夏空遊泳! 海のいきものつかみ取り祭(作者 zino
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#キマイラフューチャー  #戦後 


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#キマイラフューチャー
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#戦後


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●夏空遊泳! 海のいきものつかみ取り祭
 新し親分の力によって突如カクリヨファンタズムに出現した真夏のピーチのことは、既に周知の事実だろう。
 それでは時を同じくして此処、キマイラフューチャーにオープンせんとすレジャースポットのことは?
 ビーチ、といっても正確には本物ではないが、本物にほど近く作り出されたキラキラの海はキマイラたちが夏をエンジョイする上で申し分ない。
 ステキですよねぇとうねうねしていたニュイ・ミヴ(新約・f02077)は、ですが、と悩まし気に触腕を震わせ空を指した。そのとき、ちょうど空からも落ちてきた水滴がぽちゃんとタールに混ざる。
 こんな晴天に雨? いいや、違う。
「ご覧の通り、たまーに“バグってしまった”ポイントがあるようでして……」
 見上げれば広がる青には魚、魚、魚! 美しい波を描く小魚の群れ、優雅に尾びれを揺らめかせ舞う熱帯魚。海とは何だったのか、金魚や鯉もちらほらと。
 空がある筈の場所に海が。正確には、海のいきものたちがなんの問題もなく空を自由気ままに泳ぎ回っているのだ。
 異様な速さで過ぎる巨影はまさかクジラだろうか。とても長いウミウシに大きなクラゲ、ちょっとまて、ピカピカした七色ネオンを灯すソレは? どう見ても人面のアレは……?
「でも大丈夫ですよ! ここはキマイラフューチャーで、みなさんは猟兵なのですから!」
 そう、ちょっと行ってつかまえてあげて海へ連れ帰るだけ、です!!
 ニュイはゴリ押しで不思議空間への順応を迫り、後方に転がる選りすぐりお役立ちグッズとやらを紹介し始めた。
 まずはオーソドックスなウォータージェットパック。そして空も飛べる自転車にサーフボード。色々な世界の技術の結晶たちを利用できるとなれば百人力だとも。
 ちなみにだが、海のいきものたちを正しく目の前の海へ送り込むには“触れる”だけでいいらしい。
「えっと。まだ海が動く可能性があるので、おすすめは薄着か、せっかくですので水着でチャレンジもステキかと! みなさんのカッコイイお姿に、現地のみなさんもきっと大盛り上がり間違いなしです!」
 さらっと流したが、海が動く、とは?
 ――ジュウウウウウッ! 答え合わせをするかの如く、海面から超速で噴き出た水が一直線に空を貫いたのは直後のことだった。こちらはまるで間欠泉か鉄砲水。
 そうでなくとも大岩や海藻が特に説明もなく普通に空に存在しているため、障害物や身を隠す習性のいきものを考えれば一筋縄ではいかぬともうから予想がつく。
「ふっふふ、わくわくしちゃいますねぇ!」
 ざあざあ落ちてきた水しぶきと金ぴかヒトデに楽し気に身を揺すったニュイは、それにしても、と泳ぐ気満々でカメラの類を構えるキマイラたちを振り返った。
 オープン当日とはいえこの見物人の数は。
「これもまたばずり、ということでしょうか?」

「ふっ、予想通り最高のオープニングイベントになりそうね……!」
 ハンモックでくつろぎ、手にするはアイスの白雲にしゅわりと爽やかな炭酸の青、夏空を再現したかのラムネフロート。
 それをクルクルストローでチューチューしていたキマイラ女改め施設責任者は、パリピサングラスを意味深にずらしながら不敵な笑みを浮かべていた。とか。

 すべてはバグ? もしかして計算尽く?
 ――いずれにせよ、今年も熱い夏になりそうだ!


zino
 ご覧いただきありがとうございます。
 zinoと申します。今回は、キマイラフューチャーへとご案内いたします。
 戦闘(第2章)については最小人数またはサポート参加者様のみで進行予定の、日常(第1章)パートメインのシナリオとなります。

●プレイング受付について
 導入はなし。受付スケジュールはタグ、マスターページにてお知らせいたします。
 ご参加者様数よってはプレイングの再送信をお願いする可能性がございます。

●第1章について
 バグって空に飛び出してしまった海のいきものを、思い思いの方法でつかまえましょう。
 いきものの種類は普通に海にいるもの(魚類に限らず幅広く)からSNSでしか噂されていないような珍生物、オリジナルの生命体までなんでも可。色やサイズもチグハグ。
 岩や海藻、水泡などのオブジェクトもそのまま空に浮いていることがあります。また、時折海水が噴き上がってきます。
 キマイラフューチャー仕様ファンタジー空間なので自由に楽しくご想像ください。いきものは丈夫ですが、殺傷目的の攻撃のみお控えください。
 水着でご参加いただく際はイラストがあればその公開日を、なければ軽くデザインを、プレイングにてお教えください。

 空を飛ぶにあたり、自前のユーベルコードや技能、アイテムでチャレンジいただけます。
 必要であれば以下の装備が会場で貸し出し可能です。
 ・ウォータージェットパック(背負うタイプ)
 ・スカイサイクル(天使核の力で空中移動を可能にした軽量の自転車。1~2人乗り)
 ・マジック・サーフボード(空中滑走も可能な、サーフィン魔法を行使できるサーフボード)

 複数人でのご参加は【1グループあたり3名様まで】とさせていただきます。
 複数人でのご参加の場合、プレイングに【お相手のIDと名前(普段の呼び方)】か【グループ名】をご記入ください。
 個人でのご参加の場合、確実なソロ描写をご希望でしたら【ソロ】とご記入ください。
 グリモア猟兵は現地への転送に専念します。
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第1章 日常 『うみあそび!』

POWぼうけんだー!素敵なものを探すぞー!
SPDおあそびだー!魚と泳ぐよ!
WIZのーんびり。きれいなところでお喋り!
👑5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


旭・まどか
クラウン(f03642)と

空が海になっているだなんて俄には信じ難かったけれど
実際目にしてしまうと信じざるを得ないな

目の前を横切る金魚を突けば
むずがる様に逃げる白鰭を目で追い

ふふ、それなら安心して空へと漕ぎ出せそう
だったら運転は任せても構わない?
特等席で空の遊泳を楽しませて貰おう

ぐん、と漕ぎ出す勢いそのままに
慣性に置いていかれる白くまフードを押さえて

目まぐるしく移り変わる海の彩に驚きが追いつかない

嗚呼、本当
鱗が光って…否、身体全体が光ってる?
くにゃりと曲がるヒトデは僕らに手を振っているみたい

僕が気になったのは、この子
いつの間にか君の頭に乗っていたパンダウミウシを捕まえ
ほら見て
君と御揃い、白黒の子


クラウン・メリー
まどか(f18469)と

わあ!みーんな空に飛んでる!
ふふー、俺達も海のトレジャーハンターになっちゃおう!

翼は仕舞って
会場にあるものを借りようかな?
もし落ちそうになったらキャッチするから安心してね!

まどかはどっちが良い?
スカイサイクルなら漕ぐよ!

うんうん、任せて!しっかり掴んでてね!
よーし、出発進行ー!

ひゃわー!気持ち良いね!
まどか軽いからスイスイ漕げちゃう!
わ、わ!あっちにキラキラ光るお魚さんがいるよ!

こっちにはお星様が!じゃなかった、ヒトデさんだ!
片手を伸ばして七色に光るヒトデさんをキャッチ!

まどかは気になるお魚さんいたかな?

わ!ほんとだ!
ふふー、いっしょに真っ白なウミウシさん探しに行こう?



 目がくらみそうに高い青空。を、泳ぐ魚たち。
 ――空が海になっているだなんて俄には信じ難かったけれど。
「実際目にしてしまうと……ね」
「わあ! みーんな空に飛んでる! ふふー、俺達も海のトレジャーハンターになっちゃおう!」
 ふかっとした白くまフードで日光を遮る旭・まどか(MementoMori・f18469)の隣、はしゃぐのはクラウン・メリー(愉快なピエロ・f03642)。サーカスから飛び出してきたかの派手派手な衣装は同時に涼し気で、海辺の祭りの景色に溶け込んでいた。
 何もかもの明度と彩度が高い。
「ぼーっとする? 大丈夫?」
「ううん。平気」
 行く手に、ふたりで先ほど食べたアイスみたいなもこもこ白雲が流れてゆく。
 おいしそう! 早くもときめき目で追うクラウンの横顔に、ふっと表情を和らげるまどかから行こうかと先を促した。「魚たちに先に食べられてしまうよ」「むむ、それは負けてられないなぁ」なんてやり取りに声を弾ませて、押す自転車の車輪を転がす。
 ちなみにこの自転車は空も飛べるとのレンタルスカイサイクルだ。着くなり自前の翼を収納したクラウンにまどかは首を傾げたものだが、何か問う前に、いっしょに楽しみたいもん――と。お馴染みの真っ直ぐさで告げられてしまえば、突き放す理由なんて見当たらなかった。
(「本当はすこしくらっとするけれど」)
 きっと、悪い感覚じゃないんだろう。そう、目の前横切る眩しい金魚をつっつくまどかの指をくすぐり返して、白いひれがゆらりと透き通っていった。

「運転は任せても構わない?」
「うんうん、任せて! しっかり掴んでてね!」
 よーし、出発進行ー!
 もし落ちそうになったらキャッチする、のあんしんサポート付き。クラウンを前、まどかを後ろに乗せた自転車はそうして大海原ならぬ大空へ漕ぎ出した。
 ぐんと身体が押し込まれ、水圧改め風圧が白くまフードを持ち上げる。片手をクラウンの胴に回し、もう片手でフードを押さえたまどかが一瞬ぎゅっと瞑った目を開いたなら、そこに広がるのは特等席だからこそ堪能出来る絶景だ。
 さあさあ、心地好い小雨に似た音をして目まぐるしく移り変わる海の彩! クレヨンで描いたような鮮やかな発色の熱帯の魚が右から、左から。ほのかな光球抱えたクラゲは上へ上へとふんわり漂って、車輪をぽよよんと弾ませる空中階段にも早変わり。自転車と並走する銀の鱗の小魚たちは、時折ふたりの頭上にアーチを描いて泳ぎ過ぎる。
「――――わあ」
 驚きが、追い付かなくって。
「ひゅわー! 気持ち良いね! それに綺麗っ」
 ぽかんとちいさく口を開けるまどかは次に、すごいすごいと両手を広げ手放し運転するクラウンにびくりと瞬いた。思わず片手ならぬ両手、回す腕に力を込めるも、ご心配なく! 猟兵サーカス仕込みのバランス感覚は抜群で、危うげもなくコース取りをしてみせる。
 そのまま、すれ違うウミガメとパチンと星屑散るタッチしてようやくハンドルに手を戻したクラウンが弾けるように笑った。
「まどかは怖くない?」
「……怖いわけ、ないよね」
「そっか! ふふー、まどか軽いからスイスイ漕げちゃう!」
 抗議のつもりでぽかっと背を叩いてもその背はくすくすと震えるばかり。
 すっかり風に捲られてしまったフードだが、頭上に浮いた水泡たちのおかげか日光は複雑に屈折している。空の遊泳はなんだか涼しい。ふんふふん、音響さん代わりにご機嫌な鼻歌うたうクラウンが「わ、わ!」と声を上げたのは、まどかもこっそり心内で歌をなぞり始めたときのこと。
「あっちにキラキラ光るお魚さんがいるよ!」
「嗚呼、本当。鱗が光って……否、身体全体が光ってる?」
 横手にクラウンに指さされた魚はひらりと大きく細長く、リュウグウノツカイに似ている。帯めいてたなびく身体がその度に光を返し、うっすら緑や青に色付いて。眩しいのに、同じだけ淡く優しい。
 月のようだと思ったのはどちらだったろう、直後にお星様――もとい、七色ヒトデたちが降り注いでくれば尚のことムードたっぷり!
「流れ星だー!? どうしよまどか、願いごと願いごとっ」
「ふふ、流れヒトデの間違いでしょう」
 彼らにはきっとどんな願いも荷が重い。でも、せっかくならこのお宝集めの成功を祈っておこうかな、なんて。
 身のこなしはまさにトレジャーハンター、落ちてきたひとつを伸ばした片手で上手に空中キャッチするクラウンの後ろでまどかは、くにゃりと曲がって落ちる星々へ手を振り返した。

 ふにー。うににー。
 呼吸の間隔で伸び縮みし色を変えるヒトデはハンドルにくっついて、もう暫し共に空を楽しんでゆくご様子で。もっとオシャレな自転車になっちゃった、にっこり笑いかけるクラウンはぐんぐんペダルを回す。そういえば。
「まどかは気になるお魚さんいたかな?」
「そうだね」
 僕が気になったのは、この子。
 肩越しに問えば、まどかの声とともにそっと何かが頭に触れる感触がした。
「ほら見て。君と御揃い、白黒の子」
 はてなと振り返りたくなる金の瞳の前へ差し出されたてのひらに乗っかっているのは、白黒模様がとても愛らしいパンダウミウシだ。同じく白黒基調の装いをしたクラウンを仲間と思いついてきたのだろうか、もにもにひんやりした手触りのそれも「?」と言いたげに頭部を持ち上げる。
 自然、見つめあう二者。
「~~ほんとだ! ふふー、まどか似の子もどこかにいるかもっ」
「交代する? 漕ぐの」
 ぱあっと笑顔輝かすクラウンに反応し、にょんと動くウミウシの触覚が微笑ましい。
 しかし疲れてはいないだろうか。積極的に表に出すことはないが優しいまどかの心遣いを、ありがとうと汲み取ったうえでクラウンは己が胸を叩いた。「大丈夫!」自分が楽しいだけでなく友だちを、ギャラリーをも楽しませ笑顔にすることが出来る。この役回りは自分にとっても特等席なのだ、と。
「そう。じゃあ、引き続き安全運転でよろしくね」
「もっちろん!」
 微かに笑んで再度回される腕に拳を振り上げ、いざ、いっしょに真っ白ウミウシさん探しへ!
 キラキラなひと夏の冒険は続いてゆく。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

ロカジ・ミナイ
エンジくん(f06959)

一昨年の水着にサイバーチックな魚籠を提げて登場する僕

うん?うんうん
エンジ、海バーツ、オケオケ……うん?うん
よくわからねぇが頑張れって言われたら頑張るのが漢ってもんだが?

僕は泳ぐのも釣りも得意中の得意だからね
この間なんてちいちゃい島を一本釣りしたくらいだし
うん、元気に飛んでる…変な魚だねぇ…

長身と長い手足、ジャンプ力を活かして高級魚っぽいやつに掴みかかる
デカくて魚籠に入らねぇ!ガハハ!
グワー!ワカメだと思ったらウニだったー!イッテー!

ん?あのサカナは嫌だって?仕方ないな、僕に任
…わっ、なにこれベタベタしてやだー
見てよ賢い君、これベタベタで、臭、あっ、
やだー!避けないで!


エンジ・カラカ
ロカジン(f04128)

狼柄の水着ダヨー
賢い君も一緒ダヨー

ロカジン!海が動く!
コレは海バーツ!オーケー?
ロカジンガンバレ、ガンバレ

うん?うんうん。賢い君がロカジンの手伝いするって。
ロカジンなにする?なにする?

ヘンナサカナ

あそこ。アッチ。
ギラギラしたサカナがいるいる。
アッチはベタベタしているいる。

グワー!ワカメが空飛んでる!
ワカメバーツ。ワカメは野菜。
……野菜?うーん、バーツ!

アァ……コレは指で賢い君を動かしながらサカナを捕まえる…。
あのベタベタしたヤツは賢い君も嫌いって言っている。うんうん。

オンナノコはベタベタがキライ。
臭いのもキライキライ。
グワー!コノサカナクサイ!



 気儘に頭上を泳いでゆく名も知らぬ魚からは生命のにおいがしない。
 すん、と鼻を鳴らしていたエンジ・カラカ(六月・f06959)はなーんだ食べられないんだと言いたげに狼尾ならぬ狼風襤褸布の裾を垂らすが、抱える、賢い君こと相棒の拷問具に映り込むキラキラに眇めた眼を丸くする。
 波打つ幾重もの光の線。
 目で追った先、宙で揺らめく海の塊がうごうごこちらへ向かってきているではないか。
「ロカジン! 海が動く!」
「うん? うんうん」
「コレは海バーツ! オーケー? ロカジンガンバレ、ガンバレ」
 一方、木陰にて形式上は医者らしくゆるだら準備体操なんかしていたロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)は、まーたエンジくんの頭がフワフワしてるなぁくらいの気持ちで生返事していた。エンジ海バーツね、オケオケうん。うん?
 よくわからねぇが。
 頑張れと言われたならば頑張るのが漢ってもんだが?
「一切合切任せなさいよ、――っぶ」
「アァ……さすが頼もしいなァ……」
 活動的な装いと相まって立ち姿は粋でいなせな海男といったところであったか、洗練された近未来デザインの魚籠を腰にぶら下げ、腕を回しきって振り返るロカジはエンジがひょっと盾にした分の水塊をモロに顔で受ける。
 無駄にもったりとした弾力のある“海”は宇宙飛行士が顔に被るアレの逆バージョンのような密閉性だ! しかし漢ロカジ、ここで無様に助けを乞うことなどしない。泳ぎも釣りも得意中の得意、この間なんか島ひとつ一本釣りしてやったのだ、この程度――!
「賢い君、手伝わない、オーケー?」
 ――ノーです。
 バタつく腕でバッテンを作ってみせられたエンジがにまりとすれば、手元から飛び出した赤い糸がロカジに巻き付き、思わぬ力強さで水責めから引っ張り出した。雑に砂浜へ投げ出されるロカジ。
「ひーっ奇襲たぁセコい野郎だよまったく! でもねぇ、色男はタダじゃ転ばないのさ」
 その、砂ばかり握りしめたと思われていた両拳が開かれると、そこには蜘蛛の子のようにわさぁと群れる逆三角形の小エビが収まっていて。
「ロカジンキモチワルイー!」
「そんな僕が気色悪いみたいな。でも変なエビだねぇ……いでで挟むの禁止!」
 罵倒しながらはしゃぐエンジは引いているのだか喜んでいるのだか。
 ムキムキ逞しいハサミからしてザリガニかもしれない。この海は何もわからない。「切れる? 賢い君の糸は負けないない」「いやそれ毒あるくない?」二人と賢い君、辰砂とでちょっかいを出す間に彼らの姿は薄れて、おそらくは海へ帰ったのだろう、最後には水滴だけが残された。
 なるほどこういう仕組みか。もはや怖れるものなしと、腫れた指でしっかと立ち上がるロカジの傍らエンジの視線は忙しない。
「ヘンナサカナ」
 アッチ、と右を指せば太陽めいてごうごう燃え立つ鱗をしたキケンなギラギラ魚。
 左を指せばあまりにぬめりけのある表皮により仲間内でくっついてしまった怪奇・球体ベタベタ魚。
 それらの合間をズワーッと泳ぎ抜ける立派な上顎のカジキマグロが、やはり空を悠々自適に泳ぎ回る非日常風景だ。
「うん、元気な……変な魚たちだねぇ……」
「ネー。 ――! ロカジンロカジン、アレほしい」
 と、盛大に吹っ掛けられた水飛沫に変顔するロカジの耳にひときわ弾む声が飛び込む。見遣ればエンジが見つめているのは、割と高空を泳ぐ宝石じみた鱗の巨大魚で。長めのひれはドレスよろしくたなびいて、狼男の心を惹いたのはなによりその鮮やかな赤の体色だろう。賢い君に似ている。
「あら綺麗」
 へぇ、と鼻を啜ったロカジは狩人の眼差しをして口角を持ち上げた。
 ――来たよ来たよ。腕の見せ所が!
「賢い君、ちょいとあの木から木に糸頼めるかい?」
「オーケー」
 駆け出す友の頼みに応え、赤糸を手繰るのはエンジ本人。
 糸がサーカスの綱渡りのように渡された瞬間、助走をつけてのロカジ渾身のハイジャンプ! 糸のひと踏みで更なる大空へ。背丈、手足、長いそれらと人より秀でたジャンプ力を発揮した飛びつきは、見事に巨大魚の胴を捉えた。
「獲ぉったァーーッ!! デカくて魚籠に入らねぇ! ガハハ!」
「ワーイ! ロカジンスゴーイ!」
 魚を抱き落下する身をネット状になった糸束が受け止め、楽々着地を手伝う。
「コレもワッショイしたい!」
「ほいほい、重いよ割と」
 間近に見る宝石魚はよほど美麗で、もし店に並べられたなら良い値がつくだろうにとしみじみ思うロカジは、今日のところは同じだけピカピカ瞳を煌めかせるエンジに価値を見出しておくことにする。

 ――グワー! ワカメが空飛んでる! 野菜のくせに! ……野菜? うーん、バーツ!
 ――グワー! ワカメだと思ったらウニだったー! イッテー!
 それからも二人は大騒ぎしながらつかみ取り祭を盛り上げていった。苦しむほどギャラリーは湧いた。おそろしい世界。
 周囲に目立ついきものはいよいよ球体ベタ魚のみとなる。つかまえるの? あれを? えぇ……。
「思ったんだけど。あの魚も賢い君の糸でちょちょいとやればさ」
「オンナノコはベタベタがキライ」
「あ、そう……仕方ないか、僕に任っうわっなんか出てきた!」
 しゅわわわわ、と。
 触れただけで噴射される分泌液は捕食者から身を守るためのアレであろうか。ベタベタしてやだーくらいで、漢方をどうにかした感じのにおいはロカジとしては許容範囲内だ。
「見たろう賢い君、僕の雄姿……あれ?」
「グワー! クサイ!」
 が、エンジの方は。
 ズザッと砂を蹴り、賢い君の目鼻(?)を押さえてやりつつ逃げの姿勢。
「臭いのもキライキライ」
「やだー! 避けないで!」
 始まる追いかけっこ。素知らぬ顔でキラキラする海。
 すごい楽しそう! と眺めるキマイラたちがミニゲームに飛び入り参戦するまで、そう時間はかからなかった。とか。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
水着は今年の7/24に公開された水着を着て、孔雀輪を使い飛行する

メガリスの関係で空を飛ぶ海洋生物はいるが、ここまでたくさんだと見るだけで圧倒されるな
ほら、お前達の住処はここじゃないだろ。戻るんだ

SPDで判定
風火輪:孔雀輪を使い【空中浮遊】【空中機動】で移動する
まずは魚と一緒に空を飛んで海まで【おびき寄せる】
それでも戻らないのだったら風嵐の指輪で風の【結界術】を使用
対象を傷つけないように気を付けて張り、そのまま海に誘導する

イルカを見つけたら撫でたりしてみたい、グリードオーシャンでも敵以外ではあまり見かけなかったし触れ合いたい


シャルファ・ルイエ
水着
2020年7月10日


海って鯉や金魚が泳いでいたり、動いたりするものなんですか???
正確には海じゃないので良いんでしょうか……?

