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凉爽大俠録

#封神武侠界

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#封神武侠界


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●封神武侠界
 人界北方、医巫閭山(いぶりょざん)。
 緑溢るるこの山には、仙界に通ずる洞穴が存在していた。
 その名を、「涼爽洞(りょうそうどう)」と云う。
 かつてこの山は、緑どころか草木も生えぬ不毛の地であったとされる。
 あまりの荒廃ぶりに、仙界の仙人たちも匙を投げたほどだった。
 いっぽう人界の人々は、諦めることなく永い時間をかけて種を蒔き、地を耕した。
 禿山が緑に覆われるさまを見た仙人たちは、たいそう驚いたという。
 彼らは人々に敬意を表し、惜しみなく力を貸すことを約束した。
 それからというもの、洞穴を抜ける風は四季を問わず涼やかなものとなった。
 ゆえに、涼爽洞という名がついたのである。

 ……しかし、いま。
 涼爽洞には魔が棲まい、仙界と人界の交流を途絶えさせてしまった。
「カカカカカッ! 特級料理人、何するものぞ。我が暗黒料理完成の時は近しッ!」
 洞穴より吹き抜けるは涼爽なる風に非ず、悪鬼魔道の笑声なり。
 やがてその魔手は、桃源郷へと至るであろう……!

●グリモアベース:予知者、クイン・クェンビー
「ねえねえ、みんなもう新しく見つかった世界には行ってみた!?
 クインはまだなんだよねー、面白そうな世界だし行ってみたいなー!」
 少女めいた容姿の少年は、目を輝かせて言った。
 封神武侠界――それは近頃新たに発見された、新たな異世界だ。
 大海に囲まれし中国大陸に広がった『人界』と、
 桃源郷広がりし仙人たちの住処、『仙界』の交流により、
 奇妙奇天烈なる『仙術武侠文明』を発達させた、古代中国なのである。
 クインは、その封神武侠界で暗躍するオブリビオンの動きを予知したのだ。
「そいつは二つの世界を繋ぐ洞穴を塞いで、行き来出来なくさせちゃってるんだ。
 このままだと、オブリビオンのせいで二つの世界が同時にやられちゃうかも!
 だからみんなで「りょーそーどー」に行って、オブリビオンを倒してほしいの!」
 と、クインは語る。……ちょっとだけ、自分も行きたそうな顔で。

 それはさておき。
「んっとね~、みんなにはまず、仙界側に転移して情報収集をしてほしいんだ。
 洞穴の場所はともかく、オブリビオンのことははっきりわかってなくてね?
 きっと桃源郷の仙人さんたちなら、詳しいことを知ってると思うからさ!」
 予知によると、人界側の洞穴はすでに塞がれてしまっているらしい。
 なので仙界側に転移し、敵の内情を探るのが効果的、というわけだ。
「腹が減ってはなんとやら! 美味しいものとか食べながらでもいいと思うよ?
 桃源郷っていうんだから、きっとものすごーくきれいな場所だろうし。
 ……でもあくまで目的はオブリビオンを倒すことだから、それは忘れないよーに!」
 クインは顔をしかめて、猟兵たちに注意を促した。
 決して、転移役の関係で自分が遊べないからって拗ねているわけではない。
「洞穴までは問題なく移動できる……けど、多分相手も配下を連れてるはずだよ。
 どんな奴が出てくるかまではわからないから、油断せずに対処してね!」
 敵との戦いがどれだけ優位に運ぶかは、情報収集の結果次第といったところ。
 クインは猟兵たちの顔を見渡し、うんうんと頷くと、転移術式を起動した。
「美味しいもの食べながらお花見かあ、いーなー……って、違う違うっ!
 みんな、怪我しないで無事に帰ってきてね! えーと、ツァイチェーン!」
 笑顔で手を振る少年の姿が、グリモアの光の中に消えていく……。


唐揚げ
 よだれ鶏です。ついに、ついにやってきました念願の中華世界!!
 というわけで、新世界第一弾よろしくお願いします!

●一章の概要
 皆さんが転移する先は、仙界のとある桃源郷です。
 OPに書いてある山がどうこうは、あくまで人界側の話なのでご注意ください。
(でも、情報収集には役立つと思われます)
 桃源郷には桜が咲き誇り、桃を使ったスイーツなんかも売られているようです。
 お酒もあります。でも未成年の飲酒はめっ! なので、お気をつけください。
 よほど滅茶苦茶な乱痴気騒ぎをしない限り、宴を開いても問題ないでしょう。
 宴を開くと、どこからともなく仙女の皆さんがやってきてお注ぎとかします。
(宴だからって仙女の皆さんに変なことしたらダメですよ! フリでなく)

 桃園を離れると、仙人の修行にぴったりの深山幽谷に出るようです。
 喧騒を嫌う方は、こちらで時間を過ごしたり、伝手を探すというのもアリです。

 冒険フラグメントではありませんが、
 この章で集めた情報によってその後の展開がすこーしだけ変化します。
 判定難易度が変わるわけではないので、お気軽にプレイングしてください。
(ちなみに、クインは出れません。転移のお仕事があるので)

●プレイング受付について
 今回は、締切は特に設けません……が、執筆開始の目安としては、
 だいたい【03/27(土)17:59頃】から手を付けられるかなーと見込んでいます。
 システム的に締め切られるまではご自由にご参加いただけますので、お気軽に!
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第1章 日常 『桃園に遊ぶ』

POW   :    賑やかに宴を楽しむ。

SPD   :    ゆっくり桃園を散策する。

WIZ   :    静かに花を眺める。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 夾岸數百歩、中無雜樹(岸を差し挟むこと数百歩、うちに雑樹なし)
 芳草鮮美、落英繽紛(草は香りよく鮮やかで美しく、桃の花びらがはらはらと乱れ散る)

『桃花源記』に曰く、桃源郷とはそのような場所であるという。
 猟兵たちの転移した仙界は、まさしくそうした夢心地の場所であった。

 ただ花々が咲き誇るだけの場所ならば、いくらでもあろう。
 しかし斯様に桃や桜の花々が乱れ散るとなれば、指折り数える程度。
 漂う香りは胸とろかせるほどに甘やかで、この世ならぬ鮮烈さで染まっている。
 時を忘れてしまいそうな花園が、猟兵たちの前に広がっていた。

 木々に生る蟠桃は瑞々しく、ひとかじりすれば活力漲ること甚だしい。
 あいにく西王母のそれのように不老長命とまではいかずとも、
 ひとつ齧れば十里は軽やかに駆け抜けられそうなほどである。
 桃園には仙女が遊び、どこからか琵琶や筝(こと)の音が聞こえてきた。

 少し足を伸ばして園を離れれば、そこは雲にけぶる深山幽谷である。
 景色は壮麗なれど山々は過酷であり、功なくして征くは不適。
 ならばこそ、俗世を離れた仙人たちの修行の場にはうってつけなのだ。

 相応しき礼あらば、仙界の住人は喜んで猟兵に協力してくれるだろう。
 洞穴が塞がれてしまっている以上、こちらにも影響は出ているはずなのだから。
九段下・鈴音
SPDで行動するのじゃ。

ゆっくり桃園を散策したら、深山幽谷に移動して情報収集をするのじゃ。
オブリビオンがどんな姿なのか、どういった攻撃をしてくるのかといった基本情報以外に、どんな性格をしているのかとか、相手の戦意を下げるような言葉があるのか等も聴くのじゃ。
何があるか分からぬので、妖狐を一匹連れておく。

相手に悪い印象を持たれないように、できるだけ下手に出るのじゃ。
普段とは違う口調で話しかけるのじゃ。
です、ます、でしょうか、のような口調で話しかけるのじゃ。



●仙人たちの話
「つい最近のことだ」
 深山幽谷に遊ぶ仙人が、重い口を開いた。
「山に棲む獣がめっきりと数を減らし、作物が荒らし回られていた。
 たまに野を折りた熊だとかが畑を襲うことはあったが、あれは様子が違った」
「……と、いうと。具体的にはどのように?」
「うむ」
 九段下・鈴音の言葉に、仙人は続ける。
「ふつう、熊や猪であれば見境なく畑の土を掘り返し、作物を食い荒らす。
 しかし襲われた畑からは、作物だけが忽然と姿を消していてな……つまり」
「まるで盗人にでも遭ったようであった、と。そういうことですね」
「然様。とはいえここは仙界だ、そのような不逞の輩はそうそう現れん。
 人界から迷い込んだ盗賊ならばいざしらず、それも滅多に来るものではない」
 曰く、涼爽洞は仙界・人界それぞれで注意深く見張られているのだという。
 ゆえに人界に二心を持ったような輩がいても、洞穴を潜り抜けてこちらに来ることはない。
 仙界は生活のための知恵と技術を提供し、人界がその安寧を守る。
 そういうふうにして、このふたつの世界の交流は成り立ってきたのである。
「……なるほど。ありがとうございました」
 鈴音はうやうやしく拱手をし、仙人に礼を告げてその場を去る。
「作物を襲うこそ泥か、やっていることだけみればなんともみみっちいものじゃが……」
 仙界の住人は、一筋縄ではいかぬものばかりである。
 猟兵ほどではないにせよ、その内功はいずれも常人が敵うものではない。
 作物が欲しいなら、それこそ緑に溢れた人界の山間を狙ったほうがよほどいい。
 そもそも桃源郷では食うに困らぬ。となると……。
「さては道を外れた特級料理人か何かかのう? こりゃ珍妙な拳法が出そうじゃ」
 この封神武侠界では、調理の腕前さえも戦う技術になりうる。
 作物を盗んだのがオブリビオンだとすれば、その可能性は十分にあるだろう。
 なんともへんてこな話だが、それだけに予測がつかないのは厄介である。
「もう少し情報を集めてみるとするかのう。オブリビオンを目撃した者もいるはずじゃ」
 あらためて意気込む鈴音の言葉に、妖狐がコンッ、と高く鳴いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

劉・涼鈴
桃のいい匂いがするー!

おっすおっす! 私は劉家拳伝承者、涼鈴だよ!
拱手して仙人に挨拶だ!

桃を使った杏仁豆腐! 桃の入ったお饅頭!
どれもおいしそう! いっぱい食べるぞ! 腹ごしらえだね!

桃を使ってジャグリング! 宴会芸みたいなもんだね!
【パフォーマンス】で目立って、洞穴の話を聞きやすくしよう!
投げてる桃がちょっとずつ減ってるのは気にしないでね!(もしゃもしゃ)
なんか悪さしてるやつがいるっぽいんだけど、なんか心当たりないー?
戦い方とか弱点とか!
あ、あとついでに、洞穴抜けた先の里でおいしいものとかさ!



●桃のスイーツ、食べ放題!
「わあ、桃のいい匂いがするー!」
 桃源郷に足を踏み入れた劉・涼鈴は、目をキラキラと輝かせた。
 何もかもが珍しい。きょろきょろ周りを見るさまはとてもよく目立つ。
「あら、そこのかわいいお嬢さん。旅人さんかしら?」
「おっすおっす! 私は劉家拳伝承者、涼鈴だよ!」
 明るくざっくばらんな挨拶ながら、涼鈴の拱手は堂に入ったものだった。
 声をかけた仙女たちは、その礼儀の正しさと明るさにくすくすと微笑む。
「元気なお嬢さんね。お菓子はいかが?」
「えっ、食べていいの!?」
「ええ、ここの桃は尽きることなき甘露。分け合うのが流儀ですもの」
 仙女たちの囲む木製の卓の上には、桃を使ったスイーツが並んでいる。
 涼鈴は彼女たちにお礼を言いつつ、さっそくご相伴に預かることにした。
「これ、丹精込めて作った杏仁豆腐よ。よかったら食べて」
「こっちは桃の入ったおまんじゅうなの。美味しいわよ」
「わーい! いただきまーす!!」
 涼鈴は勧められる料理を次から次へとぱくぱく食べていく。
 その気持ちいいまでの食べっぷりと、幸せそうな表情は人を喜ばすものだ。
 仙女たちはまるで餌付けでもするかのように、どんどん料理を持ってきた。
 それも、涼鈴の健康的な胃袋には、いくらでも放り込めてしまう。

 ……はたして、卓上は空っぽになってしまった。
「驚いた。旅人のあなた、ものすごい食べっぷりなのね?」
「でも、見ていてとても気持ちがよかったわ。なんだかお礼を言いたいくらい」
「いいえ、こちらこそご馳走様! そうだ、お礼に芸を披露しよっかな!」
 涼鈴はそう言うと、近くに生っていた桃をもぎ取り、軽やかに放り投げた。
「よっ、ほっ、はっ!」
 さながら雑技団のごとく、桃を使ったジャグリングである。
 単にお手玉みたいにするだけでなく、頭や膝や肩でキャッチしてみたり、
 ジャグリングしながら演舞をしたりと、その身軽さを十二分に生かした見世物である。
「「「まあ、すごい!」」」
「えへへ……お粗末様!」
 ぱちぱちと拍手されると、涼鈴は得意げに鼻の下をこすった。
「ところでせっかくだから教えてほしいんだけど……」
「何かしら?」
「このあたりに悪さをしてるやつがいるっぽいんだけど、何か心当たりはない?
 私はそいつを懲らしめるためにここに来たんだ。なにせ、伝承者だからね!」
 ふふん、と得意げな涼鈴の言葉に、仙女たちは顔を見合わせた。
「そうねえ……最近、武装したキョンシーの群れが出るって話を聞いたわ」
「ええ。ものすごい武功を持っているんだとか」
「……それは不安だね。しかも、この仙界の人たちでも歯がたたないのか……」
 おそらく、オブリビオンが従えている兵力なのだろう。
「ありがとう、でも安心して! ぜーんぶ、私たちがやっつけてくるから!」
「ふふ、頼もしいわね。でもほっぺにおべんと、ついてるわよ?」
「え! ……あー、えへへ。こりゃ失敬」
 桃をかじりつつ、恥ずかしそうに頭をかく涼鈴だった。

成功 🔵​🔵​🔴​

羅・虎云
胡姉(f32667)と情報収集

物を売っている者や花見をしている者まで可能な限り
敵が料理に関わっているのであれば、妖しい料理人の話であったり
最近見かけなくなった者の有無等を聞く

話すのも、慣れないことをするのも、疲れる
休み休み、取り掛かるとしよう
胡姉はどうだろうか

半身の虎の体を伏せて少し休んでいれば
漂う甘い香り、おそらくは桃の饅頭を蒸したものだろう
大人しく匂いだけを楽しんでいれば、僅かな誘惑の言葉
一つだけ……それぞれ、一つだけなら

酒は、いい
猟兵の務め、終えずして楽しむべからず
桃の飲み物なら、問題はない

受け取ったマントウと山査子の飴を交互に静かに食べる
茶……白桃の香りがする茶も売っていた
あとで買おう


胡・蘭芳
羅の若様(f32672)と
若様は真面目ですわね……

あちらこちらで拱手をしてから情報収集をする様子を眺めて
そう零すと、あちらこちらをふーらふら

美味しそうなマントウですこと
ではそれを頂きましょう
そうですわね、2つ頂けますかしら?
あぁ……その山査子の飴も2つくださいな?

どうだろうか?そう問われても
今は私、口の中にマントウがおりますのよ……?
そんなことを想いながらもぐもぐ

ふふ、若様は甘いものがお好きなのですね
揺れる尻尾を眺めてそう思いつつも告げず

若様、宜しければ山査子の飴、いかがですか?
マントウもありましてよ?
それとも……お酒の方がよろしいかしら?

若様の応えに
お茶でしたらご一緒出来ますわね?
そう笑んで



●若君と羽衣人
「……若様は真面目ですわね……」
 転移してからさっそく情報収集に励む羅・虎云の姿を眺め、胡・蘭芳は呟いた。
 彼女も仕事をしていないわけではないが、勤勉さでは明らかに彼のほうが上だ。
 きっと、一族の名を背負うという自負が、そうさせているのだろう。
「少しはねぎらってさしあげましょうか」
 蘭芳はそう思いたち、少し早めに仕事を切り上げることにした。
 そして虎云が聞き込みをしている間に、適当な出店を当たり、注文する。
「美味しそうな饅頭(マントウ)ですわね。ふたつほどいただけますかしら?」
「へい、毎度! ふたつとも一緒の包みに入れますかい?」
「いいえ、別々で……ああ、あとはその山査子の飴もふたつ、くださいな?」
「合点!」
 店主は気前のいい返事をして、いそいそと品物を包んでくれた。
「感謝いたしますわ」
 蘭芳は慎ましやかな笑みを浮かべて礼を言い、その場をあとにする。
 見た目は少女というよりも女と呼ぶのが自然なくらいの成熟した様子だが、
 その笑顔やおっとりとした振る舞いは、少女と呼ぶのが適切に思える。
 まさしく絵巻物や寓話に出てくるような、この世ならぬ天女のような雰囲気。
 つまりは夢か現か、相対するものを惑わせるような芳しさがあった。
 心を虜にしてしまう寵姫とはまた別の、いわば愛嬌とでもいうべきものだ。
「きれいなお嬢さんだったなあ。ありゃきっと連れがいるんだろう。羨ましいことで」
 店主はそんな蘭芳の背中を見送りつつ、そう呟くのだった。

 ……そしてちょうど、そこに虎云が戻ってきた。
「話すのも、慣れないことをするのも、疲れるな……」
「お疲れ様ですわ、若様。こちらをどうぞ」
 そう言って蘭芳が包みを差し出すと、虎云は少々困ったような顔をした。
 腹が減っていない……と、いうわけではない。むしろ空腹だ。
 そしてどちらも虎云の好物だ。だから、困っているのである。
 誇りある羅家の一員として、清貧は当然のこと。五欲は仙道の大敵である。
 しかも今はなすべき使命がある。心ゆくまま休むのは気が引けた。
 なので虎云は、おとなしく匂いだけを楽しむつもりだったのだが……。
「……若様、食べませんの? 甘いものはお好きでしょう?」
「まあ、そうなのだが……いや、受け取ろう。ありがとう、胡姉」
 蘭芳の笑顔に悪意はない。そもそも彼女はこんなつまらない意地悪はしない。
 虎云の生真面目な懊悩を知ってか知らずか、蘭芳はほんのりと微笑んだ。
「とんでもありませんわ。若様、頑張っていらしたものですから」
「……そう言ってもらえると、私としても嬉しいよ。ところでこれは……」
「マントウと、飴ですわ。これ、なかなか大きくて食べ応えありそうでしょう?」
「あ、ああ……」
 逆に困る。いや、しかしでも、それぞれひとつだけなら、まあ……。
(胡姉にも悪いからな……ひとつだけなら、問題あるまい)
 虎云は心の中でそうひとりごちつつ、饅頭から口をつける。
 後ろめたさのせいか、いつも以上に味覚が冴えていた。つまり、美味い。
「……罪な味だな……」
「?」
 遠い目をする虎云の隣で、もぐもぐと大きな饅頭を頬張る蘭芳。
 虎云は片手で饅頭を食べているが、蘭芳のほうは両手でやっとである。
 ちまちまと頑張って食べている様子は、少女というよりも小動物めいていた。
「ところで、胡姉……そちらの情報収集の様子は、どうだっただろうか」
「……」
「私のほうは、いくつか気になる噂を耳にしたのだが……胡姉?」
「…………」
 蘭芳は困ったような表情で、もきゅもきゅと口を動かしている。
「ああ、すまん……食べている最中だったな……」
 気疲れしているせいか、困惑させられたせいか、どうも調子が合わない。
 バツの悪い表情で頭をかきつつ、虎云は静かに桃園を見渡した。
 修行の果てに仙人となった虎云にとって、俗世の付き合いはしがらみ……というよりも有り体に言って、慣れていない。気疲れしてしまうのである。
 早い話が人見知りなのだ。なので、見た目以上に彼は疲れていた。
「あるいは、お酒のほうがよろしかったかしら……」
 そんな彼を見て、蘭芳はぽつりと呟いた。
「……いや、酒はいい」
 すると虎云が応えた。
「猟兵の務め、終えずして楽しむべからず。強いて言うなら桃の飲み物なら……」
「なら、お茶でしたらご一緒出来ますわね? 若様」
「……ああ。さきほど、白桃の香りがする茶が売っていた。それを買おう」
「ええ、ええ。一緒に楽しむといたしましょう」
 蘭芳は嬉しそうに、穏やかな声音で頷いた。
 はらはらと舞い散る花びらのなか、しばしふたりは食事を楽しんだ……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジン・エラー
【甘くない】

似ィ〜〜〜〜てるかァ〜〜〜〜〜??
オレァ〜〜どォ〜〜〜も気持ち悪ィ〜〜〜〜〜ンだが

アァ〜〜〜〜??別に甘ェモンなンかどこでも一緒じゃねェか
ンなことよりオレァ──ンゲ

ア〜〜〜〜〜ハイハイハイハイ………ちィ〜〜とはしゃぎすぎじゃねェ〜〜〜〜〜かァ〜〜?
ウヒャヒ、強欲なこって
そォ〜〜ンなンじゃ、本来の目的なンてすっぽ抜けてンじゃねェ〜〜〜〜の?
アッビャヒャ!そォ〜〜かい!
ン〜じゃ、任せたぜ スイーツ大好き探偵サンよ

──いィ〜〜や?
良かったなァ〜〜〜〜〜ァエリシャ
ア?あァ〜〜〜〜〜………
鬼に負けてる仙女だらけなのは面白ェ〜〜〜なァ〜〜〜〜と思ってよ


千桜・エリシャ
【甘くない】

ここが桃源郷ですのね!
うちの宿に少し似ているかしら?

桃源郷のスイーツ気になりますわ!
お酒は今日はなしですわよ
…私は飲めなくてつまらないですし
もう!いいから参りましょう!

目につくお店へ端からお邪魔しますわ!
あれもこれも全部欲しいですもの!
ほら!ジンさん、次はあっちよ!
も、もちろんお仕事も忘れてなくってよ?
ここを狙っている方や変わったことがないか聴こうかしら

ふふ、こんなにサービスしてもらっちゃいましたわ
桃源郷ってとても気前がいいのね
どうかしましたの?
むぅ…ジンさんこそ
先程から仙女の方をちらちらと…
私だって負けていないと思うのですけれども
…!
減らず口ですこと
ジンさんの口にスイーツをえいっ



●幽世より仙界へ
「ここが桃源郷ですのね……少し、うちの宿に似ているかしら?」
 はらはらと花びら舞い散る仙界に、千桜・エリシャの姿はよく似合う。
 芳しい香りと美しい風景は、たしかにエリシャの経営する宿によく似ていた。
 けれどそれは、サムライエンパイアやサクラミラージュのような、
 東洋に根ざした文明世界ともまた異なるもの……似て非なる美があった。
 そんな玄妙な風景のなか微笑むさまは、まさしく妖艶である。
「似ィ~~~~~~~てるかァ~~~~~~~???」
 ……が、その雰囲気を、この男がぶち壊しにする。
 ジン・エラーは両目をこれみよがしに顰め、大げさに首を傾げてみせた。
「オレァ~~~~どォ~~~も気持ち悪ィ~~~~ンだがなァ~~~」
「もう! わかってませんわねジンさんは、雰囲気が台無しですわっ」
「ケッ! くだらねェ~~~」
 あいも変わらずの騒がしさに、ゆったりとした時間を楽しむ仙人たちも驚きだ。
「ほォ~~~ら見ろよ、雰囲気とかそンなモン関係ねェ~~~ンだっつゥの。
 オレみてェな優れた人間は、どォ~~~しても目立っちまうモンだからなァ!」
「ただ単に騒がしいから白眼視されてるだけですのよ……ふてぶてしいですわね」
「ギャハホハイヒヒッ1 お前がそンな台詞言うのかよエリシャァ~~~!!」
「あなたより私のほうが目立ちたがりみたいなこと言うのやめていただけます!?」
「ギヒャハハハ! イヒヒッヒホハハ!」
 何がおかしいのか笑い転げるジン。エリシャは大きくため息をついた。
 どんな世界にあっても、ふたりのノリは相変わらずらしい。

 しかしどうやら、新しい世界にテンションの上がっているらしいエリシャ。
「気を取り直して、まずはスイーツを攻めてみたいところですわね」
 などと言い出すと、微妙~な反応のジンを引きずって桃源郷を歩き出す。
「桃源郷ならではのお味、気になりますわ」
「アァ~~~? 別に甘ェモンなンかどこでも一緒じゃねェかァ~~~?
 ンなモンよりオレは……ンゲッ! ちょ、待てエリシャァ首絞まってンよォ!」
「襟首掴んでも黙らないってどこから声出してますのあなた……行きますわよ」
 この勢いだと、ジンは首引っこ抜いてもゲラゲラ笑いそうである。
 まあそんな物騒な話はさておいて、ふたりは桃と桜の花が舞い散る郷を歩く。
「……それと先に言っておきますけれど、今日はお酒はナシですわよ」
「アァ? なンだァエリシャア~~~、自分だけ呑めないのが悔しいってかァ?」
「く、くやしいとかじゃありませんわ! つまらないだけですの!」
「ンなの大体同じ……ってェおい首を絞めンな首をォ~~~!!」
「い・い・か・ら! 行きますわよ!」
 まるで注射を嫌がるペットを、病院まで引っ張る飼い主のような有様である。
 デートというよりはエリシャがジンを引きずり回す形で、郷を巡るふたり。
 仙界には、ふたりのようにエネルギッシュな若者はそうそういないようで、
 店では苦笑いをされたり、あるいは囃し立てられたりもする。
 共通しているのは、だいたいの住人がエリシャに気前よく振る舞ったということだ。
 世界を越えても、変わらないもの……たとえばそれは、美しさということだろう。
 桃源郷の美しさが時間を忘れさせるように、寵姫はヒトを虜にしてしまう。

「…………」
「……ンさん、ジンさん!? 聞いてますの!?」
「あ? あァ~~~、聞いてねェ」
「そこはせめてウソでも「聞いてる」というところでしょう!?」
 しこたまスイーツを買い集めたふたり(というかエリシャ)は、
 戦利品を楽しむために適当な開けた場所に腰掛けて店を広げていた。
 するともてなしのために仙女たちがどこからともなく現れて、
 茶を注いだり卓を用意したり、舞を踊るものや楽器を爪弾く者まで出てくる。
 そしてその仙女たちに、ジンはなにやらご執心の様子なのである。
「もう……さっきから仙女の方をちらちらと。目的を忘れてませんわよね?」
「……それァオレの台詞だよなァ? お前ここに来た理由覚えてるかァ~~~?」
「それはもちろんスイ」
「スイーツを楽しみに来たとか言わねェよなァ~~~? 聞き込みだぜェ~~~?」
「…………」
「…………」
「……も、もももちろんお仕事も忘れてなくってよ!?」
「目が泳いでるぞエリシャァ~~~」
 呆れた顔になりつつ、ジンはやれやれと肩をすくめた。
「ったく、ちィ~~~とはしゃぎすぎだぜェ~~~? こンなに買い漁ってよォ」
「これは……半分ぐらいはサービスしてもらったものですのよ?」
「アッビャヒャ! 喜んで受け取ってたのはお前だろうがよォ~~~」
「それとこれとは話が別ですものっ」
「そォかいそォかい、強欲なスイーツ大好き探偵も居たモンだねェ~~~」
「誰が探偵ですのっ! だいたいジンさんはその聞き込みすらしてないでしょう!?」
「なンで聖者がンな地道なことしなきゃいけねェんだァ?」
「あ、ああ言えばこう言う……!!」
 完全に目的を忘れているように思えるが、なにげに情報は手に入っていた。
 というよりも、向こうが世間話のつもりで投げかけてきた話題がほとんどだが。
 曰く、このあたりには妖獣の類が滅多に出ず、平和が続いているらしい。
 それはおそらく、より強大なオブリビオンが密かにこの地を総べているということ。
 洞穴を塞ぎ、目障りな獣を狩りながら、潜伏し続けているのだろう。
 なまじ表に出てくるよりも、厄介なタイプと言えた。
「……それにしたって」
 そんな話をしつつ、エリシャはまた仙女を見ているジンに頬を膨らませた。
「私だって、負けていないでしょうに……」
「あン?」
 ふてくされた様子のエリシャに気付いたジンは、そっぽを向いて何気なく言う。
「逆だよ、逆ァく」
「え?」
「鬼に負けてる仙女だらけで面白ェ~~~って、そォいうこったよ」
「……!」
 エリシャは大きく目を見開き……そして、ジンの口に饅頭を突っ込んだ。
「ブヒャヒャ! 面白ェツラもがっ」
「まったく、減らず口ですこと!」
 エリシャはかすかに頬を染めつつそっぽを向いた。
「……! ……!!」
 なお、気道を塞がれたジンは、顔が真っ青であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

