12
真夏の夜にはまだ遠く

#アリスラビリンス #猟書家の侵攻 #猟書家 #マーダー・ラビット #時計ウサギ

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アリスラビリンス
🔒
#猟書家の侵攻
🔒
#猟書家
🔒
#マーダー・ラビット
🔒
#時計ウサギ


0




●然れどウサギは誘う
 無数にあるといわれる魔法のウサギ穴、その一つをアリス達は時計ウサギに案内されながら進んでいた。
 明るい雰囲気の、綺麗なウサギ穴を先導するのは明るくも陽気な時計ウサギ。
「は〜い、こっちですよ『アリス御一行様』! 次の国にこそ、アリスさんの『自分の扉』があればいいですね!」
 自分の扉、と言われてアリスの少女が希望に溢れた瞳で頷く。
「そうですよね~、ここまで大変な冒険をしてやってきたんですからね」
 あの時はこうやって切り抜けた、あの時は辛くてもアリスさんの笑顔があったから皆で頑張れた、そんな今までの冒険を振り返るような時計ウサギの言葉に、愉快な仲間達もそんな事もあったねと笑っている。
「そんな大変な旅も、きっともうすぐ終わりですよ」
 そうね、そうだといいわね、とアリスが時計ウサギを見て笑った時だった。
「そういえば、ウサギ穴って僕ら時計ウサギが先導しないと通れないんですけど、知ってました?」
 顔はいつも通り笑っているのに、声が何処かいつもと違う。そんな時計ウサギに、知らないわとアリスが答えた。
「おや、ご存じなかったんですね! じゃあ、一つ賢くなったってことですね!」
 良かったですね~と続けて、ではもう一つと時計ウサギが笑う。
「じゃあ逆に、今みたいなウサギ穴のど真ん中で、時計ウサギが居なくなったら、一体どうなると思います?」
 先導してくれる時計ウサギが居なくなったら? 考えたこともなかった質問に戸惑いながら、アリスが言い淀む。
「はいはいシンキングタイム……1、2、終了! はい、アリスさん!」
 名指しで問われ、アリスが迷いながらも違う世界に辿り着いちゃうとか? と、答えた。
「ぶっぶー、はい残念! 正解は~『骸の海の藻屑と化す』でした~!」
 予想もしていなかった答えに、アリス一行が息を飲む。
「はい、それでは正解できなかったアリスさん達には、実際に体験して貰っちゃいましょう~!」
 お別れの時間です、ばいばい! そう言うと、時計ウサギが笑って軽やかに走り出した。
「ああ、そうだ! でも、いちおう穴の出口で待ってるから」
 出てこれたら、ご褒美に殺してあげるね~!
 時計ウサギの笑い声がこだまして、あっという間に姿が見えなくなると、じわりじわりとウサギ穴の様子が変わっていく。
 明るく綺麗な道は、何処か悍ましく、恐ろしいものへと。
 呆然としていたアリス達が今からでも遅くはないと、時計ウサギが走っていった方へ歩き出すと世界は一変する。
 見たことがあるようでないような、夜の学校の世界へと。

●グリモアベースにて
 アリスラビリンスに猟書家の一人が現れる、その名はマーダー・ラビット、時計ウサギなのだと八重垣・菊花(翡翠菊・f24068)が猟兵達へと告げる。
「マーダー・ラビットはアリス達をウサギ穴に置き去りにするんよ」
 置き去りにされたアリス達は、ウサギ穴から出られなくなり骸の海の藻屑と化してしまう。それを猟兵達の手で救い出してほしいのだと、菊花は言った。
「時計ウサギの先導がないウサギ穴はな、不安定に時空の絡み合った異世界になってしまうんやけど」
 今回は、どうも夜の学校の世界になってしまっているようで。
「夜の学校って言うたら、まぁひとつしかあらへんよな」
 そう、七不思議である。
「七不思議いうてもな、現れる怪異はオウガに洗脳された愉快な仲間達みたいでな? 多分そんなに怖くないんちゃうかなー、なんて」
 思うんやけど、と菊花がそっと視線をあらぬ方へ向けた。
「ま、まぁこういうんは行かなわからへんし!」
 転移した先は夜の学校の中、何もせずとも向こうから七不思議が現れる場合もあれば、見つけに行って現れるものもあるのだとか。
「怪異をやっつけるんも良し、逃げの一手を打つも良し。バタバタしとったらアリス達も見つかるはずやよって」
 そうしたら、この奇妙な世界の出口が見えてくるはず。
「脱出できたら、その先にはマーダー・ラビットがおるはずやからな。お仕置きしたってな!」
 倒すことができれば、アリス達はまた再び扉を探す旅に戻れるだろう。
「ほな、季節外れのお化け屋敷みたいなもんやけど……頼んだで!」
 ぱん! と両の手を打ち鳴らすと、菊花がウサギ穴に通じる道を開く為に手の中に現れたグリモアに触れた。


波多蜜花
 閲覧ありがとうございます、波多蜜花です。
 今回は二章のみで構成された猟書家シナリオ、倒すはマーダー・ラビットとなっております。二章の内、どちらか一つだけの参加でも大丈夫です。

●各章の受付期間について
 恐れ入りますが、受付期間前のプレイング送信は流してしまう可能性が非常に高くなっております。各章、断章が入り次第受付期間(〆切を含む)をお知らせいたしますので、MSページをご覧ください。

●第一章:冒険
 異世界となったウサギ穴、夜の学校にて七不思議と遭遇します。遭遇する七不思議は一つだけですが、何と遭遇するかはご指定頂けると助かります。
 七不思議は色々あると思いますので、好きなのを選んでください(検索して出てくる七不思議でお願いします)
 また、こちらOPで菊花が言っていたように変質してしまった愉快な仲間達が七不思議に扮している形になるのですが、ファンシーな感じかガチホラーな感じか選べます。
 ファンシーを選ぶ方は選んだ七不思議の名前の後に【E】ガチホラーは【H】と付けてください。例:テケテケE テケテケH といった感じです。
 バチバチに拳に物を言わせてもいいですし、ギャアギャア言いながら逃げまくるのも大丈夫です。シリアス風なプレイングはシリアス風に、コメディ風なプレイングはコメディ風なリプレイに仕上がります。

●第二章:ボス戦
 猟書家マーダー・ラビットとの戦闘になります。

●プレイングボーナス
 アリス御一行にも手伝ってもらう、です。
 アリス御一行は「アリス適合者」を中心とした、愉快な仲間やオウガブラッド等のパーティです、時計ウサギはいません。
 こういう仲間に手伝ってもらいたいなどあれば、ご自由にご指定ください。特になければこちらで設定いたします。

●同行者について
 今回は夜の校舎! 七不思議! 肝試し! みたいな気持ちで、二名様迄とさせていただきます。迷子防止にお相手のIDをお書き添えください。
 プレイングの失効日を統一してください、失効日が同じであれば送信時刻は問いません。朝8:31~翌朝8:29迄は失効日が同じになります(プレイング受付締切日はこの限りではありません、受付時間内に送信してください)
 未成年者の飲酒喫煙、公序良俗に反するプレイングなどは一律不採用となりますのでご理解よろしくお願いいたします。

 それでは、皆様の素敵なプレイングをお待ちしております。
155




第1章 冒険 『学校の怪談』

POW   :    体力と気合いでアリスを探す。

SPD   :    技術を使ってアリスの痕跡を探す。

WIZ   :    知的にアリスの方にこちらを見つけてもらう。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●夜の学校
 そこはどんよりと暗く、窓から差す月の光はどこか赤く。
 言ってしまえば、とてもとても不気味で恐ろしい雰囲気を放っていた。
 迷い込んだアリス御一行は不安気な顔で、歩きたくもない廊下を進む。カツン、カツン、ペタペタと響く自分達の足音すらも身体の震えを助長させているかのようだった。
 カツン、カツン、ペタペタ。
     カツン、カツン、ペタペタ、カツン。
 今、足音が一つ多かったような。
 そんな気がして、アリス達はふっと足を止めると顔を見合わせ、思わず後ろを振り向いた。
 カツン、カツン、カシャン。
『ア、ソ、ボ』
 そう笑ったのは、右半身がマネキンの様に艶々で左半身が皮膚を剥がれたように筋肉が露出し、胴の部分は内臓の見える人型――人体模型だった。
 絹を裂くような悲鳴やら野太い声が響いて、アリス達は散り散りに逃げ出していく。
 一人になってしまったその先にも、七不思議と呼ばれる怪異が待ち受けるとも知らずに――。
 そして、猟兵達は怪異としての役割を与えられた愉快な仲間達が現れるこの校舎に、足を踏み入れるのだ。
太宰・寿
【ミモザ2】◎
動く模型人形H

無理…暗い…ジメジメしてる気がする
だってそんなに怖くないって聞いてたし、私達相棒でしょ?
うう、雰囲気がありすぎるよぉ

恐る恐る周りを見ながら、アリス達を探すけど

ああああ足音がする気がしない?
この世の終わりのような顔で英の袖を掴む
後ろからなにか…ねぇ、すごく嫌な感じがするの
振り向いて確認したいけど、見たら終わりのような気がする

あ、ってなに?いるの?何かいるの?
ちらっと振り向いたら、いるじゃないですか理科室に置いてあるあの、あれ、あれです
……
や、やだぁー!!!!!無理無理無理無理
UCでどうにかしてもらう

ごめん待って…腰抜けちゃった
そ、そうだけど理屈じゃないの…!


花房・英
【ミモザ2】◎
動く模型人形H

そんなに怖いなら、なんで着いてくんの
俺一人でも行けたのに
まぁ、いてくれた方が安心だけど(心強いの半分、目が離せないの半分)
寿がホラー苦手なの知ってるけど
めちゃくちゃ怖がるから却って冷静になるな

あぁ、足音すんね
嫌な感じは同意かな
挙動不審の寿を見遣ってから、後ろを振り向く
廊下の先、理科室の札の下を見ると模型人形がいた



大丈夫だから、あんなのただの人形だろ
模型が近づいて来たなら、寿を後ろに庇いながら加減しつつ蹴り飛ばす
後は寿のUCがどうにかするだろ

ほら、もうどっか行った…マジか、そんなに怖かった?
寿のそばにしゃがみ込んで、背中をさする
倒せるのに、なにがそんなに怖いんだ?



●怖いの温度差
 暗い学校の廊下を歩きながら、太宰・寿(パステルペインター・f18704)は涙目で花房・英(サイボーグのグールドライバー・f18794)の服の裾を掴んでいた。
「無理……暗い……ジメジメしてる気がする……」
 確かに暗い、と英は思う。校舎の中の電気は点いておらず、外からの赤い月の光だけが頼りの状況だ。けれど、見えないわけではないと思いながら、英は小さく息を吐いた。
「そんなに怖いなら、なんで着いてくんの。俺一人でも行けたのに」
 冷たく突き放したように聞こえる言葉だけれど、寿はその声音に呆れと優しさを感じて足元に向けていた視線を上げる。
「だってそんなに怖くないって聞いてたし、私達相棒でしょ?」
 最終的に目を逸らしてただろ、あの案内してくれた子。とは口に出さず、英は服の裾が皺になるくらいはいいか、と思う。
「まぁ、いてくれた方が安心だけど」
 ぱぁっと明るくなった寿の表情に、心強いが半分と目が離せないが半分の意味で、とは隠したまま英が頷いた。
「行くよ、アリス達を探さないと」
「う、うん……うう、雰囲気がありすぎるよぉ」
 バサバサバサ、と窓の外を飛んでいった鴉のような影に、寿が『み゜っ』みたいな声を上げたけれど構わず先を行く事にする。ペタペタと誰もいない廊下を二人で歩く、時折聞こえる風の音が女の悲鳴のようで寿の肩が跳ねた。
 それを横目で見つつ、寿がホラー苦手なのは知っているけれど、これだけ怖がられると却ってこっちが冷静になるな……と英は思う。自分より怒っている人や、泣いている人がいるとすんっとなってしまうあの現象だ。
「い、いないね」
 何が? お化け? 恐る恐る辺りを見回す寿に聞こうとして、言い掛けた言葉を押し留める。怖がりの彼女が、お化けを探してきょろきょろするはずはない。
「アリス達もこの校舎を逃げ回っているなら、そのうち会うだろ」
「うん、そうだよね」
 もしかしたら前から来るかもしれないし、と寿が視線を前に向けた時だった。
 カツン、と足音がしたのだ。
 木造の校舎の、木造の廊下。自分達の足音は、ペタペタと聞こえるのに。
 ――カツン、カツン。
 ほらまた、カツンって。
「あ」
「あ?」
「ああああ、足音がする気がしない?」
 若干血の気の引いた顔色で、この世の終わりみたいな顔をした寿が英を見上げて言った。
「あぁ、足音すんね」
「ま゜っ」
 もう片方の手も英の裾をぎゅうっと握り締め、寿がなんとか息を整えようと静かに深呼吸をする。
「あ、あとね、あの、後ろからなにか……ねぇ、すごく嫌な感じがするの」
 振り向いて確認したい気もするけれど、それを見たら終わりのような気がして、寿にはとてもじゃないけれどできない。
「嫌な感じは同意かな」
 確かに嫌な気配がする、けれどそんなに強い気配でもない。このまま無視して歩き続けても構わないのだけれど、これは七不思議とかいう奴ではないかと英は思い立つ。挙動不審な寿を見遣って、ちょっと突けば瞳に張った涙の膜が決壊しそうな彼女の代わりとでも言うように、英がおもむろに後ろを振り向いた。
 廊下の先に見えたのは嫌に目に付く理科室と書かれた教室を示す札。それから、その下には人のような影。よく見れば、それは人体模型だった。
「あ」
「あ、ってなに? いるの? 何かいるの?」
 もうこれ以上はないくらいに彼の服の裾を握って、寿がちらっと後ろを振り返る。
「あ゛」
 思わず漏れてしまった引き攣った声に、寿が咄嗟に片手で口を押さえた。
 いる、確実にいる。理科室に置いてある、あの、あれ、あれです、あれが。
「……」
「寿?」
 すっかり黙ってしまった上に、動きを止めてしまった寿を心配して、英が声を掛ける。それと同時に、カツン、カツンとまた足音が響きだす。カツン、カツン。あと何歩で、こっちに辿り着くの?
 確実にこちらに向かってくる足音に、寿の恐怖心が決壊した。
「や」
「や?」
「や、やだぁー!!!!!」
 ぶわわっと泣き出してしゃがんでしまった寿に驚いて、英が寿を背中に庇いながら音のする方へ身体を向ける。見れば人体模型がこちらへやってくるのが見えた。
「大丈夫だから、あんなのただの人形だろ」
 猟兵でなければ確実に死亡フラグみたいな台詞を言いつつ、英が近付いてきた模型を蹴り飛ばす。
 ガチャン! と派手な音を立てて倒れた模型が、中の内臓などが飛び散ったままに立ち上がるのを見て、寿が叫ぶ。
「ああああ無理無理無理無理!!!!!」
 無理ー! と叫ぶ寿が泣きながら召喚するのは絵本の中の陽気な登場人物達。彼らには小さな翼と彼らに合った装備を以て、彼女の望みのままに人体模型へと襲い掛かった。
 こうなったら、あとは寿の召喚した彼らが何とかしてくれるだろうと、英は彼女の傍らで膝を突く。
「ほら、もうどっか行った……マジか、そんなに怖かった?」
 えぐえぐとしゃくり上げる寿の背をあやすように撫でて、俺より年上には見えないな……とこっそり思う。
「う、だって、あんなの怖いぃ……」
 寿の知っている人体模型よりもリアルで、筋肉の部分なんて本物の人間の様に動いていた。
 思い出して、またほろりと涙を零すと、英がその涙と指先で拭う。
「倒せるのに、なにがそんなに怖いんだ?」
「そ、そうだけど理屈じゃないの……!」
 理屈じゃない、幼稚園の子どもが泣くのと一緒か、なるほど……? と思いつつ、英が寿を起き上がらせるために引っ張り上げる。
「あっ」
 よたよたとして、転びそうになった彼女を抱き留めて、もう一度大丈夫か? と英が問う。
「ご、ごめん、待って……腰抜けちゃった」
 そう言う彼女の為に、支えるように前を向けば。
「あ」
「えっなに、また出たの!?」
「いや、あそこに愉快な仲間がいる」
 指を向けたその先には、寿と同じように腰を抜かしたアリスの仲間が居たのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

スピーリ・ウルプタス

二宮金次郎像と遭遇【E】

ここが!お話に聞いたジャパニーズホラーの現場!
(学校や七不思議の知識皆無な異国ヤドリガミ。うっきうき)

アリス様方を探しに校庭に出ましたらば、何やら動く石像さんが
今晩は、良い赤月夜ですね
そちらの背負ってらっしゃる物(薪)、どこかに運ばれるのですか?
僭越ながらお手伝いさせていただきましょう
!?(ごっつ重い←石だから)
これは…っもしや、アリス様を助け出す資格が私にあるかどうかの、試練!?
悦んで!
(目的無く走り回る像の後を、何も気付く事無く必死について回る)
(プルプル体震わせたり、ずべしゃっ、と転んだりしては幸せそうに)

アリス様方を無事見つけられたら
私、認めていただけたと!



