大祓百鬼夜行⑱〜鬼門封じを立て直せ!
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日本には古来より『鬼門』という考え方が存在する。
曰く、災いのくる方角。艮(うしとら)の方角。その方角から来るのは『鬼』。
鬼とは、生ける者にとって災いや悪しきものの象徴であり、鬼門とは鬼が通ってくる道である。
だからこそ、人々は。
その鬼門に対して、お札を貼ったり、守護神を置いてみたり、あるいは寺社を建てて。
鬼の侵入を防ぐ。
これこそが『鬼門封じ』と呼ばれるものである。
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「災いが通って来る門なら閉じてしまえばいい、ということですわね」
深護・刹那(花誘う蝶・f03199)が集まってくれた猟兵たちにお礼を述べた後。
告げるのは『大祓百鬼夜行』に対する予知の話。
「皆さんには、この『鬼門封じ』を立て直していただきたいのです」
そう言って刹那は詳しい話を喋り出す。
場所はUDCアースのとある神社。ここはUDC組織にとって鬼門封じにあたる場所にある。そしてUDC怪物から組織を守る結界の要でもある。
「ここが戦争の余波で少し壊れていまして。いえ、龍脈は無事なので結界が無くなったわけではないのですが」
そこで一度言葉を切り、刹那はちょっと困った顔をする。
「『鬼』が幽世から戻ってきますの」
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鬼と言っても種類も性格も様々。それはそうだ、生ける者たちにとって理解不能なモノが鬼となっていくのだから。ごった煮なのである。
「とはいえ、UDC組織にとって『鬼』は『UDC-Null』に位置付けされていますわ」
UDC-NullとはUDC怪物ではないと証明されたもの、すなわち単なる虚言の類につける分類。
されど、UDC-Nullははかつて、本当に実在していたモノである。
「幽世の妖怪さんたち。これがUDC-Nullの正体なのですわ」
妖怪たちがUDCアースからカクリヨファンタズムに逃れた際、彼らは『非実在の存在』と定義されてしまったのである。
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「鬼たちが戻ってくるだけなら何の問題もないのですが、彼らもまた戦争によって骸魂に取り憑かれていますわ」
そのため、非常に凶暴で暴力的になっている。彼らがUDCアースに降り立てば、甚大な被害は必至。
「これを押し留めているのが鬼門封じですの」
鬼門封じは鬼に対して、来訪を拒否する『おまじない』のようなものだ。これが有効な限り、鬼はUDCアースに辿り着けない。
しかし、それが壊れてしまったら?
「このまま戦争の余波を見逃せば、鬼門封じが壊れます。その前に皆さんの手で鬼門封じを立て直して欲しいのです」
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かつて鬼を斬ったという刀がご神体である、鬼門封じとなっている神社。
「ここは今、物理的と概念的と霊脈的に崩壊しかかってますの」
まず、物理。
鳥居が壊れました。鳥居とは神域の入り口であるがゆえに、今この神社は神域を定めることができない。
「結果、龍脈の力を留めておくことが出来ないのですわ」
そこで神域を定める必要がある。流石に鳥居を立て直すのは流石に無理なので。
「玉砂利を。清められた玉砂利を境内に敷き詰めてくださいませ」
ちょうど玉砂利の入れ替え時期であったため、玉砂利そのものは近くの広場に積み上がっている。追加も発注済み。
皆にお願いしたいのは玉砂利を清め、祓い、浄化して。境内に敷き詰める。
玉砂利の有る範囲を神域とするのだ。
「次に概念。度重なるオブリビオンの襲撃でご神刀の力が弱まっていますの」
そのため、結界の強度が弱まっている。本来ならお清め、祓い、力を取り戻してもらうのだが、今動かすことは難しい。
「そこで概念で殴り返します。『鬼が嫌いそうなもの』を何でも構いません。持ってきてくださいませ」
和洋問わず、逸話・由来の真偽問わず。何でもいいから鬼に効きそうなものを集めて欲しい。
