 戦わなければ理解し合えない形の常識というものも、存在する。
 キマイラたちが求めているのは勿論これだ。
 この世には、理解する為の避けられない戦いもある――。
「お互いに良さはあるわ?」
 キチンと話し合い続ければ、解決できる事かもしれない。マリアドールの無邪気な言葉に、夕辺は悪魔の尻尾を捕まえてゆらゆら揺らして尋ねる。
「ああでも……ちなみに貴方はどちらが好き?」
 当然指し示す言葉は、スイーツのこと。
 ふわふわと、衣装を揺らして二人は同時に距離を取る。
 この後起こる事は、"そういうこと"だから。
 お祭りの一端として、楽しむべき事を存分にやれる距離はギリギリ声が届く距離。
「えっ、えっと……どちらかといえばマリアはね、たけのこクレープが好きかしら」
「そう……ほら。やっぱり。私はきのこドーナツが好きなのよ」
 意見の相違、勃発。
「だって主体はドーナツよ?美味しいじゃない」
 きのこ主体ということはヘルシーさもあるわ。甘さはきっと抑えられていないけれど。女の子に対する悪魔の魅力を持っている気もするけれど。
 それでもドーナツ美味しいを夕辺は強めに主張した。
「たけのこクレープだって、負けてないの。マリアは其処に苺を加えるのが好みね」
 たけのこを主軸に置きつつ、クレープとしての体裁を崩さない為のスイーツ選びが重要なのだ。
 トッピングの自由度はドーナツの上を行く。味変出来るは世界を救えます。飽きがこない味作りが出来る素敵のスイーツなのです。
「苺?酸っぱさと甘さを両立させた……チョイスね。でも私、チョコバナナ派なの」
 チョコだけ、バナナだけ、ではなく。どっちもハッピーセットだ。
 これは主張がぶつかるはずだ――二人の間を漫画のような風が通り過ぎていく。
 二人の髪と翼を靡かせる決戦の合図。
「夕辺……あなたとは戦わなくっちゃいけない運命みたい」
 ほら、この竪琴が奏でそうな音の予想が出来る?
 空気の震えでな――んとなく伝わるでしょう?
「ふふふ。そうね……戦うしか無いというのなら私も容赦はしないわ」
 お菓子は決して悪くない。悪くないのだ、本来なら。判っている夕辺にも、引けないラインがある。今はマリアドールと向き合う境界線に。
 ――でもこの戦い、負けられない……!
 握り込む手元には、竹筒が――準備は完了済み。
「お菓子に優劣はないけれどっ!そこまで言われたら負けたくないのだわっ!」
 朱に染めた頬をぷくっと膨れさせたマリアドールの、凱旋の狼煙は此処から上がる。え?まだ戦ってなかったの? そうだ、猟兵たちの戦いは、舌論から始まっていたとキマイラ学会では意見が一致している。
 高らかに謳う声が開幕を告げる、歌声を会場中に響かせる! サウンド・オブ・パワーな音圧を、音の誘導弾として範囲攻撃として夕辺に差し向ける。
 ――狙う相手は、一人だもの!
 八分音符や四分休符、カラフルポップな音色で物理的に具現化した音符達で取り囲もうと誘うのだ。
 音に囲まれたなら身体を痺れさせる程の音色が、その身をすこおしだけその場に縛って魅せるのだけど!
「負けないのは此方も!お客様とて今回は容赦しないわ!」
 向けられた誘導弾に向けて、一斉発射する管狐の乱舞。
 フルバーストして狙う物、それは全て誘導弾の相殺狙い。
 音が弾けると、メルヘン可愛い音がした。
 ぷきゃっ、と子どもの靴が立てるような音。
 氷の管狐達をぶつけた事で氷が割れるような音も。
 ――全弾の防衛は完璧!でも竪琴を持つ彼女は傍には……。
 不得手の距離は"近接"だ。夕辺は本命の攻撃を隠しながら、出来る範囲踊るような足取りでマリアドールに近づいていく。
 天使の声が悪魔を退けるか。
 悪魔が天使の羽を掴むのか――答えは、白と黒のナース丈程のふわふわ揺れるスカートに。
「正直ちょっと痺れた、っていうのが本音よ?」
「……!」
「でも、悪魔的提案を申し入れるわね。これが終わったら」
 二人で一緒にどちらのスイーツも食べましょう。
 本命攻撃の蹴撃は、白ニーソの輝きを打ち消して――竪琴に思い切り蹴り込むことで場外ギリギリまでマリアドールを蹴り飛ばす。
 そんな息を呑む女の聖戦(たたかい)withハロウィン予選の一幕が、あったらしい。

 今年の"きのこ派"が強い――キマイラネットワークが大いに盛り上がっていく。
 本戦大会での盛り上がりは、更に激しさを増すことだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『きのこたけのこ武闘会(決勝戦)』

POW   :    パワーで相手をねじ伏せる!

