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アポカリプス・ランページ⑦〜エクシード・トップアタック

#アポカリプスヘル #アポカリプス・ランページ #ヴォーテックス一族 #ロンメル・ヴォーテックス #アポカリプス・ランページ⑦

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#アポカリプス・ランページ⑦


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●鉄血のロンメル
「進め」
 戦車が動いた。無限軌道が荒野を踏みしめ、無数の轍を地に刻む。
「進め、進め」
 男が言う。軍帽を被り、右腕を戦車砲に換装した男だ。
 ロンメル・ヴォーテックス。青い目が見据えるのは、常に前のみ。鉄血宰相に後退はなく、彼の行く道は常に勝利と栄光で彩られている。
「――進め、進め、進め!! 全ての障害を、刺客を、我ら鋼鉄の無限軌道部隊が踏み潰す! 阻む全てを機関銃で、戦車砲で粉砕し、キャタピラで踏み拉いて前へ進め!! 我らに後退はない! 我らが行く道こそが常勝の道だ!! 全速前進!!」
 戦車のハッチが次々と開き、ロンメルと同じ軍装の男達が敬礼と歓声をもって、彼の指揮とカリスマを称える。
 ロンメルが指揮するのは、その数五〇〇に達しようかという戦車連隊だ。これは通常の戦車大隊の数倍、ともすれば十倍に至ろうかという数である。
 この数を正確に指揮し、一糸乱れぬ統率の元制圧戦を行うのがロンメルの常勝戦法。これを前にしては彼の兄妹とて、苦戦は免れまい。
 ロンメルは自身の勝利を疑わない。自身の名は常勝無敵の陸軍元帥と同じモノ。勝利を宿命づけられ、自身のたどる轍がそこに繋がっていると確信している。

 男は進む。確信のままに。
 猟兵だと? そんなペテンのような情報に踊らされるものか。
 よしんばいたとして、この無敵の戦車連隊の前に羽蟲が飛ぼうと落とすのみ。
 勝利は動かぬ。
 ロンメルは檄を飛ばし、荒野を走る。勝利の後に開けるワインの銘柄を考えながら。

●文豪に曰く
「だからね、きみ。そういう男の脚を引っ掛けてやるのが、楽しいんじゃあないか」
 白い膚をした文豪――些々霧・悠一郞(甘き死よ来たれ・f24336)が、煙管を燻らせて笑った。
「性格が悪いなどと云ってくれるな、彼奴を放置すれば面倒なことになるのは事実だからね。きみたちの手を借りたいわけだ」
 ふ、と肺に残った白い煙を吐き出しきると、一息吸って悠一郞は説明を始める。
「今回の敵は、ロンメル・ヴォーテックス。ヴォーテックス一族の一人にして軍人宰相。特定の拠点を置かず、戦車連隊を動く拠点として転戦する、部隊そのものを移動基地とした特殊な敵だね。今回諸君に念頭に置いてもらいたいのは、その戦車連隊だ。先程話した予知の模様を思い起こしてもらえれば分かるとおり、とにかく層が厚い」
 なにせ、戦車だけで五〇〇台。あとは戦車を補助する補助車両、牽引車、迫撃砲、etc……移動基地と称するのには充分すぎるほどの規模の部隊だ。
「非戦闘車両はともかく、戦車をどうにかしなければロンメル本人には届かないことだろう。此度、きみたちにはそこに頭を絞ってもらいたい。ロンメル本人が持つユーベルコードは、タチの悪いことに、『彼の軍団を強化する』ものだ。まともに相手をしたのでは、ロンメルに手が届く前に消耗して擂り潰されてしまうだろう」
 戦車軍団の砲弾に加え、ロンメル本人の火力もある。多重攻撃に対応しなければ、近づくことさえままなるまい。
「とはいえ、小生は何の心配もしていない。何故なら、諸君が百戦錬磨の猟兵だと知っている故に。知力と暴力の全てを尽くし、必ずやあの伊達男を荒野の塵にしてくれるだろうと思っているよ。――さて、長話はここまでで」
 コン、と灰皿に打ち付けた煙管型グリモアより極彩色の煙が溢れ、雲のような“門”を形作る。
「転送地点はロンメル戦車連隊側方七〇メートルプラスマイナス二〇メートル。――それでは、電撃戦を始めよう!」

 ――ミッションスタート、“エクシード・トップアタック”!
 グッドラック、イェーガー!



 お世話になっております。
 お久しぶりの方はお久しぶりです。初めましての方は初めまして。
 煙です。

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「アポカリプス・ランページ」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

●プレイングボーナス
 以下に基づく行動をすると有利なプレイングとして判定されます。
 プレイングボーナス:戦車軍団に対処する。

●採用人数
 再送の発生しない範囲で終了します。最初に届いたプレイングから三日以内で完結の予定です(プレイングが少数に留まる場合、この限りではありません)。
 先着順などはありません。各々方の渾身のプレイング、お待ちしております。

●受付開始
 公開後、即受付開始です。
 ご覧になった段階で受け付けておりますので、いつでもどうぞ。

 それでは、此度もよろしくお願いします!
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第1章 ボス戦 『ロンメル・ヴォーテックス』

POW   :    軍人宰相の指揮
自身が操縦する【戦車軍団】の【反応速度】と【耐久力】を増強する。
SPD   :    アンブッシュ・タクティクス
戦場の地形や壁、元から置かれた物品や建造物を利用して戦うと、【ロンメル率いる戦車軍団の搭載火器】の威力と攻撃回数が3倍になる。
WIZ   :    戦場の掟
敵より【指揮する配下の数が多い】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

グラナト・ラガルティハ
戦車軍団か…徒人で有ればまず敵いはしないだろうな。だが…俺達は猟兵。埒外の存在だ。
認めたくない事実を認めず。
…いや理解せず。
あり得ないと伏すのは愚かでしかないぞ。
兄弟の刺客などと言うちっぽけなものではない。
理解しろ。
軍人ならば『想定外』などただの言い訳だ。
そこまで思考の至らなかったお前の敗北だとも。

さて戦車は何でできていたかな…
多くは金属などの無機物か?
はらばこの技はどうだ?

【封印を解く】で神の力を限定解放。
自身の装備品、蠍の剣と柘榴石の指輪をベースにUC【我が眷属の領域】を使用し火炎柱を発生させ【属性攻撃】炎で威力を上げ【焼却】

この戦場に無機物など溢れているからな。



●号砲
「戦車軍団か。徒人であればまず叶いはしないだろうな」
 場に最初に降り立ったのは赤髪に、炎めいた朱い外套と脚甲、軍装を纏った男だった。
 男の名は、グラナト・ラガルティハ(火炎纏う蠍の神・f16720)。焔纏う蠍――火炎と戦の神の一柱である。
「――だが、俺たちは猟兵。埒外の存在だ」
 グラナトは腕を組み、金眼を煌めかせた。
『目標確認! 次から次へと反応が増えているぞ、鼠一匹生かして帰すな!』
 戦車部隊が、ロンメルの指揮に従って旋回。レースカーめいた速度での回頭は、戦車には本来有り得べからざる挙動だったが、ロンメルの指揮により強化された戦車部隊は常識外れの機動力、攻撃力を持つ。
 ――だが、関係ない。グラナトは言葉を続けた。
「認めたくない事実を認めず――いや、理解せず、あり得ないと付すのは愚かでしかないぞ。俺たちは、兄弟の刺客などと言うちっぽけなものではない。――理解しろ。軍人ならば『想定外』などただの言い訳だ」
『撃てェッ!!』
 ドガッ、ドガッ、ド、ド、ドドドドドドドッ!!!
 凄まじい密度での戦車砲の激発!! 空中で分解した対人小矢弾――フレシェット弾の母弾から、無数の子弾が吐き出された。空を黒く埋め尽くす矢の群! 降り注ぐ、文字通り鼠一匹逃さぬ蹂躙の嵐。
「――そこまで思考の至らなかったお前の敗北だ。思い知るがいい」
 ず、ッ、ごオォッ!!
 突如として火炎柱が巻き起こった。グラナトが己が神としての権能を揮ったのである。
 蠍の剣、そして柘榴石の指環を媒介として発露するは、『我が眷属の領域』!!
 降り注ぐ子弾の全ては、グラナト及びその周辺に到達した瞬間に火炎柱に呑み込まれて溶融、火炎の一部となって柱に燃え爆ぜ消える!
『何だと……?!』
「指先ほどの矢弾で、俺を貫こうとは笑わせる」
 グラナトは権能により、己に迫る矢弾――無機物を火炎の柱の一部に変換、灼き尽くしたのだ。ユーベルコードで強化された敵の戦車までも火炎柱に変えることは難しいが――しかし、火種は充分!
「――だが、まあ、いい種火となった。馳走してやる、鱈腹食らえ」
 グラナトは天を衝くが如き火炎柱を己が剣に収束させ、敵の戦車部隊へと振り下ろした。矢弾を全て取り込んだ火炎柱の有効範囲は一〇〇メートルを越える!
 回避間に合わず十数台の戦車が粉砕爆砕され、爆炎を上げた。
『莫迦な……?!』
「――これを狼煙とする。さあ、戦を始めよう。蹂躙される側がどちらか、篤と知るがいい!!」
 驚愕の声を上げるロンメルに、炎を従えた戦神は高らかに告げる!!

大成功 🔵​🔵​🔵​

レモン・セノサキ
「FORTE.50」に弾倉追加
最初の一発目は「C.T.弾頭」を装填
敵戦車500、こっちの弾数は9
イイね、お釣りが来るレベルで充分だ

「ディアボロスライナー」に騎乗
即UCを発動する
瞬間的な戦力の増加、此れこそが
"偽身符" のヤドリガミの真骨頂さ
一斉に「C.T.弾頭」を発射、空中で起爆
無数の▲衝撃波の融合波面で▲範囲攻撃だ

抜けて来た戦車の反撃はバイクを乗捨て盾とし
以後「仕掛鋼糸」の▲ロープワークで回避
装甲薄そうな背面を狙撃しよう

やぁGENERAL、ご機嫌いかが?
▲グラップル織り交ぜ至近距離の▲クイックドロウ
▲砲撃の反動を推進力に、銃剣で▲早業の▲切断
メンテしたガンスミスの腕は、コッチの圧勝のようだね



●流星
 ロンメルが次に発そうとした指示に、覆い被さるようにエキゾースト・ノートが響き渡った。まるで流星めいて、一台のバイクが敵陣に突っ込んでいく。
「敵戦車五〇〇。こっちの弾数は九――イイね、お釣りが来るレベルで充分だ」
 爆炎と共に四散した連隊前衛の戦車十数台。空いたその穴に突っ込む宇宙バイクがある。光の可変翼を備えたそのマシンは『ディアボロスライナー』。乗り手の名は――レモン・セノサキ(金瞳の"偽"魔弾術士・f29870)! 自動操縦、フルスロットル。手放しで手持ちのライフルに巨大な追加弾倉をドッキングする。

