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せせらぎの迷い子たち

#アルダワ魔法学園 #戦後 #精霊の森 #挿絵

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●さまよう精霊獣
 あるじ……あるじ……何処へ行ったの?
 さびしいよ。かなしいよ。
 だいすきな主、ねえ、帰ってきて。
 ボクたち、いっぱい探したんだよ。
 お願いだから……。

●グリモアベース
「アルダワ魔法学園の世界にある伝説【天空樹の迷宮】をご存知だろうか」
 地図を広げながらクック・ルウは説明を始めた。
 ツツツ、と黒い指をなぞらせて、中原地方の下にある⑥番を割り振られた場所を示す。
「そう……この巨大な森のある場所だ」
 島一つを覆うような大森林。精霊の森と呼ばれ、実際に精霊の力が強い森である。
 大森林の中央にそびえる巨木天空樹には、かつてアルダワに匹敵する広大なダンジョンが存在したという。

「近頃、伝説であった天空樹の迷宮への入り口が発見されてな」

 それはこの世界にとって驚くべき話だった。
 ゆえに冒険者たちは、今こぞってこのダンジョンへ向かっているらしい。
「けれどそこには災魔が現れる。当然、冒険者達では太刀打ちできない相手だ。皆には先にその場へ行ってもらい、災魔を退けてほしい」

 辺りの背景は変化して、青く澄んだ空と大樹の景色を見せた。
 青々とした樹木が織り成す道はまるで山のようである。
 枝葉が木陰をつくり、涼し気な気配が伺えるだろうか。
 どこからか滴るのだろうか、視線をやれば滔々と水が流れている。
 それは幹の隙間を伝ってゆるやかな川となっていた。

「天空樹のダンジョンはな、上へ上へと目指す造りになっている。この場所を登っていけば、人の気配に惹かれて災魔が集まってくるはずだ。水遊びをするのもいいかもしれない……のんびりと楽しんでいる姿を見せた方が、向こうの警戒心も薄れるのではないかな」
 あれはおそらく人に慣れた獣のようであるから。そう言葉を添えて。
 グリモアが道を拓く。
 聞こえてくるのは、葉擦れとせせらぎの音だろう。


鍵森
 舞台はアルダワ【天空樹の迷宮】。
 全2章となります。

●構成
 1章:冒険。
 天空樹を流れる川を進みます。

 2章:集団戦。
 『ベスティア・ザッフィーロ』との戦いになります。
 帰らぬ主を探して彷徨う、使役されていた精霊獣のなれの果て。
 彼らをどのように骸の海へと送るのかは皆様にお任せします。

 ここまでお目通しありがとうございます。
 皆様のご参加お待ちしております。
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第1章 冒険 『せせらぎと共に』

POW   :    泳いで先に進む

SPD   :    歩いて先に進む

WIZ   :    濡れないように先に進む

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 この場所は巨大な天空樹を少し昇ったところにあるらしい。
 木の幹にできたくぼみを、澄んだ水が流れていく。
 うろにはたっぷりと水が溜まっていて、まるで池のよう。
 耳を澄ませれば、ぱしゃん。と何かが跳ねる小さな音もするだろうか。
 ここにはどうやら魚も生息しているようだ。

 初夏の日差しを浴びながら、水遊びめいた道中になるだろうか。
 休憩をするなら、腰掛ける枝や蔓には困らないだろう。
ラファエラ・エヴァンジェリスタ
天空樹…というのか
こういう景色は初めて見た
圧巻だけど…森林浴に良さそう

愛馬Tenebrarumに騎乗してのんびり進む
テネブレ、水は気持ち良い?
ふふ、良かったねえ
愛馬の首を撫でながら、語り掛ける

陽射しも水のせせらぎも心地好い
…嗚呼、それに、水の煌めきのなんて気持ち良さそうなこと
少し悩んで、馬から降りる
テネブレ、誰にも内緒だよ
靴を脱いで、持ち上げた裾がなお濡れるのも構わずに愛馬の隣を歩く
わざと水飛沫を跳ねさせてみたり、魚の影を数歩追ってみたり
楽しいな

…ねえ、おまえ、昔よく行った避暑地を覚えている?
…私は此処の方が、今の方が楽しいな
おまえはどう?

水着を仕立ててまた来たいね
次は日傘も忘れずに



 それは天穹へと続く道のようであった。
 愛馬の背に揺られながら、ラファエラ・エヴァンジェリスタ(貴腐の薔薇・f32871)はそっと首を傾ぐ。
「天空樹……というのか。こういう景色は初めて見た」
 あまりにも巨大な樹木であるが故に幹は地面のようであったし、そこへ苔や草木が生えだしているから、まるで森のようだ。眺めていると、緑にはこれほどの種類があるのかと思わされる。
「圧巻だけど……森林浴に良さそう」
 蔓が絡まりつくった自然のアーチを抜ければ、しばらくなだらかな坂道が続いた。
 のんびり進もう。と声に出さずともテネブレはそうしてくれる。
「こうした遠乗りも良いものだね」
 風が枝葉をゆらす度、降り注ぐ木漏れ日がちらちらと形を変え、影と光が遊ぶ。
 なんとも良い陽気、聞こえてくるせせらぎの音も心地好い。
 景色を眺める内に、その形の良い唇もほころんで。
「テネブレ、水は気持ち良い?」
 川の浅いところへと踏み入れたテネブレが、ぱしゃ、ぱしゃ、水を跳ねる音を立てた。
 その足音を聞けば、気持ちも伝わってくる。
「ふふ、良かったねえ」
 やさしく愛馬の首を撫でてやりながら、ラファエラの声も柔らかい響きを帯びるのだ。
 川の流れに視線をやれば、さんさんと降り注ぐ陽光に水は煌めいて美しい。
 ゆるやかなその流れに己を預けてみたいと、思わずにはいられなくて。
 ……嗚呼。
 悩ましげに吐息をついてしまう。心は揺れて、やがて。
「テネブレ、誰にも内緒だよ」
 細い人差し指を唇に当てて、ささやく。
 足を止めた馬から降り、ラファエラはゆっくりと靴を脱いだ。
 幼い子供の頃にもこうした振る舞いをできただろうか。はしたないと嗜めるものもいない。ここには他に人影もなく見咎めるものなどいないだろうけれど。自分を知る誰かが見れば、驚くだろうか。なんて。
「ふふ」
 スカートの裾を持ち上げて、足の先から水に入ればひんやりとした感触。
 流れていく水はすこし擽ったくて、けれども気持ちがいい。
「行こう、テネブレ」
 青空に近いこの場所で、陽を浴びながら、歩こう。
 それはなんだか胸が弾むような喜びを覚えるような行為だ。
「……ねえ、おまえ、昔よく行った避暑地を覚えている?」
 つま先立てた足先で水を掬うように蹴って、裾が濡れるのもかまわず、わざと飛沫を飛ばしてみたりする。
「……私は此処の方が、今の方が楽しいな」
 今度はするりと泳いでいく魚の影に、一歩、二歩、三歩、近づいてみたりして、思うままに戯れを。
「おまえはどう?」
 ささやかにはしゃぐ彼女を見守るテネブレは、穏やかに頭を寄せてくる。
 その表情を見れば言葉などいらないだろう。ラファエラはヴエールに覆われた双眸をやわく細めた。

 水着を仕立ててまた来たいね。
 次は日傘も忘れずに。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
伝説の迷宮ときたか。正直、奥の方になにがあるのか多少気になるところではあるが
今回は探索ではなくやるべきことをやるとしよう

……なんて、敵がいないのに身構えていても仕方ない。今は気楽にやらせてもらおう
魚がいるって話だし、折角なら軽く魚釣りでもさせてもらおうか
釣り竿は持ち込んで、餌は迷宮内で虫でも探してみよう

焦ることなくのんびりと釣り糸を垂らして魚がかかるのを待つとしよう
釣れた魚は軽く様子を確かめてそのまま逃がす。この後戦いがある事を考えると、持っていく訳にもいかないし

いやはや、この大自然の中で釣りをするってのも良いものだ
だが、目的を忘れちゃいけない。釣り場を変更がてら時々先に進んでいくとしよう



「伝説の迷宮ときたか」
 夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)はさっと視線を巡らせて、明るい日差しを浴びる木々の中を歩き出す。あまりにも巨大な樹木は、その幹や枝の上にも森を作っているようだった。
 入り組んだ茂みの奥や突き当りを探れば、探せばなにか部屋や道が見つかるような気配がする。
 そびえ立つ天空樹の迷宮とは何の為にあるのか、何処かへと至る場所であるのか。
(正直、奥の方になにがあるのか多少気になるところではあるが)
 今回の目的は探索ではない、そう心得ている。
 せせらぎの音を頼りに足を向ければ、すぐに水の流れる場所へと着いた。これを更に辿って上へ登るのだったなと依頼の内容を再度確認しながら。軍学校で習ったように姿勢を正し、足を踏み出して。
「……なんて、敵がいないのに身構えていても仕方ない」
 今はやるべきことをやろう。と、肩の力を抜いた。
 こうしてのどかな処へ来たのだから、気楽にやらせてもらおう。
「用意してきたこれもあることだし」
 そう呟きながら取り出したのは自前の釣り竿だ。
「魚がいるって話だし、折角なら軽く魚釣りでもさせてもらおうか」
 釣り場によさそうな場所を目指して歩き出せば、川の中に群れをなす稚魚がサッと逃げていくのが見えた。それなら成魚は向こうの方だろうか、と水音の大きな方へいくとちょっとした滝がある。
 なるべく足音も立てずに静かに近寄っていきながら、魚影を探す。
 ここは良さそうだ。
 少し引き返して、こなれた様子で餌となる虫を探したなら、自然が豊富なこの場所には自生する生き物も多いようだった。魚や虫の他にも、どこかに鳥や獣もいるのだろう。
「さて……なにが釣れるか」
 餌を取り付け滝壺へと釣り糸を垂らしたら、じっくりと待つ。
 魚がかかるまで、焦らないことがコツだ。
 のんびりと風景に溶け込むように、あたりの音に耳を澄ませて自然体となりながら佇む。
 そうすれば――手応えが来る。浮きが沈んで竿がしなるのへ呼吸を合わせて竿を引いた。
「おお、悪くない手応えだ……よし」
 釣り上げた魚が水飛沫を上げて水から上がる。なかなかのサイズの魚だ。
 満足気に眺め。どうやら普通の川魚らしい、と軽く確認をしてから丁寧に針を取って逃した。
 この後戦いがある事を考えると、持っていく訳にもいかない。
「いやはや、この大自然の中で釣りをするってのも良いものだ」
 逃した魚が慌てて泳ぎ去っていくのを見送り、鏡介はさらに上流の方へ登りだす。
 ここへ来た目的を果たすため、釣り場を変えつつ時々移動をしながら進むこととした。

