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傾城傾国、寵姫跋扈

#封神武侠界 #芙蓉国

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#封神武侠界
#芙蓉国


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●むかしむかし、あるところに
 大陸のとある小国、芙蓉と紫竹は昔から隣国同士諍いが絶えず、互いが何かしら難癖をつけては小競り合いを繰り返すという不毛な争いを延々と繰り広げておりました。
 代々の君主はもはや執念とも言えるほどの敵対心を継承し、臣民たちは「もうこいつらどうしようもねえな」という諦念のもと付き従うほどの荒みよう。
 けれども、小競り合いで済んでいるうちは、まだ良かったのかも知れません。

 ある日、芙蓉国の主が目をつけた麗しき踊り子が妃として召し上げられてから、いよいよ雲行きは怪しくなりました。
 妃は妃でもその正体は邪悪なる寵姫、あっという間に君主を骨抜きにすると、諫言する忠臣を讒言する奸臣が駆逐し、国はまたたく間に傾いていきました。
 そして、それを見逃す紫竹国ではありません。今こそ決着の刻とばかりに大戦の準備を進めているというではありませんか。
 しかし、もはやそれを止める手立てはありません。
 今や、芙蓉は風前の灯火。
 そして、芙蓉を食い潰したあとに傾国の寵姫が狙うのは、他ならぬ紫竹。
 堕落と戦乱を求め、何もかもを破滅へと導くその存在こそ――。

●それはとてもよくあるお話
「オブリビオン、ということでございますね」
 グリモアベースの片隅で竹簡をじゃらりと広げながら、鳳・統(たったひとつ望むものは遠く・f32785)が淡々と口を開く。
「破壊された『封神台』より解き放たれしそれらの一体、寵姫『黒蝿華妃』が小さいながら国を一つ……いいえ、二つほど食い潰そうとする未来が視えました」
 邪悪な寵姫は元々諍いが絶えぬ二国のうち片方の君主を籠絡し国ごと堕落させ、もう片方の国の侵攻を誘い、ゆくゆくはどちらも餌食にしようと企んでいるのだという。
「皆様には、恐れながら芙蓉国へと赴いて頂き、かの寵姫を成敗してきて頂きたく存じます。爛れた国とて、少なからず志ある者は留まっておりますゆえ」
 そういうと鳳統は、芙蓉国へと転移を受けたのちに取るべき行動を説明する。

「芙蓉国の中枢はもはや黒蝿華妃とその手駒どもがはびこるばかり、ですが城を出れば……そうですね、郊外の酒場あたりにて、まだ志ある者にも巡り会えましょう」

 芙蓉の町外れ、そこそこ大きな酒場に行けば、義侠心あふれる好漢たちが――。
「何とかせねばとは思っておるのでしょう、しかしながら如何ともし難くくすぶっております。そこで、皆様方の出番でございます」
 竹簡を一度床に置き、右の拳を左手で包み込む。『拱手』という挨拶だ。
「これだけ、お忘れなく。後は皆様らしく、好漢たちに向けて心震わせる名乗りを上げて、口上のひとつでも聞かせてやって下さいませ」
 国を救わんとする心意気、武を示さんとする覇気、その他諸々あるだろう。
 意気消沈してしまっている者たちを奮い立たせ、オブリビオンとその配下に立ち向かうべく協力してもらうのが一番の近道だと鳳統は告げる。

「民の決起の気運を察すれば、寵姫も動きましょう。城までは好漢たちが案内してくれるとしまして、突入すれば配下の奸臣どもを蹴散らし、寵姫との決戦となりましょう」
 鳳統が竹簡を放り投げれば、伸びる書が封神武侠界への道を開く。
「ご武運を、皆様方。私は此処で、無事のお帰りをお待ち申し上げますれば」
 かつて軍師であった男は、恭しい拱手で猟兵たちを送り出した。


かやぬま
●ごあいさつ
 美人計か、はたまたただの偶然か。
 封神武侠界での事件解決をお願い致します、かやぬまです。

●ご案内
 第1章:冒険、という名のエンターテイメントです。
 国に見切りをつけられずに、けれど打開案も見出せずにくすぶっている義侠心を抱いた芙蓉国の人々が、場末の酒場にたむろっています。
 皆様はそこへ乗り込んで、かっちょいい名乗りを上げつつ人々を鼓舞して下さい。
 PSWの数値はお気になさらず、それっぽい二つ名や武勇伝を語り聞かせれば、好漢たちの心に響くことでしょう。

 第2章:集団戦、寵姫が招き入れた手駒の奸臣どもがひしめく城へと攻め込みます。
 どんな戦いになるかは、断章にてご案内致します。

 第3章:ボス戦、黒蝿華妃との決戦です。
 こちらも詳細はお話が進んでから追って情報を開示致します。

●プレイング受付について
 日程は都度MSページとタグにてご案内致します。
 お手数ですが、ご確認頂いた上で送信頂けますと有難いです。
 また、プレイングを送って下さる前にMSページをご一読下さいますと幸いです。

 それでは、楽しんで参りましょう! よろしくお願い致します!
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第1章 冒険 『人呼んで』

POW   :    豪気な外号を名乗る

SPD   :    瀟洒な二つ名を名乗る

WIZ   :    風雅な綽名を名乗る

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●余燼か、再燃か
 芙蓉国はその立地上、隣国の紫竹国と比べて肥沃な土地に恵まれ、国力も高ければ民の心も豊かであった。
 今では見る影もなくなってしまったが、だからといってそうそう生まれ育った国を捨てられる者は多くない。
 特に、主が突然現れた美女に骨抜きになってしまったとて、軽々しく掌を返せるほど武に生きるものどもは単純には出来ていない。
 今でこそ酒場で飲んだくれてはいるものの、それはもどかしさを紛らわせるため。
 本当にもうどうでも良かったならば、とうに国を去っていただろうから。

「……くそっ!!」
「やめとくれよ、後できちんと掃除してもらうからね」

 誰かが何かを投げて、店の片隅に転がっていった大きな瓶を割る。
 国を憂う男たちと、女だてらに荒くれどもを相手にどんと構えて商売をする女主人、そのどちらも眉間にしわを寄せるばかり。

 ここに残されているのは、ほんのわずかな救国の可能性。
 その種火を再び燃え上がらせるのは、他ならぬ猟兵たちの役目である。
鏑木・桜子
はわわ、キマイラフューチャーの古いアーカイブで見ました…。ここってサンゴクシ?とかいう時代のちょっと後の世界ですよね…。折角平和になったのに大変ですね。
というわけでわたしは辺境から武を生業にして渡ってきた剣客の体で接触します。
チビなんで見た目で侮られそうだったら得意の居合術で武を示しましょう。
その上で打開策がなく燻ってる侠客の皆さんに周の文王、漢の高祖も世を憂いていたが志を持って立ち上がりやがて呂尚や張良を得て天下を治めた故事に準え力なく策もなくとも志を持って立ち上がればきっと武人や軍師が集まり人財が集まり大きな力になること説きましょう。
そして策はわかりませんが…武ならわたしに任せてください!



●幕開けは一閃と共に
 事件が起きている『芙蓉国』は、今でこそすっかり疲弊してしまっているが、元々は肥沃な土地に恵まれ住まう人々に活気をもたらしていたという。
 街並みこそそれなりに整っているが、道を行く人々の数がそもそも少なく、すれ違った際に窺える表情は皆一様に暗い。
 そんな景色に、転移を受けて降り立った鏑木・桜子(キマイラの力持ち・f33029)は見覚えがあった。

(「はわわ、キマイラフューチャーの古いアーカイブで見ました……」)

 UDCアースの技術よりもダイナミックに、まるでその世界に放り出されたかのような体験さえ出来る(らしい)キマイラフューチャーの歴史追体験アーカイブ。
(「確かここって、サンゴクシ? とかいう時代のちょっと後の世界、ですよね……」)
 一番盛り上がるシーンだからと体験してしまった大軍勢のぶつかり合いや、軍師たちが意見を活発に交わす場面をほんのり思い出しながら、ここがいつで、どこかを思う。
「折角平和になったのに、大変ですね」
 まさに、この一言に尽きた。人界のみならず仙界を含むこの中国を統一した司馬炎は、破壊された封神台からあふれ出したオブリビオンの対処に頭を悩ませる日々だ。
 今この国で起きている事件も、まさにその一つ。なればこそユーベルコード使いは厚遇を受けるし、期待されているのだ。
 桜子はむん、と両の拳を握って気合いを一つ、件の酒場へと足を踏み入れた。

 薄暗い店内は、じっとりとした気配に包まれていた。
 客席に腰を下ろした男たちからはまるで覇気が感じられず、時折思い出したように酒を呷るばかり。
「……お嬢ちゃん、ウチに山羊の乳は置いてないよ」
 酒場の女主人が、桜子には一瞥もくれずにそれだけ言う。
 ここで客の男たちから嘲笑でも湧いたら、いっそその方がまだ良かったろう。
(「う、うう……チビなんで見た目で侮られそうとは思ったけど」)
 ならば目にもの見せてくれようと思うのは、桜子でなくても当然のこと。
 抱えて入ってきためたくそデカい大太刀「桜花絢爛」の柄に手をかけると、信じられないことにその刀身を一気に抜き放って――たまたま空いていた木の机を一刀両断!

「「「なっ……!!?」」」

 これには怠惰の極みに陥っていた男たちも、女主人も目を見張る。
 いっせいに視線を注がれる中、桜子は大太刀を鞘にちんと収めた。
「わたしは、辺境から武を生業にして渡ってきた剣客です」
 うん、間違ったことは何一つ言ってない! ヨシ!
「お、おう……とりあえず、あんたの腕前がすげえのは分かった」
「だが、こんな所に来てどうしようってんだい? この国は、もう……」
 お終いだ、そこまでは言葉にできなかった。
 それこそが、まだ『あきらめきれない』ことの証でもあったろう。
 だから桜子は、打開策が見出せず燻るばかりの侠客へと真摯に言葉を伝える。

「皆さんは、周の文王や漢の高祖と聞いて何かを思い出しませんか」
「「「……」」」

 思い出すも何も、あまりにも名高い二人だ。
「二人とも世を憂いていましたが、志を持って立ち上がり、やがて呂尚や張良を得て……」
 そう、己ひとりの力では叶わずとも、共に良き軍師の助力を得たことによって活路を見出した。
「皆さんだってそうです!」
「お、俺たちが!?」
 突然我が身にたとえられて変な声を上げる侠客たちに、桜子は大太刀を抱きしめたまま切々と説く。
「今は力なく、策もない。でも、偉大な先人のように志を持って立ち上がれば! きっと武人や軍師も集まって、ついでに人財も集まって大きな力になります!」
「……って、そりゃ……」
 陰鬱な雰囲気に包まれていたはずの酒場が、ざわめきに包まれる。
 互いに顔を見合わせ、まるで夢物語なはずなのに、自然とかつての英雄たちと己とを重ね合わせてしまうのは侠客の性か。

「……お嬢ちゃん、名前は」
「はい、鏑木・桜子です!」

 ぱしんと一つ、拱手と共に名乗りを上げる。
「そして『策』はわかりませんが……『武』ならわたしに任せてください!!」
 その足元には、真っ二つになった机があった。

「肝心の策も軍師もねえ、か……」
 誰かが肩を竦めながら鼻で笑う。
「……これから、来るのかい?」
 しかしその眼差しは、確かに強い光を宿していた。

成功 🔵​🔵​🔴​

木常野・都月


拱手。
(グリモア猟兵さんがやってるのをみて、チィと練習したんだ)

俺は木常野都月。字?字はない。好きに呼んでいい。

俺は人と世界を救いにきた。
俺は猟兵。人と世界を守るのが仕事だからな。

ここにくれば、国を救いたい人がいると聞いてやってきたんだけど…酔っ払いばかりだな。
その…この中に国を救いたい人いる?

国を守れるのは、そこの国の人達だからな。

俺達猟兵が黒蝿華妃とかいう人を倒しても、そのあと国を守る人がいないと、結局国は無くなってしまう。

自分の国という縄張りを守るという事は、その縄張りに住む人達にしか出来ない事なんだ。

だから、その、黒蝿華妃を倒した後、国を守りたいなら、俺を助けて欲しい。
お願いします。


張・西嘉

酒場の男達が国が傾きかけているのに逃げられないと言うのはまだ愛国心がある証拠だろう。
それでも動く事ができないのは諫言をした忠臣を駆逐してしまったと言う事があるからだろうな。下手をしたら彼らの二の舞になりかねんからな。

だが彼らにはまだ国を思う気持ちがある。
ならば発破をかけてやればいい。

名乗りを上げしっかりと拱手をし。

貴殿達に義心あるならば我ら猟兵が力を貸そう。
自身の国を亡国などにはしたくはないだろう?
貴殿達の国を思う気持ちと武。
そして我々の力があれば必ずや成し遂げられる。

あとは貴殿達の決断だ(力強くにっと笑い)



●国を守るということの意味
 流れが、変わろうとしている。
 光が、差し込もうとしている。
 そんな気配を誰もが感じ、酒場は異様な雰囲気に包まれていた。

 次いで足を踏み入れたのは、張・西嘉(人間の宿星武侠・f32676)と木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)の二人であった。
(「酒場の男達が、国が傾きかけているのに逃げられないというのは」)
 西嘉は酒場の雰囲気を肌で感じて確信する。
(「まだ、愛国心がある証拠だろう」)
 揃って拱手し、軽く頭を下げる。
 都月の肩の上では月の精霊チィが後ろ脚で立ち上がり主に倣おうと前脚を合わせていた。右と左の掌をちょっとずらして合わせるのがチィなりの礼であった。かわいい。
(「それでも動く事ができないのは、諫言をした忠臣を主君が駆逐してしまったと言う事があるからだろうな」)
 礼を解きながら、西嘉は冷静にそう分析する。
 そして実際、その通りであった。誰だって、二の舞になりかねないと分かっていて無茶を働くほど無謀ではない。
 たとえ腑抜けと誹りを受けようとも、死んでしまってはどうしようもないのだから。

(「だが、彼らにはまだ国を思う気持ちがある」)
 炎が完全に消えておらず、ほんのわずかでも燻っているならば――発破をかけてやればいい!

