41
百の獣で夜に咲け

#カクリヨファンタズム

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#カクリヨファンタズム


0





「おやおや、ろくろ首のお前さん。そんなに首が長かったかい?」
 ずんぐりむっくり。冬の間に蓄えた体いっぱいの栄養といっしょに、化け狸は雪の積もる地面に埋まった真っ白な首に聞いた。
 これが首だとは、正直化け狸も最初の頃は思っていなかった。
 巣のそばに転がる太いそれは、真っ白なうどんのよう。そうでなければ鱗のない蛇だろうかと思って、雪に埋まる着物で正体を判別したのだ。
「ああ、よかったわぁ。たぬきさん、あなたならうまく化けられるだろうから、戻し方を教えてもらおうと思ったの」
 ぬうんと声が響く。とさとさ、――と、樹に積もった雪が落ちていった。
 はてはて、どこから声がしているのやらと小さな足跡をポテポテと押しながら、たぬきもその頭に向かっていく。
「おんやまぁ、可哀そうに。蛇になっちまってる」
「やっぱり?何かおかしいと思ったのよ。ヒトっぽく化ける方法を忘れちゃって」
 瞳孔は縦に裂け、困ったような表情は声からでしかわからぬ。
 しゅるると舌を鳴らした彼女に、化け狸はよく肥えた腹をぽんと鳴らしてやった。
「おれに任せておきな!うまく化けてやるから、お前さんもアッと驚いて思い出せるだろう!」
 そぉれ!
 掛け声とともに化け狸はどろんぱっぱ。
 ――ひらりと舞う葉を合図に現れたのは、しっかり冬で肥えた大きなヒグマだったのでした。

「「あれぇ?」」


「と、いうわけでカクリヨファンタズムは滅んじゃうわけよ」
 どういうこっちゃ。
 ヘンリエッタ・モリアーティ――の内在する一人格であるマリーは、だって予知しちゃったんだもんなどと言いながら嫋やかなしぐさで腕を組んだ。
 ウェーブのかかった黒のセミロングが、無邪気なものである。ふわふわと細い毛先を右手でもてあそびながら、言葉を少し選んでいた。
 グリモアベースにて。海での戦争も明けたところで猟兵たちの忙しさはさほど変わらない。
「――まあつまり、『人という概念』が失われたってとこじゃなぁい?」
 カクリヨファンタズムは複雑怪奇故に不安定な世界だ。
 ちょっとしたことで世界は滅びかけるし、概念は消し飛んでしまう時があるし、そのたびに猟兵たちが何とかしているのだけれど。
 この女が見てしまった予知というのは、かつて人間と共存した妖怪たちのアイデンティティに関わる部分である。
「人の姿をとることができないみたい。まあ、もっと複雑なものに化けれるでしょうけどねぇ」
 丁寧に彩られたネイルを例に、視線をやってから続ける。
「ろくろ首なんてうどんみたいな蛇になっちゃってるんだから。一つ目の傘のおばけなんて、ただのボロボロの傘っぽい蛾になっちゃって、しくしく落ち込んでるのよぉ」
 後半はともかく、前半はうまくたとえられているかどうかは女ですら怪しかったらしい。苦笑いを含めながらの語調であった。
「ここの世界のみんなは、思い出とか懐かしさとか、そういうものを食べて生きてるでしょぉ」
 ――事態は、わりとキャッチーに深刻なのだという。
 『人という概念』が失われているのだ。
 かつての隣人だった彼らに察知されなくなり、世界を追いやられた彼らが住まうノスタルジックな世界には、人間の名残がたくさんある。
 忘れられた機械だって、建物だって――景色だってすべて人間と得てきたものだ。しかし、「それが何なのか」もこのままではわからなくなってしまう。
 自分がどうしてここにいるのか、何をしていたのか、何にすがって、追憶を求めたのか。
 失われた目的の先が無意味となって、世界はかくして滅んだのだ。
「って言っても。今はみーんなお酒のんでどんちゃかやって弾幕ビュンビュン飛ばしてるけどね!」
 うーん元気。
 おセンチになってしまう妖怪たちも多いが、憂鬱な時こそ酒だ酒だで今のところはまだポジティブな空気で崩壊しつつあるらしい。
 今なら間に合う!というタイミングで猟兵たちに何とかしてもらおうという感じなのだ。
「あ、でもでも。みんなも人の形は保てないみたいだから、気を付けてね!」
 思い出したかのように。
 現状『人という概念』が消えてしまっている。当然、人間に近い容姿も同様に作用されるだろう。
 お互いをいつもの姿で認識はできないが、問題なくユーべルコードは活用できるようであった。
「わんちゃんねこちゃん、あとは鳥も魚も、皆がそういうのになっちゃうみたい。あ!水がなくてもするするっと泳げるから、そういうのになっちゃった人は安心してね!」
 すなわち――人の姿を保てない・擬態できない猟兵たちは、四つん這いだったりエラだったりで駆け巡りながら最後のパーティ同然のカクリヨファンタズムをかけぬけなくてはならないのである。
 でも、どうぶつのすがたなのでだいたい当たり判定は小さい。これは猟兵たちの有利であった。これで勝てます。間違いないね。
 妖怪たちは極めて猟兵たちには友好であるので、勢い余ってバンバン弾幕を飛ばしてくるがまあ心配あるまい。
 いつも通りにいなしてやって、遊びもほどほどに、異変解決へと導いてあげよう。
「それでは素敵な――百獣夜行を、猟兵(JAEGER)!」


さもえど
 さもえどです。ノーマルシューターです。
 今回はカクリヨファンタズムで「人間」という概念が失われております。
 妖怪も人型に化けることはおろか、自分たちの定義もあやふやになりつつゆるやかに滅びそうです。
 まさしく世界のアイデンティティがほわほわで、猟兵たちもまごうことなくこの概念の喪失影響をうけます。
 イヌネコ鳥魚爬虫類虫etc...になりつつ弾幕をかわしつつ、この異変を解決しよう!というシナリオです。
 ジャンルはゆるめです。ゆるっとギャグの予定です。
 いつも通りユーべルコードは使えますのでご安心ください。
 ★こんな動物になりたいな、というのがあればプレイングに明記ください。
 また、特に思いつかないけど……お任せ!と、してくださるかたは🐾をプレイングのどこかにどうぞ!
 プレイングの受付期間は、各断章とタグにてお知らせ予定です。
 それでは、みなさまの素敵なプレイングをこころよりお待ちしております🐾!
218




第1章 集団戦 『龍神片』

POW   :    肉喰(にくはみ)
自身の身体部位ひとつを【大元の龍神もしくは混ざりあった邪神】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
SPD   :    龍乱舞
【回避と攻撃が一体となった神速の旧き套路】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    属性撃
【龍神が司っていた属性での攻撃(投射可能)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【をその属性によって染め上げて】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ――どろんぱっぱ!

 妖怪たちはできねえものはしょうがねえと言わんばかりに酒を盛る。
 もとより忘れられてもう見えないような身の集いである。今更人間のことを少しくらい忘れてしまったところで、どんな後悔があろうか!
 そもそも人間ってなんだっけ? 誰だっけ? どうして大事なものだと思っちゃうんだっけ。
 どんちゃんどんちゃん、揺蕩う気持ちをかき回すような宴の音とともに、さあ咲けやれ咲けと弾幕が夜に舞う。
 ぱっ、ぱっ、と一つの玉をくす玉のようにして割って見せれば、分離して飛び散る玉粒をしゅぱぁんと拳が跳ね返した。

「なぬ~!どいつもこいつも、人に化けれぬとなれば正体を現すと思うたが」
「竜らしいものがどこにもおらんではないか!」
「これでは主様もお目覚めになった甲斐があるまい!」
「むう~困った困った」
 『龍神片』。
 龍神の体にしかりとけがれた骸魂が根付いた彼らが、がっかりとした口ぶりでそう宣った。
 人型であることを奪われる概念において、彼らはなんと姿勢正しく直立なのである。
 どうやらこの異変に関与していると思って問題ないだろう。しかしその数、ひい、ふう、みい――おお、なんとも数えきれない足並みで酔い散らかしては弾幕を撒いて、お互いを脅かしあう妖怪たちに一喝する。
「ええい!この中に、龍はおらんのか!」
「竜でもかまわん!」
「集めれば龍か?」
「然ればわれらの手にて、ばらばらにしてくっつけてやろうではないか!」
「竜たれ!龍たれ!竜たれ! 主様のお眼鏡に適う龍であれ!」

 しゃ、しゃぁあああーーーーーーーーーーーーーーーーーん……。

 どこからともなく聞こえて来たシンバルの音である。 
 びしりとそれぞれの戦闘カンフーポーズらしいものをお披露目した彼らの尾が揺れた。ぽかぁんと口をあける魑魅魍魎は、お互いに目を見合わせる。
 翠がぶゥん、と空気が裂けば、それを合図に妖怪たちも醒めた空気から楽し気に顔をゆがませた!
「なんだなんだ」
「いいぞいいぞ!」
「やっちまえ!」
「どっちも勝っちゃえ」
「どっちもおののけ!」

 デ、デ、デ、デ、と低いビートのリズムはどの妖怪が起こしたものであるやら。
 刻まれるリズムと祭り囃子よりも壮大なメロディとともに、妖怪たちのやんややんやと紙吹雪のようにまき散らす弾幕と、おふざけ舞台であれど凶悪な拳と蹴りが猟兵たちを待ち構える。
「未来の使徒たるおぬしらとて所詮今は畜生」
「今は我らのほうが圧倒的有利!」
「されば疾く、此処より――――去ね!」
 さてさてどうやらここから真剣。
 獣とどうやら黒幕の御使いが織りなす弾幕舞踏勝負と相成った!滅びゆく未来のために、一幕の崩壊宴とゆこうではないか!
 待ち望まれるはどんでん返し! さァさァ四つ足、背びれも尾びれも、しなやか尾っぽもご一緒に――どろんぱっぱ!



 集団戦です。
 猟兵たちはそれぞれ任意(お任せの方は🐾をプレイングのどこかに)の動物になっています。
 当たり判定は勿論小さめですし、いつも通り問題なくユーベルコードも使えます。
 楽しく、そして美しく、または激しく弾幕勝負といきましょう!避けることに専念しても、味方のフォローに回ってもOKです。
 妖怪たちは酔ってテンションが上がっておりますので、落ち着いて~とするのもOK。猟兵のことが大好きなので落ち着きます。
 
 ★プレイング受付3/10 8:31~3/12 18:00予定
 出来る限りご案内したいので、再送をお願いする場合があります。その際は、MSページと旅団、タグ、Twitterにて告知させていただきます。
ゼイル・パックルード
◎△
動物か、一体何になるやら
自分のらしい動物ってなんだろうな、能力もあって炎っぽいって言われたりすることは多いけど……火に関する動物なんているものかね。言霊ってのもあるし、案外そういう近い動物になるのかな。

ということで、どうみても火の熊、ヒグマです。
漢字が違う?知らん、俺A&W人だし、今は熊だし、漢字とか知らん。
俺も竜とかがよかったけどね……なんだかんだカッコいいし。とはいえ一部だけなんて空気読めない真似をするね

割とでかい図体だし、弾幕を掻い潜るってのは難しそうだな。身体に火を纏うとするか、ヒグマだし。

空を飛びつつ一気に相手に近づいていくとするぜ。実は飛行する熊でヒグマだったとさ


アルトリウス・セレスタイト
俺が人の形を失えば
おそらくこうなるだろうな。というものはある
誰にも見えそうにはないのが難だが

人の要素が核になったがために人型である程度の身
その要素を排してしまえば「中身」である絶無が残るだけ
形がどうあれ見えぬものと成っているだろう
だが妖怪たちの盛り上がりに水を差すのは控えるべきと思うので、無難な鳥の姿でも創造しておく

戦況は『天光』で逐一把握
攻撃には煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し阻み逸らし捻じ伏せる
全行程必要魔力は『超克』で“世界の外”から常時供給

破界で掃討
対象は戦域のオブリビオン
それ以外は「障害」故に無視され影響皆無
『刻真』『再帰』で間断なく無限に斉射を継続
飽和火力で圧殺する

※アドリブ歓迎




 アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)が人の形を失えば、こうなるだろうというものは本人にも予想がついていた。
 どうやら古今東西、人の形を奪われた命たちは動物になってみせて盛り上がっているようである。青色の瞳に映ったささやかな予知を思い出しながら、世界の歯車相応のそれは考えていた。
「ふむ」
 そう、空気を読むのだ。
 空気は吸うものだけどそういう指摘が空気読めてないのである。アルトリウスはなんと空気が読めるくらいには世界も歩いてきちゃったのでだいたいわかるのだ。
 右を見れば妖怪が酒を飲み、左を見れば管を巻く。なるほどなるほど、されば然様に在るべきなのだ。
「――いいだろう」
 形がどうであれ、人の要素がたまたまアルトリウスの形にふさわしかったがための人型イケメンなのである。この式に当てはまらねば、多分誰にも認知されないレベルのものになるのだ。
 それはちょっとお祭りとしては味気ない。いや祭りではないのだけど。

 とまれ、アルトリウスは――ならば別の形をとればよいとした。
 その姿が「おお!なんと――あれは」
 ばさりと大きな翼を広げた彼に、ぐるんと振り向いた『龍神片』たち。

「シマエナガじゃな?」
「いかにも」

 そう。シマエナガである。
 老若男女問わずたぶん皆「かわいいな~」と思えるシンボルなのだ。
 ちょんちょん、と両足で跳ねながら前進する声はアルトリウスそのものなのだけど、小さなシルエットが米粒の弾幕をすりぬけるようにやってくるのはある意味シュールホラーである。
「わははははは――なんだその小さな体は!」
「やってしまえやってしまえ!」
「なぁにそう焦るな――あれ?」
 超小型である。
 ぴょんぴょこ跳ねる体は豪速のパンチもキックも、地形を塗り替えるほどの衝撃もなんてことはないどころか、そんなものはあったか?という顔で飛び越えては『龍神片』の頭に乗ってやるのだ。
「だぁ!?」
「何故!?」
「おのれ面妖な!」
「お前が言うのか」アルトリウスが小さな体を膨らませてから、ふすー…………と呆れとも一息ともつかぬ呼吸をした。
「いいぞいいぞちっちゃいの!」
「やっちまえ!わっはっは!」
 観客たちからはそれいけやれいけと弾幕が舞う。ぼ、ぼ、ぼ、と展開される球体たちは大型だ。「わわわわわわ!!!」と叫んだのは『龍神片』のみで、逃げ回るその頭に座りながらアルトリウスは――『天光』と呼ばれる原理で夜空に舞う影を見た。

 ず         っ、 どん――――――ッッッ!!!!!!

「わぁああ!?」
 飛びのく『龍神片』たち。ついでに頭に乗ったアルトリウスも宙に放り出されたが、なんてことはない。小さな羽をふぁさりと広げれば、空を滑空していった。
 そして、赤毛の獣の頭にとまる。
「あ?――なんか、頭に乗ったか?」
「ひぐま」
「どーも。ヒグマです」
 
 デッッッッッッッッッッッッッッッッッッカ…………………。

 ぬううん、とした巨体である。
 これには思わずバーンアウト・ノヴァたちも固まってしまった。当然、ヒグマなのだ。目の前に突如落ちてきた影というのは、煌々と燃えるような赤毛をしたヒグマ――もとい、ゼイル・パックルード(囚焔・f02162)である!
「どうみても火の熊でヒグマだろしかも飛ぶ熊だしヒグマだぜ」
「何でうまいこといってやったような声色なのだ!」冷静な『龍神片』はさておいて、ぶっちゃけこの戦いにおいては先に正気に戻ったほうが負けである。
 ぼ、ぼう、ぼう、と両手を燃やしながら、もはやデカすぎて見上げても顔に影が落ちちゃって。しいて言うなら目とぎらぎらの歯だけがわかるような彼の状態だ。ムチャコワイネ。
 こふぁあと口から洩れる白い息もそらそうである。バーンアウト・ノヴァーー闘志によって燃え盛る彼の体は、今や中までアッツアツのゴハンもといアッツアツの弾丸そのもの。焼いた鉄同然。青い炎に照らされてなお顔が見えねえ!こわい!
「うむ。――暖かくて体温調節にはちょうどいいな」
「あ? やっぱり乗ってるな」
 のっそりとした動作でおのれの頭を手のひらで投げようにも、人間ほど指先が器用でない。
 いつもの感覚で腕を頭にやっても、絶妙に腕が短いのだ。うーむ、なかなか届かんなと結局後頭部を掻くだけに終わった。
「放り投げられて、たまたまここに来た。降りるか?」
「いいや、いるのがわからなかっただけだよ」
 アルトリウスの淡々とした返事を聞くに、敵ではないらしい。それにほとんど重量も感じないのだ、今のゼイルにとっては脅威でもなんでもないし戦う相手でもなかった。激やば概念っぽい存在もかわいいシマエナガになればなんかいい感じにカモフラできちゃうのである。
「――燃やされないようにだけ、気を付けてくれよ」

 ごぉおおおおおおおおおおゥアアアアアアアアあああッッッッ!!!!!!!!

 聞いたこともないような獣の吠え声であった。
 妖怪たちも皆耳を押さえて目をぱちくり。目の前に残ったのは己らの弾幕ではなく、火の粉と美しい青色の軌跡だけ。
 それをたどれば、夜空には満点の炎の花と青の花弁。「わああ」と一つが声を上げれば、きゃらきゃらと皆が喜んで拍手した。これこそ、合わせ弾幕――『覇界炎』とでも名付けようか!
 正直、ゼイルとしては竜がよかったのである。火の粉を散らしながら降りてくる彼の頭には、ちゃっかりアルトリウスが座っていた。
 慣れたものだ。前足から着地して見せて、ふすりと鼻を鳴らす。のっそのっそと次の獲物を求める横顔はいつもの彼そのものといっていいだろう。
「あれ」
 ゼイルが声を上げた。「まだ後ろであんた何かしてるのか?」
 ぴちぴちと小鳥のさえずりとともに、アルトリウスが応える。
「全行程必要魔力は『超克』で“世界の外”から常時供給している。さらに、『刻真』『再帰』で間断なく無限に斉射を継続。飽和火力で圧殺――」
「俺ぁ難しいことはわかんねぇや」
 どうやらとんでもないものを頭に乗せたようであっても、今日のゼイルはヒグマであった。ふわわと大あくびをしてから、「でも盛り上がったならいい……よな?」と。
 絶叫とともに散っていく神様の欠片たちの悲鳴を満足げに聞いて、小さな耳がぴこぴことゴキゲンなのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジュジュ・ブランロジエ
【紫翠】◎
白猫に

あはは!猫になっちゃったにゃ!
ちょっと面白くて楽しいにゃ
ほら、折角猫だから語尾に『にゃ』を付けたら可愛いかなって
コノさんもすごーく可愛いにゃ!

お祭り騒ぎは大好きだけどしっかりばっちりお仕事しちゃうよ
うんうん、私達は無敵!

猫の素早さ活かし動き回りフェイント
白薔薇舞刃を二回攻撃
広範囲に広げるけど狙いは敵のみ
弾幕勝負に白薔薇で華を添えるにゃー

ふふ、私とコノさん、ユーベルコードのコンビネーションもバッチリだね
猫姿じゃなかったらキメポーズしたいくらい素敵!
あ、猫でもキメポーズしてみちゃう?
そう、そんな感じで……にゃん☆(キメポーズ)

妖怪さん、ちょっと落ち着いてね
私達のショーを観ててにゃん


コノハ・ライゼ
【紫翠】◎
黒猫に

あらぁ、すっごくジュジュちゃんっぽくて可愛い~
うんうん、こーゆーのはなりきるのが大事にゃ……あ、ソレじゃダメなんだっけ?
まいっか、可愛いは正義にゃ!

ふふ、アタシもお祭り騒ぎだぁいすき!
でもってソレに乗じて狩るのも、大得意
それからそれから、アタシ達のコンビネーションは、無敵!
ジュジュちゃんの動きに合わせ外してと緩急つけて攪乱
範囲攻撃で互いにオーラ防御を纏い弾幕を潜り抜けるわ
【天片】広げジュジュちゃんのショーに華を添えつつ
当たりそうな攻撃を迎え撃ちましょ

イイわね、決めポーズ!
猫の決めポーズってドウ?こう?

熱くなり過ぎは体に毒にゃぁ
敵だけを見極め花弁で覆い生命を頂戴するわねぇ




 にゃんにゃかにゃん。
 しゅるりとしたかわいいしっぽは一級品。
 まるで生まれたてをそのまま大きくしたような、美しい毛並みには汚れ一つついていないのだ。
「あはは!猫になっちゃったにゃ!」
 ジュジュ・ブランロジエ(白薔薇の人形遣い・f01079)――普段は人を笑わせるために手指を器用に操る彼女なのだが、今日はどうやらその手がなくても人を笑顔にできる姿である。
 ゴキゲンにしっぽを立てて、かわいいおひげをふわりとひろげて「にゃーお」とひと鳴き。
「きゃあ~~~~~~~~~~~~!!!!」
「かわいいねえ!!!ねこちゃんかわいいねえ!!!!」
「こんなのしゃみせんにできないわ!!!」
「かわいいわねえ~~~!!!!!たべちゃいたい!!!!」
 腐っても妖怪なのかちょっと物騒な感じのかわいいコールが混じってはいたが悪意はない。実際綿菓子のような彼女なのだ。短毛であれど白というだけでわりと輪郭ってあいまいなのである。
「えへへ」悪い気はしないらしい。ジュジュがにへにへと笑いながら、背にどうやってか背負った相棒・メボンゴを揺らしていれば。
「あらぁ、すっごくジュジュちゃんっぽくてかわいい~」
 ふゃふゃした声色でそばに寄ってくる優しい黒猫さん、コノハ・ライゼ(空々・f03130)である。彼の正体と言えばキツネなのだけど、それは激やばタブーなのだ。どれくらいタブーかっていうと、マタタビの上にち●~る的なものをさらにかけるくらいにはだめである。
 とまれ、ふゃあ~おと声を上げて近寄る聞きなれた声に、「あ!コノさん」と声を上げたジュジュである。商売柄といえばいいのか、お客のことは忘れまい。さらに、友人となれば当然だ。
「コノさんもすごーく可愛いにゃ!」
 こんにちは、こんにちにゃ、とふすふす、すりすり。
 お互いにほほを寄せ合うだけでもう妖怪たちはめろめろなのだ。動物式のあいさつではあるが、お互いに親交があるゆえの自然な行いである。ふわふわふかふかなのだった。
「ちょっと面白くて楽しいにゃ」
「にゃ?」
 こて、と首をかしげたのは黒猫コノさんのほうである。
「ほら、折角猫だから語尾に『にゃ』を付けたら可愛いかなって」
 ちょっと照れながらはにかむ少女の顔が思い出せるくらいに、白猫は愛らしい顔でみゃ~んと鳴いてみる。なるほどね、と黒猫が瞬きを繰り返して。
「うんうん、こーゆーのはなりきるのが大事にゃ……あ、ソレじゃダメなんだっけ?」
 かわいいので大丈夫。世界は優しい。ありがとうザッツネコネコワールド。
「まいっか、可愛いは正義にゃ!」
「お祭り騒ぎは大好きだけどしっかりばっちりお仕事しちゃうよ――うんうん、私達は無敵!無敵にゃ!」
「ふふ、アタシもお祭り騒ぎだぁいすき!にゃー!」

 盛り上がる会場の熱気と言えば、すごかった。
 二匹の白黒猫がさてさてやってきたとなれば、もうまずはその可愛さにうおおおおお!!!!!!!!!!!ネコチャン!!!!!!!!!と湧きたつ。
「出たなかわいいの暴力どもめ!」
「かわいい畜生!」
「ネコチャン!!!」 ネコチャン知ってんのか?
 『龍神片』たちも二人がかわいくてふゃふゃなのでこのとおりである。
 いつもより覇気のない感じで骨抜きなカンフーポーズで二匹を待ち構えたが――。

 そこからが、やばかったのだ。

 ところで、猫が何かにじゃれついている写真を撮ったことがあるだろうか。
 猫は非常に体が柔らかく、また跳躍力も優れており狩りに適した生き物である。まあつまりなにがあったかというと、二匹はさながら格闘家のようであった。
 へろへろな『龍神片』のパンチが飛んでくれば、その腕をサッと体を液状にしたかのようにかわし。
 白猫ジュジュはそのかわいいおてての肉球で、ぺちっと布の顔を押さえ。
 黒猫コノさんといえば白猫の後を追い、鋭い猫キックを放つのである。
「べぶ!!!?」思わずこれには『龍神片』もクリーンヒット。っていうか猫ってこんなに動くんですかという予想外にやられてダブルヒット。すっころんだ仲間を見てからではもう遅い!
 まさに、阿鼻叫喚なのだ――――――――。
 ネコチャン侮るなかれ。ジュジュが舞えばコノハが刺す。ふわりとかわしたジュジュの動きから一泊遅れてするどい猫パンチ。
「こいつらちょろいにゃ!!!!!!!!!!」コノハさん、その通りです。
 カァッと牙をむき出しにしたコノハの言う通り。ネコチャンには誰もがバリちょろなのだった。うわあ~っと踏み台にされていく『龍神片』たちをジャンプ台にして白猫ジュジュはくるりんぱ。
 月を背に体を浮かせた彼女から、ふわりと花弁が舞う――。
「さあ、さあ、ご覧あれ!」
「酔っぱらった弾なんかよりも、もっと素敵なもの見せたゲル!」

 【白薔薇舞刃】と【天片】。このふたつを合わせるならば、弾幕の名は――【白黒舞天】とかでいかがだろうか。
 そう。二人は忘れていないのだ。弾幕と言えば美しさが勝負である。キラキラキラキラ――と輝いた彼らの織りなす美しさには、弾幕で対抗しようにも圧倒的なきらびやかさを前に『龍神片』たちに勝ち目はない!
 体を吹っ飛ばされる彼らの名残を見送って、黒猫と白猫は熱狂する妖怪たちに振り向いた。
「熱くなり過ぎは体に毒にゃあ」
「ちょっと落ち着いてね!私達のショーを観ててにゃん」
 圧倒される。
 満点の星空に舞う幻想的な弾幕は、まさに流星群のようでもあった。
 キラキラと輝くそれを見ながらまた、酒をぐびりとは飲むものの。妖怪たちは軌跡を眺めてどんどん呑むペースを落としてゆく。
「ああ、きれいだ」
「なんでこんなに綺麗っておもっちゃうんだろうなぁ」
「おお……ううう……」
 何か忘れてはいけないものを忘れているような気がしてきて。
 どんどんこみ上げる感情で泣き出す妖怪たちもいた。これこそ、感動というものである!

「ふふ! ショーは成功みたいにゃん」
「そうねェ、この調子で皆が忘れないようにキープしてあげましょ」
 人が――人間であるジュジュが助手たるコノハの力を借りて行ったショーのようなものである。もちろん、奇術師としては人に笑ってほしい。しかし、此度は違った。
 笑い過ぎて忘れてもいけないものがたくさんあるのだ。時には涙を流し、ああこれだ、これなのだと己の心に素直になるのがほどほどによかろう。気持ちのいい涙を流す妖怪たちを見て、にへへと猫二匹が笑う。
 しっとりとしたパートに入るトランペットもそこそこな妖怪たちの演奏するBGMとともに、舞う弾幕の中で二匹の猫は顔を見合わせて。
「猫姿じゃなかったらキメポーズしたいくらい素敵!」
「イイわね、決めポーズ!」
「あ、猫でもキメポーズしてみちゃう?」
「猫の決めポーズってドウ? こう?」
「そう、そんな感じで……」
 白黒の猫二匹でお互いかがみ合わせ。体を起こして顔の前で手を握れば?

「「にゃんっ☆」」

 招き猫二匹。さあさあ寄っといで、素敵な一夜にようこそ!
 忘れ物はございませんか? どうぞ思い出すまでゆっくりと空を見ていよう。
 白と黒の猫がもてなす、美しい夜空がきっと――遠い昔を思い出させてくれるはず。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロカジ・ミナイ
エンジくん(f06959)

🐾◎
(猫以外でお願いします)

やぁやぁ、エンジくん
今日もでっかいねぇ!…いや、小さいのかい?
そうね、どっちでもいいや

僕も本当は狐だけども
今日みたいな動物もイイネ!ダハハ!

そうよ、賢くて足が速いとモテる
動物ってだけでも結構モテる
要するにモテモテでめっちゃくちゃ強いわけ
動物同士のコンビネーションなんてモテモテツヨツヨ
遠慮なくエンジくんを踏み台にして飛び上がるものの
エンジくん!スパーンする頭がいっぱいある!

ん?苦い薬をお呼びで?
任せときな!僕の得意分野よ!
体をブルブルすりゃ黒い錠剤が飛び散る
コレってば腹の中やら口の中やらで爆発炎上するくらい苦い

さぁエンジくん競争だ!ガハハ!


エンジ・カラカ
ロカジン(f04128)

🐾◎

ワォ、小さい!
いやいや、いつも通り?
まァ、イイヤ。とっちでもイイヤ。

コレは動物になったなった。
いつもはオオカミだケド、今日は動物だ。うんうん。
イイネ!

ケモノは賢い!ケモノは足が速い!
ロカジン、ロカジン、ハロゥ、ハロゥ。
アイツを倒そう。

コレよりも立派な尻尾!
コレよりも大きい口!
ダメダメバーツ!噛み付くバーツ!

コレの方が強い!賢い!
ロカジン、ロカジン
アイツの頭をスパーンとしようそうしよう。

アァ……頭がひーふーみー、タクサン…!
ロカジン、ロカジン
コレを踏み台にして頭をスパーンとやってくれくれ

アァ……やっぱやーめた…。
アイツラの口ににがーい薬を入れた方の勝ち!
ヨーイドン!




「ワォ」
 エンジ・カラカ(六月・f06959)といえば。
 大きな体をした彼といえばたどたどしい口調に似合わず伸びた背である。ゆえに地面は遠く、大きな石ころがあれば踏んづけてしまえばいいし、邪魔なものは気づかないうちに踏み砕いていればよい彼は、「普通に立っている」にもかかわらず――冷たい世界ではいつくばってもいないのに――やけに地面が近かった。
「小さい!」体高が。
 ぴょいんと跳ねた彼の体は、満月になじんだ夜のものではない。いつもの彼と言えばオオカミなのに、今日の彼と言えばどうやら体もそれより大きいらしい。ぽんぽんと跳ねながら、自分のものらしきシルエットを見た。
「やぁやぁ、エンジくん。今日もでっかいねぇ!……いや、小さいのかい?」
 しげしげと自分のものではない手を見るエンジに声をかけたのは、聞きなれた彼のもの。ぴくり!と耳が跳ねて顔を勢いよく上げれば、――そこには立派なクジャクがいた。
「ロカジン?」
「いかにもそうだよ」
「ロカジン!」
「そうだよって何回言わせんの、ダハハ!」
 ロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)は、キツネである。
 だというのにどうやらここに来ればクジャクになってしまったのだが、まあさして問題ではないどころか「やっぱそうだよねえ」だなんてちょっとうれし気にしてみせるのである。色男にはキラキラがよいとされています。
「エンジくんはずいぶんかわいくなったねぇ」
「コレ、かわいい? コレ、動物になったなった? なに? ナニ?」 
 たどたどしい言葉も似合うのだけれど、なにせ迫力がすごい。ロカジの目の前に映る姿はエンジには見えていないのだ。だから、教えてやらねば――まつ毛の長い色っぽいクジャクが、悩まし気な吐息とともにささやいてやるのだ。

「パンダになってるよ」
「ぱんだ!」

 なんとも豪奢な二人組になっちゃったのだ。
 もちもちと動くエンジの体についていきながら、しゃなり……しゃなり……と美しくロカジは歩いて見せる。
「ケモノは賢い!ケモノは足が速い!」
「そうよ、賢くて足が速いとモテる」
「そうなの?」
「動物ってだけでも結構モテる」
「モテる!」
「ヤバイ」
「やば」
 パンダも走らせると早い。クジャクも早い。
 ふわわわわわ~~~~ッッッとロカジが羽を開いて見せた。そして、流し目を――右から左まで見せつけるようにゆっくりと回転する。細い足で優雅に立ち振る舞う彼の姿を見て、エンジははえ~~~~~という顔をしていた。はええ~~~…………ごーじゃす…………。
「要するにモテモテでめっちゃくちゃ強いわけ!動物同士のコンビネーションなんてモテモテツヨツヨ!!」
「モテモテツヨツヨ!」
「バズるってやつよ!!」
「ばずる!!」
 たぶんこの世界にTwi●terとかがあればヤバイことになっていたと思う。
 わああ~~~~~っと盛り上がるのは妖怪たち。その中でもキャーキャー黄色い声なんかも上がっちゃってるのだ。う~ん、チョロ!wという顔をしてみるクジャクと、なんだか明るい空気がうれしいパンダくんである。
 エンジを踏み台にして飛び上がったクジャクに対する人気のあがりようったらすごい。割れんばかりの感性にどうもどうも、あ、どうもどうもと羽を折り頭を下げながらはしゃぐロカジの前に――「やい!」と声が並んだ。
「あん?」
「ロカジン、ロカジン、ハロゥ、ハロゥ」
 
 ざざざざざざ~~~っと並んだのは二本直立の彼ら!
 そう、『龍神片』たちである!
「おめでたい奴らがならびおって!」
「我らにみつからぬと思ったか!」
「こざかしいマネを!」
 はァ~~~~~~出たよこの三下っぽい言いがかりマーチさぁ……という感じである。空気読めねえのかよという顔をクジャクが不機嫌に作っていたが、パンダの彼と言えばやる気に満ちていた。
「アイツらを倒そう」
「こざかしいも何もただ歩いてただけでしょーが……おっ、やる気だねぇエンジくん」
「コレよりも立派な尻尾! コレよりも大きい口! ダメダメバーツ! 噛み付くバーツ!」
「そうだねぇそうだねぇ、いいがかりだよねぇ。困ってるのは俺たちなんだしねぇ」
 もふもふの頭を逆立てて怒るエンジに、かわいそうにかわいそうにとあやすようにロカジがうんうん頷いていた。全然普通に背中に乗ってるが。
「コレの方が強い!賢い!ロカジン、ロカジン!アイツの頭をスパーンとしようそうしよう」
「いいねえ、さんせー!やっちゃおうやっちゃおう!どーせ一夜限りなんだしね!」
 
 パンダって、一応熊であるからして。

「ぶべばッッ!!!!?」
「ガア!」
 勢い任せにエンジがすぺーんと頭をたたけば、はっきり言って致命的なのである。
 べちゃーんと鋭く横転した『龍神片』の顔布からいかにも見えたらアカンR18G的なものがまろび出ていた。
「んー?」それを「わ」見ちゃったロカジである。
「ストーップ!ストップストップ!!!!!!!!!!!!!」
「ロカジン?」
「グロいよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
 思わず音楽も止まっちゃうくらいに、ヤバかった。
 妖怪たちもまあ妖怪の端くれなのでグロには慣れていたが、やべーものを見ちゃった感じである。ワオ……という空気を前に、たじたじだった『龍神片』たちがしめしめここだと態勢を立て直す!!
「お前たちは的がデカすぎるのだ!」
 表面積的な意味で。
 ばばばばばばばばばばと拳を高速で突き出せば、波状の弾幕たちがまた世界を覆う。こりゃたまらんと音楽を再開する妖怪たちのメンタルは大変たくましいので問題ありません!
「アァ……やっぱやーめた……」
 ぶんぶんと手を鋭く突き出せば弾幕はエンジの掌が相殺する。ばすんばすんと消えていく。その光景を、ほとんど真っ黒な模様で目のシルエットすらわからぬというのに金の瞳が確かに細く閉じられつつあった。
「アイツラの口ににがーい薬を入れた方の勝ち!」
「おっ!苦い薬をお呼びで? 任せときな!僕の得意分野よ!」
 ていうかそのほうがたぶんヨシ!
 体をぶるぶると震わせた絢爛なクジャクからはポンポンポンと【葬捨男の八法心薬】!
 ほとんどロカジの思い通りに作られるこのオクスリの効能は爆発炎上ほど苦いとお約束!待ってましたといわんばかりに宙に浮いたそれらは――パンダとクジャクを囲うように展開された。
「な、なんだ?」いかにもヤバ気な空気にたじろぐ『龍神片』たちと。
「さぁエンジくん競争だ!ガハハ!」
「ヨーイドン!」
 猛ダッシュで突っ込むパンダと風圧ですごい形になりながらも爆笑するクジャクのマジでヤバイ特攻連携弾幕が衝突―――――――――ッッッッ!!!!!!!!

「う、うわあああああああああああああああああ~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 口にパンダのパンチでねじこまれたり、クジャクに爆笑されながらねじこまれたりなんかして。ばんばんと爆ぜていく彼らの派手な散りざまもまた一興!
 弾幕はパワーなので大丈夫です。今日もカクリヨファンタズムは大盛り上がりなのでした。ヤバイ弾幕と空気はボムで消す!!生き残りの秘訣。テストに出ます。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

旭・まどか
クラウン(f03642)と◎🐾

自分たちの生死に関わる問題だろうに
楽観的というか、何というか

同意を求めた先
声は確かに君なのに姿形が別だから瞬く

クラウン、君なの?

まどかも、の声に足元を見下ろし
やけに世界が大きく見えるのもそのせいかと

君に引かれ一回転する世界
四足歩行も肉球も慣れないけれど、違和は無いから
君と会話も出来るなら左程問題は無いね
原因と思しきアレを懲らしめよう

ひと鳴きと共に夜空と星々を呼び出して
本体と汚された場所を打ち砕こう

直接弾幕を避ける術は持たないから
オーラ防御で弾けるだけ弾いて
貫通したらばそれはその時
諦めていたにも関わらず寸で避けられた事に
僕自身が驚いた

さぁ、倒れるまで踊って貰おうか


クラウン・メリー
まどか(f18469)と◎🐾

くるくると自分の姿を眺めて
わーい!俺じゃないみたい!

まどかの声が聞こえたから返事して
ふふー、まどか見て見てっ!
うんうん、クラウンだよ!

あれれ?まどかもまどかじゃないみたい!
俺達妖怪さんになっちゃった!
ぴょんぴょんジャンプしたり踊ったり
まどかの手をとって少しだけくるりと回る
あはは、なんだか楽しいね?

よーし!懲らしめちゃお!
どろんぱっぱ!
お星様といっしょにお花を散らして敵を惑わせ

俺は踊るように口で咥えた黒剣で敵を裂く
敵の攻撃だって弾いちゃうよ!ふふー、多少喰らっても大丈夫!
わ、まどか凄い!俺も俺も!

ほらほら、どんちゃん騒ぎがお好みなんだよね?
もっともっと愉快に踊ろう!




 まず、自分の手を見て驚いた。
 大きな手はクリームパンよりは作りがしっかりしているのだけれど、イヌっぽい割には少しサイズがあり過ぎるような気がして。
「――楽観的というか、何というか」
 旭・まどか(MementoMori・f18469)は、猟兵たちと『龍神片』たちで盛り上がる弾幕勝負をちらりと見てから呆れと妙な納得を混ぜて息を吐いた。
 まどかの姿は、今やオオカミである。顔のパーツが中心にキュッと集まって、キリッとしたイケメンのオオカミなのはおそらくダンピールの生まれながらのパッシブ「美形」のせいでもあろう。ただ、まだ幼獣らしく――背は低い。
 まどかの世界ではありえない光景だ。世界が滅びようとしてるというのに、あんまり皆々危機感がない。慣れとは恐ろしいが、なんとなくまどかもこの世界に慣れてしまえそうな気がするのはやはり頭も獣になってしまったからだろうか。
 ぐしぐしと曲がらない指先で頭を押さえて、ハンチング帽は乗っていたことに気づく。
「君はどう思う?――って」
「わーい!俺じゃないみたい!」
 まったくもって対照的だから驚いちゃうね。
 クラウン・メリー(愉快なピエロ・f03642)――らしい声で鳴いているのは、オカメインコである。
「クラウン、君なの?」
「あれれ?まどかもまどかじゃないみたい!俺達妖怪さんになっちゃった!」
 ふすふす。ぴいちくぱあちく。
 赤いほっぺのチークはいつもの彼の柄になっているものだから、まどかも割とすんなりクラウンだと判別できたのだけれど。クラウンはあまりにも純真にまどかだと判断したものだから。
 ためらいなくまどかのふわふわの首元に体を左右にゆらし、チャッチャと反復横跳びするクラウンのしぐさといえば、なかなかに愛嬌たっぷりの彼らしい。
「あはは、なんだか楽しいね?」
 クラウンの動きを首だけで追いかけていたまどかが、体をくるりと回すことになった。楽しいかな? と一瞬考えるまどかであったが――しっぽは割と正直なご様子。子犬のようには振らないけれど、遠心力だけでなにもゆらゆらしているわけではあるまい。
 だってそもそもしっぽは無意識なので。
「――左程、問題は無いね」ふすりと鼻を鳴らしたオオカミさんはちょっぴり傲慢なのだ。いやいや斜めになりたいですよ。だってまだ思春期なのだし。
 クラウンもまどかの心がしっぽでわかるのはちょうどよい。ピエロは人を喜ばせるのが仕事だ。時におもしろおかしく、時にはお上品に。お客様に合わせて姿をピエロかクラウンか選ぶように。
 まあ。とまれクラウンの冠羽だってぴょこりとしていたものがふわ~~っと大きく広がっている時点で、あまり二人の間には隠し事がないようなかんじである。まろやかな感じの空気なのだった。
「さて、原因と思しきアレを懲らしめよう。刻々と事態は進むのだろうし」
「よーし!懲らしめちゃお!――前座ってやつだもんね!」

 どろんぱっぱ!

「む?」
 『龍神片』たちが空をみあげれば、小さなシルエットが浮かんでいた。
 今やクラウンの体はとっても小さい。羽をたためば小さな弾幕の隙間もするっと通り抜けちゃう。猟兵たちと弾幕勝負を繰り広げる御使いの彼らのところまでひとっとび。
「おどろのけ、もののけ、――【道化師手品】!」
 ぱぱっ、と空にフリチラリアの花びらが舞う。
 クラウンのトレードマークといってよいだろう。咲き誇る美しいフリチラリアたちが、弾幕を打ち消しあうようにして花びらで包んでいく。
 酔った空気のへろへろ弾幕も、過激な拳も、手足もギュッとだきしめて。
「わわわ、わ!?」
「おのれ!鳥のくせに!」
 すってんころりん!転がる『龍神片』たちに、ドッ!ワハハと妖怪たちが大声で笑う。
「いいぞいいぞ!ちっちゃいのにやるなあ!」
「こいつは驚いた!」
「やっちまえ!もっと驚かせてくれ!」
 観客からのアンコールに、真っ白な羽を広げてクラウンは大喜び。
「いいよいいよ!まっかせて!」そんな愛くるしい存在が、嘴で黒剣をくわえてぶんぶん!
「いやいやいやいやいやいやどういう筋肉しておるのだ」
「あいてっ」
「斬れやしないけどいたい!」
 ベチッ。ペチチ。べちちち。
 オカメインコってオウムなのだった。割と力強めなのである。
 楽しくって元気いっぱいのクラウンが素なので、ぜんぜん大丈夫です。ぶんぶん黒い剣を振り回すとちゃんと『龍神片』にクリーンヒット。腰が入ってないので斬れはしないが、普通にあたると痛いのだ。
 きゃんきゃんと悲鳴をあげた『龍神片』たちを見て――「今だよ!」とクラウンが笛のように鳴く。

 ――――――ゥウウウオオオオオオオオオオぉおおおおん…………。

 仲間の声に応ずる遠吠えが響いた。
「ふぇ?」転がされた『龍神片』が体を起こせば、夜空には満点の星々があったのに――それがどんどん近づいてくる!
「空が、空がァ!」
「我らよ!空から星が!」
「見たらわかる!」
「逃げろ逃げろ~~!!!!」
 【天体観測】。
 殺傷パワーがすごい星たちが落ちてくる。具体的に言うと金平糖っぽい。ごすごすごすごすごす――っと音を立てていろんなところに突き刺さるのを、やや離れた場所からまどかが見ていた。
「どこもかしこも逃げ場なんて無いよ。さぁ、――倒れるまで踊って貰おうか」
 べろりと真っ赤な舌で上あごを舐めるまどかは、割と無意識にサマになっていてノリノリなのである。
「わ、まどか凄い!俺も俺も!」
 クラウンが旋回してまどかのそばに戻ってきては、そういえばと声をあげる。
「弾幕でケガとかしてない?」割とバンバン振ってはきているが、二人をすり抜けるようにして着弾していく。
「僕も驚いたけど、割とこの体の都合はいいようだよ」
 どうぶつの体なので。
 危ない!と思ってもわりとジャンプすれば飛び越えられてしまうし。ぺったりと地面に伏せたらさほど危機でもないのだ。機動力にちょっぴり頼りないとはまどか自身が思っていたが、幼獣というのも相まって頭を通り過ぎる弾幕たちを流星群のようだなとは思えるくらいに余白がある。
「そっか、よかったぁ」
 心配されるほどのことでもないのに、なんて思ったけれど。
 クラウンが心底安心したような声色で、ふわ~っと体を膨らませてからキリッと収縮する。
「よぉし――ほらほら、どんちゃん騒ぎがお好みなんだよね?」
 星々に追われてぜえはあ、ひいはあ。
 ぐったりとした『龍神片』たちが地面に伏せて肩で息をする頃に。
「もっともっと愉快に踊ろう!」
 まるで地獄めいたことを笑顔で言うクラウンがいるものだから。
「おおお、お助け~~~~~~~~~!!!!!!!!」

 まどかもなんだか、ふすっ――と鼻を鳴らしたのだった。
 笑ったのかな。笑ってくれました? しっぽの先はちょっぴりゆらゆら。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

曲輪・流生
◎ 🐾
人の概念が無くなれば人の思い出を食べているカクリヨの人達にとってはあまり…いえ、とてもよくないですし。世界の崩壊も起きてしまいますしと気合いを入れて依頼に参加。

わわっ、僕も動物の姿になってしまいました。
他の皆さんも動物でてんやわんやと宴会をする様子は楽しそうなのですが。

あ、あの方達は竜をお探しなのですか?
僕も竜神の端くれだったりするのですが…
えっと…この姿じゃダメですか?
などと考えているうちに困惑して
UC【竜ハ惑ウ】を発動

ど、どうしたらいいんでしょう…!?


ジャハル・アルムリフ

…なんだ、これは

視界が低い
角…どころか確かめるための手、足…翼は…?
尾はあるがなぜか渦を巻いている
確か…図鑑で目にした、タツノオトシゴ…とかなんとか…

成る程、竜ゆえか――否、もっと他に何かあったろう

見下ろすばかりの草花すら見上げ
新鮮ではある、あるが
理不尽噛み締め
風に押され尾に跳ねられ時に獣に張り付いたり
上も下も見失うなどして
遅れに遅れをとりながらも前進
混乱の元へと急ぎ向かう
…この小さき姿、そもそも良く見えぬのであろうな

いやに愉しそうだが敵は敵
この拳で――…、拳?
拳どころか何もない

なかば自棄になりながら
回転加え速度稼いだ、体ごとの【竜墜】見舞う
そして目が回る
如何にして止まるのだろうか――




「なんだ……これは……」
 ジャハル・アルムリフ(凶星・f00995)はすげえイケメンである。
 褐色黒髪でドラゴン属性。さらに表情は乏しいのに大食いだし。ここにおしゃべり機能までついちゃって堅物というよりはちょっと鎧のやわらかめな竜なのだ。
 ジャハルはすくすく育ってカッコイイ竜になった同胞食いなのだけれど、そんな彼にもまあもちろんこの奇天烈怪奇極まりない異変は干渉するもので。
 ふぁふぁと宙に揺蕩う己の体を見るすべがない。
 というか、首がいい感じに曲がらないのだ。
 竜の勝手でも動かないし、人間の可動域でもどうやら意味なし。おっとと、と体を上下に揺らしたり、時折一回転なんかしてみたり。
 パッとみれば踊っているように見えるのだろう。ひゅうひゅうと妖怪たちから歓声があがるので、どうやら興には乗れているらしかった。
「失礼、俺は――」
「お前さん、タツノオトシゴだぁね!」
 きゃらきゃらと笑って、揺蕩うジャハルのそばで盃を呑んだ鬼らしい女に言われてびっくり。見てみるかいと鏡代わりに酒をのぞき込んでみれば、なんともまああのジャハルとは己ですら疑ってしまったのだ!
「――成程」
 図鑑で見たことがある外見そのものである。竜ゆえだそうで。
「……否、もっと他に何かあったろう」
 おっしゃるとおりで。
 ぴるぴるぴるぴるとヒレが泳ぐ。熱狂する空気に揺らされているのかもしれない。なんてこたとトボトボしっぽで飛び跳ねる彼である。感覚的にはいつも通り人間の手足なのに、どうにも視界がシンクロしない。
「理不尽な……」
 でもそういうのがニーズあると思います。
 若き竜の罪のアレなのかもしれない。アレなのかな。うずまき連れてぴょんぴょこ跳びながらどろんぱっぱ。神話めいた空気もどこへやら。弾幕舞い散る夜空を見上げて、タツノオトシゴはそれでも勇猛に騒ぎに跳ねるのだった。

 ――カクリヨには詳しい。
 人の概念というものがなくなればどうなるかはわかっているのに、曲輪・流生(廓の竜・f30714)もまたこの喧騒こそ中々にカクリヨらしいと思ってしまうのだ。
「わわっ」
 己の手を見て、声を上げる彼である。まったくもって世間知らずないい子ちゃんなのだが、純真な声だからこそ多くの妖怪たちがかなり心配した。
「おやおや、大丈夫かい」
「あらまぁ、曲輪の」
「知ってるのかい?」
「んーん、名前だけ~」
 悟り妖怪でもいるのだろうか。
 それとも酒に酔って人の歴史でも読んだ白澤だったのかもしれぬ。
「こんばんは」てんやわんやの宴会模様にぺこりとお辞儀をして、流生はふにゃりと笑ったが――やはりその足元は、いつものそれでない。
 竜神なのだ。だというのに今日は、なんとも愛らしいイタチになってしまっている。
 真白のイタチは自分のしっぽと足を三度ほど交互に見てびっくり!ふわふわのしっぽを逆立てて「ええーーっ!?」と声をあげていた。
「そんなぁ」消えかけの竜とはいえ竜だったのに。
 取り上げられたのは信仰だけでなく神格もであるらしい。この異変の影響でとりあげられたものを取り返さねば――がっくりしている暇もなく、流生はきりっとかわいいマーブルの形をした目を開いた。
「い、いそいで解決しなきゃ!」
 びしっと二本の足で立ったけれど。
「あぅ」疲れてふにゃふにゃ。
 そもそも立つことに優れたイタチではあるが、骨格が歩くためには作られていない。胴長の体を持ち上げるのも大変だった。

「……おぬし、それで我らと戦えるのか?」
 『龍神片』たちもわりとしんぱい。
 しゃがんでつんつく、うずくまるイタチをつついてみる。「わぁあ」と悲鳴を上げるものの、流生はうちあげられた魚のように体を跳ねさせるばかりで。
「あ、あの」
「ん?」
「竜か龍をお探しなのですよね……?」
「いかにも!」
 ――なぜ探しているのだろう。
 腹を人差し指でつんつんしてくる彼らの手足こそ、龍らしい。灯台下暗しというわけでもあるまいに、なぜ?
 ささやかな疑問を頭に、流生は提案した。
「僕も竜神の端くれだったりするのですが……」
「うん!?」明らかに反応が異なった。つんつんと流生をつつく手が止まって、じっとりと布越しに見られている心地がする。
「えっと……この姿じゃダメですか?」
 きゃるんとしている自覚はない。そういうとこだぞ~!
 体を縮こまらせながら、お願いするように両手を顔の前で合わせる。もちもちの肉球同士が合わさればしあわせのここち。しかし――。
「ならぬ!!!!!!!」クワッときた。
「おぬしのどこが竜なのだ!!!!イタチではないか!!!!!」
「ひえええ」
 すごい剣幕だった。びっくりしちゃった。優しい流生がびっくりしちゃったから――【竜ハ惑ウ】。

「ぬおっ!!!!!?????」

 バゴォン!!!と爆炎が後方で上がった。
 『龍神片』たちがお互いの顔を見合わせて、爆炎の上がるほうにひとっとびすれば――そこには連なった白い炎が一匹のイタチを中心として立ち昇り。
「おお!!龍!!」
「龍が居ったぞぉおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!」
「あう、あうあう」ナンダカメッチャモリアガッタネ。
 完全に意図してのものではないのだが、呼び出した炎たちが連なりあって天に上る龍のよう。ど派手な弾幕である。空に舞う米粒の弾幕も、ゆっくり堕ちようとするクナイ型のものもキレイに消し飛んで一匹の龍が表れたのだ!
「すごーい!」
「きれいだ綺麗!」
「かっこいー!」
 ぱちぱちぱちぱちと拍手が上がる中、さらに困惑は深まるばかり。
「ど、どうしたらいいんでしょう……!?」
 アンコールに答えるべきか否か。
 とはいえ丸焦げの『龍神片』たちもちょっと爽快そう。
 わあわああと群がる彼らが迫ってきて――いよいよ愛らしい悲鳴を何度目か上げかけたときである。

「遅れに遅れをとったが――」

 イタチを鰻のようにつかもうとした『龍神片』の一体が、まるで虚空から殴られたかのように体を吹っ飛ばして行った。
 嗚咽の暇もない。吹き飛んでいくかの姿はあっという間に灰になって消えていくではないか!
「拳どころか何もないが、力はいつも通りであるらしいな」
 やけに迫力のある声であった。
 いったいどこから声がしているのやら。己を守ってくれた見方を探して、白いイタチはきょろきょろ。
「ど、どちらに!?」
「此処だ」
 ――きっと。
 たぶん、いつもの姿だったらすごくサマになっていたし、ちょっとエモい感じもあった。
 イタチとなった流生の眼前で浮いた彼、長身の褐色美青年ジャハルがタツノオトシゴじゃなければ、わりとよかった光景である。
 弾き飛んでいく一体を皮切りに、まるでパチンコ玉のようにタツノオトシゴがびゅんびゅん!!跳ね返りを駆使したぶっちゃけどうとでもなれの【竜墜】はいつもより濃厚な呪詛がのっております!!ヘイラッシャイ!!!
「戦えてはいるようだな――」
「あのあの、あの、えっと」
 べち。
 ベチチチチチチチ。
 跳ね返りを駆使して弾幕をかいくぐり、時に追突してなお爆ぜさせながら――タツノオトシゴは前へ前へと進んでいく。
「ぎゃ!」「ぐわー!」「いたい!」「なんだこれは!」技を撃つ間もナシナシ!
 あっという間に海を割ったよう。奇跡を残して掃討するタツノオトシゴはまるで――流星のごとく――。
「ところで」
「まってくださ~~い!」
 爆速で飛んでいくジャハルがいて。それを追いかけるのが流生であった。
「如何にして止まるのだろうか――」
「い、行かないで~~~~~~~っっっっ!!!!止まってください~~~~~~~っっっ!!!!」
「イタチのとこじゃあ、玉転がしが流行ってるのかい?」
「いンやあ。俺たちかまいたちにゃ覚えがないけど。でもやってみたら楽しそうだなぁ!次の弾幕はそういうのにしてみよう!」

 ――誰かとめてあげて。
 イタチが追い越したころには、きっとその背で受け止められたタツノオトシゴがいたのでしょう!問題なし!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オスカー・ローレスト
【柴と雀】

(ちぎれてない翼のある、ふくら雀に)

ほ、本当に、鳥に……膨れてるのは……まだ、寒さがあるから……?

東は、柴犬……落ち込んでるみたいだから、可愛いって思っちゃった事は、黙っておこう……

でも……この姿なら、飛べ……あ、と、飛ぶの、慣れてないから、長くは、無理そう……(飛べるのがちょっと嬉しかった小雀

う、うん、頭、乗せてもらう、ね……

ぴぃ……そ、それにしても……凄く騒ぎになってるね……で、でも、何とかしない、と……

移動中は東の頭に足でしっかり掴まりつつ、
東が包囲攻撃してくれた敵には、少し飛び上がって、照準を合わせて……【暴風纏いし矢羽の乱舞】の【一斉発射】を、撃ち込む、よ……


西條・東
【柴と雀】
(黒いコロッとした豆柴の姿)
「オスカーはむくむくしてて暖かそうだな!(小さいので触ったら潰れる気がして、を我慢をしてる)
俺は格好いい狼…じゃない!?」(少ししょんぼり)
ん~…この違うって気持ちをぶつけるぜ!

「オスカー?疲れるなら俺の頭に乗るか?」

戦闘はUCで沢山の敵を囲って纏めるぜ
「小さくなっても纏めれば一緒だ!」
敵からの攻撃はオスカーと俺を纏めて【オーラ防御】で防いだり犬の素早さで回避だ!(逃げ足使用)
「ちゃんといるか?落ちたら大きな声で呼ぶんだぜ!」




 オスカー・ローレスト(小さくとも奮う者・f19434)は、たいへんちいさくふるえていた。
「ほ、ほんとうに……」
 本来の彼と言えば、顔を隠す布と喪服の衣装に身を包んだ気弱そうな片翼の青年である。わけあっていろいろと薄幸な彼なのだけれど、此度はどうやら羽を取り戻させてもらえたらしい。
 ふわわわわ~~~っと体を膨らませた今の姿はもっちもち。罪悪感も羽毛の奥へ奥へと吸い込まれていて、代わりにやけに外の空気が寒く思えたふっくらな雀である。
「鳥に……!」
 まだ寒いから膨らんでいるのだろうか。でもふくらんでる鳥かわいいですよね。
 ふわふわな自分の感覚にまだ慣れぬ。ぱちぱちと瞬きをしてみたら、そんな彼をのぞき込む友人のお鼻がどろんぱっぱとやってきた。
「わぁ、オスカーはむくむくしてて暖かそうだな!」
 西條・東(生まれながらの災厄・f25402)。
 物書きの爺さんと強靭な婆さんと暮らしている活発な彼である。普段の彼と言えば、なかなかに人懐っこく優しい心の持ち主だ。とんでもない力を手にしているから、あまり人と触れあわないようにはしているのだけれど――オスカーとの相性は非常に良いといえる。
 オスカーは不幸だ。とんでもなく不幸である。ふくふくした雀になっちゃったのは、きっと東の「悪い子パワー」のせいかもしれない。
「俺は格好いい狼……じゃない!?!!?」
 本当は触りたいのだけど、触ったらつぶしてしまいそう。東がはふはふとしながらオスカーを眺めていて、彼の瞳に映る自分を見たからようやく気付いた。
 かわいい~マメシバなのである。黒くてちいさな彼は思わず自分の顔を両前足で押さえてころんころん。そんなぁ、とか言いながら、ちょっと違うぜ……とがっくりしてみる彼の姿は絶対バズる。
 ンキャワイイ~~~~と悲鳴をあげる妖怪たちの声にびっくり。オスカーがふあふあの東の愛くるしさに「かわいい」と思ったことは、彼の落ち込み様と周囲の反応を見比べて飲み込むことにした。
「でも……この姿なら、飛べ……あ、と、飛ぶの、慣れてないから、長くは、無理そう……」
 ぱちちちち、と不器用に地面をたたいてからふわっと飛んだ。
 ――懐かしいようで遠い感覚に、オスカーの小さな目が輝く。ちょっとした憧れだったのだ。
「おお」よかったなぁと思えたのはオスカーがたとえ小さな雀でも表情を読んでやれる東だからこそである。へたっぴだけれどのびのびとした飛行を見て、「あ、でも、疲れるなら俺の頭に乗るか?」とフォローを入れた。
「う、うん、頭、乗せてもらう、ね……」
「おう!」
 わふ!と吠えた彼のおにぎりのような頭に着地。
 かわいい×かわいいはほとんど暴力なのだった。「「「「「「ぎゃあああああああ~~~~~!!!!!!」」」」」と悲鳴を上げたのは『龍神片』さんたちです。
「お、おお、なんとかわいい!」
「かわいいはずるいぞ!」
「畜生はかわいいのだ!」
「忘れておったわ……」
 なんか勝手にひざまずいたりしている彼ら。けだまをあなどることなかれ。
「ぴぃ……」たたかいにくい。
 オスカーが頭の上でぴるぴる震えているのを感じて、東が吠えた!
「やい!なめるんじゃねえぞ!」
「なめておらぬ!!!!!!!!!!!」
「予想外に苦戦しておるわ!!!!!!!!」胸を押さえて勝手にダメージ受けてる『龍神片』さんたちです。
 かわいい~~~~~~~~~~の空気に飲まれて弾幕もへろへろ。
 かわいいねえ、かわいいねえとほっこりする妖怪たちのとろけようったらとんでもない。ゆ~っくり落ちてくる弾幕は、密度さえあれど小さな彼らにとってかわすことなどお茶の子さいさい!
「しっかり捕まってるんだぜ!落ちたら大きな声で呼ぶんだ!」
「う、うん―――!!」
 きゅうっと短い毛をしっかり足で掴ませてもらって。
 空気抵抗をうけないように、もちもちの雀が頭にしっかり伏せたらあとは東の機動力がものをいうのである。しゅばばばばばばっと小さいながらに幼獣の体力を生かしてかけめぐる!めぐる、めぐる――!!
「うおおお!?」
「目が回る!」
「おのれちょこまかと!」
「ちょこまかわいい!」
 あっという間に自分たちの背をぴたりとくっつけるくらいに固まってしまった『龍神片』たち。四方八方に拳を繰り出そうとも、ちゃっちゃっと走ってゆく小さな黒をとらえることなどできはしない!
 程よく集まったのならばちょうどよい。ぺろりと東が上あごを舌で舐めて―ーそれから、態勢を低くしてうううううううう……とうなり声をあげれば「ひっくりかえす」準備は万全!
 さあさあここでお披露目といこう、この愛らしきものたちこそ恐ろしい!

「――その者たちを、串刺しにせよ!!」
「【暴風纏いし矢羽の乱舞】っっ……!!」

 【摩訶不思議な裁判】と合わせた弾幕である。トランプ模様の槍たちが七二〇本と、四一〇本の鋭い羽たちが展開されて――収縮――そして、妖怪たちのここぞといわんばかりのドラムロールとともに刺さる刺さる刺さる刺さるッッッ!!!!!

「ごっふぁ……」
「貫かれたぞ……」
「我らのハートも……」

 もふもふあなどるなかれ。
「まいったか!」
「あ、ああ、よかった……う、うまくいって……」
 きゃわん!と幼い声で吠えた黒柴の上で、ほっとするふっくら雀。
 かわいい二匹のわんぱくパレードはまだ続く!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

佐那・千之助

クロト(f00472)と

この姿は…ねこ!
クロトは…仔猫!
かわいいしぬ。私をころしに来ているかわいさ
そろりと尻尾を動かし、仔猫のほっぺたスリスリ…
かわ、いい…!!
彼の猫姿にきゅんきゅんして夢中になるたび人の概念が蒸発しそう
理性はクロトが持っててくれるから大丈夫だと思う
四本足でトコトコ歩いてみる。わぁわぁ新鮮じゃ。歩くの早い?
にゃあにゃあしか言えなくなっても猫同士なので通じるかな?
クロトがにゃあにゃあ鳴いたなら永遠に鼓膜に刻みたい
心の底から親子猫状態を全力でエンジョイ
此処に住みたい、今日は帰さぬぞ

うわ弾幕
仔猫の首根っこくわえて避けつつ
楽しすぎるが世界滅亡は防がねばな
炎で包んで敵を攻撃・視界を塞ぐ


クロト・ラトキエ

千之助(f00454)、
大変申し上げ難いのですが…

大変です。この姿、暗器使えない。

猫――基、僕は至極真面目に言ってるんです…が!
めちゃくちゃ…はしゃがれています…。
何で君(22)が成猫で僕(38)が仔猫なのかは大いに異議申し立てたいですけど!
これ、ちゃんと喋れてます?鳴き声になってない?
はい。何方にしろ聞いてませんねっ?
このまま此処住んだら世界と一緒に滅びますからね!?

歩く速度は大事。
弾幕、当たりたく無いですし。
さて…
姿勢正しく直立なのが敵。それ以外は味方。
判り易〜い!
千之助。くわえて移動、そのままお願いしますね。
得物無しで使える…且つ怒られない業…
えーい――捌式!
龍神片へ手当たり次第ですっ




「この姿は……ねこ!!!!!!」
 ネコーーーーーーン…………ッッッッッッ!!!!!!
 佐那・千之助(火輪・f00454)。いつもは燃え盛る炎のような色をした髪をたなびかせ、ダークセイヴァーにて人の盾となるダンピールである。扱う炎はあまたを救い、強きを挫き炎にくべれば狂戦士の力が漲る魔と人を別てぬ半端もの――とはいわれているものの。
 今日の彼と言えば、ムチャカワなのだった。橙色の毛並みに走る炎のような渦たちがしっかりトラ柄。ベンガルなどが近いかもしれぬが、ふんわりな感じに仕上がってしまったのだ!!
「クロトは……仔猫!!!!!!!!!!」
「千之助……大変申し上げ難いのですが」
 クロト・ラトキエ(TTX・f00472)。めちゃつらい。
「この姿、暗器使えない」
 年齢にしてさんじゅうはっさい。くろとさんじゅうはっさいである。なのに今日の彼と言えば、果たして愛しの彼と来たもののお互いどんな姿に為るやらと好奇心いっぱいでやってきたはいいものの。――愛らしい黒猫子猫になってしまっているではないか!!!!
 きつい。
 とても、きつい。
「アラフォーですが……???????????」現実は非常であった。
「かっっっ、かわいい!!!かわいい……しぬ……」
 ふゃふゃのこねこである。
 肉球もまっぴんく。クロトがあるこうものならころんと転がってまるでおまんじゅうのよう。これにはたまらんと、すっかりお尻をあげたまま前足でぺそぺそと撫でてみる千之助である。ふわわわわ~んと髭が広がるのも致し方なかろう。
「クロト、かわいいのう、かわいいのう」にゃあにゃあと鳴きながらほっぺたすりすり。
「何で君(22)が成猫で僕(38)が仔猫なのかは大いに異議申し立てたいですけど!!!???!!?」ふにゃあふにゃあと猫なのか何なのかわからぬ声をあげるクロト。そら、だってねえ。そういうことですよ。
 もちゃもちゃとすりすりされたり、ざらざらの下で毛並みを撫でられたり、かわいいのうかわいいのうともみくちゃに甘やかされながら困っていたのはクロトのほうだ。
 しごとに!!!!!!!!!!!!!!!!きているんですけど!!!!!???!!?
「此処に住みたい、今日は帰さぬぞ」そんなイケボでいうにはちょっとシチュエーションがかわいかった。
 キリッとした千之助ニャンの顔をかわいい子猫の両手がムギュッ。
「このまま此処住んだら世界と一緒に滅びますからね!?」
 ふみゃあ!んなーん。ふな~~!!ななーん。
 親子猫状態でなんだかんだ毛づくろいなんかも始めちゃって、いよいよお互いに千之助の理性が心配になってきたころ合いでクロトの小さな猫パンチが正気を手繰りつつあった。
「うわ弾幕」
「わわ!?」
 クロトの首筋をカッとくわえたらのびるのびる。窒息の危険がないとなれば、千之助はにゃんぱらり!
 びゅびゅびゅびゅんと飛んでくる弾幕はどうやら二人……いや、二匹を狙ったものではない。だけれど、やはり祭りのボルテージがそれぞれ上がりつつあるのだ。なるほどなるほど、とクロトが冷静に分析しようと試みる。
「何か分かったかえ?」
 時折びびびびび~っと飛んでくるビーム弾を飛び越えながら、千之助が聞いた。
 一旦第一幕が終わった地面に卸してやって、ぽてぽてとそれぞれペースを合わせて歩いてみる。とはいえやはりクロトはまだ子猫。足腰がしっかりしていないからか、何回かへたりこんでしまった。
「あたたた……」
「うーむ、やはり咥えたほうがいいのう」
「すみません、とんだ醜態を……」
「好い、好い!クロトと私の仲ではないか」
 優しくて頼りになる彼君というやつ。イケネコの顔にやはりキュンときてしまうのはしかたあるまいて。黒猫がぴるぴるしながら親猫にくわえられているころには、第二幕がやってきつつあった。
「たぶん、目立ちたいのだと思います」
「ほほお。奴らも馬鹿ではないと?」
「――ええ、おそらく、自分たちを狼煙としているのかと」
 姿勢正しく直立なのが敵。それ以外は味方!なんとも判り易〜い戦局である!こんなもん敵が負けるにきまっておろうが!
 だけれどわざわざその手を取るということは、はてはて何やらきな臭い。ふすふすと鼻を鳴らすクロトにぐるぐるごろごろ、飛び交う光線をかいくぐる千之助がゴキゲンにうなずいた。
「そのまま。千之助、お願いしますね」
「あいわかった――」
「ぬ!!?」
 猫たちが猛ダッシュで迫りくる『龍神片』たちである。ぐるんと振り向いて二つが米粒程度には認識できる距離から――橙の猫の目が光った。
 【千思蛮紅】!ばばばばう、と燃え盛る『龍神片』たちはもうびっくり!
「わあああなんだこれは!」
「あついあつい!」
「もえてしまう!」
 わあわあきゃあきゃあ!たまったもんじゃないと転がる彼らを見て妖怪はわっはっは!
「えらいこっちゃえらいこっちゃ!」
「さあいけやれゆけ、どんとゆけ!」
「もえてもえてもえつきろ!」
「わーっはっはっは!!!」
 どんどんどんちゃか、きゃらきゃら。演奏する妖怪たちも楽し気に楽器を鳴らし、三味線などはもはやギターのように激しく鳴らされている。
「何やら盛り上げたようじゃな」千之助が得意げに場を駆け巡れば、後に残された『龍神片』たちが燃え盛る。
「うう、良いんだか悪いんだか! えーい――」
 【捌式】!
 クロトといえばその手先の器用さが武器――なのだが今はもはやかわいらしいおててなのであった。なので、ここで使えるのがこの操作自在の鋼糸!すっぱすっぱと焼ける肉を切り裂いていくことの見事!
 おおー、と感嘆する妖怪たちからぴゅうぴゅうと口笛もやってきた。いいぞいいぞもっとやれ!もっと驚かせてやれ!とやいのやいの。
「見事じゃ」
「千之助がいたからサマになっただけですよ……うー」
 ぱらぱら舞う弾幕が頭上ではじけて紙吹雪。頭に二人の祝福を乗せながら、ざ~りざ~りとクロトのほほを千之助がなめてやる。
 やはりいまいち腰のあがりきらぬ未熟な足に、はあ~~~とクロトは大きくため息をついたのだった。
 ……甘えられるのは、オトクということでここはひとつ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

百鳥・円
【花鳥】◎

どろんぱっぱー!
あっははー、人型を保てないだなんて不思議
ねね、おししょー
わたしはどーんな姿をしてます?🐾

っと、言っているうちにお出ましのよーです
手持ちの宝石糖は無くしてない?
準備はオッケー?こちらは万全!
ささっと終えてパパッと解決ですの!

人型じゃあないわたしが扱うとどーなるんでしょ?
炎と氷の力を放ってみーましょ
んふふ、これはこれで楽しーですね?

ひととしての概念が消し飛んでいるのなら
思う存分このひと時を楽しむまで!
百鬼夜行とやらを楽しみましょ!
なんという偶然。わたしも百に縁があるのです

妖怪?獣?ひとでなし?
なんでもござれですん
狂ったカクリヨの地はとーっても好きですよう
派手に遊びましょ


宵雛花・十雉
【花鳥】

『人という概念』が失われた場所か
つまり人間じゃなくなっちまうって訳かい
なぁんかドキドキすんなぁ

どろんぱっぱ?
お、もしかしてオレももう人間じゃ無くなってんのかい?🐾
円ちゃんは動物になっても円ちゃんって感じだなぁ
その姿もなかなかいいじゃねぇか
へへ、オレもなかなかサマになってんだろ?

なんだ、さっそく出たのかい
新しい自分を楽しんでる暇もねぇな
さぁて、やってやろうぜ助手くん

こいつはいいや
人間の時より小回りが効くような気がするぜ
んじゃあこっちの炎も喰らいな!
へぇ、いつもと感じが違って面白ぇ

よっ、さすが!
百鬼夜行の百は百鳥の百!
今日くらいは羽目外してさ
人じゃねぇもんになって大暴れしてやろうぜ




「どろんぱっぱー!」「どろんぱっぱー?」
 さてさて熱も冷めないうちに。ぽぽんと二匹が飛び出してお祭り会場前である。
 盛り上がってはいるもののまだまだ酒に余裕もあれば、妖怪たちもどんちゃかわらわらで、『龍神片』たちもウワーとかギャーとか言いながら吹っ飛ばされていく割にはまだまだおかわりがあるらしい。
「人間じゃなくなっちまうって訳かい。なぁんかドキドキすんなぁ――お、もしかしてオレももう人間じゃ無くなってんのかい?」
 美しい真っ白の毛並み。宵雛花・十雉(奇々傀々・f23050)が変化して見せたのはいわゆるホワイトタイガーと呼ばれる美しき獣であった。
 もふもふの体を自分で見てみながら、「きれいなもんだねえ」と満足気。ぺろぺろと手を舐めて顔を洗ってしまうのも習性ゆえである。目的をわすれちゃいけねえ、と自分に言い聞かせながらも、ネコ科の割には大きな体にちょっぴり満足気なのだ。
 たくましい前足には普段十雉にはないような筋力を感じさせる。これはきっと、人間の時よりも俊敏に動けそうだとわくわくするばかり!ゴキゲンなしっぽと一緒に、瞬きを少しして――助手ちゃんを見てみたのだ。
「ねね、おししょー。わたしはどーんな姿をしてます?」
「円ちゃんは動物になっても円ちゃんって感じだなぁ」
 さてさて、おししょーたる十雉が神の使いである虎っぽいのならば。百鳥・円(華回帰・f10932)は何かといえば、ふっくらとした羽毛がまず目立った。
「フクロウさ」
「フクロウ!」
「いンや、ミミズクっていえばいいかねぇ」
 ちょんちょん、ととがった愛らしい二つの角のような毛。ふわわ~~~っと嬉しさで膨らむ丸いシルエットも愛らしいが、木のような美しい模様つき。中型よりはやや大きいミミズクとなった円は、両翼をひろげてみた。
「その姿もなかなかいいじゃねぇか」
「なんと!これは不思議です。人型を本当に保てないなんて――」
「だなぁ。へへ、オレもなかなかサマになってんだろ?」
「はい、ししょー!ちゃんと人でないですよっ」
「なはは」にゃはは。
 好奇心のまんまるおめめが特徴的だが、その実フクロウといえば大変あたまがよいとされる森の賢者である。
 獲物をしっかりとらえ、音がどこから出ているのかを確認し、夜をふんわりと飛ぶのは夢の中を自由気ままにわたる円っぽい。
 たくましいけれど作られた美しさ。保護されねば生きていけぬ自然界では目立つ色。それでも肉食獣らしくあろうとする姿はなんだか十雉っぽい。
「やい!なにをおぬしら和んでおるのだ!」
 なるほどね~なんてお互いを推理しているのもつかの間。
 祭りのお席で難しいことはノンノン!といいたいばかりに『龍神片』たちがずかずかとやってきた!
 空気を読んでいないのはどっちやら。しかし、この二人も割とノリノリでやる気なのである。
「っと、言っているうちにお出ましのよーですね」
「なんだ、さっそく出たのかい」
 新しい自分を楽しんでる暇もねぇな――なんて言いながら。
「さぁて、やってやろうぜ助手くん」
「もちろんですおししょー!準備はオッケー? こちらは万全!」
「任せなァ、とっくに腹は決まってんだ!」
「それじゃあ、ささっと終えてパパッと解決ですの!」
 ぐるぐると虎がうなればほっほー!と元気に鳴くみみずくちゃん。
 ふわっと飛んだのはこの中でなにより「空の自由」を手に入れた円である!
「人型じゃあないわたしが扱うとどーなるんでしょ?」
 ――【獄双蝶】。
 宝石が――いや。火炎と氷結を孕んだ美しい蝶たちがきらりきらりと舞っていく!
 第一波が円のように作られれば、そこから波状して花開くように二波、三波とあっというまに弾幕となって蝶は満ちていくのだ。ふぁさふぁさと翼をふるうだけでこの火力、風を得意とする円とも相性がたいへんよろしい!
「んふふ。いーい気分です!いつもよりノリにのってまいりまーすよ!」
「わわわわわわわ!!!!」
 びゅうびゅうと飛んでくる弾幕を避けきれず一体、そしてまた一体。あっけなく爆ぜていく彼らの哀れなこと。しかし、楽しんだものが勝つのはどこの世界も共通には違いあるまい。
「避けるのに必死になってちゃあいけねぇな!」
 円の弾幕をどうにかこうにか潜り抜けるのでせいいっぱいな『龍神片』の胴を、鋭く十雉がくわえたなぎなたが穿つ!
「ぎゃひん!?」情けない悲鳴を上げた一体がぼぼぼぼうっと燃え盛れば、蝶に紛れて――【大輪・紅蓮椿】。
 二つ合わせた弾幕の名をつけるとしたら、【獄花・双揚羽】などいかがでしょう。
 いよいよ密度も狂気的!妖怪たちが負けじと音楽に合わせていくら粒を作っても、そんなものはぺろりと円と十雉の弾幕が飲み込んでしまうのだ!
「うおおお、なんだなんだ」
「すごいなあ!猟兵、かっこいいなあ!」
「弾幕もあんなに使えるとは!こりゃあ恐れ入るぜ!」
「かっこいい!きれい!」
「いいな~!」
 あっという間に炎の渦と美しき蝶たちによるエレクトリカルなパレードもびっくりな極彩の炎と氷の煉獄が作られれば、ぜえはあと逃げようとする『龍神片』たちの切ない悲鳴。
「こ、この畜生どもめ~!!」
 情けない負け犬の遠吠えめいたものには、円がくるりと頭を傾けて「ええ?」と聞き返してやる。
「妖怪?獣?ひとでなし? なんでもござれですん」
「だってここはカクリヨだからなぁ!」どっすん!十雉のいつもの彼よりずっと重いとらぱんち!それだけで吹っ飛ばされる『龍神片』を見て、いつもより使える力の幅広さに爽快なのだ。
「ひととしての概念が消し飛んでいるのなら――思う存分このひと時を楽しむまで!楽しめない空気読めないかわいそーな子から、百鬼夜行はご退場ねがいましょうか!」
「よっ、さすが!百鬼夜行の百は百鳥の百!」合いの手の虎の声はいつもよりずっと大きい。がおう!と吠えた彼のさわやかさったらいつもの苦悩はどこへやら!
 獣だからちょっと気持ちも楽なのかもしれない。だってけものはむずかしいことわかんないもんね。
「おやおやなんという偶然。わたしも百に縁があるのです!」
 歌うように、はたまた演目のように。
 どうせ現世とて同じ地獄。酸いも甘いも味わって、責め苦もいじめも受け止めてこそ人生というもの!同じ地獄なら踊らにゃ損々!死ぬのは甘えで生きるのは辛え!
 ぱっ、ぱっ、ぱっ――――煌めく炎に混じる蝶たちの動きがどんどん早まっていく。
 そう、これがいわゆる「発狂モード」と呼べる難易度の弾幕なのだ!

「派手に遊びましょ?」
「狂いに狂わばさぁ狂え!正気な奴から置いてくぜ、大暴れの時間だ!」

 極彩の光に照らされて妖怪たちは胸打たれたのだという――。 
 弾幕は、エモーショナル。人生は地獄でも、毎日超キラキラしていこうね!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
【相照】
★普通サイズの黒蛇

竜にはなれなかったよ……
しかもなんかゆるい蛇だ
黒いアオダイショウみたいな
草食だから?
そっか、蛇は肉食か
じゃあ何で!?
嵯泉は格好良いのに!龍虎って言うのに!
ずるいぞ!!私だって嵯泉と並ぶ奴が良かった!!

私は知ってるぞ
アタリハンテーが小さい方が強いんだ
体が小さいと小さいらしい
つまり貴様らの負けだ!
【氷霜】のダンマクで撃墜してやる!
ちゃんと氷の壁で嵯泉も私も守らないとな
避けなきゃ駄目?知らん知らん!!勝った奴が勝つんだよ!!

嵯泉かっこいーなー
人間じゃなくてもサマになるんだ
……(居住まいを正してドヤ顔)

……アタリハンテーって結局何なんだろ
嵯泉知ってる?
へー!何でも知ってるな!


鷲生・嵯泉
【相照】
★標準的な虎

声はすれど姿が……ああ、其処か
緩いと云うか、随分と牧歌的な……
いや、この場合は逆転したのだろう
アオダイショウは鼠や蛙を喰う肉食だ
さて何故だろうな……
お前には悪いが、虎猫にならなかった事に安堵している
しかし……視界が低い……

此の姿でも刃は振れる
縛紅の柄を咥えて振り回し、弾幕なぞ斬り払って後ろへも通さん
身を低く、捉えにくく走り抜け――静禍凌檻
妙な事態を引き起こした責、其の身で払え
具体的には全員斬られろ

サマに成っているかどうか自分では解らんが
お前の姿とて居住まい正せば神秘的というものだと思うぞ
(蛇でもドヤ顔とは解るものなのだな……)
確か……見えない当たった事に為る範囲、だったか




「竜には……なれなかったよ……」
「声はすれど姿が……ああ、其処か」
 ニルズヘッグ・ニヴルヘイム(竜吼・f01811)といえば、立派な竜の魔王である。
 真っ黒なうろこを持つ名前に恥じぬつよい竜なのだ。竜だけど草食めにある。お姉さん、弟さんは立派にそだちました……か……???
 スゴイ業をもう名づけの時点で背負っちゃってる彼だから、それを支えるために体がしっかり強くなるのはしょうがないとされています。だけれど今日の彼は――ぜんぜんしっかりしていないかんじ。
 うずくまるニルズヘッグの気持ちもわかってほしい。今の彼と言えばただの蛇なのだ。
 黒いアオダイショウ――メラニズムの進んだ個体である。もちもちな太さではあるが大きさとしては本当にいつもの彼からすればちまっとしたもので。
 なんだかみっともないような感じがしてぐすぐすしているのだろう蛇をのぞき込むのは、そこいらの野良猫よりもずんぐりとした虎、鷲生・嵯泉(烈志・f05845)であった。
 ――その声はわが盟友、ニルズヘッグではないか?
 温度的にはそんな感じである。しなやかなひげを広げて、低くごろごろと喉を鳴らしながら地面に伏せて友の様子をうかがっている。
「随分と牧歌的な……」
「ピェー」
 いつもより倍の倍の倍も超えた倍で嵯泉は大きく見えるし、ニルズヘッグは小さく見える。
「草食だから?」
「いや、この場合は逆転したのだろう。アオダイショウは鼠や蛙を喰う肉食だ」
「そっか、蛇は肉食か――じゃあ何で!?」ピェーッ
「さて何故だろうな……」
「嵯泉は格好良いのに!龍虎って言うのに!ずるいぞ!!私だって嵯泉と並ぶ奴が良かった!!」
 とぐろを巻いて駄々をこねる黒い蛇に、いつもの面影を感じてしまうものだから。嵯泉としては、いつもの彼と認識しやすくてよいのだけれども、どうやらニルズヘッグ自体はたいへんご不満であるらしい。地面と腹が擦りあって、サラララララ……とそれっぽい音が聞こえる。
「草食の動物であればまあもかく、……お前には悪いが、虎猫にならなかった事に安堵している」
「ヤダーッ!!ヤダーッ!!!」
 草食で虎に似合う動物って何がいただろうか。牛?
 駄々をこねるニルズヘッグはともかくとして、嵯泉虎といえば前足をすっかりクロスさせてちょっとくつろいでいた。
 とてもではないが戦闘という空気でない。しかし戦局を見ておかねばなるまい。隻眼で――あ、眼帯はちゃんとアレしているようです――それぞれの弾幕の動きを頭に叩き込んでいる。
「幾ら酔っているとはいえ、矢張りある程度の規則性が在る。……スネている場合ではないぞ」
「うう……どうしてドラゴンになれなかったんだ……」
 もしょもしょと動き出したやゎやゎの蛇である。体が小さいのは弱くてよくないのだけれど、此度はわりとニルズヘッグは有利なところだ。
「やい!やい!何をくつろいでいるのだ!」
「む、出番か」
「そんな我らの戦いを出しものみたいに!」
「似たようなもんだろが!」ピピェー!!
 『龍神片』たちがずかずか不機嫌にやってくるので、よいしょと立ち上がる嵯泉である。刀を口にくわえて、果てさてどう戦おうかと考えていたら。
「いいぞ~!!楽しくなってきた~!!」
「酔いも回れば宵も廻る!」
「さあさあもっともっと、派手にいこうぜ!」
「「「「「「「ぎゃっはっはっはっはっはっは!!!」」」」」」」

 ――危機感など、ない!
 嵯泉は理解した。あかんやつだと。これはいかんと。妖怪たち、かなり出来上がってきちゃってるのだ。
「私は知ってるぞ!アタリハンテーが小さい方が強いんだ」
「なぬ――弾幕はパワーで掃討!これこそ正義!小癪な蛇などさっさと退場させてやるわ!」
「体が小さいと小さいんだろ!!つまり貴様らの負けだ!!!」
「ほざけー!」
 争いは同じレベルでしか発生しないので。その理論で行くと今一番弱いのは嵯泉になっちゃうけど彼らの世界では一応カウントされていないらしい。
 なるほど一応『龍神片』たちもなんかふゃふゃレベルであった。虎が溜息をつきたかったが、なんだかここで息を大きく吸ったり吐いたりするとちょっと頭痛もしてきそうである。
「……妙な事態を引き起こした責、其の身で払え」
 がるる、と低くうなってから四つ足にぐぐっと力を入れる。嵯泉がど、どう!と地面を蹴った!!
「具体的には全員斬られろ」
 いつも通りの怪力は出るらしい――ことを確認したら【静禍凌檻】!ニルズヘッグと言い争っていたうちのひとつをざっぱり斬れば、たちまち体が凍り付く!
「あがががががががが」「へっへーん!どうだ!わかっただろ!」
 ぱきぱきに凍っていく彼らにニルズヘッグもこれにはにっこり。俺の父ちゃんすげえだろ状態である。父ちゃんではないが。
「うおおおお!!おのれ――貴様がこの中では一番でかいな!?」
「……忘れて居れば良いものを」
 ハ!!!!と気づいた一体が嵯泉にパンチとキックを混ぜた弾幕勝負!体を超速で突っ込ませてドーンと勢いのままクナイ型の弾幕がわっさりと溢れた。視界を覆いつくす数に、さてさてどうしたものかと嵯泉が止まれば――【氷霜】!
「助かった」
「避けろよ!!!!!!」
「知らん知らん!!!勝った奴が勝つんだよ!!!弾幕はパワーだからな!!」
 それでいいのか――とは思いながらも。
 濁流のような弾幕を相手に、さすがに虎――動物の中でも結構大型な嵯泉のすり抜けだけではかわし切れない。そこを、ニルズヘッグの氷たちが盾となって彼を守るのだ。突っ込んできた一体に太刀筋を浅くとも当ててやれば、ぱきーんと凍って転がっていく。
「氷芸だ!」
「虎が氷芸とは」
「蛇も操ってるぞ」
「こいつぁたまげた!」
 たまげたおどろいたの合唱は、彼らの中では一番の賞賛なのであって。
「ぐぬぬ、おぼえていろ……!」「主様が必ず貴様らを……!」とそれぞれ砕けて消えていく『龍神片』たちの声はあっさり飲み込まれていた。
 ぶるぶる、と嵯泉が体を震わせて毛皮に乗った霜を払う。
「嵯泉かっこいーなー。人間じゃなくてもサマになるんだなぁ」
「サマに成っているかどうか自分では解らんが――お前の姿とて居住まい正せば神秘的というものだと思うぞ」
「……」ドヤッ
「うむ……」鳴き声みたいな声が出てた。ニャム。
 刀も槍も満足にはふるえないが、戦いのコツはちょっとばかり掴んできた。嵯泉がのっそりと腰を下ろして、ドヤるニルズヘッグを見下ろさないようかがんでいる。
 怪我は特にみあたらない。血の匂いがしないかどうか、ふすふすと虎の大きな鼻が動いた。
「……アタリハンテーって結局何なんだろ」
 しゅるりしゅるり。取り合えず何時までも開けたところにいてはまたおかわりがやってくる。
 何度でも二人には挑んでいいだろうが、二人としては世界になじむことが最優先事項だ。
「確か……見えない当たった事に為る範囲、だったか」
「へー!嵯泉、何でも知ってるな!」
 心得た嵯泉がいるので大丈夫っぽいです。蛇のしゃらしゃら進む速さに合わせて、優しい虎がのっそりのっそり、足音も立てずに寄り添ってやっていたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

花邨・八千代
【徒然】
どろんぱっぱ!
……してみたら黒い豆柴になっていた、しかも仔犬
なんで???
しかも話せないし!キャンキャン言ってるだけだし!

うわぁーん!俺かっけーのが良かったァー!
布静はなんかゴージャスな猫になってるし!ずりーぞ!

キャンキャン騒いで猫布静の足元に纏わりついてたら首根っこ咥えられた
解せぬ
「きゅーん……」

降ろしてもらったら戦闘開始!
ちびだからって舐めんじゃねーぞ!

「ガルルルルル!」
唸って吠えて大暴れ!
やるぜやるぜ俺はやるぜ!

仔犬でも元は羅刹、「怪力」は健在だ
弾幕と攻撃を避けつつ、布静のバールも使って敵に接近
食らいついたら【落花】だ
めちゃくちゃに振り回してやる

とんだ猛獣を目覚めさせちまったなァ?


薬袋・布静
【徒然】
八千代の我儘でどろんぱっぱしたら
メインクーンになっとった
意味がわからんし喋れんし豆柴うるせぇし
取り敢えず八千代らしき子犬の首根っこ咥え黙らす

よし、整理しよか
まだ思考が真面な今の内に色々確認せな
きっと今の状況も敵さんの仕業やろうし
ささっと倒して元戻ればなんとかなるやろ

THE NOUKIN

普段にも増して思考も疎かなのは仕方ない

八千代を降ろしてやり戦闘態勢へ
【碧海の主】が使えるか曖昧だが…
何とかなるやろ精神
先に猛毒仕込んだバールを咥え
敵へと打ち込みに行く
何本か命中したのなら発動させ
傷口から針と毒が蝕み継続ダメージ
刺さったままのバールは程よい足場になり
八千代の行動範囲を増やす
獣らしゅう暴れよか




「え、行くん?この依頼」
「いこーぜ!!!」
「何でぇよ」
「面白そうじゃねーか!!!!」
「めっちゃ嫌な予感しかせえへんわあ」

 ――そして、どろんぱっぱのち、現在に至る。
 薬袋・布静(毒喰み・f04350)といえば、なかなか悪しき隣人である。
 ミステリアスな京訛りの男というだけでもかなり色っぽくはあるのだが、彼の妖しさを侮る勿れ。「いい性格」の薬師である彼の腕は確かなのに、人の不安心を煽りに煽る物言いをしたりなんかする。実際薬が必要なときっていろんな薬を飲む必要があるし。風邪薬でも胃を傷めないように胃薬つけたりとか。
 それを――まあちょっとばかり。おおげさに言ってみたりなんかして。商売ですもんしゃあないんちゃいます? 堪忍どすえ~なんてテンションの彼は美しい色男でもあったのだ。
 だけどまあ、今はといえば――メインクーンになっちゃってまして。
「いやほら言うたやん絶対アカンやろなって気がしたんやって」ニャゴニャゴ
 簡単に言うとめっちゃでかい猫なのだ。体の割には小さな両手。ぷゃぷゃのにくきうをちょっと嗅いでみたり。わぁお、おひさまのにおひ。
「八千代は? わがままお姫様どこいってん」ウルルァン
 何かしゃべるたびに猫の声がついてくるのはともかく。きょろきょろと両足で立ってあたりを見回せば――きゃんきゃん!と甲高い声がした。
「あーらら」ナウァ
「うわぁーーーーーん!!!!!!!俺かっけーのが良かったァー!」きゃんきゃんきゃーーーん!!!
 さて、花邨・八千代(可惜夜エレクトロ・f00102)は二人の受難の原点にして頂点である。
 記憶喪失中の頭がちょっぴりやわこい彼女。羅刹の美しい角とご一緒に、なんとかなるだろ精神でずんずんと生きてきた彼女は普段、とげのような美しさをしながらもお淑やかとはまったくもって遠い。気に入らなければけり飛ばし、貪るように飯は食い。酒も飲めばタバコも吸い、賭け事には盛り上がって、そのまま喧嘩にも参戦する。
 要は、大変――まあ。活発な。そんな感じの美人であるのだが、どうやら今回はちょっとばかりの幼さが彼女の運命を選ばせてしまったのだろう。
「おにぎりみたいになってはるねえ、八千代」ムァオ
「布静はなんかゴージャスな猫になってるし!!!ずりーぞ!!!」きゃおきゃおきゃうーん!
 八千代は――黒い豆柴、その仔犬になってしまっていた。全然歩けていない。ぽてぽて腰をなんどもおろしては持ち上げようとしながら、なにかしら抗議しているらしい。
 座るメインクーン布静の周りをぐるぐるしていたら、とうとう首根っこをくわえられて捕まえられちゃったりなんかもした。
「やかまし」アム
「ぐえ」キューン……
 ちなみに、ここまでの会話でお互いの声は聞き取れていない。
 どうやら子犬のような鳴き声しかできないらしい八千代にはてさてどうしたもんかとぽてぽて布静が運んでいく。
「まぁ今の状況も敵さんの仕業には違いあらへん」フナナ
 思考がまだ人間よりであるうちに、どうにかしてやらねばと考えつつも――。
「ささっと倒して元に戻ればなんとかなる。これや」ウルルァン
「何言ってんのかわっかんねーよ!」キャンャワーン!