 そのバトルライフル――『決戦用』小銃は、名を『FORTE.50』という。
 口径三〇ミリメートル。その弾丸の破壊力は、戦車の装甲すら貫くほどだ。

「さあ、矢弾で迎えてくれた礼でもしようか!」
 レモンは高らかに謳い、ユーベルコードを起動。『乱符・複製偽身符』! 刹那の間にレモンの姿が多重にぶれ、無数に分化する! その数一瞬にして九八! 一撃もらえば消滅する自身の贋作を大量に発生させるユーベルコードだ!
『反応急速増殖だと……!?』
「瞬間的な戦力の増加、此れこそが"偽身符" のヤドリガミの真骨頂さ!」
 狙い通りの一撃。
 レモンの号令一下、彼女の分身達が一斉に三〇ミリメートル『C.T.弾頭』を発射し空中で起爆した。クラスター・サーモバリック炸裂弾頭。空間爆発を発生させる子弾をまき散らす砲弾である。空間爆発が二十台あまりの戦車達を巻き込み、キャタピラを、砲塔を削り取って行動不能、あるいは破壊に至らしめる!
『おのれ……!』
 機関銃弾がレモンらを墜とすべく嵐の如く放たれる。分身が次々と貫かれ光爆に消えるなかを、レモンは巧みに回避、掻い潜り、バイクを蹴って跳び、鋼糸を戦車に延ばし、戦車から戦車を八艘飛び! 戦車軍団の中央近くまで侵徹する! ――中央近く、指揮戦車の上に立つロンメルへ急接近!
「貴様……!」
「やぁGENERAL、ご機嫌いかが?」
 肉声で交わしたは一言。ロンメルは驚愕と憎悪を、レモンは会心の不敵な笑みを、表情に乗せて、両者は刹那相対した。
 声もなく放たれたロンメルの右腕砲を、レモンはFORTE.50を明後日に発砲、反動で側方回避、立て続けに再装填、激発! 反動を推進力とし疾り、身体を廻す。
 ――一閃!
「鈍い――メンテしたガンスミスの腕は、コッチの圧勝のようだね」
「っぐ、ォォッ……!?」
 言い捨てに繰り出した銃剣の加速斬撃が、ロンメルの胸を真一文字に裂く……!!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア


「そういうの」が楽しい…うふふ、極めて同感ねぇ。
それじゃ、「戦車最大の敵」でお相手しましょうか。

ラグ(幻影)・摩利支天印(陽炎)・帝釈天印(雷)・エオロー(結界)で○オーラ防御のステルス○迷彩傾斜装甲を展開、ミッドナイトレースに○騎乗してテイクオフ。対空砲くらいはあるでしょうけど、盲撃ちじゃ当たってあげられないわぁ。戦車相手に○鎧無視攻撃のトップアタックは基本よねぇ?

ある程度蹴散らしたら本命ねぇ。
――準えるのはシュトゥーカの魔王、ソ連人民最大の敵。即ち、●轢殺・先駆による急降下○爆撃。生憎ジェリコの喇叭は持ち合わせていないけれど。
…言ったでしょう?「戦車最大の敵で相手をする」って。



●シュトゥーカの悪魔
 先行する猟兵らが切り拓いた戦端に、次々と後続の猟兵達が飛び込んでいく。
 それを空から、バイク型UFOに騎乗して俯瞰する影があった。ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)である。
「『そういうの』が楽しい……うふふ、極めて同感ねぇ。それじゃ、『戦車最大の敵』でお相手しましょうか」
 呟くなり、ティオレンシアはいくつものルーンと真言を重ねる。ルーンからはラグとエオロー。真言から摩利支天印と帝釈天印。幻影に結界、陽炎に雷。これら真言とルーンの効果を重ねることで、ティオレンシアが騎乗するバイク型UFO『ミッドナイトレース』は、ステルス効果と装甲を備えた急造の急降下爆撃機となる。
「行くわよぉ……!」
 アクセルを全開。ミッドナイトレースは鋭く回頭して急上昇、急激に角度を変え、戦車軍団目掛けトップアタックを仕掛ける。
『撃て撃てッ!! 奴らの侵徹を許すな!!』
 ロンメルの指示に従い、対空機関砲や機銃が空に向けて放たれる。だが、その何れもがティオレンシアを捉え得ない。ジグザグに飛びながら加速、照準を外して翔け抜ける。
「戦車相手にトップアタックは基本よねぇ。――盲撃ちに当たってはあげられないわぁ、出直してらっしゃいな!」
 急降下しながら、ティオレンシアはミッドナイトレースに搭載したグレネードのロックを外す。機体から外れ、ミッドナイトレースの俯角加速を存分に受けたグレネードは、さながら下に投擲されたかの如き勢いで飛び、次々と数機の戦車に突き刺さって爆発、爆発、爆発! 行動不能、あるいは破壊に追い込んでいく!
 ユーベルコード、『轢殺・先駆』の効果だ。このユーベルコードの影響下にあれば、ただのグレネードですら戦車装甲を貫通・破壊せしめるのである!
『ぬううッ、何をしている! よく狙えッ!』
「戦車が爆撃に対応しようなんて、無茶を言うのねぇ。――言ってみれば今のあたしは、あなたたちの天敵よぉ?」
 せせら笑うようにティオレンシアは再び急上昇からの急降下! 更に数台の戦車を爆砕し、地面すれすれを滑空して戦車と戦車の間を縫い駆け、ロンメル機から十時方向の戦車の影から急上昇!
 ミッドナイトレースを背面飛行させウィンク。片目は『オブシディアン』の照門を覗いている!
「生憎ジェリコの喇叭は持ち合わせていないけれど――シュトゥーカの魔王の真似事くらいは出来ていたでしょぉ?」
「貴ッ、様ぁ……!」
 電光石火の六連射。ロンメルに命中した銃弾が、苦鳴と血飛沫を散らす!

大成功 🔵​🔵​🔵​

菊・菊

にひッ、わかるぜ
偉そうな奴の鼻っ面折ってやるのが、イーんだよなあ

菊紋鍔がカタカタ笑うように、音を立てた

奪う大人は嫌いだ
弱い子どもが嫌いだ

だから俺が、邪魔してやる

『最悪』

転ばしてやんなら、徹底的にバカにしてえよなあ

砂塵の舞う戦場に降り立てば、直後
その刃は自身の腕を滑る
血を啜ると、刀を依り代とするクソ女は上機嫌に笑った

「数にゃ、数だろ」

近代兵器に立ち向かうは悪霊の施す花びら

美しく
細やかで
捕らえ難く
執拗だ

それは、時に燃えて滅し
それは、時に盾となり壁となり
それは、時に毒を撒き夢を見せ
それは、時に刃となって、肉を断つ

てめえの御自慢の軍隊がよ
たかが花に
蹂躙されるのは、どういう気分だよ

艶やかな菊が嗤った



●葬送花吹雪
「にひッ、わかるぜ。偉そうな奴の鼻っ面折ってやるのが、イーんだよなあ」
 また一人の猟兵が、“門”から飛びだし着地した。先行する猟兵の戦闘を見ながら、グリモア猟兵の言葉を思い出して笑うのは菊・菊(Code:pot mum・f29554)。彼の手の内で、菊紋鍔がカタカタ笑うように音を立てる。
 ――奪う大人は嫌いだ。弱い子どもも嫌いだ。だから俺が、邪魔してやる。
 菊は自身の腕を、ひゅっと妖刀『寒菊』で薙いだ。鍔揺れで笑う刀が、彼の血を舐めて啜り、ぬらりと光った。菊には聞こえる。寒菊に宿る女――彼曰く、『クソ女』が上機嫌に笑うのが。
「てめえの機嫌が良さげなのは気に入らねえけどよ、ああ、そうだな――せっかく足かけて転ばしてやんなら、徹底的にバカにしてえよなあ」
 少年は、ぎらりと笑う。
 先行する猟兵達の攻撃ぶりに、敵の警戒度は段違いに上がっていた。
『加減は無用だ、総員、会敵対象に全力攻撃! 放てェ!!』
 ロンメルの号令。菊目掛け、十数大の戦車が水平射撃を仕掛ける。砲口が火を噴くその前に、菊は腕を一閃した。
 ――『最悪』。溝の底に落ち腐れ。
 ぶ、あうっ!
 菊を、凄まじい量の花弁が取り捲いた。花弁はまるで生きている――否、プログラミングされているかのような幾何学的な軌跡を描き舞う。近代兵器の前に舞う花吹雪。それはいかにも儚く、無力に見えた。
 ――だが、それらは。
 美しく、
 細やかで、
 捕らえ難く、
 執拗である。
 砲が火を噴いた。立て続けの水平射撃。正確無比に菊を狙った砲弾は、しかし彼に命中する前に空中で爆発四散した。溢れ出た花弁が楯となり、空中で砲弾を阻んで爆裂させたのだ。
 弾幕に隙間が出来る。戦車に乗る射手の動揺が窺えた。
「ご自慢の戦車砲もそれじゃあ形無しだな」
 菊は嗤う。せせら嗤う。艶やかに、美しく。
 弾幕の隙間に菊花の嵐をねじ込む。彼の操る花片は、毒を撒き、あるいは炎に燃えながら突き刺さって敵の武装を破壊し、あるいは手裏剣めいて回転しながら装甲に突き立ち貫いて、内部の敵を殺傷した。次々と戦車を無効化しながら駆ける菊は止まらない。
「――よう、どんな気分だ? たかが花に、てめえの御自慢の軍隊が蹂躙される時の気分ってのはよ!」
『貴様……!』
 ロンメルの歯軋りが聞こえてきそうで、益々おかしくて。
 菊は、刀に宿った女と重ねるように嗤った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラブリー・ラビットクロー
凄い数の戦車だ
こんな沢山で走ったらセカイはどんどん荒れていっちゃうぞ
行くぞマザー
ホントのセカイを取り戻してヒトのユメを叶えるんだ
【頑張りましょう】

アウトローサインのカラースプレーで描いたのは他のヴォーテックス達の姿
ホントはこんなの描く為にらぶのスプレーがある訳じゃないけどしょーがねーのん
ハリボテだけど
きっと少しはビックリするかも

その隙にラビットギアで戦車達に近づくぞ
運転手をボコしたらその戦車を盗んじゃえ
マザー!上手くできそーか?
【ケーブル接続を確認。タンクシステムへのハッキングを開始します】
その間に戦車もユメかわいー色にアートしちゃえ
【ハッキング完了。システム使用中の戦車を全て掌握しました】



