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炎黎、憧憬

#アックス&ウィザーズ #猟書家の侵攻 #猟書家 #チーフメイド・アレキサンドライト #エルフ

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 旅人さん、旅人さん、今日はいい天気です。
 きっとこんな日は速やかに、火は燃え広がることでしょう。

 ……炎が森を覆っている。北からの強風で火は燃え盛り、天には白い煙が広がっていた。
 ひらり、ひらり。
 ――ひら、ひらと。
 その森の間を、ちらちら混ざるように。小さな何かが浮遊している。
 それは、子猫ほどの大きさの奇妙な生き物だ。
 全身がきらきらしていて、本来なら精霊とも見紛うような、いかにも自然から生まれたような。そんな姿をしていた……のだ、けれど。
 ――こわいものがくるよ。
 ――とてもとても、こわいものがくるよ。
 それは言葉を発しない。けれども何故か周囲にいるものには、その意思が聞こえたろう。
 ――こわいよ。
 ――こわいよ。
 森の中、木々に間に現れたそれは、そんな意思を発しながら空中を漂う。それとともに、彼らの近くにある木々が燃え上がった。
 それの体には……アックス&ウィザーズには存在しない、機械のようなものが取り付けられていた。


 リュカ・エンキアンサス(蒼炎の旅人・f02586)はなんだか微妙な顔をしていた。まるで、サツマイモだと思って食べたものがジャガイモだった、みたいな、そんな、どうにも評価できないような顔色である。
「……エルフの森っていうのがあるんだけど」
 だがそんな顔も一瞬で、リュカはいつもの通り淡々と説明を始める。
「そもそもエルフっていう種族は、人間と一緒でそこまで珍しくはない。普通に世界中で人間と暮らしてるし、街中でいても特に何の説明もなくすれ違う程度だとは思う。……けど、まあ稀に」
 あるのだという。何がというと、エルフたちだけが暮らすエルフの森というものが。それなりに数多く。
「エルフ以外の多種族が侵入すると、迷ってしまって集落にたどり着くことができないんだって。だから、俺も行ったことない。そういうのにかかわると、碌なことがないし」
 それで、今日はその碌なことがない案件なのである、とリュカは言うのであった。
「けどまあ……それに目を付けたのが、大天使ブラキエルの目論む「天上界への到達」を実現すべく、行動を始めたオブビリオン……っていうことらしい。もっと具体的に言うと、その猟書家の計画を継いだもの、ということになるんだけど」
 リュカは言う。エルフの森には一本だけ、「世界樹イルミンスール」から株分けされた「聖なる木」が存在しているらしいのだ。そうしてそれが、周囲の森を迷宮化させている、力のある樹なのである。それ自身は、火を点けられても燃えることはないが……、
「で。迷宮化された森を抜けて近付くことはできないから他の樹木を焼き払って丸裸にして一本だけ残った樹を確保しようって魂胆らしいよ」
 他の樹木がすべて消え失せれば、最後に残ったものが力のある樹だ。何とわかりやすい話だろう。
「……ま、ある種効率的であることは否定しない。ついでにエルフも殲滅させればなお良いな、って、計画らしいけど……」
 そこで、リュカは言葉を切る。そして、
「そういうわけで、止めてきてほしいんだ」
 と、言うのであった。
「わかってることが、割と結構少ないから。現地に行って、臨機応変に対応して。現地のエルフと協力してくれれば、戦闘を有利に進められる」
 彼らの協力を得られれば、森で迷うことは少ないだろう。また、敵を効率的に殲滅できるようになるという。
「……」
 それでリュカは若干、さっきみたいな。やっぱり砂糖だと思って舐めたら塩だった、みたいな。何とも言えない表情を一瞬、して、
「……気を付けて行ってきて、いろいろ」
 そういって、話を締めくくった。


ふじもりみきや
いつもお世話になり、ありがとうございます。
ふじもりみきやです。

プレイングボーナス(全章共通)……エルフ達と協力し、共に戦う。

後は臨機応変に頑張れ。
今回は割と戦闘よりです。一章はそこまで出ないですが、二章はガっと強敵成分とシリアス成分が上昇する予定です。割と怪我人が出てきたりする予定なので、苦手な方はご注意を。


あと補足です。
エルフたちは「神秘的な事柄への順応力」が高いため、猟兵達が訪れてもすんなりと状況を理解し、迅速に協力してくれます。
猟兵達が到着した時点で既に幹部は焼き討ちを開始しています。

です。
第一章のオブビリオンたちについている機械は、スペースシップワールドの「アームドフォート」を装着したビジュアルをしています。そこから炎を発生させているっぽいですが、倒せば倒れて使えなくなるのでそのままさっくり倒してください。

それでは、皆様、良い一日ヲ。
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第1章 集団戦 『空飛ぶオトシゴ』

POW   :    仲間を呼ぶ声
自身が戦闘で瀕死になると【仲間の空飛ぶオトシゴ】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    未来の予言が聞こえた気がする
自身が【何となく祈りを捧げているような動作をして】いる間、レベルm半径内の対象全てに【不吉な予言】によるダメージか【幸運の予言】による治癒を与え続ける。
WIZ   :    力を受け取る
全身を【輝く光】で覆い、自身が敵から受けた【負傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。

イラスト:羽月ことり

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 森の中では奇妙な形をした生き物が浮遊している。
 ひらり、ひらり。
 ――ひら、ひらと。
 ――こわいよ。こわいよ。
 ――こわいものがくるよ。
 と。
 予言にもならぬものを予言しながら、触れたものを燃え上がらせている。
 ――いたいよ。
 ――とって。
 ――これ……とって、
 奇妙な形をしたものは、背負わされた機械が不快でならないとでもいうようにそれを木々にこすりつけ、そして木々に火を移しながら、徐々に村のほうに向かって侵攻していくのであった……。



 猟兵たちが現地に到着して、真っ先に気付いたのはその匂いであった。
 ……生きた樹が焼ける匂い。そしてそこから発生する大量の煙があたりに充満している。
 場所はどうやら村の入り口付近だ。ツリーハウスがたくさん連なる、それなりに大きそうな集落である。
「アリスちゃんたちの班は西側に。ウタおばさんの班は東側から消火にあたってくださ~い。ダグさんは私と一緒にあちら側から……」
 エルフの森ではエルフたちが森の消火活動に追われていた。指揮をとっているのは若い女性で、猟兵たちが声をかけるとぺこりと一礼する。頭の上に一羽の鳥がとまっていた。彼女がお辞儀をすると、鳥は一緒にお辞儀をしているかのように見える。
「お伺いしております。私は村の防衛を任されている、イレイナです」
 一瞬、何か違和感のようなものを猟兵たちは持ったかもしれない。しかしそれが形になる前に、彼女は言った。
「炎はすぐそこ、四方八方から迫っておりますので~、現地に分散しているエルフたちと協力して対処していただけたらと思います。私たちだけだと、あの奇妙な生き物を倒すことはできませんが~……」
 倒してくれれば、消火活動くらいはできるだろう、とイレイナは言った。
「どうぞ……宜しくお願いします」



●マスターより
戦場は森です。まずは集団敵:空飛ぶオトシゴを排除してください。
周囲に散ったエルフたちが協力してくれるので、森は自由に、迷うことなく移動できます。
敵を倒せば火自体はエルフたちが消してくれるので、そこまで気にしなくて大丈夫。
つまり、
プレイングボーナス(全章共通)……エルフ達と協力し、共に戦う。……というのは、普通に戦えばクリアすることになります。
協力とか格別気にせず普通に戦闘を書いてくださればオッケーです。
プレイングに指定された場合のみ、現地のエルフとかが出てきて話したりはします。待ち伏せに適した場所とか、回り込みしやすい地形なんかを教えてくれます。

●第一章:集団敵
いっぱいいます。
POW SPD WIZ はあまり気にせず。
背負わされている機械を取って取ってと主張しますが、触ると燃えます。注意。
近接戦闘を行う場合は体に触れると自分も燃えます。
攻撃自体はそんなに強くないです。

●プレイング募集期間
4月26日(月)8:31~28日(水)17:00まで
また、無理ない範囲で書かせていただきますので、参加人数によっては再送になる可能性があります。
その際は、プレイングが返ってきたその日の23時までにプレイングを再送いただければ幸いです。
篝・倫太郎
煙がすげぇな……
生木燃やすと火の手より先に煙だもんな……
これが枯れ木だとあっというに燃え広がるだろうから
その辺だけはまだ、マシか

集落のエルフに火の勢いが強い箇所を確認
その方向に敵の数が多いって事だろうからそちらに向かう
消火が難しそうなら他の猟兵に声掛けて助力してもらってな!
無理はしちゃダメだぜ?

Loreleiを起動して音や熱源探知で敵の位置を確認
煙で敵を視認出来ねぇで抜けられました、じゃお粗末過ぎる

攻撃力強化に篝火使用
まずは吹き飛ばしと水の神力を乗せた華焔刀でなぎ払い野先制攻撃
視界を確保したら刃先返して2回攻撃で範囲攻撃

こっから先は焼かせねぇよ

こっちが焼かれても困るンで
一定の距離を保って戦う


冴島・類
怖いものかあ…
君らもかなり怖いと思いますけどねえ
現状、エルフさんや森からすれば

その機械をつけた者?の事なのかもしれないが
森を燃やされるのは、止めたいんで

エルフさん達に、消化活動任せ
自身はオトシゴ達の動きを見て、比較的低空のものには瓜江に足場作ってもらい
跳び、薙ぎ払いで攻撃

けど相手が飛んでる以上、高さに逃げられると困る
その動きあれば
燃える前の木や、逆に今から彼らが向かう先に回り込める位置の木を伺い

登り足場にし、舞使い衝撃波で中距離攻撃し
近付けさせぬよう
抜けて迫るものがあった際は
背に腹は変えれぬ
掴んで跳び離れ
木から無理にでも引き離す

僕は多少の火は耐えれるが
…森はそうはいかぬ
丸裸になんて、させぬとも



 けほ、と篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)は軽くせき込んで口元に手をやった。
「煙がすげぇな……」
 生木燃やすと火の手より先に煙だもんな……と、若干げんなりしたような倫太郎の言葉に頷いたのは冴島・類(公孫樹・f13398)であった。
「森が燃えるのは……なんだか居た堪れないですね」
 沢山の縁が焼け落ちるさまは見ていて楽しいものでは、決してなかった。
「ま、これが枯れ木だとあっというに燃え広がるだろうから……、その辺だけはまだ、マシか」
「そう……だね」
 ぶすぶすと燃えている木々に、類は目を細めて小さく頷く。炎はゆっくりではあるが確実に広がっていて、このまま放っておけば全焼は時間の問題であった。
「僕は多少の火は耐えれるが……、森はそうはいかぬ」
 丸裸になんて、させぬとも。最後まで言わずにしっかり心の中で呟いて、類は一つ、小さく頷く。倫太郎は僅かに目を眇めた。風に乗って何か妙に、違和感のようなものを感じたからかもしれない。
「エルフさんたちには、消火活動をお任せしていいかな?」
「……だな」
「じゃあ、僕は先に行っているよ」
 視界の端に、ちらりと赤いものがうつった気がして類が即座に反応する。おう、と倫太郎は応えて振り返った。
「ってわけで、倒しながら移動するわ。火の勢いが強いところってある?」
「いや、それがねぇ。あたしたち連絡手段も持ってないし、散らばった子たちのことはわかんないしで……」
 火の勢いが強い場所がわかれば、そちらへ向かえば敵が多いだろうと思われたのだが、エルフのおばちゃんが首を横に振る。
「森を守るために、いっぱい訓練はしてきたんだけど、今までこういうこともなかったものだから、バラバラになっちゃってさあ。探そうにも、この煙だろ?」
「そかそか。んじゃ、なんとなく煙の多いほうに向かうよ。消火が難しそうなら他の猟兵に声掛けて助力してもらってな! 無理はしちゃダメだぜ?」
 わからないなら仕方がない。倫太郎の言葉にあいよっ、と元気に答えておばちゃんは森の中へ消えていった。……そうして数歩進んでしまうと、もうおばちゃんの姿は煙で見えない。
「んじゃ、ま……」
 そういうわけなので倫太郎は超高度コンピューター内蔵のバイザータイプゴーグルを起動する。音や熱源探知て敵、味方の位置を確認しようとしたのだ。
「煙で敵を視認出来ねぇで抜けられました、じゃお粗末過ぎるかんな……。けど」
 それにしてもばらけたものだと、倫太郎はエルフや敵の位置を確認して。僅かに首を傾げながらも、ひとまず先行する類を追って走り出した。

 幸いにも風がない。ゆえに煙は晴れないが、それでも火の勢いが少しでも弱まるなら、それは良かったと類は思うだろう。
「……いた」
 森の木々の端に、森の色によく似た、蹴れども違う生き物の姿が見える。即座に類は十指に繋いだ赤糸で操る濡羽色の髪持つ絡繰人形、瓜江を操った。
 瓜江が身をかがめる。それを足場にして類は上空へと飛びあがる。銀杏色の組紐飾りの付いた短刀が翻れば、木の上その葉と葉の間に体をこすりつけようとしていたオトシゴを、背中に背負った奇妙な機械ごと切り裂いた。
 切り裂かれると同時に、オトシゴは消滅する。そのまま類は返す刃を薙ぎ払い、類の足元に漂うオトシゴを薙ぎ払った。

 ――こわいものがくるよ。
 ――こわいものがくるよ。

「怖いものかあ……。君らもかなり怖いと思いますけどねえ。現状、エルフさんや森からすれば」
 声にならない声が類の耳に届く。思わずぽつんと言い返した類に、漂う周囲のオトシゴたちは身を震わせたようであった。
「その機械をつけた者? の事なのかもしれないが……」
 震えるようなその言葉に、類は小さく頷く。平時であれば、可愛いと思うことができたであろう其の生き物たちを、類は今までにない真剣な顔で一瞥する。
「……森を燃やされるのは、止めたいんで。何があろうとも、倒すよ」
 可愛くても可哀想でもなんであっても、森を燃やそうとするものを許す区とはできない。そのまま足場にしていた木の枝を類は蹴る。急降下して、今にも火を点けようと幹のあたりに漂っていたオトシゴたちを切り裂いた。そのまま残ったオトシゴたちを記から引っぺがすようにつかんで離し、投げつける。