 🐾THE NOUKIN🐾

 ねこといぬでは考えられることなどわりと限られているのでヨシ!(??)
「お、おったおった。お~い。倒させてくれへん?」ナルルァン
「こっちがちびだからって舐めんじゃねーぞ!!」ガルルルルルル!!
「む!!!!???!!!???!言葉を使わないのになにか挑発されておるのはわかる!!!!!」いやわかるんかーい。
 『龍神片』さんたちもどたどたやってきて布静と八千代を取り囲んだ!祭りも乱痴気騒ぎもいいところだというのにちっとも数が減らない彼らである。いったいどれだけいるのやら――げんなりした顔が布静であれば、わくわくしたのがお祭り女こと八千代である。
「やるぜやるぜ俺はやるぜ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」ワフワフワフワワワワ!!
「気ぃつけなあかんで~、いつもとちゃうんやから。もーほんまにこの子は」ゥルルルァーン……
 ドタタタタタタタタ!!!!!小さな足で駆けていく割には八千代も早い早い!そこは犬になっても元羅刹。怪力は健在なのだ――地を蹴れば台地が陥没し質量とか無視して豪速ダッシュ!!
 【碧海の主】をはてさて操っていいやらと思ってはいたが、どうやら問題ないらしい布静である。
「何とかなるやろと思たら、ほんまになんとかなるもんやなぁ」ニャゴニャゴ
 跳躍とともに口にひとつ、パールをくわえて。走っていく八千代の上をとれば、プッと吐き出してしまう。すると――『龍神片』と外野の妖怪から生み出される弾幕をかき分けてにゃんぱらり!布静が地面にするりと降りるころには、無数の真珠が『龍神片』たちに突き刺さっていた!
「な、なんだ?」そう、小さすぎて見えなかったのである。
 己らの体に付着した白い宝石に、なんだなんだと惑う声。
「どうしたどうした」
「何が起きる?」
「おもしろいことか?」
「驚かせてくれるのかあ?」
 妖怪たちも何が起きるか興味津々!わらわらと群がる酔っ払いの喧騒は、ちょっとばかし八千代には懐かしかっただろうか。
「目ぇかっ開いてよぉく見やがれー―俺、参上ってやつだよッッッッ!!!!!!」ワキャー!
 【落花】。
 犬ヤクザ漫画よろしく、布静が『龍神片』に突き刺したパールを足場にぽーんと高く跳ねた豆柴八千代ががら空きの首をがぶり!!「ぎゃあ!」と悲鳴が上がったと思えばそのままむごたらしいほどぶんぶんがるがる!!

「犬ってさぁ。なんであんなにおもちゃ振り回すんやろね」ムルルァン
 なんか習性らしいです。
 獲物の喉を確実にかみ切って窒息させるために振り回したりするそうで。それを豆とはいえ怪力な八千代がもうやろうものならびったんびったんというかめったんめったんというか。
「ぎゃはははは!」
「餅つきや餅つき!!」
「だぁあっはっはっは!!やっちまえやっちまえ!」
 妖怪たちも大盛り上がりのハイパーパワーで弾幕も吹き飛ぶくらいの大立ち回り!
「たまらん、たまらん!」
「逃げろぉ」
「逃げられるもんならなァ」ヌルルァン
 やれやれといった声色で布静が言うのも当然である。「ぐええ」「しびれる」という声を残して倒れた二体に、「動くからやで」と教えてやった。――聞こえているかはともかくとして。
「とんだ猛獣を目覚めさせちまったなァ? えぇ!?」ワワワン!
「どーせやったら獣らしゅう暴れよか。なァ、八千代」フャーォ
 
 お互いの考えは聞こえちゃいないけれど、二人だからわかるものがあるというもので。
 八千代がわんぱくに暴力をふるうのも、なんだかちょっぴりほほえましい布静だったのでした。
 ――むゃおと大きなあくびひとつ。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エスタシュ・ロックドア
ガァ゛ァ゛
っつーわけで、ワタリガラスだ
真の姿と同じだが、真の姿そのものじゃねぇんだろーな、多分
いつもの男前を見せられねぇのは残念だが、
このツラもイケてるだろ?(どや)
ただの禽獣と侮るな
姿変われど獄卒よ
きっちり仕事してやらぁ

『鋭晶黒羽』発動
はばたきながら【範囲攻撃】で目に付く敵に羽を撃ち込むぜ
通常ショットがホーミングって楽でいいよな
敵の攻撃は【空中戦】で迎え撃つ
無防備に開けた大口の柔らけぇ所を爪で切り裂いて【カウンター】
あるいは【野生の勘】で華麗に飛びまわって回避

悪くねぇが、やっぱ身体軽いと調子狂うな
それにこれじゃシンディーちゃんとのデートもできやしねぇ
早いとこ仕事終わらねぇとな




 ――ガァ゛ァ゛。
「む。なにやら不吉な鳴き声」
 不吉はもう始まっているのだけれど。
 『龍神片』たちは無尽蔵に湧いている。上空から見ればその数がよくわかった――まるで軍隊のような数を冷静にとらえて、賢い鳥の頭脳はクルクル回る。
「いつもの男前を見せられねぇのは残念だが――」
「ぬぬ!」ふわっと降りてきた黒い影が一体何をしでかそうというのか。
 『龍神片』たちが身構えてしまうのも無理はあるまい。どう見てもこのけものは如何にもイケないかんじの雰囲気なのだ。
「このツラもイケてるだろ?」
 ――ドヤッ。
 美しい濡れ羽色の毛並みで現れたたくましい大型の禽獣こそ、エスタシュ・ロックドア(大鴉・f01818)。なかなかの密度で弾幕が空間に張られていたというのに、龍もどきな彼らを見下ろす姿はひとつも傷がない。
 そう、今ではふわふわな毛並みの彼だが侮るなかれ。はらわたの代わりにあふれる燃えるような青の瞳が示すように、この鴉とて普段のエスタシュどおりに飛び回ることが出来るのだった!
「姿変われど獄卒よ、きっちり仕事してやらぁ」
 低く鳴く鴉を見上げて、「ほざけ!」「おりてこい!」「お前など食ってしまうわ!」ときゃんきゃらきゃんきゃらブーイング。
「あー、あー、なんつうかわいくない奴らだ!まったく」
 ぴょこぴょこ飛び跳ねるところを見るに、飛ぶ力は持っていないらしい。からかうようにかぁかぁと鳴きながらエスタシュが周りをぐーるぐる。
「おのれおのれ!」
「ならば落とすまで!」
「――ッとぉ、おいおいどこ見てんだ?」
 【鋭晶黒羽】。
 自動ホーミングしてくれちゃうこの便利な羽、いつもより多めにはばたいてゆきます!
 ぶわわわわわっと世界を塗り替えるほどの羽毛の量で発射されていくのは――エスタシュも驚きであった。
「ははあ、悪くねえなあ」
「ぷげっ!?」
 通常弾として己の羽根、しかしとっておきの一手というのはどんな男も隠し持っているもので。
 わざわざ真正面から戦ってやるような気もないのだ。うわうわと弾に逃げる無防備な布――今にも竜に変化してブレスを吐こうとするその口にするどくズバッと鈎爪キック!!
 さらに重ねて羽ばたきを交えて体をよじればぐるぐるっと大きな真っ黒の体が旋回!まるでドリルのように渦巻くエスタシュの風圧で、妖怪たちのよっぱらった弾幕は吸い上げられて彼を取り巻いていく――。
「おいおいおい!」
「俺たちの弾幕ごと操ろうってのか!」
「はっはっは!おもしろい!」
「かっこいいぞー!」
 きゃんきゃら嬉しそうな妖怪たちである。
 自分たちが余興程度にばら撒いた弾を、大好きな猟兵がうまく使ってくれるならそれもまたよし!よしったらよし!
「なん、なんだ……!?」
「おお、これはまさに……――た、竜巻ッ!!?」
「竜を探してんだって?」
 にやりと思惑を含む低い声が、竜巻の向こうから響いた。『龍神片』たちの眼前には、なんともまぁ見事な竜巻!ごおおおおッと激しく渦巻くそれの中心にいるエスタシュが、今一度大きな羽を羽ばたかせたのなら。

「冥土送りだ、――アッチでよろしくやんなぁ!」

 まるで竜が顎をひらいたかのよう。
 ひときわ強い風が吹いたかと思われれば、妖怪たちの弾幕とエスタシュの羽根を孕んだ渦が、ばッ――――くん!!!と『龍神片』たちを飲み込んでしまって跡形もない。
「ひゅう~~!!!」
「きれいさっぱりだ!」
「ふっとばされちまったかぁ?」
「兄ちゃんやるねえ!もいっかいどうだい!」
 やんややんやと持て囃されて、大鴉はやっぱり得意げ。ふくよかな胸筋にも似た胸をはってふわりと着地。なあに拍手も受け止めるのさ。だっていい男の特権なのだから。
 に、しても。
「悪くねぇが、やっぱ身体軽いと調子狂うな」
 実際、ちょっと軽すぎる。思ったより力は使い過ぎてしまうし、普段のエスタシュとはまるで戦い方が違ってきてしまうのだ。慣れるために、もう少し戦っていこうかと考えて。
「それにこれじゃシンディーちゃんとのデートもできやしねぇ。早いとこ仕事終わらねぇとな……」
 やっぱり自由の象徴である彼女――バイクのシンディーちゃんが恋しいのだ。自由を求める彼としてはこの大きな翼も捨てがたいが、やっぱり走るのならば愛しのあの子と走りたいし、こんな小さな体に収まるような男でもあるまい。
 やれやれ、とため息をついて次に往く。空をちょっぴり低めに飛びながら、せめて気持ちは自由のままだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

グウェンドリン・グレンジャー
◎△🐾
スーパー、へんげ、ドロンハッパー
(何やらパワーのレンジャーめいた掛け声でどろんはっぱを使う)
おおー、これ……が、動物。あにまる、ぼでー

私、は、身体、小さく、なってても。やることは、ぶっ飛ばすだけ
(動物の身体で全力疾走。怪力を脚力に回してスピードアップ。第六感で攻撃タイミングを予測しつつ、走りながら回避)
おおー、本当に、当たり判定、小さい。いつもなら、当たってた
一番近い敵へ、怪力で、力一杯踏み切って、先制で、体当たり
噛みついて、生命力吸収

UC発動。皆、つついて、啄んで、がんばろー
きゃー、ちょっと、ちょっと、肩、肩無理、ワタリガラス、今、肩、無理だから……あっち、あっちに、敵、残ってるから



 ●
 「スーパー、へんげ、ドロンハッパー」
 なにやらかわいらしいノリで。
 なんだかんだやっぱりグウェンドリン・グレンジャー(Blue Heaven・f00712)だっておんなのこである。まほうしょうじょ。あれ?ちょっと違う気もしてきました(ガバガバ概念)。
 とまれ今日の変身グッズはなんともリーズナブル。どろんはっぱを頭にぽーいと乗せてやれば、あらふしぎ――グウェンドリンはあっというまにかわいらしい四つ足――に――。
「おおー」
 彼女と言えば、特徴的なのは多分背中の羽根であろう。
 だからこそ、彼女自身もいつかのしんどい依頼では鴉の姿であった。雄大に空を飛んだり、死肉を食べたりもする怖いアレである。生きるためならしょうがなくない?とも思わなくはないだろうが。
 とまれ、今日のグウェンドリンといえば――しなやかしっぽとゴキゲンなお耳がひょこひょこ。これは、どうやら「……キツネ!」です。
 ぎんぎつね。ふわっふわの毛並みを持った 天然の灰色は美しい。ふわふわの体はまったくもって寒さを感じないし、なんだかちょっぴりお得。化けた甲斐もあったというものであろう。
「あにまる、ぼでー……」
 ボンキュッボンではないんだけども。 
 そこはやはり色気よりさわりごこち。己のしっぽを真っ黒なかわいらしい足でふにふにしてみれば、予想外にきもちよい。ぎゅうっと抱きしめてみればころんころーん。
「むう」
「な、なにをしているのだ……?」
 満足いくまで抱きしめていても、どうやら前にはすすまぬようで。
 『龍神片』がしっぽを抱きしめてすっかり丸くなっちゃったグウェンドリンに声をかけてみた。すごく不服そうな顔をされた。げせぬ……。
「……やっぱり、やること。かわら、ない」
 自分のしっぽも堪能する暇もないらしい。体を起こしてプルプルとふるえば砂ぼこりが落ちていく。
「や、やるのか?やるのだな?」
「ぐぬぬどうしてどいつもこいつもちょっと愛らしいのだ」
「畜生のくせに!」
「畜生故では……?」真実に気づき始めた一体はさておいて。
「えい」様子を見にかがんだ一体の掌にガブー!!「ぎゃああ!」と悲鳴が上がるがまったくもって無視。ぶんぶん手を振られても一向に離れません。
「こやつ!!!!離れぬ!!!!」「おなかすいた」「食べないで!!!!!!」「うわああああ」「こっちくんなああああ」
 ブブブブブブブと振り回されて尚グウェンドリンは離れぬ。食らいついたらぐるぐると険しくうなって哀れな『龍神片』からチャージ中。ある程度飲み込んだらすっかり干からびた彼は灰になってしまった。ぽろんと干からびた体から転がっていく玉――一応龍神の正体であろう。それが無事なので、ヨシ!
「……味。覚え、ある。……邪神?」
「いかにも!わっ、我らは邪神が一部よ!」
 うまいこと融合した邪神の部分だけ吸ってみたグウェンドリンである。大きな耳がレーダーのようにぴここここ、と動けば「ふーん」と納得の声。
「……やっぱり、かわらない」
 ――【Queendom of Corvus】。
 たちまち、九十八匹のカラスが沸いた。
「うおおお!!!??!?」
「打ち落とせ!打ち落とせーーー!!」
 反射のように出てくる彼らのブレスも弾幕もぴょんぴょこかわす。いつもなら当たっていただろう密度も、獣の体ならばなんてことはない。
 まぁるい体をころんとすればバウンドして、小さな足で駆けていく。しゅたたたたた、と本体であるグウェンドリンが注意を引けば、敵のこめかみにカラスのくちばしダーツがずどん!
「皆、つついて、啄んで、がんばろー」
「ぐわーーーー!!!!!や、やめろーーーー!!!!」
 そろそろ攻撃的なカラスが目立つ時期なので、皆様ご注意願いたい。
「きゃー、ちょっと、ちょっと、肩、肩無理、ワタリガラス、今、肩、無理だから……」
「襲われとる!!!!!!」
「術師であろ!!???」
 襲われているわけではなくて、いつも通りグウェンドリンの肩にとまろうとした一匹がいただけで。それでもやっぱりちょっぴり不服。ぐぁーと低く抗議のひと鳴きをすれば、困ったキツネがあっちあっちと小さな掌で指してみて。
「敵、残ってるから」
「そいつをこっちに寄越――ぶわーーー!!!!!」
 でっかい鴉、直撃。ご愁傷様です。
 頭に大きな穴が空いたらしい一体からまたころころ、ころり。龍神の大事な玉がころころり。しばらくするとちょっとほどけて「たすかったあ」と一声。
 なんだかんだソツなく仕事はこなしちゃう。だってできる女の子なのだ。お父さん、立派に育っていますよ。お父さん聞いてますか!? 見てますか!? あなたの娘さんですよ!!?
「しっぽ、もふもふ」
「さわっていーい?」妖怪たちがわくわくで聞いてみたら。
「いい、よ。ちょっと、だけ、ね」
 虚弱体質なんのそので克服した通り。
 もうキツネの体になれつつあるグウェンドリンなのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

小泉・飛鳥

やれやれ。まさしくカクリヨに還って来たんだと、実感するよ。
なんにせよ、ここは僕が生まれ育った世界。そして……僕たち妖怪にとって大切な世界だ。オブリビオンに奪わせはしないよ

なんて格好つけてみたものの……さて、この姿では締まらないね
他の動物の姿よりは、しっくりくるけれどもね

エメラルド色の野兎の姿
ふわりと宙に浮かぶよ

さて、こうする以上は、派手なお祭り騒ぎにしようじゃないか

器用に敵の攻撃を避けて飛びながらワンダーエッグを念動の力で射出していくよ
着弾すれば盛大な花火……と言うには火力がありすぎるけれども
まぁ、時にやりすぎるのも妖怪というものさ

僕が、怒って?
ふふ。いや。まさかまさか……―――




「やれやれ。まさしくカクリヨに還って来たんだと、実感するよ。」
 小泉・飛鳥(言祝ぎの詞・f29044)は、人に寄り添うあやかしである。
 彼の名と言えばかつての人間の苗字からあやかり、人と交わるのを楽しみ、彼らの織りなす物語に驚かされては魅せられて今もまた筆を握る、正しく人間を愛するカクリヨファンタズムの妖怪である。
 お化けには学校も試験もない。だけれど、――人間と一緒に学ぶことが出来るようになったのは、まさに飛鳥からすればこれ以上にない救いのようなチャンスであったろう。
 がんばってぴょんぴょこしながらどうにかこうにか。文字通り存在の「復活」をした兎はなんやかやあって今ここに帰ってきてしまったわけだけど・
 エメラルドの毛並みにかわいらしいお鼻がひくひく。そして耳もぴろぴろ――ああ、とっても祭り騒ぎがなつかしい。
「おやおや帰ってきたのかい?」
「仕事でね。そちらは元気?」
「おかえり!」
「はいはい、また行くけど。ただいま」
 飛鳥だとこの姿でもわかるのはさすがカクリヨの住人たちといったところか。
 ぴょっこぴょっこ跳ねながらも愛想よく返事をして、祭りの空気に溶け込んでいく。人間に忘れ去られた者たちが、大事なことを忘れてなおどんちゃかやっているのは――飛鳥には、かなり、痛ましく思えてしまう。
 さみしいのだ。さみしいから、酔ってさみしさを忘れているように思えてしまう。
 ポジティブな破滅ではあるが実質防御反応のようなものにはかわりあるまい。
「――ここは僕が生まれ育った世界。そして……僕たち妖怪にとって大切な世界だ」
「ぬ――来たか!」
「オブリビオンに奪わせはしないよ」
 ぽーんとひときわ高く跳ねた兎がくるりと着地!わあっと湧き上がる妖怪たちは、彼のために新しい音楽を練り上げる。ズッチャ、ズッチャカと変則的なリズムがいくつか流れてから――三拍子のハイテンポ。
 小太鼓が心臓のビートのよう。タッ、タッ、タッ、タッと飛鳥の耳に届く妖怪たちの音色に、頷いて。

「派手なお祭り騒ぎにしようじゃないか――!」

 【Hase】。
 もとよりかわいい小兎に為れる彼である。
 なんてことあるまい――頭上に浮かんだワンダーエッグたちが爆速で飛んで行く!
「おわあああああ!!」
「なんのこれしき!」
 あまりの速さに顔を撃ちぬかれる『龍神片』もいたけれど。そうはいくかと裏拳で迎え撃つ個体もちらほら。
 かわされても念動力で意識して、テテテテテテテテと兎の脚力で降り注ぐ弾幕も素早く、そしてギリギリのラインであえてかわす。
「観客も楽しませなくては!礼儀作法だよ――さては、知らないね!?」
 なぜならば。
 『龍神片』たちの骸玉は、邪神である。人間を脅かし、カクリヨを、ひいては妖怪たちを苦しめる彼らの存在はやはり許しておけぬ。
 いつも笑顔を忘れず、人をおどろかせるための愛嬌と服装なんかもおきざりにした今はいつもよりやや力もはいってしまうみたい。
 ああ、怒ってる?
「――ふふ。いや。まさかまさか」
「めっっっっっっちゃ怒ってる!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「怒ってないよ♡」
「怒ってるぅううううううううううう!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
 ちゅ、どーん。一つ爆ぜればまたちゅどどーーん。
 着弾したところから派手に花火があがり、その火炎からまた弾幕が作られる。まるで一斉掃射が何回にも分けて行われるような密度はほとんど濁流のよう。
 きゃるんとかわいらしく兎の姿でキメポーズしたら、あとは妖怪たちのぴゅうぴゅうと上がる口笛が飛鳥を肯定したのだった。
「忘れちゃだめだよ、ちゃんと考えておいてよね」
 ――ぽつりとこぼした言葉は、きっと誰にも聞こえていない。
 はあ。やれやれ。それでは次のステージにいこう! てけてけと走り出す兎の背中に、どんな思いが渦巻いていたのかはきっと誰にもわからないまま。化かすなら皆を化かさねば。
 さてさて心も体もおきらくごくらくご一緒に、――どろんぱっぱ!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘルガ・リープフラウ
🦢花狼🐺


あら? 何だか体が……
わたくし、本当に白鳥になってしまいましたの?

いつもなら背中の翼で飛べるのに、
この姿では腕をパタパタしないといけないなんて
頭の隅に、まるで髪飾りのようにちょこんと乗ったミスミソウが
わたくしがわたくしである証でしょうか

ヴォルフは狼になっても、いつも通り素敵ですわ……
ああでも惚気ている場合ではありませんでした
一刻も早く元の姿に戻らなければ

白鳥になっても歌の力は問題なく伝わるのね
優しい歌声と聖なる光に祈りと浄化の力を込めて
傷ついた仲間達には癒しを
襲い来る敵には神罰でお灸をすえましょう
酔っぱらっている妖怪さんたちも、正気に戻ってくれると良いのですが


ヴォルフガング・エアレーザー
🦢花狼🐺


気が付けば青い毛並みの狼の姿に
事態を解決するまで人の姿に戻れないことは覚悟していたが

人狼の俺は、何度もこの姿になったことがあるからいいが
同行した妻のヘルガは……

見間違えるものか
純白の翼に可憐な姿、そして頭のミスミソウ
白鳥になってもお前は相変わらず美しい

とは言えこの姿のままでは、お前を抱きしめることも叶わない
何よりこの乱痴気騒ぎを放ってはおけんな

とりあえずはあの竜人じみた集団を何とかする必要がありそうだ
敵の攻撃や弾幕は野生の勘で見切り回避し【獄狼の軍団】を召喚
炎を纏った狼犬相手には迂闊に噛みつけまい
逆にこちらから噛みついてやる
ヘルガの援護があれば、恐れるものは何もない!




 ――あらあら、困った困った。
「何だか、体が」
 ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)はまず自分の目線が少し下がったことに驚いた。縮んでしまったのか、はたまた地面が陥没したのか――はてさてどれだろうと思っている間に腕を見てみれば、真っ白の翼。
「わたくし、本当に」
 自分の姿を脳裏に思い描けば、確かに翼は大きい。だけれど、「ここまでではない」というか。
 驚きは確信へ。素っ頓狂な声を上げてしまうのも無理はなかった。
「――白鳥になってしまいましたの?」
 こればかりは、無垢なる彼女もおどろきびっくり。
 しげしげと美しい羽毛を眺めて、はわ~と息を吐く。ツンとした自分の嘴がくすぐればこそばゆい。中々慣れぬ経験におろおろとしつつも、しっかりと体が動かせるかどうかを試していた。
「ヘルガか」
「ヴォルフ!」
 腕をばたばたさせないと空にも飛べないけれど、思ったより体が軽いからか浮くのはたやすい。
 空中にふわりと浮いた白鳥の頭にあるミスミソウを見ずとも、駆け付けた一頭のオオカミがいた。
 ヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)は人狼である。
 ――なんとな~くこの依頼の予知を聞いた時から、ああこれはきっと事態を解決するまでは人の形に戻れないだろうなとは察していた彼である。
 だからこそしっかりと妻の居場所はつかんでおくべきであるから、こうして転移の際少し離れていても問題なく真っ先にたどり着いてくれるのだ。
 ふすす、と鼻を鳴らして「問題ないか、それ以外は」と聞いてみる。「ええ」とふわり、着地するヘルガが立ってみれば地面にぽすり。座っているわけではなくて、ハクチョウは走る足をしていないのである。水を泳ぐかのように――そのままスライドしてきた。
「泳いでいる……のか?」
「地面から少しだけ浮いています。水がなくても移動は楽、みたいで……」
「そうか――なら確かに弾幕には今のほうが有利か」
「ええ、走るよりはきっと早いですわ」
 こくこくと首を縦に振ってきゅるる。高い声で鳴くハクチョウの声に、ゴキゲンなオオカミの耳がぴこぴこ、しっぽはゆ~らゆら。

「ヴォルフは狼になっても、いつも通り素敵ですわ……」
「――お前こそ。白鳥になってもお前は相変わらず美しい」
 見つめあうのは愛と、それから安心と。ほんわか温度の夫婦のひととき。
 動物になってもお互いを見つけてしまうのだから、お二人はたいへんむちゃくちゃらぶいのだ。
「ヒューーーー!!ヒュウーーーー!!!」
「いい嫁さんだなぁ旦那~~!!!」
「そ~れお裾分けのご祝儀で弾幕だあ!」
「とっとけとっとけ~~!!!!!」
 どーん、どーん、ぱらぱら、ごーんごーん。最後のは鐘です。
「いけない。惚気ている場合ではありませんでしたわ」かなりの声量に圧倒されてハッとするヘルガに。
「確かに」素早くヴォルフも頷いた。
 この乱痴気騒ぎである。ちょっと二人が触れ合えばひゅうひゅう!お熱いねえ!そりゃお熱い。まだまだ新婚ほやほやであるため!
「それにこの姿のままでは、お前を抱きしめることも叶わない」
「ふふ、一刻も早く元の姿に戻らなければ」
「おあついねえ~~~~!!!!!!!」
「うらやましくなってきちまうなあ……」
「彼女ほしい……」
「がんばれよ……」
 少し硬い毛質だけれど、それは彼が頑張ってきた証。お互いの首を寄り添わせてから、一匹と一羽で敵に向き合った。

「ぐ、ぐぬぬぬぬ~~~!!!」
 この『龍神片』さんたちは、独身である。
 普通にむちゃうらやましいが?????みんな酒で浮かれてるけど彼らは正気なのでなんかもううらやましくてたまらなかったのだった……。季節は寒いし人恋しいし。なんか騒ぎを起こしてるけどどんどん祓われちゃうし。なむさんだし。
「問答無用である!」
「やってしまえーー!!」
「りあじゅうというもの!!」
「爆ぜて去ね!!!!!!!!!!」
 ものすごい殺気。
「り、りあ……?」何を言われているのかわからないヘルガを守るように、ヴォルフがうなり声をあげて前に出る。
「くだらん――貴様等に後れをとる俺ではないわッッッ!」
 ヴォルフがカアッ!と鋭く息を吐けば口からあふれる炎!
 ばうっと戦場を覆うほどの熱量があふれて、【獄狼の軍団】は顕現して見せる!ウォオオオオウと一匹が遠吠えすれば、全身を燃え盛らせる彼らも同じく声をそろえた。
「――己があるべき場所へと、還れ!」
「援護します!」
 頼んだぞ、とは彼も言わずとも。二人の間には信頼がある。
 それでもたくましい青いオオカミの背中はいつも通りに思えたのだ。ちくしょー!とかうらやましー!とかいう悲鳴めいた声とともに放たれる竜の顔からのブレスをかわし、狼たちで相殺する。米粒のような細かい弾幕を前に、狼たるヴォルフの眼に恐怖は見当たらず!
「――主よ」
 白鳥が、歌う。
 彼女の周りだけを弾幕が避けていくように見えるだろう。これは、ヴォルフが己のオオカミたちで彼女にだけは攻撃が届かぬよう壁にし、食らっているからである。
「御身が流せし清き憐れみの涙が、この地上より諸々の罪穢れを濯ぎ――」
 手は祈りの形には組めないから、せめて胸の中でしかりと念じる。
 救うべき人を、世界を、思い描けば――いつも通りに歌えるのだ。

「善き人々に恵みの慈雨をもたらさんことを……」

 【涙の日】。
 米粒のような細かな弾幕の壁を打ち破ったヴォルフの傷を瞬時に癒し、代わりに――弾幕らしく言うならばレーザーというべきだろう、裁きの光が『龍神片』たちを貫き動きを封じた!
 そこをがぶりと狼たちが噛みつけば、あっというまに爆ぜてきれいに消えていく。はらはらと火の粉になって散った彼らからぽろぽろと龍の玉たち。
「うう、た、たすかったぁ」
「どうなるかとおもうた」
「おたすけぇ……」
 骸玉にいいようにされていた小さな龍神たちだ。「あらあら」とヘルガが驚いたのも一瞬のこと。歌ってやれば見る見るうちに傷はふさがる程度の消耗で済んだようである。
「――ヘルガ、次はこちらを」
「はい、ヴォルフ」
 喧噪のさなか、狼と白鳥のつがいが龍たちを丁寧に治していく。元気になったものから隠れるように指示をした二人には、野生のカンというべきか――壮大な「出し物」の予感を感じ取っていたのかもしれなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

穂結・神楽耶
【彼岸花】

わ…本当にヒト型になれないや。
何に成るのか分かんなかったので緊張してたんですけど…
蝶なら慣れているので少しは安心です。
ほら、わたくしの神器がこの形ですから。

そういうネグルは…虎、ですか?
犬っぽいと思ってたので意外…。
あはは、かわい……ごほん、格好いいですよ。
どことなくキリッとしてますし、わたくしより大きいですし。
ちょうどいいですし頭に失礼しますね~。

弾幕来ます!
強いかはともかく、普段より脆いと思いますよ?
頑張って避けてくださいねー。
避けきれなさそうなのは【焦羽挵蝶】で相殺しますから。
弾幕の隙間を縫うようにこちらからもお返しです!
道が開けたらあとは任せ――

かみついて。(生温かい眼差し)


ネグル・ギュネス
【彼岸花】
※虎化します。但しちょっと可愛いデフォルメ感

………どうして(現場虎感)
最近なんか何何故感が凄いんだけど(哀愁)

犬って──いや犬の方がまだマシだったか。何この可愛い虎感
まあ虎だからつよい、つよい…よね…?

はーい(虚無顔)
まあ世界の為ならば、どんな条件でも駆け抜けてやらぁよ!

いやその分身体能力が上がってる感。ただトリガーも刀も使えないか、ら
俊敏に見切り、爪で弾いて誰だ猫パンチ言ったやつからころしゅ(殺意MAX)

【勝利導く黄金の眼】で未来先読みから、衝撃波を纏った爪で弾いて裂いて切り刻んで噛み付いてや、る…?

かみついて。(獣化した感覚に、どうして顔)

ぼくはにんげんだよ、わるいとらじゃないよ




 この身はもとより人の身ではないし。
 依頼の予知を見てみるに、戦闘には支障がないのだったら穂結・神楽耶(あやつなぎ・f15297)にとってそれほど形状が変わることに今更の不安もありはしない。
 ――ありはしないが。
「わ……」
 ぽ、ぽ、と鱗粉のような火が自分から散っていたような気がして、体をよじる。それでもいまいいち体の縮尺がわからないでひらひら――鋼の体がいつもよりうんと軽い。
「本当にヒト型になれないや」
 クロアゲハである。
 ひらひらと空を舞いながら、ちょっぴり安心した神楽耶であった。まだ神器とは親和性も高いし。あと当たり判定極小だし。たぶんよっぽどえげつない弾幕が来ない限りは被弾もしないし。
「あ、いけない――ネグル? ネグルはどこに」
 同時に転送してきたはずの弟分もそういえば姿が違うのだっけ。
 すっかり大きくなってしまった世界はいつもより視界も広い。上下に一生懸命羽を浮かせてみれば、なにやらむにむにした球体がいた。
「ドウシテ…………」
 トラだしヨシ!(ヨシではない)
 ネグル・ギュネス(Phantom exist・f00099)はいつもシャッキリとしてスタイリッシュな色男なのだけれど、今日はどうやらカクリヨに歓迎されてか鋼の男もやわやわな存在にされたようで。
 二頭身くらいのトラになってしまっているのだ。クリームパンのようなおててである。刀握れますか? カラン……と力なく転がったのであんまりあかんようです。あかんやないか!
「最近なんか何何故感が凄いんだけど……」哀愁たっぷりにつぶやくネグルは、なんか――せめてかっこいい姿のトラだったらな……とifを考えてしまうのだった……。お疲れ様です……。
「あはは、かわ――ごほん、格好いいですよ。ネグル」そんなしょぼくれるトラの頭にちょこんと乗る神楽耶である。
「姉さん!?」
「いかにも」
「如何にも!!!???」
 順応が速い姉貴分、見習わなくちゃいけないねぇ……。
 同じトラでもほかの猟兵はかっこよくなってるのもいらっしゃったやないですか!!なんでや!!という気持ちをほんのり抑えつつ、トラっぽいけどいまいち締りのねえ体になれるためにのそのそ歩きだす。
「犬っぽいと思ってたので意外です」
「犬っぽいほうがまだマシだったよ――まあ虎だから強い?つよい……よね!?」
「どことなくキリッとしてますし、わたくしより大きいですし。きっとつよ~い虎さんですよ」
「なんでそんな物語言い聞かせる保母さんみたいなんだよ姉さん…………」
「自己暗示です、自己暗示」
「暗示て」
 嘆いてもしょうがないのはその通り。やれやれとしながらも前を向くのがこの不屈の男なのだ。
 祭りの喧騒も近くなってきて、二人の存在も妖怪たちに見えて来たらしい。なんだか不思議な二匹がいるぞとわやわやしだせば――音楽が変わる。
「暗示は置いとくとしても」
「置いとくの!?」がんばって頭の中でオレハツヨイ オレハツヨイ オレハトラ オレハツヨイ!と言い続けてきたスカーフェイスのネグルが叫ぶ。
「普段よりは脆いと思いますよ?私たちどっちも」
「あ、あー……」 
 神楽耶の冷静な分析にはなるほど納得なのだった。
 確かに今は当たり判定――というか面積が小さいから、ネグルも神楽耶も相手の攻撃を避けることは無難にできるだろう。代わりに、被弾してしまった場合のダメージがきっと異常だ。
「――へっ。まあ世界の為ならば、どんな条件でも駆け抜けてやらぁよ!」
「避けて避けて避けまくればオッケーってことですからね!」
 しゃらしゃらと鈴の音、それから三味線の音が鳴り響いて――和のメロディ!
「お前たちに似合う音楽でもてなしてやるよ!」
「かっちょいい弾幕見せてくれ!」
「がんばれちっちゃいの~!」
「だぶるでちっちゃいな!」
「ちっちゃいちっちゃいうるせ~~~~~~~!!!!!知らねえ~~~~!!!!好きでこの姿じゃねえんだっつの~~~!!!!」でも曲としてはわるかぁない。盛り上がる気持ちがあるのも確かだから、酔っぱらった妖怪たちにはノリノリでツッコミをしつつも――ネグルは、頭に乗せた神楽耶とともに敵を見据えた。
「む、なにやら――新参の香り!!!!!」
 『龍神片』たちがぐるんと振り向いた。警戒とともに無数の粒――それらに火薬を感じた神楽耶がシピピピピと小刻みに羽を揺らす!
「弾幕来ます!!!」
「よっしゃぁ―――――!!!」
 【勝利導く黄金の眼】!かわす事ならこのネグルの右に出るものは今のところあんまりない!!
 ぎらぎらに輝いた黄金の瞳をしたちっちゃな虎がぽーんと飛び出せば、まず拳とともに襲い来るレーザービームらしき弾幕を、その拳を踏み台に飛び越えてにゃんぱらり!
 続いて地面につく前に体を一回転ひねれば遠心力でしっぽもしなる。
「ぅううおおら!!!!」ええい獣の体なんだ知るか!今のネグルに手足があるならそれは刀が四本あるのと同じことよ!!鋭いかぎづめがあればそれでヨシ!ヨシったらヨシ!四肢でめちゃくちゃに球の弾幕を切り刻み、ぱんちぱんちぱんち!!
「おお、なんという猫パンチ――」
「ころしゅ(殺意)」ザシューーーッ
「トラチャン゛ッ!!!!?????」ピチュン……(被弾音)。
「いいですよネグルその調子!いけー!いけー!ふれー!ふれー!」
 【焦羽挵蝶】でトラパンチの間は神楽耶が弾幕相殺!んでもってついでにお返しの弾幕!
「わたくしたちだけが避け続けるなんて、フェアじゃないでしょう?」
「うわ~~~!!!!???」
 どわっ!と押し寄せる炎の蝶々たちに追いかけまわされる邪なる神を宿した彼らに容赦、ナシ!お前らむちゃくちゃ邪神の香りするやないかと激しく飛び回り爆炎をあげていく蝶々たちである。む、無慈悲ッ!!!圧倒的無慈悲火炎蝶々軍団制圧射撃ッッッ!!!

「道が開きました!さあネグル、かっ飛ばして――」
「ンむ!!!!!!!!」
「ん?なんか食べてません?」 
 この調子でいけばいい感じに数も減らせそう、と判断した神楽耶に返事をしたネグル。なにやらくぐもった声の調子に、あれれと蝶々も羽を下ろす。
「あ」
「んぁ」
 ぽとり。
 さっきまでどうやら夢中で『龍神片』に噛みついちゃっていたらしい。ぐったりとした一体の体がネグルの口から地面に力なく横たわった。
「か、かみついて」
「かみついて。」
 ぼうぜんとしたネグルである。そう、ちゃんと頭の中では自分は人間の姿を……ウッ!?思い出せないッ……これこそが概念の喪失ッッ……!!平等ッ……!!
「ど、ドウシテ……???」頭を抱えちゃったのだった。
「なじんじゃってますねえ」もとより人の体じゃないので神楽耶は冷静である。ヨスヨスと小さなおててで毛並みをかきわけてやった。
「ぼくはにんげんだよ、わるいとらじゃないよ……」
「いつもよりおおめにはしゃいでまいりま~す」
 カタナもトリガーとかもないし!もうしょうがないのだった。
 今日も一日、――無事に帰れたらそれで、ヨシ!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

霞末・遵
【幽蜻蛉】◎△
おじさん蜘蛛だからこうなるよね
でも脚が半分しかなくて動きづらいなあ
犬や猫みたいに四足歩行できないんだけどなあ

龍探してるんだって。丁度よかったじゃない惟継さん
ひょっとしたら友達かもしれないよ
惟継さん?

消えた……
まあそういうこともあるか

ないか
どうしたのそんなにちっちゃくなっちゃって
化け蜘蛛でもそこまで小さくはならないよ
いいよいいよ乗って乗って
あっやっぱくすぐったいから降りて
やだちょっと手が届かないじゃないもー仕方ないなー
今だけだからねえ

惟継さんは小さくても元気だなあ
おじさんも何かしたいけど……この手じゃ鞄も開けらんないよ
もうちょうちょに適当に任せようかな
今は当たらない方が大事ってね


鈴久名・惟継
【幽蜻蛉】◎△
遵殿が蜘蛛に戻るのは分かる、分かるぞ
元の姿に影響を受けるのは納得だ
だがな、だがな……

何故俺が蜥蜴なのだ!

消えとらん、そういうこともない
蜥蜴になって体が縮んでしまっただけだ!
小さい龍とかでは駄目だったのだろうか……うぅむ

一先ずこれでは移動が不便だ、遵殿……背中?胴体?に乗せてくれ
普段は竜の姿でお前さんを乗せているだろう?
今回は逆ということでお前さんが頼りだ、頼んだぞ

武器を振るのも、ちと面倒だ
天候操作と鳴神を使って周囲に雷を落として奴等を倒してしまおう
龍神片~~~?
竜を探していながら、俺を蜥蜴にした戯け者が俺の知り合いなものか
天罰を下してやる!遵殿、この調子でどんどん奴等を追ってくれ




「おじさん蜘蛛だからこうなるよねえ」
 霞末・遵(二分と半分・f28427)は蜘蛛の妖怪であった。
「でも脚が半分しかなくて動きづらいなあ」
 無邪気な子供が動くおもちゃのようにしか思えず虫の足を引っこ抜く遊びをよくするのだけれど、たとえそれが悪意のない暴力だったとして、声のあげられない被害者がいるならば虫であり、そして彼でもある。
 大きなタランチュラ。じいっとしていて普段からあまり動く必要のない蜘蛛ではある。毛にさわると存外ふわふわできもちよい。
 まあいっかでよっこいせと地面に伏せてみた。敵からは見つかっていないようだし、今のところあの弾幕お祭り騒ぎには巻き込まれそうにもないしで。ひんやりとした地面でくつろぎながら、足の欠けたタランチュラは相方に話しかける。
「龍探してるんだって。丁度よかったじゃない惟継さん。ひょっとしたら友達かもしれないよ」
 のんきな声で言ったものの、返事はなく。
「――惟継さん?」
 いるはずの彼を探して左右を見ても、どうやらおらず。
「……消えた……」
 鈴久名・惟継(天ノ雨竜・f27933)は立派な龍神である。
 確かに信仰は廃れてしまった彼であれど、いまだ人間には友好的でカクリヨ出身のかみさまらしいポリシーを抱いた彼だ。だから、――いるはずだし、まさか姿を忘れたわけでもないのだけど。あれ?顔どんな顔だっけ。すごく大きいのは覚えてるんだけどなあ。
「まあそういうこともあるか」
「何故俺が蜥蜴なのだ!!!!!!!!!!」
「ないか」
 ――そんなことはなかった。
 遵に見えなかったのはしょうがないことである。タランチュラである遵よりもずっといまは惟継のほうが平たくって小さいのだ。綺麗な青いしっぽと美しい光沢をもった、ニホントカゲがぽってりと地面に伏せてビャーーーーッと鳴いた。トカゲって鳴くんですよ。
「どうしたのそんなにちっちゃくなっちゃって。化け蜘蛛でもそこまで小さくはならないよ」
「知らんわ! 俺とてこの姿は――まあ元の姿に影響を受けるのはわかる、わかるぞ。いやしかし、小さい龍とかでは駄目だったのだろうか……うぅむ……」
「かわいそうに」
 なんかあからさまにしょぼくれているので、ふさふさの蜘蛛がいたわりの声をかけた。
「一先ずこれでは移動が不便だ。――遵殿、背中? 胴体? に乗せてくれ」
「いいよいいよ乗って乗って」
 普段の二人とは役割が逆である。
 遵が龍となった惟継の背中に乗って夜の世界を夢見心地に揺蕩うことはあれど、その逆というのはないというか、ありえないというか。多分遵の体がもたないので、今回は貴重な経験やもしれぬ。よっちよっちと小さなトカゲがタランチュラの背中に「失礼」と乗っていくのだが。
「あっやっぱくすぐったいから降りて」
「ぬぅ、普段は竜の姿でお前さんを乗せているだろう?」
 もぞもぞとかぎ爪で体を触られる感覚、たとえるなら孫の手でフェザータッチされているようなものだった。おじさんにはちょっと未知の感覚である。
「やだちょっと手が届かないじゃないもー仕方ないなー今だけだからねえ」
「今回は逆ということでお前さんが頼りだ、頼んだぞ」
 おろそうと手で触ろうにも関節の可動域が決まってるので無理だった。はああ~と哀愁の溜息をつきつつ、おじさん蜘蛛がのそのそと急がず慌てず進んでいく。
「いや、この姿では武器も振れんことはないがちと面倒だな」
「振れるの??????????」おじさん的にはそっちのほうがびっくりである。
 遵にもいつもの腕があるように、一応足がしゃきしゃきとどうやらブーツのような感じでガジェットを履かせては貰っているようだが、大型の敵を相手には大した火力になるかどうかもちょっぴり怪しいなあと思っていたところである。
「当然であろう。俺は鍛えているのだし」
「そういう問題かなあ」
 でもできるならできるかもしれない。そういうことにしておきましょうね。
 ちっちゃいとかげとなった惟継がううむううむと戦い方を考えている最中にも、妖怪たちから「どわっはっは!!!!なんだお前らかわいくなっちまって!!!」と声が上がる。
「はいはい、危ないから下がっててねえ」
「遵殿の言うとおりだ。あまり呑み過ぎるのではないぞ!」
 クワッ!!!!!!!!!!といつもの迫力ならばだいぶ意味があった惟継の一喝も今の妖怪たちにはわりとどこ吹く風で。「気を付けねえと、へそをとられちまうなあ!」なんて言いながらもすごすごと弾幕勝負にそなえているようであった。
 どん、どん、ごろごろ、どんどん――。
「お、太鼓の音だねえ。惟継さんにぴったりな感じだ」
「お前さんにも似合う音であろうよ。うむ、良い音色に力を貰うとしようか――」
 妖怪たちが二人に合わせてどんどん音色を変えていく。美しい弾幕勝負には極上の音とリズムがなくては!
「来おったな猟兵!いいや、畜生め――!!」
 しゃきっと身構えた『龍神片』たちがどんどん弾幕を展開していく。視界を埋め尽くすほどの光球を「わあ~」なんてのんきな声を上げてみていた遵がいた。
「よかったねぇ、惟継さん。やっぱりあれお友達じゃない?」
「莫迦を言え!竜を探していながら、俺を蜥蜴にした戯け者が俺の知り合いなものか」
「なぬ!?聞き捨てならぬ、お前もまた竜を騙るか!!?」キエーッ
 声を上げてカンフーポーズをする『龍神片』たちに、すううとトカゲが小さな肺を膨らませて――。

「このような事態になっては貴様等も竜神が判別できんだろうが!!!!!!!!!」
「ハッ!!!!!!!!!!!!!???????????????」
「う~んその通り」

 『ひと』という概念が喪失してしまった今。
 人の信仰で成り立っていた竜も竜神たちもすっかりその力を失ってそれぞれ愛らしい畜生になってしまっているのである。根本的な問題で、「見つかりっこない」のだ。
 ピシャアアアアーーーーーーン……と電流が走ったような『龍神片』たち。小さくなっても惟継さんは元気で声が大きいなあという遵。おいかりごろごろの惟継である。
「天罰を下してやる!そこに直れ!!」
 ――執行、【鳴神】!!
 惟継の怒りに合わせてたちまち月すら隠す暗雲は、びしゃああああん!と鋭く叫び声を上げてどうんどうん!!と地面を穿つ!!
「わわわわ!!!」
「に、にげろぉ!!!」
「ギャーーーッ」ジュッ
 雷による殲滅は横一直線。迫りくる弾幕もびしゃーんとはじけ飛んで、間をすり抜けるものはどうしたものかと遵がまったり避ける。いわゆるちょん避けというもので、当たらなければ大丈夫というやつなのだ。テクニカルです。
「おじさんも何かしたいけど……この手じゃ鞄も開けらんないし、ちょうちょに適当に任せようかな」
 【喰い尽くす群】。花から花へ飛ぶ蝶々の姿が――おおよそ430体。
 吹雪のように弾幕を食らう幻の姿がよりおそろしい。群れが過ぎ去ったあとにはころころと竜玉が転がって、「ぷはあ」とそこから竜神たちが出てくる。
「ああ、たすかった」
「ありがとう」
「大変だった……」
「――骸魂に飲み込まれていたのだ。あちらで休んでいると良い」へろへろの竜神たちに惟継が喧噪の方向を指さす。妖怪たちがどうやら戻ってきた竜神たちに介抱をしてやっているらしい。
「いい感じだねえ、惟継さん」
「うむ――いやしかし、遵殿。ならばこそより急がねばならぬ。この調子でどんどん奴等を追ってくれ」
「はいはい。焦らず急がず、でも怠けず。今は当たらないほうが大事だからね」
 解放されていく小さな神格たちが集まれば、それこそ「竜」の気配に違いないのに。
 ――おやおや、これはちょっと怖いのが後に潜んでる気がするなあ。
 なんて、思いながらも確実に二人で制圧していくのだ。これが余興ならば、あとはきっと本命が待っているからして。
 浮かれたカクリヨファンタズムが醒めるまであと何刻――?杞憂であることを願って、さあどろんぱっぱ!
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

宵鍔・千鶴
【紫桜】

飛んでくる弾幕を交わし
愉快な妖怪達をやれやれ眺め
俺も初めてだよ

何になろうと
俺は俺できみはきみだし
さあ、奇々怪々な物語の始まりにゃ
どろんと化けたら黒い毛並の野良猫が
おすまし猫へ肉球ハイタッチ

シャトにゃんも連れて帰っていい?
沢山甘やかして可愛がってあげるよ、にゃあんて
俺は良いよ、縁側でごろごろ大歓迎
お魚は代わりにたい焼きを所望しとこうっと

シャトにゃんが飛ばす猫弾幕に
あ、可愛い…って、言ってる場合か
怯んだ隙見て
お魚ならぬ刀をくわえた野良猫駆け出し
咲かせてみせよう
にゃんにゃんにゃん
薄紅の花がはらりと舞って
愛し俺達の華で
格好よくキメポーズ
…猫だけど

はてさて、妖怪たちよ
宴は愉しめたか?


シャト・フランチェスカ
【紫桜】

弾幕遊びは初めてだな
千鶴はどう?

急拵えのチームじゃないこと、思い知れ
執筆のクライマックスにも似た高揚感
肉球を合わせたならダブルねこパワー炸裂さ

長毛のおすまし猫にどろんぱっぱ
好奇心は猫をも殺す――って言うけれど
先に滅ぶのはどっちかにゃ

戦いじゃなければ千鶴にゃんこを連れ帰って
縁側でお魚でもあげたいところだけど
我慢だ、我慢

にゃるほど、たい焼き、心得た
…人という概念、取り戻しに来たんだっけ?
猫のままでもいい気がしてきちゃった

宴となれば猫も猫を投げるもの
咲かせや咲かせ
にゃんにゃんにゃん
もふもふ猫弾幕で千鶴の被弾を防ごう

最後は、僕たちの愛する華で

…猫だけどね
やあ、妖怪たちも盛り上がってくれたかな




 どろんぱっぱでしゅたたたたた――駆けていくのは二匹の猫。
「ぐぬぬ!すばしっこい!」
 『龍神片』たちもこの二匹にはひときわ手を焼いていた。
 あっちににゃんぱら、こっちににゃんぱら!かわいらしい猫二匹は仲良しコンビネーションで弾幕を優雅にかわす。拳もやわこい体でぬるんと曲がってどこふく風。
 ただの愛くるしい毛玉の急ごしらえなチームとあなどるなかれ。この二人は作戦も立ててお互いににゃんぱらしているのである。
 おすまし長毛のかわいい猫がしたりと地面に足をつけたのなら、そこに黒い毛並みのかわいい子猫が続いてからの肉球でハイタッチ。
「弾幕遊びは初めてだな――でもわりとサマになってるかも。千鶴はどう?」
「俺も初めてだよ。でも、問題なさそう」
 シャト・フランチェスカ(侘桜のハイパーグラフィア・f24181)と宵鍔・千鶴(nyx・f00683)は仲良しさんなのだ。
「何になろうと、俺は俺できみはきみだしね」
 キレイなおひげを広げてにゃごにゃご、うるにゃん。千鶴がいつもの調子で語る口ぶりには、今では彼の面影こそ――世界の影響で思い出せないけれどなんとなく安心感はある。
「戦いじゃなければ千鶴にゃんこを連れ帰って、縁側でお魚でもあげたいところだけど」
「ああ、俺は良いよ。縁側でごろごろ大歓迎。シャトにゃんも連れて帰っていい?」
 ふすふすとお互いの鼻を近づけあって、うにゃあ、ごろなんと鳴いて見つめあう。
「沢山甘やかして可愛がってあげるよ、――にゃあんて」
「ふふ、我慢にゃ、我慢」
 くすぐりあうように額を小さなざらざら舌でてしてしと舐めあえば心地よさそう。
「何を……見せつけられておるのだ……!!???」
「グウウッッッッ!!!!」
「どうした『龍神片』B!!!]
「こ、これが――だぶるねこパワー……!!!!」ガク
「『龍神片』B~~~~~~~~~~~~~~~~ッッッッ!!!!!!!!」
 なんか勝手に倒れて残機が減っていくけれど、かわいらしい猫同士が毛づくろいしあっていれば誰しも消滅するというもので。
「そうだ、お魚は代わりにたい焼きがいいな。俺はたい焼きが大好きな猫なのにゃ」
「にゃるほど、たい焼き、心得た――なんだか猫のままでもいい気がしてきちゃった」
 ぐるにゃんごろにゃん。
 どうせ元の世界で人の形になったって、しんどい思いをするだけな気もするけれど。敵のよくわからない悶絶を聞けば、はあやれやれ仕事だったなあとどちらともなく思い出してちょっと名残惜しい。
「せめて宴は盛り上げて、俺たちも楽しもうにゃ」
「世界が滅ばない程度に、にゃあ」
「ぐぬ~~~~!!!よくもBを!!!よくもやってくれたなネコチャンどもめ……!!!」
 声に迫力のない『龍神片』たちである。そもそも竜を探しているくせに、信仰の源である人間という概念を奪っちゃったり、――戦うはずの相手をかわいい動物にかえちゃったりとか、結構ちゃんとした敵だったなら確実に脅威だったはずなのにおまぬけだなぁと二人して思わないでもない。
 まあ、それを理由に――加減をする予定もないのだけど。
 いいぞいいぞ、もっともっとだと酔いに酔った妖怪たちが音楽で戦場を染め上げていく。トランペットの激しい音色から妖しく美しいエレクトロなピアノの音と早くも確かな足取りのようなビート――地底から沸き立つような音色に猫たち四つの瞳がきらりと輝いた。
 
「好奇心は猫をも殺す――って言うけれど、先に滅ぶのはどっちかにゃ?」
「さあ、奇々怪々な物語の始まりにゃ」

 宴となれば猫も猫を投げるもので。
「ウワーーーーッ!!!ネコチャン!!!??ネコチャヌ!!!????」
「そーれ咲かせや咲かせ」
「あ、可愛い」
 【猫猫綴】。シャトの呼び出した炎と氷と、あとすっごいもちもちのおっきいネコチャン!が『龍神片』たちをこれでもかと襲う!!!ウワーーーッ!!!ウラヤマシーーッ!!!
 シャトとてこのゆるふゎな空気に呑まれきっているわけではない。冷静な頭で相手を観察していたが、どうやら真面目に動物に弱いっぽいのだ。それじゃあ弱いものをぶつけて動きも抵抗も封じてしまおうではないかという段取り、非常にあたまがよい!IQ50000000くらいある!
 さまざまな猫に乗られたりすりよられたりされて、『龍神片』たちは文字通り手も足も出ない。ならばあとは展開された弾幕のみ――するりとすり抜けていくのは千鶴であった!
 美しい黒の毛並みは光沢までついていて、イケネコの要素なるものはすべて得た姿である。ダンピールの血の影響だと思われます。とても美しい黒猫がお魚ならぬ刀をくわえて駆けだしていた!
 シャトの猫弾幕、たいへんかわいい。かわいいけれど言っている場合ではないので――。
「にゃんにゃんにゃーん」
 【月華ノ餞】。
 べしべしと峰打ちでとろけた『龍神片』の胴体をたたいてやればあっという間に二人の愛する華を美しく咲かせ、弾幕たちを相殺、のち――占領!
「うぐあああああ~~~!!!」
「ネコチャン!!?ネコチャンサクラチャン!!?ネコチャ~~~ン!!!!!」
 ふあふあな猫とさくらに吹っ飛ばされればさすがに骸魂もはじけ飛ぶというもので。ぽてり、ぽてりと次々竜玉が転がっていく地面にしゅたりと千鶴が着地した。
 ――ニャンッ!(キメポーズ)
 夜空に舞い散る桜を背景に、刀をくわえた黒猫がビシッ!とひねりをくわえたおすましキメポーズ。一連の流れに妖怪たちも思わず息をのまざるを得ない!

「す、すげえ……」
「めちゃくちゃきれいだった……」
「ネコチャン……!!」
「うおおおおネコチャン!!!!」
「花見だ花見だ!!!」
「酒をもっともってこーい!!!」

 てちてちと歩いてくるシャトが、妖怪たちの盛り上がりをみて満足気。
「嗚呼、盛り上がってくれたようだ。宴はこうじゃにゃいと」
「愉しんでこそ、だっけ」
 長毛の頭にぺそりと乗っていた桜の花びらを、黒猫が手先で払い通してやる。
「シャト、せっかくの毛並みが乱れてる」
「む。本当に? 後ろで弾幕をかわしていたからかな」
 紫陽花めいた美しい毛並みがもったいない。直してあげるねと千鶴が丁寧に毛づくろいをはじめたなら、あとはなんだかまったりとした空間なのでした。
「うーん、やっぱり猫のままでもいい気がしてきたにゃあ」
 シャトが投げた猫たちがかえってくるころには、なんだかもちもちなあったかい空間が出来上がっていたのでした。ネ、ネコチャ~~ン!!未完を増やさないで~~!!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

橙樹・千織


ふぅむ
どういう原理なのでしょうねぇ
手(肉球)をじぃと見つめる
ツシマヤマネコ…のようなもの
キマイラだからこうなったのかしら?

念のため浄化と破魔を纏い
ぽてぽて進めば弾幕飛び交う広場
これを…この身体でどうにかしろと
いえ
来たからには全力を尽くしますが

あら?今、何か飛んできたような…
気のせいかしら
此方に飛んでくる弾幕は野生の勘でねこぱんち

あらあら、まあまあ
みなさん呑み過ぎでは?
お酒は飲んでも飲まれるな
基本中の基本ですよ?
煙を風の魔法で吹き飛ばし小首を傾げる

さて
そちらの方々
龍を見つけてどうするつもりなのか
教えてくださいな

万が一
私の大切な子に手を出されてはたまらないもの
ね?

…爪研ぎで骸魂剥がれるかしらねぇ




「ふぅむ……どういう原理なのでしょうねぇ」
 橙樹・千織(藍櫻を舞唄う面影草・f02428)は己の手足を見て、声に出さざるを得なかった。
 肉球がぽちぽち愛らしくギュッと詰まった両手足を見て、それから柔らかい体をねじって自分の様子を見てみる。
「キマイラだからこうなったのかしら……」
 ツシマヤマネコ、っぽい。
 お顔をくしくしと両手で洗ってみれば、なんだかこつりとしたものが顔の横についている。
 どれどれと妖怪たちの酒が詰まった樽を鏡代わりに見てみれば、くせ毛のようにそこだけがぴょこんとはねていた。ツノのあった個所で間違いあるまい。
 いつもより酒の匂いが敏感に感じられた。つうんとした心地を鼻に得て、もすんとお尻を地面につける。
「やはり勝手が違いますね」
 これでは得物を持とうにも難しい。
 千織といえば中々に大きなものをふるったりするものだから、やろうと思えばできないではないが――一人でこの戦局にきているし、行き当たりばったりで被弾してはきっとただでは済まないような感じがするのだ。博打で命を落とすような彼女ではない。中身はともかく頭は冷静でおしとやか~な獣である。
 どうやって戦おうか考えて、ぽてぽてと歩けば宴のやいのやいのわあわあきゃあきゃあと盛り上がる音楽と声援たち。弾幕飛び交う広場は地獄絵図のはずなのに、わりと好意的に見ていられるのは敵以外はみんな動物になってしまっているからだろうか。視覚処理って大切なのだった。
「――これを、どうしろと」おっしゃる通りです。
 普段の戦いの場ならまだしもこのおふざけ空間である。助け出すべく側もどんちゃん、猟兵たちもなんだかもう順応してまあいっかでなんとか戦っている場にやってきた千織は守護巫女の自覚あってやってきているわけで。
 ひとつ、大きなため息をついてから――。
「いえ、来たからには全力を尽くしますが……」
 しまらぬ空気を飲み込んで、ここはひとつ頑張るかと舞台に躍り出たときである。
「む!!新手か――隙ありッッ!!!!!!」
「あら?」
「ぶげう!!!!!!??????」
 猫なのだ。
 素早く動くものには体が勝手に動いちゃうのである。
 だから――まあ本質的な千織の性質も相まって。びゅんと飛んできた千織狙いの不意打ちパンチをさらりとかわして猫パンチ!『龍神片』の体が消し飛ぶほどのパンチをしてしまったヤマネコである。
「……気のせいかしら」きのせいじゃないです。
 跡形もなく吹っ飛んだ彼からの竜玉も気にならぬ。弾幕も掌底ではじけ飛んでしまって――妖怪たちもこの規格外には唖然!
 ふすふすとおひげを広げて、優雅なしぐさで歩く千織である。
「あらあら、まあまあ」
「アノ、エット」妖怪たちもたじたじ。
「――みなさん呑みすぎでは? お酒は飲んでも飲まれるな。基本中の基本ですよ?」
 妖怪たちは、ほんのり思い出してとても背筋を凍らせた。
 そう――どんな世の中も、あらあらうふふ系のおねいさんを怒らせることが一番怖いとされているのだ――。
 にこりと穏やかに笑っているらしい千織の表情の奥底が誰にもよめぬ!!!「よ、よめないッ」とさとり妖怪まで言い出して這いつくばった。お、おそろしい……シラフの猛獣お姉さんおそろしいよう!!
「さて、そちらの方々」
「ヒェ」
 もちろん『龍神片』さんたちも怖かった。だって……怖くない? 怖い。
 けして凄んでおらず穏やかな口調だというのに、びりびりと伝わる緊張感がある――あ、これあかんやつやと誰もが思っていた。
「龍を見つけてどうするつもりなのか。教えてくださいな」
「あ、主様が!!!龍をお求めなのです!!!龍を殺すために作られた主様がドカンと――」
「アッ!!!!!バカ!!!!!!」
 ぽろりと恐怖から口を滑らせてしまった『龍神片』をほかの彼らが布ごと顔をギュッと封じ込める。
「ドカンと?」
「ヒ」追求の言葉にみんながこわばった。
「――万が一。私の大切な子に手を出されてはたまらないもの」
 それは、ある種の攻撃宣言であり。暴力の肯定であり、正当化であり。
「爪研ぎで骸魂剥がれるかしら」
 しゃきんと爪を出した猫の獰猛な顔は、まごうことなき野生であっただろう――。

「ね?」

 【剣舞・燐椿】。
 会場の酒気も相まって、転がる竜玉たち以外は、あっというまに消し飛んだ。
 妖怪たちも、今回の光景を目にして心に刻んだのだ。酒はのんでも、のまれるな。いつまでも忘れないでね――!!!

大成功 🔵​🔵​🔵​

桜雨・カイ

ヤドリガミの私も変わるのでしょうか……と思っていたら、犬(コーギー)!?

でもこれは良いかも
もふもふに触れると温かい気持ちになるのは全世界共通だと思います!
それに普段もふもふする事はあっても、される機会はないのでちょっと興味が……。

けれど、足が……少し(短い)
ここは【審判さん】の力を借りましょう
なんだか審判さんの戸惑う気配を感じますが、私です、犬に見えますが私です!力を貸して下さい!

足の短さは【アルカナ・グロウ】で足の回転数を上げることでカバーします
妖怪さん達が寄って(酔って)きた時は、懸命に彼らによじ登って落ち着かせようと頑張ります。

落ち着いたら再度駆け抜けます




 はてさて。
 もとからヤドリガミである。人の形をとるのは人に縁があるからであって、彼らのために生きてきたからこその擬態といってよい。――それが奪われるところで一体何になるやら。好奇心めいた気持ちがあるのは否定しなかった、が。
「犬ーーーーー!!!!??!?」
 桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)はコーギーになってしまったのである!!!走る食パンコッペパン!!
 チャーーーーーーンと効果音が付きそうなくらいには立派なコーギーなのだ。もちもちの手足を見た。地面との間がいつもよりめちゃくちゃにちかい。短足なのである。
「おお、なんと……でもこれは良いかも」いいんですか?
 確かにカイの気質というか、性格的には出来る限りどんなことも平和的に終わるのがよいとされている。
 戦争なんてしなくていいはずなのだ。この世には足らない。人間の数がもふもふの数より多い。やはりもふもふこそすべて。もふもふこそ平和的な兵器として活躍すべきなのだ。そう、きっとそうに違いない気がしてきた――。
「もふもふされる機会はないですし、そっちにも興味が……」と思ってしまうのもしょうがない。犬である。コーギーは羊を追いかける犬であるが、やっぱり人にはかわいがられたいのだ。
 まだ触れたことのない感覚にどきどきわくわく。それでもやっぱりコーギーの欠点と言えば脚だろうか。早いのは早いのだけれど、なにせ歩幅が小さいのである。
「かわいいのですが、これではあの弾幕勝負を乗り切れませんね……!」ま、まじめ……。
 カイはとてもまじめであった。
 キリッとしたコーギーのお顔につぶらな瞳。まじめな色が宿るかしこみのたかい感じのおかお。モフモフならではのゆるさもあいまる。
「【審判さん】!力を貸してください――」
 これ来るべきときなんか????????????
 アルカナたる審判はちょっと動揺した。「私です!私です!」と言ってる目の前の犬についてというよりは――こんな……こんなゆるふわなアレで呼ばれるとはちょっと思ってなくて――。
 なんとか説得には応じてというか、環境に適応してくれたらしいかの力を手に入れたカイは気を取り直して宴に出発!
 こんにちは、こんにちはと礼儀正しく行進ついでに、【アルカナ・グロウ】――【審判】の力を借りた。

「なんともちんちくりんで、かわいい犬よのう」バビュン!!! 「……はい?」

 妖怪たちが愛らしいカイの姿を見て和んでいた時である。
 弾丸か?というスピードでカイが走っていった。足が短くて歩幅が狭いけれど、走るのがあらかじめ早いのならば回転率をあげればいいのでは???という名推理がうまく働いたのである――!!
「えーい!!!」
「ウワーーーッ!!!!モフモフ!!!!」
 弾幕なんのその。みちみちに詰まった弾幕の間は転がって伏せて待機しまた大きく跳ねて走る走る!!そのまま助走ついでにチャーミングコギドリル!!!(体を回転させながら突撃することを言います)
「はわっ……な、なんという、モフモフ……」
「危ない弾幕ごっこはやめましょう! えい、えいっ」
「はわわわ……」
 もちもちの感触を抱きしめやすいよう、体をすりすりと寄せてやれば、こりゃたまらんと『龍神片』たちも体からどんどん骸魂を浄化されていくというもので。
 ――審判さんの「いいのかなこれで……」という意識が聞こえてこないでもないが、まあそれはそれとして。世界が助かるのでよいとされています。
 なんとも平和的な光景である。「さわっていい~?」とのそのそやってくる妖怪たちにも、あぶないからさがっててください~~!と飛びつきにいく。
 そしてまたある程度なだめたら、次は『龍神片』たちへ。我も……我も……と過酷な猟兵たちとの戦況に疲れた彼らが癒されて導かれればあら不思議。
「はあ、よかった。何とか切り抜けたようですね……」
 はふはふと口から舌を見せながら満足気なカイがいたのでした。ころころ転がる竜玉たちから、竜神たちも抜け出していく。少し休んだらまた、平和的に皆をなんとかせねばと――かわいい後ろ姿に使命を背負って駆け抜けていくのでした。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

インディゴ・クロワッサン
アッ にゃんこのアイコン依頼するの忘れてた!(メタァ)
「それはそれとして、UC使わなくても猫になれるのって実は便利だったり?」
いや、僕の基本形態は人間(ダンピール)だから大問題なんだけどね!
弾幕勝負かー……
「おっけー!弾幕なら負けないよー!」
UC:飛翔する黒の刃 を使いながら、拷問具:嘆きの金糸雀で弾の貯蔵はバッチリ!…あ。
「【気合い】で羽生やしておこーっと」
足りない機動力は【ジャンプ/ロープワーク/早業/地形の利用/空中戦】とかで補いつつ、弾幕や攻撃は【第六感/見切り/残像/空中浮遊】で避けるよー!
チョン避けしやすい、当たり判定の小ささに救われてるかもねー☆


豊水・晶
私、竜なのですがバレるとやっぱり積極的に狙われてしまうのでしょうか。うう、お腹が痛くなってきました。

皆さんどんちゃん騒ぎしているようですし、ここはお酒の力を借りて気分を上げましょう。その後は流れに任せて弾幕勝負でピチューンを量産します。手持ちの8個の竜珠で弾幕!制圧射撃!蹂躙!回避は野生の勘と幸運で。アドリブや絡みなどは自由にしていただいて大丈夫です。🐾


ティオレンシア・シーディア
◎△🐾

人の姿を保てない、かぁ…あたしだったら何になるんだろ?
…拳銃撃てない体にならなきゃいいんだけど。
尻尾があったら色々と便利かしらねぇ?

なぁに、弾幕舞踏?そーゆ―ことなら、あたしけっこー得意よぉ?
ゴールドシーンにお願いして●黙殺の○弾幕(マヒ・足止め・凍結等々デバフ特盛)を展開、あたし自身は格闘戦仕掛けましょ。
たしかにあたしは射手だけど…近接戦闘の心得くらいはあるのよぉ?
あたしのスタイルは〇ダンスと〇グラップルを合わせた〇見切り主体の格闘技…カポエイラ。そこにガンプレイを合わせたCQBがあたしの「嗜み」。
それじゃ、矢と刃と弾丸の嵐の中で踊りましょうか。
同じ阿呆なら踊らにゃ損損、ってね?




「もしかしてコードを使わなくても猫になれるのって、案外実は便利だったり?」
「ええ……でも武器が使えないのって結構めんどくさくなぁい?」
「お腹痛くなってきました……」
 最後の一人は竜神のため。
 豊水・晶(流れ揺蕩う水晶・f31057)は力は薄れたとはいえ立派な竜神である。今は――ぽてぽてのかわいらしいポメラニアンになってしまっているのだが。
 竜と何のゆかりもない姿になっているのは、やはり晶の信仰がかなり薄れているというのもあるからだが――今回の場合は幸運であることにも起因するだろう。
「まぁその姿じゃ、竜神だって誰もおもわないわよぉ」
「そうですかね!?そうでしょうか!?」
「大丈夫だよ~」
 ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は黒豹の姿でなんとかなるでしょというお顔もち。のっそりと歩きながら、小さめな体躯をしたインディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)と二人の歩幅と合わせている。
「でも確かに……僕も基本形態は人間(ダンピール)だから大問題なんだけどね!」
「私もねえ、普段は射手だからこーいう時つかえたらよかったんだけどぉ」
 しっぽのさきっちょをちょいちょいと動かしてみても、木の上に登って生きる器用な彼らもさすがに銃を握るためには骨格も作られていないらしい。
「え、えええーい!大丈夫です、きっと大丈夫!」ポメラニアンがきゃんきゃう!と鳴いて跳ねながら、頭に小さな器を乗せてやってきた。
「うん、何とかなると思ってるけど……それは?」インディゴがなにやら好奇心半分でとてとて歩いて尋ねてくるものだから。ええ、と頷いておそるおそる地面にふせて低い鼻に滑らせするする器を下ろす。
「飲めば……緊張もほぐれるかと思って……」
「お酒の力を借りるってやつねぇ」やめといたほうがいいんじゃないかなとは思ったティオレンシアである。でも必要なときもあるかもしれないので、まあそっと見守ることにした。
 何かあればにゃんぱらりと守ってあげればいいのだし――などと思っていたところで。
「あー、敵さん。こーんばんはー」
 ふゃ~おと明るくインディゴのあいさつに「あいこんばんは」と軽妙に返してしまった『龍神片』たちである。
「ばか!なに優しく返しとるのだ」
「はっ!!!???つい、かわいくて……」
「馬鹿者!!!はやくやつらを倒して龍につなぎあわせねば!!」
「それなんか……ムカデっぽい人間になっちゃいそぉな気がするのは気のせい……?」ティオレンシアの懸念はゴアの方向でした。でもみんなそう思ったと思います。
「ひいいい!」がぶがぶと急いで酒をのみこんで――なんとか気分をあげたいところである晶だった。心強い味方もいるし、なんとかなるだろうと思ってゆっくり息を吐く。
「あ、やっぱりやっちゃうんだねぇ。おっけー!弾幕なら負けないよー!」」
 ぶわ、と気合も込めて翼を背中に生やしたインディゴである。今の彼と言えば小さくて、空も飛べて、機動力も高い!ネコチャンスゴイ!
「まあ弾幕舞踏ってならこっちも得意だからねぇ」
 姿勢を低くしてぐるるとうなるクロヒョウ、ティオレンシアも元はといえばやり手の用心棒。得意なのはカポエイラで、そこにガンプレイを組み込んだCQBこそこの女の骨頂ではあるのだけれど。
 今日は構えた手足がもちもちの肉球に包まれているものだから四つん這いの姿勢でどう戦うかを考えていた。
 弾幕には――【黙殺】で。
「あわせるわぁ、よろしくね」「オッケー!」
 インディゴのゆったりとしたにゃあごの合図。【飛翔する黒の刃】はティオレンシアのコードと似ていて扱いやすい。黒剣が宙に浮かべば、矢と刃がその間を補うように密集する。
「え、ええ……」
 圧倒される『龍神片』さんたち。若干ヒキ気味なのも致し方あるまい――。
 1010本+850本だけでも光景で見ればかなりの密度なのに、そこにまだ加えるべき玉の数がある。それは――燃え盛るようにゆらゆらと毛並みが沸き立つポメラニアンこと、晶!
「『我らが敵を捉え、穿て』――!!」
 【護法の光】が煌めいたら、もはや一斉掃射どころではない圧倒的な質量による暴力が始まった!!
「う、うわああああああああ!!!!!やれやれ!!」
「やられる前にやるのだ!!!」
「あは、その心構えは大事かもねぇ」
 インディゴはするりするりと複雑な飛行を繰り出す。小さいからこそ密度の高いところをくぐってちょんちょん避けていくのだ。動きはゆっくり目だがこのぬるりと弾幕の隙間を縫う感じはネコチャンのおひげをもってしてできることであるからして。
 弾幕の貯蔵もばっちりであるので、あまり恐れもなくどちらかというと本当にゲームを楽しむようにしてかいくぐってくる!
「さぁ、頑張って避けないと――ああほら!」
「え」
 インディゴが敵に声を上げれば、それも致し方なし。
 剣の波をどうにかして拳で蹴り、足で蹴り、龍の顎でくらってかわそうとした『龍神片』さんたちをバオッ!!!!と襲ったのは光線である。
「よし!ピチュりましたね!」
「なぁにそれ」
「被弾したことを言うそうです」よっぱらったポメラニアンなので独特な言葉の意味も分かるらしかった。晶がべろべろになりつつもびゅんびゅん光線を飛ばして、前へ前へと進んでいく二人を援護する。
 ついでに妖怪たちのよっぱらい弾幕もボムる!ボムるったらボムるのだ!!視界が開けたティオレンシアも、被弾しないよう地面すれすれを複雑に飛びながら接敵!!
「さぁ、同じ地獄でも踊らにゃ損損ってねぇ――!」
「ごぶぇ!!!!!!」ネコパンチならぬジャガーパンチ。鋭いパンチングからのキック!!
「……なんか……いつもより力が入る気がするわぁ」
「あ、わかるなぁ。なんだか手先が不器用になったぶん、力が入っちゃうよねえ」
「普段どんな攻撃を仕掛けているのだお前たちは……」
 サラサラ……と消えていく『龍神片』さんたちと、余韻をのこして転がっていく竜玉を追いかける晶である。無事に中の竜神たちは助けることが出来ているらしいのを、ふすふすとにおいをかいでから確認!
「この調子でどんどんいきましょー!そーれっ」
「ギャーーーッ!!!!!????」シビーーーーーーーーーーーーッ
 それぞれの光を密集させた極大光線に消し飛ぶ弾幕!!逃げきれずに尽きる『龍神片』さんたち!!
「ふふふ!ほんとにゲームでもやってるみたい。そぉれ!」
「発狂モードやめて~~~~~ッ!!???」
 ど、どどどどどどど――っと台地が揺れていく。どすどすと突き刺さる剣のおびただしい量がすべてであった。弾幕過剰だよ!なにやってんの!!でも世界が助かりそうなのでOKです!!
「まぁなんだかしっかり戦えそうだし、この調子でいきましょぉか……」
 すっかり地獄どころか罪人処刑場じみてきた様相を横目に、ティオレンシアはがっつり腕で『龍神片』さんたちにチョークスリーパーをかましていたのでそれもそれでヨシ!

「いや……動物になっても……」
「猟兵って強いまんまではないか……」
「普通に格闘技しかけてくるではないか……」

 猟兵は生命の埒外なのでできることはなんでもできるのであった。『龍神片』さんたちの悲鳴と三人の弾幕での圧倒物量とテクニカルな応酬はまだまだ続く!!
 もはやこの状態、難易度で言うと狂気的――激しい密度とまばゆさに感動した妖怪たちが、やったれやったれと酒樽を追加しただった。ハイスコア目指していこう!(?)
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジャガーノート・ジャック
★レグルス

(黒豹――というには大分小さい。黒猫と言った方が相応しい風貌だろう)
真っ黒だな、ボンベイか?(データ検索しつつ)
君はノルウェージャンフォレストキャットか。

まぁ森か森でないかで言えば森だな。
お互い随分可愛らしい姿になったものだ。

――宇宙に飛ぶより仕事だ相棒。
元より獣と遠からず、『― ̄』もそう変わらない。

ああ、則ち
いつも通りだ、我々らしくやろう。

("F.F."発動。
450条超の雷閃を派手な軌道を描くようにしつつ
妖怪と骸魂どものどんぱっぱに負けじと閃かせる
【誘導弾×一斉発射×砲撃×スナイパー】)

(猫二匹が放つには随分派手で野放図な雷炎。)

上々。いかにも"レグルス"だ。(ザザッ)


ロク・ザイオン
◎レグルス

……。
これは。
(ヤマネコになるかと思いきや
随分小さい上にフカフカ優雅に長い毛足の)
の…うぇ…フォレストキャット
森か
そうか(満足)

おれはかわいくない
猫は愛らしいけど、おれは…
今猫だから…
おれは…???(宇宙)

ジャックはかわいいよ(確信)

キミは大丈夫か(獣の振る舞いが)
おれは得意
勘が大事だ
思うように、したいように、するといいよ
…『 』と、大して変わらない

(【ダッシュ、ジャンプ】高速機動で弾幕を躱し、敵を引きつけながら
「轟赫」九十五条を広げ【薙ぎ払い】
地の属性を延焼させた炎で塗り潰しながら
【野生の勘】で敵を囲い込み追い詰める)

星の扱いなら、負ける気がしない
早く終わらせて…おれも酒のみたい




 果たしてこの鎧をまとっていてなお、その「舞台設定」は「ロールプレイ」に大きくかかわるのだろうか。
 ――半分の疑問と、もう半分は好奇心。ちょっとばかりの余剰な警戒を頭に、ジャガーノート・ジャック(AVATAR・f02381)はどろんぱっぱの世界でそれっぽい姿を手に入れることになった!
「……真っ黒な猫だな。ボンベイか?」
 ボンベイ。黒猫と同じでは?と侮る勿れ、立派な猫種である。黒猫と違うところはいっぱいあるのだが、両手足についた肉球をサーチする金色の目がその証。じい……と手のひらを見ていればころんと後ろに転がる。
「柔らかいのに屹立するのには少し心許ないか」その通りです。
 立ち上がるのは出来るが長時間その姿勢であることはお勧めされない。真新しい感覚であった。視線は低く、しかしサーチする分には問題ない。むしろいつもよりもうちょっとだけ鋭敏になったような気すら感じる――。
「ジャック」 ヌッ
「うお」ビクッ
 視界を覆うほどの毛皮が横切ってきた。
 ぬうっとした動きと、ふさふさの長毛には見慣れた色をしている。咳払いの代わりに前足でぴるぴるぴる、と顔を拭いてから――ジャックはあらためて声色のあるじをみた。
「ロクか」
「おれだ」
 ざらざらの声色は猫になってもあんまりかわらない。ゔるるぁん……と鳴いたのはロク・ザイオン(変遷の灯・f01377)。
「その姿はノルウェージャン・フォレスト・キャットだな」
「の…うぇ…フォレストキャット」
 ヤマネコになると思っていたので、ロクとしてはこの高貴な長ったらしい名前も、小さいけれどふかふかな優雅の毛並みもあまり慣れぬ。ぐしぐしと毛づくろいしてみながら、ぽてりと横たわって体をうごうごさせてみた。
「猫の割には順応性も高く温厚で、優しい性格が多いらしい」
 スキャンは続く。この肉体もどうにか武器としてやらねばならぬ――鋼鉄の頭はちゃんと考えていたのだ――。
「北欧で太古より人と密なつながりのある猫だな」
「人と密なつながり……森か」
「……名前には含まれている」
 うなぎのようだと思った。
 ロクが体の加減をみながら背中でうねり、地面をずりずり進んでいく。テケテケついていくジャックのほうは確かにちょっとぎこちない。
「そうか(満足)」
 ――これぞ、順応性ッッッッッ……。
 頭の固さというよりは、いかに自分をその場で臨機応変に変える力があるかどうかな気がした。体を起こして乱れた長毛をきれいに舌先で整えていくロクを見ながらそう思うジャックである。
「まぁ森か森でないかで言えば森だな。お互い随分可愛らしい姿になったものだ」
 ロールプレイは続けないといけないので、いたって冷静に。黒い体でじいっとロクを見下ろしながら、わざとらしくため息をつくようなそぶりをした。しっぽが地面でのたうっている。
「おれはかわいくない。猫は愛らしいけど、おれは……」
 ロクはふと熱心な毛づくろいをやめて。
「今猫だから……」
 星空を見上げ――。
「…………………おれは……???(宇宙)」
「ロク――宇宙に飛ぶより仕事だ相棒」意識を戻してやろうと思って声をかけた。
「ジャックはかわいいよ(確信)」
 ともかく、まあ。
 もとより獣とそう遠いわけでもない。何も変わらないはずだし、支障はないだろう――。
「キミは大丈夫か」
「ああ」
「おれは得意」
「そうだな」
「勘が大事だ」
 ロクが何をいいたいのかはなんとなくわかる。
 獣のふるまいというのは難しいように思われるが、此度の姿がお互い親和性の高い猫でよかったと思っていた。これなら――「自由気まま」にはちょうどいいし。
「思うように、したいように、するといいよ」
 二人して音もなく、とてとてと歩いていく。目指すはにぎやかな宴会会場、どこもかしこもどろんぱっぱの大騒ぎ。当たれば大儲け負ければ大損地獄往き!
 そんな景色をつぶらな瞳で追いかけながら、さあいくぞとロクの長い尾が好奇心に揺れる。
「……『 』と、大して変わらない」
「『― ̄』もそう変わらない。――ああ、即ちいつも通りだ。我々らしく、やろう」

 獅子の子らは、走った。

「ぅううううるるるるるるぁあああああああァアアアア!!!!!!!!!!!!!!」
「フャーーーーーーー!!!!?????ネコチャン!!!!!!!!??????」
「くそっネコチャンが二匹もおるぞ!!!!」
「ネコチャンはずるいであろうが!!!!!」
 敵の動揺を視認。【轟赫】を発動したロクに向けられた注視が大きくぶれたのをジャックも見逃さない!九五の星々が宿る――それにまけじとどろんぱっぱ!さあいけやれいけ魅せてくれと言わんばかりに妖怪たちの弾幕と、『龍神片』による真っ赤な光球が迎え撃った!!!
「ロク!閃くぞ―――――!!」
「わかったッ!!!!」
 【"F.F."】。
 四五〇条を超える雷が派手に舞う。ち、ち、ちゅい――とまるで鳥が鳴くような音を立てたかと思えば激しく屈折!
「なぬ!?――うわっ」
「躱すのならば慎重にな。当たるのは大歓迎だが」
 飛びのけば追尾するように雷は角度を変え、相手を捉えた!!
 弾幕同士の間をすり抜けるようにして、しかし確実に逃げた相手を捉えるのはまさに猛獣の牙がごとく!!
 ――二人の合わせ弾幕、これを名付けるのならば【轟雷】などいかがでしょうか。
「いやあ、猫二匹があんな力あるなんてなぁ」
「バカ、猟兵だぞ!出来るんだよあいつらは」
「りょうへいってすげー!」
 どんちゃん、きゃらきゃら。二人を見上げて笑う妖怪たちの盛り上がりように、空を駆け巡る猫二匹がまるで彗星のような軌跡を残して。
「早く終わらせて……おれも酒のみたい」
「――上々。いかにも"レグルス"だ」ザザッ

 圧倒的な輝きを背ににゃんぱらり。
 きっとどの一等星よりも、一等星らしく夜に輝いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セリオス・アリス
双星】◎ねこ
動物になってもどこぞの剣持つ犬(?)みたいに咥えて戦えばいいと思ってたが…
小さな四つ足に小さな口
…困ったどうやっても持てねぇな?
とりあえず立派な爪はあるし
ひっかいたり果敢に挑んでみるけど
…くっダメージがちいせぇなぁ!
せめてアレスくらいでかけりゃ!
いやけど猫だって声が出せるんだ
歌ぐらい歌えるだろう!
アレスに咥えられ
乗せられた背にはしっとしがみつきながら
アレスを風の属性攻撃でサポートだ
ついでににゃうにゃう歌って身体強化
うおおおよっしゃ!
俺もやるぜやるぜやるぜ!
アレスが盾で止めた隙に
その鼻っ面に溜めた力を全力でぶつける!
喰らえ【星球撃】(猫パンチ)!

どーだ!猫もすごいだろ!(on背中)


アレクシス・ミラ
【双星】
◎立て耳の大型犬

犬のような狼のような獣の友はいるが
…まさか僕も同じようになるとは…
いや、姿は犬でも心は騎士
【天誓の暁星】…誓いとやるべきことは変わらない!
盾を背負い
相手になろうと存在感を示すように吠える
獣の友の戦う姿を思い出しながら戦ってみせよう
攻撃を見切りながら四足で駆け
爪で攻撃をいなす
セリオスへの攻撃は盾で防ごう
ダメージを与えきれない様子の彼の首根っこを咥え
一緒に回避
そのまま背中に乗せるよ
…黒猫が歌ってる…可愛らしいな…
っと、和んでる場合ではないか
風の援護を受け接近
噛みつき攻撃に対し盾を咥えてオーラ防御…『閃壁』展開
全力で受け止める!

ああ、見事だったよ
…あれ、また背中に乗るのかい?




「犬のような狼のような獣の友はいるが……まさか僕も同じようになるとは……」
「動物になってもどこぞの剣持つ犬(?)みたいに咥えて戦えばいいと思ってたが……」
 セリオス・アリス(青宵の剣・f09573)とアレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)――セリオスとアレスは星々がごとく輝く赤と青の一等星たち。
 セリオスが行こうぜ行こうぜとアレクシスに言えば、シンフォニアのわりに物理で殴ろうとする彼の護衛をするのがアレクシスの役目であるから。うんうんわかったわかったと付いてってのどろんぱっぱ!
「アレス誘っといてよかったぜ、これ……」
「うん、――僕もそう思う。セリオスがいてよかったよ」
 きらめく二人も世界の喪失には抗えず。あっというまにいつもの姿が可愛らしく変わっちゃって、二人のシルエットはどこへやら。
 立て耳の大型犬は、立派な前足とたくましい後ろ足できっちりと座ってみせる。しっかりとしたマズルと顔の中心にキュッと集まったパーツがキツネ顔のいけわんこ。これがアレクシスと言われたら、たぶん「ああ」と十人中八割は納得できるような姿であった。
 そして、片割れのセリオスといえば――愛らしい黒猫である。きらきらとした青の虹彩は幼い印象を与えるが、こちらもしなやかで品のある体つき。美しい尾っぽをゆるりとしならせて、手入れの行き届いた被毛は長毛なれど毛だまひとつない。いかにもロイヤルな仕上がりに、セリオスは心持ち満足げであった――そう、在る一点を除いて。
「……困った。これどうやっても持てねぇな????」
「うーん」
 ウニャ~~ン……。
 セリオスが武器を呼び出さずとも結果は明らかである。
 アレクシスが盾を背負えているのは、それは犬になってもしっかりとした体があるからだ。大型犬にしても体重はだいたい30~40kgほどはあるし、筋肉は被毛の浮き沈みから見てもたくましい。
 対してセリオス。筋力という点においては――猫の時でもまあいうまでもなくッッッッ……!!
「セリオス、大丈夫だよ。僕が守るから」
「せめてッ……せめてアレスくらいでかけりゃ俺もなぁ!!!!!!」
 ふすふすと嘆いてまるまる黒猫の背を鼻先で撫でてやる。
 アレクシスも今の己の姿に動揺はあるが、セリオスの嘆きようを見ていれば騎士らしくあらねばと変わらぬ誓いと己の心をより一層強く感じるというもので。
「――守ってみせる」
 ぐるる……と低くアレクシスが唸れば、セリオスも悟った。敵がいるのだ――。
「エッ……エモッ……」
「これがえもーしょなるというものッ……」
「とうとい……」
「お互いに畜生の姿になってもあるべき姿はかわらんのだなぁ……」
「いや戦う気あるか????あるんだよな?????」
 セリオスも思わずつっこんでしまったが『龍神片』さんたちも二人の在り方にはエモを感じざるを得なかったのだ……。半分はカクリヨの妖怪たちなのでひと同士の愛し合いにエモを感じざるをえない……。エモい……。
「戦う気はあるとも!!!」
「我らが試練だ!!!!」
「超えていけッ……超えていけッ……!!」
「――いいだろう」アレクシス、まじめであった。
 何やらよくわからぬが、敵がやる気であるというのならばアレクシスもまた戦わない理由がない。眼前に広がる膨大な弾幕を見ても、臆することはなかった。
 動物の姿で、確かに二人は当たり判定も小さいであろう。
 ゆっくりおちついて躱せばなんてことはないかもしれない。だけれど、しかし、もし、――万が一セリオスが被弾したらきっと、ただではすまない。
 【天誓の暁星】よ、今こそ煌け!
「僕が――僕たちが相手になる!」
 ガウッ!!!と鋭く吠えたアレクシスが思い描くのは、獣の友だ。四つ足でありながら戦場を縦横無尽に駆け巡り、勇猛果敢に挑む姿をイメージする。参考にできるものがあるのならば、問題はあるまい。この騎士とて心はいつでも騎士ゆえに守るものさえあれば適応するのは早かった!
「セリオス!」
「おうよ!」
 相手の弾幕が動き出す。ならばとアレクシスは素早くセリオスをくわえて背に昇らせた。背に背負った盾の中に滑り込むようにしたセリオスの安全は保障されたといってよい。
 ボ ッ、――と飛んできた拳と足の攻撃は跳んでかわす!
「む、!」
「早いが、僕のほうが早いッ!」ばしりとその手足を蹴り飛ばし、踏み抜き駆ける!止まれば被弾するが焦っても被弾するのだ。冷静な頭で弾幕のパターンを読み解きながら立ち回らねばとする頭に――歌が届く。
 うにゃ~にゃにゃ、にゃ、んな~……。
「エッ」
「かわいいな……」
 か、かわいい~~~~~~……。そんな空気でみんなの攻撃が止まっちゃうくらいであった。
 セリオスとて守られているばかりではない!ベシベシ、シュッシュと盾と背中の隙間からねこぱんちをしていてわかったのだが、あまりにもダメージが爪では少ないのである。
 ならばどうするかといえば――ここは彼の本懐である歌があるだろうと閃いた!