●タンクジャック・ラビットクロー
「凄い数の戦車だ。こんな沢山で走ったらセカイはどんどん荒れていっちゃうぞ。行くぞマザー、ホントのセカイを取り戻してヒトのユメを叶えるんだ」
【頑張りましょう】
 少女の声に、滑らかに、端末の人工音声が答えた。ラブリー・ラビットクロー(とオフライン非通信端末【ビッグマザー】・f26591)だ。戦場の片隅で、カラースプレーで他のヴォーテックス一族らの姿を地面にペイントしていく。
「ホントはこんなの描く為にらぶのスプレーがある訳じゃないけどしょーがねーのん」
 ロンメルを除くヴォーテックス一族の姿を細密に描き抜き、ラブリーはユーベルコードを発動した。
 『頭の中のセカイの全て』。ほぼ中身のないただのハリボテとは言え、一見それとしか見えない三人の姿が瞬く間に実体化する。
「よし。マザー、適当に敵を煽ってやるのん」
【欺瞞情報を無線に載せる作戦を提案します】
「おっけー」
 ラブリーはニセヴォーテックス一族らを適当に明後日の方向に向け走らせると、それとは反対側に向け小型戦車『ラビットギア』に飛び乗って走り出した。激闘を繰り広げる敵の死角へ回り込む。
【警告! 他のヴォーテックス一族の姿を確認! 九時方向! 総員攻撃!】
『何だと?! おいっ、今の無線は誰の物――』
 ロンメルが誰何する前に、一部の気の早い戦車が、ラブリーが作った偽物を捕捉。即座に砲撃を開始する。ラブリーはそこを衝き、陣形から外れた戦車に死角から接近、取り付く。ハッチをチェーンソーで切り抜く。激音。
「っなっ、何だァ?!」
 内側から慌てた声が聞こえた時には、ラブリーは戦車内に滑り込んでいる。
「はろー、あんどぐっばい」
「うげっ?!」「ぐおっ!?」「ごはーっ!?」
 三人一組の戦車乗組員をバットで殴打、ノックアウト。縛って後部に転がし、ラブリーは戦車の情報端子にマザーを接続する。
「マザー! 上手くできそーか?」
【ケーブル接続を確認。タンクシステムへのハッキングを開始します】
「よしきた。その間にこの戦車もユメかわいー色にアートしちゃお」
 車外に飛び出したラブリーが神業的な速度で戦車をポップ&キュートなカラーに塗り替えるのと同時、マザーが『Completed』の表示を明滅させる。
【ハッキング完了。システム使用中の戦車を掌握しました】
「おっけー。――じゃ、やったるなんな! ぜんそくぜんしん、ほーげきかいしー!」
 ロンメルの指揮下にあったはずの戦車の一部が、マザーを通したラブリーの命令に従い隊列を狂わせてでたらめに前進! あろうことか砲撃! 散発的に同士討ちが発生する!
『ええいっ、情報戦か、忌々しい……!』
「使えるモノは何でも使った方がいいって、らぶだって知ってるのん」
 ロンメルの苛立ち混じりの呻きに、済ました顔でラブリーは戦車を走らせる!

大成功 🔵​🔵​🔵​

仇死原・アンナ


砂塵の世界を救う為にも…
そして悪逆なる一族が一人…鉄血の男を討ち倒そうぞ!
我が名はアンナ…処刑人が娘也ッ!

まるで地の果てまで見据えてるようだが…空を見るがいい…
空から降るのは雨や雪だけではない…!

【天より降る滅びの火】を発動
地獄の炎の火炎球を空より降らせて[範囲攻撃と鎧無視攻撃]で
敵の指揮する戦車軍団を[焼却]し殲滅しよう

逃げようとする戦車あれば[誘導弾で追跡]して追い詰め
それを利用して戦車同士を衝突させて自滅に追い込もう

戦車軍団を撃退できたら鉄塊剣を抜き振るい敵将と戦闘
[鎧砕きと怪力の重量攻撃]で右腕の戦車砲を[部位破壊]し
そのまま鉄塊剣を[なぎ払い]、真っ二つに[切断]してやる…!



●獄炎馳せる
 駆ける。躰に蒼い炎を燻らせ、処刑人が駆ける。
「砂塵の世界を救う為にも……悪逆なる一族が一人……鉄血の男を討ち倒そうぞ!」
 蒼き炎は炎獄の鎧より溢れ出るモノ。鉄塊めいた巨大剣を引っ提げ、単身戦車の群に突撃するのは仇死原・アンナ(炎獄の執行人あるいは焔の魔女・f09978)!
 敵前衛戦車との相対距離五〇メートル。即座に機関銃の掃射が来る。しかしアンナはより姿勢を低くし、ジグザグに駆けて弾丸を掻い潜り、顎をしゃくった。
「まるで地の果てまで見据えてるようだが……空を見るがいい……空から降るのは雨や雪だけではない……!」
 まるで呪いめいた語調で彼女が言えば、空が赤く染まった。
 その瞬間、戦車兵達は驚愕する。――空が燃えている。比喩ではない。燃えているのだ。
 ――『天より降る滅びの火』!
 アンナが行使するのは地獄の炎を固めた火焔球である。それが千発あまり、天に唐突に焼結して雲を焼いた。一発一発が幾何学的な軌道を描き、まるで空襲めいて降り注ぐ!!
 数発なら強化された戦車装甲がそれを受け止めただろう。しかしその数、千発だ。アンナは自身の前方にいる戦車部隊の壁に穴を開けるように、一直線に火炎弾を降り注がせた。敵もただの戦車ではない、回避や応射をするものもある。好都合だ。回避してくれれば道が空く――それに、ただ回避させるわけがない。火炎弾の軌道を変化させホーミング、一台に数十発を叩き込む飽和攻撃で爆破、滅却する! 回避を焦った敵戦車がそこかしこで激突するのを横目に、アンナは真っ直ぐにロンメルに向けて駆け抜ける!
「我が名はアンナ……処刑人が娘也ッ!」
「またぞろ来たか、異能の兵共が……! 貴様らが、貴様らが『猟兵』だというのか、この力――異界を渡る稀なる強者共……!」
 ロンメルの周囲を固める戦車が機関銃で弾幕を形成するが、アンナは鉄塊剣を盾にし火花を散らし防御! 数発掠め血が飛沫くのを無視し、全力で地を蹴り踏み込む!
「お前の首を貰い受けるッ!!」
「化物め……!!」
 アンナ目掛けロンメルの右腕砲が火を噴くが、アンナは自身に付帯させた火焔球でそれを迎撃。爆炎爆ぜるなかを肩で斬り裂き跳躍、炎を飛び抜け――
「喰らえッ……!!」
「っぐ、おぉおっ?!」
 アンナの鉄塊剣が、ロンメルの躰を捉えた。断罪大剣『錆色の乙女』が、ロンメルの軍装を引き裂き、血を撒き散らす……!!

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
視野狭窄に陥ろうと敵の戦場軍団はこの世界に住まう人々の安寧脅かす脅威
私達を正確に認識しての次戦の機会など、与えるつもりはありません

機械馬に●騎乗
スラスターでの●推力移動、大地●踏みつける騎馬の跳躍も駆使し砲撃を躱しつつ敵軍へ接近

さあ、次は此方の手番です
此方も数は揃えましたよ

電脳剣を振るい誘導兵器召喚
マルチセンサーでの●情報収集でUC射程圏内の敵車両の装甲脆弱部を●見切り茎で貫き電力やエネルギーを吸収、紫紺の花を咲かせ攻撃を封じ込めます

封じ損ねた敵や手動で動く兵器は格納銃器の乱れ撃ちスナイパー射撃で射手等を排除
そのまま●怪力で振るう剣と盾用いた騎馬突撃で戦車を蹴散らしながら味方の活路を切り拓き



●騎士の本懐
「視野狭窄に陥ろうと敵の戦場軍団はこの世界に住まう人々の安寧脅かす脅威――私達を正確に認識しての次戦の機会など、与えるつもりはありません」
 高く切り立った隆起の上から戦況を見下ろし、機械白馬「ロシナンテⅡ」に跨がった騎士――否、機士が言った。その体高三メートル近い。白を基本にアクセントに楝色をあしらった機械仕掛けの甲冑騎士である。トリテレイア・ゼロナイン(「誰かの為」の機械騎士・f04141)だ。
「行きますよ、ロシナンテ。――仲間の活路を拓きます!」
 騎士とは、危険を冒してもなにかを助くものだ。機械であるとて、その想いにひとひらの曇りも無し。
 トリテレイアは機械馬のスラスターを全開に、切り立った隆起を駆け降りる。加速、加速、加速! 即座に捕捉され放たれる砲撃を、ギャロップとスラスターの併用で右に左に避け、華麗に駆ける!
「先手は譲って差し上げましたが、次は此方の手番です。此方も数は揃えましたよ」
 トリテレイアは電脳禁忌剣『アレクシア』を抜剣。現実を改変し、無数の誘導兵器を召喚する。――抑止兵装『守護の花』! ブローディアの花めいた形をした無数のビットが空中に展開される。その数一瞬にして千超! マルチセンサーにより視界内戦車三八両をマルチ・ロックオン!
「数には数を、です。――咲き誇れ、ブローディア!!」
 トリテレイアが電脳剣を指揮棒めいて振り下ろすのと同時に、無数のブローディア・ビットは柱に藍色の光の軌跡を曳いて戦車目掛けて殺到した。一発一発の威力は高くない。そもそも攻撃用の兵装と言うより、敵を無力化させるためのモノだ。――しかし脅威はその数にある。千を越えるブローディア・ビットは、瞬く間に戦車の装甲の継ぎ目、あるいは被弾して脆くなった場所へ殺到し、次々と突き立って電装系・燃料系に根を張ってエネルギーを吸い上げた。
 ロンメルのユーベルコードにより強化されていた戦車だが、雨の如く振る花の猛撃に絶えきれるわけもない。突き立った花は、戦車の動力を超自然的に吸い尽くし、紫紺の花を咲かせた。力を失ったかのように動かなくなる戦車の間を駆け抜け、トリテレイアは一台の戦車を飛び越えるなり機械馬のパワーレベルをマックスまで上げる。
「はああっ!!」
 裂帛の気勢!
 電脳剣を単純な膂力で振り回し、更に数台の戦車を薙ぎ倒す!
「今です、皆さん!」
 剣を振り上げ仲間を鼓舞するトリテレイアの勇姿に続き、更に数名の猟兵が戦場へ突撃していく……!

