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アポカリプス・ランページ⑪〜神に至る

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「無敵の偽神……なのですか」
 早臣・煉夜(夜に飛ぶ鳥・f26032)はなるほどなるほど、と、資料を確認しながら頷いた。
「偽物だけれども無敵……なのですね。という事は、無敵を無敵たらしめている何かがある……なるほど偽神細胞」
 そこまで。考えて。その後の死霊もざっと確認して煉夜は顔を上げる。そうしてにっこりと笑った。
「その名を、無敵の偽神「デミウルゴス」。というらしいのですよ。ちなみに彼は体内に偽神細胞を持たない存在からの攻撃を完全に無効化するのです。それで、「無敵」なのですね」
 因みにストームブレイドたちは体内に移植した「偽神細胞」により、オブリビオン・ストームを喰らい操る能力を得ている。なので、ストームブレイドたちは何も考えずに攻撃すれば問題ないのです、と、煉夜は添えてから、
「で、大変なのはストームブレイドではない方々です。ストームブレイドではない皆さんは、ソルトレークシティで手に入れた偽神細胞液を体内に注射し、一時的に「偽神化」しなければいけないのですねー」
 そうしなければ、デミウルゴスに傷を与える事すらできないのだという。ただし、と煉夜は人差し指を一本、立てた。
「ストームブレイドの方は、その細胞の拒絶反応のために寿命が限られているといわれています。……勿論、一時的にそれを注入する皆さんも、一時的とはいえ無事ではありません。つまり」
 人差し指を、そっと唇に煉夜は持っていく。
「拒絶反応をもたらし、時に絶命の危機さえあります。とのことです。具体的に言うと……、まず、頭痛がします。頭痛がしたなーと思ったら、視界の端から黒くなっていきます。この時点で、立っているのもつらくなってきます」
 注射を打ってから、数分でそうなってくると、煉夜は言う。
「視界は徐々に狭まって、最後には真っ暗になって、昏倒するのですよ。……ちなみにこれ、注射を打ってからものの数分でこうなってきますからね」
 つまり、だいたい戦場では十全の力は発揮しづらいという事らしい。
「大変ですけど……でも、やらなきゃいけないでしょう?」
 そうしなければ戦えないのだ。ならば躊躇う必要はないと、煉夜は笑った。
「だったら、やっちゃいましょう。僕は気を付けて、体を大事になんて言わないのですよ。以上を踏まえて……存分に、ぶん殴ってきましょう」
 そういって、煉夜は話を締めくくった。


ふじもりみきや
いつもお世話になり、ありがとうございます。
ふじもりみきやです。
状況はだいたい煉夜が言った通り。
こういう副作用にかかりたい!という方は事前に明記してください。
そうでない方は、戦闘後激しい頭の痛みに襲われ、視界が端から徐々に黒くなっていき、最終的には真っ暗になり、やがて昏倒します。
そこまで、戦闘開始から数分です。
激痛耐性系無効。UCでも無効化することはできません。
何もなければ頭痛が始まる段階で戦闘能力に支障が出てきます。
ご留意ください。
あんまり副作用なんか関係ない!な無敵なプレイングはお返しする可能性があります。
それを踏まえて、熱いプレイング、お待ちしております。
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プレイングボーナス……「偽神化」し、デミウルゴスを攻撃する。
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第1章 ボス戦 『デミウルゴス』

POW   :    デミウルゴス・セル
自身の【偽神細胞でできた、変化する肉体】が捕食した対象のユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、[偽神細胞でできた、変化する肉体]から何度でも発動できる。
SPD   :    偽神断罪剣
装備中のアイテム「【偽神断罪剣(偽神細胞製の大剣)】」の効果・威力・射程を3倍に増幅する。
WIZ   :    デミウルゴス・ヴァイオレーション
自身が装備する【偽神断罪剣(偽神細胞製の大剣)】から【強毒化した偽神細胞】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【死に至る拒絶反応】の状態異常を与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ジフテリア・クレステッド
この条件だ…Dによる寿命代替も殆ど意味はないはず…でもこの高速戦闘形態が強敵との短期決戦に一番向いてる!

持ち前の【ダッシュ】力を【念動力】で強化!更にはUCで高速移動能力獲得!その疾風迅雷の速度を活かして【先制攻撃】!
【毒使い】は先制攻撃で【マヒ攻撃】や【目潰し】の効果がある毒を当てるのが重要だからね。こっちだけじゃなくそっちにもデバフをプレゼントフォーユー!
更に私のこの形態での毒は敵の被害を完全に操作する!
その身体中の偽神細胞!暴走させてあげるよ!あなたの細胞がどれだけヤバいものなのかはこれまでの戦いと今この時に痛感してるからね!
無敵の細胞に【蹂躙】されてしまえ!

【根性】比べだよ!大先輩!


月夜・玲
さて…どうしたもんかな
頭痛がして昏倒
戦い方を考えないとね
許された時間は数分
ならこの手でいこうか
意地と意地との戦いを始めようか!

ある程度距離を取り《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
そして偽神細胞液を体内に注射
と同時に【Code:P.D】起動!
雷龍12体、最大サイズで召喚!
全12体にデミウルゴスの攻撃を指示
『ブレス攻撃』、雷の牙による『串刺し』攻撃を連携を取らせつつ行わせる
私は剣の片方を杖代わりに、もう片側の剣は『オーラ防御』で強化しつつ偽神断罪剣の攻撃を『武器受け』するように構える
意識を少しでも長く保つために、意識が落ちそうになったら自分に剣を突き立てて龍の稼働時間を稼ぐ!



「さて……どうしたもんかな」
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)は言ってみた。言いながらもやるべきことは一つとわかっていた。わかっていながらも、思案するように言う玲に、ジフテリア・クレステッド(ビリオン・マウスユニット・f24668)は(ガスマスクで口元は見えないが)僅かに目元を笑みの形に緩めた。
「この条件だ……Dによる寿命代替も殆ど意味はないはず……でもこの高速戦闘形態が強敵との短期決戦に一番向いてる!」
 先に行く、とばかりに走り出すジフテリア。まさに速攻ともいえる様子はテンション高めである。常に毒素を体にためるジフテリアは、それでもストームブレイドであるがゆえに偽神細胞を注射することによる副作用は存在しないが、相手が長期戦を許すほど簡単な敵でないこともまた理解していた。
「先に行く!」
「単刀直入に言うけど……囮にしてもいいかな!?」
「勿論だ!」
 そんな走るジフテリアに、すかさず玲が問いかけた。素早く了承の返事があり、その背中を玲は見送る。言葉を選んでいる余裕はないので正直に言った。ジフテリアも正直に返した。玲もまた頷いて、
「頭痛がして昏倒……か。戦い方を考えないとね。許された時間は数分……」
 考える時間は一瞬だ。普段なら危険な戦いだが、幸いにも今はジフテリアが飛び出していってくれている。
「ならこの手でいこうか……。私たちと君、意地と意地との戦いを始めようか!」

