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Witch Lord War~燭火

#ダークセイヴァー #殺戮者の紋章 #闇の救済者 #魔女領主戦争 #宿敵撃破

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#闇の救済者
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●紅い断頭台
「へえ、私に暗躍の牙を向ける勢力ねえ」
 断頭台の刃が今、みすぼらしい身なりへと着せ替えられた頭を跳ね飛ばした。
 ごろりと転がるのは、男のそれで。転がっていった先には真新しいものが幾つもあった。頭だけ在る。頭のない胴だけが別の場所で斃れている。
「いつから私の箱庭に、そんな強気な"猫"ばかりを迎えただろう」
 傍に置くは、黒子を演じるに相応しい隷従。形ばかり隷属させた処刑人共たちが振興するものは、本来"異端の神"である。
 "処刑台の魔女"の指示など聞き入れるものではないが、言い方と伝え方を少し換えるだけで彼らは思いのままの役者にもなる――既に死して久しい死人人形も同然なのだ。
 再び殺すまでには及ばない。
「威勢のいい"猫"をたくさん連れておいで。神は私にそう命じているんだよ、処刑劇の役者にたくさんたくさん、"元気な猫"を連れておいで」
『選ばれる魂に幸あらんことを』
「そうだね、私も希望を抱きたい。次に訪れるモノが失敗などしなければそれで構わないのだけれどね。沢山訪れるようだから、脚本自体をもっと密を増して内容を深めておくべきかな……フフフフフ」

●"希望"
「闇の救済者達(ダークセイヴァー)たちが、行動を起こそうとしている」
 フィッダ・ヨクセム(停ノ幼獣・f18408)は、密かにレジスタンス活動を行う者たちに動きがあるのだ、と話し始める。宵闇に紛れ活動する猟兵になぞらえてその名を名乗る彼らは、ある地方領主を討つ算段を整えたというのである。
「だが……狙ッている領地は、他の領地にあまりに近い。単純な突撃では増援を呼ばれかねなくて、返り討ちの危険しかない」
 そこで、闇の救済者達も最小で最大の功績を得るにはどうするべきかを考えた。
 狙っている領地と、近場のもう一つの領地。
 不確定要素を排除して、どちらも黙らせるには――。
「"同時制圧"だ。なかなか思い切ッた計画を打ち出すモンだよな」
 二つの領地を一気に落とせる程の戦力と仲間を彼らは有し、集まりつつある。
 彼らが一丸となればどちらの領主も"倒せるかも"しれない。
「あくまで可能性の範囲からはでない。だから、……彼らの暗躍に、俺様達猟兵も、一枚噛んでやろうぜ?俺らの活動で勇気と希望が芽生えた奴らの、手助けだ。途中で二部隊に別れるなんて穴がでけえし、"はじめから別々の領主"を叩きに行くのを勧める。二部隊にワケても、猟兵が先導するならそれでも戦力自体は十分なんだよ――心配すんな」

 同時刻、同じ予知を視たという不思議な縁のグリモア猟兵とこの作戦を行うならば、不可能はないはずだ。あちらのことは、あちらの同僚の話を聞くといい。
 どちらを攻めるにしても、猟兵が率先すれば闇の救済者達は目的をきっちり定めてくれる筈だ。
 此方は此方の、出来る事をしよう。
「俺様が送る先は、『演劇を愛するヴァンパイア』の支配する処刑人だらけの血塗れな場所になる。自分が主役な劇の"役"を、才がある領民に割り振ッては合わないと殺す処刑人が領主でな、日々隷従させた処刑人を派遣して代役を立ててる日々を過ごしている為、断頭台が大活躍だ。領主は、"永遠に完成しない劇"を作ろうと躍起になッている」
 その地は明らかな冷遇を強いられている地域。敵はこちらの動きに目ざとく気がついて、処刑人たちを大量に解き放ち、襲撃の熱量を抑えようとしてくるはずだ。向かってくる連中を捕獲して、理想を叶えるいい機会とでも考えていることだろう。
「闇の救済者達だけではダメなんだ。一騎当千な実力を有する猟兵でも、ダメなんだ。蹴散らせ、進め。捕まるな、捕まえさせるな、理不尽を否定し、処刑しろ」
 処刑しろ、はあくまで揶揄の言葉だが。
 それくらいの気概で戦わなければ、被害が出てしまうかもしれない。
 闇の救済者達にユーベルコード使いは殆ど存在しないが、他種族と融和して優秀な黒騎士や咎人殺しなども仲間に加えている為、人数は敵の何よりも勝る。
「ちョッとした、戦闘集団だな」
 これを先導し、地方領主の館を攻め落とす。
 此処までが闇の救済者達との作戦だ。
「……だがな、此処まで高い規模で色々が動けば、第五の貴族が必ず勝利に湧く希望を潰しに来るもんなんだ。耳を貸すな、逃すな、立ち向かえ。敵を迎え撃つタイミングは領主を陥落させたら、だ」
 先にも後にも出没するタイミングは連鎖的。
 重要なプランは必要ない。なぜなら――。
「過去に縛られる必要はない。闇の救済者たちに絶望を与えるのがヴァンパイアなら、俺様達は奴らの希望で有り続ければいいんだからさ」


タテガミ
 こんにちは、タテガミです。
 処刑の仕方、その考え方。ダークセイヴァー流宗教上の違いにて、それは始まり暴れだすのである。
 今回は、里音MSさんと合同な感じでお送りします。

 ==========。
 このシナリオは里音MSとの合同シナリオです。
 同じ時間に進行しているため、両方のシナリオに参加することはできません。
 両MS同時進行のため、各章プレイング受付前に準備期間を設けます。
 その上で、受付期間は短め、成功人数に達しない場合はサポートさんのお力も借りての進行となります。
 各章の受付期間は各シナリオのタグでご確認ください。
 ==========。

●第一章
 大量の配下の軍勢との戦闘です。
 どどど、っと来ます。領主の頂く宗教とは振興する派閥が異なりますが、信仰に溺れられるのは領主のおかげ。さあ処刑の時間です。一致団結した宗教団体は、手強いですよ。
 闇の救済者達を奮起させるため、猟兵達が先行を行ったり、色々な方法で手助けは出来ると思います。闇の救済者達は負傷・死傷者なしで切り抜けられるとは思っていませんが被害の規模が少ないに越したことは、無いと思われます。

●第二章
 闇の救済者達が配下の軍勢と引き続き戦闘している間に、そのまま領主の館に押しかけて、領主の逃げ道を無くしてしまえば後は討つだけだ!
 集団は彼らに任せて、猟兵たちは領主を討つ事を優先して下さい。
 数こそパワー、領主の目指す完璧な舞台、お気に召さないと断頭台へご招待。処刑人の魔女は、娘なれど、舞台に立った猟兵も、玩具になり得るかどうか吟味します。

●第三章
 第五の貴族直属の配下とのボス戦です。
 美しさを問い、美しさの為に戦う麗人ヴァンパイアの考えを、闇の救済者はおそらく良しとしません。この場で彼女を討たなければならないのです。猟兵達が負けたりすると、このボスは全てを破壊し、奮起の篝火を消し止めるでしょう。

 今回は、第二章、第三章の冒頭に断章を挟みます。
 第一章の受付は里音MSと同じく【4/3~4/4一杯】。ロスタイムは発生する予定ですが、受付期間以降の採用はお約束できませんので、ご注意を。

 受付期間と併せてご確認ください。皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『異端の神に捧げる処刑人』

POW   :    幸あらんことを
自身の【肉体】を代償に、【斧に歪んだ信仰】を籠めた一撃を放つ。自分にとって肉体を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD   :    神は希望を与えて下さる。神は、神は、かみかみか
【自己暗示により限界を超えた筋肉】を一時的に増強し、全ての能力を6倍にする。ただし、レベル秒後に1分間の昏睡状態に陥る。
WIZ   :    救いを、救いを、救いを成す為。立ち上がれ
【心や身体が壊れても信仰を果たす】という願いを【肉体が破損した者、昏倒した者】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リック・ランドルフ
……希望なんてのは柄じゃないが。……ok、今日は希望になってみようじゃねえか。

まずは高い場所。建物の屋根やら屋上やらに移動して、そこから戦場の様子を確認する。(地形の利用、情報収集)

そして救済者達の援護をする。ライフルで救済者達を攻撃しようとする処刑人達の武器、狙い打つ(スナイパー、援護射撃、武器落とし) 主役はアイツ等だ。アイツ等がやる気を出させる為にも……必要以上に俺達が力を出すのは駄目だろうしな。

処刑人達がこっちに気が付いたら、下に降りて武器を熱線銃に持ち替え、UCを発動。熱線銃をショットガンにして攻撃だ。(零距離射撃、早業


……明けない夜はない。それを救済者に、そして領主に教えてやるよ。


ゲニウス・サガレン
(連携歓迎)

なんだい、処刑人のあの頭の袋
あれじゃ、視界が遮られる
周りが見えづらくなるじゃないか……歪んだ信仰心みたいだね
それとも、視野が広い方がいいというのも、現代的な偏見なのかな……

さて、闇の救済者達と共に戦おう
UC「眠れる力を呼び起こせ!」
ここで敵を圧倒し、変われると信じれなければ世情も変わらない!
向こうが宗教的一体感なら、こちらは変革への意志だ!

私も微力ながら戦おう

アイテム「フライング・シュリンプ」&「沈滞の投網」
上空より、敵勢力でも元気の良さそうな連中に、上から網をかぶせて動きを封じる
自動修復する投網さ、そう簡単には破れないよ

アイテム「スティングレイ短針銃」
自分の身はこれで守ろう



●突き進め

 煙が好むくらいの高い処に陣取った一団。
 付いてきた闇の救済者たちになるべく身を低く、ステルスに徹するようにハンドサインで告げる男の姿があった。
「……次にするべき指示を頂けますか」
「ッ……待て待て、俺を頼りすぎるな」
 リック・ランドルフ(刑事で猟兵・f00168)静かに闇の救済者達を嗜める。
 仲間意識を持たれる事自体を指摘するつもりはないが、あくまで手を貸すだけだ。
「しかし、コードネーム"希望"が居ることは我々の指揮も纏まります故……」
 深めにフードを被った人狼が、マスケット銃の点検をしながら囁く。
 "司令塔"は必要ではないか、と。
「……OK、指揮にまで関わるとなると、それを無下にはできねえ」
 頼まれたモノを拒む事などリックの辞書にはないのだ。
「今日は……"希望"になってみようじゃねえか」
 サムズアップで、合図すれば闇の救済者の気配は信頼と安堵の色に染まる。
 そう、単純なことなのだ。
 出来るかも知れないという理想を、"出来る"に換える為の自信は。
 "猟兵が居る"ただ、それだけで強く、大きく変わるのだ。
「まだ撃つな。敵の行動を、戦場全体を。キッチリ把握するんだ」
「……あれが処刑人?なんだ、あの頭の袋…………」
 目を細めるまでもない。頭部に麻布を被った集団が何処をみても見えるのだ。
 ゲニウス・サガレン(探検家を気取る駆け出し学者・f30902)が気になったことは少々場の空気を軽くする。
「だってよく考えてご覧よ、麻の繊維なら其処まで困難ではないかもしれないが、あれじゃ視界が遮られる……」
 網目の粗さで、呼吸も視界も妨げられるものではないだろうと分析が捗る。
 視界を安定化させる明確な目線の穴などもない。
「周りが見えづらくなるじゃないか、仲間内でぶつかったりはしていないが……」
 ――随分と歪んだ信仰心があるみたいだねえ。
「それともだよ、君。視野が広い方がいいというのも、現代的な偏見なのかな……」
 此処はダークセイヴァー。夜と闇に覆われて、比較的、暗い地である。
 二倍も、三倍も視界を狭める処刑人たちだ。そこになにかの意図すら考えてしまうゲニウス。
「……"神"とやらしか見るつもりがないんだろう」
 ほかが見えなくて彼らは全く困らない。
 ニックの返事に興味深い考え方だ、と軽く口笛を吹きそうになるのを我慢した。
 今、不用意に音を立てるのはいけない――。
「……状況は把握した。此処からの狙撃も、重要な意味を持つだろう。銃を持つモノは俺に続け」
「近接武器を持つ人たちは私とだ、これでも応援に自信しかない!」
 ゲニウスの主張は頼れるのか?疑問符が幾つか出没したが、返事を聞いている時間はない。
 それぞれの主張を参考に、得意武器を携えて闇の救済者たちが続く。

 ――上から見て判ったこと。
 ゲニウスが見た戦場は、とにかく徹底的に此方を排除する為に行動する処刑人の群ばかり。押し返す、または突き進む団体というのはあまりに少ない。
 彼らの先頭に、猟兵が居るのだろう、
「……不安かい?いいや大丈夫さ、共に戦おう!」
 私がいるから。ゲニウスの言葉に偽りは始めからなかった。
 眠れる力を呼び起こせ!言葉に掛けられた気持ちを汲んだ闇の救済者達がバトルオーラに覆われる。
「戦闘集団と聞いたから、更に強化すれば君たちならきっとやれる!」
 ――立ち止まることなく、突き進める。
「此処で敵を圧倒し、変われるんだと信じなければ!世情も何も、変わらない!」
「君たちの"希望"は後方にあるだろ!向こうが宗教的一体感なら!こちらは革命への意志だ!」
 ――突き進め!君たちが進む道行きが、必ず明るいと信じろ!
「ぉおおおおお!!」
『その行動、全てに幸あらんことを』
 心のない彼らが口々に言う言葉との相互性は取れていない。人の心を取りこぼした彼らがすることは、更に"心"を代償に歪んだ信仰心を乗せて。
 ぶぉん、ぶぉんと狩り落とそうと振り抜いてくる。
『死は、救済である』
『救済は神が示される言霊である』
 各々の武器で重い一撃を受け止めて、闇の救済者達は突き進む。
 この一撃を跳ね返し、次の攻撃の機会を淡々と狙うのだ。
「……そう、その調子」
 迫りくる豪腕の殺害行動を、スティングレイ短針銃で、ぴぴぴ、と狙撃して反らす。毒性こそ低いが、正確性をずらすことなら可能のはずだ。
「さて、このタイミングだ」
 指をパチンと鳴らすと敵勢力で最も元気の有り余る集団の上に振ってくる金属製の網。大量の人間型オブリビオンを大漁に捕る日が来ようとは――。
「うん、想像以上だ」
 ゲニウスがフライングシュリンプたちを解き放ったのはリックと別れるより少し前。沈滞の投網を携帯させて、上空へ逃していた。もとよりこの戦場の空も闇。空から奇襲が行われるなど、誰も想像していなかった。
『!?」
 処刑人たちの動きが、一気に乱れ始める――。

「……力あるから闘う彼らは、強いな」
「……なにか?」
 呟いた一言に狼耳をパタッと動かした人狼へ。
 なんでもないとリックは首を振った。
「いや。……タイミングを逃すな、構えろ」
 今戦っている敵を見定めて、実際に戦う様子まで見定めた。
 熱線銃を握る手が、標的として見定めるのは動きをわずかに止めた個体。
 闇の救済者たちに止められた、個体の無防備な頭そのものだ。
「最適解は、……今はライフルだ」
 手本と言う宣言もなく、素早くちゃき、と構えて頭を撃ち抜く。
 すぅ、といきなり力が抜けたように仰け反る敵を、最前線の彼らは蹴り飛ばし前へ前へと突き進んでいく。
 ――そうだ、それでいい。
「……肩や体ではなく、頭を?」
「そう、もしくは胸を狙え。……戦いで、必要になることもある。悩むなら、斧だ」
 武器を落とし、弾いて攻撃手段を削げ。
 リックの意図を察して、幾人かは武器目掛けてマスケット銃の引き金を引く。
「……了解です」
 覚悟を決めたモノたちは、リックと同じく頭を潰す。
 動くモノを止めるなら、――心臓か頭。
 ぎりりと唇を噛む誰かの音。
 ――主役として行動するするべきは、アイツらであり。
 ――狙撃の道を選んだコイツらだ。
 ――前線で闘うアイツも相当やる気を出させてるようだが……。
「ああ。狙ったら、……逃がすなよ。迷えば仲間が落とされるぞ」
 ――必要以上に、俺達が力を貸すのは、駄目だろ。
「……っ此方に駆けてくる一団があります!前線、躱されました!」
「狼狽えるな、処刑人達がこっちに気がついただけだ」
 隠れているモノは見つかる事もあるんだとリックは高所の利点を早々に放棄する。
 遅れて行動する闇の救済者達を多少置き去りにするが、彼らなら追いつける筈だ。
 ――迫りくるモノを待ち構えているだけなのが一番愚策……。
 手に握る銃を熱線銃に持ち替えて、駆けながらオプションセットを切り替える。
 ショットガンスタイルに持ち込めば、早打ちもまた、可能。
『希望を与えて下さる存在が、神、神は』
「……眠った向こうで好きなくらい進行しろ」
 ずどんと零距離射撃を打ち込んで、昏睡よりも深く、処刑人を黙らせる。
 再び語る口などもう無いだろう。麻布の中で爆ぜたはずだ。
 自己暗示で既に限界を超えた筋肉だったようだが、心臓を、頭の中身を鍛えられるモノなどそう居まい。熱線で焼かれるより疾く、生者を亡き者にする術しか彼らは持たなかったようだから。
「……明けない夜はない。それを救済者に、そして」
 ――領主に教えてやるよ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

鵜飼・章
これは推理でも予言でもないけれど
領主の名前は『カレン』でしょう
うん、知っているよ
…楽しそうな劇を見てきてあげようと思って

彼女がそういう趣向を好むならば
僕も舞台上で求められた役割を演じるだけだ
即ち希望の光としての『猟兵』
闇の救済者を

猿回しと口八丁しか芸のない僕にこの役は相応しくない
けれど喜劇の駒としては上出来だろう
意外性のある配役は群衆に好まれるものだよ
UC【現在完了】を使い支援中心に動く

毒は全て効果的そうだから
刺した後にあの敵を狙ってほしいと個別に指示を出す
今の彼らには成功体験が必要だろう
僕が直接手を下していては意味がない

永遠に完成しない劇…まるで僕の人生みたいだね
お気に召して貰えたら良いけど



●"主役の名は"

「これは推理でも予言でも無いのだけどね」
 鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)が闇の救済者たちに混ざって呟く。
 言葉に聞き耳を立てながら周囲で簒奪者の鎌をぐっと握り込んだ男たち。
 ぞろぞろと一糸乱れぬ動きで此方へ歩いてくる異端の神に捧げる処刑人。
『神の声を聞きましたか。神の願いを聞きましたか』
 遠く空高く、有翼の娘を彼らは総じて神だと言った。この場へ赴くように指示を齎した"魔女"よりも、崇拝するべき存在はあれなのだと。
『命を掛けるにふさわしい御方……ああ』
「領主の名前、聞かせてくれないか。いや、知らなくてもいい。領主の名前は"カレン"でしょう」
 章は問う。
 断頭台に色を染め、演者を求める魔女の名を。
『何故……』
「うん、知ってるんだよ」
 ――舞台に一番近い場所で。
 ――……楽しそうな劇を見てきてあげようと思ってね。
『識るのなら、神の声を聞き給え』
 どどど、と幾人かの処刑人が勇み突進してくる。
 赤錆びた斧を振りかざし、希望と称して処刑を始める気なのだろう。
 少数でも連れ帰れば神の意向に従うことになる。
 大人数を、生者ではない信者へ変えたところでそれは神が気にすることではない。
 "異端の神"は人間と同様の考え方などしていないから。
 ――彼女の好む傾向は、彼らも含めた舞台なのかな。
 ――いいね、僕も舞台上で求められた役割を演じるだけだ。
「即ち、希望の光としての"猟兵"。闇の救済者を、ね」

 ――しかし、猿回しと口八丁しか芸のない僕には……。
 この役は相応しくない。輝かしい程に眩くて。
 決めつけて動こうにも、滑稽に映る。
 ――けれどね、喜劇の駒としては上出来なんじゃないかな。
 正義と、悪人。それだけでは劇に成らないから。
 成立させる為の村人や、通行人。
 "エトセトラ"がいなくては。
「残念だなあ、この場での議論は既に終わっていてね」
 <<現在完了>>。
 ヴゥウウン。一斉に騒々しく飛び立つ蜂が処刑人の群に我先にと突っ込んでいく。
「さあ。それは"神が望んだこと"なのさ、痛みもまた祝福」
『……神、が……?』
 意識の乱れは自己暗示にて彼らは補完する。
 心酔する神以外の言葉を聞くこと、能わず。
『いや、我らが神は、神は』
 信仰こそパワー。限界を超えて、信仰心が肉体にまで影響を及ぼしていく。
 はじめに見かけた姿とは程遠く、盛り上がる山のように巨大な男へと変わって突然機敏な動きで斧を振う。
 ぶぉん。
 力強い音は空を切った。なぜなら――。
 手足の神経が断裂し、握っていた斧は明後日の方向へ吹っ飛んでいく。
 体にぴたりとくっついた蜂が、鋭利な針を突き刺したのだ。
 動きが止まった処刑人たちにぞぞぞ、と蠍が這い上がっていく。
 気を取られた集団は、蜘蛛の糸に絡まる蝶のごとし。
 毒が周り、一時的な強化を行った体を動かせぬまま、がくん、と頭を垂れる。
 乱れ乱れて、現在完了をその身で示せ。
 昏睡は神が赦したやすらぎだ。
「さあ。暴力的な彼らが君たちを滅ぼす前に、彼らの愛する"神"の元へ還らせてあげるといいよ」
「うぉおお!!!」
 一分間の戦線崩壊が始まった、恐れるな討て。殺される前に、黙らせろ。
 章の扱う"毒"は全て効果てきめん、元人間のオブリビオンには効きすぎた程だ。
 その手の鎌で、叛逆の意志を示といい。
 ――今の彼らには"成功体験"こそ、必要だろう。
 ――成し遂げる。次へと挑む、架け橋となるはずだ。
 ――それに。
「……僕が直接手を下していては、意味がない」
 迫られた分だけ押し返し、闇の救済者たちと共に進む。
 ――永遠に完成しない劇。
 ――……まるで僕の人生みたいだね。
「対面するまでも含めて、お気に召して貰えたら良いけど」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルネ・プロスト
いやはやまさか二正面作戦とはね
もう一方の領主にも興味はあるのだけど同時進行とあっては仕方なし、か
それならそれで、よりろくでなし度の高い此方の領主の始末に専念すると致しましょう
どうにもならない事は考えるだけ無駄だしね