「俺は木常野・都月。俺は、人と世界を救いにきた」
「人と、世界を……救う?」
 都月が真顔であまりにも規模が大きい話を切り出したものだから、男たちはうさんくさいものを見る目で妖狐の青年を射抜く。
 だが、都月は怯まない。肩に愛らしい生き物を乗せたまま、堂々と身分を明かす。
「俺は猟兵、人と世界を守るのが仕事だからな」
「「「りょ、猟兵!?」」」
 尋常ならざる修行の果てに力を得たもの、謎と神秘に包まれた仙界の住人、そして異世界よりの来訪者……突如として世にあふれ出たオブリビオンに立ち向かうもの。
 存在こそ噂には聞いていたものの、こうして目の当たりにするのは初めてというものがほとんどであった。
 もしかしたら先程机をぶった斬っていった娘も……? そう考えると納得が行く。
 男たちの反応に確かな手応えを得た都月は、それらをぐるりと見渡して言った。
「ここにくれば、国を救いたい人がいると聞いてやってきたんだけど……」
 一度言葉を切って、わざと聞こえるようにため息を吐いてみせた。

「酔っ払いばかりだな」
「なんだァ? てめェ……」
「おい待て、キレるのが早すぎる!」

 果たしてわざと挑発したのか、それとも心からの感想だったのか。
 都月は意図を読ませぬままに、侠客たちへと問う。
「その……この中に、国を救いたい人、いる?」
「「「……」」」
 真っ直ぐな問いに、誰もが押し黙る。
 救いたいか否かで言えば、当然答えは応である。
 だが、そう答えられたならどれだけ良いか。

「俺の名は張・西嘉、彼と同じく猟兵と呼ばれる者だ」
 都月と並び立つ西嘉の恵まれた体躯に、男たちが息を呑む。
 焦茶の髪に鋭い茶の瞳が、どこか鷹を思わせる男であった。
「貴殿達に義心あるならば、我ら猟兵が力を貸そう」
「何だって……!?」
 自分たちに足りないと思っていたもの、理想を現実とするための『力』。
 それを持つものたちが、今目の前に二人もいて、助力してくれるという。
「……義心、か」
 酒場にたむろしていた男たちは、そもそも己が何者かを考える。
 何故、此処に居る?
 何故、此処から逃げない?
「……」
 女主人は、包丁で何かを切りながら、黙って事の成り行きを見守っている。

「自身の国を、亡国などにはしたくはないだろう?」
「当たり前だっ!!」

 誰かが、西嘉の言葉を受けて弾かれたように机を叩いて立ち上がった。
 その男はすぐに我に返ってすぐ席についてしまったが、確かな答えがそこにはあった。
 鷹のような男は、よく通る声で酒場にいる全ての者に聞こえんばかりに告げる。
「貴殿達の国を思う『気持ち』と『武』、そして――」
 どん、と己の胸を拳で一つ叩く。
「我々の『力』があれば、必ずや成し遂げられる」
 酒場を、しばしの間沈黙が支配する。
「国を、思う……」
 誰かがそう呟き、心を同じくする。
「俺たちに、出来ることはあるのか?」
 それでも拭えぬ不安が漏れ出て、都月がすかさず答えた。
「国を守れるのは、そこの国の人達だからな」
 狐耳を揺らして微笑む都月はが説くのは、妖狐としての矜持から来る真摯な言葉だ。

「俺達猟兵が黒蝿華妃とかいう人を倒しても、そのあと国を守る人がいないと、結局国は無くなってしまう」
 解決のために手を貸すのは簡単だ。だが、その後はどうする?
 この芙蓉という国を救うだけではなく、これからも守っていくには?
「……っ」

「自分の国という『縄張り』を守るという事は、その『縄張り』に住む人達にしか出来ない事なんだ」

 縄張り、という言葉が、野性味あふれていてしかし分かりやすい。
 難解な言葉をひねり出すよりも、ずっと真っ直ぐに心に響くのだ。

「だから、その……黒蝿華妃を倒した後、国を守りたいなら、俺を助けて欲しい」
 お願いします、と深々一礼をした都月を横目で見遣りつつ、西嘉もニッと笑う。
「――あとは、貴殿達の決断だ」

 酒場には、もはや誰一人として気だるげにしている者はいなかった。
 姿勢を正し、あるいは席を立ち、本来持っていたであろう精悍な表情を見せていた。

 ことり、と。女主人が適当な机の上に小皿を置いた。
「……奢りだよ、とりあえず歓迎するよ」
 美味しそうな棒々鶏が、綺麗に盛り付けられていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

レパル・リオン
◆好きなだけアドリブを入れてほしい◆

静かに闘気を滾らせながら入店。
全員の前で静かに拱手。

やあやあ我こそは!(ババン!)
虎に遭っては虎を討ち、龍に遭っては龍を討つ!
神も悪魔も、巨大ロボだってなんのその!
(おもいきり見栄を切る)

虎の腕は空を掴む!(空中にパンチ)
竜の脚は地を穿つ!(空中にキック)
燃える正義の来訪者!

あたしの名はレパル・リオン!
またの名を…とおっ!(変身)
魔法猟兵!イェーガー・レパル(ドッカーン!!!)

(決まった…!)


ミカエル・アレクセイ
やれやれ、随分とクサってるな…
【鼓舞】をするのは得意ではあるが、果たして俺の言葉が吉と出るかそれとも…

何、きな臭いと聞いてふらりと立ち寄ったしがない男に過ぎんよ俺は
酒場でクダをまいている忠臣たぁ聞いて呆れる
(相手がオブリビオンなだけ仕方がないが…と内心理解はしつつ)
俺も嘗ては主を持っていた
そしてその主が道を誤ればどんな危険をおかしてもその道を正したもんだ

無論…背中を預けたり共に命を背負う奴等が居たから出来た事には違いない
奴等が居たからこその取れた立場だったろうさ

(等と過去を懐かしみつつ同じ立場を理解し、支えられると暗に示し)

今は俺達…猟兵という力がここにあるだろう
ガツンとやりに行かねぇかい?



●それぞれのエール
 種火が風に煽られその勢いを静かに増すように、酒場で飲んだくれていたはずの男たちは、徐々に本来の『好漢』と呼ばれていた頃の気勢を取り戻しつつあった。
 今や、酒を呷るのは自棄になっているからではなく景気づけになりつつあり、肉塊を食いちぎるのはまさに燃え上がらんとする闘志の表れであったろう。

 芙蓉を守りたい、救いたい。
 その気持ちはあれど――どうやって?

 男たちは、かつて己が『好漢』と呼ばれていた頃の姿を見失っていた。
 この滾る思いを、どのように発露させていたのかを忘れてしまっていた。
 故に、この二人が来たのであろう。

「……」
「「「な……っ!?」」」
 その気配を察した瞬間、酒場中の誰もが飲食を止めて入口の方を向いた。
 静かなる闘気は、しかし尋常ならざる気配を伴って圧倒的に場を支配する。
 滾る闘気の主――レパル・リオン(魔法猟兵イェーガー・レパル・f15574)は、全員の視線を一身に集める中、静かに拱手した。
(「なんて気をしてやがる……何かの拳術の使い手か!?」)
(「この距離でこのヒリつきだ、まともにやり合ったらどうなっちまう?」)
 戦場もかくやという空気をもたらしたレパルは、礼を解いて前を見据える。
 そして、大音声と派手な身振りで見得を切り始めた!

「やあやあ我こそは!!」
 ババン!! どこからともなくどこかで聞いた効果音!!
「虎に遭っては虎を討ち、龍に遭っては龍を討つ!」
 えっそんな簡単に討てるものなの、いやこの獣人少女ならやりかねない、という顔をする侠客たちに、レパルはさらに畳みかける。
「神も! 悪魔も!! 巨大ロボだってなんのその!!!」
 えっっっ!? すごすぎひん!? 仙人が宝貝ロボとかよく乗り回してるけど、それも余裕ってこと!? 思わず男たちが身を乗り出す!!
(「行ける……!」)
 確かな手応えを感じながら、レパルの口上はクライマックスへと向かう。
「虎の腕は空を掴む!」
 掌底を繰り出すようなモーションから、グッと握った拳は力強いことこの上ない。
「竜の脚は地を穿つ!」
 言葉通り、力強い竜の脚が回し蹴りをひとつ繰り出せば凄まじい風が巻き起こる。
 髪という髪を思いきり逆立てる侠客たちに向けて、レパルに照明が当てられたのは気のせいか。
「燃える正義の来訪者! あたしの名はレパル・リオン!!」
 その乙女、狼で虎でドラゴンであり。
 そして――!?
「またの名を……っ」
 とおっ! 掛け声と共に天井に激突しない程度の絶妙な高さで飛び上がる。
 今こそ発動せよ、【変身(レパル・トランスフォーム)】!
 レパルの身体が一瞬まばゆい光に包まれたと思うや、百獣の王の絶対的王者にして魔法少女の爆誕である。

「魔法猟兵!! イェーガー・レパル!!」

 ちゅどーん! 酒場の外ギリギリで、謎の背景爆発が色を添えた。
 お外は大丈夫だろうかという心配も今は無粋、安全を確保した上での演出です。
(「決まった……!」)
 この上なく完璧な名乗りが出来たと、謎の達成感に身を震わせるレパル。
 そう、男たちは――その姿に、間違いなく『憧れ』の感情を抱いていた。

(「やれやれ、随分とクサってると聞いちゃいたが……」)
 思っていた以上に状況が好転しているのを目の当たりにして、ミカエル・アレクセイ(山猿・f21199)はちょっぴり複雑なため息をひとつ吐いた。
(「人心を奮い立たせるのは得意ではあるが、果たして俺の言葉が吉と出るか、それとも……」)
 レパルの見事としか言いようがない名乗りの後で、己のテンションは少々落差が激しすぎるだろうか。
 だが、ミカエルはミカエルなりに出来ることをするだけだ。
 無言の期待を向ける侠客たちに、特別な力は何一つ持たぬ神は気だるげに告げた。
「何、きな臭いと聞いてふらりと立ち寄ったしがない男に過ぎんよ、俺は」
 怠惰の残滓は微かに残り、酒臭さが鼻をつく。
(「相手がオブリビオンなだけ、仕方がないか」)
 そう、一定の理解は示しつつも敢えて手厳しい一言を言い放つ。
「酒場でクダをまいている『忠臣』たぁ、聞いて呆れる」
「「「……」」」
 言われて反論が出来ぬ手前、男たちは少々不機嫌そうに押し黙った。
 だが、誰も反駁したり、手を出したりしないのは、話を聞こうという姿勢の表れだ。
 故にミカエルは、ゆっくりと一歩ずつ踏み込みながら朗々と言い聞かせる。
「俺も、嘗ては主を持っていた。そして、その主が道を誤ればどんな危険をおかしてもその道を正したもんだ」

 本当に、この男は昔を懐かしんでいる。
 決して、侠客たちを侮蔑しているのではない。
 それを理解するからこそ、ミカエルもまた理解を返す。
 これは説得ではない――共感の共有だ。

「無論……背中を預けたり、共に命を背負う奴等が居たから出来た事には違いない」
 眼前の男はまだ若く見えるが、纏う気配がまず違う。侠客たちにはそれが分かった。
「奴等が居たからこその、取れた立場だったろうさ」
 過去を懐かしむようで、ミカエルは、現在を見ている。
 即ち――今の侠客たちと己とは、同じ立場であると。支えられるということだ。
 両の腕をゆるりと広げれば、ゆったりとした着物が威厳を伴って揺れた。

「今は俺達……猟兵という『力』がここにあるだろう」
 隣では魔法猟兵も、その命を、魂を燃やしながらうんうんと頷いている。
「ガツンと、やりに行かねぇかい?」

 誰ともなしに、口の端を上げて笑った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

六道銭・千里
◎【葉銭】
国を滅ぼす寵姫なぁ…まるでかの妲己のよう…っておい待てぇ!?
酒場に突入したこのはに続いて中へ(拱手)

名乗りを上げるこのはの首をもって引き戻し中断を…
なんで大学進学早々俺はこんなことやっとるんやろうなぁ…(遠い目)


まぁ、しゃあない…この流れに俺も乗るか…
ポケットの冥銭を弾き、空で銭貫文棒を形成。掴んで振り回してパフォーマンスをし
我が名は千里、六道銭・千里。閻魔王の代理人にてかの悪行を尽くす黒蝿華妃に裁きを言い渡す者

汝らに閻魔王の加護ありて、我らに義はあり
今こそ悪姫と奸臣に正義の裁きを


っと…まぁこんなもんやな…
そしてこのはの方を見て…わぁお…報奨金で足りるやろうか…


月影・このは
◎【葉銭】
酒場の扉を激しく開き中へ、そして拱手を

天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ!
天に輝く宿星が!悪姫を倒しこの国に平和をとボクを呼ぶ!
正義の戦闘機人で超鋼士!月影・このは。ここに推参!