大成功 🔵​🔵​🔵​

丸越・梓
アドリブ、マスタリング歓迎
NG:味方を攻撃する
_

「ヨル」
喚ぶは我が友
黒き鎧を纏うヒポグリフ
「征くぞ」
彼の金の瞳が、凛々しく煌めいた


ヨルに騎乗し空を翔る
砲撃の陽動を引き受けながら抜刀、派手に暴れ蹂躙しながら味方を援護し
躱しきれない攻撃にはオーラ防御で対応
一瞬の隙も見逃さず上空へ駆け昇り、展開するは静謐に輝く──我が支配下たる、夜
戦況を冷静に見極め、敵の一歩先へ行く様に
荒ぶ嵐の如き神速の斬撃、更に範囲攻撃にて一層の破壊と撹乱を齎し
味方を鼓舞しながら勇猛果敢に攻め込んでいく

互いのこの正義は譲れぬ
然しロンメルらへの敬意や誠意は忘れず
骸の海へ旅立つ彼らへ

「──グッドラック」



●夜が降る
 空を、黒き鎧を纏う幻獣、ヒポグリフが飛んだ。その背に一人の男の姿。
「ヨル」
 男が口を開いた。幻獣の名を呼ぶ。空を戦闘機の比ではない出鱈目な機動でジグザグに飛びながら、ヒポグリフが鷲頭から鋭い鳴き声で応えた。いつでもいける、と謳うようだ。
「――征くぞ」
 凜々しく煌めく金眼。主人、丸越・梓(零の魔王・f31127)の声に従い、ヒポグリフは高度を下げ、低空飛行で戦車群に襲いかかった。
 ご、ォウッ!!
 ヒポグリフの翼が空気を裂き、ヒポグリフは凄まじい三次元軌道を描いて飛行した。高射砲や戦車の機銃、あるいは戦車のハッチから顔を出した歩兵によるアサルトライフルの銃弾が、梓とヨルを襲う。しかしその何れもが彼ら二人を捉えられぬ。当に人獣一体の凄まじい曲芸飛行だ。ヨルが選ぶコースに合わせて、梓はその背で躰を振り、空気抵抗を減らして滑らかに重心移動、弾丸の嵐の間を、まるで嵐の中悠々と舞う蝶めいて飛び抜ける。
 当然、梓とて撃たれっぱなしになるつもりなど毛頭ない。地上で白兵戦を行う味方の補助のために陽動を引き受けたが、それだけで終わるつもりはなかった。
「――帳を降ろすぞ」
 戦場によく通る声で言うと、梓は弾丸と砲弾の間を縫いながらヨルに急上昇を命じた。Gが躰を襲うが、頓着せぬ。戦場全てを俯瞰できるほどの高度まで上がりながら、梓は妖刀『桜』を抜刀。
 抜刀に刀身が凜と鳴って応えた瞬間、戦場を夜が覆った。太陽が陰り、藍色に染まる空。
 ――『侯爵』、起動。訪れるのは、静謐に輝く、魔王の支配下たる夜。
「俺はお前たちの正義を否定しない。だが、俺にも曲げられぬ正義がある」
 金眼が、ああ、今空にはない、月のように煌めく!
「互いの正義を譲れぬのなら、戦うしかあるまい」
 ――爆発的な速度で、梓は急降下した。
 集中する弾幕。だが、梓は夜に最低限の回避を命じ、オーラによる障壁で機銃を弾き飛ばして一直線にダイヴ。地表すれすれでヨルに翼を広げさせ、落下エネルギーを凶悪な揚力と推進力に変換……!!
 煌めく妖刀の刃が、まるでライトに照らされた驟雨の如き無数の斬閃を描いた。『侯爵』により増幅された斬撃の嵐、その威力は想像を絶する!
 斬、斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬ッ!!!! 戦車の履帯が砲が機銃がハッチが車輪が次々と斬り裂かれ、漏出した燃料が火花で引火し爆発、爆発爆発!! 梓が飛んだその軌跡上で次々と戦車が爆発炎上する!
 急上昇し、空中で刃を振って残心を極めながら、梓は次の標的を探しヨルを疾らせる。
「――グッドラック」
 忘れまい。お前たちの誇りも、何もかも。
 還れ、骸の海へ。然らば、然らば。

大成功 🔵​🔵​🔵​

柊・はとり


UC発動
あんたの罪状は山とあるだろうが
敢えて一つ指摘するなら『無知』だな
109秒で罪を思い知れ

敵の能力が三倍になろうが
俺の能力は六倍だ
後はどれだけ効率的に暴れられるか
手間が無いのは自然災害だな

天候操作と属性攻撃で
戦場の各所に竜巻・雪崩・落雷・豪雨等
超災害級の天変地異を起こし敵軍を蹂躙
指揮系統を麻痺させる
災害は勝手に暴れてくれるんで
俺自身も動ける寸法だ
名探偵の呪いも捨てたもんじゃないね

地震は俺が担当してやろう
地形破壊で地割れと落石を起こし
戦場を混乱に陥れロンメルへ接近
この状況で俺を狙える奴がいたら
敬意を表してなぎ払っとく

これが猟兵だ
理解できたか?
殺気で怯ませ渾身の力で切断
寝落ちる前に退散するぜ



●電撃推理一〇九秒
 は、と溜息をついた少年がいた。
 それは嘲笑うようで、ほとほと呆れたようでもあった。
「あんたの罪状は山とあるだろうが、敢えて一つ指摘するなら『無知』だな。――109秒で罪を思い知れ」
 享年十六歳の高校生探偵、柊・はとり(死に損ないのニケ・f25213)は知っている。未知を知らざるままに侮るものは、決して大成など出来ないのだということを。
 はとりは即座にユーベルコードを起動した。「第二の殺人『眠れる森』」――ロンメルの罪、無知を指摘し、己の全ての能力を増幅する。タイムリミットは一〇九秒。
 はとりが天に腕を突き出すなり、雷が鳴り渡った。嵐が巻き起こり、旋風が渦を巻き、豪雨が降り注いで脆くなった地面が液状化した。天候を操作し、はとりが人為的に災害を巻き起こしたのである。一度操作した天候はそのまま暴れ続ける。意のままになるのは初動だけだが、それで充分だ。何より勝手に続いてくれるというのがいい。そちらに意識を裂かず行動し続けられるからだ。あと七〇秒。
「地震だけは俺が担当してやる。――そら、指揮系統がガタガタになったところで地面が揺れればどうなる?」
 名探偵は走りながら、地面を蹴りつけ横に跳んだ。彼が蹴りつけた位置から『地形破壊』の効果による亀裂が走り、地が割れる。小規模な地割れだが、しかし戦車を呑み込む程度の幅はある。回避するものもあれば落下してはまり込み、動きが取れなくなるものもある。言うまでもなく、戦場の一角は瞬く間に混乱の坩堝に陥った。盲滅法に機銃を撃つ戦車もあったが、その銃弾を掻い潜り、はとりは大剣『コキュートスの水槽』で力任せに薙ぎ払い、ひっくり返して横転させる。あと三五秒。
 駆ける。混乱した敵陣へ真っ直ぐに斬り込む。ロンメルは既に先行する猟兵によりダメージを受けていたが、未だ健在。突っ込んでくるはとりを視認し、周囲の戦車に攻撃を命じる。
「猟兵はここにいる。俺が、俺たちが猟兵だ」
「莫迦な……こんな力を持つ者達がいるなどと……!」
「その調子じゃ、理解出来てないみたいだな。――する必要もないさ。お前の罪は、『無知』で決まりだ」
 はとりは放たれる戦車の機銃弾を弾き掻い潜り、ロンメルが指し向けた戦車砲を弾き除け、走るその速度のままに胴薙ぎ一閃を叩き込んだ。
「ガッ、は……!?」
 血を吐くロンメルを尻目に、はとりはそのまま駆け抜け、一目散に離脱した。残り十秒。
 ……一〇九秒。証明終了。
 探偵の姿は、もうどこにもない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マリー・ハロット
マリー、アポヘルは楽しい事何にもないし、みんな大変そうだからキライ……だけど、みんな大変そうに頑張ってるのに、それをめちゃくちゃにしちゃおうとするやつはもっとキライ!

おじさん、手下がいないと何にもできないんでしょ? だったら、まず手下と戦車から倒しちゃお!
なんかすっごい沢山いるし、ちょっとだけ硬そうだけど……マリーの相手にはならないね!
確か、上からは弱いんだっけ? 空から仕掛けるね!(【空中浮遊】【空中戦】)
【念動力】で戦車を足止めして、【念動力】をおーよーした“ぱいろきねしす”ぶんしうんどーせいぎょ?だっけ、アハッ、マリーよくわかんないや。でも、ちょー熱くして、ドロドロに溶かしちゃうよ!



●炎の雨
 ふわり、と、浅黒い膚の少女が飛んだ。背になにもない。翼があるわけでも、なにか推進機構を持っているわけでもない。――彼女はサイキッカーだ。
「マリー、アポヘルは楽しい事何にもないし、みんな大変そうだからキライ……だけど、みんな大変そうに頑張ってるのに、それをめちゃくちゃにしちゃおうとするやつはもっとキライ!」
 幼い義憤を燃やしながら、少女、マリー・ハロット(高級カラーひよこ・f24446)は戦場を俯瞰する。グリモア猟兵の説明によれば、敵のユーベルコードは己の部下たる戦車部隊を精強に強化するモノだという。
「おじさん、手下がいないと何にもできないんでしょ? だったら、まず手下と戦車から倒しちゃお!」
 マリーは容赦ない言葉を無邪気に口にして、にっこりと笑った。浮かび上がった彼女の周囲に、ぽう、ぽ、ぽっ、とごく軽いポップ音と共に炎が点る。それは、単に何らかの物体が激烈な酸化反応により燃焼して発生した訳ではない――超自然の炎。サイキック。分子運動量制御、つまり分子間の摩擦を具現化する念動力のカテゴリ。『ぱいろきねしす』。
「何かすっごい沢山いるし、ちょっとだけ硬そうだけど……マリーの相手にはならないね!」
 マリーは軽やかに笑うと、サイキックの出力を全開にした。炎は瞬く間に空気を呑み込んで両拳ほどのサイズにまで膨れ上がる。それがマリーを取り囲むように、一瞬にして一〇三発顕現!
「確か、上からに弱いんだよね? 戦車って。マリー知ってるよ! なんでか知らないけど!」
 戦車というのは、主たる火器である主砲の照準を人力・手動で行う必要がある。ペダル制御とハンドル制御でだ。それ故基本的に鈍重な対戦車戦、あるいは構造物を破壊するための対静止目標射撃しか出来ないものと見ていい。戦車が空を飛ぶ敵、戦闘機やそれに類する高速で飛行する対象を主砲で捉えることなど、不可能に近いのである。
 マリーはそれを、細かい理屈は抜きに知っていた。
「念動力をおーよーした“ぱいろきねしす”……ぶんしうんどーせいぎょ? だっけ? アハッ! マリーよくわかんないや。でも、ちょー熱くして、ドロドロに溶かしちゃうよ!」
 マリーは腕を目一杯に空に掲げ、
「燃えちゃえ――っ!!」
 振り下ろした。

 炎の雨が降る。

 応射した戦車砲の砲弾が、空中で火炎弾に呑まれ爆発した。その爆炎を貫いて尚も一〇〇発あまりの火炎弾が降り注ぐ!
 隕石めいた速度で着弾した火炎弾は戦車の装甲を焼き貫いて侵徹、燃料に引火させ次々と爆発四散させていく。戦車一両につき叩き込まれた火炎弾は五発――一瞬で二十台が煉獄の焔に包まれる。
「さぁ、どんどんいくよーっ!」
 金の瞳の小悪魔が、再び火炎弾を周囲に展開する……!

