アポカリプス・ランページ⑰〜拳闘と超克
●拳
ワシントンD.C.の中心部に位置するナショナル・モール、さらにその中心にそびえ立つ巨大な白色のオベリスク――ワシントン・モニュメントの前に一人の男性が待ち受けていた。
「……来たようだね、猟兵の諸君」
その男は『フィールド・オブ・ナイン』の一柱にして『オブリビオン・フォーミュラ』である。
尋常ならざる迫力を受けて猟兵達の足が止まる。
これより先に一歩を踏み出せば、即座に己たちはあの両腕の餌食になるであろうことを予感させるほどの迫力が彼にはあった。
「私は『プレジデント』。昔は人の名もあったが、色々無くしてね。今や『昔大統領だった事がある』という肩書だけが自慢の、しがないナイスガイさ」
そう、彼こそが『プレジデント』。
彼が語る言葉に偽りはないだろうが、しかして彼に残されたのは屈強なる肉体と豪腕であった。ただ、それだけで猟兵達は己の闘争本能がびりびりと刺激されるのを感じた。
「ああ、なるほど。私はこの世界のオブリビオン全てとソーシャル・ネットワークを構築していてね。エルドラドを占拠されたこともあって、君等にも私の放つ強力な精神波の影響があるのだろう」
それはつまり猟兵達は此処が窮地ではなくても『真の姿』になれるということを示していた。
「みなぎる闘争心は見事なものだ。ああ、聞かれる前に答えておこう。私の目的は『全人類のオブリビオン化』。もちろん、黙示録の黄昏――アポカリプスヘルを生き残った僅かな人たちだけじゃない」
『プレジデント』はにこやかに笑いながら、爽やかな声で伝える。
そこにあったのは、なんの躊躇いもない。気負いもない。ただ己が為すべき目的を伝える簡潔な言葉であった。
「全てだ。全ての世界の人類を、私のユーベルコードでオブリビオン化する」
衝撃は津波のように猟兵達の心を押し流すだろう。
その言葉に偽りはない。確実に全ての世界の人類をオブリビオン化するための術が彼にはあるのだ。
故に、猟兵達は戦慄する。それは即ち己達もまたオブリビオン化するという脅威であったからだ。
しかし、その戦慄に応えるように『プレジデント』は言う。
「……いや、諸君は対象外だ。己の『真の姿』に自覚はあるだろう? 諸君はひとりひとりが別種の存在。時間質量論だけじゃ、こんな異端は説明できないさ」
爽やかに微笑む姿は、確かに心を預けたくなる『大統領』足り得るものであった。
けれど、その恐るべき計画を実行させるわけにはいかない。猟兵達は己の心の中の闘争心をかき乱されるのを感じながら、一歩前に踏み出す。
如何に目の前の敵が凄まじき敵であったとしても。
それでも己たちが戦わなければ、全人類のオブリビオン化、即ち死が行われることになる。
その踏み出した一歩を見て『プレジデント』は笑う。
「やはりそうか。諸君らは未だ『オーバーロード』に到達していないようだが。それでも一歩を踏み出す開拓精神の持ち主であるのだろうな。ならば、戦いの中で諸君らを目覚めさせてみようか。いや、何、敵に塩を送るつもりではないよ」
赤と青の豪腕が打ち鳴らされる。
何を、と猟兵が呟いた瞬間『プレジデント』の拳が握られる。それは真四角の形をしていた。
そう、それは拳闘技。
拳で箱を作るようにするからプクソスとも、プギラートゥスとも呼ばれた拳闘技の構え。
みなぎる闘志はこれまでの爽やかな一面を吹き飛ばすには十分すぎるものであった。
「私もそれを見てみたいと思っただけのことさ。さあ、来るがいい。君たちが齎す超克『オーバーロード』に至る道を私に見せてくれたまえ――」
●アポカリプス・ランページ
グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。ついにワシントンD.C.にまで皆さんの進撃、ストレイト・ロードが繋がりました。この地で待ち受けるのは『フィールド・オブ・ナイン』の一柱、『プレジデント』……全人類のオブリビオン化計画を標榜するオブリビオン・フォーミュラです」
『プレジデント』は共もつけずに一人、猟兵たちをワシントンD.C.の中央モニュメントであるワシントン・モニュメントの前にて待ち受けている。
復興されたモニュメントはかつての文明を想起させる壮麗さであるが、もちろん『プレジデント』はオブリビオンであり、倒さなければならない存在である。
「彼は全てのオブリビオンとソーシャル・ネットワークを構築しており、放たれる強力な精神波……闘争心を煽るソーシャル・ネットワークにより、皆さんの『真の姿』をかき立てることでしょう」
それは即ち、窮地であるということだ。
本来猟兵は窮地に至りて初めて『真の姿』に変身することができる。
だが、今回『プレジデント』の放つ精神波によって、窮地でなくてもそれが可能なのだ。
「ですが、『真の姿』になって強化されたとしても侮ることができぬのが『プレジデント』です。彼は確かに武装を保たぬ存在。拳だけで戦う存在ですが、その力は凄まじい技量と膂力を持っています」
つまり、甘く見ても、見なくても……『プレジデント』はその両腕だけで猟兵を鏖殺せしめる力を持っていると言ってもいい。
しかし、ボクシングで戦う『プレジデント』に対し、真の姿を晒し、ボクシングでもって相対するのであれば、その者はさらなる力をもって強化されるのだという。
「それが、『プレジデント』の放つ精神波の影響なのかどうかはわかりません。皆さんが超克、即ち『オーバーロード』に至る予兆であるとも……」
詳しいことはナイアルテにも理解できていないようであった。
けれど、、危険な相手であることは言うまでもない。
『プレジデント』――その謎に満ちた半生を紐解くことはできないだろう。彼を打倒し、彼の計画を阻止することこそが世界を救う一歩になる。
それがどんなに困難な道であったのだとしても、心に勇気が在る限り、その一歩は小さくても偉大なる一歩となることをナイアルテは期待し、猟兵たちを送り出すのであった――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『アポカリプス・ランページ』の戦争シナリオとなります。
ワシントン・モニュメントの前にて待ち受ける『プレジデント』との決戦を行うシナリオになります。
『プレジデント』はたった一人で皆さんを待ち受け、迎え撃つでしょう。
威風堂々たる佇まいは、その技量が並々ならぬことを知らしめますし、屈強なる身体は尋常ならざる膂力を発揮することがわかるでしょう。
※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。
プレイングボーナス……真の姿を晒し、ボクシングで戦う(🔴は不要)。
それでは、『フィールド・オブ・ナイン』の齎すカタストロフを阻止する皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『プレジデント・ザ・ショウダウン』
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POW : アイ・アム・プレジデント
自身の【大統領魂】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD : プレジデント・ナックル
【竜巻をも引き起こす鋼鉄の両拳】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ : アポカリプス・ヘブン
【対象を天高く吹き飛ばすアッパーカット】を放ち、レベルm半径内の指定した対象全てを「対象の棲家」に転移する。転移を拒否するとダメージ。
イラスト:色
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
バルタン・ノーヴェ
プレジデント!
全世界の人々をオブリビオンにするという所業、ワタシたちは看過できマセーン!
ゆえに、ここでアナタを打ちのめしマース!
アナタの流儀に合わせ、刀や銃器はおいてリングイン!
いざ! 真の姿、開放!
「骸式兵装展開、岩の番!」
機械の腕に合わせて、岩の腕を纏うであります。
二対の岩腕に一対の岩翼、合わせて6本の攻撃手段となりマスガ、これもまたボクシングの腕のようなもの。
巨体を活かしつつ、後の先の構え。
そちらの不利に付け込まず、プレジデントの攻撃にカウンターを決めるスタイルで立ち回りマース。
これもまた、過去の強敵から得られた力であります。
過去は否定しマセーン。しかし、未来に進むことは諦めマセーン!
『フィールド・オブ・ナイン』の一柱たる『プレジデント』は言った。
全ての人類をオブリビオン化すると。
それはこのアポカリプスヘルに生きる人々だけではなく、あらゆる世界の人類をオブリビオン化する壮大なる計画であった。
そんな事が可能であるのかという疑問はあれど、しかして、その身に宿したオブリビオン・フォーミュラたる力の一端を垣間見れば、それが本気であることをバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は知る。
「『プレジデント』! 全世界の人々をオブリビオンにするという所業、ワタシたちは看過できマセーン!」
バルタンは元より他の猟兵たちも同じ気持ちであろう。
しかし、対峙する『プレジデント』の迫力は凄まじいものであった。
これまで数多の死線を越えてきた猟兵たちすらも圧倒する屈強たる肉体。そこに宿る大統領魂とも言うべき信念はいささかも揺らぐことはなかった。
「なるほど。レディ。猟兵とはそういう存在であると私も理解しているよ。ならば、語るべきは言葉ではないだろうね」
青と赤の拳を打ち鳴らす。
火花散る拳の一撃はまるで嵐を呼ぶゴングのようであった。
「故に、ここで貴方を打ちのめしマース!」
バルタンは一線を越えた。
そこがすでにリングであることを彼女は理解していた。刀や銃器はこの際無粋であるとバルタンは無手で飛び込む。
その瞳にあるのは彼女の思い描く意志。
なんのために戦うのか。何のために今一歩を踏み出したのか。彼女はそれを知るからこそ、その姿は『真の姿』へと変貌する。
「骸式兵装展開、岩の番!」
それはユーベルコードの輝きであり、同時に『大天使ブラキエル』を模した姿であった。
かつて戦ったオウガ・フォーミュラ。模倣様式・絶対岩腕(イミテーションスタイル・ブラキエル)はそのための力だ。
その頑強なる岩翼と二対の岩腕を生やし、己の機械の腕とともにバルタンは『プレジデント』に迫る。
「レディ。良い姿に成ったものだ。手数で私にまさろうというのかね。その意気やよし。受けて立とう」
『プレジデント』と真っ向からバルタンはぶつかる。
放たれる豪腕の一撃をすり抜けるカウンターの一撃。それは六本腕となったバルタンであっても、容易なものではなかった。
カウンターを狙うほどの隙がないのだ。
「デスガ! なんのために攻撃手段を増やしたと!」
隙がないのならばこじ開けるのみである。振るわれる豪腕の一撃を紙一重で躱し続ける。しかし、掠めただけでも己の体を震わせる衝撃は凄まじいものであった。
躱したと確信しても後から衝撃が襲ってくるのだ。
「君のスタイルはカウンターを狙い、同時に手数を増やすもの……なるほど? ブラキオンの鎧がなければ、君は今ので終わっていたわけだが」
バルタンの身体を覆うブラキオンの鎧に似た岩鎧がなければ、掠めただけでも致命傷になる一撃を躱し続けるバルタン。
闘争本能が刺激される。
「で、それで過去を否定するかね」
「いいえ。これもまた、過去の強敵から得られた力であります、『プレジデント』。ならば、過去は否定しマセーン」
バルタンが迫る。
その瞳に輝くのはユーベルコードの輝きではない。見据えるは過去ではなく未来。
彼女が求め、明日を求めた人々の魂を救う戦いであればこそ、彼女は豪腕の一撃で砕けた岩腕と岩翼の破片の中を進む。
どれだけ強大な敵であったとしても関係ない。
己が為すべきことは変わらぬと彼女は前に、前に進むのだ。
「しかし、未来に進むことは諦めマセーン!」
己が振るう拳はそのために。
カウンターとして放たれた拳の一撃が『プレジデント』の頬を打ち据える。その一撃は確かに届いたのだ。
今は小さな一撃でもいい。
最初の一歩がなければ、猟兵達の紡ぐ戦いに勝利はない。
故に、その一撃は『プレジデント』の脳を揺らし、膝をつかせるには十分な一撃であったのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第三『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風
あえて無手。
真の姿『紅炎狼』。狼獣人姿なのよな。
さて、近距離ならば、わしは無手でいこう。なに、間合いを合わせるためよ。
あと、ボクシングはそうだと聞いたが?
まあ、転移は拒否するし、最初は慣れぬから被弾はしよう。
しかし【四悪霊・『回』】はそれをも力とするUC。つまり、一方的不利にはならん!
ははは、わしとて武人なのだ。こういうのは血が騒ぐ。
強化充分となったら、第六感からの見切りで懐に入り、一発お見舞いしようか!
あ?回りにおる者?応援団よ。
※
陰海月と霹靂、応援のためだけに出てきてる。手は出さない。真剣勝負だと理解してる。
膝をついた『プレジデント』が立ち上がる。
己の顎をさすりながら、葉巻をくわえ、紫煙をくゆらせる姿は余裕そのものであったが、彼は素直に猟兵の力を認めたようであった。
「実によい拳だった。私の膝を付かせるとはな。猟兵たちよ。君たちの戦いはいつもこうなのだろうな」
個としての力は確かにオブリビオン・フォーミュラたる『プレジデント』には至らない。
遠く及ぶこともない。
けれど、これまで彼らが勝利してきたのは、ひとえに繋ぐ戦いであるからだ。
それを『プレジデント』は理解したようだった。
されど、未だ戦いは終わらない。
目の前に現れた紅の炎を纏うような獣人の姿を見やり、彼は笑った。
あまりに爽やかな笑顔であったために馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は一瞬毒気を抜かれたような気分になったが、襲い来る精神波がそれを許さないだろう。
闘争心を煽るソーシャル・ネットワークは相対する猟兵の『真の姿』を解放させるものであった。窮地であると身体が叫ぶからこそ、『侵す者』は己の本来の姿をさらけ出すのだ。
「ほう、無手で挑むかね」
「なに、間合いを合わせるためよ。ボクシングとはそういうものだと聞いたが?」
『侵す者』が笑う。
彼もまた武の天才と呼ばれた存在である。
武とは得物を振るうだけが武ではない。彼の手にある拳一つで戦えずして何が『武の天才』か。
「ゴングは不要のようだ」
『侵す者』が一線を超えた瞬間、『プレジデント』の巨躯が迫る。
なんという速度。踏み込みの速度だけで言えば、瞬間移動したかのように速度であった。
放たれる拳はアッパーカット。
下段より放たれるかち上げるような拳の一撃は真下から強襲故に、意識を向けていなければ躱すことはできなかっただろう。
獣人たる『侵す者』の反射速度をもってしても躱せぬ一撃が彼の顎を割るように打ち上げられる。
空高く舞い上げられた『侵す者』は空中で姿勢を整え、大地に立つ。
脳が揺れる。
視界が歪む。
あまりの激痛に吐き気すら催す。あえて一撃目は受けようと思ったことが間違いであったと思うほどの一撃であった。
しかし、それでも彼は笑ったのだ。
「ははは、わしとて武人なのだな! こういうのは血が――騒ぐ!
