アポカリプス・ランページ⑦〜Think Tank
「皆、ロンメル・ヴォーテックスの居場所が分かったで!」
グリモアベースに集った猟兵達に向かって、グリモア猟兵、ツキカ・アシュヴィン(星追いの渡り鳥・f24375)が呼びかける。
「奴がおるんは、昔ロズウェルっちゅう名前の街があった辺りの荒野や。あの辺りを中心に、自前の戦車軍団を動く拠点として動き回っとるみたいやな」
かつての偉大な指揮官と同じ名と『軍人宰相』の二つ名を持つロンメル・ヴォーテックス。その名に恥じない強力無比な戦車軍団を率いる彼は、特定の拠点を持たず、戦車軍団を動く拠点として行動しているのだという。
「今回皆に頼みたいんは、勿論このロンメルをやっつけるコトやねんけども……ただ正面から突っ込むだけじゃあ、流石に勝ち目はあんまりあらへん」
ロンメルの有する最大の能力は、その指揮能力である。無数の戦車の一台一台に至るまで状況を把握し、適切な命令を下すことで、それら戦車軍団を一個の生物であるかの如く自由自在に動かしてみせる。
その数と連携の前には、歴戦の猟兵とてまともに戦えば苦戦は免れないだろうが──対処の術はある、とツキカは言う。
「丁度、奴がおるトコの近くに、放棄された軍事基地の廃墟があってな。ここに、AI制御式の戦車が動く状態で放置されとるんよ。これを上手く使えれば、ロンメルをやっつけるコトも十分可能なハズやで!」
これら戦車は、AIによって指示した通りに動き、攻撃を仕掛ける。上手く使えば、敵の数にも十分対抗可能であるはずだ。
「ちゅうても、真正面から単純にぶつければやっぱりあっさりやられる程度の数しかあらへんから……もう一味、なんか作戦を考えてった方がええかも知れんね」
周辺は基本的に平坦な荒野だが、場所によっては谷間や大きな地割れのある地点もある。これらを利用したり、戦車群の運用をよく考えたりすれば、その力を最大限に発揮することができるだろう。
「あ、ロンメル本人はぶっちゃけそない強うないから、皆やったら楽勝やと思うで☆」
直接的な戦闘能力は一般レイダーとあまり変わらないらしい。あくまで脅威は彼の率いる軍団、ということだ。
「ヤツも他のヴォーテックス一族と同じで、人を使い捨ての兵士にしたりする酷いヤツや。ここできっちりブチのめしてやってや!」
そんなツキカの願いを受けつつ、猟兵達は一路、かの荒野へと転移してゆくのであった。
五条新一郎
砂漠の狐の名を継ぐもの。
五条です。
アポカリプス・ランページ、次なる戦いは荒野の戦車戦。
『ロンメル・ヴォーテックス』率いる戦車軍団を、AI戦車群にて突破し、指揮官たるロンメルを討ち取ってくださいませ。
●目的
『ロンメル・ヴォーテックス』の撃破。
尚、今回はフラグメント内容が「冒険」となっている通り、ロンメル本人ではなく彼が率いる戦車軍団との戦いがメインになります。
●戦場
アポカリプスヘル、旧アメリカ合衆国領ニューメキシコ州ロズウェル周辺の荒野。
基本的に平坦な地形ですが、所々に小規模な渓谷地帯や大きな地割れがあります。
●プレイングについて
「知略で戦車軍団を排除する」ことでプレイングボーナスがつきます。
今回はAI戦車群が使用可能となっておりますので、これを上手く用いて戦車軍団を退け、ロンメル本人に攻撃を加えてくださいませ。
尚、AI戦車の武装は主砲と機銃。ロンメルの戦車軍団は他にも色々武装を持っているようです。
●リプレイについて
「アポカリプス・ランページ④〜Pray by Slay」完結後から執筆開始、9/7(火)いっぱいまでに書ける限りの方を採用したいと思います。
それでは、皆様の機略自在なプレイングお待ちしております。
第1章 冒険
『VSウォーゲーム』
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POW : 敵の予想を上回るパワーで攻撃する
SPD : 身を隠して移動し、奇襲を仕掛ける
WIZ : 知略で敵を誘導し、釘付けにする
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ユウキ・スズキ
「よぉ、Mr.Desert fox?」
まぁ、歴史て習ったナチ野郎とは別人なんだろうが……
「良いぜ、俺は兵隊らしく戦いたいところだが……今回は指揮官としてお相手しよう」
指定UC使用
「かの幽霊師団の名に恥じぬ指揮を期待しているよミスター」
兵員輸送車を指揮車とし、そこから各AI戦車の情報を統括。
隊列は横隊
が、全てじゃない
半数は戦場の凹凸を利用して敵両側面より迂回、敵集団に対し、本隊とY字に取り囲んだ形で挟撃させる
「降伏は認めん。あぁ、それと……私を倒しても奴らはもう止まらない……機械とは良い物ですな。なぁ? Jelly boy(ドイツ人に対する蔑称)?」
「自慢の戦車もろともスクラップにしてやれ」
荒涼たる荒野を征く、無限軌道の群れ。『軍人宰相』の異名を取るヴォーテックス一族が一人『ロンメル・ヴォーテックス』率いる戦車軍団だ。
一糸乱れず整然たる隊列を組み進む戦車達を遠目に眺め、APC07C兵員輸送車の機上、ユウキ・スズキ((自称)不審者さん【少尉】・f07020)は煙草を一服する。
「――よう、Mr.Desart Fox」
紫煙と共に吐き出したその名は、嘗てこの世界にも存在したであろう名将の異名。視界の先、己のもとへ迫る戦車軍団の指揮官もまた、かの将と同じ名を持つが故に。
何らかの理由にて過去より蘇った本人、或いは本人のクローン、といった説も語られるが。名が同じなだけの別人であろう、とユウキは考える。
「まあ、どちらでも構わんがね」
振り向いた先には、敵軍団にも負けぬ程に整然と並ぶ戦車の群れ。近隣の軍事基地跡より拝借した、AI制御の戦車達だ。
「今回は、指揮官としてお相手しよう」
どちらかといえば兵隊としての戦いを志向するユウキであるが、折角の戦力を活かすならば己は指揮に回った方が都合が良い。兵員輸送車に乗り込む。此度はこれを指揮車とする。
コマンドを送れば、戦車達が各々のAIにて命令を判断、其に基づいて動き出す。無駄なく速やかな動きにて、指揮車の前に横隊を形成する。
その直後、砂塵の向こうに戦車の影。敵軍団の接近だ。
「さて。かの幽霊師団の名に恥じぬ指揮。期待しているよミスター」
左眼のみの視線で車列を眺め、ユウキは再度煙草を一服する。
『前方、所属不明の敵戦車部隊を確認!』
隊列の最前を行く戦車からの通信を受け、ロンメル・ヴォーテックスは双眼鏡を以て進路上の風景を睨む。
左右に小高い丘を有する、ちょっとした窪地。その先に、小規模な戦車部隊が横隊を敷いて待ち構えている。
「――ふん、来たか。愚かな兄妹の手先共」
己の戦車軍団に比すれば貧弱と言う他ない隊列に、ロンメルは下らぬとばかり言い捨てる。この程度の部隊で、己に挑むなど愚かしいにも程がある。
「重戦車隊を前へ。自走砲を出すまでもない、叩き潰せ」
命令に従い、戦車軍団の中でも一際大きく重厚な戦車達が先行してゆく。入れ替わり、前方の軽戦車が後方へ下がる。その動きに無駄は無く、其々が将の命令を過不足なく理解している事が伺える。
(伏兵の可能性も無いではないが。あの兄妹共の手下だ、あるとすれば既に出てきていることだろう)
現時点で存在せぬならば、可能性は考えずとも良い。ロンメルはそう結論づけていた。
そして開かれた戦端。
ロンメル軍の重戦車隊は前進しながら砲撃を繰り返し、大型の砲弾を次々とAI戦車隊へ降り注がせる。
(まだだ。もう少し奥まで敵を引き付けてからだ)
AI戦車に少しずつ後退しつつの牽制砲撃を命令しながら、ユウキは機を窺う。AI戦車が二機、三機と砲弾を受けて大破するが、彼に焦りは無い。好機の訪れるは、もう間もなく。吸い込んだ紫煙が脳を刺激し、思考を研ぎ澄ます。
交戦開始より、きっかり三分。機会は訪れた。
「よし、両翼部隊、前進し攻撃開始!」
『よ、四時と八時より敵戦車部隊出現! 攻撃を受け、ぐわぁぁ!』
「何!?」
後方部隊からの切迫した報告、そして直後に途絶する通信。その直前に飛び込んできた爆音に、まさか、とロンメルは目を見開く。
通信にあった方角へ双眼鏡を向ける。どちらからも、前方にいるものと同様の戦車が迫り、其方へ下がっていた軽戦車隊が次々と破壊されてゆくのが見える。
「ここまで行動を起こさずにいた、だと……!? ちっ、全軍、全速前進! 正面の敵部隊を突破する!」
完全に包囲されている。その現実にロンメルは歯噛みしつつも、現状を打破すべく突破を試みんと全軍へ命令を下した。
「此方に来るか。流石に降伏するつもりは無いようだな」
尤も、降伏した処で認めるつもりも無いが。ユウキは迫る戦車軍団を前に口元を歪める。
「だが、私を倒しても奴らはもう止まらない」
撃破されるその瞬間まで砲撃を繰り返すAI戦車隊。重装甲の戦車部隊も、幾度も砲撃を受ければ大破してゆく。その間にも、側面より回り込んだAI戦車達が後ろから敵軍団を喰い散らしてゆく。
「機械とは良いものですな――なぁ、Jelly boy?」
侮蔑を籠めて。視界に見えたロンメルの指揮車両へ向かって、ユウキは言い放った。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
「戦車軍団で責めるなんて酷いんだぞ☆」
これからやる事の方がよっぽどひでーよ!
