#封神武侠界
タグの編集
現在は作者のみ編集可能です。
🔒公式タグは編集できません。
|
●月天心
満月が清かに空を彩っている。
月光が落ちるはその高さ1000メートルはあろうかという断崖絶壁。その天辺から突き出た薄い岩は平らで、月への橋を掛けようかというほどに長く、天然の月見台となっている。
地面に咲き誇るは美事な曼殊沙華。
そのすっくとした首を伸ばして、頭に赤い花冠を頂いている。
――風が、崖の下から吹いた。
煽られ倒れそうなほどの風は熱く、ひんやりと心地よかったはずの夜風を焦がしていく。
すると崖の下から、一匹の炎龍がぬうと現れた。
そのからだのすべてが赤く燃え上がる炎で、目だけが黄色く爛々と輝いている。
その炎龍に、何十羽もの極彩色の鳥が群がる。
否、あれは死告鳥だ。
月も清かな月光誕
振鈴響くは山の上
炎龍宴に舞い降りて
玉兎夜光にかき消える
きゃらきゃらとした笑い声と共に、死告鳥たちがあちらこちらで歌い始める。
その不協和音が頭に響いて、響いてーー
「くそ…!なんだこいつら!」
岩壁の上で、術者たる若き英傑たちが次々と倒れてゆく。
空気を焦がした炎龍が、はかなく掻き消える。
残ったのは、まあるくおおきな黄色いお月さまだけ。
●舞火龍
「み、皆さまお手すきですか……?」
エンドゥーシャン・ダアクー(蓮姫・f33180)はお疲れのところ申し訳ありません、と頭を下げる。
「此度は封神武侠界でのお仕事です。仙界で厳しい修行に打ち込む若き英傑たちが、オブリビオンの大軍勢に襲撃されてしまうようなんです」
若き英傑たちとは、猟兵よりは弱いものの、修行を通してユーベルコードを会得した強者たちのことだ。
「今回向かっていただきたいのは、地上より遥か高い岩壁から突き出た場所です。あ、天辺は平らで、広い舞台のようになっているのですけどね。ここで、若き英傑たちが厳しい修行をこなし、“炎の龍”を生み出すことに成功したようなのですが――」
その炎の龍と英傑たちを狙って、オブリビオンたちが襲撃に来るというのだ。
「そこで、皆さんの出番です!今はちょうど中秋の名月の頃。仙界でも、月を祭る行事がございます。その祭りで油断していると見せかけ、敵を討ってもらいたいのです!」
つまり、こういうことらしい。
若き英傑たちに事情を伝え、猟兵たちと協力体制を組んでもらう。ただし、猟兵たちが厳重に警戒していては、オブリビオンもそう容易くは寄ってこないだろう。
そこで、月見の宴を催して楽しんでるふりをし、そこへ奇襲するオブリビオンを討とうというのだ。
「わたし、月の糕……ええと、ケーキみたいなものですが、これをたくさん用意しておきます。英傑の方々には果物や鳥獣型の燈籠を用意してもらっています。さらに、少しでも月見の宴っぽくするために、そして攻撃態勢に直ぐ移れるように、英傑さんたちには“炎舞”をしていただく予定です。炎の龍が見れますよ!かっこよさそうです!」
両手を合わせてはしゃぐエンドゥーシャンは、はっとして恥じ入るようにこうべを垂れる。
「…戦いが控えてるのに、失礼しました……えと。皆さまには、宴を全力で楽しんでいる人になりきって頂くか、もしくは可能でしたら、ご自分の特技を生かして“演武”などを催していただけると助かります!」
高いところから見る月の景色も、咲き乱れる曼殊沙華も美しいですよ、とエンドゥーシャンは語る。
「準備ができた方から、崖の上までお送りいたします。高いところが苦手な方はどうぞお気を付けくださいね」
エンドゥーシャンは手を合わせて、一礼する。
南雲
こんにちは、南雲(なぐも)と申します。
戦争でお疲れのところかと思いますが、もし余力があれば、重陽の節句風行事など。
今回イメージする舞台はノルウェーの「トロルの舌」です。遥か高い岩場。
●章構成
第一章(日常)
仙界で「お月見 兼 演武の宴」でございます。
ご用意させていただくお食事は「月の糕(甘くきいろい蒸しパンのようなもの)」、「茱萸のジュース(甘酸っぱい)」、「菊花(淡い色の菊型の干菓子)」でございます。
戦闘前ですので、菊酒は残念ながらありません。
宴を楽しんでいただいても良し、準備運動として演武をしてくださっても良し。行動は、どちらかに絞って頂けると幸いです。
第二章(集団戦)
宴を楽しんで油断していると思った死告鳥が襲ってきます。
英傑たちも火龍で援護します(ご利用してもしなくても)
詳細は断章を差し挟む予定です。
第三章(集団戦)
若き英傑を弑さんとする第二陣がやってまいります。
詳細は断章を差し挟む予定です。
●受付について
全採用を心がけておりますが、人数によってはわたしの能力的に難しいことがあります。サクサク進行したいと思いますが、おそらく5組ほどが限界です。場合によっては最低限の人数で運営してまいります。
〆切はハッシュタグにてお知らせします。
いずれの章も途中参加を歓迎しております。
第1章 日常
『驚異的猟兵雑技団!』
|
POW : パワフルな演武!
SPD : 繊細なアクロバット!
WIZ : 口上で人を集めるのも大事な仕事!
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●月之宴
「破ァッ!」
平らかな岩床の上で、若く雄々しい青年たちの声が響く。
落ちる日に向かって突き出す彼らの手には炎。十数人の英傑たちが日夜修行に明け暮れ体得した炎術。その一人一人の炎が縒り合わさって、やがて一匹の大きな炎の龍が姿を現す。
その青年の一人――きりりと引き締まった眉の引泉が、あなたの方へとやってきて、丁寧に拱手する。
「お話は伺っています。我々の術を狙って、妖獣どもが襲ってくるとか…猟兵の皆さまにはお手数をおかけしますが、どうぞお力をお貸しください」
深々と一礼をすると、上げた顔には笑みが浮かぶ。
「我々もご相伴に預かります。皆さまの中には、演武を披露してくださる方もいるとか……類稀なるお力をお持ちと伺っています。我々の勉強にもなりますから、とても楽しみです」
------
月見台の先端へと立てば、このあたりの景色を一望できる。
山際と山の端が、去る夕陽の名残赤に染まる。
眼下には広大な川がゆうるりと流れ、地を覆う木々は濃い影の中で眠りにつこうとしている。
天頂を見上げれば、光るは深い青を纏うきいろい満月。
あなたが空を見上げていると、涼しい風に乗って、あたたかな香りが届くだろう。
香りがした方へと振り向けば、桃や鳥の形をした燈籠にぽつぽつと灯がともるその下に、きいろい小さな月が下りていて。
「猟兵さん、おひとついかがですか。月の糕に茱萸の飲み物、菊花は日持ちもするからお土産にしてもいいですよ」
実家が菓子屋だったという英傑の一人が、人懐っこそうな笑顔で勧めてくる。随分とたくさん用意されていたようで、残してもなんだから、あれもこれもと押し付けられるかもしれない。
――どん。
大きな音と共に、熱い風が過ぎる。
地上から、空に向けてうねりながら上がるそれは、炎の龍。
さあ、祭りが始まった。ゆるりと過ごそうか。
七篠・コガネ
◎
ここがホーシンブキョーカイ?僕初めて来ました!
おっと、挨拶ですね(思わず敬礼)あれ?違ったです?
あれがこの世界で見る月、かぁ
地上で見える月…いつか僕の世界でも叶えられればいいな…
…よし!今はこの宴を楽しみましょう!
おお!あれが話に聞いてた炎の龍なのです?格好良い!
僕もなんか出来るかな
となれば…他世界の人達もビックリさせたあの技やっちゃおう
月目がけて【ジャンプ】
そしたら地面に向かってUC使用で【踏みつけ】
どんなもんです?…え?演武じゃないです?ただの一発芸!?
しかもこんな高い所でやったら危ないって!?
で、でも、頼りがいあるでしょう?
僕の脚でぶっ飛ばせないものなんて無いんだから!
平らかに伸びる岩の端。眼下に広がる森の上、首をぐいっと上に傾けたところに、まあるい月がある。
輝く月に照らされた七篠・コガネ(ひとりぼっちのコガネムシ・f01385)の金色の瞳が、きらきらと反射する。
「ここがホーシンブキョーカイ……あれがこの世界で見る月、かぁ」
宇宙から見る星たちの景色もきれいだけれど、空にぽかりと浮かぶ月はまるくてきいろくて。
――嗚呼、この月を。
地上で見える月を、いつか、僕の故郷でも見られるように。
コガネはそっとこころの中で願う。
その背中に、控えめながらはきはきとした声がかかる。
「猟兵さん、ようこそお越しくださいました」
「あ、こんにちは! …こんばんは?」
思わず敬礼の姿勢を取ったコガネだが、声をかけてきた引泉の顔には疑問符。彼の手は、拱手のかたちをとっている。
その手のかたちに、コガネの顔にも、疑問符。
「…あれ? 違ったです?」
お互いの頭の上に疑問符が浮かんでいるようすに、どちらからとは言わずに笑いが込み上げて。
「ふふふ、これは失礼しました。宴が始まりますから、どうぞこちらへ。我らの演武をお見せいたします」
そう、折角来たんだから。
少し笑ったことで、コガネの気持ちもちょっぴり、前を向けた気がする。
(「よし!今はこの宴を楽しみましょう!)