堆沙坑・娘娘
・WIZ
拱手にて礼。名乗る必要があれば名乗りますが私が名乗ると仙人は微妙な顔をする人が多いので聞かれなければ名乗りません。
私が涼爽洞に住み着いた悪漢ないし幼獣を退治に来た旨を伝え、貰えるのであれば情報を貰います。仮に貰えなくても、どうせ私は敵を問答無用でパイルバンカーで貫くだけですので、私にはあまり影響はないと思いますが。

深山幽谷での修行にも惹かれますが私の修行は地形と環境によろしくないので今回は控えます。それに花が咲き、仙女が遊び、琵琶と筝の音が響くこの場所で…酒を飲まないなんて嘘でしょう。桃を齧り、花を見ながら盃を傾け、漂う様々な香りを楽しみ、耳を澄ませ音に酔う。

力は抜く時は抜くものです。



●パイルバンカー娘、桃園を楽しむ
 桃源郷の片隅にある饅頭屋にて。
「おい、さっきのあの娘っ子、ずいぶん礼儀正しかったな」
 店先にやってきた馴染みの客が、店主に声をかけた。
「見てたのかい? 旦那。たしかにありゃあ、よく礼をわきまえた子だったよ」
 店主は朗らかに笑いながら、常連客にそう答える。
「ただ饅頭を食べに来ただけにゃあ見えなかったが……」
「ああ、なんでもあの涼爽洞の化物退治に来たらしい。見上げたもんだよ」
「妙なのが住み着いたってぇ、あれか。へええ、あんな娘っ子が武侠とはねえ」
「いやまったく、見た目じゃわからないもんだよ」
「ところであの娘さん、名前は?」
「さあ……それが礼儀は正しいんだが、名はさっぱり名乗ってくれんでね」
「そうかい。ま、それも侠気ってやつなのかね」
 ……などと話すふたりだが、その娘っ子の名を聞いていたら話は違ったろう。
 なにせ彼女の名……それも自分でつけたものだが……は、堆沙坑・娘娘。
 奇妙奇天烈な、パイルバンカー神仙拳」の伝承者、というか事実上の祖である。
 砂山を作るような気軽さで悪党の死体の山を築く、恐るべき強者。
 ……なのだが、まあ拳法の名前からして分かる通り、風評はだいぶアレだ。
 もっともその影響をわきまえて名乗らないあたり、礼を知るという点においては間違っていないのだが……。

 さて、その娘娘はというと。
「……甘露ですね」
 酒を呑んでいた。
 見た目からはわからないが、彼女は生身の人間ではない。
 そもそも時を忘れし仙界において、見た目の年齢など多寡にもなりはすまいが、
 彼女の実年齢(稼働時間というべきか)はざっと60年を越えている。
 幼い風貌の少女が、桃園を見上げながら盃を傾けるさまはなんとも奇妙だ。
 しかし不思議と、合っているようにも思える。年季のなせるわざというべきか。
「こんな美しい景色を楽しまないのは嘘というものです。それに、芳しい……」
 血塗られた……もとい、荒々しい武勇伝の数々を築いた強者に似つかわしくない言葉。
 目で色を、鼻で香りを、舌で酒を楽しみながら、穏やかな時間にくつろぐ。
 遠くから聞こえる琵琶の音は、その耳朶をも酔いしれさせてくれた。
「力を抜ける時は、きちんと抜いてこそ。これから戦いがあるのですから」
 それもまた、武に生きる者なりのわきまえ方といったところか。
 逆に言うと、これからどれだけの血風が吹き荒れるか恐ろしいところである。、

大成功 🔵​🔵​🔵​

穂結・神楽耶
【炊事課】

ええ、桃源郷って名前からしてすごいとは思ってましたが、
まさかここまでとは……
とても居心地のいい空気です。

ええ、もちろん。
お花見ですよね!!
あ、桃ジュースってやっぱり蟠桃使ってるんですね?
口当たりよくっていくらでも飲めそう……。

あっ仙女様方こんなに来てくださって!
やだもうおもてなししないといけませんね…。
固めの蟠桃を添えた春サラダ!
生ハムで包んだ桃のカプレーゼ!
あとはお花見の定番「おにぎり」「だし巻き卵」「唐揚げ」三種の神器を食らえ!
ニルさんも匡さんも、お酒だけだとアルコール回りますから摘まんでくださいね。
デザートは切った桃を薔薇みたく並べたゼリーです。
爽やかな果実の甘みを召し上がれ!


ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
【炊事課】
トウゲンキョーって初めて来たぜ!
甘いにおいがするなー
何か凄え桃があるんだろ?いっぱい食ってこうよ

こんなキレーなとこでやることは……一つに決まってる、よな(渾身のキメ顔)
酒飲もうぜ酒!!匡もだぞ!!穂結はジュースな!!
セツドとレーギを持って!ジャパニーズ・オハナミ!!

レディたちにはこの世界の挨拶を
ええと……手をこう……包む……んだっけ?だよな?
あっお酌ってそんな そんなお気を遣わずに そんなそんな
穂結、そのスイーツ旨い?甘すぎなけりゃ一口くれ~

ええと花見だけじゃなくて
なァレディたち
最近人間界と行き来出来なくなったと聞くが
他に変わったことはないか?
例えば――妙な動きをしている奴、とか


鳴宮・匡
【炊事課】


においの強いところ苦手なんだよ
鼻が利きづらくなるから……

そのキメ顔嫌な予感しかしないけど大丈夫??? じゃなかったわ
えっ穂結も乗るのかよ……いやいいけど……わかったよ……
節度と礼儀を持つならまず俺に勧めるその酒を下げるところから始めてくれるか?
仕事があるのに酒なんて飲んでられるか 狙いがミリでも狂ったら支障が出るんだぞ

おもてなしする方ってこっちなのか???
うわこいつ(穂結)めちゃくちゃ本格的に料理にのめり込んでる……
いや俺酒飲んでないし、ニルもなんとか言って
……あいつも普通に持て成されてるし……

いやもういいか、一人で情報収集だけしておこう
チビ達(無貌の輩)にも手伝ってもらうか……



●炊事課、大いに楽しむ
 はたして、そのテンションの高さは桃源郷の雰囲気がゆえか。
「あれが蟠桃……中国神話に伝わる神仙の果実ですね!」
「なんか凄え桃だっていうのは知ってる! いっぱい食ってこうよ!」
 それとも、初めて目の辺りにした食材ゆえか! 多分後者である。
「……テンション高すぎだろふたりとも」
 そんな穂結・神楽耶とニルズヘッグ・ニヴルヘイムのはしゃぎぶりに対して、
 鳴宮・匡はいつになく冷静沈着……というか、ややダウナーだった。
「おいおい匡、トウゲンキョーだぞトウゲンキョー。甘いにおいもするしいい場所じゃないか」
「その匂いが困るんだよ……鼻が効きづらくなるからさ」
「まあまあそう言わず。さっそく蟠桃もいただいてまいりましたし」
「さっそく食材ゲットして料理するつもり満々じゃないか……まあいいけどさ」
 匡は思った。どうもこの手の場所に来ると引率役になりがちだな、と。
 羽目を外すという概念が彼にはないだけに、消去法でそうなるのも必然である。
「別に料理だけじゃないぜ、匡。こんなキレーな場所でやることは、ひとつだろ?」
「ニル、その無駄なキメ顔、すごく嫌な予感がするかやめてくれ」
「こういうときはこう、キリッとカメラ目線になるものだって聞いたぞ!」
「どこだよカメラ」
 キリッ。イマジナリーカメラを意識して、渾身のキメ顔をするニルズへッグ。
「ええ、もちろんわかっております。お花見ですよね!!」
「そう! おハナミ! そしてつまり……酒だ酒!! 酒飲もうぜ!!!」
 案の定始まったよ、とばかりに嘆息する匡。
「あ、穂結はジュースな」
「桃ジュースというのが気になりますね、蟠桃を搾ってるんでしょうか」
「……穂結まで乗ると、いよいよ止められないな……」
 完全に巻き込まれ&まとめ役を運命づけられた匡は、遠い目でひとりごちた。

 そういう考えに及ぶのは、何も人界からの旅人に限った話ではない。
 仙人やその他の仙界住人たちも、思い思いに桃園の景色を楽しんでいた。
 つまり、無礼講というやつだ。なので、ニルズへッグはさらに調子に乗る。
「匡も飲もうぜ、酒! ブレイコってやつだぞ!」
「俺に勧めるなよ、仕事があるのにアルコールなんて摂ってられないだろ」
「まあそれはそうだけどさー、セツドとレーギが大事なんだぞ匡!」
「節ぢも礼儀も、他人に酒を勧める時に使う言葉じゃないから」
 ニルズへッグは酒が飲みたいわけでなく、この状況にはしゃいでいるらしい。
 見た目はいかつい偉丈夫だが、その様子はなんとも悪童めいている。
「おい穂結、お前からも何か……」
「え? どうしました匡さん? あ、お料理ならもう用意が済みましたよ」
「早いなおい。っていうか、なんであっちの連中(仙女たち)に振る舞ってるの?」
「せっかく来ていただいたのですからおもてなししないといけないかなと」
「あっちももてなすために出てきたと思うんだけど……」
 仙女の皆さんも、張り切って出てきたらサラダとかカプレーゼとか、
 あとこうめっちゃうまそうなだし巻き卵とか唐揚げとかおにぎりとか、
 いかにも花見~~~って感じのメニューを差し出され、ちょっと戸惑っていた。
「あ、これ美味しいです! すごいんですのね、旅人の方々!」
 まあそれはそれとしてめっちゃ舌鼓は打っていた。だって美味しそうだし。
「固めの蟠桃を添えた春サラダと、生ハムで包んだ桃のカプレーゼです。
 さ、ニルさんも匡さんもどうぞ。お酒だけだとアルコールが回りますからね」
「いや待った、まずはキョーシュ? でちゃんと挨拶しとかないとだよな。
 えーと、手をこう……包んで……あっお酌ってそんな、そんなお気を遣わずに」
「めちゃくちゃもてなされてるなニル……」
 酌をしようとする仙女を控えめに制しつつ、呆れ顔の匡。
 うまい飯にうまい酒、そしていい景色に音色と香り。
 ここまで揃えば、ニルズへッグや神楽耶がはしゃいでしまうのも無理はない。
「デザートは桃のゼリーですよ!」
「へえ~、桃で薔薇を作ったのか、甘そうで美味しそうだ!」
「……俺だけでも情報収集しておくか」
 わいわい騒ぐふたりをよそに、さりげなーく影(チビ)たちを放つ匡。
 ただよう甘い香りは、任務遂行にあたっては少々困りものではある……が。
「なあ匡、あそこのレディが気になる話をしてたぞ。聞いてみないか?」
「匡さん、こちらのデザートはいかがです? 自信作なのですが」
「……ああ、わかったよ」
 ひっきりなしに絡んでくるふたりになんとも言えない表情を見せ、応じる。
 その様子は、呆れたようでありながらも……彼なりに、楽しそうではあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

尸・骸燐
【黒弊】
ここが仙界……美味しいお酒があるところ。
情報収集するには人をいっぱい集める必要があるよね。
つまり飲んで騒いで楽しそうにしていれば、きっと寄ってくる人が居ると思う。
それで他の人が聞いてくれれば完璧。

理論武装は終わったよ。あとは美味しいお酒たくさん飲むだけだよね。
同じ黒弊の人でもそうでなくても飲んでるー? ってお酒を進めるよ。
紹興酒、清酒、どぶろく、お肉、何でも美味しく頂くよ。死んでても美味しいものは美味しい。けど肉まんは駄目だよ
UDCアースだとこういえば良いって最近知ったよ。
うぇーい


黎・嶺依
【黒幇】
久方ぶりの仙界じゃのう…
探せば顔見知りの一人や二人、見つからんこともないじゃろうが
…まあ、わしも数世紀も顔を見せておらん上に、雲華市からそう長くは離れられぬ身
今見せたところで詮無きことよな

黒幇の連中を引き連れ、花見に興じようか
竪琴のひとつでも借りて爪弾いてみせよう
部下が楽しめるように気を回すのも幇主の務めよ

…しかしこやつらと来たら、花より団子、団子より酒…
霞月に至っては何より宝貝ときたものじゃ
団子と酒さえあれば、雲華でも問題なかったかのう、これは
まったく、やれやれじゃ…


黎・霞月
【黒弊】

仙界はなァ、知り合い多いけどォ……
彼奴らみーんなして主人持たねェのって聞いて来るから、めんどいンだよなー……

情報収集はとりあえず聞き耳立てるくらいはしとくかなァ、って感じ
今日はァ、花見て酒飲んでゆっくりする日ィ
ま、気になる宝貝持ってる奴が居たら絶対花よりそっち見るけど
だって行きずりで見る宝貝って一期一会じゃん?この機会に見とかねェとさァ

嶺小姐も気にしねェでゆっくりすれば良いのにねェ、毎日我(オレ)たちにあれやこれやしてンだし
……あ、これ美味ァい
骸燐も飲むー?
あは、我的には美味いもんはァ、他の奴にも配った方が美味ェの

えー?花は好きだよォ、我
酒はそりゃあったら飲むでしょ、美味いもんは好きィ



●黒幇の人外ども
 多くの人にとって、仙界とはまさしく夢の世界、文字通りの桃源郷である。
 人界と交流を持ったこの封神武侠界ですら、それは例外ではない。
 むしろ繋がりがあるからこそ、仙人との隔絶を強く認識させられもするだろう。
 友好的な隣人であり、しかし自分たちとは違う「別の存在」。
 それが、人界の多くの人々にとっての仙人であり、仙界の住人である。

 しかし仙界の住人の誰もが、その世界に住まうことをよしとするわけではない。
 望んで仙界を離れる者も居れば、やむを得ぬ事情で人界に下る者もいる。
 そして得てして、そういう輩は日向を離れ影に身を潜めるもの。
 黒幇(ヘイバン)は、そうした爪弾きものを受け入れるゆりかごでもあった。

「……久方ぶりの仙界じゃのう」
 その幇の女幇主、黎・嶺依が仙界に帰った。
 昔なじみがこの報せを聞いたら、はたしてどう思うやら。
 呪いに似たねがいによって縛られ、そうせざるがゆえに人を束ねた女。
 見た目は生娘めいてあどけなく、しかし重ねた年季は雰囲気に滲み出ている。
 昔懐かしい香りにしばし意識を預け、嶺依は得も言われぬ表情を浮かべた。
「ま、顔見知りがいたとして、いまのわらわが顔を見せたところで詮無きことよ。
 霞月、骸燐。汝ら、今日の目的はわかっておろうな? ただの遊覧ではないぞ」
「あァー……? わかってるよォ、聞き耳くらいはしとくさァ」
 そんな嶺依の言葉に、黎・霞月はやる気なさげな気だるい声で答えた。
 何処で手に入れたのやら、さっそく瓢箪をひとつ提げてぐびぐび呷っている。
「今日はァ、花見て酒呑んでゆっくりする日だろォ」
「だからそうではないと……」
「でも、仙界には美味しいお酒がいっぱいあるって聞いたよ」
 尸・骸燐は骸燐で、完全に目的がすり替わっている。
「情報収集をするには、人をいっぱい集める必要があるよね。
 つまり呑んで騒いで楽しそうにしてれば、きっと寄ってくる人がいるよ。
 そうやって人を集めたほうが、効率的に情報を集められるんじゃないかな?」
「よくもまあその手の屁理屈が立て板に水を流すように出てくるもんじゃのう」
 嶺依は呆れ顔である。だが、骸燐はさっぱり気にしていない。
「おっさけ、おっさけ♪ 紹興酒に清酒、どぶろく、お肉……ふふふ」
「嶺小姐もさァ、気にしねェでゆっくりすりゃいいんじゃねェのォ?」
「……そう思うなら、少しはわらわの気苦労を減らしてくれると嬉しいんじゃがの」
 嶺依は霞月をジト目で睨む。が、霞月はやっぱり気にしていない。
 ふてぶてしいというべきか、器が大きいというべきか。図太いのは間違いない。
 そういうところが手をかけさせる、とでも言いたげな嶺依である。
「どっかに面白ェ宝貝持った奴でもいねェかなァ~」
「……まったく、やれやれじゃ」
 奔放にもほどがある様子に、何度目かもわからぬため息をつくのであった。

 たとえトップにやる気があろうと、部下がこの調子では情報収集どころではない。
 嶺依は早々にいろんなものを諦め、せめて懐かしい景色を楽しむことにした。
 道行く仙女から竪琴を借り、適当な切り株に腰掛けると思い思いに爪弾く。
 芳しい風に音色が交わり、はらはらと舞い散る花びらを見えない色で彩る。
 さすがというべきか、その姿はほかの仙女よりよほど堂に入っていた。
「嶺小姐の演奏たァ、今日はいいつまみが揃ってるねェ」
「部下が楽しめるように取り計らうのも幇主の務めよ。ただではないぞ」
「わかってるわかってるゥ、我もちゃあんと働くってばさァ」
 くすくすと笑う霞月の言葉は、あんまり信用ならない響きに満ちている。
「ところで骸燐、こっちの酒呑むー? これ、けっこう美味いよォ」
「やった。じゃあもらおうかな、うぇーい」
「……なんじゃそれは」
「知らないの? UDCアースだと、こういうときはこういうんだって」
 なぜかちょっと得意げな骸燐。人差し指と小指を立てたハンドサインをする。
「うぇーい」
「……何かが激しく間違っておる気がするのじゃが」
「いや、でもなんか楽しくなってこねェ? ウェーイ」
「うぇーい」
「酒を楽しむなら楽しむで、もう少し風雅に気を使えんのか、汝らは」
 自由すぎる部下たちの振る舞いに、終始呆れ顔の耐えない苦労人。
 それでも心落ち着くのは、身内とともに穏やかな時間を過ごすためか。
 あるいは昔懐かしいこの故郷に、久方ぶりに心が安らいでいるのか。
「……まあ、いまはそれでよい。いまはな」
 考えるのをやめ、嶺依はしばし己の奏でる音色に心を委ねた……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セレナリア・アーチボルト
ふーむ、これは不思議な世界ですね。
メイドとして見たことない料理には心躍ります。
中華料理ですか? これは主人へのお土産として学んでいきましょう

食べ歩き上等!むしろこの手軽さが賞賛すべき点でしょうか
月餅、胡麻団子、桃饅と甘味には餡子を使ったものが多いですね。

レシピのイメージを固めるためにも店主とお話し致しましょう。
何気ない事でもインスピレーションに影響あるものです。

ふふふ、主人の下へ帰った暁にはレパートリーの多さに感涙間違いなしですね!

アドリブ・絡み歓迎です



●ゴーイング・マイ・ウェイ
「……なるほど、そのような隠し味を使うのですね。これは勉強になります」
 とある飯店にて、セレナリア・アーチボルトは熱心にメモを取っていた。
 それというのも、彼女がいましがた平らげた中華料理のレシピを調べていたのだ。
 ……ん? レシピの聞き込み? 何かあっているけど間違っているような……?
「しかしお嬢さん、熱心だね。誰か作ってあげたい人でもいるのかい?」
「ええ、私はメイド……つまり給仕ですので、主人への手土産といったところです」
「ははあ、なるほど。あんたみたいな勤勉な給仕がいるなんて幸せな主人だね」
「そりゃもう感涙に咽び泣くこと間違いなしです。まあ顔は覚えてないですが」
「えっ?」
「えっ」
 なにそれこわい。

「……おかしいですね、なぜ行く先行く先で怪訝な顔をされるのでしょうか」
 月餅、ゴマ団子、桃饅にエトセトラエトセトラ。
 手軽なファーストフードを抱えたセレナリアは、饅頭をぱくつきつつ首を傾げる。
 そらまあ、名前も見た目も何もかも覚えていない主人のためにレシピを教えて下さい、なんて言われて、首を傾げない人間がいるわけがないという話である。
「いえ、それ以前に、何かもっと重要なものを忘れているような……」
 はて一体なんだろうか。もしや、まだ食べていないものがあるのでは?
 そんなセレナリアのぶっとんだ思考に、饅頭食ってるというのに腹が鳴る。
「うーむ、肉料理はもう食べましたし、桃のスイーツもこの通り買い込みました。
 あと考えられるのは酒類ですが、しかしメイドが酒を飲み歩くというのも……」
「なあ、聞いたかあの噂」
「おや?」
 そこでセレナリアは、なにやらうわさ話をする住人の会話を耳にした。
「ああ、涼爽洞のまわりでキョンシーの兵隊がうろついてたって話だろ」
「おっかないよなあ。人界からも人が来なくなったっていうし」
「………………………あっ」
 やべえ大変なもの忘れてた。セレナリアはバツの悪さにとりあえず饅頭を食べた。
 頑張れ流浪のメイド、情報収集ってそういう意味じゃないぞ!!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヤムヤム・グリード
桃園、と言うかそこに成る蟠桃にかなり興味はある──が、事件の解決が先だな。幾ら素晴らしい食材が在ろうとも、この地が荒らされちゃァ台無しだ。
ひとまず今は我慢、諸々終わり次第存分に堪能してやるッ……!

で、敵の調査ねェ。
フーム……仮に野生生物が相手だったとしたらその食性からどういうヤツかある程度推測は出来るし、今回も同じような手が使えるかも知れん。さっき聞いた言葉だが、それこそ腹は減っては何とやらってヤツだ。
……いや、そもそもオブリビオンって栄養補給とかするモンなのかどうか解らんが。

深山を巡って痕跡やら何やらを探しつつ、途中で仙人の方々に出遭ったら挨拶してから妙な影を見かけなかったか尋ねるとしよう。



●悪魔の料理人さん
 桃園を離れ、霧烟る深山幽谷……の、そのまたさらに奥。
 仙人でもなかなか足を運ばぬ険しい山道を、ひとりの超級料理人が征く。
「へえ、こりゃ面白いな……桃源郷ってのは桃園だけの話じゃないらしい。
 自生してる植物からして、季節に環境も何もかも無視してやがる」
 食べられそうな植物をつぶさにチェックする、彼の肌は赤褐色だ。
 ヤムヤム・グリードは、なんと悪魔で料理人という異色の存在。
 台所(キッチン)の悪魔という、ヘスティア神が聞いたらびっくりしそうな悪魔なのである。

 そんなヤムヤムだが、目当ては何も食材だけではない。
「おっと……これは修行中に失礼。少々質問をしてもよろしいか?」
 山間の泉にて、結跏趺坐で瞑想に耽る仙人に、拱手で礼を示す。
「……何用か、異郷の方。儂に答えられることであればなんなりと答えよう」
 その礼節を認めた仙人は、姿勢を崩さぬままに重々しく頷いた。
「このところ、涼爽洞で何か不審な出来事がなかったか探しているのです。
 聞くところによれば、かの洞穴を悪しき者が支配しているとのことで……」
「……ふむ。なるほど」
 仙人は何か得心がいった様子で頷き、こう答えた。
「たしかに、近頃あの洞穴の回りでは、達人の成れの果てと思しき僵尸が見受けられておる。
 そしてそれらを取りまとめておるのは……おぬしと同じ、料理人なのだ」
「! オレと同じ……?」
「然様。超級料理人が禁忌とする左道……暗黒料理に身を堕とした男だ」
「あ、暗黒、料理……ッ!!」
 その名前の禍々しさに、ヤムヤムは愕然とした。
「たしかに聞いたことあるぜ……料理を人のためじゃなく己のために作る連中のことを。
 毒物や薬物を使い、時には天地をも乱すという、あの暗黒料理人が……!?」
「儂はそのことを伝えるために此処で修行をしておった。どうやら、おぬしがそれを知るべき超級料理人であったようだな」
「……こいつはどうやら、食材巡りをしてる場合じゃないみたいだな」
 ヤムヤムは再度の拱手とともに礼を言うと、その場をあとにした。
 料理人のはしくれとして、料理を悪行に使う輩を赦すわけにはいかない。
「ぶちのめしてやるぜ、暗黒料理人ッ!!」
 赤褐色の胸の中で、猛々しい戦いの炎が燃えていた!

大成功 🔵​🔵​🔵​

リンタロウ・ホネハミ
あ~~~~……
香りだけで腹いっぱいになりそうな桃とか
超絶美人の仙女さんらのビワだのなんだのとセッションとか
もうめっっっちゃ心惹かれる!!
惹かれるんすけど……そいつは依頼が解決してからにしやしょう……!!

泣く泣く向かう先は飛べねぇ奴はお断りと言わんばかりの秘境
くそっ、オレっちも武術極めりゃこんな秘境ひょいひょい飛んで……
いや武術極めたら飛べるってなんっすかマジで

グチグチ言いつつも踏破して、辿り着いた先にゃあ多分いるでしょう、仙人が
拱手をして2つばかり問いましょうか
一つは涼爽洞をこじ開けるのを手伝ってくれないっすかと
そしてもう一つは……それが出来るだけの力があるか、ちょいと手合わせ願いますっとね



●秘境に赴く
「ぜえ、はあ、ぜえ……!!」
 深山幽谷を行くリンタロウ・ホネハミの足取りは、重たい。
 なにせ桃源郷のあの光景が、芳しい香りが、いまだ脳裏にこびついている。
 香りだけで腹が満たされそうな見事な桃に、見惚れるほどの美しい風景。
 そして美しい仙女に酌をされながら、玄妙な琵琶の音に耳を傾ける……。
 騎士のはしくれとして、そんな贅沢に心が惹かれないわけがない。
 なにより、酒! 思い出すだけで喉が乾いてくるあの甘露の香りときたら!
「呑みてえ……! 桃、喰いてぇ~……!!」
 だが、手は出せぬ。なにせ先にやるべきことがあるのだ。
 リンタロウは根が真面目であった。サボって豪遊とかは出来ないタイプだ。
 なので、その執着を断ち切るためにも、この秘境へとやってきた。
 しかし今度は、人間が立ち入るべきだとは思えない過酷な山道が彼を苦しめる。
 時折霧の向こうへ目を向けると、雲の上を飛ぶ人影らしきものが見えた。
「マジで達人って飛ぶんすねぇ……いや武術極めたら飛べるってなんだよマジで」
 半ばひがみに近い愚痴である。が、まあ、その価値観もさもありなん。
 精神と内なる肉体を鍛える東洋的武術観と、生きるための技術を養う西洋的武術観では齟齬が生まれるのも無理からぬもの。
 ましてやリンタロウの剣術は、あくまで敵を倒すことに特化した実戦派である。
 永い時間をかけて心身を鍛えるというやり方自体が身にそぐわないのだ。
「オレっちも飛びてえなぁ、畜生~~~」
 ぐちぐちと不平不満をこぼしつつ、たくましい身体で山道を征くリンタロウだった。

 タフなリンタロウでも音を上げそうなほどの山道が、ようやく終わる。
「これで、頂上……!!」
 もはや垂直に近い山肌を張り付くようにして登りきったリンタロウ。
 すると彼を照らすように、雲の上の太陽が神々しく山頂を染め上げた。
「……ほう。ここまでたどり着く人間がいるとは」
 そしてその太陽を背に、白髪白髯の老人がゆらりと振り返る。
 リンタロウは身を起こし、そして息を呑んだ。老人の足元に気付いたのだ。
 老人……否、仙人の足先には、今にも折れそうな枯れ木が一本。
 仙人はその枯れ木を凸凹の山肌に突き立て、その上につま先立ちしている!
「……ちょっくらふたつばかし、聞きたいことがあるんすけどね」
 リンタロウは拱手で礼を示した上で、仙人に問うた。
「申してみよ」
「ひとつは、涼爽洞をこじ開けるのを手伝ってくれないかってことっす。
 人手が多いに越したことはないっすからね。力を借りれるなら本望っすよ」
「……もうひとつは?」
 リンタロウはにやりと笑い、骨剣を抜いた。
「それができるだけの力があるか、ちょいと手合わせ願えるっすかねえ!」
 老人の白髯にまみれた口元に、笑みが浮かんだ。
 ふわりと重さを感じさせない動きで跳躍し、さらに不安定な足場に着地。
 つま先立ちしていた枯れ木がくるくると、その手の中に収まった。
「ならばワシは、この枝で相手してしんぜよう」
「キコージュツってやつっすか? 面白そうじゃねえっすか!」
 ――がきん!!
 山間に響き渡る重い金属音に、羽を休める小鳥たちが慌てて飛んでいく。
 リンタロウはその身を以て、仙界の武術の奥深さを知ることとなった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
桃源郷の住人達には敬語

涼爽洞に居座っている者についてお伺いしたいのですがよろしかったでしょうか?
こちらは差し入れです、よろしければどうぞ
修行方法も気になるが、今はオブリビオンを何とかしないと

SPDで判定
俺は深山幽谷で聞き込みし【情報収集】する
【視力】【暗視】で休んでいる人を見つけ拱手して挨拶してから話しかける
水や食べ物も買っておき、礼を失しないように気を付ける【心配り】
敵の容姿や話していた内容、武器、性格、他にも情報があればしっかりと聞いておく



●幽谷にて
 仙人の修行は、単なる武功を積むためのものとは限らない。
 身体を鍛えることは精神を練り上げるための方法のひとつにしか過ぎず、
 その求道の目指す先は、最強ではなくより自己を高めることにある。
 ゆえに実戦的な能力においては、猟兵のほうが勝る。踏んだ場数の違いだ。
 だからこそ、オブリビオンに対処しうる猟兵を仙人は強く歓迎する。
 ルイス・グリッドは礼節を示したうえで、そんな彼らに聞き込みを試みた。
「修行のところ失礼します。こちらは差し入れです。よろしければ……」
「かたじけない。しかし、差し入れは結構だ」
 ルイスが水と食物を差し出そうとすると、仙人は片手を差し出して辞した。
「あいにく私は断食の最中でな、もう一ヶ月は何も口にしていないのだ。
 だが、礼を失したとは思わないでくれ。その心意気は十分伝わっている」
「なるほど。それも、仙界の修行のひとつなんですね」
「然様。錬丹術を以て道を究めんとする者もいる。やり方はそれぞれなのだ」
 ルイスとしては、その修行内容にも深い興味があった。
 しかし彼は改めて目的意識を強めると、仙人にこう問うた。
「涼爽洞に住み着いたという魔物を倒すために、情報を集めているのです」
「ほう」
「何か知っていることがあれば、教えていただきたい。どんな些細なものでも構いません。たとえば敵の容姿であるとか、話していた内容、武器……他にも色々と」
「そうさな……洞穴にあえて踏み込んだものは多くない。
 人界との行き来が不可能になったと聞いて、討伐に向かった者もいる
 しかしそれらの血気盛んな者たちは、みな還ることなく報せを絶ったのだ」
 仙人は深い悲しみをたたえた表情を浮かべた。
「我らとて太刀打ちできぬ存在に、あたら挑むのは命を捨てるも同義。
 手をこまねいていた、と言わざるを得まいな。貴殿のような者が来てくれて助かった。
 ……まずは僵尸の群れに気をつけよ。いずれも武功を積んだ達人の成れの果てだ」
 僵尸――この世界における死人、つまりは自分の同類。
 それが立ちはだかると聞いて、ルイスは険を深めた。
「もしかすれば、我々の同胞だった者もその中に加わっているやもしれぬ。
 仮にそれらしい僵尸を見かけたならば、どうか貴殿の手で討ってくれまいか」
「……わかりました。俺に出来ることであれば」
「頼む。どうか同胞の魂を解き放ってやってくれ」
 仙人に頭を下げられ、ルイスは決意を新たにした。
 勇猛なる仙界の住人を己のしもべとするオブリビオンを、必ず倒すのだと!