 やるぜやるぜ俺はやるぜ、やってるぜ!!!!!!!!!!!!!

 そんな闘志に満ちた気持ちが美しくも愛らしい声に乗っているような気がする。アレクシスは……和んでいた……。落ち着いてきた……冷静に……。
「――っと、和んでいる場合ではないか」
「グワーーーッ!!!!」 
 風の援護を受けて突撃!!両前足で鋭くアタック!!!
 吹っ飛んでいく一体を見送って「おのれ~~!!!かわいい声でまどわせおって~~!!!」と『龍神片』が織りなす弾幕が襲い来る!
 それを――『閃壁』展開!背中の盾を今だと顎で支えて滑りだせば、カァン!と鋭い音が響く。弾幕をかき分け、跳弾を巻き起こしてみせた!
「わわ、わ!!?」「ばっかもーん!どこを狙っておウアバーッ」
 フレンドリーファイア状態である。高密度の弾幕は敵の陣形を一気に崩し、そして――。
「す、すまなんだ、今なんとか」
「でぇええええええりゃあああああああああッッッ!!!!!」

 ――すッぱぁん。

 接近したアレクシスの背で、身をあらわにしたセリオスが飛び出し、しっかりと腰が入ったねこぱんちもとい――【星球撃】!!
 猫から……とてもネコチャンから出たとは思えないほどの衝撃を生んで……地面が波状に割れたのだった――。

「どーだ!猫もすごいだろ!」
「ああ、見事だったよ。……あれ、また背中に乗るのかい?」
「なんか落ち着くんだよなあ、アレスの背中」
「そっか、それはよかった」
 たかが猫と犬と侮るなかれ。
 星々はやっぱり星々なのである。爆発的な火力を誇って、さあ次やれ次と二人はのしのし進んでいく。戦え双星!その輝きがどんな姿でも変わらぬとみせつけていこうね!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱赫七・カムイ
⛩神櫻


元より人では無い私から、人の概念が喪われるとは面白いね

変じたのは三つ目の鴉
なかなか動きやすくて良いよ

……サヨ、出ておいで
変ずるなり穴蔵に隠れてしまった可愛い巫女を呼ぶ
おいで、大丈夫
美しい桜の蛇龍であるよ、サヨ
頭を撫でる手がないから、代わりに羽を擦り寄せる
噫、お酒はやめた方がいい
…首は一つであれ、恐らく本性は八岐大蛇に類すると口にはせずとも推測する
代わりにきみのすきな甘味を貰ってこようね

飛び交う弾幕を見切り躱して
風を斬撃のように起こしなぎ払い切断していく

噫、サヨ
上手、見事だよ
美しい桜が咲いていく
今宵は麗しき花見酒が楽しめそうだね

きみが龍でも蛇でも…私の想いはかわらない
サヨは綺麗なままだよ


誘名・櫻宵
🌸神櫻


どうして!
私は龍なのに
美しい桜龍に変ずるとばかり思っていたのに
こんな、こんな…桜の大蛇だなんて!
嫌だ、嫌
こんなのが私の本性と突きつけられたよう

穴蔵に隠れ嘆く
私は龍なのに
こうなるくらいならまだ猫や魚の方が

カムイ…優しい羽根の温もりに頭を擦り寄せる
あなたは美しい神鴉だこと
羽に包んで暖めてたんと甘やかして頂戴な
温くてやわこくて─美味しそうだわ
いっそ酒に酔ってしまおうか
でも、かぁいい神様が止めるから
言う事を聴いてあげる

甘いのがたくさん欲しいわ
燥ぐ妖怪達が少し恨めしい
皆、桜になってしまえばいいのに

─喰華

散れ、散れ
桜となって
神罰巡らせ宴を美しく咲かせてあげる

這いずる姿
あなたに嫌われたらどうしよう




 元より人の身ではないし、人の概念が消えることに何の影響があるのかといえば。――人に信仰されていたという実績が消えて、彼の神格を下げられるということなのだけれど。
「面白いね。なかなか動きやすくて良いよ」
 朱赫七・カムイ(約倖ノ赫・f30062)は、大きな鴉になっていた。
 三つ目の鴉である――奇形であるのがその神格の名残であろう。ふあふあの胸元も含めて全体的に毛並みは朱色で、つるりとした光沢は跳ぶための背に映えて美しい。
「――サヨ、出ておいで」
 てん、てん、と鴉が跳ねて前へと進む。
 この依頼に一緒に来たはずの愛しの巫女が見つからぬ――のではなくて、隠れてしまったのを見届けた。隠れる前に止めるのはちょっぴり無粋だ。かわいいものはみんな隠れたがるものであるからして。
「……」
「おいで、大丈夫」
 土が盛り上がった空洞がある。
 まだまだ宴の場とはちょっぴり遠い場所だ。草が生い茂る中、たまたま空いていた何かの巣であろう。そこに、誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)は滑り込んでとぐろを巻いていた。
 手があったのなら頭を掻きむしっていたかもしれない。
「どうして!」
 ――私は龍なのに!
 この依頼に来ちゃう前までは、櫻宵は己の姿の変容を予想していたのである。美しさには余念のない彼だ。愛想のよい顔を取り繕い、綺麗な言葉を並べて人の心を潤し、その肉体から精神までを芳醇にさせてみせ、食べごろはいつかと考えるような彼である。故に、この「世界」までもを惑わせると思って信じていたというのに!
 ずるずると這いずるからだがうらめしい。此度、立派な桜色の大蛇になってしまったのだ。――本性のままに!
「こうなるくらいならまだ猫や魚のほうがずっとマシだわ!」
「サヨ」
 ヒステリックな声が穴から響く。
 くちばしをつっこむような無粋な真似はしない。ただ、代わりに穴の前に座り込んだ朱色の鴉はいつもより柔らかな口調で言葉をかけ続けていた。まるで求愛のさえずりのようでもある。
「美しい桜の蛇龍であるよ、サヨ。噫、ごめんね。今は手がないものだから」
 羽を穴に差し込んでやろうにもやっぱり狭い。
 届かない理由を櫻宵に教えてやって、反応をじっと待っている。カムイは知っていたのだ。こういう時は櫻宵が折れるのを待つ方がよい。自分の役目は、折れた彼を受け止めてやることである。
 ――ずり、ずるり。
 おずおずと顔が出てきた。しぃいい、と舌がちろちろとしなるのも無理はない。とってもこの姿を見せるのは怖いのである。
 しかし――カムイからすれば、櫻宵の杞憂も愛らしいものだった。
「ほうら、やっぱり美しい」
 月の光に照らされた大蛇――ニシキヘビのような太さであっても長さがある。首をもたげれば鴉のカムイの背など追い越してしまうほど。瞼のない目はじいっとカムイを見つめながら、彼を囲うように動いた。
「おいで、サヨ」
 翼を広げて、まるで人間であったときのように腕を広げたつもりのカムイに、少し――反応を遅れさせてから、平たい顔をおずおずと羽根に近づけてすり寄る櫻宵であった。
「あなたは美しい神鴉だこと――」
「サヨのほうが美しいよ」
「そんな。温くてやわこくて─―美味しそうだわ」
「食べられては仕事にならないから、それは困るけれど」
「こんな気分ならいっそ酒に酔ってしまおうかしら」
 甘える蛇の頭をくちばしをの横面で撫でてやってから、そのフレーズにぴくりと鴉は止まる。
「――噫、お酒はやめた方がいい」
 首は今一つ。
 ……しかし、きっと本性は八つ首の大蛇であろうとなんとなくカムイもわかっていた。お酒など与えたらどんなあられもないことになるやら、きっと酔いから醒めたときが櫻宵の終わりかもしれない……危機である。たいへん、あぶない。
 出来る限り穏やかに伝えてみれば、「……言うことを聞いてあげる」と櫻宵も素直にうなずいた。カムイの真意が読めなかった間があってではあるが、愛しのかぁいい神様がいうのならばそれはそうであるからして。
「代わりにきみのすきな甘味を貰ってこようね」
 あやすように小さく鳴きながら、てん、てん、と三つ目の鴉は跳ねていく。
 ――宴の音色が随分近くなってきた。

「む、むむ!?面妖な!!!」
「そなた等がこうしたのだろうに」
 『龍神片』たちが弾幕を飛ばしてくる。
 びゅんびゅんと激しく光が舞っていても、カムイは大して動揺もしない。彼を護るように――あるいは締め付けるように――円を描いて囲う大蛇が不機嫌になっていくのはわかっていた。
 風を巻き起こせば弾幕は掻き消える。ならばならばとおかわりがやってくるのなら、それもまた何度も打ち消す。【桜守ノ契】は永遠だ――無効化のち反射の縁は花弁となって邪を祓う!
「ワーーーッ!!!??」
「はっはっは!いいぞいいぞぉ、そら、音楽だ音楽!」
 桜に遭う音楽を鳴らしてやろうと大盛り上がりの妖怪たち。けちょんけちょんにやられる『龍神片』たちには目もくれず、琴の音がギターとエレクトロな伴奏に乗り、そこにハイテンポなバイオリンまで割り込んでくる。
 なかなかやかましいのに、実になじむような心地であった――しかし、櫻宵からすればその光景が少し恨めしい。
 己の恥ずかしい姿を愛する神の前にさらけ出されて、なんとも気分はよろしくないのだ。やんややんやと騒ぐ何もかもが桜になってしまえばいいのに――!
「美しく咲かせてあげる」
 【喰華】。
 ぶわりと沸き立つ花弁は呪われて赤黒い。いつもとは違う色模様に、ああやはりと自分を暴かれたような気がしてたまらないのだった。敵の悲鳴などどうでもよい、ただ隣の鴉の心が気になって――蛇は様子をうかがうように見上げてしまう。
「わあ」鴉の驚きの声にびくりとした。
 ――美しい彼の桜に、悪しき己の色が混ざっていく。
「噫、サヨ」
 きらわれたら、どうしよう。

「上手、見事だよ」
「――え?」

 しゃらしゃらと響く音色も妖怪たちが誂えたものだろう。まるで、二人のために奏でられるような聞いたこともない音が二人の織りなす弾幕を彩っていく。
「今宵は麗しき花見酒が楽しめそうだね。妖怪たちも喜んでいるよ、御覧」
「あ、――」
 恨めしく思えた。憎らしくも思えた。自分はこんなにも嘆いているのに、楽しそうなものだから。
 しかし、カムイに導かれればその光景は一変する――皆が、己らで手繰った桜を見て楽しんでいるではないか。
「きれいだなぁ」
「こういう桜も悪かぁない」
「へっへ、一足先だ」
「お得だねぇ」
 魑魅魍魎が表情をやわこくさせて、それを見上げている。
 蛇の目の前に広がったのは、畏怖する彼らの表情ではなかったのだ。鴉がその頭を翼で覆ってやる。
「――サヨは、綺麗なままだよ」
 かわらないのだよ、と優しい温度で伝えていた。桜の吹雪が、ふたつを淡くかたどるまで。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リーオ・ヘクスマキナ


(灰毛の子供サイズの狼)
(横には成体サイズの赤毛の狼が。赤頭巾さん、カクリヨの姿……もとい。今回の依頼の姿である)

イメージと違うけど……あぁ。もしかして赤頭巾さんの普段の姿の「狼の耳」が切っ掛けかな?
まぁ、とりあえずこの姿って事で。行けるところまで行ってみよー!
(但し子狼の歩幅では遅すぎたため、赤頭巾狼の背中の上に乗せられている)

移動と近接戦闘は赤頭巾さんが担当
空を駆け、弾幕を掻い潜り、時にその爪と牙でバッサリザックリ
リーオはUCで生み出した短槍を弾幕代わりに発射する、「持ち運びできる砲台」役に徹する
幻覚はキレイな視覚効果のみに限定

……多分、その方がカクリヨの妖怪にはウケそうだしねぇ




 はてさて今回はどんな姿になるか。
 前回の依頼ではけものというより、人の姿をしたけものが現れる、みたいな感じではあったのだけれど。リーオ・ヘクスマキナ(魅入られた約束履行者・f04190)にはとんと見当もつかないままに現れてみた。
 たし、と地面に手を付けた自分の感覚にまず違和感。四つん這いになることに苦労がない――。
「わあ」
 ちっちゃい狼である。まだまだ幼獣の灰色は、ぽてりと座り込んで手足を見た。「イメージとはちょっと違うけど……わ、わわっ」
 座った体を横から何かにぐいぐいと押されている。存在を主張するような力の主をくりくりの目玉で見てやれば、燃えるような赤毛であった。
「……赤頭巾さん……?」
 いかにも。
 ふす~~……と深く鼻で息を吐いた彼女こそ、リーオの相棒赤頭巾さんである。普段の姿にはオオカミの耳をはやす彼女が起因で、なるほどこうなっちゃったのかと納得な感じ。
「まぁ、なんとかなるよねえ」
 出た、リーオの悪い癖。いいところでもある。
 ウゲ、という顔を赤頭巾さんがした気がした。普段はフードに隠されて表情が読み取り辛いが、オオカミとなった今は別だ。尻尾は力なく垂れさがり、耳は横に倒れて落胆しているっぽい。
「だ、だいじょーぶだよ。行けるとこまで行ってみよ!ね」
 ぽてぽて、もたもた。
 歩き慣れない感覚に戸惑いつつも、リーオは懸命に走り出してみるのに。

「ぜえ……ぜえ……ちょ、ちょっとまってもらっていい……あかずきんさん……ちょっと……」
「……」ンナフ
 幼獣オオカミの歩幅と成獣オオカミの歩幅、信じられんくらい違うので……。
 あまりにも進みの遅いリーオの体である。懸命に走ってはいるのだけどもはや今のリーオはへたれて地面に転がるけだまのようであった。
 さすがに――見るに見かねた赤毛の狼がそっとその背をくわえる。
「わ、わわっ!?わあ、――ありがとう」
 背中にポーンと放り投げて、もすりと着地。ふわふわの赤毛から落ち着く香りがして、子犬の体はおさまった。結局こういう役回りであるが、赤毛の狼も悪い気はしないらしい。
 感謝しなさいよねと目を吊り上げつつも、尻尾の先はふりふりとご機嫌め。しっかりと大きな背中に捕まって、リーオたちは宴の場にやってくるのだった。
「たのもーう」
「きおったな猟兵!」
「うわっ、親子モフモフ!」
「親子じゃないけどね!?」
 まあパッと見ての印象といえば愛くるしい子連れのオオカミであった。赤頭巾さん、やっちゃってください!
 【赤■の魔■の加護・「化身のハチ:幻灯磔槍」】。
 ふわ、と赤い灯を彼らの体に宿して、明滅する――妖怪たちが視線をむけた。
「なんだなんだ」
「手品か?火事か?」
「どっちでもかまうもんか!」
「おもしろければなんでもいいぞ!」
 ――まずつかみは上場といったところか。
「よろしくね、赤頭巾さん」言われずとも、と言いたげな返事は背中の震えで感じた。ぐるるるるる……と低くうなった赤毛が毛を逆立たせる。きらきらと月の光に反射した毛並みが金色に見えて、本当に燃えているようだった。
 きれいだなぁ、と思っていたのも束の間で――。
「うわああああああ~~~~~~~~~~~~」リーオの声が余韻を残しながら、赤毛のオオカミは豪速で駆けていく!!
 ばびゅんと衝撃波を生んで走り抜けるその姿は、赤い槍を八一〇本生み出し飛来させた!しきつめられた米粒弾幕に大穴を開け、そこがふさがる前に潜り抜ける。
 くるりんぱと体をひねってリーオが浮くなら、すかさず尻尾でからめとって背中に戻す。
「うおおお器用な!!!!ウブッ」
 そのすきを狙うならば殴りかかる腕をがぶり!!ばきり!!ごきり!!ばきっ、ごきごきききッ――なんかあかん音してますね。
 強靭な顎でどんどん食い破っていく赤頭巾さん!!赤頭巾さんここふわふわなとこです!!赤頭巾さん!?ゴア担当!!!?――という破竹の勢いでばったばったと倒していくさまは爽快そのもの。
「いいねえ派手だねえ」と嬉し気な妖怪たちはゴアも大丈夫でした。だって妖怪なので。
「赤は好きだぜ、かっこいいからなぁ」
「俺はあのちんちくりんもかわいいと思う」
「ひえええ~~早い早い~~~!!」リーオが固定砲台として赤頭巾さんの背でどんどん槍を生み出しては飛来させていく。球体の隙間を潜り抜け、敵を真っ赤に染め上げる赤頭巾さん、まさに野獣であった。
 あたり一面血しぶきなのか火の海なのか。悲鳴すら燃やす様なハイテンションの快進撃が終わるころにはぺんぺん草一つ残っていない。
「赤頭巾さん、どろどろになってない? 大丈夫」とその背に声をかけると、ブルルルルッと体をドリルにしてみせる頼もしい相棒。
 落ち着くころにはきれいさっぱり血のりもとれて、小さなリーオを鼻先で転がしてけがをしていないか入念にチェックするのである。
「くすぐったいよ」
 きゃっきゃと笑うリーオはきっと赤毛の心など知らないでいたのだ――。
 ふすー、と満足げに鼻を鳴らした赤毛がまた、灰色を背にのせて歩いていく。なんだかちょっぴり、やっぱりご機嫌なしっぽだったとさ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神狩・カフカ
【異鴉】◎

ま、おれはこの姿だよな
朱色の鴉姿でクロウの元へ
よォ、クロウの兄さん
なにシケた顔してンだ?よく似合ってんじゃねェか
おれはご覧の通りサ
そう見えるかい?ふふ、どうだかなァ
ははっ!人型のときはおれよりチビだもンな!
事実だろ?とにやぁり

おっと
神崩れが割って入るたァ何様のつもりだ?

おや、お膳立てしてくれンのかい?殊勝なこって
ンじゃ、期待に応えねェとな
おれは後方で戦局を見つつ攻撃は眷属に任せようか
炎の火勢を強めるように風を起こし
好きなだけ喰らっていいぜ
隙を見ては嘴で劈いてやろう
へェ、その身体も使いこなしてンじゃねェか
でも視野は狭いみてェだな
クロウに向く攻撃を遮るように目眩まし
貸しひとつな?なんてな


杜鬼・クロウ
【異鴉】◎
ファー付の黒外套着た眼光鋭い黒豹
カフカ→常桜鬼の過去を知る人で一方的に複雑感情。嫌いじゃない

元より俺は人ではねェとはいえ
…嘘だろ

最初は自分の姿に愕然
尻尾しゅん

よりにもよってお前と一緒かよ、カフカ!がるる…
名の通り鴉なンだな(見上げて
…お前って普段から自在に変化出来るのか?(妙に馴染む
また有耶無耶にする気かよ
まァ俺の方が大きくて格好イイな(マウント取り
ハ?てめ…

遮る様に敵来襲

俺が敵引きつけっからその間にヤれ

盾役
UC使用で邪神の頭部を燃やす
爪で仕留めて尻尾へ噛みつき
自分の尻尾ビンタで敵吹っ飛ばす
狩りはお手の物

お前への借りがまた増えたわ
その顔腹立つ

カフカにピンチ救われ面白くなさげに鼻鳴らす




「ま、おれはこの姿だよな」
 どろんぱっぱしたとて――神狩・カフカ(朱鴉・f22830)にとっては今の己の姿は納得だ。
 違和感のないなじみ深い感覚どころか、どこかのびのびとした解放感すら感じられる。
 朱色の鴉は大きな翼をはためかせて、共に出発した複雑な関係――と彼は言うのだけれど、カフカからすれば単純明快な相手とめぐり合う。
 それがどうして彼だと分かったかといえば、やはりその恰好であろう。
「よォ、クロウの兄さん」
「嘘だろ……」
 声をかけたのは黒豹へであった。しかしこの黒豹、なんと豪奢な外套をわかりやすく着ているのだ。尻尾はしょんぼりと垂れさがり、まるで色男の威厳も何もかもを見失ってしまったかのようなその背があまりにも印象的だった。そして、――ここまで落ち込むのも彼くらいだろうと思えたもので。
「げェ、――よりにもよってお前もかよ、カフカ!」
「なにシケた顔してンだ?よく似合ってんじゃねェか」
 がるる!と獰猛な吐息交じりに鳴いたこの猛獣こそ、杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)だ。
 もとよりこの身は人ではないとはいえ、確かに「ひと」という概念が消えるとクロウをはじめ「かみさま」にあたる器物も竜もなにもかも信仰を奪われることになる。
 よくよく考えれば一大事で恐ろしい異変のはずなのだが――それほど緊張感がない雰囲気に化かされていたらしい。喪失感が恐ろしく、畜生まで成り下がった己の体に嘆いてた時であった。
 やってきちゃったカフカに対しては、大変複雑なこころもちである。
 一方的な感情だとクロウにも理解があるから、……いやでも……だいぶ……泥沼ですよね……。
 しかし、そこは割り切る男。苦手な輩が相手でもここはイケメンに乗り切っていかねばと咳払いひとつ。
「――名の通り鴉なンだな」
「おれはご覧の通りサ」
 頭上でばさばさとして降りてこないカフカを、クロウがじいっと見上げた。
「……お前って普段から自在に変化出来るのか?」
「そう見えるかい?ふふ、どうだかなァ」
「――また有耶無耶にする気かよ」
 いっつもこうだ。
 クロウからすればまともに会話をしたいというのに、カフカはひらりと受け流していく。
 これでは気に入らねえ!とつかみかかっても交わされるし、仲良くしようと手を差し出しても握ってもらえない気持ちだ。う~ん絶妙に遊ばれているここち。かわいい女の子なら悶えていたかもしれないが、クロウだとそうはいかないのである。
「まァ俺の方が大きくて格好イイな」
 ふすん、とドヤ顔で見上げてやったクロウだ。マウントをとっちゃう。だって遊ばれるがわはつまんないのである。
「ははっ!人型のときはおれよりチビだもンな!」
「ハ?てめ……」
「事実だろ?」
 ふぁさふぁさと翼がはためく。一行に降りてこない鴉にいよいよ黒豹がしびれを切らしてとびかかってやろうかとうずうずしだしていた時であった。

「あ、あのー……」
「我らを無視して殺し合いそうなのはやめてもろて……」
「おっと――神崩れが割って入るたァ何様のつもりだ?」
 おずおずとやってきた『神龍片』様たちだってそりゃあちょっと察しちゃうわけである。
 なんだか絶妙に仲良くもならなさそうな二人の間にやってきちゃったぞ……という心地。居心地悪そうな感じの空気にカフカがぴしゃりと水をかけてやるように言い放った。
「な、なぬ!?何故我らの正体を」
「におうンだよ、お前さんら。――ひどいにおいがするぜ」
「くさくないやい!!!」ほんまか?とお互い嗅ぎ合いながら発破で無事着火してくれたようで。
 戦闘態勢が整いつつある敵陣には竜の顔がうぞり、うぞり、うぞり――。
 クロウもゆるゆるな空気にはややついて行けずに静観していたが、ひとつ、はぁあああ~~~~~~…………とクソデカため息を吐いたことでどうにかいろいろなものを飲み込んだ。
 のしり、のしりと大きな足で歩いていく。
「俺が敵引きつけっからその間にヤれ」
「おや、お膳立てしてくれンのかい? 殊勝なこって」
「っざけンな。そのほうが勝率高いからだよ」
 ――きゅいん、きゅいん、きゅいん。
 目の前に広がる光の粒の数は一体どれほどあるやら。まず放射線状にちりばめられる弾幕を地面を滑るようにして走りながら躱すクロウである。今注視はクロウにむいているのだ、カフカは少し身をよじるだけで弾には当たらない。
「――まァ腐っても神っぽいってとこか」
 体のすれすれを通っていく弾のひとつひとつからは確かに脅威を感じたカフカである。
「ンじゃ、期待に応えねェとな」
 【夕暮鴉】。
 ふぅ、と息を吐けば煙が満ちる。すると――どこからともなく鴉が飛び出るマジックショー!
 ぱぱぱぱぱぱ、っと羽ばたいていく眷属たちは獰猛な声を上げて風を大きく唸らせていた。
 そこに――クロウが【金蝶華】を乗せる!まさに夕暮れに焼かれる蝶々たちのよう!
 どんどん風に煽られた炎が燃え盛って、満足げなカフカであった。……もしかして、カフカはこれをずっと意識していたからかもしれない。
 燃え盛る熱い男であるクロウを、カフカという風が逆なでして余計に燃やすのだ。
 そうするとクロウは爆発的な火力を得ることに成る――彼らの織りなす弾幕が、かみさまくずれの弾幕をどんどん飲み込んで燃やしていく!!
「うわわわあちあちあちあち!!」服の端を燃やされてずったんばったん、『龍神片』たちが踊るように混乱を巻き起こせばそこを――。
「オラァッ!!!!」ヤクザキックならぬパンサーキック!!「ぎゃひん!」とすっ飛んでいく一匹を皮切りとして、クロウの尻尾がぐぐっと力強くしなった!
「狩りは!!お手の!!!物だっつーーーーーーの!!!!!!!!」
「ギャアアアアアッッッッ!!!???!!?」
「へェ、その身体も使いこなしてンじゃねェか」
「俺の獲物を盗るンじゃねえ!!!」
 ぐわぁお!とクロウがぼっこぼこに尻尾で足で、その爪と肉球パンチキックとで蹂躙していくのをつんつくと相槌のようにカフカがつついていく。
 ひいひい喘ぐ『龍神片』たちなどさながら餅つきの餅のようなもんで。べっしべしとはっ斃される彼らも――。
「ええいこのっ!!」
 せめてもの抵抗にと大きな頭部でぐわりとクロウに噛みつこうとした。
 横からの一撃である。完全に肉食獣であるクロウの視界からは見えていない――が。
「――でも視野は狭いみてェだな」
「ぎゃん!!?」
「ァあ゛!?」
 ばしゅ、と視界の端で光が瞬いた。クロウの視界はつぶれない、なぜなら狭い視界の範囲外だからだ――しかし、横から襲った竜の頭部はもろにカフカの弾幕を浴びてしまったのである。すってんころりん転がっていくそれを見送って、クロウは面白くなさそうに鼻を鳴らす。
 なんともいえねえ……。
 タッグだから正解のやりとりのはずであった。ここは漢、クロウ。ちゃんとありがとうは言うべきである……。
「お前への借りがまた増えたわ」
「おっ? じゃあまた貸しひとつな? なんてな!」
「その顔腹立つ」
 イエナカッタヨ……。
 なんだかんだ様々な事情抜きにすれば相性の良い神様どうしのはずである。
 この調子で宴の喧騒に呑まれてすこしでも……いい感じに……なれることを期待しよう。さあさあ弾幕勝負はまだまだ続く!余興が明けるまであっちもこっちも忘れてどろんぱっぱ!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティア・メル
ロキちゃん(f25190)と🐾

どろんぱっぱ!
んにっ
視界が急に変わってびっくりなんだよ
ころんと地面に転がって
んふふ、かぁいいかな?
ロキちゃんの方へと近寄って
うん、ロキちゃんもかぁいいねっ

この姿でも歌えるかなあ
惑飴を歌って、落ち着いて作戦
わわっ!お酒!
飲んで騒げばきっと何でも良くなるよ

ぐびぐびごくごく
ふふふーいつものロキちゃんとまた少し違って
かぁいいな
一緒に笑って鳴いては絡み酒
ロキちゃんロキちゃん、もっと構って
ぼくだけ見ててよ

いつかソーダ水のカクテルを振る舞うね
にゃはは!齧られた!ね、ぼくは美味しい?
ぼくもロキちゃんを齧っちゃおー
なんだか甘くて美味しいんだよ
酔いどれ2人でどんちゃんどんちゃん


ロキ・バロックヒート
ティアちゃん(f26360)と🐾

どろんぱ~
急に体勢が変わったら転がっちゃう
ティアちゃん?かーわいい
近くにおいでって手招き
撫でようとしたけどこの姿じゃ難しいかな

妖怪たち忘れるとこだった
弾幕は影の獣たちで一先ず受け止めて
まぁまぁ落ち着いて作戦でいく
おいしいお酒色々持って来たんだよ
もっと飲もうよ~

笑い上戸に絡み上戸
ほらほらティアちゃんも飲んで飲んで
歌に合わせ笑う
ううん、鳴く?ふふふ
ティアちゃんだけ見詰めてあげるよ

今は動物だけど
ティアちゃんはソーダ水のカクテルになってたり?
ねぇねぇ味見させてって君をかぷっと齧る
どんなお味かな?この間みたいに甘くておいしそう
わぁっ齧られちゃったあはは
益々酔っちゃうかも




「どろんぱっぱ!」「どろんぱ~」
 もとよりそんなに戦いがすごく好きというたちでもないし。ばしばしやるような熱狂さがあるかといえばそうでもなくって。
「んにっ」
 喜楽を得ることに特化した飴玉のように甘い中身の女の子、ティア・メル(きゃんでぃぞるぶ・f26360)はころりころりと毛玉になって転がった。ぷはぁと顔を上げれば自分の姿を改めて認識する。どうやら真っ白な翼なのに、おなかの方は美しい桃色になってしまったようで――モモイロインコと呼ばれる種類の鳥の姿にだいへんしん。
「わぁ~……本当に変わってる!びっくりなんだよ」
 ぴるる、ぴるるるる。愛らしい声で鳴いてみて、てんてんと左右に跳ねてご機嫌さん。
 ティアが楽し気に踊りながら一緒に依頼にやってきた彼の姿を探してみることにした。
「んに?」
「あー、ティアちゃん?か~わいい」
 のっそりのっそり。やってきたのはメラニズムの大きいライオン。
 黒化個体である。鬣も黒く、しかしスッとした目鼻立ちからは少々女性的な印象も感じさせられた。夜の光と空気に包まれて、真っ黒だった輪郭がうっすらと見えていく。
「おいで、おいで」
「ロキちゃん!」
 ロキ・バロックヒート(深淵を覗く・f25190)もまた、神であるゆえに人の姿を失えばその権能も位がさがり、畜生――とはいえ百獣の王たる冠を被ったけものになった。
 撫でてはやりたいけれど、あまりにも体格差があって大きな手ではティアをつぶしてしまいそう。ちょんちょこちょんちょこ跳ねて近づいてくるティアがご機嫌にお歌を歌いながらぴいぴいと甘えてやってきた。
「ロキちゃんも、ロキちゃんもかぁいいねっ」
「ほんと~?」ぐるぐると喉をうれしさで鳴らしながら、ロキが地面に伏せる。かぁいいねえ~とほほを毛づくろいされてくすぐったい。お返しに鼻ですりすりと羽毛をかき分けると、くすぐったいよところころり。飴玉が転がれば獅子も機嫌よく微笑むというもので。
 くるくるぐるぐるのど鳴らして、お互いに可愛らしい姿を喜び合いながら楽しんでいた時である。
「……ふ、ふかふか……!!!!!!」
「ふかふかがふかふかしておるぞ!!!!」
「このモフモフ度はもはやふかふか……!!!」
「ん~??」
 二人してさえずりぐるぐるのどを鳴らし構いあっていたら、どうやらいつまでたっても次の猟兵がこないからとやってきた『龍神片』さんたちである。
「お、おおお……このモフモフと戦わねばならんのか……!!?」
「我らとてふかふかしたいが……!!!???!!?」
「戦わなくていいんじゃないかなぁ」
「えっ」
 ティアの素っ頓狂とも思える提案に、思わず『龍神片』さんたちもびっくり。
「あなたたちは踊って、楽しくやればいいと思うんだよ」
 ぴるぴる、ぴるる。
 美しい声色で歌いながら、くるくると桃色が回転する。【惑飴】はどんどん『龍神片』さんたちの頭の中をどろどろのとかして、それでいいのかなあと思わせていくのだ。
 なんか……戦わないといけない理由が……あったきがするのに……。
 なんだっけ……。
 なんだか主様が……。
 何か言ってたっけ……。
 やわやわでぐずぐずに溶けていく思考をさかのぼることも難しい。
 ぐるぐると淡いクリーム色と桃色にかき混ぜられた脳は何も考えられなくって。
「うんうん、そうそう。せっかく音楽もあるんだし、踊っちゃえばいいんじゃな~い?」
 ロキがそれを助長する。ひげをしっかり広げて【影の領域】が彼の腹の下からずるずる湧き出てきた。
「踊る相手が欲しいなら、ど~ぞ」
 ゴロンと寝ころんだ獅子はモモイロインコの相手しかしてやる気もなくって。 
「わああ」
「もふもふだ」
「もふもふがいる」
 惑わされた『龍神片』さんたちはあっという間に獣たちに飲み込まれて幸せそう。
 うんうんよかったなんて二人で見合わせて、奇妙な光景に「なんだかよくわからないけどおもしろい!」と妖怪たちがきゃいのきゃいののどんちゃん騒ぎを始めていたのだった。
「うわ、びっくりしたぁ。妖怪さんたちも落ち着いてぇ」
「忘れるところだった」わすれないで!かみさま!
 ティアのさえずる歌声がどんどん妖怪たちのボルテージをとろけさせていく。無邪気な支配はあっという間に浸透して、どの妖怪もへべれけよりも甘い蜂蜜に漬けられたようにとろんとしたお顔でその場に座り込んだりしているのだった。
「まぁまぁ、みんな落ち着いて。美味しいお酒いろいろ持ってきたんだよ~」
「わ、わっ、お酒!」
「安いお酒いっぱい飲むより、こっちのほうがいいよぉ。さあ、のもうのもう」
 ロキの毛皮からころころからんからん。割らないよう気をつけながら、彼の黒い鬣からあふれてくるのは秘蔵のお酒たち。
「安いお酒は悪酔いしちゃうから、ね」
 ――さあ、乾杯乾杯。宴にかんぱーい!

「んふふ、ほらほら、ティアちゃんも飲んで飲んで」
 ――ぐびぐびごくごく。
「ふふふー、いつものロキちゃんとまた少し違って」
 ――ぐびぐびごくごく、しゅわわわ。
「かぁいいなぁ」
 リキュールを炭酸で割った果実の簡易的なそれを、妖怪たちから借りたお猪口にちょいと入れてやればそれで今のティアを酔わせるには充分であった。 
 いつもの躰よりも小さい。酔いが回るのはあっというまで、ライオンのまっくろふわふわなお腹でとろっとろにとろけるインコがいた。
 実はティア、はじめてのしっかり飲酒である。これがお酒の味でよさかぁ~なんて思いながら身をゆだねているのだ。一緒に呑んでくれる人がロキでよかったかもしれない。
「ロキちゃんロキちゃん、もっと構って」
「んふふ~わかってるよ」
 じいっとティアを見つめて、美味しいお酒にまったりしだしてまどろむ妖怪たちも、獣たちに覆われてすっかり気配も感じなくなった神様もどきもどうでもよくって。
 ロキのキラキラとした太陽のような瞳にはころころころがるティアのまんまるとした姿が映る。口を開けたらひとのみしてしまいそうだから、口は閉じたままにしていたけれど。
「ねえねえ、ティアちゃん」
「なぁに?」
「ティアちゃんはソーダ水のカクテルになってるの?」
「うふふ、どうかなぁ」
「味見させて」
「にゃはは!齧られた!」
 歯は立てないようにして、しゅるっとした眺めの尾羽を口で食む。こころなしか甘い香りがして、ロキは耳をぴるぴると震わせた。本当に食べたらこの鳥は――いいや、ティアはこの前と同じようにやっぱり甘くて、しゅわしゅわでおいしいのかもしれない。
「ね、ぼくは美味しい? ぼくもロキちゃんを齧っちゃおー」
「わぁっ、齧られちゃった。あはは」
 益々酔ってしまうかも、なんて。
 きっとそれは――知らず知らずのうちに黒獅子も甘ぁい彼女の歌声に緩まされたからかもしれないし。この緩やかなどんちゃんさわぎに気分がもう酔っているからかもしれない。
 獣どうしの緩やかな時間はとっても甘くて、みんなでふわふわ夢のよう。美味しくてあまぁいひと時を、どうぞ「本番」まで楽しんでいて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

久澄・真
【五万円】◎🐾

崩壊するからこそなんじゃねーの
最後の晩餐ってやつだろ

クハッ、安直すぎねぇか
蛇はコイツだけで間に合ってるっての
腕に絡まる死霊蛇竜を見ながら
それでも確かに分からない事は無いと内心で

お前はー…なんだろうな

蝙蝠と思いつきはしたものの
さっき安直だと言った手前口にするのは憚られて
兎にでもなって捕食されてみるか?
と軽口で返すのみに

結果が分かればへぇと面白そうに嗤うのみ
でもまあ
何になろうと結局欲に塗れた「人間」って動物が一番“俺らしい”
さっさと戻るとするか、ハニー?

死霊蛇竜と死霊騎士に仕事させ
自分はいつも通り高みの見物
済ませてデートの続きと行こう
こんな形じゃ、煙草も吸えねぇしな


ジェイ・バグショット
【五万円】◎🐾(蝙蝠以外)

世界が崩壊するってのに宴会とは呑気なもんだな

お互い何になるか予想でもしてみるか?
真はアレだろ、蛇じゃねーの

使ってる死霊のイメージを安直に述べる
まぁ何になっても圧強そうだもんなァ、お前

自分のことは見当もつかない
答え合わせには納得するかもしれないし嗤うかもしれない
あぁ、そうしよう
その姿も悪くはないが、ダーリンの顔も見たいしな
いつもの軽口

複数召喚した拷問具『荊棘王ワポゼ』は自動で宙を飛び回り、敵を見つけては高速回転により傷口を抉る

影のUDC『テフルネプ』による騙し討ち
自在に形を変え敵を捕縛・範囲攻撃


久しぶりのデートだろ?酒の一杯でも飲もうぜ
いつものように軽口を交わしながら




「世界が崩壊するってのに宴会とは呑気なもんだな」
「崩壊するからこそなんじゃねーの。最後の晩餐ってやつだろ」
 ここまでやってきてどろんぱっぱなことに成る前に。
 久澄・真(○●○・f13102)とジェイ・バグショット(幕引き・f01070)はお互いがどのような姿になるのかを、まるでお互いの手牌から作られる役を予想するようなやり取りをしていた。
 ジェイは、真ならば蛇になるのではないかと予想している。
 ――それを聞いた真は安直すぎると笑ったが、内心わからないでもえない。
 真はジェイから蝙蝠を予想したが、――それこそ安直だから、何も言わないでおいていっそ兎にでもなって食われてみるかなんて脅かす。
 ジェイを食えばどうなるかなんていうのは、真のずる賢い脳があればすぐにわかるだろうに。「笑えない冗談だな」なんて鼻で笑ってやったのだ。
 ――まぁ何になっても圧強そうだもんなァ、お前。
 ジェイの軽口に「うるせぇよ。これでも営業じゃいいスマイルすんのよ」なんて軽口が還ってくるものだから、それには――知ってるよとは言わないで、初めて聞いた様な顔をしておいたのだった。

 それが、ちょっと前までの出来事である。

「へえ」
 ジェイの躰からは苦痛がとれなかった。
 モズである。ズグロモリモズ――スズメ科カラス目で唯一毒を持つ鳥だ。
 雄であるために普段のジェイからは想像できないほど鮮やかな色を体に持っている。きらきらと輝くがあまりにも凶悪な毒がその鳥には潜んでいたのだ。
 筋肉や羽に猛毒を持ち、人間を羽一枚で殺してしまう。
「――病の権化のわりには随分可愛らしいな」
 羽ばたいてみて、飛行能力に問題がないことを悟る。
 いつもより長時間体を動かすことに支障はなさそうだ。かなり今のジェイは当たり判定が小さいが、脆さは平時の倍以上。しかし病がすべて今は「毒素」となっている。
 体は軋むように痛いが、――動きすぎて虚弱に陥ることはなさそうに思える。
 ジェイは、此度連れてきた真に潔癖のきらいがあってよかったと心から安堵する。ベタベタとした接触を好まぬ距離のよくわかった男だ。すれ違いざまに殺してしまうことは考えられないのであった。
 さて、そんな真はどんな姿かと夜目に疎い目で手繰る。
「ああなんだ、狐じゃねェか」
「なんだとはなんだっつの。マジで食うぞ」
「腹壊すからやめとけッて」
 真は、美しい真っ白な狐になっている。
「強欲の象徴だ。カラス、タヌキ、クモ、ハリネズミ――ンでもって、狐と鬼」
「おいおい時代遅れの宗教トークは結構だ。それ以上言うなら金とんぞ。被受講料」
「時代遅れの世界だぜ。そうなっちまうよなってハナシだよ」
 とはいえ、どちらも嗤っている。
 狐といえば化かすのだ。人を誑かし、化かし、唆し、そして自分だけ儲けておいしいところを食べていく。成程まさに真らしいなと彼も納得しただろう――ただ、このまぁるい手では葉っぱをあたまに乗せることはできても、札を捲ることはできまい。
「――でもまあ、結局『人間』って動物が一番“俺らしい”」
 たとえ葉っぱを金に換えることができたとして。
 そんなものは、もう何度も人間の姿でやってしまっていることだから。
 にたりにたりと獰猛な牙をみせて笑う真には、ジェイも薄く笑みを返した。
「その姿も悪くはないが、ダーリンの顔も見たいしな」
「おや。じゃあ答えは知ったしさっさと戻るとするか、ハニー? いつまでも同じクイズ番組は飽きるだろ?」
「ああ。チャンネルを回す――行くぞ」
 モズはけして、キツネによりそうこともない。
 彼の上を高く飛んで、その背中に影を落とした程度だ。
 そしてキツネもそれを一瞥することなく前へ前へと歩いていく。
「おっ!?」
「新しい動物――いいや猟兵だ!!」
「うるせぇなあ。お前ら倒して金になるなら、俺はどうでもいいんだけどよ」
 真が足早に歩いていれば立ちふさがるのは弾幕と『龍神片』。この体で唯一困ることといえば、お気に入りの煙草が吸えないことだ。
「ったく――おたくら、俺の時間に幾ら払ってくれんだか」
 苛立ちは尻尾の膨張がすべてである。ぶわりと毛を逆立たせるが、それでもなお控えめな怒りの表し方は真の冷を示していた。

「命で払えや。あとで金に換えてやるからよ」

 【リザレクト・オブリビオン】。使うカードはこれきりで充分であった。
 うぞりと呼び出される死霊の騎士と蛇竜は悍ましい力を纏いながら、キツネの影より湧き出てくる。何ともつかぬ叫び声をあげながら仕事に出る彼らにかけてやる言葉はない。
 ――真が前に出るはずがないのだ。
「ハヤニエっつーのは、これでいいか?」
「上出来だ」
 二つの影がとびだしていくのを、当たり前の結果があるだけの戦場から興味を無くした真の前に拷問具たちが降り注ぐ。
 ジェイの――【大殺戮の夜】が繰り出された。
 真っ赤な満月が大きく光り、宴の場を紅く朱く染め上げる。妖怪たちがその面妖さに驚いている間に、叫び声も封じるように複数呼び出された拷問具『荊棘王ワポゼ』が空を舞えば、激しく敵を轢き殺す。逃げようとするのならば影のUDC『テフルネプ』が地面に引きずり込み、その悲鳴すら飲み込んで竜玉だけを取り残していくのだ。
 輝く前に弾幕を弾けさせる。届くことのないエネルギーたちは光の粒子となって消えていく。まるで、暴かれたように――真の真っ赤な目の前で砂のように空気に溶け込んでいった。
 今宵は静かな殺戮である。ジェイの羽ばたきと同じくらいに、誰も、何も――宴の音しか聞こえないほど。

「実にスマートな仕事ぶりだった」
「お褒め頂き光栄だ、ダーリン」
「そンじゃあデートの続きだ。煙草が吸えねえとイライラするしな」
「おいおい、久しぶりのデートだろ? 酒の一杯でも飲もうぜ」
 ――唇でキスでもすれば死んでしまいそうな毒を孕んでおいて。
 ひらり、ふわり。
 まるで空を泳いでいるかのようにゆったりと上空を飛行するジェイの影を追うようにして、真はさらに歩んでいく。けして急ぎはしない。急いで止めたいのならばそういう誰かがやればいいのだ。真は、報酬金以上のことはしない。かわりに、確実な「解決」へと足を進めていく。
 いつものような軽口が二人にはBGMだ。二人でくつくつと肩を揺らしながら、宴の中に紛れていく。
 二人に必要だったのは、歓迎の嵐でもなければ奏でられる旋律でもないし、美しい弾幕でもないし、浴びるほどの酒でもない。あればいいのは「金」なのだ――それぞれに切り離せないものがしかとあって、化かされるほど浮かれちゃいない二人の心は、いつだって数字のように不変そのものだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

牙・虎鉄
◆シャーロット(f14294)と

【変身→虎】

~前回までのあらすじ~
武力はつよつよだが女性にはよわよわな🐯
シャーロットの言葉に成程と頷き修行の為に参加を決めたが……?
どうなる牙・虎鉄!
~あらすじここまで~

(【捉月】で回避即反撃の虎拳を叩き込みつつ
シャーロットを載せ駆ける)
今の処、君を見ても乗せても支障ない、極めて順調だ
(🐯残機:🐯🐯🐯🐯🐯🐯🐯🐯)

君のお陰で戦い易い迄ある。
この調子で行きたい処……
(しがみ付かれる)
(🐯🐯🐯🐯🐯🐯🐯💥)

いや、まだこれしき……
(脳裏を過ぎる素肌の触合い)
(🐯🐯🐯🐯🐯💥💥)

……待てシャーロットやはり降り(鼻血噴射)


シャーロット・プラチナム
◆ふーちゃん(f31118)と!

【変身:オッドアイの小さな白猫】

ふーちゃんって女の子が苦手なのよね。
動物姿だったら大丈夫なんじゃないかしら!名案!

虎になったふーちゃんの背中に乗ってー……わ。背中ひろーい。
敵の攻撃をふーちゃんが避けやすいように、背中の羽からいっぱい撃つわ!牽制!射撃!

なんだか楽しいかもっ。落ちないようにぎゅっとしがみつくの。
……あれ?
ねえねえふーちゃん、わたし思うのだけど!
この姿でぴったりするってことは素肌同士のふれあいってことになるわ!たいへん!

……あ、鼻血。(だめだったかあ、の顔)

※アドリブ歓迎




 ~前回までのあらすじ~
 武力はつよつよだが女性にはよわよわな🐯
 シャーロットの言葉に成程と頷き修行の為に参加を決めたが……?
 どうなる牙・虎鉄!
 ~あらすじここまで~

 丁寧なあらすじがついていたので引用しました。
 さて、――牙・虎鉄(拳鬼虎・f31118)はあらすじ通りに一介の武人である。
 高潔の佇まい、理と仁をわきまえる眼、まだ若き体には過ぎた夢と野望を拳に乗せ、願うは己が身での鉄血機甲撃滅を掲げた険しき道を歩む少年である。
 因みに齢にして十五歳。そりゃもう、ピチピチなのだ。思春期である。
 ――虎鉄は己の身に与えられる試練に、ひとつも憶さなかった。
 己の姿を忘れても、掲げた信念は変わらず。体ではなくて心で考え、いかなる凶悪と対峙しようとその拳がある限りけして彼の姿勢はあるがままにあれる。
 故に、今――地面を四肢で蹴り、たくましき若い虎に為っていたとてその威力はかわらなかった。
「げぶっ!?」
 『龍神片』の頭を大きな足で踏みつけてにゃんぱらりのどろんぱっぱ!
 相手が大きな竜の頭で噛みつこうというのならばその前にうんと早くとらぱんち!剛腕である彼の力はこの姿でも変わらない。吹っ飛んでいく敵の体を盾にして弾幕はしのぎ、破竹の勢いで前へ前へ!
「わ、すごいわ、すごいわふーちゃん!」
 ――そんな彼の背に乗っていたのが、シャーロット・プラチナム(うたうしろがね・f14294)であった。
 今の彼女は愛らしい白猫になっている。オッドアイの瞳をゴキゲンに細めたり、時折激しい戦禍に目を瞬かせたりしながら虎鉄の背でにゃごにゃごとゴキゲンにしていた。水晶でできた小さな羽が彼女の武装である。【白銀遊戯】で虎鉄が進みやすいよう、しっかりとサポートをしていた。
 琉球硝子ブレスレットのヤドリガミであるシャーロットは、さして己の体が猫になることに抵抗はないらしい。もとより人間に憧れて、その感情すら――なりきれないとはわかっていても――「人間になりたい」と願う彼女である。
 その概念や目的が失われることを危惧してか、しないでか。この依頼には虎鉄を連れてやってきたのだが――存外、今のところは大変たのしいようで。
「全然大丈夫そう!よかったぁ」
「嗚、――今の処、君を見ても乗せても支障ない、極めて順調だ」

 🐯残機:🐯🐯🐯🐯🐯🐯🐯🐯
 SPELL:🐈🐈🐈🐈🐈🐈🐈
 
 二人のコンビネーションを前には敵の弾幕も心なしかたじたじ。
「ええい!あの虎と猫を堕とせんのか!」
「ムチャいうな我!」
「お前も我!!」
「お前も!?」 なんだかちょっと混乱してきましたね。
 シビビビビビビビと飛んでくる水晶片をさすがにかわしきることは当たり判定大きめの『龍神片』さんたちも難しいご様子。横にちょんと避ければそこにトラパンチがつきささって即ゲームオーバーの所謂オワタ式というやつで。
「なんじゃこのクソゲーーー!!!!!」その通りです。
「そういう仕様だ」
 ルールに文句を云う等情けないことこの上なし。
 ぐるると喉をうならせて、険しい顔でトラは次の獲物にも掌底(とらぱんち)!!
 ドウッ、と衝撃波を生ませるような強い風圧を感じて――やはり背中に乗ったシャーロットはゴキゲンなのだった。
「君のお陰で戦い易い迄ある」
「ほんと!?」
 うれしいわ、たのしいわ!
 ぎゅうっと子猫が虎の背中にしがみついて――。
「この調子で行きたい処……」
 空中を駆ける虎の動きが固まってしまった。
 フリーズした四つ足に、信じられないほどの――電流のような衝撃が走る――!!!
 ああ、忘れること勿れ……この武人、牙・虎鉄はムチャツヨなのだが――あくまでまだまだ青少年なのであった。
 
 🐯残機:🐯🐯🐯🐯🐯🐯 X ピチューン
 SPELL:🐈🐈🐈🐈🐈🐈
 
 シャーロットとしては。
 この虎鉄とともに依頼に行けるのを心よりうれしく思っているのだ。
 虎鉄は女性が苦手である。同じ年ごろのような姿をしたシャーロットのことも過度な接近を拒むほどだ。いや、感覚的には虎鉄くんはただしい。そうですよね!!!??!?女の子がべたべたするほうがちょっとアレじゃないですか!!??!!?いやでも女の子はかわいいのでいいのか……。
 そう、シャーロットはかわいいのだ。
 とんでもねえ経歴とかとんでもねえコードをお持ちだけれども、非常にかわいい女の子である。無邪気で、無垢で、好奇心いっぱいの「かわいい」を水晶にしたようなキラキラな女の子なのだ。やっぱり自覚すべきなのはシャーロットちゃんじゃないですか???!?
 かわいい女の子が、年ごろの一番元気なころの男の子に近づいちゃうと、どうなる……???
「――あれ?」
 あれじゃないが。
 明らかに挙動が処理落ちしだした虎鉄を見て、シャーロットも不思議に思う。
「あ! ねえねえふーちゃん。わたし思うのだけど」
 ――この姿でぴったりするってことは素肌同士のふれあいってことになるわ!たいへん!

 どうしてそういうことをいっちゃうんですか!!!?!!?!?!?
 青少年の想像力をナメてはいけない。今、虎鉄の中には様々な映像が通り過ぎて行ったのだ――。もとから鍛えている少年である。筋肉もしっかりついていて、脳には血流も栄養もめぐりやすい。わかりますか? とても考えるのがうまいということです。
 ――彼の頭の中には――とても――ここでは記載できないような――アレソレがめぐったんですけども――。
 でも、青少年だししょうがない。虎鉄事態とてもまじめなのだ。武人として励んできた彼は、その拳でありとあらゆるものを屠ることはできても――。

  🐯残機:🐯🐯🐯🐯🐯x x ピチュチューン
  SPELL:🐈🐈🐈🐈🐈

「……待てシャーロットやはり降り」ンブッッッ
「あ、鼻血」

 女体には、勝てなかったよ―――――――――。
 ぐらりと墜落する虎の体にぺったりくっついたネコチャンである。ちゃっかり虎鉄が地面とのクッションになったあとも、残念そうな顔で額をぺちぺちしてみたりしていたのだった。
 修行のこんてにゅー、できそうですか? ざんきいっこで……。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

花剣・耀子
◎△
何を以てヒトとするか。
何をヒトと定義するか。
……なあんて、哲学的なおはなしではないのよね。
わかっているわ。あたしはくわしい。
だいたい、こういう時は逆らったって無駄なのだわ。

真っ黒い毛並みに青い目玉。
ピンと立った耳に長い尻尾。
今日のあたしはふつうのねこよ。にゃーん。

安置を探すのは慣れているのよ。
今日はせっかくねこなのだから、身軽に気楽に跳ね回るわ。
……ねこの視点は面白いわね。
くるくる回りすぎたら目を回しそう。
このまま遊びに行ってしまいたい気分だけれど、
お仕事はちゃんとしてゆきましょう。

剣がなくても爪があるわ。
きらりと白く光らせて弾幕勝負。
シュッと隙間に滑り込んで、お返しに花を散らしましょう。


玉ノ井・狐狛
◎🐾

ふだんの手妻に自由が利かないのは一大事だよなァ
にもかかわらず、その状況を遊びに組み入れようっつうスタンスは気に入ったぜ
ちょいと混ぜてもらおうか

弾幕遊戯への主な攻略法はざっと3つ
把握する、記憶する、そして計画する
つっても初見の一発勝負じゃ、記憶も計画もあったもんじゃない
だから把握――つまり弾の発射位置・数・軌道・特殊性能その他を見切ったあとは、

気合避けってヤツだな!
なァに、弾と弾の隙間が当たり判定よりデカけりゃ、理論上はどうにかならァ

ならねぇ分は……ボム(UC)だぜ!
敵UCによる属性場を、こっちの術に利用させてもらう

アタシぁ、化けるより化かすほうが得手なんでな


鳴宮・匡
◎△
【獣:イルカ】

何この…………なに?
え、俺これ銃どうやって撃つんだ……???

いや、落ち着け
このくらいで仕事を仕損じるようじゃ二流だよな
いやそうか? 本当か……??

……いやいい
目の前のものを何とかしてから考えよう

動きはぎりぎりまで引きつけてから躱す
幸い、よくわからないけど空中を泳げるわけだし
いつもより回避はしやすいはずだ

“影”なんだからある程度自由を利かせられるはずなんだよな
俺の頭が想像できる範囲が追い付けば

なら――“弾”を創ればいいんだろ
普段触れているものだ、忠実に再現できる
――その威力も寸分違わず
銃から放つ手間がない分、いつもより軌道は自由で、物量も確保できる
文字通り、避ける隙間は与えない




 何を以てヒトとするか。
 何をヒトと定義するか。
「――なあんて、哲学的なおはなしではないのよね」
 その通りです。
 花剣・耀子(Tempest・f12822)はくわしい。いつもの依頼を知っているあたしはくわしい――そんな意気込みを感じさせるほどによくわかってくれていた。
「だいたい、こういう時は逆らったって無駄なのだわ」マジでわかりがつよい。
 耀子といえばしゃっきりとした瞳と、確実に敵を屠る意地の強さとしなやかさだ。体に何度も傷を負っても不屈の精神で立ち直る。そしてまた戦場に行き、ぼろ雑巾のようになってもまだ明日も戦い続けようとする。
 やや危なっかしいい少女は、――今回の依頼にも、わりとふわふわな雰囲気にのまれつつあるが「当たれば大損」という構図には理解があった。
 当たり判定が小さく、機動力も高いが「人間」の時にあった器用さは失われる。耀子はいいとしても、それを頼りにしていた猟兵たちにはなかなか厳しいところな気がするのである。
 まあ、今日の耀子はふつうのねこだが。 ニャーン。
 真っ黒い毛並みに青い目玉。ピンと立った耳に長いしっぽと綺麗な毛並み。
 しゃなりしゃなりと音もなく歩いて見せて、困っている猟兵がいればサポートに回れないかとうろうろしてみた。
 すると――どうやら見慣れぬ何かの後ろ姿を見ることになる。
「大丈夫かしら」
「――何この、何…………??」
 出会ったのは、鳴宮・匡(凪の海・f01612)である。
 普段の彼はどこからどうみても普通の人間らしい。アジア系の顔をしており、戦いにおいて最適解をその五感で手繰り、確実の一手を逃がさない――凪の海の名で呼ばれるとおりに殺戮兵器としても実に有能な彼であるがその武器は「器用さ」も含まれるだろう。
 それを、ごっそり失っちゃった感じのフォルムに自分で唖然とした。
 ――イルカである。
「大丈夫……じゃないな……」
 耀子だとは気づかなかったが、どうやら事情は知っているらしいから猟兵であろうと判断する。
「え、俺これ銃どうやって撃つんだ……???」
「銃が武器なのね」
「――いや、落ち着け、このくらいで仕事を仕損じるようじゃ二流だよな」
「そうね」
「いやそうか? 本当か……??」
「そうかもしれないわね」
 動揺というものを克服した耀子にとって、匡のあわてようといえば「いずれ慣れるわよ」といったかんじであった。キュイッキュイッと鳴きながら己の体をしげしげ眺めるイルカがちょっとかわいそう。
「とはいえ人手があったほうがいいのはあたしもあなたも、きっとおなじね」
「それは……確かに」
 冷静さを欠くのはいくらゆるふわ~な戦場であってもヤバい。匡は正気にもどった。もどれてきた。
「とりあえず目先のことから、ってやつか。焦らずいくよ」
「ええ」聞く壁役を徹した耀子に一ミリも焦りがないからかもしれない。それはそれで……耀子は今まで……どんな苦労を……という話でもあるが。
 移動をするときはどうやらちょっと浮くらしい。匡がヒレを動かしてみようとすると、3cmほど体が地面と隙間を作った。するり、するりと海を泳ぐような心地を感じながら、己の身は案外早く動けるようになったことを理解する。
「スピードは出るかもしれない。逃げたいときとかは俺の背中に乗るってのはどう?」
「いいわね。そうしましょう」耀子がにゃあおと鳴いて隣をとてとてと足早に歩くほどの速度が、匡の「ゆっくり」だ。
 二人が宴の会場にさあ行くかとする頃には、ちゃんちゃかちゃんちゃか盛り上がる声が聞こえてくる。妖怪のものには違いないが――音楽というよりは頓珍漢な騒ぎのような。
「あら」
「……仲間だよな?」
 匡と耀子が、その騒ぎにひょっこりと顔を出した。

「さァさァお立合い!アンタはどっちにかけるんだい!? アタシか、それともあの龍もどきか!」
「俺ぁアンタにかけるぜ!」
「俺もだ、俺も!」
「あたしはどっちも負けるに賭けるね!」
 ちゃりりん、ちゃりりん、ちゃりりりりーん。
 銭かも石かもなにかもわからぬあれやそれやが月夜を舞う。きらきらとしたものがそれぞれの酒に満ちていた空盃にぶちこまれていったのなら、とあるキンキラな毛並みをした猫がその数を小さな手で数えていた。
「こりゃあアタシの勝利がどうやら大穴だ。アンタら泣きを見ることになるぜ! 大儲けはアタシとそのファンだけだ!」
 ――玉ノ井・狐狛(代理賭博師・f20972)である。
 普段は妖狐の彼女なのだけれど、今日はその賭博の才能あってか金運招来招き猫になってしまっている。金色の毛並みはもとより彼女の由来であるが、なんともまぁゴージャスな振る舞いに思わず匡も耀子も反応に間があった。端的に言うと、超・楽しんでるのである。
「確かにこのままじゃあアタシは不利だね。なんてったってただの猫だから――おっと」
 狐狛が、ぴくりと髭を動かせば匡と耀子に気づいたのか視線を向けた。
「どうやら女神はアタシにお熱らしい。ちょいとそこのお二人さん、手伝ってくんな!」
 ちょい、ちょい、ちょーい。
 ゴキゲンな手招きに断る理由もなく。仲間というなら協力したほうが勝率も上がるだろうと考えた手前、二人も狐狛の儲けに手を貸すこととなった。
「今、アタシが勝つか奴らが勝つか、それともどっちも負けるかでちょいと盛り上がっててね」
「あら、そんなわかりきったようなことを賭けてるのね」
「……出来レースってことだろ」匡はちょっとからくりがわかっていたらしい。
「はっはっは!そんなこと言うもんじゃないぜ。やるまで勝負はわからないんだから!」

 オブリビオンたる『龍神片』たちと、動物にされたがユーベルコードは使える猟兵。どちらが勝つかなんていうとは――考えなくても、まあわかることで。

「ぐぬぬぬぬぁ!!!なんで当たらんのだ!?」
 高密度の弾幕を前にして、三人は見事にそれぞれ躱して見せていた。
 『龍神片』たちも愚かではない。力業で押し切れぬならば属性を伴った戦場で己らの力を増幅させて、物量ある弾幕で押し切ればいいと思ったのだ。
 計画的な――ここまでの流れよりは――攻撃は、完璧に思われた。妖怪たちも固唾をのみながらも戦いを鼓舞する音楽を奏でてみたりなどしている。まあ、賭けているのもあるだろうが――。
「気合避けってやつだよ!」
「安置を探すのは慣れているのよ」
「――いつもよりは簡単に思えるしな」
 先頭、匡。見切ることに長けた彼が弾幕の隙間を泳いでみせる。レーザーが飛び交うならば深海に潜るように体をよじり、高く飛び、見えぬ海から大ジャンプ!
 ひらりひらりとかわす匡の後に続くのが耀子。せっかく猫なのだしとちょっとエンジョイしだした彼女の足取りは軽やかで身のこなしは美しい。躱すならきっと美しいほうがいいのだわと思って、きらり、ひらりと弾の隙間を見つけては楽し気に通っていく。
 さて、その二人で「パターン」を読んだ三番手。狐狛が後に続いてにゃんぱらり!
 初見でかわし切ることは難しいと思っていたのだ。二人分のパターンでだいたい敵の作り出す弾幕のパターンさえ掴んでしまえば、理論上いくらしきつめた弾幕でも「あたらなければあたっていない」!
「ぐぬ、ぬぬぬぬ!!」
「おっと」
 匡が敵の拳をひらりと泳いでかわす。すると、そこ拳に耀子が着地。
「あぶないわ」とねこぱんちで踏み台にしたら――「どりゃ!」と狐狛のヤクザキックならぬ鋭いネコキック!
 ズサーーーと地面に倒れ込む『龍神片』さんの布には二匹のねこの足跡が。ちょっぴりうれしそうなのを匡は見逃さなかった。とんでもない世界に来ちゃったもんだ。
「さぁて、アタシたちももてなしてもらうばかりじゃあ面白くない」
 にたりと金色の猫が空中を舞いながら笑みを作って見せる。稼ぎ時は見逃さない。しっかりと美しくすれすれの回避で妖怪たちを沸かせたのならば――今こそどんでん返しで大穴狙い!

「アタシぁ、化けるより化かすほうが得手なんでな」

 【高難易度の攻略法】!
 ばん、ばん、ばしゅ――っと熱気で視認していた弾幕たちが消え失せる!
「な!?」
「我らの弾幕はどこに!?」
「妖怪たちのも!!?」
 おろおろと慌てふためく『龍神片』の計画は丸つぶれ!贅沢にしっかりと爪痕を残してやったのなら、最後の仕上げだ。
「――“弾”を創ればいいんだろ」
 ここに、百戦錬磨のガンナーと。
「くるくる回りすぎたら目を回しそう。――お仕事はちゃんとしてゆかないと」
 凶悪な羅刹が控えている。二人の視界は開けていて、ならばここからは「こちらの番」でいいはずだ。
「弾幕勝負だって言ったろ?」狐狛の声を合図に、三匹の視線が敵らへ向く。

「「「避けてみな」」」

 【《花剣》】と【無形の影】の同時発動――。
 影は無数の漆黒で艶めく弾丸を生み出した。それが、匡の得意とする武器である。寸分たがわず想像できた凶弾たちを見様見真似、妖怪たちの張る弾幕とやらを意識してわざわざ配置する。
「わ、わ、わ!!!」
「こっちよ」
 発射と同時に――きらりと煌めく爪をむき出しにした耀子が飛び出す!
 弾丸たちに紛れた黒猫を識別できない『龍神片』がらザシューッ!花を散らせて消えていく様は、まさに美しい弾幕といえよう!
 そう、つまり圧勝である。
「いやー、儲けた儲けた!」
 狐狛の手元には金貨のたくさん入った盃が渡されて。
 わっ、とそれぞれの驚嘆と感動に沸いた妖怪たちから紙吹雪を振らされながら、三匹は彩られる。
「……ここまで騒いだんだ、そろそろ出てきそうだけどな」
「ええ、多分――」
 酔いに呑まれぬ二人が見たのは、――動きだす山のような影であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

空露・紫陽
【紫炎】


まさか空を羽撃く日が来るなんてなぁ
人生わかんねぇもんだと下を見れば
くっは、くゆり相変わらず楽しそうじゃねぇの
ホント何処見ても動物なんてそう無い景色だ

鬣なんて無くても格好良いから問題ねぇだろ
ライオンは雌の方が強いって聞くぜ?
格好良さも可愛さも倍ってコトでイイんじゃないかね

俺のは大きさ的に鷲じゃねぇかな
漆黒の姿は天空を駆ける夜
紫紺の眸は獲物逃さぬ狙撃手
噫、本質は変わらねぇな
格好良くて狡いなんてのはお前さんも同じだろ
くゆり、と気に入り呼び慣れた響き紡いで

おう、暴れて来な
ピンチになる前にフォローしてやるからよ

軽やかに弾幕を避けながら
天空の覇者の威厳でもひとつ
――狙撃手の弾丸、避けられるかい?


炎獄・くゆり
【紫炎】


がおがお~~!
食べちゃうぞお!
なんちゃってェ、愉快愉快!
紫陽さんも楽しいでしょお~~?
右も左も動物パラダイス!

くるり身を翻せばライオンの姿
鬣が無いのがチョット残念
ま、あたしキュートなオンナノコなんで仕方ないかあ~~~
ウフフ、紫陽さんがそう言ってくれるなら無問題!
カッコよくてカワイくて強いとか最強じゃん?

紫陽さんは鷹?鷲?
天高くから獲物を狙うスナイパー
天空の覇者ってヤツですねェ
動物になってもカッコイイのズルぅい!
名を呼ばれる嬉しさに喉も鳴らしちゃう

あたしは地上で暴れてきまーす
いざって時は空から助太刀してくれるでしょ?
頼りにしてますよお~~!

そんじゃ百獣の王の風格、見せつけちゃいますか!




 ――まさか空を羽搏く日が来るなんてなぁ。
 空露・紫陽(Indulgence・f30642)はシガレットケースとしてあった。
 ヤドリガミとして持ち主を模した姿で歩いてはいるものの、彼の今は自由そのものといっていい。気ままに料理を作り、食べて、酒場に雇われ寝床を借り、働いては店主の健康管理も楽しんでいるくらいには在ることに前向きなものの生といえる。
 のんびりまったり、今日の依頼も楽しんでいけばよいだろうと思って連れた少女のはしゃぎ具合を見て楽しんでいたけれど、そんな彼に与えられた姿は――思ってもないような、新しい発見であった。
「人生わかんねぇもんだ」
 何回口にしたやらわからない、ありきたりだけれど、どんなことも楽しむ彼の象徴のような言葉。
 ひらり、ふわり。大きな翼を広げて悠々と空を飛んでみるいまの紫陽は大鷲であった。
 漆黒の翼は天空を駆ける夜がごとく、紫紺の眸は獲物逃さぬ狙撃手――なんだ本質は変わらないなと自分でも思いながら、さてさて元気な少女を探して大空から見下ろせば。
「――くっは」
 思わず、笑いがこぼれてしまったのであった。

「がおがお~~!!食べちゃうぞお~~!!!」
「ひええええ!」
「なんちゃってェ、愉快愉快!」
 炎獄・くゆり(不良品・f30662)は不良品で廃棄品。
 そう呼ばれた彼女の生はそれだけの価値しかなかったというのに、このくゆりという少女はハイパー元気でうっきうきなのだ!
 まるでじゃれつくように『龍神片』に両手でハグすれば、変形する頭に臆することなくがぶがぶと噛みついてしまう。ぐったりとした獲物が笑いもしないのに、くゆりは一人でにゃごごと笑い次の獲物に走っていく。
 やりたいほうだいのこのくゆり、ある程度ちぎっては投げを繰り返してから自分の右手はこういう時でも変形自在なことに感心していた。
「ほほー、じゃあいつもどおりですねぇ!」と安心と無関心の間のような声をあげて、自分の右腕をぐーぱーしたりしてみる。
 むちむちの肉球が見えた。なんだかおいしそうにも思えてきて、ぺろぺろと舐めてみると自分の舌がザラザラで痛い。「あれえ」と声を上げたころに、上から噛み殺したような笑い声が聞こえて来たのだった。
「相変わらず楽しそうじゃねぇの、くゆり」
「あー!紫陽さん!」
 聞きなれた声にはためらいなく返すのだ。
 にゃはは~とかわいらしく笑い声を返すくゆりのそばに、大きな翼を広げた鷲が着地した。
「紫陽さんも楽しいでしょお~~? 右も左も動物パラダイス!」
「ホント何処見ても動物なんてそう無い景色だ――ライオンだな?」
「はい!」ぎゃおう! 猫のわりには野太い鳴き声がした。
 それから、くゆりは自分の首元を後ろ足で掻いてみせる。
「鬣が無いのがチョット残念です……ま、あたしキュートなオンナノコなんで仕方ないかあ~~~」
「鬣なんて無くても格好良いから問題ねぇだろ。ライオンは雌の方が強いって聞くぜ?」
 オスはオス同士でしか戦わないし。事実、ライオンはメスのほうが働き者なのだ。
 機嫌をとりたいわけではなく、紫陽としては与えられたものを彼女が楽しめないことが損に思えている――せっかくこんなに面白いことになっているのに。
「格好良さも可愛さも倍ってコトでイイんじゃないかね」
「ウフフ、紫陽さんがそう言ってくれるなら無問題!カッコよくてカワイくて強いとか最強じゃん?」
 むちゃくちゃ調子がいい。
 くゆりの目指すべきところである。かっこよくてかわいい女子はさいつよなのだ!
 ふんふんとゴキゲンにしっぽを揺らすライオンが、猛進をやめてころりと地面にねころがってうれしいなあ、うれしいなあと体めいいっぱいにアピールしてから。
「紫陽さんは鷹?鷲?」
「俺のは大きさ的に鷲じゃねぇかな」
 ぐにに、と前足を伸ばして伸びをするくゆりに、紫陽は己のくちばしでちょいちょいと翼を繕ってみた。
「天高くから獲物を狙うスナイパー……天空の覇者ってヤツですねェ。動物になってもカッコイイのズルぅい!」
「格好良くて狡いなんてのはお前さんも同じだろ――くゆり」
 かっこいい大人に名前を呼ばれたら、やっぱりくゆりとしてはうれしいのだ。ぐるぐるごろごろ、うれしいなあ、うれしいなあ。喉を鳴らして喜ぶ彼女の顔がいくらライオンであっても、どんな顔を人間だったらしていたのかは紫陽も想像がつく。
「んん~~~!アガってきちゃいました!!あたしは地上で暴れてきまーす」
「おう、暴れて来な。ピンチになる前にフォローしてやるからよ」
 ――紫陽ならそう言ってくれると思っていた。
「頼りにしてますよお~~~~~!!」
「任された」

 空と陸の王者と王女が弾幕勝負に苦戦するはずもない。

「わわわわわわわわ何で貴様ガトリングウワーーーーーーッッッ!!!!!」
 どがららららららぱぱぱぱぱぱぱ!!!
 薬きょうがはじけ飛ぶ音と地面に転がっていく音、それから「きゃははははははははは!!!!」とくゆりの大笑いが混じって地獄の様相であった。
 【GROOVE GLOBE】。くゆりの右前脚は変幻自在なのである。どっかりとライオンが座れば、あとは右足を掲げるだけでよい。そうすれば――「弾幕」というものを殴打して打ち返し、お返しに発砲をくわえるだけであっという間に第一陣は消し飛んだ!
 殴打、殴打、殴打、殴打、「ほーむらーーーん!!」どぱぱぱらららら!!
 ばかすか殴ってオマケの弾幕にきゃあきゃあと逃げ出す『龍神片』たちのほとんどはくゆりの猛攻撃に「食われて」しまう。
「お、おたすけ~~~!!」
「おっと、そいつは無理な相談だ」
 ――そこを。
 【Kugel】で天空から紫陽が撃ちぬく。
 白銀の弾丸をばら撒くようにはなってしまうが、何ら問題は無い。コードさえ乗ってしまえばあとは単純に撃ちぬくだけだ。
 相手の弾幕を優雅にかわして見せてからのカウンターは一発ずつが的確で――あっというまに「たべのこし」を片付けてしまう。

「へっへへ。さすがです」
「お前さんもな。くゆり」

 褒美のように名前をよんでやれば、うれしげなごろごろにゃん。
「さて、休んでる暇はなさそうだ――」
 ふわりとくゆりのそばに紫陽が下りれば、その瞳がくゆりを見ない。どうしてだろうと女王が視線の先を合わせてみれば、――ずううん、と低い音がした。
「山が!」喜悦に満ちた声だったのは、くゆりだからであろう。

 山のような影が動き出して――きらり、二つの輝きをまばゆくきらめかせていた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『竜撃大砲』

POW   :    有り余る生命力
自身の【飲み込んだ竜の生命力】を代償に、【大砲から竜の生命力】を籠めた一撃を放つ。自分にとって飲み込んだ竜の生命力を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD   :    強靭な肉体
【竜の肉体】を一時的に増強し、全ての能力を6倍にする。ただし、レベル秒後に1分間の昏睡状態に陥る。
WIZ   :    理解が及ばぬ精神
自身の【飲み込んだ竜の精神】を代償に、【理性を失った竜】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【牙や爪】で戦う。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はサフィリア・ラズワルドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 その兵器は、かつて存在しない「竜」を倒すために作られた。
 竜とは権威の象徴であり、悪徳のかたちでもあり、伝説めいていつも「人間の敵」としてある。時にお姫様を攫ったり、勇者の剣に対する宿命でもあったりされた。――カクリヨファンタズムに流れ着いたひとつの大砲も、そんな宿敵を待って作られたものである。
 しかし、「竜」などは実在しなかった。
 いつしかみんな、そんな大義名分を掲げて作った大砲のことなどは忘れてしまって彼の存在と功績は真っ白のままに流れていったのである。

 ――ごぁあ、あああ、あああああ――――――!!!

 ずどん、とひときわ大きく地面が揺れた。
 酔いも回ってどんちゃん騒ぎが猟兵たちの手で落ち着けられていなければ、妖怪たちはなんだなんだとパニックになっていたかもしれない。
「ははあ、山も動く時代かえ」
「そりゃあ、山も動くでしょうよ」
「世界滅ぶのデフォだし」
 のんきである――というか、この事態に対してはわりとカクリヨファンタズムの住人たちにとっては日常茶飯事であった。
「竜ハ何処ダ?」
 山のような影が動いている。ずん、ずん、と地鳴りを鳴らして体を揺らし、ぎらぎらとした鉄のハイライトが見えただろう。
「竜ハ何処ダ―――――ッッ!!!!!」

 カッ、とまたたいて――。

 それがビームだと気付けたのはどれくらいいただろうか。
 あまりの輝度と熱により波状の衝撃波が見える。えぐられた大地と空――それから遅れて、轟音。どどどどどどぉおおおおおおん!!!とまるで雷でも落ちたときのような光と音のタイムラグがあった!
 山のようだと思われたそれが月光に照らされ、姿を現す――『竜撃大砲』!寄生された竜の生命を操り粒子砲を放つ彼の顔はもはや正気ではない!
 続いて、ばしゅ、ばしゅ、と光線が通ったところを起点に弾幕が敷かれていく。
 まるで碁盤のように散りばめられるそれの密度は高い。とはいえ弾幕に気をとられていたら、目の前の兵器から放たれる生命力のビームにきっと焼かれてしまう!
「竜、撃墜ス! 竜、撃滅ス!」
「ひいいい」『龍神片』に取り込まれていた神徳の低い竜神たちが悲鳴をあげていた。
 『竜撃大砲』が興奮したような反応を見せるのは、猟兵たちならば理由がわかっただろうか――『龍神片』から引き剥がすことに成功した竜神たちを検知したのだ!
 ぴゅうっと祭りの中に逃げ込む尾っぽ。しかし、妖怪たちの音楽団も急いで警告音を奏でるが、彼らもこの脅威には慣れっこである。
「これどうなるんだろうなぁ」
「猟兵がやっぱり勝つでしょ」
「今、彼ら動物なのに?」
「あ」
「いけるいける!」
 どん、どん、どどん。鼓舞するために鳴らされる和太鼓の音が響いて。
 妖怪たちはポジティブであった。忘れられてもなお彼らは割とたくましい。
「やっちまえ猟兵!できるできる!」
「大砲が本体だ!ぶっ壊せ!」
「当たれば大外れ、外れりゃ大当たりか?」
「知るか知るか大穴狙いのどんでん返しだ!」
 下手に逃げ回るより集まったほうがよかろうと、妖怪たちは竜から放たれる弾幕すら楽しんで見せる。ぴいぴいと指笛を合図にトランペットとバイオリン、エレクトロな鍵盤から織りなすメロディはきっとこの場にふさわしい。
「我、竜撃滅ス――敵、発見」
 どん、どん、どどん。
 ふしゅるる、と口の端から体内の炎熱を感じさせる真っ白な吐息が出た。
「主砲、前ヘ!」
 がしん、がしーん!
 肩に取り付けられたこの大砲こそ本体だ!寄生された竜は生命力にあふれているので、多少傷つこうが再生は容易であろう。
「発射用意――!!」

 さあさあ、ここ一番の大勝負!
 勝てば朝日とこんにちは、負ければ地獄にこんばんは!
 咲いて咲いての終わりの戦い、果たして勝つのは幻想か兵器か。

「撃テェエエエエエエエエエエエエエエエエエッッッ!!!」

 はたまた残るは弾幕か、それとも未来か? 酔いも醒める美しさと強さを秘めて、最期の夜は今、幻想を打ち砕く兵器に滅ぼされるのか!
 それとも幻想を知っていてなお、それを守る未来の使徒たちがめいいっぱい未来をつかみ取るか!
 冷や汗脂汗肉球も湿らせ、奔れ走れの大殺界!
 命を賭けて大儲け、四つ足も尾びれもそうでない皆様もご一緒に――どろんぱっぱ!


 ボス戦です。すごいビームと弾幕撃ってきます。
 引き続き、猟兵たちはそれぞれ動物形態ですが、「動物の姿を変えたい」という方もOKです。二章から途中参加される方も、ご検討くださいね!
(お任せの方は🐾をプレイングのどこかに/一章で🐾だった方は二章で🐾がついていれば勝手にこちらで動物の姿を変えちゃいます。動物の姿ガチャ的な感じです。)

 当たり判定は勿論小さめですし、いつも通り問題なくユーベルコードも使えます。能力も器用さが減った分、いつもより派手に動けるかもというフレーバーもあります。
 楽しく、そして美しく、または激しく弾幕勝負といきましょう!避けることに専念しても、味方のフォローに回ってもOKです。
 妖怪たちは邪魔にならないよう固まっていますので、ご一緒に観戦してもいいと思いますし、防御してあげてもいいかもしれません。みんなポジティブなのでだいじょうぶです。
 
 ★プレイング受付3/18(木) 8:31~3/20(土) 20:00予定
 出来る限りご案内したいので、再送をお願いする場合があります。その際は、MSページと旅団、タグ、Twitterにて告知させていただきます。
ロカジ・ミナイ
エンジくん(f06959)

おやおや
でっかくて強そうだけども
ブサイクな轟音だねぇ
素敵な妖怪ミュージックが聞こえねぇ

おうよ、バラすの決定!
容姿端麗眉目秀麗なクジャクの僕より目立つのは禁止よ
……ところでエンジくん、その一番に狐も追加してくんない?

エンジくんってばパンダなのに竜も出せるの?すごいねぇ
ほらほら、おやつはこっちよ
本当のおやつは非常食じゃなくて

喰らえ!クジャクロカジビーム
びゃっと広げたクジャクの翼から放たれるビームったら
カラフルで美味でなんせ音が綺麗に違いないので強い

……わ、わわ
やめとくれ賢い君!そりゃいつにも増して豪華でしなやかな僕だけど!
羽根が引っこ抜かれたらメスクジャクになっちゃう〜!


エンジ・カラカ
ロカジン(f04128)

アァ……ロカジンあれあれ…。
ビーム。ウルサイなァ。

バラす!決定!
パンダになったコレに怖いモノはないない。
でも一番はオオカミ。オーケー。
キツネ?キツネは仲間。うんうん。
仕方ないなァ。オーケー

襤褸布の下から非常食を出す。
空木と黒鳶。白と黒の仔竜ダ。賢いヨー。
パンダに薬指はある?薬指はどーれだ。
ロカジン、マブシイ!

指の傷跡を見つけたら噛み切り
賢い君に食事を与えよう
拷問具を起動。
賢い君は賢い。非常食よりも賢い。
アイツは賢くないなァ。ロカジンもそう思わないカ?

ロカジン、ロカジン、注意ー。
賢い君は情熱的ダ。あっと言う間にロカジンも食べられる!
うんうん。情熱的ー。
ロカジン、マブシイ!




 ずずん、ずずん。
 大きな大砲からどんどん出てくる弾幕たちはあっという間に夜空も覆いつくしてしまう。さてさてどれが本当の星だったかも見失うような輝度がしきつめられて、ロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)は心底納得のいかない顔をした。
「おやおや、でっかくて強そうだけども」
 ふうむ、と容姿端麗眉目秀麗なクジャクの顔は不機嫌になっていた。
 ――いまいちブサイクな轟音である。ロカジは詳しい。
「素敵な妖怪ミュージックが聞こえねぇ」
 猟兵たちを鼓舞するためでもあるその音色はロカジが先ほどまで聞いていたどんちゃん騒ぎからでもくみ取れる。この世界の住民たちは皆、自分たちを認知できる猟兵のことが大好きだ。
 がんばれがんばれそらいけやれいけいてこませ!
 無数の妖怪たちがそう言って応援しているというのに、目の前の山がずしーんと動けばそれもかき消えてしまう。これは、大変いただけないである。ゆるしがたきこと。
「アァ……ロカジンあれあれ……」
 さて、クジャクの隣で牙をむき出しにしながら表情の読めない白黒パンダが一匹。
 のっそりと座った腰を持ち上げて前足で地面を踏み、すんすんと鼻を鳴らしたのはオオカミの名残。
「ビーム。ウルサイなァ」
 ――エンジ・カラカ(六月・f06959)の不機嫌な声が響く。
 純粋に大きくて強い生き物への闘争心もあるが、大きな音は獣の耳によく聞こえてしまって、とんでもなくやかましく聞こえていた。小さな耳がぴくぴく、ぱたぱたと音波を嫌うようにふるえていて、ロカジが「おやおや、かわいそうに」と嘴でちょんちょんあやしてやる。
「うぅう、うゥう――」ぶんぶんとエンジが首を振って。

「バラす!決定!」
「おうよ、バラすの決定!!!!!」よしゃきた!と翼を広げたのがロカジであった!
 仕事はちゃんとするけど今日の二人は割とノリノリ。中華世界も来たるというし今日はノリノリでチャイナな空気でまいりましょう。二人がよっしゃー!と盛り上がれば、ごぁあああん、と銅鑼が響いた。
「パンダになったコレに怖いモノはないない」
「そうそう。パンダ、熊だしね」えっへんとするエンジにロカジが頷く。
「でも一番はオオカミ。オーケー」
「んェ」
「ロカジン? ロカジン、ナニナニ?」
 残念そうなクジャクのテンションはちょっとしょんぼり。広がっていた翼がふゃ~~……と縮まってしまって尾羽が垂れちゃったのだ。
「……エンジくん、その一番に狐も追加してくんない?」
 そう、忘れちゃいけないがこのロカジ、キツネである。
 元が狐であるからして、やはりそこは譲れない。キツネほどイカす生き物ってなかなかいないのだ。実態があるものなら何でも化かせるし、ずるいのは賢いからできること。
 これを一番ではないといわれると、なんだかロカジ的にはあんまりよくないのである。
「キツネ?キツネは仲間。うんうん」
 うーむ、とエンジは考えた。
 キツネは四足歩行。キツネは鼻がシュッとしてる……。しっぽもふわふわ。
 オオカミは四足歩行。オオカミは鼻がシュッとしてる……。しっぽもふわふわ!
 テコーン!とエンジの頭の上でおそらく電球がひらめいたらしい。白黒過ぎてまったく表情の読めないパンダが頷いた。
「仕方ないなァ。オーケー」「ヤッター!!」いいのか?

 よいしょ、とパンダが漸く大きな竜を見上げた。
 見下されるのが気に入らぬ。ぎろりとした目がふたつ、パンダを見下ろした。パンダは――闘志に燃えている。
「おお……あのパンダ、オーラが宿ってるぜ!」
「オーラってなにさ」
「すごい気ってやつだ」
 めらめらとしていたパンダの周りに宿るオーラは、さながらカンフー的なアレソレで見る奴のよう。ばっ!と両腕を広げたら、手品のように竜の子が陰陽玉のように出てきた。
 ――彼らを、【非常食】という。
「エンジくんってばパンダなのに竜も出せるの?すごいねぇ」
「コレ、コレいつもどおり。【賢い竜】ー、いーこ、いーこ」
 お手玉のように黒と白のそれぞれをぽんぽんともてあそぶエンジの肉球に、非常食たちもびっくり。ぽいんぽいんと空を跳ねまわされるふたつは目を丸くしていた。いつものごしゅじんとちがうため。
 エンジが――じっとその二つを見始めたところで、はたりと瞬きしたロカジが嘴を眼前に持ってくる。
「ほらほら、おやつはこっちよ」
「おやつ、おやつ!」
 おやつっていうか、おっきいおやつっていうか……おやつというには無理がある気がするけど、エンジが納得したので大丈夫!!きらきらとした瞳が食べ物を許されたところで、ロカジがふわっと翼を広げた。
「あいつ、まだ僕たちに気づいてないよ!チャンスだエンジくん!」
 絶好の奇襲のチャンスといえるだろう。まんべんなくを見下ろしてはいるが、小さい個々を見ているわけではないらしい。ごあああ、と熱い息を吐く大砲がばしゅ、ばしゅ、と弾幕を生み出す!
「キャー!」
「かっこいいわクジャクさん!」
「やっぱり時代はクジャクよね!」
「尾羽がイケメンで素敵!!!」尾羽がイケメンってなんだ?
「いいねえいいねえ!その調子でどんどん僕を満たしてくれ!!!ワッハッハッハ!!!!」
 クジャクの翼をフワワワワ~~~~~ッと広げたロカジがどんどん輝度を増していく。
 ロ、ロカジから……イケメンクジャク色気オーラが……っ!?
「グゥ」これには大砲さんも普通にクラッときたらしい。いや劣情ではなく。
「うおっまぶし」
「きゃ」
「ロカジン、マブシイ!!!!!!!」
 エンジがもちもちの両手で目を隠した通りに。
 今のロカジ、すっっっっっごい輝度である!!!ズギャアアアアアアンン……と輝く様はもはや太陽に等しい!絶対に太陽を肉眼では見ないでください!
 ふわ、とまるで大きな両腕で抱きしめるかのように翼を丸めて、その切っ先をまぶしさでクラクラな大砲さんへ向ければ――。
「喰らえ!!クジャクロカジビーム!!!」
「マブシイ!!!!!!」
 エンジの悲鳴通りに、ビカッ!と光ったロカジのビームが炸裂ッッッ!!美しすぎてもヤバいことが皆様よくわかりましたね!!!
 でんでんどんどん、どんどん!激しい和太鼓の音が響き渡り、じゃあああんと銅鑼が鳴く。
「負けてらんねえなあ!」
「もっともっと鳴らせ!」
「雷根性見せてやる!」
 【手名椎のこえ】の光線でいわゆるボムの役割なのだ。敷き詰められる弾幕をばしゅばしゅと消し飛ばして、砲撃と相打ちになる!ロカジは大変きぶんがよかったのでビームもたいへんつよかった!
「パンダに薬指はある? 薬指はどーれだ」
 その間に。
 むちむちのかわいい指についた爪を数えながら、非常食たちとエンジは指を折る。
「あ」――薬指に傷跡。
 毛皮をかき分けていたら見つけた約束の名残に、ためらいなく牙をたてる。
「――賢い君」
 呼び出された拷問具が、エンジの血を求めて現れる。約束をなぞるように血を与えてやれば、拷問具はそれでよいらしい。情熱的なそれが通りやすいよう、非常食たちは毒素を吐き出してエンジを弾幕から守る!
「ロカジン、ロカジン、注意ー」
「ん?」
「賢い君は情熱的ダ。あっと言う間にロカジンも食べられる!」
「え?」
 さっき呼び出していたのは非常食ではなかったっけ?
 ぱちくりと輝きながら目を瞬かせたクジャクの前にも、拷問具。
「……わ、わわ!!やめとくれ賢い君!そりゃいつにも増して豪華でしなやかな僕だけど!」
 ごわー。ごわー。と暴れる大砲なんて忘れてしまった。賢さで賢い君に劣るものなどあってないようなものである!なにかしらのダメージは受けているようなのに、それよりもヤバイものがロカジの前に来ちゃったら確認する暇も無ぇ!!!!
「羽根が引っこ抜かれたらメスクジャクになっちゃう〜!!!!!!」
「ロカジン、マブシイ!!!!!!!」

 ぴかーーーーっっっっっ。
 のちに、――カクリヨファンタズムではこの夜一番輝いたクジャクと、はしゃぎまわる暴力的なパンダを記念してペナントと提灯が作られたとか。なんとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

空露・紫陽
【紫炎】


――おい、くゆり
全く、まぁそんな愉しそうな顔しちまって
俺も? そりゃそうだ
こんな機会逃す方が勿体ねぇからな
空の王者と陸の女王は暴れ足りねぇだろ
くっは、乗っ取ると来たか
でも悪くねぇな

普段じゃ見えねぇ景色
相手の急所
撃てりゃ狙撃手は其れで十分
見逃さねぇよ
ほーら、くゆり
好きな範囲で暴れな
派手なのはお前さんの役目だろ
へぇ、と少し悪い顔をした黒鷲は
女王に迫る攻撃を空から撃ち落とし
心を貫くってのはこうかい?

なら次は俺の番と黒鷲の遊撃に付き合って貰うぜ
避ける動きは最低限当たらなきゃ俺の勝ち
俺は外してやらねぇぞ
お前さんがたチェックメイトの時間だ

王と女王だぜ
そりゃ最強だろうさ
さぁ、もっと愉しませてくれよ


炎獄・くゆり
【紫炎】


ぎゃおぎゃお!
だって紫陽さんも楽しそうなんですもぉん!
二人でこの世界の陸と空でも乗っ取っちゃいます?

彼が思うが侭に羽ばたけるよう
地上で出来るだけ目立って、目立って
敵も味方もわかんないから乱れ撃ちィ~~
ヘイトはあたしがぜーんぶお買い上げ
トドメを刺すのは王様におまかせ!
あたしのハートも射貫いちゃってイイですよお?
なぁんて、冗談のつもりだったのに
ほんっとカッコよすぎ!

じゃ次は紫陽さんのオンステージ
空を優雅に舞う姿見たい見たぁい!
その間に隠密行動
上に注目してる相手を物陰からガブリと
にゃはは、ネコ科の狩りってこんなんですよねェ

あたし達のコンビネーションさいつよ!
もっともっと遊びましょ~~~!!