獰猛に笑う『侵す者』が疾走る。
己の全身を再構築しながら四悪霊の呪詛で全身を覆う。
それは己が受け止めた『プレジデント』の拳によって、さらに頑強なる体を得る力。
四悪霊・『回』(シアクリョウ・マワル)。
未だ頭が揺れる。顎から下の感覚がない。けれど、それでも『侵す者』は輪rったのだ。
「頑丈なようだ。それにしても、君の周りにいる彼らはなんだい?」
「あ?」
『侵す者』はその言葉に訝しむ。
ああ、と気がつく。
そう、彼のまわりにあるのは四人で一人の悪霊である証拠。他の三柱のことであろう。彼らは『侵す者』に託したのだ。己たちを束ねて一つとした存在の全てを。
「応援団よ」
そして、『陰海月』と『霹靂』の姿も在った。手を出すことはないだろう。なにせ、これは真剣勝負であるからだ。
ならばこそ、拳の激突は火花を散らす。
「オーディエンスを味方につけるか。これは『プレジデント』としての名が泣く。だが!」
振るわれる豪腕の一撃。
下から振るわれるアッパーカットの一撃を『侵す者』は見切っていた。
「二度は通じぬよ!」
身を捩り、既のところで拳の直撃を免れた『侵す者』の瞳が輝く。打ち上げた拳に合わせるように振るわれるは、己の身を削った一撃によって増強された拳の一撃。
『プレジデント』が振り上げるのならば、己は振り下ろすのみ。
ねじった胴体のちからが腕に伝えられ、拳の一撃が『プレジデント』の顔面に打ち下ろされる。
自重と重力。そして、あえて受けた『プレジデント』の拳の威力。
それらすべてを込めた一撃が撃ち込まれ血飛沫を撒き散らし『侵す者』は意趣返しを為すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
東雲・深耶
プレジデントよ、貴様も武を極めた者なら異なる異種との闘いをも経験したことがあろう
文句は言わせん、時空間切断剣術と貴様のボクシングの異種近接武術戦の開幕だ
瞬間、真の姿となった私は濡れ烏の長髪が紅蓮の如き赤髪となっていく
今の私は人の姿をした剣そのものであり、剣の概念を内包する異世界そのもの
それが私という『種』、『猟兵』なのだろうな
これがサイキックハーツ『空閃人奉流』、剣の極みに至った壊れざる者(アンブレイカブル)の到達点の一つだ
拳と剣が一般法則を破壊していく如き応酬を繰り広げていきながら、私とプレジデントは異種近接武術戦を開始していくぞ
赤い血がワシントン・モニュメントの地面に走る。
それは『フィールド・オブ・ナイン』の一柱である『プレジデント』の鼻腔より噴出したものであった。
撃ち込まれた拳の一撃が『プレジデント』の顔面を捉えたためである。
片方の鼻腔を抑え、血が固まらぬ内に吹き出しつつ、彼は未だ爽やかに笑っていたのだ。
どこまでも爽やかな笑みであった。
自信に満ち溢れた表情。咥えた葉巻は未だ火が消えることはなかった。
「ふぅー……まさか二発ももうもらってしまうとはね。鍛えているつもりであったが、中々どうして……」
笑っていた。
ここまで猟兵に追い込まれていながら、未だ笑っているのだ。
「『プレジデント』よ、貴様も武を極めた者なら、異なる異種との戦いをも経験したことがろう」
そういって彼の前に歩み出たのは、東雲・深耶(時空間切断剣術・空閃人奉流流祖・f23717)であった。
彼女はその瞳で『プレジデント』を見据える。
相対しただけでわかる。目の前の存在は『大統領』にほかならない。他者を統治し、率いていく者の器を感じるだろう。
故に、彼女は妖刀を抜き払う。
「文句は言わせん。時空間切断剣術と貴様のボクシングの異種近接武術戦の開幕だ」
瞬間、『真の姿』を晒す。
紅蓮の如き赤髪をなびかせる。それはかつての濡れ烏色の髪ではなかった。
みなぎる力の前に『プレジデント』は息を吐き出すようにしながら、これまで紡がれてきた猟兵との戦いによるダメージを整えているようであった。
「レディ。私が何故『大統領』と呼ばれているのかわかるかね」
その言葉は戦いの場にあっては不要のものであった。
けれど、理解を示すことができるだろう。
今の己は人の姿をした剣そのもの。剣の概念を内包する異世界そのもの。
それが己という『種』、『猟兵』なのだろう。それを理解する。これこそが剣の極みに至った壊れざる者。その到達点の一つである。
「それが貴様の到達点であるということか」
「そのとおりさ。ならば来たまえ。初手はお譲りしよう。レディーファーストというやつだ」
瞬間、深耶の赤髪が走る。
輝くユーベルコードは、剣極到達・遍く生命の螺旋の体現者にして断ち切る者(サイキックハーツトシテノナ)としての輝きであったことだろう。
放たれる斬撃の尽くを前にして『プレジデント』の拳が激突し、消し飛ばしていく。
魔剣の斬撃であったとしても物ともしない『プレジデント』の拳は、一般法則を破壊していくことだろう。
拳の一撃が斬撃を砕く瞬間が明滅し、周囲に火花が散っていく。
尋常ならざる戦い。
そこに余人が付け入る隙などなかった。異種近接武術戦。その言葉を正しく理解しているのならば、深耶は己の斬撃が徐々に勢いを増していくのを感じただろう。
次第に強力になっていく斬撃は次第に打ち砕く拳を圧倒し始める。
「剣の極みに至ったのならば君は次に何処へ往くというのかね。それを私も知りたいと思うのだが」
互いの身体が交錯する。
放たれた剣閃は数しれず。
打ち砕かれた斬撃もまた同じである。
しかし、互いに背を向けたまま最後に鮮血を迸らせたのは『プレジデント』であった。
刻まれた斬撃の痕は、確かに『プレジデント』の胸を切り裂いていた。
壊れざる者。
その到達点の先が如何なるものであるのか。
深耶はどのような答えを見出すことだろうか。それは未だわからない。此処は到達点であり、同時に通過点であるのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
アメリア・イアハッター
聞いてもないことをべらべら喋るのは、確かに大統領って感じ
いいわ、拳と拳の真っ向勝負、受けてやろうじゃない!
敵も腕に何かつけてるし、アレくらいのグローブはOKってことよね
腕にVanguardをしっかり付け準備万端
狙っているUCは回避されても中止できないモノ
なので確実に当てられるタイミングを狙っていこう
とにかくスピード、フットワークで動き続け回避を重視
怪しまれない程度には拳を放っていく
敵の拳が巨大化するのを見た瞬間高速で接近、UCをカウンターで発動
それだけ大きいなら攻撃にも時間がかかる筈
その前に一発でも拳が入れば、もう私の攻撃は止まらないよ
真の姿?
ふふ、ずっと晒してるじゃない
帽子こそが私の真の姿よ
斬撃が刻まれた胸から噴出する血潮を『プレジデント』は冷静に見つめていた。
屈強なる肉体に刻まれた傷痕は簡単に癒えるものではなかったが、鍛え上げられた肉体は頑強なる筋肉によって裂傷を塞ぐ。
「猟兵の『真の姿』は戦闘力を増すだけではないようだね。全てが『個』であるからこそ、法則性が見当たらない。対処をそれぞれに変えないといけないという意味では厄介極まりない存在と言えるね」
『プレジデント』は未だ葉巻を咥え、紫煙をくゆらせ続けていた。
息を吐きだし、整えているのはこれまでの猟兵との戦いが激烈なるものであったからだろう。
「さりとて、諸君らは『オーバーロード』に至らぬ身。ならば、私はそれを見てみたいと思うのだよ」
打ち鳴らされる青と赤の拳。
巨大化した鋼鉄の拳は、ただの一振りだけで竜巻すらも引き起こすだろう。それがオブリビオン・フォーミュラたる者の力であるのならば、恐るべき力である。
「聞いてもないことをべらべら喋るのは、確かに大統領って感じ」
「これは手厳しいな、レディ」
『プレジデント』が見据えるのは、赤い帽子をかぶった女性であった。
軽やかに舞うように戦場に降り立ったアメリア・イアハッター(夢想空流・f01896)であった。
彼女の腕には灯台を模った裁断に火の神を祀る、道を照らす先駆けの光にして、道を拓く旅人の腕たる縛霊手であった。
「いいわ、拳と拳の真っ向勝負、受けてやろうじゃない!」
準備万端というようにステップを軽やかに踏み、アメリアが拳舞の如く戦場を駆ける。
放たれる鋼鉄拳が生み出す竜巻は、アメリアの身体を容易に吹き飛ばすだろう。
なんという力。
これほどの力の差があるのかと思い知らされるほどの圧倒的な拳であった。敵の拳の威力が一撃一撃が重たいものであるのならば、アメリアが勝るのはともかくスピードとフットワークだけであった。
常に動き続け、鋼鉄拳の一撃を躱し続ける。
「どうしたんだい、レディ。ステップを踏むだけでは私には勝てまいよ」
だが、アメリアは簡単には乗らない。
己が狙っているのは、超高速の連続攻撃。
しかし、欠点があるのだ。一撃目を外すと中止できず、大きな隙を生み出してしまう。そうなってしまえば、大地に付すのは己のほうだ。だからこそ、彼女は慎重にならざるを得ないのだ。
「――ッ!」
だが『プレジデント』の言う通りである。躱してばかりでは勝てない。
けれど、アメリアは見たのだ。凄まじい竜巻を起こすほどの鋼鉄拳の一撃。その予備動作を。
あの凄まじい一撃を放つ瞬間、あの鋼鉄腕が巨大化している。
あれだけの巨大化だ、かなり『プレジデント』本人にも負荷がかかっているだろう。ならば、その動作は大きな隙となるはず。
アメリアはそこに賭けたのだ。
「なら、どんどんテンポあげるよ!」
アメリアの瞳がユーベルコードに輝く。それは戦風拳舞(センプウケンブ)。
彼女のステップが軽やかに、けれど、これまでとは異なる次元の速度でもって繰り出される。
放たれる巨大なる鋼鉄拳を見切り、アメリアは頬を掠めながら前に突き進む。
己の勝利は前にしかない。
恐れを捨てろ。
全ての人類をオブリビオン化させるなどさせてはならない。その意志だけで彼女は踏み込み、風をまとった拳を『プレジデント』に叩き込むのだ。
「ほう、私を前にして『真の姿』をさらさずによくぞ、当てたものだ」
「真の姿? ふふ、ずっと晒してるじゃない」
アメリアは風纏う拳を振るい続ける。
その拳は目に元ならぬ超高速の連撃。凄まじい連打の一撃は確かに一撃一撃は『プレジデント』に及ばぬものであったことだろう。
されど、その連撃はまさに旋風のごとく。
削り取るようにはなたれる数百、数千にも及ぶ拳が『プレジデント』の鋼鉄腕さえも削っていくのだ。
「何……?」
『プレジデント』が困惑するのも無理なからぬことであろう。
晒していると言ったのだ。彼女の『真の姿』を。それは全ての猟兵が持つ者であり、一つの法則性すらない混沌の坩堝。
アメリアにとっての『真の姿』とは目深にかぶった古びた赤い帽子。
ヤドリガミたる彼女の『真の姿』とは本体の姿なのだ。
「帽子こそが私の真の姿よ」
アメリアは悪戯ぽく微笑み、しかし風纏う拳の連打を止めない。止まるわけがない。少しでも削る。
次に繋ぐために。そのために彼女は舞うように風とともに『プレジデント』の肉体を削ぎ落としていくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ラブリー・ラビットクロー
らぶの…真の…スガタ…
あれ…?なんだか眠たくなって⎯⎯
【お久しぶりです大統領閣下。以降は私、ビッグマザーがお相手します】
【ビッグマザーシステムは人々の生活を豊かにする為、そして何よりオブリビオンの脅威から守る為に人類の叡智を集めて開発されました】
【そしてラブリーはオブリビオンストームの脅威から人類を防衛する為に作られたフラスコチャイルドです。全てのリミッターを解除したラブリーは全ての偽神兵器を解放しており、オブリビオンストームを喰らいます】
【ネットワークに接続しました。アシストモード《拳闘》をインストール。六翼は防御と推進力に使用し、兎の耳は空間や音を全て把握します】
【人類防衛を開始します。】
「実に興味深いな。たった数刻。それだけで猟兵達の見せる姿は千差万別。どれをとっても法則性がない。まさに混沌の坩堝とでも言うべきか」
『プレジデント』は己の身体を傷つける猟兵達の攻撃を受けても尚、爽やかに笑っていた。
戦いを楽しむのではなく、ただ目の前の事象をもって笑っていたのだ。
実に多彩であると。
かつて人種のサラダボウルとさえ言われた国の『大統領』を務めた己でさえ、このような多種多様は想定していなかった。
だからこそ、今目の前に立つフラスコチャイルドたるラブリー・ラビットクロー(とオフライン非通信端末【ビッグマザー】・f26591)を迎え、鋼鉄の拳を打ち鳴らすのだ。
「らぶの……真の……スガタ……あれ……? なんだか眠くなって――」
ラブリーの瞼が重くなっていく。
敵を前にしているのに。精神波は確かに彼女の闘争心を刺激し、煽られているというのに、彼女は眠くて仕方がなかった。
目の前にいるオブリビオン・フォーミュラ『プレジデント』が己に迫るのをどこか遠く見ていた。
「こうしてまたフラスコチャイルドの到達点をみることになるとはな、『ビッグマザー』!」
振るわれる拳の一撃を躱し、ラブリーは……いや、『ビッグマザー』が、その視線を向ける。
【お久しぶりです大統領閣下。以降は私、ビッグマザーがお相手します】
それは非通信端末たる『マザー』の言葉であった。
ラブリーの意識は深層に。
表層に現れるのは『ビッグマザー』であった。彼女がタグルはラブリーというフラスコチャイルドの肉体であり、その身に宿した偽神細胞である。
「the Perfect Humanoid(パーフェクトヒューマノイド)というわけか。君の存在意義は理解しているかね」
【ビッグマザーシステムは人々の生活を豊かにするため、そして何よりオブリビオンの脅威から護る為に人類の叡智を集めて開発されました】
その存在意義は語るまでもない。
今の言葉が己の全てであり、己が守らねばならぬ者のための存在意義。
システムであるとか造られた存在であるとかは関係ない。
あるのは己のレゾンデートルを全うし、その上で愛するものを護るという絶対なる意志。
振り下ろされる拳を『ビッグマザー』は躱す。
この肉体を傷つけはさせないと、迫る連撃を躱す。あの拳が生み出す竜巻の効果範囲を読み切って彼女はラブリーの身体を動かす。
【そして、ラブリーはオブリビオンストームの脅威から人類を防衛するために造られたフラスコチャイルドです。全てのリミッターを解除したラブリーは全ての偽神兵器を解放しており――】
「オブリビオンストームを喰らい尽くすか。いいだろう。どこぞのフラスコチャイルドとは違う方向性で到達点を目指すか。ならば」
『プレジデント』が笑っている。
何がおかしいのか。
いや、おかしいとさえ思っていないだろう。喜ばしいとも思っていないだろう。
なぜなら、それは己の全人類のオブリビオン化計画を阻むものであったからだ。
「――ならば、諸君らの存在をもって私を否定するがいい!」
【ネットワークに接続しました。アシストモード《拳闘》をインストール】
瞳に宿るはユーベルコードの輝きと愛情ゆえの発露。
完成されたフラスコチャイルドではなく、不完全ながらも愛すべき者のために力を振るうラブリーという猟兵だからこそ至ることのできた境地。
六翼が光を噴出して戦場を駆け抜ける。
迫る竜巻の如き暴風を防ぎながら、ウサギの耳は空間や音を全て把握する。
息遣い。
拳を切る音。
あらゆる音を捉え、鼓動の音さえも捉えたラブリーが迫るのだ。
【人類防衛を開始します】
『ビッグマザー』がラブリーとともにある。
ただ、それだけでいい。今はそれでいい。
みなぎる拳の一撃が『プレジデント』の拳をかいくぐり、その屈強なる身体を打ち貫く。
轟音が響き渡り、その一撃をもって荒廃した世界を防衛する楔と為すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
播州・クロリア
全世界の人類のオブリビオン化!?
