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アポカリプス・ランページ④〜Pray by Slay

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 荒涼たる谷間に聳える機械要塞に、咆哮が轟く。電子音混じりの咆哮が。
 中枢たる施設を守るかの如く屹立するは、白銀の肉体を有する竜。否、竜を模した機械兵器。広げた翼の合間から、余剰出力が翠色のオーラじみて流れ出す。
 その胸中は虚には非ず。其処に設えられたは搭乗席。座するは一人の少女――人類と世界を愛し、愛された、フラスコチャイルドの少女。過去より蘇った末、己の愛した人類と世界に牙を剥いた少女。
 モニタに映る、岩肌と鋼鉄、砂塵ばかりの殺風景な世界を眺めながら、少女は呟く。

「――人類よ。貴方達の眼は、今も未来を見ていますか――?」

 その声音に滲むのは、憐憫か、希望か。



「皆さん、アポカリプスヘルを守る為の戦、参集頂き感謝致します」
 グリモアベースに集った猟兵達を前に、グリモア猟兵、愛天・真澄(愛神の使徒・f32265)は静々と一礼する。
「此度、皆さんにお願いしたいのは、ヴォーテックス一族が所有する機械要塞にあるというコンピュータウィルスプログラムの奪取です」
 曰く。
 デスバレーに存在するこの要塞は、コンピュータ研究所としての機能も有しており、主にコンピュータウィルスの研究をしていたらしい。
「予知の結果、この要塞の中枢にある研究施設に、『禁断のコンピュータウィルス』と称される極めて強力なコンピュータウィルスが存在することが判明しました」
 どれくらい強力かといえば、オブリビオン・フォーミュラたるフィールド・オブ・ナインの一角『スーパー戦車』の強力極まりない兵器群をも狂わせる程。かの存在との決戦を見据えるならば、是非とも確保しておきたい代物ではある。
「ですが、敵もそれを警戒しているのでしょうか。かの研究施設は、強力なオブリビオンによって警護されているのです」
 真澄の背後にグリモアの光が広がり、荒涼たる谷間に建つ鋼鉄造りの建造物を映し出す。
 件の研究施設であろうその建物の前、白銀の竜を模したと思しき機械兵器の姿が見える。その身長、キャバリアより更に一回りばかり大きくあろうか。そんな大型の兵器だ。
「かの兵器は『環境浄化・対変異兵器決戦用超大型偽神兵器』。嘗て世界の崩壊に抗うべく建造され、戦いの果てに破壊された搭乗型の偽神兵器が、オブリビオンとして再現されたものです」
 世界を守る為の兵器が、過去として再現された結果、世界を滅ぼす存在に与するとは皮肉な話であるが――搭乗型、ということは。と、猟兵の一人が声を上げる。
「――はい。かの兵器には搭乗者が存在します。嘗てかの兵器を駆り、人々と世界を守るべく奮戦したフラスコチャイルドの少女。――の、オブリビオンです」
 短い生涯の間に人々を、世界を愛し。その滅びを僅かでも食い止める為に己の命を捧げた少女。そんな彼女も、過去となっては只々、守るべき筈のものの滅びの為に在るばかり。
「兵器の性能、少女の技量。いずれも尋常ならざる代物にございますが。更にもう一点、脅威となる要素が存在します」
 それは何か、と猟兵の一人が問えば、真澄は頷き。
「かの兵器が全身に有する機銃から放たれる弾丸は『侵蝕プログラム弾』。これを受けた場合、皆様が有する武装の一切が数時間の間、その機能を喪失します」
 それはプログラムという名の、ある種の呪詛。銃器は勿論、剣は斬ることどころか鈍器としての利用すら不可能となる。およそ『敵を殺傷する』用途には全く使えなくなるということだ。
「これによって無力化した敵を速やかに殲滅するのが、彼女の戦法と推測されます。対策は必須でしょう」
 兵器の全身からばら撒かれる弾丸の被弾を避ける方法、或いは被弾しても戦える手段――己の肉体そのものや、実体なき攻撃手段による攻撃の用意。そうした辺りが対策として有用ではないか、と真澄は言うが。
「その上で、あれ程の敵と戦うというのは、大変な困難を伴いますが――皆様なら、きっと可能であると。私は、信じております」
 祈るように手を組む真澄。祈る先は己の奉ずる神か、或いは眼前の猟兵達か。
「それでは、転送を開始致します。皆様、どうぞよろしくお願い致します」
 そして祈りはグリモアの光を更に広げて。猟兵達を、かの谷の要塞へと送り出してゆく。


五条新一郎
 決戦兵器少女。
 五条です。

 アポカリプス・ランページ、続いてのシナリオは研究施設攻略。
 スーパー戦車の力を削ぐ為のコンピュータウィルスを入手するべく、かの施設を守る少女と彼女が駆る兵器のオブリビオンを打ち倒しましょう。

●目的
『環境浄化・対変異兵器決戦用超大型偽神兵器』の撃破。

●戦場
 デスバレー内に存在する、ヴォーテックス一族所有の要塞兼コンピュータ研究所。施設の外、要塞の敷地内が戦場となります。
 研究施設の他、要塞を構成する大小の施設が複数建っていますが、広さは充分にあります。

●プレイングについて
 OP公開直後からプレイングを受け付けます。募集状況はタグにて掲示予定。
「武装の無力化への対策を行う」ことでプレイングボーナスがつきます。侵蝕プログラム弾を受けない為の方策、受けた状態でも充分に戦う手段の用意、どちらでもOKです。
 尚、戦車やキャバリア等の搭乗兵器は攻撃手段が無力化されるだけなので、侵蝕プログラム弾を受けても機動や防御は引き続き可能です。

●リプレイについて
 先にリリースしました「アポカリプス・ランページ②〜Doom Dream」と並行して運営して参ります。
 9/5(日)いっぱいでの完結を予定。

 それでは、皆様のプレイングお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『環境浄化・対変異兵器決戦用超大型偽神兵器』

