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そろそろ夏だけどこの世の水着という水着を爆砕しようぜ!

#UDCアース

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#UDCアース


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 UDCアース世界。極東の島国、日本。
 四季に恵まれたこの国の自然は、その季節の折々で違った表情を人々に見せる。
 そんなこの国に、今年もその季節がやってくる。
 天高く登る陽と、南の大洋から風に乗って運び込まれる湿気。その相乗効果で都市部はサウナもかくやと言わんばかりの環境と化す季節。そう、『夏』の訪れだ。
 文字に起こすとただ過酷なだけじゃねーかという声も上がる気もするが、然に非ず。
 夏の山歩きに海での海水浴、夏の夜を彩る祭事や球児たちの熱い戦いにと。夏という季節は、様々な楽しみにも溢れている季節であるのだ。
 ……で、あるのだが。

「敢えて言おう! 夏なんぞ、クソ喰らえと!」

 どうやら万人が、そうとは思わぬらしい。
 ここは、とある地方都市にあるライブハウス。それなりの規模のハコであるのだがが、昨今のアレやコレで今ではめっきり人の入りも絶えて寂れた、そんなハコである。
 そんなライブハウスのステージ上で、一人の男が声を張り上げる。居並ぶ聴衆達も、『そうだそうだ』と声を上げる。
 ……まぁ、物事の好き嫌いは人それぞれだ。事実、ここ十数年のこの国の夏の暑さは少々……いや、常軌を逸したと言って良いレベルの暑さであるのも確かであるし。

「特に服装! 衣替え? クールビズ? 水着? ……ヒトとしての退化である!」

 男は語る。夏の暑さで纏う衣服を薄くする事の愚を。
 肌を晒せば日に焼かれる。虫に刺されるし、周囲の視線だって気になるだろう。
 そもそもヒトという生き物が文化的な社会を構築する上で、服装という要素は重要な要素であるはずだ。それが無ければ、ヒトはただの毛のない猿でしか無いはずだ。なのに肌を晒す薄着を纏うというのは……自ら退化を選ぶ、愚かな選択であるはずだ。
 成程。男の主張は、ある意味では間違いでは無いかもしれない。
 そういう意見を声高に主張するのも、まぁ自由であるだろう。
 ……だが。

「それに何より、人々が薄着となっては──『邪神の供物とする一般人の衣服』が、無くなってしまうではないか!」

 その意見が『邪教徒』の物であるなら、話は別だ。
 そう。この男は『邪神』を奉じる信徒にして、この場に集まった者達の指導者である。
 彼らは言う。偉大なる邪神を復活させるべしと。その為に、供物を捧げるべしと。
 先にも触れた通り、衣服とは人類文化の基本。言い換えれば、ヒトという生物にとって『最も価値のある物』と言っても良い物である。
 それだけの価値がある衣服である。ならば当然、邪神に捧げる供物としても最大の価値ある物である。
 だが、夏場は衣服が薄くなる。邪神へ捧げるべき供物が薄くなるなど……邪教徒達にとって、到底許容できる物では無い。

「故に今日、我らは動く! 全ての薄着文化を爆砕し、邪神へ捧げる供物を護るその為に!」

 ステージ上で吠える男が拳を振り上げ、告げる。

「手始めに、まずは水着という水着を爆砕する! 目標、街の水着ショップ!」

 征くぞ、同志達よ!
 叫び腕を振り上げる男の仕草に同調する様に。男を囲んでいた聴衆である邪教徒の信徒達も、感極まった声を上げると……何やら大きな荷物を数人がかりで持ち上げて、えっさほいさと掛け声を上げながら運び出していく。
 狙われた街の水着店。その運命や、如何に……!



「お集まり頂きまして、ありがとうございます」

 グリモアベースに集まる猟兵達を、揺れて輝く銀糸の長髪が迎え入れる。
 ヴィクトリア・アイニッヒ(陽光の信徒・f00408)の表情に浮かぶのは、常と変わらぬ穏やかな微笑み。
 ……どうやら今回の依頼は、それほど切羽詰まった様な案件では無いらしい。

「今回皆さんに赴いて頂きますのは、UDCアース世界。日本国の、とある地方都市です」

 季節は晩春。全国的に梅雨入りを迎え、ジメジメとした天気の続く季節である。
 そんな季節であるが、人々の心は前向きだ。梅雨を越えた先にある盛夏と、その季節を彩る日々のイベントに思いを馳せながら、その準備に余念が無いからだ。
 だが、しかし。

「そんな季節を快く思わぬ者もいるようでして。現地組織が、とある邪教徒集団の活動を察知致しました」

 今回の任務は、その邪教徒の活動を阻止する事が目的となります、と。ヴィクトリアが、言葉を紡ぐ。
 猟兵達が赴く事になるのは、とある地方都市にあるライブハウス。そこに乗り込み、今まさに行動に移ろうとしている邪教徒の集団を捕縛するという、実に簡単なお仕事だ。
 ……それなら、猟兵を動かす必要性は薄いのではないか、と。集まった猟兵の口から、疑問が上がるが。

「実は、邪教徒の指導者格の男がどうやらオブリビオンであるようでして……」

 そんな疑問に答えたヴィクトリアの言葉を聞けば、猟兵達も自ずと呼ばれた理由を理解するだろう。
 つまるところ、今回の猟兵達の役割はその指導者格の男の撃破という事だ。
 極論、それ以外の取り巻きである一般人である邪教徒は放置しても構わない。仮に逃げられたとしても既に現地組織に目を付けられている上に、今回はヴィクトリアも現地入りして組織側の支援に動くらしい。逃げ果せる事など、万に一つも出来ないだろう。
 ともあれ、周囲のことを特に気にせず戦闘に集中出来るという事だ。そういった意味でも、簡単なお仕事であると言えるだろう。

「とは言え、相手も備えはあるはずです。それと、指導者の男の手の内までは見えませんでしたので、油断はなさらずに」

 そう言って、他にご質問はありませんか? と、尋ねるヴィクトリア。
 何か聞き逃した事は無いだろうかと確認し……ふと思い立ち、とある猟兵が尋ねる。
 『そう言えば、件の連中は具体的に何をやらかそうとしていたのか?』、と。

「……その。えぇ、と……街にある水着ショップへの襲撃、だそうで……」

 その質問に答えたヴィクトリアの表情は、困惑しきりといった様子であった。
 詳しく聞けば、件の邪教徒集団は『夏の薄着文化』に対して並々ならぬ敵愾心を抱いているのだとか。
 今回彼らは、その薄着文化を物理的な意味で打破する為に決起したらしいのだが……正直言って、何言ってんのか理解が及ばんと言った所である。
 ただ一つ言えるのは、狙われた水着ショップさんにしてみればホントいい迷惑であるという事だけだ。

「何にせよ、邪教徒の活動を見過ごす訳にはいきません」

 皆様の御力を、お貸し下さい。
 丁寧に深く、礼をして。ヴィクトリアは現地に猟兵達を送り出すのだった。


月城祐一
 全国的に梅雨の季節。関東はここ10年で一番遅い梅雨入りだそうで。
 どうも、月城祐一です。とにかくジメジメしてんのが不快ですねぇ……(辟易)

 今回はUDCアース。緩めかつお気軽な感じの依頼。
 邪教徒の集会所に凸ってボコって頂きます。
 以下、補足説明となります。

 第一章は集団戦。敵は、『廻るパンドラ』。
 珍兵器の代表格みたいな見た目ですが、多分無関係なはずです。

 現地に降り立った猟兵達は、そのまま邪教徒達の集会所と化したライブハウスへ突入。戦闘へと移行します。
 戦場は屋内ですが、広さ高さは十分。
 指導者以外の邪教徒(一般人)も蜘蛛の子を散らした様に逃げ去るので、戦闘に差し障りは無いでしょう。

 第二章はボス戦。邪教集団の指導者が相手となります。
 詳細は章の進行時に公開となりますので、ご了承下さい。

 見事任務を達成すれば、第三章は日常章。ちょっとしたお買い物が楽しめます。
 ……これからの時期、水着は必要ですよね?

 暗躍し、決起する邪教徒達。
 猟兵達はその暴発を食い止め、街の平和を守れるか?
 皆様の熱いプレイング、お待ちしております!
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第1章 集団戦 『廻るパンドラ』

POW   :    終末理論
【激しい爆発】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    臨界点突破
【高速で接近し、爆発】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
WIZ   :    革命前夜
【爆発音】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。

イラスト:カス

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




 現地に降り立った猟兵達が、邪教徒の集会所と化したライブハウスの前に集う。
 外装は剥げ落ち、ボロボロだ。遠目から見れば既に廃業した施設の様にも見えるが、締め切られた扉の内側からは意気軒昂盛り上がる空気が漏れ出てくる。
 これが本来の用途で盛り上がっているのであれば何か言う事は無いだろう。だが内部の連中はこれから街へ繰り出して、世に仇を為そうと蠢く邪教徒である。
 そんな傍迷惑な連中の企みを、見過ごす訳にはいかない!

 ──ドンッ!

 封じられた扉を、音も高く蹴破って。猟兵達が突入を敢行する。
 突然の乱入者に、内部の邪教徒達は一瞬呆気に取られた様な表情を浮かべ……己の行動が後ろめたい物である事を自覚しているからか。運び出そうとした大きく重そうな箱を放置して、入り口とは別の非常口から即座に逃走していく。
 騒然とするホール。だが、小物に気を向ける必要は無い。外では現地組織の面々がグリモア猟兵の援護を受けた上で展開している。極論、放置しても構わないとも言われているのだ。
 故に、猟兵達が今気を向けるべきなのは……。

『貴様ら──猟兵か!? 何故、こんな時に……!』

 ステージ上に立つ、邪教徒達を扇動する指導者。オブリビオン以外にはいないだろう。
 細身の男だ。パーカーのフードを頭に被っている為、その表情は判らないが……それでも今まさに動き出そうとしたタイミングを猟兵達に邪魔された事による強い困惑と、それと同量の怒りを抱いている事は、伝わってくるだろう。

『だが、我々が何の備えもしていないと思ったか!』

 だが男は即座に冷静さを取り戻し、懐から何やらボタンを取り出すと。

『まさかこんなタイミングで起動させるとは思わなかったが、致し方あるまい!』

 取り出したボタンを、指で強く押し込む。
 瞬間、響き始める駆動音。音の発生源は……放置された大きな箱か。
 高まる駆動音を響かせながら、箱がゆっくりと開いていく。
 その中から顕れたのは。

 ──ゴゴゴゴゴゴゴ……!

 一対の鉄のタイヤと、それを繋ぎ合わせる太い円柱。
 巨大なミシンボビンと形容出来そうな奇妙なデザインの物体であった。
 ……いや、デザインは確かに珍妙だが。そこに含まれた悪意は、猟兵達に取っても馴染みあるもの。
 即ち、邪神が纏う悪意のソレと同質のものだ!

『往け、パンドラよ! 我らが待望を阻まんとする愚か者を爆砕するのだ!』

 吠えるオブリビオンに応える様に、高らかにエンジンを鳴らしてボビンの群れが動き出す。
 まずはこの奇妙なボビンを打ち破らねばならないらしい。ならば一気に、押し通るのみ。
 猟兵達はそれぞれ武器を構え、迫り来る奇妙な兵器と相対するのだった。
スウォミ・リーデンスベック
ヤドリガミの魔女×サイキックキャバリア、28歳の女です。人間を愛し愛された象嵌の宝石箱の精です。

「せっかくの夏なのよ! 水着を買えないなんて悲劇です! 頑張ります、真夏のリゾートのために!」

でもわたし、激しい戦闘は不得手です。ですからサイキック・ロードでまずそのあたりのものを投げつけて車輪の中央の顔の目潰しをして無力化を狙います。

もしダメだったら、車輪の繋ぎ目…接続部を壊してバラバラにできたら、きっともう動けないわよね?

 多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
よろしくおねがいします!


セフィリカ・ランブレイ
馬鹿が出る季節になっちゃったかー

去年に比べたらマシかな
強制的に水着にするよりは頭いいか
馬鹿相手にシェル姉の出番はないかな
『そう、ね』

(……あれ以来シェル姉とかみ合わないのもあるけど)
魔剣に頼れないなら、それ相応の戦術を培うだけ
…しかしアレ、パンドラっていうか、パンジャンドラムじゃん!

『私あの兵器にいい思い出ないのよね』
そういや、パンドラでなきゃ倒せない邪神相手に伝説の魔剣はパンドラ以下って煽られた事あったね……

【ガジェットショータイム】
にて軽くそして鋭い、伸縮自在のレーザーブレードを工作

刃を伸ばしリーチを補強、速さで詰め寄り攻撃する
ヒット&アウェイであちらの間合いには入れさせてやらない!





 吠えるオブリビオン。高らかに鳴り響くボビンのエンジン音。
 戦いの火蓋が今まさに切られようとしている状況であったが……。

(あー……馬鹿が出る季節に、なっちゃったかー)

 セフィリカ・ランブレイ(蒼剣と姫・f00633)の心は、どこか冷めていた。
 今回猟兵達を導いたグリモア猟兵の予知による水着に関わる案件は、実は過去数度起きている。
 そんな水着案件の内でも特に酷い案件をセフィリカは都合二度に渡り体験しており、『去年に比べればマシ』という達観した心境であったのだ。
 ……事実、『強制的に水着に着替えさせられる』とか言う例の結界に比べりゃどの案件もマシだという気もしないでもないが。

「こんな馬鹿相手に、シェル姉の出番は無いかな?」
『そう、ね。それに私、あの兵器にいい思い出無いし』

 まぁともかく、そんな馬鹿を相手にシェル姉と呼び慕う相棒にして、セフィリカが腰に佩く伝説の魔剣でもある『シェルファ』を抜く必要も無いだろうと呟けば、件の魔剣もそれを是として答えを返す。
 なおシェルファが言う所の『思い出』とは、別件の邪神案件を受けた際の一コマであるのだが。この場で触れる事では無いので、割愛させて頂くとしよう。

(……ま、あれ以来シェル姉と噛み合わないのもあるけどね)

 ともあれ、魔剣を抜かぬと決めたのならば別の手を取るしか無い。
 さてどうするか、と相手を睨むセフィリカの目は……普段の爛漫とした光とは違う、冷徹な意思の光を浮かべていた。

「せっかくの夏なのよ! 水着を買えないなんて悲劇です!」

 そんな冷めた態度のセフィリカとは打って変わって、邪神に向けて真っ直ぐな怒りを示すのはスウォミ・リーデンスベック(ヤドリガミの魔女・f33629)だ。
 スウォミは人に愛し愛された、象嵌細工の宝石箱のヤドリガミだ。そんな来歴を持つ彼女からすれば、愛する人々が陽性の活気を溢れさせる夏という季節を憎み、とりわけ人々の(無論、猟兵達も含めて)心を浮足立たせる『水着』を物理的に排除しようなどと企む邪教徒など、許せるはずがない存在である。

「頑張ります、真夏のリゾートのために!」

 ……ちょっと俗な欲に塗れている感はあるが。それでもやる気十分にスウォミが腕を広げれば、練り上げられたサイキック・オーラが渦を巻いて竜巻を作り出す。スウォミが操るユーベルコード、【サイキックロード】が発現したのだ。
 やる気は十分はスウォミであるが。実は彼女、切った張ったと言った激しい戦いは不得手である。
 そんな彼女が選んだのが、この戦い方だ。サイキック・ロードの効力で敵を強制的に戦場から遠ざける事を狙いつつ、それが成らずともダメージを与えつつオーラの竜巻により周囲の物をぶつけて牽制を図ったのだ。
 竜巻に乗って飛んでいく、空き缶やペットボトル、備品のマイクやDJセットと言ったPA設備。それらが次々にボビンの軸に描かれた顔にぶつかっていくが……。

 ──ボボッ! ボボボンッ!!

 一度、二度と。汽車が上げる汽笛のように、爆発音を響かせたボビンの動きは止まらない。
 飛び来る障害物を跳ね除けて、車輪を回して一直線に。スウォミの小柄な体を圧し潰さんと、迫り来て。
 その速度が、最高速に達する……その直前!

「──シッ!」

 鋭く響く呼気。直後、ボビンは左右真っ二つに両断されて……スウォミの体から逸れて、爆発四散する。
 見れば、スウォミの眼前には刃を斬り上げた姿勢で残身を取るセフィリカが立っていた。
 廻るパンドラが最高速に達するその瞬間を見計らい、セフィリカが一息に距離を詰めて、一刀両断斬り裂いて見せたのだ。

(と言っても、私一人の戦果じゃないけどね)

 ユーベルコードで創り上げた、軽量かつ伸縮自在のレーザーブレードをブンと振りつつ。心の内で、セフィリカが呟く。
 敵は馬鹿で、廻るパンドラとの戦闘経験も過去にあるとは言え。セフィリカの側も、とある事情でその実力に幾らかの枷が掛けられている状態である。
 そんな状況であっても、一刀の下に敵を斬り伏せられたのは、実を言えばスウォミの力による所が大きかった。
 スウォミのユーベルコードによるダメージや、牽制に放たれた障害物により、巨大ボビンはほんの僅かに最高速に乗り切れず……セフィリカの刃の前に、倒れる事となったのだ。
 故に、セフィリカは今の戦果を己一人で挙げた成果であるとは考えない。この戦果はあくまでも共同で得たものだと、そう考えていたのだ。

「すいません、助かりましたわ」
「いやいや、こっちこそ」

 そんなセフィリカの考えと似たような、『助けられた』という思いをスウォミも抱いていたのか。
 頭を下げて礼を言うスウォミに微笑みを返しつつ、セフィリカが再び剣を構える。
 ……そう、まだ戦いは始まったばかり。まだまだこの場には、多数の巨大ボビンこと『廻るパンドラ』が健在なのだ。

「しかし、うん。パンドラっていうか、パンジャンドラムじゃん……!」
「パンジャ……?」

 奇妙なフォルムの敵に、知識の中にある珍兵器の面影を見たセフィリカのツッコミをスウォミがはてと首を傾げる様な一幕もありはしたが。
 二人は即席コンビを組み上げて、迫りくる敵を上手くいなし、勢いを殺し、凌いでみせるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

メリア・アルスト
グルヴェイグ(f30017)と二人で
キャバリア持ち出すのは無理があるから『シールドアーム付きマシンウォーカー』に乗っていくよ

水場という限られた状況だからこそ許せるおしゃれアイテムなんだから、こういうのやめてよね
買い物もしたいし、さくっと片付けちゃおう…といっても、攻撃は相方のグルヴェイグ頼りだけど

●戦闘
マシンウォーカーのシールドで自分とグルヴェイグを【盾受け】で守りながらUCで竜巻でも起こして妨害かな
【集団戦術】のノウハウと【操縦】の技術で軽快に動き回りたいところ
そんな相方との戦闘中の疎通は『サイキックテレパス』を使って直感的に
それじゃ、動きが止まったところをお願いね


グルヴェイグ・ヴォルヴァ
メリア(f29925)と行動を共にしますの
メリアが操縦する乗り物の背中にしがみついて二人乗りして【念動力】で体を固定しますわ

わたくしはメリアに協力しますの
全てが解決したらお買い物でパフェをご馳走してくれるそうなので!やる気全開ですわよ!!!

●戦闘
回避や防御や移動はメリアに任せますの
そして【念動力】を用いて『小型クリスタルビット』を展開
派手に行きますわよ!
とUCの炎のミサイルも混ぜ込んだ【弾幕】を【高速詠唱】で撃ちまくりですわー!

敵のUC対策は『セイズ』による【催眠術】で爆発音を別の音だと思いこませて妨害しましょう
さしあたり、セミの鳴き声と差し替えで





 ──ボッ! ボボボッ!

 響き渡る炸裂音。巨大ボビンのエンジンが唸りを上げるその音だ。
 けたたましく鳴り響くその音は、味方に勇気を、敵には畏怖を与える物。事実、その音に同調するかのように……。

 ──ボボ……ミーン! ミーンミンミンミーン……。

 蝉の鳴き声が、鳴り響く……蝉の鳴き声!?
 これでは、パンドラがその全力を発揮できないでは無いか、と。
 唐突なその現象に、ステージ上に立つ邪教徒の指導者の表情が困惑に染まり立ち尽くす。

「水着っていうのは水場という限られた状況だからこそ許されるおしゃれアイテムなんだから。こういうの、やめてよね」

 そんな男に抗議の声を上げたのは、全長2m程の『マシンウォーカー』に搭乗するメリア・アルスト(は割とノリで生きている・f29925)だった。
 メリアの言う通り、水着とは限られた環境でこそ光るおしゃれアイテムだ。
 そんなアイテムを大手を振って着飾る事が出来る季節を、一般人も猟兵も問わず、皆が楽しみにしているのだ。メリアもきっと、そうだろう。
 それだというのに、『水着ショップ』を破壊しようだなどと……断じて許す訳にはいかない!

「買い物もしたいし、さくっと片付けよう。グルヴェイグ!」
「お任せあれですわ! やる気全開、ですわー!!」

 メリアが呼ばえば、応える声は背後から。メリアと共にマシンウォーカーの座席に二人乗りしていた、相棒であるグルヴェイグ・ヴォルヴァ(目覚めし古代遺物・f30017)の声だ。
 自称一般人であるメリアは、本来サイキックキャバリアの乗り手である。
 だが今回、屋内での戦闘という事でキャバリアは不適かとメリアは判断した。その為、今回はマシンウォーカーを用意したのだが……キャバリアと比べれば、火力の面が些か心許ないのが問題であった。
 その問題を解決するのが、グルヴェイグである。威力の高い魔法やサイキックを操るグルヴェイグがマシンウォーカーに同乗すれば、火力の穴は十二分に埋まるのだ。
 だがそれだけ強力な術を操るグルヴェイグにも、欠点はある。その欠点とはずばり、彼女の燃費の悪さだが……マシンウォーカーに同乗した状態なら、防御や回避は操縦者であるメリアが担当すれば良い。グルヴェイグに掛かる負担も相応に軽くなり、術の行使に専念する事が出来る。まさに、win-winな組み合わせと言っていいだろう。
 ……ちなみに、冒頭の唐突な蝉の鳴き声も、グルヴェイグの手によるものである。彼女の操る魔術『セイズ』によって、巨大ボビンが『爆発音=蝉の鳴き声』という幻覚を掛けられたのがその原因である。
 火力の穴埋めと良い、巨大ボビンの妨害工作と良い。今回のグルヴェイグはまさに八面六臂の大活躍である。
 事件を解決した後で、メリアはグルヴェイグにパフェをご馳走するそうなのだが……一体どれだけご馳走すればこの働きに見合うことになるのか。ちょっとメリアのお財布が心配な所である。

「『小型クリスタルビット』、展開! ──派手にいきますわよ!」

 ともあれ宣言通りにやる気全開なグルヴェイグが展開したのは、魔法と念動力で操るクリスタルビット。そこから放たれる無数のレーザーが、今もミンミンと鳴く巨大ボビンの車体に突き刺さる。
 それだけでグルヴェイグの攻撃は終わらない。ビットを維持したまま魔力を練り上げ、常人には聞き取れぬ程の高速詠唱で炎の矢を創り上げ、撃ち放てば……レーザーが貫いた穴に炎が飛び込んで。

 ──ミミーン!!