さぁ、皆さん!今こそ武器を!共に立ち上がりこの国に平和を取り戻すために今こそ城に突入を…ぐぇー


千里さんに止められ、仕方なく端へ
あっ、すいません。食べ物片っ端からお願いします
はい、これは戦闘前のエネルギー供給ですから~【大食い・エネルギー充填】
お代は向こうの方(千里)にお願いします



●大事なのは勢い、そして
「国を滅ぼす寵姫なぁ……まるで、かの妲己のよう……」
 活気を失った芙蓉の街並みを行く六道銭・千里(あの世への水先案内人・f05038)が、この国を襲った災禍の原因にかの大悪女を連想するのも無理からぬことだったろう。
 そんな千里には同行者がいたはずなのだが、ほんの少し物思いにふけっていた隙を突いたのか、隣から忽然と姿を消していたものだからこれには焦る。
「あいつ……どこ行ってん!?」
 その答えは、すぐに明らかとなる。
 酒場の中へと飛び込んで行った連れこと月影・このは(自分をウォーマシーンと思いこんでいる一般ヤドリガミ・f19303)の、めっちゃよく響く元気な声が聞こえたからだ。
「って、おい待てぇ!?」
 慌てて酒場の方へと駆け出す千里であった。開幕から大変なことである。

 ぱしんと拱手をひとつ、そしてビシッと敬礼を決めながらこのはが叫ぶ。
「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ!」
 最初は目を丸くしてぽかんとするばかりであった男たちが、次第に状況を飲み込み始めて合いの手を入れ始めた。
「また威勢の良い子供が来たなぁ!?」
「いい名乗りじゃねぇか、続けてくれよ!」
 活気がよみがえった酒場を、より盛り上げんとこのははニッと笑って声を張り上げる。
「天に輝く宿星が! 悪姫を倒し、この国に平和をとボクを呼ぶ!!」
 シャキーン!! あっまた謎の効果音が入った!! 何かの宝貝かな!?
「正義の戦闘機人で超鋼人! 月影・このは。ここに、推ッ参ッ!!」

 わあああぁぁぁぁぁああ!!!

 猟兵たちの、ここまでの地道な説得も積み重なって、今や乗せられればいつでも動くという所まで来た侠客たちの熱意は最高潮に高まっていた。
 まだ、肝心の具体的にどうするかの策こそ固まっていないが、もう男たちは己の熱意から目を背けない。それだけは確かだった。

「さぁ、皆さん! 今こそ武器を! 共に立ち上がりこの国に平和を取り戻すために今こそ城に突入を……」
「待て待て待て待て」
「ぐええぇぇぇ!!」

 もうこれ勢い任せに城まで突撃しちゃうんじゃないかなという状況を、すんでの所で(物理的に)制止したのは千里お兄ちゃんであった。
 暴走マシンと化したこのはの首根っこを引っ掴んで口上を中断させると、自らも拱手で挨拶をする。
(「なんで大学進学早々、俺はこんなことやっとるんやろうなぁ……」)
 輝け青春、何なら今が一番人生謳歌しちゃえる時期なのでは? そう思っていた時が俺にもありました状態である。今後に期待しましょう!
「まぁ、しゃあない……この流れに俺も乗るか……」
 ポケットに手を突っ込めば、冥銭の確かな感触を握り込んで取り出す。
 それをピンと指で弾けば、舞い上がった冥銭はあっという間に「銭貫文棒」となる。
 おお、という感嘆の声に、千里はまだまだこれからと言わんばかりに棍の柄にあたる部分を掴んで、豪快に振り回す。
 思い切り男たちの上まで伸びるものの、誰をも傷付けることなく華麗に振るわれる銭の鞭は、絶好のパフォーマンスとなって侠客たちを魅了した。

「我が名は千里、六道銭・千里」
 じゃららら、と音を立てる銭の鞭をしならせながらの口上は鮮やかの一言に尽きる。
「閻魔王の代理人にて、かの悪行を尽くす黒蝿華妃に裁きを言い渡す者」
 じゃっ!! 鋭い音と共に、鞭が棍へとその姿を戻した。
 どんっ!! と、千里がそれを床に鋭く突いて、凜と言い放つ。
「汝らに閻魔王の加護ありて、我らに儀はあり」
 空気は張りつめ、侠客たちはただ聞き入る。
「今こそ、悪姫と奸臣に正義の裁きを!」

 うおおおおぉぉぉぉぉおおおっ!!!
 割れるような雄叫びが響き、拳がいっせいに突き上げられた。
(「っと……まぁ、こんなもんやな……」)
 一方の千里は、柄にもないことをしたかと気恥ずかしげに頭を掻くが、文句なしに立派な口上であったのは間違いない。
 そこで、端に寄せられていたこのはがひょいと顔を出して、どことなく嬉しそうにしている女主人へと声を掛けた。
「あっ、すいません。食べ物、片っ端からお願いします」
「おいィ!?」
 誰の金で食うつもりやねんなという顔で振り返る千里に、このははニッコニコで言う。
「はい、これは戦闘前のエネルギー供給ですから~~~」
 必要経費ですよ、必要経費! そう暗に含ませてからの。
「お代はこの人にお願いします!!」
「わぁ~~~お」
 振られた千里の目は、ちょっと焦点が合っていなかった。

(「報奨金で、足りるやろうか……」)
 オブリビオンを退治すれば晋からご褒美が頂けるとは聞いていたが、流石に限度があるだろう。
 必要経費とはいえ、本来の『好漢』たる姿を取り戻しつつある男たち全員にも食わせねばならないとあれば――。

 とりあえず、後で考えよう!!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

荒谷・ひかる
うーん……必要なのはきっかけ、といった所でしょうか。
ここは、わたしもひと肌脱ぎましょうっ。

服装をこの世界の旅人風に整え、食事でもしに来たかのように入店
あたかも何も知らない風を装い、店主さんやお客の皆さんからお話を聞きます
自然な範囲でなるべく大げさなリアクションを返しながら積極的に話に食いつき、国の現状への愚痴や不満をゴリゴリ引き出して勢いに乗せ、適当に良い所で「では、世直しに行きましょう」と言い放ち注目を集め、改めて名乗ります

(拱手しつつ)
申し遅れました。わたし、名を荒谷ひかるといいます。
この地の精霊たちの悲しむ声を聴き、馳せ参じました。
人はわたしをこう呼びます――『精霊寵姫』と。


御桜・八重

酒場に入ってまずは一声。
「お腹空いたー!今日のお勧めは?」
美味しいねーと名物料理に舌鼓。
女主人との会話を皮切りに、
店内の客とこの国のことを話し出す。

地元自慢の酔客にすごいねーと相槌打ち。
国の昔を語るご老体にふんふんと神妙に。
机を叩いて嘆く荒くれには、
「それでいいの?」(ぐさり)

投げつけられる茶碗が当たる瞬間、花吹雪に身を変える。
店内に漂う花弁から流れる声。
「みんなが大事に思うこの国を」
「取り戻そう、みんなの手で」
「大丈夫だよ」
花弁が渦巻きテーブルの上で実体化。
「この桜の巫女が、助太刀いたす!」

ふんすとドヤっていると、
「土足で食卓にあがるんじゃない!」
女主人から頭をポカリ。
「ごめんなさーい!」



●まだ、間に合う
「うーん……必要なのはきっかけ、といった所でしょうか」
「だねえ……それにしてもひかるちゃん、こっちの人の格好、似合ってるね?」
 猟兵としての仕事のみならず、プライベートでも接点を持つ荒谷・ひかる(精霊寵姫・f07833)と御桜・八重(桜巫女・f23090)が連れ立って件の酒場を目指す。
 敢えて普段着とも言える巫女服で乗り込んできた八重の隣には、漢服と呼ばれる独自の衣装で旅人を装ったひかるの姿。
「ありがとうございます。ここはわたしも、ひと肌脱いじゃいますよ?」
「ええっ!? そ、そういうのはダメだと思うよ!!」
 くすりと笑って八重の賛辞に茶目っ気で返すひかる。八重はと言えば頬を染めて桜の髪飾りを揺らしながら両手を振り、慌ててひかるを止めようとする。
「うふふ、大丈夫ですよ――あら?」
 目的地の酒場に近づくにつれ、美味しそうな匂いが強まって鼻腔をくすぐるのだ。

「「……」」

 二人は顔を見合わせると、同時に頷いて酒場へと足を踏み入れたのだった。

 ひかるも八重も『酒場に食事をしに来た』というていで自然と場に溶け込む心算であったから、どういう理由からかは分からないものの、今まさに目いっぱい料理が振る舞われている状況は好都合という他なかった。
「お腹空いたー! 今日のお勧めは?」
 気さくに八重が声を掛けると、答えの代わりにほかほかの湯気を立てる肉饅頭が差し出された。
「ここの店は何でも美味いがな、強いて言うならこれが一番美味え」
 そう言う男の表情は、聞いていたよりもずっと覇気に満ちていて、既に立派な『好漢』と呼べる姿だったものだから、八重は内心で驚いてしまう。
「ありがとうございま……うわ大きい!?」
 饅頭を一つ手に取るや、八重は思わず率直な感想を口走る。まるまる一つは、とてもではないが食べきれない――そこで、ひかるの方を見た。
「半分こ、しませんか?」
「うんっ、お願い! その方がもっとおいしく食べられそうだしねっ」
 餡がみっちり入ってずっしり重い肉饅頭を丁寧に半分こして、はむっと一口。あっという間に広がる肉汁の旨味と皮の甘みがたまらない。

「「んん~~~~~!!!」」

 二人揃って、打ち合わせをした訳でもないのに揃って同じリアクション。
 それだけ美味しかったのだから仕方がないというもの、それを見て取った男たちも、厨房の女主人も笑ってみせた。
「お嬢ちゃんたち、世が世ならもっと美味いものをたくさん食わせてやれたんだがな」
 地元自慢が得意そうな酔客が、酒壺片手にちょっとさみしげに呟く。
「そうじゃなあ……こんなことになる前の芙蓉を、見せてやりたかったわい」
 この国で生まれ育ってこの歳を迎えたのだろう、国の昔を思うご老体も頷く。
「なあ……俺たちが今更立ち上がったところで、手遅れなんじゃねぇか……!?」
 机の上で拳を震わせる男は、悔悟の念に囚われる。

 それこそが、好漢たちの、最後の足枷。
 ならば、それをこそ取り払うのが、最後の仕事。

 肉饅頭の食べかすを口の端につけたまま、八重が男の前に仁王立ちになった。
「それで、いいの?」
 ――だぁん!! その言葉に、拳が机を叩いて返した。
「良い訳、ねぇだろうが!!」
 反射的に手近な茶碗を投げつけてしまう男。荒くれならではの行動だったのだが、すぐにしまったという顔になる。
(「悪ぃ、外れてくれ――」)
 男の願いが天に通じたのか? 否、八重自身の力である。
 桜の乙女の姿は茶碗がぶつかる直前、あっという間にその身が桜吹雪と化して散る。
「「「なっ……!?」」」
 はらはらと舞う、桃に似て非なる可憐な花に包まれながら、男たちは乙女の声を聞く。

「みんなが、大事に思うこの国を」
 桜舞う店内を、ひかるもまた穏やかな表情で、しかし確固たる意思で歩く。
「愚痴も、不満も、あるでしょう」
 それらは既に、先に酒場へと乗り込んだ猟兵たちが解きほぐした。
 国を作るのは他ならぬこの地に住まう民なれば、立ち上がるべきだとも説いた。
 ならば、背中を押して手を取って、いよいよ立ち上がる時は――今なのだ。
「取り戻そう、みんなの手で」
 声が響く。天女が舞い降りたかのようだった。

「――大丈夫だよ」

 花弁が渦巻き、机の上で再び八重の姿を形取る。
 拱手をひとつ、そして名乗りを上げた。
「御桜・八重。この『桜の巫女』が、助太刀いたす!!」
 ふんす、と平たい胸を張る姿に自然と拍手が沸き起こる。
 完全に――ハートキャッチしたな、と思った時だった。
「土足で食卓にあがるんじゃない!!」
 ずんずんと真っ直ぐにやってきた女主人に、後頭部をポカリとぶたれてしまった。
「うええ、ごめんなさーい!」
 演出とはいえ、ちょっと度を超してしまったと素直に謝る八重。
 そんな姿に、好漢たちのひとりがそっと手を差し伸べた。
「降りて来な、あんたの熱意は十分伝わった」
「……ありがとう!」
 いかつい手を取れば、すぐにそれが歴戦の猛者の手だと分かる。
 そうして八重が机から降りると、ひかるが言い放った。