UC発動
【情報収集・視力・戦闘知識】
戦車軍団と此方の戦車の戦力と性能の分析
周辺地域で罠にはめるに足る谷間の捕捉
【属性攻撃・迷彩】
光水属性を幼女軍団に付与して光学迷彩かつ水の障壁で存在隠蔽
但し300人程度は付与せず
幼女軍団
300人
戦車軍団と遭遇し交戦
数を減らされながらも必死に応戦を演じつつ谷間に撤退
谷間に入ればAI戦車を操作し包囲して迎撃
更に援軍戦車を誘い戦力分断
残り
【空中戦・念動力・弾幕・スナイパー】
空より幼女軍団襲来
念動光弾乱射しての蹂躙
【二回攻撃・切断・盗み・盗み攻撃】
戦車に群がり切り裂き金目の物は強奪
幼女地獄発生
「きゃー!」
「いやーん!」
「逃げろ逃げろー!」
念動光弾を放って応戦しながらも、戦車軍団から逃げ回る300人の幼女。執拗な砲撃に晒され、一人、また一人と倒れ、消えてゆく。
「愚かな奴らだ。如何に単体性能が優れていようと、たかだか300人程度で我が戦車部隊に勝てると思ったか」
戦車軍団に追撃を命令しつつ、ロンメル・ヴォーテックスは逃げ回る幼女達に侮蔑の視線を注ぐ。見目幼い少女と言えど、己に歯向かうならば躊躇無く蹂躙する。それが彼の遣り方だ。
尚も逃げる幼女達を追い、戦車軍団は谷間へ入ってゆく。伏兵がいる可能性も考慮し、後続の部隊には頭上への攻撃を備えさせつつ。
「むー、いたいけな幼女を戦車軍団で攻めるなんて酷いんだぞ☆」
谷間へ突入する戦車軍団を崖の上から眺めつつ、唇を尖らせる一人の少女。今現在ロンメル軍と交戦を続ける幼女達を、そのまま成長させたような姿。彼女こそは、かの幼女達のオリジナルと言うべき存在。機神『メルクリウス』、通称メルシー。
「これからやる事の方がよっぽどひでーよ!」
彼女を相棒とするカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)が、げんなりした様子で言い返す。彼女に策があると聞き、そのために敵の戦力や性能の分析、策に適した地形の探索などを果たしてきた彼だが。
「大体、そもそも数が多過ぎるだろって――」
「よし、今だよ! みんな、一斉攻撃ー☆」
ぼやくカシムの様子は意に介さぬ、とばかりに意気揚々と号令を発するメルクリウス。直後、地獄の釜の蓋が開く。
「ぬおおおおおお!? な、何だ、何が起こった!?」
突如、指揮車両を襲った衝撃。ロンメルは驚愕し、思わず車両の外へと飛び出して――目にした光景に、言葉を失った。
周辺には、攻撃を受けて破損した、彼率いる戦車軍団。既に大破しているものもある。
前方には、何処から持ち出してきたのか戦車に跨り砲撃を繰り出す幼女メルクリウス達。ここまでは良い。ロンメルの想像の範疇だ。
だが、上空は違う。
見上げた彼の視界を埋めていたのは――地上に在る数の、数千倍は居ようかという幼女メルクリウス達であった。
「――何……だと……?」
あまりにもあまりなその光景を前に、ロンメルは只々、言葉を失った。
「「「やっちゃえー☆」」」
そして能天気な声と共に降り注ぐは、先程地上の幼女達も繰り出していた念動光弾。だが降り注ぐ数は先程の比ではない。最早光の豪雨と言っても良い規模と数だ。
如何に頭上を警戒していようが、この数の前では大した意味は無く。戦車部隊は只々撃破されてゆくばかり。入口付近に残していた後詰め部隊も、何処からから迂回していた幼女達に分断され、各個撃破されていく。
それは、カシムのユーベルコードで大量に召喚された幼女メルクリウス達による、総数一千万を超える大軍勢を以ての蹂躙。純然たる数の暴力。
その光景、まさに幼女地獄。軍人宰相の想像を大幅に超越した、理不尽の極み。
「へへーん、どんなもんだっ☆」
胸を張ってドヤ顔するメルクリウスに対し、カシムは只々、頭を抱えるばかりであったとか。
大成功
🔵🔵🔵
アハト・アリスズナンバー
戦車軍団をこちらでも使えるのは良いですね。彼に猟兵の戦車戦というものを教えてあげましょう。まあ、戦車主体の戦術では無いのですけど……
まずはこちらも兵士を用意。ユーベルコード起動。
AI戦車は前に立ってその攻撃を受ける囮になってもらいます。まあ逃げ回ってもらって大丈夫です。
その間に全員が光学迷彩を発動して、集団戦術で破壊工作を仕掛けましょう。
気が付くと知らず知らずのうちに戦車がボロボロになってるわけですね。
最後はロンメル将軍の機体に取り付いて、ハッチをこじ開けてご対面。
集団戦で暴力をかまします。
損害を受けつつも、未だその戦力を十全に保つロンメル・ヴォーテックスの戦車軍団。その行軍する様子を、アハト・アリスズナンバー(8番目のアリス・f28285)は遠目に眺め確かめる。
「戦車軍団、まともに相対するには厄介な相手ですが――」
振り向けば、整然と居並ぶ戦車部隊。AI制御の戦車達だ。
「此方でも戦車軍団を使えるのは良いですね。彼に、猟兵の戦車戦というものを教えてあげましょう」
不敵な笑みと共に呟くアハト。尤も。
「まあ、戦車主体の戦術では無いのですけど……」
続けて呟くと共に、ザッ、と複数の足音。アハトの背後に、112名のアハトが並ぶ。アリスズナンバーと称される量産型個体の一体であるアハト、その同型のフラスコチャイルド達だ。
己と同じ顔をした彼女達の出揃ったのを確かめて。アハトは再度、前を向く。戦車軍団が近づいてきた。
「来ましたね。それでは――状況開始」
AI戦車達が前進を開始。見送るアハト達の姿が、砂塵の中に消えてゆく。
『前方、戦車部隊を確認!』
前衛部隊からの報告を受けたロンメルは、改めて周辺地形を確認する。特に視界を妨げるもののない平野。
「……私も舐められたものだな。真正面からぶつかり合って勝ち目があると見做されるとは」
ロンメルのこめかみに青筋が浮かぶ。この状況下で伏兵があるとは考えづらい。つまり敵は正面切っての戦いを挑んできたと見て間違いない。
「だが何が起こるか分からん。重戦車隊、前へ。軽戦車隊は左右に回り込め。自走砲隊、砲撃用意。速やかに殲滅せよ」
時間を与えれば何らかの策があるやも知れぬ。そう踏んだロンメルは全力での攻撃を命令。前衛に出た重戦車が主砲を轟かせ、自走砲が榴弾を撃ち上げる。
大火力に晒されたAI戦車は次々と撃破されていく。やはり敵わぬと、逃げるように後退しながら、牽制のつもり砲撃を返す。なれど前衛を担う重戦車の装甲を抜くには間合いが遠すぎる。
「ふん、後退して我々を何処ぞにおびき出そうというのか? 見え透いた策よ」
その前に迂回させた軽戦車隊で退路を断つ。軽戦車隊へと命令を飛ばす。――が。
「――む? どうしたB1、B2。応答しろ」
軽戦車隊からの応答が無い。忠実な部下である彼らが己の命令を無視するとは思えぬ。何かが起きた、そう考えるのが妥当だ。しかし何が?
次善の策を如何するか、ロンメルが思案していた、まさにその時。
「……ぬおおぉぉ!?」
突如開いた指揮車両のハッチ、そこから伸びてきた腕がロンメルの身を掴み、車外へと引っ張り出した!
「ぐおっ!? い、一体何……が……!?」
地に転がりつつも何とか身を起こしたロンメル、周囲の状況を確かめて絶句する。
無残なまでに大破した戦車群、炎上しているものも複数。そして何より、己を取り囲む、全てが同じ顔の少女達――
「如何ですか? ご自慢の戦車軍団が、知らないうちにボロボロにされていた感想は」
無論、アハトである。彼女達は光学迷彩によって身を隠し、AI戦車が交戦している間に戦車へと接近、連携しての破壊工作をかけたのだ。
元々、懐へ潜り込まれれば脆い面があるのが戦車である。為す術なく彼らは破壊され、無力化され、搭乗員達も一人残らず骸の海へ還された。その結果が現状である。
「き、貴様ら、ぐはぁ!?」
右腕を置き換えたキャノン砲を構え抗戦せんとするロンメルだが、その前に量産型の一人が彼を殴り倒す。成程、幹部級のオブリビオンにしては随分と脆弱である。単体の戦闘力は脅威たり得ぬというグリモア猟兵の言葉通りだ。
そしてそのまま、ロンメルは荒野で一人、アハトと量産型フラスコチャイルド達によって袋叩きにされたのであった。
大成功
🔵🔵🔵
尾守・夜野
女性人格の私が、腹黒で通っている僕を呼びだすわ
…地図を見る限り、ここが薄いわね
廃墟の近くの亀裂を指差し相談ね
錆鉄には私が乗り込み亀裂の中に
僕からの合図と共に、錆びて脆くなり至近距離でなければ弾の形状も保てない弾を上空に
遠くから見たら黒煙に見えるんじゃないかしら?