それを神社に納めることで対鬼の力を強める。
最後、霊脈。
「結界の維持には神社の下を通る龍脈の力を借りているのですが」
綻びかけた結界を無理やり以前と同じ強度で維持しているため、龍脈が疲弊しているというのだ。
「本来は自然回復を待つしかないのですが、そんなことを言っている余裕はありません」
そこで龍脈に対して『ユーベルコード』を叩き込み、活性化させる。
対象となるユーベルコードは、気や魔力、自然の力を利用したもの。つまり、魔法や気弾、エレメンタル・ファンタジアのようなユーベルコードになる。命の力で龍脈を活性化させるのだ。
この3つを以て、鬼門封じ立て直しとする。
「変な依頼になってしまいましたが、皆さんよろしくお願いしますわ」
そう言って刹那は猟兵たちをUDCアースに転送するのであった。
るちる
まいどお世話になってます、るちるです。
鬼門封じっておまじないにしていいのか? ま、いっか。
設定はそんな感じでゆるゆるっとしています。
●全体
1章構成の戦争シナリオです。
リプレイは皆様のプレイングに沿った雰囲気となります。コメディからシリアスまで、お気軽にご参加ください。オープニング以上の設定はありませんので、自由に補足してくださいね。
神社、龍脈、結界を破壊する行為、ご神刀に干渉する行為は禁止とします。
以下のプレイングボーナスがあります。活用してください。
『プレイングボーナス』
(1)おまじないを完成させるために行動する。
●1章
日常『おまじないを探せ!』です。
当シナリオではおまじないを鬼門封じに設定しました。
そのため、鬼門封じ完成のためにお力を貸してください。
プレイングには以下の3つから主行動を決めると書きやすいと思います。
①物理アプローチ。
境内に玉砂利を運んで敷き詰めます。皆さんにお願いしたいのは『玉砂利のお清め、お祓い、浄化』と『玉砂利を運んで敷き詰める』作業です。
②概念アプローチ。
鬼に効く、鬼が嫌う、鬼に強い『何か』を神社に集めてください。何でもいいです。捏造でもいいです。
持ってきたものに対する簡単な逸話・設定の記載があると嬉しいです。
③霊脈アプローチ。
ユーベルコードをぶっぱします。ただし、物理攻撃の系統は使用不可。龍脈が壊れてしまいますので。
技能で代替しても可としますが、こちらも物理系は不可とします。
とはいえ、その辺りはプレで補足可能とします。『これは刀の斬撃だけど、龍脈に刀から発する気を届けているんだ』などなど適当な理由があればオッケーです。
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採用人数については未定。執筆は木曜夜から始めます。
プレの受付開始はシナリオ公開されたら。改めて状況の説明を行う文章は追加ありません。
それでは皆さんの参加をお待ちしておりまーす。
第1章 日常
『おまじないを探せ!』
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POW : 忘れられたUDC-Nullの伝承を探し当てる
SPD : UDC-Nullの情報を迅速に集める
WIZ : UDC-Nullに有効そうなおまじないを考える
👑5
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ブラミエ・トゥカーズ
十年来の友人であるUDC職員の青年と共に
報酬の新鮮な血に釣られた
餅は餅屋というが、余を呼ぶのは何か間違っておらぬか?
確かに余も《鬼》を冠しておるがな。
鬼とは枷である。
姿無き害する現象、微小な生物。それらを封殺するために造り上げた式である。
ソレらは汚れた物であるからこそ、清らかな流水、良き風通し、日当たり良好、健康な食事。
それらを維持すれば鬼は発生せぬよ。
有難みのある札でも貼っておけば維持も容易かろう?
悪霊退散などの札でもよいが、そこの消毒済ステッカーでも十分と思うぞ。
貴公の言う通り、箔付けも必要であるな。
鬼を退けたなどと逸話もあれば十分な話であろう。
なぜ、余の背中を押す?
墓穴は掘り終えた。
空亡・劔
この最強の大妖怪である空亡劔を差し置いてこれだけの大異変とは生意気よ!