(手足が甲虫のような錆色の殻に覆われる)
そんなこと絶対に
(口元がマスクのような殻に覆われスズメバチのように左右に開く)
サセナイ!
(翅が縮小すると替わりに三対の爪のような虫の足が生える)
アァ!?ナンダコノ姿!?
イヤソンナコトハドウデモイイ...
今ハ...今ハタダ...殴リタイ...
踊ルコトヨリモ...死ヌマデ、イヤ死ンダ後モ殴リタイ
ダカラ「アンタ」二体ヲ貸ス
(UC【蠱の玩具】を発動)
サァ大統領サンヨ...殴リ合オウカ
永遠二付キ合ッテヤルヨ!
(『オーラ防御』で蜂蜜色のオーラを身に纏いながら殴りかかる)
身を穿つ一撃を持ってへし折られる骨の音が響き渡る。
けれど『プレジデント』は倒れない。倒れないのには理由がある。その瞳には狂気があった。
身に流れるは大統領魂。
数多のものを喪ってきた。けれど、それは過去でしかない。今、己が何を為すべきかを知っている。
滅びるのならば、滅びないようにしなければならない。
生命あるものが必ず滅びるのならば、永遠にしなければならない。それこそが『全人類のオブリビオン化計画』である。
「私は、私の職務を全うするとしよう。来たまえ。我が『全世界の人類のオブリビオン化計画』を阻むのならば、私の拳でそれを砕こう」
高鉄の拳が打ち鳴らされる。
どこまでも爽やかに。されど、狂気をはらんだ瞳が猟兵たちを見据える。
「全世界の人類のオブリビオン化!?」
播州・クロリア(踊る蟲・f23522)は己の身体が変貌していっているのに気が付かなかった。
己の見の中にある何物かがせり出してくるのを感じてはいたかもしれないが、それがなんであるのか理解していなかったのかもしれない。
自身の細胞の記憶。
意識しているわけではない。けれど、超巨大な人型の虫の影をクロリアは感じていたことだろう。
手足が甲虫のような錆色の体に覆われていく。
「そんなこと絶対に」
口元がマスクのように甲殻で覆われ、スズメバチのように左右に牙を開閉する。
その姿はまさしくキメラめいていたことだろう。
「千差万別と言ったが、面白いな。その甲虫の甲殻と私の拳どちらが上かね?」
『プレジデント』の言葉をもうクロリアは聞いていなかった。
もはや意識は、溢れ出る闘争心に支配されていた。
「サセナイ!」
羽根が収縮し、代わりに三対の爪のような虫の足が生える。まさしく異形たる姿。
「それが君の『真の姿』か……興味深い」
「アァ!? ナンダコノ姿!?」
クロリアは己の姿の変貌に驚愕していたが、それでも構わなかった。そんなことはどうでもいいのだ。
己の身を突き動かすのは、一体何だ。
言葉に出来ぬほどの衝動が襲ってくる。そうだ。今は、今はただ目の前の敵を殴りたいと思っていた。
踊ることよりも。
何よりも、死ぬまで。いや、死んでも殴りたいとさえ思っていた。
己の中にある衝動が本当に自分のものかと訝しむ余裕もなかった。みなぎる。滾る。どうしようもない衝動を己では制御しきれないとさえ思ってしまう。
この衝動の発露は。
「『アンタ』ニ体ヲ貸ス」
瞬間、彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
明け渡したことを後悔することはない。はなたれる竜巻を伴う拳の一撃をクロリアは真っ向から打ち合う。
「サァ大統領サンヨ……殴リ合オウカ」
「この一撃をかき消すか。いいとも! 来たまえ!」
「永遠ニ付キ合ッテヤルヨ!」
其処からは暗黒と琥珀のオーラが激突し、明滅する。拳と拳が激突し、轟音が響き渡る。
互いの身に流れる血潮が沸騰するほどの激闘。
迸るユーベルコードの輝きが、クロリアの中にある巨大な虫の影を大きくしていくことだろう。
血反吐を吐きながらも、拳を振るう度に充足感が己の中を満たしていく。
殴っても、殴っても、満たされることのない感情のほとばしりを叫びながら、クロリアは『プレジデント』を圧倒するほどの膂力でもって拳を撃ち抜き、砕けた拳のまま叩きつけるのだ。
己の生命の叫びを――。
大成功
🔵🔵🔵
須藤・莉亜
「なんともまァ、面白そうな敵じゃねェか。」
良いぜ。全力で殴り合おうぜッ…‼︎
UCで自身を強化。後は全力で殴り合いだ。
敵の殺気を感じ取って動きを見切り殴って行く。
それに加えて、吸血の技能をフル稼働し敵の血を奪い続けておくか。オレの欲しいと思った血は直接触れなくても勝手にオレの元にくるしな。
血を失えばちったァ動きも鈍るだろうし、オレの体力も回復出来る。一石二鳥ってヤツだ。
ミスってアッパーを食らっちまった時は、オレの尻尾を敵の腕に巻き付けて一緒に空まで上がってもらうかな。
「よお、空の旅はどうだ?」
後は腹パンでもして地面に落としてやるか。
「テメェの葉巻はオレが貰っといてやる。」
安心して落ちな。
猟兵と『プレジデント』の拳の打ち合いは轟音を響かせる。
竜巻の中で光が明滅するはユーベルコードの輝き。恐るべき『オブリビオン・フォーミュラ』たる『プレジデント』は真の姿を開放した猟兵たちとの戦いを経ても尚、未だ健在であった。
竜巻の中から飛び出した『プレジデント』が膝をつく。
どれだけ強大な敵であったとしても、猟兵は紡ぐ。一人で打倒できないのだとしても、後に続く者達のために力を振るうのだ。
「ふぅ――……一服させてももらえないようだね」
葉巻の火は未だ消えてない。
咥えたまま『プレジデント』は己の前に立つ猟兵におどけたように微笑んでみせた。
「君の姿はそれか。ほとほとに猟兵とは混沌を煮詰めたような存在のようだ。時間質量論では到底説明できないではないか」
そんな彼の前に立つのは、傲慢特権(レガリア)、その権化たる存在であった。
須藤・莉亜(ブラッドバラッド・f00277)はソーシャル・ネットワークの精神波によって闘争心を顕にした『真の姿』をさらけ出す。
吸血鬼たる己の衝動を全て開放した姿。
凶悪なる姿にかつてのけだるげな雰囲気はどこにもなかった。
「なんともまァ、面白そうな敵じゃねェか。良いぜ。全力で殴り合おうぜッ……!!」
そう叫んだ瞬間、『プレジデント』の拳が真下から強襲する。
油断も何もなかったはずだ。けれど、死角からはなたれる拳のかち上げる一撃を莉亜は躱すことができなかった。
殺気を感じた。
けれど、その瞬間にはすでに己の顎を『プレジデント』の拳が捉えていた。
顎から上が消し飛ぶ。
「……ハッ! 面白ェッ!!」
瞬時に再生する顎部。莉亜は続けざまにはなたれる竜巻の衝撃波を受けながら、身から血を噴出させながら『プレジデント』と殴り合う。
これまで猟兵たちが刻んだ傷痕から敵の血は奪える。己がほしいと願えば、血は己の手中に在るのだ。
その血を持って身を再生させる。
瞬時に、それこそ傷つけられたという知覚すらないほどに。
吹き飛ばされそうに成れば己の尻尾を巻きつけ、共に空へと、思えば引きちぎられる。
なんたる膂力。
「そうはさせんよ。吸血鬼君」
「遅ェんだよ!」
それは一瞬だった。己の傷を塞ぐ再生の力は一瞬で元通りに復元する。ならば、引きちぎられた尻尾もまた同様である。
アッパーカットの一撃を受けて尚、莉亜は駆け引きを続けていたのだ。
引きちぎられた尻尾などブラフ。即座に再生するからこそ、再び巻き付けられた尻尾とともに『プレジデント』は空へと舞い上がる。
「よお、空の旅はどうだ?」
「久方ぶりであるがね。どうせならが戦闘機に乗りたかったのだが」
「そうかよ! なら墜落するしかねぇな!」
空中で拳の応酬が行われる。凄まじい連打。連撃。あらゆる技巧を凝らし、敵の隙を突き、ガードをこじ開ける。
それは舞い上がった空から大地に落ちる瞬間までの僅かな応酬出逢ったが、数千に及ぶ拳の激突は空に火花を散らす。
「一服もさせてもらいたいものだが!」
「いいや、その必要はねェ。テメエの葉巻はオレがもらっといてやる」
莉亜の拳がついに『プレジデント』の顔面を捕らえる。両手でホールドし、彼の頭が振り上げられる。
ボクシングでは反則。けれど、関係ない。
これは闘争だ。ソーシャル・ネットワークが煽った闘争であるのならば、問題はないだろう。勢いよく莉亜は『プレジデント』の額を割るほどの頭突きの一撃を見舞い、彼を大地へと叩きつけるのだ。
「――上等なの吸ってるじゃねェか」
大空に在りて、紫煙を吹き出す莉亜の手にあったのは『プレジデント』の葉巻。
それは勝利の証とでも言うべき戦利品だった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
「『オーバーロード』に至る道を見せろ?」
わかったよ大統領……ううん、ご主人さま! その命令しかと承ったよ!
大統領の言葉を『命令』と受け取って【マスターズ・オーダー】を発動させて、大統領に挑もう。
ボクシングで戦うけど、わたしは『ヒールメイド』なので、ここは反則たっぷりでいかせてもらおう。
普通のパンチは、基本反則のためのフェイント。
フックと見せかけた肘でのバッティング(エルボー)や、キドニーブロー、
足を踏んでからの、ぎりぎりアウトなローブローなどを狙っていくよ。
大統領の攻撃は【早業】と【見切り】で躱していきたいと思うよ。
一撃、重そうだから、わたしだと飛ばされちゃいそうだしね。
道は、見えたかな……?
大地に叩き落された『プレジデント』が立ち上がる。
その姿は屈強なる偉丈夫。未だ健在であることを示すように拳を打ち鳴らし、爽やかに笑う。
誰にも安心を与える笑顔であったことだろう。
どこにも不安などないというように、その鍛えられた胸板を誇るように張る。まさしく『大統領』と呼ぶに相応しい存在であった。
「諸君らは未だ戸口に立っている自覚すらないようだな。『オーバーロード』に至る道を見てすらいない。すでに其処にあるというのに」
彼は猟兵たちに言うのだ。
『オーバーロード』に至る道を示して見せろと。
それこそが『真の姿』を開放することと関係しているのか、それとも別の異なる意味があるのか。
けれど、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)はうなずいた。
「わかったよ大統領……ううん、御主人様! その命令しかと承ったよ!」
その言葉に『プレジデント』は苦笑いしていた。
「ハウスメイドは間に合っているつもりなのだがね……だが、それもまたユーベルコードなのだろう?」
彼の言葉通りであった。
他者からの命令を承諾することによって、理緒の体はメイド服から陽炎のような靄を噴出させ、命令を遂行するために力を増大させるのだ。
それがマスターズ・オーダー。
瞳に輝くユーベルコードが理緒の姿を『ヒールメイド』に変貌させるのだ。
「わたしは『ヒールメイド』なので!」
「ほう、か細いレディが私に立ち向かうとは。些か心が痛むものであるが、私に挑むのならば加減など不要だろうな!」
打ち鳴らされた鋼鉄の拳がはなたれる。
竜巻すら生み出す拳の一撃は間近で見れば、さらに巨大なものであった。
一撃を受ければ己は砕け散ってしまうのではないかと思えるほどの一撃。
されど理緒は踏み出す。踏み出すことをもう決めたのだから、後退の意味はない。ならばこそ、軽いフットワークで拳の連打を躱す。
躱して、躱して、己の一撃を叩き込む。
フックに見せかけた肘でのバッティング。背後に回ってからの背面への打撃。足を踏んでからのローブローを叩き込む。
それら全てが反則であった。
「少々手癖足癖の悪いレディのようだ……――だが!」
吹き荒れる竜巻の如き拳の一撃は理緒の体を吹き飛ばす。
場外乱闘など言うまでもない。
けれど、理緒は己が決めたことをやり通す。
ヒールメイドとして立ち振る舞うのならば、どこまでも反則を重ねるだろう。立ち上がり、立ち向かう。
「向かってくるか。超克の道を進む……それこそが人の意志であるというのなら!」
「道は自分で作るものでしょう!」
はなたれる理緒の拳が『プレジデント』の脇腹を捕らえる。重く響く拳の一撃は、『プレジデント』の顔を歪ませる。
屈強な体。
どれだけ鍛えていても、人型であるからこそ鍛えることのできぬ箇所がある。
それは内蔵である。
筋肉という鎧に覆われていたのだとしても、今の理緒の拳は命令を完遂するために尋常ならざる高みにまで昇華されている。
それら全てを活用してはなたれる内臓を揺らす一撃は、言わばピンポイントで千枚通しを突き立てるようなものであった。
「道は、見えなくても。進めば、必ず未来にたどり着くものだから!」
だからこそ、理緒はたおやかに微笑んで言うのだ。
「御下命、仰せつかりました」
放たれたレバーへの一撃が『プレジデント』の巨体を揺らし、大地に倒れ込ませるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
フィア・シュヴァルツ
「我はフィア。昔は人の身体であったが、色々無くしてな。今や『昔、人だった事がある』というだけの、しがない不老不死の美少女魔術師だ」
確かに、こやつからは人の上に立つ者の威圧感は感じるな。
だが、我は伊達に偉い奴に反抗し続けてきたわけではない。
宮廷魔術師になれとか、不老不死の術を教えろとか、とにかく偉い奴は気に食わん!