UCで増幅した呪詛を周囲に拡散、敵の思考と精神を侵し意識を朦朧とさせる
思考に靄がかかったことで自己暗示が解ければ幸い
最低限、判断力鈍って限界超えた肉体を持て余してくれればいいかな
隙だらけの相手なら他の人達もやりやすいだろうし

ルネはナイトに騎乗、『悪意』のなぎ払いで攻撃
敵の攻撃はナイトのダッシュ&ジャンプで回避

君らも大概なのだろうけど悪いが今は眼中にないのだよ
端役は速やかにご退場願おう



●片側の戦場

「いやはや思い切りがいいね、ニ正面作戦とは……」
 二つ同時に行われる――戦争。
 ――もう一方の領主にも興味はあるのだけど。
 ルネ・プロスト(人形王国・f21741)の好奇心は、この広い戦場からも近場の領地にも手を伸ばす。届かない、もう一つの戦場へ。
 ――近いと行っても覗き見デキそうな程ではないようだから。
「同時進行では致し方なし、か」
 それならそれで、考え方を変える必要がある。
「どうかしましたか」
 闇の救済者達が尋ねるように聞いてくるので、手をひらり、とルネは振るだけ。
「いいや?それならそれで、よりろくでなし度が高い此方の領主の始末に専念できると思うと致しましょう」
 ――どうにもならない事は、考えるだけ無駄だしね。
 ――どちらもの成功と達成を、祈るばかりだよ。
「……はい。我々も全力を尽くします」
 こくり、と一つ頷いて。戦いの始まりを、ルネは詠唱に載せる。
「"裡より来たれ、淵より来たれ。幾千数多の怨憎悲嘆。――呪いに変じて我が身を満たせ"」
 ずずずず、とルネの周りの空気がずしりと質量を増すように重苦しくなる。
 言霊に寄る力の解放。
 力の扱いに慣れていて目に見えるものは僅かに身を震わせて怯え、見えないものは背筋を撫でる悪寒という効果で何が起こっているかの片鱗を感じた。
 ルネの扱う呪詛、呪力が増幅されて周囲に影響を与えている。信仰が強すぎる想いの束は正の面を強く出しているものの――少し手を加えて力の流れを転じさせてしまえば、それは抱き続ければならない"呪い"へと昇華する。
 在り方が、書き換わるように変じるのだ。
 信仰しない生者の命を過去に捧げる斧にあるのは、呪詛のそれと変わりない。
「広範囲、拡散……」
 増幅した呪詛の大きな出どころは処刑人。
 周囲に漂うだけだった呪詛を内側に侵食させて、存分に与える。
『神は希望を、与え、て……?』
 自己暗示による限界までの筋肉増強。
 行おうとした処刑人の様子が、どこかおかしくなっていく。
『神、は、カミは、かミかみカ……』
 心を無くした彼らにも、精神性は残っている。
 存在に色濃く侵食していく呪詛が、彼らの意識を朦朧とさせる。
 ――正面にいるのが誰なのか。
 ――周囲に居るのが"なに"であるのか。
「思考に制限が、靄が掛かって何が正しいのかわからなくなってしまえば、暗示だって解けちゃうよ」
 自己暗示の前提を覆し、強化能力を根こそぎ削ぐ。削ぎきれなかった個体も、限界を超えた肉体を持て余して、無作為に空を斬る形で暴れだす。
 そこにはなにもいない。
 空中を切り裂いて暴れる、処刑人はもはや歯車の欠けた人形だ。
「今の感想は?」
『カミ、が、が、がががが』
「上出来。でも少し効きすぎかな」
 最低限の判断力で、斧を振るう危ない処刑人形の群と見ればルネに恐れる部分はどこにもない。
「……ほら、皆もルネに続いて?これだけ隙だらけの相手なら、やりやすいでしょう?」
「……!」
 ランスを装備した遊撃騎兵、ナイトに騎乗してルネが先を行く素振りを見せれば、闇の救済者達は奮起する。
「そんなに浴びるほど"悪意"を浴びたくなったんだ?じゃあ、どうぞ」
 ふらふらと"運悪く"近づいてくる処刑人へは"悪意"のなぎ払いがその胴を薙ぐ。
「君らも大概なのだろうけど、悪いが今は眼中にないのだよ」
 殺到してくる敵の群は、ナイトが早駆けしたダッシュ力を駆使して飛び越えて、躱す。ルネはナイトの上からくるりと、処刑人達へと振り返る。
「脇役は速やかにご退場願おう」
 当たらなければ、恐れるものはない。
 ルネが見逃しても。
 後に続き疾走る者たちが、その足を止めず進むために倒すだろう。
「さあ、討て倒せ!」
「――すすめ!」
 各々が得意とする武器を持ち、精神汚濁を濃く行動に表す処刑人の群。
 それを前にしてひとつ、またひとつと彼らは倒して突き進むのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サンディ・ノックス
一騎当千な実力を有する猟兵でもダメだ
と注意は受けたけど、俺は立ちあがったヒト達をできる限り生かしたい
俺が生まれ、埒外になった俺を猟兵として選んだこの世界
途中で道は間違えたけど、今は世界と人々のために戦っている自負がある

だから前に出て派手に動き陽動する
「お前達の神は無力だ、俺達を止めることはできない!」
と声を張り上げて注意を向けさせて指定UCを発動
魔力を使い肉体を飛輪に変換させ、走りつつ館までの侵攻に邪魔な敵を斬り刻んでいく

立ち止まらない
俺が全力を出し道を切り開くように、闇の救済者達も全力で戦うし、対抗できる力があると信じてる
敵からの大振りな攻撃は動きを見切って躱し、喰らっても痛みに耐え突き進む



●血路

 殺到する敵戦力と抵抗する味方の戦力。
 どちらか片方に強者が現れれば戦況は軽くひっくり返るかも知れない戦場。
 五分五分の戦いを続ければ、どちらも相応に被害を出して、誰かしらは死に至る。
 雄叫びと、叫びと、怒号と、神に祈る文言。嫌でも耳につく。
「一騎当千な実力を有する猟兵でも駄目、ねえ」
 たった一人。もしくは歴戦の猟兵達が複数人で殲滅戦行う段だってありだと思う男が一人。ただ、注意の一つとして釘を刺された、サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)は、注意を聞かない男ではない。
 ――俺は立ち上がったヒト達をできる限り生かしたい。
 闇の救済者達は戦い、勝ち取るために立ち上がったのだ。
 彼らは燃え上がり始めた小さな小さな、燭火(しょっか)。
 拠点から手が伸ばせる範囲しか、彼らが自由にできた場所はない。蝋燭の灯火のような集団だ、風を大きく受けて燃え上がるには支えというのは必要で。
 処刑人に頭を刎ねられる様子を、無残に処刑されるのを、見過ごすことはしないのだと強く意識する。
 ――俺が生まれ、埒外になった俺を猟兵として選んだこの世界。
 ――……途中で、道は間違えたけど。
 ――今は世界と人々の為に、戦っているから。
 そんな自負が今は胸の中にあると、思っているから。
「俺の前へ出なくていいよ、俺が一歩先を行くから」
 誰かが返事を返してくる前に、地面を強く蹴って前へ前へと飛び出していく。
 派手めな音をわざと鳴らして、呼び止める声を背中で聞く。
 処刑人たちの群を眼前に並べ、サンディは此方を見ろと挑戦的に言葉を紡ぐのだ。
「お前達の神は無力だ、俺達を止めることは出来ない」
『無力?我らが神が?』
『否、否、否だ。我らが神は希望を紡ぐ御方だ』
 張り上げられた声に、反応する個体が多数。
 ――そう、その調子。
 ――俺を見て、俺を否定して。
 ――異教徒死すべしと潰すべき目標と認識して"付いてこい"。
「神を信じる力とやらを、俺は否定していくけどね」
『おお、神を信じぬ御方よ……その生に幸あらんことを』
 自身の内側、ヒトとしての信念を代償に斧に歪んだ信仰のオーラを燃え上がらせる。彼らには信仰心しか無い。何を欠損しようと、彼らはお構いなしだ。
 全てを異端の神に捧げていると、心酔は深まるばかり。
「身体も心も刻んで、先に生を終えるのはどちらだろうね」
 サンディは振り上げられた沢山の斧に目もくれず。
 処刑人たちの斧を振るう大振りな動きがどうにも緩慢な動作に見えて、息をするように機動を読み切って避けきる。
 ユーベルコードの発動を妨げられる武器の使い手ではないらしい。
 自身の魔力を使い、肉体を漆黒の飛輪に変換させてふわりと浮かべても。
 ユーベルコードの発動を止める手段を彼らは持たないのだ。
「じゃあ、頑張って信仰心を俺に伝えてみてね」
 聞く耳は持つ雰囲気を出しながら、しかし立ち止まらず。
 サンディは彼らの脇を走り抜けながら淡々と切り刻んでいく。

 武器を振り上げた無防備な身体を。武器を支える狂人な腕を。
 攻撃に必要な足、それも健をズタズタに切り刻むのだ。

「武器はともかく、歩く足が無ければ処刑できないよね?」
 ずしゃああ、と処刑人が斃れていく様を、見向きもせずに突き進む。
 ――俺が全力を出し、道を文字通り切り開くんだ。
 ――振り返らないよ。
 ――闇の救済者達も全力で戦うし、対抗できる力があると信じているから。
 どさどさと、倒れ込み呻き声をあげる処刑人を斬り倒し。
 突き進む猟兵の姿に触発されて、黒剣を持つ闇の救済者たちの"イケる"という希望をその目に激しく燃えだした。
 一気に後方から駆け出す彼らが、恐れるべき敵は、血路の外だけにある。息のある敵を踏み先を行くのは忍びないが――それでも、好機はという希望が、今、此処にあるから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

禍神塚・鏡吾
技能:闇に紛れる、不意打ち、変装、演技、言いくるめ、ブームの仕掛け人、目立たない、逃げ足

(不安を、感じる……心の深い所から湧き上がる感覚
或いはここに彼女が近づいているのか?)
「なら目の前の戦いは、早めに終わらせなければ」

闇の救済者に先行して処刑人達に接近、内一人を咎力封じで黙らせて物陰に引き摺り込み、服と麻袋を奪って変装します
敵中に潜入し、流言で領主に対する疑念を植え付けて士気を下げます
――領主が我らの神に祈る姿を見た者はあるか。彼女の処刑劇には神を称える要素はない
――領主は神の代弁者として適切なのか。自分の欲望のために神の御言葉を歪めていないか?

ある程度流言を広めたら、密かに脱出します



●魔法の鏡

 先行する闇の救済者達の中に紛れ、目立たない男の姿があった。
 闇に馴染みすぎて戦うために集まった一人であると違和感の欠片さえ、周囲に与えていない。
 ――不安を、感じる……。
 胸に軽く手を当てる禍神塚・鏡吾(魔法の鏡・f04789)はその正体を、探る。
 表情は処刑人の面の下だ。今は、普段の表情を表に出すべきときではない。
 ――……心の深い所から湧き上がる感覚。
 ――或いは……。
 左右の気配を探る。おかしな気配は、近くにはない。
 信仰心に溺れた盲目な処刑人たちの進軍と、共に突き進む闇の救済者達の強い戦意。それから少し遠くに別の複数の敵意があるような。あれこそが、戦いの場が近いという証明だろう。
 混戦に近い――そうこれは領地争いの、戦争だ。
 ――……此処に、彼女が近づいているのか?
 脳裏に過る姿がもし、現れるというのなら。
 ――余計に、自体を掻き混ぜていくに違いない。
「……なら、目の前の戦いは、早めに終わらせなければ」
 "彼女"が本当に訪れるとすれば、長引かせては誰のためにならない。
 そうと決めた後の、鏡吾の行動は早い。
『――であるからして、神は希望を与えるために』
 心酔する神の教えとやらを、演説するように喋り続ける処刑人たち。
 その手に握られた赤錆びた斧を新鮮な赤に染めるべく、神を信じ、神に祈りを捧げる代わりに自己暗示を繰り返す。
『我らが神が与えし希望の力を、さあご照覧あれ』
 ぐぐぐ、と盛り上がっていく上腕二頭筋。
 逞しくなる両腕の腕力が著しくあがる。
「……くっ、怯むな!向かえ討て!」
「逃げるな、持ちこたえろ!」
 様々な指示が飛ぶ。戦闘に慣れたダンピールが鼓舞の声を上げて叫ぶ。
「押し切らせるな、下がれば徐々に計画が破綻するッ!」
「「……ああ!!」」
 一人の処刑人の斧を、数人がかりの人狼の黒剣が抑え込む。
 ぎりぎりと金属音が打ち合ったが、耐えられる時間はそう多くない。
「……お見事」
 鏡吾は処刑人の背後を取って、咎力封じの手枷を嵌める。
 キツく、硬い拘束ロープが一度絡めば簡単には解けない。
 からんと落ちる斧がひとつ。無力化した処刑人はそれこそ電池が切れたように、ガクンと動かなくなる。強化の代償に、意識が深く落ち込んだようである。
「後は此方で、黙らせておきます。皆さんは先へ進んで下さい」
「……すまない、よろしく頼む!」
 ――それでいい。
 見送る複数の背中が、歩みを止めずに進む方法は何も直接対決だけではないのだ。ずるずると処刑人を物陰に引きずり込み、目覚める前に猿轡を噛ませて木に括る。
 ――動きは勿論、ユーベルコードの再発動はこれで封じましたよ。
 ――斧は……ああ、誰かが持っていってしまったようですね。
 驚異ではなくなぁった処刑人の服と麻袋を奪い、変装して成り済ましの準備は完了。敵の群の中へ素早く駆けて、外れた敵陣の中へと"戻る"。
『一つでも多くの処刑を』
『我らが神が望むことを』
「我らが神は望んでいるでしょうが、領主の彼女は本当に信仰心など持っているのでしょうか」
 混ざり込む鏡吾の流言。
「ただ自身がしたいことをするために、利用されているだけでは?」
『りよ、う……?』
「神を冒涜する側なのは、あの者たちか。それとも魔女領主か……」
『幸あれと、言葉を交わしたあのかたが……?』
 疑問は疑心として心に積もる。
 例え信仰心以上の支えにならずとも、疑心は群の軋轢を生む。
「領主が我らの神に祈る姿を誰か見たものはあるか。彼女の処刑劇には神を称える要素はない」
 "異端の神"を戴く演目を興じようとしていたか?
「領主は神の代弁者として適切なのか。自分の欲望のために神の御言葉を歪めていないか?」

 我らを信仰する者たちよ。
 異端者が誰か、――我らが神の意向に従い、最適解を排除せよ。

『信仰心無き領主こそが……?』
 ざわ、ざわと群の疑心は広がっていく。
 ――ある程度の流言が広がりましたかね。
 紛れ込んだときと同じように、鏡吾は闇の外へひそりと逃げるように脱出した。逃げる者さえ負えなくなる厚い信仰心を持つ姿には、多少敬服はするけれど。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鬼桐・相馬
●POW
信仰など圧倒的な力の前には何の意味もない
そう思える程の[暴力と蹂躙]を

〈冥府の槍〉を構え戦闘開始、前線を押し上げる
圧倒的な力を闇の救済者達へ示す事を念頭に立ち回る

「やるしかない」と「いけるかもしれない」では士気が全く違う
信仰を込めた敵の一撃を[戦闘知識と野生の勘、視力]を駆使し捉え[武器受け]する
そのまま[怪力]を込めた[範囲攻撃]に繋げて纏めて攻撃、[焼却]して行こう
〈ヘキサドラゴン〉のモモは成竜体で味方を援護するよう指示

UC発動し呼びかけを

刺し違えてもなどと思うな
何の為に仲間がいる
ひとりで無理なら隣の奴と連携しろ
俺もモモもそうやって戦ってきた

彼らの希望が冥府の加護の中更に灯ればいい



●燃え上がれ

 鬼桐・相馬(一角鬼・f23529)の金の瞳が映したのは、幽幻な亡霊共の姿だ。
 自身の明確な目的など無く、言われるがままに溺れて歩む木偶の坊。"神"と信仰する対象が、存在を認識するだけで幸福感さえ得られるという溺れた在り方。
 ――信仰など圧倒的な力の前には何の意味もない。
 もしも、抵抗さえ無駄だと思えるほどの暴力が台風のように蹂躙したのなら。
 ――焦りの余り麻布の下から顔でも覗かせるのだろうか。
 有り得そうだが、おそらくは無い。
 相馬は無言で冥府の槍を握り込み、紺青の炎をめらめらと燃え上がらせる。

 火を恐れるなら単なる獣。
 己を害する炎だと知って近づいてくるのなら、知能の有る無能。

「俺より前に出る必要はない。むしろ、飛び出すことは非推奨だ」
「了解、貴方より前に出ないことを誓います」
「……いや、誓う必要はないな。気を払い、注意してくれるだけでいい」
 ビュ、と風を裂く音を味方に引き連れて、相馬が前線へと向けて駆けていく。
 向かってくる者達は、総じて"異端の神"についての祈りを捧ぐ言葉ばかり。
 どうせ、言い分など聞いていても仕方ない。
『幸あらんことを』
 死の間際抵抗しつつもそう呟かれて、ああそうかい、と相馬は流して戦闘行動を続け熱量を上げていく。振り回す度に炎が空気を裂いて燃え上がる。
 紺青の色が、激しく燃え上がるのだ。遠くにいても、基本的にくらいこの世界で、燃える色はよく目立つ。
「彼の後に続こう」
「ああ、……いけるかもしれない、我々でも」
 闇の救済者達の士気が、明確に前を向いたのを相馬は納得するように頷く。
 ――"やるしかない”と"いけるかもしれない"では行動理論が異なる。
 ――可不可を判断するなら、勝利できる可能性を掴め。
『神を信じるのならば、我らはその意気込みに手を貸しましょう』
 処刑人の一人が、自身の斧を握らぬ腕を対象にメギッ、と自傷行為を繰り出した。
 斧によって切り取られた腕がぼとり、と無残にも地面に転がり――そのうち人波に呑まれて見えなくなった。
 歪んだ信仰心を物理的に込めるため、腕を犠牲にする事なども彼らには安いこと。
 "異端の神"は彼らにとって、掛け替えなのない信仰対象であり、それ以外に重要なものが、ないからだ。
『神は我々を見ています』
「そうか」
 赤い色をぼたぼたと落とす斧と、その持ち主の体。
 戦闘知識から導き出される、筋肉の一連の動き――踏み出しと、込められた腕の力が相馬の頭を削ごうと動くのが、分かる。
 野生の勘が告げるのだ、半歩下がれば斧は人体を削がないと。
 処刑するべき対象、この場は相馬の首すらも、刎ねられないと。
 ――バランスを崩すタイミングは。
 冥府の槍を体の前、いや、頭の前に構えて振り下ろされるべき攻撃を待つ。
 ――受けて、そこから先が――――。
 ガキッ、とぶつかる音を一つ聞いて。
 力任せに、冥府の槍を思い切り振り抜いた。肉体損傷が多いのだ、容易くバランスを崩して激しく仰け反る。
 範囲攻撃に炎の波を乗せて一蹴し、上空に待機させていたヘキサドラゴンには味方の援護を指示した。
 ――此方の事は、俺だけでなんとかなる。
 周囲が青々と煌めき、燃える。
 潰える命の数々は、どう数えても処刑人たちのほうが多かった。
 地獄の門番が、後方への進行を阻害するのだ。
「後方から敵を討つ進軍を望む者たちよ、刺し違えてなどと思うな」
「……!」
 相馬が背中越しに語りだすのを闇の救済者達の人狼が、ダンピールが聞いていた。
「何の為に仲間がいる。ひとりで無理なら隣の奴と連携しろ」
 ひとりは誰かのために、というはずだ。
 同じ目標を掲げるのなら、それが出来て更に前へ進めるというもの。
「俺もモモもそうやって戦ってきた」
「……モモ、さん?」
「上だ」
 闇の救済者たちへ迫る凶器を、白金の炎のブレスでも燃え焦がすヘキサドラゴンの姿が。敵を無様に仰け反らせて、突進攻撃で合わせて張り倒し、次の目標へ向けて翼を広げて助太刀に尽力する黒いドラゴン。
 ――見えるだろう、まるで再現されたような冥き冥府の有り様が。
 ――周囲を照らす、冥府の加護の中。更に激しく灯ればいい。
 相馬も、ヘキサドラゴンも居て、どこに負ける要素があるのかと金の目を向けられた闇の救済者達は雄叫びで返答する。
「やれる!やれるさ!」
「ああ!!」
 やる気に満ちたその声が、頼もしさというソレである。
 誰ひとり欠けず、そのまま燃え上がるように走り続けろ。
 ――そして、火種を燃え盛る炎にまで、昇華させるといい。

大成功 🔵​🔵​🔵​

有栖川・夏介
命じられるままに処刑する処刑人か。
鏡をみているようで、あまり、いい気分はしませんが……。
「はじめましょうか。処刑の時間を」
処刑人はあなた方ではなく、私です。
剣を握る手に力をこめる。

敵の攻撃は【見切り】や【武器受け】で流し、できるだけ敵をひきつけ。
ある程度ひきつけることができたら、UC【何でもない今日に】で一掃。
とりこぼした敵は「処刑人の剣」で処刑人らしく首を狙ってはねる。
「これでも処刑人ですからね。せめて、苦しまずに殺してさしあげます」
……処刑人が処刑人を殺す、か。おかしな話ですね。



●自慢の紅茶は何色ですか?