 ――    は、死んだ。
 ――森は、燃えた。

「悪い、待たせたな……っと」
 声にならない声が聞こえる。予言なのか事実なのかわからぬ言葉を吐くそれらに類が対応する前に、追いついた倫太郎が華焔刀を走らせた。木から話すように投げつけられたオトシゴを、水の神力をのせた華焔刀で薙ぎ払った。
「っておわっ、手、大丈夫か?」
「大丈夫。僕は上に戻るから、二段構えで行こう」
「おっ、そうか。りょーかい! 近くにエルフさんたちもいるから、合間見て治して貰えよ~」
 反射的につかみこんだので、類の手はオトシゴの火で火傷していた。が、それどころではないと、再び木の上へと向かう類に倫太郎もその気持ちを察して軽く手を振るにとどめる。
「祓い、喰らい、砕く、カミの力……。こっから先は焼かせねぇよ」
 災魔を喰らう水の神力を宿した華焔刀で、倫太郎は距離に気をつけながらもふわふわと飛んで来るオトシゴたちを切り裂いていく。同時に類もまた木の上から炎を見つめつつ、
「風集い、舞え」
 神霊体に身を変じ、短刀に衝撃波を纏わせ木々に近づく前に衝撃波でオトシゴたちを切り裂いた。
「このまま……敵と距離を保ったまま進めるかな」
「おう。だったら……」
 あっちから、と二人は走り出す。
 森のあちらこちらから、声にならない音が聞こえてくる気がした……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニクロム・チタノ
またまた森を燃やそうとしてるの?
エルフのみんなも大変だなぁ
よし、サクッと倒しちゃうよ!
まずは後ろに回り込んで独特な姿をしてるね、森にタツノオトシゴ神秘的な光景だけどこのまま見とれてる訳にはいかない
気付いてない所申し訳ないけど・・・狙い撃ちさせてもらうよ!
降り注げ反抗の星屑
その背負ってる機械ごと星屑で撃ち抜かせてもらうよ!
鈍足効果もあるから逃げられないよ!
これより反抗を開始する
どうか反抗の竜チタノの加護と導きを



「またまた森を燃やそうとしてるの? エルフのみんなも大変だなぁ」
 思わず、という風にニクロム・チタノ(反抗者・f32208)も腕を組む。森が燃えている光景は、何度見てもそう楽しいものではない。
「まあまあ。大変は大変よねえ」
「助けに来てもらえて、ありがたかったわ。お礼の品は何がいいかしら」
「そうね。お茶菓子で……」
「お礼なんて、ボクたちはいらないよ! ……よし、サクッと倒しちゃうよ!」
 呟きだったのに、呑気な返事が返ってきた。どうやらエルフたちは少人数で随分あちこちに散っているらしい。ぐっ、と体を伸ばしてニクロムは軽くストレッチ。慌ててそう言って地面を蹴った。……このままだと、何か女子っぽい会話に巻き込まれかねない。若干引きこもりのニクロムにとってそれは敵と戦うよりも恐ろしいことかもしれなかった。
(まず後ろに回り込んで……っと)
 ふわふわとオトシゴたちは漂うように浮かびながらも、確実に進行している。んなオトシゴたちを見つけ、ニクロムはその背後に回り込んだ。
(わ、独特な姿をしてるね。何だか生き物じゃないみたい……)
 オトシゴたちは独特の光彩で輝いていて、思わずのぞき込んで観察したくなるけれども……、
(森にタツノオトシゴ神秘的な光景だけどこのまま見とれてる訳にはいかないね)
 やるべきことを忘れてはいない。それ以上近付けば見つかるかもしれないというところまで来て、そのままニクロムはギュッと妖刀を握り込んだ。反抗の竜チタノがニクロムに与えた妖刀で、彼女が、様々な者に反抗するための力でもある。
(気付いてない所申し訳ないけど……狙い撃ちさせてもらうよ!)
 ニクロムはこの悲劇にも反抗する。そのままニクロムは声を上げた。
「降り注げ反抗の星屑……!」
 オトシゴたちがその声に気付く前に、ニクロムの妖刀から数多の星屑が現れた。それは真っすぐに背負っている機械ごと、オトシゴの体を撃ち抜いていく。
「これより反抗を開始する!」
 そうしてそのまま、オトシゴたちの群れにつっ込んだ。
 ――いたいよ。
 ――こわいものがくるよ。
 何体か直撃を受けたオトシゴたちが粉砕され、そのまま消え失せる。同時に残ったオトシゴたちも動きを鈍らせているので、そのままニクロムは妖刀で切り伏せる。
「痛いのはごめん! でも……逃がすわけにはいかないんだよ!」
 声にならない声が聞こえ、ニクロムは一瞬、目を伏せるもそのままオトシゴたちを切り伏せた。
「……どうか反抗の竜チタノの加護と導きを! ボクたちには……反抗しなきゃいけないものがあるんだ!」
 この悲劇を止めなければいけない。ニクロムは妖刀を握りしめ、ひるむことなくその声に向かい合うのであった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

都槻・綾
煮え切らぬ顔のリュカさんも
イレイナさんへの幽かな違和感も
何だか霞のかかった春景色のようですねぇ
進めば霧が晴れるのかしら
其れとも靄が濃くなるのかしら

いずれ
春と呼ぶには大分
物騒な熱さですが

怯える様子で
右往左往するオトシゴ達は
何処か憐れではあるけれど
若葉の萌える今この時期に
燃される木々は痛々しくて
ほんの僅か、ささやかに、眉を顰める

痛いと声を上げれぬ植物達も
怖いと怯えていますよ、きっと

悲しみの涙のように
ひらり舞い散る青葉を掴み
大切に懐へ

エルフさん達の護りと
少しでも消火の手伝いになるよう
水の羽搏きで一掃しましょう

極力広く届くよう
朗と歌い紡ぐ詠唱は、鳥葬

えぇ、取って差し上げます
翼に乗り
彼方の海へ
帰りなさい



 視界が煙っている。その煙る景色の中で、
「……どうしました~?」
「いえ……」
 都槻・綾(絲遊・f01786)は僅かに目を眇めた。今まさに燃えている森に向かおうとして、そして思わず足を止めた綾にエルフの少女は話しかける。柔らかい金髪に碧眼の、どこかあどけなさの残るエルフの女性……イレイナは頭の上に鳥をのせたまま微笑んでいて、
「あなたは、消火活動に向かわないのですか?」
 言いながら、綾は別のことを考えていた。
(煮え切らぬ顔のリュカさんも、イレイナさんへの幽かな違和感も。……何だか霞のかかった春景色のようですねぇ)
「……」
(進めば霧が晴れるのかしら。其れとも靄が濃くなるのかしら。……どちらにせよ、進むしかないのだけれども)
「……そうですね。私たちもある程度指示を送ったら助けに向かおうと思います~。けど、皆さんがとっても頼りになるから、私たちの出番なんてなくなっちゃいそうですが」
「……そうですか」
 にっこり笑うイレイナに、こちらもニコニコと微笑む綾。
 しばしそうして笑いあってから、綾はくるりとイレイナに背を向けた。
「では、行ってまいります」
「はいっ。お気を付けて~!」
 いずれにしてもまずはこの炎を消さねば話にならない。綾は炎がくすぶる森へと向き直る。
(……いずれにせよ、春と呼ぶには大分物騒な熱さですが……)
 走りだすと、違和感を振り切るように綾は先に進んだ。
 何かがこちらを、いつまでも見ているような気がした。

 ――こわいよ。こわいよ。
 ――こわいものがくるよ。

 煙の中に足を踏み入れて、暫くすると声にならない声のようなものがあちこちから聞こえてくる。
「……」
 綾は周囲を見回した。ちらちらと、炎を発しながら浮遊しているのはタツノオトシゴのような不思議な生き物である。

 ――いたいよ。
 ――とって。
 ――これ……とって。

 オトシゴたちは声にならない声を発しながら、むずかる子供のように背中に追った機会を木々にこすりつけるとそこから火の手が上がるのだ。
「……ああ」
 怯える様子も、若葉の萌える今この時期に燃される木々も。なんだか痛ましくて、綾はそちらへ足を向ける。ほんの僅か、ささやかに、眉を顰め。手を伸ばせばひらりとその手の中に、燃えて千切れた若葉が舞い降りた。
「……落ち着いてください。痛いと声を上げれぬ植物達も、怖いと怯えていますよ……、きっと」
 通じるかどうかわからないが、若葉を大切に懐に入れて綾は声を上げる。くるりとたちのオトシゴたちが振り返った気がした。
「航り逝く路を標さん」
 振り返ると同時に、ざあ、と風が薙ぐように水がオトシゴたちを襲う。纏う彩りに染む鳥の、疾てなる羽搏きはあちらこちらに大量に浮遊するオトシゴたちを貫いた。

 ――つめたいよ。
 ――つめたいの……?
 ――これ、とれる……?

 何のことかわかっていなさそうなオトシゴたちに綾は朗々と歌い上げる。
「えぇ、取って差し上げます。翼に乗り、彼方の海へ……帰りなさい」
 消火活動をするエルフたちを守るように。そして木々の火を少しでも消すためにも。ざあぁぁぁ。と降り注ぐ翼は柔らかな雨のようであった。

 ――つめたい。
 ――つめたい。
 ――あぁ。いたく、な……、

 消失していくオトシゴたちを、綾は見送る。
 よかったねぇ。と。なんだかそんな声にならない声が、聞こえた気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クーナ・セラフィン
うわー生の村焼き見るのは久しぶりだね。
むき出しの狂気の前では知恵も理性も…ってそーいうのじゃないよねこれは。
騎士としてこういう状況で守るのは当然の事だよね。
…男エルフいなさそうなのが気になるけど触れちゃヤバそう?

東のエルフのお手伝いに行こうか。
道案内をお願いしつつ彼女たちの護衛を務めよう。
オトシゴなんか苦しんでるみたいだし眠らせてあげよう。
UCと念動力で香り操りオトシゴ達に差し向けて意識を奪う。
痛みに暴れられては余計火が回る、眠らせ癒し夢見るままに終わらせよう。
攻撃は符に雷と水のルーン記述して投げて張り付け濡れた状態の感電で機械ごと倒そっかな。
槍と剣は直触りしない牽制用。

※アドリブ絡み等お任せ



 クーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)はゆっくりと天を仰いだ。
 仰げど仰げど、見えてくるの焼けた緑の葉と煙だけである。
「うわー……。生の村焼き見るのは久しぶりだね。むき出しの狂気の前では知恵も理性も……ってそーいうのじゃないよねこれは」
 言いながら、むぅ、と口をつぐむ。それから己の柔らかい手をぎゅっと握りしめた
「ま、騎士としてこういう状況で守るのは当然の事だよね。それじゃ……」
 そういいながらも、ちらりとクーナは周囲に視線を巡らせる。右へ、左へ。指揮をする人へ目をやって、うーん? と首をかしげた。
(……男エルフいなさそうなのが気になるけど触れちゃヤバそう?)
 どうだろう。たまたまということもあるし。考えながらクーナは言葉を選んで口を開く。

「あのさ……」
「え? 男性? ……いるいる、いっぱいいるよー。ねえ、ウタさん」
 東に向かうエルフたちの援護をすることにして、クーナは彼女たちと混ざって走っていく。
「はっはっは。おばちゃんにとってはみーんなイケメンだよ。若い子はまた違うだろうけど。ねえ??」
「ええー。そ、そうね。誰が一番かっこいいかなあ。ナナリーはどう思う?」
「うーん。私は……」
(うん、なんだかとっても女子! って会話だね……)
 少女たちの会話を聞きながら、あれこれ男性の名前が挙がっていく。
「……そんな人いた? 私は見てないけど」
 クーナが首をかしげながら聞くと、ウタおばさんは目を丸くした。
「ああ。それはね。今回の剣でみんなかなりばらけて行動してるからだよ。ほら、あのへんなの、数が多いでしょ。たくさんいすぎて対処できなくてさぁ」
「なるほど」
「まあ、お嬢ちゃんたちが来てくれたから安心だけどね! ほんと、アタシたちだけならどうなることかと思ったよ!」
「あっ、じゃあ私こっちだから」
「あ、うん、またねー」
 作戦通りだろうか。グループが半分になる。向こうも注意しておこうか、となんとなくクーナは思っていたところで、
「あ、いたいた! あのしゅーっとしたのだね!」
「ああ……あれか」
 森の間に、奇妙な機会をつけて漂っている生き物を見つけて、ウタが叫んだのでクーナたちは思わず声を落とした。
「(なんか苦しんでるみたいだし……眠らせてあげよう)キミたちは後方から支援してくれればいいから。あれは、私が倒すよ」
「う、うんっ」
 クーナの言葉にエルフは素直にうなずく。彼らがそっと後方に下がってから、
「少し休むといい。眠りは痛みを癒してくれるものさ」
 甘く優しい香りと共に白き薔薇の花びらを放った。それを念動力で移動させて、森の間にたたずむオトシゴたちに、一気に吹きかけていく。

 ――こわいよ。こわいよ。
 ――こわいものがくるよ。

 声にならぬ声を発して漂う何か。
「痛みに暴れられては余計火が回る、眠らせ癒し夢見るままに終わらせよう」
 そのまま、雷と水のルーンを記した符を塗りつける。濡れた状態で感電するように持っていく算段だ。
(近づかないようにしないと……。それに)
 一体一体はさほど弱くはないが数が多い。雷に撃たれて消えていくオトシゴたちにクーナは目をやる。
 手早く終わらせよう。別れたグループの子とは気がかりだ。クーナはそう思うと、天を仰いで髭をそよがせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ディアナ・ロドクルーン
【桔梗】
噂で聞いたことはあってもエルフの森に行くのは私も初めて
ねえ、どんな場所なんでしょうね?ミリアリアさん
猟書家をやっつけたらちょっとお散歩させてもらないかしらね、ふふ

まあ、箒で移動?宙を飛ぶなんてすごい…わぁ――っっ!!(あまりの早さに悲鳴を上げる)

何とも此処には不釣り合いなものを着けているのね
可哀そうに…と思うけど、オブビリオンだし…
さっさと骸の海に戻しましょう

数がいるならこちらも手数を増やせばいい
UCを使い影狼達を喚びだし攻撃
敵の攻撃は第六感で回避を試みる

近くにいるエルフの方たちに、消火活動をお願いしつつ
森の中にいるオトシゴの場所を教えてもらいながら
討ち漏らしがない様に確実に倒していく


ミリアリア・アーデルハイム
【桔梗】
ディアナさんは私が初めて入った旅団「桔梗の宿」の先輩です
右も左も分からず困っていた時に声を掛けて下さった方という関係です

森を焼き討ちだなんて、敵も酷いことを考えますよね
森林にどれだけの生き物がいると思ってるんでしょうか

屏氷万里鏡で周囲の様子を探りつつ進む
敵を見つければ、
乗り物酔いとか大丈夫ですか? 確認して
ディアナさんを箒に乗せて高速で向かう(先制、不意打ち狙い)

