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木漏れ日のセルセ

#アックス&ウィザーズ #戦後

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#戦後


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●木漏れ日のキラメキ
 キラキラ輝く陽射しが差し込めば、緑の木々は鮮やかな色に輝きを放つ。
 木々の隙間から零れ落ちる光は強い強い生命を帯び。辺りを、世界を熱で包みこむかのよう。けれど葉の隙間から降り注ぐ冷たくも小さな雫は、その熱から身体を護りむしろ心地良さを感じるのだ。
 胸いっぱいに息を吸い込めば、水気を含んだ空気に混じる緑と夏の香り。
 そよぐ風は仄かな涼しさを感じ、優しく肌を撫でていく。
 きっと、この陽射しもあと少し。
 だから今、最後の時間を楽しもう。
 カランと鳴る涼やかな音色が、まるで人々を歓迎するかのように響き渡った。

●夏の下で
「アックス&ウィザーズで、フェアリーの方から招待状を頂いたんです」
 青空色の封筒に、可愛らしい向日葵のシールが貼ってある手紙を手にしながら、ラナ・スピラエア(苺色の魔法・f06644)は猟兵達へとゆるりと言葉を紡いだ。
 頬を仄かに染め、瞳を輝かす姿は切羽詰まった様子では無いようで――そのまま楽しそうに笑みを落とすと、ラナは続きを言葉にして紡いでいく。
 今回のお話は、フェアリーの少女――『レテ』と云う燃えるような真っ赤な髪が印象的な少女からのお誘い。彼女が作り出したフェアリーランドは、外にも負けない夏の世界。キラキラ輝く陽射しの中、茂る木々は夏色に染まり、涼やかで美しい湖が広がっている自然溢れる世界なのだという。
「その、レテさんからですね。この世界でのお茶会のご案内を頂いたんです」
 これは、戦いの無い穏やかなお話。
 夏の陽射しを、緑を、香りを、甘味を。楽しむだけの休息のお誘い。

 まずはレテが用意した会場まで少しの散歩道。空が見えない程のアーチ状の木々が茂る一本道を歩くことになる。それはフェアリーランドらしい、どこまで続いているか分からない不思議な長さなのだが――陽射しと共に降り注ぐ冷たいミストが肌を、胸を、心を癒し夏の世界でも心地良さを感じるだろう。
 冷たいミストは勿論人体にも安全。道によっては、ローズ水やオレンジ水など、癒される香りを詰め込んだミストも降り注いでいるらしい。
 輝く緑の世界の暫しの散歩。そんなひと時も勿論癒される時間だが――。
「この道の中にですね、レテさんはコインを隠しているそうです」
 動物、花、天体。コインの形も模様も色々あるようだが、大きく分けるとその3種類。何のコインを見つけたかで、この後のお茶会でちょっとしたお菓子を追加してくれるとか。それは彼女なりの悪戯心なのか、もてなしの心なのか。それは分からないが、楽しみを求めて探してみるのも良いだろう。

 そして木々の道を抜ければ――待ちわびるのはどこまでも広がる夏空の下のお茶会。
 透き通る湖は、足を浸せばひんやりと冷たいまるで雪解け水のよう。空色を映す青い水中に並べられた硝子のテーブルの上には、レテの用意してくれた食べ物が並ぶ。
 爽やかながらもどこか懐かしさを感じるレモンパイ。ふわりと溶けるような優しい甘さの桃のムースに、柔らかくもとろける甘さのマンゴーのショートケーキ。高貴な香りが広がる薔薇のマカロンで胸を満たしつつ、キッシュやサンドイッチで少しの休息を。特に彼女がおすすめするのは、木漏れ日ゼリー。クラッシュした透き通る緑のゼリーは青林檎の味で、青空を映したかのようなブルーの二層目は微炭酸のソーダ味だ。
 どれもレテのお手製で、料理好きな彼女らしい自信作。勿論フェアリーサイズだけでなく、人間サイズも用意してくれている。
 飲み物はお茶会らしい爽やかな味わいのダージリン。アイスとホットの両方が用意されているので、お好きな方を選ぶと良い。また、レテお手製のクラフトコーラは数多のスパイスをしっかり煮詰めた、甘さ控えめの少し大人なお味のようだ。
 強く強く降り注ぐ陽射しの中。水音を響かせながら――味わう夏の食べ物はきっとお腹だけでなく心も満たしてくれるだろう。

「皆さん、海で夏は十分楽しんだかもしれません。けれど、こういった陽射しと緑も夏の醍醐味だと思うんです」
 にっこりとラナは微笑むと、皆さんも一緒にいかがでしょうかと誘いの言葉を述べる。
 もう少しで夏は終わってしまう。
 段々と陽射しが陰るのも早くなってきた夏の終わりの日。
 だからこそ、うだる世界を楽しむのは夏を惜しむようなひと時になるだろう。


公塚杏
 こんにちは、公塚杏(きみづか・あんず)です。
 『アックス&ウィザーズ』でのお話をお届け致します。

●シナリオの流れ
 ・1章 冒険(魔性の花園)
 ・2章 日常(森のお茶会)

●1章について
 どこまでも続く木々のアーチの道。
 視界を覆う程の木々なので、辺りの様子は分かりません。
 高さは2メートルくらい。人が2人ほど並んで歩ける幅になります。

 陽射しは眩しいですが、辺りからは霧状のミストが降り注いでいます。
 ミストにはローズの香りやオレンジの香りづけがされているものもあります。人体には無害なので、お好みのものをご指定頂いても大丈夫です。

 『花・動物・天体』
 以上のメダルのどれかを見つけると、お茶会でお菓子のプレゼントが用意されます。どんなメダルかお好きに指定頂いて大丈夫です。
 お任せの場合はプレイング冒頭or末尾に【☆】を記入お願いします。(それぞれで何が貰えるかは既に決めてあります)

●2章について
 アーチの先にある、透き通る湖の中でのお茶会です。
 足元が浸る程度の水の中に並ぶのは硝子のテーブルセット。(水に浸らない水辺にもテーブルはあります)
 レモンパイ・桃のムース・マンゴーのショートケーキ・薔薇のマカロン・ほうれん草とベーコンのキッシュ・卵とトマトのサンドイッチ・木漏れ日ゼリー。全て人間サイズとフェアリーサイズのものを用意してくれています。

 1人1つまで何か飲食物の持参も可能です。
 夏の終わりに、お好きな時間を過ごして頂ければ。

 こちらのみ、お誘いがあればラナがお邪魔致します。

●フェアリー『レテ』
 赤い髪に青緑の瞳。
 18歳程の夏が大好きな元気な女の子です。
 特に絡む必要はございませんので、お声掛け頂いた場合のみ登場します。

●その他
 ・全章通してお遊びです。
 ・同伴者がいる場合、プレイング内に【お相手の名前とID】を。グループの場合は【グループ名】をそれぞれお書きください。記載無い場合ご一緒出来ない可能性があります。
 ・どちらかだけの参加も大丈夫です。
 ・許容量を超えた場合は早めに締め切る、又は不採用の場合があります事をご了承下さい。
 ・受付や締め切り等の連絡は、マスターページにて随時行います。受付前に頂きましたプレイングは、基本的にはお返しさせて頂きますのでご注意下さい。

 以上。
 皆様のご参加、心よりお待ちしております。
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第1章 冒険 『魔性の花園』

POW   :    とにかく脇目も振らずに進む。

SPD   :    花の少ない場所を見つけて進む。

WIZ   :    慎重に対策を施して進む。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●夏めく世界
 木々の合間から漏れる陽射しは、まるでカーテンのように視界を覆う。
 輝くような眩い光も、空を覆う程に茂る葉のおかげで幾分か和らいでいて。光と共に降り注ぐ雫は肌の熱を冷まし、その肌の上を撫でる優しい風が更に熱を奪っていく。
 光と、緑と、風と、水と。
 夏の心地良さで作られた道へと踏み込んで、深く息を吸えば夏の香りが身体に満ちる。
 どこまでもどこまでも続く光の終わりは、今は見えない。
 けれど此処は不思議な力で出来た妖精の世界。危険なものなど無いことが分かっているから、想うままに彷徨うのが良いだろう。
 ひらりひらりと歩んでゆけば、きっと素敵な物が待っているから。
灰神楽・綾
【不死蝶/2人】
ふんふふーんなんて鼻歌交じりで
スキップするような軽い足取りで進んでいく
アーチを抜けた先にはどんな光景が待っているのかな?