お前もきっと同じに違いない!
「さらに超克『オーバーロード』しろだと?
偉そうに我に命令するでないわー!」
超克しろというなら超克してやろうではないか!
我の最強魔術【隕石召喚】を頭上から落としてくれるわ!
「くくく、人の上に立つ者なら、これを避けずに拳で割ってくれるのだろうなあ?」(邪悪な笑み
「侮っていたわけではないが、中々に効くな……さすがの私も内蔵まで鍛えていたわけではないということか……」
だが、それでも『プレジデント』は立ち上がる。
彼がボクシングを選んだのならば、一度のダウンで戦いが終わることはない。
ボクシングとは拳闘である。
拳のみで戦う闘技である。けれど、テンカウントの内に立ち上がって戦う意志さえ見せれば、それは試合続行を意味するのだ。
「我はフィア。昔は人の体であったが、色々なくしてな。今や『昔、人だったことがある』というだけの、しがない不老不死の美少女魔術師だ」
フィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)は『プレジデント』の言葉にかぶせるようにして言葉を紡ぐ。
似た境遇であるとも言えたことだろう。
目の前にたつ『プレジデント』の姿は猟兵達によって攻撃を受けて、満身創痍である。
けれど、フィアは感じていたのだ。シンパシーと言ってもいいだろう。
人の上に立つ者の威圧感。
その地位に至るまでにどれだけの反抗を続けてきたのかなど余人には伺い知る事もできないだろう。
けれど、それでも理解したのだ。
己もまたそうであったのだ。
無駄にふんぞり返った者たちから言われた言葉を今でも思い出せる。
宮廷魔術師になれとか、不老不死の術を教えろとか、とにかく偉いやつは気に食わないのだ。
「お前もきっと同じに違いない!」
びしっと指出す『プレジデント』はファイティングポーズを取りながら、にこやかに笑った。
「反骨精神は認めるがね。ハングリーだったのは、色々あった時の話だ。今の私にそれはないよ。ああ、確かに諸君らに私の計画を阻まれてなるものかという闘争心はあるのだが」
繋がったソーシャル・ネットワークからの精神波が言うのだ。
己の姿をさらけ出せと、闘争心を煽ってくる。
混戦したネットワークは猟兵にまで影響を及ぼす。
数多の猟兵たちが真の姿をさらけ出し、己の力を持ってあらゆるものを踏破する。
それこそが超克『オーバーロード』であるというのならば、フィアは傲岸不遜であると断じるのだ。
「超克『オーバーロード』しろだと? さっきから頭の中にガンガン垂れ流してきおって! 偉そうに我に命令するではないわー!!」
ぷっつんした。
我慢ならなんかった。どれだけシンパシーを感じていたのだとしても、目の前の存在が己に命令する以上、フィアは抗うものであるのだ。
正しいとか正しくないとか関係ない。
自分を自身の都合だけで動かそうとする者にたいしてフィアは抗う。そこに立場もクソもあったものではないのだ。
「超克しろというなら超克してやろうではないか!」
どれだけ空腹であったとしても、関係ない。
限界を超えることなど、すでに此処連日のアポカリプスヘル放浪の旅でしてきた。空腹に次ぐ空腹。
自食作用さえも振り切ってフィアの瞳がユーベルコードに輝く。
「くくく、人の上に立つ者なら、これを避けずにこぶしで割ってくれるのだるなぁ?」
血走った目。
限界を超えている目であった。背中と腹がくっつきそうなほどの空腹に苛まれながら、フィアは隕石召喚(メテオストライク)でもって『プレジデント』に突きつけるのだ。
抗う理由を。
己が如何に己を超えてきたのかを。
天より招来される隕石の一撃がワシントン・モニュメントをも破壊しながら『『プレジデント』に放たれる。
その一撃は周囲をフィア諸共吹き飛ばすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
陽向・理玖
大統領って言うから
口先だけなのかと思ってたけど
…熱いな
本気で行く
真の姿解放
先の戦争で何回か晒した
どんな姿でも
俺は俺だ
衝撃波撒き散らし残像纏いダッシュで間合い詰めグラップル
ジャブからのボディーブローと見せかけフェイント
回り込みストレート
悪ぃな
殴り合い得意なんだ
この姿でも変わんねぇ
むしろ頭の中はクリアで
思考は澄み切ってるし
戦闘知識でボクシングの動きは理解してる
攻撃見切りカウンター
俺のジャブは重いぜ?
拳の乱れ撃ち
大統領魂って何だ?
熱い演説か?
喋る前に加速し踏み込み
鋭く顔面に蹴り
キックボクシングもボクシングに違いねぇだろ
それとも正義を気取るつもりか?
認めらんねぇ
限界突破し見切られぬ速さで鋭く懐へ
UC
迫る巨大隕石を己の拳一つで砕いた『プレジデント』は、その身に宿す『大統領魂』でもって笑った。
どこまでも爽やかな笑顔。
貼り付けたような笑顔であったけれど、その身に宿る魂は確かに熱きものであったのだろう。
屈強なる肉体は、見るものに威圧感を与えるのではなく安心感を与えるためのもの。
その笑顔はあらゆる者の不安を取り除くためのもの。
オブリビオン・フォーミュラであったとしても『プレジデント』は確かに『大統領』と呼ぶに相応しき存在であった。
口先だけの存在かと思っていた、と陽向・理玖(夏疾風・f22773)は素直に過ちを認めた。
そして、その上で呟くのだ。
「……熱いな」
だからこそ、己もまた本気で行かねばならない。真の姿を開放する。これまで幾度か開放し晒した姿。
されど、どんな姿でも己であることを理解している。
どこまで言っても己は己なのだ。それが変わらぬことを彼はもう知っている。
「それが君の『真の姿』か。中々に精錬されつつもワイルドな出で立ち。どこぞの修行者の如き姿だな。ならば、来たまえ」
微笑む表情のまま、満身創痍の『プレジデント』が手招きする。
それに理玖はためらうことなく戦場を駆け抜ける。衝撃波を伴いながら、残像纏う速度で持って『プレジデント』へと肉薄する。
一瞬で間合いを詰め、己の拳を叩きつけるのだ。
ジャブからのボディーブロー……そしてフェイントからの回り込んでストレート。
そのコンビネーションのどれもが躱すことのできぬ必中の一撃。
「悪ぃな。殴り合い、得意なんだ」
しかし、理玖は見ただろう。それらの拳を放たれても尚、『プレジデント』は微動だにしていなかった。
微笑む笑顔さえも陰ることはなかった。
「良い拳だ。得意だと言うだけはある。けれど、まだ足りない」
吹き荒れる『プレジデント』の拳。
その連打はジャブであっても必殺の一撃と呼ぶに相応しい一撃であった。それらが高速で放たれ、襲いかかる。
その拳の軌跡をどこか遠く俯瞰するように見ていた。
頭の中はクリアで思考は澄み切っている。互いの拳がぶつかる。ジャブ同士であったとしても、己の拳が重く硬いことを知っている。
けれど、拳が砕ける。
痛みが走っても関係などなかった。互いの拳が砕けているにも関わらず、己の思考は澄み切っているし、『プレジデント』もほほえみを絶やさない。
「大統領魂って何だ? 熱い演説か?」
答えを聞くよりも早く踏み出していた。放たれるのは蹴撃。
それがまともに『プレジデント』の顔面を捉え、血飛沫が舞う。キックボクシングもボクシングには違いがないと彼は蹴撃を放ったのだ。
「それとも正義を気取るつもりか?」
「いいや。少年。大統領魂とは――!」
『プレジデント』の瞳がユーベルコードに輝く。それは如何なる反則も、いかなる悪漢の攻撃も、何もかも受け入れ包み込む度量の事を言う。
あらゆる事象を飲み込み、事態に対処することのできる度量がなければ、かの大国を律することなどできようはずもない。
「あらゆるものを受け入れ、あらゆる問題に果敢に立ち向かう勇気と正義の象徴のことを言う――!」
故に、『プレジデント』の拳が振るわれる。
暴風のごとき打撃。その嵐を受けて理玖の身体が吹き飛ぶ。凄まじ重さ。これが大国の頂点に立つ者の拳であるというのならば、なんたる重さであろうか。
『プレジデント』は未だ追撃をしない。
何故、と思うことは野暮であった。
これは悪魔でボクシング。倒れた者に追撃を加えることはないのだ。
故に、理玖は呟く。
「認めらんねぇ……認めらんねぇ……!」
立ち上がる。
どれだけ言葉を弄しようとも、全人類オブリビオン化計画などを標榜する者の言葉を、信じられるわけがない。
故に彼は走るのだ。限界を超えた速度。鋭さでもって『プレジデント』の懐に飛び込み、拳の一撃を振るう。
灰燼拳たる一撃は『プレジデント』を吹き飛ばす。
己に肉体の限界を超えた一撃は、己の肉体すらも自壊せる。血潮が吹き出し、けれど膝をおることはない。
これは己の正義と『プレジデント』の正義、そのぶつかりあいであるのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
厳・範
元々は武侠だったお爺、血が騒いだ。
アポヘルの現状も憂いている。
人間形態での参加。真の姿は…若い頃の姿か。髪色などは変わらぬ。
拱手しつつ。故郷での礼儀でな、身にしみているやつよ。
さて、あえて武器は使わぬが…わしは足技主体なのよな。
即【賭け狂い】発動。少しでも幸運をこちらへ。
さて、その腕は厄介な上にここは狭い。上に飛んで避けたり、下を掻い潜るしかなかろう。
だがその後、わしは足で蹴る。本性の黒麒麟姿を晒しておらぬとはいえ、普段からの身軽さをなめるな。
見切りはうまく作用せぬよ。八卦衣で目測も上手くいかぬからな。
…誰が全世界オブリビオン化を許すか。
それは異界の礼節であった。
『プレジデント』がそれを理解していたのか、していないのかは問題ではない。
己がそう在るべきとするからこそ、その拱手は知識なくとも人の上に立つ者に伝わることだろう。
「これはこれは……知識がなくとも分かるよ。貴殿の高潔さがね」
爽やかな微笑みをたたえながら、満身創痍たる『プレジデント』が厳・範(老當益壮・f32809)を前に一歩を踏み出す。
それはともすれば、敬愛の感情であったのかもしれない。
けれど、範は理解している。
間の前の好漢を今から討たねばならぬことを知っている。それは互いが猟兵とオブリビオンであるがゆえに。
滅ぼし、滅ぼされる間柄であればこそ。
そして何よりも、彼にはさせてはなぬ理由があった。
「故郷の礼儀でな。身に染み付いているやつよ」
「いいや、礼節とは如何なる世界であっても大切なことだよ。それだけで敬意に値する」
『プレジデント』と範の間に言葉は少なかった。
即座に彼の瞳がユーベルコードに輝き、みなぎる命知らずの狂気が発露する。
あらゆる運気を奪い、他者に不幸を与える力。
賭け狂いは文字通り、今対峙する『オブリビオン・フォーミュラ』たる『プレジデント』との戦いに合って武器を使わぬというふりを承知で挑むものである。
真なる姿は、己の若い頃の姿。
言わば全盛を誇った姿である。なればこそ、徒手空拳で戦うことなど是非もなし。
踏み出した瞬間、『プレジデント』より放たれる拳の一撃は竜巻すら生み出して放たれる。
拳であったとしても広範囲に渡る衝撃波はそれだけで己の身体を打ち据えるだろう。
「その腕は厄介な上に……竜巻で周囲を囲うとはな」
「何、リングのようなものであるさ。この竜巻の中はね!」
振るわれる拳を躱す姿は、まるでアクション映画さながらであったことだろう。『プレジデント』はカンフースターのような動きを見せる範の姿に驚嘆しつつも、己の拳が当たらぬことを怪訝に思っていた。
卓越した技量であることは言うまでもない。
けれど、何故か己の拳の軌道が逸れるのだ。
「見切りが上手くいかぬだろう。なぜなら、お前の運気をわしが吸い取っておるからな」
それに、と八卦衣は目測を誤らせる。
ゆらりと揺れるように飛び跳ねれば、それだけで拳は軌道を見失うだろう。そこに範の蹴撃が飛ぶ。
顔面を捉えた一撃を持ってさらに、範は舞い上がるようにして蹴撃の連打を打ち込み続ける。
それはまるで蝶が舞うように舞い上がる華麗なるものであったことだろう。
「……誰が全世界オブリビオン化など許すか」
それは厳然たる決意であった。
オブリビオン化するということは即ち死である。
全ての生命を愛する者であるからこそ、それは許されざるものである。己の本性たる黒麒麟の感情が迸る。
許せるわけがない。
己は誓ったのだ。
己の親友が如き英傑が望んだ世界の平和。人々の安寧。
それを永遠などという耳障りの良い言葉に置き換えたこと。それを断じて許されぬと己の魂が言っている。
「ここでその計画は水泡に帰すことになるであろうよ」
何故ならば、己と親友の約束事であるからだ。
約束は必ず果たす。それが礼節を重んじる己が化したことである。そして武侠であればこそ、その仁義を貫き通すために己の力を振るうことに躊躇いはない。
放たれる蹴撃の一撃が『プレジデント』を圧倒し、その巨躯を大地に打倒するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ジャック・スペード
真の姿
竜を模した装甲を纏い
機械剣で造られた尾を揺らす
御機嫌よう、Mr.プレジデント
お前の企みを挫きに来た
ヒトは有るが侭の姿が一番キレイだ
オブリビオンになんて、させないさ
正真正銘の殴り合いか、シンプルで良いな
全身全霊を以て受けてたとう
渾身の怪力で拳を振う
小細工なんて不要だろう
見切って、避けて、拳を突き出す
ただ其れだけだ
転送は勿論、拒む
縁のない世界であろうと
ヒトの世の危機は見逃せない
ダメージは気合で堪えよう
欠陥品である当機は壊れやすい
だが、疵はチェネルが粘液で覆ってくれる
自己強化しながら戦闘継続
腕が爆ぜたらRosaspinaを装着し
それで殴るとしよう
傷付く程に強く成れる
それが、ヒーローだからな
「御機嫌よう、Mr.プレジデント」
その言葉は機械音声とは思えぬほどの滑らかなものであった。
