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乱逆は因縁尽くか、エースの試練

#クロムキャバリア #ACE戦記 #グリプ5 #フルーⅦ

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●泥沼からの脱却
 小国家『グリプ5』と小国家『フルーⅦ』はかつては同盟国であった。
『グリプ5』が『憂国学徒兵』たちによって建国された折より続く同盟であり、友好で結ばれていた。
 けれど、オブリビオンマシンの暗躍に寄って一度は水泡に帰した友好を再び結ばんとしている。
 どちらの国もオブリビオンマシンによって狂わされた指導者によって泥沼の紛争へと突入仕掛けていた。けれど、それらを防いだのが猟兵たちである。彼等の存在無くば、どちらの小国家も今日まで存続することはできなかっただろう。
「ゆえに『軍備縮小条約』。そちらの言い分はよく理解しました。これ以上、お互いの国が歩み寄ることができないのであれば、遠からず『グリプ5』も『フルーⅦ』も滅びる」
「そのための双方で同程度のキャバリアを同時に破棄、破壊することによって戦争規模の縮小を行う。そのための条約だ。本来であれば、戦闘行為の一切の停止が望ましいが……」

『グリプ5』と『フルーⅦ』との国境に近い荒野で会談が持たれ、そこで『ツヴァイ・ラーズグリーズ』と『アジン』は互いの国の現存するキャバリアを同数破棄することでもって、互いの国が歩み寄ることを是とした。
「ええ、互いの国民のことを考えるとそれが難しいことはわかっています。曲がりなりにも一度戦争状態にまで発展したのですから」
『ツヴァイ』の言葉は尤もであった。
 如何に言葉で、条約で友好が結ばれたのだとしても、末端の人々の間には不満が募っている。感情が理性を凌駕してしまう。
 それは仕方のないことだ。
 抑え込んだとしても、それが真の平和につながるとは考えられない。
 急いではならないのだ。

「慎重な判断を感謝する。こちらから持ち出す破棄予定の機体は、『ドランギム』。こちらからは国の代表として私が『平和祈念式典』に出席する。当日はよろしく頼む、『ツヴァイ』代表」
 かつては『アジン少将』と呼ばれた『エース』は、今やパイロットではなく国の代表としての責務に追われているようである。
 そして、『ツヴァイ』もまた同様である。
 本来であれば長姉である『アイン』が相応しいと彼女は思っていたが、そういう面倒なことが嫌いな姉に押し付けられた形だった。しかし、それでも彼女はこの『平和祈念式典』を成功させるために奮闘している。

 もしも、この『平和祈念式典』が成功したのならば、きっと弟たちも戦うことがなくなるだろう。望んだ平和が、平穏が訪れるのだ。
「必ずや成功させましょう、『アジン』代表。共に平和な明日を得るために――」

●因果はめぐる。
『グリプ5』と『フルーⅦ』の中間に位置する荒野は、かつてオブリビオンマシンによる画策によって大規模な戦闘が起こった場所だ。
 そこに『平和祈念式典』の場として選んだのは、同じ過ちを犯さぬためであった。
 キャバリア『熾裂』を駆り、『ツヴァイ』はお互いの国の廃棄予定のキャバリアを見回す。
 総勢にして300機以上の機体が廃棄される。クロムキャバリアの小国家において軍事力は言うまでもなく国力を示す。
 プラントを奪い、奪わえるのが常であるが、キャバリアとは力のバロメーターでもあるのだ。これらを廃棄するということは、即ち武器を捨てるということである。
「これで……お別れですね、『熾裂』」
 名残惜しい気持ちがないわけではない。『ツヴァイ』は己の乗機をこそ、廃棄するために此処に来ている。
 機体が片膝を突き、彼女はコクピットブロックから『熾裂』の掌に乗せられ降りゆく。

「『ツヴァイ』……」
 そんな彼女を見上げるのは、『ヌル・ラーズグリーズ』であった。
 彼女の母と血はつながっていない。いや、彼女たち姉弟たちは皆、血がつながっていない。
『アイン』を始めとする『ラーズグリーズ』の名を持つ者たちは皆、かつての『エース』である『憂国学徒兵』の8人のクローンである。
 キャバリアパイロットとして行動できるのは『フュンフ』までであり、残りの三人の弟妹たちはまだ稚すぎる。
 そんな彼女はキャバリア技師であるがゆえに今回の『平和祈念式典』に随行しているのだ。
 だが、『ツヴァイ』は何故、育ての母である『ヌル』が廃棄予定地に来ているのかを訝しむ。すでに準備は整っているはずだ。あとは機体を爆破するだけ。危険だからと離れた場所にいてもらっているはずなのだ。

「どうしました、母さん? 何か不具合でも?」
「いいえ。何も。何もかも順調よ」
 微笑む『ヌル』に『ツヴァイ』はおかしいと直感する。母はたしかによく笑う女性であった。
 己たちが血のつながらぬ子供、それもクローンであるということを承知の上で本当の家族のように接してくれていた。
 だが、その微笑みが今、『ツヴァイ』にはどうしても薄っぺらく感じてしまっていたのだ。

『ヌル』が手にしていたのは、一丁の拳銃だった。
 銃口は、己に向けられている。
 何をと思う暇もなかった。
「返してもらうわ、その機体を。私の機体を。『熾裂』……いいえ、『セラフィム・オリジン』を」
 その言葉とともに銃声が響き渡る。
『ツヴァイ』の体が『熾裂』の掌から落ち、砂埃の中に消える。
 それを見ることなく『ヌル』はオブリビオンマシンと化した『熾裂』に座し、その瞳を伏せるのだった――。

●祈念
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件はクロムキャバリアです」
 彼女の言葉は手短なものであった。
 それは緊急を要するものであり、詳しい説明をしている時間がないということを示していた。
「小国家『グリプ5』と『フルーⅦ』の間で執り行われようとしていた『平和祈念式典』がオブリビオンマシンによって参列した両国の穏健派を虐殺するという予知を私は見ました」

 かつての同盟国でありオブリビオンマシンによって引き裂かれた両国。
 その両国が再び、互いの保持する軍事力、キャバリアを同時に同数破棄することによって『軍備縮小条約』という友好を結ぼうとしていた所、その廃棄予定のキャバリア全てがオブリビオンマシン化したのだという。
 これを止めなければ、平和解決手段を失った両国は滅亡するまで互いを攻撃し続けてしまう。
「この惨劇を止めねばなりません。皆さんは『平和祈念式典』の会場に飛び、有事に備えてください」
 ナイアルテの声に焦りがある。
 猟兵たちが転移したとしても、どうやらこの陰謀を企んだ首謀者の乗るオブリビオンマシンには逃げられてしまう可能性があるのだという。

「……廃棄予定のキャバリアがオブリビオンマシンになることは止められません。ですが、両国の参列した穏健派の人々を護ることで、首謀者の目論見は打破することができるはずです」
 どうかお願いいたします、とナイアルテは猶予なき転移を詫び、猟兵たちを送り出すのであった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回はクロムキャバリアにおいて小国家『グリプ5』と『フルーⅦ』の『平和祈念式典』の裏で陰謀を企てるオブリビオンマシンを打倒するシナリオになります。

●第一章
 日常です。
『平和祈念式典』の会場では同時に慰霊祭も執り行われています。
 皆さんは、有事に備えて、その式典会場に潜り込みましょう。両国の人々と交流を図ることもできるはずです。
『グリプ5』からは『アイン』、『フュンフ』、『クロア』、『ツェーン』が。
『フルーⅦ』からは『アジン』が列席しています。

●第二章
 集団戦です。
 廃棄予定であった全てのキャバリアが『オブリビオン化』し動き出し、式典をめちゃくちゃにしようと暴れだします。
 逃げ惑う人々を守りながら、これを打倒しましょう。

●第三章
 ボス戦です。
 今回の陰謀を企んだ首謀者の乗る、強力なオブリビオンマシンとの戦いになります。
 マシンを破壊したとしても、首謀者には逃げられてしまう可能性が高いです。
 仮に首謀者を捕まえた場合、首謀者は正気を失っていたにもかかわらず処刑されたあげく、両国の関係にしこりを残すことになります。
 どちらに転んだとしても、オブリビオンマシンの背後にある黒幕の思惑は部分的に叶ってしまうようです。

 それでは、戦乱続く世界、クロムキャバリアにおいて平和への祈りを手折る存在を打倒する皆さんの物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
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第1章 日常 『慰霊祭』

POW   :    死者を悼み、祈りを捧げる

SPD   :    かつて失った人に想いを馳せる

WIZ   :    死者への未練を断ち切る

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 争いはいつだって生命を奪うものである。
 それは仕方のないことだと『フュンフ・ラーズグリーズ』は思う。けれど、それが正しいことだとも思わない。だからこそ、彼は『平和祈念式典』に思いを馳せる。
 己の乗機である『熾盛』は今回の廃棄予定のキャバリアの中に含まれていない。
 両国のパワーバランスを考えた時、象徴とも言える機体を廃棄することは国民の感情に則ったものではないという判断であった。
 姉である『ツヴァイ』は、己の機体である『熾裂』を廃棄することで、この『平和祈念式典』の意味を国民に問うつもりであったのだ。
 これまで『グリプ5』は多くの戦乱に巻き込まれてきた。
「けれど、これで一歩また進める。武器を捨てることができたのなら、争いだって捨てることができるはずだから」
『フュンフ』はかつて、平和という言葉の意味すら理解できなかった。
 理解できないがゆえに、母である『ヌル』と衝突もした。
 それがオブリビオンマシンの策動であったことは、猟兵たちだけが知ることである。

「失われた生命は戻らない。だから、せめて今は祈ろう」
 共に『熾盛』を見上げる『クロア』が隣りにいる。
 かつては敵対国の住人だった彼とも、今はこうして隣立つことができている。ならば、『フルーⅦ』の人々とだってできるはずだ。
「うん、そうだね。まだ誰も見たことのない平和を、皆に示すんだ」
 その瞳は希望に満ちていた。

 失われた生命に対する鎮魂こそが、平和への道に続く。
 二人は必ずや『平和祈念式典』を成功させるべく、会場へと足を運ぶのであった――。
月夜・玲
いや勿体な
300機以上の破棄とか勿体ないなー…
まあしゃーないんだろうけど…
まともな機体なら、中のパーツとか貰って帰りたいんだけど…
うーん300機以上かー…
後の事を考えると、頭痛いなあ
ま、生身の私なら覗きに来たで潜り込むのは簡単っしょ
事が起きるまで、ぶらぶらさせて貰おうかな

暇だしツェーンちゃんでも冷やかしに行こ
やっほやっほ、今日はお仕事?
ちゃんと勉強してるー?
技術の進歩は日進月歩
ちょっと油断しただけで、すぐ置いてかれるからお互い精進しよーね
あ、彼氏?違ったっけまあいいや
クロア君も元気してる?
まあ、よろしく言っといて
私?私もちょっと式典見に来たのと…
ま、ちょっとお仕事に来ただけだよ
気にしないでね



『平和祈念式典』はいわば『軍縮条約』締結の場であった。
 けれど、戦乱だけが渦巻く世界であるクロムキャバリアにおいては珍しいことであったのは言うまでもない。
 過去にも幾度かこのようなことはあったのかもしれない。
 尽くがオブリビオンマシンの暗躍に寄って叩き潰され、人知れず争いの火種となるものであった。今回の『グリプ5』、『フルーⅦ』においてもそれは予知として確認されている。

 だが、この事実はあくまで予知であって一般人たちが知る所ではない。
 説明をしたところで、その言葉が受け入れられるものではないことを猟兵たちは知っている。
「いや勿体な」
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)は両国合わせて300機ものキャバリアが廃棄されるという事実に思わずそう言葉に出してしまっていた。
 メカニックとしての性であろうか。
 どうしたって廃棄されるキャバリアが勿体ないと思ってしまうのだ。
 しかし、両国の関係悪化を修復するためには、『軍縮条約』でもって回復するしかない。そうすることで互いの国が和平へと進む一歩になるのであれば、それはしょうがないことであると玲も理解している。

 だが、その裏でオブリビオンマシンの策動が動いていることを猟兵たちは知っている。
 廃棄される300機ものキャバリアはオブリビオンマシンへと変貌し、『平和祈念式典』に参加した両国の穏健派の全てを殺し尽くしてしまう。
 それをさせぬために彼女は単身、『平和祈念式典』の会場に潜り込んだのだ。
「まともな機体なら、中のパーツとかもらって帰りたいんだけど……」
 どう考えてもすでに中身はオブリビオンマシンとすり替わっているのだろう。
 後のことを考えると頭が痛い。

 玲はどうしたものかと考える。
 けれど、考えた所で事態が好転するわけではない。事が起きるまで式典会場をぶらぶらさせてもらおうと思っていると、見知った顔があった。
『ツェーン』だ。
 彼女はこの日のために整備士の格好をしている。
 以前見たときよりも、その掌はオイルに染まり、けれどどこか吹っ切れたような明るい表情を浮かべている。
「やっほやっほ、今日はお仕事?」
 玲が背後から声をかけると『ツェーン』は驚いたような表情を浮かべてから、朗らかな笑顔を玲に向けるのだ。
「玲さん、お久しぶりです! この間はすごかったです!」

 どうやら祝祭のことを言っているようだ。
 玲にとっては自身の深夜のテンションで作り上げた設計図がどういうわけか流出していた上に組み上げられていたという黒歴史に直面しただけであるが。
「あ、ああ……えっと、ちゃんと勉強してるー?」
「はい、それは勿論です。キャバリアのことならなんでも聞いてほしいです! それに玲さんのご意見も聞きたいです!」
 はすはすしている。
 以前の彼女とは一線を画する様子に玲はたじろぐかもしれない。
 彼女の様子は明らかに憧れのアイドルに出逢ったファンのような、そんなテンションなのだ。

 せっかく技術の進歩は日進月歩。ちょっと油断しただけで、すぐおいていかれるからお互い精進しようね、と告げるはずだったのだが、『ツェーン』の様子がおかしいくらいのテンションに圧されてしまうかも知れない。
 だからこそ、玲は年長者として、ちょっとばかり年の功を見せようと『ツェーン』を迎えに来た『クロア』との関係をいじるのだ。
「あ、彼氏?」
「ふぁっ!?」
「え……?」
 あ、こいつ難聴系主人公だな、と玲は二人の様子に目ざとく気がつく。

 え、なんだって? とテンプレの如き態度の『クロア』にこれは『ツェーン』もかなり苦労しているやつだと理解できるのだ。
「やっほ。『クロア』君も元気してる?」
「ええ、おかげさまで。今日は式典にいらしたんですね」
「そうそう、ま、あとはちょっとしたお仕事に来ただけだよ」
 気にしないでね、とほほえみ玲は『クロア』と『ツェーン』のやり取りを見やる。

 これは年の功を見せつけるつもりであったが、青春のまばゆい光を見せられたような心持ちになる。
 うぉ、まぶしっ。
 これは目に毒である。玲は年長者として、そっとフェードアウトする。
 未だ二人の関係は甘酸っぱいものなのだろう。
 オイルと硝煙の匂いばかりが鼻につく世界であっても、形こそ違えど青春はある。
 それを目の当たりにし、玲はこの後に起こるであろう惨劇を見据えるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

賀茂・絆
『グリプ5』と『フルーⅦ』での条約…ふむ。
八咫神国は結局なくなっちゃったんデスカネ…後でどうなったか調べておきマショウ。

あ、ドーモドーモ、お久しぶりデスお嬢さん!
ほら、あなたたちが八咫神国の上層部に追われてる時に颯爽と助けに来た猟兵の1人デスヨ!ワタシ!
それにしても今日はめでたい日デスネ!
これもワタシがかつてあなたたちを助けたお陰…いや、それは言い過ぎデスけども。
でも、ちょーっとは功績を認めてもらっても良いデスヨネ?

フフフ…戦争による兵器開発が縮小されれば今度は戦災復興のために医療部門が伸びるようになるデショウ!ならばワタシの製薬技術も両国に高く売れるはずデス!

というわけで、今後共ご贔屓に。



 戦争とは確かに一時的な需要を生むものであろう。
 短期間で得られる利益は確かに多い。けれど、それは長期的な目でみたのならば、手をのばす選択肢ではないことは言うまでもない。
 戦争はあらゆるものの需要を跳ね上げるものである。
 けれど、それは血を流しながら生み出される需要であって、その後に来る疲弊は得た利益を全て消耗するほどのものであることは言うまでもない。

 だからこそ、小国家同士の争いはいつだって泥沼へと沈む。
『グリプ5』と『フルーⅦ』が『軍縮条約』という友好への道を歩もうとしていることは、商売人として喜ぶべき事態であった。
 特に、賀茂・絆(キズナさん・f34084)のような薬剤を取り扱う商人にとって、それは見過ごせないビジネスチャンスであもあったのだ。
「ふむ。『八咫神国』は結局なくなっちゃったんデスカネ……」
 彼女が関与した戦いにおいて、関連した小国家の名前である。
 すでに形骸化した国であり、今は国という体裁を取り繕うこともできなくなっている。

 絆が調べた所に寄ると、新興の小国家である『シーヴァスリー』に吸収されてしまったようである。
 現状、『八咫神国』がどのような状態になっているのかを絆含め、猟兵たちも『グリプ5』も『フルーⅦ』も知り得ぬようであった。
 不気味な静けさを守る『シーヴァスリー』の動向はおいておくとして、絆は『平和祈念式典』の会場で『アイン・ラーズグリーズ』の姿を探す。
 彼女が関与した事件で『八咫神国』からの逃走を手伝ったことがあるのだ。
「あ、ドーモドーモ、お久しぶりデスお嬢さん!」
「あ?」
『アイン』の言葉はつれないものであった。

 確かにこうして面と向かって話すのは初めてである。
 しかし、『アイン』の性質からか、こういう態度をよく取るのである。基本的に面倒見の良い性格をしているのだが、どうしたって第一印象がよろしくない。
 絆は関係ないというように、この商機を逃さぬのだ。
「ほら、あなたたちが『八咫神国』の上層部に追われている時に颯爽と助けに来た猟兵の一人デスヨ! ワタシ!」
 ミーがそうなのです、というように絆は自分の顔を指差してみせる。
 やっていることは怪しいことこの上ないし、言葉遣いのせいで割増である。
 けれど、『アイン』にはピンときたようである。

「ああ、あの時のか。それは世話になったな」
 やけにあっさりとしたものである。
 彼女にとって、戦場でのやり取りはそういうものなのだろう。
「それにしても今日はめでたい日デスネ! これもワタシがかつてあなた達を助けたおかげ……いや、それは言い過ぎデスけども」
「で? 何のようだよ。ただのおべんちゃらを言いに来たってわけじゃああるまいし。で、なんだよ?」
『アイン』が笑っている。
 どうやら絆が、恩を売りに来たわけではないことを見抜いているようであった。

 いやまあ、僅かに過去の事件での功績を買ってくれたらいいなと思わないでもなかったが、そこはそこである。 
 絆もまた笑う。スマイルは商売人の基本である。
「フフフ……戦争に寄る兵器開発が縮小されれば、今度は戦災復興のために医療の方面での投資が増えるモノデス。ならば」
 その言葉に『アイン』がうなずく。
 だから、というわけかと彼女は納得したようである。話が早いのは良いことだ。

「あんたの持っているいずれかの技術や知識を買えってことだろう。そして、『フルーⅦ』にもパイプが欲しい、そういうわけだ?」
「商売人デスカラネ!」
 絆はトントン拍子に話が進んでいることに喜ぶかもしれない。
 一先ず、というように絆は自身の持つ製薬技術について『アイン』にセールストークを続ける。
 戦いが終われば、戦いに傷ついた人々を癒やす番だ。
 だからこそ、絆は戦うだけではなく、その先を見据えて行動するのだ。

「というわけで、今後共ご贔屓に」
 にっこり笑って『アイン』との商談を終えた絆は、式典へと軽い足取りで進むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
ワシントン海軍軍縮条約。西暦1921年アメリカ合衆国首都ワシントンD.C.において締結。
第一次戦略兵器削減条約。西暦1991年ソヴィエト連邦首都モスクワで調印。後に第二次条約が成立。
世界史のお勉強としては、こんなところでしょ。

状況が人々に知らされていないなら、密やかに動かないとね。
「式神使い」で黒鴉召喚。
人々が詰まらず速やかに逃げられるルートを弾き出す。
両国のおそらく中間地点が会場なら、移動に使った乗り物があるはず。
その配置を把握して、避難してきた人たちを速やかに乗せられるよう準備。
これを『グリプ5』『フルーⅦ』双方に対して実施するわ。

状況開始後はアヤメと羅睺に任せて、状況の対処に入る。



 人の紡いだ歴史は、そのまま闘いの歴史でもある。
 どんなに言い繕うのだとしても、人と争いは切って離せぬものだ。
 それは過去を見ればわかることである。
 幾度となく繰り返してもなお、人は争いを捨て去ることはできない。けれど、その一歩目をためらうのであれば、永遠に平和は訪れないだろう。
 だからこそ、クロムキャバリアの小国家『グリプ5』と『フルーⅦ』の両国は『平和祈念式典』において『軍縮条約』を結ぶ。

 キャバリア300機をあわせて破棄することによって、互いの国に横たわる感情を解消しようとするのだ。
 いや、解消などできようはずがない。
 けれど、それでもお互いの手にした武器を手放したという事実が、感情をいつしか慰めることだろう。
『平和祈念式典』は同時に死せる者を悼む場でもある。
 両国の争いで失われた生命があっただろう。
 猟兵が介入することのなかった小競り合いで多かれ少なかれ失われた生命があった。

「他世界の歴史をお勉強しても、わかることだけれど」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は己の知る歴史を紐解く。
 いつだって人は争いを繰り返してきた。
 それが愚かであるというのならば、人の生命事態が愚かしいものであるということにほかならない。けれど、争いがなければ平和を知ることもできない。
 尊いものであると同時に、その足元にある屍の意味を知らねばならない。
「いつだって失われるのは生命ばかり。状況が人々に知らされていないなら、密やかに動かないとね」

 ゆかりは黒鴉召喚(コクアショウカン)によって召喚された黒鴉の式神でもって、上空から『平和祈念式典』の場となった両国中間地点である荒野を見下ろす。
 式典の会場の周囲には両国からの輸送トレーラーや式典に参加しようとしている一般人達などが乗り付けた乗り物などがごった返している。
 廃棄予定のキャバリアがオブリビオン化した際に混乱が引き起こされるというのならば、ゆかりはそういった人々が速やかにこの場から逃げることのできるルートを探し出すのだ。
「戦いになっても他の人が巻き込まれたら元も子もないわね……とは言え、厄介」

 彼女の視覚は式神の黒鴉とつながっている。
 見下ろす式典会場の周りにはキャバリアや輸送トレーラーが複雑に移動し続けている。
 集まってきてはせわしなく場所を移動している。
 これは仕方のないことなのかもしれない。これだけ大勢の一般人たちが集まることは両国であっても想定していなかったのかもしれない。
「彼等の平和への祈りが却って仇になるわね」

 とは言え、ここまで一般人たちが乗り付けた乗り物があるのならば、非難事態は問題なく行われるだろう。
 余計な心配かもしれないが、オブリビオンマシンの策動はいつだって争いの火種を生む。
「考えすぎかも知れないけれど、アヤメと羅喉に任せるしかないわね」
 ゆかりは式神の黒鴉との五感の共有を切って、式典会場を見やる。
 人々の平和への祈り。
 それは尊ぶべきものである。