あと鬼達が凶暴化しているなら鎮めないといけないわね
概念
鰯の干物
鬼って割と嗅覚繊細なのよ
鰯とかの匂いが結構苦手なのよね
後は柊の棘
これも鬼は刺すのを嫌うのよ
「鬼はお断り」の札
是は西洋の吸血鬼にも言えるんだけど
彼らは「招かれない」と入れないのよ
きちんと断る事で招かれなくできるわ
人間って怖いわよね
これしても入ろうとするのよね
福豆
これらはもう言わずもがなよね
桃の木
桃太郎は古くからの鬼スレイヤーだからね
彼と関連のある桃の木もまた鬼を払う力があるとされるわ
さて…後は玉砂利を敷き詰めるとしようか
あたしは最強の大妖怪
玉砂利如きに怯まないわよ!
●本堂の中にて
グリモア猟兵の予知を聞いて、空亡・劔(本当は若い大妖怪・f28419)は件の、鬼門封じの神社に降り立つ。
「この最強の大妖怪である空亡・劔を差し置いてこれだけの大異変とは生意気よ!」
それは自信に溢れた言葉であった。『猟兵等ではない一般の人間に対して限りなく無力』という特性があるのは黙っておこう。
それはさておき。劔がここに訪れたのは、鬼門封じを維持するため。
「鬼達が凶暴化しているなら鎮めないといけないわね」
さっそく、本堂の中に上がり込み、持ち込んだモノを広げるのであった。
劔が持ち込んだのは『鰯の干物』と『柊の棘』と『福豆』。誰しも一度くらいは見聞したことがあるのではないだろうか。鬼を払う行事、節分の際に。
(鬼って割と嗅覚繊細なのよ。鰯とかの匂いが結構苦手なのよね)
まずは鰯の干物を宮司に渡す劔。劔の目的と意図を把握した宮司が、鰯の干物を奉納する。
(……お)
見た目は変わらずとも、妖怪の身である劔には感じ取れる。明らかに鬼門封じの力が強くなった。
「じゃあ、次は……」
続いて柊の棘と福豆も。ちなみに福豆の謂れは言わずもがな、とのこと。
再び宮司の手によって奉納されることで鬼門封じの強度が増す。
これらは地域によっては節分でも使われるという。人々が信じている度合い――すなわち信仰の強さとしては鬼を切った刀と並んでぶっちぎりといってもいいだろう。
「で、後は……」
と取り出したのは『桃の木』
桃の木には古くから鬼を祓う力があるとされる。それからこちらも大事。
「桃太郎は古くからの鬼スレイヤーだからね」
こうして、鬼門封じの強度はばっちり強化されたのである。
「最後は……これね」
劔が取り出したのは『鬼はお断り』の札。
(是は西洋の吸血鬼にも言えるんだけど、彼らは「招かれない」と入れないのよ)
ということは、だ。
(きちんと断る事で招かれなくできるわ)
それが理(ことわり)ならば、彼らは破ることができない。
(人間って怖いわよね。これしても入ろうとするのよね)
ぺたり、と入り口にお札を貼って。
本堂の強化は完了。
「さて……後は玉砂利を敷き詰めるとしようか」
そして劔(は鬼じゃないから外にも出れるし中にも入れる)は境内に出ようとする。
「あたしは最強の大妖怪。玉砂利如きに怯まないわよ!」
それで祓われるようなら、大妖怪とは言えないのではなかろうか。
●境内にて
本堂でそんなことがあった頃。
「ふむ……」
ブラミエ・トゥカーズ(”妖怪”ヴァンパイア・f27968)は十年来の友人という、UDC職員の青年とともに、鬼門封じの要たる神社を訪れていた。
(報酬の新鮮な血に釣られてきたものの……)
