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明日のみえぬぼくたち

#サクラミラージュ

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#サクラミラージュ


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●帝都桜學府:或る調査票
 ――識別個体名『幻朧将校』、モトハ亜米利加出身ノ軍人デアッタモノ。
 本名:アルバート・コグロー。享年25歳。
 来歴:英吉利方面特殊部隊ニ所属シ任務ヲ遂行スル一方、黒鉄ノ首輪ノ組織『幻朧戦線』トノ内通ガ発覚、内部告発ノ末軍法会議ニカケラレ、銃殺刑ニ処サレル。
 現在:主ニ帝都ヲ拠点トシ散発的ニ出現、幾ツカノ事件ヲ起コスモ致命的ナ騒ギニハ至ラズ。要観察対象トス。

●グリモアベース:或るグリモア猟兵の予知
「覚えてるひとっているかしら、昔『籠絡ラムプ』の力でひと騒動起こしてくれた北大路ってヤツ。今は帝都桜學府で、主に調査とかの事務仕事を任せられるまでになったらしいんだけど」
 グリモアベースの片隅で、バサリと書類の束を振って音を立てるミネルバ・レストー(桜隠し・f23814)。電子の申し子たるこの娘が、紙媒体を持つのは珍しい。つまりは、別の誰かから託された資料ということなのだろう。
「まあ、そいつのことは割とどうでもいいのよ。持ってきた情報と依頼の方がね、みんなでないと務まらないアレソレで」
 律儀に紙の書類を読み上げるミネルバの表情は、あくまでも淡々としていた。

「夜の帝都に、これまで発見されてきたヤツよりもひときわ強い影朧が見つかるんですって。怒りか、絶望か、何がソレをそう在らしめるのかもご丁寧に調査済みだそうよ」
 ぺらりと独特の音を立てて紙束をめくり、ミネルバは説明を続ける。
「影朧はどんな相手でも極力救済を試みるのが『帝都桜學府』、今回は取っておきの魔術儀式と徹底した下調べでバックアップをしてくれるの」

 ――その名も『魂鎮メ歌劇ノ儀』。

 影朧の発生理由と、それにまつわる歌劇を演じながら戦うこと。
 それにより通常の戦闘よりもひときわ強く、影朧を慰めることが叶うという。
「データが必要なら後で個別に渡すけど、今回出現した影朧は平たく言えば『幻朧戦線と関わったせいで仲間から密告されて処刑された軍人サン』ってトコ」
 ひと一人の人生を要約するには、あまりにも大雑把すぎるけれど。
 お芝居の台本は、現地で渡されるというのだから仕方がない。
「影朧にだって言い分はあるでしょうよ、だったら言わせてあげましょうよ。それを引き出してスッキリしてもらうのが、今回のみんなの役目」
 カウンセリングの一環のようにも思えるが、これも立派な超弩級戦力としての仕事だ。
 詳細は追って連絡するわね、とだけ告げて、ミネルバは雪花のグリモアをかざす。

「わたしだってまだまだ人生語れるほど人間できてないけど」
 舞い散る雪に、幻朧桜が混じり始める。
「人の数だけ物語があるって、わたしは思うのよ。みんならしく、演じてきてね」
 転移先は、帝都の街外れ。
 天候は、小雨。この舞台は、雨天決行である。

 信念か、妄執か。
 きみはなぜ影朧になったのか、ぼくたちはそれを歌劇によって追体験する。


かやぬま
 はじめまして、もしくはお世話になっております、かやぬまです。
 立ちはだかるは強い情念によって出現した影朧。
 皆様には、その対処をお願い致します。

●ご案内
 第1章:集団戦。
 影朧が自らの肉体より創造した配下を放ち、けしかけてきます。
 皆様には「誰かしらの役」を、影朧が受けた悲劇の過去に準ずるストーリーの流れに乗って、配下の群れの向こうにいる影朧へと届くように演じつつ蹴散らしていただきます。
 影朧は元々軍人であり、兵器の扱いや知識全般にも慣れたものであったと推測されます。
 そこから生まれた絡繰兵は、影朧が目指した理想の礎となり得たのか?
 それを問うもよし、正義の使者として対峙するもよし、配役は皆様にお任せします。
 ※配役が他の方と被る心配は無用です、可能な限りこちらで何とかします。

 第2章:ボス戦。
 通称「幻朧将校」、その素性は帝都桜學府がある程度調査してくれます。
 紡がれる言葉は葛藤か、苦しみか、それとも――。
 オープニングと断章とを合わせた情報開示から、引き続き役を演じるか、あるいは演じることをせず一人の猟兵としての言葉かで、影朧と語りながら刃を交えて下さい。

 第3章:日常。
 猟兵たちが勝利すると、影朧は過去の呪縛から解き放たれ、消えゆくことを選びます。
 ここまでが全てショウタイムということを、どうかお忘れなく!
 満天の星空に、降りそそぐ流星。たとえそれが舞台装置の演出であったとしても、消えゆくものをおくるにはうってつけのシチュエーションです。
 影朧の胸中がどのようなものになっているかは皆様次第ですが、彼が消えゆくその瞬間に、すべての傷は癒え、ショウの観劇者たちからは万雷の喝采が送られるでしょう。
 ※お声掛けがあった時のみ、グリモア猟兵のミネルバも末席に顔を覗かせます。

●プレイングの受付について
 恐れ入りますが、受付期間を設けての運営とさせて下さい。
 期間はMSページとタグ、旅団の告知で都度お知らせ致します。
 また、プレイングを送って下さる前にすぐ終わるのでMSページ全体にもお目通し願えれば幸いです。

 それでは、開幕です。
 演者の皆様のお越しを、心よりお待ちしております。
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第1章 集団戦 『朧侍』

POW   :    桜花行進
【霊力を流し込んだ刀を構えながらの】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【連携を行っている同型機】の協力があれば威力が倍増する。
SPD   :    桜華狂騒
【影朧に取り憑かれ、霊力機関が暴走した状態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ   :    桜香前線
【幻朧桜を介した霊力通信】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【通信を行った同型機との一糸乱れぬ連携】で攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●紫陽花が色づく頃に
 その夜は、梅雨の気配を感じさせる湿気と小雨とに覆われていた。
『……』
 ぐ、ぱ、と白手袋を握って開き、外套を纏った軍人が険しい視線を周囲へと向ける。
 皮肉なことに、現界するたびに己の力が強まっていくのを感じる。
 この力があれば、斯様なものに縋らずともこの手で願いを掴み取れたのではないか?

 ――何という錯覚、思い上がり。

 首にがっちりと嵌まった黒い鉄の首輪にそっと触れる。
 己が理想を、彼らの理念でなら叶えられると思っていた。
 指折り数える程度とはいえ、存在していた戦友たちなら理解を得られると思っていた。
 だが、この結果はどうだ。
 今の己は一介の影朧に過ぎず、しかしその存在は間違いなく世界を崩壊させる。

 影朧甲冑の亜種たる『朧侍』、これを今こそ解き放たん。
 影朧に対する決戦兵器として生み出されながら、逆に影朧に取り憑かれてしまう存在。
 ああ、何という皮肉よ。
 己という存在を語る前座として、この上なく相応しいではないか。

●補記
 街外れの開けた場所に、いくつもの塹壕が設置されています。
 影朧『幻朧将校』が放った刺客『朧侍』たちが最初の相手です。
 それはまるで、士官の号令を受けて吶喊してくる兵士たちのよう。
 まさに戦場と化したこの場所で、皆様には朧侍を蹴散らしながら『戦争の追体験』をしていただきます。
 この章ではまだ影朧本体へは届きませんが、その戦ぶりと演じた役回りは確かに影朧へと届き、次の章へと影響を及ぼします。

 影朧――幻朧将校は、不死の帝のもとに統一された世界でなおも戦地に身を置いていました。
 そこで、世界の在り方に自分なりの思想を抱くに至りました。
 それが、もしも、現実のものとなったなら――影朧兵器がこのように闊歩するのです。
 さあ、皆様はどのような役回りで、この戦火の地を駆け抜けて思いを届けますか?
雪華・風月

ヴィジランテで猟奇探偵を目指してる北大路さんですか?懐かしい名前ですね。御健勝のようで何よりです!

そして、夜の帝都に影朧ですか…
はい、帝都桜學府所属、雪華・風月。『魂鎮メ歌劇ノ儀』とやらに参加しましょう!
大丈夫です!歌劇は何度か見た経験が!(キング・ブレインのサインを胸に抱き)


※役:元部下A

何故、何故幻朧戦線等の反帝都主義者共と手を…か奴らは帝都の民を害する者共ぞ!
狂ったか!アルバート・コグロー!
士道不覚悟!せめて我らの手で引導を渡してやろう!(全棒読み)

迂闊、そのような玩具の連携などに!
短刀を『投擲』し影を縫い止め朧侍の動きを止めることで連携を乱し
雪解雫の一刀にて『切断』


御桜・八重
あは、北大路さん頑張ってるんだね♪
ちょっと嬉しくなってみたり。

コグローさんは幻朧戦線と手を結んでまで、
影朧を使った兵器を作り出そうとしていた。
その理由は正直わからないけど…

朧侍がいれば戦場で人間の兵士が戦う必要はない。
もう戦場で同胞が血を流さなくて済むように
したかったんじゃないのかな…

役割:負傷した仲間を身を挺して守り抜く。

『桜花行進』で突っ込む朧侍の刀を二刀で受けとめる。
「んぎぎぎぎ!」
わたしの後ろには負傷した戦友がいる。
彼らが脱出するまでここを通すわけには行かない。
「!」
別の朧侍が脇を抜けようとするのに反応。
【花旋風】で纏めてなぎ倒す!