 しかし、オブリビオンマシンの策動は、それらをも巻き込み、利用し、燻る火種に薪をくべることにしかならない。
 この一連の事件の黒幕が如何なる存在であるかをまだ知らない。
「なら、全部狙い通りになんてさせない。アヤメ、羅喉、頼んだわよ」
 ゆかりは式神たちに順部を任せ、式典へと向かう。
 これより起こることは平和への祈りを捧げる行いではない。
 それだけが残念でならないけれど、それでも猟兵たちはやらねばならないのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
正規の手続きでは遅いのでハッキングで短縮
会場の警備に己と機体のロシナンテⅣを組み込み大手を振って会場で行動

廃棄機体に『熾星』は…『アイン』様の性格上、手放すとは考えにくいですね
誕生経緯は兎も角、最早あの機体はあの方の物
好きに扱って頂きましょう

それよりも…

以前お会いしたのは戦場で機体越しでしたが、ご壮健で何よりです
『アジン少将』…いえ、代表
此度の条約締結には大変な尽力を為されたとか

(受け答えを●情報収集、Oマシン影響下かどうか●見切り)

…失礼ながら、嘗ての乱心を覚えておられますか
それと類似した事件が水面下で動いております

『フルーⅦ』側の警備の強化は…怪しまれますね
有事に備え、どうか御心構えを



『平和祈念式典』を虐殺の海に沈めるのがオブリビオンマシンの策動であるのならば、悠長に構えてはならぬと迅速なる手段でもって会場の警備に配置されたキャバリアにトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は己の機体である『ロシナンテⅣ』を組み込んだ。
 そうすることで『平和祈念式典』の会場に大手を振って参加することが可能になったトリテレイアは、データベースを掌握していく。
 今回の『平和祈念式典』で締結される条約では、『グリプ5』と『フルーⅦ』のキャバリア合わせて300機あまりが廃棄されることになっている。

 そこには『ツヴァイ・ラーズグリーズ』が駆る『熾裂』の名も連ねられていた。
『グリプ5』建国の礎となった『憂国学徒兵』の時代から残っていた機体の一つ。
 それが『熾裂』である。
 同じ年代の『熾盛』とは違い、破損から修繕を重ねていた機体であり、現状でそれを扱う事のできるキャバリアパイロットは限られている。
「……象徴たる機体『熾盛』は廃棄できずとも、『熾裂』を廃棄することで和平への強い思いを示す……『ツヴァイ』様らしい生真面目さとも言えるでしょうね」
 そして、もう一機『熾星』の廃棄はリストには乗っていなかった。
 その機体の生誕にはトリテレイアも一枚噛んでいるのだが、もはやあの機体は『アイン』のものである。

 ならば、好きに扱ってもらったほうがよいだろうと彼は考えていた。
「それよりも……」
 トリテレイアはデータベースへのアクセスをやめ、『ロシナンテⅣ』から降りて式典会場を歩く。
 目指す先にあるのは一人の男性である。
 直接の対面は叶ったことはないが、機体越しの対面はすでに済ませている。
「以前お会いしたのは戦場でしたが、ご壮健で何よりです。『アジン少将』……いえ、代表」
 その言葉に『アジン』は視線をよこす。
 彼の視線は鋭いものではなかったが『エース』たる存在感をトリテレイアは感じることであっただろう。

「此度の条約締結には大変な尽力を為されたとか」
「ああ、直接の対面はないようだが……君は私を知っているのか。衰えたな、私も。戦場で会った者のことは忘れぬはずであったが」
 苦笑いするように破顔する『アジン』がトリテレイアに手を差し伸べる。
 確かに一度は敵として相対したのだろう。
 けれど、此処ではそうではない。条約締結はまだであるが、すでに上層部では決定していることである。
 ならばこそ、そのわだかまりを即座に捨てることができるのが、『アジン』の国の代表としての資質であったのかもしれない。

「……失礼ながら、かつての乱心を覚えておられますか」
 トリテレイアは『アジン』の手を取り、骨伝導で言葉を告げる。
 何処に耳が在るかわからない。ならばこそ、ウォーマシンたる己の力を使う。鋼の擬似天眼(マルチセンサー・フルアクティブモード)たる彼のユーベルコードは周囲の情報を収集し超高速で解析する。
 その結果、目の前の『アジン』はオブリビオンマシンの影響下にはないことが理解できる。
 響く言葉に『アジン』は表情を変えずうなずく。
 彼もまた即座に周囲に己たちの会話が聞こえることの危険性を承知しているようであった。

「いいや、私は大したことをしていないよ。全て私の部下たちが、そして同志たちが、和平に尽力してくれたに過ぎない。私の力は微々たるものだよ。『かつてのようなことが起きぬように』私達も慢心はせぬよ」
 その言葉にトリテレイアはうなずく。
 伝えるべきことは伝えた。
 そして、『アジン』はトリテレイアが言わんとしていることを理解したのだ。

 この『平和祈念式典』の影で蠢く者がいる。
「お耳汚しをしてしまったようですね。お心構えは十分であると。ならば、私もお手伝いいたしましょう」
 手を離しトリテレイアはアイセンサーを煌めかせる。
 その輝きに『アジン』もまたうなずく。
 有事に際して即座に動けるようにと『アジン』は部下たちに支持を出し、トリテレイアに頭を下げる。
 
 盤石とまでは行かずとも。
 トリテレイアは『平和祈念式典』の開始を待つ。
 この後に控えるオブリビオンマシンの暴走。それを止め、失われる生命を全て救う。そのためにトリテレイアは静かに待つのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーリー・ザルティア
【心境】
キャバリアの廃棄…か。
いつかボクもレスヴァント、パール、ジョー…この子達と別れる日が来るのかねぇ。
その時は…笑ってバイバイしたいよ。

【行動】
判定:SPD

さて、会場に潜入完了っと。
このまま何事もなく済めばいいのに…そうならないのが悲しいね。
しっかし、慰霊祭…か。
まあ、結構覚えているものだね。死んだ戦友の遺言もも、初めて殺した敵兵の悲鳴も…。
いやだね。しかもそれを聞くのを慣れてしまってる自分も。

しかし、廃棄した後どうするのかねぇ。
なにか別の資材に生まれ変わればいいけど、結構技術的には難しいのよねぇ。キャバリア自体機密の塊だし…。
その辺何か聞いてないかしらねえフュンフくん?



 キャバリアの破棄。
 それは言葉にすれば簡単なことであったのかもしれない。
 平和に武器は必要ない。
 必要なのは武器を捨て去る勇気である。誰もが己以外の者が武器を持つことを嫌うだろう。己が武器を手放した瞬間に撃たれることを想像するからだ。
 だからこそ、『グリプ5』と『フルーⅦ』の両国の間に『軍縮条約』という名の和平が齎されることは喜ぶべきことであった。

「キャバリアの廃棄……か」
 ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)はもう一度自覚するようにつぶやく。
 それは確かに言葉にすれば簡単なことであった。
 いつの日にか彼女も『レスヴァント』や『パールヴァティー』、『シビリアンジョー』といったキャバリアを捨てるときが来るのかも知れない。
「……この子達と分かれる日が来るのかねぇ」
 けれど、それは今ではないことを知っている。いつかはやってくる。必ず。ならば、ユーリーは笑ってさよならが言えるだろうか。

 そのことを自問しながら彼女は『平和祈念式典』に潜入する。
 潜入事態は難しいものではなかった。これは二国による『条約締結』の式典である。
『軍縮条約』であるが、和平への偉大なる一歩であることは言うまでもない。
 猟兵が介入していないだけで、両国は幾度も戦禍を交えたことだろう。
 そこで失われた生命もあるのだ。
 そのための慰霊祭である。人々は失われた生命が戻らぬことを知っている。だからこそ、祈るのだ。
 犠牲になった生命に報いることができるのは、復讐ではなく祈念であることを知る。
「このまま何事もなくすめばいいのに……」
 ユーリーはそうならぬのが悲しい。
 グリモア猟兵の予知では、この後に廃棄予定のキャバリア全てがオブリビオンマシンへと姿を変える。
 その後に起こる悲劇は言うまでもない。

『平和祈念式典』の会場には人々が花を供え祈っている。
 その姿を見て、ユーリーは思い出すのだ。
「まあ、結構覚えているものだね」
 死んだ戦友の遺言も。
 初めて殺した敵兵の悲鳴も。
 どちらも久しいものである。けれど、それは鮮烈に頭に残っているものだ。忘れることはなくとも慣れていく。
 最初は耐え難い負荷となって脳に刻まれた事柄ですらも、今は忌避するほどに慣れている自分がいる。
 その事実にユーリーは今更であると頭を振る。

「しかし、廃棄した後どうするのかねぇ」
「キャバリアのことですか?」
 いつのまにか隣に来ていた『フュンフ・ラーズグリーズ』が見知った猟兵であるユーリーの姿を見かけて声を掛けてきたようである。
 彼もまた今やりっぱな『エース』の一人だ。
「そうそう。何か別の資材に生まれ変わればいいけど、結構技術的に難しいのよねぇ」
「ええ、キャバリア事態機密の塊でありますから……僕が知る限りでは、破壊された住居の素材になったり、装甲は溶かして生活用品になったりするようです」
 エネルギーインゴットは、バッテリーとして使うようである。
 コクピットブロック周りは機密だらけであるがゆえにどうしようもないが、それでも再利用できる部分は余す所無く使うようである。

「どちらの国も消耗していますから。しばらくは、そうやって復興につなげていくんです。ユーリーさん」
『フュンフ』の雰囲気は柔らかいものであった。
 やっと見えた平和への糸口。
 それをようやくの思いで手にすることが出来たことを噛み締めているようであった。
 平和のなんたるかも知らなかった少年が、今や此処まで成長したことにユーリーはどのように思っただろうか。
 頼もしいと思っただろうか。けれど、その道に影を落とす存在が居る。

 言うまでもなくオブリビオンマシンである。
 ユーリーは、彼の道に影を落とす存在を許さないだろう。そのために彼女は式典に潜り込み、諸悪の根源を断ち切らんとしているのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ガイ・レックウ
(POW)で判定
『戦乱の世界だからな…死者も珍しくねぇ。だからこそ、平和という未来を掴まなきゃならねぇ』
死者へ、追悼の祈りを捧げたあとに周囲を散歩するぜ。
【戦闘知識】で周囲を観察して避難経路を考えながら歩く。
『こんな戦乱の世界でも平和って未来を勝ち取りたいもんだ』



 クロムキャバリアは戦乱だけが渦巻く世界である。
 つかの間の平和も許されず、安寧とは程遠い。それでも人は願うだろう。平和を、安寧を、続く明日を。
 けれど、オブリビオンマシンはそれを許さない。
 天には『殲禍炎剣』が。
 地にはオブリビオンマシンが。

 人々は天を仰ぎ見ることもせず、さりとて地にあふれる争いから目を背けることも許されない。
 それがクロムキャバリアに生きる人々にとっての日常であった。
 そん世界にあって、力を持つということは至極当然のことであり、その力を手にしていないものには、言葉を発する権利すら与えられないだろう。
「戦乱の世界だから……死者も珍しくねぇ」
 ガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)は小国家『グリプ5』と『フルーⅦ』の両国が『軍縮条約』を締結する場として選んだ荒野に打ち立てられた『平和祈念式典』の会場に足をすすめる。

 確かにクロムキャバリアはどうしようもない争いばかりが続く世界である。
 平和を知らず、そして言葉は知れど意味を実感できぬ人々にとって、『平和祈念式典』ほど縁遠いものはなかったであろう。
 けれど、死者を悼む事は別である。
 争いが常であるからこそ、人は失われた生命を惜しむのだ。
「だからこそ、平和という未来を掴まなきゃならねぇ」
 士sh差へ、追悼の祈りを捧げる。

 ガイにとって、それはどのような意味を持つものであったことだろうか。
 死者は戻らない。
 失われた生命は戻っては来ない。
 それはどれだけ天に祈ったところで奇跡として成り立つこともできぬものである。それを知るからこそ、人は懸命に生きるのだろう。
「こんな戦乱の世界でも平和って未来を勝ち取りたいもんだ」
 ガイが見たのは、『平和祈念式典』に参じる一般人の多さであった。

 両国との中間地点に在るがゆえに、移動することも難しいであろうに。
 様々な手段でもって彼等はこの式典に足を運び、死者を悼む慰霊祭に参加している。
 花を供える者。
 蝋燭に火を灯す者。
 祈りを捧げる者。

 それぞれが胸に抱いた手向けを捧げているのだ。
 平和を知らぬものであったとしても、平穏を求める心は常である。

 だからこそガイは式典の周囲をみまわす。
 人々が乗り付けた車両や護衛のキャバリアでごった返す中。そこでオブリビオンマシンの騒動が起こったのであれば、混乱は免れないだろう。
 避難経路を考えながら会場の中を歩く。
 予知では廃棄予定の300機のキャバリアが一斉にオブリビオンマシン化するということであった。
 人々を守りながらオブリビオンマシンを退け、彼等の虐殺を防がねばならない。

「これはハードな一日になりそうだぜ」
 ガイはこの後に起こる混乱を収めるべく、己が何をしなければならないのかを改めて識るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メサイア・エルネイジェ
この国でもオブリビオンマシンがちょっかいを出してくるのですわね
許し難いですわ!

まずは会場の下見ですわ
多分あれが廃棄予定の機体ですわね
凄い数ですわね…これは骨が折れそうですわ…

でも今のところ事件の香りは…すんすん、良い香りがしますわね
あちらのお店からでしょうか?
そういえば朝から何も食べていませんでしたわ
お腹が減っては戦は出来ませんし今のうちにお食事を済ませておきましょう

まぁまぁ、ここのご飯は美味しいですわね
街の外で待たせているヴリちゃんにも持っていって…いえ、ヴリちゃんはエネルギーインゴットの方がお好みですわね
それにしても美味しいですわ!パクパクですわ!
…あら?わたくし何しに来たんでしたかしら?



 二つの小国家、『グリプ5』と『フルーⅦ』が成す和平への一歩である『軍縮条約』の締結。
 それを成すための『平和祈念式典』の会場の外れにメサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)は佇んでいた。
 彼女の視線の先にあるのは整然と並び立つキャバリアであった。
『ドランギム』と呼ばれる青いキャバリアはこれより廃棄される予定のキャバリアである。
『軍縮条約』によって互いの手にした武力を手放す。
 互いに争うことを良しとせず、泥沼の如き争いが続くことを嫌う。
 それは人の心に争いだけではなく平和を望む心があることを示すには十分な事柄であった。

「この国でもオブリビオンマシンがちょっかいを出してくるのですわね。許しがたいですわ!」
 メサイアは憤慨する。
 クロムキャバリアにおいて争乱は常である。仕方のないことであると割り切ってしまえればよかったのかもしれない。
 けれど、その原因がオブリビオンマシンであるというのならば、それは意味が違ってくるものである。
 人々の心に争いの火種を撒き散らし、破滅へと導いていく。
 幾つの小国家が滅びたことだろうか。

 彼女の憤慨は尤もなことであった。
「すごい数ですわね……これは骨が折れそうですわ……」
 メサイアの視線の先にあるキャバリアは300機を数える。
 これら全てが予知によればオブリビオンマシンへと変わり、『平和祈念式典』に参加した人々を虐殺するのだという。

 これを防ぐためにメサイアはやってきたのだが……。
「……すんすん、良い香りがしますわね」
 彼女の鼻腔をくすぐったのは、『平和祈念式典』の会場の外で振る舞われている炊き出しから香る美味しそうな匂いであった。
 その香りを辿っていけば、メサイアは出店の存在を知るだろう。
「そういえば、朝から何も食べていませんでしたわ」
 腹が減ってはなんとやらというものである。
 事件が起こることは必定。
 ならば、今のうちに食事を済ませ英気を養うことも必要であろう。

 早速、とメサイアは炊き出しの列に並ぶ。
 両国の人々にとって、これは平和への一歩であり、死せる者を悼む行事でもある。こんな時に振る舞われる料理というものは大抵味気ないものであるのかもしれない。
 けれど、暖かい食べ物は凍りついたような心を解きほぐすには十分なものであった。メサイアにとってもそれは変わらないものであった。
 振る舞われたスープに煮た野菜や肉の類が浮かんでいる。
「まぁまぁ……ここのご飯は美味しいですわね」
 ついついメサイアの頬も綻ぶようにして上気するだろう。

 冷たい荒野の風も。
 争いが生み出す冬の如き空気も。
 何もかもがこの暖かいスープに溶けて消えていくような気さえしたのだ。
 式典会場の外で待機しているヴリちゃんこと、己のキャバリアにも、と思うほどであった。
 けれど、キャバリアにはエネルギーインゴットのほうがいいだろう。そんな他愛のないことを考える程度の心の余裕がメサイアには生まれていた。
「それにしても美味しいですわ! パクパクですわ!」
 かつての身分的に口にすることのなかったものばかりであるが、それゆえにメサイアは喜び口に運んでいく。
 スプーンが止まらないのだ。

 お腹が膨れれば、ぼんやりとした頭になってしまう。
「……あら? わたくし何しに来たんでしたかしら?」
 思わず当初の目的を忘れてしまうほど、暖かな食事にメサイアは骨抜きにされてしまうのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サージェ・ライト
お呼びとあらば参じ……アッハイ(怒られかけた)
わたしはくのいち、きょうはちゃんとしのんでるもーん(めっちゃ小声)

さて登場シーンはさておき
慰霊祭には真面目に参列しますね

それにしても……
式典に参列している人たちは本当に平和を望んでのことだと思うのに
どうしてその平和をオブリビオンマシンは壊そうというのか
というか、タイミング良すぎでは?
やーな予感がしますねー

シリカ、シリカ
ちょっと猫っぽくうろついて周辺を見てきてもらえませんか?
特に廃棄予定のキャバリアが置いてある付近を
何か見つけたら超ダッシュで教えてください
私はこっそり忍びつついつでも動けるようにして

まずは祈りましょう
この希望が未来に繋がりますようにと



 いつものと、言われれば言わねばならぬのが前口上である。
 今日も今日とてクノイチは元気である。
「お呼びとあらば参じ……アッハイ」
 サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)の声が消えてしまったのは、無理なからぬことであった。
 今日は『グリプ5』と『フルーⅦ』の間で執り行われる『軍縮条約』の場である『平和祈念式典』にやってきているからだ。

 厳かというわけではないが、今『平和祈念式典』は一つの慰霊祭になっている。
 人々は戦いの中で失われた生命を悼み、その祈りを持って平和の実現へと歩き出そうとしている。
 それは確かに言葉にすれば簡単なことであっただろう。
 けれど、時として人の感情は理性を超えるものである。
 どれだけ心の奥底で平和を望んでいたのだとしても、己の親しい人の生命が奪われたのであれば、復讐に身を焦がすこともある。
 当然のことである。

 人々はそれでも祈るのだ。
 失われてしまった生命に報いることができるのだとすれば、見果てぬ夢であった平和をなさんと、その準備をするように慰霊祭へと祈りを捧げている。
 そんな雰囲気であるからして、サージェは小さな声で前口上を告げるのだ。
「わたしはくのいち、きょうはちゃんとしのでるもーん」
 めっちゃ小声である。
 ともあれ、そんなこんなでサージェは慰霊祭へと参列し、彼女は思う。

 これほどの人々が両国から集まってきている。
 それだけ平和への祈りが強いのだろう。戦いに疲れたとも言い換えることができるかもしれない。
 けれど、そんな彼等の願いや祈りですらオブリビオンマシンは平気で踏み躙るのだ。
「というか、タイミング良すぎでは?」
 サージェはグリモア猟兵からの予知を聞き、そう感じざるをえなかった。
 廃棄される予定のキャバリア。
 その全てがオブリビオンマシンへと変貌し、集まった穏健派たちを全て殺す。後に残るのは互いを憎しみ合い、膨れ上がっていく争乱だけである。

 これまでのオブリビオンマシンの策動を見やるに、どうころんだとしてもオブリビオンマシンの目的は全てではないが、部分的に叶ってしまう。
「やーな予感がしますねーシリカ、シリカ」
 そう言って彼女は自分のキャバリアのアバターである白猫又の『シリカ』に周囲の探索を願う。
 廃棄予定のキャバリアが集められている荒野に彼女を向かわせ、サージェは式典会場を見回す。
 誰もが祈っている。
 花を添え、失われた生命を思っている。

 明日の平和を願う、この式典すらもオブリビオンマシンは破壊しようとするだろう。
「まずは祈りましょう。この希望が未来に繋がりますようにと」
 サージェもまた膝を付き祈る。
 これまで見てきた小国家の争乱はどれもが生命の失われかねないものばかりであった。
 猟兵たちが介入した事件以外にも争いはあったことだろう。
 全てを救うことができないのはわかっている。
 けれど、それでもと願わずにはいられないのだ。なぜなら、サージェはバーチャルキャラクターだ。
 人の思いの集合体であればこそ、平和の尊さを知る。

 祈りを終えたサージェが立ち上がった瞬間、彼女は知るだろう。
 廃棄される予定のキャバリアたちが集まる場所で、今まさにオブリビオンマシンの策動が動き出したことを――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
『平和祈念式典』かぁ……。
『フュンフ』さんの志はさすがだと思うけど、この状況で武装の破棄というのはちょっと怖いね。
ま、だからこその決断なのかもしれないけどね。

『アイン』さんや『フュンフ』さんに挨拶したら、わたしは警備に当たりたいな。
反対する人もいるだろうし、テロまがいのことが起こらないように警戒しておこう。

『フュンフ』さんにはギアちゃんをつけてこっそり警備。

会場には【E.C.O.M.S】を偵察モードで飛ばして、
会場をモニタリングしながら、警備するね。

不審な動きをする人がいたら、近ければ捕まえに行くけど、
遠かったらユニットをぶつけて気絶してもらっておこうかな。

なにもないのがいちばんだからね!