SPD   :    スピードで相手を突破する!

WIZ   :    賢さで相手の裏をかく!

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●本選会場座席での場外乱闘(大食いスイーツ)

 カッ!とスポットライトが本戦のフィールドを照らし出す。ふぉーーーんと聞こえてくる微かな高音は大量のドローンが空中に飛び交っている音。吹き込む風は高所の風。ぴゅう、と口笛を吹いたとしても地上のキマイラ達には届くまい。
 地上に巨大なテレビで中継されているため、高額取引された座席指定券を入手できなかった派閥の者達もこの戦いの顛末を、見届けることが叶う。
 ああなんて、素晴らしい誰も困らない世界。
 推しと同じ派閥を選んだら超ハッピーワールド――。
 キマイラ達に猟兵達はめちゃくちゃかっこいい超すげー有名人に映る。
 同じモノを推せるだけで、楽しさは天井知らずになるのだ。
 推し(凄い人)の格好いいまたは可愛い戦闘を見れるだけで大金が動く――たけのこ派、きのこ派が出資して高層ビル屋上特設リングはつくられたという。
 つまりこれは娯楽の範囲なのです。どのような方向性だって構わない、女子供得体の知れないモノ、楽しく騒げハッピーハロウィン!

 尚、キマイラフューチャー住人の戦闘は、先程終了した。
 熱気冷めやらぬ中で行われた出場者の戦闘は、多種多様。
 ダンスを主体とした頂上決戦からトランプタワーを何段積めるかから、色んな方向性の戦いがあったらしい。
 中でも、たけのこときのこの気持ちを語る不動勝負(その場で創作ポーズをキメて動かない)は、勝負後のSNS炎上が凄まじかった。
 感動と興奮でSNSは常に大炎上状態を維持しているのだ!すごい!
 どんなに本気でぶつかってもキマイラ達だけでは――極端に"きのこ"が勝つ事も、たけのこ"が勝つ事もなかった。その戦いは、楽しさ重視で綺麗すぎたのだ――闇のきのこたけのこ戦争には程遠い――。
「……おい!予選の話聞いたかよ」
「ばっかお前ぇ、おれっち観戦席で見てたわ!流石きのこって感じだったな!」
 きのこドーナツをもさもさと、ほっぺたに詰め込むカラカルな獣耳を揺らすキマイラは上機嫌。
 だってキノコ派の運命力が強かったって証明されたんだもん。もさもさ。
「……オーイオイオイ、そいつは聞き捨てならねェや。クレープも食えよ」
 鷹のような翼をはやしたキマイラが、クレープを持った自分をスマホに収めて即座にSNSにアップ。お気づきだろうか、両方の派閥から、スイーツ大食い対決が場外にて始まっているのである。これはほんの一部、たった二人だけにスポットを当てているが、色んな所で小さな小競り合い(大食い勝負)は勃発している。
「クレープが持ったいねぇだろうが!もっとゆっくり食えよ」
 もさもさとドーナツを口に詰め込んで、どんどん消えていく。口がだんだんリスやハムスターみたいなことになっていくが、カラカル耳は気にしない。
「もさもさ聞き取りにくいんでキッチリ食ってから喋って貰っても?ドーナツの化け物みてえになってんぞ。ハッピーハロウィーンで背中思い切り叩いてやろうか」
 ドーナツ美味しいけど頬に詰めて遊ぶゲームじゃないんだわ。叩いた拍子に詰め込んだモン吹き出させてやろうか、という攻撃的ツッコミが入り一触即発な二人の戦いは猟兵の戦闘が始まるまで続く――。

 きのこ、たけのこどちらが勝ってもどちらも美味しい。
 猟兵達の武闘会は、今期絶対見逃してはならない。
 サイコーを極めた派閥争いの行く末は、猟兵達の結果次第。予選から数えてきのこが2勝、――いいやまだ勝利派閥が決まったわけではないさ。
 (コンコンコンの)トリックオアトリート、叩いてご覧よ。
 まあお菓子でも食べながらにっこり楽しく終焉まで見届けよう。
カズマサ・サイトウ(サポート)
普段の口調は「あっし、お前さん、でさぁ、ですぜ、だよ、ですぜ?」、お偉いさん「わたくし、~様、です、ます、でしょう、ですか?」

ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、連携の際はライオットシールドで味方をかばう優先。
基本的に己の能力を武器として使用し手に負えない状況にUC使用。
ガスマスクを装備し耐毒能力を底上げ、得た情報は常に仲間に共有。
罠を発見した場合、ライオットシールドで防御しつつリボルビング・スラッグシューター等で破壊または解除に挑戦する。