●ハッピー・ナイトステップ
 転送された夜の校舎をスピーリ・ウルプタス(柔和なヤドリ変態ガミ・f29171)はそれはもう、うっきうきのるんるん気分で歩いていた。
「ここが! お話に聞いたジャパニーズホラーの現場!」
 ジャパニーズホラーといえば、あの独特の恐怖感。静かなのにじわじわと迫りくる、見た目もヤバいゴースト……いや、怪異と言うのが一番しっくりくるだろうか。あれが特に心臓と胃の腑にくるのだ。
「あのホラーと向き合うのも、一つの試練なのでしょう」
 痛みとはまた違う感覚だが、恐怖というのも中々に捨て難い悦楽のひとつなのではないか、とちょっと色んなものを極めつつある異国のヤドリガミは吐息を零す。
「学校に七不思議、まだまだ知らないものが沢山あるというのも素晴らしいものですね」
 木造の廊下で軽いタップを踏みつつ、スピーリはふと窓の外へ視線を向けた。
「あれは……?」
 校庭を走り回る何かが見えて、もしやアリス御一行のお一人では? と思うや否や、スピーリは校舎から校庭へと向かう。よくよく見ればそれは石像で、スピーリはここでピンときた。
 これはもしや石像のヤドリガミなのでは? と。無知って強い!
「今晩は、良い赤月夜ですね」
 とってもフレンドリーに話し掛けてみるけれど、石像のヤドリガミ……もとい、二宮金次郎像は返事をしない。けれど、お構いなしにスピーリは話を続ける。
「そちらの背負ってらっしゃる物、どこかに運ばれるのですか? 僭越ながら、この私にお手伝いさせていただいても?」
 喋らないことを了承と受け止め、スピーリは背負子に乗せられている薪に手を伸ばし、両手に抱えた。
「!?」
 ……めっちゃくちゃ重い! そうだね、石だからね。
 何故こんな重いものを背負って走っていたのだろうか、とスピーリは考えてピンときた。
「これは……っもしや、アリス様を助け出す資格が私にあるかどうかの、試練!?」
 スピーリの黒曜石のような瞳がキラキラと輝きだし、再び走り出した石像に向かって叫ぶ。
「悦んで!」
 違う、字が違う。さすがはスピーリさんである。
 目的など無く走り回る石像の後ろをさながら親鳥に付いて回る雛の様に、スピーリが必死に追いかける。腕には石でできた薪、新手の拷問か何かかな?
「ご褒美です!」
 そうでした、ご褒美でした。
 輝かんばかりの笑顔で走り、時にプルプルと身体を震わせたり、腕に力が入らなくなって盛大にすっ転んだりしたけれど、スピーリは笑顔を絶やさず、どこまでも幸せそうに石像の後を追い掛ける。そのうちに、石像がすっと台座の上に乗って動かなくなると、試練はこれで終わりでしょうか……と些か残念そうな笑みを浮かべて背負子に薪を戻し、ありがとうございましたと頭を下げた。
「さて……おや?」
 台座の陰に、誰かが蹲っているのが見えてスピーリがどなたですか? と問い掛ける。びくんと肩を揺らした誰かをよく見れば、それはアリス御一行の仲間の一人であった。
「ああ、私、ついに認めていただけたと!」
 感無量です……と一筋の涙を流すスピーリに、愉快な仲間は言えなかった。
 石像の後を追い掛け回すスピーリが、一番怖かった、なんて。

大成功 🔵​🔵​🔵​

高妻・幽理
顔は依頼中ですが口枷をつけています。
学校、という存在を知らないのであちこち観光気分で見てまわります。
薄暗いところ、夜や雨の日が好きなので機嫌良くアリス達を探しています。
七不思議『増える階段(E)』についても知らないので遭遇したものに興味を抱きながら散策します。


 ユーベルコードは指定したものを使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。個人行動が多めです。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●ハッピー・ナイトツアー
 学校、と口枷を付けた口の中で高妻・幽理(ダンピールのバロックメイカー・f23676)が言葉を転がす。聞いたことの無い言葉ではあったけれど、それは幽理の興味を酷くそそったのだ。
 木造の建物はどこか古臭く、窓から差す月の光は赤くて不気味だけれど、薄暗いところや夜、それに雨の日が好きな幽理にとっては怖いという感情は無く、寧ろ気分が良いくらいだった。
 木の板で作られた廊下は時折ギィギィと軋んだ音を立てているが、ただそれだけ。それよりも、幾つも同じような部屋があるのが不思議で、一つ一つを覗いては廊下を歩く。
 どうして同じ部屋が幾つもあるのだろうか? それに、机と椅子も同じくらいの数だけ並べられている。突き当りまで行くと階段が見えて、一段ずつ数を数えながら登った。
 ……十一、十二。この学校という建物の階段は十二段あるんだねぇ、と考えながら二階の廊下を歩く。二階も同じような部屋が続いて、突き当りにある部屋はピアノがあったり絵が飾られていたりと少し様子の違う部屋も見えて、ますます興味深いと幽理が笑った。
 二階も全部見たところで、一階へと降りる。これもまた、どうしてか一つずつ数える気になって幽理が階段の数を数えていく。
 ……十一、十二、十三。
 十三? と、幽理が小さく首を傾げた。
 普通であれば、階段の数は同じのはず。どうして数が違うのだろうかと考えて、気付く。最後の一段が、階段などではないことに。
 最後の階段だと思った場所を踏まず、とんっと飛び降りて少しの距離を取った。
 幽理は知らぬことであったが、一段増える階段の話には諸説あるが階段から落とされて死んだ生徒が、最後の階段の下で転がって死んだ姿のままそこにいるというもの。
 警戒しつつ、横たわるそれを見れば――ファンシーな姿をした、けれどどこか禍々しい人形であった。
 人形? と幽理が近付いてみると、人形の首がぐりんと動き、こっちを見るとけたたましい笑い声を上げる。笑えるぐらいなら、まぁ大丈夫なんだよねぇ、と思って幽理は軽く手を振ってその場を離れた。
 可哀想なのは残された人形である、怯えるでもなく驚かれるでもなく、ただ手を振って離れて行ってしまったのだから。思わず手を振り返して見送ってしまったけれど。
 もしかして、アリス御一行の一人だった? とは思ったけれど、彼はそのまま一階を歩く。だって、もしもそうなら何か言ってくるはずだよね、と考えたからだ。歩いている内に、ことん、と小さな物音が近くの部屋から聞こえてきて覗き込む。
 そこには途方に暮れたアリス御一行の愉快な仲間がいて、今度こそ幽理は何か困っているのだろうかと手を差し伸べるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アウグスト・アルトナー
【恋人のアパラさん(f13386)と】

『零れ灯』と『慈愛の灯り』を頼りに、夜の学校を進みます
この光を、アリス御一行が見つけてくれると信じて

階段の踊り場で大鏡を見つけ、ふと覗き込みます
それが【死に顔を映す鏡H】であるとも知らず

映るのは、虚ろな目をし、口から血を流すぼく
髪を誰かにつかまれ、持ち上げられている、ぼくの生首

……兄さんの最期もこうでした
ぼくも、お揃いになるということですか

【狂気耐性】。拳を固め耐えます

隣を見やれば、遊色の瞳と目が合い
そっと、【手をつなぐ】ことでしょう
ええ。ぼくも、大丈夫ですよ

そこに来るのは、頭部が塗料缶の愉快な仲間
ちょうど良かったです。この鏡、塗りつぶしてしまってください


アパラ・ルッサタイン
己の死顔が映る鏡H
アウグストさん(f23918)と

デート、と言うには穏やかでないね
自作の鉱石ランプを灯し校内を廻る
灯りをアリス達が見つけてくれれば重畳

踊り場には大きな鏡
へえ、学校ってこんなのもあるの
覗き込むと
其処には

己が身の炎に耐えられず
罅割れた虚ろな顔
濁った眼

ははァ成程
有り得ぬ話じゃないか
淡々と凪いだ心で眺めて

それよりアウグストさんは?
隣を伺う
……一体、あなたは何を見たのだろうな
黒玉髄の視線と交われば笑いかけよう
手を伸ばし、【手を繋ぐ】
大丈夫かい?あたしはこの通り平気さ

彼方の角で動く気配
塗料缶みたいな頭をした…愉快な仲間?丁度良い!
この悪趣味な鏡を塗り潰してくれないか

その後は
逃げるが勝ちさ!



●鏡の中のあなた
 柔らかな灯りが三つ、暗い校舎の中で揺れている。
 アウグスト・アルトナー(悠久家族・f23918)が手にした罅入り鉱石を使った小さなペンダントライトと蝶の意匠が施された籠型の鉱石ランプ、そしてアパラ・ルッサタイン(水灯り・f13386)の持つ自作の鉱石ランプだ。
 それぞれが異なった柔らかさの光りを放ち、辺りの不気味さを和らげているようにも思える。隣り合わせに歩くアパラが辺りを見回し、ふ、と小さく笑う。
「どうしましたか?」
「ふふ、いや……デート、と言うには穏やかでないと思ってね」
 デート、とアパラの口にした言葉をアウグストが口の中で転がして、瞳を瞬かせた。
「……そうですね、デートと言うには些か場所が悪いです」
 この依頼が終わったら、改めて彼女と何処かに出掛けようなんて考えながら、アウグストが辺りを照らす様に灯りを前へと向ける。この光りをアリス達が見つけてくれるはず、と信じて揺らす灯りはクンツァイトのような紫がかったピンク色で美しい。時折、ギィギィと音を立てる木製の廊下を並んで歩き、教室の中を覗き込む。
「いませんね」
「そうだねぇ、二階へ上がってみるかい?」
 アパラの提案にアウグストが頷き、二階に続く階段を上る。階段の踊り場には古ぼけた時計と、左右に大きな鏡が飾られていた。
「へぇ、学校ってこんなのもあるの」
「恐らく、身だしなみに気を付ける為のものかと」
 それにしたって、二枚の大きな鏡を向かい合わせにする必要などあるのだろうか。
 何となく、お互いに顔を見合わせて。
 何となく、お互いに違う鏡を覗き込む。
 時計の針は、四時四十四分を指していた。
 アウグストが覗き込んだ鏡に映るのは、一切の光りを灯さない虚ろな目をして口から血を流している自分。よく見れば、髪を誰かに掴まれて持ち上げられている生首が映っていた。
「……ああ」
 何も映さない空虚な瞳は闇に沈み、首から流れ落ちる血は床を真っ赤に染め上げて。
「……兄さんの最期もうこうでした」
 同じように首を刎ねられて、虚ろな目をしていた。
「ぼくも、お揃いになるということですか」
 いつかの未来、自分の首も鉄の籠に――。
 握り締めた拳に、ぎちりと爪が食い込んだ。
 アパラが覗き込んだ鏡に映るのは、己が身の内に潜む地獄の炎に耐えられず、罅割れた虚ろな顔に濁った瞳の自分。美しく輝くクリスタリアンの光は無く、残骸とも呼べるような姿だった。
「ははァ、成程」
 有り得ない話ではない、確かにこの身の内にある地獄の炎はいつかこの身を焼き尽くすかもしれないのだから。
「だけど、それは今ではないよ」
 あたしがあたしにそれを許した時だけさ、と心は凪いでいる。悪戯な鏡だねとアウグストを見れば、鏡を見つめたまま固まっているのが見えた。
 強く握りこんだ拳は僅かに震えていて、アパラは迷わずアウグストの隣に立つと、その拳を己の両手でそっと握った。
「……アパラさん」
 優しい手の感触に隣を見れば、遊色の瞳と目が合う。
「なんだい、アウグストさん」
 一体、あなたは何を見たのだろうな、そんな迷子のような顔をして。そうは思えど口には出さず、アパラはただ黒玉髄の視線に柔らかな笑みを返す。どちらからともなく手を繋げば、その温もりが互いが生きている事を教えてくれた。
「大丈夫かい? あたしはこの通り平気さ」
 こてん、と首を傾げて問い掛ける。
「ええ。ぼくも、大丈夫ですよ」
 それが強がりであっても、あなたが隣にいてくれるなら真実になる。アウグストの強張っていた頬が、僅かに緩んだ。
 カタン、コトン、と物音が聞こえ、二人が繋いだ手とは反対に持つランプを翳すと、そこには塗料缶のような頭をした愉快な仲間が安堵したような顔をして二人に向かって手を振っている。
「もしかして、アリスの仲間かい?」
 そう問い掛ければ、大きく頷いた。
「丁度良かったです」
「ああ、丁度良い!」
 二人にそう言われて、愉快な仲間が首を傾げる。
「この鏡、塗りつぶしてしまってください」
「頼むよ、この鏡はちょっと悪趣味でね」
 お安い御用だとばかりに手にしたハケを頭に突っ込んで、愉快な仲間が真っ白いペンキを塗りたくる。両方塗り潰すと、鏡がカタカタと揺れ出した。
「さあ、反撃を受ける前に行くとしようか!」
 逃げるが勝ちさ、と陽気に笑ってアパラがアウグストの手を引いて駆け出す。
 ああ、この光があればきっとぼくは迷わないのでしょう、と眩しいものを見るように目を細め、アウグストは彼女と共に走るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

茜崎・トヲル
【モノクロフレンズ】(f23882)
(あーさん、スーさんで交互呼び!)◎E

あーさんあーさん、がっこーだよ!おれはじめて!(目がきらきら)(両手を胸の前でぐっ)
とっても暗くって、静かだ。よーし、はやく見っけてあげよーぜ、スーさん!

(耳ぴこーん!)なんか音した!えーっと、「音楽室」……ここだー!
たのもー!(扉ガラッ)びゃーー!!(びっくり絶叫)
すっすすスーさんあれ!ピアノ超すごい!でもいない!人!
てかここなんかいっぱい人の絵あrピャーー!!(垂直ジャンプ)
あーさん!目が!あのひと目が!ぴかーって!たぶんあれビーム出すぜ!

わースーさん頼れる!でも夜のがっこーヤバだね!
はやくアリス探したげねーと!


スキアファール・イリャルギ
【モノクロフレンズ】(f18631)
音楽室のピアノと肖像画E ◎

ふふ、楽しそうですねぇトーさん
そんな私も夜の学校は初めてで少しワクワクしてます
アリスさんたちはきっと心細いでしょうね、早く見つけ出さねば

確かに何か音がしましたね?
音楽室の怪異は確か――わーー!?(絶叫にびっくり!)
トーさんの助言で耳栓していてよかった……

Oh……トルコ行進曲が高速で演奏されている……何という超絶技巧……!
あぁ、音楽室ってよく肖像画が飾ってあrわーー!?(絶叫にびっくり其の2!)
あ、あの肖像画がピアノを操ってるんでしょうか?
よし、目からビーム出す前に霊障をぶつけてみます!