 一糸乱れぬ動き、とはいわぬ抱く信念を同じくする統一感。
 斧を手に、ずるり、ずるりと一歩ずつ歩を進めて近づいてくる不気味な団体。
 闇の救済者達を一人でも多く、生者から死者へと換える為に動く信者たち。
 ああ、あれこそが異端の神に、"死"を捧げる処刑人。

 ――命じられるままに処刑する処刑人、か。
 誰かに目的を言い渡されて、そのとおりを実行するそれらの姿。
 有栖川・夏介(白兎の夢はみない・f06470)は視線を逸して、直視しない。
 ――なんだか、まるで鏡を観ているよう。
 ――あまり、いい気分はしませんが……。
 あれらは信仰心に溺れ、それ以外の心を自分から追い出した処刑人の群だという。
『神は我らに示したのです』
『希望を、言霊を、在り方を』
「ああ……そういうの、いいです」
 不特定の誰かの殺害。または、生かしたまま攫って領地へと連れ帰る。
 理不尽な流れを断ち切る誰かがいるとしたら、相応のものでなければならない。
 自ずと夏介の喉から、強い言葉が紡がれた。
「処刑人はあなた方ではなく、私です。はじめましょうか、処刑の時間を」
『成程、貴方もまた、我らとは違う神を抱く者……』
 斧を持たない処刑人の手が、心の臓が秘される胸にそっと触れた。
 祈りの為のポーズなのだろうか。
 不思議な祈りの捧げ方だと夏介は思い、命乞いには向かない動きだとも思う。
 夏介はその行動をとくに止めなかったが――。
『幸あらんことを』
 胸に勢いよく突き立てられた素手が胸板をぶち抜き、ごきりと骨を折り、処刑人の胸にぐぐ、と入り込んでいる。
 みるみる真っ赤に染まる胸元と、手。それから、足元。
 何を目的とする行動なのか、いや、考えずとも自ずと導かれる結末。
 勢いよく胸から引き抜かれた生身の脈打つ塊を、引きちぎって斧に押し付ける。
 べしゃりと脈打つ塊が潰れる嫌な音がした。斧からずずず、と新鮮な血を吸う音がした。ただ一撃の威力に、呪詛と呪い(祝福)を込めている。
 個体が多いのだ、ひとつひとつが停止しようと彼らが気にする事ではない。
 誰かが"異端の神"への奉仕を遂行すればいいのだ。
 自分でなくとも、処刑人はこれだけのかずがいるのだから。
「その宗教観は、排他的ですね」
 処刑を実行しようとする群を処刑する者が剣を強く握り、力を込める。
 振り抜かれる生死を超えた一刀を、夏介は見切って簡単に躱す。
 遅れてポタポタポタと跡を残していく紅の足跡に目が行くが――今はそれどころではない。夏介を刎ねられなかった個体はそのまま絶命し、勝手に命を落としたようだがとにかく周囲に群がる数が多い。

 命を無駄にする、処刑人の殺意が高い。

 武器で受けようにも、捨て身で彼らも止まる様子がなかった。
 だが裏を返せば夏介へと注目を集め、引き付けることは容易である。
「そんなに殺気立って……疲れたでしょう。お茶会なら、私が主催しますのでごゆるりと」
 お茶会セットから針やナイフを跳ねさせて、暗器の類に手が伸びてそれら全てを投擲する。

 "何でもない今日に"お別れを。

 紅茶の代わりの大漁の流血を振る舞いましょう。
 濁々と零すだけよりは、皆で共感して味わった方がきっと、お茶会は盛り上がる。
 武器に自身の部位をねじ込んで、重すぎる代償の信仰心を他者に落ち着けるよりはもっと綺麗な"お茶"をお目にかけましょう。
「……どちらへいかれるのでしょう?」
 ふら、ふらと。夏介のユーベルコードの持て成しを体中で受けて尚、立ち向かおうとする個体にすすすと忍び寄る。
『神は』
「これでも処刑人ですからね。せめて、苦しまずに殺してさしあげます」
 返事も懺悔も聞く耳時間を設けずに、処刑人の剣は"処刑人"の首を綺麗に刎ねた。
 処刑人らしく、首を。彼らがするべき行動は、本来これが相応しいだろうに。
 実行して行く数が圧倒的に多いのは、夏介だ。
 ――……処刑人が処刑人を殺す、か。
 ――おかしな話ですね。
 処刑対象は敵か、己か。そんな疑問をぶつけても、きっと彼らの返答には"我らが神"しかいないのだろうけれど。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セリオス・アリス
【双星】アドリブ◎
希望であり続ければいいか
アレスは、そういうの得意だろ
まずは…派手に暴れて見せつけてやろうぜ

救済者たちに話すアレスの声にあわせて【青星の盟約】
さらに身体強化して
こう戦うのだと示すようにダッシュで先制攻撃だ
靴に風属性の魔力を送り
旋風を生成、炸裂させたら
斧持つ手をめがけて下から薙ぐ
それを振り下ろして2回攻撃

中々しぶとそうなやつならなおさら手や足を狙って機動力を削げと行動で教えるように
攻撃は見切り避けたり、アレスに―自分が頼れるヤツに任せたり
本命まで死なないように命を繋げ
敵を凌ぐアレスに攻撃が集中するならサポートに
死角からの敵を対処する
ほらな、こうやって支えあえば
どんな敵も怖くない


アレクシス・ミラ
【双星】
アドリブ◎

…僕は、君も得意だと思うよ
ああ、征こう!

脚鎧に光属性を充填しダッシュ
救済者達の前に出ると盾からオーラ…『閃壁』のシールドバッシュで
敵を押し返そう
此処は私達が先行します
皆さんは後詰めをお願いしたい
…貴方達も希望の灯火です
皆で絶望にも負けない払暁となろう
同意してくれるなら
【聖戦の鬨】
剣となり盾となる光を彼らに
そして傍の青星に!

皆が戦いやすいよう光の範囲攻撃で援護しつつ
敵を僕に惹きつけ壁役となろう
攻撃を見切れば
この目に映る人々を守ってみせる…この先へ繋がせる
その覚悟で攻撃から皆を庇うように
『閃壁』を城壁の如く展開
受け止める!

支え合えばどんな敵にも立ち向かえる
僕とセリオスが証明しよう



●光を

「――希望であり続ければいい、か。アレスはそういうの得意だろ」
「……どうかな、僕は、君も得意だと思うよ」
 セリオス・アリス(青宵の剣・f09573)とアレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)。二人の雰囲気にあるのは、"明るい信頼"。なんだかとても輝かしいものであり、闇の救済者達のなかにその結びつきを持つものは多くない。
「まずは、……派手に暴れて見せつけてやろうぜ」
「ああ、征こう!」
 双星の駆ける道行きを、煌々と語るその姿を。
 闇の救済者達は"星"のようだと幻視した。
 アレクシスが金の装飾が施された白銀の足鎧に光属性を充填したことで、そうだ。
 彼らの駆ける道は、流星でも通り抜けたよう。
「突き進む道は僕らの後を付けるくらいで良いと思うんだ」
 救済者達の前に自然とアレクシスが立ち塞がり、ずずず、と呪詛のような気配すら漂う昏き信仰心の群と対峙する。
 両極端の闇と光のせめぎあいが始まった。
 二つの間を隔てるように燐光を纏う輝きの大盾から"閃壁"を穿ち、光と闇の間を明確にするアレクシス。
「さあ、始めよう」
 自身の前に創り出した光の壁ごと、シールドバッシュで押し返す。
 進ませない。下がるがいい。
「此処は私達が先行します」
「でも……」
「いいえ。皆さんには後詰めをお願いしたい。――貴方達も、希望の灯火です」
 輝かしい彼らに、後を託される。
 戦う種火としては未熟な方な彼らだが、戦力としては十分だ。
 一致団結して、事を成せば火はどこまでも連携して燃え上がれるだろう。
 ――あとひと押した、アレス!
 セリオスが話しているアレクシスの声にあわせて、朗々と寵姫は謡う。
「星に願い、鳥は囀ずる。此処に集ういと輝けし星々よ――」
 根源の魔力で強化する光を纏った純白の剣もまた、キラキラと星をその輝きに宿すモノ。
 誰もを惹き付けてやまない囀りが、救済者達の耳に、心に届くだろう?
「皆で絶望にも負けない払暁となろう。同意してくれるなら――"剣となり盾となる光を彼らに――――そして、傍の青星に!"」
 聖戦の鬨は委ねられた。
 彼らの返答は、――雄叫び。
「おおお!!」
 ――勇気ある同意、感謝する。君たちの行動に、輝きに。
 ――どこまでも光が、あらんことを。
 輝く光に愛されし者たちの群、闇の救済者たちもまた輝きのソレへと至る。
「その煌めきを我が元に――さあ歌声に応えろ、力を貸せ!」
 朗々と紡ぐ、鳥の囀りが。信仰の言葉を隠す深淵を飛ぶ旋律の群が。
 アレクシスの演説の同意によるセリオスにも齎される強化の輝き。
 其処へ更に強化を重ね、輝く色は何処までも眩い白色。
 これが、物理攻撃力をぐんぐん上げている聲だなどと、救済者達は思うまい。
「そら、準備はいいか?」
 躍り出るセリオスは戦い方を示すように、ひらりとダッシュして行く。
 疾走る足から靴へ、風属性の魔力を流し込みひゅぅうと輝く風はセリオスの足元に集約する。
 ごおう、と小さく炸裂させる旋風を加速装置として扱い、歩みを止めない麻袋を被った処刑人たちの元へ鳥のように接敵する。ひらりと躍り込むセリオスの輝きに、目をくらませたようにヨロリと足見した処刑人は。
『おお、おお。眩しい輝きこれは……』
 幸の塊――などと呟きながら、自身の身体の内側"臓器"を力の代償に潰し、大きく吐血しながら斧の強化を測。
 込められた歪んだ信仰心さえあれば、輝きは赤き闇に沈むのだと疑ってやまない振り上げは、セリオスからみても無防備だ。
「遅ぇ!!」
 振り上げられた腕目掛けて、処刑人の目下に入り込み、下から上に向けて輝く軌道を描きながら薙ぐ。振り下ろす斬り裂きを加えて、二度の致命傷を負って無事で居るならこれらは単なる化物だ。
 どさり、斃れた個体が息をしているようには見えないが――。
 まだまだ周囲に蠢く同じ様な処刑人ばかりだ。安否確認などしてやる慈悲まではかけられない。
「……わかりやすい例はあんな感じだ。"希望(ひかり)"は此処に確かにあるから」
 アレクシスが救済者達が戦いやすいよう、光の範囲攻撃で援護しながら進むのを。
 やや離れたところでセリオスが見て、――双星に視線が逢う。
「……頭を下げて!」
 敵の攻撃のタイミングを指示し、攻撃の見切り。
 反撃の一手こそは此処に在リ。
 ――此の目に映る人々を欠けさせるものか。
 ――守ってみせる……この先へ、次の火種の発生する未来へ繋がせる。
 途絶えさえない、殺させない。終わらせない。
 その覚悟の重さは、城壁が如く"闇"を阻む強く輝く城壁と成らん。
「そもそも、攻撃は通さない!僕が必ず阻み、受け止める!」
「そーだそうだ、"盾"に阻まれ、出鼻を挫かれてヨタ付いて。傷ついてもしぶとそうな奴の後始末は――」
 身体ではない、頭でもない。
 必ず絶命させるまで追い詰めなくてもいいんだ、と語るセリオスは手、足どちらかの機動を削げと言う。
 実演で何体も昏倒させている白色の煌めき――先行する閃光の"剣"。
 ひらりひらりと、舞い踊る魁星はこころに星を持たない者たちの攻撃を見切り避けて、足払いを掛けて転ばせる。
 多少の危険な事をしていても、背中を任せられる頼れるやつがほら――。
「俺でも。アレスでもいいわけだ」
 ガッ、と大盾を手に、張り倒すのが見えるだろう?
 ――メインアタックは譲らないけどな!
 敵を凌ぐアレクシスに攻撃が集中するならば、鬱陶しいを行う者共をセリオス死角から対処していくだけ。
「ほらな、こうやって支え合えば――」
「支え合えば、どんな敵にも強く輝きを灯したまま、立ち向かえる」
「どんな敵も、怖くない」
「僕とセリオスが――証明して、いるだろう?」
 光の道は此処にある。
 さあ、迷わず――進め!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『『処刑台の魔女』カレン』

POW   :    『咎人の糾縄に私を吊るそうというのかね』
【迫真の演技】を披露した指定の全対象に【カレンの劇に加わり指定された役を演じたい】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
SPD   :    『いやはや救い難い糾弾だ。運命的な愚の選択だ』
演説や説得を行い、同意した全ての対象(非戦闘員も含む)に、対象の戦闘力を増加する【凶器と、カレンを満足させるまで消えない炎】を与える。
WIZ   :    『ああそうさ、全く以てこの身は潔白だとも!』
【最高の残酷劇を演じたい】という願いを【自らの熱狂的なファンと化した奴隷達】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠柊・はとりです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●燭火

 恐れず、前へ。不気味な処刑人の群をなぎ倒し、打ち払いながら進む集団はついに領主の館へと至る。
 鳥肌の立つほどの、血生臭さ。背筋が凍るほどの腐臭。
 それから鉄錆びた床の色の付き方。
 館を護るように配置された者達も、彼らの怒涛の勢いを止めること、能わず。
 なだれ込むようにして、彼らは領主――『処刑台の魔女』カレン』の前に立つ。
「――ようこそ。歓迎するよ?ふふふ」
 "異端の神"を信仰する大合唱を絶ち、斧を打ち払っては絶命させていく猟兵と闇の救済者の爆進は、舞台の急展開として面白い。
 断頭台を遣う回数が、少ないといいね。
 それは、理性的では有るがどこか狂気的な熱量を与えてくるヴァンパイアの娘。
 誰かが名を当てた、"カレン"という名の娘。断頭台を扱う、処刑人の娘だ。
「どうやら私は、領主という存在に向いているらしい。人望が在りすぎて困ってしまうね」
 集まった舞台役者がこんなに沢山。処刑人たちを黒子に加えて一世一代の大舞台の幕を此処に上げてもいいかもしれない。
 舞台の幕を上げるならば、君たちは総じて舞台役者ということになる。
「此処に始まるのは処刑劇なんだ。各々死ぬ間際の好きな"役"を演じてくれたまえ。私を討ちにきた元気な猫たち?」
 脚本の密を深めに深めたカレンの結論。それは、アドリブによる不規則な舞台の開演だ。台詞や法則性に決まりをあえて置かず、現場監督であり主演を気取るカレンの思う最高の舞台(悲劇)でなければならない。
 散り際の演技を、台詞を、演技を愛する娘は求めている。
 ――求める演技を行えなかったモノの末路は、各所に散らばる遺体の数が物語る。
 猟兵と闇の救済者達。平素なら少しずつのモノしか訪れないこの場所に今日は大変多くの人間が舞台の上に上がった。
 殺到する処刑人の群が猟兵と領主へ無理に横やりを入れようとするのを、彼ら、闇の救済者達が妨害する。
 彼らの"希望"が此処に共に共演しているから退くとはいわない。
 猟兵たちに託すしか出来ない分、"希望"を信じて、魔女の終わりを――託すのだ。
「君達の燭火は、一瞬で消え去る運命(さだめ)。それとも、支配を破る心照らす燈火へと至るのか」
 幕をあげよう。決して台詞を間違うことなかれ。
「見届けてあげよう――そして演じよう。処刑台の魔女の名の元に!」
ヘルガ・リープフラウ
この女の悪行は、かつて戦った敵と似ている

水葬の都を支配していた黒衣の吸血鬼
人の記憶を奪い改竄し、愛する者の絆を裂いて
舞台上で惨殺し嘲笑う悪意の残酷劇
わたくし自身も過去の全ての記憶を奪われ
夫への愛も歪められ貶められ、死に誘う悪夢の舞台に囚われた

許さない
今を生きる人の想いと命を踏みにじる所業
悪意に満ちた残酷劇は、この手で必ず終わらせる

これより歌うは『最後の審判』
悪は白日の下に晒され、浄化と神罰の光輝に悪徳を暴かれる
この女に無残に奪われた人々の魂に慰めを
今こそ思い知れ
踏み躙られた人々の恐怖と屈辱を

聴衆が真に望むのは、希望に満ちた喜びの舞台
悪意が決して天の裁きから逃れ得ることは無いと証明して見せる



●独壇場

『おや、君が一番に名乗りでるのかい?』
 魔女領主の前に、躍り出るオラトリオが一人。
 かつん、と音を靴音を弾ませて、真剣な剣幕が物語るのは過去の残影。
 ――この女の悪行は、かつて戦った敵と似ている――――。
 ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)は小柄な"処刑台の魔女"カレンの面影に誰かを重ねるように想う。
 雪のように白い髪は、"舞台"の上ではよく生えて。
 赤と赤錆た色ばかりが目立つ屋敷の中まで明るく見えるよう。
『返事は……無いようだね。もう君の処刑劇は始まっているのかな?』
 ゆるく微笑むカレンは、何を言い始めるか。
 どんな"役"を演じる気なのか、そわそわと楽しみに出番を譲った。
 黒衣を揺らしては、猟兵が死物狂いの演技で何を言うのかと。
 ――黒衣。ああ、あの水葬の都を支配していた吸血鬼を思い出す……。
 ――人の記憶を奪い改竄し、愛する者への絆を裂いて。
 もっと強く、前へ前へと魔女へを近づくヘルガの表情は硬いもの。
 真剣な面持ちで、それ故にカレンには演技のように映るのだ。
 こんなに周囲に戦いと血生臭い空気が在るのに。
 それすら気にせず、魔女たるカレンへ何かを言いたげにする視線。
「……舞台上で惨殺し、嘲笑う悪意の残酷劇…………」
 期待していた第一声。
 歌声の紡ぐ、控えめに呟く言葉はそれだった。
 カレンの頭に浮かんだ疑問符に答えるヘルガではない。
 ――わたくし自身も過去の全ての記憶を奪われて、夫への愛も歪められて!
「貶められて、死に誘う悪夢の舞台に囚われた!――許さない」
『……それが君の演技かい?それとも誰か幻を見ている?』
「今を生きる人々の想いと命を踏みにじる所業!そして此処に開かれた、悪意の満ちた残酷劇!」
 大きく翼を広げて主張する。
 宣言する。聞いているか――かつての、"吸血鬼"。
「この手で必ず終わらせる」
『ふむ、成程。君は私とは違うモノを見ているようだね、では……私は主張しよう。ああそうさ、全く以てこの身は潔白だとも!』
 そうだろう、私の向こうに"異端の神"の姿を見てやまない処刑人達。
『君との最高の残酷劇を演じるに必要なのは、悪意に打ち勝つ圧倒的正義!意志の力が物を言う。しかし、しかしだ天使様。それは――誰の話をしているのだい?』
 開演済みの舞台の劇中で、魔女を見ての別の幻想を語るヘルガへと注ぐ台詞。
 熱狂的なファンのように振る舞う隷従達が、賛同するように声を上げる。
 "異端の神"の声を聞く魔女が、魔女領主を見ずして誰を見る?
『私はまだ君へ何もしてないだろう、それとも、私の知らない吸血鬼の真似事を即興で演じろと?』
「これより歌う、"最後の審判"を聞いて判断するといい。主よ――!」
 ――今こそ悪は白日の下へと晒され、浄化と神罰の光輝に悪徳を暴かれよ。
 ――この女に無残に奪われた人々の魂に、慰めを。
 問答無用。言葉は迫真にせまり、真実へと至る。
『強引な役者だな、君は』
 声に乗せられた"裁き"を齎す歌声は、罪の意識とヘルガが下すだろう神罰の重みを恐怖心として植え付ける。
 魔女の耳に届く声。ぎぃぎぃと壁を引っ掻く音のような耳鳴り。
 それから処刑台の刃を落とした時の断末魔と、頭と胴体が離れた筈の死体が喋りだすような怨嗟だらけで聞き取れない嗄声。
「今こそ思い知れ――!命を踏みにじられた人々の恐怖と屈辱を!」
 ――聴衆が真に望むのは、希望に満ちた喜びの舞台であるべきなのです。
 ――悪意が決して、点の裁きから逃れ得ることは無いのだと識るといいでしょう!
 精神から揺さぶるような歌、威圧的な歌をぶつけられてカレンは苦しげに呻く。
『君が主役の舞台じゃないんだ、――此処は私の"舞台"なんだよ?』
 他人(ヒトの)舞台で主役を奪おうだなんて、大した度量じゃないか。
 正義感の強い歌が、この胸を締め付けなければ、――素晴らしき乳白色を真っ赤な色に染めてあげたのに。

成功 🔵​🔵​🔴​

ルネ・プロスト
ふむ。大したお喋り――否、徒口好きと見た
なら演じるついでに1つ聞こう
“世界の中心たる君の死以上の悲劇など有り得るものか?” ※UC発動
あぁ、答えは無用だよ。聞く気もないし
要らない言葉は霊糸を手繰り、お口にチャックで封じてしまおう

さぁ、その手の剣を君の胸に突き立てよう
それで終わり。それで閉幕
君の死という君にとって最大の悲劇で物語は幕引かれるのさ

もし御しきれそうになければ?
……クイーンに下命、高速詠唱&多重詠唱&全力魔法
幾重にも重ねた爆撃魔法で其の言葉、演技諸共吹き飛ばす

全く、これじゃ下らぬ三文喜劇だ
どうせ喋る余裕なんてないでしょう?
なら代わりにわたしが言ってあげるよ
“爆発オチなんて、サイテー!”