ケヴィン・ウッズ(サポート)
無口な少年です。武器を見るのが好きな為、戦う行為には積極的にいきます。
周りの武器の扱い方や戦闘行為をよく観察し、自分の動きにも取り入れていきます。
反面話して説得、作戦を考える等は面倒くさいことから消極的です。
無意味に傷つけるような行為でなければ、言われれば素直に従います。
あとはお任せします。


榎・うさみっち(サポート)
アドリブ・連携歓迎
◎:ほのぼの、ギャグ、冒険
△:シリアス、心情

▼性格
誰にでも強気で態度がでかい、口も悪い
でもすぐビビるヘタレ
ボケもツッコミもこなせる
自分ちの貧乏な家計を支えているからか、とてもがめつい

▼戦闘スタイル
小さい身体と逃げ足技能を活かしてぶんぶん飛び回り攻撃を避ける
逃げに徹して隙を見て一撃食らわせる
挑発して気を引いて、他猟兵にアタッカーを任せる
UCのみっちシリーズを大量召喚して数の暴力で攻撃
など、トリッキーな戦い方が多い

▼その他得意な事
料理
裁縫
アート全般

『わはは! うさみっち様が居れば百人力!』
『ぴゃああああ!』


リカルド・マスケラス(サポート)
『さーて、どう調べるっすかね~』
装着者の外見 オレンジの瞳 藍色の髪
基本は宇宙バイクに乗ったお面だが、現地のNPCから身体を借りることもある
得意なのはサポートで、非戦闘時はコミュ力や宇宙バイクの機動力で情報収集をしたりなどが可能。ある程度のその世界の知識や常識なども世界知識でわきまえていたりもする。
また、仮面単体の時のサイズを利用すれば、念動力と組み合わせて、狭い場所を通ったり潜入調査を行うこともできる。

基本的には真面目に仕事はしますが、きれいなお姉さんと一緒に行動できる選択肢があれば、迷わずそちらを選ぶチャラいキツネさんです



●飛んで回って!それで勝利は微笑むから!

 飛び入り参加だって大歓迎!
 そんな言葉に背中を押されて、あれよあれよという間に参加していた猟兵というものは存在する。キマイラたちがあまりに楽しそうに言うものだから、催しの一環として楽しんでみるのも一興かと、二つ返事で了承してしまった数人が――。