歩きながら、スマホ取り出し散歩道を写真に収めていく
木々の僅かな隙間から太陽の光が漏れる光景がとっても綺麗

わぁ、二枚もコインを見つけるなんて偉いねぇ焔
コインを持っているとお菓子を追加してもらえるんだよね
いいなぁ~俺まだ全然見つけられないや
歩いたり写真撮ったりでコイン探しのことをすっかり忘れてた
もうすぐ散歩道も終わりそうだし俺には追加お菓子無しかな…

…え、いいの?
焔がコインを一枚咥えて俺の所へやってくる
ふふ、ありがとう
向日葵のコインを大事に握り、焔を撫でてあげる


乱獅子・梓
【不死蝶】
ご機嫌なテンションの綾を後ろから追いかけつつ
木々のアーチに軽く触れてみる
偽物感は全く無い、自然そのもの
あの小さな身体でこんなに壮大な空間を創り出せるとは
フェアリーランド恐るべし…

お前達も自分で散歩するか?
しばらく俺の肩に乗っていた仔竜の焔と零だが
ぱたぱたと飛び立って自らの羽で散歩道を進んでいく
ミストを浴びてびっくりしたり
きゃっきゃとはしゃぐ様子が可愛い

ん?どうした、焔?
アーチに顔を突っ込んで何かを探し出す焔
口に咥えてきたのは向日葵のコインと、猫のコイン
これは…例のコインか!
すごいじゃないか焔(撫で撫で

ほら、焔が一枚お前にやるってさ
焔からコインを受け取った綾の笑顔は、向日葵のよう




「アーチを抜けた先にはどんな光景が待っているのかな?」
 まるで今にもスキップを始めそうな程、鼻歌交じりに軽い足取りで歩く灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)の背中を眺めながら。乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)はどこか感心したようにひとつ溜息を零し、すぐ横に生える木々のアーチへと手を伸ばす。
 道へと飛び出るように生える葉は、新緑からすっかり夏色へと変化し濃くも立派な色をしていた。触れてみればしっかりとした命を感じる手触りで、これは偽物では無い自然そのものであると実感する。
 合間から零れる陽射しは、サングラスを掛ける梓にとっては眩しいものでは無い。けれど肌へと降り注ぐその陽射しは、確かに熱を帯びている気がして。それもまた『本物』らしさを彩っているように感じる。
 ぐるりとアーチの続く世界を改めて見渡して、梓は感嘆の吐息をひとつ。
 これを作り出したのは、小さな小さな身体のフェアリーの少女。夏色を宿す彼女が、こんなにも壮大な空間を創り出せるとは。
「フェアリーランド恐るべし……」
 心からの言葉が、梓の唇からつい漏れていた。そんな彼の言葉に気付いているのかいないのか、綾は自身のスマートフォンでこの夏色の散歩道を機械の中へと収めていた。
 木々の僅かな隙間から、零れる太陽の光はキラキラと輝いていて。その陽射しの眩しさは写真のデータとなっても色濃く残る。
「お前達も自分で散歩するか?」
 梓の肩に乗って様子を伺っていた赤と青の仔竜達。どうやらこの景色に興味を持ったようで、身を乗り出しパタパタと翼をはためかせたのに気付き梓は声を掛ける。すると彼等はそれぞれ鳴き声を上げ、頷くと同時に梓の肩から飛び立った。
 陽射しに近付けばきゅうっと眩しそうに瞳を瞑り。降り注ぐミストに触れれば、びっくりしたように尾を立てた。けれど零はやはり氷と水を司っているからか、率先して水に触れようと木々の近くを飛んでいる。
 そんな、はしゃぐ楽しそうな2匹を、綾と梓は笑みを浮かべながら見守る。――景色だけでなく、彼等もカメラに収めようと綾がスマートフォンを掲げた時。
「キュー」
 焔が鳴き声を上げたかと思うと、彼はアーチの中へと顔を突っ込んでいた。頭は見えなくとも、ぶんぶん尾を揺らす様子は何かに興味を持っている様子で。
「ん? どうした、焔?」
 梓が問い掛けながら近付くと同時、ずいっと顔を出した彼の口許には金と銀のコイン。
「これは……例のコインか!」
 見て見てと言いたげに梓へと差し出したそのコインを手に取れば、金には向日葵、銀には猫の絵柄が。日差しを浴びてキラリと輝くその姿は、確かに今回の宝物。
「すごいじゃないか焔」
 ひとつひとつ絵柄をじっくり確認した後、見つけた焔の頭を撫でる梓。すると焔は嬉しそうに「キュー」と鳴くと、すりすりと心地良さそうに梓の手へと身をすり寄せる。
「わぁ、二枚もコインを見つけるなんて偉いねぇ焔」
 褒められて嬉しそうな焔の姿を見て、綾もカメラ越しでは無くしっかりと彼を見ながら言葉を紡ぐ。このコインがあれば、この後のお茶会でお菓子が追加で貰えると聞いたが。
「いいなぁ~俺まだ全然見つけられないや」
 きょろきょろと辺りを見回しながら、思い出したように綾はそう紡ぐ。まだ出口は見えないけれど、入り口からはそこそこ歩いてきたように感じる。けれどその間、歩いたり写真を撮ったりに夢中ですっかりコイン探しのことを忘れていたと今思い出す。
「もうすぐ散歩道も終わりそうだし俺には追加お菓子無しかな……」
 あとどのくらいかは具体的には分からないけれど、此処まで歩いた時間を考えるとゴールも近いだろう。今から探し始めても、見つかるのかどうかは一種の賭け。既に諦めムードで残念そうに綾は笑うが――。
「キュー」
 梓へと手渡したコインを1枚くわえると、焔はパタパタと翼を羽ばたかせ綾へと近付く。「どうしたの?」と言いたげな綾に、焔はずいっと口を近付けた。
「ほら、焔が一枚お前にやるってさ」
 彼のその行動の意味を察した梓は、助け船を出すようにそう一言。主人の言葉に焔は、こくこくと頷き更にコインを綾へと寄せた。
「……え、いいの?」
 パチパチと瞳を瞬き、焔と金色のコインを交互に見る綾。早く受け取ってと訴えるように、じいっと見つめる焔の姿に笑みを浮かべると。
「ふふ、ありがとう」
 お礼と共に金色のコインを受け取り、綾は焔の頭を優しく撫でた。
 その様子を眺める梓の口許にも、柔らかな笑みが浮かぶ。――だって、焔からコインを受け取った綾の笑顔は、そのコインに描かれた向日葵のようだったから。
 キラキラ輝く陽射しはどこまでも、どこまでも続いている。
 さあ、この先に待つ夏はどんな色?

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

イア・エエングラ
☆きらめく陽光に降る霧が
まるで水晶のかけらのよう
触れてみようと手伸べても
すこし、濡れたような心地だけ

見えぬ花の咲いたようねえ
囁く声は緑の路へと
鳴らす踵は奥までも
影を踏んで、明るいほう
それとも切り揃えきらなかった小枝のほうへ

やあ、僕探し物をしていたのだった
迷子になってやしないかしら
ねえ、レテ

夏色の子に笑いかけたら
招待状のために探しもの
木立の陰に、蕾の下に
それとも、そうな、宝物は虹の下

耀く霧のヴェールの下、かしら
めえ、夏のとっておきを見つけたなら
差し込む光が一等煌めく、心地かしら




 降り注ぐ陽射しは視界をキラキラと輝かせると同時に、そうっと天へと手を伸ばすイア・エエングラ(フラクチュア・f01543)の細い指先までも輝かせた。
 光の中、降り注ぐ霧は世界を淡く淡く覆い隠し。キラキラ輝く様子はまるで水晶の欠片のようにも思えて。触れてみようと光へとかざした手をそのまま伸ばしてみるけれど――彼の指先に何かが触れる心地は無い。
 そう、すこし濡れたような心地だけ。
 手を天から顔の前へと戻せば、ほんの少しの水の雫が指先で輝いていた。
「見えぬ花の咲いたようねえ」
 囁くように呟いた声は、緑の路へと消えていく。
 きょろきょろと辺りを見回せば、満ちる程の緑が世界を覆っている。息を吸えば降り注ぐ雫の空気に混じり、濃い緑の香りが胸に満ちる。注ぐ陽射しは暑く、服で覆われたイアの温もりの無い身体を温めるけれど。この木陰ならばそこまで苦痛では無い。
 カツリ、足を踏み出し地面を踏めば。木々のざわめきに混ざる足音。
 奥へ奥へ、進む踵の音色は迷うこと無く一定のリズムを刻み。陽射しに伸びる影を踏み、木々の合間の光が強いほうへと向かい。切り揃えきらなかった小枝のほうへ向かい。あちらこちらへと彷徨うように歩みながら、イアはこの世界を堪能する。
 そよぐ風が肌を撫でればどこからか花の香りを運んで来ていて。この奥に待つ憩いの時間に胸が弾むよう。そう、そしてその瞬間の為にも――。
「やあ、僕探し物をしていたのだった」
 思い出したように、そう紡ぐイア。
 美しき景色を散策するのも良いけれど、この中には甘い甘い宝物へのチケットが眠っているという。どこにあるのだろうか、迷子になっていないだろうか。そう想い辺りをイアが見回してみれば――。
「ねえ、レテ」
 呼びかける声。そのイアの声に、ぴくりと反応したのは葉の間からひらひらと泳ぐ赤い髪が印象的な小さな小さなフェアリーの少女。大きな深い青緑の瞳をパチパチと瞬かせて、恥ずかしそうに頬を染めて微笑んだ。
「見つかっちゃった。こんにちは、素敵な藍星さん」
 どうやらこの世界を楽しんでくれているか気になっていたらしい。挨拶をすればイアは穏やかに微笑みを返してくれる。そんな彼の様子に少しの安堵を覚え、また後でとレテは手を振り翅を羽ばたかせ去って行った。
 そんな彼女の姿を見送って。ひとつ、優しい息を零すとイアは改めて作られた世界を見回す。夏色の彼女が作り出した世界は、確かに夏色に満ちていた。輝く世界は美しい。
 そんな彼女が隠したものは――木立ちの陰か、蕾の下か、それとも。
「それとも、そうな、宝物は虹の下」
 注ぐ霧に生まれた小さな虹を見つけて、イアは藍色の瞳をひとつ瞬きながらそう語る。
 宝物は虹の下に眠る――そんな物語を聞いた気がする。だからきっと。
「耀く霧のヴェールの下、かしら」
 虹を生み出すヴェールは世界を淡く染め上げる小さな小さな水の粒。その下へと視線を下ろせば――その木々の根本にキラリと光る輝きが。そうっと手を伸ばし手にしてみれば、イアの手の中には二匹の魚が寄り添う彫刻のメダルが。光へとかざせばキラリ輝く銀色に、彼は眩しそうに瞳を細めた。
「差し込む光が一等煌めく、心地かしら」
 深い深い息と共に零される言葉。
 これは、夏のとっておきの煌めき――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アラギ・グリフォス
【花魅】


夏もあっという間よね
時は移ろい次は秋がやってくるのでしょうね

あら、楽しそうなお誘いね!
もちろん大歓迎!
魔法なき冒険も私は大好きなのよ!
それじゃ、高い視界の場所は私にお任せね!
どんなコインが見つけられるかしら?