 彼のそうしたのんびりした姿に、精霊獣たちもつられるのだろう。
 近づく気配に息を潜めて、草葉の陰から宝石のような青い瞳がそうっと覗いている。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニーナ・アーベントロート
リュカくん(f04228)と

わぁ…なんか癒されるね
涼しくて気持ちいい

あたしも濡れていい服で来たから泳いじゃおーっと
動く度に跳ねる水飛沫が光できらきらして綺麗
…わわっ! リュカくん、大丈夫ー?
迷いなく手を差し伸べたのは
弟を持つ姉としての条件反射かも

守ってくれるの? 頼もしいなぁ
でもあたしだって一人前の猟兵だからね
何かあったときは、ふたりで頑張ろう
せせらぎの音と語らいが心地好く響く中
日常を忘れてゆったり歩く

ほんとだ。お魚だ…!
あ、あっちにも沢山いるよ、見て見て
手を引くように先導してたら
小さな頃に戻ったような気持ち

…そうだ、この先に災魔がいるんだよね
行楽気分ではしゃいでいたけど、気を引き締めなきゃ


リュカ・ラス
ニーナ殿(f03448)とご一緒します

「きれいな森ですね」
水も空気もキレイです。

濡れても良い服と滑りにくい靴で来たので、水の中を進んで行っても気持ち良さそうです。
水飛沫もキラキラしてますね。
「ニーナ殿、遠くに行かないよう気を付けてくださ……わッ!!!」(ばしゃんと転ぶ)

…泳いでも気持ち良さそうです。(服を絞りながら)
でも、泳いでいて何かあってはニーナ殿をお守り出来ないので。
進むのは歩きましょう。
(女性は守るものだって、教わったので。)
「あ、ニーナ殿、あそこに魚がいますよ!」(指差ながら)

はっ、普通にピクニックみたいな気分になってしまいました。
でも、この森は災魔が出る雰囲気ではない気がします。



 明るい陽光を浴びた草木はまるで輝いているようだった。
 木漏れ日に照る灰色の髪をなびかせて、ニーナ・アーベントロート(赫の女王・f03448)は辺りを見回し表情を和らげる。
「わぁ……なんか癒されるね。涼しくて気持ちいい」
 ひんやりとした水の気配が漂う中、伸びやかな自然に囲まれて心にも爽やかなものが吹いてくるよう。
 隣のリュカ・ラス(ドラゴニアンの剣豪・f04228)も頷きながら、琥珀色の瞳を気持ちよさそうに和ませた。
 水も空気も、なんと澄んでいるのだろう。
「きれいな森ですね」
 そう呟いてから、きゅっと表情を引き締める。小さな少年は「女性は守るもの」という教えをしっかりと思い出していた。
 ニーナ殿は年上であるけれど、私がしっかりとお守りするんだ。
 そのような決意を胸に秘めているのであるから、歩く姿もすこし勇ましい。
「この辺りはちょっと深そうですね」
 天空樹の幹を伝う川はいくつも支流を作っていて、枝を這うような沢や、溢れるような水溜りと様々だった。
 どの道を選ぶのも自分達次第だと委ねられたのならば。
「濡れても良い服と滑りにくい靴で来たので、水の中を進んで行っても気持ち良さそうです」
「あたしも濡れていい服で来たから泳いじゃおーっと」
 と、程よい深さのところを選んで水に入っていくと、なめらかな水の感触は、心をはしゃがせる。
 動くたびに跳ねる水飛沫が、差し込む光に煌めいて。
「きらきらして綺麗……ほら」
 ざぶん、と大きく前へ進んでから後ろへ振り向き、両手で掬った水を周りに散らして、ニーナは楽しそうに笑った。
 そうすると降り落ちる雫が、虹色にかがやくのだ。
「わあ……」
「虹が見えた、リュカくん?」
「はい。キラキラしてました」
 こくん、と頷き。リュカはニーナの後を追う。
「ニーナ殿、遠くに行かないよう気を付けてくださ……わッ!!!」
「わわっ! リュカくん、大丈夫ー?」
 慌てたせいか足を滑らせ転んだリュカへ、ニーナは迷いなく手を差し伸べた。
 弟を持つ姉としての条件反射だろうか、しっかり手を握り崩れた体勢を立て直してあげる。

「……泳いでも気持ちよさそうですが」
 濡れた服を絞りながら、リュカはしっかりせねばと背筋を伸ばした。
「でも、泳いでいて何かあってはニーナ殿をお守り出来ませんね」
「守ってくれるの? 頼もしいなぁ」
 小さな少年の想いに微笑んで。
 けれどもお姉さんにだってゆずれないものはある。
「でもあたしだって一人前の猟兵だからね。何かあったときは、ふたりで頑張ろう」
 守られるだけではない。互いに守り合うことがきっと大切なことだろう。
 たくさんの事を学び成長する幼き少年は考え深げに、ニーナの言葉を聞いていた。
 それから歩いて進める場所を選んで進みながら、二人はゆったり語らいあった。
 せせらぎの音は心地好く響き、しばし日常を忘れて笑みを交わしながら。
「あ、ニーナ殿、あそこに魚がいますよ!」
「ほんとだ。お魚だ……! あ、あっちにも沢山いるよ、見て見て」
 リュカが指差せば、ニーナもそばに寄って水の中の景色を眺める。
 楽しくて、穏やかな時間が流れていく。
「はっ、普通にピクニックみたいな気分になってしまいました」
「……そうだ、この先に災魔がいるんだよね」
 そっと息を吐きながら、忘れていた現実(日常)に心を引き戻す。
「行楽気分ではしゃいでいたけど、気を引き締めなきゃ」
「でも、この森は災魔が出る雰囲気ではない気がします」
 戸惑うようにリュカが呟いた。
 たしかに此処には惑わすような力も、邪悪な気配も感ない。
 けれども時に無垢な相手とも戦わねばならないことをニーナは知っている。
「……そうだといいね」
 眉を下げて微笑んだ。それはどこか願うような声だったのかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アネット・レインフォール
▼静
成る程、迷宮か…。
この世界で新たに発見というのは珍しいのだろうな。
加えて、聞いた話だとトレンドでもあるらしい。

(最近はご無沙汰だが)
世界は違えど――これでも教壇に立つ一人だ。
生徒や冒険者に危険が及ぶのは避けたい。

よし。今回は学園やギルドへの報告も兼ねて
調査・情報収集を優先するとしよう。

▼動
周囲をUCで探索&ルートをマッピングしながら進行。

道中では資料用に景観や動植物をスマホのカメラで撮影したり、
川の水が飲めるか、隠し通路の有無といった調査も。

…まあ、後続の者達も情報が多ければ助かるだろう。

川や障害物は葬剣を大剣に変え、スノボの要領で進むか
念動力で他の刀剣を操作&足場に利用を。

アドリブ歓迎



 隆々とそびえ立つ天空樹。枝や幹はうねるように伸び生えて、広々とした分厚い木肌には森が根付いているようだった。此処は樹木の外側に当たる部分のようだが、おそらく内部にも道が隠されているのだろう。
「成る程、迷宮か……」
 情報を頭に叩き込むように周辺を観察しながら、アネット・レインフォール(剣の異邦人・f01254)は瞳を細めた。
 このアルダワで新たな発見があったのは珍しいことだろう。
 加えて、聞いた話だとトレンドでもあるらしい。
 これほどに謎めいた迷宮だ。伝説に挑もうという者たちが続々と集まってくるのは想像に難くはない。
 世界は違えど、アネットは教壇に立つ一人である。
 この世界でも魔法学園へ臨時講師として赴いたこともあった。
 最近はご無沙汰だが、元気にしているだろうかと思い浮かぶ顔の一つや二つもあるのだ。
 彼等の中にもいずれこの迷宮へ訪れる者がいるだろう。たやすく目に浮かぶ。
「生徒や冒険者に、危険が及ぶのは避けたいな」
 勿論先んじて災魔を倒すことも助けになるのだろうが。
 ここへ来たからにはそれ以上のこともしてやりたい。
「――よし。今回は学園やギルドへの報告も兼ねて、調査・情報収集を優先するとしよう」
 得た知識を教え伝える事こそが、教師の勤めというものだろうから。
 アネットは意識を研ぎ澄ませると、ユーベルコードを展開させた。
 周囲の状況を掌握する【無式】俯瞰ノ眼は、このような場面に置いて非常に有効な一手である。
 静かに進みながら周辺の地形を把握し、あらゆるルートを探り、マップを埋めていく。
「複雑な地形だな……迷いやすい場所は特に調べておくか」
 記録にはスマホが役立った。
 気になるものはカメラで撮影し、景観なども記録していく。
 豊富な森を蓄え、水の流れるこの場所は動植物も数多く自生している様子だ。
 全てを記録するにはメモリが幾つあっても足りないかもしれない。それでも限られた時間の中で、できるだけのことをしようという気概がある。
「……まあ、後続の者達も情報が多ければ助かるだろう」
 新しい発見を持って学園を訪れれば、生徒たちはどんな反応をするだろうか。
 不意に浮かんだ情景に、アネットは無意識に口元に笑みを漂わせた。
 きっと好奇心旺盛な溌剌とした眼差しを向けながら、口々に質問をしてくるだろう。
「なるべく答えられるようにしとかないとな」
 川の水に毒はないか調べておこう、食用にできるものはあるか、幾つかサンプルを持って帰ってみようか。
 隠された通路はないか。茂みの奥には何がある。調べるべき事は尽きない。
「さあ、この向こうへ行くにはどうするか」
 障害物が立ちふさがるような険しい道も、念動力で巧みに操る剣を足場に乗り越えていく。
 選ぶのは楽な道などではない、困難な道を行き経験を伝える事が、先を生く者ができることだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルバ・ファルチェ
(アレンジ可)

マリエちゃん(f32625)と。

精霊獣…きっと『あの人』が残したモノ。
そして今隣に居る子にとっては…。

…考えても仕方ない。取り合えず会いに行ってみようか。

二人で並んで、昔の思い出話を語りながらゆっくり歩いて進もうかな。
思い出話と言っても、幼い頃に見た景色とか一緒に遊んだときの記憶とか楽しかった思い出。
仲間や友人、そしてマリエちゃん本人を助けられなかった事とか『あの人』の話題は避けて、ね。

今はまだ、懐いてくれてる可愛い妹分と幸せな時間を分かち合いたいから。
たとえこの先に待つ結末が光の中にないとは知ってても…。

《※あの人=初恋の人=マリエの先生=精霊獣の飼い主=もう一人の宿敵》


マリエ・ホワイト
(アレンジ可)

あーちゃん(f03401)といっしょー!