「それで全員の派閥を確認しとこーぜー!」
 榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)の順応性も確たるものや。どーんと肝の座ったナイスなフェアリー!
 尚、自分の主張はあえて言わない素晴らしいスタイルだ。便乗系。
「自分はほら、足りない方って感じで~」
 リカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)もまた、ドローンが大量に飛び交うものだから、手を振って盛大にアピール。
 なんやかんやで、わりとチャラい感じが、これまたキマフュ受けするの。
 大画面に映し出された楽しげなリカルドに、キマイラ住民の歓声が至るところから聞こてくる。さりげなく自己主張がないあたり、リカルドもあれのパターンである。無所属便乗系。
「……俺は、あれ」
 キマイラ住人が作り上げたポップでSD調のエンブレム(たけのこ)を指をさすケヴィン・ウッズ(人間の剣豪・f34923)はとにかく無口だ。
 しかし、きちんと派閥を自己主張できる彼は、それだけぽつんと言って口を閉ざした。リカルドとうさみっちが楽しげにする所で、ケヴィンの視線はリカルドの宇宙バイクともうひとつに釘付けになっている。
「おう?あっしの姿になにか興味が触れるんで?」
「……なにか、持っている風(ふう)の、腕だ」
「ああ、成程。これはあっしの得意とする――ライオットシールドを此処に普段持っているからだね」
 戦闘するなら、一番年長者として同じグループの仲間をかばっていきたいつもり。
 そんなカズマサ・サイトウ(長きに巻かれる、おにぎり大好き風来坊・f26501)も、実のところ主張はどちらにも転んでいない。きのこ、たけのこどちらでもよく、多い方に同意して仲間につこうと考えていたのだ。
「……あー、ならあっしは君とは同じグループじゃないほうが良さそうか」
 風を利用する戦闘カズマサのライオットシールドを見るなら、向かい合うのが自然と考える。では派閥は敵としてきのこを選ぼう。
「じゃあ自分らは~」
「まあ適当でいいんじゃね?じゃあ唐突だけどきのこは定員なんでよろ~!」
 うさみっちはカズマサと即席"きのこ組"を組むと宣言した。
 唐突に決まる!これが派閥の怖さ!
 しかもなんとなくでじゃんけんも意見すり合わせもなく唐突に決まる!
 うさみっちの発言力はこの辺りから大物感が漂う!さくさく決める!サクサク乗る!そしてさくさく模擬戦開始っぽい雰囲気を作り出してぶーーーんと戦闘フィールドを飛び回る!
「了解、じゃあ自分は……おや?」
 サポート連携の気持ちで居たリカルドの宇宙バイクにケヴィンが既にちょこん乗っているではないか。
 ――なんでもありって話っすけど、二対一みたいなことになってるっすか……?
 ――いや、ありゃあそういう話じゃないっすね~。
「……」
 ケヴィンは熱心にカズマサとうさみっちが何をするものか観察するのに徹していた。戦おう、という雰囲気はどうにもない様子。
「まー、安全運転はするっすけど~……腹あたりをぎゅっとしておいて貰えると助かるっす」
 バイクに跨ると反応はすぐに返っていた。ぎゅっ。聞こえてないわけでもないらしい。じゃあ、一緒に派手なアクションライドにご招待。
「ルールは自分ら決めてちまう法が良いっすよね~」
 うーんとリカルドは一度腕を組んで、軽いシンキングタイム!
「あ、じゃあ簡単に、同チーム二人の足が同時に離れたら負け、とかどうっかね~」
 うさみっちは飛んでいて、ケヴィンはバイクに同乗。
 この時点で誰が足をついているかという頂上決戦が、もといも勝利者が決まっているようなものではないかという疑念が湧くのだが――そこは置いておこう。
「ああ、自分はバイクから降りないっす。だから自分の場合は特例で降りたら負け、ってことで」
「つまり……」
「ああ、あっしがきのこチームの勝敗を握るってことに?おお、一気に重大責任が……」
「まあまあ、気軽に楽しくどーんだぜ!うさみっち様はそれで良いと思うんだぜ!」
 始めから飛んでいて、勝敗に関与しないとわかった途端うさみっちの声はとんでもなく緊張感が抜けていく。
「四人いて、反対意見はナシ……じゃあそういう事ではじめてくっすよ~」
 リカルドの提案を誰も否定しなかった。おの戦いはそんなふわっとした感じで始まる。
「君はタイミングを見て、勝負を仕掛けるっすよ!」
「……うん」
 作戦を考える等から一歩離れていたケヴィンだが、護りを優先するらしい男に一撃叩き込む重大任務を引き受ける。
 これは模擬戦。
 強く攻撃を叩きつけて、ただ"足"をフィールドから離れさせればいい。
 無意味に傷つけるようなことには、ならないだろう――だからこれを、了承できた。それまでは、周りの武器の扱い方、戦い方――――もとい遊び方を、眺めていてもいいはずだ。
「んじゃあ、自分から先制していきますっすけど、……まあ言い出しっぺの法則ってことでぇ~」
 バイクを軽く蒸かして発動させるユーベルコード忍法・影魔人の術(カゲマジンノジュツ)。フィールドを照らすライトの明かりから生まれる自身の影を、ずずずと立ち上がらせるのだ。
 それは影に潜むことができ、手足をどこまでも伸ばす影魔人。
「さあ、行くっすよ!影魔人!……と、それから君も!」
 ぎゅるるるっと"たけのこ派"の急発進と進撃の音を聞いて、カズマサは腕にライオットシールドを展開する。
 バイクでの突進ではなく、リカルドが憑依する人間丈三倍の影魔人が狙いだろう。
 カズマサをふっ飛ばせば勝ち――たしかに作戦として成立している。
 ライオットシールドは風を圧縮した盾だ、このフィールドには強く強く風がたまに吹くから、その力を取り込み形を造るは容易い。
「護りは硬めを自負してるんだがね、あれはあっしが対処しやすが!」
「程よく護ってくれたまえー。うさみっち様は、ちょっと楽しくコンコンコンをしてきたトコだぜ!」
 ひゅーんと戻ってきたフェアリーはカズマサに耳打ちスタイル。
 自分の身長よりでっかい風の盾に内心凄くビビっているうさみっちは、顔には出さずにドヤァと態度デカめに腕を組んだ。
「ほう?それで何が出てきたんで?」
「じゃーん、これだ!」
 ばっ、とその手に魅せるもの。
 小さな体でも持てる、魅惑の"きのこ&たけのこスイーツ合わせ盛り"な皿だ。
 両派閥が絶句する。共存パターンのお菓子が!こんな会場に!?
 入場券、整理券が存在したのはそういうことか!?
 至る所でカメラ撮影音。
「これをうたみっちゆたんぽからぁ~」
 よにもおそろしきデビみっちを召喚する触媒としよう。
 三叉槍をもったデビみっち(総数百三)という大量の悪魔が、一気に湧いて現れる。
「これが欲しいならちょっと戦って来て貰うんだぜ!うさみっち様が勝ったらあげないけどな!」
 お菓子がほしいか、そらついてこーいとはうさみっち談。命令に従わせる為とはいえ、自分が敵陣に自ら突っ込むなんて、なんて勇敢な――。
「じゃああっしは、いい感じに攻撃が届くように援護のひとつに勤しみやしょう!」
「ふっとばなかったらっすよ~!」
 リカルドの攻撃が上から降り注ぐ――影の腕はバイクの速さに並走して襲いかかってきた。とても強くぶつかってきた影魔人の攻撃を、カズマサは気合一つを胸に、立てて受けて、その場に留まる。ぐぐ、と後方に少しだけ圧されたが。それだけだ。
「……ふっとば、なかったね」
 さあ、発動せよ。反撃のクライシスゾーン!
 やぁーー、とバイクに乗ったリカルドとケヴィンを追いかけるうさみっちにの周囲で無機物――ドローンがカズマサのユーベルコードの働きかけに応じて、超次元の竜巻となって暴れ始める。変換された姿を制御するカズマサだ。思いのままに操って、バイクを追撃するのだが。