満身創痍でも諦めない。
きっとそうだったんだよね、彼も。



●開幕・帝都桜學府の人々
 帝都の街外れに塹壕をいくつも、しかもおあつらえ向きに照明まで用意されているというのは、どう考えても人為的な舞台設定としか思えず、そして実際その通りであった。
 すべては帝都桜學府の手による魔術儀式――『魂鎮メ歌劇ノ儀』のため。
(「こちらで行える準備はこれが全部……あとは任せたぞ、超弩級戦力」)
 舞台装置に身を潜め、かつて『幻朧戦線』の奸計に巻き込まれ事件の当事者となった青年は、現在憧れの帝都桜學府でこうして後方支援の任に就いている。
 その姿を認めることができなくとも、素性についてだいたい把握した猟兵たちは、青年のことを次々と口に出す。

「あは、北大路さん頑張ってるんだね♪」
 嬉しげに笑うのは御桜・八重(桜巫女・f23090)と雪華・風月(若輩侍少女・f22820)。
「ヴィジランテで、猟奇探偵を目指してる北大路さんですか?」
(「いや、そんなご大層なものではないなあ」)
 物陰でひっそりと首を振る青年に気付くこともなく、乙女たちは無邪気に語る。
「懐かしい名前ですね、御健勝のようで何よりです!」
 わたしたちも頑張らないとですね――そう顔を見合わせ頷くと、舞台へと上がる。

 すっかり日が落ちた夜の帝都に、照明に照らされて白く浮き出た幻朧桜が舞い踊る。
(「そして、夜の帝都に影朧ですか……」)
 風月は胸に何か四角いものを抱きながら、高らかに宣言した。
「はい、帝都桜學府所属、雪華・風月。『魂鎮メ歌劇ノ儀』とやらに参加しましょう!」
 観劇も兼ねて裏方に回っている北大路青年をはじめとした桜學府の面々が『本当に大丈夫か』という視線を送ったのに気付いたのか否か、風月は手にしていたものを掲げる。
「大丈夫です! 歌劇は何度か見た経験が!!」
 デカデカと『ブレブレ』などという文字列が記されたサイン色紙を見たものは、同行者である八重を含めて皆が絶句したという。

(「コグローさんは幻朧戦線と手を結んでまで、影朧を使った兵器を作り出そうとしていた」)
 今やこの世のものではない男から、その理由を聞き出すことは叶わないとしても。
 塹壕の向こうから、複数姿を見せる『朧侍』を認めて、八重は思う。
 この『朧侍』がいれば、戦場で人間の兵士が戦う必要はない。故に――。
(「もう、戦場で同胞が血を流さなくて済むようにしたかったんじゃないのかな……」)
 導き出される想定としては、十分すぎるほど相応しいものであった。

 ――いや。
 この『朧侍』の群れを蹴散らした先に居る『幻朧将校』に手が届いたならば。
 その真意を、問い質すことも叶うのではなかろうか。
(「……だったらっ!」)
 八重は陽刀と闇刀を同時に抜き放ち、後方に控える桜學府の面々に聞こえるように叫ぶ。
「みんなっ、ここまでよく頑張ってくれたね! あとはわたしに任せてっ!!」
「えっ」
「アッ、そういう」
「ハイ、我々は先遣隊で、既に負傷し後退している設定ですね分かります」
 八重が演じる『役回り』について察したものたちから、次々に言葉を返していく。

『……』
 朧侍は当然ながら声を発することなく、ただ頭部の桜型の光を不気味に動かして、仄かに桜色に光る霊力宿した刀を構えると、八重目掛けて突進を開始した。
『……!』
 幻朧桜を介した霊力通信は、仕様を同じくする朧侍同士の連携を一糸乱れぬ強固なものとする。
 そうして威力を増した突進が八重を襲う――!
「ん、ぎぎぎぎぎぎ!!!」
 先陣を切って八重を吹っ飛ばす勢いで迫った朧侍の刀を、二刀でがっきと受け止める。
 踏ん張る足がたちまち圧されて土に線を引くも、致命的に押し切られるのは回避する。
(「わたしの後ろには、負傷した戦友がいる」)
 ――という『設定』ではあるけれど、これが『本当』だったとしたら?
「ぐぬー……やぁっ!!!」
 刃が火花を散らし、八重の二刀が朧侍三体をまとめて押し返す!
 吹っ飛ぶ朧侍の機体がやたらスローモーションに見える中、八重は見た。
 間隙を突いて、別の朧侍が脇を抜けようとする姿を。
「!!」
 桜の巫女の瞳に、青い炎が灯った。
 それは光の尾を曳いて、巫女の舞めいた斬撃の軌跡を描く。

 ――いざ吹き散らさん、【花旋風】!!

 前のめりだった身体を、片脚を軸に一気に反転させ、勢いに乗じて斬る。
 至近の間合いでなければ届かぬ必殺剣で、姑息な機体をも一刀両断である。
 それでも八重は油断なく、振り返らずに残りの朧侍の挙動を確認する。
(「満身創痍でも、諦めない」)
 そして、その先で一部始終を見ているであろう男をも射抜かんと視線を向け続ける。
(「きっとそうだったんだよね、彼も」)

 そのさまはまさに、完璧に統率が取れた軍隊の行進。
 練度の高さは機体の性能ゆえか、それとも生み出したものの力か。
 いくら『超弩級戦力』と持て囃される身であっても、数の暴力には敵わぬというもの。
「迂闊、そのような玩具の連携などに――!」
 密かに抜いた短刀「黒塗」は、夜の闇と照明の影に溶けこんで相手に勘付かせず、ユーベルコヲド【影縫い】の強力な戒めで朧侍たちの連携をたちどころに乱してみせる。
 そこへすらりと抜き放たれるは由緒正しき退魔刀「雪解雫」、今宵風月が演じるのは『幻朧将校の元部下』という役回りであった。

「何故、何故幻朧戦線等の反帝都主義者共と手を!?」
 斬! 退魔刀を一振りすれば、朧侍が一機胴をずんばらりんと斬り捨てられる。
「か奴らは帝都の民を害する者共ぞ!」
 斬! 次の一振りは袈裟斬りに振るわれ、斜めに切断された哀れな機体が大破する。
「狂ったか! アルバート・コグロー! 士道不覚悟! せめて我らの手で引導を渡してやろう!!」
 信じられるか……この迫真めいた台詞、全部棒読みなんだぜ……。
 勢いだけで叫んでいるから辛うじてそれっぽく聞こえるものの、演技としては正直ちょっと聞いていて頭を抱えてしまうレベルと言わざるを得ない。
 けれど、今問われているのは演技の優劣ではない。
 演技を通して、影朧を理解し、最終的には癒すということ。
 その点では、二人の開幕は非常に順調であったといえよう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

木常野・都月


癒すも猟兵の仕事……か。
それなら頑張らないと。
俺が出来そうな役は、そうだな。
以前影朧と一緒にいた軍の仲間にしようかな。

どうして軍を、国を、俺達を裏切ったんだ?
人とこの国を守る事が、俺達の任務のはずだ。
それが、守るどころか、平和を脅かす敵と繋がっていただなんて。
一緒に訓練して、辛い時もお互いを信じて乗り越えてきた、仲間だったのに。
いつ、何が、アイツを変えてしまったんだ。
本人に会って直接聞かなくては。
この辺り一帯を制圧する。総員伏せろ。

UC【精霊の矢】を[範囲攻撃]で。
氷の精霊様、お願いします!

敵の攻撃は[カウンター、属性攻撃]で対処しよう。
幻朧桜の精霊様、通信をストップして下さい!


満月・双葉

流石に通行人Aとかになると大根かじるしかやることなくなるので、それなりの脇役で何かありますかね?
脇役の方が闇にまぎれて動きやすい
処刑された方と密告した方の共通の友人的なのは…


可能なら薔薇の花弁で雰囲気を作りつつ敵を減らして行けたら劇らしくなって良いでしょうかね
おぉ、素晴らしい連携
僕の野生の勘で捌ききれますかね…
僕も見習わねば成りませんね?
取り敢えず通信部分は何処でしょう
そこに爆破の属性攻撃の大根はやして爆破しておきましょう
巫山戯た見た目はお許し願って、威力は本物ですから
全ては劇の演出に過ぎない
さあ、あなたの理想を見せてくださいよ



●第二幕・同胞たち
 なおも敵役として舞台の上に立ち続ける『朧侍』たちを前に、次に立ちはだかった超弩級戦力は、木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)と満月・双葉(時に紡がれた人喰星・f01681)の二人であった。
「『癒すも猟兵の仕事』……か。それなら、頑張らないと」
 ただ戦って倒す、という話ならば慣れた話ではあるし容易くも思えるが。
 敵対するものを理解して、何らかの形で和解を果たせとは中々に難しい。
 だが――その複雑さこそが人と人との関係性なのだとすれば、都月にとってはこの上ない『いい機会』とも言えるのではなかろうか。

「俺が出来そうな役は、そうだな……」
 ふむ、と考える都月に、双葉がちょいちょいと手招きをする。
「流石に通行人Aとかになると大根かじるしかやることなくなるので、それなりの脇役で何かありますかね?」
「えっ……今俺、自分が何の役をやるか考えてるところなのに」
 いわゆる、自分のことで手一杯なところに相談を持ちかけられた状態である。困った。
「……そうだ、一緒に『以前影朧と一緒にいた軍の仲間』っていうことに」
「ああ、いいですねえ。ならば僕は『処刑された方と密告した方の共通の友人』ポジションにでも回りますか」
 双葉が『脇役』にこだわった理由はひとえに『闇に紛れて動きやすい』から。
 都月が正面切って立ち回ってくれるとあらば、ますますもって好都合である。

 ざぁ、と吹き付ける一陣の風に、桜のみならず虹色の薔薇の花弁が咲き誇る。
(「より劇らしく雰囲気が出ればよし、ついでに敵の数を減らせればさらによし」)
 それこそが第二幕のはじまりの合図――仇なすものへの敵意をあらわにする虹薔薇をかいくぐった朧侍どもが、霊力通信で完璧な連携を取って二人へと迫る。
(「精霊様――」)
 愛用の杖の代わりに親指と人差し指を鉄砲に見立てて、都月は朧侍へと指先を向けた。
「ご助力、下さい……っ!」
 まるで本物の銃を撃ったかのような反動を身体に受けたのは、指先から精霊の加護を受けた氷の矢が勢いよく放たれたから。
 がぅん! と鉄を穿つ音がして、朧侍の一機が仰向けに倒れる。
「どうして軍を、国を、俺達を裏切ったんだ!?」
 確かな手応えに、迫真の演技で都月が叫ぶ。
「人とこの国を守る事が、俺達の任務のはずだ!」
 今度は左から右へと、身体ごと指先を走らせて掃射するかのごとく氷の矢を連射した。
 ガガガガッ! 氷の矢は機関銃を喰らったかのように次々とくずおれていく。
 都月は肩で息をしながら、なおも言葉を紡ぐ。届け、届けと。
「それが、守るどころか、平和を脅かす敵と繋がっていただなんて」
 声音は真実味を帯び、まるで都月が本当に幻朧将校の戦友であったかのように思わせる迫力があった。
(「おぉ、素晴らしい連携」)
 それを援護するのは双葉だ、斃された仲間の穴を埋めて即座に体勢を整える朧侍どもを見て内心で感嘆しつつ、都月の負担を軽減させるべく自らも動く。
「他者との連携、僕も見習わねば成りませんね?」
 もっとも、朧侍の連携は『同一機同士ならではのもの』なので、参考にするには少々難しいかも知れないけれど。
(「取り敢えず、通信部分は何処でしょう」)
 霊力での通信で連携が成立しているというのならば、それを断ってしまえば――?
 これは本当に野生の勘がそう告げていたとしか言いようがないのだが、左肩のパーツがめちゃくちゃ怪しかった。
 だから、双葉はそこに全力で先端を向けた大根を投擲し、爆破してやったのだ。
『……!?』
「巫山戯た見た目はお許し願って、威力は本物ですから」
 いや、大根が爆発するのにも言いたいことは色々あるけれど、どうして通信を封じる術を容易く見破れたのかという方が朧侍さんサイドは疑問だったろう。
 ただ、こればかりは「しょーがねーだろ野生の勘279もあればチョロいんだから」としか言いようがなかったことを申し添えておく。