せーれーじゅー…《せんせー》の残した子かな。
だったらわたしのきょーだいみたいなもの?わたしもせんせーの鉱石でいきかえったから。
あーちゃん、たぶんそこ気にしてるよね?わたしはべつに気にしないのになー。

ふたりでいっしょにお話しながらゆっくりすすむー。
あーちゃんたちのししょーとせんせーが知りあいだったからちっちゃい頃にいっしょに遊んだよねーとか、お花畑きれいだったよねーとかそんなお話をたくさんするの。

これからまたいっぱいあそべたらいーなー。
ときどきあーちゃんむずかしそーな顔してるからもっと笑ってほしい。

(※実年齢より幼い間延びした喋り方)



「あーちゃん! あーちゃん! かわがあるよー」
「待って、マリエちゃん。離れたら駄目だよ」
「うん。いっしょにいこうね」
 マリエ・ホワイト(死出の供花・f32625)が、アルバ・ファルチェ(タルタロスの狼・f03401)の手をぎゅっと握った。にこにこと屈託ない笑みはどこまでも無邪気で、愛らしい。
 けれどその手を握り返すのも、一瞬だけ躊躇してしまう。これから行く場所に、彼女を連れて行ってもいいのかと、そうした思いが頭を過り。胸に起こった予感はいよいよ確信を深めつつあった。
「せーれーじゅー……」
 どこかふわふわした口調で、マリエが口にした。彼女も気づいているのだ。
「《せんせー》の残した子かな」
「ああ……きっと『あの人』が残したモノ」
「だったらわたしのきょーだいみたいなもの? わたしもせんせーの鉱石でいきかえったから」
 アルバはその言葉になんと答えていいのか、解らなかった。
 彼女自身が感じていない事の重みが、胸を押しつぶすように伸し掛かる。
 やはり酷な巡り合わせではないのだろうか、葛藤にアルバの双眸は陰りを帯びた。
 その表情を見て。ぱち、ぱち、とマリエは大きな瞳を不思議そうにゆっくり瞬く。
 アルバにそんな顔をしてほしいのではないのだ。
「あーちゃん、たぶんそこ気にしてるよね?」
「……ん」
「わたしはべつに気にしないのになー」
「そっか」
「そうだよ」
 繋いだ手を引き寄せて、マリエは甘く笑う。アルバにも笑ってほしかった。
「ねえ、あーちゃん」
 明るい日差しを浴びて、木漏れ日がきらめく川辺をゆっくり歩きながら、二人は寄り添うように言葉を交わす。
 緑の広がる天空樹の景色は、昔の思い出とも重なって、楽しい記憶を呼び起こすから。
「あーちゃんたちのししょーとせんせーが知りあいだったから、ちっちゃい頃にいっしょに遊んだよねー」
「そうだったね、懐かしいな」
 水面に映る姿は、あの頃から随分変わってしまった。
 思い出の優しい部分にだけ触れるように、アルバは言葉を継ぐ。
「花畑に行ったこと、覚えてる?」
「お花畑きれいだったよねー」
「うん、マリエちゃんは昔から花が似合ってた」
「えへへー」
 嬉しそうにはにかむ様子は、どこまでも可愛い。けれど不意に重なるのは死の香り。助けられなかった。後悔は今尚続くというのに、彼女は隣りにいて笑っている。
「ここにもお花咲いてるかなー」
「探してみようか」
「じゃーねーきれいなお花を見つけたほうがかちだよー」
「ふふ、じゃあ頑張らないとだね」
 あ。笑った。
 アルバのふとした笑みに、マリエの胸にふくふくと喜びが広がる。
 ときどきあーちゃんむずかしそーな顔してるから、もっと笑ってほしい。
 これからまたいっぱいあそべたらいーなー。
 お話をたくさんして、いっしょにいられたらうれしい。

 幸せそうに笑うマリエを見つめて、アルバも微笑んだ。

 今はまだ、懐いてくれてる可愛い妹分と幸せな時間を分かち合いたいから。
 仲間や友人の話を避けた。
 『あの人』の話を避けた。
 マリエちゃん本人を助けられなかった話を避けた。
 たとえこの先に待つ結末が、光の中にないとは知ってても……。
 もう少しだけ、このまま。繋いだ手を離さずに。

 せせらぎが聞こえる。
 流れる時は巻き戻せ無いのだと、どうしようもなく報せるように。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夜鳥・藍
SPD
散策がてら進みましょうか。
でもこのアルダワという世界はどこにでもダンジョンがあるのね。
こんな大樹サクラミラージュじゃ、帝都ではあまり見られないわ。
とても綺麗だけど、なぜだか少し寂しい。
何かが誰かが足りない気がするの。私の周りにいた子たちが今はいない。そんな感じ。
私の記憶にない誰かの記憶、転生前の記憶のせいなのかしら。あの人の周りには精霊なのかな、そういう存在がいたようだから。
最近なぜか忘れたはずの記憶が呼び起こされる気がして、不思議。
きっとあの子たちがいたらすごく喜びそうだと思いながら、時々休みながら先を進む。
でも私もいて欲しいとは思えない。だって別れの時が悲しいから。



 これほどの大樹はサクラミラージュでもそうは見られないだろう。
 天空樹という名に相応しく、隆々とそびえる樹はまるで山のようで、雲を突き破るほどに兀立した天辺は全貌を眺めることも叶わない。
 苔や草木に覆われた幹や枝は青々として、降り注ぐ陽光に照らされては輝く。そぞろ歩くように水の流れを辿って道を登っていけば、沢からはせせらぎが聞こえてくる。それはとてものどかで、心安らぐような響き。
「とても綺麗だけど、なぜだか少し寂しい」
 ぽつり、声を零す。
 夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)の宙色をした瞳は揺れ、時折なにかを探すように視線を彷徨わせた。
 この緑鮮やかな大気には、何かが足りない。そんな気がしてならないのだ。
「どうして」
 何かが、誰かが、足りない気がする。私の周りにいた子たちが今はいない。
 そんな違和感が離れないのは、自分にない記憶のせいだろうか。
 ふとした瞬間に浮かぶような誰かの記憶、それは転生前の藍のものなのだろう。確信のようなものがある。
 ここが精霊の森であることと関係しているに違いない。
 あの人の周りには精霊なのか、そういう存在がいたようだから。
「……少し、休もうかな」
 細い吐息をついて、横に伸びた枝の上に腰掛ける。
 歩くのは苦ではないのだけれど、込み上げてくる思いに輪郭はなくて、どうにも気を散らされてしまう。
「最近なぜか忘れたはずの記憶が呼び起こされる気がして、不思議」
 ぼんやりと景色を眺める。
 植物はよく茂り、水は滔々として、澄んだ空気は気持ちいい。
 此処に多くの精霊たちが自然に溶け合い暮らしているのだろうと、肌身に感ずるような心地がする。
 きっとあの子たちがいたらすごく喜びそう。
「でも」
 ここに居て欲しいとは思えない。
 だって別れの時が悲しいから。
 立ち上がって、歩き出す。それでも時々立ち止まって、無意識に探してしまうのだ。
 それは果たして自分の意志なのか、自分の中に残る何かがそうさせるのか。
 胸に潜むような切ない痛みに、自分でも気づかないけれど藍の瞳は寂しげな色を浮かべている。
 いつかは死ぬ私もこうして記憶を残していくのだろうか。正体のない面影を想っては、傍にいないことに安堵をして再びの別離がないことを望むのだろうか。

 あの人が命を落とした時、あの子たちはどうしただろう。
 薄っすらと浮かびかけた思考を閉ざすように一度、瞼を伏せた。
 優しいせせらぎの音が思考を洗い流してくれたなら、再び歩き出せるだろう。前へ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【真宮家】で参加

ふうん・・・アルダワに新しい迷宮か。戦争の大迷宮の事もあるし、新しい迷宮があってもおかしくないね。天空樹か。何かと好奇心が掻き立てられる。年甲斐もなく。

まあ、見た目は穏やかな川がある風景だが、あのアルダワの迷宮だ。真紅の騎士団を同行させて進むよ。まあ、元から野外生活だからこういう地形にはなれてるよ。ああ、何かと突進癖のある奏には気を付けておこうか。いざとなっては自力で泳げる子だが念のためにね。

さあ、川の流れの先には何が待っているだろうか。こんな迷宮の奥だ。人が来るのを待ちわびているだろうからね。早くいってあげよう。


真宮・奏
【真宮家】で参加

アルダワに新しい迷宮!?凄くワクワクするんですけど。しかも【天空樹の迷宮】!!ロマンたっぷりじゃないですか!!ぜひいきましょう!!