「華麗なる怪盗の流儀……なんてものはないっ!! 金だ金だーっ!! 金がないならその命置いてけ!!」
 叫ぶ。叫びながら全力でジフテリアは駆ける。体を強化し急速に接近する。
 偽神は、虚ろな目をしてその剣を握りしめていた。……あれは正気ではない。すでに会話の通じる状態でないことは、一目見て二人にもしれた。……が、ジフテリアにはとりあえず、そんなことは関係ない。
「そう……れ!!」
 ジフテリアは自分の毒を込めた銃弾を至近距離で打ち込む。偽神がこちらを振り向いた。
「小癪、な……!」
「小癪で結構! 当てるのが重要だからね。こっちだけじゃなくそっちにもデバフをプレゼントフォーユー!」
 銃弾がぶち当たる。ダメージとしては些末なものだ。しかしながらその弾丸に込められた毒は確実に偽神を捉えた。……もっとも、
「前に……立つな! 手を伸ばすな!」
「うぉっと!?」
 自負てる上が弾丸を撃ち込むと同時に大剣を持つ腕が振るわれる。一撃で彼女の体を粉砕するほどの威力を持つ剣に、すかさずジフテリアも後退する。
「……!!」
 かすっただけで、その圧で胴が避けた。腹にぐっとした痛みがある。これは、やられた。そう思いながらもジフテリアは弾丸を何度も、何度も敵の体に撃ち込んだ。
「怯まない! その身体中の偽神細胞! 暴走させてあげるよ! あなたの細胞がどれだけヤバいものなのかはこれまでの戦いと今この時に痛感してるからね! 無敵の細胞に蹂躙されてしまえ!」
「お……おぉォぉォぉ!!」
 体の動きを鈍らせ、徐々に弱らせていく毒に偽神もまた忌々しげな声を上げた。
「……っ!!」
 剣が容赦なく振るわれる。技量は必要ない。狂っていてもその腕が振るわれるだけで近くにいた人間は引き裂かれる。ジフテリアが思わず痛みを覚悟する。その瞬間、
「カートリッジロード、プログラム展開。雷龍召喚! ……少し時間は頂いたけど、間に合ったみたいだね!」
 玲が剣を振るった。剣を振るうと同時にオーラの盾がジフテリアの前に展開される。
 偽神が腕を振る。振るだけですさまじい風圧となる。盾が破壊されるが、その一瞬の隙をついてジフテリアは後退していた。
「……っ、これを砕くのね! でも……頼んだよ!」
 しかし玲も負けてはいない。即座に玲の後ろに控えていた龍が動き出す。巨大な龍が十二体。一斉にその雷の牙でもって偽神に殺到した。
「……ぐッ!!」
 悲鳴は、偽神ではなく玲のもの。思わず剣を杖代わりにして己の体を支える。……彼女は偽神細胞液を打っていた。頭痛の進行が、思ったより早い。
「まだまだ……これからだ!」
「本体は……そちらか」
 龍の牙が偽神の腕に食らいつく。その身をブレスにさらされながらも、偽神は時、と、背後にいる玲を捉えた。腕に龍を食らいつかせたまま、神の手が動く。
「ちょっと……私を忘れられたら困るね!」
 しかしその前を、ジフテリアが立ちふさがった。銃弾を顔面にぶつける。
「ぐ……オォォォォ……!!!」
 ジフテリアの声がする。剣を杖に己を支えながら、玲は必死で前を向いた。
「私も……私だって、倒れては、いられないよ……!」
 偽神の剣で龍が切り裂かれている。粉砕され、数を減らしながらも、それでも龍たちは攻撃を続けている。……そしてそれは、ジフテリアも同じ。
「大丈夫。前を……」
 前を向け。できる限りオーラの盾で仲間を護れ。意識があるだけで龍が勝手に戦ってくれるから!
「お仕事だもの……簡単にくじけちゃいられないよね!!」
 杖代わりについていた剣で、己の足を突き刺す。頭とはまた違う痛みに息を呑む。
 ……二人ともそう長くはもたないだろう。もう数分後には昏倒していてもおかしくはない。それでも、
「意識を少しでも長く保つ……龍の稼働時間を稼ぐ!」
「そう……根性比べだよ! 大先輩!」
 其の数分に意味がある。玲の叫びにジフテリアの声が重なる。偽神もまた倒れない敵に苛立たしげに、咆哮を上げるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シキ・ジルモント
偽神細胞を使用し、偽神化して交戦する
拒絶反応については頭に入れておくが、命の危険はいつもの事だ

相手が射程を強化した剣を扱うなら、いっそ懐へ飛び込んでしまった方がいいだろう
零距離射撃の距離まで接近してユーベルコードを叩き込む
そのままの距離を維持して攻撃を続ける
離脱を考えている暇は無い、限界を迎えるまでに一撃でも多く攻撃を叩き込まなければならない

頭の痛みを自覚したら、タイムアップを意識する
戦闘能力への影響があるなら仕方がない
本格的に体が限界を迎える前に、痛みを堪えて可能な限りユーベルコードを発動し、撤退を開始
激痛で動けず倒れても銃だけは手放さないようにグリップを握りしめて、暗くなる意識に身を任せる


冴島・類
絡繰があるなら対処しようがある
拒絶反応、造られた存在
天災の如く強い其れが、望まぬ末に得た姿と言うのは…

やりましょうとも、仮初でも
同じ土台に立たねば

注射後、副作用がすぐ来始めるようだから
長引くほど不利だ
デミウルゴスに仕掛ける

瓜江と共に、駆け
早い段階は剣の狙いを見切り
残像で相手の狙いをずらし
破魔の薙ぎ払いを中距離で放ち、気を引く

視界の狭まりが来たら
割れるような頭痛に混じって
誰かの声が、聞き取れぬ程重なり耳鳴りする

望まぬもの、行き場のない声
幻聴だとしても、いたい

ぐらつき、此方に隙が生まれたら
そこを狙い攻撃を放つはず
視界の端僅かでも、見えれば
受け、糸車で返す

この嵐止める為なら
意識が途切れる前に、過った



「む……」
「ああ」
 偽神細胞液に手を伸ばした時。
 シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)と冴島・類(公孫樹・f13398)は思わず同時にそんな声を上げた。
「……」
「……」
 顔を見合わせること、数秒。
「拒絶反応については頭に入れておくが、命の危険はいつもの事だ」
「ええ。やりましょうとも、仮初でも。同じ土台に立たねば」
 お互い確認するようにそういって偽神細胞液を手に取る。躊躇いはなかった。そして隣の相手に躊躇いがないことも、最初から分かっていた。

 戦端は既に開かれていた。猟兵たちの攻撃を受けて血まみれになった偽神は、それでもなおその力を暴風のように振るっている。そしてあちこちに力尽きて倒れた猟兵たちもいる。それだけで、この戦場が一筋縄ではいかないことが見て取れた。
「拒絶反応、造られた存在……。天災の如く強い其れが、望まぬ末に得た姿と言うのは……」
「こういう時、普通の人間は、哀れと思うのだろうか?」
「あ、いえ。普通の人間は、多分怖いと思うと思う……多分」
 類の言葉に、思わずシキがそう返したので、類は一呼吸考えて、そう答えた。さて、自分がどう思うかはともかくとして、一般人はそう思うに違いない。
「俺としてはこう思う。絡繰があるなら対処しようがある。それは確かに、彼が偽物の神である証だと」
「……なるほど」
 おしゃべりはそこまでであった。こうしている間にも薬の副作用はすぐそこに迫ってきている。二人はその会話を最後に、駆けた。示し合わせたように、シキは左へ。類は右へ。戦場の中央で、血を流しながら声を上げる偽神へと一瞬で、迫る。
「寄るな……寄るな!! 祈るな。声を上げるな……!」
 静かな戦場に、暴風のごとく大剣が旋回する。風圧ですらその骨を砕くような動きに、シキは身を低くする。
(相手が射程を強化するなら……いっそ飛び込む!)
「長引くほど不利だ。瓜江……仕掛ける!」
 類もまた、その攻撃を紙一重でよけて一瞬で十指に繋いだ赤糸で操る濡羽色の髪持つ絡繰人形を展開させる。
「こっちだ!」
「……っ」
 その鼻先をかすめるように絡繰り人形の黒い羽根が偽神の顔面に迫った。ハエでも払うように剣が振るわれる。
(ここで……ずらす!)
 しかし類もまた、残像を利用して瓜江を後退させた。
 みし、と嫌な音がする。軌道をずらし距離を開けたのに、風圧ですら瓜江を粉砕する力がその剣にはあった。
「……シキさん!」
「ああ、助かる!」
 瓜江のどこかにひびが入ったか。構わず類は声を上げた。軋むような音を立てた絡繰りを構わず、類は破魔の刃を振るった。薙ぎ払うような攻撃は相手の気を引くような距離から。それを苛立たし気に偽神の剣が追撃する。
「そこ……だ。全弾くれてやる!」
 その一瞬。気が瓜江へと向かった瞬間に、シキは一瞬で偽神との距離を直前まで積めた。目の前の敵に愛用のハンドガンを握りしめ。全力でその弾を撃ち込み続ける。
「ぐ……っ!?」
 偽神がこちらを向く。その腕が振るわれる。
(離脱を考えている暇は無い……。限界を迎えるまでに一撃でも多く攻撃を叩き込まなければならない!!)
 なんとか、シキはそれを避けようとする。しかし距離を離したくはない。自然、完全に避けられるはずもなく。その剣がシキの腹を直で抉る。
「が……っ!!」
 中身がこぼれる。そんな幻想にとらわれる。腹に凄まじい痛みを感じる。……構わない。この腕が、動くのならば!
「シキさん!」
 急ぎ類が瓜江を走らせる。その顔面、気を引くように破魔の刀を鳴らす。弾丸と剣、その攻撃を受け、偽神の体もまた傷がつく。腹にはいくつもの銃弾がのめりこみ。何度も傷つけられた首は血を流す。……が、
「――!」
 偽神が、声にならない声を上げた。瓜江とシキ。まとめてその巨大な剣が粉砕しようと振るわれる。
「ぐ……っ」
「いけない……!」
 瓜江がミシミシと音を上げている。それをひったくるようにつかんで、庇うように抱えるとシキはたまらず後方へ類の側へと跳んだ。
「……」
「……」
 痛み。痛みがある。それと同時に、傷のついていないはずの頭が痛い。
「あ……ありがとう、ございます。傷は……」
「大丈夫だ」
 大丈夫だとシキは言ったが、さすがにその傷が軽傷ではないことはわかっている。類は息を呑む。瓜江もまた、軽傷ではなかった。
(このまま動かせば、壊れてしまうかもしれない……)
 この身ならいつ壊れても覚悟はできているが、大事な相棒を粉砕されるのは少し怖い。……そう、思ったのは一瞬で、
「……突入する。辛いようなら、下がっているんだ」
 まだ少しなら持つと、シキが次弾を装填しながら言うので、類は一つ、息を呑むように。
「……大丈夫」
 と言った。
 なるほど別に大丈夫ではない。
 すでに視界は狭まっていて、割れるような頭痛が始まっている。
 シキの声も、実のところ耳鳴りではっきりとは聞き取れていなかった。
 それでも、何を言っているかぐらいはわかっていたからそう答えた。
「……」
 顔を上げる。
 偽神は、距離を取った二人をじっと見ていた。
 その顔が、ほとんど見えないのに。類にはどこか、近寄るなと叫んでいるように、見えた。
(望まぬもの、行き場のない声。……幻聴だとしても、いたい……)
 近寄るなと叫びながら、終わらせてほしいと叫んでいるようにも、見えた。もう耳も目も十全には機能していないのに。
「隙を、作る」
「ああ。わかった」
 端的に行った類に、シキは頷いた。そして、
 類は歩き出した。瓜江とともに、偽神へと向かって。
 ふらつきながらも自分に向かってくる類を、偽神が見逃すはずがない。剣がまた掲げられる。
「廻り、お還り」
 振り下ろされた瞬間、類のユーベルコードが発動した。それは攻撃を無効化し、同じものを瓜江から排出するもので……、
「この嵐止める為なら……瓜江。ともに壊れても構わないだろう……?」