 断末魔代わりの蝉の鳴き声と爆炎を上げて、大破炎上。見事な戦果に、グルヴェイグが「どうだ!」と言わんばかりに胸を張る。
 当然、敵の側とて一方的にやられるばかりではない。ミーンミンミンと唸りながら、メリアとグルヴェイグが跨るマシンウォーカーに吶喊するが……。

「動きを、止める……!」

 ゴウッ! と吹き抜けた突風が、その吶喊を押し止める。
 風を放ったのは、メリアだ。体から放出したサイキックエナジーを風と変え、巨大ボビンの動きを牽制したのだ。
 メリアが放った突風の威力は、まるで竜巻の如く凄まじい。その風圧の前に、幻覚状態のボビンの出力では抗えず……前に進むどころか、現状維持が精一杯。
 そうしてその場で足踏みを続ける相手を他所に。

 ──少し動くよ。

 最適な射撃位置を取るように、メリアが機体を操り動く。
 ……戦闘中の意思の疎通は、メリアのテレパスによるものだ。激しい戦闘音が乱れ舞う戦場においては、普通に会話するよりもこちらの方が手っ取り早いし確実だ。

 ──射線確保。それじゃ、よろしくね。
 ──了解ですわ!

 再び放たれた光線と炎が、動けぬ巨大ボビンを無慈悲に残骸に変える。
 順調な戦いぶりを見せる二人。だが重ねて言うが、戦いの後のメリアのお財布は本当に大丈夫なのか……不安はそこだけと言っていいだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎
WIZ

これはまた、面妖な風貌の敵が相手だな(汗

まぁ、滅茶苦茶暑いのは苦手だから、夏より冬の方が好きな俺だけど、だからって薄着文化を物理的に打破しようなんて、横暴すぎる…
まぁ、薄着になるのは凄く良い、と思うんだけどな、俺は(主に視覚的に癒される)

まぁ、そんなよそ事を考えているよりも目の前の敵を倒す事を考えなきゃね

手持ちの飴を媒体に固有結界・黄昏の間を発動
水の疑似精霊を召喚
爆発音に共感だと?危なっかしいだけだろうに(汗

水でも被って反省しなさい!

【破魔】を付与した水弾を多数形成し敵に【一斉発射】し叩き付ける
弱った敵に肉薄し破魔刀で相手の防御を貫通する【貫通攻撃】で一閃!

成敗!


シホ・エーデルワイス
《狐御縁》
燦とは恋人

こめかみを抑えながら

…そんな…お店を一つ爆破したくらいで
長年に渡り築かれた文化が揺らぐとでも?

…多分彼らが信奉する邪神は質より量なのでしょう
燦…発想が変態です

まあ
UDCにより狂気に汚染された邪教徒ですから
まともな思考を期待してはいけませんね


一般人が戦闘に巻き込まれないよう注意

敵の足元に聖銃で鳥もち属性攻撃の範囲攻撃をして足止め

ちょっと燦!
屋内で炎は大丈夫?

爆発に巻き込まれないようオーラ結界で仲間ごと庇い防御

建物が倒壊したら大変ですよ

念の為【復世】で建物を修復


もう
燦ったら…
でも
確かに誰かと水着を買いに行くなんて初めてで楽しみです
(内心、燦はどんな水着が好みか気になっています)


四王天・燦
《狐御縁》
シホとは恋人だぜ

邪神もぴっちり貼り付いていた水着の方が一枚の布に生贄エキスが集約されていて悦ぶと思うぜ?
変態…やべ、発想が狂気感染しかけてるわ

とりあえず一般邪教徒は調教洗脳記憶改竄すれば修正もとい更生できるので逃げ出すまで時間を稼ぐ

アークウィンドふりふり
パンドラに風属性攻撃の衝撃波で横転させるよ
ついでに地形破壊して足場を崩す

邪教徒が外に出たら嬉々としてフォックスファイア乱れ撃ち
爆発音でテンション上がるぜ
引火爆発大火災を見て、炎好きとしちゃあ哄笑しちゃう
だいじょーぶ、炎はアタシの支配下だ燃えろ燃えろー♪

危険域に達したら延焼分も鎮火させる
シホの水着が気になって気づけばやりすぎちゃった☆





『えぇい、何故だ! 何故、我らの大義大望を果たす尖兵であるパンドラが、こうも容易く……!』

 巨大ボビンこと『廻るパンドラ』と猟兵の小競り合いは、猟兵の側の圧倒的優位で進んでいた。
 そんな目の前の状況に、ステージ上の男が苦々しい表情を浮かべて呟きを漏らす。
 彼にとって今回起こそうとしていた騒動は、邪神への供物を護る為の聖戦だ。その為の切り札が通じぬとあっては、そんな表情と呟きが漏れるのも当然だろうか?

「いや、大義大望って……」

 そんな敵の姿に呆れ顔なのは、鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)だった。
 ひりょ個人としては、暑い夏より冬の方が好みである。『夏なんぞクソ喰らえ』という男の主張に、頷きたい気持ちは無いではない。
 だがそれにしたって、夏の薄着文化を物理的に打破しようなどと、いくらなんでも横暴に過ぎるという物である。
 それに……。

「暑さはともかくとして。薄着になるのは凄く良い、と思うんだけどな、俺は」

 正直な所、健全な男としては(視覚的に色々と癒やされる)夏の薄着文化は諸手を挙げて喜びたい文化であるとひりょは思うのだ。
 薄着文化は尊ぶべき。そんな思いを抱く者は、ひりょだけでは無い。

「そーそー。邪神も水着の方が一枚布に生贄エキス(?)が集約されていて悦ぶと思うぜ?」

 ひりょの意見に腕を組んでうんうんと頷くのは、四王天・燦(月夜の翼・f04448)。
 今でこそ本命が出来たが、元来『百合』の気を持つ燦である。水着姿の愛らしい乙女の姿は、大好物である。
 そんな燦の仕草とコメントに、ひりょが振り向き視線を合わせる。

 ──水着、いいよね?
 ──良い……。

 絡み合う視線と視線。

 ──ピシガシグッグッ!

 そこに宿る意思を通い合わせて、何か感じる物があったのか。
 ひりょと燦は互いの拳と拳を重ねて握る。祝え! 新たな友情、同志の誕生である!

「もう、燦ってば。発想が変態ですよ?」
「変態!? ……やべ、発想が狂気感染しかけてるわ」

 そんな戯れる二人の姿に、蟀谷(こめかみ)に鈍い痛みを感じた様な仕草を見せる銀髪の乙女。
 燦の相棒にして本命であるシホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)の呆れと窘めが半々な言葉を聞けば、燦も己を取り戻して頬を叩く。
 まぁ、シホは燦を『そういうヒトだ』と理解っているし、容認もしている。だからまぁ、今は燦に対してはお小言を漏らすだけである(後でお説教がある可能性は否定できないが)。
 ともあれ、問題は……。

「と、言いますか。そんな、お店を一つ爆破したくらいで、長年に渡り築かれた文化が揺らぐとでも?」

 今回の騒動の発端となった、目の前の邪教徒だ。
 連中の目的は、『邪神への供物の守護』。その為の手段が、『夏の薄着文化の爆砕』であるのだという。
 その目的と手段に対して、シホは理解も共感の欠片も無いが。常識人であるシホとしては、一応念の為にと問わずにはいられなかったらしい。

『確かに、店の一つや二つ爆砕した程度で、薄着文化が容易く揺らぐ事は無いだろう』

 そんなシホの問いに答えた男の声は、随分と凪いだ物だった。
 ……あれ、コレもしかして説得が通じるパターンなのでは? と、シホと燦が顔を見合わせて、ひりょも首を傾げるが……。

『──だが! 大事は小事の積み重ね! 千里の道も一歩から! 水着ショップを爆砕し続ければ、やがては薄着文化も崩壊する! 今日はその一歩目なのだ!』

 あ、ダメだ。これ説得が通じるヤツでは無いですわ。
 男の叫びと目の光を見て、三人が同時に悟る。だってコイツの目、完全にイッちゃってる感じがするし……。

「……まぁ、UDCの狂気に汚染された邪教徒ですからね」

 そんな敵の様子に、疲れた様にため息を溢すシホ。
 まぁ、邪神を信奉する手合にまともな思考をしたヤツなど居た試しは無いと、シホと燦を結びつけたあの事件を筆頭とした過去の経験で理解はしていたのだが。それでもホント、邪教徒って連中は度し難い……。

「と、いけない。今は戦闘に……燦っ!」
「応よッ!」

 一瞬思考が深みに嵌りかけた事を自覚して、頭を振ってシホは意識を切り替える。
 そうだ、今はあの邪教徒を討ち倒す務めの最中。その障害である、巨大ボビンを一掃する時である。
 意識をそう切り替えて、シホが叫べば。凛としたその声に燦も意識を引き締めて。

「旋風よ、渦を巻け──!」

 携えた短剣を引き抜いて、一閃。その瞬間、吹き出た疾風がライブハウスで渦を巻く。
 燦が引き抜いたのは、『アークウィンド』の銘を持つ短剣だ。
 妖精の祝福を受けたというその刃には風の加護が宿っており、一振りすれば旋風を起こすのだという。
 燦はその加護を解き放ち、まずは巨大ボビンへの牽制を仕掛けたのだ。

 ──ボボボボボ……!

 そんな燦の牽制に圧され、巨大ボビンの動きが押し止められる。
 だが一体のボビンがエンジン出力を高めるかのように爆発音を響かせれば……呼応するかのように他のボビンをエンジンを鳴らす。
 高らかに鳴り響く爆発音。その音は、共感する者の力を高める魔笛である。

「いやいや、爆発音に共感するとか危なっかしいだけだろうに──うん?」

 その力を肌で感じたひりょが思わず突っ込むが、直後に首を傾げることになる。
 視線の先には、先程拳を交わした同志……燦の姿。剣を振り旋風を巻き起こし、敵を牽制した彼女の様子が、なにやら可笑しい。
 これは、一体……?

「──ふはっ。アハハハッ!!」

 その疑問の答えは、すぐに明らかになった。
 顔を上げ、嗤う燦。その目はテンションが振り切れたかのように、爛々とした光に満ちていた。
 ……パンドラの爆発音は、共感する者の力を高める事には既に触れた。だが、その対象には……実は敵味方の区別は無い。敵であってもその音に共感すれば、力を高める加護を受けられるのだ。
 そう、今の燦の様に。共感を以てその音を受け入れれば。常以上の力を以て、敵にその力を発揮する事が適うのだ。

「狐火よぉ……」

 燦が腕を広げれば、顕れ出たのは無数の狐火。その火勢は常よりも激しく、そして数も多い。
 そんな、猛烈な勢いで燃え上がる火を。寄り集めて、炎と変えて。

「燃ぉえ上がれぇぇぇぇぇッ!!!」

 魔笛を鳴らす巨大ボビンへと、叩き込む。
 ……巨大ボビンは、自ら爆発する事で敵を攻撃する兵器である。そんな兵器に、炎を叩きつければどうなるか。

 ──カッ!!!

 答えは簡単。引火して、爆発して、大炎上である。
 閃光を放ち爆ぜるボビン。その衝撃は凄まじく、炎は飛び散り至る所へと延焼していく。

「ちょっと燦!? 室内で炎は……!」
「だーいじょーぶ、だいじょーぶ! 炎はアタシの支配下だ燃えろ燃えろー♪」

 その光景にシホが思わず声を上げるが、テンション振り切れて上限突破状態な燦は気にも止めないと言った様子。
 いやまぁ、事実この炎は燦の支配下にあるのはその通りだし、延焼も任意で消せるのだが……邪神の加護すら受け入れてテンションがブッ壊れた状態の燦に、その辺りの冷静な判断はちょっと難しいかもしれない。

「ちょっ、コレはマズ……場よ、変われ!」

 そう感じたかは定かではないが、動いたのはひりょ。
 懐から飴玉を幾つか取り出すと、その飴玉を媒介に【固有結界・黄昏の間(コユウケッカイ・タソガレノマ)】を発動させる。
 ひりょのこの業は、無機物を媒介に疑似精霊を召喚する異能である。
 今回喚び出したのは、水の疑似精霊。激しく燃え上がる炎を打ち消す様に。

「水でも被って、反省しなさい!」

 どこかで聞いた事があるようなセリフと共に、手当り次第にと言った勢いで水弾を打ち込んでいく。

 ──ところで。皆さんは、『焼入れ』という技術はご存知だろうか?
 ざっくり簡単に説明すると、金属を高温で熱し、それを更に急速で冷ます事で硬度や耐摩耗性などの強度を強化する処置の事である。
 だが、そんな焼入れにも欠点がある。この作業は実に繊細な作業であり、少しでも雑な事をしてしまえば加工された金属の剛性を著しく落とすことにも繋がりかねないのだ。

 で、何が言いたいのかと言うと……目の前の状況に話を戻し、答えとしよう。
 燦の炎で熱せられたボビン(金属製)に、ひりょの打ち出した水弾(低温の水)が浴びせかけられた事で、偶然にも『焼入れ』と同じ状態が発生したのだ。
 当然、その状況はひりょの意図した物ではない。偶然に偶然が重なった出来事であり、当然そんな状況であれば、繊細な焼入れなど到底不可能。
 湯気立つボビンは、その素材である金属を著しく劣化させられて……。

 ──ビキッ、ピキキ……バキィッ!!

 遂に自重にすら耐えられなくなり、罅割れ、砕け、倒れて崩壊していく。
 自らの意図していなかった形での結末に、ひりょが思わず戸惑い目を見開くが……。

「──成敗!」

 戸惑いは、ほんの一瞬。『細けぇこたぁ良いんだよ』の精神で、勝利宣言である。
 そんなひりょの勝利宣言に、ヒートアップしていた燦の頭も冷えたのか。

「……っと、いっけねー。シホの水着が気になりすぎて、やりすぎちゃったぜ☆」

 口の端から舌をペロッと覗かせて、『やっちまったぜ』と反省(?)のポーズである。

「もうっ。本当に、燦ったら……」

 そんな愛すべきヒトの態度に再び蟀谷を押さえるシホであるが、今の一連のゴタゴタで建物が崩壊しては大変だと。念の為にと準備していたユーベルコードで建物の保全に余念がない。
 彼女のその行動が、今後もちょっとばかし(?)やりすぎてしまう猟兵の助けになったりするのだが……そこに触れるのは、今ではなかろう。

(でも、うん……)

 柔らかな光で煤けたホールを照らし復元しつつ、シホは思う。
 邪教徒が水着ショップを狙うとそう言ったのだから、近くに水着ショップがあるのだろう。
 無事に務めを果たす事が出来たなら、仲の良い友と連れ立って水着を見に行くのも悪くないかもしれない。
 ……直近には水着が必要なイベントが迫っている事だし。新しい物は、必要になるはずだ。

(誰かと水着を買いになんて初めてで、ちょっと楽しみですね)

 ほんの少しだけ、心を浮き立たせつつ。同時に、隣の想い人がどんな水着が好みなのかと悩みつつ。
 シホはその力を振るい、建物の保全に力を注ぐのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルトリウス・セレスタイト
邪神のセンスは理解しがたい

戦況は『天光』で逐一把握
攻撃には煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し阻み逸らし捻じ伏せる
全行程必要魔力は『超克』で“世界の外”から常時供給

絢爛を起動
起点は目の前の空気
破壊と因果の原理を以て戦域の空間を支配
範囲内全てを隙間なく破壊の原理の刃で斬断する
因果の原理を以て「オブリビオンとその武装・行動」のみを討つ

終焉へ導くのは世界より古き、即ち世界を編んだ理
飛来するのではなくその場を直に絶つ斬撃が隙間なく同時に瞬刻で現れる
俺と同じモノでないのなら受けるも躱すも不可能。一切逃さず斬滅するのみ

※アドリブ歓迎


サブリナ・カッツェン
●WIZ
【太陽の家】
随分とまぁ、しょうもない高説を垂れる邪教だこって
『ここは邪神の驚異に晒されているが、戦火が絶えないクロムキャバリアとは違い平和そのものだ。平和であればこそかも知れんな』
そんなもんかね
んで、この広さだとアイリーゼで暴れるのは無理そうだな
『だが敵さんはお構いなしの様子だぞ、サブ』
へっ、あんなキャバリアもどきにやられるかよ

【瞬間思考能力】で似ているキャバリアと適合すりゃあ、相手は自爆型か
『下手に攻撃すると誘爆の可能性は大。ローストキャットは避けられないな』
んなら『サイキック・ロード』で爆発する前に躯の海へご退場願うか
拒まれたらそれまでだが身の安全の為、可能な限り被害を抑えねぇとな





『──今日はその、一歩目なのだ!』

 とある猟兵の問いに、イッた目で叫ぶ指導者の男オブリビオン。
 まぁ継続は力なり、という格言もあることだし。言ってる事は、日常生活にも活かせる大事な事ではある。
 とは言え、だ。

「随分とまぁ、しょうもない高説を垂れる邪教徒だこって……」

 頭頂部に主張するネコのような大きな耳をヒクヒクと動かしながらその叫びを耳にしたサブリナ・カッツェン(ドラ猫トランスポーター・f30248)の胸には、当然その主張が響くことは無かった。
 なにせ、アレが目指すのは『薄着文化の破壊』などというしょーもない事である。その為の手段だって、一般人を混乱に巻き込む禄でも無い手法である。根っからの商売人であるサブリナにとって、その主張に頷ける要素など何一つ無い。只々、呆れるばかりであった。

『ここは邪神の脅威に晒されているが、戦火の絶えないクロムキャバリアとは違い平和そのものだ。あの主張も、平和であればこそかも知れんな』
「ふぅん。そんなもんかねぇ……?」

 そんなサブリナのボヤキに言葉を返したのは、サブリナが連れたタマロイドと呼ばれる小型の球形猫型アドバイザーロボット。名を、『MK(ミーケー)』と言う。
 ミーケーはサブリナの助言者であり、彼女が駆るサイキックキャバリア『アイリーゼ』の外部端末モジュールでもあるが……。

「んで、やっぱりこの広さだとアイリーゼで暴れるのは無理そうだなぁ」

 今回、サブリナはその愛機を持ち込んではいなかった。屋内での戦闘になる事を事前に把握していた為、全長5mの鋼の巨人で戦闘を行うには厳しいだろうと予測していたのだ。
 その予測は、どうやら間違いではなかったらしい。建屋自体がボロボロで、変に激しい戦いを繰り広げれば建物ごと崩落……という事態もあり得なくも無い程だ。

『だが敵さんはお構いなしの様子だぞ、サブ』

 しかし、そんな配慮も敵にはどうでも良いことなのか。ミーケーの言う通り、敵の巨大ボビンがサブリナへと車輪を向ける。

 ──相手は自爆型か。

 瞬間、サブリナの頭に過るイメージ。極限まで拡大した『瞬間思考能力』が、敵の特徴を見事に捉える。
 敵は機械じかけの、いわば『キャバリアもどき』。その特徴を取り纏めれば、自爆型と言えるタイプに分類される。
 そんな相手に下手に近づき手を出せば、諸共誘爆する可能性は否定できない。

『ローストキャットは、避けられないな』
「だな。ンなら──!」

 同じ推測をミーケーも立てたのか。諧謔混じりのその言葉に頷きながら、サブリナが掌を迫りくるボビンへ向ければ……彼女の体の内に宿るサイキック・エナジーが海練を上げて、巨大ボビンへと襲い掛かる。
 サブリナが放ったその力の名は、【サイキック・ロード】。先程別の猟兵が使用した異能と同種の力である。
 その効果も、同一だ。敵を強制的に戦場から遠ざけ、それを拒否すればダメージを与えるという物であり……。

(骸の海へのご退場は、拒まれるか!)

 その効果は、サイキックの竜巻に駆体を軋ませながらも迫るボビンの姿が示していた。
 即ち、敵を退場に追い込む事は叶わず、ダメージを与えるに留まったという事である。
 敵にダメージを負わせる事は、出来ている。しかし決定打には至らない。これでは、敵の体当たりは防げない。

「だからローストキャットは、御免だっての──っ!」

 叫びながら、武器を取り出すサブリナ。
 だが次の瞬間。サブリナの表情が、驚きに染まる。

 ──ガッ! ギギッ……!

 まるで『不可視の刃に切り裂かれた様に』、迫りくるボビンが両断されて。一度二度と、軽い爆発を起こして鉄屑へと変じたのだ。
 一体何が、と。周囲を見渡すサブリナの目が、鋭い目でこちらを……いや、巨大ボビンを睨む男の姿を捉える。

(終焉へと導くのは世界より古き、即ち世界を編んだ理)

 そこに居たのは、研ぎ澄まされた刃の様に隙の無い、細身の男性猟兵。
 名を、アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)。世界が構成される前の法則『原理』を操る、異能の猟兵である。
 万象を見通す全知の力で、アルトリウスは戦況を把握していた。サブリナの力が決定打には僅かに及ばぬ事もまた、把握していた。
 その穴を埋めるべく、彼は動いた。目の前の空間の無機物である『空気』を媒介に、破壊の原理で構築された刃を生成。傷つきながらも迫りくる巨大ボビンに重ねる様に出現させたのだ。
 その斬撃を躱すのならば、アルトリウスと同質の力が必要だが……当然、巨大ボビンにそんな力などあるはずもない。
 ただ一方的に、刃に斬り裂かれて両断されるのみである。
 ……無論、それだけの強力な力を振るうにはそれなりの代償も必要だ。だが必要な魔力は、アルトリウスの原理の力で『世界の外』から調達可能だ。
 その佇まい同様、アルトリウスの力には一片の隙も無し。完全無欠とも言えるその力で、アルトリウスは一瞬で戦場を支配してみせたのだ。

「サンキュー、助かったよ」

 感謝を告げるサブリナの声に、一つ小さく頷いて。アルトリウスは鋭いその目で、改めて敵の姿を睨む。
 ……見れば見るほど、珍妙な敵だ。こんな形の兵器など、常人のセンスでは想像も出来ぬだろう。想像できるとしたらよっぽどの天才か、はたまたネジが2~3本抜けた奇才かの、どちらかだろう。

(……邪神のセンスは、理解し難い)

 どちらにせよ、アルトリウスのセンスとは噛み合わない存在だ。
 そもそも敵は、邪神の生み出した兵器である。遠慮する必要など、微塵もない。
 冷たく、そして静かに。アルトリウスは、敵を斬滅し続けていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シャルロッテ・ヴェイロン
いや、水着ショップ襲撃って…(汗)。
ここにいるイディオットどもは水着に関する嫌な思い出でもあったのでしょうか…?

あー、念のため聞いておきますが、この建物に多少被害が及んでも問題ないですよね?――問題なし?わかりました、じゃあ早速いきましょう。

てなわけで、カモン、ホワイトラビット(キャバリア)!
召喚したら早速乗り込み【操縦】、そして【指定UC】で【情報収集】のち強化しましょう(攻撃力重点)。
そして爆発される前に片っ端から【ダッシュ】で接近して、ビームソードで【切断】していきましょう。
――逃げ遅れた邪教徒?まぁ、巻き添えで【蹂躙】しても問題ないってことで(ぉぃ)。

※アドリブ・連携歓迎





 爆炎が、水弾が、突風が、剣閃が。猟兵が振るう多種多彩な力が、邪教徒の兵器を打ち崩していく。
 そんな光景を眺め見て、シャルロッテ・ヴェイロン(お嬢様ゲーマーAliceCV・f22917)が小首を傾げる。

(ここにいたイディオットどもは、水着に関する嫌な思い出でもあったのでしょうか……?)