僕は戦車の操作と指示さ
通信はばれる可能性があるから手帳経由さ
亀裂に近い谷間に戦車を潜ませ他の戦車の音が聞こえた瞬間発射
後は瞬時に反転亀裂目指して逃走
相手の発砲と同時に深い亀裂に戦車を飛び込ませ連絡
戦車は黒纏で回収、&底近くで蓋がわりにし闇に紛れ時間を稼ぐよ
後は錆鉄の呪いの煙に触れた相手戦車が錆びるのを待つだけさ
きっと風が運んでくれる
「さて、これがこの基地周辺の地形ね」
AI戦車群が放置されていた軍事基地の廃墟にて、地図を広げて何やら話し合う二つの人影。
否、それは両者とも同一人物。尾守・夜野(墓守・f05352)の中にある人格のうち二つが、ユーベルコードを以て分離した存在。
「んーと、敵がいるのがこの辺だったっけ?」
少年のような口調で語る夜野――腹黒とされる少年人格が、地図の一点を指差す。他の猟兵からの連絡では、この辺りでロンメルと交戦したということだ。
「そうね、そしてこの近くで使えそうな地形となると――」
女性人格の夜野が、少年人格の指した一点に自らも指を置くと、そこから真っ直ぐ地図上で指先を滑らせて。
「――ここね」
示したそこは、廃墟に程近い、大地に大きな亀裂の走る地点――
そして数分後。
『それじゃ、誘導はよろしくお願いね』
装甲の錆び果てた四足獣型の機体から、女性人格の声。そのまま、錆鉄の獣は亀裂の中へと身を躍らせる。
「了解だよ。さて」
見送った少年夜野は、基地から出撃させたAI戦車群と共に移動を開始。目指す先は、亀裂に程近い谷間。
未だロンメルの戦車軍団らしき戦車群の影は見えない。その間に、少年夜野はAI戦車群を谷間へと潜ませる。
「『所定位置に到達。発煙よろしく』……っと」
移動が完了し、少年夜野は携えた自由帳にそう記す。記すことで別人格が持つ同様の自由帳や手帳に内容が転載される仕掛けの自由帳。本来の用途とは異なるが、通信に傍受のリスクが存在する状況では有効度の高い連絡手段だ。
程無くして、亀裂の方角から上がる黒煙。だが、それが『煙』でないことを、夜野達は知る。
以て、準備完了。後は獲物を待つだけだ。風の音だけが聞こえる荒野の中で、少年夜野は耳を澄ます。
「何だ、あれは」
戦車軍団の指揮車両の中。モニタに表示された外界の風景を見て、ロンメルは訝しむ。何やら黒煙が上がっているが――
『閣下! 3時方向より敵襲! 所属不明の戦車部隊です!』
そこに飛び込んできた通信。表示を切り替えれば、谷間から飛び出し戦車軍団を狙う戦車の群れの姿が確かにあった。
「損傷した車両は後退せよ! 軽戦車隊、前進し迎撃だ!」
即座に状況を判断しロンメルが命令を下せば、兵達も直ちに命令通りの機動を見せ。損傷した車両と入れ替わって前に出た戦車が砲撃を繰り出す。敵戦車、堪らず逃走を開始する。
「伏兵の可能性もある。周辺警戒しつつ追撃――を?」
逃げる戦車群を追う戦車軍団。だが、直後に奇妙なことが起こった。先の黒煙の発生源と思しき地割れに、戦車群が次々飛び込んでいくではないか。
「何だ、これは。敵の状況を確認しろ」
割れ目に隠れての反撃を試みているのかもしれない。ロンメルは油断なく軍団を割れ目の傍まで近づけて、前衛部隊に割れ目の中の確認を命ずる。
しかし、これが命取りであった。
「……何だ!? 戦車隊が……!?」
前衛にあるものを中心に、戦車達が次々に錆び付き、崩れていく。中の乗員に呼びかけるも返答が無い。一体何が起きている。
「ええい、総員撤退だ……!」
意味は分からないが脅威であるとは理解できる。慌てて部隊を後退させんとするロンメルだが、完全に錆び付いてしまった部隊は最早手遅れだ。損害を、受け入れる他にない。
『……うまくいったようね』
「うん、大分戦車をボロボロにできてたよ」
自由帳越しに会話を交わす、女性と少年、二人の夜野。黒煙の正体は、錆鉄が吐き出した多銃身散弾銃の弾丸。錆び果てたが故に至近距離でしか銃として機能しないが、呪詛の触媒としてならば十分。風向きの良さも手伝い、金属を錆びさせる呪詛を戦車軍団へと浴びせることに見事成功した形だ。
地割れから顔を出した少年夜野。敗走してゆく戦車部隊を、確かな成果を実感しつつ見送った。
大成功
🔵🔵🔵
カグヤ・アルトニウス
〇タンクバスター
アドリブ歓迎
砂漠のキツネ…ネルソンの次は今度は彼ですか
普通の戦車ですが…戦車の敵は常に航空機ですね
(乗機:マルミアドワーズ)
まずは、UC使って【先制攻撃】で頭上に突っ込み
ソードオブビクトリーのビームマシンガンモードで主力戦車群に掃射しつつトゥインクルスターから前衛に爆弾を投下して戦車ごと【地形破壊】で前を塞ぎます
あとは、味方AI戦車隊を【ハッキング】で直接【操縦】して上空から対戦車ロケットで支援しつつ主力戦車不在の部隊を狩るだけですね
荒野の上空を、一機の航空機が飛翔する。極地探索用機動艇『マルミアドワーズ』である。
「砂漠のキツネ……ネルソンの次は彼ですか」
眼下の荒野を征く戦車軍団を眺め、カグヤ・アルトニウス(辺境の万事屋兼宇宙海賊・f04065)は思案する。グリードオーシャンの七大海嘯『舵輪』、過去の名将と同じ名を持つオブリビオンは彼に次いで二人目だ。
「しかし、編成は――普通の戦車ですね」
中核戦力たる主力戦車に脇を固める軽戦車、砲撃支援を担う自走砲、等々。アポカリプスヘルには常識を超えた機能を有する兵器のオブリビオンも多いが、かの軍団を構成するのは、少なくとも見目には尋常の兵器と見える。
「ならば。戦車の敵たる航空機を以て、仕留めさせて頂きます」
マルミアドワーズの装甲にユーベルコードの光が走り。滑らかな挙動で以て、その高度を下げてゆく。
『て、敵襲ー! 上空から航空機の攻撃!』
戦車乗員からの敵襲を告げる通信に、ロンメル・ヴォーテックスは只々驚愕するより無かった。
「何だと!? 何故航空機の接近に気付けなかった……!?」
兵達を責めているわけではない。己とて、航空機が近づいていれば攻撃される前に気付けていた筈なのだ。『彼の知る航空機』であったならば。
マルミアドワーズは重力制御にて空を飛ぶ航空機。それ故、その飛行音は極めて静粛である。そのような技術を知らぬロンメルにとっては、到底予測のできぬ存在。故に、先制攻撃を許す結果となった。
「くっ、高射砲隊、前へ!主力戦車隊を守れ……!」
指示を受けて前進を開始する高射砲、だがその数は少なく、前進も速いものではない。その間にも、カグヤはマルミアドワーズを操り戦車軍団へ打撃を加えてゆく。
六連装のビームマシンガンが荒野を薙ぎ払うかのように掃射され、軌道上の戦車群を爆発炎上させる。堅牢な主力戦車の装甲も、ユーベルコードを以て貫通力を高めたビームマシンガンの前には無意味。
漸く前線に到着した高射砲隊も、地面への激突を顧みないような超高速で飛翔するマルミアドワーズを捉えられず、これもビームマシンガンで次々と薙ぎ倒されて。
再度上昇すると共に、地上で幾つもの爆発。マルミアドワーズから投下された爆弾が、前線の主力戦車を直撃。これを粉砕すると共に、大地に幾つものクレーターめいた穴を穿ったのだ。
『前方の地面に穴が開いてます! 前進できません!』
『主力戦車隊、全機大破乃至戦闘不能……!』
次々とロンメルのもとへ届く報告。その全てが、只一機の航空機の対地攻撃によって、己の誇る戦車軍団が蹂躙されていく様を告げるものであった。
「お、おのれ……!?」
歯噛みするロンメル。高射砲隊も倒された今、上空から襲い来る航空機への対処は困難。歩兵部隊がロケット砲での攻撃を試みてはいるが、あまりにも力不足。
そして、彼らに襲いかかってくる敵は、それだけではなかった。
「9時より戦車部隊接近! 砲撃してきます!」
戦車軍団の横腹に殴りかかってきた戦車部隊。AI戦車群だ。
「最早敵に主力部隊は存在しません。このまま狩ってみせましょう」
AI戦車群を砲撃せんとした自走砲にロケット砲を撃ち込み沈黙させつつ、カグヤは前面のコンソールを操作する。操作に応えてAI戦車群が展開、其々に砲撃を仕掛けて前方の敵を次々と撃破していく。
カグヤは己のハッキング能力を以て、AI戦車の制御に干渉。手動での操縦を可能としていた。以て、戦車群の全てがカグヤの一部であるかのように縦横に動き、連携し、敵を仕留める。
最早、戦場はカグヤの完全なる支配下。ロンメルに打つ手は最早存在しなかった。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィオレッタ・エーデルシュタイン
敵は大規模装甲部隊ね。
私は敵が確認できる遮蔽物に隠れておいて、AI戦車部隊は大きく2つに分割。
片方を谷間や地割れに伏せる。もう片方は敵の射程すれすれ外に展開。
こちらは嫌がらせ的に砲撃したら後退、敵を待ち伏せ部隊の横を通るようにおびき寄せるわ。
そして敵戦車隊の前衛が通り過ぎた辺りで側面から砲撃開始。