現場に着けばそれぞれ行動
自身は箒で飛びながら空中戦を仕掛けます
UCに神罰を乗せて攻撃

聖なる森に火を放つなんて、罰当たりますよ!というか、当てますよ?
…後で一緒にお散歩する約束なんですから



 ディアナ・ロドクルーン(天満月の訃言師・f01023)はほう、と感嘆の息をついた。
「噂で聞いたことはあっても、エルフの森に行くのは私も初めて……。ねえ、どんな場所なんでしょうね? ミリアリアさん」
「えっと……そうですね。すごく迷う場所、と聞いてます」
 ディアナの言葉に、瞬きをしてミリアリア・アーデルハイム(かけだし神姫・f32606)はそう答えた。ミリアリアにとって、ディアナは先輩である。右も左も分からず困っていた時に声を掛けて下さった方なので、若干ミリアリアにとってこのお出かけは緊張するものであり、そして大いに胸躍るものでもあった。
「時間があれば一度、あてもなくさまようのも楽しそうね」
「ええっ。迷子になるのですか?」
「そうそう。猟書家をやっつけたらちょっとお散歩させてもらないかしらね、ふふ」
 驚いたようなミリアリアの言葉に、嬉しそうに笑うディアナ。それは楽しそうですね、とミリアリアもわずかに微笑んだ。
「無事に……そう無事に、すべて終わったら、一度頼んでみましょうか」
「ええっ。そうしましょう」
 ディアナの言葉にうなずいて、ミリアリアは無数の氷の欠片があらゆる角度の景色を映し、見えざるものの存在を暴く屏氷万里鏡で周囲の様子を探る。そうと決まれば早めに敵を見つけて……、
「……?」
「ミリアリアさん?」
「あ!? いえ。……いえ、今」
 何か一瞬、ものすごくよくないものを見たような気がする。見えざるものの存在を暴く、それで。
「いえ……見間違いました。たぶん……見間違えたのだと。……敵を見つけました。東の方に、多数です」
 見えたのは消火活動を行っているエルフであったが、丁度すぐそこまで炎の機械を背負ったオトシゴたちが迫っていた。このままでは早くにぶつかるのは間違いない。
「……ディアナさん、乗り物酔いとか大丈夫ですか?」
「え? 乗り物酔い?」
「はい。時間がありません。これで行きましょう」
 そうしてミリアリアが取り出したのは、空を飛ぶ魔法の棕櫚箒であった。
「乗り物酔い、大丈夫なら乗ってください。飛ばします」
「まあ、箒で移動? 宙を飛ぶなんてすごい……わぁ――っっ!!」
 ミリアリアとディアナが放棄にまたがった瞬間、ものすごい勢いで空飛ぶ箒は空中へと舞い上がった!

 空から見れば、その炎の様子がよく見えた。
 敵は数で攻めてきており、あちこちから火の手が上がっている。
「森を焼き討ちだなんて、敵も酷いことを考えますよね。森林にどれだけの生き物がいると思ってるんでしょうか」
「そうね。それに……何とも此処には不釣り合いなものを着けているのね」
 焼ける森が可哀想だというミリアリアに、ディアナも小さく頷く。それからディアナは、じっと不釣り合いな機械を背負ったオトシゴたちに視線をやった。
「可哀そうに……と思うけど、オブビリオンだし……」
「……はい」
「……さっさと骸の海に戻しましょう」
 倒さなければいけない敵でも、その様子は少し可哀想に思えてディアナは言葉を詰まらせる。それにミリアリアも小さく頷いた。その優しい頷きにディアナは深呼吸すると、
「いってくるわね」
「はい、気を付けて」
 ぽん、上空に飛ぶ箒から飛び降りた。
 落下していくディアナを見送って、ミリアリアはオトシゴたちに視線を向ける。
「私は……ディアナさんほど、優しくありませんよ」
 じっ、とミリアリアは地上を見下ろした。それから、
「聖なる森に火を放つなんて、罰当たりますよ! というか、当てますよ? ……後で一緒にお散歩する約束なんですから」
 言うや否や、箒の上から手を払う。その言葉通り、雷の魔法剣が一斉に、幾何学模様を描き複雑に飛翔しながらオトシゴたちに降り注いだ。

「……やるわね、ミリアリアさん」
 それを見ながら、ディアナもオトシゴたちに目を向ける。

 ――こわいよ、
 ――ぴかぴかしてるよ。

 声にならない思念がディアナに届く。それを一度、首を横に振ってディアナは振り払って、
「そこのエルフさん!」
 近くにいたエルフに呼び掛けた。
「これからこの場所を殲滅するわね。他にオトシゴがいたら教えて。討ち漏らしがない様に確実に倒していくから」
「……! は、はい!」
 エルフの返事にディアナは頷いて、夜の夢を示す名を持つ剣を構えた。そのままクリスタルオパールの白き刀身を、突き立てるのはオトシゴではない。……それは、己の体だ。
「生を蹂躙する者 闇より出でし獣よ 滅びの声をあげ 血の嵐と共に葬り去れ」
 躊躇うことなくその身に突き立てられた県から、血があふれ出す。それは彼女の影に吸い込まれて行き、そこから黒い狼が現れた。数が多いのならば、こちらも手数を増やせばいい。
 影からにじみ出るようにして現れた黒い狼は、即座にオトシゴたちへと襲い掛かる。

 ――!
 ――こわい、ものが、きたよ。

「そうね。怖いつもりはないけれど……。あなたたちから見たら、怖いものかもしれないわね」
 子供が泣くような言い方に、ディアナは目を細める。
「けれども逃がすわけにはいかないのよ。……ごめんね」
 何とも言えない、その声音。
 ディアナのつぶやきに応えたのは、天から降るミリアリアの魔法であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ディフ・クライン
無理矢理機械をつけた子たちに望まぬままに火をつけさせているのか
酷いな、悲鳴ばかりだ
それに森が燃えるのは見たくない
森は友の住処だった
此処が同じというわけではないけれど、それでも
きっとネージュやムースは哀しむだろうから

猟兵だと名乗ってエルフたちの協力を得よう
より村に近い火の場所から教えておくれ
もしくは人が近いところかな
より被害が出そうなところから優先的に鎮火していこう

海が近くになくたって、精霊さえいれば海を感じ取れる
おいで、ユーラ。深海の君

不快そうに体を擦りつけては火を広げるオトシゴに
一度深く目礼してから

……ユーラ、力を貸して

深海水に浄化の力を乗せ
祈るように撃ち落そう
せめて痛まぬよう、一瞬で



「より村に近い火の場所から教えておくれ。もしくは人が近いところかな」
 多くの被害が出そうなところから優先的に鎮火していこう。ディフ・クライン(灰色の雪・f05200)は提案した。
「それでしたら……こことこことこことここと」
「ずいぶん……分散してるんだね」
「はい。どうにも散らばって全方向から攻めてきてるみたいで。あとここに行くようにと言われてます」
 エルフの言葉に成る程、とディフは頷いた。
「では……西のほうにしよう。そちらに向かった猟兵たちは、少ないみたいだから」
 言うなり、ディフは行動に移した。即座に煙の充満する森の中に姿を消す。
(なんだろう……作為を感じる。この状況……)
 なんだか違和感があるのだと。走りながらその違和感を分析しようとしていたところに、

 ――こわいよ。こわいよ。
 ――こわいものがくるよ。

 耳を覆いたくなるような、声のない声がその耳に届いた。
 まるで、子供の泣き声のようであった。
「無理矢理機械をつけた子たちに望まぬままに火をつけさせているのか……」
 指定されたポイント、現場に向かうと奇妙な機械を背負った奇妙な生き物がいる。
「酷いな、悲鳴ばかりだ。……ここはオレがなんとかするから、あなたたちは、消火活動を」
 近くに二人ほど、慌てたようにオトシゴと目に行こうとしていたエルフたちにディフは声をかけた。
「は、はいっ」
「近づくと燃えるらしいから、気を付けて」
 簡単にそれだけ周囲を促す。可愛い生き物に見えて、あれは立派な凶器だ。……そういう風に仕立てられたものだ。
(此処が同じというわけではないけれど、それでも……。きっとネージュやムースは哀しむだろうから)
 こんな、居た堪れないことは放っておけない。こんな森の状態は捨て置けない。森は友の住処だった。……森が燃えるのは見たくない。

 ――いたいよ。
 ――とって。
 ――これ……とって、

 助けて、と叫ぶような声に、ディフは目をやる。そうして一度、深く目礼してから。
「おいで、ユーラ。深海の君。深海に湧き出す清き水の精。君の力をオレに貸して」
 そっと囁くように呼ぶ声。
 海が近くになくたって、精霊さえいれば海を感じ取れる。浄化の力持つ深海水の矢が、オトシゴたちを取り巻いた。
「痛かったね。……辛かったね。せめて痛まぬよう、一瞬で終わらせてあげたいんだ。……ねえ、ユーラ」
 そんな、ディフの声にこたえたのか。
 浄化の力持つ深海水の矢が、一斉にオトシゴたちを取り囲む。そしてそのまま飛翔して、一斉にオトシゴたちを貫いた。

 ――こわいものがくるよ。
 ――こわいものがくるよ。
 ――……それは、もう。
 ――みんなの……傍に……。

 悲鳴のような声をあげて消失していくオトシゴたちを、何とも言えない目でディフは見送る。
「……不思議だね。倒せて、森を守れてよかったけれども、少し悲しい」
 声を聴きながら、ディフは想った。祈るように。どうか攻めて苦しまぬようにと。攻撃が激しく容赦なかったのは、きっとその祈りのためなのだろう……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木霊・ウタ
心情
聖なる木は勿論
森を焼かせやしないぜ

それに怖がったり
意にそぐわず手駒にされているみたいで
ちょいと可哀そうな奴らだよな
海へ還してやりたいぜ

敵数が多い場所までエルフに案内を頼む
ついでに同名のウタおばさんって人に挨拶も

お互いに頑張ろうぜ(ぐっ

戦闘
迦楼羅を炎翼として顕現し飛行
宙でワイルドウィンドを奏でる

旋律で仲間やエルフ、
そして怖がっている敵を勇気づけ

猟書家の傀儡と可哀そうに
お前たちがいるべき場所へ
今、送ってやる

熱き血潮ならぬ熱き炎が流れるこの身で弦を爪弾けば
響き渡る音の波紋は煉獄のごとき熱を孕む

まず背負う機械を溶かし解放し
その後に旋律と共に紅蓮で包み灰に帰す

事後
鎮魂曲を奏でる
安らかに



「おばさんもウタって言うのか? 俺もウタってんだ!」
「おやおやまあまあ。じゃあ今日からアタシとアンタは仲良しだね。飴ちゃん食べる?」
「食べる食べるー!」
 木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)の屈託ない言葉に、エルフのおばちゃんが思わずというように大きな声を上げる。
「だからさ、ウタ繋がりってわけでもないけど、ちょっと行ってくんな」
「おやまあ。じゃあ道案内に……ほらリタちゃん、この子アタシの娘なんだけど、道案内に使ってやって! リタちゃん、この子がウタおにいちゃんだよ!!」
「お兄ちゃん……リタの……?」
「ああ! お兄ちゃんに何でも任せろ!」
 ぐっ、と拳を握りしめるウタ。ノリがいい。こくりと頷くリタは10にも満たないほどの子供だが、言葉少なくともノリは良さそうだった。
「火、消してくれる?
「ああ! 聖なる木は勿論、森を焼かせやしないぜ」
「わるいの、やっつけてくれる?」
「あー……うん。悪いかどうかはわかんないけど……」
 子供の純真な問いかけに、歌はほんの少し、言葉に詰まった。
 歌に取ってオブビリオンは、憎いというよりも、ほんの少し可哀想だと思う、そんな存在だから。
(それに、話に聞く限り今回のやつは怖がったり、意にそぐわず手駒にされているみたいで……、ちょいと可哀そうな奴らだよな)
「……そうだな。ちゃんと倒して、海へ還してやりたいぜ」
 とはいえそんな複雑な事情を子供に語るわけにもいかず、しっかりと頷いたウタに、うん、と、リタも頷く。
「じゃあ……お願い、ついてきて」
「それじゃ、気を付けて行っておいでよー」
「ああっ! お互いに頑張ろうぜ」
 まるで夕飯までには帰るのよ、みたいなおばちゃんの声に見送られて、二人は森の中に飛び込んだ。

 煙が多い。
 視界が聞き辛いが、かろうじてウタは金翅鳥を呼び出していた。金色の翼をもち魔を滅する火を吐く鳥の、その翼を炎の翼としてその身におろしてウタは飛行する。先行するリタがしばらく行くと、止まった。
「あれ」
「ほんとだ、いっぱいいるな。……んじゃ、俺は言ってくるから、リタはここで大人しくしてるんだぞ!」
 空中に浮いたまま、歌はそう言って敵の群れへと接近する。丁度近くに消火活動を行っているエルフがいるのを視界に収めながら、
「んじゃ……一曲、行くか!」
 インカムの調子も上々だ。ウタは高らかに、ギターを奏でた。
「猟書家の傀儡と可哀そうに……。お前たちがいるべき場所へ、今、送ってやる!」
 共に戦うエルフにも、怯える敵にも届けとばかりに歌はギターを弾く。熱い炎が流れる身でそのギターを奏でれば、熱を孕んだ音の波紋が漂うオトシゴたちを包み込んだ。

 ――あついよ。
 ――あつい、よ……。

 まずはオトシゴたちにつく機械を破壊する。破壊すると同時にオトシゴの体が燃え上がる。それは機会が、そういう仕組みをしていたらしい。けれどもウタは慌てることなく、
「纏めて還してやる。紅蓮に抱かれて眠れ」
 その炎に苦しまぬよう、即座に地獄の炎を放ちオトシゴたちを燃え上がらせた。
「……安らかに」
 最後に奏でるのは鎮魂歌だ。オトシゴたちが灰になり、その炎が消えうせるまで。ウタはその曲を奏で続けるのであった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御園・桜花
「火が、火が…森が、燃えてしまう…」
樹木精なので涙ボロボロ

「ごめんなさい、本当は貴方達も助けを求めているのに…」
UC「召喚・精霊乱舞」
高速・多重詠唱でウンディーネを呼んで、水属性の魔力球で敵や延焼部分を吹き飛ばす

「確かに燃えた後にも草は生えます。けれど…そこがまた森になるには、何十年何百年かかるのか。此の地は、数年で樹木が生えて森を為す気候ではないのでしょう?ならば、延焼自体を止めなくては。可哀相な貴方達より、森を残すことを優先してごめんなさい…」
延焼を止めるために木々を吹き飛ばしさえする
UCが尽きても、高速・多重詠唱で水の属性攻撃続行
速やかな鎮火に努める