 連中が邪神の信徒で、色んな意味で話が通じない手合である事はシャルロッテも理解している。
 だがそれにしたって、水着ショップ襲撃とは。連中のやる事なす事がこう、実にアレ過ぎて……思わず表情を不快げに歪めるシャルロッテである。

「……こんな連中に、手加減する必要はないですね」

 頭痛が痛いみたいな心境に陥りかけた所で、頭を振って気分を切り替える。
 グリモア猟兵は、言っていた。一般邪教徒は蜘蛛の子を散らすように逃げていくだろう、と。
 事実、その言葉の通りに一般邪教徒は逃走済み。この場には猟兵と、ステージ上のオブリビオンと、ホールを元気に薙ぎ倒される巨大ボビンばかりである。
 この状況なら、『建物の損壊』も特に気にする必要は無いだろう。

「じゃあ、早速いきましょう──カモン、『ホワイトラビット』!」

 音も高らかにパチンと指を鳴らせば、顕れ出るのは巨大な人形。
 全長5mの鋼の巨人。人類を新たな進化に導くとされる、科学技術の粋が詰まった決戦兵器、『キャバリア』。その最精鋭機である。
 乗り込みシステムを立ち上げて、ゆっくりと機体を立ち上がらせれば……頭部がギリギリホールの頭上を掠るが、気にしない。何やらこちらを見て慌てた様な猟兵の姿もモニターの端に映っているが、気にしない。
 何故なら、コレは戦いで。戦いとなればゲームであっても命のやり取りであっても無慈悲に全力を尽くすのが、シャルロッテ……凄腕ゲーマー「AliceCV(アリス・セ・ヴィ)」なのだから。

「【PROGRISE:INSTALL(プログライズ・インストール)】。目標確認、データ解析──あの敵には、このプログラムが有効ですね!」

 敵の情報を収集し、解析。そうしてその上で、自機に最適な強化プログラムをインストールするプログラムを走らせる。
 敵の攻撃手段は実にシンプル。突っ込んで、自爆する……そんなタイプの敵である。
 それならば、こちらの対処法もシンプルに。

「やられる前に、片っ端から!」

 即ち、爆発される前にたたっ斬る。所謂、先手必勝というヤツである。
 元々、高速戦闘に特化したカスタムキャバリアであるホワイトラビットである。その能力を先鋭化させる強化プログラムとの相性は、抜群だ。
 ホワイトラビットがその腕を振るえば、携えたビームソードが巨大ボビンを両断し……ついでに壁を、床を、天井を。ビームの熱で焼き切っていく。その度に上がる悲鳴染みた声が上がったり上がらなかったりするが、やっぱりシャルロッテは気にしない。
 もし仮に、この場に一般邪教徒が居てもシャルロットは気にしなかっただろう。むしろ巻き添えにするかのように蹂躙しても、『問題なし』と判断していたはずだ。
 そういった意味では、速攻で逃げの一手を打った一般邪教徒の皆さんは先見の明があったと言えるのでは無いだろうか?
 ……まぁ、無事に逃げ出せるはずも無いのだから、今死ぬか組織に捕まるかの違いでしか無いのだが。

「次! 更に、次ィッ!!」

 超高速で動き回る機体を制御しつつ、コクピットの中でシャルロッテが吠える。その度に斬り裂かれたボビンが宙を舞い爆ぜて、破片がホールに散らばっていく。
 愛機を駆るシャルロッテはこうして、無慈悲に敵を斬り裂き続けたのだった。

 ……なお、ここで破損したライブハウスの建物は、他の猟兵の力で何とか元に戻った事をお知らせしておきます。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・クイン
◎クロエ(f19295)を水着買いに行きましょって誘いに来たんだけど
いっそ現地に到着したらばっくれて水着買いに行かない?
は?水着ショップ襲撃されるからどうしようもない?
ちゃんとやるわよキチガイ信者をやっつければいいんでしょ!

ひあああああ!?なにあのボビンの群れ!!
ななななにこっちに向かってきてんのよ水着ショップ襲撃してなさいよ!

慌ててクロエを盾にして、深呼吸
よよよ、よーし、反撃してやるわよオバケポピン!
クロエ、せーので弾き返して、勢いつけてあっちに転がすの!

UC【ガラスのラビリンス】
迷宮をレースのコースみたいに変形させてポピンをコース上を走らせてやるの
勢いつけてヘンタイ信者たちにぶつけてやるわ


クロエ・アスティン
アリス様(f24161)にお買い物に誘われてやってきました。
去年は邪神に酷い目に合わされていましたからね……アリス様。
って、サボるのはダメでありますよ!そ、そんなことしたらヴィクトリア様も困ってしまうであります。

転がってくるボビンに目を丸くしつつ、相手の傍まで転がってきて爆発するなんて……なかなか理にかなった兵器でありますね。
自分が前衛になって転がってくるパン……ドラ?を【無敵城塞】で受け止めてアリス様を守るであります!
そして、アリス様の合図で無敵城塞を解除したら、せーので「シールドバッシュ」を使って弾き飛ばします!

※アドリブや連携も大歓迎





 猟兵達の猛攻の前に、巨大ボビンが次々に倒され爆散していく。
 敵の数は、もう片手で数える程も無い。遠からず障害は片付かれ、ステージ上の邪教徒の指導者との戦いとなるだろう。
 ……しょーもない内容の今回の依頼だが、実はこの場には猟兵全体を見ても最精鋭と言える層に位置する者が何人かいる。そんな者達に取り囲まれれば、それほど強そうにも見えないステージ上の男など、まさに鎧袖一触と言った勢いだろう。
 故に……。

「ねぇ、クロエ。もうばっくれて水着買いに行かない?」

 アリス・クイン(ビビり屋毒吐き姫・f24161)としては、煩わしい事はもうぜーんぶお任せして、楽しい事だけして帰ろうかという気分であった。
 いやまぁ確かに、今もホールで大暴れ中な猟兵達と比べれば、アリスは気質的な意味で直接的な殴り合いには向かないタイプだが……。

「ちょっ、アリス様っ!? サボるのはダメでありますよ! そんな事をしたら、ヴィクトリア様も困ってしまうでありますよ!」

 だとしても、サボるのは良くないとクロエ・アスティン(ハーフドワーフのロリ神官戦士・f19295)に諭される。
 クロエの言葉は、ぐうの音も出ない正論である。一度お仕事を受けた以上は、完遂するのが責任という物。辞退するにしても、最低限の筋は通さなければならないのだ。それなのに、何も言わずにばっくれようなどと……流石にそれは、世間体的にマズイにも程があるだろう。
 それに、だ。

「それにアリス様。ここでサボって水着ショップに行っても、結局連中が水着ショップ襲撃する可能性がある以上は遅かれ早かれやり合うことになるのでは……?」

 クロエが言う通り、邪教徒集団の狙いは『水着ショップの爆砕』だ。
 そんな野望を胸に抱いている連中である。この場にいる指導者を猟兵達が取り逃がすとは思えないが……万に一つ、億に一つという事もある。
 アリスが水着ショップで吟味しているその最中に襲撃される、などという可能性は否定できないのだ。

「むっ、ぐ……! わかったわよちゃんとやるわよあのキチガイ信者をやっつければいいんでしょ!!」

 そんなクロエのお小言を、グギギと逆ギレしながらアリスも諾とする。
 ……余談だが、昨年のアリスは水着に関してトラブル塗れであった。邪神に目を付けられて超極小マイクロビキニでひと夏を過ごす羽目に陥るわ、別の邪神案件ではハート型ニプレスにIバックショーツというエゲツないにも程がある水着(?)を着せられるわ。もう本当に、散々な夏であったのだ。
 そんなアリスであるからして、今年の水着に掛ける思いは一際強い。『今年こそは!』と、まさに全身全霊な意気込みなのだ。
 それなのに、邪神関連でまーた邪魔される可能性を残す訳にはいかない。楽しい楽しい夏を過ごす為に、ここで連中を根こそぎ駆除しなければ……!

「ひっ!? ぴゃぁああああ! こ、こっち来たぁぁぁぁっ!?」

 と、決意を新たにするも。そのアリスの決意はゴロゴロとこちらにやってきたボビンの姿にしおしおと萎む。
 ボビンの姿は、一体のみ。どうやら最後に残った個体であるらしい。
 だがたかが一体、されど一体。ビビリのアリスにとっては、理解不能な珍兵器のその姿は恐怖の対象である。
 そんな兵器が、アリスの悲鳴に触発されたようにボボボン! とエンジン音の唸りを上げれば……。

「ななななにこっちに向かってきてんのよさっさと水着ショップ襲撃してなさいよ!」
「アリス様……」

 アリスは体を震わせて、クロエの背中に隠れるばかり。どうやらクロエを盾とするつもりらしい。その上で逆ギレ気味に口撃は続けるアリスのその残念な姿に、クロエの口から溜息が溢れる。
 まぁ、仲間を護るのは戦女神の信徒たる者の務め。クロエとしては敵の眼前に立つ事自体に否はないので、そこはまぁヨシとして。

(……中々、理にかなった兵器でありますね)

 唸りを上げる敵の姿を観察する。
 敵の側まで自走して、自爆する邪教徒が生んだ珍兵器。その運用法自体は、中々理にかなったものだとクロエは思う。威力の方も、一般人や建物相手とするならば驚異的と言えるだろう。
 だが、『生命の埒外』である猟兵を相手に回すには……些か、不足!

「──来い、であります!」

 足で床を確りと踏みしめ、自慢の大盾を構えるクロエ。自身の体を不壊の要塞と変える、【無敵城塞】の構えである。
 その姿を、挑戦と受け止めたか。ひときわ強く、巨大ボビン『廻るパンドラ』がエンジンの唸りを高鳴らせると……。

 ──グオン!

 と、急加速。一息でクロエとの距離を詰め、構えた盾に正面から体当たり。
 ガギッ、と鳴る鋼の音。手に、体に、足に、クロエの五体にずっしりと響く重み。だがこの程度なら、何という事は無い。
 敵の攻撃の、本命は……!

 ──カッ!!

 この後の、爆発なのだから。
 白に染まるクロエの視界。吹き抜ける灼熱の爆風が鎧を熱し、僅かに剥き出しとなったクロエの白い肌を焼く。
 しかし、クロエは狼狽えない。痛みに怯むこともない。戦女神の信徒として、友人を護るために──!

「戦女神様。自分に、力を──!」

 この場で退く事は、断じて無い!
 やがて光が消えて爆風が収まれば、そこに立つのは僅かな火傷をおっただけのクロエとその背に護られたアリスの姿。巨大ボビンは力を喪ったのか、クロエの盾に寄りかかった様な状態だ。

「よよよ、よーし! 反撃してやるわよ、バケボビン! クロエ!」
「はい、でありますっ!」

 そんなボビンの姿に意気をあげてアリスが叫べば、クロエがグイッと盾に力を入れてボビンを押し出す。
 転がりだす巨大ボビン。気づけばその両脇に、透明な壁があることに気づくだろう。
 この透明な壁は、アリスが創り出した【ガラスのラビリンス】によるものだ。本来戦場に迷路を作り出すその異能に、アリスは少々手を加えて……ボビンを誘導するように構成した、レースコースとして構築したのだ。
 スタート地点は、クロエの盾。では、そのゴール地点は……。

「このまま勢いをつけて、ヘンタイキチガイ邪教徒にぶつけてやるわ!」

 ステージ上に立つ、邪教の指導者以外に無い!
 いけー! と歓声を上げるアリス。その後押しを受けてボビンは少しずつ加速して、そのまま一気にステージ上に駆け上がり。

『パンドラ!? 何故こっちに──!?』

 指導者の目の前に飛び出すと。

 ──カッ!!

 勢いよく、爆発四散した。どうやらコースを走った事で、勢いと爆発力を取り戻したらしい。
 モクモクと煙る、ステージ。並の人間なら、今の爆発で確実にお陀仏だ。
 だが、相手は推定オブリビオン。多少の手傷はあるかもしれないが、そのまま倒れるという事は無いだろう。
 煙が晴れるその時こそ、決戦の幕が上がる時。そんな予感を感じながら、猟兵達はステージを凝視していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

御狐・稲見之守
英国珍兵器は[UC狐火]で爆破処分とす。
……あ、プレイングが雑?
こんなん相手したってつまらんし。

[呪詛][催眠術]よしよし邪教徒連中の云い分はよくわかった。
それではまず連中が先立って邪神の供物に衣服を捧げてもらおうか。
というわけで、ほれ脱げ。
あーそこの見るからにプライド高そうで
如何にも教えに殉じますみたいなツラして偉そうにしてる女。
Do it(やれ)

ワシ思うんじゃよ。
真に尊きは服を脱ぐ時にこそあるって。
服の裾からみえる肌は雲間からのぞく太陽の光の如く。

あ、脱ぎ終わったら帰っていいゾ?





 ライブハウス内で、巨大ボビンが殲滅されてステージ上が煙に包まれたその頃。
 建屋の裏路地では、脱出した一般邪教徒の面々が乱れた息を整えていた。

「も、もう大丈夫だよな?」
「えぇ。しかし、なんで情報が漏れて……?」

 息を整えながらも、一般邪教徒達が言葉を交わす。
 彼らの頭にあるのは、如何にしてこの場を上手く逃げ切るかという事。そうして何とか逃げ切って、邪教の教えをなんとしても残さねばという使命感だ。
 故に、言葉を交わしたのはほんの一瞬。冷静になれば、今はそんな事をしている暇は無いという事に気付き……即座にその場から動き出そうとした、その瞬間。

「おっと。『全員、その場で止まっておれ』」

 響いたその声に、動き出そうとした足が止まる。
 いや、動かないのは足だけではない。まるで金縛りにあったかのように、五体が言うことを聞かないのだ。
 そんな状態ではあるが、一人の一般邪教徒(見るからにプライドが高そうで、如何にも『教えに殉じます』みたいなツラをしている女だ)が何とか視線を響いた声の方に向ける。そこに居たのは……。

「こ、ども……?」
「ふむ、ワシを子供と言うか。まだまだワシも捨てたもんじゃないようじゃナ?」

 ふふーん、と言った様なドヤ顔を浮かべる小柄な女。御狐・稲見之守(モノノ怪神・f00307)の姿がそこにはあった。
 ライブハウスでの、巨大ボビンの掃討戦。だがそこに投入された猟兵の数は、ぶっちゃけ過剰な数であった。
 故に稲見之守はそちらは他のものに任せて、自身は邪教徒達の捕縛のお手伝いを買って出たのだ。
 ……あとあんな某国風珍兵器モドキの相手とかつまらんし、というのも理由の一つであったりするのだが。

「さて、さて……お前達の教義は、『邪神に衣服を捧げる』じゃったか?」

 動けぬ邪教徒達(稲見之守の呪詛と催眠術による効果であった)の姿をジロジロと眺める稲見之守。
 稲見之守は、思うのだ。『教義を説く時は、まずは自ら模範を示せ』、と。教義を実践出来ずして何が教義かと、そう思うのだ。
 それなのに、目の前のこの連中は……全員きっちりと、衣服を上下着込んでいる。
 これは、明らかに教義上の怠慢と呼べる事態である。これでは自身らの主張を世に広める事など、出来るはずもない。

 なので、稲見之守はちょっとしたお手伝いをする事した。

「まずは先立って、邪神の供物に衣服を捧げてもらおうかのぅ……」

 ほれ、脱げ。瞳を怪しく輝かせ、言葉に威圧感を漂わせ、稲見之守が言葉(呪詛)を紡ぎ出す。
 呪詛と催眠術に一家言を持つ稲見之守の言霊である。一般人程度に抗う術などありはしないが……多少なりとも邪神の空気に触れているのか、邪教徒達の魂が僅かに抵抗の構えをみせる。
 ……が。稲見之守の力の前では、そんなもん『金魚掬いのポイ』くらいの耐久力でしか無い。

「あー……そこの『見るからにプライド高そうで、如何にも教えに殉じますみたいなツラして偉そうにしてる女』、お前じゃお前」
「……えっ、私?」
「そう、お前。Do It.( や れ )」

 爛々と輝く稲見之守の瞳に見竦められて、『見るからに以下略』な女がビクリと震えると……ゆっくりと、ホントにゆっくりと、着る衣服を脱いでいく。
 そんな女の様子に満足気に頷きながら、稲見之守は更に思う。真に尊きは、服を脱ぐその時にこそあるのだ、と。
 衣服に隠された肌。その肌が、服の裾から恥ずかしげに露わになったその瞬間は……まさに雲間から覗く太陽の光の如く眩いものである、と。
 それに比べれば、やれ全裸だやれ着衣だと……風情が足りんわ、風情が。

「あ、脱ぎ終わったら帰っていいゾ?」
「や、帰さんで下さい。検挙しなきゃならんので……」

 服と言わず下着と言わず、全てを脱いで周知に顔を染め上げる『見るからに以下略』な女の姿をチラと見て指示を出す稲見之守に、飛んできたツッコミは現地組織のエージェントのもの。
 気づけば周囲には現地組織の面々が集結しており、一般邪教徒達にお縄を掛けていた。一部の物は脱ぎ散らかされた衣服を回収し、丁寧に折り畳んでも居る。
 ……邪教徒の検挙現場とは思えない、何ともシュールな絵面であるが。まぁ、後は任せても大丈夫だろう。

「んじゃ、ワシはあっちの方に行くでナ」

 後はよろしくー、と。ヒラヒラと手を振って、稲見之守が去っていく。
 彼女がちゃんと戦場に戻るのかどうかは……まぁ、その時に判るだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『間違った方向のエリート狂信者』

POW   :    素晴らしき強制脱衣テク
【邪神の為、己の為、漢達の夢の為という思い】を籠めた【神業とも呼べる超人的な高速脱衣テク】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【衣服(場合により鎧や装甲)】のみを攻撃する。
SPD   :    その気になったら空だって飛んでみせる
全身を【まだ俺はこんな所で止まれないとかいう思い】で覆い、自身の【衣服への熱い執念と執着】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
WIZ   :    高速強制着衣テク(衣装内容は任意)
自身の【趣味の衣服を着させて脱がしたいという欲求】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。

イラスト:森乃ゴリラ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はフィーナ・ステラガーデンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




 猟兵の手によるパンドラ返しを受け、ステージ上に立ち込めた煙。
 その煙が、少しずつ晴れていき……。

『ぐぅ……! まさか、パンドラが全滅するとは。その上、逆手に取って……ええい、忌々しい猟兵共め』

 そこに立つのは、指導者の男。
 分かってはいたが、やはり今の一撃で倒す事は出来なかったらしい。
 とは言え、完全に無傷という訳でも無いようで。纏う衣服は煤け、肌には火傷の痕も残っていた。

『だが、俺はまだ倒れる訳にはいかん。邪神復活の妨げとなる、薄着文化を打破する為に──』

 そこで一度、男が言葉を区切る。
 そうして、強い覚悟を示すかのように、叫ぶ。

『──何よりも、『漢の浪漫』であり脱衣文化の為に! 俺は、負けられん!』

 ん? んんん???
 居並ぶ猟兵達の頭に、『コイツ今何言った?』と、無数のクエスチョンマークが浮かぶ。
 ……いや、なんか深く突っ込んでいくと頭が痛くなりそうだ。色々考えるのは、ヤメておいた方が良いだろう。
 とりあえず言える事は、目の前のこのオブリビオンをブッ倒せば良いと言う。ただそれだけだ。

『往くぞ、猟兵。お前達の衣服も、俺の脱衣テクの前では無意味と知れ──!』

 腕を振り上げるオブリビオン。その指先がモゾモゾと意味深に動く。
 ……女性猟兵達の背に悪寒が走る中、オブリビオンとの戦いが始まろうとしていた。

 ====================

●第ニ章、補足

 第ニ章はボス戦。
 邪教集団の指導者、『間違った方向のエリート狂信者』が相手となります

 戦闘について、特に触れる様な点は特にはありません。
 戦場も特にギミックがあったりはしませんので、お気になさらず。
 油断すると多少脱がされたりする可能性がありますが、基本的に描写はコメディ寄りとなるはずです。ご了承下さい。

 巨大ボビンを打倒し、遂にオブリビオンが戦場に立つ。
 猟兵よ、色々アレな相手を無慈悲に叩け!
 皆様の熱いプレイング、お待ちしております!

 ==================== 
アルトリウス・セレスタイト
戦況は『天光』で逐一把握
攻撃には煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し阻み逸らし捻じ伏せる
全行程必要魔力は『超克』で“世界の外”から常時供給

魔眼・封絶で拘束
行動と能力発露を封じる魔眼故、捕らえればユーベルコードも霧散する
上がった能力も元通り。徒労だったな

「瞳に魔力を溜め、一度の行使に全力で注ぎ込み起動」という工程を『刻真』『再帰』にて無限に加速・増幅・循環
常に最大威力の拘束を加え続け多重拘束で封殺する

運動は止まらんので呼吸は可能だが発語は不能だ
苦情は受け付けんぞ

捕らえたら拘束を継続しつつ打撃で対処
纏う原理を無限に廻し、無限量の圧を乗せて撃ち込む

※アドリブ歓迎


スウォミ・リーデンスベック
ううう、なんだかとっても嫌な予感がします……
脱衣文化とか脱衣テクって何ー!?
でも、目指せ真夏のリゾート! オブリビオンに負けてる場合じゃありません!

それに、わたし思ったんです。
ヘンなことされる前に無力化しちゃえばいいんですよね!(にこ)

でも直接攻撃するのはちょっとお役に立てそうもありません。
なので、みなさんを援護します。

【錬成カミヤドリ】で自分の本体の宝石箱をたくさん作ってぶつけて、あちらの方の気を引いて集中を削ぎます。
角があたると痛いんですよ? わたしの本体。

こんなにたくさんの猟兵さんがいるんですもの、わたしがピンチになってたらきっとさっきみたいにどなたか助けてくださると思います!


御狐・稲見之守
自らの手で服を脱がす。
ああ、それはそれは楽しいことであろうさ。
誕生日のプレゼントの包みを開けるドキドキ感に通じる。

或いは、例えば脱がす過程において
その者が脱がされることを『許す』というのもまたエモいし
逆に抵抗する者を無理矢理ひん剥くというのも良い。

しかし、しかしである。

その者が「自ら服を脱ぐ」こともまた
真に価値のある、注目すべきものがあるのではないか。
特に、その者が望む形であれ望まない形であれ
恥じらいや躊躇いを覚えた上で自ら肌を晒していく。
その輝きは太陽よりも眩しく尊いものであるとワシは信じたい。

何れにしろひとつ云えることは
リアクションないとつまんないよねってことである。





 モゾモゾわきわきと意味深に動く、オブリビオンの指先。
 その様子は、女性陣の生理的嫌悪感を掻き立てる様な……何ともアレな絵面である。

「ううう、なんだかとっても嫌な予感がします……!」

 スウォミもまた、そんな嫌悪感を抱いた一人であった。
 と言うか、ヤツの言ってることからして理解不能だ。『脱衣文化』とか『脱衣テク』ってなんなんだ。
 ……思わず己の衣服を抱きしめるように掻き抱いたのは、防衛本能の発露だろうか。正直、相手をするのはお断りであるのだが。

「で、でも! 目指せ真夏のリゾート! オブリビオンに負けてる場合じゃありません!」

 夢の真夏のリゾートを満喫する為に、水着文化は護らねばならぬと。
 スウォミの中から萎えそうな戦意を、何とか維持して敵を睨む。

「──ほう、『脱衣文化』に『脱衣テク』とな!」

 そんなスウォミとは正反対に、楽しげに響く声。
 声の主は路地裏から戻ってきた、稲見之守。その瞳は、強い好奇心で彩られていた。

「うんうん、『自らの手で、相手の服を脱がす』。それはそれは楽しいことであろうさ」

 訳知り顔でうんうんと頷く稲見之守。
 例えば、実際に相手の服を脱がすシチュエーションに立ったとしよう。
 その時、相手は自分と思いを通じ合わせる間柄で……そんな相手から、服を脱がす『許し』を得るのは、最高にエモいシチュではないだろうか?
 逆に、不倶戴天の間柄の者を組み敷いた上で無理やりひん剥くというシチュエーションもまた、嗜虐心を満たすエモいシチュであるとも言えるだろう。
 何にせよ、『自らの手で、相手の服を脱がす』という嗜好は。『誕生日のプレゼントの包みを開ける』、その瞬間に感じるドキドキ感に通じるものがあるのだ。

『ほう、話が合うじゃないか!』

 そんな稲見之守の言葉に、『間違った方向でのエリート狂信者』(長いから、以後『脱衣魔』で良いや)が我が意を得たりとばかりに反応を示す。稲見之守へと向けるその目は、同志を見るかのように温かい。

「だが! しかし、しかしである!」
『むっ!?』

 そんな脱衣魔の好意的な視線を断ち切るかのように、稲見之守が言葉を紡ぐ。
 自らの手で、相手の服を脱がす。その嗜好は、確かに楽しいものである。
 だが対象とした相手が、『目の前で自ら服を脱ぐ』事もまた、真に価値のある、注目すべきものがあるのではないか、と。
 想像して欲しい。相手が、望むに望まぬにせよ脱がねばならぬ、という段に立った時に。恥じらいと戸惑いを覚え、頬を肌を薄く染め、自らその柔肌を晒していく、という光景を。
 ……グッと来る、輝かしい光景では無いだろうか?