風景は穏やかですが、アルダワの迷宮ですからね。もふもふなお友達に力を貸してもらいましょう。まあ、もふもふなお友達と共に迷宮を駆け回ってしまいそうですが!!思わずもふもふさんと川に足を入れてしまったり!!魚を捕まえようとして躓いたりしそうですが!!

母さんと瞬兄さんをはらはらさせながら向かうのは迷宮の奥。さて、どういう出来事が待っているんでしょうか?


神城・瞬
【真宮家】で参加

アルダワですから、まだ未発見の迷宮があってもおかしくありませんね。【天空樹の迷宮】ですか。構造の不可不思議さも含めて、興味が沸きます。

まあ、穏やかな風景ですか、アルダワの迷宮ですからね。念のために月白の使者を使っておきましょう。真剣に偵察する気はないので、突進癖のある奏の行動に気を付けながら、行程を楽しみますか。奏が走っていくのを慌てて追いかけたり、水に足を突っ込んだ奏を引っ張ったりおろおろしっぱなしだと思いますが。

行程の時点で物凄く疲れた気がしますが、本番は迷宮の奥ですか。頑張ります。



「ふうん……アルダワに新しい迷宮か」
「アルダワですから、まだ未発見の迷宮があってもおかしくありませんね」
「戦争の大迷宮の事もあるしね。天空樹か。何かと好奇心が掻き立てられる」
 年甲斐もなく。などと、真宮・響(赫灼の炎・f00434)は愉しげに笑む。
「天空樹の迷宮。構造の不可不思議さも含めて、興味が沸きます」
 鷹揚に頷きながら、神城・瞬(清光の月・f06558)も思考を巡らせた。
 伝説の地に足を踏み入れるとあっては、心惹かれるものがある。
「アルダワに新しい迷宮!? 凄くワクワクするんですけど!」
 素直な明るい声を上げて、真宮・奏(絢爛の星・f03210)は、きらめく瞳で母と義兄を交互に見た。
「しかも天空樹の迷宮!! ロマンたっぷりじゃないですか!! ぜひいきましょう!!」
 そうして彼等の次なる冒険の舞台は決まったのである。

 雲を突き抜けるようにそびえ立つ天空樹の巨大な幹はまるで山のように広く、森に覆われているようだった。
 明るい日光に照らされた緑の中を滔々とせせらぎが流れ落ちていく。
 降り立った三人は、まずは周囲の様子を探るとそれぞれに召喚を行った。
 穏やかな風景に見えるけれど、アルダワの迷宮となれば油断はできない。
「同行しておくれ、アンタ達」
 現れた真紅の鎧騎士達は忠実な護衛である。物々しいその姿を見れば、大抵のものは近づいても来ないだろう。
 先行すれば枝を払い、安全な道筋を作ることも可能だ。
 響も他の家族も野外生活には慣れていているので、そうした事も手際が良い。

「空が近い場所というのは良いですね。風も清々しい」
 白い鷲は高く舞い上がり、周囲を何度か旋回してから瞬のもとへ戻ってくる。
 今回は真剣に偵察する必要もなさそうなので、周辺の景色を軽く調べる程度に飛び立たせたが、五感を共有する瞬には眺めの良い光景を感じ取ることが出来たようだ。

「なにかありましたか? 瞬兄さん」
「気になるものはありませんが、天空樹の周りもずっと遠くまで森が広がっていて緑が綺麗でしたよ」
「わあ、私も見てみたいです」

 もふもふした動物を喚び出した奏は、腕にはウサギを抱え、他にもリスやキツネといった動物に囲まれている。
 精霊の森周辺の地域では森の獣達と心を通わせる魔術が発達しているというから、奏の技とも相性がいいのかもしれない。
「もふもふさん、ちょっとあの辺まで行きましょう!」
 近くに見晴らしの良い場所はないだろうかと、やにわに駆け出した奏の姿に母と義兄は、はらはらとした視線を向ける。
「何かと突進癖のある子だからね」苦笑交じりに響が呟く。
 川で転んだりしてもいざとなれば泳げるし、戦う力だってあると解ってはいても危なかしくて心配が絶えない。それは家族であるから余計に、ということなのだろう。
「奏、待って下さい。一人で遠くに行かないで」
 慌てて追い掛けるのは瞬である。
 川の上流を辿って上へと目指す道を、奏はひょいひょいと軽い動作で飛び跳ねていく。
 そうかと思えば水面になにか気になるものを見つけたように立ち止まって。
「ここ魚がいますよ!」
 思わずといった調子で川に足を入れ、魚を追いかけて水しぶきを上げる。
 しかし勢いをつけた拍子に滑ったのか、躓き体制を崩し。
「わわ、わ!」
「危ない……!」
 咄嗟のところでその手を掴んだ瞬は、力強く奏を引き寄せると安堵の息を吐いた。
「こんなところで転んで濡れたら風邪を引きますよ」
「はい、気をつけます……」
 しゅんと肩を落としたのも束の間。
「あ。兄さん、あそこに花が咲いていますよ!」
「奏、待ってください」
 まるで好奇心旺盛な子猫のように飛び出していく奏の後ろをおろおろとしながら瞬が追いかけていった。
 そんな二人様子を穏やかに見守りながら、響は真紅の鎧騎士と共に移動を進める。

 ふいに額にかかる髪をかきあげた響の瞳が上流を見つめた。その眼差しには思慮深い表情が浮かんでいる。
「人が来るのを待ちわびているだろうからね。早くいってあげよう」
 この先にどんな出来事が待っているのか。
 風の中に誰かを求めて鳴く小さな声を感じた気がした。
 はぐれた獣があそこに居るのだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

都槻・綾
足先を清涼な流れに浸せば
澄んだ冷たさが沁みわたる

双眸を閉じ
世界を彩る音へと聴き入ろう
耳で感じる風景を楽しむ一人遊び

風が木へと語りかけるとき
「遠い国の話を聞かせて」と
彼方でそよそよ
此方でくすくす
葉擦れがわくわく応えているよう
若い娘たちの囁きのようで擽ったい心地

あぁ、今
足元を擦り抜けた尾鰭は
疲れた旅人を笑わせてやろうとする
優しき悪戯っ子の魚かしら
それとも
揺蕩い游ぶ木の葉かしら

ふくふく笑んで
再び瞳を開けたときには
ほら――、
いっそう眩い光景が
きらきらと目に飛び込んでくるから
まるで新しい世界にまみえるみたい

幹に耳を寄せたなら
しらしら流れゆく音が聞こえる
其れは
人の血潮と同じく
木の中にも流れる、いのちの水音



 天穹への道筋を示すかのように聳える樹木がつくる迷宮。
 永らく人の訪れることがなかったこの場所は、しかし生命の息吹に満ちて。
 明るく差し込む陽光に緑はきらめき、澄んだ水の流れにも光は遊ぶように揺らめく。
 精霊が住まうのだという森の大気は神秘的ですらあった。
 冷涼な水の気配に惹かれたように、都槻・綾(絲遊・f01786)は太い枝の上に腰掛け、足先をせせらぎに浸し。洗われるような澄んだ冷たさが染みわたるのへ、しばし身を預けていた。
 穏やかに瞑目したまま世界を彩る音へと聞き入いる姿は、精霊と見紛われるような清廉な佇まい。
 じいっ、と耳で風景を感じながらの一人遊びを楽しむ。
 さわやかな風が吹いている。
 風が木へと語りかけるとき、「遠い国の話を聞かせて」と。
 彼方でそよそよ。
 此方でくすくす。
 葉擦れがわくわく応えているよう。
 若い娘たちの囁きのようで、擽ったい心地。

 あぁ、今。

 足元を擦り抜けた尾鰭は、疲れた旅人を笑わせてやろうとする優しき悪戯っ子の魚かしら。
 それとも、揺蕩い游ぶ木の葉かしら。
 瞼の裏に広げた世界は、さまざまと語りかけてくるから。
 ふくふくと笑みに口元をほころばせて。
 やがて綾はゆるりと瞼を上げ、青磁色の瞳をひらく。
 万緑のあざやかな緑は、水面にもその色を映していて。
 ほら――、光あふれて、いっそう眩い光景。
 きらきらと目に飛び込んでくるから、まるで新しい世界にまみえるみたい。
 触れるように手を伸ばして、指先を光に遊ばせてから。
 腰掛けていた枝からするりと降りて、浅い流れを渡った。
 ぱしゃり、ぱしゃり、薄氷を踏むような丁寧な歩みをして近づいていく。
「天空樹」
 まるで岩壁の如き巨大な幹に手を置いて耳を寄せる。
 双眸を伏せ息を潜めて、耳を澄ませたのなら。
 しらしら流れゆく微かな音が聞こえてくるだろう。
 其れは、人の血潮と同じく。
 木の中にも流れる、いのちの水音。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ベスティア・ザッフィーロ』

POW   :    《狂った番人》
自身の【主への忠誠心 】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD   :    《獰猛な雷獣》
自身の【額の宝石 】が輝く間、【纏う雷】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    《怒れる氷精》
【視線 】を向けた対象に、【氷結攻撃】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ここに人間が来るのは本当に久しぶりのことだったから。
 にぎやかな気配を感じて、獣達は様子を窺いつつ木陰から姿を現した。
 獣達は期待に輝く瞳であなた達を見回し、誰かの面影を探しては飛び跳ねる。

 お前たち、だあれ?
 ねえねえ。ボクたちの主を見なかった。
 ボクたちここで、主を待ってるんだ。

 次々と猟兵に尋ねる声はどこか不安げに揺れている。
 迷子の猫が帰り道を忘れてしまった時のように。

 古き時代の精霊獣達、彼らは過去の残滓。
 それぞれ事情は違えども。
 取り残され、はぐれ迷い、災魔となった彼らは孤独を慰めるように群れをなした。
 主と呼ばれる人達はきっともう……生きてはいないのだろう。
 それを理解できないのか、それとも信じたくないのか。

 ふいに精霊獣達は猟兵達が自分達に向ける気配や感情に気がついたように飛び退いた。

 お前たち、なんか嫌なことする気だな。
 やだ、やだ。行かないよ。ボクたちここで待たなきゃいけないんだ。
 主がきっともうすぐ来てくれるんだから!