「突撃部隊に対する側防射撃による突破破砕は基本よ」
敵が混乱するか、部隊が長く伸びればチャンス到来。
ロンメルの指揮戦車を見定めて10秒集中、ユーベルコード【千里眼射ち】。
106レベル2乗mって…「戦車より射程長いのよね」
[スナイパー][貫通攻撃][鎧無視攻撃]の組み合わせで装甲事撃ち抜いてあげるわ。
荒野に幾つも転がる岩。そのうちの一つに身を隠しながら、ヴィオレッタ・エーデルシュタイン(幸福証明・f03706)は整然と進む戦車の群れを視界に捉える。
「成程、これは何とも大規模な装甲部隊ね」
視線を右へ。AI戦車の部隊が二つ。片方は大きな地割れの中にその身を隠す。
「さあ、狩りを始めるとしましょうか」
ヴィオレッタの宣言に応えるが如く、隠れていない戦車部隊が前進を開始。併せて、ヴィオレッタも移動を始める。
『2時方向、所属不明の戦車部隊を確認! 砲撃してきます!』
ロンメルの戦車軍団の側も、AI戦車部隊の存在を確認する。
「フン、性懲りもなくまた来たか。しかし砲撃にも間合いが遠い、臆病にも程がある」
報告を受けたロンメルはあくまでも冷静に。敵は砲撃を重ねてくるが、あまりにも距離が遠く。戦車軍団の前衛たる重戦車隊にはまるで有効打を与えられない。
「……だが、鬱陶しくはある」
だというのに執拗な砲撃。徐々にロンメルの眉間の皺が深くなる。間断なく響く砲撃音が苛立ちを加速させる。
「……ええい、前衛前進! 奴らを黙らせろ!」
とうとう苛立ちが頂点に達したロンメル、重戦車隊に前進を命令。AI戦車群を排除するべく、その主砲の射程に収めんとするが。
「逃げるだと? そうはさせるものか!」
重戦車隊が前進した分だけ、AI戦車群は後退。苛立つロンメルは更に前進を命令。重戦車隊が前進する。AI戦車群が後退する。
いたちごっこじみて前進と後退が交互に繰り返されること幾度目か。突如、自軍左方で爆発が起こったことにロンメルは気付く。
『て、敵襲! 3時方向、地割れから敵戦車が出現しました……!』
「何ぃ!?」
よもやの伏兵。常のロンメルならば気付いた可能性もあろう。だがヴィオレッタが指示した、嫌がらせに徹するかの如き砲撃の繰り返しは、彼に苛立ちを与え、伏兵に気付き得る判断力を削ぎ落していたのだ。
立て続けの砲撃で、側面を守る戦車部隊が次々と撃破される。戦車軍団は、混乱のうちに叩き込まれた。
「突撃部隊に対する側防射撃による突破破砕は基本、ではなかったかしらね」
小さな崖の上から混乱する戦車軍団を見下ろし、ヴィオレッタが呟く。そのようなことも忘れてしまう程に、頭に血が上っていたのだろうか。
「ま、私にとっては好都合だけど」
今ならば、この崖上からでもロンメルの指揮車両が丸見えだ。即ち好機。ヴィオレッタは弓を構える。矢を番え、引き絞ると共に集中を開始。
漸く反撃を開始したロンメル軍団、AI戦車が撃破されてゆく。だが遅い。ヴィオレッタは尚も集中する。指揮車両の周りに近づく車両は無い。射線は妨げられない。
そして、集中すること十秒。その矢が放たれた。
ユーベルコードを以て強化したその射程は、10kmを優に超える。当然、戦車砲の射程の遥か外だ。それ程の距離を、放たれた矢は一瞬で駆け抜けて。徹甲弾じみて、指揮車両の装甲を貫いた。
「命中、ね」
直接視認はできないが、この矢、確実にロンメルへと命中した。確信を持って、ヴィオレッタは呟いた。
大成功
🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
難しい作戦はあまり得意ではありませんが……
AI戦車さんの一部を突撃させ、打撃を与えたら引き下がらせる
追撃してきたのを包囲攻撃する釣り野伏という戦術
下がるタイミングや【おびき寄せ】を、教科書に従ってますと言わんばかり
当然、呆気なく見破られる――と、同時進行する私自身の行動
白いパイロットスーツに身を包み、地割れや渓谷地帯を【クライミング】してAI戦車さんを駆逐する敵軍の側面に忍び寄り……【ヘラクレス】を召喚!
天来せよ、鋼の大英雄!
敵がこちらに向く前に突撃
砲身を掴み、【怪力】でへし折り(部位破壊)、棍棒代わりに戦車に叩き付ける
砲火に見舞われようと【神の試練を乗り越えし者】の【蹂躙】は止められない!
切り立った崖を傍とする荒野に、砲声が絶え間なく響き渡る。AI戦車群と、ロンメル・ヴォーテックス率いる戦車軍団との戦闘だ。
戦車群は砲撃を仕掛けた後に後退し、敵が前進してくれば再度砲撃し後退する。その挙動を、ロンメルは冷徹に見据えていた。
「――フン、少しは策というものを考えているようだが」
敵の攻撃と後退するその挙動。教科書通りと言うより他に無い、典型的な『釣り野伏せ』を狙った動き。それを見抜けぬロンメルではない。
「その前に包囲殲滅してくれよう。軽戦車部隊、敵左側面は抑えたな?」
『展開完了しております』
ロンメルの意を受け、敵の退路を断つ形で動いていた軽戦車部隊。その展開の完了せるを確かめ、ロンメルは命令を下す。
「良し。――総攻撃開始、一機残らず殲滅せよ」
命令に従い、前面の重戦車部隊と側面を押さえた軽戦車部隊が其々に砲撃を開始。このまま粛々と、AI戦車群を全滅させる――と思われたが。
「っ!?」
突如戦車軍団を襲った、落雷めいた地響き。驚きのあまり、思わず指揮車両から飛び出したロンメル。彼がそこで見たものは。
「――何だ、何なのだこれは!?」
天を突かんばかりに大きく高く聳え立つ、鋼鉄の巨英雄の姿。そして。
『忠実たる戦士達がその身を以て築いた機、無駄にはしない! 覚悟!』
その内より響き渡るは、オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)の大音声であった――
時間は少し巻き戻る。
AI戦車を囮としてロンメル軍団にぶつけた後、オリヴィアは戦場脇の崖をよじ登って敵軍の側面を目指していた。
見事なボディラインを引き立てる白のパイロットスーツに無駄な装飾は無く、鍛え抜かれた肉体で以て為す登攀の技術は、その身を遅滞なく崖上へと運びつつあった。
オリヴィアはあくまでも指揮官ではなく戦士である。故に策というものにあまり自信は無い。己の知る策の一つである釣り野伏せを実行するようAI戦車達へ指示したものの、ロンメル程の将であれば恐らく見破るだろう、とも感じていた。
故にこそ、決するは己の手で。AI戦車が全滅するまでに、この崖の上へ――そして、その意思は果たされた。
オリヴィアが崖上に到達したその時、まさにロンメルはAI戦車群へ総攻撃を仕掛けんとしている処であったのだ。
逸る気持ちを抑え、密やかに戦車軍団の側面へ。後方に待機する車両の兵が、彼女に気付いた、まさにその瞬間。
「――天来せよ、鋼の大英雄!」
片手を天へと掲げ、叫ぶその声に応え、『ヘラクレス』――不撓不屈の大英雄の名を冠せしスーパーロボットが、荒野に降り立った――!
「――く、全軍、敵の奇襲だ!急ぎ9時方向へ集結、迎撃せよ……!」
我に返ったロンメルが、全軍に迎撃を指示。なれどAI戦車群を包囲していた彼ら、すぐには迎撃に当たれない。
『遅い!!』
回頭せんとした自走砲の砲塔を掴み、大出力を以て車体ごと持ち上げる。以て振り回せば鉄鎚の如く、周囲の車両を片端から殴り飛ばし吹き飛ばす。一部はオリヴィアが登ってきた崖から叩き落とされてゆく。
振り回され続けた自走砲が壊れかけたと見れば、用済みとばかりに投げ飛ばし。迎撃せんと向かってきていた重戦車に衝突させ、諸共に爆発させる。
それでも漸くヘラクレスを射程に捉えた戦車軍団、鋼の大英雄を目掛け砲撃を開始。強化された敏捷性を以てしても砲火の全ては躱せず、幾発もがその身に着弾するが。
『神の試練をも乗り越えし者、止められると思うな……!』
なれどヘラクレスは止まらない。鋼鉄の巨英雄は軽戦車を軽々と持ち上げては投げ飛ばし、重戦車の装甲をも拳の一撃にて叩き潰す。
己の戦車軍団が、たった一機の鉄巨人に蹂躙される様。ロンメルは、ただ呆然と見上げるより他に無かった。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
AI制御の戦車があるみたいだから、こっちとリンクさせてわたしが操縦しちゃえば、
連携でロンメルさんに負けることはなさそうだね。
それにわたしが操縦するなら【モーフィング換装】が使えるはず。
手に入れた戦車の半数を『防御5倍、攻撃回数半分』。
残りの半分を『攻撃5倍、装甲半分』にして、
防御メインの戦車を前に、攻撃メインの戦車を後ろにした陣を敷くよ。
防御戦車で相手の攻撃を跳ね返しつつ、攻撃戦車は防御戦車の間から砲撃して攻撃しよう。
わたしも【セレステ】に乗って出撃。
セレステの位置や動きは『希』ちゃんに任せて、全体指揮に専念しよう。
『希』ちゃん、セレステの安全は大事だけど、後ろに下がりすぎないで、ねー!