「ぴゃぁやあああ!!」
 うさみっちと大量のデビみっちが竜巻に巻きこまれてぶぉんぶぉんと回されていく!三叉槍持ちのデビみっち搭載超次元竜巻だ!当たると痛いぞあぶないぞ!
「そ、そんなのありっすかぁ~!?」
 仲間ごと巻き込むデッドマンの攻撃からリカルドはフィールド上を逃げる逃げる。
 ただ、静かに――その様子でも息を潜めていた一人の人間がいた。
「……ヒーロー、そのまま突っ込んで」
 逃げてばかりはやめてよ。もっとあの盾を近くで、見たいんだけど。
 ぶっきらぼうに、作戦ありっぽいケヴィンの提案に、若干涙目を浮かべかけていたリカルドは気持ちを強く持つ。
「りょうかいっす……うう、タイミングは君に任せるっすよ~…………!」
「勿論」
 竜巻から逃げ続けているスタイルから、真正面に突っ込むというのは愚策だ。
 バイクから降りる、ふっ飛ばされて離れても負けと言われればそのとおり。
「竜巻を連れてぇええ、いざラストタックへいざゆかん~っす!」
 スピードを上げて、今度はケヴィンの策略でカズマサを倒すべく運命の瞬間(交差)が訪れる。

「……そんな計画的なことはしない」
 ケヴィンの手には適当にコンコンコンして入手したチープウェポン――バールのようなもの!
 バールのような強度はないけれど、硬そうななんか格好いい棒である。
 見た目はバール、でもバールじゃないのだ。棒。
「だから」
 力を僅かに溜めて、咄嗟の一撃はユーベルコードに昇華する。
「防ぎきったらあっしらの勝ち!いざ勝負!」
 ライオットシールドにぶつかるそれは、剣刃一閃。速さという重力を加え、重くなった一撃を放つ!
 本来は切断するそれだが――即席チープウェポンの方が先に壊れてしまうのだ。
 ただ、ぶつかった衝撃で、大の大人を押し倒すだけで済む話――!
 バイクに乗った二人からの数秒の攻撃を、結果的に防ぎきったカズマサのシールドは強かった。
 強かったが……。

「ぴゃぁああああ!!お助けぇえ!!」
 うさみっちが巻き込まれた竜巻が、全員を巻き込んで吹き荒れる。
 解除するのを忘れていたのだ――カズマサの足も、地上から離れてしまうことになる。控えめなケヴィンの驚き超えは特にうさみっちの絶叫でかき消された。

 猟兵達が敷いたルールに基づき勝者は――「たけのこ派」となった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

佐々・夕辺
【夢狐】茸
仮装は一章と同じ

そうね、でも勝負は此処から
いつ引っ繰り返ってもおかしくない

甘いわよマリアドールさん!
野菜をトッピング出来るのはきのこドーナツとて同じ
なんならサンチュで挟んで食べても美味しいというマリアージュ
そして何より持ちやすく、最後まで食べやすい…!

サンチュで挟んだドーナツを食べてアピール
片手で狐を作ってコンコン

ええ、どうせなら全力を出し合いましょう
蹴りが当たったハープに氷結の管狐を殺到させるわ
凍える手でどこまで奏でられ……ふあ…

終わったらスイーツを堪能
クレープを食べるわ、野菜トッピングで

一番好きな所?
…私の全てを受け入れてくれた所かしら…
まあ!付き合ったばかり!?
ねえ、どんな方?