うむ、夜の学校は危険がいっぱいですね……



●ハッピー・ナイトミュージック
 パァァ、と顔を輝かせ、茜崎・トヲル(白雉・f18631)がスキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)の名を呼ぶ。
「あーさんあーさん、がっこーだよ!」
「ふふ、楽しそうですねぇトーさん」
 白い髪の毛をぴょこぴょこ揺らし、目をきらきらと輝かせる男を微笑ましそうに黒髪の男が見ていた。
「がっこー、おれはじめて!」
 両手を胸の前でぐっと握り締め、トヲルが木造の校舎を見上げる。
「私も夜の学校は初めてです」
 なんだかワクワクしますよね、とスキアファールが言えば、トヲルも力強く頷いた。
 死ぬほど微笑ましいはずなのだけれど、あまりにも今現在いる場所――真っ赤な満月に照らされた不気味な夜の校舎にはどうにも不釣り合いであった。
 けれど、そんなことは二人にはどうでもいいのだ。何せトヲルは学校自体が初めてであったし、スキアファールは夜の学校が初めてで常よりもテンションが上がっていたのだから。
「とっても暗くって、静かだ」
「そうですねぇ、アリスさんたちはきっと心細いでしょうね」
 そう言われて、トヲルがハッとスキアファールを見上げる。
「それはあれだよね、ちょっとかわいそうだよね」
 おれはちっとも怖くないけど、怖い思いをしているのはかわいそうだ。
「よーし、はやく見っけてあげよーぜ、スーさん!」
「ええトーさん、私達で見つけ出しましょう」
 おー、と二人で拳を振り上げ、校舎の中へと入った。
「わ~、おんなじ部屋がいっぱいだ」
 トヲルがきょろきょろと見渡しながら、廊下を歩く。その隣で、スキアファールがあれは教室と言って勉強をする場所なんですよ、と教えてくれる。
「いっぱいあるのはなんで?」
「年齢によって、行われる授業の内容が違うからですねぇ」
 へー! と感心するトヲルの耳に何かの音が聞こえてきて、ぴこーん! と耳が揺れた。
「あーさん! なんか音した!」
「確かに、何か音がしましたね? 音……ピアノ……?」
 耳の良いスキアファールがその音がピアノだと言えば、トヲルが学校にはピアノもあるのかと目を輝かせた。
「音楽室ですかね、音楽の授業をする専用の教室があるんです」
 誰もいない音楽室で、勝手にピアノが鳴るのだとスキアファールが言うと、トヲルがスチャッと耳栓を取り出す。
「怪音波とか出るといけないから!」
「そんな怪談でしたっけ???」
 知らないけどー! と元気いっぱいに言うトヲルに笑って、折角ですしねとスキアファールが耳栓を付けた。
 音楽室、音楽室、と呟きながらトヲルが教室の札を見ながら歩き、目的の文字を見つけて指さす。
「音楽室、ここだー!」
「音楽室の怪異は確か……」
「たのもーー!!」
 スキアファールの言葉を遮って、一瞬の躊躇いもなくトヲルが音楽室の扉をガラッと開けた。
 開けた瞬間、誰もいない音楽室のピアノの蓋が開き、音楽が響き渡る。
 そして、それと同時に響き渡ったのは――!
「びゃーーーー!!!!!!」
「わーー!?」
 トヲルの絶叫だった。
 それは怖いとか、そういった類の絶叫ではなく純粋な驚きの声。耳栓をしていても響いたその声に、スキアファールは助言通りに耳栓をしていて良かったけれど、怪音波はトーさんのお声でしたかと小さく笑った。
「すっすすスーさんあれ! ピアノ超すごい! でもいない! 人!」
「Oh……トルコ行進曲が高速で演奏されている……何という超絶技巧……!」
 すごい、一寸の狂いもないとスキアファールが賞賛しつつ、誰もいないピアノを見つめる。トヲルはと言えば、すごいねーと褒めつつ音楽室の壁を見渡した。
「てかここなんかいっぱい人の絵あ」
「あぁ、音楽室ってよく有名な音楽家の肖像画が飾ってあ」
 互いに『る』という言葉を発するよりも前に、トヲルが指さした先に飾られていた肖像画の瞳がピカッと光ったのだ。
「ビャーーー!!」
「わーー!?」
 驚いた猫の様に垂直に飛んで叫んだトヲルに驚いて、スキアファールも叫ぶ。
「あーさん! 目が! あのひと目が! ぴかーって!」
「あ、あの肖像画がピアノを操ってるんでしょうか?」
 そうだと言わんばかりに、肖像画の瞳がピカピカと光る。無駄に七色に光っていて、ゲーミング肖像画……と思ったとかなんとか。
「たぶんあれビーム出すぜ!」
 めちゃくちゃワクワクしているトヲルに応えるように、肖像画の瞳が赤く光った。
「よし、目からビーム出す前に霊障をぶつけてみます!」
 己の影よりヒトガタを呼び出して、先手必勝とばかりにその力をぶつける。ぶつけられた肖像画はといえば、瞳の形が×印になっていた。
「わースーさん頼れる!」
 さすが! と、トヲルが手を叩きすっかり静かになってしまった音楽室を見回す。
「でも、夜のがっこーってけっこうヤバだね! はやくアリス探したげねーと!」
「うむ、夜の学校は危険がいっぱいですね……!」
 気を付けなくては、と言い掛けてピアノの下に誰かいる事に気が付いた。
「トーさん、あそこ」
「え? あー、だれかいる!」
 だーれだ! なんて言いながらトヲルが覗き込むと、そこには気絶するように倒れた愉快な仲間が居た。
「わ、きぜつしてるね」
「可哀想に、怖い思いをしたんでしょうね」
 連れてってあげよう、とトヲルが人形サイズの彼を抱き上げた。
 彼らは知らない、愉快な仲間が気絶したのは彼らの絶叫に驚いたからだったなんて――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

春夏秋冬・燈
テケテケ【H】◎
UCで2人組になり探索
■妹寄り人格トウカ(主に行動
□兄寄り人格アキ


夜の学校に取り残されるのは心細い筈
猟兵としてお仕事がんばります!
廊下を歩くさき見えてくる人影に
何だか不自然に見える気が…
もしかして……上半身だけの、
きゃー!!(全力で逃走
……つい端まで逃げてしまい
階段の踊り場で反省しながら隠れて待機
暫く経ってから叩かれる肩に
出そうな悲鳴を何とか抑え
不甲斐なくて申し訳ありません…


怪異を見つけた途端
居なくなる相方に呆れ顔
協力して倒す計画だったような…
倒せないなり逃げながらアリスを見つけて
残るはうちのビビりな迷子を探すか
隠れんぼを終えて合流すれば
次回はもう少し頑張りましょう、だな



●足音は二つ、もう一つは
 これは猟兵としてのお仕事、だから頑張らなくてはと意気込んで来たものの、あんまりにも雰囲気のありすぎる木造校舎の前に立つ春夏秋冬・燈(まにまに・f27645)――四人いるうちの人格であるトウカは、迷わず力を使ってもう一人の自分を呼び出した。
「お、お仕事です!」
「……一人が怖かったんだろう、トウカ」
「そ、そんなことは!」
 あるけれど、そこはきりっとした表情で隠してアキハルに尤もらしく言ってみる。
「夜の学校に取り残されるのは心細い筈ですから、早くアリスさん達を見つける為にお呼びしたんです!」
「ま、いいけど」
 これ以上突くのも可哀想かと、アキハルが校舎の中へ入る為に扉を開いた。
 中は暗く、頼りになるのは窓から差し込む赤い月の光だけ。なのに、その赤い光りは夜の校舎を更に恐ろしいもののように引き立てている。
「うわぁ……」
 思わず漏れた言葉に咳払いしつつ、トウカが行きましょうとアキハルを促す。怖い癖に強がっちゃって、とは思ったけれどそこは他の人格よりも大人なので言わないことにした。
 ギィギィと軋む木製の廊下を歩き、なんでもない影に肩を跳ねつつ、トウカはアリス達を探そうと辺りを見回す。そして、前方からなんだか小さな音がテケテケと近付いてくることに気が付いた。
「あれ、アリスさんの仲間の方でしょうか?」
「ん? ……それにしては動きが変じゃないか?」
 言われてみれば、どこか不自然な動きに見える。足音だって、何だか変だ。
 そう、まるで上半身しかなく、腕だけでこちらへ向かってきているような――。
「も、もしかして」
「心当たりでもあるのか?」
「上半身だけの、テケテケ……」
 トウカがその名を呟いた瞬間、影だったそれはテケテケと音を立ててこちらへ向かってくる。真っ赤な月明かりに見えたそれは、確かに下半身のない少女の姿で。
「きゃ、きゃーーー!!!」
 悲鳴を上げたトウカが全力で走って逃げる、それを追い掛けようとしたテケテケをすかさずアキハルが足を引っかけて盛大に転ばせた。
「まさか全力で逃げるとは思わないだろ……」
 協力して倒すはずだったのではなかったっけ、と思いつつアキハルもテケテケが立て直す前にトウカが逃げた方向とは反対側へと走り出す。追い掛けてくるテケテケをなんとか躱し、隠れつつと繰り返している内にアリスの仲間を発見した。
「残るはうちのビビりな迷子か」
 仕方ないな、と小さく笑ってアキハルが愉快な仲間を連れてトウカを探す。ぐるりと校舎を一周すれば、階段の踊り場で小さくなっているトウカを発見できた。
 ぽん、と軽く肩を叩けば、涙目でアキハルを見上げて。
「不甲斐なくて申し訳ありません……」
「次回はもう少し頑張りましょう、だな」
 笑うアキハルの言葉に、はい……と、トウカが肩を落とすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
【不死蝶】◎
七不思議:動く人体模型H

まさかこの世界にも学校があるなんてねぇ
昼は普通に授業とかしているのかな?

あっ、理科室だ
学校の怪談といえば理科室は定番だよね
怖がることなく軽快に扉を開ける
動物の剥製、謎のホルマリン漬け、
骸骨、やたらリアルな人体模型
不気味なもの集めてみました感がすごい
このホルマリンに浸かっているもの
もしかしたら本物の脳みそかもしれないよねー?

!?
突然、棚からビーカーが落ちて甲高い音が響く
うわー吃驚した、これも怪奇現象かな?

焔を梓と一緒に追いかけていたら後ろから何かが…
さっきの理科室の人体模型が高速で追いかけてくる
俺知ってる、これ捕まったらゲームオーバーになるやつだ(あはは


乱獅子・梓
【不死蝶】◎
七不思議:動く人体模型H

いや、アリスを脅かす目的で作られただけで
学校としては機能していないんじゃないか…?
雑談しつつ校舎内を歩く
俺と綾はこういう雰囲気は別に平気だが
焔と零は俺の肩でぷるぷるしている
そんなところも可愛い

人体模型が動くとかよくある話だしな
…おい、物騒なこと言うなよ
この世界だから、もしかしたら
本物のアリスの脳が…とか考えてしまった

あっ、焔ー!?
硝子が割れる音で恐怖が最高潮に達したのか
焔が廊下に飛び出してしまった
独りにするのはまずい、追いかけるぞ!

ちょ、お前はついてくるな!
焔が余計に逃げるだろうが!
焔を追いかける俺たちと、それを追いかける人体模型
何だこの光景…!?



●追いかけっこ
 真っ赤な満月に照らし出された木造の校舎を見上げて、灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は学校、と呟いてから隣に立つ乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)に視線を移す。
「まさかこの世界にも学校があるなんてねぇ」
 不思議の国には何でもあるんだね、と綾が笑う。
「昼は普通に授業とかしているのかな、どう思う?」
 梓、と問い掛けられて、同じように校舎を見上げていた梓が綾に視線を遣る。
「いやお前、これはどう考えてもアリスを脅かす目的で作られただけで、学校としては機能していないんじゃないか……?」
 多分、この世界に朝はこないのだろう。ずっとずっと夜のままで、赤い月が上っているのだ。
「え、てっきり愉快な仲間とかが授業を受けてるんだと思ったのに……」
 そう言われて、思わず想像してしまう。
 可愛らしくファンシーな姿をした愉快な仲間達が楽しそうに授業を受けたり、校庭を走り回っている姿を。
 そんなものを考えてしまったら、今の校舎の姿とあまりにも差がありすぎて、風邪を引きそうな温度差だなと梓は自分の思考を片付けた。
「行くぞ、アリスとその仲間を見つけてやらないとな」
「はーい」
 二人揃って校舎の中に入ろうとすると、梓の後ろに付いていた焔と零がぴゅーっと梓の肩に引っ付く。
「焔? 零?」
 そう呼びかけては見るが、焔も零もキュー、ガウー……と鳴いたっきり黙ってしがみついている。
「……もしかして、怖いの嫌いなんじゃない?」
「あー……」
 なるほど、そうかと梓は肩に引っ付かせたまま、頭を撫でてやった。
 でも、この校舎の中に入ることを止めるわけにはいかないからな、と足を踏み出して校舎の中へと入る。木造の建物はどこを見てもそういう雰囲気が漂っていて、綾が楽しそうにあっちこっち覗きだす。
「保健室、こっちは職員室かな」
 意外と設定が細かいんだね、と言って、ぴたりと一つの教室の前で立ち止まった。
「あっ理科室だ」
 窓から覗き込むと、暗いながらも色々あるのが見える。
「梓、梓」
「何だ?」
「学校の怪談といえば理科室は定番だよね」
 ノータイムでガラッと扉を開けて、迷わず中へと踏み込んでいく。
「はぁ……確かに人体模型が動くとか、よくある話だが」
 それにしたって相談も無しに開けて入るか? とは思ったけれど、綾なので仕方ないと梓も彼の後に続くことにした。
「動物の剥製、謎のホルマリン漬け、骨格標本、やたらリアルな人体模型……」
「小学校の理科室にあっちゃダメなのなかったか??」
 動物の剝製? と梓が首を傾げる。
「不気味なもの集めてみました感がすごいよね」
「こんなにリアルにする必要があったのかって気もするが、人体模型が動くとか骸骨が動くとかはよくある七不思議だしな」
 骨格標本の手を動かして遊んでいた綾がその手を離し、何だかよく分からないホルマリン漬けが並ぶ棚の前に立つと、首だけ梓に向けて唇の端を持ち上げる。
「このホルマリンに浸かっているもの、もしかしたら本物の脳みそかもしれないよねー?」
「……おい、物騒なこと言うなよ」
 この世界の事だ、もしかしたら本物のアリスの脳が……なんて考えてしまって、梓が眉根を寄せて綾を見た瞬間。ガタンッと音がして棚からビーカーが落ちて硝子の割れる甲高い音が響く。
「!? うわー吃驚した、これも怪奇現象かな?」
 ポルターガイストってやつ? なんて綾が言っている途中で、梓の肩にぎゅっと掴まってぷるぷる震えていた焔がキュー! と叫んで廊下へと飛び出ていった。
「あっ! 焔ー!?」
「え、焔? どうしたのかな」
「きっとさっきの音で恐怖が限界にきちまったんだ」
 独りにするのはまずいと、追い掛ける為に二人も廊下へと飛び出る。
 キューキューと鳴く声を頼りに追い掛けていると、二人分の足音だけではない足音が後ろから付いてくることに気が付いた。
「おい、綾」
「うん、何か来てる……」
 言葉の途中でちらりと綾が振り向けば、先程理科室で見た人体模型が綺麗なフォームで追い掛けてくるのが見えた。
「あっ俺知ってる、これ捕まったらゲームオーバーになるやつだ」
 あははは! と笑いながら走る綾を怪訝な瞳で見つつ、梓もちらりと振り向く。
「うっわ、お前はついてくるな!」
 大腸をぶらんと内臓部分からぶら下げて、目をかっぴらいたまま追い掛けてくる人体模型に梓が舌打ちをする。
「焔が余計に逃げるだろうが……!」
 逃げる焔を追い掛ける梓と綾、そしてそれを追い掛ける人体模型。
 何だこれどういう光景だ……!? そう思いながら、梓は逃げる焔を追い掛けた。
「梓、階段先に行って」
「何する気だ?」
「いーからいーから」
 綾のいいから、に怪訝そうな顔をしつつ、梓が先に階段を駆け上がる。
「そーれ!」
 階段を上る為に曲がろうとした人体模型に綾が回し蹴りを食らわせ、盛大な音を立てて転ばせた。
「うわー、ばらばら」
 リアルな模型の内臓が辺りに散らばって、綾がまじまじとそれを見つめる。何だか本物の様に蠢いていたけれど、梓が呼ぶので返事をして綾も階段を駆け上った。
「お前なぁ……」
「捕まらなかったからセーフだよ……あ」
「どうした?」
 あそこ、と綾が指さす先を見れば、焔が蹲って震えているのが見えた。
「ったく、しょうがないな」
 梓が焔を抱き上げると、もう一匹何かが震えているのが見えて綾が覗き込む。
「あは、アリスの仲間見ーつけた」
 ちょっと小さなぬいぐるみのドラゴンのような愉快な仲間を見つけて、綾が笑った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミア・アーベライン
◎理科室の骸骨E

わたくし、あまり学校には通えなかったんですの
でも、七不思議というものは存じておりますわ
こういう理科室に骸骨がいて、深夜12時になると笑い出すという……

…今、何か、笑いませんでした?

ええ、何か笑っておりますわね
出ていらっしゃい、わたくしが退治してさしあげ――

が、骸骨!!!
な、何をそんな趣味の悪い声で笑っていらっしゃいますの
別にこれは腰が抜けたわけではございませんわ
ただ、ちょっと躓いただけですわ、笑わないでくださいませ!?