「では、世直しに行きましょう」
「「「もう!?」」」

 一斉に注目を集めたひかるが、拱手で返すと名乗りを上げる。
「申し遅れました。わたし、名を荒谷・ひかるといいます」
 すっかり出立する雰囲気になり、慌てる者も少なくない。
「策はどうすんだ!? 国を牛耳る奸臣どもはまともに取り合えば言いくるめられちまうし、王を骨抜きにした妃はすげえ術士だっていうぜ!?」
 誰かがそう言えば、うんうんと頷いてちょっと待って欲しいと訴える侠客たち。
 だが、こうして猟兵たちが派遣されてきたということは、一刻の猶予もないということでもある。
「はい、この地の精霊たちの悲しむ声を聴き、馳せ参じました次第です」
 ひかるは、なればこそ今が決起の時と強い意思を秘めた瞳で訴える。
「人はわたしをこう呼びます――『精霊寵姫』と」

「「「つよそう」」」

 侠客たちが揃って同じ感想を述べた。すごいシンクロ率だった。
「強そうではなく、実際強いですよ?」
 ニッコリ笑うひかるだが、本当に強いのは精霊さんたちであるのはここだけの話。
 ひかるの本当の強さは――意志の強さ。

「精霊の加護、か……」
「人界だけでなく、仙界の力も借りれるようなもんだろ?」
「……食うだけ食ったし、そろそろ頃合いか」

 一人、また一人と、男たちが立ち上がる。
「俺たちゃてっきり、目玉が出るような策を引っさげて、仙術みてぇにあんたたちが何もかも解決してくれるもんだって思ったよ」
 そう言いながら、それぞれの得物を手にし始める。一度は酒場の隅に、打ち捨てたはずの愛用の武器を。
「でも――最大の『策』ってのは、俺たちが立ち向かうこと、だったんだな」
 そこに集うは、芙蓉きっての好漢たち。
 その勇姿に一切の翳りも曇りもなく、ただ頼もしいばかりだった。
「――その、通りです」
 ひかるは、今日一番の満面の笑みで答えた。

「まったく、いつもあんたらは食い散らかすだけ食い散らかして、勝手に行っちまう」
 女主人が、空いた皿を重ねて片付けながらぼやいてみせる。
「ツケだよ、必ず払いに帰っといで」
 顔は向けずに、淡々と片付けを続けながら、好漢たちと猟兵たちとを送り出した。

 帰る場所がある。守る国がある。
 ならば――戦って、生きて帰る。
 芙蓉の好漢と猟兵とが、手を取り合った瞬間である。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『私服を肥やす奸臣達』

POW   :    御馳走を食わせるから…み、見逃してくれぇ…!
【今までに口にしてきた豪勢な食事】を給仕している間、戦場にいる今までに口にしてきた豪勢な食事を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
SPD   :    金なら幾らでもやる!だから頼む命だけは!
あらゆる行動に成功する。ただし、自身の【不正により懐に蓄えてきた財産】を困難さに応じた量だけ代償にできなければ失敗する。
WIZ   :    協力すればどんな願いも叶える!儂の命だけでも…!
【自身を助けたくなるような魅力的な条件】が命中した生命体・無機物・自然現象は、レベル秒間、無意識に友好的な行動を行う(抵抗は可能)。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●内より腐り落ちるもの
 決起した好漢たちに導かれ、芙蓉の城を目指す猟兵たち。
 そうして城へと近づくにつれて、誰もがある違和感を覚え出す。

 ――城に近づけば近づくほど、人がどんどん少なくなっていくのだ。

 そんなことがあろうか? 城下町ほど賑わい活気あふれる場所もあるまいに、あるのは不気味なまでの静けさのみ。
 道すがら時折雑談なども交わした好漢たちも、だんだん口数が減っていったのは、色々な意味で気が滅入る心地になってしまったからか。
「……」
「……」
 そうして誰もが押し黙る中、遂に一行は固く閉ざされた城門の前にたどり着く。
 国を取り戻す、そう誓った男たちが用意したのは車輪がついた簡素な造りの破城槌。
「俺たちが出来るのは、どうやらこの門をぶち破るところまでだ」
 それでも十分だと猟兵たちが笑う中、着々と城門破りの準備が進む。
「この先にゃ、王以外人間はいねぇだろうさ」
「槍持った兵士程度は残してるんじゃないか? まあ、そちらは俺たちが相手をしよう」
「万が一に備えて俺たちは迎撃に専念するが、くれぐれも気をつけてな」
 口々に猟兵たちへと激励の言葉を掛けつつ、道を切り拓くべく次々と構えに入る。
 そうして屈強な男たちが大勢で、大きな丸太を勢い良く城門に叩きつけた!

 ずしいいぃぃぃん、と城内を揺るがす衝撃と轟音に、慌てふためく者どもがあった。
『ひ、ひぃ!! 来た!!』
『衛兵を向かわせろ、それでも駄目なら……』
 見るからに戦には向いてない文官の出で立ちをした中年男性たちが、豪奢な王宮の中を右往左往しながら、皆一様に目を血走らせて叫ぶ。
『金もある! 豪勢な食事だって用意させる!』
『今からでも遅くはない、儂らに協力すると誓えば、望みは思うがままと知れ!』
 侍らせていた女たちが散り散りになって逃げるさまも顧みず、よくもまあ。
 そう思う猟兵たちがほとんどではあろうが、万が一この奸臣どもの言う通りにしたが最期。甘い汁は吸えるだろうが、外道となりて堕ちるまで。

 彼らは富と権力と引き換えに、人としての生を捨て去ったもの。
 かの奸臣どもは、もはや人に非ず。
 猟兵たちには、斬り捨てることが許された存在。もはや説得の言葉は届かぬ存在。
 甘言に惑わされず、無抵抗の相手と躊躇わず、思い切り成敗するべきであるが――最終的な処遇は、猟兵それぞれの意思に一任されている。

 こじ開けられた城門を乗り越え、いざ進め、猟兵よ!
レパル・リオン
◆存分にアドリブしてほしい◆

命乞いがユーベルコードって、何こいつら!
こんな奴らに負けるか!
あたしもハッキリ言ってやる!

不正怪人!国と人々を食べ尽くすオブリビオンめ!
もうアンタ達に、誰も傷つけさせない!

フォームチェンジ!虎と雷をモチーフにした衣装に着替えて、稲妻の爪が閃く『サンダータイガー』に変身よ!

うおーっ!痺れる雷を宿す手刀を叩き込むため、最初から全力で走るわ!
何度避けられても、電撃のように素早く地を駆け、虎のように執拗に追い詰めにいく!
ゼッタイ逃がさなーい!

必殺、ボルテックロー!!!
成敗!



●サンダータイガー、推参
 わあああぁぁぁ――――――っ!!!
 城門をぶち破った勢いに任せて、芙蓉の侠客たちが怒濤のように城内へとなだれ込む。
 迎え撃つ衛兵たちは士気こそ低いものの、精鋭だけあって練度は高い。
 激しい怒号とつばぜり合いの音を背に、ある者は宙を舞い、ある者は地を蹴って城内を猛然と目指す。
 猟兵たちが、好漢たちの助力を得て、いよいよ悪の根城へと突入したのだ。

 芙蓉の城に一番乗りで足を踏み入れたレパル・リオンは、鼻をつくさまざまな『匂い』に思わず眉根を寄せる。
 香の匂い。ご馳走の匂い。照明の脂の匂い。
 ひとつひとつは香ばしくとも、それらがないまぜになって漂う気配は、もはや不快でしかなかった。
 床をドタドタと走り回る音が聞こえる。
 何かがぶちまかれ、派手に散らばる音が聞こえる。
 レパルはもはやゆったりと歩み寄る速度で、音の方へと近づいた。

『ひっ……!!』
『金なら幾らでもやる! だから、頼む……命だけは……!!』

 数名の奸臣と思われる文官たちが、それぞれに明らかに金目のものと分かる財をかき抱きながらレパルの姿を見るや命乞いを始める。
 対するレパルはどうか。
 常ならば快活な笑みを浮かべるキマイラの少女が、信じられないほど険しい顔をしていた。
(「命乞いがユーベルコードって、何こいつら!」)
 しかも何だ、その財は? どうやって手に入れた? 考えるだけでもおぞましい!
 無辜の民を犠牲にして蓄えた財で命乞いなど、誰が聞き入れるというのか!
(「こんな奴らに――負けるか!」)
 レパルの赤い瞳に、炎が宿る。
 肉球付きの虎の手で、ズビシと奸臣どもを指さす。
(「あたしも、ハッキリ言ってやる!」)
 爛れきった気配ばかりが漂う城内を、凜然たる声が引き裂いた。

「不正怪人! 国と人々を食べ尽くすオブリビオンめ!」
 ザッ! 言葉と共に一歩踏み込む!
「もうアンタ達に、誰も傷つけさせない!」
 バッ! 指し示した方の腕を外に振るって、力強く意志を示す!

 どれだけ財産を差し出そうと、眼前の猟兵の決意は変わらぬと知った奸臣どもは震えるばかり。
『あ、ああ……お願いします、死にたくない……』
『お許し下さい、この通り……蓄えなら全て差し出します……!』
 レパルの答えは否だ、ゆるりと振った首がそれを明らかにした。
「フォームチェンジ! えいっ!!」
 今度は腕を天高く突き出せば、まるで何かを掴み取ったかのように拳を握る。
『な……何と!?』
 虚空を掴んだと思われた拳には、黄色と黒の衣装が掴まれていた。

「刮目しなさい!! これが――稲妻の爪ぞ閃く、『サンダータイガー』よっ!!」

 名乗りと共に、レパルの身体をまさしく猛虎を思わせる凜々しい衣装が包む。
 走る縞模様は稲妻を形取り、身体中を微かな電撃が駆け抜けていくのが見て取れた。
「うおーーーーーーっ!!!」
 レパルは一度身を低くしたと思うや、床を蹴って全力で駆け出した。
『ひえ、ひええぇぇぇぇ!!』
 触れれば確実に痺れる電撃を宿した手刀を叩き込まんと奸臣ども目掛けて突っ込んだレパルを、しかし這いつくばって小賢しくも逃げ回る。
「せいっ!!」
『ぎゃああ!』
「やあーっ!!」
『お助けえぇ!』
 何度手刀を避けられても、電撃のように鋭く方向転換をしては確実に奸臣どもを追い詰めていくレパルの姿は――まさに、獲物を狩る虎のそれ。
「ゼッタイ逃がさなーい!」
 気がつけば、その場にいた奸臣どもはまとめて廊下の角に追い込まれていた。

「必殺、ボルテックロー!!!」

 ドゴオォォン……!!!
 轟音が城内に響き渡った。レパルの手刀は――廊下の板を、奸臣どもの眼前の板を、バッキバキに破壊していた。

「成敗!!」

 ふんす、と雷光を纏いながら胸を張るレパル。
 これでもう、奸臣どもも懲りただろう。いや、懲りてなければ救いようがない。
『あわわわわわ……』
『参りました……!』
 冠もずれて、振り乱した髪もそのままに、奸臣どもはいっせいにひれ伏した。

成功 🔵​🔵​🔴​

月影・このは
◎【葉銭】
ふむ、難しいことはさっぱりです!
とりあえずボクは衛兵が来るならそれを撃退
逃げようとする奸臣達がいるなら殺さないようノックアウト!
必要であれば千里さんのようにクリスタルウォールで『捕縛』し逃げられないように…


はい!対ヴィラン用量産型戦闘ロボでウォーマシンで、スーパーロボットなボクの願いは一つ正義です!

彼らも自身の罪を悔いてボクの願いを叶える…正義の為に捕まってくれるとは潔いですね!(ボディブローによる『気絶攻撃』+【怪力】)

因みに逃げようとすれば…対抗ヴィランと認識し…
(【リミッター解除+鎧砕き】により床を砕き)こうなります
大人しくした方がまぁ少しは寿命も伸びるんじゃないですかね?


六道銭・千里
◎【葉銭】
腐敗した国でよう聞く話よな、勝手の栄えた都は悪政により…ってな
んで、こういう光景もよう聞く話やな…(奸臣達を見て)


そうか、命を助ければどんな願いでも叶えてくれるんやな?
銭貫文棒を肩に笑顔で奸臣達に
男に二言は無いな?と再度問いかけ

男たちの身を守るために結界を発動【捕縛】、これでとりあえずこの場で感情のままに殺されるってことは無いやろ…
俺の願いは私刑で無くしっかりと司法により裁かれること
ほんじゃあ、後は任せたわと好漢たちへ

確かに今、命を助ける手伝いはした…嘘はついとらん



地獄の沙汰も金次第…まぁ、地獄に持っていける金は他人が自身の為に使った金らしいけどな
…あんた等にどんだけ持ち込めるかな?