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱赫七・カムイ
⛩神櫻

美しい園であるね

転ばぬ様にと巫女の手をとり花逍遥
甘やかな桜と桃の香りも
私の可愛い巫女のあまい馨にはかなわない

ほら
この桃なんてとても美味しそうだ
ひとつ齧ってご覧
仙界の力が、きみに宿るやもしれない
……私はきみが永遠になってくれた方がよいからね
桃を美味しそうに食べる巫女に笑む

サヨ
其れは桃のお酒かい?
……花見酒と行きたいところだけど
きみは、酒癖が悪いから─え?酒を飲む修行?
サヨは仕様がないね
私はきみに弱い

少しだけだ

ぽやぽや笑い子猫のように擦り寄るきみの愛らしいこと
修行になってる?
あやしながら角に咲くどの桜より麗しい桜を撫でる
噫、確かに前よりしっかりした足取りだね
偉いよ
私の巫女

本当に、可愛らしいな


誘名・櫻宵
🌸神櫻

ここが桃源郷なのね!
綺麗な場所ね
お弁当持ってくるんだったわ

花見気分で浮かれて歩く
大丈夫、かぁいい神様が捕まえていてくれるから
カムイ…あなたそういう事を何処で覚えてくるの?
嬉しいから、いいけれど

勧められるままに桃を齧る
蕩けるように美味しいわ!……ふふ、あなたの慾も蕩けるようね?

カムイ
桃のお酒ですって!
絶対美味しいわ!花見酒よ!
むー!お酒を飲む修行なの
其れにカムイがいるから

あまい神様にふふりと笑う
蕩けそうで美味だこと
ころころ、甘えたくなる効果でもあるのかしら
撫でられる桜角が擽ったい
ほら強いわよ
私、真っ直ぐ歩けているし騒いでもないわ

褒められた!
だぁいすきよ、私の神様
歩くの疲れたから抱っこして



●巫女と神、桃園にて心遊ぶ
「ここが桃源郷なのね……きれいな場所。お弁当持ってくるんだったわ」
 誘名・櫻宵は花見気分で桃園を歩く。舞い散る花びらを見上げ、微笑みながら。
 その姿は、まるで高名な画家が魂を込めた一枚の絵画のように美しい。
 事実仙界の住人も、玄妙なるその美しさに見とれてしまうものまで居る始末。
 美しさに性差や種族など関係ない……それをまざまざと知らされるようだ。
「美しい園であるね。だがサヨ、あまりはしゃいで転ばないように」
 そんな彼の隣を歩くのは、これまた眉目秀麗な男――朱赫七・カムイ。
 ふたりがそろりそろりと園を歩く姿は、いよいよもって筆舌に尽くしがたい。
 その身が神と巫女ならば、この世ならぬ美しさも納得出来ようか。
「ふふ……大丈夫、かぁいい神様が捕まえていてくれるもの。
 カムイこそ、こんなきれいな景色に心奪われてしまっては駄目よ?」
「その心配はいらないよ、サヨ。きみの可憐さには、香りも桜も敵わない」
 カムイが平然とした表情でそう言うと、櫻宵はぱちくりと瞬きした。
「……あなた、そういうのどこで覚えてくるの? まったくもう」
「さあて、きみを見ていたら自然と出た言葉だよ、サヨ」
「またそうやって……ま、嬉しいからいいけれど」
 口では呆れつつも、櫻宵が浮かれているのは目に明らかだった。
 そんなどこかあどけない様子もまたいとおしくて、カムイは自然と口元を綻ばす。
 ゆったりとしたこの時間は、他の世界ではなかなか味わえない贅沢だ。

 道を歩きながら、カムイは戯れに手を伸ばし、桃の木に生った果実をもいだ。
「この桃をごらん、サヨ。とても美味しそうじゃないか。ひとつどうだね」
「あら、本当……それじゃあいただこうかしら」
 櫻宵は桃を受け取り、控えめに一口。そして目を見開いた。
「……! とろけるように美味しいわ! とても瑞々しくて、しつこくない甘さよ。
 それに何より、たった一口食べただけでも体の芯から力がみなぎってくるみたい」
「なにせ、仙界の桃だからな。自然の力が凝縮されているのだろうさ」
 カムイは美味しそうに桃を楽しむ巫女の姿を、目で楽しみながら言った。
「もしかすると本物の蟠桃のように、きみは永遠の存在になるかもしれない」:
「慾が深いのね、私の神様は」
「私は正直者なだけだよ。ただ、欲しいものを欲しいというだけだ」
 神としては少々不埒な言葉かもしれないが、それもまた生きるということだろう。
 カムイの言葉は、櫻宵にとっても嬉しいものであった。
「それもいいけれど、私はいまを大切にしたいわ。いまあなたといるこの瞬間を」
「……藪から棒に、どうしたんだい?」
「あら、思ったことをそのまま口にしただけよ? あなたを見習って」
 櫻宵はそう言うが、カムイは何か裏を感じ取り、半眼になる。
「……もしやサヨ、きみ、お酒を呑みたいんだな?」
「うふふ! わかっちゃった? やぁね、私ったら冗談が下手だわ」
 カムイはやれやれと苦笑を浮かべる。
「サヨ……花見酒といきたいのは私も同じだが、しかし……」
「ねえ、いいでしょカムイ? これはお酒を呑む修行なのよ」
「……きみ、私が何を言うかわかった上でそんなことを言うんだな」
 櫻宵の酒癖がとんでもないことは、彼に近しい者なら自明の理である。
 こんな美しい景色で盃を傾ければ、自制など効くはずもあるまい。
 カムイはせめて控えろと言おうとしたが、やがて根負けして頭を振った。
「私はきみに弱い。まったく、仕様のない巫女だ」
「うふふ。私の神様は優しくて気前がよくて、大好きだわ」
 調子のいいものだ、と思いつつ、心弾むのを隠しきれないカムイである。

 ふたりはなだらかな小丘に腰掛けると、さっそく桃の酒に舌鼓を打った。
「ふふー……カムイもお酒も、あまあまだわ……幸せね」
「修行になってるのかい、それは」
 言いつつ、カムイはころころと子猫のようにじゃれる櫻宵の桜角を撫でる。
 なんだかんだいって、こんな仕草も愛らしいと思えるのが罪なところだ。
「大丈夫、大丈夫よ。その証拠にほら、受け答えもしっかりでしょう?」
「目はとろんとしているけれどね」
「それはお酒だけのせいじゃないわよう」
 などと言いながら、桜宵はくすぐったそうに身をよじる。
 そしてふわりと花びらのように離れると、ととっ、とその場で一回転。
「ほら、ね? 足取りだってしっかりしてるし、騒いでもないわ」
「わかった、わかった。もう少し呑んでも構わないよ、サヨ」
「うふふ、だぁいすきよ、私の神様!」
 ふらっと倒れ込んだ櫻宵は、そのままカムイの胸の中に飛び込む。
「……本当に、手のかかる巫女だことだ」
 言葉とは裏腹に、カムイの表情はいとおしさと優しさに満ちていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

蛇塚・レモン
わぁ~っ!
ここが封神武侠界っ!
キレイなところだねっ!
あ、第一仙人はっけーんっ!
ええと、拱手だっけ?
ドーモ、通りすがりの猟兵だよっ!
実は……(涼爽洞付近での異変や噂を聞き込み)

ひとまず、魔法の辞典で周辺地図を頁に浮き上がらせてっと
涼爽洞はこっちだねっ?
あ、桃スイーツだ~っ!
1つくださいなっ!

予知では暗黒料理人が悪巧みしてた
必ず材料や調味料を何処かから仕入れるはずっ!
ここで活動する商人達の筋も洗ってみようかなっ?
誰にも怪しまれずにオブリビオンと取引出来る商人なら、
きっと涼爽洞の内部も詳しいよねっ?
目星が付いたら透明になって、念動力で空中浮遊
怪しい人物を尾行
然るべき時に捕まえるよっ!
危険なら即退散!



●暗黒料理人の足取りを追え
 暗黒料理人……それは、超級料理人になれるほどの腕前がありながら、
 その優れた調理の腕前を、人を生かすためでなく殺すために使う外道のことだ。
 オブリビオンとして蘇った暗黒料理人の業前たるや、
 天を穢し地を乱し、人を害するとも云われる極めて危険な存在である。
 料理を武道に用いる、というとどうにも奇妙奇天烈に思えるが、
 そういう油断から足元をすくわれることを、蛇塚・レモンはよく知っていた。
「うーん、やっぱり作物を盗まれたり獣が姿を消してるみたいだね……」
 そんなレモンが集めた情報は、やはり暗黒料理人の存在を示唆していた。
 現状、洞穴に直接乗り込んだ勇士以外に、人的に被害は出ていない。
 しかしあちこちの村で作物を盗まれたり、山に棲む獣が姿を消していたのである。
 間違いなく、暗黒料理人がその邪悪な腕を磨くために食材とされてしまったのだ。
「そして、洞穴の近くで目撃された僵尸、か……きっとこいつらが配下だね。
 よしっ、そうと決まればさっそく洞穴に近くに張り込んで、僵尸を捜索だ!」
 魔法の辞典で浮かび上がらせた周辺地図にマークを入れ、レモンは意気込んだ。
「はいお嬢ちゃん、おまちどう。ウチ特製の桃饅頭だよ!」
「わあっ、ありがとう店主さん!」
 ちょうどそこに、注文していた桃饅頭が運ばれてきた。
 中身は甘いこしあんだ。出来たてのあつあつの饅頭を堪能するレモン。
「ん~、甘くて美味しいっ! 景色もいいしご飯も美味しいし、いいところだな~」
 だがその美しい仙界を、ひそかにオブリビオンが乱している。
 そう思うとレモンは居ても立ってもいられなくなりそうだった。
「そういえば店主さん、ここには品物を取引する商人とかはいないのかなっ?」
「ああ、それがね……ほら、洞穴に妙なのが住み着いたって話だろう?
 いつもなら人界とこっちを行き来して、いろんな品物を交易してるんだよ。
 今はまだなんとかなってるけど、このまま続くと色々物資が足りんだろうなあ」
「なるほど、そうやって向こうの世界と交流してたんだね……」
 仙界はその知識と技術を提供し、人界は物資を持ち込む、といったところか。
 となると、暗黒料理人は僵尸を使って作物などを奪っているはずだ。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず……まずは、偵察だね。ごちそーさまでしたっ!」
 レモンは饅頭を食べ終えると店主に元気よく挨拶し、店を飛び出した。
 その姿がふわりと浮かび上がると、桃源郷に溶けるようにして透明に変わる。
 いざ、涼爽洞を取り戻すための作戦第二段階の開始だ!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルヴトー・シフトマン
……凄い景色だなぁ
異世界を訪れるのは初めてじゃないけど、この世界はまた随分と毛色が異なりますねぇ
仙人、武侠…達人がひしめく絢爛な世界
武骨な鋼で駆けまわる俺とは、縁遠いのでしょうけど…
この世界の武技は、とても興味が湧きます

ここはオーソドックスに聞き込みといきましょう
食をお供にしてしまえば、口も開きやすいでしょうから
配下を連れているのなら、目撃もされやすいと思うので…洞穴の様子を見ていた人が見つかると僥倖です

はぁー、しかしこの中華まん…美味しいなぁ
モッチリとほのかに甘い生地に、具沢山の餡
食材の旨味を余すところなく使っているから、肉の旨味がじゅわりと溢れてきて…はぁ~~~もう一個、いや5個ください



●絢爛豪華なる世界で
「……すごい景色だなあ」
 ルヴトー・シフトマンは、驚きのあまり年相応の表情に戻っていた。
 猟兵となってからというもの、様々な異世界を巡ってきたルヴトー。
 まったく異なる世界の様相には、毎度のごとく驚かされるばかりである。
 しかしそんな異世界の景色の中でも、この封神武侠界はひときわ違って見えた。
 それはおそらく、武人のはしくれとして鍛えているからこその感嘆か。
(なんて、俺みたいな未熟者が肩を並べたような気分になってたらいけないな)
 謙虚なルヴトーは、心のなかで自分の慢心を諌めた。
 もっとも彼の腕前を知る者がその心中を聞いたら、きっと苦笑したことだろう。
 ルヴトーもまた、この世界にひしめく達人武人に遜色ない腕前を持つのだから。

 そうして張り切って聞き込みを開始したルヴトー、だが……。
「この中華まん、美味しいなあ!」
 聞き込みの最中、気前のいい店主にいただいた饅頭にご満悦の様子。
 生地はもっちりとしていてほのかに甘く、中のあんは具沢山だ。
 仙界の自然ゆえか、具材はどれもこれもが瑞々しく、そして味わいが調和している。
 一口噛みしめるごとに味が変わるような、食べたことのない完成度だった。
「こんな肉の旨味が溢れる饅頭、初めて食べるかもだ……はむっ、もぐもぐ」
「いい食いっぷりだね、兄ちゃん。そこの饅頭屋の品だろう?」
「むぐ……(ごくん)はい! 親切に品物を頂いてしまって」
 ふと話しかけてきた男性の言葉に、ルヴトーは恥ずかしそうに頭をかいた。
 そんなあどけない様子を見た男性は、微笑ましそうに口元をほころばせる。
「よかったらうちの品も食べてみないかい」
「えっ! いえ、そんな……ありがたいですけど、悪いですよ」
「いやいや! 兄ちゃんの食いっぷりを見ていたら、料理人の血が騒いでね」
「料理人の血……ですか」
「ああ。食事ってのは、そうやって美味しそうに食べてもらってこそ、だからねえ」
 男性はニカッと笑った。
「ここのところ作物を盗まれたりしてどうにも困っているんだがね。
 兄ちゃんの顔を見ていると、もっと頑張らないとと励まされた気がしたのさ。
 だから私からの感謝の気持ちってことで、まあ楽しんでおくれよ」
「そういうことなら、ではご相伴に……」
「待った! 兄ちゃん、うちの饅頭は美味いだろう? 出来たてを持ってきたよ!」
 とそこに、件の饅頭屋の店主が割り込んできた。
「ええっ!? いや美味いですしありがたいですけど! いいんですか!?」
「なんだなんだ、どっちが上か味くらべてもしてもらうか?」
「いいねぇ、望むところだ! じゃあ兄ちゃんに審査してもらおう!」
「えええ……!?」
 なんだかどんどん話が大きくなっていることに、ルヴトーは困惑するばかり。
 これもまた、人徳のなせる技……といったところだろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヨム・キプール
アドリブ・絡み◎

「人界には足を運んだことがあるが、仙界は初めてだな。何ともまぁ、絶景じゃないか」

桃と梅が咲き乱れる桃源郷。
確かに花見や酒盛りの類を好む者にとっては垂涎の地だろうぜ。

「この風景を独り占めするってのもアレだな。配信でもするか」

UCを発動し、仙界の花々を生中継だ。
本来は俺の活躍や苦戦を映すUCだが、性質上、単純に動画を配信することもできる。

「それに、情報を得るならこっちの方が都合が良いぜ」

さぁ、楽しい【情報収集】の時間だ。
琴を爪弾く仙女や道行く仙人に、今回の事件について話を聞いてみるぜ。
それを配信すれば、中国の妖怪や邪仙について詳しい視聴者のコメントが得られるかも知れねぇ。



●仙界から生中継
「人界には足を運んだことがあるが、仙界は初めてだな……」
 ヨム・キプールはそうひとりごちながら、桃源郷の桃園をひとり歩く。
 舞い散る花々とかぐわしい香りは、人界にはけして存在しない優美な景色だ。
「なんともまあ、絶景じゃないか……」
 その景色の美しさたるや、人界の者はおろか仙界の住人さえも虜にする。
 見ればなるほど、あちこちでささやかな花見や宴の気配が感じられた。
 盃を持てば何処からともなく現れる仙女たちも、
 この景色を少しでも多くの人に楽しんでほしいという心意気でそうしているのだろう。
 はたまた、サクラミラージュに居る桜の精のような"そういうもの"なのか。
 いずれにしても、ヨムは思った。この景色は、ひとりで楽しむには美しすぎると。
「この風景を独り占めするってのもアレだな。配信でもするか」
 ヨムはユーベルコード『祝福(ベラカー)』を使い、通信ユニットを召喚。
 本来であれば、これはヨムの戦いを撮影し声援を得るためのユーベルコードだ。
 しかし今はまだ、戦うべき敵も見つかっていない。
 ならばこれから戦いが待っているからこそ、平和な景色を楽しむのも一興。
 通信を起動すると、さっそく視聴者たちのコメントが映像の上を流れていく。
「この世ならぬ幽玄の桃源郷、独占生中継ってな。
 いつもの配信に比べると迫力がないかもだが、まあ見ていってくれ」
 ヨムは視聴者たちに呼びかけると、改めて情報収集を開始した。
 もちろん、拱手で礼を示すことも忘れない。仙人や仙女は鷹揚に接してくれた。
「洞穴が占拠されているという件について、何か知っていることはないか?」
「……実はわたしと懇意にしてくださっていた仙人さまが、ひとり洞穴に赴かれたのです」
 琴を爪弾く仙女は、悲しげな音色を奏でた。
「ですがもう戻らずに一週間が経ちました。おそらくはもう……」
「……そうか。やはり、犠牲者は出ているのだな」
 猟兵には敵わないとはいえ、仙界の仙人ともなれば常人をはるかに超える。
 それを一蹴するほどの敵に対し、備えは不可欠だろう。
「貴重な情報、感謝する。あなたの大事なひとの仇は必ず討とう」
 ヨムの言葉に、仙女は儚い笑みを浮かべ、頭を下げるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱酉・逢真
坊と花見/f22865
行動)不老不死求めた仙人と《死(*おれ)》。こいつァ相性悪そうさ。アンジェをこっそり調査に出して、坊の影に隠れるよゥ。よろしく頼まァ。せっかくの桃源郷、山中問答と洒落込むか。
会話)そうさなァ、冥府(のひとつ)にゃもう行ったしなァ? マ・天使とやらも居た。そのうち繋がるさ。
不老不死かィ。御年8万こえる木霊もいるが、ありゃ特殊。止めやしねェが薦めもせンぜ。定命は短生に適合した"いのち"、無理くり伸ばしゃあタマシイが傷む。自他の境界溶け混ざり、残るはうつろな生き腐れ。それこそ"精神まで不死"とかでなけりゃアな。ひ、ひ。サ・ンなことよかメシでも楽しみな。生きてるうちしか食えんぜ。


雨野・雲珠
かみさまと新世界!/f16930

(スー)
まさか桃源郷を夢心地で歩ける日が来るとは…
神話や伝説の世界だと思ってました。
(注:隣の相手も以下略)
そのうち生身で天国にも行けちゃう日が
くるかもしれませんねえ、かみさま……あれっ

頼っていただくと燃える俺です!
拱手で丁寧にご挨拶して、仙人さまにお話を伺いましょう。
あの、暗黒料理なる謎ワードが気になってるんですが…



(桃しゃくしゃく)
不老不死…俺の一存で勝手していい命ではありませんが、
好きな方みんな看取れるのはよいですね。
そも、桜の精って寿命どのぐらいなんでしょう?
三百年ぐらいいけるでしょうか…
(黙って聞いて)
…俺たちがよく知る誰かの話をなさってます?



●いのちが尽きぬ、ということ
「暗黒料理を知らないのかい、坊や」
「はあ……少なくとも聞いたことはないですね……」
 怪訝な様子の雨野・雲珠に対し、仙人はにこやかに説明した。
「いいかね。この世界において、料理というのは極めれば一種の武道にさえ至る」
「はあ」
「医食同源とも言うように、食とはあらゆる身体の活力に通じたもの。
 ふつう、料理というのは食べ物をより美味しく、より栄養豊富にするものだろう。
 なら、その逆を目指したら、どういう料理が出来るかは……わかるかね?」
「……毒物を盛ったり、不健康になるような料理を作る、ということですか?」
 その通り、と仙人は頷いた。
「それをさらに磨き上げ、一種の魔技の域にまで究めたのが暗黒料理なのだよ。
 たかが料理と侮るなかれ。極まった暗黒料理人は、一国を滅ぼしさえもしたという」
「……なんだかスケールが大きい話ですね。そういうものなんでしょうか」
 仙人は大真面目な表情だ。ならば、この世界ではそういうものなのだろう。
「お話、ありがとうございました。参考になりました!」
 至極丁寧に拱手で礼を示す雲珠に、仙人はにこやかな表情を見せる。
「ところで坊や、きみにはなにかよくないものが憑いているのではないかね?」
「? いえ……?」
「ふうむ。どことなく陰気が強いように見えるのだが……気のせいか。いや……」
「……あっ」
 何かを察した雲珠、ちらりと自分の影法師を一瞥するとぺこぺこ頭を下げる。
「いえ、問題ありません! たしかに妙かもしれませんが全然問題ないです!
 むしろ俺なんかにはもったいないというか、心強いぐらいですから、はい」
「……?」
「とにかく、これで失礼します! あらためて、お話ありがとうございました!」
 話が妙にこじれてしまう前に、雲珠はぴゅーっとその場を辞するのだった。

 人気がない場所までやってくると、影の中からくつくつと笑い声がする。
『ひ、ひ……いいのかィ、ありゃ親切心で言ってただろうによぅ』
「ええ、いいんです。だってかみさまは、別に悪い方ではありませんし」
 影に潜んだ声……つまり朱酉・逢真に、雲珠は朗らかな声で言った。
「しかし、仙人さまは陰陽の理を学び、自己を高めようという方々です。
 かみさまのことを"よくないもの"と云われるのは悲しいですが、仕方ないのもたしかですから」
『坊はいじらしいねえ。まァ実際、仙人と"死(おれ)"の相性はよくねェのさ』
「……やっぱりそうなんですか? でも、仙道は陰気にも通じるものですよね」
『"それが問題"なんだよ、坊』
 声は語る。
『錬丹術だのなンだの、仙人が求めるものってのはつまり不老不死、死の超越だ。
 ンなことを究められちまったら、俺としちゃ仕事がなくなって困っちまう。
 連中からすれば、いっちゃん忌避してるモンがこの俺……ようは水と油だなァ』
「なるほど……陰陽の問題ではなく、もっと根源的な話なんですね」
『坊の影に潜んで気配を消しちゃいるが、まァ限界はあらァな』
 言いつつも、逢真の声にあまり気にした様子はない。
『マ、そうして死にたくねェとあがくのもまたかいらしいモンさ』
「はあ」
『死(おれ)の存在を意識すればするほど、つまりは生もまた感じることになる。
 ほんとに不老不死達成されちゃお手上げだが……ひひ、それもまた一興さなァ』
「さすがかみさま、スケールが大きいですね!」
『ひ、ひ……坊はあっけらかんとしていて気が楽だねェ』
 などと会話しながら、雲珠はてくてくと桃源郷を歩く。
 芳しい香り、美しい情景。夢心地になるのも無理からぬ様相だった。
「それにしても桃源郷とは……神話や伝説の世界だと思っていました。
 もしかしたら、そのうち生身で天国に行けちゃう日も来るんでしょうか?」
『そうさな……いずれ繋がることもあらァな。猟兵てのァ世界を超えるモンだろ』
 まるで見てきたように――事実そうなのだろう――逢真は呟いた。
「それは楽しみです! 俺が看取った魂が向かう場所には、興味があるんです。
 でも同じぐらい、不老不死というのがどういうものかも気になるんですよね」
『……一長一短だぜェ』
 逢真の声には含みがあった。
『寿命ってのは"いのち"の規律、それを下手に歪めりゃ当然無理が出る。
 それこそ樹を想像してみなィ、無理くり枝を接ぎ木したらどっちも腐るだろ?』
「たしかにそうですね……」
『自他の境界が溶け混ざり、残るはうつろな生き腐れ。タマシイが傷むのさ。
 それこそ"精神まで不死"とかでなけりゃアな。ひ・ひ……』
「……かみさま? あの、俺の気のせいかもしれないんですが」
 雲珠は怪訝そうな表情をした。
「それって、俺たちの知ってる誰かのことをおっしゃってます……?」
『――……サ。ンなことよか、メシでも楽しみな。メシってのは生きてるうちしか食えんものだぜ』
「……あ、はい」
 雲珠は腑に落ちない顔で、しゃくしゃくと仙界の桃を食べた。
 甘いとろけるような味わいと、仙界由来の活力が全身に染み渡る。
「でも、俺は不老不死も少しだけいいとは思うのです、かみさま」
『そら憧れるだろうさ。いのちってのァそういうモンだ』
「ああいえ、どちらかというと……好きな方をみんな看取れるのは、いいなと」
 照れくさそうに笑う少年に、影が揺らめいた。
『――坊のそォいうところは、悪くないと思うぜ』
 神の声には、どこか不思議な響きが垣間見えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
飲み食いするのもいいが…俺としちゃ深山幽谷が気になる
真っ当な武術からは最も縁遠い身ではあるが、技術には興味が尽きない
ちょいと修行の様子を見せてもらうとしようじゃないか
若造がついていけるのかって?そりゃあアンタらとは違うけどさ
俺もまぁ、色々身に着けてんのよ…色々、ね

仙人なら、何かこう…良くねえ波動とか気とか、分かるんじゃないの?
分かる範囲でいいから、教えてくれよ
勿論タダでとは言わない…俺はまぁ、何でも屋みたいなもんでね
頼み事があれば、聞けるぜ?探し者でも組み手相手でも、何でもな