 轟音がした。
 偽物の神が振り下ろした巨大な剣が、跳ね返されて偽神自身の躰を傷つけた。
 巨大な力が強靭な体を傷つける。その勢いと衝撃に凄まじい土煙と余波で暴風が吹き荒れる。
「これで……終わりだ」
 その一瞬のスキをついて、シキは偽神へと再び接近していた。
「!」
 今の攻撃の隙で偽神は動けない。終わりなのはこちらだが、なんて式は言いながらもそんなことを思って苦笑いをして……、
「だから全弾、受け取るといい!」
 弾丸をありったけ、偽神の体を叩きつけた。
「……ぉ、オォォォォぉォぉォぉォ!!」
「させるか……!」
 声を振り絞る。力を振り絞ってシキはは走り始める。ここまで来たら、するのは攻撃ではない。撤退だ。
「……!」
 彼は傭兵だ。仕事である以上、死の覚悟はしてもむやみに死ぬことはしない。そして、
「類……!」
 友をむざむざ死なせはしない。類と、ほとんど全壊の状態になった瓜江を抱えて走る。この意識尽きるまで、動き続ける。激痛で動けず倒れても銃だけは手放さないようにグリップを握りしめて、暗くなる意識抗いながらも必死でシキは歩を進めた。
 離れていく偽神の方向は、どこか、悲しみを帯びてシキの背中を追いかけた……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルドラ・ヴォルテクス
⚫︎アドリブ連携OKです

苦痛か、俺はこの痛みをそう思った事はない。
かつては生きる実感だった、だが、今は使命を呼び起こすものだ。

【ジャガンナートの力】
ジャガンナート発動、限界突破、蹂躙する!

偽神細胞か!ジャガンナートの本質は妨げるものの破壊。
それに、俺は何度もこの感覚を味わってきた!命が削れ、焦がれる感覚!
噛み砕いてやるよ、この毒もろとも。(UCのダメージの軽減使用)

断罪剣!それがおまえの力の発火点か!
良いだろう、まずはそれからだ!(嵐の機構剣で一時使用不可に)
デミウルゴス、久しぶりに思い出したぞ、嵐の剣は破壊の力だ、おまえのような不条理に彩られた世界を壊し、輝ける明日を見るための!



 嵐のような音が聞こえる。それは耳鳴りのようなものだろうと、ルドラ・ヴォルテクス(終末を破壊する剣“嵐闘雷武“・f25181)は思った。
「苦痛か、俺はこの痛みをそう思った事はない。かつては生きる実感だった、だが、今は使命を呼び起こすものだ」
 その嵐は目の前の敵から発せられている。
 巨大な剣を持つ敵だ。すでに何度目かの猟兵の攻撃を受けてなおその力は衰えていない。
 血に染まった剣を掲げる。合わせるように、ルドラも声を上げた。
「ジャガンナート発動、限界突破、蹂躙する! ……止めて見せろ!」
 そうして彼は「止め処なきジャガンナート」へと変身し、偽神の元へと突入した。

 刃が降られる。それを紙一重でルドラは避ける。
「偽神細胞か! ジャガンナートの本質は妨げるものの破壊。それに、俺は何度もこの感覚を味わってきた! 命が削れ、焦がれる感覚!」
 よけながらも、ルドラもまた刃を振るう。
「噛み砕いてやるよ、この毒もろとも!」
 敵の攻撃を軽減しながら、偽神に向かって刃を振るうルドラ。偽神もまた、対応するように刃を振るう。
「近づくな……意志あるものが、俺に……」
 呟く声は、どこか正気を失っているように見える。言葉にはなっているが、ルドラに向かって語り掛けているとは思えないその様子。剣を掲げる偽神に、
「断罪剣! それがおまえの力の発火点か! 良いだろう、まずはそれからだ!」
 ならばそこに打撃を与える、とばかりにルドラは刃を敵の剣に合わせて振るうのであった。
「デミウルゴス、久しぶりに思い出したぞ、嵐の剣は破壊の力だ、おまえのような不条理に彩られた世界を壊し、輝ける明日を見るための!」
 攻撃を軽減し、軽減しながらルドラは攻撃を続ける。どこか命を燃やすようなその声には、力強い意思が満ち満ちている。
「……」
 すなわち、嵐の剣とは奪われた未来を奪還する剣、滅びを破壊する力。その攻撃の前に、狂った神も一つ頷いて、
「――!」
 咆哮を上げる。そして偽神もまたその力でこたえるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクトル・サリヴァン
…これ後遺症とか大丈夫なヤツ?
あんまり流儀じゃないけど必要ならやるしかないかー。
意識乗っ取られとかはゴメンだけどもね。

接敵直前に足に注射し偽神化。
あーこの感覚は…マッコウに引っ張られて深海の旅ご招待喰らった時のような。
まだ手の感覚しっかりしてる内にと高速詠唱で水の魔法を使い俺自身を鉄砲水でデミウルゴスの所に吹っ飛ばし奇襲。
銛で牽制し尾でぶっ叩き体勢崩し、そこに多重詠唱で氷で敵の足元を凍結。
…水圧と酸欠のヤバい版、ブラックアウト寸前が延々続くような…あ、視界もヤバい。
その前に、と銛を全力でぶん投げUC起動、水シャチごー。
起きた時には倒れてくれてるといいんだけど(ばたーん)