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャオロン・リー
呵呵呵呵ッ!この阿呆、俺らを居らんて言いよったか!
どんな情報も無為にするな、て、俺の仲間の交渉役がよう言うとったわ
まぁなんや
阿呆な事抜かした時点で死ぬしかあらへんやろ

金磚
戦車やらなんやらの邪魔なもんは空中戦で飛んでいく
砲撃は見切って躱す
金磚の攻撃軽減効果、激痛耐性、継戦能力で攻撃は凌ぐ

俺の槍はどこまでも増える!どこまでも飛ぶ!
戦車を蜂の巣にしても、砲塔に詰めても、配下らまとめてぶち抜いても
それでも槍はまだまだあんねんぞ
火炎属性攻撃の一斉発射で貫通攻撃
その腹に風穴開けたろうやんけ
「暴力、暴走、暴動の権化、暴れ竜シャオロン・リー!お前を蹂躙しに来たったわ!」

現実も見えてへん男が勝負に勝てるか、阿呆



●猛撃の暴れ竜
「呵呵呵呵ッ! この阿呆、俺らを居らんて言いよったか! どんな情報も無為にするな、て、俺の仲間の交渉役がよう言うとったわ!」
 戦場に大笑が響いた。竜の両翼を広げ、凄まじい速度で空を翔るのはシャオロン・リー(Reckless Ride Riot・f16759)。
 猟兵など存在するわけがない。フェイク情報、対策を考慮するに値しない存在だ――そう断じたロンメルの無能を笑い飛ばしながら、にい、と牙を剥き出す。
「まぁなんや。阿呆な事抜かした時点で死ぬしかあらへんやろ。戦場で舐めたこと言うとるんやないぞ!!」
 ゆらり。
 彼の両手にした槍の穂先が、まるで切れかけの蛍光灯の下で振ったときのように何重にもぶれた。
 ユーベルコード『金磚』、発動。超高速で低空飛行しながら、シャオロンは真っ向、戦車の群に突っ込んだ。
 当然仰角を向けた機関銃の歓待を受ける。ロンメルの能力で強化された機関銃弾は、猟兵ですら十数発ももらえば致命傷となり得る凄絶な威力を持つが、しかし竜の血脈を励起させることで己が耐久力を増幅したシャオロンは、多少の攻撃では怯まない!
「痒い、痒いなあ! そんなもんで暴れ竜を止められるつもりでおるんか、お前らァ!!」
 躰に食い込む機関銃弾が、命中したそばから傷口より押し出された。筋肉の収縮で体外に排出されたのだ。即ち、あの機銃弾ですらシャオロンの躰を、筋肉を貫けぬのだ!
「俺の槍はどこまでも増える! どこまでも飛ぶ! お前ら全部に喰わせたっても、それでも槍はまだまだあんねんぞ――見せたるわ!! 叫べやァ、閃龍牙、爆龍爪!! これがッ、俺の――『金磚』やぁッ!!!」
 叫びと共にシャオロンは最高速に乗る。突き出した禍焔竜槍『閃龍牙』と発破竜槍『爆龍爪』の切ッ先がぶれて増え、一突きが一〇〇の突きに分化する!! 擦れ違い様に戦車の砲塔を、横っ腹を、機関銃を、あるいは正面装甲を貫き、次々と鋼鉄の戦車を破壊していく。シャオロンが飛び抜けた軌跡を追うように、戦車の爆発が吹き上がっていく!!
「暴力、暴走、暴動の権化、暴れ竜シャオロン・リー! お前を蹂躙しに来たったわ! お前も味わっとけ――これがお前が居らんて言うた、猟兵の一撃やッ!!」
「――!!」
 ロンメルが浮かべた驚愕の顔を笑い飛ばし、シャオロンは飛び抜けざまにロンメルとその周囲の戦車を無数の突きで猛撃した。爆炎に呑まれ、戦車とロンメルが炎に包まれ、苦鳴が響き渡る……!

「現実も見えてへん男が勝負に勝てるか、阿呆」

 吐き捨て、シャオロンは次なる一撃の助走距離を取り、槍を構え直す!

大成功 🔵​🔵​🔵​

グラン・ボーン
500台の戦車とは圧巻だな
88戦車砲なら何発か受けても平気だろうが、あれだけの数はきついな

地に伏せやり過ごすとしよう
気で肉体を固めれば戦車に踏まれるくらいは耐えれるだろう
戦車隊中心まで耐えきったら、そこから起き上がって戦車隊と戦うとしよう

中心なら同士討ちがあるから、一斉射撃はできないだろう
戦車をひっくり返したり、戦車相手におのれの拳がどこまで通じるか殴ってみよう

近隣の戦車だけなら、砲身の動きを見て砲弾を躱すこともできるだろう

俺は巨人拳のグラン・ボーン、鍛え抜かれたこの肉体にはその右手の砲弾も通じはせんぞ。


存分に叩き尽くし給えッッッ

ロンメルを挑発して弾丸に耐えて倒す

無理なら誰かに助けてもらう



●世紀末の拳
 突如として、戦車群の足元で爆発が起こった。
 なんだ? 地雷か? 浮き足立ち、挙動が乱れる戦車群。そのド真ん中。
 地雷ではない。突き上がっているのは、巨大な拳だった。
 その巨人の拳が、土を跳ね上げたのだ。
「やれやれ。随分と踏んでくれたものだ」
 戦車砲の直撃であれば、数発までなら堪えてみせる――しかし五〇〇台を相手にそれをやっては塵も残らない。そう判断し、その五メートル半の巨人――グラン・ボーン(巨人の巨人拳伝承者・f34134)は、地に伏せて気配を殺し、地面と一体化して進撃する戦車群をやり過ごしたのだ。当然戦車のキャタピラに踏まれることになるが、気により肉体を固めればそれすらやり過ごせる。戦車隊中央近くまでそうしてやり過ごしたグランは、突如として拳を衝き上げ立ち上がり、ゲリラ戦を仕掛けたのである。
 跳ね上げた土が地に落ちぬうちに、グランは低姿勢で疾った。まるでプロレスのタックルめいた突撃。目の前の戦車にぶちかましを叩き込む。信じられないことに、戦車が揺れた。敵戦車重量は控えめに見積もって四〇トンを超える。それを体当たりで揺らし、あろうことか、
「オォォッ!!」
 裂帛の気合と共にひっくり返すッ!! 最早人間業ではない。戦車の密集地帯ならば敵が同士討ちを恐れて戦車砲を使えまいと判断しての白兵戦だ。人外の方法による合理的な兵法。知恵を持った獣と言うべきか。
 グランはひっくり返した戦車を踏み台に踏み込み、次の戦車に跳躍しながら襲いかかった。踵落とし。ぐしゃりと、まるで玩具のように戦車が叩き潰される。足元で爆発する戦車の爆圧に乗って次の戦車に襲いかかり、今度は瓦割りめいて拳を叩き込む。立て続けに叩き込んだ拳は十二発。浸透した気がエンジンを叩き潰し、これもまた爆発。
「化物が……!!」
 ロンメルが目を見開いた。驚愕に値する。五メートルの巨人がそうして立て続けに戦車を潰しているのだから、宜なるかな。
「俺は巨人拳のグラン・ボーン、鍛え抜かれたこの肉体にはその右手の砲弾も通じはせんぞ。――さあ、存分に叩き尽くし給えッッッ」
 一喝と共にグランは爆裂する戦車を蹴り、ロンメル目掛け飛びかかった。挑発の言葉に応じるようにロンメルは右腕の砲をグラン目掛けて放つ。
 グランは左拳を突き出した。砲弾とカチ合う左拳! 爆裂! 骨が砕け、左拳が使い物にならなくなる。……だが右拳がまだ、活きている!
 獣めいて叫び、グランは右拳を繰り出した。トラックの激突めいたインパクトを持つ右拳がロンメルの上体に激突! その身体を、まるで打たれた打球めいて後方に弾き飛ばす……!

大成功 🔵​🔵​🔵​

マオ・ブロークン
……あの、戦車の、軍団が。ロンメルの、……目標の、部隊。
物量は、凄まじい。真正面から、当たれば。勝ち目は、ない……
それなら。あの、軍備、そのものを……利用して、やれば。いい。

ポルター・ガイスト。たしか、元は、そっちの、言葉。
はじめは、荒れた、道を、行くような……小さな、振動。
次第に、大きく。揺らして。最後には、持ち上げて、振り回す。

戦車の、耐久力を、高めて、くれるなら……
それ自体を、武器と、して、使うにも。好都合。
周辺車両を、軍人たちを、指揮官を。
戦車の、大質量で。叩き潰して、やる。

念動力……ゴースト、の。意志が、もたらす、力。
あたしは。死んだ、くらいじゃ……止まれない。
……まだ、先へ。



●騒霊の呪い
 敵の軍勢は、これだけ削ってもなお三〇〇機近く残存している。ロンメルが窮地に陥るに従い、彼の指揮は冴え渡る一方。五〇〇機を指揮するのと、三〇〇機を指揮するのとでは精度が違う。ロンメルの指揮がより浸透し、三〇〇機の動きは今までよりも精細に、より鋭くなっている。
「……あの、戦車の、軍団が。ロンメルの、……目標の、部隊」
 蒼白い顔をした少女がぽつりと呟いた。最早戦場は乱戦状態、そこかしこを猟兵と戦車の火砲の嵐が飛び交っている。
「物量は、凄まじい。真正面から、当たれば。勝ち目は、ない……それなら。あの、軍備、そのものを……利用して、やれば。いい」
 縺れる舌で呟くのは、マオ・ブロークン(涙の海に沈む・f24917)。
 錆びた脳の回転は鈍りきり、停止した拍動はもう二度と刻まれない。けれど彼女は死してなお生きるデッドマン。猟兵の一人だ。
「ポルター・ガイストを知っている? たしか、元は、そっちの、言葉」
 ロンメル・ヴォーテックスがドイツの生まれかは知らないが、ロンメル陸軍元帥はドイツ人だ。それになぞらえて、真央は聞こえもせぬ言葉を謳う。
 少女は目を閉じ、集中した。これは騒霊。ゴーストの意志がもたらす力、ポルター・ガイスト。
 ――数台の戦車を、僅かな震動が襲った。それは荒れた道を行くような小さな振動だった。駆動系に異常が起きたような振動ではなかった。だから、乗員はそれを見過ごした。
 振動は、すぐに大きくなった。まるで嵐に揺られる帆船めいて車両が揺れだしたとき、乗員は異常に気付いて対処しようとしたが、車両は既に騒霊に囚われている。マオの手の平の内側も同じ事。
 マオの瞳が、まるで鬼火のように青白く燃えた。
 声もなく騒霊に命じる。マオは、ゴーストの意志に根ざす念動力を行使し、数台の戦車を『持ち上げた』。歯を食い縛り、振り回して、近くの戦車に持ち上げた戦車を叩きつける。まるで駄々をこねる子供が人形をそうするような容赦のなさで。
 ロンメルの能力により耐久性の高まった戦車は、良質な棍棒だ。叩きつける、叩きつける、叩きつける、叩きつける、叩きつける、叩きつける、周辺の車両を、降車して逃げようとする軍人達を、次々と叩き潰して粉砕する。
 持ち上げた戦車が焼け黒ずんだ鉄の塊になってしまうまでそれを繰り返し、マオはゆらりと幽鬼のように踏み出した。
「あたしは。死んだ、くらいじゃ……止まれない」
 拍動が止まっても、足は、まだ動く。
 ……まだ、先へ。デッドマンは往く。

大成功 🔵​🔵​🔵​

杜鬼・クロウ
負傷◎
互いに譲れぬ矜持
只管進む敵に清々しさすら覚え

物騒なモン仰山揃えてきたなァ
俺もテメェみてェな堅物は派手に転ばせて反応を拝みてェトコだが
正々堂々、常勝の道とやらをぶっ壊した方が滾るぜ

(ちィ、埒が明かねェな
邪魔な戦車共を丸ごと灼き払うか
必ず轟かせる)

夜雀召喚
宰相の場所を確認しその直線上にいる戦車をUCで破壊
宰相までの路を切り拓く
妨害する戦車の大砲口や車体を玄夜叉で斬る
戦車対応するのは最小限
力は温存する

体力が削れたと思ったか?
生憎とまだまだ暴れ足りねェンだわ!

