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真夏の夜のスターマイン×スプラッシュバトル!!

#カクリヨファンタズム #お祭り2021 #夏休み #プレイング受付:8/5(木)夜23:59まで #再送受付:【9日(月)8:31~11日(水)23:59】

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#夏休み
#プレイング受付:8/5(木)夜23:59まで
#再送受付:【9日(月)8:31~11日(水)23:59】


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 ヒューーーー、パァン! ドン、ドン!
 カクリヨの空に色とりどりの花火が打ち上げられる。
 これはこの世界が最も大きな滅びの危機を脱した事、そして先日の水着コンテストも大盛況だったことを祝し、妖怪親分たちが用意してくれた「妖怪花火」だ。
 一見普通の花火と極めて近い見た目をしているが、妖怪花火というからには人間たちをびっくりさせる仕掛けが隠されている。
 なんとこの花火、一緒に乗って打ち上げられたり、はたまた花火が描き出した模様の上で空中散歩を楽しめたりできるのだ!


「となればやる事はひとつだろ」
 既に水着に着替え、浮き輪まで抱えた浮かれポンチが云った。ジャスパー・ドゥルジー("D"RIVE・f20695)である。
「花火を利用して立体バトルだ。それも夏らしく水鉄砲でスプラッシュバトルだ」
 云うが早いか、ジャスパーは集まった猟兵達に風船を手渡して行く。
「ルールはこうだ。各自両腕に二つの風船をくくりつける。腕に当たる形状がねえ奴は、まあ身体のどこかにくっつけてくれりゃあいい。んで、対戦相手の風船を割り合うんだ。二つとも割られた奴から負けだ。
 武器は各自で用意してちょ。水鉄砲っていったけど、水を利用したものなら他のやつでもいいと思う。たとえばユーベルコードで水の手裏剣を作って投げるとかさ……ん? そうそう、ユーベルコード。折角立体バトルなんだから、ユーベルコードくらい許されてもいいだろ?」
 だって全力で遊んだほうが絶対たのしーじゃん、とジャスパーは云う。

「ああ、ただ現地の妖怪も一緒に参加してるみたいだから、そいつら相手の時はさすがに手加減してやって。こないだの戦争じゃ自分たちから骸魂に乗っ取られたくらいだし、ふつーの人間よりは丈夫だとは思うけど。
 まあ奴らもグループでバトってる猟兵のとこに割り込んでくるほど命知らずじゃねえだろうし、当たるとしたらフリー……ソロで参戦してる猟兵かな? 妖怪連中を楽しませてやりたいってんなら一緒に戦ってそれなりに健闘させてやってもいいんじゃねえかな。もしソロ参加で本気でやりあいてえってんなら、俺らが相手になってやるし」
 俺らとは、ジャスパーをはじめとしたグリモア猟兵のことらしい。
 要は、猟兵はソロで参加してもグループで参加しても楽しめる、くらいに受け取って構わないようだ。

「バトルステージは花火が映える夜の浜辺。空が戦場な分広々してるけど、代わりに遮蔽物になるものは何もない。んー、まあ、敢えて云うなら花火で水をガードするくらいは出来るかもだけど、身を隠すのは無理だな。敢えて地上でバトルってのも勿論ありだ。
 風船は水の武器で割った場合のみカウントされる。故意に別の方法で割るのはルール違反だぜ。つっても順位とか決めるような厳格なバトルじゃねえから、各自楽しんでやってくれればいいと思う」
 だって、そのために用意してくれた花火なのだから。
 猟兵と、現地の妖怪たちが「楽しかった」と笑顔で云ってくれるのが、親分たちにとっては一番嬉しいに違いないのだ。


ion
●お世話になっております。ionです。
 水着ではしゃぐ大乱闘バトルの幕開けです!!

 ~簡単ルールまとめ~
1.参加者はみんな、両腕に風船をつけているよ。
  腕がないキャラクターさんでも、身体のどこかにふたつだよ。どこにつけても当たりやすさは変わらないよ(判定には影響しないよ)
2.みんなは「水にまつわる武器」を持っているよ。
  基本は水鉄砲だけど、他のものでもいいよ。
3.武器で対戦相手の風船を割ろう! ふたつとも割れちゃった人が負けだよ。
4.お空には妖怪花火があがっているよ。一緒に打ち上げられたり、花火が描く模様の上を歩いたりして、立体的なバトルが楽しめるよ。
5.猟兵同士のバトルではユーベルコードの使用も許可されているよ! 大人げない? 誉め言葉だよ!
6.水の武器以外、たとえばパンチとかで風船を割るのはだめ! 花火を打ち上げている親分さんたちにメッてされちゃうよ!
  

 ……大乱闘バトルとはいっても描写自体は基本、他グループ様のかけあわせなどは行いません。
 ソロの方は現地の妖怪さんとバトルだったり、希望があれば当方のグリモア猟兵(ジャスパー・リア・リリー・充)とのバトルシーンとして描きます。呼べるのは1グループ1人まで。
 一般妖怪さんにユーベルコードを使うのはちょっとかわいそうなので、ユーベルコードを使ってはちゃめちゃバトルをしたい! という人はグリモア猟兵を呼び出してください。もちろんグループバトルに招待頂くのも大歓迎です。

 ソロ・グループ問わず、勝敗はプレイング内で明記されていればその通りにしますし、書いてなかったらプレイングとダイスとノリでこちらが決めます。
 甲乙つけがたかったら「戦いはまだまだ続く……!」的な描写になる可能性もあります。ノリです。楽しいのが一番ですからね!
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第1章 日常 『猟兵達の夏休み2021』

POW   :    妖怪花火で空へGO!

SPD   :    妖怪花火の上で空中散歩

WIZ   :    静かに花火を楽しもう

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ふとしたきっかけで簡単に滅びかけるこの世界も、今宵はその片鱗さえも伺わせない。
 昼間は二千人近くの猟兵たちが参加する水着コンテストに大盛り上がりした妖怪たちだが、その顔に疲労の気配は微塵もなかった。
 ――だって、お楽しみはまだまだこれからだから!
「今度は猟兵たちの水鉄砲バトルだってさ!」
「さっすが我らが親分たち。粋な事しやがるぜ!」
 夏のビーチに季節外れの雪女がそわそわと身体を揺らせば、身体の透けた犬がヒトの言葉を続かせる。
「見学も飛び入り参加も大歓迎だって。雨女ちゃん、一緒にどう?」
「そんな、猟兵さんに水をかけるなんて恐れ多いですよう」
「そーんなこと云っちゃって。ホントは混ざりたくてうずうずしてるの知ってるっすよ」
 ぺちゃくちゃ、わちゃわちゃ。大盛り上がりの妖怪たち。
 そんな自由な彼らだって、猟兵たちがこのビーチを訪れた途端、諸手を挙げての大歓迎!
「わー、猟兵さんだー!!」
「あ、あの人水着コンテストでひときわ輝いてた人! 今回も頑張ってね!!」
「はいはーい、見学する人は危ないからテープの前には出ないでねー。サインのお願いはバトルの後でねー」
 大きな色紙を両手で抱えた子供の妖怪が、蜘蛛女に押し戻されてえーっと不満顔。

 妖怪たちを見る事ができるヒトで、愛すべき二つの故郷を救ってくれて。
 その上こんな楽しい催し物をしてくれる猟兵たちは、今や妖怪たちの憧れの存在なのだ。
 そんな彼らを楽しませるべく、そして何より自分たちが楽しむべく。
 仁義ある戦いが今、スタートする!

 最初の花火が打ち上げられ、描き出された空へ昇る階段は、さながら戦いの開始を告げる狼煙のようであった。

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 プレイング受付:8/2(月)朝8:31~
==================================
深山・鴇
【八重】
(パーカーにサーフパンツ、裸足)
さて、俺は身を守る術がないからな、フィジカル面でなんとかやるか
武器は二丁拳銃、刀と違うがまぁなんとかなるだろう

一服してたら一つ落とされたので、全力で雲珠君を追う
悪路もなんのその、当たらずとも水浸しにする気概
隙を見て一気に間合いを詰め一つもらいだ

ほう、聞いてあげよう
あー…(チラっと逢真君の方を見遣る、超悪い顔で笑っているのを見た)
よしきたやろう(いい笑顔)

なんっだあの弾幕、俺じゃなかったら避けれんだろ
(ギリ避けて迫りつつ、己は陽動。背に隠れる雲珠に指示)
雲珠君、今だ!

あ、あー(やられたのを見て、この際顔を狙って水鉄砲を撃つ)
はは、水も滴るいい男だな、逢真君


朱酉・逢真
【八重】
心情)ああマジ夜で良かった。サテ・整備された道ですら歩いてるだけでふらふらンなる俺だ。砂場なぞ走ったらコケて足を折る。なンで逃げるのはナシ、全力で攻めるぜ。
行動)海を背にして座り〈水〉を操る。STGの時間だ。水弾水球どっさり作って360度撃ち出そう。もちろんズルはナシ、道は残す。避けられるよう調整はするさ…簡単にとはいかンがなァ!
ひひ、ヒヒヒ! さァさ・坊も深山サンもかかっておいでェ、かみさまが相手してやンよ。それぞれ一発いれりゃア俺の負けだ。俺の水タンクは海そのもの。残弾は尽きンぜ、きっちり仕留めなァ!
(最後、油断したすきに水かけ風船割って) ひひ、旦那もなァ! これで仲良く全滅さ。


雨野・雲珠
【八重】
某浮世絵師のお兄さんからごっついウォーターガンを拝借です!
あっちょっと重っ…
【四之宮】【枝絡み】を防御や移動に使えるのが
俺のあどばんてーじです。

というわけで余裕しゃくしゃくの深山さんの風船に一発入れます。
ふふ。…ってキャーー!
一足飛びでわけわからない距離の詰め方してくる!
しばらく縦横無尽に逃げ回りますが
速攻ずぶ濡れにされ、ひとつ割られたあたりで
は…話を聞いて下さい(命乞い)
ここで俺を落とせば、あとに残るのはかみさまの厚い弾幕。
そう…手を組みませんか。

枝で壁を作って深山さんの前進を助けつつ、
合図で飛び出します!
お覚悟っ───あー…!(やられた)

ふふ、あはは!
珍しいものが見られました!




「これがあれば負け知らずです」
 童子姿の桜の精、雨野・雲珠(慚愧・f22865)はどこか得意顔。でっかいガラガラ福引器――もとい箱宮と共に背負ったのはウォーターガン。でかい! ごつい! カッコいい!!
 親愛なる浮世絵師から拝借してきたという大きなウォーターガンは、小柄な雲珠が持つと更に一回りも二回りも立派に見える。
「あっちょっと重っ……」
 思わずよろけそうにもなってしまうけれど、これがあればきっと勝利間違いなしである。
 さてさて雲珠がふんすふんすと気合を入れる頃、対照的に余裕綽々、紫煙くゆらす男もいた。煙草屋であり探偵業も営むという、胡散臭さと怪しさをかけあわせたような男である。毛先にいくにつれ瞳と同じ桃色に染まる髪が目を惹く彼は深山・鴇(黒花鳥・f22925)。サーフパンツにパーカー合わせ、足元は裸足のラフな格好である。
 彼は雲珠と撃ち合う気がないのか。答えは否である。その腰にはいつでも抜けるように二丁の拳銃がスタンバイしている。刀とは勝手が違うが、まあ扱えぬこともないだろう。ただし搦め手に長ける雲珠と違い、自分は身を護る術を持たない事を知っているだけである。とあればあとはフィジカル面で何とかするだけ。馴染みの味が、馨が、煙が五感を満たせば、それだけ感覚も研ぎ澄まされるというものだ。
 ただし。
「隙ありです」
 無慈悲な水が雲珠によって放たれ、今まさに煙を吸い込もうとした鴇の手元を撃ち抜いた。
「……あ」
 ぱん、と音を立てて割れる一つ目の風船。ちいちゃくガッツポーズをする雲珠。
「ふふ。やりました」
「へえ」
 にっこり。楽しそうに、とても楽しそうに鴇が笑った。
 笑って、花火の路を一歩、踏みしめた。
「これでもうひとつも……ってキャーーーー!!!」
 すかさず二発目を放とうとした雲珠は、いきなり目の前に鴇が迫ってきたのだから大慌て。
 悪路も何のその、的確に足場を選び、たった一足飛びで尋常ではない距離の詰め方をしてくる。
「随分と水浸しになりたいようだね、雲珠君」
「なんて身体能力と脚の長さですか!」
 わいわい、きゃあきゃあ始まる空中追いかけっこを、もう一人の参加者は海に背を向けてどかりと座り、見上げていた。
(「……元気だなァ。いくら昼間ほど暑くないとはいえ」)
 不自然なほどに色の白い男である。およそ夏のビーチなどというシチュエーションに向いているようには見えない。
 彼は病毒の神であり、名を朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)という。そしてその性質と外見が示す通り、ヒトの云う健康やら壮健やらとは縁の遠い存在であった。
(「それにしてもマジ夜で良かった。昼間だったら今頃ふらふらンなって意識も怪しかった。とはいえ夜だからってあんな風に砂場なぞ走ったらコケて足を折ったに違いない」)
 逢真の視界の先では、今も尚鴇と雲珠が熱い攻防戦を繰り広げていた。箱宮から伸びる桜の根が鴇に絡みついて動きを封じるが、鴇はあっという間に振りほどいて二丁拳銃から激しい水撃の雨を降らせる。途端に雲珠はずぶぬれで、どさくさに紛れて風船も一個破裂してしまっていた。
「ああ!」
「さて、これで同点だ」
 デカブツを二つも抱えて縦横無尽に逃げ回る雲珠もすごければ、桜の眷属たる雲珠のシガラミを一瞬で突破する鴇も人間業とは思えない。あの二人に目をつけられてしまえば、逃げ惑う自分はあっという間に袋のネズミだ。
(「となればすることはひとつ」)
 あの二人が互いの風船に夢中になっているうちに――全力で攻める。