マリアドール・シュシュ
【夢狐】竹
仮装は一章同様

今はきのこ派が優勢なのね
でもこっからの逆転劇で巻き返すんだからっ(天使の羽揺らす

きのこドーナツは食べやすさの点でも有利ね…
たけのこクレープはデザートだけでなく野菜をトッピングしても楽しめるわ!
スイーツの枠に捉われずヘルシー部門でも
見た目も負けず劣らず華やかで映えるわ

クレープを食す所をカメラにアピール
ウィンクする

最後まで夕辺とは争う運命みたい

耳飾りを花弁に変えUC使用
世界を謳う
眠りを誘う穏やかな旋律奏で
演出で服がボロボロに
全て終了後、互いのスイーツ食し恋バナに花咲かす

馴れ初めはあの旅館かしら
夕辺は結婚相手のどんな所が一番好きか知りたいの
マリアは…まだ付き合ったばかりで(照



●ハロウィン's「RAGNAROK」

 いなかまち、から舞台を移し――ビル風が二人の髪をゆるりと揺らす。
「この時が、来たわね」
「ええ、来てしまったのね……」
 二人の中継が始まった途端、キマイラフューチャー中のきのこ派たけのこ派がざわつき出したらしい。
 視聴率がぐん、と上がって、ぶわあああとドローンの数が一気に増えて。
 観客たちが熱狂したように騒いでいる。
 "天使"と"悪魔"なナースな二人が、SNSまで炎上させていた為だ。噂では、"天使派"と"悪魔派"という別の部門・派閥が発生しはじめた、という。ハロウィンだけの影響にとどまらない!ハイビートな流行が移ろうサイケデリックな熱狂が、猟兵二人の知らない所でブラックホール並みの規模拡大をはじめていた――。