力と力の衝突
制御難しい風属性の魔釼で宰相の主な攻撃手(腕の銃)を真っ先に斬り刻む
敵の攻撃は武器受け
炎の黒剣で宰相を足止めし機能停止狙う

沈め



●彼だけの光
「ハ、物騒なモン仰山揃えてきたなァ。俺もテメェみてェな堅物は派手に転ばせて反応を拝みてェトコだが――正々堂々、常勝の道とやらをぶっ壊してやる方が滾るぜ」
 黒の大剣、『玄夜叉・伍輝』を振り翳し、風雲児が疾る。杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)だ。しかし障害なく素通しというわけにはいかない。正面切って突っ込めば、手痛い応射が待っている。
 クロウ目掛け、十数両の戦車からの大砲の水平射撃。世界を引っ繰り返すような轟音と共に射出される砲弾が、ジグザグに駆けるクロウの側方や前方に次々と炸裂し、凄まじい衝撃波と爆音でクロウの身体を嬲る。側方二メートルに着弾するだけで破片と衝撃波がクロウの躰を軋ませ、傷つけた。
(ちィ、埒が明かねェな。邪魔な戦車共を丸ごと灼き払うか――必ず轟かせてやる)
 クロウは既に、ロンメルの所在を割り出している。式神『夜雀』を使役することで、今自分が立っているその直線上にロンメルがいることを確認済だ。
 ――一撃。只一撃を放ち、ロンメルへの道を切り拓く。
 圧縮した詠唱を口の中で転がし、クロウは砲弾の間を転げるように抜けながら玄夜叉を振り被った。その刀身から眩き光が迸った。彼の刃は永海・鋭春改作、崩し烈光含の逸品。崩し烈光含は複数属性を融和させず一刀に内包する脅威の技だが、本来、これを施された刃は烈光鉄が持つはずの『光閃』を放つ権能を持たない。複数属性それぞれを使うことは出来ても、その全てを合わせた結果である烈光鉄としての性能を持たないのだ。
 だが、彼は、クロウは、それを可能とする。五行の属性全てを己の中に落とし込み、言うならば、崩し烈光含の刃を、束の間烈光鉄の剣として扱う技術を編み出したのである。
 ――玄夜叉から、天を衝く如き光が溢れ出る!
「オオオォォッ!!」
 振り下ろす一刀は最涯に至る剣。『滅鬼伝阿修羅流「五ノ型・刃光」』……!
 迸った光が、軌道上にある二十台あまりの戦車を叩き斬り、敵の陣形に穴を開けるッ!!
「なッ……んだとォ?!」
 ロンメルが上げる驚愕の声。クロウはそれを聴きながら既に走り出している。玄夜叉の刃に風の魔力を励起、移動速度を加速。周囲の景色が集中線を曳いてぶれ、ロンメルが瞬く間に近づく。まさに疾風の歩法!
「――余計な問答はいらねェ」
「小癪なァ……ッ!!」
 跳ね上げて砲弾を放つロンメルの一撃を、喰らう前に砲を黒剣で弾き飛ばして回避! そのままの速度で身を廻し、刃を返したときにはすでに魔釼は炎の属性へと切り替わっている……!
「……沈め、鉄血宰相ッ!!!」
「っぐ、おぉああっ!?」
 一喝、振り抜く火炎大車輪の一撃が、ロンメルの身体を裂き炎上させる……!!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジュリア・ホワイト
フム
実の所ボク好みのドクトリンではあるんだ
「だが悪の軍団なら倒すまでさ。出動!」

正統派の暴力を極めた難敵だけど
一手で戦車軍団を無力化し、ロンメル本体への道を切り開く
そんな手に心当たりがある
「手を貸しておくれ、我が鋼鉄の眷属達よ!」
【錬成カミヤドリ】でボクの本体――機関車一式を丸ごと複製
100本近いそれらを戦車軍団の進路や間に縦横無尽に出現させ足止め/分断
「戦車の障害物踏破能力でも、流石に列車は乗り越えられまい。軍団には工兵車両もあるだろうけど…」
それらの作業は、一瞬で障害物を除去できるほど早くない
「そしてそれだけの時間があれば!列車の中を伝ってボクがキミの元へ走るには十分なんだよ、ロンメル!」



●パイプライン・トレイン
「フム、実の所ボク好みのドクトリンではあるんだが――悪の軍団なら倒すまでさ。出動!」
 場に降り立つなり手を打ち振り、即座にユーベルコードを起動したのはジュリア・ホワイト(白い蒸気と黒い鋼・f17335)。今回彼女が取った手は、真正面からの正攻法だ。
「手を貸しておくれ、我が鋼鉄の眷属達よ!」
 声に応えて現れるのは、――なんと主車両どころか従車両まで一式揃った、彼女の本体の複製品だ! 『錬成カミヤドリ』! ヤドリガミが使う最も基礎的なユーベルコードだが、この場合は彼女の元となった器物が問題である。
 彼女は、蒸気機関車だ。
 ジュリアの指揮に従い、百両近くに及ぶ機関車が敵戦車の群に突っ込む! 縦横無尽と戦車の進路や間を横切り縫うように突っ込む機関車が、戦車の動きを制限し、限定する!
 ――確かにロンメルとその戦車連隊は正統派の暴力を極めた難敵だ。しかし、このようにこちらも大量の物量を用いてぶつけてやれば、一時的とはいえ戦車軍団を無力化し、ロンメル本体への道を切り開く事が出来る。
「戦車の障害物踏破能力でも、流石に列車は乗り越えられまい。軍団には工兵車両もあるだろうけど――それらを使ったところで、この規模の障害物を一瞬で除去できるものか!」
 ジュリアは走り出した。戦車や工兵が、所々で機関車のボディや車両目掛け砲撃や発破を仕掛けるが、彼女の言うとおり効果的に車両を除去するには至らない!
 その間にジュリアは写し身の車両のドアを全解放! 敵の間に縦横と走らせた車両をパイプラインめいて用いて、会敵を回避しながら駆け抜ける!
「――そうして稼げたこの時間があれば! 列車の中を伝ってボクがキミの元へ走るには十分なんだよ、ロンメル!」
「こ、このような巫山戯た手をッ……!」
「馬鹿言っちゃいけない、こっちは大真面目だ。――ヒーロー、オーヴァードライブ! 参上だよ!」
 ジュリアは堂々と告げてロンメルへ襲いかかった。ロンメルは右腕砲で応戦するが、ジュリアは目くらましにML106を四発同時発射、爆発させることで黒炎と轟音で目を眩ます!
「ぬうッ!?」
 反射的に顔をかばい仰け反ったロンメルが次に目にしたのは――
 黒炎を抜け、黒い精霊銃を構えたジュリアの姿だった。

 No.4から放たれる、寸分狂わぬ六連射が、ロンメルの身体を穿ち貫いた。
 血を吐きよろめきながら飛び退くロンメルに、ジュリアは嘯くように言うのだった。

「さあ、退場の時間だ。キミにその名は重すぎる!!!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐那・千之助

あの男、今夜のワインとか考えていそうな余裕の表情してる(第六感
夜を楽しみに一日を過ごすのは生者の権利
過去が奪って良いものではないな
この世界に平穏を取り戻せるよう総てを砕こう

砲弾からの防御時に展開するオーラは大盾の如き地獄の焔
多少の砲撃なら溶け墜とせるが
無理そうならまともに受けぬよう立ち回ろう

数には数で、とUC発動
天高く撃ち上げ高速に下降する大量の火矢で、戦車中心に敵のみを貫く
指揮官にも届くならば幾らか撃ち込んでしまおう
負傷に満たずとも軍を乱せれば脆さが生じるであろう

相手が戦車であれ、黒剣で貫けば魔力を吸収できる
それを治癒や力の充填に充て、死なない限り継戦が可能
さて、指揮官を貫くのは何発目か



●火雨
 鉄火舞う。機関銃と砲塔の水平連射を前にしては、さしもの猟兵とて容易には近づけぬ。それをどうにかするために各人が策を練っていたのだが、時には目には目を、数には数を、矢には矢をといわんばかりに正面突破を試みる猟兵もいた。佐那・千之助(火輪・f00454)もその一人だ。
 飛来する砲弾を地獄の火焔で構築した炎の大楯で溶かし落とす。一撃であからさまに歪む炎盾に千之助は僅かに顔をしかめた。敵の火力を認めざるを得ない。まともに受けては、数発で盾を突破されて負傷を負うだろう。
 ならば、まともに受けぬよう立ち回ればよい。
 千之助はユーベルコードを発動。『火樹銀花』。彼の周囲に百個あまりの火球が浮いた。千之助が手印を組むなり、火球はぎゅるりと渦巻きフォルムを変えて矢を形取る。
「数には数を、だ」
 まるでなにかを投げ上げるように下から上へと千之助が腕を薙げば、百あまりの炎の矢が天へ放たれた。……放物線の頂点を迎えた次の瞬間、矢の群は明らかに自由落下を上回る加速を見せた。瞬く間に、炎矢の驟雨が降り注ぐ!
 瀑布のごとき火焔の雨に貫かれ、八台ばかりの戦車が爆発四散。爆炎の中から火矢が再び飛び出し空を目指した。またも降り注ぎ、次なる対象へ迫る。
『そいつだ! その赤毛の男を狙え……!』
 ロンメルが、千之助が降らせる火矢の雨の脅威を早くも悟ったように命令を下す。先ほどに倍する集中砲火が千之助を襲った。炎の大楯に弾丸が立て続けに突き刺さり、抜けて、身体に銃弾が食い込む。脆くなったところに砲撃が直撃、炎の盾が砕け、貫通した砲弾が左脇腹をごっそりと持っていく。さしもの千之助も血を吐くが、その顔から余裕は消えない。
 転げるように駆け、攻撃してくる戦車を火矢で貫きながら、手近な一体に黒剣を突き立てる。魔力をそこから吸い上げ、治療に当てれば、大きく欠けた脇腹さえ数秒で埋まった。彼は不死たる吸血鬼。夜の眷属。
『馬鹿な……その攻撃力に再生能力だと……?! 化物め……!』
「――おやおや。さっきまでは今夜のワインでも考えていそうな顔をしていたのに、随分余裕が消えたものだな」
 拡声器越しのロンメルの声に、千之助は肩を竦めて応じた。
 動かなくなった戦車から黒剣を引き抜き――
「僥倖僥倖、夜を楽しみに一日を過ごすのは生者の権利。過去が奪って良いものではないし、おぬしがこれより呑むのは甘露ではなく苦渋だ。――この世界の平穏のため、この鉄の連隊、砕かせてもらおう」
 周囲に火矢を従えて、千之助は笑うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マキナ・エクス
アドリブ・他猟兵との連携歓迎