海の概念についてつい考え込みそうになりましたけど、とりあえず海の生き物を触って海に戻せばいい事は分かりました!
まずは歌で誘って、《動物会話》で会話出来るか試してみます。会話が出来るなら説明をして触らせて貰って。
それがダメなら、追い込み漁をしましょう。
泳いでいる子も隠れている子も【統べる虹翼】でわたしの居る場所へ追い立てて、飛び込んでくる子にひたすら触れていきます。
飛んで、避けて、水に濡れて。
驚かせるのは申し訳ないですけど、海に帰って貰うためにもたくさん捕まえますね!



 グリードオーシャンの海も、目の前の光景と肩を並べられる程度には不思議で満ち溢れている。
 メガリスを食したことで巨大化し空を飛び回る海洋生物は、ルイス・グリッド(生者の盾・f26203)もよく知るところだ。
「まぁ……ここまでたくさんだと、さすがに圧倒されるが」
「その海って、鯉や金魚も泳いでいるんですか……?」
「……いや」
 海とは。
 歯切れの悪いルイスの返事にシャルファ・ルイエ(謳う小鳥・f04245)は考えることをやめた。
 悠々と泳ぎ過ぎるひらりと優美なベタのひれは金から白への淡いグラデーションで、まるで本日のシャルファの装いを頑張ってまねっこしたよう。白を基調としたシースルーのワンピースはマリンルックなビキニを透かして、厳かさと健康的な美を見事に両立させている。純白の翼を震わせれば伝い零れる水滴まで、朝露の輝きめいて。
 よそゆきスタイルのシャルファに対し、ルイスはスポーティーなウエットスーツ姿。レジャー施設だろうと目を光らせるのは常に人々のため、いつ戦いが起きようとそのまま駆けつけていけそうな機能性は、なるほど遊びにも全力で臨むべしとする男の選択らしい。
「なんにせよ、このままじゃ遊びたい人も遊べないだろうからな」
 今はさざ波を映して静かに輝くだけの右手を握り、開きながら、白砂を踏んで空改め海を睨み上げるルイス。
 足取りに伴い、次第に強く舞い上がる砂は孔雀輪こと飛行をも可能にするメガリスが風を呼び起こすためだった。軽く膝を折り、直後にはバネのように飛び立ってゆくルイスを「お気をつけて!」シャルファは折り畳み椅子に腰掛けのほほんと見送る――――だけではない、安心してほしい。
「わたしも頑張らなくっちゃ。たしか触って海に戻せばいいんでした、よね」
 先ほどのベタはすこし先で仲間と合流したらしく、ラメ入りの絵具で塗ったみたいに煌めく彩を持ついろんな種類の金魚が集まっている。
 縁日の出し物と同じで、慌ただしく追おうとすれば逃げるだろう。けれどもシャルファには術がある。その花唇がおもむろにちいさく歌を口遊み始めると、魚たちが次々に顔を向けた。
「――こんにちは、皆さん。お外は暑くはありませんか?」
 動物と会話出来るという、とっても平和的な術が。

「俺には到底真似出来そうにないな」
 娘を中心に海のいきものが集い始める光景は、空飛ぶルイスから見ると絵本の中の一ページのようだった。
 ギャラリーのキマイラたちも大体同じ感想らしい、幻想的な絵のベストショットを収めんと軽い乱闘が始まっていたりする。なに、平穏の象徴で良い。
 一方のルイスが飛び込んでいたのはアジの群れ。皆が整然と同じ方向へ進むアジは空でたなびくと祭会場の鯉のぼりじみて、これだけ近付いてもあちらからはぶつからないあたり、ルイスもまた群れの一員として認識されている風だ。
 賑やかな空の旅。しかしこのまま観客席へ飛び込ませるわけにはいかない。
「ほら、お前達の住処はここじゃないだろ。戻るんだ」
 シャルファと違い言葉は交わせないが、パッチリした目を見ているとなんだか意思疎通出来ているような気がしてくる。
 気持ち緩んだスピードに、もうひと押しと輝かせるのは銀に光る風嵐の指輪。ルイスの手元から解き放たれるメガリスの力は、此度も守るために。――さあ、あぁぁ、海藻が揃って揺れるのは目に見えぬ風が通ったから。そうして張り巡らされた風の結界がやんわり魚群の進路を制御する。時折、迷いをみせるものもいるが。
「恐れることはない。俺も行こう」
 短くも柔く言って、ルイスは孔雀輪の出力をぐんと上げ群れの先頭へ。
 心地好い水泡の天気雨。導く宛の大海は広く穏やかに、皆の帰りを待っている。

 わくわくふれあいレジャー向け用に設計された海のいきものは、人の熱を拒まない。
 ――では、触りますね。
 金魚に鯉、熱帯魚。事情を説明してシャルファが触れたものたちはどれも聞き分け良く海へ帰っていった。
「うんうん、良い子たちですねぇ。……あら?」
 やがてシャルファは、自分の番がやってきたチビネムリブカのギザギザ歯が何かを挟んでいるのに気付く。
 しきりに頭を振るのは差し出す仕草? それは淡い黄色に染まるプルメリアの花だった。
「まあ」
 ぱち、と瞬くシャルファ。オラトリオとして髪に咲く小花が花好きと思わせたのか。彼らを呼び集めるためにと響かせてきた、美しいさえずりの礼ということかもしれない。
 鳥と魚。大きく異なる種は本来ならばこうして出会うこともなかったろう、が。
「嬉しいです。わたし、海の中にも会いに行けますので」
 またいつか! ――受け取った花に唇寄せて微笑めば、ぽぽぽとあたたかな光の泡になる魚の感情も伝わってくるようだ。
 周囲のいきものがおとなしく帰路についたのなら、さて次は。
「やんちゃな子たちを遊び疲れさせないと、です?」
 プルメリアをステッキ代わりに揺らして呼び出す魔法の硝子鳥。
「呼んできてくださいな」
 にっこり伝える一声だけで飛び立つ無数の鳥が、追い込み漁を開始した。
 海からの水鉄砲もゴツゴツの岩もなんのその! 華麗に飛び交うシャルファの鳥はすぐにルイスのもとへも辿り着いて、風の結界内へと魚たちを迷い込ませる手伝いをする。
「助かる」
 アジと共に海へ飛び込んで濡れた身体は早くも乾いていた。
 頭に乗ったヒトデをしれっと啄んで剥がしてもらいつつ、巡らす視界にイルカの姿を見るルイス。強面をしておいてなんだが、イルカにはひときわ興味を惹かれる。グリードオーシャンでも敵以外ではあまり見かける機会がなかったのだ、慎重に距離を詰めてあわよくば――――。
「かわいいイルカさん、よしよししても良いですか?」
「!」
 撫でてみたい。
 ――と、思っていたらば傍らにて天の声。
 羽ばたき、軽やかな一歩で動物との心の距離を詰めてしまえるシャルファに「この子、撫でられるのが好きみたいです」なんて手招かれてしまえば、あとは心ゆくまで。

 飛んで、水に濡れて。ふれあって。
 出会いのひとつひとつが、不思議で素敵な夏の思い出になる。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

雨野・雲珠
菊花お嬢さんと!/f24068
※今年の水着。箱宮は下ろしています

はい!参りましょうお嬢さん!
動きの自由度ならジェットパックでしょうか…
(装着。次いでお嬢さんのお腹に【枝絡み】しゅるり。
 巻きつけくっつけ、コバンザメスタイルの完成)
…よし!



猛烈なクレームを受けてお姫様だっこに変更しました。
以前も同じことやって怒られましたが、
あの体勢のほうが両腕空いてよいと思うんですよ俺は…

ともあれ俺は移動係です。
速度に気を付けつつあちこち飛び回って、
大岩を見つけたらしゅうっと着地。
はっ……カニ!(カニ)
一緒にはしゃぎつつもお嬢さんが落ちないようにだけは あっ
わーーーっお嬢さっ……、

よ、良かった…もう……!


八重垣・菊花
雲珠くんと!/f22865
今年の水着

雲珠くん!これは夢の摑み取りやで!
せやね、ジェットパックで
(雲珠のやることを見ている、既視感を覚える、これカクリヨの水蜘蛛川姫倒した時と同じ流れ)
雲珠くんな、前にも言うたやん!
こういう時は!お姫様抱っこやって!
見栄えって大事なんやで(真顔)

なんたって今日のうちは夏のお嬢さんやからな!
カニもタコもヒトデもおるし、ちっちゃいジンベエザメもおるんやけど!何あれ、ぬいぐるみみたいで可愛い!うちはあのジンベエを(勢い余って落下)
きゃー!なんて叫びつつも余裕のお嬢さん
(貴船を呼んで、大きくなったクラゲの上で見事着地、雲珠くんにピースしつつ片手にはちゃっかりジンベイ)



 うなぁお。
 誰かが差していったパラソルの下、愛らしいねこ浮き輪は海を透かして心地好さげに目を細めている。
「どうでしょう?」
「バッチリや」
 視線の先ではつい先刻まで屋台の手伝いでもしていたかのような、粋な腹掛姿で借り物のウォータージェットパックを装着し終えた雨野・雲珠(慚愧・f22865)がくるり回った。手伝ってあげた八重垣・菊花(翡翠菊・f24068)は親指をぐっして、空から降ってくる水滴を同じ手でつかまえる。わ、つめたい!
 てのひらのちいさな池で音符似のオタマジャクシが跳ね、鈴音を鳴らし消えて。
「――雲珠くん! これは夢の摑み取りやで!」
「――はい! 参りましょうお嬢さん!」
 気合十分、早速菊花を空へご案内すべく雲珠の取った方法は、  しゅるり。
 共に両腕が自由であるようにと、桜の枝と根を少女の胴に巻き付け自分にくっつけする迷いなきコバンザメスタイル。菊花はぽかんとした。もっとこう、せめておんぶとか。せめて――……っていうかこれ、デジャヴでは?
「も~~っ! 雲珠くんな、前にも言うたやん! こういう時は! お姫様抱っこやって!!」
「わっわっ、暴れると危ないですよ……!」
 見栄え、大事。
 レディ扱いしてほしい菊花と抱っこ紐状態に違和感ゼロの雲珠のぶつかり合いだ! 余談ながら、抱えられつつじたじた四肢を動かす菊花の絵面はそれこそ童じみていたとか。
 健康的に日に焼けた小麦色の頬がぷっくり膨らむ様がお餅のよう、なんて口に出すとまたまた怒られそうなことを思いつつ、結局折れたのは雲珠の方。枝絡みをしゅるると解いて、少女を抱え上げる腕の見かけによらぬ力強さは医療に従事する日々の賜物だろう。
「そう、これやこれ! はー、ギャラリーに写真機頼んどくんやったわぁ」
「はぁ。落とさないように頑張るので、腕四本分のご活躍期待してますね?」
「もち!」
 なんたって今日のうちは夏のお嬢さんやからな!
 ぺかーっと自信満々に笑う菊花を見ていると、万事上手くいきそうな気がしてくる。
 眉下げやわく笑い返す雲珠が、では、と砂を蹴りつければ純白のサマードレスがふんわり風に膨らんだ。そのままぐんと飛び立つ空へカーテンめいて広がり、下方から眺めていたなら新種のクラゲが増えたよう。ごうごう、パックから噴出される水が海面を騒がせて。

「わーっ雲珠くんヤシ! ヤシぶつかる!」
「あーっ!?」

 ……なんて空での騒ぎもありはしたが。
 地頭の良い雲珠は飲み込み早く、障害物の回避行動に必要な距離感やどのように体重をかければどのくらい速度が出るかを考え、活かし始めた。スレスレを通り抜ける苔生した岩の上で休憩していたムチムチ大ウミウシをサッとつかみ取るのは菊花で、仰々しく「とったぁ!」と声を張る微笑ましさときたら。
 騒ぎを聞きつけたためか、行く手にひょっこり顔を覗かせる影がぽつぽつ。
「はっ……カニ!」
「それにタコ、ヒトデやろ……ちっちゃいジンベエザメもおるんやけど! 何あれ、ぬいぐるみみたいで可愛い!」
「ぬいぐるみ!」
 浮遊する大きめの岩に一旦着地した雲珠と菊花は、海のいきものたちの出迎えに嬉々として華やぐ。
 タツノオトシゴ入り水泡がシャボン玉みたく漂う中、横歩きで足の甲に乗ってきた墨色のカニにどきどきしていた雲珠は、指さす菊花の更なるパワーワードに顔を上げた。正面顔はちょっぴり間抜け面、というか愛嬌のある顔立ちをした姿は小さくとも確かにジンベエザメに見える。すいーというよりぽよよーとでも効果音のつきそうなゆるさで大気を掻き、どこかへ行ってしまうサメぐるみに思わず、菊花は。
「――まって!」
「あっ ええっ!?」
 雲珠の腕を飛び出して、ジャンプッ!
 空中へ舞った身体は海中と違い浮き上がらず、見る間に高度を下げてゆく。「きゃあああ!」遠のく、かよわい少女然とした悲鳴が空いた雲珠の腕をわたつかせた。
「わーーーっお嬢さっ」
 タイミング悪くざああっと二人の間を過ぎていった魚群が視界を奪う。
 素手と桜枝とで渦のようなそれを掻き分けて、なんとか追いかけ飛び立つ雲珠は開けた青空で待っていた光景に目を丸くした。
「じゃーん! なぁ雲珠くん、この子触り心地もぬいぐるみなんやけどー!?」
 海とのはざまに咲いた菊の花。主の願いに応じジャイアントになったくらげ、貴船の上に見事着地し余裕綽々でピースをくれる菊花だ。逆側の腕にはばっちりと先ほどのジンベエザメが確保されている。本当に絵になるなぁなんて、いや、それより。
「よ、  良かった……もう……!」
「えっどないしたんそのほっぺ、お餅やん!」
「お餅じゃないです!」
 へろへろ力なく同じ高度まで下がってきた雲珠へ、こちらは遠慮なくにんまり茶化しながら菊花が手を差し伸べた。

「あの。思ったんですが、はじめから貴船さんに頼っていては……?」
「分かっとらんなぁー、ひと夏のドキドキいうんを」
 進路を巨大クラゲにお任せする空の旅も、のんびりとした気球のようで楽しい。
 貸してもらったジンベエくんが海へ帰る前にもにもにと戯れる手だけ忙しなく、もっともな疑問を口にする雲珠に対して大人びた笑みを浮かべる菊花。髪に絡んだ発色の良い珊瑚が上質な装飾品めいて、“夏のお嬢さん”を盛り立てる。
 ――でも、タコまで気付かず乗っけているのがまだ子どもっぽい。
「っふふ。そうですね、失礼しました」
「ちょお、今の笑うとこ?」
 そーっと背後に回して伸ばす桜枝で取ってあげるのが雲珠のやさしさであった。
 実際のところ、子どもでも大人でも良くって。水滴の天気雨、点滅するヒトデの星々に手を翳しながら「また来たいですねぇ」と呟けば「せやねぇ」としみじみした声が返る。
 こんな心ときめく縁、ひと夏限りでは惜しい気持ちは同じだもの。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
【相照】2021・07・24公開
海だー!
でも海に入らないんだろ?沈まなくて済むな!
一杯捕まえるぞー!
ええー、嵯泉も一緒に沈んじまうよ

ふふーん、勝負挑んで良いのか?
私は自分で飛べるんだ
これだけでアドバンテージだぞ!
大きいの一杯捕まえて、嵯泉のことびっくりさせてやろ
クラゲは毒があるから気を付けて
ヒトデは捕まえやすくて良いな
魚とか隠れてる奴はうまく追い詰められるかな
あ!タコだ!めんだこ!仲間だぞ!
めん……溶けてる……恥ずかしい?そう……

嵯泉どのくらい捕まえた?
じゃあ……どういう基準で決めれば良いんだろ、これ
うん!凄く楽しかったよ!
ええー。じゃあ、嵯泉は楽しくなかったの?
そっか――へへ。なら良いや!