 近づけば、シャッ、と威嚇し牙を剥く。
 逆立つ毛並みに電気が迸り、不安に怯える視線は冷気を帯びた。
 それは危険な力を持っている証。

 放っておけば、いずれ人を襲うことになるだろう。
 だから今ここで、送ってあげなくてはいけない。
 過去があるべき骸の海へ。
ラファエラ・エヴァンジェリスタ
獣くさい、と常なら吐いて捨てるところだ
けれど愛馬が哀しい瞳をしたから、首を抱きつつ、思わず耳を傾けた
嗚呼、私はおまえたちを知らぬが
…よく、あるじを待っていた

愛馬に騎乗し直して、獣たちから距離をおく
氷結攻撃にはオーラ防御で我が身と愛馬とを護る

UCを使用して狂乱を招きつつ
「黒孔雀」を開いて呼ばう幻惑は、せめて彼らに幸せなものでありますように
…優しさなどは最低限より心得ぬ
が、この獣たちが痛くないよう悲しくないよう、たとえ偽善であれどもそう願う

…おまえたち、もう瞳を閉じてご覧
深い眠りの淵でかつてのあるじに会えるとしたら
その誘惑に抗う意味はないだろう
傍らで「茨の抱擁」で吸血し、緩やかにとどめを刺して行く



 明確な敵意を向ける精霊獣を前にして少女は屹然と振る舞う。礼儀をわきまえぬものどもであった。どの様な理由があっても、牙をむき出し唸り声を上げながら彼女を見るなど、誰であろうと許されることではない。
 獣くさい、と常なら吐いて捨てるところだ。
 けれど、その言葉を向けることは出来なかった。
「テネブレ、お前……」
 ラファエラ・エヴァンジェリスタ(貴腐の薔薇・f32871)は傍らにいる愛馬の首を抱いた。フルル、と小さな嘶き。哀しい瞳をしたその様子に、耳を傾けずにはいられない。
「そうか」
 亡くした主を待ち続ける精霊獣達の気持ちが、テネブレにはよく解るのだろう。
 どこまでも忠実に、心を変えることもなく、共に在った日々を忘れずにずっと。夜を幾つ越えたとて忘れ得ぬ思い出と共に在り続けた。
 他ならぬお前だから、解るのだね……。
 言葉を交わさずとも伝わる気持ちがある。ラファエラは頷くとその背にひらりと優雅に騎乗し、手綱を掴んで共に行こうと示した。力強い手応えが返ってくる。
 怒れる氷精の青い視線から凍気が迸り迫る、しかしラファエラのオーラに弾かれたそれは氷雪となって散った。
「私がこのものたちにやれるのは、永遠の眠りだけだろう」
 ならばせめて、誉れを。息を吸って、獣たちへ眼差しを向ける。彼等は距離をとるテネブレに警戒しながら、それでも逃げ出そうとはしない。立ち向かうのだ、愛する者を信ずるがゆえに。
 嗚呼、私はおまえたちを知らぬが。
「……よく、あるじを待っていた」
 それでもせめてその献身に報いる言葉を贈ろう。
 獣たちの青い大きな眼は丸くなり、きょとんとした表情が浮かぶ。

 リィ――……ン。

 澄みとおった美しい鈴の音が鳴り渡った。
 けだものどもよ。お聴き。
 ラファエラは手を繰り、鈴を鳴らす。鎮魂を騙る音色が舞曲となって、死霊を招くだろうか。
 幸せに狂えるなら、願いが叶うこともあるかもしれない。
 獣たちは次々と、ありもしない方向を見ては嬉しそうな声で鳴いた。親を見つけた迷子のように。
 その様子に、黒孔雀を開く。引き起こされる幻惑が、せめて彼らに幸せなものでありますようにと。

 あるじ、あるじだ……! あるじの声が、したよ!

「……おまえたち、もう瞳を閉じてご覧」
 獣たちの歓喜の声に頷いて。
 鈴の響きに含ませ、誘惑を乗せた甘い囁きを送る。
 深い眠りの淵でかつてのあるじに会えるとしたら、その誘惑に抗う意味はないだろう。

 うん。 ……もう、寝る。 あるじ、と一緒……に。

 たどたどしい声が止んでいく。ラファエラの影は揺らぐように黒き茨となって這いずり、獣たちを包んだ。
 茨の棘は血をすすり、やがて緩やかなとどめを刺すだろう。
「優しさなどは最低限より心得ぬ」
 けれど。
 この獣たちが痛くないよう悲しくないよう、その気持が偽善であれども願う。
 ヴェールの奥の双眸を伏せて、暫し瞑目する。
 瞳を開けた時には獣たちの姿はないだろう、彼等はようやく眠ったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜鳥・藍
胸が詰まりそうになる。
あの人がなくなったあと、あの子たちはどうなったの?
少しずつ思い出す、という言うには記録を閲覧しているようなものだけど、私はまだすべてを思い出したわけじゃないから。

青月を構え雷公天絶陣を放ちます。降り注ぐ雷で相手の視線を多少は妨げられるとは思います。こちらに届いたとしてもオーラ防御で軽減を。
でもダメージは通るかしら?相手も雷を使うのよね。
いえ、ならば纏う雷ごと貫くまで。
攻撃する事に心は痛むけど、このままでは本当にずっと彼らは主と会えないでしょう。
骸の海がどんな場所かはわかりません。そこで会える補償もありません。
でもここにとどまり続けるよりはずっと良いと思うのです。



 夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)は言葉を失ったように立ち尽くし、精霊獣たちを茫然と見つめる。
 胸が詰まりそうだった。
 居なくなった主が帰ってくると信じて待ち続けるその姿に、あの子たちを重ねてしまう。
 あの人がなくなったあと、あの子たちはどうなったの?
 無事でいるのか、それとも運命を共にしたのか。確かなことはわからない。
 それをどうしても思い出せないことが、苦しい。
 少しずつ思い出してきたあの人の事は、ただ記録を閲覧するようになぞるだけで。
 私はまだすべてを思い出したわけじゃないから。
 死んだ後のことまで解らないのは仕方がないのだとしても、せめてあの子たちの性格だとかそういうものを知っていれば……想像するぐらいは出来るかも知れないのに。

 主は……帰ってくるの! ぜったい帰ってくるんだから!

 まるで自分に言い聞かせるように精霊獣が叫ぶ。そう思い続けなければ折れてしまうのだというように。
 もしも何処かであの子たちが同じ様な思いでいたならば、どうすればいいのだろう。
 だって私は世界に"帰って"きた。あの人とは別人となって、けれどきっとあの人と同じ姿で。こうして別世界を行き来できる身となったのならば、いつか巡り合うこともあるのかもしれない。
 その可能性が藍にはある。
「悲しんでいないといいな……」
 呟く声は震えを帯びていた。ああ、いけない。
 呼吸を整えて、青月を握る。今は目の前のこの子らにしてやれる事をなさねばならない。
 敵意に反応して精霊獣が身構えた。踏み込んで、告げる。
「このままでは本当にずっと主と会えないでしょう――だから」
 雷公天絶陣。打刀を振り抜き、横一閃、斬撃とともに青白い雷を迸らせる。
 精霊獣は跳び上がって雷を避け、ギラギラと怒りの眼を向けて鋭い鳴き声を上げた。獣の視線は雷にそらされたが、眼差しが向けられた場所はたちまち氷結し霜柱をつくりだす。
 藍はせせらぎから離れるように地を蹴って樹の枝へ飛び上がると、青月の刃で次から次と雷を降らせた。目も眩むような閃光が起こっては精霊獣を貫く。
 攻撃を与えることに心が痛む。けれど、ここで見過ごすことは出来ない。
 青月の柄を今一度、つよく握りしめた。
「骸の海がどんな場所かはわかりません。そこで主と会える保証もありません」
 転生をした身であるからこそ、不確かなことは言えない。
 けれど彼等に先がないなどと、そんなことは誰にもわかるまい。
「でもここにとどまり続けるよりは、ずっと良い」
 静かな声を落として見送った。
 置いていかれた悲しみに鳴いていた声が聞こえなくなる。
 置いていってしまった悲しみを覚えながら、藍はフードを深く被り溜め息をついた。
 胸が詰まりそうな心地は、しばらく晴れそうもない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アネット・レインフォール
▼静
…精霊獣は身が朽ちた今も待ち人を求める、か。
きっと生前は心強い存在だったのだろうな

シマエナのようなケースもあるし、
こうした手合いは使役や再契約が出来ればいいんだがな。

いつの日かそうした方法も見つかるのかもしれないが…
今は少しだけ眠るといい

▼動
会話が成立するかは不明だが
可能なら主やこの地の情報等を問うてみる。

敵は敏捷力や魔力を使った攻撃が得意と判断。
葬剣を無数の鋼糸状に展開し絡ませる事で阻害と消耗を狙う。

折を見て結界術で閉じ込め、複数の敵を巻き込む形で
UCを範囲攻撃化させて送り出そう

待ちくたびれた上、久しぶりに沢山動いて疲れただろう?

願わくば――旅立つ先で待ち人に会えるようにと。

アドリブ歓迎



「お前達の主はどんな人だったんだ?」
 相手は災魔と化した精霊獣。言葉は通じれども、会話が成り立つのかは解らない。
 けれど尋ねたのは、少しでも多くの情報を得たい為。
 アネット・レインフォール(剣の異邦人・f01254)は、冷静に振る舞いながら声を紡いだ。
 けれど知ることは、相手に踏み込むということでもあるだろう。少なくともこの場合はそうだった。
 思わぬ問いかけに眼を丸くした後、警戒するように耳を忙しなく動かしながら、精霊獣はまるで子供が自慢するような嬉しそうな様子で声を上げる。

 主はね。強くてね、なんでも知っててね。すごいんだよ。
 ボクね、主と一緒にずっと居たんだよ。大好きだからね。だから、帰っくるの待ってるの!