「まあまあ、これも劇の演出と思ってひとつ」
 僕と君との仲でしょう? などと嘯く双葉の姿はいっそ清々しくもあり。
「さあ、あなたの『理想』を見せてくださいよ――都月さん!」
「ああ――一緒に訓練して、辛い時もお互いを信じて乗り越えてきた、仲間だったのに」
 いつ、何が、アイツを変えてしまったんだ。
 影朧兵器の向こうに、アイツがいるのなら。
(「本人に会って、直接聞かなくては」)
 都月は指鉄砲の構えを解き、両の掌をかざす。

「この辺り一帯を制圧する、総員伏せろ」

 纏う冷気に負けぬ声音で都月がそう告げれば、後方で待機する桜學府の面々がしっかりと塹壕に身を隠す。

「幻朧桜の精霊様、通信をストップして下さい! ……えっ!? もうしてる!?」
「(ニッコリ)」
 素で気付いておらず仰天し、隣を見た都月に、見られた双葉はサムズアップで笑った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リューイン・ランサード
【竜鬼】

過去の悲劇のストーリーの流れに沿い、誰かの役割を演じ、それを影朧に見せる。
「雑魚とは違うのだよ、雑魚とは…。」と叫んでの無双はダメという事ですね。

ひかるさん発案の『戦場へ向かう兵士』と『見送り、帰りを待つ女』を演じます。
出発時に「お国の為、頑張って参ります!」と女(ひかるさん)に礼儀正しく挨拶。
女の言葉には「ありがとう」と手を握り、笑顔で返す。

朧侍達との戦いでは「戦力比は歴然、ここまでか。いや俺は必ずあの人の元に帰る。」と戦闘。

UCで要となる敵達を燃やして集団連携阻害。
ひかるさんの援護の元、第六感で読んで見切りで躱し、ビームシールド盾受けで防ぎ、双剣の風の属性攻撃・2回攻撃で倒していく


荒谷・ひかる
【竜鬼】

無双はしても大丈夫だと思いますけれど、それ相応の役が必要と言う所でしょうか。

カップルで戦争ものと言えば、戦地へ向かう男性と帰りを待つ女性の役ですね
戦地へ向かう彼を「家のことは任せてください」「頑張って活躍してきてくださいね」と気丈に笑顔で見送り
(この際【精霊さん応援団】発動し彼の能力強化)
その姿が汽車の中に消え、彼からこちらが見えなくなった辺りで静かに泣き崩れ
「あなたを失う恐怖で何も手に付かない」「どんなに無様でもいいから生きて帰ってきて」
そんな伝えられなかった本音を胸に涙し、郵便の音(死亡通知の可能性)に怯える日々を過ごす
……そんな演技をします



●第三幕・男と女
「過去の悲劇のストーリーの流れに沿い、誰かの役割を演じ、それを影朧に見せる……」
 リューイン・ランサード(竜の雛・f13950)が、確かめるように呟く。
「『雑魚とは違うのだよ、雑魚とは……』と叫んでの無双はダメという事ですね」
 ンモーそうやってリューインさん最近容赦なくネタぶっ込んでくるからー!
 仲良く連れ立って今日もやって来た荒谷・ひかる(精霊寵姫・f07833)がくすくす笑う。
「無双は……しても大丈夫だと思いますけれど、それ相応の『役』が必要と言う所でしょうか」
「……と、言うと?」
 リューインがひかるの顔をまじまじと見る。こういう時のひかるにはだいたい『策』があるからだ。
 その期待のまなざしに応えんと、ひかるはリューインの藍の瞳を見つめて告げる。

「カップルで戦争ものと言えば、『戦地へ向かう男性と帰りを待つ女性』の役ですね」
「なるほど」

 実際のサクラミラージュの戦争事情がどうであったかはさておき、一般的に知られる戦争とはだいたい兵士は男。召集に応じて戦地へ赴くのを、女はただ見送るという絵面であったろう。
 ひかるのアイデアと意図をすぐに呑み込んだリューインは、少しだけこそこそと話し合った後に、ザッと踵を返してひかるへとその背中を向けた。

「ひかるさん」
 ざああ、と風が吹き、幻朧桜が舞い散るなか、若き青年兵士(役)は振り返る。
「お国の為、頑張って参ります!」
 ああ、敬礼が何と凜々しく眩しいことか――!
「……家のことは、任せてください」
 それが自分に出来る精一杯だからと、留守を任される女(役)は胸の前で手を組む。
「頑張って、活躍してきてくださいね」
 言えるのは、それが精一杯だった。
 帰ってきて欲しいと言えたなら、どんなにか良かっただろう。
 けれど今は、戦って、この幻朧桜のように潔く散ることこそが誉れなれば――。

 ぎゅっ。

 一度は背を向けた筈の青年が、女の両手をしっかりと握っていた。
「ありがとう」
 そして、まるで向日葵のように――眩しい笑顔を見せてくれた。
「……がんばっ、て」
 これは演技だと分かっていたはずなのに。
 もしもこれが本当だったらと思うと、自然と涙があふれた。
 あふれた感情は超常――ユーベルコヲドとなって、見えない力となって、リューインを包む。
 声援は文字通り力となって、これより死地に赴く(設定)の青年を大いに助けるのだ。
 おおっとここで舞台装置のひとつ、汽車が役に立つ時が来たぞ!
(「これ、本当に使うとは思わなかったなあ」)
 なんていう桜學府メンバーの胸中を知ってか知らずか、リューインが乗り込み去って行く演出を一通りこなした後。
「ううっ……!」
 いよいよひかるは静かに声を押し殺し、泣き崩れてしまった。
「あなたを失う恐怖で……何も手に付かない」
 家のことは任せろと言ったのに。
「どんなに無様でもいいから……生きて、帰ってきて」
 玉砕こそが最上の結果とされていたとしても、それでも。
 伝えられなかった『本音』を胸に、ただはらはらと涙をこぼすひかる。
 これから、彼の戦死を伝える郵便の音に怯える日々を過ごさねばならぬのかと――泣き腫らした目で、夜空を仰ぐのだった。

 一方、塹壕が並ぶ戦地で接敵したリューイン。
 霊力通信によって同一機体である朧侍どもは、一糸乱れぬ隊列を組んで迫って来る。
「戦力比は歴然、ここまでか――いや、俺は必ずあの人の元に帰る」
 歴戦の猟兵ならば敵の手口はだいたい『読める』。例えばこういった連携を取る手合いにはおおかた『指揮官』が存在するものだ。
 まずは徒手空拳で立ちはだかり、両手に紅蓮の炎をぽうと浮かべる。
「そこだッ!」
 幾重にも重なって迫る朧侍の中段ほどに位置する機体に、迫撃砲のような軌道を描き炎が襲い掛かる。
『……!』
 読み通り、というべきか。訓練された軍隊の行進を思わせる朧侍の進撃に乱れが生じた。
(「ひかるさん、ありがとう」)
 ――力が、みなぎる。
 愛しいひとの援護なくして、一撃で指揮官を燃やし尽くすなど敵わなかっただろう。
(「行けます、僕は勝てます」)
 予備があったか、すぐに体勢を立て直してくる朧侍どもの桜色の刀身をビームシールドで受け止め防ぎ、リューインはそのまま逆に押し返す。
「風よ、竜へと届け――!」
 盾に強く押されて仰け反った朧侍を狙い、リューインは背中の翼を雄々しく広げて双剣を抜き放ち、クロスするように両断する!

(「主人公補正、ってありますよね」)
 涙を拭いながら、ひかるは佇みながら微笑む。
(「だから、思いっきり無双しちゃってください☆」)
 この上なくヒロイックな活躍をするもよし、悲劇的な最期を迎えてもよし。
 どちらに転んでも観客の胸を震わせる、名演技であったという。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

氏家・禄郎


ああ、過去の再現

動力甲冑による駆逐
紛争処理と称した私達のアレは間違いなく戦争だった

そうだな
世界をよりよくするために戦争をするというのは分かる
けど、その結果がこれだ
戦争に囚われ、機動兵器を塹壕に置くという思想がもう固まってしまっていいるんだよ

闇にまぎれるように塹壕に潜み、陰より手榴弾を転がす
狭い場所だ、逃げ場はない
次にトレンチガンを構えて突撃だ
塹壕での散弾は殺すに至らないが回避できず、衝撃がお前の動きを一瞬止める
それで十分だ
後は銃剣で急所を破壊するだけさ

囲まれる、問題はない
引鉄を引けば咄嗟の一撃による散弾がお前を封じる

ここは私にとって『有利』なんだよ

忘れたのか?
こいつは歩兵の代わりにならない


ティオレンシア・シーディア


ふぅん…影朧という無秩序を歌劇という秩序に収め、終演=終焉にて治める見立ての術式、ってとこかしらぁ?興味深いわねぇ。
…彼も頑張ってるようだし、偉そうに講釈垂れた身としては無様は晒せないわねぇ。

「舞台設定」は戦場…なら、あたしの「設定」は「現実主義の傭兵」ってとこかしらぁ?
ミッドナイトレースで○騎乗突撃、●轢殺でバイク騎兵やりましょうか。
突進〇見切って流鏑馬と○爆撃で蹴散らしてやるわぁ。

『さぁて、それじゃあ稼ぎましょうか。指揮官潰せば特別褒章貰えるかしらぁ?』
『ま、戦争終わったらあたしも失業だけど…そのほうがいいに決まってるしねぇ。さっさと終わらないかなぁ』


(イメージソング:一騎当千/梅とら)



●第四幕・地獄を見たものたち
 ――ざ、ざざ。
 氏家・禄郎(探偵屋・f22632)の視界に、ノイズが走る。
(「動力甲冑による駆逐、紛争処理と称した私達の『アレ』は間違いなく『戦争』だった」)
 これは間違いなく、過去の再現。
 既視感などという生温いものではない、なればこそ脳が否定しようとするのだ。
「ふぅん……影朧という無秩序を歌劇という秩序に収め、『終演=終焉』にて治める」
 禄郎の状況を知ってか知らずか、並び立つティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)はとろり甘い声で此度の魔術儀式の本質を言い当ててみせる。
「見立ての術式、ってとこかしらぁ? 興味深いわねぇ」
 二人の背後には、物陰から期待のまなざしを向ける帝都桜學府の面々がある。その中にはもちろん、魔術儀式の遂行という大任を請け負ったかの青年もいた。
(「……彼も頑張ってるようだし、偉そうに講釈垂れた身としては無様は晒せないわねぇ」)
 この結果は、青年が『彼と己を知った』が故のことであろう。
 そして今こうして信頼を寄せている以上、その期待を裏切る訳にはいかない。