…既にサイバネ塗れの俺じゃ、気功や仙術を身に着けるのは難しい
だがまぁ、変換式を組むことは出来そうだ
手札の糧にしてやるぜ



●男、新たな術を学ぶ
 ヴィクティム・ウィンターミュートは、まっとうな武術家ではない。
 その身体のほとんどは機械化され、ゆえに内息を練ることも難しい身だ。
 しかし、どんな武道仙術であれ、すべては技術と知識に集約される。
 そのイロハを学べば、あるいは利用できるアイデアもあるかもしれない。
 ヴィクティムはそう考え、情報収集の片手間に知恵を乞おうとした。

 ――の、だが。
「おい、たしかに修行の様子を見せてくれとは言ったぜ。だがよ――」
 ドドドドドド……と、滝が激しく流れ落ちる……その滝壺の中。
「実際に修行をさせろとまでは言ってねえだろうが!?」
「甘いッ!」
 滝に打たれながら喚くヴィクティムに、仙人は一喝を返した。
「知恵だけで我らの武功を身につけようなど片腹痛し。それは生兵法も大概よ。
 学ばんとするならまず味わうがよし。百聞は一見に如かずという言葉もあろう」
「だから、俺はまっとうな武術とは縁遠い身で……」
「くどいッ! いいから集中せよ!」
 ヴィクティムは嘆息し、滝の圧力に抗うことに集中した。
 サイボーグであり、また同時に生身を極限まで鍛え上げているヴィクティムは、
 この程度の修行であれば音を上げない程度にはタフな男である。
(まったく、俺は何をやってんだ? もっとスマートに盗むつもりだったのによ)
 文句を言うと怒られるので、ヴィクティムはうんざりして口を閉じた。
 すると頭の中を、ぐるぐると益体もない思考が浮かんでは消えていく。
(こういうカンフー映画みたいなのは、俺のガラじゃねえんだがな……)
 まるでその心を見透かしているように、仙人の鋭い眼差しが射竦めた。
(だいたい鍛えったところで、気功も仙術も俺には身につかねえ。
 俺には"虚無"があるし、思考もサイバネでブーストすりゃ事足りる)
 まるで不平不満を連ねる子供のような文句が、頭の中にぽんぽん浮かぶ。
 しかし不思議と意識は研ぎ澄まされていき、そういった雑念も削げ落ちていった。
(こういうのは、変換式を組んで手っ取り早く術式にするのが一番だろうが。
 たとえば、そうだな……体内の気の流れを利用するなら、こう……)
 すると今度は、アイデアの種が次々に湧いてくるではないか。
 規則的な滝の音が、ヴィクティムの意識をさらに深奥へと誘い出す。
 もはや仙人の視線も気にならず、彼はしばし思考に耽った。

 ――そして。
「あ?」
 気がつくと、周囲の時間はざっと1時間以上過ぎていたらしい。
 ヴィクティムは咄嗟に滝から飛び出し……頷く仙人に気付いた。
「どうだ。役には立っただろう。ようは、使い方ということだ」
 その言葉には、ヴィクティムはただ苦笑を返すしか出来なかったようである。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『僵尸兵士』

POW   :    僵尸兵器
【生前に愛用していた武器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    僵尸鏡体
【硬質化した肉体】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、硬質化した肉体から何度でも発動できる。
WIZ   :    僵尸連携陣
敵より【仲間の数が多い】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。

イラスト:鹿人

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●仙界:深山幽谷の麓
 仙界で多発している、作物の盗難や野獣の消失といった小さな事件。
 それらはどうやら、洞穴に住み着いたオブリビオンの仕業であるようだ。
 予知でかすかに聞き取れたように、敵の首魁は『暗黒料理人』。
 すなわち、超級料理人と似て非なる、天地を穢す暗黒料理の使い手である。
 おそらく盗まれた作物や姿を消した獣は、奴の具材として利用されているのだろう。

 名はいかにも奇妙奇天烈だが、だからといって油断は禁物。
 極まった暗黒料理人は、その技術で人心を乱し国すらも沈めるという。
 そして、そいつが危険であることを示すように……見よ!
 洞穴を目指す猟兵たちの前に立ちはだかるは、武器を携えし僵尸軍団である!
 暗黒料理人が殺め従えた、人界の名だたる達人武人に、それだけではない。
 洞穴を解放しようと奴に挑んだ、仙人らの成れの果てまでも加わっていた。
 ただならぬ武功を持つ達人たちは、死してなおその意を掌握されているのだ。
 僵尸どもは落ち窪んだ目で猟兵たちを睨み、刀・槍・棍と、様々な武器を構えた。
 死者ゆえに痛みも恐怖も感じぬ上に、身体に刻まれた武功は練達のそれ。
 死臭漂わす哀れな亡者たちに、今こそ慈悲の終わりをくれてやるときだ!

●プレイング受付期間
 4/4(日)08:30前後まで。
九段下・鈴音
死してなお操られるか。あわれよのぅ。妾がその呪縛から解き放ってくれよう。
【衝撃波】の【一斉発射】で基本的に攻撃を行う。相手の攻撃は【武器受け】で受け流し、その威力を利用して反撃する。
ユーベルコードは多くの敵を巻き込めるように放つ位置を決める。もちろん味方は巻き込まない。
数は多いがスタミナなら負けん。全て片付けてやろぅ。
各種耐性を駆使して苦痛に耐えるのじゃ。
使えるようなら【妖剣解放】も駆使して集団戦闘に相応しい戦い方をするのじゃ。できなければ【衝撃波】と【一斉発射】で攻撃する。寿命が縮まることは気にしないのじゃ。



●死したるものを再び殺す
 青い鬼火を眼窩の奥で燃やし、僵尸兵士が九段下・鈴音を包囲する。
 その手には戟や蛮刀といった武器を携え、これらもまた鬼火を纏っていた。
 死んだことにより穢れた氣が、鬼火に変じて鋼に流れているのである。
「死してなお操られるか、哀れよのぅ……」
 鈴音は妖刀『竜胆』を手に、四方に気を散らして敵を威嚇した。
 背後に回る敵も居たが、死人ゆえにその邪悪な気配は見ずとも感じられる。
 つまり、鈴音に死角はない。どこから襲いかかられたとしても対処出来よう。
「妾がその呪縛から解き放ってくれよう。さあ、いつでも参るがいい」
 それを示すかのように、鈴音は掌を上向け、くいっと手招きしてみせた。
 僵尸兵士は腰を深く落とし、身構える。空気が緊迫により張り詰めた。
 はたして流れた静寂は5秒か10秒か――出し抜けに、僵尸兵士が跳躍する!

 ほぼ同時。
 寸分の狂いもなく、四方から同時に飛びかかるという、非人間的連携。
 同時であるがゆえに、一方の敵に対処すれば他方の敵が鈴音を害する。
 つまり、『同時に攻撃しなければ敵の攻撃をしのげない』ということだ。
 いかな達人とて、四方の敵を一斉に斬ることなど『普通は』出来ない。
「――すべてを喰らいつくせ、竜胆ッ!」
 だが、鈴音は猟兵だ。猟兵とは、ユーベルコードによって奇跡を起こすもの。
 妖刀が口訣に応えて刀身を長く伸ばし、風よりも疾く剣を走らせる。
 鈴音はその場でぐるりと一回転。衝撃波さえ起こす速度で斬撃を放っていた。
 360度余すところなく吹き荒れた衝撃は、割れたガラスのように"飛び散る"。
 つまりは、斬撃の嵐である。僵尸兵士の身体をバラバラに切り裂く無数の剣閃!
「この程度で終わりではないぞ。お前たちとてこの程度で死にはすまい」
 鈴音は薄く笑い、地を蹴った。そして、吹き飛ばされた前方の僵尸を斬る。
 斬撃によって切り裂かれた身体から、血のように青い鬼火が噴き出す。
 ある意味でのカウンターか。鈴音は首を傾げるようにして、噴出した鬼火を回避。
 直後、背後から別の僵尸。斬られた片腕ごと蛮刀を握りしめ、振った。
 狙いは袈裟懸け。鈴音は竜胆を背中に回し、刃を受け、そして弾く。
 敵が後退する。伸びた刀身は遠間など意に介さず、僵尸兵士を串刺しにした!
「いくらでも来い。スタミナ勝負なら負けんぞ?」
 刀身を鬼火が伝わるよりも早く、鈴音はその身体を微塵に裂いた。
 斬撃の余波が、死角に回り込もうとしていた別の僵尸兵士をバラバラにする。
 死してなお操られる僵尸たちを解放するため、妖刀の冴えは増すばかりなり!

大成功 🔵​🔵​🔵​

堆沙坑・娘娘
どんな大層な悪党かと思えばその実態は作物泥棒…卑しい下賤の者でしたか。
そんな者にこれほどの武人たちが死体を弄ばれ操られているとは不憫な…挙句の果てには仙人まで…終わらせましょう。

神速の踏み込みからパイルバンカーで【貫通攻撃】。
その貫通攻撃の威力そのままに僵尸の躯内部で闘気を炸裂させ、跡形もなく消し飛ばすように爆発させます。
敵の攻撃は攻撃力重視のものを優先的に回避。

…遺体を残せず、申し訳ございません。しかし、術を施された躯をまた利用させるわけにはいかないのです…そして、このように成り果てた姿をこれ以上晒させていいわけがない…いずれ黄泉にて詫びましょう。

『暗黒料理人』…あなたの末路は豚の餌です。



●死して屍拾う者なし
 作物泥棒に狩り場の占有。
 暗黒料理人の『こちら側での』仕業は、なんともしょっぱいものばかりである。
 お題目を掲げて都を騒がす悪党に比べれば、実にチンケなものだろう。
 ……問題は、悪党としての力量がその仕業に見合っていないことだ。
 現にこうして、すでに相当量の死者が僵尸として操られてしまっている。
 そのことを、堆沙坑・娘娘は哀れみ……そして同時に、憤った。

「卑しい下賤の者に、これほどの武人たちが死体を弄ばれてしまっているとは。
 挙げ句の果てには仙人まで……せめて、私のこの神仙拳で終わらせましょう」
 娘娘はパイルバンカーに杭を装填し、僵尸兵士の群れと向かい合った。
 眼窩の奥に炉の炎めいて鬼火を燃やす、土気色の肌の僵尸兵士たち。
 手に手に使い慣れた武器を持ち、身構えるその姿はあきらかに達人のものだ。
 墓場の空気を思わせる独特の穢れた内功が、びりびりと肌を震わせた。
「――行きます」
 仕掛けたのは娘娘だ。僵尸兵士は、恐るべき反射神経でそれに反応する。
 神速の踏み込みに対し、後の先を得た戟の刺突! 娘娘は間一髪で矛先を躱す!
 突き出された鋼とパイルバンカーがぶつかり、ギリリと火花を散らした。
 娘娘は小柄さを活かし、身をたわませるようにして懐に入り込む。
「……遺体を遺さず、申し訳ございません……ッ!」
 パイルバンカーの鋒が腹部に押し付けられる。娘娘は引き金を引いた。
 ドウンッ!! と炸裂音。流し込まれた闘気が、僵尸兵士の肉体を内側から吹き飛ばす。
 死体はくの字に折れ曲がって大きく吹っ飛び、そして空中で四散した。
「崩裂(パァンリィエ)。……術を施された躯を、また利用させるわけにはいかず。
 なによりも、このように成り果てた姿を、これ以上晒させたくはありません」
 独白する娘娘の首を刎ねようと、背後に回った僵尸兵士が蛮刀を振るう。
 横薙ぎの剣閃。娘娘は地面に伏せるほどに身を低くし、斬首を回避。
「いずれ黄泉にて詫びましょう……ですが、いまは」
 娘娘はパイルバンカーの杭を地面に突き立て、それを支柱にぐるりと回転する。
 加速を得た蹴り足を僵尸兵士の鎖骨付近に叩き込む。骨が砕ける手応え。
 しかし、死体は痛みを感じない。細い足を掴み、逃げられないようにしてしまう!
「生前のあなたならば、きっとそんな野獣のような真似はしなかったでしょうに」
 ここまでが娘娘の作戦だ。彼女は掴まれた足を支えにパイルバンカーを抜いた。
 そして敵が蛮刀を振るうより先に、自由になった鋒が死体の脳天を貫く。
「"暗黒料理人"……あなたの末路は、豚の餌です。必ず、討ち果たします」
 決意を込めた闘気が、僵尸兵士の脳天からつま先までを駆け抜けた。
 死体が四散し、娘娘は解放される。重力を感じさせない動きでふわりと着地。
 暗闇からさらなる気配を感じ、娘娘は振り返る。敵はいまだ無数。
「あなたの下劣な暗黒料理とやらが踏みにじったものが、どれだけ重いか。
 それを、私の武を以て味わわせてあげましょう。死した彼らの分までも」
 冷たく澄んだ人形の瞳の奥には、悪党への怒りが燃えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎

あの人の言っていた僵尸軍団だな、この洞穴の前に貴方方の魂を解放する
貴方方の同胞の願いでもある、絶対に果たさせてもらう
どうか穏やかで良き眠りを

POWで判定
情報収集の時に聞いた仙人の同胞を【視力】【暗視】で探して勝負を挑む
敵からの攻撃は銀腕を【武器改造】で盾にして【盾受け】【オーラ防御】で防いだり、盾の表面のみを液状化させて【受け流】す
多少のダメージは【覚悟】して受ける
自分は籠手を付けた本来の腕で【怪力】【鎧無視攻撃】【貫通攻撃】を伴った指定UCで攻撃
倒すことが出来れば孔雀輪の力で炎を出し敵を【焼却】して魂を解き放つ
余裕があれば拱手を行い、少しの間黙祷する



●魂の解放のために
「……あなたが、話に聞いていた仙人の同胞だな」
 一見すると見分けのつきにくい僵尸軍団の中にも、かすかな差異はある。
 暗黒料理人によって捻じ曲げられた死人の相貌……その内のほんの小さな違い。 同じ死人(デッドマン)であるルイス・グリッドでなければ気づけないような。
「あなたがたの同胞の願い……それは、あなたがたの魂を解放することだ。
 俺は、あなたがたに穏やかで良き眠りを迎えてほしい。だから、勝負してくれ」
 ルイスの言葉は、喜怒哀楽を失った僵尸兵士には届かない――はず、だった。
 しかし、肉体に刻み込まれたサガが、その言葉によって揺り動かされたか。
 あるいは、穢された魂が、解放を謳うルイスの言葉に突き動かされたか。
 元仙人の僵尸兵士たちが、ルイスの前に立つ。ルイスは何も云わずに頷いた。
 戦うことは止められない――しかしせめて、その最期に名誉ある終わりを。
 ルイスはその想いを胸に、銀の腕を突き出すように構え、踏み込んだ!

 しかして、初手は僵尸兵士が取る。後の先、というやつだ。
「!」
 ルイスは踏み込みに合わせて繰り出された刺突と斬撃を、変化した銀腕で受ける。
 矛の交差点をこじ開けるように、腕をねじり……盾化した表面を液状化。
 僵尸兵士の攻撃は力の流れを狂わされ、ぬるりとうけんがされてしまった。
「その隙、もらった……!」
 ルイスは横からの攻撃を認識した上で、被弾覚悟でさらに一歩踏み込む。
 別の僵尸兵士の矛が脇腹をかすめる。しかし同時にルイスの篭手も、到達!
 一体目の僵尸兵士が、一撃必殺の破壊力を受け、くの字に折れ曲がって吹っ飛んだ!
「……ぐッ!」
 だが、無茶な攻撃だ。ルイスは脇腹をえぐられたことで体勢を崩した。
 3体目の僵尸兵士が、鎖鎌を振り上げ空中からルイスに襲いかかる。
 ルイスは両手を突き出し、逆さ立ちの要領で隙を殺し、さらに足を繰り出す。
 振り下ろされた鎌を逆さ蹴りで弾き、両腕の力で身体を跳ねさせた!
「俺も、無傷であなたがたを倒せるとは……思っていないッ!」
 空中で天地を元通りにしたルイスは、銀の腕を鈎のように変形させる。
 その鈎で矛を受け止め、ひしぎ、破壊。落ちながら篭手で手刀を繰り出した。
 落下速度を乗せた手刀は、僵尸兵士の鎖骨から胴体までをばっさりと叩き割る。
 即座に胴体から手刀を引き抜き、振り向きざまの裏拳。3体目の頭部を破壊。
 一瞬の攻防ののち、身体を破壊された僵尸兵士はほぼ同時にどさりと斃れた。
 その屍は孔雀輪の力で生まれた炎によって、盛大に燃え上がる。
「……どうか、安らかに眠ってくれ」
 ルイスは拱手と黙祷を捧げ、そしてすぐに駆け出した。
 弔いの炎は、天へその手を伸ばすように燃え続けていた……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

劉・涼鈴
話に聞いた武装したキョンシーの群れってのはこいつらだね!
桃も食べて元気いっぱい! いっくぞぉおおおお!!

覇王方天戟をぶん回してながら突撃!!
持ってるのは偃月刀? 面白い! ついでも蛇矛持ちも呼んで来ーい!
【怪力】で戟を叩き付ける! 【なぎ払って】【蹂躙】だー!
敵の攻撃を戟で【受け流し】て、硬質化した肉体を蹴り砕く(鎧砕き)!
蹴っ飛ばした先の敵を巻き込んで戟で叩き潰す!!
おらおらおらー! 私を止めてみろー!

劉家の奥義を骸の海への土産にしてあげる!
高まったテンション(気合い)で膨れ上がった【覇気】を練り上げて、【劉家奥義・獅吼爆裂覇】!!
ぶッ飛べー!!



●唸れ、劉家絶招!
 ぶおんぶおん、と――覇王方天戟の分厚い刃が、威圧的に空を切る。
 僵尸兵士の群れは、劉・涼鈴を取り囲み、じりじりと間合いを測る構えだ。
 いつ何処から襲いかかってきてもおかしくない、一触即発の気配。
 だが、涼鈴は不敵に笑っていた。この程度の苦境は飽きるほど味わってきた。
 それに彼女は、義憤や不安よりも……ワクワクと高揚に溢れている!
「桃も食べて元気いっぱいだからね、そう簡単に私は負けてあげないよ!
 そっちが来ないなら……こっちからいっくぞぉおおおおッ!!」
 涼鈴は裂帛の気合をあげ、だんッ!! と地を蹴って真正面に突撃した。
 あまりの速度に、駆け抜けたあとに風の空白が生まれ、大気をかき混ぜる。
 正面に立つ僵尸兵士は、涼鈴の吶喊に対し、反応がわずかに遅れた!
「まず、ひとつッ!」
 覇王方天戟が振るわれると、僵尸兵士の穢れた身体は真っ二つになった。
 そのときにはすでに、涼鈴は死角を取ろうとする二体目の気配を感じている。
 死体の残骸を吹き飛ばす勢いで方天戟を振り回し、横合いからの斬撃をガード。
 力によって弾くのではなく、柔の要領で偃月刀を……受け流す!
「ふたつ!」
 蹴り足が地を砕いた。斜めに振り上げられたつま先が敵の脇腹に突き刺さる。
 外気功によって硬質化した蹴りは、鉄球を超高速で叩きつけるようなものだ。
 くの字に折れ曲がった肉体は恐るべき速度で吹っ飛び、別の敵を巻き込む。
「おらおらおらー! 私を止めてみろー!!」
 涼鈴はボウリングのようにふっ飛ばされた敵の群れに、自ら飛び込んだ。
 そして敵が体勢を取り直すより先に、懐で覇王方天戟を振るい、叩き潰す。
 まさしく一騎当千の戦いぶり。鎧袖一触とはこのことか!

 しかし、僵尸兵士とてただやられているばかりではない。
 蛇矛を携えた敵が二体、涼鈴を前後から串刺しにしようと襲いかかった。
 どちらか一方に対処すれば、もう一方が涼鈴の胸部か腹部を抉るだろう。
「すぅー……っ」
 涼鈴は鋭い呼気とともに、大きく空気を肺に取り込んだ。
「劉家奥義……獅吼、爆裂覇! ぶッ飛べーッ!!」
 空気は血液とともに体内を駆け巡り、爆発的な量の覇気を生み出す。
 それは経絡を巡って鋼の如く練り上げられ、両掌から迸った。
 涼鈴はそれぞれの掌を前後の敵に向け、圧縮された闘気によって迎撃!
 万軍をも薙ぎ払う威力を受けては、僵尸兵士とて無事では済まない。
 その銘の如くに死人は爆裂し、穢れた瘴気をも闘気が洗い流してしまった!

大成功 🔵​🔵​🔵​

黎・嶺依
【黒幇】
道理で顔を見ないと思えば……
霞月、骸燐。楽にしておやりなさい

僵尸の中に、見知った仙人の顔をいくつか見つける
呆れたような声と顔
だが、仙力を帯びた羽衣だけが怒気を孕んだかのようにはためく
仙術によって羽衣から仙力を放ち、霞月(の飛)と骸燐を強化・支援する

気迫の伴わぬ者を前に立たせようとは思わぬ。骸燐の巻き添えになるやもしれぬゆえな
それに…仙界には霞月の知己も多いと聞く
わらわも彼奴も、知った顔を手にかけたくはあるまい…

すまぬな、骸燐。汝にはよく働いてもらわねばならぬ

同胞よ、先にいっておくれ
いずれわらわも朽ちた時には、汝らの後を追うとしよう


尸・骸燐
【黒幇】
死して尚動き回るだなんて、そんな世の摂理を見出してしまった彼らを
また再び土の中に戻してあげる。
…………ねぇ、自分で言ってて何なんだけど全力でわたしに突き刺さった。どうしよう。
まぁ良いや、とりあえず全力でぶん回していいみたいだから、行くよ

老大(嶺依)からの支援を受けつつ、全力で方天戟をぶん回して敵を叩いていくよ
宿星天剣戟を使用して敵を撹乱しつつ、力任せで武器をぶん回していくよ


黎・霞月
【黒弊】

わァお、死屍累々……いやこの場合扱いは生きてるカウント?どっちかなァ?
まあほら骸燐、刺さったのは引っこ抜いて向こうに投げ返しときなァ
自意識あるのと無いのじゃ大違いじゃんね?

ん、でェ……ちょっと真面目にお仕事しますかァ、嶺小姐お怒りみてェだし
我(オレ)の可愛い飛、出ておいで
さァさ、好きに暴れておいでェ
だァいじょーぶ、天雷に討たれりゃ自分が死ンでたことも思い出すってェ
そんなダッセェ姿で居ねェで、さっさと土にお還りよ
ちょびっとばかし、飛の腹の中に入る奴も居るかもしンねェけどさァ

えー、我、前衛嫌ァい
後ろでぬくぬくしてるよォ、我が頑張らなくても飛が前に出るから良いでしょー
ふは、嶺小姐は優しーねェ



●時の閲したその果てで
 暗黒料理人の悪どさを呪うべきか、はたまたかつての知己を憐れむべきか。
 いずれにせよ、僵尸兵士の中には黎・嶺依の見知った相手も混じっていた。
「道理で顔を見ないと思えば……まったく、何をやっておるのだか」
 呆れたような声と顔で、頭を振る嶺依。
 だが、尸・骸燐と黎・霞月は気付いていた……彼女の羽衣の不自然さに。
 風もないのにはためくそれは、ただ仙力を帯びているから、というだけではない。
 ……嶺依の心の奥の静かな怒気が、無意識にそこに現れているのだ。
 さもありなん。いかな理由であれ、昔なじみをこんなざまに変えられたのである。
 もっとも彼女らの中にも僵尸はいるのだが、そこはそれ。
 自意識を保ち、第二の人生を楽しむ気楽な僵尸武侠と、自我を奪われた兵士。
 どちらがマシであるかは一目瞭然。同じ死体と区別するには違いすぎる。
「霞月、骸燐。これ以上は見ていられぬ、楽にしておやりなさい」
「はァい、嶺小姐。今回ばかりは真面目にお仕事しますよッと」
 霞月は間延びした返事をしつつ、身構える。纏う気迫がわずかに変質した。
 武に秀でた者でなければ、そのかすかな違いには気付けないだろう。
 彼もまた、彼なりに真剣に戦うつもりなのだ。それゆえの鋭い殺気である。
「世の摂理を乱した者たちを、再び土の中へ……って、こりゃダメだ。
 それっぽく振る舞おうとしてみたけど、全力でわたしにも突き刺さってるもん」
 対する骸燐は、あくまで普段どおりの天真爛漫な様子で冗談めかした。
 同じ僵尸――内面は大きく違えど、その枠組み自体は、覆しようがない。
 死人が死人を殺す。そのアイロニーに、骸燐はへらりと笑みを浮かべた。
「まぁ、いいか。全力でぶん回していいみたいだから、行くけどさ」
「そういうことォ。これを見過ごす理由は、まあないじゃんね?」
 霞月の言葉に、こくりと頷く。死人であることは邪悪を許す理由にならない。
 彼女が立つのは生者の側であり、ならばこの場での衝突は必至である。
 嶺依が見知った者、見知らぬ者……僵尸兵士はすべて無機質に身構えた。
 揺らめく闘気は穢れた死人のそれ。自我を奪われた人形のような虚ろな内功。
 正と負の気が見えぬままにぶつかりあい……どちらともなく、動いた!