「──その輝きは、太陽よりも眩しく尊いものであると、ワシは信じたい」
『……成程。一理、ある』

 稲見之守のその熱弁に、唾を飲み込む脱衣魔。新たな見識を得られたとでも言うかのように、その表情はどこか神妙であった。
 ……ところで、今は猟兵vsオブリビオンの戦いの最中であるという事を、忘れてはいないだろうか。

「よいしょっ……えいっ!」
『えっ──ガッ!?』

 可愛らしい声と共に飛来した物体を顔面で受けて、苦痛に呻く脱衣魔。
 頭を振りつつ視線を向ければ──。

「私、思ったんです。ヘンな事される前に、無力化しちゃえばいいんですよね!」

 そこには、花も綻ぶ様な可憐な笑みを浮かべるスウォミと、山と積まれた箱状の物体が連なっていた。
 スウォミは、切った張ったが苦手である事は既に触れた通りである。そこで、スウォミは一計を案じた。
 それは、ヤドリガミである己の本質を活かした策。本体である象嵌細工の宝石箱を複製し、作った側から相手にブン投げ続けようという物であった。
 ……幸い、稲見之守と脱衣魔の性癖トーク(?)のお陰で複製に必要な時間は山程あった。投げる弾の貯蔵は、十分である。

「えいっ、やぁっ!」
『ちょっ、まっ……痛ぇ! 今、カドが!?』

 可愛らしい掛け声と共に投擲される宝石箱はその細工もあってか中々の重みで、またカドが当たれば結構痛い。
 そんな投擲物を何とかせねばならないと、脱衣魔が(趣味と実益も兼ねてスウォミの衣服を脱がして着せて脱がす為に)動こうとした、その瞬間だった。

「──淀め」
『ぐっ──!? ガッ……!』

 鋭い男の声が響いた同時に、脱衣魔の体から力が抜け出たのは。
 パクパクと動く、脱衣魔の口。どうやら力と同時に、発語機能も奪われたらしい。

「【魔眼・封絶】。行動と能力発露を封じる魔眼故、ユーベルコードも霧散する」

 驚愕と疑問に歪む男の表情。そんな男に向けて解説するかのように、アルトリウスが言葉を紡ぐ。
 アルトリウスは世界の理を織り紬ぎ、力とする猟兵だ。このユーベルコードも、そんな力の応用の一つである。
 即ち、鋭いその目に魔力を宿し魔眼と成して、相手の存在の根底すらも捉える事で、相手の力の発露を根本から封じるという術である。
 ……当然、それだけの強力な術であるのだから、やはり消費する力も相応に大きい。準備に必要な時間も、また必要だ。
 だが、先頃に見せた力と同様。魔力に関しては世界の理の外から無限に供給されるし、時間に関しても『原理』の力で無限に加速し、増幅し、循環が可能である。極論、アルトリウスはその力を無制限に行使することが可能なのだ。
 ……世が世なら、強すぎてそのうちナーフされそうな気がひしひしとするが。『生命の埒外』とも呼ばれる理外の存在である猟兵ならば、まぁこういうのも許される……の、だろうか?

「力の底上げを狙ったのだろうが、元通りだ。徒労だったな」

 ともあれ、アルトリウスの力によって脱衣魔はその力を発揮する術を喪った。文句を言いたげにこちらを見るが、発語機能を封じられた為にその文句は言葉とはならない。
 その為か、刺すような憎々しげな視線がアルトリウスに注がれるが……それで実際にヒトを殺せる訳でもなし。アルトリウスはもう、我関せずの構えである。

「まだまだ行きますよー! えいっ、えいっ!」
『──! ──ッ!!』

 そんな状況の脱衣魔に、追い打ちをかけるかのようにスウォミの宝石箱が降り注げば。男は必死に躱し、腕で払い……痛みに顔を歪ませるばかり。
 一方的に、ジリジリと削る様な展開。その戦闘風景を……。

「何れにしても、リアクション無いとつまんないよね、って事であるのぅ」

 稲見之守はただ、薄笑いを浮かべて見守るのだった。

 ……って。今回この妖狐ただ性癖語りに来ただけじゃないか、という声も上がりそうな気がするが。
 実際、稲見之守は『ユーベルコードを使用していない』ので、書いてる方としてこうするしか無かったのだ。ご了承頂きたい。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シャルロッテ・ヴェイロン
(前章に引き続き、ホワイトラビットを【操縦】中)

いや、「脱衣文化」って…(汗)。
やっぱりコイツ、救いようのないイディオットですね――まあ、もとよりあいつはオブリビオンなので、救うつもりは1インチもないですが。

――で、人間サイズはともかく、キャバリアの外装をどうやって着替えさせようってんでしょうかねぇ?(と、さりげなく【挑発】)
――まあ、向かってきたところで、チャージした【指定UC(炎属性)】で【焼却】しちゃいますけど(【属性攻撃・レーザー射撃・覚悟】)。

※アドリブ・連携歓迎





 一方的に宝石箱を投げ続けていた猟兵が、残弾を切らしたか。能力封じを行っていた者の護衛を受けつつ、交代する。
 体の自由を取り戻し、脱衣魔が何やら喉の様子を確かめたり手首を振ったりしている様子を、シャルロッテは今も乗り込むホワイトラビットのモニタ越しに眺めつつ……。

「……いや、脱衣文化って」

 小さなその口からは、心底呆れたような溜息が漏れた。
 先ほどシャルロッテは、この場に集まっていた邪教徒達を『イディオット』と評していた。
 その中でも、今ステージ上で息を整えているあの男はとびっきり。文字通り、救いようが無いレベルであると言えるだろう。

「まぁもとより、救うつもりは1インチも無いですが──!?」

 呟き、さて潰そうかと意識を引き締めかけたその瞬間。シャルロッテの背に、悪寒が走る。
 モニタを見れば、脱衣魔の目がこちらを見ていた。
 その目付きは鋭いのに、まるでこちらの一挙手一投足を……いや、コクピットの内側に座すシャルロッテの体を観察しているかのような粘っこい視線だ。
 ……あ、今口が動いた。『甘ロリ……いや、敢えてのスモックも捨てがたい』とか言ってるような気がする。

「で、ででででも! ──人間サイズはともかく、キャバリアの外装をどうやって着替えさせようってんでしょうねぇ?」

 あまりに気色の悪さに一瞬取り乱すシャルロッテであるが、すぐに平静を取り戻す。
 そうだ。今シャルロッテは、人類が生んだ科学の結晶であるキャバリアに搭乗した状態だ。
 キャバリアのコクピットは外部から遮断された空間で、そこをこじ開けるには正規の手順を踏むか、外部装甲を無理やり貫く以外に他はない。
 対して、モニタ越しに敵はそれ程威圧感のある外見をしているという訳でもない。強力な武器があるわけでも無いし、こちらの電装系をハックされるような恐れも無いだろう。
 つまり、自身の身は安全なのだと悟れば。さり気なくスピーカーをオンにして、相手を挑発する事も怖くないのだ。

『──ほう、吠えたな小娘』

 そんなシャルロッテの挑発に、脱衣魔が応える。
 その声は、嫌に明瞭にシャルロッテの耳を打ち……そして、次の瞬間。

『ならば魅せてやろう。我が『脱衣テク』の真髄を──!』

 男の声が響いた瞬間、姿が掻き消え。

 ──ゴォンッ!!!                         パサッ。

「きゃあっ!?」

 コクピットの正面装甲を、何かが激しく突き揺らす。
 突然の衝撃に、思わずと言った悲鳴を上げるシャルロッテ。
 ……まさか、今の一瞬で敵が距離を詰めたのか? そうしてそのまま、殴りかかって来たとでも言うのだろうか?
 シャルロッテの頭に湧いた疑問は、正しい。脱衣魔は高めた身体能力で、ステージ上からホワイトラビットのコクピットブロックまで一息に跳躍し、その勢いのままに拳を振るったのだ。
 とは言え……。

「殴られた程度で、ホワイトラビットがどうにかなるとでも! それに、わたしの服は──?」

 言いつつ、シャルッテは己の体にちょっとした違和感を感じる。
 なんだか、妙にスースーとするような。そう、素肌に冷たい風が当たっている時のような。
 ……まさか、と。シャルロッテの顔が、自らの体に向いて。

「っ~~~~~~~~~~!?!?!?!?」

 絹を引き裂くような悲鳴が、シャルロッテの喉から上がった。
 そう。今の彼女は、一糸纏わぬ白い肌を晒す生まれたままの姿であった。シャルロッテの衣服は、見事に脱がされていたのだ。
 一体、どうやってやったのか。その詳しい理屈は、説明が出来ない。
 だがシャルロッテの今の状態が示すように。脱衣魔ががコクピットブロックの装甲板を叩いたその瞬間、『生命の埒外』でもあるオブリビオンとしての力が発動されて、なんやかんやでシャルロッテの衣服は剥がされてしまったのだ
 ……本来ならこの上で、いいとこ育ちのお嬢様としてはとても余人にはお見せできない恥ずかしい衣装に着替えさせられた上でまた脱がされた可能性もあるのだが。流石に装甲板越しでは、そこまでの力は発揮できなかったようである。

『フハハハハッ! 見たか、我が『脱衣テk』うおおぉぉぉッ!?』

 ステージ上に舞い戻り、高らかに哄笑する脱衣魔。
 だがその高笑いは強制的に止められる。真紅に燃え立つ極太の熱の塊が一条、男が立つ場を焼き払ったのだ。

「……ス」

 その光線を放ったのは、当然シャルロッテ。
 シャルッテは、震えていた。コクピットに四散していた衣服を胸に掻き抱いて、憤慨に震えていた。
 コクピット内にいたから、余人に今の姿を見られてはいないとは言え。こんな姿を、戦場で晒す事になるとは。穴があったら入りたいとは、まさにこの事である。
 だが、その前に。こんな事態を招いた、この男だけは……!

「ぼくによくもこんな恥をかかせたな! 絶対に、ブッ殺すッ!!」

 立ち上げるプログラムは、機体の攻撃力を引き上げる攻撃プログラム。
 そのプログラムに従うように、ホワイトラビットがエネルギーをチャージして……白光を、放つ!

『ちょっ!? そこまでキレる事はぬぉぉおおおお危ねぇぇぇぇぇッ!!!???』

 再び爆ぜるステージ。飛び跳ね躱した脱衣魔を狙い、更に一射、もう一射、続いて一射、おまけに一射……乱れ飛ぶレーザーが、ライブハウスの建屋を撃ち抜いていく。その度に、とある猟兵が慌てたように光を放つが……シャルロッテの目には、入らない。
 今はとにかく、目の前のコイツを! 女の敵である脱衣魔を、ブッ殺さなければならないのだ!!

「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
『う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?!?』

 響き渡る二つの叫びが、戦場に響く。
 結果として、機体のエネルギーが先に切れたシャルロッテは、脱衣魔をその手で始末する事は叶わなかった。
 だが脱衣魔に大きな消耗を強いる事には、成功したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シホ・エーデルワイス
《狐御縁》


成程
敵は変質者…女の敵
この類の犯罪者によって
どれだけ多くの人が心に傷を負っているか…

『聖痕』の宿命故
辱められる覚悟は済んでいて悪寒は走らない

悲し気な表情の後
覚悟の眼差し


燦から服を盗る手癖を見切り情報収集

聖銃で応戦しつつ
脱衣し易そうな箇所が目立つ迷彩を纏い
催眠術で誘惑し
隙を突かれた演技で
敵の手をおびき寄せ
光学迷彩と念動力で目立たなくして固定した虎挟にかませ
貫通攻撃による部位破壊

貴方の弱点はどこを狙って何をするか宣言している事

なら

そこに罠を仕掛けておけば良い

証明成功で【魂鎖】が絡みついて拘束

貴方の欲望が強ければ強い程
その鎖は強固になります

私が抑え
燦が攻撃


建物が倒壊しそうなら【復世】で保全


四王天・燦
《狐御縁》


シバキ倒さなきゃ気が済まねえ
ホームランとばかりに神鳴の峰打ちで変態を吹き飛ばすぜ
のんびりして魔手がシホに迫ると怖い。落ち着け、明鏡止
水の精神だ。次の一刀で決
着をつけてやる!
が、焦りのせいで上着を盗られるよ
楽勝という侮りがあった…って演技さ、大丈夫だとシホに目配せ
しかと変質者の手癖はシホに見せられた。アタシも見切りで読
み、武器受けで脱衣の魔手をカウンターで斬るぜ
でも、一見無力な人間を斬るのは心が苦しいや
仕事だと割り切ろう…斬るしか
方法がないんだと殺気を全開!
なーんてね、シホの魂鎖に合わせ伍式で慈悲深く焼くよ。衣服と
いっしょに、妄執よ燃え尽きろ!
ねえシホ、水着が、夏の海が楽しみだね♪





 激しい光線の乱舞にあわや建物の倒壊の危機が、と心配されたりもしたが。

「……な、なんとか間に合いましたね」

 そこは、シホの献身で何とか免れた。
 ふぅ、と額の汗を拭うシホ。だが次の瞬間、その目は鋭くステージ上に舞い戻った脱衣魔を貫く。

「成程。敵は変質者……女の敵、ですか」

 当初、シホは敵の存在をどう捉えるべきか戸惑いを覚えていた。
 だが、今になればはっきり判る。奴らは只の、変質者。口では大義だ大望だと大仰な事を喚くが、その本質は只の変態以外の何者でもないのだ、と。
 ……きっと奴は、先程まで発狂染みた猛攻に出た少女猟兵の様に、これまでにも多くの女性の心を傷つけて来たのだろう。
 そんな被害者たちの無念と心の痛みを思えば……!

「絶対に、討ちましょう……!」

 沈痛な表情は、一瞬だけ。胸の聖痕を決意に輝かせ、シホが眦を決して銃を引き抜く。
 そんなシホの溢れる戦意を感じたか。息を整えていた脱衣魔が、シホへと視線を向けて……その瞳に、好色な色を浮かばせる。ワキワキと動かす指先を見れば、『嫋やかな女からどうやって剥ぎ取ってやろうか』という夢想を描いているのは明白だ。
 そんな粘ついた視線に、シホの心は揺らがない。聖痕を刻まれた宿命故に、シホはその手の覚悟は済んでいるからだ。
 だが、むしろ。心を揺らがされたのは、シホでは無く……。

「テメェ……何見てやがんだ、あぁ!?」

 シホの相棒であり想い人でもある、燦の方であった。
 まるで三下のチンピラの様に声を荒げる燦だが、さもありなん。
 燦にとってシホは、何者にも代えがたい存在だ。共に歩み、支え合い、未来を生きようと誓った、比翼連理の間柄である。
 そんな存在が、下卑た視線を浴びているのだ。声を荒らげない方がおかしいだろう。

「シホをそういう目で見て良いのはアタシだけなんだよゴルァッ!」

 シホの水着が楽しみすぎて仕方ない(※プレイングをよーく読んでみよう)せいか。飛び出た燦の独占欲に塗れたセリフには、言われたシホも思わず掌で顔を隠して俯いたりもしたが。

『ふむ、成程……ぴっちりしたボディスーツ、いやヒラヒラ系もギャップがあって悪くないか……?』

 そんな燦の憤慨は、脱衣魔には馬耳東風と言った様子。燦の肢体のラインを見極めるかのような視線を飛ばし、何やらブツブツと呟いている。どうやら着せたら似合いそうな(その上で脱がしがいのある)衣服をチョイスしているようだ。
 そんな敵の、どうしようもない態度に。燦の堪忍袋の尾が切れる。

「上等だァ……シバキ倒してやるよッ!!」

 迸る紅の雷光を滾らせながら、引き抜いた刃を振るって駆け出す燦。
 言葉は荒いが、燦の心は冷静だった。
 一直線に、敵との距離を詰め、刃を返して峰を向ける。そうしてそのまま、刀を逆袈裟に振り上げるが──。

『甘いな、小娘──!』

 その剣閃を、脱衣魔は軽やかに回避。その上すれ違いざまに……。

『この上着は、頂いていく!』

 燦の纏う上着が、奪われる。

「燦っ!」
「大丈夫だ! ちょっと油断しただけさ!」

 心配気なシホの声に応える燦。だがその頬には、一筋の汗が滲んでいた。
 ……一見、脱衣魔に翻弄されているかのように見える現在の戦況。だが──。

(シホには、しっかりと見せられたな)

 ──ここまでが、全てが二人の仕込みであるとしたら、どうだろう?
 そう。実は燦の立ち回りはフェイクであった。燦の目的は、『シホに脱衣魔が服を見せる瞬間を見極めさせる事』であったのだ。
 その為にわざわざ燦は隙だらけの大振りを繰り出したし、わざと上着を敵に奪わせもしたのだ。
 ……結果として、シホは敵の手並みをしっかりと見切ったらしい。それならば、後は……。

「畳み掛けるぞ、シホ!」
「えぇ!」

 敵の手を、『そこ』へと導くのみ。
 声を掛け合い、前に出る燦。シホは後衛で銃を構えて援護の姿勢だ。
 二人の連携は、流石は比翼連理の間柄。一分の隙も無い、見事な手前である。
 だが、しかし……。

『フハハハハ! 遅い、遅いなぁ小娘どもっ!』

 身体能力を強化した脱衣魔には、届かない。燦の刃は空を斬り、シホの銃弾も届かない。
 あまりにも素早い敵の身のこなしに、ほんの一瞬二人の反応が遅れて。

『隙だらけだ! 次はぺったんこ娘ではなく、そっちの豊満な娘を……!』

 脱衣魔が燦という壁を抜け出すと、疾走。一息にシホへと距離を詰める。
 そうして、その魔手が。淡く輝く胸元を包む布へと伸びて──。

「──掛かりましたね」
『何……ぐぁっ!?』

 瞬間、響く男の苦痛の声。
 見ればシホの胸へと伸びた男の掌が、何かに噛みつかれていた。アレは……トラバサミ、であろうか。

「……貴方の技術は、確かに凄まじい物があります。ですが──」

 ──その技術にも、弱点があります、と。痛みに呻く男を見下ろして、淡々とシホが告げる。
 その弱点とは、脱衣魔の技術それそのものにある。
 彼の振るう力は、『脱衣』という現象に特化した物。つまり彼の狙いは、対手の衣服以外に無い。
 それはつまり、『何を狙っているのか常に宣言している』のと同義であり……。

「であるならば、対処は容易。そこに罠を仕掛ければ、良いのです」

 シホが、己の胸を指す。その仕草はまるで、『ここに誘導したのです』と言わんばかりだ。
 ……事実、シホは脱衣魔の狙いを誘導していた。普段は淡い聖痕の光を殊更強く輝かせ、その上で光を目立たせる様に迷彩を纏ったのだ。
 更に言うなれば、畳み掛けた際に出来た隙も演技。銃を『外した』のも演技で、立ち振舞いに隙を作ったのも演技。
 そうして、敵の意識を一点に集中させた上で。シホはそこに、罠を置いたのだ。
 ……二人で組み上げた、緻密な仕込み。その成果は、目の前の男の掌が証明していた。

『だ、だが俺の弱点を指摘した程度で、俺の『脱衣』への情熱は──』
「いいえ、終わりです」

 シホの看破に、男が吠える。まだ俺は終われぬと、脱衣への情熱を露わに叫ぶ。
 が、そんな叫びにシホが返したのは冷たい一言。そしてその言葉が終わった、その瞬間。

 ──ギギギギギギッ!!

 虚空から顕れた無数の鎖が、脱衣魔の四肢を縛り付ける。
 敵の異能を看破した事で発動する、シホの異能が発動したのだ。

『こ、コレは……!』
「今です、燦!」

 狼狽する脱衣魔が鎖を鳴らすが、戒めが解けるはずもない。
 そうして敵の動きを封じたシホが、燦の名を呼ばえば。

「任せろ、シホ! 御狐・燦の狐火をもって命を貫き焼き尽くせ……!」

 応える燦が喚び出すは、蒼く輝く狐火の群れ。苦痛を与えず、慈悲を以て敵を焼くその炎を。

「──妄執よ、燃え尽きろ!」

 動けぬ敵に。余すこと無く、叩きつける!

『ぐぁっ!? おぐっ──~~~~ッッ!!!』

 その炎に、脱衣魔が上げるのは声無き悲鳴。
 その悲鳴は、苦痛による物では無く恐怖によるもの。苦痛は与えぬとは言え、魂が焼かれて力が溶け落ちるその感覚は筆舌に尽くし難いだろう。
 少しずつ、少しずつ。脱衣魔の力が弱まっていく。そうしてそのまま、その存在を『骸の海』に還して行く……事は、無かった。

 ──バキッィ!