「『舞台設定』は『戦場』……ねぇ」
 用意された塹壕は、影朧の記憶から取り出したものだという。
 所属していた部隊で、『敵』と交戦している最中に同胞と言葉を交わした記憶。
「……」
 禄郎は険しい顔のまま、正面に展開する影朧兵器の亜種――『朧侍』を見据えた。
「そうだな、『世界をよりよくするために戦争をする』というのは、分かる」
「……?」
 それは誰に聞かせるでもない独白であるとすぐに理解できたが故に、ティオレンシアは反応こそすれ発言の意図を問うことはしなかった。
「けど、その結果が『これ』だ」
 とうの昔に軍を退役したはずの男の顔は、今まさに、間違いなく――。

「戦争に囚われ、機動兵器を塹壕に置くという思想がもう固まってしまっているんだよ」

 言うなり、禄郎はステンコートを翻しより前方の塹壕へと身を隠す。
 ハンチング帽から垣間見えるその男の顔は、間違いなく『軍人』の顔をしていた。
「……なら、あたしの『設定』は『現実主義の傭兵』ってとこかしらぁ?」
 戦争に理想を託した男たちと、あくまでも現実から目を背けない女。
 がしゃん、がしゃんと音を立てて前進してくる朧侍ども目掛けて、ティオレンシアは愛車「ミッドナイトレース」にひらりと跨り、さながらバイクの騎兵と化す。
 仕様としては『バイク型UFO』なので、果たしてエンジンが搭載されているかが明らかにされていないのが惜しい。あったとしたら、盛大にそれを吹かしていただろう。

「さぁて、それじゃ稼ぎましょうか」
 ハンドルを握るのは片手のみ、もう片方の手には愛銃「オブシディアン」。
「指揮官潰せば、特別褒章貰えるかしらぁ?」

 ぎゃるっ!! と、盛大に音を立てて後輪が土を飛び散らせながら、女傭兵が突撃を敢行する。
 迎撃する立場となった朧侍どもは気味が悪いほどに同じタイミングで抜刀し、構える。
(「あたしの目の前に立ちふさがるっていうなら、ねぇ」)
『……!』
 一斉に斬り掛かってくる相手を、鋭い眼光で見切って間を掻い潜り、敵陣深く潜り込むと同時に――全てをまとめてロックオン!
「思いのまま、蹴散らしてあげるわぁ」
 いち、に、さん、し、ご、ろく。
 次々と銃弾を致命的な部位に喰らって、物言わぬ鉄塊と化す朧侍ども。
 バイクを駆りながら的確に的を射抜くさまは、まるで流鏑馬のよう。
 ティオレンシアが次弾を装填すべく一旦間を置けば、指揮系統を狂わされた朧侍どもが内なる影朧に乗っ取られて、それまでとは全く異なる無秩序な動きを始めたではないか。

 ――ころん。

 何かが転がり、朧侍の足元にかつんとぶつかった瞬間。
『!!!』
 閃光が走り、直後、衝撃と爆風が複数の朧侍を吹き飛ばした。
 闇にまぎれるように塹壕に潜んだ禄郎が、ティオレンシアを巻き込まぬ機を見て手榴弾を放ったのだ。
(「狭い場所だ、逃げ場はない」)
 もちろん、仲間を慮っただけでなく、地の利を得たこともあるけれど。
 完全に混乱状態に陥った残りの朧侍目掛けて、銃剣を取り付けたトレンチガンを手に無駄のない動きで突撃していく。
「塹壕での散弾は殺すに至らないが回避できず」
 ――ぱぁん!! かつてポイントマンを務めていた男が放つ言葉の通り、来ると分かっていても回避が叶わぬ弾丸が朧侍どもを撃ち抜き、それは致命とはならずとも。
「衝撃がお前の動きを一瞬止める――それで、十分だ」
 ――がぁん!! 甲冑の隙間、急所と呼べる『そこ』――顔面のセンサー部分に銃剣を容赦なく突き立てれば、それでお終い。
 済まないな、などと嘯く男はまるでそうは思っていないに違いない。

「ここは私にとって『有利』なんだよ」
「そのようねぇ、あんまりにも手慣れてるから驚いちゃったぁ」

 ざりっと音を立ててバイクを横付けにして、沈黙した朧侍だった残骸を禄郎と共に見遣るティオレンシア。
「ま、戦争終わったらあたしも失業だけど……そのほうがいいに決まってるしねぇ」
「その台詞は果たして演技かい、それとも本音かい?」
 ようやくティオレンシアの方をまともに見た禄郎は、いつもの食えない顔をしていて。

「あー、さっさと終わらないかなぁ」

 だからティオレンシアも、いつも通り考えを読ませぬ女のままでいたのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『幻朧将校』

POW   :    影朧兵器『グラッジ弾』
【任意の対象へグラッジ弾を撃ち影朧】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    影朧兵器『ラプラスの悪魔』
自身に【影朧の入った薬物を射ち、瘴気】をまとい、高速移動と【未来余地によって放つ衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    影朧兵器『黙示録の軍団』
自身が【怒りや恐怖心】を感じると、レベル×1体の【名も無き影朧】が召喚される。名も無き影朧は怒りや恐怖心を与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠氏家・禄郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Yo buddy.You still alive?
 その男は、宵闇に溶け込んでしまいそうなほどに黒い出で立ちをしていた。
 白く浮き立つ幻朧桜に照らされるように辛うじてその姿を猟兵たちの前に見せる男は、峻厳な顔立ちを崩さず、軍靴で戦地を一歩一歩確かめるように踏みしめて進む。

『貴様達は、何故人々の間から争いが無くならないと思う』

 不死の帝のもと、ひとつの国となった世界。
 誰もがしあわせに、平和に暮らせる世界が訪れるかと思いきや、些細な諍いからかつて国境であった所でかつて異なる民族であったもの同士が武力に訴えるまで、『争い』というものがなくなった試しはない。

『味方の為に身を挺して戦う姿は美しい、その向こうに居る敵もまた同じではあるが』
 正義と正義がぶつかった先には、争いしかない。
『漫然とした平和では最早誤魔化しが効かない、故に幻朧戦線が立ち上がったのだよ』
 戦争による緊張こそが、人類の発展に繋がると思い込んだが故の内通。
『……仲間か、真に仲間であったならば告発などせず理解をして欲しかったものだ』
 恨み節めいた台詞を吐きながらも、男の表情は全く変わらない。
『そうだ、どう足掻いても誰かが死に誰かが泣くならば、その機会は均等であるべきだ』
 ただ、握られた拳銃の銃口はいつ誰に向けられてもおかしくない。
『傭兵が失業するような世の中が本当にやって来るなら、それも良かろう』
 ざあ、と幻朧桜が舞い上がり、幻朧将校と呼ばれる影朧の外套を翻らせた。
『改めて問おう――貴様等は、戦争が無くなる世の中が来ると思うか?』

 なぜ、どうして、この男はそのような問いを発するのか。
 答えが、欲しいのか。ああ――きっと、欲しいのだ。
 死してなお傷ついた過去の亡霊として黄泉返らせられる己の、心残りを。
 葛藤を、苦しみを、こうして吐き出す機会を与えられた。
 ならば問おう――どうすればいいのか。
 どうすれば、よかったのかを。

●補記
 演者として立ち回る方は『☆』の記号と役回り、心情と台詞を。
 素の自分として立ち回る方は『★』の記号、心情と台詞をそれぞれお願いします。

 幻朧将校とは攻撃の応酬もありますが、メインは言葉と言葉のぶつかり合いです。
 儀式は継続していますので、影朧に対する姿勢には十分お気を付け下さい。
 補記は以上です、皆様らしい立ち居振る舞いをお待ちしております。
氏家・禄郎

安心したよ幻朧将校
お前は最早コグローではない
彼ならば戦争が必要な理由を語るはずだ
「緊張が技術を作り出し、戦いが実証となる」
とね

だが、お前は違う
幻朧戦線という熱狂を取り込んだ、影、朧
ただの影朧だ

答えてやろう
戦争はもっとも原始的な経済活動だ
文明発展に寄与するが、それ以上に損失が大きい
文化を知った我々にはそれより有益な方法を知っている

ギムレットは終わりだ
コグローは駆逐する側として人々を鎮圧し、理想を求め、そして道を誤った
誰もが彼を知っていた
だが、うやむやにするには時間がなく
かと言って、無視はできないことをした
故に死んだ

『推理』はここで終わり

「戯曲は終焉へと向かう」

リボルバーの撃鉄を起こす。



●似て非なるもの
 そして、男は――氏家・禄郎は対峙する。
「安心したよ、『幻朧将校』」
『……』
 影朧の名をことさら強調するように、告げる。
 対する影朧は、険しい顔を崩さぬまま。
「お前は最早『コグロー』ではない、彼ならば『戦争が必要な理由を語る』はずだ」
 ロイド眼鏡の向こうで、常とは異なる剣呑な眼差しを向けながら、探偵屋は言った。

 確信があった。
 己が知る『彼』ならば、斯様な迷いは見せないだろうと。

 ――緊張が技術を作り出し、戦いが実証となる。

 むしろ、そう演説をぶち上げてこちら側をねじ伏せんばかりであったろうと。
 だから、お前は『違う』と断言できるのだ。
「お前は、幻朧戦線という熱狂を取り込んだ、影、朧」
『……』
「ただの、影朧だ」
 まるで、己に言い聞かせるかのごとく。
 探偵屋は、そう言い切ってみせたのだ。

 双方が、共に拳銃を握っていた。
 クイックドロウの勝負ではないが、一触即発の空気であることは間違いない。
 演ずることをせず、ただ一人の猟兵として立つ禄郎は、厳然と言い放つのみ。
「答えてやろう――戦争はもっとも原始的な経済活動だ」
『……原始的、か』
 考えに考え抜いた答えを暗に野蛮だと指摘された心地か、幻朧将校が眉根を寄せる。
「そう。文明発展に寄与するが、それ以上に損失が大きい」
 拳銃の銃口はいまだ地を見ており、撃鉄は上げられていない。
 ただ、求められた答えを返すことに禄郎は全神経を集中する。
「文化を知った我々は、それより有益な方法を知っている」

 戦争で全てが解決するなら、いっそどれだけ楽か!
 そう思えるほどに、人の世はままならないことばかり。
 けれども『それこそがより良い選択肢である』と知るが故に、戦争は忌避されるのだ。

「――【推理(ギムレット)】は、終わりだ」
 誰も理解ってくれなかったなどと、そんなことを言ってくれるな。
「コグローは駆逐する側として人々を鎮圧し、理想を求め、そして――道を誤った」
 僕も、彼も、誰もが、君を知っていた。
「だが、それをうやむやにするには時間がなく、かと言って、無視はできないことをした」
 故に、君は死んだ。
 これにて、『推理』はお終い。