「ま、待ってください。話を聞いてください!」
「ほう、命乞いかな? 聞いてあげよう」
 頼みの筈の武器を置き、両手をパーにして差し出す雲珠に、鴇はニヤリと悪い笑顔。
「ここで俺を落とせば、あとに残るのはかみさまの厚い弾幕。ひとりでの突破は困難です」
「弾幕? あー……」
 横目で逢真を見る鴇。一見静かに座っているだけにも見える逢真は遠目にも、とてもとても悪い笑顔をしていた。
 まだ暑さの残る熱帯夜を急激に冷却するような、笑顔だった。
「そう。手を組みませんか」
「よしきたやろう」
 差し出されたちいさな手を、間髪入れず握り返した。こちらも負けじととてもいい笑顔で。
(「んン? 気づかれたか? まァいい、サテ・STGの時間だ」)
 激しい攻防戦が落ち着いたのを悟る神だが、案外俗っぽいフレーズと共に権能の残滓を振るう。『水』は逢真の得意分野だ。液体ならば思いのまま。海から吸い上げられた水は水弾となり、水球となり、逢真の周辺を覆い尽くす。
「なんっだあの弾幕……」
「ひひ、ヒヒヒ! さァさ、さァさ・坊も深山サンもかかっておいでェ――……かみさまが相手してやンよ」
 逢真が手を宙めがけて振るうと同時、無数の水が四方八方、ものすごい速度で襲い掛かって来る!
 巨大な水球が足元を掬おうと迫り、鋭く噴射された水弾が風船をつけ狙う。
「俺じゃなかったら避けれんだろ、こんなの」
 辛うじて躱しながら距離を詰める鴇。二丁拳銃を構えた瞬間、水撃の雨は更に熾烈さを増して猛然と飛び掛かってきた。
 雲珠の操る枝が幾重にも絡みつき、壁を形成して鴇を護る。しがらみとは無い方がいいことも多いが、有った方が良いときもあるにはあるのである。そう、今とかね!
 雲珠の護りを受けて二丁拳銃が同時に水を放つ。ひとつは宙を舞う水弾に阻まれたが、ひとつは逢真の風船へと届いた。
「これで全員残り一つ。今は二対一だ……だが」
「そう。俺の水タンクは海そのもの。残弾は尽きンぜ。きっちり仕留めなァ!!」
 まるで悪の親玉のように振る舞う逢真だが、相手の『勝ち筋』は残してある。文字通り海を干上がらせる勢いで吸い上げれば逃げる場所さえ与えない事も可能だが、それでは面白くないじゃァないか。おかげで鴇は額に汗を滲ませ、雲珠の助けも借りながら何とか留まり続けている。
「それもそろそろ終いってとこか」
 無数の水撃が、四方八方から鴇を狙い澄ます。逢真の意識もが自分に全て集まったのを知覚した鴇は、にやりと口角を吊り上げた。
「雲珠君、今だ!」
「お覚悟っ!!」
 鴇の背にすっぽりと隠れていた雲珠が飛び出し、ウォーターガンを引き絞る。
「陽動か……!」
 雲珠はサポートに徹していたのではない。この時を狙っていたのだ。物凄い速度で射出される水が逢真の風船へと迫る。
「甘いねェ、坊」
 ぐにゃり、鴇を狙っていた水弾が空中で軌道を変える。
「えっ……あー……!」
 見開かれる目。二つ目の風船があえなく飛び散った。
「そっちの手はそれで全部かァ?」
「あ、あー……」
 秘策を破られた鴇がこの際だからとやけくそ気味に放った水が逢真の顔にヒット。
「わっぷ」
「はは、水も滴るいい男だな、逢真君」
 ぴしゅ。お返しのように放たれた水が、鴇の最後の風船を割っていた。
「ひひ、旦那もなァ! これで仲良く全滅さ」
「仲良く……?」
 鴇の前で逢真は両手をひらひらとさせてみせる。その手の風船は鴇が射抜いた一つめだけでなく、二つめも割られていた。
 雲珠の決死の一撃が、逢真へと届いていたのだ。
「なんだ、じゃあ俺の勝ちだったじゃないか」
「気づいてなかったンだろ? おあいこおあいこ」
 無言で水鉄砲を構える鴇。けらけらと水の球を宙に浮かべる逢真。
「ふふ……あはは!」
 雲珠が声に出して笑ったので、臨戦態勢だった二人もきょとん顔でそちらを向いた。
「何がそんなに面白いんだい」
「だって、なんだか……珍しいものが見られました!」
 ころころ笑い転げる雲珠。顔を見合わせた二人も、つられて肩を震わせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ダンテ・ホーンテッド
水鉄砲大乱闘?!楽しそうじゃねーか?!
さっき今年の水着でサーフィンした後だが俺様も参戦するぜ!

夜空の花火へ打ち上がり
ミント色の風船で弟ジークムントを思い出しながら
次々と水鉄砲で他の猟兵や妖怪達の風船を割り
妙にゴツくかっこいい造形の水鉄砲を二丁銃のように両手に持って
見ろよ二刀流ーやべー!とはしゃぐが
まじで?ウケるし!
とジャスパーさんにからかわれて妙に似たもの同士として何かを感じたのか
トゲみてーなスタッズで
自分の風船割るなよー
お前もなー
と言い合い後タイマンで戦う

ジャスパーさんと熾烈でハードロックに
激しく立体軌道的空中攻防戦してる内に試合終了

結果的に自分の風船を守りきり
やべー奴だなとお互いを讃える




 一目会ったその日から恋の花咲くこともある――そんな名キャッチフレーズがウツシヨにはあるというが、此度カクリヨに咲いた花は夜空を彩る火の花と、恋ではないが二人を揺さぶる想いの花であった。
「お」
「あ」
 やたらめったら体中に開けられたピアスと黒い宝石。黒い長髪は一部だけ違う色のメッシュ。尖り耳にカラフルな爪、水着に着替えても隠し切れないパンクロック精神まで、二人は実に、よく似通っていた。
((こいつ、絶対話が合う))
 本人たちもそう思ったし、多分周りもそう思った。それほどまでにシンパシーを感じたのだ。
 ファントムアメジストのクリスタリアンであるダンテ・ホーンテッド(黒い幻雷と紫水晶・f23827)と、ジャスパー・ドゥルジーである。
「なあ、あんたもこのあとのバトルやる?」
「当然。さっきサーフィンした後だがまだまだ動き足りねえ気分」
「マジ? ちょー元気じゃーん」
「ここで逢ったのも何かの縁ってやつだ」
「おう、派手にバトろうぜ」
 がっしと肩を組んで、二人仲良く打ち上げられていった。
 ちなみにこの二人、初対面どころかまだ互いの名前も知らない。


 ダンテの両腕にくくりつけられた風船は爽やかなミントカラー。弟を連想したダンテの眸が優しそうに細められたのはほんの一瞬のこと。
「っしゃ、やるからには遠慮は無しだぜ!」
 がしゃこんと構えるのはウォーターガン。ひとつだって背に背負って持つようなスケールのやたらでかくてごっついやつが、二丁である。
 試し撃ちとばかりに引き金を絞れば、遥か彼方の妖怪さんの風船が二つ同時に撃ち抜かれていた。
「見ろよ二刀流ーやべー!」
「うわやっべウケる。つかそのデザインめっちゃイカしてんな」
「あ? これ?」
 ダンテのウォーターガンには、どちらも稲妻のような紋様があしらわれていた。
「これ俺様がデザインしたやつよ」
「マジ!? あんたデザイナーなのか?」
「うんにゃ、イラストレーターってやつ」
「マジかあ。どーりでセンスぶっ飛んでると思ったわ」
「それ、誉め言葉だろ?」
「とーぜんよ」
 にししと笑い合う二人。繰り返すが初対面である。
「じゃあ俺も負けねえくらいハイセンスなやつでいくわ」
 ずずん、とジャスパーが構える水鉄砲は、水鉄砲というよりもガトリング砲といった方が近かった。
「水鉄砲か? それ」
「水が出りゃ水鉄砲よ」
 シンプルな理屈。確かになと笑ったダンテはフルスロットルの連射を叩き込み、ジャスパーも負けじと応戦する。まごう事なき水鉄砲バトルなのに、辺りを飛び交う花火が彼らの銃撃戦によって引き起こされた火花と錯覚してしまうほどの激しさであった。
「つーか、そのトゲみたいなスタッズで自分の風船割るなよー」
「そりゃ兄ちゃんもだろ、どこまでが自前でどこまでがピアスかさっぱりだぜ」
 軽口が飛び交うテンポまで心地よい。熾烈に、そして軽快に。
 水の噴射と全身の動きでハードロックを奏でるが如く、激しいバトルが繰り広げられていく。
 どれほどそうしていただろうか。ふと、足場が急激に少なくなっていく。
「お?」
 数少ない足場を辿り地上に降りた二人。どうやら熱中しているうち、妖怪花火の打ち上げ時間が終わってしまったようだ。
「時間切れ、か」
 互いの手元を見れば、あれだけ激しく撃ち合い、ずぶ濡れになったにも関わらず、無事なまんまの風船たち。ダンテのミントカラーと、ジャスパーのパープル。合わせて四個のまんまるが、誇るように揺れていた。
「決着、つかなかったな」
「マジだな。やべー奴だなあんた」
「そっちこそ」
 肩で息をしながら、顔を見合わせてふは、と笑い合った。
「俺様はダンテ。そっちは?」
「ジャスパー。今度作品見せろよ」
 しょっぱなから打ち解け合っていた二人は、やっとこさ互いの名前を知る事になったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

乱獅子・梓
【不死蝶】
よっし、先手必勝だ!
二丁拳銃な水鉄砲で連射攻撃…が、紅い蝶に全て弾かれる
ちょ、汚いぞお前!?
でも昔は攻撃一辺倒の戦い方しか知らなかった綾が
守る戦いもするようになったのは感慨深いな…
って感心している場合じゃない!

それならば…蝶の隙間を狙ってひたすら攻撃だ!
数撃ちゃ当たるだろう!
そんな単純な戦法では勿論当たらず、時間が過ぎていく
だが、真の狙いは…

…今だ、零!!
俺が矢継ぎ早に綾に攻撃を仕掛けている間に
こっそりと仔竜の零を接近させていた
綾の足場となっている花火より更に下から現れた零が
綾の足元目掛けてブレスを発射、そしてUC発動
これでお前の動きもうざったい蝶たちも封じた!
さぁ、覚悟しな!


灰神楽・綾
【不死蝶】
うわぁ、開始前のあれこれすっ飛ばしていきなり攻撃してきた
でも残念でした~
UCの紅い蝶が攻撃を全て受け止める
この鉄壁の守りを突破出来るかな?