「……そうか、じゃあ。此処のことも教えてくれるか」

 森の大きな樹!
 こっちに水があってね。あっちの枝のとこは見晴らしがいいの。あとね、あとね。

「うん」
 情報としてはあまりにも拙い内容だった。けれど、言葉を遮らないように耳を傾ける。
 身が朽ちた今も待ち人を求める精霊獣の強い思いが込められたその声を聞き届ける。
 彼等にとって、主はきっと心強い存在だったのだろう。
 ひたむきで素直な様子からもそれは伝わってくる。
「色々教えてくれて、ありがとうな」
 オブリビオンでなければ、また違う解決法を望めたのだろうか。
 以前にも同じ様なケースがあった。あの時は別の手段を選べた。
 こうした手合いは使役や再契約が出来ればいいんだがな。と、思考の端で模索する。
 しかしきっとそれは救いにならないのだと、アネットには解っていた。
 言葉を交わしたからこそ解る、彼等は新しい主など望んでいない。
 交わることのない道の終わりを選べるというのなら。
 選んだ一振りは、葬剣【逢魔ガ刻】。

 お前! やっぱり敵……!

 警戒はしていても、動きはアネットより一手遅れをとる。
 アネットは飛びかかろうとする精霊獣の間合いへと素早く踏み込んだ。抜き払った剣は鋼糸状に展開し、蜘蛛の巣のように張り巡って相手の動きを阻害する。
 ユーベルコードによって、鋼糸は身体を傷つけぬ痛みのない攻撃となっていた。
 しかし体に絡みつく邪魔な鋼糸を噛みちぎろうとがむしゃらに牙を立てては、獣達は凶暴に鳴く。毛先から迸る魔力は電流となって爆ぜ、バチバチと危険な音を立てた。死物狂いと言っていい抵抗は、鋼糸以外のもので己を傷つけるだろう。
 動きを封じるように、アネットは結界術を使って精霊獣を閉じ込める。
 いつの日かもっと別の方法も見つかるのかもしれない……けれど。
「今はこうするしか方法はないんだ」
 闘気を更に剣に込める。それは触れたものを傷や苦痛から開放する静かな一撃を与えるだろう。繰る糸を引き寄せピンと張れば、獣達の安らかな終りは軽い手応えとなって伝わった。
 深い息を吐いて、アネットは精霊獣の体が光となって消えていくのを見つめた。
「待ちくたびれた上、久しぶりに沢山動いて疲れただろう?」
 今は少しだけ眠るといい。
 願わくば――旅立つ先で待ち人に会えるように。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
長く待ち続ける事が出来てしまったが故の悲劇……とでも言うべきか

君達の主はもういない……と言っても恐らく伝わらないし、納得もしないだろう
本当は、彼らは斬るべき相手ではないとは思う
だが、俺には彼らを優しく眠らせてやような事はできない
だから、俺に出来る形で終わらせよう

神刀の封印を解き、弐の型【朧月】の構えを取る
高速の攻撃を見切って、破魔の刃で雷を切り払いや最小限の動きで回避
隙を狙って反撃の一刀を災魔……精霊獣に叩き込む

浄化の力を込めて、せめて出来る限り苦痛を与えないように一撃で一匹を倒す

これ以上、ここで待ち続ける必要はない
骸の海へ還ればきっと、そこで探していた人とも会えるだろうから、もう休むと良い



 精霊獣の様子を見て、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は理解をした。
 自分にできることは一つだけなのだと。
 手の中で神刀【無仭】の封印が解かれる。刀の鍔を指で押し上げれば、神気が溢れ漂うようだった。引き抜いて、静かに構えるは弐の型【朧月】。
 それは、受け身の型である。相手の攻撃を誘い、隙を縫うようにして返すのが【朧月】。
「――来い」
 鋭く告げた。
 殺気に反応した精霊獣たちが周りを囲む。それぞれに距離をとって間合いを計っているようだった。
 緊張に満ちた空気の中、気圧されたかのように一匹が走りだす。
 額にある宝石が煌めけば、放電する身体は触れた者を灼くだろう。常人ならば目で追うのも難しい、俊敏な獣の動きで飛びかかってくるが。鏡介はそれを最小限の動作で避けながら薙ぐように刀身を一閃させた。
 流麗な一撃だった。
 まるで風にでも押されたかのように獣は倒れ、毛先で雷がパチパチと火花のように飛び舞う。横目に見て、鏡介は口元を引き結んだ。
 全ては長く待ち続ける事が出来てしまったが故の悲劇……とでも言うべき事。
 あれほどひたむきに主を待ち続ける精霊獣達へ、鏡介は言葉を掛けることは出来なかった。
 君達の主はもういない……と言っても恐らく伝わらないし、納得もしないだろう。
 残酷な真実を伝えたところで、悲しみが深まるばかりなのだとしたら、せめて痛みも感じさせないような一瞬の一撃で送ると決めた。

 本当は、彼らは斬るべき相手ではないとは思う。
 だが、俺には彼らを優しく眠らせてやるような事はできない。
 だから、俺に出来る形で終わらせる。

 葛藤を拭い去るように、刀の柄をつよく握る。
 仲間を討たれて怒りの声を上げた精霊獣達が雷を降らせては、枝や幹を伝って撹乱するような動きで跳びかった。
 閃光が起こり、弾ける電気の音が耳朶を打つ。
 しかし鏡介は乱れない。
 息を吸い意識を研ぎ澄ませ、間合いに入った精霊獣を確実に仕留めていく。
 どれほどに雷を纏って身を守ろうと『真に斬ると決めたもの』のみを断つ破魔の刃は、雷すらも切り払った。
 もはや、力の差は歴然としていた。
 それでも獣達は逃げずに向かってくる。退くことはできないのだ。主を待つために。
 最後の一匹になっても、それは変わらなかった。
 カアッ!! と、木々に響き渡るような一声を上げて、獣は喰らいつくように飛びかかる。死物狂いで噛みかかる牙を刀身で受ければ、刀越しに恐るべき強さが伝わった。必死な心ごと受け止めて。
「これ以上、ここで待ち続ける必要はない」
 もういいのだと、返す刀を叩き込む。
「骸の海へ還ればきっと、そこで探していた人とも会えるだろうから、もう休むと良い」
 その声は標となっただろうか。
 精霊獣の体が光となって淡く溶けるように消えていく。
 見送って、刀を鞘に収めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

都槻・綾
斯様に親しみ
敬愛するほどだもの
きっと素敵な主さんだったのねぇ

宜しければ
共に過ごした日々のこと
お話聞かせてくださる?

一緒に木登りしたかしら
水遊びも楽しかったかしら
生い茂る青葉の陰で、かくれんぼもしたかしら
宝石みたいに美しい木の実を見つけたかしら
ね、
其れを半分こで分け合う味は
美味しくて、甘くて、しあわせだったのではないかしら

優しい記憶
あたたかな思い出

例え過去の残滓でも
大切なものに想いを馳せるときの
純粋な、耀く瞳は色褪せない

触れることが叶うなら
穏やかに微笑んで
毛並みを撫でよう

愛しい思いを抱いたまま、
誰も、何も傷付けずに
主が待つ彼方の海へと帰ってほしいから
馨遥の子守歌で
夢の方舟へと乗せて差し上げたいな



 斯様に親しみ、敬愛するほどだもの。
 きっと素敵な主さんだったのねぇ。
 泣いてる幼子をあやすように、ゆうるりと言ノ葉を紡いでいく。
 眦を細めて都槻・綾(絲遊・f01786)は精霊獣たちへ優しく笑みかけた。
「宜しければ」
 彼がねだるように伺えば、逆立てた毛も治まっていくだろう。
 かすかに漂う甘い馨も相まって、心は静まり少しずつ大人しくなっていく。
「共に過ごした日々のこと、お話聞かせてくださる?」

 いいよ。ぽつんと一匹が答えた。
 静かな水面に雫が落ちて波紋を生むように、それは広がって。
 ボクのあるじは優しかったの。ボクのあるじは強かったよ。ボクのあるじは温かだった。
 それぞれに語られる声は、時にはにかむように、時に懐かしそうに。
 まるで子供が手に握りしめた宝物を指広げて見せてくれたようだったから。
「そう、素敵ねぇ」と大げさでもなく頷いていく。
 もっと思い出して、教えてね。
 あなたと主さん。

 一緒に木登りしたかしら。
 水遊びも楽しかったかしら。
 生い茂る青葉の陰で、かくれんぼもしたかしら。
 宝石みたいに美しい木の実を見つけたかしら。
 ね。
 其れを半分こで分け合う味は、美味しくて、甘くて、しあわせだったのではないかしら。

 子守歌のような調子で、尋ねていけば。
 その声は精霊獣達の心へ染み入り、忘れかけていた遠い日々の景色を蘇らせていく。
 不安に惑い怯えていた瞳にきらきらとした色が灯りだす。
 例え過去の残滓でも、大切なものに思いを馳せる時の純粋な、耀く瞳は色褪せない。
 優しい記憶。あたたかな思い出。
 夢の中でなら会えるでしょう。
「いいこ、いいこ」
 愛しい思いを抱いたまま、まだ誰も、何も傷つけずにいる内に。
 主が待つ彼方の海へと帰ってほしいから。
 柔らかな草の上で丸くおなりと促してやれば、ふるると喉鳴らして精霊獣達は眠たげに歩いていく。
 すでに夢見心地なのか、安心しきったように寛いだ姿をして。
 綾もそっと後に続くように草の上に座ると、一匹がそばに来て足に体をくっつけて眠りだす。
 甘えん坊なのだろうか。人を愛して共に暮らしていた頃を思い出したからだろうか。
 寂しくないように背中を優しく撫でてあげる。ふかふかした毛並みは柔らかい。
 気持ちよさそうに目を閉じて、ふぅー、と精霊獣は息を吐いた。

 馨遙の子守歌が、精霊獣たちを夢の方舟へと乗せて運んでいく。
 せせらぎのずっと向こうへゆらゆらと行くのでしょう。
 どうぞ心安らかな旅になりますように。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リュカ・ラス
ニーナ殿(f03448)と。