「『平和祈念式典』かぁ……」
 菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は、『グリプ5』と『フルーⅦ』の中間地点である荒野で開かれている慰霊祭、『平和祈念式典』の会場で独りごちる。
 彼女はこれまで多くの事件で『グリプ5』や周辺の小国家をめぐるオブリビオンマシンの策動に介入してきた。
 それは全て間違いではなかった。
 此処に至るまでの道程は並大抵のことでは為し得ぬことであったはずだからだ。

 人は争う。
 それは止めようのないことである。
 けれど、オブリビオンマシンの蒔く火種は違うのだ。オブリビオンマシンたちは人と人とを争わせることばかりに注力している。
 どうしようもない諍いによって人の心が乱れるのを期待しているのだ。
「『フュンフ』さんの志は流石だと思うけど、この状況で武装の破棄というのはちょっと怖いね」
 両国が決断したことである。
 争いを捨てるためには、手にした武器を捨てなければならない。

 この争いばかりが続く世界にあって、それは勇気ある決断であったのだろう。
 だからこその決断であると理緒は理解を示しながら『アイン』と『フュンフ』に挨拶をすませる。
「警備、よろしくおねがいします」
「おう、よろしくな。まあ、私もいることだ。そう緊張しなくって大丈夫だぜ」
 そう告げる二人の機体は式典の警護についているようである。
『熾盛』と『熾星』。
 その二機は恐らく象徴として残されることになったのだろう。

 全ての武器を捨て去ることができないのだとしても。
 それでも徐々に人は武器から手を離すことができるはずだ。そのための式典である。
「うん、それじゃあわたしも警備がんばります!」
 そんなふうに理緒は二人と別れて警備に戻る。
 考えすぎかも知れないが、不審な動きをする者がいるかもしれない。彼等は知らないことだが、この後廃棄予定のキャバリアたちが全てオブリビオン化するという予知を受けている。

 その混乱に乗じて『フュンフ』に害をなそうとする者がいるかもしれないと、理緒はE.C.O.M.S(イーシーオーエムエス)の小型ユニットを人知れず付け、彼の周辺をモニタリングしながら警護するのだ。
「なにもないのがいちばんだからね!」
 けれど、その願いはたやすく引き裂かれる。

 人々が慰霊祭において失われた生命を悼む時、廃棄されるはずだったキャバリアたちが一斉に動き出す。
 オブリビオンマシン。
 それは人を狂気に奔らせるものである。
 けれど、今回は違う。全てのオブリビオンマシンは自動で動き出し、『平和祈念式典』へと襲いかかるだろう。

 同時に理緒は見たかも知れない。
 その大群の奥からひときわ凄まじい速度で持って疾駆する機体――『熾裂』の姿を。
 それは『ツヴァイ・ラーズグリーズ』の機体であり、廃棄される機体の一つでもあった。
『熾裂』は一直線に式典会場を警護していたキャバリアたちを瞬く間に破壊する。
 爆風が吹き荒れ、周囲は混乱に陥れられた。
「なんで――! なんで、あの機体が……!」
 理緒の疑問ももっともであったことだろう。
 だが、『熾裂』に率いられた300機ものオブリビオンマシンが迫っている。矢継ぎ早に展開される事態に理緒はことの深刻さを理解するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ドランギム』

POW   :    バレット・ストリーム・アタック
【ジャイアントバズーカ】と【マシンガン】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    アックス・ストリーム・チャージ
【ヒートアックスで斬りかかるホバー機動の】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【同型機】の協力があれば威力が倍増する。
WIZ   :    ホバー・ストリーム・アタック
【敵を惑わす複数機での連携機動による幻惑】が命中した対象に対し、高威力高命中の【複数機の連携による連続攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。

イラスト:純志

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「――『熾裂』!? どういうことだ!」
『アイン』は即座に動いていた。
『平和祈念式典』の会場の外れに位置していた廃棄予定のキャバリア300機全てが突如として動き出し、式典会場に迫っていることを察知したときには何もかもがおそすぎた。
 あの『熾裂』は300機の中の一機であった。
 過去の象徴として自ら手放すことによって両国の国民たちに平和の是非を問うものであったのだ。
 だというのに、凄まじい速度で迫りくる『熾裂』は警備のキャバリアたちを瞬く間に破壊し、突如として暴徒と化した300機の『ドランギム』を率いいて襲ってくるのだ。

「『ツヴァイ』……じゃねぇ! なんだ、あの動きは……!」
『アイン』は見た。
『熾裂』の挙動は、今まで見たことのない機動であった。
 己の機体『熾星』へと疾走る彼女の足が呆然と止まった瞬間、『熾裂』より放たれたビットが『熾星』のコクピットブロックを撃ち抜き爆発する。
 その爆発の中に『アイン』は消え、後を追っていた『フュンフ』と『クロア』は呆然とするしかなかったのだ。

「『アイン』さん!」
「ねえ、さん……どうして! あれは、『ツヴァイ』姉さんじゃないのか!?」
『フュンフ』が『熾盛』に乗り込んだ瞬間、肉薄する『熾裂』。
 ビームブレイドと無敵斬艦刀が激突し、火花を散らす。

 周囲には青い装甲の『ドランギム』が無数に展開し、式典会場に集まった人々を虐殺せんとしている。
「どうして……! 答えろ! お前は姉さんじゃないな! どうしてこんなことをする!」
「全ては平和のためです。『フュンフ』。あなたはやはりキャバリアに乗るべきではない。お前は『あの人』じゃない。『あの人』の如き天賦の才能すら感じない」
 その言葉に『フュンフ』は惑う。
 その声を知っている。
 なぜなら、それは。

「母さん……?」
『ヌル・ラーズグリーズ』のものであったからだ。
 理解が及ばない。何故、姉の機体に母が乗っているのか。そして、暴徒と化した『ドランギム』を率いているのか。
 何もわからない。

「お前は『フュンフ・エイル』じゃない。『あの人』じゃない。お前だけが別物……」
 けれど、歴然とした事実がある。
 この事態を収束しなければ、人々の生命が失われてしまうということだ――。
村崎・ゆかり
始まった。アヤメ、羅睺、それぞれの国の群衆を誘導お願い。
あたしはキャバリア三百機を相手にする。

オブリビオンマシンは機動力が高いみたい。
それなら、「全力魔法」「範囲攻撃」衝撃属性の「属性攻撃」「衝撃波」「竜脈使い」「仙術」「道術」で地烈陣。攻撃回数強化。
オブリビオンマシンにはことごとく、地割れに飲み込まれてもらう。

『アイン』と『フュンフ』には、地割れが収まってから戦場へ入ってもらう。
二人にはお母さんの説得をしてもらわなきゃね。

地烈陣を使い終えると、乱戦になった場合にこれ以上の使用は危なすぎる。
あたしも黒鴉と連携して避難誘導に入るわ。あらかじめ把握してる社領状況から、「集団戦術」の要領で送り出す。



 怒涛の如き先陣を切る青い装甲のキャバリア『ドランギム』はジャイアントバズーカを構え、『平和祈念式典』の会場へと砲弾を打ち込む。
 人々の悲鳴が聞こえ、蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う人々を式神たちが避難誘導していく姿を見送り、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)はいよいよ300機ものオブリビオンマシンとの大規模戦闘がはじまったことをしる。

 廃棄予定であったキャバリアたちは言うまでもなく全てがオブリビオンマシンへと変貌した。
「ご武運を!」
 式神のアヤメがゆかりに告げ、ゆかりはうなずく。
 彼女がこれからやらねばならぬことは、300機ものオブリビオンマシンを打倒することである。
 地を這うようにして圧倒的な機動力で持って迫る『ドランギム』は、こと地上戦を主戦場とするキャバリアにとっては驚異的な存在となるだろう。

 もしも、オブリビオンマシン側の策動がそれまで見越してのことであったのならば、黒幕の為したことは深謀遠慮を極めたものであったのかもしれない。
「だからといって退くわけには行かないでしょう! ――古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。竜脈宿せし大地よ。永劫の微睡みから目覚め、汝を忘れ去った者共に相応の報いを与えよ。疾!」
 ゆかりの瞳がユーベルコードに輝き、『平和祈念式典』と『ドランギム』の間に地烈陣(チレツジン)による地割れを引き起こして、彼等を飲み込む。
 けれど、全てを飲み込むことはできない。
 前列の一部が地割れに巻き込まれて落ちていくのを確認しながら、ゆかりは後方の警備に当たっていたキャバリアたちが動き出すのを見ていた。

 他の猟兵の忠告のおかげか、『フルーⅦ』側の警備キャバリアに損害は多くは出ていないようであった。
 けれど、『熾裂』と『熾盛』の戦いに巻き込まれる形で被害が拡大していっているようである。
「『アイン』は――……何処!?」
 このような事態であればこそ、『エース』の力は必要不可欠である。
 けれど、彼女が当てにしていた『アイン』は未だ所在が不明だ。『熾星』の爆発に巻き込まれて、彼女の生死すら今は不明なのだ。

 あのオブリビオンマシンと化した『熾裂』には彼女たちの母親である『ヌル・ラーズグリーズ』が乗っているのであれば、子である彼等で説得をしてもらわなければならないと思っていたのだが、それすら今はできない。
「ここまで計算ずくだったのなら……黒幕ってやつは何処にいるっていうのよ」
 ゆかりはユーベルコードの輝きを収める。
 これ以上ユーベルコードを使い続ければ、乱戦になった時、味方までも巻き込みかねない。
 強力な力ではあるが、危険もはらんでいるのである。

「『フュンフ』が『熾裂』を抑え込んでいるうちに、民間人を避難させるわ、手伝って!」
 その言葉に『アジン』が答える。
 彼は他の猟兵の助言に従って行動していたため、即座に民間人たちを乗せた車両を避難させていた。
 その手際は確かに代表と成るべき器であったのだろう。
「こちらの車両はすでに発車させてある。逃げ遅れた者たちを収容する時間が欲しい!」
『アジン』の言葉にゆかりがうなずく。

 民間人を守ることはできるだろう。
 けれど、状況は良くならない。これだけの数のオブリビオンマシンが大挙して大地を疾駆しているのだ。
 数を僅かに減らしたとしても、まだ戦いは終わらない。
 それどころか、一機でも戦列を抜けられてしまえば、後に来るのは虐殺の雨である。

「避難を急がせましょ。あたしも手伝うから!」
 式神の黒鴉と連携し、避難誘導を始めたゆかりの背後で『熾裂』と『熾盛』がぶつかり合う音が響く。
 オブリビオンマシンは親子の情ですら引き裂く。
 激突する二機をゆかりは見やりながら、オブリビオンマシンの卑劣なる策動に怒りをみなぎらせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
やれやれ…つくづくこの世界もトラブル続きだな
「また黒幕くんかな?」
UC発動
【属性攻撃・迷彩】
光水属性を機体と竜達に付与
光学迷彩で存在を隠し水障壁で熱源隠蔽し散開
【情報収集・戦闘知識・視力・医術】
竜達と共に敵の陣形
援護が必要な者の把握
そしてアインの捜索を行う
また状況からアインの状態も能力を把握した上で推測

状況から彼女がどう動くかも分析

あいつは生き残る術も一流です
必ず痕跡を残してるはず…!


【空中戦・念動力・弾幕・スナイパー】
飛び回りながら念動光弾乱射して蹂躙

竜達
【補食・二回攻撃・切断】
複数で一体に飛びかかり確実に仕留める

アインを見つけたら救出

お礼はちゅーでいいですよ!

安全な場所まで運ぶ



 青い装甲のキャバリア『ドランギム』が大挙として『平和祈念式典』に襲いかかる。
 式典会場は混乱に陥り、人々は逃げ惑う。
 けれど、事前に潜り込んでいた猟兵たちの活躍に寄って人々の避難は混乱はあれど、手間取ること無く順次行われている。
『フルーⅦ』が手動となって避難を誘導し、『グリプ5』が突如として暴走した廃棄予定であったキャバリアの対処に当たる。

 皮肉なことに、ここに来て彼等は一つにまとまりつつあったのだ。
 一時のわだかまりを捨て、互いの国の国民を守るために足りぬものを補いはじめていた。
「やれやれ……つくづくこの世界もトラブル続きだな」
『また黒幕くんかな?』
 それは虚空より現れたキャバリアから聞こえる言葉であり、その姿は『ドランギム』たちには捉えることはできなかった。
 光と水の属性を纏った機体は、不可視なる存在と成って戦場を駆け抜ける。

「万物の根源よ…帝竜眼よ…文明を構成せしめし竜の力を示せ…!」
 カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)の帝竜眼「ダイウルゴス」(ブンメイヲシンリャクシユウゴウスルモノ)が輝き、数多の竜たちが姿を隠したまま『ドランギム』へと襲いかかる。
 如何に彼等が連携の取れた攻撃をするのだとしても、不可視なる存在を相手することは難しかっただろう。
「援護が必要な者……そんでもって、『アイン』だ。あいつは生き残る術も一流です。必ず痕跡を遺しているはず……!」
 カシムにとって『アイン』とはそういう存在なのだろう。

『エース』の中の『エース』とまで言われた彼女である。
 こんなところで死ぬはずがないと、彼女の生死不明の状況を聞きカシムは確信していた。
 己の機体の爆風に巻き込まれたという未確認の情報だけでは、『アイン』が死んだとは到底思えなかったのだ。
 不可視の機体『メルクリウス』と共に戦場を駆け抜ける。
 どこかにいるはずだと創作を続け、この状況ならば彼女がどう動くのかを導き出そうとするのだ。

『ご主人サマ!』
『メルシー』の声が響く。
『メルクリウス』のコクピットの中で、在る一点が示される。
 念動光弾を乱射しながら飛ぶ『メルクリウス』のアイセンサーが捉えたのは、『ドランギム』が駆け抜ける戦場にあって疾走る『アイン』の姿であった。
 だが、彼女の片腕がない。
 爆風に巻き込まれての負傷であろう。

「『アイン』!」
 カシムは彼女に迫る『ドランギム』を竜達で抑え込み、その機体を破壊する。
「――お前かよ。悪いが、式典の側にあるキャバリアトレーラーまで運んでくれ」
 片腕を喪ってもなお、彼女は戦うつもりであったようだった。
 その気概は認めるべきものであろうが、無茶がすぎる。
 けれど、そういったところで彼女は立ち止まらないことはカシムがよく知っている。ならばこそ、彼はおどけていうのだ。

「お礼はちゅーでいいですよ!」
「そういうのは後で言うこったな!」
『アイン』の言葉にカシムは式典の側に待機していたキャバリアトレーラーへと彼女を運ぶ。
 すでに医療班や『ツェーン』が待機していたようで、彼女の身柄を預けてカシムは再び戦場へと舞い戻る。
 彼が召喚した小型ダイウルゴス――竜たちは二体で一体の『ドランギム』を仕留めるのに精一杯であった。

『ドランギム』の連携は見事であり、それを崩す事は難しい。
 それに数も多い。彼我の戦力差もさることながら、練度も高いのだ。カシムは状況が刻一刻と悪くなっている事に気がつく。
 猟兵たちが駆けつけているからこそ、この程度で済んでいるのだ。
「まずいですね――」
 おどけてみてお礼をねだってみたものの、それでも目の前に迫りくるオブリビオンマシンの大群は、猟兵達ごと民間人をすり潰さんと迫るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メサイア・エルネイジェ
あわわ、大変ですわ!
キャバリアが勝手に暴れ始めましたわ!
こっちに来ますわ!いやー!助けてー!ヴリちゃーん!

という訳でヴリちゃんがすっ飛んで来てくれましたわ
…思い出しましたわ!
わたくし、アレを懲らしめに参ったんですわ!
式典をぶち壊す輩はわたくしとヴリちゃんがスクラップにしてやりますわ!

何か変な機体が紛れておりますわね
こまけぇこたぁいいんですわ
ヴリちゃん!特攻(ぶっこ)みますわよ!
マシンガンなんて豆鉄砲はヴリちゃんの装甲には通用しませんわ
バズーカは流石に痛いのでちゃんと避けるのでしてよ
接近戦に持ち込んでクローで掴んだ所をインナーパイルで串刺しですわ
この戦い方なら市民を巻き込む心配も少なくてよ



「あわわ、大変ですわ! キャバリアが勝手に暴れ始めましたわ!」
 混乱の中にいたメサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)は迫りくるオブリビオンマシン『ドランギム』の姿に目を見開いた。
 突如として暴徒と化した廃棄予定であったキャバリアたち。
 それらは全てオブリビオンマシン化しており、すでに人のコントロールを離れている。
 無人機のようであるが、その挙動は確かに人に害をなそうとする意志すら感じるものであった。
「こっちに来ますわ! いやー! 助けてー! ヴリちゃーん!」
 メサイアの叫びに呼応するように低空を弾丸のように飛んで着地した機龍の如きキャバリア『ヴリトラ』が漆黒の装甲を震わせ、咆哮する。

 メサイアは己のキャバリアに搭乗し、眼前のオブリビオンマシンを見据える。
 その機体の色は青。
 そして、荒野での行動を想定しているのだろう。
 ホバーで疾駆する機動力は侮りがたいものである。マシンガンから弾丸が放たれ『ヴリトラ』の装甲に激突するが、それは豆鉄砲に過ぎない。
 強固な装甲に守られた機体は、小口径の弾丸など物ともしないのだ。
「……思い出しましたわ! わたくしアレを懲らしめに参ったんですわ!」

 ようやくにしてメサイアは己がこの地を訪れた意味を思い出す。
 そう、あのオブリビオンマシンから式典に参加する者たちを守るために転移したのだった。思わず食事の美味しさにかまけて忘れるところであったが、セーフである。
「式典をぶち壊す輩はわたくしとヴリちゃんがスクラップにしてやりますわ!」
 その言葉に応えるように『ヴリトラ』が咆哮し、マシンガンの弾丸を物ともせずに大地を踏みしめる。

「こまけぇことぁいいんですわ!」
 あまりにも脳筋すぎるどストレート。
 メサイアの操縦技術は大したものであったが、『ヴリトラ』の機体性能は破格であったことだろう。
 例え、小口径と言えど、それはキャバリアサイズであるからだ。
 決してマシンガンの弾丸も致命打にならぬわけではない。だというのに、漆黒の装甲はそれすらも弾いて突進する。

 その重装甲に甘えることなくバズーカの砲弾は見極めて躱している当たり、メサイアと『ヴリトラ』の性能は通常のキャバリアと一線を画するものであったことだろう。
「風通しを良くしてさしあげますわ!」
『ドランギム』に組み合った『ヴリトラ』のアイセンサーがユーベルコードに輝く。
 鉤爪の一撃で『ドランギム』を吹き飛ばし、体勢を崩した所に両腕に仕込まれたパイルバンカーの一撃が加えられる。
 パイルの射程が短いけれど、それは何度も連射する必要性があるからだろう。

 放たれた一撃が『ドランギム』のコクピットを貫き、その機能を停止させる。
 さらに尻尾で機能停止した『ドランギム』を薙ぎ払い、未だ動き回る別の機体へと投げつけるのだ。
「人の平和への祈りを妨げるのであれば、このわたくし、メサイアがやってみせますわ!」
 すかさず接近戦に持ち込んだ『ヴリトラ』が咆哮し、クローで固定した『ドランギム』をインナーパイルの一撃で持って破壊する。
 効率はよくはないのかもしれない。
 どれだけ確実に敵を葬りさることができたのだとしても、オブリビオンマシンの数は実に300機を数えているのだ。

 けれど、メサイアはここが式典会場であることを考慮している。
 逃げ惑う人々を銃火にさらしていいわけがない。だからこそ、接近戦で持って『ドランギム』をひきつけ、式典会場から引き離しつつ戦っていたのだ。
「これで避難をする方々の時間は稼げるはず……いきますわよ、ヴリちゃん!」
 メサイアは『ヴリトラ』と人馬一体の如き操縦で持って戦場を駆け抜ける。
『ドランギム』をひきつけ、人々から遠ざける。
 こちらが消耗することなど厭うことはないだろう。これで人々が守られ、戦禍に消える生命が一つでも減るのであれば。

 彼女はきっとそのために敢えて不利な戦いに己の身を置き、その名の意味を示すように黒き機竜と共に戦場を駆け抜けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
(試作型術式騎兵【ツィルニトラ】)に騎乗
…判ってはいたけど一気に混乱してきてるな……
…やることは足止め…そして撃破だな…あっち(2機)の戦いよりこちらの方が喫緊だ…

…連携起動でこちらに来るならやりやすい…
…【連鎖する戒めの雷】を発動…雷速からは逃れられず…どれか1機に当たれば連携している他の機体にも伝播する…
…縛り上げて動きを止めている間に重奏強化術式【エコー】を複数回使用して術式効果を強化…
…今度は多重強化された【連鎖する戒めの雷】をドランギム達に向って発射…
…強化された伝播範囲で出来る限り巻き込んで足止め…出来れば破壊してしまうとしよう…



『平和祈念式典』は大挙として暴走するオブリビオンマシン『ドランギム』によって混乱に陥れられていた。
 ここは『グリプ5』と『フルーⅦ』の中間地点である荒野だ。
 何も遮蔽物がない。
 式典の会場という建物はあるのだとしても、キャバリアの砲撃に耐えられるものではない。
 人々は逃げ惑う。
 平和への道筋、その光が見えたかもしれないというのにオブリビオンマシンは、そのささやかな光すら踏みつけにしなければならないというかのように大地を疾駆するのだ。

 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は、その混乱の坩堝たる式典会場に試作型術式騎兵『ツィルニトラ』と共に降り立つ。
「……判ってはいたけど一気に混乱してきてるな……」
 グリモア猟兵の予知によって廃棄予定であったキャバリアがオブリビオンマシン化することはわかっていたことである。
 それでもこの数は尋常ではない。
 しかも『ドランギム』は複数の機体での連携攻撃に特化したキャバリアであった。
 オブリビオンマシン化するにあたって無人機となったが、それでも機体の連携の精度は凄まじいものであった。

 それに荒野という立地もまたオブリビオンマシンに味方している。
 ホバーで疾駆する機動性は侮りがたいものである。さらには『グリプ5』の機体である『熾裂』がオブリビオンマシン化し、護衛として残っていた『熾盛』と今交戦している最中だ。
「……やることは足止め……そして撃破だな」
 メンカルは状況が喫緊していることを知る。
 人々が逃げ惑い、オブリビオンマシンの犠牲になることこそ、この『平和祈念式典』の失敗を意味する。
 そうなれば両国の関係は一気に冷え込むだろう。

 穏健派たちであっても、今回の不手際の責任を問われる。
 だからこそ、メンカルは『熾盛』と『熾裂』との戦いの行方よりも人々を守ることを優先するのだ。
「連携機動こちらに来るならやりやすい……」
 メンカルの瞳がユーベルコードに輝く。
『ツィルニトラ』の周囲に展開される無数の魔法陣。
 それは同じ性質の存在に伝播する雷の鎖。
 連鎖する戒めの雷(ライトニング・チェイン)は、『ドランギム』のように同型であり、同時に複数存在するオブリビオンにこそ、その力の猛威を振るう。

 どれだけ連携と速度に優れた『ドランギム』であったとしても、雷の速さで疾走る鎖を躱すことなどできない。
 一度に複数の機体を捉える必要ないのだ。
「……一機だけ捉えればいい。おまえたちにはただの一機なのかもしれない。けれど……」
 一度当たれば、それは同型機に伝播し、雷の鎖でもって動きを封じるのだ。
 一機が捉えられ、重奏強化術式『エコー』が展開される。『ツィルニトラ』はキャバリアであると同時にメンカルの術式をキャバリアサイズまで拡大する機能こそが本領である。

『エコー』が複数展開され、術式の効果を底上げしていく。
 さらに多重強化されたユーベルコードの鎖が『ドランギム』たちに向かって一斉に放たれる。
 破壊にまで至らずとも、今のメンカルには十分であった。
 一瞬で伝播する雷の鎖は、未だ倒しきれぬ『ドランギム』たちの動きを一切合切全てを封じる。
「……猟兵は私だけじゃない……なら、出来る限りの足止めをする……そして、その隙に……」
 人々は逃げおおせるだろう。
 そうなれば、オブリビオンマシンの目論見の半分は打ち砕くことができる。どれだけ人の願いや祈りを踏み躙るのだとしても、生きてこそ実るものがある。

「……だから、お前たちの目論見は叶わない」
 伝播する雷の鎖が戦場に網目のように広がっていく。
 天網恢恢疎にして漏らさず。
 オブリビオンマシンが悪意をもって事をなすのならば、猟兵はそれを捉えて離さない網となるだろう。
 今ここに、その網目となる雷の力が発露し、『ドランギム』の全てを抑え込む。
 メンカルは『ツィルニトラ』を中心にして300機近い機体を捕縛し、時間を稼ぎ続けるであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ノエル・カンナビス
市民を守るには敵機の数を減らさないと仕方なく、
しかし敵陣に飛び込んでいては突破が防げず、
となれば私がなすべきは、市民の前で城壁となることです。
距離を開いて待機したまま砲撃しましょう。