釣られたんかい。いや、ここはむしろUDC職員の作戦と慧眼を褒めるべきだろう。きっと彼はグリモア猟兵の予知を経由せずとも、この神社の危機と対策をブラミエと見極めたのだから。
「餅は餅屋というが、余を呼ぶのは何か間違っておらぬか?」
そう言って青年を振り返るブラミエ。もちろん『そんなことない』という返事が返ってくる。信頼する友人がそう言うのであれば、ブラミエも嘆息をつきながら境内の中をいくしかあるまい。
その時、本堂から出てきた女性とすれ違う。ちらりと一瞥するがどうやら妖怪、それも敵ではないらしい。そのままスルーしてブラミエはもう一度嘆息をつく。
(確かに余も《鬼》を冠しておるがな)
冠しているとしても近しい存在かどうかはまた別。されど、『共通している』ということは、少なからず精通してしまうのもまた道理なのである。
ブラミエ曰く。
――鬼とは枷である。
――姿無き害する現象、微小な生物。それらを封殺するために造り上げた式である。
――故に、ソレらは汚れた物である。
「汚れた物であるからこそ……」
苦手なものがある。近づけないものがある。それは清らかな流水、良き風通し、日当たり良好、健康な食事といったもの。
「それらを維持すれば鬼は発生せぬよ」
ブラミエの言葉に感心したように頷きを返す。
「後は……有難みのある札でも貼っておけば維持も容易かろう?」
若干飽きたような表情で青年を振り返るブラミエ。そこで目についたのは、今やどんな施設でも入り口に置いてある消毒関連のアイテム。
「悪霊退散などの札でもよいが、そこの消毒済ステッカーでも十分と思うぞ」
ブラミエがそう言うので、青年が先回り。本堂の入り口にぺたりと消毒済ステッカーを貼る。その時、彼は気付いた、そこに貼られている『モノ』に。
それを隠すように入り口を背にして、青年は振り返ってブラミエに問う。『これだけで大丈夫なのか?』と。
「……ふむ。貴公の言う通り。箔付けも必要であるな。鬼を退けたなどと逸話もあれば十分な話であろう」
ブラミエの言葉に、青年は満足そうに頷きを返す。
「……?」
急に機嫌が良くなった青年が自分の後ろに回り込むのを見て、ブラミエは首を傾げた。
「なぜ、余の背中を押す?」
というか、すっごい勢いで入り口に向かわされている。
この後、悲劇が起こったことは言うまでもない。
●そんなわけで
雷が落ちた。そんな音が本堂から響いて来た。
「なにごと!?」
神社の階段を駆け下りていた劔が思わず振り向くほどに。
まさか自分が貼ったお札で、仲間の猟兵たるブラミエをクリティカルに撃退したとか、夢にも思っていない劔であった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
御狐・稲見之守
[稲見神社] 妖怪達は忘れられ彼岸へと渡り
そして鬼門の戸隠しをするは朽ちた社に眠る鬼斬り刀。
ふふ、もしヤドリガミならば何を想うか。なあ、鈍刀?
ここは桃木の枝と桃実、それに和酒で鬼祓いと行こうか。
桃には古来より魔除け鬼祓いの力があってな。酒は自分用。
さて鈍刀よ。ここいらで酒盛りでも如何か。
なぁに、我らが酒盛りしていれば鬼でも泣いて逃げていくさ。
――我らもいつの日か忘れ去られ幽世へと渡ることになるだろう。
忘れ去られるというのは、寂しいことであるなあ。
何処かにもらってくれるイイ男でもおらんものか、なんてなァ?