●正義の定義
 きゃあきゃあと逃げ惑う女たちとすれ違いながら、六道銭・千里と月影・このはも城内への侵入を果たす。
 ほえーという様子で女たちを見送るこのはに対し、千里は苦い顔だ。
「腐敗した国でよう聞く話よな、勝手の栄えた都は悪政により……ってな」
 呟く千里を見上げて、このはは素直な感想を述べる。
「ふむ、難しいことはさっぱりです!」
 そこへ、廊下の向こうからドタドタとやってくる衛兵が二人。
『うおおおおおお、ここから先は行かせぬぞおおおおお!』
『頂戴した金を、故郷に送るんだ!!』
 その勢いをそのまま活かすように――このはが両腕でアックスボンバーをキメた!
『『ぐえええええ!!!』』
「即落ち2コマか???」
 あまりにも流れるように撃退される衛兵を見て、千里が思わずツッコミを入れる。
 まあええわ、と後頭部を軽く掻いて、地獄の獄卒はその仕事を果たしに向かった。

「んで、こういう光景もよう聞く話やな……?」

 千里の視線の向こうには、身を寄せ合って震える奸臣どもが居た。
 ひとりはでっぷりと肥え、もうひとりは小賢しそうな痩身。
『た、助けてくれ! 儂らに協力すれば、どんな願いも叶える!』
『ああ、そうだとも……! だから、儂の命だけでも……』
 ん? 今何でもって。
 言ったからには、聞いてもらわなければ。
「そうか、命を助ければどんな願いでも叶えてくれるんやな?」
 じゃり、と音を立てて銭貫文棒を肩に担ぎ、笑顔で奸臣どもに問う千里。
「男に二言は無いな?」
 ぐ、と顔を近づけ再度問いかければ、こくこくと頷く奸臣ども。

 ――こつん。

 冥銭の棍が、床板を叩いた。同時、奸臣どもを守るように防御の結界が展開され――。
『な、何だこれは!?』
『閉じ込められ……っ』
 元々笑みを湛えていた千里が、口の端を上げていよいよ不敵に笑んだ。
「このは」
「えい!」
『ぐえええええ!!!』
 視線も向けずに戦友に合図をした千里に、すぐ意図を汲んでこのはが物陰で密かに逃亡を試みていたもう一人の奸臣にマイルドなボディブローをキメた。
 マイルドな威力にしても盛大に吹っ飛んで壁に激突してしまうのだから、自分をウォーマシンだと思い込んでいるヤドリガミはおっかない。
 その奸臣もこのはがベルトから展開させたバリア「クリスタルウォール」で捕縛し、状況は完全に猟兵有利となった。
「これで、とりあえずこの場で感情のままに殺される、ってことは無いやろ……」
「はい!」
 棍を突いたまま柄に両手を添える千里がひと息吐いて、このはが呼応する。
『ど、どういうつもりだ……!』
『願いを言え! 儂らが叶えてやる!』
 いよいよ必死になって懇願する奸臣どもに、千里とこのはが真っ直ぐ向き合った。

「はい! 対ヴィラン用量産型戦闘ロボでウォーマシンで、スーパーロボットなボクの願いは一つ!」
(『『ごくり……』』)
 無茶を言われたらどうしようと冷や冷やしながらも、奸臣どもは律儀に耳を貸す。
「正義です!!!」
『『えっ』』
 概念で攻めてきたかー、という感じの反応であった。
「正義の為に捕まってくれるとは潔いですね!」
 『『待って』』
 このはは完全に自分の主張が通ると信じて疑わない。流石である。
「皆さんも自身の罪を悔いてボクの願いを叶える……完っ璧です!」
 そういうのはちょっと……という顔で互いを見合わせても無駄である。だって自分たちで『何でも言うこと聞く』って言ったじゃんね?
 千里も、仁王立ちをしたまま淡々と告げる。
「俺の願いは『私刑では無く、しっかりと司法により裁かれること』」
『『……っ』』
 悪を裁くもの、ふたり。それが揃って、道理を以て願いを叶えろと言う。
 その後ろから現れたのは、あらかじめ示し合わせて待機させていた数名の侠客たち。
『ひぃ……!!』
「殺さねぇよ、猟兵さんたちの頼みだからよ」
「――ほんじゃあ、後は任せたわ」
 結界を解き、奸臣どもの身柄を好漢たちに任せる千里。
「確かに今、命を助ける手伝いはした……嘘は、ついとらん」
 俵のように担がれながら、複雑な視線を向けてくる奸臣どもに、千里はそう返す。

「あっ、こいつ……!?」
『殺される、絶対殺される……!!』
 ぬるりとした動きで、先程このはから逃れた奸臣がまたしても逃亡を試みる。
「懲りませんねぇ」
 ――対抗ヴィランと認識。
 ――リミッター、解除。
 しゅばっ!! 信じられない素早さで奸臣の逃亡速度を上回って進路を塞ぐと――。
「こうなります!!」
 ばぁんっ!! と、小さな拳が恐るべき破壊力で床板を粉々に打ち砕いた!
『あ、あ、ああ……』
 完全に腰を抜かしてへたり込み、今度こそ連行される奸臣に向けて、このはが言った。
「大人しくした方が、まぁ少しは寿命も伸びるんじゃないですかね?」

 殺してしまうのは容易い。
 けれど、険しくも正しい人道を、猟兵たちは選び取った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

御桜・八重

お金をばら撒く奸臣の前に仁王立ち。
「子供の頃に教わらなかった?」
悪いことをしたら、お・仕・置・き!

慌てふためく奸臣を猛追。
けれどUCのおかげでなかなか捕まらない。
よーしと懐から桜の花弁一握りを掴みだし、
「せーの、ふーっ!」
吹き散らした花弁が自分のミニ分身に変化。
「みんな、やっちゃえーっ」
寄ってたかって奸臣の懐から金銀財宝を持ち出す。
元はと言えば国の財産、外に届けて復興資金にしてもらおう!

財産が減れば成功させられる行動も少なくなる。
元より何回失敗しても諦めるつもりは無いけどね!
伸ばせる手は伸ばす。届いた手は掴む。掴んだその手は、
「はーなーさーなーいーっ!」
オーラを纏った手で思い切りお尻を叩く!



●思い出される仁義の教え
 城門を破られ、頼みの衛兵たちも抑え込まれ、猟兵たちの侵入を許した報は瞬く間に城内中に知れ渡る所となる。
 奸臣どもは我先にと逃亡を図ったり猟兵たちの買収を試みるも、ここまでそのことごとくが失敗。命までは取られずにいるものの、着実に窮地に追い込まれつつあった。

『か、金か!? 金ならほら、この通りいくらでもある……!』
 数名の奸臣どもが、城内のとある一室に踏み込んできた御桜・八重の姿を認めるや見せつけるように金貨や紙幣を抱え込んではばら撒いた。
『だからどうか、頼む……! い、命だけは……ひぃッ!?』
 舞い散る紙幣を踏まぬよう、しかし床を力強く踏み鳴らした勢いでいっそう舞わせながら、八重は惨めに命乞いをする奸臣どもを仁王立ちで見下ろす。
「子供の頃に教わらなかった?」
『……ふへ?』
 突然、何を言われたのか分からず奸臣の一人が変な声を出す。
 八重自身は小柄な少女であるはずなのに、この威圧感は――尋常ではない。
 財が舞い散るのがひと段落したところで、八重は自ら答えを告げた。

「悪いことをしたら、お・仕・置・き!!」
『『『ひいいぃぃぃぃいい!?』』』

 成敗されるのは御免だと、慌てふためく奸臣どもをひとりひとり『お仕置き』すべくずんずん前に進み出る八重。
『む、娘! 今はまだその価値が分からぬやも知れぬが!』
『そうだ、取り敢えず受け取っておくが良い! 世の中はとにかく金だ!』
 それでも懲りずに貯め込んだ――ろくでもない手段で貯め込んだ汚い金をここぞとぶちまけて、八重を何とか押しとどめようとする奸臣ども。
「く……っ」
 八重は決して金に目が眩んだ訳ではない。
 それでもなかなか誰一人として捕まえられないのは、ひとえに奸臣どもが欲の果てに得たユーベルコードの効果だった。
 今や奸臣どもは財の全てを惜しむことなく差し出し、全力で助かろうとしている。
 それだけ超常の威力も増大し、八重ほどの実力者を相手に拮抗まで持ち込むのだ。
(「むむむ、それじゃあ……」)
 桜の乙女は一瞬難しい顔をするも、すぐに悪戯っぽい笑みで懐に手を入れる。
 そうして、掴み取ったのは一握りの桜の花弁だった。

「せーの、ふーっ!!」

 握った拳を開いて、ふわり広がった桜の花弁を一気に吹き散らす八重。
 それはまるでかの大英雄・孫悟空が行使した身外身の法のごとく、花弁のひとつひとつが小さな小さな八重となって、ずらり並んで奸臣どもを包囲したのだ。
「みんな、やっちゃえーっ!!」
「「「おーーーーー!」」」
『『『あーーーーーーーーーっ!!?』』』
 主たる八重の号令に応じて、ミニ八重がいっせいに奸臣どもを――囲んでわいわいと懐に手を突っ込んで、あるいは隙間に入り込んで、ありとあらゆる金銀財宝を持ち出す!
『ま、待て! 返事も聞いておらんのに勝手に持ち出すな!』
「勝手に? 元はと言えば国の財宝でしょ?」
 言い掛かりをつける奸臣に、毅然として言い返す八重。
「これは外に届けて、復興資金にしてもらいますー!」
『おのれ……な、何故、言うことを聞かぬ……!?』
 呻くような声に八重は答えず、ニッコリ笑うばかり。
(「財産が減れば、成功させられる行動も少なくなる」)
 戦略と理想とが噛み合った結果と言えよう。

 ――元より、何回失敗しても諦めるつもりは無いけどね!

 そうして、いよいよ八重は奸臣の一人に手を伸ばす。
『く、来るなぁ!!』
 這って逃げるばかりの文官など、本来捕らえるのは容易いことだ。
 伸ばせる手は伸ばす。届いた手は掴む。
 そして、掴んだその手は――。

「はーなーさーなーいーっ!!」
『ああああああ!!!!!』

 べっしーーーん!!!
 桜色のオーラを纏った掌で思いっきりお尻を叩かれた時、その奸臣は、確かに幼き日の親の教えを思い出したという。

成功 🔵​🔵​🔴​

張・西嘉

まぁ、こう言った者も現れるのも必定と言えんこともないが実際に目にするとやはり気分が滅入るな。
国を傾けるきっかけを作ったのは件のオブリビオンだろうが実際に国を傾けていったのはこういった奸臣だろう。

金などいらんよ。今の仕事だけで十分な給金を貰っているしそんな汚い金には興味もない。
それに俺は忠義のない奴は好かんからな遠慮なく殴れる。
UC【乱戦遊戯】
自身の武器の他に戦場にあるものを使って攻撃や回避に利用。


木常野・都月


この人達は、オブリビオン?
オブリビオンなら倒さないといけない。

俺の目的はオブリビオン…黒蝿華妃を倒す事だ。

オブリビオンだったり、オブリビオンの仲間なら人であっても殺す。

邪魔をしないなら、貴方達に興味はないよ。
人同士の縄張り争いは、人同士でやるといい。

ただ…これは野生の世界の話だけど。
仲間や群を裏切って、縄張りを奪ったやつが、また仲間に入れるとは思わない事だ。
裏切り者には死が待ってる。
人も狐も、その辺りは同じだと思うぞ。

先に進もう。宣言通り、邪魔をしてくる人がいるなら、UC【狐火】で燃やしていこう。

どんな願いでも?
それじゃあ黒蝿華妃を倒せるか?
倒してくれるなら、俺、仕事楽が出来るから嬉しい。



●立ち回りの在り方
 猟兵たちがいっせいに城内へと踏み込んでから暫し、広い芙蓉の城内も猟兵たちの手により順調に奸臣どもが無力化され、制圧されつつあった。
 退廃の匂いばかりが漂う城内を進みながら、張・西嘉は軽く眉間に皺を寄せた。
(「まぁ、こう言った者も現れるのも必定と言えんこともないが」)
 忠臣が廃され猛将が去りしのちに国が迎える姿は想像に難くない。
 だが、実際目の当たりにするとやはり気が滅入るというもの。西嘉は城に向かう道中での好漢たちの様子を思い出し、なるほどなと納得をする。
「国を傾けるきっかけを作ったのは件のオブリビオンだろうが……」
 廊下を進めば、徐々に人の気配が濃くなる。
「実際に国を傾けていったのは、こういった奸臣だろう」
『ひっ……!』
 そうして遂に、西嘉は宴の最中だったと思われる広間へと足を踏み入れた。

 西嘉に少しばかり遅れて、木常野・都月も広間へとたどり着く。
 食い散らかした後も生々しい、演奏を披露していたと思しき所には楽器だけが放り出されていた。
(「この人達は、オブリビオン?」)
 欲が人のカタチをして服を纏っているだけ、のようにさえ思える奸臣どもを見て、都月は一瞬判断に迷いさえした、が。
(「オブリビオンなら、倒さないといけない」)
 己が成すべきことは違えない、それこそが猟兵としての矜持。
 中性的な顔立ちをきゅっと引き締めて、固まって震え上がる奸臣どもを見遣る。
『ま、ままま待ってくれ! 話をしよう、なぁ!?』
『そうだとも……! 金ならあるし、儂らの力をもってすれば、どんな願いでも』
 あわあわと両手を振って、見苦しくも命乞いをする奸臣どもに、西嘉と都月が思わず顔を見合わせる。
 西嘉は改めて呆れたという風に難しい顔になり、都月は逆に感情を消した顔になる。
 金か、あるいは望みのままにする権力か――ということか。