鷲生・嵯泉
【相照】2021・07・24公開日
妙な状態ではあるが……海、だな
沈む様なら、いざと成れば此方に掴まれば良い
私がそう簡単に沈むものか、きちんと手は打つさ

では何方がより多く捕獲出来るか、一勝負としようか
何、其の方がお前も遣り甲斐があるだろう?
生憎と私にも手は在る――獲剔、行くぞ
こいつで近寄れるものとなると……
ホオジロザメに……あれはマグロか。構わん、全力で追え
カマスだろうがバショウカジキだろうが、お前なら追い付けよう

其れなりだとは思うが
大型なものが多い分、お前には及ばない様だ
基準か……ならば――海、楽しかったか?
では、沢山楽しんだお前の勝ちで良い
いや――お前のお陰で楽しかったから言っているんだよ



「海だー!」
「……ああ。海、だな」
 泳がなくていい海――沈む心配のない空模様に手放しで喜ぶニルズヘッグ・ニヴルヘイム(伐竜・f01811)の隣にいれば、些細な問題などどうでもよくなる、鷲生・嵯泉(烈志・f05845)としても。
 沈むようなら、いざとなれば此方に掴まればいい。そう告げてみても巻き添えにしそうと遠慮がちだったニルズヘッグがもし溺れる状況があれば、嵯泉はお構いなしで掬い上げる気でいる。お互い頑固で、思いあっているからこそで。踏み歩く白砂がさりりと崩れ、隠れていた桜色の貝が声援を送る風に開閉する。
「一杯捕まえような! っと、皆も熱中症には気を付けるんだぞ!」
 背の翼を広げやる気満々なニルズヘッグは、本日海のキャプテン風の装いだ。どこか舞台衣装のようでもあったろうか、観客席へ愛想よく手を振る彼をアイドル的存在と解釈している者も少なくはない。波音に似たシャッター音が連続して、すまし顔の嵯泉も礼儀で目礼をした。
 一杯、――か。
「では何方がより多く捕獲出来るか、一勝負としようか」
「ふふーん、勝負挑んで良いのか?」
 私は自分で飛べるんだ、と竜の翼で送られる風が涼しい。
 ふと笑む嵯泉の素肌に羽織った衣が揺れる。それにしても大きな揺れは……、にゅうん、そこから凶悪フェイスの巨大深海魚ホウライエソが顔を出してきたとなれば合点がいく。
「わっ」
「生憎と私にも手は在る」
 ――獲剔、行くぞ。
 あーっ! スタートダッシュで先を越され声を上げるニルズヘッグを後目に、嵯泉を乗せびゅおんと飛び立つホウライエソ、獲剔。
 悠々泳いでいた魚たちは、プログラム通りであれば出くわすはずもない深海の捕食者襲来にドびっくり。
 蜘蛛の子を散らすようにさあーっと道を開けるが、これが通りやすくて良い。もとより大物狙いの嵯泉は彼らを流し見て見送るのみで、視線を定める先はぐんぐん近付く巨大生物の影。ゆっくり振り返るホオジロザメは早くもラスボスの様相であったが、対する嵯泉にも獲剔にも同様の“オーラ”がある。
「ふん、まだ若い個体だな」
 旋回し始める数メートルのサメに対してこの余裕!
 なにせこちらは八メートル級だ。「構わん、突っ込め」抜刀する代わりに嵯泉が素手を翳せば、薄らと発光し応じる獲剔は海を空を波打たせて突き進む。飛び掛かるタイミングを狙っていたホオジロザメは一度仕切り直しを試みるが、メガリスを食べて能力を得た深海魚の力強いこと。
 水泡の壁をいくつもぶち抜き体当たりの敢行だ。その間に獲剔の背をとんっと蹴り跳んだ嵯泉は、危うげなくサメの背へと着地して。
「空の旅は十分楽しんだか?」
 挨拶する風だ。ざらついた肌をごく軽く叩いた。
 途端、風船から空気が抜けるみたくシューッと海水を噴き縮むサメから飛び降りれば、待ってましたと滑り込む獲剔に騎乗する。
「さて」
 休む間もなく次へ舵を切る男の姿に、見上げるギャラリーは一層沸くというもの。なお捕食者同士の邂逅があまりに緊張感のある絵面だったため、噛みつかれても痛くない安心安全なビーチです! と必死の場内アナウンスも鳴り響いていたとか。

「ははっ、嵯泉の奴」
 逆側へ飛んだニルズヘッグには見ずとも分かる、彼が戦場のノリそのままに大活躍してしまっていることくらい。
 だからこそ負けていられない! 今は鱗に覆われた肌が日に焼け付くほど高く、自前の翼ならではの慣れた飛翔で海藻、大岩の障害物をすいすい潜り抜けるニルズヘッグも実のところ大物狙い派であった。
(「大きいの一杯捕まえて、嵯泉のことびっくりさせてやろ」)
 視界の端に過ぎる小さな魚や何故だか浮いてる貝、警戒心ゼロのタツノオトシゴへはぱぱぱとタッチ。泡になって透けゆく涼し気な姿をしっかりと楽しみながらも、目当ての影を探す。
 ――クラゲは毒があるから気を付けて、と。ヒトデは、うん、捕まえやすくて良い。
 追われれば物陰に逃げる習性を持つ魚たちも、ユーベルコードに底上げされた竜のスピードにはさすがに敵わない。
「ごめんな、脅かす気はないんだよ」
 両手でぎゅっとされ膨らんだフグに申し訳なさげに眉下げ笑うニルズヘッグは、はたと。ふわふわ漂い落ちる赤茶色に目が引かれる。
 タコ。それもメンダコだ!
「めんだこ! 仲間だぞ!」
 ニルズヘッグのめんだこも嵯泉の獲剔と同じくメガリスを食し巨大化した深海魚であるが、呼びかけてもうんともすんとも反応しない。「? めん……あっ」なんと溶け出してそのへんの岩に張り付いていた。恥ずかしい? そう……。
 普段深海に連れてゆく機会などそうないので、仕方ないのかもしれない。代わりにニルズヘッグがふにふにソフトタッチして親睦を深めていれば、横合いからごうと大気を裂いて飛び込んでくる魚影があった。
「!」
 出た、マグロ! それを追う、鋭い赤目と目が合って。
 頭と尾へ。ふたつの手が同時にマグロの肌に触れる。
 ――……今のはどちらの得点だろう?
「ここまで勝ってる自信あるぜ、私?」
「ほう? では、そろそろ始めるとするか」
 鉢合わせしたニルズヘッグと嵯泉、縁深い同士でありながら交わす視線も言葉もバチバチと火花の散りそうなほど。真剣勝負は、だからこそ燃えるのだ。
 このときばさあっと放られたジャケットと羽織がキマイラたちの間でファンサービスじみていたのは、知らぬ存ぜぬ話である。

 そうして、もう暫し。
 まさしく縦横無尽に空だか海だかを駆け巡った二人は、両側から巨大エイを引っ張ったのをきっかけに大岩に腰掛けひと休みしていた。成果を尋ね合えば嵯泉は大物中心でニルズヘッグに数で劣る模様。競うとは言ったが、そういえばどういう基準で決めれば良いのだろう、この勝敗は。
「何をどれだけとか覚えてないもんなー……」
 むむむと半ば無意識に尾で水泡とじゃれるニルズヘッグを、嵯泉は横目で見遣った。
 そういうことならば。
「――海、楽しかったか?」
「へ? うん! 凄く楽しかったよ!」
「では、沢山楽しんだお前の勝ちで良い」
 きょとんと聞いていたニルズヘッグは、一旦黙り言葉の意図を噛み砕く。
 勝ちを譲られた? ううん、大事なところはそこでなくって。
「ええー。じゃあ、嵯泉は楽しくなかったの?」
「いや」
 お前のお陰で楽しかったから言っているんだよ。
 そっか――へへ。なら良いや!

 喜ぶ尾がぱしゃあんっと泡を割り、ここにきて一番のずぶ濡れに、二人して吹き出した。
 またひとつ、共に在ってこその楽しさを知る。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

矢来・夕立
イサカさん/f04949 ※2021/7/24

散歩しましょう。
誕生日にあげたもの、折角ですから使ってください。
コレさしてれば水飛沫も平気そうだし。

魚は…目の前に来たやつを触るくらいで良いんじゃないですか。
一緒の傘に入ってちゃ走れもしませんよ。

此処にも宝石の魚はいるでしょうか。
メルビレイみたいなクジラとか、イワシトルネードとか。
それからUDCの熱帯魚とか。あと、たことか。しらすとか。
…今日の夕餉のことを考えていました。

今年も水辺に来られてよかったです。
また少し夏が好きになりました。
…海?本物の?…そうですね。本物は、今年はまだですね。
空からじゃ、波の音だけはどうしても遠い。


黒江・イサカ
夕立/f14904と ※2019/7/20

自分でやったプレゼントの使い道を見つけて来るなんて、
福利厚生までしっかりした男だなあ
夜にビル街飛ぶのも結構楽しいけどね、あれ
(https://tw6.jp/garage/item/show?item_id=140107)

それにしても、すっかり魚に詳しくなったねえ
後半、食い物の話みたいになってるけど
そういうこと言ってると寄ってきてくれないよ、お魚さんがた
なーんて、彼らには流石に関係ないだろうけど…
じゃ、頑張るひとたちを高みの見物と行こうか ハハ

…ええ?確かにこれも賑やかでいいけどさあ
本物の海も行こうよ、後で 夏の海
この海はちょっと、僕には静かすぎるから



 一枚の薄い生地越しに遠い夏の海がぼやけている。
 微かな波が光の刺繍となり揺れるのを、黒江・イサカ(雑踏・f04949)は穏やかに見つめていた。ゆるく世界を回す。高くから降ってきた水泡がぱしゃんと弾けて、露先を煌めかせた。そうしてもちものとなった傘を手に佇む男の背の極楽浄土の彩に、その横顔に、触れはせず大切に。
「どう? そんなに似合う?」
 大切に、宗教画みたく拝むだけだった矢来・夕立(影・f14904)は不意に動いて自分を映した瞳に肩を揺らす。
 はぁ。気のない返事だけ条件反射で零して、ついでに視線を空と海の境界へ流して。「当たり前ですね」何事もなかったように言葉を続ければ「当たり前だよな」くつりとした笑いが耳を擽った。
「君がくれたんだもん。プレゼントの使い道を自分で見つけて来るなんて、福利厚生までしっかりした男だなあ」
「……どうも」
 碌に濡れてもいないラッシュガードの裾を絞る夕立。熱いし暑い真夏のビーチは、もしかすると温度設定からバグってるんじゃないかと問い詰めたいほど。
 散歩しましょう、とイサカを誘い出してもうどのくらい経ったろう。誕生日に夕立がイサカへ贈った傘は空だって飛べる、曰く“ふしぎな魔法の傘”。派手に海のいきものを追い回すことこそ出来ないが、相合傘してゆったり遊覧飛行に興ずるにはこれ以上ない代物であった。
 これで夜にビル街を飛ぶのも結構楽しい、そんななんでもないイサカの台詞ひとつが彼のくらしに存在していると知れて嬉しいお返しになる。
「一匹あっちの岩に隠れました、今」
「はぁい」
 明らかに話を変えた夕立に敢えて逃げ道残す風なイサカがいて、二人はどちらともなく手を引いて空を歩く。
 海のいきものを探知するのは大体夕立の役目だ。夏のビーチなんて天敵みたいな防備力の高いスタイルでいながら、決して放棄はしていない。仕事というのもあるにはあるが、宙で固定された海底の砂からぎょろりと目だけ動かすオコゼだとか、海草に擬態したカミソリウオだとか、そういうものを見つけたときにすごいじゃないと褒められるのが擽ったかったりして。
 岩陰に手を伸ばし、ひんやりした薄皮に触れる。
「ふむ、こいつはフグの仲間ですか」
「へぇぇ。それにしてもゆうちゃん、すっかり魚に詳しくなったねえ」
「多少は」
 直後には威嚇でぷくうと膨らむトゲトゲな魚をすこしも警戒せず覗くイサカの指をきもち引き戻しつつ、それらのものが気に入っていると気付かせてくれたのは誰だと――ヘタに蒸し返すと温度が更に上がる気しかしないので、もうすこし一緒に散歩するためにも一度夕立は口を噤み、あたりを見渡した。
「メルビレイみたいなクジラとか、イワシトルネードとか……UDCの熱帯魚とか。そういうの、見つけてみたいですけど」
 青から赤へ、波打つごとにグラデーションするゲーミングイカ。
 イカ。
「あと、たことか。しらすとか」
「うん。食い物の話?」
「……今日の夕餉のことを考えていました」
 あまりおいしくなさそうな色彩ながらも、つい海鮮の方へ引っ張られていった思考をイサカにつっつかれ前髪を掻き上げる夕立。
 帽子、やはり被るべきだったか。熱を逃がしていれば傘のつくる日陰がすこし大きめに寄せられて、熱気以上に気持ちが安らぐ。自分たちよりも大きな人間が、そうして動いたからだろうか、いきものたちがぴゅーっと散ってゆく。
「ほら。そういうこと言ってると寄ってきてくれないよ、お魚さんがた」
 からから笑うイサカがちょっと意地悪めに声のトーンを落として。
「いざとなれば手はいくらでもあります」
「やだー物騒ー」
 二人なりの軽口で華やぐのも楽しい。
 青海波模様の折り紙が四角いまま上着のポケットに引っ込んだ。もしも彼らを三枚におろしたとて、断面には光の粒子が行き交うだけだろう。だったら作り物の太陽と、隣のひかりだけで間に合っている。ひれに打たれて飛んできた水泡がもうひとつぱしゃっと傘を濡らした。

 ほら夕立、熱帯魚。
 君の好きな魚だと先に見つけてくれたイサカへは、綺麗ですねだとかテンプレみたいな返しをするのがまだ精一杯の夕立で。
 悔しくとも眩しい。いとおしい。いくらかは大人らしくなった指で繋ぎ直す、幾度目かの夏が。

「よくやってくれてるね、これ」
「そうですね。我ながら……良い選択だったかと」
 イサカが、綺麗なだけの雨垂れとまた遊んでいる。
 ――あ。目が合いそうだ。察して赤目が追った雨粒の落ちゆく先ではジェット噴射される水が猟兵たちを自由自在に飛ばし、飛行機雲めいた軌跡を描いていた。目についたもの、手元に来たものだけつかまえて、気儘な散歩をするうち随分と高くまで来たらしい。
 小型だがクジラには触れたしイワシの群れにも包まれた。宝石鱗の魚だって七色まで数えて、この感覚を満足と呼ぶのかもしれない。
「今年も水辺に来られてよかったです。また少し夏が好きになりました」
 逸れてさえいれば平熱で吐ける夕立の声を傘は弾かず、くるり回される世界の端に色付く熱帯魚柄が艶やか。
 言った。かと思えば、ええ? と即問い返されたので素でびっくりする夕立である。一番近い、硝子越しの赤が自分を直視したのに微笑んで、確かにこれも賑やかでいいけどさあ、とはイサカ。
「本物の海も行こうよ、後で 夏の海」
 ……海? 本物の?
「この海はちょっと、僕には静かすぎるから」
 続けるイサカの眼差しが導くみたく眼下の青へ流れる。
 当然のように夕立はそれを追う。――空からじゃ、波の音だけはどうしても遠い。
「……そうですね。本物は、今年はまだですね」
「ね。ついでに獲れたての魚買って帰ろ」
「いやまぁ、はい、店に寄れるかはイサカさん次第ですが」
 けれども引きずり込まれる水の冷たさも今は恋しい、なんて。
 目を伏せれば触れられるほど鮮やかに蘇る日々と、今日とを結ぶ“これから”の話はあたたかい。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

マルガリタ・トンプソン
鸙野(f15821)と
水着:2020.7.18納品

一度来たことある世界だけど、空を泳ぐ魚を見るのは初めてだなぁ
君の中の一番を更新できたなら来た価値があったね

君って空飛べ……ないよね。俺もだけど
自転車、乗ったことないけどいけるんじゃない?UCDアースじゃみんな乗ってるし
あ、せっかくだから二人乗りしようよ
善処はするけど倒れるっていうか落ちるよね、これ

水着姿がかっこよかったから誘った……のは内緒だけど
まあ魚の方に目が行くよね
生きた魚ってまじまじ見たことないし
触るとこんな感触なんだ
えっ鯨怖くないの?でかいじゃん
いいけど食べられそうになったら水鉄砲で撃つからね
ふふ、怖いのは嫌だけど楽しい。変なの


鸙野・灰二
マルガリタ(f06257)と
服装:2021.7.24納品水着

キマイラフューチャーに行ッたことはあるか?
声をかけながら見上げてみれば文字通り空を泳ぐ魚
俺は今日初めて来たが、此処は一等、奇ッ怪な世界だな

……空は飛べない。お前もか、そうか
貸し出し道具に頼るとしよう
此の自転車ッて奴を使うのはどうだ
二人乗り?構わんが乗るのは初めてでな
倒れたら受け身を取ッて呉れ、落ちる時は俺が下になろう

魚泳ぐ空は近付くと尚凄まじい
誘われなければ此の世界を訪れる事は無かッただろう
マルガリタに感謝しなくてはな
自転車に乗りながら魚に手を伸ばし、触れては海に戻す
折角だ、彼処の鯨にも近付いて良いか
喰われそうになる前に離れるからよ



 ちら、ちら、頭上を行き交う魚たちがランダムな模様を落とす。
 両手を組んで頭の上へ。ぐーっと伸びをすると肺いっぱいに取り込まれる空気は、微かに本物の海のかおりがした。
「うん、いい天気」
 スポーティーな印象のタクティカル風レインコートの下は、ガーリーなリボンがあしらわれたビキニ。少年と少女のどちらの性質も持ち合わせているかのような、マルガリタ・トンプソン(イン・ユア・ハンド・f06257)は近付く足音に振り返れば「やっぱり似合うね」と並ぶ鸙野・灰二(宿り我身・f15821)を肘でつっついた。
 緩やかに着流された和装は夏めいて。常はざんばらの灰の長髪が今日は撫でつけられ、更には後ろでひとつに括られている。
 よって遮るものを持たぬ緑眼はいくらか眩しそうに、ずっと低い位置にある瞳を見返した。つむじからつま先まで断りなく眺め下ろす無遠慮さは、勝手知ったる仲だけに逆に居心地が良い。そのうえで「お前もよく似合う」だとか、素面で吐くから。
「へへ」
 水着姿が、君がかっこよかったから誘ったんだよ……っていうのは、内緒だけれど。
 マルガリタは花飾りの咲く方の髪を耳にかけ直し、ちょっと小走りで前へ出た。数歩で振り返る。
「自転車! 借りるんでしょ、せっかくだから二人乗りしよう」
「二人乗り? 構わんが乗るのは初めてでな、倒れたら受け身を取ッて呉れ」
「UDCアースじゃみんな乗ってるし、いけると思うけどなぁ」
 自転車に乗ったことがないのはお互い様だ。
 なんなら、灰二にとってはキマイラフューチャーに訪れたこと自体も今日が初めて。
 もしものときは自分が下になると約束してくれる灰二だが。もしものもしもちょっとくらい怪我したって。此処は一等、奇ッ怪な世界だ――そう空ゆく魚を見上げる彼の中の“一番”を更新出来た、それだけでも十分来た価値があると、マルガリタは思うのだ。

 チリリン。風鈴にも似た音は涼し気で、案外景色にマッチしていた。
 物は試しで鳴らされたスカイサイクルのベルを海のいきものは気にも留めず、気儘にあたりを泳ぎまわる。交通法なんて知ったこっちゃない。
「これ、轢かない方が難しかったりして」
「俺とお前だ。轢く、よりも早く仕留めてしまえばいい」
「戦場に出るみたいに言うんだからなぁ」
 物言いこそ物騒な灰二だが触れるだけで良いのはちゃんと再三意思統一済である。“武器”同士が夏のビーチでバカンスだなんて、いつかなら笑ってしまったかもしれない。
 マルガリタがホルダーにさした水鉄砲、その平和な弾薬だけが漕ぎ出される自転車の振動にたぷんと揺れて、波打った。
 ――空へ。
「すごい、浮いてる」
「ああ。…………」
 海のいきものが泳ぐ空は、近付くと尚凄まじい。
 色もとりどり、知った姿からまるで見知らぬ姿まで。移ろいがちな風景に擬態しようとするものは大忙しで、その逆、ゆったりと子を抱えて背泳ぎするラッコなどは寝ているのだか起きているのだか。
 背にマルガリタを乗せペダルを回す側を買って出た灰二は、そうと意識する前に誘う黒色金魚の尾びれに手を伸ばした。ちいさな動物に触れたときと同じ、やわらかな感触が伝う。あの頃よりも上手になった力加減は戯れくる命を傷付けることなく、しゅわしゅわと光る泡へ変えてゆく。結ばれた口元が微かに弧を描く。 今、なにを考えて。
「わ」
 ぽよよっ。
 魚たちへ注いでいた視線も一瞬逸れ、その横顔を我知らず見つめたマルガリタは、自ずから飛び込んできた手乗りサイズのフウセンウオに声を上げた。
 これは? 明るいオレンジの体色は親しみを感じぬでもない。「どうした」肩越しに案ずる気配がして。「ううん、」胸元にぶつかって目を回すそれに触れてみれば指が沈みそうなほど脆い存在であるとわかる。生きた魚をまじまじ見る機会もなかったなら、こうして触れる機会もなかった。
「面白いや」
「そうか。俺もだ。お前に誘われなければ此の世界を訪れる事は無かッただろう」
 感謝しなくてはな。
 言って、灰二はコースを銀に光る魚群トンネルの方にとる。懸念されていた自転車の運転技術だが問題という問題はなく、そもそも二人して肝が据わりまくっているため、時折小岩に乗り上げたって焦る素振りもなかった。急な訪問者に驚いて顔を覗かせたザリガニと目が合って、それを引っ張り上げたくらい?
 海へ旅立ったフウセンウオに代わり、マルガリタの膝の上には大きなメンダコがねこのように丸まってくつろいでいる。
 耳っぽいひれが揺れ遊び、置いた片手がくすぐったい。ゼリーみたいだと零せば、腹でも減ったかと見当違いなリアクションがきて。これもまた、面白いのひとつ。
「結構ぼーっとしてるやつが多いんだ」
「争う必要がないということか」
 木漏れ日めいてさあさあと降る鱗のきらめきが肌を過ぎてゆく。空の海は、終始穏やかだった。
 魚群トンネルの壁に手を添えれば、走行するに伴ってぽわぽわんとパステルの泡を残し視界が開ける。二人の進路に次に姿を見せたのは、種類こそわからないが、とても大きなクジラだ。なんでもひと呑みにしてしまえそうなでっかい口がまさに今開かれて、プランクトンのいる海水に代わり地上から吹き上がってきた花びらを取り込む。
「うわあ」
「折角だ、彼処の鯨にも近付いて良いか」
「えっ怖くないの? でかいじゃん」
 ハンドルを握っているのは灰二なのだから当然好きにしたっていいのに、律儀なものだ。
 広い背に守られ、ちょっと身体を傾けて覗く先のクジラはマルガリタにしてみればモンスターそのもの。だが、ここまで触れ合ってきたいきものを思えば気にならないこともなくて。
「喰われそうになる前に離れるからよ」
「ならいいけど。食べられそうになったら撃つからね」
 なぁんて水鉄砲を前へと差し向けながらもマルガリタは知っている。
 灰二との約束が破られたためしはないし、それに。
「随分と平和的だな」
「だって“そういう日”だし?」
 ――ふふ、怖いのは嫌だけど楽しい。変なの。
 どんな出会いも今日ならば良い思い出になりそう。一番は、いっしょに更新し続けたい。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

イディ・ナシュ
【水難】

絶景ではありますが
それを楽しむ余裕が然程無いのは悲しむべき事かもしれません
何故なら、キディと二人乗りという愚を犯してしまっているからです
ぐんぐん後ろに流れて行く青やその他とりどりの色彩
身体が物凄い速度で後ろに引っ張られます

漕ぐ速度を落としてくださ――
と義妹へ訴えようにも空気圧が酷くて口が開きませんし
まあ、それは、ええ、振り落とされますよね
水着(2020/7/18)なのがせめてもの救いでしょうか

慌てて両手で空を掻けばぬるりとした手触り
申し訳ございませんウミウシ様
海への道連れにさせて頂きます
落下途中に衝突したのがエスパルダ様だったとは
きっと後々知るのでしょう
なにせ目を回しておりましたので…


エスパルダ・メア
【水難】

暑いしオレもバグって良い?ダメ?仕事?まじぃ?
あーだめホントバグる…けど景色は確かに綺麗な
水着は去年のを着て、サーフボードを借りて
終始眉間に皺があるのは暑いのがダメなせい

高いとこは二人に任せ…何かすげえ速度で行った気がすんなまあいいや頑張れイディの首と四肢
下の方にいたペンギンを抱えて返し
七色のマグロとかを掴み取りしたところで

ウグェ!!!