『私は、その果ての残滓だと言うのか』
「そうだね、骸の海より黄泉返った、哀れな残滓だ」

 ここに、幻朧将校の存在が定義づけされ。
 戯曲は、終焉へと向かう。
 リボルバーの撃鉄が起こされ、銃口が幻朧将校へと――そして、夜空へと向けられ、一発の発砲音。

「終わりにしよう、幻朧将校」
 終幕を告げる号砲のように。
 そう、これは『魔術儀式』。
 己の立ち位置を明確にされた影朧は、己が投げ掛けた問いの答えを得るのだ。
(「ああ、僕は」)
 銃を下ろしながら、禄郎はもう一度眼前の影朧を見た。
(「二度も、友を殺さずに済んだのだね」)
 去来した感情は複雑ではあったが、それだけは間違いない事実であった。

成功 🔵​🔵​🔴​

リューイン・ランサード
【竜鬼】


ひかるさんの熱演後、彼が迷った時に相談した識者を演じ、自分なりに考えた世界と人の理で彼の問いに返す。

戦争とは争いの最終解決手段だよ。
話し合いや棚上げでは解決できない時に戦争で解決する。

いつの世も新しく興った者は力に見合うものを求め、既に在る者は持てるものを守ろうとする。
栄枯盛衰と弱肉強食は世の真理だ。
だから争いも戦争も無くならない。

出来る事は悲劇を少なくする事くらいだろう。
果ての無いどぶ渫いのようなもの。

けれどそれを厭って安易な解答に逃げ込んだら、どうしようもない悲劇を生んでしまう。
君はそれを知っている筈だ。

そう回答し、UCで彼が呼び出した『黙示録の軍団』を消し去り、双剣で彼を斬る。


荒谷・ひかる
【竜鬼】



愛する男を見送り、そして喪った女の役(先程の続き的な)で情に訴える演技をする

……なんで、あのひとがしななきゃならなかったの
何の権利があって、わたしからあのひとを奪って……!
それだけじゃない、あんた達のせいで、この子は父親を知らずに育つ……(大きなお腹を押えながら)
わたしが……この子が、何をしたって言うのよ……!(咽び泣く演技)

その後場面が変わり、心を病んで「一緒におとうさんに会いにいこうね……」とお腹の子ごと心中を図り
しかし真っ当には死ねず影朧と化し(演出込みで【覚醒・一耀の魂】発動)軍団を斬り伏せて男へ襲い掛かる
(戦争の悲劇は多くの影朧を生むリスクがあることを実体験させる狙い)



●夜よ、見るがいい
 ばん、ばん。
 スポットライトが目まぐるしく舞台を照らす演出が施される音だ。
 独り立つ幻朧将校のみが照明を浴びながら、暗がりをただ見つめていた。
(『答えてみせよ、超弩級戦力』)
 己は影、朧。ある男の妄執の果てに黄泉返った存在。
 幻朧戦線の戦士として暗躍する、一介の戦士である。

 戦争こそが、停滞を打破し世を繋ぐ唯一無二の手段だと思っていた。
 故に己が生まれたのだと、そう信じていた。
 それを『否』だと言うならば、確たる証を立ててみるが良い。

 まるで、それに呼応するかのように。
 暗闇に一筋の光が射して、女の姿が浮かび上がった。
「……なんで」
 女の――荒谷・ひかるの声は、顔は、それは酷いものであった。
「あのひとが、しななきゃならなかったの」
 幻朧将校は顔色ひとつ変えず、けれど何かに気付いたように、呟いた。
『誉れ高き、玉砕を遂げたか』
「何が……誉れよ……!」
 演技とは思えぬほどの迫力で、腹の底から恨めしい声を上げるひかる。
 その、腹は。
「何の権利があって、わたしからあのひとを奪って……!」
 暗転している最中に、帝都桜學府の手助けを受けながら仕込んだものではあるが。
「それだけじゃない」
 見るからに身重と分かるような大きさをしていた。
「あんた達のせいで、『この子』は父親を知らずに育つ……」
 まるで本当に身ごもっているかのように腹を押さえながら、静かにくずおれる。

「わたしが……この子が、あのひとが、何をしたって言うのよ……!!」

 ――ああああああ!!
 黒子のような姿で裏方に徹している桜學府の面々までもが思わずもらい泣きをしてしまう程の、ひかるの慟哭。
 その声を残して、一度スポットライトは消え、ひかるが闇に溶けていく。

『……そうだとも』
 幻朧将校は独りごちる。ここには今、己しかいないのだから。
『戦争で泣く者が出るのは必定、なればこそその悲しみは誰もが等しく負うべきだと』
 ――そう、己の基になった人物は考えた。
『場面転換、か』
 ざああ、と。幻朧桜がひときわ強く吹くと同時に、己もまた演者である幻朧将校はそれを知る。
 気付けば再びスポットライトを浴びたひかるの手には――一振りの刀があった。
「一緒に、おとうさんに会いにいこうね……」
『……』
 怨嗟にまみれていた女は、うって変わって笑んでいた。
 ――病みきった笑みであった。
 刃をすらりと抜き、お腹の子ごと自らを貫いて心中を図る。
 ああ、何と――どうしようもない、悲劇。

 ――ああああああ!!!!!
 先程の慟哭と似て非なる絶叫が、響き渡った。
 何と、演技ではなかったのか? 刃は確かに、女の――ひかるの腹を貫いている!
(「お願い、『私』。わたしに力を貸して――」)
 半分演技で、半分本当。叫びの正体は、ひかるの身体を張ったひと芝居であった。
 いとしいひとが遺した子を道連れに自ら命を断とうだなんて、真っ当に死ねる訳がない。
 ひかるは、そう言いたかったのか。
 ユーベルコヲド【覚醒・一耀の魂(アウェイキング・ソウル)】を発動させながら、みるみるその姿はオブリビオン――すなわち、影朧と化していく。
『何が、言いたい』
 外套をばさりと翻し、幻朧将校が初めて感情をその顔に浮かべた――甚だ『不快』だと。
 幻朧戦線の同士たちと思しき黒鉄の首輪の兵士たちがたちまち生じてひかるに迫る。
(「良いでしょう、『わたし』。あの男に、教えてやりましょう」)
 意識が混濁するような心地がした。
 わたし、私、超弩級戦力、影朧、わたしであって、私でない、ああ、ないまぜに。

「ああああああああああああああああ!!!!!!!」

 名も無き軍団を一撃のもとに斬り伏せて、ひかるであった影朧はそのまま幻朧将校へと襲い掛かる!
『……ッ』
 それに対して幻朧将校は咄嗟に拳銃を持ち替え、腰の軍刀を鋭く抜き放つと、ひかるの刃をがきんと受けた。
 鍔迫り合いの最中で、ひかるは真の姿を晒して、気迫のみで伝える。

 これこそが、戦争の悲劇のリスクであると。
 多くの影朧を生み出す可能性を、お前は考慮したのかと。

『……ッ!』
 きぃん、と。鋭い音と共に遂に幻朧将校の軍刀がひかるの刃を押し返す。
 だが、それこそが頃合いであった。ひかると入れ替わるように、リューイン・ランサードがスポットライトを浴びて登場する番であったのだから。
「久しいな」
『……? ああ、そういう趣向かね』
 この『魂鎮メ歌劇ノ儀』という術式に組み込まれた身であるものは、改めずとも全ての配役を把握する。
 眼前の少年は『己が迷った時に相談をした識者』という立ち回りを選んだらしい、と。
 リューインもまた理解を得られた手応えを感じ、自分なりに考えた世界と人の理で幻朧将校の問いに返さんと、正面から向き直った。
「戦争とは、争いの最終解決手段だよ」
 ひかるが、今まさに迫真を超えた演技――いや、魂の叫びを見せた。
 ならば、己も負けずに考え抜いた『答え』を伝えなければならない。
「話し合いや、棚上げでは解決できない時に、戦争で解決する」
『――ほう』
 棚上げにする、というのもひとつの解決手段ではある。
 何でも白黒つければ良い、というものでもないからだ。
「いつの世も新しく興った者は力に見合うものを求め、既に在る者は持てるものを守ろうとする」
 誰もが求め、誰もが守る。
 けれども、栄枯盛衰と弱肉強食は悲しいかな、世の真理。
「――だから、争いも戦争も無くならない」
『其れが、答えか』
 幻朧将校の低い声に、しかしリューインはゆるりとかぶりを振る。

「出来る事は、悲劇を少なくする事くらいだろう」
 真っ直ぐに、幻朧将校を見据えて。
「果ての無い、どぶ渫いのようなもの」
 男を、そして、どうしようもない現実を見据えて、なおその瞳の輝きは消えない。
「けれど、それを厭って安易な解答に逃げ込んだら、どうしようもない『悲劇』を生んでしまう」
 ここで一度、ひかるがいるであろう後方を振り返るリューイン。
 そして再び、幻朧将校に向き直った。

「君は、それを知っている筈だ」
『ぐ……!』

 再び放たれた名も無き軍団は、宵闇に溶けてしまいそうな刀身の剣とそれを清く照らし出す刀とに斬り捨てられた。
 そのままの勢いでリューインは幻朧将校に迫ると――。
「今一度、己の胸に聞いてみるといい」
 とん、と。双剣をそっと影朧の胸元に当て、すぐに離した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア
◎☆・現実主義の傭兵

戦争のない世界?やぁねぇ――


そんなもの、来るわけないでしょう?
人間って三人集まれば派閥ができる生き物よぉ?

私見だけど。内通なんてやらかす前に、あなたこそ理解を求めるべきだったんじゃないかしらぁ?
そもそも戦争による発展って国家のリソースを洗い浚いブッこんだブーストによるものだもの、長続きなんてしないわぁ。
一撃で事態を解決できる銀の弾丸なんて存在しない以上、幻朧戦線なんて過激で奇天烈な「宗教」に転ぶよりは建設的じゃないかしらねぇ?

…気づいてるでしょうけど。恒久平和の方法、一つだけあるわよぉ?