案内された席のあたりで、コガネは脚部を折りたたんで演者の方を見る。
十数人の青年たちが、一斉に同じ動作で手を組み術を唱える。音がしそうなほど切れのいい、息の合った動作。その手元が一斉に明るくなったかと思えば、それぞれ組まれた指の先から炎が迸る。蛇のように天に躍り上がるそれらは空中でひとつに寄り集まり、轟轟と唸りながら一匹の龍となった。
「おお!あれが話に聞いてた炎の龍なのです?格好良い!」
コガネが拍手をして讃えれば、案内してくれた引泉は少し照れた様子で謙遜する。
「いえいえ、我らの技など。猟兵の方々は皆、技をお持ちと伺っています。もしよろしければ、学ばせていただけませんか」
「僕もなんか出来るかな……それじゃ、あの技やっちゃおう」
炎龍が場の空気を温めてから消えたところで、コガネは徐に立ち上がる。その背を、周囲の期待の眼が追いかけてくる。
「んー、こほん。では、ひとつ」
拍手が鳴りやむところで、コガネは両足にぐっと力を籠める。
――前に、他の世界の人もビックリしてたから。みんなもきっとビックリしてくれるかな。
勢い良く地を蹴って、コガネが高々と飛び上がる。地上にいた者たちは、一瞬コガネが消えたと思うほどの素早さ。遅れて空を見上げれば、天高く飛び上がったコガネの姿は月と重なって。まるで、月から降りてくるかのようで。
「―――月天子……」
ひとりの英傑の口から言葉が漏れる。嗚呼、これが猟兵。噂に違わずなんと心強い方々なのか――と、思ったのも束の間。
ひゅん。
矢が掠めるような、空気を切り裂く音。
その直後の、落雷のような衝撃音。
遅れて周囲を爆風が飲み込んで、砂塵がぶわあと広がって。
数秒後、ぱらぱらと落ちた砂の煙が晴れてみれば、ジャンプする前に立っていた場所に、変わらず立つコガネ――いや、少しばかり背が縮んだろうかとその足元を見れば、地面は数十センチえぐられていて。
「どんなもんです? 驚きました? 僕の脚でぶっ飛ばせないものなんて無いんだから!」
誇らしげなコガネだったけれど。拍手で迎えた引泉の頬は、ちょっぴり引き攣れていた。
その顔には、猟兵が味方で良かった、という思いがありありと浮かんでいるようだった。
大成功
🔵🔵🔵
ラファエラ・エヴァンジェリスタ
存分に宴を楽しめば良いのだな
任せろ、得意だ
嗚呼、月がいつもより近く思える
UCの騎士を伴いつつ、高台からの景色と月を存分に楽しみ
飽きたら菓子でも貰いに行こうかと…
…おや
何やら向こうで演武をしているね
気になるか?我が騎士よ
貴公の演武は城に居た頃に見たきりだ
貴公とて低い身分ではないというのに
まさか斯様に実戦ばかりに身を置かせることになろうとはな…
…嗚呼、演武か
私以外に披露させてやるのは些か癪ではあるが
良い、今宵は宴ゆえ許す
行って参れ
一礼の後の剣の演武は演舞にも近い
仮想の敵へと立ち回り、攻守を披露する形にて
冴えた太刀筋が炎に照り映える
以前よりもキレが増したかね
らしくもないが、終えたら拍手を送ってやろう
煌々と輝く月は、どこの世界の其れも美しいものだ。
「嗚呼、月がいつもより近く思える」
月は寡黙だった。隣に立つ騎士も、また。
ラファエラ・エヴァンジェリスタ(貴腐の薔薇・f32871)は、隣に立つ騎士の横顔をそっと目の端にとらえる。どんな場所でも、どんな時でも、喚べばこうして隣に居てくれる我が騎士。彼岸の国から呼び寄せる、その魂。
大河は遠くにあって、その流れは止まっているかのように見える。けれど、確か流れているのだ。
変わらないと、思うものでも。
さあ、と風が吹いて、足元を飾る曼殊沙華が揺れる。
くるりと踵を返して、ラファエラは灯りともるほうへと歩み出す。一歩遅れて、騎士も歩き出す。
つと、その脚が止まった。
「…おや。何やら向こうで演武をしているね。…気になるか? 我が騎士よ」
騎士の視線の先は、華やかに舞い躍る炎龍や、ゆったりとしたこの国独特の剣舞に向けられている。
貴族の宴の楽しみのひとつであり、若き青年ならば華麗な舞とその剣技を披露できる場。
この騎士は、低い身分ではないのにそういった場にあまり縁がなかった。なまじ腕が立つものだから、実践にばかり身を置かせることになってしまっていたのだ。
だから、彼の剣技はラファエラも城にいた頃以来見ていない。
久しぶりに見られるのが衆目を集める場というのも、ほんとうは、ちょっぴり癪だけれど。まあ、うらわかき乙女はいないようだし。
「良い、今宵は宴ゆえ許す。行って参れ」
白銀に輝く鎧兜を身に着けた騎士が前へ進み出れば、見慣れぬ異国の姿に英傑たちはほうと息をのむ。見るからに重そうな鎧。あの姿で、何をするのだろうと。
す、と騎士が右腕を胸に翳す。そのすらりと伸びた立ち姿は石像のようにぴくりともぶれない。
突如、右腕が空気を切るように振り下ろされ――その先に現れたのは、白銀の剣。月光を浴びて、きらりと不敵に光る。
ごく、と誰かの喉が鳴る。
まるで本物の一騎打ちを目の前にしているかのような緊張感が、辺りを包む。
ず、と騎士の右足が僅かに後ろへ下がる。ぐっと踏み込んだかと思うとすぐに前へ踏み出し、剣を両の手で構えて攻撃を受けるように切っ先が半円を描いて兜の前、そのまま流れるように攻撃へと転じて重い斬撃が振り下ろされる。また受けて、払って、重心を落としてくるり身体を回して避けその勢いを利用して下から切りかかる――
「…――以前よりもキレが増したかね」
何度見ても美しい、無駄のない所作。静からの動。その滑らかな動きにほうと見惚れながら――こころの中では、大喝采。私の騎士はやっぱり誰よりも素晴らしいと叫びたくなるほどだ。
勿論、ここではしないけれど。
最後は剣を両の手で眼前にすっくと構え、片膝をついて、終幕。
一呼吸おいて称賛の大拍手が送られる。興奮した様子の英傑たちが、口々に今の剣技を振り返る。中国武術とは異なる技の数々に、英傑たちの克己心も大いに刺激されたようだ。
騎士は、無言でラファエラの元へと戻る。
そのいつもの姿に、ラファエラは大きくなりすぎないようにぱちぱちと拍手して。
「……質問攻めになる前に、菓子をもらいに行くぞ」
ふいっと。好奇心いっぱいに此方を見つめてくる英傑たちに気づかぬふりをして、菓子の方へと歩んでいった。
大成功
🔵🔵🔵
鳴上・冬季
◎
「せっかく不老不死の仙になったのです。師の命でもない限り、甘味三昧でゆるゆる過ごしたいのですよ、私は」
演武を横目で眺めつつひたすら甘い菓子だけを食す
他に食べる者がいなければ、糕は1人で食べ尽くす勢いで食べる
合間に口直しで仙丹や仙桃を噛り、黙々と食べ続ける
途中、口を拭った紙が風に飛ばされた風を装いUC使用
風に紛れて飛んでいく紙片に見せかけたまま、崖下の様子をそれとなく探らせる
(話では死告鳥の鳴き声が響いて程なく無力化されているようですから。歌を聞かされる前に崖下に飛び込んで蹴散らした方が良さそうですねえ)
演武や月を眺める振りを続けたまま、視覚共有した式神に崖下の様子を探らせ続ける
宴も酣のころ。
物珍しい演武に皆のこころが浮かれ騒いだように見える中、鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)は座してゆるりと甘味に手を伸ばす。
「…せっかく不老不死の仙になったのです。師の命でもない限り、甘味三昧でゆるゆる過ごしたいのですよ、私は」
誰に言うでもなくひとりごちながら、冬季はまんまるの月のような糕を口へ放り込んでいく。
ぱく。
ひょい、ぱく。
間に仙丹。ぼりぼりといい音がして、違う食感を楽しめる。
また、ぱく。
ぱく。
時折蜜のたっぷり入った仙桃で喉を潤す。
そしてまた、ぱく。
ものすごい勢いで、糕が冬季の腹の中へと消えていく。
菓子を並べた卓子を任されている英傑が、冬季の指につかまれては口へと運ばれてゆく糕を幾度も幾度も目で追っていく。
「…それも、何かの術ですか?」
思わず惚けたようにこぼれた問いに、冬季は口角だけを上げて不敵に答える。
「いいえ」
ひょい、ぱく。
もう狐に化かされているとしか思えない気持ちで、英傑はごしごしと目をこする。
そうして、冬季は演武で賑わうほうを横目でちらりと眺める。ひとつ、ふたつの演武が無事に終わったようだ。冬季も無事(?)、糕のほとんどを食べて、残りは演武を終えた他の猟兵が食べるであろう分を残して口元を懐紙で拭う――と見えた瞬間、びょうと吹いた風に懐紙が巻き上げられる。
「嗚呼。飛んで行っちゃいましたねえ」
冬季が再び口角を上げて、英傑に微笑みかける。慌てる様子も無ければさして気にした様子も無い冬季に、訳が分からない英傑は( 掴めないお人だ )と思いながら、でも甘味が好きな人にわるいものはいないとも思っているので、曖昧な笑みを浮かべたまま頷く。
風に巻き上げられた懐紙が、ひいらりひらりと崖下へ落ちてゆく。
冬季は月へと目を向ける。その目に映るのは、月――ではなく。視覚を共有する、先程の懐紙、もとい式神の眼。
「(話では、死告鳥の鳴き声が響いて程なく無力化されているようですから……どこかに潜んでいるに違いありません。先ずは崖下の偵察といきましょうか)」
式紙は、風にあおられるふうを装って崖下をゆっくりと旋回しながら見回す。
くうるりくるり。
ひらひらひら。
切り立つ岩場の、平らになったその下。崖上にいる者には、完全に視覚になるであろう場所。
その岩壁に、いくつもの穴がある。
その穴から、ひらり落ちる、いちまいの極彩色の羽。
――月光が差すよ。もうすぐだよ。
きゃらきゃらきゃら。
若い娘のような、鳥のような笑声が微かに聞こえてくる。
「――いましたね」
冬季は小さく呟いて、徐に席を立った。直ぐに飛び込んでいけるように、涼みにきたふうを装って崖下に足を投げ出して月を望む。
「…――中庭地白樹栖鴉……誰の詩でしたかね」
この宴が終わるころには、月を望む余裕は束の間失われるだろう。
冬季は徒然と物思いにふけながら、懐から最後の糕を取り出だして食べた。
大成功
🔵🔵🔵
杜鬼・クロウ
【逸環】◎
紫の差し色入り白の長袍
裾に八咫烏の模様
黒の上着羽織る
炎の龍も見てェし今は宴を楽しむか
中秋の名月を盃にするたァ風流だねェ(絶景に感動
一人で月見酒の予定が二人と遭遇
…お前らと出くわすとは
曼殊沙華に惹かれたか?”あか”が似合うお二人サンだしよ
逢引の邪魔しちゃ悪ィだろ(ニヤ
見せつけてくれンなァ(コイツら無自覚かよ
カフカが演舞を?へーえ、お手並み拝見だな
(祝の伴奏…阿吽の呼吸のよう
演舞と演奏、二人の空間に見惚れ
カフカに乗せられ急遽演武を披露
UC使用
刀を使い花炎と共に舞う
戦う時の動きそのまま
故郷で主のを見てたぐらいで俺はしたコトねェケド…カフカには負けたくねェ(謎の張り合い
愛らしくない!(ハモる
葬・祝
【逸環】◎
少年姿
服装は猫猫猫絵師全身そのまま
あら、クロウ
くふふ、珍しい組み合わせになりましたねぇ
折角です、このままご一緒しませんかクロウ
逢引なんぞせずとも、大抵一緒ですもの
ねぇ?とカフカを見上げ、指を絡め繋いだままの手を緩く揺らす
私、カフカの演舞が見たいです
カフカが舞うなら、久し振りに弾きましょうか
其処らの奏者から借りた二胡を手に楽しげに
天賦の才なんてなくとも、数百年も触っていれば常人よりは弾けますよ
クロウが舞台に上がれば演舞のためのゆるりとした美しい音は苛烈に、演武のためのものへ
ふたりして毛を逆立てた仔猫と仔犬のようで、何だか可笑しくてくすくすと笑い声
仲良く喧嘩してくださいな
愛らしいですねぇ
神狩・カフカ
【逸環】◎
おや、クロウの兄さんじゃねェか
こんなところで会うたァ奇遇だねェ
なンだ寂しく一人酒かい?
邪魔も何もどうせ四六時中一緒だしなァ
そンじゃ、一差し舞ってみるかねェ
天狗の修行時代に余興でよく踊らされたからなァ
舞はお手の物サ
はふりの伴奏で踊るなんざいつぶりだろうな
ンじゃ、兄さん
よォく見ておけよ?