POW   :    救世竜は乙女を贄とし/小型飛竜型偽神兵器一斉出撃
自身の【操縦者(フラスコチャイルド志願兵)の負担】を代償に、【自身内部の防衛も行う遠隔操作型偽神兵器群】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【大量生産と並行制御での物量・爪牙での捕食】で戦う。
SPD   :    乙女の慈愛は地に満ちて/全銃座斉射・浄化粒子散布
【操縦者が語る「敵を倒し環境を改善したい」】という願いを【巨大立体映像と大陸規模の電波ジャックで人】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。
WIZ   :    果てに竜と乙女は過去に墜ち/Oストーム砲最大出力
自身の【勝敗無関係に翌日の操縦者(代替不能)の命】を代償に、【対人・対物銃座弾幕と共に口部砲の最大出力】を籠めた一撃を放つ。自分にとって勝敗無関係に翌日の操縦者(代替不能)の命を失う代償が大きい程、威力は上昇する。

イラスト:タヌギモ

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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はトリテレイア・ゼロナインです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

尖晶・十紀
武器の使用不可…のーぷろぶれむ。元々、ステゴロの方が得意、肉体もそれ用に頑丈に調整されてるからね

さあ…シンプルに殴り合いと行こう

基本はこぶし、場合に応じ臨機応変に蹴りも頭突きも目潰しも急所狙いも、有効と判断した攻撃はどんどん繰り出す喧嘩殺法

体格差も利用し内に入り込みアクロバティックに攻める
共闘相手がいるなら積極的にかばう

敵の攻撃は激痛耐性で耐えながら受けきりカウンター、攻撃を利用しUC発動

ジャンプし産み出した大剣にて重力+怪力で生まれた威力を打ち付けるが如く振るう

UCで産み出した血の大剣は自分の体の一部だから武器カウントされないはず

アドリブ連携可


ナイ・デス
明日は我が身……可能性はあります
いつか本体が壊れ、私は死んで、オブリビオンとなる可能性もあるのですよね
正直、そうなったら嫌ですが……あなたも、そう思う人だったでしょうか

みんな。あの人を骸の海へ、還してあげましょう

彫像約1000体が変形合体したキャバリア擬きの「ダイウルゴス」
弾を受けても問題ない
その中から呼びかける

武装でも、彫像ではない。ダイウルゴス、文明を守護する竜、です!

『文明守護竜』
彫像、大地、大気が黒竜となって合体
連続発動で、どんどん大きくなって【重量攻撃】
一部は分離【念動力】で支援して兵器群と戦い

元救世竜と元侵略竜、爪牙で勝負
【生命力吸収レーザー】口から放ち、骸の海へ還そうとします


夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
成程、確かに厄介ですねぇ。
とは言え、頑張ってみましょうかぁ。

【翳華】を発動、全身を『ブラックホール』に変換、吸収を開始しますねぇ。
この姿自体は『武装』では有りませんから『浸食』の影響は受けませんし、召喚した個体による『物量』や『爪牙』も『吸収対象』とすればほぼ通じません。
『この状態に対し有効な武器』を形成してきた場合は『外周速度』の性質を利用し速度を上げて回避するか、優先的に[カウンター]で叩きますぅ。
強力な力を持つ『偽神兵器』本体は抵抗する可能性も高いですが、その場合は『吸収』したエネルギーを利用した『ブラックホールジェット』の噴出で[範囲攻撃]、吹き飛ばしましょう。


リーゼロッテ・ローデンヴァルト
【POW】
※アドリブ絡み連携大歓迎

DA41号【ファルコン】で【ナインス・ライン】を
歪な戦闘機に変形させ、作戦領域へ侵攻

【アダマンタイト】追加で最高マッハ28の大推力
【マトリクス・メモリ】の『防弾性能の発生源』でバリア強化
上部【アーリー・バード】で回避用機動力の向上
下部【プロキオン】の光弾で火力確保

此等で『侵蝕弾』を機体に一切接触させず
連続特攻で手下諸共打ち砕くよ
全身改造済でも少しキツいけどね

◆心情
滅亡を覆せず絶望したのかな?
『手遅れ』なら苦痛は短くね…

◆離脱前通信
『お嬢さん、聞こえる?』
人類も彼女の後輩も懸命に未来を視る善い連中ばかりと伝達
レリさんの主治医でもあるしね
『ああ、心配は要らないさ』


朱鷺透・小枝子
亡国の主に搭乗操縦。RSパルスマシンガンの弾幕と、RX騎兵刀を振るい、切断、小型飛竜偽神兵器を破壊し、救世竜へと走る。

不愉快だ、存在が不快だ!壊す、壊す、壊す!

侵蝕プログラム弾で武装や機体の戦闘能力が喪失しても、なお走る。
その存在が、生き様を侮辱している。かつて己が命を使いきった人の存在を汚している。それは自分にとって赦しがたい冒涜だ!

【煉獄倍眼】を発動。自身を焼却し継戦能力、機体及び自身に超再生力を獲得。強引に、接近し、救世竜へ殴り掛る。

『ああああアアアアアアあアアアア!!!!!!!』

超能力:発火能力で高熱を生みだし、属性攻撃。
至近距離を維持し、超高熱そのものを念動力で操り溶解、破壊する!



 熱く乾いた風の吹く、荒涼たる谷間に聳える鋼鉄の要塞。
 その最奥部、崖に張り付くようにして建てられた建物を守るように、白銀の竜が屹立する。
『環境浄化・対変異兵器決戦用超大型偽神兵器』、かつて世界の崩壊を食い止めるべく戦い、今は世界の崩壊に与する救世竜。
 その胸部搭乗席に座するは一人の少女。かつて愛する人類と世界に命を捧げ、今は愛する人類と世界の命を奪わんとする乙女。
 暗いコクピットの中で瞑想じみて瞳を閉じ、シートに身を委ねていた少女は然し、乗機の齎す反応を感知して眼を開く。接近する動体反応有。オブリビオンではない。
「――反応数、5。うち大型熱源2。――来ましたね」
 機体のコンソールを操作し、それら反応の仔細を確かめる少女。間違いない、この施設を狙う者達だ。
 コンソールの上で更に指が踊るたび、コクピット内に光が走り、竜の唸りにも似た動力機関の音が響きだす。HMDを装着。竜の視界――外界の風景が眼前に現れる。
「――行きましょう。この世界を、救うための戦いに」
 静かに、しかし確かな意志の滲む声音で呼びかければ。その機体のあちらこちらから、無数の小さな白き竜が飛び立って。迫る敵を迎撃するべく、飛翔する。