ああ、もう、あくまでも笑うようでしたら吹き飛ばしてさしあげますわ!
近づいてくる骸骨にUC使用
な、なんて恥ずかしい敵でしたのかしら…
もう懲り懲りですわ



●笑う骸骨の怪
 赤い月の光が差し込む校舎の中を、ミア・アーベライン(朔月の魔女・f31928)はちょっとわくわくとした気持ちで歩いていた。
「わたくし、あまり学校には通えなかったんですの」
 だから、学校には少し憧れがあるのだと病弱だった彼女は小さく笑う。
 たとえ、それがちょっと不気味な夜の学校だとしても。
「だって、夜の学校にも少し行ってみたかったんですもの」
 学校には少ししか通えなかったけれど、七不思議の存在は知っている。健康であったのならば、もしかしたら夜の学校に七不思議を探しに行ってみたかもしれない、なんて。
 理科室の前を通り掛かり、そっと教室の中を覗き込む。
「そうそう、こういう理科室に骸骨の標本があって、深夜12時になると笑い出すという……」
 ケタケタケタ、と歯を嚙み鳴らすような音が聞こえた気がしてミアが首を傾げる。
「……今、何か、笑いませんでした?」
 そう呟くと、今度こそしっかりと、ケタケタケタと笑うような音が鳴り響く。
「聞き間違いではありませんでしたわね、ええ、何か笑っておりますわね」
 ごくり、とミアの喉が鳴る。ここで怖じ気付いては猟兵の名が廃るというもの、ミアは毅然とした態度で理科室へと足を踏み入れた。
「出ていらっしゃい、わたくしが退治してさしあげ――」
 ミアの言葉を遮るように、白い何かがカタカタとミアの前へと飛び出してくる。
「きゃあっ!」
 驚きのあまり、後ろにぺたんと尻餅を突く形でミアが座り込むと、その姿を指さして笑うかのように骨格標本がケタケタケタと笑っている姿が見えた。
「が、骸骨!! な、何をそんな趣味の悪い声で笑っていらっしゃいますの」
 なんだかちょっと恥ずかしくなってしまって、ミアが頬を赤くして骨格標本へと言い返す。骨格標本から返ってくるのは笑い声ばかりだったけれど。
「べ、別にこれは腰が抜けたわけではございませんわ。ただ、ちょっと躓いただけですわ、笑わないでくださいませ!?」
 ずっと笑い続ける骨格標本に段々腹が立ってきたのだろう、ミアがむっとした顔で立ち上がる。
「ああ、もう、あくまでも笑うようでしたら吹き飛ばしてさしあげますわ!」
 こうなったら実力行使だと、ミアが魔力を集中させて口の中で詠唱を行い、その力を骨格標本へと放った。
 ケタケタケタケタ! と、ひと際甲高い声で笑ったかと思うと骨格標本がバラバラになる。そうして、やっと静かになったバラバラのそれに向けてミアが溜息をついた。
「な、なんて恥ずかしい敵でしたのかしら……もう懲り懲りですわ」
 そう言ってスカートについた誇りを掃っていると、視界の端で何かが動くのが見えて振り向く。
「誰ですの!?」
 そう鋭く問うと、影が姿を現す。それはアリス御一行の一人、ライオンの着ぐるみのような姿をした愉快な仲間。
「……もしかして、今の見ていらっしゃいましたの?」
 こくん、と控えめに頷いた愉快な仲間に、忘れて下さいませ! とミアが顔を赤くして叫ぶのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雨野・雲珠
鳥栖さんと/音楽室の怪異【E】◎

おばけはいいんです、そこらじゅうにいますし。
暗いところだって怖くないです。
でもいきなりバーって出てくるとイヤー!ってなるじゃないですか…
手を塞ぐのはよろしくないので、羽の先触っててもいいですか?

ピャッ(物音に15㎝くらい跳ぶ)
……ひ……(ピアノの下に蹲る影と目が合った)
(※ご一行の一人)
キャーーー!
──あっ、待って待って!俺たちは味方です!
お怪我はありませんか?大変でしたね…

うわわわ急に物理的に危ない!
合流した方の肩を抱えるようにしてだーって逃げて、
鳥栖さんが蹴破った扉から飛び出し外からバーン!って閉めて、
一息つきます。
ふう…一緒にここを抜け出しましょう


鳥栖・エンデ
雲珠くん(f22865)と
音楽室の怪異【E】◎

夜の学校に七不思議に
子どもらしいとこういうのが
怖いのかぁ、なんて思いながら
アリスたちを助けに頑張ろー

服掴むより尻尾とか羽根の方が
歩きやすそうな気もするけれど
落ち着きそうなら手でも繋いでおく?
お任せするよ〜と迷子を探しに教室巡り

聴こえてきた誘うような
ピアノの音に音楽室へと入って
…あ、迷子見つかった?
夜中の演奏会だけなら
そこまで被害はないような……
と、手を着こうとしたピアノが牙を剥くし
肖像画の目からビームは出るし
急に侵入者用の罠みたいでワクワク
同行者気にしなくて良かったら
存分に殴って回れたのになぁ
開かない扉は蹴破って
とりあえず脱出としようか



●扉は蹴ればなんとかなるもの
 ゲートから送り込まれた先はちょっと、いや大分不気味な夜の学校であった。
 真っ赤な満月の光が差し込む廊下を雨野・雲珠(慚愧・f22865)と鳥栖・エンデ(悪喰・f27131)が並んで歩く。夜の学校に七不思議、子どもってこういうのが怖いのかぁとエンデが辺りを見回すと、雲珠がぽつりと呟いた。
「おばけはいいんです、そこらじゅうにいますし」
 雲珠のその言葉に、エンデはお化けってそこら中にいるのかな、とぼんやりと思う。確かにカクリヨファンタズムとかはお化けがいっぱいだよね、でも雲珠くんってサクラミラージュに住んでなかったっけ? と、エンデが雲珠を見遣った。
 その視線に気が付いているのかいないのか、雲珠は話を続ける。
「暗いところだって怖くないです」
 夜の闇の優しさを知っているし、意外と月明かりだけでも良く見えるもの。
 でも、と雲珠がエンデを見上げる。
「いきなりバーって出てくるとイヤー! ってなるじゃないですか……!」
 その真剣な雲珠の表情に、エンデはくすりと笑う。
 勿論馬鹿にしたような笑いじゃなくって、驚かすような吃驚系のホラーが怖いのかぁ、という笑いである。
「うーん、じゃあ手でも繋いでおく?」
 きっと安心するよ、とエンデが手を差し出す。
「手を塞ぐのはよろしくないと思うんです」
 折角の申し出を断るのは心苦しかったけれど、これはただの肝試しではないのだ。
「そっか、じゃあ服を掴むとか尻尾とか羽を掴むとか?」
 雲珠くんのいいようにしていいよ、と笑うエンデは確かに雲珠よりも年上のお兄さんだった。雲珠だって十八歳のお兄さんなのだけれど、これが包容力……と思わざるを得ない。
「では、お言葉に甘えて羽の先を触っててもいいですか?」
 エンデの腰の辺りから生えた翼の先にちょん、と指先を触れると、エンデが少しくらい掴んでも大丈夫だよと笑う。でも、驚いた拍子に羽を毟っちゃいそうだなと思った雲珠は、これで大丈夫ですと頷いた。
 そんな風に廊下を歩き、迷子のアリス達を探す為に教室を巡る。一階には見当たらないようだと階段を上って二階へと向かい、また一つ一つ教室を覗いていくとポーンという音が聞こえてくるではないか。
「ピャッ」
 びくんとした雲珠が垂直に十五センチくらい飛んで、やっぱり触れているだけで良かったと胸を撫で下ろす。
「なんだか誘う様な音だね」
「ピアノの音でしょうか」
 ピアノとくれば音楽室だと、二人で音の聞こえる方へと向かう。
「ありました!」
 室名札にも音楽室と書かれた教室の扉を開ければ、誰もいないのにひとりでに音楽を奏でるピアノが見えた。
「か、勝手にピアノが」
 種も仕掛けもないんですよね、と雲珠がピアノの下を覗き込めば、ピアノの下に蹲る影と目が合って――。
「きゃ」
「きゃ?」
「キャーーー!」
 雲珠の悲鳴にピアノの下の影もキャー! と叫ぶ。
「どうどう、落ち着いて。雲珠くん、ほら」
 迷子の子じゃない? とエンデが言うと、雲珠が閉じていた目をぱちりと開く。よく見れば、可愛らしい花のような愉快な仲間がそこに居た。
 雲珠がしゃがむと、愉快な仲間がびくんと震えて後退る。
「あっ、待って待って! 俺たちは味方です!」
 味方と聞いて、怯えていた愉快な仲間がピアノの下から這い出て立ち上がった。
「お怪我はありませんか? 大変でしたね……」
 その言葉に安心したのか、愉快な仲間がこくんと頷いて二人の横に立つ。
「良かった、迷子の子も見つかったね。それにしても、夜中の演奏会だけならそこまで被害はないような……」
 自動演奏のピアノみたいなものだよね、とエンデがピアノに触れようとした瞬間、今まで大人しく音楽を奏でていたピアノがぐわっと大きな口を開いて牙を剝く。
「鳥栖さん、危ない!」
「おっと」
 咄嗟にその口を避けると、今度は音楽室に飾られた肖像画の目からビームが放たれた。
「うわわわ」
 雲珠が叫んで愉快な仲間を庇うように肩を抱き、難を逃れる。
「きゅ、急に物理的に危なく……!」
「被害がないって言ったからかなー?」
 侵入者用の罠みたいで面白い、一人で来てたら存分に殴って回れたのになぁ、なんて思いながらエンデがこの場を脱出する為に雲珠達のいる出入口へと向かう。
「鳥栖さん、扉が開かないです!」
 閉じ込められたと雲珠が焦ると、エンデがにっこり笑ってちょっと退いてとジェスチャーをする。それに従い扉から離れると、エンデが勢いを付けて――扉を蹴破った。
「ほら、開いた」
「物理的に!」
 開いた扉から飛び出し、扉をバーン! と閉めると一階まで一気に駆け降りる。
「楽しかったねぇ」
「楽しかったんですか?」
 うん、とエンデが機嫌よく笑うのを見て、雲珠もつられたように笑った。
「それじゃあ、とりあえず脱出としようか」
「はい、愉快な仲間の方も、一緒にここを抜け出しましょう!」
 脱出するまでにまた怖い目にあったりもしてエンデの腕力が解決してくれるのだけれど、それはまた別のお話なのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浅間・墨
ロベルタさん(f22361)。トイレの花子さん【E】。
学校…寺子屋のようなものでしょうか?
とりあえずロベルタさんについて行こうと思います。
途中で用を足したくなったらしいロベルタさんと厠へ。
私は入り口で待っています。

?ロベルタさん何方かと話している…気がします?
「…あ、あの…だ…か、居…す…?」
確認のために厠の中に顔を向けますがロベルタさんだけで…。
??しかし周囲に邪気もないですし問題…ない…ですか?

ロベルタさんには見えているようですが私には見えません。
…少し…ショックです。私は巫女職なのに…。
(花子さんに慰められているが気づかない)


ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)。花子さん【E】。
何だか面白そうだから墨ねーの手を引いていくじぇ!
「…ごめん。ちょっと…トイレ…」
トイレの入り口前で墨ねーに待ってもらって中に入るよ。
おー。なんだか真っ暗…でもないけど雰囲気あるねぃ♪

トイレを澄ませて手を洗ったら小さい女の子が。あれ?
声かけて話してたら意気投合しちゃって楽しくなったじぇ!
…ん?墨ねーには…見えない?あれ?じゃあ…この子は…?
「そっか! ゆーれーだったんだねぃ!」
…ん?墨ねーが…へこんでる?



●見える? 見えない?
 なんだかとっても面白そう! という理由だけで、ロベルタ・ヴェルディアナ(ちまっ娘アリス・f22361)は浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)の手を引いて、如何にもな雰囲気を醸し出す夜の学校を歩いていた。
「ふんふんふーん♪ 夜の学校は暗いんだじぇ~♪」
「学校……寺子屋のようなものでしょうか?」
「テラコヤ? お店じゃないんだじぇ」
 もう既に意思疎通ができていない、けれど墨はロベルタのそんな自由なところが好きだったし、きちんと説明すれば良いのだと知っている。
「寺子屋と言うのは、そうですね……子ども達が読み書きを学ぶ場所、でしょうか」
「それなら、墨ねーの言う通りなんだじぇ!」
 自分の考えが間違っていなかったことに、墨が小さく笑みを零した。
 ギシギシ、キィキィと鳴る木造の廊下を歩き、窓から教室の中を覗き込んでアリスの仲間がいないかを探す。
「いないねぃ」
「見当たりませんね、もう脱出したのかもしれませんが」
 それならそれで、全然オッケー! と、ロベルタがくるりとスカートの裾を翻し、まだ見ていない場所を探す為に歩き出した。
 途中までは元気よく歩いていたロベルタだったのだけど、段々もじもじとし始めて墨が首を傾げてロベルタを見遣る。
「墨ねー……」
「どうなさいました?」
「ごめん、ちょっと……トイレ……」
 ああ、と墨が微笑んで、二人でトイレを探す。順繰りに見ていけば女性用のトイレが見つかって、ロベルタが勢いよく中に入っていく。
「私はここで待っていますので」
「うん、ちょっと待っててねぃ!」
 一応電気を付けてみようとするけれど、スイッチを入れても電灯は点かなかったので、暗いトイレも何のそのとばかりにトイレの扉を開く。
「真っ暗……ってわけでもないんだよねぃ」
 真っ赤な満月の月明かりは不気味さがあるけれど、ギリギリ見える範囲なのだ。
「わお、和式! 雰囲気あるねぃ♪」
 では失礼、とばかりに用を足し、手を洗おうと洗面所に向かう。水は出るようで、どういう基準なんだろうと思いつつも有り難く手を洗った。
「ええっと、ハンカチハンカチ……」
 持ってたっけ? とロベルタが思った瞬間に、そっと白いハンカチが差し出される。
「貸してくれるの? ありがと!」
 差し出されたハンカチで手を拭いて、返そうと相手を見れば見知らぬ小さな女の子で。
「あれ? こんなところで何してるんだじぇ?」
 そう問い掛ければ、白いブラウスに赤い吊りスカートを着た女の子はロベルタに向かって微笑んだ。
 迷子なのか、もしかして愉快な仲間達なのかな? なんて色々聞いているうちに、控えめながらも頷いたり首を横に振ったりと意思疎通のできる少女のことがすっかり気に入って、ロベルタは洗面所の前でにこにこと話す。鏡にその少女が映っていないことには、全く気が付かずに――。
 さて、トイレの入り口で待っている墨はといえば、中々出てこないロベルタが段々心配になってきて、そぉっと扉の方へと近付く。
「……? ロベルタさん、何方かと話している……気がします?」
 大きな独り言という可能性も無きにしも非ずなのだが、念の為に確認を……と、墨が扉を開けた。
「……あ、あの、ロベルタさん? だ……か、居……ます……?」
 そぉっと覗き込んで、本当に誰かいたらと思うと声が小さくなってしまったけれど、墨がロベルタに問い掛ける。
「ん? いるよ!」
「ええと……」
 いる、と言われた場所に視線を向けるけれど、墨から見ればどこをどう見てもロベルタしか見えない。
「いません、よ?」
「あれ?」
 墨はいないと言うけれど、ロベルタの目には変わらず少女が笑っている姿が見えて。
「墨ねーには……見えない? あれ? じゃあ……この子は……?」
 むむむ? と首を傾げ、墨を見て、少女を見遣る。
 そうして、閃いた! とばかりにロベルタが声を上げた。
「そっか! ゆーれーだったんだねぃ!」
 こくんと頷いた少女に、ロベルタが満面の笑みを浮かべる。
「幽霊、ですか?」
 危険なものかと身構えるけれど、周囲には邪気もなく悪意も感じられない。それにロベルタが笑っているのだから、恐らくは問題ないのだろう。
「ここにいるんだよ、墨ねー」
 ここ、と指さされた場所の隣まで来るけれど、やはり姿も気配もわからない。
「……ロベルタさんには見えているようですが……残念ながら……私には、見えません……」
 私、巫女職なのに見えないなんて……、と少しショックを受けたように墨が俯く。
「……ん? 墨ねー、へこんでる?」
 そう言った瞬間に、少女の霊が慰めるように墨の背を撫でるけれど、それにも気付かないようで墨は小さく溜息をついていた。
「ん~~、見えないのは年齢のせい、とか!」
「そう、かもしれません……!」
 そう言われるとなんだか救われたような気がして、墨が微笑んだ。
 少女がロベルタの服の裾をつん、と引っ張り、あっち、と廊下に向けて指をさす。
「何? 何かいるのかな?」
 トイレからそっと顔を出すと、少女が指さした場所には愉快な仲間がしょんぼりとした顔で立っていて。
「あー! 愉快な仲間、見つけたんだじぇ!」
 ありがとう! とお礼を言おうとしたら、少女の姿はロベルタにも見えなくなっていた。
「七不思議……いい奴だったんだじぇ♪」
 ばいばい、とトイレに向かって手を振って、ロベルタは墨と共に愉快な仲間の方へと走るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

杜鬼・クロウ
【鏡花】◎
ヤバイ人体模型H

誰がお化け如き恐れてるって?
俺は学校に通ったコトねェから凄ェ興味あったンだよなァ

夜の校舎や七不思議に目輝かせ高揚気味

お前も幽霊平気なのか…フーン
怖くねェンじゃなかったのかよ
はぐれねェよう気ィつけろ

ニコリネをわっと驚かせて笑う
先導して校舎内を歩く

UC使用
鏡を5枚出す
逆にホラー感増す

誰か居たら鏡でも気付けるだろ
お前も根性見せろや(彼女へ命令
急に強くなったなァ、頼もしいぜ!