伴奏に合わせて扇子片手にひらり舞う
呆けてねェでお前さんも舞台に上がってこいって!
ははっ!派手でいいねェ!
けど見掛け倒しにならねェようにな?
なんて煽るようにニヤリ笑って
扇子から天狗の羽団扇に持ち替えれば
クロウに合わせて風を起こして花吹雪
対照的に優雅に舞う
おれも負けるつもりはないねェ
いや、愛らしくはねェだろ?
月は中天高く澄みきって、月光に照らされた眼下の川は散りばめられた宝石が煌めくように輝いている。
「中秋の名月を盃にするたァ、風流だねェ」
杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)は、月映る盃をぐいと傾ける。ふくよかな芳香が鼻腔をくすぐって、すうと逃げていく。その残り香を楽しむように大きく息を吸う彼の纏うものは、裾の八咫烏が目を奪う白の長袍。紫の照り映えるその長袍に黒の上着を羽織った彼と夜天にかかる月は、一幅の天人の絵のようだ。
その背に、鈴を転がしたような玲瓏たる声がかかる。
「あら、クロウ」
己の名を呼ばれて振り返ってみれば、そこに立つのは清澈なまでに肌の白い少年と、夕暮に宵闇を溶いた髪の青年。
――おっそろしく綺麗な奴らだなァ
月あかりを正面から受ける彼らはまるでこの世のものとは思えぬほど。一瞬惚けたクロウに、青年――神狩・カフカ(朱鴉・f22830)が声をかける。
「おや、クロウの兄さんじゃねェか、こんなところで会うたァ奇遇だねェ。…なンだ、寂しく一人酒かい?」
人懐っこそうな声音に、クロウも少しこころが解ける。浮世離れした彼らだけれど、話してみれば存外気安いのだ。
「…お前らと出くわすとはな。曼殊沙華に惹かれたか?”あか”が似合うお二人サンだしよ」
「くふふ、珍しい組み合わせになりましたねぇ。折角です、このままご一緒しませんか、クロウ」
やわり微笑みながら繊い指を口元へと添えるのは、葬・祝( ・f27942)。紅映える黒の着物の袂を揺らす彼に、クロウは唇を片方だけ上げて答える。
「逢引の邪魔しちゃ悪ィだろ」
ちょっと揶揄ったつもりのクロウの声音に、けれど対するふたりは事も無げに答える。
「逢引なんぞせずとも、大抵一緒ですもの」
「邪魔も何も、どうせ四六時中一緒だしなァ」
絡めた指と繋いだ手。無自覚に思えるほど軽くその手を揺らす彼らに、クロウは完全に肩の力も抜けた。
「見せつけてくれンなァ……」
思わず笑みこぼれたクロウに首を傾いでから、祝がゆるりと隣に立つ青年を仰ぐ。愛しい子。華やぐ宴の楽の音。友との邂逅。ならば、この時間を忘れられぬものとしたいから。
「私、カフカの演舞が見たいです。カフカが舞うなら、久し振りに弾きましょう」
その提案に、カフカははたと目を見張ってから、ひとつ頷いて。天狗の下で修業をしていたころ、余興でよく踊らされたものだ。ただその時とは違って、いま心弾むのには理由がある。
久方振りの、祝の奏でる調べ。これ以上に足取り軽くなるものなどあろうか。
「ンじゃ、兄さん。よォく見ておけよ?」
「へーえ、お手並み拝見だな」
カフカが笑みだけを残して座の中央へと歩を進める。
その背に期待を乗せた軽口を送って、クロウは酒盃を持たぬ片手でひらりと手を振る。
祝が楽の奏者から二胡を借り受けて弓を撓らせる。静かな調べから入るその舞曲に、カフカは扇子を広げてゆらりと天を仰ぎ見る。伸ばされた指先の先にはまあるい月。透明感のある二胡の、たゆむような音に合わせて反る背のしなやかさ、片脱ぎの垂れる袂の艶やかさ。祝はその舞を愛おしげに見つめながら、流れるように曲を奏でる。
一糸乱れぬ、ふたりの舞台。
――美事なもんだなァ
酒を吞むのも忘れてほうと見惚れれば、くうるり廻ったカフカの袂がふわりと空気をはらんでゆっくり落ちた、その奥に。カフカの左目がクロウをひたと見つめて。
微笑む。
艶然とした面に瞬間胸が飛び跳ねれば、カフカは月光受けて冴えわたるような手を伸ばす。
「呆けてねェでお前さんも舞台に上がってこいって!」
その伸ばされた腕が、あまりにも匂いやかで。知らず伸ばした腕を引かれて、クロウも座の中央へと引き寄せられてゆく。舞など、故郷で主が舞うのを見たことがあるくらいで、己が舞ったことなど一度も無いが。
――ええい、ままよ
牽かれた腕の勢いそのまま、クロウは袂から唐菖蒲のお守りを取り出だして天へと放る。
とたん夜天に咲く花炎。その降りしきる炎を咲かせて、すらり抜いた刀で天を衝く。散らした炎は消えることなく渦巻くように夜空を舞い、クロウは曲に合わせた流れるような動作で払う如くに舞い躍る。
「ははっ! 派手でいいねェ! けど見掛け倒しにならねェようにな?」
楽しさに動かされて不敵に微笑むカフカも、羽団扇を取り出だして負けじと風を起こす。ぶわり巻き起こる風に花炎が再び舞い上がり、クロウの動きに合わせてカフカは受けるようにゆうるりふわりと舞い躍る。
交わる視線、行き交う剣と羽団扇。
祝の奏でる曲も、いつしか苛烈さを帯びて、まろびそうな律動を刻む。その音に合わせてくるりくるり舞いながら退いては進み、進んでは退きを繰り返すふたりの様子が、遊びと知りつつその奥に薄ら本気を見せるような、仔猫と子犬のようで。
弾きながら、祝のはれやかな笑声が音曲に交じる。
――仲の良い喧嘩だこと
「愛らしいですねぇ」
ほろり咲いた愛おしげな声に、ふたりが同じときに振り向いて。
「いや、愛らしくはねェだろ?」
「愛らしくない!」
また、ころころと笑う声が曲へと加わった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ユフィルリート・ミルティリエール
「ひゃっ…!」
大きな掛け声、大きな炎の龍
まだ慣れない転移の直後
感覚に飛びこんできたものが簡単にキャパシティを埋めるから
心が追い付かない
でもこんな所で腰を抜かすわけにはいかない、よね
えっと…(お腹が鳴る)
「ぁ…」
そうだ、何も食べないで来ちゃった
…あの蒸しパンみたいな物、美味しそう
食べてみたいな
「あの、1つ私にも頂けますか?」
お腹も満足したし、魅せる為に練習したものとは違うから期待に沿えるかは分からないけど
「準備運動がてらの拙いものですがよかったら見てください」
足に力を込めたら足首から小さな光翼
背の翼は頼りなくてもこの靴があれば補える
魔鍵の封印を解いて握ったら
空を、滑って、踊る(剣舞の様なもの)
小さな火竜がそれぞれ円を描いて空を舞う。蛇のように長い身体を渦巻いて、一斉に空へと舞い上がって衝突した―――と思えば、一つに合わさり観客たちの頭上をごうと飛ぶ。
「ひゃっ…!」
転移してきたばかりのユフィルリート・ミルティリエール(たとえ小さな翼でも・f34827)が、熱風と勢いに思わず首を竦めれば。頭上を掠めた炎龍の、きいろい目玉が此方を向いていて。
あわわ。
ユフィルリートの顔からさあっと血の気が引いて、背中の真っ白い羽はぺしょんと縮こまって。腰からすとんと、力なく地に落ちる。
すう、と音もなく炎龍が消えた直後に、人々の集まる方では大喝采。嗚呼そうだ、現地では演武が開かれているって言ってたっけ。
初めての土地、初めて見るもの。
さっきの炎龍でこころがいっぱいになって、まだ足に力は戻らない。
――ぐう。
「ぁ…」
思わず抑えたお腹から、身体の訴えがまだ続く。
そう、襲われる人を助ける依頼と聞いて、心根の真っ直ぐなユフィルリートは何も食べずにすぐさま駆け付けたのだ。炎龍に驚いて腰から下の力が入らなかったのも、空腹が一役買ってしまったのだろう。
そこに、ふわんと甘い香りが漂ってくる。
風の吹く方へ顔を向ければ、そこにあったのは灯火揺れる机に並べられた、きいろくて、まんまるで、ふんわりとした、ちいさな月みたいなもの。
「…お、おいしそう……」
ぐう。
その声に応えるように、お腹の虫ももうひと鳴き。ユフィルリートはちょっと恥ずかしくなって、でも肩の力も抜けて、ふ、と笑みがこぼれ落ちる。お腹が空いているなら、だいじょうぶ。今はまだ戦いのときではないみたいだし、折角だから。
ゆっくり膝を動かして。そろそろと立って。
うん、だいじょうぶ。ちゃんと動く。
勇気を出して、机にせっせとあの円いものを並べている英傑の青年に声をかけてみる。
「あの、1つ私にも頂けますか?」
おずおずとした声に、丸顔がこちらを振り向く。その顔に、柔らかな笑みが広がって。
あ、このひともお月さまみたい。
「もちろん、もちろん! 猟兵の皆さんには、しっかり英気を養ってもらいませんと」
まんまるい糕が、まんまるい手に乗った紙に包まれて渡される。ユフィルリートの手に乗れば、ほかほかと温かくて。
はくり。
ふわふわした生地の中に、きいろいカスタードのようなクリーム。口の中に甘く広がって、お腹が満たされていく。
「貴女のような方も戦うのですね……失礼、妹がいるもので」
糕をくれた英傑が、眉を下げてなんだか心配そうな顔をする。
ユフィルリートはその顔を見ていたら、なんだかたまらなくなって。きゅっと結んだ両手に力を込めて、身を乗り出す。
「ぁ、あのっ拙いものですがっ…よかったら見てください!」
呆気にとられた英傑を置いて、くるりと背を向けユフィルリートは駆けだす。
駆ける、駆ける、その間に足首からは小さな光翼が羽を広げて。伸ばした手には、その手に馴染む剣のような魔鍵。
たっ、と一度、力強く地を蹴れば。そのまま月にのぼるかのように空へと滑り出す。
――誰かを、守るためなら。力が、出るから。
空を舞うユフィルリートは、夜天に浮かぶ小さな真珠。
その儚くも尊い剣舞を見た者は、おのずとその二つの手が合わさっていくようだった。
大成功
🔵🔵🔵
紬雁・紅葉
アドリブ、即興連携歓迎
まあまあ!これが音に聞く蓬莱の宴…(サムライエンパイア脳)
うっとり笑み
演武?倭式でよろしければ…
羅刹紋を顕わに、実に嬉し気に笑み
台上にて一礼
月読様に礼…
天羽々斬を鞘祓い十握刃を顕現
残像忍び足破魔光属性薙ぎ払いダンスUC
羅刹に伝わる"剣神"布都主の神楽舞を存分に魅せる
仙境至りし武にして舞
月に叢雲花に風
宵の帳が上がる頃
羽ばたく鳥の声や良し
与えられた演武の区切り時間まで舞い(継戦能力)
最後は無音にて納刀し一礼、微笑みを残して静々と退く…
柳・雪蘭
◎
高い所は怖くないけれど。
炎の龍はとても綺麗ね、私にはあんなに大きいものは扱えないわ。皆凄いのね。大きくて、とても綺麗。
…あ、後でお菓子貰えるかしら、とても美味しそうなの。
何をしようかしら…そうね、では弓を使っての舞でもどう?