『敵さん発見だよ、でもって動きも確認。お供と一緒に前進開始』
 地上を駆ける猟兵達に通信。送信主は上空、蒼き異形の戦闘機。本来はキャバリアである機体を、増加装甲にて半ば無理矢理に特攻兵器じみた戦闘機に変形させたものだ。
「――さて。この世界を救う、ねえ」
 通信を終え、改めて視界に映る白銀竜を見据えてリーゼロッテ・ローデンヴァルト(リリー先生って呼んでよ・f30386)は思案する。現状の立場から察するに『救う』とは『殺し尽くす』と同義だろう。
 命を賭して滅びを回避せんとした世界が、結局滅びたことに絶望したのだろうか。心中は察し得ぬでもないが、しかし。
「まだ、諦めるには早いさ」
 己がこの世界で出会った人々を思い返す。苦しくとも、懸命に未来を見据えて日々を生き抜く人々。彼らの生き様を、まだ無に還してはいけない。
 ペダルを踏み込む。キャバリアから戦闘機に変形させられた愛機『ナインス・ライン』が、その後部より炎を噴いて。音速を遥かに超える速度で、空を駆けてゆく。

 デス・バレーを疾走する、一機のキャバリアと二人の猟兵、低空を飛翔する今一人の猟兵。前方に、その内側を外より守る鋼鉄の防壁が見えてきた。そして、そこから飛び立つ竜の群れも。
「見えた……!」
 翼は無くとも模したる姿は竜。白きジャイアントキャバリア『亡国の主』の搭乗席にて、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)が唸るように声を上げる。同時に湧き上がる、不快感と敵意。怨念、或いは呪詛めいて小枝子の思考を侵食し満たしてゆく。
「不愉快だ……存在が不快だ!」
 白き乗機の片腕に持つガトリング砲を掲げ、現れる竜の群れに狙いを定める。今一方の手に、騎兵刀を抜刀する。
「壊す、壊す、壊すッ!!」
 そして吼えると共に、ガトリング砲もまた咆哮と弾丸を放ちだす。弾丸が小竜を撃ち抜き、数体を撃墜する。
 なれど小竜の群れは尚も数を増やす。情報にあったユーベルコードの産物ならば、現在進行形で生産されているのだろう。
「成程、これは厄介なものですねぇ」
 背に生ずるオーラの翼で低空を飛翔しつつ、その様を観測した夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)が眉を顰める。圧倒的物量を以てしての攻勢。ならば物量を捻じ伏せるだけの広範囲攻撃が必要だ。
「では、頑張ってみましょうかぁ」
 両手を合わせ、祈りを始める。己の奉ずる豊饒の女神への祈りを。
「大いなる豊饒の女神、その象徴せし欠片の一つを我が身へ――」
 祈りの成就と同時、るこるの前方を飛翔していた小竜達が速度を上げて彼女へ飛び掛かってゆく。否、彼女のいる方へ引き込まれていく。まるで彼女の生ずる重力に引きずり込まれるかのように。
 否、それは比喩ではない。祈りは、彼女の肉体を指向性の超重力物体――ブラックホールへと変異させたが為だ。光すら逃さぬ超重力は小竜達の逃れ得る処には非ず、次々とるこるの元へと引きずり込まれ、圧搾され粉砕されてゆく。
 小竜の群れが数を減らした隙を、猟兵達が駆けてゆく。向かう先から、尚も小竜を生み出し続ける白銀竜が姿を現した。
『小竜群を突破してきましたか。単体性能に秀でた個体群のようです』
 搭乗者たる少女の声が聞こえてくる。猟兵達の力を冷静に見定めつつ、相棒たる白銀竜を身構えさせる。近接戦闘の構え。
「これが決戦兵器型偽神兵器。かつて世界の崩壊を食い止めようとしたもの、か」
 間近で目にする巨大な偉容。るこるの重力を逃れて迫った小竜を拳で殴り飛ばしながら、尖晶・十紀(クリムゾン・ファイアリービート・f24470)は目を瞠る。
「世界を守ろうとしたものが、世界を滅ぼす側になる――」
 明日は我が身、かもしれない。ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)は思う。何処にあるかも分からぬ本体が壊れれば、今は死なない――死ねない――ナイとて死ぬ。そうして過去となれば、オブリビオンと化して蘇る可能性もある。
「オブリビオンになっちゃえば、元がどっちであっても関係ないって事、だね」
 横からの十紀の言葉に頷くナイ。改めて救世竜を見据える瞳には、何処か悲哀が滲む。
「正直、私はそれは嫌ですが……あなたも、そう思う人だった、でしょうか」
 そうであって欲しい、とナイは願う。愛したものを、己の手で滅ぼしてしまうこと程、悲しいことは早々無い。その筈だから。
『私の力は昔も今も、人類の、世界の為に。人類に安息を、世界に繁栄を』
「囀るな、オブリビオン!!」
 嘯いたその言葉を欺瞞と断じるかのように。小枝子の叫びを伴って、飛び込んできた亡国の主が騎兵刀を振り下ろす。腕部装甲にて受ける救世竜、両者の間に火花が散る。
「貴様の存在は! 彼女の生き様を侮辱している! 己が命を使い切った彼女の存在を汚している! その冒涜、赦せるものか!!」
 心中に滾る憤怒のままに小枝子は吼える。与えられた目的であれど、多くを救わんとするその使命に殉ずるを良しとして命を燃やし尽くした、生前のかの少女。その生き様、死ぬまで戦い続けるべく生み出されながら祖国の滅びを生き残ってしまった小枝子にとっては思う処もあろう。それが故にこそ、眼前のオブリビオンへの憎悪が滾るのか。
「――そう、ですね」
 ナイは頷く。いずれにしても、過去は正しく過去へ。
「みんな。あの人を骸の海へ、還してあげましょう」
 その呼びかけは同道する猟兵達と共に、虚空より現れ出る竜の彫像へ向けて。帝竜ダイウルゴス、その彫像を結合しキャバリア擬きと化さしめたもの。飛び乗ったナイの身が内へ沈むと共に、竜の眼が光を帯びる。
「ん、殴り倒して、叩き返そう」
 騎兵刀を振るい猛然と攻めたてる亡国の主の足元を駆け、十紀が白銀の竜へと殴りかかる。人の域を逸脱せんばかりに強化改造と調整を施された肉体は、華奢な体躯からは想像もできぬ怪力を発揮する。