「――おい、くゆり」
「ぎゃおぎゃお!何ですか、紫陽さん!」
 炎獄・くゆり(不良品・f30662)はご機嫌なメスライオンである。
 どん、どん、どかーん!とぶっ放した右腕のガトリングが思いのほか爽快に決まってしまったからだけではもちろんなかった。小さなくゆりたちに対する巨大すぎる脅威にワクワクが止まらないし鷲たる空露・紫陽(Indulgence・f30642)のイケメンぶりにももう大興奮なのだ。
 どうしよっかな、どうやってたたかおうかなやんじゃいますぅ、なんて心があらわになっているのは、ぐねぐねと身をよじって転がっていたからであった。
「全く、まぁそんな愉しそうな顔しちまって」
 紫陽が鷲の瞳で見下ろしている。あたたかく見守る目線はまるで父のようでもありつつ、寛容そのものであった。
「だって紫陽さんも楽しそうなんですもぉん!」
「俺も? ――そりゃそうだ」
 こんな「大物」相手に出来るのはそうそうない。
 紫陽のものの生から見ても、この事態はまさに異常でとびきりおかしい。だから、「楽しい」と思えて当然であった。平穏無事な毎日に馴染む彼は、この非日常感がたまらない。
 一度ふるると体を震わせて翼に空気を通したら、紫陽の準備は万全らしかった。
「空の王者と陸の女王は暴れ足りねぇだろ」
 ――だって。
 くゆりがどんな暴れん坊かを、紫陽は知っている。
 ティラノサウルスの模型に全弾命中させて「きもちいい」なんて言っちゃう女子なのだ。あまりに凶悪で、あまりに狂暴。まさにくゆりのために在るような文字列だなと思う。
「モチのロンですよぉ!ぜぇんぜんッ、まだまだ暴れ足りません!」
 がば、と身を起こしたライオンがギラギラの瞳で鷲のアメジストを覗き込むように見た。
「二人でこの世界の陸と空でも乗っ取っちゃいます?」
「くっは、乗っ取ると来たか」
 かみ殺しきれなかった紫陽の笑いが黄金めいたくちばしから漏れる。
 ふるふると羽毛を震わせて少しだけ間をおいてから、いけませんか?どうしますか?と言いたげな可愛いライオンの無邪気な凶暴性を認めたのだ。
「でも悪くねぇな」
 なぁ、――くゆり。
 名を呼ばれたライオンが、大きな声で返事をした。

「きゃはははははははははははは!!!!!」
「ゴァ、アアアアぁあああッ!!????」
 どぱぱぱぱらたたたたたたたたたたたたたたたた!!!!!
 誰ですかこのメスライオンにGOサインを出しちゃった悪いイケメンは!!!!と言いたくなってしまうほどに、くゆりの右腕はあまりにも地獄を生み出すことに適している。
 変形自在の右腕、今日の調子は【MUSTANG HIPPIE】!四つ足では走らず超低空飛行をしながらの乱れ撃ちは敵も味方も全く考慮しない!
「さぁさぁこっちですよぉ!!あたしを追いかけてくださぁい!追いかけられた方が燃えるんで!!」
「ぐる、ぐぐ、ぁ――」
 大砲がぎりぎりと異音を立てながら、寄生された竜に与えられるダメージより脅威を判定する。
「目標、補足。脅威レベル、計測――」
「ぶつぶつお喋りしてる暇ないですよぅ!さぁさぁ走って!地獄の舞台でおどりましょ!」
 がががががががらたたたたたたたたたた!!
 くゆりが鉛玉の弾幕を放つようにガトリングを連射する!それをすべてかき消すための砲撃が――きらりと太い砲身を煌かせてから放たれた!!
「うひゃあっ!」たのしい!
 バリバリにイカすレーザーの威力である。どばん!とくゆりの足元――地面が割れるほどの一撃!衝撃ですってんころりん転がってもなんのその、ネコ科の体は大変しなやかであるからすぐに持ち直した。
「サイッッコーー!!!あたしも遣り甲斐ありますありますっ!もうアガっちゃ~う!!!」
 砲撃、連射。また砲撃、そして連射!!
「どわわわわわわ」
「何だこれすっげぇ!!」
「きゃああおたすけえ!」
 妖怪たちもびっくり仰天の撃ち合いが始まっている!!ちゃんちゃんきゃらきゃら、音楽すらも統率がとれないというのに絶えず聞こえるものだから、くゆりの暴れっぷりに楽しみを見出していたのだ。
 激しい暴力の攻め合い――とはいえ、くゆりとて愚かでない。これも戦場に慣れた彼女の計画のうちなのだ。
 今、妖怪たちも、この砲台も、誰も空を見ていない。ずっと空を見ていたのはくゆりだけだ。
「あたしのハートも射貫いちゃってイイですよお?」
 オジサマを唆す小悪魔のような囁きは、硝煙の香りと少しばかりの色気を孕んでいて。
 それを――耳の良い鷲が聞き逃さない。
 夜空に一匹の鷲がいた。大きな翼を広げて、月の光を受けて影を戦場に落とす。あっという間に鷲の影に呑まれた祭りの舞台は黒く染まって。

「――心を貫くってのはこうかい?」

 さて。先ほどから、くゆりは走りまわって右腕のガトリングをぶちかまし続けていたのだけれど、弾幕を避けてはいなかった。全部彼女を被弾させる前に「撃ち落されている」。
 ひとつも気配を感じさせない狙撃手がいたのだ。女が悠然と陸を駆けるというのならば、レディ・ファーストの精神で舞台を整えてやるのが度量ある男というものであろう。
 黒鷲が、ずっと弾幕を打ち落としていたのである。彼女に届く前に、取り返しのつかないことに成る前に――妖怪たちにも被弾させないよう気を付けながら、しかし華やかな女の邪魔はせずに。
 いよいよ狙撃手がその正体を現した。くゆりを狙ったレーザーを、射止めるように【Kugel】が貫けば霧散する!

「――わ」

 まるで、祝福されるかのよう。粒子がきらきらと火花のように舞ってくゆりを包むにとどまった。そのまま、流れるように空気に消える――。
「ほんっと、カッコよすぎ!」
 きゃああと黄色い声をライオンがあげて、ころころりと嬉しさに転がってしまう。
 乙女が望む冗談のような夢をかなえてやるのもまた、色男の仕事だ。思わぬ花束をもらったくゆりが転がるのがまた愉快で、黒鷲はゆっくり目を細めてから降りてくる。
「俺は外してやらねぇぞ」
 ようやく上を見た砲台が、竜の雄たけびを上げて続いては紫陽を狙う!ぎゅいんぎゅいんとチャージされる粒子には「遅ェ」と言葉と共に銀色を差し込んだ!
 砲身の中でばうん!!!!と黒煙を上げて爆ぜる――ビームは打てない!
 最低限当たらなければいいのだ。敷き詰められる弾幕を前に、黒鷲はけして身をこわばらせることがなかった。時折翼をたたんで急降下してみせ、それからまた急上昇し網目をくぐる。
「かごめかごめッてか――?俺にはちょっと粗すぎるな」
 敷き詰められた碁盤のような弾幕が回転を加えて視覚を惑わす。狙撃手に必要なのは冷静さだ――翼を広げる回数は最低限。きゅうっと体を細めて潜り抜け、その隙間から何度も何度も銀色を浴びせてやる。
「お前さんがた。チェックメイトの時間だ」
「グゥ、ウウオ、オ」銃弾を何度も食らった竜の体がぐらりと揺らいだら。

「後ろの正面だぁーーーーーあれッ!!!!」

 ばッッッッッッッがん!!!!!と――すっかり紫陽に気をとられてしまっていた砲台のからだを強大な機械仕掛けの獅子がバクリ!!ネコ科の狩りはチームワークがものをいう。ばちばち、と火花を散らせてから――竜の右肩が悲鳴をあげた!地響きをさせるほどの轟音と爆炎を背に離脱したくゆりが地に足をつければ、ばしゅうううん……と弾幕は消え失せる。
「あたし達のコンビネーションさいつよ~~~~っっっ!!!完璧ですっ!!」
「王と女王だぜ、そりゃ最強だろうさ」
 にゃはにゃはぎゃははと転がって嬉しさを体いっぱいにアピールするくゆりのそばに、悠然と紫陽が降りてくる。
「ねえねえ、紫陽さん!もっともっと遊びましょ~~~!!」
 尻尾もぶんぶん、前足を伸ばして体を中途半端な伏せのポーズ。待ちきれないのだろうくゆりの瞳は煌々としていて「燃えたばかり」といえる。
「女王がこう仰せなんだ」
 女王が望むなら、それを与えてやるのが王というもので。

「――さぁ、もっと愉しませてくれよ」

 黒鷲がまたふわりと空を飛べば、雌獅子が陸を駆ける。
 まだまだ二人の一夜は始まったばかり!さあ、妖怪も神も竜も驚き轟く空の王者と陸の女王の美しき演目、織りなす地獄で――死ぬまで踊れ!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

旭・まどか
クラウン(f03642)と◎△

見た目に違わず手強そうだね
大砲にビームに手札が多くて羨ましい限り

返事が無いから其方を見れど
いるのは見慣れぬ獣の姿

おや、また変身してしまったの?
中々愉快な事になっているね

普段は指示に徹しているけれど、折角四つ足を得たんだ
たまには隣に並び立つ事も悪くは無いでしょう?

色めき立つ八重の色と不安気に揺れる黄金の色は対照的かしら
僕が心配なら精々フォローをよろしくね

三頭の四つ足の獣が火の輪舞う戦場を駆ける
理性を失った傀儡が相手でも――嗚呼、
僕らに敵うものは居ない

相手を攪乱出来たらば
さぁ、最後の見せ場は譲ってあげるよ

姿が変わっても尚
器用に大玉を転がす白黒ピエロにバトンを渡そう


クラウン・メリー
まどか(f18469)と◎🐾

自分の姿を見たらまた違う動物へ
わあ!またどろんぱっぱしちゃった!

どうどう?似合ってるかな?

狼さんににっこり微笑み掛けて
ふふー、でもでも大丈夫!
俺達ならあの竜撃大砲さんだってやっつけれちゃうよね!

妖怪さん!みんなで手拍子よろしくね!
ぱちぱちと共に大玉に乗ってころころダンス
わ、まどかもいっしょにしてくれるの?
うんうん、フォローはどんと任せて!

よーし!まだまだこれからだよ!

くるりと火の輪を回して敵に向かって投げて
アチチだけど我慢してね!
大砲の音がまるで花火の音に聴こえて思わず決めポーズ決めちゃう!

まどかうるさくしちゃってごめんね?
大玉を自由自在に操り大砲に向ってどーん!




「見た目に違わず手強そうだね」
 今のところ猟兵が圧倒しているけれど、それでもなお砲身はすこしひしゃげて壊れているほどか。もはやあの筒からは何も打てないだろうが、何よりも相手には手数が多い。
 旭・まどか(MementoMori・f18469)は、まだ若い狼の姿でじっと場を見ていた。
 妖怪たちはなんやかんやと守られているようだし、あれほど暴れまわっても特に問題はないのだろう。守るものが己の身だけで済むのならばそれ以上に望ましい戦局もあるまい。
 さてどう攻めようかと考えるまどかの声に、返事は――なかった。
「……?」とうとう愛想でもつかされたのだろうかという少しばかりの違和感があって、振り向いてみる。
「――わぁあ!またどろんぱっぱしちゃった!」
 もくもくと変化の名残が残る煙をつれた動物が、オオカミの隣で己の掌を見ていた。
 ヒレのようなものにかわってしまっている両手をたたいてみれば存外大きな音がして、クラウン・メリー(愉快なピエロ・f03642)はころころと笑ってみせる。
「アシカだよ!」
「おや、また変身してしまったの? 中々愉快な事になっているね」
「アシカなんだ!やったぁ!」
 ――何をそんなに喜んでいるのか。まどかの記憶にあるアシカといえば、そう、ショーのできる動物である。するりするりとでこぼこの地面を滑る腹がちょっと心配だったが、どうやら二センチ程地面からは常に浮遊しているらしい。鼻先を地面にこすりながら、まどかがその差を目視した。
「移動には支障なさそうだね」
「うん!どうどう? 似合ってるかな?」
「ああ、うん。似合っていると思うよ」
 まどかの現実的な心配よりも、まどかが楽しんでいるかどうかのほうがクラウンにとっては大事! 隣人にも笑顔になってもらわないとピエロの意味がないのである。
 まどかの曖昧な返事にも、言葉通りに受け取って「やったあ」と喜んで見せるクラウンが嬉しそうに鳴いていた。
「それじゃあ、行こうか。放っておくと世界が砕けてしまいそう」
「オッケー!行こう行こう。あれ、まどかも前に行くの?」
 いつものまどかは、指示役である。
 狼たちに指示を出し狩りを命ずる。いつだってまどかは頂点で傷つくことのない場所を選んできた。自分が美しいゆえに壊れやすいのを知っているかのように――それこそが一番勝率の高く能率のいい方法だと判断している。しかし、今回はせっかくの四つ足であった。
 馴染みある彼らを扱うように己の身を扱うことも、気分転換には佳いとして。ふすりと鼻を鳴らしてやる。
「たまには隣に並び立つ事も悪くは無いでしょう?」
「もちろん!大歓迎だし大丈夫だよ!俺達ならあの竜撃大砲さんだってやっつけられちゃうよね!」

 さぁさぁ皆さま、お手を拝借!
「妖怪さーん! みんなで手拍子よろしくね!」
 ぱん、ぱん、と拍手を求めてお手本のクラウンが喧騒の中をかき分けていく。
「なんだ、なんだ?」
「出し物か?」
「いいや猟兵だ!」
「はっはっは!愉快な奴らだよなあ」
 それぞれが浮かれた手拍子をして、あそれ、あそれ、と合いの手を入れていく。楽器を演奏していた妖怪たちも一度目配せして、それではこの場にふさわしい音色をと音を選んでいた。
 エレクトロなトーンが響いている。耳をひくりひくりとさせながら、かき分けるクラウンの後ろをしゃなりしゃなり、まどかが歩いていた。
「さあさあ、楽しいショーが始まるよ!」
 【道化師遊戯】。
 大玉に乗ったクラウンがころころ、ころり。「わあっとと」と声を上げてわざとバランスを崩してからも持ち直してみたり。大きな球に乗せられたアシカが目立って目立っての大盛り上がり!
「いいぞいいぞ」
「うわははは!あぶねえなあ」
「器用なものねえ」
 驚きが食料だった彼らにとってサーカスはやっぱり相性がいいらしい。
「僕ものせて」
「わ、まどかもいっしょにしてくれるの?」
 拍手に合わせて球に乗ってころころ進むアシカをオオカミがどくように鼻先でぐいぐいと押す。
「僕が心配?」
「え、えーと」だって練習もしていないし。
 おもしろおかしく芸を披露するのが道化師だけれど、すってんころりんするさまだって一応芸のひとつなのだ。笑われに行くことを含めてまでの技術であるので、そういうことをやったことも、知らないだろうまどかが笑われるのは――なんだか傷つけてしまうような気もして。
 まどかはそれを知ってか知らずか、わふ、と小さく鳴いてから。
「僕が心配なら精々フォローをよろしくね」
 ああ、そうか!とその言葉にクラウンは閃く。
「うんうん、フォローはどんと任せて!」
 まどかがひょいと球に乗れば、それをクラウンが鼻先で支える。はたから見ればクラウンが押しているように見えるが、具体的にはまどかの四つ足が球を回しているのだ。転んでしまわないように両手もちょっと添えて、くるくるころころ二人は舞う。

「――ぐう、うう、ウ」
「よーし!まだまだこれからだよ!」

 二人のショーは大盛り上がり!
 今度は火の輪をくぐって見せるまどかとその狼たちだ。少し熱いけれどなんてクラウンから聞いていたが、大したことはない。くぐるときは一瞬だからである。
 動物を使うサーカスは禁止されつつあって――いずれこのカクリヨファンタズムにも仲間入りするかもしれない。だから、これはほんの先取り。
 見慣れぬ喧騒を視界に入れて、大砲はぎらりと輝いた。ただでさえ忘れられた己がさらに忘れられようとしているではないか!
「発見、発見、敵、発見――!」
「おや、竜撃大砲さんも混ざる? 混ざりたい? じゃあ――!」

 アチチだけれど、我慢してね!

 ふわ、と火の輪が展開される。大砲に向かって飛んだ輪っかたちを追いかけて、オオカミたちが四つ足で地を蹴って跳ねた。
 【天満月】を纏う月光の三頭が難なく潜る。砲撃も、弾幕も。その間をするりと抜ける煌きたちが、輪っかをくぐって大砲を飛び越えた。
 遅れた砲撃の音に合わせてクラウンがびしっと敬礼キメポーズ!すべてが彼らの演出なのだ。
「すっげえ――」
「かっこいいな!」
「なんだぁありゃ、めちゃくちゃきれい!」
 ふふん、と満足げなまどかである。理性を失った傀儡が相手ならば、このまどかたちに敵うものはない。砲台が飛び越えていった狼たちを負う。
 竜の喉が大きく反ったなら、準備は万端だ。
「さぁ、最後の見せ場は譲ってあげるよ」
 ドドドドドドドドドドタタタタタタタタタタ………。
 ドラムロールが響いている。よくよく分かっているらしい雰囲気づくりもまさにそのためにあるかのよう。妖怪たちも随分空気を読んでくれて、今は息をのんで沈黙していた。

「――白黒ピエロ。君の舞台だったのだから」
「どーーーん!!!!」

 ダンッ! ひときわ強く太鼓の音が響いたと思えば、大きな大玉がまるで意志を持ったかのよう。クラウンの鼻先に乗った球をぽおんと上へ打ち上げてから、テールアタック!
 びゅうううん――と風を切りながら大砲まで一直線!まどかを狙うはずだったその砲身にがぽりと嵌って大爆発!!
「だはは!」
「でけえ花火だ!」
「こりゃびっくり!」
 たまらずぎゃおおおんと鳴いた大砲もショーらしい。
 大拍手喝采の嵐の中に、すたりとまどかが着地した。やったぁやったぁと飛び跳ねて、「大成功だね!」とすり寄るクラウンに顔を体ごとちょっと半歩引いてから。
「……まあ、僕がかかわったんだから。いいショーだったんじゃない」
「うん!とびきり素敵なショーだったよ!」
 尻尾の先っちょがふりふり、ゆらゆら。ご機嫌におぅおぅ鳴くクラウンに、きっとまどかの尻尾は見えていなかったかもしれない。
 楽しい一夜をありがとう、素敵なサーカスのお二人さん!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
【相照】
あーーー!!あいつ竜だ!!ずるい!!
私も竜が良かった蛇じゃヤダヤダ
ううう……分かった、頑張る……ピエー

派手にとっ散らかしやがって
お望みの通り【冀求】で竜を呼んでやるよ
ただし98匹だ!!!
散開!避けて気を惹け
ついでに大砲狙って攻撃だ!

私は毒もないみたいだし
嵯泉はアタリハンテーが大きいからな
竜で気を逸らせれば上々ってわけ
頭良いだろ?(ドヤ蛇)
へへー(嬉しい)

にしても嵯泉のダンマク綺麗な
避けんの大変そう
ハッキョーモードって奴?
強いモードをそう言うらしいよ

ふふーん
本当の竜狩りは嵯泉なんだぞ
……あれ?もしかして私、蛇でちょうど良かったの?
わーー!!ヤダヤダヤダーー!!竜が良いーー!!


鷲生・嵯泉
【相照】
竜は竜でも寄生された状態は嫌だろうと思うが
大丈夫だ、本当は竜で在る事は周知の事実
今少しだけ我慢しておく事だ

随分と大行儀な真似をしてくれる
ならば相応に返して遣ろう
――殲遍萬猟、繚乱せよ
生命力が元ならば、其れを喰らう呪詛属性の斬撃弾幕を呉れてやる

此の姿だと動きは速いが躱すには応用が利き難い
御蔭で助かっている
(尻尾で肩…は無いから胴を軽く叩く)
お前の竜の統制も見事なものだと思うぞ
ハッキョー……発狂?
いや私はしていないが、相手は発狂するかもな
……人聞きが悪いのは気の所為か

其の身に竜が付随するなら此方の獲物だ
況してや竜を侮るものを――誰が赦すか
いや戻れば竜だから。落ち着け(潰さぬ様に肉球で触れ)




「あーーー!!あいつ竜だ!!ずるい!!」
「竜は竜でも寄生された状態は嫌だろうと思うが」
 ニルズヘッグ・ニヴルヘイム(竜吼・f01811)という名の黒蛇は激怒した。
 かならずや、あの竜感満載の竜激大砲さんを駆逐せねばならぬと思うた。自分のアイデンティティがガバガバになっているというのにこの見せつけられるような仕打ち。目の前の猟兵にいいようにされてる大きいだけの竜を見上げて、とても激怒していた。まるで「お前は名前がアレなので木の根っこでも食ってなさい」と押し付けられたような心地がするのである。
 鷲生・嵯泉(烈志・f05845)は、そんな彼を慰めつつ冷静なツッコミを入れた。でもニルズヘッグの妹に寄生生物おるし……。うーむ、ニャム。ともかくあんなものに嫉妬をむき出しにしなくても、ニルズヘッグはよいものだと分かってほしかった虎である。
「私も竜が良かった蛇じゃヤダヤダ!!!」ンピャーーーー!!!
「大丈夫だ、本当は竜で在る事は周知の事実。今少しだけ我慢しておく事だ」
 下手に触ればなんだか踏み抜いてしまいそうな嵯泉である。出来る限り優しい声色で諭すようにして、リアクションを待ってみた。
 ニルズヘッグとはいえ竜である。蛇とはちがうのだよ!蛇とは!
 そりゃ神話で人類を最初に過ちに浸したのは蛇であろうが、竜はもっと違うのだ!権威の象徴!悪たる存在!人間に倒される敵!時に協力し合って世界を回すこともある!でもだいたいつよくてかっこいいし全然蛇とはちがう!!この辺ちょっとうるさいのだ。世界とかそういうのには割と寛容なのに。
「そもそもずるいと言えど、あの竜も被害者だ。狙うべきは背の大砲の筈。違うか?」
「ううう……」
 しゅるしゅるととぐろを巻いて不機嫌をあらわにしていたニルズヘッグのつぶらな瞳には表情が宿らないようなのに、いちいち動きが加わっているから所謂「すねている」という状態なのはわかった嵯泉である。こういう時は、子供の目線に立ちながら感情を受け止めて、それから行動を治してやるのがいい。
 まあ、もっとも別に親子じゃないっていうか。どっちも良いご年齢のハンサムたちなのですが……。
「分かった、頑張る……」ピェエ……。
「うむ」ニャム。
 喪われた公平性と与えられた理不尽にいつまでも駄々をこねてもしょうがないか――とは冷静なニルズヘッグのIQ300くらいある面が理解し始めていたのもあった。

「随分と大行儀な真似をしてくれる」
 ぐるるるる、と低くうなりながら縞模様の毛並みを逆立たせて、嵯泉は深く鼻にしわを乗せながら唸った。ばしゅ、ばしゅ、ばしゅ、と彼の気配に呼応して弾幕が敷き詰められていく。
 一つの球は少し浮遊したかと思えば分裂した。そこから、四方にビームを放つらしい。嵯泉をホーミングする機能はないが、途中でへにょりとレーザーの軌道を変えるのだ。激しく動き回るよりは、慎重にゆっくりと避けたほうがいいものである。
 そろり、そろりと歩きながら時にジャンプし、ニルズヘッグがボールのように丸まって跳ねたり、なかなかじれったい攻防戦である。
「派手にとっ散らかしやがって――お望み通りで竜を呼んでやるよ」
 【冀求】。
 蛇に操られる氷獄の竜たちが、うぞりと姿を虚空より氷の結晶が敷き詰められて作り出されていく。その数、「ただし98匹だ!!!」割と多い!!
「!!竜!!竜発見!!!竜発見!!撃滅、撃滅ーーーーーッッッ!!!」
「散開ッッ!!!出来る限り避けて気を引け!!」
 そんな「かわせ!!」だけでなんとかしようとするトレーナーみたいなこと言うじゃないですか。竜たちはニルズヘッグのおかげで生命維持の必要がない。力任せな砲撃にブチ抜かれても、たちどころに氷の結晶達は集まってしまうのだ!
「ついでに大砲狙って突撃だーーッッ!!」
 どかーん、ばこーん。
 花火のような破裂音と共に、きらきらと氷の破片たちが月光を受けて輝いてる。
「氷って花火になるもんなんだなあ」
「くすだまじゃね?」
「めでたい!」
「めでたいぞ~~!!今日はめでたぁ~~い!!」へろへろへべれけなぬりかべが言ってました。
 竜たちが大砲を狙って突撃してくるなら、それをレーザーで焼き払う。しかし、あっという間に再生して衝突!
「グアアアア!!」これにはたまらず山も呻くというもので。
「わっはっはっは!!どーだ!どーだ!苦しいだろう!!さむくてつめたいぞぉ!!」
 雪合戦というかほとんど氷つぶてのガトリング状態っていうか。
 すっかり竜に夢中になっているならば、あとはこの砲台のみどうにかすればよいのである。そもそもこの砲撃の理由は一番「当たり判定の大きい」嵯泉を護る為だ。
 今の彼の爪先ではさすがに山ひとつを切り崩すには少し足りない。それでも少し足らないくらいなのが怖いが。
 しかし、ニルズヘッグが気を引いた今ならば嵯泉にも攻撃のチャンスが十全にある。日頃使う馴染んだ得物とは違うからこそ、集中して――。

「――【殲遍萬猟】、繚乱せよ」

 ぎゅうううん、と虎の体を起点に呪詛がかき集められてからの、放出!
 ばしゅううん!と鋭い破裂音と共に斬撃弾幕が展開される!あっという間に六十四方向に飛んで見せる弾幕は、超密度を誇って大砲に突撃!!
「私は毒もないみたいだし。嵯泉はアタリハンテーが大きいからな――竜で気を逸らせれば上々ってわけ。頭良いだろ?」
 ドヤァッ。
 この作戦、ニルズヘッグ立案である。IQ300くらいあるのだ。
「……此の姿だと動きは速いが躱すには応用が利き難い。御蔭で助かっている」
 ちょっと返事までに空白があったのは、人間でいうところのボディタッチをどこでするかどうかなやんだからである。手だと踏みそうだし。尻尾で――肩はないので、その胴を軽くぽふぽふとした。
「へへー」ンヘェ
 瞼がないため笑顔は作れないが、何かしら嬉しいらしいのは伝わる。ご機嫌に体がしゅるしゅるとくねっていて、爬虫類もやはりよく見れば表情があるものだなと思わされる虎嵯泉なのだった。
「にしても嵯泉のダンマク綺麗な。避けんの大変そう」
「お前の竜の統制も見事なものだと思うぞ」
 嵯泉の弾幕、当然ながら力任せなものではない。
 此の弾幕はほかの妖怪たちも見ているのだ。「かっこいい!」「きれい!」などといった歓声の意味するところは、見ている相手も楽しめるもののほうが善いという暗示でもある。
 なかなか堅物そうに見えてその場に合わせたことはソツなくできるタイプの嵯泉だ。ニルズヘッグの突撃する氷竜たちと合わせて、丁寧に編まれた斬撃弾幕がどんどん敵を追い詰めていく!
 これを見たときに、ニルズヘッグはハッとした。
「ハッキョーモードって奴?」ンニニ
「ハッキョー……発狂?いや私はしていないが、相手は発狂するかもな」グルル
「強いモードをそう言うらしいよ」ンシュルル
「……人聞きが悪いのは気の所為か」
 うーん、ルナティック(?)。
「オノレオノレオノレオノレオノレ―――――ッッッ!!!!」
 確かに深刻なダメージをどんどん体に刻まれて発狂している砲台の悲鳴はなんともまぁ情けない。ニルズヘッグに腕がついていたら、あかんべぇとしていたかもしれない。
「ふふーん、本当の竜狩りは嵯泉なんだぞ! 貴様など三流にも四流にも劣るわ!」
「其の身に竜が付随するなら此方の獲物だ。況してや竜を侮るものを――誰が赦すか」
 ぎろりと赤が睨んだのはその背に寄生した砲台に向けて。
 背中に付着した配線コードをぶちぶちと斬られながら、ざりざりとノイズ交じりの声で砲台が怒りをむき出しにしていた。
 ふすん!と得意げに胸……腹?を張ったニルズヘッグ、またもやひらめいてしまう。

「……あれ?もしかして私、蛇でちょうど良かったの?」
 ――――今この状況では……ソッスネ……。そんな空気が見守っていた竜神たちから響いてくる。
「わーー!!ヤダヤダヤダーー!!竜が良いーー!!」ジタバタ
「いや戻れば竜だから。落ち着け」
「ンェエ」ピェー……。
 むにゅりと嵯泉が潰さないように気を付けて肉球で背に触れてやって。IQが3くらいまで落ちたニルズヘッグがしぶしぶ、めそめそとしながら腹を地面にぴったりとつけてすごすご虎の背に隠れていく。
 はやく夜が明けてやってくれまいかと、のんびり虎が夜空を仰ぐのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鈴久名・惟継
【幽蜻蛉】◎△
俺を乗せたまま何処へ行くのかと思えば……外の音が聞こえんのか?
うかうかしていたら此処に入ったまま吹き飛ばされるぞ

だめだ
動け動け、俺は今こんな姿なのだぞ
呼んでると言っても殺す気満々では戦うしかあるまい
まずは様子を見に行くぞ

竜を呼んでいながら奴自身も竜とは皮肉なものだ
よし、遵殿もやる気になったか
奴を近くで見たいだろう?

敵の動きに警戒しながら敵に接近
近付いた所で雷帝ノ槍を生成、弓矢のように飛ばして狙おう
体に当たらなくとも武器に当たればただでは済まん

……忘れられた物に、竜か
他人事とは思えず同情はするが、救えぬならやるしかないな

蜘蛛の体の部位なぞ知るものか
俺が変な所に触れても気にするでない


霞末・遵
【幽蜻蛉】◎△
狭いとこって落ち着くなあ
収まりはいいし暗くて涼しいし……おじさんこのままでもいい気がしてきた
ということで惟継さんあとはひとりでがんばって

だめ?
だって呼ばれてるのおじさんじゃないもん龍だもん
すごい怒ってるじゃん顔も出したくないもん
ちょっと見るだけ? 仕方ないなあ

うわかっこいいじゃん
やば、なにあれ
かっこいいじゃん

よし行こう。もっと近くで見よう
でも歩くの大変だなあ。遠いなあ
うーん……ズルしよう
前方の適当な的に蜘蛛の網ひっかけて巻き取って前進
脚がガジェットでよかった。生身じゃ出せないもんね
何度かやれば近くまでいけるでしょ

惟継さんちゃんと掴まってる?
変なとこ掴んだらえっちって言うからね




 蜘蛛といえば、狭くてくら~いところが大好きである。
「収まりはいいし暗くて涼しいし……おじさんこのままでもいい気がしてきた」
「俺を乗せたまま何処へ行くのかと思えば……外の音が聞こえんのか?」
 そんなこと言ったって、霞末・遵(二分と半分・f28427)はおじさんである。
 お人好しでひとがいいはずで、正直けんかなんて好きじゃない。だって争いも戦いもべつに遵がやらなくてもいいことのはずなのだ。
 さてさて、それを許さないのは鈴久名・惟継(天ノ雨竜・f27933)。カクリヨファンタズムに通ずる彼にとってはこの世界が滅んでは困るどころではない。とはいえ、蜘蛛の気持ちもわからんでもなかったのである。日頃の遵を見ていれば、彼がわりと面倒がる気持ちもわかる気がするのだ。わかるけどがんばってほしい。小さな蜥蜴になってしまった竜神は、妖怪たちが空けた酒瓶のなかに入り込んじゃった遵がどうすれば出てくるやら考えていた。妖怪たちが騒いで踊っても出てくるまい。どっかの女神ではないのだし。
「うかうかしていたら此処に入ったまま吹き飛ばされるぞ」
「ええ……おじさんはいいよ。ということで惟継さんあとはひとりでがんばって」
「だめだ」
「だめ?」
 折りたたんだ金属の足先にぺちぺち前足で触れてみる。引っ張る力がないのが歯がゆい惟継であった。
「動け動け、俺は今こんな姿なのだぞ」
「だって呼ばれてるのおじさんじゃないもん龍だもん」
「呼んでると言っても殺す気満々では戦うしかあるまい」
「すごい怒ってるじゃん顔も出したくないもん」
 ああいえばこういう。
 怠惰なわけではない。ないのだが。呑気の遵と使命感ある勇敢な惟継とではこうも一大事に腰の重さが違ってしまう。うーむ、と真っ暗な酒瓶の中身を見ながら蜥蜴が少し考えて。
「まずは様子を見に行くぞ。これでどうだ?」
「……ほんとぉ?」
「うむ」
「ちょっと見るだけ?」
「まずは見てみないと話にならんだろう俺一人でできることかどうかもわからぬ」
「……仕方ないなぁ」
 押して駄目ならちょっと引いてみなということで。
 どうしても学び舎に行きたがらない子などをあやすときのようであった。父性を生かした「ちょっとだけ」というフレーズに、のそりと蜘蛛が動いた。
「ちょっとだけだからねぇ」
「うむ。頼むぞ――」
 きちきちきち、機械仕掛けの二本の足がうごめいて。それからちぐはぐな他の足がついてきた。よじよじと背に惟継が昇れば、あとはたどり着くばかり。さあ、えっちらおっちら行こうではないか。

「うわかっこいいじゃん」
 たどり着いてみれば――遵は、めちゃくちゃ感動していたのだ。
「やば、なにあれ」
「竜を呼んでいながら奴自身も竜とは皮肉なものだ――よし、遵殿もやる気になったか」
「かっこいいじゃん」
 何を隠そう、このおじさん。とっても機械仕掛けが大好きである。
 生きていたころは蜘蛛の妖怪のまま街で絡繰り屋をやっていた彼であった。職業病というべきか、機械のものや仕掛けがあるものにはとっても目がない。背中に乗せられた大砲がかっこよく感じてしまうし、むき出しの配線コードや生命力を竜から吸い上げる導線もとっても気になっている。
「ええ~~……かっこいい」
 ここまで好奇心むき出しになる相手で助かった。遵の反応が思いのほかよくて、惟継は内心ホッとする。惟継だけではとてもじゃないが相手にしたくはない脅威である。
「奴を近くで見たいだろう?」
「よし行こう。もっと近くで見よう」
 でも歩くのは面倒だし大変そうな距離である。蜘蛛とトカゲがその全景を見れるのだから、二人と大砲の距離はとっても離れていると思っていい。ではどうしようか、――「ズル」するのがいちばんよいとされた。
「いくよー、惟継さん」
 しっかり捕まっていてね、と言いながら。この度は両脚がちゃんとガジェットでよかったなとほっとする遵である。【蜘蛛の網】をシュッと飛ばしてみた。
 ワイヤーロープの先端にビスがつながっている。一発であの大砲に近寄れるとは思っていないし、弾幕もかいくぐれるとはおもっていないが「糸遊び」ならば得意中の得意だ。指と腕だけ意識をむければいい。
 まず、樹の枝に触れた。巻き取られるようにして二人の体が宙に浮き、ぽおんと空を飛ぶ。もう一度それを繰り返す。ぽん、ぽん、と何度か跳ねてようやく弾幕が見えてきた。
「おお!早い。これはいいな」
「惟継さんちゃんと掴まってる? 変なとこ掴んだらえっちって言うからね」
「蜘蛛の体の部位なぞ知るものか。俺が変な所に触れても気にするでない」
 【雷帝ノ槍】。
 弾幕の中に飛び込むのは遵に任せている。器用な男だ、のらりくらりとしつつもソツなく相手の軌道を呼んで躱して接近を試みている。
 興味と好奇心で釣ってしまったが、惟継としても此度の原因には思うところがないわけではない。
 ――忘れられたものに、存在しないとされた竜が寄生している。
 他人事とはどうしても思えなかった。まさに、竜神たる惟継はその痛みを知っている。
 科学に押しやられた幻想である。人間が幻想を、そして神を信じなくなって数字を見るようになり、もう長い。わかっていたことの筈なのに、じくりと胸が痛むような気がした。やはり、人間が好きなのだ。
「同情はするが、――救えぬならやるしかないな」
 雷の矢が降り注ぐ。
 それでも、忘れられても。やはり「ひと」を想うのならば、世界を壊してはならんのだろうと思えた。ここには「ひと」の名残がたくさんある。
 それを護る為に竜神は弓をひくのだ。「ひと」が忘れたのならば自分に出番はないとしっているけれど、それでも。「ひと」がいつか、――思い出してくれる日まで。
「きゃー!惟継さんのえっち!!」
「我慢しろ」
 ごろごろごろろ、がしゃーん!
 空気を裂いた雷の矢が無数に突き刺さり、竜は悶えて光線を乱射する。ひょいひょいと器用に遵が飛び跳ねれば、しっかりと惟継がその体を四つ足で握っていた。
「わあ、いっぱい降ってくるね……これは何だろう」
「遵殿、急いでくれ」
「ええ……もうちょっと見たかったのにぃ」
 飛んでくる金属のパーツを時折見つめては、はよ走ってくれとせかされながら。
 蜘蛛がすごすごと森の奥へ引っ込んでいく。悲壮な竜の嘶きを聞きながら、歯車一つを大事にしていたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ゼイル・パックルード
◎△

でかい図体なので弾幕を真正面から避けるなんてできないので分身を作って隠れるとしよう。そう、辺り一面くまなくクマばかり……さすがに自分で言っててアホらしくなってきたな

デカイ的を狙う時、破壊力に自信がある場合とか、理性低いのならまず頭か胴体を狙う。
足元は比較的安全だろう、分身には二足歩行で行動させつつ、本体の俺は四足歩行で姿勢を低くして近づいていく。
最後は群れで襲いかかろう

竜の脅威とはいかずとも、熊はもっと密接に実在した脅威として人に襲いかかっているのさ。こんなクマがいるかは知らんけど(ぽりぽり)
"俺自身"も人間の敵みたいなもんだと思うけどね……敵であるためにその人間を消されちゃたまらない。


グウェンドリン・グレンジャー
◎△
こんこん
(どうやら狐の姿を気に入ったようだ)

弾幕、バトル
んー、あったっけ、弾幕……
(一瞬想像したのは故郷が誇る素敵兵器。パンジャンチガウ。欲しいけどまだ持ってない)
よし。私が、乗っかれそうな獣(ひと)、探そう
(自分が比較的大きめかもしれないという可能性を忘れている!)

へーい、きみきみー、どこの、世界、住み?
私、あなたの、こうげき……と、すばやさ、アップできる
但し、私、その間、鈍足紙耐久、なる
やろう。ダブルバトル
(前足を上げサムズアップ風)

背中、乗せてもらって、UC発動。仲間を強化
念動力、に、属性攻撃……の、氷属性を、籠めて、呪殺弾、の、援護射撃
竜には、氷が抜群
金枝篇、にも、そう書かれている




 ずんぐりむっくりとしたクマが、のそのそと歩いていく。
 頭上を飛び交う弾幕を見て、「こりゃ無理だわ」と早々に判断したヒグマがゼイル・パックルード(囚焔・f02162)。真正面からやりあっちゃあとんでもないことになっちまう。すごすごと喧騒の中に腰を下ろして、どうしたもんかと考えている彼であった。
「こちとらクマだぜ」
 それはそう(それはそう)。
 こんな機動力を求められるわりには的としてあまりに今のゼイルは大きすぎたのだった。うーんクマったクマった。ごろんと酒瓶とかお猪口が転がる祭りの敷物で、ぼりぼりと腹を掻く。
 何も怠けているわけではない――目の前の戦況をよく見て考えているのだ。相手が大きすぎるから、強大な一撃を食らわせるのが良いだろう。しかし、それにはかなり密度のある弾幕たちが邪魔だ。
「理性はないようであるって思っていいか?ん?ないようである……?」
 どれだ。もはやどれだ。まあ殺せば敵は死ぬ。
 よくわからんがクマとしては見くびられるのを善いとは思えないし、早々にゼイルは手を打つ必要があろうと判断した。クマだって確かに竜ほど脅威があるとは言わないが、「身近な脅威」の中では天災の次と言っていいだろう。
 幻想の怖さとは違うのだ。この恐怖は襲われてみないとわかるまい。ゼイルも襲われたことはないが怖いのは知っている。普通は炎に近寄るクマっていないのだ。クマはとてもおくびょうなので……。
 それに、突き詰めればゼイルだって人間の敵だ。
 ――自分のために人を殺し、あまつさえ人に殺されたがる。
 まるで命の燃え上がるきらめきを焚きつけてやろうとする彼の、ある意味生きる気高さの押し付けをよくよくやってしまうのだ。まごうことなく人間の敵である。殺す必要がないものを殺すのだもの、そんな悪辣さとあの機械に乗っ取られたドラゴンで優劣をつけるとして、こちらが劣だとされるのは些か納得もいかない。ゼイルの殺意は美意識のようなものだから。
「とはいえはてさて、良い感じに弱るまで待つかな」
 ごろごろ、ごろり。獲物を狩るのもタイミングをみないといけないので、ゼイルはとりあえず転がったのだ。
 すると、そこに――ギンギツネが一匹やってくる。
「こんこん」
「……キツネはケンケンって鳴くぜ」
 犬の仲間だから、もうちょっとそれっぽい声がするのだと教えてもらったのはグウェンドリン・グレンジャー(Blue Heaven・f00712)。
「まるで、セキでも、してる、みたい、ね?」
 とぎれとぎれの声を紡ぎながら、不思議そうにしてみたキツネである。
 グウェンドリンといえば、どうしてこんなところをうろうろしていたのだっけ。
 瞬きを何度か繰り返してから、ああそうだったとキツネが大きな耳をぴこぴこ広げてはたたむ。
「へーい、きみきみー、どこの、世界、住み?」
「……」答えるべきかどうか悩んだゼイルであった。「……UDCアース」仮住まいのほうが。
 ゼイルは知っている。グウェンドリンのこの「いってみた」というやつ。ナンパなのだ。普通の女の子が使うべきものではないやつだ。だけどなんだかおもしろそうなので続きを促している。はよ、の手招きであった。
「私、あなたの、こうげき……と、すばやさ、アップできる。但し、私、その間、鈍足紙耐久、なる」
 グウェンドリンは。
 ――先ほどまで、ぽてりぽてりと歩きながら考えていたのである。いかにもこの体は小さくて素早いけれど、いつもどおりの怪力任せではあの大きなアトラクションではあそべまい。
 はてさて、弾幕バトルができたかどうかと考えてみれば故郷の素敵兵器――パンジャンチガウ。まだもってない。もってなかったんですか? ほんまや……。
 まあともかく、羽では倒しきれなさそうである。何だかんだどうしたものかと考えながら、思いついたのは「乗っかれそうな人を探す」であった。幸い、今回目の前に大きい部類であるヒグマのゼイルがいたために、この作戦はちゃんと成し遂げられそうである。やったぜ。
「やろう。ダブルバトル」
 前足をヒョイと持ち上げた。
 キリッとしたキツネのちぐはぐ具合。まるで感情表現を忘れてしまった子供のよう。――同情はないけれど、せいいっぱいの愛想なのだろうなとは伝わってくる。害意もないようだし、まあ、よいだろう。
「わかった。俺も手数は増やせるが、強くて速いことこしたこたぁないし」
「よかった」ホッとした。グウェンドリン自身は全然動けないのだから、大きなゼイルが守ったほうが勝率が高い。ゼイル自身も効率よく恐怖を与えて思い知らせてやれるならそれが一番スッとしそうであった。

 ――ぬう、っと。

「な、なんだありゃあ」
「家事か?」
「いいや――」
 めらめらと燃える四つ足が歩いてくる。さながら軍隊のように地面を踏み、のそりのそりと弾幕を臆することなく妖怪たちをかき分けてきた。
 燃やしたくなきゃ俺に触るな。マジでやけどするぜ。いや本当に。ああほらお前の髭がこげちまった――なんていいながら、炎の何かがくつくつと意地悪く笑う。
 なんだなんだと熱でうねる視界をかきわけて、妖怪たちがその正体をみた――!!
「ありゃヒグマだ!!!!!」
 いいえ、ゼイルです。
 【火の子】と呼ばれるコードだ。ゼイルの炎で作った分身たちが、獲物はどこだそこかと追い求めて練り歩いている。その中心で守られるようにしているボスヒグマがゼイルなのだ。で、背中に乗っているギンギツネがグウェンドリン。
「不思議、熱く、ないの、ね」
「――まあね。俺だって燃やす相手くらい選ぶさ。あんたはまだ燃やすときじゃない」そう、まだ。
 練り歩くヒグマたちがごうごう、ごうごうと鳴き声なのか体を燃やす音なのかわからぬ異音を放っている。それが警戒の音だとは、ゼイルもすぐにわかったもので。
 空に散りばめられた碁盤めいた密度の弾幕が、ぎゅうっと縮まったかとおもいきや――落下してくる!!

「行くぞッッッ!!!!」

 バオッ!と吠えたゼイルに合わせて、火の子たちは飛び出した!
 その速さと力強さがいつもよりも苛烈で、にたりとゼイルは笑う。
 目視できるほどにグウェンドリンのコードを感じていた。【Silvery garden of yours】――自身の能力を代償に仲間の力を底上げするコードは、今のゼイルのコードにぴったりといえる。炎はよく燃やして、火の回りが早いほうが良い!
 ごごう、ごうごう、激しく燃えるヒグマたちが弾幕と衝突して爆発!どんどん激しく音を立てて燃えるものだから、これには妖怪たちも「たまやー!」と声を上げていた。
「季節外れの花火もいいねえ」
「乙なもんだ」
「酒はもうねえのかあ?」
「だぁめだよ、ほどほどにしなきゃ忘れちまうぜ」
 こんな立派な花火、忘れたらもったいないよなあ。
 爆炎をあげて燃えさかる弾幕たちを見送りながら、ぼんやりと妖怪たちが瞳にきらめきを映す。ああそういえば、何を忘れていたんだっけ――。

「ッち、やっぱりそう炎は効かねえか」
 火薬を乗せているのだ。竜のうろこはなかなか炎を通してはくれない。燃え盛るヒグマたちのパンチなどによって、巨体は大きく揺らめいたりしているけれど、決定打には少し足りない気がするゼイルである。
 そこに、ひょこりと背中のグウェンドリンが提案した。
「竜には、氷が抜群」
「あ?」
「金枝篇、にも、そう書かれている」
「……ふーん」
 なんかいいことを聞いたような。自分ではできないことを知ってしまったような。
 なるほどねとあいまいな返事をしていたゼイルの背から、グウェンドリンが氷の弾幕を展開した。「うぉっさぶ!?」急に下がった周囲の温度にゼイルも思わず毛を逆立てる。
「せー、の」
 
 氷柱めいた氷の牙たちが、グウェンドリンの念動力と合わせて呪い殺しの弾となる!
 ずがががが、――突き刺ささった氷たちによってあっという間に竜の弾幕は書き消えた!悲鳴めいた大声が地面を震わせ、ダメージをあらわにしている!
「中の大砲まで届いたみたい」
「そりゃあよかった。これで俺たち小さい者もちょっと怖いってわかればいいんだけど」
 炎の炎熱でひしゃげた大砲のパーツたちと、霜の降りる体をした竜を見上げてヒグマがせせらわらう。
「ま、死ぬまでわかんねえよな」

 ――そこまで、一緒かもしれなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

曲輪・流生

引き続きイタチ

た、大砲です…!
(僕は竜神ですよ!とアピールしようとしてはたと気付き)
そうでした…僕、今はイタチの姿なんでした…!
でもさっきよりは落ち着いたからちゃんと技も使えるはずです…!
UC【真白き炎】(無意識に【神罰】発動)
(見事な弾幕を展開)

と言うかですね…さっきの龍神片さんにしても貴方にしても…貴方達の方が龍や竜に近いのですが…気付いていらっしゃいますか?


馬飼家・ヤング
◎🐾(なんかネタっぽいの希望)

人の概念がなくなって動物化するんやったら、元より人間離れした外見のわいは関係あらへんね!セーフセーフ…ってなんじゃこりゃああああああ!?
(二足歩行=人間型のカテゴリからは逃れられなかった模様。仕方ないね)

なんか妖怪のおっちゃんらが酒飲んでどんちゃんやっとるって聞いたから、わいもしれっと混じって一杯やろかと思てたのに!
動物になったら酒どころやあらへんやん!!

あーっ!せっかく用意した酒と肴が弾幕でグチャっといってもうた……
オノレかー!わいの楽しみを台無しにしてくれよったんは!!
コンチクショー!返せー!戻せー!!
(どうぶつパワーで怒りに任せてポコポコポコ)




 Q. 人の概念がなくなって動物化するのだったら、もとから人間でも動物でもない外見のものなら大丈夫じゃないんですか?
 A.(ヤドリガミを指さす)(首を振る)

「なんっっっっじゃこりゃあああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
 素敵なリアクションを披露してくれたのは馬飼家・ヤング(テレビウムのちっさいおっちゃん・f12992)!ほらねもう二つ名とかそのへんにおっちゃんって入っちゃってるし二足歩行なのでテレビウムの彼だってこのとおりどろんぱっぱとしてまうわけです。
 ぽんぽんたぬきは真っ黄色!それこそオオサカのえべっさんよろしく大きいお腹をした立派なたぬきになっちゃった、そんなヤングが開幕早々叫ぶのも致し方ない状況であった。
「落ち着いてください!」
「落ち着けへんやろ!!!!????????順応力高ないッ!!!!!???」
「僕は竜神ですよ!」
「イタチやけど!!!!???!!!?!?」
「そうでした……!」今気づいた。
 曲輪・流生(廓の竜・f30714)はそんな動揺する彼をまずなんとか落ち着けられないかと善心いっぱいのつるつるふわふわなしなやかな体でめいいっぱいどうにかしようと両腕を振る。
「なんか妖怪のおっちゃんらが酒飲んでどんちゃんやっとるって聞いたから、わいもしれっと混じって一杯やろかと思てたのに!」
 タヌキが身を起こしてうあああ、と頭を抱えて嘆いている。
「動物になったら酒どころやあらへんやん!!」
「仕事中ですのでお酒はちょっと……!!!!!どうなんでしょう……!!」
 気持ちはわかる。
 流生としてはとてもがんばりたいが、それは流生が本当に優しくて他に尽くす献身的な存在であるからして。「でもそのお願いはちょっとかなえてあげられません……」とはなかなか言えない。むしろめちゃくちゃ悲しんでるヤングさんがちょっとかわいそうにも思えてきた。
「ど、どうでしょうか。こういうのは……えっと、お仕事がおわったあとで皆でいただくとか、どうです?」
「えっ!!!???!!!?なにそれ素敵やん!!」立ち直った。関西人は大変そういうところある。大阪風観光都市「テナモンヤ・ナニワ・シティ」出身のこの男、もらえるものは貰える主義である。
「あー、なんかそう思てたら、ここはいったん我慢するっちゅうのもアリな気ぃしてきたわぁ」
 ぽんぽこぽん。お腹をたたいてなんだかゴキゲンになってきたヤングさんである。
「でしょう、僕はお酒が飲めませんけど、でも皆で戦えばその分早くそういう時間も長く取れますし……!」
「あんちゃんめっちゃ上手やなぁ!」うへうへうへと笑いながら、なんだかどんどんその気になってきたヤングさん。
 ノリノリな関西人のおっちゃん系であるからして、良い感じに言われればわりとその気になってきちゃったりするのだ。オオサカでタブーなのはオオサカ出身なのにマジでクソしょうもないことばっかりいうおっさんである。
 流生としては、なんだか混乱から落ち着いてくれたようだし、戦意も取り戻してくれたらしい仲間の一人を自分の手でどうにかこうにか持ち上げられたことがうれしい。ああよかった、誰かのためにできた――という自信が、彼を強くした。
 そう、この流生。落ち着けばとっても強いのだ。幼くともかつては人間をその力で堕落させたようなものである。何でも願いを叶えることの怖さったらないのだけど、今の彼といえばイタチの姿に順応して、こうして味方を落ち着けさせられるほどしたたかになった。
「と言うかですね……」
 くる、と大きい大砲に振り向いた。
「さっきの龍神片さんにしても貴方にしても……貴方達の方が龍や竜に近いのですが……気付いていらっしゃいますか?」
「灯台デモクラシーってやつやん!」
「そうなんですか?」
「これわいもしかして自分でノリツッコミせんなあかんやつ!!!????」そうです。流生くんは純なのでッ……!

 きゃいのきゃいのしているしている間に、耳障りだったのか竜から生命エネルギーをすいあげた大砲が弾幕を降らせた!
「わわわわわわわわわわわわわあ!!!??ちょちょちょ!!!フリなしはあかんて!!絶対あかんよそういうの!!!ちゃんと言わなあかんて!!!」
「――落ち着いてやれば出来るはず!」
 まったくもって突然降りそそいだあまりの物量と脅威に目を白黒させる黄金のたぬきがすってんころりん、後ろにまわればイタチの【真白き炎】が迎え撃つ!
「おお」
「ありゃあすげえ」
「あれ。あのイタチ、もしかして竜か?」
「竜神じゃないの!」
 妖怪たちにはなじみ深い種族である。あっという間に流生を起点として、見事な弾幕が組み立てられた!
「僕だって……!」イタチの瞳でキッと前を見据えた流生が力を送り込めば、白色の炎は煌々と燃え盛り弾幕を打ち落としていく!!!
 どう、どどん、どんどん! 太鼓の音色で竜神を称える囃子が鳴り響いて、ああそういえばどんちゃんした弾幕祭りにきたのだとふと、ヤングは思い出した。
 ――持ってきたものがあったのだ。
「あーっ!!!!!!!!!!!」
 絶叫が響き渡るが、あっという間に弾幕同士の競り合いにかき消されてしまう。
 ヨヨヨヨ……膝から崩れ落ちるタヌキの姿は誰も見ず。もちもちのおなかに乗っかるようにして転がって、無残な自分の荷物を見た。
 酒と肴を……持ってきたのである……甲子園みたいなもんで……。
 だって……ねえ。猟兵いっぱいおるし……おっちゃんがんばらんでもええやん……。妖怪たちたのしそうやし一緒に一人くらい紛れて酒飲んでもまあばれへんやん……テレビウムかてほとんど妖怪みたいなもんちゃう?ちゃうの?ああそう……。
「……ぉぉおおおおおおおおおおオノレかぁあああああああああ!!!!!!!!!!!!!わいの楽しみを台無しにしてくれよったんは!!!!!???おぉ!!!!!???!!!?!??!?」
 ――これにはヤングもブチギレ金剛である。
「グルメの道は一期一会!!!!!!!!!!『また買えば?』では腹の虫が収まらんのじゃワレ!!!!!!ドートン堀の底より深い絶望がオノレに分かるかゴルァ!?!!?!!?!!?」
 道頓堀って浅くないですか?いや、もしかしたらテナモンヤ・ナニワ・シティのほうは深いのかもしれなかった。
 そんなわけですっぱ抜いたのは【くいだおれ野郎の逆襲】!
「コンチクショー!!!!!!返せー!!!!!!戻せー!!!!!!!!ごめんで済んだら警察はいらんのんじゃ!!!!!!まるっと全部カネで解決せんかい!!!!!!!!!!!!」
 流生が弾幕をかき消したその一瞬で、さあ怒りに満ちた黄金のタヌキの一撃が今!突き刺さる―――――――ッッッッ!!!!!

「 タ ヌ と 和 解 せ よ ッ ッ ッ ! ! ! ! ! ! 」

 き、決まったァーーーーーッッッ!!! ディープ・ニシナリ・アッパー!!!!!!!!!鋭い一撃が竜の顎を直撃!ぐるんと目を回した巨体がぐらぐらと揺れて――どうううん、と地面に一度崩れ落ちた!!!

「あかんよ……ほんまに……食いもんの恨みって怖いんやから……」
 地面にしゅたりと着地して、しょんぼりしたタヌキさん。
 あからさまにしょぼくれる彼に、流生が自分に関心を寄せた妖怪たちにひそひそと耳打ちついでのお願いをしたのだ。
「あの……どうかお酒と、何か食べ物をあのかたに……分けていただけませんか?」
「いいよいいよ」
「あんたもいいもん見してくれたし、なんかお食べ」
「えっ、いいんですか!?」
「え!?食いもんくれんの!?いやあ~~もう、すんまへんなぁ。おおきに~!!」

 頑張ってくれたお二人にはちゃんとご褒美が待っておりますので。
 妖怪たちからすれば猟兵たちはみんなかっこいいし憧れでもある。愛すべき隣人たちの笑顔のために、さあさあこちらにと祭りの席に二人分を用意するのだった。どうぞ、ごゆっくり弾幕勝負を楽しんで!まいどおおきに~!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

穂結・神楽耶
【彼岸花】

それわたくしですね。(現実逃避を許さないストロングスタイル)

いやー、それにしても破壊力すっごいですね。
「失われた古代兵器」とか流れついててもおかしくない世界に何を言ってるんでしょうかこのネグルは。
避けられます?大丈夫?
わたくしだったら掠めるまでもなく蒸発しますからほら。あははー(焦げ跡なでなで)

はぁい、それじゃあ任せます。
ネグルの頭に捕まることとUC詠唱に全神経を集中。
長く唱えるだけ威力が上がるから、衝撃波と後の弾幕ごと破滅へ導きましょう。

はてさて皆様。
かわ…カッコいい虎の雄姿はお楽しみ頂けましたか?
次は大砲同士の打ち合いを御覧入れましょう。
さあ、お仕置きですよ──【神掃洗朱】!


ネグル・ギュネス
【彼岸花】
あ、ちょうちょ(現実逃避)

いやいやいやいや動物で挑む奴じゃねぇだろ何がどろんぱっぱだよこの場からどろんしたいよ(早口)
ああいうのはもっとファンタジーとかアポヘルとかであっぶね焦げた毛が焦げたァ!!!アツゥイ!!!

ああもう、腹ぁ括るしかねぇか!姉さん、しっかり掴まってろよ────黄金眼、起動!駆け抜けていく!

砲台があるってことは、撃つ瞬間に此方に向くし予備動作はある
その瞬間を見切り、ジグザグに回避していこうともよ
弾幕は未来予測で射線を見切る、多少掠めてもなぁ、虎は強ぇんだよ!

本体に向けて突っ込む、イチバチだ!
妖怪ども、見ていろよ!姿が変われど戦い方は変わりゃしねぇさ
くたばり、やがれ!



「あ、ちょうちょ」
「それわたくしですね」
 ネグル・ギュネス(Phantom exist・f00099)としては、現実逃避もしたくあった。25歳ですよ!?今年で26になる成人男性がどっかの球場マスコットよろしくデフォルメな虎になっちゃってるんですわ。ここは甲子園でもなんでもないカクリヨファンタズムなのでいろんな意味でネグルの諸々は崩壊寸前になっていた!
 そこにしっかりと現実逃避許さない系ストロングスタイル蝶々こと穂結・神楽耶(あやつなぎ・f15297)がひらひらと翅をはためかせ彼をどうにかこうにか現実に引き戻す。
 神楽耶ちゃん的にはこの程度、超些細なことである。なんならウインクしながら「余裕ですよこういうの!慣れてますんで!」みたいな雰囲気で馴染んじゃってるレベルで順応力が高い。たぶん世界を救う使命感のほうが精神を凌駕しているみたいなもんだと思います。
「いやー、それにしても破壊力すっごいですね」
 蝶々の視点から見たときはもう、そのあたりが白く光ったかとおもいきや吹き飛ばされるような衝撃と、鼓膜がなくてよかった~と思ってしまうほどの爆音すぎて何があったやら一瞬理解も遅れた。
 猟兵たちとあの兵器が戯れのように戦い始めてからはやや視界も落ち着いて、虎に守られながらあたりを見たものだが――これは確かに兵器にふさわしいパワーを誇っているのだと悟るのには十分すぎる爪痕が残っている。
「いやいやいやいや動物で挑む奴じゃねぇだろ何がどろんぱっぱだよこの場からどろんしたいよ(早口)」神楽耶ちゃん、座布団一枚あげて。
「『失われた古代兵器』とか流れついててもおかしくない世界に何を言ってるんでしょうかこのネグルは。」やっぱり座布団一枚もってって。
 納得するしかない理不尽……ッ……!!これがッッッ!!!理(ことわり)ッ……!!!
 ネグルとてゴネたいわけでもないが、あまりにも難題過ぎる。これならまだかぐや姫の難題とかのほうがまだ成就させられそうな気がした。だってこんなんデカすぎてむちゃですやん……。でも、他の猟兵たちは何とかやってるみたいなところも見たし聞いたんや。ほなできるんちゃうか? 姉さんが言うには出来るっていうねん。ほなできるわ。
「ああいうのはもっとファンタジーとかアポヘルとかで(じゅっ)――あっぶね焦げた毛が焦げたァ!!!アツゥイ!!!」
 生きてる証拠だよ。
 ネグルが動物サイズくらいになっちゃった半分機械の躰で諸々考えながら額がアッチアチになってきたのを感じたころに、ビーム弾幕がかすめていく。
「避けられます? 大丈夫?」
「だ、だいじょぶ……」死ぬかと思ったネグルくんである。
「わたくしだったら掠めるまでもなく蒸発しますからほら。あははー」
 笑いながらシレッとメチャクチャ怖いことを言った。
 そう、神楽耶は今掌サイズくらいの蝶々になってしまっているのだ。ふらふら飛び回れば被弾することは避けられようが、万が一今の体のどこかしらが熱光線にあたっちゃうとジュッではすまない。一撃アウトのオワタ式である。死にゲーより過酷でコンティニューできないのさ!

 きつい。
 今の状況、このままではかなりきつい。
 ネグルは自分のやけどのあとをなでなでする蝶々の感覚が軽すぎることにぞぞ……っとしながら、はああ~……と深く息を吐く。
「ああもう、――腹ぁ括るしかねぇか!」
 このネグル。やろうと決めたらもう誰にも止められない!
 やるのかやるのかそうだやるのだやらねばな。彼の中に眠る機械の部分が命令通りに駆動し始めたのなら、デフォルメ虎ちゃん出動である。
「姉さん、しっかり掴まってろよ」
「はぁい、それじゃあ任せます」
 四つん這いの体がぐぐぐぐ、と毛先を逆立たせながら丸まって、その後頭部にしっかりと蝶がしがみ付いている。
 眼前の敵は確かに体も威力も段違いのものだが、やはりその分予備動作も大きい。ダメージを一定受ければ弾幕もかき消されるようだし、弾幕にはパターンがある。
 戦意をむき出しにしたネグルに注視が向けられた――やはり、これではこの鋼を止めるには「遅すぎる」!
「────【黄金眼】、起動!」

「ガアアアアアッッッ!!!!!!!」
 激しいビームは中途半端なものだった。
 あまりにも砲台に近づいてくるトラチャンことネグルが早すぎる!チャージしきる前に噴出しなければ、当てることもままならないらしい砲台からは乱射がおきていた。
 それを、ネグルはジグザグに走行することで回避し続けている。まっすぐにしか飛べないというのなら直前に左右どちらかにスライドすれば問題はない。
 ――っぢ、と駆ける足の裏を焼かれたが気にしている暇はなかった。むしろ、予測した演算に生ずるラグと誤算を編集するために冷静である。
「ちィ、ッ――途中で曲がるのかよ!」
 ネグルにむかったレーザーたちが地面すれすれでへにょりと曲がる。むちゃくちゃ嫌なへにょりレーザーである。しかしこれもネグルはひょいとジャンプするようにして躱してみせて、また前へ前へと突っ込んでいくのだ。
 神楽耶はその頭にひしりと捕まりながら、詠唱を続けている。【神掃洗朱】は詠唱の時間が長ければ長いほど威力を増す彼女の弾幕といっていい。真っ黒な斬撃たちが赤い輪郭をぎらつかせて飛び交っていく。ネグルに触れる前に竜の弾幕を「破滅」させ、塵と化して空へ還した!
 衝撃波も弾幕も、すべてすべて等しく滅ぼしていく。蝶の思念は言葉にならずとも、その威力がすべてを物語っていた。「これ以上も許さない」と滅びの武器の抱く強い意志が、忘れられた兵器に対抗する!
 護られている。
 滅ぼす力で、ネグルは――開くべき未来を知っている男の命は、確かに護られたッ!
「多少掠めてもなぁ、虎は強ぇんだよ!」
 どう、どう、どどう。
 激しい弾幕の強襲を前にしても虎は止まることがない!
 勇猛果敢な虎の姿を前に、妖怪たちもこれには息をのんでいた。
「おお、なんだありゃあ」
「すげえ!速度が全然落ちねえ!」
「がんばって、トラさん!」
「走って!!ああ、あぶない!!」
 圧倒的な脅威を前に。この目の前に差し迫った死の予兆を見せつけられてもネグルはけして足を止めない。姿が変われど戦い方は変わらぬ!忘れないものをその胸に常に、抱いている限り――!!
「うぅううううううぉおおおおらァアアアアッッッ!!!!!!」
 この勝負は、もはや賭けであった。
 妖怪たちも両手で目を覆ってしまいそうになるほどである。眼前に迫った弾幕を飛び越えようとするネグルと、次なる攻撃を構えた砲台。
 殺意が交錯する――しかし、先手を打つのは曲がらぬ鋼の意志!!
「くたばり、―――――やがれッッッッッ!!!!!!!!!!」

 ぜ、全力の虎ぱんちーーーー!!!!!!!!!
 ば ぐぉッ!!と聞いたこともないような破砕音が響き、弾幕を飛び越え切ったネグルのアッパーカットが鋭く竜の顎に直撃――――――ッッッ!!!!くらりと目を回した竜の背が揺らいで、砲台も上を向いた。
「はてさて皆様。かわ……カッコいい虎の雄姿はお楽しみ頂けましたか?」
 宙を舞う虎の後頭部で、黒揚羽が翅を広げて見せる。ちらちら、ちら――とあたりに赤黒い鱗片が舞い降りて。
「次は大砲同士の撃ち合いを御覧入れましょう」
 静かな神楽耶の声は透き通る。妖怪たちの耳に入り、彼らも圧倒的な「どんでん返し」から目が離せないのだった。
 きら、きら、ぎら、――破滅の色に染まった無数の斬撃たちが、さきほどネグルを護っていたものとは段違いの数で現れる。
 碁盤上に竜をまもるよう展開された弾幕とほぼ同数!

「さあ、お仕置きですよ――!!」

 一度蝶が、羽搏けば!
 それを合図に破滅色の強襲が始まった!!弾幕同士でぶつかりあい、真っ黒な煙を上げながら爆破、爆破、爆破ッッ!!!竜の巨体が大きく揺らめき、機械のパーツからは火花が散る。
 苦し気な声を上げる竜よりも大砲のダメージのほうが深刻であった、粒子を集めることすらままならぬような有様を見送りながら、ネグルが地面に転がる。

「どんなもんだってんだ!ハハ、やりゃあできるもんだな――」
「はいはい、油断せずあっちです、あっち」
 弾幕勝負、またもや猟兵の勝利と相成る!
 まるっこいネグルが転がってきたなら、妖怪たちが「すごかったなあ」とか「がんばったなあ!」とか言いながら酒の席までひきずりこんでいくのだ。
「え?あれ?なんか……運動会の保護者席みたいなノリ……??」
「大きさ的に」ええい。この女神、長いものには巻かれとる。
 さあさあ頑張ったお二人には美味しいご飯と年齢が許すほうにはお酒も持て成してどうぞどうぞのごゆっくり。ボーナスみたいなものです、ボーナス。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

西條・東
【柴と雀】
でっ、でっけ~ドラゴンだ!!かっけぇ~!!
あっ!でも倒さないとな!(目をキラキラさせながら)

敵が攻撃の反動で昏倒するのを狙って、UCの黒の金魚は【貫通攻撃】、白の金魚は氷の【属性攻撃】をするぜ!

昏倒するまでの間はオスカーを乗せて回避に回るぜ(逃げ足、オーラ防御使用)
攻撃を回避できないものだったらオスカーをかばう!俺の方がでかいからな!
『痛くないぜ!それよりオスカーを守るんだ!』(尻尾ぱたぱた)


オスカー・ローレスト
【柴と雀】

ぴーーー?!?!(轟音にビビって飛び上がり羽をパタパタさせているふくら雀
そ、そうだね、倒さ、ないと……

お、俺はまた、東の頭に乗せてもらって、敵が昏倒するタイミングを伺う、よ……

ぴ?! あ、東、大丈夫、かい……?!
お、俺を庇って、なんて、そんな……
た、確かに、今はそう、だけど……ぴぃ……(すごく申し訳ない気持ち

か、庇ってもらった分、俺も、やる事をやらない、と……いつものクロスボウは使えない、けど……魔力の矢は作れる……敵が昏倒した隙を狙って【切実なる願いの矢】で【暗殺】、するよ……!!




「で、でっけ~ドラゴンだ!!かっけぇ~~~!!!!」
 男の子のあこがれであった。
 みんな好きですよね。ドラゴンとかになんかちょっとメカとかついてるの。西條・東(生まれながらの災厄・f25402)も類にまれず大変かっこいいもの好きであった。
 なにせまだ十二歳の子である。どんどんばんばん猟兵たちと大砲が殺しあってはいるけれど、その迫力は現実からは大きく離れてもはや幻想的といえた。きらきらと瞳を輝かせながら、まだまだ未熟な黒柴の姿でしっぽをふりふり。
「ぴーーー?!?!」
 オスカー・ローレスト(小さくとも奮う者・f19434)は成人男性なので目の前の脅威が普通に怖かった。やっぱりいろんなことを知っているといろんなことが怖く思えちゃうのだ。オスカーはそれにしても残酷な経験をたくさんしているからでもあるのだけどもまあそれは今ともかくとして。
 ふっくらした雀がぴょーんと跳ねたのも無理はない。羽根をばたつかせてからへなへなとまた東の頭にもすりと座る。人間で言うと腰が抜けた状態みたいなもんであった。
「おっ? オスカー、大丈夫か?」
 俺がいるから心配しなくていいぜ!なんて言いたげな声色。尻尾をぶんぶんと無邪気に振って、頭で羽根をふくらませてびくつく頭上の友達に、東はわふわふと舌を出す。
「だっ……だ、だいじょう、ぶ」
 まだまだ幼い東がこんなに胆を座らせているというのに何とも情けない気がしてしまうのだ。正直なところオスカーとしては目の前に視界に収まりきらないほどの脅威は恐ろしいことこの上ない。展開される弾幕の密度だってとてもノーマルなモードとは思えないほどに見えていた。
「すっげ~かっけぇなあ……あっ!でも倒さないとな!」
「そ、そうだね、倒さ、ないと……」
 小さきものたち、挑むさまは正反対。
 東もオスカーも戦いに挑む背姿勢は異なれど小さいからこそ警戒度は同じくらいである。一発でも食らって踏みつぶされれば即死間違いなしなのは二人として共通の弱みであり、理解だ。
 つまり――この圧倒的な不利な状況をまずどうすればかいくぐれるのか。二人はそれを狙ってずうっと、他の猟兵たちの戦いを見ている。
「オスカー!気づいたか!?」
「えっ、えっ、えと、どれ、かなっ……!」
 茂みに隠れてもちもち柴の頭にのせられていた雀も、――自分たちの生存を最優先にしたことを申し訳なくも思いながら――敵を観察していた。
「あいつ、ダメージを受けると弾幕を消しちゃうみたいだ」
「そう、だね……た、たぶん、だけど、集中、できないんじゃ……ない、かな」
「集中?」東がふすふすと鼻を鳴らしながらオスカーの見解に興味を示す。
 弓を引く時と同じことだ。オスカーの脳裏に、ぢり、と嫌な熱さがあったきがした。
「……ほ、ほら、お、俺たちは、小さいから。……狙い、に、にくいんだとおもう。強いビームを使えば、使うほど、疲れるだろうし、竜のほうが」
「なるほどなあ……つまりアレだろ? 将を射んと欲すれば先ず馬を射よってことだな!」
「む、難しい言葉、知ってるね、東……」
 エッヘン!なんと東は文豪の卵なのでよく知っていた。得意げな黒柴の頭でほっこりとした雀である。
 ずずうん、と先ほどとは違う轟音がした。腹の底に響くようなそれは、竜が倒れた音だ。
「あ、あいつ倒れるんだ――でもちょっとしたら動けそうだな」
「……ああいうときが、俺たちの、ち、チャンス……かもしれない」
 卑怯なことを思いついてしまう自分があまりにも――。
 ぶわわわと羽毛を膨らませて震えるオスカーではあったが、東は「いい作戦だぜ!さすがだ、オスカー!」と笑い飛ばしてしまった。
「えっ」思わず、これにはチュンとびっくり。
「俺たち、めちゃくちゃちっちぇもんな!へへ、それなら勝てそうだぜ」
 ――ぶんぶんふりふり。勝つための作戦会議だってかっこいいにきまってらぁ!東がうんうんと頷いて迷うことなく動き出す。
「んじゃあ、やっちまおうぜオスカー!善は急げって言うんだ!」
「で、で、でもっ、でも、東……!」
「だいじょーぶ!俺が守ってやるから!!」

 ばびゅんと飛び出した小さな命があまりにも強くって。
 思わず、ぷるぷるふるえていた雀もほろりと涙を流してしまいそうなほど頼りになるぬくもりに、足でぎゅうっとしがみついていたのだった。
「ガア、アアア、アアアアーーーー!!!!!」
「うわっとととと!!」
 全能力を強化した大砲自体は、先ほどまでに比べて非常に駆動の無駄がない。
 小さいからこそ探知しにくかろう東たちを見つけては、そうはいかぬと吠えながらの弾幕の展開!ど、ど、ど、ど、と小刻みな連射が東たちを襲う!
「あぁッぶねえ……!やるじゃねえか!」
「あ、東、がんばって!」
「おう!」わん!と強く吠えて【双魚の行進】!
 黒白の金魚がふわりと現れれば、その二つが光を伴い――東を護るように旋回しだす。
 避ける隙間がないというのなら金魚たちが弾幕を破壊し、一回りの大きな穴をあけて見せた!そこにぴょーんと飛び込んで、休むことなく穴をあけ続けてしのいでいる。
「おお、やるなあちっこいの!」
「がんばれーっ!」
「あぶねえ、上だ上ーっ!!」
 妖怪たちもその器用さと賢明さには感動していた。パパーッと大きく喇叭の音が鳴ったかと思いきやハイテンポなリズムで東の体にビートを響かせる。音楽を聴きながら運動するといつもよりパフォーマンスがあがるのでおすすめです!
 てて、とて、とてててっ。
 四つの足で戦場を駆け巡りながら弾幕をどうにかひねって躱す。さあ――そろそろタイムリミットの筈だ!弾幕の耐久はもう明けるはず、そう確信したときに。
「ぴっ!?」
 頭上のオスカーを狙ったビームが、弾幕に差し込まれる!!
「オスカーッ!!!」悲鳴を聞いてほとんど反射だった。
 東がぐるんと体を丸めてしまう。前に転がるようにした柴犬の背中をジュッと光線がかすめて――ぱぱっ、と赤い血の華が咲いてしまったのだ。
「あ、東、――――――――!!!」
「油断したぜ……オスカー、大丈夫か?」
 しかしそこは興奮しきった幼い体である。ころりんころりんとしてみせて、また元気に走り出す。恐れ知らずの少年の精神はすりむいたくらいで何とも思わない!
「大丈夫、かい……?! お、俺を庇って、なんて、そんな……」
「だって俺の方がでかいからな!」
「た、確かに、今はそう、だけど……ぴぃ……」
「それに痛くないぜ!それよりオスカーを守るんだ!」
 うーん、わかいって素晴らしく元気なのだ。もう二十歳こえてくると十歳の元気ってなんか眩しいですもんね。東の冷静な判断もまたオスカーは反撃できないほど整理されていて、自分の情けなさと申し訳なさがごちゃまぜになってきた。うう……いけめんわんこはおさなくてもつよいね……。
 東が攻撃を食らってしまったから、黒と白の金魚はふわっと霧散して消えていく。
 それと同時に弾幕も消えた――しめた、と雀がぐらぐらと目を回している砲台を見つめる。
「お、俺も、やる事をやらない、と……」
 【切実なる願いの矢】は、いつものクロスボウにはのせられずとも叶う矢である。
 もはや今の砲台はやや風に吹かれる的のようなものだ。ふっくらした雀の頭上に大きな槍が作られて――狙うは、まだダメージの目立たない砲台のほう!

「やっちまえ、オスカー!」
「い、っけぇ…………っ!!」
 食いしばるような声と共に。頼りの仲間の声を聴いたオスカーが矢を放つ!!
 カッ―――――とそれが着弾と共に光って、大きく竜の背をのけぞらせた!お見事、天晴れ!ぎらぎらと光る魔術の爆ぜる勢いに任せて、砲身の一つがびしびしとひび割れを作って黒煙をあげていた――。 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セリオス・アリス
【双星】◎猫
アレスの背中をベストポジションとして陣取って
さあやってやるぜ!!
けど…あれ、アイツが竜じゃねぇの???

うおっ!?
ビームが放たれたらとっさに盾の隙間に逃げ込んで
いけ!そこだ!がんばれアレス!
ビームの来る方向を第六感で見切り小さなあんよで教える

防戦から攻めに転じるなら…やっぱここはビームにはビームだ!
アレス!盾カリバーだ!
いけ!そこだ!モロコシでも撃てたんだから盾でも撃てる!
ほら、いってる間にもまた来るぜ!お前なら斬れる!
盾が背中にないぶんしっかりアレスにしがみつき
にゃごにゃご【赤星の盟約】を歌って更なる応援
いっけ~!!キメろ!

もし撃てたら、ゴロゴロ喉を鳴らして勝利の雄叫びをあげる


アレクシス・ミラ
【双星】
◎立て耳の大型犬

この調子で次も…
…うん、僕もあれが竜に見えるな

っと、セリオス!盾の中に!
彼が入るのを確認したら
見切りながら駆け、弾幕や攻撃を躱し
教えてくれる通りに動こう
君の声に応えてみせるよ、黒猫さん

だが、これでは防戦一方だな…え?
盾カリバーって何だい!?
心当たり(のUC)はあるが…厳密にはビームでは…それに、盾では少々無理が…
た、確かに何故かとうもろこしの芯からでも撃ててしまったけれど!
〜〜っ君には絶対に当てさせないが、しっかり掴まっていてくれよ!
盾の持ち手を咥え
この…盾、で…?何であろうと運命を切り開いてみせる!
なるようになれ!!
大砲狙って【天空一閃】!!

(本当に撃てたら遠い目に)




 喧噪の中、うにゃうにゃうなうな、これでもかこれでもかと弾幕を飛び越え、いなし、ころりんころりんとかわす相棒の背中に必死でしがみつく愛らしいネコチャヌが一匹!!!!!
「さあやってやるぜ!!!やるぜやるぜ!!!」
 チャーーーーーーーーーン!!!!!やってきたのはセリオス・アリス(青宵の剣・f09573)!!今日の彼は愛らしいブルーアイの黒猫だ。フャーン!とまだまだ幼い声で鳴き、頼もしい背中に乗ってやってきた!やるぜやるぜそうかやるのかやるならやらねば!!
「この調子で次も……」
 はたり。強大な影を見上げて、ぱちくりとしてからピンと耳を立てたのはアレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)。たくましい大型犬になった彼は人間の時と変わらず騎士らしくあった。そういえばマントもしっかりはためいております。綺麗なお召し物まで犬猫サイズ、ご安心ください!
 さて。
 双星の二人が立ち止まってしまった理由、皆様もだいたいお分かりかと思う。
「……あれ、アイツが竜じゃねぇの???」
「……うん、僕もあれが竜に見えるな」
 灯台元暗しというか、なんというか。
 ここまで小さい体であくせくさせられておいて納得のいかないこのもてなしに、ニャム……とセリオスが目をぱちぱちさせる。「あ、でもアレか。アレって大砲が本体なんだよな?」とつぶやけば。
「――確かに。配線といえばいいのかな……あのコードが……竜の生命を吸い上げてるのか!」
 ごうん、ごうん――心臓のような音がよくよく耳をすませば聞こえてくる。アレクシスが悪寒を感じ取ったように、そうなのだ。今回討つべきはあの大砲。しかし、竜とて頑丈すぎるほどである。まずは竜を弱らせてから、大砲を脆くさせるのが一番得策と思われるのだ――。
「人質みてぇなもんじゃねえか……ッ!許せねえ」
「しかし、彼もこれ以上被害を周りに与えたくないだろう。セリオス、やろう!」
「おう!当たり前だ――――うおっ!!!??」
「っと、セリオス!盾の中に!」
 立ち止まった二人に照準が定まる!ぎゅぎゅうん、と鋭くビームが飛んでくるのを目視して、急いでセリオスがアレクシスの盾に潜り込んだ!
「ちっくしょ、アレス!俺が指示を出す!」
「わかった!」
 二人の間に、確認は必要ない。
 それは依存からではなく、ふたつが信頼しあっているからだ。アレクシスもセリオスの役割とその実力を知っているし、セリオスもアレクシスのすべてを疑うはずがないのだ。迷いなくわんにゃん隊、キラめいて出動です!!
 たしっと地面を蹴って走り出す!アレクシスの脚力はいつもより強化されていた。走り出せば見る見るうちに彼をやや遅れて追いかけていたレーザーたちが地面に突き刺さって捉えられずにいる。
「右!」
「ああ!」
「次、左っ!」
「よし!」
「そこ!」
「わかった!」
「あっちだ!」
「了解っ!」
「がんばれアレス!」
 ――最後のほう指示語でしたけど!!通じるんです、二人はなんてたって幼馴染からずっとここまでやってきた。アレクシスはセリオスの言いたいことはだいたいもうわかってしまうし、セリオスも同じ。なんかお餅つきとかすごく捗りそうな二人である。いかがですか、来年とか……。
 とまれ、弾幕相手はなんのその!セリオスの目利きが盾の中できらめいて、その通りにアレクシスが着実に動く。セリオスが信頼をよせるなら、それに応えてやりたいのだ。うーん、やさしい。
 しかし、問題が一つ。
「――これでは防戦一方だな……」
 そう。今のところ、避けるのに苦労はない。
 しかし、アレクシスはいつもの(犬用サイズの)装備にセリオスを乗せて常に全身で運動を続けている。たとえるのなら、重しをつけて二十跳びを何回も繰り返すような感じの疲れがどんどんたまってく感じ。――そう、いつか今は差をつけてかわすことのできているレーザーも、弾幕も、追いついてしまう時がこのままではやってくるのだ。
 しかし、その懸念はすでにセリオスも考えついている。
「そうなんだよなぁ……」ンニャニャゴ……。
 どうしたもんかとうなりながら、相手のビームを忌々し気に盾の隙間から見つめていたセリオスにその時、天啓が下りる。神は言ってるんですよ、ここで潰えちゃいけないって……。神はエモ好きだし……(??????)。

「やっぱここはビームにはビームだ!アレス!盾カリバーだ!」
「盾カリバーって何だい!?!!!?!?!?!?!?!?!」

 とんでもねえにゃん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
 素っ頓狂にも思えるセリオスの提案。しかし、ここはアレクシス!対の言っていることは理解してやろうと走りながら脳をフル回転した!!!おなかすかない!???!?体はつかうわ頭は使うわで大変だと思うので後でいっぱい食べてください!!!
 ――心当たりのユーベルコードはある。
 あるんかい。
「厳密にはビームでは……それに、盾では少々無理が……!」
「いけ!そこだ!モロコシでも撃てたんだから盾でも撃てる!」
 トウモロコシと盾なら正直耐久力というかそういうの全部盾のほうが勝つので盾のほうがましでは?と思えるんですけど、考えてみよう。アレクシスが渋りながらビームをかわしている理由を。
 モロコシはまだ……見ようによっては剣っぽいのだ。
 幼心でモロコシをむいたとき、バナナとはまた違う頑丈さを感じたことはないだろうか……薄目で見ればまだなんか……黄金に光ってる感じにも思えるし……なんか……ありそうじゃないですか……。でも盾は違う!!盾は守るものなのだ!!それはなんか違う!!騎士か? ディフェンサーか!? 別ゲームでした。
「ほら、いってる間にもまた来るぜ!お前なら斬れる!」
 セリオス、あまりにも天然に非情である。
「〜〜っ君には絶対に当てさせないが、しっかり掴まっていてくれよ!」
 アレクシス。ここはもう、呑んだ。いろいろと。
 確かにこのままではラチがあかないのだ。己がいなくなったらセリオスはどうなる!? そう考えたらやるしかない!いろんなものをかなぐり捨てて適応するしかないのだ!!
「この……盾、で……? 何であろうと運命を切り開いてみせる!」
 し、しまらねえ!!!!!しかし、そこに――美しい子猫の鳴き声が聞こえて来た。
 セリオスのいいところは散々ムチャぶりするけどちゃんとフォローに入るところである。【赤星の盟約】を盾がアレクシスにくわえられて頭上から消えた分、しっかりとその背中にしがみつきニャゴニャゴ歌っていた。
 セリオスの歌声が耳に届く。大きな耳はどんな戦況でも大切な輝きの声を聴き漏らしたりはしない!

「―――ぃいいいっけ~!!キメろ!」
「なるようになれッッッッ!!!!!!!【天空一閃】――――――ッッッッッ!!!!!!!!」

 ちゅ、どぉおおおおん――――――――。
 極天のきらめきがまたたいて、きれいさっぱり弾幕を吹き飛ばし――大砲を片方焼失させる!!
「うおおおおおおおなんだありゃあ!」
「すっげぇ!!!何から撃ったんだ!?」
「盾だ、盾!!!!!!」
「最近の盾は器用なもんだなあ」
 妖怪たちもこれには立ち上がって大歓喜!!
 拮抗していた戦況に大きな巻き返しが起き、ワアアッと妖怪たちの声が初めて大砲を上回った!
「――いよっしゃああ!!!!さすがだぜ、アレス!!アレス? おーい」
 撃てちゃった。撃てちゃいましたね。
 とても――遠い目をしていたアレクシスの背で、ごろごろにゃごにゃご、にゃおーん!とうれし気にセリオスが鳴く。いやあ、あっぱれあっぱれ。もしかしたらね、ほら、心に剣を持ち、盾となる赤き一等星だし。心の剣が光って、こう、盾に伝わったのかもしれないし!!元気出していこうね!!
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジャガーノート・ジャック
◎レグルス

(何やらキレ散らかしてるなあの相棒、というSPACE-EYE
だが凡そ十年くらい前に流行りに流行った弾幕ごっこゲーの様相を呈すのであれば
中身ゲーマー今ボンベイの豹、腕ならぬ猫の手が鳴るのだ)

(ダッシュに残像で弾幕を掻い潜る
スマホでミスって撮れた時の滅茶苦茶長い猫っぽくなったりしつつ)

"耐久弾幕"な。
ヨシ やるか。

(レグルスビームは破壊力
レグルスボムは爆殺力
レグルスファイヤで地を焦がし
レグルスサンダー空を裂く
【一斉発射×砲撃×爆撃×援護射撃×狙撃】
悪魔の力と言わんばかりのRegulus:Full-Burstでの火力大判振舞いである)

まさに"弾幕はパワー"と言う奴だ。(満足げ)(ザザッ)


ロク・ザイオン
◎レグルス

……。
(ガタイがデカい、その上声もデカい
獣の理論では何もかも立派な挑発であり)
……やんのか?
(にゃんこの堪忍袋も猫の額サイズになっていた)

ジャック。
あれだ。あれあれ。
"ゲーム"のやつ。
やるぞ。

(【野生の勘、ダッシュ】で弾幕を掻い潜り
ぽーんと【ジャンプ】頭上を取る)
しゃむは歌え
鳴は飛べ
ひゅどらは…でっかくなれ
(みっつのしもべに命令だ(役に立つかはわからないが)
獅子星「全天轟雷」!
閃煌の熱、雷華の雷、自前の火炎も全部解き放ち
相棒と弾幕の十字砲火
六倍強化の相手でも、真っ向から敵弾諸共【なぎ払い】【焼却】する)

暫くすれば眠ってしまうんだろ
……最後まで立ってた方がえらい
森の、掟だ。




 ガタイもでけーし。声もでけーし。
 むちゃくちゃ暴れてこっちのことガンつけてくれちゃうし。
「……」
 あんたそれ何やってんのかわかってんの? おうコラどこ中だコラ。誰にガンつけてくれとんねん、おお? おどれ舐めてたらしょうちしゃあへんど!やんのか? おん? やんのか!?
「……やんのか?」
「相棒」
 ロク・ザイオン(変遷の灯・f01377)の堪忍袋はノルウェージャン・フォレストキャットの頭サイズくらいに縮小していた。いや、いつもはもうちょっとロクも寛容なんです。
 今は立ち上がって「は?」みたいな顔しながら瞳孔を真ん丸にして見下ろす砲台を睨みつけてしっぽがぼわぼわだし毛も逆立ってああほらもうなんか口からはこの世のものとは思えないオラオラな鳴き声が出てますが。喧嘩上等。野生ノ掟。夜露死苦。
 ――とまあ、ロクはロクのまっとうな理由で怒っているんだけども。ジャガーノート・ジャック(AVATAR・f02381)にはその怒りがなんのこっちゃさっぱりわからんという具合で。猫の習性で検索するよりも、動物 威嚇 とかで検索したほうが早そうであった。した。わからないものは調べるのが長生きの秘訣なので。
「……なるほど、あれは動物界隈では挑発か」動物のなんかアレのことです。
「や゛ぁん゛の゛かぁ゛?」
「相棒、落ち着け」
 ゔるるるるぁああ~~~~~~~~~~~~ぉおお。
 地獄からやってきたんかお前はという温度でむちゃくちゃ鳴いてるロクである。あまりにもおどろおどろしいそれが響くものだから、ぎょろりとボロボロになりつつある砲台が竜の瞳を動かした。
 ジャックはちょいちょいと小さな手でロクをつつき、ふみゃああ~~~~~~~~ぉおおおおおぅうううんんん……と怒りをあらわにし続ける彼女をいったん止める。
「五月蠅い。近所迷惑になってしまう」
「すまん……」猫の怒ってる声って思ったより響きますよね。
 妖怪たちがなんだなんだとちょっと心配交じりに視線を集めてきたのは割と好都合ではあるが、心配ついでに戦わずにこっちにおいでなんてされたら本末転倒なわけで。
「さあ、来るぞ。奴にはちゃんと届いたようだしな」

 ――弾幕、展開!
 碁盤上に敷き詰められる弾幕たちはさらに密度を増していく。妖怪たちの音楽を無視してめちゃくちゃなリズムでホーミングしてくる銃弾型の弾幕だ!ば、ば、ば、と散りばめられて降り注ぐのを、にゃんぱらりとロクがジャンプとしなやかな体のひねりで避けたのなら――。
「な、なんだあれはァーーーーッ!!!?」
「し、心霊!心霊写真!!」
 しゅるるるるるる~~~~~んと弾幕の隙間を通り抜けてしまうジャックの残像、すげえ残る!!!処理落ちしてるみたいになってる!!スマホでミスって撮れた時の滅茶苦茶長い猫っぽくなっちゃうのである!早すぎて! 猫ってなんか面白いことしてる時に限ってあんまりうまく撮れないですよね。蛇足でした。
「うなぎか」
「私だ」
「ジャックか」
 相棒、目を丸くしないで。
 赤い瞳で残像を残しつつ走れば若干音爆弾に弱いアレっぽい。ずざざざざざ――と地面をすべり、いったん着地。ロクも後に続いてしゃなりと降り立ったのなら、やはりかわすだけではキリのなさそうな空間に対抗策を見出す。
「ジャック」
「どうした」
「あれだ。あれあれ。"ゲーム"のやつ」
 手だけで説明は難しいが、ロクが己のちいさな手でくいくいとなにやら長ぼそい箱を意識しているらしい動きをする。髭を広げる相棒がようやくその名前を思い出して口にすれば、黒猫は瞳孔を丸くしてゴキゲンに鳴いた。
「――やるぞ」
「"耐久弾幕"な。ヨシ――やるか」

 ジャックの中には、ゲーマーがいる。
 彼もこの凡そ十年前くらいに流行りに流行ってすごかったSTGの存在を知っているし、その鬼畜難易度から何までやり込んできたのだろう。最近新作も発売する話出たし、多分やると思われる。
 まあともかく、今この状況。実はかなりジャックのほうは楽しんでいるのだ。
 ロクは、その彼のいつもやってる"ゲーム"の中でもSTGという種類は動くものを追いかけたくてたぶんたまらないと思うのだけれど、まあそこはちょっと割愛するとして。
「しゃむ、鳴、ひゅどら」
 むぁむぁむぁ、とそれぞれのしもべの名前をよんだ。ロクの毛並みからどうやって生えてきたのかはわからないが、四角い猫のようなモチーフがあるデバイスと、カラスらしきものと、どうみてもフグが表れる。それぞれがロクの指示を聞いて――こくりと頷いた。
 やはり、ここは野生の戦いである。このしもべたちの長たるロクは、眼前の敵に教えてやらねばならない。
「群れがある。おれのほうがつよい」
 そう。野生では、孤独な個体というのは社会性がない、ということになる。
 一匹狼という言葉がクールな意味でつかわれているのは、狼社会としては間違いなのだ。社会性がない一匹が群れからのけものにされて、一人ぼっちでとぼとぼ歩いている状態をいう。
 だから、この場合――群れを持っているロクこそ、この無機物よりもつよい。森的なレベルがダンチなのだ。その自信はロクに森の力を感じさせ――プラシーボって言わないで――熱も、雷も、自前の火炎もすべて解き放ったスーパーネコチャンに大変身することが出来るッッ!!!!
「行くぞ、ジャック」
「了解」
 レグルスビームは破壊力🎶
 レグルスボムは爆殺力🎶
 レグルスファイヤで地を焦がし🎶
 レグルスサンダー空を裂く🎶
 ※なんか引っこ抜いたら後ろをついてきてたまに食べられちゃうゲームみたいなリズムで歌ったらいい感じだったのでそのまま引用しました。
 まあ、つまり。

 【Regulus: Full-Burst】・ClothFire!!!
 