 まず機先を制したのは、驚くべき速度で間合いを詰めた骸燐である。
 その敏捷さは、彼女が元来持ち得る武功をはるかに越えていた。
 それもそのはず……実はふたりの背を、嶺依の仙力が後押ししているのだ。
「すまぬな、骸燐。汝にはよく働いてもらわねばならぬぞ」
「わかってるよ、そのための私だから!」
 "借刀殺人の計"――仙術や歌、あるいは舞によって味方を鼓舞する術式だ。
 嶺依がその気になれば、望まぬ者を無理矢理に戦いに駆り出すことさえも出来る。
 つまり味方を鼓舞するだけでなく、敵を同士討ちさせることも出来るというもの。
 その支援を受けた骸燐の膂力は、常の倍……否、ともすればそれ以上にも達するか!
「せぇいッ!!」
 敵陣に飛び込んだ骸燐が、全力で方天戟を振るう。
 その結果起こるのは、局所的な竜巻が現出したような破壊である。
 大地を砕くほどの薙ぎ払いは、土を巻き上げて死体を引き裂き、散らした。
「さァさ、好きに暴れておいでェ――我の可愛い飛よ」
 地より立ち上るのが破壊の竜巻ならば、空から落ちるのは神の怒槌。
 霞月の招来した白額虎『飛』の起こした雷が、嵐を貫くように降り注ぐ。
 その天雷もまた、嶺依の仙力によって威力を増幅されている。
 大地を穿つ雷光を浴びた僵尸兵士は、全身が黒焦げになり音もなく崩れ去った。
「そんなダッセェ姿でいるよか、さっさと土にお還りよ。
 ……ま、ちょびっとばかし、飛の腹の中に入るやつも居るかもしンねェけどさァ」
 雷を纏った白額虎は、天を支配する帝のごとく悠然と頭上を舞い、雷撃を起こす。
 かと思えば猛禽のように急降下し、天雷を逃れた僵尸兵士をがぶりと噛み砕いた。
「……わらわのわがままを聞いてもらってすまぬな、霞月よ」
「ふは、嶺小姐は優しいねェ? 別に気にしてねェよ、我は」
 と噴き出す霞月の内面は、言葉と表情からは測り難い。
 しかし、僵尸兵士の中に紛れた知己は、何も嶺依のものだけではない。
 霞月にとっても、きっと見知った相手がいるのは間違いないのだ。
(――同胞よ、先に逝っておくれ。いずれわらわも朽ちし時に後を追うでな)
 嶺依はそれ以上無粋を口にせず、心のなかで知己らに哀悼を捧げた。
 僵尸兵士は無機質な人形のごとく、天雷と方天戟が起こす破滅に抗おうとする。
「全部吹き飛ばしてあげるからさぁ、全部忘れてさっさと骸の海に還りな!」
 ただ純然とその力を振るう骸燐が想うのは、嶺依と同じ哀悼か、あるいは。
 少なくともその宿星の矛は、僵尸兵士たちにとって慈悲深い一撃と言えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱酉・逢真
坊と/f22865
会話)ああ、不死になっちまや俺の手は届かん。ならばとォぜん《あの女》の手中さ。陰陽つりあい取れての此の世。死から逃げりゃア生に囚われる。"いのち"は常に進むもの、過去の不死とて未来で殺すさ。
行動)坊の結界に俺の結界、重ね強めて僵尸ら隔離だ。弓を鳴らしてくれるかい。清浄さが増すはずさ。眷属ども、湧き出ずりて結界をかこめ。その目であますとこなく奴さんら見張れ。俺は坊の影から出て、奴さんらの不浄を殺してやろう。俺ン中にある《あの女》のチカラだ。タマシイみィんな光に熔かして、残り転がるは純なる遺骸(*むくろ)。あァア…あらゆる意味で疲れたぜ。坊ォ、影いれとくれ。いまァ光を見たくねェ。


雨野・雲珠
かみさまと/f16930

仙人さまも僵尸になっちゃうんですねえ…
トンチキ系オブリビオンかと思ったらとんでもない、
一刻も早く止めなくては

僭越ながらお力添えを!
【四之宮】で相手の足を止めながら自分は極力距離をとり、
梓弓【花鳴り】の弦を弾いて破魔と浄化の結界をばご用意いたしましょう。
二重三重、五重九重。十重十重に守り候え…

できればこの世界の弔い方で送ってさしあげたいものです。
無事行き来できるようになったら、
仙境人界のどちらにもお知らせしますから…
と静かに骸に手を合わせます。

あっはい。俺の影なんかでよろしければ!
お疲れ様です、とお見送りして思わずしみじみします。
最近めっきりふしぎ慣れしてる気がする…



●陰中に陽あり、死の中に生あり
 たとえ陰陽の調和を経て仙人に至った者でさえ、生命の軛を外れない。
 ならばこのように、オブリビオンの邪術で死人と化すことも道理である。
 仙人がわずかな現世への執着から凋落する寓話は、枚挙にいとまがないのだ。
 もっとも彼らの場合、現状は邪悪な術で強要された不本意な不死であろうが。
「一刻も早く止めねばなりませんね、かみさま」
「そォだなァ、"死せざる死"ってヤツは、俺としちゃアとっても困りモンだ」
 雨野・雲珠の言葉に、朱酉・逢真は陰気な笑声で答えた。
「不死になっちまや俺の手は届かん、ならばとォぜん《あの女》の手中さ。
 陰陽生死、釣り合い取れてのこの世。死から逃げりゃア生に囚われる、ってな」
「ならば、我らの未来創る力を以て過去を殺す……ということですね?」
「ひ、ひ。坊は利口だねェ。ンじゃま、ひとつ弓を鳴らしちゃくれねェかい」
「……僭越ながら、承知いたしました!」
 襲いかかる僵尸兵士の攻撃を身軽さで躱し、雲珠は大きく距離をとった。
 そして梓弓『花鳴り』の弦を、琴を爪弾くようにぴん、と弾く。
 浄めの儀式として知られる鳴弦である。響く音は淀んだ大気を静かに洗い流す。
 反響した音が調和し、混じり合い、周囲に見えざる破魔の結界を築いた。
「二重三重、五重九重。十重十重に守り候え……」
 嫋、嫋、嫋――。
 死人にとって、これほど耳障りで忌々しい響きはないだろう。
 僵尸兵士は誘蛾灯に惹かれる羽蟲めいて、没入する雲珠へと襲いかかる。
 しかしてその足元を土中から貫くのは、箱宮から蠢き出でた桜の根であった。
 引きちぎるには、精力に溢れた桜の根はあまりに強靭に過ぎる。
 仙界の気質が桜に合っているのか、根の張る力は普段よりも強いのだ。

「ひ、ひ……上出来、上出来。あいにく俺は浄めは不得意だからなァ」
 影から滲み出るようにして、逢真がゆらりと姿を現した。
 紫煙くゆらす煙管を指揮棒よろしく振るうと、くっきりと結界が結界に重なる。
 それは可視化されるほどの強度を以て、足止めされた僵尸たちを隔絶した。
「さァて、こいつはちと……いや、だァいぶ疲れンだが……」
 逢真はやおら服の胸元をはだけ、己の心臓を抉り出すように身体を貫いた。
 はたして引き出されたのは心の臓にあらず……それは、光である。
 物質でないはずなのにそこに在る、固着化された光としか言いようのない何か。
 つまりは、生(き)そのもの。あるいは、陽(ひ)そのものだ。
「そらよ。毒の毒、病の病は神威、てな。その不浄、殺し尽くしてやらァ」
 無造作に投げ込まれた光は、結界の中を白く染め上げるほどに炸裂した。
 水をやりすぎた植物が枯れてしまうように、過剰な生の力はかえって死を齎す。
 結界は僵尸からふたりを守るためのものではない――あの光から守るためのものだ。
 獅子身中の虫とは、まさにこのこと。《あの女》のチカラは目を灼くほどに忌まわしい。
「……できれば、この世界の弔い方で送ってさしあげたいものです」
 鳴弦を終えた雲珠は立ち上がり、光に解けゆく魂へと手を合わせた。
 戦いが終わったときには、必ずその最期を伝えよう、と彼は心で誓う。
 死者は何も云わない――穢された魂は消えて、そこに遺るはただの遺骸のみ。
「……坊ォ、影いれとくれ」
「あ、はい! 俺の影なんかでよろしければ!」
 逢真は心底しんどそうな青ざめた顔で、ぽつりと呟いた。
「いまは光なンざ見たくねェ……」
 言い終わらぬうちに、その身体は再び影へと染み込んで消えていく。
「お疲れ様です――あれほどのものを身の裡に残されておられては、大変でしょうね」
 言いつつも、雲珠は浄められた遺骸たちを振り返り、小首をかしげた。
「それにしても俺、最近めっきりふしぎ慣れしているような……」
 つるむ神が神だけに、さもありなん。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジン・エラー
【甘くない】

アァ~~~~~ララララァ~~~~~
雁首揃えてまァ~~~~~~~
ア?別にそォ~~~いう意味で言ってねェよォ
ギャラヒヒャ!!いッくら動いてもそのデケェ脂肪は縮まねェ~~~~ぞ?

餡子だか黄粉だか知らねェ~~~けどよォ~~~~~
まァ~~~そいつのせいでお前らこォ~~~なっちまってンだろ?
どォ~~~じょォ~~~~するぜ
だが運が良かったなァ
オレが来てやったぜ

見たとこ死に体だからなァ~~~ンも感じねェ~~~って具合だけどよ
痛みだの恐怖だの、ンな生半可なモンじゃねェぞ
オレの光はな。

バカ言えよエリシャ
お前が惚けてンだろうが


千桜・エリシャ
【甘くない】

あら、僵尸がこんなに沢山
これならいくら首をいただいても問題ありませんわよね
違いましたの?まあどちらでもいいですけれども
食後の運動にはちょうど良さそうですわ
その脂肪とはどこのことを仰ってるのかしら…?
まったく…

そちらの首魁はお料理で人心を掌握するようですが
人の心を堕とせるのはお料理だけではなくってよ
ふわりと桜を吹雪かせて
傀儡の心だろうと私にかかれば思いの儘
僵尸さんたちを魅了しましょう
さあさ、あなた達の武勇を私に見せてくださいまし
勝った方にはご褒美をあげますわ
私が直々に首を斬り落として差し上げましょう

あら、ジンさん
見惚れてしまいました?なんて
もう、素直じゃないのね

…まあ、お互い様かしら



●魅入らせ斬って、呆け惚けるは――
 人の心はうつろいやすいもので、時には簡単に魅入られ囚われてしまう。
 うつくしいもの。
 きよらかなもの。
 あるいは――ぞっとするほどに艶やかな、舞い散る桜の吹雪などに。
「そちらの首魁は、お料理で人心を掌握するようですが……人の心を堕とせるのは、お料理だけではなくってよ? さあ、私の思いのままに踊ってくださいまし」
 千桜・エリシャの蠱惑的な声は、見た目だけでなく耳朶からも心を蕩かせる。
 僵尸兵士どもに自我があれば、さぞかし情けない顔を晒していたことだろう。
 無機質な人形めいて心を殺されていたのは、はたして連中にとって幸か不幸か。
 仮に心を保っていたとして、吹きすさぶ桜吹雪の魔性に抗えるはずもなかったが。
「どォ~~~じょォ~~~するぜェ~~~、可哀想な奴らだよなァ~~~?
 餡子だが黄粉だか知らねェ野郎のせいで、こォ~~ンなざまになっちまってよォ、
 かと思えば今度は操り人形ときた。まったく、同情しちまうぜェ~~~」
 と、ジン・エラーは、これみよがしに皮肉げに言ってみせた。
「なんとか言うヤツの兵隊にされンのと、お前ェ~に操られンの、どっちがマシかねェ?」
「……随分なお言葉ですわね? だったら、早く楽にしてあげればいいのではありませんの?」
「ギャラヒヒャ! そう目くじら立てンなよォ、図星突かれてご立腹かァ?
 ……あァいや、腹はともかくもうちと上の脂肪は据え置きだったか! ギヒャハ!」
「い、いきなり何を言い出しますのっ!! あと、太ってはいませんから!!」
 生娘めいて顔を赤らめ胸元を隠すエリシャに、ジンは爆笑する。
 これだけの数の死人を魅入らせておいて、こういうことをやるからこの娘は面白い。
 否、あるいは己も魅入られているのか――馬鹿げた考えだと脳内で一笑に付す。
「まァなンでもいいさ――お前らは運がいいぜェ、オレが来てやったンだ。
 せいぜい操られて、争いあって、ンでこいつに首を斬られちまうがイイさ。
 斃れたヤツもそうでねェヤツも、全ェ~~~~~ン員、オレの光で救ってやる」
「さて……そんな"かけら"が遺るかしら?」
 エリシャは一転して残酷な笑みを浮かべ、そして僵尸たちに告げた。
「さあ、あなたたちの武勇を私達に見せてくださいまし。お互いに争いあって」
 その言葉を皮切りに、死人同士の無益で残酷な戦いが始まった。

 痛みを知らず、恐怖を知らず。
 武芸の達人たる僵尸兵士の戦いは、ともすれば上質な劇のよう。
 桜吹雪の中で踊るように殺し合う姿は、残酷だが同時に美しくもある。
 だが、この場でもっとも残酷なのは、それを笑んで見守るこの女だ。
「ああ、素晴らしいですわ……さぞかし年季と想像を絶する鍛錬を重ねたのでしょう。
 けれどそのすべてはオブリビオンに奪われ、捻じ曲げられ、この有様……」
「よォ~~~~く言うぜ、捻じ曲げてンのはどこの誰だろうなァ~~~??」
「うふふ……私はただ、あるべき武勇を再び振るっていただいているだけですわ」
 魅了が解けたか、あるいは我こそ勝者なりとアピールするつもりか。
 僵尸兵士が一体、戦いの輪を抜けてエリシャにびょうと戟を突き出した。
「あら」
 エリシャはふわりと風に舞う花びらのような軽やかさで、矛を躱す。
 そして淀みない動作で敵の横を取り、そのまま風のように後ろへと吹き抜けた。
「ふふ、いけませんわ早とちりは……けれどこれで、まずひとつ」
 どさりと、首から下の胴体だけが倒れ伏す。
 刃に乗ったままの頸に触れ、エリシャはうっとりと陶然とした笑みを浮かべた。
 ひとつ、ふたつ、みっつ――収穫が始まった。頸が、刎ねられていく。
「うふ、ふふふ……うふふふふ!」
「……まったく、自分勝手で傲慢で、欲深くて卑しい女だよなァ?」
 ジンもまた傲慢にして驕傲なる光を纏い、片眉を釣り上げた。
「欲しくてたまらねェだろ? だが、ダメだ。やらねェ、オレのモンだぜ。
 ――代わりに、救済(すくい)をくれてやる。オレの光に、屈して還りな」
 光が死体を飲み込み、救済という名の終わりをもたらす。
 光と、桜。己の意思を曲げることを決してしない、傲慢で自分勝手なエゴ。
 それが並び、死体というエゴを失った哀れな人形たちを終わらせていく。
「あら、ジンさん……見惚れてしまって、あなたも参加したくなったかしら?」
「バカ言えよ、エリシャ――お前が惚けてンだろうが」
「もう、素直じゃないのね」
 言いながら、エリシャは刃を滑らし、首を狩る。
 それもお互い様かしら、などと、光の眩さに目を細めて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
【炊事課】
本格的に任務開始って奴だな
今度こそ気持ち良ーく酒飲ませるためにも
とっとと退いてもらわねえとな
な!匡!!

蛇竜の黒槍は地に突き立てて
手を離してみせようか
攻撃を躱す必要だって最低限だぜ
何しろ穂結の炎が燃やしてくれるし――

任せろ穂結
起動術式、【欺瞞の鏃】
匡を狙おうとするのを最優先に
背後から知覚外の刃で切り刻んでやるとしよう
如何に芸達者な武人といえど、聞こえも見えもしない呪いを見極めることなぞ難しかろう?

私の方を狙うのは匡が何とかしてくれるだろ
どっちも遠隔攻撃メインなんだし、迫って来た奴より遠くの奴の方がぶち抜きやす……
ごめんそれ私だけだったかも……
ま、まあこれが信頼って奴だよ(渾身のドヤ顔)


穂結・神楽耶
【炊事課】

桃源郷の景色には相応しくないですし、
とっとと片付けてお花見に戻りましょう!
そうですよー。結局匡さん飲んでないですもん。

それでは最前列に失礼しまして。
いくら達人の体といえ死体になっているのなら。
荼毘に伏して差し上げましょう――【深緋華裂】。
空に一直線、炎の防衛線を敷いて迎え撃ちます。
いかな痛みを感じないとはいえ、灰と化してしまえば動かせないでしょう?
コピーしたって炎ならばわたくしが従えられますから。
ゾンビ以外を燃やしはしません。

それでも抜けてきた敵は…
匡さん、ニルさん!お願いします!
後衛が安心して狙い定められるようにするのが前衛の役目です。
…ふふ、相変わらずお二人が仲良くて何よりです。


鳴宮・匡
【炊事課】


その「飲ませる」って俺相手の話してる???
あ、やっぱり
……いやまあ、お前いるし
全部片付いた後ならいいけどさ

痛みも恐怖もない――なんてのはただの弱点だろ
どちらも生存のための機構なんだから

狙うのは頭だ
特に炎で巻かれて態勢が崩れた敵を狙うのが早いか
吹っ飛ばして止まらないようなら腕、脚と落としていくよ
それならいずれ炎に巻かれて終わりだろ
ニルの方を狙ってるやつも、早めに落としておきたいな
俺はともかく、ニルは術師だ
近づかれすぎるのはうまくないだろうし

……俺は別に、近かろうと遠かろうと問題ないぜ
でもこっちに気を取られてる敵をニルが撃ってくれるなら
多分そっちの方が効率的だろうし
助かってるよ、サンキュ



●炊事課の三人、死体相手に大立ち回る
 ぱかん、と乾いた音を立てて、僵尸兵士の頭が吹っ飛んだ。
 腐った脳漿が地面に飛び散り、顎から上が欠損した死体がどうと倒れる。
 鳴宮・匡の狙撃が脳天に命中した形だ。彼の狙いならばこの程度は朝飯前。
 しかし僵尸兵士とて、棒立ちでされるがまま撃たれたわけではない。
 鼬もかくやの身軽さで飛び跳ねて、その目を欺こうと縦横無尽に動いていた。
 死体ゆえ、痛みによる筋力の限界というものが、僵尸兵士には存在しない。
 そこに生前の武功が組み合わされば、もはやその体捌きは烈風の如し。
 もっとも匡の目は、風さえも見極めて貫いてしまう死神のそれなのだが。

 僵尸兵士を"殺す"のは、来るとわかっている弾丸だけではない。
 ニルズヘッグ・ニヴルヘイムが生み出す知覚外の刃――『欺瞞の鏃』。
 それは風を起こさず、音も生まず、そもそも感じ取ることさえも出来ない。
 武器を手放したニルズへッグの姿は、無防備・丸腰のそれにしか見えまい。
 その欺瞞から繰り出されるミストルテインは、ゆえに必中・必殺。
 ……あるいは僵尸兵士が死体ではなく、生前の自我を備えた達人であれば。
 地に黒槍を突き立ててみせるニルズへッグの振る舞いを、訝しみはしたやもしれぬ。
 察しがよければその意図を感じ取り、回避は不可能としても防御は出来たかもしれない。
 しかしあいにく、奴らは死人。恐怖を感じ取ることのない無敵のはずの兵隊。
 それゆえに、ニルズへッグの行動の裏を感じ取ることも、出来ないのだ。
 達人でさえ回避不能・防御困難の刃を、エゴなき人形が避けられるはずもなし。
 頭の爆ぜた死体の隣に、ずたずたに切り刻まれた死体が転がった。

 そしてそれらを、空に一直線に敷かれた炎の防衛線が覆い、燃やしていく。
 地に満ちる炎の名を、あるいは穂結・神楽耶と云った。
 揺らめく炎の熱ひとつ、燃えて散りゆく火の粉の一つ一つまでもが彼女と同義。
 憑焔されし炎は、拡大された神楽耶自身であり、また彼女の従僕でもある。
 いかな武功とて、それを欺いて先へ征くことなど出来るはずもなし。
 そして刀神の無名なる銘のもと従った炎は、慮外のものを燃やしもしない。
 つまり敵にとっては矛となり、味方にとっては壁となる都合のいい境界だ。
 深緋華裂なる炎は、それを越えようとした愚か者を炎獄によって罰する。
 斃れた死体を燃やすのは、炎の裁きではなく神楽耶の慈悲。
 せめてその屍を弔い浄めようという、彼女なりの哀悼のやり方だった。

 かくのごとくして、炊事課の三人は多数相手に大立ち回りを繰り広げる。
 銃撃が頭を吹き飛ばし、知覚外の呪われた刃が身体を切り裂き、炎が防ぐ。
 はたして死体となった彼らが本来の生者であれば、そこに何を浮かべたか。
 優れた連携と術式に対する称賛か。
 はたまた、隙のない攻防に対する嫉妬か。
 達人たちはきっと臍を噛み、その立ち回りに膝を屈しただろう。
 哀れな死人たちは降伏を知らぬ。ゆえに、ただ愚直に挑み続ける。
 エゴを通すための行為であれば、それも気高くいじましいものだ。
 だが自我なき捨て身は、ただの蛮勇にさえ劣る――つまりは、無為である。
「まだまだ現れますね……とっとと片付けて、お花見に戻りましょう!」
 前衛を務める神楽耶は、出し抜けに素っ頓狂なことを言い出した。
「いや、いま戦闘中だろ……しかも、まだ目標は居るんだからな」
 匡が呆れた声音で言うが、意外にもニルズへッグが神楽耶の応援に立った。
「そりゃわかってるさ。けど今度こそ、気持ちよーく酒を呑ませたいだろ!」
「そうですそうです、まだ匡さんは呑んでないんですから」
「……ちょっと待て」
 匡は呆れたように頭に手をやった。
「気持ちよく"呑みたい"ならまだわかるけど、"呑ませたい"ってなんだよ……」
「そのままの意味ですよぅ。ね、ニルさん?」
「応とも! そのためにも、頑張って敵をぶっ倒さねえとな!」
 なにやら間違った方向に気炎万丈なふたりに、呆れ顔になる匡。
「……まあ、お前がいるし、全部片付いたあとならいいけどさ」
「「本当(です)か!?」」
「いいから、まずはこいつら蹴散らすぞ。集中しろよ!」
「「もちろんだ(です)!」」
 喜色満面で戦いに戻るふたりをちらりと見やり、匡は呆れた笑みめいた表情を作った。
 向こうに回した死人に対し、こちらに並んだ仲間のなんと生き生きしたことか。
 冷えつきかけた己の心にも、その暖かさが伝わってくるようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

羅・虎云
引き続き、胡姉(f32667)と

生者のように動いていようとも魂無き骸、同情はしない
その骸を元の動かぬものにするだけ

胡姉は、怒っているのだろうか
……あぁ、その通りだな
往こう

旋刃を使用
破魔となぎ払いを組み合わせて胡姉以外の僵尸を指定して攻撃
届く範囲、全てにて斬り刻む
敵が多い内は旋刃を活用し、数える程度まで減少したら単体狙い

僵尸の目が使いものになっているかはどうであれ
花びらや蝶の攻撃だけでも十分妨害はできるだろう
あとは、任された

敵からの攻撃は得物による武器受けにて防御
複数であれば防いだ後になぎ払いにて距離を取る

……問題はない
仙人の成れの果て、死すれば威厳の欠片も無し
胡姉も、問題はないか


胡・蘭芳
引き続き、羅の若様(f32672)と

あらあらまぁまぁ
これは、死人への冒涜というものですわね
そうでしょう?若様

怒ってはおりませんよ?
怒っても、死人は返りませんもの

けれど、これ以上増やす訳にもいきません
お還りなさいな、あなた達

花蝶繚乱を使用
視界に入る敵を端から端へと
撫でるように芳烈を滑らせて対象を指定

召喚した花弁と蝶に基本の攻撃は任せましょう
目くらましも兼ねてくれると良いのですけれど
そうしたら若様の攻撃も通りやすいでしょうから

近接する敵は芳烈で叩けばいいでしょうか?
ふふ、翡翠は硬い石ですのよ?
ご注意なさいませ

敵の攻撃は結界術とオーラ防御で防ぎますわね?

……大丈夫でして?若様
はい、私も問題なし、です



●冒涜には鉄槌を以て
「……怒っているのか、胡姉?」
 羅・虎云の言葉に、胡・蘭芳はきょとんとした顔で首を傾げた。
「いいえ? たしかに、死人への冒涜は見逃せないものですわ、若様。
 ですが、私が怒ってなんになりましょう。怒っても、死人は返りませんもの」
「……そうか。ああ、そうだな」
 虎云は無粋なことを云った、と、非礼を詫びた。
「もはや同情はなし。私たちがすべきことは、動く骸を動かぬものに戻すだけだ」
「ええ、その通りでございます、若様。"出来ること"は、それだけですわ」
 覆水盆に返らずとはよく言ったもの。
 この桃源郷にあると、何もかもがうつろうことなく在るように思えてしまう。
 けれどもふたりは知っている――この世は、それほど優しくはない。
 いのちも、森羅万象も、時の流れによって無情に流され変わってしまうのだと。
 ゆえに人は、そこに儚さを見出し、美しさを感じ、心を遊ばせるのだ。
 死は避けられぬ。魔であれ人であれ、仙人であれ、獣であれ。
 だからこそ。その死を穢すものは、疾(と)く終わらせなければならないのである。
「往こう、胡姉」
「参りましょう、若様」
 ふたりの戦いが始まった。

 殺到する僵尸兵士の群れを覆ったのは、うんざりするほどの量の花弁と蝶だ。
 当然、自然のものではない――蘭芳の召喚した、光り輝くこの世ならざる群れ。
 花蝶繚乱。そのさま美しく、だが恐ろしく、この世のものにあらざる光景なり。
「ひらり、ふわり、咲いて舞う――さあ、どうぞ酔いしれてくださいまし」
 花弁は一見するとふんわりと軽やかに舞っているようにみえる。
 しかしてそれは目くらまし。実際のところ、花弁はそれ自体が鋭利な刃だ。
 蝶の羽ばたきは五感を惑わせて狂わせ、吹きすさぶ花弁の回避を困難にする。
 一時でも足を止めてしまえば、たちまち花弁は獲物をずたずたに切り裂く。
 かといって無理矢理に突破しようとすれば、がらんどうの隙を晒す。
 花弁を回避しようと身を伏せれば――そこへ、虎云の矛が来るのである。
「斬り祓え、祓業ッ!!」
 ごう、と風が唸った。刃が起こした"つむじ"が、死体を屍へと還す。
 生前の彼らならば、優れた武功でその起こりを読んだやもしれぬ。
 回避出来ずとも、携えた各々の愛剣愛槍によって、防御は出来たはずだ。
 その防御さえも刈り取るがゆえに、虎云の振るう『祓業』は恐ろしいのだが。
 ……いずれにせよ、死人に自我はない。それは動くだけの人形である。
 恐怖も痛みも感じることがないゆえに、僵尸兵士が防ぐも避けるも能わぬ。
 地ごと薙ぎ払う一撃は、死体をこそげ取るようにして削り、そし土に還した。
 死して屍拾う者なし。積み上げた武功に比べて、そのさまのなんと無情なるか。
「……大丈夫でして? 若様」
 虎云に守られる形で後ろに立つ蘭芳は、ふと虎云の顔を覗き込んだ。
 そんな彼女の優しい瞳を、虎云は深く澄んだ表情で見返す。
「問題ない。仙人とて、死すれば威厳なし。すべてただの屍に過ぎぬ。
 むしろそれを一刻も早く終わらせてやることが、おそらくは手向けなのだろう」
「……そうですわね。私も問題ございませんわ。ですから」
 蘭芳は、一歩歩みだした。その手には芳烈。
「一薙ぎにて終わらせましょう、若様。この戦いは無益ですもの」
「……ああ。首魁も、この祓業の錆びにしてくれる」
 ふたりが戦場を駆ける。花弁と蝶が、狂ったようにそのあとに舞い踊った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルヴトー・シフトマン
…死者を冒涜するとは、胸糞悪ィな
死とは眠り、それを歪めて妨げる者はたとえ神であろうとも許されない
親父はよくそう言っていた…こうして直視して、その意味が分かる
これは、許しちゃいけない

天狼は動けるはず…行くぞ!
は先手必勝、すぐさま動く
敵の中で一番先に動くのは誰か、俺の未来視が捉えている
そいつに急接近、引っ掴んで──敵の渦中にぶん投げる
そのままぐちゃぐちゃになった前線で、<烈震砕牙>の柄を伸ばしてぶん回し、暴れ回る

それでも達人達だ、反撃はあるだろう
だけど俺は、それすらも視えている──未来視による【見切り】だ
貴方達を冒涜した奴を滅するのは、俺達に任せてくれ
今はただ、静かに眠っていて欲しい



●暴れ、砕き、祈る
 死とは眠り。避けられぬ終わりであると同時に、妨げるべからざる静謐。
 誰にとっても等しく訪れるがゆえに、死者とは平等で、そして無垢だ。
 どんな悪党であろうが罪人であろうが、死したそれを憎悪するのは無益である。
 そしてなにより、無意味で――悲しいことだろう。
 だからこそ、死は妨げられてはならない。
 歪められてもならない……そう、たとえそれが神だとしても。
「胸糞悪ィな……!」
 ルヴトー・シフトマンは2秒先の未来で跋扈する死体を見、毒づいた。
 件の首魁がいかにして斯様な軍勢を作り上げたのか、それは定かならぬ。
 唾棄すべき邪法など知りたくもない。嫌悪と、そして怒りがある。
 彼らは達人ばかりだ。その武功を積み上げるにどれほどの年月を要したか。
 鍛錬は艱難辛苦を極め、誇りさえも抱いていたはずなのだ。
 それを、斯様に踏みにじる。まさしく悪鬼の所業、許すべからず!
「先の先はもらった!!」
 一刻も早くこの光景を終わらせるため、ルヴトーは最先鋒の敵を掴んだ。
 そしてそれを、さながら手榴弾のように手勢の中へと放り投げる。
 落下、そして放射状に広がる衝撃。敵の前線が、ぐちゃぐちゃにかき混ぜられる。
 その一瞬の隙を見逃すルヴトーではない。烈震砕牙の柄を伸ばし、ぶん回す!
「うおおおおッ!!」
 未来視が切り替わる。恐るべき速度で間合いを詰めた僵尸たちによる反撃。
 さすがは武術の達人たちだ。死んで自我を奪われてもその技巧は健在か。
 積み上げられたその技術に内心で舌を巻き、感嘆を抱く。
 ……そしてそれが、敵へのさらなる怒りを掻き立てる、ルヴトーは、吠えた!
「その動きも、俺には視えている――だから、ただ静かに、堕ちろッッッ!!」
 後の先を得たカウンターが、礫めいて飛びかかる僵尸兵士たちを撃墜!
 四散した肉体はあとさえも遺さず消えていく。それを以て弔いとした。
「あなたたちを冒涜した奴を滅するのは、俺たちに任せてくれ」
 戦場において、祈りは一瞬だけあればよい。
 ルヴトーはわずかな黙祷から目を開き、再び戦乱の未来をその眼に視た。
 弔うためではなく、それを糧として進み、邪悪を滅するために!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
オイオイ、質も数も良い集団とか狡くねえか?
クソッタレ、アデプト相手はやりにくいから苦手なんだ
だからまぁ、こっちも狡い手を使う
死人を操るって点は同じではあるが…俺は終わったらちゃんと開放するさ

【先制攻撃】でいきなりかますぜ──『Robbery』
暗黒料理人とやらに操られてるってんなら、当然制御権はそいつにある
だからそれを、『奪って』てやる
システム管理者を俺に移譲するだけさ 簡単だろう?
そうしたら、奴らの使う数の有利によるブーストは切れちまう
味方がごっそり減るわけだしな

あとは一緒に攻めに行くだけだ
さっきも言った通り、俺は狡いんでね
しっかり働いたら、ちゃんとした死をくれてやる
…それまで我慢しといてくれ



●ヴァーサス・アデプト
 極まった個というのは、往々にして常識を超える。
 ヴィクティム・ウィンターミュートのようなランナーの世界において、
 そういうイカれた輩のことは達人(アデプト)と呼ばれるのだ。
 魔術ではなく、
 サイバネでもなく、
 ましてやハッキングでもなく。
 鍛え上げた武功とやらで、魔法みたいな芸当を可能とする連中。
 肉体の可能性、そういうものを開ききった、心強くも手強いヤツら。
 相手に回すには、ドラゴンに次いでやりづらいバケモノどもである。

「正面切ってやり合うなんて俺には無理さ、だから"こうする"しかないんだぜ」
 ヴィクティムはさっぱり悪びれたふうもなく、"狡い手"を使った。
 僵尸兵士の群れに電脳魔術でアクセスし、その制御権『を奪った』のだ。
 地面からぶわりと吹き上がったガラス片が触れた瞬間、僵尸の動きが止まった。
 暗黒料理人によって刻まれた邪術の印を、電脳の魔術で書き換える。
 すべてを奪うことはできまい。しかし、半分でも奪えればそれでよし。
「目には目を、歯には歯を。アデプトにはアデプトを。それがストリートの警句さ」
 ヴィクティムがピアノを弾くように空中に指を彷徨わせると、僵尸兵士のうち半分がぐるりと踵を返し、同胞――あるいは同じ被害者――に襲いかかった。
 武功には武功を以て対処すべし。ヴィクティムには出来ないが、これはヴィクティムにしか出来ない狡猾な手口である。
 死体を死体で破壊するというのはなんとも後味の悪い話である。
「すぐに解放するさ。これだって、アンタたちを弔うための手段なんだぜ」
 その後味の悪ささえ、ヴィクティムは飲み込む――飲み込めてしまう。
 狡猾さは、なにもそのプランニングと手段だけに限った話ではない。
 精神的な切り替え。どれだけ邪悪な手を打ったとしても"納得させる"思考法。
 そういうものがなければ、闇の世界に長く身を置くことは出来ない。
 虚無に喰わせるのはたやすい。だがヴィクティムはその苦味を内心で嚥下した。
「……ちゃんとした死をくれてやるまで、少しだけ我慢していてくれ」
 無意識に漏れた呟きは、彼のかすかな人間性の証左。
 それがある限り、ヴィクティムの苦しみは終わらない。
 だがおそらく、彼が負けることもまた、ないのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セレナリア・アーチボルト
あーオブリビオン討伐!その様なお話しでしたね!
主人へのお土産とオブリビオン、どちらが上かと言われるとそう! お土産ですね!
だからちょっとそちらを優先しただけで改めてお勤めを果たしましょう。

さてはて、見たところこちらのキョンシーも暗黒調理人とやらの被害者のご様子
しからばこれ以上罪を重ねぬ様に討ち倒すがせめてもの慈悲、いざ!