夜雀召喚し怪異探索
怪しい輩がいたら連絡するよう伝達
怪異発見後は玄夜叉で斬る

ニコリネ、そいつお化けじゃねェぞ
ってウワ!こっちが本物じゃねェか
追いかけてくんな!
気持ち悪かったわ…ニコリネ大丈夫か?(手差し出し


ニコリネ・ユーリカ
【鏡花】◎
臓器どろりん人体模型H

ミスターったらオバケが怖くて私を誘ったのね(ほほほ
私はハイスクールで沢山の怪談を耳にしたから平気よ
今更どんな幽霊が出たって全ッ然怖くないから
先頭はミスターにヤダ後ろも怖いから置いてかないで!!

UCで幽霊吸引機を背負った「都市伝説バスターズ」に変身!
退治する側になれば!! 奮起できるかな!!
ライトで前方を照らしつつアリスを捜索
そうねぇ鏡で光量を増せば……余計ホラーじゃない?(蒼白

むむっ前方に怪しい影を発見!
びゃぁぁああ強力吸引機で吸、えっあっ、愉快な仲間さん!?

アリスを発見したら[手をつな]いで進みましょ
ホラ迷子になったら嫌だしお願い離さないでミスターも!(ぎゅむ



●怪異をバスターしちゃうあれ
 どんよりとした暗い空、雲の隙間から覗くのは真っ赤な満月、その満月が照らすのはどこか寂れた木造の校舎。お化けが出るぞ、と言わんばかりの建物を前にして、ニコリネ・ユーリカ(花売り娘・f02123)は何処かご機嫌な顔をして杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)を見遣った。
「ミスターったら、オバケが怖くて私を誘ったのね」
 ほほほ、と手を口元に当ててニコリネが笑う。
「誰がお化け如きを恐れてるって?」
 片眉を跳ね上げて、クロウがニコリネをじろり睨む。それから口元に笑みを浮かべ、木造の校舎に視線を戻した。
「俺は学校に通ったコトねェから、凄ェ興味あったンだよなァ」
 夜の学校って奴にも、七不思議って奴にも、とクロウが言う。
「七不思議、学校によって色々あるのよね」
「知ってンのか?」
「ええ、私はハイスクールで沢山の怪談を耳にしてきましたから」
 夜中に動く人体模型、誰もいないのに鳴るピアノ、校庭を走り回る銅像、階段の数が十三段になるもの、トイレに現れる少女の霊、廊下を歩いていると追い掛けてくる上半身しかない少女の霊……と、ニコリネが有名だと思う七不思議をクロウに聞かせた。
「へェ……聞いてるだけだと特に怖くもないのがあるな」
 ピアノが鳴ったり銅像が走り回ったり、それはどこが怖いんだ? とクロウが首を傾げて問い掛ける。
「……それは体験した人しかわからないんじゃないかしら? それに怖いばっかりでもないのよ、七不思議って」
 この校舎の中で出会う七不思議は知らないけれど、と思いつつニコリネが答えた。
「まあ、私は今更どんな幽霊が出たって全ッ然怖くないから!」
 任せなさい、とばかりに胸を張ったニコリネに、クロウが唇の端を持ち上げた。
「お前も幽霊平気なのか……フーン、じゃあお前先頭な」
「先頭はミスターに!」
「なんだよ、じゃあ俺が先に……」
「ヤダ! 後ろも怖いから置いてかないで!!」
「怖くねェンじゃなかったのかよ!」
 前言撤回が早すぎるだろ、とクロウが呆れたようにニコリネを見遣る。
「幽霊が怖くないのと、夜の校舎が怖くないのは別だと思うのよ!」
 結局怖いンじゃねェか、とクロウが笑って、何だかんだでクロウが先導することとなった。
「あ、中に入る前に」
 リコリネがそう言うと彼女の力、Fair Lady Nを行使する。パァ、と眩い光りが煌くと、ニコリネの背には幽霊吸引機が装着され、これで準備万端と奮起するように拳を握った。
「はぐれねェよう気ィつけろ」
 その言葉にこくんと頷いて、二人でギィギィと鳴る廊下を歩く。おっかなびっくり、といった風にライトを照らして歩くニコリネを揶揄いたくなって、クロウが大きな声を出して驚かすとニコリネがぴょんっと飛び上がって悲鳴を上げる。
「み、ミスター!」
「ふ、ハハ、悪い悪い」
 悪いと思っていない顔と声で謝罪しつつ、手を前に構えて黄金鏡を五枚出現させると前方に展開させた。
「背後に誰か居たら、鏡で気付けるだろ」
「そうねぇ、鏡で光量を増やせば……余計ホラーじゃない?」
 光が反射して、余計に濃い影を生んでいるのは控え目に言ったってニコリネにはホラー感マシマシである。これじゃあアリスを探すどころじゃないんじゃ、とクロウを見上げるとニヤっとした笑みを浮かべて言う。
「お前も根性見せろや」
 命令である、そしてそれは今の彼女にはとっても有効であった。
「むむっ前方に怪しい影を発見!」
「ハハッ急に強くなったなァ、頼もしいぜ!」
 吸引機を片手に向かって行くニコリネを見つつ、夜雀を召喚すると怪異を見つけたら伝えろと言って蝙蝠に変化する果実型式神を放つ。
「びゃぁぁああ!」
「どうし……」
 一目見てニコリネ言うところの怪しい影が怪異ではないと見抜いたクロウが、ニコリネが吸引機を向けた手を掴んで止める。
「強力吸引機で吸……」
「ニコリネ、そいつお化けじゃねェぞ」
「えっあっ、アリスさん!?」
 よくよく見れば、可愛らしい女の子が涙目でこちらを見上げているのが見えた。
「良かった、アリスさんが見つかって! 一緒に行きましょう?」
 そう言ってニコリネが手を差し出すと、アリスが頷いてその手を取った。
「ミスター、これで一件落着ね!」
「いや……もう一つ怪しい影が」
「アリスさんのお仲間かしら?」
 こっちよ、とニコリネが手を振ると同時に、クロウが放った夜雀が主へ危険を知らせる。
「待て、ニコリネ!」
 手にしたライトを影の方へ向けると、そこには。
「びゃ、びゃぁぁああ!!」
 一度外へ飛び出た臓器をむちゃくちゃに身体に詰め込んだような、人体模型。
 人体模型と言うよりは、もうそれは生きた人間が身体の半分の皮を剥がれたような生々しさのある怪異であった。
「チッ、こっちが本物じゃねぇか! 玄夜叉!」
 手に馴染む漆黒の大魔剣を手繰り寄せ、クロウが人体模型へと振り下ろす。
 真っ二つになったそれが、真っ二つになったまま手足を動かしクロウ達へと追い縋る。
「追いかけてくんな!」
 人体模型の頭を蹴っ飛ばし、固まってしまったニコリネとアリスを引っ張ってクロウ達は校舎の外へと走った。
「はー……気持ち悪かったわ……ニコリネ大丈夫か?」
「だいじょばない……だいじょばないけど、大丈夫……」
 アリスさんも、ミスターも、大丈夫? とニコリネがなんとか顔を上げる。その先に、ぐにゃんとしたような時空の歪みのようなものを見つけて、ニコリネがあれ! と指さした。
「出口か?」
「きっとそうよ! 行きましょう、あっ手は繋いでね! ホラ迷子になったら嫌だし、お願い離さないで、ミスターも!」
 しょうがねェなと差し出された手を掴み、クロウはニコリネとアリスを連れて出口に向かうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『マーダー・ラビット』

POW   :    きす・おぶ・ざ・です
【なんとなく選んだ武器】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    ふぁんとむ・きらー
【糸や鋏、ナイフ等】による素早い一撃を放つ。また、【使わない武器を捨てる】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    まさくーる・ぱーてぃ
自身の【殺戮への喜びによって瞳】が輝く間、【自身の全て】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠終夜・嵐吾です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●うさぎがわらう
 アリスとその仲間達を連れて、猟兵達は木造の校舎から脱出する。校庭にはまるでマーブルを描いたような時空の歪みが見え、きっとあれこそが出口だと駆けた。
 それは正しく出口であり、そこを抜けると青空が広がっていて、よくよく見れば、あの恐ろしくも禍々しい夜の学校の世界と対をなすような、建てたばかりのようなぴかぴかの木造の校舎が見えた。
 それから、嬉しそうに笑う時計ウサギの姿も。
「おや、おやおや! あはっ、本当に出てきたんですね~!」
 おめでとうございます! あなたは選ばれたアリスですね! なんて、自分がしたことなんて忘れたかのように時計ウサギが手を叩いてアリス達を祝福している。
「ああ、僕は何て幸せ者なんでしょう!」
 大きく手を広げ、それから芝居がかった動きで一礼をしてみせた。
「試練を潜り抜けたアリスさん達に、改めて自己紹介をいたしましょう。僕は猟書家の一人、マーダー・ラビット」
 手にした鋏をシャキンと鳴らし、あはっと笑って。
「約束通りご褒美をさしあげますね!」
 誰から殺して欲しい? そう言って、マーダー・ラビットは嬉しそうに駆け出した。
アウグスト・アルトナー

【アパラさん(f13386)と】

戦場は校庭

まず、自身が前に出て敵の攻撃を【おびき寄せ】、アパラさんと塗料缶頭の愉快な仲間を攻撃させないようにします
自身に向かう攻撃は【オーラ防御】。捌ききれない分は【激痛耐性】で耐えます

隙を見て、【嘘から出た実】
「あの愉快な仲間の方の油性塗料、すごいんですよ。何しろ、竜になってあなたを呑み込むんですよ?」
この嘘を具現化して、塗料の竜で敵を【捕食】し、動きを封じます

それからアパラさんの喚んだ水晶馬に乗り、『NIX-03MN』を【クイックドロウ】して敵を撃ちつつ、敵から距離を取ります

アパラさん、お願いします。炎を

油性塗料はよく燃えます
うさぎの丸焼きになってください


アパラ・ルッサタイン

アウグストさん(f23918)と

校庭へ
【退紅色】で水晶馬を喚ぶ
敵に氷針を放ち、
引き付けてくれているアウグストさんへの攻撃を少しでも阻害
援護出来ればそれで良しさ

塗料缶頭さん(愉快な仲間)と共にその間に敵近くへ移動
アウグストさんのUCに合わせる様に
敵に塗料を塗りつけてもらおう

塗料缶頭さん、先程鏡にやったヤツ
もう一度お願い出来ないかい?
あの怖いウサギに景気よく頼むよ!

捕縛が成ったなら
アウグストさん、水晶馬に乗っておくれ
水晶馬は彼のいう事をようく聞いて其処から離れて

……そろそろ良いかな?
巻き込まぬ距離が保てたら
【2回攻撃】で此度は炎を
お任せあれ
存分に焼却しよう

やあ、塗料ってこんなに良く燃えるんだねえ



●ウサギには噓と実、それから炎を
 校庭を走り回るマーダー・ラビットを一番に捕捉したのはアウグスト・アルトナー(悠久家族・f23918)で、雪結晶のマークがついた拳銃で威嚇するようにマーダー・ラビットの足元を狙う。
『やだなぁ、危ないじゃないですか!』
 当たったら痛いんですよ? なんて笑いながらアウグストに向かって手にした鋏を向けた。
 血塗れの鋏を振り回し、切れ味を試してあげますね! とアウグストに向かって鋏を振るう。右へ左へと鋏の刃を避けつつ、自身の肌を掠めそうになる切っ先は彼のココロのままに形を変えるオーラによって、その攻撃を防いだ。
「邪魔な盾ですね!」
 それごと切ってしまいましょうか、とマーダー・ラビットの瞳が妖しく光った。
 アウグストの後方から二人の攻防に目を離さぬまま、アパラ・ルッサタイン(水灯り・f13386)が遊色の瞳を煌かせる。
「さあ、描いておくれ」
 アパラが手にした洋灯から、ぶわりと炎が溢れ出す。それは瞬く間に水晶馬となって、アウグストに猛攻を仕掛けるマーダー・ラビットに氷針を浴びせた。
『っと! もう、痛いじゃないですか!』
 アウグストから距離を取ったマーダー・ラビットにふん、とアパラが笑って、援護が出来たなら何よりだとアウグストへ視線を送る。その視線を受け止めてアウグストがアパラに微笑むと、マーダー・ラビットの動きを阻害するように拳銃の引き金を引いた。
 マーダー・ラビットの視線がアウグストに注がれると、その隙にアパラが塗料缶頭の愉快な仲間を連れてマーダー・ラビットの背後を取る様に動く。
 マーダー・ラビットを間に挟み、アウグストとアパラはお互いの一挙手一投足、その全てを己の五感で感じ取っていた。
 それはまるでワルツを踊るかのように、次にどう動けばいいのかを理解しているかのよう。
「塗料缶頭さん」
 そう小さな声でアパラが愉快な仲間に呼びかけると、まん丸い目がアパラへと向けられる。
「先程鏡にやったヤツ、もう一度お願い出来ないかい?」
 鏡にやったこと、それは自分の塗料を相手にぶち撒けたこと。こくんと頷いた愉快な仲間に笑顔を向けて、合図と同時に動いてもらうよう伝え、その瞬間を待つ。
 アウグストがマーダー・ラビットの気を確りと引き付けたのを確認すると、アパラが声を上げた。
「塗料缶頭さん、あの怖いウサギに景気よく頼むよ!」
 任された! とばかりに愉快な仲間がマーダー・ラビットに向かって、勢いよく塗料をぶち撒ける。それにはきっと、自分達を騙して怖い目に合わせた恨みも含まれていたのだろう。真っ赤な塗料がマーダー・ラビットへと降り注いだ。
『えっ、何ですか!?』
「愉快な仲間の油性塗料です」
 塗料? とマーダー・ラビットが背中に掛かったそれに指先を伸ばす。それに追い打ちをかけるように、アウグストが高らかに告げる。
「あの愉快な仲間の方の油性塗料、すごいんですよ。何しろ、竜になってあなたを呑み込むんですよ?」
『そんなこと』
 あるわけがない、と言おうとした瞬間、マーダー・ラビットの背後からぐわりと大きな竜の顎が現れたではないか。それはアウグストの力、噓から出た実。虚言を具象化する力だ。
 竜の顎に飲み込まれたマーダー・ラビットの動きが止まると、アパラが水晶馬にアウグストのいう事をようく聞いてと言い聞かせ、彼の元へ走らせた。
 アウグストが水晶馬の背に乗り、馬上からNIX-03MNを撃ちつつマーダー・ラビットから距離を取る。
「アパラさん、お願いします」
 アウグストの声が響くと、アパラがふわりと微笑む。
 距離は充分、目標は塗料塗れの殺戮ウサギ。
「お任せあれ、存分に焼却しよう」
 囁くような声に応え、水晶馬が今度は幾つもの炎を放った。
『あつ、あっつい、熱いですよ!』
 ギャアギャア喚きながら、マーダー・ラビットが燃えたまま走る。
「やあ、塗料ってこんなに良く燃えるんだねえ」
「ええ、油性塗料はよく燃えます」
 うさぎの丸焼きの出来上がりですね、とアウグストが燃えたまま走り転がるマーダー・ラビットを見て呟いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

スピーリ・ウルプタス
敵様の纏う武器たちを観察していたら気付きました
これは!私の天敵様ですね!
ええ、本体はナイフや鋏などで簡単に千切られてしまいますので(やたら嬉しそう)
ちなみに火や水も天敵です☆(聞いてない)

なれば、数で勝負といきましょう
UC発動
躊躇いなく分身本たちで攻撃受け止めては、別の分身本で体当たり攻撃
ええ決して、あわよくばこのヒトの身に押し寄せる、分身本たちが切り刻まれる痛覚を堪能したいとか思っていませんよ。
本体まで分身の中に織り交ぜて、いつ致命的一撃もらうかハラハラゾクゾク時間を楽しんでなんておりませんとも!(良い笑顔)
(狂人と変人は紙一重かもしれない)