そうね
夏が終わるだなんて信じられないほど
薔薇の香りも夏空の下では爽やかに感じる
なんて涼やかなのかしら

緑に紛れてしまったら、フィーちゃんを見失ってしまいそうね
けれど、輝く緑に踊る貴女は愛らしくて
妖精のように輝かせてるの
だから私はそっと微笑んで見守るのよ
美しい姿を見逃さないように

それじゃあ、2人が見つけたもの
同時に見せ合いましょうか?

さぁ、どんなコインが私達の掌にあるかしら、ね?


フィリーネ・リア
【花魅】


…気が付けば夏も終わりに近づいて
此処は夏の色彩が沢山で心が踊ってしまいますわ
次の秋も楽しみで浮足立ちますの

木々のアーチ
辺りが見えないまるで秘密基地への路
ねぇ、アラギちゃん
妖精さんの隠したコイン探し
魔法で探すのも芸がありませんから、ふたりで地道に探すのは如何?
ぼくとアラギちゃんの視界は違いますから色々見えますもの
低い視界はお任せ下さいまし

陽射しがご機嫌ですわ
仰ぐ空に浮かぶはきらきら
あら、薔薇の馨も致しますわね
降り注ぐ霧が涼やかですの

輝く緑にぼくも混ざれるかしら?
なんて、足音でステップ踏んで
時折あなたに手を振り微笑みましょう

ぼくが見つけたのは?
貴女が見つけたのは?

うふふ、それではせーので




 気が付けば、夏の終わりが近付いている――。
 眩い世界にフィリーネ・リア(パンドラの色彩・f31906)はきゅうっと茜の瞳を瞼で隠した。この陽射しは、夏特有の強い色。世界を輝かせ、活気に満たす不思議な色。
「此処は夏の色彩が沢山で心が踊ってしまいますわ」
 そろそろと瞼を開け、改めて瞳に映る色は濃い緑に輝く光。零れる細かな雫が光に当たれば、キラキラと輝くだけでなく小さな虹を作り出している。
 美しくも、鮮やかな色々の世界にフィリーネが瞳を輝かせ無邪気に笑えば、風に漆黒の髪を躍らせながらアラギ・グリフォス(変化を求める貪欲者・f05247)も微笑みを返す。
「夏もあっという間よね。時は移ろい次は秋がやってくるのでしょうね」
 すうっとひとつ息を吸い込んで。夏の香りを楽しみながらアラギはそう紡ぐ。熱を帯びた水に濃い緑の匂いを楽しめるのもこの季節特有。――けれど、季節は巡るものだから。
「次の秋も楽しみで浮足立ちますの」
 くすくすと楽しそうに笑いながら、フィリーネはそう返す。秋に咲き乱れる淡い紅葉色の髪をくるりと躍らせ、弾むように歩みを進めれば木漏れ日が彼女の髪へと降り注いだ。緑を黄金色に染め上げるその陽射しに、漆黒の瞳をアラギが細めれば。
「ねぇ、アラギちゃん」
 くるりと振り返り、満面の笑みで彼の名を呼ぶ小さな魔女。
「妖精さんの隠したコイン探し。魔法で探すのも芸がありませんから、ふたりで地道に探すのは如何?」
 此処は、辺りが見えない秘密基地のような路。
 だからこそ、2人で協力しすれば――きっと違うものが見つかるはず。そう、2人の目線は違うから。高い所と低い所と、協力すれば数多の世界が見えるはず。
 小さな彼女のお誘いに、アラギの顔に浮かぶのは勿論笑み。
「あら、楽しそうなお誘いね! もちろん大歓迎!」
 2人とも『魔女』ではあるけれど。だからこそ魔法を使わない時間の過ごし方だって楽しめるのだ。ひとつひとつ注意をして、何がどこにあるかを探すワクワクは魔法では味わえない時間だから。
 どんなコインが見つけられるかしら? ――くすくすと笑いながらアラギが紡げば、ひらひら歩むフィリーネの足取りも軽くなる。
「陽射しがご機嫌ですわ。仰ぐ空に浮かぶはきらきら。あら、薔薇の馨も致しますわね」
 そうっと夏色の世界に身を委ね、瞳を閉じてフィリーネはこの世界に浸る。注ぐ霧に混じる薔薇の香は華やかで瑞々しく、緑と光に溢れたこの世界に新たな色を与えてくれたよう。風が吹けばまたその香りも淡く世界に広がって、優しく穏やかに消えていく。
「そうね。夏が終わるだなんて信じられないほど」
 夏を満喫出来る創られた世界だから、時期なんて関係無いのかもしれないけれど。確かに暦のうえでは夏は終わってしまうのだ。だからこういった時間を過ごせるのも、今年はあと僅か。夏の熱を、陽射しを、香りを。折角だからたっぷり楽しもう。
 心地良い霧が身体を包めば、夏に満ちた世界でも涼やかに感じるから不思議なもの。
「輝く緑にぼくも混ざれるかしら?」
 とんっと足音でステップを刻み。くるりくるりと緑の中へと消えていくフィリーネ。彼女のひらひら揺れる緑の髪は、注ぐ陽射しに輝けば葉と同じように輝いて。
「緑に紛れてしまったら、フィーちゃんを見失ってしまいそうね」
 微笑みながら、ぽつりと零すアラギ。けれどくるりと振り返って、楽しそうに笑いながら手を振ってくれる彼女の様子を見れば――その愛らしさに、更なる笑みが口元には浮かんでしまう。
 輝く緑に踊る貴女。
 彼女は愛らしくて、妖精のように輝かせている。
 ――だから、アラギはそっと微笑んで見守るのだ。
 その美しい姿を、逃さないように。
 ひらり、ひらり。どこまでも続く緑の光路を歩む2人。あちらにこちらに視線を動かし、キラリと強く煌めく光を見つけたのはほぼ同時。それぞれ気になる場所に手を伸ばせば、そこには自然とは不釣り合いのコインが輝いていて――。
「それじゃあ、2人が見つけたもの。同時に見せ合いましょうか?」
「うふふ、それではせーので」
 声と同時に開かれる2つの手。
 フィリーネの手の中には、輝く深い緑に沢山の六芒星が散りばめられている。少し角度を変えると、まるで虹のように星の部分だけ色が変わりゆく美しいもの。
 アラギの手の中には、深く輝く鳶色に咲く美しき薔薇の刻印。
 それはまるで、辺りに揺蕩う薔薇の香りの主のようにも思えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

葬・祝
【彼岸花】☆

フェアリーランドって何でもありなんですね?
たまにはこうしてのんびりと歩くだけも、悪くありませんねぇ
くふふ、君には暑いかもしれませんけど

繋いだ手は、体温もなくひんやりと
もしかしたら、ミストより冷たいだろうか
柑橘系の爽やかな香りと涼しいミスト、ついでにカフカの和傘の影でそっと笑う
暑さに参ったり日に焼けたりなんて私はしないのに、それと分かっていても、ついつい私を傘に入れようとするこの子の気遣いが愛おしい

コインを探しながら、のんびりと歩を進める
あら、カフカ、カフカ、あれ
指で示した先には木々のアーチに引っ掛かったコインがきらり
カフカなら届くでしょう?
折角歩いてるんですもの、今日は浮きませんよ


神狩・カフカ
☆【彼岸花】

ほう、随分と洒落た招待だな
フェアリーランドってのはおれの神域みてェなもんかもな
なんて、己の社がある常秋の神域を思い浮かべながら
まあ、確かに暑いのは苦手だけどよ
散歩は好きだぜ

繋いだ手の体温は
こいつの死を実感するだけだったが
今日ばかりは心地よさを感じる
手を引かれながらも
よっと、愛用の和傘を差して
ほれ、入れよ
ちっとは日除けになるだろォよ
生前と同じ扱いは無駄だろうが変えたくはなくて
…まあ、意地みてェなもんかもしれねェが
こいつが笑ってるから良しとしよう