響き渡る声に『プレジデント』はにこやかな視線を向ける。それは爽やかささえ感じるほほえみであったし、見るものに安心感を与えるものであったことだろう。
しかし、ジャック・スペード(J♠️・f16475)は、そこに底知れぬ威圧感を感じる。これが『オブリビオン・フォーミュラ』たる『プレジデント』であると機械の身であっても実感できたのである。
すでに彼の身体は真の姿を開放している。
竜を模した装甲を纏い、機械剣で造られた尾を揺らしながら一歩を踏み出していた。
ここで臆してはならない。
己は何のためにこの戦場に踏み出したのか。
「お前の企みを挫きに来た。ヒトは在るが儘の姿が一番キレイだ。オブリビオンになんて、させないさ」
「在るが儘とは、どのような状態を示すんだい? ヒトは変わっていく。老いていく。どうしようもなくね。それを永遠に美しいままにしようというのは間違いではないのではないかね?」
鋼鉄の拳が打ち鳴らされる。
確かにヒトは老いる。ウォーマシンたる己にはないことだ。
けれど、それでもジャックは知っている。
己を救ってくれた優しさは永遠の中にはないのだ。己が触れた機械の身でも感じることのできた優しさは、変わるからこそ生み出されてきたものだ。
かつての人が人から人に紡いできたからこそ、他の誰かに優しくできるという感情。
それは彼をウォーマシンではなく、『ヒーロー』足らしめたものである。
「人の優しさが『こころ』を宿してくれた。その温もりと恩義に報いる為には――!」
ジャックが疾走る。
互いに徒手。渾身の怪力で拳を振るう。小細工など不要である。全身全霊を持って『プレジデント』の拳と己の拳がぶつかり、ひしゃげていく。
鋼鉄の拳同士。
火花が塵り、砕けた装甲が弾き飛ばされていく。
拳と拳のぶつかり合いが嵐を呼ぶようにジャックと『プレジデント』を取り囲み、リングのように形成していく。
「『こころ』など変わっていくものの最たるものさ。君が得たものは一時的なものでしかないのかもしれないぞ? それでも、そんな不確かなもののために君は戦うというのかね?」
死角から放たれるアッパーカットの一撃がジャックの顎部をえぐる。
けれど関係ない。転送されそうになるも、それを拒む。身体が軋み、あらゆる場所にエラーメッセージが頻出するのを無視して、彼は一歩を踏み出した。
あの凄まじい一撃は躱せない。
もう一撃を受ければ、自分の頭部は消し飛ぶだろう。けれど、それでも愚直に戦うしかないのだ。
己にできることは唯一つ。
全身を漆黒の粘液が覆い、砕けた装甲と顎部に充填されていく。破損など気にしてなど居られない。
「戦うさ。どれだけ己の身が傷つくのだとしても、それでも戦う。それでも強くなる。それが――」
彼の瞳がユーベルコードという意志ではなく、彼に『こころ』を宿した優しさによって輝く。
激突した拳が、腕が爆ぜる。
「そのような犠牲のない世界にすると私は言っている!」
振り抜かれた拳が己の機体を破壊する。粘液が間に合わない。けれど、ジャックの瞳は敗北に喫してはいなかった。
煌めくはやはり『こころ』。
もしも、己の身体を突き動かすものが魂というものであるのならば、それはきっと己を助けてくれた彼らが与えてくれたものである。
ならばこそ、彼は蔦薔薇の意匠と剣の紋章に彩られた、銀の鈎を爆ぜた腕に装着し、振りかぶる。
アッパーカットの一撃が見えた。
「それでもと言うのが、ヒーロだからな!」
下からかちあげられる拳の一撃を身を反らして避けるのではなく、あえて受けに行く。
ギリギリでかすめるようにして首を傾けながら振り下ろされる銀の鈎が『プレジデント』に撃ち込まれる。
どれだけ変わっていくのだとしても、あのぬくもりを感じた瞬間だけは己の中で変わらない。
それはこれからどんなことが己の身に降りかかるのだとしても、決して揺らがぬことであると示すようにその一撃をジャックは叩き込むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
堂々とした振る舞いと邪悪では無い人格。
確かにナイスガイな大統領さんですね♪
(一礼して)それでは私は人がありのまま幸せに暮らせるように、全力を尽くしてお相手します。
真の姿になってUC発動、過去に見たボクシング作品(主にマンガ)を思い出して構える。
彼の攻撃は第六感・見切り・ダンスによる舞うような体さばきで躱し、躱しきれ無いジャブ等は腕に纏ったオーラ防御とUC効果で受け流す。
彼に敬意を表し、有名なボクシング技を再現。
プラズマの属性攻撃を右拳に宿し、念動力にて電子スピンをコントロールして形成したプラズマスパイラルを衝撃波と共に打ち出す貫通攻撃。
「ギャラクティカ・マグナム!」
彼を遥か遠くに吹き飛ばします
幾度の打倒があった。
『オブリビオン・フォーミュラ』たる『プレジデント』はその度に立ち上がってきた。それもテンカウントの内に。
それは彼がボクシングを志すからであり、同時に胸に秘めたる『大統領魂』の為せる業であったからだろう。
「ぷっ――……ふぅ……葉巻がないのは寂しいが……これはこれは。見事な神性である。やんごとなき位階の神々とお見受けするが?」
その恭しき礼儀の前に大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)は、『プレジデント』が堂々としたふるまいと邪悪ではない人格に確かにナイスガイであると理解しただろう。
けれど、対峙してわかる。
やはりオブリビオンである。猟兵である己と対決し、滅ぼし、滅ぼされる間柄の存在であると理解するのだ。
「大町・詩乃と申します。私は人がありのまま幸せに暮らせる様に、全力を尽くしてお相手させていただきます」
彼女は真の姿、その神性解放(シンセイカイホウ)によって本来の神としての姿を取り戻す。
瞳に輝くのはユーベルコード。
その輝きを前に危害あるものすべてを浄化消滅する若草色のオーラを纏い、扇状に降り立つ。
胸に抱くは人々や世界を護りたいという想い。
それはこの荒廃した世界にあっても変わることのない想いであった。
「見様見真似ですが」
構える。過去に見たボクシング作品。その主人公たちは強大な敵を前にして臆しただろうか?
いや、決して恐れなかった。
例え負けるとわかっていたとしても、彼らは立ち向かったではないか。
「ファイティングポーズを取ったからには、戦う意志があるとみなす。テンカウントの内に立ち上がり、相手よりも強烈な打撃を打ち込む。些かレディに対しては刺激が強いと思われますがね」
だが、それでも『プレジデント』は先制してこない。
まるでレディファーストだとでも言うかのように悠然と構えているのだ。詩乃は踏み込む。
この一戦を踏み込んだ瞬間、目の前の敵は己を女性だとは扱わないだろう。己と対等なる存在として全力を持って力を振るうだろうという予感があった。
しかし、その拳の連打の一撃を舞うように躱す。
神としての第六感。それがなければ、詩乃の身体は拳に寄って砕かれていたことだろう。舞うような体捌きを前に『プレジデント』の高速のジャブが飛ぶ。
オーラによってガードしても、ガードの上から衝撃が詩乃を襲うのだ。
「神と呼ばれる方には申し訳ないが、これは人間の問題なのでね。人間がどうにかしなければならないのですよ! これが!」
放たれるジャブは重い。
もうこうと呼ぶに値する打撃を躱し、ガードしながらも詩乃は己が消耗點せられていることに気がつく。
「ですが、それが『オブリビオン化』などという結論になるのならば、私はそれを許すわけにはいかないのです!」
みなぎるは闘志ではなく、想い。
人を思う神の心が、その拳に力を宿す。プラズマを拳に宿し、念動力によって電子スピンをコントロールし、形成したプラズマスパイラルが集約する。
それは彼女が見た物語の一幕。
あらゆる全てを撃ち抜く拳の一撃。未来を切り拓く一撃。
その名を彼女は叫ぶのだ。
「ギャラクティカ・マグナム!」
撃ち込まれたプラズマスパイラルの衝撃波は屈強なる『プレジデント』の肉体を吹き飛ばす。
神たる詩乃の放つ一撃は『プレジデント』にとって意外なる一撃であったことだろう。
たとえ、闘争心が煽られていたのだとしても想定外の力であったはず。
吹き飛ばされていく『プレジデント』をみやり、詩乃は言うのだ。
「人のが紡ぐ世界、そこに永遠は必要ない。あるのは、人の営みだけ。見守ることこそ、信じることだと想いませんか――?」
絵物語がこうして現実に染み出したように。
人の思いが紡ぐものがあるからこそ、永遠は刹那に覆る。
それを彼女は知るからこそ、尊び、その世界を守ろうとするのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
フィラデルフィア・シャイントピア
イエーイ!Mr.プレジデント!いざ勝負デース!
【アドリブOK・通常時は陽気なアメリカン口調だが、真の姿になると威厳ある冷徹な口調になる】
【真の姿は黒いドレスに黒い羽、輝く黒髪のいかにも邪悪そうな女神の姿】
大統領とは、国のために尽くすものだと思っていたのだけれど…
この世界では身勝手な独裁者という意味なのかしらね?
【戦闘】
私もその気概だけは認めて、素手で勝負しましょう。
両腕に太陽の力、月の力を宿し自身の力をさらに高める。
そしてその力で高まった速度による連続攻撃で大統領を仕留めるわ。
世界を飲み込める力を持つ私が人に堕した理由?
…あなたが思っているより、人は面白いからかしらね。
プラズマが生み出す衝撃波に吹き飛ばされた『プレジデント』が膝をつく。
今や復興されたワシントン・モニュメントの周辺は戦いの残骸で溢れかえっている。それだけの激しい戦いが繰り広げられて尚、『プレジデント』は健在であった。
いや、これまで猟兵たちが紡いできた戦いの傷痕は残っている。
どれだけ強大な存在であったとしても、消耗はするのだ。
その強固なる鋼鉄の拳を打ち鳴らし、『プレジデント』は爽やかに笑う。
「それでこそだ。猟兵。だが、私の『大統領魂』は未だ尽きてはいない。さあ、来たまえ」
その言葉にフィラデルフィア・シャイントピア(シャイン&シャドウ・f16459)――否、ヒーローネーム『ミスエクリプス』が降り立つ。
「イエーイ!Mr.プレジデント! いざ勝負デース!」
その姿は燦然と輝く太陽のようにきらめいていた。
誰もがその神性を見上げたことだろう。煌めく太陽は荒廃した世界にあって、明るい光を齎すものであった。
しかし、彼女の真の姿は違う。
太陽と月の陰たる力を手繰る彼女の真の姿は黒いドレスに黒い羽根を持つ女神であった。
輝く黒髪はいかにも邪悪と呼ぶに相応しい存在であったが、それを見上げ『プレジデント』は未だ微笑んでいた。
「これはまたミステリアスなレディ。お目にかかれて光栄です。元女神様とでも呼べばよろしいかな? それとも『ミスエクリプス』と? 我が『全人類オブリビオン化計画』は進めさせて頂くのですが」
あくまで譲らぬ姿勢。
爽やかな笑顔は人を安心させるためのものであったが、強固なる意志でもって『全人類オブリビオン化計画』を推し進める『プレジデント』にとって『ミスエクリプス』は障害でしかない
「大統領とは、国のために尽くすものだと思っていたけれど……この世界では身勝手な独裁者という意味なのかしらね?」
冷徹なる言葉が響く。
先程までの明るい声色は消え失せ、真の姿としての神が顕現する。
あるのはどこまでも冷たい視線。けれど、『プレジデント』は未だ爽やかに笑うのだ。
太陽と力が融合した日食のオーラを纏い、内包する光と闇のエネルギーが溢れ出している。
それを前に『プレジデント』は胸を張っていうのだ。
「ええ、そのとおり。私は『プレジデント』。国のために尽くしておりますよ。永遠という不滅をもたらそうとしているだけです。貴方にもそれは理解できると思っていましたが、猟兵であればどうしようもない。私の『オブリビオン化計画』にはどうしても障害――ならば、踏み越えていくのが人の歩みでしょうから」
踏み込む『プレジデント』の拳が唸りを上げる。
巨大な鋼鉄拳が『ミスエクリプス』へと迫る。
その拳の一撃を両腕に宿した太陽と月の力で持って受け止める。
きしむ腕。
これがオブリビオン・フォーミュラと呼ばれるオブリビオンの力。けれど、『ミスエクリプス』もまた女神と呼ばれた存在である。
高められた光と闇の力が交錯し、増幅していく。
己が求めるのは速度である。
「これだけの力を持ちながら、人に与する理由は如何なものか!」
拳の殴打が応酬によって激突する。
ユーベルコードの輝きの中で、『ミスエクリプス』が言う。
「……あなたが思っているより、人は面白いからかしらね」
それは人間の営みの結実。
文化という華やかなる光景を彼女が見たからだろう。人であれば、人の生み出した人間の生命の讃歌に全てを任せることができないだろう。
どこかに自身の価値基準を指針としてしまう。
けれど、神たる彼女は違う。
人の文化を気に入り、それを守りたいと思った。だからこそ、彼女は力を振るうことに躊躇いを保たない。
「それを永遠にしようというのですよ、私は」
「人はそれを停滞とも呼ぶのよ。壊れ、再生し、また再び芽吹く。その文化の色を私は知りたい。だから、あなたは存在してはいけない」
振るわれる光と闇の拳が『プレジデント』を穿つ。
鋼鉄腕が砕け、振るわれる光と闇の集約せし一撃が、相容れぬ存在を穿つように振るわれるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
…お前の目的を知った以上、逃す訳にはいかない
お前は此処で討ち果たすわ。全ての世界の生命の為にね
大鎌に武器改造を施し右拳を覆う手甲「現在を貫くもの」に変形し、
真の姿である左眼の聖痕が解放され無数の魂が降霊した状態に変化しUCを発動
…闇に覆われた我らの故郷とは異なれど、救世の意志に翳りは無い
…ならば、我が眼に宿りし数多の魂達よ
その力を貸して欲しい。共に世界の大敵を討つ為に…!