何かが落ちてきたのとぶつかったのはわかった
やたらゆっくりな視界でそれがイディなのもギリッギリわかったしやっぱ落ちたなって爆走キディを見上げた気がして

受け止め

るとかは無理なんだよ暑いから!!

見事に潰れて海に落ちて行くが
せめて七色のマグロも持っていきたい


キディ・ナシュ
【水難】
見上げるだけでもわくわくしますがお仕事です!
新しい水着で、二人乗りのスカイサイクルを借りてゴーです
おねえちゃん、しっかり掴まっていてくださいね!

わ、見てくださいエスパルダさんのご親戚のような青いお魚さんがいます!
こっちの青色に黄色の模様はおねえちゃんにも見えます!
素敵な光景に視線もキョロキョロ
流れる景色に、指先だけでそーっとお魚さんたちに触れて戻します

楽しくて夢中になれば
ペダルを漕ぐ力もどんどん強くなるのも仕方がないこと
あ、見てくださ――
そうして振り返ったら二人の姿が消えていました

…は!大変です!
おねえちゃんとエスパルダさんが迷子になりました!
イルカさん、あの二人の行方を知りませんか?



「わ、見てくださいエスパルダさんのご親戚のようなお魚さんがいます!」
「お前なぁ、青けりゃなんでもオレかっての」
「いえ、確かに似ておりますかと。この目つきをご覧ください」
「むむ!? こっちにはおねえちゃんがっ!」
「あぁー? 確かに似てんな、この毒持ってそう感」
 交わす言葉こそフリーダムだって、わーい綺麗なお魚さんだーとつんつんして微笑み交わしあう――などという、フレッシュなひとときもあるにはあったのだ。
 ドタバタな三人組にだって、初めの数分間は。

 高波とともに空へと乗り出せば、それだけ真夏の太陽に近付く。
 サーフィン魔法とやらも日差しからは守ってくれぬらしい。まるで青空に花のベールが掛かったよう、清涼に透けた羽織をひらめかせ借り物のマジック・サーフボードを乗りこなすエスパルダ・メア(零氷・f16282)の姿は絵になっていたが、当人の眉間の皺は険しい。
「あっちぃっ! くっそ、どうせバグるなら雪でも降ってろよ……!」
 海じゃなくとも自分だってバグりそう。
 アイスレイピアのヤドリガミたるエスパルダにとって暑さは天敵だ。身体の所々に纏う氷こそ変わらず形と冷気を保ってはいても、気分はすっかり棒だけになったアイス。眩暈にくっつきかけた瞼を、しかし脇を通り抜けゆく人影が連れる強風が叩き起こした。
「ふふん、お先ですよエスパルダさん!」
「ああ……キディ、速度を……速度が……」
 二人乗りスカイサイクルの前にキディ・ナシュ(未知・f00998)、後ろにイディ・ナシュ(廻宵話・f00651)。
 高い位置でポニーテールに盛った髪はおそろいで揺れ、水滴の真珠をくっつけてキラリと輝く。髪がそうなら装いもまた夏仕様、甘く爽やかなオレンジ基調のセーラー水着は元気印の妹らしく、反対に、シックな色味で統一された中でピリリとスパイスのきく柄物ワンピースを着こなすスマートさは姉らしい。
 ただしコンディションについてはご覧の通り。もはや立ち漕ぎ状態でぎゅんっぎゅんペダルを回すキディにしがみつき、うわごとのように安全運転を願い繰り返すイディは、荒々しい運転にもとから色白の肌を更に青白くしている。
 おかしい。絶景を楽しむはずが。何故――何故よりにもよって、義妹と二人乗りという愚を犯してしまったのか。
 なお、イディ必死の懇願は風の音に掻き消され誰の耳へも届いていない。「うおっ」余波で傾いたボードを的確な体重移動で立て直すエスパルダは、瞬く間に頭上へすっ飛んでいった自転車を目の上に手を翳しつつ見送った。あー……。
「ま、高いとこは任せとくとして」
 まあいいや頑張れイディの首と四肢。
 激やばコーヒーカップでももげなかったので大丈夫、多分。遅れてやってきた涼風に心地好さげに目を細めた男は、何も見なかったことにして改めて周囲を見渡す。
 ペンギンだ。夏の海設定のくせ何故だか浮かぶ流氷に乗っかっているペンギンたちが、時を同じくしてエスパルダを見つめている。
「作れんじゃねぇか、氷……」
 自身の精霊が迷い出て溶けていないかとちょっと心配になるエスパルダであったが、額を見るに杞憂で済みそうでほっとする。噴き上がる水流にボードを乗り上げて氷上へ飛び移れば、よちよち寄ってくる個体から手当たり次第に抱え上げてゆく。
 嫌がるどころか安心したようにエスパルダの腕に抱き着く彼らは、本物同様ふかりとしたぬくもりを残して粒子めいた水泡へ。
「もう迷い込むなよ」
 お前らのせいじゃねぇんだろうが、と苦笑しつつ見守る穏やかな時間が流れるその頃、上空では大変なことになっていた。
 ガタガタガタガタ!! ――噴き零れる寸前の鍋みたいな音をして、回る自転車の車輪。

「おねえちゃん、気になるお魚さんいましたかー?」
「…………」
 はしゃぐキディ、ぐったりイディの二人旅はとってもアツアツ。
 海藻のカーテンをくぐって飛び出すキディの姿は、本人自体が愛らしいカクレクマノミのよう。「こんにちは!」行き交う海のいきものの中には伸ばした人差し指の先をつっついてくるものもいて、美しい景色とふれあいの楽しさに夢中でどんどんと強くペダルを漕いでしまうのも仕方のないことだ。
 一方のイディは、道中で心配そうに寄り付いてきたウミガメのこどもを魔導書の代わりに無心で抱きしめていた。時折甲羅を撫でてページを開こうとする素振りもするあたり、かなり極限状態であることが窺える。残念ながらカメではこの状況を打開してくれるナニかを召喚してはくれず。
「――キディ」
「狼さん似の子はいませんかねっ」
 浮遊感が強まる。
「――……、ぁぁ」
「イルカさんにもまたご挨拶したいですし、それにそれに」
 もう、無理。
 運転手キディが魚群に沿ってカーブするコースを取った瞬間、サドルからふっと零れ落ちるイディの身体は宙へ投げ出された。
「っは、 」
 まずい、海は。このままでは。カメが消えたことで空いた両手をほぼ無意識にばたつかせるイディはぬるりとつめたい手触りに縋る。流れる青背景に雲みたくもこっと白いそれは、不思議に大きいがウミウシの仲間だろう。何かのバグで水に浮いてくれやしまいか。駄目か。そこをなんとか。
(「申し訳ございませんウミウシ様……道連れにさせていただきます」)
「ぃよーし、次はあちらの皆さんまで!」
 キディはといえば依然として異変に気付かずゴーゴー! な爆走で駆け去ってゆくも、イディにとって不幸中の幸いは真下でエスパルダが活動中であったことかもしれない。
 それはちょうど、鮮やかな七色マグロとの競争についに勝利したエスパルダが久しぶりの晴れやかな笑みを浮かべていたときだった。
「っしゃあ! そんじゃ、勝者の特権としてつかまえさせてもらウグェ!!!」
 ガゴォッッッッ。
 空から落ちてきた美女、なんて字面だけは最高だが、衝突の衝撃を考えてみろという話だ。
 猛スピードの自転車から振り落とされてきた分、スピンのかかったイディはちょっとしたユーベルコードのようにエスパルダに突き刺さった。やたらゆっくりに傾く視界で、エスパルダは飛来物が知った女でそれを落としたのも知った女であると悟る。ほらなやっぱこうなると思ったわ、受け止め――――。
「く、そ、ぉぉああああッ」
 ――るとか無理に決まってんだろ暑いし!!
 諸共に海へ叩き落されてゆく二人。それでもせっかくの七色マグロだけはと尾ひれを握りしめる様は、漢の意地としてキラリと輝いていた。

「あ、見てくださ――、あれっおねえちゃん? エスパルダさん?」
 その血の滲む叫びの一端でも届いたろうか。ここにきてひとりきりという異変に気付くキディがようやっとペダルを漕ぐ足を休める。
 イルカの群れを発見してきゃいきゃいしていたキディの見回す空には、相変わらずの海が広がっているばかり。思案を巡らせるのは一瞬。二人がいない、ということは。
「……は! 大変です! おねえちゃんとエスパルダさんが迷子になりました!」
 これだ。
 どうしたの? と言いたげに嘴を寄せてくるイルカたちを撫でてやるキディは、目線を合わせてお願いごとをする。
「イルカさん、あの二人の行方を知りませんか?」
 ただでさえ賢いといわれるイルカたちは、キマイラフューチャーのイメージ補正でまるでヒトの言葉が分かっているよう。互いに顔を見合わせるとひれを揺らして、キディについてこいと伝える風に泳ぎ出した。上ではなく下、海へと。
 砕ける水の飛沫。空の急斜面を駆け下りる際の、強い向かい風が面白い!
 ドッキリな状況でも明るく笑い声を弾けさせるキディはやがて、本物よりも丈夫でやわらかいクジラの背できゅうと目を回し倒れ伏している二人を発見する。
 イディの下敷きになったエスパルダを啄んでいたペンギンたちもキディの接近に気付き、翼を振ってここだよと示してくれる。「ありがとうございました!」頼もしき海の友たちに礼を告げるキディはクジラの背に到着すれば、したり顔して二人を引っ張り上げた。
「もう、眠っちゃうなんて仕方ありませんね。やっぱりわたしがついていてあげなくては!」
 自転車の、後ろへ。

 ――おかしい話でな。意識飛んでたはずなのに覚えてんだよ、何度も海面にぶつかったの。
 ――奇遇でございますね。あの子の笑い声が、波音以上に耳にこびりついております。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ジャック・スペード
【XXX】

2021/7/24水着

空に魚が泳いでるなんて
なんとも不思議な光景だ
とはいえ夢があって良い
サーフボードに乗って空へ

揺蕩うギガントプリスを
鐵の掌にそっと捕らえてみる
この子、ちょっと風鈴に似てないか
優しく揺らしたら音も溢れそうだ

エイ……?
ああ、砂に紛れてるのか
コノハは見つけるのが上手だな
珊瑚に隠れるエビに和みつつ

空に揺れる不思議な海洋生物は
チンアナゴにメンダコか
眺めてると癒されるな……
グソクムシは確かに、顔がカワイイ
あと仕草もよく見ると和むような

生き生きしているからこそ
美味しそうに見えるんだろうな

お、あっちで泳いでる魚は
ラブカじゃないか
怪獣みたいでカッコイイな……
掴まえようと追いかけに行く


ロキ・バロックヒート
【XXX】
去年の水着

わー夏の空気持ち良いねぇ
皆と一緒にサーフボードで行っちゃおう

魚たちがどんなカタチしてるのかよく見えるよ
でかいクジラとかマンボウとか泳いでたら圧巻だね
コノハくんはなんか見付けた?
あぁエイはかくれんぼ得意だよねぇって笑う
ジャックくんの方は…風鈴?言われて見たらそうかも
揺らしたら音でも鳴らないかな?ふふ

でっかいグソクムシもいるかな?
キモカワとか言われてるけど絶対可愛いよ
コノハくんもジャックくんもわかる~!?

あとうにょうにょしてるのとかが良いな
チンアナゴ?
あ、そこのメンダコもほしいな~
食べちゃ駄目なんだったっけ?残念
ラブカカッコいいよね
上に乗ったりしてみたーい
一緒に追いかけちゃおう


コノハ・ライゼ
【XXX】
2021/7/24水着、帽子無し

天地がひっくり返った、ワケじゃナイのよねぇ
賑やかな夏空に
折角だし海っぽさも満喫しなきゃ、とサーフボードで空へ

こんなに間近で見れるなら、レアなコ見付けたいよねぇ
物陰や擬態して隠れてそうなコを探して気分はかくれんぼ
珊瑚から覗くエビっぽいコの髭
砂に紛れてるのはエイかしら
見ぃつけた、とちょんとつつき

ぎが……ナンとかって名前の割に丸くて可愛いのネ
グソクムシはのんびり屋さんよね
鎧みたいな無骨さも同居してるトコがイイ

美味しそうな魚を捕獲できないのがザンネン……とも思うケド
ふよふよ飛ぶメンダコや遠くを漂うクリオネ発見すれば
触れてみたくていつの間にかのんびり鬼ごっこへ



 大波ならぬひえひえの間欠泉に送り出され、ボードを駆って空へ乗り込む影三つ。
 南国の色彩も鮮やかに羽ばたくコノハ・ライゼ(空々・f03130)は、行き違うリーフフィッシュにいよいよ天地がひっくり返ったような思いで笑みを零しながらタッチした。しゅぽんっと音を立てて泡に解ける彼らを続くロキ・バロックヒート(深淵を覗く・f25190)が興味津々に見送る。
「すごいねぇ、可愛い子いっぱい!」
「ね、海と空どっちが泳ぎ心地良いのかしら?」
「夢があって良いな。尋ねてみるか?」
 冗談めかし、和やかな談笑に加わるもうひとりはウォーマシンのジャック・スペード(J♠️・f16475)。
 羽織る海軍風コートが旗めいてたなびく下、夏の陽光に熱されたボディは水泡をすぐに蒸発させて元の海へと送り届ける。サーフィン魔法は偉大だ。「えいっ」本物の動物のような身のこなしでぴょんっとジャンプし魚へタッチ、それから足元に滑り込んできたボードへ余裕の着地と離れ業をしてのけるのはおとぎ話に出てくるねこに似た装いのロキで。
 キマイラたちだろう、歓声が遠く下方から耳に届く。
 海のいきものに、人々。賑やかな夏空は三人それぞれに居心地が良く、そして爽快だった。
「ロキ、今のコなんて言ってた?」
「んー。どっちも! かな?」
「フッ、なによりだ」
 動物との対話は実際にロキが可能とするところであるが、見たままな内容にコノハもジャックも笑ってしまう。
 そうしている間にも深く、もとい高く進む青の世界。海中とは違い良好な視界は、せっかくならばレアなコを見つけたい! ――なんてコノハの好奇心をくすぐるに十分で。狩りをする獣同様すうと薄氷の瞳を眇めれば、宙に浮く岩陰にも海草の束にも惹かれるイロイロがみえてくる。
 ざあっ! キレのあるターンで風に乗り、滑る。
「アナタはだぁれ?」
 見ぃつけた、と、ちょんとひげをつつかれたエビの黒目が珊瑚の奥で瞬くように煌めいて。
 いっぱいの脚でそそくさ引っ込む様は恥ずかしがり屋っぽくもあり、そりゃ美人さんに見つめられたらね、だとか茶化すロキの声音はころころ弾んだ。
「エビっておいしいだけじゃなくて可愛い顔立ちしてるよねぇ」
「ロキのカワイイは懐が広そうだな。この子はどうだ? 風鈴に似てないか」
 そうジャックが鐵の掌で潰さぬようにとやんわり包むのは、空を揺蕩うギガントプリス。
 ほんのり橙に染まった体色はこちらもまた恥じらうよう? すこし掌傾けるだけでころり転がるまんまるは、りりん、と微かな音すら聞こえてきそう。「鳴った?」「カモ」大の男三人集まって、ちいさな友へ耳を寄せてみる絵面は平和をそのまま絵にしたそれで。
 そっと耳を澄ましていると、羽音改めひれが大気を打つ音が近付いてくる。
 それに、さしかかる大きな影も。

 わあ。
 一番に溜息零したのは誰だったろう。音と影の正体はなんと、シロナガスクジラ。
 まるで水底から見上げる戦艦、現実味のない壮観な光景を一拍ぽかんと目で追って――――ハッと現実に引き戻されるきっかけは、クジラが吹き上げた土砂降りの潮だった。
「っつめた!」
「あっはは、何これ!」
 本来、海中ではないのだから噴水状になりようもないそれも、生成したキマイラたちのイメージが先行してか立派な海水だ。
 ざあざあ降り注ぐ天気雨にわーっと手を翳すコノハもフードを引っ張り上げるロキも、そんな二人から思いきり盾にされるジャックも「おい」と言いはしながら瞬く双眸の光は楽し気なもの。
「もっと精密機械を気遣ったりとか、ないのか?」
「アナタそんなヤワじゃないデショ?」
「ねー」
 ねーっと言い合う化かし上手二人のぞんざいな扱いは友人だからこそ。
 それを知っているので、まったくとコートを羽織り直す機人もいっそ晴れやかでいられる。案の定すぐに乾いてゆく水であったが、激しく打ち付けた雨で心なしか変わった周囲の景色に先ほどまではなかったオブジェクトが“動いてきていた”。そのことに目敏く気付いたのはコノハ。
 浮島よろしくぽつんと纏まった砂の中、ばっちり視線が絡んだコレは?
「ふふっ。かくれんぼ上手ネ」
 おしゃれに擬態したエイ!
 誰かが踏んづけてしまう前に、そう砂を撫でれば気持ちよさげに目を細めた薄茶色がぽよよととろけて。
「ああ、エイはかくれんぼ得意だよねぇ」
「コノハはそれ以上に、見つけるのが上手だな」
「だぁれが鬼ですって?」
 海のいきもの探しが飽きぬなら、軽快なおしゃべりもまた尽きぬもの。
 そこかしこでゆらゆら揺れるのは海草だけではない、黄と白の縞々、細長いシルエットが特徴的なチンアナゴも水族館の人気者といえよう。「花みたい」「おいしそう」「花粉すごそう」「やっぱ粉っぽいかな?」口々の感想に「ロマンはどうした」ツッコむのはジャックで、彼らが間違っても調理されてしまわぬようにと率先して送り返すのであった。
「ほら。災難だったな」
 そりゃあ綺麗を前にして腹は減るけれど、だからってこの場で獲って喰らいやしない。
「ちぇー、信用ないコト」
「逆にありまくりって言えない? ――ん?」
 残った海草をぷちぷちする係に任命されたコノハとロキは、ふと、ぬるっと硬質に伝わる不思議な手触りに顔を見合わせる。
 岩、のようだがもぞもぞ動く。緑のカーテンを掻き分けてみれば、そこに待っていたのはダイオウグソクムシだ。ねこくらいの大きさはあるだろう、二対の触覚がこんにちはと言う風にそよいで、ぱあっと瞳を輝かせ顔を近づけるロキ。

 かわいい~~っ!