とはいえアリス様方に手出しは決してさせませんので。



●紙一重の攻防
 カチカチ山の狸みたいな感じで走り転がるマーダー・ラビットを見て、スピーリ・ウルプタス(柔和なヤドリ変態ガミ・f29171)はなるほどそういう、と思ったのだけれど、彼が水を浴びて火を消した瞬間にすんっと真顔に戻る。
「お仲間ではなかったのですね……」
『全く酷い目にあってしまいましたねぇ、これは――うん、貴方で憂さを晴らすとしましょう!』
 貴方で憂さを、という言葉と自分に向けられた視線、にスピーリがすんっとした真顔から喜色に満ち溢れた笑みを浮かべて叫んだ。
「悦んで!」
『いいお返事ですね!』
 これはこれで相性がよろしいのではないか、と思いはしたけれどマーダー・ラビットは猟書家であり、猟兵とは相容れない存在。けれど、けれどだ。
 マーダー・ラビットの扱う武器はどう見たってスピーリの天敵。彼は魔導書のヤドリガミなので、ナイフや鋏なんて持ち出されてしまったら簡単に千切られてしまう。
「ちなみに、火や水も天敵です☆」
 嬉しそうな顔をして、自分の弱点を話すスピーリにマーダー・ラビットもほんのちょっと面食らってしまったけれど、お望みなら君をバラバラにしてあげるよ、と鋏をシャキンと鳴らした。
「マーベラス! 嗚呼、でも私にはご主人様がいますので」
 ここで倒れるわけにはいかないのです、とスピーリが微笑んで手にした己の本体を撫でる。
「不惜身命といきましょう」
 囁くように言うと、スピーリの本体と寸分違わぬ複製が現れた。その数、八十五冊。
『あはは、全部切り刻んでさしあげますね!』
 たくさん、たくさん殺せると笑ったマーダー・ラビットの瞳が赤く輝く。何冊かの分身本を盾にすれば、殺戮ウサギが楽しそうに切れ味鋭い鋏で本をバラバラにしていく。
「……ッハ、さいっこうです!」
 脂汗を滲ませつつも、スピーリの表情は悦びに満ち溢れ、痛みの走る腕をなんてことないように動かしては分身本をマーダー・ラビットにぶち当てた。
 相手がよろけたところへ、総攻撃だとばかりに分身本を雪崩こませ、ついでに本体も織り交ぜる。鋏の切っ先が本体に触れるか触れないかの紙一重を楽しんでいるのだ。
「この感覚、昂ぶります……!」
 致命的な一撃をもらえば自身も危ういのだが、このハラハラゾクゾクする時間が楽しくて仕方ないと、スピーリが鮮やかに笑っては分厚い魔導書をマーダー・ラビットに降り注がせた。
「ああ、とはいえ大丈夫ですよ、愉快な仲間様に手は出させませんので」
 ある意味ハイエンドな戦いを後方で見守っていた愉快な仲間がその言葉に頷きつつ、世界って広いんだなぁと現実逃避気味にスピーリの戦いを後方から支援するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

高妻・幽理
「(うさぎ??)」
人の形をしているけれど?
首をかしげた幽理がハサミに気付く。
赤錆びて見えるのは……背後に庇ったアリスの仲間達が怯えていたことを思い出して、サッと幽理の顔色が変わる。
積極的に情報収集をしない為りょうしょか、というのが何かも知らない幽理でもどうやら友好的なのはその笑みだけらしいと察することができて、ユーベルコード【リアライズ・バロック】が怯えたアリスの仲間達に引きずられるように発動、攻撃を開始する。

残りはお任せします



●知らずとも
 校庭を走るマーダー・ラビットを見て、高妻・幽理(ダンピールのバロックメイカー・f23676)はうさぎ?? と首を傾げる。ああ、そういえば時計ウサギと言っていたっけ、と思いつつ、それならアリスの仲間なのではと一緒に脱出した愉快な仲間を見遣る。
 視線に気付いた愉快な仲間が、問う様な幽理の視線にふるふると首を横に振った。
 仲間じゃないのか、ともう一度マーダー・ラビットを見れば、手に鋏を持っていて。赤錆びて見えるのは、誰かの血。それに気づいた瞬間、幽理の顔色が変わった。
 咄嗟に愉快な仲間を背後に庇い、こちらに向かってきたマーダー・ラビットを睨み付ける。
『おやおや、怖いお顔ですね! 駄目ですよ、笑って笑って! ほら、僕みたいにね!』
 その笑顔は優し気に見えて、目は笑っていない。背後で怯える気配を感じ、下がってと言うように手を後ろへ向けた。
『ふふ、口枷をしていては笑えませんよねぇ』
 りょうしょか、と口枷の嵌まった唇でなぞる。
『ええ、その通りですよ!』
 猟書家が何を意味するものなのか、積極的に情報収集をしない幽理には何一つ分からなかったし、知らないことばかりだけれど。
 知らずとも、それは敵だと本能が告げていた。
 友好的に見える笑みは殺意に満ち溢れていたし、鋏は幽理とその背後に庇われた愉快な仲間を狙っている。
 だめだよ、とその意思を籠めてマーダー・ラビットを見た。
 だって僕はその為に此処に居るのだから。
『では、力尽くといきましょう!』
 楽し気に笑うマーダー・ラビットが幽理に襲い掛かる。バックステップを踏んでそれを避け、愉快な仲間を守りながら攻防を重ねていく。鋏が幽理の腕を掠め、僅かに血が飛び散ると背後でヒッと息を飲む声が聞こえた。
 愉快な仲間の怯えた声、感情が揺れ動く。
『あはは、もっともっと、僕と遊びましょう!』
 マーダー・ラビットの言葉に、幽理がそれは本当の言葉ではないと強く思う。マーダー・ラビットの言う言葉は全てが殺意に満ちている、と。
 瞬間、幽理の元にバロックレギオンが召喚される。それは悍ましき怪物であったけれど、幽理へ猜疑心を与えたマーダー・ラビットへと迷わず襲い掛かった。
 嘘吐きなうさぎは消えてよ。その心のままに、バロックレギオンはマーダー・ラビットを追い詰めるようにどこまでも追い掛けていく。
 もう怖くないよ、と言うように背後に守った愉快な仲間を見遣ると、そっと小さな手を幽理の傷へと当てた。
 それは不思議な光りを放って、手を離した時には幽理の傷はすっかりと治っていて。
 幽理はありがとう、と目元を緩ませたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

太宰・寿
【ミモザ2】◎
で、出れたー…!
後はマーダー・ラビットを倒せば終わりだね
怖い思いした分、張り切って虹霓を振るよ(素振り
カッコ悪いとこ見せた分も取り戻さないと、年上の矜持が…!

絵の具を散らしながら虹霓を振る
あえて接近戦に持ち込んで
とは言えきっとマーダー・ラビットの速さについていくので精一杯
虹霓で攻撃を凌いで
…ちくたくさん、捕まえて!
硝子の蔓でほんのちょっと動きを止められたなら、後は英が捉えてくれる

英がいてくれたら無茶にならないよ
へら、と笑って小言に応えたら

ほら、こうやって英が助けてくれるもの
マーダーラビットに、おまけで桜吹雪をプレゼント
さようなら、悪いうさぎさん
別に根に持ってない…ことはないよね


花房・英
【ミモザ2】◎
…あんまり張り切り過ぎて怪我しないでよ
別にカッコ悪くはなかったと思うけど
寿は時々つまんない事に拘るな
まぁいいや、仕事だしさっさと片付けよう

駆け出した寿に待てと言うには遅くて
寿が捌ききれない攻撃は、クロからエネルギーの盾を展開して補助する
無茶しやがって
ああ言えばこう言う…
けど、それは俺も同じかと内心思いながら
寿の作った隙は逃さずに、手に遊ばせていた無銘を振り抜く
花の刻印を刻んだなら、後は少しずつ毒が蝕んでいくだろう
入れ替わりに寿より前に出て寿のUC発動までマーダー・ラビットの動きを抑える

あてにしてくれるのは悪い気しないけど
だから目を離せないんだよ、とため息
すげぇ根に持ってるな…



●悪いウサギには倍返し!
「で、出れたー……!」
 ホラー感満載の空間から抜け出せて、太宰・寿(パステルペインター・f18704)が安堵の声を零すと、花房・英(サイボーグのグールドライバー・f18794)もその表情に小さく笑みを浮かべる。それから、現れた猟書家マーダー・ラビットに鋭い視線を向けた。
「後はマーダー・ラビットを倒せば終わりだね」
「ああ、そうだな」
 寿がモップサイズの絵筆を両手で構え、何かを叩き割るような素振りを繰り返す。
「怖い思いした分、張り切って虹霓を振るよ」
 夜の校舎で味わった怖さを少しでも味併せてやるんだから、とばかりに寿が素振りはここまでと虹霓を構えた。
「……あんまり張り切り過ぎて怪我しないでよ」
 肝心なところで転ぶんだからとは口にせず、英が手に嵌めた黒い指ぬきグローブを指先で軽く嵌め直す。
「だって、カッコ悪いとこ見せた分も取り戻さないと、年上の矜持が……!」
「別にカッコ悪くはなかったと思うけど」
「嘘、だって絶対カッコ悪かったもの」
「寿は時々つまんない事に拘るな」
 カッコ悪いというよりは、可愛いに近かったけど、そんなことは口には出さず、英は拳を握って開いてを何度か繰り返し、クロの調子を確かめながら息を吐く。
「まぁいいや、仕事だしさっさと片付けよう」
「うん! 行くわよー!」
 そう言うと、いざウサギ退治とばかりに寿が駆け出した。
「ま……っ」
 待てと言うには遅く、英はその後を追い掛ける。
『おや、今度はお嬢さんがお相手ですね? いいですよ、遊びましょう!』
 動かなくなるまで、と笑ったマーダー・ラビットに向かって、寿が絵具を散らしながら虹霓を振り被った。
『お絵描きですか、僕も得意なんですよ~あなたの血で綺麗な絵を描いてさしあげますね!』
 手にした鋏をシャキンと鳴らし、赤い目を輝かせたマーダー・ラビットが寿に襲い掛かる。敢えての接近戦を選んだ寿はマーダー・ラビットの攻撃を虹霓で防ぐけれど、殺戮ウサギの動きは考えていたよりも早い。
 隙を突いて繰り出された鋏の切っ先に怪我を覚悟して、気丈に虹霓を振るった。
「寿!」
 咄嗟に英がクロからエネルギーの盾を展開し、寿を凶刃から守る。
「全く、無茶しやがって」
「英がいてくれたら無茶にならないよ」
 だから大丈夫なのだと、へらりと笑って寿が腕時計に触れる。
「……ちくたくさん、捕まえて!」
 それは腕時計型のクランケヴァッフェ、寿の意志に応じて硝子の蔦がマーダー・ラビットへと伸びる。
 少しでも動きを止められたなら、必ず英が捉えてくれる。そう信じて寿は意識を集中させ、硝子の蔦でマーダー・ラビットの腕を捕まえさせた。
「ったく、ああ言えばこう言う……」
 けど、それは俺も同じかと胸の内で呟きながら寿が作り出した隙を逃さないとばかりに、手の中で遊ばせていた刀身に乙女椿が装飾された折りたたみ式のナイフをマーダー・ラビットに向かって振りぬいた。
「印をやろう、お前を殺す標を」
 殺戮ウサギに刻んだのは花の刻印、無銘から変じた毒の蝶が花の蜜を吸うかのように群がっていく。
「ほら、ね? 言った通りでしょう?」
 こうやって、英が助けてくれるもの、と寿が笑みを浮かべながらマーダー・ラビットへ追撃を掛けるかのように虹霓を無数の桜の花びらへと変えていく。
 桜吹雪を操る寿を横目で見つつ、あてにしてくれるのは悪い気しないけど、と英は思う。
「だから目を離せないんだよ……」
 誰にも聞こえない声でそう呟いて、そっと溜息を零しつつマーダー・ラビットを追い詰める為に桜吹雪に合わせるように蝶を遊ばせた。
「さようなら、悪いうさぎさん」
 逃げるように駆け出したマーダー・ラビットを桜の花びらが追いかける。
 それは絶対に怖い目に合わせてやるんだから、という寿の気概にも似ていて。
「すげぇ根に持ってるな……」
「……別に根に持ってない……ことはないよね」
 そうっと英の顔を窺うように寿が彼を見上げれば、彼の紫色の瞳と目が合って寿はふにゃりと笑ったのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミア・アーベライン

アリスさま方
わたくし、悔しいですけれども猟兵としてはさして強くございませんの
だから、敵の隙が見えたら教えてくださいませ
そこを、狙いますわ

妖刀「ドゥンケル」を手にとって、UC起動
体力がない分、不利かもしれませんが、そこはそれですわ
わたくしには守るべき方々がいらっしゃる
この剣にかけて、けして負けられない

一撃でいい 入れてみせますわ

おそらくはスピード勝負になるかと思いますの
斬って斬られて、でもアリスさま方の合図は逃しませんわ

ドゥンケル、喰らっておしまいなさい!

剣をまっすぐ突き出して刺すんですの
ああ、オブリビオンにも生気はあるんですのね
大変美味しゅうございましたわ

アドリブ歓迎です



●その一撃は鋭く
 猟書家、マーダー・ラビットを前にしてミア・アーベライン(朔月の魔女・f31928)はライオンの着ぐるみのような愉快な仲間、ライにだけ聞こえるような声で話掛けた。
「ライ様」
 ぴょこん! と耳を揺らしたライがミアの言葉を聞き逃さないように、黙って頷く。
「わたくし、悔しいですけれども猟兵としてはさして強くございませんの」
 だからこそ、あなたの助けが必要なのだとミアは言う。
「敵の隙が見えたら教えてくださいませ。そこを、狙いますわ」
 それまではどんなに不利であっても、必ずアリスさま方をお守りしますから、とミアが微笑んだ。
 その微笑みに確りと頷き、ライはミアの後方へと下がる。邪魔をしてはいけないし、マーダー・ラビットの隙を一瞬たりとも見逃さない為だ。
 ライが下がったことを確認すると、ミアが妖刀ドゥンケルを手にし、その力を解放する。白銀にも似た剣はその名を現すかのように暗く、昏いオーラを放ち、ミアの身体へと纏わりついていく。
「参りますわ」
『今度は君が遊んでくれるんですか? いいですよ~、いっぱいいっぱい遊びましょう!』
 シャキンと鳴らした鋏の音よりも早く、マーダー・ラビットがミアへと素早い一撃を放つ。けれど昏いオーラを纏った彼女はその動きに喰らい付き、ドゥンケルの刃で弾いた。
 体力のない自分に取ってはどこまで付いていけるかがネックではあるけれど、そこはそれ。動きに付いていけている、それはミアにとっては喜ばしいことであった。
「ふふ、当たりませんわね」
『生意気なレディですね~、お仕置きが必要ですね!』
 お仕置きが必要なのは其方でしょう、とマーダー・ラビットに鋭い視線を向けながら、ミアは殺戮ウサギの動きに全神経を集中させる。
「わたくしには守るべき方々がいらっしゃいますの、この剣にかけて、けして負けられないんですわ!」
『あは、それごと全部殺してあげるよ~!』
 愉しい、とばかりに笑うマーダー・ラビットの切っ先がミアの腕を掠れば、お返しとばかりにドゥンケルの刃がマーダー・ラビットの足を切り裂いた。
 瞬間、マーダー・ラビットの体勢が僅かに崩れ、ライが声を上げる。
「ドゥンケル、喰らっておしまいなさい!」
 その合図を逃すミアではない、剣を真っ直ぐに突き出してマーダー・ラビットの脇腹を貫いた。
『……っ!』
「ああ、オブリビオンにも生気はあるんですのね?」
 きゅうっと瞳を細め、ドゥンケルを抉る様に引き抜く。
「大変美味しゅうございましたわ」
 ぺろりと下唇を舐めて、ミアが艶やかに微笑んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳥栖・エンデ

雲珠くん(f22865)と
七不思議と夜の校舎を脱出した先には
ウサギが待ち受けていましたとさ
……こういうのも怖い話になるのかなぁ
ならない?
まぁ、殴れば解決する方が
単純でやり易い気はするねぇ
血の気が多いやつ相手するのは好きだよ

騎士槍を構えてのウサギ狩り
後方からの攻撃は雲珠くんに任せて
…あ、何だか愉しそうな事になってる
気配がする。気になる……後で見せて貰おう、と
積極的に刺したり投げたり
召喚ドラゴンでの追撃も忘れずに
ご褒美もお仕置きも
受け取り方に因るんだろうけど
ほらほら足元がガラ空きさ

よく淡々としてるとは言われるけど
楽しい時は楽しいよぅ
舌舐めずりとかして派手にヤっちゃう?