※アドリブ絡み等お任せ



 ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)は何とも渋い表情を、していた。シャチとして表情はわかりにくいところがあるが、割と今回は誰から見ても明らかであった。
「……これ後遺症とか大丈夫なヤツ?」
 これとは、偽神細胞のことである。
「あんまり流儀じゃないけど必要ならやるしかないかー。意識乗っ取られとかはゴメンだけどもね」
 まあそんなことを言っていても始まらないのは確かである。しばし疑心細胞を見つめていたヴィクトルであったが、そのうちえいや、と足に注射をさしてみた。
 そうして敵に向き直る。すでに戦いは始まっていた。目の前には敵がいて、時間はそうないのだから、戦闘直前ぎりぎりで注射を打ちたかったという気持ちがあったのは確かであった。
「あーこの感覚は……マッコウに引っ張られて深海の旅ご招待喰らった時のような」
 何となく起きる頭痛が、この後酷いことになるぞ、という予感はきちんとある。まだそれぐらいの痛みで、手の感覚がしっかりあるうちにと、ヴィクトルは素早く水の魔法を唱えた。対象は……自分自身だ。
「よっし……!」
 声とともに飛ぶ。鉄砲水がヴィクトルの体を打ち、一瞬で偽神のところへ走った。偽神は既にほかの猟兵と戦闘に入り傷だらけであったが……、
「先手必勝! さあ、追いかけて、齧り付いて――喰い千切れ」
 手にしていた銛を飛ばされる勢いのままぶっさす。そのままぐりんと尾で足を払った。
「……また……来たのか。脆弱な人間が……!」
「脆弱かどうかは、やってみなきゃわかんないよっ」
 あと人間かどうかも若干怪しいがそれはそれ。敵の足元を凍結させ、そのままシャチを召喚して偽神に食らいつかせる。
「うわ……」
 数多の攻撃を受けてなお健在だった疑心は、水のシャチに食らいつかれながらも構わず剣を持つ腕を振るう。
「……水圧と酸欠のヤバい版、ブラックアウト寸前が延々続くような……あ、視界もヤバい」
 ついでに自分もそう長くない。長くはないと思いながらも、
「起きた時には倒れてくれてるといいんだけど」
 なんとかできる間は、と。ヴィクトルは魔法を放ち続けるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ディアナ・ロドクルーン
【天狗狼】
自身が偽物だと分っているがゆえにの願いか
死にたがりの神、なら遠慮なく容赦なく刃で貫きましょう

はぁ――…

重い吐息
徐々に浸透してくる頭の痛みに柳眉を寄せて
満月の時の苦しみより酷いなんて、あるものなのね
だけど己の身がどうなろうとも知った事じゃない
為すべき事を為すだけよ


さあ、行くわよミコト
UCの刻印の力を彼にも付与
一撃でも多く、偽神細胞を破壊せしめよ

昏倒するまで、どちらが先に倒れるかしら

切って斬られて、手足が動くまで、血に塗れ、目の前が真っ暗になるまで
デミウルゴスに刃を振り下ろそう

嗚呼…私はまだ――

(意識があるのか、ないのか…もう考える事すらできずに崩れ落ちる)


ミコト・イザナギ
【天狗狼】
神に近しい程、祀られてしまうものです
元来、神とは願望機そのもの
望んでそうなったのでなければ
その誕生は祝(呪)われて当然

後遺症等知った事ではありません
限界まで偽神細胞を注入しましょう

同じ偽物であるから抱く感情は複雑ですが
神がお望みならば叶えるが天狗の使命
行こう、ディアナ!

(仮面を投げ捨て、地面を転げて悶えながら)
【三昧耶形】で健康体になってるのに
意識が罅割れるようだ

だけどやるしかない…!
誰も神の幸せを祈らない
ならばせめて神の狗たるオレだけでも…!

腕があがらない
腸が爆ぜて踏ん張りも効かない

でも、限界突破でやるんだよ…!

ディアナ、ディアナは…どこに?
なんであれ、オレだけでも、前のめり、に…



「自身が偽物だと分っているがゆえにの願い、か……」
 ディアナ・ロドクルーン(天満月の訃言師・f01023)はそんなことを呟いていた。その何とも言えない表情に、ミコト・イザナギ(語り音の天狗・f23042)はあっさりと、肩をすくめる。
「神に近しい程、祀られてしまうものです。元来、神とは願望機そのもの。……望んでそうなったのでなければ、その誕生は祝(呪)われて当然でしょう」
 よくあることだ。なんて冗談か本気か判じかねるミコトの言葉に、そう。とディアナも小さく頷く。
「死にたがりの神、なら遠慮なく容赦なく刃で貫きましょう」
「うん。まあ……同じ偽物であるから抱く感情は複雑ですが、神がお望みならば叶えるが天狗の使命。そういうわけで難しい悩みは一つ置いておいて、行こう、ディアナ!」
 後遺症? 知ったことではありません。とでもいうかのように、さくっと限界まで偽神細胞を注入するミコトに、
「はぁ――……。ええ。そうね……」
 すでにディアナは行動に移していた。わかっていたことだが、僅かに眉根を寄せるディアナ。
「この感覚……急いだほうがいいのね」
 重い吐息をついて、形のいい眉を寄せて、ディアナは思わずつぶやいた。
「満月の時の苦しみより酷いなんて、あるものなのね……」
「……うんまあ、人生何でも体験してみるもんだよねえ」
 徐々に重くなってくる頭。これがすぐに頭痛に代わるだろう。眼球が痛む。視界はどこまで持つのかわからない。……が、
「だけど己の身がどうなろうとも知った事じゃない。為すべき事を為すだけよ。……さあ、行くわよミコト。あなたもいい?」
「勿論。お供しますよ、どこまでも」
 言葉だけはせめて軽く。そうして二人は、その戦場に足を踏み入れた。

 戦いはすでに始まっていた。荒野に立つ血まみれの男。腹が避け、首が避け。そして頭部に損傷が見られる。それでも男は立っている。
「まだか……まだ死なぬのか……!」
 叫んでいるのは、敵にではない。己にだろう。これほどまでに傷を負っても、偽神の力は健在であった。血まみれで出鱈目に刃を振るえば、その風圧でこちらもすでに傷を負いそうになる。
「一閃一閃また一閃。無慈悲な歌が耳を裂く 高鳴る鼓動に身を任せ 足音高く舞い踊れ。……一撃でも多く、偽神細胞を破壊せしめよ」
 すかさずディアナは自分とミコトに刻印を刻んだ。それ以上の言葉は必要なかった。……意識が途切れるまで、ダメージを与え、そして次につなぐ。それが二人の役割だ。
「我欲を押し通す誓願を果さんが為、今この時、我が身を刃と為さしめん」
 ミコトもまた、妖刀に吸わせた生命力を開放する。健康体の姿になっても、頭痛は全く消えてくれなくてその事実に内心軽く驚きながらも走り出した。
「昏倒するまで、どちらが先に倒れるかしら」
 歌うように、ディアナが言った。その言葉が焼けに、印象的であった。
「――!!」
 偽神もまた、二人を視界にとらえて……そして戦闘が始まった。

 巨大な剣が振り回される。風圧ですら人を粉砕する勢いに、
「……っ!!」
 紙一重。よけようと思った瞬間、ディアナの足が砕かれた。
「嗚呼…私はまだ――!!」
 まだ、負けてはいられない。血まみれのドレスで何とか身をよじらせ、敵の血で染まった白かったはずの刀身で刃を振るう。
「この腕が……動く、限り……!」
「くそ……っ!」
 ミコトもまた、いつもつけている天狗面を投げ捨てる。地面に転がりながらも妖刀を振るい続ける。
 オォォォォ、と吠えるような声で再び県が振り下ろされた。ミコトの脳天を砕こうとしたそれを紙一重でよけて、その衝撃で片が砕ける。
「ディアナ、ディアナ……! ディアナは……どこに?」
 視界がかすむ。声が届いているのか、そもそも声が出せているのかもミコトにはわからない。
「ディアナ……。だけどやるしかない……! 誰も神の幸せを祈らない。ならばせめて神の狗たるオレだけでも……!」
 限界などとうに超えている。刀が届かないならば刃を投げる。何でもいい。腕があがらない。腸が爆ぜて踏ん張りも効かない。それでも攻撃する手は止めない。
「なんであれ、オレだけでも、前のめり、に……」
 そんな悲痛な声を、ディアナは聞いていただろうか。薄れていく意識の中、彼女もまた必死で刃を握り腕を振るう。
「脆弱。あまりに弱い。……それでは」
 すべての音が遠くなる中、救えない。と。神はふと、声を漏らすのをミコトは聞いた。
 その言葉は、ミコトたちが自分を救えないといっているようにも、
 もしくは、自分がミコトたちを救えないといっているようにも、聞こえた。
「それでも……!」
 それでも。ミコトは叫んだ。それでも戦うと。
 意識が絶え、倒れ伏せるまで。
 彼らもまた、休むことなく戦いを続けるのであった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マオ・ブロークン
あたしの、身体のような、モノにも。
偽神細胞の、侵食は、お構いなし。なんだね。
……確かに。マシンが、侵食された、姿も、沢山、見てきた。
いいよ。それでしか、倒せない、の、でしょう。
与えられた、条件で、立ち向かう。