ただし、大軍を粉砕するための戦域兵器で。

要塞も貫通するインクリーザーなら敵陣を縦に蹂躙できます。
エネルギー充填/貫通攻撃/範囲攻撃/なぎ払いで充分でしょう。
友軍には射線を通知しますよ。筒先注意。

敵の攻撃も距離を詰めなければ効果が薄いですし、
低速のロケットや軽量の銃弾などは流れ弾まで含めて全部、
オーラ防御と称するガーディアン装甲の衝撃波防御で弾けます。
このエイストラの前には遠距離実体弾などどうという事はないのです。



『グリプ5』と『フルーⅦ』の中間地点である荒野、『平和祈念式典』の会場は混乱に陥っていた。
 突如として襲ってきたキャバリア『ドランギム』の暴走に寄って、人々は散り散りになって逃げ惑う。
 さらに悪いことには『グリプ5』の廃棄予定であったキャバリア『熾裂』がオブリビオンマシン化し、警備のキャバリアを破壊したのだ。
 これでは人々は丸裸も同然である。
 キャバリアから人が逃げることはまず無理である。

「市民を守るには敵機の数を減らさないと仕方なく、しかし敵陣に飛び込んでいては突破が防げず」
 ノエル・カンナビス(キャバリア傭兵・f33081)は己の機体である『エイストラ』と共に『平和祈念式典』の会場を護るように機体を動かす。
 すでに猟兵たちが動いている。
 廃棄予定であったキャバリア300機がオブリビオン化したことは目を覆いたくなるような惨状であったが、迅速に『フルーⅦ』の代表である『アジン』が人々の避難を誘導し、猟兵が協力したが故に人的な被害は未だ出ていない。

「となれば、私がなすべきは、市民の前で城壁に為ることです」
 ノエルはキャバリアのコクピットから望遠レンズに切り替えたアイセンサーでもって『ドランギム』が荒野に上げる砂埃を見やる。
 ホバーを有するアンダーフレームのおかげでこの荒野においては彼等の戦術機動は連携を前提としていたとしても、脅威そのものであった。
 単純に戦うのであれば、数という暴力で猟兵たちが駆るキャバリアであっても圧倒されるであろう。
 だが、此処にある猟兵たちは皆、己たちが何をなさねばならないかを知っている。

「距離は未だ開いている。他の猟兵が時間を稼いでくれたおかげですね」
 雷の鎖が網目のように『ドランギム』たちの動きを封じているのだ。
 それはノエルにとっては格好のチャンスであった。
『エイストラ』の構えるプラズマライフルの砲口がユーベルコードの輝きを湛えていく。
「大群を粉砕するための戦域兵器、要塞も貫通するインクリーザーならば」
 光をたたえたプラズマライフルの一撃が増幅された粒子ビームとなって『ドランギム』の大群を一撃のもとに蹂躙する。
 友軍に射線を通知した後であったとは言え、そのユーベルコードに寄って強化されたプラズマライフルの一撃は凄まじいものだえった。

 どれだけ『ドランギム』が連携戦術に長けたキャバリアであったのだとしても、動きを封じされた状態でさらされる長距離砲撃を躱すことなどできないだろう。
「低速のロケットや軽量の銃弾の流れ弾など無意味です」
 ガーディアン装甲の衝撃波防御は全てを弾くだろう。
 それに『エイストラ』の装甲の前に遠距離の実体弾など、どうということはないのだ。
「Eバンク・リリース。インクリーズ」
 トリガーを引く指に躊躇いはない。
 あの機体が無人機であることはわかっている。オブリビオン化した以上、破壊しなければ、人々に被害が出るだろう。
 そうなれば、両国の関係は冷え込む。
 武器から手を離すという結論に居たり、決断した人々の思いを無駄にするわけにはいかない。

 ならばこそ、ノエルの瞳はユーベルコードに輝くだろう。
 放たれる光条のビームが『ドランギム』を薙ぎ払っていく。それでも廃棄予定であった300機の『ドランギム』たちのモノアイセンサーが砂塵の奥に煌めく。
「それでも私がなすべきことは代わりありません」
 城壁となること。
『エイストラ』の砲撃はまだまだ続く。
 一機たりとて自身の背後に抜けさせることはないように。そうすることで守れる何かがあるのならば、ノエルは一歩も引かずに砲撃に専念するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

賀茂・絆
商談も終わりましたし、後はこの商機を潰そうとする輩を叩き潰すだけデスネ!
降臨するのデス!別雷大神!

こっちには遠距離兵器なんてひとつもございマセンガ、雷を切り裂く大神を捉えられると思ったら大間違いデスヨ!
血統覚醒でちゃんとしたヴァンパイアになったワタシの身体能力であれば、かなり無茶な高速機動をしても耐えられマス!
圧倒的な速度で以て【先制攻撃】!そして身体能力でゴリ押せばエースパイロット級の動きを機体にさせることも可能!
どーせヴァンパイア混じりで人間より無駄に長い寿命!削れるときには削っちゃいマショウ!悠久の時を無理して生きたいわけでもありマセンシ!

目にも止まらぬ速さで全てを断ちKILLのデス!



 戦場を雷の鎖が走り、ビームの光条が暴走するキャバリア――いや、オブリビオンマシン『ドランギム』を薙ぎ払っていく。
 機体が爆散する荒野。
 吹き荒れる砂塵の奥にされど、『ドランギム』のモノアイセンサーが煌めく。
 廃棄予定だったキャバリアの全てがオブリビオンマシン化し、暴徒となって人々を襲う。
『平和祈念式典』においては在ってはならぬ事態。
 それは言うまでもなく犠牲者が出れば、これまでの『グリプ5』と『フルーⅦ』両国の歩みが水泡に帰すことを意味していた。

 穏健派は追いやられ、他国を侵略してでも全てを奪おうとする強行派によって、再び両国は争いの惨禍へと墜ちるだろう。
 その末路にあるのは滅びだけである。
「商談も終わりましたし、後はこの商機を潰そうとする輩を叩き潰すだけデスネ!」
 賀茂・絆(キズナさん・f34084)は、荒野に立つ。
 すでに彼女は戦いが終わった後のことを考えている。
 戦争というビジネスよりも、その後に続く未来とのビジネスを彼女は優先するのだ。
 ゆえに虚空に手をのばす。

「降臨するのデス! 別雷大神!」
 その瞬間、絆の頭上より降り立つ神霊の如きキャバリア。
 雷を切り裂く彼女のキャバリアが大地へと降り立ち、絆をコクピットに収める。凄まじき速度を齎す機体は、搭乗者に凄まじい負荷を掛けることだろう。
 だが、そんなことを彼女は気にしない。
 己の機体には遠距離兵器など一つとして存在していない。

 けれど、それが何の問題に為るだろうか。
『別雷大神』は稲妻の如き速度を持ち、雷すらも切り裂く機体である。ならばこそ、『ドランギム』に彼女は捉えることはできない。
「血統覚醒……ゴリ押しデース!」
 絆の瞳がユーベルコードに輝き、その色を真紅に変える。
 ヴァンパイアとして覚醒した絆の肉体は、どれほどの負荷であっても耐えきることだろう。

「どーせヴァンパイア混じりで人間よりも無駄に長い寿命!」
 そのユーベルコードにはデメリットも存在する。
 覚醒した状態では毎秒寿命を削るのだ。されど、その効果たるや絶大なものである。絆はゆえに躊躇わない。
 人と人とが存在するからこそ商機は存在する。
 ビジネスも、お金も発生するのだ。自分ひとりが生きながらえたところで、それはまるで意味のないことだ。
 彼女という存在は他者がいるからこそ成り立つものである。
 絆はそれを理解しているからこそ、真紅に輝く瞳で『ドランギム』を見据え、一瞬の内に肉薄する。

「削れる時には削っちゃいマショウ! 悠久の時を無理して生きたいわけでもありマセンシ!」
 神速の踏み込みで放たれる『別雷大神』の一撃が『ドランギム』の頭部を吹き飛ばす。
 さらに瞬時に四肢を砕き、瞬く間に次なる標的へと疾走る。
 それはまさしく雷そのもの。
 圧倒的な速度で持って『ドランギム』が攻撃する暇すら与えないのだ。今この瞬間において絆の操縦する『別雷大神』は『エース』と並び立つには十分すぎるほどの戦果を上げていく。

 彼女の瞳の真紅が残光となって戦場に刻まれた後には『ドランギム』の残骸が山積するのみである。 
「目に止まらぬ速さで全てを断ちKILLのデス!」
 その雷光の如き戦いぶりは凄まじく。
 人々は見ることはなかっただろう。けれど、それでいい。
 このような光景を見る必要など無いのだ。平和の中に戦いの残滓はあってはならない。

 ゆえに絆は己の機体の姿を人々の目に留まらせることなく、その神速の如き速度でもって『ドランギム』を破壊し続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サージェ・ライト
シリカ!急いで戻って!この戦場、スピードが要です!
かもんっ!『ファントムシリカ』!

シリカ!ミニシリカ!
センサーをフル稼働で!
アインさんは無事っぽいので、ツヴァイさんの反応をサーチしてください!
見つけたらそこまで一気に突破します!

ドランギムの大群が邪魔ですね!?
セラフィナイトスピアを装備
横薙ぎの一閃からの【快刀乱麻】でふっとばします!
からのー
セラフィナイトスピアに斥力バリア展開
エンジェライトスラスターで一直線に突撃です!
バリアで吹っ飛ばしながら目標地点まで!
ツヴァイさんツヴァイさん!
まだ死んじゃだめですよ!
式典、まだ終わってないんですから!!
立役者が死んだら何の意味も無いでしょう!?



 キャバリア廃棄予定地より疾駆する無数の『ドランギム』はすでにオブリビオンマシン化している。
 300機にも及ぶキャバリアがオブリビオンマシンとして荒野に疾走る光景は凄まじいものであり、同時に恐怖の対象でもあったことだろう。
 さらに悪いことには『グリプ5』の廃棄予定であった『熾裂』もまたオブリビオンマシンとなってしまったことである。
 今は『熾盛』が交戦し、食い止めているようであるが、『熾裂』のパイロットである『ツヴァイ』の生死は不明だった。
 果たして無事でいるのかどうかすらわからぬ事態。
 人々は逃げ惑い、されど猟兵と『フルーⅦ』の代表である『アジン』の働きによって避難は無事に行われている。混乱に陥ってもなお、人はまだ平和への道を諦めていないのだ。

「シリカ! 急いで戻って!」
 サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は思わず叫んでいた。
 現状の確認は未だできていない。
 多くの状況が同時に動いていて、サージェは己が成すべきことを定めるのだ。
 それは――。

「かもんっ! 『ファントムシリカ』! シリカ! ミニシリカ! センサーをフル稼働で!」
 サージェの言葉にAIたちが即座にセンサーを稼働させる。
 すでに『熾裂』を今操縦しているのが『ツヴァイ』ではないことはわかっている。彼女たちの母である『ヌル・ラーズグリーズ』があのオブリビオンマシンを操縦しているのだ。
 ならば、彼女の安否が心配される。
 彼女が『グリプ5』の代表でもある。彼女が失われれば、それだけで両国の関係は冷え切ることだろう。
 そうなれば、平和への糸口すら喪うことになってしまう。
 それは決してさせてはならぬことだ。『ファントムシリカ』の道行きを阻む『ドランギム』たちが連携戦術でもって『ファントムシリカ』へと迫る。

 それは彼女がなそうとしていることを阻まんとしているのだ。
『ツヴァイ』という生命を此処で潰すこと。
 それがオブリビオンマシンの策動の一つであるからだ。
「邪魔ですね!? そうるぶれいかーっ!!」
 サージェの瞳がユーベルコードに輝き、快刀乱麻(ブレイクアサシン)の如き切れ味のセラフィナイトスピアの一撃が『ドランギム』の攻撃を斥力バリアでもって弾きながら吹き飛ばしていく。

 穿つ一撃と爆風が吹き荒れる中、『ファントムシリカ』は疾駆する。
 己の機体の損壊などサージェは気にしてはいなかった。
「お姉ちゃん!」
 シリカの言葉とともに砂塵の奥に動かぬ人影を見つける。
 大地に倒れ込んでいる『ツヴァイ』を認め、サージェはいっきに『ドランギム』を蹴散らすのだ。

 吹き荒れる爆風の中を『ファントムシリカ』が掛ける。
 そのマニュピレーターでもって『ツヴァイ』の体をすくい上げ、サージェはコクピットハッチから身を乗り出して言葉を投げかける。
「『ツヴァイ』さん、『ツヴァイ』さん!」
「……――」
 返事はない。
 腹部を撃たれている。出血しているが未だ僅かな息があることをサージェは確認し、シリカたちにバイタルのサインを確認してもらいながら、メディカルキットを取り出し、応急処置を済ませていく。
 何もしないよりはマシだ。

 それにサージェにとっても死んでほしくない人なのだ。
「まだ死んじゃだめですよ! 式典、まだ終わってないんですから!! 立役者が死んだら何の意味もないでしょう!?」
 その言葉に応えることはでいないのかもしれない。
 けれど、他者の言葉が死に瀕した生命に与える力があるのもまた事実である。サージェは『ツヴァイ』を抱えたまま、全速力で式典付近に待機していたキャバリアトレーラーへと疾走る。

 そこには負傷した『アイン』や機体を失った『クロア』、そして『ツェーン』がいる。
 彼等に『ツヴァイ』を任せ、サージェは再び荒野に戻る。
 そこにはまだ依然として脅威である『ドランギム』が残っている。サージェは、この式典を必ずや成功に導くために再びエンジェライトスラスターの燐光を撒き散らしながら、三日月状のエネルギー波と共に縦断するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーリー・ザルティア
【心境】
「よかった。アインちゃんは無事か。あとはツヴァイちゃんだけだけど…。」

あとごめんなさい。
ちょっぴり心の片隅で死んだふりして隠れるシチュとして最適でね?って疑ってごめんなさい(心の中でこそッと謝罪。)

【行動】
レスヴァントで出撃だよ。

まずは、ESレーダーユニット:アマテラス射出!
戦場を『索敵』して避難している一般人に一番近いオブビリオンマシンを優先に潰していかないとね…っと。

オーバーブースト・ラストスパート!!
最大加速で接敵してイニティウムで『切断』してアストライアの『制圧射撃』で撃墜していくよ。

しかし…これグリプ5側は苦しい立場になりそうだね。
真意や真相は兎も角、犯人がヌルさんじゃね…。



 混乱に陥る『平和祈念式典』の会場。
 突如として暴走しはじめたキャバリア『ドランギム』は残らず全てがオブリビオンマシン化し、人々を襲う。
 猟兵たちは数少ない手勢ながら人々を護るために防衛戦を強いられる。
 援軍は期待できない。
 ここは『グリプ5』と『フルーⅦ』の中間点だ。援軍が到着する頃には居合わせた者たち全てが殺戮された後であろう。
 もしも、この『平和祈念式典』で生命が失われたのならば、全てが水泡に帰す。
 両国代表や、人々の祈り全てが無駄になってしまう。
 彼等が願った平和への第一歩をオブリビオンマシンに踏みにじらせていいわけがない。

「よかった。『アイン』ちゃんは無事か……『ツヴァイ』ちゃんも確保されたんだ!」
 ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は『レスヴァント』を駆り戦場を疾駆する。
 すでに他の猟兵に寄って『グリプ5』の生死不明であった者たちの所在が確認されている。
『アイン』は片腕を失い、『ツヴァイ』は未だ予断を許さぬ容態である。
 しかし、未だ生命が失われていないというのであれば平和への祈りはか細くも紡がれているのだ。

「あとごめんなさい」
 ユーリーはコクピットの中で独りごちる。
 心の片隅で『ツヴァイ』が死んだふりをして隠れるシチュエーションとしては最適ではないかと疑ってしまっていたのだ。
 しかし、それも無理なからぬことであろう。
 術策権謀が渦巻く環境で生きてきたのならばなおさらである。しかし、それが真実でなかったことでユーリーは心が軽くなる思いであった。

「アマテラス射出!」
 放たれれるドローンが戦場の情報を精査する。
 人々の生命を失わせてはならないのならば、『ドランギム』が襲いかかる人々をこそ救わねばならない。
 ドローンから送られてくる索敵情報で防衛線の破られそうな部分へとユーリーは『レスヴァント』と共に飛ぶのだ。

 そう、まさしく。
 文字通り、彼女と『レスヴァント』は飛ぶ。
 オーバーブースト・ラストッスパート。それはユーベルコードでありながら、天に座す暴走衛生『殲禍炎剣』に感知されなくなる特殊粒子を放ちながら飛ぶ力だ。
「防衛線を突破しそうな『ドランギム』から叩く!」
 手にしたキャバリアソードが『ドランギム』の期待を頭上より一撃のもとに切り裂く。
 爆風吹き荒れる中、『レスヴァント』のアイセンサーが煌めく。
 迫りくる連携戦術に長けた機体である『ドランギム』が周囲を囲むが飛翔する機体に対して、地を這う『ドランギム』が追いつける道理など無い。
 アサルトライフルから放たれる弾丸が『ドランギム』を撃ち貫き、撃破していく。

「しかし……これ『グリプ5』側は苦しい立場になりそうだね」
 ユーリーは戦場の中心で激突する『熾盛』と『熾裂』の姿を見る。あれに乗っているのは『フュンフ』とその母である『ヌル・ラーズグリーズ』である。
 真意や真相はともかく。
 今回の騒動の犯人が『ヌル』である以上、どう転んでも『グリプ5』は内外に敵を作ることになる。

 これがオブリビオンマシンのやり方である。
 この絵図を描いた黒幕が望むのは全てではない。部分的にでも己ののぞみを叶えるためだけに此処に在る者たちに強要するのだ。
 天秤にかけることを。
 その悪辣さを知り、ユーリーは歯噛みすると同時に一刻も早い事態の終息に疾走るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
うーん、あの人が狙われちゃった…か
どう転んでも黒幕に都合の良いように扱われているみたいで気に食わないなあ
処刑か、逃がすか…か
…先に邪魔する機体を片付けてからだね

数が居るなら…面倒だから雑にいこう雑に
EX:I.S.T[BK0001]に騎乗
ドランギムの足元をすり抜け『悪路走破』しながらこちらに注意を引き付ける
蹴飛ばされでもしない限り、そんな対キャバリア用の戦術なんてどうとでもなるんだよ
…まあ、スリルは満点だけどね
走行中に適当に『斬撃波』で挑発して注意を引き付けて移動しよう
味方や警備用のキャバリアが巻き込まれないよう距離を取ったら【エナジー解放】を起動
纏めて葬る!

さて、どう黒幕の度肝を抜いてやろうか



『熾裂』――オブリビオンマシン化したキャバリアに乗っているのは『フュンフ・ラーズグリーズ』や『アイン』、『ツヴァイ』らの母親である『ヌル・ラーズグリーズ』である。
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)は彼女との面識がある猟兵であった。
 あの時言葉をかわした彼女は、たしかに子を思う母だった。例え、クローニングされた子であり、血の繋がらぬ子供らであっても己が母であることをやめない人物であった。
 だからこそ、この暴挙の中心に在ることがいまだ信じられない。
 けれど、同時に黒幕が描いた絵図がこれであるのならば、どう転んでも黒幕に都合の良いように扱われているようで玲は気に食わないと思うのだ。

 この事件が終息したのだとしても。
「処刑か、逃がすか……か」
 玲はどちらを選んだとしても『グリプ5』や周辺国に与える影響は大きいことを知る。
 処刑を選べば『ラーズグリーズ』の子供らは親という寄す処を喪う。
 国の中心である『ツヴァイ』は確保されているが、容態は予断を許さぬ。機体の多くが損壊し、『エース』も減らされ、国としての体裁を保つことが難しくなるだろう。
 逃したとしても、オブリビオンマシンの背後にある黒幕の手駒は増える。しかし、『グリプ5』は即時崩壊には至らない。
 けれど、言いようのないしこりを残すことになる。

「……先に邪魔する機体を片付けてからだね……面倒だから雑にいこう雑に」
 玲は模造神器運用補助バイクを駆り、大地を疾駆する。
 オブリビオンマシン『ドランギム』もまた大地を疾駆する機体である。ホバー移動と連携戦術でもって数を頼みした場合、猟兵たちであっても手こずる相手である。
 それが300機近く存在しているという事実が人々を護る防衛線を強いられているという点とか見合って、こちらを苦しませるのだ。

 玲は挑発するようにバイクで大地を走り、『ドランギム』のアンダーフレームの間を縫うようにして走り抜ける。
「……まあ、スリルは満点だけどね」
 斬撃を飛ばし、『ドランギム』たちの注意を惹きつける。
 オブリビオンマシンが狙うのは逃げ惑う人々である。キャバリアは二の次にして、人の生命を狙うように設定されている無人機なのだろう。
 そこに生身単身で走り込んできた玲であれば、標的がそちらに移るのも道理である。

 マシンガンやバズーカの砲弾が玲をおそうが、その尽くを大地を走破することによって躱し続ける。
「そんな対キャバリア用の戦術なんてどうにでもなるんだよ――エネルギー解放、広域放射!」
 模造神器運用補助バイクから抜き払った刀身が青く輝く。
 ユーベルコードに寄ってエナジー解放(エナジーバースト)された斬撃波の一撃が十字を描いて『ドランギム』たちの群れを一撃のもとに切り裂く。

「纏めて葬る!」
 爆発が吹き荒れる中、さらに『ドランギム』が迫ってくる。
 数が多い。単純に数でこちらの防衛線を突破するつもりなのだ。単調であっても、こちらの手勢が少ないことを見越した行動であろう。
「いちいち、こっちへ嫌がらせをしてくるな……」
 玲は大地を走り抜けながら、斬撃波を放ち続ける。自身が生身であることが唯一のアドバンテージである。
 自分が戦場を駆け抜ける限り『ドランギム』は自分を狙ってくるだろう。

 けれど、打開策が見えない。
「さて、どう黒幕の度肝を抜いてやろうか」
 思案する。そんな中、戦場に突っ切ってくるキャバリアトレーラーの姿が視える。そこに座すのは『ツェーン』であった。トレーラーの上には破壊された『熾星』と大きなコクピットブロックであった。
「玲さん! 時間を稼いでください。私が――!」

 彼女の姿を見る。黒幕が唯一予定通りに処理できなった少女『ツェーン』。
 玲が示した道を走る彼女が、玲の道を照らすのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
(高所から様子を伺っていた、一人の男が動き出した)
人々が戦を棄てようとも、『奴等(オブリビオンマシン)』は
戦を望む……奴等が世に在る限り、平和は決して訪れない。
結局、戦う以外に道はない……か。
■闘
今は、一刻も早く動き出した300機を止めなければなるまい。
しかし、あの機体たち……どうも動きが妙だな。
あまり『目にしない』ほうがいいやもしれん。

目を瞑り、『不思議な布』を眼に巻いて視界を完全に断ち、
【聞き耳】と【野生の勘】を用いて生身で突撃。
『複数の機械音が交わって聞こえる』場所へ【ダッシュ】だ!
『死ぬ気か?』と聞こえたが、気にしない。