無銘・飯綱丸
[稲見神社] 我、悪鬼悪霊を叩き斬る退魔の刀。
斬るものがなければ眠るのみ、この身はただの刀よ。
お望みならここで女狐の頸を刎ねてやってもよいが。
しかしさて、酒盛りか。
女狐とというのは癪だがちょうど良い。
こちらも鬼祓いに柊の枝とメザシ、豆、そして酒の用意がある。
この世界においても追儺に用いるそうだ。
――器物が忘れ去られ蔵へと眠り
或いは打ち捨てられることなどよくあることだ。
眠る場所があるだけ良いことではないか。
もたれかかるな女狐、頸を刎ね落とすぞ。
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【稲見神社】より馳せ参じた御狐・稲見之守(モノノ怪神・f00307)と無銘・飯綱丸(天狗刀・f16355)。
まずは鬼門封じの状態を把握せんと本堂の中へと足を踏み入れる。
(妖怪達は忘れられ彼岸へと渡り……)
思索を巡らす稲見之守の視線の先にあるのは、ご神刀。
(そして鬼門の戸隠しをするは朽ちた社に眠る鬼斬り刀)
そのご神刀も今や力を落として刀身を曇らせるばかり。
「ふふ、もしヤドリガミならば何を想うか。なあ、鈍刀?」
肩越しに振り向き、声をかける相手は飯綱丸。悪鬼悪霊を叩き斬る退魔の刀のヤドリガミである。
「お望みならここで女狐の頸を刎ねてやってもよいが」
例え、その身が人の姿を取っていたとしても、だ。『ただの刀』という本質に変わりはない。ゆえに斬るものがなければ眠るのみ、なのだが。
何故、このような場所に連れ回されているのか。
首を傾げる飯綱丸に、稲見之守が告げたのは、端的に言えば酒盛りであった。
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「ここは桃木の枝と桃実、それに和酒で鬼祓いと行こうか」
そう言って稲見之守は奉納台に桃の木の枝を乗せる。
「桃には古来より魔除け鬼祓いの力があってな」
そう言いながらもう片方の手に持っていた酒……は自分用らしくて、そのままキープ。ついでに桃の実もだ。
「さて鈍刀よ。ここいらで酒盛りでも如何か」
「なに?」
唐突な稲見之守の言葉に、眉をひそめる飯綱丸。
「なぁに、我らが酒盛りしていれば鬼でも泣いて逃げていくさ」
「……ふむ」
筋は通っている。
それに、だ。
(女狐とというのは癪だが……ちょうど良い)
飯綱丸もまた自身が準備してきたものに視線を落としていた。柊の枝とメザシ、豆、そして酒。
(この世界においても追儺に用いるそうだ)
と鬼祓いのために用意してきたものである。
食えないものは神に捧げて、稲見之守と飯綱丸は本堂の一角で酒盛りを始めるのであった。
古来より、宴というのは何かの節目に行われるものだ。
お祭りと言ってもいい。食べること飲むことが儀式なのだ。
神社で行われるそれに、神の力が関与しないわけがなく、ならば逆説的にこの場で行う宴は神の力に干渉できる。
だからこそ、存分にやった方がいい。
酒が進んでツマミも消えていく。
程よく酔いが回れば、思うことも増える。
(――器物が忘れ去られ蔵へと眠り、或いは打ち捨てられることなどよくあることだ)
飯綱丸の視線の先にあるのは、ご神刀だ。ヤドリガミ……となるくらいには歳を経ているだろう。だがその身が顕現していないのなら、きっと宿らずとも済んだのだ。
(眠る場所があるだけ良いことではないか)
それはモノとしては幸せなこと、なのかもしれない。
盃を口元に持っていきながら、稲見之守は想いを巡らす飯綱丸に視線を遣る。その様子に嘆息ひとつつきながら、稲見之守は天井を見上げる。
ここに訪れた切欠、UDC-Null。忘れ去られた妖怪たち。
(――我らもいつの日か忘れ去られ幽世へと渡ることになるだろう)
姿かたちが無くなれど記憶から消えなければ、ソレは『在る』。だけど、忘れされれてしまったら?
「……忘れ去られるというのは、寂しいことであるなあ」
「もたれかかるな女狐、頸を刎ね落とすぞ」
飯綱丸の背にもたれかかりながら、稲見之守が呟く。それをいなすように飯綱丸が言葉を発するが、稲見之守は気にする様子もない。
「何処かにもらってくれるイイ男でもおらんものか、なんてなァ?」
「…………」
稲見之守の言葉に、返す言葉を探し損ねたのか、あるいは呆れかえったのか。
飯綱丸は嘆息ひとつ、盃を口元へ運ぶのであった。
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こうして、鬼門封じの要たる神社の中から、『鬼』に対する概念を強化することに成功した猟兵たち。
急場しのぎだが、鬼門封じは今しばらくの間なら持つだろう。その間に、戦争の決着をつける。
そのために、猟兵たちはまた戦場へと戻るのであった。
大成功
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