●爆破

「ふむ。大したお喋り、――いやこの場合は徒口(むだぐち)好きと見るべきかな」
 ルネ・プロストは咽るように居ずまいを正す"処刑台の魔女"カレンと目が合った。
 軽く咳き込むその姿はまさしく演技を続けよう。
 主役を張ろうという気概さえ伝わる。
『演者は喋って語って、胸の内を明かして叫ぶのがお約束というものだよ』
「そういうものかな」
 ――なら、演じるついでにひとつ聞こう。
 ――折角だから、演じるように問い質そう。
「"世界の中心たる君の死以上の悲劇など有り得るものか?”」
 質問すると共に、魔女の身体から何かが解けていくように糸が生み出される。
 ルネから発生したものないが、魔女の内側からするすると解れていく糸が実体化してルネの指に結ばれる。

 十糸操縦・七魄篭絡(マリオネット・インヴェイグルナーヴス)。

 捕まえたものはこの舞台の主役。
 ――そんなに演じたければ、身体はルネが思わぬ方へ動かしてあげるよ。
『……いやはや救い難い糾弾だね。運命的な愚の選択とさえ思ってしまうよ』
「ああ、答えは無用だよ。聞く気もないし」
 カレンが演説するように声を絞るが、ルネの指の動きのほうが早い。
 周囲の隷従する処刑人に音は届かなかった。勿論、同意が出来た個体もない。
 闇の救済者たちと戦う激しい戦闘音が、この対決の効果音であったからだ。
 大きく叫ぶように台詞を言わなければ舞台役者の同意も、台詞の続きも誘えない。
 戦闘力を増加する凶器の輝きもなければ、消えない炎が彩る事もないのだ。
「要らない言葉は霊糸を手繰ってほらこの通り」
 空中で右から左へと動くルネの手。それから握り込む動作。
 連動するように伸びた糸が、きゅっ、と見る見る縫合を施して結び閉ざされるカレンの口。糸を縫合するように主役の口を閉ざしてしまえば、後はルネの言葉のみがこの場を支配する。
「お口をチャックで封じてみたよ」
『――』
「おやおや、言葉がないと主役じゃいられないって?」
 身体の自由を、言葉を封じたルネに主張する言葉は聞き取れない。
 しかし演劇好きの魔女がやることだ、言葉は伝わらずとも、抵抗するように無理やり動かす身体。制限された動きの中で、手が上がる。
 武器を持たない手の指を揃えて首元まで持って来て。
 それからゆっくりと、――右から左へ。
 "首を撥ねてやる"。
 主役だけ無声劇となっても舞台上だからか彼女はその姿勢を崩していないらしい。
「いいよ、じゃあそのとおり」
 ピアノの鍵盤でも叩くように操る指が持ち上げるのは、剣を握る腕。
 ぐぐぐ、と持ち上がる腕が敵対者ではなく、カレン自身に向けられる。
 握り直した刃の先が、魔女領主の中心――胸――――へズズズと押し込まれていく。魔女本人の手で、差し込まれる終焉だ。それで終わり。これで、閉幕。
「君の死という君にとって最大の悲劇で物語は幕を引かれるのさ」
 ――どうだい、素晴らしい舞台案だろう?
 ルネによって自傷行為を行わされた魔女の顔を覗き込むと――笑みを讃えた表情は消えていた。痛みに歪み、口からも胸からもだくだくと流血で濡らしながら。
『――主役は簡単に死なない、それが舞台というものでも、ある、だろう?』
 途切れながら声が漏れ始める。
 無理やりなら動く身体で、剣で口の糸を強引に切り裂いたのだ。口が開けば声は紡げる。胸が、中身が多少潰れたところで死に絶えるまでが舞台といえる。
 説得はルネに向けて。だが、領主が喋る声を今度は聞いて拾い上げた処刑人共が、そうだそうだと声を重ねてきた。
 鉄錆びた色の斧に、狂気的な紫色の炎が燃え移る。炎属性を身に着けて、闇の救済者たちをひとつでも滅ぼさんと彼らは攻撃行動へと戻る。
 電波するように広がる戦闘員たちへカレンが与えたのは、炎の抵抗。
「……全く、これじゃ下らぬ三文喜劇だ。どうせそれ以上喋る余裕なんてないでしょう?」
 ぜぇぜぇと乱れた息遣い。
 肺に深々刺さった痛みも合わせて、声なんてだしていられまい。
「……クイーンに下命、高速詠唱を。次の言の葉に乗せて同時に放て」
 宝杖と豪華絢爛なドレスを装備した女帝人形が、聞き届けた。ママならば同時に多重詠唱も行うし、行うからには全力。此処まで言わずとも、きっと実行するだろう。
「なら代わりにわたしが言ってあげるよ、"ああ!爆発オチなんて、サイテー!"」
 幾重にも重ねた属性は、宣言道理の爆破属性。
 ずどどどどどど、と打ち込まれたホーミング魔法が爆発の轟音と煙を巻き上げる。
 言葉も演技諸共煙の向こうに消え失せるといい。
 劇の終わりが全て吹き飛んでしまう、なんて舞台の終わりもあるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サンディ・ノックス
どちらを選ぶべきか
敵の求める“演技”に乗るか、相手にしないか
乗らないことで理不尽な力が働いて首を刎ねられる可能性はゼロじゃない
ならばこうしよう
敵の求めるものは死ぬ間際の“役”
俺が演じるのは最後まで力の限りあがき抵抗する者
そして、それを演技ではなく現実にしてやるのさ

「俺は屈しない、お前を倒しこの地を解放する!」
ありふれた言葉だけど、まずはわかりやすく自分の立場を示して
攻撃回数を重視した指定UCで敵に斬りかかる
どう出る?
演技を愛する者ならただ潰すなんて面白くないことはしないよね
応えてくれるだろう?その剣が飾りでないのなら

敵の劇に加わりたいという感情は
自分の演技のほうが上だという傲慢さですぐ収まるな


リック・ランドルフ
…芝居がかった奴は何人も見てきたが、…お前はその中でもとびっきりだな。 とびっきりの大根役者だ。 素人の俺の方がお前よりも上手く演技出来そうだ。



…この劇に参加させられた他の役者が残念で仕方ねえ




…ああ、本当に…残念だ。



…役者達の代わりに俺達が終演、壊してやるよこの劇を




――今日で終いだ


敵の言葉に耳を貸さないように救済者達に注意と覚悟を促す。

お前達のやってる事は間違いじゃない! 思い出せ!お前達は何の為にここに来た!?希望を、灯火を灯しに来たんだろ!(言いくるめ、コミュ力、覚悟)




そのあとは拳銃で敵を攻撃しつつ、頃合いを見計らってUCを使用。
敵を拘束して全弾打ち込む(ゼロ距離射撃、ロープワーク、捕縛)


ゲニウス・サガレン
ある人が、人生で主役を張れるのは生まれた時とお葬式、あとはせいぜい結婚式だと言っていたけど、さて、カレン嬢はずっと主役を張りたいとおっしゃるのかな?

カリスマか魔術か、あの領主は人々を操ることができるようだ
下手に近づくと「演技」に巻き込まれる恐れがある

UC「水魔アプサラー召喚」

遠方からアプサラーの力で水を操り、最高に地味な攻撃をしてあげよう

さぁ我が友、落ち着いて、丁寧に仕事を頼むよ、そういつものように

カレンが演技に没入した瞬間、アプサラーがその顔を水で覆い、少し、水をそのまま留める
口と鼻を水で塞ぎ、呼吸を乱すんだ
慌てたところを、アイテム「スティングレイ短針銃」で狙撃する
痛みで目を覚ましたまえ


有栖川・夏介
舞台役者などになるつもりは、毛頭ないのですが……。
好きな役を、ということであれば私の役はもちろん、貴女という魔女を処刑する処刑人です。

敵の攻撃に注意しつつ、徐々に敵との距離を詰めていく。
間合いに入ったら「処刑人の剣」で、首を狙い大きく振りかぶって斬りつける。
…という一見隙だらけの動作で【フェイント】を行い、「懐の匕首」で【捨て身の一撃】
表情を変えることなく【傷口をえぐる】
UC【血を欲す白薔薇の花】を発動し、さらにダメ押し。
「紅く染めよ、と女王が言った。……残念ですが、ここで死ぬのは俺じゃない。お前だよ」
お前の望む演者になどならない。舞台の幕は下ろす。



●処刑劇

 爆炎に呑まれ、咽る主役の新たな役者募集はすぐに始まる。
『私は、魔女だよ……ほんの少し、痛みを誤魔化すくらいの術なら使えるのさ』
 とは言え、怪我を負ったのは胸――これは威勢だけで乗り切る構え。
 例え此処で死ぬとしても。彼女は死ぬまで愛する劇を、主役である劇から降りようとしないのだ。

 ――さて、どちらを選ぶべきか。
 サンディ・ノックスの脳裏にチラつくアイディアは。
 ――敵の求める"演技"に乗るか。
 ――当然のように相手にしないか。
 ――乗らないことも勿論できるだろうけどね。
 ――その代わり誘いに乗らない事で理不尽な力が働きそうだからなあ。
 ――処刑台で首を刎ねられる可能性はゼロじゃない、かも。
 "処刑台の魔女』カレン"は役を演じるなら進んで先手を譲ってくる。
 ――ならば、そうだね。こうしようか。
「求めているのは死ぬ間際の"役"だそうだね?」
『そうだとも。君はどんな役を演じるか決まったかい?』
「俺が演じるのは――ハハ、それを最後まで言ったらつまらないかな。演じて示すよ」
 ――最後まで力の限りあがき、抵抗する者。
 ――面白いだろう?面白くしてみせよう。
 演技でだけでは終わらせないとサンディは目論む。
 舞台はやがて現実となり、その終わりに勝利の喝采は鳴り響くだろうと。

「ある人が言っていた話を思い出したよ。聞いてくれるかい?」
 まるで詩人のように話し始める男、ゲニウス・サガレン。
 "役"を演じているのだと思えば、魔女は耳を貸す。
 その内容がなんであれ、現場監督は絵になる形を重視する。
『いいよ。処刑台を前にして流暢に語る度胸があるなら存分に話してみるといいさ』
 話の顛末からその内容まで。
 ヴァンパイアの魔女領主を唸らせるものなら、簡単には刃は落ちない。
 さあどうぞ、話してご覧。娘は大げさに手を差し出す。
「人生というのは舞台と同じ。正確にはよく似ているというのが適切なのだと言うんだ、主役を張れるのは生まれた時とお葬式……」
 誰かに生まれた瞬間を祝福されたとき。
 誰かに永遠の悲しみを与えたとき。
「あとはそう、せいぜいが契を交わした結婚式だと言っていたかな」
 身振り手振りを加えて、それこそ演じるようにゲニウスは小柄そうな領主へと目を移す。足元にあるのはおびただしい惨殺の跡。乾いて掠れた血痕だった成れの果て。
 生々しい赤が彼女の行い続けてきた、これまでの舞台の惨状だ。
「さて、カレン嬢はずっと主役を張りたいとおっしゃるのかな?」
 ――毎日が誰かのハッピーバースデー?
 ――祝福の一旦として舞台が開演している領主主催の特別な晴れ舞台?
 とでもじゃないがそんな明るい館にはゲニウスには見えなかった。
 断頭台。死体。血の匂い。血生臭い。
 舞台の上にこれだけの不純物を抱えて、何がリアル(しんじつ)で、何が
 ――それとも、毎日誰かをその手で殺した葬儀の主催者でいいのかな?
 この世界であれば、そちらの方が似合うだろう。
 ヴァンパイアによる圧政――人類へ支配。
 毎日理不尽に選抜されて断頭台で首を刎ねられてもこのままならば何も変わらず、彼女の舞台の幕は何度でもあがるのだろうが――。
『やれやれ、主役は主役。どのようなシチュエーションでも熟せてこそなのさ』
 限られた時(とき)の中でスポットライトが当たるほうがいいのではないか。
 ゲニウスからそう投げかけられて、カレンは笑う。
 朗らかに。そして、楽しげに。
『お望みとあらばどのような台本でも用意しよう。しかし、私の理想(ぷらん)から逸れた時点で全員が同じ顛末だ。ああそうさ、ここが私の舞台(領地)で在る限り!私の身はどこまでも潔白だとも!』
 ――そうだろう?――――。
 目の前に対峙するゲニウスだけに語るのではなく。
 呼びかけるように、周囲へ話しかける様はまるで舞台の"主役"。
『"異端の神"もそう申されているのであれば……』
『勿論だ、かの神も私の主張を祝福するだろう。つまりは、私の舞台は最高の残酷劇であるべきなのさ!』
『おお、我らが神が……であれば支持致しましょう!モット過激に!』
『殺伐とした演目に!』
 熱狂的ファンと化した処刑人の群のボルテージが上がり、闇の救済者達との打ち合いの拮抗が徐々に熱量で押され始めた。カリスマ性を存分に発揮して、舞台を支配しているのだ――あの小柄な魔女領主は。

「……芝居かかった奴はこれまで何人も見てきたが、……お前はその中でもとびっきりだな」
 リック・ランドルフの目付きは、苦笑を帯びたそれだ。
 真実笑ってやりたいわけではないが、呆れにも似た表情が魔女を見る。
『最高の演者だと褒めてくれるのかい?』
「いいや、その逆だ。とびっきりの大根役者だ」
 演じられてはいるだろう、しかしその演技は誰に見せるためのものなのだ?
「…… 素人の俺の方がお前よりも上手く演技出来そうだよ」
『頼もしい限りじゃないか、私としては存分に魅せて欲しいのだけれど』
「……この劇に、参加させられた他の役者が残念で仕方がねぇ」
 猟兵が訪れる前に散った数。
 猟兵が識るより前に落とされた命を刈り取る刃が落ちた数。
 どれもが計り知れない数だろう。何度も繰り返し、何度もやり直して無理強いさせて潰して削いだこの悲劇の終着点は魔女領主にしか見えていない。
 ――いや、最終公演に漕ぎ着けていないんだ。
 ――何かが納得していない、主役を張っている実感でも、足りてないのか?
『なにが、残念だと想うのかい?』
「……ああ、本当に、…………残念だ」
 目頭を手で覆い。顔を隠すようにするリックの迫真の演技。
 言葉を遅らせることで周囲の目を独占する。
「……役者達の代わりに俺達との舞台が終演になる。壊してやるよこの劇を」
 続いてきた惨劇を。此処で止めよう。
『……成程。君の役は"全てを破壊する者"、ふふふ、面白いこと言うね。残念というのは少し違うと想うのだけれどなあ、私の化した課題通りの"役"を演じられたなかったこれまでの彼らが悪いのさ』
 カレンが領主であるこの場所で。
 舞台の上に上げられた後、魔女の言葉を受け止めて従順で利口な猫でいなくては。
 舞台の上で"ニャー"と鳴くだけでいいのだ。恐れず、台本通りに。大抵の、連れてこられた人間は、台詞トンで頭ごと飛ぶ。これのが繰り返されてきた。
「――だから、今日で終いだ」
『荒唐無稽も望む所、いやはや救い難い糾弾もあったものだ。私の舞台に立って、そこまで言って見せるとは』
 カレンの言葉に共感した者たちがその手に握る斧に紫の炎が燃え盛る。彼らの意志では消えない炎で盛り立てて――被害という名の殺傷能力を上げていく。
『窮地の淵に立たせた時、立たされた時。最期の台詞が聞けるだろう?』

「あの、お話の途中で申し訳ないんですが……舞台役者などになるつもりは、毛頭無いのですが……」
 有栖川・夏介は舞台の上にあがったつもりなのない。
 全否定の初撃で精神的にぶん殴る。
 今あるこの異様な盛り上がりも、暑苦しいほどに燃え盛る彼女の質問攻めも。
 汗をかくだけで綺羅びやかな色もない。
 誰がこの舞台を楽しんでいるのか。領主だけだ。
 領主に隷従する、狂った処刑人共だけだ。
「……ああでも好きな役を、ということであれば私の役はもちろん、貴女という魔女を処刑する処刑人です」
『ほおう?処刑される側ではなく、する側ときたか……配役被り?大いにありだ』
「俺は屈しない、お前を倒しこの地を開放する!」
 声を上げたサンディが、自分の役を主張する。
 魔女が望むのは役者なんだろう?
 ありふれた言葉だが、明確に。誰もが分かる言葉で敵対を示す。
「さあ、宴の時間だよ」
 全体に黒い暗夜の剣を振りかざし、迫真の演技を披露し続ける対象に向けて、笑顔をこぼすカレンは誰の目から見ても"楽しそう"と映った。こんなちぐはぐな劇もありだと新たな境地を見つけたような、子供らしい表情だと。
「受ける?防ぐ?それとも――」
『答えはこうだよ、仔猫ちゃん。もっと可愛く鳴かないと応えてあげないよ』
 誰よりも足掻こうとする筆頭の剣を、魔女領主はレイピアで受ける。
 自身の血痕さえつく細身のそれで、受けるのだ。
 サンディよりも小柄な娘だが、それでも純血ヴァンパイア。
 抵抗してくる領地に住まう者たちに負けずに此処に住んでいるのだから、そう安々とは膝を折らない。
「仔猫?ハハ、激しく吼える狼かもしれないよ!」
 かきん、と鋼のぶつかる音をひとつ聞いて、すぐに二撃、三撃と打ち込み攻撃回数を重視して攻め立てる。
 ――それら全てを躱し続けてもいいけれど――――。
「台詞は?演技を愛する者ならただ潰すなんて面白くないことはしないよね。ほら、どうしたの。応えてくれるだろう?」
 ――その剣は飾りではないようだけれどね。
 ――すっかり口が留守じゃないか。
 カレンの劇に加わり、指定された役なんて。
 サンディの傲慢な自尊心の前では心を強く震わせるなど不可能なことだ。
 魔女よりも自分の演技の方がすでに上だと、サンディは彼女を下に見ているから。
 揺れるしても台詞一つ分程度。舞ってやる時間は渡せても、待ってやる必要はない。台詞がないなら、次へ移行する。

 劇は途中で、終わらない。

「カリスマか魔術か、あの領主は人々を操ることが出来るようだ」
 ――下手に近づくと"演技"に巻き込まれ兼ねない。
 サンディはなんとも無いように打ち合っているようなのが、ゲニウスは少々驚きに心を揺らした。
 ――……が、世界には物ともしない人もいるんだねえ。
「お前達のやってることは間違いじゃない!敵の重く熱い、呪いの怨嗟を受けても怯むな!」
 思い出せ、と叫ぶリックの声。
 闇の救済者達へ、敵の言葉に耳を貸すなと覚悟と注意を声の限りに叫ぶのだ。
「俺達が希望だというのなら、周囲を見ろ、希望の灯火を胸に抱く仲間と一緒に此処で戦っているだろう!」
 炎の燃え盛る斧の攻撃を、各々武器で目に心に相応の燭火(ひ)を熱く燃え上がらせた抵抗が始まった。
 ざわざわと、リックに同意を示す声が広がっていく――。
「なんのために此処に来た!?思い出せ!!」
「随分と格好いいこと、言いますね」
 夏介は静かに演説を聞き届けて、軽やかにリックとゲニウスの脇を抜けていく。
 ――敵の攻撃に注意しつつ、徐々に敵との距離を詰めましょう。
 ――あの彼が惹きつけていますし。
 ――周囲の足止めは、彼らが彼らの役目としてやっています。
「……まあな、領主の魔術かなんかわからんもんで、火を消されたら堪らんしな」
 後方射撃を得意とするリックは叫んだ熱を抱えたまま銃で魔女に打ち込み続ける。
 猟兵に流れ弾がいかないか多少の迷いこそあるが、かなりの剣の使い手。
 当たることはまず無いだろうと踏んで、サンディの振るい続ける攻撃を支援する。
「消すのは熱意くらいでいいはずだね、――さあ頼んだよ、アプサラー!」
 飼育壷から流水の術を来る水魔アプサラーを召喚し、遠方からの援護を同時にゲニウスも受け持つ。
 館の赤も流水で流れていけば御の字だ。
『ふゅるるるぅ』
「さぁ我が友、落ち着いて、丁寧に仕事を頼むよ」

 見極めた瞬間は、この地点。
 四つの役者が、主役と同時に共演を果たす。

『――』
 カレンが演技に没入しようとした瞬間、アプサラーが操る水の術がカレンの周囲に躍り出る。くるくると周囲で旋回したかと思った時にはカレンの視界は水に溺れて息を断たれる。
 大きな水の玉として形を留めたヘルメットを被せられたのだ。
「少しの間、大人しくしていて貰うよ」
 口と鼻と、視界とそれから呼吸。水の中に沈んだヴァンパイアの呼吸する術を、正常なる世界を覗く視界を奪ったゲニウスの攻撃を景気に――。
「ぼこぼこ喋ってる所悪いんだが、主役の座から降りてもらおうか」
 自分の名が彫られた身の丈程の大きさの十字架を、地獄への片道切符として提示する。突き立てた十字架は墓標へ至る、道を魔女に示すのだ。
 絡みつく無数の鎖が無防備な身体を拘束し、束縛を完了させる事でこれまで彼女が舞台の上で発揮していたカリスマオーラ(ユーベルコード)の継続使用を断絶させる。
 どれもこれも、収束させてしまえば勢いを失った熱狂的なだけのファンが残る。
 闇の救済者達の業火に残り滓は果たして耐えきれるか?
『――ぷはっ』
 少々の間の水牢拘束が外れて、カレンが喋り始める前に。
「……おっと」
 別の拘束を完了させたリックが、残りの弾倉分ゼロ距離からの射撃で全てを体にご馳走してやった。
 娘の痛みに叫ぶ声が、大音量で館中に響き渡る。
「痛いかい?じゃあ、――」
 ゲニウスのスティングレイ短針銃の一撃。
 痛み自体を麻痺させる神経毒を打ち込んで、死に一番近いのは誰なのか。
 本人が自覚するまでの時間を持たせておく。

 そうだ、――死神の接近に、彼女はまだ気がついていないから。

「いい声ですね」
 色な攻撃を中を抜けて、咎人を殺すため息を潜めていた処刑人。
 夏介が飛び上がって、向けるそれは首を落とすに最適な――処刑人の剣。
 振りかぶり首を落とすために振るうのだと、痛みに叫ぶ魔女にわずかでも悟らせる事ができたら行幸。
『……ッ!』
 ――掛かりましたね。
 夏介の攻撃は首を刎ねるまでには至らず、むしろ大振りした一撃で目を眩ませるに最大の意味を発揮した。
 歩く断頭台、処刑人が死を齎しにやってきたと、彼女は一瞬目を閉じて舞台から逃げ出したのだ。
「痛いと鳴いても良いんですよ仔猫ちゃん?」
 趣向返しに、猟兵へ呼んだ名称で呼び返す。
 夏介は大振りした剣ではなく、本命のアタックを懐まで潜り込み深々と突き立てる。ご丁寧に、突き立てた場所はリックが銃弾を連続して打ち込んだ生々しく数多らしい傷跡。血に塗れた――懐の匕首。懐から取り出す速度は出したと悟らせない。
『……やりたい、ほうだい、してくれるね……!』
「ええ。"そういう劇の主役"をしたかったのでしょう?」
 ぐりぃ、と傷口を抉る。
 リアルタイムで痛がり絶叫するべき点なのに、彼女は痛みを堪えて笑い出す。
『ははは、そうだよ。そのとおりだ!アドリブしかない劇だよ、楽しいじゃないか!』
 目の前の娘は死ぬまで演じることをやめるつもりはないらしい。
 表情を変える事無く、夏介は詠唱するように呟く。
「紅く染めよ、と王女が言った。……残念ですが、ここで死ぬのは俺じゃない。お前だよ」
 薔薇の似合う情報は魔女ではない。
 装備武器を無数の白い薔薇に変えて、流れ出た赤で染めて往く。夏介の薔薇の花弁は紅く染まり、ダメ押しに攻撃を加えられて、叫ぶ威勢が薄れた魔女へ。
 暗い世界で、白に彩られながらギラリとあかいめを、ひからせて。
「お前の望む演者になど誰もならない。舞台の幕は今日下りる」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セリオス・アリス
【双星】アドリブ◎
胸くそ悪いごっこ遊びに付き合ってやる義理はねぇが…
確かに、のせられたと思わせといた方が周りに被害もいかねぇかもな
けどなアレス、俺とお前の舞台で役割をふるなら逆だ
頭の固いアレスより、俺はもっとうまい
わざと笑って言い張って
渡されたマントの代わりに自分のマントを押し付ける