音の交わりが激しくなったら『空薙』の柄に手をかけ、
【早業】の抜刀から【空薙・舞】を放ち、幾多の刃による
【範囲攻撃】で一気に仕留めるぞ。

俺は只、俺にできることを行うまでだ……

※アドリブ歓迎・不採用可



『平和祈念式典』の会場の上から荒野を見下ろしていた一人の男が動き出す。
 人々が争いを捨てようとも、オブリビオンマシンは火種を撒き散らす。
 争いこそが世界の在り方であるというように、人の心から争いを忘れさせることをさせないのだ。
「戦を望む……奴等が世に在る限り、平和は決して訪れない」
 愛久山・清綱(鬼獣の巫・f16956)は猛禽の翼を広げる。
 その評定に在るのは諦めであったのかもしれない。

 世界から争いが消えない。
 きっとオブリビオンマシンが存在しなくても、それは変わらないのかも知れない。
 けれど、見果てぬ平和の夢があるのだとしても、それを心に抱くこともできぬのは間違いであるとはっきりと彼は言えるのだ。
 どれだけ争いの満ちる世界であっても平和を知らぬ者に、安寧は訪れない。
 ゆえにそれを勝ち取るために成すべきことは一つしかないのだ。
「結局、戦う以外に道はない……か」
 清綱は『不思議な布』で己の視界を覆う。

 廃棄予定であった300機近いキャバリア『ドランギム』たちの動きはどれもが連携に優れた動きであった。
 一刻も早く、あれらを止めなければ式典に集まった人々に害を及ぼしかねない。
 この戦いにおいて寛容であるのは生命を一つとて失わせてはならぬということである。生命が失われれば、この式典の意義が失われるだけではない。
 両国の関係まで水泡に帰す。
 ならばこそ、清綱は己の視界を覆い、聴覚と己の野生の勘のみによって単身生身で戦場に飛び込むのだ。

「動きが妙だと思っていたが、やはり無人機か」
 清綱は複数の機械音が交わる音を聞こえた。
 どこかで誰かが死ぬ気か発する声が聞こえた気がしたが、機にはしない。手にかけた刀を構える。
 単身で戦場に飛び込んだ清綱めがけて『ドランギム』たちが殺到する。
 彼等は無人機であるがゆえに、優先目標を設定されている。
 それはキャバリアこそが戦場の花形であり、同時に主戦力であるクロムキャバリアにおいて非道なる行い――つまり、生身の人間を優先的に攻撃するというプログラムである。

『ドランギム』たちが一斉に防衛線を突破しようとしているのは、そういう理由があったのだ。
 人々をただ鏖殺せしめるためだけに彼等は行動している。
 それは許しがたいことだ。
「ならば、こちらも刀を抜かねばならぬ。秘儀・空薙……」
 覆われた布より輝くはユーベルコードの輝き。
 抜刀の後に放たれる斬撃はまるで踊り舞うように空間に放たれ、一瞬にして迫りくる『ドランギム』を破壊せしめるのだ。

「俺は只、俺にできることを行うまでだ……」
 爆風が荒ぶ中を猛禽の翼が羽撃きでもって打ち払う。
 舞う斬撃は清綱の周囲に迫る『ドランギム』たちを例外なく切り捨てる。それは不可思議な光景であったことだろう。
『ドランギム』が動く度に爆発が起こっていく。
 清綱に近づく機体の尽くが例外なく斬り捨てられていくのだ。

 どれだけバズーカの砲撃や銃火にさらされても、清綱の動きは淀みないものであった。
 空薙・舞(ソラナギ)と名付けられたユーベルコードが示すとおり、清綱は舞うように飛ぶ。
 この空に蓋をされた世界にあってなお、優美にまう剣閃の一撃が『ドランギム』を破壊し、平和を望む者を害さんとする意志を阻むように荒野に走り抜ける。
「人が平和を望むのならば、それに応える。俺が成すべきことはそれだけよ」
 どんなに黒幕が策を弄するのだとしても。
 清綱は刃を振るうことをやめないだろう。人の願いが平和に向かうのならばこそ、己はひとふりの刃として、その黒き書き割りをこそ切り裂かねばならないのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
そのやり方……その言いよう……。
トラウマ刺激されて、奥歯を噛みしめるけど、
「冷静に」と自分に言い聞かせて【セレステ】に乗り込むね。

『希』ちゃん、コントロール任せるね。
少しは当たってもいいから、できる限りの出力わたしに回して。

『フュンフ』さん、相手の足は必ず止めるから、いまは引いて立て直して!

フュンフさんにそう告げたら、
【リミッター解除】した【全力魔法】と【多重詠唱】で【ジャミング】と【E.C.M】を発動。

ジャミングでフュンフさんたちにステルス効果を、
E.C.Mは相手の電子機器にエラーを起こさせて、動きを止めるね。

「お前は『あの人』じゃない?」
当たり前だよ。
「彼は『フュンフ・エイル』だからね!」



「全ては『平和』のためです、『フュンフ』」
「あの頃の僕とは違う! 平和の意味もわからなかった僕じゃないんだ、母さん! どうして、こんなことが『平和』のためになるっていうんだ!」
 戦場では『熾盛』と『熾裂』が激突する。
 ビームブレイドと無敵斬艦刀が打ち合い、火花を散らす。
 ビットが乱れ飛び、驚異的な機動でもって『熾盛』が躱し肉薄する。勝負が決めきらないのは、『フュンフ』が母親である『ヌル・ラーズグリーズ』が相手であり、躊躇っているからではない。

 単純に『熾裂』を手繰る『ヌル・ラーズグリーズ』の技量が『フュンフ・ラーズグリーズ』より勝っているからだ。
「何もお前は得ることはできない。その程度では」
 放たれるプラズマビームの一撃が迸る。

 その光景を菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は『セレステ』に乗り込み、歯噛みする。
 トラウマが刺激されるようでもあった。
 しかし、理緒はかぶりを降る。
「そのやり方……その言いよう……ううん、冷静に」
 そう、冷静にならなければならない。
 ここで激情にかられてしまうのはオブリビオンマシンの策動、その黒幕の思うツボである。
 AIである『希』にコントロールを任せ、迫る『ドランギム』を見やる。
 ホバー移動で疾駆する彼等は猟兵達によって数を減らしているが、未だ防衛線を突破せんと連携戦術でもって迫るのだ。

「少しは当たってもいいから、出来る限り出力、わたしに回して」
 放たれる砲弾や銃火を『セレステ』が躱し、惹きつけていく。
 しかし、それ以上に『熾盛』の状態が芳しくないことを理緒は知る。母親を討たねばならないという感情と今の現状がどうあっても噛み合わないのだろう。
 あのままでは危ういと理緒は感じたのだ。
「『フュンフ』さん、相手の足は必ず止めるから、いまは退いて立て直して!」
「――でもっ! ここで母さんを止めないと!」
 その言葉に理緒はやはりと思っただろう。
 きっと理屈で理解していても感情で理解できていないのだ。

「……仕方ない! リミッター解除! E.C.M(イー・シー・エム)機動!」
『セレステ』に供えられた電波妨害装置からノイズジャミングとディセプションが放たれ、『ドランギム』にぶつかる。
 それは連携戦術に長けた機体である『ドランギム』の連携をほどき、味方である『熾盛』にステルス効果を齎すものであった。

 相手の電子機器にエラーを起こさせ、動きを止める理緒のユーベルコードは確かに『熾裂』にも有効だったはずだ。
「お前は『あの人』じゃない? ――当たり前だよ」
 理緒は叫ぶ。 
 彼女の中のトラウマが首をもたげるけれど、それでも彼女は言わずにはいられなかったのだ。

『フュンフ』は『ヌル』の言うところの『あの人』ではないだろう。
 わかっている。
 けれど、彼女が母親であるというのならば。そんな言葉はふさわしくないはずだ。
「彼は『フュンフ・ラーズグリーズ』だからね! 『フュンフ・エイル』じゃない!」
 その言葉に後押しされるようにして『熾盛』が『熾裂』に迫る。
 ビームブレイドの一閃が振るわれ、その一撃が『熾裂』へと放たれようとした瞬間、電波妨害装置のジャミングを受けたはずの『熾裂』が一閃を躱す。

「ええ、理解しています。『あの人』じゃない。『あの人』は言ったのです。いつの日にか『フュンフ』、お前が『あの人』の幻影を超えると。けれど」
 それは叶わなかった、と『ヌル』はため息を吐き出すように。
 これまで一度たりとて損壊したことのなかった『熾盛』のオーバーフレームを切り裂くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
アイン様が!?
…いえ、彼女らの実力を信じて『フルーⅦ』側に接触を図ったのです
私は騎士として為すべき事を為すまで

UCの大量の重火器を装着したロシナンテⅣで迎撃
避難完了までの時間を稼ぐ為、両国警備部隊を援護

大量の廃棄機体…対抗するために武装を満載したのです

ミサイルポッドやガトリングガンの乱れ撃ち、レーザーキャノンのスナイパー射撃、混戦状態において敵のみを撃ち抜く重火器の飽和射撃で●蹂躙

砲火を抜けてきましたか、宜しい!

パージした使用済み武装を●操縦する機体で蹴り飛ばし
敵機に直撃させ動きを止め射撃で止め

あの声はヌル様…

…!
アジン代表、『グリプ5』代表、ツヴァイ様の安否確認を願えますか!?



『熾星』は、オブリビオンマシン化した『熾裂』の一撃に寄ってコクピットブロックを爆砕させられ、オーバーフレームとアンダーフレームのみを残す無残なる姿を晒していた。
 パイロットである『アイン』の生死は一時不明であったが猟兵の働きによって片腕を喪う負傷を追ったものの命に別条はないという報をトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)を聞き驚愕した。
 けれど、彼は頭を振る。
 彼は『アイン』の実力を信じたからこそ『フルーⅦ』に接触し、この事態を解決するために動いたのだ。
 ならばこそ、己が成すべきことをなさねばならぬと『ロシナンテⅣ』と共に迫りくるオブリビオンマシン『ドランギム』を迎え撃つのだ。

「一般人の避難完了までの時間を稼ぎます……『グリプ5』側で動ける機体は……『熾盛』のみ。警備のキャバリアは『熾裂』に潰されてしまいましたか……!」
 残すキャバリアは『フルーⅦ』側の警備に当たっていた機体だけである。
 しかし、それだけでは数を減らしているとは言え連携戦術に長けた『ドランギム』を相手取るには不安が残る。
『ロシナンテⅣ』は他の猟兵達と連携し、防衛線を突破されぬようにと『フルーⅦ』側の警備機体と共に『ドランギム』を撃つ。

「大量廃棄機体……対抗するために武装を満載したのです」
 強襲・殲滅戦用武装強化ユニット(エクステンションパーツ・コンボウェポンユニット)を装備した『ロシナンテⅣ』は大火力を要する機体へと変貌を遂げていた。
 ミサイルポッドやガトリングガン、さらにはレーザーキャノンによる精密な射撃。
 このような混乱した戦場にあってこそ彼の操縦技術が光るというものである。ウォーマシンたる彼の演算速度に生身の人間が匹敵することなどない。
 飽和攻撃とも言うべき弾丸の雨を降り注がせながら、『ロシナンテⅣ』は『ドランギム』を圧倒的な火力で薙ぎ払うのだ。

 しかし、それらの砲火を抜けてくる『ドランギム』もまた存在するのだ。
 なにせ数が多い。猟兵たちが尽力してなお、これだけの数が抜けてくる。ここで防衛線を突破されては、人々の生命に害が及ぶ。
 もしも、この式典で一つの生命でも取りこぼしてしまったのならば。
 後に残るのは両国の冷え切った関係だけである。
 平和には程遠い現実が横たわることになるだろう。
「砲火を抜けてきましたか、よろしい!」

 瞬時に強化ユニットをパージし、蹴り飛ばし敵機にぶち当てるのだ。そこへ切り込む一撃で持ってトリテレイアは最後の『ドランギム』を討ち果たす。
「お前はやはり『あの人』には及ばない。何もかも足りない。覚悟も、矜持も、技量も、何もかも」
『熾裂』の無敵斬艦刀の一撃が『熾盛』のオーバーフレーム、その片腕を切断する。
 その光景をトリテレイアは見た。

 そして、知ったのだ。
 あの『熾裂』に乗るのは、『ラーズグリーズ』の名を持つ者たちの母である『ヌル・ラーズグリーズ』であると。
「あの声は『ヌル』様……ッ!」
 ならば、あの機体を乗機していた『ツヴァイ』はどうなったのか。
 トリテレイアは己の電脳が導き出した最悪を否定するために『フルーⅦ』代表の『アジン』へと通信をつなぐ。

「『アジン』代表、『グリプ5』代表、『ツヴァイ』様の安否確認を――」
「此方でも確認している。彼女は保護されているが……」
 銃で撃たれている、と言葉が続く。
 予断を許さぬ容態である。けれど、まだ生命は失われていない。ならば、か細い希望はつながっているのだ。

 どれだけこの絵図を描いた黒幕が夢見る未来が、平和など遥か遠きものになるのだとしても。
 それでも未だ生命は失われていない。
 ならば、まだ希望は潰えていない――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『セラフィム・リッパー』

POW   :    断罪の剣
【無敵斬艦刀】が命中した対象を切断する。
SPD   :    エンジェルビット
自身が装備する【BS-Fクリスタルビット】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    フォールンウイング
【光の翼】を向けた対象に、【プラズマビーム】でダメージを与える。命中率が高い。

イラスト:棘ナツ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


オブリビオンマシン『熾裂』の振るう無敵斬艦刀の一撃が、『憂国学徒兵』時代より一度たりとて損壊したことのない伝説的キャバリア『熾盛』のオーバーフレーム、その片腕を切断する。
 それは『熾盛』の伝説が幕を閉じた瞬間であった。
「――母さん!」
『フュンフ・ラーズグリーズ』の叫びは悲痛なものであった。

 己の母を撃たねばならぬという葛藤が、躊躇いが、彼の生死を分ける。
「だから、お前は『あの人』を超えられない。人の情など、矜持を妨げる障害にしかならないと何故わからないのです。『平和』は、数多の障害の先にあるもの」
『ヌル・ラーズグリーズ』が手繰る『熾裂』が返す刃で『熾盛』のアンダーフレームを砕き、ビットの乱舞が防御に回した残った腕を砕く。
 四肢を切断され、破壊された『熾盛』がだるま状態で大地に伏す。

「終わりです。お前は――」
「させない! そんなことはさせない――!」
 割り込むようにして走り込むのは一台のキャバリアトレーラーであった。そこにあったのは、一機のキャバリア。
 それは歪なキャバリアであった。
 コクピットブロックが通常の機体よりも大きく、オーバーフレームとアンダーフレームは『熾星』のものであった。

「破壊したはずですが……」
 その言葉に『ツェーン』が応える。彼女だけが、この絵図を描いた黒幕が唯一思い通りに出来なかった少女である。
 彼女がもしも、絵図のとおりにパイロットとして存在していたのならば、『フュンフ・ラーズグリーズ』は此処で死する運命であっただろう。
 けれど、そうはならなかった。
 不確定要素、『猟兵』の存在に寄って、彼女はパイロットではなく――メカニックとしての道を歩んだ。

 それが今を作り出している。
「やれるかよ、『クロア』!」
「やります、やらないといけないっていうのなら!」
 片腕を失った『アイン』と機体を失った『クロア』が一つのキャバリアのコクピットに座す。それは複座式の機体のコクピットブロック。
 かつて『セラフィム・プロト』と呼ばれた機体のコクピットブロックであった。

「『ドライ』、『フィーア』……借りるぜ」
『アイン』が懐かしむようにつぶやく。『熾星』のオーバーフレームとアンダーフレームによって、廃棄予定であった『セラフィム・プロト』のコクピットブロックは生まれ変わる。
『ツェーン』がそれを為したのだ。
 彼女がいなければ。彼女がメカニックとならなければ、拓けぬ未来があった。
 それは紛うこと無く猟兵が照らした道。
 そして、そのか細い希望の光は今、猟兵たちの道を照らす。

「――煩わしい。過去の遺物が、『過去』たる私を阻むか」
『熾裂』の姿が変わっていく。
 それはかつて『熾盛』を模し、デチューンされた機体『熾裂』――またの名を『セラフィム・オリジン』、『セラフィム・リッパー』の原型となった機体。
 オブリビオンマシンとしての本来の力を露わにし、『ヌル・ラーズグリーズ』は過去に在りし全盛の力でもって猟兵たちを圧倒するだろう。

 だが、それでもやらねばならぬ。
 か細い希望を護ることを――。
村崎・ゆかり
セラフィム・オリジン――まさかセラフィムV?
だけどやることは変わらない。オブリビオンマシンはことごとく討滅する。

「全力魔法」「呪詛」「仙術」「道術」で金光陣。
この黄金の光が生み出す影に取り殺されなさいな。ああ、傷つけると自分にダメージ入るから。

それでもクリスタルビットは攻撃に使ってくるか。
射線を「見切り」つつ、「オーラ防御」で弾く。

『迦利』、出番よ。
機甲式『GPD-331迦利』、鋭角に「オーラ防御」を纏って、敵機体へ突撃!
コクピットは外して一撃を入れなさい!
しかる後に「レーザー射撃」の零距離射撃。可能な限り装甲を砕く。

始まりのセラフィム……。やっぱりあなただったのかしら、『エイル』は?



 オブリビオンマシンと化した『熾裂』。
 それはかつて『憂国学徒兵』の時代に突如として現れた『熾盛』をデチューンして生み出されたいわば『熾盛』の量産型。
 しかし、扱いにくさは言うまでもなく。
 十全に性能を発揮することが出来たのは『憂国学徒兵』の『エース』である8人をおいて他には存在しなかった。
 その一機が今日まで残っていたのは、奇跡的というほかない。
『熾盛』が『フュンフ・エイル』の駆る伝説的機体であるというのならば、『熾裂』はその後の『グリプ5』におけるキャバリア開発の礎となった機体である。

 それは『セラフィム・オリジン』と呼ばれ、『セラフィム・プロト』、『セラフィム・リッパー』へと受け継がれていく。
 その『セラフィム』の名を冠する機体を幾度か見たことのある猟兵、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)にとって、オブリビオンマシン化した機体『熾裂』こと『セラフィム・オリジン』は他世界で消えた青い鎧の巨人を思わせた。
「『セラフィム・オリジン』――まさか『セラフィムV』?」
「いいえ。私の知る『これ』はそうではない。とは言え、私がそれについて語る理由もなく……『平和』への道を阻むというのならば」
『ヌル』の言葉とともに『セラフィム・オリジン』の機体からクリスタルビットが飛び出し、ゆかりを襲う。

 ゆかりは即座に瞳をユーベルコードに輝かせる。
「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。光り輝くほどに影はより深く。濁気に沈む愚人の影よ、克己せよ。汝らの現し身に牙を剥け。疾!」
 金光陣(キンコウジン)が展開し、金光が作る『セラフィム・オリジン』の影から偽物が現れる。
 それらがゆかりの指示にしたがって『ヌル』の駆る『セラフィム・オリジン』へとそいかかるのだ。

「ただの幻影ではない……実態を持っているというのならば」
『ヌル』の行動は迅速であった。
 例え敵が生身単身の存在であったとしても、彼女に慢心はない。
 キャバリアという圧倒的な力を有していたとしても、彼女はクリスタルビットでもって、影ではなくゆかりという術者本体を狙ってくるのだ。
「こちらのユーベルコードを知っている……! 理解しているっていうのね、この金光の特性を!」
「意味なくそのような影を生み出す方ではないとわかるのならば、術者事態を狙うは定石。かつて、『八咫神国』でも似たようなキャバリア使いがいました」
 迫る『セラフィム・オリジン』にゆかりは、己の式神にしてキャバリアである『GPD-331迦利』を突撃させる。

 無人機であるがゆえにありえぬほどの速度と己の機体を衝角に見立てて突撃させる大胆なる一撃が『セラフィム・オリジン』の纏う光の翼でもって受け止められる。
 光の翼とオーラの力が激突し、火花を散らす。
「無人機による突撃……然る後にゼロ距離射撃。無人機である特性を十全に引き出すには有効的な手段です」
 そこまでしてもなお、『セラフィム・オリジン』は『迦利』を弾き飛ばし、レーザー射撃の一撃を躱してみせるのだ。

 光の翼が消し飛ばすことはできたが、それでもなお『セラフィム・オリジン』は健在である。
 その動きはこれまで見てきた『エース』のどれよりも鋭く、早いものであったことだろう。これが『ヌル』というパイロットの技量であると言わしめるように過去の栄光たる『セラフィム・オリジン』は凄まじき戦術機動でもって、ゆかりを翻弄する。
「始まりのセラフィム……やっぱりあなただったのかしら、『エイル』は?」
「私は、ただの『ヌル』。その名を冠する『あの人』はもう此処には居ない。だから、代わりを立てる必要があるのです。かつて『グリプ5』がそうしたように。絶対的な『エース』がいるからこそ、『平和』は訪れる」
 それは詭弁にしかすぎないだろう。

 圧倒的な力が齎す『平和』は安寧であろう。
 けれど、ゆかりは知っている。強い力が齎す安寧は、より強い力によって滅ぼされる定めであると。
 だからこそ、ゆかりは言うのだ。
「あなたが『エイル』じゃないっていうのなら、それで構わない。どちらにしたって、あなたを打倒することに変わりはないんだから!」
 迫る『迦利』の突撃が再び光の翼と激突し、周囲に火花を散らす。
 此処で『セラフィム・オリジン』を抑え込む。
 消耗させ、次に繋がなければ今まさに垣間見えたか細い希望の光すら紡ぐ音はできないのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
(引き続き試作型術式騎兵【ツィルニトラ】に騎乗中)
…アイン、クロア、やれるね……?
…援護するよ…【我が手に彩る傀儡舞】を発動…
…破壊されたドランギムを操ってプロトと連携させるよ…
…さらに熾盛のコクピットブロックも確保させて退避させとこう…

フュンフが粘ってくれて助かった…お陰で相手の動きの癖が判る…
…光の翼にドランギムを割り込ませて盾にして防ぐよ…
そして残りのドランギムのバズーカやマシンガンでプロトの援護…
…さて…如何に隙を作るかだけど…
プロトの攻撃タイミングに合わせて現影投射術式【ファンタズマゴリア】で
熾盛の姿を被せたドランギムで攻撃…
敵の気を惹いてプロトの攻撃への対処を邪魔するとしようか…



『セラフィム・プロト』はかつて、『セラフィム・リッパー』を開発する前のテストベッドとして生み出された機体であった。
 煩雑化する操作。
 多彩な武装。
 それらを一人のパイロットで制御するのは難しい。ならば、それぞれのモーションをプリセットすればいい。そのために生み出された『セラフィム・プロト』は複座式となっており、『ラーズグリーズ』の名を持つ子供ら、『ドライ』と『フィーア』の双子の兄妹によって運用されていた。
 けれど、『セラフィム・リッパー』3号機暴走の事故により双子の生命は失われている。

 その『セラフィム・プロト』のコクピットブロックもまた今回の『平和祈念式典』において破棄される予定であったのだ。
 コクピットブロックだけではオブリビオンマシンには成りえない。
 そこにコクピットブロックを破壊された『熾星』のオーバーフレームとアンダーフレームをもって『ツェーン』が急造であれど組み上げた『セラフィム・プロト』は奇しくも此処に再誕を果たすのだった。
「……『アイン』、『クロア』、やれるね……?」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は試作型術式騎兵『ツィルニトラ』を駆り、新生した『セラフィム・プロト』と共に並び立つ。