さて、敵は随分と自分の軍団に自身があるようだねえ。
だけど情報収集が足りなさすぎるんじゃないかな?この世界に猟兵が降り立ち始めてからかなりの時間がたっているというのに、猟兵の情報を入手できていないとはね。指揮官失格だろう。
それじゃあ生命の埒外たる猟兵の力存分に味わっていただこうか。

UC発動。まずは相手戦車の足元の地形を矢に変換して移動を妨害。
そのあとは飛んでくる砲弾を変換してお返し。着弾時に砲弾に戻せば威力も上がるだろう。あとはまあ敵戦車も無機物だろう?なら片っ端から変換して無力化していこう。



●仕組まれた銀矢の罠
「随分と自分の軍団に自信があるようだねえ。――だけど、情報収集能力はお粗末なものだな」
 ひょいと、降り立ったその場で、長身の女が肩を竦めた。エメラルドの瞳に銀髪、真っ白な膚をした、整った人形めいた容貌の女である。彼女の視線の先では、既に先行した猟兵達が場を引っかき回し、そこかしこで戦車を撃滅している。
「この世界にこの世界に猟兵が降り立ち始めてからかなりの時間がたっているというのに、猟兵の情報を入手できていないとはね。指揮官失格だろう」
 女とロンメルとの距離はかなり開いている。声が届くことはないが、呆れと嘲りを籠めて女は言った。
「――怠慢の報いは死で贖ってもらうとしよう。それじゃあ生命の埒外たる猟兵の力、存分に味わっていただこうか」
 女の名は、マキナ・エクス(物語の観客にしてハッピーエンド主義者・f33726)。挙げた手からフィンガースナップを一つ。ユーベルコードを発動する。
「月の女神の話を知っているかな? ――これはその再現、偽りの神話を奏でよう。偽典閲覧、伝承認識、神具構築。汝、月の女神の威光を見よ……」
 起動。『偽典神話・月の女神の矢』。
 突如として、敵戦車の足元がぎらりと銀色に輝いた。同時に十数台の戦車が移動を阻害され、その履帯が千切れて空転、移動不能の状態となる!
 マキナの使ったユーベルコード、『偽典神話・月の女神の矢』は、半径百メートル内の無機物を無数の銀の矢に変換する能力だ。当然、地面に含まれる無機物を矢に変換することも容易である。それにより、彼女は地面を剣山めいた状態に変え、一部の敵の動きを一手で封じて見せたのだ。
 ――敵そのものを銀の矢に変換して無力化してやることも考えたが、敵はロンメルのユーベルコードで強化されており、こちらのユーベルコードの伝導率が落ちる。時間が掛かる。――となれば、
「別案のほうが楽だね」
 マキナが涼しげに言うなり、移動を封じられた戦車達がならばと主砲を回頭させ、マキナ目掛けて斉射した。マキナは慌ても騒ぎもせず、人差し指を立てた右手を挙げ、
「受け取り拒否だ。お返しするよ」
 タクトのように指を振る。
 空中、飛来した砲弾の群が一瞬で銀の矢に塗り変わる。支配下に置いた元砲弾の運動エネルギーの向きを、そっくりそのまま反対方向に切り替えてやり、ほんの少し勢いを乗せて敵の元へ送り返す。
「ご機嫌よう」
 二度目のフィンガースナップ。
 銀の矢は空中で砲弾の形を取り戻し――己を放った戦車達へと降り注ぎ、爆発、爆発爆発爆発爆発ッ!!!
「さて、どんどん行こうか。ゆっくりやっていたんじゃあ、日が暮れてしまうから」
 爆裂炎上する戦車の群を前に誇るでもなく、マキナは次の標的へ向けて歩き出すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セリオス・アリス
【双星】◎
ああ、アレス
全部ぶっ飛ばして勝利の道を切り開いてやる!

歌で身体強化して
靴に風を
アレスに追従するように進み、まずは…アレスを鼓舞するような歌を歌いながら力を溜める
敵がアレスの陣に入るまで
じりじりと急く気持ちを抑え込み
それさえ叶えば…こっちのもんだ

こんだけ砲撃がうるさけりゃ
歌を聞く余裕もねぇだろう?
…アレス以外は
歌が目印になるように
歌い、光に紛れて身を隠しながら駆け回る
攻撃はとっておきの1発まで置いといて
回避しつつはぐれた戦車をひきつけ一ヶ所に
集まったら…まとめてぶったぎってやる

炎の魔力を全力で剣に注ぎ【彗星剣】
さぁ!でかブツにはデカいのだ
切り開いてやるよ勝利の道を
こっちも物理的になァ!


アレクシス・ミラ
【双星】◎

僕達も一人で戦っている訳ではない
戦局を変えよう、セリオス

脚鎧に光属性を充填
敵との距離を縮めるように彼の前を征く
攻撃が来たら盾から『閃壁』展開
…相手は強大な軍隊
それでも…いや、だからこそ僕は盾として此処に立つ
僕の後ろには銃弾一発たりとも絶対に通さない
此処で止める…守り抜く
彼の歌声に誓おう
覚悟と共に『閃壁』で受け止め
耐え続ける

狙いは軍隊を「範囲内」へと惹きつける事
それを見切れば【天聖光陣】最大展開
地雷の如く戦車の下から光の柱を放つ
セリオスへは攻撃が向かわないように光の柱で彼を隠し、守る壁となろう
歌を目印に
彼に合わせて敵を追い込む
この領域は貴様達を逃しはしない
剣を…勝利の道へ導いてみせる!



「僕達も一人で戦っている訳ではない。戦局を変えよう、セリオス」
「ああ、アレス。全部ぶっ飛ばして勝利の道を切り開いてやる!」
 戦況は佳境。奇襲から始まった電撃戦は猟兵優位に進み、今や残る敵戦車の数も三分の一強といったところだ。そこに、二つの外套が翻る。アレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)、そしてセリオス・アリス(青宵の剣・f09573)だ。
 双方、グリーヴと靴に光の魔力、風の魔力を装填。暁光を爆ぜさせながらアレクシスが、夜風を荒れさせながらセリオスが、戦車軍団目掛け突っ込んでいく。アレクシスが前衛を務め、その後ろをセリオスが疾る。
 敵戦車の反応は、母数が少なくなったことで桁違いに早くなっている。瞬時に十数発からなる戦車砲の速射が来た。
「セリオス!」
「分かってる!」
 セリオスは、ささやき紡ぐような願い歌により根源の魔力を励起。アレクシスと彼自身を強化する。戦場に着いてから紡ぎ続けてきた歌は、二人のみにしか聞こえない。
(こんだけドカンドカンうるせぇ戦場だ。聞く余裕もねぇだろう? ……アレス以外は)
 支援を背に受け、アレクシスが盾を地面に突き立て、意念を注ぎ込む。守る、というそのただ一念に基づき光の壁が形成される。『閃壁』。殺到する戦車砲弾を歯を食い縛りながら受け止める。防ぐなり、着弾爆発の噴煙を斬り裂き、二者は再び前進した。
(――射程内まであと少し)
 アレクシスは敵との距離を測る。敵の機動力も計算に入れ、回避できない殺傷半径まで接近する必要がある。
 相手は強大な軍隊。まともに戦えば、踏み潰されるのみ。それでも……いや、だからこそ、アレクシスは盾として此処に立つ。彼の決意は鋼の如く固く、その盾の如くに盤石だ。
(僕の後ろには銃弾一発たりとも絶対に通さない。此処で止める……守り抜く)
 セリオスの歌声に誓ったのだ。もう二度と折れないと。彼を必ず守り通すと!
 敵前衛との相対距離五〇メートル! 砲撃の第二陣が来る! 再び盾を突き立て、閃壁を展開。衝突する砲弾、炸裂する爆炎! 閃壁が受け止めたエネルギーの一部がフィードバックし、アレクシスの骨身が軋んでその口の端から血が流れる。
 だが、その程度で止まれはしない。守れずセリオスを失いかけたあの日の思いに比べれば、この痛みなど蚊に刺されたほどの痛痒にも及ばぬ!
 アレクシスは次射が来る前に、地に光陣を描いた。『天聖光陣』! それは瞬時に半径一〇〇メートル強の範囲をマークし、敵三十数体をすっぽりと範囲に収める!
「合わせるぞ、セリオス!!」
「任せとけッ!!」
 敵が戸惑うように射程から抜けようと走り出すその瞬間、アレクシスは天聖光陣の光を放った。天聖光陣は地面に描いた陣より光柱を放ち、敵を下から地雷めいて攻撃する、聖なる光の陣である。つまり彼を中心とした半径一〇〇メートル強の範囲は、今や既に、彼の意のままとなる地雷原も同じなのだ!
 そこをセリオスが疾る。枯れ目掛け放たれる攻撃は、アレクシスが天聖光陣の光でカバーする。
「随分我慢することになったぜ。てめぇらがアレスの陣に入っちまえばこっちのもんだ!!」
 最早声を伏せることも無く、相棒に届くように高らかに謳う。その魔力の高まりを目と感覚で捉えながら、アレクシスは尚も数台の戦車を光柱で攻撃、退路を限定していく。
 苦し紛れの戦車砲も、撒き散らされる機関銃弾も、アレクシスの援護を受けた黒歌鳥を墜とすには能わぬ!
「この領域は貴様達を逃しはしない。剣を……勝利の道へ導いてみせる!」
「その通りだぜ。――そら、いい感じにまとまったな!! まとめてぶったぎってやる――燃えろ!! 彗星剣!!」
 セリオスが吼えるのと同時に、根源の魔力で構築した白蒼の魔力剣が、天を衝くほどに燃え上がった。青白い炎を放つそれは、『彗星剣』の派生バリエーションの一つ。根源の魔力を熱量と運動量に変換し、軌道上の敵を爆砕する必殺剣!
「さぁ! でかブツにはデカいのだ。切り開いてやるよ勝利の道を――こっちも物理的になァ!」
 セリオスは跳んだ。彼の外套の裾が死神の翼めいて翻る。巨大な炎の柱めいて燃え上がる蒼き剣を、男は寸分の狂いなく、纏まった二十台の戦車に向けて一直線に振り下ろした。

   メテオール・サラマンドラ
 ――彗 星 剣・『 紅 蓮 旋 』、炸裂!!