『……! 生身でこれ程の腕力……!』
 乗機の装甲に受けた衝撃を感じ、少女は驚愕を漏らす。体躯の差は圧倒的なれど、これ程までに力ある個体の前には有利たり得ない。
 ならばと、生み出されたばかりの小竜を差し向ける。だがそれも十紀の想定内だ。その背を踏みつけ蹴り飛ばしながら更に跳躍、膝関節を殴りつける。
 堪らず跳躍して両者から距離を取った白銀竜へ、無数の光弾が降り注ぐ。上空より飛来した、リーゼロッテのナインス・ラインに搭載されたビームガンポッドの斉射だ。
『どうやら『手遅れ』みたいだからね。せめて苦痛は短くしてあげるよ!』
 更に放たれたるは特殊反応弾頭ミサイル。だが間合いが遠かったか、白銀竜本体を庇うかのように割って入った小竜に命中。其を跡形もなく吹き飛ばす程の爆発が、荒野の上空に花火の如く咲く。
『このまま、纏めて飲み込んでみせましょう』
 ナインス・ラインが飛び抜けた直後に迫るは、ブラックホールと変じたるこる。新たに生産される小竜達を次々と飲み込みながら、本体たる白銀竜をも重力圏に捉える。
 然し機竜は機体各部のスラスターを吹かし重力圏を脱出。更に口部を開けば、そこから覗くは大型の砲門。放たれるは渦巻く漆黒のエネルギー――超小型のオブリビオン・ストームとでも言うべき砲撃だ。偽神兵器である以上、これもオブリビオン・ストームを動力としているならば、その動力エネルギーを直接射出する攻撃も有り得るのだろう。
『なんのぉ!』
 だがこの状態でもるこるは機動が可能だ。外周速度の性質も利用し、巧みにストーム砲を回避してゆく。
 高度を下げてゆく白銀竜、そこに十紀と、亡国の主を駆る小枝子が追撃せんと迫る。猟兵達の猛攻を前に、然し、少女はあくまで冷静に。
『全砲門展開。掃射開始』
 宣言すると同時、機竜の全身から無数の銃座が展開される。そして放たれるは、空間を埋め尽くすかの如き猛烈なる弾幕。回避の余地など無き弾丸の嵐が、猟兵達を襲う。
「くぅ……っ!」
 十紀は腕を以て致命箇所を守る。四肢や脇腹を撃ち抜かれ全身から激痛が走るも、この程度の痛みならば耐えられる。動けなくさえならなければ問題ない。
『ちっ、これが……!』
 亡国の主の搭乗席内で小枝子は歯噛みする。主の損傷自体は些細なものだが、ガトリング砲の引鉄を引いても弾が出ない。のみならず、騎兵刀さえも使い物にならなくなったことを悟る。
 グリモア猟兵の情報にあった『侵蝕プログラム弾』。受けた者の武器を機能不全に至らしめる機能を有する弾丸、今し方受けた弾丸こそがそれであると理解した為だ。
 だが。
『それが、どうした!!』
 亡国の主はそれら武装を自ら放棄。直後、その内から響きだすは、小枝子の壮絶なまでの絶叫。
『あああああアアアアアアああアアアア!!!!!!!!』
 左眼の義眼が燃えるような熱を帯びる。肉が、神経が、全身が直接焼かれるかの如き激痛を生じる。だが、それ故にこそ肉体は活性化する。同時に、己の駆る機体も。
 亡国の主が跳ぶ。弾幕を真正面から突っ切り、翳した拳を、最早小枝子の一部であるが故に侵蝕プログラム弾の影響を受けない攻撃を、救世竜へと、叩き付ける!
『くぅ……っ!?』
 あまりにも荒々しき一撃に、思わず怯む少女。弾幕が一時途切れたそこに、十紀が飛び込んでくる。
 痛みは耐えられども出血は止められず、全身が血塗れとなった無残な有様だが、彼女にとっては問題ない。寧ろ好都合とさえ言える。
 その血は種々の特異なる力を秘めた灼血、物質化もまた可能とする。全身に塗れていた血液が十紀の片手へと集い、長く延びて広がって。彼女自身の身の丈程はあろうかという大剣へと変貌する。
「お返し……だよ!」
 そして振り抜けば、白銀の装甲へと確かな傷を刻む。血液故に十紀の肉体の一部たるこの剣もまた、侵蝕プログラム弾の影響外であった。
 小枝子と十紀の苛烈なる攻勢が、白銀の装甲を砕き、削り。瞬く間にその損傷を増やしてゆく。
『くっ、このような……あうっ!?』
 再度跳躍した白銀竜へと、猛烈なるエネルギーの奔流が浴びせられる。見上げれば、歪んだ重力により形作られた漆黒の孔。ブラックホールと化したるこるの姿は、少女からはそう見えていた。
『頂いたエネルギー、お返し致しますねぇ』
 それはブラックホールに吸い込まれたエネルギーに対する、排出されるエネルギー。宇宙ジェットとも呼ばれる現象の応用。先程白銀竜が撃ち出したストーム砲以上のエネルギーを以て、かの機竜を炙り焦がす。
『あなたがかつて、守ろうとした世界を守るために――』
 吹き飛んだ救世竜にかかる影。かの竜よりも更に巨大な漆黒の竜。大地や大気と一体化して巨大化を果たした、ナイを中枢とした新生ダイウルゴス。武装でも彫像でもない、文明を、世界を護る竜。
 その口腔に集束するエネルギー。それは生命力を吸収し、己と一体化さしめる、元侵略竜としての在り方の残滓。元救世竜へと狙いを定めて、撃ち放つ。
『ぐぅ……っ! く、出力が、落ちていく……!?』
 逃れようにも、機体の出力自体が低下している。そのまま、己の生命力も削れてゆくのを感じ――そこへ飛来する、蒼き機影。ナインス・ラインだ。
『お嬢さん、聞こえる?』
 少女のもとへ、リーゼロッテからの通信。迫る歪な戦闘機。
『心配は無用だよ。この世界の人達は、皆、懸命に未来を見て生きている』
 そして次の瞬間。白銀の機竜は、突撃してきた戦闘機のバリアの激突を受け。地上へと真っ逆さまに叩き落とされていった。
『だから――けふっ。安心して、眠るがいいさ』
 己の肉体の耐G能力の限界まで超音速機動を繰り返したが故の代償。口から血を吐きながらもリーゼロッテが告げた言葉は、彼女への手向けとして。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