柑橘系の香りは馴染みがない分新鮮で
暑さも段々と気にならなくなってきた頃
おっ、よく見つけたな
手を伸ばしてコインを取って
さぁて、なにがもらえるかな




「フェアリーランドって何でもありなんですね?」
 キラキラ輝く木漏れ日と、深い深い緑の葉に覆われた小路にて。葬・祝(   ・f27942)はその不思議な世界にぱちりと淡い銀色の瞳を瞬いた。
 小さな妖精が創り出した、小さな壺の中の世界。
 けれどその世界は何処までも何処までも広がる夏色世界に思えて、ただただ彼は不思議そうに息を零した。
「ほう、随分と洒落た招待だな」
 すると、すぐ隣で聴こえる声。その声の在処を探すように視線を上げれば、共に此の地に足を下ろした神狩・カフカ(朱鴉・f22830)が楽しそうに笑みを浮かべていた。
 フェアリーランドは独自の世界を作れると聞くが、それはカフカの神域のようなものなのかと。己の社がある常秋の神域を思い出しながら、どこか納得したように彼は頷く。
 さくり。
 カフカから視線を元の景色へと戻すと、祝は一歩踏み出した。
「たまにはこうしてのんびりと歩くだけも、悪くありませんねぇ」
 夏の熱を含んだ風が祝の肌を撫でる。さらさらと揺れる艶やかな黒髪。零れる陽射しは葉が揺れ動けば微かに煌めきを変え、露出した肌に当たる霧が熱を冷ます。
「くふふ、君には暑いかもしれませんけど」
 その冷たさに少しだけ驚いたように瞳を閉じながら、身を包む熱に祝はそう紡ぎ後ろを振り返った。彼の銀色の瞳を見返して、つうっと首筋を伝う汗を感じながらカフカは。
「まあ、確かに暑いのは苦手だけどよ。散歩は好きだぜ」
 差した和傘のおかげで陽射しも凌げる。肌にまとわりつく熱だけはどうしようも無いけれど、此処は世界柄か湿気が少ないようで幾分かマシだろう。
 くるりと傘を回した後。
 どちらからともなく伸ばした手を繋げば、ひやりとした心地がカフカの掌に満ちる。
 外気との差に、知っていても一瞬びくりとするが。すぐに繋いだその冷たさが心地良さに変わっていく。――いつもは、死を実感するだけだったけれど。今この時分は心地良さのほうが上回ることに新たな発見があった。
「もしかしたら、ミストより冷たいだろうか」
 そんなカフカの様子をじっと見上げ、注ぐ霧が身体を冷やしていく心地を感じながらそう紡いだ。小さな粒子で舞い落ちる霧の心地良さを吸い込めば、胸に満ちるのは甘くも爽やかな柑橘の香り。恐らくオレンジのミストをその身で楽しんでいると――。
「ほれ、入れよ」
 カフカがその身を隠していた彼岸花の和傘を祝へと差し出した。先程まで注がれていた木漏れ日が影になり、祝の小さな身体は隠れるよう。
「ちっとは日除けになるだろォよ」
 傘の隙間から零れる陽射しを見上げながら、カフカがそう語る通り、これならば陽射しは当たらない。けれど――祝は、暑さに参ったり日に焼けたりなんてしない。そうとカフカも知っている筈なのに、ついつい彼を傘に入れてくれるその気遣いが心地良くて、愛おしくて。祝は口許に笑みを浮かべてしまう。
 そう、これはカフカにとっては意地のようなもの。生前と同じ扱いは無駄だと分かっているけれど、変えたくは無いのだと想うから。
 そしてそれは――当の本人である祝が笑っているから、きっと問題は無いのだろう。
 傘で影を生み出せば。肌を撫でる水気を含んだ風に冷たさを感じ、仄かに汗ばむ身体を冷やしていくよう。くるりと和傘を回せば降り注ぐ霧が世界へと散っていく。
 世界に満ちる、緑と柑橘の香り。
 馴染みの無い爽やかな香りに新鮮さを感じつつも、暑さにも大分慣れてきたその時。
「あら、カフカ、カフカ、あれ」
 繋いだ手を気付いて欲しいとアピールするように大きく揺らして。もう片方の手で木々のアーチを指差しながら祝が名前を呼んだ。その言葉にカフカは見回していた視線を彼へと向けた後、祝の指さす方を見れば――そこには、高い位置にキラリと輝く物が。なんだろうと開いた左目を凝らしてみれば、そこには自然物とは違う色が。
「カフカなら届くでしょう?」
 折角歩いているのだから、今日は浮かない。
 その強い意志を表すように、祝がそう紡ぐ通り。小柄な彼では背伸びしても届かないけれど、長身でアーチに近いカフカならば手を伸ばせば届く距離。
 こくりと頷いて、楽しそうに笑みを浮かべ彼が手を伸ばせば――その指先に、自然とは違う硬質な感覚が訪れる。材質上一瞬の冷たさを覚悟したが、意外なことに辺りの熱のせいかそのコインより祝の掌のほうがずっと冷たかった。
「ほら」
 伸ばした腕を下ろし、そのまま目の前の彼へと差し出すカフカ。
 彼の手の中には――彼岸花が描かれた、鈍色と深い緋色のコインが輝いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『森のお茶会』

POW   :    紅茶や珈琲といった飲み物を楽しむ。

SPD   :    お茶菓子を楽しむ。

WIZ   :    動物達と触れ合う。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●夏色透明
 木漏れ日差し込む小路を歩いてどれ程経っただろう――。
 時間の感覚さえも忘れてしまうような景色。注ぐ陽射しは風に揺らめき、零れる小さな小さな雫が身体の熱を奪ってくれたからか不快感は感じられない。
「こんにちは! 皆さん無事に来れたのね!」
 アーチを抜け、姿を現した猟兵の姿を見て、晴れやかな笑みを浮かべる小さな少女。燃えるように赤い髪はひとつにくくり、風に乗り揺れる姿は彼女の向日葵のような笑顔によく似合っている。そのまま彼女は透き通る蒼い翅を羽ばたかせ猟兵の近くを飛ぶと、どうぞこっちへと案内をしてくれた。
 花咲く野原を歩き、目の前に広がる湖の近くへと辿り着けば。そこは透き通る程に澄み渡り、空の色を映すかのように青々と。水の中に並べられた硝子のテーブルに腰掛ければ、不思議と透明な水の世界に浸る心地になるだろう。

 花の描かれたコインを手にした人には、オレンジ花の蜂蜜を練り込んだマドレーヌを。
 生き物の描かれたコインの人には生み立て卵を使ったとろとろのミニプリンを。コインと同じ生き物が、ちょこんと飾られているのがポイントだ。
 そして天体の描かれたコインの人には、お星様の形の愛らしいロリポップクッキーを。キャンディのように可愛らしいその星は、表面にマーブルのパステル色でアイシングが施されている少しだけ凝ったもの。

「飲み物もお菓子もたっぷりあるわ。夏は終わってしまうけれど、だからこそこの時間を目いっぱい楽しんでね!」
 テーブルの上には綺麗に飾られたお菓子や軽食。グラスにたっぷり淹れたお茶を片手に、挨拶を交わした後に待つのは――とびきりのひと時。
灰神楽・綾
【不死蝶】
ふぅ、ようやく到着だね
ほら梓、そんな難しい顔してないで、早く座ろうよ

テーブルの上に並ぶメニューの数々に、わぁと感嘆の声
あの子が小さな身体で一生懸命作ってくれたのかな
ひとつひとつ大事に味わって食べないとだね

まず頂いたのはレモンパイ
レモンクリームの甘酸っぱさ、メレンゲのふわふわ感
パイのサクサク感、どれも絶品
次に木漏れ日ゼリー
その美しさにまずは写真を一枚
夏の暑さを忘れさせてくれるような爽やかな味わい
おまけのマドレーヌも勿論忘れちゃいけない

うちの料理上手の梓をちらりと見て
あ~、ゼリーやレモンパイとっても美味しかったな~
また食べたいな~ なんてはっきり言葉にはせずに
作ってオーラを発してみたり


乱獅子・梓
【不死蝶】
まず目に入るのは澄み渡った青空
どこまでも高く、宇宙まで続いていそうに思える
…ここ本当にユーベルコード製なんだよな…?
フェアリーランド恐るべし、とさっきと全く同じ感想を抱く

綾に言われてハッと考えるのをやめてテーブルへ
細かいことは置いといて今はお茶会を楽しむ時間だ
コインを見つけてくれた焔にはご褒美のプリンを
自分にも、と言いたげにアピールしてくる零にはゼリーを

どれも見た目も味も一級品
俺にも作れるだろうか…なんて考えてたら
綾がわざとらしくこっちを見てくる
あれは遠回しに、今度俺に作ってとねだっている顔だ
その場は「あー、そうだな」なんてスルーしてやったが