「今はまだ、きのこ派が優勢なのね」
 此処で勝ちを拾えたなら、引き分けに持ち込める……?
 ――ああでも、一対一の戦いがカウントとするなら、二対二の結果は?
 マリアドール・シュシュは考える。
 ――もしや、この戦いにマリアが勝てば、逆転が狙え……?
 キマイラフューチャーだ、此処は。
 奥の手にレフェリーへ進言してみるのは良い隠し玉になるかも知れない。
 そう思うとぐん、と勝ち気になれる。"もしかしたら"は、勇気のしるし。
 それが女の子、というものだ。
「こっから、マリアが巻き返すんだからっ」
 天使の翼を揺らすと、ふわ、と羽毛のような羽が溢れる。
「あらあら天使さん。そう簡単には攻めさせないのよ」
 悪魔の角のとんがりくらい、佐々・夕辺は悪魔の笑みを浮かべよう。
 ――今日は悪魔風。小悪魔風……!
「勝負はいつもこうして誰かが向き合った瞬間から。いつどこでひっくり返っても可笑しくないの」
 ――いつも笑って終わりじゃすまないことだってあるのよ。
 ――指先一つでころんと勝敗や主張は傾くの。
 天使に向かって悪魔は囁く。一人の主張じゃあ世界も主張も変わらないと。
「悪魔さんは意地悪さんね!でもマリアだって主張するのよ」
「へえ、どんな主張かしら」
 傾聴の囁き。悪魔さん、前回の勝利の感触と現状の優位性に浸っております。
 ちょっと短め黒いナースなスカートの際どいラインにドローンが近づいている事に気がついていらっしゃいません。
 そんな危なげな様子に気がついているマリアドールは、すぅ、と手元にクレープも持ち出す。
 当然、武器以外を持ち込んではいけないルールもありません。
 スタッフがマリアドールの要望に応え、実物を用意しました。
「ほうら夕辺、見て!」
 白衣の天使が、自信有り気にメガネを装着!賢い言葉をもり立てます。マリアドールのターンだ、とざわめくたけのこ派閥の視聴率がぐぅうんと上がった模様。
「このたっぷりのお野菜を!意外と合うのよ、……レタス類」
 スイーツとしても抜群。トッピングの自由度は、無限に重ねがけ出来る筈。
「だからこうして、本物を用意してみたの」
「スイーツに葉物系野菜を……!?」
「そう。クレープがクリームとデザードしか挟めないなんて事はないのよ!」
 全体のバランスを考えて、スイーツ要素を残しつつ両立させてさらなる進化が可能だという主張だ。
「コンコンコン限定という話だったけれどこの味を憶えてお店を出ってだせるはず」
 スイーツ枠に囚われず、ヘルシー部門からだって主張が出来るのよ。
 凄いと思わない?
「見た目も負けず劣らず。場合によっては更に華やかで、SNS映え――しちゃうの」
 手にしたクレープ、実食タイム。
 マリアドールがクレープをおもむろにはむっ、とするとレンズ集中の音が何処からともなく聞こえる!
 みんなが見ているぞ!マリアドール!
 視界に飛び込んできたカメラは空にたくさん。
 ニッコリ笑って、口元の(素材の味を大切にした甘さ控えめ)クリームを拭いながらのウィンク!
 完璧すぎるたけのこ主張力に、上空ドローンがぼとぼとと次々に墜落していく!
 なんということだ!場外でドローン操縦者達が悩殺(みりょう)されまくって昏睡したようだ!操縦者はキマイラたちなので、おそらくエモにキュン死(あまりの動機に行動不能に陥った)しただけ。しばらくすれば、"天使ちゃん可愛いー!サイコー!"とSNSで騒ぎ出すことだろう。
「……どうかしら、夕辺。今回は、完璧でしょう!」
「思わず、ドキッとしたけれどね……甘いわよマリアドールさん。甘すぎる、甘々さんよ!サンプル品を持ち込んだのは、自分だけなんて思わないで!」
 ばーん、と夕辺が掲げるものこそ正真正銘"きのこドーナツ"。
 こちらもまた、夕辺の要請を受けてスタッフが実物を用意しました。
 参加賞とはまた別の品です。
 ご利用ありがとうございます、悪魔さんの為にドーナツをコンコンコン出来て幸せです。スタッフの謎のメッセージが電波に乗って混入したが、種族特徴を閉まっていた夕辺にはどうにも聞こえなかったようだ。
 すっ……と悪魔さんは"悪魔の素材を"取り出して、セット。
「見て。野菜をトッピング出来るのは、きのこドーナツとて同じ!」
「そ、それは……サンチュ?」
「正解よ。こんなこともあろうかと、食べ比べアンケートをスタッフさんに仕掛けておいて正解だったと思うばかりよ」
 きのこ派キマイラたちに"きのこドーナツ"に合わせて食べるなら何?と夕辺は調査したという。
 "黒衣の悪魔さん"としてSNSを炎上させていた(猟兵達は知らない)もので、話しかけられたキマイラ達はすぐに返答をくれた。
「上位を占めていたのはレタスやサンチュ類。味変は……やはり一度は手を出してしまうようね」
 流石バズリを得るために、日夜努力する愉快な住人たち。
 やることの自由度は、誰も負けていない。
「きのこもたけのこも、お山こそホームグラウンドだもの。やはり葉物な野菜は合うのそう――真理ね」
 奇抜発言の中には、きのこドーナツをもう一度ふわっと焼き直してあったかくして食べるという意見もあった。ヘルシーさは据え置いて、食の好みを貫くという。一度は試してみたくなる案である。
「そちらは内側に入れていたようだけれど、サンチュで挟んで食べる――外から攻めることだって出来るの」
 外側にヘルシーなトッピングを添えてみる。これぞ悪魔の所業。
 たけのこ派には、この発想はなかったのではないか?
 びっくりた様子をみせたマリアドールにふふふ、と微笑う夕辺。
「挟んで食べても美味しいというマリアージュよ。手元も汚れない、最後まで食べやすい……!」
 持ちやすさ、不慮の中身こぼれなんてないのが最大の魅力よ!
 サンチュで挟んだドーナツを、夕辺は空に一度見せつけて。
 アピールした後、美味しそうに頬張る。食べてアピール!これが二人目となるときのこ派のドローンがすごい勢いで寄ってくる!
 夕辺の近くによってきたドローン群に、半分くらいをぺろっと食べた夕辺は口元を指で拭いつつ。
 片手で狐を作ってこんこんさせる。美味しいコン♪なアピールを添えて。
 その姿に、こんどはきのこ派ドローンが――すごい勢いで空高く上昇していった。
 ドローン操縦者の昏倒により、操作は上昇を選ばれたまま遥か上空へ消えていく。
 墜落による故障と、大気圏突破の可能性のある消失。さてどちらが軽度か、という争いはとても蛇足である。
「美味しそうだったわ……ドーナツ」
「クレープもね……」