「AI戦車、かー」
軍事基地跡にてそれら戦車群を前とした菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は思案する。
「……AI制御だったら、わたしのセレステとリンクさせられるかな?」
ふと思いつき、己の乗機である『リオ・セレステ』に乗りこむ。コンソールを叩き、AI戦車群の制御系にアクセス。そのまま操作すること暫し。
「……よし、できた!」
そう長い時間をかけることなく、作業は完了。全てのAI戦車を、リオ・セレステの制御下に置き、理緒の手で操縦可能な状態にしたのだ。
そして。
「……これだったら、モーフィング換装できるかな?」
それは、理緒が操縦または搭乗する機体の性能を変化させるユーベルコード。己の制御下に置いた状態のAI戦車ならば、己が操縦する機体である為、効果を及ぼすことが可能である、と理緒は考えたのだ。
「よし、それなら……」
ものは試し、とユーベルコードを行使。すると、戦車の半数は装甲が薄くなってゆく代わりに砲塔が太く長く変化し、残り半数は逆に砲塔が細くなる代わりに装甲が分厚く、重く変化していった。
「わ、うまくいった!」
成果に嬉しげな笑みを浮かべる理緒。早速これら戦車部隊を率い、ロンメル・ヴォーテックス率いる戦車軍団のもとへと出撃していくのであった。
『前方、所属不明の戦車部隊を確認!』
荒野の只中、ロンメルの戦車軍団は横隊を敷いて待ち構える戦車部隊の姿を捉えた。
「フン、正面切ってかかってくるとは。随分と舐められたものだ」
指揮車両にて報告の通信を受けたロンメル、侮る様子がありありと分かる笑みを浮かべ。
「全軍前進! 正面の戦車部隊を叩き潰せ!」
命令に基づき、戦車軍団は前進を開始。前衛を担う重戦車が、正面の戦車を射程に捉え。その主砲を放ち攻撃を仕掛ける。
『命中! 敵戦車……そ、損傷軽微!?』
「……何?」
届いた報告にロンメルの目が驚きで見開かれる。重戦車の主砲が直撃しながら損傷軽微などと、一体どれ程の重装甲なのか――
『て、敵の砲撃! 六号車、七号車、爆散しました!!』
「何ぃ!?」
続いて届いた報告に思わず立ち上がるロンメル。この戦車軍団の主力たる重戦車が一撃で破壊された、その事実が信じられぬとばかりに。
「おー、威力充分! このままやっつけていこうー!」
AI戦車部隊が齎した戦果を確かめ、快哉を上げる理緒。防御性能を強化した戦車を前とし、その列の間から攻撃性能を強化した戦車が砲撃を仕掛ける、攻防一体の編成は見事に功を奏していた。
「よっし、このまま前進して攻撃ー! 自走砲が動く前に近づかないとね」
コンソールを叩き、戦車部隊を前へ。壁役の戦車を飛び越えて攻撃役の戦車を直接攻撃する、自走砲の砲撃は脅威。それ故に、可能な限り迅速に敵軍団に接近せんとしているのだ。
「じゃあわたしも前にー……って、あれ。希ちゃーん?」
前進する戦車部隊を追って、指揮車両たるリオ・セレステも前進する、と思っていた理緒、一行に動かない機体を訝しむ。とはいえ原因は明らかだ。
「希ちゃん、セレステの安全は大事だけど、後ろに下がりすぎないで、ねー」
呼びかければリオ・セレステは前進を開始する。此度はAI戦車部隊の指揮に専念するため、車両の運転はサポートAI『希』に任せていた理緒だが。どうもこの希、慎重と言うか臆病と言うか、そんな性質を持っているようである。
そのようなことがありつつも、理緒による強化改造を受けたAI戦車部隊は、次々とロンメルの戦車軍団を撃破。かの軍団に、多大なダメージを与えてみせたのである。
大成功
🔵🔵🔵
柊・はとり
戦闘知識一辺に特化した戦バカって所か
油断せずに行くぜ
AI戦車群には谷間や地割れの座標を記録させ
絶対侵入しないようにさせる
加えて敵軍をその地点へ追い込むため
鶴翼の陣で包囲攻撃するよう設定
火力不足なんで一時的に俺の偽神兵器と同期させ
主砲から強力な氷属性攻撃を発射できるよう改造
天候操作で戦場に霧を発生させ
敵軍に地形が視認できないように
こっちはAIなんで問題ない
中央の一台には俺が乗りUCを発動
本来の性能を遥かに超えた速度で制圧射撃を行い
その間他の戦車は主砲を撃ち続ける
殺気を放ち勝てないと思わせるのも肝要だ
撤退を始めて落ちてくれるといいが
ロンメルの位置は第六感と聞き耳で探り
戦車で直接轢く
最後は暴力で悪い
そこは深い谷に面した荒野の一角。深い地割れが幾つも口を開け、迂闊に踏み入れば忽ちのうちに落ちてしまいそうな危険な領域。
「――と、こんな処かね」
AI戦車のコマンド設定用端末への入力を終え、柊・はとり(死に損ないのニケ・f25213)は眼鏡を指で押し上げる。此度の作戦遂行において、確実に必要になる措置。妥協なく設定を完了した。
「さて、後は――火力だな」
見る限り、AI戦車の主砲は中口径。ロンメル率いる戦車軍団の主力戦車に対しては、恐らく些かならず火力不足だろう。
ならば、と彼は携えた剣を取り出す。『コキュートス』、氷の力宿す偽神兵器。搭載されたAIを戦車のAIと同期すればいける筈だ。はとりは早速作業に取り掛かる。
「――霧か。珍しいな」
行軍を続けるロンメル・ヴォーテックスの戦車軍団を、濃い霧が包む。基本的に乾ききった荒野であるこの一体、霧が出るのは滅多に無いことだ。意外げにロンメルは呟く。
然しこの濃度、油断すれば地形の急変に対応できまい。行軍に際して注意するよう、全軍に通達せねば――そう思った、その矢先である。
『て、敵襲……!』
『七時方向より敵の砲撃! 機体中破!』
『十一時方向からも砲撃! き、機体が凍ってる……!?』
突如飛び込んできた、幾つもの敵襲報告。複数の方角からの砲撃。いつの間にか包囲されていたというのか。
「ええい、反撃だ! 砲撃の来た方角へ反撃しろ!」
何はともあれ反撃である、と命令を下すロンメル。敵の砲撃を頼りに攻撃すべき方向を推測、砲撃を開始してゆく。
「ちっ、反撃するかよ」
砲撃が飛んできたのを見て、はとりは舌打ちする。敵の砲撃はほぼ当たらないが、当たれば確実に落とされる。此方の作戦からすれば、手数が減る事態は何としても避けたい。
鶴翼陣に展開したAI戦車達に砲撃を続けさせつつ、はとりは更なる手段に出る。己が乗る、陣の中央のAI戦車に対し、コキュートスを構えたかと思うと――徐に、その刃を突き刺した!
「心中ごっこは御免だ……やるなら、そっちだけでやって貰う……!」
直後、その戦車が猛烈な勢いで砲撃を開始。機関砲かと紛う勢いで、次々と戦車軍団の在る方向を目掛け砲弾を撃ちまくる。まるで、単騎で数台分の働きをするかのように。
「正面から敵集団の一斉砲撃だと……!?」
そして霧でAI戦車部隊を視認できないロンメル軍は、案の定その数を誤認していた。殺気溢れる気配が霧の向こうから伝わってくるのもあり、兵の間に動揺が広がりつつあることが、通信越しでも伝わってくる。
「……ええい、癪だが一時後退だ! 後退して霧を抜けた後に改めて反撃だ!」
敵が左方から攻撃してくるなら、右方へ逃げるべし。ロンメルの命令に従い、戦車軍団はそちらへ進路を取る――そして。
「……ぐおぉっ!? な、何だ!?」
突如身動きの取れなくなる指揮車両。慌てて車両を下りて確認すれば、大きな地割れに嵌って殆ど横転しかけていた。
それだけではない。周囲を見れば、軍団の戦車達の多くがこれらの地割れに嵌り、動きを封じられている。中には、もっと大きな地割れに落ちてしまった車両も。
(まさか、この為の罠……!?)
愕然とするロンメル。立ち込める霧に乗じた、この地形へ己らを誘導する策だったのでは――
と、その直後。霧の中を己目掛けて爆走するエンジン音が響き渡る。その方向を見れば。
「悪ぃな、暴力でだが頂くぜ」
「ぐはぁぁぁ!?」
はとりが操るAI戦車が猛スピードで突っ込んできたのだ。反応する暇もあればこそ。突っ走る戦車はそのまま、進路上のロンメルを跳ね飛ばしていくのであった。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
自分はただの兵士。
考えれば考えるほど訳が分からなくなる。
だから、簡単に考えた。平坦な地形で迎え撃つ。
いくぞ、突破するぞ、主よ!
AI戦車を引き連れて亡国の主を操縦。突撃しながら【渚の戦端】を発動。此処を選んだのは伏兵を仕込み難く、お互いの兵力差が分かりやすいから。だから、戦力を誤認させやすい。
『海』が現れ、500機以上の量産型キャバリア、ディスポーザブル01がその姿を現す
此処が、自分達の戦場だ!!進めぇえええッ!!
継戦能力、頑丈な01が積極的に盾になり攻撃を受け止め、01のRSパルスガトリングと、戦車群の武装を合わせ弾幕を形成、敵群を排除。
主で推力移動、ロンメル目掛けて、RX騎兵刀を叩き込む!!
荒野を征くは白き巨人。AIにて動く戦車の群れを後ろに従えるその様は『亡国の主』の名に相応しかろうか。
その搭乗席、敵たる戦車軍団が接近しつつあるのを、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)はモニタ越しに睨む。
小枝子は指揮官ではない。ただの兵士である。戦術とか、策略とか、考えれば考える程に分からなくなる。故に、彼女は簡単に考えた。平坦な地形で迎え撃てば良い、と。
「――いくぞ、突破するぞ、主よ!」
叫び、機体を前進させる。主もまた、応えるように咆哮し、疾駆する。
『敵部隊確認! 戦車複数と……な、何だあの恐竜みたいな機体は!?』
一方のロンメル・ヴォーテックス側。前衛の戦車から届いた狼狽じみた報告にも、指揮官たるロンメルは冷静に思考する。
(此処は平地。此方を釣り出そうという動きでもない。即ち、伏兵の可能性は無い。この戦力で我々を撃破できるつもりでいると?)