マキナ・エクス
アドリブ・他猟兵との連携歓迎

身命を賭して世界の滅びに抗わんとし、人類の希望であろうとした少女。
そんな彼女が滅びのために利用されるなどあってはならない。既に完結した物語に加筆は不要だ。

UC発動。戦闘能力を上昇させて弾丸の回避を試みる。
その後は装備している武装で攻撃。
対物拳銃で【貫通攻撃】【2回攻撃】【零距離射撃】
大鎌で【範囲攻撃】【なぎ払い】
パイルバンカーで【串刺し】
敵の攻撃は防御用からくり人形で【かばう】で防ぐ。

文明は滅びたとしても、人類は希望を失わず明日を掴むため前に進み続けている。だから安心して眠りたまえよ。


カシム・ディーン
なんとも悲惨な存在ですね
「悲しいなぁ…メルシー達神機シリーズも本当は人々の為に在った機神達なんだ…でもオブビリオンになった子達は…」(しょんぼり鶏立体映像

なら止めて骸の海に返してやるのが一番、か

【情報収集・視力・戦闘知識】
敵の動きと癖と浸食プログラム弾の弾幕の把握
他の依頼でのプログラム弾のデータと照合しワクチンプログラム生成

【属性攻撃・迷彩】
光水属性を機体に付与
光学迷彩展開と共に水の障壁で熱源隠蔽

UC発動
【念動力・空中戦・弾幕・スナイパー】
念動障壁を纏い超高速かつ複雑な動きで飛び回避しつつ念動光弾乱射

【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
接近して鎌剣で切り刻み銃撃兵装強奪
可能なら乗り手強奪も試みる


メレディア・クラックロック
問いを出すのが遅すぎる。
未来はね、望まなくなったその瞬間から見えなくなるんだ。
キミという過去の産物を倒そうとしてるボクらがどっちを向いてるかなんて…
答えなくても分かるでしょ?
ボクらの未来のためにもう終わりな、先輩。

侵蝕プログラム弾は避けなくていい。
だって、これだけは武装じゃない。
ボクという機体が有する原初にして最大の機能。
【Green garnet】――ハッキングスタート。

あの巨体だ、ほんの少しの邪魔さえすれば思いっきり狂うでしょ。
兵器照準は誰もいない方へ。
飛翔パーツは二秒の停止で足止め可能。
立体映像も電波ジャックも棄却。
ほんの少しの隙を抉じ開けてくれる誰かがいる。
キミに抗うのは一人じゃない。