歌で身体強化して大舞台を演じてやる
ダッシュで距離を詰めたら
剣に炎の属性を込めて斬りかかる
敵の攻撃は…ギリギリを見切り回避
薄く皮膚を切り、血が出りゃよりギリギリな感じを出せるか?
望むものを得られてると錯覚しろよ

演技半分でよろめいて
抱き止められたらすがる首に歯を立て【羊飼いの祈り】
こっから先の逆転劇は…アレス、任せたぜ


アレクシス・ミラ
【双星】
アドリブ◎

…被害を抑え、敵の懐へと近づく為だ
僕なら散り際の騎士という役で食いついてもらえるだろう
彼の言葉に目を見開く
君が…!?ッ言ってる場合か!
…なら、これだけは
オーラ防御を纏わせた己のマントを渡す
無理はしないこと
…いいね

大舞台の外で機をうかがう
…彼が傷つく度に駆け寄りたくなるけど
まだ止めてはならない
分かっては、いるんだ…っ
…でも
ッセリオス!!
咄嗟に彼を抱き留めながら
彼の牙を隠すように向きを変える

…ああ、
セリオスを強く抱きしめ
黒のマントを纏う
ー君の望みに応えてみせよう
【天誓の守護者】
彼を守る光で地を覆い
奴隷達も置き去りにする速さで
敵へと駆ける
…僕の役は
友に託された者だ
光の剣戟で幕引きを



●幕は既に墜ちている

 舞台の上に立ちながら、今は自分たちの出番ではないとさり気なく身を引いて。
 舞台袖の向こう側、オーディエンスを装って闇の救済者達に紛れ魔女の姿を伺う猟兵は存在する。
 息を潜めるなら敵の中。処刑人達を討ちながら、セリオス・アリスとアレクシス・ミラは声を交わしている。
「胸くそ悪いごっこ遊びに付き合わされる義理はねぇが……」
「……被害を抑え、敵の懐へ近づく為だ」
 剣と盾、戦う姿勢をどちらも崩さずに。
 突進するように突っ込んでくる処刑人たちはアレクシスが阻む。
 会話を遮ろうとしてくる問答無用な処刑人の斧攻撃を、胴を裂くようにセリオスは打ち捨てて、とん、と背中を合わせて。
 二人の静かな会議(会話)は続く。
「確かにな。上手くノせられたと思わせといた方が周りに被害もいかねえかもな」
「だろう?僕なら、"散り際の騎士という役"で食いついて貰えるだろう。敗北間際の騎士だ、主役としては気持ちよく首斬りが行えると思うだろう」
 ――僕ならば、と格好から見ても存分に役に立つんじゃないかな。
「今なんつった?アレス、俺とお前で舞台での役割を名乗るなら"逆"がいい」
 セリオスは、"散り際の歌姫という役"をするという。聞いた言葉に、アレクシスは目を見開く。全く嘘や冗談で言ったようには見えなかった。
 つまり――セリオスは、本気なのだ。
「君が……!?」
 そんなことを言っている時間がないのを分かっている。
 躍り掛るように斬り込んでくる処刑人(モブ)を激しく蹴り倒し、主役と対面するべきチャンスを此処だと見極めきらないアレクシスではない。
「頭の固いアレスより、俺はもっとうまい」
 わざと笑って、セリオスは今主張したことを曲げないと伝えに掛かる。
「此処で演じて魅せる君ではないだろ、判ってる。……なら、これだけは」
 ふぁさぁ、とオーラ防御を纏わせた青星の祈りを渡す。
 薄いベールを重ねたマントがひらりと揺れるのを、セリオスは受け取る代わりに自身のマントを押し付けた。
 返答はこれでいいだろ。ああそれはそんな意気込みすら感じる。
「無理はしないこと。……いいね?」

『残酷劇の舞台には、色んな人間が訪れる。ああ愉快だね』
 "処刑台の魔女"カレンは肩で息をしている。目に見えて、台詞に張りがない。
 肺が上手く機能していないのを、演技で誤魔化している。
『個性的で、人間ドラマがどこにでも在る。だからこそ散り際は言うだけ言って終わる残酷でありながら、美しいものがいい』
 命の終わりを見届けられる、最も近い処刑の特等席で魔女は喜びに笑うのだ。
 怒号と武器がぶつかる音。攻撃し合う者たちの息遣いが溢れる中で。青のマントをはためかせ歌声を響かせながら、ひとりで"主役"へとダッシュで詰め寄るセリオス。
 猟兵の首は誰のものも落ちていない。
 誰の命も断てていない処刑台の魔女に、理想通りの仕事などさせてやるものか。
 歌声で自身を強化して、――マントを軽く撫でる。
 ――大丈夫さ、いつもと同じ"祈り"が俺と一緒だから。
 剣に炎の属性を込めて、素っ首狙いのシンフォニアが魔女狩りに挑む。
『歌声の素晴らしい歌姫も、喚いて叫んでくれてもいいのに。なあ――皆もそう思うだろう?』
 会話が無ければ最高の残酷劇にならないじゃないか。
 演じてくれなきゃ、最高には程遠い。
『君たちも処刑対象に願っておくれよ。"もっと、もっと!"ってね』
 主役が望む最高潮の、フィナーレを!
 呼びかけに応えた隷従たちが、声を揃えて"もっと、もっと!"と騒ぎ始める。
 舞台を整えるのは、周囲から。
 環境の流れが変われば――舞台の流れだって変わるのだ。
『さあ叫ぶように歌って。好きにアドリブを聞かせて!』
 細い剣で魔女は迎え撃つ。めらりと燃え上がらせるのはカレンの得意な炎。
 首が狙われる、胸が狙われる。
 傷口が抉られる。命を絶とうとする者たちが行う事は、死角狙い。
 故にひらりと躱すように飛び退いて、代わりに目を潰そうように刃を向ける。
 ――チッ。
 内心によるセリオスの舌打ち。
「アドリブはいいよな、だが――死ぬ間際に歌うのは、さてなんだろうな」
 祈るため?悲しむため?
 そんな演技を持ちかけて、敵の攻撃はギリギリ見切って回避する。
 頬を軽く裂かれ、つぅ、と痛みが頬を伝う。
 ――軽く皮膚を斬らせるギリギリ。
 ――どうだ、これも演技の一貫!
『そりゃあ、抱く"友愛"とかじゃあないのかい?ロマンだねえ』
 もっと欲しい?もっと血で彩られたい?
 じゃあもっと、切り傷を作ってあげよう。
 "過激"を全面に推した残酷劇の犠牲者に、セリオスに華をそえようと攻撃は加速する。セリオスはぐり、と流血を拳で拭って。攻撃の連撃も、炎の応酬も繰り返しながら、ギリギリの攻撃を受け続ける。

 ずっと大舞台を見つめていた赤き一等星。邪魔が入らないように露払いに徹しながら、見ていたのはずっと青い炎の一等星だけだ。
 演じると言っていた彼のことだ。
 ――止めてはならない。
 わざとだと判っていても、傷をつけられた時点でアレクシスは駆け寄りたかった。
 止めず、見なかった事にするには悲しい光景に映ったけれど。
 ――まだ、止めてはだめだ。
 ――分かっては、いるんだ……っ。
 唇を噛む。
 ――ああ、まだなんだよ。
 ――でも――――。

『だが、それで主張は終わりなのかい?はは、君は……領民たちと変わらないな』
「望むものを提供されて、それで自分の理想に沿わなければ斬り続けるってか?……ハァー。理想通りと錯覚しろよ、程々にさあ」
 演技半分で、身軽に踏み込む攻撃を繰り返していたセリオスだが、動きが自分の理想と離れてやや遅れた。
「……ッセリオス!!」
 炎の魔法をもろに食らって、着地に一度失敗しそうになったところを――アレクシスが受け止める。
「……無茶は、してないだろ」
 縋るように首元に抱きつくセリオスが、何をするか悟ったアレクシスは彼の牙を隠すように向きを変えた。
 首に歯を立てて、囁くように呟いて。
「こっから始まる逆転劇は、……アレス、任せたぜ」
「ああ、……勿論さ」
 "羊飼いの祈り"を施すセリオスの口が、離れて。
 アレクシスは一度、強く抱きしめる。
 黒いマントを纏ったアレクシスが、"演じる"のはカレンのためじゃない。
「――君の笑みに応えてみせよう」
 暁の光を纏った騎士の剣は、まばゆい輝きで今まで主役の座を奪いに掛かる。
『お姫様の代わりに、騎士様が立ち上がりました?ふふ、いいシナリオじゃないか』
「立ち上がる?いいや……」
 青星を守る光で地を覆い、奴隷達も置き去りに。
 闇の救済者達の進撃模様も背景の向こう側に置いていく。
 敵へと駆ける足は、まるで流れる星のように素早く。
 それから、息をつかせぬ速さで接敵を可能にした。セリオスの祈りでそれは余計に輝きを得ていて、短い時間の中で余計に煌めき続ける。
「……僕の役は、共に託された役だ」
 残酷劇を終わらせる、光の剣戟をその身に存分に浴びて浄化されるといい。
 受けるだけ、斬らせないなど甘い演出をアレクシスは良しとしない。
「さあ幕引きだ」
 盛り上がる劇であれ。それを現実化していたのだ魔女は。
 ボルテージが上がる舞台こそ良しとした。
『――残念、幕を下ろすのは君ではないよ。私が決めた、時なのさ』
 体をずばぁ、と切り裂さかれて身軽そうな体が宙を舞った――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鬼桐・相馬
●POW
今際の際、槍を支えに閻魔王の名を呼び力尽きる演技位ならできそうだ
想像の域を出ないが自分の末路のひとつ
倒れる際は槍の刃先の僅かな炎を死体の血に継ぎ、導火線のように辿らせ敵へ向けUCの下準備を

迫真の演技には〈アシモフゲアスの刻印〉〈軍制コート〉そして〈冥府の槍〉へ感情等を可能な限り流し喰わせ抵抗
俺の死に際の演技は面白くないだろうが断頭台など[怪力]を込めた槍で[なぎ払い、焼却]
同時に敵へ到達したUCを発動させよう

獄卒として死者を数多見てきた
この舞台、人の死の優劣を競うようでくだらないな
死ねば閻魔王の許へ送られるだけだ

ここで生まれた怨嗟の残滓が見守る中
お前が主役の処刑劇もいいんじゃないか



●怨嗟叫ぶ死刑囚

 切り裂かれた真新しい傷跡を押さえて、死の間際を歩く魔女は、まだ気丈に振る舞おうとする。舞台の上にいる限り、"演じる"ことをやめないらしい。
 ――今際の際、槍を支えに閻魔王の名を呼び力尽きる演技くらいならば、どうだ。
 鬼桐・相馬もまた、演じる役を思い浮かべて、あえて名乗らず相応に振る舞う。
 男が思う想像の域はでないが、これはいつかあり得るかもしれない"自身の末路のひとつ"。そう思えば、演技の幅は広がるばかり。
 ――"いつか起こるかもしれない"未来の予行練習とでも思えばいいか。
「……此処で一体幾つの命が旅立った」
『さあ。数えてもいいけれど既に朽ちたモノも多いからねぇ、大変な作業しか無いよ』
「だろうな。地獄の獄卒でもそんな暇なことはしない」
 演技のような演技ではないような、そんな言葉が交わされて。
『君は?どんな死に際で私を主役にしてくれるんだい?』
 突然此処で死に際、と相馬は悩む仕草を数分。
 無言の沈黙が舞台上に広がって、周囲の喧騒すら置いていく。
 相馬の中で今から演技をするぞ、と宣言するものか?と疑問が浮上していた。
 こういうものは即行動に移すのが理想的か?とさえ、相馬の思考は現在ぐるぐると流れている。
『……成程、君はアドリブに時間をかけるタイプのようだね』
 ゲネプロ(通し稽古)には向かない、実践型なんだろううなと魔女に呟かれ。
『即興というのは、そういうものではないんだ。君の首は貰ってしまってもいいのかな?』
 処刑台の魔女が指を鳴らす。
 いやな空気の流れが相馬の周囲にじわりじわりと展開される。
 魔力で首を撥ねる断頭台へ相馬の意識に関係なく、連れて行こうとしているのだ。
「それは困る。俺はまだ失敗していないし、まだなにもして、いな、い……」
 挑発なら買うと言わんばかりの、槍を構えた相馬は戦いに赴きを置く。舞闘という言葉も在るくらいだ。正直に言えば、その方が早いだろうとさえ考える。

 わざとらしくないように注意しながら、相馬は此処まで戦闘で戦場を進めてきた中で何処かで致命傷を負っていた風を装う。
 普通に会話していたはずの羅刹が突然斃れ込むのを魔女は驚きの顔で見ていた。
 決して槍からは手を離さないが。倒れ込むのも演技の範囲として色々な雑念を一気に放り投げる。
 ――いっそ、無様な方がそれらしい。
 ――あくまで俺の中の可能性(理想)を演じよう。
 斃れて以降は殺りの刃先に意識を向けて――僅かな炎を見渡す限りの真新しい死体の血に繋ぎ、導火線のように巡らせて。
 行おうと計画しているユーベルコードの発動までの下準備を粛々と行う。
 まだ息はある。それを解らせるために、肩で息をゆっくりとしながらだ。
『……ハハ、君が闇の救済者達の中で一番の英雄だったのかい?ご苦労なことだね、もう楽になってはどうかな。私を咎人として吊るせないだろう』
 迫真の演技しているのか?疑惑はカレンの中に浮上して、指定した斃れた相馬へと指定された役を演じたくなる感情を戯れに与える。
 もし本当に息も絶え絶え、だというのなら、名誉在る死する役を主役の名のもとに執行することもできる。
『ああ、本当に理想的な――展開じゃあないか。幻の拍手が聞こえてくるようだ……』
 想像の中へ気持ちを飛ばす魔女を横目に、相馬はといえば――。
 精神拘束を掛けるアシモフゲアスの刻印と、軍制コートが魔女の与えようとした外部的圧力を跳ね除けていた。
 感情に関わる枷、制限。複雑に色んな所有物が分担する相馬にとって、侵食されるという始末書モノな現象は起こさない。
 極めつけは、冥府の槍。揺らいだ感情を可能な限り力として流して喰わせて、抵抗を徹底した。
『ではもう私はそれ以上を求めないよ。さあ、その首を――勇者の頭を刎ねてしまおうね』
 魔力で相馬の周囲に断頭台をセッティングし、魔女領主は完成度の高い劇だと、内心のわくわくを止められずに居た。
 こんなに簡単に終わっていいのか?
 いや、もう少し極めていってもいいのではないか?
 わくわくは行動を止めるに留まる。頭を刎ねる宣言するものだから、身を翻し反撃のチャンスを待っていた相馬が痺れを切らして糸を勘違いする。
「なんだ、俺の死に際の演技はそんなに面白くなかったか」
『……ん?』
 何事もなかったようにムクリと起き上がり、相馬は己の周囲に配置された断頭台を怪力を込めた槍で薙ぎ払い、派手に燃やした。
 なにせ木製の断頭台だ、見事に燃える。青で激しく燃やされて今すぐ消してもう遅い。
「演じるなら、これくらいでなければダメかと思ったんだが」
 同時に、敵へと到達したユーベルコードを発動――。

 冥府の槍から発生した炎が、いつのまにかカレンの周囲を囲って燃えていた。罪深き魔女領主カレンの周囲に刺し殺さんばかりの棘が映えて、対象の自由を奪う。
「獄卒として死者を数多見てきたが……この舞台、人の死の優劣を競うだけでくだらないな。中身がない」
『何を、いうのかな。私が良いと思えば、いいのだよ』
 これまで魔女が話してきた敵意や否定の分だけ、追撃の棘が腹部を襲って突き刺さる。ぐしゃり、と嫌な音が耳に届いた。
「それをくだらないといっている。我が主――閻魔王の許へ送ってやろう。そこで同じように刎ねられる経験を積むと良い」
 捕らえた罪人へ見下すように、裁定するように相馬は告げて。
「此処で生み出された怨嗟の残滓が見えないのか。そこら中で見届けているぞ」
 ひゅうう、と冷たい風がカレンの頬を撫でていく。火炎に包まれているはずなのに、呪いの風が恨み節をぶつけるように撫でることをやめない。
「お前が主役の処刑劇もなかなかいいと思うぞ」
 ――それすらも、否定を繰り出すのだろうが。
 ――結果は同じ。お前の理想の舞台は、永遠に上がることはないだろうな。
 ほら、燃える音突き刺さる棘。
 お前の耳には聞こえないのか。怨嗟を叫ぶ、頭を断たれた連中の呼び声が。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鵜飼・章
やっぱり闇を照らす役は嫌だ
舞台照明って裏方だものね
そう思わないカレンさん
楽しそうな事をしているね
これは特に嫌味じゃないけど
口に出すと嫌味っぽいかな

演説に同意しインプロを始めようか
凶器は【ダモクレスの剣】で出した闇の剣で十分
僕もやりたいな、その人望の厚い領主ってやつ
身の程知らずにきみの権力を奪いに来た
愚かな人間の役…なんてどうだろう

炎は激痛耐性と落ち着きで無視
死ななければいい
いや、楽しければ死んでも構わない
きみと剣を交わせばその焦がれるような情熱を
一端でも感じる事が出来るだろうか
…違うな、この場合怒るのが正解だ
「きみは何てひどい事をしたんだ」って

きみは頭上の剣が見えていたのかな
大根役者でごめんね


禍神塚・鏡吾
技能:演劇、大声、挑発、だまし討ち

この領主も「彼女」と同じ
決して叶わぬ望みを叶えようとして、大勢を苦しめる……

「宜しい、この舞台で私の役割を果たしましょう」

殊更に芝居がかった動きで、拾い物の剣で挑みます
わざと劣勢になり(普通に戦っても負けそうですが)、負け惜しみを装って勝手な事を言います

「私が斃れても、闇の救済者は負けない!
領主の言葉には嘘しか無いのだから
信じてもいない神の名の下に処刑人達を操り、劇を装って己の嗜虐心を満たす、欺瞞に満ちた吸血鬼に、必ずや真実の裁きは下る!」

敵にも好きに喋らせて、その演説が終わったら照魔鏡を使います
「貴女は今、嘘をつきましたね?」

言葉通り道化の役割を果たしますよ



●剣

 ――希望の光、ね。
 ――やっぱり、闇を照らす役は嫌だな。
 鵜飼・章は"希望"の灯火、その綺羅星の一つであるように祭り上げられているようで内心複雑な思いだった。
「舞台証明って、裏方の仕事だからね。そう思わない?カレンさん」
 血に塗れ、血に彩られ。
 魔女は血の中に没そうとしていた。燃える火種を止める手はないのだろうと、半ばあきらめに似た気配すら漂わせて。しかし、彼女は演技を続けることをやめない。
『……君は舞台の上で役を演じたくない人なのかい?』
「そんなことはないよ、うん。楽しそうな事をしているね」
 体中、服の上からでも分かる傷だらけ。
 実行する側が実装された数々の罪の跡。
 魔女領主が、領主として相応しくないと猟兵によって訴えられた数。
 ――これは特に嫌意じゃないけど。
「口に出すと嫌味っぽく聞こえるものかな」
 怪我を推して、"処刑台の魔女"カレンは笑って答える。
『皮肉だらけの舞台役者というのも、役の幅が広がると私は思うね。さあ、彼だけかい?死ぬ間際を演じる者はいないのかい?』

 ――この領主も"彼女"と同じ……。
 支配する形に正しいは存在しない。
 理想があって殺すものと、決して叶わぬ望みを叶えるために結果として殺すのと。
 どちらにしても、存在するのは圧政を強いる支配側の都合だけが優先された玩具箱でしかない。
 ――大勢を苦しめている。
 ――懇願を受けても、生かしては帰していないでしょうから――――。
「宜しい、この舞台で私の役割を果たしましょう」
 禍神塚・鏡吾は殊更に芝居がかった動きで、インプロ(即興劇)の仲間に加わる。
 領主の館に訪れた時点で、一対一の舞台ではない。前提すら覆し放題だ。
 はじめから多勢が舞台上にいるのだから、誰が何を話しても、逆上など起こらない。