…あとでこっそりレテに作り方を聞いてみるか




「ふぅ、ようやく到着だね」
 溢れる程の光の元へと足を踏み出し、灰神楽・綾は言葉を零す。先程までの木々が光を遮ってくれた世界と違い、何も遮るものが無い此の場は強い強い光が差し込んでいる。
 キラキラ輝く水面。硝子家具も美しく輝き、視界に広がるのはどこまでも続く夏色。
 綾は赤い眼鏡を掛けている為、その夏の眩しさからは彼の瞳を守ってくれる。けれど、何故だろう。眩しい、と感じてしまいつい眼鏡の奥の瞳を細めてしまう。
「……ここ本当にユーベルコード製なんだよな……?」
 彼に続くようにして、木々の小路から姿を現した乱獅子・梓は深い息を吐きながら想わず浮かんだ言葉を漏らしていた。
 高い高い空は澄み渡るような青色で。大きな夏の雲も穏やかに流れている。それはどこまでも高く、宇宙にまで続いていそうに梓は思えた。
 ――フェアリーランド恐るべし。
 続くように浮かぶ感想は、先程の小路でも思ったことと全く一緒。此処までの空間を創り出すフェアリーの少女は、一体どんな力を持っているのだろうか。
「ほら梓、そんな難しい顔してないで、早く座ろうよ」
 足を止め、サングラスの奥の瞳を瞬いて。呆けるように立つ彼の姿に、綾は覗き込むように顔を見つつ声を掛ける。その声に現実へと戻ってきた梓は頷くと、2人は並び湖へと近付いた。煌めく水面の水中へと足を踏み入れて、水音を立てながらセッティングされたテーブルへと腰を下ろす。
 すると、ふわりと鼻をくすぐる甘い香り。
 光に輝く硝子の上、上品な皿に盛られたお菓子の数々もまるで輝いているように美しく。その姿に、綾は思わず「わぁ」と感嘆の声を零してしまった。
「あの子が小さな身体で一生懸命作ってくれたのかな」
 ひとつひとつ大事に味わって食べないと。笑みと共にそう零しながら彼は両手を合わせると、まずは喉を潤す為にアイティーを一口。その後、香ばしい焼き色が美しいレモンパイへとフォークを伸ばす。
 さくりと響く小さな音色。一口を口に含めば、レモンクリームの甘酸っぱさと爽やかな香り、焦げ目の付いたふわふわのメレンゲの甘さが程よく合わさり、パイ生地のさくさく感との絶妙なバランスを作っている。
 美味しい、と言葉にはせずとも。次々と口に運ぶ彼の様子にその意味はしっかり伝わる。梓が口許に笑みを浮かべた時、レテがふわりと舞うとテーブルの上にマドレーヌとプリンを置いて行ってくれた。
 そのプリンを梓が手元に寄せれば、その上に乗るのはホワイトチョコで出来た猫の飾り。卵型の器の愛らしいプリンへ、匙を入れればソースのような柔らかさ。
「焔」
 名前を呼べば、肩の上の真っ赤な彼が顔を覗き込む。ひとつ撫でて、プリンをすくった匙を口許へと差し出せば、彼は嬉しそうに尾を揺らしながらパクリと食べた。
 きゅうっと瞳を閉じ、口を動かす彼の様子は嬉しそうで、思わず梓も嬉しくなってしまう。すると、逆肩に乗る雫が羨ましそうに梓の顔を覗き込んでくる。
 自分も食べたいというアピールなのだろう。いつもはクールな彼のアピールに、梓は微笑むと今度はキラキラ光に輝く木漏れ日ゼリーへと匙を入れ雫へと。
 嬉しそうに食べる2匹の仔竜。
 そんな彼等にも負けない程、梓も嬉しそう。そして、様々な種類へと手を伸ばす綾の嬉しさも満ち溢れていく程。輝く木漏れ日ゼリーは新たな写真へと収めた後、口に含めばしっかりと冷えた心地良さが広がる。甘く瑞々しい青林檎の味わいに、弾けるような炭酸が口に広がる不思議な心地。それは、夏の暑さを忘れさせてくれるような爽やかな味わいで、足元の冷たい水を揺らすように足を動かせば涼やかな水音が鳴った。
 ご褒美に貰った花蜂蜜がたっぷり練り込まれたマドレーヌをぱくりと食べながら。
「あ~、ゼリーやレモンパイとっても美味しかったな~」
 あっという間に平らげてしまったお菓子を、名残惜しむように綾は紡ぐ。
「また食べたいな~」
 ゆらゆら足を揺らしながら、ちらりと隣の梓を見ながら何かをアピールする綾。そんな彼の気持ちは、しっかり梓にも伝わっていたようで――丁度、彼も自分でも作れるだろうかと思っていたタイミングなのもあって、ついついひとつ溜息が零れてしまう。
「あー、そうだな」
 今此の場で返すのは、そっけない態度。
 聞き流すような彼の姿に、綾は変わらずちらちらと視線を送っているけれど――梓はしっかりと、こっそりとレテに作り方を聞こうと小さな少女の姿を探していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朧・ユェー
【月光】

可愛らしい妖精さん、初めまして
素敵なお茶会をお招きいただき有り難うねぇ
おやおや、直ぐに足をつけたらビックリしますよ
有り難うねぇ
小さな手を握り、横へ座り足を
冷んやりと心地よい
青空のお散歩ですね

本当に、食べ過ぎてはいけませんよ?
えぇ、木漏れ日ゼリーは美しくて食べるのが勿体ないですね

おや?一口くださるのですか?有り難うねぇ
ぱくりと食べて、ん、甘くて美味しいですね
じゃこちらは桃のムースをすくって彼女の口元に

此処の紅茶は僕の次?
それは嬉しいお言葉ですね
ではその御礼に甘い珈琲を用意しました。
妖精さんもどうですか?

えぇ、どの日も素敵な夏
でも想い出はいつまでも残ってますよ


ルーシー・ブルーベル
【月光】

レテさん、ごきげんよう
ステキなお茶会ね
素足になって湖の中へ
ひゃあ冷たい!けど心地良いな
さ!ゆぇパパ
手を差し伸べて
ふふ、青空を歩いているよう

テーブルの上はおいしそうなものが沢山
だっ、だいじょうぶよ?たぶん

最初は木漏れ日ゼリー
光に透かしてみれば何てキレイ
本当ね…でも食べちゃう
爽やか!ココを例えるならこんなお味

マンゴーショートケーキを大きく一口すくい取り
はいっ、パパ
あーん!
ルーシーも?あーん!
…ふふーおいしい

紅茶もおいしい
パパの紅茶の次位に
これルーシーにとって最大の賛辞なの
パパのコーヒーは格別よ
レテさんもぜひ!

この夏は沢山お出かけしたね
終わるのが惜しい
そうね…ずっと
全部木漏れ日の様な思い出よ




「レテさん、ごきげんよう。ステキなお茶会ね」
 夏の陽射しを浴びてキラキラと輝く赤い髪。透き通る翅を揺らしながらテーブルの間を飛び回る小さな少女を見つけて、ルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)は笑みを浮かべると共に挨拶をする。
「可愛らしい妖精さん、初めまして」
 ぽんっと少女の頭へと手を乗せて、後ろから朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)も穏やかな笑みと共に声を掛ける。お茶会へのお招きに感謝を述べれば、招待者であるレテはにっこりと頬を染めながら嬉しそうに微笑んだ。
「こんにちは、向日葵みたいなお嬢さんに月のお兄様。こちらこそ来てくれて嬉しいわ」
 どうぞゆっくりしていってねと、笑う彼女はキラキラと輝く夏の姿。注ぐ陽射しよりも眩しいその姿に、ルーシーは左目をほんの少しだけ細めた後輝く水面へと足を伸ばす。
「ひゃあ冷たい! けど心地良いな」
 足を浸ければ涼やかな水音と共に、一瞬で身体に走る冷たい心地。けれどその冷たさは、じりじりと肌を焼く夏の陽射しと相性は抜群で、すぐに心地良さが満ちていく。
「おやおや、直ぐに足をつけたらビックリしますよ」
 はしゃぐように水飛沫をあげたルーシーの姿に、くすくすと笑みを零しながらユェーも続くように水面へと足を下ろそうとすれば――。
「さ! ゆぇパパ」
 キラキラ輝く大きな瞳。小さな身体でぐぐっと目一杯手を伸ばして、大きな彼へ手を差し伸べるルーシー。その手を取って、彼も続き水の中へと足を浸す。
「ふふ、青空を歩いているよう」
 掌の温もりと、足元の心地良さ。空を映す湖を歩めば、その心地良さにルーシーは嬉しそうに笑っている。
 そんな少女の姿に穏やかな心地に満たされながら、ユェーは危険は無いかと様子を伺うように水中へと意識を向けた。けれど不思議なことに、そこはごつごつとした感触は無く。滑りやすい緑も生えていなさそうな随分と歩きやすい地面をしている。――自然とは少しだけ違う、心地良い構造。これこそ、フェアリーランドの恩恵なのだろうか。
 少女が危うく転んでしまうような危険は、恐らくない。そのことにユェーがほっとしたようにこっそり笑みを浮かべていると、ここにしようとルーシーは美しい青に囲まれたテーブルへと腰を下ろした。
 腰を下ろし、目の前に並ぶお菓子たちを見遣ればどれもこれもキラキラと輝くような美しさで、ルーシーは声にならない息を零してしまう。
「本当に、食べ過ぎてはいけませんよ?」
「だっ、だいじょうぶよ? たぶん」
 そんな彼女に、少しだけ心配そうに大人らしい注意の言葉を添えれば。はっと現実に返ったルーシーは慌てたように頷いた。
 そのまま少女は、そうっと木漏れ日のグラスへと手を伸ばす。日差しを浴びて輝く緑。そして青空を表すように透き通る青のグラデーションが美しいゼリーのグラスを、掲げて光へと透かしてみれば――。
「キレイ……」
 思わず見惚れてしまうような輝きに、ルーシーはうっとりと瞳を細める。
「えぇ、木漏れ日ゼリーは美しくて食べるのが勿体ないですね」
 彼女の掲げるゼリーの輝きを眺めながら、こくりとユェーは頷き同意を示した。頷いてくれた彼が嬉しく、笑みを浮かべながらルーシーはドキドキしつつ匙を入れ、緑と青を一緒にすくうと小さな口の中へ。
 まず広がるのは、青林檎の爽やかな味わい。そしてその後に続く微炭酸なゼリーが口の中でしゅわりと弾ければ、心地良い夏の爽やかさを強く感じた。
 頬に手を当て嬉しそうに微笑んだ少女は、匙を置くとフォークへと手を伸ばし。
「はいっ、パパ。あーん!」
 すくったふわふわ生クリームに飾られる鮮やかな黄色が美味しそうなショートケーキを、自分の口では無く隣に座るユェーへ。優しい彼女に甘い笑みを零すと、ユェーは素直に口を上げ彼女の手からケーキをぱくり。
「ん、甘くて美味しいですね」
 ほんの少し口許についてしまった生クリームを拭いながら、嬉しそうに笑みを零すユェー。お返しにと、数あるお菓子から彼が選んだのは甘い甘い桃のムース。
 2人で食べ合って、すっきりとした味わいの紅茶を楽しんで。美しき景色と水の心地良さ。満たされる気持ちに、ルーシーはふふ、と笑みを零すと。
「紅茶もおいしい。パパの紅茶の次位に」
 ぱしゃりと足元の水を跳ねさせながら、そう紡ぐ。――大好きなユェーの次、というのは、ルーシーにとっては最大の賛辞で。
「僕の次? それは嬉しいお言葉ですね」
 ユェーは笑みを零すと自身もカップへと口を付けほうっと溜息を零す。その御礼にと、用意していた甘い珈琲の入ったポットへと手を伸ばせば。丁度近くを飛んでいたレテが「ありがとう」とお礼を言いに傍へと飛んでくる。
「妖精さんもどうですか?」
「え、良いのかしら?」
「パパのコーヒーは格別よ。レテさんもぜひ!」
 もてなす側である為、少しの戸惑いをレテは見せたけれど。キラキラ瞳を輝かせて、少しだけ身を乗り出すように誘いを述べてくれる少女の姿に、レテはくすくすと嬉しそうに笑みながら、それならばと妖精用カップへと注がれた珈琲を一口。
「……美味しい! 香りも、苦さも丁度良くって、私のお菓子とも合いそうね」
 嬉しそうに笑う夏色の笑顔に、ユェーだけでなくルーシーも嬉しくなる。2人は顔を見合わせて、改めて高い高い空へと視線を向けた。
「この夏は沢山お出かけしたね」
 ――終わるのが惜しい、とルーシーは想ってしまう。
 この高い空は、外の世界へと戻ればもう見ることは出来ない夏色。段々と秋の気配を感じ移り変わりゆくのが季節と云うもの。
「えぇ、どの日も素敵な夏。でも想い出はいつまでも残ってますよ」
 瞳を閉じ、珈琲へと口を付けながらゆるりとユェーはそう零す。
 短い夏の時間。けれど、積み重なった日々の記憶はいつまでたっても色褪せない、木漏れ日のような思い出だから。
 ――ふわりと、漂う珈琲の香りが2人を包み込んでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