佐伯・晶
生前はきっと素晴らしい人物だったんだろうけど
オブビリオンとして蘇った以上
倒すしかないのが悲しいね

竜型の偽神兵器か
こっちも鉑帝竜で対抗してみようか
飛竜型のキャバリアっぽい何かだよ

背中のレールガンで開幕のご挨拶をしたら接近して戦おう
敵の小銃の弾は神気で停めて機体に触れないように耐えるよ
これはオーラ防御みたいなものだよ

相手の周囲を低空で飛び回りつつ
足の爪や尻尾で攻撃を加えるよ

敵を倒し環境を改善したい、か
悪い事ばかりでもないけど
どうやって環境を改善するのか
僕らを倒す事がそれにどうつながるのか聞いてみたいところだね

武装が使えなくなったら
しがみ付いてUCを使用
希少金属で出来た鉑帝竜の重さはかなりのものだよ



 猟兵達との交戦を経て、少なからぬ傷を負った白銀の救世竜。その機体へと、上空から砲撃が降り落ちてくる。
『っ! 上空から大型動体反応2……地上に小型動体反応2……』
 機体を跳躍させ砲撃を回避、接近する敵の存在を確かめるフラスコチャイルドの少女。白銀竜のカメラ越しに、迫り来た砲撃の主を捉える。
『ご挨拶と思ったけど、その前に気付かれたか』
 それはレールガンをはじめ数種の武装を搭載した白金色の飛竜。据え付けられたコクピットに搭乗者たる佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)を乗せたキャバリアのような何か。名を『鉑帝竜』。
『負傷度合いはさっきの猟兵達の交戦情報通り。ただ、あまり機体の稼働に支障は出ていないようだね』
 コクピットに響く通信は、地上で情報分析を行うメレディア・クラックロック(インタビュア・f31094)のものだ。飛ばしたドローンを介した映像と、ここまでの交戦記録から、敵の戦闘力や状態を分析してゆく。
 鉑帝竜は急降下しながら前脚の爪を振るい、白銀竜へと斬りかかる。白銀竜も抗するように腕部の爪を振り上げ、白金と白銀の爪が交錯し火花を散らす。と。
『背後……そこですね……!』
 反撃せんと振り上げた片腕を、そのまま背後へと振る。何もないはずの空間から金属同士のぶつかる音と火花が散る。
 否、何もないわけではない。空間が揺らめき、黒銀色の人型兵器の存在を明らかとする。『機神』と称されるサイキックキャバリア『メルクリウス』だ。
「くっ、気付かれるとは……!」
 そのコクピット内にてカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は歯噛みする。魔術にて機体に光学迷彩と熱源遮断を施し、不意打ちを狙ったが。よもや気付かれるとは。
『アレだね、電波対策忘れてたかも!』
 カシムの前に鶏をデフォルメしたような立体映像がポップアップ、気付かれた原因を推測する。メルクリウスに宿る意思の機内用アバターである。
「それならまだ良いが、歴戦の勘って奴だったらどうしようもないな……ッ!」
 白銀竜の口部にエネルギーが蓄積しているのを見て、カシムは機体を横へ跳ばす。直後、一瞬前までメルクリウスがいた空間を、超小型オブリビオン・ストームと言うべき漆黒のエネルギーが斬り裂いていった。
 追撃を試みる白銀竜、だが地上から二発の銃声が轟く。素早く脚を上げ、装甲で受ける機竜。なれど装甲目標への攻撃を考慮した対物拳銃より放たれた弾丸は、搭乗者の想定より深く弾痕を刻む。
「流石に世界の滅びに抗わんとしただけのことはある……良い反応をしているね」
 単発破壊力を突き詰めた拳銃の強烈な反動で仰け反った身を、虚空から伸びる繰り手に委ねつつ、マキナ・エクス(物語の観客にしてハッピーエンド主義者・f33726)は白銀竜を見上げる。膝を狙って機動を殺す心算だったが、あのタイミングで対応するか。
「生前からこれ程の力の持ち主だったとなれば、人々にとって大きな希望となっていたことだろう」
 再び両手の拳銃を構えるマキナ。更なる攻撃を嫌ってか、跳躍する救世竜。そこへ追撃を繰り出さんと、晶の鉑帝竜とカシムのメルクリウスとが上空より迫り――
『そうかもしれません。けれど、結局は守れなかった』
 それらを認めつつ、少女はマキナの言葉に応える。同時、その全身から現れるは幾つもの銃口。
「っ! 皆、侵蝕プログラム弾だ! 回避か防御を――」
 マキナの傍まで近づいていたメレディアが、銃座の展開を認めて声を上げる。然し、それが三人に伝わるが早いか、救世竜が動く。
『無力な者は、ただただ滅び、過去に沈むのみ――』
 そして全身から全方位へ。機銃の一斉掃射を繰り出す。侵蝕プログラム弾を籠めた弾幕の嵐を。
『ちっ、避けきれ……くぅぅぅっ!』
『カシムくんっ!』
 メレディアの警告に応じ距離を取らんとしたメルクリウスだが、その機体には少なからぬ弾丸の雨が浴びせられる。損傷は致命的という程ではないが、侵蝕プログラム弾の影響は免れ得まい。
 彼を案じ声を上げる晶。晶自身は機体を覆う静謐のオーラを以て弾丸の機体への着弾を回避したが故、影響は避け得たが。
「メレディア……!」
 虚空の繰り手の操作で踊るような回避動作を取っていたマキナが、首だけでメレディアを振り向き叫ぶ。その先には、全身を銃弾に裂かれ膝をつくメレディアの姿があった。
 メレディアも回避動作は取ったものの避けきるには至らず。侵蝕プログラム弾以前に、そのダメージ自体が無視できないものとなっていたのだ。
『倒れは、しませんか。然し、私達に勝てない者が、滅びを超えられるとは思えません』
 四者其々の被害の度合いを確かめ、少女は語る。その声音は、諦観と憐憫――と、ある種の期待を滲ませて。
『それでも、貴方達は。尚も未来を見るというのですか?』
 投げかけられる問い。誰ともなく口を開きかけた中、一番に声を上げたのは――メレディアだった。
「――その問いは。投げるのが、遅すぎる」
 血に塗れた脚を叱咤し、立ち上がる。
「未来というのはね、望まなくなったその瞬間から見えなくなるんだ。そして、ボクらは今、過去の産物たるキミを倒す為にここにいる」
 その意味する処は、答えずとも分かるだろう、と。挑むような視線を救世竜へ、そしてその搭乗席の少女へ向ける。
『――そうですか。ならば』
 不意に、救世竜の上空に立体的な映像が浮かび上がる。空間投影プロジェクター。映し出されたのは、銀の髪に真紅の瞳の少女。これが救世竜を操る少女の姿か。
『私の力の限りを以て、貴方達に安息を齎しましょう。そして、世界に繁栄を』
 以て実行せんとするは、全世界への電波ジャックと己の願いへの賛同者を募る為の放送行為。以て、猟兵達を打ち倒さんとする力を得ようというのだ。
 だが。
『――え? 電波が……』
 少女は困惑する。この救世竜に搭載された放送電波機構が作動しない。損傷は無い。ならば何故――
「――ハッキング成功。ここまで見せてなかったけど、これがボクの本領だからね」
 声の主はメレディア。携帯端末を手に、救世竜を見返す翠玉の瞳は仄かな光を帯びて。ユーベルコードの領域に達した、侵蝕プログラム弾にも阻止できぬ、彼女という機体が有する原初にして最大の機能――即ち、ハッキング機能の発現である。
「そして、キミに抗うのは一人じゃない」
 立体映像が消えていく。地上のマキナ、上空の鉑帝竜と、体勢を立て直しつつあるメルクリウスを見渡し、メレディアは告げる。
 以て、反撃の開始である。

『生前の君は素晴らしい人物だったんだろうけど!』
 最初に仕掛けたは晶。前肢の鉤爪を振るい、斬りつけにかかる。
『っ!?』
 先程同様に爪を以て受け止めんとした白銀竜だが、その動作が一拍遅れる。戦闘においては致命的な遅延。振り下ろされた白金の爪が、救世竜の肩を抉る。
「そんな君が、滅び齎す為に利用されるなどあってはならない」
 更に尻尾の追撃を受け、地上近くまで吹き飛ばされてきたところに、マキナが大鎌を振るい斬り込む。美術品と紛うかの如く美しい意匠の鎌は、然し斬りつけるごと強烈なる呪詛を放ち。その装甲を腐食させてゆく。
『くっ、機体動作に異常が……あうっ!?』
 マキナを退けんと放った腕部ビーム砲は、彼女の居場所とは全く別の方向へ放たれる。困惑の隙を突き、背後から浴びせられる幾つものエネルギー弾。だが振り向けども何もいない――否。
『世界を守ろうとして守れず、逆に滅ぼす側になるとか悲惨過ぎるじゃないですか!』
 カシムの声。其処に在ったのはメルクリウスだ。此度の戦いに至るまでにも幾度か侵蝕プログラム弾の脅威に触れていたカシム、被弾したそれのデータを基にワクチンプログラムを作成していたのだ。
『此処で止めて、骸の海に還してあげます!』
 少女の死角から立て続けに撃ち出される念動光弾が、次々と白銀竜へ着弾。爆裂すると共に、装甲が砕け、内部構造にも損傷が重なってゆく。
『あの敵の居場所も分からない……まさか、ここまで……!』
 先程は察知できたメルクリウスの位置が分からない。敵の機動速度が上がっている為、だけではない。――メレディアだ!
「それだけの大きな機体を、たった一人で制御しているんだ。電脳への依存度は大きいよね?」
 確信を以て告げるメレディア。事実、彼女がかの機竜に対して行ったハッキングは、些細なプログラム改竄に過ぎなかった。しかしその結果は身ての通り。あらゆる挙動に対して、大小数多の不具合が現れていた。
『安息や繁栄って言うけど、それはどういう意味なのかな』
 飛び回るメルクリウスに翻弄され、動きの鈍る白銀竜へと、白金の竜がしがみつく。同時に、晶が少女へと問いかける。
『僕には死後の世界での安息と、オブリビオンの繁栄としか思えなかったけど』
『そう……人類に、破滅を超える力無くば――っくぅぅぅっ!』
 その通りである、と答えかけた少女とその乗機を、極低温の嵐が襲う。晶自身をも凍結させることで強烈な冷気を齎す嵐に、全身の機構が次々と壊れ、砕けてゆく。逃れようにも希少金属の肉体を持つ鉑帝竜は容易に振り解けず。
「何、案ずることはない」
 甚大な損傷を受け、動けぬ白銀竜のもとへとマキナが駆ける。掲げるは巨大な十字型のパイルバンカー。
「君が思っているよりもずっと、人類は強い。文明が滅びたとしても、希望を失うことなく明日を掴む為、前に進み続けているのだから」
 嘗ての滅びは覆せずとも、せめてその眠りは安らかであるようにと。祈りを籠めて、十字杭を構える。