 猟兵二人が芝居道具として手にしたもの。
 鏡吾は殊更芝居がかった動きで拾い物の剣を向けて。
 多少の違和感を感じて切れ味を自分の指で確認する。
 ――手入れが行き届いていませんね。
 ――鉄錆びて朽ち過ぎた、形だけ保った剣のようなもの……。
 ――ああ、この剣も"役を演じている"のか。
 章は心があり知性のある闇"闇くん"で作られた武器を、ひらりと手にして魔女に対峙する。
「僕にはこの、ダモクレスの剣で出した闇の剣で十分。では僕からいくよ?」
 脅すように、向けた剣を持ちながら。
 かつんかつん、と魔女の方へ近づいていく。
「僕もやりたいな、その人望の厚い領主ってやつ」
 ――身の程知らずにきみの権力を奪いに来た、愚かな正義感の溢れた人間の役。
 ――死の間際、窮鼠は何にだって噛み付くものだよ。
『真っ向からの叛逆者の役かい?……成程、ふたりともその役でくるというのだね?私から領主の座を奪うと…………はは、ハハハハハ!』
 愉快なものを見た、なんという怖いもの知らず!
『なんと傲慢な主張だ。それを全面的に許可して与える領主であり魔女がいると思うのかい?』
 カレンの目が据わる。
 猟兵二人への言葉の投げかけのようで、その声は凛と響く。
 魔女の声は、舞台役者全体へ伝える伝令だ。さあ舞台を動くぞ――。
『そんなはずはない。領主のお考えは"異端の神"の次に聞き届けるべきだ』
『反旗を翻すなど、なんと愚かな』
 ざわざわと周囲でざわつき始める処刑人達。彼らに批判を持ち出す意志はない。ただ"異端の神"の命(めい)のもと統治しているというこの魔女の言葉もまた、絶対だ。
 同意するすべての個体の斧に、殺意の炎が燃え上がる。怨嗟の色、カレンが満足するまで舞台の幕が下りないように。消えない炎がつけられた。
『闇の救済者達を打ち倒せ、君たちの叛逆活動は此処までだ。私は全ての頭を平等に処刑台に送ろう!』
 戦闘力を増した処刑人の勢いが時々舞台の上に乱入してくる。
 殺到する、発狂した村人がなだれ込んでくるよう。
 拾い物の剣で、斧の攻撃を受けて誤魔化そうとする鏡吾だが、彼らは殺意の塊となって舞台のうえで暴れている。
 一人を止めれば、死角から数人が襲いかかってくるのを、――あえて劣勢を受けれいて。身を掠めた斧の斬り裂きを、重症なダメージであるかのように演技して、膝を付き大げさなくらい咳き込む。
 ――普通に戦っても負けそうですが、いえ、何もいいますまい。
「……私が、此処で、斃れても!」
 大きな声を張り上げて、時々大胆に咽る。
 少々大げさなくらいが望ましいはずだと信じて、声を張る。
「闇の救済者は負けない!領主の言葉には嘘しかないのだから。さあ聞け、隷従する処刑人たちよ。信じてもいない神の名のもとに魔女にいいように繰られる気分はどうなのだ?劇を装って己の嗜虐心を満たすこの娘は根っからの魔女である!欺瞞に満ちた吸血鬼だ、ああ、此処に必ずや真実の裁きは下るのだ!」
 ざわ、ざわ。再び周囲はざわついた。
 領主の言葉に同意して力を得た処刑人達が仲間内で顔を合わせ始める。
『しんじてもいない?』
『我らが神の言葉を、聞いていない……?』
 真実なのか、魔女領主。視線がカレンに集まってくる。
 それすらも愉快そうに微笑みを絶やさない娘は、普通の娘ではない――魔女の娘。
『"異端の神"が私など相手にするはずがないだろう?彼らは彼らの独自の領地(なわばり)を支配する。彼らとしているのは常に、領地(なわばり)争いだよ?』
 騙してなどいないさ、とクスクス笑いながら、信仰心さえ手玉に取って遊ぶのだ。
 絶望するならそれでもいい。隷従を解くならすきにするといい。
『私の意をすこしでも外れたら、君たちが待つのは――』
 指をぱちんと、一つ鳴らす。
『――!!!!』
 ある処刑人が突然張り倒されて、処刑台の内側に不思議な力で頭を押し込まれた。
 魔女が魔女たる所以。断頭台に流れるように魔術で導き、それから――。
 刃が流れるように墜ちて、ぶつり、と嫌な音を響かせた。
 ごろり、と麻布を被った頭が転がって、しゅううと砂のように消え去った。
『こうなるだけさ。君たちも演じるならしっかり役割を"演じ続ける"ことだね』
 敵を好きに喋らせておいて、鏡吾は照魔鏡を使う。
「鏡の前でたくさん喋って頂いたところ恐縮なのですが、――貴女は言葉巧みに、嘘をついていると認めましたね?」
 言葉通りの道化の役割を演じつつ、鏡から眩い光を放ち救いのない光の攻撃を魔女へぶつけた。
 照明には強すぎて、既に持っていた傷口がじゅくじゅくと悪化する攻撃だ。
 チッ――カレンから、舌打ちが漏れ出す。
 否定はしない、故に輝きはどこまでも凶器として彼女へと降り注いだ。

「炎も、怒涛の攻撃も、落ち着いて対処していればどうということもないさ」
 章の方は落ち着きで誤魔化しているが、激痛耐性が無ければ嫌な汗すら掻きそうな程の攻撃を受けている。
 いや、攻撃の方は本当にさほどでもないのだ。ただ、付随する炎の熱量は地獄のそれのように錯覚する。
 可憐でありながら苛烈で、消えない。
『攻撃の中で炎に焼かれて命を終えそうな君。死ななければいい、という涼しい顔をしているね』
「いや、楽しければ死んでも構わないんだよ」
 カッ、と床を蹴って闇の剣を手に魔女へ迫る。
『ああ、内側から厚いほうが好みだと。いやはや救い難いね……首が飛べば、どちらも同じだと言うのに』
 魔女は剣を抜いて対抗してきた、合わさる刃で受け止めて。
 それから命のやり取りは剣同士のそれにあずけて、暫く主張を打ち付け合う。
「その焦がれる上な舞台上の熱も、断頭台で刎ねる楽しさのようなものも。どちらも同じ情熱からくるのかな」
 ――僕は、その一端でも感じる事ができないかと思った。
 ――……得られた答えは、"怒り"だ。
 ――たった今、目の間で消えたモノはオブリビオンだけど――――。
「きみは、これまでも何てひどい事をしてきたんだ」
『酷いのは、どちらかな。私の頭上にこれほどの華を咲かせて』
「ああ……君の頭上の剣が見えていたのかな。大根役者でごめんね」
 ダモクレスの剣で攻撃を受けて、章が得たのは、カレンの思考の一部だ。
 どこまでも愛しているらしい演劇の中で、境遇に人間らしい"嘘"の感情を演出する。
 すなわち、普通ならこうすると章が思ったのは、――剣の打ち合いの中で体に刃を馳走する。
 手元からが望ましい、それを普通、予測する。
 だから――ダモクレスの剣を一つと誤認させて、上に華のように待機させて、その場所まで打ち合いを続けた。
「じゃあ改めてご覧よ、きみの上にも――ダモクレスの剣は咲くから」
 ずどどどど、と連続するように剣が娘の体に突き刺さり、可憐な華は最期を演技さえ散らされるように紅い水溜りの上にどしゃりと倒れた。
 主役が斃れたら舞台公演はここで終わり。
 最終公演には、主役に薔薇を送るのが良いだろう。
 そんな想いで、此処に"真っ赤な花"が咲いたのさ。
 ――その方が絵になるし舞台上で死するのも舞台の華とも、いうからね。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『鏡に映らない』グリムヒルド』

POW   :    世界で一番美しいのは誰?
【自分の美貌が敵を屈服させる】という願いを【精神を支配した配下たち】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。
SPD   :    世界で一番美しいのは誰?
【手鏡を覗き込んでいた】時間に応じて、攻撃や推理を含めた「次の行動」の成功率を上昇させる。
WIZ   :    世界で一番美しいのは誰?
全身を【触れた者の自我を蝕む闇】で覆い、自身が敵から受けた【自身の美しさを否定する言葉】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は禍神塚・鏡吾です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●燭火を潰さんとする者

 あちらから聞こえてくるような気がする声は、勝利を喜ぶ声だった。
 こちらの領地でも、すこし遅れて領主を討ち果たし歓声が大きく木霊する。
 声が響き合い、二面同時攻略は達成されたのだと燃え上がる火種、闇の救済者達は達成感と実感を得たことだろう。
 この地の圧政もこれで終わる――誰もが魔女領主のマリオネットでいる必要はなくなったのだ。
 闇の救済者達が取り戻した、"希望の先駆け"となったのだから。
 喜び渦中。水を差すように、喜びの鼻っ柱を折るように。

「随分と大きな声をあげているのですね」
 猟兵の耳には届いた。静かで冷徹。
 歓声を美しくないと揺らしたその顔は、新たなヴァンパイアが訪れたのだと。
 第五貴族直属の配下として訪れた女、"鏡に映らない"グリムヒルド。
「美しさとは勝利を噛みしめることですか?」
「美しさとは褒め称え喜ぶことですか?」
 鏡にする問いかけは、そんな抽象的なモノは受け付けないと彼女は言った。生き残った処刑人達が、討たれた領主の代わりに現れたヴァンパイアに鞍替えしていく。
 彼らは"異端の神"の声を聞くヴァンパイアの下につく。人間だった時の心は何処かに消えているから。
 宗教的なことをいう、彼女の下でも同じ恩恵があると信じてやまないのだ。
 隷従するものはどこまでも誰かに隷従する――。

「さあお答えを。――世界で一番美しいのは"誰"?」
 意に沿わない人間の群、闇の救済者達を美しないと彼女は言うのだ。
 手にする鏡は応えない。彼女の顔は鏡に写っていないから。
 手にする鏡は応えない。魂のない彼女が世界で美しい筈がないと知っているから。
 手にする鏡は応えない。返答は身を滅ぼす(割られる)と知っているから。
「……この地は汚れ、汚れていると。美しくない地へと染まりきってしまうまえに滅ぼしましょう」
 血に染まり、流血に彩られ未だ"美しい"地であるうちに。
リック・ランドルフ
……主役は遅れてやってくるってか。しかも女って事は……さしずめ、シンデレラって所か?……いや、鏡に問い掛けるって事は小人と暮らすやつだったか?……ま、どっちでもいいか。

おい、お姫さんよ。悪いが今日のパーティーは時間厳守、飛び入り参加はお断りなんだ。だから、追い出させて貰うぜ。

ここはコイツらの居場所だ。お前の居場所は―――ないんだよ。

処刑人達は救済者に任せていいんだよな?頼んだぜ、……ここまで来たんだ。命優先しろよ?

見た感じ、鏡がアイツの武器か?俺の勘が正しければあの鏡は……よし、UCを使って鏡を喋らす。そして真実をあのお姫さんに知ってもらう(戦闘知識、情報収集)

そして動揺してる間に銃で攻撃だ。


有栖川・夏介
新しいヴァンパイア…か。次から次へとキリがないな。
それに相手方の処刑人達、ああも簡単に鞍替えするとは。
意思があるのかないのか…(やはり、鏡をみているようで気分が悪い……)

……なんであれ、私は処刑人らしく刑を執行するまでです。
「残念ですが…さよならの時間です」

美しさを問う敵の声には答えず、黙っている。
「貴女の望む答えが返ってくるとは限らないのに、それでも聞きたいのですか?」
言葉に圧をかけ、敵に対して【恐怖を与える】
少しでも躊躇うそぶりをみせたら、それは恐怖した証拠。
すかさずUC【黄泉へと誘う紅の乙女】を発動し、攻撃。
「首をはねよ、と女王が言った」
これで…終わらせる。


ルネ・プロスト
おや、後日談をご所望かい。それとも第二幕の開演を?
どちらにせよ無理に引き伸ばした蛇足の物語程醜いものもないだろうに

基本はポーン8体の乱れ撃ち&弾幕&制圧射撃で攻撃兼ねた敵の行動牽制
加えビショップ2体の属性攻撃&マヒ攻撃&オーラ防御、雷の結界で自陣を覆う
迂闊に近づけば感電して大きな隙を晒す事になるわけだけど、どうでるかな

UCは敵UCに合わせて頭2腕6脚2の割振りで発動
当たれば次の行動の起点を潰せる
避けられても手鏡を覗いた次は回避行動だからどの道損はない
UCかビショップの雷で敵の動きが止まったらキングの斧槍振り下ろし

先ずは美しいの定義を述べたまえよ
そんな抽象的な問いに答えなど出せるわけないだろう?


ヘルガ・リープフラウ
質問には答えない
この女には意味がないと知っているから
どんな答も――たとえそれが彼女の美を褒めたたえる言葉だとしても
彼女は其れすら疑うだろうから

カレンが嘯いた主役の座にも興味はない
歪んだ享楽のために人の心と命を踏みにじる
その傲慢なる悪意が許せないだけ
わたくしの望みは民の幸福、愛と希望が報われる世界

歌うは【涙の日】
苦難に立ち向かう勇気と覚悟を決め
破魔と浄化の光放ち
自我を蝕む闇が齎す呪詛や狂気に耐え抜く
悪しき支配者とそれに従う心無き下僕に神罰を
人々の為に立ち上がる同胞に鼓舞と癒しの光を

踏み躙られ泥にまみれてもなお背を伸ばし
力強く咲く路傍の花
わたくしの信じる「人の心の美しさ」はそこにある



●真っ向から否定する者

「おや、劇の後日談をご所望かい」
 笑う様子を魅せない新たなヴァンパイアの訪れに、ルネ・プロストは劇の続きを望まれたのかとも思った。
 領主が討たれた後の統治者が居なくなった領地に起こる次の悲劇の物語。
 この終幕を、良しとしない娯楽としての楽しみを寄越せと突きつけられたものかと。劇としてならそういうこともあるだろう。
「それとも、此処から始まる第二幕の開演を?」
「……本物の主役は遅れてやってくる、ってか。しかも女って事は…………さしずめ、シンデレラって所か?」
 綺羅びやかで、途中から主役の座に上り詰める為に訪れた、主役狙いのヴァンパイアではないか。
 猟兵達の中でも憶測は飛ぶ。リック・ランドルフもまたその一人だ。
 闇の救済者達が喜ぶ歓声を汚(けが)れと言い放つ"鏡に映らない"グリムヒルドの主役級存在感は、確かにあった。
「……いや、鏡に問い掛けるってことは小人と暮らすやつだったか?…………まあ、どっちでもいいか」
 魔法で綺羅びやかを得たのか、それとも真実輝ける悪辣を働くものだったのか。
 尋ねたところで、ヴァンパイアは答えまい。
「そうだよ、どちらにせよ無理に引き伸ばした蛇足の物語程醜いものもないだろうに」
『蛇足?さて、なんのことでしょう。もう一度問いましょう、――世界で一番美しいのは誰?』
 意に沿わない言葉の数々だったのか、グリムヒルド熱心に手鏡を覗き込み問い掛ける。ヴァンパイアである彼女は人間の言葉を重要視しないようだ。
 では"鏡"ならば。鏡ならば見える通りに、見える言葉で返答するはず。
『……』
 鏡は、無言。一言だって言葉を発しない。
「おい、お姫さんよ。悪いが今日のパーティーは時間厳守、入場するにも参加するにも招待されてなきゃいけないんだ。定員制でな、飛び入り参加はお断りなんだよ。だから、追い出させて貰うぜ」
「そうだよ。満員なんだ――みえないのかい?」
 ルネの傍に並ぶのは、銃剣と革鎧を装備した等身大の駒盤遊戯。ポーンが八体。
 全てを勢揃いさせてずらりと並ばせた途端、乱れ打ち弾幕が始まる。
 ――闇の救済者達と、ルネ達と。
 ――それから本当に救われた領民たち。
「人数はもう手一杯なんだよ。それにほら」
 八体のポーンの中に加わるのは木杖と鎖製の祭服を装備した駒盤遊戯。ビショップが二体。防護の術に長けている中でも雷の力を選択し、自陣全体を包むように結界を施した。時々ばちっと爆ぜる音。あの電圧は触れば感電を齎すそれだ。
 痺れるだけならいいが、触った部分が無事で居られる保証もない。
『世界で一番美しいのは誰?世界で一番この場にふさわしいのは、誰?』
「迂闊に近づくとその顔も美貌も全部無くなってしまうよ」

 ずっと鏡から目をそらさないグリムヒルドは、答えこそに興味はあり質問への返答ではないそれには答えようとしない。
『私が尋ねているのだから、それにこそ応えよ』
 冷たく言い放つグリムヒルドは、ポーンの行う制圧射撃を踊るように避けてみせた。見ていた時間はとても長い。
 故に、軽やかに踊るように避けるという概念を、息を吐くほど容易く達成させる。
『第五の貴族も認めないことです。私はこの身に"殺戮者"の紋章を持っているのですから。答えない者達は一人たりともこの場に残しません。問いかけは簡単だったはずですよ』
 紋章。彼女は自身とは別の、寄生型オブリビオンを宿しているということになる。
 印に応じたパワーアップがされており、彼女よりも更に上位の存在が彼女の在り方を認めているということにほかならない。
 これは――地下都市からの制圧行為かもしれない――――。
「ほら、ほら。それ以上は鼻が無くなるよ?」
 グリムヒルドのユーベルコードに合わせ、頭2腕6脚2の割り振りで十糸拘束・五体封殺を発動するルネ。霊糸を対象に向けて放ち、絡め取る。取ろうと、する。
「全てを避けきるならそれもいいけど。掠めた時点でルネの策略の中でマリオネットを演じているよ」
 ――主役級の働きなんて論外だね。
「回避行動の為に鏡を覗いて、回避して更に覗く。誰のことも見てないじゃないか」
 避けきった後を狙い全ての糸がグリムヒルドを捕らえた。
「だってルネのことも見てない。ルネの背後に何がいる?」
 ポーンではない。ビショップでもない。
 斧槍と豪華絢爛な鎧を装備した駒盤遊戯。キングがひとつ降臨していた。
 声を上げさせる隙を生じさせず、そのまま槍斧は振り下ろされてごしゃあ、と嫌な音が大きく響いた。
「先ずは"美しいの定義"を述べたまえよ。そんな抽象的な問に答えなどだせるわけ、ないだろう?」
『……世界で一番美しいのは、誰?さあ誰か答えなさい。誰ですか?』
 ぼたぼたと派手に鮮血を吹き出しながら、女は答えを求める。

「質問になど答える気はありません」
 気丈に振る舞うヘルガ・リープフラウは強い言葉で跳ね除ける。
 ――この女には意味がないと、知っているから。
 何しろ相手はヴァンパイア。嘘や甘言など通じまい。どんな答えだろうと、人類側が言葉にした話を鵜呑みになどしないだろうとヘルガはなんとなく強く思うのだ。
 ――たとえそれが、彼女の美を褒め称える言葉だとしても。
 ――彼女は其れすら疑うだろうから
「わたくしは特に、あの者"カレン"が嘯いた主役の座にも興味はない」
 ――歪んだ享楽のために人の心と命を踏みにじる在り方が。
 ――傲慢なる悪意でしかない存在が許せないだけ。
「望みは此処に今存在しないもの。民の幸福、愛と希望が報われる世界……」
『此処で領主をしていた魔女と何が違うのですか。私にはわかりません、その理想は一人の手には大きすぎやしませんか』
 幸福になる為の要素は、このダークセイヴァーには少し足りないもの。
 希望の燭火は、いずれ色んな場所で燃え広がっていくはずだ。
 だがすぐに広がる炎の波へと至ることは、難しい。
 ヴァンパイアへの叛逆を果たす日も来るかも知れないが――国家としての礎も。
 武術や魔法。
 それらの衰退を止められなかった百年の歴史は、重くのしかかって来る。
「それでも、自由のための歌を、紡ぐ事をやめないのです。人類は」
 否定の言葉を聞いたグリムヒルドの腕力は大幅に上がっていた。
 自我を蝕むどす黒い闇を手に燈し、彼女はこの世界の在り方を語る。
『人類が取り返すべきものは貴女一人で賄えないものでしょう?』
 静謐なる聖歌を謳いこぼすヘルガは問に、応えない。
「――♪」
 首元を掴まれた。じりじりと生命力を奪われる。
 それから、ダイレクトに触れられた事でヘルガは自我を侵食されていく。
『では一言、私に声を返しなさい。歌一つで救えるのは誰?世界で一番美しいのは――?』
 ヘルガに襲い掛かる拷問のような急激な体力の減退。
 それから闇が入り込んだことで、狂気と呪詛による正しい心を内側か喰らわれ抉られるような胸の痛み。今正しいと思っていることを諦めても良いのではないか、と悪魔の囁きまで幻聴として置いていく。
 ――そんなもの、……!
 脱力する気分に負けず、朗々とその声を届けるように祈りを捧げた結末は、激しい光量で降り注ぐ。

 カッ――!

 陽の光が乏しい空に、"涙の日"に誘われた光がスポットライトのようにグリムヒルドを照らし出した。
 邪気を打ち払う裁きの光。
 破魔と浄化の光は、闇を引きずる女をまばゆい輝きで襲う。
『ああああ!!!!』
 それから悲哀を包み込む白き慈愛の光の範囲を周囲と、ヘルガ自身に。
 主役一人と、心無き下僕は次々に白き輝きに焼かれ――。
 人生の主役は一人ひとりであるべきと治癒の輝きで更に人類側は勢いを増して煌めくように、希望をその胸に強く抱いていく。
 ――悪しき支配者と従うモノへ神罰を。
 ――人々の為に立ち上がる同胞に、鼓舞と癒やしの輝きを――――。

 ――圧政の領地で踏み躙られ、泥に塗れ。
 ――なお背中を伸ばし、歩もうとするもの。
「力強く咲く路端の花。わたくしの信じる"人の心の美しさ"とはそこにあるのです」

「処刑人達は……救済者たちに任せていいんだよな。おい、頼んだぜ?」
 ――領主に勝って……ここまで来たんだ。
 ――命大事にしろよ?死んだら意味が、無いんだからよ。
 異変に気づけと銃を幾つか真上に放つリックの行動に。
 ルネの敷いた広範囲の自陣の防壁に。
 ヘルガの齎した輝きの癒やしに。
 流石の闇の救済者たちもなにかがおかしいと気がついた。
 一部の者達は早々に、戦闘態勢に移っていく。
 ああまだだ、敵はまだ多い。魔女領主だけで戦いは終わっていなかった。
 大丈夫だ。叛逆の燭火はまだ、轟々と燃えている。
「おい、見た感じ……鏡がアイツの武器か?」
 ――大事に大事にしてるしな。
「俺の勘が正しければ、あの鏡は……」
「なにかわかったかい?」
「逮捕されるより自首した方が罪ってのは軽くなるらしいからな。俺たちより欲しがってる"言葉"を聞かせてやるのさ」
 ――心は素直、って奴だ。
 ――あの鏡がもしも魔法の鏡なら。本当は喋るはずだ。
「なあ、鏡。お姫さんが知りたがってるようだ。この機会に喋ってしまうといい」
 グリムヒルドの鏡にうっすらと、口が浮かび上がる。
『せ、世界で一番美しいのは』
『世界で一番美しいのは、誰?』
『…………』
 黙ろうとする鏡の口をリックは隠し事や秘密と断定して不思議な力でお喋りにさせる。そのための舌だ。そのためのユーベルコードだ。
 ――さあ喋れ。お前が告げるべき言葉を。
『あ、貴女では……ありません。貴女ではないのです』
『は?』
 ――鏡の本心かどうかは、見破られまい。
 ――俺にもわからん。だが、"聞きたがっていた"ようだからな。
「僅かにでも動揺したな?――今だ!」
 ――俺は銃を打ち続ける。
 ――お前らは、……何を打ち込む?