羽衣を使って、ふわりと身体を浮かせながら。
音は――そうね、折角だから歌いましょう。
月の美しさを。夜の静けさを。
花の命の儚さを。この一時の素晴らしさを。
月華神弓に月の光が当たれば、きっと綺麗ね。
銀雪も手伝ってくれる?肩か弓に止まって尾を靡かせていたら、とても素敵だわ。
舞が終われば、深々と頭を下げて。
あまり上手ではないけれど、少しでも楽しんで貰えたなら嬉しいわ。
月がほぼ真上に上がった。
巨大な炎龍が、月へと昇天していくように中空へ真っ直ぐに上がり、消えてゆく。見事な演武、見事な技の数々。
感嘆の声を上げながら、柳・雪蘭(雪華的假小子公主・f33385)は、ぱちぱちと両手を叩く。
「私にはあんなに大きいものは扱えないわ。皆凄いのね」
思わず漏れた賛辞に、隣に座る紬雁・紅葉(剣樹の貴女・f03588)が微笑みながら相槌を打つ。
「まことに……これが音に聞く蓬莱の宴なのですね。わたしも、なにかお見せできたらいいのですけれど」
紅葉が思いあぐねたふうに眉を下げて雪蘭の方を向いたときに、さらりと肩から流れる黒髪。月の光を受けて艶然と微笑むさまは、まるで和国の月からいらした姫のよう。
対する雪蘭は、その悩ましげな紅葉に悪戯っぽく笑って見せる。透き通る羽衣越しに淡然と微笑むさまは、この世の有象無象など意に介さぬような天女のそれ。
「そうね、では舞でも一緒にどう?」
「まあ。よいのですか? …では、和の国の舞でもよろしければ、ぜひ」
ふたり交わした瞳は、宴を楽しむあの高揚するような気持ちが入り混じって。互いに手を取り合うように、座の中央へと進んでいく。
ふたりが進み出れば、英傑たちは自然とそちらへ目が惹かれて。麗しの姫君たちが舞う楽は何ぞと期待が辺りを包むよう。
「月読様に……」
紅葉が小さく告げて、ふたりして月へ向かって一礼する。その洗練された所作はよどみなく。
まずは紅葉がすらり鞘から刀身を抜き、十握刃を月へと捧げるように掲げ持つ。
続いて雪蘭が羽衣広げてふわりと中空へ浮き上がり、月華神弓を横ざまに掲げ持つ。
月あかりに照らされたふたつの得物は、戦いに使うものなのに。無骨さなど微塵もない。
ふたりが互いの言葉を唱和してゆく。
――月に叢雲
――花に風
――叢雲払い
――風を切る
――水を掬えば手には月
――花に触れれば香がうつる
ゆうらり。紅葉が地を滑るようにまあるく円を描く。
ふうわり。雪蘭が空を包むようにおおきく腕を広げる。
ふたりの演武は速さこそないけれど、だからこそひとつひとつの所作の美しさが殊更よくわかる。伸ばされた腕のその先に嫋やかに続く指先。反らされて露わになる喉元の輝かんばかりの白さ。時折天空から降ろした腕と、地上から伸ばした腕が交差し、けれど交わらぬもどかしさ。纏う綾衣の袂は揶揄うように左右に揺れて、うつくしきふたりのかんばせを隠しては、また親臨させる。
ふたりの舞に、聴衆は翻弄されていくようで。
嗚呼月が空にあるうちにこの舞が終わりを迎えることなどあっていいはずがない――そう思う人々の頭上を、真白き一羽の鳥が飛び過ぎる。
長い尾を優雅にはためかせながら、くうるりと座の中央をひとまわりして、雪蘭の捧げ持つ水晶の長弓の端に留まった。
そして、一声。高く鳴く。
「夜の帳が下りる頃 羽ばたく鳥の声や良し」
その鳥の声に応えるように、紅葉が唱を結ぶ。
雪蘭がふわりと羽衣をはためかせて地へと舞い戻る。
紅葉が音もなく納刀し、終わりを告げる。
ふたり(と、一羽)揃って一礼すれば、万雷の拍手が迎えて。
ざわざわとどよめく人の声にも臆することなく雪蘭が涼しげに微笑めば、ちょっと人に気圧されていた紅葉もはにかんで応える。
勿論、英傑たちも彼女たちが猟兵であることはとうに知っている。であれば、声をかけるのは畏れ多くて。ただ崇敬の眼差しだけが送られてくるのも、何処かくすぐったくて居心地がいいとは言えないから。
どちらからともなく交わす視線。くすり、ふたり同時に微笑んで。
「――ねえ、甘いものでも食べましょ」
「ええ、是非」
軽やかに袂を翻してふたりが進む先には、ご褒美のちいさな月が待っている。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『死告鳥』
|
POW : 死告旋翼翔
【翼を広げ、回転しながら繰り出す】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【多くの死告鳥】の協力があれば威力が倍増する。
SPD : 死告嵐
【翼】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ : 死求鳴
【人の死を求める鳴き声】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
イラスト:+風
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●死告鳥
ばさり。
幾百もの羽搏きが耳朶を打つ。力強い羽搏きが、あかい曼殊沙華の花を散らしていく。
――月光が差したよ。 月の命も 龍の命も もう 終わりだよ。
「出たな怪鳥! ――猟兵の皆さま。我らも援護いたします!」
敵襲ありと心していた英傑たちが、一様に頷いて戦闘の態勢を取る。
彼らは炎龍を操ることができる。必要とあらば力を貸してくれるだろう。
しかし死告鳥は空を飛ぶ。何か策を講じねば、いともたやすく攻撃は避けられてしまうだろう。
武器を手に取り、猟兵たちは空を自由に駆る相手と対峙する。
柳・雪蘭
〇
死告げの鳥が来たのね、でも龍を落とさせはしないわ。
空を行くなら、そこまで届ければいいのだから。
月光は貴方達のではなく、私の力。さあ、光の矢を放ちましょう。
白華流星撃
先程舞ったものによく似た一指しを。
ゆるりと回って、弓を構えて。死告鳥の翼を狙ってまず一矢。
飛べなくなれば、倒す事は簡単になるものね?
英傑さん達が大丈夫そうなら、落ちたものに止めを。
無理そうな近寄らないようにね、貴方達に怪我をしてほしくないわ。
何度も弓を引いて、力の限りに矢を放ちましょう。
私は落ちても大丈夫だから、崖のぎりぎりを移動しながら攻撃しようと思うわ。必要なら空中に飛び出してしまっても良いわね。
極彩色の羽が舞う。
英傑たちが構える様子を楽しげに見降ろしながら、ぎらりとその爪を月光に光らせて。
「死告げの鳥が来たのね、でも龍を落とさせはしないわ」
ふわりと地を滑るように、されど毅然と死告鳥の前に立ったのは柳・雪蘭(雪華的假小子公主・f33385)。先ほどの舞でも用いた月華神弓を押し抱くようにして、月へ掲げてから面を上げる。
「月光は貴方達のではなく、私の力。さあ、光の矢を放ちましょう」
雪蘭が構えた弓には、あでやかな香りと共に光の矢が顕現する。相手は飛ぶ鳥。絶えず羽搏くその姿に焦点はあてにくいが――ぎゃあぎゃあ泣き喚く死告鳥を物ともせず、雪蘭はにこりと微笑って矢を放つ。
弓が震えたと思ったら、風切る音もなく光の矢は吸い込まれるように真っ直ぐ死告鳥の翼を貫通する。一羽の死告鳥がキャアと哀れな声を上げて落下していくのを見て、仲間の鳥たちが途端に膨れて威嚇を始める。爛々と目を黄色く輝かせながら、翼は先程よりも倍は大きくなり、その大きく膨らんだ翼をもって崖上へと襲来する。
「危ない!」
英傑たちが雪蘭に襲い掛かる死告鳥へと炎龍を放つ。ごうという音を伴って間一髪、地面に翼を叩きこもうとする死告鳥たちを追い払う。
「――ありがとう。けれど、無理に近づかないでね。貴方達に怪我をしてほしくないわ」
儚げな微笑みで告げれば、多くの英傑の眼差しはつい釘付けに。いえ貴女の怪我の方が心配ですと、惚けたような微かな声さえ漏れ聞こえて。
雪蘭はその声に柔く笑んでから再び天を仰ぐ。その瞳に、先程の儚さはない。
「絶対、外さないわ」
今度は息つく暇もなく次々と矢を放つ。仲間の死に興奮し、猛り狂う死告鳥を狙うのは容易ではないはずなのに、その矢は確実に翼へと突き立てられてゆく。
まだ戦いの火蓋は切って落とされたばかり。
その手始めに夜天を彩る白光の矢は、地から天へと走る流星のように猟兵たちの士気を高めていった。
成功
🔵🔵🔴
葬・祝
【逸環】◎
あら残念、楽しい時間が過ぎるのは早いですねぇ
ご心配なく、何時でも構いやしませんよ
くふふ、クロウったらこの子にちょっかい出すのが楽しくて仕方ないんですねぇ
微笑ましげに笑って、否定された気もするが放置
クロウに与えた神威は幸運
不幸を退け反転させるもの
そう簡単に、傷付けられると思わないでくださいな
カフカが何やら拗ねているのは気付くも、理由に思い至らず
さて、【誘惑、おびき寄せ】で敵を集め、纏めて束縛して地に落としましょう
空を自由に飛ぶ生き物とて、その身を縛り封じればどうとでもなるでしょう?
……ま、そうせずとも空の戦いなら問題ない子なんですけど
カフカったら、地上だとどうにも鈍臭いですからねぇ……
神狩・カフカ
【逸環】◎
宴も酣ってことかねェ
おいおい兄さん
誰に向かって言ってンだ?
ほう?心強いこって
ンじゃ、後ろで楽させてもらおうか
余裕の面持ちで天狗の羽団扇を構えて
天候操作で雷を起こし敵を堕としたなら
クロウの炎の勢いを増幅させるように風を吹かす
ふと花飾りに気付いて
お前さん、いいもン持ってンじゃねぇか
説明されずとも誰の加護が籠められたもんかはわかる
ふぅん…と気のない口ぶり
その実表情は拗ねたようなもので
腹いせにクロウごと風に巻き込んでやる
いやいや、おれは援護してるだけだぜ?
何の話だろうな
攻撃が届きそうなら結界術で護ってやるサ
ふふ、天狗は空を自在に翔けるもンだからな
って、鈍臭いは余計だろ?
否定出来ないので苦笑い
杜鬼・クロウ
【逸環】◎
華やぐ宴も終いか
さァて、お仕事すンぞ
二人とも、準備は出来てっか?
祝、心強いなァ
文系なカフカサンは危ねェから俺の後ろにいろよ
護ってヤっから(舌出して煽る
演武後、息整えて臨戦態勢
玄夜叉に持ち変える
前衛
金蓮火の火からUC使用
金の蝶で死告鳥が堕ちたら、剣に焔を出力させ翼や胴を薙ぐ
一章の演武の延長線
死角からの攻撃は間一髪で回避か剣で武器受け
腕の赫月(いのり)に護られる
誕生日に貰ったンだよ
イイだろー?(自慢
ってカフカてんめェ…妬いてるからって俺まで巻き込むなや!