「ごめんなさい、本当にごめんなさい…」



 ちらちらと炎が散っている。
 御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)は目を見開き、ずっとその様子を見つめていた。
「火が、火が……森が、燃えてしまう……」
 ぐっとその掌を握りしめる。瞳からは涙がこぼれて行った。……彼女は、桜のせいだ。木のことを、森のことを、深く深く大切に思っているのである。
 生木の燃える音も、炎により樹が崩れ落ちることも。彼女にとっては痛ましいことこの上なく。……そして、

 ――いたいよ。
 ――とって。
 ――これ……とって、

 泣きそうな子供のような、声にならない声で浮遊するその不思議な生き物たちも、彼女にとっては苦しくてたまらないものであった。
「ごめんなさい、本当は貴方達も助けを求めているのに……」
 ――いたいよ。
 ――いたいよ……。
 手を掲げると、懐くようにその手に近寄って来るオトシゴたち。己の手が焼ける感触に、その痛みに桜花の目からはまた涙がこぼれた。……痛みから、こぼれた涙ではない。そうする事しかできない子たちが可哀想だったのだ。
「でも……、倒します。倒すしか……ないのです。……おいで精霊、数多の精霊、お前の力を貸しておくれ」
 優しいその声に応えるように、ウィンディーネたちが現れる。水を纏った魔力弾が、その瞬間弾けた。
 周囲の燃える木々に。その炎の上に魔力弾が落ち、そしてオトシゴたちもの体を貫く。
「確かに燃えた後にも草は生えます。けれど…そこがまた森になるには、何十年何百年かかるのか……」
 じゅわりと、水蒸気が発生していっせりに周囲に煙が舞い上がった。それとともに、声にならない悲鳴のような音が周囲に満ちていく。
「此の地は、数年で樹木が生えて森を為す気候ではないのでしょう? ならば、延焼自体を止めなくては。可哀相な貴方達より、森を残すことを優先してごめんなさい……」
 それが、オトシゴたちの悲鳴であると気付いたとき、桜花は小さく、本当に小さく、詫びるように呟くのであった。
「私は……大切なもののために、あなたたちを犠牲にします」
 燃え盛る大木を見つければ、延焼を止めるためにその気を吹き飛ばし。
 助けを求めるように近寄ってくる奇妙な生き物たちを吹き飛ばし。
「ごめんなさい、本当にごめんなさい……」
 彼女は進んだ。目に涙をためて。しかし、俯くことなく、
「私は……森を守ります。私自身の、気持ちのために……」
 しっかりと前を向いて、そして守るために倒し続けるのであった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夏目・晴夜
…焦げた香りは少々苦手です
なんか舌まで苦くなってきますね

変な機械を取り付けられて、可哀想に
いいですよ、このハレルヤが取ってあげます
なのでそこから一歩も『動かないで下さい』

敵は『謳う静寂』による落雷で広く貫き
近付いてくる敵がいれば妖刀で【なぎ払い】
敵の体に触れないよう留意しますが、万一触れてしまったら敵を【串刺し】【傷口をえぐり】速やかに倒します
そうすればエルフたちが私についた火も消して下さるでしょうからね

可哀想だとは思いますが、残さず倒させて頂きます
オブリビオンに同情して逃すような行いは決して褒められないですからね
まあ、せめて一思いに優しく殺してあげますよ
ですから安心して『今すぐ死んで下さい』



「う……。なんだか髪にまで煙の匂いが染みつく気がします」
 しゅん、と夏目・晴夜(不夜狼・f00145)の耳が垂れた。
「……焦げた香りは少々苦手です。なんか舌まで苦くなってきますね……」
 嗅覚鋭い身としては、これが結構、きついのである。鼻も辛いし舌も辛いし目も辛いしいっそ全部パーツ分けして洗浄したいところ。ところである……が、
「ですが、そんな辛い中頑張るハレルヤもかっこいい……と、誰か褒めてくれるはずです。ええきっと」
 ハレルヤ知ってる。頑張っていれば見てくれている人もいるし、褒めてくれる人もいるのである。
 ……そういうわけで、晴夜は煙の充満する森の中へと突入した。
 そういえば……、
「しかしながらこのハレルヤの雄姿を見て褒める犠牲者(ルビ:ギャラリー)がなんか少なくありません……?」
 要するに、消火活動担当のエルフさんめっちゃ散ってて数が少ない気がするなあ。なんてちょっとばっかし不満を感じながら……。

 そんな不満を感じながらも、晴夜もまた火の手が上がった場所を重点的に回る。
「変な機械を取り付けられて、可哀想に」
 オトシゴたちは、ふわふわと木の周りを飛び回っていた。背中に不釣り合いな機械を付け、それを壊そうと背中を木の実機にこすりつけている。

 ――いたいよ。
 ――とって。
 ――これ……とって、

 声は発せないのに、なんとなく思念でその言葉が通じる。子供の悲鳴のようなニュアンスの声に、ハレルヤはすぅ、吐息を吸い込んだ。
「いいですよ、このハレルヤが取ってあげます。なのでそこから……一歩も『動かないで下さい』」

 ――いたいよ。
 ――いたいよぉ。

 晴夜の命令のような言葉は通じない。……否、通じないことをわかっていて、晴夜も発していた。晴夜を見つけて、救いを求めるようにふわりとそちらへ向かおうとしたオトシゴに雷が落ちる。

 ――!

 生き物が動かないでいることは不可能だ。次々に漂うオトシゴたちに雷が落ちた。さほど協力でない個体は、その一撃で霧散する。そして、

 ――怖いよ。怖いよぉ……、

 落雷に撃たれながらも、一目散に晴夜へと向かってくる個体がいる。それは構わず晴夜は妖刀を構えて迎撃する。
「いくら私が頼りになりそうなナイスガイだとしても、焼きハレルヤはご遠慮いただきたいですね!」
 よくわからないことを言いながらも、落雷で出来た傷口に晴夜はそのまま妖刀を突き立てる。触れないように注意するが、触れたら触れたでエルフたちに森と一緒に消してもらおうという魂胆で、
「可哀想だとは思いますが……、残さず倒させて頂きます。オブリビオンに同情して逃すような行いは決して褒められないですからね。めっちゃ怒られますからね。御免です」
 その切り口を遠慮のないぐらいに抉り切った。真っ二つにしたオトシゴにちらりと視線をやるが、その次には、

 ――たすけて。
 ――たすけて。

 どこからともなくあらわれた彼らが、晴夜を取り囲んでいた。助けを求めるようなその声に、晴夜は僅かに目を眇めて、
「頼られるのは、悪くないですけど……。……まあ、せめて一思いに優しく殺してあげますよ。ですから安心して『今すぐ死んで下さい』」
 また、叶わぬ名とともに雷を下すのであった。
「……まあ、この素晴らしいハレルヤのお言葉が無視されるというのもあれであれなんですけど」
 若干不満そげだったという。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
一本木を確保するために森を燃やすってか。無駄にスケールがデカくて、しかもえげつねえ話だ。
怖ぇけど、なんとか止めねえとな。

奴らは予言で運気を操れるんか。けど、運気を操るんならこっちだって負けてねえ。
ってなわけで《忠義貫く犬の祝福》を自分に使って、相手のユーベルコードに対抗する。少なくとも、対等な条件には持ち込めるはずだ。
背負ってる機械をどうにかすればいいみてえだから、〈武器落とし〉の要領で機械を壊すか落とすか出来ねえか試してみる。的が小せえみたいだけど〈スナイパー〉ばりに精度を引き上げれば、当てられなくはねえだろ。
あとは周囲にいる味方やエルフに、適宜〈援護射撃〉を飛ばして、行動のサポートをする。


シキ・ジルモント
なんだ、あの機械は
どうやら自らの意思で火を放ってはいない様子だが…
しかしあれもオブリビオンである以上は放置もできない

銃の射程を活かして接近せずに交戦する
オブリビオンの通り道に立ち塞がり接近するものを片端から排除、炎を広げないよう妨害を試みる
待ち伏せの場所は周囲の地形に詳しいエルフに聞いておく
敵が視界に入り次第ユーベルコードで急所を狙撃し、一撃で仕留めたい
弾を無駄にしない為、暴れられて炎を広げない為…それに、余計な痛みを与える必要も無いだろう

オブリビオンの言っていた「こわいもの」についてはエルフにも警戒を促しておく
あの機械を取り付けた元凶が居るなら、これで終わりというわけにはいかないだろうからな



 ふわり、ふわりと。奇妙な生き物が漂っている。
「なんだ、あの機械は。どうやら自らの意思で火を放ってはいない様子だが……」
 シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は思わずそうつぶやいた。丁度待ち伏せに適した場所を聞いて、敵を待っているところであった。オトシゴたちは見るからにファンシーな生き物であるが、それが木々に体をこすりつけるたびに火の手が上がっていく。
「一本木を確保するために森を燃やすってか。無駄にスケールがデカくて、しかもえげつねえ話だな。それにやり方が……なんていうか、嫌いだ」
 シキの言葉に思わず言ったのは、鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)であった。さほど力のなさそうな小さな生き物に、機械を付けて発火させるなんて、見ていて気持ちのいいものでないのは確かだろう。
「怖ぇけど……、なんとか止めねえとな。森のためとか、平和のためとか、そういうんじゃなくて……いやそういうのもあるけど……ほっとけねぇだろ」
「ああ。あれもオブリビオンである以上は放置もできない」
 一度視線を交わす。そうして互いに頷きあった。無言で走り出したのは嵐である。木々を超えて、オトシゴたちが群れになり漂う場所へと突入する。
「正しき者には恵みの花を。不義の者には裁きの枷を。ここ掘れワンワン、……なんてな!」
 走りながら、嵐は祈るような仕草をして妖怪「禍福の忠犬シロ」の描かれたメダルを己の体に貼り付ける。幸運を齎し、その敵対者には不運を齎すメダルであるが、今回は他人に使うのではなく自分に使うので、効果はいつもよりささやかだ。……けど、
「奴らは予言で運気を操れるんか。けど、運気を操るんならこっちだって負けてねえ。……っていうか、負けてられねぇ!」
 そのままぐんっ、と速度を上げる。とにかく、スリングショットの射程範囲まで向かう。向こうも嵐に気付いたのか、

 ――だれか。
 ――だれかきたよ。
 ――    は死んだ。
 ――森はもえた。
 ――いたいよ。
 ――いたいよぉぉぉぉぉぉ。

「……っ、黙ってろ!!」
 耳の奥を揺らすような声のない声に、嵐はゴム弾を放った。狙うのは背負っている機械だ。幸運を。放たれたゴム弾が、正確にオトシゴたちの機械を撃ち抜く。
「的が小せえみたいだけど……やったか!」
「いや、突っ込んでくるぞ」
 機械が壊れると同時に、炎がオトシゴたちを包み込んだ。そのまま嵐の元へと突っ込んでくるのを、別の場所に回り込んでいたシキのハンドガンが撃ち抜く。
「突っ込んでくる。倒すしか……ないなっ」
「くっそっ!!」
 突進して来るオトシゴから逃れるように嵐は走る。走りながら小石を拾い、それを弾丸のような威力でもってオトシゴたちに打ち付ける。
「西からも来る。そっちはこちらが対処するから、北のほうに逃げろ」
「サンキュ、助かるぜ!」
 離れたところから戦況を見やって、シキが声を上げた。追いかけて来るオトシゴから逃れるように嵐が北に向かうと同時に、シキは西の方角から向かって来るオトシゴたちの群れに飛び込んだ。
「……」
 無言で対象を睨み、引き金を引く瞬間息を止める。
 銃を両手で構え狙いを定め、シキはハンドガンでオトシゴたちに応援する。一撃で体の中央、急所を狙う。
(弾を無駄にしない為、暴れられて炎を広げない為……それに、余計な痛みを与える必要も無いだろう)
 子供のように声にならない声を上げる存在に、シキはせめてその戦闘が長引かないことを祈りながら、銃を撃ち続けた。

 ――こわいよ。こわいよ。
 ――こわいものがくるよ。

「あいつら、あっちに……!」
 二人から逃れるように、オトシゴたちは散ろうとする。丁度消火活動中のエルフのほうに向かっているのを、嵐のスリング団とシキの銃弾が性格に打ち抜いてお落としていく。
「ありがとう。助かった……!」
「ああ。そっちの、消火活動頑張れよー!」
 一人で周囲の消火に当たっているエルフの男性に、シキは僅かに眉を寄せる。
「……なるべく、目の届くところにいてくれ。異常があったら、すぐに声をあげてほしい。警戒を怠らないように」
 端的に、シキはそれだけ男性に言った。そうしている間にも、オトシゴたちがまた現れている。例外なく、背に機械を付けたオトシゴが。それに嵐はちらりとシキに目をやった。シキの言葉に、思うことがあったからだ。
「……あれのことか?」
「ああ」
 オブリビオンの言っていた「こわいもの」。
 シキはそれが気になっていたのだ。
「あの機械を取り付けた元凶が居るなら、これで終わりというわけにはいかないだろうからな。もちろん……炎を広げないこと、あれらを排除することも大事だが」
「ああ。なんかもうほんと怖ぇけど……やるしかないな!」
 嵐の言葉に、シキは頷く。そうして二人また左右に散った。
 炎を背負ったオトシゴたちは構わず二人を見つけると近寄ってくる。それに躊躇うことなく弾を叩き込んで、二人は着実に彼らに対処していった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フィーネ・ルーファリア
エルフの森を焼こうだなんて、オトシゴ達は考えてないんでしょうね
ただ、オトシゴ達が向かう先にエルフの村があるのはまずいわ
同じエルフとして見過ごすわけには行かないわね

村の防衛を任されてるイレイナさんには、ちょっとだけ親近感が湧くわね
私も故郷の風の森で守護者をやってるからかしら?
一瞬感じた違和感は気になるけど、今は森に起きてる危機をどうにかしないとね

選択UCでオトシゴの背中についてる変な機械だけを狙って落としていくわ
羽刃は小さいから機械だけを破壊することは出来るでしょう
大丈夫、今いたいのとってあげるからね
機械がなくなればオトシゴ達も大人しくなるでしょうし、火をつけることも出来なくなる、わよね?