 天使と悪魔の間に生まれる、"いいなあ"というお互いへ向ける羨ましさ。
「……沢山の反応が聞こえたわ?同じくらいの歓声。応援…………ああ、夕辺とは最後まで争う運命にあるみたい」
「マリアドールさん。この場所は、決戦の舞台に相応しいわ?どうせなら、全力を出し合いましょう」
 戦いの火蓋は急に落ちる。
 手元のスイーツが無くなるまでの平和条約は此処に崩れて無くなる。
「全力で、ええ勿論……この場所に、ハルモニアの華と引き連れて。匂いと共に踊りましょう」
 任意で花びらに変えるのは茉莉花の歌環。
 自分の武器をジャスミンの形をした水晶の花びらとして、煌めかせマリアドールはハープを手に世界を相手に謳う。
 茉莉花の雨(ヤースミーン)の舞うところに、マリアドールの歌がある。
 局地的な煌めく水晶の花弁は、確かに幻想的だ。
 眠りを誘う旋律の運びその手で操り、夕辺の出方を誘う。
「……良い声、そしていい音色。でも!冬の訪れは突然よ」
 獣の冬を知りなさい、管狐厳冬(クダギツネ・フィンブルヴェート)!
 一度蹴りを当てたハープ目掛けて、厳しい冬の訪れを夕辺は告げる。
「吹き付ける冷たさで、弦を爪弾き歌い続けられる?」
 氷結の管狐の殺到で、悴むマリアドールの指先。
「ふぁ」
 凍える手で何処まで奏でられるかと、この作戦を選んだが花弁の殺到を眠気混ざりで避け続けられない。
 ぴっぴっ、と避け損なってナースな衣装が鋭利に、水晶の花弁に割かれる。
「マリアの歌で――今度こそ、たけのこの勝利を謳うのよ!」
 かくん、と膝を折りかけた眠気MAXの夕辺に殺到する無数の花弁だが、マリアドールの範囲指定はというと歌か旋律が紡げる限りの範囲で――夕辺の"降参"の言葉を聞くまで。
 だから――勝利を確信できたマリアドールだが、凍える手がほんの少し、意図せぬ音符を紡いだことで。
 天使(あくま)も悪魔(てんし)も巻き込むズタズタ災害が引き起こるのであった。
 最後まで、フィールドに立っていたのはマリアドール。
 つまりこの勝負の勝者は――"たけのこ"だ。


 はらり、と危ない場面がカメラに映し出されかけたのだ、それは完全阻止が行われた。野生の勘をフルに働かせたレフェリーが慌てて電子機器を支配下に置いてジャミングした為だ。
 そういうシーンは、完全にアウトです。規制対象です。
 危なげなシーンがキマイラ住民に公開されることはありませんでした。
 この武闘会は、どこまでも健全でお送りされなければならないのです。
 戦闘数なら"引き分け"で。一対一という人数的な勝敗数なら、"たけのこ"がぴょこっと勝利した数が多かった。
 あたまひとつぶんのしょうり。つまりだ――きのこたけのこ戦争は、頭一つ分程度しか差がつかない戦いなのである。
 これは来年もまた、闇の戦いは行われるだろう。
 この戦いは何度でも続き、繰り広げられる魂の(へいわな)戦争なのだ――。


●参加賞のスイーツを片手に
「ええと、マリアが仕掛けたことだけど眠気は?大丈夫?」
 マリアドールの心配声と共に差し出されるクレープを受け取る夕辺。
「大丈夫よ、目をもう少し擦りたくなってしまうのだけど……」
 夕辺からは、サンチュと一緒にドーナツを。
 お互いのスイーツの良し悪しは理解を示せる。
 主張は変わったりしないけれど、スイーツは美味しいのです。
 女子会にはあるべき甘さ、手にとりやすさ、気楽さです。

「ええと、えと……馴れ初めはあの旅館かしら」
 ニヨニヨと、隠していた耳をびょっと飛び出させて、夕辺はによによと微笑う。

「夕辺は?結婚相手のどんなところが一番好き?」
 知りたいの、とはにかむマリアドールの言葉に融けるように頬を染めて、夕辺は何故?と問う。
 女の子の質問だ、勿論ふんわりとは理解している。
 ――でも、きちんとことばでききたいじゃない?
「マリアは……まだ付き合ったばかりで……?」
 照れくさそうな小声で、頬の熱の高まりを隠そうとするマリアドールが、本物の天使なのではないかと疑う夕辺だ。
 ぱたぱたと、手で顔を仰ぐ彼女に聞かれたら。
 答えてあげないのは悪魔だろう。
 でも悪魔の時間や対立は。さっきでおしまい。
「まあ、付き合ったばかり!?あら、あらあら。ふふ……一番好きな所?よね?」
 こくこく頷く天使さんの、可愛らしさの前なら言えちゃいそう。
「……私の全てを受け入れてくれた所かしら……」
 聞かれた事に答えただけだ。
 でもそわそわは、マリアドールが発した言葉の興味に傾く。
「ねえ、マリアドールさん?……どんな方?」
 あなたの大事に想う人。
 スイーツを堪能しまくりながら、その合間合間にどうか聴かせて?
 ――あなたを、そんな風に可愛らしくする人との話を。


 ハッピーなハロウィンとは――勝利した側に訪れるものではなく。
 主張の権利を上回った方が一方的に行うものでもなく。
 心温まるトークの中にあるだろう。トリック・オア・トリート。
 悪戯はしないけれど、赤裸々な女子トークからは逃してくれない。
 キマイラフューチャーでは、今年。
 何故か悪魔な衣装と天使の衣装が、爆発的に大流行した。
 ……一体どこの誰の影響なのだろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年10月27日


挿絵イラスト