雨野・雲珠
鳥栖さんと/f27131

ウサギですからねぇ。怖くは……
あ、前言撤回です。あれは凶悪且つ性質の悪いウサギ!
俺はお花ちゃん(※仮称)と一緒に距離をとります。

ウサギといえばくくり罠ですが、相手もなかなか賢そう。
刃物…ハサミにナイフ…そうだ!
【六之宮】で強力なでっかい磁石を出します。
直接持ってると流れ弾で刺さりそうなので、
【枝絡み】の枝でひと巻きして、鳥モチよろしく高く掲げる感じで。
吸着!余分な凶器回収!(ぐるんぐるん)
前と後ろで絵面のかっこよさの落差がひどいですが、
俺は合理的な桜なので気にしないのです!
ついでに足をとろうと枝で邪魔もします!

鳥栖さんてこう……あんまり変わりませんよね。
そう見えるだけ?



●怖い話の続きは昔話のように
 そうして、七不思議の現れる夜の校舎を抜け出した三人の前には、血塗れの鋏を持った殺戮ウサギが待ち受けていたのでした。
「ねぇ、雲珠くん」
「はい、なんでしょう?」
 鳥栖・エンデ(悪喰・f27131)の呼び掛けに、愉快な仲間のお花ちゃんと手を繋いでいた雨野・雲珠(慚愧・f22865)が答える。
「……こういうのも怖い話になるのかなぁ」
 脱出した先に待ち受けていたマーダー・ラビットを見て、あれ、と指をさして言う。
「ウサギですからねぇ」
「ならない?」
「大して怖くは……」
 そう言い掛けて、手を繋いでいたお花ちゃんがびくんと震えるのを感じ、もう一度雲珠がマーダー・ラビットを見遣る。にこっと笑った笑顔の奥に、底知れない嫌な気配を感じて雲珠が前言撤回ですと手を上げた。
「あれは凶悪且つ、性質の悪いウサギ!」
「じゃあ、やっぱり怖いお話になるかな?」
「なります、めでたしめでたしで終わらせますけども」
 そう言いつつ、雲珠がお花ちゃんと一緒に距離を取った。
『おやおや、ハッピーエンドがお好みですか? ええ、僕にお任せですよ~最高のハッピーエンドにしてみせましょう!』
 僕にとってのね! とマーダー・ラビットが笑い、鋏を手にしてこちらへと跳ねてくる。
「まぁ、この場合殴れば解決するよねぇ」
 難しいギミックを解くよりも、単純でやり易くていいとエンデが笑う。
「血の気が多いやつを相手にするのは好きだよ」
 そう言ったエンデの手には青白く輝く騎士の槍Gungnirが握られて、マーダー・ラビットへその穂先を向けた。
「ウサギ狩りだ」
『狩られるのはどちらでしょうね~!』
 唇の端を持ち上げて、エンデが殺戮ウサギを迎え撃つ。鋏と槍がぶつかる音が響く中、雲珠が何か良い援護射撃が出来ないものかと考える。
「ウサギといえばくくり罠ですが、野生の獣でもありませんし……」
 見え透いた罠を踏んでくれるほど愚かではないだろう、そもそも刃物を持った時計ウサギなのだ。
「刃物……ハサミにナイフ……そうだ!」
 閃いた、と瞳を輝かせた雲珠が六之宮の力を以って実物を模した精巧な偽物を作り出す。集中して作り上げたそれは大きな磁石で、持ち上げるのもちょっと重たいほど。
「直接持ってると危ないですよね」
 枝絡み、と囁けば雲珠の意のままに桜の根が張り、枝が伸びる。
 伸びた枝が大きな磁石をくるんとひと巻きして、鳥もちのようにぐんっとマーダー・ラビットの頭上へと持ち上げられた。
「吸着! 余分な凶器は回収します!」
 磁石が引き寄せるものは何か、と言われたら何を思い浮かべるだろうか。
 鉄、そう、鉄である。そしてマーダー・ラビットが持っている物は何かと問われれば、鋏と答えるだろう。
 つまり――。
『は、あ?』
 ぐいっと鋏を持つ手が引っ張られたマーダー・ラビットの頭には、クエスチョンマークが浮かんでいたに違いない。一瞬きょとんとした殺戮ウサギに向けて、エンデが容赦なく槍を突き刺していく。
「……あ、これ多分背後で愉しそうなことになってるんだろうなぁ」
 さすがに敵を前にして後ろを振り向くような真似はしないけれど、エンデはめちゃくちゃ気になる、と唇を尖らせた。
「仕方ない、後で見せて貰おう」
 だから、君を倒す為に頑張らなくっちゃね。
 Gungnirの槍をくるりと回し、エンデがドラゴンを召喚する。
「あの傷が目印だよ」
 そう囁けば、突き刺した槍の傷口を目掛け、ドラゴンが流星の如く飛んでいく。
「おお、ドラゴンです!」
 わー、と言いながら後方支援に徹しつつ、雲珠が自分とエンデの絵面の落差について僅かばかりに考えるけれど、俺は合理的な桜なので気にしないのです! と枝を伸ばしてマーダー・ラビットの足元をつついた。
『っの、邪魔くさい枝だねぇ!』
「あんよが上手だねぇ?」
 足元がガラ空きだとエンデが穂先をマーダー・ラビットの足へと向けて、突き刺す。
「鳥栖さんてこう……あんまり変わりませんよね」
 平常時とあまり変わらぬ対応に、雲珠がこてんと首を傾げて、そう見えるだけだろうかと不思議に思う。
「よく淡々としてるとは言われるけど、楽しい時は楽しいよぅ?」
 頭上の耳をぴこぴこと動かして、エンデが聞こえてきた声に答える。
「わかりやすーく、舌舐めずりとかして派手にヤっちゃう?」
 武器がこれではと撤退するように逃げ出したマーダー・ラビットにエンデが下唇をぺろりと舐めて、手にした槍を勢いよく投げる。そして、これでもかとばかりにドラゴンによる追撃を放つのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
【不死蝶】◎
わぁ、さっきと違って綺麗な校舎
ここなら愉快な仲間たちが授業受けててもおかしくないね
むしろ、本当にここを学校にしちゃってもいいかもね

そうだねぇ、このウサギさんは
大人しくウサギ小屋には入ってくれなさそうだもんね?

梓のドラゴンたちが頑張ってくれている中
俺も隙間を縫うようにナイフを投げて敵の動きを妨害しよう
ウサギさんの余裕綽々の胡散臭い笑顔がだんだんと
「うっとおしいなぁ」と言いたそうな
忌々しげな顔に変わってきたら
そっとPhantomの紅い蝶を放つ
きっと冷静に戦場を見渡す余裕が薄れてきた頃だろう
敵のもとへと辿り着いた蝶がぴとっと触れた瞬間
UC発動、蝶は鎖へと変化し敵を縛り付けるよ


乱獅子・梓
【不死蝶】◎
お前まだそれ考えてたんだな…
楽しい学校計画を立てるにしても
このぴかぴかの校舎にあのエセウサギ野郎は
明らかに似つかわしくないからお帰りいただこうか

UC発動し、雷属性のドラゴンたちを召喚
ウサギ野郎に一斉に突撃だ!
タックルや頭突きを喰らわせたり
雷属性のブレスによるマヒ攻撃で動きを妨害したり
敵もUCで反撃してくるだろうが
いくら攻撃回数が増えても
100匹を超えるドラゴンたちの猛攻に
対応し切るのは骨が折れるだろう

綾によって捕縛に成功したら
焔、お前の出番だ
さっきお前を怖がらせたのは
何もかもあのウサギ野郎の仕業だ
その恨みつらみ、思う存分ぶつけてやりな!
成竜の焔の渾身のブレス攻撃を浴びせる



●反撃のブレス
 先程までの不気味な夜の校舎ではなく、青空の下で輝くようなぴっかぴかの校舎。余りの違いに灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)が思わず声を上げた。
「わぁ、さっきと違って綺麗な校舎だよ、梓」
「同じ木造でも大分と違うな」
 昼間だから、というだけの差ではないのだろう。根本的に世界が違うのだ。
「ここなら愉快な仲間たちが授業受けててもおかしくないね」
「お前まだそれ考えてたんだな……」
「むしろ、本当にここを学校にしちゃってもいいかもね」
 でも、確かにこの世界なら楽しく授業を受けている愉快な仲間達がいてもおかしくはない。出来たばかりなのか、隠れてしまっているのか、生憎と姿は見えなかったけれど。
「楽しい学校計画をたてるにしても、だ」
 梓の視線が、ぴかぴかの校舎から校庭を走り回る時計ウサギへと向けられる。
「まずはこのぴかぴかの校舎にあのエセウサギ野郎は明らかに似つかわしくないから、お帰りいただこうか」
「そうだねぇ、このウサギさんは大人しくウサギ小屋には入ってくれなさそうだもんね?」
 そも、あんなウサギを飼いたくはないと梓が眉根を寄せるが、綾はお構いなしに笑ってコートの内側に忍ばせた小型ナイフを手に取った。
『おやおやぁ、次はあなた達が遊んでくださるんですか? いいですよ~遊びましょう!』
 命を賭けた遊びですけれど、とマーダー・ラビットが笑って手にした鋏をシャキン、シャキンと鳴らして二人に向かって襲い掛かる。
「良い度胸だな、エセウサギ!」
 叫んだ梓が力を発動させ、パリパリと電撃を纏ったドラゴン達を召喚していく。
「行け、ウサギ野郎に一斉攻撃だ!」
 梓の指示を受けたドラゴン達はその意のままに舞い踊り、マーダー・ラビットに向かってタックルを仕掛けたり、頭突きを仕掛けたりと突撃を開始した。
『わ~切り裂き甲斐がありますねぇ!』
 たくさん殺せる、と笑ったマーダー・ラビットの瞳が赤く輝いて、手にした鋏を楽しそうに鳴らすとドラゴン達を相手にする為に跳び回る。
「梓のドラゴンたちはお利口さんだね」
 電撃纏うドラゴンの隙間を縫うように、綾も走り回ってマーダー・ラビットに向かってナイフを投げ付けた。
 ドラゴン達の隙間から飛んでくるナイフを全て避けるのは難しいのか、マーダー・ラビットに少しずつ傷が増えていく。その間にも、ドラゴン達は敵の動きを阻害するかのように電撃を纏ったブレスを吐き出し、ぴょんぴょんと逃げ回るウサギを追い詰める。
「いくらウサギ野郎の攻撃の手数が増えても、百匹を超える俺のドラゴンたちには対応しきれないだろう?」
『おやおやぁ、僕を舐めてもらっては困るなぁ!』
 あはは! と笑うマーダー・ラビットが隠し持っていたナイフを自分を追うドラゴンへと投げ付け、徐々に数を減らしていくが、その数を半数に減らすのが精一杯に見えた。
 徐々にマーダー・ラビットの表情が軽薄な笑みから苛ついたような、忌々しいものを見るようなものへと変わっていく。
「うっとおしそうだねぇ?」
 綾がその表情の変化に気付き、唇の端を楽しそうに持ち上げる。
「出番だよ、Phantom」
 そう囁くと、綾のコートの裾から赤く光る蝶の群れが現れる。それはオーラによって形作られた赤い蝶、ドラゴン達の猛攻に紛れ、赤い蝶がひらりふわりとマーダー・ラビットへと飛び立った。
「そろそろ冷静に戦場を見渡す余裕が薄れてきた頃だろう?」
 綾の言葉通り、ドラゴン達の攻撃を躱すマーダー・ラビットの元へ難なく辿り着いた赤い蝶が殺戮ウサギのぴょこりと伸びたウサギ耳にぴとっと触れた。
「離してあげないから、覚悟してね」
 赤い蝶は鎖へと変じ、マーダー・ラビットの動きを封じていく。
『この……っ!』
 ぎちり、と赤い鎖に捕縛されたウサギが綾を睨み付ける。
「梓、ウサギさん捕まえたよ」
「でかした綾!」
 あとでアイス買ってやる! と叫んで梓が焔の名を呼んだ。
「さあ焔、お前の出番だ」
 キュー、と鳴いた焔を撫でて、梓がにやりと笑う。
「さっきお前を怖がらせたのは、何もかもあのウサギ野郎の仕業だ」
 キュ! と焔が鳴いてマーダー・ラビットを澄んだ緑色の瞳で見遣る。
「その恨みつらみ、思う存分ぶつけてやりな!」
 梓の声に焔がその身体を成竜の姿へと変化させ、ひと際大きくキュー! と鳴いて。
 思う存分、渾身のブレスをマーダー・ラビットへと浴びせた。
「わぁ、よく燃えてるね」
「相当恨んでたな、これは……」
「帰ったら、焔にもアイス買ってあげないとね?」
 その言葉に零が自分もとばかりに、ガウ! と鳴くのを撫でて、結局梓がアイスを人数分買うことになるのはまた後程のお話である。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浅間・墨
ロベルタさん(f22361)と。
『国綱』の一刀で【地擦り一閃『伏雷』】を使用します。
リミッターを解除し限界突破した上で多重詠唱を開始します。
技(UC)の威力と速度を維持するために継戦能力を用います。

「…逃…ま…ん」
マーダーラビットの姿を見失わないよう全速力で追いかけます。
隙はなさそうなので彼とすれ違いざまにまずは斬ってみようと。
狙う部位は素早く動ける脚。もしくは腕にしてみようと思います。
斬り飛ばす気で鎧防御無視と鎧砕きに貫通攻撃を籠めてみます。

攻撃や障害物の回避は見切りや野生の勘と第六感でなんとか…。
勿論ロベルタさんとの連携や協力でマーダーラビットと戦います。
私を囮にしてロベルタさんの補佐を。


ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)と。
パフォーマンスで身体機能上げた後で封印を解いくよ。
次に限界突破で更に機能上げてから多重詠唱をするじぇ。
墨ねーがしてるように継戦能力で速さと威力の維持をする。
まだ準備に慣れてないから戸惑って墨ねーより遅れるけど…。
う。大丈夫。すぐに追いつくじぇ~♪
兎さんと墨ねーに追いついたら状況見て僕も蹴りを一撃!
墨ねーは脚と腕を狙うみたいだから…僕は背中かお腹かな~。
身体で一番表面積が広い部位だからねぃ。当たりやすいかも?
僕の蹴りに注目してくれれば墨ねーの攻撃が当たりやすいはず。
一撃目の蹴りは避けられても次の蹴りはどーかな?
床に手を着いて身体捻ってクイックドローの零距離射撃で蹴り♪