「鎖がっ!?」

 甲高い音を立て、シホの創り出した鎖が砕ける。
 瞬間、自由を取り戻した男が跳躍してその場を逃れ……地に降り立つと、その場を転がり火を掻き消す。
 シホの鎖は、『敵の強さ』にその強度を依存する物である。つまり『強くない敵であれば、その強度はそれ程でも無い』のだ。
 今回、その性質が脱衣魔に味方した。元々(『脱衣』に関しては恐ろしい力を誇るが)戦闘能力はそれ程でも無い脱衣魔が、炎に焼かれてその力を更に減じた事で……鎖は僅かな身動ぎにすら耐えられぬ程、脆弱になってしまっていたのだ。
 ……今回は、そんな結果となってしまったが。しかしシホのこの鎖は、使い方次第では戦況を覆す程に強力な力と成り得る異能である。
 もっと使い方に研鑽を重ねれば、立派な切り札と成り得ることだろう。

「すいません、燦。私がもっと……」
「気にしちゃいないさ。それに……しっかり深手は負わせたみたいだし、ね」

 頭を下げるシホの髪を撫で、燦が答える。
 事実、燦の言う通り。脱衣魔は、深い傷を負っているのは明白だ。勝敗の天秤は、もはや猟兵優位の状況から揺るぐ事はないだろう。
 その事を認識し、燦はシホの水着と夏の海を心に思い描く余裕を取り戻すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

メリア・アルスト
グルヴェイグ(f30017)と二人で
(眉をひそめたものすごく不機嫌な顔)
…よし、殺そう
(出身がクロムキャバリアなので命の扱いが軽め)

『ブリーシンガメン』にサイキックエナジーを注いで『魔装キャバリア『レーヴァテイン』』を召喚し、さっさと乗り込む
コックピットを閉めて脱衣の影響を受けにくくしたうえで体格差を活かした踏みつぶしとかライフルの射撃とかしようと思う
そして隙を見てUCで一秒だけ反応を上げて回避、後にグルヴェイグのUCで動きを封じたらフォースセイバーで焼き切ろう

(聞こえないくらいの小さい小声かつサイキックテレパスをオフにして)…グルヴェイグを脱がせていいのは私だけだ


グルヴェイグ・ヴォルヴァ
メリア(f29925)と行動を共にしますの
並々ならぬ情熱は感じますわ…衣類の有無など些細なことだと思うのですが、どうも私が目覚めた時代では諸々の価値観が変わっていてこの辺りはよくわかりませんの
…ですが、邪神の復活に繋がるのであれば阻止しなければなりませんわね
…ひえ、メリアが怒ってますわ…レーヴァティンまで出して一体どうしましたの…??
そしてメリアと主にキャバリアへ乗り込みますわ

メリアとは『サイキックテレパス』で意志疎通しますの
そしてタイミングを合わせてUCのサイキックブラスト!
わたくしたちの勝ちですわ~♪
あら、メリア何か言いまして?
何でもない?
では気のせいですわね





 床を転がり、体に燃え移った炎を掻き消した脱衣魔が再び立ち上がる。
 その姿は既に全身ボロボロで、見窄らしい。だが今もまだ、その目だけは死んでいない。
 そんな脱衣魔の姿を眺め、グルヴェイグがゴクリと唾を飲む。

「並々ならぬ情熱を、感じますわ……」

 つい最近、目覚めたばかりのバーチャルキャラクターであるグルヴェイグである。そんな彼女としては、衣服の有無など些細な事だと思うのだが……どうもこの時代では、その辺りの諸々の価値観が変わってしまっているらしく。今回の物事の機微を、中々掴めないでいた。
 だがそんな彼女でも、邪教徒の企みは阻止しなければならぬ事は理解している。放置し企みを成就させてしまっては、邪神の復活に繋がりかねないからだ。
 それ故に。

「頑張って、務めを果たさねば。ですわね、メリア……メリア?」

 ふんすっ、と。拳を握ってやる気を示して、相棒であるメリアへと声を掛けるが……肝心のメリアからの反応が、無い。
 一体どうしたのだろうかと、グルヴェイグがメリアの顔を覗き込むと……。

「────」
「ひえっ……め、メリア? 怒っていま、す……?」

 メリアの表情は、全力で『不機嫌』を表していた。
 その目は冷えに冷えており、まさに絶対零度。そんな視線で、脱衣魔を射殺さんと言わんばかりに睨みつけていたのだ。
 普段はどこか緊張感が薄くぼんやりとした事の多いメリアが見せる珍しい顔に、グルヴェイグは一瞬息を呑み……恐る恐ると言った様子で、言葉を掛ける。

「ん……別に怒ってはいない、けど」
「け、けど?」

 そんなグルヴェイグの問いに、返ってきたメリアの答えは常と大きく変わらぬ抑揚の少ない物だった。
 だが、付き合いの深いグルヴェイグには判る。メリアはやっぱり、怒っていると。
 だって、その証拠に。メリアは今、彼女の胸元を飾る首飾りに、サイキックエナジーを注いでいるじゃないか。
 ……メリアの首飾りは、彼女の駆るサイキックキャバリア『レーヴァテイン』の鍵でもある。
 つまり、メリアは──。

「──とりあえず、殺そう」

 今回の戦場環境を考慮し、温存していた力……キャバリアを喚び出してまで。全力で敵を叩こうと、そう考えたという事なのだ。
 ……一体何が、メリアの逆鱗に触れたのか。グルヴェイグには理解らないが……それでもメリアが本気を出すというのなら、否はない。
 共に機体に乗り込んで、システムを立ち上げて。機体と同調し、敵と向き合う。

 ──さっきの様子を見るに、あの変態相手ではコクピット越しでも危ない。ライフルで牽制する。

 メリアからグルヴェイグに伝わる思念は、敵への強い嫌悪感が滲んでいた。
 先程、別の猟兵がキャバリアの装甲板越しに服を脱がされたらしい様子を二人は目にしていた。
 その事を思えば、メリアが抱く感情は当然だと言える。全ての女性の敵とも言える脱衣魔など、誰だって近づけたくはないだろう。

 ──それで、時が来たら……。

 そうして続く思念は、グルヴェイグへの指示。
 指示の内容は、妥当かつ堅実。余程の事が無い限り、変な結果にはならない内容だ。

 ──なるほど。了解ですわ!

 当然、グルヴェイグに否はない。
 伝えられた指示に了解を告げれば……。

 ──それじゃあ、行くよ。

 響くメリアの思念と共に、二人が乗るレーヴァテインが動き出す。
 腕に構えた標準的なキャバリアライフルを敵に向け、弾雨の雨を叩き込んだのだ。

『……学生服。セーラーいや、ブレザー……くっ!』

 そんな驟雨の如き鉛玉の雨を、脱衣魔は慌てて回避する。
 浅からぬ傷を負っているにしては、その動きは妙に素早い。というか、少しずつその動きが鋭くなっているような。
 ……これは、まさか!

 ──アイツ、強化してる!

 その事に気付き、メリアの思念が嫌悪に叫ぶ。
 そう。二人がキャバリアを喚び出すまでのその間、脱衣魔もただ黙って息を整えていた訳ではなかった。
 脱衣魔は、メリアとグルヴェイグの二人を眺め見て……似合いそうな服に着せ替える空想を頭の中で描いていた。
 そうしてその上で、着せ替えた衣服を脱がすという欲求を膨らませた事で。己の身体能力を、強化していたのだ。
 ……字に起こすと、ホントに気持ち悪いなコイツの能力。メリアが嫌悪感を抱くのは、残念でもないし当然と言った所である。

『ふっ、はっ! ……その銃撃には、もう十分馴れた!』

 撃ち放たれ続ける機銃弾。その全てを、脱衣魔は飛び、跳ね、踊り、軽やかに躱す。
 その動きのキレは、実に凄まじい。そして、そうなれば……。

『ならば、今度はこちらの番だ!』

 言葉を残し、一歩二歩とステップを踏んで。男の体が、掻き消えた。
 その動きは、先程別の猟兵との戦いでも見せた動きだ。今回もまた、一瞬で距離を詰めてキャバリアのコクピットを叩こうと言うのだろう。
 だが、その動きは既に見た動きだ。種が割れているのならば、回避する事は、難しくない!

「一瞬でもあれば、十分──!」

 男がステップを踏んだ、その瞬間。メリアが意識を集中すれば、駆る愛機の状態が全て頭の中へと飛び込んでくる。
 そうして機体の状態を全て把握したその上で、機体に掛けられたリミッターをカットして。限界を越えた反射のまま、ほんの半歩、機体を動かせば。

『──なにィッ!?』

 飛び来た男の拳は狙いを外されて、虚しく宙を切る。
 交差し、行き違うレーヴァテインと脱衣魔の体。
 だが、メリアの狙いはこれが全てでは無い!

 ──グルヴェイグ!

 吠えるメリアの思念。そこに宿るは、先程の指示を果たせという強い意志。
 待ちに待ったその瞬間に。

「行きますわ! サイキック……ブラストォッ!!」

 グルヴェイグが、体の内で練り上げ続けた力を解き放つ。
 唸りを上げて放たれた念動力は機体を飛び越え渦を巻き、高圧電流と化して脱衣魔の体を捉える!
 直撃を受け、苦痛の悲鳴を上げる男。体の動きを封じられ、再び無様に転がる脱衣魔を焼き切ろうと。

「これで、終わり!」

 メリアがレーヴァテインに装備された専用フォースセイバーを展開し、灼熱の光剣を振り払う!
 振り抜かれた光。その熱に呑まれ、脱衣魔の体が斬り裂かれ、燃え上がる。
 だが。

『──まだっ! 俺は、まだ死ねんッ!!』

 斬り裂かれ、体を焼かれてなお。男はまだ、倒れない。
 掲げた理想を曲げはしないと言うように、目に強い光を浮かばせて、その場に立つ。
 ……これでこの男がもうちょっとマシな思想の持ち主なら、絵になったのだが。非常に残念な事である。

「……ちっ」

 仕留め損なった事実に、メリアが思わず舌を打つ。そんな普段の彼女が見せない敵意を剥き出しにした姿に、グルヴェイグは小首を傾げる。
 ……グルヴェイグは知らない。メリアが絶対零度の視線で敵の姿を睨んでいた時に、彼女が何を思い、何を呟いていたのかを。

 ──グルヴェイグを脱がして良いのは、私だけだ。

  そんな事を露とも知らぬグルヴェイグは、この後もずっと首を傾げ続けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎
WIZ

…まさか、男の俺も脱着したい…とか、思ってないよね?(汗
俺は男に服を脱がされて喜ぶような性癖はない!
可愛い女の子になら…いやいや、そう言う問題では!(頭振り思考を中断)
周りにいる女性陣が危なそうな気がする

たちが悪いな、方向性の誤ったエリートというのは…
だが、不埒なエリートをここでしばき倒して場を収めるため、戦い抜いてやる!
キャバリアと契約した際に直接契約した光と闇の疑似精霊達に呼びかけ力を借りよう!『絶対死守の誓い』を発動!

脱がす為には相手に接近する必要があるはず
ターゲットになった味方を【かばう】よう立ち回りつつ
なら【マヒ攻撃】付与した闇の波動で迎撃、【破魔】の刀で反撃


セフィリカ・ランブレイ
生き残った馬鹿の純度が上がってる…
脱がせたいから着衣文化保護水着反対…?

『水着脱がせばよくない?』

シェル姉、フェチは理屈じゃないの
私もわかんないけど

そのフェチ心にサービスもいいけど
私の肌安くはないんだよね。我、王族ぞ?
つまり容赦なく潰す!

今度は精霊魔法の勘を取り戻しとこ
主に機械の制御のため覚えた魔法技術。それも実戦に取りこめば戦術の幅は広がる
剣さえあればいいとはもう言わない

【エレメンタル・ファンタジア】

出力や複雑な術を組むのは無理でも、ゴーレムの制御に術式を使ってきた分、魔力の緻密な制御には自信がある
自身の身のこなしとあわせ、一定の距離を保ち炎の雨や氷の突風等で的確に相手の体力を削ろう





 幾度にも及ぶ猟兵の猛攻の前に、既に脱衣魔の体は満身創痍の体であった。
 だが、それでも。奴の心は折れていない。何がそこまで、男の心を支えるのか……。

「……服を脱がせたいから、着衣文化保護水着反対……?」

 その根底にあるのは、男が掲げた『脱衣文化』とか言う良く判らん文化であるのだろうが、と。セフィリカはその未知の文化について考察を深めようと思考を巡らそうとして……即座に止めた。だって考えれば考えるほど、頭が痛くなりそうなんだもの。
 とにかく、言えることがあるとするならば。『馬鹿の純度が、上がっている』という事だけである。

『……というか。水着を脱がして供物にすればよくない?』
「や、シェル姉。フェチは理屈じゃないの」

 呆れたような(というか実際呆れていた)魔剣のボヤキに言葉を返すが、実際の所はセフィリカにもその辺りの事は良く理解っていない。
 だが普段のセフィリカなら、その辺の素養はありそうな気もしないでもないが……いや、変に理解を得た姿など見たくないからこのままでいいや。

(まー、うん。馬鹿のフェチ心にサービスもいいけど……私の肌、安くはないんだよねー)

 我、王族ぞ? と、普段から己のスタイルに絶対の自信を持つセフィリカだ。多少脱がされた所で、羞恥に震える程ヤワではない。
 だがそれはそれ、これはこれである。不埒な馬鹿野郎に玉の肌を軽々しく見せてやるほど、セフィリカは貞操観念を捨てている訳ではないのだ。
 つまり、何が言いたいのかというと……。

「うん、容赦なく潰そ!」

 と、いう事であった。
 体に宿る魔力を励起して、練り上げる。
 主に魔導ゴーレムの制御の為にと覚えた、各種魔法技術。その制御には自信があるが……実戦で使い得るかと言えば、少々物足りぬ所でもある。
 その技術を、実戦レベルでも使えるようになれれば……!

(うぅん。性質が悪いな、方向性の誤ったエリートというのは……)

 一方、ひりょも脱衣魔の姿を見て呆れを覚えていた。
 これだけの猟兵の猛攻を受けて、なお倒れぬタフネス。そして諦め折れぬ精神力。成程、エリートの名に恥じぬ強さである。
 けれどどれだけ強かろうが、奴のその本質は『変質者』以外の何者でもない。
 世の為、人の為。不埒なエリートはこの場でしばき倒して、騒動の火種を潰さねばならぬのだ。

(むっ。あれは……!)

 そんなセフィリカが魔力を練り上げる姿を、脱衣魔がジッと見つめている事にひりょが気づく。
 ブツブツと呟き、その度に首を振っている様子は……候補となる衣装が多すぎて、定まらないのだろうか?
 健全な男である身としては、そういう妄想に頭を遊ばせるのはまぁ、否定はしない。だが、その妄想を口にするどころか行動に移すのは、断じて許される物ではない。
 狙われた彼女に、あの変態の魔手が伸びる前に。何としても、護らねばと。

「……ま、まさか男の俺も脱衣したい……とか、思ってないよね?」

 ひりょがとった手段は、会話による誘導だった。
 戦闘の幕が上がった直後、奴は他の猟兵と性癖トークを繰り広げていた。ならば、その手の話題……『脱衣』に関する話題に乗ってくる可能性は、無くは無いはず。
 ひりょは会話で敵の意識を自身に引き付ける事で、女性陣を護ろうと考えたのだ。
 ……いや、まぁ。正直引っかかる筈は無いだろうとも思っていたのだが。

『……男への脱衣、か』

 やはり脱衣絡みの会話には、乗ってくるのか。
 なんとひりょの言葉を聞いた脱衣魔が、ひりょへと向き直り会話の構えである。
 まさか乗ってくるとは、と。驚きに目を見開くひりょへと向けて。

『答えよう。些か、浅い考えであると、な!』

 男は語る。脱衣文化に、男女の別は無いと。
 邪神復活の為に必要なのは、尊い供物。人類の英知の結晶である、衣服である。
 そこに性差が介在する余地は無い。衣服であれば皆等しく、尊い供物であるのだ、と。
 ……まさかのマジレス(いや微妙に意味不明ではあるけれど)に、ひりょは思わず虚を突かれたかのような心持ちに陥るが。

『……だがまぁ。漢としては、見目麗しい美女美少女を脱衣するのが浪漫かな、って』
「台無しだよ! 確かに可愛い女の子の方が視覚的に癒やされるし嬉しいけれども!」

 直後ポロリと溢れた本音に、ひりょのツッコミが冴えて響く。
 いやまぁ、ひりょとしては男に脱がされて喜ぶ性癖は無いし、どうせ脱ぐ脱がすなら可愛い女の子相手の方がげふんげふん。
 ……ともあれ、語るに落ちるとはまさにこの事である。

「やはりお前の様な奴を、女性陣に近づける訳にはいかない!」
『ならばお前を乗り越えて──』

 ひりょが仕込み刀を引き抜き構えれば、相対する様に脱衣魔も構え……。

『──後ろに控える女の衣服を、剥ぎ取ろう!』

 一歩二歩と、ステップ見せて。直後、その姿が掻き消える。ここまで度々見せてきた、強化された身体能力による超加速だ。
 その状態から繰り出される一撃を、肉眼で捉えて点で合わせて反撃するのは、難しいだろう。
 ならば──面で合わせて、立ち回るだけの事!

「闇の疑似精霊、力を貸してくれ!」

 ひりょが呼ばえば、顕れ出るのは闇の力を司る疑似精霊。
 彼の乗機であるサイキックキャバリアと契約を交わした際に縁を得たその存在は、周囲の空間に闇の波動を拡散する攻撃を得手とする存在だ。
 つまり、どれだけ疾かろうとも、防御手段が無ければ……。

『──ぐっ! くぅ……なんだ! 足が、痺れて……!?』

 この場の空間全体に広がる攻撃を、避けることなど出来ないのだ。
 闇の波動には、神経を痺れさせ鈍らせる麻痺の力が乗っている。これで相手の足を、潰せたはず。
 ならば、後は……大技を練り上げ続けた彼女に、後事を託そう。

「後は、任せた!」
「オーケー、任された!」

 掛けられたひりょの声に答えたセフィリカの掌の内側では、膨大な魔力が渦を巻いていた。
 多種多彩な才を持ち、控えめに言っても天才と評されるセフィリカである。そんな彼女も、こと魔術に関してはそれ程腕が立つという訳ではない。
 だが、それでも先程触れた通り。魔力を『制御』するという一点だけを見れば……彼女の実力は、歴戦の魔道士のソレと比肩する実力を有していた。
 つまり、どういう事かと言えば。『属性』と『自然現象』を合成するという暴走しやすい大技【エレメンタル・ファンタジア】を御する事も、能うという事である。

「──いけぇっ!」

 気合一声。セフィリカが練り上げた魔力の渦を解き放てば、ライブハウスのホールに旋風が吹き荒れる。
 風に乗るは、炎や氷、土塊に稲妻。そのどれもがしっかりと制御され、脱衣魔の体を穿たんと的確に降り注いでいく。
 そんな攻撃の前に、足を潰された脱衣魔は必死に抗うが……一つ二つと躱す間に、同じだけの攻撃が体に突き刺さり、苦痛に呻く。

(剣さえあればいいとは、もう言わない)

 そんな敵の様子を油断なく見据えながら、セフィリカが思う。
 今、セフィリカが求めるのは更なる力。どんな理不尽を捻じ伏せる、圧倒的な力を求めていた。
 セフィリカのそんな願いを体現するかのように。更に強く暴風が吹き、脱衣魔の叫びを掻き消していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アリス・クイン
クロエ(f19295)といっしょに戦うわ。主にクロエが戦うわ
大丈夫、あいつの攻撃は見切ったもの
アタシには秘策があるのよ

クロエを全面に押し出しつつ、そっと耳打ち
あれよ! クロエの得意技、なんやかんや光って自分から下着姿になるやつ!
脱がしたと思った瞬間にアレをやったら、あいつ絶対ビビるわよ!

脱がした!なに、脱げてなかった!?なぜ?
そこにドーンってアタシとクロエで不意打ちをしかけてノシちゃうってわけよ

UC【バロックレギオン】
クロエに防御を任せて、こっちは反撃のぬいぐるみの準備
どうせあいつら脱がすのが目的って、ハダカ見たいだけでしょ
そしたらきっとドスケベなことするに決まってるわ!ぶっコロさなきゃ!


クロエ・アスティン
アリス様(f24161)と一緒にやってやります!

耳打ちされて作戦を伝えられますが……
ア、アリス様、あれは下着じゃないであります!?
戦女神様のれっきとした鎧でありますーー!!

そんなこんなとこそこそとアリス様と作戦会議をしていたらオブリビオンが襲い掛かってきます。
とっさにアリス様を庇ったせいで脱衣テクの餌食になり、パンツ一枚の姿にされて思わず両手で前を隠して屈みこんでしまいます。
続けてアリス様に襲い掛かろうとするのを見て、友達は守るでありますと【戦乙女の誓い】で真の姿……
アリス様曰く下着姿(違うであります!)になって反撃であります!

※アドリブや連携も大歓迎





 突風に巻かれて脱衣魔の体が翻弄される。
 その様子を眺め見ながら並ぶアリスとクロエは、二人揃ってむむむと悩んでいた。
 大勢はほぼ、決している。あと一押しか二押しすれば、変態は討ち取れる事だろう。
 けれど、下手に近づけば奴にはあの驚異的な脱衣テクがある。当然、それに関しては警戒しているが……物事に、絶対はありえない。一体どうすれば、あの変態の魔手から逃れて攻撃することが……。

「……あっ!」

 瞬間、アリスの頭に天啓が閃く。
 思い立ったが吉日と、(アリスとクロエの身長差は頭二つ分程あるので)屈み込みクロエにその閃きを耳打ちする。
 その言葉を聞くクロエは、最初はふむふむと頷いていたが……。

「……ちょっ、あ、アリス様! あれは下着じゃないでありますっ!? 戦女神様の、れっきとした鎧でありますー!」
「はいはいそういうの良いからっ。それで、やるの? やらないの?」
「もうっ。本当に、もうっ、であります!」

 一体何を言われたのか、顔を赤くしぷんすかと抗議の声を上げるクロエを気にせず話を進めようとするアリス。
 まぁ確かに、今の状況を考えれば、と。少々釈然としない物があるが。クロエは唸りつつ、考える。
 アリスの案は、悪くない。成功すれば、確かに大きな隙を作れるだろう。
 少々自身が負うリスクが大きい気もするけれど、戦女神の信徒としても率先して危地(と言うには些かアレな感じもするが)に飛び込むのは誉れある行動であるはずだ。
 ……逡巡は、僅か。顔を上げて、アリスと視線を合わせ……。

「やりましょ──」
『コソコソと内緒話とは、余裕だな──!』

 諾を返そうとした、その瞬間。すぐ側から響く脱衣魔の声に、クロエの背が凍る。
 気づけば、奴が──全身ボロボロの、いつ倒れても可笑しくない程の傷を負った脱衣魔がそこにいた。
 だが、奴の目はまだ折れていない。むしろ、『斃れる前に、この娘達(の衣服)だけは!』とでも言うかのような。死なば諸共とも言いたげな光を、その目に宿していた。
 そんな男の目に、クロエの体に染み付いた過去の傷が疼いて脚が震えるが……。

「アリス様っ!」
「きゃっ!?」

 勇気と力を振り絞り、クロエはアリスを突き飛ばす。
 転倒するアリス。だがこれで、男の手からアリスは逃れた。
 その自己犠牲の精神に、脱衣魔も思わず目を見開いて。

『見事な心掛けだ! ならば、俺も全力で脱がそう!』

 クロエに向けて敬意を示すかのように(ぜんぜんうれしくない)、その力の全身全霊を以て少女の纏う鎧に触れれば。

 ──ガシャンッ! パサッ……!

「ひっ!?」

 胸を護る胸甲が、純白のワンピースが、背伸びした大人っぽいビスチェが。クロエの体から、瞬く間に剥ぎ取られる。
 クロエの体を今覆う布は、ショーツ(と、黒絹の長手袋にニーソックス)のみ。
 曝け出された小さな膨らみを隠すように、クロエが手で前を隠してへたり込む。

『まずは、一人──!』

 座り込んだクロエを顧みる事無く、脱衣魔が次に狙うはアリスである。その邪まな視線を浴びて、ビビリのアリスは全身が目に見える程に震えていた。
 ……眼の前で、友達が恐怖に震えている。見過ごして、良いのだろうか。

 ──否。断じて、否!

 戦女神の信徒である以上、奉じる神に恥じぬ闘いをしなければならない。
 それなのに、震える友を護れずして……何が戦女神の信徒か!