そう簡単に当たってあげないよーだ
蝶たちによる肩代わりの他にも
梓のタイミングに合わせて水鉄砲を放って相殺

…!?
突然足元にかかる冷気
直後、氷の鎖で足を捕縛され、紅い蝶たちも消滅
なるほど、梓ががむしゃらに攻撃してきたのは
零の接近を俺に気付かせないようにする為
そしてこの明るい花火の模様も
零の存在を隠すカモフラージュとなったわけか
これは一杯食わされたね

でもこのままただやられるのも面白くない
梓と同時に俺も相打ち覚悟で水鉄砲発射
やっぱりこういう戦いの方が燃えるね




 前略。
「よっし、先手必勝だ!!」
「うわぁ、開始前のあれこれすっ飛ばしていきなり攻撃してきた……でも残念でした~」
 開幕と同時に引かれる引き金。二丁拳銃から放たれた連射は、しかし紅い蝶の群れに全て阻まれる。
「ちょ、汚いぞお前!?」
「汚くなんてないよ。正当なルールだもの」
 あっけらかんと云ってのける灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)に歯噛みしつつ、乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は何故か一種の感慨深さを感じていた。
(「まあ、感慨深くもなるよな……昔は攻撃一辺倒の戦い方しか知らなかった綾が守る戦いもするようになったんだからな……」)
 出逢ったばかりの頃、綾は今よりももっと戦い以外に興味を示さない性質だった。それ以外の事――たとえば自分の生活すらも他人任せにし、戦いが生み出す益よりも死合う事そのものを目的とするような男だった。失ったのだという記憶が彼の人格を形成するルーツだとしたら、理不尽だらけの闇の世界においても相当に荒んだ経歴だったに違いないと思わせるほどに。
 そんな綾が。自分を護る事を覚えた。もしかしたら、それはより戦いを楽しむ為という理由かもしれないが、それにしたって随分と人間らしい行動であるように思える。
 出逢ってから今までの年月に想いを馳せかけた梓の意識は、二の腕に直撃した冷たさに連れ戻される。
「っと、感心してる場合じゃなかった!」
「ちぇ、当てるつもりだったんだけどな」
 口調とは裏腹に実に楽しそうににこにこしながら、綾が射撃を放つ。負けじと梓も弾切れをおそれずトリガーを引き続けた。梓の方が「手数」は多いが、綾の護りは強固だ。
「なら、蝶の隙間をひたすら攻撃だ! 数撃ちゃ当たるだろ!!」
 竜騎士の梓と、近接武器を得意とする綾だ。射撃の腕前自体に大きな差は無いだろう。護りを突破できるかに勝負はかかっていると踏んだように、梓は花火の上を駆けながらひたすらに水鉄砲を撃ち続ける。
「そう簡単に当たってあげないよーだ」
 綾は自身の周りを飛び交う蝶に護られながら、ここぞというタイミングで引き金を絞った。それは時に梓の射撃を相殺し、時に梓の身体を叩く。だが、どちらもまだ風船までは届いていない。
(「すばしっこいなあ。でもそろそろ決めようか」)
 サングラスの奥の赤がすぼめられる。狙い澄まして風船を撃ち抜こうとした綾の耳に、梓の勝ち誇ったような声が響いた。
「……今だ、零!!」
 ――零だって?
 咄嗟に辺りを見回すが、梓の相棒である零の姿は見当たらない。
「……下か!?」
「ガウガウ!!」
 綾の足場、青緑の花火に紛れるようにこっそりと近づいていた氷竜の零がブレスを放つ。絶対零度の鎖に絡めとられた綾の脚は花火に縫い付けられたように動かなくなり、生息不能な低温に蝶の群れもぱたぱたと落ちては消えていった。
「なるほど、一杯食わされたね」
 綾は笑みを深めて云った。
「がむしゃらに見えた攻撃は全てこの為……零の接近を俺に気づかせないようにする為、だったんだね?」
「そう。そしてこの明るい花火も、カモフラージュにはもってこいってわけさ」
 ニヤリ、梓が二丁拳銃を構える。
「これでお前の動きもうざったい蝶たちも封じた!」
「理屈はわかったよ。わかったけど」
 腰から上が無事に動くことを確認し、綾は大袈裟に肩を竦めてみせた。
「まさか水鉄砲バトルで寿命を削るほど、梓が無鉄砲だとは知らなかったなぁ」
「あ? あー……」
 そう。埒外の力さえ封じ込める零の吐息は、時に術者の命さえも蝕む。本来であれば、気軽に放つようなものではない……筈だ。
「……似てきたんじゃないのか。どっかの向こう見ずに。何せもう随分と肩を並べてるからな」
「へぇ。楽しむために命を投げ出すほどの向こう見ずさんか、逢ってみたいものだね」
「……お前なぁ」
 からかうような物言いに、梓は思わず力が抜けそうな心地だった。けれど銃を構え直し、二つの風船へと狙いを定める。
「何にせよ俺らの勝ちだ。さぁ、覚悟しな!」
「まだ判らないよ。動けないからって当てられないわけじゃない」
 綾もまた、水鉄砲を構える。
 フィールド上を縦横無尽に駆け回り翻弄する梓。
 不利な状況ではあるが、相打ち覚悟の決死な狙撃で着実に風船へと迫り続ける綾。
 水が身体に降りかかり、膚の上で飛沫を上げる。
 綾の右手の近くで炸裂音が響き、やや遅れて梓の風船が割れるのが見える。
(「――さっきの堅実な戦略も、悪くはなかったけど」)
 自然と弧を描く口元を、綾は自覚していた。
(「やっぱり、こういう戦いの方が燃えるね」)
 互いを削り合う熾烈なバトル。なるほどこれを味わえるというのなら、少しくらい己の未来を差し出すのも悪くないと、自分も判断するかもしれない。
 ずっと楽しんでいたいくらいだと、想いはするけれど。
「ま、あんまり徒に削れてしまうのも寂しいよね。足場が消えたら俺も危なそうだし」
 だからそろそろ――終わりにしよう。
 綾が放つ渾身の一撃が、梓の最後の風船を鮮やかに撃ち抜いたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

戀鈴・シアン
【狼硝】

親友の頭に在る見慣れない耳と尻尾
驚きと、それ以上の嬉しさが心に灯る
また一つきみの事が知れた

ああ、負けてられない
俺達のチームワークを見せようか
作戦を考えたんだけど…(耳打ち)
よし、往こう
相手の妖怪二人組も宜しくね

水鉄砲を構え、いざ夜空へ
わっ……!
空に打ち上がるのってこんな感覚なんだ
ふふ、すごい経験

まずは硝子片を近くに集め
花火や硝子の反射を利用して、此方に狙いを定められないよう
頼もしい遊撃手が目立ってくれてるから
その隙に俺は相手の風船を的確に狙って
よし、一つずつ命中!
……あれ、俺のも割れてる!

手加減してやって、と言われたけれど
その必要ないくらい、相手も手強いね
軍配が上がるのは――

勝敗お任せ


飛砂・煉月
【狼硝】

バトルなら負けらんないや
本気の証に普段晒さない狼の耳と尻尾を出して
親友に見せても平気な自分にさえ綻ぶ
最強タッグの力見せてやろうよ、シアン

…ん、作戦?
おっけ、それで!
相手宜しくーと笑う陽の犬

ふたり揃いで構えた水鉄砲
花火に乗り夜空へ
あっは、オレ達もう花火じゃん

人狼の身体能力と脚力生かし駆けて、翔けて
獲物狙う月の狼の顔をしながら
実はオレ、遊撃手!
シアンは上手く隠れてる筈
ならオレは動いて跳ねて相手を翻弄するだけ
見切れば当たらないよって挑発ひとつで視線はオレへ

シアンの射撃にナーイス!
…ってオレのも一個割れてら
やるじゃんって楽しくなって
オレらも生身だし手加減要らないね
心躍る勝負の行方は?

勝敗お任せ




「バトルなら負けられないや。こっちも本気で行こう、シアン」
「ああ、負けてられないね……おや」
 友の声に振り向いた戀鈴・シアン(硝子の想華・f25393)が片眉を持ち上げたのは、飛砂・煉月(渇望の黒狼・f00719)の頭から普段は見られない狼の耳が覗いていたから。
 見れば腰元からもふわふわの尻尾がひょっこりと。
 人狼である煉月のこと、この姿の方が力を発揮しやすいのだろう事は簡単に察しが付く。けれど数多の戦場を共にした親友も、この姿を見るのは初めてだったのだ。
「ヘンじゃない?」
「もちろん」
「良かったあ」
 そして、煉月も。シアンならこの姿の自分を否定しないと判っていたからこそ迷わずに半獣の姿を解放したのだが、改めて友の笑顔を目にすればますます頬がほころぶ心地だった。
 それは彼が受け入れてくれた事にもだし、自分がこの姿を見せる事に恐怖を抱かなかった事にでもある。忌まわしい、呪いの血であったはずなのに。
「俺の方こそ良かったよ」とシアン。
「なんで?」
「また一つ、きみの事が知れた」
「!」
 目を見開く煉月の腰元で、狼尻尾までがゆらゆらと嬉しそうに揺れているのを見れば、シアンの心に灯った嬉しさがますます大きくなっていくのを感じる。
 いつか見た恐怖の光景。愛する友だからこそ食べてしまいたいと渇望する狼の本能に、煉月はずっと怯えていた。その一部を解放するまでに、どれだけの恐怖が、葛藤があっただろうか。
「っし! 最強タッグの力、見せてやろうよ」
「うん。俺達のチームワークを見せようか」
 またひとつ距離が縮まったような心地よさに、二人は肩を並べて笑い合った。
「そうそうレン、作戦を考えたんだけど……」
「ん、作戦?」
 文字通りぴんと聞き耳を立てる狼耳に、シアンはこしょこしょと耳打ち。
「おっけ、それで!」
 二人揃いで構えた水鉄砲。仲良く打ち上げられて、夜の空へと繰り出した。


「わっ……! 空に打ちあがるのってこんな感覚なんだ」
「あっは、オレ達もう花火じゃん」
「ふふ、すごい経験」
 滅多に味わえない打ち上げ体験も楽しいものだけれど、お楽しみはまだまだこれから。
「猟兵さん、みーっけ!」
「見てみて、あの子たちちょっと妖怪みたいでかわいーい!」
 最強タッグの前に立ちはだかるのは二人の妖怪。二股尻尾の猫又なのだろう少女と、鈴飾りを至る所にあしらった少女。後者はおそらく鈴の付喪神か何かなのだろう。人狼と硝子花瓶の二人組に、似ていると云えば確かに似ている。
「君たちが相手をしてくれるのかな。宜しくね」
「宜しくー!」
 朗らかに笑むシアンの隣で、煉月もいつものスマイル。狼の特徴を持っていても、今の彼はいつもの陽の犬そのもの。
「よっし、二人とも……オレについてこれる?」
 その双眸が水鉄砲を構えた瞬間、すっと細められる。猛然と引き絞るトリガー。妖怪たちに襲い掛かる水撃の嵐。
 きゃっと短い悲鳴を上げた妖怪たちがそちらに銃口を向けた時には、煉月の姿はそこにはない。
「どこ?」
「あっち!」
 鈴の付喪神が指差したのは遥か上空。新たに打ち上げられた足場に踏み出して、煉月は上空から雨のように水鉄砲の攻撃を降らせ続けた。
 妖怪二人も応戦するが、高低差に阻まれて水が届かない。ならばと空へ駆け出しながら、負けじと引き金を絞り続ける。
「もう一人の男の子の姿が見えないけど……」
 訝しがるように猫叉が辺りを見回すが、ぴゅっと顔のすぐそばに飛来した水に思考は中断される。
「何を企んでるのかは判らないけど、ひとまずあの狼さんをほっとく訳にはいかないね!」
「今日は満月でもないのに、とんだ狼人間がいたもんだにゃー」
 狙いが自分に向けられている事に、煉月は安堵する。
「へへっ、当たらないよー!」
 彼女達の狙いがますます自分に集中するように、敢えて挑発的な言葉とアクロバティックな動きで煉月は二人を翻弄する。
(「レン、うまくやってくれてるみたい」)
 一方その頃、シアンは硝子片で花火の光を反射する事により、迷彩効果のように周辺に溶け込んでいた。夜の空にあるには鮮やかな白と青の水晶めいた色彩も、巧みに光を分散させ視界を逸らす事によって彼女達の意識外に留まり続けている。
 実の所、煉月は遊撃手なのだ。攻撃の本命はシアンの正確無比な狙撃。友の頑張りと勇気に報いようと、シアンが引き金にかけた指に力を込める。
 ひとつ。
「ふにゃっ!?」
 ぱあんと小気味よい音と共に、猫叉の風船がはじけ飛んだ。
「えっ、どこからにゃ!?」
 そして、もうひとつ。狙い澄ましたその瞬間、付喪神がキッとこちらを鋭く睨みつけてきた。
 シアンが目を瞬かせつつも水鉄砲を放ったのにやや遅れ、付喪神も続く。
 ふたつの水撃は、どちらも的確に相手の風船を射抜いていた。
「……水が飛んできた方向から俺のいる場所を推測したのか」
「ふふふ。伊達に長生きはしてないよ」
 得意そうな付喪神。これで風船は妖怪たちが二、シアンと煉月が三……いや。
「あれ、オレのも一個割れてら」
 煉月が目を見開いた。狼の身体能力をもってしても、二対一の攻防を完全に制する事は至難だったようだ。
「これで同点にゃ」
「そっちのお兄さんの狙いも判明したし、むしろ私達の方がちょっぴり有利かも? なーんて」
 ぴこぴこと得意そうに尻尾を揺らす猫又に、鈴を鳴らす付喪神。シアンと煉月は顔を見合わせた。
「手加減してやって、と言われたけれど」
「その必要、全然なさそうだね。オレらも生身だし」
 躱し合う笑みは、試合開始前よりもますます深く、充実したものだった。
 なるほど、滅びかけては蘇るこの世界の妖怪たちは随分と頼もしい。この世界に再び立ち込める暗雲の気配はあれど、彼女達がいる限りきっと大丈夫だろう。
 そして何より。
 今この時が、とても楽しい。背を預けられる友がいて、それを思い切りぶつけられる一期一会があって。
 心躍る勝負は続き、僅差で煉月・シアンのペアが勝利を収める事となった。
 四人は握手を交わし合い、最後に肩を並べて打ち上げられる花火を地上から仰ぎ見たのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

水鉄砲…
カクリヨでのてれび?番組の戦場で使った以来だなぁ…
とにかく引き金を引いて風船を撃てばいいのか…
行こうか…えいえいおー!