祝も笑ってンじゃねェっつの!
文句言いつつカフカの盾に
祝が呪詛で足止めした所を畳み掛け十字切り
敵の数を極力減らす
味方の炎龍使わせる暇与えず
美しい楽の音の音は疾うに鳴りやみ、耳障りな甲高い鳴き声だけが辺りに響く。
「あら残念、楽しい時間が過ぎるのは早いですねぇ」
「宴も酣ってことかねェ」
葬・祝( ・f27942)と神狩・カフカ(朱鴉・f22830)が互いに流した瞳だけを重ねて、ちょっと興ざめしたような、残念そうな声音。
その二人の横でぱんとひとつ手を叩いて、杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)がいち早く気持ちを切り替える。
「さァて、お仕事すンぞ。二人とも、準備は出来てっか?」
目の覚めるような音にひとつ瞬いてから、祝がゆるりと余裕たっぷりに微笑んで。
「ご心配なく、何時でも構いやしませんよ」
「祝、心強いなァ。文系なカフカサンは危ねェから俺の後ろにいろよ」
かっちーん。――なんて音はしていないけれど、揶揄われたカフカは片目を眇めてひくりと笑う。
「おいおい兄さん…誰に向かって言ってンだ?」
「カフカって名前のやつが他にいたかァ? ま、護ってヤっから援護頼むぜェ」
「ほう? 心強いこって!」
ちろりと舌を出して繰り出す言葉の猫パンチ。それを受けて尻尾ゆらり唸り声上げる子犬の威嚇……にしか見えない、ふたりの応酬。耳と尻尾が見えるよう、とはらり咲う祝の口元隠す袂から、ぽろりこぼれる小さな所感。
「くふふ、クロウったらこの子にちょっかい出すのが楽しくて仕方ないんですねぇ」
その小さな声をひろったクロウは祝にも小さく威嚇しながら、尻尾はたしんたしんと不満げに地を打って――いるように見える。それを見てくすくすと笑い止まらぬ祝。
――それがまた、なんだかふたりの世界みたいで。
カフカは不承不承、矛を収めて気持ちを切り替える。
「…ンじゃ、後ろで楽させてもらおうか」
「おう、行くか」
その声にクロウも改めて敵に向き直り、身の丈に等しい漆黒の剣「玄夜叉」を顕現させる。
かちんと鳴らすは黒地に映える金蓮花。ぼうと生じる火の粉は蝶のかたちに中空を舞い、螺旋描いて次々と死告鳥へと踊りかかる。
対する死告鳥たちはその翼を巨大化させ防御を試みるが、炎は容赦なく極彩色の羽をなめるように焼いていく。堕ちる鳥が地に降り注ぐ前に、クロウの玄夜叉はその身に炎を纏って躊躇わずに断ち切っていく。
「言うだけのことあるなァ兄さん」
ひゅうと口笛吹いて、悪戯そうな目で腕組むカフカが羽団扇をするりと構える。ゆらり天へと掲げられた羽団扇が喚ぶは雷と風。閃く光が空を切り裂き、炎の蝶に動きを制限されている死告鳥へと白い矢のように射かかる。轟く風は大気をうねらせ、炎を増幅させて空を赤く染めるよう。
きらり。
不意に、雷の光に照らされた「あか」が、カフカの眼を捉える。
クロウの腕を彩る、紅い組紐と緋玉の花飾り。
籠められた神威。
「――お前さん、いいもン持ってンじゃねぇか」
戦いの最中にかけられた声に、クロウの瞳は向かないけれど言葉だけは余裕たっぷりに答える。
「誕生日に貰ったンだよ。イイだろー?」
カフカは気づいたんだろうか。この、贈り主を。
この、戦いの最中で。
気づけてしまうんだろうか。気づいちまうんだろうな。
クロウはちらりと一度だけ彼に目を遣る。
あーあ。
やっぱりほら、お前。なんつー顔してんだよ。
祝も後ろからふたりの様子を見て、カフカの表情の変化に気づく。
おや。あの子、拗ねている。
――何故?
こてりと傾いだ頸も、解答には辿り着かず。
ただ、風の様相が変わる。
先程までクロウを台風の目に回転していた風が、逆巻くように勢いを増して。中心ごと、飲み込むように。ぐおんぐおんと虚空の隅々からありったけの風を集めて全てを飲み込むがごとくに渦巻いていく。死告鳥たちは風に煽られ為すすべもない。
クロウも風に飲み込まれそうになりつつ、持ち前の胆力とバランス力で踏みとどまっている。
「ってカフカてんめェ…妬いてるからって俺まで巻き込むなや!」
「いやいや、おれは援護してるだけだぜ?」
からから笑うカフカの顔に、先程迄の憂いはない。
再び戻った子犬の笑顔に、祝はこころのどこかに再びぽっかり日が当たったような心地で、最後の仕上げにかかる。
「さて、終わりにしましょうね」
ばらり。
祝の周囲を囲むように顕現したのは千を超える呪符。夜闇にぼうと淡く浮かぶそれらは、儚く薄い符なのに――ひやり。どこか、見るものの心を震え上がらせる。
からからから。
何処からか、鳴子の音がする。まるで長く続く鳥居の奥から此方へ駆けてくるおおきなおおきな“何か”――
どう、と中空に浮かぶ呪符が一斉に死告鳥へと放たれる。呪符が吸い寄せられるように死告鳥の身体を包み、包み、その姿すら見えなくなる迄――見届けて、祝がうっそうと笑む。
「空を自由に飛ぶ生き物とて、その身を縛り封じればどうとでもなるでしょう?」
(おお、こわ)
その様子を踏ん張りながら見上げていたクロウとカフカは、これを好機と一時停戦して共闘する。
踏み切るクロウの振り翳す玄夜叉は、呪符に包まれた死告鳥を十字に切り落とす。
カフカの喚ぶ雷は、クロウへ堕ちる死告鳥の塊を灰燼に帰す。
いつもの飄々とした笑みで風と雷を繰るカフカを見て、祝は小さく息を吐く。
「……ま、そうせずとも空の戦いなら問題ない子なんですけど。カフカったら、地上だとどうにも鈍臭いですからねぇ……」
「鈍臭いは余計だろ?」
振り向いたカフカの苦笑いする横顔に、先程の拗ねた顔が重なる。
あの顔は、あの気持ちは、何て名前がついているんだろう。
――その気持ちを、いつか知れたら。
逆巻く風の中で、空に堕ちる極彩色の中で。
そんなことを考えながら、三人は確実に死告鳥の数を減らしてゆく。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ユフィルリート・ミルティリエール
「お願いがあるんです」
人とお話するのは苦手だけど優しい人達なのは分かるから
さっき炎の龍を操っていた人達に声を掛けてみる
お願いしたのは、雷を見たらその場所に炎を当ててもらうこと
詳しい事は話してる暇がないと思うからそれだけ言って空へ翔け上がった
空はブルーアルカディア育ちの翔剣士にとっても得意な場所
魔鍵に纏わせた風の魔力を刃の様に飛ばして牽制しながら、敵を何体か大まかにでも近い所に纏めていく
敵が声を上げそうになる頃
「鳴かせない…!」
目の前に敵の集まりが出来た瞬間、魔鍵の切っ先を袈裟斬りの形で振り下ろす(UC発動)
落雷は目印
直撃の後敵の足元から起こるのはお願いしていた炎を呼び込み強めて逆巻く風刃の竜巻
ラファエラ・エヴァンジェリスタ
…耳に障る
月見の宴を邪魔するとは野暮な輩よ
せめてもう少し淑やかであれば慈悲のひとつもかけようものを
英傑達と己の身にオーラ防御を施してから
英傑たちよ、炎の龍を舞わせよ
鳥どもの上へと頼む
囀るな、鳥
もう少し品の良い鳴き声を上げられぬものかね
挑発しながらこれみよがしに黒孔雀を扇いでやって
本命は茨の抱擁
上空の炎の龍が照らしたならば鳥どもの身に影も落ちよう
地上に落とした影は勿論、重なる羽根の間、服の襞、どんな小さな影ひとつ黒き茨の苗床よ
吸血させながら全力魔法で力を注いで
地上に引きずり落とせるかね
後は我が騎士に任せよう
蹂躙せよ
月と炎の共演も乙なものよな
鳥が少々五月蝿いが
我が騎士よ、早く黙らせておくれ
狂ったように喚き散らす鳥の声は耳障りで。
先程迄の甘美な楽の音はどこへやら、夜の空気に満ちるのは嬌声と怒号と破壊の音。
「月見の宴を邪魔するとは野暮な輩よ……せめてもう少し淑やかであれば慈悲のひとつもかけようものを」
堪能していた甘味の最後のひとくちを殊更味わうように咀嚼してから、ラファエラ・エヴァンジェリスタ(貴腐の薔薇・f32871)は中空へと向き直る。
嗚呼嫌だ戦いたくない。女の嬌声のようなあの声はどうにも神経を逆なでしてくる。
いらいらと空を舞う鳥たちを睨めつけながら、ラファエラは策を立てる。此度の戦いは英傑たちも協力してくれるとのこと。使わぬ手はあるまい――と足を伸ばしたラファエラの横を、小さい足音が駆け抜けていく。
跳ねる亜麻色、ひらめく白。少女はたたと駆けて、そのまま集う英傑たちの前で足を止めて勢い良く頭を下げる。震える声に、少女が緊張していることが伝わってくる。
「お…お願いが、あるんです」
ユフィルリート・ミルティリエール(たとえ小さな翼でも・f34827)は、自分のこぶしにぎゅうと力を込めて、懸命に言葉を紡ぐ。筋骨隆々の若者たちは、ユフィルリートよりもずっとずうっと大きくて、ほぼ真上を見上げなくては目が合わない。けれど、その目を見れば優しい人たちだという事がわかるから。話を聞くために膝をついてくれた英傑の、その柔らかな空気に勇気をもらってユフィルリートは一息に伝える。
「あの、雷を…雷が見えたら、そこに炎の龍を当ててくださいっ」
言うだけ言って、ぴゅっと踵を返して空へと駆けてゆく。
子リスの逃走。
武を誇ることはできずとも、ひとの為に戦おうとするユフィルリートの背に、ラファエラは口元を抑える。
なにあれ。可愛い。
立ち向かうのはひとりではないのだと、ラファエラもちょっぴり勇気をもらえたり。脱兎のごとき背を戸惑いながら見送った英傑に、ラファエラは加えて言葉をかける。
「聞いていたか。貴公らは雷を見たら、炎の龍を舞わせよ。鳥どもの上から頼む」
ラファエラには威厳というものが、からだから発せられるその空気のようなものが、英傑たちをして自然と頷かしむ。英傑たちはすぐさま準備に移った。
夜天を風が切る。
星と星の間を滑るように駆け抜けるユフィルリートが魔鍵を振るう。死告鳥はぎゃあぎゃあ喚きながら風の刃を避け、避け、――いつの間にやら一塊に寄せられていく。互いの羽がぶつかり合い、その危機をようやく察した鳥が大きく口を開けた瞬間。
「鳴かせない…!」
閃く魔鍵が鳥の塊へ斜めに振り下ろされると同時。白い閃光が光って、一瞬間空も山も飲み込み全てが透ける。轟く轟音と、光に目を焼かれて右往左往する死告鳥の頭上に忽ち炎龍が顕現する。うねる様に上から躍りかかる炎龍を援護するように逆巻く風。飲み込まれる死告鳥は後方に退路を見出すが、そこに落ちるは炎に照らされた自らの濃い影――から生ずる黒き茨。