●追いかけっこ
 夜の校舎から一転、ウサギ穴の出口に飛び込めば広がっていたのは青い空と、同じような木造校舎だけれどぴかぴかの新校舎だった。
「青空なんだじぇ~!」
「……無事に、出られたよう……です……」
 愉快な仲間を連れてウサギ穴を抜け出せて良かった、と浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)がほっと一息をつく。けれど、そんな安堵は束の間のこと。目の前には血濡れた鋏をシャキンと動かす猟書家、マーダー・ラビットが待ち受けていたのだから。
 怯える愉快な仲間を下がらせて、ロベルタ・ヴェルディアナ(ちまっ娘アリス・f22361)と共にマーダー・ラビットに相対する。
『やあ、お嬢さん方! ウザギ穴から脱出できたお祝いに、遊びましょうか!』
「遊ぶの? いいよ」
 ロベルタがそう答え、爪先で地面とトントンと軽く蹴る。手首も軽く振って、運動をする前準備のような動作を見せた。
『ええ、もちろん! 何がいいですか?』
 最終的には僕があなた方を殺す遊びですけどね! と、マーダー・ラビットが愉し気に赤い目を細める。
「追いかけっこがいいんだじぇ!」
『あは! 追いかけっこ! 時計ウサギと追いかけっこをするんですか?』
 心底愉快そうに笑うマーダー・ラビットに、ロベルタが言い放つ。
「そうだじぇ~、ハンターはこっちだけどねぃ!」
「……参ります」
 ロベルタの前に、すっと墨が出る。それはまだ追いかけっこの準備が出来ていないロベルタを庇う様な動き。マーダー・ラビットはどっちと追いかけっこでもいいですよ、と余裕そうな笑みを浮かべている。
『どっちかって言うと、僕追い掛ける方が得意なんですけどねぇ』
 いいですよ、逃げてあげますと殺戮ウサギがぴょんと跳ねた。
『その代わり、つまらなかったら僕が鬼になりますからね!』
 駆け出したマーダー・ラビットを見据え、墨が二尺二寸九分の大刀を鞘から抜き去ると地面すれすれを一閃させる。
「八雷の名の元に……」
 ぐん、と世界が鮮明になるかのような感覚のまま、墨がウサギを狩る為に駆けた。
「……逃……ま……ん」
 稲光の如き速さで逃げるマーダー・ラビットに追い付き、すれ違いざまにまずは一太刀。
『あは、あはは! 中々楽しめそうですね!』
 鋏を鳴らし、赤い瞳を瞬かせたマーダー・ラビットがその切っ先を防ぐ。二撃、三撃、と刃を重ねると、マーダー・ラビットも両の手に持つ鋏でそれを受けた。
「さっすが墨ねー、速いんだじぇ!」
 墨と殺戮ウサギの動きを目で追いかけながら、ロベルタが更に身体機能を上げるべくリミッターを解除していく。この一連の動作を墨と同じレベルまでに持っていければ、と強く思う。
「う。大丈夫。すぐに追いつくじぇ~♪」
 弱気はダメダメ、とロベルタが顔を上げて詠唱を重ね、パリ、と電光を足先に纏った。
「Uccidi i nemici in orbita con l'aiuto del ruggito!」
 己の軌道の先にマーダー・ラビットを捉えると、ロベルタがドンッという咆哮のような音を立てて駆け出す。そして墨が狙う部位が脚と腕だと瞬時に判断すると、マーダー・ラビットの背中目掛けて鋭い蹴りを放った。
『っと、お転婆なお嬢さんたちですねぇ!』
「墨ねー!」
「……はいっ」
 ロベルタの蹴りをマーダー・ラビットが避けた瞬間、僅かな体幹の乱れを感じて墨が国綱の刃を振るう。それはマーダー・ラビットの腕に確かな傷を付け、笑い顔が僅かに顰められる。
「ふふーん、ハンターは僕らだって言ったはずだじぇ!」
 墨の連撃に鋏を振るうマーダー・ラビットにロベルタが宣言すると、地面に手を突いて身体を思い切り捻り、その背を目掛けて蹴り付けた。
『……ぐっ』
 身体能力を底上げした零距離からの蹴りの威力は凄まじくマーダー・ラビットが苦し気に呻き、倒れそうになったところを踏み留まると、ロベルタに鋏の一撃を入れようとその切っ先を向ける。しかし、ロベルタが腕の力で跳ねて地面に足先を付ける僅かな時間をカバーする為に墨が動いた。
「……さ……ま……せん……っ」
 ロベルタには指一本触れさせないとばかりに、墨が国綱を振り下ろす。
『はぁ、二対一ではこっちが些か分が悪いですねぇ!』
 ぴょん、と飛び跳ねたマーダー・ラビットが二人から距離を取ろうと走り出した。
「あっ逃げたんだじぇ! 墨ねー、追うよ!」
「……はいっ」
 ぴょんぴょんと跳ねる殺戮ウサギを追い掛けて、二人も駆け出すのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

杜鬼・クロウ
【鏡花】◎
俺はもうちぃっとばかし夜の校舎で七不思議を楽しみたかったなァ
ニコリネが怖がる様子を見たかっ…おっと何でもねェ(お道化て
そうも言ってられねェか
早くアリス達には扉探しの旅へ戻ってもらわねェと

アリス達に被害行かぬ様に下がらせ
背負う大剣振り下ろし臨戦態勢
前衛
手袋代償にUC使用
螺旋剣で敵へ応戦
咲く花に目細め

ナイスだ、ニコリネ!
折鶴蘭に百日紅、紅薔薇…ハ、お前と遊んだ時のコト思い出すわ
魅せてくれンなァ!

敵の一撃を剣で武器受け・かばう

沢山ぴょんぴょん跳ねてアソばせてくれよ
(怖ェのはお化けよりも…
さっきのコト、根に持ってンなァニコリネ…)
おう、任されたわ!

炎属性出力させ敵の攻撃潜り抜け
決め手の二連撃


ニコリネ・ユーリカ
【鏡花】◎
皆はあの兎に大変な冒険を強いられてきたのね
私達も酷い目に遭わされたわ(ムキッ
ええ、兎の言う通りお終いにしましょ
兎を骸の海の藻屑にして本当の扉を見つけに行くの!

敵は手に取った物を何でも凶器にする
それならUCで兎が触れた物、触れそうな物を花に変えるわ
攻撃回数が増えても殺傷力が落ちればトントン
ふふ、そのお花よく似合ってる!

アリスに攻撃が向かわぬよう挑発し
敵意を引き付けるわ

兎は綺麗な紅い瞳をしてるのね
でも私はもっと美しい瞳の人を知ってる
ほぅらあんなに燿いて……貴方に死を届けようとしてる
(怖い顔で語り、私達に怖い思いをさせた兎を怖がらせちゃう)
ミスター、悪ウサギに張り付いた笑顔を凍らせて頂戴!



●目には目を、歯には歯を
 目の前に広がった青空に、ニコリネ・ユーリカ(花売り娘・f02123)は思わず顔を輝かせ、杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)に向かって言った。
「太陽って素晴らしいわね、ミスター!」
 真っ赤なお月様じゃないのよ、と鼻歌まで飛び出すほど。
「俺はもうちぃっとばかし、夜の校舎で七不思議を楽しみたかったなァ。ニコリネが怖がる様子を見たかっ……」
「ミスター?」
「おっと、何でもねェ。でもよ」
 七不思議って言うからには、七つあったンだろう? と、クロウが口の端を持ち上げる。
「あら、七不思議は七つ体験しては駄目なのよ、ミスター」
「なンでだ?」
 首を傾げたクロウに、ニコリネが七つ全部知ってしまうと不幸が訪れるのだと、さも恐ろし気に囁いた。
「へェ、じゃあアイツが七番目だったりするのか?」
 クロウが猟書家、マーダー・ラビットを指で示して皮肉気に笑う。
「だったら、コテンパンのギッタギタにして差し上げちゃうのだけど!」
 アリス達がマーダー・ラビットを見て、びくんと震えるのを見てニコリネが頬を膨らませる。そうだな、と頷いたクロウが彼女達に離れた場所に行くようにと告げた。
「皆はあの兎に大変な冒険を強いられてきたのね」
 私達も酷い目に遭わされたわ、とニコリネがあの恐怖を思い出したようにマーダー・ラビットを睨み付ける。
『おや、おやおや! 今度はあなた達の番ですか~?』
 散々猟兵達と追いかけっこをしてきたのだろう、少し疲れたような顔をしつつもマーダー・ラビットはご褒美を差し上げなくては、と赤い瞳を細めて言った。
「ウサギを倒して、早くアリス達には扉探しの旅へ戻ってもらわねェとなァ? ニコリネ」
「ええ、その通りよミスター! 兎を骸の海の藻屑にして本当の扉を見つけに行くの!」
 やるわよ、ミスター! というニコリネの言葉に、クロウが背負っていた大剣を勢いよく振り下ろす。
「いつでもいいぜェ、ウサギ野郎!」
『あは、威勢がいいですねぇ!』
 愉しく遊びましょうね、と手にした鋏をシャキンと鳴らした。
「神羅万象の根源たる玄冬に集う呪いよ。秘められし力を分け与え給え。術式解放(オプティカル・オムニス)──我が剣の礎となれ!」
 クロウが力を発動すると、嵌めていた手袋が融けるように消えていく。そして、それを代償としたかのようにクロウの構えていた大剣が螺旋状の黒魔剣へと変化した。
「仕留め易そうな形だろう?」
 そう笑ったクロウが一気に距離を詰めると、マーダー・ラビットも同じように笑って距離を詰める。そして手にした鋏を――。
「Flowers don’t tell, they show.語らずとも示して見せるわ」
 ニコリネが謡うように囁いて、花へと変えた。
『……ッ!?』
「ハハッ」
 咲いた花の美しさに目を細め、クロウが刃をマーダー・ラビットへと突き刺す。それをバックステップで致命傷を避けた殺戮ウサギが花となった鋏を捨てて、腰に差したナイフに持ち替える。
「ふふ、甘いわよ!」
 ニコリネがマーダー・ラビットが触れる無機物全てを花へと変えていく。
「これなら、攻撃回数が増えても殺傷力が落ちればトントンでしょう? ふふ、そのお花よく似合ってるわ、ウサギさん!」
「ナイスだ、ニコリネ!」
 折鶴蘭に百日紅、紅薔薇と咲き誇る花にクロウが笑みを零す。
「ハ、お前と遊んだ時のコト思い出すわ。魅せてくれンなァ!」
『全く、あなた方は手を変え品を変え、ですねぇ!』
 それでもマーダー・ラビットは、その名にふさわしく花であっても武器としてクロウとなんとか渡り合う。さすがは猟書家、といったところだろうか。
「いいねェ、沢山ぴょんぴょん跳ねてアソばせてくれよ!」
『それならば、あなたの首を刎ねて差し上げましょう!』
 縊り殺してもいいですね、と赤い瞳を輝かせてマーダー・ラビットが嗤う。一撃を黒魔剣で受け、流し、隙を突いてはクロウが反撃をと繰り返す。それはニコリネからすればとても美しく、華のように思えた。
「兎は綺麗な紅い瞳をしてるのね、でも私はもっと美しい瞳の人を知ってる」
 ぽんぽんと花を咲かせながら、ニコリネがマーダー・ラビットへと言葉を紡ぐ。
「ほぅらあんなに燿いて……貴方に死を届けようとしてる」
 そう、あなたの目の前の男よ、とニコリネが精一杯の怖い顔をして、マーダー・ラビットを怖がらせるように語る。
『あは、そんなもの怖くもなんともないですよ!』
 嗤うマーダー・ラビットに、わかってねぇなとクロウが笑う。本当に怖いのはお化けでも何でもなく、さっきのことを根に持った――。
「ミスター、悪ウサギに張り付いた笑顔を凍らせて頂戴!」
「おう、任されたわ!」
 螺旋を描く黒魔剣に炎を纏わせ、多少の傷を負うのは覚悟の上とマーダー・ラビットの攻撃を潜り抜ける。
「喰らえッ!」
 螺旋の切っ先を素早い動きで二度、マーダー・ラビットへと繰り出した。
『……ぐッ』
 ぴょん、と跳ねる殺戮ウサギの勢いは弱い。決着の時はすぐそこに迫っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

茜崎・トヲル
【モノクロフレンズ】(f23882)
(あーさん、スーさんで交互呼び!)◎

愉快な仲間の人はあんぜんそーなところにいてもらってー
来るよお、あーさん!打ち合わせどーりにいこーう!

ガッて超接近!したら特大威力で攻撃するんでしょう
おれはそれをボディで受けて、そのままUC発動!武器を固定!
腕と足からめて体もがんじがらめだ!
へっへ、いまのおれはちょーつよくって重いぜ!うごけないだろー!
たぶんあーさんも手伝ってくれてるし?絶対に逃がさないぜ!

さあ来いスーさん!おれごとどっかーんだ!
大丈夫信じて、おれはぜったい死なないんだ!
(いちおーウサギの人を前に出すよ。あーさんは優しいから、おれ攻撃するのいやだろうし)


スキアファール・イリャルギ
【モノクロフレンズ】(f18631)◎

大丈夫、悪い兎は私たちが懲らしめますからね
よかったら応援をよろしくお願いします
えぇ、迎え撃ちましょうトーさん。打ち合わせ通りに!

代償を払いUC発動
両腕・両脚の呪瘡包帯を鞭状の影に
こっそり、攻撃を受け止めたトーさんの体勢が崩れぬようにと
周囲にオーラの防壁を纏わせ援護しつつ……
トーさんが敵を拘束したらすかさず攻撃
ダメ押しで敵の得物を持つ手を雁字搦めに縛りましょう

さぁ、行きますよトーさん!
残りの鞭状の影でありったけの力と呪詛を込めてどかーんと!
トーさんの体質を理解し、信頼しているからこそ為せる作戦です
少し衝撃が強いかもしれませんが、トーさん耐えてくださいね……!



●信頼と絆
 ウサギ穴の出口から青空が見えた瞬間に、トンネルを抜けるとそこは雪国だった。ってありましたよね、と思いながらスキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)は青空を見上げ、ぴっかぴかの木造校舎を見遣った。
「わー、ぴっかぴかのがっこうだー!」
 さっきまでの場所とは正反対だと茜崎・トヲル(白雉・f18631)がにぱーっと笑う。もしかしたら、あのウサギ穴はこの世界が捻じれた空間だったのかもしれないなぁと思いつつ、一緒に抜け出た愉快な仲間を安全な場所に隠れるように促した。
「大丈夫、悪い兎は私たちが懲らしめますからね」
 不安そうな顔をした愉快な仲間に、スキアファールが頷く。
「よかったら、応援をよろしくお願いします」
 そう言われれば、愉快な仲間が心得たとばかりに飛び跳ねて、二人の邪魔にならない場所へと姿を隠した。
「よーし、あーさん! わるいウサギをやっつけちゃおー!」
「ええ、トーさん」
 視線を交わし、二人は随分とボロボロになった猟書家、マーダー・ラビットへと視線を向ける。
「ぼろぼろだねぇ、スーさん」
「他の猟兵の方々とやり合ったのでしょう」
 そっかー、じゃあ次はおれたちのばんだ! と、トヲルが構えた。
『はぁ、次はあなた達ですか~? 猟兵っていうのは面倒ですねぇ』
 それでも、殺戮は愉しい。いっぱい殺せたら、もっと愉しいのだとマーダー・ラビットが二人に向かって鋏をシャキンと鳴らす。
『それじゃあ、遊びましょうか!』
「来るよお、あーさん! 打ち合わせどーりにいこーう!」
「えぇ、迎え撃ちましょうトーさん。打ち合わせ通りに!」
 まずは互いに課した役割を全うするべく、スキアファールは怪奇部分の無数にある目と口を一つずつ代償とする。そして両腕両足に巻いた呪瘡包帯を鞭状の影へと変化させた。
「いっくぞー」
『こちらからもいきますよ~!』
 ぴょんぴょんと跳ねるような動きから、距離を一気に詰めるようにマーダー・ラビットが駆ける。その姿にトヲルはにぃっと笑って、自分からも距離を詰めた。
『そーれっ!』
 手にした鋏を振りぬく速度は異常なまでに早く、それに伴う威力を以ってトヲルの身体へと迫る。それを避けることなくトヲルがその身で受け、たたらを踏む。けれど体勢を崩さずに立っていられたのはスキアファールがこっそり彼の周囲にオーラを使って防壁を作り上げていたから。
「ありがと、スーさん!」
 その言葉に小さく頷き、スキアファールはトヲルがすることを見守った。
「ふふーん、きかないからね!」
 攻撃をその身に、つまりは鋏を身の内に埋め込んだままトヲルは己の肉体を強化する。体重の増加を代償に、筋骨密度を九十六倍にも高めたのだ。
 見た目にこそ変化はないが、そうとなればマーダー・ラビットが鋏を抜こうとしても動くことは無い。そのまま腕を足を絡め、トヲルは己の肉体を使ってマーダー・ラビットの動きを雁字搦めに封じていく。
『この……っ』
「へっへ、いまのおれはちょーつよくって重いぜ! うごけないだろー!」
 えっへん! と胸を張りつつ、トヲルがマーダー・ラビットの視線を捉えて笑う。
「あーさんも手伝ってくれてるし? 絶対に逃がさないぜ!」
 自分の力だけではない後押しを感じ、スキアファールに向かって、ねー? とトヲルが声を掛ける。
「勿論です!」
 トヲルがマーダー・ラビットを拘束したのを確認し、スキアファールがすかさず鞭状の影を唸らせた。
「ダメ押しといきましょう」
 マーダー・ラビットの持つ獲物を影を使って絡め取り、更に手を動かせぬように縛り上げていく。
 さあ、これで準備はなったとスキアファールがトヲルの目を見れば、トヲルも彼の目を見て大きく頷いた。
「さあ来いスーさん! おれごとどっかーんだ!」
『は? あなた、何を言ってるんです?』
 そんなこと、普通はしませんよと喚くウサギを黙らせるようにスキアファールが影を飛ばす。トヲルはそんな優しい彼の為に、おれを攻撃するのは嫌だろうと、せめてとマーダー・ラビットをスキアファールの方へと向けた。
「さぁ、行きますよトーさん!」
「大丈夫信じて、おれはぜったい死なないんだ!」
「少し衝撃が強いかもしれませんが、トーさん耐えてくださいね……!」
 ええ、あなたの言葉を信じます。
 そう小さく呟いて、スキアファールが残りの鞭状の影でありったけの力と呪詛を込め、笑顔から一転焦った表情を見せたマーダー・ラビットへと容赦なく叩きつけた。
 それはトヲルの体質――なんでも直って、なんにも痛くないという事を理解し、信頼しているからこそ成立つ作戦。そして、二人の作戦は逃げ回るばかりのマーダー・ラビットを捕え、見事に仕留めてみせたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年04月30日
宿敵 『マーダー・ラビット』 を撃破!


挿絵イラスト