攻撃のキレから見てもさぞや名のある武人だったのでしょう冷静に攻撃を見切り回避してカウンターを打ちましょう
命中率を重視するなら致命傷のみ気をつけて捨身の一撃をお返します!
使うUCは【愛と勇気のメイドパンチ】!
当たればもれなく爆発四散です!

アドリブ・絡み歓迎


蛇塚・レモン
出たな~っ!?
数に数で対抗するよっ!

UCで505体の埴輪兵を乗せた巨大な八首有翼蛇神様を召喚っ!
さあ、みんなっ!
一気に畳み掛けるよっ!

あたいは蛇腹剣を振り回して風属性の全力魔法を宿してなぎ払いっ!
風圧による衝撃波と範囲攻撃は、回避しように無難しいはず!
眷属のみんなも斬撃波の弾幕を乱れ打ちして
飽和火力で敵の回避を阻害してもらうよっ!

極めつけは、上空から放たれる蛇神様の八首ブレス!
他の猟兵に被害が出ないように気を付けながら、周辺を絨毯爆撃!
回避率3倍らしいけど、面攻撃に対しても同じ事を言えるかなっ?

防御はあたいの黄金霊波動による念動力の斥力と
盃から溢れる霊水の結界術で食い止める
勿論、鏡盾も使うよ!


ヤムヤム・グリード
あの有様を見るに、件の暗黒料理人とやらは配下にメシを振る舞うようなタイプのヤツじゃ無ェようだ。
あくまでも悪行を為す道具としてのみ料理を扱うとは……絶対に許せんッ!

キョンシーとかいう連中のコトは正直よく解らんが、要はゾンビみたいなモンか?それなら燃やしてやるぜェ!
巨大包丁を構えながら大きく息を吸い、接近されそうになったら魔炎を吐くッ!そして斬りかかる!
仮にコイツら自身を燃やし切れずとも、その持ってる武器を灰にしちまえば後は刻むだけの話だッ!

中には徒手で戦う元拳法家だったヤツとかもいるかも知れんが……ま、その時はその時だろ。
痛みを感じないなら炎を臆したりもしないだろうし、どのみち油断は禁物だしな。



●いざ、涼爽洞へ
 死人が来る。
 一体どれだけの悪行を重ね、これほどの数の達人をその手にかけたのか。
 恐るべきは暗黒料理。人心を惑わし、天を穢し地を染めるとされる邪法なり。
「この有様を見るに、奴は配下にメシを振る舞うようなタイプじゃないらしいな。
 あくまで悪行を為す道具のためにのみ料理を扱うとは……絶対に許せんッ!!」
 ヤムヤム・グリードは、料理人として義憤を燃やした。
 キョンシーというものは、デビルキングワールド出身の彼にはよくわからない。
 しかし、ゾンビのような死体であるのだと考えれば、対処は簡単だ。
「どのみちアンタたちは、もう元には戻せまい。ならせめて焼き尽くしてやる!」
 ヤムヤムは大きく息を吸い込み、そして魔の炎を噴き出した。
 キッチンの悪魔として生まれたヤムヤムの炎は、火力の調整が自在に可能だ。
 主にそれは、彼が理想とする料理のために生かされる。
 しかし戦いに使えば、このように……死体を燃やすことなど造作もなし!
「ウェルダンに焼き上げて……いや、この場合はそんなもんじゃ足りないだろうな。
 さあ、跡形も遺さず消えちまえ。あとのことはオレたちがやってやるッ!」
 黒焦げになった僵尸兵士の残骸は、役目を終えたかのように崩れ落ちた。
 ヤムヤムは地面に広がったその残骸を一瞥し、複雑な面持ちで眉根を寄せる。
 もはや死を穢された僵尸は、斯様にして弔う他にないのだとわかっていても……。
「……まったく、胸糞悪くさせてくれるぜ、暗黒料理人とやらめ!」
 ヤムヤムはその無念と慚愧を、心に燃える怒りの炎の薪に変えた。
 そしてその滾りを魔炎へと変えて、巨大包丁を振り回し道を切り開く!

 焼け焦げた僵尸兵士の屍を踏み越えて、次々に新手が飛び出してくる。
 涼爽洞に近づけば近づくほど、僵尸兵士の反撃と数は激しさを増していた。
「やっぱりっ、事前調査の通りだね! どこから来るかはわかってるんだよ!」
 あらかじめ敵陣を調査していた蛇塚・レモンは、敵の伏兵を読んでいた。
 二重三重に張り巡らされた罠は、暗黒料理人の狡猾さを示すように執拗だ。
 それを蛇腹剣によって起こした烈風の竜巻によって、悪意ごと切り刻む!
「敵が数で来るなら、こっちも数だ! 村のみんな、蛇神様とあたいに力を!」
 レモンの呼びかけに応じ、光とともに巨大な八首の翼蛇が降臨した。
 その背に乗るは、合計で505体の埴輪兵。レモンに付き従う旧き戦士たちだ!
「さあ、みんなっ! 一気に畳み掛けるよ!!」
 伏兵を蹂躙したレモンは、埴輪兵の力を借りて一気に敵陣に攻め込んだ。
 ヤムヤムが切り開いた活路を、旧き兵士たちは霊剣を手に気焔万丈猛進する。
 敵の連携を数の差で圧倒し、かき乱すことでイニシアチブを握るのだ。
 そしてレモンが蛇腹剣を渦のごとく振るえば、埴輪兵の霊剣もまた嵐を起こす!
 暗黒料理人が従えた僵尸兵士たちも、さすがにこの数を超えることはない。
 一体一体の力量に差があろうと、その連携と統率ぶりはレモンのほうが上だ。
「蛇神様、よろしくっ!」
 そして極めつけは、空に君臨する八岐大蛇が吐き出したブレスである。
 点や線ではなく面を圧倒する絨毯爆撃のごとき、超広範囲攻撃。
 たとえ敵が連携によって回避率を増そうと、そもそも回避余地のない攻撃ならば何の問題もない。
 ブレスによって木々は吹き飛ばされ禿山と化し、そこを埴輪兵が埋め尽くした。
 負けじと振り下ろされる戟の一撃を水盾で受け止め、返す刀で僵尸を斬る!
「さすがは達人から作られた僵尸……一筋縄じゃいかないねっ。
 でも、あたいたちはその無念を晴らすためにここへ来たんだよ!
 だから、どれだけ抵抗されても、あたいたちは止まらないんだからね!!」
 敵の腕前は、翻ってそれだけの達人を穢す暗黒料理人の外道ぶりを際立てる。
 剥奪された彼らの魂は、きっと嘆き、苦しみ、そして悲しんでいるだろう。
 望まぬ不死を終わらせるため、レモンは黄金霊波動を身にまとい、突き進んだ。
 そのあとに吹き抜けるは剣戟の旋風。死臭をも吹き払う鮮烈なる斬撃の竜巻!
「さてはて、これほどの被害者がいるとはまったく閉口ものですね……」
 ヤムヤムとレモン、そして埴輪兵たちが切り開いた活路に、もうひとりが続く。
 セレナリア・アーチボルトは敵の手勢に呆れた表情で頭を振った。
 そこへ襲いかかる名もなき達人。手にした青龍偃月刀がセレナリアの首を狙う!
「おっと! その動きのキレ、さぞや名のある武人だったのでしょうが!」
 セレナリアは冷静に敵の動きを見極め、流れるような連撃を間一髪躱した。
 そして僅かな攻撃の隙を見切り、懐に潜り込んで渾身の拳を繰り出す!
「これ以上罪を重ねぬよう、この拳にて討ち倒してあげましょうっ!!」
 SMAAAAASH!! 全力を込めた拳が僵尸兵士の拳を叩き、くの字に吹き飛ばした。
 地面と平行に吹き飛ばされた僵尸兵士は、周りの敵を巻き込み爆発四散!
「お勤めを果たしもせずに帰るのはメイドの恥。ここで止まりはしませんとも!」
「まだまだ来るよ、気をつけて! 怪我をしたらあたいの後ろに隠れてね!」
 レモンは突き進むセレナリアとヤムヤムに声をかけ、巨大な結界を展開した。
 僵尸兵士の遠隔攻撃部隊の擲った槍が、霊水の結界によって阻まれる。
 彼女の強力な結界術がなければ、二段構えの攻撃によって被害が出たかもしれない。
「生きてた頃にこれだけの軍勢を組めば、さぞかし心強かったろうによ……。
 いや、だからこそ暗黒料理人は、この仙界の強者を手勢に引き込みやがったのか」
「それもあるだろうけど、この数……もしかすると……」
 ヤムヤムのつぶやきに、レモンはしばし考え、眉根を寄せた。
「人界のほうでも、予知されてない被害が出てるのかもしれないね……!」
「だったらなおさら止めないとなりませんね。いざ、涼爽洞へ!」
 セレナリアは発奮し、その拳をもって達人たちに終わりをもたらした。
 三人たちは、そして猟兵たちは力を合わせ、敵陣を鏃めいて貫き洞穴を目指す。
 あとに残るは屍のみ。そして向こうに回すは、悪鬼外道なり!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『暗黒料理人』

POW   :    暗黒料理・天
【超暗黒料理人】に変身し、レベル×100km/hで飛翔しながら、戦場の敵全てに弱い【ながらも食欲を掻き立てる暗黒料理】を放ち続ける。
SPD   :    暗黒料理・人
【暗黒料理によって完全に支配下に置いた者達】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    暗黒料理・地
【暗黒料理】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【から無限に食材が湧き出る環境に変え】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。

イラスト:アイカワ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠アルミィ・キングフィッシャーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●涼爽洞
「カッカッカ! カカカカカッ!」
 見てくれだけは奇妙奇天烈。それが、暗黒料理人である。
 いかにも厨師らしい格好に、手には中華包丁と鍋。されどその眼光!
「せっかく手間暇かけて仕込んだ僵尸どもも平らげられてしまうとは!
 まったく、食いしん坊な猟兵たちだことだ。しかし、ご安心めされい!」
 暗黒料理人はにたりと笑みを浮かべ、涼爽洞の奥の暗がりを示した。
 ふらふらと幽鬼めいた足取りで現れるのは、痩せこけた様子の人々である。
 その表情は明らかに正気ではなく、落ち窪んだ目は飢え餓えていた。
「あ……料理……あの料理を、もう一度……」
「もう、限界だ……早く、早く食べさせてくれ……!」
 おお、なんたることか……暗黒料理人の手勢は僵尸だけではないのだ。
 麻薬的料理を与え、その心を掌握した上で餓死寸前まで追い込んだ人々。
 それは人界側で攫われた人であり、同時に力で打ち負かされた仙人でもあった。
 僵尸兵士は、こうして追い詰められた人々の成れの果てだったのである。
「この地に根ざした食材の味は、おおよそ覚えたり。我が暗黒料理、完全無欠!
 もはや家畜を奪い作物を盗む必要もなし。食材などいくらでも生み出してくれよう!」
 ヒュン、と中華包丁が大地を切り裂くと、そこから溢れ出る食材の山!
 芳醇な桃、肉質のいい獣、清らかな水……すべて我が物顔で悪用している。
 そしてそれは同時に、環境さえ操る暗黒料理術の武器でもあり盾でもある!
「さあ、我が暗黒料理を喰らい、そして虜になるがいい、猟兵たちよ!
 案ずることはなし……その欲望はいくらでも満たしてやる、カーカカカカ!」
 珍妙奇天烈と油断するべからず。欲求を支配する暗黒料理は麻薬であり毒だ。
 心乱すその魔性に抗わねば、かの悪鬼外道を討ち果たすことは出来ない……!
 涼爽洞に平和を取り戻し、人界と仙界の交流を正しく通じさせるためにも、
 いよいよここが決戦の舞台である。いざや、悪漢討つべし!

●プレイング受付期間
 04/09(金)12:59前後まで。
九段下・鈴音
アドリブ歓迎じゃ。

SPDで行動する。

飢えた人達を見て、なんて酷いことを。今から妾たちが助けてやるからな。暗黒料理人よ、これ以上の非道は許さぬ!

戦闘範囲内に飢えた人達がいたら可能な限り戦闘範囲外に逃がす。襲いかかってきたら可能なら気絶させる。できなければ足運びでそこから移動する。

【衝撃波】の【一斉発射】で戦う。UCで【衝撃波】の範囲を広げて逃げられないようにする。相手の攻撃は【武器受け】で受け流しつつ反撃をするか【オーラ防御】で耐える。

暗黒料理人、料理の究極を求めたなれの果てかのぅ。ただ、人をキョンシーにするなど許すわけにはいかん。ここで終わりにするのじゃ。



●非道を止めよ
「うう……ひもじい、ひもじい……」
 目が落ちくぼむほどにやせ細った人々が、幽鬼のように呻く。
 それは単なる栄養失調だけではない、あきらかに精神的な疲弊もあるようだ。
 おそらく麻薬中毒者めいて、暗黒料理に魅入られてしまったのだろう。
 しかし、まだ僵尸にまでは成り果てていない。救うことは出来るはずだ。
「なんてひどいことを……貴様、なにゆえにこのような真似をした!?」
 九段下・鈴音は人々の姿に激昂し、暗黒料理人を睨みつけた。
「カカカカ! 理由? そんなもの、我が暗黒料理を究めるための贄に過ぎんわ。
 ま、こうしてお前たちを躊躇させる肉の壁にも利用できるのだがな、カカカカ!」
「……外道めが。そうやってあの達人たちを僵尸に変えたか」
「だとすればどうする? 猟兵よ!」
 暗黒料理人は中華包丁を振り上げ、鈴音に襲いかかる。
 鈴音は咄嗟に妖刀を構えるが……うつろな目の人々が彼女に飛びかかった!
「な……! よもや、精神を支配されておるのか……ええいッ!」
 鈴音は反撃を諦め、妖刀で中華包丁を受け止めるに留めた。
 ガキン! と金属音が響き、暗黒料理人と鈴音はそれぞれ大きく後退する。
「すまぬな、人々よ……今から妾たちが助けてやる。今は辛抱しておくれ!」
 鈴音はやむを得ず、襲いかかる人々を峰打ちで気絶させていった。
 回避しながら闘うことは可能だが、その場合戦闘の余波が彼らを襲うだろう。
 それでは意味がない。この戦いは、ただ敵を倒すだけでは終わらないのだ。
「カーカカカ、隙ありィッ!」
 そして卑劣なる暗黒料理人は、人々の対処に励む鈴音に切りかかった!
「ぐ……!」
 鈴音は剣の鞘で包丁を受け止めるが、こらえきれずに吹き飛ばされてしまう。
 彼女の身体をオーラで防御していなければ、斬撃は深々と刻まれていただろう。
「これ以上の非道は許さぬぞ、暗黒料理人……ここで終わらせてくれる!」
「いつまでそんな吠え面をかけるか楽しみだのう、カーカカカ!」
 暗黒料理人は調子に乗って追撃を仕掛ける。鈴音はそこに活を見出した。
「甘いわ……貴様の太刀筋、すでに見切ったのじゃ!」
「ぬおっ!?」
 敵が攻撃を仕掛けるその瞬間に妖刀を巨大化させ、後の先を取ったのである!
 周りに人々がいなければさらなる追撃が出来たが、そこは諦めざるを得ない。
 それでも鈴音の斬撃は衝撃波を生み出し、油断した暗黒料理人の身体を貫いた!
「ぐ……ぐわぁッ!?」
 暗黒料理人は咄嗟に距離を取ろうとしたが、そこに斬撃の衝撃波が襲いかかる。
 逃げるのを先読みした、鈴音の見事な回り込みの成果だ!
「人々を盾にしなければ戦えぬような卑怯者に、妾は決して負けはせぬ。
 非道の代償をその身で償ってもらうまで、決して逃しはせぬぞ、暗黒料理人!」
「……!!」
 鈴音の鋭い睨みを受け、暗黒料理人は震え上がった。
 たとえ人々の命を盾に取ろうと、鈴音は決して怯まない。
 むしろその外道な行いこそが、彼女の義侠心を強く燃え上がらせる……!

成功 🔵​🔵​🔴​

朱赫七・カムイ
⛩神櫻

おはよう、私の巫女よ
よく眠っていたね
やはりきみは酒を飲んではいけない
ひとつ戦が終わったようだよ

ふふ
微睡む春のように愛しい寝顔であった
美しい桜の巫女姫よ
ずっとその頬を髪を撫で愛でていたかったがそうも行かぬようだ

食を探求するものでありながら、人々の食を絶ち飢餓におとすとは…料理人とも呼ばれる資格もない
おや、サヨ
お腹がすいたのかい?

私は巫女の作った御饌しか食べないが
巫女が腹を空かせている
神としても放っておけない
然しアレを食べたらお腹を壊さないかい?

吹き荒ぶ桜嵐と艷めく微笑みの美しいこと
人々を結界で守った後
疾く駆け抜け
踏み込み食材ごと切断する
サヨが食べたいのは料理ではなくそなたらしい

妬けることだ


誘名・櫻宵
🌸神櫻

はっ!?今何時?!寝てた?!
神様の膝の上、飛び起きる
お酒を飲んだあといい気分になって寝たっぽい!
やだもう、寝顔を晒していたわ
……それだけよね?痴態を晒してないわよね?

あらぁ、良い香り
よく寝たからお腹すいたわ

うふふ

当たり前よ
カムイのご飯は私が作るんだから

なかなか欲深いものがいるのね
見てくれは悪く不味そうだけど
桜にして食べて仕舞えば同じよね

愛のない料理など味気なくつまらない
なぎ払い弾き斬って
とろり誘惑とかして蜜華で誘う

ねぇお願いよ
おなかがすいたの食べられて
少しは美味しいスパイスになるかしら
桜化の神罰巡らせ生命を喰らい腹の中
おさめてしまいましょ

勘違いしないでカムイ
私が一番食べたいのはあなたよ



●腹を満たす
 二対一。
 それも凄腕の剣豪ふたりを相手に、暗黒料理人は立ち回っていた。
「カカカッ!」
 両手に中華包丁を握り、目まぐるしい速度で刃を煌めかせ剣を弾く。
 これが並の使い手であれば、数手で全身をバラバラにされていただろう。
 朱赫七・カムイと誘名・櫻宵のコンビネーションでなくば、こうはいかない。
「神! そして龍! カカカ! どう調理したものか迷う迷う!」
「あら、私たちを食べるつもりだなんて、ずいぶん自信家なのね?」
 櫻宵は薄く笑い、フェイントを織り交ぜた斬撃で暗黒料理人を攻め立てる。
 彼の動きはまるで舞いのようで、緩急が激しくテンポが読みづらい。
 遠くへ下がったと思ったら、次の瞬間には懐に潜り込んでいるといったふうに。
 華美な衣装と舞い散る桜吹雪、そしてその美しさが敵の目を奪う。
 そして、剣がどこから来るのかを判じづらくする。極めてトリッキーな剣術だ。
 暗黒料理人はそれを見切り、死角からうねるように奔る剣をいなした。
 魔道に心血を捧げた暗黒料理人は、そう簡単には傾国の美には絆されない。
「不遜だな――なによりも、私のサヨに下劣な感情を向けたのが気に入らぬ」
 対するカムイの剣は苛烈で、受け太刀を損なえばまるごと斬られかねなかった。
 それだけ、暗黒料理人の物言いが彼の逆鱗に触れたということだろう。
 どんな形どんな感情であれ、カムイから櫻宵を奪おうとする輩は神の怒りを買う。
 それが食材として利用するというものでも、義憤より独占欲が勝るのである。
 冬の空に煌めく稲妻じみた苛烈な剣を、暗黒料理人は苦労しながらも受け切る。
 カムイの苛立ちさえも、奴にとってはスパイス、といったところか。

 ――もちろん、ふたりの剣はそんな増上慢を抱えて凌げはしない。
 剣戟は実力伯仲に見えて、その実互いに小手調べのようなものだった。
 暗黒料理人が反応を見て楽しみ、どう料理しようか品定めしているように、
 櫻宵もまた――暗黒料理人のどす黒い欲望を、剣を通じて見定めている。
「見てくれはすごく不味そうだけれど、桜にして食べてしまえば同じよね……?」
「……サヨ、感心しないよ。あんなものを食べたら腹を壊してしまう」
「あらカムイ、私の心配をしてくれるの? うふふ、だぁいじょうぶよ」
 心配そうなカムイの言葉に、櫻宵はうっとりとした声音で言った。
「ゲテモノなら食べ飽きているもの。ねえあなた、どんな味がするのかしら」
「カカカカ……暗黒料理ではなく、このワシを食らうと? これはなかなか……」
 暗黒料理人のこめかみを汗が伝う。蛇に睨まれた蛙のような心地だ。
 興味本位に覗き込んだ龍の目は、まるで無限の虚のように見通せぬ闇。
 どろりと濁った櫻宵のまなざしが、桜化の呪いを暗黒料理人にもたらす……!
「カカカッ!」
 このままではまずい。そう考えた暗黒料理人は、一か八かの賭けに打って出た。
 術が自分にかかる前に、直接攻撃で櫻宵の首を落とそうというのだ。
 地を裂き獣や作物を我が物とする神速の刃が、櫻宵めがけて奔る!
「――サヨがそなたを食べたいというのだ。ならば、おとなしくするがいい」
 そこにカムイが割り込み、ぎぃん!! と中華包丁を弾いた。
 返す刀で逆袈裟の一撃を繰り出し、中華料理人の身体をざくりと斬る!
「カカァ……ッ!?」
 中華料理人は傷口を抑え後退る。
 傷口から滴った血は、桜の花弁に変わり櫻宵の身体に吸い込まれていった。
「あら残念。けど……やっぱり欲深くて味わい深いわ。ふふふ」
「……妬けることだ」
 ぽつりと呟いたカムイの方を見て、櫻宵は艶やかに笑った。
「勘違いしないで、カムイ? 私が一番食べたいのは、あなたなのよ?」
 龍と神の間に結ばれた絆の名は、魔道に堕ちた暗黒料理人にさえ解らぬ。
 得体の知れぬ感情を調理してみたいという好奇心と、
 これ以上踏み込めば死ぬという恐怖が、その心の中に同時に渦巻いていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

羅・虎云
引き続き胡姉(f32667)と

胡姉、やはり怒っているのでは
……呆れは同意

先程の店で食べたものでも満たされるというのに
奴のものだけでなければならぬと惑わす
大地を切り裂かなくとも、大地には水が流れ
植物が生まれ、そこに獣も生き付く

教えがなくとも自然の道理は理解できよう
それを、捻じ曲げることは許されぬ

胡姉が放つ蝶と共に、私は前へ
鞭に破魔の力を宿して宝貝「雷公天絶陣」
雷による属性攻撃を強化し、なぎ払うことで暗黒料理ごと敵を狙う
奴の料理が当たらぬようにしながら湧き出した食材は鞭を操り
武器受けにて受け止める

茶か……構わぬ
それから、他のものも何か買いたい
暗黒料理よりもあの店等で食べたものの方が美味そうだった


胡・蘭芳
勿論、羅の若様(f32672)と

……
あ、怒ってはおりませんわよ、若様
怒ってはおりませんが、呆れてはいるのです

要するにあの方は
普通の料理で食した人を魅了出来ない程度の料理人
という立ち位置で宜しいのでしょう?

可哀想ですわね……食材が
ちゃんとした調理を施されれば絶品であっただろう食材が
哀れでなりません

では、花蝶繚乱で若様の援護を
蝶や花弁で攻撃を受けて、環境変化はさせません
万が一食材が湧き出る場になってしまったら……
斬撃波と貫通攻撃を乗せた芳烈を一閃、敵へと

料理人が食べ物を粗末にするとは何事です

敵の攻撃はオーラ防御と結界術で防ぎましょう

若様、終わったらお茶をご一緒して下さいませね?
ふふ、承知致しました



●満つるを知る
「…………」
 胡・蘭芳が黙ったまま暗黒料理人を見つめているものだから、
 羅・虎云は彼女が怒ったのではないかと考え、おずおずと問うた。
「胡姉……やはり、怒っているのでは?」
「……あ、怒ってはおりませんわよ? 若様」
 そんな虎云の問いかけに、蘭芳はにこりといつも通りの笑みを浮かべた。
 ただ……目は笑っていない。そこに籠められたのは怒りではなく……。
「怒ってはおりませんが、呆れてはいるのです」
「……呆れか。それは、同意だ」
 虎云は深く頷いた。そして、暗黒料理人を睨む。
「さきほどの店で食べたものでも、この腹も心も十分に満たされたものだ。
 だが奴は人々を、手前勝手に作り上げた左道の代物で惑わせるという」
「ええ。要するにあの方は、普通の料理では勝負出来ない、ということですもの」
「――……は?」
 蘭芳の言葉に、暗黒料理人がぴくりと眉を動かした。
「今、なんと言ったかね、羽衣人のお嬢サン?」
「聞こえませんでしたか? ならば、もう一度申し上げさせていただきますね」
 蘭芳はやはりいつも通りのおっとりとした笑みを浮かべて、もう一度言った。
「あなたは、普通の料理では食した人を魅了することも、満足させられもしない。
 その程度の腕前だから、暗黒料理などという左道に堕ちた、ということでしょう?」
「…………」
「あなたに相応しい腕前があるのならば、そんな邪術を使う必要はありませんもの」
(……胡姉、こういうときは本当に恐ろしいな)
 笑顔でズバズバと図星を突きまくる蘭芳を一瞥し、虎云は嘆息した。
 彼女に悪意や怒気はない。だからこそ、正論は人の心を抉るのである。
 そらみたことか。暗黒料理人が拳を震わせ――そして、吠えた!
「よくもほざいたな、小娘ェッ!!」
 そして両手に中華包丁を握り、猿(ましら)のごとくふたりに飛びかかる!