全身を今まで聖痕に取り込んで来た無数の霊魂達のオーラで防御して覆い、
浄化された魂達の救世の祈りに精神を同調する事で極限まで戦闘力の増強を行い、
手甲に霊魂を降霊して闇の魔力を溜めつつ敵の攻撃を見切りカウンター主体で拳闘を行うわ
砕かれた鋼鉄の腕の破片が舞い散る中、『プレジデント』は未だ笑う。
自信満々に、傲岸不遜に。
その爽やかな笑顔こそが、己の大統領たる誇りであるというように、見る者の不安を取り除く笑顔とともに戦場に立つのだ。
砕けた鋼鉄拳は未だ腕の形をしている。拳を形作っている。
ならば、彼はファイティングポーズを取るだろう。
「さあ、此処からが本番だ。猟兵よ。超えてみせよう。君たちを――」
彼の目的は『全人類のオブリビオン化』である。
それもアポカリプスヘルだけではない、他に存在する世界の全ての人類をオブリビオン化することが目的なのである。
ならばこそ、それを許せぬのが猟兵である。
「……お前の目的を知った以上、逃がす訳にはいかない。お前は此処で討ち果たすわ」
その姿は左眼の聖痕を開放したリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)であった。
彼女は過去を現在に改変する。刻む者の名を持つ大鎌を手甲へと変え、己に降霊した無数の魂で体を覆う。
代行者の羈束・断末魔の瞳(レムナント・ゴーストイグニッション)たるユーベルコードが輝き、真の姿をさらけ出したリーヴァルディが戦場を駆ける。
「すべての世界の生命の為にね」
「それは君の故郷たる世界のために、の間違いではないかね?」
迫る拳が眼前に在る。
それをリーヴァルディは今まで聖痕に取り込んできた無数の霊魂達のオーラで防御し、覆う。
しかし、それでも砕く拳の一撃は凄まじい。
これほどの劣勢に立たされながらも、未だ『プレジデント』のちからは衰えを見せないのだ。
「いいえ。闇に覆われた我等の故郷とは異なれど、救世の意志に翳りはない」
彼女の手甲が煌めく。
それは左眼の聖痕と同調し、浄化された魂たちの祈りを齎すもの。
極限まで高められた力。
それは己の身には限界を超えるしかない力であったのだとしても、それでもリーヴァルディは、『プレジデント』の言葉を否定しなければならない。
この祈りが、この願いが、偽善であってなるものかと魂たちが叫ぶ。
どれだけの世界があるのだとしても、そこにオブリビオンが見せる陰があり、そこに人の悲鳴があるのならば、己は駆けつけるだろう。
それこそが、聖痕に吸収してきた魂たちの悲痛なる願いであるのならば。
「我が眼にやどりし数多の魂たちよ。その力を貸して欲しい」
迫る拳の一撃がオーラを砕く。
ここまで強化されても尚、及ばぬ存在。
これまで猟兵たちが紡いできた戦いの軌跡があってもなお、まだ届かない。
「力を借り受けるのならば、それそうおうの行動を示さなければならない。それは大統領も諸君らも変わらぬようだな!」
振りかぶられる拳。
砕けた拳で振るう一撃は、その一撃毎に『プレジデント』の身体を自壊させるだろう。
激痛が走っているはずだ。
けれど、それでもとリーヴァルディは願うのだ。
「ともに世界の大敵を討つ為に……!」
闇の魔力が満ちる。
手甲を嵌めた腕が疼く。己の身体を蝕むような強烈な力の奔流。これが救世への願い。祈り。
彼女は拳に力を込める。
かの『プレジデント』と己の間にあるものに差はない。
ならばこそ、彼女の左眼が輝くのだ。目の前の敵を討てと。世界を救うために力を振るえと。
「終わった物が私の前に立たないで」
忘れられし者。
オブリビオン。その存在を前にしてリーヴァルディは今を生きる者たちのために祈る魂を代弁するように『現在』を持って過去を砕く一撃を『プレジデント』に見舞うのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
御形・菘
他人の理想や野望に一々文句をつける気は無いよ
勝者が歴史を作る…貴方はとても真っすぐなのね
ただ『この場』の相性は、私とひどく噛み合った、だから来たの
ユーベルコード発動に普段の演出は入れず、花々は咲かせてしまうわ
相手の懐に潜り込み、接近戦を仕掛けるよ
被弾上等、でも真っ向受けて耐えるわけじゃない
足を使い身を躱し、最もインパクトが乗る点さえ外せば、パンチの威力はそれ程強くならない
二本の足に、両腕が同じ長さ、重心が偏らないって素敵ね
そして私の拳は神すら殺す! そこに至った!
決して届くはずのない理想の姿、そしてこのバトル映像を、
皆に胸を張って公開できる日が来ると信じているよ、いつかすべて平和になった後でね
『フィールド・オブ・ナイン』の一柱にして『オブリビオン・フォーミュラ』たる『プレジデント』は数多の猟兵との戦いを経て、未だ立っていた。
いや、何度も倒れ伏している。
けれど、テンカウントの内に立ち上がり、ファイティングポーズを取るのだ。
未だ戦いは終わっていないのだと。
己の掲げる『全人類オブリビオン化計画』を遂行するために、己の拳が在る限り戦うのだと示してみせたのだ。
「他人の理想や野望に一々文句をつける気はないよ。勝者が歴史を作る……」
御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)は、本来の姿――真の姿をさらけ出す。
普段の彼女とは違う所作。違う言動。
その瞳が見るのは『プレジデント』の意志であった。
「そう。勝者こそが歴史を作る。だがね、私はすべての人々に永遠を齎すだけなのだよ。歴史はこれ以上紡がれない。永遠の中で人々に安寧を齎す。それこそが私の責務であると信じている」
だからこそ、猟兵とオブリビオンは激突するのだ。
そこに如何なる理由があったとしても、オブリビオンと猟兵である以上、滅ぼし、滅ぼされるだけの関係でしかない。
「……貴方はとても真っ直ぐなのね」
けれど、菘は言う。
「ただ『この場』の愛書は、私とひどく噛み合った、だから来たの」
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
本来であればシステム・フラワーズの力を一時的に借りて戦場を花々咲き乱れる空間に変える。
ワシントン・モニュメントが破壊されたこの大地にあって、その演出は普段のものではなかった。
あの動画を撮影する大仰な、派手で、エモい演出ではなかった。
破壊された広場に花々が咲き乱れる。ただそれだけ。いつもの演出など鳴りを潜めたように菘は疾走る。
「花か。レディ。やはり女性にこそ花は似合うものだよ」
振るわれる拳。
その鋼鉄拳は砕けていたが、未だ拳の形を保っていた。
放たれる一撃一撃が重たいものであったが、菘は躱すことなどしなかった。否、拳のインパクトが最も乗る点さえ外せば、拳の一撃の威力はそれほど強くはならない。
「二本の足に、両腕が同じ長さ、重心が偏らないって素敵ね」
彼女の本来の姿は、猟兵としての姿とは異なるものだった。
大きく異なるのが蛇の体躯。そして異形なる腕。
それらの特徴は真の姿にはない。あるのは拳のインパクトの点を一瞬で大地に受け流す二本の足。
バランスの取れた身体は、それを簡単に可能にしてしまうのだ。
「見事なスウェーバック! レディ! 見事なものだな!」
「ええ、だからこそ私の拳は神すら殺す! そこに至った!」
互いの拳と身体が激突する。
方や見事な体捌きでもって拳の重さを消すフットワーク。
方や大統領魂に燃える凄まじいコンビネーション。
どちらかが崩れれば、即座に勝負が終わるような、肌のひりつく戦い。
それは決して届くはずのない理想の姿。そして、このバトルの映像。
これを公開することは未だないだろう。
なぜなら、菘にとってそれは胸を張れるものではないからだ。けれど、いつの日かと思うからこそ、彼女の拳は『プレジデント』に届き得るのだ。
「胸を張り給え、レディ! 君の拳は確かに素晴らしいものだったと!」
放たれる一撃が『プレジデント』を捉える。
轟音が鳴り響き、大地の力を二本の足が受け止め『プレジデント』の身体をかち上げる。
まるで昇り龍の如き拳から生み出される衝撃波が彼の身体を高く舞い上がらせ、地面に失墜させる。
突き上げた拳。
その先を菘はきっと見ただろう。
いつの日か、この映像を公開し、皆に見てもらえる未来。
それを信じ、彼女はすべての世界に平和が齎された光景を幻視する。それこそが、己がたどり着くべき未来だと信じるように――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
良き闘争心の現れであります、プレジデント。人だった貴官は、兵士にとって良き指導者だったのかもしれない。
真の姿は赤眼白髪化。白髪化は脳器官の副作用の一つ、使い捨ての兵士には気にする事じゃない。【ディスポーザブル】ミサイルガントレットを装備。こいつで殴ろう。
だが、オブリビオンの貴官を人とは思わない。
敵だ!
増大したスピードと反応速度で拳を躱し、ロケット、プラズマシューズの推力移動で竜巻を突き抜ける!
人は前に進むべきだ。
赤い両目の人工魔眼で、念動力を使い、殴られても吹き飛ばされず、自分の体に強引に空中機動を取らせ、拳を乗り越える!
指導者は、前へ進み、進むべき道を指して導く者だ。
お前は、違う…!
天高く舞い上がった『プレジデント』の身体がぐしゃりと大地に落ちる。
しかし、テンカウントを待つまでもなく、彼は立ち上がり、闘志みなぎらせファイティングポーズを構えるのだ。
両腕の鋼鉄拳は砕けているが、未だ拳の形を保っている。
まだ戦うつもりなのだ。
巨大化する拳は竜巻すら呼ぶ一撃。
「ラウンドはまだ残っているだろう。判定など不要。私は『大統領』である! ならば、私こそが全ての人類をオブリビオン化しなければならないのだよ!」
漲る気迫は、凄まじい圧迫感でもって猟兵たちを圧倒するだろう。
「良き闘争心の現れです、『プレジデント』。人だった貴官は兵士にとって良き指導者だったのかもしれない」
朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は己の真の姿を晒す。
黒髪は白髪へと変わり、瞳は赤く染まる。
その姿を前にして『プレジデント』は、彼女の身体の異変に気がついたようだった。
「君のそれは脳器官への副作用か。何故そうまでして戦うのかね――いや、愚問だな、これは」
そう、愚問であった。
己は使い捨ての兵士。副作用など気にすることではない。それを無言の肯定として、小枝子はガントレットを拳にはめる。
目の前の敵。
そう、敵だ。どんなに言葉を尽くしても、どんなに爽やかな人を引きつける笑顔を浮かべていたのだとしても。
「だが、オブリビオンの貴官を人とは思わない」
「ならば、なんと規定する。君は」
そう、答えを間違えることはない。己は兵士である。己がなんのために生み出されたのかなど言うまでもない。
敵と戦うためだ。
そして、目の前にいるのは――。
「敵だ!」
放たれる拳。竜巻が発生し、小枝子の身体を強かに打ち据えるだろう。風の刃が彼女の身体のあちこちを切り刻むが、小枝子は止まらない。
ガントレットのミサイルが火を吹き、プラズマシューズの推力が彼女に傷を厭う暇を与えない。いや、もとより傷など彼女には関係のないことだった。
永遠を求めるのがオブリビオン化であるという。
全ての人類をオブリビオン化し、永遠としてアーカイヴする。
それこそが救済だと言う。
自分には理解できない。
永遠など意味があるのか。そこに平穏はあるのか。そして、その平穏の中で兵士として生まれ、兵士として死ぬことを義務付けられた自分に居場所はあるのか。
答えは否である。
ならばこそ、ではない。彼女はそれ以外のモノを見て、考えたのだ。
「人は前に進むべきだ」
どんなに辛くても、どんなに悲しくても、どんなに取り戻したい過去があったのだとしても、それでも前に進まなければならない。
竜巻を突破し、赤い両目の人工魔眼が念動力でもって彼女の身体を突き動かす。強引な念動力は空中機動を取らせるが、身体のあちこちが悲鳴を上げる。
ひしゃげる骨。
けれど、痛みなど彼女には関係ない。
「いいや、ここで永遠になるべきだ。それが平穏というものだ。変わらぬ毎日。明日など望まなくても、永遠は此処にあるのだから!」
振るわれる拳が小枝子を捉え、腕の骨が砕けた。
けれど、彼女の魔眼は見ただろう。
永遠を語る『プレジデント』は違うと。
「指導者は、前へ進み、進むべき道を指して導く者だ。お前は、違う……!」
ディスポーザブル(コワレロコワレロコワレロ)と叫ぶ心がある。
恐怖と痛みは消し去ることができる。だからこそ、この拳を振るうことができるのだ。
小枝子は裂帛の気合とともに拳を打ち出す。
永遠を砕く刹那の一撃。
それこそが、小枝子が破壊者として放つ最大の一撃であった――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
真の姿
即ちキャバリア搭乗状態こそ今の真の姿!
メルシー…全てを僕に委ねろ
「了解だよ…メルシーとご主人サマは一心同体だぞ☆」
よぅ大統領
僕らの世界でも力ある者こそ王でした
そして…僕の世界の王は刈り取った
お前も狩ってやるよ
(両の拳を構え)
正直に言います
僕は殴り合いは苦手です
だからこれは単純な暴力です
【情報収集・視力・戦闘知識・医術】
大統領の動きと癖を冷徹に観察し分析
UC発動
しかし空は飛ばないがフットワーク強化
【属性攻撃・二回攻撃・念動力・弾幕・スナイパー】
念動障壁を纏い尋常ならざる速度を制御
弾幕の如き超高速連続の拳を肉体構造上の弱点へと向けて精密に打ち込み
体格差さえ幻想と言わんばかりの連続拳撃!!