 むぅ、とフィーネ・ルーファリア(森の守護者・f27328)は何とも言えない顔で、煙の上がる森を見つめていた。
「イレイナさん」
「はい~?」
 フィーネは声をかける。頭の上で鳥が揺れている。相変わらず何か、微妙な違和感を感じて。それが気になって。……気になるけれども、明確な答えを掴み切れずに、
「私も、故郷の風の森で守護者をやってるからかしら? なんだかあなたのこと、他人みたいに思えないの」
「まあ。あなたもですか~? ふふふ、それは嬉しい」
 フィーネの言葉に屈託なく微笑むイレイナ。……そして、
「ねえ、でしたら……」
「え……?」
 不意に言われた言葉に、フィーネは瞬きをする。
「森を守る仕事は、とても素晴らしいものだと思いませんか?」
「え……え。そうね」
 そう。フィーネも小さく頷いた。イレイナのその言葉に異論はない。森葉を守ることは大事な仕事だし、それをフィーネだって素晴らしいものだと思っている。
「……今は森に起きてる危機をどうにかしないとね」
 なのになぜだろう。こんなに違和感を感じるのは。
 フィーネは警戒を解かぬまま走り出す。木を、引き締めないと、と。誰にともなく彼女は呟いた。

 ――こわいよ。こわいよ。
 ――こわいものがくるよ。

 彼らはすぐに見つかった。森と森の間を漂う姿は不可思議で、その背に追うた機会がなければなんとも幻想的な雰囲気だった。

 ――いたいよ。
 ――とって。
 ――これ……とって、

 声にならない声が聞こえる。背中の機械を木々にこすりつけると、炎が気に燃え移っていく。
(エルフの森を焼こうだなんて、この子達は考えてないんでしょうね……)
 その光景に、フィーネはそっと目を伏せた。距離を測る。
(ただ、オトシゴ達が向かう先にエルフの村があるだけ……。それだけなのよ。でも……同じエルフとして見過ごすわけには行かないわね)
 出来れば、傷つけたくない。フィーネはさっと手を掲げる。
「弓だけじゃなくて魔法だって得意なんだから! ……我が敵を切り裂け!」

 ――!!

 呼び出したのは、魔法で作られた刃の付いた羽根。それが一斉に、オトシゴたちに放たれる。
「大丈夫、今いたいのとってあげるからね……っ!」
 羽根は小さいから、機械だけを狙って撃ち込むことができると。フィーネの狙い通りに跳ねはオトシゴの機械に命中する。さほど強いものではない。数発。場合によれば一発で機械を破壊することはできた。
「機械がなくなればオトシゴ達も大人しくなるでしょうし、火をつけることも出来なくなる、わよ……ね? ……」
 ぼん、と機械が壊れた瞬間、其の中から炎が噴き出す。
「ああ……っ!」

 ――あつい。
 ――あつい、よぉぉぉぉ……っ!!

 瞬く間にオトシゴたちが炎に包まれた。そのまま無茶苦茶に暴れまわり、フィーネの方にも突進してくる。
「……っ」
 助けられない。フィーネは思わず唇を噛む。
「わかった……」
 炎が木々に燃え広がる中、フィーネは風の羽根を再び操る。
「これしか、助ける方法はないのよね?」
 フィーネがそうしてオトシゴたちにとどめを刺すまで、オトシゴたちは炎を負ったまま飛び回った。
 ……倒すには、やっぱりさほどの労力はいらなくて、
「……できれば助けてあげたかったのよね」
 暫くして、声にならない声は沈黙した。フィーネは一つ頷いて、また歩き出す。こうしている間にも、ほかの場所で火の手が上がっている。
 彼女は……森を守りたいのだ。だから、足を止めるわけにはいかないのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『人喰い鳥の魔女』

POW   :    食事の時間
【攻撃】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    脳のない体
【人体の頭部以外を瞬間再生し】【新たに己の喰らった死体を喚び】【その人間の特性に沿った強化方法】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    死者の紬
自身が戦闘で瀕死になると【己の喰らった人間の死体】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。

イラスト:misty

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠リュカ・エンキアンサスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 足音が聞こえて、彼女はゆっくりと顔を上げた。丁度村の前の切り株に腰を下ろして、まるで友達を待つみたいに猟兵たちを待っていた。
「うーん、残念。さすがに旅人さんの目を盗んで、計画を完遂するのはちょーっと、難易度が高かったようですね~」
 エルフはこてりと、かわいらしく首を傾げる。金髪がさらりと流れる。同じように鳥が頭を下げる。猟兵たちとともに仕事を終えて戻ってきていたエルフたちが、その姿を見て、声をかけようとして、
「仕方がないのでさようなら、……と言いたいところですが今日の私はお仕事を与えられてる身分でして~。この村を聖なる木を持って帰ってこの町を全滅させるまで、帰ってきちゃだめって言われているのですよ~」
「え……」
 その台詞に、動揺が広がった。
「何……言ってるの? どういうこと? イレイナちゃん」
「おや、聞こえませんでしたか~?」
 震える声で尋ねるエルフに、イレイナはにっこりと微笑んで、
「みんな死にましょう。死んで私たちの仲間になりましょう。大丈夫、怖くなんてありませんよ~。だって……」
 腰に下げられた剣を抜き放った。同時に、物陰のあちらこちらから、音を立てて何かが姿を現した。
「私も、私の仲間たちも、すでにもうそうなっているのですから」
 それは、村の警護に当たっていたエルフたちであった。

 何者だ、と猟兵は聞いた。
「何者だと言われても……イレイナですよ~。こちらは私を動かしている人喰い鳥さん。……正確に言うと、イレイナは死んで、イレイナの振りをしてる死人という事になりますか? けど~。完璧にイレイナと同じ行動ができるなら、それはもうイレイナでいいんじゃないですか?」
 いつからだ、と誰かが問うた。
「えーっと、15日ほど前からでしょうか~。本当ならもっと時間をかけて、本人に成りすましたかったのですが……そこは妥協しました。今回のイレイナにはお仕事がありますから」
 ずっと感じていた違和感はこれだったのか、と誰かが呟いた。
「あ、そうですよ。皆さんなんかすっごく警戒してて~。おかげで、エルフの皆さんをバラバラにさせてオトシゴさんと私の部隊で各個撃破して仲間にしていく計画がおじゃんです。あなたたちが来てから一人も殺せてないんです。ひどいと思いません~?」
 その、部隊の人というのは、と、誰かが口にすると、
「はい、15日ほど前に私と一緒に殺された人たちです。でも大丈夫、みんなここに生きて、ちゃんと動いてます。必要とあらば喋りますよ?」
 お父さん、と泣き崩れるエルフの声がした。
「ああ。泣かないでアリス。大丈夫です。すぐにみんな同じになります」
 どうしてそんなひどいことをするのか、と誰かが聞いた。
「ひどいこと? ひどいことではないですよ。だって私はこの通り。……生きてますから。ここに」
 これ以上は平行線のようだ。と、どちらとも感じたのであろう。自然とその場での会話はおしまいになる。
「……イレイナはずっと思っていました。聖なる木を私たちは自分たちのためだけに使っていいのだろうかと。この力を使えば、もっと他にできることがあるのでないかと悩んでいました。……なら、天界への扉を開くために聖なる木を確保しようと思うのは、イレイナの意思に沿っていますよね」
 呟くように言いながらも、イレイナは剣を握る。その頭の上に乗っていた鳥が、ばさりと羽根音を立ててその肩へととまった。
「私は、人喰い鳥と人喰い鳥の魔女。私たちは二人でひとつ。私の目的はこの村のエルフと旅人さんたちを全滅させて聖なる木を持ち帰ること」
 始めましょう、と囀るようにイレイナは笑った。

●マスターより
色々宣いましたが戦闘です。

イレイナは剣及びなんか自然っぽい魔法を使用し戦闘します。(剣メインですが猟兵たちが遠距離撃ってくると遠距離で対応します)
その他のエルフの死人たちは剣や弓などで攻撃します。
イレイナは猟兵を狙います。
その他の人はエルフの村の住人たちを狙います。
彼らは本当に生きているかのように振舞いますが、死人なので倒せば死体に戻ります。

イレイナ及びエルフの死人たちを動かしている鳥は、基本イレイナの肩から動きません。攻撃もしませんが、鳥に攻撃しようとすると9割がたイレイナが庇います。
すべての死体を倒せば自動的に鳥は倒せるのですが、逆を言うと死体を倒さず取りを倒す方法は、今回は、ありません。

他のことはだいたいフィーリングで、どうぞ。

イレイナのことは「最初から気付いていたぜ!」っていっても「全然気づかなかったぜ!」ってしてもどっちでも大丈夫です。全くそういうの触れずに倒しにかかってももちろん問題ありません。


プレイング募集期間は、1日8:31~4日17:00までです。
徳川・家光
「騙すことになんの意味があるんだ!お前がオブリビオンならば、心を弄ぶことなく、ただ殺戮の勤めを果たすこともできたであろう!」
 少し、ずれた考え方かもしれません。ですが、敵も目的があって戦うのならば、ある面で理解を示すという事も無くはありません。ですが、楽しみ、自己満足の為に、心優しき人々の心も体も壊すことは、民を預かる者として、断じて許すことはできません!

羅刹大伽藍! 巨大鎧に乗り込んで、真正面から突撃します!
敵は「食事の時間」を放ってくる筈ですが、それは想定内。大伽藍を犠牲にして、構わず前に進みます。
大伽藍がすべて破壊されても未だ肉薄できなかったなら……想定外ですが、僕の怒りは止まりません!


鏡島・嵐
こいつがこの騒動の黒幕か……! 強そうだ……やっぱ怖ぇな……。
でも、やらせるわけにはいかねえ。ここで止めねーと……!
だから力を貸してくれ、クゥ!

クゥの背中に〈騎乗〉して〈ダッシュ〉で相手を翻弄しながら〈スナイパー〉並みの精度でエルフの死人から撃ち落としていく。
〈逃げ足〉を活かしてなるべく死人とかに包囲されねえように位置取りに気をつける。
イレイナって奴の攻撃は〈第六感〉を活かして〈見切り〉、隙あらば反撃。

雑魚をある程度数を減らしたら、イレイナ狙いにシフト。
他に味方がいるんなら〈援護射撃〉でサポートしたり、〈目潰し〉や〈マヒ攻撃〉で相手の行動を邪魔するようにして、有利な状況を作り出す。



 それは、本当に生きているかのようであった。
 けれども、どうやってもそれは死んでいるらしい。
「こいつがこの騒動の黒幕か……! 強そうだ……やっぱ怖ぇな……」
 嵐が小さく、呟いた。その言葉に、不思議そうにそれは……イレイナは、生きているように、瞬きをした。
「だいじょうぶです、怖くありませんよ~。……死んでしまえば、みんな一緒です」
 言うなり、距離が詰まった。瞬く間に接近してきたそれが、一瞬で剣を抜き放つ。
「!!」
 人体の限界を無視した、無茶な加速と同時に振るわれた剣を白刃で押しとどめたのは、徳川・家光(江戸幕府将軍・f04430)であった。
「大丈夫ですか!」
「ああ。ちょっとびっくりしただけだ!」
 イレイナが動くと同時に、周囲の使者たちも動き出す気配がする。家光と嵐は一瞬、視線を交わして、
「彼女は抑える!」
「ああっ。だったら俺は……!」
 周囲の使者を倒すと、叫ばずともいえ密も分かったようでイレイナに向き直る。嵐はそのまま、
「怖いけど、やらせるわけにはいかねえ。ここで止めねーと……! だから力を貸してくれ、クゥ!」
 焔を纏った黄金のライオンの背へと騎乗した。怖い。その気持ちとは裏腹に、黄金のライオンは即座に跳ねる。嵐に躊躇う時間も与えず、恐れる暇もないとでもいうかのように駆ける。
「でも殺すのは……たとえ死んでたとしても、嫌だから……!」
 愛用のスリングショットで狙いを定める。ここは木の実や小石や、嵐の使う弾には事欠かない。召喚された死体たちの足元を狙って嵐は弾を飛ばしていく。
「……!」
 背後で息を呑む声がする。それはきっと死体と親しかったエルフたちのものであろう。きっと誰か、ほかの猟兵がフォローしてくれることは明らかで、嵐は心の中で詫びる。
(とにかく、数を減らす。そして最初に、皆に有利な状況を作り出す……!)
 一刻も早く、イレイナと対面している家光の援護に回る。嵐は心の中で詫びながらも、手を止めることはしなかった。恐ろしくとも、悲しくとも、すべきことはするのだと、その眼が決意と語っていた。

 一方。
「うーん。勝手に抑えることにされても困ります~」
 がっ。と家光の抑えていた剣が跳ね上がる。弾き飛ばそうとするその力を全力で抑え込んで、家光は声を上げた。
「騙すことになんの意味があるんだ!」
「……はい?」
「お前がオブリビオンならば、心を弄ぶことなく、ただ殺戮の勤めを果たすこともできたであろう!」
 問われた言葉に、イレイナ人間じみた瞬きをした。そんなことを聞かれるとは、思っていなかった。……そんな顔であった。縁起だろうかと、一瞬家光は訝しんだが、彼の刀と拮抗していた彼女の力が、僅かに弱まる。
「意味……ですか」
 反芻するように、イレイナは呟く。その視線を正面から見据えて、家光ははっきりと頷いた。
「そう。意味です。……少し、ずれた考え方かもしれません。ですが、敵も目的があって戦うのならば、ある面で理解を示すという事も無くはありません」
 そうだ。彼だって、将軍として人を預かる身だ。その心とは裏腹に、非情な決断をすることもあるだろう。目的のために戦うこともあるだろう。……けれど、
「ですが、楽しみ、自己満足の為に、心優しき人々の心も体も壊すことは、民を預かる者として、断じて許すことはできません!」
 覚悟に合わせて成長するという名刀が閃いて、イレイナの剣を弾き飛ばした。それと同時に、
「悪い、遅れた!」
「いいえ、遅れていません!」
 嵐が合流する。援護する、というその前に、滅武士団をイレイナのほうに畳みかける。それをまともに受け、彼女は僅かによろめいたようであった。
「それでは、大伽藍にて、お相手しましょう!」
 彼女がひるんだ瞬間に、家光は巨大な鎧に乗り込む。甲冑や走行を合体させた巨大なその姿に、
「……なるほど楽しみ!」
 イレイナもまた顔を上げた。その眼には楽しそうな色が浮かんでいた。
「そうか……そうですかなるほどそうですか! これが楽しいという感覚! なるほど……なるほどなるほどなるほど!」
「ふざけているのか!!」
「ふざけてませんよ!」
 家光の強い言葉に負けじと高らかに、彼女は宣言して駆ける。明らかに人体に負担をかける動きで、無茶苦茶な速度で進撃し、その鎧の継ぎ目を切り裂く、切り裂いた部位からボロボロと装甲は離れていくが、家光は構わずそれを犠牲にしてそのまま巨大鎧が握りこんだ鉄剣を振り下ろした。
 その動きをかわそうとするイレイナに、
「動く、な……!」
 嵐の麻痺弾がさく裂する。かわしきれずに傷を追う少女。しかし……、
「まだです! あなたを倒すまで……僕の怒りは止まりません!」
「おうっ。怒りとか、そういうのはじゃ俺はねえけど……」
 いまだ立ち上がる彼女に、嵐は頷いて次の麻痺弾を握りこんだ。
「ここで止める! 最後まで、援護するぜ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ディフ・クライン
死者の冒涜は好ましくないな
イレイナは生きていないよ
貴方がそれらしく振る舞っているだけ
それは、人形遊びと何が違うんだい?