「グルルォ、オオオアアアアーーーッッ!!!!???」これには火炎につよかろうドラゴンさんもびっくり。
 もはや悪魔のごとくである。ビームはとぶわボムははじけるわ身をよじれば火炎がホーミングするわサンダーがへにょってべしべし体に当たるわでドラゴンさん、いたいことこの上ない。
 せっかく展開した弾幕もどんどん燃やしていく!ロクの火炎も相まって、ふたつの輝きが今ここに成就!!どどう、と勢いよく燃える十字架がまさしく弾幕合戦を凌駕した―――ッッッ!!!

「気に入ったわ、今度私もああいうのをしましょう」
「ヴァンパイアがやって大丈夫なのか……?」
 これには西洋妖怪さんもにっこりであったそうです。
 もうひとつ教えてやる、とロクが一歩前に出た。歌うしゃむ。飛ぶ鳴。でっかくなって頭にロクをのせ、彼女が砲台を見下ろせるようにしてやったひゅどら。
「……最後まで立ってた方がえらい」
 のそりとひゅどらの頭からぐらぐら、ふらふらとまっすぐ立っていられなくなった砲台たちを見下すロクが、判決を。
「森の、掟だ」
 どどどどう、と横にずり落ちるように倒れたドラゴンの土煙に煽られたジャックが、黒い毛並みにいっぱい砂粒を乗せてぷるぷるふるえた。
「いやここカクリヨファンタズムなんだが……」
 勝者が森と言ったら、―――――森ッ!!!!!!!!!!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

インディゴ・クロワッサン
◎🐾(羽継続)
おぉ、気合いでやってみるもんだねー!ちゃんと羽生えた!
普段はUC頼みだったし、僕も頑張ろー!
「…ん?何か姿変わってない?」
まぁ、やる事は変わらないからいいや!
【空中戦/空中浮遊/ジャンプ/踏みつけ/吹き飛ばし/早業】で動きながら【第六感/見切り/聞き耳】で弾幕やレーザーを見切りつつ
今度は、拷問具:嘆きの金糸雀をチリンチリン鳴らしまくって、拷問具の弾幕だー!
「敵が山みたいにでっかいんだし、拷問具も弾幕みたいなもんでしょ」(謎理屈)
拷問具を盾にしたり、拷問具で相殺しながら、めっちゃくちゃ近付いたら
「せーの っ」
指定UCを使って、砲塔を………どーんっ!
「あれ…力入り過ぎちゃった?」


アルトリウス・セレスタイト
聞き齧っただけだが
ボスはデカくて弾をたくさん撃つものらしい

戦況は『天光』で逐一把握
攻撃には『煌皇』にて
纏う十一の原理を無限に廻し阻み逸らし捻じ伏せる
全行程必要魔力は『超克』で“世界の外”から常時供給

引き続き鳥状態
絢爛を起動
起点は目の前の空気
因果と破壊の原理にて戦域の空間を支配
破壊の原理を無限量の斬撃に変換
因果の原理にて目標をオブリビオンと召喚物、及びそれらの行動のみに限定
打倒まで戦域全てを隙間なく斬り続ける
元に戻せそうなら竜種は対象から外しておく

消え失せるまで斬り続ければ良い
万象一切に終わりを告げる破壊の原理に例外はない
残らず斬り捨てればいずれ終わろう
規模と物量で圧殺する

※アドリブ歓迎




 物は試しで気合次第である。なせばなる。なんとかなるのだ。人生ってそんなかんじですよね。
「いや~、さっきはなんとかなったねぇ」
 インディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)はどろんぱっぱ――煙に紛れて現れた。ちゃんと背中の羽根は残っているようだし、よしよしとしてから体の調子を確認しようと手足をみれば、先ほどよりはずいぶん大きくなっていて。
「……ん? 何か姿変わってない?」
 先ほどとは打って変わって、今回はしっかりとした体つきのよう。しかし、毛並みの色などはあまり変わらないように思えて。よくよく見てみれば、どうやらインディゴの体には斑点が増えているようだった。
「ん、んー?……あ、クロヒョウかあ」
 ちょっと当たり判定は大きめ。でもパワーは強め。次なる自機はこれできまり!
 やることは変わらないのでインディゴとしては立ち回りを少しだけ変えるだけでよい。ぐーぱーと一度手を動かしてから、飛来する弾幕たちをしなやかにかわしていく。
 案外動けるものである。背の羽根もあるおかげかもしれないが、ちょっとジャンプすれば後ろ足の筋肉がばねの役割をして存外高く打ち上げてくれるのだ。
「うん!いい感じかな」
 ど、ど、ど、と波状に繰り広げられる弾幕は慎重に見極めてそろりそろりとした足並みでかわし続ける。時折低速と高速を使い分けていかないと追い詰められて被弾しちゃうことがままありますよね。
 へにょる螺旋のようなレーザーはジャンプでかわし、追尾してくる大きめのエネルギー弾のようなものはインディゴにたどり着く前に走って距離を開けつつ地面に衝突してもらう。
「ははは、すごいすごい――おっと」
 走り続けてかわし続ける先に、違和感があった。
 常に降り注ぐ弾幕がたった一点を起点にしてどんどん切り崩されているのだ。
 ばきり、ばきり、ぱきり――爆ぜることなく潰えていく弾幕の無残なこと!クロヒョウはそこを安置としてすべりこんで、ひとまず息をつく。
「はぁっ~~~……いやあ、かわすのは難なくできるけど防戦一方も大変だ」
「――聞き齧っただけだが」
 おや、どこからか声がする。弾がくずされる大地にて、ぴこりぴこりと耳をはためかせてインディゴはきょろきょろと周りを見た。
「ボスはデカくて弾をたくさん撃つものらしい」
「そうそう、そうなんだよね――って、わあ」
 あやうく踏みつぶすかと思ったの「わあ」である。
 インディゴの足元にもふもふの白いけだまが鎮座していた。これは、アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)――のかりそめのすがた、シマエナガである。
 すでに彼の超常の能力は起動していた。常時世界の外より魔力を供給し、無限にフルパワーをふるえる状態での【絢爛】で迫りくる弾幕をまず押し返しているところであったらしい。
 ゆったりとシマエナガがクロヒョウをみあげて、それからまた前を見た。むちゃくちゃ肝が据わっているのである。
「――消え失せるまで斬り続ければ良い」
「ははあ、なるほど」
 仕組みはインディゴにはわからないが、膨大な魔力の持ち主で、異常な力をふるっているのは理解できる。つまり、この安置はもとから存在したものではなく、アルトリウスが今ひ切り開いて作っている最中というわけだ。
「よーし、じゃあ僕もここで弾幕の相手しちゃお!」
「援護する」
「ありがとう!」
 好きにやってよいとアルトリウスが言うなら、少しくらいスペースを借りても罰はあたるまい。というか、アルトリウス的には何もかも彼ひとりで収束することもできるのだけれど、それでは猟兵の成長とか、キャパのふるまいとか、そういうところを阻害してしまうレベルなのでじょじょに、じょじょ~に打ち返しているのだ。戦えるいきものから牙をうばっちゃいけませんと歴史にも書いているので。
「敵が山みたいにでっかいんだし、拷問具も弾幕みたいなもんでしょ」(謎理屈)
「違いない」(謎便乗)
 ちりりん、ちりりん。
 嘆きの金糸雀を響かせれば、インディゴの拷問具たちがどんどん空間からあふれてやってきた!それぞれが無造作に飛んで行っては弾幕と衝突し、更なる活路を切り開く!
「なんかいつもより調子いいかも……?」
 んにゃあう、と喉をうならせたインディゴの察しの通り。今の彼にはアルトリウスの魔術内で発動バフがかかっているので、いつもより多めに殺傷力ものっております!!
「万象一切に終わりを告げる破壊の原理に例外はない。残らず斬り捨てればいずれ終わろう」
 ――救えそうなものは救うが。
 まだ元に戻せそうな竜種である。何もかもが見えなくなってしまった彼が原因でこの騒ぎが起きているというのならば、彼をどうにか引き剥がして大砲のみをくまなく破壊してやるのがいいだろうとした。アルトリウスの暴威は竜を狙わず、最初から大砲を狙っている!
「よーし、じゃあ――てきぱきとやってしまおうか!」

 ダッ、とクロヒョウがくわえた拷問具をぶうんと投げて、それから跳躍する。
 まず、弾幕の第一波をガードした!爆破で鉄くず同然になった拷問具を足場にして、さらに跳躍!相殺を繰り返し、接近は早い!飛び上がったクロヒョウがしっかりと口に拷問具をくわえたら――。

「せーの っ」

 ずっっっっ―――――どん!!!
 【悪しき鬼は羅刹の如く】が炸裂ッッ!!!!がいいいいいいいいいいいぃいい……んんんとしばらく、まるで寺の鐘でも強くたたいてしまったかのような音が響いて―――これにはやっぱり、インディゴのほうもびっくりしていた。
「あれ……力入り過ぎちゃった?」
 まさかそんな力で殴りつけたつもりじゃなかったのだけど。
 足場が不安定の中懸命に殴ったインディゴの体には、ちゃんとアルトリウスの原理もまとわりついて彼を強化しきっている。「見事だ」とシマエナガがその外見の割には渋めのイケボで賞賛したなら、大砲が砕け散って竜がアンバランスに傾いていく。

「――圧殺の時間だ。お前だけ、このカクリヨファンタズムより去ね」
 
 つう、とシマエナガが鋭い青で突き刺すように宣言したのなら、竜が苦し気に悲鳴を上げる!まだだ、まだだともがき苦しむ怨念が目に宿っただろう――ああ、まだまだ狂乱の夜は続くのだ!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リア・ファル

(🐾/詳細お任せ)

ボクがヒトを模さないなら
本体である戦艦の姿だよね、ねー、ヌァザ?
(傍らの銀猫、『ヌァザ』と己を見比べる)

って、そんなことないねコレ???

(『イルダーナ』に鎮座する2匹)

演算解析で避けるのは問題ないけど、(情報収集、学習力、空中戦、操縦)
攻めるなら弾幕を相殺したいところだね

空に弾幕、星を描いて、明日へご案内ってね!
UC【吸い阻むは虚無の黒星・転じ返すは白光の報復剣】

吸い阻め、黒星!
(砲撃、スナイパー)

如何に生命力に溢れた一撃だろうと、
癒えぬ傷を負ったら長続きしないでしょ?

我が光剣の弾幕、とくとご覧あれ!(弾幕)

悪いけど、幻想も兵器も、ボクにとっては親しき仲さ


リーオ・ヘクスマキナ
うーわー。ドラゴンだよ、ドラゴン
しかも大砲背負ってるし
……突飛な光景過ぎて、現実感が薄れそうだなぁ

基本戦術は先とほぼ同じく
赤頭巾さんが移動と近接攻撃
リーオがその背中からUCでの攻撃と周辺警戒

但し先よりも回避と防御の比重を増やし、大砲は特に警戒
赤頭巾さんの高速移動にも(ちょっとだけ)慣れてきたのか
要所で瞬間思考速度の加速も取り入れ、周辺状況を赤頭巾さんに伝達するだけでなく
UCの短槍に灯る炎を七色にしたりなどの余裕を見せる

……と、正攻法で戦っているように妖怪達に見せかけつつも
ボスの視界に映る自分達に「何もない空間」の幻覚を被せたり等で
光学迷彩のように使う等、シレッと小細工も弄す




 はてさて、自分がヒトの姿を模さないのならば、そのあるべき姿はわかりきっているようなものである。リア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)は本体が戦艦だ。じゃあ此の弾幕勝負、もらったなって感じであった。
 だって戦艦である。砲台よりも絶対大きいし、張れる弾幕の量だってけた違いだ。足し算引き算しかわからない小学生だって絶対リアが勝つって言うね!まちがいない結果だけが計算せずとも見えた。
 はずだった。
「ねー、ヌァザ?」
 ん?
 どうして銀猫、ヌァザがいつもより大きめに見えているのだろう。
 そもそもリアがもうこのどろんぱっぱの乱痴気騒ぎにやってきたなら、変身は始まっているはずである。予測演算的にはばっちり戦艦になっていないとおかしい時間なのに、いつまでたってもそういった雰囲気はない。ヌァザが目をぱちぱちさせて、――自分たちがまだ愛機『イルダーナ』に載っている事実を教えてくれた。
「って、そんなことないねコレ???」ンニー
 ヌァザがあいまいな温度で返事をしたなら、ようやくリアは自分の手足を見た。
 ふさふさのそれである。体はしっかりと曲がったりするようだが、どうやら耳がよく発達しているようで――「うさぎだこれ!!!???!!!?!?」そう、うさぎです。
 雪を蹴ることに適したうさぎの足!蹴られるとマジでいたいので注意してください!!うぁっちゃ~~~とイルダーナに座ったまま、リアは出来る限り、本当に、冷静であろうとつとめた。
「の、脳までは……兎サイズじゃないのかな? 演算解析に問題はなさそうだけど……」
 イルダーナに操縦を預ける。リアがわざわざコントロールを握らなくても、もはやリアの手足同然の相棒は彼女の描いた通りの進路で進むのだ。弾幕がとんでくるのなら緩急をつけてアクセルとブレーキを操作する。ジグザグ走行で空を駆け巡るのにはなんの支障もないから不思議なものだ。
「ああそうか、えーと。概念が失われてるってことだから、一応ボクたちはデータとして能力を保持されて……うわわわわわ!」
「うおお、なんじゃありゃ」
「ほうき星か?」
「いや、あれは兎が乗ってるらしい」
「ウサギって、月にいるもんじゃないのかい?」
 考えているうちに追尾するレーザーが追いかけてくるのなら、リアはしっかりとイルダーナにしがみついている。「ああくそ、そうか!空気抵抗がいつもとは違うんだった!」デジタル、そういうところがたいへんなのだ。
 イルダーナに命令を出せばきちんと操縦の心地は元通り。風圧で吹き飛ばされそうになっていたリアは、いつもの定位置に尻を落ち着けた。ヌァザはびゅんびゅんと過ぎ去っていくレーザー弾幕が気になるのか、じいっと目で追っている。
「いやあ、コツはつかんできたけど……さすがに攻め手にそろそろまわりたいかな」
 と、なると。
 あとはリアの得意分野のようなもので。兎がぴょこりと体を起こしてパネルにふれる。さてさて、どうやって跳ねまわしてあげようか!

「うーわー。ドラゴンだよ、ドラゴン」
 独り言ではない。
 小さなオオカミがあまりにも苛烈で強大な脅威に嘆いていたのだ。しっかりと相棒である赤頭巾のしなやかな四つ足の背に捕まって、リーオ・ヘクスマキナ(魅入られた約束履行者・f04190)はあからさまにげんなりした顔をする。
「しかも大砲背負ってるし……突飛な光景過ぎて、現実感が薄れそうだなぁ」
 ダメージを与えてほとんど使い物にならなくなっているとはいえ、リーオからすれば大砲が弾幕を打ってくるなんてどんな戦場でも見たことがなかった。
 人間同士の兵器で使えば間違いなくタブー扱いされるだろうななんてハチャメチャな威力を横目で見ながら、その弾幕を避け続ける赤頭巾の狼を見つめる。
 何も言わない彼女の身のこなしは先ほどのままだ。しかし、大きく動きは先ほどより異なる。
 【赤■の魔■の加護・「化身のハチ:幻灯磔槍」】でしっかりと槍を作り上げたのならば、それで攻め手に出るのではなく、回避と防御に徹している。
「赤頭巾さん! 来るよっ」
 リーオがさらなる弾幕の追加を告げたときに、その激しさに圧されないうちに槍で道を切り開く。ついでに一本だけ、間を縫うように放てば――届く前にはレーザーで焼かれてしまうが、リーオたちが避けきる時間稼ぎにはなるというもので。
「目星にはなってるかな、よぉし」今度は槍たちをきらきらと七色に彩ってみる。リーオは今、かなり頭がさえているのだ。リーオ自身が動くことはないし、信頼できる相棒は文句ひとつ言わずに懸命に走り続けている。
「いくよ――!!」
 あと。
 こんなにまじめに戦ってはいるが、じつは先ほどからかわしたり、飛んだりしている赤頭巾さんは「種」を知っているので悠然としていたのもあった。
 実は、「ステルス」機能を使っている。見えない壁のようなものが、今幻影として二人の周りを包んでいるのだ。光の屈折でリーオと赤頭巾さんとの距離が大砲からは正確な位置が読み取れないまま無駄撃ち――二人には物理的に届かない弾幕を展開することになる。
 あくまでさきほどから赤頭巾さんが跳ねまわっているのは妖怪たちを喜ばせるためのパフォーマンスなのであって、それ以上でも以下でもないのだった。
 シレ~ッとそんなことをやってのけるリーオに赤頭巾さん、ちょっぴり満足げである。ゆうしゅうな彼が一緒にいてくれれば鼻も高い。惑わせる力は狂気のはじまりだもんね!(?)
「あー、っでも。やっぱりまだ決め手には時間かかりそうかな……」
 とはいえ。赤頭巾さんが先ほどから放つ槍はやはりレーザーにばしゅうと焼かれている。面倒くさいレーザーなのだ。途中で軌道を普通に変えるので、パターンを判別しようにも微妙にドットがずれているような心地すらある。リーオはともかく、赤頭巾さん的にはイライラポイントだ。
「何か派手な攻撃があれば――お?」
 頭上を、彗星が駆け抜けていく。
 きらきらと星くずをちりばめたようなあかりを連れて――突撃を試みる宇宙バイクの姿があった!リアだ!!

「空に弾幕、星を描いて、明日へご案内ってね!さあ、醒める時間をお届けだ!」
 【吸い阻むは虚無の黒星・転じ返すは白光の報復剣】!
 うさぎのちいさな掌をばっとひろげて、きりりとした桃色の瞳が告げる。
「吸い阻め、黒星!」ぎゅううううおおおおおっっっ――――リアの進行方向にあった弾幕が、まるでブラックホールに吸い込まれていくように彼女の『アンサラー』に飲み込まれれば、あっという間に報復剣が無数に出来上がる!
「悪いけど、幻想も兵器も、ボクにとっては親しき仲さ」
 だから、この戦局はやはりリアたちのものだ。ぎゅんぎゅんと吸い上げた弾幕の数だけ空間に敷き詰められるそれに――リーオたちの槍が混ざる。
「これなら通る、気がするッ!」ほんまか?という顔を赤頭巾さんがしていたが、問題ないでしょう!リアが切り開くところに便乗するのだ。ちょっと配達屋さん!これもおねがいしま~す!なんて駆け込んでも、リアはできるバリキャリなので全然笑顔で引き受けてくれそうだし!!

「如何に生命力に溢れた一撃だろうと、癒えぬ傷を負ったら長続きしないでしょ? ――さあ、とくとご覧あれ!」
「よし、赤頭巾さん、――――いくよっ!」

 七色に光る槍たちと、真っ白な剣たちが降り注いだ。
 高すぎる輝度を前に竜の輪郭が消え――弾幕同士が衝突ッッッ!!!爆風に巻き込まれ「うわあ」とリーオが浮くなら、しかりと赤頭巾さんがくわえてキャッチ。
「た、たすかったぁ」ふすす、と赤頭巾さん。感謝してよねといいたげなお目目に、きゅうーー……んと丸まるリーオであった。
「おや? どうやら余剰に何か乗せちゃったみたい。まあ、サービスってとこだよね」
 うさぎが猫に問えば、「にゃぁう」とのんびりした返事が返ってくる。やっぱり、大したことじゃない――自分がどうあるべきかを忘れぬ少女に、この程度はなんてことない運搬トラブルだったのだ。うーむ、お見事、ごくろうさまです!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

花剣・耀子
◎△
推定匡くん(f01612)と

キュイキュイ言っているのがたいへんかわいいわ。かわいい。ニャーン。
イルカさんはさかなではないのでごあんしんよ。

あたしねこだからよくわからないのだけれど、
とりあえずあれをなんとかすればいいのはわかるのよ。

ねこだから当たり判定もちいさいもの。
弾幕の合間を縫って、匡くんの準備ができるまで此方へと気を惹きましょう。

派手な弾幕は戦いの華ね。当たってやりはしないけれど。
ニャンニャンニャー。鬼さん此方。
軽やかにくるくる躱して機を伺うわ。
飛び交う弾に匡くんの色が勝ち始めたら、頃合いかしら。

作って貰った隙間に滑り込んで、ビームもろとも切り裂きましょう。
ねこの爪は鋭いのよ。ニャア。


鳴宮・匡
◎△
推定耀子(f12822)と

いや耀子だよなこれ 多分 多分……?
なんかすごく生温い視線で見られている気がするんだけど……。
齧らないでくれよ、頼むから
大丈夫ならいいけど

向こうが気を引いてくれてる間に、準備の時間はあるだろう
といってもこっちに攻撃が飛んでこないわけじゃないから
しっかり見切って躱していくよ
幸い、動く先には困らないしな
耀子の方も含めて、躱しきれない分はこちらの弾幕で相殺するよ
もう流石に弾をうまく創るのにも慣れてきた気がする
案外、俺器用なのかな……

躱して気を引きながら、多分向こうも敵に近づいてるだろ
弾幕で援護して相手の動きを制限しつつ、決定的な一撃はそっちに任せるさ
それじゃ、頼むぜ




 推定――。
「……耀子だよなこれ 多分 多分……?」キュイッ キュイッ
「ええ、そうよ匡くん」ンニャルルァーン
 花剣・耀子(Tempest・f12822)と鳴宮・匡(凪の海・f01612)はおおよそお互いを名乗る動物と対峙していた。匡の目の前には黒猫。耀子の目の前にはイルカ。
「……」
「あら、どうしたのかしら」ニャウ
「ちょっと……頭の整理がな……」キュイッキュッ…
「いいのよ、ゆっくりで」ンニャ~
 匡、自分のことをひとでなしと言う場面が何度かありながら、その体は人の域をあんまりでないのである。尻尾がはえるわけでもなんでもない彼の体が人以外のものになっちゃってるというだけで、わりとショックがでかい。
 もしかしたら、大多数はヨガとかで自分の体が空を飛んでいくのを想像してください……とか言われているかもしれないけれど、匡は残念ながらそういう余裕のある場とかメルヘンの許されるところで生きていなかったのである。夢見がちなことを考えてみろ!!お前の脳髄からハチの巣にしてやる!!返事はサー・イエス・サー!!!――というまでいくとまあ誇張なんだけども。
 黙って突っ立ってたら死ぬような戦場で生きてきた彼にとって、この何とも言えないファンタジックはさすがに脳も処理落ちするらしかった。
「齧らないでくれよ、頼むから」
「イルカさんはさかなではないのでごあんしんよ」
「大丈夫ならいいけど」
 きゅいきゅい……しょんぼりとした音程なのは気のせいではない。成人男性である匡が何が嬉しくてイルカのアレなどせねばならんのか。これも罪の形なんでしょうか。地獄過ぎねえか????
 一方、耀子といえばすっかり猫の体に馴染んでいる。
 ――あたしねこだからよくわからないのだけれど、とりあえずあれをなんとかすればいいのはわかるのよ。
 一番ねこにしたらアカンかった気はするんですけど、そこはどうぞご安心を。普段からだいたい耀子は難しいことを考えないので。
 イルカが何に悩むのかもよくわからないけれど、まあ悩んでるなら待ってあげるのが一番だ。じいっと何もないところを見てみたり、戦場の音に合わせて耳をくりくりうごかしちゃったりなんかして。
「……早く、なんとかしないとな」
「そうよ。あわてず、あせらず、でもなまけず」
「お前は何か……すごいよな……」ンキュー……。
 危機感もへったくれもねえ。耀子の豪胆さ、少し見習うべきなのかな……とも思えてきた匡なのだった。

「グウウ、グギ、ギギギィイイ……!!」
 うめき声をあげる竜が次なる標的を捕捉する。がぎ、ぎぎぎといびつな音を立てて大砲が敵を睨もうと必死だった。砲身がすっかり壊れてしまった今、チャージするのにも時間がかかるらしい。
「あら、それでも派手なのね」ちゃ、ちゃちゃ、と地面を爪で蹴りながら、耀子は走る。
 ねこなので当然当たり判定も小さいのだ。ねこはここにいました!パターン青、ねこです!!よろしいでしょうか!? いいですとも!!
 敷き詰められた弾幕には時折滑り込み回避、まるで液体なのでは?と思わせるような柔らかさでぎりぎりの回避。それから飛び上がってのにゃんぱらり。月夜に跳ねるはネコチャヌ耀子チャン!
「ニャンニャンニャー。鬼さん此方」
「――――――ガアアア!!!!!!!」
 がしゃこん、がしゃこん。怒りの音が響くけれど、そんなものはネコチャンにとってどうでもよし。それより、鮮やかな耀子の芸じみた弾幕回避を見て「おおおお!」と沸き立つ妖怪たちのほうが見ていて面白い。
 耀子を執拗に追いかけるホーミング玉はまったく別の力によって阻まれ霧散していく。ぱぁんとはじけ飛んだ光のむこう、空を泳ぎ続けるイルカがいた。
「……案外、俺器用なのかな……」器用って言うか、割り切ってきたっていうか……。
 弾幕の嵐は匡にとってなんでもない。ぱっと見でうねるようにちりばめられるそれだって、所詮規則性に則ったものだ。ある程度兵器から作られるものなら、匡にとって躱すのにも見切るのにも勝機はある。
「そっちが先手だったんだ、今度は俺たちが塗り替えさせてもらうよ」
 ――そのほうが盛り上がるんだろ?よく知らないけど。
 弾幕勝負はやはり美しさとパワーと技術がものをいう。匡の【無形の影】で銃弾型の弾幕をひとつ作ったのなら、それを無限に生成していく。匡にとって一番馴染んだ形をしたエネルギー弾はあたりを真っ黒に染める勢いで分裂し、発射!!!!
「まるで魚の大群が泳いでる見てえだ」
「海かぁ」
「俺海見たことないんだよなあ」
「今度見に行けば?」
「世界が助かったらなあ」
 月夜に万の大群が泳ぐ――。
 あっという間に弾幕の一転攻勢!黒が白球を貫き、確殺をきめていくッ!!画面上からきれいさっぱり弾が消えるボムが無限にある感じであった。むちゃくちゃ優秀すぎる性能で耀子が被弾しないよう守っている。
 耀子は、――「あっ」と弾幕を見ては匡の黒を追いかけていた。なんでかっていうと、猫だからです。早く動くもの気になっちゃうじゃないですか。
 しゅたたたたたと小さい体が黒い弾丸たちめがけてにゃんぱらふにゃにゃん。走るネコチャン!!音もなく走る耀子ニャン!!!ンァアア!!
「……いや、なんかいい感じだな……」匡が空を泳ぎながら弾幕をくるり、身をよじって躱しつつ。たまたま弾幕が弾幕を打ち消しあっていたことで、本体めがける残り弾が安全ルートで耀子に案内を出せていたようでちょっと安心。むちゃらっきーなのである意味大吉。こりゃあ今年はもらいましたね。勝ったな(?)
 迫ってくる耀子めがけてビームがぎゅぎゅうんと向かっても、耀子はまったくためらわない。耀子にあるのは恐怖ではなく、――確信!

「ねこの爪は鋭いのよ。ニャア」

 お前みたいな猫がいてたまるか!!!!!!!!!!!!???????????
 【剣刃一閃】withねこのつめ。
 放たれる粒子を八方向に切り裂いたのは、そう。耀子の爪である。自前の。それ。――猟兵、マジでなんでもありなんだな……と匡が思っていたことだろう。すごいよね。なんでもありなのでヨシ!!!!!ビームを切り裂いた爪の衝撃波で砲台もなんかズタズタになったけど!!!ヨシ!!!!お前にヨシ!!!俺にヨシ!!!
 しゃなりと地面に着地してみせて、耀子の背でばしゅううううううん……と弾幕たちが砕け散る。

「……爪とぎできる木はないかしら」
「見つけるの……付き合うよ……」
 まじまじとおててを見ながらにゃごにゃご。耀子の一言には、匡がきゅきゅい……と鳴き声を返すのでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神狩・カフカ
【異鴉】◎

ははっ!今度は随分ド派手なもンが出てきやがったなァ!
クロウの背中に降り立って
ンじゃ、あとは頼んだぜ
毛皮をもふって寛ぐ構え
飛び続けるのも疲れるもンでなァ
ちょいと休ませてくれや
おいおい、おれの見てくれで年寄りたァどういう了見だ
尻尾と戯れていれば振り落とされそうに
あー!わかった!働く!働くって!
その代わり、お前さんが連れってってくれやと乗り物扱い
ん?ほら、さっきの貸しがあったろ
これでチャラにしてやっからサ

今度はおれが援護してやろう
派手に暴れるといい
弾幕は結界術で弾いて
ビームの動向は常に観察
風を起こして身体ごと吹き飛ばして避けようか
おっ、随分便利なもん(鏡)持ってンじゃねェか
決め手は任せたぜ


杜鬼・クロウ
【異鴉】◎黒豹

敵サンがでかく見えるぜ…
オイ、何ちゃっかりサボってるンだお前は(もふもふされ擽ったい。耳ぴくぴく
疲れただァ?年寄りくせェコト言ってンなや
…あァ悪い、事実だったか(実年齢知らずカマかけた。人外なのは認知。大方正解と予想

ちぃっと飛んでたぐらいで…これだから体力0の文系な探偵サンは(大袈裟に溜息
働かざる鴉、食うべからずだぜ(尻尾ぺちぺち
どンだけ俺を顎で使う気だ
ち…借り一つ返したかンな、がるる

UC使用
動物姿なので5枚召喚

光線なら神鏡(おれ)の贋物で跳ね返せる
乗り心地は保証しねェ
落ちたくなきゃァちゃんと掴まってろよカフカ

カフカを乗せた儘、鏡操る
敵へ爪立てて唸って噛みつき
半ば八つ当たり気味




「ははっ!今度は随分ド派手なもンが出てきやがったなァ!」
「敵サンがでかく見えるぜ……」
「いいじゃァねェか。仕留めがいあって」
 神狩・カフカ(朱鴉・f22830)と杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)といえば、まあいい意味で言えば正反対なのでお互いを補えるようなところであって。悪く言えば……その……水と油です……。
 クロウが苦し気にうめきながらも依然弾幕をより密度高く張り続けるかの砲台を忌々し気に、しかし、どうにかしてあの竜を救てやらねばとは思うのならば、カフカとしてはもうなんか普通にエンジョイなのだ。カクリヨファンタズムエンジョイ勢なのでガチ勢の怒り、普通に買いやすい。世界救出ガチ勢にもちょっとアレ。よってクロウとはもっとアレである。
「ンじゃ、あとは頼んだぜ」
「オイ、何ちゃっかりサボってるンだお前は」
 もふん。
 クロウの頭でもふもふくつろぎだしましたわ。この朱鴉。は~~~よっこいせという温度で黒豹のたのもしい頭でくつろいでいるのだけど、そんなことはやすやす許さず。クロウが姿勢を低くして警戒の唸りから一転、ちょこんとおすましで座ればずるずる頭から背中に落ちていく。
「飛び続けるのも疲れるもンでなァ、ちょいと休ませてくれや……」
「疲れただァ? 年寄りくせェコト言ってンなや……あァ悪い、事実だったか」カマかけである。クロウはカフカの本当の年齢など知らぬ。
 というかもしかしたら君たちどっこいどっこいなのかもしれない……年齢的にも……ヤドリガミと神だし……。まあ、ともかく。
「おいおい、おれの見てくれで年寄りたァどういう了見だ」
 もふもふの尻尾をくちばしでざりざり撫でたりしながらまったりしだしたカフカに、うっっっげえ……と人型を保っていたなら全身サブイボまみれになっていただろうクロウの冷たい視線が刺さる。
「ちぃっと飛んでたぐらいで……これだから体力0の文系な探偵サンは」
 ハァ~~~~ア……とクソデカため息。しかし、カフカ微動だにせず。暖簾に腕押しならぬカフカに皮肉というやつなのかもしれない。すなわち意味がないことをさします。
 しかしクロウ。ちゃんとここは別の手段を思いついている。ぺちぺちと尻尾でその顔をかるくはたきながら。
「働かざる鴉、食うべからずだぜ」
「あー!わかった!働く!働くって!」
 ずりずりとそのまま尻尾で振り落とされそうなカフカがかぁかぁと懸命に鳴いて。
「その代わり、お前さんが連れってってくれや」
「オイ、どンだけ俺を顎で使う気だ」
「ん?ほら、さっきの貸しがあったろ」
 やっぱりクロウの一枚上手でのらりくらりしちゃうカフカであった。働かないとメシはでないのはさもありなん。とはいえタダで働くわけもないのが常というもので。
「これでチャラにしてやっからサ」
「――ち……借り一つ返したかンな」がるる……。
 なんだかんだでクロウもいい奴なのだ。結局、カフカの要望どうりに動いてやっている。
 のしのしと大きな足を彼の分まで広めに歩かせたのならば、あっというまに祭りの舞台にやってきた。本番の演目に盛り上がる妖怪たちの騒々しさに、カフカもクロウも瞳孔をまるくしてやってから――。
「乗り心地は保証しねェぞ。落ちたくなきゃァちゃんと掴まってろよカフカ!」
「お前さん、本当に律儀だよなァ――」カフカの哀れみめいた穏やかな声は、クロヒョウ狙いの弾幕たちに飲み込まれてしまうのだけれど。

「発露せよ」
 駆け巡るクロヒョウを起点に【贋物の器】は五枚展開される。
 今の神徳ではこれが精いっぱいなのだ普段のクロウならばもっと操れるが――いや、しかし、五枚程度で十分と言える。 
 飛んでくるレーザーは鏡で反射してしまえばよい。避けきれぬ分の弾幕は弾いてやればいいし、壊れたらまた贋物を増やすだけだ。きらきらと砕けるガラス片の美しさを月光に反射させながら、クロウは疾駆してみせる!
「おおー!!ありゃあなんだ」
「鏡の妖怪か?」
「ばァかいってんじゃないよ!ありゃ神様さ!」
「へへえ!かみさま!」
 祭り拍子に楽しむ妖怪たちの声。守らねばならぬとクロウが背負う弱き者たちは、彼を信じている。信仰が神々にとっては力だ――クロウの足にさらなる力が込められた!
「遅ェ!!それじゃあ俺には届かねえぞッッ!!!」
 がぃいいいいいぃいいんんん―――。鋭く跳ね飛ばされる光球の数々に、背に乗せられたカフカが絶景絶景と笑う。
「おうおう、随分便利なもん持ってンじゃねェか!」
「うるせェ、さっさと援護に回れっての!」
「おうとも。さア――」
 さんざん自分の頭に乗っておいて、弾幕とクロウの競り合いに感動している場合ではないのだけども。神様ってみんなマイペースなのだ。だって神様だし。元がモノのクロウと違うのは、そのあたりであろう。
 ば、とカラスが両翼を広げて見せて。
「派手に暴れると良い」

 【天狗の羽団扇】!
 ぶわ、と己の羽根を羽搏かせればクロウ狙いの弾幕たちが吹き飛んでいく!
「さァ、ビームがまた来るぜ!」
「言われなくてもなァ、わかってンだっての!!」
 カフカが大きくガアガアと鳴けば、クロウがわ゛お!と低く返す。
 二人を狙ったビームがぐにゃぐにゃとランダムな回転をくわえてやってくるのなら、鏡一枚でクロウが真正面の一撃を制し、彼らを狙う左右のレーザーをカフカの羽ばたきがかき消していく!神々にすら届かない弾幕たちがへろへろになって地面に墜落する様は、さながら枯れた紅葉のようでもあった。
 その間にも、どどう、どどう、と四つ足の勇ましい足音を響かせながらクロウ、接敵!!
 高く跳躍した体で砲台の上をとった!!!
「さあ、決めちまえ!」
「おぉおおおおおおおおおおおおおおらァッ!!!!!!!!!!!!」
 どるるどるると唸って爪をたて、巨体に飛びつき上り詰める!狙うは――砲台の配線!!!

 ぶっっっっちぃいいいいいいいいん―――花火が散り、カフカが目視した限りでは砲台の片方が完全機能停止!!!ぷすぷすと黒煙を上げる竜のまわりから、クロヒョウが飛び出て地面に降り立った。
「はっは!やるじゃねェの!」
「うるっせェ。ンなもん、いつもだったら一瞬だっつの、一瞬!」
 ――むちゃくちゃ八つ当たりめいた攻撃だったし。
 配線くわえたときにぎゅるるるるっとクロウがスピンして「ねじきった」のは背中にいるカフカがしっかり覚えているのだ。その時にぞぞぞぞ、と背筋に悪寒が走って、今はクロウをよしよしと羽毛でモフモフしてやる感じなのである。
 優しい人こそ怒らせたらこわいので……クロウくんをからかうのは、ほどほどにね!!!!!!!!!!まあ、そんなつもりカフカにはないのでしょうけどね!!!!!!!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シャト・フランチェスカ
【紫桜】

人に戻らずとも猫のままで良くない?
なんて考えてません、考えてにゃいよ僕は

さあて
すごいビームが出せる程度の能力、だね
舌なめずりして千鶴に目配せ
攻めの弾幕、魅せてあげよう

妖怪たちを煽るのも忘れない
僕らのチームに賭けたなら肉球だって触らせちゃう
どっちを応援するか決めたかい?

…僕も抱っこしていいはず(小声)

桜吹雪に巻かれれば竜とて猫に首ったけ
上手く避けても降り注ぐ薄桃は
すばやさアップとちょっぴり早いお花見のオマケ付き

とはいえ
すっかり忘れ去られてしまった大砲
きみの無念を想像できぬ文豪ではない

ね、
花火でも一発どかーんと咲かせてみてはどうだろう
ノリのいい妖怪たちだし、盛り上がってくれるんじゃないかな


宵鍔・千鶴
【紫桜】

猫は気侭で自由だから
人よりもずうっと動きやすいにゃ
ってごろにゃん同意

のんびりしたいけど仕方ない、働くねこだ
ちょっとすごいビームが出せる竜だからって
俺達には問題ないよね、って交わる視線に
しゅるんと尻尾を絡めて
さあ、弾幕勝負だよ

妖怪達の声援は俺達のものだ
ふふ、勝利した暁には
好きなだけ抱っこされてあげよう

視界を覆う薄紅の桜が舞い上がり
魅惑のシャトにゃんに竜も敵うまいて
お花見に酔えず歯向かうならば
きらんと光る赫飾り
くわえた刃で桜に代わって成敗だ

大砲よ、きみのことは忘れない(たぶん)

ほほう、さすがシャト、名案だ
雑なビームより、打ち上げ花火の方が
お祭りっぽいね
咲かせておくれ、空へ綺麗な花を




 ごろにゃん、ごろにゃん、にゃごにゃご猫二匹。
 頭上で花火がぽんぽん上がって、ふたりで戯れてたって正直無事に朝日とか昇りそうだし。
「――人に戻らずとも猫のままで良くない?」
 さよならにこれ以上言い訳するのやめませんかシャト・フランチェスカ(侘桜のハイパーグラフィア・f24181)!!???!!?
「なんて考えてません、考えてにゃいよ僕は」すげえ取り繕った。
 まったりした語調でシャトが長毛を妖怪たちの敷物に背をこすったりしつつ空を見上げている。会場の空気が酒気帯びているからか、なんか空気を吸ってはいてするだけでも小さな体に酔いも回ったような気がしてしまう。
「猫は気侭で自由だから、人よりもずうっと動きやすいにゃ」
「それにゃー」
 宵鍔・千鶴(nyx・f00683)はもはや慇懃無礼っていうか、無断欠勤っていうか、職務放棄っていうか、なんかそんな感じの振る舞いになっていた。
 のんびりごろごろ、転がり続けて二人でごろにゃん。だって猫だからむずかしいこともわかんないし、アツく戦ってる猟兵たちで正直無事に依頼も達成できそうな感じではある。もうほとんど弱った大砲は片方使い物にならないようだし――。

「うーん、でも、すごいビームが出せる程度の能力があれほど弱ったのなら」
「俺たちには絶好のチャンスかもしれないね」
 どれほどすごいビームが出て来たって、きっと二人はまったく問題にもならないのだけれど。
 しゅるり、しゅるりとお互いのしっぽを絡めあって目くばせ。ぴったりとくっついて約束のように絡めあってたわむれる。なんか……ネコチャンどうしなのに……すごく……ええい!じれってぇな……!という感じなのだった。
「攻めの弾幕、魅せてあげよう」
「――弾幕勝負といこうか」
 舌なめずりをぺろりとしてみるシャトが体を起こしたのなら、それにしゃなりとついていくのが千鶴だ。それでもしっぽの先はやっぱりつんつんしあったり、きゅっと絡めあったりするのだけど――。
 まあ、やることをやったほうがよろしいのは確かなのだった。

「さあさ、妖怪たち」
「俺たちに賭けてくれるかい?」
 わああっと妖怪たちから歓声があがる。
 戦いの舞台に舞い降りた二匹のネコチャンズはこう宣ったわけだ。「僕らが勝つか、彼が勝つのか。どっちに賭ける?」と。何を隠そう弾幕勝負、最後まで立つのがどちらかも大事だけど、エンタメでもある。二人はとてもそういった大衆の反応には詳しいのだった。シャトに関しては文豪だし。千鶴はよくわかんないけどよくわかんないものほどのめりこんじゃうタイプだし。
 それにしても、シャトと千鶴はどちらもサービス精神の旺盛なネコチャンなのだ。それに可愛がられてうれしいなあとも思えるネコチャンである。だって自分がかわいいのわかってるもんね!
「僕らのチームに賭けたなら肉球だって触らせちゃうよ」
「ほんとうか!?」
「ああ、私ずっとあなたを応援してたのよ!」
 ふにふに、ぷにぷに。まるで選挙活動でもやってんのか???という感じではあるが、シャトの両手を握り勝利を祈願する猟兵たち。
「いやぁ、さすがに猫二匹の弾幕と、あの大砲から出てくる弾幕じゃあどうだろうなあ」
「躱しきれるだろうけど、物量で勝てるかどうかだよな」
「弾幕は美しさも競うべきだしねぇ」
「ふふ、いいね。賭け事はちゃんと平等な目で見て行うべきだ」千鶴は、「弾幕勝負」においては二人が劣るのではないかと懸念する妖怪たちのことも穏やかに小さな顎で頷いて肯定する。
「誰かが損して誰かが得するものだからね。おっと、金を賭けるのはナシだ。――勝利した暁には別の景品を用意しているから」
 やいのやいの、ざわざわ。言いたい放題にしながらも、しかし勝負という観点を忘れちゃいない妖怪たちはそれぞれ「弾幕勝負」における勝敗予想をたてるわけで。その間に、音楽担当の妖怪たちはそれぞれ曲を選んでいる。さて、どうしようか――と目配せしてから、伴奏が始まった。
「好きなだけ抱っこされてあげよう。見事、勝てたらね」
 美しいメロディは徐々に崩れていく。意図された不協和音が二人の猫にあてがわれた。音階がずれて世界が崩落していくような音はきちんと仕組まれすぎていて不快でない。
「……僕も抱っこしていいはず」
「? シャト、何か言ったかい」
 ちょっぴりやきもちめいたその言葉は、音にもまれてかわいい黒猫のお耳には届かなかったみたい。

 しゃらりら、ららら。
 美しき桜の花弁が舞ってゆく。季節外れの桃色に、竜の視界が奪われた。
「――グ、ゥウオ?」
 目をあからさまに丸くしたそれに、桜色の猫が語り掛ける。
「きみの無念を想像できぬ文豪ではないよ」
 しゃなり、しゃなりと一歩ずつ。小さな足は――まるで、踊りにでも誘うかのように淑やかに前へと出てきた。
 【🌸n sp🌸r🌸tu et ver🌸tate.】。シャトの連れた桜吹雪が、弾幕となって展開される!
「忘れ去られることは、つらかろうね」
「――ぉお、お、お!!!!!」
 泣き叫ぶような雄たけびだった。ぎゅうんぎゅうんとあたりに竜より弾幕が展開される。すっかり大砲のレーザーは落ち着いてしまっているからこそ、弾幕での攻撃手段のほうが難易度異常であった!う~んこれは六面発狂ってかんじです。
「ちょっぴり早いお花見といこうじゃないか」
 シャトの桃色の数がそれを圧倒する!!ごごうと降り注げば竜の弾幕たちと衝突した!圧倒的な物量を前に、どんどん桜の海と地表が化けていく。
 体をすっかり桃色に染められてなお、砲台たちはずっとシャトを視線だけで追い続けていた。当たり判定がでかすぎるのでこんもり積もった桜の山みたいになっちゃってます。
 シャトも相殺しきれなかったぶんの弾幕は、ぬるんとやわらかい体をいかして溶けるようにかわすのだけれど、そのぬるんがすごくはやい。ヌルン!というかんじ。いつもより早めにとけております。
 地面にひらべったくしてみせて、隣にやってきた黒猫のきらめきを見る。
「ね、花火でも一発どかーんと咲かせてみてはどうだろう」
「ほほう、さすがシャト、名案だ」
「ノリのいい妖怪たちだし、盛り上がってくれるんじゃないかなと思うんだよね」
「お祭りっぽいしね」
 刃をくわえた千鶴にゃんである。
 千鶴にゃんとしては、もううんとかわいい魅惑のシャトにゃんがね。かわいかったわけですわ。もうそれで正直満足してる所もなきにしもあらずなわけです。ももいろにゃんこのかわいい舞踏みたし、竜もこんなん敵わんでしょと思ってたわけで。
 でも、竜はまだなんかやる気のようだから――バシッと成敗仕ろうかってところなのだった。つまり、千鶴自体がシャトの弾幕の一部になるということさ!!!
 桜の海に足を浸せば、バビュンッ!!!とロケットスタート!
 口にくわえた鋼のきらめきを引き連れて、夜桜の吹雪に満月をバックに浮かぶくろねこにゃんこ。映え×映え=めっちゃ映えのこの構図――そしてそのまま!

「桜に代わって、成敗だ」

 ……セラ●ン? 
 きらきらと赫が月光に反射しつつ、黒猫が大砲に牙立てる!
 ひび割れていたところにしっかりと刃を突き立てたのなら、爆発ッ!!
「咲かせておくれ、空へ綺麗な花を」
 ちゅどーーーんとあからさまな音がして、しゅたり。黒猫は音もなく桜の海に立っていた。そう、溺れることもなく――。嫋やかにたたずむ桜色の猫のもとへと歩いていく。お互いのほほを寄せ合い、尻尾を絡めたのならこれにてこの勝負、ネコチャンの勝利であった!ニャンッ!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シャーロット・プラチナム
◆ふーちゃん(f31118)と!

……なんだかへんにょりしてるわ!だいじょぶ?
(猫の前足でふーちゃんをたしたしする)

ボス戦!よ!がんばろ、ふーちゃん!
定位置に乗っかるわ!装甲越しだし大丈夫かしら残機。

弾幕が止まったときに……んんっ。なんだかシューティングゲームみたいで、楽しいかも!

わたし、誰かと一緒に戦うのって初めてで……あっ!わたし知ってるわ!『はじめての共同作業』ってやつよね!ケーキ真っ二つにするやつ!ウェディングドラゴンかしら。あっ大砲の方なんだっけウェディング大砲ね!入刀!(喋る間も水晶弾はぶつけつつ)

……ふーちゃんふーちゃん、また鼻血。
水晶で血止めできるかしら。お鼻に詰める?


牙・虎鉄
◆シャーロット(f14294)と

獣身に堕ちて尚この様な形で命の危機を憶えるとはな……
(残り残機:🐯🐯🐯🐯🐯)

か、辛うじて平気だ
正念場だ、行こうシャーロット(よろよろ立ち上がる)

【纏黒】で背に装着した機甲の上にシャーロットを載せる
直接触れねばまだどうにか

一定間隔で敵は停止する様だ
その隙にあらん限り弾を撃ち込め、シャーロット
それ迄は俺が避け続けよう(野生の勘×見切り)

――そうか
共闘は初めてか
戦場で肩を並べる者がいるのは確かに嬉しいものだな

君が楽しいなら何よ……
共同作業。(共同作業)(脳裏を過ぎる新婚シャーロット)

(残機:🐯🐯💥💥💥)
ン゛ッッ(鼻血)

ち、小さめので頼む……(瀕死)




「ふーちゃん!ふーちゃん!……なんだかへんにょりしてるわ!だいじょぶ?」
 ぺち、ぺぺぺぺ、ぺちち。
 小さな白猫の前足は全然痛くないし、なんかちょっと気持ちよくもなってきたな……肉球はふゃふゃだしな……。
「か、―――――辛うじて平気だ」
 獣身に堕ちてっていうか身も心もけだものギリギリラインになりつつあるんですよ、ずんぐりした虎の牙・虎鉄(拳鬼虎・f31118)くん!!がんばって!!なにかにつけてかわいくてえっちなシャーロット・プラチナム(うたうしろがね・f14294)ちゃんにまけないで!!
「ボス戦!よ!がんばろ、ふーちゃん!」
「正念場だ、……行こう、シャーロット」いろんな意味でいきそうだけど本当に大丈夫ですかね……。
 虎鉄くんはえっちでかわいい(本人はまったく無意識な)シャーロットによる少年誌レベルのお色気で今もう顔面が血まみれであった。人でも食ったのかこの虎と言われるレベルには血まみれである。まあ全部彼の鼻血なのですけれど………………。
 説明しておくと、虎鉄もシャーロットもどっちかが悪いとかそういう問題ではない。シャーロットも傷つけたくて虎鉄の背に乗ってえっちな発言をしたわけでもないのだ。なんとなくそう思ったから無邪気になんとなく言っちゃっただけで、彼女自身元々は無機物だし、人肌どうしの触れ合いがなんかちょっと人間っぽい気がして嬉しかったからつい口から出てきてしまったというだけのことで。
 それに、虎鉄だって真面目な男だ。戦うことのみを突き詰めそのために生き、拳を握り、 魔神拳機"シャンユエ"を操らずともいずれ戦場を己が拳のみで切り開きたいとか、そういうことをメチャクチャ思って頑張っているタイプである。武道極めすぎて色に弱い。最強へのために色を知る歳が来たんですけど、なんか弱すぎてアレなだけなんです。
「【"纏黒"】」
 ――こんなことで貸し出しをさせられるシャンユエ、どんな気持ちなんだろう……。いや、持ち主の生命の危機だし多分シャンユエはいいよって言ってくれるさ!わかんないよ父さんッ!!(???)
 ともかく、二人とて二度も同じ事故(?)を起こしたりはしないのだ。しゃきーんと現れたのはシャンユエの機甲一枚。虎鉄の背にのせればそこにちょこんとシャーロットが座る。
「直接触れねばまだ、どうにか」ずびび、と鼻血をすすっている虎に。
「ほんとうね、よかったぁ」心底安心した白猫である。

 🐯残機:🐯🐯🐯🐯🐯
  SPELL:🐈🐈🐈🐈🐈

「一定間隔で敵は停止するようだ。その隙にあらん限り弾を撃ち込め、シャーロット」
「うん!」
 弾幕、展開――。
 機動力に関してはシャーロットの援護も必要ない。虎鉄の体は日頃より鍛えられていて、この程度の弾幕相手ならば避け続けることは容易であった。少し跳ねれば飛び越えて、ひらりひらりと残像を連れてかわしていく。その間に、シャーロットの【白銀遊戯】が弾幕を織りなす。キラキラと光るのは彼女の背中より生えた水晶の翼骨。き、き、き、き、と水晶針が鋭くなれば――射出!!!
 次々とアッというまに弾幕はまるで針でも突き刺された風船がごとくぱぁん!とはじけ飛んでいく!
 ぜえ、ぜえ、と竜の体が疲労で苦しみだしたときに一波が止まれば、すかさず「今!」と虎鉄が指示を出し、「はい!」とシャーロットが弾幕を撃ちだす。背負わされたコードの配線を切るようにかすめていくそれらを器用に操っている彼女の声が、なかなかに生き生きとしていた。

「わたし、誰かと一緒に戦うのって初めて!」
「――そうか」

 虎鉄とて、身に覚えがある。
 一人で研磨し続けてきた。戦うための体を鍛え、孤独で茨の旅だった。不可能と笑われても、絶対に己だけは曲げず、己を信ずるものは己しかあるまいと拳を穿ってきた。シャーロットがどれほど孤独な旅を続けてきたのかはわからぬ。だけれど、こうして二人がコンビネーションよく戦えているのは――それがすべての答えなのだろう。
 きっと、二人とも孤独に慣れ過ぎていて。今、肩を並べてもいいと信じられる相手がいることは、――。

「君が楽しいなら何よ……」
「あっ!わたし知ってるわ!『はじめての共同作業』ってやつよね!ケーキ真っ二つにするやつ!ウェディングドラゴンかしら。あっ大砲の方なんだっけウェディング大砲ね!入刀!」
「共同作業」

 どうして言っちゃうんですか??????????????と思われるかもしれない。赦してあげてほしい。シャーロットは人間っぽいことに憧れがすごくあって……(以下略)。
 ともかく、その思わず口から出たフレーズには悪意なんてひとつもなかったのだが、思春期十五歳の男の子にはですね……とても刺さりましたね……。
 虎鉄の脳裏には、あるイメージが思い浮かぶ。
 ――幸せだわ!と笑うシャーロットの純白の姿。
 ――水晶より透明度が高いんだななんて思わされてしまうようなレースに包まれた彼女との幸せな風景。
 ――ウェディング主刀。
 ――シャンユエをバックに青空と美しい緑の草原で二人で撮る写真。ほんま草。
 ――あと夫婦生活には欠かせない夜の共同鍛錬。
 ――まあ後半はほとんどこの妄想だったんですけど。

「ン゛ッッ」
 🐯残機:🐯🐯💥💥💥
 SPELL:🐈🐈🐈🐈<フ、フーチャン!
 
 じゃ、邪の念~~~~~~~~~~~~~~~~~ッッッッ!!!!君たちそんな関係じゃあないでしょうまだ~~~~~~ッッッ!!!??
 まあね。しょうがないんですよ。何が悪いかって言うとこの戦いは誰も悪くないんです。
 鼻血をまき散らしながら地面に追突し滑り込んでいく虎鉄の背で、シャーロットが悲鳴めいた声を上げていた。落下するのこわいからね。
「……ふーちゃんふーちゃん、また鼻血」
「……」
「水晶で血止めできるかしら。お鼻に詰める?」
「……小さめので頼む」
 それもっと血が出ません? 抜き差し(意味深)とかで……。
 ともかく、なんかまあいい感じにダメージは与えれたらしい。ぐったりする虎の隣で、白猫がやれやれとした顔をしながら球体型の水晶をズヌリと鼻につめてやったのでした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リル・ルリ
【猫歌】
子ペンギンの姿

あれあれー?
ヨルと目が合った
ん?足がある!わぁい、僕、歩けるや!
ちょこまかと動き回れば、ヨルが後をついてきて追いかけっこのようになる
くっつくとヨルはあったかい
短い足でも、走り歩けるのが嬉しい
いつもの僕に足はないもの

……もしかして、君は千織?
みてみて、僕!リルだよ
子ペンギンになったんだ!
えっへん

千織、ふわふわで可愛いね
なでなでしてもいい?
なんてしてたら大きなびぃむが降ってきてびっくり!
わぁ?!
龍を?そんなのだめなんだから!
千織、一緒にやっつけよ!
ぴょんと跳ねて、いつもの様に歌うよ!
びぃむなんて打てないように、蕩けさせちゃう
音楽にあわせて、
歌う『魅惑の歌』

さぁ、千織!
今だよ!


橙樹・千織
【猫歌】

あら…ヨルさん?
変わらぬ姿(ツシマヤマネコっぽい)でぽてとて進めば見知った子ペンギンの式神に出会う

そちらのペンギンさんは……?
式神と戯れるもう一匹にこてりと首かしげ

え?はい、千織ですが…
ぇ、リルさん?
あのリルさんですか?
あらあら、ヨルさんと同じ可愛らしい子ペンギンさんですねぇ

ふふ、ありがとうございますねぇ
どうぞー、と頭差し出し尻尾をゆらゆら

はわ!?
龍を…へぇ、なるほど
あれらが言っていたのはお前のことか
ビームに驚き飛び退いて
元凶をジトリ

ええ、ええ
もちろんですとも
やっつけてしまいましょう
ぺしりと尻尾で地面を叩けば焔の椿が花ひらく

さすがリルさん
それでは
華とやまねこぱんちでお仕置きしましょ!




「あれあれー?」
 リル・ルリ(『櫻沫の匣舟』・f10762)は美しい人魚であった。
 美青年の部類に当たる。彼が悠々と泳いでいれば女のようにも思えるだろう。線の細い、美しくあるために作られた体は愛玩にふさわしい。歌声を聞いても男だとは判別できないほどに、超越した美をもっていた。
 ――檻に入れられ、ただ魅せられ、そして歌うだけの人魚には。
 たとえ世界を救う力が与えられても、叶わなかったものがある。

 リルはこの世界にやってくるとき、自分は多分魚になるのだろうなと依頼の概要でつかんでいただろうが――今日、違和感を感じて地面を見下ろせば小さな足が生えていたのでした。
「足がある!わ、わ、わー!」
 ぺたぺた、ぺたぺた。
 愛らしい足でいっちに、さん、し。普段では感じることもできない初めてのそれにはしゃいでしまうリルは、ずうっと憧れていた足をこんな形で手に入れちゃったのだ。
 ペンギンの雛であるヨルと目があって、お互いにおなじような姿をしているのだと確認しあう。
「わぁい!僕、歩けるや!」
 ちょこまか。ちょこまか。
 小さい体でぽんぽん跳ねるように飛んでみて、全身いっぱいにうれしい!をアピール!
 ぽてぽてと往くまんじゅうのような球体がふたつ、追いかけっこのように動き出したらリルが急ブレーキでヨルがもふん!背中とお腹がくっついて、きゃっきゃと笑いあいもふもふと触れ合っていく。あったかいねぇときゅうきゅう鳴きながら、一匹と一人であたためあっていたころ。
「――あら、ヨルさん?」
 そんなもふもふ空間にさらなるもふもふがまたひとつ。
 しゃなりしゃなりと歩いてくるもふもふはツシマヤマネコの橙樹・千織(藍櫻を舞唄う面影草・f02428)。
 浮かれた空気に呑まれることなく、だけれど猫の躰とはもう親和しきっちゃってる彼女だ。もともとがけだものなので順応力もすごくたかい。それより、見たことのある誰かのペンギンがいたからそっちの方がびっくりであった。目を真ん丸にして、ふわふわとひげがひろがる。
「……もしかして、君は千織?」
「え?はい、千織ですが……」まるで初めて電話をし合ったかのよう。
「みてみて、僕!リルだよ!」
「ぇ、リルさん? あのリルさんですか?」
 すっかりリルがもしこの依頼に来たら、それこそ美しい魚や、それに準ずる何かになっているのだろうと思っていたからこれには千織の尻尾もぶわわと広がっちゃって。でも、ヨルとリルを交互に見れば、それもそうかななんて納得してしまうのだった。
「子ペンギンになったんだ!」えっへん
「あらあら、ほんと。ヨルさんと同じ可愛らしい子ペンギンさんですねぇ」
 なごむから、まあいっか。そんな感じの納得である。ふわふわしているのだった。
 それに嬉しそうに地に足つけてじゃんぷするリルはやっぱり愛らしいし、かわいいものは正義だし。千織が疑う必要もないので、早々によかったなぁ……とかわいさをかみしめてやる。
「千織、ふわふわで可愛いね。なでなでしてもいい?」
 ぷるぷると未熟な翼でリルが手を伸ばしてくるのなら、ぺこりと千織は頭を下げる。
「ふふ、ありがとうございますねぇ。さあどうぞー」
「わぁい!」
 尻尾もご機嫌な範囲でゆ~らゆら。さあどうぞ撫でて撫でてと甘えるように喉もごろごろぐるぐる嬉し気に響かせていた――というのに!

「はわ!?」
「わぁ!?」

 ぽてんとリルが尻餅をついて、それはかなわなかったのが――さっきまでの事で。

 さてさて戦場がどんどん激化していく中、リルはすっかりぷんぷんと怒っていた。
「龍を?そんなのだめなんだから!」ぷんすかぴいぴい!せっかくご機嫌に新しい体を楽しんでいたのに、目の前でとりあげられただけでなくビームを放つ無粋な大砲は赦せない。何より、龍を狙うなんてそんなの――リルの桜色を否定されたようでとってもおこなのだ!おこ!
「龍を――へぇ、なるほど。あれらが言っていたのはお前のことか」
 じとり。
 姐さん、怖いです。二人の穏やかなふれあいタイムがやってくると思えばビームなどで邪魔してくれちゃったあの大砲はやはり許せぬ。千織さんの怒りにね、触れちゃったらもう終わりっすよ。やっちゃってくださいよ姐さん!
「千織、一緒にやっつけよ!」
「ええ、ええ。もちろんですとも」
 おうおう、なんだなんだ、どうしたどうしたとやってくる妖怪たち。
 勝負か?勝負か!それじゃあ演奏しちゃいましょう!とちゃっかちゃっか伴奏が作られていく。メロディは何にしようかな――なんて妖怪たちが思ったころに。

「――やっつけてしまいましょう」

 ばしぃんと尻尾で千織が地面をたたけば焔の椿が花ひらく!まるで怒った女王様のムチっぽい音だったので妖怪たちもびっくり……めちゃくちゃ怒ってらっしゃるじゃないですかァ……。
 【剣舞・燐椿】。ぶわ、ぶわ、ぶわ、と椿の花が開けばそこにリルの歌声が混ざる。妖怪たちが彼の歌声を届け安かろうと酒だるを足場にしてペンギンたちを載せてやったのだ。
 【「魅惑の歌」】。どんな強固な意志を持っていても、このリルのやわらかな歌声の前ではほとんど無力だ。とろとろとしてきた竜の瞳に、ちっともリルたちは映らない。砲撃も展開されているのにさきほどから弾幕の動きはゆるやかで、千織がするすると避けていくのに一つも苦労がなかった。――目を閉じていても避けるのはたやすいほどに!
「さぁ、千織!今だよ!」しゃらら、しゃららと響くハープの音色に合わせてリルが息つぎをしたのなら、惹きつけて離さない柔らかな音色にぴたりと弾幕がとうとう止まってしまう。
 そこを――足場を燃やしながら跳躍したツシマヤマネコ・パンチが横っ面をべしーーーん!!!!!

 竜がね、ふっとんだんですよ。
 山みたいなサイズなのに。
 さて、と言いながらしゃなりと降りてくる千織を前に、茫然とした妖怪たちと「やったね!」と飛び上がってきゃっきゃするリルがいる。リル的には慣れっこっていうか……リルくんは純粋なので……勝てたのならヨシ!!!という感じなんで……。
「さあ、どうぞ続きを」
「わぁい!」
 今度こそツシマヤマネコがぺこりとしたら、ぎゅうっともふもふの灰色の子ぺんぎんたちがぺったり。あったかいねえ、やぁらかいねえと戯れてヤマネコサンもご機嫌なのでした。
 ……怒らせないで、おこうね!!!!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティア・メル
ロキちゃん(f25190)と
姿はそのままに

るーんるーん
ロキちゃんに乗っかって酔っ払いるんるん
鼻歌まじりに闊歩する
えーい、ロキちゃんのお通りだよーっ

わー!ロキちゃん、すごいすごいっ
何かビームが出てきたんだよ
ぼくも…うーん
ぼくはビームを出せないから、君のビームに
とっても強い効果音を添える感じで歌おうかな

ぴるぴる、ぴるる
魅了蕩していっぱい歌うよん
ビーム同士がかち合ってバチバチ
あっちのビームを無かったことにしちゃおう
ロキちゃんの邪魔はさせないよ

ぴるぴる、ぴるる
んふふ、どうかな?
少しは役に立てたなら良いんだけれど

ふふふーぼくを食べてくれるの?
骨の髄まで余さず食べて
代わりにロキちゃんを丸ごと頂戴?


ロキ・バロックヒート
ティアちゃん(f26360)と
姿はそのまま

気分よくふらふらと
頭に乗せたティアちゃんと一緒にうたいながら
のっしのっし堂々と闊歩
がおーがおー
鼻はぴすぴす
酔っぱのかみさまのお通りだー

弾幕すごーい観戦しよーと思ったけど
すごいビームなら俺様も撃てるー!ってつい参加
【神の指先】で極太の神罰の光をどーん!どーん!
あれこれどこから出てるんだろ?おくち??
まあいっかーくらえー!

ビーム同士がかち合ってバチバチなる
ティアちゃんのうたで応援してよ
ぜんぶこわすはかいのひかりだぞー負けないよー
でもビームが消えてびっくり
ふふふティアちゃんすごいえらーい

ねぇ
食べちゃってもいーい?
食べたらきっと蕩けて
ティアちゃんのものになるよ




 るーん、るーん。
 ティア・メル(きゃんでぃぞるぶ・f26360)はすっかりご機嫌だ。モモイロインコになった体は羽根の艶もよくってもっちもち。酔っぱらってもいなくっても今の気分はふわふわだったに違いない。そう思って――黒い獅子の頭にのっている。
「えーい、ロキちゃんのお通りだよーっ!」
「がおー、がおー!酔っぱかみさまのお通りだー」
 ふぁふぁのまろやかな感じでお鼻はぴすぴす。鼻歌をモモイロインコにつられて歌いながら、黒獅子のかみさま、ロキ・バロックヒート(深淵を覗く・f25190)はのっしのっしと歩いてやる。
 ははあ~~~~と頭を下げだす妖怪たちはわりとみんな酔っぱらってノリノリなのだ。もちろん先ほどから歌っているティアの歌声のおかげもある。ただでさえきつめのお酒をみんなでのんでいたというのに、そこで脳までふわふわになっちゃったらこのざまなのだ。
 とってもいい気分でふたりのさんぽ。すると、夜空では弾幕がきらきらり。
「わー」
「すごいねーっ」
 ロキが声を上げたのなら、ティアがきゃっきゃと喜んでそれを見るものだから。
 じゃあじゃあとロキも舌なめずり。「俺様もできるよ!俺様もすごいビームできる!」対抗心というよりは、ティアに自分を見逃さないでほしいという気持ちもあっての神様の乱入!
「いっくぞ~~!くらえ~~~!!」
 か、神様~~~~~!!!!!そんな気軽に神罰しないで~~~!!!
 【神の指先】。
 かみさま、おたわむれを……。
 びゅうんびゅうんと懲りずに大砲が力をふりしぼってレーザーを展開するのなら、それにはロキのビームで対抗する。バチバチなりはじめた。なんかちゅいちゅい電流みたいな音がして、空間に亀裂みたいなのがはしっていく。
「う~ん、なんだかいい勝負」
 ど~しよっかな~とロキがそれを見上げて、そうだそうだと頭の上でさえずるティアにぐるぐるごろごろとおねだりするのだ。
「ティアちゃんのうたで応援してよ」
「いいよ~!ロキちゃんのリクエストだったら、よろこんで!」
 ぴるぴる、ぴるるん。ティアは超すごい・ツヨイ光線は使えないけれど、彼女の役目はかわいらしい声で鳴くことだし。
 【病飴】はとってもいじわるなコードなのだ。
 ロキのまぁるいお耳がぴくぴくうごいてるんちゃかるんちゃか四つ足も身軽に動いちゃう。弾幕はぴょん、あそれ、ぴょん。ちょっと跳ねてしまえばひらひらくねくねとかわしちゃう。
「ぜんぶこわすはかいのひかりだぞー負けないよー」
 さらに、ぱか~んと開いた口から、音も何もかもを置き去りにする高速の大光線が発射ァ!!!!!どうして!!!!レーザーとか一瞬で消えちゃうのだ。ビームもそう。弾幕もそう。弾幕はパワーだけどやりすぎですよ神様ぁ!!!???!!?ばぎゅううううううおおおおおん……という効果音が後からついてきて、これには妖怪たちもぽかん。大砲もぽかん。ドラゴンはつかれていた。え、ええ……。
 自分のビームの威力にすってんころりんしたロキが、背中にのってたティアと一緒にけらっけら笑っちゃう。今の二人は正直なところ、箸がこけてもたのしくてしょうがないのだった。
「あははは!やりすぎちゃったぁ、たのし~」
 まさか歌声が本当にここまで役に立っちゃうなんて思ってなくって。ティアとしてはこれ以上に嬉しいこともなかったのだけれど。ロキはロキで、そんな彼女の無邪気な応援でやりすぎちゃうくらいには快楽的なかみさまなので。
「ふふふ、ティアちゃんすごいえらーい」
 くるりんぺたりん。二人でひとりしきり笑ったのなら、ぴすぴすぷすすと鼻を鳴らしてロキがお鼻にすべりおちてきたティアにお目目をにんまり。
「ねぇ。食べちゃってもいーい?」
「ふふふーぼくを食べてくれるの?」
 もっちもちのティアの腹の感覚がして、ロキの喉がうるうる、ぐるぐる。
「食べたらきっと蕩けて、ティアちゃんのものになるよ」
 歌の影響もあるけれど、かみさまがなんてことを言っちゃうのだ。
 なんてこともそんなことも言いたい時だってある。だって二人は酔っちゃっているのだもの。えぅえぅ、ぐるぐる。うっとりしてきた顔はなんだか眠たそうな子供のよう。
 明日のことも考えるのもなんだかもうめんどくさいし。途方もないことを思い返すのもしんどいし。いいんじゃないかなぁこのまままったりするのもなんて思いつつそんな提案をしてみるのだ。何もかもを置き去りにするような罪な果実をティアに見せるように。
 すると、くいくいとティアがその眉間の毛並みを溶かしてあげながら、ぴるるぴるると嬉し気にころころ笑う。
「そうだねぇ」
 じゃあ、と見つめて。
「骨の髄まで余さず食べて、代わりにロキちゃんを丸ごと頂戴?」
 それは――かなり無責任で、本当に享楽的な提案。
「やったぁ」と口を開いた黒獅子の大きな口が、ぽーんとお鼻にのったモモイロインコをぱくり!

 えっ、食べちゃったの……!?と妖怪たちの酔いも醒めちゃって、かちりとまるで時間が止まったかのよう。

「な~んちゃってぇ」
「あはは!」
 ぺろりと舌を出したロキの口から、先ほどと変わらないティアがころころと出てきて地面にぽとり。またふたりでけらけら、ころころ、ふわふわ。
 二人にさっきからさんざんかき乱された妖怪たちもホッとして、ああよかったなんだなんだとふにゃふにゃとろけて敷物の上にごろごろり。
「みんなとろけておいしそうだねえ」
「そうだねえ」
 でも食べちゃいけないからね。
 大きな黒獅子とモモイロインコが見つめ合って、どちらからともなくにししと笑う。
 仕事はしたし、お二人の今日のお仕事はこれにておしまい!さあさ、素敵な夜明けまでもう少し。ふたりでとろけそうな甘さの中、もう少しぐるぐると夜空をみつめあっていて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

百鳥・円
【花鳥】

ひゃーんとんでもない爆音!
何時もの耳なら気絶してたかもですん

あらあらとても大きなものに寄生されてるよーで
んふふ、なんだか楽しくなりそーですね?

さて、ここ一番の大勝負!
いっきますよー!白虎のおししょー!
ミミズクまどかちゃんも頑張りますん

華麗に楽しく!
そうして勝利を掴めたらはっぴいの極みですん
弾幕の間隔を縫うように飛んでいきましょ!
おししょーお怪我はないですか!

黒曜の衝撃波で薙ぎ払ってみせましょう!
そーおれ!
普段より彩りは落ちますがキレイでしょう?

しゅばばっと大勝負を終えて
ゆーっくりと演奏を楽しみたいものです

なんだから悲しげな大砲を引き剥がしましょー
とびきり大きな衝撃波を放っておきますよう


宵雛花・十雉
【花鳥】

うへー、すっげぇな…
大迫力って感じ
弾幕にビームまであるとは、男の浪漫だなぁ

けどまぁ、何とかなんだろ!
なんてったって今のオレはホワイトタイガー
そんじょそこらの奴にゃ負ける気しねぇ
お空の方は任せたぜ、ミミズク円ちゃん

そうだな、楽しく行こうか
猛々しく豪快に
地を駆け吠えるぜ

『第六感』…もとい野生の勘で弾幕の隙間を見つけてやる
見てろよ、白虎の機動力と身のこなし!
はっはっは、気分いいなぁ!
円ちゃんも怪我してねぇかい?

あの大砲を狙えばいいんだな
うっし、協力して引っぺがしちまおう

行け、赤鬼と青鬼!
…って、もしかして鬼たちも動物になっちまってんのか!?
まぁいいや、いつもと違うパワーを見せてやれ!




「ひゃーんとんでもない爆音!」
「うへー、すっげぇな……大迫力って感じ」
 百鳥・円(華回帰・f10932)はいつもの耳ではなくてよかったなぁと安堵する。
 ぼんぼんばんばんどこもかしこも爆発したりなんだりしながら、それぞれ綺麗なものなのはそうなのだけれど。それでもあまりにも大迫力のやり取りが続けられているものだから、ミミズクも体がふくふくと膨らんじゃうのだった。
 宵雛花・十雉(奇々傀々・f23050)からしても、今のしっかりとしたたくましいホワイトタイガーの体だからこそ逃げ出すことはないけれど、いつもだったら心臓が口から出ていたかもしれない。比喩だけど、そんな感じのビビり具合を円の前でみせることが無くてよかったと安堵ばかりだ。
「弾幕にビームまであるとは、男の浪漫だなぁ」
「男の子はみんなああいうのを夢見ますよねえ」
「女の子も好きかい?」
「好きな子は好きだと思いますよう」
 う~んジェンダー的にもぐろーばる。にゃんだふるでわんだふるなこの世界ではなんでもよいとされています。うむうむと頷くミミズクが教えてくれるなら、そうだよなぁと十雉もうんうん。
「さて、ここ一番の大勝負!いっきますよー!白虎のおししょー!」
「よし、何とかなんだろ!何とかするぜ!!お空は任せたぜ、ミミズク円ちゃん!」
 二人の合言葉は「どんな時も楽しく」なので。
 作戦内容はガンガン楽しくどんどんいろいろやって、ほどほどに命をだいじに。まず、注意をひくためにどどうと地面を蹴ったのは十雉であった!
「見てろよ、白虎の機動力と身のこなし――――!」
 しゅたっ、と走ればいつもよりうんと早い。
 時折爪で土を蹴り上げまきあげ、勇ましく猛々しくはしっちゃう。弾幕が敷き詰められてもなんてことない。ジャンプして、ぐるりと体をひねってみればやわらかいねこ科の躰でにゃんぱらり!
「はっはっは、気分いいなぁ!」
 自由自在に走れる強いからだってこんなに便利なんだなァとも思える。ぎゃおうぎゃおう!と楽しく鳴いて喜ぶ十雉の声を聴きながら、まどかもしゅう~んと弾幕をくぐりぬけちゃう。根暗な自分なんてどこにいっちゃったやら!ずっとこのまま男らしくあれたらきっと悩まなくていいこと、いっぱいあるのになぁ!ンー、にゃごにゃご!
 如何なる激しい弾幕だって、頭の中に冷静な自分をおいておく円からすればおちゃのこさいさい。ある程度のパターンがあるのは夢も弾幕もいっしょだもので、どれもこれもが金平糖に見えてきたのならあとはお話も簡単で。
 つるつるんと滑るように躱していけば、パッと大きく翼を広げて狭いところから解放されたことを示す。弾幕の嵐はひとまず抜けたが、眼前に第二波がすぐそこまで近づいてきた!
「おししょー!お怪我はないですか!」
「おうとも!円ちゃんも怪我してねぇかい?」
「んふふ!ごしんぱいにはおよびませんよぅ!」
 やっぱり「楽しむ」というのが一番強いのだと、お互いの声色を聞いてにんまり。
「すげえ……」
「なんでったってあんなに楽しそうなんだ?」
「楽しそうだから余裕があるのかもなあ」
「俺も弾幕にゃあ、パニックにならねえように気を付けねえと」
 さあさあ第二波到来。先ほどよりもぎゅぎゅっと濃縮の弾幕たちを相手にも、二匹はまったくもって臆さない!
 にゃんぱらぱるりら。お空のミミズクがひゅ~んと飛んで、地面に落ちる影を追いかけるように白虎がぎゃおう。
 円の耳には妖怪たちが二人に合わせた曲で応援しようと作り上げたトランペットがメインの大きな音が奏でられている。パー!と鋭い音と共に羽根を羽搏かせたら、どうやらいつもよりずっと早く飛べる気がしたのだ!
 さてさて、折角だししゅばばとデキる女らしく仕事を片付けて、ゆ~っくりと自分たちにあてられた音楽を楽しんだりしたいものなのだけれど。
「いやあ、キリがないですね~……おししょー!やり返しちゃいましょう」
「よしきた!いくぜぇ」
 怒涛の弾幕をかわしてかわしてかわすだけではまだまだ終わりが見えてこぬ。もはやここまで追いつめられてもまだまだ暴れ足りないのだというあの砲台の恨みすらもおいしそう。円が十雉に号令をかけたのなら、にたりと虎が笑う。
「行け、赤鬼と青鬼!――狙いは大砲だぜ!」
 どろんぱっぱ!!
「……って、もしかして鬼たちも動物になっちまってんのか!?」ききい~~~~~っと急ブレーキ。
 十雉が大きなまんまるお目目で【神織双鬼】で呼び出した鬼たちを見てみれば、おやおやなんだこりゃと彼らを見てみる。青鬼と赤鬼がやってくる場所には、コンコンとキツネが二匹。
 彼らもお互いを見合わせてなんじゃこりゃと言いたげだけれど、「ええい!かまうもんか」と十雉がぎゃお~! ぴょぴょっと二匹の耳が「それもそうだ」と言いたげに反応したならば、コンコン陰陽アタック!
「いつもと違うパワーを見せてやれ!」
 ぎゅるぎゅるとお互いの顎を噛み合うようにして回転しだしたキツネたちが弾幕展開ッ!ばしばしばし、と弾幕同士が衝突しあって十雉が走り出す。
「いけるぜ――円ちゃんっ!」
「はい!おまかせあれ――そーおれ!!」
 【獄操刃】!!いつもよりも彩は落ちてしまうけれど、白と黒しかないのは勝負の世界にお決まりだから!びゅううんと跳んでいく黒い衝撃波たちが弾幕に加勢すればあっという間に視界が開けてきた!

「いよっしゃ――そんじゃあ仕上げだ!派手にいくぜっ」
 ぎゃおう!!ぎゃうぎゃう!けんけんけーん!キツネと虎の合唱とご一緒に、ひときわ大きく円も羽搏いてみる。黒曜色の風圧は弾幕を引き連れて――砲台へ!!

「悲しむことはないですよ」
 ばごん、ばごん!と砲台がひしゃげていって――。
「ああそうさ、悲しむからつらいのさ」
 ぶちぶちりと配線がちぎれていって、がこんと大きく大砲がゆらいだ。
 
「「どうせ同じ地獄なら、踊らにゃ損々!」」

 だって苦しくっても悲しくっても、同じこと考えてたってキリないもんね。忘れられたっていつだって大きな声で鳴いたら、みんなきっと誰かが見つけてくれるはずだから。
 ぱ、ぱぱ、と火花を散らしていまにも背から落ちてしまいそうな大砲の一つが、恨めし気に鈍く輝いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジャハル・アルムリフ
*前よりは大きい爬虫類に進化🐾

うむ、幾分マシだ
きりと表情筋らしきものを引き締め
少なくとも先程までよりは

竜に連なるものなれば此処に
…などと嘯くにも説得力に欠けような
気の毒な竜達に代わって仕置きと参ろう

まかり間違って踏まれぬように
そこら行く妖怪らの背や頭上を拝借、跳び渡る
右だ、避けられよ
前へ飛べ
ええと……、全力で走れ
などと声を掛けて回避試みながら
想い描き、喚ぶは無数の【落星】

其は疑うべくもない星の輝き
身を以て知る怒り狂った主君の落とす雷
かの一撃、危険度は連中の弾幕にも等しいに違いない
済まぬが耐えてくれ、竜たちよ
心で詫びて躊躇はせず

例え、その衝撃で
巻き添えに少々吹き飛ばされたとしても


玉ノ井・狐狛


あー、わかるわかる
ピンポイントな対策装備みたいなのって、ついつい用意しちまうよな
そしてけっこうな割合で出番が来ないヤツだ

憂さ晴らしの相手をしてやろう
アタシぁ竜なんつう大層なモンじゃないが、どっかの帝竜サマがたのツラはずいぶんと見たんでな
代役くらいにゃなるかもだぜ

そんじゃ、こっちからも演し物をひとつ(UC)
ギャラリーもいることだし、避けてばかりじゃ受けが悪ィ
(召喚した剣群による弾幕をもちいて攻撃)

イカした音楽をバックに大騒ぎ――ほら、じつに愉快な時間だろ?
それで気が晴れるかどうかは知らないし、手を抜いたりはしてやらないけどな!




「うむ、幾分マシだ」
 いやさっきまでがすごいあの……ガチャで言うと……ドブだったみたいなね……。
 ジャハル・アルムリフ(凶星・f00995)は此度もどろんぱっぱ!さてさて何の姿になれかたかと思えばミズオオトカゲである。
 メラニズムが進んだ個体なのでほとんど黒い。光沢めいた鱗はジャハルのもちまえの健康の結果です。きらきらしている。つやつやモニターである。
 キリッとしてみる。きりり……。先ほどよりは大きな手足も安心だ。飛ぶことはできないけれど、動いてみれば存外早いし体は平たいのに大きい。尻尾をしなやかにひゅんひゅんを何度か回してみれば、これもなかなか武器として使えそうだ。
「竜に連なるものなれば此処に」
 ――むちゃくちゃ説得力にはかけるけれども!
 でもまぁ、わりとしっかりした体躯なのでそれなりに妖怪たちには説得力があった。
「気の毒な竜達に代わって仕置きと参ろう。あの寄生された竜もな」
 今回の依頼、竜の皆さん踏んだり蹴ったりである。
 どうしてこんなに理不尽な目に遭いやすいのだろう、星のめぐりかな――なんて感じで多分この仕打ち、ジャハルなら許してくれそうだった。

「あ~~~~わかるわかる。ピンポイントな対策装備みたいなのって、ついつい用意しちまうよな。そしてけっこうな割合で出番が来ないヤツだ」
 玉ノ井・狐狛(代理賭博師・f20972)、実によくわかっていたしこの大砲不憫なもんだなァ~と思えていた。
 実際彼も歴史の被害者と言えよう。まあ、無機物なのでそういった心っぽいものはもしかしたら作った人とか、そうでない誰かの心を模倣しただけかもしれないけれど、それくらい手塩にかけられて作られたのだろうとはあのしぶとさを見ればわかる。
 竜相手に作られた平気だ、猟兵たちがフルパワーアタックしようがまだまだ動こうとするのはもはや執念通り越した狂気であろう。
「……憂さ晴らしの相手をしてやろう」
 だから、まあこの争い。あやしてやるようなものである。
 ぽんぽんと跳ねて飛んでの金運の招き猫は黄金の毛並みを輝かせて弾幕をかわす。密度がどんどん上がる発狂モードにだってまったくもって焦らない。どんな勝負もそうだ。命の駆け引きだってそう。焦った奴からミスって負けちゃうと狐狛は知っている。
「――アタシぁ竜なんつう大層なモンじゃないが、どっかの帝竜サマがたのツラはずいぶんと見たんでな」
 代役になってやろうというほど優しい気持ちがあるわけではないが。
 とはいえ、まあこの大砲。人間を恨んでいるのだろうなというのはわかってしまうのだ。人を嫌ったこの金属が生み出した異変は、確かに竜の討伐は目的として存在したものだけれど、その背景には「捨てられて忘れられた」人間を喪失させている前例がある。
「どうせ騒ぐんだ、お仲間を呼んでやるとするぜ」
 しゅたり、にゃんぱら、しゅるしゅるり。
 ちょん避けしつつも体を器用にくねくねと曲げて粒子の海をかいくぐりながら、狐狛が作り出したのは弾幕。
 せっかく彼女を応援するギャラリーだっていて、彼女のために美しい音色を奏でてはぎゅんぎゅんとエレキギターまで持ち出す妖怪たち。そんな賑やかな彼らには応えてやらねば勝負師としての信頼もあるというもの。
「――ほら、実に愉快な仲間だろ?」
 【鍛冶場泥棒の大風呂敷】!聖剣よりも真剣の数のほうが多い!!!
 ぎゃぎゃぎゃぎゃと音を立ててびっちりと空間に剣たちが呼び出される。敷き詰められた弾幕と衝突相殺!!どががががががと音を立てながら文字通り弾幕同士の真剣勝負が白熱したなら、妖怪たちからうおおおと声が上がる。
 火花を散らし、お互いを食らいあい――美しいったらないが、やはり決め手には少し遠い。しかし狐狛、ここは勝負師であった。 
 ――運命の女神が微笑むと「信じている」。

「失礼」
「どわっ」
 間違っても踏まれないように。
 ぽんぽんとトカゲのわりには大きな体で妖怪たちの頭上をとびうつり、その背中を、頭を大きな足で跳ねていく。
 ミズオオトカゲ――ジャハルが前へ前へとかき分けながら進み「右だ、避けられよ」「わあ!!」妖怪たちを弾幕から安全圏へと誘導していた。
 のしりと頭に居座れば左に大きく傾かせたり、また飛び跳ねては前へ飛ばせたり。「ええと――全力で走れ」「どわああ~~~!!!!」鬼の大きな背中に捕まって走って走って。そうすることで巻き込まれそうな彼らを導きながら、戦場に彼がたどり着く。
「よくやってくれた!」
 バッ!と大きな背中から離脱するなら、オオトカゲの眉間がきらりと光る!

 ――思い描くのは、疑うべくもない星の輝き。身を以て知る怒り狂った主君の落とす雷。
「さあ、でっかい星が落ちてくるぜ!願い事はきまったかァ!?」
 ぎら、ぎら、ぎら――周囲が輝きだしたのだ。どんな宝石よりも輝かしい輝度を垣間見て、にたりと勝利を確信した狐狛が笑う。
 【落星】。
 ジャハルの念に応じて落ちてくるのは無数の隕石――ッッ!!!
 狐狛の弾幕に混じったそれらが無情に降り注ぐッ!!竜のうめき声を聞いたが、それでもジャハルは心で詫びて加減はしない。
「わあわあなんて派手な弾幕だ!!」
「ひゃああ~~!!」
 すっ飛ばされる一反木綿も見た。ちなみに、ジャハルも飛んだ。衝撃波で。狐狛は塗り壁にうけとめてもらったので、なんてことはない。「いやここまでデカい当たりを引いちまうとは」なんてけらけら笑っている。

「――うむ。やりすぎたか」

 うっぷんが……溜まってたんじゃないですかね!?(前章の)
 とまれ、竜は十分に弱らせたはず。後続の猟兵たちもきっとあの大砲を砕くのにやりやすかろうと信じて――ジャハルは吹き飛ばされながら目を閉じた。
「無茶するなァ」狐狛がそれを見送って、がしりと黒いオオトカゲを鬼たちが受け止めたのを見て安堵する。
 誰もかれもが満身創痍だけれど、それでも今この場はこころさえも化かされて楽しいばっかり。そろそろ静かな朝焼けが恋しくなりつつも――金色の猫がぬりかべの手の中で、ふゃあ~おとあくびをひとつした。猟兵たちがこの勝負に負けるのは、もはや想像も予想もできないし、どんないかさまだって考えつかなかったものだから!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジュジュ・ブランロジエ
【紫翠】◎白猫
メボンゴ有無お任せ
妖怪に預けても可

お前の敵はここにはいないにゃ!
にゃんて言っても通じないよね
実力行使で退場してもらおう
行こう、コノにゃん!
ネコネコショータイムにゃ!

ワンダートリートで行動阻害
敵の攻撃を見切りフェイント混ぜつつ回避
コノにゃんが跳んだら私は地を駆る
にゃんこダッシュ!
強化されても当たらなければどうってことない!
連携が上手くいったら肉球ぷにっとハイタッチ

敵が昏睡状態になったらフルボッコにゃん
雷属性の衝撃波+二回攻撃を時間までひたすら連発
無敵タイムにゃ!
あっ、もう起きた!

オーラ防御の範囲を広げ妖怪さんを爆風や粉塵から庇う
ド派手なショーでも観客の安全を保証するのが一流なのにゃ


コノハ・ライゼ
【紫翠】◎黒猫

煩いのが出てきたにゃぁ
アタシ達のショーを彩るには無粋が過ぎるンだにゃ
ええ、格の差ってヤツを見せてあげマショ

範囲攻撃で自分達にオーラ防御
ジュジュにゃんの攻撃に合わせ敵の攻撃を見切り身軽に避けていくにゃ
妖怪サンら以外の、その辺にあるモノ適当に足場に跳び華麗に空中戦
誰か危ない時は転がってるガラクタ蹴っ飛ばして攻撃からかばうにゃ
引き続きのコンビネーションで攪乱
今度は光のショーにゃ、と【彩月】で敵を照らし玻璃から生命力を吸い上げマショ
決まれば肉球ハイタッチ!

フルボッコタイムでは近付き念入りに爪で傷口抉っておくにゃ
ふふ、お寝坊サン
その玻璃は抜けはしないのにゃー
寝惚け眼でついてこれるかにゃ?