イア・エエングラ
まあ、まあ、夏のお庭ねえ

一歩、一歩に波紋を残し
吸い込まれてそな夏の色に
心までも染まってしまいそう
反射する光がさしこんで、ねえ、
眩しくて、恋しくて、目を細めたら

あのね、ラナ
お茶を一杯、いかがかしら
ひとりじめでは、勿体ないもの

硝子のポットへ持ち込んだレモングラスの紅茶
銀のアラザンの踊る琥珀を、揃えのカップへ
ケーキもどれも美味しそうで迷ってしまうねえ
ね、貴女はなにが、お好き?
宝物はぱちんとテーブルへ
食べる前に泳ぎだしてはしまわない?
プリンの匙でそうっと掬って

光の破片が降るようで
妖精の翅が舞うような
まるで夢のよな景色ねえ
瞬きしたら消えそうで、だから、ね、
ラナ、きっと一緒に、覚えていてね




 注ぐ陽射しを浴びて、キラキラ輝く水面。
「まあ、まあ、夏のお庭ねえ」
 そのあまりの眩さに、イア・エエングラは瞳を細めた。
 長い衣服を揺らし、そうっと足を水面へと浸ければ。ちゃぷりと響く涼しげな水音と共に広がるのは美しき均一の波紋。
 それは青を纏うイアだからこそ、今にも溶けてしまいそうな景色だった。青色が、夏の光を浴びて輝く姿に、心までも染まってしまいそうだとイアは想う。
 キラリ、反射する光がより強く輝き、イアは思わず瞳を閉じていた。それは眩しくて、恋しくて――そのまま彼は、光から逃げるように帽子で顔に影を作るとひとつのテーブルへと近付く。
「あのね、ラナ。お茶を一杯、いかがかしら」
 ひとりじめでは、勿体ないもの――穏やかに紡ぐ青年の姿が眩しくて。テーブルに座っていたラナは一瞬瞳を細めるけれど、すぐにその顔には笑顔が咲く。
「はい、もちろんです! こちらの席で良いですか?」
 目の前の椅子を示して少女が紡げば、イアは頷きを返す。椅子を動かす時も、足を踏み出し腰を下ろす時も。足元に浮かんでは消えゆくのは波紋の芸術。
 そのまま彼は、用意していた硝子ポットのレモングラスの紅茶を手にする。
 淡い色合いに踊るのは、キラキラ輝く銀のアラザン。まるで水中を心地良く漂う星粒のような美しさをたたえる紅茶を、イアは丁寧に2つの揃えのカップへと注いでくれた。
 とくとくと響く水音は、足元で奏でられる音色とはまた違った心地良さで。カップに注いだ拍子にふわりと漂うレモングラスの爽やかな香りは暑い中でも涼しさを感じるよう。
 イアが差し出してくれたカップを手にし、ラナはまず紅茶を一口。
「……美味しいです」
 微笑んで、紡ぐ少女の姿にイアは嬉しそうに笑みを返し。自身も紅茶で水分を補給しながら、視線は硝子テーブルの上に並ぶお菓子たちへ。
「ケーキもどれも美味しそうで迷ってしまうねえ。ね、貴女はなにが、お好き?」
「そうですね、どれも好きなんですけど……やっぱり季節の果物が好きなので」
 マンゴーと、桃と。ほんの少し迷った後、ラナは桃のムースへと手を伸ばした。「イアさんは?」と、にっこりと笑いながら問い掛けられれば、イアも迷うように口許に煌めく指先を当てるけれど――先程の木漏れ日小路で手に入れた、1枚の宝物をテーブルへと置いた時、夏色の妖精が運んできてくれたのは卵型の可愛らしいプリン。
 折角だからまずはこれからと、イアは微笑みながらそのプリンを手にした。カラメルの上に、ちょこんと飾られたビターチョコの2匹の魚を瞳に映すと。
「食べる前に泳ぎだしてはしまわない?」
「本当、水面が心地良いから今にも逃げ出してしまいそうです」
 匙でプリンと共に魚をすくったイアは、そのままラナと微笑み合うとぱくりと一口。広がる卵の優しい甘さ、カラメルのこんがり香ばしい香り、そしてパキリと響くチョコの音色。そのとろけるように広がる味わいが心地良くて、包まれた景色が気持ち良くて。
「まるで夢のよな景色ねえ」
 光の破片が降るようで。
 妖精の翅が舞うような。
 美しき景色は、瞬きしたら消えそうに思える程儚くも感じられて。
「ラナ、きっと一緒に、覚えていてね」
 そうっと微笑み、目の前の少女を瞳で捉えイアが紡げば。ラナはこくりと頷いた。
「……はい。この日のことは、ずうっと忘れないと思います」
 そっと瞳を閉じて、この日の景色を胸の頁に留めるようにラナは紡ぐ。
 2人の心に留めたならば、この美しき景色はきっと輝き失せないのだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

愛徳・琥瑚
常盤くん/f04783

涼しげな卓を眩しい陽が尚煌めかす
金色の眸細めてご機嫌に
ありがと!と、
友の引いてくれる席に着いたなら
裸足の爪先を心地よい水温が冷やしてく

ホント!
テーブルや椅子も水で出来てるみたい
湖に溶け込む様な硝子の其れを
コツンと鳴らしからりと笑う

目を惹いたのは
夏の陽のよなマンゴーショート
広がる甘さに頬も蕩けそう!

オススメだって外せないわ
木漏れ日ゼリーを手元に寄せて
陽に翳したなら色が卓に映るかしら
ほら見て!キラキラ!
目で楽しんだら口にも運んで
二層其々の爽やかさに眸煌かせたなら
弾む声音で美味をキミに伝えましょ

キミのは?と問わずとも
その表情が教えてくれる
素敵な夏の思い出を
キミと綴れて嬉しいわ!