ああ、ムースが猛っている
ならばおいで。死せる深き森の主

召喚せしはここではない森の主だったヘラジカ
貴方と一緒にしないでくれ
死霊とは言えムースにはムース自身の意志がある
オレは彼に力添えしてもらっているだけだ

行こう、ムース
森を焼く、森の生き物を無為に殺す
それはどちらも、君が一番嫌いなことだったから

ムースにオレの氷属性を付与しよう
角の風に霰を
蹄に霜を
矢を冷気の風で吹き飛ばし
生きているエルフたちを背に庇い、冷たき蹄で共に駆けよう

死者には安息を
感情のない人形に、加減なんて期待しないでくれ



 ほぼ肩から脇腹まで真っ二つにされたような彼女の体は、
「ああ……なるほど痛い。なるほどこういうときは、痛いというべきでしょうねぇ」
 修復していく。抉り取られた場所は再び肉が戻り、切り裂かれた体は接合する。傷ひとつない体に戻ってしまえば、それはもはや人間のようで。
「……死者の冒涜は好ましくないな」
 そうしてそれは、明らかに人間ではなかった。
 故に、ディフはそう言って首を横に振った。
「イレイナは生きていないよ。……貴方がそれらしく振る舞っているだけ。それは……、人形遊びと何が違うんだい?」
 静かに、ディフが問う。その問いかけに、くるりとイレイナはそちらを向いた。
「さて、さて、さてどうでしょう。イレイナはその言葉に、答えを持ってはいません。なぜなら、私はイレイナであるからです」
「君は、イレイナではないよ」
 これ以上の問答は無駄だと、ディフはわかっていた。そしておそらくはイレイナもまた、わかっていただろう。だからそこで、会話は打ち切る。そうしてディフはそっと目を伏せた。
「……ああ、ムースが猛っている。……ならばおいで。死せる深き森の主。森の主よ。君の力を、貸して」
 代わりにディフは呼ぶ。ここではないどこか、別の森の主であったヘラジカが、その償還に応じて姿を現した。風を纏いし巨大な角、力強い蹄。その霊の姿に、イレイナは首を傾げる。どこか楽しそうに。
「あら、まあ。それは私の仲間たちとどこが違うの?」
「貴方と一緒にしないでくれ。死霊とは言えムースにはムース自身の意志がある。……オレは彼に力添えしてもらっているだけだ」
 一緒にするなとばかりに殺気を膨らませるヘラジカの霊。その背をディフは優しく撫でる。そのままその背に騎乗すると、ディフはムースに氷の属性を付与した。
「行こう、ムース。森を焼く、森の生き物を無為に殺す……。それはどちらも、君が一番嫌いなことだったから」
 その声に応じるように、霊は駆ける。角の風に霰を、蹄に霜を纏ったその姿。すかさず死人のエルフが矢を射かけた。
「ああ……こっちだよ」
 生きているエルフたちを背に庇い。その矢を冷気の風で吹き飛ばす。
「死者には安息を。……感情のない人形に、加減なんて期待しないでくれ」
 そのまま霜を纏った蹄を高らかに響かせて、村人だった死体へとディフは突進する。
 その突撃で現れた、かつて人であったものを蹴散らしながら、ディフはヘラジカの頸筋を撫でた。
 霊の怒りで空気が震える。風と霰を纏った角を掲げて、ヘラジカはイレイナだったものへと突進する。
 その怒りは、咆哮のように周囲に響き渡った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニクロム・チタノ
イレイナさん、あなたってヒトは・・・
エルフのみんな下がっていて!
許さないなんて言わないけど、倒させてもらうよ!
ボク結構素早いのさ、接近戦はボクが有利だ
でもなんて厄介なんだ
何度首を落としても復活するなんて
このままじゃボクの体力が無くなっちゃうよ・・・
こうなったら
燃えて反抗の炎
森を壊したくなかったけどもうこの方法しかない
重力嵐であなたもその鳥や仲間達も全て呑み込む
嗚呼、なんてことだろう
守るべき森を自分で壊すなんて・・・



 受けた傷を修復していく様は、明らかに人とは一線を画していて。
 ニクロムはぐっと睨むように目を見開いた。強大な敵に立ち向かうその瞳は、言葉にならない怒りをたたえていた。
「イレイナさん、あなたってヒトは……」
 叫びたい。叫びだしたかった。けれども何を叫ぶべきかもわからなかった。目の前のエルフはただ、ふわふわと笑って可愛らしく首を傾げている。
 きっと、生前もそんな風に笑っていたに違いない。
「嗚呼、なんてことだろう。守るべき森を自分で壊すなんて……」
 何を叫べばよかったのか。ひどいと叫べばよかったのか。可哀想にと嘆けばよかったのか。……けれども何を言ったとしても、その声はもう決してイレイナには届かない。
「そうですね……。確かにこの森を焼くのは残念なことでした。でも、私には目的がありましたから、仕方がありません」
「それは、イレイナさんの目的じゃなかった!! そんなことをしたいわけじゃなかった!」
 帰ってきた言葉に、ニクロムは叫ぶ。違う。これは……本当の彼女じゃない。だったら、
「許さないなんて言わないけど、倒させてもらうよ!」
 そう、ニクロムは宣言する。そういい捨ててから、
「エルフのみんな下がっていて!」
 イレイナへと走り込んだ。全力で近寄って、そのまま反抗の妖刀でイレイナの肩口から脇腹へと、一瞬で切り下げる。
「あら、痛い……それに、お早いですねぇ」
「ふふん。ボク結構素早いのさ、接近戦はボクが有利だ」
「それは……どう、でしょう?」
 薬とイレイナが微笑む。切り落おろた箇所が瞬間的に再生していく。
「!」
 肉が蠢いて繋がっていく。その感触にニクロムの背が泡立った。
「こ……の!」
「ふふふ、どうぞどうぞ、こっちですよー」
 腕を切り落とし、瞬間に再生する。
 足を切り裂き、瞬間に再生する。
「だったら……!」
 イレイナの首が落ちたとき、その首をポンともって胴体をくっつけたとき、たまらずにクロムは声を上げた。
「このままじゃボクの体力が無くなっちゃうよ……! こうなったら、森を壊したくなかったけどもうこの方法しかない……!」
 ごう、と風が舞い上がった。それは嵐のような重力の塊だった。
「燃えて反抗の炎……!」
 重力嵐が周囲に吹きすさぶ。あらゆるものを飲み込んでいく。
「これより反抗を開始する……! 絶対、あきらめないし、負けてなんてやらないから……!」
 彼女の苦戦に反応して、重力嵐は彼女の敵を飲み込んでいく。
「どっちが先にやられるか。勝負です……!」
 声をあげながら、まるで負ける気など欠片もないように、ニクロムは叫んで妖刀を握りこみ負けることなく振るった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クーナ・セラフィン
何か怪しかったけどそういう事か。
…沼男問題だったっけ。
周りから見て同じ姿で同じ振る舞いの存在がいるなら…と、私がどうこう言える話じゃないか。
けど今いるキミは別物だ。意志を都合よく曲解された人を害するお人形。
…悪事を為す前に介錯してあげる。

周りから片づける。同胞相手はやり辛いだろうし私が倒そう。
エルフ達には守りに専念するようお願いしつつ、なお攻撃してる奴を死人と判別。
剣や矢を革命剣で受け流しつつ懐に切り込みできるだけ損壊させないよう胸突撃槍の一撃を。
数減らし護衛がいなくなったら木々を利用し反撃躱しつつ切り込みUCの一撃を喰らわせる。
鳥も当然逃がさない、確実にUCで始末する。

※アドリブ絡み等お任せ



 クーナもまた、白雪と白百合の銀槍を構えて駆けた。
「みんな、逃げて! 逃げるのが無理なら守りに専念するんだ!」
 声をあげながら、槍を振り回す。死体と生きた人間を見分けるのは簡単であった。……生きている人たちは、現状が信じられずに呆然としていて、死者は即座に戦闘態勢に入ったから。
(何か怪しかったけどそういう事か。……沼男問題だったっけ。周りから見て同じ姿で同じ振る舞いの存在がいるなら……と、私がどうこう言える話じゃないか)
 それを冷静に判断して、クーナは白百合のオーラを纏わせた槍を振るう。
「苦しませるのも心苦しいんだよ――動かないでね?」
 同胞相手二はやり辛いだろうと、エルフたちを守るように右へ、左へ。身軽な身で死人のエルフたちを串刺しにしていった。
 構わず矢が放たれる。痛みを感じることのなさそうなその動きに、クーナはそれを美しい細剣で薙ぎ払う。薙ぎ払うと同時にもう片方の手で槍をくるりと旋回させて、その隙に敵の懐に踏み込んで深々と槍を突き刺した。
 一方では仲間たちが本体と戦っている。鳥と共に戦うエルフがすらりと長いその手を掲げる。
「!?」
 雷がクーナの鼻先で弾けた。即座にクーナは後退する。
「こっちも、気づいているのか……!」
「ええ。ええ。森の中の戦いはこのイレイナ、てなれたものですよ~?」
 呟きもしっかり拾って、少女が笑う。負けじとクーナは木々の影に隠れ、駆け上った。
「今いるキミは別物だ。意志を都合よく曲解された人を害するお人形。……悪事を為す前に介錯してあげる」
 死体たちの数が減った隙を狙い、クーナはイレイナのほうに迫った。雷が連続してクーナに放たれる。それを木々を盾に、時には上へ、下へと移動しながら飛び越えて、クーナは走る。
「そこだ!」
 鼻先を銀槍が掠める。そのまま内で顔を傷つけようとしたら、その前にイレイナがそれを己の腕で受け止めた。
「キミも、鳥も当然逃がさない、確実に始末する」
「うふふ~。怖いですね。できるでしょうか~?」
「勿論、やるさ」
 傷つけられた腕が瞬く間に再生していく。それに、
「諦めないよ。何度だって……やってやるから!」
 構わずクーナは槍をイレイナに叩きつけた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御園・桜花
「死は覆りません。貴方達はもう、滅びを運ぶ使者に過ぎないのです…」

UC「エントの召喚」
死体をどんどん地中から突き上げる樹の根で串刺しに
敵を百舌の早贄状態にし自分は高速・多重詠唱で破魔乗せた鎮魂歌歌い敵を攻撃
敵からの攻撃は第六感や見切りで避ける

「聖樹には他に使い道があるかもしれない、滅びから世界を救いたい。そのために考え足掻くのは、生あるものとして尊い願いでした。でも滅んだ貴方達は、滅びを広めるものとしての聖樹の使い道しか選べなくなってしまったから。私達は、私は…貴方達を滅します」
「骸の海に戻ったら。生あるものへ、森を慈しむ者への転生を願ってくれませんか。またお会いできる日をお待ちしています」



 それは主張した。生きているのだと。
「死は覆りません。貴方達はもう、滅びを運ぶ使者に過ぎないのです……」
 だから桜花は応えた。死者は死んでいるのだと。
「なぜ」
「なぜ?」
「命とは何かしら。魂とは何かしら。生きて、動いて、試行して。それ以外に何があれば生きていて、何がなければ死んでいるのかしら?」
「……世迷いごと、ですね」
 歌うようなイレイナの口調に、桜花はそっと目を伏せる。
「おいでませ我らが同胞。その偉大なる武と威をもちいて、我らが敵を討ち滅ぼさん」
 議論をするつもりは、最初からなかった。桜花ははらりと、軽々と、桜の花びらの刻印がある鉄線を開く。開くと同時に周囲に木の牧人の霊が召喚された。
「……敵か、味方かで分ければあなたは間違いなく敵です」
 牧人たちが地面から槍のように木の根を走らせ、まるで生きているかのように動く死体たちの体を貫いていく。
「聖樹には他に使い道があるかもしれない、滅びから世界を救いたい。そのために考え足掻くのは、生あるものとして尊い願いでした」
 生きているうちに、その悩みを聞いていたなら、共に考えることもできたかもしれないと。桜花は心のどこかで思いながらも鉄扇を仰いだ。動けなくなっている死体たちに、破魔をのせた鎮魂歌を歌う。
「でも滅んだ貴方達は、滅びを広めるものとしての聖樹の使い道しか選べなくなってしまったから。私達は、私は……貴方達を滅します」
 鎮魂歌を歌うと、死体ったちの体がボロボロと崩れていく。同時にイレイナの体も崩れ落ちる。……イレイナはよりオブビリオンに近いからか、崩れながらもどんどん体を再生していく。素早く治りながら、そして素早く崩れ落ちていく。
「どうして?」
「どうして……?」
「滅びを広めるかどうかは、まだ、わからないじゃないですか~? もしかしたら、恒久の世界平和が得られるかもしれませんよ?」
 改めて問いかけられ、桜花は少し、視線を上にあげた。……目には、沢山の木々が映っている。全焼を免れた、木たちである。
「それは……確かにそうかもしれません」
 聖なる木は天上界へ至るために集められている、としか桜花たちは知らない。天上界が如何なるものかもわからない。……けれども、
「けれども、あなたたち自身が滅びを広める存在ですから。そして……」
 そして。
 桜花の後ろでは、泣いているエルフたちがいる。家族が死んで、それが襲い掛かってきて。その光景が信じられずに、泣いている人がいる。
 周囲には、煙の臭いがいまだ充満している。森に火を放たれた。その火が消えても、燃えていたという事実は消えない。木々の何割かは失われ、そこに生きていた小さな虫や鳥たち、住人の命も失われただろう。
「このような悲しみしか引き起こさないやり方で得たものでは……決して、平和を得られません」
「……そう」
 なるほどと。納得しているのかいないのか、感心したような声をイレイナは上げた。
 同時に、炎の矢が桜花へ向かって放たれる。それを桜花はよけよう……として、
「……」
 鉄扇で叩き落とした。僅かにその手の甲が焦げるが、そんなことは構わない。
 これ以上……森の中に火を落とすぐらいならば。
「骸の海に戻ったら。生あるものへ、森を慈しむ者への転生を願ってくれませんか。そして……またお会いできる日をお待ちしています」
 歌とともに、イレイナの体が崩れて行く。崩れながらもそれが再生していく。……それで桜花も構わない。再生は無限に続くわけではないだろう。ならばそうして……冷徹に削っていく。
「私が祈るの? イレイナの転生を?」
「ええ」
 桜花の言葉に、それは僅かに、笑ったようであった。
「……次も、殺しますよ」
「いいえ。その時は、私が守ります」
 きっぱりと桜花は言い切る。そして歌を歌い続ける。その足をとどめて、仲間たちに後を託すのであった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シキ・ジルモント
エルフの村人の生存を優先、必要なら庇ってでも守る
仲間の寝返りにあったように感じて、正常な判断ができない者も居るだろう
しかしそうさせたのはオブリビオンだ、彼らの言葉は本心ではない
死んで彼らの仲間となるのではなく、生きて集落を立て直して欲しい