「お前の敵はここにはいないにゃ!――にゃんて言っても通じないよね」
「煩いのが出てきたにゃぁ。アタシ達のショーを彩るには無粋が過ぎるンだにゃ」
 コノハ・ライゼ(空々・f03130)もジュジュ・ブランロジエ(白薔薇の人形遣い・f01079)も、例の大砲についてはなんだか可哀想半分、はたから迷惑半分で。
 むしろこの楽しい舞台で唯一楽しんでいないのだから、ジュジュからすれば唯一皆から笑顔を奪ってしまう残念なものだし、コノハからすればこの中で一番ダサいといっていい。なんやこの陰キャがという感じである。お前何陰キャしとんねんコラ笑えやというかんじ。がんばってるのに!!ねこねこになって!!猟兵たちも!!
「実力行使で退場してもらおうか。――よし、行こう、コノにゃん!ネコネコショータイムにゃ!」
「ええ、格の差ってヤツを見せてあげマショにゃ」
 にゃんにゃかにゃんにゃんにゃ!
 もはや乱雑で軌道も読めない弾幕がちりばめられ始めていた。コノにゃんのほうがスピードが速い。とととととととと!と鋭く跳んでいく彼を追いかけるように、ジュジュは地面を走った。いつもよりは早くて身軽だけれど走るのも全身運動だ。余計な体力はつかえないにゃんとも思いつつ、彼女の――優先順位はいつもかわらない!
「あぶないにゃ!」
「きゃあ!?」もはやだれでもいいのだといわんばかりの弾幕は当然、妖怪たちも巻き込まれる。爆風や粉塵がどんどん立ち昇るのならば、そこはジュジュの仕掛けのみせどころ。
 オーラを纏い、それを広げて絹でも編むように観客である妖怪たちをかばう!
「わあ、すごい」
「カーテンみたい」
「安全第一にゃ~!」そしてまた、しゅととと~っと走っていきながら。
 ジュジュのふるまいをちらりと見送って、コノハも同じように観客たちの守護を意識する。ぽーんと跳ねて妖怪たちが弾幕に襲われそうなら酒だるキック!ゴロンと転がった樽が弾幕を防いで中のお酒がばっしゃん!
「ぶへっ」「浴びるほど飲まなきゃ損にゃあ」
「そうだそうだ、浴びるほど飲め!わっはっは」「危ないにゃん」
 煽る妖怪のことはどこからか転がってきたトタンを蹴っ飛ばして守る。はぁやれやれとは思いつつも――ここまで浮かせてやったのは自分たちだしという気持ちももちろんあって。
「コノにゃん!」
「ジュジュにゃん!」
 お互いに声を掛け合えば、どこからともなくドラムロール!妖怪たちがしっかりと彼らの演出を手伝っているのだ。では最大限に応えて見せようと、ジュジュが二本足で屹立する。ぬうっと体を伸ばして、眼前の大砲たちを見つめる。
 そして、指先を一本だけ立てた。すうっとそのまま〇を描いて、その中に彼らを収める。怨嗟の輝きが鈍い、弾幕の密度もそれほどでないから――オーラで防げる程度だ。
 強化しようとどくどく、竜の体が脈打っているのがわかる。
「そうはさせないにゃよ~……!」
 デデデデデデデデデ、と激しく刻まれるそれを合図に【ワンダートリート】を起動するジュジュがいた。三本のナイフを頭上に展開させて、しゃきりと目を伸ばして大きく振りかぶった!

「にゃっ! ふにゃっ! うにゃ!!」

 デン!デン!デン! シャーーーーーーーーン
 しゅたたた、と見事竜に突き刺さった小さなナイフは決して致命にもならなければ大きなけがにもならない。しかし、――竜は沈黙したのだ。
 そう、ユーベルコードが封じられている!
 ならば今!とコノにゃんがすかさず追撃をしかけるのだ!【彩月】が起動し、黒猫が走ればどんどん周囲が輝きだす。きらっきらの照明に妖怪たちも照らされて、わあわあと目を見開いて口を開けるほどだった。
「お次は光のショーにゃ。見逃さにゃいで?」
 竜の目を光で潰しておいて何を言う、という感じではあるのだけど。コノにゃんがもてなしたいのはジュジュにゃんと二人のお客様だから、敵にはあまり情け容赦がないのにゃん。猫の世界はシビアにゃ~~~……。
 さあさあ、圧倒的な輝度で――ぎゅううっと相手から生命力を吸い上げる。稼働率をうんと下げてやったら、玻璃の射出!!結晶がざくりと大砲に突き刺されば完了!
「さあさあ、ナイフ投げはまだまだ終わらないにゃ!」
「ここからはスーパーフルボッコタイムにゃーん!」
 ジュジュにゃんの雷任せの衝撃波がばちばち!ごろごろ!
 コノにゃんの追撃は大砲の上に降り立って、その砲身でと~~~~ってもみみざわりな爪とぎ!さてさて竜の強化限界時間まで、たくさんいたずらしちゃうねこちゃんたちの攻撃は止まらない――さあ、時間だ!
 ばしゅうううううん……と消え失せる弾幕たちに、やったねやったねと二匹の肉球でハイタッチ!
「ナイスコンビネーション!んにゃ!」
「にゃはは!アタシたちなら余裕にゃ。さて、それじゃあお決まりの?」
 肉球ハイタッチ、かーらーの?

 ――にゃんっ!★

 二人でポーズをキメたのなら、妖怪たちから拍手喝采!
「いやあ、こっちが見てて面白い弾幕って珍しいぜ」
「派手同士の戦いみたいなところあるものねえ」
「これが手品かぁ」
「教えてもらえるのかなぁ。投げナイフ」
 新しいエンタメのカタチである。それぞれが感動している中、ぎぎぎ、ぎぎぎ、と大砲がもう目覚めた昏睡の竜を連れて怒りをにじませレーザーを収縮させている――!
「あっ、もう起きた!」
「ふふ、お寝坊サン。暴れてもその玻璃は抜けはしないのにゃー」
 竜がぐりぐりと両腕を使い、ぐっさりと大砲に刺さってしまった結晶を引き抜こうとしているけれど、全然びくともしないのだ。挙句力が入りすぎて背面からずずんと転んでしまった。
「それじゃあアタシたちを捕まえることはできないにゃ~」
「にゃはは!さあさあ、皆さんご一緒に!」

 どわっはっはっは!
 ――楽しめないとんでもクレーマーにはお引き取りをいただかないと!
 素敵な舞台を護るのもまた、大事なサービスだもの。みんなの笑顔は安全と平和の上で成り立つんだにゃん!
 黒と白の猫たちが織り成す素敵な喜劇、ご堪能いただけただろうか。さてさてそれでは、いよいよ夜明け前。戦いはもう少しだけつづくのにゃ!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱赫七・カムイ
⛩神櫻

よかった
サヨ
少し元気になってくれて
きみは美しい
誰がきみを否定して拒んでも
私がサヨを受け入れる

生涯たったひとりの私の巫女(妻)
桜蛇の頭を優しく撫で
花冷えの心を暖めるよう寄り添う

きみだけだ
誰しもに与える愛じゃない

じゃあ後でご褒美に
サヨは可愛いからつい甘やかしたくなる

サヨは美しい蛇龍だ
撃たせはしない
弾幕を弾く結界をはり広範囲に斬風を薙ぎ払い撃ち落とす

厄神ノ微笑
そなたの全ては約されず届かない
厄されるのみ
大砲が爆ぜたりね

全て巫女の幸いになればいい
きみが楽しいならそれでいい

やっぱりサヨは美しい
ずっと昔から焦がれてやまない桜彩
綺麗だと三つ目を細める

ごめんね
この子は私の龍なんだ
千年以上前から、決まってる


誘名・櫻宵
🌸神櫻

ふわふわとした神鴉の体温がぬくい
優しい神の愛に包まれて心地いい
だいすき、擦り寄る

あなたはこんな呪蛇の私を綺麗だといってくれる
歓ぶ妖怪達の姿も悪くなかった
少しだけ笑う
カムイが気が付かせてくれた

優しい神様だからきっと他のものにも優しさを施すのかもしれない…考えたら腹が立ってきた
丸呑みにしたいわ、私の神様

うふふ、冗談
あとで頂戴ね

弾幕にカムイが撃ち落とされてはかなわない
這いずるなんて私らしくない

龍華

飛び上がり
神罰纏う斬撃の様な桜嵐でなぎ払う
楽しいわね
カムイ
思いきり暴れてやりましょ

綺麗でいたい
あなたに寄り添って
隣にいたい
私のいとしい神を堕とさぬよう
美しく
例え呪蛇だったとしても
カムイが誇れるように




 まぁ、弾幕勝負そっちのけで愛し合ってるような感じの猟兵もいていいわけです。だってすごく戦ってくれてるし……まわりがこう……ネッ(?)

「よかった、サヨ――少し元気になってくれて」
 己の翼の中でふわりと機嫌をよくしたのは、触れ合っているだけでわかるとも。蛇の顔はめったに表情が変わらないけれど、朱赫七・カムイ(約倖ノ赫・f30062)にとって誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)はそこいらの蛇ではない。
 櫻宵は、カムイがいくら愛している愛していると囁いてやってもやはり生きている年数も業の数ももちろんあってのことだが、どうしてもすり抜けていってしまうのだ。愛着の底がひらいてしまっているから、いくら愛情を注いでも注いでも、満たされているはずのそれがどんどん零れ落ちて自分も、隣のひとも見失ってしまうきらいがある。
「きみは美しい。誰がきみを否定して拒んでも、私がサヨを受け入れる」
 変わらない言葉を何度だってかけてやらないと、大きくて美しい体を表に出すこともままならない。手がかかるけれど、それは愛嬌というもので――まあ、惚れた弱みであろうといわれればそれもそうではあるのだけど。
 ただ、誰しもに与えるような愛ではない。
 カムイは神だ。だれもかれもを等しく平等に愛する存在ではある。だけれど、そのひときわ大きな寵愛は生涯たったひとりの私の巫女(妻)――である桜蛇に向けられるのが必然であった。
 そう決まっていることだ。花冷えの心をあたためてやるのもまた、誰かに与えるぬくもりとは大きく違う。芯から指があったなら指先まで温めてやりたい神鴉の恩恵は飽きることなく龍に注がれていた。
 膨大で、限りないものだからこそ。
 櫻宵も満たされ続けることができるというもので――すっかり、ほくほくと鴉の内側でぬくもってしまっていた。寒いと蛇は動けないし、それでは辛かろうと思って。
 だいすき、とすり寄る櫻宵の心境にも変化が起きていた。
「あなたはこんな呪蛇の私を綺麗だといってくれる」
 しゅるりと蛇の顔がようやく鴉の翼から顔を出して。
「それに、歓ぶ妖怪達の姿も悪くなかった」
「おや、珍しいね。君が――有象無象を想うなんて」
 ――少しだけ微笑んでいる。
 櫻宵は蛇らしく執着が強い。普段は愛する対象にしか興味を注がないのに、珍しくそう言っていたかと思えば、少しだけ苛立ちを声にのせて「丸呑みにしたいわ、私の神様」と言ってみたりもする。
 櫻宵は、愛を信じることができないのだろう。
 何度もそれに裏切られてきて、だけれど手に入らないからこそ掴もうと懸命になってしまう。そもそも愛たるものがどんなもので、どれほどの深さかもあまり理解しきれていない。永遠な空回り。だから、「独占したい」の結果が猟奇に至っているのだろうか――。
 究極の不器用だ。ただ、そう思えてなお愛せるのはカムイだからこその視点であろう。
「じゃあ後でご褒美に」くるると麗しく喉が鳴る。
「うふふ、冗談よ」
「冗談でいいのかい?――サヨは可愛いからつい甘やかしたくなる」
「……あとで頂戴ね」
 何を、とは言わなかった。それに値するものなら、たぶん今はなんでも満たされると思うから――。

「――龍、ダ」
 桜色の、龍が空を占めた。
 【龍華】。美しい破魔の桜纏う春暁の桜龍に成った櫻宵は、一つの結論に至る。
「弾幕にカムイが撃ち落とされてはかなわない。這いずるなんて私らしくない」
 そうでしょう、と言いたげな声色が響く。見上げる妖怪たちの中には、あまりの神々しさに涙を流すものもいた。
「ああ、なんて――龍だ」
「龍だ!」わあっと大きく妖怪たちが騒いだのもつかの間。
「龍ぅうううゥウウウ!!!!!!!!」がぁああああ!!と鋭く叫んだ大砲たちの弾幕が展開されたのならば、それらは櫻龍に触れることなく砕け散っていく。ばきぃいいい、ん、と壊れていく怨嗟の弾丸たちから護るは――神の寵愛が証、その結界。
「そなたの全ては約されず届かない。厄されるのみだ」
 【厄神ノ微笑】。
 幸運を奪う。何もかもから、取り上げていく。厄神らしく膨大な力を操る神鴉は、薄く笑みを作った。

「――大砲が爆ぜたりね」

 どぅん!!!
 レーザーを放つはずの大砲が爆ぜてしまう。ばちち、ばちち、と光りを放ちながらよろめくそれを見て、櫻龍が空を泳いだ。桜が舞う、舞う、舞い散り――降り注ぐ!!!

 ――綺麗でいたい、あなたに寄り添って。
 ――隣にいたい。
 いとしい神を堕とさぬように、しかしその神格を手繰るように。龍は舞い、神を祝福する。
 ――例え呪蛇だったとしても。
 ――「あなた」が誇れるように。

 美しい琴の音色は、妖怪たちからの贈り物であった。それから金管楽器たちの淑やかながらにしっかりとした音が響く。
 ずっと昔から焦がれてやまなかった、この桜色を祝福する音色であった。カムイが三つ目を細めて、耳を澄ましている。
 見もだえ苦しみ、櫻に呑まれていく大砲などもうどうでもよくって。
 ただ、今は――。
「ごめんね」
 すべて、この櫻龍の幸いになればいいのだと。何もかもから等しく奪った幸運を、ただこの子だけが楽しければそれでいいのだと、いくら注いでも注いでも愛情をすり減らし続けてしまういとしいものに注ぎ続ける。
「この子は私の龍なんだ。千年以上前から、決まってる」
 そなたが堕としてよいものではないのだと、確かにそれだけは罰して。

 ああ、今までの。
 隣にいてやれなかったぶんだけ――悲しませてしまった分だけ、せめて美しく咲かせてやらねばと想いながら。神と竜は揺蕩う。どこまでも、二人のままに。神と龍のままに。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ディルクニア・エリスランサス
🐾(鳥類希望)

ケッ、鳥かよ。天使みてぇで嫌いなんだがな
……が、しかしだ。ここの連中は気に入った
滅びを目前にしても宴会やってるとか、随分と面白可笑しい奴らだしな

一肌……いや一羽毛か? 脱いでやらァ



(本来は)パワーファイター型のタンク兼魔法砲台
解決方法は大体腕力か魔力で吹き飛ばすという雑なもの
とても聖者とは思えない(



方針:
まずは【魔力砲撃】の代替詠唱用に、妖怪共から貰った酒をがぶ飲みする
ほーれドンドン持ってこい。こちとら酔ってるほど強くなンだ
(※砲撃の威力は上がっても強くはなりません)

「それなり」に飲んでい~い気分になった所で出発
空飛んで攻撃をヒラッヒラ避けつつ、砲撃をお見舞いしてやらァ


ティオレンシア・シーディア
◎△🐾

あー…STGとかでよくあるわよねぇ、拠点型巨大ボス。こいつそのクチかぁ。
…というか、えらく気楽に煽ってくれちゃってまぁ…

あんなの相手じゃ遠間からちまちま撃ったってラチ開かないし、そもそも撃ち合いじゃ勝ち目ないわねぇ。懐飛び込んだほうがまだ分があるでしょ。ミッドナイトレースが使えたら楽だったんだけど…この躰だし。大人しく○気合い入れて全力○ダッシュで突撃しましょ。
一発食らわせたら●蕭殺を起動、多重デバフで〇援護射撃。竜のビット潰しつつ至近距離から盛大にイヤガラセし続けてやるわぁ。

…今回はホントにゴールドシーン頼りねぇ…
あたし魔道の才能絶無だからしょうがないことではあるんだけど。


桜雨・カイ
ここは危ないので…いえ、皆さんを避難させようと押してるんでる、肉球パンチではないんです…だめです離れる様子がないです
あやまって流れ弾が飛んできてはいけませんから、
ここで妖怪の皆さんの守りにつきます。

想撚糸を発動……したいのですが、この低い位置からだと結界の広がりが悪そうです、もう少し高いところにのぼらないと

皆さんの近くで高い所……あそこなら位置的には良さそうですがちょっとご迷惑になりそうな……はっ、危ない!流れ弾が!
すみません、頭の上をお借りします!
とっさに身体の大きな妖怪のもとへ走り寄って
さっき見た場所(頭)に飛び乗る
短い前足を精一杯伸ばし(ぷるぷる)【想撚糸】発動!

すみません失礼しましたっ




「ケッ、鳥かよ。天使みてぇで嫌いなんだがな」
 ――ディルクニア・エリスランサス(酔幻に溺れるヤサグレ模造天使・f30418)。とってもセクシーな彼女の姿を知るものは、彼女が所謂のんべえな女だというのはご存じであろう。
 というのも、酔いから醒めてしまった時のほうが彼女は危険であるというのが彼女なのである。常に酔っていないと何をするのかが彼女自身でも予想がつかないほど不安定で、――かつ、非常に危険な女でもあった。
 まあそんな彼女も今日はどろんぱっぱに来てしまったために立派なトラツグミになってしまっているのだけれど。鳴き声が不気味でその昔は鵺のじゃね?とか言われてた例のアレなんです。
 ばさばさと小さめな体から羽根を広げて見て、心底うんざり。天使嫌いなので余計にうんざり――なのだけど。
「まぁ、個々の連中は気に入った」
 ぱちぱちと瞬き何度かして、トラツグミの躰で周囲を見てみる。滅びを目前にしてもやってることが宴会なのだし、随分面白おかしいもので。彼らにとっては恐らく滅びなんて日常茶飯事だから、どうにかなっちゃうだろうと常に思っているのもあろう。
 ――毎日滅びに恐れて苦しむよりはずっと気楽そうでいいし。
「一肌……いや一羽毛か? 脱いでやらァ」
 なら、酔ったままでも随分やりやすかろうと。小さな体はもう場の空気で酔ってしまいそうなほどだったのだけれど――ふわり、羽搏いていった。

「あー……STGとかでよくあるわよねえ。拠点型巨大ボス……こいつそのクチかあ……」
 ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)も困った顔を作ってしまうというもので。次の御姿にどろんぱっぱとしてみれば、体はヒョウからオオカミになった。先ほどよりはしなやかさは失われたけれど、走る力は強かろう。
「あたしは撃ち合いじゃあ勝ち目もキリもないでしょぉし……いいタイミングで滑り込めたら一番なんだけどお」
 ――ミッドナイトレースは使えない。
 いつもの手段がほとんど封じられた今、どうしたものかと考える。魔道の才能がほとんどないけれど、今はこれだけがティオレンシアの精一杯の勝機であった。
「お願いねえ、ゴールドシーン」願うように鉱物の生命体に声をかけてみる。きらきらと煌いているが――これも「使い方次第」ということだ。
「ほんと、えらく喜楽に煽ってくれるんだから……」
 当たれば即死間違いなしだというのに、敵側はそんなこと考慮するはずもなく。徐々に展開される弾幕もダメージごとに形状を変えてしまうものだから、パターン通りに見切るには少しだけ時間も欲しい。止まってても無駄かな――と思って走り出すティオレンシアは、珍しく「いちかばちか」の大勝負に出ていたのだった。
 ……まあ、猟兵もまだまだたくさんいるし、カバーがあるだろうとも思ってのことだけれど。

「いえ、あの」
 ぷに。むにむに。
 桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)は愛らしい肉球で妖怪さんたちをぱんちしていた。
「かわいいねえ」「ぷにぷにだねえ」
 それぞれに肉球をにぎにぎされて短い脚が困っている。あわあわとした顔をしてから。
「ち、違うんです……みなさんここは危ないんです!あのう、うう。えっと」ぎゅむぎゅむと押しこんでみても妖怪のほうが握っている力が強い。今のカイはコーギーなのである。足の短くてぷりけつのあれ。遠目から見ると食パンっぽいあれ。
「あやまって流れ弾がとんできてはいけませんから~~!!!」
 なでわしゃもみくちゃにされながらどうにかぐるぐると体をひねって抜け出してくる。へろへろになりつつも低い体高を生かして歩くぽてぽてと魅惑ボディを連れて、あたりを見回す。
 どう見たってカイのまわりで呑んだくれている妖怪たちは次の弾幕の射線にはいっちゃうのだ。でも妖怪たちはもうだめだめモ~ドである。
「もふもふさせてくれぇ……」とゾンビのように呻いていたりとかもする。きゃー!っと逃げ出すカイの後姿を誰も追いかけることができないくらいにべろべろであった。
「うう、――このままでは……」 
 動かせないなら守るまで。しかしこんなに体高が低いところからだと守りの糸もどこまで届くかが見えないのである。妖怪にも大きさがそれぞれあって、大きすぎるものを護ってやれない可能性もあった。
「高いところ……」ぱっと見てみたのはカイの中ではちょうどよいシルエット。しかし、それは妖怪そのものである。つまり踏んづけていかねばならないし、気持ちよさそうにうつらうつらと船もこいじゃってて。余計にご迷惑になっちゃうかも……とためらっているうちのことだった。
「あ!!流れ弾――危ないッ!!」
「んー?」
 ぽーんと跳ねたコギダイブ!もすんとカイが飛び乗ったのはぬりかべの彼だ。
 とても広くて大きい彼は、何がはりついたのやらもあまりわかっていないらしい。そのまま勢い任せでしゃかしゃかしゃか――っと上り詰めたのなら、ばっ!と短い足を延ばす!

 ――【燃焼糸】!!

「ほーれドンドン持ってこい。こちとら酔ってるほど強くなンだ!まだまだあンだろ? えェ? 」
 まあ、言葉のあやもちょっと入ってるらしいのだけど。
 ぷはぁ、と口から酒のにおいを漂わせながら、トラツグミは酒樽に顔を突っ込んでごくごくり。
「なんつう飲みっぷりだ姉ちゃん」
「アァん? 日和ってンじゃねェよ」すっかりできあがってい~い気分。ひっく、ひきゅ、なんてしゃっくりをしながらも、これも一応ディルクニアの作戦のうちなのだ。
 ――彼女の弾幕には、代償が必要である。
「ふぃ~い……いい感じにまわってきたぜ、オイ。かますか、ここでよォ。かましちゃうかァ」
 よっこいせ、と翼を広げた。
 ばさりと羽搏けばそれだけでアルコールのにおいが漂ってくる。風圧に酒の香りを纏わせながら、ふらり、くらり、のらり。弾幕の展開される戦場に、トラツグミはやってくる。
「ああ~ん?」目の前ではすでに戦闘を続ける猟兵がいた。ティオレンシアだ。
 オオカミの彼女が一生懸命走っているのが見える。彼女なりに懸命にやってる姿を、酔っぱらった双眸にのせて――「ぃっく」――またしゃっくりをした。
「決定打がほしいよなァ、そうだよなァ――」
 さて。
 このディルクニア。普段といえばパワーファイター型のタンク兼魔法砲台。だいたい腕力と魔力で吹き飛ばす雑なもので、聖者の名も泣くわ破戒間違いなしのアレそれを攻撃とするのだけれど。未来の使途が減るほうが神様とやらもショックであろうし――というか神様だってなんかワインとかパンとか作るし――かまうものかと弾幕をひらひら躱してから、己の【魔力砲撃】を展開した。

「きゃっ!?」後ろから猛烈な魔力の砲撃が行われて、衝撃でティオレンシアの後ろ足が浮いた。
 あまりにも規格外な砲撃にもうびっくりである。何が起きたのやらとあたりを見回せば、ふらふらとおぼつかない浮遊を繰り返す鳥らしき影。さあ、第二弾の砲撃がやってくる――。
「ちょちょちょちょ、ちょっとぉ」いや。
 これは、チャンスかもしれないと息を荒げながらティオレンシアが閃いた。決定打はある。しかし、ティオレンシアに必要だったのはタイミングだ。ディルクニアの二波目が発射される――!
 そのタイミングで、オオカミは走った。
 魔力砲撃がばかりと弾幕たちをひき潰す。そこに新たな弾幕が敷き詰められる前に、ティオレンシアは前へ前へと滑り込んでいく。
 そして、――懐に入った!
「イヤガラセ、させてもらうわよぉ」
 強大な配線コードにオオカミのあぎとががぶりと噛みつけば、【蕭殺】は成立だ!解呪ではなかなか消えないしつこい魔術刻印を歯形ごと刻みつけたのなら、魔術特性――多重デバフである――で追撃を加える!

「ぎ、ぎぎ、ぎ――?」苦し気な声を出す竜にもはやレーザーを撃つ力は残っていない!
「あんたにゃァちょっと似合わねえ羽根みたいだな、それェ」
 ぐらぐらと頭が回る中、ディルクニアが嗤う。

「ひっぺがしてやるよ」

 魔力砲撃は、めちゃくちゃな乱射があった。
 やさぐれ上等の直線砲は見事、龍をむしばむ背中のタンクをぶっちぎっていく――。残りの砲撃がどこに向かうのかというと、どこでもないから。

「ぁあ、あっぶなかったぁ……」
 泥酔コントロールの砲撃は、しっかりとカイの結界が受け止めたということである。結界のむこうの大地がほぼ焦土同然になっていることに、護られた妖怪たちが目をぱちくり。
「すみません、失礼しましたっ」
 ぴょいと降りていくカイを、いろんな妖怪たちが引き留めたことだろう!
「いやいや……なんとかなってよかったけどぉ……」非凡には応えるわぁなんて言いながら。ちゃっかり結界の中に滑り込んだティオレンシアがぷるぷると体を回してほこりを叩き落としていた。無事故でヨシ!飲酒弾幕勝負、問題ナシ!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジェイ・バグショット
【五万円】◎🐾(蝙蝠以外)

動物なんてどうかと思ったが
真を見下ろせるのは気分がイイ
病が毒にってのも気に入った

お前が狐ってのも似合ってんぞ
ふかふかした毛並みなんて高値で売れそうじゃね?
ふーん…色々ねぇ
恐いヤツだとクツクツ嗤う

竜殺しのシロモノとは大層なことだ
竜が寄生されるとは皮肉だな

ヒスった竜の相手なんて最悪だ
オイ真、自慢の営業スマイル引っ提げて相手して来いよ
ハハ、ヒスった女の相手とは真様も大変だねェ

獣だらけの世界になってんだ
一匹二匹増えたところで変わんねぇだろ
ハウンド・ドッグで猟犬型の血液生物を二体生み出す

イイ子に出来たらご褒美くれよ?
貢物だけじゃ到底足りないと
ここぞとばかりにニヤリ強欲さを見せ


久澄・真
【五万円】◎🐾

クハッ、何
そんなに普段見下ろされんの嫌だったか?
仕方ねぇよそこは止まっちまった自分の成長ホルモン恨め
毒鳥っつーのは確かに納得だがな

俺の毛皮は並の値段じゃ売れねぇな
金も取るし色々してもらう
色々、な

次は大砲か
相変わらず猟兵業は面倒なの相手にするんだな
だから本職にしたくねぇんだよ
姿もまた変わっちまったし
いい加減ヤニ切れだからさっさと終わらすぞ

俺の営業スマイルは良い取引相手限定だ
ヒスった無機物は対象外
ヒスった女もゴメンだけどな…って話の途中で邪魔すんな
ヤル気なく引っ張った操り糸
マネキン人形が攻撃を無防備に受ける

おら、ワンコロ共に餌だ
お優しい真様からの貢物
言いつつ仕事押し付けるつもりで




「動物なんてどうかと思ったが――」
 ジェイ・バグショット(幕引き・f01070)はまた姿の変わった自分の手足をゆっくり眺めている。
「さっきの姿は真を見下ろせるし、病が毒にってのも気に入った」
 先ほどまでの姿はモズであった。小さな鳥だけれど、翼一枚で人を致命に至らしめる毒鳥。
 なかなか如実に今日のコンディション踏まえて現れるらしい動物の姿に微笑みながら、ジェイは自分の肉球を確認する。それから、前足の爪の数を数えた――狼爪がある。
 真っ黒の毛並みをしたオオカミであった。今から使うカードを読まれたような気がして、こんな乱痴気騒ぎもいいところな世界にも油断はできないなと感じさせられる。
「クハッ、何? そんなに普段見下ろされんの嫌だったか?」
 ――仕方ねぇよそこは止まっちまった自分の成長ホルモン恨め。
 久澄・真(○●○・f13102)からすれば、今のジェイの姿も納得ではある。毒鳥というのは先ほどまでの姿だけれど、真もなるほどジェイらしいなと納得できたものだ。
 しかし、オオカミの姿もまた――印象という面ではあまり変わらない。
「お似合いだぜ、ワンちゃん」
「お前もさっきまでキツネだったろうが。似合ってたぜ? ふかふかした毛並みなんて高値で売れそうじゃね?」
 真は、しゅるしゅる、ずるずると腹を滑らせて大きな体を動かしてみる。手も足も感覚があるのに使えないというのはどうにも調子が狂うが、自分の鱗をじいっと見ていれば自然光もあいまって美しいものであった。
「俺の毛皮は並の値段じゃ売れねぇな。金も取るし色々してもらう」
 しゃあ、と鋭く舌がしなった。
「――色々、な」
「ふーん……色々ねぇ。恐いヤツだ。……その鱗も高く売れそうだぜ。金運がどうとかって」
 ――ばぁか。
 しゅー、と口から息を吐いている真の姿は、先ほどの四つ足とは打って変わって大きな蛇である。アミメニシキヘビ――通称、レティックと呼ばれる大型の蛇だ。人を呑んだこともある例がいくつか存在するほどには大きく、研究目的以外の飼育は許可されていない種である。
 色は真っ白で、代わりにきらきらとした赤色の瞳はルビーのよう。まだ深夜でよかったとは真も後で思うだろう。世界が暗いから周りが見えやすい。
 クツクツと笑いながらオオカミがのそりと歩けば、付きまとうように蛇もうねり、その足の間を結っていく。
「竜殺しのシロモノとは大層なことだ」
 弾幕を掻い潜るのはさほど難しいことでもない。ずうっと二人は、この大きな存在が弱るまで待っていたのである。いちいち真正面から相手するほど暑苦しくもあれないし、ヒロイックに憧れもない。必要なのは、効率とそれに応じた金銭だ。
 のそりとジェイが歩きながら、すっかり数も威力も衰えた戦場を掻い潜る。
「まあ、――竜が寄生されるとは皮肉だな」
「だから本職にしたくねぇんだよ、猟兵業」
 どいつもこいつもめんどくせえ。真からすれば人間相手に唆したり、殺すなら引き金ひとつで片付けられるような社会のほうが単純で簡単だ。思春期のガキじゃあるめえし、なんで全身全霊賭けなきゃいけねぇんだっつの――アラサー間近の体に応えるっつうのな。
 真の中で行われているのは計算だ。かけるべきコストとリターンはいつだって、リターン>コストであらなければ儲けにならない。
「いい加減ヤニ切れだからさっさと終わらすぞ、マジで。イライラするだけだ」
 しゅるる、と息を鋭く吐いている。彼の苛立ちがそのまま伝わるような音に、ふすふすとジェイが鼻を鳴らす。
「とはいえ、ヒスった竜の相手なんて最悪だ。オイ真、自慢の営業スマイル引っ提げて相手して来いよ」
「はァ? 俺の営業スマイルは良い取引相手限定だ。安かねェんだよ。つか無機物のクセにヒスんなってのな」
「ハハ、――その感じじゃあ、随分相手してきたらしい。金儲けとはいえヒスった女の相手とは真様も大変だねェ」
「ヒスった女もゴメンだけどな……っと」
 頭の中に今までの「金づるだけど無茶苦茶維持のコストに手間がかかって二度と相手してやるか」と思ったブラックリストの顧客が流れていったのは、真の記憶力が優れているからであろう。
 それらがそれぞれ金のにおいをさせていたころを思い出しているうちに、真の大きな胴体をビームが狙っていた。
 ――――だからまあ、緊張感のない声が出たのだけど。

「話の途中で邪魔すんな」
 心から興味のない声が出た。
 【オペラツィオン・マカブル】。やる気のない声と共に呼び出されたからくり人形が、ビームを受け止めてしまっている。
「それって糸操れるのか?」手足のない真の姿を見て、ジェイが小首をかしげた。
「手品のネタ教えちゃあ商売あがったりだろーが」
 ハ、と笑い交じりの呼気が蛇の大きな口から聞こえている間に――ぴしりと人形から排出された糸がビームと弾幕をかき消していく!
「オラ、さっさと仕事しろ。見せ場は用意してやったんだからよ」
「ああ、わかった。それじゃあ素敵なダーリンのお気遣いに感謝して――」
 【内なる獣】。
 真っ赤な血でできたジェイのけだものたちが現れる。猟犬型の怪物は、ちなまぐささを連れながら主たるジェイに頭を垂れた。オオカミはぎらりと――金色の瞳で命令を下す。
「イイ子に出来たらご褒美くれよ?」
 彼らの代わりにジェイが強欲に求めてやるのだ。
 オオカミは、人になつかない。慣れはするが、犬のように心から共感して共存することはない――。その気高さに、いつだって人は美しさを感じさせられるのだろう。
 真は、やはり似合う姿だなと想えていただろうか。
「ハイハイ。おら、ワンコロ共――お優しい真様からの貢物だ」
 犬には先払いで。オオカミには後払いで。
 ぽーいと飛んでいったからくり人形を吠えながら追い立てる犬たちの騒がしさに目を細める二匹が、食いちぎられていく無機物の音を聞いていたのだった。

「――悲鳴には聞こえないな」
「そりゃあよかった、お前はマトモだってことだよ」
 

 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヘルガ・リープフラウ
❄花狼
恐らくあの大砲が本体……あれを壊せば取り込まれた竜は元に戻るのね
戦うたびに生命力や精神を削られて、なんて苦しそう……
行きましょう、ヴォルフ
一刻も早く苦しみを止めないと

【主よ、哀れみ給え】
白鳥の翼を広げ、平和への祈りを捧げて
妖怪さんたちは相変わらず飲めや歌えでポジティブだけど、
でも同じ宴に興じるなら、街も壊れず誰も死なない優しい世界がいいわ

聖なる光に照らされ動きが止まっているうちに
ヴォルフ、あの大砲を狙って……!

無事元に戻ったら、あなたや竜神さんも一緒に
今度こそみんなで祝杯をあげましょう


ヴォルフガング・エアレーザー
❄花狼

ああ、この騒ぎもそろそろここで終わりにしよう
妖怪たちに自覚はないようだが、この世界をここで滅ぼすわけにはいかん
何より、ヘルガの言うようにあの竜も苦しんでいるのなら
一刻も早く解放してやらねばな

敵の攻撃や弾幕は野生の勘で見切り回避
たとえ人の姿を無くし、剣を手に取ることが叶わずとも
【守護騎士の誓い】はいつもこの胸にある
恐れるものは何もない

ヘルガの作ってくれた隙を突いて
竜の本体と大砲が癒着している継ぎ目を狙って
鎧砕きの力を込めた噛みつき攻撃
少し痛むかもしれんが、我慢してくれ
もっとも、人に恐れられた猛き存在ならばこの程度は耐えられようが

ああ、存在しない恐怖に怯えて暮らすよりは
平和な世界がいいさ




「――なんて、苦しそう」
 白鳥のヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)からしても、かの竜はあまりにも哀れであった。
 戦うたびに大砲の怒りに付き合わされ、生命力も気力も吸われている。しかし、無理やりコードで刺激を与えられて動かされている姿は、動けないのに動けと鞭を撃たれる動物を見ている気持ちになってしまうのだ。
 大砲はエネルギー源の竜にすらもちろんのこと容赦がない。そもそも竜がいなくては動かない作りであるのは、そういうことであろう。膨大なものには膨大なものをぶつけるために作られているのだ。だから、これほどの猛威は対人に使われることがなかった――そのためのエネルギーがどこにもなかったから。
「行きましょう、ヴォルフ。一刻も早く苦しみを止めないと」
「ああ。この騒ぎもそろそろここで終わりにしよう」
 ヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)もまた、群青色のオオカミの姿で白鳥に頷く。
 妖怪たちの騒ぎっぷりは先ほどよりは落ち着いたとはいえ、世界の崩壊に慣れ過ぎてしまっている。つまり、能動的に動けるのは自分達猟兵のみだ――世界を滅ぼしてやるわけにはいかない。
 さらに、ヘルガの言うことが確かならば、あの竜も早く解放してやるべきだと思える。
 一刻も早く助けてやらねばなるまい。忘れられた孤独の犠牲になる前に。
 四つ足では剣を持てない。地面を踏みしめながら、ヴォルフガングも自分で不可能を感じている。だが、――【守護騎士の誓い】はいつもこの男の胸にあった。
 恐れるものはない。ずしりとしっかり鍛えられたからだに毛並みが乗って、弾幕を依然張り続けようとする大砲と竜を見据える。
 随分弱らせることには成功しているが、依然その背には大砲が乗っていて常に竜の寿命をむさぼり続けているように思える。ぎゅうん、ぎゅうん、と光を吸い上げるような音が聞こえて、――ヴォルフガングは目を細めた。
「同じ宴に興じるなら、街も壊れず誰も死なない優しい世界がいいわ」
 ふわり、その後ろで白鳥が翼を広げる。
 ヘルガから見える世界も同様だ。妖怪たちは相変わらずポジティブで、二人のために音楽まで奏でてこの騒ぎを楽しんでいるけれど、それはきっと忘れたものを埋めるように飲んで飲んでを繰り返した酒のせいである。
 ――ずいぶんきつい酒を皆で呑んでいたのは、正直場のにおいでもうわかってしまうものだから。
 それでは、本当の「宴」というものを楽しむことはできないだろう。ヘルガがきらきらと白い羽根を輝かせながら、慈しむように一枚一枚の羽根先まで大きく翼を伸ばす。
 何をするのかはヴォルフガングももうわかっていた。白鳥の前に立っていたまま、低く姿勢を撓める。
【主よ、哀れみ給え】!
「ヴォルフ、あの大砲を狙って……!」
 きら、きら、――白鳥の純白が光り輝いた!
 月光よりも輝度が高く、しかしひとつの穢れもない慈愛の心はあたりを真っ白に照らし、竜と砲台の視界を奪う。ヘルガからのオーダーを聞き届けてひくり、ヴォルフガングの耳が動く。
 返事もないまま、駆けだした。
 力強く、オオカミは土を蹴る。
 その身に剣はない。暴れ狂う強大な竜が体を丸めて光を拒むように苦しんでいた。
 ――守らねばならぬと、その姿を見て蒼狼は決意する。やらねばならぬ。奪われる者に、これ以上うばわれなくていいのだと教えてやらねばならぬ――!!
 弾幕を掻い潜り、走り出し、圧倒的な物量を誇る光球を飛び越えていく。
 地面を砕くほどの威力はまだ残っているのを確認した。時折体をごろりと横に転がし、前に飛び出したり、ジグザグに逸れながら走ることで規則性を読まれないようにする。狭い個所に入り込んで、ぢりりと頬を焼かれて血が出ても――オオカミは前を見たまま止まることがなかった。
「少し痛むかもしれんが、我慢してくれ」
 もっとも、人に恐れられた猛き存在ならばこの程度は耐えられようが。
 心の中でそう割り切っている。見つめた竜の瞳が、まだ死んでいない――!!
 だん、とひときわ大きく跳べば、竜の手に張り付いた。ヴォルフガングの逞しい体がそのままどんどん竜の手から脈打つ腕をつたい、肩に昇る。かなり負傷が進んでいて、猟兵たちとの戦いの痕がみえてきた。
 残る配線はわずか。――ひときわ大きい配線コードを噛み、ぐるりとヴォルフガングが体にひねりをくわえる!
「ヴォルフ、ああ、どうか――」
 ヘルガが祈る。
 ヴォルフガングの事を信頼している。白鳥の輝きが止まる前に、彼ならばきっと竜を救う大きな一撃を作り出してくれると信じて叫んでしまいそうな言葉を飲み込んだ。
 竜が動きを取り戻そうと両腕を動かし始めるけれど、しっかりと背中に張り付いてぶちぶちと配線を引っこ抜き始めるヴォルフガングをとらえることはできない!
 やがて――。

 竜の背から滑り落ちるように大砲が地面にずずぅううう…………んん……と煙を上げながら落ちていく。ぱちぱちと火花を散らす大きなコードを口から離して、ヴォルフガングは竜の背からとびおりた。遅れて、竜も大地に伏せるようにして目を回している。

「ああ、よかった――!」
 竜の傍にヘルガがやってきて、その鼻っ面を羽で温めてやる。
「無事元に戻ったら、あなたや竜神さんも一緒に。今度こそみんなで祝杯をあげましょう……!ああよかったわ、これでこれ以上苦しむことはないでしょう」
「ああ」
 白鳥が安堵した姿に、オオカミもまた同様に表情を緩ませる。
 それから、振り向いて大砲を見た。怨嗟の感情は、まだあの無機物の中にうごめいているらしい。
「存在しない恐怖に怯えて暮らすよりは、平和な世界がいいさ――」

 ぽつり、ヴォルフガングがこぼした言葉は。
 きっと、いつかの――愛も戦う意味も知らずに孤独に暴力をふるっていた少年を、思い出したからだろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

小泉・飛鳥
……君のやっていることは八つ当たりだよ、砲台くん

僕みたいな妖怪は本来は戦い向けじゃないのだけれどね、と零しながら
蒐集した物語の知識から敵の攻撃を予測して目もくらむような砲撃、竜の暴威を器用にいなして

逃げ回りながらワンダーエッグを設置
触れれば盛大に爆発
お祭り騒ぎに爆竹はつきもの、驚き騒いでくれるかい

その爆風に紛れて
【世界の卵】から現れたのは
情念の怪、文車妖妃

……竜を討つ
その意義を忘れられ、打ち捨てられ
君は寂しかったのだろう
いっそこの盛大なお祭り騒ぎと、僕らを道連れに
……それは解る
でも、そうはなりたくないんだ

……妖妃が砲台の情念を吸って無力化する
大人しく、眠りに還ってくれないかな
もう一度、骸の海で




 小泉・飛鳥(言祝ぎの詞・f29044)は、ごろりと転がった砲台を見ていた。
「――君のやっていることは八つ当たりだよ、砲台くん」
 ぎゅい、ぎゅい、ぎゅいいい……と竜の残り香でまだ動こうとするその無機物に、触れることもままならない。兎は飛んではねて、エメラレルド色を吊れながら最後の弾幕を避けはじめた。
 踊るようにかわしながら、ぽこりぽこりと球体が兎の体から出ていく。
 ――ワンダーエッグだ。
 弾幕がすこしでも触れば大爆発。ばあんばあんと地面事ふきとばす音は、妖怪たちにはオオウケであった。ぎゃはははわっはははと驚き笑って、転がりまわる彼らと。
 地面に這いつくばるだけの、忘れられた無機物を小さなうさぎの瞳が見比べる。
「……竜を討つ」
 ここは、忘れられた皆の世界だ。
 妖怪は人間が好きだ。
 どうしようもなく、さだめられたように、好きで好きでしょうがない。どうして見えなくなってしまったの、もっと一緒に驚いて楽しんでほしかったよ。人間の面白いお話の、その続きを見せてよ。もっと語ろう、もっと笑おう、もっと一緒に――過ごしたかったよ。
「その意義を忘れられ、打ち捨てられ」
 降り注ぐ弾幕たちにもはや、脅威はない。
 飛鳥も走るのをやめて、ぽてぽてと後ろ足を落ち着けて歩きながら、その鉄くずを見てやる。
 この鉄くずだって、もとは――。
「君は寂しかったのだろう」
 人のために、ありたかったのだ。
 兵器であった。この大砲は、人間の勝手で作られたものだ。
 目に見えない敵を恐れた人間たちが、いつかその日のためにととっておいた愚かな結晶。科学が認められ始めても――依然付きまとう「見えない何か」を恐れていた時代の産物。
 人を殺すために作られていないこの鉄だからこそ、皆より人の概念を奪ってしまったのだ。
「いっそこの盛大なお祭り騒ぎと、僕らを道連れに」
 ――どうせ、誰も。
 人間なんかにはもう覚えてもらえていないのだと、思い知らせてやりたくて。
「……それは解る」
 わかってしまうのは、飛鳥が――同じくらい『いつか』を心待ちにしているからだ。
 人間にわかってもらえなくなった。人間を学べなくなった。世界の半分がごっそりと失われた気がして、彼らの作った文化も、物語も、その人生からも飛鳥は居場所を奪われている。
 人間が、妖怪たちを忘れてしまったせいで。
「でも」
 首を、緩く左右に振った。
 ふわふわの胸元の毛に小さな右手を添えて、心からの言葉を紡ぐ。

「そうはなりたくないんだ」
 ――【世界の卵】。
 ちいさな卵が、うさぎの胸からぽこりと生えて現れた。ふわふわの毛なみにそってころころと地面を転がって、影を落とせば現れるのは妖妃のかたち。
「さみしくても」
 ゆうっくりと黒い影が情念を吸い上げていく。ぎしぎしと軋む鉄の塊の音は、消えたくないと喘いでいるようにも聞こえた。
「忘れられても、――打ち捨てられても」
 痛いほどわかってしまうのに。兎はきっと、小さくて。さみしければ死んでしまうかもなんて言われるくらいには繊細であるのに。
 背を丸めなかった。ゆっくりと砲台のふちに、飛鳥がちいさな体で抱きしめてやる。すすけたにおいに、鼻がひくひくと動いた。
「『いつか』があるなら」

 ――いつかを、あきらめてはいけないから。

「大人しく、眠りに還ってくれないかな」
 もう一度、骸の海で。
 大砲の熱さが、すっかりと消えてしまう。先ほどまで乱射していた砲身は、あっという間に冷たくなってしまった。そこにはもう、ただひびわれた鉄しか残らないのだと飛鳥は悟る。
 ゆっくりと体を離して、ぽてりとしりもちをついた。
 どんちゃんどんちゃん、えらいこっちゃ、えらいこっちゃ夜明けのじかんじゃ!
 ――妖怪たちが騒ぐのを、背を丸めた兎が振り返る。
 
 山の向こうから、どんどん空が青白くなって――。
 滅ぶはずの世界に、朝が満ちた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『もふもふ天国』

POW   :    全力でもふもふにダイブする

SPD   :    動物達と駆け回って遊ぶ

WIZ   :    もふもふの毛皮を撫でさせてもらいながらのんびり過ごす

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「よあけだ」
「朝が来た」
 ヒグマと大蛇が、朝日を浴びた。
 酔っぱらった顔は赤かったのに、おひさまに当てられてしまえば何もかも白く染まっちゃって。目をぱちぱちとさせてお互いを見てみれば、そこにはいつものふたりがいたのだ。
「なにしてたんだっけねぇ」
「おやおや、ろくろ首のお前さん。ずいぶんべっぴんさんになっちまって」
「ばかねぇ、前からこうだったわよ――」
「「あれぇ」」
 タヌキが人型に化けた姿へ戻って、ろくろ首を指さしていた。
 大蛇になってしまった彼女の姿は美しい整った顔立ちと、異常に長い首と、真白で細い手足つき。蛇にはないそれらをまじまじと見つめてぱちくり。
 それから、お互いに指さし確認しあって、「ひとがただ!」とびっくり!わあ、わあ、とお祭り会場ではそれぞれが声を上げあうだろう。こりゃまたびっくり、おどろいた!あんたその姿だったねえそういえば!

 ――世界に、人の概念が戻る。
 妖怪たちは思い出した。ああそうだそうだ、人の姿はこれだったねと。
 どうして忘れちゃったんだろう、とちょっぴり悲しむものもいれば。
 大事なものだったねと再確認しあうものたちもいたりして。馴染むような懐かしい感覚に、みんながじんわりと心の底からあたたまり、酔いでは満たされなかった心の奥に平穏が訪れる。
「ああ、よかった。よかった――」
「あれれ。猟兵さんたちはもうちょっとかかるかなぁ」
「俺たちより頑張ってくれたもんねぇ」

 猟兵たちも、徐々に徐々に、自分の姿を取り戻すだろう。
 感謝する妖怪たちは、それぞれおもてなしを始める。お酒と肴と、酔いを醒ますためのお水をばっちり用意して、どうぞどうぞと今度は猟兵のために宴を始めたのだ。
 ――まあ、ただお酒が飲みたいだけでは? とも思わなくはないが。
 さて、どうぞ最後はゆったりと過ごしていくといい。たくさん働いた君たちの体はちょっとばかり疲れていて、元に戻るにも時間がかかるようだから。
 夢と酔いからさめるまで。
 春の訪れを感じながら、あたたかな世界でくつろいでいって。


 日常(宴)です。
 引き続き、猟兵たちはそれぞれ動物形態ですが、一定時間経過すれば戻ります。どろんぱっぱ!
 ペアのかたはどちらかが先に人の姿に戻ったりするかもしれません。
 どちらとも人の姿にもどって、妖怪たちをもふもふするのもOKです。
 好きにくつろいで、大変だった一日をふりかえってもよし。だらだらしてもよしです。ギャグなので。
「動物の姿を変えたい」という方もOKです。三章から途中参加される方も、ご検討ください!
(お任せの方は🐾をプレイングのどこかに/🐾がついていれば勝手にこちらで動物の姿を変えちゃいます。動物の姿ガチャ的な感じです。)
 
 温泉はいりたい~とか、めちゃくちゃお酒飲みたい~!(成人に限りますが)とかあればご自由にプレイングにご記載ください! ありがとうのおもてなしを精一杯妖怪たちがしてくれます。
 ★プレイング受付3/27(土) 8:31~ 3/29(月) 20:00予定 

 出来る限りご案内したいので、再送をお願いする場合があります。その際は、MSページと旅団、タグ、Twitterにて告知させていただきます。
エンジ・カラカ
ロカジン(f04128)

ロカジン、ロカジン、宴だー!
パンダー!クジャクー!

そこのそこそこ、妖怪妖怪。
オオカミパンダとクジャクキツネも仲間に入れてくれくれ。
ロカジン、宴ダー!

アァ……クジャクってお酒飲める…?
ロカジンの嘴、お酒飲めなさそう。
コレは飲める!手もある!口もある!
何だかオオカミに戻ってきた気がする。

ロカジン、ロカジン
コレコレ。まだパンダ?それともオオカミ?
ちょーっとパンダよりもかっこよくなって来た気がするする。
うんうん。耳とか。手とか。尻尾とか。

ロカジンも眩しく無くなって来た気がするする。


モドッター!!!


ロカジ・ミナイ
エンジくん(f06959)

宴!?今宴って言ったかい!?
そりゃ僕らの出番じゃないか!!

嘴で酒を飲むのはまどろっこしいが
酒への執着でなんとかする
もちろん輝くほど美しい所作でがぶ飲みよ

うんうん、オオカミオオカミ、君はイケメンオオカミ
……手生えてんじゃん
手生えてんじゃん!
そういやエンジくんには手と尻尾が生えてて白い毛は生えてなかったねぇ!
今の君はほぼ人よ!概ね!

おや、僕も人っぽくなってきたかい?そう、眩しくなくなって
いやぁ、僕は狐でも人間でも眩しいはずよ
……こう、物理的な輝きではなくて
……うん……

あーあ、激モテクジャクタイムが終わっちまった!飲むしかねぇ!
酒持ってこい!酒!



「ロカジン、ロカジン、宴だー!」
 エンジ・カラカ(六月・f06959)がぱんぱかぱーんのぽんぽこぽーんなわけで。
 大きな両腕でばんざーい!嬉しいなったらうれしいな。エンジには何がどうだかさっぱりわからないけれど、暴れるだけ暴れたらなんだかいい感じの雰囲気なのだ。
 妖怪たちもわっしょいわっしょい、ばんざいばんざい!エンジの真似をして紙吹雪に花吹雪付きの歓迎には、ぴゅあ~なエンジもわかりやすくって嬉しい感じ。
「宴!? 今宴って言ったかい!?」
 ンギュン!!!と首を振り向かせたのはロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)。
 今の彼といえばとってもクジャク。それもとびきり美しいクジャクなわけだけれど、変化してもしなくっても、彼といえばお酒はだいすきで。
「そりゃ僕らの出番じゃないか!!」
「パンダー!クジャクー!」
「ンゴージャス!!!!」
「んごーじゃす!!」
 それに、今の姿なんてなんとも目出度くって。人前に出せば出すだけきらびやかに見えるものだから。やっぱりしみったれた空気よりもこういう穏やかな空気のほうが好きである。ロカジはふぁさりと大きな翼を広げて、長いまつげをまぶたで持ち上げ、きらきらの瞳を宴の場へ向けた。
 エンジはすっかり場の空気がうれしいし。与えられるものはすべていただこうとする遠慮のない彼である。がぶがぶ、もぐもぐ。ぐびぐびり。
「おいおいおい……置いた端からモチがなくなっていくぜ!?」
「団子だ!団子を持ってこい!!」
「ちょちょちょ待て待て今魚焼いてんだ!!!」
「魚じゃ足らねえよお前!!酒だ酒!!酒でおなか一杯作戦だ!」
 ぱくぱく、もぐもぐ。ぺろぺろり。
 エンジのサイズがサイズである。パンダって一日に14時間15キロの食事するらしいです。残りの10時間は睡眠してるらしいです。
 食べるペースはまったりなれど、みるみるうちにお皿の上を開けていくエンジの姿はほとんどマル。球体であった。――ふと、手を止めてじいっとロカジのほうを向く。この隙にと妖怪たちが追加で白米を焚きにいくころ。
「アァ……クジャクってお酒飲める……? ロカジンの嘴、お酒飲めなさそう」
「いや、これが案外いけるね、ちょっと待って今集中してる」
「しゅうちゅう」
「ストローみたいな感じだから」
「ちゅーちゅー?」
「そう、ちゅーちゅーしてるの」
「しゅーちゅーでちゅーちゅー」なるほどね~という顔をしていたパンダ――いいや、エンジはそういばオオカミであった。
 嫋やかに首を曲げ、どうにかお猪口に入れられた日本酒をンヂュウウウウウウ……!!と気合をいれて吸い上げるロカジの姿はクジャクであるからその険しい顔も美しい羽毛で隠されている。
「ああ、見て見て。あんなに美しく呑まれるのね……」
「お酒を飲むときも優雅さを忘れられないなんて……」
「輝いていらっしゃるわ……」
 実際はタピオカつまってんじゃねえの?と思えるようなストローをンギュウウウウウとすいあげてみたり、ペロペロペロ……と細い舌先で犬のように酒を舐めて喉の奥に押しやる感じなのだけど。
 しかしここは漢ロカジ、忘れてはならない色っぽさとセレブリティな輝き。艶めく所作でごまかしつつも、必死のパッチでお酒は頂くタイプなのだった――が。
「あれ」
 ぱち、と隣でぐびぐびがつがつやっていたエンジの姿を見る。いや、正しくは視界の端に赤い糸が見えたから――あれ?と思っていたのであった。
「ガウ?」
 エンジがその視線に、キョトンとする。
 こてりと首を傾げたその姿は――「……手生えてんじゃん」わしづかみにしている五指の器用な白さに、すべて合点がいったのはロカジのほうであった。
 
「手生えてんじゃん!!!!」二回目です。

「ロカジン、ロカジン、コレコレ。まだパンダ? それともオオカミ?」
「うんうん、オオカミオオカミ、君はイケメンオオカミ!!だけど今は、概ね人よ!!!」
 そうだそうだそうだった、とロカジが自分の頭を掻き上げれば、そこには鳥のとかさの感触もなくって。いつもの見慣れたピンク色がたらりと降りてくるのがどこか懐かしいような心地がする。
 人間という概念が失われていたから、ロカジはようやくもどってきた「ひと」というものがじんわりと自分の中に馴染む心地がした。四つん這いでお猪口にひっしに口をつけていた体制から、よっこいしょの合図で尻を敷物にあずける。
「ロカジンも眩しく無くなって来た気がするする」
 一方、エンジのほうは自分の指先をまじまじとみながら、パンダのそれよりかっこよい骨筋が見えてきてぱちぱちと金色のひとみで瞬き数度。
 もともとヒトである自覚とかそういうむずかしいことはふんわりとしているエンジである。オオカミだし。人狼だし。左手の指には毛をかきわけなくても見えるくっきりとした傷痕。
 オオカミ耳と尻尾の生えた中途半端な状態から、徐々にいつもの姿へエンジが戻るころ。ロカジの姿がくっきりと見えるようになってきていた。
「おや、僕も人っぽくなってきたかい?そう、眩しくなくなって……」
 ふ、と余裕たっぷりにあぐらをかき、どこからともなく取り出した煙管に火を落とすロカジ。
「いやぁ、僕は狐でも人間でも――眩しいはずよ」
 すう、と肺に煙を満たしたのならば余裕たっぷりに煙を吐き出して大人の色気を意識する。だけどまあ、そういった……メンナクっていうか……女受けを狙った演出は、いまいちロカジにはわかんなくって。
「なに? どうして? ロカジン、見える。見えるえる。」
「いやあのねこう物理的な輝きではなくって……」
 なんなら妖怪たちにもあんまりわかってなくって。
「やだ……クジャクの優雅さからはかけ離れてたわ……」
「黙ってたらカッコイイタイプよねえ」
「むしろちょっと派手だわぁ。あのピンクさえなければ考えるんだけど……」
 言いたい放題にいわれていた。
「よつんばいのお尻みた?」
「みたみた」
「そこまでして呑みたいの?」
「優雅ではないわよねぇ」
 あと必死にお酒を飲んでる姿もばっちりみられていた。
「ロカジン?」
「……うん……」
 化かすというのは化かしきるから意味があるのであって。
 手品のタネを知れば面白く感じられないのと同じこと――いや、これ以上はロカジくんのために言及するのをやめておきます……化かしにあやかって激モテを堪能したツケですとか言いません……。
「あーあ、もう飲むしかねぇ!酒持ってこい!酒!」
「さけ、さけ、のむ、のむ!食む、食む!」
 ちゃんちゃらきゃんきゃら。
 やりたい放題目出度い男の二人旅、これにて集結。いつも通りの君たちがきっと一番イイってことさ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

郭・梦琪
🐾

アイヤー!賑やかな世界ネ!

ワァオ!ワタシ動物なってるヨ。
皆仲間ネ。
宴会好きヨ。ワタシお酒飲む。
好きな酒教える宜し。
ワタシその酒飲むネ!

好喝!

首長いヒトいるヨ。
ワタシ初めて見た!
ろくろ首。妖怪。聞いたコト有るヨ!
旅人言ってた気がするネ。
お前たち妖怪?
楽しい!面白い!妖怪!

宴楽し。ワクワクして来たヨ。
ワタシ宴大好き
ご飯何有る?ワタシご飯食べれるヨ。
ご飯食べたら踊るネ。
ワタシ動物 動物も踊れるヨ。
宴に踊りは欠かせない言うヨ。

どんちゃんどんちゃん!歌う!踊る!
皆一緒ネ!もっと騒ぐヨ!
酒も鱈腹飲むネ!もっと飲むヨ!
どんちゃんどんちゃん!




「アイヤー!賑やかな世界ネ!」
 郭・梦琪(斯々然々・f32811)がぴょんぴょん跳ねてやってくる!ニーハオキョンシー!
 大きく見れば死体のくくりだけれどそんじょそこらの生きてる人間よりよっぽど元気いっぱいの彼女は、わらわらとお酒をのんではしゃいでの宴の世界にふらりとやってきちゃったのだ!
「ワァオ!」
 動物になった自分の姿にもびっくりどろんぱっぱ!
 ぽいんぽいんと跳ねている感覚がいつもとさほど変わらないけれど、なんでかな?はてはてと考えていれば、妖怪たちが彼女の声に惹かれてやってくる。
「おやおやお嬢ちゃん、大陸からきたのかい?」
「あんた、カンガルーになっちまってるよ!」
「真的嗎!?」
 びっくりした梦琪の様子に妖怪たちの方がびっくり!ほらほら見てごらんと渡された手鏡を見てみれば、梦琪は額に札の貼られたカンガルーになってしまっているのだ!
「キレイ!」
「そりゃあよかった」
「皆仲間ネ」
「そうそう!」
「じゃあ一緒に呑もう呑もう!」
 こまけぇこたぁいいんだよ!ヨシ!
 ぴょんぴょんと跳ねる梦琪を連れて妖怪たちがちゃんちゃか食器を鳴らし、宴の席へご案内!すでにたぬきのぽんぽこ腹踊りだとかそういったことも始まっていて、なかなかの喧騒である。だけど、梦琪はつぶらな瞳をきらきらとさせてその光景を眺めていた。
「宴会好きヨ。ワタシお酒飲む。好きな酒教える宜し。ワタシその酒飲むネ!」
「おお、嬢ちゃんも飲むのかい?いいねぇ」
 拱手ポーズをしっかりやってみせてくれるものだから、妖怪たちもさあご一緒に。なんだかここだけ異文化交流がスムーズに行われていますね。
 さあさあのめのめ、のむならのめのめ。トクトクと大きな赤い盃に盛られたたっぷりのお酒にすんすんと鼻を鳴らしてから、小さな手はゆっくりとそれを掲げて喉にぐびぐび流し込む!

「好喝!」
「オオーーーーー!!!!」
「すげぇ……!!圧倒されるぜ……!」
 ぷはぁ、と息を吐いて楽しむ梦琪。あまりの飲みっぷりにはこれまた妖怪たちのボルテージもあがっちゃうというもので!
「あらあら、あまりお嬢さんに呑ませるんじゃあないよゥ、お前たち」
「首長いヒト」
 そこに優しい味方としてやってきたモラルある女の姿。異常に首が長く、最初のほうで人間の姿を奪われて一番困っちゃったかの妖怪がそろりそろりとやってきた。
「ワタシ初めて見た!」
「おやァ、ろくろ首は初めてかい? 驚いてくれて、うれしいわぁ」
「ろくろ首。妖怪。聞いたコト有るヨ!旅人言ってた気がするネ」
 ――久々に驚いてくれる人がいると、やっぱり妖怪としては嬉しいみたいで。
 ろくろ首がころころと嬉しそうに笑って見せたなら、それじゃあ俺は、ぼくは、私は!と紹介の雰囲気。どんどんどろんぱっぱのうらめしや!梦琪の周りはさながら百鬼夜行になっちゃった。
「お前たち妖怪?」
「そうさ、俺達妖怪さ!」
「楽しい!面白い!妖怪!」
 きゃっきゃ、きゃっきゃ!まるで赤子が笑ったかのような無垢なもの。梦琪が笑ったのなら妖怪たちも大笑い!わっはっはと明るい空気に成れば、どちらも飯食う手が進むというもので。
「お前さんどこから来たんだい?」
「猟兵はいろんな世界からきてくれるからなあ」
「仙界ヨ!」
「仙界!ははぁ、そりゃまたえれぇところから」
 ようきた、ようきた。死んでるからこそパラダイス!長い旅路のところ、ふらりと立ち寄ったこの世界がまさかこんなに楽しいとは。飲んで食べてが済んだら次は踊る時間なのだ。
 カンガルーが祭り囃子に合わせてぴょん。
 そしたらろくろ首も、がしゃどくろも、一つ目傘のお化けもぴょん。
 たぬきもぴょん。狐もぴょん!宴に踊りは欠かせない――さあどんちゃん、どんちゃん!どうせ死ぬなら死んでも踊れ!
「皆一緒ネ!もっと騒ぐヨ!よろしいカ?」
 おうともおうとも!
 思い出した今日に乾杯。楽しい出会いに万歳。
「酒も鱈腹飲むネ!もっと飲むヨ!」
   
 ――死体のすがたに戻った梦琪が飛び跳ねる後ろでも、それはそれは長い妖怪たちの楽し気なパレードが開かれていたとさ。
 可喜可賀!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ゼイル・パックルード

クマになっても俺は俺を忘れない、戦闘狂いの殺人者
あクマで自分のためにやったことだし、感謝とかされる謂れはねぇな

とかいつもなら去るところなんだけど、まだ姿が戻らねぇ……。でけぇし目立つし、みんなテンション高ぇから抜け出しづれぇ。曲がりなりに

つーか今さらだけど身体でかくて重い、疲れた。抜け出せないならゴロゴロする。そもそもでかくて邪魔そうだし。

だからなにもしないぞ、絶対になにをされても動かない。プー太郎のごとく寝転がってやる。

さて、姿が戻る寸前に影になって退散するよ、逃避熊。
正体不明の熊にでも感謝しておいてくれ。俺という人でなしを知られることはないやね

祭りの景色を眺めて、あとはいつもの俺に戻るさ




 ――クマになっても俺は俺を忘れない。
 ゼイル・パックルード(囚焔・f02162)はぼりぼりと自分の腹をかきつつも、横たわってさながら夏休みには必ず一回地上波に乗る夏休みの不思議な出会いを果たす土砂降りの中バスを待っていたら女の子から傘をもらい大はしゃぎしちゃうふわふわでなんだか森に言い伝えある例のアレさながら横たわっている。
  ・・
「あクマで自分のためにやったことだし、感謝とかされる謂れはねぇな」
 \ドッ/ \ワハハ/
 ――本当はもうこれを言ったらお茶を濁してさっさと帰りたいところなのだ。
 ゼイルはとてもクールな青年である。とはいえ空気も読めるしわかるタイプだから余計な苦労が絶えないのであって。
 なにせ今の彼はヒグマである。クマのなかでも超大型な部類になってしまったものだから、なんかちょっと渋いギャグで笑いをとってこっそりこのどんちゃん騒ぎから抜け出したいのだけれど、動けばすんごい目立っちゃう。
 実際彼の周りで笑い転げてきゃらきゃらやってる妖怪たちといえば、彼の大きさと強さを目当てにちょっかいをかけてきてもてなそうとしたいかにもテンション高いあればっかりである。
「いやははははは!おもしれぇえ~~~ッッッ!」
「もはや神の言葉……」
「啓示だねこれは啓示」
「いやそこまでまともに受け止められると逆に傷つくんだけど……」
 曲がりなりにもこの場は祝いの席なのである。ゼイルは社会性があるので、正直今の姿のままではこの場からこっそりいなくなることも難しいのもわかっているし。散れ散れと相手を無碍に出来ない自覚もある。
 こんなにポジティブだけど……一応ゼイルは大変不本意だけれど救世主になっちゃったので……。
 ――ますますヒーローとやらに憧れる気持ちはわからなさそうであった。
「はー、もう疲れたわ。ちょっと静かにしててくれ」
「えー?」
「もうお話やめるの!?」
「もっとダジャレいってよ!!」
 いまのゼイルは……もう何もしないモードなのだ……くまのプー太郎さんなのだ……いや、いいように形容すると涅槃静寂っていうかそういう感じである。
 実際体ももう疲れているのだ。のっそりと寝転がったまま、体の節々の自分にない重さと大きさを実感する。ごろごろと身をよじってみたりして、彼の体にのっかる火の玉なのか何なのかはわからないけれど、小さい子供のかたちをした妖怪をどうにかこうにか諦めさせたりしながら――ほらほら、もうお疲れなのよなんて穏やかな声も聞こえてきてようやく安寧を得れたような気がするのである。
 ――事実。
 自分の姿がどんなのだっけと思いうかべる暇もないのだったら戻りようもないよななんて考えながら、ころころ、ごろごろん。
 体を休ませてみたら、そういえば俺の体はもっともっと違ったななんて思い出せてきて。朝、鏡で見た自分の顔を思い出す。肌の黒さもここまでではなかったし――さかのぼればさかのぼるほど、細かい体の感覚が取り戻せるような気がして。
「さて」
 ――【影狼】。熊なのだけど。
 体がゆっくりと真っ黒にそまり、影となってすうっと地面を滑るように宴の席から離れていく。

 しばらくすれば、クマがいた場所はすっかり空いてしまっていた。
「あれぇ」素っ頓狂な声をあげたのは先ほどの幼い火の玉で。
「あらあら、帰っちゃったのね」と言ったのはそれを制していた女らしき妖怪の声である。
「そんなぁ。お礼をもっとしたかったのに」と残念な声も上がったけれど、――幼い火の色をした頭を優しい女の手が撫ぜている。
「大丈夫よ、ありがとうの気持ちはきっと伝わったに違いないわ――」

 どんどん、ぴいひゃら。
 ――うごめく影がゆっくり青年の形を作って、金色の瞳が山の中から宴の風景を眺めていた。
 誰にも知られたくない。英雄ならば、綺麗なままでこの場はおわっておかないと。正体不明のくまさんは、森の奥にゆっくり消えていったとさ。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
【相照】
えっまだ戻んないの?
私いつまで蛇なんだよー!!ピエー
もうこうなったら
こうなったら……

(考える間)

……嵯泉に乗ってやる(よじ登る)
高いしすげー!かっこいー
いつもは私が乗っける側だから、こういうの新鮮で良いな!
にしてもふかふか艶々だ
嵯泉も髪整えたら、このくらい艶々になるんじゃない?(寝そべりながら撫で転がされるがまま)
勿体ないなあ。髪に良い薬やろっか?
私なんか短いとこは跳ねるんだもんなー
すとれーとぱーま?しかないのかなー
似合ってる?ならこのままでもいっかな……

……あんまりこんなことしてたら眠くなって来た
暖かいから、つい……
急に人に戻ったら流石に潰しそうだし
名残惜しいけど降りよう……


鷲生・嵯泉
【相照】
いま少し時間が掛かるか
早く戻りたいのは山々だが仕方ない
まあそう焦る事も……どうした。何を考えて…?

……何故そうなる(云いながらも伏せて登り易く)
確かに普段はお前の背から見事な世界を見せて貰うばかりだしな
偶にはこんな機会が在っても良いか
そんなにふかふか艶々…か?
(尻尾を伸ばして蛇を撫で転がし)
髪質は悪くないらしいが、こうも適当に扱っている現状では、な
何だ、ストレートにしたいのか?
今の侭でも十分似合っていて悪く無いと思うが
薬。自分で使ってみてはどうだ(前脚に顎乗せてのほほんと)

冬でもないのに眠くなるとは珍しいな
寝かせてやっても構わんのだが、流石に潰れるのは困る
……又機会があれば乗せてやろう




「えっまだ戻んないの?」
「いま少し時間が掛かるか――」
「私いつまで蛇なんだよー!!」ピエー!!!!
 ニルズヘッグ・ニヴルヘイム(竜吼・f01811)はそりゃもう、スネてた。
 だって偉大なる竜種のはしくれである!!蛇なんかじゃ満足できるわけないのだ!むしろこれは彼のなけなしのプライドのほんと潰してほしくないところのアレであった。
 ンピーーー!!!とかきいたことのない声を上げている黒蛇の事を見ながら鷲生・嵯泉(烈志・f05845)はまったりとしていた。早く戻りたいのは嵯泉もやまやまだけどしょうがない。なんともできないことはなんともできないのだ。長いものには巻かれていくのである。おとななので。
「まあそう焦ることも……」さとりの虎であった。ぴいぴい体全体で不満をあらわにする蛇を落ち着かせようと声をかけるも、蛇のほうはそうはいかぬ!!いかんのですよ!!
「もうこうなったら、こうなったら……!!」
 プルプル……。
 すっごい尻尾がビチチチチチってはねてる。
 怒り……それは……ッ……原初の感情ッ……!!
「どうした。何を考えて――――――?」

 別にッッッッ………何も考えていなかったのであるッ……!!!!

「……嵯泉に乗ってやる」
「……何故そうなる」ムァオ
 思いつき300%のニルズヘッグの不満解消であったが、嵯泉としてはまあよいのだった。ところかまわず噛むような発想にならないところがいい子ちゃんなのであると知っている。ぺそりと顎を地面にくっつけて、よじよじとニルズヘッグが昇りやすいように調節してやっている。パ、パパー!!
 登り切ったところでのっそりと姿勢を正して座ってやる嵯泉なのだ。
「高いしすげー!かっこいー!!」
 キラッキラの少年のような温度でニルズヘッグがはしゃぐ。
「いつもは私が乗っける側だから、こういうの新鮮で良いな!」
「確かに普段はお前の背から見事な世界を見せて貰うばかりだしな……偶にはこんな機会が在っても良いか」
 何せ返しをしようと嵯泉が気を回しても、気など遣うな遣うなとニルズヘッグはとってもそれ以上に気を回すものだから。なんだか日頃の支え合っていたところにいい形で報いてるようで、嵯泉としてはちょっと気分もよい。
「にしてもふかふか艶々だ~~~」
「そんなにふかふか艶々……か?」
 ぺそーん。
 頭から首にかけて平たくねそべるニルズヘッグに、嵯泉は器用に尻尾でなでなでしてやる。あ~~~天国~~~~……という感じのとろけかたをする黒蛇であった。
 嵯泉も言われてみて自分の毛並みをまじまじ見てみる。やはり毛並みは代謝――日頃の健康状態の結果であるから、ニルズヘッグにそれぞれ作ってもらっている飯のバランスがよいのだろう。
「嵯泉も髪整えたら、このくらい艶々になるんじゃない……?」ピキー
「――髪質は悪くないらしいが、こうも適当に扱っている現状では、な」ンナフ
 そういえば日頃の嵯泉といえば、自分の髪の手入れなど見苦しくなければよい程度にしか気にかけていないのである。それよりも刀などの手入れのほうが重要で、確かにニルズヘッグとしても嵯泉が髪に意識を裂けるかと言われれば――むしろニルズヘッグがやってやるほうが早いし善い気がする。
「勿体ないなあ。髪に良い薬やろっか?ぬりぬりって」
「薬。……自分で使ってみてはどうだ」
 まったりポーズにはいっちゃった。嵯泉も正直あまり普段より脳を使わぬ会話でちょっとゆるゆるである。戦闘の気配もないのもあって、のんびりまったりの虎さんなのだ。前脚に顎なんてのせちゃって、のほほん。ゆったり隻眼を細めて、ひといき。
「私なんか短いとこは跳ねるんだもんなー。すとれーとぱーま?しかないのかなー」
「今の侭でも十分似合っていて悪く無いと思うが」
「似合ってる? ……ならこのままでもいっかな……」
 いいのか……? いろんな意味で……。
 なんでもない会話である。二人にとってはお互いが無事で元気ならそれでいいわけで。瞼のないニルズヘッグの瞳が穏やかな輝きのまま、動くことなく腹をあたためてじっとしている。
 落ち着く温度と感触と、笑いをとるわけでもない当たり前の会話に感じるこの、胸の奥にあるふわふわとした心地はなんだったけ。
「……あんまりこんなことしてたら眠くなって来た」ムァムァ……
「――、冬でもないのに眠くなるとは珍しいな」
 嵯泉の記憶にあるニルズヘッグといえば、朝から夜まで動き続ける活発さだ。
 彼が眠気に襲われること自体が正直稀な気がしている。唯一冬は眠そうなそぶりを見せるものの、普段のニルズヘッグといえばだれが休んでいいといっても止まらないし、やるといったらどんどんやってやり過ぎてしまうくらい懸命なのだ。
 そんな彼の姿を普通に思い出せるようになってきて――その姿が当たり前に人の形を作りだしたものだから。そうか、時間かと気づきだした。
「暖かいから、つい……」
「そうか、――又機会があれば乗せてやろう」
 むにょむにょ、しゅるしゅる。ゆっくりと降りていく蛇の動きそのもので、ニルズヘッグの眠気がわかるのも貴重な体験だ。
 嵯泉の鼻を滑り落ちるようにして、ぽてりと蛇が着地する。どろんぱっぱ!――宴の席には、おねむなニルズヘッグがこしこしと両目をこすりながら座っていたのだった。
 彼の姿を見た虎も、それにあわせてどろんぱっぱ!背筋をピンと伸ばして正座する嵯泉が現れたなら、ニルズヘッグも目をこするのをやめてにっこり。
「やっぱこっちのが、しっくりくるなァ」
「ああ」
 蛇の姿の時も、虎の姿の時も、けして二人とも見失うことはなかったけれど。
 当たり前のように感じていたお互いの姿が見えると、やっぱりなんだか安心する。ねむたげなニルズヘッグに、さあ帰ろうかと嵯泉が腰を上げればきっとあとは、ふたりの拠点で穏やかな時間が続くだろう。
 ひらり、ひらり。二人が過ごした場に、紙吹雪の名残が流れていったのでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

豊水・晶
ううう、視界が回る。まさか、ポメラニアンになったことでお酒への耐性が弱くなるだなんて。いつもなら一升瓶くらい水と一緒なのに。
何年ぶりくらいでしょうか、こんなにひどいのは。とりあえず温泉。温泉に行ってお酒を抜きましょう。あううう、頭痛い。
式神使い使用
藍、温泉までなるべく揺らさず運んでください。

はふーぅ、やっぱり酔いを覚ますには温泉ですねぇ。(普通の温泉に入ろうとしたら深すぎたので、桶にお湯をいれて貰って寛ぐポメラニアンの図)
はぁ~そろそろ一度あがりましょうか。
どろんぱっぱ!
何と突然変身が解けてしまったー。あまりに突然だったので、バランスを崩し頭から桶のお湯を被ってしまう。
アドリブ、絡み◎




 温泉にうかぶけだま一匹。
「ううう、視界が回る――」
 呑みすぎちゃったお顔なのは豊水・晶(流れ揺蕩う水晶・f31057)だ。
 ポメラニアンの姿に為ってしまった今は、小さな体にぐるぐるとアルコールがめぐりにめぐってぽやぽやぱやぱや不思議な心地でいたのだけれど……簡単に言うと二日酔いのグロッキー状態で頭痛がものすごいことになっていた。
 いつもは一升瓶くらいは水とたいして変わらないのに、こんなに酒で痛い目を見たのはいったい何年ぶりだろう。竜神として二十四歳、――なるべく揺らさずに温泉に運んでくださいと指示を出したもふもふでふわふわな藍が頼りになったもので。
「まだまだ修行が足らないんでしょうか」
 そんなことはないとおもうんですが。
 妖怪たちに案内されたのは小さなけだまである晶の体が、元はおんなのかたちをとる竜神そのもであると聞いて用意されたちいさなプールにも満たない浅さの温泉――というか、桶である。それでもお湯がいずれ冷えてはいけないからと桶のままそこそこの広さの温泉に浮かんでいた。
 ポメラニアン、ほとんどが毛なので体は大変軽い。ちゃぷりと体をつければあっという間にぷかぷか、ふわふわ。風が吹けばそのままに浅い水面にたゆたっている。
 広さとして申し分なく思えるのは、やはり今の体が小さいからだろう。まるで海にヨットで流れていくような、そんな心地がする――晴天の朝は美しかった。
 ずきんずきんとしていた頭痛もどこか遠くに感じるほどの平和な青に、晶がゆっくりと目を細める。
「はふーぅ……」
 う~~~ん。ごまんえつ。
 ほっかほかの蒸気とお湯の温度であっためられて、ポメラニアンの体もしっとり。
 やっぱりお酒を抜くなら温泉に限るなぁ、なんて思っていたのだ。へふへふと舌を出せば人間が汗をかくのと同じこと。どんどんずきずき痛んでいたどこかしこも穏やかな鈍痛から、ゆっくり空に吸い込まれるように消えていく。
 ――遠くの祭り囃子や妖怪パレードは晶の場所からも見えた。囲うように積まれた石の間から眺めるにぎやかさは、やっぱり晶としても好ましい。
 守るべきものを、しっかりと守れた。
 侵略者に二度も襲撃され、弱り果てた竜神は今こうして――確かに滅びゆく世界ひとつをその両手で救えたのである。つぶらな二つの瞳に空を映して、ゆっくりまばたきをしてじんわりとぬくもりが増えるだろう。それは、達成感だった。
「――はぁ~、さてさて。そろそろ一度あがりましょうか」
 ちゃっぷちゃっぷ。
 桶の中からちょびっと手を出して、犬かきの要領で小さなおててをオールがわり。
 風向きに合わせて体重をかけて、ゆったりとしたカーブを描きながら温泉から出ていこうとしたときに――。

 どろんぱっぱ!
「きゃ!?」
 竜神たる自分の今までを振り返っていたから、晶の体にはもう神性が戻っていたのだ!
 ばしゃぁあんと派手にしぶきが上がり、「あらあら」「はしゃいでるのかな」と妖怪たちがのんびりな声をあげた。
「うう、ううう……」
 頭に桶を乗せて、すっかり美女の姿に戻った晶が温泉の中に肩まで浸かってしまっていたのでした。髪の毛もすっかりお湯につかっちゃってびちょぬれ。なんだかしまらないけれど、それもそれで理不尽な世界のご愛敬。ゆっくりと髪の毛を手で束ねながら、竜神さまが大きなため息をついたのでした。
 滋養にもいいし、痛みにもいいから。
 せっかくなのでちょっとした心の痛みも癒されてってくださいね……!!

大成功 🔵​🔵​🔵​

穂結・神楽耶
【彼岸花】

どろんぱっぱ!
…よし、顕現体に戻ると落ち着きますね。
ってあれ?
そっか、ひとは自分の体を顕現させるとかやらないですもんね。
ネグルは体も大きいですし、戻るのも遅いんでしょうか?
とはいえ歓待を受けないのは失礼ですから!
行きますよー!(摘み上げる)

ネグルは何を……あー、虎って肉食。
すみません、あまり火を通していないステーキをば。
ありがとうございます!
はいネグル、あーん。
あーん。(圧)

虎ネグルをもふりに来た妖怪様方に混じって失礼もふもふ。
うん、やわっこい。
それでいて髪の毛と同じにサラサラでいつまでも撫でていられますね。
あはは、じゃあ遠慮なく。
今日もよく頑張りました、って撫でてあげましょう。


ネグル・ギュネス
【彼岸花】
どうして。(セカンドシーズン)
いや何でまだ戻らないのかの意味が、え?時間かかる?そっかぁ(諦観)
宴は良いが、この手──前脚?だと飲み食いが辛…ちょっと何かエサみたいに積み上げないでいや人間だから虎でも犬でもないから…あ、でも肉美味しそ…ハッ。

ともあれ、戻らないなら座布団上で、あーんされながら食事だ
丸くなりながら、尻尾ゆらゆらり
もふりたければ好きにしろ、誰でも拒みはしない
撫でるのも良いよ、心地いいしね

それで皆が喜ぶならば、暫くは虎のまま、包み込んで見守ろう
頑張った人や、怖かった人を癒すように、暖かく柔らかく。
取り戻した平穏な時間が、どうか暖かくありますように。




「どろんぱっぱ!」
 ノリノリな声をあげてくれたのは穂結・神楽耶(あやつなぎ・f15297)だった。
 小さな蝶の姿がとけたらあら不思議!戻ってきたのは美しい大和撫子そのもののような和服に身を包む慎まやかな少女の姿でするんと着地。
 おおー、と妖怪たちから拍手があがるのも納得といったところであろう。小さなアゲハの正体が美少女だというのなら、虫を殺すときもきっと、ふと……と立ち止まるやもしれない。
「よし、顕現体に戻ると落ち着きますね――ってあれ?」
 ぐ、ぱ、ぐ、ぱ。繰り返し両手を握ったり放したり。
 やっぱり慣れた心地が一番安心するし地に足付いた様な心地がするもので。ちょっとつま先にぐぐっと力を入れたりなんかして、神楽耶はようやく戻った自分の体の感覚ひとつひとつを確かめる。問題、ナシ!
 と、思っていたのだけれど。
「どうして……」
 ネグル・ギュネス(Phantom exist・f00099)。ドウシテ・セカンドシーズン……。
 デフォルメのぽってぽての小さいトラチャンのまま戻れぬ彼である。宴の席にやってきたものの、周りの猟兵を見ていればそろそろ戻るし今か今かと自分の姿を待ち望んでいるのだけれど、いまいち自分の人型を頭の中で思い浮かべることができない。
 むちゃくちゃ宇宙を感じていそうな茫然とした顔には、そっかと合点がいったのは神楽耶である。
「そっか。ひとは自分の体を顕現させるとかやらないですもんね」
「ひとっていうか……いやなんで戻らないのかとか……そっちの意味で……」
 神楽耶のヤドリガミ理論はいまいち半分機械の鋼鉄男にはよくわからんのだけど。
 要するに、「思い描く」ってことがほとんどないのである。だって自分の姿はネグルにとっては当たり前にあるものだけれど、神楽耶にとっては自分で描いて作っているガワなのだ。そのへんギャップが生じている。普段から「化けている」神楽耶は馴染むのも戻るのも早いということです。たぶんね。
「それに、ネグルは体も大きいですし、戻るのも遅いんでしょうか?」
「――え? 時間かかる? そっかぁ……」
 そういえば自分の躰、結構普通に大きかった部類だっけなぁ……ああなんか思い出せそうな気がしてきた……シルエットが……スーツ姿のシルエットが……。
「とはいえ歓待を受けないのは失礼ですから!」
「宴は良いが、この手──前脚? だと飲み食いが辛……うわうわちょっと何かエサみたいに積み上げないでいや人間だから虎でも犬でもないから……」
 ひょい、と首根っこを掴まれた。もはや少女のオキニなぬいぐるみ状態である。されるがままのあきらめ顔のちっちゃいとら、びっくりであった。――女の子に持ち上げられるッ……!!未知ッ……!!
「さあさあ行きますよー!」
「あ、でも肉美味しそ……ハッ!!!???!!!?!」なにもかもあやしくなってきたな。
 よだれだらだら状態のトラチャンをつれて炎の少女がどうもどうもとご挨拶。本日はえー、お日柄もよく~なんて言いながら席までご案内してもらっていたころに、神楽耶が妖怪たちの視線を集めていたことに気づく。
「すんげえお腹すいてるんだねぇ」
「え?」神楽耶はそもそもあまり食事が必要ない。刀だし。
 ――ということは。視線をつまんだトラチャンに向けて見たら案の定であった。
「ネグル……」
「ハッ……!!!!!!!!」
 やさしいほほえみと視線に意識を戻したネグルである。お重につまった唐揚げとか、黄金色の卵とか、たこさんウィンナーも、牛肉であろう焼肉も、正直全部うまそうでしょうがない。男の人だからただでさえ濃い味、うまあじなのだった。
 お腹がたくさんすいていそうな弟分に、さて天ぷらでもお願いしようかと考えたけれど――そういえば虎?のままであった。ふと、神楽耶が気を回してやって。
「すみません、あまり火を通していないステーキをば」
「あいよー! ちょうど焼いてたのがあるよぉ、どうぞどうぞ」
「ありがとうございます!」
 うーんさすがの気遣い。なんだか懐かしい祭りの雰囲気を感じさせるような、竹の葉っぱで作られた船型のお皿に肉をもってもらう。熱さなどこの神楽耶の前では無意味。掌に「だいじょうぶ?」と言われながらのせてやって。
「はい、ネグル。あーん」
「ンァ」もはやまるくなっちゃってる。
「あーん」圧がすごいっす!姐さん!!!
 座布団の上でまるくなっちゃったネグルに神楽耶があーんしてあげる構図なのだ。はほはほ、もくもく。口から白い息をこぼしつつおいしそうに食べるネグル、半分くらいもうええわと思っている節があるとおもわれる。
 穏やかな心地の雰囲気は、どうやらネグルが食べれば食べるほど周囲ににじんでいるようで、妖怪たちもいそいそとやってくる。
「あの……撫でても……」
「いいよ。誰でも拒みはしないさ」
「あ、じゃあ私も失礼して……」神楽耶がすっとそこに混じる。
 お肉をたくさん食べてきて、ふっくらしてきたネグルである。毛並みは十分よくって、神楽耶が触っても「やわっこい」と口にしてしまうくらい手触り、ヨシ!
「もふもふだぁ」
「もふもふ……」
「髪の毛と同じくらいサラサラですねぇ」
「そーなの?」それは知らんかったネグルである。自分の髪の毛の触り心地、意識しないとわかんないですよね。
 妖怪たちがここちよさそうにそれぞれ、ちいさくてぽてぽてなネグルの毛並みを撫でているものだから。なんだか情けない姿に思えていたこの姿も悪くないなと思えてくるものである。男のプライドよりも、――人を救う気持ちの方が強い。
「ああよかった」
「なんだか落ち着いてきたよ」
「大変だったねぇ」
 ――ほらやっぱり。
 ポジティブな空気ではあったけど、そうありきれない誰かだっていたのだし。もしかしたら、皆心の底でとんでもない寂しさを抱えていたから、お酒に明け暮れていたのかもしれないから。
 ネグルは妖怪たちの顔色をよく見ていた。浮かれてとろけた瞳ではなくて、それらが徐々に穏やかなぬくもりに満ちていくのは悪くない。
 たった一瞬の気休めかもしれない。明日には、またこの世界は滅びにめぐり合うだろう。だけど、今は。

「あらあら」
 ぐるる、くるる、と喉を鳴らしていた虎の姿が、大きな青年の姿にどろんぱっぱ。
 ――どうやら撫でられているうちに眠ってしまったネグルの脳は、無事に夢の中で己のあるべき姿を取り戻したらしい。目をまるくした妖怪たちが、神楽耶の「おしずかに」の人差し指をまじまじと見て、ゆっくり手を放していく。

「今日もよく頑張りました」
 そっと。鋼色の髪を撫でてあげながら炎色の刀が微笑む。
 ――取り戻したあなたの平穏な時間が、どうか暖かくありますように。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

曲輪・流生

引き続きイタチ
無事に『人』と言う概念が戻ったようですね。
一安心です。
(人の形に戻っていく妖怪さん達に安堵の笑みを浮かべて)
僕が元の姿に戻るのはもう少し後でしょうか?
竜の姿になることはありましたが動物さんの姿になるのは初めてで…なんだかんだで楽しかったです。
もう少しだけこの姿を楽しみましょうか。
人の姿に戻るその時まで僕もこの宴を楽しみましょう。


グウェンドリン・グレンジャー
◎△
一件落着ー
(自分の尻尾をもふりつつ、つかれたーとごろごろしたりする)
狐の自分、もうちょっと、楽しもう
故郷、ロンドン、にも、狐は、いるけど、こーゆー色、初めて見る
(尻尾ぶんぶん、自分で追いかけてぐるぐる。目が回って、お腹を上にぱったりと休憩。寝転がる)

(寝転がっていると、カクリヨ民の地元妖怪さんと目が合った)
……はっ、もふもふな、私が、狙われている、アトモスフィア
いいよー、撫でられると、私も、楽しいー
牛乳、くれるのー、ありがと
(耳ぴこぴこ)

(ポヒュッっという気の抜けたような音とともに、元のちょいカラス人間に戻った)
おおー、何だか、人間ボディ、久しぶりな気分。ほんの少しの、間、なのに


インディゴ・クロワッサン
◎🐾 (気分が良いので羽も継続)
お酒良いの!?呑む呑むー!お酒呑むー!
「やっぱりお仕事の後のお酒って最高~!」
あ、ワイン注いでくれるの?やったー!
清酒もいいし、焼酎もいいんだけど…
「果実酒も好きだよ?でもやっぱりワインなんだよねぇ」
もしかして、そこのヴァンパイアさんと好み似てる?
「もしかして、一番は血…の様に赤いワインとか!?」
僕としてはオブリビオンの血が一番なんだけど、それはさておき、ワインって良いよねぇ…
「あ、他の世界のお肴いるー?」
UC:無限収納 を使って、おつまみをどんどこ追加~
「他の世界のお酒もあるから、呑みたいひとは声かけてね~」
勿論、他の猟兵にも振る舞っちゃうぞ~!