「逃げ道があると思うなよ、鳥」
ラファエラが嫋やかに黒孔雀を扇ぐ。顕現する茨は地に堕ちた影からのみならず。炎に照らされた死告鳥の極彩色の羽、重なる綾の隙間、そのすべてに生じた影からしなやかに伸びて死告鳥の自由を奪う。
ずわりずわりと血を抜かれながら逆巻く風に飲み込まれ、逃げ道などどこにもなく。一際甲高い末期の声が、夜空を切り裂いて次々地へと墜つ。
羽も抜け落ち、嗤う気力も削がれ、それでも動く翼であわよくば逃げようとする死告鳥の横。
ふわり降り立つ白い天使と、月に白銀照らす騎士がいた。
「逃がしません!」
「蹂躙せよ」
青ざめひゅっと息吸う死告鳥の断末魔。
空に舞う炎龍と浮かぶ月も乙なものと見上げながら、ラファエラは短く告げる。
「五月蝿い。我が騎士よ、早く黙らせておくれ」
後ろで控える英傑たちは頷きながら、感心しながら。皆でこころを合わせて“可憐な女性も強い”と思うのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鳴上・冬季
「弾幕でこちらに敵を近付けねば、英傑が倒れることはないでしょう。ひとまず、それで充分では?」
「出でよ、黄巾力士金行軍」
黄巾力士113体召喚
崖の上から砲頭で空中の敵へ鎧無視・無差別攻撃で蹂躙するよう命じる
自分はいつも連れている黄巾力士と空中戦
自分は風火輪
黄巾力士は飛来椅使用
雷公鞭振り回し雷属性で攻撃
敵の攻撃は黄巾力士にオーラ防御で庇わせる
金行軍の射線を邪魔しないよう自分と黄巾力士1体は崖飛び降りた空中に陣取る
「さて、あの洞穴から何体出てくるのやら。楽しみですねえ」
嗤う
「歌声程度、銃撃や雷鳴で消して見せましょう。鳥の鳴き声ごときにいいようにされるのは業腹です」
空中の鳥が全滅したら洞穴の中も確認する
七篠・コガネ
◎
大地の上で月を見上げながら宴を楽しむなんて
僕の世界じゃまず出来る事じゃないのに
邪魔なんてさせませんよ
元々『猛禽類』の名を持つ僕に【空中戦】を仕掛けるなんて
骸の海で後悔する事になりますからね
英傑さん達には炎龍で死告鳥の連携を崩すようお願いしたいです
僕は死告鳥の上を飛び立ってcode-Nobodyを【一斉発射】
…思い出してきました
昔、解放軍との戦闘で血塗れの大地の上で月を拝んだ事がある
あんな冷たい月はもう二度と見たくはないよ…
死告鳥がこちらへ向かってきた瞬間を狙い
上空からUCで【踏みつけ】て蹴り落としてくれましょう
死告鳥の後ろ?えぇ…ただの地面ですとも
生憎僕は『舞う』タイプの鳥ではないでして
落星のごとく死告鳥たちが落ちてゆく。
それでも、空を舞う死告鳥は未だ多い。何処から湧いてくるのか――それを、この男は知っている。鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)はその居所を潰すために、空を満たす死告鳥たちへと先ず一手を打つ。
「出でよ、黄巾力士金行軍」
詠唱と共にずらり居並ぶのは113体もの黄巾力士。研磨された金属の面は月の光を反射して、地上の月さながら。
「鳥の鳴き声ごときにいいようにされるのは業腹です。蹂躙なさい」
黄巾力士たちは火砲を搭載した頭を一斉に中空へと差し向けて、次々と火を吹いていく。高射砲から花火のように炸裂する音が立て続けに鳴り響き、怒涛の響きが辺りを席巻する。あまりの音と空を切り裂いて飛んでくる砲弾に、死告鳥のきぃきぃ声も届かない。
「うわー。派手ですね!」
どんぱち鳴り響く空を見上げて、七篠・コガネ(ひとりぼっちのコガネムシ・f01385)が感嘆の声を上げる。どこかで見たことのある銃声と砲声の鳴りやまぬ空。先程の宴ではちんとんしゃんと淑やかな楽の音を聴きながら見上げた月だったが、今は火と喊声に満ちている。
その光景が、かつて見た景色と重なる。
それは、遠い遠い昔。帝国兵として戦って、命令されるがままに多くの命を奪った解放軍との戦いの中の記憶。両者の血で満たされた赤い大地で見上げた、冴えわたる月。
「あんな冷たい月はもう二度と見たくはないよ…」
コガネの拳がギッと音を立てて強く握られる。次の瞬間、羽型のプラズマジェットを展開して銃声鳴り響く空へぶわり音を立てて飛翔する。
目線合うところまで飛んできたコガネに、死告鳥たちは誘うようにきゃあきゃあ嬌声を上げて。
「邪魔なんてさせませんよ! 骸の海で後悔する事になりますからね」
死告鳥よりも高く舞い上がったコガネの背から、新たにcode-Nobodyが展開する。『猛禽類』と称された彼の、その背を覆う鋼の翼。ばらり広がるそれらから、個々それぞれ高威力のエネルギー砲が発射される。
「喰らえぇぇ!!」
空から雨の如く降り注ぐコガネの弾と、地上から矢の如く降り注ぐ冬季の黄巾力士の砲弾。死告鳥たちは字の如く矢も盾もたまらず散り散りに逃げ惑う。
その死告鳥たちを迎えるのは両足首に風火輪を嵌め雷公鞭を構える冬季と黄巾力士。
「逃げになっていませんよ」
死告鳥の一体が威嚇しながら翼を広げ、回転を加えた突進で打ち破ろうとするところを、鞭の如く振るわれた雷公鞭から発する雷がぴかり光って捉える。一瞬の放熱と後から漂う焦げた香りに、周囲の鳥も仲間が墜ちたことを知る。
こちらには逃げられぬと悟った鳥がコガネの背へ向けて突進を繰り出せば――その鳥が最期に見たのはスロー再生されるような光景。自らが回転する視界の中で、対するコガネの松葉色の髪がふわり風になびく。焼けたような浅黒い肌が次第にこちらへ振り返り――くんっと急激に振り返ったその瞳は月のような金。
「残念」
次の瞬間その身の骨を砕くような衝撃と共に急激な風の音が死告鳥の耳を支配する。落下、落下、そして暗転。
「生憎僕は『舞う』タイプの鳥ではないでして」
立っているのはコガネだけ。ぱら、とひび割れた地面から砂がこぼれる音がして、コガネの足がようやく上がる。地面に深く穿った罅の中にはこと切れた鳥。
「……大体片付いたかなあ?」
コガネが空を見上げる。
空を覆っていた鳥も、黄巾力士の絨毯爆撃によりそのすべてが撃ち落とされた。静けさを取り戻しつつある夜空に、黄巾力士1体と冬季の飛ぶ音だけが響き渡る。
彼らが留まるのは宴の最中に見つけた崖下の洞窟の前。
「さて、あの洞穴から何が出てくるのやら。楽しみですねえ」
ふしゅうと溜息つくような音がして、穴の中から漆黒の瘴気が噴き出してくる。凝った瘴気が大気を満たし、おどろおどろしい雲が月を隠してゆく。
「…第二陣、ですね」
一息入れる間もないまま、次の敵が猟兵たちの前へ姿を現す。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 集団戦
『濁業仙人』
|
POW : 業雷衝
自身の【理性】を代償に、【業(カルマ)】を籠めた一撃を放つ。自分にとって理性を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD : 業濁瘴
【漆黒の瘴気】を解放し、戦場の敵全員の【生命力】を奪って不幸を与え、自身に「奪った総量に応じた幸運」を付与する。
WIZ : 呪仙痕
攻撃が命中した対象に【激痛を与える呪詛の刻印】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【刻印の拡大】による追加攻撃を与え続ける。
イラスト:猫背
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●濁業仙人
漆黒の瘴気が夜天を満たしてゆく。
中空に浮かぶ月は悪業凝った瘴気に隠され、清新だった森や川の香りは汚濁した臭気にとって代わる。
「天高く浮かぶ月に響く声……」
「見よ、あの魂たちの穢れ無きこと」
「おお、おお……反吐が出るのお」
岩頂の居並ぶ英傑たちの、その内奥を見通すかのように。濁業仙人たちは目を眇めてにちゃりと黄色い歯をのぞかせる。
「あの者たちも…仙人だというのか…! …っぐ!」
嘆く英傑の一人が、顔を歪めて膝をつく。拡がる瘴気が、未だ修行の身たる英傑たちに重くのしかかる。
ひとり、またひとり。
英傑たちは膝を折る。
瘴気はこの場にとどまり、長く続けば英傑たちにも影響が出るだろう。勿論、今回は英傑たちに無理をさせるわけにはいかない。
猟兵たちは、今度は自分たちの力だけで立ち向かう。
討ち果たせるのは、猟兵たちだけなのだから。
下原・知恵
「ハッ! 仙人とは言わず、一万人くらいで掛かってこいよ」
・瘴気に立ち向かう英傑たちに、祖国解放の為に戦い続けてきた若かりし頃の自身の面影を重ねている
・「迷彩」技能で身を隠し、濁業仙人の死角から奇襲をかけながら登場。ワサビニコフ小銃が火を噴いて瘴気のもとを貫かんとする
・他PCとの連携を歓迎する:もしも僚友と連携しているのならば、自らおとりになってダメージを一手に引き受ける。ゴリラめいて強靭化した巨躯が、いずくんぞ瘴気に屈しからむ(いや、屈しない)
・相手の攻撃も強すぎてこちらが死にかけようとも「戦場の亡霊」を発動して、反撃を試みる
「よく狙えよ、まだ俺を殺せてないぞ。心臓は、ココだぜ?」
鳴上・冬季
◎
「邪仙ごときがよく吠える。封神台なくば封神されぬと思い上がっておるのではあるまいな」
口元歪め
「貴様らのような邪仙を見逃しては仙の名折れ。貴様らにふさわしい末路を与えてやろう…我に下れ、哮天犬」
UCで宝貝・哮天犬(飛行可能な自立思考型犬型宝貝、人の騎獣になれるほど大きくその爪と牙でたやすく敵を引き裂く)創造
「我が敵全てを引き裂き喰らい尽くせ…行け、哮天犬」
哮天犬に敵を鎧無視・無差別攻撃で殲滅するよう命じ自分は竜脈使い更に哮天犬を強化して継戦能力高める
敵の攻撃は黄巾力士にオーラ防御で庇わせる
「犬にも劣る邪仙など、哮天犬に殲滅させれば充分です。花狐貂では他の猟兵の戦場を奪ってしまいますからね」
嗤う
七篠・コガネ
◎
暗い闇の中には光が必要だ
前も足元も見えたもんじゃない
だから皆光を求める。僕だって未来へ進むための光になりたい
…そろそろいいかな。ブチ切れても
空へ飛び立って上から迎撃しましょう
当たるとヤバそうな一撃でしょうが要は当たらなきゃいいのですね
【一斉発射】で攻撃しつつ、避けきれない攻撃は蹴って【カウンター】
こんな汚ぇ瘴気、早いとこ掃除しないとね!