……感覚の、鈍った、身体にも。突き刺さる、痛み。
ただでさえ、ふらつく、身体が……まともに、動かせない。
ああ。敵の、攻撃が、襲ってくる。
より強い、細胞の、侵食を、重ねられ。
身体が、ぐずぐずと、音を立てて、崩れそう、……

……大丈夫。あたしは、死なない。もう死んでる、もの。
死を越えた、苦しみを、身体に、抱えて。
骨の魚が、ぞろりと、湧き出てくる。復讐の、ために。
悲しみを、喰らい尽くす、ために。



 痛い。……痛い痛い痛い痛い痛い。
 全身が焼けるように痛い。脳がバターみたいに解けるようで痛い。体の末端が焼失したように痛い。
「ァ……」
 マオ・ブロークン(涙の海に沈む・f24917)は、天を仰ぐ。偽神細胞を投入した体は、あるはずのない痛みに全身が呻いていた。
「あたしの、身体のような、モノにも。偽神細胞の、侵食は、お構いなし。なんだね……」
 かろうじて吐き出す呼吸。あるはずもない何かが痛み、それが何かすら理解できない。そんな状況のまま、マオは歩きだした。
「……確かに。マシンが、侵食された、姿も、沢山、見てきた。……いいよ。それでしか、倒せない、の、でしょう」
 吐き気がする。これが徐々にひどくなるというのだから笑えない。というか笑い事ではない。……でも、
「うん……与えられた、条件で、立ち向かう」
 結局はそういうコト。……いつだってそう。いつだって、マオに選択肢はそんなになかったから。
 今回は、こういう事ってだけ。だから痛くても、マオは歩いていくことができるのだ。

 目の前に神がいる。
 神って何、ってマオは心の中で叫ぶ。
 感覚の鈍ったマオの体に、こんなに痛みが戻るなんてもう嬉しいのか悲しいのかわからない。
 ただ、とめどなくその眼から涙があふれた。
 偽神が、こちらを捉える。
 まだ距離がある。敵もまた何かに耐えるように立ち尽くしていた。
「……」
「……」
 ああ。
 最初に動いたのは、偽神の方であった。
 剣が振るわれる。その剣は毒を持つ偽神細胞を孕んでいる。
「……っ」
 抵抗することなく、マオはそれを身に受ける。……さらに強い痛みに。苦しみに、両目から、涙がこぼれる。このまま……体が音を立てて崩れてしまいそうで。
「……大丈夫。あたしは、死なない。もう死んでる、もの」
 かすれた声で、マオは言った。涙を流しながら、歪んだ骨の魚を召喚した。
「死を越えた、苦しみを。痛い。苦しい。……悲しい。だか、ら」
 自分で自分の体を抱く。骨魚はマオの状態に関係なく、偽神の元へ殺到する。
「喰らい尽くせ。喰らい尽くせ。悲しみを、喰らい尽くす、ために。走れ。走れ。走れ……」
 死者の魂を骨のうちに宿した骨魚が、喰らえと走る。敵の体を少しでも齧り、奪い、そして斃せと叫ぶ。マオが倒れるまで。否。倒れて地に貼っても顔を上げる力が尽きるまで。骨魚たちの召喚は、ずっとずっと続いた……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

丸越・梓
アドリブ、マスタリング歓迎

_

「……ッ」
──ドクン、と鼓動が強く脈打つ

頑強故に、今でも様々な薬や毒の実験台にされ
幾度も苦しく辛かったけれども
弱い自分は決して表には出さない、今もそうだ
元来感覚が鋭敏故に拒絶反応を過敏に感じ
それでも歯を食いしばって顔を上げる
強がることは昔から得意だ
何よりこの背に護りたいものがあるから

かつて異邦の故郷にて
「悪魔」と「黒い狼」と散々蔑まれ迫害されてきた俺が、偽とは言え『神』とは皮肉なものだ
勿論故郷の奉ずる神とは違うと解っている
それでも、否故にこそか
神に至るなど烏滸がましいと罰を受けるように
身体と精神を
細胞が確かに蝕む

然し苦痛を噯気にも見せず
相手を縛る鎖を断ち斬る様
一閃


ヴィクティム・ウィンターミュート
すぐ終わらせる さっさと細胞液を寄こしてくれ
別に死んだって構わねえ 死ぬつもりなんて無いが、覚悟はしてる
勝利は全ての犠牲を容認する それが俺の身なら猶更だ
やろうぜ──どっちが壊れるか決まるまでな

自己サイバネ【ハッキング】 フルオーバードライブ
──イカれた野郎はお好きかな?『Obsession』
攻めて、攻めて、攻めまくろう…時間が惜しいからな
──頭がいてぇ アホみてーに出血してきた

【ダッシュ】で近づいて、二刀にしたナイフでインファイト
おい、その剣はまずいな…壊してやる
左の仕込みショットガンを連射しまくって、剣の【武器破壊】を狙う
…まずいな、時間が無い
こうなりゃ捨て身で急所を狙ってやるよ!



「……ッ」
 丸越・梓(零の魔王・f31127)が偽神薬液を使用したとき、頭の中に何か……──ドクン、と鼓動が強く脈打ったような気がした。
「ああ……」
 頑強故に、今でも様々な薬や毒の実験台にされ、幾度も苦しく辛かったけれども、これは今までにない痛みの感覚がある。説明しろと言われれば難しいが、頭痛といえば頭痛……なのだけれども、違う何かを感じることも、できた。
 視界の先には、それがいる。偽神。つまりはそれは、偽物だ。どこを見ているのかわからないそれは、巨大な剣を振り回しながら歩いている。どこかに向かおうとしているのか。けれどもどこへも行くことができないのか。そんな言いようのない印象を梓に抱かせた。
「すぐ終わらせる。さっさと細胞液を寄こしてくれ。……別に死んだって構わねえ 死ぬつもりなんて無いが、覚悟はしてる」
 そう、言っていたのは隣にいるヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)であった。彼は僅かに口の端を歪めて、別に物語のような悲壮な決意をにじませるでもなく当たり前のことのように言っていた。
「勝利は全ての犠牲を容認する。それが俺の身なら猶更だ」
「……そうだな」
 自然と、梓の口からも肯定の言葉が出ていた。元来感覚が過敏であるがゆえに、拒絶反応すら過剰に感じ、始まる痛みと吐き気を堪えながらも顔を上げて何でもないことのようにうなずいた梓を、ヴィクティムはちらりと見て、
「だろ。……やろうぜ──どっちが壊れるか決まるまでな」
 まるで梓をカラオケにでも誘うかのような口ぶりで、軽く大地を蹴り偽神の元へと走り出した。
「……ああ!」
 梓も走る。何よりこの背に護りたいものがあるから。そのためなら、強がることは昔から得意だた。
 ヴィクティムの方はどうだろう。梓の背中を見ながらそんなことを考える。
 誰かの幸せを守りたい。……それだけは、きっと確かだった。端役気質であることは自分で理解している。けれども、その思いだけは負けないという自負はある。
 そんなヴィクティムは走る、走る。走る。走るだけで偽物の圧が強くなる。くそったれ、と舌打ちしながらヴィクティムは電脳魔術士らしく己のデバイスを起動させた。数分、もてばいい。だから過剰に出力を上げて、
「──イカれた野郎はお好きかな? 『Obsession』……敗けて生き残るくらいなら、死んででも勝つ。それが、俺を活かす強い意志だ!」
 生体機械ナイフを手に、敵の懐に入り込み飛び込んだ。
「近寄るな……!」
 咆哮に近い疑心の声がする。ヴィクティムに殴りかかろうとその巨大な腕を振り回す。同じく弧を描く大剣がヴィクティムに届くその前に、梓がその腕を掻い潜って接近した。
「悪いがそういうわけにもいかない……行くぞ」
 まずは一撃。梓が養老をそのわき腹に叩き込む。不意の攻撃に僅かに偽神の体が揺らぐ。
「勿論こっちからも、行かせてもらうぜ!」
 その隙にすかさずヴィクティムも攻撃を加える。二刀流化したナイフを全体重でもって突き刺せば、
「■■■■■!」
 偽物が声にならない方向を発する。そのまま近寄る人型を蹴散らそうと腕を振り回す。
「なにを言ってんだか、わかんねえな!」
 ヴィクティムが毒づくように叫んだ。そうでもしないと痛みと、その方向から発せされる圧に飛ばされてしまいそうだった。
「ろくなことを言っていないのだけは間違いない」
「はっ。そりゃそうだ!」
 梓の返しに、笑いながらもヴィクティムも腕を振り回す。
「つまりは聞いてるってことだな。攻めて、攻めて、攻めまくろう……時間が惜しいからな」
「ああ」
「やめろ……やめろやめろやめろやめろ! そんな目で。そんな絶望の欠片もない目で、見るんじゃない……!」
 偽神が叫ぶ。彼にとって梓とヴィクティムはどう見えているのかがわからない。妖刀で攻撃を加えながら梓はその顔を見る。……人に近い。でも人ではない何か。そして、
(かつて異邦の故郷にて、「悪魔」と「黒い狼」と散々蔑まれ迫害されてきた俺が……、偽とは言え『神』とは皮肉なものだ)
 一時的とはいえ、それに対抗して戦っている二人。思わず胸をよぎる思いに何とも言えない苦みを感じ、梓は武器を握りしめる手に力を込める。
(勿論故郷の奉ずる神とは違うと解っている。……それでも、否故にこそか)
 力を籠めると同時に、激痛が頭のほうまで走った。頭痛か、と思ったら、肩のあたりが真っ赤に染まっていて、ああ、あの剣の攻撃か。なんて梓は納得する。神に至るなど烏滸がましいと罰を受けるようにひどくなる一方の頭痛に誤魔化されていたが敵の攻撃だって決して侮れるものはない。
「──頭がいてぇ。アホみてーに出血してきた」
 無言で耐える梓の傍らで、思わずぼやくようにヴィクティムが声をあげていた。しかしその攻撃は緩まない。ナイフを両手に、ひたすら懐に入って切って切って斬りまくっている。
「…まずいな、時間が無い。……あと、あー。あれだ。おい、その剣はまずいな……」
 頭痛で脳がほどけていく。バラバラになりそうな痛みの中必死でヴィクティムは腕を振るっていく。壊してやる。と言いながらも、さて、あの巨大な剣を壊せるだろうか、なんて。痛みで逆に冷静になった頭の中の自分がそんなことを言っている。
「このまま……ちょっとでも!」
 ダメージを、与える。すかさずヴィクティムは腕に仕込んでいたショットガンを連射して、敵の急所と剣を同時に攻撃していく。
「手伝おう」
 それに、梓も前に出た。今ここで倒せなくとも、少しでもこうして獲物を弱らせておけば後に続く者のためになると信じて。
「お前も、ずいぶんボロボロだぜ」
 ヴィクティムが軽口をたたく。そうか。と梓は生真面目に頷く。
「そちらも、大丈夫か」
「そりゃ……お前、俺がまともな奴だと思ってんのか?」
 それが答えだというヴィクティムに、なるほど、とやっぱり梓も頷いた。
「ならば……」
 一閃。
 二人の攻撃が偽神の刃を叩く。……彼らの限界も近いだろうところに、