「ああよかった――無事にヒトという概念が戻ったのですね」
 イタチの姿のまま、曲輪・流生(廓の竜・f30714)はほっと一息。
「一件落着ー」その隣でころんころんするギンギツネもこれまた一安心。
 グウェンドリン・グレンジャー(Blue Heaven・f00712)は、故郷のロンドンで見た狐の姿とはまた違う毛並みを楽しんでいる。尻尾をぶんぶん振ってみて、時折追いかけて見てくらくらり。ヘソ天なんかもしちゃってぱったり休憩で寝転がる。
「だ、だいじょうぶですか……?」
「んー、へーき」くるくる視界は回ってるけど、悪い気分ではない。
 流生が心配そうにイタチの顔で覗き込むけれど、当のグウェンドリンは割と丈夫で破天荒なのである。おじょうさま、たいへんげんきです。
「僕たちが戻るのはもう少し後でしょうか?」
 流生があたりを見回して、妖怪たちがどんどん人の形に化けていくのを見送っている。
 人の形が恋しいけれど、流生がいくら自分のかたちを思い出そうとしても想像した景色や姿がちょっと霞んでいて難しい。
「そうかも。でも、楽しむ、時間って、思えば、いいよ」
 グウェンドリンの自由さは流生の寛容さには佳く親和するというもので。
 ――確かにいずれ戻るなら、楽しんでみるのもまた一興かなと想えるのだ。
「そうですね!僕も、なんだかんだで楽しかったです」
 とても大変だった。
 信仰の源である人間という概念から消し飛ばされたらもちろん神格もごっそり下がっちゃうもので。まっしろなイタチになっちゃったけれど、自分が何かはずっと心の中にある燃えるものがあるものだから、どうにかこうにか技はしっかり使えたけれど――。
「はっ」
「ど、どうしました?」
 ぴくっと両手両足をしならせたグウェンドリンの怪しい動きに、流生は可愛いお目目をまぁるくしてみて。
「――もふもふな、私たちが、狙われている、アトモスフィア……」
「あ、あともす……?????」
 なにやら聞き慣れない横文字。見知らぬ言語が頭を横切って行って、流生の思考を覆ったころに――もふもふな二匹を、わぁあいと抱きしめる妖怪たちがいたのだった。

「お酒良いの!?呑む呑むー!お酒呑むー!」
 ぐわぁお!
 藍色の虎になったインディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)。
 どんどん大きくなっていく自分の姿は、きっと仕事に打ち込んだからであろうと思えるのだ。だってぐびぐび飲んでるお酒がすっごくおいしい!
「この酒はねえ、そんじょそこらじゃ手に入らないのさ」
「そうなの?」
「そりゃそうだよぉ、なんてったって竜神さんたちが分けてくれてるんだから!」
「へへえ~!」
 本当かどうかはわかんないんだけど。酔っ払いの戯言にしては自信満々だったし、まあ本当に高級なお酒とかだったらお得なのは間違いないので。
 のど越しもよく、さっぱりしていて飲みやすい。くう~~~~っと思わず言いたくなるほど喉を潤す感覚に、インディゴの気分もよくなっちゃって。背中の羽根が広がってわっさわさ。
「あ、ワイン注いでくれるの?」
「もちろんさ。さあ、呑んで呑んで」
 なんだか不思議な心地だけれど、お酒の席だしまあいいか!
 和洋折衷ちゃんぽんの世界なのだから、日本酒を飲んだ後に洋酒をのんでもいいので、ヨシ!
「ほかにはどんなお酒がすきなの?」
 のみっぷりのいい虎に、妖怪たちも興味津々!お酒の席だもの無礼講無礼講。猟兵たちが大好きで気になっちゃう彼らはお酒の好みだって知りたいのだ。
「んー」くるくるとワインが注がれた盃を回しながら。
 そういえば清酒も好きだ。焼酎も好きである。飲めるものならなんでもおいしく感じてしまう自分の舌は随分お得だなぁ。
「果実酒とか?」インディゴの雰囲気はかわいらしいし、似合う気がするとはキツネの話。
「果実酒も好きだよ? でもやっぱりワインなんだよねぇ――ん!?」
 こくっと飲み込んでみたワインの味にはびっくり!なんだかおいしいんだけれど、ちょっと避けてきたものの味がする――。
「もしかして、一番は血――の様に赤いワインとか!?」
 だっはっは!
 優雅に笑うヴァンパイアに目配せして、大笑いする妖怪たちの喧騒にブラックジョークは飲み込まれる。インディゴとしてはオブリビオンの血が一番ではあるんだけど……。
「まあ、それはそれとして。ワインっていいよねぇ……」
「年代ものだからな」くくく、と笑う吸血鬼が何を言いたいかはわかってしまうのだった。それってつまり、――人間がまだ妖怪たちを忘れていなかったときにってことだし……。
「あ、他の世界のお肴いるー?」
「えっ?」
 【無限収納】。
  突然茨の扉が現れたかと思いきや、座ったまま扉に触れた虎の姿がギュッと吸い込まれていく。
 しばらくしたら虎がひょこっと顔を出してきて、扉を大きく開いたら妖怪たちには見たこともないおつまみやらお酒やらがい~~~~~っぱい!!
 まるで財宝なんかを見てしまったような気持ちになって、妖怪たちはこりゃまたびっくり!今日一番驚いたかもしれないね。お互いの顔を見合わせる姿に、インディゴもなんだか持て成しててうれしくなってきちゃって。
「他の世界のお酒もあるから、呑みたいひとは声かけてね~」
 わぁいわぁい!妖怪たちがわらわらやってきたのなら、その手にわっしょいわっしょいされてやってくるもふもふの猟兵たちもついてくる。
「あれ、あれれ」
「わ、わ、わー!?」
 ギンギツネのグウェンドリンと、まっしろイタチの流生も宴の席にご到着!
「ようこそ!どうぞ楽しんでいってね」
「えっえっ、僕お酒は」
「お酒だめ!?じゃあジュースで!」
「わー!!」ありとあらゆるジュースが飛び出てくるものだから。これには流生もびっくり!もっふもふでもっちもちなイタチの毛並みを楽しんでいた妖怪たちが提案する。
「それじゃあ好きなのいただきな。俺らがついでやるよ」とか。
 いいんでしょうか……いいんですよねきっと……。ふわ、っと微笑んだ流生がどろんぱっぱ!
「――わあ!」
「もどっちゃった。あ、私、牛乳が、いいー」
 びっくり仰天。撫でられてまったりしていたグウェンドリンの目の前で、竜神は元の姿を取り戻したのである。
 ちなみに、グウェンドリンが牛乳をリクエストしたのは――まあ彼女がグールドライバーなことに由来すると思うんですけど……。 
 ひとくちくぴり。お猪口に注がれたそれを呑んだらぽひゅんとなんだか間抜けな音。
「おおー」
 元のはかなげな美少女に戻った彼女の声もなんだか気が抜けていて。
「人間ボディ、久しぶりな気分。ほんの少しの、間、なのに」
「お嬢さん、天狗なのかい?」
「ん? ちがう、と、おもう」
「曖昧……」
 ちょっぴり鴉人間に戻ったのでした。
「あれれ、もう時間切れー!?でもいいや、もうちょっと楽しんでいこうよ!ね、ね!」
 インディゴもちゃっかり人型にはもう戻っちゃってるのだけれど。それはそれでこれはこれ!宴はまだまだ終わらない。
 せっかく楽しいひと時を作ることができたのだもの、神も人も半魔もご一緒に。どんちゃんどんちゃん、それぞれにぎやかなひと時を!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

空露・紫陽
【紫炎】

暁の空が朝を連れてくる
まだ黒鷲の侭か
なら少しこの姿でしか見れない景色を見とくかね

…おっと、そろそろ俺は戻る頃合いか
勘が告げれば地に降り人へ
おや、くゆりは未だその姿か
折角だから毛繕いでもしてみるかい?
ほら、イイ子だから大人しくしてな
褒美に喉を撫ぜれば
気持ち良さそうで何よりだ

ふたり元の姿に戻れば
――お前さん、酒は飲めるかい?
煙草に紫煙燻らせ誘いひとつ
乾杯しても未だ残る余韻
愉しかったなと呟けばお前さんだって同じだろ
…なぁ、くゆり?
燻らせる煙と同じ名を持つお姫様に笑う

おいおい、出来上がるの早ぇな
柔く仕方ねぇ奴と笑う
今度は俺のお勧めの酒と手作りのつまみ作ってやるさ
愉しみにしてな――は届いたかい?


炎獄・くゆり
【紫炎】


あれぇ、いつの間にやら寝てました
ニンゲンの紫陽さんの幻覚が……夢?

まァいいや、甘えちゃお~~~
むにゃむにゃごろり擦り寄れば
優しく撫でてくれる大きな手
背中も頭も喉もぜぇんぶきもちい~…

ぼふんと戻れば元の姿
あら?
色男の膝枕で起きちゃうなんて役得
おはようございまぁ~~す

もっちろん飲めますよお~~?
オトナの女ですから!
一回飲んだだけですけど
ウフ、ご一緒してくれるんです?

心地良い乾杯の音
勿論、同意は何度だって重ねちゃいます
ね~~紫陽さん!
眸に焼きついた空の王様の姿にニマニマ

美味しいお酒、乱闘の余韻、目の前にはイケメン
こんなの酔い回っちゃいますよお
へろへろ笑って上機嫌
また夢の中に帰っちゃいそ~~




 ――暁の空が、朝日をつれてくる。
 まだ黒鷲の姿からは戻れないようだった。空露・紫陽(Indulgence・f30642)は自分の姿を思い浮かべることなど、造作もない。この身はモノである。
 しかし、――ああそうだった。
 この姿で眺める景色も悪くはないが、あの姿は「主人」をかたどったものであったなとふと思い出す。忘れてるなんて、なんと薄情なことだろうとくつくつ笑って、彼の勘が告げるのだ。『もう戻ろう』と。
 ふわり、――羽ばたく。
 空を駆ける時間はもう必要ないだろう。朝焼けの空を背に、ゆっくりと。しかし陽が昇るよりは早くに、宴の地にてひとのすがたで降り立つのだ。
「おや――」
「むぁ」
 さてさて、暴れるだけ暴れていた女王はこてりと眠っていたのだけれど。そんな彼女の睡眠を邪魔しないよう――女の化けが剥がれるところをまずまず見てやろうという気にもならない優しい紫陽は外を楽しんできたのだ。
 すっかり人の体をとりもどした紫陽が、ちょっぴり面白そうな声を出したのは炎獄・くゆり(不良品・f30662)が元の姿を取り戻していなかったというところで。
「くゆりは未だその姿か」
「あれぇ……?」
 むゃむゃ、むにゃにゃご。
 メスライオンの姿でこてりと首をかしげる瞳はまだまだ夢心地。
 ――く、とやっぱり喉の奥で笑いをかみ殺してしまう紫陽も、ちょっかいをかけたくなってしまうというもので。
「紫陽さぁん、ニンゲン……?」
「ほら、イイ子だから大人しくしてな」
 折角だから、とズルい前置き。紫陽がそう言ったかと思えば、指先で弧を描くようにくゆりの喉を撫ぜてやる。すりすり、さすさす――ご褒美の温かさに、ふゃんとくゆりの表情もなんだか落ち着いてしまうというもので。
 いいのかなぁ、甘えちゃって、まァいいや~~~…………。むにゃむにゃごろごろ、大きな手足はのびちゃって。こてりと地面に転がっているその体の、背も頭も喉もまんべんなく撫でてやる。
 ――こういう触り方ができるのは、くゆりが女の形をとっていなかったからで。

「あら?」
「おっ」
 ぽふん!と音を立ててくゆりがどろんぱっぱ。
 地面に伏せていた体はいつものかわいらしいくゆりのそれ。ぴたりと手を止めて、そっと紫陽も手を退かせる。
「……おはようございまぁ~~す」
「おう、おはよう」
 いつの間にやら膝枕までされてたみたいで。顎を膝に預けていたくゆりのニヤニヤフェイスたるや、役得~~~!!といった感じ。
 紫陽としては、やはりいつもの姿のほうがお姫様らしいななんて思ってしまえるのだ。

「――お前さん、酒は飲めるかい?」
 ち、ち、と何度か火をつければ煙草はすんなり、素直に紫煙を燻らせるというもので。
 問いかけを投げられたお姫様は目をぱちりとさせてから。
「もっちろん飲めますよお~~? オトナの女ですから!」なんて笑って見せる。
 愛嬌たっぷりの顔は凶悪だけれど少女らしい。
「一回飲んだだけですけど。ウフ、ご一緒してくれるんです?」
「おう。――オトナの時間だからな」
「キャー!」
 仕事終わりのお疲れの一杯。そんな時間だってオトナにしか許されないご褒美の時間なんだもの。
 妖怪たちから用意されたお猪口をちょいと付き合わせてささやかな乾杯。
 つう、と唇を湿らせる程度にとどめる紫陽の姿を見ながら、真似してみるくゆりである。じいい~~~……んと鼻に抜けるような心地がして、なるほどと思わされた。やっぱり、オトナで出来るイケメンってかっこいいのである。
「愉しかったな――なぁ、くゆり」
「もっちろんですよ、ね~~~!!紫陽さん!」
 くゆりの頭の中ではすっかり焼き付いた空の王様の姿。
 それを目の前の紫陽と照らし合わせることなんてすぐにくゆりの頭にかかればちょちょいのちょいなわけで。にへにへにまにま、楽し気な彼女の顔を見て、どうしてか紫陽も愉しくなってしまうものだから同じように喉を震わせ静かに笑った。
 ――そう、まだ余韻が残っている。
 本当に楽しいひと時だったと、紫陽も未知の経験と燃えるような戦いが焼き付いている。
 逞しく走り回る女王の姿には揺さぶられるものがたくさんあったとも――オトナの男らしく、冷静ではあったけれど。
「んっへへへ~~いやあ~~最高でしたよほんとにぃ」
「おいおい、出来上がるの早ぇな」
「そ~ですかぁ……?へへへ、また夢の中に帰っちゃいそぉ~~」
 お猪口に三度ほど口をつけたところで、けらけら、からからとくゆりが上機嫌に笑いだして、ふにゃりと首をかたむけたり、くらくらと体を前後左右にゆ~っくり動かしてしまう。
 だって美味しいお酒に乱闘の余韻、それに目の前にはイケメンがいるんだから――酔えないわけがないもので。くるくると頭に廻るアルコールはくゆりが興奮すればするほどそれはもう効果てきめんだ。
 そんな彼女の姿を見て、仕方ねぇ奴、とやわらかく紫陽はわらってくれる。
「今度は俺のお勧めの酒と手作りのつまみ作ってやるさ」
 危ねェよ、と一言添えて。
 そっとぐらつく酔った肩に手を添えて、肩に腕を回してやる形になる。
 そのまま、上着をするりと脱いだら綺麗に片手で畳んで枕に早変わり。こてりとくゆりを寝かせてやるにも、地面に頭を置くのは味気ない。
「なァ、寝ちまうやつがいるンだ。何かかける布とかはないかい」
 ――もてなしを配膳する妖怪に尋ねれば、それではそれではと薄い布が渡される。
 枕はいりますか?という問いには、そいつァ間に合ってるよと紫陽が愛想よく断った。だけれど、どうもと小さく会釈してくゆりの世話を甲斐甲斐しくやってやる彼の姿はとても様になっていて。
「――すてきねえ」
「ほんとねえ」
 いきましょ、いきましょ。
 二人が穏やかに休めるように、妖怪たちもそっと声をひそめてやってくれる。
 今日一番に頑張った女王様の寝顔に、はらりと桜が一弁やってきた。それを――男の骨ばった指が、つうっと払ってやる。

「愉しみにしてな――は届いたかい?」
 んふふ、と寝ながら微笑んだくゆりの意味はきっと、夢の中でもうとびきり甘えてもてなしてもらっていたからだろうか。
 穏やかな春の風を感じながら、――紫陽は何本目かの煙草にまた火をつけた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鈴久名・惟継
【幽蜻蛉】◎△
敵も倒され、人の概念も戻り、俺達の姿も
……まだ元には戻らんのか
うぅむ……折角宴を楽しめるというのに小さいのは不便だ

おい、そこの妖怪達
笑うでない!この姿では宴の用意も出来ん
俺達に酒と肴の用意をしてくれ
俺達はこの姿で戦ったのだ、働きに似合うものを頼む
遵殿も今の内に注文を……物騒な言葉が聞こえた、早く持ってきてくれ!

さてさて……杯は同じものながら、まるで風呂のようだな
肴も一口二口で終わってしまうようなものも沢山楽しめる
言葉通り浴びるように酒が飲めて、腹一杯食えるとなると、まぁ悪くない
この姿で戦は勘弁して欲しいものの潜入には活かせるな

寝て起きた頃には元に戻ってるといいなぁ
俺も寝るとするか


霞末・遵
【幽蜻蛉】◎△
大きい生き物に囲まれてると落ち着かないなあ
でも狭いとこで急に戻っちゃったら困るしなあ

お酒飲めるならまあいいか
ねえおじさんもお酒欲しいなー。いっぱい注いでよいっぱい
おつまみもあるといいなあ。蝶とかバッタでもいいけど
がんばったらお腹すいちゃった
美味しそうなトカゲが背中に乗ってたのにずっと我慢してたんだよ
ね、偉いでしょ。だからお肉ちょうだい

惟継さん戻っちゃうのはちょっと残念だな
折角小さくて可愛いのに
たまにその格好に化けさせてあげようか
何もないとこから急に雷飛んできたら敵さんびっくりすると思うよ
面白いと思うけどなー

さあて、飲んだら寝よ寝よ。おやすみい
起きたらスクラップ漁りに行こうねえ




 ――敵は倒され、朝はやってきた。妖怪たちの記憶にも染みわたるように人の概念が戻り、それぞれ想い出の姿を取り戻してしっかりと在りたい姿に変わっていく。
 と、いうのに。
「……まだ元には戻らんのか」
「大きい生き物に囲まれてると落ち着かないなあ……」
 鈴久名・惟継(天ノ雨竜・f27933)と霞末・遵(二分と半分・f28427)は、いまだに綺麗なニホントカゲと大きなタランチュラのままだった。
 遵などは、狭い徳利の中に入ろうかどうか悩んでいるまである。狭いところで急に戻ってしまうと困るから、なんだか落ち着かない気持ちを抱きながらも周りのにぎやかさをのんびり眺めていたのだ。
「でもお酒飲めるならまあいいか」
「うむむ……」
「惟継さん、そんな難しい顔してもしょうがないじゃないか」
「お前さんは本当に順応力が高いな……」
「えへへ」
 順応力が高いというよりは、なんだかんだで悪霊の割には呑気な遵である。
 わかんないことはまぁわかんないし、なんとかなるでしょう、長い糸には巻かれたらいいんだよ~という温度な彼の穏やかさは、惟継にはちょっとむずがゆい。
「おい、そこの妖怪達」
「わ!な、なんだ!」
「なぁんだ、鈴久名の」
「鈴久名さんかぁ」
「びっくりしちゃったよォ」
 ミャ!と大きく鳴いた蜥蜴の声に、妖怪たちはびっくりからのからころ笑い。
 普段の雷のごとくのような豪快の竜神さまも、小さくなってしまえばかわいいものだ。妖怪たちがからかうのではなくて、安心から笑っているのを見て――惟継はコラッとぴょんぴょん後ろ足で跳ねる。
「笑うでない!この姿では宴の用意も出来んのだ」
「そりゃあそうだ」
「俺達に酒と肴の用意をしてくれ」
「あいわかった!」
「ちょいと待ってな!」
 ちゃんかちゃんか。皿を鳴らして有象無象が動いたら、どうぞどうぞと宴のおもてなし。
「俺達はこの姿で戦ったのだ、働きに似合うものを頼むぞ」
「へいへい、ご注文は?」
 狐顔の男がメモ用紙を片手に、頭にねじり鉢巻きをつけて問うてくる。ふふんとふんぞり返って座るトカゲが、さて何にしたものかなぁと考えていたなら蜘蛛がもごもご顎を動かしていた。
「お酒ほしいなー。いっぱい注いでよ、いっぱい」
「うむ、まず酒が無ければ始まらぬ」
「お酒ね、あいあい。ちょーどいいのがそろってるよ」
「じゃあ、ありったけもってきてよぉ」
 蜘蛛が前足をちょっと動かしてややはしゃいでいるらしい声色で注文をする。へいへい、お任せあれと頷けばあっという間に盆に乗せられてやってくるお猪口たち。
「む……」小さい、と言いかけたが傍に置かれてみればその大きさ、なるほどの惟継である。トカゲの躰で立ち上がらねばいけないほどだ。にゅるんと体をフチにのせて、ちろりちろりと舐めてみる。
「うまい」
「そうだろう!今日は目出度い日だからねェ。あんたらに助けてもらった竜神さんたちが、秘蔵のヤツを出したってウワサさ!」
「おいし~」樹液でも吸ってるのか、という感じではあるが。顎からちゅうちゅうとお猪口にしがみつくようにして遵が蜘蛛の姿でお酒を堪能中であった。
「ねえ。せっかくだし、おつまみもあるといいなあ。蝶とかバッタでもいいけど」
「イナゴがあったかねぇ」
「がんばったらお腹すいちゃった――美味しそうなトカゲが背中に乗ってたのにずっと我慢してたんだよ」
「物騒な言葉が聞こえた、早く持ってきてくれ!!!!」
 お肉ならなんでもいいよぉと遵の言葉が無事に届いたのか、さすがに神たる惟継にコオロギだのなんだのをふるまうわけにもいかないので――ちょん、ちょん、と小指サイズほどの肉団子たちが葉っぱのお皿に乗ってやってくる。
「さァさァどうぞ、お気に召すといいけども」
 ――返事はたぶん、キュっと肉団子に抱き着くようにして食べている惟継と、ちゅうちゅうと中の肉を溶解液で溶かしながら吸い上げている遵の様子がすべてだった。

 のんで、たべて、またのんで。
 ちっとも減らない酒でできた水面に、ぽやっとしたトカゲの顔が浮かぶ。
「まるで風呂のようだな」
「ほんとだねぇ」
 実際、二人からしてみればまぁ今の状況、悪くないのである。
 普段のサイズならば酒だって飯だってきっとさっさと飲み食い終わって次へ次へと繰り出しただろうが、しっかり味わいながら少ない量で満足できるのはお得さを感じさせられる。
 いつもよりたくさん楽しみながら――言葉通りに浴びるように酒が飲めて、腹いっぱい食えるのもたまにはよいかもしれない。
「あーあ、でも惟継さん戻っちゃうのはちょっと残念だな。折角小さくて可愛いのに」
「何を言う。不便には変わりないぞ」
 可愛さよりもいかに戦うべき時に戦えるかのほうが惟継には大事なのだった。そんな彼の表情は、トカゲの今はさほど変化がないけれど、なんだか困った顔をしているのだろうなとは遵も想像がつく。
 ふふ、と遵が笑った。ふわふわ、とタランチュラの毛並みがざわめく。
「たまにその格好に化けさせてあげようか。何もないとこから急に雷飛んできたら敵さんびっくりすると思うよ」
「――この姿で戦は勘弁して欲しいが」
「面白いと思うけどなー」
「……まぁ、確かに潜入には活かせるな」
 ぷちっと潰されればひとたまりもないが、潰されないように動けばいいなら奇襲などには役立つかもしれない。人の躰では通れないところを渡るのにも、小ささはやはり求められるだろう。
 あくまで実用的な理論を考え出した惟継の様子を見て、遵はゆったり――彼の難し気な顔が鮮明に思い浮かぶようになってくる。ああ、なぁんだ。もう時間だな――。
「さあて、飲んだら寝よ寝よ」
 ぺしょんと足を延ばして腹をしっかり地につけた蜘蛛の様子を見下ろして、トカゲもそういえば自分の瞼がどんどん落ちてくることに気づく。
 そういえば小さな体でうんと頑張ってしまったのだ――ああ、やっぱり小さくなってしまうといろいろ不便だな――実用は――……。
「――寝て起きた頃には元に戻ってるといいなぁ」
 今は、たぶん考えたところで結論がでないだろうし。
 ぐるぐるとかき混ぜられていく意識を感じながら、くるりとトカゲも全身を丸めて蜘蛛に寄り添っている。
「俺も寝るとするか」
「おやすみい」
「おやすみ」
「起きたらスクラップ漁りに行こうねえ」
「ああ」
 くう、くう。すや、すや。
 ――あっという間に寝息を立ててしまった遵の声色で、意識が落ちていく惟継の脳には彼の寝顔が思い浮かべた気がするのだ。

「あーあ。寝ちまって」
「毛布あるかい、毛布」
「竜神さまも、蜘蛛さんも、お疲れ様ぁ」
 ありがとうね、ありがとねえ。
 寄り添って眠る彼らに、感謝の気持ちと一緒におだやかな夢の世界への切符が渡されたのでした。
 目覚めてもきっと、明日はあるから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

西條・東
【柴と雀】
俺達もそろそろ戻るんだな…ならこの体で温泉に入りてぇな!
『オスカーも温泉いこうぜ!』(尻尾をぱたぱた)
オスカーが沈まないように風呂桶を用意して温泉に向かうぜ

『あったけ~!戦った後の温泉って良いな!』(怪我した尻尾はお湯に浸けないようにピンとしてる)
風呂桶は流されないように固定しよう

ふと、両方に羽根があるの嬉しそうだったなと思い出して、戻ったらオスカーのもう片方の羽根も生えてますように…なんて大変な願いを心の中で呟きながら温泉を楽しむ!

『いい湯だったな~…あふっ…なんか眠くなってきた…落ち着いたからかな…?』
オスカーも眠そうなら敷物が敷いてある所で寝るぜ…次はかっこいいのが良いな…


オスカー・ローレスト
【柴と雀】

温泉……うん、そう、だね……入ろう、か……
……この姿なら、入ってもちぎれた羽の跡、東に見せなくて済むし(心の中で

桶にお湯を入れてもらう形で、温泉、入る、よ……うん、確かに、あったかくて気持ちいい、ね……

ぴ……(傷口に染みないようにしっぽ立ててるのに気づいて申し訳なさそう
こ、これは謝るべき、なのかな……で、でも東は気にしてなさそうだし……ぴぃ……

あ、あったまってきたら眠くなってきちゃった、ね。どこか、休めるところで寝よう、か……元の姿に戻った時のことも考えて、頭には乗らない、よ……(東の傍にちょこんと座って寝る

……元に戻った時、東の傷、少しでも治ってたら、いいな……




 そろそろ元の姿に戻ってしまうなら、折角だからこの体で温泉を楽しもう――なんて提案してくれた友人の気持ちを、無碍にはできなくって。
 オスカー・ローレスト(小さくとも奮う者・f19434)はちゅん、ちゅん、と足を跳ねさせながら西條・東(生まれながらの災厄・f25402)のあとをついていく。
 温泉に行こうぜ!なんて東は言ったのだ。
 無邪気な提案にはオスカーも二つ返事をしそうになってしまうくらい眩しいものがあった。結局、彼の提案には「うん」と返してしまったし、今更やっぱやめたなんて言えない。
 ――この姿なら、ちぎれてしまった羽根の跡を東にまざまざ見せなくて済むだろうし。
 なんでこんなことを考えてしまうのだろう、やっぱりいつまでも卑怯者で、臆病で、情けない。誰が殺した――?
 ぶわ、と体が膨れてふるふるっとゆする。その様子を耳でキャッチした東が、しっかりと口に桶を加えて振り向いた。
「どーした? オスカー。寒い?」
「う……うん、……ちょっと……!」
「お!じゃあ急がないとな。へへっ、案内おねがいしまーす!」
 小さなふたりの温泉旅。はいよぉ、と間延びした猫又の声がして、あらあら可愛いお客さんたちだこと。愛想よく二人にぴったりなお湯を選んで案内してやっていた。

「あ、あったけ~~~……!!!!」
「……うん、確かに、あったかくて気持ちいい、ね……」
 オスカーの体は小さいから、きっと浮力もあるのだけれど。あまりに小さくて流されてしまいそうだから風呂桶の中に猫又がお湯を汲んでくれた。そこにちゃぽり、ちいさなふくらすずめをまずいれてやる。
 温泉にじゃぶじゃぶと先に黒柴が肩まで浸かったら、彼と石で挟むようにして桶を浮かせてばっちり固定してやった。
「あ、……ありがとう、ございます……!」
「ありがとー!」
 いえいえ、どうぞごゆっくり。猫又がにこにことして手を振って立ち去れば、静かな空間と穏やかな時間にふわり、湯気が際立っていく。
「戦った後の温泉って良いな!」
「ぴ……」
 東がわふ!と声を上げれば、オスカーもそれには頷きたかったのだけれど。
 ぴんと立った東の尻尾が気になってしまってしょうがない。「オスカー? 疲れたのか?」と彼の心配を案ずる声も、今のオスカーにはあまり聞こえていなかった。
 温められているから、というわけではない。どくどく、どくどく。小さな心臓が脈打っている。
 ――謝るべき、だろうか。
 ――ここでもお前は謝らないのか?
 ――助けようとしたって?
 ――助けられなかったくせに。
 ――『Who Killed Cock Robin』?
「あの、ねっ……」
 自分の口から飛び出た言葉には、オスカーのほうが驚いた。
 東が「ん?」と首を傾げて、続きを促している。言わなければ、ならない気がした。
「ケガ、が」
「あ、これ? 気にしてないぜ!」
「ちが」
「むしろ、オスカーに何もなくてよかった! 俺はともかく今のオスカーはちっちゃいし」
「そうじゃ、なく、て……」
 ちゃぷ、と桶の中の水面が揺れる。
 どういえばいいんだろう、と惑うオスカーの視線を、じっと東も追いかけていた。
 東が何かを言えば、オスカーが急いで取り繕っているように聞こえる。だから、黙ってあげるのも優しさだろうか――なんて考えていたとき。

「あり、がとう……」

 ぴぃ……と小さな鳴き声と共に、感謝が伝えられる。
 ぴ、ぴ、ぴ、と耳が震えて「おう!」と東が元気よく返事した。
 ――このアクシデントを、なあなあにしていいわけがないと、オスカーは思えたのだ。
 確かに東の善意だ。冷静な状況判断で、彼の言うようにすずめのオスカーが怪我してはきっと失血多量で命も危うかったかもしれない。だから、盾になると判断した東は正しい。
 でも、それを「気にしない」わけにはいかなかった。
 彼の行動を「いけない」と攻めれない。東の行動は確かに優しさからのものだから、オスカーはただ、ほんの一言の謝辞を告げるべきだったのだ。
 彼のいまを、ここにいてくれることを、その傷を、心より申し訳ないと思うなら――「ありがとう」と言ってあげるべきだと、言葉を選んだのである。東には、この臆病な彼の遠回りがどこまで伝わったのかはわからないが――ただ、機嫌よく笑ってくれていた。
「この温泉、薬効? があるらしいぜ!」
「そ、それは……すごいね……!」
「だろ!きっと人間に戻ったころには治ってるんだ」
 ――それが、オスカーの片方の羽根にも、ちょっといい効果が出たらいいなと思ったのは東の内緒ごとだ。
 気にしているのは東も知っていた。むしろ、翼がそろったことが嬉しそうだったふくらすずめの姿を忘れられないのである。ないものを戻してくれなんて、大きすぎる願いかもしれないけれど――でも、それくらいご褒美があってもいいじゃないかと想えている。だって彼がもし、筆を執るなら。そう、書いてあげただろうから。

「いい湯だったな~……」
 んぁふ。
 柴犬の彼が大きなお口をあけてから、まったり閉じたら飲みかけの水をまたぴちゃぴちゃ舐める。
 柴犬のとなり、温泉の休みどころ――畳の敷かれた日よけの傘だけがぶすりと中心に刺された場所にて、外の風を感じながら二人がまったりと過ごす。
「――なんか眠くなってきた……落ち着いたからかな……?」
「あ、あったまってきたら眠くなってきちゃったし、ね……」
 休む場所であるからか、手際よく毛布まで用意されている。
 湯冷めしないよう、もそもそと二人はお互いの毛布をかぶるのだ。小さなからだで寄り添うように、ぺそり、横になって――。
「おやすみ、オスカー」
「おやすみ、……東」
 ――次はかっこいいのがいいな。
 ――東の傷、少しでも治ってたら、いいな。
 ふゃふゃ、すゃすゃ。
 あたたかな春の訪れとともに、さらさらと緑の若葉たちが波を作っていく。
 二人の耳に聞こえるのは、きっと遠くの祭り囃子ではなくてお互いの寝息だっただろうか――お疲れさまでした、どうぞ、傷が癒えていますように。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジェイ・バグショット
【五万円】◎

元に戻らねぇじゃん…
狼耳をぴるると動かし
くぁ…と欠伸

慣れちまえば姿なんてどうでもいいわ
狼なんて人間の時より速く動けて便利なくらいだ
鼻も耳も良いしよ

酒飲みてぇなぁ…
真を睥睨するも酒には釣られる
体裁を気にするタチでもないし
このまま呑んでやってもイイ

そういえば俺にご褒美は?
犬どもにはやってたろ
図太くねだるのも戯れの内

振る舞いはいつも通りのはずなのに
欲しい"ご褒美"につい反応
言葉以上に尾に感情が出てしまう
こりゃあ俺の長所が台無しだな…
言葉遊びも出来やしない

ぐるると喉を鳴らすとささやかな反抗
ご褒美ごと掌を甘噛みしようと
ワリーな、俺は躾もなってないもんで

ご褒美が一粒なんてケチじゃねーの、真様?


久澄・真
【五万円】◎

なんだ
気に入ったならそのままでいーんじゃねぇの

ん?…なんか俺は戻ったわ
変温動物は気温変化に耐えられなかったんかね
悪ぃな、お先ー
オアズケ喰らってた害煙を目一杯に吸い込んで
長く吐き出した

酒飲みてぇの?ほらよ、どうぞ
と酒を注いだ皿を地面へ
さてと飲むのかどうか見ものだな?ククッ

あーご褒美ねぇ
ぐるり辺りを見回す
妖怪の血でも調達してきてやろうか?
それともー…俺のがい?
ぶちり、握る掌の皮を爪が突き破る感触
一粒流れた血が手の甲で留まる

…クッ、ぶはは!
尻尾が随分と素直だなぁジェイ
こりゃ良いと眺め酒を煽った

こいつに噛まれるのは初めてじゃないが
ったく、マテも出来ねぇのか?
クハッ!図々しい駄犬だことで。




 くあぁ~ぉ。
「……元に戻らねぇじゃん」
 ジェイ・バグショット(幕引き・f01070)はいまだにオオカミのまま。黒い毛並みの大きな三角のお耳がぴるると動いて、大あくびをする彼の機嫌をうつすよう。
 正直、今の姿もどうでもよい。もうジェイはすっかり慣れてしまった――人間の姿であるときよりも早く動けて便利だし、耳も鼻もよいなら申し分ないねとすら思えてくる。
 がしがしと後ろ足で下あごを掻く彼の姿が、本当にさっぱりオオカミに見えてしまって久澄・真(○●○・f13102)は思わずニヤリとしてしまう。
「ん?」
 気に入ったらそのままでいーんじゃねぇの、なんて軽口をたたいた時だった。蛇は嗤わない。笑えない。
「……なんか俺は戻ったわ」
「なんだそりゃ。コツでもあんのか」ふす、と鼻を鳴らすオオカミの金色の瞳を覗き込めば、いつもの真が映っていた。うーん、整った顔立ちだことなんて言いながらていねいに両頬の輪郭を指先でなぞり、瞬きを二度してオオカミの顔からは離れる。
「変温動物は気温変化に耐えられなかったんかね」
 たぶんそうだとおもいます。
 春は気温の変化も激しいとはいうけれど、すっかり夜も明けたこの世界は陽気なんかに包まれていて。
「悪ぃな、お先ー」
「どーぞ」
 隣で尻尾をたらりと地面に垂らしたオオカミの顔はちょっぴりスネているようにも見えるし、たいして気にしていないようにも思える。待ちわびた体に悪い煙を肺いっぱいに満たして、ぷはぁー……と長く真は至福のひと時を味わうのだ。
 体からしちゃ散々だったけれど、目の前の男が畜生の姿から戻れないのはちょっぴり愉快でもある。
 ふすふすと煙の香りを嗅いで副流煙を味わったのなら、ジェイがぐるると喉を小さく鳴らした。
「酒飲みてぇなぁ」
「酒飲みてぇの? ――ほらよ、どうぞ」
 ちょうどよく盃に盛られた、真が嗅いでもすぐにわかるほど高級な日本酒があった。
 真っ赤なそれをスライドさせて、どうぞどうぞとジェイの前に置いてやる。
 さながら――犬に水を遣る飼い主のよう。金色の瞳が少し、細められて真を見た。
 が。
「オイオイ、躊躇いねぇなァ」
「今更だろ」
「かわいげもねェ」
 がぶがぶと口をつけてそれを呑むオオカミの後頭部には、ちょっぴり引き気味である。
 まあ確かに――ジェイがそういうことを気にするタチかといわれれば、いやそうでもないかと頭で決着はついた。からかい甲斐はないけれど、張り合いはある男ではあるし。
「そういえば」
「あァ?」
「俺にご褒美は? 犬どもにはやってたろ」
 ――なんの話しかは忘れていない。
 真は金の貸し借りはちゃぁんと揃えて覚えているように、相手から求められていることも大体は想像がつく利口な頭をもっている。犬たちにくれてやったのを、このジェイにもやってやればいいだけだとも。しかし、それではまるでつまらないのだ。
「あーご褒美ねぇ」
 わざとらしく肩を一度すくめてから、すとんと落としてぐるり、あたりを見回す。
「妖怪の血でも調達してきてやろうか?」
 そこいらにたくさんいる彼らだって、血くらいは流れているだろうなんて笑えない冗句だろうか。もちろん本気の提案ではないから、真だってあっさりと流し見るだけである。
 ――それとも。
 見せつけるように褐色の掌が、ぱっとジェイの鼻先で開かれた。
 それから、ゆっくりと細い五指が一本ずつ折れていく。確かめるようにぎゅうっと握りこまれた。ぶつ、と皮が鋭い爪で裂け、き、ぎ、と関節のきしむ音は真が男の力で掌を圧迫している故に立てられる。
 ほんの一粒――それが、掌を伝い、拳にとどまり雫のように在ったら。

「……俺のがいい?」

 ジェイの金色に、真っ赤な月が浮かんだよう。
「――クッ、ぶはは!」
「あぁ?」
 思わず、ジェイも己の尻尾には不満げな声を出してしまうというもので。
 尾を追いかける犬もこんな気持ちなのだろうか。ジェイ自身は図太く、しかし欲しいものは必ず手に入れてやろうと構えていたのだけれど、振り返れば尻尾はどうやらそうはいかずぶんぶんと右へ左へと激しく動くではないか。
「はぁ……おいおい、こりゃあ俺の長所が台無しだ。言葉遊びも出来やしない」
「こりゃ良い!ハハハッ、いいね、素直だこと!」
 赤い敷物の外にはえたつくしに往復びんたをする尻尾から、嗤いながら酒をあおった真をにらむ。
 ぐるる、と喉を鳴らして――のそり、大きな体が動き出した。
「おッと」
 ぐぱ、と開かれたあぎとは予想よりも大きい。真の握りこんだ手をほどくように、牙が撫ぜていく。あじあじと優しくかんだかと思えば、舌をぬろりと這わせてあっという間に華奢な指を開かせていた。
「ったく、マテも出来ねぇのか?」
「ワリーな、俺は躾もなってないもんで」
「クハッ!図々しい駄犬だことで」
 がるる、ぅるる。楽しむような喉の音を響かせるジェイに――噛まれたことは一度ではない。
 だからこそ、ほとんど抵抗なく真も舐めさせてやれるのだ。これが彼でなければ、きっと顎を蹴り飛ばしていたに違いないから。
 ジェイは滴る赤を一粒くまなくなめとったらごくりと喉に送る。赤色で思い出すのだ――ひとのすがたを、その螺旋を、そのかたちを、取り戻す。

「あーら」
 どかりと座っていた真を見下ろす様に、オオカミからぶわりと黒が一度盛り上がったかと思いきや――そこには、真っ黒な髪と虚弱色の肌をした男が立っていた。
 ぎらりと金色の瞳が鈍く輝いていて、いつも通りの彼がいる。
「なァにマジになってんの」
「ハ、もう終いだってことだよ」
 ゆっくりと見上げる赤に視線を合わせようと、黒い背中が丸まっていく。
 骨ばった褐色の手を握っても、抵抗は見られない。先ほどそうされたように、赤の色に映る己の姿を――ジェイが認めてから。

「ご褒美が一粒なんてケチじゃねーの、真様?」

 低く唸る男の声は、オオカミよりも獣らしかっただろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

佐那・千之助
クロト(f00472)、もふもふ天国じゃ!
人の概念は蒸発したまま猫姿

仔猫を咥えて天高く舞い上がり
山のようなもふもふ、化け猫妖怪さんへダーイブ
化け猫さん、あそんであそんで!
いい?やったー
ころころふかふか
仔猫も道連れ
もふもふでもふもふするともうすっごいもふもふ
滑り台みたいに背を滑り
落ちる前に沢山のしっぽでひょーいと無げ戻されて
かわいいたのしいきもちいい最高
もふもふはきっとマタタビより効く
やめられぬ~

クロト、どうじゃ?
こういうのいつももふらず眺めておるじゃろ
このもふもふは唯の動物でなく懐の深い妖怪さん
きっと優しく受けとめてくれる

天使が生まれた!
と思ったら人に戻ったクロト!不変の可愛さ…
え?私も?
あ~


クロト・ラトキエ
千之助(f00454)…
理性まで蒸発…してませんよね?
何でまだねここねこ。
仔猫…ドウシテ…
(※戦闘サボってたからかな!

この姿では歩くのも儘なりませんし、
運んで貰うしか
――!?
突然の跳躍!
そして柔い何かに激突!?
千之助に咥えられたまま、
あぁー…(ころころ
ぅなー…(ふかふか
ふぁー…(すべるー
…もふのゲシュタルト崩壊!
知った顔には見せられない姿!

…はい。
きっと起こり得ぬ体験ですし、気持ちいいですし、
楽しいと、思います…。
僕は生き物には嫌われる性質だから。
気を遣ってくれてる事も解――

どろんぱっぱ!

あ。戻った…。
橙色の猫を見てニッコリ。
では懐の深い猫さんと君に、心ゆくまでもふもふさせて頂きましょうかね~




「クロト、――もふもふ天国じゃ!!」
「千之助……理性まで蒸発……してませんよね?」
 クロト・ラトキエ(TTX・f00472)、真に遺憾の意であった。
 周りの猟兵たちも妖怪たちもどんどん本来の姿に戻っていくというのに、クロトと佐那・千之助(火輪・f00454)はちっともその片鱗が見えやしないのだ。まあ戦闘サボってたらね!しょうがないね!ちっちゃくてかわいいネコチャンではたたかうの、むずかしいからね……(???)
「ドウシテ……」ちったい両手足を眺めて、アラフォーのちょっとした嘆き。おかしいな……涙なんてもう渇いているとおもうのだけど……まあ、ともかく。
 歩くのも心もとないやわやわ赤ちゃんネコチャンボディである。ちょっとあるけばポテンとお尻がさがって足腰の弱さ……もとい、未熟さを晒すわけにもいかなかった。千之助がご機嫌にクロトの首根っこをくわえてしたした歩く。
 頼りになる炎色の毛並みには、なんだか照れ臭いような、だからこそ頼れる説得力が感じられて――それもまた、にゃんだかおはずかしい。

「――わ!!!??」

 と思っていたら。
 クロトは――自分の体が風圧にかられて浮いていたのを悟る。アレッ おかしい さっきまで……なんだか恥ずかしいけど穏やかな二人の時間だったはずなのに……。
「化け猫さん、あそんであそんで!」
「せ、千之助―――――――!!?!!?!?!」
 まっっっっっっっ…………ふぅうううううううううん………。
 なにかしらに激突したらしいが、ネコ二匹を受け止めるほどのやぁらかいものであるらしい。毛並みが視界でふわわっとざわめいて、低いごろごろとした音が鳴り響く。
「な、なにを、いったい……?」クロトが動揺するのもおかまいなく、あたたかさがゆっくりうごめいた。
「おやァ、なんだい。ちっこい子じゃァないか、かまわんよ」
「いい?やったー!」
 大きな年老いた化け猫が、二人を背に乗せてにんまりと笑っている。
 ひげを広げてこんにちは。かろうじて毛並みから視認できるのは大きさ的に千之助のみだ。「やめられぬ、このもふもふ……」ぐるぐるすりすりと毛並みにじゃれつく猫と子猫程度、何の重しにもならないのである。
「ミケさんや、あんたは大丈夫そうだねェ」
「こんな子ら、まだまだかわいいもんよ」山とはいかずとも、樹ほどはありそうな大きなミケ。ぐるるぁ~おと愛想よく鳴いている彼女から見ればまだまだ幼い二人の戯れ程度、まだまだ序の口であるのだとか。
 ころり。
「あぁー……」
 ふぁっふぁっ。
「ぅなー……」
 尻尾の滑り台でしゅるーん。
「ふぁー……」
 落ちそうになる前にひょいと尻尾で投げ戻され、またふかりと首の毛並みに埋もれた。穏やかな温度とおばあちゃんのかほり……そしてもふもふとお日様のあたたかさ……。
「マタタビより効くのう」
「……もふのゲシュタルト崩壊!」

 >>>>>ど う せ す べ て が モ フ に な る !!!<<<<<

 ふぁふぁの感覚に全身を包まれ、いろんなところがゆるゆるになってまんまるぽんぽこりんのお腹を晒した二人の姿、見知った顔には見せられぬ……。
 ふぁあ、とあくびをした千之助が、自分の傍でころがる小さなけだまをじいっと見つめる。
「クロト、どうじゃ? こういうのいつももふらず眺めておるじゃろ」
 ――クロトは、あまり動物に好かれるたちではない。
「……はい」
 だから、これは起こり得ぬ体験なのだ。
 動物は人間のように言葉を持たないが、代わりにお互いの機敏を察知するために洞察力や感覚の点において長けている。クロトがいくらもふもふたちを可愛いと思っても、もふもふたちはそっとクロトから距離を置いてしまうのだ。
 ――血が奥まで染みついた人間など、おそろしいものでしかない。
「気を遣ってくれてる事も解――」
「気にするでない」ぶるるぁお、と二人を包むけだまから声がする。ミケのしゃがれたそれだった。
「お前のような人間程度、化け猫人生にくらべればかわいいものよ」
 小さな黒猫を覗き込むように、おおきな巨体が動いた。
 くぁ、と開かれた口内がまるで、人を食ったかのように真っ赤で――。

 どろんぱっぱ!

「あ」
「天使じゃ!天使が生まれてしもうた!!おお!!」
 カ、カ、カ、と噎せるようにミケが笑い、クロトがまじまじと自分の両手や足先を見る。それから、その周りをぐにゃぐにゃと体をくねらせながら千之助が右往左往。
「おお……なんと、クロト……不変のかわいさ……」
「――千之助……」
 あぐらをかいてミケの背中にお世話になりながら、そんなクロトの足でうにょんうにょんとうどんのようにからだをやわこくしながら∞マークを背中で描き続ける千之助の姿を見下ろして、おもわず「はは」と笑ってしまう。
 むんず、とうごめく胴体を両手で捕まえて、ゆっくり持ち上げた。てろ~んと伸びるやわこい猫の姿が、きょとんとした顔でひくひく、おひげを動かして――。
「では。懐の深い猫さんと君に、心ゆくまでもふもふさせて頂きましょうかね~」
「え? 私も?」
 そんな橙色の彼のいとおしいおなかに、顔からもふーん。
 それから、背中から大きな彼女にぼふーん。
「あ~」ゴロゴロゴロゴロゴロモフー……。
 むちゃくちゃにモフられる千之助も、まんざらではないお声。千之助もクロト大好きなのでしょうがないね。ふゃふゃなお顔はきっと独り占め。きゅっと抱きしめるように頭にはりついて、喉の奥の奥からぐるぐるぐる、ごろごろごろ。どんなクロトもかわいくてしょうがないものだから、ついつい甘えた音が出てしまってもご愛敬。
 ――いいのだろうか、いいんじゃないかな。もふもふのあたたかい天国に包まれて、血腥い日々からはちょっと遠く。今は、大好きなぬくもりと、優しい色に甘える時間としてきっと刻まれたことでしょう。
 大きな化け猫、ミケの背中は確かに二人の宴の場となっていたのでした。ふゃ~お。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

旭・まどか
クラウン(f03642)と◎

お疲れさま
無事に事無く終えられた様で何より
――君の姿もね

いつもの見慣れた姿を眇め
やはり君はそれが一番良い、と

僕はもう少し掛かるみたい
二本で立つ脚も服も元通りだけれど
獣の前足は未だ健在で背後の尾も呼吸に合わせて左右に揺れる

嗚呼、僕も早く戻りたい
握り返せずとも君が此の手を引いてくれはするけれど
やはり繋ぎ返せないのは心許ない
――なんて、勿論表には出さないけれど

初舞台を終えた新人を労ってはくれないの?
冗談交じりに休憩の催促
もふれとばかりに鼻先を寄せる妖を肉球でぽふり
あれ食べたい、と目線で御馳走を示せば
差し出されるは君の匙

君は良いの?
僕の尻尾は高いよ
未だ在る獣の名残を揺らそう


クラウン・メリー
まどか(f18469)と

わあ!人に戻っちゃった!
ふふー、オカメインコさんもアシカさんも楽しかったな!

えへへ、ほんと?

まどかは戻れたかな?と視線を向ければ
わ、まどかはまだ狼さんだ!
俺もまだ動物さんの姿でいたかったな!

でもね、人に戻れて良かった!
君の手をそっと繋ごうとして

だって君の手を握れるんだもん!
ふふ、今は肉球かな?

ね、妖怪さん達ともふもふする?
それともまたどんちゃん騒ぎしたり
みんなといっしょに愉快なショーをしちゃう?

そうだね!休憩しよっか!
羽根でも鰭でもなく自分の手で君に触れようと
まどか、甘いもの食べる?あーんしてあげる!

俺はみんなの笑顔が見れたからお腹いっぱい!
だからまどかをもふもふする!




 どろんぱっぱ!
「わあ!人に戻っちゃった!」
 ショーの時間はもうおしまい。ならば演者にはいつもの姿に戻ってもらわないと――無事にショーも終わって打ち上げの時間なのだから。
 クラウン・メリー(愉快なピエロ・f03642)の姿はいつもの彼の通りだった。派手なフェイスアートと、無邪気で可愛らしい彼そのものの姿。確かに、オカメインコにもアシカにもなってしまえるのは本当に楽しかったけれど、やっぱり自分といえばこの姿がしっくりきてしまう。確かめるように何度か手を握って、開いて、それから――。
「お疲れさま。無事に事無く終えられた様で何より――君の姿もね」
「まどか!――わ」
  旭・まどか(MementoMori・f18469)は、するりとクラウンの傍にやってくる。
  道化師らしく大げさに驚いた仕草があったけれど、それは本当に驚いているからであろう。まどかの姿は、クラウンのようにまだ完全な人には至っていない。
「まどかはまだ狼さんだ!」
「僕はもう少し掛かるみたい」
 半分獣、といえばいいのか。二本で立つ足も、服もいつも通りなのに、やっぱり獣の前足は健在だからきっと上半身と尻尾だけが残ってしまっている。不思議そうに、オオカミの鼻で前足を嗅いでみたりした。
「俺もまだ動物さんの姿でいたかったな!」
「――君はそれが一番良いよ」
「え?」
「なんでも」
 小さな声で紡がれた言葉は、喧騒にもまれてクラウンには届かなかった。別に届かなくても構いやしないまどかだけれど、なんだかちょっとむず痒いような心地がする。
 ゆるりと首を振るオオカミがそれ以上を追求しないのなら、クラウンもしつこく聞き返す必要もない。呼吸に合わせてゆらゆらと左右に揺れる尻尾がなくたって、まどかの気持ちはなんとなくくみ取れるのだから。
「でもね、人に戻れて良かったって思うんだよ!」
「へえ」
「だって君の手を握れるんだもん!」
 きゅ、と握り返せないけものの手を握られる。
 からからと笑うクラウンの顔は、にぎやかだけれど――まどかの視線から見れば、どこか朝日より少し穏やかなひかりに思えた。
 握り返せないことを気にしないからこそ、まどかは彼の前でまどからしくあることを辛いと思わない。もとより、人にへらへらとはできないたちだ。傲慢で高飛車、繊細な外見であるのに「かわいげのない」子供。
 不躾で粗忽な過干渉を、何よりも厭い――孤高であるこの不器用な彼が、たとえ獣の手でなくても道化師の手を握り返せたかといえば、きっと今までならわからなかった。だけど、今日は――心もとなく思ってしまう。
「上手だね」
 もちろん、表には出さないけれど。
「ええっ、本心だよっ!?ほら。握れるし」
「はいはい、わかったわかった」
 ふすんと鼻を鳴らすオオカミのいじわるな声も、なんだかクラウンには心地よくって。表情すら今はもう曖昧な姿のまどかと戯れられるのは、きっと彼だけなのかもしれなかった。だって――道化師は一人でも楽しいものだから。

「ね、妖怪さん達ともふもふする? それともまたどんちゃん騒ぎしたり、みんなといっしょに愉快なショーをしちゃう?」
 あたりはすっかりお祭りムード。あっちではパレード、こっちでは酒盛りのデッドヒート。わいわいがやがやと騒ぎに騒いでいるけれど、朝っぱらから呑んではぴすぴす眠る妖怪も猟兵もたくさん見える。何をしてもきっと今なら笑いをとれる絶好のチャンスとムードに、クラウンは両眼をキラキラさせながらまどかにたずねた。
「初舞台を終えた新人を労ってはくれないの?」
 もふらせろ~と言いたげな一反木綿には前足の肉球ぽふり。ああ~~……としあわせな悲鳴を上げて墜落する彼を視線で見送って、まどかのおねだりは冗談交じりなものだった。
「――はは!そうだね!休憩しよっか!」
 よくわかってるじゃないか、と耳がぴこぴこ。尻尾もちょっとふりふり。
 まどかにはたくさん働いてもらったからねなんて冗談もつけて、クラウンはまどかの目線をちらりと見て、その先にあったごちそうを手に取る。
「まどか、甘いもの食べる? あーんしてあげる!」
 ぱ、と両手いっぱいにケーキを持ってきたクラウンだ。それはUDCアースではちょっと古めなデザインというべきか――乗せられた砂糖菓子やラッピングに年季を感じる。
 それでも味は申し分ないのであろう、みずみずしいイチゴの色と、真っ白な生クリームはいかにもおいしそうで。
「いただくよ」と言ったまどかの鼻でもわかってしまうくらい、よいものである。
 座った二人で向かい合い、獣の口に丁寧にフォークで切り分けて、クラウンが甲斐甲斐しく運んでいく。
 羽でも、ヒレでもない。人間らしい自分の手でまどかに触れればなんだかいつもより暖かい気がしてしまうのは、どうしてだろう――。
「あーん」
 クラウンの合図と一緒に口を開けたまどかも気分はよさそうで。
「君は良いの?」なんて自分のごちそうを分ける一言をかけるくらい。
「俺はみんなの笑顔が見れたからお腹いっぱい!」
「そう」
 人の笑いで満たされるなんて、オラトリオは不思議だねなんてまどかは思うのだけれど――まあ、彼がそれでいいというならいいのだろう。ケーキをもぐもぐ、ぺろぺろと上顎を舐めるまどかの姿を見るクラウンの顔は、幸せそうであったから。
「――だから、まどかをもふもふする!」
 と思いきや。
 全く退屈させてくれない道化である。ぱあっと笑って、さっぱりケーキの消えたお皿とフォークを敷物の上に置いたなら、後ろに回って彼の尻尾を両手で抱える。
「僕の尻尾は高いよ」
「え~? ちなみに、ケーキ何個分?」
「……僕が満足する分かな」
「ふふふ! いくらでも運んできちゃうよ」
 もふもふ、ふわふわ。クラウンの顔を撫ぜるように尻尾を動かして、彼の鼻っ面をくすぐったり、前髪をもてあそんだり。
「あはは、まどか。器用だねぇ」
「そう。まあ、――君ほどじゃないさ」
 必ず笑顔を齎せてくれる、不思議なピエロに。
 これはほんのチップ程度なのだからと、オオカミの尾は優し気に触れていた。――魔法が解ける、そのときまで。
 穏やかでささやかな二人の打ち上げをどうか、たのしんでいて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

コノハ・ライゼ
🐾
【紫翠】◎

想いが戻ったのは良かったケド、元に戻るのはなんだかまだ勿体ないわねぇ
猫コンビネーション楽しかったなあとか思ってた所為か、ジュジュちゃんが戻っても自分は戻らず
それどころか別の動物になっちゃった?

あは、ソレならソレで楽しまなくっちゃ!
酒宴に混ざってジュジュちゃん達のショーを観覧
たまにはすっかりお客サン気分もイイねぇ
色んな妖怪サンと話しては、アナタイケてるわね!ナンて誉めたら
似た動物にまたどろんと化けちゃったり
化けてはジュジュちゃん達に合いの手や歓声送ったり

うさちゃんからお花を受け取ったらまたまたどろん
魔法が解けるように元の姿へ――
とかなったら、ショーとしても面白いンじゃなくて?


ジュジュ・ブランロジエ
【紫翠】◎
『』は裏声でメボンゴの台詞

やっと人間に戻った!
猫も楽しかったけどやっぱり人間の方がメボンゴを操り易くていいな
あっ、コノさんは別の動物になったね
ふふふ、面白〜い

さてさて、宴にはショーが必要でしょ?
『盛り上げちゃうよ!』
人形劇と手品を披露

メボンゴのおててにご注目
このハンカチをかけて、1、2、3!
……じゃーん!花束はこっちでーす!
(メボンゴに注目させておいて自分が花束を出す)

『今度こそメボンゴがお花出すよ!』
蝋燭の炎に紙を翳した途端に燃え上がり薔薇が出現
炎に気を取られた隙に隠し持った薔薇を出すだけの簡単な手品だけどそれをメボンゴがやるっていうのはすごいと思うの
『お花、コノちゃにあげる〜!』




 ――想いが戻ったのはいいけれど、なんだかもとに戻ってしまうのはまだまだ勿体ない気がしちゃう。
 ねこねこコンビネーション楽しかったのになぁなんて心の底で思っていたものだから、コノハ・ライゼ(空々・f03130)は獣の姿から戻れないままでいた。
「あらあら」
「やっと人間に戻った――ってあれ、コノさん?」
 猫も愉しかったけれど、やっぱり自分の姿は指先器用な人間のそれが一番しっくりくる気がするのである。ジュジュ・ブランロジエ(白薔薇の人形遣い・f01079)は久しぶりの指先の感覚は、相棒のメボンゴをしっかりと理想通りの姿に操ってくれる。背負ってばかりいたウサギにほつれがないかどうか確認して、よしと顔を上げたらコノハの有様がそんなかんじだったので。
 ――コノハは、ジャッカルになっていた。
 死肉を漁るジャッカルの姿は、死に関係する神ともよく結び付けられるのだけれど彼らを犬か狐かオオカミかで割り振るなら、一応小型のオオカミだ。狐には絶対にならないであろうコノハのつよい意志がきっと作用してる。そんな気がいたします。
「こんどはイヌになっちゃったわァ」
 たのしげにぴょんぴょん!跳ねてみた。先手「イヌ」刷り込み成功!!ジュジュも「ワンちゃんだねぇ」とにっこにこである。さっきまで猫だったから犬になってもね、さほどそんな違和感ないしね(?)。
「ふふふ、面白~い」
「せっかくだもの、楽しまなくっちゃぁ!」
 それはそれ。これはこれ。きゃっきゃとはしゃぐ犬の姿に、ジュジュもうんうんと頷いて――そういえば、楽しませるといえば彼女にとっては。

「『盛り上げちゃうよ!』」

 わぁ、っと歓声があがった。
 おもてなしをする妖怪たちに甘えては、奇術師らしくない。誰もに笑顔を運ぶことこそジュジュの本業なのだ。ここは任せていただきたいとひとつそれっぽくお辞儀をしたのなら、めくるめくメボンゴと織りなすショーのご開幕!
 腹話術だけは若干不得手なのもご愛敬。まず最初のつかみは、わはは!と笑いだす妖怪たちの「いいぞいいぞ!」ですべてオーケイ。
 マジックとは、繊細なものである。
 一つの掛け違えが起きるとタネがおじゃんになってしまう。だから、うんと相手を油断させてからの不意打ちの連続といえばわかりやすい。今、メボンゴを使った腹話術で妖怪たちの油断を誘ったのなら3,2,1の合図で噎せたジュジュの口から万国旗。
「わあ、なんだありゃ」
「ずっと呑んでたのか?」
「ばぁか!そんなわけあるかよ!」
 すっかり驚くことに夢中になってしまった妖怪たちは、西から東までもうジュジュに釘付けだ。
「――たまにはすっかりお客サン気分もイイねぇ」
 そして、ライゼはその波の中に居る。
 妖怪たちをたった一瞬でまとめてしまえるジュジュの手さばきは本当に美しいものだ。いつもは助手や共演者として舞台に上がる彼も、こうして客観的にジュジュのおもてなしを見ていれば、毒気も戦闘狂いもどこへやら。
 『どこにもない』彼ですら、『そこにある』ものに夢中になってしまうほど。
「あら、アナタイケてるわねぇ」
「えっ?」
 さて、とはいえ。じいっとあまりジュジュの方を見られては、酒の席の即興奇術は暴かれないように。注視するカマイタチの三兄弟にジャッカルが話しかけたらどろんぱっぱ!
「こンな感じかしら?」
「わあ!」「四人になっちまった!」
 指さしあってびっくりぎょうてん。くすくすと笑って「これもマジック?」なんて観客席からのライゼの声。
 ――ジュジュがその声に気づいて、にこりと笑ってからメボンゴと視線を合わせた。
「メボンゴ、私に内緒でお客さんに魔法をかけたの?」
「『人聞き悪いなぁ、ジュジュ。勝手にお客さんをとっちゃったからって機嫌を悪くしないで?』」
「答えになってないよ!――もう、メボンゴったら。知らない」
「『お花をあげるよ! だから機嫌なおして?』」
 もごもごの茶番劇には妖怪たちのわはは笑いとにやにや笑い。ダメじゃん、お客さんとっちゃったら~ほら~、ジュジュちゃんスネちまったぞ~!なんて笑いが出てきて、それでも期待に満ちた目がそれぞれ集まっている。
 ――なら。
 メボンゴの手に注目させて、ハンカチをかける。
 1,2,3――丁寧に指先でハンカチをたたいたのなら。
「――もうお花は間に合ってるよ!」
 ぱっ!と花束が現れたのはジュジュの手であった。
 わぁあ、どうなってるんだとはしゃぐ妖怪たちはやっぱり奇術に疎いらしい。
 あれは確かこれがこうなってるんだっけ……と思い出そうとする西洋妖怪も、さすがにトレンド奇術師のジュジュのしかけはわかりきることもできなくって。
「『もう一度チャンスをちょうだい!』」とわきわき動くメボンゴに、がんばれ~!なんて声も聞こえてくる。
 その間もライゼはいろんなお客さんの集中力が切れないように、どろんぱっぱ、どろんぱっぱ。最終的にはゲコゲコ大ガエルの姿になってけらけらと笑いながらショーを見守っていた時だ。
 ぱちり、とジュジュにウインクを送れば、視界の端でとらえたジュジュは、視線をメボンゴからそらさなくても意図を理解する。
「――そう、じゃあもう一回だけだよ?」
「『わあ、ありがとうジュジュ!』」
 メボンゴに紙きれを一枚。裏も表も何もないただの紙切れであることをお客さんにアピールしたなら、化け猫の手も借りてろうそくの炎を持ってきてもらう。もちろん運んでくるこの妖怪も何も知らされていない。どきどきとした化け猫の顔がかわいらしかった。
 ――すると、紙をかざした途端にぶぁっ!!と激しく炎が燃え上がる!!
 わぁっと声を上げた妖怪たちはすっかり炎を見ていたから、隠し持ったジュジュの薔薇には気づかない。次にメボンゴが手にしたのは、真っ赤な一輪のそれ――。
 ぱちぱちぱち、と激しく拍手が起こる中メボンゴは意地悪な声を紡ぐのだ。
「『――でも、ジュジュはもうお花持ってるもんね』」
「まあね。私のはもう間に合っちゃった」
「『じゃあ――』」
 くるり、二人で最後は踵でターン。体ごと、大ガエルになったライゼに向けられる。

「『お花、コノちゃにあげる〜!』」

 真っ赤な薔薇を差し出された素敵な彼に、感謝のあかいろ。
 どろんぱっぱ!魔法が解けるように、無垢な少女らに差し出された花を手にした美しい青年が現れたのでした――。
「素敵なショーをありがとう、奇術師サン」
 くすりと笑った騙し人の顔も、ずいぶん満足そうで。ふふふ!とメボンゴとジュジュが笑えばショーの完成だ。すごいね、すごいね!と手を叩く妖怪たちも新しい驚きの形を知ってゆく。
 ――いつでもどんな時も、どんなひとにも驚きと喜びを忘れない。
「まさか俺たちが化かされるたぁ」
「おどろいた、ほんとにおどろいた!」

 きっと、妖怪たちにも忘れられない、楽しい思い出になったでしょう!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロキ・バロックヒート
ティアちゃん(f26360)と

これにて一件落着だね
あれ?元の姿ってなんだったっけ?
まあいっか~ティアちゃんかわいいから

でも結構もどかしいんだよね
すごーく頑張ってくれたねってよしよしするのもたいへん
うっかり壊しちゃいそう
ほんと?壊れない?
がうがうごろごろ鳴いて
羽根を撫でたり桃色お腹とほっぺをつついたりしたいなぁ
そうそうこんな感じに…
あ、俺様元に戻ってるや
ふふふありがと
俺様もどっちのティアちゃんも好きー

ねぇねぇおいでよ、手に乗って
かわい~って思う存分よしよしする
もうこの姿のままでいない?ずっと可愛がってあげる
うそうそ
このまま手を繋げないのも寂しいから
じゃああともうちょっとだけ
ちいさい君を愛でたいな


ティア・メル
ロキちゃん(f25190)と
姿はそのままに

一件落着っ
んふふ、いっぱい騒いで歌って楽しんでたら
あっという間だったんだよ
んに、元の姿ってなんだっけ?
まあ、いっか
ロキちゃんに可愛がってもらえるもんね

にゃはは
ぼくは簡単に壊れたりしないよん
ぴるぴるぴるる
戻って良かったねって鳴く
うんうん、ロキちゃんだ
どっちのロキちゃんも好きだよ

手の上にぴょんぴょんと乗って
わわ、ふふふーすごく安心するんだよ
人の手の温もりだ
このままー?
んにに、少し悩んじゃう
でもやっぱりぼくも元に戻りたいな
これじゃあロキちゃんと手を繋げないからね
甘い飴玉みたいなぼくに戻らないと

でももう少しだけ
掌に擦り寄って甘えちゃおう
ぴるぴるぴるる




「これにて一件落着だね」
「一見落着っ」
 ――呑んでさわいで、歌って遊んで。
 ロキ・バロックヒート(深淵を覗く・f25190)とティア・メル(きゃんでぃぞるぶ・f26360)といえば、この依頼でもずっと彼らのペースで楽しく遊んでいたものだから。いえいえちゃんと仕事もやってくれていたんですけどね。
「んふふ、あっという間だったんだよ」
 ぴるぷる、ティアが嬉しそうにハミングするなら、それを見たロキも大きな黒獅子の姿のままにぐるぐると喉を鳴らして頷いた。
「ほんとぉ、あっという間だったね」
「ねー」
 ぴゅいぴゅい、ちちち。穏やかな桃色の毛皮は、もうお酒も抜けたみたい。
 さっきよりはまだ鮮明な歌声に、心地よさそうにロキのまぁるいお耳がぴるぴる動いて、ああそういえばと小首をかしげる。
「……元の姿ってなんだっけ」
「んに?」
 周りはどんどんどろんぱっぱ。獣の姿から取り戻した人間の体でそれぞれ宴の準備とか、わいわいきゃあきゃあとそれぞれ楽しんでいるのだけど――ロキとティアにはさっぱりそんな気配がないどころか、自分の姿があんまり思い出せないでいる。なんだったかなぁ、どうだったかなぁ。
「まぁいっか~ティアちゃんかわいいから」
「えへへ!まぁ、いっかぁ」
 ロキちゃんに可愛がってもらえるもんねぇなんてニコニコしていて。
 正直危機感なんかはティアから一番遠い感情なのだ。かわいければいいじゃないですか、何でも丸く収まる。古事記にもそう書いています。
「でも結構もどかしいんだよね」
「そーなの?」
 じいっと地面に伏せたライオンが、モモイロインコを見上げる。
 ふわふわもこもこのお腹から顔にかけてが、鼻息だけでふあふあと広がるのだもの。そりゃあ、ロキだって気が気でない。いくら神様で、有象無象をプチっとやってしまうのが日常だったとしてもティア相手にそれは好ましいことではないのだ。ロキは邪神なので、よいものは残したいのである。神ならまんべんなく愛して潰すと思いますので……。
「すごーく頑張ってくれたねってよしよしするのもたいへん。うっかり壊しちゃいそう」
「にゃはは、ぼくは簡単に壊れたりしないよん」
 ティアは怖いもの知らずである。
「ほんと? 壊れない?」
 おずおず、がうがう、ごろごろ。快楽主義の裸足のかみさま、ちょっぴり不安げに。でも、自分の欲は我慢できずにモモイロインコにこてりとあおむけになって問うてみる。
「ほんと、ほんと!」
 無垢は罪。
 そんなはずがないけれど、ティアはロキのことを信じてくれているので、ロキも信じるしかあるまい。おそるおそるあおむけの視界のまま、ゆっくり指を伸ばした。
 ――羽根をさわさわ。
 ほっぺつんつん。
 桃色お腹をふさふさ。
「うにゃはは」
 ころころとくすぐったくて、触られてうれしいティアが笑ってしまえば、ロキもなんだかほほえましくなってしまって。そうそう、こんな風に優しく触れば――。
「あ」
「ロキちゃんだ!」
 ――すっかり、ロキの指はにんげんのそれ。
 仰向けの体をころんとうつぶせにしたら、自分の両肘を地につけて、顎をさわさわ、ほっぺもさわさわ。
「俺様、元に戻ってるや」
「戻ってよかったねっ」
 ぴるぴるり!楽し気に鳴くティアはまだまだ戻らないけれど、きっと人間である必要をまだティアが感じていないからであろう。ロキはティアを壊さないように、複雑なかたちをとろうとしたから――人間の姿に紐づいた。
 かわいがられたい気持ちでいっぱいのティアは、今の姿のほうが効率もよい。ぴょんぴょこ跳ねてやったねのダンス。しっぽもふりふり、ちゅいちゅい鳴いて。
「どっちのロキちゃんも好きだよ!」
「ふふふ、ありがと。俺様もどっちのティアちゃんも好きー」
 人間の姿ならもう願ったりかなったりのようなもの。よいしょと起き上がったロキがふやりと笑って、褐色の細い指をひろげておいでおいでとティアを招く。
「わわ、――ふふふ!すごーく、安心するんだよ」
 人の手の温もりに、こうして体全体で味わうのは初めてのことであった。 
 ロキの両手に包まれるように、ティアが乗る。かみさまの掌に乗せられたモモイロインコは、弄ばれるわけでなく、ゆっくりと空が覆われていくのだ。
「かわい~ね、ティアちゃん」
 ねぇ、と。
 邪な誘いは忘れない。これは、もはや生粋の邪悪であった。
「――もうこの姿のままでいない? ずっと可愛がってあげる」
 ささやくような魔性の声に、無垢な飴玉は考える。何色にも染まりそうな透明で、あまぁい彼女をコーティングするなら、真っ黒がふさわしいだろうか。誰にも、何味なのか想像できないくらいの――濃度で。
「んにに……」
 迷っている声には、ちょっぴりロキも眉をあげて。
「……やっぱりぼくも元に戻りたいな。」
 ――これじゃあロキちゃんと手を繋げないからね、なんていう少女の甘さったら、一級品だったものだから。
 邪の魔性もゆっくりと影をひそめて、ロキはへらりと笑って見せる。
「うそうそ。このまま手を繋げないのは寂しいよねぇ」
 さみしがりと、さみしがり。
 きっと混ざってはふたつとも破滅するだけだろうから。美味しいとわかっているし、甘いとも思えるのだけれど――手に入れて溶かしてしまうなら、後には何も残らないものね。
 じゃああともうちょっとだけ、ちいさい少女を愛でたい神様である。
 優しくほほに触れて、くちばしをなでる。普段一番使うけれど、めったに鳥自身では触れない首元もなぜてやらないと。空を覆っていた掌がどけられて、モモイロインコの頭の上は晴天がこんにちは。
 ぴる、ぴる、ぴるる――。
 もうすこしだけ、もうすこしだけ。
 掌にすり寄って甘えるちいさないのちを、潰さないように不器用な神様の指先が優しく撫ぜてやっていたのでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア
◎🐾

はー…どーにかこーにか、なんとかなったわねぇ…
これでやぁっと元の姿に戻れ――もど……戻、らない、わ、ねぇ…?というかまた別のに変わっちゃったし。あれぇ…?
え?もーちょっと時間かかるの?

ま、そーゆ―ことならのんびりしてましょ。妖怪さんたちが宴会してくれるみたいだし、そっちに混ざりましょうか。…なぁんか久しぶりに目一杯呑みたい気分だし。
(自覚はないが割とヤケ酒モードである。まああまりにも蟒蛇すぎてどんだけ呑もうがほろ酔いにすらならないのだが。酒豪すぎるのも善し悪しである)

…別にまるっきり普段の戦い方できなかった憂さ晴らしじゃないわよぉ?…ないったら。ホントよぉ?(自覚ゼロ)




「はー……」
 思わず、深いため息も出てしまうというもので。
 ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)はもう、気が気ではなかったのだ。トンデモ能力が使えるわけではないし、獣に理解があるというわけでもない。
「それでもまぁ、どーにかこーにか、なんとかなったわねぇ……」
 胆が冷えた。
 無数の弾幕をかわせていたからこそ、今があるのだけど。正直ぶっつけ本番の見切り発車めいたあの戦闘の数々、生まれてこのかた人としてしか生きたことのないティオレンシアには未知極めたものである。ゲームじゃないんだからと何回頭の中で唱えたことやら。
 得意の獲物も使えず、魔法だけの縛りプレイなんてハード通り越してルナティックに違いないのである。やれやれとしていたら、周りはどんどん人の形を取り戻していて――自分の身にもそれが起こると信じてやまなかったのだけれど。
「――もど……戻、らない、わ、ねぇ……?」
 戻らないですね……。
「あれぇ……?」
 ぽふんと音を立てても、ティオレンシアの体がお次は親しんだ動物のものに。カラスである。どこにでもいる、ふつうのカラスの御姿。
「……え?もーちょっと時間かかるの?」
 みたいです。

 まぁそういうことならしょうがないか、なんて思えるティオレンシアは大変順応力が高いのだ!さっすがにんげん!やったねにんげん!
 きゃっきゃと騒ぐ妖怪たちが目につけば、ゆったりそちらに寄っていく。
「混ぜてくださるぅ?」と甘い声で問うてみれば。
「いいよいいよ!」
「あんた猟兵か?」
「どうぞどうぞ!」
「いいねえ、あんた酒は強いのかい!」
 わいわいがやがや、おおきな狸がお腹をぽんと叩いてそうティオレンシアに問うた。
 しばし考えたのは、――己がバーを経営しているかどうかをここで明かすべきかどうかを審査していためである。まぁるいカラスの黒いお目目が、きょとんとした色を作って。
「お酒は飲むけどぉ、嗜む程度よ」

 嗜む程度が酒場なんか経営するわけないのだけど。

 自覚はないようではあるが、ティオレンシア。かなり、やけ酒モードであったらしい。
 彼女の持ち味と言えば人間らしい人間から繰り出される対人間用の殺人拳である。器用な指先と手さばきによって繰り出される暗器の数々にルーンがちょっと乗って成功するようなアサシンスタイルが、今回全部封じられていた。そのフラストレーションたるや、正直妖怪たちやほかの猟兵では理解が追い付かないほどのものである。
 だって、誰だって……得意なこととりあげられて……強制的に苦労しろって理不尽なこと言われたら……イライラしますよね……。
 ――まあそういう依頼だとはわかっていたけれど。
「あらぁ、もう呑まないの?」
「も、もうのめにゃい……」ぽんぽんたぬきの大頭、ここに堕つ――。
 竜神たち秘蔵のお酒まで持ち出して、たかがカラス一匹なんてことなかろう、ちょっとかわいがってやろうと思ったのが運の尽き。あっという間に大妖怪たちが我も我もと名乗りをあげたものの、全員撃沈。その中にぽつり、カラスが立っていて――。
「あ、あんた蟒蛇……?」
「やぁねえ、ほんとはただの人間よぉ」今はカラスだけど。
「ま、まるで憂さ晴らしのようだったぜ……」
「酒瓶をちぎっては投げ、ちぎっては投げって感じがな……」
 すっかりティオレンシアに挑んでしまった大妖怪たちはつぶれてしまって、それの介抱に動くどうやら手下らしきみなさんたち。すげえ、すげえ……とただならぬ雰囲気をティオレンシアに感じながら、おずおずと引き下がっていく。かないっこない……このカラス相手に……ッ……!!
「――そんなことないったらぁ、皆さん疲れてたんじゃなぁい?」
 【絞殺】の力も相まってだとはおもうけれど――いやそんなことはないか――。
 ともかく、思う存分お酒を飲んだらゆっくりUDCアースにご帰還ください……のびのび生きて、ヨシ!

大成功 🔵​🔵​🔵​

桜雨・カイ
無事に解決したので、お酒のみながらみんなでわいわいしましょう
…でも酔っ払って暴れたりするのはだめですよ
揉めそうな時は駆けつけて(コギドリルで)なだめたり
寝入っている人(または妖怪)には風邪ひかないように何か上着を掛けたりします

私もいただいていいんですか…うっ、盃に手が。
転がりそうになりながらもなんとか一杯いただきます

体が小さいから酔いが回るのも早いですね
寝落ちてしまうまでほろ酔い気分で
他のもふもふさん達と もふもふしたりされたりして
宴を楽しみましょう




 いやはやなんとか無事に解決したのは本当に良かったのだけれど。
「いけませーーーーーん!!!」ギュルルルルルル
「ウワーーーッ!!!!!!もふもふ!!!!!!!!!!」ンマフーーーーーーー
 やっぱりお酒の席だから、皆気も大きくなってきちゃってたのだ。
 桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)はいまだにコーギーの姿だけれど、特に困った様子は見られない。というか、その小ささとかわいさとチャーミングなお顔とおしりでなんとかいろんなトラブルを未然に防いでいた。
 密着!!!コギ警察24時ッッ!!!!異変解決飲み会編ッッッ!!!!
 そんな感じの働きぶりである。それではカイのこの場の動きを見守っていきましょう。
 テテテテテと走り出し、跳躍。ぐるぐると体をひねってコギドリルで牽制するのはキツネとタヌキの東西対決。どうやら酔っぱらった勢いで、どっちがうまく化けられるかを競っているうちに、規模の大きすぎる変化を行ったために龍と虎で取っ組み合いをはじめそうになっていたらしい。
「せっかくめでたいお席なのですから、どうかここはひとつ仲良くしませんか?」
 はふはふと舌を出しながら着地。通り過ぎていったモフモフの感覚に茫然とした争いの二匹は、コギをみてからお互いを見て、「いやまったくだ」「すまねえ」と頭をかくのである。
 これこそ――平和的解決――。
 コギ巡査もといカイは、この酒の席であるからこそ発生しそうな事件を未然に解決する使命を宿した熱いコギ・ハートの持ち主である――。
「む!」
 低い体高だからこそ、混雑する宴の席もスムーズにかきわけていける。おぼつかない千鳥足の雪女がいたら、ゆっくり座ってくださいと足にまとわりついて、まわりの鬼たちに声をかけ彼女を支えてもらうのだ。
「毛布は余っていますか?」
「あいよぉ、ありがとねぇ。犬のおまわりさん」
「お、おまわりさんではないのですが――はい!」
 うーん、治安ヨシ。感謝感謝である。ぽてぽてとてとて、忙しなく毛布をくわえて運び、すっかり酔っぱらって夢の世界に行く妖怪たちにはもひもひと毛布をかけていく。
「ううっ……きもちわるい……」酒に酔って気分の悪いひとがいたのなら。
「エチケット袋です!!!」とナイロン袋をもってゆき。
「さむいよう……」体が冷えてしまった妖怪がいたのなら。
「はい!!!!!!!どうぞ!!!!」スライディングでそのふとももにのっかり。
 どうにかこうにか調和をしっかり保ちながら、ようやく宴のワイワイさが落ち着いたかという頃合いに。ぽてぽてと走るカイにちょいちょいと先ほどの狐とタヌキが手招き。
「おうい、そこのわんこさん」
「あんたも猟兵なんだろぃ」
「あ、さきほどの!」
「さっきはすまんかった」
「お詫びにどうだい、あんたもそのへんにして、いっぱい呑んでいかないかい」
 俺たちがお酌をするからさなんて言いながら、先ほどのお詫びをしたいのだという二匹の提案には、カイも無碍にすることはできなくって。
 むしろ――自分がきっかけで二人が手を取り合ってくれたのが嬉しいのだ。「はい!」と元気よく返事をして、二人が大きな盃にたっぷり酒を注いでくれたのなら転がりそうになりつつもぺろぺろり。
「いいお酒ですねぇ」
「竜神さんたちがもってきてくれたのさ」
「なるほどぉ」
 あんまりよくわからないが、染みわたるような辛さの中にあっさりとした心地がある。うーむ、うまい!
 体が小さいから酔いが回るのも早くって、へろぉんと笑顔になってしまう。三匹でわいわいきゃいきゃいとお話をしていたら、それぞれの瞼がどんどん重くなっていくではないか。
「へへへ、いい気分だ」
「ほんとですねぇ」
「今日はもう寝ちまおうぜ」
 ――たぶん、正気だったらいけませんと言っていたけれど。
「いいですねぇ」お互いの尻尾とからだをモフモフとしながら、丸まって身を寄せ合って眠るのもまた悪くないかもしれない。
 気分がよい。疲れた全身に染みわたるような酒気を感じながら――あったかいなぁ、ともふもふにつつまれるのでした。おつかれさまです、治安コギ巡査……もとい、桜雨・カイさん!

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーオ・ヘクスマキナ

うひゃー。大変だった!
でもどうにかこうにか一件落着
かくして滅亡は回避されました、ってね

何時になったらこの姿から戻るかは分からないけど……
折角だし、そこら辺で美味しいもの貰って赤頭巾さんと一緒にこの世界の綺麗な景色を堪能したいかなぁ
ホラ。物凄く大きな月とか宙に浮かぶ建物とか、そうそう見れるものじゃないし

……普段の姿だと何を考えてるのか、よく分からないけどさ
今の赤頭巾さんなら、そっちから聞こえてくる念話以外でも、表情が良く見える
だからホントは、この機会に聞いてみたい事だって、沢山あるんだ

けど、俺は待つって決めちゃったから
だから、今はこうやってノンビリするだけで満足って事で。ね



(ギャグの筈では?)




「うひゃー!大変だった」
 リーオ・ヘクスマキナ(魅入られた約束履行者・f04190)が祭りの喧騒とは少しから離れた場所でのんびり、原っぱに寝転がって空を見ている。
 ちいさな狼だった体は宴の席から離れたら、ぽふりと一度煙を立てたかと思いきやブチハイエナになってしまっていた。それでもまだ小さいのだけれど、不思議な体の模様をしばらく見まわしてみて、なぁんだまだ人の形には戻らないんだな長いものに巻かれた彼である。
「――かくして滅亡は回避されました、ってね」
 一件落着、めでたしめでたし。
 赤頭巾の彼女はオオカミのまま、リーオのあとについてきていた。小さくて心もとないリーオを甘やかしてばかりではいないらしい。
 折角だからと言った彼の提案を呑む代わりに、自分が宴の席から貰ってきたもてなしの食品と飲み物の数々を運ぶ代わりに、リーオにエスコートを任せていた。
「ねえ、赤頭巾さん。ここって不思議だよね」
 ――あっちでは陽が昇っているのに。
 ――こっちでは、もう夜が始まってしまっている。
 ものすごく大きな月が接近してきていて、今にも地表とぶつかるのではないかという幻想的な風景と朝日が昇りすっかり晴天になった世界が同居することもあるなんて、なんて滅茶苦茶な世界だろう――ここじゃあ人間は生きていけないねなんて苦笑いを浮かべたのは、リーオだった。
「でもそうそう見れるものじゃないし、なんだかお得な感じだよね」
 赤頭巾の彼女から返事はない。
 ただ、ゆるりと地面に寝そべって、まったりと尻尾を振る姿は――多分、この世界を悪いものだとは思っていないようだったから。
「ねえ、赤頭巾さん」
 そんな様子を見て、解った気になってしまうのは、とてもズルいことだと思う。
 リーオは、のそりと体をひねって寝そべる彼女の顔を覗き込んだ。
 耳だけひくりと動いて、金色のオオカミは「聞いてるよ」のアピールをする。
「――普段の姿だと、何考えてるのかよく分からないけどさ」
 それが、もどかしく思う気がするのに。
 それが、彼女の引いた線なのだと思うと、不躾に踏み荒らしてはいけないものだと知っている。
 女性には謎が多いものだと、リーオも各地を歩く上でなんとなく知っていった経験であるし理解でもあるけれど、とはいえわからないなら知りたいと思うのもまた人間の気持ちというもので――。
 自分の姿が、獣であっても『何であっても』きっと、変わらない関心なのだと思っている。
「今の赤頭巾さんなら、そっちから聞こえてくる念話以外でも、表情が良く見える」
 必要最低限のみのやり取りからでは、真意が探れない。
 だが、獣にまで――至った彼女の今ならば、リーオがひとつふたつ刺激を与えれば正直に尾が、そして表情が返事をするのだろう。それは事実だから、赤頭巾の彼女も何も言わずにふすりと鼻を鳴らしていた。「生意気ね」なんて言いたげに――。
「だから、ホントはね」
 知りたいことが、たくさんある。
 欠落してしまった記憶が多い。ちぐはぐなことがたくさんある。追い付かない気持ちがあって、理解できないノイズが自分の人生にはあまりにも多すぎた。
 それを、――そのすべてを知っているのは、赤頭巾さんだけなのだから。
「この機会に聞いてみたい事だって、沢山あるんだ」
 でも、訪ねてしまえば。
 この関係がどうなってしまうのかはわからない。
 リーオが目覚めたときから、赤頭巾さんは傍にいた。彼の往く先々を共に歩んでくれている。信頼関係がないわけではない、だけど、もしこの線をリーオから踏み越えてしまえば、何もかもが壊れてしまう気がする。
 こんなにも美しくて強そうなオオカミなのに、その実、やはり少女なのだ。――ちらりとハイエナの彼を映す目は、繊細な女のそれに思えてしまった。
「けど、俺は待つって決めちゃったから」
 それ以上、その瞳を見るのはまるで責めているように感じられるだろうから。
 リーオにそんなつもりはないのだと、彼女に優しさで背を向ける。

「だから、今はこうやってノンビリするだけで満足って事で。ね」
 ――夜が始まる世界で、さららと二人の間を気持ちの良い風が吹き抜けていった。

 赤頭巾さんが、ぴょこりと尻尾を振ってあらぬ方向を見つめる。
 ――ギャグの筈では?
 ええ、まあ。……カクリヨなんで、いいんじゃないでしょうか!知らんけど!さあ食べて食べて!呑んで呑んで!
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

杜鬼・クロウ
【異鴉】◎

やっと終わったか
…よく飽きねェよな(もふられ慣れた
そんなに気持ちいのかよ

急に人姿へ戻る

ウワ!ちょ、重ェよバカ!
何時まで乗ってンだッ
ンな残念がらなくても(不服

文句言いカフカを蹴って退かす
酒持って温泉へ

…そろそろ答え合わせといこうや、カフカ

今回の獣姿
羽団扇
人智を超えた洞察眼

なァ、カミサマ
鴉天狗サマと言った方が正しいか
探偵にしちゃァ”出来すぎ”なンだよ
でも過去に常春桜と出会ったのは何で…またそれか
度量が小っちぇなァ
アイツが絡むと
俺に侵されるのが怖ェの

俺は、ケジメをつけに行く
…俺の時間は無限でも、アイツは違う
今しかねェンだよ
今のアイツが好きだから
結び直す

お前とは
もっと”仲良く”なれると思うぜ


神狩・カフカ
【異鴉】◎

いやァ中々の毛並みだからなァ…おっ?
ああ…おれの毛皮が…
戻ればクロウに馬乗りになって見下ろしていて
ほーう?この眺めも悪くねェな
って、いてて
このおれを蹴り飛ばすたァ罰当たりな奴め…

なンだ温泉に連れてきたかと思えばいきなり
答えを聴けばにやり
ははっ!こりゃお見事!名推理じゃねェか!
一つ訂正するとすりゃァ
おれはただの鴉天狗じゃねェ
そン中でも特別に偉ァ~い大天狗ってやつサ
今度は姫さんの話か
そいつァ教えられねェな
おれは思い出を大切にする質なンでな
ふふ、なんとでも言えばいいサ

へェ?お前さんも待てばいいのによ
あの人間の聖者だってすぐ死ぬだろ
お前さんは真っ直ぐな男だな

…そんな顔して言う台詞じゃねェだろ




「やっと――終わったか」
 杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)が、長く息を吐く。
 黒豹の姿も扱いなれてきた頃合いだ。不便ではあったがいつもより活発に動けたような気もしているが、やはりあるべき神格は戻さねばなるまい。宴が開かれ、どんちゃん騒ぎの喧騒に普段ならば混ざっていたかもしれないが――。
「……よく飽きねェよな、そんなに気持ちいのかよ」
「いやァ中々の毛並みだからなァ」
 ふわふわ、もこもこ。黒い毛並みを堪能する大鴉、神狩・カフカ(朱鴉・f22830)の存在があまりにもめざわ――ノイズ――……大きかった。この彼を連れて和気あいあいとした雰囲気に馴染むのは、いかなるクロウであってもちょっと心の余裕が足らない。
 さっさと退かしてやろうかと思っていたら。
「――おっ?」
「ウワ!ちょ、重ェよバカ! 何時まで乗ってンだッ」
「ああ……おれの毛皮が……」
「ンな残念がらなくても」つか俺の毛皮だよ!!
 どろんぱっぱ!
 黒豹の背中に寝そべってもふもふを堪能していた鴉の姿が、二人の男のそれに戻ってしまう。豪奢な着飾り同士がかみ合って金属音を立て、確かな質量がお互いに取り戻されてしまった――。あと、クロウよりカフカのほうが大きい。結果、ムギュッとなってしまうのはしょうがないことであった。
「ほーう?この眺めも悪くねェな――って」
 クロウからすれば、全然嬉しくないマウントポジションである。
 想う女が乗っているならまだしも、いけ好かない隠し事の多い緋色の名探偵に乗られて何がうれしかろうか。なにもうれしくない。
 ためらうことなく、長い足でげしりとカフカの上等な着物事蹴り飛ばしてやった。
「いッてて……このおれを蹴り飛ばすたァ罰当たりな奴め……」
「おう、この俺に馬乗りになるほうがよっぽど罰当たりだぜ」
 そっくりそのまま返してやるよのガルルは獣の姿であってもそうでなくても変わらないらしい。カフカが落ちた背中をさすりながら立ち上がると、クロウは何やら次の準備をしていて――。

「――そろそろ答え合わせといこうや、カフカ」
「なンだ温泉に連れてきたかと思えばいきなり」
 かっこん。
 鹿威しの音が響く。男二人で裸の付き合いをしろだなんて、まァ大胆な提案だなとカフカも思わないでないが、それがこのクロウの付き合い方なのであろうとも思った。
 カフカから見ても、クロウは律儀で正直だ。冗句は言えても嘘はつけないような男だとみている。いちいち言葉にして確かめて、己の心に確信を求める真っ直ぐさにカフカが付き合うのは――在り方がさっぱりとしていて気持ちいいからだ。 
 湯気のたつ穏やかな湯に、髪の毛を着けないよう互いにタオルで髪を纏めて縛り上げる男同士の答え合わせが始まる。水質は乳白色だった。そういえば、肩こりとか――頭痛とかにもよいとかいていたっけ、なんてカフカが思い出し、肩まで浸かっていたときである。
「なァ、カミサマ――鴉天狗サマと言った方が正しいか」
 クロウが、じとりとカフカを見た。
 胸をはり、肘を囲う岩に乗せている。クロウには自信があった。カフカの獣姿をはじめ、扱うあの団扇も、並外れた洞察力も――裏付けというより状況証拠がそろいすぎていて、隠されるすべてがちらついてしょうがない。
「お前、探偵にしちゃァ”出来すぎ”なンだよ」
 だから、はっきりと言ってやった。まず最初の隠し事を見抜く程度の力は、己にもあるのだと目の前の朱色に突きつける。
 すると――けらりと笑って見せるカフカがいた。
「ははっ!こりゃお見事!名推理じゃねェか!――ああいや、一つ訂正するとすりゃァ」
 ばしゃりと音を立てて前髪をかき上げる右手が現れる。
 見抜かれたことに動揺も見られないなら、なぜ隠していたのか甚だクロウには意図が読めないでいるが――。
「おれはただの鴉天狗じゃねェ」
 次の難題を提示するのが、かみさまであるから。
「そン中でも特別に偉ァ~い大天狗ってやつサ」
「でも過去に常春桜と出会ったのは何で――」
「今度は姫さんの話か。そいつァ教えられねェな」
 く、くく、と喉を鳴らすカフカは、けしてクロウをもてあそんでいるわけではない。彼にとっては、話せる範囲がそれぞれ決まっている。
「此れじゃァ裸の付き合いってより、裸の取り調べだぜ」
「度量が小っちぇなァ、アイツが絡むと」
 今宵は目出度い席なのだからとカフカがひらり、追撃をかわせば――クロウは皮肉で応ずる。
「おれは思い出を大切にする質なンでな」
「俺に侵されるのが怖ェの?」
「いンや。姫さんのぷらいばしーとやらを護ってるのサ」
 ――なんとでも言えばいい。
 あっさりと、クロウのことなど敵視したことも、何とも思っていないのだとカフカは寛大にも言ってのける。
 ますますこのかみさまの言っていることが納得いきそうで、いかないようなむず痒い心地がしてクロウは鋭く舌打ちをひとつ、くれてやった。
 なぜ、自分だけがこんなに焦っているのだろうか。答えは単純だった――眩しいくらいにまっすぐに輝く、苛烈の性だからだ。
「俺は、ケジメをつけに行く」
「へェ? お前さんも待てばいいのによ。あの人間の聖者だってすぐ死ぬだろ」
「……俺の時間は無限でも、アイツは違う。今しかねェンだよ」
 今の【蜜約の血桜】を、思い浮かべられる。
 その彼女しか知らない。それまでの彼女を知れない。――好きだから、いましか見ていない。
「結び直す」
「――へェ」
 カフカには、その感覚はなかった。
 愛するものがどうあってもよいのだ。明日の日に死んでも等しくいとおしい。誰かと寝ようが、まぐわおうが、なんだろうが。永遠を生きるカフカにとっては、愛しい命のやりたいことは何もかも愛して見守れる。
「お前さんは真っ直ぐな男だな」
 ――それが、「のらりくらり」の無責任だと言われれば、そうなのかもしれないが。
「お前とは」
 ちゃぷりと、温泉に浮かんでいた桶をクロウが手に取る。中は熱燗が入っていて、冷めぬように湯で温められ続けているのだ。
 ひとつ、徳利を手に取った。カフカの隻眼の前に掲げる。
「もっと”仲良く”なれると思うぜ」
「……そんな顔して言う台詞じゃねェだろ」
 ――妥協か、それとも、成長か。
 かみさまも心は成長するもんなのかね、なんて。くつくつと朱色が笑う。まっすぐな黒の背に、温泉に迷い込んでそのまま揺蕩っていたらしい桜の花びらがまとわりついていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

宵鍔・千鶴
【紫桜】

そうだなあ
好きなときに微睡んで
ごはん貰って
偶にご主人に愛嬌を振り撒いておいて

もうちょっとお猫様でいたいね
毛繕いしてシャトに同意
小さな視点からの世界も
中々に興味深いからさ

約束通り妖怪たちにごろにゃん
好きに構われつつ
…あ、シャト、その飲み干したの…
言わんこっちゃにゃい、既に酔ってる

…うん、シャトと一緒で凄く楽しかった
でもさ、シャトにゃん、俺はシラフなんだよ
わかってる?
ずるい先生だにゃあ…もう
…そんなの俺だって。

そろそろどろんぱっぱ
ヒトに戻る時間だ
あ、駄々こねてる。ご褒美かは分からないけど
ころんとお腹を見せて好きにしていいよのポーズ
今は猫だからね、特別だ

無事に戻ったら
きみへ、内緒って微笑んで


シャト・フランチェスカ
【紫桜】

仕事しない
ペン持てない
締切断固拒否
猫なので

千鶴はひとに戻りたいって思う?
と、伸びをしながら

今回のボーナスタイムもとい珍事が
創作のネタになったのも確かだけど

妖怪たちのもてなしを
もふもふされつつ楽しんでたら
おや?
今一気に呷ったの、お酒?
体が小さいせいか…

ふふーん
ほろ酔いだけど猫なので許されますね
千鶴、僕はねえ
今日はすっごく楽しかったよ
きみと一緒だったからね
シラフの僕は言えないだろうけど
僕はきみってひとが大好きなのさ

いやだ戻りたくない!
何かご褒美をおくれよう
そしたら頑張れるかも

にゃんということでしょう!
きみは己の可愛さを自覚した方がいいな!