打ち込まれた打撃の数は今や数えることもできないだろう。
『プレジデント』の身体は満身創痍であった。けれど、その顔に浮かぶ表情は爽やかな笑顔のままであった。
些かも翳りを見せぬ笑顔は、猟兵たちにとって脅威そのものであったことだろう。
此処まで消耗させても尚、未だ笑み一つ奪えていない。
「いいや、君たちはよくやっていると思う。自分よりも強大な個に対して、此処まで怯む事無く戦いを挑むのだからね」
構えたファイティングポーズから繰り出される拳は竜巻すら呼び起こして猟兵たちを寄せ付けないだろう。
「よぅ大統領。僕らの世界でも力ある者こそ王でした。そして……僕の世界の王は刈り取った。お前も狩ってやるよ」
カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は己の駆るキャバリア、界導神機『メルクリウス』との完全なる騎乗を果たしていた。
彼にとって真の姿とは、キャバリアに搭乗している状態を指す。
メルシーに全てを委ねさせ、一心同体へと昇華することこそ、彼の力の発露であったことだろう。
「ほう、これがキャバリアか。戦車と違い、戦術を手繰ることこそが最大の利点と言えるわけか。興味深いな」
圧倒的な体格差。
けれど、巨大化した鋼鉄拳が振るわれ、放たれる竜巻の一撃は、戦術兵器と人との間にある体格差すらも覆すのだ。
それを『メルクリウス』は瞬時に躱す。
いや、躱すというのは大げさであったのかもしれない。
僅かに移動した。ただ、その速度が尋常ならざる速度であったということだけだ。
神速戦闘機構『速足で駆ける者』(ブーツオブヘルメース)――それこそが己の速度を三倍にまで引き上げる力。
「正直に言います。僕は殴り合いが苦手です。だからこれは単純な暴力です」
「それは意外だな――」
強化されたフットワークは竜巻すらも躱して『プレジデント』に迫る。肉薄する巨大な人型兵器の威圧感は尋常ならざるものであったことだろう。
念動障壁を纏い、その速度を制御しての肉薄。
放たれる超高速連続の拳を、砕けた鋼鉄拳へと振り下ろす。これだけの体格差があろうがなかろうが関係ない。
「これほどとはな……! 巨大兵器の在り方を覆す……!」
『プレジデント』はその高速の拳を躱すことができない。竜巻を持って相殺するのがやっとであった。
どれだけ体格差があろうとも、巨大なものは小さき者の弱点をつけぬという幻想さえも上書きする。
「メルクリウス…お前の力を見せてみろ…!」
放たれる拳が『プレジデント』を吹き飛ばす。
竜巻が『メルクリウス』に迫れば、それさえも拳の連続攻撃が打ち消し、荒廃した世界の空、その曇天さえも切り裂くのだ。
「この程度の脅威を乗り越えられないで世界が救えるものかよ――!」
大成功
🔵🔵🔵
シーザー・ゴールドマン
かつての最強国家の大統領か。
ハハハ、最強国家のトップが最強の闘士というのは物語的で良いね。
ボクシングをお望みかい? 良いだろう。
真の姿(と言っても外見は特に変わらない。黄金の瞳が輝きが増し、身に纏う真紅のオーラが濃ゆくなる程度)形態でボクシングを楽しみましょう。
多彩な打撃(怪力×功夫に貫通攻撃や鎧砕き、部位破壊を乗せたもの)
先の先(先制攻撃)や後の先(見切り)、直感(第六感)に戦闘経験値(戦闘知識)による回避からのカウンターなど存分に楽しみます。
敵POWUC発動時の不利な行動に乗じて『バベルの消失』による一撃で勝負を決めましょう。
なかなか楽しめたよ。ありがとう。
巨大な拳に打たれても尚、『プレジデント』はダウンすることはなかった。
ギリギリのところで踏ん張っていた、というのが正しいのだろうが、倒れていないことには間違いない。
しかし、その身体は数多の猟兵達の戦いを経て、満身創痍。
高鉄の拳はひび割れ、砕けていてもファイティングポーズを取る限り、そこに闘志が存在する限り、戦いが終わらぬことを示していた。
「良き拳だ。これほどまでに私を追い詰めるとは……これが私の『全人類オブリビオン化計画』を阻む障害。世界が用意した障壁であるというのなら」
その瞳は未だ何も諦めていなかった。
これだけ消耗させても尚、彼の瞳に在るのは『大統領魂』とも言うべき熱き血潮であったのだろう。
「かつての最強国家の大統領か。ハハハ、最強国家のトップが最強の闘士というのは、物語的で良いね」
真紅のスーツを纏った美丈夫たるシーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)が破壊されたワシントン・モニュメントへと降り立つ。
彼の瞳が見つめるのは『プレジデント』のファイティングポーズであった。
ここまで彼を戦わせ、奮い立たせるのは、きっとその身に宿った魂とでも言うべきものなのだろう。
ゆえに、シーザーは相手の土俵に立つのだ。
「ボクシングをお望みかい? 良いだろう」
その瞳が黄金に輝きを増し、身にまとう真紅のオーラが色濃くなっていく。
「あまり姿が変わらないのか。それが君本来の姿であることは言うまでもないようだが……いや、これは野暮というものだな。ならば、私も応えよう」
互いにファイティングポーズを取る。
ゴングが鳴ったわけではない。けれど、どちらからともなく足を踏み出した瞬間、世界最速の拳が振るわれる。
ジャブ。
それは肘を基点にして放たれる最小にして最短の動作で拳を打ち出す闘技である。
しかし、それはシーザーも同時であった。
多彩な打撃の応酬。
綺羅びやかさえ感じさせる拳の激突は、先の先、後の先などといったあらゆる直感を駆使して行われる拳の激突であった。
「ふっ……楽しんでいるようだね、猟兵。この拳のぶつかり合いを」
「最強の闘士が相手もとも成れば、そうなろうさ」
だが、『プレジデント』はこれまで紡がれたきた消耗の差がある。この如何ともし難い消耗を埋めているのが『大統領魂』である。それによって『プレジデント』はシーザーと互角以上に戦っているのだ。
「やはり、窮地に追い込まれるほどに力を増すようだね……それが生前の君かい?」
「そのとおりさ。今はただのナイスガイだがね!」
振るわれる拳が互いを捉える。
十分に楽しめた、とシーザーは微笑んでさえいた。いや、それは『プレジデント』も同じであったことだろう。
互いの瞳がユーベルコードに輝く。
煌めくのは、バベルの消失(デウス・イーラ)。魔力による超高速かつ大威力の一撃。
それは互いの拳が互いに激突した瞬間にきらめいていた。
確かに『プレジデント』の拳はシーザーを捉えていた。同時にシーザーの拳もまた捉えていたのだ。
けれど、ここに来てシーザーのユーベルコードがそれを上回る。
同じ打撃を二度繰り返す。一瞬にして二連撃。一撃目は通常の拳。されど、二撃目はユーベルコードによって魔力を載せた一撃であった。
伝わった一撃目の衝撃を波として増幅させる魔力の二撃目は、『プレジデント』の身体の中で増幅させられ、凄まじい衝撃となって放たれる。
「なかなか楽しめたよ。ありがとう」
シーザーの礼を告げる言葉は届かなかったことだろう。
なぜなら、『プレジデント』は破壊されたワシントン・モニュメントの残骸に吹き飛ばされ、その身を打ち込まれていたのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
セルマ・エンフィールド
炎と冷気を纏う真の姿で戦闘。
御覧の通り、私は徒手での戦いは得意ではありません。
代役を立てますが……問題はありますか?
氷の弾丸を放つ銃「フィンブルヴェト」とそれに加えて炎の弾丸を放つ銃「ラグナロク」も核として使用、【氷晶の巨人】を作成します。
氷晶の巨人を作成したらスカートの内側に隠してあるデリンジャー及び袖口に隠してあるナイフを足元に落とします。
これらがないからと言って戦闘手段がなくなるわけではありませんが……私は手を出さない、という意思表示と受け取ってください。
氷晶の巨人には拳で戦闘させます。氷の身体で諸刃の剣ですが、「ラグナロク」の力を引き出しての炎の拳は切り札として使いましょう。
ワシントン・モニュメントの残骸に打ち込まれた『プレジデント』が身体を起こす。猟兵達の攻撃は確実に彼を追い込んでいた。
鋼鉄の拳はひび割れ、ようやくにして拳の形を取っているにすぎない。
けれど、それでも彼の表情に浮かぶさわやかな笑顔だけは、未だ拭うことができないでいた。
「ふぅ……やはり混沌の坩堝。猟兵の真の姿とは、法則性を見出すことができない。君もそうであるようにね。しかし、レディ。君は――」
『プレジデント』が見やるのは、炎と冷気を纏うセルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)の姿であった。
彼女の周囲を取り巻く炎と冷気。それは相反するものが同時に存在するという矛盾であったが、それを可能にせしめるのが彼女という猟兵であった。
「ご覧のとおり、私は徒手での戦いは得意でありません」
己の弱点とも言うべき徒手での戦いの不得手をあえて告げる。それを前に『プレジデント』はうなずいていた。
爽やかな笑顔は変わらず。けれど、彼女の言うところの不得手を責めるでもなかった。
戦いに合って非情であれとも言うこともなかった。
なぜなら、彼の言うボクシングとは結局の所人を殺すことができる拳でありながら、人を殺すことを良しとせず、制圧するための拳であったからだ。
たとえ、それは猟兵との戦いであったとしても変わらなかっただろう。
結果として猟兵が敗れてしまったのだとしても、それはそれである。ゆえに、セルマの次に告げる言葉にも頷くのだ。
「代役を立てますが……問題はありますか?」
「いいや。ないとも、レディ。しかし、それでも君は君の戦う力でもって代役を立てるというのであれば、私はそれを歓迎しよう」
その言葉と同時にセルマの瞳がユーベルコードに輝く。
核としてマスケット銃『フィンブルヴェト』を使用し、さらに炎の弾丸を放つ『ラグナロク』をも使用し、氷晶の巨人(ヒョウショウノキョジン)を生み出す。
その威容は凄まじいものであり、これを代役として立てることをセルマは告げたのだ。
さらにスカートの内側に隠してあるデリンジャーや袖に格下ナイフを足元に落とす。
「潔いのだな、猟兵のレディ。淑女としても一流のようだ」
彼女の行動に『プレジデント』は感じ入るようであった。
「これらがないからと言って戦闘手段がなくなるわけではありませんが……私は手を出さない、という意思表示として受け取ってください」
「いいや、十分さ、レディ! それでこそと言っておこうか!」
『プレジデント』と氷晶の巨人が激突する。
その激烈なる戦いは周囲に凄まじい衝撃波を生み、戦いの苛烈さを物語る。
氷の拳が『プレジデント』の拳と激突し、互いに拳を砕いていく。けれど、『プレジデント』はセルマの代役を受け入れたことにより、その『大統領魂』を更に燃え上がらせるのだ。
巨躯たる巨人との戦いは確かに不利であったことだろう。
けれど、それこそが彼の魂を燃え上がらせ、氷晶の巨人を圧倒する拳で持って、その氷の体を砕いていくのだ。
「代役だからと言って加減はしない。それとも、この程度かね、レディ!」
吠える『プレジデント』を前にセルマは諸刃の刃たる切り札を切る。
今しかないとさえ思っただろう。なんのために炎の弾丸を打ち出す『ラグナロク』をも核にしたのか。
それは、氷晶の巨人の身体をもろくしてしまうためだ。
その力を発露したが最後、氷晶の巨人の身体は熱で溶けてしまう。だからこそ、セルマは見定めたのだ。
使い所が如何なる場所であるかを。
これまで猟兵たちが紡いできた『プレジデント』の消耗は凄まじいものである。これまでの戦いを見ていればわかる。
鋼鉄の腕はひび割れ、その身に打ち込まれた打撃は数千を越えるだろう。だと言うのに未だ彼は立っている。
「ならば、此処で――!」
セルマの瞳がユーベルコードに輝く。
切り札たる『ラグナロク』が炎の力を放出する。
それは『フィンブルヴェト』によって散々に冷やされた空気が一気に熱によって膨張することに寄って起きる衝撃波。
己の身体を基点にして放たれる熱波の一撃は『プレジデント』さえも耐えることのできない一撃と成って、吹き飛ばす。
試合では敗けであろう。
しかし、勝負には買ったのだ。セルマは、吹き飛ばされた『プレジデント』を見つめ、その紳士なる振る舞いに淑女として一礼をするのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
ボクシングで戦うってどうするんだろ
困りましたの
こういうのは晶の領分だと思いますの
否定はしないけどね
僕なら邪神の領域使って
正面から殴り合ってたと思う
という訳でこの子にお願いしますの
プレジデント様を見る限り
金属の巨腕を使うのは大丈夫そうですの
はーい、まかされたのですよー
存分に加護を授けますから
よろしくお願いしますの
とってもお強そうですから
ちょっとずるさせて貰うのですよ
わたしは触れた物を金属に変えられるのですよー
この拳で殴っても拳で防御しても効果あるのです
それを伝えてプレジデントさんの選択肢を狭めましょう
アッパーカットは希少金属の重さを活かして踏ん張るのです
何とか耐えたらお返しに思いっきり殴るのです
「困りましたの」
それは佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)の身の内に融合した邪神の第一声であった。
いや、それは晶もまた同じ気持ちであった。
『フィールド・オブ・ナイン』の一柱である『プレジデント』との戦い。
その場において猟兵は真の姿をさらし、ボクシングでもって戦うことにより、その力を更に高める事ができるという。
だからこそ、困っていたのだ。
ボクシング経験者でもない晶。
そして、それは晶の両分であると思っていた邪神。互いの思惑が拮抗し、戦場にあって未だ邪神と晶は決めあぐねていたのだ。
「僕なら邪神の領域使って正面から殴り合っていたと思う」
晶の言葉に邪神は優雅ではないと一蹴する。真の姿たる己の姿をさらけ出している以上、そんな野蛮なことはできないのだ。
ゆえに、邪神は己のユーベルコードを輝かせる。
「というわけでこの子にお願いしマスの。よろしくて、『プレジデント』?」
邪神が見やるのは、吹き飛ばされながらも再び立ち上がった『プレジデント』の姿であった。
満身創痍であるが、未だ爽やかな笑顔、ナイスガイとしての立ち振舞は崩れてさえいない。
「ああ、構わないよ。それもまた君たちの力の一端であるおならば」
その言葉に、金属柱にて構成される超硬装甲を持つ、式神白金竜複製模造体(ファミリア・プラチナコピー・レプリカ)が降り立つ。
「はーい、まかされたのですよー」
存分にかごを授けられた使い魔がのんびりとした口調で言う。しかし、その力は言うまでもなく強力無比である。
放たれる超硬装甲の拳が『プレジデント』に放たれる。
「ほう、触れたものを金属に変える力を持つのか……それはとても厄介だね。少しズルをしようと思ったようだが」
その拳をひらりと躱し、『プレジデント』が竜巻すら引き起こすアッパーカットでもって使い魔を弾き飛ばす。
しかし、その拳を受け止めた装甲はひしゃげても『プレジデント』は何故か追撃をやめて、後退するのだ。
「……防御しても金属化することができるのか」
「はいなのですよー。とってもお強そうでしたから」
にこやかに喋る使い魔と『プレジデント』が相対する。脅威であるのは、やはりあのアッパーカットだけだ。
あの一撃を受けてしまえば、強制的な転移が待っている。それを踏ん張れば踏ん張るほどに構造体にダメージが入っていく。
だが、しかし、軽いフットワークで巨大な使い魔を相手取る『プレジデント』に攻撃を当てるのは難しい。
ならば、できることは一つ。
「がんばって踏ん張るのですよー!」
覚悟を決めた使い魔がガードを固める。放たれるアッパーカットの一撃は凄まじい衝撃を持って、使い魔の構造体を跳ね上げさせる。
地面に超硬金属のアンカーを打ち込んでも尚、巨体が宙に浮く。
「無駄だよ。拒めば拒むほどにその身体に私の拳が生み出した竜巻が、君の身体を刻むだろう!」
そう、抵抗すれば抵抗するほどに竜巻は構造体を傷つける。
けれど、邪神の加護がこちらにはあるのだ。それをもって使い魔はふんばり、ばらばらになっていく巨体のままに『プレジデント』へと一撃を見舞う。
「死なば諸共なのですよー!」
特攻とも取れる一撃。
それは希少金属の超硬装甲であるがゆえに、凄まじい重量となって『プレジデント』に襲いかかり、圧倒的な重量で持って彼の身体を押しつぶし、地鳴りの音をワシントン・モニュメントに響かせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
シュッシュッ!