「──戦女神様! 見ていてくださいであります!!」

 決意を胸に、クロエが吠える。
 瞬間、クロエを包む眩い閃光。光は少女の体に纏わりついて、使徒が纏う戦装束へと姿を変える。
 その戦装束とは即ち、アリスが言った下着と評した鎧。上下を申し訳程度に覆う薄布鎧である、ビキニアーマーである。

『……っ!? 馬鹿な! 今確かに脱がしたはず!?』

 そんなクロエから溢れる光に振り向いた脱衣魔が、目を見開いて驚きを示す。
 呆然としたその様子は、明らかに隙だらけ。その姿は、正しく──。

(アリス様の想定通り、であります!)

 そう。先程アリスが耳打ちした言葉通りの姿であった。

 ──いい、クロエ。アレよ、クロエの得意技の……なんやかんや光って、自分から下着姿になるヤツ! アレを使うのよ!
 ──あいつが脱がした! と思った瞬間にアレをやったら、あいつ絶対ビビるわよ!
 ──その隙を突いて、アタシとクロエでドーンって不意打ちをしかけてノシちゃうってわけよ!

 アリスの耳打ちした内容は、上記の通りであった。
 多少雑なプランニング、という感は否めないが。アリスの案はその実、彼我の特徴はしっかり汲みつつ、相手の動揺を誘う要素も組み込んだ内容であった。
 不安要素は、相手がなりふり構わずアリスを脱がしに動こうとしないかという一点であったが……クロエを容易く脱がせた事で精神に僅かな余裕を得たか。脱衣魔は遮二無二動くということはしなかった。ヤツが我武者羅な動きを見せていれば、アリスもまた白い肌を晒す事になっただろう。
 アリスの策は確かに成就したが、その成否は実は紙一重の差であったのだ。

「クロエ、今よ!」
「はいっ、であります!」

 ともあれ、策は成った。
 狼狽し隙を晒す脱衣魔に向けて、戦女神の使徒としての姿を晒すクロエが盾を押し込めば、広く重い一撃に思わずたたらを踏んでバランスを崩す脱衣魔。
 そんな、変質者に向けて。

「アンタ、邪神がどーの文化がどーの言ってるけど! どうせ女の子のハダカが見たいだけなんでしょ!」

 叫ぶアリスが喚び出したのは、80体を数えるぬいぐるみ軍団。
 猜疑や恐怖を感じると喚び出されるその存在を……!

「この、ドスケベ野郎! ぶっコロしてやるわ!!」

 目の前の変質者に、嗾ける!
 個々の戦闘力は低くとも、圧倒的多数のぬいぐるみ軍団だ。狼狽えた上にバランスを崩した脱衣魔に、抵抗の余地など存在しない。

『ぬわっ! ぐっ!? おぉぉ──!?』

 押し寄せるぬいぐるみの津波にあっさり押し流されて、ホールの壁へ向けて一直線。
 そのままズドンッ! と音も激しく衝突し……力無く、床へと倒れ込む。

「ふふんっ! 作戦大成功ね!」
「やりましたでありますね、アリス様!」

 そんな敵の姿を見届けて、アリスとクロエがパシン! と手を打ち合わせる。
 喜びを分かち合う二人。だが……。

(この戦装束は、断じて下着姿では無いのでありますっ!)

 と、クロエは内心でだけ叫ぶのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

サブリナ・カッツェン
●POW
…なぁ、MK
『言うな。哀しき漢のサガだ』
いざとなったらアイリーゼを召喚してやろうかと思っちまったがこうなりゃ付き合うしかねぇか
『白旗でも上げて脱がされるのか?』
馬鹿言うな、みすみす黙って脱がされるか
相手をほださせて反撃の機会を伺うんだよ

いいぜ、ならあたしと勝負しようぜ…このコイントスでな!
『なるほど、野球拳』
野球拳言うな!
『説明しよう。サブは金貨の裏表を言い当てる勝負をオブリビオンにふっかけたのだ。勝てば相手が脱ぐ、負ければ自分が脱ぐという単純極まりないルールの元、どう見ても墓穴を掘る予感しかしないのは気のせいだろうか』
へっ、いい気になって油断したのを見計らって『指弾』で見舞ってやるよ





 時は少し遡り、戦いが佳境を迎える頃の事である。

「……なぁ、MK(ミーケー)」
『言うな、哀しき男のサガだ』

 猟兵達の猛攻の前にズタボロになっていく脱衣魔。
 その姿を眺めて溜息混じりのサブリナのボヤキのその先は、相棒によって止められた。
 サブリナが何を思っているのかは定かではないが、予想は付く。その内容を要約すれば、『なんなのあのアホ?』と言った所であろうか。
 まぁ、その気持ちは判る。脱衣文化の保護などという理解不能な目的を掲げる上に、超人的な脱衣テクを持つ変質者などという存在は、女性の敵以外の何者でも無いのだから。
 いざとなれば他の猟兵達の様に、愛機であるキャバリアを喚び出して処しようかとも考えたが……キャバリアの装甲板越しですら脱がしに掛かられた一連の流れを見て、その考えはボツとした。
 ……しかしそうなると、一体どう対処したら良いやら。

「……こうなりゃ、付き合うしかねぇかなぁ」

 しばし悩み、ポツリと言葉が零れ出る。

『白旗でも上げて脱がされるか?』
「馬鹿言うな。みすみす黙って脱がされるかよ」

 その言葉をからかうかのような相棒の問いを、サブリナは鼻で笑って切り捨てる。
 アレの相手をするのは、正直業腹である。だが猟兵としての務めを受けてこの場にいる以上、背に腹は変えられない。
 上手くいくかは少々賭けだが……。

「おっとぉ……?」

 と、サブリナが悩んでいたその裏で。戦闘は着々と進んでいたらしく。
 今、まさに。変質者はぬいぐるみ軍団の津波に押し流されて、壁へと衝突し床へと倒れ込んだ状況であった。
 様子を伺えば、敵はもう相当な消耗状態にある様子。これなら、サブリナの策も上手く行くだろうか?

(……細工、はしてないけど。仕上げを御覧じろ、ってな)

 一つ大きく息をして、ゆっくりと。余裕の足取りでサブリナが歩む。その行く先は、倒れたままの脱衣魔の下。
 近寄る女の足音に、脱衣魔は体を起こそうと藻掻くが……立ち上がるには、至らない。

「よう、色男。もう限界かい?」
『馬鹿を、言うな……俺は、俺の理想は、まだ……!』

 からかう様に声を掛けるが、脱衣魔はやはり立ち上がる事は出来ない様子。
 歯を食いしばるその姿を見るに、どうやら消耗の方は、本当に厳しいようだ。
 ……この状態なら、不意を打たれて超絶的な脱衣テクを披露される事も無いはずだ。
 障害は、消えた。後は、ヤツが乗ってくるかどうか?

「そうかい。なら──あたしと一つ、勝負しようぜ?」
『勝負、だと……?』

 なるほど、野球拳。などと言い出す相棒を殴って黙らせつつ。サブリナが懐から取り出したのは、一枚の金貨。

「コインを弾いて、表か裏か。コイントスってヤツさ。アンタが勝ったら……大人しく、脱がせてやるよ」
『……』

 サブリナのその提案に、脱衣魔の表情に迷いが浮かぶ。
 彼にとって、脱衣とは自らの手で脱がせる行為。この様なゲームで脱衣を決めるなど、邪道以外の何者でもない。
 だが、しかしだ。既に男は、自身の体が限界であることを自覚している。その状態で、目の前の相手を脱がせるには……他に方法が、無い。

『……良い、だろう。裏だ』
「オーケー、交渉成立だな」

 迷った時間は、数秒程。諾を返した男の表情は、苦渋に満ちた物であった。
 ともあれ、交渉は成った。後は実際に、勝負に出るだけだ。

「それじゃあ──行くぜ!」

 親指と人差指の間に乗せたコインを、勢いよく弾く。打ち上げられたコインはくるくると回転しながら高く舞い上がり……やがて、落下してくる。
 表か、裏か。答えは二つに一つだけ──。

「集中してるみたいだが──」

 コインの行く先をジッと見つめる脱衣魔の耳に響く、サブリナの声。
 その声に視線を向ければ……こちらを見下ろすサブリナが、掌の内側に丸めた中指を親指で押さえる、所謂『デコピン』の構えを取っていた。
 何のつもりかと、困惑を浮かべる脱衣魔。
 ──その感情が、彼がこの場で感じた最後の感情であった。

「──油断したな?」

 舞い落ちる金貨が、サブリナの眼前へ到達したその瞬間。
 静かな戦意と共に、抑え込んだ中指をサブリナが解き放てば……金貨が中指に弾かれて、軌道を変えた。
 打ち出された金貨の勢いは、凄まじかった。脱衣魔が認識するよりも早くその頭を撃ち抜き床へと突き刺さると、そのままアスファルトの床を十数メートル抉って漸く止まった程である。
 ……当然、そんな威力で撃ち抜かれた脱衣魔の頭が無事なはずが無い。抵抗する力も無く直撃された頭は上半身ごと纏めて消し飛び……遂に全ての力を喪って塵となり、骸の海へと消えていくばかりだ。

「……騙したのは悪いが。釣りはいらねぇから、とっときな」

 塵となり風化し消えていく脱衣魔に向けて、静かに呟くサブリナ。
 ……まぁ、金貨は今の一撃で拉げて使い物にならないはずだ。三途の渡し賃代わりにしかならないだろう。

 ともあれ。こうして、『薄着文化』の破壊を目論んだ邪教徒の集団は殲滅された。
 猟兵達は、人々の夏の楽しみの一つを守りきる事に成功したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『水着ショッピング』

POW   :    直感で選ぶ など

SPD   :    実用性で選ぶ など

WIZ   :    デザイン性で選ぶ など

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




 邪神の復活を掲げ、『脱衣文化』の保護と『夏の薄着文化』の破壊を試みた邪教集団は、猟兵達の活躍の前に殲滅された。
 教主であったオブリビオンは討たれ、構成員の一般邪教徒達も余さず捕縛されている。これでひとまず、今回の案件の片は付いたと言えるだろう。
 だが、世に騒乱の種は尽きまじ。第二、第三の脱衣系邪教集団が現れる可能性は否定できない。
 その時はまた、猟兵達の活躍が求められる事になるだろう……。

 さて、討伐目標を討ち果たした事で今回の猟兵達のお勤めは無事終了である。
 後はもう、自由時間。さっさと帰って体を休めるも良し、足を伸ばして遊びに行くも、個々の自由だ。
 ……だが、今回この場に集まった猟兵達の多くは、とある共通の目的を胸に抱いていた。

 ──季節は夏。猟兵の夏と言えば……あのお祭り。
 ──必要なのは、水着。去年の物もいいけれど、折角ならば新調したい。
 ──幸い、近くには水着ショップがあるのだという。
 ──折角だ。水着ショップを覗いて、色々と見て回るのも良いだろう。

 事後の処理を現地組織にお任せして、猟兵達は一路水着ショップへと向かう。
 依頼の後のお楽しみ。日常を謳歌する時間が、始まろうとしていた。

 ====================

●第三章、補足

 第三章は日常章。
 本日のメインイベント。街の水着ショップで、ショッピングのお時間です。

 街中にあるお店は広く、商品も多種多彩。
 普通のヒト型系種族の皆さんは勿論、大きい方や小さい方、特殊な体型の方にも対応した水着をご用意しています。
 試着室もしっかり完備していますので、ご安心下さい。
 ……なんでUDCアース世界のただの水着屋がそんな手広く対応してるのかは考えてはいけない。イイネ?

 また店内にスタッフ以外の一般人の方は居らず、猟兵達の貸し切り状態となっています。
 ……が、あまり羽目を外し過ぎぬよう。公序良俗を守った行動を、心掛け下さい。

 また、三章ではヴィクトリアも皆さんと同行しております。何かあれば、是非お声がけ下さい。
 特に何も無ければ、皆さんを送り迎えしたり事後処理をする為にその場に待機し、皆さんの楽しむ姿を見守っています。

 迫りくる夏本番。
 すぐそこに迫る未来を想い、騒動を終えた猟兵達が日常を楽しむ。
 皆さんの楽しいプレイング、お待ちしております!

 ==================== 
スウォミ・リーデンスベック
きゃー!
待ってましたー!

恥ずかしながらわたし、現し身を得て初めての! 夏! なのです!

色とりどりの水着、目移りしちゃいますね。見てるだけで楽しいです。この大型の水着は、どういう種族の方用なんでしょうか?

たくさんの方が試着してるのもそれとなくチェックいたします。あ、あの方の水着かわいいー。似合ってる〜。

そして結局自分のものは買えないわたしなのでした。なぜなら、まだまだ駆け出しなので…

でも、皆さんが夏を満喫するための笑顔を見て、満足しながらお店を後にします。

うん、いいことしたあとは気持ちがいいですね!





 真夏の太陽の様に輝く照明。壁面は南国の空を思わせる様な青の壁紙で覆われて、床の白さは砂浜の如く。ただし室温だけはやや涼しげな心地よさ。
 猟兵達が訪れた水着ショップは、本格的なシーズンの到来を前にして、内装工事を執り行った直後と言った風情であった。

「きゃーっ! 待ってましたー!!」

 そんな水着ショップの内装に、スウォミのテンションが跳ね上がる。
 スウォミにとって今年の夏は、写し身を得て初めて迎える夏である。
 そんな事情を抱える彼女であるのだから、南国のリゾートビーチを想像させる様なショップの内装や、陳列された色とりどりの水着達に針が振り切れたのは当然のことだろう。

「本当に目移りしちゃいますね! 見ているだけで楽しいですっ!」

 色とりどりな水着達。どれだけ見ても飽きず楽しめる程に、そのデザインは多種多彩。
 ……時折混じっている、明らかに一般的な体型のヒト型種族向けでは無いサイズの水着には思わず小首を傾げたりもするが。一体どんな種族向けの物なのかと推察するのも、スウォミにとっては楽しい時間だ。

(あっ、あの方の水着かわいいー。似合ってるー……)

 そんな風に時間を過ごす内に、一人、また一人と。コレと決めた水着を手に取り確かめて、試着を始める猟兵達。
 僚友のそんな姿をそれとなくチェックし、感じ入った様な念を抱くスウォミであるが……彼女自身の手には、水着は無い。
 水着が欲しくない? 否、断じて否である。この時期の猟兵で、水着が欲しくない者など(極一部を除いて)いるはずが無い。
 当然、スウォミも水着は欲しい。欲しい、けれど……。

「……うっ。お高いですわね……」

 写し身を得たばかりのスウォミはまだまだ、猟兵としても駆け出しの身分である。
 故に、諸々の諸事情が重なってか。この場で水着をお買い上げするには、こう……色々と、お察しなのであった。

 ──あぁ、でも。

 ちょっとガックリしつつも、スウォミは思う。
 今日の事件を無事に阻止した事で、この街の人々はきっと楽しい夏を満喫出来るはず。この場に集った猟兵達もまた、そうに違いない。
 ……だって、この店で水着を見て回る者達は。皆が皆、あんなに楽しそうな笑顔を浮かべているのだから。

「うん。良いことをした後は、気持ちがいいですね!」

 初めて迎える夏。
 つまりそれは……生涯で一度切りの、『特別な時間』であるという事。
 そんな季節を、楽しく過ごせそうな予感に。スウォミの笑顔は、ますます光り輝くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎

やれやれ…変態エリートもなんとか下し、平和が戻ったわけですね
ホッとした所で、今年は水着を俺も新調しようかな、と思っていたので見て回ろう
去年はちょうど猟兵となったばかりで、水着を購入して夏を満喫する時間もないままに過ぎ去ってしまったからね(汗

とはいえ、男物の水着っていうのは、まぁ、女性用に比べてそう多くはないのだよね、迷う事もないかもしれない
シンプルなベーシックの海水パンツにしよう

それにしても、女性の水着って、本当に色合いやらデザインやら、多岐に渡っていて凄いものだな…
男が一人で女性水着をじろじろ見ているのは不審者以外の何物でもないので、ガン見しないようには気を付けなきゃ、だけど(汗





 水着ショップのそこかしこから聞こえる、女性猟兵の楽しげな声。
 そんな声を聞きながら、変態エリートを無事に討ち滅ぼし、平和が戻ったのだという実感をひりょは感じていた。

「やれやれ……ともあれ、めでたしめでたしって所かな」

 今回の戦いでは、基本的には皆無事だった。
 そんな結果に、ホッと胸を撫で下ろし。ひりょは周囲をぐるりと見渡す。

「……ふむ」

 ひりょが猟兵として目覚めたのは、昨年の夏の頃。あの頃は色々とバタバタしていて、夏を満喫する時間もないままに季節が過ぎ去ってしまったのは苦い思い出である。
 だが、今年は違う。猟兵として経験を積み上げた事で心に余裕は出来ているし、スケジュール的にも問題はない。今年は水着を新調して夏を満喫しようかと考えていたひりょにとっては、今回の水着ショップはまさに渡りに船と言った所である。

「男性用水着は……あっちか」

 呟きひりょが足を運んだのは、男性用水着が集められた一角。
 多種多彩なデザインで種類の多い女性用水着と比べれば、男性用水着というのはそれ程多くの種類が無いもの。
 故にひりょは、水着選びにそれ程時間は掛からないだろうと考えていたのだが……。

「おっ? おぉ……?」

 その予想は、いい意味で裏切られた。
 確かに、男性用水着は女性用のそれと比すれば種類は多くない。
 だがそれでも、競泳用と言われて想像出来るような肌に張り付くスイムウェアだけでも膝上丈の『ハーフスパッツ』やそれを更に短くした『ボックス』、Vラインのみを布地で覆う『ノーマル』と分類される程に数がある。またそれ以外にも、サーフパンツに代表されるレジャー向けな『ルーズ』タイプの物もあるのだ。
 その上で、個々にデザインや機能なども違うのだから……意外な事に、男性用水着もその種類は豊富であったりするのだ。
 そんな並ぶ水着に、ひりょは一瞬面食らうが……再び聞こえてきた女性陣の楽しげな声に、思わず視線がそちらに向かう。
 試着室の方にいるのだろうか、声の主の姿は見えない。だがそちらに視線を向ければ必然、ひりょの視界には色とりどりの女性用水着が飛び込んでくるだろう。
 ……あまり向こうをジロジロ見ると、今度はこちらが不審者扱いされかねないので。
 色々惜しいが、ひりょはゆっくりと視線をこちらに戻す。

(……あぁ。でもやっぱり、女性用に比べればね)

 そんな事をしている内に。浮足立ちかけたひりょの精神は、落ち着きを取り戻していた。
 うん。確かに今、想定よりも多かった水着の種類に動揺した。
 けれど、女性用水着に比べればやっぱり数は少ないじゃないか。
 ならば、迷う事は無い。シンプルなデザインで、ピンと来る物をサクッと一つ……。

「──ん、コレかな」

 ひりょが選んで手にとったのは、膝丈のシンプルなサーフパンツだった。
 柄は無い。黒をベースにしたシンプルなデザインだが、腰から膝に掛けて伸びる波打つ水を思わせる金のワンラインがアクセントとなっている品である。
 ……ベーシックさの中にも、明るさと落ち着きが両立した印象だ。

「……うん、悪くないんじゃないかな」

 手に取る水着を買い物籠へ収め、満足げに笑むひりょ。
 後は水着を選ぶ女性陣という魅力的過ぎる光景をガン見しないよう気をつけつつ、レジへと向かうだけであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャルロッテ・ヴェイロン
ひどい目に遭いやがったのですよ、ある意味で。

アー、モシモシ、証拠隠滅――もとい、事後処理班?現場となった建物、更地にしちゃってください(ぉぃ)。

――さて、どんな水着にしましょうか。念のため事前にネットで【情報収集】していきましょう。

――よし、今年のは少し攻めたデザインでいきましょう。では早速「あっ、お客様にはこちらの方がお勧めですよ?(と、勧められたのが「白スク水」)」

――いや、この今年流行の「今なら特別サービスで、豪華な賞品がもらえるキャンペーンに参加できますよ?」

――で、賞品は何です?(結局キャンペーンに釣られて白スク水お買い上げ(ぇ))。

※アドリブ・連携歓迎





「──ひどい目に遭いやがったのですよ、ある意味で……」

 水着ショップの一角。買い物疲れを癒やす目的で置かれたベンチに腰掛けて、シャルロッテが溜息を溢す。
 今回の任務で、一番酷い目に遭ったのは誰かと言えば……それはシャルロッテに他ならないだろう。
 シャルロッテ以外にも服を剥かれた者はいないではないが、他の者達はみな作戦遂行の為に敢えて被害に遭ったという形である。言わば、『コラテラル・ダメージ』と言った所であり、脱がされる事に覚悟もあったはずである。
 だがシャルロッテは違う。彼女は純粋に、あの変質者の超絶テクの犠牲となったタダの被害者である。
 故に、シャルロッテが一番の被害者である……という事に、異論を抱く人はいないだろう。

「……ふぅ。さて」

 そんな戦いで負った心の傷を癒やすが如く。ベンチ側の自販機で売っていた缶ジュースを一息に飲み干したシャルロッテは、懐から端末を取り出すと何やらアプリを立ち上げて……。

「アー、モシモシ? 証拠隠滅──じゃなかった。事後処理班の人?」

 戦場であったライブハウスで現在作業中の現地組織のエージェントへ向けて、電話を掛けた。
 彼女が立ち上げたアプリは、ハッキングツールである。そのツールを活かし、エージェントの連絡先を確保して、今通話を繋げたのだ。
 ……まぁ、それは良いとして。シャルロッテは一体、何をしようとしているのか?

「今日の現場のライブハウスあるじゃないですか。えぇ。その建物、更地にしちゃってください」

 続く言葉が、その疑問の答えである。
 キャバリアに搭乗していたので見られなかったとはいえ。シャルロッテは今日、衆目の面前で一糸纏わぬ姿を晒す事になったのは事実である。
 戦場でそんな姿を晒すのは、恥である。良いとこ生まれのお嬢様であるシャルロッテとしては、そんな恥は……無かったこととせねば、気がすまない。
 故にシャルロッテは今日の痕跡を消し去る為に、戦場であったライブハウスの存在を『無かったこと』にしようと企てたのだ。

「それじゃ、よろしくー……ふぅ、ヨシ!」

 困惑の声を上げる電話の向こうの相手を気にすること無く通話を切る。
 これで、憂いは断った。ならば後は、今年の夏を考えるのみ。
 さてさて、今年の夏はどんな水着にしようかな、と。ベンチを立ち上がり、シャルロッテが水着の並ぶ売り場へと足を運ぶ。

(今年の水着は……うん。少し攻めたデザインでいきましょう)

 この場に至るに当たって、シャルロッテは事前に今年の水着のトレンド情報をネットで収集していた。
 今年のトレンドは、ハイウエストのブラックビキニやアニマル柄、フリルを施したデザインなど……どれも良さげで、目移りしそうだ。
 そんな中でも、やはりここは攻めて行くべきと。狙うは胸元にシャーリング加工を施してシルエットを際立たせる、布地少なめのビキニタイプ……!