あれが精霊獣…
かわいいですね。
ニーナ殿の弟君と…あ、いえ、何でもないです。
大丈夫、いけます。

貴方達が先に此処に居たとしても、この森にはこれから冒険者がたくさん来ます。
その人達の為に災魔を退けないといけないんです。

退けて、と頼まれました。
だから倒さなくて良いならそうしたいです。
でも私達にはどうしても主人と会わせてあげる事は出来ないんです。
ごめんなさい。

UCはキールを呼びます。
せめて、一撃で出来ますように。

私も竜を呼び出すからなんとなく分かります。
皆と離れたらさみしいし悲しいです。

こんなに綺麗な場所で待っていたのは、ここならさみしくないからだったんでしょうか。


ニーナ・アーベントロート
リュカくん(f04228)と

黒い毛並みに、幼い口調
なんか君達、あたしの大事な子にちょっと似てる
…だから、尚更
ここでケジメをつけてあげたいな
リュカくん、行けそう?
目配せの後に柔く笑って頷いて

指定UCで自身の防御力を増強
オーラ防御と衝撃波でガードしながら
ダッシュ、ジャンプ、時にフェイントも駆使して
此方の動きを読まれにくいように
隙ができたら彼らの意識を魔力でハッキング
敵意の低下、可能であれば喪失を試みる
…会いたいひとに会えなくて辛いの、わかるから
直接攻撃するのは、やめておくよ
引導は仲間達に託して

…リュカくん、強い子だね
思いはあの子達にも届いた筈だから
きっとどこか遠くで、ご主人と再会出来てるよ



「あれが精霊獣……かわいいですね」
 額の宝石と同じ色の大きな青い瞳と、ふかふかの毛並み、抱きかかえられるぐらいの大きさ。主を慕う様子も、よく懐いた動物のようだった。
 それ故に、リュカ・ラス(ドラゴニアンの剣豪・f04228)は僅かに顔を曇らせる。解り会えない相手だからこそ、その可愛らしさは悲しくて。
 それに、あの幼い口調と黒い毛並みはまるで。
「ニーナ殿の弟君と……あ、いえ、何でもないです。」
 失言だったと慌てて口を手で押さえながら、申し訳無さそうに目を伏せる。
 けれどニーナ・アーベントロート(赫の女王・f03448)も同じようなことを考えていたから。
「うん、あたしの大事な子にちょっと似てる」
 その事を無理に否定はしない。
「……だから、尚更。ここでケジメをつけてあげたいな」
 ここで終わらせてあげなければ、もっと苦しむことになるだろう。
 声には凛とした響きを帯びる。
 隣にいるリュカもぎゅっと剣の柄を握った。
「リュカくん、行けそう?」
「大丈夫、いけます」
 頼もしい言葉に、目配せを送ったニーナは柔く笑みながら頷く。
 そして此処にはいないもう一人へ、そっと囁くのだ。
「――力を貸してね、ロラン」
 どこからかする狼の遠吠えが、樹木を伝うように響き渡る。大丈夫、そばにいる。と答えてくれたようだった。二人は背を押されたように地を蹴った。
 精霊獣たちは威嚇の声を上げながら向かってくる。凍気を発する瞳が、見つめた先に霜柱を走らせる。
 頬へ冷たいものが掠めるのを感じながら、それでもリュカは踏み出して。
「退けて、と頼まれました。だから倒さなくて良いならそうしたいです」
 剣を振るいながら獣たちへ向けて言葉を紡ぐ。
 なにも説明しないままではいられなかった。意味は伝わらないかも知れない。それでも。
「貴方達が先に此処に居たとしても、この森にはこれから冒険者がたくさん来ます」
 その人達の為に、災魔を退けないといけない。
 考えて、考えて、それが戦う理由なのだと気持ちを奮い立たせる。
「君達、こっちだよ」
 相手を撹乱するように動き回るニーナはひらりと舞うように精霊獣たちの間をすり抜けた。
 至近距離で受けそうになる攻撃を巧みに防御しながら、満月の力を帯びた相貌は輝くような魅力を引き立て、相手の油断を誘う。あちらこちらとまるで蝶のように掴みどころのない動きで跳び回って。
「……会いたいひとに会えなくて辛いの、わかるから」
 だから直接手を下すことは、やめておくよと。寂しげに微笑んだ。
 小夜啼鳥の心臓が謳う。ニーナの魔力は精霊獣の意識へとアクセスし、潜り込んで干渉をはじめる。敵意を低下させようと用いられたその技は繋がりとなって、少しだけ胸の奥に泣きたくなるような痛みを走らせた。

 あるじに会いたい。 あるじ、どこ……?

 精霊獣たちの動きが大人しくなって、うずくまるように地面に伏していく。直接手を下したくはないけれど、それでもとどめを与えなくてはいけない。ニーナはあれほど軽やかだった足元に、泥に浸かったような重たさを感じながら、それでも一歩を踏む。
 ニーナ殿。と小さな声が後ろから引き止めた。
「私に任せて頂けますか?」
「……、うん」
 リュカは前へと進み出ると颯竜・キールを呼んだ。若草色の竜翼を宿した姿へと変身する。柔らかな風を周囲に起こしながら、彼の持つ剣は鋭く煌めいた。
「私も竜を呼び出すからなんとなく分かります。皆と離れたらさみしいし悲しいです」
 会いたくて、探す気持ちはよく解る。どうにかできる方法があるなら、いくらでも力を貸してあげたい。
「でも私達には、どうしても主人と会わせてあげる事は出来ないんです」
 静かに剣を横一閃に振るう。
 斬りつける刃は風波を起こし、精霊獣たちの体は刃に触れた先から光へと変わり消えていった。
「ごめんなさい」
 琥珀色の瞳が、最後を見届ける。

 戦いの騒がしさが鎮まっていくと、せせらぎの音がまた聞こえてくる。
 二人は清流へ足を浸して佇んだ、やがて。
「……リュカくん、強い子だね」
 ニーナの声へ曖昧に首を揺らす。
 しっかりと頷くことはまだ出来ない。
「こんなに綺麗な場所で待っていたのは、ここならさみしくないからだったんでしょうか」
 そうかもしれないね、とニーナは呟くと淡く微笑みながら胸の上に手を置く。
 魔力を介して繋げた意識から、かすかにだけれど、感じたのだ。
「思いはあの子達にも届いた筈だから、きっとどこか遠くで、ご主人と再会出来てるよ」

 風が吹き抜けて、高い空へと飛んでいく。
 息を吐いて、木々を見上げ梢の先にある青空を仰いだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【真宮家】で参加

そうか、大切な主を待ってるんだね。アタシの夫はもう居ないが帰りを待つ気持ちは良く分かる。でもね、もうアンタ達は犠牲が出る程になってしまった。長い待ちぼうけを終わりにしないとね。

アタシは【忍び足】【目立たない】で敵集団の背後を取る。不利な行動をするなら回避や防御行動を捨ててくるだろう。その攻撃を【戦闘知識】で見切り、【オーラ防御】【残像】【見切り】で回避。【カウンター】気味に【不意討ち】【気合い】【怪力】で力任せに竜牙を併せた【範囲攻撃】で薙ぎ払う。

余り時間をかけたくない。ひと思いに、還してやろう。もう待つ必要はないんだ。おやすみ。


真宮・奏
【真宮家】で参加

お父さんの事は目の前で死を見届けてるので辛いですが帰ってこないものと理解できますが、この子達の主は生死も明らかになってなくてまだ帰りを待てるというのが厄介ですね。でも犠牲は防がないと。

あえてて前に立って【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【拠点防御】【ジャストガード】【受け流し】【氷結耐性】で集団の攻撃に耐えきります。視線がこちらに向かないなら【衝撃波】【範囲攻撃】で牽制。

歯を食いしばって耐えながら【範囲攻撃】化した疾風の矢で攻撃。貴方達の寂しさ、主を待ち焦がれる思い、全てこの身で受け止めます。全てここに置いて行ってください。来世では待ち人に会えますように。


神城・瞬
【真宮家】で参加

僕の場合は目の前で両親が死んだので、辛い思い出ではあるのですが、帰ってこないのが分かってるんですが、この子達の場合は主が帰る可能性があるのがある意味残酷ですね・・・長い間の待ちぼうけを終わりにしましょう。

攻撃回数が増えても動きが変わらないのなら纏めて動きを止めてしまいましょう。【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】【武器落とし】を併せた【結界術】を【高速詠唱】で【範囲攻撃】化して展開、更に裂帛の束縛を使いましょう。追撃に【魔力溜め】【全力魔法】を込めた【衝撃波】で攻撃。

飛んでくる攻撃は【オーラ防御】【第六感】で凌ぎます。

多くの犠牲が出る前に、止めさせて貰います!!



 幼いような言葉遣いと、その態度に。
 まるで親を亡くした子供のようだと、思ってしまう。
「そうか、大切な主を待ってるんだね」
 真宮・響(赫灼の炎・f00434)はやるせない溜め息を吐く。
 その横で真宮・奏(絢爛の星・f03210)と神城・瞬(清光の月・f06558)も顔を曇らせた。
 夫を、父を、両親を亡くした彼等にはその悲しみがよく解った。だからこそ同情する部分もある。けれど、覚悟が揺らぐことはない。
「お父さんの事は、目の前で死を見届けてるので、辛いですが帰ってこないものと理解できます」
「僕も辛い思い出はあるからこそ、両親は帰ってこないと解っていますが」
 けれど。彼等には別れを実感できる記憶がないのだろう。
 それはある意味残酷なことだった。
「この子達の主は生死も明らかになってなくて、まだ帰りを待てるというのが厄介ですね」
「そうだね。帰りを待つ気持ちは良く分かる」
 どこかにまだ望みがあるうちは諦められないだろう。
 だいすきだとあんなに訴えているのだ。
 オブリビオンでなければ、悲しくてもそのままにしておけたかもしれない。
 けれど彼等は過去の残滓となってしまった。今を生きる者達とは相慣れず、敵対する宿命となってしまった。
 ここに来る冒険者たちは精霊獣の事情なぞ知らないだろうし、その想いを尊重するものばかりとは限らない。
 そうなった時、ただの人間はオブリビオンに敵いはしないから。
「もうアンタ達は、いずれ犠牲を出す存在になってしまった」
 ならばせめて事情を察した者の手で眠らせてやるのが良いのかもしれない。
 長い待ちぼうけを終わりにしてやろう。
「……犠牲は防がないと!」
 矢面に立つように颯爽と飛び出したのは奏。
 主を失ってそれも解らず彷徨い続けるこの子たちが、別の誰かを失わせることになってはいけない。
 新しい悲しみを生み出してはいけないから。
「みんなおいで、私が受け止めてあげます!」
 エレメンタル・シールドを使い身を守りながら、奏は自分に注意が集まるように大きく動き回る。

 こないで! やだ!