ボクシングで勝負すればいいんだね!
ところで大統領はなんでこんなことしてるの?
いやまーフツーのオブリビオン的なアレなら別にそれでいいんだけれど
どっちにしろ過去のアルバムにスクラップしてあげるのは変わらないしね!
●真の姿の発露と拳闘と
それじゃリングに嵐を起こすとしようか!
そうオブリビオンストームなんかじゃない、本物のね!
リングなんか無いって?気分の問題だよ!
ボクは自分の真の姿なんて覚えてないし、知らない
みんなに聞いても、みんなそれぞれ違う姿格好だったって言うんだもの
キミにはボク(神)がどんな姿に見えてる?
勘【第六感】で避け!
UC『神撃』で刺す!
ドーンッ!!
超硬装甲の残骸が降りしきり、地鳴りの如き音とともに沈んだ『プレジデント』が残骸を押しのけて復帰した時、見たのはロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)がしきりにシャドーボクシングをしている光景であった。
「シュッシュッ!」
汗を滴らせることのないシャドー。
それは確かに美しいフォムであったが、『プレジデント』は特に構うでもなく、瓦礫を押しのけてロニの前に立つ。
「ボクシングで勝負すればいいんだね! ところで大統領はなんでこんなことしてるの?」
「簡単なことさ、少年。私は全ての人類をオブリビオン化したいだけなのさ。永遠にね。諸君ら猟兵は対象外であるが……まあ、普通のオブリビオンと変わらないよ」
その言葉にロニは、なーんだとつまらなそうに呟く。
あまりにも普通のオブリビオンらしい解答だと思ったのだろう。けれど、彼が為すべきことは変わらない。
そう、どちらにせよ、だ。
「なら、過去のアルバムにスクラップしてあげるのは変わらないしね! じゃあ、行こうか!」
ロニは己の真の姿を開放し、リングに嵐を巻き起こす。
それはオブリビオンストームではなく、正真正銘の本物の嵐であった。神たる身であればこそ為し得た奇跡であろう。
「ふふー、リング無くたっていいじゃない。気分の問題だよ!」
しかし、真の姿を開放したと言っても、ロニの姿に代わりはない。それは外見が殆ど変わらないということを示しているのか、それとも他の要因が絡んでいるのかはわかりかねるものであった。
「ボクは自分の真の姿を覚えてないし、知らない。みんなに聞いても、みんなそれぞれ違う姿格好だったっていうんだもの」
ならば、今『プレジデント』の前にいるロニは如何なる姿であるのだろうか。
見る者に寄って姿を変える神。
その姿は千差万別。
不定形。
ならばこそ、『プレジデント』はかぶりを降る。少年の姿にしか見えないのだ。先程と変わらぬ少年。
あどけない雰囲気をまといながら、強烈なる混沌の坩堝としての存在でしかない。
「キミにはボクがどんな姿に見えてる?」
「依然変わりなく。ただ、私が打倒すべき障害にしか見えてないよ」
嵐が囲うリングの上でロニと『プレジデント』が激突する。そこには最早、観客など必要なかった。
あるのは、神撃(ゴッドブロー)と大統領魂の激突が見せる明滅のみ。
躱し、刺す。そしてドーンッ!! ロニがしたことはそれだけだった。
それでもオブリビオン・フォーミュラと神との激突はワシントン・モニュメントの広場を破壊し尽くすことだろう。
力の奔流は互いに拮抗し打ち合っては消えていく。
嵐の中で行われる拳の打ち合いは、終わりがないのかと思うほど長きに渡り続けられ、そして嵐が過ぎ去った後、『プレジデント』が大地に倒れ伏す光景が見られたことだろう。
そこに在ったロニの姿は、誰にも捉えられぬ姿であったことだろう。
見る者によって姿を変える不定形の神。
信心無き者にさせ神々しさを感じさせる拳さえも、見ることの叶わぬ光景。これが真なる姿をさらけ出した神の戦いであるというのならば、嵐の中にこそ真実があるのだろう――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
この姿は、好きではありませんね
鎧模した装甲外れ、兜脱ぎ
黒い内部フレーム剥き出しの真の姿
異端にして別種…思い当たる節はあります
記憶と人格の喪失…あの時、私は機械として一度“死”を迎えたのでしょう
そして己が何者であろうと為すべき事に変わりなし
貴方の政策に騎士として否を告げます
電脳剣背負い拳闘の構えで近接戦
挙動を見切り牽制の拳を放ち
アッパーはガード…!
腕が砕けようと…!
取れた装甲に身を潜めた妖精の情報を元に電脳剣起動
巨大な両腕を新たに装備
爪…竜の腕?
(騎士に討たれるべき竜…力求むるモノを戒める
生前のあの方の思考の影響でしょうか)
なればこそ、正しきと信ずる道の為に…!
爪を拳に
限界突破した怪力で打ち抜き
『フィールド・オブ・ナイン』の一柱たる『プレジデント』は一度は倒れ伏した。
しかし、ボクシングというものはテンカウントの内に立ち上がり、続行の闘志を見せることによって行われる闘技である。
ならば、幾度打ちのめされたとしても立ち上がる『プレジデント』は、まさに『ボクサー』であったのだろう。
「やれやれ、凄まじいな。これほどの存在が未だ多く存在しているとは……ああ、君もまた同じなのだろうね」
『プレジデント』が視線を向けた先にあったのは、その白き鎧の如き装甲を排した黒い内部フレームがむき出しにされたトリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)の姿であった。
それこそが機械騎士の真なる姿。
異端にして別種。そう『プレジデント』が言っていた言葉にトリテレイアは思い当たる節があったのだ。
己の記憶と人格の消失。
確かに己は一度“死”を迎えたのだろう。
「機械騎士とでも呼べばいいかね。それとも、個体番号で呼ぶのが正しいかね?」
その言葉にトリテレイアはアイセンサーを揺らめかせる。
以前の己であれば、電脳が揺らいだことだろう。
しかし、今の己は違う。己が何者であろうと為すべきことに変わりはない。
「いかようにも。貴方の政策に騎士として否を告げます」
「オブリビオン化すれば、すべての人々は永遠になる。老いることも病むこともない。ある意味理想だとは思わないかね? 争いも競争も、何も起こらない――ああ、そうだね。確かに争いが起こらないのは、君たちにとっては、存在意義の損失となるか」
『プレジデント』の言葉はトリテレイアの炉心に薪をくべただけであったことだろう。
やはり間違っていると確信する。
己の真なる姿、黒いフレームだけの姿に成ったのだとしても、己はやるべきことを違えない。
「その損失こそが、私の――いえ、騎士としての最後。それが迎えられるというのであれば!」
己は喜んで己の存在意義を否定するだろう。
放たれる拳の応酬。敵は満身創痍。けれど、この裂帛の気合のごとく打ち込まれてくる拳の重さは凄まじいの一言に尽きる。
警戒すべきはアッパーカット。
しかし、どれだけ警戒していたとしても、その鋭い一撃は放たれる。
「ほう、存在する意味を喪っても良いと――!」
放たれる一撃をトリテレイアは躱せなかった。けれど己の腕でもってガードし、その一撃を防ぐのだ。
「防いだか……だが!」
振り抜かれた一撃がトリテレイアの腕部を破壊する。
やはり満身創痍であっても『オブリビオン・フォーミュラ』と呼ぶに相応しき存在。此処まで来て尚、あの爽やかな笑顔が崩れぬ。
「腕が砕けようと……!」
さらに二撃目が振り切られる。下から上へ。己の電脳の中枢たる頭部を狙って放たれる一撃。
これを喪ってしまえば、勝機もまた喪われるだろう。それだけは、と残った腕で防御する。だが、その防御すらも砕かれてしまう。
「これで終わりだよ、機械騎士。君の姿は実に意外であったが――っ!?」
『プレジデント』は驚愕した。
それは、あり得ない光景であった。
電脳禁忌剣・通常駆動機構:兵装改造『妖精の導き』(ウェポンカスタマイズ・スティールフェアリーズ)。それは排された装甲に潜んだ妖精ロボによるデータの送信により電脳禁忌剣より改造されたトリテレイアの腕であった。
「これは……爪……竜の腕?」
それは騎士に討たれるべき竜、力求めるモノを戒める生前の己の創造主の思考であったことだろう。
それに影響された己の腕。
確かに力の象徴。使い方を間違えれば、あらゆるものを傷つけるだろう。けれど、トリテレイアの炉心が唸りを上げる。
己はもう迷わない。
迷いが生まれるからこそ、力の矛先がぶれるのだ。
「なればこそ、正しきと信ずる道の為に……!」
爪を拳に変えたトリテレイアが『プレジデント』へと肉薄する。己の駆動系、出力、その全てを出し切る新たなる力の象徴たる一撃が『プレジデント』を穿つ。
胴に大穴を空けた『プレジデント』は最後まで立っていた。
けれど、トリテレイアは確信する。これが繋ぐ戦いであると。限界を超えた一撃を繰り出した己に最後の一撃は放てない。
けれど、あとに続く者がいる。
世界を荒廃に導かんとする者を討とうとする志を同じくする仲間が――!
大成功
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ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
この姿あんまり出したくないんだけどねえ。
人と関わるようになった今はもう、
昔の周り全てを排除する為の力なんて余分なだけだし。
こんなものを見て、アンタは楽しいのかい?
尻尾の発電器官を全開にして全身から放電しつつ、
【無影瞬撃】で素早く接近して攻撃するよ。
相手の拳は腕で受けて、竜巻は脚の爪を床に突き立てて耐えて、
真正面から真の姿の身体能力と耐久力に任せて殴り合う。
どうあるかなんてそいつが好きに決めればいい。
勝手に押し付けるようなもんじゃないよ。
ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)は正直なところを言えば、雷纏う己の真の姿をさらけ出したくはないと思っていた。
この姿は己のまわりが全て敵であった頃の名残であろう。
今はもう、この姿になることはない。というよりも、最早必要ないのだ。
まわり全てを排斥する為の力など余分なだけだとさえ、彼女は思っていたのだ。
今の自分の周りには人がいる。
同じ猟兵が居る。
別に姿形が違ったって構わないのだ。だから、この力は己にとって不要な、余分なものなのだ。
けれど、『フィールド・オブ・ナイン』の一柱たる『プレジデント』は言うのだ。
これこそが『オーバーロード』に至る道であり、己の真の姿に問うべきことなのだと。
それを『プレジデント』は見たいと言った。
「別に愉快なものではないと思うけど、こんなものを見て、アンタは楽しいのかい?」
告げる視線の先にあったのは、これまで猟兵たちが紡いでき戦いの軌跡があった。
穿たれた胴への大穴。全身を穿つ打撃の痕。砕けた鋼鉄の拳。
満身創痍と呼ぶべき姿となった『プレジデント』は、未だその顔に爽やかな笑顔を貼り付けたままであった。
「ああ、ただの興味本位だよ。レディの衣服を剥ぐような行いであったこと、それは非礼であったと詫びるべきであるが」
しかし、未だ戦いは終わっていない。
『プレジデント』は諦めない。
彼が計画した『全人類のオブリビオン化計画』は此処で彼を逃せば、必ず実現へと向かっていくだろう。
それはなんとしても防がねばならぬことである。
「人は永遠を求めるものだ。それは有史以来、富と権力を手にした者が次に求めるものさ。だからこそ、私はそれら全てを人類全てにあまねく与えようというのだよ。それこそが、私が『大統領』である証なのだからね!」
砕けた鋼鉄の拳を打ち鳴らし、『プレジデント』が迫る。
まだ戦うつもりなのだとペトニアロトゥシカは、尻尾の発電器官を前回にし、全身から夥しい放電を纏いて、互いの距離を一瞬で詰めるのだ。
「どうあるかなんて、そいつが好きに決めればいい」
永遠も刹那も。
誰もが自由に選んでいいはずだ。誰も彼もが同じ思いを持っているわけではない。同じ姿を持っているわけでもない。
それをペトニアロトゥシカは嫌というほど理解しているはずだ。
己の姿を見て排斥した者もいれば、受け入れた者だっている。そこに生命の形の違いがあるだけだ。
受け入れるのも、受け入れないのも、その人個人が選べばいいだけのこと。
それを均一にして、画一にして真っ平らにすることが永遠だというのならば、それこそをペトニアロトゥシカは否定するだろう。
「いいや、そんなことをしては人の生命は間に合わない! 悠長にやっている暇などないのだ。永遠にできぬ時はそこまで迫っている。人の生命は短いのだよ! だから、私が与えよと――!」
張り付いていた笑顔。
それはきっと見るものを不安にさせぬためのもの。
屈強なる肉体は、指導者としての責任からであろう。
ならばこそ、ペトニアロトゥシカは言うのだ。
「勝手に押し付けるようなもんじゃないよ」
人の生き方とは。生命の在り方とは。
そういうものは、自分で選んで決めて歩んでいくものだ。
――無影瞬撃(ラピッド・ノッカー)。
セルマの雷光の輝きが『プレジデント』を貫く。
それは永遠を求める『プレジデント』を切り裂く刹那の一撃であった。
混沌の体現者、体は獣、頭は人、心は樹懶――その答えを内包するペトニアロトゥシカだからこそ、永遠を否定することができる。
その一撃は嵐を切り裂く一条の雷撃となって、かつてのワシントン・モニュメントに奔り、『プレジデント』を霧消させるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