「させぬ」
 虎云が射線上に割り込み、鞭を振るって敵の牙じみた刃を弾いた。
 暗黒料理人はくるくると身軽に着地し、包丁でぎゃりりん! と地を削る。
 すると切れ目は裂け目に変わり、そこから獰猛な獣が這い出そうともがいた!
「可哀想ですわね……きちんと調理を施されれば、きっと絶品だったでしょうに」
 仙界の山を自由に飛び跳ねていた獣のあるべき姿を思い描き、蘭芳は悲しんだ。
 暗黒料理の魔性によって歪められた獣は、現れればふたりに害をなすだろう。
 ゆえに、そうはさせじを光り輝く花弁が舞い踊り、蝶の群れとなって敵を襲う!
「むおっ!? なんだネェ、これはッ!?」
「若様」
「――心得た」
 敵が蝶の群れに惑わされ術を解いてしまった一瞬の隙を突き、虎云が襲いかかる。
 手にした鞭にバチバチと雷の力が集まり、振るった瞬間電光の飛沫が迸った!
「大地を切り裂かなくとも、地には水が流れ植物が生まれ獣も息づく。
 人はそうして天然自然のうちから恵みを享けて今日まで生きてきたのだ。
 その歴史で紡がれた技術を悪用する輩なぞに、我が宝貝は負けはせん!」
 ドォン!! と、電光の飛沫は巨大な稲妻に変じて暗黒料理人を打ちのめした。
「カカァーッ!?」
 稲妻は穢された地の亀裂を浄め、獣たちをあるべき場所へと還す。
「そもそも――料理人が食べ物を粗末にするとは、何事ですッ!」
 そしてさらに、追撃の芳烈が暗黒料理人の脳天に炸裂!
「カハ……ッ! こ、こいつら、強い……!!」
 額を割られた暗黒料理人は、額から血を、全身からぷすぷすと煙を上げつつたたらを踏んだ。
「若様、終わったらお茶をご一緒してくださいませね?」
「ああ、心得た。そのためにも――外道はさっさと片付けるとしよう」
 峻烈な眼光を浴び、暗黒料理人はごくりと息を呑んだ。
 大地の滋養を、人々の心を弄んだ外道に、相応しい報いが下るときが来た!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ルヴトー・シフトマン
そうかよ…テメェの仕業ってか
飯っつーのはなァ、最も近くにある幸福の形なんだよ
決して人を弄ぶために使うモンじゃねえ
テメェは料理人としては下の下、三流ですら烏滸がましいクズだ

テメェの作った暗黒料理も、それに魅せられちまった連中も
『圧し潰してやる』
この怒りで、地に伏し頭を垂れろ!!
テメェには包丁を握ることも、口を動かすことも許さない
この重圧の中でもなお、動こうってんなら…未来視がそれを観測する
手足を撃ち抜いて動けなくしてやるよ

…長い間やり続けるには消耗がきついな
くだらねえ暗黒料理も、もう助からねえ犠牲者も…処理する
テメェのたくらみは此処で終いだ
骸の海の底で、真っ当に食に携わる人々に懺悔しやがれ



●幸福を穢すもの
 クロムキャバリアは、テクノロジーこそ発達したが物資に乏しい世界だ。
 万能釜たるプラントがなければ、日々の食事にさえも事欠く有様。
 だからこそクロムキャバリアの人々は、プラントを求めて争い合うのだ。
「……そうかよ、テメェの仕業ってか」
 ルヴトー・シフトマンは、知っている。
 限られた食事ゆえに誰もがその恩恵を享受出来ず、飢える苦しさを。
 配給を受けられずに飢えて渇き苦しむ人を、見ているしかない悲しさを。
 ……ルヴトー・シフトマンは、知っている。
 求めても得られない苦しみと、その「当たり前」の大切さを……!
「メシっつーのはなァ、もっとも近くにある幸福の形なんだよ」
 ルヴトーはすさまじい殺気を放ち、暗黒料理人を睨みつけた。
「けっして人を弄ぶために使うモンじゃねえ……ましてや!
 その力で人を操り、肉の盾みてェに扱うなんざ、もってのほかだ!!」
「カカカ! ならばどうするというね、若者よ!」
「決まってる……テメェも、テメェの生み出したものも、何もかも圧し潰してやる。
 テメェは料理人としては下の下、三流ですらおこがましいクズ野郎だッ!!」
「カァーカカカカ! ならばその三流の技に魅入られた連中を殺してみるといい!」
 卑劣! 暗黒料理人は、魅入られた人々を前に出してルヴトーを止めるつもりだ。
 ルヴトーはカメラ越しに人々を観察し、怒りを通り越して冷えた頭で考える。
(さっきの僵尸とは違う。この人たちはまだ……手遅れじゃねぇ)
 ならば、どうするか。キャバリアの火力では手加減なんて精妙なことは難しい。
 しかし、ルヴトーの真価は、キャバリアの兵装にあらず。すなわち……!

「――う ご く な ッ ! !」
「!?」
 ズズン!! と、見えない強烈な重力が洞穴を満たした。
 否、それは重力などではない。正しくはルヴトーの放つ強烈な覇気だ。
 精神どころか肉体にさえ作用する重圧が、人々を大地に伏せさせてしまう!
「う、うああ……苦しい……!」
「足りない、満たされない……!」
 人々はひもじさと強烈な重圧に苦しみながら、外傷はなく死んでもいない。
 そして――暗黒料理人はがら空きだ! 天狼が人々の頭上を飛び越えた!
「カカカッ!? う、動けん……!」
「その手足、刈り取ってやる……!!」
 BLAMN!! 銃弾が暗黒料理人を襲う! 重圧ゆえに回避は困難!
「グオッ!? こ、この私が手も足も出ないだと……!?」
 幸福を穢すものの喉笛に、王狼の牙が……ついに、突き立てられたのだ!

大成功 🔵​🔵​🔵​

セレナリア・アーチボルト
ふふふ、毒にしかならぬ料理しか作れぬなど調理人とは片腹痛いですね。
よろしい!このセレナリア、存分に腕を振るいましょう!

医食同源というように料理と医術は同じようなもの。麻薬的料理に溺れた人々を救うもまた料理!
暗黒調理人が沸かせた物なれど食材に罪はありません
むしろ地の食材を再現したなら都合が良いですね。レシピは十分、慣れ親しんだこの地の料理で目を覚ませてあげましょう!

【UCメイドのたしなみ】により【料理編】と【救護編】を3倍に!
1章で食べ歩いたレシピから身体に優しいものを再現して支配下に置かれた人たちの口に突っ込みます。

故郷の味がきっと目を覚ましてくれるでしょう!

アドリブ絡み歓迎



●調査の成果!
「ううう……た、足りない、どれだけ食べても足りない……」
「苦しい……腹は満ちているはずなのに飢えて苦しい……!」
 麻薬中毒者めいた足取りで、徐々に操られた人々が近づいてくる。
 暗黒料理に魅入られた人々は、もう自分で自分の身体を制御出来ないのだ。
 しかし、まだ助け出すことは出来る。盾として利用されているのがその理由だ。
 手遅れになっているのなら、暗黒料理人を守る盾としては役に立たない。
 問題は、どのようにして暗黒料理の影響を取り除くか、だが……。
「ふふふ、毒にしかならぬ料理しか作れぬとは。調理人としては片腹痛し、です」
 セレナリア・アーチボルトは不敵な笑みを浮かべ、言い放った。
「その程度の料理の影響など、この私にかかれば一瞬で取り除けますとも!」
「カカッ!? この私の料理を上回るものを作れるというのかァ~ッ!?」
 暗黒料理人はプライドを傷つけられたようで、激昂した。
 だが、セレナリアは臆さない。胸を張り、挑発してみせる。
「この国には「医食同源」という言葉がありますよね? つまりそういうことです。
 こんなこともあろうかと、仙界で学んだ料理の数々を見せてさしあげます!」
 なんと、桃源郷でのレシピの聞き込みがこんな形で役に立とうとは。
 セレナリアは大地の裂け目から生まれた具材をキャッチすると、
 ものすごいスピードで調理を始め、次々に美味しそうな料理を作り出す!
「な、何ーッ!?」
「さあ皆さん、どうぞお食べください! このセレナリア自慢の料理ですよ!」
「「「お、おおお……!」」」
 人々は落ち窪んだ目を輝かせ、我先にと料理に飛びついた。
 無我夢中で食事する人々の肌色に生気が戻り、彼らは自由を取り戻す!
「か、身体が自由に動く!」
「あの苦しさもない! すごい……!」
「ありがとうございます、とても美味しかった……!」
「どういたしまして。故郷の味が皆さんの目を覚ましたのですよ」
 セレナリアはにこりと笑い、そして暗黒料理人に手斧を突きつけた。
「どうですか? 暗黒料理人。あなたの料理など、所詮はこの程度なんですよ!」
「き、き、貴様ァ……!!」
 暗黒料理人は中華包丁を構え、すさまじい殺気を放つ。
 セレナリアの不敵な笑みは崩れない。彼女には、メイドとしての誇りがあるからだ!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジン・エラー
【甘くない】

オッッッ~~~~!!!オイオイオイ見ろよエリシャァ~~~~!!!
バカみてェにアホな格好してるぜアイツゥ~~~~!!!
クソ面白ェ~~~~~!!!エッヘッヒャヒヒャハハ!!!
ア?なンだよその目はァ~~~~

完全無欠たァ~~~よく言ったもンだなァ~~~~
ン~~~なこと言われるとォ……なァ?
ぶち壊したくなンのが人間だよなァ~~~~!!

肝心の料理はァ~~~ふゥ~~~~ン……
い~~やァ?オレにゃよくわかンねェ~~~けど……
そうだなァ~~~……
お前の飯のが美味ェ それはわかる

オレたちの慾がンなモンで満たせると思ったかバァァ~~~~カ!!!!


千桜・エリシャ
【甘くない】

なにがそんなに面白いのかしら
ともかく!宿の経営者として
おかしな料理を徒に振る舞う方を野放しにできませんものね

あら、ジンさん
私も同意見でしてよ
では遠慮なく
完膚なきまでにぶち壊してしまいましょう

桜をふわりと吹雪かせて
先程の僵尸さんたちを傀儡に変えて
さあ、あなたたち
おかしな料理を食べさせられた恨みを晴らしなさい
私が力を貸しますわ
あら、あなたが生み出した方々でしょう?
ご自分でなんとかなさったらいかが?

ちょっとジンさん!
そんな変なものをわざわざ口にしなくても…
あら、最初は私の料理なんてと嫌がっていたくせに
あなたの胃袋を掴んでしまったかしら?ふふふ

さて、慾を満たすためにも
御首をいただきますわね



●慾
「オッッッ~~~!! オイオイオイオイ、見ろよエリシャア~~~~!!」
 突然大声を出すジン・エラー……と言ってもいつものことだが。
「アイツバカみてェにアホな格好してるぜェ~~~~ホヒャッハハハハ!!
 クソ面白ェ~~~~!! エッヘッヒャヒッヒャハハハ!! ブヘハハハ!!」
「…………」
「……ア? なンだよその目はァ~~~」
 ジンがつっかかったのは暗黒料理人……ではなく、千桜・エリシャのほうだ。
「いえ、なにがそんなに面白いのかと思ってただけですわ」
「その割にバカを見るような顔してたじゃねェかァ~~~、エェ~~~???」
「あら、それはわかりますのね。ジンさんのくせに」
「アァ~~~~??? いま聞き捨てならねェこと」
「コラッ、貴様ら! 私を置いてグチャグチャやっているんじゃないネ!」
 暗黒料理人は痺れを切らして叫んだ。
「ブヒャホハハハハ! アホな格好したアホがキレてンぜェ~~ウヒヒャホハ!」
「……はぁ」
 バカみたいに笑ってるのはどなたかしら、という言葉を飲み込むエリシャ。
 別に遠慮したわけではない。言ってたら話が進まないのである。
「ともかく! 宿の経営者として、おかしな料理をいたずらに振る舞う方は野放しに出来ませんわ」
「ホォ~、私の暗黒料理をおかしなもの呼ばわりとは!」
「おかしなもの以外のなんだと言いますの? まったくもう」
 僵尸を生み出し、人々を麻薬中毒者めいて操ってしまう。
 やっていることはトンチキだが、その結果はけして微笑ましいものではない。
「そォだなァ~~~、完全無欠とか言われるとぶち壊したくなンだよなァ~~~!!」
「あらジンさん、珍しく意見が合いましたわね」
「ブヒャハハハ! ま、人間そういうモンだよなァ~~~?」
 ジンもにたりと笑みを浮かべ、一歩前に出る。
「てなわけで、テメェのご自慢の品は叩き潰してやンよォ!!」
「ええ、完膚なきなまでに――ただし、そうするのは私たちではなく」
 ふわり、と桜が舞う……桜吹雪の中から現れたのは!
「カカッ!? こ、こいつらは!」
「あなたが生み出した、僵尸さんたちですけれど」
 エリシャの力で操られた、首なしの僵尸たちの百華夜行である!
 かつて達人であったものたちの成れの果てが、暗黒料理人に飛びかかった!
「カカーッ! この私に倒された身で小賢しいーッ!」
 暗黒料理人は大地の裂け目から様々な食材を呼び出した。
 食材……というのはつまり、この仙界に根ざす植物や動物である。
 たとえば巨大な樹の根が僵尸の足を捉え、猛牛の角が胴体を貫く。
 といったふうに、暗黒料理の力で凶暴化した食材が雑魚を蹴散らすのだ。
「カァカカカッ! さあ、貴様らも我が暗黒料理の虜になれィッ!」
 そして出現した食材を中華包丁で一瞬にして切り裂いてしまう!
 まるで手裏剣のように、程よくスライスされた食材がふたりに飛んできた!
「食材を飛ばすだなんて、もったいないにもほどが……!」
「あァ~~~~ン? なンだこりゃア」
 仮にも料理を嗜む者として憤るエリシャの前にジンが割り込んだ。
 そして暗黒料理を摘み取ると、なんと自分から食べてしまったのである。
「ってジンさん!? そんなおかしなもの食べて……!」
「……い~~~やァ? オレにゃよくわかンねェ~~~けど……」
 ジンはごくりと食材を嚥下すると、エリシャのほうを振り向く。
「お前の飯のが美味ェ。それはわかる」
「……あら、最初は私の料理なんて嫌がっていたくせに」
 エリシャはくすりと笑い、剣を引き抜いた。
「まあ、褒め言葉として受け取っておきますわ!」
「なにィ!? 私の暗黒料理が効かないだと~~~!?」
「そンなモンでオレらの慾を満たせるかよ、バァ~~~~カ!!」
 ジンの放つ光が、暗黒料理人による大地の変異を洗い清めてしまう。
 僵尸が真っ二つになって斃れた瞬間、その奥から襲いかかるエリシャ!
「私の慾を満たせるのは、料理よりもあなたの御首ですわ!」
 獰猛な剣が、暗黒料理人を切り裂く。その表情は、鬼の笑み……!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

朱酉・逢真
坊と/f22865
会話)ヒトは死を拒む。理由なンざさまざま、重要じゃない。だが、ああ教えよう。死なくして生(*き)なしと。坊よ、飢えたやつにがっつり食わせちゃダメさ。胃が驚いて吐いちまう。そこの使うのもやめときな…なに仕込まれてっかわからんぜ。仔らが用意するからさ。仙人ァなまぐさダメだろ、よゥく煮た薬膳粥あたりがいいかもなァ。
行動)影が多くてありがてェやな。眷属ども。俺の仔らよ。影に湧け。渦巻き、奴さんを抑えろ。多く死ぬだろう。それでいい。その死から生は生まれる。我らは《死》。《生》の隣(*かげ)で咲うもの。雲珠坊や。さァさ、作物はたくさんある。植物の"いのち"、食べさせておやり。


雨野・雲珠
かみさまと/f16930

あ…食欲をそそるすごくよい香りが…
痛っ、(相棒の白蛇に頬をかぷっと)──は!危なかった
汐くん、ありがとうございます

保護と隔離は十八番。
かみさまが時間を稼いでいてくださるうちに、
【花吹雪】でどんどん寝かせていきます。
倒れた方々の手をとり箱のご神紋にくっつけ、
戦闘が終わるまで箱宮の中で眠っていて頂きましょう。

なんと恐ろしい…
あ、お粥はよいですね。水分多めで、くたくたに煮て
…この湧き出た食料、食べちゃだめでしょうか。
うわぁ…すごい、こんな御業が…!
ありがたく使わせていただきます!

…かみさまにも何かしてさしあげられたらいいのにな。
生きてるものの感覚だって、わかってるんですけど。



●生きてるものの感覚、死んだものの世界
「カァカカカカ! さあ、獣よ! 植物よ! 我が意のままに暴れよォ!」
 暗黒料理人が大地を切り裂くと、その裂け目から地の滋養が溢れ出る。
 本来、この世界の滋養――つまり気脈は常に巡り続け輪廻するべきものだ。
 死んだ動物の死体が、より小さな生き物や植物の苗床となるように。
 すべてはつながっており、常に巡るからこそ自然というのは循環している。
 暗黒料理人のやっていることは、その経絡を無理矢理に引き裂いているも同然。
 溢れ出した滋養が荒ぶる植物や獰猛な獣の姿をとり、猟兵たちに襲いかかる!
「影が多くてありがてェやな。さて眷属ども、俺の仔らよ。おいでな」
 朱酉・逢真は雨野・雲珠の影から現れると、煙管を吹かした。
 すると煙は獣・鳥・蟲といった生物に変わり、うぞうぞと洞穴を満たす。
 それらはすべて死んだもの。巡った生命の成れの果てである。
「影に湧け。渦巻き、蠢き、満ちな。数には数だ、ひひひ」
 煙が、あるいは洞穴の影が、次々に死せる眷属の形を取って波濤となる。
 それは大地の裂け目から現れた、歪んだ気脈の化身とぶつかりあった。
 まるで泥濘と荒波が混ざり合うように、白と黒とが暗がりの中で喰らい合う。
 滋養を求める植物の根を骨になった動物が貪り、食いちぎる。
 角や爪で獲物を切り裂く猛獣を、毒を持っ鳥や蟲がついばみ、殺す。
 なんとも壮絶な光景だ。しかし、弱肉強食とはそういうものである。
 世界の至るところで、永劫繰り返されてきた当然の生命の輪廻。
 目の前の光景は、それを圧縮しここに現出させたに過ぎないのだ。
「……すごい、光景ですね……」
「見惚れてる場合じゃねェぜ坊、ついでに言うとよだれも拭いときな」
「……はっ」
 洞穴に満ちる暗黒料理の麻薬的な匂いのせいか。
 雲珠は思わず口元を拭いつつ、息を整えて白い花吹雪を降らせた。
「まずは、倒れた方々を保護して……と」
 暗黒料理に魅入られた人々は、白い花吹雪の力で安寧の眠りにつく。
 そして吹きすさぶ花吹雪は、気脈から湧いて出た獣たちをも眠らせた。
 荒ぶる植物は落ち着きを取り戻し、大地の裂け目もまた閉じていくのだ。
「カカァ!? なぜ私のこじ開けた気脈が閉じているゥ!?」
「そいつァいけねェよお前さん、"そこ"はいじくっちゃアダメなとこだ」
 神が笑う。
「それをいじられちゃア、正しく廻ってる生と死があべこべになっちまう。
 腐るべきじゃねェ土地が腐り、枯れるべきじゃねェ野山が枯れちまうのさ。
 そうすっと飢えと渇きで要らねェ死人がたくさんさ。仕事が増えっちまう、ひひ」
 眠りについた獣たちや植物は死に絶え、あるいは枯れ、大地に還元されていく。
 あとにぽとりぽとりと落ちるのは、急速な成長と枯渇で熟れた果実の山だ。
「うわぁ……お、美味しそう……!」
「いいぜ、坊。作物ってェのは食ってやらんともったいねェだろ?」
 神にそのような概念はない。が、男はそれらしい言い回しをしてみせた。
「植物の"いのち"、食べさせておやり。きっとそいつらにゃア効果覿面さ」
「は、はい! さすがはかみさま、すごい御業です……!」
 雲珠が植物を絞りその果汁を人々に含ませると、土気色の肌は生気を取り戻し呻きも収まった。
 果実とは、瑞々しい生命の結実そのもの。
 悪しき外法で心身を病んだ人々には、まさに百薬の長である。
「……かみさまにも、なにかしてさしあげられたらいいのにな」
 暗黒料理人と対峙する男の背をみやり、雲珠は呟いた。
「生きてるものの感覚だって、わかってはいるけれど……」
 その思いを知ってか知らずか、男は相変わらず陰気に笑う。
 死と病毒を連れた男の足元に生命の結実が転がるさまは、なんとも奇妙だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
【炊事課】
つまり――これは!!
料理勝負ってことだなッッッ!!!

笑止千万ッ!料理人が聞いて呆れる!
穂結の言う通りだ!
料理とは心を込めて振るうもの――であればこそ他者の心を揺さぶるもの
そのような洗脳めいた料理なぞ、この私が打ち砕いてやる!!料理でッッ!!

幸いにして食材だけは豊富
とあらば思いつく限りのメニューを作ってやろうではないか
この世界の味覚に合うような――中華料理を!
さァ民衆よ、私の料理を心ゆくまで堪能するが良い!!

ふはは、暗黒料理など穂結の心を奪えもすまい
矜持も何も叩き割ってやったところで――
……何かいつもごめんな匡
後で酒奢るから許してくれ
っつーわけで!!やっちまえー!!匡ー!!


穂結・神楽耶
【炊事課】

――喝ッ!!
料理とは人身を支配し従えるモノに非ず。
胃を満たし心温めるモノにございますれば。
貴殿は料理人を冠するに能わず。
これより炊事課が証明して差し上げます。

というわけで――
残さず、余さず、頂きます。

暗黒料理なんのその。
口内・消化器系を焔化してしまえば毒素が体内に入ることはありません。
そもそも味覚も焼け落ちてますから味わいも何もありませんけど!わはは!
これじゃあ虜になってあげられませんね…もっと食べれば分かりませんが…(食べ燃やしながら)

あ、皆様には美味しい料理があっちにありますからね~(ニルさんを示す)(中華のいい匂いが食欲をそそる)
…匡さん?あれ何です? なぜ突然UFO!?


鳴宮・匡
【炊事課】


もうのっけからこいつらの言ってることがわかんねーんだけど……
いやこの状況で深く考えたらダメだな
まあいいや、こういう時にお誂え向きのものもあるし
…………不本意だけど

ニルと穂結が時間稼いでくれてる間に
こっちはこっちで仕事をしよう
まずはニルの料理で正気に戻らないやつをどうにかする
……というわけで支援要請だな
ところでこれここからでも繋が るのかよどうなってんだ??
いやまあこの状況で深く考えたらダメだな(2回目)
とりあえず一般人の鎮圧は任せたよ

いきなり正気に戻らないでくれるか??
いいよ、無茶振りとわけのわかんない状況には慣れてるし

――じゃ、邪魔もなくなったことだし
あらためて――墜ちてもらうぜ



●炊事課、料理対決を挑む!
 ――料理。
 それは日常の象徴。
 人間が人間らしい生活を送るための、最低限の、必要不可欠の文化。
 ひもじさを感じた人間は、心までやせ細り生きる活力を失ってしまうものだ。
 そして投げやりな思考になり、何をやっても上手くいかなくなる。
 どれだけくそったれな生き方をしていても、食事さえ満たされていれば案外なんとかなるもの。
 だからこそ、食事は欠かしてはならないものだと、三人は知っている。

 ……という、真面目な理屈はさておき。
「喝ッ!!」
 穂結・神楽耶はいつになく険を帯びた様子で、暗黒料理人を一喝した。
「料理とは人身を支配し従えるモノに非ず。胃を満たし心暖めるモノ!
 すなわち、貴殿は料理人の名を冠するに能わず。端的に申し上げて不快です!」
「カァーカカカ! 片腹痛し! そのような正道の理屈は聞き飽きたわ!」
 しかし暗黒料理人は悪びれない。悪童めいて一笑に付す。
「心を暖める? カッカカカ! まさしく語るに落ちたり、愚も愚の骨頂!
 素晴らしい技とはすなわち、己の意を世界に広めるため振るうべきモノ!
 ならばこの私が、私の技でやりたいことをやるのは当然というものだねェ!」
「ハ! 笑止千万はこちらの台詞だ、三下め」
 ニルズヘッグ・ニヴルヘイムは皮肉げに表情を歪めた。
「そもそもだ、貴様は己の腕前をこれでもかと誇っているがそこが間違いなのだ」
「……何ィ?」
 暗黒料理人はよほど自分の腕前を誇っているのか、その物言いに眉根を寄せた。
 その振る舞いこそが小賢しい、とニルズへッグは挑発的な笑みを浮かべる。
「料理とは心を込めて振るうもの――であればこそ他者の心を揺さぶるもの。
 小手先と小細工で人々を洗脳させるような料理なぞ、ハナから料理と呼べん。
 料理人が聞いて呆れる! 貴様のやっていることは、ただの食材の無駄遣いだ!」
「き、き、貴様ァ……!!」
 暗黒料理人にとって、これほど聞き捨てならない罵倒はなかった。
 たとえ左道に堕ちたとて、それは奴にとって「料理」という技術なのである。
 その根本を否定されたとあらば、激昂せざるもむべなるかな!
「……ま、そうだな。飯を麻薬みたいに使うのは問題外だろ」
 ふたりほど熱烈なこだわりがあるわけではないが、鳴宮・匡も料理上手。
 特に彼の場合、ヒトとしての在り方に(もちろんふたりもそうだが)一段深い思い入れ……というよりも、匡なりの考えというものがあった。
 人と卓を囲むことに、単なる食事以上の意義を見出していたからこそ、
 匡もまた料理の腕を磨き、それを通じて様々な交流をしてきたのである。
 ああまで熱血することはないが、暗黒料理など言語道断という点では同じだ。
「なんであれ、お前を見逃すつもりはないけどな。さっさと片付け――」
「ああそうだ。この私が打ち砕いてやる! ――料理でッッ!!」
「は??」
 なんだけど、ニルズへッグの素っ頓狂な言葉に思わず素のリアクションをした。

「なんだ、匡! なにか間違っているところがあるかッ!?」
「いや、普通に戦えば……」
「何を言ってるんだ! 目には目を、歯には歯を! 料理には料理だッ!!」
 ニルズへッグは熱弁した。いつになく左目の炎も燃えていた(物理的に)
「本当の料理のなんたるかを、私が教えてやる!!」
「……その必要あるか???」
「ご安心ください、匡さん。食べるのはわたくしの仕事です!」
「なんでドヤ顔してんだよ???」
 どやぁ。親指で自分を指差す神楽耶。なんもかんもがずれていた。
「ぬぬぅ、そこまで言われては私も退けないねッ!」
「ええ……」
 しかし暗黒料理人もノッてきた! 匡、思わずげんなりした顔になる!
 だが料理とはこういうものなのだ! 理屈ではないのである!!
 たとえ戦闘中だろうがなんだろうが――否、そもそも戦闘とはなにか!?
 料理人にとっての戦闘とは、料理に他ならないのだ……!!