世界が亡べ
更地に成れば、間違いなく争いは無くなるわねぇ。



●救いがたきものよ
 女は――ティオレンシア・シーディアは、『現実主義の傭兵』を演じ抜くことを決めた。
 だが、この言葉のどこまでが演技で、どこまでが本当かは、誰も見抜けない。
 それは、対峙する幻朧将校であっても同じだった。
『貴様も謳うか、戦争のない世界を』
 低く、けれどよく通る声音の幻朧将校の言葉に、ティオレンシアは口の端を上げた。
「『戦争のない世界』? やぁねぇ――」
 とろんと甘く響く声が返され、そしてそれは一瞬だけ、凄みを帯びたように思えた。

「そんなもの、来るわけないでしょう?」

 知ってるでしょうけど、なんて笑って。
「人間って、三人集まれば派閥ができる生き物よぉ?」
『……は、其れは確かにな』
 友と信じた者たちからの告発で死んだ存在の『残滓』たる己には、耳が痛い。
 女は、決してただ男を蔑ろにするために此処に来た訳ではない。
 だから、向かい合う。現実主義の傭兵らしく、堂々と振る舞う。
「私見だけど」
 糸目の向こうで赤い紅い瞳が覗くことに、男は気付いただろうか。
「内通なんてやらかす前に、あなたこそ『理解を求める』べきだったんじゃないかしらぁ?」
『……ほう?』
 興味深そうな反応に手応えを感じつつ、ティオレンシアは続ける。
「そもそも戦争による発展って、国家のリソースを洗い浚いブッこんだブーストによるものだもの、長続きなんてしないわぁ」
 誰よりも、現実を見据えた意見であった。
 甘い甘い声で紡がれる、厳然たる事実であった。
「一撃で事態を解決できる『銀の弾丸』なんて存在しない以上、『幻朧戦線』なんて過激で奇天烈な『宗教』に転ぶよりは――建設的じゃないかしらねぇ?」
『手厳しいものだ――宗教とはな』
 無意識に片眼鏡の位置を直しつつ、幻朧将校は何かを言おうとした。
 それを、ティオレンシアが敢えて言葉を被せて制した。

「……気付いてるでしょうけど」
 それは、甘く甘く囁かれる、どうしようもない現実。
「恒久平和の方法、一つだけ『ある』わよぉ?」

 ――得体の知れぬ、圧力を感じた。
 故に、幻朧将校は知れず一歩だけ後退った。
「世界が、亡べ」
 そして、ティオレンシアはその顔から表情を消した。
「更地に成れば、間違いなく、争いは無くなるわねぇ」

 影朧たる己ならば、其処に『居る』だけで世界を滅びに導くであろう。
 けれども、どうしようもなく足掻くのは――?

成功 🔵​🔵​🔴​

雪華・風月

☆:元部下A
否ぁ!アルバート・コグロー!貴様のような身勝手が争いを産むのだ!
幻朧戦線の言なぞ所詮狂言!子が、力の無き者達へ刃を振るうそれを正義と言うのか!我ら軍人の使命は力無き者を守る盾であり剣ぞ!それを忘れた愚か者め!その性根叩き直してくれる!


…真の仲間であると思うならそれこそ言の葉を交わすべきでした
お互い言葉を思いを伝え理解する…無論お互いそれでなお相容れず争うこともありましょう…
けれど、それすらせずにいては争いは無くならないのです
死を、争いを無くすなら……貴方のやり方は間違っていたのです


雪解雫にて、攻撃を『武器受け』し威力を『受け流し』
『カウンター』にて…


木常野・都月
◎☆(元軍の仲間役)

戦争が無くならないと絶望したから、殺しあう世の中にしようというのか?

確かに、戦争を無くす事は難しい。
争いは、努力なしに無くなるものではないから。

だからと言って、努力を怠る理由にはならないだろう。

今日よりも平和な明日を目指すために、俺や軍の仲間達は、立ち上がったんだ。
平和を望む、力無い人達の代わりに、俺達が戦っているんだ。

どうしたらよかったか?
人に答えを聞いても意味がないぞ。
答えは人それぞれ違うだろうからな。

ただ…どんな答えだとしても。
今ある人々の幸せを奪う事は、俺は絶対に許さない。
それが俺の答えだ。

UC【黒の狐火】で敵将校を狙おう。
(精気は2割位。倒すつもりはないからな。



●きみが夢見たもの
 先立って舞台で演じ抜く猟兵たちに紛れて、衣装の準備をするものが二人。
 ほんのりレトロな軍服一式を身に纏った、木常野・都月と雪華・風月だった。
 二人が演じるのは、幻朧将校のかつての仲間、そして部下という役回り。
 準備万端整って、眩いばかりの照明を浴びてざりっと地を踏みしめれば、対峙するは険しい顔をした幻朧将校。

「戦争が無くならないと『絶望』したから、殺しあう世の中にしようというのか?」

 都月が――もはや己をヒトと疑わぬ妖狐が問えば。

『否、私は微塵も絶望などしていない。屈していたならば、此処に立ってさえいない』

 影朧が――なおも己を己たらしめる妄執にすがり。

「否ぁ! アルバート・コグロー! 貴様のような身勝手が争いを産むのだ!!」

 風月の――叛逆せし部下を演じる乙女の苛烈な叫びが響く。

 いつの間にか右手に握られた拳銃の銃口が風月を狙い、何の前触れもなく込められたグラッジ弾が放たれた。
(「……っ!!」)
 が、ぎぃん!
 間一髪、超弩級戦力ならではの超反応で風月は鞘に収めたままの雪解雫で凶弾を弾く。
 痺れる手を悟られまいと、風月は軍服姿でなおも語気を荒げて叫んだ。
「幻朧戦線の言など所詮狂言っ! 子が、力の無き者達へ刃を振るうそれを『正義』だと言うのかっ!!」
 そのままの勢いで、今度は風月が刀身を抜き放ち一気に間合いを詰めると幻朧将校へと斬り掛かる!
『ッ、……犠牲無き進化など、有り得ぬとは思わないか』
 今度は、清廉なる刃が黒鉄の銃で受け止められた。
 二人はしばし、至近距離で睨み合う。

「確かに、戦争を無くす事は難しい」
 やや離れたところで、都月がぽつり呟く。
「争いは、努力なしに無くなるものではないから」
 そう言って、真摯な眼差しを斬り結ぶ二人へと向けた。

 ――だからと言って、努力を怠る理由にはならないだろう?

『努力したとも、その果てに『私』が居るのだ』
 ぐ、と。拳銃で刀を受ける幻朧将校に押し負けそうになる風月は、ぎりと歯を食いしばって負けじと押し返す。
「我ら軍人の使命は、力無き者を守る盾であり剣ぞ! それを忘れたか、愚か者め!」
 そうして僅かの間に力は拮抗し、そうして互いが弾かれるように後方へと退いた。
「その根性……叩き直してくれるっ!!」
 吼える風月の隣に都月も並び立ち、援護するように言葉を紡ぐ。
「今日よりも平和な明日を目指すために、俺や軍の仲間達は、立ち上がったんだ」
『……』
 これは、演劇。戯曲。虚構にして、夢、現に過ぎない。
 なのに、何故。
「平和を望む、力無い人達の代わりに、俺達が戦っているんだ」
 眼前の、まったく似ても似つかぬ者どもに、姿形が重なるのか?

 そして、刀を構えたまま、風月が一転して穏やかな口調で言葉を掛けた。
「……真に仲間であると思うなら、それこそ言の葉を交わすべきでした」
 それは、風月の嘘偽らざる、演技さえも抜きにした、心からの言葉。
「お互い、言葉を、思いを伝え、理解する……」
 無論、お互いそれでもなお相容れず、争うこともあろうと言い添えて。
「けれど、それすらせずにいては、争いは無くならないのです」
 學徒兵の乙女の結った髪が夜風に揺れる。
 妖狐の青年の豊かな尾も、同じく揺れた。
「『どうしたらよかったか』? 人に答えを聞いても意味がないぞ」

 ――ここまで聞いて、分かっていると思うけれど。
 ――答えは、人それぞれまったく違うものだから。

『私を、身勝手と言ったな』
 峻厳な表情はそのままに、幻朧将校は銃口を下ろす。
『貴様等も、大概なものだとは思わないか』
 そして――口の端を僅かに上げて、間違いなく、笑った。
「どんな答えだとしても、今ある人々の幸せを奪う事だけは、俺は絶対に許さない」
 対する都月は、常は穏やかな顔を険しくして、厳然とそう言い放った。

『貴様等の言葉には全く統一性がないが、しかし、筋は通っていると理解した』
 照明を浴びて、影朧の片眼鏡が光る。
『戦争により世界を調律せんとした男の成れの果て――それが、『私』だ』
 幻朧戦線に肩入れをする謎めいた影朧――『幻朧将校』の名を持つ、己。
 こうして魔術儀式の舞台に引き上げられた時点で、こうなることは必定だったのか。
『私は、私のしてきたことは、そしてこれからもしようとすることは』
 風月が、雪解雫を振り上げながら頷いた。
「死を、争いを無くすなら……」
 もはや影朧は、立ち尽くすばかり。
「貴方のやり方は、間違っていたのです」

 ――ざ、ん。

 袈裟斬りにされたかに見えた幻朧将校は、しかし傷一つ負っておらず。
 ユーベルコヲド【刃邪剣正(ハジャケンショウ)】の霊力により、その歪んだ在りようをこそ斬り捨てられたのだった。

『いつか』
 幻朧将校――かつて、アルバート・コグローと呼ばれた男の残滓は、背負った名の通り幻朧戦線の戦士として帝都にて暗躍を続けていた。
 けれど、それももう、きっとお終い。
 がしゃん、と音を立てて、首にがっちりと嵌まっていた黒鉄の首輪が両断されて地に落ちたのがその証拠。
『来るのか、齎すのか、貴様等が』

 ――真に平和がもたらされた、この『帝都』という世界を、見せてくれるのか。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 日常 『スタアゲイザー』

POW   :    願い事をたくさんする

SPD   :    願い事を素早く3回唱える

WIZ   :    願い事に想いを込める

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●dream end discharger
 雨はもう、すっかり止んでいた。
 今や降りそそぐものは、夜空に白く浮かぶ幻朧桜ばかり。
 猟兵たちが、そして桜學府の面々が固唾を呑んで見守る中で、黒鉄の首輪を斬り落とされた幻朧将校がゆっくりと己の首元へと白手袋の手を伸ばした。

『妄執は、此処に断たれた――と言う事か』

 その顔は、本来、晴れ晴れとしていなければならなかった。
 けれども、その峻厳な表情は微塵も崩れることがなかった。

『死してなお無様を晒すのは本意では無い』

 喉元にがり、と指を突き立てるようにして、幻朧将校は低く告げた。
(「――まずい!」)
 身振り手振りで何とか超弩級戦力たちに察した状況を伝えようと、北大路青年が必死な顔になる。
(「あいつ、まだやる気だ! それじゃあ、魔術儀式の失敗はもちろん、あの影朧だってどうなるか分からない」)
 口をぱくぱく、懸命に超弩級戦力たちに状況を伝える北大路青年。
 それを把握した猟兵たちが、いっせいに幻朧将校の方を向いた時。

『私を』
 ――此処が、夢の果てならば。
『真の意味で、終わらせて見せよ』
 ――相応の、幕引きが欲しい。

 ばさあっ!
 黒い外套が脱ぎ捨てられ、幻朧将校は抜き身の刀の如き鋭さで舞台に立つ。
 それが、どんなに間違ったものだと糾弾されようとも。
 かれは、間違いなく明日を夢見ていた。
 満天の星空が謳う中、きみは影朧の幕引きを飾れるか?