 すでに『熾裂』――『セラフィム・オリジン』は猟兵との戦いを繰り広げている。一進一退ともつかぬ強力なオブリビオンマシンに『エース』以上の力を持つ『ヌル・ラーズグリーズ』の技量で持って戦局はオブリビオンマシンに傾いている。
「ああ、私が回避を」
「俺が攻撃を。受け持ちます。そうすれば!」
『アイン』は片腕を失っているが、操作することには支障はないようであった。それに加えて『クロア』の直感的なセンスがあるのならば、『セラフィム・オリジン』に引けはとらないだろう。
「……援護するよ……物言わぬ躯よ、起きよ、踊れ。汝は木偶、汝は無命。魔女が望むは九十九綾取る繰繰り糸」
 術式で編み上げられた魔力による非実態の糸が放たれ、破壊された『ドランギム』たちを操り、『セラフィム・プロト』と共に『セラフィム・オリジン』へと襲いかかるのだ。

「機体を操る……厄介な相手です。ですが」
『セラフィム・オリジン』の光の翼が羽撃き、放たれるプラズマビームが次々と、メンカルの手繰るユーベルコード、我が手に彩る傀儡舞(ストレンジ・ストリングス)でもって操作される『ドランギム』を撃ち貫いていく。
 爆発が巻き起こり、周囲に凄まじい爆炎を上げさせる。
 射撃も操縦も精確。
 まさに機械のような精密さであった。

「――やってくれたな、母さん……いや、もう『ヌル・ラーズグリーズ』と呼んだ方がいいよな!」
『アイン』が『セラフィム・プロト』と共に駆ける。
 急造の機体であれど、メンカルの手繰る『ドランギム』と連携をすれば、なんとか渡り合うことができる程度の力量差である。
 しかし、『ヌル』は答えない。
 襲い来る『ドランギム』を次々とプラズマビームの射撃で破壊し続ける。

 その戦闘をメンカルはつぶさに観察する。
「『フュンフ』が粘ってくれて助かった……おかげで相手の動きの癖が判る……」
 プラズマビームの一撃が『ツィルニトラ』を狙う。
 けれど、それを『ドランギム』を盾にすることによってメンカルはいなし続ける。『ドランギム』の残った武装、バズーカやマシンガンでもって『セラフィム・プロト』の攻撃の隙をなんとか作ろうとメンカルは『セラフィム・オリジン』の動きを見やる。

 機械のような正確さ。
 それは逆に言うのならばとっさの行動には対応できないということでもあるのだ。
 ならばこそ、メンカルは『熾盛』のコクピットブロックを『ドランギム』に確保させ、退避させるのだ。
「それはさせません。偽りの『エース』など不要。『あの人』に及ばぬのであれば、存在する意味など無いのです」
 放たれるプラズマビームの一撃を『セラフィム・プロト』と『ツィルニトラ』が防ぐ。
「メンカルさん……頼みます!」
「……任された」
 メンカルは『クロア』と僅かな時間で互いの意図を汲み取る。魔力の糸でもって手繰る『ドランギム』に幻影投射術式『ファンタズマゴリア』で生み出した『熾盛』の姿をかぶせ、突撃させる。

 それは子供だましにもならぬものであったが、それでも『ヌル』は無視できないであろうとメンカルは理解している。
 機械のように反応するのならば、それがどんな姿であれ反応してしまう。
 そこに付け入ることのできるのが『エース』だ。
「……今だよ」
 メンカルの言葉を受けて、『セラフィム・プロト』が破壊される『熾盛』の姿をかぶせた『ドランギム』の爆発から飛び出し、『セラフィム・オリジン』に一撃を加える。

 光の翼が消失し、肩部装甲がひしゃげ……『セラフィム・オリジン』は己の体に傷をつけたことに対する怒りを表すようにジェネレーターを唸らせ、光の翼を極大にまで広げるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ガイ・レックウ
【POW】で判定
『やかましいぜ。平和は誰かの力で奪い取るものじゃない。皆の意思で掴み取るものだ。だから、お前という障害は、俺たちで叩き潰す』
愛機スター・インパルスを駆り、【オーラ防御】とブレードでの【武器受け】で防御しながら電磁機関砲の【制圧射撃】で牽制し、距離を詰めるぜ
【なぎ払い】と【鎧砕き】で隙を作り、ユーベルコード【ドラゴニック・オーバーエンド】を叩き込むぜ



 光の翼が広がり、そのオブリビオンマシンとしての本性を表した『熾裂』――『セラフィム・オリジン』は猟兵たちを相手取っても遜色のない技量と性能を見せつける。
 これまで猟兵たちが対峙してきた『エース』要するオブリビオンマシンとは一線を画する戦闘力。
 消耗させている事は間違いない。
 けれど、損傷が少ないという点においては、これでのオブリビオンマシンとはまるで違うことを示していた。
『ヌル・ラーズグリーズ』は、『グリプ5』におけるキャバリア開発技師にして『ラーズグリーズ』の名を持つ子供らの母としての役割を持つ人物である。

 如何に『熾盛』と呼ばれるキャバリアが伝説的な機体であったのだとしても、彼女にとっては『フュンフ・エイル』が乗らぬ機体などさしたる敵ではなかったのかもしれない。
「私という『過去』を止められぬ『エース』に意味など無いのです。『平和』への道程を、その礎にすらなれぬというのであれば、もう要らないのです」
『ヌル・ラーズグリーズ』の言葉はオブリビオンマシンに寄って狂化されているからなのだろうか。
 言うことが極端過ぎる。
 手にした無敵斬艦刀の切っ先が猟兵たちへと向けられ、光の翼が膨れ上がると同時に凄まじい速度で迫る。

「やかましいぜ。平和は誰かの力で奪い取るものじゃない。皆の意志でつかみ取るものだ。だから――」
 ガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)は愛機である『スター・インパルス』を駆り、特殊超合金製の片刃剣を構える。
「お前という障害は、俺たちで叩き潰す」
 激突する刃の火花が散る。
 パワーで勝るはずの『スター・インパルス』の踏み込みを『セラフィム・オリジン』は真っ向から受け止める。
 無敵斬艦刀の名は伊達ではないということだろう。
 オーラ防御を重ねてもなお、特殊合金の刃がきしむ。機体性能だけではない。無敵斬艦刀を振るう機体の動きによって達人の如き動きを再現しているのだ。

 それはまさに機械の如き動きであった。
 寸分違わず、達人の動きをトレースしたかのような動き。電磁機関砲が『スター・インパルス』から放たれ、牽制する。
 しかし、その牽制射撃を見越したかのように光の翼が電磁力によって加速した弾丸を叩き落とすのだ。
「この程度で、牽制になると」
「距離を詰めれば――!」
 踏み込むガイと『スター・インパルス』。薙ぎ払うように大振りの一撃が横薙ぎに『セラフィム・オリジン』に放たれる。後方に回避すれば体勢を崩すことができる。

 そこに一瞬の隙を見出し、勝機と為さんとした。
 けれど、その牽制の太刀筋すらも『ヌル・ラーズグリーズ』は見切る。機械のような寸分違わない動きで持って後退するのではなく、曲芸のように空中に一回転して刃を躱し、キャバリアのアンダーフレーム……脚部による踵落としでもって『スター・インパルス』の装甲を砕く。
「この――! だが、勝負を急いだな!」
 ガイの瞳がユーベルコードに輝く。
 手にした特殊合金の剣を投げ放つ。距離を詰める。ただその一点だけをガイは狙っていたのだ。

「燃えよ!灼熱の炎!猛れ!漆黒の雷!全てを…砕けぇ!!」
 放たれる『スター・インパルス』の拳の一撃。
 それは紅蓮の炎と漆黒の雷纏いし、二頭のドラゴンとなって、打ち込まれるドラゴニック・オ-バーエンド。
 その拳を『セラフィム・オリジン』は無敵斬艦刀の刀身で受け止める。
 爆炎の中に消える機体。
 ふきとばされる『セラフィム・オリジン』であったが。爆炎の中から光の翼が羽ばたく。

「これでどうだ……!」
「……この無敵斬艦刀に拳でもって亀裂を走らせるとは……」
 無敵斬艦刀の刀身に罅を入れながらも、未だ健在である『セラフィム・オリジン』は揺らめく炎の中で咆哮する。
 かつて周辺国家に悪魔とすら言われた天使を模したキャバリアは、今此処に再び過去より舞い戻るように光の翼を羽撃かせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メサイア・エルネイジェ
通信で色々お喋りしているご様子…浅からぬ因縁があるようですわね
それもこれも元を辿れば全部オブリビオンが悪いのですわ!多分!
機体から引き摺り下ろして正気に戻してさしあげます!

ふぇっ…斬艦刀ではありませんの
ヴリちゃん強しと言えど迂闊に近付くのは危険で危ないですわ
間合いを取って戦わないと…でも鉄砲なんて持ってきてねぇですわ…
あ、閃きましたわ!
ラースオブザパワー!
この場には最低でも300のドランギムの残骸がある筈ですわ
しかもわたくしが壊した分はパイルで突き刺しただけなので丸々残っておりますわ
これをひたすらぽいぽい投げ付けますわ!
切り払われてもなんのその
残骸に埋もれて動けなくなってしまえばいいんですわ!



 オブリビオンマシン『セラフィム・オリジン』の力は凄まじいものであった。
 これまで関連する事件において『エース』を要するオブリビオンマシンの存在は強敵として猟兵たちを苦しめてきた。
 けれど、『セラフィム・オリジン』と『ヌル・ラーズグリーズ』は、それとは一線を画するものであった。
 戦術機動は勿論のこと、攻撃性能も群を抜いている。
 距離を離せばプラズマビームの一撃が襲い、クリスタルビットが全方位から射撃を加えてくる。
 逃げ場無き戦場にあって、全方位からの攻撃に対応できる者は限られるだろう。
 さりとて近接に持ち込めば無敵斬艦刀が振り下ろされる。

「『平和』とは力で勝ち取るもの。力なき者には、その権利すらない。人はそれを理解すべきなのです。そのために『エース』がいる。けれど、半端な存在は百害あって一利なし」
 ならばこそ、『ヌル・ラーズグリーズ』は己の子すら殺すことを厭わぬという。   
 その言葉をメサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)は聞く。
 浅からぬ因縁があるのだろう。
 けれど、その言葉が本心であるとメサイアは思うことはできなかった。どれだけ言葉を弄したところで、親子の情が簡単に引き裂けるものではないのだ。
 心にも無いことを『ヌル・ラーズグリーズ』が言っているとメサイアは感じた。

「それもこれも元を辿れば全部オブリビオンが悪いのですわ! 多分!」
 それは間違っていない。
 オブリビオンマシンは搭乗者の思想を狂わせる。
『平和』への願いが強いからこそ、行き過ぎた理論に行き着いたのだとしてもおかしくない。
 メサイアは黒き機龍『ヴリトラ』と共に戦場を駆け抜ける。
「機体から引きずり降ろして正気に戻して差し上げます!」

 しかし、メサイアはたじろぐ。
『セラフィム・オリジン』の構える無敵斬艦刀は刀身に罅が入っているのだとしても、その強力な一撃を知っているからだ。
 如何に強靭な装甲を持つ『ヴリトラ』と言えど、あの一撃をうけて無事でいられない。
 かといって、間合いを取って戦うことは『ヴリトラ』にとって不利である。
 機銃を持たぬ機龍である『ヴリトラ』最大の強みは装甲と類まれなる近接格闘である。
 だが、『セラフィム・オリジン』の機動性に翻弄されれば、その力を十全に発揮することはできない。
 ゆえに彼女は追い込まれていたのだ。

「獣の如きキャバリア……懐かしいです。幾度も刃を交えた……ゆえに分かります。その機体の強み。装甲と近接戦闘。獣の道理は人の道理など意に介さない。それゆえに、その獣性こそが、その機体の強み。なのであれば!」
『セラフィム・オリジン』が踏み込んでくる。
 無敵斬艦刀の刀身が煌めくのをメサイアは見た。
 あの刀身が叩きつけられば、間違いなく両断される。窮地にありてメサイアは閃くのだ。

「全力全開ですわ! 見せなさい、ヴリちゃん! 憤怒の剛力(ラースオブザパワー)を!」
 メサイアと『ヴリトラ』のアイセンサーがユーベルコードに輝く。
 この戦場には最低でも300機もの『ドランギム』の残骸が残されている。猟兵達によって残らず打倒された残骸をこそ、彼女は利用するのだ。
 パイルを打ち込んだだけの『ドランギム』の残骸を『ヴリトラ』のテイルが貫き、振るわれた無敵斬艦刀の一撃を防ぐのだ。

「目くらましですか、その程度で」
 そう、たしかに『セラフィム・オリジン』は止められない。けれど、それでいいのだ。
 メサイアの目的はそれではない。
『ドランギム』の残骸をさらに投げ放つ。
 ひたすらに。ただひたすらに『ヴリトラ』は『ドランギム』の残骸を投げつけ続ける。それは質量兵器であると同時に『セラフィム・オリジン』を逃さぬ徹底した攻撃であった。

「切り払われてもなんのそのですわ! 残骸に埋もれて動けなくなってしまえばいいんですわ!」
 メサイアの閃きは、瞬く間に『ドランギム』の残骸によって『セラフィム・オリジン』を囲う檻となるだろう。
 攻撃を躱し、残骸を切り払う度に圧倒的な機動性を誇る『セラフィム・オリジン』の優位性を損なわせていく。
 メサイアの行動は直線的であったかも知れない。
 けれど、それはひたむきであるからこそ、其処に活路を見出すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
あれこれ考えるのは後だ!
戦えディスポーザブル、『壊れるまで戦い続けろ!!』

ディスポーザブル01を操縦、『戦塵の悪霊』は発動された。
【闘争心】による【激痛耐性】で過負荷を無視、
代償で強化されていく【瞬間思考力】と【念動力】が01の機動性能を高め、【怪力】でもってセラフィム・オリジンなるものへと右手に持った騎兵刀と左腕のパワークローを振るい、戦う。

何が平和か、何がエースか、
母が子を壊す事が、平和に成るものか!?

切断されたパワークローの代わりにプレスブロウを召喚、瞬間装着。
【早業】両手で騎兵刀を振るい、更なる戦闘を続行。

まがい物(オブリビオンマシン)がッ…!!

【継戦能力】致命的の一撃を貰っても、【何がなんでも自身】を戦わせる。
真の姿:小枝子の輪郭が崩れて戦塵霊物質の人型の塊のなり掛けに、01もキャバリアではなく悪霊として、機械の道理を無視して、

マシンが、まがい物の平和を語るなぁアアアア!!!

右腕のブラストナックルを叩きつけ、電磁パルスと共に崩壊霊物質が、セラフィム・オリジンを【解体】しに掛る。



 虚空より現れるサイキックキャバリア『ディスポーザブル01』は、突如として『グリプ5』と『フルーⅦ』の中間地点である荒野に出現する。
 それは、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)の駆るキャバリアである。
 小枝子は猟兵であると同時に悪霊だ。
 自覚なき悪霊であるからこそ、己の中に宿る闘争本能が何故今刺激されているのかを知らない。いや、知っているのだ。
 何故、己の中にある本能が叫んでいるのかを。

 この『平和祈念式典』が意味することを考える暇もない。
 何故、親と子が争わなければならないのか。オブリビオンマシンが如何なる経緯でそうしたことを為さしめたのか。
 理由はいくつも存在しているであろうし、真実は未だ見えない。
「けれど、あれこれ考えるのは後だ!」
 小枝子の瞳がユーベルコードに輝く。
 禍々しき輝き。
「戦え『ディスポーザブル』、『壊れるまで戦い続けろ!!」
 その言葉に呼応するように『ディスポーザブル01』のジェネレーターが唸り声を上げる。

 己の肉体にかかる負荷が凄まじい。
 それが加速度的に上がっていることも理解している。けれど、そんなことは小枝子に関係などなかった。
「機体が唸り声を上げている……悪霊が。私の成す『平和』を阻みますか。その忌まわしき機体でもって――戦塵の悪霊(ジカクナキアクリョウ)風情が!」
『セラフィム・オリジン』を駆る『ヌル・ラーズグリーズ』が迫る。
 手にする無敵斬艦刀の刀身が煌めく。
 猟兵の一撃に寄って刀身に罅が走っているが、未だその刀身は折れない。

 打ち合う騎馬刀と無敵斬艦刀が激突する。
 振るわれる左腕のパワークローの一撃を躱し、『セラフィム・オリジン』は凄まじき機動性で持って『ディスポーザブル』を翻弄する。
 ユーベルコードに寄って機動性能を高めているというのに追いつけないのだ。
「何が『平和』か、何が『エース』か」
 小枝子は激情のままに叫ぶ。
 それに応えるように『ディスポーザブル』は『セラフィム・オリジン』へと猛追する。
 凄まじい機動戦は戦場にユーベルコードの残光を残すほどであったことだろう。
「――母が子を壊すことが、平和に成るものか!?」
 パワークローの一撃を躱した『セラフィム・オリジン』の振るう無敵斬艦刀が『ディスポーザブル』の左腕を根本から両断する。
 さらに無敵斬艦刀の柄でもって『ディスポーザブル』の頭部を打ち付け砕く。
 目にも留まらぬ連続攻撃は小枝子を追い詰めていく。

「なりますとも。私だけが本物なのですから。あの子は『あの人』じゃない。ならば、失敗だったということです」
 迫る無敵斬艦刀の一撃が『ディスポーザブル』を両断せんと振るわれる。
 だが、その一撃を真っ向から打ち据えるのは、虚空より召喚されたプレスブロウであった。
 切断された左腕の代わりに瞬間的に装着され、無敵斬艦刀の刀身に罅をさらに入れるのだ。
 両手で持ち直した騎馬刀の一撃が再び、激しい音を響かせ剣戟へと変わる。

「まがい物(オブリビオンマシン)がッ……!!」
 小枝子の叫びはそこで潰える。
 コクピットブロックに横薙ぎに叩きつけられる『セラフィム・オリジン』の蹴撃でもって機体がへし折れるようにして吹き飛ぶのだ。
 なんたる戦闘技術。
 機械の如き精確な技術と、達人ごとき体術。
 それらの全てが己を滅ぼすべく振るわれている。ひしゃげるコクピットブロック。
 小枝子の額が割れ、血が溢れ出す。

 勝負は此処に決した。
 如何なる猟兵であっても『セラフィム・オリジン』を捉える事は敵わない。
 致命的な一撃を受けた『ディスポーザブル』の膝が折れようとした瞬間、その膝が大地に付くことはなかった。
 何故ならば、彼女は悪霊である。
『ディスポーザブル』は器であり、増幅器でもある。
 ここに踏み越えるのだ。

 何をと、つぶやくのはオブリビオンのみである。
 猟兵であるからこそ、限界のその先へと踏み越えることができる。己という存在を超克せしめるのが猟兵である。
 溢れ出すのは憎しみである。
 戦うために生まれ、戦いに死するが小枝子の原点であろう。だが、その体を作る本質は滅びを是とはしない。
「――何を」
『戦え』
『戦え』
『戦え』
 響く言葉は世界すらも侵食していくだろう。
 何が何でも自身を戦わせるのが、戦塵の奥底に眠る本物の悪霊である。小枝子という輪郭が崩れ、霊物質の塊となり、キャバリアという枠組みを越えていく。

 それこそがオーバーロード。
 人でもなく。キャバリアでもなく。
 唯一つの悪霊として機械の道理すらも凌駕し、小枝子は叫ぶのだ。
「マシンが、まがい物の平和を――」
 咆哮する。
 間違っていると、巨大なる悪霊の塊が拳を『セラフィム・オリジン』へと叩きつける。電磁パルスと共に崩壊霊物質がほとばしり、その機体を破壊迫る。
 防御に回した光の翼が分解されていく。

 明滅する世界の中に迸る悪霊の絶叫。
「語るなぁアアアア!!!」
 それは、もはや『ディスポーザブル』ではなく、小枝子という悪霊本来の姿。あらゆる争いを生む根源を滅する怨念の一撃となって『セラフィム・オリジン』を大地に叩きつけるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
あの機体は……!

みたことのある機体が勢揃いって感じだね。
データは揃っているけど、直接のキャバリア戦となるとわたしの腕ではかなり分が悪いかな。
支援がわたしの得意分野。細い糸なら少しでも太くするのがわたしの仕事!

いくら相手が超絶技巧を誇るパイロットと【セラフィムV】だったとしても、
動きを止めてしまえば……止まらなくても、少しでも動きを遅くできれば、攻撃の隙はできるはず。

【全力魔法】と【リミッター解除】それに【限界突破】も乗せて、【フレーム・アドバンス】を使うね。

ここをなんとかすれば後のことはどうにでもなる!
すべてをかけて思いっきりいくよ。

4人分の想いが詰まった『熾星』なら、絶対やれるはずだからね!



 熾盛』を模し、デチューンされた機体『熾裂』――またの名を『セラフィム・オリジン』、『セラフィム・リッパー』の原型となった機体。
 それが『ヌル・ラーズグリーズ』の駆るオブリビオンマシンである。
『セラフィム・オリジン』の思想は『セラフィム・プロト』に受け継がれ、『セラフィム・リッパー』として一応の結実を見せる。
 しかし、そのどれもがオブリビオンマシンになり、また破壊されてきた。

『熾盛』とは如何なる機体であるのかを菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は知る。
 何故か他世界に存在するデータ。
 電子空間に残されたデータはたしかに『熾盛』のものであった。直接整備したこともあるがゆえに、伝説的なキャバリアとなったその機体はいくつかの変遷を経て、今の状態へと装備を変えている。
 A型からF型まで連なる最期は、デチューンされた機体による破壊である。
 四肢は破壊され、頭部とコクピットブロックだけが残される。
 それが成れの果てである。

「みたことのある機体が勢揃い……データは揃っているけど」
 理緒は己の技量では『セラフィム・オリジン』を駆る『ヌル・ラーズグリーズ』に敵うべくもないことを予感する。
 分が悪いとは言え、それでも退くことはできない。
 もとより支援が彼女の得意分野である。
 このか細い希望が今にもちぎれてしまいそうなら、太く撚り合わせるのが理緒の仕事である。
「いくら相手が超絶技巧を誇るパイロットであったとしても……動きを止めてしまえば……!」

 理緒のユーベルコードが輝く。
 自身のコンピュータにキャプチャした『セラフィム・オリジン』の画像をトリミングし、同期プログラムを放つ。
 それは現実と同期させる電脳魔術にして現実を蝕むユーベルコードである。
 トリミングされた『セラフィム・オリジン』は停止させることはできないまでも動きを鈍らせる。
 フレーム・アドバンスと名付けられたユーベルコードは『セラフィム・オリジン』の動きを止める。

 しかし、動きを止めた瞬間放たれるはプラズマビームである。
 光の翼が集約し、放たれるプラズマビームはこれまで見た『セラフィム・リッパー』の比ではない。
「出力が上がってる……!? オブリビオンマシン化した影響ってこと?」
 プラズマビームの奔流が『セレステ』に迫る。
 その窮地を救ったのは『セラフィム・プロト』であった。展開されたシールドがプラズマビームの一撃を防ぐ。
 プラズマビームの粒子が周囲に飛び散る。

「さっきのやつはまだできるかよ!」
『アイン』の言葉に理緒はうなずく。
 完全に動きを止めることはできなくても、攻撃の隙は生まれるはずである。
 理緒自身に攻撃の力はなくても、此処には自分一人ではない。『ツェーン』が紡ぎ、『アイン』と『クロア』が繋ぎ止めた未来がある。
 ならばこそ、理緒はうなずくのだ。

「ここをなんとかすれば後のことはどうにでもなる! すべてをかけて思いっきり行くよ!」
 理緒の瞳が再びユーベルコードに輝く。
「煩わしい……全て『過去』が私を妨げる。私の『平和』は、『あの人』に願われたもの……!」
 迫るプラズマビームが止まる。
 それは理緒のフレーム・アドバンスによる完全停止。『セラフィム・オリジン』を完全に止めることは出来なくても、プラズマビームは停止することができる。
 停止されたプラズマビームの光条を縫うようにして『セラフィム・プロト』が走る。急造ゆえに武装はない。
 だからこそ、展開されたシールドを質量兵器にして『セラフィム・オリジン』へと叩きつけるのだ。

「四人分の思いが詰まった『熾星』なら、絶対やれるはずだからね! ううん、絶対に出来る!」
 理緒の言葉と共に打ち付けられたシールドが『セラフィム・オリジン』の装甲をひしゃげ、吹き飛ばす。
 誰もがより良い未来を願っているのならば。
 オブリビオンマシンの思惑など砕いて進むことができる。それを証明するように『セラフィム・オリジン』は徐々にその動きを鈍らせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

賀茂・絆
勿体ぶって出てきたみたいデスガ、兵装は『セラフィム・リッパー』と大差ないようではありマセンカ!
ならどうとでもしてみせマスヨ!