「あっ、お客様?」

 意気揚々と、狙った水着をその手に取ろうとしたその瞬間。シャルロッテを呼び止める人の声。
 視線を向ければそちらには、店のスタッフが。20代半ばくらいの、眼鏡を掛けた女性スタッフだ。
 一体何の用なのかと、怪訝そうな顔を浮かべるシャルロッテ。そんな疑問に答えるように。

「お客様には、こちらの方がお勧めですよ?」

 店員が、その手に用意した水着をシャルロッテに差し出す。
 競泳水着の様に肌に張り付く、飾り気の少ない無地のワンピースタイプだ。
 色は白。胸元には、自身の名前を書くワッペンが縫い付けられている。
 ……見る人が見れば、判る。その水着の名は、『スクール水着』。それもある種特殊なタイプの、『白スク』と呼ばれる物であると。

「あの、いや。わたしは今年流行のこの──」

 浮かびそうになる嫌な顔をお嬢様の仮面で必死に抑え込みつつ、固辞しようとするシャルロッテ。
 だが、その仮面は……。

「今なら特別サービスで、豪華な賞品が貰えるキャンペーンがですね……」
「それにします。で、賞品ってなんです???」

 目の前にぶら下がった物欲の前に、あっさり崩壊。
 と同時に、シャルロッテの今年の夏の供は白スク水と相成ったのであった。

 ……なお、肝心の賞品についてはシャルロッテのみが知るのでここで記す必要は無いだろう。
 あと『無かったこと』にされたライブハウスの安否の方も結局どうなったのかは……神のみが知る事である。

大成功 🔵​🔵​🔵​

織座・このみ
●姉様
『こちらで、水着が手に入ると聞きましてぇっ!』
この季節、皆さん水着なるもので盛り上がっていますが、エンパイアでは手に入らなかったですからねぇ
この機会逃しませんよぅl

どれも素敵そうですけどぉ、どういったのが普通なんですかねぇ?
あんまりに非常識なものは避けたいところですがぁ
『女の子ならだれでも一度は着たことある水着、なんてものはないですよねぇ』

(なお水着コンはスク水が確定してる模様)

●このみ
うぅ……姉様に無理やり連れてこられたんよ……

ぅ、うちは変なのでも露出しなのがいいんよ……
「上に羽織るものとかありますかねぇ?」

※内心・思考の口調は、訛り気味
人前では狐面外さない
アドリブ歓迎





『こちらで水着が手に入ると聞きましてぇっ!!』

 猟兵達で賑わう水着ショップに、バーンと扉を開き飛び込んでくる影。
 すわ、何者かと。一瞬猟兵達に緊張が走るが……その緊張は、すぐに解ける。
 飛び込んできたその影は、『生命の埒外』の力宿す者であったからだ。

『この季節、皆さん水着なるもので盛り上がっていますが、エンパイアでは手に入らなかったですからねぇ』

 この機会は逃しませんよぅ! と、拳を握る影。黒の狐面を顔に着けた、小柄な女だ。
 だが女の最大の特徴は、狐面に非ず。彼女の体は、燃え盛る炎──ブレイズキャリバーが宿す、『地獄の炎』で構築された物であったのだ。
 彼女の名は、織座・このか。狐の特徴を持つキマイラの戦巫女猟兵の、姉である。
 ……実は、このか自身は猟兵では無い。このかは猟兵である妹の炎に宿る、双子の姉でしかない。
 では、肝心の猟兵である妹本人はどこにいるのだろうか。

『っと、そんな所に隠れてないで……!』
「わっ、ちょ、姉様……!」

 きょろきょろと周囲を見渡したこのかが、物陰に隠れていた妹を引っ張り出す。
 妹である猟兵。彼女の名は、織座・このみ(半身は焔となりて傍らに・f04890)という。内気で、人見知りで、引っ込み思案と、人目に立つのが苦手な要素をコンプリートしているような女であった。
 そんな彼女が、何故この場にいるのかと言えば……。

(ぅぅ……姉様に、無理やり連れてこられたんよ……)

 と、そんな理由であった。
 妹を無理やり引っ張って、このかがこの場を訪れたのには理由がある。
 それは、すぐそこに迫った夏。猟兵達が楽しみにしている、水着の祭典だ。
 猟兵としての歴がそこそこに長い織座姉妹であるから、その祭典で一体何が必要なのかは理解している。
 だが、必要なアイテムである水着は、彼女たちが普段過ごすエンパイア世界では中々手に入る物では無いのだ。特にこう綺羅びやかなものとなると、入手難度は更に跳ね上がるという物だ。
 そんな彼女たちにとって、戦闘後に水着ショップを訪れられるという今回の機会は渡りに船であった。戦闘でこそ目立ってはいなかったが、この瞬間を彼女達(というより、このか)は待っていたのだ。 

『しかし、ふむ……綺羅びやかでどれも素敵そうですけどぉ、どういったのが普通なんですかねぇ?』

 輝かしく並ぶ水着達を楽しげに眺めつつ、このかがふむと唸りを上げる。
 確かに、並ぶ水着はどれも綺羅びやかで艶やかだ。だがその中から一着を選ぶとなると……基準とするべき『普通』が、このかには判らないのだ。
 ……出来るなら、非常識な物は避けたい所だが。

「姉様……あたしは変なのでも露出しないのが……」
『あ、店員さーん。ちょっといいですかねぇ?』

 悩む姉にこのみが控えめに手を上げ意見を出すが、このかはその意見を見事にスルー。近くの店員を呼び出して……。

『女の子なら、だれでも一度は着たことある水着……なんてものは、ないですよねぇ?』
「あぁ、それなら……ちょうど良いのがありますよぉ?」

 意見を求めれば、店員(20代半ばの、女性スタッフであった)が眼鏡を輝かせて奥に下がると……すぐに一着の水着を手に、戻ってくる。

「こちらの水着、『女子なら誰でも一度は着たことがある水着』です。今なら豪華賞品も付いてくるお得なキャンペーン中!」

 どこか鼻息の荒さを感じさせる店員のセリフを聞き流しつつ、このかが水着を検める。
 一般的な、ワンピース形状の水着だ。生地は肌にぴっちり張り付く素材。着心地は悪く無さそうだ。
 特徴的なのは腰回りの上下に分割線がある事か。恐らく水着の中に入り込んだ水を抜く為の穴か何かなのだろう。
 ……水着に疎いこのかには判らないが、この水着は確かに女子なら一度は着たことがあるはずの物だ。
 その名は、『スクール水着』。子供が学校の授業の際に着用する、水泳着である。

『ふーむ……悪くないんじゃないかねぇ?』

 その水着を指で触って確かめて、ふむりふむりと頷くこのか。どうやら印象のほどは悪くない様子である。
 ……だが、うん。このみとしては、この水着でもまだ微妙に露出過多な気がしたようで。

「店員さん、上に羽織る物とかありますかねぇ……?」
「あぁ、でしたら……」

 こっそり店員に声を掛け、羽織物の調達も忘れない。
 ……さてさて、二人の水着がどうなるか。その結果は、当日明らかになるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・クイン
クロエ(f19295)と水着ショップについたわ
アタシの水着を選ぼうなんて、クロエったら生意気ね?
ふ、ふーん……かわいいじゃない。ちょっと試しに着てみようかしら

試着室にいそいそと入って可愛い水着を試着!
……したはずなのに、なんでアタシ、マイクロビキニを着てるのかしら?
ふふふ、きっとアレね。エロ水着の呪いってことね?ファ●ク!

よーしアタシもクロエに水着を選んであげるわ!
試着室から飛び出して、クロエのサイズに合わせた水着を探してあげる
アタシよりドスケベな水着をね!仲間になりましょうクロエ!!

勢いのままに試着室に飛び込んで、ぐいぐい押し付け着せてあげるわ
まぁクロエにぴったりこれはもう買うしかないわね!


クロエ・アスティン
アリス様(f24161)と水着ショップへ!
去年は大変だったでありますからね……

せっかくですからね、アリス様には可愛らしい水着を……これなんかどうであります?とフリルのついた露出は少な目のタンキニタイプの水着をチョイス。
自分も同じタイプの水着を試着してみますかと試着室に入って下着姿になったところでアリス様が突然入ってきます!!?

ア、ア、アリス様、その水着は一体!?
エロ水着に驚いていると試着しようとしていた水着を取られて別の水着を手渡されます。
手に取ってみると首元や腰で紐を交差させるタイプの布地極小のスリングショットエロ水着。
ひぃ、こ、こんなの裸と一緒でありますーーー!

※無理やり買わされました





「遂に辿り着いたわ! 水着ショップ!!」

 声を上げるアリスの全身からは、これ以上無いほどの覇気が迸っていた。
 去年水着周りでアレコレあったのは既に触れた通り。そして今年の水着に賭ける思いの程も、触れた通りである。

(去年は本当に、大変だったでありますからね……)

 そんなアリスの苦難の歴史は、クロエも重々知っている。
 当然、アリスがこうなる事も理解しており……ほろりと一筋涙が零れ落ちそうである。
 まぁ、何にせよ。変態案件は無事に片付けて、これからのお楽しみを邪魔するヤツはもういない。
 今はこの時間を、全力で楽しむべきだろう。

「あのっ、アリス様っ。せっかくですから、アリス様の水着は自分に……!」
「へっ? クロエが、アタシの水着を? ふ、ふーん……?」

 せっかくの機会なので、と手を挙げるクロエの意思表示に、アリスは驚きに一瞬目を見開くが……その表情はすぐに、色々な感情が綯い交ぜとなった様な何とも言えない物へと変わる。
 そんなアリスを横に置き、クロエが売り場へ駆けていき……。

「アリス様! これなんて、どうでありますか?」

 戻ってきたその手に携えたのは、トップとボトムの二つに分かれたセパレートタイプ。特にトップがタンクトップ状になった、『タンキニ』と呼ばれるタイプの水着であった。

「ふーん……?」

 受け取るアリスがしげしげと眺めてみれば。セパレートタイプの水着にしては露出はやや控えめでありながら、要所要所に今年のトレンドであるフリルをあしらうなど、デザイン性は悪くない。いや、直截に言って……。

「……かわいいじゃない。こんなの選んでくるなんて、クロエったら生意気ね」
「えぇっ!?」
「冗談よ、じょーだん。それじゃ、ちょっと試しに着てみようかしら」

 素直に認めるのが悔しくて、ポロリと溢れた言葉にショックを受けた様子のクロエを宥めつつ。アリスが試着室へと消えていく。
 その後姿を見送って、クロエもまた試着室へと進んでいく。
 カーテンを締め切り、衣服に手を掛ける。
 しゅるしゅると鳴る衣擦れの音。薄布一枚向こうには多くの人がいる空間で衣服を脱いでいるという状況に、ほんの一瞬クロエの頬が羞恥の朱に染まり……。

 ──パンッ!

「っ!? な、なんの音でありますか!?」

 瞬間、響いた炸裂音にその念は消し飛んだ。
 音の元は、隣……アリスが入った試着室。
 まさか、何かのテロか? いや、それにしては音が随分と軽い。それに隣からは何やら女の子が使っちゃいけない『Fワード』を叫ぶアリスの声が……あ、今カーテン開け放った。そのまま足音も高く駆け出して……。

「──クロエっ!!!」
「ひっ、アリス様!? なんでこっちに……!」

 十数秒後。クロエの試着室のカーテンを勢いよく開け放ち、アリスが飛び込んでくる。
 一体何があったのか。というかなんで試着中にこっちに……と、問い質そうとして、クロエが気付く。

「あ、あの。アリス様……その水着は、一体……?」

 クロエが気づいたのは、アリスの衣装の変化だった。
 先程まで着ていた普段着では無い。水着姿で、間違い無い。
 だが彼女が着ている水着は、試着室で確かめていたクロエが選んだタンキニ水着では無い。
 クロエはその水着を、知っている。だがどうしても、認めたく無かった。
 だって、その水着は──!

「ふっ、ふふふ……きっとアレね。エロ水着の呪いって事ね?」

 そう。アリスが呟くその内容の通り。去年アリスがひと夏を共にした、超極小マイクロビキニなのだから。
 夏が終わり、季節が巡り。呪いは完全に解けたのだと、アリスはそう思っていた。
 だが、事実は違う。確かに呪いの力の大部分は解消されていたらしいが、体に染み付いたその力はまだ健在であったらしく……夏の訪れと同時に活性化し、遂に発現してしまったのだ。

(か、掛ける言葉が見当たらないであります……っ!)

 俯き乾いた笑いを垂れ流すアリスの姿を見て、クロエはその事実に思い至るが……言葉を掛ける事も出来ず、下着姿のままのどうしたものやらとオロオロする事しか出来ない。
 ……もしここで何か上手いことが言えたりしたら、この後のクロエを襲う悲劇は免れたのかもしれない。
 だが、現実は。クロエはどうする事も出来ず、ただアリスの暴走に巻き込まれるばかりである。

「クロエ。ねぇクロエ。アタシたち、友達よね???」
「えっ、はい。そうであります、よ?」
「そうよね! そうよねッ!! なら、アタシが選んだ水着も着てくれるわよねッ!!!」

 俯いていた顔を上げたアリスの目からは、光が完全に消えていた。
 そんな状態で迫られたのだから、クロエはもう堪らない。怯えながら、問われた言葉にこくこくと頷くばかり。
 そうして返されたクロエの言葉に、言質を取ったと言わんばかりに……アリスがクロエに、水着を押し付ける。

「水着、でありますか……こ、これはっ!?」

 押し付けられた水着を恐る恐る検めれば、クロエの目は驚きに見開かれるだろう。
 その水着は、首元と腰で紐を交差させつつ、プライベートゾーンをその紐で隠すタイプの水着。
 俗に言う、『スリングショット』と呼ばれるタイプのソレを、更に布面積を減らした様な物であった。
 ……有り体に言って、タダのヒモである。

「あ、アリス様っ!? これ、ただのヒモでありますよっ!?」
「そうねヒモねまぁクロエにすっごくぴったりさぁこれはもう着て買うしかないわね仲間になりましょうクロエッッッ!!!!」
「ひぃっ!? こ、こんなのハダカと一緒でありますよーーーっ!?」

 きゃいきゃいと賑やかになる試着室。その騒ぎに何事かとお店のスタッフさんがやって来て……騒ぎはますます、大きくなる。
 ……最終的に、アリスが(不可抗力とは言え)破ってしまった水着の弁償や、クロエが(無理やりに)ヒモを買わされる事で収まるまで、騒ぎは続くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

メリア・アルスト
グルヴェイグ(f30017)と二人で
●心情
裏表なく無邪気でかわいらしい面があって、静かにしているととても綺麗で
そんなグルヴェイグが好きだから、もっといろんな楽しみを知ってほしいし、いろんな姿も知りたいんだ

●買い物
美味しかった?
買い物終わったら次はクレープに寄ろうね
じゃ水着だけど、今は水浴びの時はこういう服に着替えるんだよ
全部脱ぐのはダメ、ダメだよ
このワンピースとか露出少なくていいんじゃない?
あ、でもこっちのセパレートも露出増えるけど素敵だと思う
着方がわかりにくい?じゃあ手伝うよ
と着衣室で手伝ったり
そしてグルヴェイグから帽子をもらってびっくり
ありがとう…大事にするね


グルヴェイグ・ヴォルヴァ
メリア(f29925)と行動を共に

おわりましたわ!
一仕事終えたあとのスイーツは最高ですの
いつもご馳走になってるし、猟兵としてのお給料もありますし、たまにはわたくしも支払いますわ
え、別にいい…?そうですか…
では、今回も甘えてしまいますわね
(といいつつちょっと遠慮して少なめにパフェ三杯に抑える)

水着はメリアと一緒にあれこれ選んだり手伝ってもらったりしますわ
全部脱いでしまった方が便利だとは思うのですが…まあ時代が変われば流儀も変わるというものですわね
なるほど、着飾る要素もありますのね

そして途中でこっそり黒のベレー帽を買ってメリアにプレゼント
こういうの、似合うと思いまして





 猟兵達が水着ショップに向かう、その一方。
 一部の猟兵は先に用事を済まそうと、列を外れて単独行動を取るものもいた。

「……んー! 一仕事終えたあとのスイーツは最高ですの!」

 水着ショップ側にある、喫茶店。
 その一角に、メリアとグルヴェイグは腰を据えていた。
 今回の依頼に当たっての、メリアがグルヴェイグを連れ出す為の約束。
 即ち、『パフェをご馳走する』という約束を果たす為だ。

「うんうん、美味しそうで良かった」

 満面の笑みでスプーンを口に運ぶグルヴェイグの姿は、実に愛らしい。
 そんな彼女の姿を見つめれば、メリアの口元も自然と綻ぶ。
 ……だが、今日のグルヴェイグの活躍はまさに八面六臂の物であった。

「おかわり、してもいいから。好きなだけ頼んでいいよ?」
「よろしいのですか! では……!」

 故に、メリアはグルヴェイグの活躍に報いるのがパフェの一杯では安すぎるだろうと考て。
 早くも容器の底をスプーンで突っつき始めたグルヴェイグにお代わりを勧める。
 当然、その声にグルヴェイグは目を輝かせてオーダーを通すべく手を上げかけるが……。

「……あっ、でも」

 と、その手を引っ込める。
 どうかしたか、と首を傾げるメリア。そんな彼女の疑問に答えるように。

「その、いつもご馳走になってるし。わたくしにも、猟兵としてのお給料もありますから。たまにはわたくしも、支払いを……」

 上目を使い、どこか申し訳無さそうに言葉を紡ぐグルヴェイグ。
 そんなグルヴェイグの姿に、メリアは思う。
 裏表など無く、無邪気で、可愛らしくて。でも静かにしている時は、とても綺麗で。
 メリアはそんなグルヴェイグを好ましく思っている。だから、彼女にもっと色んな楽しみを知って欲しい。色んな姿をした彼女を知りたいと、そう思うのだ。
 ……今のグルヴェイグの姿も、また新しい彼女の姿。その姿を心のフレームに収めつつ。

「別に良い。今日は、一緒に依頼に出たお礼だし……この後のお買い物もあるから」

 努めて表情を変えずに、メリアは言葉を返す。
 ……この気持ちは、明かさない。まだ胸に秘めたままで良いのだから。

「そう、ですか……? では、今回も甘えてしまいますね?」

 そんなメリアの様子に、ほんの僅かに何かを感じたか。グルヴェイグの瞳の光が、僅かに揺れる。
 ……が、揺らいだのはほんの一瞬。直ぐにグルヴェイグの瞳は明るく輝いて。

「すいません、パフェのお代わりをお願いしますわ!」

 ウェイターを呼び寄せて、パフェのお代わりをお願いする。
 オーダを受け去っていくウェイターの姿を、楽しそうに見守るグルヴェイグ。
 その姿はもう、完全にいつもの通りであったが……それでもちょっと遠慮したのか。パフェのお代わりは、三杯で済ませるのであった。

 ………
 ……
 …

「むー、全部脱いでしまった方が便利だと思うのですけれど……」
「全部脱ぐのはダメ、ダメだよ。今の時代は水浴びの時はこういう服に着替えるんだよ」

 時は流れて、猟兵達の賑やかな喧騒が響く水着ショップ。
 喫茶店を出て一行と合流したメリアとグルヴェイグの二人も、その喧騒の例外では無かった。
 楽しげに言葉を交わしながら、今はメリアがグルヴェイグの水着を選んでいる最中である。

「ふぅむ。まぁ時代が変われば流儀も変わるというものですわね」
「そういうこと。ほら、このワンピースとか露出少なくて良いんじゃない? あ、でもこっちのセパレートも露出増えるけど素敵だと思うけど」

 時代の変化にどこか遠い目をするグルヴェイグの呟きに答えつつ、メリアは目についた水着を手に取りグルヴェイグの手に預ける。
 その手に預けられた水着を目にして、『成程、着飾る要素も……』などと唸り出すグルヴェイグ。
 ……この彼女の姿も、メリアが見たいと願うグルヴェイグの新しい姿の一つ。喫茶店の時と同じ様に、心のフレームに刻んで収める。
 今日一日で、新しい彼女を何度も見れた。実に眼福である。

「むむむ? これは一体、どう着れば……?」
「着方、わかりにくい? じゃあ手伝うよ」

 そんな思いに耽るメリアであったが、首を傾げるグルヴェイグの声が聞こえれば意識が戻る。
 どうやらメリアが渡した水着を両方とも試着してみるつもりであるようだが……その着方が、判らぬらしい。
 そんなグルヴェイグの様子に、口元に柔らかな笑みを浮かべると。メリアはグルヴェイグの手を取って、試着室へと足を運ぶ。
 試着室の中で、二人の間にどんなやり取りがあったのか。そして二人がどんな水着を買ったのか。それに関しては、本人たちだけが知る事である。
 ただ、一つだけ。

「メリア、いつもありがとう。こういうの、似合うと思いまして」
「黒のベレー帽……うん、ありがとう。大事にするね、グルヴェイグ……」

 水着を買い上げ、帰宅する最中。
 グルヴェイグからメリアへの、ちょっとしたサプライズがあった事だけは書き添えておこう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

サブリナ・カッツェン
●POW

はー、終わった終わった
そんじゃ、ここからは商いの時間と行くかね
『何時もの世界を股にかけた転売だな』
転売じゃなくて行商だろ
人聞きの悪ぃことを言うんじゃねぇよ

しかしまぁ、ホント種類が多いな
可愛らしいもんから紐同然の奴まで、流石専門店だけあるわな
『いっそのこと店ごと買い上げるか?』
バカ言うな
金貨が幾らあっても足んねぇし、あたしはそんなやり方が嫌いなのは知ってんだろ?
ここは目利きの直感が物を言うんだよ
『水着を選んでいる内に、ヴィクトリアか店員が来たようだぞ』
何だよ…え、悩んでいるなら試着だって?
いや、あたしは別に…
『じゃあ、サブ。実際に着て確かめようか』
って、MK!余計な事を言うんじゃねぇ!?





「はー、終わった終わったぁ……」

 呟くサブリナが、ぐぐぐっと背を伸ばす。
 しょうもない敵との戦いであったが、思った以上に体に力が入っていたか。バキバキと音を立てる背骨や関節が心地いい。
 まぁ、ともあれ。猟兵としての戦いの時間は、無事に終わった。
 これからの時間は……。

「商いの時間、と行くかね」

 そう。サブリナの本業である、商売人としての時間である。
 サブリナは、交易商人(と言うより、『運び屋』という側面が強いが……)としての顔を持つ猟兵である。
 交易商人の基本は、安い場所で買い上げて、必要とする場所へと持ち運ぶ事。利益が出れば、なお良いと言った感じである。
 夏の盛りとなる季節は間近。そんな季節であるから、水着の需要は各地で増える。
 この店に並ぶ各種の水着は、サブリナにしてみれば宝の山と同義であった。
 ……口さがない相棒は、そんなサブリナの商いを『世界を股にかけた転売』と称するが、断じて違う。サブリナの行いはあくまでも、交易であり行商である。転売屋、などと言う商売人の仁義を弁えぬ不届き者と一緒にして欲しくは無いものである。

「……しっかしまぁ、ホント種類が多いな」

 ともあれ、まずは売り場に並ぶ商品の吟味である。
 並ぶ水着は、多種多彩。可愛らしい物からほぼ紐の様な水着かどうか疑わしい物まで、色合い、デザイン、千差万別取り揃えたと言った具合である。
 これだけの品揃えだ。流石は専門店、と言った所だろうか?