「主役もなにも、あれは新しいヴァンパイアでしかないでしょう」
 有栖川・夏介の頭の中には、次から次に訪れる見事なほどの殺戮模様の幻想劇。
「次から次と、領民を不安にさせることしかできないのですね」
 ――本当に、キリがない。
「それに相手方の処刑人達、ああも簡単に鞍替えするとは。信仰対象が変わらなければ誰の下でも良いと……」
 ――意志があるのか、ないのか……。
 ――ああやはり、鏡に姿を映しているようで気分が悪い……。
 表情の乏しいほうの夏介でも、気分を害されるのは心外だ。
 仕事に没頭し、あれらは全て首を撥ねて掃除してしまおう。
 私情を一時放り投げて、機械のように武器を振るえばこの気分を殺しておくだけで事は済む。
「ところで……なんですか、あれ」
 動揺した事を偽るように、グリムヒルドは自身の体をペタペタと触り始める。
 自分は此処にいるはずだ。絶対此処にいるはずの美しい存在だ。
『ありえない。ありえない……!!』
 触れた自分の身体を媒介に蝕む闇が彼女の身体を覆った。
 目に見えて、黒いオーラがグリムヒルドから立ち上る。
 狂ったように、小声で何かを永遠に呟いている。
『美しい、私は美しいのです。なぜ、なぜ分からない!?』
 ――ああ、溜息が出る。あれは死ぬ間際の罪人と変わらない顔だ。
 ――自我が脆くなると、首が落ちる瞬間の叫ぶ顔は絶望に染まる。
「わかりませんね。残念ですが……さよならの時間です」
 美しさを否定する言葉さえ乗せず、夏介はずっと黙っている。
「貴女の望む答えが返ってくるとは限らないのに、それでも聞きたいのですか?」
『美しいでしょう。世界で一番!その名前を告げて、さあ!美しいのは、――誰!?』
 女のヒステリーは停まらない。
 言葉に圧を掛けた夏介に対して、それでも言えと言葉をまくしあげてくる。
 恐怖よりも"美しい"と語られたいのだと悟り、それでも夏介は語る口を開かない。
「名前はお綺麗ですね」
『そ、それだけ……!?』
 それ以外にも言葉は在るはずでしょう、顔を向けて、戦闘力を上げてオーラの届く距離に詰め寄ってくる。
 生命力を吸いとるヴァンパイア。それを彼女は拷問と称する。
 ――僅かですが、躊躇いました。見逃しません。
 ――私に、恐怖の貌を魅せましたね。
「あとはそう。……首をはねよ、と女王が言った」
 恐怖の感情を与えられたグリムヒルドに、夏介は召喚した少女の赤いドレスの中から狂乱する女を切り裂く大鎌を飛ばした。
 ざくり、と音を立てて。女の身体に刃が刺さる。
 ずっと見つめていた時間に応じて、避けるを強化していたグリムヒルドだが――動揺の隙ごと切り裂かれては、その体は真っ赤に染まる――――。
 ――ああ、終わらせ損ねましたか……!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鵜飼・章
おや…
カーテンコールに横槍を入れるなんて
第五の貴族というのは思ったより無粋な人達だ
僕は空気が読めないので
気の毒な鏡さんが言い淀んでいる台詞を読み上げてしまうよ
『だからきみは美しくないんだ』

中身の伴わない美しさは惨めだ
僕自身がそうだから熟知しているよ
ああ…今はあの娘が焼いてくれたから
多少は味のある役者になれているかな
王子様としてお返事しないとね
『ごめん、僕好みのタイプはカブトムシだから…』

【確証バイアス】を発動
処刑人達にカブトムシのかっこよさを説いて言いくるめよう
あの輝き、力強い飛翔
何よりこの舞台上での異端性をご覧
彼女より余程神に相応しいだろう

無粋な舞台には無粋な幕引きを
裏方はこっそり退場するよ



●美しい翅(つばさ)を

「おや……カーテンコールに横槍を入れるだなんて」
 "鏡に映らない"グリムヒルド"は攻撃を身に受けても、ドレスを翻し何処かへ去ろうとはしない。
 麗人の服装をずたずたにされても、地に汚されても。この地を人類側に渡すよりも、滅ぼしてヴァンパイア視点での平穏を守りたいがためだ。
『美しいものは守るべき。美しいものはその姿を保つべき。そうではないのですか?』
「それはきみの、信念?いやちょっと違うかな……第五の貴族というのは、思ったより無粋な人達だ」
 鵜飼・章は空気を読まない。
 章は必要以上のカーテンコールは求めていないのだ。
 小さな燭火が、燃え広がり足掛かりに燃え盛る一歩を見る、その後のことは――。
 ――休み無く齎されてもいらないんだよ――――。
『ヴァンパイアの統べる地は、美しい。つまり、世界で一番美しいのは――』
 自分の発言に酔いしれるように、グリムヒルドは手鏡を問い詰める。
 ただ、他の猟兵からのユーベルコードが解けた鏡は再び言い淀む。あ、あ、と小声が聞こえるような気もするが、言葉にすることすら嫌がるような気配を章は感じた。
 ――ああ、気の毒に。
 ――愛用品(仮)にも、愛されていないだなんて。
「代わりに教えてあげるね。だからきみは、美しくないんだよ」

『なんと申されたのでしょう。命知らずなのでしょうか』
「中身の伴わない美しさは惨めだ、って言ってるんだよ」
 見る限り美貌が異常に整っている様子を見て取れない章。
 ただ、人間というには生気がなくて。
 ヴァンパイアにしては爵位のような立ち振舞を魅せない。そこにいるのが当然で。問いかけに答え無いものは、容赦のない殺意が空気を揺さぶる。
 ずずずず、と黒い殺気が周囲の空気を体感の上でずしりと重くする。
『美しさに中身は必要だと。それよりも先に、貴方が答えるべき言葉が在ると思いませんか?』
「いいや、僕はもう応えだだろう。一度だけじゃ満足していないのかい?」
 ――僕自身がそうだから熟知しているんだよ。
 中身が伴わない。章は自分のことのように知っていると振る舞った。
 ――言われたい言葉も、言われたいという欲望も。
 ――解らなくは、ないんだよね。
『私は世界で一番美しいのです。誰よりも、誰よりも――そうでしょう、私の美貌は人類よりも美しい。私は、この場を容易く蹂躙できる』
 単純に願う屈服させる、とグリムヒルドは演説する。
 配下に下った処刑人達は"新たなボス"がどのような顔をしていようが気にしない。
 彼らに心はないが、その代わり頭の中の情報を"彼女はとても美しい"と精神から掌握されているから。
 賛同する人数に際限がない。美しい顔を持つから達成する、とその願いは叶うと彼らは後押しを加えてくる。
 願いが叶う――それは即ち"世界で一番美しいのはグリムヒルド"と肯定するも同じ。美を讃えさせるも同然の言葉で、グリムヒルドは満足そうに笑う。
 ――……ああそうか。今は、あの娘が焼いてくれたから。
 浴びた分だけ、痛みにも似た信念の火傷を所々に残されていた。
 傷のようで、悪夢のようなそれは、まだ乾ききっているともいえない。
 ――ほら、"存在した"って跡ならあるよ。
 通りの通らない話。どこか虚空を相手にしているような気がする話。
 淋しげに笑って、その笑顔の意味をおそらくグリムヒルドは悟らないと判っていて尚。言葉を欲しがるお姫様に、王子様"として演じるように役を演じる。
 味のある深みのある言葉を選んだ王子様は――こう言うだろう。
「ごめん、僕好みのタイプはカブトムシだから……」
 美しいとはいわない。好みではないとサラリと躱す。
 その美貌は、すごい格好いいカブトムシに、劣る、と。
 章の最強無敵な信念を崩せるのは"美しい"ではなかった。
 これはきっと相性の問題だ。彼女は相手にするべき猟兵も間違えた。
『カブトムシ?そんなはずはありません。そんなモノが美しいだなんて』
「僕の前提は揺るがない。僕はそれが正しいと思う。この前提は決して揺らぐことはない、これが≪確証バイアス≫――」
 想像を糧に翅を広げ現れるのは一本角の立派な大きなカブトムシ。
 幻想的で、本物のカブトムシの比にならない夢色カブト。
 ブゥウウウウウン――それは、グリムヒルドを角を突き立てて張り飛ばす!
 満足感に任せて手を伸ばし、生命力を順に吸収しようとしてた手を弾き、甲虫は翔ぶ。キラキラと輝きを牽いて飛び、処刑人達の上空を取った。
「ほら、あの輝き……まるで星を見るようだろう。流れ星といってもいい」
 ――流線の見事な身体。ああ、実にいい。
 ――屈服させよう、だなんてそうはいかない。
「美しい美貌に屈服するくらいなら、すごくかっこいいカブトムシに溺れる方がいいかな」
 言いくるめるように呟く章に、処刑人達はその視線を奪われる。
 この舞台上で異端の花火を咲かせることは、決して間違いではないはずだ。
「ほらご覧よ。彼女より余程"神"に相応しいだろう?」
 章のカブトムシは場を乱すように翔び周り、誘惑するカッコよさをダークセイヴァーの空に魅せつける。
 ――無粋な舞台には、多少の不思議を。
 ――無粋な幕引きは、裏方の失踪を選択しよう。
 章はこっそり戦場から退場し、いつしか居なくなっていた。
 ヴァンパイアへ行った物理的な突進攻撃だけを現実(リアル)に残して。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ゲニウス・サガレン
宗教に共通することは、自分が一人ではないことを精神的に確認することと言われている
議論は多々あるけど、少なくとも宗教とは誰かに従い、その意を絶対視することと必ずしもイコールではないと思う

処刑人について言ったつもりだけど、かのヴァンパイアも自分しか見えていない
古代遺跡も研究した者としては、それは宗教じゃない、ただの複雑化した承認欲求じゃないのかな

アイテム「C式ガジェット」
UC「ガジェットショータイム」

体色を変え、周囲に擬態して接近するんだ私のタコ型ガジェット
そして隙を見て、彼女の大事なあの鏡に墨を噴きかけろ!

慌てたところをアイテム「スティングレイ短針銃」で狙撃する
貴女も、痛みで目を覚ますといい



●論点

「宗教に共通することをあえて明らかにしよう」
 彼らが胸に抱くもの、彼らが何故宗教に堕ちるのか。
 ゲニウス・サガレンはあえて思っていた事を口にする。
 世界が違えば胸に抱くものは少しずつズレていく。
 これが悪いという意味では、ない。
『……?』
「宗教とは基本集まりでね、広めること、信仰する事を目的の始まりに置く。この利点は自分が一人ではないこと、同意者たちと精神的な繋がりを確認する事が目的だ」
 これはそういう形。議論の余地は多々あるものの。
 信者と信者ではないものとの会話は、あまり意味を持たない。
「少なくとも宗教とは誰かに従い、その意を絶対視することと必ずしもイコールではないと私は思う」
 内部崩壊が起こりうる芽は何処にでも存在する可能性がある。
 洗脳以外で意思統一がなされないからだ。
「それを踏まえてよく考えてほしんだよ。美しさは果たして、絶対かな?」
 ――処刑人について言ったつもりだけど、彼らの考えは変わりそうにないね。
 処刑人達は首を傾げるようにしたのも一瞬。
 グリムヒルドの意向に従って事実上開放された領地にその斧を振るっていく。
 壊せるものが多少でも。上に戴く偽の領主もどきでも。
 "異端の神"が認めるものならば、彼らの宗教観は何も崩れないのだ。
『それは、美しいことですか?』
「美しいとは違うかも知れないねぇ」
 ――このヴァンパイアも、あの領主も。
 ――基本的に自分のことしか見えていない。
 手鏡から顔を背けること無く、美しいさ尋ねてくるグリムヒルドに対してゲニウスはやれやれ、と肩を落とす。どうせ見えていのだ、失礼な態度をほんの少しとったところでいきなり殺意を上げて襲ってはこまい。
「宗教というのは深層心理な部分においても私は思うところがあるね。古代遺跡を研究した者としての言葉にはなるが……君のそれは宗教の心理じゃないと思うかな。ただの複雑化した承認欲求じゃないのかな、と」
 言われたいだけの言葉ならば。
 返すほどの意味はない。ゲニウスは首を振って、彼女の返答は曖昧に返す。
 全てわざとだ。的確な返答を、返すべきではない、と彼は考えている。
『世界で一番美しいのは誰ですか?答えるまで問いましょう』
「困ったな……」
 今戦っている敵に有効なガジェットを、魔導蒸気機関を利用して召喚するゲニウス。C式ガジェットを媒体にした時、ゲニウスが喚ぶものは大抵生物に寄る。
 半自律的に動き、行動するのだ。ああ、なんとロマンあふれることだろう。
「これが貴女には何に見えるかな?」
 体色を変えて、風景に溶け込もうとするガジェットの見た目はタコ型。
 ふわあ、と足を広げて魔導蒸気を吹き上げたタコはグリムヒルドにひらりと躱された。"次の行動"を避けるに割り振っていたグリムヒルドの反撃は、タコ型ガジェットの掴み取りに移行する。
 姿が見えづらく擬態しているいるとはえ、ヴァンパイアの周囲に翔ぶ魚類などあってはならない。
『美しくない!』
「そうかい?これはこれで、私は美しいと思うのだけど……ほら、そこだ!」
 ――彼女の大事そうにする鏡へ、墨を噴きかけろ!
 ゲニウスがチャンスと思った考えとタコの自立行動は交差した。
 手鏡へ噴きかける墨は、見事に命中する。
『……な、なんてことを…………!!』
 慌てた彼女は鏡を綺麗にするべく拭く布を探し始める。
 近くに綺麗な布はない。磨けるようなシルクは、ないのだ。
「慌てている所悪いね。貴女もそろそろ、痛みで目を醒ますといいんだよ」
 スティングレイ短針銃で、軽く狙撃をした。
 狙った場所は、腕。それも手鏡を持つ付け根を集中的に、だ。
 からん、と手鏡を落とそうとする彼女。大事にしたいのは手鏡なのか――それとも、自分を美しいという(はずの)心の拠り所、なのか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鬼桐・相馬
●POW
大地を染める血はいずれ固まり雨が洗い流す
ここで流れる血はお終いにしよう

〈冥府の槍〉を右手に
〈宵鷲の鉤爪〉を装着した〈ヘヴィクロスボウ〉を左手に構える
美貌に誑かされるつもりはないが配下達の数を減らし対策を

弩から鉤爪を射出し配下達を纏めて拘束、[怪力]で締め上げる
ワイヤーに槍から炎を継ぎ[威圧し恐怖を与える]ことで隷属心を揺さぶれないか試したい
効果がないようなら躊躇わず[焼却]

猟兵が闇の救済者の希望として在り続ける
彼らや他の猟兵を見て思ったんだ
その光がより鮮烈なものとなるよう、俺は闇をより深くしようと

配下の数を減らしたらグリムヒルドへ[ダッシュ]で肉薄
UCを発動し真正面から炎を浴びせよう



●地獄送り

 絶望は、燃え移る火があれば希望になる。
 少しの火の粉も、燃え上がる意味を得るだろう。
「大地を染める血がどれほど多かろうと。微かだろうと日が差し込むこともあるだろう。汚れていようと、この世界ならよくあり得る光景だ」
 薄い太陽光に照らし出されたり、風化とともに少しずつ乾く赤の色は鬼桐・相馬の目の届く各所にさえ点在して見えるほど。この地はどこも血塗れだ。
 つい最近、大量に流されたはずの赤褐色も。
 点々と足跡のように残された死までを記した残痕も。
 朽ちるには足りぬ時間の中に置き去りにされた腐乱死体も。
 どこにでもある、赤の痕跡。
 いずれは真新しいものたちさえもっと色褪せて、過去へと代わり穏やかな時間の向こうに消えていくはずだ。
 雨に当たれば徐々にだが、流れる血があったことも洗い流していくだろう。
「まだ美しいとは程遠い。いずれ美しくなるだろう」
『世界で一番美しいのは、誰?』
 誰だと思う?答えは一つしか準備しては居ないけれど。
 グリムヒルドの手鏡は、他の猟兵が浴びせた墨を派手に被り、くすんでいた。
 慌てて衣服の袖で拭われたようだが、鏡は何も映していない。相馬でさえ、そう思う。拭われた鏡の表面に、黒ずんだ表面に、何を移すというのだろう。
「世界で一番かは知らん」
 冥府の槍を右に持った相馬は更に、左手に構えたヘヴィクロスボウは宵鷲の鉤爪を食ませていた。
『では教えて差し上げましょう。世界で一番美しいのは私グリムヒルドであると!』
 ほら、そうでしょう。
 配下へと加わった処刑人達はうぉーと叫びながら同意を示す。
『御覧なさい、私の美貌は隷属するもの共さえ魅了する!』
 精神を支配したグリムヒルドは、制圧した人類側の者、すなわち相馬を襲えへ命じ始めた。配下たちは斧を振りかざし、自身の抱く信仰心さえ忘れたように相馬へと襲いかかってくる。
『さあ、貴方も屈しなさい!我が美貌に。さあ精神を脆く露呈なさい、そうして貴方も私に告げなさい――誰が一番美しいのかと』
「願いのために手段を選ばない。強いて言えば、全体的に醜いな」
 全体を遠巻きに眺めてヘヴィクロスボウからの一撃。
 闇色の鉤爪を駆けることでより長く、より遠くに射出した。
 ぐるんと鉤爪が配下達を纏めて捕まえて。
 ぐい、と片手でワイヤーを弩ごと引っ張り、急激に締め付けてやれば内側に囚われた者達は全てただの木偶の坊。
 斧を振るおうが、力を尽くして暴れようが羅刹が怪力を込めた拘束は。
 戦場で闇の救済者たちともぶつかり合うように戦ってきた者たちであれば在るほど逃げ出せまい。
 疲れを知った者たちを、逃がすほど相馬は優しい鬼ではない。
『我らが神よ……我らが行いに祝福を』
『救いを、救いを、救いを成すが為……』
「さちあらんことを、か。いい加減聞き飽きた」
 相馬がするのは縛り付けたワイヤーへ、槍から紺青の炎を奔らせること。
 よく使う武器が、その炎が奔る様を滞らせるわけはない。
 威圧するだけで留まらない恐怖の炎がぐるぅりと隷属心ごと追い込んでく。
「そんなことを言ってる場合か。焼かれても尚、神に祈り続けるつもりか」
『ああ、我らが神よ……』

 ――ああ、だめだ、こいつら。
 ワイヤーに炎を伝わせて脅す。それだけに留めるつもりだった相馬だが。
 心のない者たちは考え直すということすら考えることをしないらしい。
 ならば派手に燃える薪となるといい。
「燃やす手伝いなら、してやる。全身で燃える薪となって"異端の神"も我々は此処に居たとでも告げろ」
 ――まあ、俺が識る限り"異端の神"はそんなものに見向きもしないが。
『まあ、残酷。でも良い色に燃えていますね――ああ、美しい光景です。断末魔も添えられていて、ええ』

「猟兵が闇の救済者の希望として在り続ける。これはその具現化だ」
 ごおうと燃える紺青に、グリムヒルドは自身の笑みを凍らせたように貼り付ける。
『ああ、汚い……』
「ヴァンパイアとは意見の相違しかないな」
 ――共に戦った彼らや、他の猟兵を見て思った。
 ――光が、より鮮明なものとなるよう、俺は闇をより深くしようと。
 ――当然、闇を裂いた光がより、目立つだろうから。
「悲鳴まで綺麗、美しいという口で。人類の考えは汚いというか」
 目減りしていく配下の数を横目に、相馬はグリムヒルドに肉薄する。
 隙ばかりみせる女へ、声を低く囁くのだ。
「よく燃えそうだ」
 噴出する冥府の炎は鬼火継ぎ。これまでの戦場で一度たりとも負傷しなかった、ということはない。
 激しく燃える火を継いで、真正面から顔を焼いてやる。
 悪意しかない女を燃料とすれば、冥府の炎はより派手により苛烈にお前はよく燃えるだろう。
『アァアアアアアアア!!!』

大成功 🔵​🔵​🔵​

サンディ・ノックス
何を美しいと思うかはそれぞれ
勝手に好きなものを美しいと思っていればいい
ただお前の感性に付き合う義理はないよ

胸鎧と一体化、全身黒鎧の異形と化す
黒剣を握りダッシュして女の懐に飛び込みたい
配下の妨害は通りすがりに斬り捨てるけどキリがないな
UC招集・赤夜を発動、不可視の魔力で構成されたもう一人の自分を女に向かわせて
俺が剣を持つのと同様に所持している剣で女を斬らせる

斬る直前にもう一人の自分は楽しげに囁く
洗脳した者達にもてはやされていい気分かい?