 青宵の剣と赤暁の盾の揃うところに敗北無し。蒼き炎が炸裂し、戦車軍団の一角が凄まじい爆発を上げて吹き飛んだ。最早ロンメル戦車連隊にまともな防御ラインは一つもない。食い破るように次なる猟兵達がそこへ飛び込んでいくのを横目に、セリオスとアレクシスも頷き一つ、次なる戦場へ驀地に駆けていく……!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

矢来・夕立
お薬さん/f15222

▼方針
戦車群に毒を展開・戦車を無力化
冴木:正面から接近
矢来:背後から奇襲

確か以前も戦車相手でしたね。
今回はあっち側へデバフをお願いします。
無理は言いませんよ。全部無力化して頂ければ結構。

彼我七十メートル前後。敵が戦車ならほとんど至近距離です。
ガラクタの《闇に紛れて》接近。
戦車がああなってしまうなら元の地形もぼろぼろでしょう。
硬い鉄や脆い地面との間に式紙を配置。足音を消して跳びます。

そういやお薬さんは一体何を…
…いまなんか飛びましたね。自分の毒だから平気なんでしょうか。
このようにお膳立てをしていただいたのならオレに否やはありません。毒入りですけど。膳。


冴木・蜜
美少年さん/f14904

あの時を思い出しますね
そういえばこの世界でしたか

中々無茶を言われた気がしますが
ともあれ 御依頼承りました

転移後
地上に展開する戦車を全て『偽毒』へと変えます
腐食性の毒液へと変えれば
中身も無事では済みますまい

範囲外から砲弾が飛んできても無意味
降り注ぐ弾さえも全て薬液へと変え
地上へ降らせて
無力化してしまいましょう

そのまま体を液状化
伸ばした腕を引き戻すことで戦場を飛び
正面からロンメル氏に接敵

私に物理攻撃は効かない
負傷も構わず
そのまま彼に毒手を伸ばし――

ところで
御存知ですか
先程の砲弾は酸にはならなかったのですよ
あれはただ一人のための処方薬

……私は囮です

さあ任せましたよ
美少年さん



「あの時を思い出しますね。そういえばこの世界でしたか」
「ああ、確か以前も戦車相手でしたね。今回はあれほど大きい相手ではありませんが。ともあれ、今回はあっち側へデバフをお願いします。無理は言いませんよ。全部無力化して頂ければ結構」
「舌の根が駄々濡れの内に無茶を言われた気がしますが。ともあれ、御依頼承りました」


 ――冴木・蜜(天賦の薬・f15222)は薄笑みを浮かべる。
 彼我の距離は七〇メートル前後。敵からしてみれば、殆ど至近距離。歩兵の格闘に例えれば、喉に短剣を突きつけ合うような距離だ。
「では始めましょう。――薬も過ぎれば毒となる。その意味を身を以て味わいなさい」
 蜜が言うなり、腕を一閃。ユーベルコードの波が戦場を駆け抜けた。一瞬では、何の変化もない。しかし走り抜けたユーベルコードの波動だけは、その場にいた戦車兵の全てが感じていた。『攻撃を受けている』。その事実だけが明確に伝わる。
 戦車兵達は即座に蜜に照準を合わせ、戦車砲を発砲した。轟音を立てて射出された弾頭は――しかし、射出後数メートルで、びしゃりと音を立てて液状化、空中に散って霧となる。
 ユーベルコード、『偽毒』。装填された砲弾を薬液に変え、無力化してのけたのだ。
「流石に名将の指揮下とあって浸透が遅いようですが――ああ、少しずつ効いてきたようですね」
 数両の戦車の動きが軋んだように鈍くなり、履帯が千切れて溶け落ち、行動不能になる個体が出始める。蜜が使ったユーベルコードの効果だ。『偽毒』は、射程内に捉えた無機物を任意の毒物や薬液に変換するユーベルコードである。彼は戦車の装甲や部品を腐食性の強酸に変換しようとしたのだ。ロンメルのユーベルコードで強化されているとはいえ、戦車とて無機物で構成されている。全く影響なくやり過ごせるはずもない。
 敵の動きが鈍り、攻撃の手が止まったところを、蜜は己が身体を液状化して延ばし、戦車の
突起を掴み、縮めることで自身の身体を引き寄せ、それを繰り返すことで戦場をまるでワイヤーアクションめいて飛ぶ。目指すはロンメル、唯一人!
「申し訳ありませんが、この辺りで幕引きです。部隊が五割以上の損耗を負った場合、これを壊滅と定義するそうですが――戦車隊、残るは何両ですか? あなたの方が詳しいと思いますが、いかがですか、ロンメル氏」
「貴様ァッ!!」
 あからさまな挑発に、ロンメルは右腕砲を蜜へ振り向け、躊躇なく連射した。直撃のたび蜜の身体は千切れ吹き飛び、薬液となって飛び散る。それにすら頓着せず、四肢の内三肢を失いながら蜜は敵に接近。毒手でロンメルの左肩を薙ぎ、腐らせる。
「があぁっ……!」
 しかしまだ致命傷と言うには浅い! 飛び退くロンメル、地に力なく落ち、身体の再生を始める蜜。蜜に止めを刺すべくロンメルが砲を持ち上げたとき、蜜は、ふと思い出したように言った。
「――ところで、御存知ですか。先程の砲弾は酸にはならなかったのですよ。……あれはただ一人のための処方薬」

 その通り。
 そんなだから、お前は大局も見られずにここで死ぬ。

「……私は囮です。さあ任せましたよ、美少年さん」
「心得ました」
 その男は全く唐突に現れた。動きを制限された戦車群の影、奴らが地に落とした影、その間をまるで縫うかのように。影から影へと、超自然的な手段で跳躍しているかのように。
 矢来・夕立は名乗ることも無く、壊れ、あるいは動きの鈍った戦車の間を駆けてきていた。ぶれるように影が動いている、目の錯覚かと、目を擦って注視している間に見失って仕舞うほどの速度。否、そもそも常人では視認すら叶わぬ。
 彼の動きには音がない。それは、酸でズタズタになった地面や、足場とする戦車装甲と自身の足の間に逐一式紙を配置することで、紙に足音を吸わせて無音化しながら走っているためだ。その技術に理屈はある、理由もある、だが何故そのような神業が、絶技が可能となるのか。
「このようにお膳立てをしていただいたのならオレに否やはありません。毒入りですけど。膳」
 戦車が放った砲弾が、変換されたその薬液。辺り一帯に漂う薬臭い霧が、夕立の肺腑から吸収されて彼の能力をブーストしている。夕立の身体組成に合わせて調節された強力な『処方薬』が、夕立本人の技量を更にプッシュしている。
 今やもう、かれを捉えられるものはない。

     インビジブル
 かれは、不可視の忍びだ。
「だからお前も、」

 かかンッ!!
 戦車の甲板を蹴った夕立の踵が、まるで拍子木のような音を立てた。
 鞘走る紅飾りの脇指。永海・鉄観作、斬魔鉄製脇指。『雷花・旋』。鍔に仕込まれた飄嵐鉄が、この期に及んで夕立の動きを加速する。曳光する赫の目と、抜いた刃の煌めきさえ、危機に振り向くロンメルの視界に残さない。

「否応無く、死ね」

 斬撃、一瞬で二九。
 全身を裂かれて、ロンメル・ヴォーテックスの躰からまるで噴水のように、血の飛沫が迸った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鹿忍・由紀
手厚い歓迎だけど戦車なんて専門外だな
指揮官だけを狙っていこう

戦車の殲滅ははなから考えない
多少の足止めが出来れば上々
小回り効かないデカブツなら
近付いた方が狙いにくいだろ
あのキャタピラに巻き込まれるのも勘弁だけど

砲撃は見切って瞬間思考でやり過ごす
戦車を背にして避けてしまえば同士討ちも狙えるだろうか

戦車と戦車の間を縫って
足を止めぬよう高速で駆け抜ける
足場代わりに装甲を蹴れば
ついでに影朧で斬り裂ける

自慢の戦車達も悪くなかったよ
俺がノロマだったらやられてたね
アンタの方がノロマだったんだけど

ロンメルの元まで真っ直ぐに
ナイフの一閃、大きく蹴り上げ
更に影朧が追尾する

さあ狙ってみなよガラクタ
俺は誰にも捕まらない



●キーンエッジ
 ロンメル・ヴォーテックスの戦車連隊は確かに精強だった。
 しかし、最早見る影もない。猟兵達の電撃的な奇襲、超自然的な戦闘能力の粋が、彼の連隊を打ち砕いた。残る戦車は五〇あまり。後退しながらロンメルはそれを自身の周りに集め、鉄壁の陣形を布く。
 鉄血宰相には最早ひとひらの油断もなかった。ただの敗戦でなるものかと、戦車達に漲らせたユーベルコードはここまでで最大の出力。猟兵達といえど、気軽に突っ込める状況ではない。
 しかし、
「手厚い歓迎だけど戦車なんて専門外だな。――指揮官だけを狙っていこう。いい加減、幕の引き時だろ」
 つまらなさそうに呟いて、一人の男が羽のように軽く踏み出した。鹿忍・由紀(余計者・f05760)である。息を吸う。躰に魔力を巡らせながら疾る。全速力。淡く光る彼の身体から、質量を持った魔力残像が遊離する。
 ユーベルコード、『影朧』。視界から消失するほどの超高速で、由紀は放たれる銃弾、砲弾の間を縫い、矢のように戦車部隊に突っ込んだ。
「アンタらみたいに固い連中に、ナイフを立てようなんて思っちゃいない」
 退けよ、と言いたげにぼやく。足を絶対に止めない。足場代わりに装甲を蹴りつけ、ついでに主砲を残像で斬り裂く。
「狙ってみなよ、我楽多連隊。俺は誰にも捕まらない」
 堂々とした挑発をしながら、戦車の装甲を蹴って宙に身を躍らせる。着地際を襲う砲撃を側転回避。わざと敵車両の間近を走り抜けることで誤射を誘発し、数台を敵の砲弾を利用して破壊する。
「私の、……私の鋼鉄の連隊が……!!」
「自慢の戦車達も悪くなかったよ。俺がノロマだったらやられてたね、まあ――アンタの方がノロマだったんだけど」
「おのれ、おのれ、おのれ!! 猟兵ァァアアッ!!!」
 ロンメルは過去最速で己が砲を持ち上げ、由紀を狙った。
 だが、彼の本分は指揮。それこそ、鈍間と嘲られた彼の腕では、加速した由紀を捉えること叶わぬ。
 尚も飛び交う銃弾を潜り抜け、由紀は跳び上がり様にロンメルの砲を蹴り上げ反らし、そのまま身体を回してナイフを一閃した。
 ぴ、と血が空中に一文字の線を曳く。ぱっくりと裂けたロンメルの首。戦慄くその口元が、由紀の動きを追って打ち込まれた残像の一撃――こちらは胸を裂いた――により、今度こそ停止した。

「地獄でワインを楽しみなよ。――少し苦いかもしれないけどね」

 由紀は着地し、ナイフから血を振って払う。
 指揮者を失い、停止した機甲部隊の間で――猟兵達の勝利に沸く声が、高らかに響き渡った。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月09日


挿絵イラスト