(「頼む! 演出なら何だってやってやる、あんたたちだけが頼りだ、超弩級戦力!」)
 必死に伝える北大路青年の後ろで、桜學府の面々も頷いて同意する。
(「星に願いを――あんたたちの言葉で、叶えてやってくれ」)

 見上げれば、幻朧桜と星の海。
 夢は潰えたのか、いつか果たされるのか。
 導き、癒し、あるいは諭し、何なら殴ってでも――或る男を、おくって欲しい。

●補記
 戦闘はありません、演技の必要もありません。
 ただ、幻朧将校が『最期に、そして次にどうあって欲しいか』を、願って下さい。
 黒鉄の首輪は断たれ、幻朧戦線への妄執もまた消え去りましたが、転生へはあともうひと押しが必要です。
 大がかりなものでなければ舞台演出で手助けもできますし、プレイングに記載があればミネルバもお手伝いが可能です。

 外套を脱ぐ時が来ました。
 どんな形でも構いません、皆様の願いで影朧を送り出して下さい。
雪華・風月
歌劇の終わりには踊るもの…と
ということでわたしと踊りませんか?舞うのは剣舞…となりますが(用意してもらった木刀を差し出し)
はい、終わりであるなら身を裂く刀身は必要も無いでしょう

剣士とはお互い剣で語り合うもの
わたしからは次代の剣を…貴方の願いを受け取りこの世界にいずれ真の平和を…
わたしでは駄目でも次の、更に次の世代が…そういった願い、希望を剣に込めて

今回はやり方は間違っていました、ですが貴方の夢…戦争が無くなるというのは間違いでは無いのです
また、この世に生まれ直し、次は共に平和の為に…

この桜の下で願いましょう誓いましょう
今はただ貴方に一度の安らぎを…


御桜・八重

北大路さん。
篝火を。

巫女の正装を纏い、静々と舞台へ。
幻朧将校を前に舞うは、神楽・御桜舞。
祝詞に、舞に、思いを込めて、
転生への祈りを深く伝えます。

その手は銃を握っていたけれど。
平和への想いは本物だった。
誰にも悲劇が起こりうる世界は、
誰もが幸せになれる世界の裏返し。
優しいが故の、反転。

彼が骸の海に還ってしまえば、
また一からこの道程のやり直し。
夢を終わらせると選択するに至った、
その心を霧散させたくない。

幻朧桜に願う。
この魂の転生を。

彼は。コグローさんの残滓たる幻朧将校は。
きっと助けを求める数多の人の手を掴む。
あの光の向こうでその手を待つ人々のために。
幻朧桜の力を借りて、彼の背を押す。

がんばってね!



●舞い踊れ、咲き誇れ
『……』
 幻朧桜舞う宵の空のもと立ち尽くす幻朧将校の前に、雪華・風月が立つ。
 その手には、二振りの木刀があった。
「北大路さん」
 御桜・八重は桜學府所属の青年にそっと囁き、頼みを告げる。
「篝火を」
「……任せろ」
 整った正装の巫女装束に身を包んだ八重が真剣な面持ちで告げるからには、相応の立派な篝火を焚かねばならぬ。
 如何なる要望にも応えると言っただけのことはあり、すぐに役者たちは煌々と燃える炎に照らし出された。

 しゃらん、しゃらん。
 八重が手にした神楽鈴の清廉なる音色を聞きながら、風月は一振りの木刀を影朧へと差し出した。
「歌劇の終わりには踊るもの……と」
『……成程』
 大人しく手を伸ばして木刀を受け取りながら、幻朧将校は敢えて問う。
『軍刀ならば佩いているが、敢えて木刀を持ってきたのは』
「はい、終わりであるならば――身を裂く刀身は必要も無いでしょう」

 ――しゃん。しゃぁん。

 鈴の音が、空気を清らかにしていくかのように。
 舞うは神楽・御桜舞。
 朗々と謡われる祝詞に、美しい巫女の舞に、思いを込めて。
 二人の乙女が願うはひとつ、かの影朧の転生である。

「ということで、わたしと踊りませんか? 舞うのは剣舞……となりますが」
 八重の神楽舞に乗って、風月が手元に残った木刀を構える。
『淑女からのダンスの誘いを断わる程、無粋では無いつもりだ』
 しゃん、しゃん。
 ――かぁん!!
 木刀同士がぶつかり合う小気味良い音が、鈴の音に混ざり始めた。

「その手は、銃を握っていたけれど」
 八重は深く深く祈りながら、幻朧将校へと言葉を紡ぐ。
「平和への想いは、本物だった」
 誰にも悲劇が起こりうる世界は、誰もが幸せになれる世界の、裏返し。
(「優しいが故の――反転」)
 影朧と超弩級戦力との剣舞を見守りながら、桜の巫女は己の舞を捧げ続ける。

 しゃん、しゃん、かぁん。
 互いに相応の腕を持つがゆえの、見事な剣舞であった。
 打ち合わせるたびに、風月もまた影朧へと語りかける。
「剣士とは、お互い剣で語り合うもの」
『其の年で大したものだ、流石は超弩級戦力と言うべきか』
 木刀を打ち合わせ、間合いを取り、拍を合わせてまた打ち込む。
「わたしからは次代の剣を……貴方の願いを受け取り、この世界にいずれ真の平和を……」
『……伝えるというのか、その剣を以て』
 影朧の言葉に、風月はひとつ頷いて、くるりと身を翻してから木刀を振り下ろした。
「わたしでは駄目でも、次の、更に次の世代が……」
 そういった願い、希望を、剣に込めて。

(「彼が骸の海に還ってしまえば、また一からこの道程のやり直し」)
 語り継がれるものが、確かにある。それは今まさに風月が、伝えてくれた。
(「夢を終わらせると選択するに至った、その心を霧散させたくない」)

 ――しゃん!

 ひときわ強く鈴が振るわれ、幻朧桜がざああと舞った。
(「幻朧桜に願う。この魂の転生を」)
 影朧と風月とは、しばし間合いを取ったまま動かない。
「今回はやり方は間違っていました、ですが貴方の夢……『戦争が無くなる』というのは、間違いではないのです」
 風月は一度瞑目し、ゆっくりと木刀を振るう。
 影朧もまたその動きに合わせ、木刀を振るう。
『間違いでは、ない……か』
 かん、と打ち鳴らされた木刀の音が、鈴の音と本当によく似合う。
「また、この世に生まれ直し、次は共に平和の為に……」
 木刀を合わせたまま、震える手で、風月は俯いた。

(「彼は」)
 八重は、そんな二人を静かに見守りながら思う。
(「コグローさんの残滓たる『幻朧将校』は」)
 拳銃を握り、軍刀を振るい、今は無害な木刀を握るその手を見る。
(「きっと、助けを求める数多の人の手を掴む」)
 ああ――本来は、そのための白手袋なのだと。
『……』
 どうした、とさえ問わず、ただ風月の様子を見守るばかりの幻朧将校から、敵意や害意めいたものはもはや感じ取れない。
「この、桜の下で、願いましょう、誓いましょう」
 震える声で風月が言う中、八重が木刀を握る影朧の手に己が手を添えた。
「今はただ、貴方に一度の安らぎを……」
『私に、安らぎだと』
 そのようなものが、許されるのか。
「そうだよ」
 もう片方の手を、幻朧将校の背に添えて。
 八重は静かに、けれど力強く告げた。
「この手を待つ人々のために――」
 ざああ、ざああ。まるで八重を後押しするように、幻朧桜が舞い踊る。
 どうか、光の向こうへ。
 そして、転生という奇跡を。

「――がんばってね!」

 ああ、わたしたちは。
 貴方の道行きを、心から応援するものである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リューイン・ランサード
【竜鬼】

ひかるさんの行動に続ける形で、第二章でやった識者を演じ続ける。

「彼女は優しいからこう言うが、私は違う。
『いつか来るのか、齎すのか、貴様等が。』だと。
甘えた事を言うなよ。
それが君の望みなら人任せにせず、さっさと転生して、争いと戦争の悲劇を減じる為にキリキリ働け。

『一燈照隅 万燈照国』という言葉がある。
自分の為すべき事を為し、志を同じくする者達と連携する事で、この世を今よりもマシにできる。
その時、君が幸せになっても誰も文句は言わん。
いいや、私が言わせん。

さらばだ、いつかまた会おう。
良き再会であらんことを。」と言って去る。

言葉の刃を彼に思いっきり刺すので、UC使用や戦闘行為は無しで行きます。


荒谷・ひかる
【竜鬼】

『役』を脱ぎ、素の自分で対峙
緊迫した状況にも物怖じせず、柔らかく微笑んで語り掛ける

一番大事なのは「あなたが納得できたのかどうか」
どれほどわたし達が言葉を、想いをぶつけても、あなたが納得できないのならどうにもなりません。
だから。

気が済むまで、何度でもお付き合いします。
納得いくまで、何度だって間違えていいんです。
過ちを繰り返すその度に、毎回わたし達が止めてあげますから。

手段は兎も角……あなたの明日を夢見た『心』を、私は肯定します。

リューさんに後を引き継ぎつつ【世界に希望を】発動
願うは「彼の魂が様々なしがらみを振り払い、初心に帰る」こと
どうか、次こそは……真っ当にその想いを遂げられますように



●良き導き手たち
 誰よりも舞台の上で熱演を繰り広げたふたり――荒谷・ひかるとリューイン・ランサードが幻朧将校の前へと進み出た。
 戦地に赴く愛しいひとを気丈に送り出しながら、その果ては狂気に囚われ、死にきれず影朧と成り果てた女――その役柄も、これでお終い。
 緊張感が張りつめる舞台の上で、ひかるは物怖じせず、柔らかく微笑む。
「一番大事なのは、『あなたが納得できたのかどうか』」
『……』
 軍帽で隠れがちな幻朧将校の目元が、微かに揺れ動いたように思えた。
「どれほどわたし達が言葉を、想いをぶつけても、あなたが納得できないのならどうにもなりません」
 己の在りようを決めるのは、他ならぬ己自身。
 ならば、今この影朧は、どう在ろうと願うのか?
「――だから」
 ひかるはそう言って、花のような笑顔を幻朧将校へと臆することなく向けた。
「気が済むまで、何度でもお付き合いします」
『……超弩級戦力というのは、存外、暇なのか』
 冗談めかした台詞を真顔で言うのも、この影朧の性格なのだろうか。
 ふふ、とひかるは笑んで答えると、言葉を続けた。
「納得行くまで、何度だって間違えていいんです」

 だって。
 過ちを繰り返すその度に、毎回わたし達が止めてあげますから。

『……理解が追いつかぬよ、超弩級戦力』
「いいんです、今はそれで」
 ひかるは、手段は兎も角として、幻朧将校が明日を夢見た『心』を、肯定していた。
 ね、と振り返ったひかるの視線の先に居たリューインは、どこか芝居がかった仕草で。
「――彼女は優しいからこう言うが、私は違う」
 温和そうな青年が厳しい識者の演技をする様は、影朧にとっては些かこそばゆく思えて、どんな顔をすれば良いかという心持ちで、それでも耳を傾ける。
「『いつか来るのか、齎すのか、貴様等が』だと? 甘えた事を言うなよ」
 いや――もはやどこまでが演技で、どこからがリューインの本音かの区別が付かぬ。
 それだけ、情念がこめられた言葉であったのだ。
「それが君の望みなら、人任せにせず、さっさと転生して、争いと戦争の悲劇を減じる為にキリキリ働け」
『は――随分とハッキリ言ってくれる』
 薄々、見えている『これから』。骸の海より抜け出して、転生という救済に身を委ね、今度こそ『間違えない』生き様を見せることこそが、正しいのだと。