「えっ持って帰りたい。いい? いいよね?」
「置いて帰りなさい」
 グソクムシより更に硬い手がロキの肩を叩いた。ジャックだ。
 いい出汁が出そうだな……と藻を握りしめていたコノハも言葉なく寂し気に微笑む。ダイオウグソクムシを速攻で胸に抱いたロキがふるふると後退る。
「二人もこの子をキモカワっていじめちゃうの……?」
「いや。グソクムシは確かに、カワイイ。仕草もよく見ると和むような」
「のんびり屋さんよね。鎧みたいな無骨さも同居してるトコがイイ」
「わかる~~!?」
 やり取りのうちにもしゅわしゅわ消えゆく彼か彼女かとの別れは涙なしには語れなかった、とかとか。
 パーカーの尾を垂らし(元々)しょんぼりするロキの肩を今度はコノハが叩いた。ねぇ、ほら、示す先には赤褐色のふんわりと浮き沈みするタコ。ただのタコではない、深海のいきもの続きのメンダコがいる。「!」すぐに喜色を取り戻す青年のかんばせに、引っ張られるようにジャックも瞳に瞬く光を和らげる。
 作り物であろうと海のいきものたちはどれも生き生きとしている。
 おいしそうに見えるのもきっと、悪いことではないのだ。
「ん……癒し系が続くが、俺はあっちにも興味があるぞ」
「わお、ナニあのコ? オブリビオンも顔負けだわ」
 まだ遠い、他の魚たちが起こす水流で揺らいだ魚影はずんぐりと太くも長い。
 あちらも深海の住民、ラブカ。モンスターじみたとぼけた顔立ちはでっかくなったウツボ風だがサメの一種らしい。いかにも凶悪なギザ歯が陽光に光って。
「ああ。怪獣みたいでカッコイイな……」
 頷くジャックのロマンはここにあった模様。
 ボートもボディも出力全開、つかみ取りへと颯爽と滑り出してゆく機人の背に、メンダコをぎゅみっとしたロキとクリオネを指先に遊ばせるコノハは顔を見合わせた。――あら、あらあらあら。
「ジャックくんだけずるーい! 俺様もカッコいいラブカ乗る!」
「こらー、狩っちゃダメよー? なんて、ネ」
 ふわりと落っこちたジャックの軍帽をキャッチして、二人もまた後を追う。
 触れてみたいものがまだまだ沢山ある。このまま空と海の端から端までだって、楽しみ尽くせそうな気がした。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

キトリ・フローエ
水着*21年7月24日

空は飛べるけれど
折角だもの、サーフィン魔法で挑みましょう!
…あたしに丁度良いサーフボードはあるかしら?

大きなジンベエザメさんと追いかけっこをしたいの!
ねえ、どこへ行くの?一緒に遊びましょう!
触れたら海に帰ってしまうのよね
だからぎゅってしたい気持ちを抑えつつ飛び回るわ
熱帯魚もあたしからすればきっと小さくはなくて
お星様みたいにきらきらなお魚さんもいるのね?
岩陰に隠れている子を探すのは多分得意よ!
色んなお魚さんや空の海の景色を楽しみつつ
手の届く範囲で触れるものは触って海へ送りながら
ジンベエザメさんと心ゆくまで楽しんだ後
最後にちゃんとジンベエザメさんを全身でぎゅってして本物の海へ


ルル・ミール
※今年の水着

空行く魚をお助けクエスト…!
高い所は何とかランドでバッチリです!

あの時の経験に空を行く魚という光景へのトキメキ詰めて
空飛ぶサーフボードにぴょん
海の動きを見て飛び出しポイント覚えたらGOです!

気付かれないように後ろから接近
水の硝子ペンで作った水の中に捕獲→海へどぽん!作戦です
気付かれた時は水でイルカの群れを作って一緒に追い込んで
さあさあ、海はこっちですよとご案内

むっ
パステルレインボーなウツボ発見です
でも警戒心強いですね…
なら、同じ魚を描いて…!
ほらほらお友達も一緒です怖くないですよ~
こちらも笑顔で海までご案内、です

あっ!
今横を過ぎたのはゴールデン人面魚!?
わわわ、待って下さーい!



 海渡る風が夏めくシースルーを擽れば、装飾の星々はしゃらしゃら秘密のおしゃべり。
 明るく柔らかな金と黄の彩纏うフェアリーの姿は砂浜に咲いた可憐な一輪、あるいは翅を休める蝶そのもののよう。キトリ・フローエ(星導・f02354)には自前の翅もあるけれど、せっかくならと今日はサーフィン魔法で挑戦だ。
 天へ噴き出す水につられて見上げる青にはいきものが躍り、キトリをダンスへ誘うよう!
 ――でも、その前に。
「ねえあなた、これってどうやって滑り出せばいいかしら?」
 誰か近くにいる――。微かな衣擦れの音がして、キトリは背後を振り返った。
 近い分大きく映る、伸ばされたヒトの、指。熱心に見つめてくるまん丸藤紫がふたつ。その頭上にてぴこりと動く犬耳が、声より何より一番先にご挨拶をして。
「ひゃっ」
「あなたよ、あなた」
「てへへ、突然ごめんなさい!」
 続くキトリの声にハッッ! と姿勢を正すキマイラ少女はルル・ミール(賢者の卵・f06050)。
 岩陰から飛び出せば、はにかむルルはちいさな妖精にお辞儀する。華ロリ調ワンピース水着は甘やかな色ながら薄く柔く、軽い、天の衣めいた材質で涼しげだ。同様に抱えたマジック・サーフボードには蛇尻尾が絡みついて舌を出し、こちらはちょっぴり暑そう?
「あまりにも綺麗なので、ステキな海のお友達発見かと思っちゃいました……」
「あら、それは光栄ね。サーフィン魔法使い同士がんばりましょ! それとも協力しちゃう?」
 小回りのきくキトリは物陰に隠れているいきものを見つけることに自信がある。この提案に「ぜひ!」と前のめりなのはルルで、楽しいひとときは誰かと過ごすことでもっと楽しく輝くと知っているから。
 空行く魚のお助けクエスト――。高所もへっちゃらと縦横無尽に駆けた夜の遊園地での経験を、ここで活かさずいつ活かす?
「ではでは、ご質問の滑り出しのコツですがっ」
 サーフボードをぺんと倒してそこにぴょん!
 手はグーに、眼差しはキリリと空へ。はだしのつま先はやんわり白砂を撫でるのみ、するとひとりでに前へ進む板は魔法のように上へも浮き始めた。
「やるぞーっていっぱい思うだけ、です!」
 未知への第一歩はいつだって、溢れ出しそうなトキメキが踏み出させる。
「――だったら簡単そうね」
 くすくす笑ってまねっこするキトリにも、ルルの説明はとってもわかりやすい。

 ぱしゃあんっ!

「「わ」」
 勢い付き過ぎて体当たりした水泡が割れ、つめたい! 喜色いっぱい声上げ頭を振って。
 二人がもう一度目を開けてみたなら、なんと! 大きなジンベエザメがゆるく尾を揺らし過ぎてゆくところではないか。キトリにとっては大きな大きなその顔は、けれどもどこかとぼけて優しそう。温厚な巨体の周囲を取り巻く様々な小魚たちが、おや? と少女らを振り返る。
 ――追いかけっこをしてみたいわ……!
 ――楽しいこと間違いなしですね……!
 ひそひそ。
「ねえ、どこへ行くの? 一緒に遊びましょう!」
「私たち、おすすめの行先を知ってるんです」
 サメのもとへ寄り付き切り出す、なんだかビーチでのナンパみたいな台詞も拒まれず、すぐ傍らを共に“泳ぐ”ことをよしとしてくれた。
 斑点模様がおしゃれな肌に触りたい。でも、触れたら海に帰ってしまうのだという。ぎゅっとしたい気持ちを抑えるキトリはふと、端でせっせか硝子ペンを動かすルルに気付く。ペン先からぽわぽわ飛んでいるのは……水の玉? ぱち。目が合ったルルは口パクで笑んでみせ玉たちをふうっと吹いた。
(「み て て?」)
 すると、どうだ。
 漂うシャボンなそれらが、触れる小魚たちをむにんと取り込みそのまま眼下の海へどぼんとご招待。
 魔法のペンが描き出したシャボンタクシーの出来上がり!
「すごいじゃない!」
「ふふふー、続けまして! さあさあそちらの皆さんも、海はこっちですよ」
 間髪入れずルルが送り出す水のイルカは群れで作り出すウェーブによって、別なご一行もまとめて案内し始めた。
 見えているいきものはこの手法でどんどこつかまえられそうだ。「だったら、あたしは――」頷くキトリはボードのみならず癖で翅も震わせ、煌めきの鱗粉を降らせてははぐれっ子探しへ。岩や藻の陰、珊瑚の合間、不思議な石像の空洞まで。
「大丈夫、迷子になんてさせないわ」
 ぴゅおうとひとっ飛び、可愛く覗いたひげやおしりをつんとして「こんにちは!」。
 ジンベエザメと進む空。深海から飛び出してきた体内がスケスケの名も知らぬ魚、優美なひれのドレスで着飾る金魚、宝石に似て艶やかに色付く鱗の熱帯魚、…………四方八方気になるいきものばかり。幸せで目が回りそうとはこのことか。
「む!」
「む?」
 キトリがクリオネと握手しているとやけに気合いの入った声が。
 声の主、ルルは耳尻尾をぴんと立て岩と岩の間を凝視していた。そう。そこに顔を出す、パステルレインボー・ウツボを――!
(「きょうてきの気配!」)
 ざりりと足を擦れば即頭を引っ込める彼にもしかし、怖いではなく楽しい気持ちで帰ってほしい。
 ひょっこり隣で覗くキトリ。
「恥ずかしがり屋さん?」
「うんうん、でしたら――……ほらほらお友達も一緒です怖くないですよ~」
 満場一致の作戦に、かなりデフォルメのかかったるる・うつぼを描いてあげて万事解決だ。

 やがて連れ立って消えるウツボの背後にぼんやりかすむ魚影が、ひとつ。
 派手派手しい金鱗は目潰し効果抜群、尾から頭へ視線を動かせばそこには――ちょっとくたびれたおじさんの、顔?
「あっ! ゴールデン人面魚!?」
「海で息出来るのかしら……?」
 気色悪がるどころかわっくわくなルルがいる一方で、キトリとしてはつい別の意味で心配になってしまったり。
 わわわ待って下さーい! クリーチャーを追い全速のあわてんぼう娘の背に「気を付けるのよ!」と声を掛ければ、任せといてとばかり蛇尻尾が左右に振られた。それにキトリも応じ、改めてジンベエザメを振り返る。
「あなたもそろそろ、帰りましょうか」
 こんなに沢山はしゃいでも涼しいのは、思えば、この巨体で日差しを遮ってくれていたのかもしれない。
 ――今日はありがとう。感謝よ伝えとぎゅっと抱き着くと、持ち上がる胸びれがこちらこそと撫でてくれるようだった。ほのかな光の粒がその身を本来の海へ呼び戻す。微笑んで見送る、キトリは。
「すごいです! おじさんが! キトリさんおじさんがタコを!?」
「ぷっ。 はぁい、今行くわ!」
 まだまだ暮れぬ夏空を泳ぎ、踊る。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

シェフィーネス・ダイアクロイト
【💪】アドリブ◎
サーフボード拝借
2021/7/24水着

此の世界に訪れるのは初めてだが、奇怪な場所も在るのだな
メガリスは無さそうだが宙の海…実に興味深い(眼鏡で遠く見渡す

美しい魚達や未知の生物に餌やり
一人で堪能中に二人と遭遇

アリエ・イヴ…(顔見て狼狽するがすぐ表情戻す
貴様らと共に行動する気は無い
アンカー、追ってくるな!

天秤に掛け逃亡断念

あの鯨を?
その漕ぎ方では追いつけんだろう
先に捕らえるのは私だ

サーフボードを乗りこなして鯨と駆けっこ
UC使用
頑丈な網を鯨の行く先へ予め仕掛ける

(…奴等に乗せられた
私が戯れるなど
忌々しい)

後はゆっくり鮟鱇やエイ、海豚など見る
蟹を見たらグリシャン戦争を思い出し不機嫌に


アリエ・イヴ
【💪】アドリブ◎
21年7月27日の水着

空まで海みたいで
悪かねぇが…アイツらも水が恋しいだろうよ
還す為にも空で漁と洒落こもうぜガイ
…っていってたら
更に海が恋しそうな相手を発見
よぉシェフィー、こんなとこでも会うなんざ
やっぱ運命じゃねぇ?
一瞬の違和感は、シェフィーを捕まえる意識に上書きされ
シェフィーが俺たちが捕まえる獲物1号希望ならやぶさかじゃねぇが
あっちのでかい獲物を一緒に捕りにいくのとどっちがいい

目指すは鯨
空でもガイがいりゃ問題ねぇな
サイクルの後ろに股がって
距離が近づいたら碇を投げ
鯨に鎖を絡めよう
俺の回収任せたぜ!
そのまま飛び出せばあとはなるように

ああ、海の生き物なら
やっぱ水中が落ち着くよなぁ


ガイ・アンカー
【💪】
アドリブ◎
今年7月24日水着

海だって泳ぐ奴らを待ってるだろうよ
漁なら任せな…、…あ?
魚と戯れる人魚姫みてえな奴発見
なーんかアリエに対して妙な気配を感じたが
(それは見逃しといてやろう
シェフィーネス自身は逃さねえが)
なあに、ただのお誘いさ
乗っておいて損はないと思うぜ?
ガッと肩を組みこそり
アリエも一先ずは満足するだろうさ

俺はアリエとサイクルに乗ろう
航海術で気流に乗るように漕ぎ
野生の勘で鯨を追い
吹き上がる水から【海魔の大渦潮】
鎖…はやめて水流で網代わりだ
そら、捕まえてきな

片手で引っ掴むように宙のアリエを回収
ははっ、俺の獲物はお前だったみてえだな?

やっぱ水が馴染むのかね
…おい。そいつは蟹違いだ



「アリエ・イヴ…………」
 摘まむ“にこにこ! 海のともだちのおやつ”が零れ落ちる。
 シェフィーネス・ダイアクロイト(孤高のアイオライト・f26369)は目に見えて狼狽していた。宙の海に惹かれ初めてこんな奇怪な世界まで足を運んだというのに、見間違えもしないあの赤毛、複雑な間柄の人間のまさかの登場に絶句した。
 寄ってきていた愛らしいピグミーたちが頭を傾げる中。
 凝視する先のアリエ・イヴ(Le miel est sucré・f26383)は自身が長を務める海賊団ロールボアの団員にして家族、ガイ・アンカー(Weigh Anchor!・f26515)を連れ夏満喫中! 穢れなき海色のファーコートを肩に引っ掛け、くわえたラムネフロートのストローをご機嫌に揺らしている。
「さてと、そろそろ漁と洒落こもうぜガイ。空の海も悪かねぇ景色だが、アイツらも水が恋しいだろうよ」
「だな。海だって泳ぐ奴らを待ってるだろうよ、漁なら任せな……、……あ?」
 歴戦の船乗りスタイルは飾りにあらず、長の片腕として常より周囲の気配に意識を尖らせているだけはある。
 まだ距離のある奥で固まる知った顔を見つけたガイは、ああー、と声を間延びさせた。綺麗な魚と戯れ、囲まれるシェフィーネスの姿は整った顔立ちと線の細さも相まってさながら人魚姫か。水へ解けては結ばれる装束が音もなくとぷんと揺らいで。「あ? ――おお」きっとアリエの笑みは、そうしてきよらに溢れる水掬う指先に海への恋慕を見た所為もあったろう。
「よぉシェフィー、こんなとこでも会うなんざやっぱ運命じゃねぇ?」
「、 」
 この状況に息を呑んだのはシェフィーネス。
 会いたくはなかった。屈託なく声をかけてくるアリエに後退りしかけるも、シェフィーネスにとてプライドがある。敵前逃亡は恥。いやそもそも、何故に自分がこの場を譲る必要が?
「それ以上寄るなよ。貴様らと共に行動する気は無い」
 ――今日は一日、楽しむと決めたのだ。
 秒で氷点下に冷やした眼差しで二人を射貫く。早速足を踏み出していたアリエはつれねぇことでと両手と口角を上げるも、シェフィーネスの態度に一抹の違和感を覚える。
 とはいえ今はそれよりも。
「シェフィーが俺たちが捕まえる獲物一号希望ならやぶさかじゃねぇが。あっちのでかい獲物を一緒に捕りにいくのとどっちがいい?」
 お宝を逃がしてなるものかと海賊魂がうずくのだ。
 あっち? 視線だけで一瞬窺うシェフィーネスは、硝子越しの瞳を僅かに丸くする。
 空渡る、大鯨がそこにいた。
「どちらかなど」
 間は逡巡か。
 ガイは押していたスカイサイクルを立てかけ二人を流し見る。アリエに対してのシェフィーネスは今日、何故だか、どこか。
(「ま、見逃しといてやるとするか」)
「なあに、ただのお誘いさ。そうカッカするなって」
「アンカーきさ、 ぅ」
 人好きするおおらかさを発揮する大男は大股で詰めれば、ガッと人魚姫様の肩を組む。
 からの、耳打ち。
「乗っておいて損はないと思うぜ? アリエも一先ずは満足するだろうさ」
「…………」
 ずっしりとした重みがシェフィーネスの中の天秤を傾ける。
 長く細く深く落とされた観念の息。ピグミーたちが励ますみたくつっついた。

「んな寂しそうな顔すんなよ、コイツが三人乗りだったらなー」
「おっそうだ、サイドカー付けてもらうか?」
「誰がするか。アンカーもやめろ」
 二人乗りスカイサイクルにはガイとアリエ、マジック・サーフボードにはシェフィーネス。
 競うように空の海へ飛び出した面々は今、視界に同じひとつの標的――大鯨を捉え翔けている。自転車はガイの運転だ。疲れ知らずの肉体と、海での暮らし実質百年超えの航海術に勘。足元にあるものは海流でこそないが、気流を読んで乗るのも案外楽しいものだ。
「飛ばすとするぜ」
 海から噴出する鉄砲水もタイミング良く利用して、高々飛び上がった車体はショートカットで鯨頭上の大岩へ!
 ヒャッホー! さながらジェットコースター。叫ぶアリエはひっかぶった水に一層嬉々と、頼もしき運転手の背を叩いた。
「空でもガイがいりゃ問題ねぇな」
「ふん。その漕ぎ方では追いつけんだろう、先に捕らえるのは私だ」
 けれどもシェフィーネスも負けてはいない。
 空を流れ落つ海を斜めに刻んで突き進むボード使いは、波を乗りこなすサーファーと相違なく。アリエたちとはあくまで別の道をゆく、その五指がぐんと近付く大鯨へ向け伸ばされた。
 ユーベルコード、空想の現。
「いけ」
 途端、青空へうんと大きな網が張られ鯨を包む。
 無敵の想像の創造。標的の行く手を遮る風にして現出させた罠は、己が勝利を信じるからこそ頑丈だ。
「――へぇ」
「くくく、あいつ本気じゃねえか」
 それを見た二人もカードを切る。
 いいや。実のところ、仕上げは既に始まっていた。目を凝らせば分かるだろう。大鯨をも濡らした先の水流が綿密に編み上げられ、水の網を作り上げている。網の先を握るのはガイ。標的との距離が一気に縮んで思えたのは、それぞれの走破技術だけではなくガイが行使した海魔の大渦潮の賜物で。
「そら、捕まえてきな」
「ああ。回収任せたぜ!」
 とんっ。
 と、サドルを蹴ってアリエが跳ぶ。
 ここは空中ウン十メートル。眼下でギャラリーがどよめくのを破天荒な海賊は一笑し、アハ・ガドール、バトルアンカーを大海へ一投した。
 重量たっぷりの碇は敢えて行き過ぎ、繋ぐ鎖が標的を絡めとる。
「下で家族が待ってんぞ!」
 ラ・メール・エデン。
 ――海の愛し子は落下の最中、三重のお縄についた大鯨をぱちんとタッチ。
「っ!」
 そのまま真っ逆さま、
 の未来を予想し頭真っ白で動きかけたシェフィーネスより早く滑り込んだ自転車に、がっちり回収された。
「ヒューッ信じてたぜガイ!」
「ははっ、俺の獲物はお前だったみてえだな?」
 安堵の声は会場中からも漏れたろう。
 ガイの片手で楽々引っ掴まれたアリエは、どやあぁぁとシェフィーネスを見遣る。
(「……奴等に乗せられた。私が戯れるなど。それに、今」)
 当のシェフィーネスはといえば、自責の念で眉間を押さえそれどころではなく。