舐められたものだ、と内心毒づきながらも、その頭脳は状況に対する最適解を導き出す。即ち。
「慌てるな。大方、マシンウォーカーの類だろう。単騎で来る以上、性能は高かろうが……所詮は単騎だ。軽戦車を回り込ませ、包囲にて撃破。自走砲隊、後続の戦車を砲撃。前衛機体に合流させるな」
各部隊へ命令を下す。突撃してきた主力機を包囲撃破し、然る後に足止めした後続を殲滅する。成程、理に適う戦術と言えるかもしれない。
――これが、敵戦力の全てであったならば。
亡国の主を食い止めるべく前進してきた重戦車に、騎兵刀を叩きつけ両断しながら。小枝子は主の首を巡らせ戦場を俯瞰する。
「――自分は、此処に居る」
残る重戦車と、側面に回り込んだ軽戦車の砲撃が次々と主に命中。装甲が徐々に剥離し、損傷が増えていく。
だが、恐るるには足りず。己は兵士であり、死ぬまで戦い続けるもの。此処こそ己の在るべき場所。即ち――
「――此処が、自分達の戦場だ!!」
咆哮すると同時。戦場に、『海』が現れた。
実体ではない。霊物質で構成された、幻の如き海だ。だが、現れたのは『海』だけではない。
『――か、閣下! 敵の増援です! 人型兵器が、10、20……か、数えきれません!!』
「何ぃ!? ど、何処に伏兵が潜んでいたというのだ!? この何もない平地の何処に!?」
ロンメルと、彼の率いる戦車軍団は見た。『海』の中から姿を現す、重装甲の人型兵器――キャバリアの群れを。
『進めぇぇえええぇぇぇぇッ!!』
荒野に轟く、小枝子の喊声。応えるように、現れたキャバリア――ディスポーザブル01と、追いついたAI戦車群とが一斉に攻撃を開始。キャバリアのパルスガトリングが、AI戦車の主砲が、喊声に応えるが如く咆哮し、濃密なる弾幕を戦車軍団へと浴びせてゆく。
瞬く間に薙ぎ払われる軽戦車。持ち堪えた重戦車も只では済まぬ。辛うじて砲撃を返すものの、ディスポーザブル01の異常なまでに頑丈な装甲には掠り傷程度しかつけられない。
その重戦車も弾幕の嵐に呑まれゆく中、霊気の海を突き抜け亡国の主は駆ける。目指すは軍団の中心に在る指揮車両。捉えた以上、逃がしはしない。
「壊れろぉぉおおぉぉぉぉぉぉ!!」
瞬く間に肉薄、同時に振り下ろされた騎兵刀が、一刀のもとに車両を両断してみせた。
大成功
🔵🔵🔵
陸郷・める
☆める:戦車乗りの少女。
★7号:搭載偽神兵器の生体コアにされた元ヒャッハー。
★数でぶつかりゃ負けるんなら分断だな。一番足が速い改造戦車の俺様達で喧嘩売って砲撃し、手に負えず逃げるふりして追撃させる
あの言動だ。歯向かった奴を見逃すと思えねぇし、かといって配下に追撃部隊を任せるとも思えねぇ
動く時にゃ必ず自分で確認し、指示を出せる位置をキープしてんだろ
狭くて大々的に展開できねぇ渓谷内へ誘い込み、予め待ち伏せさせた戦車共に迎撃させる。で、前方の戦車共に意識向いたとこでUCで機動性強化した俺様たちが《ジャンプ》で上から襲撃、踏んで蹴って暴れ回る。って所でどうだ?
あ、AI戦車は極力残す。後で貰うからな!
『ヒャッハー! 覚悟しろや軍人野郎ー!』
如何にもレイダー然とした叫び声を機体より響かせながら、一台の戦車がロンメル率いる戦車軍団目掛けて砲撃を繰り出す。不運な重戦車が一台、直撃を受けて吹き飛んだ。
『て、敵襲! 戦車1!』
「それなりの性能のようだが所詮は単騎。速やかに迎撃せよ」
なれどロンメルは動じることなく迎撃を命令。応えた戦車達が、一斉に襲いきた戦車を目掛け砲撃を開始、猛烈な砲弾の雨が襲い来る。
『ヒィッ!? こ、こんなの勝てっこねぇ!? に、逃げろぉ!』
猛烈な反撃の前に、戦車から狼狽えきった声が響く。そしてそのまま反転、無限軌道を全開として一目散に逃げ出してゆく。
『敵戦車、逃走を開始しました。如何致しますか』
「釣り出しの為の囮ならば、もう少しマシな戦力を持ってくる筈だ。大方、私の事が気に入らぬ野良レイダーだろう。己が浅慮の報い、受けさせてやるがいい」
この荒野を生きる為には、舐めた態度を取る者に対して徹底的な粛正を喰らわせる必要がある。ロンメルは迷わず追撃を命令。応えて、その全軍が戦車追撃に動き出した。
『よっしゃー! める、奴さんまんまと引っ掛かりやがったぜぇ!』
「おっけ、このまま、さそいこむ」
戦車軍団に追われる戦車――『6号』の車内、先のレイダー然とした声と、操縦席の幼い少女が会話を交わす。少女は陸郷・める(死念動力実験成功体6号・f26600)、響く声の主は戦車に搭載された偽神兵器の制御用生体部品『7号』だ。
『ヘヘッ、思った通りだぜ。奴さんもきっちり一緒じゃねぇか』
追跡してくる戦車軍団の中、ロンメルの乗る指揮車両と思しき車両を確かめ7号は笑う。ロンメルの性格上、配下だけを追撃に差し向けるということはしないだろう、という彼らの読みは正しかった。
尚、めるの返事は無い。彼女は戦車の操縦に専念しているので、作戦行動中は普段以上に無口となるためだ。7号も其を理解している故、返事が無くとも気にはしない。
『よぉし、このままこっちへ……来たぜ来たぜ! 連中、雁首揃えて突っ込んでくらぁ! ヒャッハー!』
そして6号戦車は両側を高い崖に挟まれた峡谷地帯へ走り込む。後ろを確かめれば、戦車軍団が隊列を組み直しながら峡谷へ突っ込んでくる。うまくいった、と7号は快哉を上げる。後はもう少し奥まで引き込むだけだ。逃げるように戦車軍団を引き付けてゆく6号戦車。追う戦車軍団。追走劇を続けること、もう暫し――
突如、戦車軍団を襲った轟音と激震。ロンメルは即座に直感する。戦車の砲撃だ。
『て、敵襲……! 崖上に、戦車部隊が現れました……!』
「ぐっ、伏兵……だと……!?」
車外の様子をモニタに映せば、前方に聳える崖の上、己らに砲口を向ける、何台もの戦車の姿がはっきりと映し出されていた。
『ヒャッハー! 大成功だぜー!』
不意打ちは大成功。7号の声が戦車の中に響き渡る。AI戦車達を予め崖上に待機させ、そこにめる達が戦車軍団を誘い込み砲撃を喰らわす。策は見事に的中した。
「まだまだ……。7号、アーム、よろしく……!」
だがこれだけで終わりではない。次なる手を繰り出すべく、めるが声を上げる。
『応よ! この戦車はそんじょそこらのとは一味違うってコト、あの軍人野郎に教えてやろうぜぇ!』
7号が応えると同時に。6号戦車は『跳んだ』。
「ちぃ! 全軍応戦せよ! 自走砲隊、砲撃用意!」
『了解、砲撃開――ぐわぁぁぁ!?』
崖上から砲撃をかけてくるAI戦車達に反撃するべく、自走砲隊が砲門を上向けかけ――た処に降ってきた戦車が押し潰す。
「な、何……だと……!?」
その様をモニタ越しに確かめたロンメル、信じられないとばかりの驚愕の表情を浮かべる。戦車が、まるで人間のように『跳んで』くるなど、彼の常識に範疇には無い。
『ヒャッハー! 戦車が愚鈍で砲撃しかないと思ったら大間違いだコラァ!』
先程までの無限軌道から六本の脚に変形し、そして胴部からは戦車らしからぬ太く強靭なアームを生やした、異形の戦車。それこそは、戦車でありながら格闘戦をこなす、6号戦車の格闘形態。
繰り出す拳は軽戦車や支援車両を軽々と殴り飛ばし、跳躍すれば重戦車をも踏み潰す強烈な踏みつけ。対抗しようにも、峡谷の中では車両同士が位置を入れ替えるのさえ容易ではない。
外からはAI戦車の砲撃、内では暴れ回る6号戦車。為す術なく蹂躙されてゆく、ロンメルの戦車軍団。
『おらぁぁ!』
「ぐわぁぁぁぁ!?」
そして、ロンメルの乗っていた指揮車両もまた、6号戦車のアームパンチで以て拉げながら吹き飛んでいった。
大成功
🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
…えーあい、せいぎょしき、せんしゃ?
…よく分からないけど、ゴーレムみたいな物よね、多分
…敵を釣るのは私がやる。貴方達は私の指示した場所で待機して
敵が目標地点に入ったら十字放火でしとめ……あれ、聞こえている?