飛行時の超速で地面に向かって飛び降ります
演武の時とは比じゃないやつを見せてやりましょう
宛ら今の僕は落雷か隕石ですね!
そのまま敵の配置が固まってる箇所に向けて【踏みつけ】
センニンだとかよく分からないけど
せっかくの月見、邪魔をすんじゃねーゲロクソが!です
瘴気が広がる空は昏い。
墨のような闇が、瘴気が、英傑たちへとその魔手を伸ばす。修行を重ねる彼らですらも、未だオブリビオンを打ち倒すには至らない。己の手すら見えなくなる中で、微かな呻き声が七篠・コガネ(ひとりぼっちのコガネムシ・f01385)の聴覚センサーに刺さる。
さえぎるもののない宙の暗黒。しずかな孤独の中で探す光。そんな不安を、誰よりも知っているから。
――僕だって、未来へ進むための光になりたい。
再び背中の鉄の翼が広がる。空を駆るコガネの姿は一条の光になって、充填されるエネルギー弾は暗い空の中を流星の如く飛んでゆく。
「こんな汚ぇ瘴気、早いとこ掃除してやります!」
連続するエネルギー弾は花火のような音を立てて、空を舞う濁業仙人たちを狙い撃ちにしていく。弾は濁った瘴気すら撃ち抜き、散じてゆく。その弾を味方すら盾にして避け乍ら、邪仙の幾人かがさざめき嗤う。
「ほほ。見たことないがあれは宝貝人間なのかのお」
「愉快愉快。じゃが宝貝人間にやられる我らではない」
「――邪仙ごときがよく吠える。封神台なくば封神されぬと思い上がっておるのではあるまいな」
その濁業仙人たちの言を嗤うように、鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)の声が頭上から降る。風火輪の炎がその餓鬼のように浅ましい業濁仙人たちの顔を明らかにし、対する冬季の顔を妖しく浮かび上がらせる。その面には、常の飄々とした色とは異なる、歪む口の端。
明らかな侮蔑と、嘲笑。
「貴様らのような邪仙を見逃しては仙の名折れ。ふさわしい末路を与えてやろう」
冬季の長い指と指の間に白い靄がかかったかと思えば。軽い破裂音と共に中空へと踊り出したのは犬型宝貝「哮天犬」。尻尾を揺らしながら冬季の周囲を駆けるようにじゃれつくように、その巨躯を空へと滑らせる。
「我が敵全てを引き裂き喰らい尽くせ、哮天犬」
ひとたび命が下りれば、哮天犬はコガネの弾で散り散りになった業濁仙人たちめがけてその鋭い牙を剥く。弾を避け後退する邪仙を横からがぶり、攻撃しようと伸ばした腕をがぶり。一体ずつ、だが確実にその命を絶っていく。
空はいかん、地へ降りようと岩崖へ後退する業濁仙人たちのその背後から、さらに奇襲。邪仙自らが目くらましに満たした闇のような瘴気に身を隠して気を狙っていた、黒い影。
比喩でなく、本当に黒い。
「ハッ! 仙人とは言わず、一万人くらいで掛かってこいよ!」
軽く笑ってワサビニコフ小銃の銃口から火を吹かせるのは下原・知恵(ゴリラのゲリラ・f35109)。地上で膝をつき倒れ伏す英傑たちを背に護る彼は、どう見てもゴリラだけれど。彼は、かつて祖国のためにその身を投げ出して戦った英雄でもある。隆々の背中越しに英傑たちをちらり振り返る彼の眼は優しい。自分たちの国を案じて日夜修行に励む英傑たちを、自分と重ねずにはいられないのだ。
「若造が…なめるでない!」
その知恵めがけて悪業仙人たちが邪気を放つ。己の理性を犠牲にして放たれる圧はすさまじく、知恵は小銃を平に構えて防御に徹するほかなくなった。
「ぐっ…!」
圧される知恵を見下ろす悪業仙人の眼は獣のように血走って。兇悪な本性を剥き出しにけたたましく笑声を響かすその姿はあまりに浅ましく――それを見た冬季は、愉快そうに嗤う。
「ちっぽけな理性を犠牲に得た力などたかが知れていますね。哮天犬に殲滅させれば、充分」
冬季が差し向けた哮天犬の鋭い歯牙が、堕ちた仙人の横腹からがぶり咥えてその身を裂いて。理性も失った哀れな邪仙が、烟のように儚く空へと散っていく。
「すまねえ、助かったぜ」
知恵も英傑の守りに徹した戦い故に後れを取ったが、今度は反撃に転じる。亡霊を召喚して地上に降りくる悪業仙人たちを翻弄しながら、二挺のワサビニコフ小銃で制圧していく。
「おい仙人ども! まだ俺を殺せてないぞ。心臓は、ココだぜ?」
とんと心臓に親指向ける知恵の余裕の笑みを見て、悪業仙人たちは歯噛みする。けれど地上からの機銃、空からのエネルギー弾、その間をすり抜けるようにしてとどめを刺す哮天犬。そのすべてに対応するのは、いかな達人と云えども不可能だ。
次第に減ってくる敵を見回して、コガネの目がちかちかと明滅を始める。
「…そろそろいいかな。ブチ切れても」
コガネの胸の内、激しい回転音のような音が鳴り響く。内蔵されたコアマシンが急激に電気エネルギーを溜めていく音だ。コガネの中の“怒り”が目に見えるエネルギーとなって発散されるかの如く、髪も、目も、機械の身体もその内側から激しい光を放ち始める。
「センニンだかなんだか知らねーですけど、せっかくの月見、邪魔をすんじゃねーゲロクソがああぁぁ!です!!!」
もはや誰もが目を開けていられなくなるほどの白い光の中で、コガネの声だけが轟き渡る。眼下に固まる十数人の悪業仙人めがけてぐぐと躰を傾け、背中の翼が瞬いた瞬間に、空に現れる光の尾。大気との摩擦熱で白く燃え上がりながら、邪仙を巻き込んで地上へ落下するコガネはさながら隕石。
激しい衝突音は、先の戦いで穿った罅を今度こそ致命的なものとしたことを如実に表す。衝撃に伴い砕け散った大きな岩塊が、大河に落ちる水音が弾ける。
「……結構崩れましたね」
空に浮かぶ冬季が、はて英傑たちは無事なのかと岩崖へと目を遣る。砂塵けぶるその奥には、座り込んだり横になったりしながらも、確かに人影があった。コガネが光り始めた時に、長年の経験から危機を察した知恵がその怪力を発揮して英傑たちを奥へと避難させていたようだ。大きく穿たれた穴からふしゅると煙立つのを見て、知恵は恐る恐る穴の中を覗き込む。
「――……派手にやったなあ、兄ちゃん」
けほ。
穴の中で、コガネがぶすぶすと黒い煙をふかす。
「……ヒなん誘どウ…ありガとでシタ……」
ごふん。ひときわでっかい煙がその口からこぼれる。
あれだけの威力を放つには、その身体への負荷も尋常じゃないのだろう。よっこらしょと穴に降りてコガネを担ぎ上げながら、知恵は未だ戦いつづく空を見上げる。
少し晴れた瘴気の間から、月の明るい光が差し込んできた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ラファエラ・エヴァンジェリスタ
反吐が出る、か
此方の台詞だ
貴公らの家には鏡のひとつないのかね
英傑たちよ、下がっておいで
貴公らが折角鍛え抜いたその業を使うにはあまりにもお粗末な相手であるゆえに
彼らに語りながらオーラ防御を付与して逃そう
嗚呼、息が詰まるな
「黒孔雀」で口元を覆いつ
我が騎士よ、撫で斬りにしてやるが良い
全力魔法でその刃に風属性攻撃を付与しよう
瘴気を幾らか祓えるだろうかね
オーラ防御を与えてその背を見送り、
私も愛馬に騎乗し疾駆して、踏みつけさせて数を減らすのを手伝おうか
「茨の抱擁」にて吸血を試みつ、嗚呼、嫌だ
これなら先の鳥どもから血を巻き上げるほうが未だ幾らか気分が良い
仙人ども、覚えずとも構わぬが
私は醜いものが嫌いなのだよ
ユフィルリート・ミルティリエール
◎
禍々しい姿に気味の悪さは感じる
けれど怖いよりも許せない気持ちの方が強かった
『妹がいるもので』
そう言って私を心配そうに見つめてくれた人
私の為に膝をついて話を聞いてくれた人
優しくしてくれたあの人達が兄さまや姉さまと重なるほど、喪うことをこの心が拒絶する
あの人達と逆の方向に意識を向けさせなくちゃ
避けた攻撃があの人達に当たったら意味がない
「…っ」
私はまだ痛みに怯えてる
他人の痛みにだけならともかく自分の痛みにも
だけどこれ以上瘴気には皆耐えられない
「…ミルフリューア、お願いっ!」
魔鍵を真っ直ぐ敵に投擲(UC発動)
握る武器無しの私は無防備
それでも
技すら未熟な私だから
私を全部差し出す気で戦わなくちゃだめ…!