「ああ、海の生き物ならやっぱ水中が落ち着くよなぁ」
「おい」
「やっぱ水が馴染むのかね」
「……おい、何故まだついてくる」
 本来の居場所で潮を吹く大鯨が元気でなにより。岩場で休憩、和やか~に歓談するアリエとガイは、シェフィーネスに「「?」」と振り返った。
 なんとも日和った空気。アンコウにエイ、イルカと結局、あれからも三人一組で色々ないきものをつかまえてしまった。
 極めつけはそこの巨大蟹だ。
 蟹。蟹といえば二人の前で無様を晒したあの海の、
「…………(ギリッ)」
 ああ。やられる前にやらねば。
 苛立ち隠せず敵意剥くシェフィーネスのもと現出しかける想像の靄を、歩み寄ったガイが握り潰すのは直後。
「そいつは蟹違いだ」
 まぼろしの銃弾が霧散する。落ち着いた声が続く。
 は、と目を見張るシェフィーネスとて海のいきものを傷付けるのは本意でない。
「……知っている」
 しかし。
 礼を言うのもと顔を背けたまま眼鏡のブリッジを押し上げるのに、ガイは溜息がちな笑みを浮かべるのだった。
「難儀な奴」
「うるさい」
「――オイお前ら、なに油売ってんだ? とっとと持ち場につきな、次は鮫狩りだ!」
 傍から見れば蟹さんと戯れているようにしか見えぬ二人を、よく通る声が呼び戻す。
 しれっと自分まで乗組員として扱いたがるアリエに、シェフィーネスの眉間の皺の理由はひと波でさらわれてしまう。いつもこうだ。なんでもかんでもかき乱し、陽光ほどに騒がしく――……眩しく、笑う。
「私に指図するな。アリエ・イヴ」
 そのまま背を向け帰路につく、筈が。
「おー、とか言って網の方はやる気満々で編み直してくれるわけか」
「だっはは、愛してんぜシェフィー!」
 願う想像を具現化するユーベルコードは無意識に、彼らとのもうひとときを希望したらしい。
 …………。……。
「これは貴様らを縛り上げる用だ」
 忌々しい。
 地を這う声とともに二人へ向けシェフィーネスが射出した網に、大笑するままのアリエはばっしとガイの肩を押した。
「ガイ出せ! 出航だ!!」
「へいへい、お望み通りどこまでも!」
 飛び乗るスカイサイクルが力強く漕ぎ出せば網&マジック・サーフボードが切れ味も鋭く後を追う。
 海賊たちの大騒ぎを、海は今日も穏やかに見守っている。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

鵜飼・章
【旅烏】
2019年7月20日の水着

海のいきものつかみ取り祭
なんてときめく響きだ
見てリュカさん、フライングわかめ
わかめなのに自力で泳ぐ珍種だ…
凄くない?魚そのものな動き(どや

何その冷めた反応
じゃあもっとリュカさんが驚くものを捕まえるよ
どっちが凄い子を捕まえるか勝負だ
よーいドン

UCで隼に乗り空へ
リュカさんは鯨狙いだな
なら僕も大物珍獣を狙う
おや、あの恐竜めいた影はまさか…
動物と話す力で穏便に説得しよう
一緒に来てくれませんか?

という訳で僕はUMAを捕まえた
実在したのかネッシー…え、知らない?
リュカさんの鯨も大きいけど
珍しさでは僕の勝ちだって

勝敗はともかく
僕らすごくバズるよ…
ほらカメラに向かってピースだ


リュカ・エンキアンサス
【旅烏】
章お兄さんと
水着は2019年7月20日のもの

海の生き物…
実は俺は、鯨が、好きなんだ
ほらお兄さんくじ

……?
お兄さん、何それ?
いや、そんな顔で言われても
そんなもの、持って帰っちゃいけません。その辺にポイしてきなさい
は??勝負??
え、いつの間にそんなことに…
だが勝負と言われたからには負けるわけにはいかない
そっちが変なもので勝負するならこっちは鯨で勝負する。やつを捕まえる。
スカイサイクル×騎乗×追跡や捕縛で大人げなく全力で対抗しよう
…ところでこれ、何をどうすれば勝利なんだっけ?
あ、うん、聞こえないな。大きいの捕まえたほうが勝利で、いいよね

ばず…?
よくわかんないけど写真を撮るのはいいと思います



 夏だ。
 ムードを盛り立てるためであろうか、姿は見えぬのにセミの声が聞こえる。
 土と緑、それに海のにおい。静かに目を閉じ自然からの贈り物に心を傾けていたリュカ・エンキアンサス(蒼炎の旅人・f02586)は、やがて開く青い瞳を、めいっぱい映したクジラに透き通らせる。
「実は俺は、鯨が、好きなんだ」
 ぽつと零す声には続きがあった。ペアルックという訳ではないが、同じく全力海遊びに適した装いを選んだ友。
 共にこの地へ赴いた鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)にもあの立派な姿を見逃さないでほしいと、視線を隣へ。
「ほらお兄さんくじ」
「見てリュカさん、フライングわかめ」
 向けてみれば。時を同じくして、章もリュカに見てほしいものをつかみ取ってぶるんぶるんさせていた。
 すごい! 全身をくねらせ前進する本物の魚そのものな代物だ! 何それ?
「わかめなのに自力で泳ぐ珍種だ……凄くない?」
「いや、そんな顔で言われても。その辺にポイしてきなさい」
 そんなもの持って帰っちゃいけません。ドヤ顔の章を一刀両断するリュカ。
 何その冷めた反応ー。解放したわかめが空で泡になるのを見送った章は、同じ空にリュカをときめかせたクジラを見つければふむとひと呼吸。そういうことならば。 ――指を鳴らす。飛来した大きな黒いハヤブサに、た、と飛び乗る。
「じゃあもっとリュカさんが驚くものを捕まえるよ。どっちが凄い子を捕まえるか勝負だ」
「は?? 勝負??」
「よーいドン」
 呼び止める暇もない!
 ザアッ。風と化し飛び去る大鳥が残した羽根を拾うリュカは、果たし状じみたそれを握りしめた。
「いいよ。どのみち俺はやつを捕まえる」
 ――勝負と言われたからには負けるわけにはいかない。
 戦士らしい、そして少年らしい闘志をじりじり陽に焦がして。一路、クジラへと。駆けながらスカイサイクルに乗り込むのだ。
 大きくなる、速くなる、伸びる、透ける……いきもののバグり方にも色んなタイプがあるが、つぶっとした体表からしてザトウクジラだろうか、リュカのお目当ての動きはトロい。
「いける」
 全力だ。
 岩を避け、海草を突っ切り、時にはジャンプで珊瑚をも越える。長いバイク旅で培ったハンドル捌きがここで光る。
 軽装である分、意識するそのままに車体がついてくるような――――風とまでひとつになった心地だ。身を低くして踏み込むペダルがうるさく鳴って鼓動の高鳴りとリンクする。ゆっくりと、身を捩った大きなクジラが並走するリュカを見つめた。
「や、……った!」
 見つめ返す。弾む息のまま、手を触れる。
 間近にふれあうクジラという存在は、何度だって少年の心を惹き付ける。

(「……おや? あの影は、まさか」)
 一方の章は、飛び立った空だか海に小島のように浮かぶ物体を発見していた。
 いいやこの際だ、湖と言わせていただこう。だってあの姿は、あの、首長竜めいた緑のシルエットは――!
「実在したのか、ネッシー……」
 嘗て一世を風靡したというUMA・ネッシー。
 本来ならば湖の下に隠れているであろう下半身がモザイクがかっているのがいかにもそれっぽい。常は焦点の朧げな眼差しを一点、ひたすらに幻獣に定めた章がハヤブサを翔けさせる。もはや人間以上に動物と話す方が上手なレベルだ、こんにちは、の第一声によどみなく。
「慣れぬ空でお困りでしょう。うみ――湖へご案内します、一緒に来てくれませんか?」
『えぇー。せっかく来たのに手ぶらで帰るとかー』
「そこをなんとか。何か……あ、ゼリーとか召し上がります?」
『え、なにこれ激ウマじゃーん』
 ベルトポーチを漁り取り出したるは昆虫ゼリー。持ってて良かった昆虫ゼリー。
 突然の滞空お食事タイム。両頬に手を添え肘をつく章は、大きな口から伸ばす小さい舌でカブトムシみたいにゼリーをぺろぺろするいきものをうっとり見守るのだった。昼下がりのカフェ、向かい合わせ、小食の彼女を幸せに待つ彼氏シチュのSSRカードみたいに。
 はよせえ。ハヤブサはちょっと迷惑そうな面をしていたが、歯止め役はどこにもいなかった。

 ――と、いう訳なんだ。

「僕はUMAを捕まえた」
「UMA」
 繰り返すリュカの声に抑揚はない。
 合流した章の後ろにいる、口周りをべとつかせた緑の怪獣? が戦果ということだけはわかるが。
「おめでとう」
「ありがとう。え、知らない? ネッシーだよネッシー」
 見上げる首が疲れる前に視線を戻したリュカは残酷に頭を振る。まさかジェネレーションギャップ。
 そもそも自分をネッシーとか認識していない怪獣が繰り出した大あくびに、二人して若干吸い込まれそうになりつつ「それよりも見て」リュカはてのひらを上へ、先のクジラを紹介する。そのサイズ感はUMA? と比べるまでもない。
「勝負は決まったみたいだ」
 あれ。
 ……ところでこれ、何をどうすれば勝利なんだっけ?

「そうだね。リュカさんの鯨も大きいけど、珍しさでは僕の勝ちだって」
「あ、うん、聞こえないな。大きいの捕まえたほうが勝利で、いいよね」

 熱なき火花をバチバチ飛ばし合う二人を余所に、ネッシー? とクジラは「あ、ども」「今日暑いっすね~」な具合で頭を下げたりしていた。
 ならば水鉄砲で決めるか? さながら荒野のガンマン、互いにホルダーをパチンとし得物を引き抜いたとき、おそるおそるといった声色でギャラリーのキマイラが声を飛ばす。
「あのー、海のいきものさんそろそろお帰りらしいですー」
「「――!」」
 ハッと振り仰げば、つかみ取りの過程で接触したためだろう、それぞれの背で大物二体が薄れかかっている。
 そうだ。この記念すべき日に争いなどと、馬鹿げているじゃないか。
「ピースだ、リュカさん」
「ピース」
「こうだよこう」
 薄笑い。まさかそれも知らんのかと言いたげ、仰々しく指一本ずつ立ててみせる章をほぼスルーするリュカとて無論知っている。
 だが何故、今。疑問を続けかけたとき、――ピカッ、と世界が瞬いた。気がした。
 光の出所にはカメラを構えるキマイラたちがいて。
「ね。僕らすごくバズるよ……」
「ばず……よくわかんないけど、写真を撮るのはいいと思います」
 彼らの思い出になるならと、控えめに真似たリュカの微笑に星か水かの雫が煌めく。

 中央には激闘の果て和解した戦士たちを捉えて。
 サービス精神旺盛にひれを振る、逆光に薄れかけの奇妙×巨大いきものは神秘的とホラーの中間くらい。
 実にキマイラ好みの仕上がりとなった一枚は拡散されまくったとか、施設責任者が海のいきものセットな菓子折りを持ってきたとか、ネッシー実は施設側で用意したものじゃなかったとか――すべてはとある夏の日の不思議と、これからの話。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

境・花世
綾(f01786)と
2021/7/24公開水着

雲の波間に光る甲の飾りは
きみがくれた美しい白と銀の泡沫
まるで人魚になった気分だと
ひらり、尾びれを優雅に揺らして
うつくしい背中を追いかけよう

綾は神さま、わたしはばけもの
並んでも群れにはなれないけれど

——ちいさいのはね、きっと、
大きいさめの傍にいるのが好きなんだよ

二匹の近くへと滑らかに泳いで
仲良しな距離にふくふく笑う
そのまま一緒に、はぐれずにお帰り
きらっきらの飛沫の向こうに消えた影を
眩しく目を細め見送って

一緒にいくよ、きみと、どこへだって!

大きいさめ……ならぬ綾の手を取り
晴れ渡る空にふたり分の澪を引く
夏を一心にかがやかせ、
弾ける飛沫を幾つも越えて


都槻・綾
f11024/花世
7/24公開水着

降り来る飛沫も
其処彼処で上がる歓声も
夏景色を更に彩る心地

ジンベエザメが泳ぐ軌跡は
虹を描くみたいで
ダイナミック且つ優雅

後ろを必死についていく魚影はコバンザメ
まるで
稚魚が母親と逸れまいとするかのようで愛らしくもあり

けれど
コバンザメは鮫ではないのですよね
不思議な共生関係ねぇ

種族の違う我々が
共に助け合って生きていくのと似ているだろうか

昊を翔けて跳ねて
こんにちは、と並び泳ぎ
ふたりにちょいと触れたなら
盛大な飛沫を残して帰り行く
避け切れる訳も無くずぶ濡れなのが
何だか可笑しい

さぁさ
次の迷子のところへ

花世へ手を差し伸べ
空中を游ぎましょ

ほら、木陰に
ふるふる震えている金魚さんを発見



 足甲に煌めく美しき白と銀の泡沫は他でもない、想い人が境・花世(はなひとや・f11024)を――花世という個の存在を祝い触れてくれた、証。
 パレオの尾びれを優雅に揺らして、人魚にでもなった気分。
(「どんなお姫様よりも幸せ者だ」)
「花世」
 思うのだ。
「! うん、おまたせ」
 彼、都槻・綾(絲遊・f01786)が名を呼ぶ声ならば光より深く海底にでも届くだろう。
 黒に金の格式高い意匠が触れれば霞と消えそうな空色と溶け合って、仙界の存在めいてうつくしい。視界に入れる度に見惚れてしまう、綾の背を追い、たっと駆ける花世の足取りに舞う花びらを白砂が抱きとめた。

 そうやって、夏の海辺はだれにとってもあたたかい。
 降り来る飛沫も、其処彼処で上がる歓声も、夏景色を更に彩る心地。
 空という海を思いのまま泳ぐジンベエザメが振り撒く水は、実際に微かな虹を架けていたやもしれない。彼らの動きの優雅さ、ダイナミックさに虹を重ね見ていた綾の瞳が一度ゆっくりと瞬いた。綺麗な一瞬を己の其処へ仕舞いこんでおく風に。
 後ろを必死についてゆくのはコバンザメ? まるで、稚魚が母親と逸れまいとするかのようで愛らしくもあり。
「親子かな?」
「いいえ、コバンザメは鮫ではないのですよね。不思議な共生関係ねぇ」
 種族の違う我々が、共に助け合って生きていくのと似ているだろうか。頭上に手を翳し見上げる花世の疑問に、綾はのほほんと穏やかに答えた。
 サメなのにサメじゃない。
 ひとりごとめいて言葉をなぞる花世は、頬に触れる眼差しに気付かない。
 他人事ではないように思えた。綾は神さま、わたしはばけもの。並んでも群れにはなれないけれど。
「――ちいさいのはね、きっと、大きいさめの傍にいるのが好きなんだよ」
 利用ではなく、好き。
 神頼みがしたいわけじゃない、ただ、……きみが。
「つかみ取り、始めましょうか」
「ん。帰してあげなきゃ」
 滲む切情を足甲に触れる細糸が宥めてくれる。素敵な考えだと笑み否定も肯定もしない綾の近く、この距離でと、もう定めた筈だからと花世は。
 天翔により音もなく空へ舞い上がる、否、駆け上がる綾は目の前を過ぎようとしていたジンベエザメへ「こんにちは」と親しみを込め語りかけた。追い付いてきたコバンザメがびゃっと腹へ頭をぶつけるのに眦を緩めては、失礼しますねとそれぞれにちょいっ。タッチ。
「道中お気をつけて――」
「はぐれずにお帰り……って、わぷっ」
 すると生じる盛大な水飛沫!
 二匹の仲良しな距離にふくふくと笑っていた花世をも巻き込む力強い「ありがとう」が、視界いっぱいをキラキラ尽くしにする。
 その向こう側へ共に薄れてゆく影、ふたつ。
 つめたいだとかびっくりだとかよりも、尊く眩しい光景にこそ細めた瞳で見送って。

「ふふふ、一本取られてしまいました」
「っ綾、大丈夫? 痛くなかった?」
 やんわり、笑うひとの声にハッとした。
 軽やかに着地する綾をたったか覗き込む花世だが、どこからどう見ても水も滴るなんとやらが出来上がっているだけであった。
 乗り越えた筈が思わず顔を覆う。「花世? 目でも」逆に前髪をひと房持ち上げられそうになり先に顔を上げる。なんでもない、全然まったく。
「なんでもないよ? つかみ取り、お見事でした」
「光栄です。でも、そうねぇ、待っている子が他にも大勢いるみたい」
 ピシッとされてピシッと返す、言葉遊びに興ずる綾があたりを見回せば花世も後を追う。
 いつもの空までもう一息、といったところだろう。 ――不意に。目の前に差し出されるてのひらが、そんな花世の意識を独り占めにする。
「さぁさ、次の迷子のところへ」
「! うんっ」
 一緒にいくよ、きみと、どこへだって!
 次はご一緒にとの誘いの手を取る花世は、短い返事に万感の思いを込めて。常よりほんの僅かだけ強く握るその指の背を、やわやわと、いつくしむみたいに重なる親指が撫ぜた。
 そこに意味を探す間もない、綾と共に泳ぎ出す世界は一瞬とて見逃すのがもったいないから。
 晴れ渡る空にふたり分の澪を引く。色違いの羽衣はときに遠のき、ときに絡んで戯れている。そうして向かう先にももう一色、ひらりゆらりとたなびく薄衣を見つけた綾が「ほら」と、手を引き花世を傍らまで呼び寄せる。
「見えますか? あの木陰、愛らしい子がいますよ」
「――ああ! かわいいね、とってもかわいい……金魚?」
 とても近い。並んだって。綾は神さまで、わたしは――……。
 綾という存在はいつも、花世がひとりで定めた線を自然と越える。それでいて。詰まりかけた息を誤魔化せば、花世は彼が愛らしいと呼ぶ魚を見た。不思議な現象で人間の子どもくらいのサイズ感になってしまっても、なかみはちいさなままなのだ、帰るべき場所がわからずに心細さに震える。
 さみしそう。
「大丈夫だよ」
 さみしくない。
 微かな波紋を立てそばへ降りたつま先が、真珠の歌声を奏でる。綾とつないでいない方の手で包み触れてあげれば、錯覚だろうか、伝う水滴が涙みたく光った。
「素敵な出逢いをありがとうございます、ね」
 上から触れる綾の手は、金魚と花世、まるでどちらをも慰めるように優しい。
 震えを止め、落ち着いた様子でほわほわ水泡になってゆくいきものが消えれば、あとには重なる二人の手が残るのみ。――両手を繋いだらさすがに泳ぎ辛そうだ、なぁ。そそくさ引っ込める花世の一部始終を見守っていた綾は、ふと下方を一瞥すれば小さく笑んで。
「人魚のお姫様、ここで一枚お写真でも?」
「えっ? あっ」
 悪戯っぽく。引っ込みきる前の手に指を絡めて、絵本の挿絵、舞踏会のワンシーンのようにくるりと躍った。
 尾びれがひときわ美しく翻る。その一瞬を、パシャッと激写したキマイラが下の方で喜びの声を上げるのが聞こえた。カメラ以上にぱちぱち瞬くだけの花世へ、あとで画像をお裾分けいただいて帰りましょうか――そう囁く綾は、次の次の迷子さがしへも花世を伴に選ぶのだった。

 夏を一心にかがやかせ、弾ける飛沫を幾つも越えて。
 季節の向こうへも、ねがいは続いてゆく。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

オズ・ケストナー
セロ(f06061)と水着で

セロ、空が海だよっ
わーっと手を伸ばす

どれもはじめてっ
じゃあわたしもこれにするっ
おそろい持って、むん!と気合の笑顔

見よう見まねでボードの上に立ち上がろうとしたらひっくり返り
わあっ
セロがどんどんうまくなるから拍手
よーしわたしもっ
よたよたわたわた、笑い声あげて

あれなんだろうっ?
うん、さわっちゃえさわっちゃえっ
指先でつん、と魚をつつく

セロ、みてみてっ
とってもとっても大きいクラゲ
きっとぽよぽよのぷにぷにだよっ

顔合わせて頷いたら狙いを定めて
だーいぶっ

感触に目が輝く
たのしい笑顔が溢れて止まらず
セロの手を取って

ラッコ?かわいいっ
みんななかよしなのかな?
うんうん、てをつなぎにいこうっ


セロ・アルコイリス
オズ(f01136)と水着にオンパーカで

すげぇ!
やっぱキマイラフューチャーは面白いですね!