………。
…こんな時の為に編み出した御業があるもの。問題無いわ
UCを発動して「御使い、地縛鎖、韋駄天、誘惑、操縦、盾、軍略」の呪詛を付与
AI戦車に電子精霊の魔力を溜め自動●操縦を行い●集団行動をとらせ、
自身は存在感を強化して敵軍を●誘惑して陽動を行い敵を惹き付け、
敵の砲撃を矢避けの●オーラで防御する浮遊●盾で受け流し、
●ダッシュで●地形の利用した十字放火地点まで駆け抜け敵軍を乱れ撃ちにする
「えーあい、せいぎょしき、せんしゃ?」
軍事基地跡にて、居並ぶAI戦車群を前としたリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、困惑していた。それは一体、どのようなものであるのか、と。
ダークセイヴァーの出身であり、猟兵としても異なる世界へ赴くことのあまりないリーヴァルディである。AI、というものに馴染みがないのも無理からぬ話だ。
(……ゴーレムみたいな物よね、多分)
一先ずそのように理解し、改めてAI戦車群を見据える。
「……敵を釣るのは私がやる。貴方達は私の指示した場所で待機して。敵が目標地点に入ったら、十字砲火で仕留め……」
己の考える作戦を説明せんとしたリーヴァルディだが、そこで違和感に気付く。
「……あれ、聞こえている?」
AI戦車群の反応があまりにも無いが故に、心配になる。実際、AI戦車に作戦を指示するには口頭ではなく端末を介する必要があるのだが、リーヴァルディは其方にも馴染みが無い。
「……………」
沈黙を保つAI戦車群を前に、思案すること暫し。
「……こんな時の為に編み出した御業の出番ね」
この世界の流儀が分からぬなら、己の流儀を用いれば良い。リーヴァルディは呪文の詠唱を開始する。その身から溢れ出すは呪詛を籠めた無数の呪文。帯めいてAI戦車達へと絡みつけば、その蠢くごとに呪詛を車体に刻み込んでゆく。これら戦車群を、己のやり方で制御するための呪詛を。
発動から然程の時を経ずして、AI戦車群のその全てに呪詛の付与が完了。改めて、リーヴァルディは戦車群に対し呼びかける。
「……さあ、行きましょう」
すると、応えるように戦車群が移動を開始。うまくいった。リーヴァルディもまた、彼らを率いるように荒野へと駆けだしてゆく。
荒野を駆けるリーヴァルディ、戦車軍団の存在を視界に認めれば、漆黒の大鎌をその手に構え。振り抜くのを以て、最前列の重戦車の装甲を斬り裂いて奥の動力部と諸共に破壊。爆発する機体を尻目に跳躍する。
『て、敵襲! ……に、人間です!? 人間が一人で戦車を……!』
「狼狽えるな!」
突然の襲撃、そして装甲をも両断する敵の出現に、兵士からの報告にも狼狽する様子がありありと浮かぶ。
そんな彼らを一喝しつつ、ロンメルは作戦を指示する。
「強力な個人とて所詮は単騎。軽戦車を以て包囲し、殲滅せよ」
命令を受け、軽戦車部隊が左右からリーヴァルディを挟みうつ。放たれた砲撃を、身を翻して回避すれば、跳躍し間合いを離して仕切り直す。
「逃がしはせん、私からは逃げられぬと知るがいい……」
ロンメルの呟きに応えるかの如く、戦車達は執拗にリーヴァルディを追い立てる。砲撃を繰り出す。砲弾は彼女の身を逸れるかのように射線を曲げられ、何処へともなく飛び去ってゆく。彼女の身を包むオーラによって受け流したのだ。
逃げるリーヴァルディ、追う戦車軍団。そんな追いかけっこは――長くは続かなかった。
「ぬおおおお!?」
突如指揮車両を襲った爆発と衝撃。見れば、戦車軍団を囲むかのように並ぶ、呪文めいたものを刻み込んだ装甲を有する奇妙な戦車群が、大きく分けて斜め前二方向から絶え間ない砲撃を繰り出し。戦車軍団を十字砲火に晒していたのだ。無論、リーヴァルディによって呪詛を刻まれたAI戦車達である。
戦車軍団も反撃するものの、AI戦車群は見た目以上の装甲と火力を有し。反撃を耐えるばかりか、更なる攻撃によって次々と戦車を破壊していく。
「ば……馬鹿な、あんな戦車が、我が戦車軍団を……」
質も量も、己の戦車軍団の方が圧倒的に上のはず。それが何故。
理解することのできぬまま、ロンメルの指揮車両は、リーヴァルディの振るった鎌によって真っ二つに切断されるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
リーゼロッテ・ローデンヴァルト
【WIZ】
※アドリブ連携絡み大歓迎
※愛機搭乗
陸軍元帥の威光に肖るのはさておき…
コイツ、自分が一番非科学的って自覚あるの?
ま、新装備の実験台には丁度イイね♪
ともあれAI戦車群を生体電脳経由で細かく制御
【スケイプ・セル】と【ウインド・ミル】で防御を固めつつ
【マトリクス・メモリ】による『スピードの発生源』で高速化
連携してジリジリ包囲網を狭めてイクよ
そしてアタシは【アダマンタイト】の出力と
【ヴァルカン】の機動力で高速周回トップアタック
粒子を撒きつつ逃げるヤツの足周りを狙うよ
此等はオペ74番【セント・エルモ】の仕込み
狙い通り戦車共の大渋滞で元帥の逃亡を封じたら着火っ
狐共を一匹も遺さず蒸し焼き&感電さね♪
『前方に所属不明の戦車部隊発見!』
報告を受けたロンメル・ヴォーテックスがモニタへと目を向ければ、映し出されるのは居並ぶ戦車群と、それを率いるように屹立する、青く巨大な人型の兵器。
(新手のマシンウォーカーか。随分と重装甲なようだが、我が軍団の重戦車部隊に抜けぬ装甲ではない)
如何にも目立つそれを見遣り、ロンメルはそう判断する。実際にはマシンウォーカーではない、『ナインス・ライン』という名のキャバリアであるのだが――そのような兵器はアポカリプスヘルに存在しない。故にロンメルはその存在を信じない。
「恐らく青いマシンウォーカーが隊長機だ。これを重戦車で足止めし、軽戦車隊B1を側面に回し、連携して攻撃しこれを撃滅。軽戦車隊B2は逆側より奥の戦車隊の側面へ回って攻撃を開始せよ。自走砲隊は敵戦車群と青いマシンウォーカーとを分断する形で砲撃しろ」
各部隊へ指示を飛ばし、ロンメルはモニタを睨み敵の出方を見る――が。その後の敵の動きは、彼の理解の範疇を超越するものであった。
「陸軍元帥の威光に肖るのはさておき……」
ナインス・ラインの機内。戦闘態勢に入った敵戦車軍団をモニタ越しに見遣り、リーゼロッテ・ローデンヴァルト(リリー先生って呼んでよ・f30386)は肩を竦める。
「アイツ、自分が一番非科学的って自覚あるの?」
聞けばロンメル・ヴォーテックスという男は、科学で説明できぬ存在の一切を信じていないという。オブリビオンなど非科学の化身の如き存在である筈だが、とリーゼロッテは呆れ返る。
「ま、新装備の実験台には丁度イイね♪」
後に続くAI戦車達の挙動を脳内でイメージする。生体電脳化を施したリーゼロッテの頭脳は、かの戦車群のAIと接続され、これらをより自在に制御することを可能としていた。散開し、展開を始めていた戦車軍団を抑え込むように包囲。付与された攻性防壁は飛来する砲弾を確実に防ぎ、頭上を護衛するドローンは上下からの連携攻撃を実現する。以て、敵の挙動を制限し、徐々に包囲網を狭めてゆく。
その間に自らもまた動く。脇下から伸びる巨大推進器が咆哮し、重厚な機体を猛烈な速度で浮上――飛翔させる。AI戦車群を突破せんと攻撃を繰り返す戦車軍団、その頭上を縦横無尽に飛び回り、ライフル射撃の雨を降らす。弾丸は狙い違わず戦車の無限軌道を撃ち抜き、これを破壊。一台一台と、機動を封じられ、同時に他の戦車の挙動を妨げる障害物となる。
(よしよし、仕込みは上々)
ナインス・ラインが飛翔するごと、その後には青白い光の粒子めいた物質が散り落ち、空間に滞留する。それの意味する処に気付く者は、戦車軍団の内には一人もいなかった。
やがて、AI戦車群に追い詰められた戦車軍団は、前にも後ろにも碌に動けぬ過密状態に陥っていた。足を潰された車両も障害物となり、彼等の機動を妨げる。それらを包むかのように、青白い粒子がキラキラと空間内で輝いている。
「よっし、これくらいで良いかな。元帥殿も逃げられやしないだろうし?」
戦車軍団で過密状態となった中心近くに、指揮車両と思しき車両があることは確認済みだ。ロンメルは間違いなくあそこにいる。ならば、仕込んできた切り札を切る時だ。
構えたるビームランスから、幾つもの加熱粒子の弾丸が放たれる。その射線の先には、一切の戦車は無く、ただただ光の粒子が舞うばかり――だが、これで良いのだ。
次の瞬間、粒子が一際強く光を放ったかと思えば、周囲の粒子へと瞬く間に伝播し光は一気に膨張。青白い炎となって戦車軍団を包み込む。その火勢、炎には強い筈の戦車の装甲さえも燃やし溶かさんばかりの勢い。
更に迸るは強烈なる電流の嵐。互いが互いを増幅し、領域内で絶え間なく荒れ狂う。一撃受けただけでも常人ならば絶命しかねない程の電流が、空間内で幾度もの伝播を繰り返して、内にあるものを焼き払ってゆく。
無論、ロンメルもこの炎と電流を逃れはできぬだろう。戦車軍団が碌な抵抗もできぬまま崩れてゆくのを、リーゼロッテは楽しげに眺めていたとか。
大成功
🔵🔵🔵
チロル・ツークシュピッツェ
アドリブ、絡み歓迎
ツークシュピッツェ級双胴戦闘空母五番艦チロルとしての本体でいくよ~
しかも艦橋に艦長の亡霊付きだぁ♥
艦載機のジェネムⅡ隊を出撃させてAI戦車と連携させつつ主砲やミサイルで攻撃していくよぉ♥
でもって、AI戦車とジェネムⅡ隊を囮に敵をおびき寄せるよぉ
敵の数が多いなら丸ごと削ったらどうかなぁ?
「はぁ、しかし核でも使わない限りそう簡単には……まさか!」
懲罰艦になんで核が積んであると思ってるのぉ?いざって時には諸共吹き飛ばす為だよぉ?
さっ、部隊に現地点の死守を命じてねぇ~?
「み、味方ごとなど、戦争にもルールがあります!」
君含めて皆亡霊じゃん、今更今更♥
じゃ、撃っちゃうんだなぁ~これが♥
クリスティーヌ・エスポワール
ロンメル、言動は頑迷だけど戦術は本物みたいね
私がやれるかしら……ううん、やるのよ!