「どんな願いでも?」
 都月がまず問えば、奸臣の一人が食いつく。
『そうとも! 富も名声も、思うがままぞ!』
 人は、己の価値でしか世界をはかれない。故に、願いの範囲も己が思いつくものに限られる。
 だから、都月が告げた願いは、奸臣を激しく驚愕させた。
「それじゃあ、黒蝿華妃を倒せるか?」
『……は???』
 想定外、いや想定内でも無理難題。あまりのことに、腑抜けた声しか出せなかった。
 だが都月はいたって真剣だ、何のためにここに来たのかを考えれば、当然であった。
「俺の目的はオブリビオン……黒蝿華妃を倒す事だ」
 都月が一歩踏み出すと同時にこつりと靴音が鳴り、そのひとつだけでも奸臣どもが震え上がる。
『ま、ま、待ってくれ!! 妃を殺せだなんて、無茶苦茶だ!!』
『あのお方には逆らえん……今の儂らがあるのも、あのお方のお力あってで』
 要するに、自分の望みは『飲めない』ということか。
 そう判断した都月は、冷ややかな声で彼らが今置かれている事実を知らしめた。

「オブリビオンだったり、オブリビオンの仲間なら――人であっても、殺す」
『『『……!!』』』

 奸臣どもがより一層身を寄せ合うさまは、哀れささえ感じない醜さしかない。
 そのうちの一人が、はたと思いついたように部屋の隅から立派な飾りが施された箱を引っ張り出し、その蓋を開けた。
『か……金ならどうだ! まだまだ用意できる! この中国でならどこででも使え』
「金などいらんよ」
『ぐっ……』
 奸臣の言葉をぶった切って、西嘉が拒絶の一言をぶつければ、いよいよもって奸臣どもは言葉を失う。
「今の仕事だけで十分な給金を貰っているし」
 むしろ、この連中を成敗すれば晋国から報奨も出る。
 それに――。
「そんな汚い金には、興味もない」
 西嘉が険しい顔をするのは、恥ずかしげもなく自らのものとして差し出そうとしている財が薄汚いものでしかないから。
 そのことさえも自覚せず、これで自らが救われると信じて疑わぬ浅ましさ。

 ――このような輩など。

 ごきり、と。鷹の威風を纏う男の指が鳴った。
「それに、俺は」
『ごふぁっ!!』
 そして、ひゅんっと拳が風を切り、奸臣の一人の頬をしたたかに打ち据えた。
「忠義のない奴は好かんからな、こうして遠慮なく殴れる」
『ひあ、あぁぁっ!』
 ひとかたまりになっていた奸臣どもが、いよいよ散り散りになって逃げ惑う。
 宴席で使われていた椅子を振りかざし、西嘉へと投げつけて抵抗を試みるものがあれば、ひょいと最低限の動きで躱したのち転がった椅子を足場に宙を舞う。
「哈――!」
 今度は鋭い飛び蹴りが別の奸臣の背を捕らえた。ぐええと蛙が潰れるような声で地に伏す奸臣を踏み台に、大机の卓子被に手を掛けると、力いっぱい引っ張った。
『ぶわっ!?』
『ま、前が見えん!』
 卓上の食事を一切落とすことなく引き抜かれた大きな卓子被は、我先に逃亡を図る醜い男どもを一網打尽に包み込む。
 あわあわと白い布をもぞもぞさせる奸臣どもに、西嘉と入れ替わるように都月が言い放つ。
「邪魔をしないなら、貴方達に興味はないよ。人同士の縄張り争いは、人同士でやるといい」
 ぴたり、と。白布の動きが止まった。
「ただ……これは野生の世界の話だけど」
 断りを入れた上で、都月が言葉を掛ける。西嘉は、得物を構えながらも見守る。
「仲間や群れを裏切って、縄張りを奪ったやつが、また仲間に入れるとは思わない事だ」
『『『……』』』
 場を静寂が支配して、遠くから聞こえる喧騒だけがいやに響く。
「裏切り者には死が待ってる。人も狐も、その辺りは同じだと思うぞ」
 軽率に自らの立場を変えようとすれば、果てに何が待つか?
 西嘉に打ち据えられ伸びている者どもは勿論、卓子被に包まれた者どもも身を以て思い知らされただろう。

 ――素直に、降伏すべきだと。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

荒谷・ひかる
まあ、貴方方を助ければ本当にわたしの望みを叶えてくれるんですか?
わかりました、外の皆さんへはわたしから便宜を図りましょう。
それでは、わたしの望みを聞いてくださいませ。

(【満面笑顔の向日葵少女】発動しつつ)
わたしの望み、それは……この国を、民が皆穏やかに笑って過ごせるような国にすること、です。
そして悪から国を護るには、悪を知らねばいけませんから……悪事に通じた貴方達なら、逆にその考えを活かした善政も布ける筈。
その上で程々に贅沢するなら、民も許してくれるでしょう。
今反省すれば、ここまで権力闘争に生き残ってきた皆さんなら、大丈夫。
がんばれ、がんばれっ♪
(「鼓舞」してその気にさせ、反省を促す)



●清濁、併せ呑むこと
 芙蓉の城は広い。猟兵たちがここまで奮戦して奸臣どもを色々な意味で蹴散らしてきたが、その全てを制圧するには至らなかった。
 しかし、それももうすぐ決着の刻を迎えようとしている――。

「まあ、貴方方を助ければ本当にわたしの望みを叶えてくれるんですか?」
 鈴のように愛らしい声を弾ませ、荒谷・ひかるが両手をちょんと合わせる。
『あ、ああ……勿論だとも! どんな願いでも望みでも思うがままだ!』
『儂らの権力をもってすれば、造作もないわ! だから頼む……!』
 好感触とばかりに、奸臣どもがこぞってひかるに詰め寄る。
 内心嫌悪感を抱いたかどうかはひかるのみぞ知るところだが、表向きは全く動じず、大らかな仕草で両手を広げた。
「わかりました、外の皆さんへはわたしから便宜を図りましょう」
 おおお……! と、光明を見出した奸臣どもが顔を見合わせて歓喜の声を上げる。
「それでは、わたしの望みを聞いてくださいませ」
 ならば、彼奴らはひかるの望みを聞き届けなければならない。
 何でも申してみよ、と言葉を急かす奸臣どもを、まばゆい光が照らした――!

 にっ、ぱあああああああああああああ……!

 映像でご覧いただけないのが残念ですが、【満面笑顔の向日葵少女(サンフラワー・ガール)】たる超常の域に達した純粋無垢な笑顔は、間違いなく輝きを伴っていました。
「わたしの望み、それは……この国が、民が皆穏やかに笑って過ごせるような国にすること、です」
『なん……だと……』
『絵に描いたような聖人君子の台詞よ……』
『儂らには、あまりにも眩しすぎる……ッ』
 ひとり、またひとりと奸臣どもが色々な意味で顔を覆っていく。直視とか無理だった。
 ひかるは無垢なる笑顔のまま、純粋な望みを紡ぎ続ける。
「そして悪から国を護るには、悪を知らねばいけませんから……」
『!?』
 そっと、温かな手が奸臣のひとりの肩に置かれたものだから、びくんと身体が跳ねてしまう。
「悪事に通じた貴方達なら、逆にその考えを活かした善政も布ける筈」
『な、何と……儂らを、そのように……!?』
 ――誰ともなしに、涙を流していた。
 今度はひかるが確かな手応えを感じ、ラストスパートをかける。
「その上で程々に贅沢するなら、民も許してくれるでしょう」
 奸臣どもが、顔を上げる。
 許される? 己が……!?
 答えの代わりに首肯して、ひかるは両の拳を一度上下させた。
「今反省すれば、ここまで権力闘争に生き残ってきた皆さんなら、大丈夫」
『儂らは……』
『ああ……そうか、そうだな……』
 完全に、ひかるのペース――いや、これはもはや、ひかるの領域!

「がんばれ♪ がんばれっ♪」
『『『か゛ん゛は゛り゛ま゛す゛!!!』』』

 恐るべし、希有なる威力を誇る鼓舞の力よ――!

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『黒縄華妃』

POW   :    働け、下僕共よ
レベル×1体の【配下の下級役人】を召喚する。[配下の下級役人]は【公権力】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
SPD   :    妾に逆らう屑虫共を、一人残らず吊るしてくれよう!
【傾国の寵姫としての体裁】を脱ぎ、【世界を滅ぼすオブリビオンの本性を現した姿】に変身する。武器「【絞殺縄鞭】」と戦闘力増加を得るが、解除するまで毎秒理性を喪失する。
WIZ   :    ああ、なんと頼もしいお方♪
【黒縄華妃に籠絡された武侠や権力者】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はジュリア・ホワイトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●傾国の美女、稀代の悪女
 芙蓉の城内を、奸臣どもをどうにかしながら上へ上へと駆け上がっていく猟兵たち。
 元より城内を満たしていた退廃の匂いがひときわ強まり、次第にそれは甘ったるい香のカタチを取って猟兵たちの鼻腔をくすぐった。
 それに加えて――何か尋常ならざる『圧』を感じる。

『ふふ、ふ――』
 女の繊手が、すっかり骨抜きにされた身なりの良い男性の頬を撫ぜる。
「媛、媛よ……我は決して、お主を……」
 元々は壮健な顔立ちをしていたであろう男は、もはやかつての賢王たる威厳を失い、ただひとりの女だけを求める。
 手に入れた寵姫が、何もかもを食い潰してしまう悪女とも知らず。
 いや、気付けどもどうしようもなかったやも知れず。
 何故なら相手は、オブリビオンなのだから。

『王よ、ご心配なさらないで下さいまし』
 男の腕の中からするりと抜けだし、女――『黒蝿華妃』が艶然と笑んだ。
『私が、すべて収めて参りましょう』
 絹の衣を脱ぎ捨てれば、寵姫の姿は赤と黒の艶めかしい衣装に包まれる。
 その身がふわりと浮き上がり、手には見るも禍々しい太い縄。
 先が輪になっているのは、気に入らぬ相手を縛り首にするためのものだ。

(『妾は決して、このような所で斃れはせぬ』)

 己のかつての生き様は、まさに絞首刑に処され幕を下ろしたが。
 こうして蘇ったからには、いよいよその邪悪さを増すばかりだ。

『手駒は幾らでも呼べる、いざとなれば妾自らが出る』
 堕落せし王と、堕落せしめた妃とがのさばる玉座の間に踏み込んできた猟兵たち。
 戦場とするにはいささか憚られるも、広さとしては十分。
 ひいっと玉座の後ろに芙蓉の王が身を隠したのは僥倖か、少なくとも戦闘に巻き込む心配はないだろう。

『歓迎しようぞ、猟兵ども――妾の前に屈せよ、縊り殺してくれる!』

 絶世の美女と呼ぶに相応しい美貌から、世にも恐ろしい台詞が飛び出した。
荒谷・ひかる
さて、王様は後で正気に戻すとして。
呼び出される協力者があくまで人間であるなら、手はあります。

【風の精霊さん】発動
総勢510体の不可視の風の精霊さん達を召喚
敵側の協力者が現れる端から各一体ずつ彼らの呼吸器を通じ肺へと侵入
酸素を肺から追い出し、窒息による気絶を狙います
気絶したら速やかに離脱してもらい、殺さないように注意

黒縄華妃へも同じように口や鼻を通じて内臓へと侵入
こちらはダメージを与えるべく、内部で鎌鼬を発生させての自爆攻撃を敢行
ここまでわたしは何も行動せず、風の精霊さん達は不可視なので何が起きるのか推測し防御するのは難しいはず

国を傾かせ、多くの人々を悲しませた報い……この場で受けて頂きます。



●『わからせる』
 香の匂いが疎ましいほどに漂う、玉座の間に猟兵たちが続々と集う。
 その先陣を切ったのは、奸臣どもを殺さず退去させるのにも一役買った荒谷・ひかるであった。
 脱ぎ散らかさせた女物の衣装、食い散らかされた高価な果物の数々……眼前に広がる光景に、ひかるはほんの僅かに険しい表情を見せる。
(「さて、王様は後で正気に戻すとして」)
 玉座の裏に隠れた男も元は善政を敷く立派な王であったろう、オブリビオンの魔の手より解放されればきっと目を覚ますに違いない。
 故に、今対峙すべきは――禍々しい気配を隠そうともせぬ、黒縄華妃!