デモニックビキニを着て相手をしよう

妖怪花火と共に空に上がって
[地形を利用しダッシュとジャンプ]で戦場を駆け回ろう

水鉄砲から発射される水を
地獄の炎で火傷しないけどちょっと熱い湯に変えて相手を攻撃
[不意打ちの鎧無視攻撃で体勢を崩そう]

いざとなったら【凄惨解体人間】で
自身に一部を血液に変えてそれを相手と風船に浴びせて
[恐怖を与えておどろかしながら]風船を割ろう

血液は液体だから大丈夫…のはず…
え…スプラッターなのとグロテスクなのは駄目?
……チッ…あ…何でもないです…




「水鉄砲……カクリヨでのてれび? 番組の戦場で使った以来だなぁ……」
 どこかぼんやりとした口調で呟くのは仇死原・アンナ(炎獄の執行人あるいは焔の魔女・f09978)。架空のテレビ番組の侵食を止める為に、戦国時代をサブマシンガン型の水鉄砲で駆け巡ったドキドキサバイバルゲームは記憶に新しい。
 あの時と違うのは、水鉄砲がプレーンな拳銃型である事だが、引き金を引けば水が出てくるというのは一緒である。そして的が風船であるということを確認したアンナは、早速妖怪花火に打ち上げられて宙へと舞い上がる。
「行こうか……えいえいおー!」
 ぽやんとした表情はいまいち締まりに欠けるが、本人的にはやる気十分だ。
 さてさてまずは誰を狙うべきかと花火の足場に降り立ちつつ周りを見回していると、背後から何やら気配がした。
 身を捻って水を交わしつつ、挨拶代わりにこちらも引き金を絞る。ひゃっと飛び退いたのは三つ目小僧だ。
「さすが猟兵さん。後ろからそーっと狙ったのにすぐ気づかれちゃった」
「ほうほう、あなたが相手ね」
 ゆらり、アンナの周りで地獄の炎が揺らめいた。処刑人一族の中でもアンナだけが使える力だ。無論敵前では非情な処刑執行人と化すアンナとて、その力を一般妖怪相手に惜しみなく使うような無粋な真似はしない。
 蒼い炎は水鉄砲の周囲をほんの数秒飛び交って、すぐに離れる。次にアンナが放った水撃は、三つ目小僧の脚に命中した。
「わわわ、あっつ!?」
 その温度は火傷しない程度に調整されていたが、いかにも夏が似合う水鉄砲から放たれた事や、人魂を思わせる地獄の炎のビジュアルが涼しげであった事もあってか三つ目小僧はアンナの予想以上に驚き、飛び退いた。バランスを崩したところでアンナの追撃が妖怪の風船をひとつ撃ち抜いた。
「おねーさん、容赦ないなあ。水着はとーっても素敵でよく似合ってるのに」
「ああ……これ?」
 アンナが自分の身体を見下ろす。うんうんと三つ目小僧が頷いた。
「昼間の水着コンテストでも、とっても目立ってたよ!」
 おだてて油断を誘う作戦なのかもしれないが、当のアンナはぽややんとした表情のまま。喜ぶでも恥ずかしがるでもなく、当然隙などもなく、彼女にとっての事実だけを口にした。
「これはね……デモニックビキニ」
「で、デモニック?」
「うん。デモニックでしょ」
 麦わら帽子から伸びる、山羊のような曲がり角。ビーチボールにはドクロのマークもあしらって、なるほど悪魔といえば悪魔らしい。
 なんて会話をしつつアンナは再び銃を向けるが、妖怪の姿が眼前から消えていた。おや、と目を丸くしていると、いきなり目の前に三つ目小僧がドアップで飛び込んできた。
「ばああ~!!」
 なるほど彼は姿を消したりあらわしたりできるらしい。実に妖怪らしい特技だ。アンナは後ろに飛び退いて危機を回避しようともしたが、
(「あ、いや……多少花を持たせてあげるべき、かな?」)
「わあっ」
 多少棒読みな驚きと共に、妖怪の不意打ち射撃を甘んじて受ける事にした。
「ひひひ、これで同点!」
「なるほど。あなたはさぷらいずが好き……」
 それなら期待に沿えるだろうかとアンナは力の断片を解放する。妖怪相手にユーベルコードでの攻撃はダメとのことだが、演出ならばOKだろう。
 アンナの肉体が、どろりと溶ける。肉片交じりの赤黒い血液となったアンナが妖怪へと迫った。
「!? ひィ!?」
 みっつのまなこを限界まで見開いた三つ目小僧の風船を、アンナが包み込んで粉砕する。
 へたり込む妖怪の傍らで血と肉片がどろどろと集まり固まり、アンナの姿へと戻っていく。
「血液は、液体だからセーフ……だよね?」
 けろりと云ってのけるアンナだが、後で妖怪たちにこってり絞られたとか、いないとか。
 曰く――「スプラッターとかグロテスクとか怖すぎるおどかしは駄目」とか、なんとかで。
 思わず漏れ出た本性で舌打ちをしてしまったアンナは、その後必死に取り繕ったが、後の祭りだったという。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャルロット・クリスティア
【しゃるあかり】
両手でしっかり持って正面に構えて、撃つ。
基本は教えておきましたが、さてさて、灯さん、どれだけやれるでしょうかね……っと、言ってたら鉢合わせですか。
いつも妹分扱いってのも癪ですし、たまにはわからせて差し上げますかね!

こちとら本職の銃使い、相手の銃口から弾道を見切るくらい軽いもの。
手加減?してますよ勿論。本気出してたらとっくに風船割ってますって、ほらほら頑張って!

……ひゃっ!?……ってどこ撃ってんですか!狙うのは風船でしょう!?
し……っ!?い、言うに事欠いて年頃の女子に……!
失礼ですよ、まったくもう!!
(風船じゃなくて顔面に水べしべし)

……気にしてるのに。


皐月・灯
【しゃるあかり】

ったく、自分の土俵に引きずり込みやがって……。
そもそもオレは超近接特化型なんだ。
銃どころか遠隔攻撃全般、感覚からして掴めねーしな。
多少はレクチャーされたけど、不利にゃ違いねーぜ。

水の弾道を【見切】ってるからそう当たりゃしねーけど、
こっちの攻撃も当たらねーんじゃジリ貧だ。
……ええい、真面目に狙ってんだよこっちは!

つーかシャルのやつ、オレの動きのクセを知ってっから、
避ける先を予測して撃ってくんだよ。
……くそ、何が「手加減しますから」だ!
アイツ普通に楽しんでやがる!

オレはずっと風船狙ってんだ!
お前の尻がでけーのが悪いんだよ!
本当のことだろ……あ。

あー……わかったから、拗ねんな。




 時は少し遡る。
「両手でしっかり持って正面に構えて、撃つ。これが基本です!」
「はいはい、両手でしっかり持って正面に構えて、撃つ。それが基本、な」
「あと、海に入る時は準備運動は忘れずに、ですよ」
「……今日は海には入らねーんじゃねーのか」
 やいのやいのと云い合いながら会場へと歩いてくるのは、元より狙撃の腕に長ける少女シャルロット・クリスティア(弾痕・f00330)と、いまいち乗り気ではない様子の少年皐月・灯(追憶のヴァナルガンド・f00069)だった。
「ったく、自分の土俵に引きずり込みやがって……。そもそもオレは超近接特化型なんだ」
 シャルロットも灯も魔術に長けているという点では似ているが、魔術処理を施した銃器類の扱いを得意とするシャルロットと、両手の魔術刻印からの権限を得意とする灯ではその在り様や得意分野は随分と異なる。元からこうして戦い抜いてきたのだから、銃どころか遠隔攻撃全般の感覚がつかめないというのが灯なのだ。それこそ拳から水でも出るように改良を施す方がよほど自分向きとも思えるのだが、得意そうにレクチャーするシャルロットを見ればまあ、悪い気はしない。
(「……とはいえ、当たりたくはねー相手だ」)
 と、思っていたのに。

「げ」
「あ」
 半ばお約束といった様子で、広大なバトルフィールドで二人は鉢合わせる事となったのである。
「偶然ですね!」
 密かにげんなりする灯とは対照的に、シャルロットの顔はどこか楽しそうですらあった。……だって。
「いつも妹分扱いってのも癪ですし、たまにはわからせて差し上げますかね!」
 水着と同じ鮮やかな青の眸をきらっきらに輝かせて、ハンドガンのような小さい水鉄砲から出会い頭にまずは一撃。
「んだよそれは」
 辛うじて躱した灯が放った反撃は、シャルロットには届かず。んふふー、と楽しそうに笑うシャルロットが、天真爛漫に見える表情の奥で油断なくこちらの様子を伺っている事を灯は知っている。だからこそ始末に負えないのだ。
 そしてシャルロットの方は、灯の目線の動き、銃口の向きから次の手を読み、易々と躱しながら追いつめるように引き金を絞る。立て続けに撃った二発は灯の銃を弾き、腿を掠めた。いつもぶっきらぼうですました様子の灯が焦り、そして焦りを顔に出すまいとますます眉間の皺を深めているのはいっそ痛快ですらある。
(「チッ、何とか風船に当てられるのは免れてはいるが……」)
 唇を軽く噛み湿らせながら、灯は必死でシャルロットに食らいつく。近距離戦を潜り抜けてきた動体視力は水の弾道を見切る事に一役買っているし、経験が完全に無駄になっているとは言い難い。言い難いが、何せ分が悪すぎる。当てられなければ意味がないのだ。長引けば長引くほど、経験に長けるシャルロットの方が有利になるだろう。
(「つーかシャルの奴、オレが「今」どう動いてるかだけじゃなく、次にどう動くかってとこまで読んでやがるな」)
 共に戦場を駆け抜ける時、バディやグループの動きにも気を配るのは灯もシャルロットも当然にこなしているが、ひたすらに接近戦をこなす灯よりも後方に居る事の多いシャルロットの方がこちらの動きを目にし、そのクセを把握する力に長けているのだろう。水鉄砲の水撃の応酬のたびに経験値の差を見せつけられるようで、灯は歯噛みした。
「……お前、ちったあ手加減しろよ」
「手加減? してますよ勿論。最初っから」
 思わず漏れ出た言葉に、あっけらかんとシャルロットが返す。
「本気出してたらとっくに風船割ってますって。ほらほら頑張って!」
 悔しい。悔しいが、事実なのだろう。マギテック仕様の特製銃からそこら辺の何でもない水鉄砲に持ち替えた所で、狙いを違えるような女ではないのだ。
 いまだって余裕綽々、タンクの水を交換したりなどしている。しかも鼻歌混じりに、実に楽しそうに。
(「……クソ」)
 じゃあここいらで一発当ててやろうじゃないか。それで一対二だ。その時点で彼女は圧倒的に不利になる。狙い澄まし、灯は引き金を絞った。的は丸くて大きい二つの風船――……。
「……ひゃあっ!?」
「あ、悪ィ」
 素っ頓狂な悲鳴に、思わず口をついて出る謝罪。腕の風船をちゃあんと狙ったはずの灯の狙撃は、下に逸れてシャルロットのお尻を直撃していたのだ!
「どこ撃ってんですか! 狙うのは風船でしょう!? 灯さんさいてーです!!」
「さいッ……」
 羽織ったアウターを身体に巻き付けるようにしながらお尻を隠すシャルロットに、灯が顔を真っ赤にする。
「誤解だ! オレはずっと風船狙ってたんだ! お前の尻がでけーのが悪いんだよ!」
「し……っ!? い、言うに事欠いて年頃の女子に……!」
 わなわなと唇と銃口を震わせたシャルロットが、次の瞬間正確無比な狙いで灯の顔面にありったけのヘッドショットを叩き込む!
「わっぷ、お前こそどこ狙ってんだ!」
「失礼ですよ、まったくもう!!」
「本当のことだろ…………あ」
 灯の言葉に、シャルロットは空っぽタンクの水鉄砲を持つ手をぶらりと垂らし、涙目で呟いた。
「……気にしてるのに」
「あー……わかったから。拗ねんな」
「……それだけですか?」
「…………悪かったって」
 じっ、と青色の瞳が灯を見上げる。ばつが悪そうに灯が視線を外した。
 その瞬間!
 シャルロットの手が羽織の内ポケットからもう一丁の水鉄砲を取り出し、灯の風船を正確にスナイプ!
「あ!?」
「もう怒りました。絶対に負けません!」
 わちゃわちゃ追いかけっこは、まだまだ始まったばかり。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

蒼・霓虹
事前に〈虹色金平糖クラスター砲〉を【メカニック&武器改造】

虹色金平糖からシャボン玉出るパブルガンに、折角ですし駄菓子兵器も試してみましょうか

[POW]
UCで攻撃力重視発動〈彩虹(特機形態)〉さんごと真の姿(今年の水着コンテストの)に

挑む相手はジャスパーさん
一対一、グループ戦どちらでも

改造した〈虹色金平糖クラスター砲〉を発射し【念動力】で金平糖の中のバフルガンを開き【属性攻撃(泡)】の【弾幕】展開

それに紛れ【悪路走破&推力移動】で【操縦】し砂場や花火を駆け【第六感】で【回避】し

水鉄砲かわりに【高速詠唱】した〈ネオンアクアストライク〉を水圧【レーザー射撃】にし風船を

[アドリブ絡み掛け合い大歓迎]