まず、戦車に【電影の鞘は剣を抜く】で顕現させた煙幕を仕込んでおくわ
そして、煙を巻き上げながら全体の半分を先行部隊として進撃
煙幕で全体の状態を把握しにくくした上で、砂漠の岩や砂丘を遮蔽にしながら砲戦に持ち込み……わざとボロ負けし、『整然と』後退させるわ
敵が追ってきて隊列が伸びたら反撃開始よ!
「戦車前進!後手からの一撃(バックハンドブロウ)を決めるわ!」
予め伏せていた残り半分の戦車と、UCで投影した重戦車、それと上空から私のキャバリアを進撃させ突出部を切り裂く!
「借り物の戦術と戦略だけど、あなたには十分かしら」
猟兵達との激戦を経て、すっかりボロボロになったロンメル戦車軍団。なれどその戦力は未だ、正面切っての戦いを可能とするものではあった。
「……ふん、今回は随分と執拗に攻めてくるではないか。誰の入れ知恵があったのやら」
ブラッドルビーか、それともクライストか。実際には両者とも既に滅びているのだが、彼は信じていない。猟兵という第三勢力の存在さえも信じていないが為に。己の目で確かめていないものは信じない、それがロンメル・ヴォーテックスという男であった。
が。
『か、閣下! 上空に、巨大な飛行物体が現れました! 飛行船ではありません!』
それ故に、突如上空に現れたその飛行物体――双胴型の飛行空母を目の前にした時。彼は、己の目を疑ったという。
『ふふ~ん、頭ガチガチの頑固な司令官さんとか、ばぁかみたいっ♪』
荒野に響く声は、幼いながらも対する者を揶揄うような生意気さに満ちる。上空を行く双胴型戦闘空母、ツークシュピッツェ級双胴戦闘空母五番艦チロル――猟兵としての名をチロル・ツークシュピッツェ(メスガキガレオノイド・f34507)と云うガレオノイドのものだ。
『そうね、随分と頑迷な人のようだけど……戦術眼は本物みたいね』
地上を行くAI戦車群、それらを率いるかの如く先頭に立つ、細い流線形のフォルムを有するクロムキャバリア『メテオール』より応え。その搭乗者、クリスティーヌ・エスポワール(廃憶の白百合・f02149)のものだ。
『どうだかねぇ~? ま、それはともかく、作戦はさっき話した通りでいいんだよねぇ?』
クリスティーヌの見立てにも疑問を呈するチロルだが。任務遂行に対する意志は確かだ。改めて、クリスティーヌに作戦を確認する。
『ええ。AI戦車とそっちのキャバリア部隊の半分で敵を誘引。隊列が伸びたところに残り半分を投入して叩く』
『おっけーおっけー。それじゃ、艦長よろしくぅ~』
応えてクリスティーヌが作戦概要を復唱めいて告げれば、チロルは早速艦内へ指示を出す。かつてクロムキャバリア某国の懲罰艦として稼働し一度撃沈された経緯を有するこの艦には、その乗員の亡霊が乗りこんでいる。艦長の亡霊もまた存在しているのだ。
「了解しました。ジェネムII隊、全機出撃!」
空母のカタパルトから次々と飛び出してくるキャバリア。この艦の艦載機であるキャバリア『ジェネムII』である。
『それじゃ、こっちも始めましょうか。一番隊、前進!』
呼応するように、クリスティーヌもAI戦車隊の半分を前進させる。黒煙を巻き上げながら進むそれらは、やがてジェネムII隊と合流し、共に戦車軍団へと迫ってゆく。
『敵部隊接近、戦車と詳細不明の人型兵器です』
「煙幕を張っているな。後ろに控える戦力の動きを見せないつもりか」
一方、飛行空母の存在の齎した衝撃から立ち直ったロンメル。敵の状況を観察し、その意図を推測する。
「まずは接近してくる敵を迎え撃つ。この辺りは岩場や丘陵が多い、軽戦車を回し遮蔽として使え。側面には常に警戒しておけ」
想定される作戦を想定した上で命令を下す。応えて動き出す戦車達。戦いの始まりである。
そして激突する両軍。ジェネムII隊が正面を受け持ち、その間にAI戦車隊が付近の岩場や丘陵に拠って側面からの砲撃を仕掛ける――予定であったが。
『くっ、もう敵が抑えてる……!』
岩場に近づいた戦車が、そこに居た敵戦車の砲撃を受ける。反撃も遮蔽に遮られうまく当たらぬ。歯噛みするクリスティーヌ。
『あれぇ~、この人達戦車なんかにあっさりやられてるぅ~。ざぁこなんだからぁ~♪』
そこからの援護砲撃と、正面の重戦車部隊による砲撃を前に苦戦するジェネムII隊。チロルは相変わらず小生意気に煽る。
『思った以上に苦戦するわね……一度退くわよ!』
『はぁ~い。ざぁこ達ぃ、下がってきなさぁ~い♪』
思った以上に被害を与えられていないが、惨敗の上での後退は作戦の内だ。相互に庇い合い、後退してゆくAI戦車とキャバリアの部隊。
『敵部隊、後退を開始。追撃しますか』
整然と後退してゆく敵部隊をモニタ越しに眺めてロンメルは思案する。相変わらず煙幕の先は見通せない。だがそれは敵も同じの筈だ。
「煙幕の向こうの敵と合流する前に叩く。軽戦車を先攻させて追撃しろ。自走砲隊前進、煙幕の出ている辺りを砲撃できるよう準備しておけ」
故にここで一気に叩く。ロンメルは追撃を命令する。その後の敵本隊との戦いも見据えつつ。
――だが、彼はまだ気づいていない。己の誤算に。
『来たわね……!』
戦列は伸びた。策は成った。クリスティーヌが笑みを浮かべる。AI戦車を介した索敵により、彼女には煙幕の向こうの敵の状況も十全に把握できるのだ。
『戦車前進! 後手からの一撃を決めるわ!』
即ちバックハンドブロウ。そう称される戦術にて勝敗を決するべく、クリスティーヌは機体を飛翔させる。後に続くかの如く、AI戦車部隊の残り半数、そして漆黒の重戦車――クリスティーヌのユーベルコードで投影された戦車が前進する。
『それじゃ~アタシは……よっし、ジェネムII隊、敵の後続を抑えに行きなさぁ~い♪』
敵前衛はクリスティーヌに任せ、チロルは己の艦載機を後方へ差し向ける。決着をつけるために。
『落ちなさいっ!』
メテオールの背より展開された発振器から、何本ものレーザーが放たれる。それは流星群が地に降り落ちるが如く空中に幾つもの軌跡を描き、地上の敵戦車を次々と撃ち抜き爆散させる。
地上では投影重戦車が進軍する。目の前を塞ぐ軽戦車を薙ぎ倒し、前へ前へ。その側面はAI戦車が固める盤石な態勢。と思われたが。
『っ! 遠距離砲撃……!』
クリスティーヌがそれに気づいた1秒後。戦列に降り落ちてきた榴弾が投影戦車隊とAI戦車の一部を吹き飛ばす。そして軽戦車を掃討した先には重戦車隊が待ち受けていた。放たれる重い砲撃は、投影重戦車でも無視できぬ威力だ。ならば己の出番。
『粒子砲展開、目標捕捉……』
フォーコン・クラジューズ。推進機構であると同時に粒子砲でもある、この武器を構える。エネルギーが砲口へと集束してゆく。
『発射ーっ!』
そして放つ。射線上の重戦車複数を巻き込み、これらを纏めて吹き飛ばしてみせた。
『よぉしよぉし、ざぁこ達は頑張って抑えてるみたいねぇ』
ジェネムII隊の奮闘に、チロルは満足げに笑いを漏らす。
「ですが、抑えはできても撃破が……」
そこに疑問を呈する艦長。だが、それに対する答えを、チロルは既に持っていた。
『大丈夫、丸ごと削っちゃえばいいんだよぉ。その為の武装、あるでしょぉ?』
「……まさか!?」
艦長がそれに思い当たると同時、艦体から展開されるは一際長大なるミサイル。その弾頭は。
『懲罰艦になんで核が積んであるか、知らないワケじゃないよねぇ?』
「……! し、しかし戦争にもルールが……」
チロルの指摘にはっとした顔をする艦長。彼女がこれから何をするつもりか理解したのだ。
『君含めて皆亡霊じゃん、今更今更~♪』
艦長の抗弁を遮り、チロルは笑う。そして、核ミサイルが放たれた。
『……! じ、上空に巨大な熱源反応! これは……』
「……ば、馬鹿な!? 奴ら、何処からこんなものを持ち出して……いや、総員後退! 後退せよ!」
ロンメル軍の指揮車両内は、迫り来る『それ』に気付いて恐慌状態にあった。逃げ出そうにも敵の人型兵器部隊に抑えられ、思うように動けない。もう間に合わない。
モニタの中で徐々に大きくなってゆくミサイル。ロンメルは、愕然とした表情でそれを見つめていた。
「なんと……なんということだ……世界の王となるべき、この私が……こんな……」
漏れ出た言葉は皆まで言えず。ミサイルの着弾と同時、一体を猛烈なまでの爆炎と爆風と閃光が席捲し。ロンメルの姿もまた、その中で消し飛んでいったのである。
『………』
敵の前衛部隊を粗方排除したクリスティーヌは、ロンメルがいた筈の敵軍後方から巻き起こったその爆発を眺め、思わず呆然としてしまっていた。
『……こんな兵器まで積んでたのね……』
何しろ作戦段階では一言も聞いていなかったのだ。これ程の兵器を隠していたとは、恐ろしい子と思ったとか、思わなかったとか。
●
ともあれ。
猟兵達の戦術の前に、『軍人宰相』ロンメル・ヴォーテックス率いる戦車軍団は完膚無きまでに叩き潰され。ロンメル本人も含め、全滅の憂き目を見たのであった。
大成功
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