『小娘、此処はお前のような下賤の者が立ち入って良い場所では無い』
「……っ」

 一言、口を開いただけでこの『圧』。
 ひかるは思わず息を呑み、その場に立ち尽くしたまま固まってしまう。
 黒蝿華妃は不思議な力で宙に浮いたまま、どす黒い縄を一本ずるりと地面から伸ばし、冕冠を被った恰幅の良い立派な身なりの男の姿を『引きずり出した』。
『あぁ、何時見ても頼もしい貴方様! 今こそ貴方様のお力を示して下さいませ♪』
『……』
 もはや己の優位を疑いもせぬオブリビオンの悪妃が、かつて食い潰してきた国のうち――何処の何という国かも覚えていないだろう、そんな亡国の王をけしかけようとする。
 ひかるはと言えば、その場からぴくりとも動かない――動けないのか?
 胸の前でぎゅっと両手を握りしめ、後ずさることさえ叶わないその姿。

 それはどう見ても、気圧されて完全に立ち竦んでしまったかのように見えたろう。
 故に、ひかるが密かに『何をしていた』のかにも、気付かなかったろう。
(「精霊さん、風の精霊さん――」)
 ひかるは何もせず、ただ呼び掛け、それに応じる風の精霊さんたちは皆不可避。
 密やかに、総勢五百十体の小さな刺客たちが、すらりと腰の玉剣を抜き放った堕落せし王を取り囲む。
(「呼び出される協力者があくまで人間であるなら、手はあります」)
『……!』
 ずん、ずんと威厳ある足取りでひかるへと迫り、剣を振り上げたその時だった。

『……っ、……!?』

 かん、かららん。王が剣を取り落とし、床に転がる音がいやに響く。
 その両手は首を、肺のあたりを掻きむしり、苦悶の表情で呻くばかり。
『ど……どうなさいましたか!』
 たかだか小娘の首ひとつ、刎ねるのは容易と踏んでいた黒蝿華妃が驚愕し、しかしすぐにその小娘の方を鋭く睨む。
『お前……っ』
「……」
 ひかるが、初めて黒蝿華妃を一瞥した。
 赤茶の瞳は揺るがず、動じず、ただひとつの意思だけが宿っていた。

 ――国を傾かせ、多くの人々を悲しませた報い。
 ――この場で、受けて頂きます。

『ぐ……がっ……!!』
 いかな黒蝿華妃ほどの強力なオブリビオンでも、不可視の攻撃には対応のしようがない。
 狭い隙間からでも侵入しうる風の精霊さんたちが、召喚されし王に仕掛けたように――いや、ただ呼吸器を通じて肺へと侵入し、酸素を肺から追い出し窒息へと追い込んだだけではなく、オブリビオンへ対しては容赦なくその牙を剥く!

 風の精霊さんたちは口や鼻を通じて臓腑へと侵入し、その身の内より鎌鼬と化して。
『かっ……は!!』
 身体の内側から、ズタズタに引き裂いた!
 盛大に血反吐を吐いて、苦悶する黒蝿華妃。
 その一部始終を見ていたひかるは、遂に一度としてその場を動くことはなく。

(『何をした……!? 何をされた……!? 猟兵とは、何なのだ……!?』)

 己をも上回る謎の力に、黒蝿華妃は初めて『戦慄』の感情を覚えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レパル・リオン
◆アドリブが好き◆

『サンダータイガー』フォームのまま戦いに挑むわ!

ようやくお出ましね、黒縄華妃!
自分の事しかわからないヤツに、王様のイスは似合わない!
いぃっくぞぉォ!!

悪そうな縄だー!当たりたくない!
パンチで弾く!キックで弾く!
くっ、縄速い!でも負けない!

ぐっ、ヤバい!こほっ…!!
(縄が首に巻き付く)

くびが…くるしっ…!
でも、まだよ…このまま全力でジタバタするわ!
捕まる前にアゲた電撃パワーを、激しく抵抗して更に引き上げる!

限界までアゲれば、距離があっても打ち込める!
ポジトロンバンカーっっ!!

縄が取れたら猛ダッシュで接近!
もう一撃ぃぃぃーーー!!!


御桜・八重


もー、男の人って、どうしてこうなんだか!
大きな胸に鼻の下を伸ばす彼氏を思い浮かべ、
プンスカしながら部屋に突入!

公権力って偉そうってこと?
鼻の下伸ばして従ってるんじゃ説得力無し!
…とは言え、この数は厄介だね。
素早さを生かして囲みを突破しようとするけど、
足止めされてる間に縄に捕まり、天井から緊縛逆さづりに!
ジタバタするわたしを勝ち誇って見上げる妃…

今だっ!

身を花弁に変えて縄を抜け、直上から妃に突撃!
「この国を縛るものを、断ーつっ!!」
飛んでくる縄を斬り払いながら一直線に落下。
すれ違う瞬間二刀を振り抜き、縄ごと纏めて妃を斬る!

この国を立て直して紫竹国と仲直りするのはあなたたちの仕事。
がんばってね!



●『あがく』
 黒蝿華妃がようやく己が何をされたのかを理解した時には、既に次の相手が玉座の間に踏み込んできていた。
 黄色の記事に黒い稲妻が走る『サンダータイガー』の衣装も凜々しきレパル・リオンと、桜の巫女たる御桜・八重の二人であった。
(「もー、男の人って、どうしてこうなんだか!」)
 八重がまず視界に捉えたのは、玉座の陰で震える芙蓉国の王の姿。
 うちの彼氏はこんなやわな男じゃないけれど――とは思いつつ、大きな胸に鼻の下を伸ばす姿が何だか妙に重なってしまい、自然とプンスカしながら黒蝿華妃を睨み付ける。
「ようやくお出ましね、黒蝿華妃!」
『勝手に人の城にずかずかと踏み込んできて抜かしおる! 疾く妾の前より失せよ!』
 ズビシと指さしてレパルがオブリビオンの悪妃に宣戦布告をすれば、悪妃はまるで玉座が己のものであるかのごとくに振る舞うではないか。
「自分の事しかわからないヤツに、王様のイスは似合わない!」
 その姿を見過ごせず、レパルはド直球の正論で咆え――床を蹴り、駆け出した。

「いぃっく、ぞぉォーーーーー!!!」

 玉座の間は相応の広さを持ち、黒蝿華妃との間合いを詰めるには相応の速度と時間とを要する。
 その隙を突いて、悪妃はまず配下の下級役人どもをわらわらと召喚し、肉壁とする。
「わ、もう、退いて……!」
『げへへ、そうは行きませんなあ』
『往来ひとつにしても、法を守って頂かねばなりませぬ』
 レパルと同じく駆け出していた八重が慌ててブレーキを掛けて激突を避けるも、下級役人どもは『公権力』を振りかざしてその道行きを妨げようとする。
 だが、正しい法ならばいざ知らず、此奴らが従っている『法』とやらには興味なし。
 八重は一歩だけ足を引いて強行突破の姿勢を取りつつ、力強く言い放った。
「『公権力』って、偉そうってこと?」
 ぐぐっ、と。力を込めた足で地を蹴ると同時、八重は叫んだ。
「鼻の下伸ばして従ってるんじゃ、説得力なーーーしっ!!」
『『『何とーーーーーっ!?』』』
 割と真面目に言い返せなかった下級役人どもが、八重の猛チャージに蹴散らされたのは、至極当然の結果であったろう。

『威勢だけは良いな、獣人の娘! 面白い、妾が手ずから相手をしてやろう!』
 ――ぞ、わ。
「……っ!?」
 その邪悪な気配に、レパルでさえも一瞬息を呑む。
 黒蝿華妃は、間違いなく『世界を滅ぼすオブリビオン』としての本性を顕わにした。
 手にしていた縄ひとつもただの縄ではない、『絞殺縄鞭』たる宝貝級の武器である。
『妾に逆らう屑虫どもを――一人残らず吊してくれよう!』
 ひゅお……っ! 空を切る音も鋭く、黒い縄がレパルに襲い掛かった。
「うわっ!?」
 初撃を間一髪虎の手パンチで弾く。跳ね返された黒縄は、すぐに足元を狙って飛来する。
「くぅっ!!」
 そうはさせじと、ドラゴンの脚が回し蹴りでまたしても縄を弾き返す。
(「くっ、縄、速い……!」)
『ふふ、うふふふ……いいわね、足掻かれるとその分仕留め甲斐があるわ』
 徐々に理性を失いつつある悪妃が、いよいよ酷薄な笑みを浮かべる一方で、レパルはここまでの攻撃を間一髪のところで躱してきた。
 次は、どうか。
 果たして、凌げるか。
(「でも、負けない!!」)
 疾風迅雷、文字通り稲妻となりて縄を躱し切れるのか――!?

『面倒だ、『二人とも』纏めて死ね』
「「……!!」」

 レパルは、その縄の動きを捉えることができなかった。
 八重は、その縄から逃れる術を下級役人どもの相手に追われて持ち得なかった。
 哀れ二人の猟兵は、首を絞められ、あるいは天井から逆さ吊りにされてしまう!
「ぐっ、ヤバい! こほっ……!!」
 言葉以上に割とマジでヤバい状況であった、レパルも八重もこのままでは窒息か、あるいは頭に血がのぼるかで僅かも持たないであろう。
「ちょっ、下ろしなさーい!!」
「くびが……くるしっ……!!」
 猟兵たちが足掻くさまは、黒蝿華妃にとっては甘露。
 嗜虐的に唇を舐めながら、縄を握る手を歓喜に震わせる。
『ふふ、ふふふ……最初の頃の威勢はどうした? もっと妾を楽しませよ』
 ぐいっ! 一度縄を引けば、レパルを縊り殺そうとする黒縄がギリリと音を立てる。
 意識が遠のきそうになるのを留めていられるのは、正義の心と共に戦う仲間、そして大切な人の存在あればこそ。
「でも、まだよ……っ」
 縄に両手を掛けたまま、レパルは全力でジタバタする。
 その身体は全身が電撃に包まれ、それは決して衰えることがない。
『そこな小娘はどうだ、お前の生意気さを讃えて念入りに縛りあげてやったが』
「……」
 緊縛と言っても良いくらいぐるぐる巻きにされて吊り下げられてしまっては、八重がどんなにジタバタ足掻いても逃れることは叶わない――。

(「今だっ!!」)

 ――かに、思われた。
「ひらひら変われ、花吹雪――【桜吹雪化身ノ舞】っ!!」
『何……っ!?』
 八重が声を発した瞬間、その姿が無数の花弁と化し、縄の隙間からはらはらあふれ出し、逃れ出て行くではないか。
「よおぉぉぉぉしっ、アゲげくぞーーーーーっ!!!」
 八重の突然の変化に黒蝿華妃が気を取られた一瞬の隙を突いて、レパルも極限まで抵抗して電撃パワーを引き上げて、引き上げて……!?
『お前……足掻いていたのは……っ!!』
 気付くのが遅い、としか言いようがなかった。レパルは激しく活動してエネルギーを高めることにより、放てる超常を持っていたのだ。

「喰らええぇぇぇぇぇっ!! 【紫電一穿(ポジトロンバンカー)】!!!」

 限界までアゲた電撃パワーは超圧縮され、距離を無視して悪妃へとぶち込まれる。
『ぐっ……ぁ……!!!』
 無数の男たちを惑わせてきた悪妃の肢体に、正義の電撃が鉄槌を下す。
 勢い良く吹っ飛んだ黒蝿華妃は、後方の玉座に激突して、勢いで前方へと跳ね返された。
 ――そこへ、首に絡み付いた縄を振り払ったレパルが迫っていた。
「もう、一撃ぃぃぃーーーーーっっっ!!!」
 どっ、かあああああん!!!! 電撃を纏った一撃が、雷神の一撃のごとく悪妃の頬をしっかりと捕らえた。

 数度、床を跳ねた後転がる黒蝿華妃。
『うう……ば、馬鹿な……』
 口元の血を拭った時、視界に入ったのは――頭上から舞い落ちてくる、桜の花弁。
『……な、に』
 見上げた悪妃の目に映ったのは、二刀をかざして急襲する桜の乙女の姿であった。
「この国を縛るものを、断ーーーつっ!!!」
 ――斬っ! 振り抜かれた二刀は、身を守ろうとかざされた黒縄ごと悪妃の両腕を深々と切り裂いた。

 勢いで、八重は城の窓からそのまま好漢たちが待つ地上へと飛び出していく。
 慌てて受け止めようとする好漢たちを見て微笑みながら、八重は思う。

(「この国を立て直して紫竹国と仲直りするのは、あなたたちの仕事」)
 共に戦ったレパルも無事に離脱することを祈りながら、桜は舞い落ちる。
(「――がんばってね!」)

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月影・このは
◎【葉銭】
そういう美的感覚はウォーマシンのボクにはよくわかりませんと…
とりあえず目からも胸からも熱線が出なさそうなのでマイナスポイントですね

ブラストブーツの炸薬で前へ出て格闘戦!【功夫】、
ホイールの回転にて敵の縄を弾き、この拳にて【受け流し・怪力】

もし縛られそうならホイール・ソーを展開し切り裂くことで拘束を解きます


敵の黒縄の動きを『見切り』、掴んで引き寄せ、拳による『カウンター』の一撃にて『吹き飛ばし』
そしてUCにて拘束…千里さん!