「「だから――」」

「ボクらの未来のために、もう終わりな。先輩」
「安心して眠りたまえ、竜の乙女よ」
 メレディアとマキナの手向けた言葉が重なると共に。撃ち出された十字杭が、白銀竜の胸を貫き、撃ち砕いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

久留米・圓太郎
■WIZ
武装の無力化プログラム、か
その論理は違えど、魔法もある意味、術式というプログラムには違いないからな

オレ自身が動けなくなるとお終いだが、オレがケガしたら実体がない師匠達はいられなくなる以上、結果は同じだ

[オーラ防御、地形の利用、世界知識、野生の勘]で自らを隠しつつ、召喚した師匠やオレ達に[空中戦、カウンター、高速詠唱、全力魔法、属性攻撃、2回攻撃、範囲攻撃、援護射撃、衝撃波]で攻撃していただこう

最大出力を放つ砲、ということはそうそう乱発はできまい

そしてこれだけ大きいとなれば、関節部分への負担は物凄いはずだから、そこが弱点になるはず!そこを叩く!

※連携・アドリブ共に歓迎


ルゥ・グレイス
PDBCInt.接続。
運動エネルギー削減の魔術を展開。弾を届かせないというプロセスで着弾を回避。

弾幕の中からプログラムが起動してない不発弾を探す。

それを取得次第、退避。

「人類の眼は未だ未来を見据えている。
終末図書館は、その事実を保証します。

だから次は君が救われる番だ、UC起動」

Oストーム砲の充填のため、一度、その動きを止める。その一瞬。
不発だった侵食プログラムを強制的に起動。こちらの銃に装填したプログラム弾を機竜に放つ。

代償なんて払わせない
その前にその機竜の力を止める。

停止した機竜の中の少女に解析をかけ、型番、個体データを確認。
「貴方の事は記録させてもらうよ、
さよなら英雄、絶対に忘れないから」


レイシャン・ラディスティ
ちょっと気になったものでー
このフラスコチャイルドのかた、エヴォル・エヴァンジェの姉様だったりしません?
違うなら違うでいいんですけどねー

サーちゃんに乗って戦いますー
侵食プログラム弾は回避を頑張りますけどきっと避け切れないのでー
でも当たるときっと痛いのでー
当たっても大丈夫な部分で受けれたらと思いますー
サーちゃんも機動だけなら大丈夫だと思いますのでー