人喰い鳥を倒す邪魔になる死人、エルフに近付く死人は躊躇わず射撃で倒す
人喰い鳥だけの狙撃を狙うが、死人を倒す以外に射線を通す方法が無いのなら、まずイレイナ含む死人を倒す事を考える
数が多い場合、囲まれた場合はユーベルコードで反撃し体勢を立て直す

ダメージを受けても動ける限り戦闘を続行する
オブビリオンに聖なる木は渡せない、そして操られている彼らに仲間を殺させたくはない


冴島・類
彼らが零していた「死んだ」と言うのは
イレイナさん達のこと、だったのか
無念や痛みの中で、伝えたかったのかと
森の為にと倒した彼らの声を、反芻し、悼み

確かにとても、怖い
既知に潜まれれば、気付くのは遅れるし
感情が鈍らせるし

悲しむエルフの皆様に申し訳ない…が
これ以上は、させぬ

己は、操られた遺体の対応へ
村人への攻撃は瓜江で庇い、下がってと声かけ
彼らの持つ武器へ綾繋の糸を放ち、強奪、引っ張り引き離し
踏み込み、可能な限り至近で傷を少なく
破魔込めた刀で突き倒し

助けられず、御免なさい
その身に家族は殺させない

制御奪った武器を操り飛び道具のように使用
鳥へ攻撃、当たらずとも庇わせて
味方が魔女へ攻撃しやすい隙を、作りたい



 少女が手を伸ばす。お父さん、と呼びかけると、死人となったはずの父親が微笑んで手を広げる。
「どうした、アリス。こっちにおいで」
「あ……」
 ふらふらと少女が父親のほうへと歩き出そうとした瞬間、
 男の持っていた剣が、娘に向かって閃いた。
「……っ」
 血が飛び散る。その血に僅かに眉根を寄せて、シキは拳を握りこんだ。
「下がって!」
「ああ!」
 思わず、シキの体が動いていた。庇うように少女と男の間に立ち塞がり、腕でその剣を受ける。受けた瞬間、声を発したのは類だ。即座に絡繰人形の瓜江を前に出す。
「こっちだ」
 二撃目、三撃目を瓜江が捌いている間に、シキは少女の肩を抱いて後退させる。凍り付いたように動かない少女に、悲しそうな男の声が駆けられた。
「アリス。どうしたんだい? こっちにおいで」
「皆怖い顔をしているわ。どうしちゃったの? 私たちより、そんなよそ者のことを信じるの?」
 次々と死体から声が上がる。その声にエルフたちが傍目で見ても明らかなぐらい動揺していてシキは思わず言葉に詰まる。
 ちらりとシキは類のほうを見る。類は頷いて一歩前に出た。同時に瓜江も前に進む。
 じわじわと滲みよるようにこちらへと向かってくる死体たち。
 その奥にいるイレイナに、類は一度だけ視線を向ける。
(彼らが零していた「死んだ」と言うのは、イレイナさん達のこと、だったのか……)
 先ほど戦ったオトシゴたちは言っていた。……なぜ、言っていたのだろうかと、類はそんなことを考えた。
(知らせようとしてくれていた……)
 無念や痛みの中で、それを伝えたかったのかと。そう思うと、森の為にと倒した彼らの声が蘇ってくるような気がして胸が痛くなる。
 なぜ、何のためにかはわからない。……けれどもきっと、彼らも自分から銛を燃やしたくはなかったのだと思いたい。そして、託されたのだと思いたい。
(悲しむエルフの皆様に申し訳ない……が、これ以上は、させぬ。託されたからには、必ず守る……!)
 濡羽色の髪持つ絡繰人形が赤い糸とともに踊る。十指でそれを操って、類は正面の死体の腕を叩き落とす。
「……!」
 悲鳴のような、息をのむような音がする。きっと武器を叩き落とすと同時に、そのまま腕が落とされたからであろう。
 切り口が蠢く。再生しようとしている気配を感じる。落とされた腕が再生される、その一瞬前に、
「結んだならば、解くまで」
 不可視の糸が死体の手にしていた剣とつながった。そのまま制御権を剥奪し、剣を遠くに放り投げる。
「……」
 銀杏色の組紐飾りを揺らし、即座に類本人が距離を詰めた。そのまま破魔の力を込めた刀で、心臓を貫く。
「(なるべく、傷を少なく……!)」
 どうと倒れる死体は、確かに胸を貫かれて倒れた。……傷口が蠢いている気配がする。頭部以外の傷口は遅かれ早かれその傷は塞がるだろう。家族がいる手前、なるべく傷つけたくないと思っていたけれど……、
「……助けられず、御免なさい。けど……その身に家族は殺させない」
 類はそのまま、額に短刀を突き刺してとどめを刺した。

「落ち着くんだ。……信じたくはないだろう、正常な判断ができない者も居るだろう。けれども聞いてくれ。彼らは……敵だ」
 類が戦いを請け負ってくれている間に、シキが静かに、噛んで含めるように、エルフの村人たちに語り掛けた。
「彼らは、あんたたちを殺しに来る。優しい言葉で、悲しそうな顔をして、殺そうと、しているんだ」
 ……優しく人に語り掛けることの、なんと難しいことか。
 涙を流す少女に、シキは言うべき言葉を探す。……気の利いた言葉なんて、出てこない。
「しかしそうさせたのはオブリビオンだ、彼らの言葉は本心ではない。死んで彼らの仲間となるのではなく、生きて集落を立て直して欲しい」
 シキが語るのは、ただの彼の願いだ。
 本当は、本当に、それが本心でないのかどうかすら、誰にもわからないことだ。……死人の思いなんて、誰にだってわからないから、
 だから、シキが彼らに生きてほしいと願ったのだ。……そうしてシキもまた、血のにじむ手で銃を握りこむ。
「……」
 そうして、類とともに敵へと向き直ると、正面を見据えてこちらへ襲い掛かってくるエルフの死体に弾丸を撃ち込んだ。
「……頭部以外は、再生されるから」
「わかった」
 さすがに大きな声で言えなくて、僅かに声を落として類が言うと、シキも頷く。
「援護させてくれ。死人を倒す以外に人喰い鳥に射線を通す方法が無いのなら、まずイレイナ含む死人を倒していこう」
「そうだね……」
 赤い糸とともにからくり人形が躍る。それが武器を奪っている隙をついて類が刀を額に突き立てた。すぐ隣にいた少女の死体が弓を引き絞る。その矢が放たれる前に、シキの弾丸が少女の死体の額に叩きつけられた。
「オブビリオンに聖なる木は渡せない、そして操られている彼らに仲間を殺させたくはない」
「……ああ」
 シキの言葉に類は頷く。
「……確かに、怖いものだ」
「怖いもの……?」
「ほら、オトシゴたちの言っていた、怖いものが来るよ、って」
「ああ」
 類の言葉に、オトシゴたちの言葉を思い出してシキも頷く。
「確かにとても、怖い。既知に潜まれれば、気付くのは遅れるし、感情が鈍らせるし……」
 何より悲しいのだと、類は言った。そうだな、とシキも小さく頷いた。
「お父さん……」
 倒れる父親に駆け寄ろうとして、少女が止められている。それを後ろに感じながら、二人は静かに正面を見据えた。
「味方が魔女へ攻撃しやすい隙を、作りたい。鳥に当たらずともいい」
「そうだな。……」
 シキは視線を走らせた。銃声がする。連続した射撃が的確に周囲の死体を撃ち抜いていく。始終一貫して指揮の表情は変わらない。態度も変わらない。ただ。祈るような何かがあると、彼の背中を見るエルフたちは、思った。そして、
「瓜江……。僕たちも。この人でなくなってしまった人たちの縁は、もう繋ぐことはできないけれど」
 類もまた、赤い糸で死体を繋ぐ。武器を奪い、落とす。断つための糸を振るうことは、決して楽しいものではなかったけれど……、
「……」
 きっと、彼らが乗り越えてくれると、信じて……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フィーネ・ルーファリア
ああ、やっぱりあの違和感は(気付いてはいたが確信が持てなかった様子)
イレイナさんの森を守りたいって言う気持ちを利用して、嫌がるオトシゴ達に無理やりあんな機械を着けて特攻させて
許さないわ!

選択UCの羽刃を全部イレイナの肩の鳥に向けて放つわ
そうなるとイレイナさんが庇うだろうから怯んで攻撃の手を止めてしまうかも

確かに、イレイナさんは聖なる木の力を他のことに使いたいと思ってたのでしょう
でもそれは世界のためであって、あんた達の目的のためなんかじゃないわ!

助けたいけど倒すしかないなら……
羽を拡散させてエルフ達を襲ってる彼らに向ける
そしてイレイナさんにも
もう少し早く助けに来てあげれればよかったわ
ごめんなさい


木霊・ウタ
心情
命を弄ぶ奴を許さない
鳥野郎と死者を海へ還し送ってやろうぜ

エルフ
惑わされるな!
家族やダチを解放してやるんだ

被害が出そうなら
炎翼広げ炎の幕で庇う

戦闘
体からジェットの如く炎を噴出させ
一気に間合いを詰め
その勢いと
更に刃から爆炎噴出で剣速をあげ
獄炎纏う焔摩天を薙ぎ払う

鳥を狙う
庇われ受けられても構わない

イレイナ
心優しい真面目な子だったんだな
そんな子が命を蔑ろにする筈はない
傀儡にされ可哀そうに
倒すことで解放する

炎交じりの剣風
舞い散る火の粉が
鳥とイレイナへ延焼
焼き鳥にしてやる

イレイナの魔法も獄炎で喰らい
火力上昇

続けざまの剣撃と共に
徐々に広がり激しさ増す紅蓮で
イレイナと鳥、死人を送る

事後に鎮魂曲
安らかを願う



 お父さん、と誰かが泣いていた。
 イレイナ、と誰かが呼んでいた。
「ねえ、イレイナおねえちゃん、どうしちゃったの?」
 ウタと一緒に行動していたエルフの少女リタが聞いた。まだ五歳ぐらいで、状況が理解できていない、そんな顔をしていた。
「アリスおねえちゃんはどうして泣いてるの? お母さんはどうして泣いてるの? ダグおじさんはどうしてあんなに怖い顔をしているの? ねえ、どうして……」
 それでも、その大人たちの空気を感じ取っているのであろう。言いながら、泣きだしそうになるリタの言葉に、ウタはそっと、その手を握った。
 握りしめて、一呼吸。そうしてぐっと何かを堪えて顔を上げる。
「惑わされるな! 家族やダチを解放してやるんだ。それしか……それしか、ねえだろ。……ウタおばさん、リタを頼む」
 ウタと同じ名前のおばさんが、はっ。と我に返ったように娘に駆け寄る。抱き上げて後退したところで、
「おやおや、余所見はいけませんよ~?」
 はっ、と、思わずそれに気を取られていたフィーネは顔を上げた。エルフから遠ざけるように、イレイナの前に立ち塞がっていたフィーネの鼻先を剣が掠める。間一髪でそれを避けて、フィーネは油断なく弓を構えた。
「いいえ。余所見なんてしてないけれど。……ああ、やっぱりあの違和感は、そうだったのねと思っただけよ」
「違和感? 違和感なんてありましたか~?」
 私は、完璧だったはずでしょう。と、彼女が言う。その、当たり前のことを言うかのような口ぶりに、フィーネはぐっと弓を握る手に力を込めた。
「イレイナさんの森を守りたいって言う気持ちを利用して、嫌がるオトシゴ達に無理やりあんな機械を着けて特攻させて……。そんなの、ほんのんの気持ちなわけ、ないでしょう! 許さないわ!」
 声を上げる。上げると同時にその叫びに呼応するかのように風邪が巻き起こった。魔法で作られた刃の付いた羽根が、ぶわ、と、その怒りを象徴するかのように舞い上がる。
「弓だけじゃなくて魔法だって得意なんだから! ……我が敵を切り裂け!」
 矢と同時に羽刃も叩きつけるフィーネ。すべての怒りを込めて、フィーネはイリーナの肩に止まる鳥へと全力を叩きつけた。
「させません~」
 しかしそれが鳥に届く前に、イリーナがその身をよじった。腕を掲げ、その先から肩のあたりまで。その身を使って羽刃を受け止める。数多の傷口から血が流れ……、
「おかえしします~」
 受け止めた羽を風の魔法で操って、今度はフィーネ向かってそれを叩きつけた。
「……っ!!」
 思わぬ行動に、フィーネが固まる。自分に攻撃が向かってきたことよりも、イレイナが鳥をかばい、そして傷だらけになったことに思わず衝撃を受けた。
「こ……の!」
 フィーネの鼻先まで迫ったそれを、今度は炎の翼が燃やし尽くす。炎の翼を広げて、炎の膜でフィーネをかばって、ウタは巨大剣を構えた。
「大丈夫だな!」
「え、ええ……!」
 それで、はっ、とフィーネも我に返る。
 イレイナといえば、傷だらけになったはずなのに瞬く間にその傷口が治癒されて言っていた。体の肉が動き、傷がいつの間にか消えていく。そのさまは生きているものでは到底なかった。
「心優しい真面目な子だったんだな」
 そのさまに、ウタがぽつりとつぶやく。その言葉は、フィーネの胸もうった。
「そんな子が命を蔑ろにする筈はない。傀儡にされ可哀そうに……」
「そう……そうね。あれは、もうイレイナさんではないのね……」
 その言葉を確認するように、反芻するようにフィーネは言って。そうして歌は力強く頷いた。
「ああ。なら、せめて、倒すことで解放する。……命を弄ぶ奴は許さない……。鳥野郎と死者を海へ還し送ってやろうぜ」
 体から炎を吐き出して、ウタが返事を待たずにかけた。刃から吹き上げる炎を払う。
「イレイナと一緒に……焼き鳥にしてやる!!」
 そのまま突っ込むと同時に、イレイナから氷の魔法が放たれた。
「そんなもの!!」
 その矢を、炎が払いのける。邪魔をするなというように、ウタは踏み込む。
「今だわ……」
 その対処に追われている間に。フィーネが再び羽刃を展開させる。
「今度は、ためらわない……!」
「ひどいです~。あなたとは、お友達になれると思ってましたのに」
 炎の間を狙って、フィーネは刃を絶え間なくイレイナへと届ける。イレイナは炎と刃をその体で受け、受けながら瞬間に傷を再生させ、また傷を追うを繰り返していた。
「そうね。イレイナさんとは、友達になれたかもしれないわ。……本当のイレイナさんとなら!」
 悲しそうな声を出すイレイナに、フィーネは今度は躊躇わない。……辛くないといえばうそになる。本性を知っていても、悲しそうな声に攻撃を向けるのは、辛い。けれども、
「確かに、イレイナさんは聖なる木の力を他のことに使いたいと思ってたのでしょう。でもそれは世界のためであって、あんた達の目的のためなんかじゃないわ! 助けたいけど倒すしかないなら……、私は!」
 羽根を拡散させる。いつの間にか彼らを取り囲むように新たに現れた死体たちも巻き込んでフィーネはその刃を突き立てる。
「俺たちが送る! 安らかにイレイナたちが眠れるように!」
 炎がイレイナと鳥を巻き込む。フィーネはそっと、心の中で呟いた。
「もう少し早く助けに来てあげれればよかったわ…………。ごめんなさい」
 風の刃と炎が彼女を包み込む。そこには……、安らかを願う気持ちが確かにあったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夏目・晴夜
全く気付きませんでした…凄いですね、まるで寄生虫です
その悪行は例えハレルヤがしても許されないでしょうね