 最後に一つ、鋼が軋むような嫌な音が響いた……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ディフ・クライン
命の危険すらある、か…
この身を壊すのは怖い、けれど
最初に決めたんだ
滅ぶ世界を受け入れられないから、戦うのだと

王よ、駆けてくれるかい

痛みに鈍いこの身を襲う、経験したことのない程の頭痛
体内を廻る魔力がまるで沸騰しているみたいだ
清浄なマナを求めて勝手に呼気が荒くなる
ふらつく足、狭まる視界
それでも立っていられるうちに

王よ、あの剣を振らせないでくれ!
出来るのなら弾き飛ばせ……!

王がギリギリまで戦えるよう、オレ自身は全力でオーラ防御で身を守ろう
痛みで揺らいでも
視界が黒く染め上げられようとも
最後の一瞬まで目を離さぬよう

デミウルゴス
望まぬ神の器が辛いのなら
終わらせよう
手伝う、から

ああ、でも
壊れるのは…怖いな…



「命の危険すらある、か……」
 言われた言葉を反芻するのは、ディフ・クライン(雪月夜・f05200)であった。手の中には偽神細胞がある。
(この身を壊すのは怖い、けれど……)
 それをぎゅっと握ってみる。
 ……別に、彼が戦わなくとも、本当は良いのかもしれない。
 こんなものは覚悟の決まっている人間がやればいい。そういうものかもしれない。
 それでも……、
「最初に決めたんだ。滅ぶ世界を受け入れられないから……、戦うのだと」
 自分で、戦うと決めた。誰のためでもない。自分が許せないもののために戦うと決めたから、
「王よ、駆けてくれるかい」
 ディフの言葉に、傍らのかつて王であった死霊騎士は何処か力強く頷いた……ような、気がした。
 偽神細胞を体に投入する。頭痛がする、というには若干不思議な感覚だ。
 恐らく普通の人間でも、同じように表現するだろう。「頭痛といえば確かに頭痛だが、感じたことのない痛みと不快感がある」と。
「……急ごう。これはそう、長くはもたないな」
 今はまだ耐えられても、徐々に痛みは強くなるだろう。そんな予感がする。死霊騎士の愛馬であった、漆黒の死霊騎馬に騎士王は騎乗する。今回はそれにディフは乗らない。ただ、痛みを堪えながらそれを見送った。
 走りだす。走り出せばその強大な偽物の神はすぐにでも視界に飛び込んできた。
 見つけたということは、見つかったということでもある。神がこちらを見る。その眼は力強く……そしてここを見ているのに見ていないような、何か狂気のようなものを映し出していた。
「……っ!!」
 剣が振られる。……あれが剣だとするならば、まだ十分に、距離はある。距離はあるがその距離があてにならないこととはもちろん、ディフだってわかっていた。
「……っ、大丈夫だ。そのまま……!」
 ディフを庇うような位置取りを取ろうとする死霊騎馬に、ディフが叫ぶ。その意図を一瞬で察したのか、死霊騎士はすかさず方向を変えずに走り出した。
 毒が偽神の剣から放たれる。その毒はあえて言うならばディフの力の一部である死霊の王と騎馬には効かない。構わず、彼らは走る。一瞬で距離を詰めて、大剣を握る偽神に突進した。
「王よ、あの剣を振らせないでくれ! 出来るのなら弾き飛ばせ……!」
 もう一撃。振りかぶっている偽神にディフは命じる。命じながらディフは魔法で身を護るドームのようなものを作った。……これで毒の浸食は、多少なりとも抑えられるに違いない。
「……っ!!」
 そう、息をつこうとした瞬間視界が揺れる。同時に鋼と鋼の弾かれる音がしている。王と偽神が打ちあっている。……見なければ。見て、声をかけて……、
「ぐ、ぁ……」
 そうすることが最適とわかっているのに、視界が明滅する。ディフの取り込んだ偽神細胞か、それとも敵が吐いた毒か。もしくはその両方がディフの中で暴れまわっていた。痛みに鈍いこの身を襲う、経験したことのない程の頭痛にディフはそのまま倒れ伏したくなる。
 体内を廻る魔力がまるで沸騰しているみたいだ。清浄なマナを求めて勝手に呼気が荒くなる。
 ふらつく足、狭まる視界。
 いっそ倒れてしまえば楽になれる。
 倒れてしまえばこれ以上苦しむこともない。それで終わりで……でも、
「それでも立っていられるうちに……頼んだ!!」
 倒れれば、すべて終わりだ。
 だから、ディフは声の限り叫んで。
 最後の一瞬まで目を離さぬよう、狭まる視界の中顔を上げる。
「デミウルゴス……!」
 手を伸ばす。応えるように王の腕が振るわれた。……その時、
 ガッ、と、鈍い音がして、偽神の剣が抉れた。
「望まぬ神の器が辛いのなら、終わらせよう! 手伝う、から……!」
「無意味だ。人では何も終わらせられない。人では、何も救えない。偽物は所詮偽物だ。なにも、救えない。俺も、お前たちも……!」
 剣が縦方向に半分に割れている。あれで崩れずに振るえているのだから不思議だ、なんて。一瞬場違いな感想がディフの頭をよぎった。偽神は叫んでいた。
「無意味だ。縋るな。祈るな。希望を持つな。できることなど何もない……!」
「そんなことは……そんなことは、ない」
 ディフの声に、偽神は叫ぶ。そんなことはないと。小さいけれどもディフも声を上げる。
 その剣は、何度も他の猟兵たちも攻撃を加えたものだ。
 それを、最後にディフが割ったのだ。
「一人では……大したことはできない。けれど、繋いでいけば……」
「黙れ……!」
 偽神の声とともに、半壊した剣が振るわれた。威力が減じられていたとしても、風圧だけで人を砕く剣はその力をディフに向けて……、
(ああ、でも。壊れるのは……怖いな……)
 最後に、彼はそんなことを思った。
 剣で倒れたか、毒で倒れたかわかる前に、
 ディフの意識は、途絶えた……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【華禱】
強い力は相応の代償が付き物です
限られた時間に、上乗せした力を叩き込めるか