 冷たい視線が走り、周囲の気温が下がっていく。集団からの攻撃に耐えながら、奏は眉根を寄せて歯を食いしばった。吐く息が白く染まるような急激な寒さが襲いかかる。
「これぐらい平気です」
 貴方達の寂しさ、主を待ち焦がれる思い、全てこの身で受け止めると決めたから。
 強く立ち続け、風を操る。
「そちらの事情も気の毒ではありますが」
 瞬は天空樹に生える植物に紛れて、伸びはやした枝蔓を放つ。
 この環境下でその攻撃は非常に効果的だ。雷を纏った精霊獣達は次々と絡めとられ動きを封じられていく。
「止めさせて貰います!!」
 追撃の魔法を放ちながら、瞬は力強く叫んだ。
 そんな二人の立ち回りに呼吸を合わせて、音もなく駆け回るのは響。
 がむしゃらに向かってくるものには、カウンターを見舞い、素早くなるべく苦しまぬように急所を狙って。精霊獣の背後に回っては、剣を閃かせ一太刀を浴びせていく。
 三人の連携を前にして精霊獣達はその数を減らし。やがて。
「頃合いだね……大技を使うよ!」
 響の合図に合わせて、二人は力を練り上げる。
 風巻くように大気は唸り、植物の気配が一層濃くなる。まるでこの地に住まう精霊たちが力を貸しているようだ。この哀れな迷い子たちを送り出してくれと囁くように。
「ひと思いに、還してやろう」
「風よ、奔れ!!」
「覚悟!!」
 力任せに振り下ろされた竜牙の一撃が周囲を巻き込んで衝撃波を生む。枝蔓に動きを封じられたものは避けることは叶わない。放たれた魔法の矢は、風に乗って残る獣の身体を撃ち抜いた。
 命を終えたその体は光となって消えていく。
「悲しい思いは、全てここに置いて行ってください」
 祈るように奏は呟く。
「来世では待ち人に会えますように」
 もしかしたら彼等もまた新しい精霊となって戻ってくる日はあるだろうか。
 そんな未来を胸に思い描いて、天空樹を後にした。

 今は解き放たれて。
 おやすみ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルバ・ファルチェ
(アドリブ可)

マリエちゃん(f32625)と。

実験のためにマリエちゃん達、自分が育てた生徒達を手にかけた人を待っても無駄だよ。

もう待つのも信じるのもやめよう?…なんて自分の心にも言い聞かせてるみたいだ。

信じようとして裏切られ、守りたくて守れなくて、あげく巻き添えで師匠に殺されかけて…。
…もう後悔ばかりするのはイヤだ。

巨狼姿でマリエちゃんを守り、コルノに額の宝石を【貫通攻撃】【部位破壊】で攻撃するよう指示。
【かばう】時は【オーラ防御】と【激痛耐性】でダメージを最小限に。

戦闘後、人の姿にもどったらマリエちゃんを正気に戻すため腕を囓らせながら【結界術】【浄化】。
まだもう少し僕達に時間を…。


マリエ・ホワイト
(アドリブ可)

あーちゃん(f03401)と!

せんせー待っててもこないよー?かえるとこにかえろー?

お話、ぜーんぜん聞いてくれそうにないのー。
つかまえよーとしてもダメだし、あーちゃんには怪我させちゃうし……ずっとうごいてたら、なんだろ……おなか、すいてきた、な……。

…まりぃ、おなか、へったの
たべる、かじる…おなかへったら、しかたないもんね?
べすちゃん、かじってもおいしくなぁい
でもすこしはくーふくなおるからかじる
いなくなるまで、かじかじするもん

あーちゃん、おいしそー
かじっていーの?かじるー。

(※鉱石の魔力が不足すると血を求める、血で満たされれば正気に戻る。
実験にて魔女の残した呪いの影響)



 どこまでも悲しい真実に救いはないのだろうか。
 精霊獣ベスティア・ザッフィーロ。お前もあの人に裏切られたんじゃないのか。
 どうしたらそんな風に、死んだ後まで信じ続けられる。
 アルバ・ファルチェ(タルタロスの狼・f03401)は、暗い表情を浮かべて歩み寄る。
 獣の青い瞳が不思議そうに瞬き、じっと二人を見つめた。

 お前、どこかで会った……?
 だれ? だれ?

 きっと覚えていてもわからないだろう。
 アルバも……そしてマリエも見違えるように成長したのだから。
 過去のままでいるオブリビオンとなったベスティアにはきっと説明をしてもわからない。
「実験のために自分が育てた生徒達を手にかけたような人を待っても無駄だよ」
 引き金を引くようにそう言った。

 …………え。

「もう待つのも信じるのもやめよう?」
「せんせー待っててもこないよー? かえるとこにかえろー?」
 優しいような穏やかさで微笑みかける。だってあまりにも可哀想だ。
 にこにことマリエ・ホワイト(f32625)も無邪気に笑いかけた。

 なんで。 なんでそんなこと言うの?
 あるじは……あるじはきっと帰ってくるよ。

「来ないよ」
 縋るような思いを否定する。
 アルバの言葉は自分へ言い聞かせるようでもあった。心の中にまだ残っている望みを丁寧に摘み取るように、真実から目を逸らすなと警告をするように繰り返す。
「迎えになんて、絶対来ないよ」
 ぞっとするほど冷たい声だった。
「べすちゃん、おいでー」
 冷たく凍りつくような空気の中で、マリエだけがふわふわと笑う。
 両手を差し伸べ、て、て、て、と近寄っていくのへ。

 きらい……。きらいきらいきらい!
 お前達なんてだいきらい!

 絶叫を上げて精霊獣は牙を剥く。信じていたものを否定されたのだ。当然の反応といえるだろう。
 穏やかな結末など最初から望めないと、アルバは既に諦めていたから。真実を告げることも迷わなかった。
 ただマリエに迫る危機にだけ体は反応する。彼女を抱きしめるように躊躇なくその身を盾にして、精霊獣からの一撃を受ける。鋭い爪に引き裂かれ、腕から鮮血が飛び散った。
「大丈夫、マリエちゃん」
「うん。あーちゃんぎゅってしてくれたから、だいじょうぶー」
「よかった」
 彼女が無事ならこの身など、どうなっても構わない。そう言わんばかりの行動であった。けれど腕の中に匿われたマリエの瞳は血の香りに一瞬妖しい色を帯びて。あんなにも懐かしい思い出は遠い過去になってしまったのだと思い知らされるのだ。

 信じようとして裏切られ、守りたくて守れなくて、あげく巻き添えで師匠に殺されかけて……。
 ――……もう後悔ばかりするのはイヤだ。

 失いたくないと思う気持ちに呼応するように、アルバの体が膨らむように姿を変えて。たちまち白毛の巨狼となったアルバはマリエを守るために立ちはだかる。その背には天使のような翼と、悪魔のような黒い翼が混在し、二つの長い尾が揺れていた。
 飛びかかってくる精霊獣を巨狼は一蹴し、近寄らせまいとする。しかしあまりにも怒りを買った彼を精霊獣達は許さず、次々と襲いかかる。コルノと共に立ち向かいながら、アルバは激しい攻防に身を躍らせた。

「ねえ、べすちゃん、べーすちゃん」
 ベスティアは、もはや誰の声にも耳を貸す様子はない。
 残念そうにマリエは溜め息をついた。
「お話、ぜーんぜん聞いてくれそうにないのー」
 つかまえよーとしてもダメだし、あーちゃんには怪我させちゃうし……。
 ずっとうごいたのに、手がとどかない。
 かえるとこにかえろー……って、よびにきたのに。
「なんだろ……おなか、すいてきた、な……」
 こてん。と首をかしげる。
「……まりぃ、おなか、へったの」
 たべる、かじる……おなかへったら、しかたないもんね?
 あーちゃんがまもってくれるけど、ほらこっちにもきた。
 おいでべすちゃん。だっこしたらやわらかくてーふわふわー。
 前にもこんなことあったかな。わかんないや。
 んー。
 べすちゃん、かじってもおいしくなぁい。
 でもすこしはくーふくなおるからかじる。いなくなるまで、かじかじするもん。
「……」
 巨狼のアルバは光景に瞳を見開く。
 これが一つの結末。こうなると解っていたのに、連れてきてしまった。気づいた瞬間に止めるべきだっただろうか。マリエちゃん。そう呼んだはずの声は獣の唸りとなるばかり。
 戦いを終えて人の姿に戻ったアルバは疲れた様子でマリエの傍に膝をついた。盾となり続けたその体は傷だらけだったから。魔力不足に血を求め狂気に侵されたマリエは嬉しそうに笑った。
「あーちゃん、おいしそー」
「いいよ……おいで。齧らせてあげる」
「かじっていーの? かじるー」
 差し出された腕に口づけて。まるでお菓子を食べる子供のように幸せそうな様子で血をすする。
 魔女(あの人)の残した呪いは彼女を狂わせ蝕んでいく。
 傷の痛みも苦しみもどうでもいい、ただ失われていくことを止められない事実に打ちのめされる。
 結界と浄化の力を施しながら、何度も、何度も。マリエが正気に戻るまで願った。

 まだもう少し僕達に時間を……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年06月27日


挿絵イラスト