元に戻れば酔いもさめて
…僕、何か変なこと言ってた?




「仕事しない」
「ペン持てない」
「締切断固拒否」
「――猫なので」
 シャト・フランチェスカ(侘桜のハイパーグラフィア・f24181)は物書きである。
 それはそれは彼女の織りなすものがたりといえば、とってもえもい。読者の皆さんだって編集者だって出版社だってもう先生先生と万歳三唱のち締め切りが進捗が校閲が会見がパーティーがどうのこうのとやっかましいのが彼女の本来あるべき創作というしじまの檻と無限のマス目に囲まれた場ではあるが、本当に――窮屈で、たいへんで、あっという間の日々の数々で。
 こうして猫の躰で好きなようにできるのは夢のようだった。愛する猫のようにのびのびとしてよいだなんて、にゃんとすてきな猫生にゃのだろう。
「千鶴はひとに戻りたいって思う?」
「そうだなあ」
 魔法が解けなければいいのにと想うのは、宵鍔・千鶴(nyx・f00683)だってそうだ。
 ――好きなときに微睡んで、ごはん貰って、偶にご主人に愛嬌を振り撒いておいて。そうしたら猫は生きるのに困ることなんてあんまりない。
 言いつけ通りに外に出るのもほどほどにしていれば、車に轢かれるようなこともあるまいし。育ちが育ちだからこそ、こんなに開放感あって自由なにゃん生にはただただ居心地よさだけを感じてしまう。
「もうちょっとお猫様でいたいね」
「だよね」
「小さな視点からの世界も、中々に興味深いからさ」
「今回のボーナスタイムもとい珍事――が、創作のネタになったのも確かだし」
 んにゃご~。
 ねこねこのままでもいいんじゃないかなぁなんて思いながら、二人の賭けに乗った妖怪たちにふわふわ、優しくもふられちゃう。全身マッサージのようなものだから、シャトも千鶴も不快はない。
「ねこは手足触ってほしくないって聞くが、そうなんかえ」
「らしいよぉ」
 妖怪たちも酔ってはいるけど相手を思いやる気持ちは忘れないのだ。
「か~~ッ、俺もあんたたちに賭けときゃよかった」
「ふふふ」シャトが背中をさすさすと妖怪たちに撫でられながら、おひげを広げてにんまり笑う。
 それから、用意されたものを確認もせず、気分が良いままするりと舌に乗せてチュッと音を立てた。つうんと鼻に抜けるような爽快さがあって――くらり、頭が揺れる。
 そんなももいろにゃんこの後姿を見ていた千鶴にゃん、びっくりである。だって呑んでいたのは、あの底の浅い真っ赤な器から考えなくてもどうみたって――。
「――あ、シャト、その飲み干したの……」
「んゃ~?」
 こちらを向いたシャトにゃんの顔は、ふんにゃりととろけてしまっていた。
「言わんこっちゃにゃい」
 猟兵たちをもてなすための酒だから、悪いものではないと聞く。千鶴がため息のかわりに小さくあくびして、「に」と鳴いてみせた。それを拾ったシャトのお耳がひくひくと動いて、とすとす歩いてやってくる。
 ふふーん、とにまにま笑って撫でられる千鶴にゃんの顔にほっぺすりすり。
「千鶴、僕はねえ。今日はすっごく楽しかったよ」
 むゃ~おと甘く鳴いて、ざりざりと額を舐めてやる。
「きみと一緒だったからね」
「……うん、シャトと一緒で凄く楽しかった」
 千鶴にゃん、正直に返すしかなく。
 今のシャトはどうみても正気ではないのだけど、ふにゃらふにゃらかと鳴く彼女がかわいくてしょうがないのもまた事実なのだ。妖怪たちも猫同士のたわむれ、かわいい……と悶えているし。
「シラフの僕は言えないだろうけど、僕はきみってひとが大好きなのさ」
 ぴ!
 ――思わず、尻尾がまっすぐ伸びる。
 お構いなしのうるうる喉に、千鶴にゃんもちょっぴりごろごろ。
「でもさ、シャトにゃん」
「ん?」
「俺はシラフなんだよ」
 それから、美しい瞳を覗き込むようにして――。
「わかってる?」
 確認のために問うてみても。
「んふふ」
 はぐらかすように喉のくるくる甘えた音で返されてしまう。
「ずるい先生だにゃあ……もう」
 ――そんなの俺だって。
 千鶴が真剣に問うても、相手はやはりあのシャトなのだ。惑わす様に、揶揄うような微笑みと共に曖昧にされてしまう。それに、酒の席でのことだからとはわかっているのだけれど、言われた千鶴からすれば聞き逃せるようなことではなくって。
 落ち着こうとぱち、ぱち、千鶴にゃんが瞬きを何度かしているうちに、あたりはどんどんどろんぱっぱ――もう魔法が解ける時間なのだ。
「いやだ戻りたくない! 締切なんていやだにゃん! せめて後生に何かご褒美をおくれよう……そしたら頑張れるかも……」
 むちゃゴネである。
 ばたん!と倒れたももいろにゃんこのうなぎがごとくのうねり。
 あの大文豪シャト先生がこんな醜態をさらしているなんて、ファンが知ったらどう思うだろうか。いや、多分よけいにハマりそうではあるのだけど――千鶴にゃんはせめて、彼女のこのありさまを自分だけのものにしておこうと妖怪たちの手から逃れてぺたり、寝そべって見せる。
「……はい、ご褒美かは分からないけど」
 こっ――これは――ころんとお腹を見せちゃって……「好きにしていいよ」のポーズッッ!
 ふあふあの千鶴の毛並みが、シャトにゃんのまえに差し出されてしまったのにゃ……!!!駄々こねで転がりまくっていた体に葉っぱだの紙吹雪だのがまとわりついてもお構いなしに、千鶴のことをおおきなお目目で見つめてしまう。
「――今は猫だからね、特別だ」
「噫、――にゃんということでしょう!きみは己の可愛さを自覚した方がいいな!」
 もはや輝き。この世の宝。脱稿後の布団。打ち合わせのあとに食べるコーヒーゼリーであった。
 この極上の毛艶、印税なんかよりずっと価値あるものに思えてしょうがにゃい!かわいらしいシャトのぴんくの肉球が、ふにふにとシャトのお腹を撫で押さえてそのままダイブでごろにゃんこ。
 二匹ともほんわり、幸せそうなのでした。


「――僕、何か変なこと言ってた?」
「内緒」
 酔いが醒めて、人の姿を取り戻した先生が。
 眉間にしわを寄せながら、自分のほほに手を添えながら考えているのを横目で見て、ひとつも覚えていないらしいのを――やれやれとそのご友人がため息をついたのはまた別の話。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

百鳥・円
【花鳥】

どろぱっぱー!
も、どうやらおしまいのよーですよう
うーん、なんだか名残惜しいですねえ
んふふ。最後はどんちゃん騒ぎといきましょ

おにーさんはお酒飲めます?
わたしは所謂ラストティーンですの!
ですのでノンアルで失礼しますよう
成人したら是非是非お酒飲みましょーねえ

愉快な時間にかんぱーい!

つんつんと啄くように飲みますよう
たーくんさん動いたから美味しいですの!

おやや、あれは!
よすがのおにーさん!いえいえおししょー!
あちらに大きなみたらし団子が!
もちもちとろーりと美味しそう!
あれも食べましょ!
ちゅんちゅんと啄きますよう

気がつけば白虎が何時ものお姿に
なんだかお久しぶりですよう
またいーっぱい遊びたいですねえ


宵雛花・十雉
【花鳥】

ちぇー、もう終わりか
もう少しこの姿を楽しみたかったところだけどな
なぁなぁ、戻っちまう前に勝利を祝おうぜ
こういう時は酒宴を開くって相場が決まって…
て、円ちゃんひょっとして未成年かい?
んじゃあ酒盛りはまた別の機会にとっておくとして
今日はオレもジュースにしよ

かんぱーい!
コップじゃ飲みにくいから皿に注いでもらった
ざらざらの舌でぺろぺろ舐めるように飲む
お、嘴で器用に飲むもんだなぁ

え、でっかいみたらし団子!どこだ!?
きょろきょろ辺りを見回して
見つけたら急いで駆けていく
うんうん、やっぱこれだなぁ
労働の後のみたらし団子は格別だぜ

あ…も、戻ってる!?
残念だけど、何だかんだでお互いこの姿がしっくりくんなぁ





「どろぱっぱー!――も、どうやらおしまいのよーですよう」
「ちぇー、もう終わりか」
 百鳥・円(華回帰・f10932)と宵雛花・十雉(奇々傀々・f23050)のまわりでは、いろんな妖怪たちも猟兵たちもどろんぱっぱ。どんどん人の形を取り戻して、ああよかったよかったなんて手を叩き合い嬉しや嬉しのムードはまだよいもののはずなのに。
「もう少しこの姿を楽しみたかったところだけどな」
「うーん、なんだか名残惜しいですねえ」
 腹の内にひとつもふたつもかかえたミミズクと虎は、今の獣の姿のほうが心地いのになぁなんて思ってしまう。いいや、戻らないといけないとはわかっているのに、なんだか勿体なくって。もうしばらくこのままでもいいような――やっぱりいけないような。
「なぁなぁ、戻っちまう前に勝利を祝おうぜ」
「んふふ!素敵な提案です、おししょー。最後はどんちゃん騒ぎといきましょ」
 ふわふわと膨れて小さくほっほっと笑うミミズクに、白虎もにんまり笑ってうんうんと頷く。どうせ終わってしまう祭りなら、最後まで楽しく笑顔で終わらないと!

 ちゃんかちゃんか。ちゃんかちゃんか。
「おにーさんはお酒飲めます?」
「おう!――て、円ちゃんひょっとして未成年かい?」
「ええ、わたしは所謂ラストティーンですの!」
 おやおや、あんさんそうだったのかいなんて酒を注ぐキツネからは意外そうな声が出た。おんぼろな露店も今日は風情があるというもの。忙しそうな小麦色の彼らが、あっちに酒を、こっちにつまみをと走り回っていた。
 円と十雉がたどり着いたころにはやや落ち着いた様子であり、よい頃合いだといえるだろう。二人に合わせた器を選んでいた一匹が、「それじゃあこっちだな」と酒の描かれていないメニューを円に手渡す。
「あんた、しっかりしてるからもうとうに成人してると思ってたよ!」
「んふふ、騙されてくれましたぁ?」
「こいつぁ、一本とられた!」化かすことにおいては狐のほうが生業なのに、どうやら円のほうが一枚上手。けらけらと笑いながら、円の指さした――レモンスカッシュにオマケだよとバタービスケットをつけてくれる。
「成人したら是非是非お酒飲みましょーねえ」
「そうかい、そうだなぁ――今日はオレもジュースにしよ」
「あら、いいですのに」
「いいのいいの。祝いで一緒に呑めた方が気分もいいだろ」
 ちょっぴり男らしい背伸びのような、だけれど女らしいやさしさめいた言葉だった。気を遣わせたのではなくて、「いずれ」の日を楽しみに待つ十雉の振る舞いに円まで心地よくなってしまう。
「うーん、男前だ。そンじゃあ、あんたにもオマケだよ」
 二人が宴を楽しめるよう、酔いつぶれて寝転がる妖怪たちを鬼たちがよいしょよいしょとかきわける。陽はやや高く、朝と昼のあいだごろ。
「素敵なモーニングってかんじですねぇ」
「お、トーストもあるみたいだぜ」
 それいけやれいけとんとお食べ。十雉の背に乗った円が見ている限りでは、彼らのかわりに妖怪たちがスイーツやら何やらたくさんもってきて――。

「愉快な時間にかんぱーい!」
「かんぱーい!」
 あっという間のおもてなしセットの完成であった。
 パンケーキだのなんだの、疲れた体には食べたい何もかもがきっちりと揃えられている。つんつんとついばむようにレモンスカッシュを呑む円と、べろりべろりと舌で器に注がれたミックスジュースを飲む十雉は、お互い器用なものだと笑いあった。
「たーくんさん動いたから美味しいですの!」
「ほんとだなぁ、いやいや今日はよく働いた」
 考えてみれば夜通しずっと動きっぱなし。
 円の元気さはやはり彼女の若さもあろう。十雉としては、もう足腰がふらふらしかけていた。ようやく水と甘酸っぱさを意識出来て、体にどっと心地よい疲れがやってくる。ふすーと鼻から息をはいて、ぺろぺろと上顎を舐める虎の顔がなんだかかわいくって、ふふふと円が羽根をふくらませていた。
「――おやや、あれは!」
 そんな十雉の後ろで、おそらく妖精だとかそんな類であろう幼い妖怪がぴるぴると翅を動かし、キラキラと輝く何かを配膳するではないか。
 ぴょこり!円が体をきゅっとすぼめてびっくり! ――ミミズクはたいへん目もよいのである!見つけた獲物にはロックオン!
「よすがのおにーさん!いえいえおししょー!あちらに大きなみたらし団子が!」
「え、でっかいみたらし団子!どこだ!?」
 きょろきょろする十雉のあたまを、もふもふの翼ではっしとつかんで「こちらです!」とぐりん!「ォフ」と声を漏らした十雉の視界に――。
 もちもちとろーり。
 あまぁい蜜たっぷりで、こねられて丸めらたてのほっかほか。串にしっかり固定されしあの甘美な暴力――おお、まさに!
「ぉ、おおお!」
「あれも食べましょ!おししょー!いそいで!」
 ちゅんちゅん!!みたらし団子くださいな!!
 びゅん、と飛び出した白虎の十雉が頭にお皿を預かりたくさんのみたらし団子をのせてやってくる。

「うんうん、やっぱこれだなぁ」
 ――労働の後のみたらし団子は格別だぜ!
「おいしいですの、おいしいですの!」
 あむあむ、もぐもぐ。ん~~~!!と時折唸りつつも、甘さにはほっぺまでとろけておちてしまいそう。
 たくさん食べたいな、たべたいな。一つずつちゅんちゅん食べるのはもどかしくって。もう少し口が開かないかな、と二人してあー、と口を大きく開けていたら――。
「あ、……も、戻ってる!?」
「あらら?」
 知らぬうちに、二人の姿はみたらしだんごのサイズにふさわしい人間の姿。
 大事に手に持っていたみたらしだんごに夢中で、お互いの姿を忘れちゃっていたみたい。団子を見てから、お互いを見て、交互に二度ほど繰り返したらああなんだと一安心。
「残念だけど、何だかんだでお互いこの姿がしっくりくんなぁ」
「なんだかお久しぶりに思ってしまいますねぇ」
 あむあむ、むぐむぐ。大きな体で繊細に食べるよりも、小さな体でもどかしく食べるよりも、やっぱりこの人型の姿が一番自分達らしい気がしてしまう。
 ちょうど、みたらし団子を食べるにいちばんふさわしいこの姿。忘れられるわけがあろうか、いいや。忘れられないとも!
「またいーっぱい遊びたいですねえ」
「そーだなぁ、次は食い倒れてみっか!」
 いっぱい働いたのならきっと帳消しだもの。
 むしゃむしゃ、ぱくぱく。
 おいしいひとつまみを口に放り込みつつ。やっぱり味がよくわかって、自分の慣れた体がいちばんなんでも楽しめるお二人なのでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱赫七・カムイ
⛩神櫻

サヨ、夜明けだ
私の神格が戻るのは思いの他はやい
きみを温められない名残惜しさを感じながら
腕に絡む可愛らしい姿に笑む

お酒はあげられないけれど甘いものを貰おう
サヨはよく頑張ったからご褒美だよ
艶やかな鱗を撫でて美しい巫女を褒める
きみは何より美しい
ほら、こんなに綺麗だよ
甘く言葉を重ねて一つずつ口に運んであげて慈しむ

何処かの神は
汝の敵を愛せよと謳ったのだっけ
成程ね
敵はきみの中の愛なる呪

サヨ
私はきみを
きみの中の呪ごと愛するよ
私の呪(愛)を受けてくれる?

桜蛇と瞳があって口先を撫でようと─おや
いいところで戻ったね
腕の中にはあたたかい春の温度
可愛い
照れている?

温泉にでもはいって帰ろうか
この熱を忘れないように


誘名・櫻宵
🌸神櫻

眩しい
優しい腕に抱かれる
優しい瞳の赫い神様
カムイだけ先に戻ったの?

…蛇の私は嫌かな
離して欲しくなくて巻き付き頬を擦る

カムイが私を甘やかすのは好ましい
妖が持ってきた甘味を飲み込み
撫でる神のぬくもりに酔う

重ねられる言葉に真心
─心地いい
注がれる愛が美味しい

─悪くない
蛇であるのも
美しいと認めてくれた

驚いてカムイを見る
嘗ての己を堕し穢し殺めた呪ごと愛すると?
どれ程優しい神なのか

受け入れてあげる
甘い言葉を紡ぐ唇に眸を細めて
触れられる事を期待して…
もどった!?
一気に恥ずかしくなり顔を背ける

な、なんでもないったら

温泉!
やまない鼓動に消えない熱
ひとでなくなるのが意外と悪くなかったと感じた事も
私、忘れない





「サヨ、夜明けだ」
 朱赫七・カムイ(約倖ノ赫・f30062)の神格が戻るのは思いの他早かった。
 夜明けとともに神の信仰は元に戻る――「前」の分もあるからであろう。どっと体に力が戻る感覚と共に、翼たちがひらひらと剥がれ落ちて人の腕を作り出し、その体に衣を載せていく。
 この体のほうが温めてやりやすかったに違いないが――それでも、仕方あるまいとそれもまた受け入れる赫の神は、桜色の蛇を抱きしめてやっていた。
 ――眩しい。
 誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)の瞳には、この優しい神も、そして朝日も輝度が高すぎる。まぶたもなく足もない、蛇の体は目を細めることすらできなかった。
「カムイだけ先に戻ったの?」
「みたいだね」
 尋ねながら、おずおずと。
 ――蛇の私は嫌かな、と思いながら離して欲しくなくて巻き付き、蛇はまるで猫のように頬を擦る。う
 腕に絡みつく執着の象徴らしい動きに、くすりとカムイが笑った。もっともっと羽毛で温めてやりたかったが、どうせなら人肌で人を思い出させてやるのがいちばんよいだろう。カムイは神で、櫻宵はかんなぎだ。ひとの素と、ひとの素の遣いでは手繰るひとがたまでの距離も違う。
 できる限りいたずらに人前には櫻宵の姿をさらさないよう、大事に布の内側に絡みつかせている。袖口からひょこり、蛇の顔が出ていいように宴の場を練り歩いていた。
「お酒はあげられないけれど――」
 甘いものを貰おうか、とカムイが一言声を掛ければ、徳の高い神だとわかった狐も狸もこっくりも、わあわあと驚いて急いでもてなす。
 お饅頭一つでよかったのだけれど、ははあ、どうぞどうぞと差し出される団子たちがまた桜色でおいしそうだったもので。
「サヨはよく頑張ったからご褒美だよ」
 気づけば、二人きりになれるだろう――宴の席より離れた川の近くで、切り株に座ったカムイがそうっと蛇の口に甘味を与える。
「カムイは、いいの?」
「櫻宵から、ね」
 艶やかな鱗を撫でて、美しい巫女を褒めていた。
 何度も何度もささやくように、ひとつひとつ、お団子一個につき甘い言葉を一つかけている。それは欺瞞ではなく、単に事実の羅列であった。
「きみは何より美しい」
 忘れてしまわないよう、蛇がひとつひとつのご褒美を食べるたびに。
 愛をのせて、神は微笑む。
 ─―心地いい。注がれる愛が美味しい。
 櫻宵は蛇だ。獲物を丸呑みし、顎をはずし、自分よりも大きなものをも呑み込もうとする貪欲のそれである。足もなく、手もなく、いまや表情も作れない――というのに。
「ほら、こんなに綺麗だよ」
 甘く、何度も言葉を重ねて一つずつ口に運んであげて慈しむ神の啓示にはくらくらと脳が書き換えられてしまう気がする。
 ─―悪くない。蛇であるのも、美しいと認めてくれたのならと思ってしまう。
 あさましいかもしれない。だけれど、何より素直に救われてしまった心地がするのだ。
 自分に対して何度も否定し続けた、血まみれでけがらわしい在り方を許せずにいたのに、罪も罰も曖昧模糊のかなたに散らせてしまっていい気もしてしまう。
 むくむくと甘味をむさぼる蛇をいとおしく見下ろしながら、カムイは優しく囁いた。
 ――偉大なる何処かの神は、汝の敵を愛せよと謳ったのだ。
「サヨ、私はきみを」
 ならば、カムイの敵は最愛の中の愛なる呪である。
「きみの中の呪ごと愛するよ」
 ば、と驚いてカムイを見る櫻宵である。蛇は全身で感情を示すから、面白いななんてカムイは思っていた。
「嘗ての己を堕し穢し、殺めた呪ごと愛すると?――そんな」
 どれ程優しい神なのか。
 いいや、優しいからこそ神なのか?
 櫻宵のなかでは、それを「やめて」と言いたい自分もいる。それでは何もかもが二の舞の気がしてしまうのだ――だけれど、カムイはきっと「やめてはくれない」。それがさだめであり、そうすることを是とするのだと赤い瞳が微笑んでいる。
     アイ
「――私の呪を受けてくれる?」

 受け入れてしまうほかなかった。
 櫻宵のこの身はずっと、愛してほしいと叫んでいる。満たされない欠落を、何度も忘れてしまう自分を愛することも、けして一人ではできないのだ。殺すばかりで、痛めつけるばかりで、何もかもから奪うだけど悪辣である事実だけの我儘な感情に振り回されるのをただ、助けてほしいと思っていた。
 この世で最も幸福であることは「安全」であることである。
 するりするりと長く大きな体を袖からすべてはい出させて、ゆっくり首をもたげた桜蛇と瞳があった。そして、カムイが口先を撫でようと指を伸ばせば─―。
「おや」
「もどった!?」
「いいところで戻ったね」
 ぎゅ、っとカムイにしがみついた櫻宵のひとがたが顕れる。
 どうやら魔法は解ける時間のようで――カムイの腕の中にはあたたかい春の温度。口元に添えられた手をぐいっと両手で押しやっても、しっかり背中にはもう腕が回されていて櫻宵はすっぽりカムイの胸に顔を収めるかたちとなった。
「どうしたの?」
「な、なんでもない」
「可愛い、――照れている?」
「なんでもないったら!」
 気娘でもあるまいし!と金切り声を上げてしまいそうになるのも何もかも、この神様が優しすぎるのがわるいに決まってる。
 ははは、と嫋やかに笑って見せる余裕がまた愛しくも小憎らしい。ちょっと前まで世界の事も何も箸の持ち方すら知らぬ子供のようであったのに、今ではすっかり櫻宵の手綱を握ってしまったカムイである。
「さて、――じゃあ、温泉にでもはいって帰ろうか」
「温泉!」
 やまない鼓動と消えない熱。
 いいわねいいわね、そうしましょとまくし立てるような櫻宵は、きっと忘れない。ひとでなくなるのが意外と悪くなかったと感じた事も、呪われたこの人生も。
 ――恨むことばかりではなかったのだと、苦渋の果てに至るこの時を。
 立ち上がったカムイの腕にそっと腕をからませて、二人で温泉まで向かっていく。
 ――この熱を忘れないように。

「ああ、奥様。女性はこちらの湯で――」
「奥様だって」
「ふふ」
「ンエッ!?」
 温泉の番台だった大ガマガエルさんの吃驚顔もまた旅のおまけに。素敵な一日を、どうぞお過ごしください。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

花剣・耀子

イルカの匡くん(f01612)と

なんとなしに疲れている雰囲気を感じるのよ。
お仕事は終わりだもの。のんびりしましょう。

宴会セットを背負って、余所より静かなところへと。
春だから、きっとキラキラきれいだわ。

ゆらゆらと尻尾を揺らして、聞こえた声に思案顔。

あたしに出来る事をするのは“いつも通り”よ。
考えても仕方の無いことは考えないの。ねこだもの。

そうね。折角だからお花見気分でお茶でも、
お茶……(匡くんを見る)(イルカさんだ)
イルカさんって、どうやって飲み食いするのかしら。

……ああー、水族館で見たことがあるわ。
三色団子を串から外して、ぽんと投げましょう。ねこは前足だって器用なのよ。
喉に詰まらせないでね。


鳴宮・匡

ねこの耀子(f12822)と

いつもより疲れた気分なのなんでだろう
精神的なあれかな
俺自分にそういうのないと思ってたんだけど

静かなところでじっとしてよう
耀子は景色とか楽しむ余裕があるみたいだけど
俺は全然ダメだ
戦いは集中してればよかったんだけど
いざ終わると落ち着かない

“いつも通り”じゃないのって不安に感じない?
ずっとこのままってことはないと頭でわかってても

気持ちはいつもと同じ、って?
俺もそういう風に考えられればいいんだけど
昔なら出来たかもしれないのに……難しい

……なんか食べようか
少しは気が紛れ……(お茶を見る)(耀子を見る)(自分を見る)

……いいよ、団子とか投げてくれ
このムードなら多少許されるだろ




 朝日出てるのに黄昏るヒレつきが一匹。
「いつもより疲れた気分なのなんでだろう……精神的なあれかな」
 鳴宮・匡(凪の海・f01612)、イルカとなってほとんど半日。
 そもそもイルカなのに全然海の中とか泳いでないし、なんかイルカっぽいこととか全然なかった。自機イルカでSTGやりまくってた感じである。
 そもそも匡は自由自在に空を飛べたこととかないし、ハリウッド的な感じの動きはとることがあってもあまりにリスクが大きいからやりたがらないし、そうなる前に別の方法をとってきたから――こんな奇天烈怪奇な状態も、夢ですら見たことない。ほとんど夢だって見ないし。
「俺自分にそういうのないと思ってたんだけど」
「お仕事は終わりだもの。のんびりしましょう」
 むぁ~お。花剣・耀子(Tempest・f12822)は黒猫の姿で想うのだ。
 考えることがいっぱいできる人って、こういう時難儀するんだなぁと。
 かしかしと顎を後ろ足でかくのだって、ぺろぺろと手先を舐めるのだって、な~んの抵抗もない耀子である。「きゃう」とあくびを一つして、ぱちぱちとまばたき数度、また匡を見た。
 ――なんでそんなになりきれるんだって顔されてたんですけど。

 さてさて宴会セットを背負って、余所より静かなところへと。二匹でよっさほいさとやってくる。春だから、きっとキラキラきれいだわ――なんて耀子が言っていた通りかどうかは、正直匡にはわからないけれど草原迄やってきた。
 タンポポがいっぱい咲いて、ところどころ違う色の花とかもあって。そんでもって、つくしなんかも顔を出している。詰めば食べれるんだっけなんて思い返しながら、二人は――じっとすることにしたのだ。
「ほら、やっぱり綺麗だわ」なんて言いながら、耀子はうろうろしてるけど。
「俺は全然ダメだ――落ち着かない」
 戦いのときは集中してればよかったんだけどいざ終わると、自分が人間でない現実に落ち着けねーのである。匡、むちゃくちゃ警戒心が高い。あたりまえなのだが、彼は髪の毛一本からつま先まで普通に人間なのでファンタジックすぎる有様に脳の処理が追い付いてないのだ。うけいれられないともいいます。
 生まれてこのかたメルヘンなことなんざ考えたことね~~~のである。イルカさんとネコチャンがご一緒にピクニックなんて絶対可愛い構図なんだけれどもそんなことを「かわいいねえ」で済ませられるほど浮かれちゃいない。おい!!生まれた時から戦争で育ってんだぞ!!文字覚えるよりも先に引き金の引き方覚えてんだよこっちは!!!!!無理だよ!!!!――とかは叫ばないだけ、ずっと匡の心は凪いでいる……とは思う……。
 さて、耀子といえばゆらゆらと尻尾を揺らして、聞こえた声に思案顔。
「“いつも通り”じゃないのって不安に感じない?」
 どうにかこうにか共感してほしい気もして、なんとなくイルカがきゅいきゅいと問うてみる。ずっとこのままってことはないと頭でわかってても、もし戻れなかったら、体のどこからが欠けてしまってたら、という「たられば」が匡の頭を駆け巡っていく。
 それを。
「――あたしに出来る事をするのは“いつも通り”よ」

 さっぱり。

「考えても仕方の無いことは考えないの。ねこだもの」
 わかるよ、とか一切ないのだ。耀子、あまりにもさばさば系女子である――というのも、匡のように耀子は考えていない。そう、「何も考えていない」のだ。
 脳死という意味ではなくって……脳筋といえばそれはそうなのだけれども……。
 ともかく、耀子は「その場で何ができるか」を「いつも考えている」のである。
 たとえば、この依頼で耀子は猫の姿になったけれど、猫じゃなかった場合も同じようにしていただろう。鳥だったら空を飛んだし、魚だったら泳いでたのだ。
 ――そう、すごく単純に物事に割り切りを着けられるのである。だってやることだけは決まっている。「斬る」ことだけだ。有象無象も、オブリビオンも、悪縁も、なんだって断ち切る。理不尽もこの通り、耀子の人生哲学という名の剣にかかればさっぱりポンである。
 黒猫が心底不思議そうだったものだから、イルカはぽかんとしてしまった。
「……気持ちはいつもと同じ、って?」
「そうよ。それ以外に大事なことはないでしょう」
 ――いや、まぁ、そうなんだけど。
 耀子はフラットだ。フラットではない時もあるけれど、それでも冷静を取り戻す女だ。どれほど怒りがあっても、どれほど悲しいことがあっても、それでも前に前にと行かねばならない。果たすべきことがたくさんある。
「俺もそういう風に考えられればいいんだけど……昔なら出来たかもしれないのに……難しい」
 たぶん、ちょっとちがうとおもう。
 ――匡の「割り切り」はあきらめであるけど、耀子の「割り切り」はつまり、究極的に、本当に単純を突き詰めた「それはそれ、これはこれ」なのだ。
 一体、何が違うのだろう――耀子の顔が思い浮かべそうで思い浮かべないが、匡の頭にあるホワンホワンシルエットから推察するに……角とかかもしれない……。
「……なんか食べようか」
「そうね。折角だからお花見気分でお茶でも」
 思考のスパイラルに陥ってる気がした。
 とりあえず、食べねば頭も働くまい。耀子もうんうんと頷いて、かさかさと宴会セットを開き始めたら――。

「少しは気が紛れ……」(お茶を見る)(耀子を見る)(自分を見る)
「お茶……」(匡を見る)(イルカさん)(イルカです)
 しばし、沈黙。
 十秒ほどお互いに固まって、――耀子の口が動いた。
「……イルカさんって、どうやって飲み食いするのかしら」
「つかめないしな……」手とか全部ヒレなので。
「……ああー、でも、水族館で見たことがあるわ。どうかしら。抵抗があるなら、また考えるけど」
「……いいよ、団子とか投げてくれ」
「喉に詰まらせないでね」
 三色団子を串から外して、ぽんぽんぽんと器用な前足の御手玉のち、匡へ投げて見せる耀子。ぴょーんと高く跳ねてみて、ぱくりと加えてみるイルカの匡。
 ――このムードなら多少許されるだろ。
 ほんまか?
 自分にたくさんの言い訳をしながら、しょうがないのだとむぐむぐ食べる匡と。なんだか本物のイルカショーを見た気になって、ちょっと嬉しかった耀子なのでした。たくさん食べたら戻れると思うから、がんばって!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロク・ザイオン
◎レグルス

(元より獣とひとの境が曖昧なお陰か
思い出せば転身は容易く)
……。
(体格差をいいことに相棒を膝に乗せたい
こねたい
労いたい)
……撫でられるのは、気持ちいいのに。
(ぽすぽすパンチを受け止める)

しゃむ、さつ…?撮影、を、する。
(ネコ型デバイスの両目が瞬きパシャシャシャシャ)
(両目から宙に投影される画像)
……どうして(宇宙猫)

こんなに小さく愛らしいジャックはな。
レアだ。
レアは…貴重で…星がたくさんついてて…
星。
好きだろ。
な。
貴重なものは高値がつく。みんな見たがる。海の商人の常識だ。
……匡だって見たいかも知れないぞ。
な。

………いるかみや(宇宙)
見たいな。
それは、たぶん、すごく、レアだ。


ジャガーノート・ジャック
◎レグルス

君の方が戻るの早いんだな。(ざりざり)
(何となく釈然としない豹鎧(まだボンベイ)だった。)

いや別に撫でなくていい
もちるな
こねるな
(ごろごろにょろにょろしつつ逃げる)(しまいには猫ぱんち(弱入力))

撮影もやめなさい
ヤメロ
妙にクドイな今日は
(残像とダッシュ駆使で逃げる
やはり妙に長かったり極端に短かったり或いはマッチョに見える写真になる)
(しまいにはしゃむをパン生地みたいに捏ねる。どちらが上か理解らせてやる(製造者マウント))

いや高レアも星も好きだが(それとこれとは別)

匡?
先ほどまでイルカになってたしそれどころじゃないんじゃないか?

あ、しまった
イルカ宮撮っておけば良かった
★5間違い無しだ




 元より獣とひとの境が曖昧なお陰で、思い出せば転身は容易いのだった。
 ロク・ザイオン(変遷の灯・f01377)は取り戻した人の姿をいまさら気にする様子もないが、きちんと動くかどうかを試しに手を何度か握りこんだり、ぷるぷると首を振ってみたりを繰り替えす。
「……」
「君の方が戻るの早いんだな」(ざりざり)
 問題はない――が。
 ジャガーノート・ジャック(AVATAR・f02381)のほうは、いまだボンベイの姿のままである。
 うにゃろ゛ろ゛ろん……とノイズ交じりの猫の声はプログラムされているのかもしれない――いや、多分ボンベイの音声をいろんなところから集めて気分に合わせた音が出せるよう音MAD状態でジャックのスピーカーから奏でているのだろう。
 だけどまぁ、それは。けものとひとの間っこであるロクの何かをくすぐるには十分な疑似餌のようなもので。
 ……す、とその釈然としないボンベイの顔に手が伸ばされた。
「いや別に撫でなくていい」
 ロク、無言である。ぬるんとジャックが体を動かしてなでなでの手を避けた。
 ならば次はと両手で襲い掛かるロク!!襲い掛かるっていうか彼女的には相棒をいたわったりとかそういうことをしたいんだけど!!逃げられたら追いかけてしまうのが猫のサガ!!!!
「もちるな」
 ごろごろん。クワガタも真っ青なロクのハグ・ギロチンをまるで球体になることでかわすジャック。
「こねるな」
 こねるまえになんかにゅるにゅるになって捕まえようとしたロクの腕と体から逃れるジャック。
 ぜーはー。ぜーはー。
 レグルス、息も切れ切れである。ロクに至っては【不落】まで使ってるのだが、そこはジャックの拒絶・ドントタッチミープリティキャッツの精神(プレッシャー)が勝ったらしい。
「無駄なことに体力を使わせるな」
「……撫でられるのは、気持ちいいのに」
 ねこぱんち(弱)(ジャックだけに?)
 ぽっすぽすとぱんちされるのをしゃがみ込んで両手で受け止めるのは、なんだかちょっとハイタッチっぽい。
 しかし、ロク。あきらめの悪さという点においては森で鍛えられている。獲物をおいそれとあきらめては死ぬ。自然は厳しいのでロクも忍耐はしっかりあった。まあ境遇に耐えて今を生きてるだけでもロクは我慢強いとおもいます。
「しゃむ、さつ……? 撮影、を、する」
 オッケー、SIAM!撮影して!ネコ型デバイスの両目が瞬いてパシャラララララララララ!!!!!!
「撮影もやめなさい」
 しかし、そこはジャックも同じであった。しんどいけど頑張って生きてるんで忍耐はジャックにもある。生きてるっていうか……存在してるっていうか……とにかくそんな彼にもちゃんと肖像権が……あるんですかね……ある!!あるといったらあるのでかわすことにつとめる!!うおおおお!
「ヤメロ」
 ――妙にくどいな今日は。
 ジャックの動きは実に怪奇であった。なんか妙に長い写真に成ったり、極端にキュッとしてて胴どこ?といったものになったり、両腕がめちゃくちゃマッチョに見えたりなど――絶えず動き回るので黒色の猫っぽい何かがバズりそうな写真ばかりがとれてしまう――。
「……どうして……」
 ロクもこれにはSIAMの両目から投影された結果に宇宙を感じざるを得ない……隣でSIAMのことを製造者マウントでこねまわしてるボンベイがいるけど……いやそのボンベイもまぁ……大まかにいえば……宇宙っていうか……なんか……そういう感じなんで……。(?)
 さて、投影から目をそらして、SIAMのことをスライムみたいにこねてるジャックにロクが説得に出る。えらいぞ!にんげんっぽい!
「こんなに小さく愛らしいジャックはな。レアだ」
 しゃがみこんで、じっとその瞳を見つめて。
 ひととおはなしするときは目を見つめることがだいじなのだ。自然界でやったら殺し合いなので不思議なもんである。
「レアは……貴重で……星がたくさんついてて……」
 ロクが思い浮かべるのは――ジャックの中身がコンビニで無数のりんごカードとかそういうのを買っている背中のこと。
「星。好きだろ。」
 わくわくの彼が一喜一憂するのを、何の意味も解らずに見ていた時に聞いた知識だ――。
「な。」
「いや高レアも星も好きだが」
 ――それとこれとは別じゃね? うーん、その通りです。
 でも、ロクが知る限りではUDCアースとかのにんげん、たくさんの星がついていると、みんなすっごく嬉しい!UDCアースのにんげん、みんなお星さまだぁいすき!わぁい!ほら御覧あれが流星群よ~~!!!!
「貴重なものは高値がつく。みんな見たがる。海の商人の常識だ。……匡だって見たいかも知れないぞ」
 グリードオーシャンの商人とかもそう言う!多分あのお疲れな傭兵も見たら笑っちゃうかもしれない!お得!さあお買い得!今ならカメラの前に立つだけでOK!
「な。」
「――匡? 先ほどまでイルカになってたしそれどころじゃないんじゃないか?」
 ウワッ、シレっと論点のすり替えをしたこのジャックである。このジャック絶対レスバつよいです。
「………いるかみや」あーあ、ロクちゃんが宇宙にいってしまいました。
 ロクが宇宙を感じるのも無理はない。二人が知ってるお疲れの傭兵は、さっきまでイルカになってとぼとぼしていたのだ。でもロクは目の前のジャックに夢中ですっかりその様子を見ていない。
 想像しても――想像できないことって――たくさんあって――。
「見たいな」
 じゃあ見ればよくね?というのがロクである。うーんこの猫!好奇心で殺したもものはたくさんありそう!!
「それは、たぶん、すごく、レアだ」
「そうだろ。あ、しまった――イルカ宮撮っておけば良かった。確かに★5間違い無しだ」
「探すか」
「探そう」
 シレ~~~~~っとロクの注意をそらすことに成功したジャックである。ブブブブブブと残像を残しながら、ロクと一緒にイルカショーのところへと向かって一目散!
 果たして二人がたどり着くころには、お互い魔法が解けているのかどうかはまたご想像にお任せということで――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジャハル・アルムリフ
*再び謎の進化🐾

うむ、これが最終形態か
――…進化とは如何なるものだったろうか
朝日に問えど答えは遠い

今宵は少々、と申すか
味わうはずのなかった動き方ばかり
疲れを残しては明日に差し支える故

しからば湯治である

隅の方、ゆるい打たせ湯のある場所などで
頭だけ出して熱を楽しむ
うむ、味わい深い文化である
あの不運な竜達も今ごろ羽を休めているだろうか

…ひとの多い場所は
決して得意では無かったはずだが
こうも騒がしいのに居心地が悪くないのは
誰も彼も、ばけものだと誹るものなど居らぬせいか
落とし子も、大蜥蜴も、そして此れも
果たして主に見せたらどんな顔をする事やら

して気の所為だろうか
この姿、のぼせるのが早い…ような……




「うむ――これが」
 最終形態である。
 ジャハル・アルムリフ(凶星・f00995)がたどり着いた一つの解の形であった。いや一つの解も何も彼の姿はイケメンなんですけど、今回の依頼での最終どろんぱっぱは――イリエワニである。安心安全の稚ワニサイズ。
「――…進化とは如何なるものだったろうか」
 朝日に目を細めて問うているジャハルの背中、つやつやしていてごつごつなのだった。キラキラと日光を反射して、綺麗だね……!成長すれば1tとかも目じゃない大きくなる種類だからね!!
 さて、今日のジャハルといえば本当に夜のうちに善く働いてしまったものである。文字通り全身を使い、世界のためにいろんなものをかなぐり捨て、理不尽にもまれ、実際結構へとへとなのだった。胴体の長いイリエワニになったからか、いろんな妖怪たちも彼を踏まないようによけやすい。
「あんた、どこに行くんだい?」
「湯治を」
「ああ、温泉かァ。乗せてってやるよぉ」
 愛想のいい火車の声にうむうむと頷いて、ご厚意を無碍にするわけにもいかぬジャハル、ちゃっかり手押し車に乗せてもらうのだ。
 味わうはずのなかった動きばかりをしたもので、普段使わぬ筋肉もふんだんに動かしてやった気がするのである。疲れを残しては明日に差支えてしまうので、――然らば、湯治こそ解であろう。

 ちゃぱぱぱぱぱぱぱぱ……。

 ぷかり、ワニの目玉と鼻の孔だけが浮かんでいた。
 できる限り隅の方で、それでいて打たせ湯もあるところにのそりのそりとやってきたジャハル。つるんと滑るように湯につかれば、あっという間に全身しっかり温められた。
 ――味わい深い文化である。
 ジャハル、爬虫類故に温かいところは好きな模様。
 打たせ湯が頭にととととととと……と落ちるのも気持ちが良い。いろんなことに混乱して頭皮もすっかり固まっていた気がするのだ。
 血流が善くなるのを感じながら、あの不運な竜たちも今頃は羽根を休めているのだろうか――なんてことも考えられる余裕がある。
 うっすら目を瞑れば、ぷかり。不思議と体が浮かぶ。すっかり脱力できていたらしいジャハルの全身がリラックスの極致に至っていた。
 ――ひとの多い場所は、決して得意ではなかったはずだ。
 しかし、耳をすませば宴の喧騒が聞こえてくる。妖怪たちのパレードも、きゃらきゃらとどこかの湯で楽しむ声も、食器の音も、別の音も、何もかもが穏やかな空気に響いている。
 前までなら、煩わしいとしかめっ面をしていただろう――なのに、今は「悪くない」とすら思えている。
 ここがカクリヨファンタズムだからであろうか。ワニのジャハルを甲斐甲斐しく運んでくれた火車も、温泉の番台である大ガマガエルも、使用人の猫又も、アイスクリームなるものを売る犬神も、どれもこれも確かに「ばけもの」だ。
 ここは、ばけものの楽園である。忘れ去られて恐れられた彼らの唯一の居場所は、ジャハルすら受けれ入れてしまえるほどに寛大であった。己の異質さすらこの世界ではほんの少しの要素でしかないのだと思えると、不思議と――悪いところではないのだと思えてしまう。
 踏んだり蹴ったり、大変な目にばかり遭ったけれど。
 今も人間の姿を取り戻すには至らないし、きっと己の何かが足らないせいだともジャハルはわかる。しかし、居心地が思ったよりもよくって。
「果たして主に見せたらどんな顔をする事やら」
 ――落とし子も、大蜥蜴も、鰐も。
 思い浮かべた七彩の双つ星の顔が、驚いてから大笑いになった。それから、きっと好奇心に満ちた顔で話を聞いてくれそうな顔もして――ああ、帰らねばという気持ちがゆっくりと湧き上がってくる。
 ほんわり。ほこほこ。
 ――気のせいだろうか。なんだか思い浮かべた主のお顔がどんどんぼやけていく感じがするのである。あれ……いや主は儚い感じだし美しいけれど……なんかこういう霞み方は……。

「この姿、のぼせるのが早い…ような……」
「お、おきゃくさーん!?」
 釣り具のウキがごとく、ぷか~とまっすぐに伸びたイリエワニが揺蕩っていたので、いそいで見回りの猫又さんが助け出してくれる。
 ワニはだいたい25~28度が適温!体が冷えないよう、赤ちゃんのおくるみがごとくタオルで巻かれるジャハルが休み処にいたのでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セリオス・アリス
【双星】◎
おい、なんでアレスは戻ったのに俺はそのままなんだよ
おかしいだろ!
暴れまわってたらアレスの声
…そうか
この姿だったらアレスの大きな手が…もっと大きいわけか
悪くねぇな
膝の上を占領して全力で撫でられる
あ~そこ、気持ちいい
すごい落ち着く
やっぱりこの手が一番好きだ
もはや液体レベルにリラックス
抱き上げろと催促して
してもらったらお返しに鼻をペロリとなめる

アレスからもお返しをされたら

……戻ったな
いやいやこのタイミングで戻るってなんだ!?
状況と体勢に真っ赤になり慌てるけど
…ふ、ふは!顔を合わせたらそんなのどうでもよくなって
なぁ、聞いてくれよ
アレスわんの背中がどうだったかとか
話したいことがいっぱいあるんだ


アレクシス・ミラ
【双星】


漸くいつもの姿に…あれ?
未だ黒猫姿で不満そうな彼の傍に
籠手を外してしゃがむ
大丈夫だよ、セリオス
君もすぐに戻れるはずさ
だから、ね?一緒に待とう?

セリオスが膝の上に乗ってきたら
気持ち良さそうな表情をする所を柔く撫でる
はは、溶けちゃってる
…何だか嬉しくなるな

ん?…ああ、これがお望みかい?
抱き上げれば正解の様子
今の君は柔らかくてとてもあたたかいね
わ。…あはは、くすぐったいよ
…僕もお返し
セリオスの鼻先に自分の鼻先をくっつける
と…

…も、戻れて何より…
体勢と状況に顔が赤くなる、けど
顔を見合わせたら…何だが可笑しくなって思わずくすくすと
うん、全部聞くよ
僕もセリにゃ…猫の君の歌の事とか
沢山話したいんだ




 きら、きら、きら――。
 輝度が戻る。金色の毛並みはどんどん青年の体にかわり、視線がぐんぐん高くなるのを感じていた。指先の感覚が明確になり、あたりを見回す。夜は明け、化かされた時間は元通り。アレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)はいつもの彼らしい整った顔つきであたりを見回した。
「――あれ?」
 己が戻ったのなら、ふたつのひとつも戻っているだろうとおもっていたのだけど。
「おい、なんでアレスは戻ったのに俺はそのままなんだよ!!!おかしいだろ!!!!」
 ――なんでや!!!!!セリオス・アリス(青宵の剣・f09573)はネコチャンのまんまなのおかしいやろ!!!
 そう、セリオスは猫のままであった。二人でどろんぱっぱと同時に起きたはずなのに、どういう因果やら――やはり彼のほうが「守られる」立場だからこそ、こういった災難には好かれやすいのかもしれない。
 とりあえず、暴れまわってうにゃうにゃうにゃところころ転がる子猫が踏まれてはならぬ。籠手を外し、身軽になった手でまっくろこねこを護るようにアレクシスが道行く妖怪たちの足元からのけ、自分側に寄せるのだった。
「大丈夫だよ、セリオス。君もすぐに戻れるはずさ」
 しゃがみ込んだアレクシスの顔が、セリオスの視界いっぱいを埋め尽くす。
「だから、ね?一緒に待とう?」
 ――……そうか。
 ――この姿だったらアレスの大きな手が……もっと大きいわけか。
 気づいちゃったなセリオスにゃん……悪くねぇなと想うのもしかたあるめぇ……。そう、今はイヌの時よりずっとアレクシスは大きい。かっこいい彼の王子様フェイスもいつもより子猫のセリオスは堪能できるし、大きなおててのなでなでも全身で受け止めることができる。ある意味一番お得ドコロでもあるのだ!
「よっし、じゃあ待ってやる!」
「うん」素直に聞いてくれてうれしかったアレクシス、セリオスの打算と下心にはあんまり気づいていない。
 ほんわりと微笑んだ彼の膝を、てしてしと小さなおててで叩けば胡坐を作ってくれる。そこに、よいせよいせとよじ登って折りたたまれる右膝のところにぽすり。
 ――なでろ!!!!!!!
 セリオスが言わずとも、なんとなく気迫を感じ取ったアレクシスである。
 ヨォシヨシヨシ……激しくなでくりまわすよりも、両手で包むように触るのがいいんだろうなぁと思いながら、未発達の顔も喉も背中ももしょもしょと撫ぜてやる。
「あ~そこ、気持ちいい……」
 すごい落ち着く効果がある……もはやアレクシスの完璧なおさわりはさしずめ全身マッサージ……セラピー効果すら感じられる……セリオスを撫でててアレクシス自体も癒されているのでこの関係、まぎれもなくwin-win……ッッッ!!!
 ――やっぱりこの手が一番好きだ。
 もはや液体レベルにリラックスしてるとろっとろのセリオスである。ふゃ~んと伸びてしまった子猫の体を見て、思わず笑顔も溢れてしまうというもので。
「はは、溶けちゃってる」
 ――何だか嬉しくなるな。
 アレクシスがそんな彼の一等星を大事にあたためて撫でてやっていたら、さらなる「にゃあお」と甘えたおねだりの音。
「ん?」ちょっと小首をかしげて「……ああ、これがお望みかい?」
 わざと言葉を使わなかったセリオスのお願いも、アレクシスは悟ってしまえるのだ。スパダリなので。
 甘える子猫の背中と、お尻に手を添えて抱き上げる。人間の姿ならお姫様抱っこのそれだが、四つ足の動物は赤ちゃんのように「たかいたかい」と持ち上げると苦しくなってしまうのだ。なので、ベストな抱え方である――苦しくない?とか聞いてあげながらやってあげるアレクシス、何よりセリオスのことが大事である。
「今の君は柔らかくてとてもあたたかいね」
 それはお前もだろ~がとは思わなくもなかった。
 子猫の姿だからいつもより積極的に甘えることもできるセリオスは、ここぞとばかりに自分を覗き込む彼の顔をはしりと両手で捕まえて、ざらざらの舌でアレクシスの鼻をぺろぺろりと舐めてみる。
「わ。――……あはは、くすぐったいよ」
 顔を反らすことはなくって。セリオスのやりたいようにさせていたアレクシスがきゅっと目を瞑っている。
 セリオスが満足して口を離したら。
「僕もお返し」
 子猫のの鼻先に自分の鼻先をくっつけてみる。
 ――いつもの姿では、こうやって人前でむやみやたらに彼らの距離で戯れることは恥ずかしいけれど。今の子猫の彼になら、これくらいやってみてもいいんじゃないかって思って。
 すると。
 ――王子様のキスで目覚めるお姫さまがごとく、という具合に。

「……戻ったな」
「……も、戻れて何より……」
 どろんぱっぱ!!
 アレクシスにお姫様抱っこされるセリオス(にんげんのすがた)が顕れたのでした。
「いやいやいやいやいや!!!!!このタイミングで戻るってなんだ!?!!?」
 せりおす は しょうきに もどった!
 そう、セリオス自体も二十八歳の長身男性である。彼にも今の状況、いろんな事実としてめちゃくちゃ恥ずかしいことに成ってしまっているのだ!やべえやべえと慌てる彼の視界で、顔を真っ赤にしたままぽかんとしたアレクシスの顔が見えて――。
「――ふ、ふは!」
「ふふふ」
 なぁんだその顔!なんてお互いに思っちゃってて、顔を合わせたらそんなのどうでもよくなってしまうのだ。
 なにもかも面白可笑しくなってしまうのは、きっとお互いが無事で、それでいて隣にいてくれるきみがいつも通りだったから。
「なぁ、聞いてくれよ、アレスわんの背中がどうだったかとか――」
 くしゃくしゃになった美しい黒髪、その前側を掌でぐしぐしと整えてから。
「話したいことがいっぱいあるんだ」
 セリオスがアレクシスに微笑みかけるなら。
「うん、全部聞くよ」
 こくりと頷くアレクシスがいて。
「僕もセリにゃ――猫の君の歌の事とか、沢山話したいんだ」
 思い出しながら、あの不思議な夜のひとときを悪くなかったななんて思ってしまう。
 お互いに寄り添いあって、小さく笑いあう。二人の秘密の時間。内緒、内緒の――僕だけしか知らない、君のかわいいところを教えてあげるから。
 双星のきらめきは、太陽が照らす世界でも穏やかなままだったのでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
【猫歌】

ふふー!
ひと段落の大団円かな!
千織はまだ猫の姿?
僕も、足とももうお別れかな……そのまえに、もう少しだけ
ぽてぽて、子ペンギンのままでヨルと戯れる
ぎゅうとすると暖かい
歩くのも駆けるのも楽しくて歌いたくなる気分だ

千織、温泉にいこう
すいすい游ぐよ!もう少し、こうしていつもと違う姿を楽しもうよ
猫の千織もすごく可愛くてそっと身を寄せてぎゅうとする

ごはんもいいな
僕はお魚を食べるんだ!
千織はやっぱりお肉かい?
地を踏みしめるのが幸せで、楽しくて
それでも僕は、僕のかたちが好きなんだ
かあさんと同じ人魚の
ふわりともどったら、少しの名残惜しさとこれで良かったと言う想いが宿る

うん!千織!
楽しもう!沢山食べるぞー!


橙樹・千織
【猫歌】

妖のみなさん、元の姿に戻れているようでなによりです
猫の体でぐぅー、とのびる
ふふ、櫻宵さん達にもリルさんのその姿、見せてあげられたら良かったのに
リルさんとヨルさんのやりとりをふわほわ眺めて癒されて

温泉いいですねぇ
ぬくぬくのんびりは良いものですよ
あらあら、泳ぐのは程々にね
すり、と頭をすりよせて

宴なら沢山お料理がありそうですねぇ
リルさんとヨルさんは何がいいかしら
とびきり美味しいお刺身もあるはず
肉汁滴るお肉に新鮮なお野菜
お腹すいてきちゃいましたねぇ

とっても不思議な体験でしたねぇ
やはりいつもの姿が落ち着きます
人型に戻ればふわりと笑う

ふふふ
リルさん最後まで宴を楽しみましょうか
甘味もあるかしらねぇ




 ぽん、ぽん、といろんなところで人の形が増えてくる。
「ふふー!ひと段落の大団円かな!」
 えっへん!僕たちがんばったよ!リル・ルリ(『櫻沫の匣舟』・f10762)はお友達のヨルと一緒に胸をはる。本当によくがんばってくれました!
「――あれれ、千織はまだ猫の姿?」
「ええ、私はまだ時間がかかるかと」
 橙樹・千織(藍櫻を舞唄う面影草・f02428)は隣で猫の姿でうんとのびのび。前脚を大きく突き出してひといき。
「妖のみなさん、元の姿に戻れているようでなによりですねぇ」
「うん! みんな、人の姿になれてうれしいみたい」
「ふふ、櫻宵さん達にもリルさんのその姿、見せてあげられたら良かったのに」
 そういえば、同じ依頼にやってきていた。桜色の竜を見たし、彼に素敵な舞台を用意してやった赫色も覚えているけれど。だけど、リルは――。
「うん、でも……僕も、足とももうお別れかな……そのまえに、もう少しだけ」
 やっと手に入れた足は、ヨルとおそろいの足。
 ぽてぽて、もふもふ、追いかけっこ!千織の周りをぐるぐると円を描くように走り回るヨルとリルの姿は一生懸命でかわいらしい。千織も知る二人がきっと眺めたら、かわいくて卒倒するに違いないのだけど――まあ時間もないだろうし、いいかなぁとふんわりゆる~く思っているのだ。
 逃げるヨルに追い付いたリルがぎゅうとすると暖かい。もふもふとお互いのやわらかさを分け合うと、ヨルもなんだかうれしそう!楽しくて歌いたくなっちゃうね、なんてきゅうきゅうと雛二人で合唱中。
 そんな賑やかな三匹のところに、ちょうど火車が通りかかったのでした。
「温泉はどうだい。そこの御三方」
「あら、温泉?」
「千織、温泉にいこう!」
「いいですねぇ」
「疲れにもいいよぉ、湯治の効果もあるんだ」
 ぬくぬくのんびりは良いものだ。からからと荷台に積んでもらえば、そのまま温泉に直行便。はやいはやいとはしゃぎつつも、たどり着けばなかなか立派な施設だったものだから。ころんとびっくりヨルとリルに、にこにこと千織がご一緒する感じであった。

「わぁ~!!」
 リル、海の生き物故に泳ぐのは大好きである。
 子ペンギンの姿ですいすい游ぐ二匹を、まったり千織が見守っている。
 さほど深くないところなら溺れることもなかろうと、一応動物サイズにと案内された家庭用プールほどの規模の場所で三匹、まったりとぬくもっていたのでした。
「あらあら、泳ぐのは程々にね」
「はぁい。でも楽しいねっ」
 すり、と頭をすりよせた猫の千織がすごく可愛くて、リルもそっと身を寄せてぎゅうとしがみつく。千織はとってもやさしいから、嗜める程度で留めてくれるのだ。リルもヨルも泳ぐのが好きだと分かっているので、せめて千織に気にせずともいてほしいがそれでは保護者としてちょっと無責任になってしまうゆえの一言である。
 三匹でたっぷりお湯を堪能したら、さてさて次はとタオルを被ってぽてぽて進む。いつ解けてしまってもおかしくないから、最後までこの姿を堪能できるうちにいろいろやってしまおうという三匹なのだ。う~ん!かわいくて抜け目ないぞ!

「宴ならとは思ってましたが、沢山お料理がありますよ」
 タオルでしっかり毛皮を乾かしたのなら、お次は温泉施設にあるご飯処。
 宴の喧騒もいいけれど、こういうところで穏やかに食べたい妖怪たちもそこそこいるらしく、うどんや蕎麦、オムライスや鍋なんかをつつきあったりしているペアも団体も見かけるもので。
「リルさんとヨルさんは何がいいかしら」
 三匹です、と千織が店員に声をかければ、こちらにどうぞ!と整えられた日本風景が見える座敷までご案内。たたみを音もなくあるく千織のあとを、ぺたぺたと子ペンギンたちがついてくる。
「僕はお魚を食べるんだ!」ヨルもうんうんうなずいて、リルに続く。
 それぞれ座布団に座れば、ヨルとルリはとなりどうし。千織と向かいあうことになった。
「千織はやっぱりお肉かい?」
 とびきり美味しいお刺身もあるはず――ぺろりぺろりと手羽先でメニューをめくるリルを視線でおいかけながら、千織がきらきらと瞳ですすけた写真つきの品を眺める。
 肉汁滴るお肉に新鮮なお野菜、とれたてピチピチ摩訶不思議のお料理たち。
「お腹すいてきちゃいましたねぇ……やっぱりお肉かしら」
「わぁい!じゃあお肉の盛り合わせとか、どう?」
「あら。そんなものが……」
 わいわい、きゃっきゃ!
 本日のお刺身つきの懐石料理と、エネルギーばっちりのお肉の盛り合わせ。
 サービスだよと菜の花の天ぷらもついてきて、お上品に醤油と大根おろしでいただきます!
 おなか一杯に食べたら――今日の振り返りのお時間なのだ。
 まんまるになったヨルがころんと寝転がっている。それを眺めながら、リルは食後の一杯で頼んだお冷をゆっくり飲んでいた。
「地を踏みしめるのが幸せで、楽しくて――名残惜しいけど」
「ええ」
 何を言いたいのかは、千織もわかる。
 欲しかった足があるのは確かにリルには嬉しかろう、しかし、それは彼から「彼」を損ねてしまうのだ。
「それでも僕は、僕のかたちが好きなんだ」
 ――かあさんと同じ人魚のあかし。
 ふわり、ふわり。リルはずっと――手にすることのなかった小さな足を眺めていた。魔法がとけて、その感覚がいつものものに入れ替わるまで、ずっと。
「だから、これでいいんだよね」
 美しいきめ細やかな鱗を撫でる。大きな尾に変わった人魚の証を眺めて、それから千織に向き直った。
「ええ、やはりいつもの姿が落ち着きます」
 ふわりと笑った彼女が、いつの間にやら猫の姿から戻ってしまっている。きょとりとリルが瞬きして。
「……千織、もしかして」
「はい?」
「僕に合わせてくれたの?」
「いえいえまさか、タイミングがよかっただけですよ」
 くすり、優しくあたたかく微笑む千織はいつもどおり。
 ぴこぴことネコの耳を動かす彼女の優しい温度に、なんだかうれしくなってしまうリルがいた。
「さあ、リルさん。最後まで宴を楽しみましょうか」
「うん!千織!楽しもう!まだまだ沢山食べるぞー!」
「甘味もあるかしらねぇ」
 ぺろり、ぺろり。今度はスイーツのメニューをめくっているうちに。
 温泉から出てきた桜色と赫色とがふたりの近くにまで案内されてきたことでしょう。どうぞ、皆で優しい宴の時間を楽しんで。
 ――思い出話に花がたくさん、咲きますように。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

牙・虎鉄
◆シャーロット(f14294)と

(鼻には水晶が詰まってるのでやや鼻声)
ギリギリ生きてる

付き合って貰って済まなかったな
お陰で克服すべき事もより克明になった――ような気がする
多分

君にも良い経験になったろうか
……そうか、それは何より
ああ、後はゆるりとし

温泉???
――いや分かった

(スゥーーー)"耐雪梅花麗"…

人の事に興味があるのだったものな。(※20秒経過)
俺も少しだけ強くなれた気がする。(※40秒経過)
恐らく君のお陰もあろう――(※70秒経過)

うむ だが

(※限界時間到達+シャーロット人化)

すまん限界d

(※残機:💥)

(致死量では?くらいの鼻血を出して倒れる🐯。
虎鉄、温泉の湯船に沈む――)


シャーロット・プラチナム
◆ふーちゃん(f31118)と!

ふーちゃんふーちゃん、だいじょぶ?
(前足てちちち)

えへへ、わたしお役に立てたのね!よかったぁ。
お友達のお役に立てるの、うれしいわ!

終わったことだしゆっくりしよ? ……あっ!温泉だって!
まだ猫の姿のまんまだし、このままざぶーんって入れるみたいね!
(しゃーろっとは人の話を聞かない)(ざぶーん)

わたし、今は猫だけど……にんげんのこと、少しまたわかってきたかも!
アナタのことも。えへへ。お友達のこと知るのって、うれしいのね。

……あっ。
ふーちゃんふーちゃん!もどった!わたし人っぽくなってる!みてみて!
(しゃーろっとは羞恥心がゼロだ!)




「ふーちゃんふーちゃん、だいじょぶ?」
 かわいくてまっちろい前足で、虎のほっぺをてちちち。――シャーロット・プラチナム(うたうしろがね・f14294)、恐ろしい子ッッッ……!!
 真っ白な子猫になれどもその死の威力、あなどれぬ。傍で横たわる屈強な若い虎、牙・虎鉄(拳鬼虎・f31118)でなければ何人が犠牲になっていただろうか。いや虎鉄もゴリゴリに削れてるのだけど、何がって言うと寿命とか尊厳とか……そっち系が……。
「ギリギリ生きてる」
 鼻にまぁるい水晶玉をつめてもらったので止血は力技でなんとかなりつつあった。危なかった――大義を胸にしたまま志半ばで折れるところでしたね――。いやそういう意味じゃなくって――。
「付き合って貰って済まなかったな、お陰で克服すべき事もより克明になった――ような気がする」
 多分。
 むくりと起き上がる虎の顔、きりりとしておりました。いわゆるちょっと賢者タイムとかそういうのを通り越して涅槃静寂だったんだと思います。
 武人の虎鉄、このようなことで倒れておれぬのだ。まだまだやるべきことがたくさんある。己の弱さを見つけたなら、それをより研磨して強くせねばならんなとしっかり顧みることができる健全な子である。えらい。
「えへへ、わたしお役に立てたのね!よかったぁ」
 ぴょこぴょこ!かわいいお耳が嬉しそうに左右に揺れていた。
「お友達のお役に立てるの、うれしいわ!」んゃお!シャーロットが愛らしく笑っても、虎鉄の心は落ち着いていた。うむ、なんら問題はない――。
 むしろ、この一戦が純粋な彼女にとって良い経験になったことを願っている。そりゃ血も(主に虎鉄から)出たし、大変なこと(主に虎鉄が)はたくさんあったけれど、誰かと共に苦戦しながら(主に虎鉄が)一緒に死線をくぐるのは、やはり貴重だ。
「……そうか、それは何より」
 だから、彼女が喜んでくれたことを心から嬉しく思える。
 未熟な己の拳でも、もう誰かに何かを説いてやれるのだと――存外、ためになったのは虎鉄も同じだったかもしれない。
「終わったことだしゆっくりしよ? ――あっ!温泉だって!」
「ああ、後はゆるりとし……」
 そんなしみじみムードの中、温泉直行便の火車たちがどんどん駆けていったのだ。いろんな動物姿の猟兵のせてえんやこら!急げや急げの猛ダッシュに、猫のおひげもつられて動く。
「温泉???」正気か???????という声が出た。
「だめ?」きょとりと首を傾げるシャーロット。「ふーちゃんは温泉きらい?」人によるものねぇなんて言ってる彼女、本当に純粋なのである。
「――いや分かった」
 そういうとこだぞ虎鉄く~~~~~~~~~~~ん!!!!!!!!!!!!!!!虎鉄くんもスケベなわけではないのだ。普通に純朴なので、できれば友達のお願いは聞いてやりたいのである。俺が我慢すればいいだけのことだからね、そうだね……そうか……??????????

「まだ猫の姿のまんまだし、このままざぶーんって入れるみたいね!」
 さてさてばびゅんと運ばれてきた二匹。虎鉄は心が(主にシャーロットのせいで)乱れまくっているし、シャーロットはそもそも人ではないので、なかなか人型を取り戻すのに時間がかかるとみた。
 それでは動物サイズの皆様はこちらにと猫又が案内してくれた二人だけの岩場に、つるんと滑るようにしてばしゃーん!ざぶーん!シャーロットが容赦なく浸かってゆく。
「だ、大丈夫かしらぁ……お知り合いなのよね?」猫又のお姉さんもこれにはちょっとたじたじ。声からしてもシャーロットは雌だし。虎鉄は雄だし。
 ――虎鉄が、スゥと目を閉じて息を鼻から吸う。
【雪に耐えて梅花麗し】
「"耐雪梅花麗"(やせがまん)……」
 オイ!!!!!!!!!!!!!!こんなときの為みたいなUC遣うな!!!!!!!!!!!!!いいのかこんなことにWP使って!!!!!!!!!
 ――まあともかく。
 悟りを通り越して宇宙にまで至りそうな虎鉄の凪いだ顔である。これはきっと大丈夫だ……!そう確信して猫又のお姉さんもそっとその場から離れてくれた。
 心を乱れさせないよう、そうっと前足一本ずつで湯に浸かっていく。シャーロットがたのしげに泳いでいるところに、規則的な虎鉄の波紋が広がった。
「ふーちゃん、大丈夫そう?」
「ああ」
 ――ふ、と微笑んでやる。
 よかったぁ、と笑うシャーロットも、本当に心から嬉しいのだ。友達に毎度毎度迷惑をかけてばかりで、申し訳ないなとは感じていたから。
「わたし、今は猫だけど……にんげんのこと、少しまたわかってきたかも!」
「人の事に興味があるのだったものな」
 ――20秒経過。
「アナタのことも。えへへ。お友達のこと知るのって、うれしいのね」
「ああ、――俺も少しだけ強くなれた気がする」
 無邪気な微笑みを前に、そっと虎が腰を落として座った。
 ――40秒経過。
「恐らく君のお陰もあろう――」
 まったりと微笑んで。
 ――70秒経過。
「うむ だが」
「……あっ。ふーちゃんふーちゃん!もどった!わたし人っぽくなってる!みてみて!」
 虎鉄くんは――学ばないなぁ――。
 ▼しゃーろっと は 羞恥心が ゼロだ !
 ▼しゃーろっと の おいろけ こうげき!
 ▼ふーてぃえ に こうかは ばつぐんだ!

「すまん限界d」
 🐯残機:💥
 ――シャーロットが「人に憧れている」ことを思い出すのなら、彼女が人の形を取り戻すなど些細なことだったろうと、沈みゆく景色の中で想うのである。
 彼女がそう言い始めたときに虎鉄は目を閉じるべきだったのだ。きりりとした顔で直視すべきではなかった――シャーロットはモノである。自分の体がいかにかわいくってきゅーとでぽいんでぱいんであってもその価値がわからんのです…………。
 目の前でどろんぱっぱの効果が消えてしまったシャーロットをモロに受けてしまった虎鉄、致死量では???というほどの鼻血を出し、ばしゃぁあん――と湯舟を真っ赤に染めて血の池地獄もとい温泉に沈んでいくのでした――。
「ふーちゃん!!!??ふーちゃん!!!」

 ――だれかァ!!!助けてくださァアアいッッッッ!!!!!!!
 ※無事に虎鉄にはのちほどガチムチな妖怪たちがえっさほいさと湯舟からもちあげて、1UPもといげんきが出るなにかしらを与えられて救命措置がとられました。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヘルガ・リープフラウ
🐺🦢花狼


世界も妖怪の皆さんも、みんな無事で良かったわ

ヴォルフは人型に戻れたようだけど
わたくしはまだ白鳥のまま
心配せずとも、しばらく待っていれば元に戻れるでしょうけど
何だか不思議な気分

ああ、ヴォルフがわたくしを抱き上げて優しく撫でてくれる
狼になった彼をわたくしが撫でることはあったけれど
逆の立場になるのは初めてね
彼の手が羽を伝う感触が心地よい

囁きかけるように嘴を彼の顔に寄せて
え? 待って、この状況で人型に戻ったら……

さっきまで嘴のあった場所に彼の唇が触れて
周囲の歓声に熱くなった頬は薔薇のように真っ赤になって
彼の胸に顔をうずめ、愛しい人にだけ聞こえる声で囁く言葉

「ありがとう……愛してる」


ヴォルフガング・エアレーザー
🐺🦢花狼


周囲の妖怪たちの様子は表面上は変わらないように見えるが
あの時のような死と隣り合わせのやけくそ気味な焦燥感がない
心からの解放を喜ぶ今の方が遥かに好ましい

ヘルガはまだ戻れないのか
小さくなった彼女の体をそっと抱き上げて
包み込むように優しく撫ぜる
大丈夫だ、俺がついているから
何も恐れることはない
彼女の声に耳を傾けるように頬を寄せて

気が付けば唇に触れる感触は、固い嘴ではなく桜色の柔らかな
……えっ、この状況は……

これは思いっきり見られてしまったな……
何だその……すまない

恥ずかしさに隠れるように顔をうずめる彼女を
庇うように抱きしめる
胸の内が何だかこそばゆい

ああ、俺もだ。ヘルガ
これからもずっと傍に




 ヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)の身は、あるべき姿を取り戻した。人をむしばむ狼の病を未だ、抱えたまま――しかし、護るべきものを護るための掌を確かめて、ようやく肩の荷が少しだけ降りたような心地がする。長く息を吐いてから、目の前の白鳥を青い瞳で見た。
「ヘルガ」
「はい」
 彼の妻であるヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)は、白鳥の姿からまだ戻れていない。
 しかし、宴を優しく見守る彼女には戻れぬことの動揺よりも安心のほうが勝っていた。どこもかしこも演目を楽しみながら、それでいて笑顔が咲き誇っている。まるで、冬が明けて春が訪れたように――。
「世界も妖怪の皆さんも、みんな無事で良かったわ」
「ああ」
 周囲の妖怪たちの様子は表面上は変わらないように見えても、ヴォルフにはわかっている。そのにぎやかさの質が圧倒的に違うのだ。
「あの時のような死と隣り合わせのやけくそ気味な焦燥感がない」
「ええ」
「心からの解放を喜ぶ今の方が遥かに――好ましい」
 滅ぶなら、どうせ地獄なら。
 酔って踊って楽しんで、死ぬまで笑顔でいてやろうとする勢いと比べたら、あるべきもの愛しいものを思い出した今のほうが、ずっと彼らは生き生きしているように見えるのだ。
 救済を為した。猟兵たちと、そして二人で導くべきところに妖怪たちを――どうしようもない乱痴気騒ぎだったけれど、無事におさめてやれたのだという実感が二人の間に広がっていく。
「まだ、ヘルガは戻りそうにないか」
「ええ――心配せずとも、しばらく待っていれば元に戻れるでしょうけど」
 いろんなところで人影が増えていく。
 あまりにも滅亡と変化を織りなすこの空間では、いかなる人間も適応が難しい。故に、まばらに見えてきた器用な姿は、妖怪たちの思い出から作り出された変化なのだ。
「何だか不思議な気分だわ」
 ――自分の翼を見ながら、ヘルガが漠然とした自分のシルエットのみ思い浮かぶ頭でそう、感想を口にする。
 焦りがない、わけではなくて――。
 空は晴天だ。しかし、西の方角を見れば夜の真っ最中だ。
 南を見れば地面がひっくり返っているし、「次は何がおきるかわからない」世界である。此度はうまくいったけれど、まだこのまま白鳥であったら――。
「大丈夫だ、俺がついているから」
 その華奢な輪郭を、しっかりと抱き寄せるたくましい狼の腕がある。
 ヴォルフが、低く唸った。
「――何も恐れることはない」
 【永遠の双星≪白≫】。
 まるで、言葉にしていないのに、その声を聞いたかのよう。
 ヘルガのくちばしはひくりとも動かないのに、その頬に人のほほを寄せてやる。
 それから、そうっと。まるで割れ物の硝子細工を扱うように指先で、美しい毛並みを撫ぜるのだ。背を、羽根を、そっと伝うように何度も。
 ヘルガが――狼になったヴォルフを撫でてやることは多くても、その逆というのは初めてだわなんて思い出す。彼の無骨だけれど、精一杯慈しむような手つきに合わせて、心がどんどん落ち着いていった。――無意識のうちに、囁きかけるように嘴を彼の顔に寄せていく。

「え?」
「――えっ」
 お互い、すっかり油断してしまっていたのである。
 嘴をヴォルフの顔に寄せたとき、ヘルガの魔法は解けてしまった。桜色の唇を食んでいたことには、ヴォルフも――しばらく間をおいてやっと実感する。
 
 おやおや、あらあらなんて。
 いろんなところから聞こえてくるまで忘れていたけれど、己らは今宴の席にてもてなされていたのだっけ。ひゅうひゅうと口笛が聞こえたなと思えばぱっ、ぱっ、と紙吹雪に桜吹雪が舞う。
「王子様とお姫様だぁ」
「キスで魔法が解けるってやつねぇ!」
「おあついね~ッ」
「俺もあと百年わかけりゃ」
「あんたなんていつもそういうじゃないか」
 きゃらきゃらからからと笑いだす妖怪たちを前に、自分たちがどういう状況だったのかは――なかなかにむず痒くわからされてしまって。
「これは――思いっきり見られてしまったな……」
「あっ、えっと……あの」
 ヘルガの肩にしっかりと手を置いて、とりあえずどうしたものかと考えるヴォルフに、ヘルガもなんと返したらいいやらわからない。
 夫婦なのだからその程度確かに当たり前なのだけれど、彼らはとても慎まやかである。人前で口を吸うとか、そういうのは――あまり経験のあることではなくって。
 さらに、ヘルガの立場も立場だ。無礼を働いたような心地がして、真面目な男であるヴォルフは思わず頭を少し下げてしまうのだった。
「何だその……すまない」
「あ、――謝らないで、ヴォルフ」
 いやだったわけじゃないから。
 薔薇のごとく真っ赤になってしまったヘルガの頬を、両手で彼女が押さえながらそっと首を振る。ヴォルフがピンと立った耳を平行にしてしまうほどには、他人に見られてしまうなんて抵抗があることではあったけれど。
 顔を隠す様に、ヴォルフの胸にぎゅっと飛び込む。
 うずめて、すり寄る姿にやっぱり歓声があがるけれど。それは冷やかすのとは違う温度だったのだ。
「幸せだといいねえ」
「ほんとだ、ほんと」
「愛は平和だかんねえ」
 ――何より人を愛する彼らが、他人の幸せを疎むはずもなくって。
 ぱち、ぱち、とヴォルフが二度ほど瞬きをして、妖怪たちのそれが祝福なのだと理解して、そっと目を細める。
 胸の内がこそばくてたまらないが、それはきっとヘルガも一緒に違いないのだ。ぽん、ぽん、と落ち着かせるために掌でヘルガの薄い背中を撫で、ヴォルフがもぞりと動いた彼女に集中した。

「ありがとう……愛してる」
 ――愛する人にだけ聞こえたらいい、そんな声量の【愛の賛歌】。
「――ああ、俺もだ。ヘルガ」
 聞こえない悲鳴を聞こう。
 届かない叫びを必ず拾おう。
 願いを共に叶え、苦難はともに戦い、そして――何度もそれを重ねて、愛しているのだとわかりあおう。
「これからもずっと傍に」
 当たり前のように思っていた約束を、何度だって口にする。
 今回の依頼のように、忘れてしまうことや、取り上げられてしまうことがないように。もし、そういうことがあっても――すぐに思い出したり、取り返せたりできるように。
 誓いをここに。何度も滅ぶ世界ですら、君を愛しているのだと二人、確かに寄り添っていたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

小泉・飛鳥
これは困ったな。まだ人形(じんけい)に戻らない
うさぎのヒゲを苦笑する風に揺らして

妖怪たちにはワンダーエッグをいくつか置いていこう
爆発はしないから安心して。本来の用途はびっくり箱に近いんだ
中身があたりか外れかはお愉しみ

そうやって煙に巻いて
料理と飲み物をちょっぴり失敬して
宴の声が届くけれど、ひと気が少ない場所を探してのんびり過ごそう

……そう、のんびりと
この姿では筆が重いね
そう、零しながら両の手でペンを抱えてうんしょ、うんしょと文を綴る

……君を赦すことは難しいけれど
君の無念を忘れもしない
君の在った証がいつか、誰かに届くように、筆を執るよ

僕たち妖怪とオブリビオンはとても似ている
だから諦めたくないんだ




「――これは困ったな。まだ人形(じんけい)に戻らない」
「あんたも大変だねぇ」
 苦笑いする翡翠のうさぎは、ひげをゆらゆらさせて困った困った。
 小泉・飛鳥(言祝ぎの詞・f29044)は妖怪たちと物々交換を繰り返す。と、言うのも――彼自身は宴の空気は好きなのだけれど、煙に巻きたいなと思っているのだ。
「おや、今日は俺たちがもてなすってのに」
「いいんだ。同じ妖怪のよしみだろう」
「そりゃそうかもだけど」
「あんただって猟兵なのにねぇ」
「いいんだ、いいんだ」
 びっくり箱のように楽しむべきのワンダーエッグをいくつか妖怪たちの掌に。ありがてえ、ありがてえやと受け取る彼らだって、今日は少しご褒美があればいいと思うのである。
 中身があたりか外れかはお愉しみだよ、なんて一言添えてやれば――じゃあ誰があたりかどうか確認しようじゃないか!とまた盛り上がる。さあ集まった集まった!開封式だなんて盛り上がる喧騒をひとつふたつみっつ――。
 そこには混ざらないまま、翡翠の兎はバケットにいそいそと飲み物と料理をつめていく。
「あれえ、小泉さんはどこにいったんだい」
「卵配ってんじゃぁないのかね」
 ――いつの間にやら宴の席から、翡翠の彼が消えていた。

 人気のない場所でないと、創作活動は落ち着かないのである。
 もとよりのんびりと、思考の海にどっぷり浸かって行うことだ。集中力と適度な栄養と、運動と、それでいて発想が鍵になる大仕事である。
「――この姿では筆が重いね」
 文字通りの意味もあったが、ひとつ文字をかくにも一苦労であった。小泉飛鳥は文豪でもある。
 彼が人を好きになった理由はこの文字で織りなされる物語のおかげなのだ。これが無くてはいつもの日々など始まらぬといわんばかりに、言葉を零しながら両の手でペンを抱えてうんしょ、うんしょと文を綴っていく。
 ――思考の整理めいている。
「……君を赦すことは難しいけれど」
 それは、素直な感想だった。
 世界から忘れられて、人間たちにはもう触れることすら届かない。
 ようやく猟兵たちに見つけてもらえるこの日まで、妖怪たちはずっとずっと、心の奥底で孤独があった。ともに喜ぶこともできず、驚いてもらうことも、恐れてもらうこともできないままに――飢餓で絶滅する前にどうにかこうにか生きていける思い出の地にすべりこんだ彼らである。
 ここを壊されては、人間に二度と会うことはできなくなってしまうのに。
 怒りのままに暴れるあの姿は、――赦すということを置いて、客観的にかの大砲を見れば確かにあれも正当だ。飛鳥にとってはまだ共感できるほどまっすぐな主張に思える。
「君の無念を忘れもしない」
 無念だった。
 文字をいくら綴れど、人間たちには作者不明で知られていくのがいいところ。
 読んだ誰かの心に響くこともない、届けられないからそんな作品はもうないのだと踏みにじられるような気分は、こうしてしっかりペンを抱えてでも綴ろうとする飛鳥は味わい続けてきている。
 ――だからこそ、世界を壊してしまえと。
 ――人間なんて、と皆からとりあげた彼を許すことはできなかった。
 愛らしいけれど、忘れてしまった人間たちを憎らしく思うのも理解できる。できてしまうからこそ、決してそれを許してはならない。
 がりがり、ざりざりと、丁寧に描かれていく文字は、原稿用紙のマス目を確かに埋めていく。
 時折、全身をいたわるために腰を落ち着けて――晴天の空を見あげた。
 ゆっくりと雲が動けば、鴉天狗やらその手下やらが空を悠々と飛んでいる。それらを追いかけるようにして無数の竜神たちがやがて、鱗雲のように泳ぎだした。

「君の在った証がいつか、誰かに届くように、筆を執るよ」
 思い出にすがる。
 いつまでも過去にあった彼らを、忘れることができない。
 愛された日々を、見つけてもらえた日々を、ともに喜んで、楽しんで、悲しんで、ともに怒った日々のひとつひとつも――忘れない。
 きっと、カクリヨファンタズムの妖怪とオブリビオンは似ているのだと飛鳥は思う。
 それでも、たった一つ違うとするのなら。

「諦めたくないんだ」

 けっして、未来を諦めないというところ。
 さくり、宴の席から持ち出したバタークッキーをひとかじり。
 さあ、またペンを執ろう。いつか読んでくれる誰かのために、一羽の兎が見た――美しくも残酷で、愉快な摩訶不思議の宴の話を。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬飼家・ヤング

なんやかんやあったけど、これにて一件落着ってか!

まだタヌキの姿のままやけど、よー考えたら妖怪の皆さんかて
動物になっても飲んで食ってどんちゃんやってたやん
せやったらこのまま宴会モードに突入や!
かーっ、仕事の後の一杯ウマー!
すっかり出来上がって上機嫌で腹鼓をぽんぽこりーん!

あんさん(2章ボスの竜)も災難やったなあ
ささ、遠慮なく飲んで嫌なことはパーッと忘れや

……おや? わいのタヌボデーに変化が……
これは元のイケメンテレビウムに戻るチャンス!
どろんぱっぱー!!

……ぽよん♪
(そこにはナニワのハリボテ看板で見たような
ぽってりとしたとれとれピチピチなフグが🐡)

なんでやねーん!!
(おあとがよろしいようで)




「なんやかんやあったけど、これにて一件落着ってか!」
 馬飼家・ヤング(テレビウムのちっさいおっちゃん・f12992)はぽんぽこりんと己の腹太鼓で音頭を取った。
「そうだそうだ、もうおしめぇだ!」
「なぁんてことなかったよなぁ!」
「あんたらなんもしてへんやないか~~い!!!」
 ヤングにやいのやいのと合いの手を入れる鬼さんたちもでへへと笑い。ヤングのキレッキレな腰の入ったツッコミにはドッ!と妖怪たちも笑い声をあげちゃうというもので。
「よー考えたら妖怪の皆さんかて、動物になっても飲んで食ってどんちゃんやってたやん」
「呑まねえとやってらんねえよ!」
「食わねえともったいねえよ!」
「ほんならわいかて飲み食いさせてもろてよろしいな!?よろしおますな!?」
「どうぞどうぞ」
「そこはもうちょっと焦らしてぇ~~な!!」
 うーんすっかり宴会モード。
 お仕事のあとの一杯はとってもおいしいし、思わずオッサンっぽさ全開に「かーっ!」なんて言っちゃうのである。
「むっちゃワンカップやん? わいもなんかおしゃれなん呑みたいわぁ」
「おやおやちょっとまっときな」
「ハイ水」
「いやまだ早いて!!!」
 妖怪たちのノリノリの合いの手もなーんのその。すぱすぱっとツッコミをいれつつ、ナニワど根性でちゃっかりお酒もおつまみもいただき腹鼓もぽんぽこりーん!
 すっかり地面に伏せて妖怪たちに傷薬をぺたぺた塗られている竜の前にくらくらっと千鳥足でやってきて、「あんさんも災難やったなぁ」と鼻っ面をぺちぺちしてやる。
「ささ、遠慮なく飲んで嫌なことはパーッと忘れや、おっちゃんの奢りやで」
「お前金払ってね~だろ!!!!」
「ケチケチすんなや!!!いやそれはそうでした!!!どうもおおきに!!」
 痛み止めになるといいけどねぇなんていいながら、竜の顎の端っこからお酒を注いでみるぬりかべなんかもいたりして。
 さあさあもっともっともりあがってんか!ヤングが歩けば大笑い、ヤングが食べれば大はしゃぎ!飲めや騒げやのにぎやかさ、きっと大阪風観光都市「テナモンヤ・ナニワ・シティ」にも匹敵するほどのやかましさになっていたことだろう。

「――おや?」
 ぴたり、たぬきが動きを止める。
「なんだなんだ」
「どうかした?」
「なァんかあたったんじゃねえの」
「アホか!ヤングさんはなぁ!酔ってもその辺は間違えへんで。これは――」
 狸も狐も猫も蛇も、おやおやとみんなで立ち止まったヤングを見る。
 どんどん四つ足が煙に包まれていって、さらなる変化を起こそうとしているのだ――!えらいこっちゃえらいこっちゃとはしゃぐ小さなタヌキと一緒に、妖怪たちみんなもえらいこっちゃ、えらいこっちゃ!
「これは元のイケメンテレビウムに戻るチャンスや!!!!!!!いくで、いくでいくでいくでいくでーーーっっ!!!!」
 気合十分、ボルテージも最高潮!
 うおおおおおと力んだタヌボデー、黄金に輝く――うおっまぶし!!※画面前の皆さんはもう少し離れてリプレイを読むようにしてください。


           ――ピ 🐡 カッ――

 と、瞬いて。
 世界が真っ白に包まれるほどの輝度のあと、ぽよんぽよんと宴の席に跳ねるのはヤングさんのいつものテレビウムボデーではなくて、ナニワのハリボテ看板よろしくのとれたてぴちぴち、よく肥えたフグの姿なのでした。

「なんでやねーーーーーーん!!!!!!!!!!!!!!!!」

 さすが【喜劇王☆爆誕】、おあとがよろしいようで!
 ぎゃはは、どはは、と笑い転げる妖怪たちも、すっかり緊張が解けていて。それぞれが人の姿を取り戻し、ひとつひとつに人を思い出していくのでしょう。
 空を泳ぐ竜神の群れも、ようやく訪れたつかの間の平穏に――ほっと胸をなでおろしていたのでした。



 どうか、忘れないで。
 あたりまえに隣にいるひとのことを。
 あたりまえに愛してくれているひとのこと。
 あたりまえに友として、あなたをあなたとして認めてくれるひとのことを。
 たとえ明日世界が終わっても、――あなたの姿を、あるべき姿をいつまでも思い出せますように。

 さてさて。
 これにて百獣夜行、美しくも残酷で愉快な乱痴気騒ぎのお終い、御仕舞い!
 化かしに化かされ惑うの夜、愉しんだもの勝ちは常世も幽世も変わるまい。さあ、もう一度口に出してみて。
 夢から現へ、朧から鮮へ還るための合言葉は――「どろんぱっぱ」!

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年04月01日


挿絵イラスト