神埜・常盤
琥瑚さん/f23161

ふふ、涼し気だねェ
常は苦手な陽射しだって
今日は心地好い

彼女の椅子を引いたあと
自身も席に腰かけて
あァ、澄んだ水に揺蕩っているようだ
こういう眺めを楽しみながら
茶会に興じるのも良いね

手を伸ばすのはレモンパイ
酸味が夏の火照りを吹き飛ばしてくれる
さっぱりしてて、美味しいなァ

夏陽の如き菓子に手を伸ばす友には
君らしいねと笑い掛け

木漏れ日のゼリーも綺麗だねェ
森と湖を映したような色合い
どんな味なんだろう
美味しいかい、琥瑚さん

マカロンを頬張れば
愛すべき薔薇の馨に包まれて
思わずこころ跳ねるよう

去り行く夏は惜しいけど
向日葵のような君を見れば
移ろう季節の寂しさなど飛んで行く
一緒に来れてよかった




 注ぐ陽射しは強い夏色を宿し、光を浴びた水面はキラキラと光を放つ。
「ふふ、涼し気だねェ」
 傍らから零れた声に、その眩さに思わず金色の瞳を細めていた愛徳・琥瑚(ひらひら・f23161)ははっとしたように視線を送った。
 声の主の顔が見えるよう、顔を上げれば光は更に強く感じ。視界に映る神埜・常盤(宵色ガイヤルド・f04783)の琥珀色の髪はまるで金色のように輝きを纏っている。
 光にか、常盤にか。瞳を細める琥瑚の姿に笑みを浮かべると、すうっと常盤は息を吸い込んだ。いつもは強い陽射しは苦手だと感じるけれど、不思議なことに今日は心地良い。
 世界的に湿気の強くはない心地良い暑さだからだろうか。
 水気を含んだ空気が涼しく感じるからだろうか。
 ――それとも、この光を味わえるのはもう最後だからだろうか。
 足元を流れる涼やかな水のおかげか、この暑さの中佇んでいても汗が伝うことは無い。彼は水中に並ぶ硝子テーブルのひとつへと近付くと、紳士的に椅子を引いた。
「ありがと!」
 そのまま笑顔を琥瑚に向けるから、彼女はその行動の意味を察すると満面の笑みで席へと腰を下ろす。軽い足取りで水中を歩めば軽やかなリズムで波紋が生まれ、彼女の結いあげた2つの髪も楽しげに揺れていた。
 彼女が着席したのを確認して、常盤も腰を下ろせば――透き通る硝子製のテーブルと椅子は、足元を浸した水面の様子もしっかりと見えていて。
「あァ、澄んだ水に揺蕩っているようだ」
 ゆるりと瞳を細め、そう紡げば。ぐぐっと背伸びをしながら琥瑚も大きく頷いた。
「ホント! テーブルや椅子も水で出来てるみたい」
 透き通るテーブルの下、蒼の裾から覗く足をゆるりと動かし水を感じながら。琥瑚はコツンとテーブルの表面を軽く拳で叩き音色を奏でる。その音もまた心地良く、常盤は笑みを浮かべた。――こういう眺めを楽しみながら、茶会に興じるのも良い。
 透き通るテーブルの上に並ぶお菓子は色とりどり、鮮やかでどれも食べて欲しいと訴えているかのよう。宝石のように輝くその中から、常盤が手を真っ先に伸ばしたのはレモンパイ。ふわふわのメレンゲが焦げ目を纏う姿も美味しそうだったが、いざ口にすればさくさくとした生地と酸味が心地良い味わいで。
「さっぱりしてて、美味しいなァ」
 口の中に広がる味わいを堪能するように瞳を閉じて、心地良さそうに微笑めば。琥瑚は数ある中から夏の陽のようなマンゴーのショートケーキをぱくり。
「広がる甘さに頬も蕩けそう!」
 とろけるようなマンゴーの甘さを包み込むのは、控えめな甘さのふわふわクリーム。口の中で蕩けるようなその甘さに、思わず頬を押さえ歓声を上げてしまう。
 「君らしいね」と常盤が紡げば、2人は改めて瞳を交わしどちらからともなく笑みを零し合う。――そのまま次に琥瑚が手を伸ばしたのは、木漏れ日のゼリー。
 彼女はグラスを持ち上げると、降り注ぐ陽射しにその緑と青の色合いが美しいゼリーをかざしてみる。
「ほら見て! キラキラ!」
 彼女がそう紡ぐ通り、光を浴びれば緑色と青色はキラキラと輝いて。その光の色は透き通るテーブルへと映り尚強く煌めくのだ。
 その輝きを見惚れるように見つめる常盤。さくりとマカロンの音色響かせ、その輝きへと視線を送りながら――木漏れ日のお味を尋ねれば、応えるように琥瑚は匙を落とす。
「美味しいわ!」
 口に広がる爽やかな青林檎のお味。包み込むようなソーダの味わいは少しだけ刺激的で、その味に合わさるように口に広がる炭酸がまた心地良い。
 輝くゼリーに負けぬ程瞳を輝かす琥瑚の姿を見れば、常盤はどこか嬉しそうに微笑むと頷きを返し――手にしていたマカロンを、再び口へと運んだ。
 ふわりと広がる薔薇の香は、口の中だけでなく一瞬だけ常盤の周りへと。
 心地良い音色を奏でながら、マカロンを口にする彼をじっと見れば。琥瑚は仄かに頬を染め嬉しそうにまた笑みを深める。「キミのは?」と感想を問おうと思ったけれど、もう聞く必要も無いだろう。だって、言葉にせずともその表情が教えてくれているから。
 ふわりと吹く風。
 熱を含みつつも水気を含んだ夏風は心地良く、2人の肌を優しく撫でていく。するとマカロンから香る薔薇の香が、一瞬だけ琥瑚の鼻をくすぐった気がした。
 すんっと、一瞬鼻を鳴らし。笑むと共にまた匙を口へと運ぶ彼女。
 去りゆく夏は惜しいけれど、向日葵のような琥瑚の姿を見れば。常盤の心に宿った、移ろう季節の寂しさなど飛んでいく。
 ――一緒に来れてよかった。
 小さな声で零す常盤。その声に琥瑚は顔を上げると、髪を弾ませ大きく頷く。
「素敵な夏の思い出を、キミと綴れて嬉しいわ!」
 今年の、夏のひと時を――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱赫七・カムイ
⛩神櫻

美しく長閑な場所だね、サヨ
手を繋いでいれば、水も怖くはないだろう
吹き抜ける風も心地いい…其れに斯様なご馳走まである
可憐な妖精の君に感謝しなくてはいけないね

美味しそうに甘味を頬張る姿は可愛らしいと笑みが咲いてやまない
木漏れ日のゼリーだったか
爽やかで優しくて美味しいよ
食べてみる?
小鳥のように口をあけたきみに一口おすそ分け
美味しい?
サヨがわけてくれた桃のムースも実に美味
いくらでも食べられそうだ
くらふとこーら、というのは初めてだ

初めての夏は彩やかで華やかな倖を沢山得られた
ひととせをきみと巡るのは倖であるよ
ずっとこうしていたかったんだ

一緒にいてくれる?─これからも
薬指の誓いに落とされた唇に愛が咲く


誘名・櫻宵
🌸神櫻

夏の日差しに緑の梢に──噫、私はこういう夏も好きよ!
ぱしゃりと足先は水と戯れて
指先は愛しい神と結ばれる
この深さならちいとも怖くはないけれどカムイに甘えたいから怖がるふりをする

うふふ
心もお腹も満たされる──ええ、感謝しなければ
甘いものは幾らでも食べられるわ
薔薇のマカロンを味わって、ショートケーキもぺろりと平らげて桃のムースをぱくりと頬張る
カムイのは木漏れ日ゼリー?
ひとくち、あなたの夏をわけてと強請る
ふふ、しゅわりと美味しいわ
私の桃もあげる

私もこーら、初めてなの
乾杯よ!