もう一人の自分を操り女を斬りながら俺は配下を処理して女に接近
(配下の処理と、俺は俺の美しさを信じるという信念で結果的に敵UCに対抗)
接敵できれば俺直々に女を斬ろう



●重ならない美しさ

「この地が汚れている?」
 じゃりり、と砂を強く踏むサンディ・ノックス。
「汚れていたのは流され続けた血が理由だろう?圧政から開放されたと喜ぶ姿を否定する権利は無いと思うんだよね」
 この地に巣くうヴァンパイアを討ち、勝利に湧くこの地に。
 空気を読まずに別のヴァンパイアが訪れただけのこの地を否定する権利はないはずだ。次は防衛しようとする燭火が燃える。
 戦力は十分だ。
 怪我する者はあったとしても、癒えればきっと戦いの火花となって先陣を往く。
 あとは次の戦いに備え準備する時間と。
 早々の拠点運用を敷けば、闇の救済者達は自信を糧にやりきれるだろう。
 ただし、終戦した時に脇から殴り込み戦いを畳み掛けてくる根性は――流石に腐っていると断言せざる終えないが。
「何を美しいと思うかは人それぞれ。そちらも勝手に好きなものを美しいと思っていればいい。口に出して言う必要は、全く無いね」
『では貴方、世界で一番美しいのは誰です?』
「答えると思う?お前の感性に付き合う義理はないよ」
 胸部を守る鎧と一体化し、その姿を全身黒鎧の異形と化すサンディ。

『付き合ってくださらないのでしたら私の美貌にて必ずや屈服させてみせましょう』
 ――さあ賛同なさい。この世界で誰が一番美しいのかを――――。
 ――その声に変えて、指し示しなさい隷属共――――。
 グリムヒルドの声に侵食するような精神支配が、心のない処刑人達の思考を侵食する。大勢の賛同を得て、女は自分は美しいのだと溺れるように微笑む。
 手元の手鏡に、女の姿は――不思議と映っていないようだが、そんな事はサンディに関係ないことだ。
 黒剣を握り、ダッシュして女の懐へ飛び込まんと駆け出す。
 そうだ、女の服装はすでにボロボロで。
 攻撃的武器のようなものを持っていなくても、鏡に映らぬなにかでも。
 目の前の女は、力を持ったヴァンパイアなのだ。
『神の思し召しのままに……』
「煩いよ、此処にカミサマはいないんだ。信仰対象ですら無い何をカミだと言っているんだい」
 走り抜けざまに手を伸ばしてくる盲信する馬鹿どもを通りすがりに切り倒し、言葉ごとねじ伏せる。
 此処に"異端の神"はいない。
 彼らに命令を下していた魔女領主もいない。
 精神支配を受けて、彼女を神だというのなら……異端の神も地に堕ちたものだ。
 共存する事無く、支配領地さえ別れているヴァンパイアと異端の神が混同しているなど冒涜的にもほどが在る。
 ――ああ、キリがないな。
「単純な攻撃だけじゃ、飽きるでしょう。ああ、俺は飽きるからこの手で行くよ?」
 不可視の魔力で構成されたもう一人のサンディが、すぅ、と分裂するようにグリムヒルドに向かって直進を始める。
 魔神が如き速度、悪魔が如き誰も止められぬ黒鎧の異形(もうひとり)が、有象無象を無視して突っ込んでいく背中を見つめる暫しの時間。
 足止めを喰らう本物のサンディより先に到達するもうひとりが、身を低く剣を構え。もう一人は愉しそうな笑みを浮かべ、女にしか聞こえない声で囁いた。
 その一瞬、すべての音が遅くなり、言葉は不思議と頭の中にスッ、と入り込んだ。
「洗脳した者達に、これでもかと持て囃されていい気分かい?」
『……!?』
 反論するより早く、体感は元の時間に戻る。
 復帰の速さに身体は追いつかず、剣は素早く振り抜かれていて、横薙ぎにグリムヒルドの身体を激しく切り裂いて、抉った!

 弧を描くように舞う鮮血。

 ――ああ面白いほど見事に、血飛沫が上がったね。
 先を行かせた自分を繰り、にやりと笑うサンディはグリムヒルドを切り付ける攻撃を辞めないが。
 本人は本人で、死にたがりの配下共を順番に切り捨てて追いかける。
「「その方が綺麗だと思うよ」」
 もう一人の自分と声を重ねて、だが決して美しいと言葉を発しはしないサンディ。
 自分の信じる美しさの形は信念という形で、結果的に戦闘姿勢で示していたのだ。
 女は、攻撃的な前衛的戦闘を行わなかったが為に気が付かなかった。
 賛同者が少しずつ斃されていけば、彼女の願いの比重は叶わないにどんどん傾いていく。だからこのような結果へ至っていくのだ。
『生きている貴方から、生命力を奪えば……!』
「許すと思った?そんなワケ無いでしょ」
 接敵を許しておきながら、抵抗するヴァンパイアをサンディは直々に女を斬りつける事で罰する。
 ――そうやって美しくない生き方をしようとするから。
 ――誰も心からその美貌を褒めないんだよ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セリオス・アリス
【双星】アドリブ◎
この程度の傷、平気っちゃ平気だが
…ありがとな
無茶にならねぇようにさっさと終わらせるか!

歌で身体強化して
ダッシュで先制攻撃だ
炎の属性を剣にこめ
斬りつける

敵の攻撃を見切り避けつつ
はッ…!その程度で美しいだとか
俺の方が顔はいいだろうが
信者の人数を減らせば敵の攻撃だってきっと叶わねぇ
誘惑して惹き付けてアレスの方へ
あとは…物理でお黙りいただこうか!

お前とはほんっとーに意見があわねぇみてぇだなぁッ!
何より美しいのは
繋いでく未来で、ここにある日常だ
生きていく人だ

アレスと目を合わせ
赤星に青星を添わす
思いの丈をぶつけるように
全力の魔力を、歌を込めて
【彗星剣】で、その下らねぇ問答を終わらせる!


アレクシス・ミラ
【双星】
アドリブ◎

戦いに行く前に…セリオス
じっとしていて、と先程の“演技”で負った傷の応急手当(『救助活動』)を
…少し、心配していたんだ
マントも返すよ

美しい黒歌鳥なら教えられるけどね
僕はセリオスの援護を
麻痺を込めた雷属性を拡げるように剣から放とう
配下が彼へ惹きつけられたら
かばい、シールドバッシュで弾き飛ばす
悪いが、彼の方へ行きたければ
盾(僕)を超えてもらおう

…この世界で懸命に今日を生きようとする人々を
彼らとの明日を繋いでいこうと戦う救済者達を美しくないだなんて言わせない
彼らの美しい輝きは…僕らが守り抜く

セリオスと視線を合わせ
青星に赤星を重ねる
全ての光と想いを
【彗星剣・『熾天赤星』】に込めよう!



●シャイニングソウルハート

 ラストダンスを開演を。
 二人の猟兵は少し遠く、闇の救済者たち――観客――――に混ざって耳に聞く。
 早くに見つけた"火炎の一団"が燃やしに行ったのだ。
 ああ、悪意を持って近づいてくるモノは燃やしてしまえ。
「皆もう戦っているね」
「っ……ああ」
「でも戦いに行く前に、ちょっとまって……セリオス」
 アレクシス・ミラに止められて、セリオス・アリスが浮かべたのは心配性め、とゆるく苦笑する表情。
 強化の反動で一分間の昏睡から目覚めた後だ。
 よくあることだ、そう重要視するものではないだろ、と反論しようとする口をアレクシスは人差し指で押さえつける。
 彼が気にしたのは一人ド派手に切り傷を作ったこと。
 わざと回避しきらない、ギリギリを攻めたことだ。
「……この程度の傷、平気っちゃ平気だが?」
 頬の切り傷だって生乾き、他の場所もそう、傷だらけ。
 強がりではないだろうけど、そういう話ではないんだよ。
「いいからじっとしていて」
 さっきの"演技"で負った傷の手当を手早く行って。
 見た目以上の深い傷ではないことが確認できて、アレクシスは一人頷く。
「滲みる?……大丈夫そうだね。少し、心配していたんだ」
「……ありがとな」
「どういたしまして。そうだマントも返すよ。次は一緒だからね」
 手当を完了させて、満足気にしたアレクシスがセリオスの肩を叩く。
 返却されたマントをセリオスは受け取って、代わりに彼のマントと交換だ。
「一緒だからな、無茶にならねぇようさっさと終わらせるか!」
 遅れて乱入してきた主役気取りに、主役の座は渡さねーといセリオスが大きく息を吸い込んで。
 謳い出すの身体強化の旋律。駆ける足は常に軽やかに。
 スピードを上げて突き刺し抉れ。
 攻撃の基本はスピード勝負、先制に込めるスタートダッシュと挙を突く一瞬が命だ。ダッシュして駆けるセリオスは黒歌鳥、燃える赤の尾を牽いて、"鏡に映らない"グリムヒルドの前に飛び出した。
『世界で一番、美しいのは、誰?』
「俺!」
 女の問いかけを、自信満々な囀りが遮って炎属性を従えた剣で斬りつけてやった。
 身を捩り、避けようとした女の服が燃やされる。
『……聞き取れなかったですが。そちらの?貴方はどうですか』
「うーん?美しい黒歌鳥なら教えられるんだけどねぇ。自己申告もあっただろう?」
『ああ、世界の汚れが見えるようです……こんな最先端なところに、在るだなんて…………』
 掃除を行わなければ。
 手鏡で口元を隠すようにしたグリムヒルドは、自身の怪我の事は無視して。
 声にさえ美の概念を埋め込み魔術の聞いた精神汚染を配下に浴びせかける。
『世界一の美貌、これが分からないだなんて……解らせなければなりません。立ち上がりなさい、世界を正すために!』
 精神支配を受けた処刑人達はもはや考える頭を持たない。
 彼らが彼女の武器のようなもの。彼女の取り巻き、彼女を崇める偽の宗教団体。
『死に、幸を見出さんことを……』
『死は、救済……』
 聞いてきた戯言も、汚染されたように塗り替えられている。
『救済です。美しさの前えでは何も要らない。さあ、その身を捧げなさい』
 ガッ、と麻布に手をかけて。ヴァンパイアは微々たるものと分かりつつも。
 配下となった隷属から生命力を奪い……消滅させる。
『少し持てばいいのです。私の願い、叶うまで』

「ああもうごちゃごちゃうるせー!」
 彼女を崇め、敵対するもはや意識さえ在るかわからない亡霊共の斧をセリオスはひらりと躱した。
 回避した上で、振り上げた斧を持つ個体の腹部へタックルするようにぶつかって突き飛ばす。
「はッ……!その程度で美しいだとか笑いしかねえなあ!俺のほうが顔はいいだろうが!」
 おい笑えよ、と強い剣幕で配下共に言い寄っても。
 彼らは彼女の美貌にしか応えなかった。
 美しい、美しいと寝言のような呪詛を零すばかり。
「くそ……どんな顔も美しく見えるとか、良いように改造されてんだなあ!」
 ――崇められてた異端の神とやらも可哀想に。
 ――お前らの姿もきっと、コイツら頭にねえよ。
「でも"敵"だってのはわかんだろ、ほら付いてこいよ」
 誘惑して誘い、よたよたと付いてくる馬鹿どもをアレクシスに引き付ける。
 セリオスの援護に麻痺を込めた雷属性を剣に宿らせ、広範囲に広げて放つ――。
 バリバリと、激しい雷光が突き抜けること一瞬の出来事。
 付いてきた者達は、一斉に麻痺の餌食となってバタバタと斃れて行く。
「俺の美しさにひれ伏した!屈服させるならやっぱり物理だ、お前も同じようにお黙りいただこうか!」
「僕の攻撃の冴えに痺れたんだよ。物理に物を言わせるのは、この場では良いことだと思うけどね」
 生き延びたゾンビのような声を上げる者達が、接近をまだ試みようとするのをアレクシスは見つけて。
 さり気なくセリオスを庇うように立つ。
 大盾で阻み、それから――シールドバッシュで激しく弾き飛ばすのだ。
「悪いが、彼の方へ行きたいならば。盾(僕)を超えて貰おう」
 彼らの戦う意志は精神から支配されているものだ。
『神、神が……美しい…………』
 足が、腰が。腕が。明後日の方に折れ曲がっても尚立ち上がり。
 生々しい血を撒き散らしながら、何処かを激しく負傷した彼らの無様な在り方をグリムヒルドは嫌そうな顔をして、一言。
『ああ、その人形達は壊れましたね。お疲れ様でした』
 言葉だけの礼(廃棄通告)を彼女から受ければ、簡単に支配は解かれて替えの利く人形のように捨てられ――限界を超えたダメージの中でもがき、嗚咽を吐きながら塵のように消えていく。

「……彼らも、元は此処で普通の人間だったと噂で聞いたよ。今は成れの果てだけど、…………捨てられて死ぬことは仕方がないかもしれないね。信仰対象を何度も変えるのはバチあたりだよ。でも、でもだよ」
 アレクシスは背中の向こう、たくさん集った闇の救済者たち。
 それからどこかで息を潜めているこの領地に済む者達を想う。
「……この世界で懸命に今日を生きようとする人々を。彼らとの明日を繋いでいこうと戦う救済者達を美しくないだなんて言わせないよ」
『この喜びかた。支配から逃れた猿のよう。ああみっともない……美しい様子なんてどこにもありません!』
「お前とはほんっとーに意見があわねぇみてぇだなぁッ!」
『なにが、言いたいのでしょう……美しいと謳う貴方は』
 ダンピールであるセリオスを、女はバッサリと美しくないと言い切らなかった。
 ああ多少なり、彼女にも美の基準があるのだろう。ただし、ヴァンパイア基準だ。
 どうせ人類に共感されるものではない。
「顔より、心だ馬鹿。なにより美しいのはなあ、繋いでく未来で、――此処に訪れるだろうあるべき日常だ」
 圧政でも、隷属でもない。
 人類が奪われた本来在るべき輝きは、今は戦火の中にだけ。
 ただし、取り戻すべき日常は――未来に必ず在るから。

 アレスと目が合う。
 セリオスと目が合った。
「彼らの美しい輝きは……僕らが守り抜く!」
 青宵の剣と赤暁の盾。合わさる輝きは太陽を超える輝きを生む。
 ヴァンパイアならば目が眩むほど、焼かれる痛みをその身に受ける筈だ。
 青星に赤星を重ね、赤星に青星を添わす。
『ではそこで、世界で一番美しいのは誰なのですか?』
 セリオスは全力で魔力を歌に込め、同時に展開する魔力の奔流さえも剣と盾、二人の魔力に更に重ねて空さえ断つ、鋭き剣と成す。
「――生きていく人だ!!」
 ――その下らねぇ問答を終わらせる!
 思いの丈に合わせるように、全ての光と想いを彗星剣に乗せてアレクシスと振る。
 "熾天赤星"――独りが駄目なら――――二人で教えてやるのだ。美しさを履き違えたヴァンパイアの、殺す以外を何もない胸など貫き、切り裂け――!!
「美しさを理解できないというのなら、此処でしっかりと胸と頭に叩き込む事だ!」
 光に胸の孔を焼かれて、そして貫かれ。女の体が反動で、無造作に宙を舞った。
 取りこぼした所持品が、一つ。先に墜ちてパリンと軽い音を立てた。
 ああ、彼女の心の拠り所――手鏡が、無残に、割れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

禍神塚・鏡吾
技能:呪詛耐性、狂気耐性、念動力、串刺し

アドリブ歓迎

嘗て私はこの吸血鬼に敗れ、精神を支配されて多くの人を手にかけました
その過去を消す事はできませんが、これだけは言わなければ

「お答えします
世界で一番美しいのは、時を糧に自分や他者の未来を生み出す人です
自分が映らぬ鏡を無為に覗き続け、美意識の為に他者の未来をも閉ざす貴女は、美しくありません」

自我を蝕む闇に耐えつつ、UCを詠唱抜きで使います
鏡の表面には、彼女の貌を電脳魔術で複写(それ迄の戦いで受けた傷等は反映しません)した幻を浮かべます

「今、貴女を鏡に映しています」

動きを止めた彼女の背後から剣で心臓を貫きます
昔の私が、彼女の意に沿わぬ人々にしたように



●美しき残酷な人

 ぜえぜえ、と胸を抑えて肩で呼吸する女――ヴァンパイア。
 強きモノだ、焼かれ貫かれ斬られても、人類に負けるモノかとギリギリで踏みと留まっていた。
 自分に答える鏡もない。衣服も相当な乱れだ。
 誰が第五の貴族直属のモノだと想うのだろう。
 ああ、配下に置いた者達ならば、まだ彼女の言葉に答えるだろうが。
「さて、お疲れでしょうから、ここで私が少しだけ語りましょう」
 禍神塚・鏡吾は演技するように、前に進み出る。
 誰に招かれたわけではない。誰に妨害されるでもない。
 鏡吾がこの地に訪れた時僅かに不安に思い、湧き上がるモノを感じていた――その原因は目の前の"鏡に映らない"グリムヒルド。
 血に塗れ、麗しい様子を散らしていようが鏡吾は目の前に立った。
 到来の予感に、誰よりも早く気がついていた。
 その女が本当に現れた事を驚きはしない。だから――あえて目の前で言おう。

「かつて私は吸血鬼に破れ、精神を支配されて――この手は多くの人の破滅を齎しました」
『ああ、有象無象塵芥の顔ならば私も覚えてはいませんでしたが……』
 第五の貴族直属のヴァンパイアとして、グリムヒルドが滅ぼした村々は数多く。
 今も尚、支配下に置いている村は存在する。
 誰もが彼女の美貌を褒め称え、彼女の欲求を満たすため以外の存在理由を剥奪された。小さな村々、それから領民。眷属に至るまで。彼女が満足する言葉を吐くことしか許されない"美しさを称える為のもの"として扱われたのだ。
『……配下として人類側の生物を殺し尽くし、私の言葉に一番初めに応えた貴方を覚えています』

 彼女は昔、手鏡を所持していなかった。
 もっと大きく――長辺五十センチ程度の、楕円形の西洋鏡を所持していたことがある。ある宮廷建築の美術様式を反映したような、金の装飾で縁取られた鏡を。偶然訪れた村で見つけた"鏡"を奪い、それから気まぐれに尋ねた事が運命の分かれ目。
『世界で一番美しいのは誰?』
 喋る西洋鏡へ女は問いかけた。
 いつかどこか、此処十年の間の過去で確かに返答し――"鏡"は返答内容を間違えた。鏡面を虹色に変化させ、仮面のような顔が浮かび上がり質問に対し、魔法の鏡は応えた。喋りだした言葉は。
「貴女は美しいかたでしょう」
 世界で一番、かは知らない。あくまでそこにただ存在した現実。
 その美貌は美しいと表現する以外の言葉がなかった。
 だからこそ、美しいと思った事をそのまましゃべっただけだった。
『そう。貴方は美しいと言ってくださるのね?ああ、――嬉しい』
 最も、彼女が問いかけたことに多くの理由があったわけではなかった。
 誰もが素直に"美しい"と称することはなかったから。
 ヴァンパイアに発生した純粋な気持ちが、その言葉(美しい)へと余計に固執する元凶ともなったのだ。
 鏡は呪物と称され、色々な世界を点在していた。
 第六天魔王"織田信長"が魔術によって召喚した渡来人が、サムライエンパイアへ持ち込んだ後。
 あまり縁起の良い出自とはいえない鏡は、色んな場所を転々とした。
 ヤドリガミ化したのはその頃だが、――鏡吾は、自身の本体をいつの間にか奪われていた。当時の持ち主が喋りだした鏡を不気味に思って破棄した後、ヤドリガミとして活動し始めた時期。
 ダークセイヴァーでひそりと隠れ潜み、過ごしていた時期の話だ。
 喋ったのはあくまで"西洋鏡"。仮初めの姿を得た鏡吾では、なかった。
『世界で一番美しいのは誰?』
「それは貴方です」
 美貌が西洋鏡の精神を掌握し、触れたモノの自我を蝕み人形として扱ったのだ。
 喋った鏡の代わりに、事を成すべく配下となったのは――鏡吾。
 ヤドリガミは、敵にいいように使われていた。
 殺したもの、壊したものは数多い。
 今となってはその虐殺は――抱える黒い闇。
 仮面の下に表情を隠すことしか、出来ないことだ。
『鏡は私を美しいといったのですから、当然誰もが美しいと言うはずでしょう」
「そうですね。そうでないと、おかしいでしょうね」
 鏡に映る顔を見たことがない女の隣に、必ず答える鏡が遭った。

 ――過去は消すことは出来ませんが、これだけは言わなくては。
『さああのときのように応えて下さい。世界で一番美しいのは誰?』
「お答えしましょう。世界で一番美しいのは――時を糧に、他者の未来を生み出す人々です。今を生きる人類こそが美しい」
『……なんですって?』
「貴方は気がついているでしょう。しかし知らぬフリをしている。自分が映らぬ鏡を無為に覗き続け、尋ね続ける。
 虚無の行いだと知りながら、今度は美意識のために他者の未来まで閉ざす貴女。その行動は美しいとはかけ離れています。貴女たが世界で一番美しくありません」

 ヴァンパイアとしての存在感を大いに燃やし、触れたものを支配する自我の闇を彼女は身に纏う。
 嘗ての優秀な部下だった"鏡"。もう一度、いや何度でもその言葉を発するだろうと思っていた鏡に、裏切られた。
 意に沿わない事をされ、支配下に置くため間近で彼女は掴みかかった。鏡吾に対して、"美しさ"の概念を伝え自身に触れた現実を創り出し、自我を蝕む闇を与える。
『もう一度言ってご覧なさい。貴方は過去に言ったのですから』
「見たいのでしたら、どうぞ。私は鏡を使いたいというのでしたら拒みません」
 呪詛と狂気に耐えながら、鏡吾は、グリムヒルドを鏡に写す。
 鏡に写ったグリムヒルドの貌を、電脳魔術で電子の境界から複写して周囲を侵食するように、顔を幻としてずらりと並べた。
『……これ、は…………』
「見てわかりませんか?今、貴女を鏡に映しています」
 これまでの戦いで得た傷があっては、見栄えが悪い。
 故に反映せずにコピーしたのは、鏡吾の僅かばかりの趣向返しだ。
 彼女の部下として働いた事で発生したトラウマは、今も鏡吾に残るもの。
『……私…………?』
 鏡に映らない魂のないヴァンパイアの貌は、細かく描写され女は初めて自分の顔を見た。
『世界で一番、美しいではないですか……』
 動きを止めた彼女。
 この世の中で最も美しい自分に見惚れ、人類を滅ぼすことも汚れを正すことも、恍惚の向こう側に置き去りにしたただのひとりの女となった。
 ――顔を見れて、良かったですね。
 背後に回った鏡吾は、さっくりと拾い上げて所持したままだった剣をぐさりと突き刺した。
 ――"剣"もこれでお役御免。
 形を保つだけでの役をこれでこの得物を終えられる。
 ぐしゃり手元で折れて突き刺さった刃は彼女の中に残された。
「そうですね。では、さようならです――美しい人」
 その攻撃は、心の臓を貫いていた。
『――――』
 昔の鏡吾が、彼女の意に沿わぬ人々へ行ったときのように。
 決別の刃が勝者と敗者の差を大きく分けて、隔てた。
 断末魔さえ挙げることのないまま、消え去る彼女の顔は――誰がみても美しいと思えるものだっただろうに。
 心からの美しいとの声を、聞けない彼女はなんて勝手なヴァンパイアだろう。
 鏡吾そのとき仮面の下に笑みを隠さなかったのは。
 彼の過去に隠すものなど――もう無かったから。


 かくして――革命に動いた燭火は簡単に吹き消される事はなく。
 燃え盛るべき場所を得た。燃え広がるべき場所を、強者から勝ち取った。
 いつか世界に広がる劫火となり、取り戻すべきモノを手にするまでずっと、ずっと明るく燃え続けるだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年04月22日
宿敵 『『処刑台の魔女』カレン』 『『鏡に映らない』グリムヒルド』 を撃破!


挿絵イラスト