この雷神相手にビットではスロウリィ!
そうなると攻撃手段はプラズマビーム!しかしプラズマビームを撃つには光の翼を向けなければいけないという大きな隙がある!なら薬で強化されたワタシの【瞬間思考力】でビームをぶった斬れマス!剣も雷神デスシネ!

ま、ビームのぶった斬りはかなり無理してやってる風に見せかけマスガ。
そして段々近づきながら最後の一撃を決めるってタイミングでビーム斬りを失敗した…振りをして骸の海を放出してビーム無効化。
倒した!と気が抜けた瞬間にぶった斬ってやるのデス!



 ふきとばされた『セラフィム・オリジン』の機体は未だ何処にも欠損はなかった。
 けれど、頭部の装甲はひしゃげている。
 五体満足で猟兵たちの攻撃を凌ぐのは、並のオブリビオンマシンではないからだろう。それは疑う余地もないことであった。
「勿体ぶって出てきたみたいデスガ、兵装は『セラフィム・リッパー』と大差ないようではありマセンカ! たかが出力が上がった程度で」
 賀茂・絆(キズナさん・f34084)は己のキャバリア『別雷大神』と共に戦場を駆け抜ける。
 光の翼が集約されて放たれるプラズマビームの砲撃は確かに凄まじい威力で持って戦場と成った荒野に奔る。

 精確な砲撃。
 まるで機械がそうしているかのような精密な射撃である。
 しかし、絆は理解していた。
 速度で勝る己の機体を捉えようとするのならば、クリスタルビットのオールレンジ攻撃では不足である。
 全てが躱される。
 ならば、プラズマビームでの砲撃は在る種当然の判断であった。
「速度だけが取り柄のキャバリアなど」
 プラズマビームの光条を『別雷大神』は躱す。しかし、徐々に照準が在ってきているのを絆は理解する。

『エース』と呼ばれる存在を要するオブリビオンマシンの恐ろしさは言うまでもない。
 けれど、遅い。
「やはりスロウリィ! プラズマビームはたしかに強力デスガ! 光の翼をむけなければならないという大きな隙がアリマス!」
 ならばこそ、薬でもって強化された絆の瞬間的な思考は一つの選択肢を選び取る。
 それは放たれたビーム粒子を神霊級UDCを内包した大剣でもって断ち切ることであった。

 ビームの光条は真っ二つにッサ枯れる。
 雷神は雷よりも早く全てを焼き斬る。それが例えビームの奔流であろうとも関係ないことだ。
 断ち切れぬものなどないというように『別雷大神』が咆哮する。
 しかし、その行いは大きな隙を生み出す。如何に『別雷大神』と言えど、プラズマビームを断ち切ることは難しいはずだった。

 ――否。

 そのように見せかけたのだ。
「凄まじい力……まさしく神霊と呼ぶに相応しい機体……ですが!」
 プラズマビームの奔流はますます持って凄まじい勢いで絆を襲う。
 振りかぶった斬撃がプラズマビームを切りさく頻度が遅くなっていく。それを好機とみなした『ヌル・ラーズグリーズ』は勝ちを確信したことだろう。

「勝ったと思ったときが負けなのですよ!」
 プラズマビームの奔流から真っ向にぶつかるオブリビオン・ヴォイド。
 それは己の機体より放つ骸の海。
 過去の化身たるオブリビオンマシンにあっては、己の故郷とも言うべき骸の海そのものがプラズマビームを放つ光の翼を無力化する。
「――ッ! こちらの武装を!」
「どれだけ強力な武装であったとしても、骸の海に沈めば無力化されるノデス!」
 放たれ続ける骸の海に沈む光の翼。

 それは強力無比なる『セラフィム・オリジン』の一つの武装を無力化し、これまで拮抗していた猟兵と『セラフィム・オリジン』の戦況を一転させる一手となるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ノエル・カンナビス
はぁ(溜息

何度も言って来ましたけれども。
過去の人物も機体も、越えるべき道程の一つに過ぎません。
そんなものはゴールラインですらないのです。

歴史に名だたるエースたちは、その殆どが名もない兵に墜とされました。
それが現実というものです。覚えておくと良いですよ。

先制攻撃/指定UC。

空中と地上との境界を駆け飛び、
空中戦の速度で地上戦の運動性を発揮する次世代技術の結晶たるエイストラ、
ビットのような古典的手段で捉えられるとは思わないで下さいね?
そして重貫通モードのプラズマライフルは、光の翼だの無敵斬艦刀だのの
護りで止められはしませんよ。

多数の残骸が転がる平地では私には追い付けません。
戦場を選び損ねましたね。



 ため息が出る。
 それはノエル・カンナビス(キャバリア傭兵・f33081)にとって幾度となく言ってきたことであった。
 オブリビオンマシン乗る者は皆、思想を狂わされる。
 狂おしいほどの『平和』を求める者には、その『平和』を齎す力を。
 戦乱を生き抜くための力を求める者には、破滅に至る力を。
 そうすることでこのクロムキャバリアの世界には戦乱が絶えず、そしてあらゆるものが潰えていく。

「何度も言ってきましたけれども」
 ノエルにとって『過去』とは道程の一つに過ぎず。
 至る道程はいくつもある。
「過去の人物も機体も、越えるべき道程の一つに過ぎません。そんなものはゴールラインですらないのです」
『エイストラ』と共にノエルは空と地上の境界を飛ぶ。
 このクロムキャバリアにおいて空とは自由の象徴などではない。蓋をされた空には明確な境界線が在る。
 暴走衛生『殲禍炎剣』によって撃ち落とされる危険の在る高度まで上がることはできない。

 ダブルフェイズ・マニューバー。
 それこそがノエルの持つ技量であり、ユーベルコードにまで昇華された力である。
「グラウンドリフレクター・オン」
 空中戦の速度で地上戦の運動性を発揮する次世代技術の決勝たる『エイストラ』が『セラフィム・オリジン』の放つクリスタルビットを躱す。
「ビットのような古典的手段で捉えられるとは思わないでくださいね?」
 放たれるプラズマビームの光条を『セラフィム・オリジン』は躱す。
 光の翼で防御することもできただろうが、すでに光の翼は猟兵の放った骸の海により消失している。

 攻防一体の武装である光の翼を失った『セラフィム・オリジン』にとって、攻撃はもはや躱すしかない。
 そして、攻撃を交わすためにはあらゆるものが障害になるだろう。
 重貫通モードのプラズマライフルの一撃が遮蔽物ごと敵機を貫く。それが『セラフィム・オリジン』を駆る『ヌル・ラーズグリーズ』にもわかっているからこそ躱すしかない。
 その機動性を頼みにして動き回るしか無いのだ。
「防御は受け付けず、こちらに回避を強いる……」
「護りでは止められはしませんよ。武装を喪うだけです」

 ノエルは確実に追い込んでいく。
 この空を封じられた世界にあって、空中機動を成す機体を止めるすべはないだろう。どれだけ『セラフィム・オリジン』がオブリビオンマシンとなって尋常ならざる力を発揮するのだとしても。
 それでも『殲禍炎剣』の脅威は振り払えない。
 この理が戦場にある限り、ノエルは感知されぬ高度ギリギリを飛ぶ技量でもって『セラフィム・オリジン』を圧倒するのだ。

「地の利を活かす……ですが」
 多数の『ドランギム』の残骸が転がる平地。
 そこにあってノエルの駆る『エイストラ』を振り切ることなどできはしない。
 逃亡の可能性を潰すようにノエルは『セラフィム・オリジン』を追い込んでいく。
 この絵図を描いた黒幕にとって、最善は『グリプ5』の勢力を削ぎ落とし、周辺国家から孤立させること。
 けれど、猟兵の介入が考えられるのならば、それは全て得ることができないことを示している。

 ならば、『セラフィム・オリジン』が打倒されたのだとしても、逃亡を成功するのだとしても。
 黒幕にとって半分も得ることができたのならば、それはどちらに転んでも良いということにほかならない。
「そんなことは関係ないのです。歴史に名だたるエースたちは、その殆どが名もない兵に墜とされました。それが現実というものです。覚えておくと良いですよ」
 名も人物も。
 何もかもが戦場においては平等である。

 だからこそ、ノエルは『セラフィム・オリジン』が戦場を選びそこねたことを告げるようにプラズマビームの光条を放ち、オブリビオンマシンに傾いていた戦況が覆されたことを示すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーリー・ザルティア
【心境】
ヌルさんがパイロットなのよね。
撃墜して処刑して終わり…って訳にはいかないよね。
ボク的にはあえて逃がす方向で行きたいよ、もちろん可能な限り監視しないとだけどさ…。

【行動】

まあ、とりあえず撃墜する!!
引き続きレスヴァントで戦う!!

チャフを撒いてクリスタルビットの遠隔操作を『ジャミング』してアストライアの『制圧射撃』で撃墜する
ワルツ・オブ・キャバリア発動。外部装甲排除!!
高速機動モードに変形して『ダッシュ』で接敵。
イニティウムで敵機を『切断』する。

ヌルさんが脱出したら、アマテラスを射出し逃走経路を『索敵』し可能な限り追うわ。
ああ、でも捕まらないようにあえて撃墜報告はしない方向で…。



『セラフィム・オリジン』より放たれたクリスタルビットが空を舞う。
 それは絢爛豪華な煌きのようであり、同時に己に近づけさせぬという意志すら感じさせるものであった。
 光の翼は猟兵の放った骸の海によって消失している。
 これまで五体満足で戦い続け、猟兵と五角以上の戦いを繰り広げていた『セラフィム・オリジン』はジリジリと消耗を強いられ始めていた。
「ここまで追い込まれることは想定していましたが……これが猟兵という存在。この『セラフィム・オリジン』が怯えるほどの力というわけですね」
『ヌル・ラーズグリーズ』はつぶやく。
 機械のような正確さで持って、猟兵たちの追撃をかわし、展開したクリスタルビットでもって迎撃する。

「『ヌル』さんがパイロットなのよね」
「ええ、そのとおりです。私がこの機体を操縦しています。それが何か」
 ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)はこれまでも『グリプ5』に関連したオブリビオンマシンの事件に関わっている。
 だからこそ、撃墜して処刑して終わりというわけにはいかぬと思っている。
 彼女自身としては『ヌル』を決して殺したいわけではないのだ。
 逃がすように仕向けることはできる。
 オブリビオンマシンに乗るがゆえに搭乗者は思想を狂わされる。ならば、その生命に罪はないはずなのだ。

「まあ、とりあえず撃墜する!!」
 話はそれからだ。
 どうなるかはわからない。けれど、『セラフィム・オリジン』は破壊しなければならない。その意志がユーリーにはあるのだ。
 ばらまかれたチャフが電波を阻害し、クリスタルビットの遠隔操作をジャミングする。完全に妨害することができなくても、動きを鈍らせることはできるだろう。
『レスヴァント』の手にしたアサルトライフルから放たれた弾丸が次々とクリスタルビットを撃ち落としていく。

 しかし、『セラフィム・オリジン』は破壊された『ドランギム』の残骸の上を跳ねるようにして飛びながら『レスヴァント』の猛追を躱すのだ。
 追いつけない。
 純粋な機体性能では負けていないはずなのに、残骸すらも利用する技量でもってジリジリと距離を離され続けているのだ。
「そうはさせない……! 外部装甲排除!!」
 ユーリーの瞳がユーベルコードに輝く。
『ヌル』を殺すことはない。逃がすことになるかもしれない。けれど、そのオブリビオンマシンは破壊する。
 存在してはいけない機体であるからこそ、ユーリーはそれが何を齎すのかを知っている。

「高機動モードへ移行。ぶっとべー!! ボクの『レスヴァント』!!!」
『レスヴァント』の装甲が弾け飛ぶようにして排除され、凄まじい速度で持って『セラフィム・オリジン』へと迫る。
 手にしたアサルトライフルから弾丸がばらまかれ、逃走コースを潰す。
 ワルツを踊るように二機の残光が戦場に刻まれる。
 キャバリアブレードの白熱した刀身が煌き、その一撃で持ってクリスタルビットを切り裂き、爆風の中『レスヴァント』のアイセンサーが輝く。

 それはこの瞬間において『レスヴァント』とユーリーが『セラフィム・オリジン』の全てを上回った瞬間であった。
 放たれる一撃が『セラフィム・オリジン』のコクピットハッチの装甲を切り裂く。
 すれ違いざまに視線が絡まる。
 ユーリーの手が僅かに反応する。
 此処で墜とすこともできただろう。けれど、ユーリーは思うのだ。本当にそれが正しいことであろかと。

「――ッ!」
 殺したくはない。
 けれど、ここで逃してはならないとも思う。だからこそ、ユーリーは揺らぐのかもしれない。
『セラフィム・オリジン』より放たれた蹴撃の一撃を受けて『レスヴァント』が傾ぐ。
 それでもユーリーはドローンであるアマテラスを射出する。
 どのような結末になるのだとしても、彼女は見届けなければならない。

『平和』を求めた母が本当にただ死するだけでいいのか。
 その結末を――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
やれやれ
熟女も美味しい気はしますが
「でもエースだよ?」
エースに挑んで打ち破るのも悪くねーな

平和を願うならもっとエロい作戦を用意しやがれバッキャローが

「ナイアルテちゃんのおっぱいプリン後で挑戦しようね☆」

【情報収集・戦闘知識・視力】
敵の動きと癖
その能力を正確に把握するよう努める

【属性攻撃・迷彩】
光水属性を機体に付与
光学迷彩で存在を隠し

UC発動
【弾幕・念動力・スナイパー・空中戦】
超高速で飛び回りながら念動光弾を乱射してその動きを止める
「メルシーだって天使じゃなくて神様だぞ☆」

【2回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
容赦なく襲い掛かり鎌剣で切り刻み
武装の強奪に掛かる

【武器受け】
ビットは念動光弾で迎撃



「やれやれ。熟女も美味しい気はしますが」
 カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は逼迫した事態にあっても己のスタンスを崩すことはなかった。
 どれだけ深刻な事態であったのだとしても、やるべきことは変わらない。
 オブリビオンマシンは破壊しなければならない。
 存在するだけで争乱の火種を撒き散らし、平和からは程遠い状況ばかりを生み出す。
 そうなれば世界は必ず破滅へとひた走ることだろう。
 それをさせぬのが猟兵という存在なのであれば、如何なる信条があろうともやるべきことはかわらないのだ。

『でもエースだよ?』
 己の機体である『メルクリウス』のアバターである『メルシー』が言う。
 尋常ならざる技量。
 精確な機械の如き操縦技術。それに加えてオブリビオンマシン化したことによって出力の上がった機体。
 どれもが脅威と呼ぶに相応しいものであった。
「『エース』に挑んで打ち破るのも悪くねーな」
 同時にカシムは思うのだ。
 平和を思うのならば、もっとよい作戦があるだろうがと。それがどのような内容であったのかは、カシムの頭の中である。

 けれど、『メルシー』は彼女らしく、謎のプリンに後で挑戦しようと意気込んでいる。
 つまるところ。
 どんな状況であってもいつもどおりを行うことができるものがもっとも強いのだ。
「光学迷彩……熱源まで覆い隠す徹底ぶり……」
 放たれる光弾が乱れ打たれた瞬間、『ヌル・ラーズグリーズ』は射線から『メルクリウス』の存在を感知していた。
 これまで多くの猟兵と戦ってきたからこそわかる。
 彼等は一人ひとりが生命の埒外に在る存在である。だからこそ、通常の戦法も、セオリーもメソッドも存在しない。

 自身の中にある経験を元に動くのは、あまりにも危険である。
 固定観念を捨て去り、そのようなことも起こり得ると理解していなければ、即座に彼女は死ぬことになっただろう。
『メルシーだって天使じゃなくて神様だぞ☆』
 神速を誇る『メルクリウス』の機体が、その存在を隠しながら高速で飛ぶのだ。
「光弾はブラフ……ならば!」
『セラフィム・オリジン』が不可視の機体より放たれる斬撃の一撃を無敵斬艦刀でもって受け止める。
 放たれる斬撃は鋭く。無敵斬艦刀の刀身に走った罅の亀裂が大きくなっていく。


「加速装置起動…メルクリウス…お前の力を見せてみろ…!」
 ユーベルコードに輝く『メルクリウス』のアイセンサー。
 神速戦闘機構『速足で駆ける者』(ブーツオブヘルメース)が唸りを上げ、更に速度を上げた不可視なる機体が斬撃を解き放つのだ。
 それは武装の強奪と破壊を狙った嵐の如き斬撃。
「クリスタルビット!」
 放たれるクリスタルビットが光弾と激突し爆風を巻き起こす。視界を覆う爆風の中、カシムは見ただろう。

 猟兵たちの度重なる攻撃で持って光の翼を失いながらも、それでも華麗に舞う戦術機動を。
 不可視なる斬撃をもってしても仕留めきれない。
 それほどの力を持ちながら、オブリビオンマシンと化した『セラフィム・オリジン』をカシムは捉える。

 ユーベルコードに寄って底上げされた超高速機動攻撃。
 鎌剣の剣閃では捉えられぬというのならば、振り下ろすのではなく刺突を持って仕留める。
 最速にして最小の動き。
 それが刺突である。
 線で描かれる斬撃は、その軌跡ゆえに躱される。ならば、点で放つ刺突であったのならば躱すことはできない。
 それが神速を誇る『メルクリウス』であるのならば尚の事である。

「遅ぇってんですよ!」
 放つ刺突の一撃が『セラフィム・オリジン』の肩部装甲を貫き、凄まじい衝撃波でもって、その機体を吹き飛ばすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サージェ・ライト
☆引き続き、『ファントムシリカ』に乗って

セラフィム・リッパーですか!

そしてこちらは…わーつい最近見たことあるー
やっぱりキャバリアはクロムの世界が似合いますね
ドライさんにフィーアさん

よーし、シリカ
セラフィム・プロトの援護します
具体的にはとつげぎにゃああああ?!

無敵斬艦刀の一撃がいかに鋭くても!
接近戦ならファントムシリカの得意とするところ!
フローライトダガーを構えて推力ダッシュ
斬艦刀の一撃に合わせてダガーを使って曲芸をするように回避
肉薄します!
「手数こそ正義!参ります!」
至近距離からの【疾風怒濤】を叩き込んで、セラフィム・プロトが攻撃する隙を作りましょう!
「アインさん、クロアチアさん、今です!」



 ついに『セラフィム・オリジン』の五体に損壊が生まれる。
 攻防一体の武装である光の翼は猟兵に寄って放たれた骸の海で損失し、無敵斬艦刀の刀身には亀裂が走っている。
 けれど、これまで『セラフィム・オリジン』は『ヌル・ラーズグリーズ』の機械のごとき操作技術によって五体満足で猟兵との戦いを繰り広げていたのだ。
 しかし、それも此処までである。
 放たれた鎌剣の一撃が『セラフィム・オリジン』の肩部装甲を貫き、無敵斬艦刀を両手で操ることを許さない。

 無敵斬艦刀は鋭さと頑強さ、そして重さに寄ってあらゆるものを断ち切る武装である。片手で扱うこともできるであろうが、重さゆえに速度は落ちる。
「ですが、何の問題もありません。未だ戦況は覆されど、覆せぬほどではないのですから」
『ヌル・ラーズグリーズ』は逃亡するだろう。
 それは予知からも知られていたことであった。しかし、彼女を捕縛すれば処刑が待っている。
 どれだけオブリビオンマシンの存在を説いたところで、一般人たちにはオブリビオンマシンを知覚できない。

 そうなれば『グリプ5』は周辺国から孤立し、そしてこれまで『ラーズグリーズ』の名を持つ子どもたちを繋ぎ止めていた楔が消えることになる。
「『セラフィム・リッパー』ですか!」
 サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は、『ファントムシリカ』を駆り、戦場に飛び込む。
 隣に疾駆するシールドを装備した機体、『セラフィム・プロト』の姿に目を丸くする。
「わーつい最近見たことあるー」
 とは言え、類似点はコクピットブロックだけである。
 オーバーフレームとアンダーフレームは『熾星』のものであり、その形は歪であった。急造であるがゆえに仕方のないことであったが。

 その姿を見て、サージェは思う。
『ドライ』と『フィーア』。姿は知らない。けれど、その魂の名を知っている。だからこそ、その魂が結実したかのような『セラフィム・プロト』の姿に、やはり此方の姿のほうがいいと笑むのだ。
「よーし、シリカ。『セラフィム・プロト』の援護します。具体的にはとつげきにゃああああ?!」
 安定の、ばりぃである。
 気合十分なサージェであったが、いつものやりとりは変わらない。

 ゆえにサージェは爪痕を肌に遺し、涙目になりながらも『ファントムシリカ』でもって『セラフィム・オリジン』の間合いへと飛び込むのだ。
「如何に鋭くても!」
「間合いに入ってくるとは……!」
 振るわれる無敵斬艦刀の一撃は確かに鋭い。けれど、これまで猟兵たちが紡いできた戦いの軌跡は、難攻不落と思われた機体にすら届くのだ。

「片腕で振るうのならば、その重さがデメリットになりえますね!」
 振るわれる斬艦刀の一撃をフローライトダガーでもって受け流し、曲芸をするように回避するのだ。
「動きが鈍った……! 畳み掛けるぞ、『クロア』!」
『アイン』が踏み込み、シールドを構えた『セラフィム・プロト』が無敵斬艦刀を横から打ち付け、その重量でもって『セラフィム・オリジン』の機体を傾がせる。

「手数こそ正義! 参ります!」
 サージェの瞳がユーベルコードに輝く。
 手にしたフローライトダガーは二刀。ならば、その威力は無敵斬艦刀に劣るとは言えども、手数で圧倒することが出来る。
 肩部を損壊した『セラフィム・オリジン』にとって、その手数こそが脅威そのものであったことだろう。