戦に己が身に対する恐れは不要……今も、これからも変わりません
……簪は仕舞っておきます、そこは倫太郎が譲らないでしょうからね

打ってから視界の変化や酷い頭痛に顔を顰める
それでも体が動くように何度も精神から肉体へ伝え続ける
まだ倒れるには早いと、一撃与えるまでは意識を手放すなと

倫太郎の拘束術が発動する音を合図に駆け出す
視力は当てにせず、聞き耳にて戦闘音と気配で感知
攻撃は武器受けにてその場で防御

私はより敵の近くへ、距離を詰めたら早業の抜刀術『瞬月』
彼と共に戦い続けてきたからこそ立ち回りを体が覚えている
今はそれを頼りにするのみ


篝・倫太郎
【華禱】
ものの数分で、なぁ……
まぁ、その数分で最大火力を叩き込めって話なんだろな

……夜彦、怖い?
俺?俺は別に怖くないかな……
一番怖いのはさ、我が身可愛さに出来る事をやらないことだから
だから、怖くない……けど、あんたは簪仕舞っといてね

打った端からぐらりと視界が揺れる、頭が割れるような痛み
でも、まだ動ける
だから、全力で往くまでだ

拘束術使用
視界が狭まる前に射程内に捉えて鎖での先制攻撃と拘束
同時に斬撃波と鎧無視攻撃を乗せた華焔刀でなぎ払い
狙うのは機動力を奪う意図も含めて足元

夜彦が攻撃しやすいよう、立ち回る
不調だろうがなんだろうが、これはもう本能に近い
確認しなくても『判る』から

敵の攻撃は見切りで回避



「ものの数分で、なぁ……。まぁ、その数分で最大火力を叩き込めって話なんだろな」
「強い力は相応の代償が付き物です。……限られた時間に、上乗せした力をいかに、叩き込めるか……」
 難しい顔をする月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)に、篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)が軽く声をかけた。それから、
「……夜彦、怖い?」
 冗談めかした口調で言う倫太郎に、夜彦は頷く。
「そうですね……」
「え」
 まさかそこで工程の言葉があると思わなかった。思わず言葉に詰まった倫太郎に、夜彦はちょっと笑った。
「いえ。戦に己が身に対する恐れは不要……今も、これからも変わりません」
「あ。なるほど。びっくりした」
「そういう倫太郎はどうなのですか」
 ちょっと胸に手を当ててドキドキしている倫太郎に、夜彦が問いかける。
「俺? 俺は別に怖くないかな……一番怖いのはさ、我が身可愛さに出来る事をやらないことだから」
 気負うことなく答えた倫太郎に、夜彦は微笑む。知ってました。そういう人だと。という夜彦に倫太郎は、
「だから、怖くない……けど、あんたは簪仕舞っといてね」
 若干真剣な顔で言うので、夜彦はちょっと笑うのであった。
「……簪は仕舞っておきます、ええ。そこは倫太郎が譲らないでしょうからね」
「あったりまえだろ~!」

 ……そんな会話を戦いの前にした彼らも、
 戦場に立つと、ただ静かに目の前の敵を見るしかなかった。
「……」
 その姿は、人のように見えて人ではなかった。
 誰かを見ているようで、誰も見ていなかった。
 強い狂気を宿した目で、彼は襲い掛かる猟兵たちを薙ぎ払っていく。
 すでに前身は血まみれで、その剣は縦方向に半分に折れている。けれども……、
「縛めを……!」
 まずは声を上げ、倫太郎が見えない鎖を放った。頭が痛む。痛みながらもなんとかその体を拘束しようとする。
「目が見えなくなる前に、早く……!」
「……」
 鎖が剣に絡む。ぐ、と偽神がその剣を持つ手に力を込める。
「が……っ!」
 鎖が振られる。高速などものともしない動きで偽神はその剣をぶん回した。
「できないなら、できるまでやる。全力で往くまでだ……!」
 離れていても届く剣の衝撃と、絶え間なく続く頭痛を堪えながら倫太郎は声を上げる。
「倫太郎!」
 そして、その間にも夜彦はすでに走っていた。
 走るとそのたびに夜彦もまた頭が痛む。痛みながらも夜彦は走る。倫太郎の拘束術を合図に、その真正面から突入する。
 倫太郎の呻くような声は聞こえていた。けれども振り返らずに夜彦は走る。
「我が愛刀の一閃、受けてみよ」
 曇りなき愛刀を振るい、夜彦は敵の懐につっ込んだ。
「――!!」
 偽神の腹に傷が増える。そして同時に咆哮のような声とともに、再びその腕が振るわれる。毒をまき散らしながら走る剣は、たやすく夜彦と倫太郎の体を吹き飛ばす。
「でえええい。とま、れ……!」
 それでも、倫太郎は駆けよって華焔刀を振るった。今の一撃で、何か腹に嫌な音がしたけれども構っている余裕はない。
(見えなくてもいい。夜彦が攻撃しやすいように、少しでも立ち回る……!)
 狙いは低く。足を払うように薙ぐ。転ばせられるとは思ってないが、少しでも動きを鈍らせたい。
 鎖もまた完全に拘束はできていないが、敵の全身に絡みつかせて何とか動きを止めている。
「夜彦!」
「承知!」
 そうして、その戦闘音と倫太郎の声音でまた、夜彦も敵と倫太郎と己の位置を図った。
(立ち回りは体が覚えている……。長く、共に戦ってきたから……)
 徐々に見えなくなっていく死かい。それでもかまわず突っ込んで、夜彦は刃を振るった。
「今はそれを頼りにするのみ……!」
 傷だらけの偽者に、深く深く更に傷を作る。
「まだだ。まだ、倒れるには早い……!」
「ああ。最後まで全力だ!」
 咆哮を上げる偽神を、二人は倒れる最後まで攻撃し続けるのであった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

柊・はとり
常の凍傷に加えて今日は頭痛も酷い
最悪だ
恐らく俺の苦痛を燃料として動く
ふざけた偽神兵器の嫌がらせだろう
このままだと恐らく視力も…

激しい頭痛の中で思考能力には頼れない
元々乏しい視力は尚更如何しようもない
頼れるのは死の前兆を告げる探偵の第六感と
傷つき続けた果てに得た継戦能力だけ
敵の肉体と己の細胞からの攻撃に
精神力で耐え

コキュートス…お前は俺に何を望んでる
『その検索結果は見つかりませんでした』

UC使用
お前なんかにこの力は使わせない

幾度となく殺され続け
いっそ殺せと思った事は何度もある
だが俺は人を殺そうだなんて思った事はない
だからな…お前を見てると無性に腹が立つよ

どちらが真犯人かは明白だ
俺はお前を『倒す』



 柊・はとり(死に損ないのニケ・f25213)は難しい顔をして、目の前にいる敵をただ見据えていた。
 そこには、ただひとり佇む人のようで人でないものの姿があった。
 数多の攻撃を受け最早体はボロボロで、その剣は縦方向半分に砕けている。
 それでもなお、猟兵などこの程度でも倒し切ると立つさまはまさに異様ですらあった。
「……」
 けれどもはとりの難しい顔は、その敵の姿が原因ではない。
(常の凍傷に加えて今日は頭痛も酷い……。最悪だ)
 はとりはストームブレイドであるがゆえに偽神細胞を撃ち込む必要はない。
 だからこの不調の原因は……、
(恐らく俺の苦痛を燃料として動く、ふざけた偽神兵器の嫌がらせだろう。このままだと恐らく視力も……)