「あれ、霓虹に……彩虹もなんかちょっと夏仕様?」
 夜のビーチでもひときわ目立つ大きなロボットを見付けたジャスパーが、小走りで駆けよった。ロボットの腕部パーツに腰掛けているのは水着姿の竜神、蒼・霓虹(彩虹駆る日陰者の虹龍・f29441)だ。彼女が時にファードラゴンのような姿をしているのはジャスパーも見た事はあったが、相棒の彩虹の姿は見慣れなかった。白を基調としたボディに虹色がきらめくいつものボディカラーとも、霓虹たちが真の力を解放した時に見せるピンクとブルーのカラーリングとも違った、爽やかな青を基調とした姿だった。結晶めいた幾何学模様と、虹色の反射光はさすが虹龍の化身といったところか。
「こういった催しは初めてで……ヘンじゃありませんか?」
「うんにゃ、めっちゃ似合ってる」
「良かったです」
 ほっと笑みを零す霓虹が腰かけている彩虹の腕に、ジャスパーは目を落とす。
「ひょっとして武装も新しいヤツ?」
「はい。金平糖クラスター砲です。駄菓子兵器というのを新調したんです」
「今話題のヤツだな。なるほど、俺バーサス霓虹&彩虹か……強敵だなァ」
 参ったなあと口では云うが、その顔はむしろこれからのバトルが楽しみで仕方ないというようににやついている。
「楽しそうですね、ジャスパーさん」
「だって遠慮が要らねェだろ?」
 なあ、とジャスパーは傍らの存在に呼び掛ける。メンダコのような姿をした精霊が、楽しそうにきゃっきゃと頷いた。
「俺らもタッグで相手するぜ」


 虹色金平糖クラスター砲が火を噴き、中から無数の金平糖が発射される。水鉄砲で牽制したジャスパーがハッ、と笑みを零した。
「水以外で風船を割るのは反則だぜ、お二人さん!」
「はい。割るのは反則ですよね。でも……」
 発射された金平糖たちが、空中で一斉にぱかりと二つに割れた。中からもこもこと泡が現れ、弾幕のようにみるみると広がっていく!
「んなっ」
「直接攻撃でないのなら、大丈夫ですよね?」
 視界を虹色の泡でふさがれたジャスパーが目を剥いた。傍らでは精霊が一生懸命水を噴射して泡を追い払おうとしている。
 泡の弾幕に紛れるように、彩虹が花火の足場を駆け巡る。悪路も重力もなんのその、信じられない程の身軽さで巨体がフィールドを駆け巡る。
「出たばっかの武器をさっそく使いこなしてるとか、メカニックの鑑だぜ」
 舌を巻きながらもジャスパーは射撃の腕を止めない。弾幕は確かに視覚情報を著しく阻害しているが、彩虹の巨体は目立つのだ。大きな動く影を狙えば、おおよその位置の把握までは容易い。
(「だが的が小さすぎる。霓虹はあの影のどの辺りだ?」)
 目を凝らすジャスパーの目は、確かに捉えた。霓虹の掲げるマジックカードが、虹泡の中でもひときわ光り輝いて見えたのを。
 だが。
「これがっ……わたし達の、わたしと彩虹さんの、本気ですっ!!」
 ネオンアクアストライク。虹色絶対零度の水流は威力こそ普段より抑えられていたが、その勢いも正確さもそのままに、ジャスパーの右腕の風船を撃ち抜いていた。
「構うな、行け!!」
 衝撃に水鉄砲を取り落としながらもジャスパーは叫ぶ。メンダコ精霊の放つ水は彩虹のそれよりも細く頼りなかったが、攻撃の一瞬の隙をついて霓虹の腕の風船を撃ち抜いていた。
「……これで、お互い後がなくなりましたね」
 きゅっと表情を引き締めながら、霓虹が云う。
「ヒュ~~~。可愛い顔しておっかねえわ。同じ手は二度と通用しねえだろうしなあ」
 水鉄砲を拾い上げるジャスパーの表情を見て、霓虹はふふっと微笑んだ。
「楽しそうですね」
「そっちこそ」
「彩虹さんが一緒にいる限り、わたしは負けません」
「そりゃあこっちも同じさ」
 赤と紫が見つめ合って、もう一度笑みを零し合った。
 直後に開始されたのは、今までよりも激しく、遠慮のない、水の応酬だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘスティア・イクテュス
【ヘス澪】
提督風水着を着用
ライフル型水鉄砲に水風船グレネードを装備

ふふふふ、銃の扱いならわたしの有利!ここで屠ってくれるわ!澪!!
って、魔法込めてってずるくない!?


数は力よ!行け!プチヘス部隊!【集団戦術・弾幕】(同じ水着、ピストルタイプの水鉄砲持ち)
口で偽の作戦を伝えながら、秘匿回線による作戦&情報共有【情報収集】で
澪を『騙し討ち』
ついでにプチヘス達をマイクに超音波による澪への『ジャミング』耳の良さが命取りね!

仕方ないわね、最終兵器、暴徒鎮圧用の高圧放水砲よ!消し飛びなさい!
【吹き飛ばし】
勝敗おまかせ


栗花落・澪
【ヘス澪】
今年の水着

軽量型の水鉄砲に水魔法の【属性攻撃】を上乗せ
水弾の威力と発射速度強化

狙いの付け方は魔法とそんなに変わらないもん

あ、ずるーい!
こっちだって!
【UC】で同じ水鉄砲、水魔法を使用する分身達を出し
【空中戦】を仕掛けながら【範囲攻撃】

僕も分身達も花火を盾代わりに上手く使うよ
分身の一部は卵の殻を盾に
【聞き耳】で周囲の位置を把握し早めの反応

ってうるさ!?
もー、無差別攻撃するぞ!?

長期戦になると体力的に負けそうなので短期決戦狙い
分身と僕だけが理解出来る【歌唱】の音階を用いた作戦連携に
敵陣にのみ作用する【催眠術】を乗せて
上手くヘスティアさんの隙を引き出し一つずつ確実に割りたいね

※勝敗お任せ




「ふふふふ、銃の扱いならわたしの有利! ここで屠ってくれるわ! 澪!!」
「余裕でいられるのも今のうちだけだよヘスティアさん、僕だって負けないんだから!」
 にらみ合う美少女二人、じゃなかった美少女と美少年。
 そんな使い古しのボケも今日はなんだか許されてしまいそうなくらい、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)はいつも以上に美少女だった。澪が男の子だと知った今でも可愛いものを着せたがる義理の姉によって、繊細な細工が施された白い布をふわりと纏わされた今日の澪。自前の翼も相俟ってまるで壁画に描かれた女神のよう。
「あーら、そんな動き辛そうな服装でどうやって戦うつもりかしら!」
 自身は動きやすさと涼しさと勿論格好良さに可愛さまで兼ね備えた提督風水着を着用しているヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)が煽る煽る。歯に物着せぬ言葉の応酬は、二人が気の置けない間柄だからこそ。
 文明が生み出した妖精羽で空を駈ける電脳魔術師と、聖なる羽と奇跡の歌声を持つ少年。真っ向からぶつかればどうなるかはさておき、今日は水鉄砲バトルという大前提がある。
 つまり、わたしが負けるわけがない! ヘスティアはライフル型の水鉄砲での巧みな射撃で澪を追いつめつつ、逃げ道を塞いだところで水風船グレネードを投げつける!
「きゃー!」
「よし、まずは手堅く一つ目!」
 ガッツポーズを取るヘスティア目掛けて、まっすぐに飛び込んでくる水の弾丸。
「えっ……きゃあ!?」
 慌てて旋回しようとするも、水は予想をはるかに上回るスピードでヘスティアに届き、風船を粉砕する。
「やったあ、同点!」
「ななな、なによ今の」
「水鉄砲に水の魔法を乗せてみたんだ。威力とスピードはアップするし、狙いのつけかたも魔法とそんなに変わらないし」
 澪が手に持っているのは、ごくありふれた軽量型の水鉄砲。当然ながら、ヘスティアが避け切れないほどのスピードなど普通は出る筈がない。
「って、それずるくない!?」
「ずるくない!」
 何せユーベルコードありのバトルである。その上、今披露したものはユーベルコードですらない初歩的な魔術だ。
「なるほど。そっちがその気なら、わたしにも考えがあるわ」
 正直これを使うのはちょっと複雑なんだけど、今日はそうも云っていられない。
「数は力よ! 行け! プチベス軍団!!!」
 ヘスティアの声と共に、どこからかわらわらと現れたのは彼女にどことなく似た二頭身のロボットたち。おなかに数字のついた彼女達は、律儀にヘスティアと同じ水着を着て、ちっちゃな水鉄砲で澪に狙いを定める。
「あ、ずるーい! それならこっちだって!」
 澪も負けじと無数のミニ澪を召喚する。こちらの方はより小さく頼りなく、おまけになぜかたまご澪まで混ざっているが、数はむちゃくちゃに多い。
「狙いは風船だよ、やっちゃって!」
 おー、とミニ澪たちは豆粒みたいな水鉄砲から懸命に攻撃を放つ。
「そちらも数で攻めてくるなら蹴散らすまで! 皆、合体はせずにまずは小さい奴らを倒すのよ!」
 ヘスティアの号令に、プチヘス部隊がおーっと吶喊の声。
「なるほど、じゃあこっちは花火の盾に隠れながら……」
 手堅く堅実に行こう、と澪は分身たちに告げる。分身と澪だけが意思疎通できる音階での符牒でだ。ロボット達さえ止めてくれれば、僕がヘスティアさんの風船を狙い撃つから、と。
 射撃の腕前は魔法でカバー出来るが、澪がヘスティアに絶対敵わないものがある。体力だ。海賊船の船長として世界を駆け巡る彼女と、猟兵になって多少補えているとはいえ心臓が弱い自分では、長期戦になればどちらに軍配が上がるかは日の目を見るより明らかである。
(「相手が散らばっているなら、僕の分身たちが止められる筈」)
 ヘスティアが気を取られているうちに、催眠誘う歌で動きを阻害しながら本体の風船を狙う澪は、突如目の前に飛び込んできたプチベスに目を剥いた。
「なっ!」
 慌てて飛び退き水鉄砲の一撃を避ける。おなかに刻まれた文字は「30」まで増えていた。
「まんまとかかったわね!」
「ずるーい! 騙したの!?」
「そっちだってこっそりチビ達とお話してたでしょう、お互い様よ!」
『オタガイサマー!!』
 駄目押しとばかりにプチヘスから一斉に超音波が放たれる。歌を行使する特性上、常人よりも耳の良い澪には効果てきめんだった。
「ってうるさ!? もー、無差別攻撃するぞ!?」
 こうなったらなりふり構ってはいられない。澪もちび澪たちも、一斉に水鉄砲を構えてヘスティアを狙う。
「仕方ないわね、最終兵器、暴徒鎮圧用の高圧放水砲よ! 消し飛びなさい!」
「誰が暴徒だー!!」
 何百もの水弾が織りなす雨が、極太のレーザー砲がごとき高圧放水が、錯綜する。
 激しい水のダンスが収まった時、風船の破片がはらり、と舞い落ちる。
 それは、澪の腕にくくりつけられていた金色の風船だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

空露・紫陽
【紫炎】

くっは、くゆりはブレねぇな
ま、お姫様の相手は妖怪にゃ荷が重そうだ
俺で良ければ喜んでってな

狙撃手が本気出しちゃ大人げないのが課題だが
遊び心も大切かね
おっと、可愛い割に随分とエグそうなモン持ってんじゃねぇか
イイねぇ、滾る
増々、長く遊びたくなってきた

狙い当てるは風船以外、偶には顔も
けれど飽きは何れ来る
そんな美少女には応えてやんねぇとなぁ?
UCで空を蹴り
降り注ぐ雨の弾幕の隙間を駆けて
隙間を見つけりゃ狙撃手のテリトリー
風船狙いの一発放てば次だ
空の王者を経験してから癖になっちまってと笑い
次に撃ったのは、

お前さんもやるじゃねぇの、くゆり
勝っても負けても愉しい勝負だが
最後まで樂しくやろうぜ
――お姫様?


炎獄・くゆり
【紫炎】

手加減なんてつまんなぁい
ナニゴトも本気出してナンボですよお
ってコトでぇ、紫陽さん!
モチロンお相手してくれますよね?

今日のくゆりちゃんのラブリー装備!
お手製の水鉄砲を右腕に装着!
白とピンクでカワイイでしょ?
そこいらの水鉄砲とは威力も桁違いですよお~~~
相手が紫陽さんならエンリョなくイケそう
さ、さ、遊びましょ~~~

花火に乗ってるだけじゃ飽きちゃう
UCでも何でも使って空中戦といきますか!
空も飛べるタイプの美少女なんで~~~
頭上から大雨をお見舞い!
ウフフ、さすが紫陽さん
空の戦いはもうお手のものって感じですね~~?

紫陽さん相手はさすがに苦戦しますねェ
ンフ、そう来なくっちゃ!
負っけませんよ~~~!