 だが。
 そのような資格が、己にあるのか?
 向かい合った先で、己のために両手を組んで必死に祈る少女がいる。
 その祈りは、間違いなく己のために向けられているのだろう。
『娘よ――何を、願う』
「あなたの魂が、様々なしがらみを振り払い、初心に帰ることです」
 祈り、願うひかるをかばうようにリューインが立てば、いよいよ語気は強くなる。
「『一燈照隅 万燈照国』という言葉がある」
 ――自分の為すべき事を為し、志を同じくする者達と連携する事で、この世を今よりもマシにできる。
『志を同じくする者、か』
 手を取る相手を、間違えた。
 己の生に、二度目があるならば?
「その時、君が幸せになっても誰も文句は言わん――いいや、私が言わせん」

 不思議な、心地であった。
 ままならぬ人生であったし、こうして影朧として現界してからも変わらなかった。
 転生など考えもしなかったけれども、不思議と――胸の奥が、熱い。
「さらばだ、いつかまた会おう」
 リューインが演じる識者には、確かにどこか心当たりがあった。
 いつか、また。その言葉が、深く沁みいるようであった。

「どうか、次こそは……真っ当にその想いを遂げられますように」
「ああ、良き再会であらんことを」

 ひかるとリューインは、そう言って二人手を取り合って舞台から降りていく。
 残された幻朧将校は、無意識に胸元を掴んでいた。
『転生、か』
 己にはあり得ないと思っていた、あるひとつの結末。
 いよいよ現実味を帯びてきたその気配に、不動の心にさざ波が起きていたのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木常野・都月


ずっと演技してたから、言ってないけれど。

実は俺もどうしたら争いが無くなるか、分からない。
だって俺は妖狐…人初心者だから。

でももし、本当に争いのない世の中を作れるとしたら、それは人が、人なら、作れると思うんだ。
狐だった俺だからこそ、そう思うんだ。

だって人は、深い感情を湛える心がある。
感情を伝える言葉がある。
言葉と言葉を交わして争いを納められるのは、人しかいないと俺は思う。

だから俺は、人の持つ心と言葉の可能性を信じたい。

だから、これは、俺からの…お願い。

転生して、新たな命として、人の可能性を信じて欲しい。
獣から見ると、人って凄いんだぞ?
そして、次に出来るなら、平和な未来を造って欲しい、かな。


ティオレンシア・シーディア


少数の人間が多少暴れた程度でひっくり返るほど、世界って脆くないのよねぇ。
あなたが受け取ったのは銀の弾丸どころかザミエルの7発目だった――もう、気づいたでしょう?
…なんて。この期に及んで言って聞くならここまでになってないわよねぇ。なんとか納得して心残りなく還ってほしいとこだけど。
何なら決闘でもする?

きっとあなた、相当に切れて十分に有能でそれなりに善良で――だからこそ、手を広げられる政治家とか軍人には「向きすぎていて向かない」人だったのねぇ。
もっと手の届く範囲の狭い職業をお勧めしておくわぁ。飲食店の店主とかいいんじゃない?
…それと。次は、身近な人に泣かれないようにしなさいな?



●君の道行きに幸あらんことを
「ずっと演技してたから、言ってないけれど」
 好青年たる木常野・都月がようやく素の自分として言葉を発する時が来た。
 同席しているティオレンシア・シーディアは、まずは静観することを選ぶ。
「実は、俺もどうしたら争いが無くなるか、分からない」
 ――だって俺は妖狐。『ヒト』初心者だから。
『その割には良い演技であったと、私は貴様を評価するが』
 ぶわっ。予想外の褒め言葉に、都月の黒い尻尾がぶわり広がる。
 勢い込んで、そのままたたみかけるように影朧へと話し続けた。
「でももし、本当に争いのない世の中を作れるとしたら、それは人が、人なら、作れると思うんだ」
『……』
「狐だった俺だからこそ、そう思うんだ」

 ひと息に思いの丈をぶちまけて、ひと息つく都月の後を受けるように、ティオレンシアが蕩けるような甘い声で引き継いだ。
「少数の人間が多少暴れた程度でひっくり返るほど、世界って脆くないのよねぇ」
『癪ではあるが、其れが真実であろうな』
「あなたが受け取ったのは銀の弾丸どころか『ザミエルの七発目』だった――」
 魔弾の射手、最後の一撃。悪魔の望む箇所へと命中する凶弾。
「もう、気付いたでしょう?」
『……』
 いまだ憮然とした表情を隠さぬ影朧を見て、ティオレンシアは甘い息を吐く。
「……なんて。この期に及んで言って聞くならここまでになってないわよねぇ」
 願いはひとつ。
 なんとか納得して、心残りなく還ってほしいところだけれど。
「何なら、決闘でもする?」
『魔弾は既に撃ち尽くした――故に、辞退しよう』
 そう言うと、影朧は都月を見た。
 とても、何か大切なことを言いたげにしている都月を。

「人は、だって人は、深い感情を湛える心がある。感情を伝える言葉がある」
 時に刃となり、時に癒しとなる、コミュニケーションに於ける最大の武器。
「言葉と言葉を交わして争いを収められるのは、人しかいないと俺は思う」
『言葉、か』
 実力行使で何もかもを成し遂げようとした己の根底には、言葉での限界を知ってしまったがゆえのこともある。
 けれども、諦めたがゆえの今の己であることを考えれば――。

 諦めなかったならば、どうなっていたのだろうかと。

「だから俺は、人の持つ心と言葉の可能性を信じたい」
 己を獣であったと言う青年は、人の持つ闇の深さをまだ知らないのだろうか。
 そのことを告げようとした幻朧将校は、切なる声に押し切られた。
「だから、これは、俺からの……お願い」
 ぺこり、と頭を下げる都月。
 純粋に、己の言葉を聞き入れてもらおうとする誠実さ。
「転生して、新たな命として、人の可能性を信じて欲しい」
『……』
 顔を上げた都月は、瞳を輝かせて訴える。
「獣から見ると、人って、凄いんだぞ?」
『……ああ、愚かで、救いがたく、だが、明日を夢見ずにはいられない』
 幻朧将校の言葉に、都月は手応えを感じたのか、はにかんで笑った。
「そして、次に出来るなら、平和な未来を造って欲しい――かな」

 一部始終を静観していたティオレンシアも、甘い声で影朧へと話しかける。
「きっとあなた、相当に切れて十分に有能で、それなりに善良で――」
『止せ、流石に過大評価だ』
 幻朧将校の制止も聞かず、女はつらつらと思うがままを述べる。
「だからこそ、手を広げられる政治家とか軍人には『向きすぎて向かない』人だったのねぇ」
『……其れを言われると、痛いな。他に適職でも有ったというのかね』
 ほんの少しだけ口角を上げて問う影朧に、答えるティオレンシア。
「もっと手の届く範囲の狭い職業をお勧めしておくわぁ」
 そう言って、自らが身に纏うバーテンダーの衣装を見せて。
「飲食店の店主とかいいんじゃない?」
『転身も甚だしいな、だが興味深くはある』
 参考にしよう、と呟いたのは、間違いなく『転生』を見越してのことだろう。

 都月とティオレンシアがそんな幻朧将校の様子を見守る。
 ああ、そうそう。なんて、ティオレンシアが言い添えた。

「……それと。次は、身近な人に泣かれないようにしなさいな?」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

氏家・禄郎
結構な回り道をしたな?
人としての理想を捨てきれず、なお夢を追い、そして熱情に染まり、今、それは冷めた。

気分はどうだい?
……私はまあ、古い付き合いと再会できてよかったというべきだが
かと言って、ハッピーエンドで幸せにとも思っていない


……俺達には似合わないからな(笑)


どうする?
理想が危惧され紛争処理に飛ばされ
しかも虐殺に近い位置で戦争を見て
理想を求め取引することを選び
僕らに拒まれた

それでも、妄執として生き続けたが
それも無くなった

けれど僕達は人間なのだ
人間ならば責任の取り方というのがある
さあコグロー
『君はどうやって終わりたい?』

全てが終われば一言

「――Farewell friend」

物語は終わりさ



●さようなら、またいつか
 終の時が訪れる。
 誰にでも等しく訪れるものだ。
「――結構な回り道をしたな?」
 舞台の上には、幻朧将校と氏家・禄郎の二人きりとなった。
 幻朧桜は止めどなく舞い踊り続け、夜空に白く浮き立つばかり。
「人としての理想を捨てきれず、なお夢を追い、そして熱情に染まり――」
 言葉を紡ぐ禄郎の表情は窺い知れない。
 それを黙って聞く影朧の表情もまた、同じ。

「今、それは冷めた」
『……貴様の言う通りだ』

 初めて、互いの顔を見る。
 互いが良く知る、『いつもの顔』をしていた。
 食えない男だと思っていたし、難しい男だと思っていた。その印象のままに。
「気分はどうだい?」
『不思議なものだ、言語化が難しい。貴様はどうだ』
「……私はまあ、古い付き合いと再会できてよかったというべきだが」
 知っていた。
 めでたしめでたしのハッピーエンド、大団円など――。

「……俺達には、似合わないからな」

 ハンチング帽を脱いで、くせっ毛をくしゃりとして、笑ってみせた。
『そうだな、少なくとも――その幕引きは似つかわしくない』
「なら、どうする? 理想が危惧され紛争処理に飛ばされ、しかも虐殺に近い位置で戦争を見て、理想を求め取引することを選び――僕らに拒まれた」
 それこそが、アルバート・コグローの真実。
 過去のものとなり、骸の海より出でし残滓となりて、しかしそれも無くなった。

 探偵屋――氏家・禄郎は、幕を下ろすために問う。
「けれど、僕達は『人間』なのだ。人間ならば、『責任』の取り方というのがある」
『……』
「さあ、『コグロー』」
 友よ。君と僕とは、間違いなく友であった。
 君との別れは、あまりにも無情なものであったけれど。
 この幕引きは、君の思うがままだ。

 ――君は、どうやって終わりたい?

『私は』
 罪を犯したのは、事実。
 罰を受けねばならぬのもまた、事実。
 そうしてその先には――償いを果たすという役目があると。
『許されるならば、もう一度』
 幻朧桜が、幻朧将校――アルバート・コグローの身体を包み始める。

『今度こそ、道を違えずに――』

 超弩級戦力たちの願いを一身に受けた幻朧桜の花吹雪が、文字通り影朧を攫っていった。
 後には何も残らず、全てが終わったことを暗に告げていた。
 禄郎はハンチング帽を被り直して、呟く。

「――Farewell friend」

 かくして、或る影朧の物語は終わりを告げて。
 さざ波のようなささやかな拍手でもって、幕を下ろした。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年06月27日
宿敵 『幻朧将校』 を撃破!


挿絵イラスト