六道銭・千里
◎【葉銭】
確かに国を滅ぼしかけるだけあって美人さんよなぁ…
まぁ、猟兵なんか他にも美男美女だらけで見慣れとるわけやけど…

駄弁りもまぁここまでにして、ほんならやらしてもらおうか
このはの背後から指弾にて冥銭を跳ばして『援護射撃』
縄を弾いたり【武器落とし】してこのはの接近の援護や

このはが拘束したら俺の手番、ばら撒いた硬貨も代償にUCを…
銭貫文棒を銭剣状に、その首を落とす


絞首で反省せんなら次は断頭ってな
まぁ、やりすぎて名の通りの黒縄地獄には行けへんやろう
兎も角、その罪あの世で贖うことやな…



●『だんじて、さばく』
「確かに、国を滅ぼしかけるだけあって、美人さんよなぁ……」
「そういう美的感覚は、ウォーマシンのボクにはよくわかりません、と……」
(『ウォーマシン……?』)
 猟兵たちの猛攻と圧倒とで既に血にまみれ傷ついた黒蝿華妃の前に立ちはだかった次なる刺客こそ、六道銭・千里と月影・このはの二人であった。
 悪妃のツッコミどころがちょっとおかしいのは、疲れているからだろうか。
 さて置き、もはや悪妃はその邪悪を隠そうともせず、縄を手にゆらり宙を舞う。
『お前達、妾の美貌の前に下るならば今のうちぞ? 妾は寛大である――』
 蠱惑的な笑みと声音で、相手が殿方であることを逆手に取ろうとする、が。

「まぁ、猟兵なんか他にも美男美女だらけで見慣れてるわけやけど……」
「とりあえず、目からも胸からも熱線が出なさそうなのでマイナスポイントですね」
『……!!』

 千里の言い分はまだ分からなくもないけれど、このはの評価は相当にアレだった。
 プライドを傷付けられた黒蝿華妃が前言撤回とばかりに殺気をむき出しにすれば、おお怖という風に千里が肩を竦め、冥銭をぴんと一度宙に弾き上げた。
「駄弁りもまぁここまでにして――ほんなら、やらしてもらおうか」
「はい! 対ヴィラン用量産型戦闘ロボ518号――月影・このは、出ます!」
 言葉と同時、このはがブラストブーツの炸裂火薬を発火させて一気に間合いを詰めた。
『ふふ――面白い子』
 しかし悪妃は動じず、このはを黒縄で迎撃しようとする、が。
 ――ぴぃん、と。鋭く弾かれた千里の冥銭がその縄の軌道をこのはから反らせる!
「悪ぅ思わんといてや」
「千里さん、感謝します――とうっ!!」
 負けじと飛来した再びの黒縄を、今度は自前のホイールを回転させながら受け流し、このはがそのまま裏拳を叩き込むように腕を振るう。
『くっ……!』
「せめて胸がミサイルになっていれば、少しは興味を持てたかも知れませんが」
 独自の美的感覚を披露しながら、このはが一切の躊躇なく拳を振り抜いた!
『……!!』
「残念です!」
 執拗に束縛を試みてくる黒縄をバトルホイールから生えた回転鋸で切り裂いて逃れる。
 美貌を誇る顔面を容赦なく強打され、たまらずよろめいた黒蝿華妃の動きを見切るのは容易く、このははなおも暴れる黒縄ををガッと掴み、悪妃ごと引き寄せる。
『おのれ……この、妾を、このような扱いで……!』
「改造の相談なら、いつでも付き合います、よっ!」
 左の腕で引っ張った黒縄の先に居た悪妃を、正義の右ストレートが捉えた。
 思いっきり吹っ飛んでいく華奢な体躯の黒蝿華妃目掛けて、このはは両腕を揃える。

「サイ、クロォォォン……」
 ぎゅいいいいいん! 両腕のホイールが高速回転!
「バ・イ・ン・ドォーーーっ!!!」
 ごうっ! 玉座の間に竜巻が生じ、あっという間に黒蝿華妃を拘束したではないか!

「千里さんっ!!」
「おう、任しとき」
 このはを援護するために弾き飛ばした冥銭、それでも足りぬというのならばと、じゃらりと追加で冥銭をぶちまけながら、千里が最低限の冥銭で構成した銭剣を振り上げる。

「――判決、死刑」
 飄々とした男の顔が、峻厳な表情へと一変する。
「その罪、地獄で贖うことやな」
 立ち上る可視化した霊力が千里の身体全体を包み、やがて銭剣へと収束していく。
 黒蝿華妃は竜巻の力で完全に身動きを封じられ、逃れることも叶わない。
『おの、れえええぇぇぇぇ!!!』
(「絞首で反省せんなら、断頭しかあらへんやろ」)
 陰陽師にして地獄の獄卒たる千里には、よく分かる。
 この女は――やり過ぎた。名の通りの『黒縄地獄』には行けないだろう。
 とにもかくにも、この罪は骸の海に還る前に、相応の地獄で贖うべきだ。

 故に、斬首とする。
 断罪の一撃が頸部へと振り下ろされ――しかしその瞬間、最期の悪あがきか、黒蝿華妃が間一髪首を限界まで曲げて千里の剣を僅かに躱した。
「何や、しぶといやっちゃ……」
 それでも首を掠めていったことには変わりなく、血が滴る銭剣をがつんと床に叩き付けながら千里が苦々しく睨めつける。
 致命こそ逃れながらも深手を負った悪妃は、首を押さえながら忌々しげに吐き捨てた。
『おのれ……おのれ……! 妾の玉体に、よくも此処まで……っ!!』
 其処にはもはや傾国の美女の面影はなく、ただ悪鬼の形相の化物がいるばかり。
 玉座に隠れる王も、いよいよ寵姫の正体に気付き、青ざめるばかり。

 決着の刻は、近い。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

木常野・都月


オブリビオンとはいえ、1人で人の国を壊す力があるのか。
権力って。女の人って。……怖いな。

とはいえ、この人を倒すのが俺の仕事。
結果、多くの人が居心地良い国が出来れば、猟兵として願ったり適ったりだ。
酒場の人達も喜ぶし、美味しかったバンバンジィの恩は返したい。
オブリビオンは、人の国から出て行け。

UC【精霊の矢】で黒縄華妃を狙おう。
風の精霊様、お願いします。
黒縄華妃と物騒な縄、纏めて切り刻んでしまおうか。

現れた新手は[カウンター、範囲攻撃、属性攻撃]で牽制しよう。
狙いはあくまで黒縄華妃だ。

貴女に、ほんの少しでもいいから。
国で一番偉い人の奥さんとして…国に住む人達の幸せを願う心があればよかったのにな。


張・西嘉

傾国の美女なぁ…王はすっかり骨抜きにされてしまったようだが。
まぁ、俺の好みではないな。

王よ、この国を憂う士がいたこと光栄に思うがいい。そうでなければ芙蓉国は滅んでいただろうよ。

まったくわらわらとたまったもんじゃないな。
お前達が掲げる公権力とやらには屈せんよ。
今は雇われの身だからな主以外の命や律は何の意味もない。主が望まない限りは従うこともないだろう。
さぁ、まとめて吹き飛ばしてやろう。
UC【地砕撃】

…すまんが壊した所は後で直しておいてくれ。



●『おわらせる』
「傾国の美女なぁ……」
 玉座の間に踏み込んだ張・西嘉が呟きながら睥睨した先には、血にまみれ満身創痍の黒蝿華妃の姿があった。
 既に猟兵たちから袋叩きにあったか、それでもなおこうして生き汚く黒縄に縋るように立っているのは、流石の強敵というべきか。
「王はすっかり骨抜きにされてしまったようだが」
 悪妃の背後にある玉座、その陰から事態をこっそり窺っている冕冠の男こそが芙蓉の王であろう。
 西嘉はそれを一瞥して、改めて悪妃を見た。

『ふ、ふふ……そうとも、妾の美貌が今までどれだけの男を魅了してきたと思っている』
「だが、まぁ、俺の好みではないな」
『あああ、猟兵という輩はどいつもこいつも見る目がない!!!』

 視線が合うや否や、起死回生の誘惑を試みる黒蝿華妃をばっさり斬って捨てる西嘉。
 先に戦った別の猟兵の言にもあるが、美男美女は猟兵界隈に生きていれば良くも悪くも『見慣れる』。免疫もつくし、それを抜きにしても、人の好みは多種多様だ。
 ムギャーっと黒縄を引いて憤慨する悪妃の向こう側、王と視線を合わせた西嘉がよく通声で告げた。
「王よ、この国を憂う士がいたこと、光栄に思うがいい」
「……あ、あ……」
 王は今、酩酊から醒める途中。
 甘い夢から引きずり出されるのは名残惜しくとも、眼を開けばそこには確かに己の犯した罪と罰とがあり、それでもなお手を差し伸べる者たちの声が城外から聞こえるのだ。
「そうでなければ、芙蓉国は滅んでいただろうよ」
「……ああ……!」
 猟兵たちが勝手に乗り込んでオブリビオンを退治すれば、それで解決したのは確かだ。
 けれどこの『芙蓉国』の今後を見越したら、どうか?
 それを誰よりも深く考えたのは西嘉と、今まさに玉座の間にたどり着いた木常野・都月であった。

 酒場での、侠客たちを説得した時のことを思い出す。
 ――この国は、この事件ののち、自らの力で立ち直り、立て直されなければならない。

 都月と、黒蝿華妃の視線がぶつかった。
(「オブリビオンとはいえ、一人で人の国を壊す力があるのか」)
 それは、単純な戦闘力の強さだけでは測れない、別の『力』。
 積年の敵愾心でぶつかり合ってきた隣国・紫竹がいくら矛を交えようとも陥落させられなかった芙蓉を、あっという間に堕落せしめた『権力』、そして『欲望』。
(「権力って、女の人って……怖いな」)
 もはや色仕掛けで猟兵たちを籠絡することは不可能と悟った黒蝿華妃が、血にまみれた様さえ妖艶に、ぎりと縄を握りしめて都月を睨めつけた。
 だが、都月も負けてはいない。精霊宿りし杖を握り、強く睨み返した。
(「とはいえ、この人を倒すのが俺の仕事」)
 単純に『任務だから』という枠を超え、多くの人にとって居心地の良い国が出来るなら、猟兵としては願ったり叶ったりである。
「酒場の人達も喜ぶし、美味しかったバンバンジィの恩は返したい」
『何……?』
 愛用の青龍偃月刀を油断なく構える西嘉の隣に立ち、都月は風を纏う。

「オブリビオンは、人の国から出て行け」

 ――ごうっ!!!
 都月が強い意志を込めて発した言葉は文字通りの『力』となって、風の精霊様の助力を得る。
 風の矢は不可視にて、まったく見切ることさえ許さず、一斉に放たれた無数の矢が黒蝿ごと悪妃を切り裂いていく!
『あ、ぐっ……あ……!!』
 機関銃に踊らされるかの如く、風の矢に次々と切り裂かれて翻弄される黒蝿華妃。
 だが、最期の悪あがきとばかりに甲高い声で叫んだ。
『お前達……っ! 妾を、妾を助けよ……っ!!』
 千切れた縄の一片一片が、あっという間に人のカタチを取っていく。
 それはあっという間にかつて悪妃が籠絡した者どもの姿となって、行く手を塞ぐ。
「まったく、わらわらとたまったもんじゃないな」
『何と、恐れを知らぬたわけ者が! この方を何方と心得るか!』
 振りかざされる公権力に、並の人であれば無意識に屈してしまうだろう。
 だが、西嘉はどこ吹く風でいよいよ青龍偃月刀を前に構えた。
「お前達が掲げる『公権力』とやらには屈せんよ」
『……は?』
 従うべきは何か。その基準は何か。

「今は『雇われの身』だからな、『主』以外の命や律は何の意味もない」

 氷の化身のような、我が『主』。
 望まれぬ限りは、他のものに従うことなどあり得ない。
 鷹の目は偃月刀の刃に負けず鋭く輝き、愚かなる役人どもを射抜く。
「さぁ」
『ひ……ひぃっ!?』
 偃月刀が一度、大きく横薙ぎに振るわれた。風圧だけで、役人どもが仰け反る。
「まとめて、吹き飛ばしてやろう」

 ――ど、っごおおおぉぉぉぉん!!!

 豪奢な布が敷かれた玉座の間、役人どもが群れる足元。
 そこを躊躇なく、西嘉の得物――青龍偃月刀が強烈に粉砕した!
『『『あああああ!!!』』』
 衝撃で下級役人どもが四散し、視界が拓ける。
 後方で悪妃の護衛にあたっていたかつての武将と思しき男が二人、都月と睨み合った。
「狙いは、貴方たちじゃない」
 西嘉がしてみせたように、風の矢を十数発武将たちの足元に放ちながら、あくまでも都月の狙いは黒蝿華妃から離れない。
「あくまで貴女だ――黒蝿華妃」
『おのれ……っ』
 頼みの護衛も封じ込められ、気に入らぬもののことごとくを縊り殺してきた邪悪な縄も千切れ飛んだ。

「貴女に、ほんの少しでもいいから」
 風になびく都月の髪が、その表情に愁いの陰を落としたのは気のせいか。
「国で一番偉い人の奥さんとして……国に住む人達の幸せを願う心があればよかったのにな」
『あ……っ……はは……!』
 そうであったら、どんなに良かっただろう。
 誰もが幸せになれたかも知れないのに、人の世はままならない。
 数百を超える恐るべき数の矢にいっせいに貫かれ、文字通りぼろぼろと崩れ落ちていく黒蝿華妃は――最期まで、その美貌に嘲笑を浮かべていた。
 いつか、縁が巡りこの悪妃が完全に滅ぼされるまで、その野望は潰えることがない。
 ならば、その時まで何度でも、猟兵たちはその力を振るうまでのこと。

「お、お……お主ら……」
 事態をほぼほぼ把握した芙蓉の王が、青ざめた顔で玉座から這い出てきた。
「ああ……」
 それを見た西嘉が、拱手の後に至極真面目な顔で一言だけ告げた。

「……すまんが、壊した所は後で直しておいてくれ」

 城も、国も。
 すべて、ここからもう一度。
 傾けど、直される。国を作る、人が居る限り。

 ――さあ、酒場で祝勝会と行こうではないか!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2021年04月28日


挿絵イラスト