 しかし、その圧倒的な――疾風怒濤(クリティカルアサシン)の如き超連続攻撃ですら『セラフィム・オリジン』は無敵斬艦刀をたぐり剣戟の音を響かせる。
 フローライトダガーの緑の燐光が火花のように周囲に飛び散る。
 けれど、サージェは『ファントムシリカ』の機体のあちこちからフレームが悲鳴を上げても構わなかった。
 後でどれだけ怒られるのだとしても、それでも決死の覚悟で隙を生み出すのだ。
「『アイン』さん、『クロア』さん、今です!」
 無敵斬艦刀のガードをこじ開けたサージェの疾風怒濤の超連続攻撃。
 其処に飛び込むは『アイン』が挙動を制御し、一瞬の隙すら見逃さぬ『クロア』の直感的な攻撃センスによるシールドの一撃。

 武装を用意できなかった『セラフィム・プロト』唯一の防御にして最大の攻撃。
「行け――!」
 質量兵器と化したシールドバッシュの一撃が『セラフィム・オリジン』の機体を激しく揺さぶり、打ち付ける。
 それは一人では何も為し得ぬからこそ、誰かの力を頼り、そして助けることによって生み出された力。
 サージェはきしむ機体が悲鳴を上げるようにしてコクピットに響くアラートに、後で怒られる時間を計算するしかなかったのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
平和は数多の障害の先にあるもの……俺が幼い頃に見た
多くの歴史書も、そのように『語っていた』。
今は闘う以外に道はない。全て、承知の上だ……
■闘
如何に高い性能を持つ機体と言えども生身で戦うぞ。
鍛え上げた此の技で、俺の『道』を示さん。

序盤は【残像】を伴う動きで狙いを定め辛くなるよう立ち回る。
敵が刀を振るう動作を見せたら懐まで全力で【ダッシュ】し、
【怪力】全開で刀を持ったアームの部分を【グラップル】の
要領で受け止め、押し返す。

好機が来たら刀に手をかけ、【早業】の抜刀から【空薙】を
広範囲に放ち、其の巨体を斬艦刀ごと【切断】するのだ。
放つ際は可能な限り、コクピットを巻き込まないように。

■他
俺はマシンの無力化のみを考え、首謀者は当事国の者達に任せる。
不安はあるが……余所者がこれ以上関わるわけにはいかない。

※アドリブ歓迎・不採用可



『セラフィム・プロト』のシールドが砕ける。
 それほどまでの衝撃でもって『セラフィム・オリジン』に叩きつけられた一撃は重たかった。
 吹き飛ぶ機体。
 けれど、無敵斬艦刀を地面に突き立て体制を整えた『セラフィム・オリジン』の搭乗者『ヌル・ラーズグリーズ』は未だ何も諦めてはいなかった。
 光の翼は骸の海によって消失し、無敵斬艦刀の刀身に亀裂が走ったのだとしても。
 機体の肩部を損壊したに過ぎない状態である。
 これほどの猟兵たちからの攻撃を受けてなお、『セラフィム・オリジン』は機体の形を人型にとどめていたことこそを賞賛すべきであったのかもしれない。

「『平和』に至るための障害。わかっているのです。あなた達が私にとってのそれであることは。一足飛びには何も為せないことなど」
『ヌル・ラーズグリーズ』は未だ冷静であった。
 激情に駆られることなく、ただ己が成すべきことを成すという意志さえ感じられたことだろう。

「『平和』は数多の障害の先にあるもの……俺が幼い頃に見た多くの歴史者もそのように『語っていた』」
 愛久山・清綱(鬼獣の巫・f16956)にはわかっていた。
 理解していたのだ。
 どれだけの事情があろうとも。今は戦う以外に道はないのだと。
 全ては承知の上であると。

 だからこそ、清綱は生身でもって『セラフィム・オリジン』に対峙するのだ。
 如何に高い性能を持つ機体であれども関係ない。鍛え上げた己の技でもって己の『道』を示すことこそが、清綱にとっての超克であった。
「生身でキャバリアに立ち向かう超常の人。クロムキャバリアの歴史を紐解けば、その存在はあるのでしょう。理解しています。だからといって――」
 ためらう理由などないというように無敵斬艦刀の一撃が振るわれる。
 5m級の戦術兵器が振るう斬撃と人と同じ体長の清綱とではリーチも何もかもが違いすぎる。

 残像を伴う動きでもって狙いを定めづらくなるようにと立ち回る清綱であったが、その機械の如き操縦技術でもって放たれる攻撃は躱すことの難しい攻撃であった。
 小手先の回避など、たやすく見破られる。
「ならば――!」
 踏み込むしか無いのだ。
 逃げ回っていても敵うことはない。敵を打ち倒すことなどできないのだ。
 無敵斬艦刀の刃は鋭い。どんなものであっても両断するだろう。
 ならばこそ、踏み込み、『セラフィム・オリジン』が無敵斬艦刀を握るマニピュレーターへと飛び込むのだ。

 己の体などたやすくひしゃげるであろう重量差。
 けれど、大地を踏みしめ清綱はその一撃を拳で受け止める。
 己の体の中に流れる血液全てが沸騰するかのような、全てを出し切るような怪力でもって押し返し、清綱は猛禽の翼を広げる。
「これが俺の『道』だ。その刃が『平和』を望むがゆえに数多の血を欲するのならば――」
 清綱の瞳がユーベルコードに輝く。
 居合の構え。
 
 それは一瞬の静謐さすらものであったことだろう。
 天に舞う猛禽の翼。
 同じく翼持つ者の名を冠する機体を見下ろすは、何の因果であろうか。
「空薙(ソラナギ)……その刃があらゆるものを断ち切るのであれば」
 己の放つ斬撃は空間を断ち切る一太刀である。

 居合より放たれた目にも留まらぬ神速の斬撃は、『セラフィム・オリジン』を逃さぬ斬撃の檻となって空間そのものを切断し、その装甲を切り裂く。
「躱せない……! この斬撃は……!」
 空間そのものを切断する斬撃は、躱すことのできぬ一瞬の斬撃である。
 コクピットブロックを巻き込まぬようにと手心が互いの明暗をわける。

 ただ敵を打倒するのであれば、この一撃で終わりであったことだろう。
 だが、生命を奪うことを良しとしなかったのが清綱である。マシンの無力化だけを考えて居たがゆえに、その戦闘能力を奪わんと放たれた一太刀こそが、オブリビオンマシンに付け入る隙を与えたのだ。
「ですが!」
 袈裟懸けに放った斬撃を『セラフィム・オリジン』は己の損壊した肩部の腕部と脚部でもって挟み込む。

 真剣白刃取りの如き挙動。
「俺の不安が招いたか……だが!」
 ユーベルコードに輝く斬撃。
 それは例え受け止めたとしても、ただではすまない。
 空間を断ち切る一撃は、袈裟懸けに奮ったままに『セラフィム・オリジン』の腕部と脚部を切り裂き、機動力を奪うのだ。

 己が『道』に迷いはない。けれど、『ヌル・ラーズグリーズ』が、この事件の後どうのような処遇を受けるのか。
 ただそれだけが清綱の心に残った不安であったのかもしれない。
 よそ者である己が過剰に関わるべきではないと思ったからこそ、『セラフィム・オリジン』は腕部と脚部を喪うだけに収まったのだ。

 けれど、それでも多大なる損害を与えたことに変わりはない。
 清綱は己の渾身こそを確信し、刀を収めるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
捕えれば此度の責任か
逃せば更なる厄災の先兵か
フュンフ様、ヌル様を取り巻く状況はお分かりですね

それでも尚、彼女を救いたいと
共に在りたいと願いますか?

ならば命じなさい!
力を貸せ、と!

命令受諾と同時にⅣから降りOL
禁忌剣に眠る設計図の解放許可は救う為故に
御伽を愛し、帝国に開発を強制された創造主の憎悪の形
騎士が討つべき悪しき竜
敵と同サイズの未完の破壊兵器の姿に

EPDユニットの素粒子干渉で万象●蹂躙
●天候操作の濃霧と電子●ジャミングで衆目から戦場隠蔽
浮遊砲台●砲撃や剣の斬撃でビットを無害な美しき花弁に素粒子変換
プロトを援護

以前、私の糾弾をヌル様は皆様の“母”として受け止めました
ええ、騎士として全力を尽くすに値する方です
彼女はお任せを!

フュンフ様
皆を信じ、皆が信ずるエースの覚悟…今こそ!

同時攻撃で●盗み攻撃
コクピット強奪かばい
そしてオリジンの機体を塵一つ残さず素粒子分解

自爆試みた為、止む無く完全破壊
素粒子干渉による整形(●肉体改造変装医療)
ヌル様は公的に死亡と情報改竄

…御伽噺のようにはいきません、ね



 この事件の絵図を描いた黒幕にとって、半分こそが最大の戦果であった。
 黒幕がなにか事をなそうとする度に猟兵が介入してくることは、もはや必定であり、避けることのできない事態である。
 それは純然たる事実だ。
 これまで黒幕はそれを理解していたからこそ、全てが己の好都合に転がるように仕組んできた。
「捕まえれば此度の責任か。逃せばさらなる厄災の尖兵か」
 トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)は、そのどちらであっても黒幕の描く絵図、その結末が変わらぬことを知る。

 全てを手に入れようとするのではなく、結末に至る道程において半分を目標に設定することで、次なる道筋を模索する。
 それが黒幕の悪辣なところであった。
 こちらに二択を迫っているのだ。
 生命を捨てるか。それとも拾って更に拡大する戦乱の火種を蒔くか。

 それをこれまで黒幕がしてきたのだ。けれど、今回はそれを猟兵に選ばせ湯としている。
「『フュンフ』様、『ヌル』様を取り巻く状況は御分かりですね」
 トリテレイアは四肢を失った『熾盛』のコクピットブロックから這い出した『フュンフ』に己もまた『ロシナンテⅣ』より降りて告げる。
 どちらにころんだとしても、『ヌル』という存在は助からないかもしれない。
 けれど、それでもと願うのであれば。
 トリテレイアは騎士である。

 願う者が在ってこそ力を発揮する存在である。
「母さんは――」
『フュンフ』にもわかっているのだろう。猟兵達と激突する『セラフィム・オリジン』。それを動かしているのが、間違いなく自分の母であると。
 だからこそ、ためらう。
 本当にそれが正しいことなのか、彼にはわからないのだろう。
「彼女を救いたいと、共に在りたいと願いますか?」
 その問いかけはトリテレイアにとっては、『フュンフ』に刃を突きつけるものと同じであったことだろう。

 選ばなければならない。
 選択しなければならない。どちらもはない。どちらかしかない。
 現実は非常で、お伽噺のようにはいかない。
 めでたしめでたしが現実にはないからこそ、人はお伽噺を愛するのだから。

 けれど、それは否である。
 お伽噺が現実ではないと誰が決めた。
「僕は、母さんと――母さんと、みんなで生きたい……!」
 打ちのめされても、どんなに叩き伏せられたとしても、人は望む。その人が望む手があるのならば、それを掴むのが己である。
 トリテレイアのアイセンサーが煌めく。
 己もまたただの一人では存在し得ない騎士である。望む者がいて、それに手を差し伸べる騎士であるからこそ、その願いの成就のために力を振るうのだ。

「ならば命じなさい! 力を貸せ、と!」
 差し伸べた手を掴むのならば。それはユーベルコードの輝きと成って、己に手にした電脳禁忌剣が煌めく。
 銀河帝国量産型ウォーマシン・非常時越権機能行使(シークレットコマンド・ヒドゥンスキル)。
 御伽を愛し、帝国に開発を強制された創造主の憎悪の形。
 それが今開封される。
 騎士が撃つべき悪しき竜。

 騎士たる己がその姿へと変貌する。
 それは本来在ってはならぬものであったことだろう。けれど、関係ない。
 護るべき者があり、そして願われたのならば。
「以前、私の糾弾を『ヌル』様は皆様の“母”として受け止めました」
『憂国学徒兵』のクローンたる子供らに温情をと。
 それを為した『母』である彼女に問いただしたのだ。そして同時に、改善をも。その時彼女ははぐらかす事もできたであろうし、お為ごかしをすることだって出来たはずだ。
 国のため、平和のため、と。
 けれど、彼女は全ての糾弾を受け止めていた。

 ならば、そこに偽りなどない。
「ええ、騎士として全力を尽くすに値する方です」
「母さんを、頼みます!」
「おまかせを!」
 悪しき竜が咆哮する。
 しかし、その姿が悪しきものであったとしても、その炉心に燃えるものは邪心ではない。
 あるのは騎士道物語。
 それに端を発する騎士道精神は、悪しき竜を希望の象徴に変えるだろう。

「『フュンフ』様。皆を信じ、皆が信じる『エース』の覚悟……今こそ!」
 トリテレイアが示す。
 迫るクリスタルビットを尽く素粒子干渉でもって無効化し、美しき花弁に変えていく。
 それは天候操作のちからでもって濃霧と電子ジャミングでもって衆目の視線から隠すことだろう。
 けれど、それは僅かな時間でしか無い。
 骸の海によって消失したはずの光の翼が羽撃き、『セラフィム・オリジン』が咆哮する。

 片腕と脚部を喪ってなお、宙を舞う姿は、たしかに天使の名を冠するに値するのかもしれなかった。 
 けれど、ジェネレーターの唸りが、咆哮となって放たれる姿は、もはや天使ですらない。
 一撃を受けてひしゃげた頭部より覗くアイセンサーは悪魔のごとき様相と輝きを持ってトリテレイアへと迫るのだ。
「其処にいましたか、『フュンフ』。お前はやはり、存在してはいけない。『あの人』になれぬのならば、存在する意味など――」
 その言葉を遮るようにトリテレイアは飛ぶ。
 放つ一撃が『セラフィム・オリジン』の無敵斬艦刀を砕き、光の翼すらも消滅させていく。

「それより先の言葉は貴女の真意などではない! 狂気に染まるからこそ、捻じ曲げられたことば! それを紡がせるわけにはいかぬのです!」
 トリテレイアは例え、それが偽りであり歪んだ言葉であっても言わせてはならぬと思った。
 親が子に。
 そのようなことを告げることなど許してはならない。
『セラフィム・オリジン』がそれを言わせるのならば、それをさせぬと白き竜の如き威容でもって天使の如き存在を大地に叩きつける。

 嵐のように花弁が舞い散り、戦場に吹き荒れる。
 平和を祈る声が聞こえる。誰もが願っている。よりよい未来を。トリテレイアは、そのか細い希望を断ち切らせぬようにと、己の創造主の憎悪、その形を今、希望の形へと昇華させるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
…分かった、『ヌル・ラーズグリーズ』は私が殺す
逃がすでなく、捕らえるでなく
此処で殺す

さあ始めようか
あの子が変えた未来の為に
超克…オーバーロード
外装転送、出力最大
模造神器、全抜刀
アイン、クロアくん
まだ動ける?
動けるなら、私がセラフィムに近付けるよう援護よろ
無茶は承知、無理をするなら今しかない
プラズマビームは『オーラ防御』と模造神器での『武器受け』、それでも足りなければ外装の腕で防ぐ
近付きさえ出来れば良い

『斬撃波』で敵の動きを牽制しながら接近、機体に張り付いて【断章・焔ノ血〈焔ノ絆〉】起動
対象はヌル・ラーズグリーズ
貴女の命と私の命は今此処に1つになった
私が死なない限り、貴女は死ぬ事は無い
けれど、それを今知っているのは私だけ
蒼炎よ、コクピットを燃やし尽くせ

操縦系さえ壊してしまえば、どんな機体だって鉄屑
ダメ押しコクピットを剣で『串刺し』にしよう
貴女は此処で死ぬ、どう考えても死んだ状況になる


…後の事までは私は知らない
けど、生きているだけでも救われる事もあるよ
私はただ気に食わなかったからだけだから



「母さん――!」
『フュンフ・ラーズグリーズ』の悲痛なる叫びが響く。
 すでに己に戦う力はない。
『熾盛』は四肢を砕かれ、大地に伏す。力なき者の声など何処にも届きはしない。
 だから力が要るのだ。
 戦乱だけが渦巻く世界にあって、それだけが真理であった。
「諦めろ、『フュンフ』! あれはもう母さんじゃない! 『ヌル・ラーズグリーズ』だ!」
『アイン』が『セラフィム・プロト』を『クロア』と共に駆り『セラフィム・オリジン』を抑え込む。

 猟兵たちの攻撃に寄って漸くにして消耗した機体。
 逃亡させてはならない。かと言って、取り押さえた後のことは言うまでもない。
 両国の『平和祈念式典』を台無しにした『ヌル・ラーズグリーズ』を人々は感情では許さないだろう。
 後に待ち受けるのは処刑しかない。
 それを理解するからこそ『アイン』は叫ぶ。
 望んでいるわけではないことはわかっている。何もかもが選択しなければならないのならば、それが仕方のないことだと理性が理解する。

 それでも、と叫ぶのが子供なのかもしれない。大人になれと誰かが言う。理屈で考えろと。
 感情で叫んだところで、力なき者の言葉は誰も耳を貸すことはないだろうと。
 だが、その力なき者の言葉に耳を傾け、手を差し伸べる者がいる。
「……わかった、『ヌル・ラーズグリーズ』は私が殺す。逃がすでなく、捕らえるでなく」
 此処で殺す。

 月夜・玲(頂の探究者・f01605)が告げる。
 生身単身で戦場に立つ彼女の瞳が『セラフィム・オリジン』を見据える。
 誰も何も言えなかっただろう。
 彼女のみなぎる力は、手にした模造神器の青い光を讃え、何者からの反論を許さぬものであった。
「さあ、始めようか」
 玲の瞳が輝く。決意に満ち、そして本来在るべきであった未来への道筋を書き換えた少女の思いを引き継ぐ者として、彼女は超克へと至る。

「外装転送、出力最大。模造神器、全抜刀」
 告げる言葉は如何なる不条理すらも震え上がらせるほどの力を持っていた。
 これが力在る者。
 オブリビオンマシンが震える。
「機体が、震える……恐怖している……?」
『ヌル・ラーズグリーズ』はたじろいだことだろう。
 機体の状況は追い込まれていると言ってもいい。けれど、それでも彼女は此処から逃亡することは可能であるとさえ思っていたのだ。

 だが、目の前の存在は違う。
 必ずや己を殺すと力をみなぎらせている。その重圧に機体が、オブリビオンマシンが滅びの兆候を感じ取り、怯えたのだ。
「『アイン』、『クロア』くん、まだ動ける?」
「誰に物言ってやがる!」
「いけます……! けど!」
『クロア』の言葉も玲は理解していた。彼が言わんとしていることも。これから生命を奪うと宣言したのは、『フュンフ』たち『ラーズグリーズ』の名を持つ子供らの『母』である。

「無茶は承知。無理ををするなら今しかない」
 放たれたプラズマビームの光条を『セラフィム・プロト』のシールドが受け止める。幾度も受け止めてきたシールドが限界に達し、溶解して弾け飛ぶ。
「行けよ! やらなきゃならないんだから! あの人を、母さんを止めなければ、これまでの全部が台無しになるっていうんなら!」
『アイン』の操作に寄って玲の体を押し出すようにして『セラフィム・プロト』の腕部が砕けながら投げ放つ。

 凄まじい加速。
 一直線に奔る青い残光めがけて、プラズマビームが迸る。光の翼を集約して放つプラズマビームの一撃は狙い過たず玲へと打ち込まれた。
 けれど、その一撃を模造神器の刀身で受け止め、さらに外装腕とオーラの力を上乗せにして防ぐ。
「――これでも足りないっていうのなら!」
 強引に振り切った模造神器の刀身がプラズマビームを切り裂き、副腕が砕けて散る。
 出力の上がったプラズマビームの一撃を完全に殺すことができなかったのだ。

 けれど、それでいい。
 玲にとって必要であったのは近づくことであった。それだけでよかったのだ。
「偽書・焔神起動。断章・焔ノ杖閲覧。システム起動。深層領域閲覧。血は焔、焔は命。其は全てを包む真理の絆」
 玲の瞳がユーベルコードに輝く。
 彼女は選んだ。『ヌル・ラーズグリーズ』を殺すことを。誰の手でもない。『ラーズグリーズ』の子どもたちの手ですらない。他の誰でもない己の手でもって殺すと決めたのだ。

 ユーベルコードに寄って紡がれた蒼炎の鎖が『セラフィム・オリジン』のコクピットに座す『ヌル・ラーズグリーズ』と玲をつなぐ。
「鎖……!?」
「貴女の生命と私の生命は今此処に一つになった」
 それこそが、断章・焔ノ血〈焔ノ絆〉(フラグメント・ファイアブラッド・リザレクション)。
 蒼炎の鎖で繋がれた者以外の全てを燃やし尽くすユーベルコードの力。
 何故、『セラフィム・オリジン』が怯えたのかを、『ヌル・ラーズグリーズ』は知る。

 あらゆるものを燃やし尽くす蒼炎は、如何にオブリビオンマシンであっても防ぐことはできない。
「蒼炎よ、コクピットを燃やし尽くせ」
 超常の人が放つ蒼炎は『平和祈念式典』へと集まった人々全てに、その光景を見せつける。
 この惨劇を生み出した張本人。
 その首謀者が駆るキャバリアを討ち滅ぼす蒼炎。
 誰の目からも、それは明らかであった。

「貴女は此処で死ぬ」
 それは非常なる言葉であったかも知れない。誰がどう見ても、どう考えても死んだ状況になる。
 けれど、それは誤りである。
 蒼炎の鎖で繋がれた者は同時に死なぬ限り死なないのだ。
 それこそが、彼女のユーベルコード。破壊の力を持ちながら再生の力を持つ焔の力である。

 吹き荒れる蒼炎が『セラフィム・オリジン』の機体を破壊していく。
 燃え尽きようとするフレームが、玲を引き剥がさんと迫るも、模造神器の刀身が放つ青い斬撃が切り裂きコクピットへと突き立てられる。
 怨嗟の如き咆哮が蒼炎の向こう側に聞こえる。

「私が死なない限り、貴女は死ぬことはない。けれど、それを今知っているのは私だけ」
 玲の瞳は蒼炎に燃え尽きていく『セラフィム・オリジン』のコクピットから蒼炎でつながる『ヌル・ラーズグリーズ』を見据えていた。
「なぜ」
 自分を生かそうとするのかと問いかける瞳が在った。

「……後の事までは私は知らない」
 この後彼女がどう生きるのか。どう贖罪するのか。
 どちらにせよ、『ヌル・ラーズグリーズ』は此処で死ぬ。死んだのだ。己が殺したのだから。
 ならば、この後彼女が『ヌル・ラーズグリーズ』として生きるのか、それとも『母』として生きるのかは彼女が決めることだ。

「けど、生きているだけで救われることもあるよ」
 己はただ気に食わなかっただけだからと、吹きすさぶ蒼炎の嵐の中、玲はただ一人の女性となった『母』を『セラフィム・プロト』に、子供らに託すのだ。

 捕縛するでもなく、逃がすでもなく。
 第三の選択肢を選び取った猟兵たちは、黒幕が描く絵図の中で唯一思い通りにならなかった少女の想いを受け止めたのだ。
 黒幕が望んだ半分すらも得ることはなく。その尽くを霧消させたのだ。

 きっと、これが在り得た未来の中で、もっとも良い未来に続く道。それが今、拓けた瞬間であった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年11月30日


挿絵イラスト