犠牲者の体を傷付けるのはいい気分ではないので、なるべく一撃で仕留めたく
仕留め損ねても同じ傷口を刺して抉って、難しくとも極力傷を増やさぬよう尽力します
住人たちへの攻撃は妖刀で【武器受け・なぎ払い】庇ってあげますよ
代わりに怪我してあげるのも猟兵の仕事ですしね

完璧に同じ行動をして本人に成りすましても、本人の意識が無いならそれは見目だけの偽物です
本物のイレイナさんが聖なる木に何を思っていたのかは知りませんが、最期に何を思ったのかは私でもわかりますよ
無念だったであろう本人の意思に沿って、目的は阻止します



 一歩、後ろに引く。引いた瞬間、剣の切っ先が鼻先を通過した。
「あら」
「おや」
 冗談みたいな呟きを互いに漏らした後、晴夜はさらに一歩引き、イレイナはさらに一歩突っ込んだ。
 剣と妖刀がぶつかり、不愉快な音を立てる。けたたましい音とともに剣が妖刀を抑え込んでいく。
「全く気付きませんでした。……凄いですね、まるで寄生虫です」
 華奢なエルフの姿からは想像できないその力に、晴夜は淡々とイレイナを観察した。……常人ではありえない動きをさせる、さらにそれによる負担を瞬時に治癒させている。それにより、生前以上の力を出しているのであろう。
 焼かれようが、傷つけられようが。まるで構わないというそのあり方は晴夜にとっては理解しがたいものだ。
「……その悪行は例えハレルヤがしても許されないでしょうね」
 すっ、と刀を右へそらす。剣を受け流した後で、即座に踏み込んでイレイナに迫った。
「……っ!」
 イレイナは懐への侵入を許す。正確に首から頭へ。狙い済ませた一撃にイレイナは腕を上げてそれを受け止める。左腕を切り落とさせることで攻撃をそらし、そのまま即座に後退した。
「……」
「……」
 互いに、距離をとる。落とされた彼女の腕からは血が吐き出され……そして即座に新たに腕が生えてくる。切り落とされた腕は灰のように溶けて消え、傷が消えた女は警戒するように晴夜を見ていた。
(さすがに、犠牲者の体を傷付けるのはいい気分ではありませんね……)
 消えていく腕を視界に収めながらも、晴れる夜はもう一度刀を両手で握りしめる。
(いつものように傷口を抉るなら、彼女が庇う本体や頭部を狙うか……もしくは再生を許さぬ速度で膾斬りにするか……)
 考えながら、晴夜は様子をうかがう。猟兵たちの攻撃を受け、傷を追っては再生を繰り返している身体であるがそれも無限ではないと思う……。思いたい。取りあえずさっき首を落とされた彼女がそれをひょいと拾ってひっつけたことは考えないようにしておく。
(ですが……あまり時間もかけたくないのは事実です)
 いつも駄々洩れている思考であるが、さすがに今日はそれを口から出すことはしない。晴夜はちらりと背後をうかがう。
「残念ですねえ。私を殺しても、だーれも褒めてくれませんよ」
 それを察してか、イレイナも楽しげに言った。晴夜の後ろでは、無事であった村のエルフたちが固唾を飲んで彼らを見ていた。……それが決して、好意ばかりの気持ちでないことは晴夜にもわかっている。そこにあるのは、悲しみばかりだ。
「それよりも私たちと一緒に楽しく暮らした方がとっても有意義ですよ~? 聖なる木を持ち帰れば、きっとたくさん褒めてくれますから」
「ふ……っ。その程度の褒めで協力すると思われるとは心外ですね!」
 その声をきっかけに、再び晴夜が踏み込む。愛刀をしっかり握りこみ、
「完璧に同じ行動をして本人に成りすましても、本人の意識が無いならそれは見目だけの偽物です。本物のイレイナさんが聖なる木に何を思っていたのかは知りませんが、最期に何を思ったのかは私でもわかりますよ……。無念だったであろう本人の意思に沿って、目的は阻止します! あと褒めてもらうのは本人の霊に気持ち褒めてもらったと思うことにしますのでご心配なく!」
 いるかどうかは知らんけど! 言うなり晴夜は再び距離を詰めた。再生を封じるには頭部を狙うしかない。その切っ先が彼女の目に向かう。
「やめて、殺さないで!!」
 背後から悲痛な叫び声がする。イレイナもまた、それを捌こうと剣を晴夜のほうに振り下ろそうとした瞬間、
「……っ、捉えました!」
 晴夜は紙一重でそれを避けて、背後に回り込みその背に剣を突き立てた。
 瞬間、傷口が再生されて行く。それも構わず晴夜は同じ傷口に妖刀を突き刺し続ける。一撃一撃が本来ならば致命傷だ。破壊と再生を繰り返す体に、
「ちょっと……大人しくしていてください。今のうちです!」
「離せ……離しなさいっ!!」
 誰かが動いた頭部と体を分断させ、そして本体を倒す。それまで抑える。その意図を察したのか、猟兵たちが動いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

篝・倫太郎
死は死であって、そこでその命は仕舞いだ
思考や言葉を辿って模したとしても
それは進化のない死が訪れるまでの『過去』を模してるに過ぎない
人は、生きていれば未来があって進化がある
どうやったって進化が訪れない以上、死人は死人だ

拘束術使用
イレイナも含め、射程範囲内の総ての死者に
鎖での先制攻撃と同時に拘束
術に破魔と浄化を乗せとく

拘束したらダッシュで接近して
吹き飛ばしと衝撃波を乗せた華焔刀で攻撃
おっと、そうそう、華焔刀にも破魔と浄化乗せて
村人への攻撃を阻止するように立ち回り

敵の攻撃は見切りと残像で回避
回避不能時はオーラ防御で防いで
武器受けで受け流してカウンター

死者を、死を、冒涜するのも大概にして
とっとと還んな



「ほんと、大概厄介だよな!」
 災いを縛る見えない鎖が引きちぎられる。それを新たに結び直して、倫太郎は華焔刀を構えなおす。
 腕や足を拘束すれば、それを躊躇いなく切り落とす死体たち。死者は死者ゆえに、痛みはないのだろう。その後体を修復していくのを見ると、さすがの倫太郎も毒づきたくなるのは仕方のないことかもしれなかった。
「こ……のっ!」
 華焔刀が薙ぎ払われる。破魔の力をのせた刃で切り裂いていく。浄化をのせればイレイナは兎も角、それ以外の死体の修復は目に見えて遅くなる。ならばやらない手はない。
「困り、ましたね……! 怪我をしてもすぐ直るのが、私たちのいいところですのに……!」
 他の猟兵と交戦中のイレイナであったが、倫太郎のことも見逃してはいないようであった。その言い方に、はっ、と倫太郎は声を荒らげる。
「死は死であって、そこでその命は仕舞いだ。思考や言葉を辿って模したとしても、それは進化のない死が訪れるまでの『過去』を模してるに過ぎない。……人は、生きていれば未来があって進化がある。どうやったって進化が訪れない以上、死人は死人だ!」
 声をあげながら、全力で倫太郎は走る。丁度仲間の猟兵が、イレイナの体を動けないようにつなぎとめたところであった。
「さすがに首刎ねられたら、そう簡単に体は生えてこないだろ!」
 先ほど倫太郎はほかの猟兵たちに腕を切り落とされた彼女が、その腕を新たに生やすのを見た。そして首を落とされても、冗談のように再びそれをのせて繋ぎ止めたのを見た。首から下の彼女の再生力はすさまじくてきりがない。……なら、残酷なことでも、しなければならないのは、
「その首貰って……それで遠くに、飛ばす!」
「それは……さーせーまーせーんー!!」
 倫太郎の言葉に、イレイナは叫んだ。冗談のような言葉の一言一言が魔法のように熱を持つ。半壊していた死体たちが、無理やりにでも動いて出鱈目に襲い掛かる。それは……、
「くっそ!」
 背後に避難しているエルフたちに向かっていた。即座に倫太郎が拘束術を再び飛ばす。倫太郎としては、そうされたら対処せざるを得ない。
「これ以上、生きてるやつらを傷つけられてたまるかよ……!」
「わかります~。それが人間だと、わかっていますよ!!」
「だったら……!」
 倫太郎が何かを握りこんだ。そうして狙いを定めて、
「これで、どうだ……!」
 投げた。それは、小刀であった、イレイナは手が塞がっているから避けられない。風の魔法が小刀に叩きつけられる。その、イレイナが刃へと意識をそらした瞬間、
「死者を、死を、冒涜するのも大概にして……とっとと還んな!」
 一瞬で倫太郎はイレイナへ肉薄し、いつもの華焔刀を翻し……その首を、跳ねたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

都槻・綾
村人達の守護を念頭第一
死人を迎撃

さぁ
戦況を切り抜けてのち
心の限りに弔いをしましょう

背に庇いしエルフ達へと微笑んで
今を生き抜く為の力を鼓舞

高速で紡ぐ花筐

花嵐で霞む視界は
骸達を海へと帰すばかりでなく
子供達にかつての家族の散華を
残酷に目に焼き付けない為の
せめてもの覆い

朗たる詠唱で
範囲一掃

霧が晴れたなら
鳥と魔女へと疾駆
走りながら抜刀

本性は器の身故に
己も「生きている」とは言い難く
生と死の完全なる線引きは出来ないけれど
少なくとも
骸と化した命は「生きては居ない」というのが
現し世の理のようだから

即ち
理は呪
反すれば
返呪を喰らうことになりますよ

淡い笑みの元
袈裟懸けに切り上げる

撃退した後は
村人と共に
亡き命達の弔いを



「ああ。……ああ」
 戦いが終わっていく。もはや逃れられない決着の気配がする。
 それを見守るエルフの村の人々。そこに喜びはない。なぜなら、戦っているのは死んだとされている彼らの仲間であるからだ。
 倒さねばならぬことはわかっている。
 けれども、いま彼らはこうして、動いているのだ。
「……さぁ、もう少しです。戦況を切り抜けてのち、心の限りに弔いをしましょう」
 だからこそ、綾はそう言って微笑んだ。背に彼らを庇い、守っていた綾には、彼らの悲しみはよくわかっている。
 ……けれども、彼らはこれからも、生きて行かなければいけないのだから。
「ね?」
 これは必要なことなのだと、念を押すように綾は言った。無言でうなずく彼らに、綾は再び前を向く。
「いつか見た――未だ見ぬ花景の柩に眠れ、」
 そうして、綾は二つ目の己の武器を四季謳う彩りの花びらへと変えていく。今までも彼らを守るために使っていたが、さらに強く、深く。色とりどりの花弁が吹きすさぶ。
 傷ついた死人たちがその刃にさらされて消えていく。即時修復しなくなっているのは、仲間たちの攻撃が聞き、そしてイレイナたちも追い詰められているからだろう。
 ……だからこの刃は、必要以上といえるかもしれない。
 けれども、綾はそうしたかったのだ。……それは、
「うう……。お父さん……」
 涙を流す、村人たち。
 家族の死を、仲間の死を。なるべく隠したいという、それは綾の思いだったのだろう。
「ああ……」
 綾はぽつんとつぶやいた。そうして……、
「生とは、何なのでしょうね」
 言って、かけた。丁度その花の色どりが途切れる隙間に、一瞬にして鳥と魔女との距離を詰めた。
「!」
 村人たちの前から動かないと思っていたのか。イレイナが驚いたように意識を向ける。その瞬間、
 魔女の首が刎ねられた。
 頭部以外の傷を瞬間的に再生させる彼女。そしてそれを利用して、本体の鳥を庇ってくるのがあのオブビリオンの戦法であった。
 本体に攻撃を通すには、まず、首を落として、即座につなげられないよう体から遠ざけるしかなく、そして……、
 庇うものなくなった人喰い鳥は、己の敗北を察して飛び立とうとしていた。
「やあ、いかせませんよ」
 しかしそれに、綾が間に合った。黎明の如き清澄な刀身が鳴る。
「……っ」
「本性は器の身故に、己も「生きている」とは言い難く。生と死の完全なる線引きは出来ないけれど……、少なくとも、骸と化した命は「生きては居ない」というのが現し世の理のようだから」
 歌うように、綾は言う。彼らが息もであるのか、どうなのか。そんな難しいことは、綾にはこたえる気がないけれども……、
「即ち、理は呪。……反すれば、返呪を喰らうことになりますよ」
 そうして、一閃。敵は敵だとばかりに淡い笑みの元、
 まっすぐにその鳥の体を斬り上げた。
 全身を真二つにされた鳥は、ひと声鳴いて地に落ちる。
 そうすると今まで、首を撥ねられたとしても最終的にはその体を修復させていたイレイナの動きもピクリと止まる。
 ざあ。と。
 鳥も、イレイナも、それ以外の死体も砂のようにその姿は輪郭を失い崩れていき、
 最後にはなにも。……もう何も残らなかった。
「……それでも、弔いをしましょう。彼らは確かにここに生き、そして死んだのですから」
 消えていく鳥に、小さく綾が呟いた。
 そうして……戦いは終わったのである。

 その後、エルフたちは感謝し今後「聖なる木」の力が必要になるような事があれば、いつでもすぐに協力すると猟兵たちに誓った。
「悲しいのは……悲しいです。けど、それでも」
 助かった命で、守られた命だから。
 大事にしたいと、父を亡くした娘はそう猟兵に言ったという……。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月04日


挿絵イラスト