 人生を楽しむ秘訣とは何か。
 その答えは人によって様々だろうが、炎獄・くゆり(不良品・f30662)の答えはいつだってシンプルだ。
「それはですねえ、ナニゴトも本気出してナンボって事ですよお。手加減なんてつまんなぁい」
 夏空色にハイビスカス浮かべたシャツを脱ぎ捨てれば、ずぶ濡れになる準備は完璧。炎獄・くゆり(不良品・f30662)が薫る炎のような金の眸を細めてにししっと笑った。
「ってコトでぇ、紫陽さん! モチロンお相手してくれますよね?」
「くっは、くゆりはブレねぇな」
 空露・紫陽(Indulgence・f30642)が笑みを零せば、咥え煙草から溢れた紫煙が揺れる。紫陽は『本体』の元々の所持者を模した外見を、今は海賊風の水着に包んでいる。
「ま、お姫様の相手は妖怪にゃ荷が重そうだ。俺で良ければ喜んでってな」
 それに、と紫陽は思う。妖怪相手に本気を出せないのは、自分も同じ事だ。
 紫陽は狙撃手である。それも懐に仕舞っているのは小さな拳銃ひとつだけ。風情に満ちた氏名とは裏腹に、時に自由気ままに、時に獣が如く躊躇なく、引き金を引いたり引かなかったりの人生だ。それで生きてきた程度には腕に覚えがある。
 一般妖怪に本気など出したら、試合開始のいちにのさんで風船が消し飛んでいる。そんなつまらない試合、さすがに大ブーイングに違いない。
(「くゆりが相手でも、それはそれで大の大人が本気でかかるのは大人げないかも知れないが……遊び心も大切かね」)
 それに銃器との密接な結びつきという点では、おそらくくゆりに勝るものは早々いないのだから。
「おっと、可愛い割に随分とエグそうなモン持ってんじゃねぇか」
「デショデショ~? 今日のくゆりちゃんのラブリー装備! そこいらの水鉄砲とは威力も桁違いですよお~~~」
 嬉しそうに見せびらかすくゆりの「右腕」は、白とピンクに炎マークをあしらった、見た目カワイク★火力はエゲツナク★な特別仕様のウォーターガンと化していたのだ!
 もちろん弾切れ知らずのおっきなタンクもセットである。せっかく「付け替え自由」の便利な右腕があるのだから、最大限に可愛く便利に有効活用しなければバチが当たるというものだ。
「イイねぇ、滾る。……増々、長く遊びたくなってきた」
「相手が紫陽さんならエンリョなくイケそう! さ、さ、遊びましょ~~~」
 小躍りしながら打ち上げられるくゆりと、肩を竦めながら続く紫陽。
 きっと、同じくらい心が弾んでいたに違いない。


「ぴゃはっ、つ~~めたい!」
 頬に水鉄砲の狙撃を喰らったくゆりが撃ち返せば、極太の水圧が紫陽の腕を叩く。
「油断していると銃を落としてしまいそうだな、これは」
「またまた~~、紫陽さんに限ってそれはないでしょ~!」
 けらけら笑うくゆりに、紫陽も笑みを滲ませる。
 けれどそんな二人のこと、じゃれ合うような銃撃戦は最初こそ愉しいが何れ飽きが来てしまう。
「そんなの勿体ないですよね~~~!!」
 くゆりの足が力強く花火の足場を踏みしめ、虚空へと身を躍らせる。あわや砂浜へと大落下――と思いきや、その身体がまるで翼でも生えているかのように舞い上がる。
「こう見えて空も飛べるタイプの美少女なんで~~~」
 美少女すごい。畳みかけるように繰り出される連続砲撃は、砲撃というよりもバケツをひっくり返した雨のよう。
「は、やるねえ。随分と……樂しませてくれる」
 その中を、紫陽が駆ける。くゆりの飛翔スピードは並の妖怪ならば目視さえも敵わぬほどだが、紫陽の目は油断なくそれを追いかけ、銃口の向きさえも見定め続けている。
 水と水の僅かな隙間を掻い潜り、紫陽もまた何もない場所に足を踏み出した。文字通り宙を駆けるステップは、くゆりへと続く見えない階段を駆け上がっているかのよう。
「ウフフ、さすが紫陽さん。空の戦いはもうお手のものって感じですね~~?」
「空の王者を経験してから癖になっちまって」
 距離を詰めれば当然攻撃もすさまじさを増す。超スピードからの砲撃は熾烈の一言だったが、紫陽がくゆりに勝っている絶対的なものがある。
「狙撃手には、僅かな隙間がありゃ充分なんだぜ」
「なんの、こっちだって~~~!!」
 差し迫る水と水の合間に、正確無比な一撃が放たれる。
 ぱあんと風船が割れる音が、激しい銃撃戦の中にも確かに響いた。それは紫陽がくゆりの風船を撃ち抜いた音であり、くゆりが紫陽の風船を撃ち抜いた音でもあった。
「紫陽さん相手はさすがに苦戦しますねェ」
 自らも後がないというのに、実に楽しそうにくゆりが身体を揺らす。それは紫陽も同じことだった。
「お前さんもやるじゃねぇの、くゆり」
 反撃に転ずる絶対的なチャンスを見定めた筈だったのに、くゆりの猛撃は紫陽に食らいついて離さなかった。くゆりにしてみても、どんなに乱射しても僅かに残る隙を的確に攻めてくる紫陽は一筋縄ではいかない相手だ。
「勝っても負けても愉しい勝負だが、最後まで樂しくやろうぜ――お姫様?」
「ンフ、そう来なくっちゃ! 負っけませんよ~~~!」
 行き交う水はますます激しさを増し、二人の顔に刻まれる笑顔もどんどんと輝いていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

五百崎・零
※戦闘中はハイテンション

水鉄砲バトル楽しそう。死にたくないし、水鉄砲なら安全そう。
どうせなら本気でやりたいんだけど、グリモア猟兵の人とやれないかな?

と、いうわけで―
派手に戦おうじゃねぇか!ひひ、ヒャハハハハ!!!
普段から銃を使用しているので水鉄砲の扱いにも慣れてる。
UC【第一悪魔式「傲慢なる翼獣」】を使用、移動手段として使う。
やるなら本気でやんねぇと楽しくないだろ?

攻撃は最大の防御
風船を狙い、弾切れを恐れずにガンガン撃っていく。
ひひ、逃げんなよぉ!?
アハハハ、そうこなくちゃ。楽しくやろうぜ!!
勝っても負けても大満足。死なずに戦えることが楽しくて嬉しい。
もう1戦。いや、ずっと戦ってたい。




「水鉄砲バトル楽しそう。死にたくないけど、水鉄砲なら安全だし」
「そーだよなァ、痛いのは嬉しいけど死にたくはないよなァ」
「どうせなら本気でやりたいんだけど、グリモア猟兵さんお相手してくれる?」
「俺でよければ大歓迎よ。えーと……」
「五百崎・零。ゼロって書いて、りん。覚えづらかったらいおりんでもいーよ」
「りょーかい、いおりん。俺はジャスパーだ。宜しく頼むぜ」
 ――なんて会話をしていたのが十分ほど前。死にたくないデッドマンな五百崎・零(死にたくない死人・f28909)も、死ぬほど痛い目には遭いたいけどやっぱり死にたくないジャスパーも、初対面とは思えぬ打ち解けっぷりであった。
 これは水鉄砲バトルもさぞ楽しいに違いない、とジャスパーは思っていたのだが。
 だが。
「と、いうわけで……」
 じゃっこんとカラフルな水鉄砲を構えた瞬間、零は豹変した。
「派手に戦おうじゃねぇか! ひひ、ヒャハハハハ!!!」
「オイ兄ちゃんキャラ変激しすぎねーか!? 死にたくねえとかほざいてたのはどこのどいつだ!?」
「死なねえためには攻めが肝心だろ!」
 傲慢なる翼獣が零を背に乗せ、縦横無尽に戦場を駆けまわる。その上から射撃の雨を降らせる零には一切の遠慮というものがない。
「ああそうだ……なッ!!」
 殺らねば、殺られる。極めて単純なルールだ。砕け散るのが命だろうが風船だろうがそこに大した違いはない。ジャスパーは自分の血を変形させ、盾にして水撃を阻む。
 防ぎ切ったことに安堵を漏らす隙さえ与えず、翼を生やした獅子はジャスパーの背後に周り込んでいた。こちらも負けじと自前の翼を翻して飛び退くが、狙い澄ました零の射撃がジャスパーの左腕の風船を撃ち抜いていた。
「ま、じかよッ」
「ほらほら、逃げてばっかじゃつまんねえぜ? オレは本気でやりたいって云ったはずだよなァ!?」
 からん、と音を立てて空になったタンクが落ちる。たっぷり水の詰まった新しいタンクを装填しながら、唇の端を吊り上げて零は笑んだ。獰猛とすら言える笑みの中に隠されているものを感じ取ったジャスパーは、同じようににやりと笑った。
「そうか――」
 水撃を阻むために展開していた血の盾が、形を変えていく。一切の護りを棄てた、無数の水鉄砲へと。
「何だいおりん、さっきはちょーっとばかし驚いたけどよ、あんたやっぱ面白えな」
 銃口が一斉に零を狙い、水撃が文字通り嵐のように猛然と襲い掛かる。
「! ――っははははははは!!」
 一瞬面くらったように目を丸くしていた零が、けたたましく嗤った。
「そうこなくちゃ、楽しくやろうぜ!!」
 嵐の中を、獅子が駆ける。逃げる為ではない。攻める為に。
 死にたくない。それは過去の無い零にとって根幹のような想いだ。自分は既に死んでいるらしいが、次に死ぬような目に遭ったらどうなるかなんて保証はどこにもない。
 死にたくないのは、死んだら何もないからだ。戦場に流れる赤も。悲鳴も。この高揚感も。何もかも無くなってしまう。
 だからクレイジーな振る舞いとは裏腹に、零は自分を粗末には扱わない。死なない為の負傷は厭わないが、命だけは決して投げ出さない。
 でも今は――失うのは風船だけだ。かかっているのは勝負の行方だけ。
 だというのに全力で戦える。こんな楽しい事、滅多にない。
 零の右腕の風船が音を立てて爆ぜた。この『豪雨』に晒され続けていたらもう片方が破られるのも時間の問題だろう。
「その前に、届かせてやるぜ――!」
 狙い澄まし、引き絞った銃撃。それは護りを棄てた男の腕に、鮮やかに飛び込むようにヒットした。
「ちぇ、俺の負けかあ」
 風船を割られた腕をぷらぷらさせ、ジャスパーが唇の端をとがらせた。
「いやあ、次やったらわかんないぜ。というわけで」
 零が新しい水タンクと、新品の風船を手にする。
「もう一戦やらね?」
「マジ? 次は負けねえぜ」
「望むところだ」
 クッ、と喉を鳴らして零は笑う。
 実際、勝ち負けなんて大した問題ではないのだ。
 望みがあるとしたら――ずっと戦っていたい。疲れ果てて、それこそ「これ以上やったら疲労で死ぬ」という境地まで。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菊・菊
【兄弟盃】

あの夜のリベンジマッチだ
最高に燃えるよなァ
ルーファス、ちゃんと首洗って待ってたか?

兄貴みてえで、最近のルーファスは嫌いじゃない
でも初対面ボッコボコにされたのは根に持ってるわけよ

今日の相棒はクソデカ水鉄砲
いつものクソ刀と違ってリーチも水圧も充分だろ
はあ?余裕ぶってんのも今のうちだからな
ひひッ、
てめえのお得意の火がなきゃな
俺だってぶちのめせんだよッて冷てえッ!

だー!かけんなちょっと待て早いって早いってばか!
俺が撃ってからにしろよばーかばーか!

口では好き勝手言っても
やっぱり頬は緩んで、次第に罵声は笑い声へ

いつの間にか風船は意識の遠くに飛んでいく
ずぶ濡れのまま、その背に揺られて帰るまで


ルーファス・グレンヴィル
【兄弟盃】

ああ?
──あの日の夜か
くくくと喉奥が震えた
リベンジならいつでも受け付けてるよ
もう一度、完膚なきまでに叩き潰してやろうか

どこ狙ってんだよ、アキ
サメの水鉄砲から発射した水は
そのまま彼の顔へ飛んでいく
オレらの風船は此処だろ?
ほら、と見せつける両腕
未だ無事な風船がゆらりと揺れた

でも、風船だけなんて勿体ねえな
どうせ濡れるのなら遠慮なく乱射しようか
オレの得意分野は確かに火だけど
まだまだアキには負けてやらねえよ
弟分には格好いい背中、魅せねえとな?

聞こえる罵声なんて気にも留めず
やがては笑い合いながら、ずぶ濡れに

勝負の結末よりも、
お前が楽しんでくれるなら、それで良いか
──負けたら負けたで悔しいけどな!