 と、まあそんな感じで。
「カカカカカカーッ!!」
「ハッハッハッハッハ!」
 なぜか急遽用意された特設厨房を使い、料理対決を始めた両名。
「す、すげえ! あの男、なんて包丁さばきだ!」
「火加減も完璧だぜ! 魚が生きて泳いでいるかのようだ!」
「スープが輝いて見える……!!」
 肉の盾めいて利用されていたはずの被害者のみなさんも、多いに湧き上がっている。
 もはやこの場の雰囲気(ルビ:テクスチャ)は料理漫画のそれになってしまった。
 となると、仮に匡が暗黒料理人を撃ったところでどうにもならない。
 極まった料理人は、飛行機だって真正面から受け止められるのだから!
「……よし、考えるのをやめよう」
 そしてこの状況に慣れた匡は、早々に思考を打ち切った。
 さらになにやら端末を取り出すと、ポチポチと操作し始める。
「ところでこれ、ここからでも繋が……るのかよこれどうなってんだ???」
 いや落ち着け、深く考えるな。正気に戻ったらダメなやつだ。
 いや操られた人々は正気に戻さないといけないのだが、それはそれ!
「あー、もしもし。支援要請頼めるか?」
『確認したわ。5秒でUFOが行くから、離れてね』
 と、端末から聞こえてくる誰かさんの声。
 まあお相手さんグリモア猟兵だし同じ世界に居たんじゃない?(適当)
「いや早いな……とりあえずこれでいいか」
 匡が要請を終えると、ちょうど調理が終わっているところだった。
「さあ民衆よ、私の料理を心ゆくまで堪能するがいい!!」
 先攻ニルズへッグ! ことりことりと満漢全席を並べていく。
「おお……! こ、この味わいは!!」
 なぜか妙に食通っぽい一般人が、一口食べて目を輝かせた!
「舌の上でシャッキリポン、それでいて肉汁が溢れてまるで味の七変化!
 外はカリカリ中はふわふわ、ジューシーでありながらしつこくない味わい……!
 これこそまさに、味の国士無双! おお、餓えた心が満たされていくぅ~!!」
 そしてなにやら浮かび始めた。いや料理で浮かぶってなんだ?
「クキィーッ! この私の暗黒料理も食べてみるネ、さぁ!!」
 後攻暗黒料理人、試食役はまだ暗黒料理を食べていない神楽耶だ。
 暗黒料理人はニヤリと笑う。やつは最初から勝負をするつもりなどない。
 暗黒料理の力で神楽耶を操り、裏切らせようという腹積もりなのだ。卑劣!
「……ぁむ、もぐもぐ……」
 だが神楽耶! なんと暗黒料理をきちんと平らげていくではないか!
 即座に発狂し暴れまわる毒素が入っているはずの暗黒料理を! なぜ!?
「カカァ!? な、なぜ私の満漢全席を食べて正気でいられるゥ!?」
「簡単でございます」
 ボワッ! と、神楽耶の身体が炎に包まれた。えっ?
「えっ!?」
「口の中や消化器系をこのように焔化してしまえば、毒素など入りません。
 そもそも味覚も焼け落ちておりますので味見も何もありませんけれど!!」
「そ、それでは勝負にならんではないかァーッ!?」
「おっと、最初から勝負をするつもりがなかった輩が言うじゃないか、え?」
「……!!」
 ニルズへッグに痛いところを突かれ、暗黒料理人はうろたえた。
「というわけで、暗黒料理破れたり、でございますね。わはは!」
「お、おのれーッ! ならば後ろに控えさせていた一般人を使ってーッ!」
「……残念だけど、お前が頼りにしてる連中はもう来ないぜ」
 匡の言葉通り、洞穴の奥からは誰も……現れない!
「な、何故だーッ!?」
「……知らないほうがいいと思うんだけどな」
 遠い目をする匡。洞穴に降り注ぐUFOの謎ビーム……洞穴にUFOって何???
「匡さん、なんですあれ!?」
「UFOだってさ」
「未確認飛行物体(アンノウン・フライング・オブジェクト)!?!?」
 神楽耶は驚いた。でもふたりのトンチキ具合も大概だったと思う。
「「「やったー頭がスッキリしたぞー!」」」
 ともあれ、ビームを浴びた人々はとっくに正気に戻っていたのだ!
「「「俺達も美味しい料理で我に返ったぞー!」
 ニルズへッグの料理を食べたみなさんも正気に戻っていた。雑ゥ!
「匡、なんかごめんな……あとで酒奢るからさ……」
「まあ、いいけど」
「いやほんと毎回ごめんな。とにかくあとは任せたぞ匡ー!!」
「本当にいいけどさ別に……仕事をするだけだし」
 ジャキッ。匡が銃のスライドを引くと暗黒料理人は冷や汗を垂らした。
「ってわけだ。そろそろ片付けさせてくれ」
「ば、バカなーッ!? 私の暗黒料理がこんな形で敗れるなどーッ!?」
 二重の意味での敗北は、暗黒料理人の心を折るには十分すぎた……!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
ンッンー、確かにこれだけの上物…腕の良い料理人が使えば素晴らしい物が出来上がるだろうな
逆に言えば、腕の悪い料理人じゃ持て余すだけ
例えばお前みたいな、自分には実力があるって勘違いしてる愉快な道化じみた料理人だ
おおっと、事実を言われてキレちまったかい?ハッハー!

おいおい、俺はそんなもん食う趣味は無いぜ
【見切り】と【第六感】で暗黒料理を避けてっと…お、食材を生み出すのか?じゃあ、それはナシだな
──『Dirty Edit』
お前の大好きな食材は現れんよ
材料が無い料理人って何するんだ?霞でも作る?
…なんて言ってる間に、懐に潜り込む
俺も材料を斬るのは得意なんだ
今宵カットするのは、ダセエ料理人の首ってね



●ランナーズ・クッキング
 ヒュカッ! と、ヴィクティム・ウィンターミュートの顔面すれすれを中華包丁が通り過ぎた。
 暗黒料理人は両手に包丁を構え、恐るべき速度でヴィクティムに斬りかかる。
 なるほど武術家としても一流ということなのだろう。その動き、実に苛烈!
「カァーカカカ! さあ、バラバラになってしまうがいいネ!」
「ずいぶん自信があるみたいだな。けど――ああ、のろますぎるぜ」
「カカッ!?」
 ヴィクティムの言葉はハッタリではない。その証拠に彼は傷一つなし!
 間一髪回避しているように見えるが、それはヴィクティムの挑発である。
 攻撃に合わせてギリギリ回避してみせるほど、彼は動きが見えているのだ。
 正面張った戦いは不得意だと嘯くこの男、しかしてプロフェッショナルである。
 この程度の相手ならば、体術で遅れを取るほど甘くはない!
「残念だなァ、料理の腕前だけじゃなく武術(コッチ)も三流以下かい。
 いくら具材がよくても、腕の悪い料理人じゃ持て余しちまうだけッてわけだ。
 自分には実力があるって勘違いしてる愉快な道化が料理人とは、お笑いだぜ」
「貴様ァーッ!!」
「おおっと、事実を言われてキレちまったかい? ハッハー!」
 暗黒料理人の斬撃を躱し、ヴィクティムは距離を取った。
 すると暗黒料理人は、大地の気脈に裂け目を生み出そうとする。
 そうすることで、溢れる大地の滋養を都合のいいように書き換えてしまい、
 荒れ狂う動物や凶暴な植物といった、環境の力で敵を絡め取ろうとするのだ。

 ――だが!
「カカカ! 現われよ我が食材……カカッ!?」
 包丁が大地を切り裂いても、裂け目からは何も現れなかった。
 愕然とする暗黒料理人に、ヴィクティムはにやりと笑う。
「残念だなァ、そいつはすでに俺が"書き換え"たあとさ」
 ――Dirty Edit!
 ユーベルコードの術式を改竄してしまう電脳ウィルスの力である!
「材料がない暗黒料理人って何するんだ? 霞でも作るのか、え?」
「貴様――ハッ!?」
 暗黒料理人は目を曇らせた。怒りのせいである。
 それこそがヴィクティムの狙い……彼はすでに、懐に潜り込んでいる!
「正しいカッティングを見せてやるよ、四流料理人」
「カハ……ッ!!」
 逆手に握られた電磁ナイフが、暗黒料理人を切り裂く。
 屈辱的な一撃に、暗黒料理人のプライドは完全に砕かれた……!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヤムヤム・グリード
『無限に食材が湧き出る環境』は、敵だけが一方的に有利になる場ってワケじゃない。
そもそも食材自体には何の罪も無く、問題になるのはその食材が暗黒料理と化してしまうコトだ。ならばッ!
『食材が湧き出た端から調理し、暗黒料理人に使用させなければ良い』!

先の桃源郷に生っていた蟠桃然り、この世界──特に仙界には、ただ食べるだけでも滋養効果のある食材が数多く存在する。
湧き出た食材に仙界の食材を組み合わせ、暗黒料理に対抗する為の薬膳を作ってみせようッ!

料理は心を支配する為の道具じゃねェ……荒んだ心に寄り添い、癒し、そして救うモノだッ!
この地の平和、そして〝食〟の未来の為ッ!テメェの作る料理には絶対に負けんッ!!



●悪魔でも料理人!
「カァーカカカ! すべては私の意のまま! 食材も! 人の心もッ!!」
 暗黒料理人はあちこちに亀裂を生み出し、勝ち誇った。
 そこから湧き出る無限の食材とは、つまりこの仙界の気脈そのもの。
 天然自然に巡る大地の力を無理やり捻じ曲げて、食材に変えているのだ。
 こんな無法を許せば、封神武侠界そのものに致命的悪影響が出かねない。
 一体どうすれば、この暴走を止められるのか……!?

 ヤムヤム・グリードが出した答えは、他の誰とも違っていた。
「甘いな、暗黒料理人よ!」
「カカッ!?」
 なんとヤムヤムは、飛び出した料理を即座に調理してしまっていたのだ!
「無限に食材が湧き出る環境……なるほど、そいつは料理人として夢のようだ。
 だが、料理を出来るのはテメェだけじゃねぇ、このオレもまた料理人のはしくれよ!」
 ヤムヤムは果実をすさまじい速度で切り裂き、荒ぶる動物を一瞬で〆てしまう。
 魚はその新鮮さを失わないうちに包丁を入れ、肉を焼き、骨で出汁を取る!
 食の力で平和をもたらしたいという思いがキッチンを生み出していた。
 ヤムヤムのその手さばきは、暗黒料理人をはるかに越えている!
「料理は人の心を支配するための道具じゃねェ。
 荒んだ心に寄り添い、癒やし、そして救うモノだッ!!」
「き、貴様! この私にそんな道理を説くとは……聞き飽きた理屈だねェ!」
「なら教えてやる! テメェの忘れた、本当の料理の在り方ってモンを!」
 ヤムヤムが空中に放り投げた食材は、まるで吸い寄せられるように皿に盛られる。
 すると魔法のようにして、見事な薬膳が次々に出来上がるではないか。
 そして操られた人々は、まるで吸い寄せられるようにそれらを食べ始めた!
「お、おお……!」
「なんて美味だ……身体だけじゃない、心まで満たされる!」
 人々の目に生気が戻り、笑顔が戻り、そして自由を取り戻した。
 暗黒料理のいびつな支配が、ヤムヤムの薬膳によって払われたのである。
「ば、バカな!? 暗黒料理漬けにしてやった人間どもがッ!」
「テメェの料理なんぞには絶対に負けん! オレの理想を叶えるためにも!!」
 この地を、否、すべての世界を"食"によって平和にする。
 ヤムヤムの思いは、暗黒料理人の外法をたしかに上回ったのだ!
 この地を直接歩き、味わい、感じ取ったすべてが、彼の調理を助けている!
「"食"の未来のため……テメェのすべてを、討ち倒してやるぜッ!」
 人々の歓声がヤムヤムを称える。それこそが何よりも明白な差であった。
 彼の料理は、苦しむ人々に希望を取り戻したのだ……!

大成功 🔵​🔵​🔵​

堆沙坑・娘娘
黙れ。

死ね。

暗黒料理人と操られた人たちが動く前、もしくは動き出したところを最速で【貫通攻撃】。
どうせこういう外道は操った人々を盾にするに決まっています。
ならばその間も与えず、さっさと貫くのみ。

…近づいて分かりましたが、口が臭いんですよ。(空いた方の手で嫌そうに自分の鼻と口元を覆うジェスチャーをしながら)(実際には臭くなくても臭いことにする)
こんな汚れた肉、豚の餌にもなりません。食べる豚が可哀想です。前言を撤回します…ああ、私としたことが…(演技臭い嘆き)
…それと、いつまで私のパイルバンカーにその汚い体で突き刺さっているつもりですか?(操られた人々に囲まれる前に杭に刺さった敵を蹴り飛ばして離脱)



●最速・最善
 暗黒料理で操った人々を肉の盾に利用し、一方的に攻撃する。
 それが、数多の達人を屠ってきた暗黒料理人のシンプルなやり方だ。
 もちろん、真正面から戦ってもそこらの達人では勝てぬほど、やつは強い。
 オブリビオンとはそういうものである。しかし……。

「がふっ」
 暗黒料理人は血を吐いた。堆沙坑・娘娘は心底嫌そうに顔をしかめる。
「……まだ生きていますか。本当に往生際の悪い、どこまでも腐った輩ですね」
 何が起きたのか。
 端的に言えば――娘娘が、何よりも早く動き、暗黒料理人に杭を突き刺した。
 人々を肉の建てにするとか、その隙に攻撃するとか、そんなレベルではない。
 まさしく最速最優、打ち出される杭の如き神速の踏み込みであった。

 "雷霆"。

 娘娘は、この技をそう呼ぶ。
 光が煌めくような速度で敵に近づき、ただパイルバンカーで杭打ちする。
 それだけのシンプルな……だからこそ、抗いようのない強力な攻撃である。
「近づいてわかりましたが、口が臭いんですよあなた」
 実際はそんなことはないのだが、娘娘はわざとらしく口元を覆ってみせた。
「あなたのような汚れた肉は、豚の餌にもなりません。食べる豚が可哀想です。
 前言を撤回しないといけませんね……ああ、私としたことがなんて考えのない……」
「……お、おま、え……」
 暗黒料理人がうめいた。
「な、なんだ、ネ、その、速さ、は……?」
「……黙れ。さっさと死ね」
 娘娘は暗黒料理人の身体を乱暴に蹴り、杭を引き抜くと距離を取った。
 まさしく人形そのものの冷徹な瞳で、苦悶する暗黒料理人を見下ろす。
 悪に一切の慈悲も容赦も見いださぬ、苛烈で強靭なる武功。
 その前には、暗黒料理だとかいう小手先は、何も通用しないのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎

どれだけお前の料理が美味しかろうと俺は食べたくないな
人を追い込んで環境も勝手に変えるなんて許しておけない
人界も仙界も好きにはさせない

SPDで判定
孔雀輪で【空中浮遊】して移動
被害者が襲ってきたら指輪で風の【結界術】を発動させて閉じ込め、他にも襲ってくるようなら【武器改造】で刃の無い剣状にした銀腕で【早業】【優しさ】【心配り】を併用して【気絶攻撃】で無力化する
それから砂埃を巻き上げて【目潰し】した隙に【迷彩】で身を隠しつつ、【ダッシュ】で敵に近づいて【怪力】【鎧無視攻撃】【貫通攻撃】【早業】を使い指定UCで【切断】する



●ふたつの世界を守るため
 ルイス・グリッドの見た限り、暗黒料理で操られた人々の大半は仙界の住人ではないようだった。
 同じ古代中国風の文明でも、仙界と人界とではあきらかに文化の違いが生まれる。
 つまり奴は、先んじて人界で「駒」を増やし、力をつけていたのだろう。
 仙界での悪行が、そこまで知れ渡っていなかったのはそれが理由なのだ。
「料理を使って人を操り、あまつさえ僵尸にまで変え、盾代わりに利用する……か。
 どれだけお前の料理が美味しかろうと、俺は食べたくないな。言語登壇だ」
 ルイスは嫌悪を隠しもせずに言い、銀の腕で暗黒料理人を指差した。
「人を追い込んで環境さえ勝手に変えるなんて、許しておけることじゃない。
 この仙界も、人界も……どちらの世界も、これ以上お前の好きにさせない!」
「カァーカカカカ! ならば止めてみせるがいいーッ!」
 暗黒料理人は高笑いとともに、操られた人々をルイスへ差し向けた。
 ルイスはゾンビめいて群がる人々の攻撃を、空中に浮かび上がることで回避。
 そして風の結界術を発動し、正気を失った人々を風の障壁の中に閉じ込めた。
「う、ううう……苦しい……!」
「満たされない……腹が満たされない……!」
「すまない、いまは耐えてくれ」
 ルイスは人々の苦悶の呻きに顔を顰め、暗黒料理人を睨んだ。

 ――しかし、その姿がない!
「不意打ちなんて、どこまでも汚いオブリビオンだな!」
 ルイスの優れた勘がなければ、暗黒料理人の攻撃を許していただろう。
 彼は咄嗟に銀の腕を盾めいて展開し、暗黒料理人の中華包丁を受け止めた。
「カカカ! なかなか目がいい……ぬうっ!?」
 そして素早く砂を蹴り上げて埃を巻き上げ、目潰しすると死角に回り込む。
「な、何をする! 卑怯なッ!」
「お前のような卑怯者に何を言われようと、心が痛まないな」
 ルイスは再び銀腕を変形させ、めくるめく速度の武闘を叩き込んだ。
 怯んだ暗黒料理人は連続攻撃を防御しきれず、ざくりと身体を切り裂かれる!
「グワーッ!?」
 その衝撃で、仮初に塞がれていた貫通傷が開き、血が噴き出した。
 傷口を抑えて後退る暗黒料理人に、ルイスは言い放つ。
「観念しろ。お前に惑わされた人々の報いを、その身で受けてもらうぞ!」
 暗黒料理人は冷や汗で顔を濡らしながら、ただ震えることしか出来ない……!

大成功 🔵​🔵​🔵​

劉・涼鈴
料理はおいしく楽しくなくちゃ! 洗脳に使うなんて許さないぞ!

突撃ー!
洞穴なら近くに岩とか落ちてないかな?
【怪力】でぶん投げて(投擲)、自由に飛ばせないぞ!
どっせーい!

包丁やフライパンより長い戟のリーチを活かして畳みかける!
襲ってくる人たちは戟で【なぎ払ったり】、蹴っ飛ばしたり(吹き飛ばし)!
おりゃおりゃおりゃー! 【功夫】が足りてないよ!

食べ物を粗末にするのはダメだけど……暗黒料理ってんなら毒とおんなじだ!
【覇気】を練り上げて地面に掌打を叩き付ける!
【劉家奥義・祝融禍焔掌】! 今だけここは火焔山だ!
地面から火柱がドーン!



●突撃! 蹂躙!! 火柱!!!
「どっせーい!!」
 やおら劉・涼鈴は洞穴に転がっていた大岩を持ち上げた。
 人間が持つには不釣り合いな大きさだが、彼女の功夫ならば!
「おりゃー!!」
「カカカーッ!?」
 大質量を投げつけられるという、極めてシンプルで有効な攻撃。
 暗黒料理人は飛行を諦め、地上に降りざるを得ない。
「こ、こいつむちゃくちゃするネ! お前達、かかれーッ!」
「「「うううう……」」」
 土気色の肌をした人々が、ゾンビめいた足取りで涼鈴に近づいてくる。
 涼鈴は戟をくるくると回し、衝撃波を起こして人々を吹き飛ばした!
「おりゃおりゃおりゃー! いつまでも操られてないで、目を覚ませーッ!」
「に、肉の盾が効かないィ!? お前、こいつらのことはどうでもいいのかネ!?」
「手加減のひとつも出来ないで伝承者を名乗るわけないでしょ? お生憎様!」
 なるほどたしかによく見てみれば、人々には外傷がほとんどない。
 一見すると荒っぽい攻撃だが、威力をきちんと調節されていた。
 実際のところ、練り上げた軽功を放つことで痛みなく吹き飛ばしているのだ。
「そのぐらいも見抜けないなんて、あなたも功夫タリてないね!」
「ぬうううう……!! よくも吼えたな小娘!!」
 暗黒料理人は両手に中華包丁を構え、涼鈴と激しい戦いを繰り広げた。
 一流の料理人は一流の武術家でもある。めくるめく速度の斬撃!
「なるほど速さはなかなかだね、でも当たらなーい!」
 涼鈴は攻撃を見切り、素早く上体を動かして斬撃を躱してしまう。
 そもそもの武功の土台が違う、まさしく鎧袖一触の立ち回りだ!
「クキィーッ! 生意気な小娘めェー!」
「料理っていうのはね、おいしく楽しくなくちゃいけないんだよ!
 洗脳とか毒殺とか、そんなことのために使うのは許さないんだから!」
 涼鈴は闘気を片手に集め、しゃがみこむと同時に掌打を地面に叩きつけた。
「劉家奥義・祝融禍焔掌――燃えつきろッ!!」
 ドォン!! と地面が裂け、暗黒料理人の足元に噴き出す巨大な火柱!
「グ、グワーーーーーーッ!?」
「どんなもんだい! 今だけ此処は火焔山だよっ!」
 溌剌な笑顔を浮かべて、涼鈴は戟を構える。
 劉家拳法ここにあり。その強さ、まさしく国士無双!

大成功 🔵​🔵​🔵​

尸・骸燐
【黒幇】
ふっふっふ、私の武威の前にまた生贄を……あれ、ねぇ、老大(嶺依)
もしかしてこれ生きてる感じの?
……まぁ死んでるより生きてる方が良いよね、霞月良いこと言った。
まぁ私はもう死んでるけど。

被害者をある程度無視、なるだけ気絶させる程度にとどめつつ、
暗黒料理人の首を狙って方天戟をぶん回していくよ。
あれの首さえ取れば……止まるよね? 止まるかな? 止まんなかったらその時考えればいいや。
ちょっとだけ料理の味は気になるけど、まぁしょうが無いよね


黎・嶺依
【黒幇】
たかが食、されど食か…
仙界にまで至った者らが、斯様に低俗な者の手にかけられたとは
お笑い草じゃのう

…まあ、そうさなあ
霞月は元より専ら宝貝にしか興味を示さん獣じゃったなあ…
もそっと食に気を遣ったり、他者と交流してくれれば婆の心配の種もなくなるのじゃが…まあともかく。

ではひとつ、わらわから所望がある
霞月、骸燐――彼奴の御首を獲って参れ

仙力を纏わせ、飛翔能力を補助することで味方の機動力を底上げする

ここはちょうど仙界なのだ
霞でも食ろうて生きてみればいかがかのう
黄泉路であれば、霞には困らぬであろうよ


黎・霞月
【黒幇】

うっわァ……知ってる顔ちらほら居るゥ……
完っ全に麻薬の中毒者みてェじゃんね、これ倒したあとどうにかなンのかなァ……
や、わざわざ世話してやる気は欠片もねェけどォ

あ、我ねェ、さっき言い損ねたけどォ
嶺小姐が思ってるほど知ってる顔あっても気にしねェからだいじょーぶゥ
だって、別に人に興味ねェもん
そりゃ、死ンでるよりは生きてる方が良いとは思うけどねェ……そンくらいよ、我

てかさァ、食い物とかとりあえず栄養摂れて餓死しなきゃ良くね?
美食とか欠片もキョーミねー……
それにさァ、飛だって宝貝だもんなァ
我の力で動いてンのに、わざわざ食い物とか要らねェよ

ふは、はァい承りィ
ってワケでェ、飛、灼き尽くしておいでェ



 人界北方、医巫閭山(いぶりょざん)。
 緑溢るるこの山には、仙界に通ずる洞穴が存在していた。
 その名を、「涼爽洞(りょうそうどう)」と云う。

 一度は悪漢によって支配されたこの洞穴も、猟兵たちによって元通りになった。
 仙界と人界の人々は、まずはじめに彼らのことを口にあげ、称えたという。
 曰く、英雄好漢。
 曰く、国士無双。
 曰く、秋霜烈日。
 人々は様々な言葉で彼らを称えたが、最後は決まってこのように言った。
「彼ら彼女らこそ、まことの大侠であろう」――と。

●凉爽大俠録
 さて、とはいえ、猟兵のすべてが見上げた志の持ち主なのかと言えばそうではない。
 中には「黒幇」の面々のように、様々な意味で人並み外れた連中もいた。
「ふっふっふ、私の武威の前にまた生贄を……って、あれ」
 やる気満々で拳を鳴らす尸・骸燐だが、はたと気づく。
「ねえ老大、あれってもしかして、生きてる感じのやつ?」
「見ればわかるじゃろうに。いやまあ汝では無理もないか」
 黎・嶺依は片手を顔に当てて、はあとため息をついた。
 僵尸となって久しい彼女では、生者と死者の区別もそうそうつくまい。
 ……まあ僵尸云々の以前に、そこを頓着しない骸燐の性根も大いに問題だろうが。
「まあともあれ、その生きてる感じのやつじゃ。殺生は避けておけ」
「なンか見知った顔も居るしなァ……あれ、倒して元通りになンのかね」
 他人事のように云う黎・霞月。実際のところ、彼にとっては他人事である。
 何よりも宝貝に興味を向ける学術肌(さもなければ、宝貝にしか興味のない唐変木)である彼にとって、見知った相手だろうが他人は他人だ。どうでもいい。
「ま、生きてるほうが死ンでっかよりはいいだろうけどさァ」
「汝もまあそういう輩であろうよ、やれやれ」
 嶺依はまた嘆息し頭を振る。この部下どものなんと奇天烈なことか。
 とはいえまあ、腕に覚えがあるからこそ彼女はふたりを連れてきたのである。
 向こうに回した下劣な暗黒料理人なぞ、3人にかかれば敵ではない。
「霞月、骸燐。わらわからひとつ、所望がある」
 あるじの言葉に、ふたりはにやりと笑みを浮かべた。
「――彼奴の御首を獲ってまいれ。斯様な低俗な者、仙界に不要なり」
「ふは、はァい承りィ」
「知道了!」
 ふたりは従順に返事をし、あるじの意のままに敵に挑む。
 黒幇の恐るべき使い手が、暗黒料理人に牙を剥いたのだ――!

「カァカカカカ! なかなかやるようだが、この数の差は……何ィ!?」
 人々を操り勝ち誇る暗黒料理人の余裕は、あっさりと崩れてしまった。
 なにせ骸燐が、方天戟を振り回し、次々に操られた人々をのしていくからだ!
「手加減はするから死なないでよねー、っと!」
 骸燐の攻撃は、本当に最低限の手加減をしただけの乱暴なものである。
 しかしそれが逆に功を奏し、腕に覚えがある人々の抵抗をねじ伏せていた。
 どのみち暗黒料理人を倒すか暗黒料理の影響を取り除くかしない限り、
 操られた人々を正気に戻すことは不可能。そして、彼らに料理の覚えなどない。
 優れた超級料理人であれば、この場で料理を作って癒やすだとかも出来るだろうが……。
「骸燐、全部を倒さんでもよい。無視できるものは無視するのじゃ」
「ありがと、老大!」
 嶺依の仙力ブーストを受けた骸燐は、人垣を布のようにひょいと飛び越えた。
 暗黒料理人は両手に中華包丁を構え、振り下ろされた方天戟を迎え撃つ!
「クキィ……! お前のような僵尸なんぞに私の暗黒料理を邪魔されたくないネェ!」
「暗黒料理ねぇ。ちょーっとだけ味は気になるけど……ま、老大がああ言ってるからさ!」
 骸燐はすさまじい猛攻をかけ、暗黒料理人の首を叩き落とそうとした。
 嶺依の仙力でブーストされたその膂力は、暗黒料理人をして防戦一方である!
「ク、クキィ……!」
「我は食い物とかキョーミねーからなァ。飛にもいらねェし」
 その暗黒料理人の死角に、霞月の作り上げた飛が回り込んでいた。
「そら、一思いに灼き尽くしてやりなァ!」
「カカァーッ!?」
 ズドン!! と降り注ぐ雷! そして飛の纏う電光が暗黒料理人を襲う!
 嶺依の力出増幅された宝貝の力は、洞穴を真昼のごとく照らすほどに強烈。
 骸燐の攻撃に対処せざる得ない暗黒料理人は、雷撃を防げずまともに受けた!
「カ、カカ、カ……!」
「残念じゃったのう、何某とやら」
 黒焦げでプスプスと煙を上げる暗黒料理人を見て、嶺依はにたりと笑った。
「ここはちょうど仙界――貴様のような輩の腕は要らぬ。死ぬるがよい」
「カ――」
「そーれ、首! もらいッ!!」
 暗黒料理人の断末魔は、ヒュカッ! と首を刎ねられたことで止んだ。
 その生命が途絶えた瞬間、操られていた人々もどさどさと倒れ込む。
 仙界の住人もいれば、秘密裏に攫われていた人界の住人もいるようだった。
「老大、一丁上がりだよォ!」
「うむ、大儀である。ま、あとのことはどうとでもなるじゃろうて」
「だねェ。……にしても食なンてよォ、影響摂れて餓死しなきゃよくね?」
「霞月、汝はもそっと色んなことに気を配って、わらわを安心させておくれ……」
 相変わらずの物言いに、またまた嘆息する嶺依であった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2021年04月16日


挿絵イラスト