色々試してみてーけどサーフボード乗ってみてーです!
たぶん最初は何度もひっくり返るけどそれも楽しい
あっはは!
オズもどんどん上達してますよ

えっねぇこれ触るんです?
飛び出してきたイカにちょいと手を退きつつ

声掛けに見れば透明でふよふよ浮く巨大クラゲ
わくわくのココロのままに掛け声揃えてだーいぶ!
飛び乗ったらそのまま海に潜っちまう?
顔出したら笑って、先にボードに乗れりゃオズの手を取ってまた空へ

あっ見てくださいオズ! ラッコ!
あの子たちと手ぇ繋いだら、今度はふんわり海に戻れますかね?
手を繋ぐのは寝るときだけとか関係ねー



「わーっ! セロ、空が海だよっ」
「すげぇ! やっぱキマイラフューチャーは面白いですね!」
 広い、広い空の海へと両腕を伸ばす。
 さあさあ降る少ししょっぱい霧雨は、陽の下で見たなら光のレースのようだった。
 目移りしてしまう素敵な異変。どうしよう、どれを楽しもう? 伸ばしきった腕がぶつかり見つめ合うオズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)とセロ・アルコイリス(花盗人・f06061)は、お互いわくそわして仕方ないことが言葉なくとも伝わり、頷いた。

 ――全部で!

 そんな二人が先ず駆け込むはお役立ちグッズの山。
 セロの頼もしき翼竜に相乗りという手もあったが、せっかくなのだ。“マリンスポーツ”にも興じてみたい。
「わ、わ、 わ」
「おーオズ、その調子!」
 わあわあ、あはは。明るい笑い声が鳴り止まない。
 向日葵とアンスリウム、弾ける水飛沫のシルエットが描かれたマジック・サーフボードは色違い。初体験のサーフィン魔法に何度か白砂を転がりまわった二人はすっかり砂だらけで、けれど、それも楽しくて。
「セロみたいにはうまくいかないや」
「またまた。オズもどんどん上達してますよ」
 尻もちついたオズが照れくさそうにふわふわな頭に手をやるのに、背を叩いて励ますセロは砂を払ってやる。
 そしてマフラーを一周分、巻きなおす。そろそろ出発だ。誘い、長いひれを揺らめかす鯉の輝きは金銀財宝のそれで、天への挑戦を目出度く飾った。
「さぁ!」
 横並びに滑り出すセロとオズ。
 風を受けたセロのパーカーが意気揚々と帆のように膨らんで。
「いってきます、シュネー!」
 オズがぶんぶんと手を振れば、木陰に差した日傘の下、おそろいマリンコーデでおめかしした人形がちいさく手を上げた。

 明るい空中で見るいきものは、暗い海中で見る顔とまた違って見える。
 だからこそどきどきわくわく。暫しタコとにらめっこしていたセロは、岩陰から突然飛び出す切っ先にびっくり手を引いた。
「へ」
 硝子のナイフ!?
 いえいえ、正体は剣先のように鋭い胴のイカ。スイと横切ってゆくのを見送――……りかけて、あわててタッチする。
「あっぶねー、珍しい子だらけですねオズ」
「うん、さわっちゃえさわっちゃえっ」
 近くのオズはみんなともだちのいつもの調子。
 フグでもカニでも、威嚇されたって僅かも挫けぬ心でアタックだ。つん、つん。指先に伝う命のやわらかさが微笑ましい。
 一挙一動に喜び溢れるオズの姿はセロにも同じものをくれる。よし、と気合を入れ直して――、 あ。
「へへ、なんかオズに似た子みっけました」
「ええっ、わたしこんなにむにむにしてる? じゃあね、そっちの子はセロ!」
「その子ちょいとカワイイが過ぎやしません?」
 短いひれを懸命に動かして飛ぶフウセンウオと、白雲を映し込むほど磨かれたプラチナ鱗のエンゼルフィッシュ。
 オズっぽいと思ったのはむにむに要素よりも愛らしく元気をくれる色味に動き、セロっぽいと思ったのはかわいい要素よりも光の加減で虹に煌めく美しさ、だったのだけれど――。
「どっちもいい子だねっ」
「いやぁ、ますますおれって感じしねー! なんて」
 ――なかよくしてくれる、やさしいところが本当は一番そっくりかも。
 てのひらに乗ったり寄り付く懐っこい魚を共に構い倒していれば、ふと。オズの視界の端に何かが垂れてきた。
 天から伸びる、糸?
 はてなと辿り見上げれば、なんと! とってもとっても大きな透明ゼリー……ではなく輪郭だけ光るクラゲが浮かんでいるではないか。
「セロ、みてみてっ」
「はぁい? うわデカ!」
 肩をとんとん振り向かせると期待通りの反応をしてくれるセロが面白い。
 きっとぽよぽよのぷにぷにだよ、そう気持ち声をひそめて続けるオズに、セロもノリノリの勿体ぶり方で深く頷いた。顔を見合わせる。
「――あのお宝、頂くっきゃねーですね?」
「――いこう!」
 そうして二人、ボードを駆り突っ込む先には海からの噴水。
 恐れはない、好奇心こそを翼に。打ち上げられて高々舞い上がる大空へ、鳥のように両腕を広げダイブする。

 わああああ、ぁぁあ!

 落ちてゆく先は巨大クラゲの傘の上。
 まるでトランポリンだ。ぽよよよよと受け止められたセロとオズは、バウンドのはずみで落っこちかけたところを触手ですくい上げられる。傘のちょうど真ん中あたりに並んで座らせられると、改めて顔を見合わせて……。
「~~っすごかった! すごい!」
「ね、オズの言った通りでした!」
 輝く瞳はおそろいだった。助けてくれたクラゲにありがとうを伝えながら、撫で撫でとぽよぽよのぷにぷにを堪能するのだ。
 そんなクラゲがそのまま下へ下へと海へ潜るとき、背の二人もばっしゃあんとその歓迎を受けることになる。「ひゃーっ!」「つめたーい!」わっと海面に顔を出しても、こみあげてくるのは楽しくって仕方ないという笑みばかり。
 浮いていたサーフボードに一足早く身軽に飛び乗ると、セロはオズに手を差し出した。
「さてオズ、まだまだ欲張っちまっても?」
「もちろん!」
 願ったり叶ったりとオズはその手を取る。
 舞う水滴はいっしょに行く冒険のキラキラ、そのもののようで。

「あっ見てくださいオズ! ラッコ!」
「かわいいっ。みんななかよしなのかな?」
 再び空へ舞い戻って見たとびきりほのぼのな光景が、これ。集まって手をつなぎ浮かぶラッコだ。
 こうした行為は眠っているうち潮の流れで迷子になることへの対策だったろうか。海自体からはぐれてしまっている状況ではあるが、彼らの仲はバグにも負けないと思うと胸にあたたかいものが込み上げてくる。
「もしもし、良けりゃ海までご案内しましょうか?」
 脅かさぬようそっとそばへ寄り呼びかけると、ラッコたちが薄く目を開けてまだ誰ともつないでいない方の手をぐーぱーした。
 ……これは?
「わたしたちとも、つないでくれる?」
「やった、でしたら遠慮なく!」
 なんて素敵な体験だろう! ボードに背を預けて広い空を仰ぐ二人は、ラッコ一家とともに心地好い陽光を全身で浴びる。
 海までのごくごくゆったりとした下降。微かなさざ波の音。ひだまりの香り。もふもふの手。 ああ、これは。
 ――ねむっちゃいそうだね……。
 ――いいと思います、少しくらい……。

 端と端にいるオズとセロも、心の中では互いに手をつなぎながら目を閉じた。
 もしものときもちゃんと見つけてあげるから。その、確かな自信がある。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵


第2章 集団戦 『夏の思い出トリオ』

POW ●ひまわり怪人・ウェポン
【ひまわり兵器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD ●かき氷怪人・ジェノサイド
【かき氷攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ ●蚊取り線香怪人・リフレクション
対象のユーベルコードに対し【蚊取り線香】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵たちが次々に海のいきものをつかみ取ってゆく光景は、刺激的で、芸術的で、とにかくなんだか色々すごかった。
 眺めるキマイラの中には、泳ぐ気でいたくせにより高性能のカメラをコンコンしに旅立った者などもいた。彼らが放り出していった鞄のひとつから転げ出た、ひまわりを模した新品のフロートが物言いたげに空を見上げている。
『お前もくやしいよなぁ……』
 ざりりっ。
 そのとき、白砂に三つの異形の影が落ちた。
『夏だってのに、どうして俺らが主役じゃないんだ?』
『空なんか飛びやがって! それは蚊の仕事だろうが!』
『涼むならかき氷にしろ、なにがビーチだ! こんな作りもん!』
 ひまわり怪人、蚊取り線香怪人、かき氷怪人。
 主張はメチャクチャでバラバラだが、集客が大成功したこのレジャー施設とその一番の立役者となった猟兵に対する苛立ちは一致している。
『お前らは今から目の前で起こることを撮ってろ、いいな。――オイ! 猟兵』
 尚も空に釘付けのキマイラたちを押しのけて、ずかずかと砂浜へ入り込んできた怪人ズが頭上の猟兵へ指を突きつける。
 が、絶賛海のいきものと戯れ中で声にすら気付いていない者が大半かもしれない。拡声器くらい持ってくればよかったのに。
 その中でも一部反応してくれた猟兵の存在に気を良くした怪人ズは、それぞれの兵器を構えたり振ったりして見せつけながら声を張り上げる。
『降りてこい! どっちが夏の主役か思い知らせてやる!』
『まぁ来なくても俺の線香で落としてやるがな! 痛いぞ頭から落ちるとか』
『つーかずっと飛び回ってるとか熱中症になるだろうが! 氷食え!』
 さもなくばこのピカピカの海モドキをぶっ潰してやる、と。

 戦え猟兵! 心通わしあった海のいきもののためにも!
 ちなみに施設責任者はハンモックで気持ちよく寝こけているし、キマイラたちは「おっ次のイベントきたか~」くらいにしか思っていなかった。
都槻・綾
何れも夏の風物詩ですねぇ

手で作る廂の下
眩しく細めた双眸は楽し気

骸海へ還してしまったら
心弾む夏が暮れてしまいそうで
惜しくもあるのだけど
季節は廻るからこそ
鮮やかなのだろうとも思うので

こんにちは

今一度
翔けて跳ねて
ひんやり怪人の前へ着地――と同時に、抜刀

斬撃波で氷を更にふんわりと…なりません?
あら残念

でもほら
きらきらと氷が陽に煌いて綺麗

中空を軽やかに弾み
軌道を翻弄しながら敵技を躱しましょ

削り氷は
宇治金時練乳掛け挽茶アイス乗せの栗の甘露煮乗せで更に白玉団子添えが好きです

呪文を唱えるようにすらすらと

「美味しい」の満面の笑み添えて
さむずあっぷで見送りたかったなぁ、なんて

ひらり閃かせる白刃で
氷を余さず水に帰す



 まあ、――夏の風物詩ですねぇ。
 わあわあ騒ぎ立てる怪人ズの声を耳にした綾は、セミの声に耳を澄ますような和やかな面持ちをしていた。
 手で作った廂の下、眩しく細めた相貌は楽し気。しかし、今しがたまでふれあっていたコバルト色の熱帯魚を送り出すもう片手には刀の鞘が収まって、華のある美しさの中に棘を覗かせている。
 ひまわりが作り出す迷路の光と影、削り下ろす音も味わい深いかき氷、夕涼みの縁側で焚く蚊取り線香の匂い。
 彼らを骸の海へ還してしまったら、心弾む夏が暮れてしまいそうで惜しくもあるのだけど。
「季節は廻るからこそ鮮やかなのだろうとも、思うので」
 独り言ちた綾がまなこを開く。とん、と。空という足場を踏み切る。
 ユーベルコード、天翔の力により天も地もない――まるで重力をも感じさせぬ軽やかな飛翔が、一歩にして彼我の距離を縮めた瞬間のこと。

「こんにちは」
『!!? な』

 ザンッ! 抜かれた刃が儘、一閃、陽光に煌めく。
 綾からの手痛い挨拶を喰らうのは、夏の思い出トリオの中でも氷塊を抱え上げて威嚇していたかき氷怪人だ。
 事態を把握しきる前にズレゆく氷が真っ二つに分かたれて落ちた。どちゃりと砂に塗れるまでに吹きつけた斬撃の余波の風がスパパパパと行き来して、氷塊と、それだけではなく怪人の頭部のかき氷粒をも一層細かにする。
『なああああ!?』
「あら残念。こうでは食べられないかしら」
 更にふんわり氷にと思ったのだけれど。
 強い日差しもあってか、通り越して水になった元・氷の水滴を悠々と掻い潜る綾が唇に引く笑みは怪人の心を逆撫でした。
『俺の氷を美麗エフェクトに使うんじゃねぇぇぇ!』
 なんてったって絵になり過ぎる。
 陽に輝きキラキラとした水滴と氷粒とが綾という麗人を飾り立て、ただ適当に撮るだけで加工済の写真レベルになる状況にキマイラたちもどよめく。中には、ひんやりとした細雪の風を水風呂のように楽しむ者もいて。憤慨するかき氷怪人は噴火ならぬ噴氷する、が。
「やですねぇ。これでも私、夏にはあなた方がいてこそと思っているんですよ」
 本当です。本当。
 そんな満喫中のギャラリーへも及びかねない反撃の一手を、すいと翻された刀身が舐めるように断った。
 散弾めいた氷の粒がばらばらと弾き上げられる様はポップコーンか。なんにせよ賑やかな光景を映し淡く光る青磁の瞳も嘘は言っていないのだろう、だからこそおそろしい。
『じ、じゃあなんで……』
 底知れぬものを感じてババッと飛び退くかき氷怪人。
 判断こそは良かったが、しかし遅い。否、綾の踏み込みが速過ぎる。ワーッと撃ち放つ当てずっぽうの狙いでは到底定まらない、蒼空に羽衣が踊り深まる色合いに一瞬でも気を取られたならば、たたん、たんと変則的に宙をも駆ける男は既に目と鼻の先だ。
『――ンガッ!?』
 さながら、叩きつける嵐。
 刀の頭を鋭く胸に打ち込まれた怪人は盛大に吹っ飛んで。
「ふむ。爽やかなお味でいらっしゃる」
 大の字でびたんと張り付けられた大岩にて、時間差でやってきた斬撃波に切り刻まれる。
 一方の綾は飛び散ったラムネシロップを評価してやる余裕ぶり。ベトベトになるかと思いきや使い手同様に綺麗なままの刀を軽く振りつつ、ざり、と白砂を踏み鳴らして怪人へ歩み寄る。ふるえるかき氷。にこりと微笑む男。
 そうそう申し遅れました。
「削り氷は、宇治金時練乳掛け挽茶アイス乗せの栗の甘露煮乗せで更に白玉団子添えが好きです」
『ぁ……え……?』
 ヤバいモノを喚び出すとしか思えぬすらすら長詠唱。それが怪人の認識出来た(出来てない)最後の言葉であった。
 せめて瞬時に宇治金時練乳掛け挽茶アイス乗せの栗の甘露煮乗せで更に白玉団子添えに様変わりし命乞い出来ていれば! ――いいや、だとしても結末は変わらなかったろう。
 オブリビオン。彼らの居場所が骸の海にのみある限り。
「さようなら」
 美味しい、と、満面の笑みを添えさむずあっぷで見送りたくとも、出来ぬのだ。
 ひらり閃く白刃に待ったはない。夏の海から迷い出た大岩とともに水へと、海へと帰りゆく怪人を見つめ下ろす綾の背にそのとき、ふと声が降りかかった。猟兵さん、猟兵さん。
「お疲れっす。よかったらこれ、美人の彼女さんと」
 甘い香りに振り返れば、ラムネフロートを二つ差し出すエプロン姿のキマイラが立っている。
 美人の彼女さん。ぱちと瞬いた綾は刀を収めると、やはり否定も肯定もせずにやわい笑みでそれを受け取った。
「ご親切にありがとうございます」
 よく見れば特別に練乳と白玉団子付き。
 心弾む夏は変わらずに続いてくれそうだ。
大成功 🔵🔵🔵

イディ・ナシュ
【水難】

キディの眩い笑顔と主張を前に
若い子は元気ですね…という心地になってしまうのは
体力が底をついているからでしょうか

ともあれ先程助けて頂いた鯨様の背をお借りして対峙いたします
二人が存分力を揮えるように
くるくる線香様を阻むことに尽力しましょう

今度はきちんと魔導書を開きます
鶏に息を吐きつけさせても相殺はされますが
相殺させ続けられれば他に害は及ばないのではないでしょうか
ですので貴方(鶏)は肺活量の限界に挑んでくださいね
そこではー、です、ほらもう一度

無邪気に空で殺す宣言を怪人様がたへ放つ義妹は止める術を持ちません
せめておさぼりをしているエスパルダ様に鶏をけしかけて
羽毛で暖めて差し上げますね


エスパルダ・メア
【水難】

良い子のお手本みたいなキディが眩しい
オレらをボロボロにしたのあいつなんだがな

っていうか夏の主役は暑さじゃねえの?
何よりもうHPがゼロに近いんだよ
水面に叩きつけられすぎたんだよ
かき氷食わせてくれるなら対決するより食ってたいんだが

さっきのペンギンの群れか
…乗せてくれんの?ってうちのペンギーもう乗ってんじゃねえか楽しそうだな!

鶏がすげえ強いられてる…無邪気な子供が一番怖いとかあるよな
かき氷はうまい
え、食えって言ったろ熱中症怖いじゃん?
いやまあさすがに食ってるだけってのもあれだし
よしフィー行ってこい、オレの代わりに戦って来い
オレは暑い
だいたい姉妹に持ってきゃなんとかな…うわ鶏やめ――!(落下)


キディ・ナシュ
【水難】

おねえちゃんとエスパルダさんがぼろぼろです
何かあったんでしょうか…?
はっ!もしや既に怪人達にやられて…!?

さておき夏は夏を楽しむみんなが主役です
だからちゃんと後で
ひまわりも見に行きますし
かき氷も美味しく頂きますし
蚊取り線香は…良く分かりませんが着火しますので!
ご安心ください!夏はまだまだこれからです!
楽しみですね!

子どもたちとイルカさんの背に乗ってゴーです!
ひまわり兵器は危ないので没収いたしましょう
こちらに向かって撃たれる分はわたしが打ち返すので
奪っちゃってきてくださいね!

ひらめきました!
お三方も上を楽しめばハッピー気分になるかもしれません
あとでスカイサイクル一緒に乗りましょうね!