 七色妖怪花火が打ち上げられる宙の下。二人の男がじっと動かず視線を交わし合っている。
 ところどころ金交じりの黒髪を緩く束ねた長髪の男も、灰色の髪を水着に合わせてセットした男も笑顔で――そして、この上なく好戦的な目をしていた。
「あの夜のリベンジマッチだ。最高に燃えるよなァ」
 最初に口を開いたのは長髪の方だった。菊・菊(Code:pot mum・f29554)である。
「ルーファス、ちゃんと首洗って待ってたか?」
「ああ?」
 名前を呼ばれた灰色髪の方、ルーファス・グレンヴィル(常夜・f06629)はやや眉を顰め、それからくくっと喉奥を鳴らして笑った。
「あの日の夜か。まだ根に持ってたのかよ、アキ」
「ったり前だろ、初対面でボコボコにされて根に持たないやつがいるか」
 菊の声音は批難というよりも挑発のニュアンスが強かったが、根に持っているのは事実だ。何だかんだ付き合いの長い中、最近のルーファスには兄貴分のような感情も抱いているほどだったが、だからといってやられた事がなくなるわけではない。
「リベンジならいつでも受け付けてるよ」
「“いつでも”? 今から果たすつもりだけど?」
「それはねえな。何故なら」
 ルーファスが水鉄砲を構える。
「今日はもう一度、完膚なきまでに叩き潰してやるからな」
「はん、そう云っていられるのも今のうちだ」
 揃って肩を揺らして笑う二人。直後、その姿が消えた。


 打ち上げられては破裂し、破裂しては散っていく。
 目まぐるしく変わっていく空中のバトルフィールドを、二人はまるで馴染みの広場でダンスにでも興じているかのような正確さと鮮やかさで駆け巡る。
「いつものクソ刀と違ってリーチも水圧も充分だろ。今日はいける」
 やや低い背に細い手足。包帯や絆創膏が痛々しささえ感じさせるほどに繊細な体躯の菊が手にするのはカラフルなクソデカ水鉄砲。その巨大さたるや菊の腕よりも、脚よりも、ぶっとい!
 それにふさわしい重さを感じさせない軽快な身のこなしから、菊は猛烈な水撃を放ち続ける。
「風船といわず身体ごと吹き飛ばしてやるよ」
「へえ?」
 だがそれは、ルーファスがひょいひょいと身体を逸らすだけであえなく躱されてしまう。
「どこ狙ってんだよ、アキ」
 他方のルーファスは鮫型の水鉄砲だ。赤い眸が持ち主とお揃い風味なのがちょっぴりキュートである。
「はあ? 余裕ぶってんのも今のうちだからな」
 手にしたばかりの水鉄砲の狙いが定まらないのは致し方ない部分もある。だがクソ女のクソ刀に比べれば扱いやすい上にやかましくもないのは事実だ。それに、と菊の口元から笑みが漏れる。
「ひひッ、慣れねえ事してんのはお互い様だ」
「そうか?」
 ルーファスが肩を竦め、力を抜いた何気ない動作で引き金を絞る。
「てめえのお得意の火がなきゃな、俺だってぶちのめせんだよッて冷てえッ!」
 鮫さんの口の下から放たれた水撃は、見事菊の顔面にクリーンヒット!
「って風船狙えよ!」
「あ? だってフェアじゃねえだろ」
 ほら、と見せつけるように掲げられたルーファスの腕には、今だ無事な風船がゆらりと揺れている。それは菊とて同じ事ではある、が。
「そっちはまだ狙いもうまくつけれてねえみてえだしな?」
「そんな余裕ぶっといて、後で後悔しても知らねえぞ」
「ほーう。じゃあ本気で行くか。なあナイト」
「え」
 直後、小さな水鉄砲ひとつしか所持していないとは思えないほどの早撃ちの雨が菊へと襲い掛かる!
「だー! ちょっと待て早いって早いってばか! 俺が撃ってからにしろよばーかばーか!」
「っくく、リベンジマッチじゃなかったのか?」
 どうせ濡れるのだから、とルーファスの放つ水撃の雨には遠慮など欠片もない。敢えて風船に的を絞る事もせず、徹底的に菊を追いつめ、ずぶぬれにする算段だ。
 タンクが小さい分すぐに水が尽きてしまう欠点は、小さな竜のナイトが替えのタンクに水を詰めて運んでくれることによって補っている。勿論「リロード」の隙を逃さず、菊もありったけの射撃をぶちかますのだった。
(「オレの得意分野は確かに火だけど、まだまだアキには負けてやらねえよ」)
 気づけばルーファスも、菊に負けず劣らずのずぶぬれだった。それでも口元に浮かぶ笑みには、好戦的な獰猛さ以上の何かが浮かんでいた。
「弟分には格好いい背中、魅せねえとな?」
「なんか云ったか?」
「まだまだ青いなって云ったんだよ、アキ」
「はァ? ちょっと年上だからってガキ扱いはねえだろばーかばーか」
 軽口には軽口で。精一杯眉間に皺寄せていつものように口も態度も悪い少年として振る舞ってみせながらも、緩む頬だけはどうしようもない。
「ぷくく、ははは!」
「何笑ってんだ、隙が増えるぜガキ――くくっ」
「ガキじゃない、アキだ……っはは!」
 やがて罵声は笑い声にかき消され、飛び交う水も風船を狙うというよりもただのじゃれあいのような応酬へと変わっていく。

 妖怪花火が終焉を迎えるころ、ずぶ濡れの菊は、やっぱりずぶ濡れのルーファスにおぶられて帰路につく。
 二人の風船は仲良く全滅していたけれど、どちらが先に割れてしまったのかは、二人の表情から察する事は出来なかった。
 だって二人とも、満ち足りたような笑顔をしていたから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エンティ・シェア
【花面】

まずは空室の住人でぬいぐるみ二人を呼んで
妖怪達の横槍が入らないように対処しておくれ
(意訳:好きに遊んでおいで)

さて、今日は真剣勝負と行こうか、シェルゥカ
水鉄砲を装備して挑むよ
君よりは猟兵として活動しているつもりだからね
負けるわけにはいかないよ
水の冷たさを楽しみながら花火の上を駆け回ろう
そら、一つ。すぐに二つ目も割ってあげようか

切なげな眼と言葉は
ころしてほしいと望むようで
胸を刺される心地に思わず足を止めたら…普通に割られた
…はー…
今のはずるい(むすー

無邪気な君を見ると、そんな気がないのがよくわかる
まったくもう…楽しそうで、何よりだ(頭を振って切り替えて)
よーし、捕まえてやろう
待て待てー☆


シェルゥカ・ヨルナギ
【花面】

ねぇエンティ
猟兵の経験と空中水鉄砲バトルの強さは別だと思うんだ
だから君が勝つとは限らないよっ

わー!この花火面白いねー!
あっあれも綺麗、乗りたい!
次はどれに…
あれっ、割られちゃった

追い詰められて思い出したのは
望まず敵対関係に置かれた男二人の物語
倒された側が格好良くて
真似したい
今ぴったりな状況
けど真似すれば負ける…でもやるなら今…
…やっちゃお!

ずっと待っていた。君の手で幕を下ろしてもらえる、この時を
(全力で切なさを表現)
…あれ?
エンティ撃たないの?
じゃあ撃っちゃお(びしゃー

なんだか割られた以上に悔しがってる?
あっ、こっちに来た!
…なら海だし、あれもやってみたい!
はははっ、捕まえてごら~ん☆




「君達には大事なお仕事があるんだ」
 呼び寄せた黒熊と白兎のぬいぐるみに、冗談めかしてエンティ・シェア(欠片・f00526)は云う。
「妖怪達の横槍が入らないように対処しておくれ。巻き込んでしまってはかわいそうだからね」
 ぬいぐるみ達は顔を見合わせて、ぽてぽてと楽しそうに走っていった。
 対処。つまり、辺りが見回しやすい場所なら、好きに遊んでいていいに違いない!
 さっそく花火の上をきゃっきゃと走り回る『二人』に、シェルゥカ・ヨルナギ(暁闇の星を見つめる・f20687)がふふと笑みを漏らした。
「これで水入らずってやつだね。いや水浸しにはなるんだっけ」
「さて、今日は真剣勝負と行こうか、シェルゥカ」
 掲げた水鉄砲。シェルゥカも同じように続く。
「君よりは猟兵として活動しているつもりだからね。負けるわけにはいかないよ」
「そうかも知れないけど……ねぇエンティ、猟兵の経験と空中水鉄砲バトルの強さは別だと思うんだ」
 もっぱら応援係を自称するシェルゥカだけど、それはそれ。そもそもでいけば今エンティという身体を動かしている『私』だって、荒事が得意な方ではないはずなのだ。それを得意とする魂は別に存在している。
「だから君が勝つとは限らないよっ」
 先手必勝。水鉄砲を連続で放ちながら、シェルゥカはふわりと花火の路に飛び乗った。次々に打ちあがる花火が宙の路を展開していく。通常の花火よりは長く残るが、それでも光の路は目まぐるしく姿を変えていく。エンティめがけて引き金を絞りながらも、時に階段を駆け上るように、時にジャンプするように、シェルゥカは空の散歩を楽しんだ。
「わー、この花火面白いねー! あっあれも綺麗、乗りたい!」
 試合を忘れてしまいそうなほど心躍る光景。さてさて次はどこに……と辺りを見回した時、ぱん、と無慈悲な音がシェルゥカの手元で響いた。
「あれっ、割られちゃった」
「ふふ。そら、一つ」
 風船を割ったのは勿論、エンティの狙い澄ました狙撃だった。シェルゥカの放つ水の冷たさや、そして彼と同じく花火の上を駆ける楽しさを堪能しつつも、一撃で当ててくるところはさすが先輩猟兵といったところか。
「すぐ二つ目も割ってあげようか」
「あら、どうしよう……」
 これで後がない。どうしたものかと思いめぐらすシェルゥカの脳裡に浮かんだのは、どちらかというと勝負には関係ない、というかはっきりと不利にさえなるエピソードだった。
 いつか目にした、望まず敵対関係に置かれた男二人の物語。
 シェルゥカの心を揺さぶったのは、倒された側のほう。散り際がとても格好良くて、憧れた。
 ――今の状況なら、彼の真似が出来るんじゃないかな?
 でもでもやられる側なのである。真似をしたら、後がない自分は負けが確定である。
 勝負を取るか。憧れや楽しさを取るか。
「……やっちゃお!」
「ん? 何を……」
 訝しむように眉根を上げたエンティの前で、シェルゥカが水鉄砲を握る手をだらりと力なく下ろした。
「シェルゥカ?」
「ずっと待っていた。君の手で幕を下ろしてもらえる、この時を」
「……!」
 生気というものが抜けてしまったほどに白い膚。その中でひときわ鮮やかな赤い眼が、じっとエンティを見上げていた。
 ふ、と微かに笑みの形を作る口元は、永い闘争に疲れ果てた青年がようやく安寧を得られる事にほっとしてさえいるようで。
 ――そんなわけがない。そんなわけがないのに。
 どこか焦点の虚ろな眼差しに、エンティの心はきゅうと締め付けられる。
 思わず足を止めた途端――シェルゥカの表情がけろりと変わった。
「あれ? エンティ撃たないの? じゃあ撃っちゃお」
 容赦ない一撃がエンティの風船をかち割った。
「え」
「やった。同点だね」
 にっこりと笑う青年は、そういえばエンティと同じく多重人格者なのだという。さっきのあれは確かに人格でも入れ替わったような完成度であったが――多分、いや、間違いなく只の演技だ。
 あっけらかんとした笑顔。ころしてほしいなんて、微塵も思っていないことがよーくわかる表情。
「まったくもう……」
「なんだか割られた以上に悔しがってる?」
 ふふふと漏れる笑い声。マイペースさにすっかり振り回されつつも、エンティは頭を振って切り替える。
「……楽しそうで、何よりだ」
 お返しとばかりに放った一撃。シェルゥカが今度は身を翻して避ける。
 ではと花火の床を蹴って距離を詰めれば、わあと驚き顔で飛び退いた。
「こっち来た! なら海だし、あれもやってみたい!」
 これもどこかで見たエピソードである。ただし、こちらは闘争など無縁の仲睦まじい二人組がやっているやつだ。
「はははっ、捕まえてごら~ん☆」
「ほうほう。実に色んなことを知っているね、シェルゥカは」
 繰り出す射撃には遠慮の欠片もないが、エンティの口元にも楽しそうな笑みが刻まれていた。
「よーし。捕まえてやろう。待て待てー☆」
 夜空に咲いた二つの笑顔。楽しい追いかけっこは、まだまだ続く。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルーシー・ブルーベル
【彩夜】
対戦相手:グリモア猟兵さん達でお任せ

夏が……この季節が、来てしまったのね
いいわ
やりましょう、みなさん

黄色と青の風船をつけて
苺が変身したドラゴンさんの背に乗り空へ
ふふ、今年もよろしくね、苺
なゆさんもゆぇパパもがんばって!
お二人も!ティータイムも楽しみにしてる

スゴイミズデッポウ?
うん、分かった
やってみるわ、約束ね!

お相手がこちらを認識したなら、
竜の背から降り立って妖怪花火の上へと飛ぶ
花火を駆け
水の軌道を見切り避けていくわ

背に気配、苺色と視線が交わる
此方の行動が終えたと思わせた所で【花車の更新】
この風が3人に届きますよう
――今ね
ルーシーも風船めがけ狙いを定めて
引き金(水鉄砲)をひきましょう!


歌獣・苺
【彩夜】
対戦相手:グリモア猟兵お任せ

尻尾にぎゅっと
赤と青の風船を結べば
歌を紡ぐ
『これは、皆を希望に導く謳』
薄桃色のドラゴンになれば
3人の後ろに聳え立つ

さぁ、今年も派手にやろうよ
蘭ボス!
今年も勝ってゆぇの紅茶で
浜辺でティータイムしよう!