勿論よ、カムイ
幸せになりましょう
巡るひととせをあなたと共に─これからも
ずっと一緒に
神の左手薬指に結んだ誓いに、キスをひとつ




 キラキラ注ぐ夏の陽射しに、緑の梢――。
「美しく長閑な場所だね、サヨ」
「噫、私はこういう夏も好きよ!」
 春咲く瞳を輝かせ、誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)は満面の笑みを浮かべる。そんな彼へと微笑みかける朱赫七・カムイ(厄する約倖・f30062)もまた、彼の笑顔が眩しくてついつい笑みを深めてしまう。
 水が怖い櫻宵のことを考えると、水に浸らぬテーブルが良いかもしれないけれど。折角だから透き通る世界を楽しみたい気持ちもある。
 だから――カムイは櫻宵の手へと自身の手を伸ばすと、互いの指を絡め合った。そうすれば、水も怖くないだろうと思ったから。
 その熱に、櫻宵は嬉しそうに笑みを浮かべる。だって、心配する彼の優しさが分かるから。――本当は、この程度の深さならば怖くなど無いのだけれど。折角だからカムイに甘えたいと思い、きゅうっと絡めた指へと力を込めれば互いに水の中へと足を踏み出した。
 パシャリと響く水の音。
 飛沫が散れば波紋が所々で生まれ、一定の時間で消えていく。
 並ぶ硝子テーブルへと腰を下ろせば、透き通る世界に身を浸すよう。輝き、水に満ちた夏色の世界にて――楽しむべきは今回のメインであるお茶会だろう。
 長い爪が輝く指先を上品に伸ばして、櫻宵はまずは薔薇のマカロンをさくりと一口。桜が身近ではあるけれど、高貴な薔薇の香りも櫻宵にはよく似合っていた。甘いショートケーキに柔らかなムース。次々と食べる櫻宵の表情は、とろけるように幸せそう。
 だって、彼は甘い物が大好きだから。
 この景色の中、甘い物が食べられる。そんな心もお腹も満たされるお誘いに、感謝をしなければと紡ぐ彼の姿はまた愛らしく感じ。カムイは眺めているだけでも胸が満ちるような心地に包まれる。
 けれど、折角だからと。カムイが手を伸ばしたのはお勧めの木漏れ日ゼリー。光を浴びてキラキラと輝くゼリーは美しく、まるで宝石のように輝いている。匙を落とし、緑と青を一緒にすくい口へと含めば――青林檎の爽やかさと共に、弾けるソーダが広がった。
「カムイのは木漏れ日ゼリー?」
「爽やかで優しくて美味しいよ。食べてみる?」
 匙を差し出して、興味深く見つめる彼へと優しく差し出すカムイ。
 その匙の上の欠片の煌めきを映す櫻宵の瞳も、宝石のように輝きを増した気がして。
「ひとくち、あなたの夏をわけて」
 ほんの少し高鳴る胸の音を感じながら、強請るように顔を近付ける彼へとカムイは匙を差し出した。ぱくりと上品に閉じられる唇。一瞬で広がるその爽やかな夏の味わいに、櫻宵は満足そうに笑みを深める。
「ふふ、しゅわりと美味しいわ」
 口の中でゼリーが弾ける不思議な心地に咲き誇る笑み。その笑みを見ればカムイはまた幸せが満ちて――そんな彼へと櫻宵が桃のムースを差し出してくれるから、嬉しそうにカムイは一口分けて貰う。
 共に甘味を楽しんで、夏色の世界を楽しんで。
 乾いた喉を潤すお味は、紅茶では無くしゅわりと弾けるクラフトコーラ。
 グラスの中で、氷と共にぷくぷくと泡を浮かべ続けるそれは、顔へと近付ければスパイシーな香りが2人の鼻をくすぐった。 
「くらふとこーら、というのは初めてだ」
「私もこーら、初めてなの。乾杯よ!」
 どんな味なのだろうかと、少しの恐怖と大きな好奇心で満たされた2人は。グラスを合わせるカチンと涼やかな音色を響かせて、一口飲んでみる。
 しゅわしゅわとした炭酸が舌を刺激すると共に、広がるスパイスは香り以上に口と鼻に抜ける爽やかさ。甘さが控えめだからか、スパイスが効いているにも関わらず意外としつこくなく飲みやすい夏の味がした。
 夏の暑さも、この夏だからこそ味わえる爽やかな心地良さも。全てカムイにとっては初めての経験で――彩やかで華やかな倖を沢山得られたと思う。
「ひととせをきみと巡るのは倖であるよ。ずっとこうしていたかったんだ」
 グラスから唇を離し、その口許に笑みを零すと傍らの彼の掌へとそっと自身の手を重ねながらそう語る。普段より熱い重なる手の体温。それすらも心地良いと想えるのは、今まで紡ぎ重ねた思い出のおかげなのだろうか。
「一緒にいてくれる? ――これからも」
 そっと瞳を覗き込めば、重なる桜霞と朱砂の色。
 彼の言葉に櫻宵は瞳を蕩けさせると、勿論だと頷き彼の名を呼んだ。
「巡るひととせをあなたと共に――これからも」
 言葉を重ねて、そっと重ねられた手を取って。自身の顔へと近付ければ、その左手薬指に結んだ誓いに櫻宵は口付けを送る。
 一瞬触れるその熱は、赤の組紐により分からなかったけれど。
 確かに愛が咲いたのをカムイは感じた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

葬・祝
【彼岸花】

なかなか涼し気な場所ですねぇ
ふたり座って、ひと時の休息を
マドレーヌをひと口、柑橘の香りと蜂蜜の甘さが丁度良い

くふふ、君にしてはいっぱい歩きましたものねぇ、良く頑張りました
いいこいいこ、と頭を撫でるのは慣れた様子
不服そうな顔を見ると、ぱちりと瞬きひとつ
悪戯めいた笑みを浮かべた

あら、この労りではご不満でした?
なら、此方で
さっきまで繋いでいたカフカの手を取って、ちゅ、と指先に口付けひとつ
愛しい私のカフカ、お疲れさまでした
とびきりの甘い声と優しい眼差しは半ば無意識
この子を想うと自然とこうなるのだから不思議だ
嗚呼ほら、真っ赤で愛らしい

ふふ、見なかったことにしておいて差し上げます
機嫌良く笑った


神狩・カフカ
【彼岸花】

やっと一息吐けるってわけか
腰を落ち着ければ自然と心が安らぐ
気持ちいいとこだなァ
マドレーヌは疲れた身体にほどよい甘さで口元が綻ぶ

最近は部屋にこもって原稿書いてたからなァ
元から体力がないことには目を瞑る
頭に伸びる手に一瞬呆気に取られるが
すぐに不服そうにじとっとした視線を向けて
お前なァ…いつまで子ども扱いする気だ?
ここが外だというのも気恥ずかしい

わかってるくせによく言うぜ…って、
取られた手の指先を
自然と目で追ってしまい
何をされたのか自覚をしてしまえば
先程の行為との落差に頬が熱くなる

ちがっ…!これはただ日差しが暑いだけで…
ふいと視線を反らすも
こいつにはお見通しだろう
誤魔化すようにお茶を呷った




 透き通る椅子へとどさりと腰を下ろし、神狩・カフカはふうっと溜息を零す。
「やっと一息吐けるってわけか」
 歩んできた道程に少しの疲労感が身体に宿る。木々により少しは和らいでいたとはいえ、陽射しを浴び続けていた肌は少しだけ熱を持っているようにも感じた。
 伸びをして景色に身を預けるカフカ。注ぐ陽射しは暑いけれど、水気を含んだ風が肌を撫でる心地は悪くはない。足元を満たす水面はキラキラと輝き、夏の色を宿していて。
「気持ちいいとこだなァ」
「なかなか涼し気な場所ですねぇ」
 彼の言葉に葬・祝はこくりと頷き、妖精のレテが運んできてくれたマドレーヌを手に取り口へと運ぶ。温められて熱々のマドレーヌからはふわりと柑橘の香りが広がり、口に含めば柑橘と共に花蜂蜜の甘さが一瞬で広がり程よい甘さが祝を満たす。
 口を動かす祝の姿をちらりと見た後、疲れた身体を解すように腕を回すカフカ。
「最近は部屋にこもって原稿書いてたからなァ」
 そう考えると、こうして陽射しを長時間浴びるのも随分と久々な気がする。開放感と共に、鈍った身体には少しだけ酷だっただろうか。再び零れる溜息ひとつ。――元から体力が無いということは敢えて口にはせずに、ゆるゆると彼の金色の瞳が瞼で隠れる。
「くふふ、君にしてはいっぱい歩きましたものねぇ、良く頑張りました」
 そんなお疲れな彼の様子に、笑みを零すと祝は――隣の彼へと手を伸ばし、その鮮やかな頭へと手を乗せ撫でた。
 いいこいいこ。
 それは見目に似合わぬすっかり慣れた手付きで。その熱に、重みに。カフカは呆気に取られたように瞳を開き、左目をパチリと瞬くが――次にその顔に浮かぶのは不服そうな表情。そして目の前にある銀色の瞳を、じっと見つめる。
「お前なァ……いつまで子ども扱いする気だ?」
 20を超えたカフカは、人間としてはすっかり大人な部類に入る。身長も体格もしっかりとしている彼が、このように子供扱いされることは気恥ずかしさが満ちてくる。此処が外だと云うことで、その感覚は猶更だった。
 けれど祝は気にした様子もなく、彼の瞳を見返して不思議そうに瞳をひとつ瞬く。
「あら、この労りではご不満でした?」
 言葉と共に零れるのは悪戯めいた笑み。彼のその言葉に、わかってるくせにとカフカは溜息交じりに零すけれど――するりと頭から離れ、カフカの手を取る祝の様子に一瞬不思議そうに視線を向ける。
 大きな彼の指先を持ち、そうっと自分の顔へと近付ける祝。
 距離が近くなり、落とされるのは――カフカの指先へと送られる口付け。
「愛しい私のカフカ、お疲れさまでした」
 零れる言葉はどこまでも甘い声。そして蕩けるような銀色の瞳はほとんど無意識で、祝にとってはカフカを――この子を想うと自然とこうなってしまう姿。
 その一瞬触れた熱に。柔らかさに。そして甘い声と瞳に。カフカは一連の動作を目で追ってはいたけれど、頭で理解するとみるみる頬を染めていく。
 頭を撫でられた子供扱いからの、この格差。それを実感すれば、自分の顔が熱を持っていくことは分かるが止められはしない。
「嗚呼ほら、真っ赤で愛らしい」
「ちがっ……! これはただ日差しが暑いだけで……」
 すぐにいつもの子供扱いを零す祝。悪戯混じりの笑みで零されるその言葉に、咄嗟にカフカは否定しつつ視線を逸らすが――。
(「こいつにはお見通しだろう」)
 それは、分かっている。
 けれど否定せずにはいられなくて、誤魔化すようにグラスに注がれたアイスティーで喉を潤すと同時に身体を冷やす。
 こくりと鳴る喉を通る音。
 広がる爽やかな香りと、暑い世界を歩いていた身体に沁み渡る冷たい心地。
 そっぽを向いたまま、ほっとしたように小さな吐息を零すカフカのそんな姿を見て。祝はまた笑みを深めると。
「ふふ、見なかったことにしておいて差し上げます」
 そんな風にご機嫌なリズムで紡がれる言葉。
 そのまま彼は食べ掛けのマドレーヌへと手を伸ばし――この夏の甘味を楽しんだ。
 ――後は水気を含んだこの風が、段々と体温を奪ってくれることだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年08月29日


挿絵イラスト