『いっそ、店ごと買い上げるか?』
「バカ言うな。金貨が幾らあっても足りねぇし、あたしはそんなやり方が嫌いなのは知ってんだろ?」

 相棒からの提案は一刀の下に切って捨てる。
 買い占めて、売りつける。そのやり口は、先程も触れた転売屋と同じやり方である。そのやり口だけは、絶対にお断りだ。
 ここは、今まで数多の商品をその目で見極めてきた目利きの直感を信じて……。

「──さま? お客様? 何か、お探しですか?」
「あ、何だよ? ……って、あぁいや、あたしは別に……」

 じぃ、と。水着を見極めようと目を凝らすサブリナ。
 だがその様子が、何かを探しいるように見えたのだろう。声を掛けてきたのは、店のスタッフであった。
 当然、『お宅の商品を仕入れて、別の所で売りたいんだ』などと、バカ正直に言うのは憚られる訳で。言葉を濁すサブリナであったが……。

『じゃあ、サブ。実際に着て確かめようか』
「んなっ!? MK、テメェ余計なことを──!」
「そうですよね! 実際着てみないと判らない事もありますからね!」

 突如響いた相棒の発言に、スタッフが目を輝かせると。サブリナの背を押し、試着室へと放り込む。
 余りの押しの強さに、サブリナの抵抗は通じない。みるみる内に、試着室の中には先程までサブリナが吟味していた水着の数々が積まれて行く。

「……え、コレ全部試着すんの……?」

 買物籠から溢れ出そうなその数に、思わずたじろぐサブリナ。だが外で待つスタッフは、『試着を終えるまでしっかりサポートしますよ!』と言わんばかりに目を輝かせている。
 ……これはもう、大人しく試着していく他には無さそうだ。

「MK、テメェ……後でマジで覚えてろよな」

 恨み言を呟きながら、服を脱ぎ捨て水着を手に取るサブリナ。
 全ての衣装を試着して、店員から開放された時。サブリナは戦闘時以上の疲労を体に感じるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルトリウス・セレスタイト
セフィリカ(f00633)と

帰還の予定だったが、見掛けた彼女が珍しく逡巡しているようなので声などかけてみる
何かあったのか

大丈夫だそうだ
詳しく解らないが、そう言うなら大丈夫なんだろう

友人と水着を見に行く様子
退散すべきかと考えるが、そのままで良いそうなので同行
選ぶのに付き合う意味の有無はともかく、君が今年も更新するのなら
何を選ぶんだろうという興味はあるな

……そう言えば
毎年新たに水着を買う文化があるらしいとは知っているが、何故なんだろうな
良い機会なので尋ねてみるとする

美少女は進化する。自分をアップデート
それも楽しいを増やす一助ということか
ならば学びにもなるか。有り難く付き合うとしよう


セフィリカ・ランブレイ
アルトリウス君(f01410)と

お買い物タイム!
ヴィクトリアちゃんにはしかるべき時までは普通に接したい
声をかけるのを躊躇は要らない

普通に、今年用の水着見に行こ、て誘うだけ
その一歩を私は…

……!!?
って、アルトリウス君……びっくりした

そいや、君も派手にやってたね
ちょっと相手に同情したっけ

ん?ああ、彼女を水着買いに行こうと誘おうとしてたの
君も来なよ、夏!水場!水着!はやっぱ外せないでしょ
今なら美少女の水着選びに付き合えるよ

『普通の感性だと居た堪れないわよそれ』

去年の水着があるんじゃないかって?
それはそれ。美少女は常に進化するんだよ。常に自分をアップデートしてかなきゃね!
というわけで、一緒に行くよ!





 明るい喧騒に包まれる水着ショップ。
 そこかしこで水着を吟味する猟兵達は皆、楽しげな笑顔を浮かべている。
 そんな様子を、目立たぬ所で穏やかな笑みを湛えて見守る一人の女がいる。
 今回、猟兵達をこの地に送り込んだ案内人。銀糸の髪のグリモア猟兵、ヴィクトリアである。

(ヴィクトリアちゃん……)

 そんなグリモア猟兵の姿を見るセフィリカの瞳には、憂いの色を浮かんでいた。
 セフィリカとヴィクトリアは、それなりに深い交友を重ねた間柄である。郷里も近く、時期は違えど同じ師に師事した事もある間柄である。その事実を知れたのは、つい最近であったけれど……時が来たら、共に師に会いに行こうとも約束を交わしてもいた。
 けれど。その約束は、もう──。

(──いけない。暗い顔をしちゃ、ダメ)

 心の底から滲み出る、昏い情念に蓋をして。頭を振って、意識を変える。
 友人であるヴィクトリアとは、然るべき時までは普通に接したい。事実を語り、軽蔑されるのは……その時で良い。
 今は、普通に。普通に、今年用の水着を見に行こうと誘うだけだ。
 声を掛けるのに、躊躇は要らない。

「……ふぅっ、ヨシ。おーい……」
「セフィリカ」
「ひゃっ!!?」

 その為の一歩を、と。ヴィクトリアに向けて声を掛けようとしたセフィリカの背後から掛かる声。
 突然のその呼び声に、乙女にあるまじき声を上げて飛び上がるセフィリカが振り返れば。

「……って、アルトリウス君? びっくりした……」

 そこに居たのは色白肌の青年猟兵。先程の戦いで思わずセフィリカが敵に同情を覚える程に派手にやらかしていた、アルトリウスであった。
 セフィリカとアルトリウスは、それなりに親しい間柄である。その関係を示すかのように、アルトリウスの鋭い眼光はほんの少しだけ和らいでいる様に余人には見えるだろう。
 ……そんな間柄であるからだろうか。戦いの最中のセフィリカの様子が何やら違う事に、アルトリウスは気付いていた。そして今この場においても、セフィリカは何やら逡巡しているようにアルトリウスには見えた。
 その様子がどうにも気になって。

「何か、あったのか」

 と、一言。単刀直入に、アルトリウスは口にする。
 そんな彼のいつもと変わらぬ様子に、驚きに目を見開いていたセフィリカは一瞬呆けて。

「ああ、大丈夫、大丈夫。ほら、あそこの彼女を水着買いに誘おうとしてただけだからね」

 そして直ぐに、その表情はいつもの闊達とした気性のそれへと変わる。
 アルトリウスから見ても、その表情は常のセフィリカのそれである。何か違和感が無い訳では無いが……彼女自身が大丈夫と言うのだから、そうなのだろう。自身の心配は、どうやら杞憂であったらしい。
 ……ならば、長居をする理由も無い。目の前の彼女は友人と水着を選ぶそうだし、ここは疾く退散するべきだろう。
 だから、「なら、良い」と。また一言告げて、アルトリウスは踵を返し……。

「……あ、そうだ。君も来なよ! 夏! 水場! 水着! やっぱ外せないでしょ!」

 その足を呼び止める様に、響くセフィリカの楽しげな声。
 その声に足を止め、振り返れば。

「今なら美少女の水着選びに付き合えるよ?」

 と。セフィリカの悪戯げな笑みがアルトリウスの目に飛び込んでくるだろう。
 ……爛漫とした笑みだ。その体からは、陽性の活気が滲み出るかのよう。

『……普通の感性の男だと居た堪れないわよ、それ』

 そんな陽性の活気と反比例するかのように、セフィリカが腰に佩く魔剣からは疲れたような溜息が聞こえるが……彼女は大体いつもこんな感じであるから、気にせずとも良いだろう。

「水着か」

 口元に手を当て、考える。
 選ぶのに付き合う、その意味の有無はまぁ兎も角として。セフィリカがどんな水着を選ぶのか、興味が無いと言えば嘘になる。ここはお言葉に甘えて同行させていただくのも、悪くはないだろう。
 ……しかし、そう言えば。

「水着と言えば。毎年新たに買う文化があるらしいとは知っているが、何故なんだろうな」

 ふと、頭に浮かんだ疑問を口にする。
 日に日に体格の変わる成長期ならばともかくとして、成人ともなれば一朝一夕に体型が変わるという事もない。ならば、去年の物でも問題は無いはずだ。
 それなのに、この時期になると人々は毎年新たな水着を求めるのだ。何とも非効率な行動では無いだろうか?

「ふぅん。まぁ、そういう意見もあるだろうけどね?」

 だが、セフィリカはそうとは感じないらしい。
 確かに、去年の水着も悪くない。実際セフィリカは去年の水着を気に入っているし、何なら一昨年の水着もそうだ。
 けれど、それに甘えるのは良くない。何故なら、『美少女とは、常に進化する生き物』であるからだ。
 常に自身をアップデートし、磨き上げる存在。それこそが、『美少女』である。
 で、あるならば。セフィリカもまた、常に己を磨き、アップデートし続けなければならない。
 水着を新しくするのも、その一環。全ては美少女である義務を果たす為の行動であるのだ。
 以上、毎年水着を新たにする理由の証明である。QED。

「成程、自分をアップデート。それも楽しいを増やす一助、という事か」
「そういう事。さ、一緒に行くよ!」

 セフィリカの証明を胸に刻むように、ふむふむと頷くアルトリウス。
 そんな彼の手を振り回すかのように手にとって。セフィリカが一歩前へと進み出て、銀糸のグリモア猟兵の名を呼ばう。
 彼女たちがどんな水着を選んだか。そしてそれに対するアルトリウスの反応は……当人たちだけが知る、としておこう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

四王天・燦
《狐御縁》

水着の為に来たんだ
邪教徒はオマケです!

可愛いの選ばねば!
まずは基本―フリルたっぷりのビキニを勧めてみる

ワンピース等どんどん持ってくるぞい
ルルは今までと趣向を変えて明るいピンクとかどうよ?
焔に薔薇のコサージュなんて小物もオススメ
シホの水着は白と青で清楚なモノを持ってくる
(上記は一例です)

シホ、この裸リボンみたいな水着なんてどうだろ

ハァハァ…色々着せたい
一度脱がせなきゃ!
シホのビンタと祓符で狂気感染が癒えるのでした

アタシも選んでよ
密かに試着室へと児童用を持ち込んで三変化で五歳児に化けて皆を驚かせてやらう
あは、冗談さ♪

ちゃんと大人として着替えてスタイリッシュにポーズを決めちゃうぜ、ビシッ!


シホ・エーデルワイス
《狐御縁》

予想よりも大変な依頼でしたが
終わり良ければ全て良し

もちろんですルル
焔も一緒に行きましょう


ルルは思い切ってVラインにしてみるのはどうかしら?

そうね…フリル等の装飾でお腹が目立たなくするのも良いかも?


焔も体のラインが分かる水着の上に
シフォン生地のカバーアップを着てみるのはどうかしら?
フィッシュテールのデザインも良いと思います


燦は身長の高さを活かしてスポーティーな競泳水着はどうかしら?


皆が勧める水着を試着するも
裸リボン水着には

ちょ!皆の前で!燦のエッチ!バカ!
と頬を紅潮させつつ恥ずかしさで思わず反発し
平手打ちで【祓符】を貼り燦の煩悩を浄化

内心
燦にだけ見せるなら…
こっそり『聖瞳』で水着を撮影


四王天・焔
《狐御縁》
WIZ判定
アドリブ歓迎

■心情
水着ショップかぁ、もう夏だし水着を着て遊びに行く為に
素敵な水着を選んでみたいな。

■行動
とりあえず、同行者の皆の意見を参考にしつつ水着を選ぶね。
薔薇のコサージュに、シフォン生地のワンピースに、紫の和柄の水着かぁ。
どれも素敵そうだけど、折角だから全部取り入れて
コサージュを飾った紫のワンピースとか、良さそうだね。

燦お姉ちゃんが凄く張り切っている……これは応援してあげないと!
シホお義姉ちゃんも照れ隠しなのかな、微笑ましいね。
ルルチェリアさんも、思い切って大胆な水着着ても良いと思うけどね。


ルルチェリア・グレイブキーパー
≪狐御縁≫

二人ともお疲れ様
やっぱり邪神教徒の考える事は理解不能ね
新しい水着を買いに行くのよね!私も混ぜて欲しいのよ!

ふむふむ、明るいピンクにVラインの水着ね
私もたまにはセクシーに決めるのも悪くないかしら
と思って試着したらお腹のお肉が……!
やっぱり大人しい感じの水着でっっ

燦さんはスタイルが良いしスポーティなビキニも良いと思うわ

焔さんは紫を基調にした和柄の水着が似合うと思うのよ

シホは青いストライプのワンピースが良いなって思うわ
でも、やっぱり燦さんが喜ぶ水着が良いわよね~?

シホに平手打ちされる燦さんを微笑ましく眺め
ふふ、燦さんは仕方ないわね~♪
なんだかんだでシホも楽しそうだわ





「二人とも、お疲れ様」
「ありがとう、ルル。予想よりも大変でしたけど、終わり良ければ、ですね」

 水着ショップに集まる多数の猟兵。
 その中でも、最も楽しげな声が響いていたのは、変質者との戦いを終えた燦とシホに、四王天・焔(妖の薔薇・f04438)、ルルチェリア・グレイブキーパー(墓守のルル・f09202)の二人も加えた《狐御縁》の面々が集まる一角であった。
 今日の騒動で改めて感じた、邪教徒という存在の度し難さ。燦とシホが感じたその労苦を労うルルチェリアの言葉を受ければ、疲労にやや暗くなりかけたシホの表情も晴れるだろう。

「おーい! いい感じの水着、選んできたぜー!」

 そんなお疲れ気味のシホとは正反対に、溌剌としているのは燦である。
 燦が今回の務めに乗り込んだその目的は、ずばりこの時の為。邪教徒云々は極論、オマケであると言っていい。
 力を尽くす本番は、今この時。全力で、皆が着るに足る可愛らしい水着を選ばねばと。買い物籠を幾つもぶら下げ、その籠全てに水着を満載してと。まさにやる気全開と言った風情である。

「燦お姉ちゃん、凄く張り切ってる……!」

 そんな姉の姿に感化されたように、焔が小さく拳を握る。
 夏の遊びは、水着が付き物。素敵なひと夏の思い出の為にも、ここで妥協は許されない。
 絶対に素敵な水着を選ばねば、と。決意を固めながら、焔が姉の抱えた籠を覗き込む。
 まず最初に目に入ったのは、色鮮やかなビキニ水着の数々。今年のトレンドであるフリルでたっぷりと飾られたその水着達は、着れば艶やかさと可愛らしさを両立させる逸品であるだろう。

「ほほぅ、コレは……私もたまにはセクシーに決めるのも悪くないかしら」
「うんうん。ルルチェリアさんも、大胆な水着を着ても良いと思うけどね」
「そうね。思い切って、Vラインにしてみるのはどうかしら」

 そんな水着を手に取り、唸るルルチェリア。そんなルルチェリアの様子に、焔とシホが口を出す。

「そうだなぁ。色の方も今までと趣向を変えて、明るいピンクとかどうよ?」

 二人の意見に同調するかのように、燦も意見を口にすれば。

「ふむふむ。明るいピンクに、Vライン……ちょっと試着してみるわね」

 条件に該当する水着を手にとって、ルルチェリアが試着室へと消えていく。
 しゅるしゅる、と小さく聞こえる衣擦れの音。一体どんな姿になるかと、残る三人の胸が期待に満ちる。
 ……そうして、暫くして。

「ど、どうかしら……?」

 カーテンを開け放ち再び姿を見せたルルチェリアの姿は、それはもう可憐な姿であった。
 普段はモノトーンで統一された衣装を纏う彼女である。だが明るい色が似合わぬかと言えば、断じてそんな事は無い。
 色白でかつ髪も白いルルチェリアの体を飾る明るい桃色は、年頃の少女の愛らしさと開花寸前の淑女としての色気を人々に感じさせるだろう。
 おー、と言う歓声と共に拍手を送るシホと焔。燦に至っては、眼福眼福と呟きながら手を合わせ拝む始末である。
 どうやら好評であるらしい事に、ルルチェリアは安堵の息を溢す。
 が、一つだけ気がかりがあるようで。

「……でも、ちょっと。こう、お腹のお肉が……!」

 それは、剥き出しとなった柔らかな白いお腹。
 普段人前に晒す事など滅多に無いその部分が剥き出しとなった事に、ルルチェリアは強い違和感を覚えているらしかった。

「や、やっぱり大人しい感じのでっっ」
「まぁまぁ、良く似合ってるって」
「うん、ここは思い切って、決めちゃおうよ」
「気になるなら、もうちょっとフリルみたいな装飾でお腹を目立たなくするのも良いかしら……?」

 顔を真っ赤に染めるルルチェリアを宥める四王寺姉妹。シホも勿体ないと感じたか、方向性を維持したままで手を加える様にアドバイスである。
 ……結局、ルルチェリアはどんな水着を選んだか。その答えは、やがて来る水着コンテストで明らかになるだろう。

 ………
 ……
 …

「それじゃあ、次は焔の番ね!」

 一騒動あったりしたが、何とかルルチェリアの水着を選び終え。次は焔の番である。
 どんな水着が良いかな、と。籠の水着を睨む様に吟味する焔。

「そうね……焔は体のラインが綺麗だから、そこが分かる水着が良いかしら?」

 そんな焔に掛けられたのは、やはりシホのアドバイス。
 シフォン織りのカバーアップで体を覆えば、艶やかさも増すだろう。
 デザイン的には……フィッシュテールデザインも、悪くないか?

「水着本体の方は、紫を基調にした和柄かしら?」

 ルルチェリアも横から口を出す。
 焔と言ってイメージ出来るのは、その瞳の色。菖蒲や杜若、藤と言った花々が持つ鮮やかな紫だ。
 そんなイメージカラーを基調にし、また和装メイド服を好む気質も組み合わせれば……ルルチェリアの意見も、的を得た物であると言えるだろう。

「ワンポイントは、ほらっ。薔薇のコサージュとか、オススメだぜ?」

 そんな二人の意見とは違う観点からの、姉である焔の意見も組み合わせれば……。

「どれも素敵だけど……折角だから、全部取り入れてみるね」

 必要な素材を胸に抱えて、焔が試着室へと潜り込む。
 そうして暫し、時間が流れて……。

「えへへ、どうかな?」

 カーテンを開けた焔の姿は、可憐な水着姿であった。
 水着は紫を基調としたワンピースタイプ。花をモチーフとした和柄がデザインされた、シンプルかつ落ち着いた作りである。
 だがそのシンプルさは、決して貧相な物では無い。布シフォンで織られたカバーアップを纏えば、どこか優雅さすら感じさせる印象を与えてくれる。飾られたコサージュが、更にその印象を強めるだろう。
 ただ着飾るだけが、ファッションでは無い。主題はシンプルに、されど脇を守り立てるアイテムを的確に纏えば、鄙びた砂浜も優雅なプライベートビーチへと変わるのだ。
 コレを買うか買わないかは別として。焔の纏う水着は、そんな事実を一同に指し示すのだった。

 …
 ……
 ………

「次は……私、ですか?」

 次に水着を選ぶのは、シホである。
 さて、どうしようかと。首を傾げながらも籠を覗こうとするシホに向けて……。

「ふふふ……シホにはコレしか無いね!」

 自信満々、水着を突き出したのは燦である。
 差し出されたその水着は、白を基調としたビキニタイプ。青のフリルで胸元を飾る、清楚さに満ち溢れた物だった。
 ……肌の露出は気になるが、艶やかさと可愛らしさのバランスが実に絶妙。嫋やかでありながら女性美に満ちたシホが纏えば、美の女神もかくやと言わんばかりに似合うだろう。

「こっちの水着も悪くないんじゃないかしら?」

 他方、ルルチェリアが推す水着も負けていない。
 水着のタイプは、ワンピース型。ボディラインを浮き立たせながら、蒼のストライプデザインによって必要以上に体のラインを目立たせない印象だ。
 こっちの水着も、悪くはないが……。

「……でも、やっぱり燦さんが喜ぶ水着が良いわよねぇ~?」
「ルルっ! ……もうっ」

 シホと燦の間柄を考えれば、大本命は言わずともと言った所。
 誂うようなルルチェリアの言葉に声を上げるシホが、二人が候補に上げた水着を胸に抱いて試着室へと消えていく。
 頬を赤らめるシホのその様子を……。

(シホお義姉ちゃん、照れ隠しなのかな? 微笑ましいね)

 焔は優しげな微笑みを浮かべて、見守っていた。

 ……さて、そうして始まったシホの試着ショーである。
 ワンピースタイプも、ビキニタイプも。どちらも負けず劣らず、シホの美しさを引き出す素晴らしい逸品であった。

「ハァハァ……可愛いよシホハァハァ……」

 その証拠に、相棒である燦の興奮っぷりたるや……ん、なんか様子がおかしくないか。
 よくよく見れば、その目はぐるぐると渦を巻いている様な。
 ……これ、明らかに正気を欠いているって状態では?

「シホぉ! 次はこの水着なんてどうかなぁ!?」

 息を荒げながら次の水着を掲げる燦が、試着室へと乗り込まん勢いで体を乗り出す。
 掲げた水着は、リボン状の長い布。まさか、それを直接体に巻きつけて水着にしろとでも言うのだろうか?
 そう、そのまさかである。この水着の名は、『裸リボン』。サラシの様に体に直接巻きつける、水着の様なナニカなのだ。
 何、着替えるのが大変だって? 大丈夫大丈夫、アタシが手ずから手伝って上げるからさぁグヘヘヘ……。

「ちょっ! やめて燦っ、皆の前で……!」

 ……一応、燦の名誉の為に説明すると。先刻戦った連中の邪気を受け、燦は暴走中という訳であるのだが。
 そんな事実は、知った事では無い。皆の面前で、しょうもない狼藉に及ぼうとする想い人を勝機に戻すその為に。

「──燦のエッチ! バカぁっ!!」

 振り上げた平手が、勢いよく振り抜かれ。甲高い音が、水着ショップに響くのだった。
 ……その後、燦の体に漂う邪気に気付いたシホが慌てて燦に護符を貼り付けて。邪気は見事に祓われた事は、書き添えておく物である。

 ………
 ……
 …

「さ、最後はアタシだな……ほら、皆で選んでよ」

 最後に水着を選ぶのは、(頬に見事な紅葉を浮かべた)燦であった。
 普通なら、ドン引きされるような先ほどまでの燦の所業である。
 だがこの場に集う少女達は、お互い勝手知ったる間柄だ。燦のあの醜態も、「しょうがないなぁ」程度の呆れで済まされていた。

「そうね。燦は背も高いから……そこを活かして、競泳水着はどうかしら?」
「だね。細身でスタイルも良いし、スポーティーなビキニも良いと思うわ」

 シホとルルチェリアの提案に、ふむと頷く燦。焔はどうかと視線をやればそちらも異論は無いらしく、ふんふんと力強く頷いていた。
 ならば、まずはその二つを試してみるかと。シホとルルチェリアが選んだ水着を受け取って、シホが試着室へと入っていく。

「……さて、と」

 カーテンを締め切って、一つ呟く。
 このまま着替えて、品評して貰うのも悪くない。
 けれど大人しくそのまま終わるのは、燦にはちょっとだけ面白みに掛ける気がしていた。
 ここは、ちょっとした悪戯……なんてのを仕掛けるのも、悪くないだろう。

「よーし……!」

 細やかな衣擦れを立てながら衣服を脱ぎ去り、引き締まった細身の裸身を露わにする。
 そうしてその状態のまま、手に持ち込んだ第三の水着を握りしめ……。

 ──カッ!

 試着室から、光が溢れる。
 突然起きたその現象に、外にいた三人が目を見開く。
 一体何が起きたのか……身構えながら、シホがカーテンを開くと。

「──こんにちは! あきらだよー!」

 そこには、純粋無垢・天真爛漫な五歳児の姿をした燦がいた。
 纏う水着は、可愛らしさ全振りな児童用水着。非常に良く似合っていた。
 あんぐりと目と口を見開く三人。そんな彼女達の驚きを見て。

「あはっ。冗談さ♪」

 五歳児の姿のまま、だが表情は普段どおりに。燦は悪戯な笑みを、浮かべるのだった。
 ……ちなみにこの後。普通に提案された水着を試着し、モデルも真っ青なスタイリッシュなポーズをビシッと決めたりもしたそうな。

 水着ショップで過ごす、猟兵達の楽しげな時間。
 夏本番の訪れを前に、猟兵達はしっかりと英気を養いと準備を整えるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年06月27日


挿絵イラスト