空を満たした邪仙が、空中戦を避けて地へと下り立つ。激減したものの未だ数多くいる仙人らが下りてくるさまは、月から姫を迎えに来たという天人の下向とは似ても似つかない。
その姿に、嫌悪に近い気味の悪さを感じながらも――ユフィルリート・ミルティリエール(たとえ小さな翼でも・f34827)は、決して目を逸らさなかった。
今も、この小さな背の後ろで倒れ伏す英傑たち。
――『妹がいるもので』
背の低い私に合わせて膝をついてくれたあのひと。心配そうに私を見つめたあのひと。
その瞳が、その声が。
長くお会いしていない、お懐かしい兄さまと姉さまに、重なる。
「――退けない」
声に出してみる。あのひとたちを傷つけたオブリビオンを、赦せない。赦さない。倒さなくちゃ。あのひとたちを護るために。
オブリビオンの前に、立たなくちゃ。
「…っ」
ふと視界が揺れた。
その原因が己の足の震えにあることを、ユフィルリートは認めざるを得なかった。そしてその震えの原因が、自分の中に未だ蔓延る恐怖であることも。
「震えておるのお、震えておるのお。清きものは、まこと儚い。哀しいほどに無力じゃの」
「我らのように深淵に堕ちねば至れぬ境地もあるというに」
邪仙の嘲笑が夜闇に響く。黒い瘴気の這い寄る中で、こころの柔いところを無遠慮に鷲掴みされるような。未熟、半端、無力――あのころの冷たい目と重なって、ユフィルリートのこうべが垂れてゆく。
そのユフィルリートの下げた視線の先に、繊細なレースが現れた。
「――貴公らの家には鏡のひとつないのかね」
貴公らが至ったのは反吐が出る見目になる境地だよ、と黒孔雀で口元覆うのそのひとは、ラファエラ・エヴァンジェリスタ(貴腐の薔薇・f32871)。その繊いからだの何処から出せるのか、凛とした声が瘴気の中でも響きわたる。
「英傑たちよ、下がっておいで。貴公らが相手するにはあまりにもお粗末――『儚い』我らで十分だ」
もう動けぬ英傑たちの、けれどその誇りを守るがためにラファエラは声をかけながらその指先がひらり舞わす。人知れず届いたその光は、英傑たちを護る薄い障壁となる。それにはっと気づいたユフィルリートが面を上げれば、優雅に傾けられた白い顎先がユフィルリートの方へ向いて。
その整った赤い唇が、咲った。
「そうであろう? ――我らは、ひとりではないのだから」
その声音が纏うやさしい響きに、ユフィルリートは魔鍵を握るその手に力を込める。
ひとりじゃない。
たとえ弱きものと侮られたとしても、助けたい誰かがいれば。共に立ち向かってくれる人がいれば。
ひとりじゃ、ない。
「ミルフリューア、お願いっ!」
剣の如き魔鍵が、ユフィルリートの手を離れて真っ直ぐに飛んでゆく。目映い光が剣を包んだかと思えば、剣の先から瓦解するようにこぼれ咲くは白薔薇の花。武器を投げ無防備になったユフィルリートの、そのこころの体現のような――儚いと嗤われようとも、半端と蔑まれようとも――最後には咲いた白い翼のように、清浄な花片。
「お願い、しますっ!」
「頼まれよう。我が騎士よ――祓ってしまえ」
散り散りに舞うその白き花弁の渦巻く中を、騎士を乗せた白馬が蹄に火花を散らすように駆けてゆく。その背を押すように生じる風が、螺旋を描く花びらを騎士の後ろ手に構えた刃に纏わせて――ひと振り。目には捉えることのできない風の刃の在り処を、可憐な花びらが教えてくれるように。白い空白が瘴気を切り裂き霧散させ、その奥に立つ邪仙をも断ち切った。
「むう…っ! 退け!」
「まだ、ですっ!」
急ぎまた空へ逃げようとする残りの邪仙の行く手を、ユフィルリートの果敢な意思を受けた可憐な花弁が阻む。そうして足止めされた邪仙の背後から、今度は黒馬が背後から踏みつける。踏みつけられた邪仙の影から密やかに這い出た黒き茨はひゅるりひゅるりとその腕や首を絡めとって――断末魔すら聞こえぬように、最期の抱擁。
「嗚呼、嫌だ。――覚えずとも構わぬが」
流れてくる赤きものの饐えたような味に、ラファエラが心底嫌そうな声を上げて――それが、邪仙への最期の手向けとなる。
「私は醜いものが嫌いなのだよ」
さあっと。
風にひらり舞う白い花弁が、瘴気を掃いていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
葬・祝
【逸環】◎
くふふ、大袈裟ですねぇ
これくらいは児戯のようなものですよ
厄災たるこの身が、この程度の瘴気で怯むなんてお笑い草です
カフカには慣れがありますし善神の類ですからねぇ、瘴気に冒される訳もありませんよ
クロウだって平気でしょう?
君、私の彼方の姿の隣で普通に話していたんですから
……ふふ、折角です
真っ向勝負しましょう?
さて。クロウ、ちょっと遊ぶので身構えてくださいね
【封印を解く】封印具の鈴を外し青年姿へ
UC+【恐怖を与える、精神攻撃、呪詛】
同じ瘴気なら強い方が勝つのが道理ですもの、ね?
あとはお任せしますよ、御二方
過去形のそれ
(今は、私のもの)
嬉しくないと言ったら嘘になる
決して表に出すことはないけれど
杜鬼・クロウ
【逸環】◎
よく持ち堪えてくれたな、後は俺達に任せろ(英傑へ
゛本当の゛祝と話した時ほどではねェが、瘴気の進行が一番早ェのは俺なハズ
祝、まさか…!ッ、その瘴気(本気かよ…格が違う)
大人姿の祝はあまり視ない
(…
今、この力を使うなら
祝と歩むと決めたカフカは何を想う?
手ェ借りるぜ、桜鬼の姫君サンよ
お前が居なくとも
共に戦場を)
…半分不正解だぜ
カフカにはこの力を秘密にしたくなかっただけだ
(同じ女を愛した者同士
今映る景色は
きっと似通ってる
その桜は何色か)
短期決戦狙い
一路平安を握り
赫月と常春桜の加護で跳ね返す
一気に敵の懐へ
玄夜叉で瘴気斬り裂く
ハッ、お似合いだよ。お前達は
カフカと共に朱色の焔を剣に出力させ袈裟斬り
神狩・カフカ
【逸環】◎
この程度の瘴気は今更だなァ
こっちにゃこいつら以上の手練がいることだし
ほう、勝負かい
見ものだねェ
ま、どっちが勝つかは目に見えてるがな
…兄さん、さっきから狙ってンだろ?
いい趣味してンな
わざわざおれの前でそれを使うかい
ふふ、まあ綺麗なもンだ
愛していた女の桜だからな
(吹っ切れたわけではないけれども
言葉は過去形で
表情も得意げなもの
進む道の連れはいるから)
ま、あんまり遊んでると兄さんが辛そうだからな
羽団扇を扇げば旋風を起こして
斬り込む兄さんを援護してやろう
風に晒されればされるほど
増えていく裂傷と
目眩ましで視界を塞いでやろうか
前が見えなきゃ何も当たりゃしねェや
今だ、クロウの兄さん
引導渡してやろうぜ
瘴気の切れ間から月がのぞく。
降り濺ぐ月の光に熱は無く。けれど一条の光がもたらす明るさは、なぜかほのりと温かいものを人々の胸のうちへ誘う。
それは、この手に届かなくても確かにあるもの。
「ええい、弱仙どもが! 求めるものすべてに恵みがあると思うでないぞ!」
「我ら今は撤退しようとも、おぬしらの馘は必ず必ず――」
「くふふ、大袈裟ですねぇ」
数を減らしても口の減らぬ業濁仙人たちの世迷言を途中で断ち切る笑い声。
葬・祝( ・f27942)の口元に添えられた袖が、するりと下がって半月描く唇を露わにする。
「あァ、この程度の瘴気は今更だなァ」
のんびりとした声で同意する神狩・カフカ(朱鴉・f22830)に「ねえ」と微笑んで、ちらり。邪仙に向けられた視線は冷たい色で、ぞっとするほど冷々と底知れぬ何かが光る。途端、ひとりでに響く鈴の音が辺りに満ちる。
ちりり。
ちりりりり。ちりりちりりりりり。
くふふ。
「祝、まさか…!ッ、その瘴気」
傍らに立つ杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)が思わず腕で口元覆えば、祝のほっそりした人差し指がふわり唇へと添えられて。濡れたようなそのいろが、再びうすく開いて艶気を含んだ低い笑い声へと変わって、変わって――高下駄履いた愛らしい少年姿がいたところに、玲瓏たる青年の姿が現れる。その青年から溢れる耐え難い圧迫感が、周囲の瘴気を圧し退けて満ちてゆく。ひとたび触れれば理由もわからず叫び出してしまいそうな、恐怖。
「……ふふ、折角です。真っ向勝負しましょう? クロウ、ちょっと遊ぶので身構えてくださいね。君、私の彼方の姿の隣で普通に話していたんですから、平気でしょう?」
にこりと笑みを残して祝は一歩、踏み出す。
ただ、歩いているだけなのに。祝が歩み進めるほどに、周囲にはズシリと肉から骨へ、骨から臓へ、大磐石の圧迫がのしかかる。空を舞っていた悪業仙人も、地に舞い降りた悪業仙人も。そのすべてが、地へ伏し頭を地に擦り付けて恐怖に戦慄えあがるほかなくなった。
「同じ瘴気なら強い方が勝つのが道理ですもの、ね? あとはお任せしますよ、御二方」
くふりと祝が笑んで数歩後ろの二人へ振り向けば、カフカは腕組みのままあっさり頷いて。
「ま、どっちが勝つかは目に見えてたな」
「……こっわ」
巫山戯たようにぶるり肩を震わして笑うクロウだけれど、強ち負荷がないとは言えなくて。この瘴気の中でその身を護る術を思案するクロウの指に触れたのは、桜が描かれたあの守り。
忘れることも叶わぬほど芯にある、ひとつきりの想い。
( ……今、この力を使うなら。祝と歩むと決めたカフカは何を想う? )
ちらり隣に立つカフカを横目に見るクロウのこころは複雑で。
誰にも教えたくない、ふたりの秘密。
その証をその手に握って。クロウは軽く飛び込むように邪仙へと漆黒の大剣を振り下ろす。
ひらり。
桜の花弁が夜闇に静かに淡く咲く。
ほろほろと。
散る散る満ちる、花霞。
咲いた花は夥しい数の蝶の乱舞のように敵を切り刻む。その間を縫うようにクロウが剣を一振りすれば、残った瘴気は霧散してゆく。
束の間、ぽかりと空いた天空から落ちた月の光が花を淡い金色に縁取って。
――なあ、同じ女を愛した者として
お前にはこの桜がどう見える?
「…兄さん、さっきから狙ってンだろ? いい趣味してンな。わざわざおれの前でそれを使うかい」
クロウの頭上から、苦い笑いとも極りわるげともつかない複雑な笑いかたが落ちてくる。見上げれば、月明りを受けてカフカが赤い翼を広げてる。飄々と、いつも何食わぬ顔でいるカフカのその表情を、確と見て――クロウは不敵に笑って見せる。
「…半分不正解だぜ。カフカにはこの力を秘密にしたくなかっただけだ」
クロウの周囲を護りながら飛び交う桜。それらを乱舞させるように、カフカの羽団扇から巻き起こる風がさらに敵の乾いた膚をぱっくり裂いていく。
風が吹くたびに花びらはくるくる舞いながら、白い頬を転げ落ちる涙のように。月の光とともに、零れ散っていく。
「――ふふ。まあ、綺麗なもンだ。愛していた女の桜だからな」
さらり肯定した言葉は、けれど過ぎ去った香りだけを残して。その金色の瞳に映る先は――進む道の連れ。
銀の瞳に、金が重なる。
小憎らしいほど、得意げないろ。この手のなかの、愛しい子。
祝がそっと隠したその袖の奥では、きっと咲き誇る花唇。
(今は、私のもの)
未だこの気持ちを現すすべがないけれど。いつか、きっと。
そんなカフカと祝はまぶしくて清らかで、泣かせるほど切なくて。クロウは大剣を斜に構えて背中越しに笑って見せる。
「ハッ、お似合いだよ。お前達は」
ぼう、と剣を包む朱色の焔。振り上げた勢いそのままに、左上から右下へ、右上から左下へ、袈裟に切り込み残る敵を凪いでいく。その一振りごとの焔を吹き上がらせるように吹く風が、炎の津波を起こして。
すべからく紅蓮にのみ込まれたあとに残るのは、煌々と輝く月だけだった。
------
●名残月
「本当に…猟兵の皆さまには、感謝の言を尽くしても尽くしきれません」
ずらり居並ぶ頭天が、律儀に拱手を捧げている。
猟兵たちは、堅苦しいのは苦手だ気にすンなとかるく手を振ったり、いいですいいです顔を上げてくださいと慌てたり。
三者三様、種々様々。
けれど誰かが天を指差し一声かければ、皆が一様に空を仰ぐ。
――ねえ、月がきれいだよ。
まあるくきいろいお月さまが空にぽっかり浮かべば、ひとのやることは決まっている。
さあ、今度はお酒も如何?
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