プログラム弾や口部砲を避けながら飛んでる間に詠唱を繰り返し重ねてー
一気に解き放つ感じで【凍てついて流るる】を使いますー
荒れ地に水を撒きましょうー



『機体損傷率70%超過……ここまでやられるとは』
 最早大破と言って良い状態にまで全身が破損した白銀の竜型偽神兵器、その各部の状態を確かめながら、搭乗者たる少女は呟く。その声音には驚愕と焦燥――ばかりではなく。何処か、歓喜と安堵の色が滲み出ているようでもあった。
「もうボロボロじゃないか……これでも、まだやるのか?」
 そんな機体の有様を見上げ、久留米・圓太郎(自称魔法使いの一番弟子・f00447)は少女へと呼びかける。
『――戦闘機能は喪失されていません。であれば、戦闘を放棄する理由など、私にはありません』
 返ってきた答えは、圓太郎としても予想していたもの。きっと生前も、こうして完全に壊れるまで戦い続けたのだろう――そんな予感があった。
「人類の眼は、未だ未来を見据えている。終末図書館は、その事実を保証します」
 圓太郎の隣に歩み出てきたルゥ・グレイス(RuG0049_1D/1S・f30247)が告げる。彼の語る組織『終末図書館』は、その設立にヴォーテックス一族が関わっていた組織ではあるが、かの一族が世界の破滅を齎さんとする事を知り離反した経緯がある。故にこその『保証』だ。
「だから――次は、君が救われる番だ」
 そうして機竜へ向けて手を伸ばすルゥだが、かの竜は立ち上がり、戦闘態勢を取ることで拒絶の意を示した。
「あのー、ひとつよろしいでしょうかー」
 そして戦闘が始まろうとしたまさにその瞬間。緩い声音で以てレイシャン・ラディスティ(揺蕩う氷海・f27574)が問いかける。
「『エヴォル・エヴァンジェ』というフラスコチャイルドの女性達のグループをご存知でしょうかー?」
 眼前の白銀竜は偽神兵器であり、搭乗者たる少女もまたフラスコチャイルドである。であれば、以前エヴォル・エヴァンジェ――フラスコチャイルドの女性達からなるストーム・キャラバンの救援に赴いた際に遭遇し逃がしたオブリビオン、エヴォル・エヴァンジェの隊員達が『姉様』と呼んでいた同部隊の初代隊長では、とレイシャンは予測したが。
『知りませんね』
 少女の返答は極めて簡潔であった。それならばそれで良い、と頷き、レイシャンは相棒たる氷龍に飛び乗る。
『この命の在る限り、この場は通しません。この先を望むのならば――』
 装甲の多くが剥がれ落ちた白銀竜、最早装甲を展開するまでもなく露わな機銃群を三人へと向けて。
『私を倒してみせることです……!』
 そして侵蝕プログラム弾による弾幕を繰り出す。一部の機銃が暴発を起こしたか、機体各部から小爆発を引き起こしながらも、バラ撒かれた弾丸は三人を目掛けて襲い掛かってゆく。
「よろしく頼んだぜ師匠! 前世のオレ!」
 だが圓太郎は既にその場から離れていた。代わって前に出るのは、彼の師である魔術師と、その弟子たる前世の圓太郎――と本人は自称しているが真偽は不明――の二者。魔術障壁を展開し、放たれる弾丸を防ぎ止める。
(論理は違えど、魔法もある意味、術式というプログラムには違いないからな……)
 侵蝕プログラム弾、というその兵器の名に、何処か相通じるものを感じつつ、召喚した師弟の戦いぶりを見守る。彼らの戦闘力は高いが、彼らは圓太郎が負傷すると消えてしまう。故に圓太郎自身は身を守ることに専念する。
「PDBCInt.接続。術式展開」
 一方のルゥは、より科学的なアプローチにて魔術を行使していた。特殊な魔術回路を形成する脳内の電脳電算機に接続し、以て自身の周囲に運動エネルギーを減衰させる魔術障壁を展開。彼のもとへ飛来した弾丸は、その全てが着弾することなく地に落ちた。
(……さて)
 だが彼の策はここからが本番だ。地に落ちた侵蝕プログラム弾のうち数発を拾い上げ、距離を取る。
(サーちゃん、頑張って避けてくださいー!)
 レイシャンは相棒たる氷龍を心中で叱咤して弾幕を回避させつつ、自らは詠唱を行っていた。全ては回避できず数発がレイシャンや氷龍の身体を掠めるが、致命には程遠い。それにレイシャンの魔術は阻害されず、氷龍も空中機動する分には障りはない。故に問題はない。
 低空を飛翔するレイシャンが大技を準備していると見せることで少女の気を引き、圓太郎の師匠達が様々な魔法攻撃を放ち救世竜を攻撃する連携が成立し、以てその機体に更なる傷を重ねていく。
『く……!』
 隙を見せればレイシャンの準備する大技を受けかねない以上、彼女に意識を割かざるを得ず、魔術師弟への対処に専念しきれない。師匠が放つ衝撃波が、機体の膝を砕き擱座せしめる。竜と乙女は、着実に追い詰められていた。
『こうなれば、奥の手を使うより他にありませんか……!』
 意を決した少女の声。全身の機銃座が、再度侵蝕プログラム弾の弾幕を展開する。其々に対処する二者だが、今度はそれだけで済まなかった。
「あれは……! なんかヤバいのが来るぞ……!」
 後方より状況を見守っていた圓太郎が焦りの声を上げる。大きくその顎を開いた救世竜、その口腔へと膨大なるエネルギーが集束しつつあるのが、目で見ても理解できたからだ。恐らくは情報にあった、オブリビオン・ストーム砲の最大出力放射。少女の命を今日限りのものとする代償のもとに放たれる、まさに奥の手と称するに相応しい一撃。
(これはー……止めるべきでしょうかー……!)
 詠唱を続けていたレイシャンは、その詠唱を以て切り札たる魔術を放つべきと判断。以て、詠唱を止めんとした――が。それを止める声が背後から聞こえる。
「その砲撃は打たせない。代償も支払わせない」
 ルゥである。その手の拳銃を構え、救世竜へと突き付ければ。
「言ったはずだ。次は、君が救われる番だと」
 宣言と共に、ユーベルコードが起動する。薬剤投与によって魔術回路が更なる励起を見せ、情報処理能力を拡張。以て、本来彼のものではないプログラムを、己のものとして起動可能とする。そして。
「――これで、止める」
 拳銃を発砲。放たれた弾丸は、装甲の剥がれきった機体胴部に命中し――直後、集束しつつあったエネルギーが、一瞬で霧散した。
『これは……侵蝕プログラム弾……!?』
 少女は機竜に起こった事態を一瞬で理解した。撃ち込まれたのは、先程ルゥが回収した侵蝕プログラム弾のうち、プログラムが不発に終わったもの。それをルゥが己のユーベルコードを以て強制的に再起動、その上で機竜目掛けて撃ち返したのだ。
 続いてルゥは銃持たぬ手を掲げる。空気中に散布した超小型ドローンと併せ、少女の情報を解析してゆく。フラスコチャイルドならば持っているだろう型番や、個体としてのデータを、可能な限り仔細に。
「――貴方のことは記録させてもらった。これで、貴方が忘れられることは決して無い」
 何故なら己が忘れないから、と。そこまで言って、ルゥは崩れ落ちる。ユーベルコードの代償、効果時間終了後の一分間の昏睡状態。
『――私の負け、のようですね』
 竜の視界を介してルゥを見下ろす少女。既に機体は殆ど動かず、そして未来を目指さんという意思もここまで散々見てきた。武力的にも精神的にも、己の敗北である、と。
「ああ。人類は生き延びる。この戦いも乗り越えて、その先もずっと、な」
 彼女の前まで出てきた圓太郎が請け負って。
「ですのでー、ご安心して、お眠りくださいねー」
 そしてレイシャンの詠唱を重ねたユーベルコードが発動。氷塊混じりの水の奔流が猛烈なる勢いで放たれ、白銀の救世竜、その機体を粉々に打ち砕き。搭乗者たる少女と共に、再びの眠りへと至らしめたのである。
 水流の止まった、その後には。救世竜の残骸から出てきたのであろうか多くの資源と、普段より幾分潤ったデス・バレーの風景が残されていた。



 こうして、猟兵達はコンピュータ研究所を兼ねた要塞の制圧に成功。件のコンピュータウイルスの回収にも成功したのである。
 アポカリプスヘルの命運を賭けた戦は、まだ始まったばかり。この成果は、果たして如何なる影響を齎すのか――

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年09月06日


挿絵イラスト