とびきり空の旅を楽しんでくるよ!いこう、ルーシー!
ルーシーを背に乗せて羽ばたきながら悪戯に大きな水飛沫を敵へかけて行く

ルーシーあのね!
すごい水鉄砲を用意をしてくるから花火の上で負けずにいてね!約束だよ!

告げて急降下すれば
なゆの花嵐に紛れて海の水を口にふくみ、大きく飛び上がってルーシーの背後へ

アイコンタクトで
ルーシーが発砲したと同時に
敵へ口の中の鉄砲水をプレゼント!


蘭・七結
【彩夜】
対戦相手:グリモア猟兵お任せ

真夏の催し――と、云うものね
ふふ。此度も水と戯れることが出来そうだわ
参りましょう、全力で

赤と黄の風船を結んで
準備は万端よ、ユェーさん
めいっぱい、楽しみましょうね

まい、ルーシーさん
おふたりもお気をつけて
そして、楽しんでいらしてね

うつくしい花火が、まばゆいわね
よい夜のひと時の戯れは、心が踊るよう
……あら、お上手
あなたは花火にも劣らぬ優雅さね、お月さま

あかい花嵐を巻き起こし、撹乱を図りましょう
僅かなひと時で構わないわ
ほんの少し、惑う時を与えられたのならば

補助を終えたなら抗戦と参りましょう
感覚を研ぎ澄ませ――放つ

本命は、ふたりの放つ水の一閃よ
すべてを避けられるかしら


朧・ユェー
【彩夜】
対戦相手:グリモア猟兵お任せ

おやおや、今年も来ましたねぇ
楽しみですね

赤と黄色の風船を
ドラゴンに変身した苺と背に乗るルーシーちゃん
苺は無茶しないようにルーシーちゃんは落ちないよう
七結ちゃんと僕はやり過ぎないようにですね
えぇ、楽しみましょう

帰ったら皆さんに美味しい紅茶を淹れましょう
勝ちましたらご褒美に美味しいケーキも焼きますね

二人にお任せして
僕は七結ちゃんの方へ
【ベラーターノ瞳】で攻撃を予知し
危なくなったら彼女を万年筆のチェーンに絡めて引き寄せ花火の上へ
花火の上も良いですねぇ、お嬢様
【嘘喰】
水鉄砲を持つ無数の手
相手の嘘真を見抜き敵の風船を攻撃していく

さて本物がどれかわかるかな?




「夏が……この季節が、来てしまったのね」
「真夏の催し――と、云うものね。ふふ。此度も水と戯れることが出来そうだわ。参りましょう、全力で」
「おやおや、今年も来ましたねぇ。楽しみですね」
「さぁ、今年も派手にやろうよ、蘭ボス!」
 目配せし合う四人の猟兵たち。
 金髪を二つに結ったルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)。
 垂れ耳の根元を花とリボンで彩った歌獣・苺(苺一会・f16654)。
 黒猫を思わせるパーカを纏った朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)。
 ボスと呼ばれた蘭・七結(まなくれなゐ・f00421)を彩るのはいつもの牡丹一華とは違う黒い華。
 そして、四人を迎え撃つのは。
「ふむ。他の者も手が空いていればよかったのだが」
 きょろきょろと辺りを見回すリリー・リャナンシーだが、近しいグリモアを持つ猟兵は皆それぞれに花火の中を駆けまわったり、祭りを盛り上げる為に裏方に徹したりと忙しい様子。
「四対一か。あっさり敗けては盛り上がりに欠けるし、第一私もつまらない」
(どうしよう、リリー?)
「なに、数が足りないのなら増やせばいいだけさ」
 裡なる少女の声に笑みで返し、ユーベルコードで呼び起こすはバロックレギオンたち。普段は五十を超える感情の怪物たちは、今は複雑に絡み合い、合体するように三体の巨人となって顕現している。
 それぞれに水鉄砲を構え、長い腕の両方に風船をくくりつけていた。
 リリーと合わせて四体。八つの風船。これで同条件というわけだ。
「おやおや。可愛らしいお嬢さんかと思ったら」
「大胆な事をなさるのね。でも、これでわたし達も遠慮が要らないわ」
 ユェーと七結がにこやかに、顔を合わせて微笑み交わし。それぞれの腕につけたのも、揃いの赤と黄色の風船。
「準備は万端よ、ユェーさん。めいっぱい、楽しみましょうね」
「えぇ、楽しみましょう」
「いいわ。やりましょう、みなさん」
 黄色と青の風船をつけたルーシーの隣で、赤と青を結んだ苺がぴょんと跳ねる。
「今年も勝ってゆぇの紅茶で浜辺でティータイムしよう!」
「えぇ、勿論。勝ちましたらご褒美に美味しいケーキも焼きますね」
「ゆぇパパのケーキ……これは頑張らなくちゃ」
「じゃあ、美味しい紅茶とケーキのために、頑張るね!」
 未来飾る希望の輪舞曲は、苺の姿を望むままに変えていく。薄桃色の、ドラゴンの姿に。ずしりと聳え立つ頼もしい姿に、ルーシーが期待に頬をほころばせながら飛び乗った。
「ふふ、今年もよろしくね、苺」
「とびきり空の旅を楽しんでくるよ! いこう、ルーシー!」
 大きな翼をはためかせて空に舞い上がるドラゴンは、先手必勝とばかりに大きな水飛沫をリリーや巨人たちにかけていった。
「わっ、ぷ……向こうも大きいのが現れたな」
 さっそく水浸しになったリリーがバロックレギオンたちに目を遣れば、風船がひとつ無残な姿になってひらひらと落ちていくところだった。お返しとばかりに繰り出される水撃の雨を、苺は優雅な空中散歩を楽しむかのようにひらりひらりと躱していく。
「苺は無茶しないように、ルーシーちゃんは落ちないように、気を付けてくださいね」
 パパと呼ばれたユェーが、その愛称に相応しい気遣いを宙へと投げかけた。
「そして、七結ちゃんと僕はやりすぎないように、ですね」
「ええ。楽しむことが一番ですもの」
 とは云いつつも、みすみす敗けてやるつもりもない。艶やかな笑みには、そんな言葉が込められているようだった。
「まい、ルーシーさん。おふたりもお気をつけて。そして、楽しんでいらしてね」


 水と花火の織りなすきらめきの中を、竜と背に乗った少女が駆けていく。
 最初に派手なアプローチを仕掛けたのが功を成したのか、リリーたちはすっかりルーシーと苺のペアに狙いを定めたようだ。
「ルーシー、あのね!」
 大きな苺が小さなルーシーへと声をかける。
「すごい水鉄砲を用意をしてくるから花火の上で負けずにいてね! 約束だよ!」
「スゴイミズデッポウ?」
 首を傾げるルーシーだが、力強く頷く苺を見れば、こくりと頷く。
「うん、わかった。やってみるわ、約束ね!」
 ぴょん、とルーシーは竜の背から降り立って妖怪花火の上へと飛んだ。
「ん? 二手に分かれるのか」
 リリーが仮面の奥の目をすがめた。
「私が少女を追いかけよう。ドラゴンが何か企んでいるようだ。阻止してくれ」
 三体のレギオンたちに命じ、リリーはルーシーの元へと向かう。
 追跡してくるレギオンを撒くように、苺は大きく翼を広げて海へと急降下する。射撃を繰り出しながら花火の路から飛び降りて後を追おうとしたレギオンたちに、あかい花嵐が襲い掛かった。
「ふふ、そちらには行かせないわ」
 七結の放つまな紅。昼の灯りの中でも美しい牡丹一華が、花火の照り返しを受けてより妖しくきらめいていた。
 レギオンは主人の命を護るべく水鉄砲の射撃を放つが、舞い踊る花嵐に阻まれてドラゴンには届かない。ならば、と狙いを七結へと変えて繰り出した連射は、突如七結が姿を消した事によって失敗に終わる。
 正確には、消えたのではない。七結の身体に絡まったチェーンが、優しく、けれど力強くその身体を引き寄せていたのだった。
「ありがとう」
 役目を果たしたチェーンは、ユェーの手の中でしゅるしゅると元の姿、万年筆へと戻っていく。
「お嬢様を傷付けさせるわけにはいきませんからね。それにしても、花火の上も良いですねぇ」
 片眉を持ち上げ、ユェーは笑んだ。
「……あら、お上手」
 二人へと迫る水を花弁の嵐で打ち砕きながら、七結は微笑んだ。
 うつくしい花火が、打ち上げられては光の路を描き出す。一般的な花火よりは長く残るが、それでも光の景色は瞬きする度にその姿を変えていく。
 そこに、花と弾ける水が織りなすいろが加わって。
 静寂と星々に満ちた夜も美しいが、こんなきらびやかな景色もよいものだ。このメンバーで楽しむなら、こんな風に心躍る夜もいい。
「あなたは花火にも劣らぬ優雅さね、お月さま」
 ユェーが微笑みで返し、そのまま視線を流す。金の眸が見遣るのはレギオンたち。全ての過去と現在を視、未来をも予知する助言者が存在するかのように、ユェーは的確に彼らの攻撃を見極めていく。
 猛攻は時に七結の花弁さえも突破してくるが、ユェーの予測はそれを二人へと届かせはしない。更にユェーの射撃がひとたび彼らへと届けば、真実とも嘘ともつかぬ水鉄砲を持つ無数の手が彼らの視界に顕現する。
「!?」
「???」
 途端に彼らは動きを鈍らせる。感情が呼び出した怪物は、それそのものが真実とは言い難い存在なのだろう。嘘を喰らう力に呑み込まれるように、死への導きに取り込まれていく。狙いを定めようにも、無数の手に阻まれてうまくいかないようだ。
 引き金を絞る音が、ふたつ。ユェーと七結、それぞれの射撃が、一体のレギオンの左右の腕に命中した。
 これで、残り二体。


 一体一。ルーシーはひたすら宙を駆けながら射撃を繰り出していた。
 ルーシーの青の風船は割られていたが、リリーの風船も残りひとつになっている。ここは攻めるよりも護りに重点を置くべきだと判断し、ひたすら光の路を走り、足場から足場へと飛び移る。
「何を企んでいるのかは知らないが、その前に仕留めてやればいい」
 ルーシーが攻撃の手を緩めた事を察知したリリーの射撃は熾烈さを増して行く。額に滲む汗を自覚しながら、ルーシーは懸命に光の戦場を駆け抜けた。
 ――そして、時は来た。
 一層激しさを増した七結の花嵐に紛れるように、苺が大きな顎めいっぱいに海水を口に含み、ルーシーの背後へと飛翔してきたのだ。
「なにっ?」
 驚愕するリリーよりももっと早く、ルーシーはそれを察していた。背に感じた頼もしい気配に振り向けば、この姿になっても愛らしい苺色と視線が交わる。
 ルーシーが差し伸べた手から、ふわりと風が巻き起こった。それは彼女の想いを乗せて、宙いっぱいに駆け巡る。
「間に合いましたね」
 今までの疲れをすべて吹き飛ばしてくれるような加護に包まれながら。さて今日のケーキは何にしましょうかと呟いて、ユェーがあっけにとられているレギオンの風船をひとつ割り。
「本命はこれからよ」
 七結も同じようにもう一体のレギオンを撃ち抜きながら微笑んだ。
「すべてを避けられるかしら」
 ルーシーの射撃がリリーへと迫る。慌ててリリーも撃ち返すが、間に合わない。
(「すごい水鉄砲、発射!!」)
 まるでおとぎ話のドラゴンが強力なブレスを放つように、苺の口から物凄い量の水が放たれる。文字通り鉄砲水と呼ぶに相応しい物量と、水圧だ。
 もはや風船を割るという生易しいものではない。戦場外へと押し流されそうになりながら、辛うじて離れた足場に飛び乗り落下を免れたリリーの風船は、当然破片すらも残さず割れてしまっている。
「逃げ……られないか」
 それは残されたレギオンたちも同じこと。巨体さえも押し流す滝のような水が、彼らの風船を粉砕していた。
「やったわ!」
 ドラゴンが低い所で掲げた前脚に、ルーシーが小さな手でハイタッチ。七結とユェーも、目を見合わせて微笑んだ。
「敗けてしまったか」
 仮面をかけ直すリリーも、どこか満足そうな様子で、四人の健闘を称えるのだった。

 やがて、花火の路は徐々にその数を減らして行く。
 楽しいバトルは、終わりの時を迎えたようだ。
 ユェー達も、他の猟兵や妖怪たちも、皆砂浜に降り立ったころ。
「飛んだり跳ねたりする花火も楽しいけど、フィナーレはやっぱりコレでしょ!」
 今からの打ち上げるぶんは進入禁止ね! とのアナウンスと共に夜空に打ち上げられるのは、無数のしだれ花火。
 耳が割れてしまいそうな破裂音とまばゆいばかりのきらめきは、勝負の高揚感を心地よく思い出させてくれるよう。

 妖怪親分プレゼンツのお祭りは、これでひとまず一区切り。
 けれど、夏はまだまだ続くのである。このカクリヨにも、異なる世界にも。
 駆け抜ける猟兵たちにも、素敵な夏が訪れますように。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年08月10日


挿絵イラスト