 恐らくそんなところかと。そこではとりは思考を打ち切ることにする。考えても仕方がないことは考えない。そもそも頭痛がひどくてこれ以上思考能力には頼れない。元々乏しい視力は尚更如何しようもない。ならば……、
 ゆら、と、亡霊のような神がこちらを向いた。……その存在を視界にとらえた。……途端、
「……!」
 目の前にそれがいた。一瞬で翻される剣に、死の前兆を告げる探偵の第六感と傷つき続けた果てに得た継戦能力ですんでのところに気付いた。
(受け……たらだめだ。死ぬ!)
 即座に理解する。とっさに横に跳んでその攻撃を紙一重でよける。避けたというのに巻き起こる風圧と衝撃で体が吹き飛び、痛む。
「……コキュートス……お前は俺に何を望んでる……!」
『その検索結果は見つかりませんでした』
 毒づきながらはとりは氷の大剣を反射的に構える。
「……」
 偽神の目を見た。
 それは何かを見ていた。はとりではなかった。はとりの方を向いて、ここにはない何かを見据えていた。
 すなわち、狂気である。
「お前なんかにこの力は使わせない……!」
 剣が持ち上がる。はとりもまた大剣を握りしめる。
(幾度となく殺され続け、いっそ殺せと思った事は何度もある……。だが俺は人を殺そうだなんて思った事はない。だからな……お前を見てると無性に腹が立つよ……!)
 氷の大剣を開放し、はとりは声を上げる。これは己もまた倒れる技だ。だが……、
「どちらが真犯人かは明白だ。俺はお前を『倒す』……!」
 こんな身だ。いっそ倒れても構わないだろう。と、
 はとりは敵を指し示し、ありったけの力で攻撃を加えるのであった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…私には為さねばならない使命がある。果たさなければならない誓いがある

…死んでいった多くの人達から託されてきた想いがある以上、
こんな異郷の地で命を散らす気はないわ

偽神化してUCを発動し体を圧縮魔力のオーラで防御して戦闘能力を限界突破させ、
積み重ねてきた戦闘知識から敵の殺気を暗視して攻撃を見切り、
大鎌をなぎ払うカウンターで迎撃して受け流しつつ懐に切り込み、
大鎌を武器改造して変形した手甲剣に魔力を溜めて怪力任せに突き刺し、
敵の体内で闇属性攻撃の斬撃波を乱れ撃ちする追撃を行う

…数分しか戦闘能力が持続しないなら、この一瞬に全てを込めて闘うまで…!

…勝負よ、偽神デミウルゴス。お前を倒し私は必ず生きて帰る!



 痛みがある。
「……私には為さねばならない使命がある。果たさなければならない誓いがある」
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は大きく息を吸い込んで、吐いた。
「……死んでいった多くの人達から託されてきた想いがある以上、こんな異郷の地で命を散らす気はないわ」
 疑心細胞を取り込んだ体は、それだけで痛みを訴える。呼吸を整えるのは一瞬だけ。そうしてリーヴァルディは真正面にその敵を見据えた。
 すでに体は数多の傷を受け、その剣は半壊している。
 人のような顔をして人でない目をしたそれはリーヴァルディをゆっくりととらえた。
 緩慢にも見える動作で大ぶりの剣を構える。それを目にした瞬間、リーヴァルディは走り出していた。
(……正面、来る!)
 走るだけで体が痛みでわずかに軋むが構わない。そのままリーヴァルディは一瞬で距離を詰めた。積み重ねてきた戦闘知識で敵の様子を判別する。剣が振られる瞬間、リーヴァルディも横へと跳んだ。
「……!」
 跳ぶ。飛ぶと同時に死者の思いから編み上げられた大鎌をリーヴァルディは払った。返すようにその足を刃で薙ぎ払い、
「その、まま……!」
 走りこむ。走りこんで返す刃でその胴体にも、
「……見せてあげる。吸血鬼狩りの覚悟を!」
 大鎌を変形させた手甲剣に魔力を溜めて、思い切り突き刺した。
 傷口から血が噴き出す。構わず偽神はその巨大な拳を振り下ろす。
「く……っ!?」
 もはやいつ倒れてもおかしくない傷にかかわらず、繰り出されたその攻撃はリーヴァルディの体を粉砕した。紙一重でよけても、なおその圧で吹き飛ばされる。
「まだよ……!」
 しかしリーヴァルディも倒れなかった。
「……数分しか戦闘能力が持続しないなら、この一瞬に全てを込めて闘うまで……!」
 全魔力を圧縮し、全面解放する決戦形態に己の姿を変える。そのまま再びリーヴァルディはその懐へと飛び込んでいく。
「……勝負よ、偽神デミウルゴス。お前を倒し、私は必ず生きて帰る!」
 闇の力を纏った斬撃波を撃ち込みながら、リーヴァルディは声を上げた。どちらかが倒れるまで、決して、この腕を止めることはないと……。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳴宮・匡
偽神細胞液とやらを接種して臨むよ
戦場に辿り着いた時点で【影海遠鳴】を発動
……まともに動けなくなる可能性が高いんだ
ならそれが起こるまでに決しておくくらいの覚悟がいるだろう

相手の得物は厄介だけど、殆どの攻撃はそれを介して行われる
であれば、それを操る体の動きを見ていれば見切れないものじゃない
出来るだけうまく躱すか、相殺して被弾を減らし
十全に動けるうちに相手へダメージを重ねていくよ

痛みなんて、昔は感じないようにしていたけど
今は当たり前に耐えがたいし、苦しいさ
それでも、最後まで相手から目は切らないし
この身体の動く限り、銃口から指を離しはしない

生き抜く、と決めたんだ
死ぬほど痛いくらいじゃ、止まってやれない



 偽神細胞液とやらを接種する。
 そして、神経伝達速度と並列演算能力を一時的に増強する。
「……」
 動けるのはモノの数分。鳴宮・匡(凪の海・f01612)は目の前のそれを顔を上げて見つめる。
「……まともに動けなくなる可能性が高いんだ。ならそれが起こるまでに決しておくくらいの覚悟がいるだろう」
 目の前の神はそうして、ただこちらを見て立っていた。
 偽神が匡を視界に止める。
「!」
 早い、という間もなく。
 それは匡の目の前に来ていた。
「お前で、最後だ」
「そうか。じゃあ、これで終わりにする!」
 目の前で、盾に半壊した剣が振られた。それはもはや剣の形をしていない、巨大な何かの塊であった。
「脆弱だ。越えられなかった。誰も、彼も」
「心外だぜ。現にこうしてお前は弱り、その剣は壊れかけてる!」
「それでは、これでは、救えない、救われない」
 声は匡に向かっているのか、それともほかの何かに語っているのか。それが判別はつかない。ただ巨大な剣が毒をまき散らしながら振るわれている。それを匡は紙一重でよけていく。
「……!」
 かわした瞬間、銃弾を撃ち込む。弾丸を剣に当ててその勢いを相殺する。
「確かに俺たちは脆弱だ。けれども、力を合わせれば神だって倒すことができる……!」
 駆け付ける途中、剣を避けたはずなのにその衝撃を受けて傷ついた猟兵がいた。
 匡もまた覚悟した。一撃で倒れる予想すらしていた。……けど、
(大丈夫だ。この痛みは、まだ耐えられる……!)
 当たり前に耐えがたい、苦み。
 けれども、耐えられないわけじゃない。
 それは、今まで戦っていた猟兵が、この偽神の力を削いだからであることに間違いはない。
「痛みなんて、昔は感じないようにしていたけど……必要なものだった。何も感じないことは強さじゃない」
 それでも息が上がっていく。頭痛は始まるし、視界は狭まっていく。
 苦しみがある。辛さがある。けれども匡は最後まで相手から目は切らなかった。……銃口から、指を離さなかった。
「生き抜く、と決めたんだ。死ぬほど痛いくらいじゃ……、止まってやれない」
 痛んで、苦しんで、脆弱と言われればそれまででしかないこの体だけれど。
 苦しみながら歩いていくことが必要なんだと、匡は声をあげて引き金を引いた。
「――」
 最後に。
 それは何か言った気がした。
 けれども、匡にはもはや何を言っているのかわからなかった。

 そうして、偽神は斃れた。
 痛みをまき散らし、苦しみをまき散らし、傷だらけになった体をようやく横たえた。
 既に立っている者もおらず、救いがあったのかはもはや誰にもわからない。
 ただ、荒野に風が吹いて。漂う毒を散らしていった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月17日


挿絵イラスト