 三対三。
 猟兵と怪人、砂浜にて向かい合う様はなにか大きな戦いの幕開けに相応しい物々しさを醸し出していた。
『いやお前らその怪我どうしたの……?』
「? おねえちゃんとエスパルダさん、どうしてそんなにぼろぼろなんですか?」
 主に猟兵側のダメージのせいなのだが。
 擦過傷や青あざが目立つ。水着のため剥き出しの肌を庇いながら立つイディとエスパルダは、一切の翳りなく声を飛ばしてくる元凶、キディの疑問へ力なく首を振った。
 元はといえば、つかみ取りどころか引きずり回しの刑でキディにやられたブツである。エスパルダは頭に貰い物の氷嚢をあてて目を瞑っている。一方、くらい目でスカイサイクルを見つめていたイディはぜえと浅い息を吐いて、素で案じてくる怪人へ、お気遣いには及びませんとこれまた丁寧に目礼した。
 ??? はっ!
「あなたたちの仕業ですか、いつの間に!」
『俺らが聞きてーよ!? いつの間だよ!』
 これに何かを感じ取ったキディ、猛る。
 横一列の均衡を崩してずずいと前へ出たキディはそのまま、どすん、どこかから取り出した巨大スパナを白砂にめり込ませた。こわい。
『や、やんのか』
 割と気圧されつつ身構える夏の思い出トリオ。
 しかと頷くキディ。
「さておき、夏は夏を楽しむみんなが主役です」
 だからちゃんと後でひまわりも見に行きますし、かき氷も美味しく頂きますし。
 蚊取り線香は……良く分かりませんが着火しますので!
「ご安心ください! 夏はまだまだこれからです! 楽しみですね!」
『え、俺の扱い雑じゃない?』
 どっちにしろ死な気配漂う蚊取り線香怪人の肩を両脇が抱いた。
 元気元気、超元気。どころかこの後まだ遊ぶ気でいやがる。良い子のお手本みたいなキディの眩しさに、エスパルダは今一度溶けかけの瞳を閉じた。
(「っていうか夏の主役は暑さじゃねえの?」)
 でもじゃあ、じゃあっていうか、蚊取り線香怪人の幸せって何だろう。痛かったな水面。ああ暑い――――、
 HPはほぼゼロ、意識を深淵に引っ張られかけたエスパルダの背にそのとき、どばあっと大量の水が押し寄せる。
「へばっ」
「! 皆様は」
 エスパルダ同様に力尽き、若い子は元気だなぁモードに入っていたイディは吹っ飛んできた男も波も綺麗に躱した。先ほどの恩とかそういうのはない。
 皆様。そう、背を向けていた海面に顔を出すクジラにイルカ、それに流氷の上のペンギンたちは、ついさっき三人が海へ帰らせてやったいきものではないか。
「ふふっ。もちろん、海のみなさんも主役ですとも!」
 喜色満面なキディの笑いがきゃらきゃらと明るく響く。
 ゾワッと鳥肌るエスパルダとイディからトラウマが消え去るにはもう暫しかかりそうであるが、ともあれ、これは頼もしき助っ人だ。
 キディの声に呼応するようにしてもう三重に増える笑いは、Playhouseでつくり出された超常の子どもたちのもの。カラカラ、ケラケラ、ヘラヘラ。「ゴーです!」家長キディと子どもたちは、大きなジャンプで再び空へ舞い上がったイルカの背にそれぞれ飛び乗れば、波に乗って怪人へ突撃! パワフルな強襲を仕掛ける。
『ギャー!?』
 散り散りになる怪人たち。
 一方。巻き添えで潰れてもおかしくない位置にいたエスパルダとイディも、クジラとペンギンによって空へ助け出されていた。
「愚妹が何度も申し訳御座いません」
「はぁ、はぁ……助かった、ぜ……ってペンギーもう乗ってんじゃねえか楽しそうだな!」
 流氷の上で氷を食んでくつろぐ自身の精霊にギョッとするエスパルダ。やだすっかり馴染んでる。労わるみたいなペンギン翼のぺちぺちが背にしみて、ぐ、と息を呑むエスパルダは戦いよりか普通に食べて休憩したかったかき氷カップの残骸を切なげに見つめた。
 ――その、カップが噛み砕かれる。
「始まったからには終わらせねばなりません」
 大きく歪な嘴。趾。もうもうと危険な色の吐息をまき散らす、イディが召喚した怪鳥の仕業だった。
 今度こそウミガメではない、白蒙の書を抱え開いたイディは疲労困憊であろうと狂いなくユーベルコードを発動させ、白波の向こうから漂い来ていた線香の匂いを相殺したのだ。いやソイツの息の方が断然クサいしヤバいだろ。エスパルダは思ったが、もうそんなの口に出す気もしないくらい疲れていた。
「そう、だな。キディじゃねえが、休むためにもちゃっちゃと片すとするか」
「くるくる線香様はこのままお任せを」
 顎にまで垂れた汗だか血だかを拭い頷くエスパルダと、見掛けだけは依然として平然としたイディ。
 二人が視線を重ねる先では、ひまわり弾をスパナでスパパパパと打ち返す疲れ知らずのキディが奮闘していた。

 無邪気な子どもが一番怖い。
 はたまた子どもは怪獣ともいうが、これは。
『やめろやめろやめろ、詰めてくるな!』
「いいえやめません、危ないひまわりは没収です!」
 いささかホラーが過ぎるのでは。
 イルカが空を舞い踊る。笑い続ける背の子どもたちは飛び降りざまに怪人へ掴みかかり、その度にひまわりの花びらがぱらぱらと風に散る。
 花びら散弾で弾き飛ばしたとてすぐに這い上がってくる様はさながらゾンビ、それぞれに欠けた身体部位が恐ろしさを加速させていた。ふむんと気合いバリバリに彼女らの強さを信じる――無敵を夢想する――キディがいる限り、怪人側に勝機はない。
 キディの一番の目当てはひまわり怪人の持つひまわり兵器。
「さぁもう一度!」
 誰も傷付かないように。誰もが夏を楽しめるように。
 原動力は純真。子どもたちの手がその願いへ届くまで、何度だって守り支えるべく、巨大スパナを振り回す。
『くそぉ、やられっぱなしと思うなよ!』
『ホラーも確かに夏の風物詩かもだがな、俺らより目立つなってんだ!』
 怪人も必死だ。押されまくっているひまわり怪人を押しのけるようにして、かき氷怪人がひえっひえの砕氷を、蚊取り線香怪人が線香のいい匂いを放出する。
 しかし。三対三といったろう、とばかりに吹き・吐きつける吹雪と硫黄臭とがそれらを呑んで喰らいあう。
「頭に響くんだよ、いちいち叫ぶな」
「ああ、けれど、今でしたら息を大きく吸っていただいても結構です」
「エスパルダさん、おねえちゃん! ……あれ? どうしてもっとぼろぼろに?」
 おまえがさっきブチ撒けた大波だよ!!?
 とは、誰も言わなかった。怪人ですら。無駄だし痛いし辛いし。
 エスパルダが齎した吹雪は正確にはエスパルダ自身というより、その身の氷から出でた氷竜サフィラスによるものだ。翼持つ青き竜は働き者で、流氷に座りかき氷をつつく主の分も積極的にかき氷怪人を追い立てる。……ん、かき氷をつつく?
「ときにエスパルダ様」
「いやアイツが熱中症なるぞつって勧めっから」
『俺のせい!? ぅえげ、くっさっ』
 イディの声に、目を合わせる前から刺々しいものを感じ取ったエスパルダは瞬間でかき氷怪人へ責任転嫁した。やはりブルーハワイ、口の中だけは極楽。
 思わず大声を上げたかき氷怪人は硫黄臭をいっぱい吸い込みもんどりうって倒れる。慄いて両手で鼻と口(?)を覆う蚊取り線香怪人だが、そのために兵器を放り出していては勝ちを捨てるようなもの。
「やってやれ、フィー」
 さすがに食ってるだけってのもあれだしくらいの温度感で呼ばれたとも知らず、愛称を呼ばれ嬉々としたサフィラスが青空を進む力強き一矢となる。
 滑るように翔け、そうして顎にてがっちり蚊取り線香に喰らい付く。下方、キディのもとへギャッと振り落とされる怪人。あれで良い、致命傷とはいかずとも大体は姉妹に持っていっておけば。しかし攻撃は成功した筈だがなぜだろう、エスパルダはちょっと前に空からの美女と衝突したところがもっと痛くなった。おまけに震えが。
「お寒そうですが」
「いや」
「暖めて差し上げますね」
 羽毛で。
「  」
 にたぁああ。今の今まで馬車馬のように息を吐き肺活量の限界に挑まされていた怪鳥が、ここで満面の笑み(幻覚)でエスパルダを見た。
「フィ、 」
 頼りの竜は戦果を上げるのに夢中だ!
 ごっ、ごっ、ごっ。怪鳥の趾がクジラの背を踏んで飛び立つ音と、巨大スパナが怪人を殴り倒す音とが綺麗に重なり合う。

「降参ですか? ごめんなさい、しますか?」
『ごべんばばび』
『ううぅ、どうしてこんな目に』
 まとめて山にされた夏の思い出トリオは目を回している。
 仁王立ちして声をかけるのはキディだった。最後のひまわりの花びら一枚をつかまえて浮かべる笑みはどこまでも純であるというのに、返り血で濡れた凶器が禍々し過ぎる。ぱ、とそれらを手放すキディも鬼ではない、ごめんなさいを聞けたならこれ以上戦う理由もないとも。
 ううん、いっそなかよく遊んだって。
「ひらめきました!」
『ヤメテ……』
 少女のヤバみを痛いほどわかってきた怪人が声を揃えて拒絶するもキディ選手これをスルー、とめていたスカイサイクルを押してくる。
 そして告げるのだ。
「お三方も上を楽しめばハッピー気分になるかもしれません。一緒に乗りましょう!」
 死刑を。

 ああ、この身は無力。
 空へ駆けのぼってゆく自転車から早くも人影が落ちるのに目を背けたイディは、不届き者が食べかけのままにしたブルーハワイを怪鳥やペンギンがおいしくいただく平和な絵面だけを記憶に残すことにした。
 尚、怪鳥にタックルされて断末魔を上げながら吹き飛んだ本来の持ち主であるが、途中で親切なイルカたちがキャッチして自転車の後ろへ運んだので大事ないだろう。
 ところで大事とは何を指すのだろう。
「夏で御座いますね……」
 空は高く日差しが眩しい。
 匙を差し出され一口、しゃくりと味わうかき氷は美味で、難しい考えごとも爽やかに消えていった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

セロ・アルコイリス
オズ(f01136)が間に合えば、彼とも

いやなんか最終的に優しいなかき氷のヒト
おれかき氷好きですよ?
でも喰い続けんのは良くねーんでしょ、やっぱ
まあおれにゃ関係ねーけど
(どーせ腹ん中で魔導蒸気の熱で溶かして終り)

さて拗ねてねーで、あんたらも空へ行きましょうよ
ってラファガに乗って攫います

ほらイルカ!
速度上げますよ、落ちねーでくださいね?
かき氷みたいな色とりどりの熱帯魚とかいねーかな
いちご、レモン、メロン……あ、グレープ!

そんなこと言ってたらかき氷喰いてーな
ねぇあんた、かき氷出せねーんです?
遊びつつかき氷喰えるとか最高でしょ、
みーんな主役ですよ
ほらほら、振る舞いましょ!
ラファガはちょいとだけですよ


オズ・ケストナー
セロ(f06061)と

わあ、いいのっ?
こおりたべるっ

よくないって、キーンてなるやつ?
わたしあれなったことない、セロも?
怪人さんは?

ひまわりならわたしもさかせられるよ
ほらっ
UCでみんなへ花を降らせる
きれいでしょ?

そうだよ
いっしょに飛んじゃおう
空をとぶのは蚊だけじゃないよ
ふふ、なんでしょうかっ
せいかいはー、わたしたちっ

ラファガにのってはしゃいで
みてみて、あの雲ひまわりみたいっ
あっちはぐるぐるしてるから、かとりせんこうかな?

セロが挙げていくかき氷の色
それじゃあこっちの雲はれんにゅうだっ

いいねっ
どのかきごおりもおいしそう
おすすめはなにかな?
ひとくちこうかんこしよっ

ラファガもかきごおりすき?
わたしもっ



「おー。おれかき氷好きですよ?」
「わあ、いいのっ? こおりたべるっ」
 かき氷。え、くれるなら全然もらうけど。
 怯む? まさか。セロとオズは揃いも揃って大歓迎の気持ちだった。切った啖呵からしてなんだか憎めぬ夏の思い出トリオを眼下に見つめ、空飛ぶサーフボードですいすいと近寄る。仇敵の思わぬフレンドリーさに身を強張らせる怪人ズはザッと得物を構え直すと、ドドンッ!
『く……くくく、油断したな!?』
 渾身の悪役っぽいセリフでそれらに火を噴かせた。
 実際に飛び出すのはひまわりと氷だ。ひまわり中央の管状花も氷粒もどちらも散弾じみて舞い、広がり、行く手を塞ぐことでセロとオズの足元を掬わんとする。確かに、ボード頼りで浮かんでいるのだからそこから飛び降りさせてしまえばこちらのものとも言えるだろう。
「「!」」
 狙い通り、二人がボードを蹴り飛んだのを見てはニヤリとする怪人。
 そして落下中はただ垂直に落ちる他ない無防備! 狙い撃つのも容易いと、玩具のような銃弾の嵐が空を駆け上がったときだった。
「でも、なぁ」
 セロが言う。
「氷喰い続けんのは良くねーんでしょ、やっぱ」
「よくないって、キーンてなるやつ? わたしあれなったことない、セロも?」
 怪人さんは? あとね、空をとぶのは蚊だけじゃないよ。
 オズが続ける。なぞなぞの、せいかいは――……?
 ああ、ピンチを感じさせぬ談笑が嵐を呼びつけたらしい。途端にセロとオズとを包み込むようにして膨れ上がった風の束が、銃弾を弾きながらひとつの像を結ぶ。
 召喚されたのは突風――白き翼竜ラファガ。ふかふかもふもふ、二人を背に乗せ大きな翼と尾を空いっぱいに広げた幻想的な姿にギャラリーのみならず怪人も息を呑む。
「せいかいはー、わたしたちっ」
「ピースピース、ってね」
 ラファガに抱きつきいぇいいぇいする二人。驚くのはそこだけではない。
 弾き返された散弾に加えて、撃ち出した覚えのない花びらまで降ってくるではないか。
「ひまわりならわたしもさかせられるよ。ほらっ、きれいでしょ?」
 こちらはオズのユーベルコード。
 ひまわりにたんぽぽ、風に乗せ届けるあたたかな色の花びらは傷付けるためのものに非ず、いっしょに遊ぶため!
 害意を奪うというオズらしい“攻撃”は未知の力として、逃げ惑う怪人ズを一層慌てさせた。
『いや綺麗だけども……オイひまわり怪人! お前の一部だろなんとかしろ!』
『無茶言うな、盾にすんなチクショー!』
「――はいはい、拗ねるのも仲間割れもよしてくださいって」
 わたわたしていた彼らは更に更にびっっくりしたろうとも。
 穏やかで楽し気な声。セロの声が、ほんのすぐそばで聞こえたのだから。

 これからみんなで空の旅するんですから。
 ねぇ?

 ザアアァッと白く、強い風が通り過ぎる。
 過ぎた後の地上には誰もいない。それもそのはず、怪人ズはまとめてラファガの背の上に攫われていた。
 …………?
「わ、そばにいるといいにおいもするね」
『キャーーーーッ!?』
 ぺた。オズに触れられてやっと現実に戻ってくる怪人。
 慌てて氷やらひまわりやらをばら撒くも、文字通りばら撒いたというだけ、それらはラファガの纏う風がぱっぱと一掃してしまう。
『降ろして! ヤメテ人攫い!』
「あっはっは、人聞きが悪――くもねーけど、ほら、周り見て。楽しみましょ?」
 初めての高所だ、ゾッとして身を寄せ合う怪人ズを余所に高度速度は上がる一方。主犯たるセロはあっけらかんと空に指を滑らせ、彼らの目線を誘導した。
 ここはキマイラの夢のリゾート、海。蚊取り線香……はちょっとわからないが、ひまわり畑もあるし、かき氷の屋台だってある。「みてみて、あの雲っ」オズが指すのはひまわりみたいな雲で、少し離れたところにはぐるぐるの蚊取り線香雲も見えるではないか。
『あ……』
「ほらイルカ! と、あの魚なんてかき氷カラーじゃねーです?」
「ほんとだ! それじゃあこっちの雲はれんにゅうだっ」
 いちご、レモン、メロン……あ、グレープ!
 ピョンと跳ねすれ違うイルカと共に泳ぐ熱帯魚のカラフルまでもが、想像力豊かな二人組のパワーを全開に高めていた。
 みえる。
 みえるぞ?
 もしかすると俺たちは、俺たちが、間違っていたのか?
 ――夏の思い出トリオの胸に確かな疑念が過ぎった。ここすごく素敵な場所じゃん。いやいや、いやいやそんな。  そんな、ことがッ!
『う、うるせーっ! そんなポカポカしたこと言ってられなくしてやるぜー!』
「わ」
 抱えた頭をぐわっと振るうかき氷怪人。
 ひゅおおおと吹きつける砕氷は吹雪か霙か。ちょっと甘いのでみぞれ味の方かも。
 いずれにせよ脅威とは呼べない。オズのユーベルコードにより害意が薄れているせいだろう、口に舞い込んでもつめたくはあるが標準的な範疇だ。これにぺろりと舌鼓を打ったのはオズで、怪人の猛攻に慌てるどころかてのひらに受け止めてもう一口いただいたりしている。
「やっぱりおいしい! これならみんなで食べられるかも?」
「やった。ほらほら、振る舞いましょ!」
『え……いいの?』
 すっかり毒気を抜かれたかき氷怪人、褒められて嬉しそう。
「遊びつつかき氷喰えるとか最高でしょ」
 みーんな主役ですよ。
 セロの言葉がトドメとなって。そこからはもう、早かった。

『大きいカップ……いる?』
「良いですね、氷! ってのがいかにも夏って感じ」
「おおもりでおねがいしまーす!」
 なごやか~~。
 翼竜の背という最高の眺めの中、繰り広げられるかき氷パーティー。かきパ。
 おすすめを尋ねたオズの手には夏らしいブルーハワイが。あれこれ目移りしていたセロへは一周ごとに味も異なるレインボーが渡されて、削りたての粒感も程よく喉を楽しませてくれる。縞模様のスプーンストローで掬い上げ、口元へ運んでやればラファガもまた嬉しそうにひと鳴きした。
「ラファガもかきごおりすき? わたしもっ」
「ラファガはちょいとだけですよ、キーンしちまいますからね」
 オズは未体験だと聞いたが、冗談めかして言うセロ自身にもその感覚は分からない。腹の中の魔導蒸気の熱は氷や冷感など簡単に溶かしてしまうから。
 けれども、喉を通るまでの“おいしい”は鮮明だ。交換しましょそうしましょと容器を傾けあう、仲睦まじく夏を満喫する猟兵の姿に一番感動しているのは他でもない、怪人たち。
『やっぱ夏はかき氷だよな……』
『馬鹿言え。蚊取り線香に守られて、ひまわりを見ながらかき氷を食う。それが正解で、みんなが主役なんだ……』
 互いに認め合ったりもしつつ。
『ありがとう、ありがとう』
 かき氷怪人をはじめ、夏の思い出トリオは満ち足りた心で消えてゆくのだった。
 うんと爽やかな海風が吹いた。
 こんな戦いの終わりがあってもいい。手の中に残ったかき氷をひと掬い、しゃくりと噛むセロとオズは頷きあう。美味いですね。おいしいね。
「夏にしてーことが一気に叶っちまいました」
「わたしも! でも、まだまだたくさんあるよ」
「へぇ? オズも中々に“欲張り”ですね?」
「ふふー、だれのおかげかな?」
 せいではなくおかげ。
 いつか人形だったふたりは、素敵な出逢いの日々で今のふたりになった。思い出語りにはもちろん互いの存在も欠かせない。
 この夏も、そんな大切な思い出のひとつになる。きっと? 必ず。人真似なんかじゃない、ともだちの距離で並ぶ影ふたつにおひさま色の花弁は降り続ける。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2021年08月08日
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